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1964-09-15 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第61号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年九月十五日(火曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長代理 理事  吉田 重延君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 坊  秀男君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       纐纈 彌三君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    渡辺 栄一君       卜部 政巳君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野原  覺君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君  委員外出席者         内閣法制局参事         官         (第一部長)  吉國 一郎君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主計局次長) 澄田  智君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (関税局長)  佐々木庸一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   木村 秀弘君         大 蔵 技 官         (醸造試験所         長)      鈴木 明治君         食糧庁長官   斎藤  誠君         農林事務官         (食糧庁総務部         企画課長)   中野 和仁君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部長)    田中  勉君         中小企業庁次長 影山 衛司君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  道正 邦彦君         日本国有鉄道参         事         (営業局貨物課         長)      原岡 幸吉君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月一日  委員纐纈彌三君辞任につき、その補欠として島  村一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員島村一郎辞任につき、その補欠として纐  纈彌三君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員菊池義郎辞任につき、その補欠として田  澤吉郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制に関する件  関税に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  税制関税及び金融に関する件についての調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤委員 本日は主として昭和三十九年産米に関する酒造用原料米について、冒頭にひとつ食糧庁のほうの御見解を承りたいと思っておるわけでありますが、まず最初に、昨年度中よりたいへん米の需給関係がアンバランスになってきて、食糧庁は大わらわになり、輸入手当てをしたりあるいは国内やみ米が高騰するのではないかという議論、国会におきましても、たいへん貯蔵米が不足してきた、ほとんど古米を繰り越すことができないような状態ではないだろうかという、非常な心配の種になったわけでありますが、今日の需給状況、さらにこれからのごく近い年次見通し食糧庁としての今後の方針、そういうようなものについてまず冒頭にひとつ、需給状況からお尋ねをしたいと思います。
  4. 斎藤誠

    斎藤説明員 ただいまお話しになりました最近の米の事情についてどのように見ているかという御質問でございます。食糧庁といたしましては、たびたび国会におきましても御説明申し上げておるところでございますが、全体といたしましては、ここ最近来大体生産消費状態はほぼ均衡を得た、安定した基調の上に立って推移しておると考えておるわけでございますが、御承知のように、最近は食糧管理操作の面におきましては以前と多少趣を異にいたしてまいりまして、買い上げ量が年々ふえてまいっております。反面、売却量もまた増加するという傾向をたどってまいりまして、いわば米の全体の需給の中におきまする、食糧管理運営に基づく米の管理操作ウェートがだんだん高まるという傾向になってまいっておるわけでございますが、これが量の拡大に伴います一面、実は昨年は御承知のように、前年に比べれば約二十万トンも生産量が減ったというふうな関係もあり、またその前の三十六年の不作の影響を受けまして、食糧管理の中におきまする政府手持ち米というものがだんだん減ってまいる反面、新米に対する依存度が高まってまいった、こういう状況にあります関係上、管理操作面においては以前よりも引き締まってきたという傾向に本年は相なったわけでございます。そこで本年の端境期におきましても、輸入米の繰り上げの措置を行なうとか、あるいは端境期におきまする集荷の対策の万全を期するとかいうような措置をとってまいりましたが、幸いにいたしまして、全体の米の需給自身については安定した基調にあるわけでございます。問題は主として管理面における操作の問題でございますが、最近におきましては大体予定どおりの進展ぐあいを示しておりまして、ほぼ各地におきましても安定した状態になってまいっておる。特に本年におきましては憂えられておりました作況が、いまのところ非常に豊作が見込まれるというような状況でございますので、端境期におきまする買い入れの促進等考え合わせますならば、いまのところ何らの需給上の不安はないということで現在に至っておるわけでございます。  ここ二、三年どういうことになるであろうかということでございますが、これは今後の生産の伸びがどのように進展していくだろうかということにかかるわけでありますが、大体の傾向といたしましては、人口の増加がほぼ一%ないし〇・九%というのが最近の増加率でございますが、消費量といたしましても大体、そういうテンポで今後伸びていくのではないか、一人当たりの消費量はほぼ横ばいの傾向を示しておりますので、全体としてはいま申し上げたようなことで推移するのではなかろうか。そうしますと、生産量につきましても年率一%ずつぐらいの増加は、いままでの経過から見まして期待できると考えておりますので、大体均衡した状態で今後も推移するのではなかろうかというように考えております。ただわれわれといたしましては九月、十月の間におきまして、従前と比べればずいぶん出回り量というものは多くなってまいりまして、現在では大体五五%から六〇%に近い数量が、十月以前に出回っているような状況に相なっておりますものの、なおこれを売却する面におきましては、出荷の面あるいは輸送の面におきまして相当忙しい思いをいたしておるわけでございます。本年度におきましても、新米売却に期待する量は約五十一万から五十三万を九月、十月において期待いたしておるわけでありますが、これをもう少し緩和する、あるいは九月一日現在における持ち越し量を、若干ゆとりのある持ち方にするというような調整考えていきたいというふうに考えておりますので、まず今後といえども大体均衡した形でありますものの、非常なゆとりのある状況に急速に立ち返る、いわゆる米がかつて二、三年前のように非常にダブつくというようなことには必ずしもならないのではないか、こう思っております。
  5. 武藤山治

    武藤委員 安定的推移をたどっておって不安はない。全体的な立場から見ればそういうことは言えると思います。  そこでさらにこまかい部門に入って、国内生産量ではまかない切れない、輸入をしなければならぬ、おそらく四、五十万トンの輸入を予定しておるのじゃないかと思うのですが、輸入推移は、三十七年、八年、本年、来年、この四年間くらいの推移を見ると、輸入状況はどうなっておりますか。
  6. 斎藤誠

    斎藤説明員 正確な数字をちょっと持っておりませんが、三十八米穀年度におきまして約二十二万トン、本年、三十九米穀年度において二十五万五千トンという計画がありまして、若干三十九年度はふえております。
  7. 武藤山治

    武藤委員 この輸入米の売り渡しでありますが、これを酒造米に八万九千トン、三十八年度においては割り当てをした。本年においても酒造米用としてやはり加州米割り当てするのか、割り当てするとすればどういうやむを得ない事情から、酒造米外米を回さなければならぬのか、その辺のひとつ食糧庁として考えておる必要性というか、やむを得ざる措置——ども見解では、清酒をつくる米はできれば内地米を一切使うべきだ、そういう見解の上からの質問でありますが、食糧庁としてどうしても十万トン程度割り当てなければならぬという操作上の事由というものはあるのか、その辺をひとつ……。
  8. 斎藤誠

    斎藤説明員 それは酒米消費量いかんにかかっておるわけでありますが、お話のように、やはり日本酒でありますから、日本米を酒の原料に充てたい。これは私も同様に思うわけであります。昨年は御承知のように酒米が二百四十五万石、本年は約三百万石というように非常な増加をいたしたわけでありまして、三十九年度の需給上から見ますと、やはり前年に比べれば外米、準内地米を相当入れて、主食についての需給調整もはからざるを得ないという事情に相なった関係上、酒米の二百四十五万から三百万にふえましたその一部につきましては、準内地米で補っていただく、こういう措置をとらざるを得なかったわけでございます。お話のようにできるだけ内地米を入れるということについては、われわれもそういうふうに考えますけれども、全体の需給関係から、まず酒米にも代用し得るものということで、加州米の一部補充という措置を本年度とったわけであります。
  9. 武藤山治

    武藤委員 酒のほうの酒造米需要が三百万石というようにふえてきた。やむを得ず加州米を入れざるを得ない。しかしいまの長官の御説明では、何かどうしても需給操作上あるいは管理操作上十万程度酒造米に回さなければ操作がつかぬというような積極的な説明がないわけですね。ただ外米をこれだけ輸入しておるから、パーセンテージに、営業用工業用と割り振って、この程度はやむを得ぬだろうということで割り当てておるという御意見で、積極的なあれがない。というのは、清酒税金だけでも一千億からの税金政府は取り立てて、国家財政に非常に大きな貢献をさせておるわけですね。しかもその清酒の特徴というのは、かおりが諸外国の酒とは違った日本独特のかおりを持っておる。しかも日本の米でつくった酒というものは、非常に粘り強くて弾力性があって、他の酒には見られない特性がある。これが日本人に非常に愛好され、本年あたりは特に輸出をしようというので、大きく予算を組んで、大々的に業界でも宣伝をしようとしている、こういうような事情を勘案すると、わずか二十万トンか二十五万トンの輸入の米のうち、十万石をとにかく酒造米に回すことは、私は避けることが可能ではないかと思う。日本清酒特性を生かしておくためにも、これをはずすことは、そう操作上むずかしいことではないのではないか。長官がここで英断をふるって、日本の酒の特性を生かしておこう、こういう決断さえつけば、この外米をはずすということは容易にできることではないか、こう私は考える。あなたの積極的な説明がまだ足らぬようでありますから、その辺をもう一回、いままでは八万九千トン割り当てたけれども、ことしからはひとつはずそう、こういう決意にはあなたはなれないものかどうか、この点をひとつ………。
  10. 斎藤誠

    斎藤説明員 いま申し上げましたようなことで、三十九年産米は、実は非常に下位等級米といいますか、わりあいに五等以下がふえまして、一、二等のいわゆる特選米と称するものが非常に減ったといったような作況にあったわけです。そこでわれわれといたしましても、従来十キロ配給の外にありましたいわゆる特用米というものを、十キロの配給の中に入れるというような措置をとりまして、消費者からは米がまずくなったではないかというようなだいぶおしかりも受けておるわけでありますが、やはり主食については、三十九米穀年度におきましては、少しでも実はおいしい内地米をということで、主食に回し得るものが実は非常に必要であったわけでございます。そういうことと、それから加州米は、比較的他の準内地米に比べれば酒米に向いておるといういろいろの意見もありまして、国税庁なり酒造業界とも相談いたしました結果、まず加州米ならばよろしかろう。加州米主食用として配給する場合におきましては、実は価格のたてまえとしては内地米普通米と同じ価格にいたしております。他の準内地米は、内地米よりも価格差を設けておるわけでございますが、そういったように一番内地米に近い性質を持っておるということからにらみ合わせまして、どうしても加州米を一部酒米に充当せざるを得なかった、こういうことでございます。今後におきましては、結局酒の原料としてどのくらいの所要量が必要であるかということに関連いたすわけでありますが、同時に国内におきます供給力がどのくらいになるかという点とにらみ合わして判断すべきだと思いますが、私どもといたしましても、できるだけ酒は日本米でという気持ちには変わりありませんけれども原料所要量が非常に大きく伸びる、同時に主食用に回します内地米供給力がどの程度に今後なるかということとにらみ合わせませんと、いま直ちにどうだと申し上げかねる次第でございます。
  11. 武藤山治

    武藤委員 おそらく長官御存じないのだと思いますが、加州米を酒に使った場合には、どうも酒の味もよくない。粘りもたいへん少ない。それのみではない。カリ分加州米には非常に多い。これはもう試験の結果明らかに出ているようであります。私は過般酒造組合陳情書を受け取った際にいろいろ質問をしてみたわけです。一石の中に含まれるカリ分というものを聞いてみますと、内地米の場合は一石について平均三百五十八ミリグラムしかカリ分が含まれていない。ところが加州米の場合は八百ミリグラム含まれている。そうするとカリ分がそれだけ倍以上多いということは、酒に何か影響があるのかとただしてみますと、カリ分が非常に多いということは発酵しやすいのだそうです。その発酵が早過ぎるということがいい酒をつくる上において非常な障害になっているのだ。だから酒屋さんは加州米割り当てのものについては早く出荷をしなければならぬ。いつまでも保存しておかずに、先にそれを売り出さなければならぬという時日的にも非常な配慮をしなければならない問題があるわけです。そういう点を酒税当局なりあるいは食糧庁なりが十分検討してあるならば、十万石程度酒米というものはやはり徴税行政の上からもこの際はずすべきだ。そして国家財政がいよいよ硬直性が強くなって財源にこと欠くというときに、おそらく、酒のほうだけはもっとつくって、ひとつ大いに税収を上げようという国の政策なんですから、そういう政策に呼応した態度食糧庁としてもとるべきではないか。食糧庁はただ需給関係だけを見て、米が適当にバランスがとれればいい、こういう安易な考えではなくて、やはり国家全体でそういう大きな貢献をしておる業界要望というものは十分取り上げるべきではないか、こう私は考えるわけです。そういうようなカリ分の問題、内地米の中でも特にいいものでなければいい酒はできない、いわんや加州米を持ってくれば、いまのカリ分の構成を見ても、まさにいいものができないということは明らかです。ですから、もう一回長官として検討し直してみる、醸造試験所あるいは大蔵省関係とも十分ひとつ検討してみて、もう一回食糧庁としての態度をきめてみたい、そういうお考えにならないものかどうか、この辺をひとつお伺いいたしたいと思います。
  12. 斎藤誠

    斎藤説明員 お話のように酒は嗜好品でありますので、原料いかんによっていろいろ影響があるだろうことは想像にかたくないわけでありまして、加州米からできた酒についてのいろいろのお話も伺っておるわけでございますか、四十米穀年度におきまして、どういうふうにするかということはまだきめておりません。したがって、いまお話になりましたような点もいろいろ考慮に入れまして、十分検討したいとは思っておりますが、一面酒のほうについて、原料米をできるだけ内地米で確保したいということもよくわかるわけでございますが、私どものほうからいうと、単なる数量だけではなしに、やはり豊作で多少なりともいい味の米を消費者の方にも配給したい、こういうこととのかね合いで検討させていただきたい、こう思うのであります。
  13. 武藤山治

    武藤委員 それではひとつ長官にもうちょっとこまかい点をお尋ねしますが、現在営業用工業用原料米一般消費者の米とその量のウェートはどうなっておりますか。石数なりパーセンテージなり両方ひとつ明らかにしていただきたい。
  14. 田中勉

    田中説明員 お尋ね食糧庁操作しております各用途別数量の割合でございますが、昨年の場合におきまして、外国米も含めまして政府が売りました数量は、全体で六百六十六万九千トンあるわけでございます。その中で主食用及び業務用数量が六百八万二千トン、この中で業務用が約二十万トンくらいになっております。したがって、その残余のものが一般家庭配給ということになっております。それから工業用の中には酒米をはじめといたしまして、菓子の原料とか、みその原料とか、いろいろこういうものがございますが、それが五十八万七千トンになっております。その総計が先ほど申し上げました六百六十七万トンという数字になっているわけでございます。
  15. 武藤山治

    武藤委員 長官御存じだと思いますが、戦前の酒は清酒一石つくるのに米を一石八斗三升一合使ったそうです。ところが戦後は食糧事情の窮迫ということから、業界でも米の節約をしようということで、今日では一石五斗一升四合しか使っていない。戦前よりも三斗も清酒原料米を節約している。何でカバーしているかといえば、 アルコールを混入して、その分をカバーする、こういう酒になっているわけです。したがって、酒も戦前と今日を比較したら——私も昔税務署に少し勤務いたした経験がありまして、酒倉に仕込みのときに行ってみますと、あの白米を六分くらいまでに白くよくついて、そしていい酒をつくろうという努力をしてきた。それが最近は、酒全体の使用石数も極度に減らしてまで苦心されている。そういうような姿を考えたときに、いまのような使用状況から見て、酒用に十万石の外米割り当てをするということは、どうも酒というものの特殊性を十分に認識をしてくれていないのではないか、こういううらみがあるような気がいたします。政務次官、いまの私の質問を聞いておって、外米の十万石を酒用割り当てるというこのいまのやり方が少し機械的過ぎるような感じがいたしませんか。あなたはどのようにお感じになっておりますか。
  16. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 私はどうも酒のほうはあまり専門ではありませんから、よくわかりませんが、しかしいま武藤委員の言われることは、諸所から聞いておりますので、もちろん大蔵省としては食糧庁相談の上でなければ決定はできませんが、なるべくならば皆さんの御希望に沿いたいものだと考えております。
  17. 武藤山治

    武藤委員 私は食糧庁長官に、十万石程度加州米酒造米に使うことは一日も早くやめてほしい、こういう強い要望を申し上げておきます。  次に、先ほどちょっと耳にひっかかったことばの中に、将来酒造米石数がどんどんふえる傾向になった場合には、外米使用というものが相当考えられるような口うらであったわけです。本年も三百万石になったからという裏にはですね。そこで酒造組合なり大蔵省なりが、税収の上から年次計画を立てて、昭和四十三年度にはこの程度の酒をつくろうという一つ目安があるわけで、私どもの手元にもその目安が配られておるわけです。それによりますと、来年は三百三十万石ですか、その翌年は三百五十、四十三年度においては約四百万石の酒造米を必要とする、こういう一つのスケジュールが数字の上に出ておるわけです。こういうものは、食糧庁大蔵省関係なりあるいは酒造組合業界なりで話し合った上でつくっている数字ですか。もしこれが話し合っておる数字だとすれば、これに比例して加州米をどのように配分をするというお考えでおるのか、その辺の見通しについてはどうなんですか。
  18. 斎藤誠

    斎藤説明員 いまお話になりました、酒としての今後の製造計画につきましては、これは私どもとは直接関係ありませんので、お話を必ずしもいたしておりません。私も承知いたしておりません。したがいまして、私のほうといたしましては、毎年度どのような原料所要量が必要であるかということにつきまして、国税庁からお話がありますると、それに応じて具体的にきめていく、こういうことにいたしておるわけでございます。したがって、いま造石数に対応して加州米をどのように入れるかということは全然まだ私のほうは検討いたしておりません。またあらかじめそのような考え方も実は持っておりません。
  19. 武藤山治

    武藤委員 国税庁長官がいらっしゃるようですから、国税庁側としては、こういう酒造組合業界計画というようなものについては関知していないわけですか。それともある程度税収というものの見通しを立てながら、この程度清酒なら売れるだろう、これはひとつこの計画を達成さしてやろう、こういうお考えになっておるのか。もしそういう考えを持っておるとすれば、酒造米だけは、年々そのつど食糧庁と話し合うだけで、長期的な計画というものは、国税庁は全くお持ちになっていないのか、その辺もひとつお伺いしたいと思います。
  20. 木村秀弘

    木村説明員 ただいま武藤委員の御指摘になりました数字は、おそらく先般中小企業近代化促進法の制定に伴いまして、酒造業界として五ヵ年計画を立てた際の一応の見込み製造数量であろうと思います。もちろんこの計画を立てます際には、酒造組合中央会あるいは国税庁学識経験者等も入りまして計画を立てておるのでございまして、その点については中に入っておるということは申し上げられます。しかしながら、これは一応の見通しでございまして、それに要する原料米手当てという面につきましては、具体的には食糧庁長官から申し上げましたように、食糧庁相談はいたしておりません。大体最近の需要を見てみますと、数年間平均いたしまして、年に五%ないし七%需要がふえております。そういう見込みで五ヵ年計画を立てれば、大体そういう数字になるだろうということでございまして、原料米手当てにつきましては、毎年毎年そのつど食糧庁のほうと協議をいたしておるわけでございます。
  21. 武藤山治

    武藤委員 食糧庁としてはまだ全然そういう長期の計画を立てておらない、しかし業界としてはこの程度清酒需要が伸びている、しかも伸びることによって政府税収が一そうふえていく、一年間百億も清酒だけの税金で伸びているわけですから、そういう国家的な見地に立ったならば、食糧庁としては私はもっと積極的に酒造米の確保という問題については検討してしかるべきだ、国税庁から年々この程度ということを言われてその場でどろなわ式に価格考えたりあるいは数量をきめたりということよりも、大めどはやはり目安として協議しておく、そういう必要があろうと私は考える。今後はそういう点を十分食糧庁としても勘案をしてもらいたい、こういう点については食糧庁長官いかがですか。
  22. 斎藤誠

    斎藤説明員 食糧庁といたしましても毎年毎年ということでなしに、ある程度の全体の長期的な計画を立ててやるべきであるということは御指摘のとおりであろうと思います。ただ計画を立てましても、やはり米作の性質上年年作況に相当フレがあるわけでございますので、そういうことで結局具体的な数字については年々お打ち合わせせざるを得ない、こういうことになっておるわけでございます。国税庁のほうからそういうお申し出がありました際におきましてはわれわれも十分検討いたしたいと思います。
  23. 武藤山治

    武藤委員 次に、第二の原料米政府売り渡し価格についてお尋ねいたしますが、一体酒造米価格食糧庁としてはいつごろおきめになる予定で、現在作業はどの程度進んでおるのか。
  24. 斎藤誠

    斎藤説明員 例年九月一ぱいくらいにはきめておりますので、ことしもできるだけ早くきめたいということでいま国税庁なりといろいろ折衝いたしております。
  25. 武藤山治

    武藤委員 年々九月ごろ決定するというお話でありますが、つくり酒屋のほうはだいぶ最近は酒の仕込みの時期が変わってきまして、昔は冬のほこりの立たない最も静かな夜中に仕込みをするという非常に幼稚な技術でやったわけでありますが、最近はもう一年じゅう酒造できるような体制に変わってきている。したがって九月上旬から酒屋としては仕込みにかからなければならない、そういう需要に追いつくような製造をしなければならないし、一定の設備でこれだけの量を製造するということになりますと、時期的にだいぶ早くなってきている。したがってもう九月にはどうしても早場米を手に入れて酒造にかかりたい、こういう状況のようであります。特に山陰地方から東北、裏日本にかけてはもうすでに人手を用意し、直ちに酒造に着手したいという非常に強い要望があるようであります。そういう点について、食糧庁としてはまだ値段がきまらぬからといって早場供出の米が酒屋にいかぬ、こういう状態は少々怠慢のそしりを免れないのではないだろうか。そこで本年の場合、価格が九月一ぱいできまる、それから酒屋に売り渡すということではなくて、暫定価格で、昨年の価格で一応暫定的に売り渡しておいて、十月になってからはっきり価格がきまったら追加を徴収する、そういう方法も事務的にとれると思うのです。そういう点、いま直ちにほしいという石数については、食糧庁としてはどういう処置をしてやろうと思っていますか。それとも価格がきまるまではもう知らぬ、そういうほおかむりでおるか、その点の食糧庁見解をひとつお尋ねし、さらに九月早々から米がほしいという希望があるかないかを一体国税庁は知っておるのか知ってないのか、知っておって農林省にも督促をしておるのかしてないのか、あるいはそういう実態がないという認識なのか、その辺もひとつ明らかにしておいてほしいと思います。
  26. 斎藤誠

    斎藤説明員 だんだん最近は新米手当ても必要であるということも承知いたしておりますが、従来とも、昨年が十月一日に価格がきまった、これが一番早いきめ方だったと思います。多くは暫定価格をきめました場合におきましても、過去の例でありますと、十月末か十一月になってから暫定価格をきめておるわけです。どうも暫定価格という形できめましても、結果においてはまた価格をきめるということになりまして、あとからいろいろトラブルが起こりますので、この二、三年来から国税庁とも、大体価格をきめる考え方、方法といいますか、これを両者の問で相談いたしまして、今後はこういう方法でやろうじゃないかということになったのであります。そこで三十七年からできるだけ早く本価格をきめようじゃないかということにいたしたわけであります。まあ本年におきましても従来の方法を踏襲いたしますならば、話は早くまとまるのじゃないか、私のほうといたしましては、早く価格をきめて、取引に支障のないようにいたしたいというふうに考えております。ただいままで私の承知しているところでは、ものの量確保につきましては、それぞれ九月から手配いたして、現地における出荷の体制は整っておるということでありますから、九月一ぱいに価格をきめるならば、いまそう取引関係として非常に困るということではないんではなかろうか、こう思っております。
  27. 木村秀弘

    木村説明員 私たちもできるだけ早期に価格が決定されることが理想だと思いまして、目下食糧庁との間で価格についての交渉をいたしております。ただ先ほど御指摘のありましたように、九月から米を引き取りたいという業界の御要望も相当熾烈なものがございますので、もし価格が最終的にきまるまで現物が入手できないということになりますと、かなり業界に対する影響も大きゅうございますので、三十六、七年に行ないましたように、もしこれが延びるようであれば、ただいま御指摘のように、暫定価格でもって何とか現物の引き取りをお願いしたい、こういう線で食糧庁にはお願いをいたしておるわけでございます。
  28. 武藤山治

    武藤委員 食糧庁長官、いまお聞きのように、国税庁側では業界が九月中にほしいという山陰から東北関係にかなりの業者がある。すでに人夫を雇い、受け入れ態勢は万端できておる。それがすぐ米が入らぬための経費増、損失というものは、相当の金額で、もし長官がその金額を出せといえば、午後にでも私は中央会から直ちに資料をとってお見せいたします。国税庁としては、できるだけ早く暫定価格でもとにかく出したいという希望があるわけですね。食糧庁としては、それほどの強い希望があり、実態がそうであるという事実があるならば、暫定価格で一応渡たすという気持ちになれますか、その点ひとつ長官、確認を……。
  29. 斎藤誠

    斎藤説明員 早くきめるということに問題があるようでありますので、私のほうとしては本価格をできるだけ早くきめたい、こう思っております。
  30. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。佐藤觀次郎君。
  31. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 食糧庁長官にちょっとお伺いしますが、昨年十一月ごろに米の手当がおくれまして、愛知県などの例でありますけれども、ちょうど仕込みの時期に米が入らないということで、業者は非常に心配して現地に行って調べた。そうしたら現地の者は農業協同組合の倉庫ががらあきであまり早く出してしまうと倉庫料が一銭もとれない、そういうふうな理屈で非常に配給がおくれたという事実を聞いておるわけですが、いま武藤委員が御指摘のように価格の決定がおくれるために仕込み時期を失するということがありますが、こういう点については一体食糧庁長官はどういうふうに——斎藤さんは今度長官になられたんだけれども、そういうようなことがあるのではないか、これは農業協同組合の立場もわかりますけれども、そういうことの処理をどのようにしておられるか、これを一つだけちょっと関連して伺いたい。
  32. 斎藤誠

    斎藤説明員 昨年度若干地方によってそのようなことがあったかと存じますが、これは価格の決定の関係とは全然無関係でありまして、主食出荷が優先されたといいますか、促進された結果、多少酒米出荷と競合した際に、酒米がおくれたというような場合があるいはあったかと思います。あるいはまた、農協等において保管料を得るという意味で、できるだけ早期の出荷を好まないというようなこともあるいはあったかと思いますが、本年はそういう点につきましてはいち早く各県と相談いたしまして、出荷について酒米一般主食用の県外搬出につきまして、両方並行していくような打ち合わせもいたしております。それから農協のほうの関係におきましては、保管日数をある程度保証するという方法をとることによりまして、早く出してもそれによって保管料収入が著しく減るとうことがないようにするという措置をとったわけでありますので、ことしもその趣旨がだいぶ徹底しておりますが、ことしは必ずしもそういうふうなことにはならないのではないか、こう思っております。またそのような指導をいたしておるわけであります。
  33. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一点、これはあとで武藤さんや堀さんからも質問があると思いますが、たびたび当委員会で問題になりますのは、酒米消費者米価で渡したらどうかという意見があるわけです。これは御承知のように間接税をとるのだから、やはり今度の米価が値上がりになりましたから、消費者米価が上がるか上がらぬか問題になりますが、こういう点について食糧庁長官はどういうふうな処理をされるのか、いままでどおりやるのか、変えるのか、この点はほんとうは大臣に伺いたいのですが、大臣がおられませんから、こういう問題どうなんですか、ちょっと関連して伺いたいと思います。
  34. 木村秀弘

    木村説明員 国税庁といたしましては、従来からも原料米酒米価格はできる限りコスト主義によつていただきたいということで、三十七年度、三十八年度におきましては、この点について食糧庁相談をいたしまして、まずほぼわれわれの希望に沿った線を出していただいたわけでございます。ところが今年は、御承知のように石当たり一万五千一円、昨年度に比べまして千七百九十七円の値上がりになっております。これがそのまま酒米価格になりますと、相当製造者に打撃を与えるだけでなく、酒の一般価格影響を及ぼしますので、できるだけこれを引き下げていただきたいということで、現在食糧庁と協議をいたしておる段階でございます。
  35. 武藤山治

    武藤委員 いまの佐藤委員質問関係してくるわけでありますが、先ほど長官はなるべく早い機会に、十月一日には確定価格をつくれるように今月一ぱいで努力したい、そう言っておりますが、現在決定しかねておる最大の要因は何ですか。どういう点が国税庁との価格調整の話し合いの中でむずかしい点になっておるのですか。これをひとつ……。
  36. 斎藤誠

    斎藤説明員 いま事務的にいろいろ折衝しておるので、私も具体的なところまで承知しておりませんが、要するにいま国税庁長官からお話がありましたような値上げの額、幅の問題であります。
  37. 武藤山治

    武藤委員 国税庁長官、ことしの生産者米価が一石一万五千一円ですか、大幅な千七百九十七円という価格引き上げになった。このままこれを酒造米価格に引き伸ばすと、一石についてどのくらいのコスト高になりますか、それだけの引き上げがそのまま反映された場合には。
  38. 木村秀弘

    木村説明員 一升大体七円程度コスト高になると思います。
  39. 武藤山治

    武藤委員 一升七円かりに清酒価格が高くなる。六月一日から清酒の基準価格が撤廃されたから、七円上がろうが、十円上がろうが、力のある酒造所はどんどん下げられるだろうし、中小酒造家は基準価格が撤廃されたからといって、そうべらぼうに高い値では売れない。そこで、その値上がり分をどう調整するかというようなことが非常な問題点だろうと思うのです。  そこでこれは私見になりますが、食糧庁長官、現在の生産者米価の中の臨時特別加算金、ことしの一石五百五十円、これはあくまでも政治的配慮からつけ加えられた価格ですね。私はそう考える。特に昨年の需給関係から見て、農民に大いにひとつ売り渡しをさせようというねらいから五百五十円をくっつけた、あるいは他の産業との格差をできるだけ縮めようという配慮からこの五百五十円はつけられた。だとしてみると、そういう政治的配慮による米価要因というものは、その五百五十円分は当然消費者価格から除くべきだと思うのです。一般会計でそういうものは補てんをすべきだ、こう私は考えるのですが、この点についてあなたの見解はいかがですか。
  40. 斎藤誠

    斎藤説明員 いまの五百五十円がどういう性格を持っておるか、これはいろいろの解釈があると思います。いずれにいたしましても、本年の米穀事情にかんがみまして、生産の確保をはかり、売り渡しの促進をはかっていただいて、これによって需給の万全を期するようにしたいという米価審議会の答申もあったわけでありますが、そういうようなことにかんがみまして、臨時特別加算金が付与されたという性格を持っておると思いますので、これによりまして主食の供給も確保され、また加工用、原料用のお米の生産、あるいは供給も確保されるというようになっておるわけでありますから、これは全然別だというように考えるのは私はいかがかと思います。いずれにしても、これは食糧庁としては、買い入れ価格の一部をなしておるわけでありますから、これがどう扱われるかということは別でありますけれども、コストという考え方には間違いない、こう思っております。
  41. 武藤山治

    武藤委員 コストには間違いありませんけれども、特別加算金をつけたというねらいは、やはり農民に対する配慮からなんです。特にそれは所得間の格差をできるだけ縮めよう、あるいは大いに正式ルートへ乗せた売り渡しを増大させよう、特に昭和三十八年度は需給関係が逼迫して国民の間にたいへんな心配が発生した、国会でも問題になった、そこで、もっと需給関係をスムーズにしようというねらいからこの五百五十円というものが付加されたものだ。あなたはいろいろな見解があるというから、そのいろいろな見解を全部ここで出してもらってもけっこうですが、そういうものをやはり酒造米に加えていくと、酒のコストがとにかく一升七円からのはね返りになってくるということを十分配慮するならば、これは今度の酒造米価格の中から除くべきだと私は考える。現在の価格決定の折衝がどの程度まで進んでおるかわかりませんが、ひとつその辺も国税庁側としては、これは含めてコストとして一万五千一円でやむを得ない、こう考えるのか、それともこの特別加算金だけは最低限除いてもらいたい、それ以外に酒造組合要望としては、またいろいろ時期別格差の問題、運賃計算の問題、金利の問題、いろいろ現実にマッチしない計算が従来行なわれてきている、これはこの際改善をしてくれという強い陳情が出ておるようでありますが、そういう他のもの、政府の経費を別として、この特別加算金だけはとにかく今度の酒造米のコストに入れない、こういう方針で臨んでいるのか、それとも長官が言うように、これはみんなコストだからそっくりこれを含めた酒造米価格にするのだ、これに妥協するのか、現在の折衝過程ではそこらの取り扱いはどういう議論になっておりますか。
  42. 木村秀弘

    木村説明員 国税庁といたしましては、ただいま武藤委員が御指摘になりましたように、主として三点、臨時特別加算、それから時期別格差、金利、この三点についてできるだけ改善を加えていただきたいという点で折衝をいたしております。そこで、臨時特別加算五百五十円をどう考えるかということは非常にむずかしい問題でございまして、もちろん一般消費者価格にどういう態度がとられるかということも関連をいたしまして、相当問題があると思います。しかしながらいずれにいたしましても、これをそのまま米価に横すべりさせられるのでは、先ほど申し上げましたように、かなり大きな影響がございますので、でき得ればこの点については考慮してもらいたいということで、現在この三点について折衝をいたしておる段階でございます。
  43. 武藤山治

    武藤委員 国税庁は、現在算定している食糧庁に向かって、この程度が妥当な数字ではないかという要望をしている金額、それは、一石についてどの程度の金額を酒造米価格として決定してほしい、その要求金額はどういうことになっておりますか。
  44. 木村秀弘

    木村説明員 ただいま協議中でございまして、具体的に数字が動いておりますので、いまの段階で申し上げるのはまだ時期が早過ぎるかと思いますけれども考え方といたしましては、先ほど武藤委員が御指摘になりましたように、臨時特別加算、これはひとつ落としていただきたい。それから、時期別格差、金利につきましては、酒造用米が早期に引き取られる関係上、前年よりも低目に算定をしていただきたい、こういう点について折衝中でございます。
  45. 武藤山治

    武藤委員 折衝中はけっこうですが、先ほども申し上げましたように、もう九月から買い取りたいという希望が非常に強いのですから、来年はひとつ生産者米価がきまったらすぐ作業に取りかかって、なるべく早い機会に決定をしてもらいたい。本年は暫定価格においても直ちに酒造業者の希望が達せられ、税収に欠陥などの生じないように配慮をすべきだ、こういう強い要望を申し上げて、食糧庁長官に対する質問のほうは終わりたいと思います。  主税局長にちょっとお尋ねいたしますが、いま清酒の鉄道貨物運賃率が他の酒類に比較をして高い。それともう一つは、酒屋が近代化促進のために廃業をする、あるいは酒の権利を他に譲渡する、そういうような場合の譲渡所得の取り扱いが、法人の場合には軽減措置があるが、個人の場合にはその軽減措置がない、こういう不満の陳情が業界から国会にもされております。個人の場合には何か総合申告の際に特別に率が低くなっているとか、あるいは金額が何%というワクを申告すればいいとか、そういう特典があるために個人と法人を区別しておるのか。それとも、なるほど個人が譲渡所得税々を法人と比較して重く取られる、そういう実態があるのか、その辺は主税局としてはどのように考えておられるか、ひとつ事実を明らかにしていただきたいと思います。
  46. 泉美之松

    ○泉説明員 最初お尋ねの酒の鉄道貨物運賃率の問題でございますが、これは国税庁のほうからお答えいただくことにいたしまして、お話の酒類業者が転業あるいは廃業をいたします場合の、その転廃業に伴いましていわゆる基準指数を譲渡する。その譲渡の場合、これに対する法人税なりあるいは所得税の課税を軽減してほしいという要望はかねてからある問題でございます。ところが武藤委員承知のようにに、法人の場合でございますと、これが合併するという場合に、合併の清算所得に対しましては軽減措置がとられておるわけでございますが、個人の場合におきましては、そういう措置がとられておりません。そこで、この間に問題があるではないかということがいわれておるわけでございます。ただ何ぶんにも基準指数というものの性格につきましていろいろ問題がございまして、これを単純に非課税にすることがいいかどうかということからいたしまして、従来そういう措置をとっておらなかったのでございますが、お話しのように、今回清酒につきまして近代化計画というのがつくられまして、その近代化計画の線に沿ってそうした措置が促進されるということになりますと、これはかつてございましたように、いわば政府のあっせんとか慫慂によってそういう措置がとられるものである、したがってそのことに関連して何らか課税上優遇措置を講じたらどうかという点が問題になってまいりますので、私どもといたしましては目下それについてどのようにしたらよいかということを検討いたしておるのでございまして、いずれ検討いたしました結果、また御審議をわずらわすようなことがあろうかと存じております。
  47. 武藤山治

    武藤委員 主税局長が検討されることに対しては敬意を表しますが、四十年度の税制をいろいろ検討する際に、これも遠い将来のことでなくて、四十年度に検討したいというお考えなのか、その辺をひとつ明らかにしていただきたい。
  48. 泉美之松

    ○泉説明員 お話しのように、清酒の近代化計画は先般告示されまして発足いたしましたので、私どもといたしましても、当然四十年度の税制改正でこれをどうするかということを検討いたす考えでございます。
  49. 武藤山治

    武藤委員 約束の割り当て時間が参りましたので、一問だけ日本国有鉄道の原岡貨物課長に運賃のことでお伺いしますが、これも時間がありませんから簡単に要点だけお尋ねいたしますが、現在清酒の運賃等級が二等級になっておる。他の酒類は三等級になっておる。そこで清酒もひとつ三等級に入れるべきだという要望があるわけですね。なぜ入れられなかったかという基準については、専門家のあなたが御存じのように、貨車一トン当たり九万八千円を超過するものとそれ以下のものというのが基準になっているようです。ところが業界のほうでは、トン当たり九万八千円になるかならないかというのは、価格の中に税額を含めて計算するか、税額は当然これは除いて計算をすべきか、そういうような点が論争点になっていると思うのです。  そこで業界のほうの主張を読んでみると、もっともだと思う点がかなりあるわけです。貨車一トンあたりの清酒特級で八万三百九十四円にしか当たらない。一級の酒で七万三千百四十四円、大衆酒の二級酒に至っては六万四千九百十九円にしかならないのだ、こういう数字から見ても当然三等級に入れてしかるべきではないか、こういう要望がありますが、これに対して当局側はどういう検討をされ、今後どういう処理をする予定でおるか、そういう点を少し明らかにしてもらいたい。
  50. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 ただいまの等級問題にお答えいたします。  国鉄の貨物等級は、発駅の荷づくり込みの実重量一トン当たりの価格でもって、これをもとにいたしまして一つの査定基準に照らしてこれが何級、これが何級というふうにきめるようになっております。その場合に価格でございますが、これは税込みの価格であるということで実行しております。この実行しておるもとは、実は昭和三十五年に貨物等級関係のいろいろな検討をした際に、有識関係の方々による委員会をこしらえまして、その委員会の答申に基づいて税込みの価格であるという指摘がございまして、そのとおり実行しているわけでございます。したがいまして、税込みの価格にいたしますと清酒は二級になり、その他の酒が三級になる、こういうのが現在の状況でございます。
  51. 武藤山治

    武藤委員 現在の状況がそういう状況なので不満だ、どうもこれは合理的でない、こういう希望があるわけですね。御承知のように、酒は他の三等になっておる米、麦、大豆、みそ、しょうゆとは、その性質が非常に違うわけです。あなたも御承知だと思いますが、清酒の場合は、特級は六割二分が税金である、半分以上税金なんですね。一級の酒でも五二%、二級で四一%という高率な、国策で非常に高い税金をかけている。大いに国民に飲ませて税金を吸い上げようというのですから、飲ませるのがいいか悪いかは別として、とにかくそういう性質の、国家税金をとるために管理しているような品物なんですね。そういうものを他のみそ、しょうゆと比較して、特別な性質のものだからという形で税を抜いて、トン幾ら、こういう計算をすることのほうがなるほど合理的じゃないだろうか、こういう点については、最近検討は全くしてありませんか、それとも、さっきあなたがおっしゃった何とか審議会ですか委員会、これは最近活動しているのですか。こういう問題を要望があるからもう一回検討してみようというので、検討し直したような形跡はないのですか。それはいかがですか。
  52. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 貨物等級の現在の状況が合理的であるかどうかという問題につきましては、実情に合うか合わないか、いろいろな問題を包蔵しております。その問題の検討には、全部を総合的に検討しなければならない、こういうように考えているわけでございます。税込み価格が実情に合うか合わないかということでございますが、御参考までにお答えいたしますと、たばこなりガソリンなりこういう非常に高額の税金が含まれておる価格につきましても、同じように税込み価格でやっておるのが現在の体系でございます。したがいまして、全体的な検討の際には、当然そういうものも一つの問題として総合的に検討されなければならない問題と私は考えております。
  53. 武藤山治

    武藤委員 私どものほうの党としては、現在の運賃の特例というものはできるだけ整理をして、でこぼこをとにかく是正をする、本来ならば、そういう特例があり過ぎて国鉄の赤字を一そう増大している、ですからこれはもう徹底的にメスを入れて整理すべきだというのが私ども社会党の方針でありますが、それまでの過程で、こういう不合理なでこぼこやどうも納得のいかぬものは一律に直す、こういう立場からは、いま酒造組合の諸君が要望しているような点を十分勘案すべきだ、こういう点を強く要望しておきます。やるならば徹底的に全部をこの際メスを入れてでこぼこを整理しなければいかぬ。それができない情勢ならば、やはり引き上げるものは引き上げてやる、こういう配慮を、あなたの上司にも十分伝えてほしい、そういう要望をして、約束の時間が来ましたから、質問を終わりたいと思います。
  54. 有馬輝武

    ○有馬委員 関連して。米の予約について食糧庁長官から事情を伺いまして、それについて関連して政務次官にお伺いしたいと思います。  三十九年産米の予約に対して、福井県では特異の事態が出ているやに伺っておりますが、それが現在どのようになっておるのか。そしてそれに対して食糧庁はどのような手を打たれておるのか。この過程を長官からでも部長からでもお聞かせいただきたいと思います。
  55. 田中勉

    田中説明員 お尋ねは、福井県におきまする予約について、またその後の売り渡しについて、福井県の農業関係の団体の動きというようなものについての御質問だと思います。米価が決定いたしました直後におきまして、北陸四県におきまして、予約についていろいろ予約を推進すべきかどうかというような動きがあったことは事実でございますが、その後におきまして、新潟、富山をはじめといたしまして、また石川県におきましても、予約はこれは当然推進すべきであるというような線で動いております。また福井県におきましても、予約問題についてはともかくもこれをやるべきであるというようなことになっておったようでありますので、その後におきまして、実際の売り渡しの問題につきまして、石川県と福井県におきまして私が承知しておる範囲のことを申し上げるわけでございますが、あるいは現地の実態と相違しているかとも思いますけれども承知している範囲を申し上げますると、石川、福井県におきましては、売り渡しの遅延運動と申しますか、売り渡しを差し控えようというような、ある時期までこういうような運動もあったことは事実でございます。ただし、石川県におきましては、八月の中、下旬にかけましては、県庁を中心といたしまして、売り渡しにつきましてもそういう動きはないというようなことで、やはり予約に引き続いて、売り渡しが間もなく始まる早場地帯でございますので、売り渡しは売り渡しとして、やはり早目に出して、そうして時期別格差なりそういう恩典に浴する、こういう動きになったわけであります。まあ福井県におきましては、若干、この八月末から九月の初めにかけまして、売り渡しにつきまして、たとえば当初何か九月の二十日前には売り渡しは要しないというような動きもあったやに聞いております。その後におきまして、九月の十五日くらいまでは売り渡しを控えようというような動きがあったようでございますが、その後、県の知事さんをはじめといたしまして、また農業団体の首脳部の方、いろいろ現地で話し合われた結果におきましては、売り渡しにつきましては、全面的に、売り渡しを差し控える、手控えるというような統一行動のようなことはいたしておらないようでございます。ことしは作柄も五日ないし一週間程度早まっておるわけであります。農家の庭先におきましてはすでに脱穀調製された米ができ上がっている現状でもございますので、まあ現地、現地で売り渡しについてはそれぞれ善処しようというようなことになっているように私は承っております。現に、また、福井県の売り渡しの実際の数量等におきましては、例年に比較してそう劣っているような数量ではないように私聞いております。
  56. 有馬輝武

    ○有馬委員 田中部長は、さほどのことはなくてというような御認識でいらっしゃるようでありますが、私は、福井県の場合、これはほかの北陸四県でも同様な動きをしたい、統一行動をしたいという希望がありながら、福井だけに最終的にはしぼられて、知事なんかもむしろその先頭に立って動いた一時期があったように伺っておるわけであります。こういった全県的な動きというものについて、生産者の意向というものがどこにあるか、ただ単に集荷をスムーズに行なうという立場からだけものを考えるのじゃなくて、よってきたるところはどういうところにあったのか、そしてその話し合いの場はいかに持つべきかという立場から見ていくべきではないかと私は考えておるわけであります。  ですから、私ここで政務次官にお伺いしたいと思いますことは、いま第一部長からお話がございましたが、やはり米価についてこういう動きというものが、本年は福井一県だけに限られておりましたけれども、でき得るならば全国あげて生産費及び所得を補償するような米価というものを要求する一つの動きとして、一万五千一円、一千七百九十七円の値上げが決定されたあとにおいてさえもそういう動きがあるという事態について、政府としても慎重な配慮を加えるべきではないかと私は考えておるわけであります。たまたま消費者米価の問題も話題になってきておりますので、あるいは本日はそれについて突っ込んだことをお伺いする場ではないかもしれませんけれども、たまたま武藤委員から酒米の問題についてもお話がございましたので、これに関連して本日お伺いしたいことは、生産者の立場というものについて、いま申し上げたような、また田中部長から御答弁がありましたような動きがある。これとの関連において、現在政府消費者米価についてどのように大蔵省を中心にして考慮を加えておられるか、これについて政務次官のほうからお伺いをしたいと思うのであります。
  57. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 私も北陸の者ですが、一つもそういうことは知りません。憶測を申し上げては何でしょうから、もっと調べて御返事申し上げたいと思います。あるいはまた時期別格差のことじゃなかろうかと思いますが、これは調べてみないと責任を持って申し上げかねます。(「いつまでに調べるのか」と呼ぶ者あり)なるべく早く、この次の委員会までには御返事するようにいたしましょう。
  58. 有馬輝武

    ○有馬委員 九州の端っこにおる私が知っておるのですから、よく事態を調べられまして、いま政務次官、次の委員会までということでございますので、お聞かせをいただきたいと思います。  関連質問を終わります。
  59. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 堀昌雄君。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほど同僚の武藤委員がかなり詳しく酒のお米の問題について論議をなさいました。実は私昭和三十五年以来、三十六年、三十七年と三回続けて酒米価格の問題をやってまいりました。主計局次長もお急ぎのようでありますから、最初に一番問題の酒の価格に触れたいと思います。  昭和三十六年の十月二十七日の当委員会におきまして、当時の法制局の第一部長でありました山内さんに食管法の中で米の価格の決定の問題についてお伺いをしたわけですが、そのときに山内さんはこう答えております。「私どもの、食糧管理法の四条二項の解釈といたしましては、やはり最初に申し上げるのは、「前項ノ場合二於ケル政府ノ売渡ノ価格ハ」と、こうきめておりますので、やはり政府の売り渡し価格の決定基準というのは四条の二項で全部一応カバーしているというふうに思っているわけでございます。それでこの四条二項の内容と申しますのは、「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」こう書いてあるわけでございまして、消費者の家計に一番問題になるのは、普通の家庭で煮たきをして食べる米、これが一番生存を維持していくという意味で欠くことのできない物資でありますから、これを中心として書かれているということは間違いないと思いますけれども、しかし、そういう用途に供しないお米の場合、たとえばお酒の問題でございますが、これも結局米を加工いたしまして最終的には消費者の家計の負担になるものですから、やはりその面で四条二項の基準がかぶってくる、こういうふうに思います。」こう答えております。これは三年も前のことでございますから、そこで最初に、一体いまの米の価格というのは、私が承知しておる範囲では三本立てだ——実は四本立てになっていいと思いますが、現在まだ三本立てだと思います。この三本の米の価格をきめる法律的な根拠という問題は、現在の食管法から見るとまさに四条二項以外にはない、こういうふうに思いますので、当時の山内法制第一部長の答弁は、現在においても同様に理解をいたします、こう思いますけれども、法制局どうですか。
  61. 吉國一郎

    吉國説明員 第四条第二項の趣旨が、ただいま堀委員がお読みになりました私の前任者の山内第一部長の答弁にありましたように、家計費及び物価その他の経済事情を参酌するということと消費者の家計を安定せしめることを本旨として定めるということをきめておる趣旨からいたしまして、基本的には第四条第一項の売り渡しの場合の売り渡し価格というものがこのような二つの要件を満たすものでなければならないということを言っておる点においては、前回の山内部長の答弁のとおりであると私考えております。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 それからこれはあなたの範囲かどうかわかりませんけれども、第一部長にちょっとお伺いをいたしますが、実はきょうもすでに食糧庁長官からお答えがあったのですが、現在のこの原料米価格はコスト主義によるのだ、こういうふうな御答弁をいただいておるわけです。そこでコスト主義ということばは、これは外国のことばも入っておりましてあれですから、ちょっと一般に使われておるコスト主義というものは法制局はどのように理解するか、ちょっとその点について法律的な解釈を聞かせていただきたい。
  63. 吉國一郎

    吉國説明員 ただいままでの法令でコスト主義という用語を用いたものはございませんので、法令の用語として私お答え申し上げることはむずかしいと思いますけれども、法制を担当いたします者として持っております常識でコスト主義ということばを解釈いたしますならば、これはたとえば一定の物資の価格を決定する場合に、その物資をこの世の中に持ち来たすために、つまり生産をするためにどれだけの費用がかかるかということを基本にいたしまして、その計算の上に立って価格を決定するものがコスト主義であるというふうに私としては考えたいと思います。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでいまの一定の物資を生産するためにどれだけの費用がかかるか、ここが私問題がある一つのところだと思うのですが、かかったということか、かかるという予想のほうなのか、これははっきりしておきたいのですが、いろいろな問題の処理をする場合には見通しの問題というものも一つあります。しかし現実の問題としては、私はコスト、エクスペンスということばの持っております概念というのは、やはり費消された物の対価というふうに理解をしておるのです。だから生産に際して費消された物の対価、こういうふうに私は理解したいのですが、法制局どうでしょうか。
  65. 吉國一郎

    吉國説明員 御質問は次第に経済問題に入りまして、私のような経済の知識のない者ではお答えすることがだんだん困難になってまいります。費用がかかった価格であるか、あるいはかかるべき価格であるかということは、その価格形成の段階においておのずから異なる問題でございます。と申しますのは、非常に極端な例を申し上げますならば、過去にすでに生産された、はるか昔に生産されたものを一定の期間倉庫に蔵置してその後販売するというような場合にはかかった価格である場合がございましょうし、継続的に生産されるものを販売する場合にはかかるべき価格であることもございましょうから、一律にいずれであるかということを断定するわけにはまいらないのではないかと思います。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 抽象論議ですから先へいってまたはっきりさせたいと思いますが、私がこんなことにこだわっていますのは、物の価格ですから、物の価格というものは、本来的には、やはり普通価格の決定がいろいろなかっこうで決定されるにしても、価格というものは本来一つではないかと思うのです。これは相対的な需要と供給できまる場合もありましょうし、政策的な配慮からきまる場合もありましょう。いろいろな問題がありましょうけれども価格というものは大体本来一つで、ある一つのものがある場合には何らかそれを複数であることを積極的に示す条件がなければならないのではないか、こう思います。だから一般的にいって価格一つだ、そうするとその価格がいまのコストという問題を考える場合には、ともかくそのあるべき価格というものも、それは一つあるかもしれませんが、それはさておいて、一般的な価格というのはいまのコストという関係からくれば、かかった費用ということが私は原則だと思うのですが、その点をもう一ぺん……。
  67. 吉國一郎

    吉國説明員 ただいまの御質問は、一つ価格というものが本来は一つではないかということにあると思いますが、原則としては一つであるという堀委員の御意見に私も賛成でございまするけれども、その価格政府はきめなければならないときに、政策の依頼によりましては、場合によってはその価格が二本立てである、あるいは三本、四本になることもあり得る、これは考えられると思います。  それから第二点の費用の点でございますが、この点については先ほど私申し上げました答弁で尽きておると思いまするけれども、やはりかかった費用である場合と、それからかかるべき費用である場合とがあり得ると思います。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとそういうことになるとこだわるのですが、費用というのは税法上でいったらかかった費用ですね。経費というのはかかったものであって、あるべき費用を税法上は言いませんね。主税局長どうですか。費用ということばを大蔵省で使う場合、経費、これはかかったものでしょう。かかるべきものについて主税局がもし経費なんということになると、非常におかしくなると私は思うのですが、この点はどうでしょう。
  69. 泉美之松

    ○泉説明員 税法上所得を計算いたします場合に、収入金額から差し引く経費というのは、お話のようにかかった費用を経費として差し引くということになるわけでございます。これは堀委員承知のとおり、所得税にいたしましても法人税にいたしましても、課税年度がございまして、その課税年度の経過によりまして、収入金額と費用というものが対応して出てきます。その収入金額から経費を差し引くわけでございます。この場合には明らかに過去の実績について算定をするわけでございまして、当然費用というのはかかったものになるわけでございます。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 一般論はそこまでとしまして、少し中身に入りますが、実はさっき一つ問題になっておりますのは、五百五十円の問題ですが、これはすでに武藤委員も触れられておりますから、私はあまり深く触れませんけれども、これは食糧庁長官、これがきまりましたのはやはり生産の奨励費ということで五百五十円ということがきまったのでしょうか。その点だけをちょっとひとつ……。
  71. 斎藤誠

    斎藤説明員 先ほど御説明いたしましたように、性質としては生産の確保、売り渡しの促進という趣旨を持った加算価格でございます。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、生産の確保をやるということは、これまで農林省が考えておられた生産者所得補償方式というルールが一つあるわけですね。大体それでこれまではきたのじゃないかと思うのですが、新しい米価決定のメカニズムが登場した、こういうことですね。
  73. 斎藤誠

    斎藤説明員 そういうふうにも理解できます。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでメカニズムの中に出てきたものは、赤城農林大臣もちょっと触れられておりましたけれども、今後の日本の農業生産性の低いという問題と、その他の生産性とのバランス、その他を考えまして、西欧でも行なわれておりますけれども、二重価格的な性格というものが今後どうしても広がってくるのじゃないだろうかというような御指摘を私は新聞で拝見したことがあるのですが、そういう意味では、まさに私は米価決定の画期的な段階にきておると思う。要するに、農産物価格政策という面における補助金をひとつコストの中に入れるという非常に新しい動き方ではないか、こういうふうな判断をするのですが、その点についてはどうですか。私はどうもこの五百五十円というのは、多分に補助金的性格であるというふうに思います。ただそれをどこで使うか、個々の農家に対しての補助金にするのか、生産物の中に織り込んで使うかという相違はあっても、これは財政的に見ると、私は補助金というようなかっこうの性格を非常に強く持っておるのじゃないか、こういうふうに判断するわけですが、いかがですか。
  75. 斎藤誠

    斎藤説明員 従来生産者米価の中におきましても、奨励金的な性格のものもあり、そうでないものもありましたが、いずれにいたしましても、これは買い入れ価格という形でやっておるわけでございます。そこでわれわれといたしましては、別個に補助金という形で出したものはそれは別でありますが、時期別格差であるとか、あるいは申し込み加算金であるとか、これらはいずれも価格ということで取り上げておるわけであります。いまお話になりました一体米価に所得補償というふうな思想からさらに発展して、いわゆる二重価格的なものが当然持ち込まるべきかどうかということにつきましては、これはいろいろ解釈があるという問題であります。私どもは、米につきましてはむしろ直接統制をまだいたしておるような段階でありまして、需給関係が非常に緩和しておるということであれば、もはや直接統制も要らないわけでありますが、米に関する限りは需給についてもまだとんとんである。そこで管理制度も運用されておる。こういう段階におきましては、やはり買ったものは、これはコストである、当然に二重価格であるべきであるかどうかについては、私としては一応研究すべきものもあると思います。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで主税局にお伺いいたしますが、この前大蔵委員会で、間接税の減税の問題については大体三年ぐらいに一ぺん減税があってもいいのじゃないか、おそくも四年に一回は減税があってもいい、こう主税局長が御答弁をされたのは御記憶にあると思います。最近の税制調査会でも現段階において四十年度に間接税の減税は行なわれそうにないということですが、政府事務当局としては、四十年度減税する意思があるかどうか。間接税、特に酒税の問題で、もし四十年度にやらないとすると、あなたの発言でいくと四十一年度には絶対にやらなければならないとくるわけです。これは大臣も答弁しております。そこで四十年度にやるのか、四十一年度にやるのか、事務当局の見解をこの際伺っておきたい。
  77. 泉美之松

    ○泉説明員 四十年度の税制改正につきましては、目下検討中でございますが、新聞紙上でもごらんになっておられますように、四十年度の財源につきましては、自然増収の見込みがそれほどございませんのと、他方におきまして歳出面におきまして公共投資、あるいは社会保障その他の費用におきましても当然増がございまして、なかなか減税を行なうということも容易ならぬような状況でございますし、また減税を行ない得るといたしました場合におきましても所得税あるいは法人税のほうが減税の順位において優先するであろうというふうに認められますので、目下のところでは四十年度において間接税について一般的な減税を行なうことは困難ではないか、かように考えております。しからば四十一年度どうなるかということでございますが、これは遠い将来のことでもございますので、なお今後検討いたすべきものと考えております。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 そのときあなたは主税局長でないからいいような御答弁のようですが、しかし四年に一ぺんはやるべきだというなら四十一年にはやらなければならない。しかしどうもあなたの口ぶりからすると間接税の減税があるかどうかわからない。いま物価が非常に高くなっておりまして、さっき国税庁長官は、もし今度の米の価格がこのままストレートにいったら七円とおっしゃったのですが、実は昭和三十八、九年産米のときにすでに千円ばかり上がっているわけですね。酒の価格の変動というものは昨年の八月ごろあったわけですから、今度は二年通算になるわけです。そうすると二年通算でいまのストレートにいったら一升一体幾ら上がりますか。
  79. 木村秀弘

    木村説明員 もしただいまのように今年度の米の買い入れ価格の値上がりがそのままストレートに移行されますと、昨年と通じて十二円くらいの上がりになると思います。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 米の原価だけで十二円、それに対して労賃の値上がりが二年分、まあ運賃、経費その他を概算をいたしますと、おそらくこれは二十五円から三十円の値上がりが、このままでいけば私は清酒について起こる可能性がある、こういうふうに思いますけれども国税庁長官どうですか。これは原価が十二円五十銭、その他のコストを見ると私は二十五円は最低上がるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  81. 木村秀弘

    木村説明員 ただいまの原価の計算をいたしますとそういうことになりますが、一方においてまた製造石数が昨年、ことし、おそらく来年も相当ふえると思います。そういう点から見て、やはり一方においては稼働率の向上による原価の減の要素、あるいは現在業界において努力をいたしております近代化計画による製造面の合理化の効果等を見てみますと、やはり若干原価としては下がる傾向の要素もございますので、彼此勘案をいたしますと、必ずしも十二円あるいは二十五円上がるということをここで断定するということもいたしかねるかと思います。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 合理化によってコストが逆に下がる分というものは、いまの酒造の問題から見ると、どうもあまり期待できないのじゃないか。なかなか合理化の進んでいない世界ですから、そう思うのですが、ただ、いま私が申しているのはいまの十二円五十銭、まあそれを十五円にしてもいいのですが、これまでの値上げの状態を見ますと、これは流通段階も必ず一緒に上がりますから、大体六・三・一のカバレージで上がるとすれば、たとえこれを二十円に押えたって、あとの十分の四くらいのものまで一緒に上がるわけですから、二、三十円の値上がりというものは必至になるのじゃないか、私はその点を心配しているわけです。片や間接税は減税をしないということでありますから、そこで最初の「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということの、酒の価格に戻っていきたいと思うのです。そこで政務次官に伺いますが、政府はもう低物価政策という旗をおろしたのでしょうか、どうですか。これまで池田さんの高度成長経済のひずみの最大の問題は物価だというのですね。そこで何とか低物価政策でいきたいということで旗を立ててきたわけですが、政府はこの低物価政策の旗をおろしたのですか。まだあがったままでしょう。どっちですか。
  83. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 決しておろしておらぬと思っております。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 政府の一番根本的ないまの経済方針、もう池田政府をささえておるというこの一番大きな旗をあげておるのは、低物価政策だと思うのですね。そうすると、片や低物価政策という旗が高くあがっておる。片や食管法によって、「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所二依リ家計及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」こうきますと、私はただやみくもに値段を下げろということは、これまで酒の米の価格で一回も言ったことがないのです。筋をひとつ通しましょうという議論をこれまで何回もしてきたわけです。そこできょうは、まあ第一段階の五百五十円問題はこれはいろいろと議論のあるところですが、澄田主計局次長にお伺いしたいのは、この場合に間接税の減税は当分行なわれない、しかし実は酒という品目は日本の比較的大衆的な嗜好飲料であって、特に農村地帯において非常に消費をされておることは御承知のとおりであります。農村地帯における一般の労働をしたときに飲まれておる。酒が比較的所得水準の上がらない層に対して与えられておる。片や物価は全般的に上昇の傾向にあって、いまこれを五百五十円のようなものをそのまま織り込むならば、さっき申し上げたように二、三十円程度の上昇はおそらく避けられないであろう。こういう段階にくると、間接税で減税をするかわりに、要するに財政収入のほうで多少配慮をする。これは主計局の立場、主税局の立場いろいろありますが、私どもはそういう立場を離れて、大蔵委員会としては広い立場から考えるならば、ここらは私は配慮を要する必要のある点ではないだろうか。間接税の減税が目の前にあれば私はそれまで申しません。それは間接税の減税によってその物価の上昇が食いとめられるからですが、片や低物価政策という条件がある、片や特に所得の上昇の低い農民層が最も多量に消費をしておる酒類である、こういう考え方からすると、これは財政的見地から多少の配慮があってしかるべきではないか、こういうふうに思いますけれども、そういう財政的見地からの考え方をひとつ伺いたいと思います。
  85. 澄田智

    ○澄田説明員 ただいまのお話の点でございますが、米価の全体の問題と、いまの財政的見地ということになりますと、これは主食としての消費者米価の問題も同時に出てくるわけでございますが、この問題は非常に財政に与える影響も多いし、金額的にも非常に大きな問題でございます。いまここで御質問でもございませんので、この問題は置きまして、本日問題になっております酒造用の原料米としての米の値段ということに問題をしぼって考えましても、われわれ主計局の立場といたしましては、財政の需要というものの現在の段階、財源との両方から見ましての段階といたしましては、食管の赤字の処理ということについては非常に苦心をしているわけでございます。そこで従来食管法の考え方の中で直接食糧の主食としての米に対しては、もちろん第四条の家計の安定というのが最も強く適用されるべきでありますし、食管法のそれが目的であります。原料米でいろいろなものとしてそれが国民の消費に充てられるということにつきましては、この関係はやや間接でございます。したがって、究極的には、先ほど法制局の御答弁にもありましたように、消費者の家計を安定せしむるということはやはりその旨とすべきこととは思いますが、その間は間接的でございますので、ややその程度におきまして違いがあるかと思っております。したがって、そういう意味で、いままでコスト主義というものをとってこられておるものと思いますが、本年の場合、非常に生産者米価の上げ幅が大きかったということ、それから臨時特別加算というような新しい要素が入っておるというようなことで、われわれの立場だけからいいますと、なるべく厳格にと申しますか、なるべくコストは十分にカバーして、そしてそれを原料米として売っていただきたい、こう思っておりますが、それがそのままのとおりいくかどうかということについては、われわれとしてもいまお話にありましたようないろいろの要素を勘案して、そこはコスト主義というもののワクの中で、いろんな要素を勘案して考えなければいかぬ問題であろう、こういうふうに認識いたしております。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 弾力のある御答弁をいただきましたので、ここでいまの五百五十円は終わります。  その次に、これは私長年やってきた問題が、実はもう三十七年でほんとうは解決したのかと思って、昨年は選挙もありましたから酒の米の価格の分析をやらなかったのですが、きょう質問するというので、少し分析をいたしてみまして、さっきの最初の抽象論にちょっと立ち戻りたいのですけれども、ことしの政府経費ですね、これが千二百八十三円として出ておりますね。そうして内訳を申し上げると、私のほうから申し上げるのもおかしいのだけれども、集荷経費が二百一円ですか、運賃が二百二十円、保管料が二百三十四円、それから事務費が三百五十七円、金利が二百七十一円、ロス、総計、こういうことで千二百八十三円、こうなっておるわけですが、ここで私は、これまでずっと実はこれらの中身の問題について議論をしておりまして、一応の了解点に達しておったと思うのですが、ここで資料を調べておる中でちょっと気がついたことが一つあるのです。そこで一体この予算はどういう基礎からこれが出たのか、本年度の三十九年の経費の積算の基礎を少し明らかにしてもらいたいと思うのです。特に金利の計算についてどういうメカニズムでこれが出たのか、これは担当主計官でけっこうですから……。
  87. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 金利の計算は、御承知のとおりこれは食糧証券を発行いたしますので、その金利を見込むわけでございますが、御承知のとおり食糧管理特別会計では国庫余裕金の使用ができるようになっております。これは国庫の収支の状況によって毎年実績的にはかなり多く使用できる場合もございますし、そうでない場合もございます。大体その使用の割合、総資金に占める国庫余裕金の使用割合を一五%見込みます。残りの食糧証券につきましては現在の日歩一銭五厘五毛でございますが、これにロスを若干見込みまして組んでおるわけでございます。その発行の基数計算、これにつきましては既往の実績大体三ヵ年の実績でございますが、それから見ました基数をとりまして金利を計算いたしております。なお詳しく申し上げますれば積算の基礎はございまするが、大体そういう考え方であります。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっと伺いますけれども、三十八年は国庫余裕金とその他の運用資金との関係、要するに食糧証券との割合の関係はどうなりましたでしょうか、三十八年単位で。
  89. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 決算的に何%になっておりまするか、その正確な数字は実は私いま手元に持っておりませんが、大体三〇%を若干こえる数字だというふうに記憶しております。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 三十七年はいかがだったでしょうか。
  91. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 三十七年は四〇%を若干こえる数字だったと思います。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 毎年で悪いのですが、三十六年もあわせて一つ
  93. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 ちょっといま手元に持っておりませんので、後ほど調べます。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 私がまず金利へひっかかってきましたのは、実は政府経費の予算決算をちょっと過年度にわたってこまかく調べてみました。そういたしますと、三十六年は金利が予算で三百六十九円とっておりましたけれども、決算百四十五円、三十七年は三百二十六円とっておりましたが、百十五円、三十八年は三百六円とってありましたが百三十八円であります。非常に政府経費か、特に金利部分においては二分の一以下しか実際コストにかかっていないのにかかわらず、毎年三年間続けて三百六十九円、三百二十六円とだんだん少しずつ減ってきておりますが、三百六円と全部三百円台に乗せておる。しかし決算では百四十五円、百十五円、百三十八円と百円台なんですね。そうすると本年度の二百七十一円、これは少し下がってきておりますが、この間にはどうしてもまだ百円くらいは幾ら働いても余裕があるんじゃないだろうか。いま三ヵ年の基数の計算というお話でしたから、基数はおそらくいまの三ヵ年、これは土台は同じことになっているはずだと思います。そうすれば違っているところは余裕金の運用比率の置き方だけに問題があるけれども、三年間のこういう実績がありながらどうしてこれを一五%に見積もったのかという点の積極的な解明をひとつお願いしたい。
  95. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 御承知のとおり国庫の余裕金の見方ということにつきましては、前年度の自然増収が大きかったからといって翌年度これが同じように出るであろうというような前提には立っておりません。特に最近はその点もだんだん詰まってまいっておりますが、たまたま三十七年、三十八年非常に自然増収が多うございますので、余裕金が相当ございます。そういった関係で実績的には先ほど申しましたように、余裕金の利用率がふえたわけでございますが、新しい予算を組みます場合には、やはり新年度に対しましてのそういった国庫の収支状況というようなものをいろいろ考えまして、理財局のほうの専門の方ともよくお打ち合わせをいたしてやるようにいたしておりますが、これは積極的に上げるということに関しましてはなかなか異論がございます。やはり一五%程度が適当であるという見方をいたしております。たまたまこの二、三年決算的に相違を生じておりますのはそういったわけでございます。本年度の状況などを見てまいりましても、必ずしもことしの予算より余裕金の利用率がふえるかどうかという見通しについて見ますと、現在の段階ではまだ議論がございます。昨年のような場合は行きそうもないという状況でございます。確かに御指摘のとおり過去二、三年のところの決算と予算との比較においては開きがございますけれども、余裕金の利用率につきましては、私どものほうとしては大体専門家の見方として適当な数字というものをとって見ておるつもりでございます。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 いま金利だけをとってちょっと象徴的に申し上げたわけですが、政府経費の総額は三十六年が千二百八十六円であったものが、決算では九百八十三円しかかからない、三百円差が出たわけですね。その次の三十七年は千二百四十円に対して九百五十一円、これも二百九十円余り差がある。三十八年は千二百八十二円に対して千三十八円、これで約二百五十円の差がある。毎年、実はコスト主義という考え方から、私は表に出たものだけでしか見てきませんでしたから、これはまあ大体これでいいと思っていましたが、いろいろ議論がある。これからまだプラス、マイナスを、これとこれを土台として立てるべきだという土台になる政府経費に三百円から二百五十円もの差がずっとあって、それだけで言うならば、コスト主義という考え方からすると多少過払いを業者のほうは過去にしてきた。政府のほうはこれだけ予算上の誤差があっただけにもうかったということが過去三年間続いている。これはやはり厳密なコストは予算ですから、なかなか計算できないのは私もよく承知をいたしておりますが、そうすると、これはコストのことですからこの前に議論をちょっとしたのですが、この経費は結局どうなっているのかというと、食管の赤字の相殺の関係の中に埋まる、計数上の問題としてしか最終的には出てこないわけですね。財政支出で補なっているわけですから、そういうことになってくるわけだと思うのですが、ここらは具体的にいまどこをどうしろという問題の提起はいたしませんけれども、今回の米価の算定に際しては、政府経費の取り扱いの問題については少し慎重な取り扱いを一ぺん新たな角度から再検討していただきたい。食糧庁のほうにお願いしておくわけです。過去において二百五十万石として、もし三百円とすると一体どのくらい政府のほうが余分にもうけたのか。三年ほどありますから五、六十億もうかったのじゃないかと思うのですが、過去のことはさておき、それだけたくさんもらったんだという前提も含めて、低物価政策の旗もおりておらぬそうでありますししますから、政府の方針の中でひとつ善処をお願いをいたしておきたいと思います。  これは私これまでいろいろ議論をいたしました中で、もう一つちょっと国税庁にお願いをいたしておきたいと思いますのは、中央会のほうで何か調査した。自分のほうで調べました結果は、保管料の支払い基数は三・五四、金利の負担日数は四五・四二日だった。こういうような計算が出ております。これは中央会がやっておられるのだから、私もあまり間違いはないと思いますけれども、これはいつも基数の問題なり金利の負担の日数の問題等いろいろ議論がありまして非常に複雑でありますから、一ぺん国税庁でちゃんとした表といいますか何かをつくって、そうしてそれを米穀を受け取るときにその先でちゃんと記帳して、一ぺん全国調査をやってみれば、一体米がどういうかっこうで、どういうふうにとれて、基数は実際はどうなって、金利の負担がどうなるのか。コスト主義ということになってきたのですから、どこかでそういうことを国税庁独自の調査を一ぺんしていただいて、私が申し上げたいことは、できるだけこういう価格の決定は客観的、科学的に筋を通してやるということにしてもらいたい。その価格がいずれになるかについては私は申し上げません。ただそういう筋が通り客観的科学的であるならば、これは万人が納得しなければならぬ問題だと思いますので、その点については国税庁側として一ぺん調査をお願いしておきたい、こう思いますがいかがでしょうか。
  97. 木村秀弘

    木村説明員 悉皆調査はやっておりませんが、部分的な抜き調査をやっております。その結論だけを申し上げますと、いまの政府経費のうちで金利の面につきましては、先ほど申し上げましたように部内で若干の異論がございますので、われわれとしては金利についてはもう一段の引き下げをお願いしたいということで交渉中でございますが、その他の経費、集荷手数料、運賃、保管料、事務費等につきましては、一昨年、昨年、食糧庁と御相談をいたしまして、大体においてそう大きな食い違いはないという結論に至っております。なお、ただいま堀委員の御指摘のように、今後はこういう面の計算というものは相当大きなウェートを占めてまいりますので、やはり相当しっかりした基本的な経費の調査を行なう必要があることは同感でございます。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、さっきの準内地米使用の問題でちょっと伺っておきたいのですが、十万石というのはトン数に直したら大体幾らになるのでしょうか。
  99. 田中勉

    田中説明員 十万石を玄米トンに直しますと一万三千五百トンでございます。精米トンで申しますと大体一万二千トンちょっとでございます。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほど食糧庁長官の御答弁を聞いておりましたら、加州米という準内地米価格の上でも日本内地米と同じ価格で出しておる、こういうふうに承ったのですが、そのことは飯米として使用する場合には内地産米とあまり相違がないから、価格において同一の価格、こういうことになっておるのじゃないかと私は考えますがいかがでしょうか。
  101. 斎藤誠

    斎藤説明員 大体そういうことであります。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 そうなりますと、いまの準内地米使用の問題というのは、これは本来オカボのようでして、さっき武藤委員も触れられておりましたようにちょっと食糧自体の構成が違うようです。醸造試験所から来ておりますね。本年度の準内地米を使いました醸造試験所としての結果と言いますか、考えをちょっと伺っておきたい。
  103. 鈴木明治

    ○鈴木説明員 本年の二月に御承知のように加州米が入りました。数年前に加州米については多少全国の酒屋が使ったことがございますけれども、今度のものについてはよくわかっておりませんので、間違いがあってはいけないと思いまして、私のほうでもさっそく実験室的な研究と同時に、ごくわずかでありますが実際製造をいたしまして、その試験を持っているわけであります。  まずつくりのときからお話を申し上げますと、玄米ということではございましたけれども、実は非常にヌカをかぶった半白米というような程度でありました。たいへん粉米が多うございましたので、私どもとしても精米をする前に粉米を除く必要があるであろうということで、よく農家で使っております縦線という米選機があります。それにかけましたところが、ほとんどがヌカでございましたけれども、粉米とヌカと合わせて約二・八%こぼれてまいりました。あと残りのものを見ましても、かなりと言いますか、ある程度青米が多いようでございましたが、そのまま精米機にかけました。現在日本の酒屋さんの一般の精米程度というのは、収量で言いまして七五%、昔の表現で言いますと二割五分精米というようなところが一般に行なわれておりますので、その程度まで精米をしたわけであります。ところが二割五分までいかないうちに、かなり米が砕けてまいります。よく米を調べてみますというと、胴割れと言いますか、かなりひびが入っておるわけでありまして、日本の現在の酒屋さんで使っております精米機にかけますと、非常に砕けやすいという欠点がございます。それで私のほうでももう少し白くして研究をしようと思ったのでございますが、それ以上白くするとただむだに粉米をつくっておるということなので、二割三分から二割五分程度だったら、普通酒屋でつくっておるから差しつかえないだろうということで酒をつくったわけであります。  つくっておる最中で一番感じましたことは、まず第一に蒸した米が多少内地米よりも色が黒いようなものがございますが、そういうことは別といたしまして、こうじをつくりましても、あるいはもろみをつくりましても、非常に急進的である。非常に温度が上がってくるというところに特徴を見出すわけであります。私どもで、米の中の発酵に非常に影響のある成分は何かということについて前々から研究しておりましたところが、カリ成分が非常に大きな影響を持っておるということでございましたので、さっそく私のほうでもカリ成分について分析してみたのであります。先ほど武藤先生がおっしゃっていたあの数字は、私どものほうから出た数字だろうと思います。内地米では大体二割五分くらいの米ですと、一キロ当たり——一石とおっしゃっておりましたが、一キログラム当たりであります。一キログラム当たり内地米ですとカリが三百ミリグラム程度であります。ところがいまの加州米の場合には八百ミリグラムぐらいございまして、約二倍半と言いますか三倍近くあるわけでございます。おそらくこれが発酵急進の一番の問題点であろうというふうに私どもは想像しております。御承知のように、酒をつくりますときに最後のもろみ管理になりまして一等大事なことは温度管理でございますけれども、その温度管理がうまくいかなかったということがひとつ見出されたわけでございます。その温度管理がうまくいかなかったという結果といたしまして、いままでの内地米を使っていた場合から見ますと、非常に早く酒になってしまう。しかしわりあいに収量はよかったようでございますが、わりあいに早く酒になってしまうという欠点がある。欠点といいますか、むしろそれでいい酒ができますならば、合理化に役立って非常にいいと思うのでございますけれども、いままでのやり方でいきますと、少しといいますか、だいぶ様子が違っておったということがございます。しかしできました酒につきましては、私ども醸造試験所でつくりました酒に関する限りは、そうひどい酒であるとは思わなかったわけでございます。ところが最近になりまして、各地方から、加州米でつくった酒に特異なかおりがあるというような声が聞えてまいりましたので、御承知の全国各局に鑑定官室がございます。その鑑定官室長に手紙を出しまして、どんなかおりがするのか、それからまたどの程度にわかるものであるかというようなことにつきましていろいろ質問をしてみたわけでございます。中にはわからぬものもあるとかいうような返事もございますが、多数のものは多少変わったにおいがあるというような返事が参っております。その変わったにおいというものに対してどういう表現を使うかということについて聞きましたところが、これは種々千差万別でございまして、青くさいとか青竹のにおいがするとかあるいは食糧貯蔵の倉庫へ行ったときのようなにおいがするとか、あるいは糖蜜くさいとか、非常にまちまちな回答が参ってきております。私どもも二、三の酒屋へ寄りまして、加州米でつくった酒を見せてもらいまして、これが加州米の独特のにおいであるというものをたくさんの酒の中から抽出して覚えようと思ったのでございますけれども、私の感じでは、しいていうならば、糖蜜のにおいがするというくらいの表現が当たっているのじゃないかと思ったわけでございます。それでせんだって私どものほうでもってきき酒をしてみようじゃないかということできき酒をしたのですが、実は先ほど申し上げましたように、加州米はふかしたとき自体に多少色がございます。それでやはり酒をつくりましてからも色が濃うございます。酒屋さんが内地米でつくった酒と加州米でつくった酒を比べますと、色の濃いというところで、まず第一に気がつくわけでございます。異常に色が濃いということで、きき酒をする人が、これは加州米だろう、ああそうです、やはりくさい、こういうような、多少、これは、何といいますか、人間のきき酒などをしますときの心理状態で、かなりそういうことがあるようでございます。私どものほうではそれをもう少し科学的にやってみようということで、ちょうどきき酒研究会というのがございますので、その連中を動員いたしましてきき酒をしてみたのでございますが、極端なのもございまして、それは、みんなといいますか、十五、六人でききまして十二、三人の連中が、加州米かどうかはわからないけれども、いままでとは違ったにおいがあるというようなことを言っているのもございました。しかしまた中には半分半分というのもございます。それからまた中には、それにまぜましたきき酒をするとき、黙って出しました内地米に対して、これは加州米のにおいがするとつけたのもございます。というようなわけで、実はやはり加州米のにおいというものは確かにあるように思いますけれども、そしてまたああいうきき酒の場合には、あるにおいに対して非常に敏感な人がございます。それからまたわりあいに鈍感なのもございます。そういうのをあわせて考えてみますと、できた酒が飲用に供し得ないというほどのひどい酒ではないように私は考えております。しかしただ一般の酒屋さんといたしましては、非常に品質をよくしようと思っておるところでございますので、多少でも自分のうちのいままでの酒と違った酒ができてくるということについては、神経質になっているということは私十分同情できると思いますが、いま現在の私どもの立場といたしましては、今後どういうふうになるかわかりませんけれども、万一に備えてあらゆる面から加州米の検討をしていく必要があるだろう。たとえば酒を貯蔵していく間非常にひねるといいますか、老熟すると申しますが、老熟の原因がいろいろ検討されておりますが、鉄分がそれを非常にアクセレレートするのではないかというようなこともございましたので、鉄分についても分析してみたわけでございますが、これは内地米とほとんど同じ程度でありまして、特別加州米が多いということはございませんでした。それでできた品質そのものにつきましては、先ほど申し上げましたように、酒屋さんとしては非常に神経質に考えておるようでございますが、私どもとしてはできた品質をもっとよくするためにということで研究しておりますが、何といってもいま一番困っておることは、思うとおりの精米ができない、非常に砕けやすいという点が非常に困った点だと私ども考えております。これが何とかカリフォルニアのほうで特別な精米機を使って、傷がつかないというようなことになってくれれば、その点だけでも大いに助かるのではないかというふうに考えております。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 専門の御意見でありますから、私ども尊重いたします。醸造試験所でおつくりになる場合と、各地の業者がつくる場合とは必ずしも条件が同じではないと思いますし、特に内地米のパターンでやっておるところで、そういう別のものをやるためにいろいろ問題が起きておるだろうと思うのです。そこでさっき伺った中で実は主要食として六百八万二千トン出ておって、業務用では二十万トン出ておるというふうに第一部長お答えになったようなんですね。そうしますと、私が伺ったいまのものが一万二、三千トンの問題でありますから、おそらくさっきの食糧庁長官のお答えのように、加州米というものは飯米としてならば内地米と大差がないのだ、価格においても同じだということなら、私は家庭向けの米にこれを振りかえることには反対しますけれども業務用として一般に外で外食をする場合の問題については、いま食糧の中で最もむだになっておるのはこの業務用米が実は相当に食べられないで残飯として出ておるのは御承知のとおりだと思うのです。一般の家庭におきましては、たいた米を残飯にして捨てるようなことはほとんどないと思うのでございますが、業務用においてはかなりの残飯が出ておるというような実情もありますし、二十万トンの中に一万トンぐらいがまじったところで、あまり影響がないのではないかという感じがしますから、この点については武藤委員からも御指摘がありましたけれども操作上の問題としてそんなに困難な問題ではないのではないかというふうな感じが私はいたします。以上の点で、需給操作上の問題もあろうかと思いますけれども、できればひとつ内地米を優先するということで配慮していただければ非常に好都合だというふうに考えます。私、主税局はもうけっこうです。  それからその次には米の価格で、一昨年、三十七年十月十日に議論をしましたときに、松元総務部企画課長が答えておられるのですが、原料米というのは、これまでは酒米価格に右へならえをしてきたわけですけれども酒米価格というもののコスト主義がだんだん徹底してきたので、かなり酒米というのは特殊的な価格になってきておるので、今後検討の余地があります、こういう答弁をしておられるのですが、その他の原料米価格というのはいまどうなっておるでしょうか。
  105. 中野和仁

    ○中野説明員 ただいま原材料の価格はどうなっているかということでございますが、酒米が先ほどいろいろ御議論のありましたようなことで、コスト価格できめております。原材料のせんべいその他の米は、全部コストということで、大体同様なやり方でやっております。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると原料米は、たとえばみそだとか菓子だとか、みんな個々別々の価格がついている、こういうことになっているわけですか、いま。
  107. 中野和仁

    ○中野説明員 ちょっとそれは私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、コスト価格ということで酒米と同様にやりますと大体同じようなことになるものですから、酒あるいはみそと別々に区別しませんで、一本の価格で現在はきめております。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 この前——まあこれはちょっと問題、別ですから、時間をとりますから簡単にやめておきますけれども、時期別格差なんというものは、おそらく菓子屋さんはそんな早い米をとらなくてもいい問題もあるのでしょうが、みその場合どうかわかりませんけれども、中身に入ってくると必ずしも私、酒と同じという点にはちょっと疑問があるのです。で、それは検討しましょうということで検討の結果実体のコストを押えてみたらこういうことになった、そういうことなんでしょうか。
  109. 中野和仁

    ○中野説明員 確かに酒の場合は大体十二月ごろまでにお引き取りになって、早く出た米を使うということがありますが、一方そのほかのものになりますと、時期別格差は少ないですけれども保管料は一年間かかるというようなことで毎年検証しておりますが、毎年大体同額程度となっております。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 それから、さっきの価格も非常に問題がありますから、ちょっともう一回ここに戻りますが、一体消費者米価というのはいつごろになったらきまるのですか。これからまあ審議会を開いておやりになるのでしょうが、めどはいつごろになればきまりますか。
  111. 斎藤誠

    斎藤説明員 まだ申し上げる段階には至っておりません。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 いま申し上げる段階でない。それは何日ということじゃないですがね、実は酒米価格もちょっと消費者米価に関連があると思うのです。全然消費者米価を離れて酒米価格というのは私はことしはきまらないんじゃないかという感じがするのです。ですから消費者米価の決定のめどが、いまからですから十月に入るということになれば、それとの関連なしに酒米価格はちょっとことし決定しにくいんじゃないか、率直に言いまして。それは皆さんのほうでは業務米の問題もありますね。だから消費者米価がきまらなければ業務米の価格がきまらないんじゃないかと思うのですが、そういう一連の関連から見ると、これはやはり米の価格というのはそういう一連のきまり方ということにならざるを得ないんじゃないか、こういうふうに私感じるんですがね。そこらをいくと、こまかいことはけっこうなんですが、めどとして皆さんでいま一応考えられておるのは、大体どこらではきまるなり、きめたいなり、きまってほしいなりでけっこうなんですが……。
  113. 斎藤誠

    斎藤説明員 ただいま申し上げましたようにこれ自身が非常な大きな問題でありまして、いつごろにするということにつきましてもいま申し上げる段階にないということを申し上げたわけでございます。きまっておるとか何とかということでなく、まだ申し上げるような段階に至っておりません、こういうことを申し上げたわけであります。しかし原料米は従来とも消費者価格関係なしに、時期を異にしてきめておるわけであります。先生のお話はことしの事情としてどういうふうに考えるべきかというふうなことかと思いますが、私は必ずしも一緒にということでなしに切り離しても考えられるのではなかろうか、こう思っております。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 まあそれはそれでいいんです。切り離す——一緒でなければならぬとは言わないのです。関連があるものでございますから……。そこで早くきまればいいんですけれども、暫定価格という制度をなくしてしまったものだから、さっき武藤委員から質問がありましたように、価格がきまらないと出ない。これはちょうど私見ておりまして、価格の決定のメカニズムで、ちょうど町で物を売り買いするときの価格決定と非常に似ているような感じがしてしようがないのですよ。いまですと品物のほしいほうは少々高く言われてもしかたがないから早く何しろほしいということが一面あるものですから、ところが暫定価格をきめちゃうと、もう品物が出ちゃうから、まあ値段はそのうちにきまればいいということになると今度あなたのほうが買い手になっちゃう。売り手、買い手、立場を異にしてしまうものですから、まあしかし私は政府価格決定というものは民間で売り手、買い手市場で価格がきまったりするようなメカニズムをあまり働かすようなしかたはフェアじゃないような気がするんですね。だからそこらは私はやはりそういう配慮があるのならば——ないと思いますが、もしあるのならば、やはりできるだけ早くきめてもらいたい。しかしそうかといってもいまさっき私が議論しましたように、なかなかことしちょっと複雑なんです、率直に言って。ちょっと例年のように、ただルールがきまったらさっといくということにならないということなんですね。私はさらに新しい問題をもう一つ出したわけです。経費についても問題があるじゃないかという新しい問題をここにもう一つ提起したわけですからね、もう一ぺんくらいこれを私はやる場合があるかと思うんです。そうすると、中間的な経過の中で、過去三年もやったですからね、これはまたやる場合があるかもしれない。そうするとなかなか簡単にいかないというのでまあ私は経緯の中で、ひとつ国税庁の側も、手をあけて待っていて、合理化をしろと片一方で言いながら、合理化をしているものに対して原材料を与えないなんというのもこれまた私はおかしなものだと思うのです。そうすれば結局コストは上がるわけですからね。そのコストは一体だれが負担するかといったら消費者が負担しなければならないわけですからね。これは生産者は必ず消費者に転嫁する以外に手はないのですからね、必ず転嫁します。高い酒を飲まされるわけです。生産者みなが手をあけて待っておるのに高い米しかいかないということはあまりメリットがないような気がしますので、ひとつ食糧庁国税庁とおのおのの立場はあるでしょうけれども消費者の立場に立って考えていただきたいと思います。そういう意味でいまの暫定価格をひとつお願いしておきたいと思います。  それからもう一つ。実は池田さんが労働力の流動性の問題について、失業保険のあり方について、季節労働者の季節失業保険は再検討しろというような閣議での発言があって、いま労働省ではそれについての検討を進められておるようですが、これに端を発して私どもの兵庫県あたりでも但馬、丹波あたりの杜氏の諸君がこれまで少なくとも六ヵ月の季節業務に従事しておったということで失業保険がもらえておったのが、もう失業保険がもらえなくなる。そうするともう杜氏なんかをやめてほかの仕事をしたほうがいいのじゃないか、こういう問題が出てきて、いまこういう専門的な技能を持っておる杜氏が非常に動揺をしておるために、私どものおります灘周辺の生産地帯では非常な労働力に対する不安というものが強くなって、これからはたして米が来ても杜氏が集まるかどうかという点について非常に不安を持っております。そこで労働省に来ていただいておりますので、私はいろいろと改正すべきものがある点もあるだろうと思います。しかしそれはまあそれとして、ちょっとこの杜氏というものの季節労働、季節業務はその他の季節的労務とやや性格を異にしていて、他人をもってちょっと代替しにくいという特殊技能を持っておるし、また酒の生産というのはやはり税収財源として非常に大きな問題でありますのでやはり少しこれらの失業保険関係の問題の処理については、まあ季節労働者一般として当然われわれとしてはいまの状態でやってもらいたいと思っておりますが、その中でも特にひとつ少し配慮をしておいていただかないと酒が生産できない。米は渡したけれども酒にならないということでも困るわけでありますので、ひとつ労働省側としてこれについてのお考えを伺っておきたいと思います。
  115. 道正邦彦

    ○道正説明員 三点にわたりましてお答えをいたしたいと思います。  第一点は、ただいま先生御指摘がございましたように、季節的な失業者に対する失業保険の受給、これは二十八年度以降をとってみますると、景気の変動に関係なく非常にふえております。具体的に申し上げまするとまあ二十八年度には十一万六千人の季節的労働者が失業保険金を受給しておりましたけれども、三十八年度には四十八万人に達しております。これは全受給者の中に占めます比率から申し上げますと三〇・七%でございます。したがいまして保険というたてまえから申し上げますると、やはりこのまま放置していいかどうかということは当然問題になってくるわけでございます。  第二点といたしましては、しかしながら同時に経済の安定、発展に伴いまして、一ころのように適職がなかなか見つからないという事情が漸次好転してきておりまして、求人、求職が合致するというケースもかなり出てきておるわけでございます。失業保険でお世話を申し上げることと並行いたしまして、職を求める方また求人、双方が満足する適職にそういう方々が就職していけるならばこれ以上のいいことはないわけでございますから、そういう点は十分に双方の希望する条件が合致するということで、決して無理をしてあくまで押し込んでしまうというようなことじゃないわけでございますから、そういう点で十分配慮しながら、しかしながら適職のあっせんを申し上げるということを並行してやっているわけでございます。そういうことによりまして失業保険の需給状況も改善されるならばこれにこしたことはないわけでございます。  次に、第三点といたしまして、しからば失業保険を改正しないでいいかどうか、あるいは改正をするとすればどうするかという問題につきましては、ただいま先生御指摘のように、また最初に申し上げましたように、相当な問題でございまして、検討をいたしております。しかしながら、現実の問題といたしまして、なま身の労働者の皆さんの日々の生活に直接触れる問題でございますので、一番大きな問題は土建関係でございますけれども、その点につきましては農林省御当局、また直接お尋ねのございました杜氏関係につきましては、大蔵省国税庁御当局と十分お打ち合わせ、御相談いたして、またかたがたそれぞれの関係業界からすでにいろいろの御要望等も参っておりますので、もちろんそういう方々の御意見も拝聴いたしまして、また審議会そのほかの場におきましても、それぞれの学識経験、利害関係の皆さんの御要望等も承りまして慎重な検討を続けてまいりたいと思います。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 考え方はけっこうなんですが、いま私が言っているのは、非常に不安を持っているわけです。失業保険をもらえないのじゃないか。一般の農民のことでございますから、ちょっと新聞に出ると、これは一年に延長するとかなんとかいろいろなことが出ますから、酒づくりに行ったのでは失業保険をもらえない、それならほかの失業保険をもらえるほうに行かなければ困るのじゃないかということで非常な動揺があるわけです。だから少なくともこの点は当面動揺する必要はないんだ、現在の既得権がそんなに一ぺんになくなってしまうようなことは当面は考えていないのだ、将来は検討の余地があるのかもしれませんが、そこらをちょっとはっきりしておいてもらえれば当面の動揺はおさまるのじゃないかと思うのですが、その辺をもう一つ
  117. 道正邦彦

    ○道正説明員 ただいま御指摘のとおりでございまして、連日のようにこの問題につきましては新聞等で報道されております。したがいまして、地方の末端の関係者の皆様が本件につきましていろいろ御心配になるのはやむを得ないところがございますけれども、われわれの末端機関が皆さんに御説明、御指導申し上げる場合には、制度の改正につきましてもいま申し上げましたようなことでそう簡単にまいらないわけでございます。現行法は現行法でございますし、またいままでの実績、沿革等はこれは行政を預かります者といたしまして当然考慮すべき筋合いでございますので、今後ともそういう点徹底をいたしてまいりたいと思います。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 国税庁も、そういう下部の動揺もあるようですから、ひとつ労働省と十分協議されて、末端のほうにもそれなりの状態で知らしていただきたいと思うのです。その点要望しておきます。  それから、酒の問題では最後ですが、毎年年末になってきますと、酒づくりの問題については資金が一時的に要るわけです。金融引き締めのないときはあまり声がないのですが、ことしのように金融を引き締めておりますと、酒づくりのための資金需要というもの、一時的借り入れ金の問題がおそらく入ってくるだろうと思います。あとで私銀行局長から金融の問題について伺いますけれども一般的に金融が非常に締まっておる段階で、地方銀行以下相互銀行、信用金庫等は資金が少し余って、これをコールに出しておるということですから、ここらで借りるのがいいと思うのですけれども、あまり取引がないという状況だと思います。これは国税庁銀行局長ともに答えていただきたいと思いますが、ことしは大幅な米の値上げをするわけですから、系統金融にはどさっと金が入ってくるのではないかと思います。ひとつこういう際ですから、できるだけ系統金融を利用して、酒造米の借り入れ金等については、銀行局、国税庁協議の上で遺漏のないような措置をお願いいたしておきたい、そういうふうに思います。特に私がちょっと聞いておりますのは、信連段階では何か組合単位にワクをつくっているので、大きな組合も小さな組合もワクが同じだということで、困っておるというような話もありますので、そこらは、単位組合には同じワクでなければならぬというような考え方は機械的に過ぎるような感じもいたしますので、ひとつ御調査の上で信連なり農中なりから少し資金が行きますような配慮をしていただきたいと思います。これについて銀行局長長官と両方からお答えいただきたいと思います。
  119. 木村秀弘

    木村説明員 毎年酒づくりの季節になりますと、原料の購入等に相当の資金が必要となってまいります。そこで一昨年、昨年と、この時期に銀行局のほうにもお願いいたしまして、特に酒米の購入等に要する資金については特別の配慮をお願いしたいということで、金融機関にもそういう趣旨のことを流していただいております。今年におきましても昨年同様、やはりそういう面で特別の配慮を願うつもりでおります。そういう点については遺憾のないように取り計らいたいと思っております。
  120. 高橋俊英

    ○高橋説明員 清酒原料の仕入れの資金につきましては、いま長官から御説明したとおり、特に各金融機関にも確保について遺憾のないように協力するように通達しておりますが、特に清酒関係は、実情を見ますと、非常に大きな部分を地方銀行に依存しております。つまり地方銀行から見れば長年の非常にいいお得意さんである。にわかにでき上がったものでもありませんし、非常に長い取引もあり、総資金量の六割程度は地方銀行がまかなっておりまして、それ以外の分をいろいろな金融機関が分担しております。系統資金のうちで、農中関係からでは、本年の三月末現在を見ますと二十数億円出ておりますが、これは関連事業への運転資金の貸し出しということで包括的に許されておるある一定の総ワクの範囲内でやっておるわけでございます。それでも一年前の三月に比べますと倍以上にふえております。あまり農中関係の資金を多くいたしますと、今度はかえって取引先銀行が迷惑だというようなこともございますから、その辺はあまり急激にはふやさずに、全体の需要がまかなえればいいじゃないかという観点で指導いたしてまいりたいと思います。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの銀行局長の御答弁のとおりだと思うのですが、私のおります兵庫県は実は地方銀行がないのです。神戸銀行という都市銀行一行になってしまいまして地方銀行はありません。神戸銀行はなかなか資金繰りがむずかしくて窮屈なようでもありますので、その点はあの灘というのは資金量も非常に豊富に必要とするところでございますから、別に信連、農中に限らないのですが、あそこらではそういうほうがまだ無理ないのじゃないかというような気もいたしますので、そこらは御配慮いただきたい。  それではいまから、これまでいろいろと議論をしてまいりました歩積み、両建て等の調査結果も集まったようでありますので、最初に銀行局長のほうから御提出をいただいておる資料等についての御説明をいただきたいと思います。
  122. 高橋俊英

    ○高橋説明員 御説明の便宜のために資料をお配りしてございますが、この中で都市銀行、地方銀行につきましては、全体の額と中小企業の分が内訳として列記してございます。いままでこれらの金融機関について検査をいたしましたのは中小企業分についてだけ行ないまして、大企業にはやっておりません。ですから従来の検査の結果と今回の報告の結果を比較してみますと、これは中小企業についてだけ比較ができるわけであります。  そこで今回のものは、都市銀行におきましてはすでに金利措置を行なった分を含めて九・八、つまり一番下の欄でございますが、融資の額に対する自粛対象預金の割合は九・八%に相当する。地方銀行の場合には、やはり金利措置分を含めまして一一。七%、相互銀行は一七・五%、信用金庫は一七・〇%となっております。都市銀行は金利の措置が実は今回強化されたわけでありまして、そのために金利措置分が非常に少なく、金利措置をしていない分の九・五%と大差がないわけでありますが、地方銀行になりますと、金利措置をすでにした分を除きますと六・一%になっております。それから相互銀行はそれが一三%、信用金庫は一一・七%、こうなっております。  下のほうに、特別検査をした今年の四月の分の数字がありますが、一番下の融資に対する自粛対象預金の割合は、都市銀行におきましては九・二%でございましたので、今回の報告のほうが上回っております。それから地方銀行の中小企業分は一〇・〇%でございましたが、金利措置済みの分を含めますと今回のほうが上回っております。相互銀行は、特別検査の結果は一一・五%ということでありまして、非常に改善されたというふうに申し上げたのでございますが、今回の報告と全相互銀行の数字をそのまま集計した数字と比べますと、この報告のほうがだいぶ上回って一七・五%であったということですが、金利措置をしておるのもありますから、これから自粛の対象になるのは一三・〇%であるということで、一番最初の昨年に検査を行なった当時の数字が二三・六であったものですから、それに比べればかなり改善はされているということが言えましょう。信用金庫のほうは、特別検査の結果と今回の報告とはほとんど変わっておりません。またこのいずれも、特別検査のときの数字は上の表のカッコの数字に相当する数字でございまして、金利措置をしておりましても一応自粛対象預金として掲げておるものでございまして、カッコ内の数字と合致するわけでありますが、これから自粛をさせる数字としては、カッコではなくてカッコのはずれたほうの数字が自粛の対象になる。もっともこれらの数字全体は、いずれも先ほど申し上げましたように報告をそのまま集計したものでございまして、中身を見ますと若干訂正を要するのじゃないかと思われるものも、感じの上からはかなり含まれております。しかしながら何ぶん数が多うございまして、全部の相互銀行等の数でございますから、結局平均をするとこれに非常に近い数字になるのではないか、過小と思われるものもあるし、中には何を勘違いしたのか、非常に過大な数字を出しておるものもございますが、平均の姿は大体こんなところではないかと思います。  なお、いまその報告が出たあとにつきまして、やはり特別検査をぽつぽつやっております。非常に過小と思われるようなものについては特別検査を実施いたしておりますが、いずれも全体の自粛措置につきましては相当まじめにこれを受け取って末端までその趣旨が徹底しているような次第で、相殺、拘束の解除、あるいは金利措置をやるような空気が十分に見受けられますので、十一月末の報告がやがて来年になりますけれども出てまいりますときには、おそらく当委員会の決議の趣旨に沿って相当減ってまいるだろうというふうに考えております。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 この前の特別検査と、今回の全数の集計とは差があるのは当然だと思いますから、現在これがスタンダードということで今後に価値が非常にあるわけでありますから、これについては多く触れる必要はありませんが、ひとつ私どもが知りたいのは、あとでちょっと触れます格づけ基準等の問題もありますが、この間も平均値だけを見せていただいたのではこの姿がよくわからないわけです。そこでこの自粛対象預金対融資額比D/Bですが、これが土台になってくるのじゃないかと思いますから、これあるいはその下のほうでもけっこうですが、これを各都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫について分布の状態をひとつ出していただいて、それは全部を出していただかなくともいいですが、大体はこうなって、モードは大体どのくらいになって、上限、下限がどういうふうで、どういうばらつきになっておるというような状態を見せていただくと、それをその次にもやはり見せていただけば、その平均値だけでなくて実態というもののあり方が銀行種別で少し様子がわかってくるのじゃないか、こういうふうな感じがしますが、そういうふうな資料をひとつお願いできるでしょうか。
  124. 高橋俊英

    ○高橋説明員 あまりこまかい刻みですと、何か非常に数が一つとか二つとかいうことになりまして目立ちますので、分類のやり方をおまかせいただきまして、大体の傾向がわかる程度に資料を出したいと思います。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 今回の歩積み、両建ての問題については、大蔵省としても責任を持ってやっていただいておりますので、われわれは今後に非常に期待をいたしております。いま局長から御答弁のありましたように、これらの調査結果に基づいて、さらに特別検査も施行されておるようでありますから、おそらく金融機関側においても今回はそれなりに協力をしておられることだというふうに信じております。ただ問題は、この前の決議でも、相互銀行は特別調査ではたいへんよかったものですから、われわれもそれをまるまる信用して、相互銀行はいいけれどもほかはよくないというきめつけ方をしておるのですが、全数調査をしてみると必ずしもそうほめるほどでもなかったということは、その点はサンプル調査ですからやむを得ないですが、この点少し相互銀行に対しては、あのときに決議してほめてあるが、あれは全数調査では必ずしも事実とは同じではなかったという点は注意を喚起しておいてもらいたいというふうに思います。  それから、ちょっと私が最近いろいろの業者のほうから聞いております点では、確かに拘束解除あるいは金利措置は行なわれておるということは私ども耳によく入ります。その点では非常に喜んでおる面がありますが、やややはり金が借りにくくなったという声をを、私は最初からちょっと不安があったのですが、ちょいちょい耳にしておるわけです。その点については、この前も附帯決議のときに私、申し上げた、要するにこれで中小企業が締め出されるのでは歩積み、両建ての問題というのはマイナスになってしまうわけですから、その点について特別検査その他で気づかれる点がないかどうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  126. 高橋俊英

    ○高橋説明員 検査の結果では、そういう苦情は、これは債務者のほうを調べておりませんから苦情はわからないわけですが、その銀行の貸し出しの割合というふうなものについて格別の変化はないというふうに見ております。相互銀行、信用金庫などにおきましても、コールレートが非常に高くなっておりますけれども、そちらのほうにばかり金を回すということをやってはならぬということを相当強く指導しておりますから、いずれにしてもこれはどこかに貸さなければならぬものなので、ただ都市銀行等になりますと全般に非常に金繰りが苦しいという事情からこれを取り引きのある中小企業については若干借りにくくなっておる。大企業についても全く同じ事情でございますのでそういう事情はあるのではないか。ただこれはやむを得ないといいますか、都市銀行がさしあたり直接の対象になっておるクレジット・ライン等で非常に強く締めておるわけでございますので、全体に非常に貸し出しそのものについては窮屈な感じを免れません。中小企業についても例外であり得ないと考えます。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 その点は都市銀行の情勢は私もわかりますが、地方銀行、相互銀行、信用金庫等におきましても、こういうことの結果として貸し出しが減少することのないようには特にこの席上でお願いしておきたいと思います。  それから二番目は、金融制度調査会が再開されていよいよここでいろんな問題が論議をされることになろうと思いますが、当面金融制度調査会としてはどういう問題を御検討になる様子であるか、現在の段階でわかります範囲を御説明がいただきたいと思います。
  128. 高橋俊英

    ○高橋説明員 先般、九月の初めにやりましたのですが、今月中にできればもう一回開催をしたい、その間に各委員から全部御発言を願うというような方針を会長がとっております。その結果として何をさしあたり当面の議題とするかを見るわけでありまして、私からこの席でどういうことが議題になるだろうということを申し上げるのはあまり適当ではないのですが、包括的に申し上げますと、昨年五月に提出されましたオーバーローンの是正に関する方針というのがございます。これはいろんな問題を含んでおるわけでございます。実際には経過等を見ますと必ずしも思ったようにはなってない。御承知のように、金融の引き締めも相当強くなっておりますし、その結果としていろんな金融面にもひずみがあらわれておるわけです。都市銀行の外部負債はむしろ増加しておるというような状況でございますので、今後いずれの日か——これはとうてい近い将来とは申し上げかねますが、金融が緩和されるということになったときに、クレジット・ライン等できつく金融引き締めしているときはいいけれども、そういうものを緩和することになった場合には、たちまちまた行き過ぎが起こる。そういうふうな状態をいかにして防ぐべきか、オーバーローンを——あの答申にある、抽象的であったと思われる点については、仕上げをしなければならない。ほんとうに金融引き締めによらずしてオーバーローンを是正するのにはいかにすればいいかという、そういうことが一つの問題としては当然に議題に上らなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 自主的に御検討なさることでありますからいいのですが、私は先回、新しい銀行の格づけ基準等の問題について言及をいたしましたのも、一つはやはり金融節度を守るというような問題ですね。率直にいって、いまの銀行というものは、いまの銀行法自体から見ますと時代が違うのではないか、銀行法は昭和二年につくられておりますから、戦前の銀行というのは、少なくとも取りつけが起こり得る銀行、つぶれる可能性のある銀行でありましたから、預金者保護ということが非常に重要な問題として書かれた仕組みの銀行法です。しかし、現在世界の中で絶対につぶれない銀行というのは私は日本の都市銀行だと思うのです。少なくとも一兆二千億余りの国家信用がこれをささえておる。さらにオペレーションの六千億、これもやはり国家信用でささえておる。国家信用のささえておる銀行がつぶれるわけはないのでありますから、戦前の銀行といまの銀行とは銀行自体のあり方としては非常に変わっておる。ただ、それだけに社会的責任というものは当然銀行としては考えてもらわなければなりませんし、同時にそれが金融節度として当然あらわれてくるべきだと思うのですが、私ども感じでは、過当競争というものがあって、必ずしも私ども考えておるような社会的責任に徹しておられるかどうかについてはやや疑問があるわけでありますから、そこらについてこの間論議をしたわけで、その同じ方向で金融制度調査会で問題を取り上げていただくならば私どもたいへんけっこうだと思うのですが、それはさしおいて、そういうことでないということになれば、これはわれわれとしてはまた当委員会で銀行法の改正等を含めての新たな段階の論議もせざるを得ないのじゃないかという気持ちを持っておるわけです。そこで、この前二ヵ月くらいでひとつ何らかの基準について検討をしようというような御答弁があったわけですが、その後の御検討の経過をちょっと伺いたい。
  130. 高橋俊英

    ○高橋説明員 大体二ヵ月くらいあれば何とか検討ができるのじゃないかというお話しを申し上げたわけですが、銀行特に都市銀行などにつきまして、経営のあり方に対する評価方法、これをいろいろな角度から研究いたしまして、実は、こういうものをきめるとすれば、できることならばこの評価を受ける側の都市銀行などの言い分も大いに聞いた上できめていきたいと思っておりますので、そのために時間がかかるということを申し上げたわけでございます。ところが、ごく最近になってでございますが、都市銀行の代表の方が私に申されるのには、どうも直接お互い同士利害関係がある問題についてこういう点に重点を置いて評価をすべきだということは、直ちに自分自身の立場を何といいますか評価するようになる、自分に都合のいいことが必ずしもほかの人に都合のいいことかどうかわからない、そういうことで、はっきり申し上げて、この論議はまとまりません、ただ大蔵省のほうでそういった結果についてこれを公表するということはやっていただきたくないけれども、実際にきめられること自体は別に反対はしない、大蔵省の側で適当にお願いいたしますというふうなことでございます。それまでにむろん私どもも何回か研究しておりました。いまの段階で決定したということは申し上げかねるのでありますが、大体の考え方といたしましては、従来の銀行に対する監督検査の際のいろいろな指摘事項がございますので、そういった場合における着眼点は、実はほとんどの銀行が一つの組織体として健全性がどうであるかという点が重点であります。ただいまお話がありましたように、いまの銀行法が、非常に銀行乱立といいますか、小銀行等がたくさんあった時代で、銀行の健全性が強く要請された時代のものであります。その流れをいまもくんでおるわけでありますが、これとても、いままではなるほど銀行が、おっしゃるように一番安全じゃないかということがございますけれども、私どもは、それは日本銀行の貸し出しという方法がございますから、いかなる緊急事態においても倒すということはないでしょう。しかしそれだからといって、中身が非常に悪くなっていいというわけじゃない。いまのこういう経済にいろいろな不安な現象がございましても一般に安心感があるというのは、銀行はつぶれないということが一つの大きな安心感になるであろうと思います。銀行の健全性ということについては依然として強い要請を続けなければならぬ。そういうことから申しまして、特に協定ができるという件数などにあらわし得るものとしては、これが一番的確性があるわけでございます。これを大きく分けましてその要素を申し上げますと、一つは健全性というものと、もう一つ同じようなものでございますが収益性という問題がある。  初めの健全性というものを分けて考えれば、こちらにいろいろ指導基準がございますが、自己資本比率が十分に高いかどうか。これはあまり都市銀行について直接問題にするほどの差はございませんが、自己資本比率が内部留保を含めてどうなっているかということ。それから不良貸し出しが多いか少ないかという意味における、われわれのほうのことばで申しますと、貸し出し金の分類率でございます。これはちょっとした差がございます。不良資産が多いか少ないかという率の問題。もう一つは、やはり健全性という見地から預貸率がどうであるかということ。いま全体としては非常にオーバーローンになっておりますが、都市銀行の中にもかなりの格差があります。これを平残でとらえまして、平残の預貸率によってある程度差別をつける。  それから第二番目の大きなワクでありますところの収益性につきましては、これは二つに分けて考えていいと思いますが、いわゆる銀行局で申します経常収支率がいいか悪いか。これも指導基準があるわけでございます。それに対して非常に近いところにあるか遠いところにあるかという問題。それから同じ収支率に関係があるのでございますけれども、預金の経費率ということも一つのめどになっている。収益性が高いということが、ただ貸し出し金利が高いということからくるとするとあまりほめられたものじゃない。やはり預金原価が安いということが一つのメリットになるわけでございます。合理化の目標はあくまでそこに置かれるべきものである。そういうものを加えていきたい。これが普通の静態的な意味での銀行の経営のあり方なんでございますが、これだけでは若干——もちろんこの部分につきましてももの足りない面もございます。それから最近における改善度合いというものを一つのメリットとしてつけ加えたい。ずっと前から同じ状態であるのか、最近になって非常に努力した結果よくなったか、悪くなったかということが、やはり一つの評定に入ってよかろうということであります。これらを総合いたしまして、いわゆる銀行経営の従来のいろいろな指導基準に基づく状態を評価するということが大きな問題として一つあるわけでございます。これだけでは、おっしゃいましたように今日における日本の、特に都市銀行の責任という点、これまでの国の政策にもよるのでしょうが、景気変動の際における特に都市銀行のビヘービアの問題が、非常に批判の対象になったオーバーローンという問題の中に含まれますけれども、これらの銀行の並列競争意欲が非常に強い場合というふうなことが批判の対象になるわけでございます。銀行がただ健全でさえあればいいという問題じゃなくて、その動きをなしている業容から考えましても、産業界に対する、あるいは一般国民生活に対する影響等を考えますと、過当競争などは厳に慎んでいただかなければならぬものでございますので、そういった主として銀行の社会性といいますか、あるいは公共性と呼んだらいいのですか、国民経済に対する貢献といいますか、そういったようなもの、これを大きなものとして、それに対する各銀行の経営者、特に経営者ということが言えると思いますが、それの態度がどうであるかというふうなことが一つのなにになると思います。昔流にいいますれば、非常に内部の統制が行き届いて組織的に運営され、積極的に生き生きと動いている銀行はいい銀行ということになるのですけれども、その及ぼす影響ということを考えますと、私がいま申しましたような点が、むしろ重点になっていかなければならぬのではないか、ただしこれは功罪相半ばするような点もございまして、従来ともオーバーローンの是正の問題を見ましても、日本の成長に対するメリットが相当あったのではないかというふうなことさえ主張されておるわけでございますから、一がいにそれを絶対的な悪ときめつけるわけにもいきませんけれども、私どもの何回かの景気変動の経験に顧みまするときには、今後におけるいわゆる開放経済体制において産業界が相当もまれてくる。それに対して非常に大きな貸し出しを行なっておる銀行としても、よほど考えていかなければならぬ。いずれは相当慎重にならざるを得ない時期が来ると思います。当面まだ金融そのものについて自由化の影響があまりないわけでございますから、やはりこの過当競争はしばらくの間はどうしても続くのではないか、特に銀行間の業容の差が非常にわずかであるということから、ちょっと気を許すと抜かれてしまうというような環境が、よけいそういう過当競争を引き起こす原因になってきておる。考え方もかなり積極的であって、いわゆる堅実型は少ないというふうな状態でございますので、そろいったものについてどのような評定を下すかということは、点数ではなかなかあらわし得ないものでございますが、しかしそういったことをかなり大きな評定の要因としてとらえていかなければ意味をなさないのではないかと思っております。  それらの考え方についてまだ完全に整理統合が行なわれておりませんので、まだこれできまったというふうに申し上げる段階でございませんが、なるべく早く一応トライアルとしてやったものでございまして、これを公表するものでもございませんから、銀行としてさしあたり直接信用を害するということにもならないと思います。しかし考え方としては、やはりいま私の申しましたようなことで銀行を見直していく必要があるというように思っております。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 大体いま銀行局長のお答えをいただいた方向で私もけっこうだと思います。特に、前段のほうは、これは機械的な問題ですから簡単なんですが、後段のほうは場合によると、金融機関側からすれば官僚統制というそしりを受けないでもないと思います。しかし私は少なくとも官僚統制のあるなしにかかわらず、相当前向きにそれが役に立ち、広い意味での国民経済にマッチをするのであるならば、ある程度のことはやむを得ないではないか、そういう統制をしなくてもいいような情勢に自主的にやっていただければ、私はそれにこしたことはないと思いますけれども、どうしても自主的に問題の処理をされないときには、ある程度のそういう関与といいますか、そういうものもやむを得ないのではないかという感じがいたしますので、いまの点については、さらに推進をしていただきたいと思います。  そこでそういうことに関連してやはり私が気になるのは、金融財政事情の八月三十一日号に、日本の百大銀行番付というものが実は発表されております。私は、そういう銀行なり金融機関の内部的な問題について、そういう社会的責任を感じて、あるべき金融機関になってもらいたい、こう念願をしておる。その片方で三十九年三月段階における日本の百大銀行番付なんというものが麗々しく発表されたりするというようなことは、全くいかがなものであろうか。私どももこういうものを見たときに感じるのは、なるほど都市銀行の中に日本相互というような大きな相互銀行が割り込んでみたり、いろいろ預金量として見ると、おもしろいという面はないでもありません。しかしやはりこういうものが出されるということは、どうしても預金競争の端緒になってくるのではないか。百番目に入りたい。何番から何番に変わった。念入りにカッコ書きをして前回の順番があわせて書いてあったりすると、これによって前は何番だったのが今度は何番になったというようなことは預金の過当競争をあおる以外の何ものでもないので、こういうものを外に対して発表させないということに何とかならぬですか。これは百害あって一利ないと思うのですが、銀行局長どうですか。
  132. 高橋俊英

    ○高橋説明員 趣旨においては全く同感なのでございますが、出版の自由、言論の自由と申しますか、そういう出版社に対して私どものほうがさせないというようなことは、はなはだどうも越権になってしまいまして、できないと思いますが、経営者、編集者などをよく知っている場合には——そういうのは確かにおもしろいから載せるのでしょうけれども、あまり業容が上がった、下がったということで銀行がそのことにばかりとらわれるということは非常に災いをなすという面があるから、できることならばそういうことをおやめ願いたいということをお願いをすることはしたいと思いますが、しかしいろいろな雑誌がございまして、私どもの気づかぬうちにそういうものが出てしまう場合もあるわけです。いま御指摘の雑誌は比較的良心的な経営をやっているように私は思います。従来もそういうことがあったのかどうか、実は私も知りませんでしたが、まあ御協力をお願いする程度でやっていきたいと思いますが、どうも差しとめるというわけには参りません。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 私だいぶ、五年ほど読んでいるのですが、こんなのが出たのは初めてで、何だかこっちがこういうことをやめてもらいたいと思っているときにわざわざ出てきたようで、まことに驚いたのですが、出版は自由ですから、出版してはいかぬということにはならぬでしょうが、こういうものは全部、預金量等はどこでどういうふうに発表する仕組みになっておるのでしょうか。各銀行が、自分のところはこれだけですといってオープンに出しておるのか。内容はいいけれども、一々一般に公表しなくても私はいいことではないかという気がするのですが、そこらの点はどういうことになっているのでしょうか。
  134. 高橋俊英

    ○高橋説明員 もともとこれは株主総会におきましては、そういう資料を当然出すのが通例でございます。それ以外に協会によりまして、メンバーの金融機関の資金量、それから増加額というふうなものを表にして出している場合が多いようです。ですからだれでもたやすくその内容を知ることができるというようなことで、毎月というわけでもありませんが、期末になると、必ずそういう表が協会の内部でつくられて配られる場合がある。ですからこれをいただいてくるということは非常に簡単なわけで、何でもないことなのです。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 出るものは仕方がありませんけれども、今後、私ども考えております趣旨、さっきお話しになった公共性といいますか、金融機関の持っておる社会的責任という面からできるだけ過当競争を排除してもらって、あるべき銀行の姿になってもらいたい、金融機関の姿になってもらいたいということを考える以外に何もないわけでありますが、何とかそれらについては、いまの基準が検討されましたならば、それに伴うところのメリットで銀行行政の上に具体的に反映できるような措置を十分ひとつ検討を進めていただきたい、これを要望いたしまして私の質問を終わります。
  136. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 春日一幸君。
  137. 春日一幸

    ○春日委員 高橋銀行局長にお伺いいたすのでありますが、まず、ただいま提出されました「歩積・両建預金等の集計結果」この資料の権威についてただしたいと思うのであります。  もとより、われわれは銀行局の提出された資料を基礎にいたしまして、わが国の金融行政、実勢を把握し、それを対象として政策を論じ確立するのでありますが、したがってこの資料はやはり国政運営の基礎になるものでありますから、当然法律に基づいて十分責任ある、また権威のある資料であると思うのでございます。しかるところ、私がちょっと不安に思いますることは、たとえばD項にあります自粛対象預金の額でございます。これは当時——当時と申しまするのは本年の四、五月ごろでございました。われわれが、高橋銀行局長とともに、歩積み、両建て、その自粛対象となるべき預金がどの程度あらんかと論じ合ったのであります。その当時銀行局長も答えられておりまするが、大体その総額は最低にして二兆円あるいは三兆円にわたるであろう、こういう答弁がございました。もとよりそれは正確な資料に基づいたものではなくして、やはり銀行局長の心証から得たる数字であったりでございます。それにしても、ここにいわゆる各金融機関からの自主的報告の集計というものが一兆円だと出ていないと思うのでございます。少なくとも責任者であります銀行局長感じておられましたものと、自主的申告に基づく対象金額とがこんなに大きくずれておるということについて、各銀行が自主的に報告した数字というものは、はたして事実の信憑性を持つものかどうか。これは一体どのように把握されておるのであるか。この点をお伺いをしたいと思うのであります。なお、それに関連をいたしまして、その当時、自主的に申告されました相互銀行のごときは、これは非常に改善されておるという報告であり、本委員会はこの意を受けて、改善の実があがっているが、都市銀行はいけない、委員会決議においてもこういう冒頭の決議をいたしておるのでございます。しかし、ここに相互銀行の自主的な申告に基づく、いわゆるその比重というものは一七・五%であります。これに対して実際の調査の結果は二二・七%と、こういうようなぐあいに自主的申告と検査の結果とが大きく開いておるのでございます。したがってこれらの資料の信憑性と申しまするか、はたしてこれが現実の事実を反映しておる資料であるかどうか。銀行局長はどのようにお考えになっておりまするか。まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  138. 高橋俊英

    ○高橋説明員 最初に私がかつて二兆円あるいはそれ以上あるのではないかと申し上げたということであります。それがすべて今回の自粛措置による対象預金によるかという意味で申し上げたかどうか、私実はあまりはっきり記憶しておりません。実は実質的な意味における両建てというものはかなり多いというのが実態であろうと思います。しかしながら今回の自粛措置に定められたものに従って検査を行ないましたところは、この三項にありますところの、都市銀行ならば九・二であるとか、融資に対する割合としては一〇%前後である、相互銀行は一一・五%であり、信用金庫は一七・三%であるというような、こういう数字になっておる。これは中小企業に限られております。大企業の分につきましてもいろいろ実情を私どもが見聞するところでは、融資を受けますと、ある程度は預金を置いていってくださいくらいの話はある、その割合はむろん中小企業の場合よりは少ないようであります。これは力と力の関係といいますか、大企業についてはあまりえげつないことを言うと逆に銀行がやられるということがありますので、大企業には目立ったはっきりした形での拘束ということはあまりやらない、実際問題としてはあるのじゃなかろうか、そういう感じで申し上げますと、いまでも私の感じから言えば、それは二兆円以上くらいのものが、銀行によって債務者があまり好まないで拘束されておるものがあるのじゃないかという感じは持っております。しかし自粛のための整理基準というものは非常にたんねんにできておりますが、相手方が自由にいつでも引き出し得るということが明らかにされたものについては、これはみんな自粛対象にならないということになっております。大企業についての報告は非常に小さな割合になっております。金額から申しましても、自粛対象預金の中でやはり大企業分というものは都市銀行の場合で申しますと三分の一程度でございまして、融資総額から比べれば非常な小さな割合になってくる。これらにつきましては検査もやっておりますが、今回は相手方にこれは自由な預金である、いつでも引き出して差しつかえないという通知を書面によって出しておるわけです。そういうものにつきましてはいかんとも、私どもで、これは自粛対象であるというふうにきめつけるわけにはいかない。そういうふうなことから一般に大企業分につきましては非常な低い率しか自粛対象に上がってこなかった。その結果といたしまして、これが四種類の金融機関を加えましても一兆二、三千億にしかならないと思いますが、とりあえずこれらの報告に基づきまして検査を行ないながら、その検査された成果がなるべく上がるようにしていって、さらに整理を進めるということにいたすほかないのじゃないか。つまり、厳格な意味での歩積み、両建てというのは、言ってみれば最終の詰めになりますと押し問答になるというケースが多い。完全に自由であるというふうに言い切ってしまって、相手方にそういう通知をしてあれば、検査官がそれは自粛対象になるのだと言うことができないようになっております。従来はそういう措置をとっておりませんでしたからただの押し問答でしたけれども、今度の場合には債務者の側にもそういった通知が行っておるわけでございますからやむを得ない。大企業は確かに債務者預金としてはかなり持っております。やはり四〇数%にのぼる貸し出しに対してあるいは五〇%以上の債務者預金が大企業についてもあることはあるのですが、御承知のように昨年以来自主的に預金を積み増したというふうな事例もあります。これは銀行側がさせたという意味ではなくて、金融引き締めに備えるという意味で預金を積み増したということは一般に知られているところでございまして、そういったものは何ら拘束性はないというふうに見られるのであります。債務者預金が多いからといって必ず今回の自粛対象預金になるということではありませんので、そういった点から数字としてはこの程度のものがさしあたり対象になる。率としては非常に違っておりますのは、先ほど申し上げたように、相互銀行が御指摘のごとく一一・五という検査の結果に対して金利措置済み分を含めると今回の報告は一七・五になっているじゃないか、たいして改善もされておらぬということでございます。これは特別検査の際に対象にとりましたのが八つの相互銀行で十五の店について行なったものでございます。その十五の店の中に三ヵ店あるいは四ヵ店と申し上げてもいいのですけれども、非常に成績のよかったところがたまたま含まれておる、そのために平均が下がってしまった。今回の検査では全銀行の全店でございますから、やはり抽出率からいって低きに失した、十五店に対して相互銀行の全店舗ということになると、だいぶ低い率になるわけでございます。もっと非常に広範にやれば誤差が少なくて済んだわけでありますが、そういう検査の能力から申しまして、この十五ヵ店程度しかやれなかったために、そのうちの一部にイレギュラーなものが入っておったということでございます。その点はわれわれとしては検査の結果としてこれが全体の成績でないということは申し上げておりましたけれども、こういうふうな食い違いが生じた点まことに申しわけない次第だと存じております。
  139. 春日一幸

    ○春日委員 この資料でDの欄にあります自粛対象預金、都市銀行の下に二千九百三十八億とありますが、これは中小企業以外のものに拘束しておる自粛対象預金、こういうことなんですか。それから地方銀行の場合もその上に中小企業と書いてあるだけで何も書いてありませんが……。
  140. 高橋俊英

    ○高橋説明員 ここにある中小企業はいずれも内訳でございますから、この都市銀行の欄に書いてある、あるいは地方銀行の欄に書いてあるのはそれらの全体の数字でございます。
  141. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、この二千九百三十八億から千八百九十七億を引いたものが都市銀行の全体としての自粛対象預金、こういうことになるわけですね。
  142. 高橋俊英

    ○高橋説明員 引いたものが中小企業にあらざる、つまり大企業の分になります。
  143. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、とにかく総預金というものの中に占めまする割合というものは非常に低くなってまいるわけでございます。当初、われわれが公正取引委員会の資料やまた銀行局から大体において示されております自粛対象預金の実在額等の判断が、相当に変わってくるわけでございます。少なければ少ないにこしたことはないのでございますが、別にわれわれはこれが大きいことを固執するものではございませんけれども、しかしそれが事実であるかどうかという問題がきわめて重大な問題であると思うのでございまして、この点はひとつ十分御留意を願って今後の検査に当たっていただきたいと思うのでございます。  したがって、私はこの機会に特に銀行局に御留意願いたいことは、われわれが本委員会において決議を行ないました当時、銀行局の御報告に基づいて、相互銀行においてはまことに改善の実があがっておる、しかるに都市銀行、地方銀行はけしからぬ、こういう断定をいたしておるのでございます。そういうような冒頭宣言のもとにかくかくあるべし、集約いたしますと、政府は、不当な歩積み、両建てが完全に解消するよう行政指導を強化するとともに、これに協力しないものには特に行政権を発動して厳重なる処罰をせよ、こういう決議を行なっておるのでございますから、どうかそういうような誤てる決議を本委員会がするようなことがありませんように、個々の資料提出はさらにさらに厳粛を期していただきたいと思うのでございます。こういう意味で私はさらに法的根拠を明らかにいたしておきたいと思うのでございますが、あなたのほうの銀行検査は、当然大蔵大臣に法律が付与いたしております銀行検査権、これは二十一条でありますが、二十一条に基づいて検査をされておる。したがってそれには立ち入り検査もあるでありましょうし、あるいは自主的な報告書徴求による検査等もあると思うのでございます。そのような銀行検査に対して不実な申し立てをしたり、記述をした者は、三十四条において役員の報告検査に関する罪といたしまして、懲役一年以下に処すということが書いてございます。特にこの三十四条の第一項には「業務報告書又ハ監査書ノ不実ノ記載、虚偽ノ公告其ノ他ノ方法ニ依リ官庁又ハ公衆ヲ欺罔シタルトキ」このときには取締役外当該責任者に対して一年以下の懲役に処する、こういうことが法律の中で明記いたしてある次第でございます。すなわち二十一条は検査権であり、その検査権を行使した場合いろんな方法によって官庁または公衆を偽った、そのようなときには一年以下の懲役に処せなければならぬと思うのでございます。これは院が特別に歩積み、両建てをなくすることのためにこのような決議をいたしておりますし、わけて法律の根拠は、二十一条と三十四条によって、そういうような場合においての刑事責任を明らかにいたしておるのでございます。でございますから、私は今後こういうような検査に基づくところの報告書の徴収にあたりましては、当然そのような責任がその報告書の中にあるものであるということを十分当事者に周知徹底せしめられまして、いやしくも偽りの報告をなさしめないよう——そのようなうそ偽りの報告がありますれば、当然あなたが誤った報告を国会にする、政策がまた狂ってくるわけでございます。狂った政策を立てますれば、当然わが国の金融が狂ってくる、経済が狂ってくる。それはまたたいへんな大きな障害を来たすのでありますから、当然あなたのほうの法律に基づく報告書の徴収にあたっては、そのくらいの大きな責任があり、うそ偽りをすればそれだけの刑事罰に問われるものであることを十分認識せしめて、権威ある資料を提出させ、またあなた自体がその実態を把握される必要があると思うのでございます。この間の経緯はどのようになっておりますか。ただいまお話しがあったように、漫然とこれをなくするように、漸進的に段階的に話し合いによってなくしていくのだというようなものであるのか、それとも独禁法の規定、銀行法の規定、また歩積み、両建ての悪い習慣、またはそのような法律違反の行為がわが国経済に与える大いなる障害、これを除去することのために一体どういうような心がまえでこの衝に当たられておるのか、一ぺんあなたの御決意を伺っておきたいと思います。
  144. 高橋俊英

    ○高橋説明員 法律に、うその報告などを出したら処罰するということがございます。そういうことも現在まで使ってはおりませんけれども、そういうことがあって、そういう裏打ちによって私どもがこういう報告を徴する権威も伴うわけでございます。ただ処罰すること自体が必ずしも行政上適当でない場合も多いのでございまして、私どもこの報告につきましては、不意に、予告なしにいつ検査をするかわからぬということを実際にもやっておりますし、またそういうことを各業界に通告しておるわけでございますから、検査結果を故意に、少ない数字を出すというふうなことはほとんどないんじゃないかというふうに考えております。これが国会で独禁法の特殊指定にもなりかねない勢いで非常に論議されたわけでございますから、それらの経緯はこれらの金融機関としても十分承知しておりまして、今回の自粛措置の実行にあたりましては、従来とは非常に違って、末端のすみずみに至るまでそれを周知徹底せしめるということについては、各責任者、頭取あるいは社長等を含めまして率先そういった措置をやっておられます。いままでとはその点では意気込みが違っておるように私も思っております。でありますから、わざわざ少ない数字を出してごまかそうというふうな傾向はないと思いますが、ただ今回の説明の便宜上お配りいたしました集計につきましても、今後精査の結果数字が移動することがあるとお断わりしておりますが、中身を店別にまでとっておりますから、見てみますと、同じようなところで数字が違っておるという場合があるわけです。私のほうから見れば、こんなに大きな差はないのじゃないかという場合がございますので、それにつきましてどうしてそういうひどい差異が出てくるのかという点は、本省あるいは財務局をして呼んで調べさしております。数字があまり違いがはなはだしいと思うものは、どっか間違っておるのではないか、つまり錯誤に基づいたものだと私は思う。必ずしも故意にやったのじゃなくて、逆に私どものほうから見て非常に多い場合があるのですね。拘束預金に対してその大部分が自粛対象だというふうな数字を出してきておるところさえあるので、これなどは私は錯誤だと思います。そういうわけで、中身には必ずしも少ないというものばかりでなくて多過ぎるのもあるというふうなことがございまして、先ほど報告に権威がないと委員会の判断を誤らせるというようなお話もございましたが、確かにそういう点がまずいと思いますので、なるべくこれをもとの数字——五月末が基準点になりますから、基準点の数字からして違っておったのでは困るので、われわれのほうから感じでどうもおかしいと思うものについてはいま申し上げたような措置をとっております。でありますから、今後この数字があるいは多少動くことがあるかもしれませんが、しかし店の数が今度は全店で非常に多いから、したがって平均いたしますと違いというものはそう大きなものにはならないのじゃないかということを先ほども委員にお答えしたような次第でございまして、これが結果的にもこのとおりだというふうにはとても私、断言する勇気はございませんが、従来の抽出の検査の場合に比べればそう実態とかけ離れたものではないのではないかというふうに存じております。
  145. 春日一幸

    ○春日委員 私は高橋銀行局長が相当の熱意を持ってこの問題と取り組まれておりますことについては敬意を表し、その努力は認めるものでありますが、ただ長い悪い習慣の中でそれになずんでしまいまして、この歩積み、両建てに対する罪悪感というものが金融機関当事者の中にはあまりになまなましく切実に感じられていないというきらいがあるということを指摘しながら、十分厳粛なる措置をとっていただくのでなければ、これは私は根絶を期しがたいと思うのでございます。俗にシカを追う者山見ずとか、森の中におる者は木を見て森を見ないとか、こういうことがありますように、なるほどあなたの職責は、金融機関の健全なる運営という一個の職責はあるのでございましょうが、しかし金融業務を通じてわが国の経済の健全なる発展に資するというまたさらにより大いなる使命があなたに課せられておるのでございますから、ただ単に金融機関の健全性だけに重点を置いて、わが国の金融はいかにあるべきかという全体的視野に立っての判断が誤っては相ならぬと考えますので、私は集約して言いますならば、さまざまな意見もあるであろう、金融機関に言い分もあるであろう、けれども、この歩積み、両建てを向こう一ヵ年間を目途としてなくするようにせなければならぬというのが、国権の最高機関たる国会があなたに与えておるところの至上命令であるのでございます。これに対して異論があるならば国会を解散せしめるだけの政治手続をとらなければならぬのでございます。金融機関がどうだというような問題は、この委員会の決議が行なわれる以前の論議でございまして、ひとたびこの委員会の決議がかく行なわれました以上、あなたの職責は何であるか、向こう一ヵ年間に歩積み、両建てをなくすることである、それ以外に何にもないのでございます。それに反対ならば、国会を解散し、そのような決議を行なったこの大蔵委員会の政治責任を主権者、国民に問う、こういうことでなければならぬのでございますから、金融機関の運営ができるかできないかは、あの決議がなされた以前の問題であると思うが、鍛冶政務次官は法律家であられますから、またこういう問題についても相当の見識をお持ちであると思うが、いかがでございますか。
  146. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 御説のとおりだと思います。十分やらなければならぬものと心得ます。
  147. 春日一幸

    ○春日委員 そうなりますと、一点だけ高橋さん明らかにいたしておきたいのでありますが、あなたは、いま三十四条というものを必ずしも背景として調査を求めておるのではないとこう言われておりますが、そういうようなことをあなたが言うということ自体は、一つの越権行為である。これは鍛冶さんの領域でありましょうが、公務員法によって国家公務員、地方公務員は、職務遂行上法律に違反をしたる事実を発見したるときは、ことごとく告発しなければならぬ。告発の結果それが無罪になるのかどうであるかは、それは裁判長の権限であって、銀行局長の権限ではない。したがいましてそういうものを背景にするとかしないとかではないのです。法律の仕組みは、国は大蔵大臣に対して検査権を与えておる。検査権を行使したら当事者は公正なる報告を出さなければならない。検査の結果うその報告が出ておったならば、銀行局長は裁判所に向かって銀行法第三十四条違反によってこれを告発せなければならない。裁判長が、よく事情がわからなかったからというようなところで宥恕の点があるならば、これに対して執行猶予なり何なりのそういう宥恕判決を下すべきものであって、そういうような条文を背景として調査しておるわけではないというようなことをあなたが言うたところで、それはもう全然意味をなさぬことであるのみならず、そういうことを軽々しく言うということは、少なくとも日本国の銀行局長に与えられておる大いなる使命感、その権威をみずからそこねるの最もはなはだしいものであります。大いにひとつ御反省を願っておきたいと思うのでございます。したがいまして、今後おそらく十月か十一月に再度こういう資料の徴集がなされるでございましょうが、その機会に私の申し上げたおそるべき論旨をよく相手に徹底して、いやしくも国権の最高機関たる国会を偽ることのありませんように、十分ひとつ配慮を加えていただきたいと思うのでございます。そうして事実に基づいてわれわれが政策論議をあやまたず行なうことのできますようにひとつ十分御注意を願いたいと思います。  次に、きょうの大新聞の中にこういう報告が出ておりました。すなわち「苦しい市銀の台所」と題しまして、本年の一月から八月までに都市銀行十三銀行は合計七千四百億円の貸し出しを行なった。しかしこの間における十三銀行が集めたところの実勢預金というものはわずか千八百億円でしかなかった。日銀は貸し出してはくれないので、したがってコールに原資を求めていった。中小企業金融機関、相互銀行、信用金庫等には資金余裕力があるものだから、そういう方面からコールを得てつじつまを合わせておる。こういう報道があるのでございますが、あなたのほうの管理によって相互銀行や中小企業金融公庫がコールに回し得る資金というものについては一定の限界、ワクの制限があると思うのでありますが、これは一体どういうことに相なっておるのでございますが、この点ひとつ現状を明らかにお示し願いたいと思います。
  148. 高橋俊英

    ○高橋説明員 相互銀行、信用金庫などでは大蔵省としての預貸率の指導がございます。指導基準としては、預金に対して貸し出しは八割程度にとどめるのがよろしいということで指導しておりますが、実情としては相互銀行などではこれをある程度オーバーしておるというような状態であります。そういう指導基準というようなものは、銀行についてもやはり同様なものがございますが、それ以外の金は、では、何になるのかといいますと、いわゆる支払い準備でございます。十分な流動性を持つということは金融機関の経営としては本来では望ましいものでございます。ただ、支払い準備金の中身といたしましては、コールあるいはそれに次いでは公社債のようなものを持っておるのがよろしいということになっておるのですが、本来、公社債市場がいまだにできていないというところからいって、公社債に対する魅力がない、処分が容易でないということから、あまり用いないということもある。利回りという点から見ましてもこれらの金融機関の資金コストが実勢としてはかなり高いために、そういった二銭あるいは二銭一厘程度の利回りになり、社債を非常に多く持とうという意欲に乏しいわけであります。私ども行政の指導としては、なるべく手厚くするようにしておりますが、そういう現状でございますので、勢い余裕資金はコールに放出するということになります。でありますから、普通の型とすれば、預金量の何%か、つまり多くとも二〇をこえない範囲がそういう余資ということになるわけでございますが、信用金庫のような場合は、地域的に非常に地域差がある地域を営業区域にしておるわけであります。預金は集まるけれども、融資の対象としては、たとえば住宅地が主たる管轄区でありますので、融資の対象を十分に見出せないという場合もございます。信用金庫は数が五百以上ございますが、その態様は千差万別と申し上げては誇大でございますが、非常に違う。でございますので、その中には非常に多くの部分を従来からコール市場に放出しておるというものもございますし、また、預貸率が九〇を上回っておるというようなところもあるわけでございます。こういう状態でございますので、平均で申しますと、相互銀行は先ほど八〇をこえておると申しましたが、九〇%くらいになっておりますから、したがって、コール市場に放出する額もおのずから知れたものでございます。信用金庫になりますと、預貸率は平残で七六%くらいでございますから、二四%に当たる部分が余裕資金として、そのうちまたある割合がコールに放出されておる。私どもの指導としましては、特にこういう信用金庫のような場合は、どうしても預貸率が上げられないというのはやむを得ないけれども、コールが高いからというて、それに魅力を感じて貸し出しを落として、コールをふやすということをやってはならぬということを指導しております。本来、中小企業に専門的に貸し出しをすることを目的にして設立を許されたのでございますから、コールでかせぐために金を集めるというのではいかぬということで、個別にも指導しております。全体としてもそれぞれの協会に対してコール放出量がどんどん増大するというようなことにならないように、強くその点経過を見ながら指導を加えておるわけでございまして、幾らまで放出していいかという制限はありませんけれども、指導でそういうようなことをやっております。
  149. 春日一幸

    ○春日委員 この際、実数を明らかに把握したいと思いますが、都市銀行十三行が、信用金庫と並びに相互銀行等からコールとして受け入れております資金の量、大体どの程度のものでございましょうか。十三銀行が日銀から借り入れておりまするもの、その他コール、いろいろなものを集約いたしますると、借り入れておりますものが二兆五、六千億に上ると思うのでございます。その中でいわゆる中小企業関係金融機関からコールで受け入れておりまする資金の量はどの程度のものになっておりますのか、当然銀行局では把握されておるものがあろうと思うので、ちょっとお示しをいただきたいと思います。
  150. 高橋俊英

    ○高橋説明員 これは七月の数字でございますが、日本銀行の統計で申しますと、コールの出し手の内訳がございます。全部の総額は一兆二百十七億円、そのうちで相互銀行、信用金庫、これは合計で出ておりますが、その分が二千二百九十六億円でございます。しかしながら、実はこれはコールという形をとっておるわけでございますが、これ以外に金融機関貸し付けというものがございます。長期のコールだと考えていただいてもいいと思います。実質は非常に長いコールを持っていると思います。それがある程度ございます。でありますから、二千二百九十六億というこれだけにとどまらないで、それ以上に若干、貸し付け金の形で都市銀行に回っている金額があるわけでございます。
  151. 春日一幸

    ○春日委員 私は、金融引き締めによりまして中小企業の金融難、これはもういまさら論ずるのも変なくらい、すでに本質的な大きな問題になっておると思うのでございます。したがって、政府関係三機関に対してこの際五百億だ、三百億だなどというて資金量の、財政投融資の増額を切実に全国の中小企業者が望んでおる。ことほどさように中小企業の金融というものはその原資を乏しくいたしておるのでございます。このようなときに相互銀行や信用金庫という中小企業に金融をすることを特殊の使命として設立されておりまする金融機関が、大銀行に対して二千二百九十六億のコールを回しておる。のみならず長期の貸し付け金としておそらく同額程度の金が出されておるのではないか、ざっと五千億程度の金が中小企業の金融機関から大銀行へ流されておるのではないかと私は思うのでございます。大銀行の貸し出しシェアは、三十七年三月末の統計によりますると、正確の数字を記憶いたしておりませんが、これは大体八兆円対二兆円、八割対二割というようなわけで、中小企業の貸し出しは実に二割くらいしかない。大企業に八割。私はそのような状態から考えまして、このようなコールのあり方、あるいは相互銀行、信金の余裕金の操作のあり方というようなものは許されておってよいであろうかどうか、これは重大な政治問題ではないかと思うのでございます。私はその支払い準備金の安全性が、また流動性が確保されなければならぬといたしまするならば、そのような制約の範囲内において、なおその資金を本来的使命、すなわち中小企業に回し得る体制においてこれを運用するやり方というものは絶無ではないかと思うのでございます。たとえば信用金庫連合会だとかあるいはまた全国相互銀行協会とか、こういうような機関の機能を発動いたしまするならば、そういうようなところが適当にそのような資金をプールいたしまして、そうしていまお話のような地域的に資金需要の乏しい金融機関の金を、そのような資金需要の旺盛な中小企業金融機関に回す、必要なときには信用金庫連合会なりあるいは相互銀行協会なりの共同責任によって流動性を確保していくという、いろいろなやり方はあり得ると思うのでございます。そのことをなさずして大銀行は日本銀行から一兆二千億の金を借りる、そうして肝心の中小企業の専門金融機関から中小企業が金がなくて困っておるといって叫び続けておるその金を、大企業のほうにこれを回さしめる、そしてそのことを傍観しておる、このような金融行政のあり方というものは適当ではないと思うのでございまするが、そうせなければならない積極的理由がありますれば、この際ひとつお示しを願いたいと思うのでございます。
  152. 高橋俊英

    ○高橋説明員 相互銀行は九〇%という預貸率で、私どものほうから言えば貸し出しの預貸率としては一応高過ぎるのじゃないかというくらいにも思うわけでございますが、信用金庫の場合ですと、先ほどいろいろ御説明申し上げましたように、預貸率が非常に低いところも出てくる。信用金庫の場合はいまお話しのような地域的な不均衡がたしかございます。そこで信用金庫の連合会がございまして、そこへ信用金庫がみなかなりの預金をする、そして地域的に需給が逼迫しておるというところにはそこから貸し出しを行なう——ということは還元融資ということでございますが、そういうことを現実に行なっております。ですから、御趣旨のようなことはある程度やっておるわけでございますが、全体としての資金量から申しますと、そういう全信連といたしましてもやはりコールに放出する、コールに放出した量はいまの数字の中に含まれております。全信連の放出した分がかなり大きいのでありますから、これが先ほどの二千二百九十六億ですか、この数字の中に入っておるわけでございます。都市銀行が非常に大きな外部負債を取り入れるということ、これは非常に大きな問題でございまして、私どももこれは非常に頭を痛める問題であります。つまり都市銀行としては非常な負債超過になる、それはどういうところからくるのかということは、非常に厳格な意味では私どもまだつかみ得ないのでございますけれども、ごくあらましを申しますれば、都市銀行は一般に大銀行、大会社をたくさんかかえております。いわゆる一部上場株だけでも数百社ある、これらの要する資金量というものは非常に大きく、都市銀行が成長する度合いよりも、これらの企業の所要資金量が増大するほうが高かったというふうに考えられるのでございます。全体の金融機関に預金として吸収されるものとしては都市銀行以外にいろいろな金融機関があって、たとえば農協のごときもかなり四、五千億の金を集めるという、これらの金のうちで、ほんとうに系統内の金融に使われるものはといいますと、まあ半分程度であるということになる。つまりそれらの金融機関においては資金が絶対的に余るような仕組みになっております。もちろんこれは金利の関係がございまして、農林漁業公庫のほうに対してはこれは需要が増すわけでございますが、非常に安い金利を出せば借り手がある、それと比べて普通の金利であれば借りないということになるかもしれませんし、また借り入れ所要額全体がそれらの系統資金全体を消化するに至らないという実情もございます。いずれにいたしましても都市銀行以外の金融機関におきましては、一般には預貸率は一〇〇をこえることはあまりない、地方銀行の一部にあるだけでございまして、大部分は預貸率はそれよりも低いのが当然でございます。そういうことから、その余った金が、もし社債市場というものが非常に発達しておりますれば、大会社が都市銀行から借りるかわりに適当な条件で社債を発行して、それが各金融機関の支払い準備になるという形が普通でありますが、ところが、先ほど申しましたようにそういうものが発達していないために、コールがこういう引き締めの時期におきましては、いまは出し手の側で三銭六、七厘になります。これは決して完全に放置してあるものではなくて、日本銀行である程度指導して押えている相場でございます。そういう非常に限界的な金利がコールにあらわれておるわけでございますが、たまたまそれが非常に有利な投資対象のごときものになってしまいまして、そこへ金を出す。それをとるのはほとんど全部が都市銀行である。都市銀行はむろん一方において中小企業金融も行なっております。御指摘のごとく八兆七千億の貸し出し残高の中で二兆一千七百億という中小企業向け貸し出しを行なっております。でありますから、その回っていった金が全部大企業だとも認定できないわけでございますけれども、しかし、とにかく全体として都市銀行の所要資金が絶対的に不足するような形になっている。この二兆一千七百億の中小企業金融を全部やらないとすれば、それはおそらく都市銀行の預貸率はほとんど全部平均して一〇〇以下におさまるのではないかと考えます。しかし、都市銀行としてもやはり中小企業はやらなければならぬし、いろいろな家庭の事情もあるわけでございます。そういうことでございますから、資金の集まり方とこれを使う面とにどうしてもマッチしないような現象がただいま生じておる、こういうことを申し上げるよりほかないのじゃないかと思います。
  153. 春日一幸

    ○春日委員 中小企業金融について政策的の意図から設けられております金融機関には、政府関係三機関がございます。そのほかには、やはり相互銀行、信用金庫、信用協同組合というようなものがあるでございましょうが、それらの機関が課せられております本来的使命というものを考えまするならば、いまのようなコールに数千億の金を回すというようなことが許されるかどうか、私は論議の余地はないと思うのでございます。かりに商工中金や何かが、これはまあ政府が出資しておるけれども一個の営利事業でございますが、これらの金融機関がコールに金を回したということになったら、私はこれはたいへんな問題であろうと思うのでございます。それと同じように、少なくとも中小企業のためにその使命をになっておりまする相銀や全信連が大銀行に金を回す、そんなばかなことは私は許されておってはならぬと思う。問題はただ単に安全性と流動性の問題でございますけれども、安全性と流動性は大銀行でなければ確保できないという筋合いのものではない。今日全信連の機構も相互銀行協会の機構もはなはだ強まってきておりまするし、その機能も非常に増大をいたしておるのでございますから、したがってこれらの機関はそのような地域的な資金の偏在は十分自主的に調整する能力を持っておると思う。私は当然、営利事業であるとはいいながら、おのずからその金融機関の持つ本来的使命、それは公共的使命、わけて中小企業金融機関は、国の政策的使命をその公共的使命の上に濃縮して持っておるのでございますから、その公共的使命とその政策的使命をこれらの両機関に果たさしめる、これは当然のことでございます。のみならず、当面しております金融の実勢は、中小企業の資金需要というものがないわけではございません。ただいま銀行局長は、大企業の資金需要が都市銀行の成長をオーバーして、そこにアンバランスを来たしておると言っておられますけれども、中小企業というものがいま国に果たしております役割りというものは、私がいまここで申し上げるまでもなく、企業総数においては九九・何%、輸出においては五三・何%、総雇用については六七・何%とか、そういうようなぐあいに、わが国産業経済の中においてそのボリュームは六割ないし六割五分を占めておる。六割ないし六割五分のボリュームを占めておる、その役割りを占めておりまする中小企業に、資金需要がないわけではない。声を大にして叫んでおりますけれども、このようないわゆる権力の結託によりまして、そういう方面へ求められても満たされていないというだけにすぎないのでございまして、それを調整するのが私は国家の使命であると思う。少なくとも銀行局長はそのような実勢を踏んまえて、大企業に資金需要もあるであろうが、中小企業の資金需要もさらに旺盛なものがある。破産、倒産相次いでおるのである。だから、コールをそんな大銀行に回す余裕があるならば、すべからく信金のワクの中で、あるいは相銀の相互間の中において、それはそのような機関をプールとしてもいいから、相互に資金を確保していくべきである、こういう金融行政上の指導があってしかるべきであると思うが、この点について御反省はございませんか。
  154. 高橋俊英

    ○高橋説明員 お説のようなこともあるのですが、それぞれの金融機関が流動性が全くないところまで貸し出しに金を使ってしまうというのは……。
  155. 春日一幸

    ○春日委員 コールに出しておる分だけでもいいのですよ。
  156. 高橋俊英

    ○高橋説明員 しかしその流動性の資金のうちの相当な割合がコールになっておる。先ほど申しましたように、通例ならば第二線準備としては社債のようなものが適当であると思いますけれども、それはいろいろな事情で持てない。ですから、そこで残ったものはといいますと、銀行預金にするよりはコールに回したほうが確かに有利なわけですから、これをいかぬというわけにもいかない。流動性を全然持たないような貸し出し、コールをもし全部貸し出しに回してしまったら預貸率は一〇〇に近いところまでいってしまいまして、それぞれの機関としては非常に不健全なものになると思います。
  157. 春日一幸

    ○春日委員 私は、預貸率を危うくしてその金を貸し出しに回せというのではございません。あなたの立場でさまざま勘案操作すれば、たとえばその当該機関の金を全信連なりあるいは相互銀行協会なりにこれを預託して、そうしてその機関の責任において、それを信用金庫の金ならば信用金庫に回していく、相互銀行の金ならば相互銀行に回していく。そうすれば、その銀行自体の預貸率は現状を確保しながら、なおかつ中小企業専門金融機関としての使命をそれら全体として果たしていくことができるではないか。わが国の中小企業たちが金融問題解決のために政府関係三公庫に向かって三百億だ、五百億だ、年末一千億くれと言っておるのだ。ところが中小企業専門金融機関が数千億の金を大企業に出し、大企業はその中で八対二というような貸し出しシェアなんだけれども、なるほどいまはあなたのお説のように二割というものを貸しておるのだから全部貸しておるのではないという説がありますが、それは大銀行は日本銀行から一兆何千億という金を借りておるし、中小企業から膨大な預金をとっておるのだから、そういうようなことを申し上げておるのではありません。少なくともあなたの指導によって操作できる中小企業向けの資金というもののパイプを確保して中小企業に還流できるように、あなたはそういう土木工事みたいなことをやられたらどうだ。こんなところに流しておるものをパイプをさいて、そうしてこれが中小企業のほうに流れていくようにする。水不足だ。東京近辺に降った雨は東京に流れてくるように、こんなことをやるのは常識じゃございませんか、そういうことを私は言っておるのです。私は研究の余地があると思うが、研究してみられてはどうです。
  158. 高橋俊英

    ○高橋説明員 その春日委員の御意見につきまして、私どもさらに検討はいたしてみたいと思いますが、要するにいまおっしゃることは、金融機関、大銀行を含めて貸し出し金を含めると五千億とおっしゃいましたが、もっと少ないかと思います。
  159. 春日一幸

    ○春日委員 四千二、三百億はある、まあいいです、研究してください。
  160. 高橋俊英

    ○高橋説明員 まあ研究いたしますが、要するに全体としては金はすべて貸し出しに使われておるのです。コールでいったものは都市銀行が現在貸し出しに使っちゃっておる。ですから、そのうちから二千億なら二千億を削り取って、コールに出さないで中小企業向けに貸せと言えば、都市銀行が二千億貸し出しを圧縮する、それは中小企業から圧縮すればもともとになるわけです。それはできないわけであります。ですから、大企業もいまのお話をそのままストレートにとれば、二千億中小企業に貸し出しをふやすことによって起こる結果は、大企業に対する貸し出しをこの際二千億削れということになるわけです。金は全部むだなく使われておるわけです。
  161. 春日一幸

    ○春日委員 私が申し上げているのは、大企業への十三行の原資の中の一兆二千五百億、それからコールの金その他いろいろなものを入れると、ざっとその公的性格のものが二千六百億近くそういうところから導入されておるということでございますね。そうして公的性格のものの貸し出し先が大企業が八割、中小企業が二割という大体の率になっておるのですね。大企業への資金需要を私は否認するものじゃございません。なるほど国際競争に対処して民族産業が、これは大企業がしょって戦ってもらわなければならぬ面があるから、必要なものを貸し出しすることはやぶさかではない。確保する必要は認めます。けれども、二重投資、過剰投資というようなものがございます。たとえば鉄においては操業短縮三割でございますとか、あるいは化学製品については操業短縮二割五分とか、あるいは化学繊維、それからセメント等においても過剰投資、二重投資というようなものが彼ら自体の操業短縮を余儀なからしめておる実態等にかんがみまして、そのような大企業に対する融資というものも、必要な面はなるほど充足をしなければならぬ。しかし一方において中小企業は金がなくて困っておるのだ。破産、倒産が相次いでおるのだ。しかもその中小企業はわが国産業経済の中で六〇%ないし六五%——これは生産、流通、雇用、貿易各面にわたってそれだけの大きな役割を果たしておるのだ。だとすれば資金の配分は銀行局においていかなる配慮でなさるべきかということを論じておるのでございます。そうすると、その中小企業専門金融機関から数千億の金を大企業に回すということでなくして、そういうような資金が遍在することによってコールに回すような金の余裕を生ずるならば、そのコールは全信連なり相互銀行協会なりでプールして、そうしてそれが大銀行に匹敵するような安全性と流動性を確保しながら、それを中小企業の金融機関に流していけ、こういうことを言っておる。なるほど営利的な立場から言えば、それはコールが高い。コールレートが高ければそれだけ営業収益は高まるでしょうけれども、およそ金融機関は営利事業であるとはいいながら、それを唯一無二の目的として存在しているものではないのです。やはりこれはさまざまな法律の制約がありますように、産業に奉仕するという公共的性格がある。わけて中小企業には特別に金融しなければならぬからというので、法律が特別に制定されている政策的理由と使命があるわけです。だからそういう理由や使命にかんがみてそのような行政指導を行なえ、こんなはっきりした議論に対して、いまあなたの答弁のように、二千億円しめたら中小企業の貸し出しを二千億円減らせばとんとんになるじゃないかというようなそんな意地の悪いというか、ばかな落語みたいな答弁をされては、これは国会の論議になりませんぞ。その問題は当然高橋銀行局長におかれても鍛冶副大臣におかれましても、十分心証を得られた問題と考えますので、今後の行政の中で十分ひとつ御指導を願って、そうして当面しております金融のアンバランス、それから中小企業金融梗塞の現状を何らかの形で打開するための善処を求めます。
  162. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。堀昌雄君。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 春日さんの質問は私よくわかる。ただちょっと整理しますとこういう問題があるのではないかと思うのです。相互銀行は別ですが、信用金庫には預貸率の非常に低い信用金庫も実はあると思うのです。そういうところは預貸率が低いけれども、地域的な条件その他いろいろな問題で貸せない。そういう余裕金も本来ならば流動性を超えてコールに出ている問題が実はあるのではないか。だからいまの信用金庫なり相互銀行総体としてみて、中には預貸率が一ぱいのものもあるだろうし、あるいはかなり余裕のある預貸率のものが全体としてはかなりあるかもしれない。そうすると、流動性を確保する点での必要な第一線準備を見た残りを信金連なり相互銀行協会にプールして、そうしてそこから貸し出しをするということになれば、いまの春日さんの言われることは具体的になるのではないか。ただどうもコールを全部持っていけという議論になるものだから少し複雑になるので、そういう状態がはたして信用金庫全体の中に、あるいは相互銀行全体の中で——相互銀行のほうはどうかわかりませんが、預貸率から見て、第一線準備のコールに出しておる適正額以上のものが出ておる額というものが、信用金庫全体として、相互銀行全体としてどのくらいあるか、そういうものは把握されておるのでしょうね。
  164. 高橋俊英

    ○高橋説明員 信用金庫については、実情おっしゃるとおりでの非常に低い預貸率のところもある。だからひどいところは過剰のある流動性を持っているわけですね。それはいまおっしゃるように全信連に預けておるわけですから、全信連としてどう運用するかということでありますが、貸し出しが、まだ足りないというか、もっと貸し出すのに余力があるというところには全信連から貸し出しを行なっておるわけです。しかしもともと預貸率がどうにも上がらない、上げることができないところには、これは貸しようがない。貸す相手がないから預けてくるというところがある。これは東京都内にもそういったところがあります。地方にもそういうのが幾つかあるようです。ですから還元融資といいまして、全信連が一たん預かった金を、なるべくなら貸し出し需要のあるところに流すという指導はやっておるわけです。しかし非常に預貸率が高くなってしまってオーバーロンになるというようなものについては指導上それは好ましくないという——先ほど申しましたように預貸率の全体の平均が七六でありますから、これがたとえば八〇%にするとすれば四%くらいの差がございます。ですから、いまコールに出しておる、特に全信連などもかなりコールに出しておるのですが、こういう出しておる金にもう少し——全体の平均が指導基準である八〇としますと、八〇より高いところが当然出てくるのですが、せめて平均が八〇になる程度には、どうせ貸し出し先は中小企業に限られますから、中小企業に対する貸し出しを上げるように指導する。ほんとうに個々の機関が八〇になることが望ましいのですが、しかしそうも言っておられませんから、七六というものは若干引き上げて中小金融に向けるようにせよというような指導はやってもいいのじゃないかと思います。しかしこの点は個別の事業五百何十ございますから、どういうことから預貸率七六になっておるのか分類してみませんと確答いたしかねますけれども、確かにコールに出しておるものが多過ぎるのではないかという感じはいたします。コールの放出量そのものについてはこれを無意味にふやすことのないように、全信連等を通じて指導してまいる。放出する割合が預金の伸びの中で高くなってくるということはさせないようにしておりますから、放出率はむしろ低下しておるように私は記憶しておりますが、今後とも、コールの魅力に引かれてそちらのほうにあまり多く出し過ぎないような指導は強く行なってまいるということであります。
  165. 春日一幸

    ○春日委員 堀君が通訳してくれたようなこともあるのですが、ただ私は問題は整理して申し上げますと、たとえば信金が一年もの定期で預けますれば五分五厘ですね。コールは三分七厘でしょう。これを一年の率で換算しますと一割三分四厘になります。集めておいて資金需要がないといっても、現在の資金需要の実勢というものはそんなものじゃない。少なくとも借り手市場といわれておりまするこの金融市場において、金があって借り手がないというのはどういうことかということです。五分五厘の定期に預かっておいてコールに回せば三倍になるのですから、そんなことは彼らのどん欲主義から発する運営のあり方であって、そんなものは銀行局から仮借なく鉄槌を下すべきものである。そんなものは三分率をふやせという問題ではない、そんなものはやめてしまえと言ってもしかるべきだと思う。あのくらいわいわい言っておるときに、資金をわいわい言っておるときに、資金の余裕があって借り手がないなんていう金融機関はろくなものではない。そうしてどんどんコールに回って、年間一割三分四厘の金利をかせいでいる。しかも長期で大銀行に融資しているなんて許されることではない。私は猛烈な反省を求めます。なおその預金について全信連がそれをプールして預かっておるならば、全信連はそういうような指導を行ないながら、なおかつ資金需要のあるところに向かってその金を流すべきである。それは、十三大銀行に流すような金があったら信用金庫の中でも、あるいはまた相互銀行の中でも金がほしい銀行があるでしょうから、そういうところへ流して貸し出し合い、彼らの全体責任において中小企業に対する貸し出し率が少しでも改善されるようにみずからの陣営を守るべきである、私はこのことを申し上げておるのでありまするが、その点はひとつ十分御善処を願いたいと思う。  次は、中小企業庁にお出かけ願っておると思うのでありますが、いま申し上げました理論もひとつ十分御留意を願いまして、政策金融のあり方について、ひとつ高橋さんと十分話を練って万全を期してもらいたいと思うのでありますが、ここに私が提案をいたしたい点が三つございます。その一つは、関連倒産というものが非常に多いのでございます。このことを東京商工興信所の統計調査によりますると、実にわが国手形交換所が始まって以来の大きな手形が不渡りになっている、倒産の数も非常に大きい、こういうことになっております。まことに事態憂慮すべきものと申さなければなりません。何らかの施策が必要でございましょう。私はこれについてこういうような対策を講ぜなければならぬのではないかと思うのでございまするが、それは自己の責任によらずして、取引先がつぶれたことによって連鎖反応を受けるような中小企業ですね、こういうものに対しては、私はやはり国の政策によって何らかの救済措置を講じていくべきではないか、これを提唱するのでございます。すなわち親企業がつぶれる、そういうことでその下請企業がつぶれて、あるいは一般商取引においても取引先がつぶれていく。本人は善良な努力をしておるにもかかわらず、不可避的にやはりその連鎖反応と申しまするか、そういうふうな関連的な打撃を受けて、みずから倒産せざるを得ない、こういうようなものに対する国の施策というものは何か考慮されておるのであるか。何もされていないとするならば、この際何らかの施策を尽くすべきではないかと思うのでございまするが、これに対して中小企業庁はどのように御検討を進められておりますか、お伺いをいたしたいと思います。
  166. 影山衛司

    ○影山説明員 お説のように、最近になりまして連鎖倒産の件数がふえておることは事実でございます。これに対しまして、問題は個々具体的な問題でもございますので、各出先の通産局長を中心にいたしまして金融懇談会的なものを設けまして、各政府関係中小企業金融機関あるいは市中銀行、それから大蔵省の出先でありますところの財務局等が一緒になりまして、個々具体的な救済方法を講じております。過去におきまして東京発動機が倒産いたしまして、関連倒産のうき目にあったのが二百社近くあったわけでございますが、東京通産局におきまして、これを政府関係金融機関におのおの分担をしてもらいまして、倒産防止のための金融措置を行なうというふうな、具体的な、きめのこまかい措置をやったわけでございますけれども、そういうふうな方針でわれわれといたしましては望んでおるわけでございます。
  167. 春日一幸

    ○春日委員 事実上はそのような行政指導によりまして部分的な救済がなされておるようでございますが、これは東発事件のように、ああいう二百社にまたがりますような大きな事件になりますと、これはゆゆしい社会問題だということで、政策的にも何らかの対策ということになるでございましょうが、全国的にはなかなか二百社にまたがるような、社会性を帯びない関連倒産というものが非常に多いのでございます。したがいまして、そういうようなものにも機会均等、すなわち本人の責任によらずして破産、倒産を余儀なくせしめられるというような企業体に対しましては、やはり国は何らかの特別措置を講じていかなければならぬ。先般東発の下請に対してとられましたように、政策的な救済融資を行なうというような、一個の機関として、政策としてそういうものをやはり制度化していく必要がありはしないかと思うのでございます。  時間が迫られておりまして、私の時間がないようでございますから、これは政策要綱として、後ほど、関連倒産事業者に対する救済特別措置法というようなものについて、一個の構想を固めておりますので、これは銀行局長並びに中小企業庁にも提示いたしたいと思いますから、十分その実態に即して対策を樹立願いたいと思うのでございます。  次は、いま中小企業者が金融難のために、高利貸しから相当の金を借り込んで、このことが中小企業の経営をはなはだ困難におとしいれておるのでございます。これはわが国の利息制限法によりますと、元本十万円以上の金利は二割をこえてはならない、元本十万円以上百万円以下のものは一割八分をこえてはならない、元本百万円以上のものの金利は一割五分をこえてはならないと、利息制限がなされておるわけでございますけれども、この法律は合意によって利息を払った分については妨げないということになっておりますから、月三分、ひどいのになりますと月五分というような高利を借り込みまして、そしてその利に利が重なって、非常な窮乏におちいっている、破産、倒産寸前のものが相当な数になっておると思うのでございます。私は、このような弱小企業等が、当面を何とか切り抜けようという応急の措置として借り入れた高金利から脅かされております状態を、何らかの国の施策によって救済する道はあるまいか、さまざま検討いたしました結果、これはひとつ商工中金か何か、そういう国の政策金融機関の中に特別原資を設けて、そういうものの一定の限度額を定めて、たとえば三百万円以下のものであるとかなんとかいうものを肩がわりして、そして一応高金利の負担から救済する、そういうような救済を受けますれば、一応当該企業はその高金利の発生を押えていくことができるでございましょうし、また返済条件も、高利貸しから借りておるのでありますから、それぞれの返済条件というものも相当確定されておると思うのでございますから、商工中金がそういうような特別資金ワクをつくりましても、国は返済を受けることによって大きな国損にはならないと思う。ただ期間が長くなるというだけのことであって、政策効果は大きくあがりますし、当面は高利に悩む中小企業の救済は相当大幅になし得ると思うのでございますが、こういう問題について中小企業庁は何か御検討になっておるところでございますか。
  168. 影山衛司

    ○影山説明員 特別にただいまのところ検討はいたしておりませんけれども、商工中金の融資方針といたしまして、そういう高利から借りておるということがはっきりいたしますものにつきましては、肩がわり融資を行なわせるということをすでにやっておるわけでございます。現在そういうふうなことをやっておるということで、新しい制度としてはまだ考えておりません。
  169. 春日一幸

    ○春日委員 高利を借りておるものについては肩がわり融資をさせておるとおっしゃいますけれども、私はむしろその逆ではないかと思うのでございます。高利貸しみたいなものから金を借りておるのではもうだめだ、だからそういうものは金融ベースに乗らないというようなことで、むしろオミットされておるというのが現状ではないかと思うのでございます。私が提唱いたしておりまするのは財政投融資の中で、特に商工中金の中で高利の負債を整理することのための特別資金ワクを設定いたしまして、そういうものを一回だけ救済をする。そうして返済条件は高利貸しから借りております条件を踏襲してまいりますれば、国損にはならないと思うのでございます。そうしてこの利息制限法はその後の新しい金利の発生というものはなくなるわけでございまするから、かたがたもってこういう制度を設けることによって、そのような不用意な経営からおちいっておりまする中小企業、零細企業の窮乏が救済できると考えますので、これまた一個の要綱をまとめておりまするから、これは銀行局長、中小企業庁に提示したいと思いますので、十分ひとつ御検討の上善処願いたいと思います。  最後に一点でございますが、不渡り手形の整理について、これまたもっと突き進んだ建設的な対策を講ずべきではないか。現在相手方が破産をしましたり何かして不渡り手形が発生いたしますると、大体金融機関は根抵当を設定いたしておりまするから、要するに担保をとっておる強味から、時間をかけて処理をする、あるいは弁護士をかけてその権利を主張していくということで、たいした損害にはならない。ところが中小企業者は担保をとられてしまっておるんだし、担保はない。それかといって弁護士をかけて裁判やるといったって、たいへんな費用だということで、多くの者が泣き寝入りになったり、あるいは一割か二割のような小さな率でこれを切り捨ててしまったり何かして、大きな損害を受けておるというのが現状でございます。このようなときに不渡り手形を、国は不渡り手形整理協会というような保証協会みたいな一個の機関を設けまして、その機関に不渡り手形を持っていく。そうすると協会は、その不渡り手形というものは正常なる商取引によって発行された手形であるかどうか、これを鑑別いたしまして、正常の商取引に基づいた手形であって、不当にこれがつぶれてしまって回収困難だというような場合は、協会がそれを受け入れて、そうして取り立ての整理の代行を行なっていく。協会がそういうものを受け取ったときには、これを全額損金算入を認めていくいまの税法上の取り扱いは、これは非常に扱いが区々になっておりまして、あるものは半額、あるいは認めないとか、相手が破産宣告を受けるのでなければ最終処理をしないとか、税法上それぞれこれは区々になっております。したがって、引き受けた協会自体がこれを鑑定して、これが正常な商取引による手形であり、不渡りになったんだ、こういうようなときには全額損金算入をする。回収ができたときにはこれを益金にして取り戻していく。こういうことをすれば合理的に処理ができると思うのでございます。協会は銀行や大きな機関と同じような対等の立場で、その相手方に向かって債権を主張いたしていく。配分を受けた分をその不渡り手形の保有者にこれを与えていく。こういうようなやり方をいたしまするならば、現在中小企業者が無力にして泣き寝入りになっておりまする多くの債権が、当然の権利を主張することによって生かされてくると思うのでありまするが、こういうような問題について中小企業庁何か基礎的な御意見等ございますか。
  170. 影山衛司

    ○影山説明員 特に不渡り手形の整理のための機構を考えるというようなことは、現在のところしておりません。
  171. 春日一幸

    ○春日委員 研究されておりますか。
  172. 影山衛司

    ○影山説明員 研究いたしておりません。個々の企業の信用状態等によりまして、個々具体的に救済できるものは救済していくということをいたしております。
  173. 春日一幸

    ○春日委員 それでは中小企業庁は、いま中小企業者の間において問題となっております多くの問題について、鈍感なのか不熱心なのか、ほとんど研究に着手されていないということはまことに遺憾でございまするが、しかし幸いにこういうような問題につきましては、そういうような中小企業者の声にこたえて、一個の構想がまとめられておる面がございます。一つは関連倒産事業者に対する救済特別措置法の制定、一つは不渡り手形整理協会法案というようなものの制定、一つは中小企業高利負債整理臨時措置法、そういうような三本立ての法律がそれぞれ制定を見まするならば、中小企業がはからずも困難におちいっておるというような経済災害に対しまして、私は相当の救済と貢献の実効があがるものと考えますから、それぞれ要綱の提出を行ないますから、十分御検討の上、願わくはひとつ早急にこういう政策についてもこの際御検討あらんことを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  174. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 卜部政巳君。
  175. 卜部政巳

    ○卜部委員 時間の関係もありますので、一点だけをとらえてひとつ質問なり問題の提起を行ないたいと思います。  まず第一点でありますが、十四日の午後羽田空港におきます税関職員の会見やめろの事件を、あなたは大体どのように把握されておるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  176. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 卜部先生も会見やめろ、こうおっしゃいましたが、税関職員の側から申しますと、やめろというふうな失礼なことばづかいは用いていないと思うわけでございます。事実として、新聞報道と違ったりいたします点等があってぐあい悪い点がございますが、十四日午後五時ごろ、ワハルド氏というメキシコの高官の方がおいでになりましたときでございます。ロビーで会見が行なわれました。その会見をやめていただきたいという申し入れもいたしました。それが非常に問題になったということを報告によって承知いたしておるわけでございます。いろいろ税関側の言い分は違うところがあるわけでございますが、私ども基本的にはこういうふうに考えておる次第でございます。こまかいところが違っておりましても、記者の方が指摘されておられますことは、基本的には羽田でやっております仕事に対して批判なり不満なり要望なりをお持ちになっておる、それがこの機会に出てきておるということでございます。その批判なり御要望なりにつきましては、税関側といたしましても、今後十分に反省を加えなければならぬというふうに考えておる次第でございます。皆さん方の御要望なり不満なりが、このような機会に警告として発せられたというふうに思います。税関側といたしましても、今後十分慎重に仕事をいたしますように注意しろということを申し上げてあるわけであります。私どもは、そのような基本的なお考えに対しましては、これは尊重いたしまして、今後の仕事の遂行上十分注意いたさねばならぬというふうに考えておる次第でございます。
  177. 卜部政巳

    ○卜部委員 関税局長、ちょっと私は異なることをお伺いいたしますが、少なくとも新聞記者がたまたま不満を持っておったことが会見をやめろ、こういう記事につながってきたのだといういまの局長の御発言のように見えますけれども、事実そういうようなことがなかった、こういうことなんですね。そういうような会見をやめろというようなことはなかった、こういうふうにあなたは把握しておられるわけですか。この点をはっきりしてください。
  178. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 やめていただきたいという申し入れをしました事実はございます。しかしことばづかいはていねいに申し上げたつもりであるということを報告いたしておりますので、それを申し上げた次第でございます。
  179. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、新聞記者の連中が日ごろのうっぷんをはらすためにこういう記事を書いた、こういうことになりますか。
  180. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 私は、日ごろのうっぷんをはらすためにお書きになったと申し上げているのではございません。つまり羽田の税関のあり方につきまして、あそこにおいでになる新聞記者の方に、たとえばこうすればいいのではないかという御批判があるというふうに感じられたわけでございまして、それがこの機会に有効に直るようにそうお話しになったということで、不満を爆発させたというふうには毛頭考えていないわけでございます。
  181. 卜部政巳

    ○卜部委員 少なくとも大新聞の記事がすべてをあげてここにこう記載をし、同時に、この中でやっぱり新聞記者としてもそういうことを知らなかった場合にいけないだろうということから、小さな声でその点についての注意をしたということを書いておるわけです。にもかかわらず、荒々しく問題を大きく取り上げておまえたちの知ったところじゃないというようなことを言っているというようなことも書いてあります。と同時に、例のメキシコからのオリンピックの視察員自体も驚いて立ち上がったという、こういう記事はうそですか。局長はこれはうそだというわけですね。これはちょっとオーバーな書き方だ、こういうことですか。その点をはっきりしてください。
  182. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 税関側の報告によりますと、若干食い違ったところがあるということを申し上げた次第であります。
  183. 卜部政巳

    ○卜部委員 どういうふうに食い違ったのですか。
  184. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 ことばの使い方なり、それから協定ができておるというふうにお話しになっておりますけれども、協定はつくられるように準備はされておりましたが、これははなはだ私どものほうの責任でございますけれども、そのようにやるように指示はいたしておるまでにはなっておりませんでした。そこで若干の食い違いがあったわけであります。私は若干その食い違いがあるということで、記事が全面的にうそであったとか、でっち上げだったとかいうことを申し上げているわけでは絶対にございません。
  185. 卜部政巳

    ○卜部委員 ちょっとあとのほうのことばがわからなかったのですが、そういう協定がなされていなかったのですか。なされていなかったというふうにいまお答えのようですが……。
  186. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 なさるべく準備はされておりましたけれども、きまっていなかったということでございます。つまりきのうは、私どものほうに報告せられておりますところでは、十七日からは実行されることになっておりますが、しかしまだそのことがそれまでにはきまっておりませんでしたので、下のほうとの話し合いがそういうふうになっておりますから、会見を妨げないようにということをはっきり申していなかったということは事実あったのでございます。非常に小さい相違でございますから、このことを強調するつもりはございませんが、私どもも羽田のお客さんに対するいろいろな扱い方につきましては、御批判のとおりに、いろいろ今後も注意をしなければならぬと考えておるところでございます。
  187. 卜部政巳

    ○卜部委員 それではいよいよおかしくなってくるのですね。この記事を見てくださいよ。岩田税関支署長の話によりますと、その事情をよく知らなかった、これは徹底させなかった上司の責任であるなどと言っていて、局長はそんなことは十七日からなんだという。これはどういうことなのですか。この点が全然逆じゃないですか。それは一体どういうことですか。
  188. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 こういうことでございます。はなはだこまかいことで恐縮でございますが……。
  189. 卜部政巳

    ○卜部委員 こまかくはないですよ。
  190. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 フインガーのロビーと申しますところは、飛行機からおおりになりましてすぐの建物の長い廊下の取っつきでございますが、ここは一般に税関が飛行機と陸上とを交通します場合に、指定交通場所という制限を設けておりまして、そこだけをお通りください、こう申し上げているわけでございます。したがいまして、人が通ることが原則になっているものでございますから、交通の違反になると申しますと語弊があるかもしれませんけれども、そういうふうな状況になることは元来好ましくないと考えているところでございますが、しかし交通のじゃまにも実質上ならないのに、一切そこで記者会見をしてはなりませんというようなことを申し上げるまでのこともないと考えているわけでありまして、若干私どもの立場から申し上げますならば、監督上に不徹底のところがあったかと思うわけでございますが、しかしオリンピックに際しまして空港ビルのロビーではあまり混雑するだろうから、フィンガーのほうのロビーでどうだろうかというお話になったわけでございます。したがって、オリンピックの場合には、オリンピック選手とか役員とかがおいでになる場合には、臨時的にそこを利用されるということになったわけでございます。もともとあまりたくさんの人が狭いところに集まりましてはぐあいが悪いものですから、人数はあまり多くならないようにという話し合いが進められておったところでございます。したがいまして、はなはだ事務的に申しますと、話し合いは進められている最中であって、まだきまっていなかった、したがって、また下に通ずることがやられていなかったということでございますが、しかしおそらくオリンピックになったらできることであれば、いまでもできないことはないじゃないかという考え方があるわけでございます。オリンピックでやれそうなことであれば、記者会見をとめないようにしたほうがいいということを通じておかなかったのがわれわれとして反省すべき点ではないかと考えている次第でございます。
  191. 卜部政巳

    ○卜部委員 局長さん、ここにはちゃんと書いてあるのです。これはすでにそういうように臨時に取りきめられたということがはっきりしているわけです。六日においては現実にメキシコ・チームとの会見が行なわれているわけです。そういうものを、あなたはそういう協定が全然なされていなかったと言い、そうしてそのことばの端々の中で若干不徹底な面がありましたなどということでは、率直に言って私はわからなくなります。そういう六日に会見の行なわれているという状態なんかについてはどういうふうに考えられますか。実際問題として、そういう取りきめが行なわれたからやられたのでしょう。そういう六日の時点の問題を局長はどういうふうにお考えになりますか。
  192. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 取りきめが決定されたから行なわれたのだろうということにつきましては、これは先ほどからるる申し上げておりますとおりに、取りきめが行なわるべく話し合いが進められておったということでございます。
  193. 卜部政巳

    ○卜部委員 それでは六日にメキシコの第一陣とやったのはどういうことですか。
  194. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 六日のことは、私はよく承知いたしておりませんけれども、実際にやられたものと考えている次第でございます。しかしそれは協定ができていないことだけは明らかでございます。はなはだむずかしい条件がついておりましたので、そう簡単にできる筋合いのものでもなかったわけでございます。
  195. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると岩田税関支署長というのは、そういうことは全然知らなかったということですか。ここの談話の中に出ておりますように、まことに申しわけない、黒川君は本省から来たばかりで、その間の事情を知っていなかったなどというようなことでしょう。申しわけないということが出る以上は、そういうような事情というものが十分のみ込まれて自分たちは羽田税関におったということでしょう。そういうことになりますと、局長の答弁と全然違うじゃないですか。その点はどうですか。
  196. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 記者の方がおいでになりまして、はなはだぐあいが悪いのですが、岩田支署長が申しましたとおりに記事になっているということではないと御本人は申しております。そのことをまず申し上げておきます。しかしこのような事件を起こしましたことははなはだ申しわけないということを岩田君も申しておりますし、また自身もそう思っていると私に申しております。こまかいいろいろな事務上の手続の点で、それは書き方なり理解のしかたなりに食い違いはございますけれども、私どもは税関が改むべき点があるという御指摘をいただいたものとして、それはすなおに受け取って直さなければならぬと思っていることは、私も岩田支署長も同じであると考えておる次第でございます。
  197. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、ちょっとやっぱりことばにひっかかりを持つわけです。私は三つの新聞を持っていますが、大体事情を知らなかったことは申しわけないというこの点については一致した書き方ですね。いま局長は、この新聞記者の書いておる内容というものは、若干その点においては認識の相違があるなどという言い方をされておりますけれども、そのことを言ったことは事実ですね。何といってもこのことは事実でしょう。そうすると、事情を知らなかった本省から来た黒川君がということになりますと、これは当然にそういう事情というものは羽田税関では十分知っておる、こういうふうに私は理解するのが正しいと思うのですね。その点は局長が言っておるように、十七日から協定が結ばれる、それか正しいのであって、徹底をしていなかったというのは、その面からの徹底がなされなかったという、こういう面と若干の食い違いがあるのですよ。その点はどうですか。
  198. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 食い違いがありますことは御指摘のとおりでございます。私どもこまかい違いがあると申しますのは、そこらのところはなはだデリケートでございますが、つまりそういう申し合わせをしようというふうに運んでおる、それが記者の方々には申し合わせができておるというふうに伝わるという可能性は確かにあろうかと思います。ただそれができていないからといって、十七日からでないとだめですということを申し上げるのは、それは適当ではないんじゃないか、そのような申し合わせを取りきめるべく進行中であるならば、どうせそうなるということが考えられておりますならば、事前においても外国からわざわざオリンピックにおいでになった方々の心証を害すというようなことをやらなくてもよかったのではないかということでございます。
  199. 卜部政巳

    ○卜部委員 これは東京空港記者会と同支署、さらに羽田入国管理事務所、東京空港検疫所との間に臨時に取りきめられたもので、去る六日の第一陣のメキシコからのチームとの会見が行なわれた、こういうふうに措置としてきめられておるのでしょう。その点はどうなんですか。
  200. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 大体そういう趣旨に従いまして取りきめが行なわれつつあったということは事実でございます。
  201. 卜部政巳

    ○卜部委員 私はしつこいようですが、現実にそういうかっこうで来日第一陣のメキシコ・チームとの会見をやっておるわけでしょう。そういうふうな形の中で、新聞記者の方々がこういうような取りきめになっておるからなどと言ったときに、おまえたちの知ったことじゃないのだ、こういうまるで憲兵みたいなかっこうでどなったということがやはりここで問題になっているわけでしょう。その点はどうなんです。
  202. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 私どもが先生に一応取りきめが進行中でございましたと申し上げております根拠は、こういうことでございます。指定交通場所というのは人が通るところを指定しておるところで、そこで記者会見が行なわれるという問題でございますものですから、お入りになる方の人数を非常に制限していただくという問題があったのでございます。いま先生も御承知のとおり腕章をつけて羽田の飛行場構内に入れますようになっておられる方が、たしか私の記憶では二百九十名くらいおいでになるわけでございます。全部お集まりになったのでは非常に通りにくくなるという問題がございますので、たしか四十名くらいに制限してくれないかという話をしておるところでございました。つまり人数が少なければお会いしていただいてけっこうです、こういう話し合いになっていたわけでございます。ところが人数を減らしますという問題がはなはだ難航いたしておりましたので、したがって私ども話し合いがついていないと了解しておるものでございます。
  203. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、会見はやめろ、そしてまたその中からおまえたちの知ったことじゃないというようなそういう罵声が浮かび出てきた、こういうことですか、結果はそうでしょう。だから結果は、黒川さんが言っておるように、そういうことではいけない、だから私は上司の命令でやったのだというようなあくまでも胸を張った言い方をしておりますけれども、そういうような局長がまだ協定がなされていないからその点については記者がそこに集中的にたくさんの人間と会見をやるということはけしからぬことだ、行ってどなってこい、こういうふうなことをやったわけですか、あなたはそういう指示を出したわけですか、どうです。
  204. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 事実はこういうことでございます。当日の責任者に同氏が聞いたようでございますが、もともと指定交通場所でございますから会見は好ましくないのだからということを言ったようでございます。私なり羽田の税関支署長岩田君なりの反省は、そのうちに人数がそう多くなければそこで会見するという便法を講ずることになっていたのでございますから、近くそうなるのだから交通に支障がなければいいよ、こういう指示を出すように徹底しておくべきであったという反省をいたしておるわけでございます。
  205. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうするとそういう問題についての徹底というものは局長が言われるように全部に徹底をしていなかったわけですね。結果的には徹底をしてなかった、こういうことになるわけですね、そういうことになりますと、その黒川という人はいつごろ本省から来られたわけですか。
  206. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 これは東京税関の本館から四月に羽田支署に転出したものでございます。
  207. 卜部政巳

    ○卜部委員 四月に来てからもう指折り数えて何ヵ月になりますか。そういうようなことになりますと、いま基本的に局長がおっしゃるようにこれは一黒川副監視官の一つの発言でなくて、あなたがおっしゃっておるようにそういうまだ協定がなされていないことによって高圧的な態度に出てくる、そういうような形というものがすなわちあなた方の態度である、こういうふうに理解してもよろしゅうございますか。
  208. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 一般に羽田における監視の態度については私ども多く反省しなければならぬものと存じます。ただ先生にお願いしておきますけれども、御本人は知りようがなかったわけでございます。つまりわれわれの段階なりここにおります監視課長の段階で記者の皆さま方とないしは組織委員会の方々との話し合いというのを進めておる段階でございまして、変わったからそうしなさいと指令を出すのにはまだ早過ぎた時期でございますので、現場の職員が知らなかったということにつきまして責任を追及されるのはかわいそうだと思うわけでございます。ただ私どもがもう少し気をきかして指示をすべきであったと考えておるところでございます。しかしおよそ規則上まだ認められていないのだからやってはいけないのですということを申し上げるときの申し上げ方の問題だろうと思うわけでございますけれども、私どもの解釈では、もっと穏やかに申し上げたように報告されておりますが、いずれにしろ日ごろ羽田の仕事のやり方というものにつきまして、いろいろな強い批判を方々の人が持っておられますことは、私どもよく承知しておるところでございます。その一つの現われとして出てきたものでございまして、具体的にどうであったというより、われわれが一般にもっと日本の玄関口におきまして人に接しますときに注意しなければならぬ点があるということが強調されておると考えまして、これは私どもも十分に御忠告を考えておりますし、そのように受け入れて考えていかなければならぬと思っておるところでございます。
  209. 卜部政巳

    ○卜部委員 私は何もこの黒川という一監視官を責めようなどとは思っておりません。だがしかしながら考えてみれば、これは意思の不徹底だとか、そういう事務的な手続の問題というものではなくて、私は心がけの問題だと思うのです。またエチケットの問題だと思うのです。そういうときにだれがやめろだとか——あなたはそういうように穏やかに言ったと言いますけれども、穏やかに言うんだったら、問題はこんなに大きくならないはずです。穏やかでないところにこういう問題が出てくる。そしてまた、注意したところの新聞記者に対しても、お前たちの知ったところじゃない、お前たちにそういう資格があるかなどという、こういう一つの発言に問題があると思うし、それが決して一個人のものではなくて、羽田といいますと、これは率直に言って世界にも悪名高い羽田ですよ。これは局長みたいな人格円満な人がおるとなかなか羽田税関もいいように見えますけれども、そうじゃない。世界でも悪名高い、憲兵が行なっておるような態度というような風評さえ立っております。そのことを局長が裏づけるように、私たちもかなりのそういう批判のあることを十分承知しております。といまおっしゃいましたね。そういうことがこれに端的にあらわれていると思うのです。だから私は一個人の問題を責めるのではなくて、やはりそうした一つの姿勢ですよ。私はこれからオリンピックを迎えるということで、全国民もあげてこれに関心を寄せ、そして日本国民のそうした面におけるところのオリンピックを迎える姿勢というものをあらゆる面から自覚しようとしているときに、その日本の玄関であるところの羽田において、やめろなどと言うことは、私は常軌を逸した言動だと思うのです。あなたはいまないとおっしゃった。ないとおっしゃったけれども、こういうかっこうで取り上げられるということは、率直に言って、一と一を足して二で割ったとしても、これは私はかなり問題が出てくるところだと思うわけです。  そこで問題になるのは、やはりメキシコの視察団の人なんでありますが、この人たちは立ち上がって帰っていったということが書いてありますけれども、その点に対する配慮はどういうふうにされるか、ちょっとお伺いしたいと思う。
  210. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 税関の業務遂行に関しましての卜部先生の御指摘、御注意、私どもよく反省いたしまして、現場にまたよく伝えるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  211. 卜部政巳

    ○卜部委員 私は新聞記事をそう逆な裏のほうから見たくないのですが、このメキシコの代表がびっくりして立ち上がって帰っていった、こう書いてありますね。しかも片一方の新聞には、もう肩をすくめて立ち上がって帰っていった、こういうふうに書いてありますね。そういうような、メキシコの次のオリンピックに対する観光視察というふうなことも含めて来ました、ということを言っておるわけですから、そういう人がやはり心証を害しておるので、その点に対する措置として、どういうことを税関はやろうとするのかということを、私はいま聞いておるわけです。
  212. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 いままでのところ特別の措置考えておりませんですが、先生のお話もございますので、よく検討してみたいと考えます。
  213. 卜部政巳

    ○卜部委員 やはり日本人としての誇りを持つということは、これは確かに必要なことだと思う。しかしそれには大きな度量がなければならないと私は思うのです。ソビエトなんかに行ってごらんなさいよ。あなた何か持っていますか、ない、こうやりますね。武器を持っていますか、武器を持っているようなことを言ってからかって、三脚あたりを見せますと、ああそれはけっこうですねというくらいのゆとりがありますよ。しかし日本の税関なら、国柄がそうであるから、アヘンなんか持ってくる連中もあるでしょう。その辺に対する監視の目をきびしくしなければならぬということはわかるにしても、やはり私は日本の税関としての度量と、その中にある日本人としての優秀さといったらおかしいのですが、ともかくそこに誇りを見せるような一つの姿というものが出てこなくちゃならぬと思うのです。そういう面におきまして、何もこのメキシコのそういう連中が、こういうことがあって、日本の税関があやまりに来たなどと言うことはこけんにかかわるなんということは考えなくて、率直に、悪かったら悪かったくらいのことは私は陳謝してもいいと思うのです。その点はどうです。
  214. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 陳謝すべきものかどうか、若干問題があるようにも思いますので、先生のお話を否定するわけじゃございませんが、お話を心にとめまして、いろいろ考えさせていただきたいと思います。
  215. 卜部政巳

    ○卜部委員 何か局長の話を聞いていますと、どうも新聞記事というものが信用されないような言い方であるのですね。何か全部否定をしているような形が出てきているような感じがしてしょうがありません。まず一つは、会見をやめろと言ったというのは、やわらかく、そこはだめですよ、こういうふうに言った、こう言っておりますね。そこに一つ相違があるでしょう。さらにここに書いてあるように、あまり大きな声でどなったので、このメキシコの視察団はびっくりして立ち上がって帰ったということが書いてあります。それがもしあなたが言うように、そういうことがなければ何もあやまることはないでしょう。しかし実際問題としては、会見はこういうところではできないのだとどなり、さらにそれにびっくりして立ち上がったということであれば、何も私は、その点は事務手続の面における行き違いの中で申しわけないことをいたしましたというような度量のあることをやってもいいと思うのですよ。だからその点がどうも、局長の話を聞いておると、ないから、先生はそういうことを言いますけれども、私はやりたくないのだという、こういうような言い方がどうもあるような気がしてしようがありません。そういうふうな面におきまして、なければそれにこしたことはない。しかしながら、私は、もしあったとすれば、この事実どおりの問題であるとするならば、当然陳謝をすべきであろう、こういうふうに考えるわけであります。その点はどうでしょう。
  216. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 御趣旨のほどよくわかる次第であります。ただ私ども日本人の間でありますれば、私は先生のお話しのとおりやりたいと思っておるわけでございますが、およそ、はなはだ恐縮でございますけれども外国人にあやまるということはどういうことであるかという問題でございます。その点はよく考えさせていただきたいと思うわけでございます。
  217. 卜部政巳

    ○卜部委員 だから私は最初申し上げたように、実際言えば、変な国に対してはぺこぺこ頭を下げるのですよ。そうしてメキシコくらいになっちゃったら、ちょっとなめちゃって頭を下げないというところに問題があると言うのですよ。何ですか、そんなことだったら、堂々と何でもかんでも筋を通していくという姿だったらわかるけれども、特に名前をあげないけれども、ある国に対しては率直に言うならば低姿勢だ、そうしてこれもだいぶ問題になっておるところでありますが、外交辞令につきましても、ある外国から来れば待遇を悪くするというようなこともありますね、私は特に名前もあげませんが、わかっているはずであります。そういうことじゃいけないというのですよ。だからそこが日本人の度量の広さをもって、私が言うのは、自分たちが悪ければ悪いといっていくぐらいの度量の広さを持て、大きさを持て、そういうことです。何も日本人が頭を下げて、それで国辱であったとか、さらにはその点から日本がなめられたというのであればこれはまた別ですよ。そうじゃないでしょう。そういうふうな問題なら十分もっと考えなければならない問題がたくさん私はあると思うのです。そのことを私は申し上げておきたいと思います。その面において私はこの新聞記事に取り上げられた問題は、いま局長のほうから日本人云々という、日本国という問題も提起されてきましたけれども、少なくともそういう面におきまして、私はほんとうに大きい日本人の度量を見せるべく、さらにオリンピックを迎えるわれわれ日本人としての雅量のあるところをひとつ示してもらいたい、こう思います。と同時に、いま申し上げておりますように、羽田税関の悪名高いということはもう周知の事実でありますし、世界でも冠たるものであります。この点はひとつ局長のほうからも先ほど来から十分述べられておりますように、今後十分な配慮のもとに、明るい羽田税関、明るい日本の玄関であるというようにしていただきたいということを特に要望いたしまして、私は終わりたいと思います。      ————◇—————
  218. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 参考人出席要求の件についておはかりいたします。  金融に関する件について、来たる二十八日、日本銀行総裁山際正道君を参考人として委員会に出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  219. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は来たる二十八日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会