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1964-08-11 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第60号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年八月十一日(火曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    岩動 道行君       宇都宮徳馬君    奥野 誠亮君       木村 剛輔君    木村武千代君       菊池 義郎君    小山 省二君       纐纈 彌三君    島村 一郎君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       濱田 幸雄君    藤枝 泉介君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  委員外出席者         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵政務次官  鍋島 直紹君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (主計局次長) 澄田  智君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      渡邊  誠君         国税庁長官   木村 秀弘君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 七月二十四日  委員大泉寛三君、大久保武夫君及び押谷富三君  辞任につき、その補欠として鴨田宗一君、纐纈  彌三君及び渡辺栄一君が議長指名委員に選  任された。 八月一日  委員宇都宮徳馬辞任につき、その補欠として  福田篤泰君が議長指名委員に選任された。 同日  委員福田篤泰辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員島村一郎辞任につき、その補欠として毛  利松平君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員田澤吉郎辞任につき、その補欠として菊  池義郎君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員宇都宮徳馬君及び野原覺辞任につき、そ  の補欠として福田篤泰君及び堂森芳夫君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員福田篤泰君及び堂森芳夫辞任につき、そ  の補欠として宇都宮徳馬君及び野原覺君が議長  の指名委員に選任された。 同月十一日  委員伊東正義君及び菊池義郎辞任につき、そ  の補欠として島村一郎君及び田澤吉郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員島村一郎君及び田澤吉郎辞任につき、そ  の補欠として伊東正義君及び菊池義郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  鍛冶及び鍋島政務次官より発言を求められております。これを許します。大蔵政務次官鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 このたび全くはからずも大蔵政務次官に任命せられました。何しろいままで国会では少しは理屈を言ったこともないではございませんが、それはすべて私の専門のほうのものでございまして、大蔵行政に関しては何ら発言をしたことはございません。そこで、いまこの政府委員席にすわらされてはなはだ面くらっておるわけでございますが、いやしくも任命せられました以上は、できるだけ勉強して、皆さまの御期待に沿えるだけひとつ沿ってみたいと考えておりまするので、何ぶんとも御指導のほどをお願いいたしとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  4. 山中貞則

  5. 鍋島直紹

    鍋島説明員 鍋島でございます。鍛冶政務次官とともに今回大蔵政務次官を拝命いたしました。微力ではございますが、最善を尽くしてお役に立ちたいと考えております。どうかよろしくお願いを申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  6. 山中貞則

    山中委員長 国の会計税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  7. 武藤山治

    武藤委員 午後から大蔵大臣出席をする予定になっておりますので、それまでの間事務当局に主として金融情勢明年度税制をめぐって数点にわたってひとつお尋ねをいたしたいと思います。  最初主税局長お尋ねいたしますが、大蔵大臣あるいは大蔵省は、再三新聞を通じて予算硬直性ということをたいへん心配をなされ、来年度税収はそう思うようにいかぬのではないか、新規事業ども相当圧縮しなければならぬ、そういう記事が再三報道されておりますが、三十八年度税収もすでに明らかになりまして、百八十一億円ですか、余剰が出た程度である、こういう三十八年度実績からどういうことが教えられ、明年度はどういう態度予算編成をしなければならないかという税収立場から大蔵省主税局の考えておる構想をまず最初にお聞きをしたいわけであります。  特に物価の問題、国際収支の問題、景気過熱との関係問題等予算編成をめぐる大きな問題点が横たわっておるわけでございますが、それらに対応する予算編成方針というものはどうあるべきか。特に税収立場から主税局はどういう予算編成が望ましいと考えておるか、そこら事務当局見解をひとつ最初お尋ねしておきたいと思います。
  8. 泉美之松

    泉説明員 お尋ねになりました件は、私の所管のこと以外の点にわたられる点がございますので、私からお答えするのがはたして適当であるかどうか疑問に感ずる点もございますのですが、お尋ねの御趣旨税制あるいは税収入見地から見た来年度予算の問題というふうに解しましてお答え申し上げたいと存じます。  お話のように三十八年度税収実績におきましては、補正後の予算に対しまして百八十一億円の自然増収となりました。それから三十九年度の歳入につきましては、四月から六月までの実績が判明いたしております。この結果はお手元に資料を差し上げておると存じますが、六月末の税収が六千三百七十四億円でございまして、予算に対しまして二一・九%に相なっております。三十八年度の決算に対しましては、三十八年の六月末におきましては二二・二%の収入となっておりましたので、それと比較いたしますると〇・三%ではございますが、前年より収入率が悪いという状況になっておるのでございます。もちろんまだわずか三ヵ月でございますので、これだけから三十九年度税収がどうなって自然増収がどうなるかということは、なかなか申し上げにくい段階にあるわけでございますが、しかし現在、御承知のとおり金融引締め措置がとられておりまして、その影響から企業の収益もさほど増大しないであろうというふうに見通されることからいたしますれば、三十九年度におきまして、もちろん予算額税収は確保できると存じますけれども、しかし多額自然増収を期待することは困難である。従来のごとく年度中に千億をこえるような自然増収はとうてい期待できないというふうに考えられるのでございます。したがいまして、四十年度の三十九年度当初予算に対する自然増収の額につきましては、もちろん四十年度経済見通しがまだはっきりいたしません今日におきましては、自然増収がどの程度生ずるであろうかというようなことをなかなか予測しがたい状況にあるのでございますが、しかし経済の先ほど申し上げましたような現状からいたしますれば、四十年度において相当多額自然増収を期待することは困難ではないかというふうに考えられるのでございます。私どもとしましては、まだもちろん一応の試算でございますから、これをもって明年度自然増収額とお考えいただきますとかえって困るかと存じますけれども、一応の試算といたしましては、新聞にも出ておりまするように、明年度経済成長率を一〇%と見まして、税収弾性値を通常の年の一・五というふうに見ますれば、大体三十九年度当初予算に対しまして、四十年度は四千五百億円程度増収しか期待できないのではないかというふうに考えられるわけでございます。この四千五百億円というのは、御承知のとおり三十九年度予算編成にあたりましては、六千八百億の自然増収を見込んだわけでございます。その額に比べますと、著しく少なくなります。他方、前年度剰余金繰り入れ不足が三十九年度におきましては千八百六十六億ございました。これは四十年度の場合におきましては減少いたしまして、約七十億程度繰り入れ不足でとどまるであろうと思われますので、その辺は大幅に違っておりますけれども、しかし三十九年度予算編成にあたりましては、六千八百億の自然増収を見込みました結果、前年度剰余金繰り入れ不足を差し引きましても四千八百億程度自然増収収入増加が見込まれたわけでございますが、それが四十年度においては前年度剰余金繰り入れ不足は少なくなりましても、しかし税収のほうの自然増収が少ないということからいたしまして、四十年度予算編成にあたっては、三十九年度よりもより一そう慎重な態度で望まねばならないのではないか、他方におきまして、これは私の所管でございませんので、ごく簡単に申し上げますけれども、御承知のとおり米価生産者価格の引き上げに伴う処理の問題、社会保障関係の国の負担増加の点、あるいは公務員の給与改定の問題、そのほか歳出需要の要請は相当多いものと考えられますので、その意味では来年の予算編成にあたりましては、そういったいろいろ困難な問題を克服して、しかも前の国会でいろいろ御論議がありましたように、国民税負担は重いわけでございますので、その減税も行なうというような、これらのいろいろな施策を取り込んで予算編成するにあたりましては、よほど慎重なかつきびしい態度で望まねばならないものと、かように考えておるのでございます。
  9. 武藤山治

    武藤委員 明年度予算編成は、なかなかたいへんな様相であるということだけは大体うなずけるわけでありますが、たまたま報道を見ますると、明年度は一千億円減税をしよう、目標そこらに置こうというような記事がたびたび出されておるわけでございますが、一千億円減税をしたいという目標はどういう根拠から大体作定をしておられるわけですか、減税基本と申しますか、そういう点をひとつお聞かせ願いたい。
  10. 泉美之松

    泉説明員 いま申し上げましたようなことからいたしまして、明年の減税規模をどの程度にするかというようなことは現在検討中でございまして、まだはっきりした問題ではございません。ただ新聞記事に出ておりまする一千億減税と申しますのは、三十九年度予算編成に当たりましてネットの減税額といたしまして一般会計におきまして八百十二億円の減税を行なったわけでございますが、なおまだ減税が不十分ではないかといったような御意向がございましたので、そういった点からすれば少なくとも千億程度減税はやるべきではないかというような空気があることからいたしまして、新聞記事にそのような数字が出ておるものと思うのでございまして、私ども公式には減税を幾らするかということはまだ検討中でございまして、現在の段階におきましてその数字を申し上げるわけにはまだ至っておりません。
  11. 武藤山治

    武藤委員 それでは主税局長、いま税制調査会処理をしておる事務状況ですね。大体税制調査会ではどういう基本的方向で、どういう内容がいま結論として出そうか、あるいは審議過程でこれがやや結論になりそうだというような見通しというものも、皆さんも税調に出ておるのですから、大体の傾向はわかると思うのです。そこで税制調査会審議状況、特に力点を置いておる減税基本、それはどういうところにあるか、まずそれを最初にお聞かせいただきたい。
  12. 泉美之松

    泉説明員 かねてから申し上げておりますとおり、税制調査会といたしましては現在の委員任期は明年七月まででございますが、その間に長期的な見地に立った税制あり方についての答申をしょう。委員任期は明年七月でございますけれども、できる限り本年じゅうにそうした長期的な見地に立っての税制あり方についての答申をまとめたいということで、せっかく審議を進められております。現在の段階におきましては、一応御承知のように税制調査会一般部会企業税制部会地方税制部会と三部会に分かれて部会審議を行なっておるわけでございますが、一応部会審議といたしましては問題点の取り上げはいたします。長期的な見地に立っての税制あり方ということでございますので、基礎問題小委員会というのを設けまして、主として若手の学者グループ中心になりまして、理論的見地に基づいて税制あり方についての検討をいたしております。税制調査会の今後の予定といたしましては、来たる十三、十四の両日一般の各界の人から参考人としての意見を聴取することにいたしております。これは税制調査会にはそれぞれの立場の人が委員になっておられるのでございますけれども、しかしたとえば純粋の若いサラリーマンであるとか、あるいは農民の方であるとかあるいはほんとうに商売をやっておられる方、個人の事業をやっておられる方、こういった方はおられませんので、そういう人の意見を十分聞きたいということからいたしまして、十三、十四の両日そういった参考人意見聴取会を開くことにいたしておりまして、そして今月の末、二十六日から基礎問題小委員会委員の方とそれから各部会部会長さん、副部会長さんがお集まりになりまして、先ほど申し上げました長期的見地から見た税制あり方についての基本的な問題の取りまとめをすることになっております。現在の段階におきましては税制調査会がどのような答申を出すことになるかまだ正確に申し上げる段階にはないのでございますが、しかしいままでの税制調査会審議の経過からいたしまして、私どもの推測いたしておりまするところによりますれば、おそらく税制調査会としては、従来の答申の経緯から見ましても、所得税減税の問題、それから企業課税の問題、この二つの問題に相当多くの重点を置いて答申がなされるものであろうというふうに考えております。
  13. 武藤山治

    武藤委員 税調がせっかく真剣に審議をしておる際に、総理大臣企業減税重点を置いたらどうかと大蔵大臣に指示を与えたり、また大蔵大臣減税五ヵ年計画なるものを新聞に発表して資本蓄積を優先する減税をしたい、こういうことを、税調審議をしておる過程で、そういう権力ある地位のものが発表するということは、税調審議をゆがめるのではないかという心配をしておるわけです。あなたは税調へ入っておるわけですね。そういう総理大蔵大臣の事前の談話発表あるいは意思表明というものが税調に全く影響を与えませんか。その辺はどのように認識をされていますか。
  14. 泉美之松

    泉説明員 従来の税制調査会審議状況及び答申の出し方等を拝見をいたしておりますと、総理大臣あるいは大蔵大臣がいろいろ御発言になっておられます。もちろんその趣旨が必ずしも十分に新聞にあらわれているかどうか問題のようにも思いますが、しかし税制調査会税制調査会として審議答申を出すことになっておりますので、総理大臣あるいは大蔵大臣が御発言されても、それが審議をゆがめるということには私はならないであろうと思っております。
  15. 武藤山治

    武藤委員 そんなことはないでしょう。それじゃね、税調税調で独自の立場審議をしておる、案をつくっておる、主税局主税局で独自の案をつくっておるのですか、大蔵当局は。それはどうなんですか。
  16. 泉美之松

    泉説明員 私ども事務当局でございますので、減税についてのいろいろの案の場合にどういうふうな減収額になるか、その場合の問題点はどういう点にあるかといったような検討は、各案について行なっておりますが、しかしそれは何も税制調査会意向に基づくものばかりでございません。各方面からいろいろの御意見がございますので、そういった場合にはそれぞれについて、そういうことを行なえばどういう減収額が生じ、その場合の問題点はどういう点にあるか、こういう検討はすべていたすことになっております。したがいまして私どもが独自に案を立ててそれを税制調査会に押しつけるというようなこともいたしませんし、また私どもがそういうふうに算定した数字はもちろん税制調査会答申基礎になることは、これは事実でございますけれども、しかしそれによって税制調査会答申方向が変わってくるということは、私はないものと考えております。
  17. 武藤山治

    武藤委員 それでは主税局長の判断で、来年度税収の見込み、予想からいって、どの程度までに税を圧縮することが妥当だ、それ以上の線をいくと、ちょっと主税局としても他の自然増やあるいは当然増や新規事業やいろいろな要求が出てくるから、これ以上は無理であろう、そういう一応の目安というものは主税局でも考えるのでしょう、収入状況から見て。それをある程度税調に、これ以上膨大になったらとても責任持てませんよ、だめですよというようこなとは言うのじゃないですか、あなたのほうでは。全然そういうことは言わぬのですか。
  18. 泉美之松

    泉説明員 先ほどから申し上げておりますように、税制調査会で目下取り上げておりまするのは、長期的見地に立っての税制あり方ということでございますので、必ずしも来年どういった減税を行なうかということではございません。来年どういった減税を行なうかということにつきましては、十月ごろから小委員会を設けまして、そして例年のとおり十二月初めに答申を出すという方向検討されるものと思っておるのでございます。現在は少なくとも今後四、五年の間の税制あり方についての答申をまとめる、こういう段階でございます。さしあたり税制調査会におきまして来年どういった減税を行なうかということはいま直ちには問題にはなっておらないのでございまして、それはおそらく十月以降問題になるであろうというふうに考えておるのでございます。  なお、お尋ねでございますが、まだ現在の段階におきましては歳出需要の額も明確になりませんし、したがってまた来年の自然増収の額につきましても、先ほど申し上げましたようにごく大ざっぱなことはいえましても、各税目別にきっちり当たった数字になっておりませんので、まだ予算編成をする場合の基礎としての数字にはなりにくい程度数字でございます。したがって、現在の段階におきましてこれ以上減税はできないとかあるいはこれだけの減税はぜひやりたい、こういう額を申し上げることはまだその機に至っておらないものと考えるのでございまして、今後十分各方面の御意見検討いたしまして、減税規模あるいはもちろん歳出需要等につきましてもいろいろ検討いたしまして予算編成に臨むべきものと考えておるのでございます。
  19. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、主税局長、たとえば金融財政事情日本経済大蔵省は、という見解で来年度減税方針どもややおぼろげには報道されておるわけです。こういうのはあなたのほうから出た記事じゃなくてみな推測の記事でしたか。あなたの部下でだれかがそういうのをやはり発表しておるのじゃないですか。それによると、たとえば来年度所得税減税を最重点大蔵省としては取り上げたい、さらに預金利子の五%源泉分離課税は期限が切れるからこれは廃止をしたい、配当所得優遇措置については他の方法でこれを源泉選択制を採用しない、こういうような大蔵省としての見解というものが報道されているわけですね。こういう考え方大蔵省のだれですか、主税局には全く関係なくて大蔵省のだれですか。それをひとつ明らかにしてください。
  20. 泉美之松

    泉説明員 いろいろのことが新聞記事に出ておりますが、それはもちろんまだ確定したものではございません。ただ私ども事務局といたしましても、やはり税制をできるだけりっぱな税制に持っていきたいという気持ちからいたしまして、従来から当委員会で申し上げておりますように、減税にあたりましては所得税負担の軽減ということに最重点を置きたい、それからまた租税特別措置につきましては検討いたしまして、その効果の薄いもの、効果の疑問に思われるもの、税負担の公平を著しく阻害するもの、こういったものにつきましてはできるだけ整理、合理化をはかりたい、こういう気持ちでおりますので、そういった気持ち新聞記者の方に反映いたしましてそういった記事が出ているものと考えるのでございます。
  21. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、それは以心伝心で主税局長気持ち新聞記者が察知して書いたものだ、大蔵省としてはそれほど強い態度としてきめているものじゃないということですね。私はこういう現段階で報道されている大蔵省見解というのはやや妥当であり、国民方向を向いた合理的な方向だと思うのです。そういう点では大いに歓迎すべき態度なんですね。ところがいよいよ予算編成期あるいは編成されてくると、この大蔵省国民方向を向いた考え方がいつも大体くつがえされるのですね。そこで私は大蔵省はやはりき然とした態度国民の利益になり国民方向を向いて最も合理的、科学的な根拠に立って策定をしようとしたものをできるだけくずさない、そういう基本的な態度を堅持してもらいたいというのが私の希望なんですよ。そこで私はこの金融財政事情に報道されておる大蔵省見解ではまず所得税を最優先に考えていこう、当然だと思うのです。物価がウナギ登りに年々上がっているのですね。本年だって四・二%の企画庁の計画どおりにはいきませんよ。年度内にまだ消費者米価も、大臣が来なければわかりませんが、おそらく二割も上げようというのでしょう。公共料金も軒並みに、いま水道料金もあるいは運賃もだっと上がろうというのでしょう。そういう傾向のときに所得税というものが単なる調整減税で終わっておって、おまけに昨年などは給与所得控除九十二億円もぶった切られてしまった。そういうことを考えてみたらやはり物価騰貴に対応する税金の取り方ということを重点に考えなければいかぬと思う。そういう点では所得税中心にまず減税をすべきだ。ところが大蔵大臣はそれとはまるで違った企業減税を優先しろと言っておる。この二律背反の中で主税局がどういう態度をとるかということを国民は非常に注目しておるわけです。そこで、ただ単にあなたが腹の中で思っておる腹づもりを記事に書かれたなんということでは国民はますます大蔵省が信頼できなくなる。やはり大蔵省としての確固とした態度があると私は思うのです。それを国民に知らせるというところに協力を求める、また支援を求むる大きな意味があると思うのです。そういう意味から本委員会主税局長の考えておることを、大臣はおこりゃしませんから、ざっくばらんに大蔵省としてはこう来年度税制をやるべきだと思う、これを発表できませんか。所得税重点的にやるという場合の根拠、なぜ所得税重点にやらなければならないという……(堀委員大蔵大臣はまだここの公式の席では所得税を優先すると私に答弁しておる。事務当局もその範囲では答えられるのだから」と呼ぶ)所得税をどうして重点にしなければならぬかという客観情勢があるわけですから、その客観情勢認識から主税局長お尋ねしましようか、いまの経済情勢
  22. 泉美之松

    泉説明員 所得税負担の点につきましては、去る国会でしばしば申し上げましたように、年々減税につとめておりますけれども、御承知のように所得税累進効果が非常に大きくてその税収弾性値税目のうちで一番高い、こういったことからいたしまして、年々減税にはつとめておりますけれども、まだその負担はなお高いと認められるのでございまして、この点につきましては当委員会でもしばしば申し上げましたように、所得税の納税者が昭和三十一年ごろは一千万人でありましたものが現在千九百万人をこえる、こういった状況にあること。それからまた高度成長の結果年々所得が増加いたしますけれども、所得の増加割合以上に税収増加割合が大きいということ。それからまだ国民生活の現状からいたしますれば課税最低限につきましてもっと引き上げの必要が認められる。それから先ほど武藤委員のお話がございましたように、来年物価がどういうふうになるか問題でございますけれども、来年はいろいろ物価問題が集中いたしておりますので、本年度の当初予算に見ましたような四・二%の消費者物価の騰貴ではおそらく済まないのではないかというようなことも予測されます。そういった点をいろいろ考え合わせますと、目下のところ所得税減税重点を置くべきではないかというふうに考えられるわけでございます。この点は税制調査会の御意見と私ども事務当局意見は一致いたしておるわけでございます。  ただ問題の企業課税につきましては、御承知のとおり昭和三十六年以降企業課税についてどういうふうに税制を持っていくべきか、いろいろ検討がされております。ことに本年からOECDに加盟するとかあるいはIMF八条国に移行するというようなことでいわゆる開放経済体制に移行したわけでございますが、今後ますます強化されてくるであろう国際競争に対処いたしまして、わが国の企業が国際競争にたえていくためにはやはり企業の経営基盤というものがしっかりしたものになる必要があろうかと思うのでございます。そういった点からいたしまして、企業課税においてそういった企業の経営基盤を強化するに役立つような税制であることが望ましいわけでございますが、こういった見地からどういった企業課税をしたらいいか、これを税制調査会としても検討いたしております。また私どもとしてもいろいろ検討いたしておるのでございます。ただこの点につきましてはいろいろの説がございますけれども、まだ的確に、こうやったらいいのだという方向を見出しがたい状況にございます。御承知のとおり三十六年以降支払い配当の軽課措置を講じておりますが、これをさらに徹底すべきなのか、あるいは利子と配当との関係からいたしまして、配当の一部損金算入を入れるべきなのか、それとも法人税率を軽減すべきなのか、あるいは法人税率の軽減にあたって、大法人と中小法人といまは三八%と三三%の二段階税率になっておりますが、これをどうすべきなのか。そもそも法人税の課税にあたっていわゆる法人擬制説的な観念を従来とっておるわけでございますが、これについてどう考えるべきなのか、こういった基本的な問題についてまだ明確な結論を得がたい状況にございます。したがって企業課税につきましては、税制調査会で目下検討いたしておりますので、これにおきまして、企業課税あり方についての結論が出ることが望ましいと考えておるのでございます。その結論を待って検討をしたいという考えを持つておるわけでございます。
  23. 武藤山治

    武藤委員 ですから私ども心配するのは、減税規模というものは大体税収で大ワクが押えられてしまうのですね。押えられてしまうのですから、企業減税ということをあまり言い出してくれば、この分け合いが、かりに二千億減税するといった場合に企業減税重点にして半分取られてしまえば所得税は変則になり、徴税だけで一千五百億かかるものが一千億しかない。あるいは一千億しか減税のワク幅がないという場合に、やはり企業減税を大きな力を持ったところから発言をされて取られてしまえば徴税が足りない、減税ができない、そういうものなんですね。いまの減税規模の査定がそもそもそういうことになっておる。これはあり余っておる金で何が何でも減税するのだという計算じゃないのですよ。逆に、このワクぐらいでやろうという大ワクをつくるのですから、企業減税に所得減税分までみな食われてしまう。そういう心配がある。ですから大蔵大臣発言総理大臣発言が非常なウエートを占めるという心配をするのは一定ワクがきまっておるからですよ。そこでやはり主税局でも大蔵省当局がもっと合理的な科学的な客観的な資料をもとにして、これだけの所得税はどうしても減税しなければ、とてもこれは徴税にも追いつかぬじゃないかということをいまの段階で明らかにすることですよ。これを明らかにして、このワクだけは絶対はずせない、そして減税ワクはひとつ高所から見てこれしかできないのだということになれば、まずその科学的な根拠に基づく減税中心にし、余ったものを政策減税企業減税として振り向ける、こういう態度をとるべきだと思うのですが、現在のやり方はどうもそれがさかさまな気がするのですよ。ことしあたりはそれをひとつ優先的にきちっと科学的な、どこから攻撃されてもくずれないという客観的な資料を基礎にしてやれないですか。あなたが主税局長のときに、ひとつそういう名主税局長ぶりを発揮できないのですか。ひとつあなたの心境をはっきりお聞きしておきたい。
  24. 泉美之松

    泉説明員 税制改正をいたす前におきまして、一般減税といわゆる政策減税とをどういうふうにかみ合わすか。これは特に三十八年度税制改正以後非常に問題とされておるところでございます。企業課税の軽減といいましても必ずしもいわゆる政策減税だけでなくて、一般的な減税ができ得る場合があるわけでございます。私どもといたしましてはできるだけそうした一般的な減税所得税並びに法人税について行なうべきであり、いわゆる政策的減税というのはその効果の点につきましてもいろいろ問題がございます。また税負担の公平という点からいいましてもいろいろ問題がございますので、でき得る限りそうしたいわゆる政策減税というものは避けるべきである、こういう基本態度に変わりはございません。来年の税制改正を行なうにあたりましては、ただいま武藤委員がお述べになりました御高見を十分体しまして努力いたしたい、かように考えるのでございます。
  25. 武藤山治

    武藤委員 次に来年三月期限の切れる預金金利の利子の分離課税ですね。これの取り扱いについて主税局長はどうすべきだ、これをどう取り扱うことが合理的であり正しい税の公平化、負担の公平化、こういう立場からも税のあり方として期限の切れるこの配当と利子の取り扱いをあなたはどうすべきだと思いますか。ひとり税調に責任を転嫁しないで、あなた自身の主税局長としての立場であなたはどういう見解をお持ちですか。
  26. 泉美之松

    泉説明員 この問題につきましては、主税局といたしましては、御承知だと思いますけれども、年来この点の是正を考えてまいっておるのでございます。来年期限が到来いたします関係からいたしまして、特に従来から利子に対する優遇措置とそれから配当に対する優遇措置との間にアンバランスがあるということからいたしまして、利子の分離五%課税を継続するのならば配当についてもそうしたらどうか、こういった要望が出てまいっております。私どもはそういった点から考えましても利子所得に対する分離五%課税の点につきましてはぜひこれを是正する方向で考えていきたいというふうに思っておるのでございます。ただその場合に、直ちに本則に戻って源泉徴収二〇%、総合課税ということになりますと、従来の日本の税制の歴史におきましてそういうことが制度上行なわれましたのは昭和二十五年の一年だけである。こういう点、また急激な変化ということにもいろいろ問題があろうかと思います。そういった点を考慮いたしまして分離五%課税を是正していただかなければなりませんが、それをどういう方向で行なうかということにつきまして、今後大蔵省部内におきまして銀行局、証券局、理財局等と十分打ち合わせをいたしたい、かように考えておるのでございます。
  27. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの主税局長発言はたいへん重要な発言でありますから、これをぜひ大蔵省部内で十分固めて税調にも反映され、あるいは発言の機会をとらえてこの預金金利五%分離課税制度というものをどのように前向きに処理するかということを、私たちは十分注目しておりますから、ひとつ泉さんが主税局長のときにそれを抜本的に前向きの体制で処理をしてもらいたいという強い要望をいたしておきます。
  28. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。堀昌雄君。
  29. 堀昌雄

    堀委員 大蔵省のどなたに答えていただいてもけっこうですが、実はこの一〇%の預金利子の分離課税が五%になりましたのは昭和三十八年四月一日からだと記憶をいたしております。そこでお伺いをしたいのは、都市勤労者世帯の総理府が調べております家計調査で調べてみますと、大体貯蓄率は昭和三十六年まではずっと貯蓄率が上昇しておったのですが、三十六年をピークとして三十七年、三十八年と漸減をしておりますね。そこで実はいまの分離課税の一〇%から五%になったということは、貯蓄の問題としては何ら効果をあげていなかった、私はこう判断をしておるのですが、その点をひとつ具体的に都市勤労者世帯における三十六年のピークからの下りぐあいをお答えをいただきたい、貯蓄率の低下状態。銀行局でもいいし財務調査官でもいいですから……。
  30. 泉美之松

    泉説明員 この貯蓄と貯蓄に対する優遇の税制との間にどういうふうな関連があるか、この点につきましてはいろいろ問題の存するところでございますが、従来の統計資料からいたしますと、御承知のように利子に対する税制はしばしば変更されまして、御承知のとおりシャウプ勧告によって総合課税になった。翌年昭和二十六年に源泉選択制度になり、それが二十八年に分離一〇%課税になり、三十年に全額非課税になり、三十二年に長期のものについてのものは免税し、短期のものについて一〇%課税になり、三十四年から長期のものについても一〇%課税にする。それが三十八年から五%課税、こういうふうにいろいろ変遷を経たわけでございますが、その間御案内のとおり三十六年までは勤労者世帯の平均貯蓄率は年々上昇をいたしまして、一六・五%にまで達したのでございます。それが三十七年には一六・一%、それから三十八年には一五・九%というふうに、七年、八年低下をしております。これは一体貯蓄というのは何によってその増加がきまるか、普通には可処分所得その増加によって貯蓄の増加が行なわれるのだ。したがって税制ということは必ずしもそれほど直接的な関係はない。過去のいろいろな非課税にした場合あるいは分離課税をとった場合、源泉選択税率にした場合、これらの経緯を見ましても、年々可処分所得が増加すれば貯蓄は増加するので、税制によってすぐに動くということはないというふうにも考えられるのでございます。  他方三十二年及び三十四年の税制の改正の結果を見ますと、あのときに長期預金に対してそれまで免税をいたしておったものは一〇%課税にするということになったときに、長期預金の分はかなり減少いたしました。これが当時の国民貯蓄組合預金のほうに分かれて入っていったというふうに見受けられる点がございますので、したがってその点から見ますと、そういった税制あり方によって貯蓄の総量はともかくとして、貯蓄の流れは相当変わってくるというふうにも考えられるわけでございます。いずれにしましてもまだ貯蓄優遇の税制によってどの程度効果が貯蓄の数字の上にあらわれるかということについては明確な判断をする資料がございません。現在のところこのように貯蓄率が減っておるのはおそらく物価の上昇が三十六年以降ございますので、そういった関係からやはり生計費に相当の支出を迫られ、そのために平均貯蓄率が減っていくのではないかというふうに考えられるのでございます。
  31. 堀昌雄

    堀委員 ですからいまのあなたの答弁からすれば、要するに物価上昇のほうが貯蓄率に影響力があるのであって、そういう非常に貯蓄率に影響のあるものが片面にあるときに、わずかな分離課税というような税制上の恩典というものはあまり意味がない。他の税制とのバランスを考えてみるときにそのバランス、たとえばいまあなたが答えられた、要するに配当課税との公平の問題というような、非常にバランスを失する問題を片方に見るならば、そのバランスを失する問題を犠牲にしてまでいまのメリットをそこへつけておいても、いまのような物価上昇の際にはそういう税制上の措置というものはあまり意味がない、こういうふうに私は理解をいたしますが、どうでしょうか。
  32. 泉美之松

    泉説明員 先ほど申し上げましたように、貯蓄の増加率あるいは増加額とその利子優遇の税制措置との間に直接的な関係はなかなか立証できにくいのでございますが、しかし他方においていわれますことは、貯蓄優遇をいままでしておったのに、その優遇をしないということになった場合に、国民の貯蓄心に及ぼす心理的影響が大きいのではないか、こういった点が問題になりまして、現在までいろいろ利子課税についての措置がとられてまいっておることは御承知のとおりでございます。したがいましてそういった点につきましても、今後検討いたしました上でないと利子優遇の税制が何ら貯蓄と関係がないということは明言できないというふうに考えられるのでございます。そういった点につきましてこれはなかなか数字的に立証できない点でございますけれども、そういった点を今後さらに分析していきたいというふうに考えておるのでございます。
  33. 武藤山治

    武藤委員 所得税減税については特にこれから大蔵省内部で十分前向きで検討して、政策減税とのかね合いというものを主税局長は十分検討するという先ほどの発言でありますからして、所得税の問題についてはこの程度にして、中小法人の問題でありますが、現在の二段階の税率では中小企業に対する税制あり方というものが妥当を欠いておるような感じをわれわれは持つわけであります。社会党は前々から当委員会を通じて中小企業に対しては特に低税率にこれを税率変更すべきである、税率をいじるべきである、政府はなかなかそれを守らぬわけでありますが、私たちは少なくとも四段階ぐらいの累進税率にして、中小法人の内部留保あるいは資本蓄積、そういうものがもっと前進できる態勢を考えるべきである。あるいは近代化資金積み立て制度というような新しい制度を設けてもいいではないか、私たちはそういう考え方から、大法人と中小企業の断層というものを税制の面から埋めるというならば、いまのような企業減税というものは大企業中心に偏しておる、これはどうしても中小企業にもっと資本蓄積ができるようにするには政府のいまのような方針ではだめだ、やはり累進税率で段階を四つぐらいに区切るべきであろう、こういう考え方を再三この上席で主張を続けてきたわけであります。一体この中小法人に対する税率のあり方というものは明年度検討するのか、いま主税局としてはそういう問題については全くノータッチで通り過ぎようとしておるのか、その辺の検討状況はいかがですか。
  34. 泉美之松

    泉説明員 私どもといたしましては、この前の国会で申し上げましたように、法人税の税率につきましては、法人税を法人擬制説的な考え方に基づいて考えるか、あるいは法人実在説的な考え方に基づいて考えるかということによって考え方がいろいろ違ってまいります。御承知のとおりわが国の法人税率は、現在は二段階でございますが、事業税を合わせますと三段階になっている。法人の事業税と法人税を合わせました税率の違いは三段階になっておるわけでございます。各国の事例を見ましてもイギリスの場合が三段階、アメリカの場合が二段階、ドイツは支払い配当に対する税率を違えておりますので、やり方がちょっと違いますので比較は適当でないかと思いますけれども、そういった段階でございまして、法人について擬制説的な考え方をとるにせよあるいは実在説的な考え方をとるにせよ、法人の税率をそれほど多く設けてはおらないのが各国の実情のように見受けます。これはもちろんその点につきましては理論的にいろいろ問題があることは御承知のとおりでございますけれども、私どもとしましては、この前の国会で申し上げましたように、アメリカにおきまして従来の法人税の構造を変えまして、年二万五千ドル以下の税率を、従来三〇%でありましたのを二二%に軽減いたしましてそういった点を考慮し、かつまた個人の事業所得に対する所得税の税率とそれから法人の税率と、この間のバランスを考える。特に御承知のとおり中小法人につきましては個人企業から中小法人なりにしたものが多いのでございますので、常に法人の税負担とそういった個人の中小企業税負担、これとを比較検討してバランスをとってまいらなければなりません。そういった点をも検討して税率についてどうあるべきかということをいろいろ検討いたしておりますが、この税率の段階をいま以上にたくさんにすることははたして適当かどうか、現在の三三%の税率については、これを引き下げた場合にどういう現象を生ずるかいろいろ検討いたしておりますけれども、現在より以上に、たとえばお話のように四段階にするのが適当かどうかということについては多少疑問を持っております。いずれにいたしましても、中小法人の税率引き下げの問題につきましては、目下のところそういったいろいろの見地をあわせて検討いたしております。
  35. 武藤山治

    武藤委員 次の委員との約束の時間がありますから、あと二点ばかりかいつまんで税制の問題をお尋ねします。  文部大臣が愛知さんにかわって、最近各紙に、私立学校法人への寄付金に対する税額控除の問題を、緊急を要するものに限るといういまの法規定を改めるべきである、さらに寄付対象の範囲を拡大すべきである、これをひとつ大蔵省に申し入れるという文部大臣談話発表が出ております。私も再三この委員会で——佐藤觀次郎さんが特に熱心に、私学振興という立場から、私学への寄付金控除の問題を取り上げておるわけです。私も再三ここで主張したわけなんですが、来年度この私立学校法人に対する寄付金の税額控除の点を拡大するのか、そういう方向検討しておるのかどうか、これが一つ。  それからもう一つは、私は前回の国会で償却資産の耐用年数の取り扱いについて国税庁長官が認定をすれば、特別の事情、特別の材質、特別の使用状況によって特別償却が認められるという今日の制度がある。そういう制度を知って感じましたのは、魚屋の場合、魚屋さんは非常に塩けの多いものをオート三輪あるいは小さな四輪車に積んで使用しておる。あるいは冷蔵庫、こういうようなものは非常に腐食が激しい。こういう魚屋さんの資産で、特に塩けを吸収するようなそういう資産に対する耐用年数を当然短縮すべきである。この点について、主税局などでは一体検討したことがあるのか、もししていないとすれば、私は当然魚屋のそういうものは見てやるべきだ、そういうものはやはり小売り価格のほうに反映をさせるというようなことも全国の魚屋業者と主税局と大いに意見の交換をしたらどうだ、非常に小さいような問題でありますが、これはやはり魚屋にとって不合理是正という立場から当然検討に値する問題だと思うのです。この二つの点、ひとつ主税局長見解をお伺いしたい。
  36. 泉美之松

    泉説明員 愛知文部大臣から、私学に対する寄付金の損金算入の問題につきまして、大蔵省に申し入れるという新聞記事は拝見いたしましたが、まだその要望を承っておりませんので、的確にどういう内容のものかまだはっきりいたしておりませんけれども、私学に対する寄付金の問題につきましては、先ほどお話しのとおり、去る国会におきましていろいろ各委員からお話がございました。私どもといたしましても、そのあり方についてかねてから検討をいたしております。  まず第一は、私立学校設立段階においての寄付金を認めるかどうかということの点でございますが、この点につきましては、文部省のほうで私立学校として認可するかどうかという問題とからんでおりまして、したがいまして、目下文部省当局と事務的に、その場合に、私立学校が設立される前にそういう寄付金を指定する事務的な手続はどういうふうにすべきかということをいま協議中でございます。税法におきましては一応できることになっているのでございますけれども、文部省の認可手続との関係をどう調整するかということで事務的に話し合っております。  そのほかの内容の点につきましては、いろいろ問題になりますのは、一つは、授業料も所得税基礎控除を認めるという点でございますが、これはなかなか問題があるのではないか。それから寄付金の中に、従来は学校の校舎の敷地及び校舎の建物、それから研究施設等を指定寄付金の対象にいたしておりますが、この指定寄付金の対象にする使途と範囲を広げるというのが愛知文部大臣のお考えのようでございます。この点につきましてはどの程度の使途を入れることが適当であるかどうか今後検討いたしたい、かように思っております。  それから魚屋さんの耐用年数でございますが、塩けの多いものを扱うことはお話のとおりでございます。しかしそれによって冷蔵庫がどの程度耐用年数が短くなるものか、運搬器具につきましてどの程度耐用年数が短くなるものか、この点につきましては、従来そういったものにつきましてはあまり不平を聞いておりませんので、それほどこまかく検討をいたしたことはございませんが、お話の点がございますので、そういった点については実情をさらに調べた上で検討いたしたいと存じます。
  37. 武藤山治

    武藤委員 いまのでやめる予定だったのですが、いまの授業料分を所得税の課税対象からはずす。——全額はずすか、半分はずすかは別としてですよ。この前の国会のときに、堀委員それから私からもいまの所得税の扶養控除の内容というものを検討した結果、ここで議論をしたわけです。そうしてみると、どうも扶養家族の年齢差というものは教育費というものをあまり加味していない。たとえば高等学校、大学、こういうところに入る年齢の子供を持つ扶養家族の考慮というものが非常に欠けている、こういう点をここでもって明らかにしたわけです。したがって扶養家族の控除の問題にこれを今後加味するというならば、私は検討外でもいいと思う。しかし所得税の扶養控除の中にはそういう点を加味しないというならば、やはり授業料の問題をひとつ、教育振興の国で、特にアジアにおける最も教育の先進国である日本ですから、日本が今日かくも国力を成長せしめた最大の原因はやはり教育水準の向上にあたるのですから、そういう点でこの教育に対するあり方というものを、税制の面から授業料の取り扱いをもっと真剣に——今後まだ考える必要はない、全然検討に値しないというぶっきらぼうな答弁でなくて、これもひとつ扶養控除の中で考えようとか、あるいはそれができないならば、別な角度から検討してみたい、こういう答弁を私は主税局長からいただきたいと期待をして実は質問をしたのです。これはどうですか。
  38. 泉美之松

    泉説明員 授業料の問題は、お話のように扶養控除に関連しまして、当委員会で問題になったことは記憶いたしております。私どもといたしましては、扶養控除のあり方については今後もちろん検討をすることにいたしておりまして、もちろん授業料の全額を控除するということはとうてい私できないと思いますが、その扶養控除の中でも御承知のようにいままで十五歳以上について控除が高かったのは学費がかかるという点を考慮しておったのでございます。それを本年の改正で十三歳以上ということにいたしました。これは食費が多くかかるという点からそうしたわけでございます。そこで従来学費が多くかかるという点を見ておった色彩が薄れてきた。そこに問題があることは御承知のとおりでございます。そこで扶養控除のあり方につきましては、いろいろ検討いたしたいと存じますが、授業料を控除するという方向につきましては、なかなかむずかしい問題があるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  39. 武藤山治

    武藤委員 これで最後にいたしますが、銀行局長せっかくおいでいただいたので、一言お尋ねしておきますが、最近の日銀発表によりましても、また大蔵省見解にしても、非常に貸し出しが増勢傾向にある。設備投資というものもそう鈍化しないで、だいぶ政府の予想した期待どおりには進んでおらぬ。こういう情勢で、さらに金融引き締めもどうも年度内にゆるめるような情勢は到来しない。こういうようなことが再三報道されておるわけでありますが、私は詳細一々質問する時間がありませんから、一点だけお尋ねをいたしますが、こういう設備投資増勢の金融情勢というものをちょっと検討してみると、日銀の発行限度額さらにオーバーローン、この両方の数字をずっとここ五、六年間を見ますと、生産性の向上をはるかに上回った通貨量が流れている。特にひどいのは昭和三十五年のオーバーローンというものは五千二億円にすぎなかったものが、翌年は日銀の貸し出しが一兆二千億円を突破しておるのです。一年間に倍以上もとにかく日銀貸し出し貨幣量というものをふやした。オペレーションをやるようになってからやや横ばいの傾向にはあるけれども、しかしオペレーションの問題をその中から差し引き計算をしてみると、やはり通貨の量というものが今日の物価問題に与えている影響というものが非常に大きい、こう私どもは判断をする。もちろんフィッシャーの経済学やあるいはケインズの経済理論を読んでみると、貨幣だけによって経済動向というもの、あるいは物価動向というものを云々することは危険であるということはわかりますが、それにしてもいまの日銀の通貨の処理のしかたというものが、どうも私は物価問題とからんで考えたときに非常な悪影響を与えているような感じがするのです。銀行局長として、行政当局で日本の経済金融情勢をどう進めるべきであるかという立場にあるあなたは、そういう問題をどのように認識されておりますか。それをひとつ………。
  40. 高橋俊英

    ○高橋説明員 オーバーローンの問題は、いまお話のように昭和三十五、六年度ごろから非常に激しくなった。最近になって急にそのオーバーローンが激化したというのではございません。ただいま特に引き締めをやっておりまして、いまのお話でございますが、日銀券の前年同期に対する増発率を見ますと、昨年度の推移は大体一八%ぐらいがピークでございます。一七%ぐらいの平均になっております。それが三月に一六%程度まで縮まってきたわけです。そしてそのころから金融の引き締めが本格化されましたので、公定歩合を引き上げましたり金利の引き上げによって引き締めを強化した。しかしその後の推移が前回でもあるいは前々回の引き締め時に比べますと、その縮まりが鈍いと思われる。四月はちょっと下がったかに見えまして、伸び率が一四・七までになったのですが、五月には一五・一、六月には一五・一、これは月中の平残でありますが、そのようなことで三月に比べて三ヵ月を経過した六月においてもたいして変わっていないという状況でございます。これらにつきましては、昨年以来私ども日本銀行ともいろいろその点議論をいたしまして、通貨の増発率が少し高いのではないかというようなことを話しまして、一七%台に推移いたしましたのも、そういった点相当考慮を払われておると思います。しかし引き締めの強さとしてはかなり強いにかかわらず、通貨が思ったほど圧縮されないというふうな点につきましては、私はやはり経済の総需要というもの、そういうものに基づいて通貨は発行される。しかし通貨の発行というものは常に受け身なものだけではありません。引き締めをするときには意識してこれを圧縮しよう、伸び率を縮めていこうという意欲は大いに働いておる。働いておるのだけれども、今回の場合都市銀行は確かに非常に金詰まりになっておりますが、企業段階ということになりますと、流動性の問題がありまして、まだ流動性が残されておるということから思ったほどの窮迫さを訴えていないというのが現状じゃないかと思います。そういう点金融の面における昨年度の流動性の積み重ねというものが、今回の引き締めを予想して行なわれた、そういうことが今回の引き締めのやや効果をそいでおるという点は確かにあろうかと思います。物価という点につきましては通貨の増発が多かったから物価が上がったというように考えるよりは、どちらかと言えば経済の実体面から——たとえば雇用の問題等からくるいろいろな生産性の上昇に見合わないような賃金の騰貴もあったのではないか、そういうことは直ちにサービス価格の上昇というようなことになります。そういうようなことで実体面の拡大のテンポがやや早過ぎたところから、消費者物価等の値上がりも顕著である。そういうことがとりもなおさず貨幣、通貨の増発を促すというようなことになっているのではないか。やはりわれわれ金融の面からいたしましてそういう通貨のあり方経済成長率をそのまま反映するような高い伸び率、これをいかにしてどういう目途で押えていかなければならないか、十分私どももやりたいと思いますが、そうは申しましても金融の面だけ非常に強く締めるということだけで万事が解決するとは思われません。やはり経済拡大のテンポというものに対する配慮が一そうこまかくなってこなければいかぬのではないか。物価問題というのは通貨即物価というような結びつきではなくて、もう少し根の深いところに原因があるのではないかと私は思っております。しかしもちろん私はいまでも通貨の増発率が高過ぎるという考えを持っております。そういう点について中央銀行に対しまして、十分考えてある程度計画的にこれを落としていくような程度に引き締めをやるべきではないか、そういうことを話し会っておるわけであります。
  41. 武藤山治

    武藤委員 いまの銀行局長の議論もうなずけないことはない。しかしいまは資本主義社会ですから、結局生産性が上がる、あるいは利潤追求がまだ可能だと言われる企業では、労使間において賃金というものはきめるものであるし、新所得政策というような政策も企画庁長官が今回発表したようでありますが、これも諸外国の例などを見ると、資本主義の体制下ではなかなかそれは無理で、そういう企業の生産性、あるいは賃金というものをコントロールするということを、基本的には資本主義はやれないのです。そうしてみると資本主義の中でこの物価騰貴をコントロールし、うまく規制し、調整するということは、やはり貨幣政策でやる以外に、いろいろ考えてみても名案はないのですね。結局貨幣をどう操作するか、利子をどう操作するかという限界が資本主義というものにはあるわけですね。そこでいまは日本は資本主義のシステムで動いているわけでありますから、そういうワク内で対案をいろいろ考えた際に、名案というものは何かないものか。われわれは名案というほどではないけれども一つの対策としてこの際ひとつ検討に値するような政策というものがあり得る、こう考える。しからばわれわれの考え方は何かというならばいまの日銀の貸し出しオーバーの問題や、あるいは今日の貸し出しの増勢の中身というものは大体設備投資方面に動いている。これは日銀でもそう言っておる。そうしてみると、この設備投資というものを政府が意図する方向にコントロールするためには、一定限度以上——どういう限度にするか、資本金の何倍にするか、あるいは売り上げ金額を基準にするか、あるは従業員、どういう基準にするか、とにかく資本金なら資本金の一定限度以上、自己資本を充実しないで借り入れをする場合には、限度以上の利子に対する高率適用ということを考えたらどうか、これが一つ。  もう一つは、一定限度以上借り入れをして、自己資本を充実しようという努力を怠った場合には、限度以上の利子は損金算入を認めないという税制にしたらどうか。何かそういうような形で、この成長が借り入れ資本にたよって無理な高度な成長をしようとする企業というものをある程度チェックしていく、規制をしていく、そして貨幣政策というものが、ある一定の、徐々にふえていくという好ましい安定成長という情勢に、金融情勢というものを持っていく、こういう意図的な方向は不可能なものであろうか、そういうものをした場合にはどういう弊害が出るだろうか。いまの金融の指導者としてそういうことはやれないのだ、やろうとするとこういう弊害が出てくるんだ、そういうものがあったらひとつきょうはお教えを願いたいと思って、銀行局長のおいでをいただいたわけです。その辺ひとつ私たちの考える二つの案に対して、銀行局長金融担当者としてどういう見解をお持ちになっておるか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  42. 高橋俊英

    ○高橋説明員 いまのお話は実はそういうふうにとれば、一定の自己資本を無視したような貸し出しに対して、高率の利率を適用せいというふうなことは、実は金融制度調査会の答申にもその見解の一端が述べられておるわけです。いまお話の税制上の損金算入を認めないというふうな問題も同じ考えなのでございますが、要するにそれらの点は一つの制度をつくって、借り過ぎをしないような制度を、企業にそういうルールをつくってそれを越えたならば罰則的な措置をとるという点、いまお話の点は罰則的な措置についての考え方を二つお示しになった。それはまことにけっこうなんですが、これはやろうと思えばできないことではないのですが、問題は一体どれだけ借りたならば不都合というふうにみなすか、それが非常にむずかしいのです。実は私も昨年世銀方式というものを独自で出してしまいましてだいぶ反撃にあった。いまでは私はあまりにも生硬のもので少しお粗末であったと思いまして、たいへん反省しておりますが、しかし考え方基本としては、何とか日本の企業が借金をすれば拡大し、他の競争者をけ落とすことができる。そういうふうな考えがあまりにも強過ぎる。しかもその上に最近になっては利益そのものもほとんど無視される。新しい投資をやって、そのされた資産が利益を生まないということもしばしばある。企業全体の資本に対する利益率は徐々に低下しております。こういうことではいわば資本主義的な経済発展というものは真の意味ではできないのであります。その点がオーバー・ボローイングで、何とかして金融のルールを確立したい。しかしながらそれをいきなり強制的な統制的なものにいたしますと、おそらく産業界、金融界の猛反対にあう。その理由の一つは、いままで非常な成長をしてきた。これは間接的に金融に片寄りつつありますが、金融機関からの借り入れというものが相当に行なわれたから、これだけの成長ができたという頭がある。ですからオーバーローンについても、金融機関側からいわせれば、必ずしも罪ばかりではないぞ、非常な利点だってあったではないか、これまでの成長をささえたのは金融だというふうなことさえ言うておるくらいです。形は非常にいびつになったけれども、全体はふくらんだじゃないかという考え方は、あまり健全な申し分とは言えませんが、そういう考え方が根底にある。それと成長産業というのは、そもそも非常なピッチで伸びる。例をいえば、石油化学なんか非常に需要の伸びが急カーブで上昇した。そういうものは初めから自己資本を多くしてやれといわれてもできない。やはり金融に相当多くたよらなければ、そういう産業は成長しない。せっかく需要があって、しかも外国からの輸入はほうっておけばふえる。それを国内でどんどんつくるのが何が悪いかというようなこと。借金をすることがむしろその場合必要なことです。その場合自己資本比率からいって、貸し出しをとめるような措置をとるということは、日本全体としてマイナスではないか。大きな理由を申し上げると大体こういった成長との関係ですね。ことに業種別の成長速度というふうなものは、みんな同じものではない。普通の繊維産業をとれば非常に成長度が低くなっておるが、一方では合成繊維の新しいものができれば急角度で上昇する。そういったものに対して、一律的な自己資本比率——一律と申しましても現状は是認する。現状からスタートしてあまり悪くしないように、あるいは改善するようにというような考え方ですけれども、それでさえ成長産業の場合にはたいへんなマイナスになるというようなこともございます。これは確かに一部はもっともな面がないではございませんが、私どもはそれらの点を考慮に入れた上で、どういうふうな融資の基準があるべきか。実はこれから九月に入りましてから、しばらく休んでおりました金融制度調査会におきまして、そういった点も検討してもらったらいかがであろうかということを考えております。何らかの形でその御趣旨に沿うような方策を生み出していきたいというふうに考えております。
  43. 武藤山治

    武藤委員 政務次官、いまお聞きのように高度成長、いわゆるノーマルな金融情勢下でない成長をしようとすると、いま言ったような借り入れ競争に依存して高度の成長をはかろうと企業競争が激化する。その結果の被害をその企業だけに及ぼすならいいけれども国民経済全体に影響を及ぼすわけですから、ひとつ資本主義のじょうずな運営、すなわち安定成長ということを自由民主党はおやりになろうと考えておるのでしょうが、それが安定成長の方向でないいま貨幣状況企業情熱になりつつある。ですからこういう点はやはり政府の中で発言権のある政務次官も十分今後ひとつ勉強をして、そういう点で国民に被害のいかない経済成長ということに留意をして、大いにひとつがんばってもらいたい、そういう要望をして、あなたのもし見解があれば見解を——弁護士としての見解でなく、きょうは金融財政通としての政務次官見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 鍛冶良作

    鍛冶説明員 その点は私は全くしろうとでございますが、先ほどから聞いておりますと、大いに研究すべき問題だと考えられます。大いに研究いたしまして、いずれまた愚見を申し述べて、御参考に供することもあるかと思います。どうぞ御指導をお願いいたします。
  45. 山中貞則

    山中委員長 ただいま大蔵大臣出席されましたが、このたびの内閣改造で再度留任されました田中大臣として、新たなる決意に基づく当面の基本施策について、所信の表明を聴取いたしたいと存じます。田中大蔵大臣
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 このたびの内閣改造に伴いまして、私が引き続き大蔵大臣の職務を行なうこととなりました。当委員会におきましても今後なおお世話になる次第でございますが、職責の重大さにかんがみ、決意を新たにして一そうの努力を傾注してまいりたいと存じておりますので、何とぞ変わらざる御支援を賜わりますようお願い申し上げます。  なお、この機会に、わが国経済の現状並びに当面の財政金融政策について、所信の一端を申し述べたいと存じます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕  わが国は、去る四月一日からIMF八条国に移行し、続いてOECDへの加盟を終え、国際経済社会の有力な一員として本格的に仲間入りしたのでありますが、まさにその年にあたり、来たる九月七日から十一日までの間、わが東京においてIMF、世銀等の総会が開催される運びとなりましたことは、まことに意義深いものがあります。この総会には、百をこえる世界の国々から大蔵大臣、中央銀行総裁をはじめとする代表団が来日することとなっており、その総数は二千人をこえるものと予想されております。このように、財政金融に関する各国の指導者が多数わが国に参集して、国際金融政策上の重要問題を討議することとなりましたことは、私ども深く喜びとするところであります。私はこの機会に、世界各国の指導者にわが国経済発展の姿を紹介するとともに、国際経済社会におけるわが国の立場についても十分に説明し、各国の理解を深めたいと考えるのであります。世界各国が互いに正しく認識し、理解し合うことこそ国際協力の基礎であることは申すまでもありません。  さて、本格的な開放体制に移行したわが国経済の最近の動向を見ますと、昨年末以来の調整措置効果が次第に浸透し、物価の動向は落ちつきを示しており、貿易収支の改善には見るべきものがあります。しかしながら、貿易外収支は依然赤字を続けております。貿易収支の黒字幅を着実に拡大し、経常収支均衡の目標に向かって国際収支の改善を進めていくには、なお一そうの努力が必要であります。しかも当面、生産はなお増勢を続け、設備投資意欲には依然として根強いものがありますので、現在の調整措置による慎重な気分を維持しない限り、ようやく盛り上がりつつある輸出意欲を再び後退させ、輸入需要の増加を来たして、国際収支を悪化させる等好ましからぬ結果をもたらすおそれが強いと考えられます。最近一部で主張されているいわゆる景気調整の手直し論につきましては、時期尚早の感がありますので、なお経済の推移を注視しつつ安定化につとめてまいりたいと存じます。  今後、わが国経済が開放体制下にあって、国際的な波動に対処しながら、さらに着実に前進を続けるためには、国際的、長期的な観点に立って、財政金融政策を適切かつ慎重に運営しなければなりません。すなわち、今後の経済運営にあたっては、安定的な成長を持続せしめつつ、その間においていわゆるひずみを是正し、国民経済全体としての効率を高め、もって世界経済の発展に伍していける実力をつちかうことを基本となすべきであります。  次に、以上申し述べましたわが国経済の現状並びに経済運営の基本態度にかんがみ、当面の財政及び租税政策について一言いたしたいと存じます。  昭和四十年度予算編成につきましては、財政需要はますます増加するものと思われるのでございますが、他方、財源があまり伸びないことも予想せられるのでございます。来年度におきましても引き続き健全均衡財政の方針を堅持することはもとよりであります。しかし、限られた財源の中でも、農業、中小企業の近代化、社会保障の充実、社会資本の整備等の重要施策を推進し、経済、社会の各部面における体質強化、ひずみの是正に真に効果的な施策はこれを積極的に拡充してまいる考えでありますが、そのためには不合理な財政負担はこれを極力排除し、既定経費についてもその必要性をこの際再検討し、思い切った節減につとめる決意であります。  なお、財源の不足を補うため公債を発行することにつきましては、開放経済下にあって国際収支の均衡及び物価の安定をはかりつつ、適度な成長を長期にわたって保持していくことが強く要請されておりますので、公債発行により経済を刺激するようなことは厳に戒める必要があると考えるのであります。  次に、今後のわが国税制あり方につきましては、一昨年来税制調査会において、基本的、かつ体系的な観点から慎重に検討を行なっており、本年末には長期的視野に立った税制あり方についての基本的な方向づけが行なわれることとなっております。したがって、来年度税制改正につきましても、この調査会の答申の線に沿って改正にあたりたいと考えておりますが、税負担の公平を期し、また今後における経済の安定的成長をはかる見地に立って、国民税負担の軽減、合理化に一そう努力したい考えであります。  次に、金融政策につきましては、さきに申し述べたような経済の動向に顧み、当面は金融調整措置の結果生じている慎重な気分を持続せしめることに意を用い、その間にあって真に必要な近代化、合理化投資が効果的に行なわれることを期待したいのであります。なお開放体制下にあって、金融界の秩序と金融機関の経営態度をより一そう適切なものとするよう配意する所存であります。また、企業に対して長期の安定した資金を供給し、資本構成の改善をはかり、もって国際競争力ないし抵抗力をつちかうため、資本市場の育成強化をはかることも今後ますます肝要であります。先般の通常国会において各位の御理解と御協力により新たに証券局の設置が認められましたことは、まことに喜びにたえないところでありますが、資本市場育成の重要性にかんがみ、証券行政の一そうの充実につとめ、特に業界の体質強化の市場環境の整備に意を用いたいと考えております。  なお、国際金融並びに対外経済政策の問題でありますが、さきに申し述べましたとおり、国際経済社会におけるわが国の比重は次第に増大してきております。しかし、このことは同時にその責任も重くなっていることを意味するのでありまして、わが国の役割りが重大になるに伴って、今後は国際協調の線に沿って政策を進めていくことがますます必要になってくるわけであります。国内体制の面におきましても、八条国移行を契機として、従来の為替管理を中心とした体制から、財政金融政策の健全かつ慎重な運用によって国際収支の均衡を保ちながら、国際間の商品サービス取引並びに資本移動を拡大する方向へと移行しつつあります。このときにあたり、さきの国会において国際金融局の発足が認められましたことは、まことに時宜にかなったものと考えるのであります。  次に、近年後進国の経済開発とこれに対する先進工業国の援助が重要な課題となっており、さきの国連貿易開発会議を契機に、この問題は一そう広い場で討議される方向に進んでおります。わが国といたしましても、特にアジア諸国の開発に大きな関心を払いながら、欧米諸国と協調して、この問題に国力の許す範囲で貢献してまいりたいと考えております。  さらにわが国輸出の振興のためには、諸外国における関税障壁を低め、またわが国商品に対する差別的取扱いを撤廃させることがぜひとも必要であります。この見地から、ガットにおける関税一括引き下げ交渉につきましても、主要貿易国の一つとしてこれに積極的に参加する所存であります。  以上わが国経済の現状と当面の財政金融政策について、若干の考え方を申し述べました。  戦後十九年、わが国経済は目ざましい成長を遂げてまいりましたが、われわれの歩むべき道はまだ険しく、解決すべき困難な課題も多く残されております。われわれはこの際、わが国経済の前途に自信と希望を持ちつつ、じみちな努力を通じて当面の課題を一歩一歩解決していくべきであります。私も大蔵大臣として最善を尽くしてまいる所存でありますので、皆様方の御協力と御鞭撻を重ねてお願い申し上げます。
  47. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 引き続き質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  48. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 田中大蔵大臣が三度も大蔵大臣になられて、いまいろいろ抱負をお聞きしたのでございますが、戦後に大蔵大臣がこんなに長くその地位にとどまったということは例がないというだけに、やはり一般に期待をされているわけです。昔は戦争前に高橋財政とか井上財政とか、そのよしあしは別にして、いろいろ問題になったのですが、私かつて廣田弘毅さんがオランダの大使をやって帰られたときに、オランダの大蔵次官をやったコラインという人が十五年も大蔵次官をやって、その後大蔵大臣になり、総理大臣になったわけであります。そういう例が外国にあるわけですが、大臣が三度も同じ地位におるということは、日本では珍しいことじゃないかと思うのでございます。そういう点で、田中さんもいままでいろいろ政調会長もやられておったし、それから大蔵大臣としてなかなか要領のいい答弁はされておりますが、しかし田中さんらしい財政、大蔵大臣というような立場に立って、今度はひとつやってもらえないか。われわれは考え方もいろいろ違いますし、いまの資本主義の社会で、われわれが思うような財政が行なわれるということは望みませんけれども、少なくとも、戦後最高の長い大蔵大臣として、やはり田中さんだからやれるというような、そういう抱負経綸というものは一体おありであるか。幾つも幾つもという欲ばかりは申しませんが、機構もだいぶ整備されましたし、大蔵大臣としては三度目ならば、もうしろうとというわけにもいきませんから、そういう点にはどういうことをお考えになっておるのか、まずその点を伺いたいと思います。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 私が三度目の大蔵大臣に留任をいたしましたということを端的に申し上げますれば、私の力量とか私の立場でなったのではなく、皆さんからも格段の御協力をいただいておりますので、それらをあわせて評価されたものだと考えておるわけであります。いままでより以上にひとつ御協力をいただきたい、こう考えます。  佐藤さんはいろいろ高い立場でこれらの財政のあり方を一体どうするのか、一つの時期を画する必要があるという御発言でございましたが、私自身も政党人といたしまして、財政の行き方に対するいろいろな国民的注文とかいろいろな角度からの再検討が望まれておることは自覚をいたしておるわけであります。でありますから、国際情勢から見ました、より高く広い、しかも長期的な立場に立った財政金融経済諸般の施策に対して、より慎重かつ積極的でなければならぬということもそのとおりでございます。しかし、ただ政党内閣でございますので、私が個人的カラーを出すというようなことは、戦前と違いまして、自民党と政府が一体、また大蔵省というチームワークの中から、より円満にしてより合理的であり、より効率的な財政方針を打ち出さなければならぬ、こういう立場でございます。これから一年ないし二年になるかもわかりませんが、いずれにしてもその間に田中財政、いわゆる高橋財政といわれ、池田財政といわれたようなそういうものを私が打ち出せるというような気負い立った気持ちはございませんが、いずれにしましても、両院において理解を得られ、また御賛成、御鞭撻が得られるような方向で十分努力をしてまいりたいと思いますので、引き続き新しいアイデア等でございましたら、いろいろ御教示を賜わりながら前進を続けてまいりたいと考えておるわけであります。
  50. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私は田中さん御承知のように政党政治であるという原則に立って、高橋さんは政友会、それから井上さんは憲政会——民政党になったのですが、そういう立場であるし、私たちが望んでおるのは、田中さんはいわゆる正規の大学の秀才ではない、それから民間で苦労されて、いわば大蔵省からいえば型破りの人だということで一般に期待されておるわけです。そういう点でいまの日本の池田内閣というのは、どうも官僚がすべてをやっておって、政党政治とは言うものの、実際は官僚に支配されておるのではないかというような危惧が生まれるわけです。田中さんは大蔵省の出身ではありませんし、政調会のときも田中さんの構想はなかなかおもしろい点もあったということを聞いておるわけですが、そういう点で私たちはただ政党政治だから田中さん一人でやれるという考えは持っておりませんけれども、少なくとも各省とも秀才の局長諸君が考えるような原案で、それをただ上で政党政治だという形でやるだけではうまみがないと考えるわけです。あなたは勘のいい人でありますから、そういう点でひとつやってもらいたいことを要求するわけであります。  そこで、実はきょうの新聞にも出ておりますIMFの問題でありますが、御承知のように日本は貿易の黒字がやや続きましたけれども、貿易全体とすれば貿易外収支が赤字でございます。これは池田総理にも聞いたことがありますが、こういう場面で相当のドルを必要とするわけですが、そういう点の計画があるのかないのか。これは十ヵ国の蔵相会議できまったからということで、来月早々日本で行なわれるそうでありますが、これは日本の国際的な問題で非常に重要な問題だと思うのですが、そういう点について、日本側の財政当局者としての田中さんの考え方は一体どのようになっておられるか、伺いたいと思います。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 十ヵ国大蔵大臣会議の決定は、今朝発表されておるわけであります。この十ヵ国の代理会議において決定しました決定は、来年度IMFの増資が行なわれるということに対しては、適当な一般的増額及び総体的調整をやろうという結論を出しておるわけであります。日本は、IMFの増資が発表されれば当然増額に応ずるという基本線でございます。これを出す場合には米ドルで出すというのではなく、御承知のとおり金で二五%、円で七五%払い込むことになっておるわけでございます。いまIMFには、外貨準備高に算入しております一億八千万ドルのゴールド・トランシュ分が預けてあるわけでございます。そういう意味で、日本の増資割り当てというのは確かに相当な額になると思いますが、反面国際機関としてのIMFのスタンドバイ等の制度の拡充、円滑化ということもあわせて考えられておるわけでございます。でありますから国際収支の将来に対処しまして、日本の出資額が大きくなれば当然スタンドバイの額も大きくなるわけでありまして、イギリスは十億ドルが今度十五億ドルとか、アメリカがウイーンの会議で六十億ドルとか、こういう貿易量が大きくなったら外貨準備高の目標が大きくなるというような場合、やはり国際収支に寄与し得るスタンドバイというものにつきましては、出資額がふえれば当然そのワクも大きくなるという考えでありますので、いますぐきまるわけでもありませんし、日本にどのくらい特別割り当てがあるのかという問題もこれからおいおい検討せられていくわけでありますが、しかしIMFの国際的に持つ機能、重要性、日本の過去の国際収支の不安定期に対処しまして貢献した歴史的な事実等もございますので、将来のIMFの増資に対しては前向きで出資に応ずるということであり、しかもその結果は日本の国際収支に寄与するという考え方に立っておるわけであります。
  52. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 IMFの問題は今後いろいろ発展しますので、時間がありませんからそれくらいにしておきます。  次に問題になっておりますのは、金利の引き下げ問題で日本銀行のあり方ということが非常に問題になっておるわけです。これは前々から当委員会で山際総裁を呼んだり、池田総理大臣田中さんにもいろいろ意見を聞いたのでありますが、一体おおまかに言ってどのような政策をとっていかれるのか。これは日銀の中立性という問題もありますが、この問題についてはどういうようにお考えになっておられますか。これも大きな問題でございますから、問題だけひとつ提起したいと思います。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 前国会での御質問にもお答え申し上げましたとおり、もうすでに二年間の長い間御審議を願い、しかも答申をいただいてから二年間たなざらしということになっておるわけでございます。国会審議過程におきましては、四月一日の八条国移行という歴史的な事実に対処して、この前提条件として日銀法の改正が行なわれてしかるべきであったという御指摘もあるわけでございます。私自身も、政治的姿勢また事実問題から考えてもそうあってしかるべきだったと思うわけでありますが、何ぶんにも中央銀行法という問題に対しては非常に重大な問題でございますので、慎重を期したということで御了解いただきたいと思います。しかし漫然として現行法を維持するという状態ではありませんので、政府としましては広く意見も徴しながら、第二には答申の点を尊重しつつ、第三点は次の通常国会に提出をめどとして、いま作業を進めておるわけでございます。答申の中で、今日までいろいろ世の中で議論をせられましたのは大蔵大臣と日銀総裁の権限の問題であります。これは日銀の中立性ということと、法律技術的な面から見た政府と国会に対して連帯して責任を負う、憲法上の規定から見まして、内閣と日銀との問題、大蔵大臣と日銀との問題ということが一点残っておるわけでありますが、これらの問題は私は十分理解が得られ、結論が出るという考え方でございます。なお答申になかった問題でも、戦後の金融機関の態様に対処しまして、中央銀行としてどう整備すべきかという問題も現在検討いたしておりますので、できるだけ早い機会に成案を得たいという考えであります。
  54. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 羅列的になりますけれども、もう一つ問題になっております証券問題で、今度松井さんが証券局長になって、大蔵省も新しい構想で進まれるわけでありますが、非常にいろいろな困難な問題もあるし、免許制の問題もあるし、四大証券の御承知の過当競争という問題もありまして、政府は声を大にして、たいこをたたいても、なかなか踊らないという形で、ますます不況の現状にあるわけです。資本主義の社会で景気が悪くなれば物が下がるのは当然でありますが、これは一つのバロメーターでありますので、これは経済のひずみであり、一面においてはこれは政府の失敗ではないか。これは高度成長政策の失敗ということも一面にありますが、そのあふりを食って相当痛めつけられておるのではないかということも言われております。田中さんは先日もこういう問題について、証券の懇談会を開くとか、何かもう少し大蔵省側と業者側との間に、一つの懇談的な話し合いをもっとやろうというような心持ちで、この間そういう談話をやられたのでありますが、証券業界の不振というのは、大衆に影響を与えるということで、非常にすみずみまで影響があると思うのでありますが、こういう点について大蔵省は一体どういう方針で今後進められるのか。証券局もわざわざできましたので、そういう点についてのはっきりしたことばを承りたいと思います。
  55. 田中角榮

    田中国務大臣 証券取引法の改正は、いま成案を得べく努力をいたしておるわけでございますが、できれば次期国会、おそくとも通常国会にはひとつ御審議をいただきたいという考え方でございます。この主要とするところは、御承知だと思いますが、資本市場の拡大、育成強化という問題、また市場と大衆投資家との間に入っておる証券業者自体を強化しなければならないという問題、また証券取引所というような機構を、法制上どうするかという問題が重大な問題になるわけでございます。証券取引法というものは、観念的に申しますと、在来の考え方基礎にしてつくられておるということは事実であります。しかし開放体制下に入りまして、新しい角度から見ますときに、このような状態で一体いいのか。現象にだけとらわれないで、これから五年、十年の長期の見通しを立てながら、当然最低といえども四十三年まで、政府がいま長期経済見通しを立てておるのでありますから、この中で金融という間接資本によるものがどう、また直接資本によるものがどうという、おおよその想定が行なわれるべきであることは事実であります。同時にブローカー業務とかディーラー業務とか、いろいろ責任を持つように業態を区分をするということも先進諸国で行なわれておることでありますし、こういうこと自体、銀行においてもとられたことでありますから、こういう問題に対しても、積極的な姿勢で検討して、将来に道を開いておく、はっきりとした責任体制をとるということも、法制の整備の過程におきまして当然検討さるべきであります。こういう観点からいま証券取引法の検討を急いでおります。証券取引法の具体的な問題としては免許とか、あるいは免許制にするとか、資本金を引き上げるとか、上げる場合に一体いまある証券業者をどのような経過措置によって救済をしていくのか、またその見込みはあるのか、またいまの業者だけを中核として育てていくというのか、新しいものはどういう状態にどういうふうにして構成員の中に入ってくるのか、これは非常にむずかしい問題でありますが、各国の事情等も十分に見ながらいま検討をいたしております。ただ大ざっぱに申しますと、在来の観念のように証券業者、証券市場というものが特定なものであるという考え方よりも、これからの日本の産業を育成し、国際競争力をつけていくためには、やはり資本市場と間接、直接の二本の柱というような考え方基本にしなければならぬ。戦前六一%もあった自己資本比率がいま二五%を割っております。これは統計数字は二七%、二六%といいますが、事実の数字は二五%を割っているという事実、下降の一途をたどっておる。しかも年間わずか五ないし六千億円の増資に対しても増資調整が必要であるというのが現状であります。でありますからそういう意味で自己資本比率をどこまで上げなければいかぬのか。これは自由化になっていきますと、当然資本の自由化というような問題が起きてくるわけでありまして、その起きてきたときにばたばたやれる問題じゃありません。でありますから、そういう意味で日本の企業の真に根本になる資本問題と取り組むというのが今度の証券取引法の改正の意図する最も大きなものでございます。銀行を育成するには百八十年、七十年の歴史があったわけでありますので、テンポの早い今日といえども相当ピッチを上げて資本市場の育成強化の施策をとりたいというのが大体の私の考えであります。
  56. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろ多岐にわたりますが、予算編成期になりまして問題になるのは、これは公共料金の値上げの問題と同時に公務員のベースアップ、それから米価の引き上げ等の問題で非常に財源に不足を来たすような心配がわれわれにはあるのですが、この物価値上げ問題とからんで予算編成期に相当な難関が予想されておるわけですが、一方においては一千億減税とかいうようなことを盛んに言っておる。しかしそういうことで一体まかなっていけるかいけぬかということについて当然に問題になってくると思うのでありますが、こういう点については、大蔵大臣はどのようにお考えになっておられますか、簡単に御説明をお願いしたいと思います。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 現在まだ来年の経済成長率を予想することもむずかしいことでございますし、今年度もまだ八月に入ったばかりということでありますので、今年度経済成長率が実質どのくらいになるかということはなかなか想定しにくい時期でございます。しかしその時期であるけれども、反面八月三十一日までには政令によって概算要求を提出すべしということになっておりますので、いま御質問するわけであります。昭和三十六年度は対前年度比二四%余、それから三十七年度も同じ二四・四、三十八年度が一七・四、三十九年度が一四・二、こういう対前年度比当初予算に対する膨張率でございます。でありますから、一五%、一八%、二〇%、二四%も対前年度比大きくならなければだめだという、こういうことになると別でございますが、大体そういうような状態ではないか。先ほども私の所信表明で申し上げましたように、健全均衡を貫かなければならない。やはり長期の見通しを立てるときに健全な姿勢はどうしても確保せざるを得ないという考えでありますので、むずかしい予算編成ではありますが、皆さんの御協力を得ながらひとつ編成は何とかしていきたいという考えでございます。私は新聞等で報道されておりますから、再任した日に私が一〇%くらいと言ったじゃないかということでありますが、これは国会という正規の場でありますので、一〇%とは一体どういう根拠でということを御質問になると、なかなかむずかしい問題でありますが、去年もちょうどいまごろ一〇%見当くらいで引き締めていこうじゃないかという考え方で、今年も一〇%程度目標ということでおるわけでございます。来年の経済成長率はとても見通しがつきませんので、今年度は名目九%でありますので、これがどのくらいになるか、私は当初大体一〇%くらいになるのではないかというように個人的に予測をしております。これらの問題は十月の末から十一月の初めくらいに、例年よりも一ヵ月ぐらい早目にひとつおおよそのめどをつけるような作業をピッチを上げてやりたいといういまの考えであります。
  58. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 同僚議員からたくさん質問が出ておりますから、私は大体概略なことで終わりますが、先ほど武藤委員からも泉さんへいろいろお話がございました中で、あなたと同じ派の佐藤派の愛知文部大臣から私学振興のために寄付金の所得税控除の幅を広げるというような、こういう御発言がございまして、私たちも田中さんも私学出身でありますけれども、今度大学生の急増対策など、あるいは科学振興などで非常に私学の財政は窮迫しております。結局は月謝の値上げというような問題になって出てくるわけでありますが、少なくとも最小限私学に対する寄付金くらいの免除はこれは田中大蔵大臣の力でこそできるのであって、いまの大蔵省の局長の人は大体東大出の秀才ばかりでありまして、こういう人は私学の苦労を知らない。ぼくらみたいに頭の悪いのは私学を出たのでありまして、そういう点でひとつ私は田中さんでこそできると思うので、そういう点でどういう考え方を持っていられるか。これはなかなか愛知さんとしてはいい構想を発言されたと思うのでありますが、そういう点についてどういうお考えを持っておられるか、それくらいの熱意は少なくとも民間出の田中大蔵大臣にできそうだと思うのでありますが、いかがでございますか。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 私学振興は必要であるということは、これは論を待たないところでございます。私が私学の出身であるとかないとかにかかわらず、私学振興は非常に重大な問題であるということは御指摘のとおりでございます。また私学の振興のためにいろいろな施策を御発表になるということは歴代文部大臣の常にやっておることでございます。ただ私が考えますことは二つに分けて申し上げますと、一つは日本が官学重点主義であったということでありますが、これからはやはり私学に相当ウエートを置かなければいかぬ。その私学にウエートを置く場合の国の財政、国と私学との関係、これは教育の中立性の問題もございますし、それから同時にさんざん議論された憲法上の問題もありますし、いろいろな問題があるわけであります。しかし私学の充実強化ということに対して政府も積極的な施策をとるということは過去にもやっておることでありますし、将来もより一そうな拡充政策をとるという姿勢は申し上げられると思います。  それから私学に対しての施策としては二つございます。一つは私学振興会を通して私学に金を提供するということが一つ。もう一つは指定寄付金制度でございます。いまあなたが御指摘になったのは指定寄付金制度、またその裏には私学に対してはもっと低利な資金を確保できるような措置をとるべし、こういうことをあなたは含んで御質問いただいておるわけでありますが、指定寄付金の問題に対しては、一般の公益法人の倍以上の損金算入を認めておるというような、いろいろなことがございます。文教委員会で、あなたは全額免税にすべし、こういう御議論でございます。全額というところにいろいろな問題があるわけで、バランス論とか、そんなものではない、いろいろな問題がございますが、いまの場合、主税局長は万全の体制をとっておりますので、現行制度をこれ以上拡充することは必要があるかどうかという御答弁をしたかもわかりませんが、制度の問題は、実態に即応しながら十分調査研究をいたします。前向きで調査研究をいたします。具体的にどうなるかというのは、もう少し時間をいただきまして、十月、十一月、重点施策をきめよう、早目にきめるときには知恵をしぼってできるだけのことをやりたいという考え方で、御了解をいただきたいと思います。
  60. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に、冒頭に申しましたように田中さん三度目の大蔵大臣で、戦後最高の長い大蔵大臣、池田内閣はそう長くは続かぬ、一年くらいだと思うのですが、その間にひとつ田中さんらしい財政をやって、ひとつそういうような効果をあげていただいて、せっかくあなたは民間出で苦労をした珍しい型の大蔵大臣でありますから、ぜひひとつわれわれの期待に沿うような仕事をやっていただくことを要望いたしまして、ほかの委員に譲ることにいたします。
  61. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 只松祐治君。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 再び大臣になられて所信表明がございました。しかし、その中で明年度予算等には若干触れられましたが、本年度の補正予算等にはほとんど触れられなかったようでございますが、私はその点について若干お伺いをしたいと思うのです。大体あとでお聞きします税調の問題と関係が出てまいりますが、本年度予算三兆二千五百五十四億円、六千八百億円という戦後最大の自然増収の見積もりを組まれた。したがって税の伸びがない、こういうようなことで補正予算を組むのが困難だろうということがいろいろ新聞でも報じられております。本年度新潟の震災であるとか、あるいは水害も起きましたし、あるいはまた公務員のベースアップあるいは消費者米価の値上げ、いろいろこういう問題が起こってくるわけでございますけれども、補正予算をどういうふうに組むつもりであるかひとつお聞きをいたしたい。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 現在まだ補正要因が確定的になっておらないわけでございます。きょうあしたあたり、二、三日うちに人事院の勧告が出そうだということは新聞承知をいたしております。これがどの程度に出るかはわかりませんが、これが出れば相当大きな財源を必要とするということは予想せられるわけでございます。いま新潟地震とか長雨災害とか集中豪雨というものの御指摘もございましたが、確かに大きな被害でございますけれども、三十九年度三百億の予備費を計上いたしておりまして、今日現在で約二百七十億余の予備費を現に持っておるわけでございます。でありますから、既往の災害等に対しまして財政措置を必ずしもいますぐ早急に必要とするかという問題は考えられないわけでございます。しかしベースアップの問題とか、またもう一つはこれからの台風シーズンに入って台風災害がどのくらいあるかという問題、それから先ほども御指摘ありました生産者米価引き上げに対して、食管に対してどの程度の繰り入れを必要とするか、これは繰り入れを必要とするのか、消費者米価の引き上げがある時期に検討せられるということになれば、一体その間の関連はどうなるのか。いままだ確たることは申し上げられない段階でございますが、いずれにしても補正要因は出てくる可能性は十分あるわけであります。きょうあすあたりでも公務員の給与に関して答申がいただければ、まずそこらの問題からひとつ考えていかなければならぬということでございます。  先ほど申しましたように、経済成長率九%でありまして、税収は大体目一ぱいに見積もっておりますので、現在相当大きな補正予算を組めるというような見通しはいまのところ非常にむずかしいというのが私の見方でございます。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 おおよそでも人事院のベースアップもすでに何パーセントか線は新聞にも報じられておるわけであります。それから米価も、いまからこれはおきめになることですが、二〇%ですか、線はいろいろ出ております。そういたしますと、災害というのは今後起こることですから予側できないでしょうが、そういうもろもろのものを勘案してどの程度の補正予算が組めるか、そういう腹づもりくらいないと、これは大蔵大臣としてあるいは大蔵当局としてはやっていけない、そういう点もわかりませんか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、米価は財政的な立場からいたしまして、多少引き上げていただかなければいかぬのではないかという考えでございます。これは公式には初めてになるかもわかりませんが、生産者米価が上がりまして、このままの計算でいきますと、千九百億に近い一般会計の繰り入れということでありますので、その他いろいろな問題とも総体的な問題として考えるときには、消費者米価の引き上げということは必要であろうという考え方であります。これは総理に申し上げたわけですが、総理は非常に慎重であります。総理大臣とすれば高い立場から考えますから、慎重に検討しろということでございますが、財政当局者としては、消費者米価の引き上げはひとつ検討しなければならぬと考えております。そうしますと、あとは公務員の問題はまだ出ないわけでありますし、新聞に出ている数字でもって逆算すればということでありますが、先ほど申しましたように、これはひとつ出ましてから正確な数字検討いたしまして御報告いたしたいと存じます。でありますから、いまの段階では、補正予算をどうすると言うには、非常に時期が早いという感じであります。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 大臣ができなければ泉さんでもどなたでもけっこうですが、補正予算が組まれると、当然それに見合う税収というものが予測されなければならぬわけですが、新聞では五百五十億円前後というようなことがたびたび報じられている。本年度そういう諸般のことを考慮し、かついまの経済情勢の中からどの程度の——たとえば所得税の源泉、申告、あるいは法人税、間接税、こういうもので、およそどの程度年度税の伸びがあるかというような点について見通しがあったら、お答えいただきたい。
  67. 泉美之松

    泉説明員 先ほど武藤委員にお答え申し上げましたように、本年度はまだ三ヵ月経過した収入実績しか判明いたしておりませんので、今後本年度内に自然増収がどの程度に生ずるかということは、現在の段階におきましては的確に申し上げるわけに参らないのでございますが、ただいままでの三ヵ月の収入実績から見ますと、これは源泉所得税の分と申告所得税の分と含めまして、所得税におきましては、若干の増収が出るのではないか、ただ法人税につきましては、この六月末の収入比率は前年度に比べまして一%下がっております。したがって今後予算どおり収入を確保できるかどうかということは、この九月決算が三月決算に対して、どの程度よくなるか、これにかかっておるのでございます。九月決算の様子がまだはっきりつかめない現状におきましては、法人税につきましてどの程度収入をあげることができるか、まだ予測いたすことができかねております。そのほかの税目におきましては、物品税及び有価証券取引税につきましては、御承知のとおり株の取引が非常に少なくなっております。これはかなりの減収を来たすであろうと思われます。それから物品税につきましても、出荷の状況を見ますと、少し減少を生ずるのではないか、そのほかの税目におきましては、関税がかなりの増収を見ております。関税のほうでは増収を来たすのではないか、あれこれ考えあわせますと、現在の段階におきまして、まだ的確に本年度増収額が幾らになるかということは申し上げかねる段階でございますけれども、大体新聞に出しおりますように、本年度増収の額としては、現在の段階では五百億円程度ではなかろうかというふうに考えられるのでございます。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、試算からいくと五百億円前後、こういうことになりますと、当然に米価の値上げ、あるいはベースアップ、あるいは災害、いろいろなものを見積もってまいりますと、補正予算を組むには特別の公債でも発行しない限りは五百億前後の補正予算しか組めない、こういう形になってくるわけであります。そういたしますと、時間がありませんから、あまりそこまでは論議できないと思いますが、私たちが一番最初予算審議しあるいは税収の問題を審議して、六千八百億というこの自然増収を見込んだ一ぱい一ぱいの予算を組んだのは誤りではないか、こういうことを私たちは言って論議をしたわけでございますが、今日の段階において大体私たちが言ったことが正しかった、こういうことになるのではないか、こういうと大臣のほうからいえばそういうことじゃない、こういう答弁をされるのではないかと思いますが、この数字から見れば補正予算を組むことは非常に苦しい無理な状態になってきておる。そのことをお認めになりますか。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 苦しいであろうということは認めます。苦しいだろうということは認めますが、補正予算の要因が出るであろうから税収を控え目に見積もれ、こういうことから見ますと、税収というものはちゃんとした見積もり、正常な見積もりをしなければならぬ、毎回毎回国会から御指摘を受けておるわけです。毎回千億も二千億も税収が出るということば大蔵省考え方がよろしくない、こういうことでいつもおしかりを受けておりますから、その意味では非常に適正な見積もりをした、こういう評価になるわけであります。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 先ほど消費者米価は上げなければならないだろう、こういう初めての大臣の答弁があったのでありますが、これに関連いたしまして国鉄あるいはバス、ハイヤーあるいは医療協議会の答申によって医療費も年内に上げなければならぬ。こういう形で物価というものが来春からあるいは年度末から軒並みに上がってくる。公共料金が上がってくる。そうすると一般物価に当然はね返ってくるわけでございますが、これと先ほどお話しになりました明年度予算、これを一〇%程度にとどめた予算を組んでいきたい、こういう話でございます。そういたしますと当然増といいますか、こういうものがやはり二千億前後予算というものは出るわけでございます。先ほどちょっと予算にも触れられましたけれども、そういう中で中小企業、農村には特別の手当をしたいとか、あるいはいろいろな政策をしたい、こういう文字はよく並べられるが、先ほど言われました本年度税収、それから来年度の税の伸び、そういうことから考え、あるいは物価の値上がり、こういうものから考えて具体的になかなか新規事業というものは明年度起こし得ないのではないか、これで全般を論ずる時間はもちろんございませんが、よく言われております農村、中小企業に対してひずみを直す、こういう点だけをとらえましてもなかなか容易ではないと思います。その点に関する手当をするとか、ひずみを直すとかいうこと、具体的にどういう政策をこういう苦しい財源の中でおやりになるか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 物価問題につきましては御承知のとおり今年度の当初見通し四・二%というものよりも現在は低い数字でございます。でありますから、年度間を通じて当初経済企画庁で見通した線で押えたいという考え方で諸般の施策を行なっておるわけでございます。そうして公共料金の値上げというものは十二月三十一日まではいずれにいたしましても閣議で決定をしておりますので、これは行なわないということはそのとおりでございます。医療費の問題は、これは中央医療協から答申かございまして厚生省でいま作業をしておるわけでございますが、これはいつから是正されるかという問題は未定でございます。  それから一月一日から米の代金も上がり、バス運賃も上がり鉄道料金もみな上がるのかということになりますと、これは物価問題も御指摘のとおり問題がありますので、これは一月から上げるもの、四月になって上げられるもの、また上げられないものというようなものはそのときになって状況を十分参照しながら政府は一つずつ考えてまいる、しかも慎重に考えているということで、ひとつ御了解いただきたいと思います。  来年度の施策は非常にむずかしい財政事情の中で重点的にやれるのかということでございます。これはやりたい、ぜひやらなければいかぬ、こういう考えでございます。まあ重点は中小企業対策とかそれから農村対策とか、農山漁村対策とかいうことでございます。具体的な農村対策等で一体どういうものがあるか、それはいま農林省で検討し、概算要求を今月末までに出すわけでございますから、政府としても十分検討いたしますが、一つ例をとれば、金を出す、補助金を出すというだけではなく、これは既定経費の中で先ほど申し上げたように合理化をしながら、整理をしながら、それを重点的に配置がえをするということも一つのことでございますし、農業政策費の中で食管の持つ二千億に近い金、こういうものは一体いいのか、これはある程度消費者米価の引き上げということでまかないながら、それをどのように重点的に農林省が予算の中で使えるか、こういう問題もあります。また一般会計から繰り入れて長期低利、無利息に近いようなものさえもやらなければいかぬという政策がございますが、これも農業系統金融という農業の中核をなしておるようないわゆる農中系統の金、農林漁業金融公庫との調整がどこかでもっと考えられないのか、これはむずかしい問題であります。むずかしい問題でありますが、御自分の金を農協から県信連を通し、これを農中にあげ、自分の金に自分で利息をつけておる、そのかわりに、必要であるにもかかわらず金は半分以上コールに流れたりまた関連産業という名において大企業に流れておる、農村そのものは資金不足であるというような問題をもっと合理化しなければならぬ。むずかしい問題ではありますが、やはりむずかしい問題とまっこうから取り組むというところに、予算の効率的な運用もあるわけでありますので、そういう面からひとつ十分検討してまいりたいと思います。  中小企業につきましては、いまの新聞でも総理が中小企業金融公庫債の発行とか大きな問題が出ておりますが、これらの問題、商中との関係をどうするか、こういう問題もあわせてこれからひとつ予算編成期までの間に、予算ができればいいんだという考えではなく、革命的というところまでいくかどうかわかりませんが、少なくとも大蔵省から見たら革命的、積極的、画期的、こういう考え方でやってまいりたい。  減税とかその他地方開発とかいろいろな重点政策が考えられるわけでありまして、予算が二〇%伸びなければ、税収が一五%以上伸びなければ何もやれないのだという考えではなく、ここでひとつ洗い直しをして、もっと重点的な政策が行なえるような予算の組み方をする、しかも五ヵ年計画の初年度とするか、十ヵ年計画の第一年度とするか初年度とするかという系統立ったものの考え方予算の効率化を考えてまいるというのが、いまの段階に申し上げられることでございます。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 予算委員会ではございませんから予算の問題はこのくらいにして、当然それとの関連性、あるいは当面の問題になってまいります税制の問題について二、三お尋ねをしたい。  さっき武藤委員の質問にも泉さんはいろいろお答えをされたわけですが、税制調査会がいまいろいろ作業をやっております。あるいは先ほどの泉さんの答弁その他を見ましても、所得税中心とした減税を行なっていきたい、こういうことが言われております。しかし大蔵大臣あるいは池田総理のほうでは、政策減税をやっていきたい、こういうことで、これは新聞その他でも、対立とまでいたしておりませんけれども、大きな見解の相違を示しておることは御承知のとおりでございます。さっきも泉さんは法人税などの中心の政策減税ということは賛成ではない、こういう意味発言をされました。しかし先ほど言うように、大臣のほうでは、池田さんの要望もあってそういう政策減税中心に行ないたい、こういう発言をなされておりますが、泉さんと大臣と食い違っておるか、あるいは大臣発言一般新聞が報ずるとおりであるかどうか、その点について……。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 私と主税局長との考え方は全然同一でございます。過程においては別な道をとったほうがいいというようなことは、これは十分、意見はいまの段階で聞かれればこれは食い違いらしきものはございますが、最終的にきまるときはまさにこん然一体ということでございますから、過去二年間の例を見てもおわかりのとおりでありまして、決定するまでにどちらが効率的かということの研究はお互いに十分するわけでありますが、最終的に事務当局と私との間に意見の相違があるというふうには理解しておりません。年々減税をしてまいったわけでございますし、また課税最低限の引き上げ等やってまいりましたが、なお直接税、特に所得税を納める方々には、税がやはり重いという感じがどうしてもあるわけであります。納税人口が非常にふえる。もちろんこれは高度成長ということでありまして、所得が急速にふえるということでございますから、年間一一%平均、四ヵ年間も続けて所得がふえるということは例のないことであります。そういうことであって、確かに納税人口がふえるということも理屈のないことではありませんが、いずれにしても税負担を軽減するにしくはたい、こういう考え方でございます。また自民党そのものとしても、減税は年中行事、減税というものが重点政策の中に入らないくらいな、そのくらいに減税をやってきておるわけです。でありますから、来年はやらぬということは考えておりません。これは税制調査会が最終答申を行なうことでありますので、税法さえも書き改める、長期の見通しに立った減税政策、いろいろなものが答申せられるわけでありますので、減税は必要であるという観念を持っております。しかも政策減税と俗にいわれておるものは一体どういうのかということでありますが、これもいままでは大体半々ぐらい、三十九年度は五五対四五ぐらいの割り振りだと思います。少なくとも所得税減税にウエートを置いてまいり、バランスをとってきたわけでございます。重点的にやるには五ヵ年間ぐらいどっちをやめてどっちを思い切ってやるということが——重点が荒らっぽい、こういわれるかもしれませんが、やはり常識的に考えてみまして、バランスをとりながらやるということだ、こういうことだと思います。バランスをとって両方の減税をやるということが、これは全然相反することではないのであります。いま苦しいから卵のうちに食ってしまう、いや卵から鶏にしてもっと卵を生ましたほうがいいのか、こういう考え方であります。これはどう考えてみても、国として、国民全体として考えるときには、利害相反するものではありません。国際情勢から日本がどういう地位にあるか、また将来どうならなければいかぬかという場合に、企業の内部留保を多くしたり、企業の体質を国際競争力に対処できるようにすることも絶対必要である。一年、二年前の石炭産業のようにみななってしまって減俸しなければならぬ、ほかのところは一〇%ずつ上がっているのに据え置きだ、こういうような状態を招来してはならないということ、これはけだし当然であります。そういう意味で、いま十分比較検討をいたしておるのでありまして、私が、あに政策減税の論者、いわゆる企業減税論者ということじゃございませんから、これはもう所得税は当然だという考えに、皆さんと同じ考えに立っておるにすぎないというふうに理解していただいていいと思います。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 初めの話を聞きますと、泉さんや税調考え方と同じだ、こういう話ですが、最後のほうの話では政策減税をやるのはあたりまえだというので、内容がわかりかねるのですが、重ねてお聞きいたしますが、最終結論を出したわけではありませんが、一応いまの税調で出ておる所得税中心減税をやるということを大臣はお考えになっておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 税調答申を尊重しながら参ります。減税案につきましては、税調答申までに政府の意見も十分開陳いたしますし、税調側との意思の疎通も十分にはかってまいりたい、その出た答申は尊重してまいりたいということでありまして、おおむね予想すれば、バランスをとりながら所得税減税企業減税といいますか、企業というものよりもまだ地方税の問題とか、あるいはだれも御反対のない住宅を一体どう建てるとか、都市改造をどうすればいいのか、地方開発はどうすればいいんだという問題、また特に中小企業はどうなるのか、農業所得に対してどうなるのかという、こういう、源泉課税だけを軽減するというよりも、同じ目標でありながら業種によっていろいろ違う問題がありますので、これらを十分しんしゃくしながら、バランスを考えながら減税政策を立てていくということを申し上げておきます。
  76. 只松祐治

    ○只松委員 先ほどの補正予算と関連して、税の伸びのところでも、法人税や何かは伸びない、マイナスだ、主として所得税で、わけても源泉なんだ、こういうお話なのでございます。明年度におきましても本年度経済の実勢に基づく税金でございますから、おそらくそういう線の税収というものになっていくと思います。そういたしますと、本年度国民総平均二二・三%の徴税率、こういうことになっております。全体で二二・三%の税金を取らないことには国の予算がまかなえないわけでございます。法人税や何かがそういうふうに減収をしてくる、こういうことになってまいりますと、これはどこからか税金を取らなければなりませんから、当然にそういう源泉あるいは申告所得税をきびしく取り立てる、あるいは強く取り立てる、こういうことになってくるのは理の当然でございます。また取りやすいところから取ってくる、こういうことにもなります。あるいは、私たちは減税と一つも思っておりませんし、言っておりません。税の調整と思っておりますが、いま激しい春闘の結果、若干ベースアップがかちとられた、こういうことで税収というものが、累進課税ですから多くなってくる、そういうことを一つものがさないように取り立ててくる。こういうふうに大蔵省なり国税庁当局がすることは当然だと思います。現在でもそういうふうに国際的に税金は高い、ある見方からすれば、泉さんが日経ですか、あれにも書かれておりましたように二〇%前後が高いか低いかということは、これはその人の論の立て方による、こういうことをおっしゃっておられましたように、これはいろいろ論争がありましょう。しかし、たとえば昭和三十五年度の税金を見ましても日本が二一・三%、米国で二七・八%。金額に直して日本で十二万八千円、米国で八十二万六千円国民が納めておる。しかしその場合国民所得はアメリカが日本の大体六・五倍、これを、国民所得と税率とを引き直しますと、アメリカは日本の国民の一・三分の一しか税金を納めていない、こういうことになるわけです。しかも御承知のように日本はまだまだアメリカよりも社会保障制度は立ちおくれております。英国や何かよりはもちろん大きく立ちおくれておる、あるいは軍備というものは平和憲法があって日本は非常に少ない。軍備、社会保障制度がきわめて少ない中で日本の税率というものがいわれておるわけなのです。こういう観点からすれば、この二二・三%というものは非常に高い、決して低くはないと思う。論の立て方にもよるでしょうが、国際的な常識から見たって決して低いものではない。ましていま言いますように、実際に徴税ということになってきて、法人税や何かが高度成長政策の失敗で税金が取れない、マイナスになる、こういうことになって、所得税中心の税の伸びしかないということになってくれば、先ほどから大臣がおっしゃっておるように、国民はそれほど重荷ではないでしょうということばがあったようですが、直接取られる源泉徴収とかあるいは申告の所得税というのが非常に多くなってくる。こういう点大臣は一つも重くなっておらない、あるいは重くない、こういうふうにお思いですか、やはり私が話したように国民の税金というものは諸外国に比しても、あるいは戦前の日本の税率に比しても重い、こういうふうにお思いになっておりますか、お尋ねいたします。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 いま所得税が重いか軽いかということでありますが、数字の上から見ると重くないということでありますが、私は事実考えてみて軽くない、こういう考え方でございますから、だから年々歳々減税を行なっておるわけでございます。税収見通しよりもそう大幅な自然増収がないので、また大法人等が業績が思わしくないという場合に、結局源泉徴収というようなものにウエートをかけて手きびしく取り立てる、こういうお話しのようでございますが、徴税上過酷な徴税をするなどということは絶対に考えておりません。これは自然に愛される徴税機構を確立するという考え方に立っておりますので、徴税の上で御迷惑をかけるということは絶対にしないように考えておりますので、御理解いただきたいと思います。  それから税金がアメリカと比べての議論、イギリスと比べての議論、確かにそれはございますし私もやっておりますし、主税当局も絶えずそういう研究をやっておりますが、まあ理想は高く、そうしてできるだけ早く理想に近づくために具体的な政策をどうするかというのが現状における日本の状態でございます。これは戦争に勝った国とかまた膨大な資源を擁し相当な金を持っている国、金は持っておらないし国際収支は赤字だけれども、長い過去において特定な利益を受けられるような、植民地ではないが特定な状態を持っておるイギリスとか、また地域的に非常に恵まれておる国とか、そういう国の現状及びこれから将来どうなるかということを目標にして、それに追いつくべくいま努力をしているのです。日本は逆に狭いところに一億の人間が住んでおって、戦争で無資本になって、この十七、八年間のうちにばたばたと、しかもその十八年間のうちにほんとうに日本が自主的にやったのは昭和二十九年から十年であります。十年間で少なくともここまで来たのでありますからこれは前進体制であるのかどうかといいますと、これは非常な勢いで前進をしておる。いわゆる先進工業国の高いレベルまで追いつくべく努力をしておる、こういうことが事実でございます。でありますからいま高いとか安くないとかという議論よりも、だんだんと日本の国力を充実をしまして、円価値をつけながら国際的にもレベルアップをはかりながらまいれば、そこでだんだんと税負担も軽くなる。税負担を軽くすると同時に物価が上がるのが非常に少なくなるとか、物価が安定するとかという場合は実質的にわれわれの生活も楽になるわけでありますので、そういう政策もあわせていま考えておるわけであります。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 いま申しましたように、税の国民全体なり諸外国に比しての徴税率というものと、この徴税する、私いま所得税の問題でもちょっと触れたわけですが、内容によるわけです。たとえば間接税にしましても酒、たばこ、砂糖、こういう三品で約五〇%以上を間接税の中で占めていると思うのです。これは田中さんのような金持ちでも日雇い労務者でも酒の量は——あるいは日雇い労務者が酒を飲むほうが多いかもしれませんが、たばこでも酒でも、これはいわゆる個人差のない税金ですね。いわゆる貧乏人でも金持ちでも一律にかかってくるこういう間接税というものが日本の間接税の中で五〇%以上を占めている、こういうことになっているのです。だから私は法人税のほうもほんとうは聞こうと思ったのですが、時間がございませんので、法人税対所得税という問題、特に源泉それから間接税の中でもこういう高級写真機とか物品税とか、こういうものにあまりかけないで、むしろそういうものを漸次下げてきて、こういう大衆消費税というものは一向下げないで非常に大きい、こういう徴税の実態というものを私たちはやはり見ていかなければならない。だからパーセンテージだけではなくてそういう内容を見ますと、先ほどから言うように所得税というものは非常に高いのではないか、こういうことを私は言っておるわけです。と同時に間接税も日本では非常に高いわけです。砂糖なんか世界一なわけでございますが、関連いたしましてそういう国民全体に及ぼしていく税金などで地方税も聞こうと思っておりますけれども、地方税を関連させますと、さらに私たち国民の個人の納税率というものは非常に高いわけなんです。住民税なんかは無差別にかけられてほとんどの国民は納めておりますから、したがいまして、そういう税の実徴というものは大法人や何かに非常に低くて、私たち国民には重くかかってきておる。したがって来年度はそういう観点からいっても、どうしても所得減税というものを中心にやるべきだ、こういうことを繰り返しこの前あたりから言っておるわけであります。その点を重ねてお伺いするとともに間接税についても考慮される余地があるかどうか、私たちとしてはしていただきたい、こういうふうに考えます。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう問題をいま税制調査会で御検討いただきまして、これはもう最終答申でございますので、そういうふうな状態で税制上間接税と直接税との比率は一体これでいいのか、大体いいといわれておりましたが、新しい事態に対処してこれでいいのか。また所得税、法人税その他との均衡の問題、バランスの問題等も検討いただいておるわけであります。  ただ御承知のとおり今度の税調は三年目になるわけでありますが、第一回目は御承知の間接税を大幅に下げたわけであります。それから第二回目は、直接税をやる、今度は総体的に考えてもらう。こういうふうな三ヵ年間でいろいろな御検討をわずらわしておるわけでございます。間接税と直接税との比率の問題はいま大体半々ということでございますが、これは税理論からいっていろいろな問題があって、先進諸国と比べてみて、日本の状態からいっていままでくらいの比率がいいのじゃないかということが大ざっぱに言われております。私たちもそれにかわるものとしてはいまなかなか考えつかないのが現状でございます。ただ私は個人的には直接税という待ったなしのものも一つの考え方でありますが、できれば消費税的な間接税を中心、間接税にウエートをかけていく、私は個人的にはそういう考えを持ったわけでありますが、ところが二年間大蔵省でいろいろなえらい人、研究した人、専門家の意見を聞くと、大臣これでいいのですよ、初めはそんなことではいかぬ、ものをよけい使ったやつがよけい払うのがいいのだ、こういうのですが、あなたが申されたように、絶対的にある水準まで国民全体が必要なものに対しては、それは間接税は下げなければいかぬ、こういう議論、いわゆる政策を一ぱい税率の中に入れてくれということになると、非常に技術的にむずかしい。ですから、あなたの言う消費をする者が税を負担するのがいい、消費をしないでずっと努力し、貯蓄をしている人間は、それは税を納めぬ、これは一番合理的だというお話はよくわかりますが、研究してみると現行のところがいいところです。私どもどうもあまり釈然とはしないのですが、大体そうかなということで、二年間来たわけでございます。前に自由民主党で御承知のとおり取引高税をやったのです。これはもう税のものの考え方は私は非常に画期的な考え方だと思っているわけでありますが、これは徴税の方法とか、感じとか、もう法律にならないうちから反対論が起きたというようなことで、取引高税はあのような状態になってしまったわけなんです。ですから、私はそういうむずかしい問題もひとつ含めて答申をしていただく、こういう考え方をとっておるわけであります。しかし中にはあまり税制とか、もう一つは一般会計の補助金の整理とか、こういう意味で大衆のわかりやすいものが一番いいので、すべてのものを一律にとってそうして出さなければならぬものは明らかに補助金として出したほうがいいという議論も、財政論として議論せられておることは御承知のとおりであります。私も、とつおいつしながらいずれが一体合理的なのかということを検討しておりますが、私の結論が出ないうちに税制調査会結論が出そうだ、こういうことでありますので、税制調査会のひとつ御答申をいただきながら十分検討いたします。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 時間がございませんのでもう一問だけ、地方税のことについてお尋ねをいたします。国税はいまお話しのように経済構造の変化あるいは経済情勢の変化に応じて調整をされてきております。しかし、地方税というものはほとんど調整されないまま残っておるものが多いわけであります。それにはいろいろな問題がございますが、たとえば住民税なんかには、これは週刊誌等を非常ににぎわしておりますように、きわめて不均衡の問題がある。たとえば大都市では住民税が二千三百六十二円くらいですか、そのときに滋賀県の安曇川なんてよく例を出されますところは八千九百三十円、こういうふうに、地域手当やなにかないような低いところへ行っても非常に高い住民税を取られる。こういう矛盾、アンバランスがある。これは新産業都市の指定やなにかで、こういう経済構造の変化に伴って、あるいは埼玉県のように非常に社会増あるいは自然増で人口がどんどん東京から流入してくる。こういうところでは、学校、道路、下水その他をつくらなければならないというようなことで非常な金がかかる。こういういろいろな問題が出ております。したがって、結論からいうならば、そういうところに対して十分な財源措置を講ぜよ、こういうことになるわけですけれども、これは主として自治省の管轄ですから、なかなか答弁しにくい点もあるかと思うのですが、地方税について、自治省と十分連絡を持って、国税との関連においてこの調整をしていただきたいというふうに思いますが、する意思があるかどうか。  それから最後ですから一緒に質問しておきますが、そういうことと関連いたしまして、経済構造が変わってくると、当然に、いま道路が盛んにできておりますし、今後もこれは別な面からも道路をおつくりになる。そうすると、国道だけが通っておりましても、あるいは産業開発道路だけが通っておっても、県道、市道をそれにつけるという必要も起こります。それからそれを走る車というものが、いままでのように単にその県内の車ではなくて、たとえば埼玉県の四号国道を通っておる自動車なんか、トラックなんか八五%が埼玉県外、わずかに一五%が県内の車、こういうことで道路っぷちにある家は飛び込まれる、ひき殺される、けがをさせられる。こういうことで埼玉県は、東京、大阪を除いて、県では全国最高なのです。そういたしますと、国道でそういう被害を受けるし、国道から国道へ県道を走っていく、市町村道を走っていくということで、砂利トラやなにかが、あるいは十トン以上の物を積んだトラックがどんどん走りますから、非常にこわされるわけです。こういうものは一方的に県や市町村が直さなければならぬ、こういうことでございます。したがいまして、私は、予算分科会でも、そういう道路税的なものを自治省として設ける必要があるのではないか、あるいは交付金の中にそういうものを十分加味すべきである、こういうことを言って、それは検討いたします、努力いたしますという答弁を得ておるわけですが、この際、そういう産業構造の変化、あるいはそれに伴う道路の問題ということに関して、そういうものを加えて地方税というものを考えるべきであるし、課税体系というものをそこまで動かすことができないならば、当然にそういうものを交付金の中に加うべきである、こういうふうに思います。そういう意思があるかどうか。したがって結論的に、そういうことをくんで地方税の財源の再分配ということも当然に考慮しなければならぬと思いますが、そういうお考えがあるかどうか伺っておきたい。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 地方税は自治省が主管でやっておりますけれども、また税制調査会にも答申を求めておるわけでございますが、どうも、国税に対してはこまかい答申が出ますが、地方税に対しては相当大ざっぱなものが出るわけであります。これはどうしてかと言うと、地方税の性質上的確なものを出す場合に財源補てんとかその他をどうするというような問題等もありまして、なかなかはっきりしたものを出さない。今度は最終答申ですから、相当思い切って出してくださると思うのです。  そういう意味で、私どもも、三十九年に住民税の不均衡是正を行ないまして、いろいろな御批判がございましたが、元利補てん債も出すように踏み切ったわけでございます。  あなたがいま申されたとおり、東京都のようなところが一番安くて、山の中が一番高い。これは山の中に住んでいる人ががまんしておるほうがおかしいので、これは非常にけんけんごうごうであります。しかも、私はこの間新潟へ行きましたら、親がこのくらい苦しんでおるから、せめて子供には勉強させていい生活をさせようと思うと、東京へ出ていってしまって、その税金は全部東京や大阪へ納める、これは一体どうなるのですか、こういうお話がありましたので、そのとおり、私もひとつ自治大臣とも十分検討しましょう、こういうことを申し上げたわけです。  これは制度の問題もございます。戦後御承知の地方自治体というものができました。地方自治というものは、結局財源問題を前提としない地方自治が急速に確立をせられましたので、結局市町村長までみな公選である。そうすればどんどん仕事をしなければいかぬ。特に戦前から戦後十九年間で地方の人件費がどのくらい大きくなったか。今度三十九年度から四十年度を比較しますと、四十年度の地方財政の規模は実質的に国の財政を上回るかもしれない。その中で東京都などは人件費が二六、七%、多いところでは、府県、市町村で五五%というようなものが人件費に食われる、こういうところもあるわけであります。その上なお新産業都市とかいろいろな先行投資をしなければいかぬ、こういう問題がありまして、結局いろいろな税金を取ろうとしても、自治体でございますから隣から取るわけにはいかない。結局自分の中でというと、間口一間に幾らという住民税、こういうことになるわけであります。でありますから、補助率をだんだんと上げておりますが、事実問題として急速に地方自治というものの確立の過程において地方財政が非常に圧迫を受けておる、こういうことは事実であります。そういう意味で、交付税制度、特別交付税制度をとったわけでございます。交付税率を上げろという御意見もございます。ございますけれども、地方税の問題は、これは全部が全部減税をするときに国が補てんをしなければ減税をしない、こういうことになると、地方自治そのものの根本問題にも触れるわけでございまして、三十九年度に引き続いて、少なくとも住宅建設とかそういう問題に対して地方税がどうあるべきかということは検討してみたいと考えます。  同時にもう一つ税から言いますと、野原であっていままで何もなかったところへ住宅公団の建物がばたばたっと建った。それを管理するために地方公共団体の出先ができ、政府の行なった住宅公団の固定資産税を主要財源としておるというところもあります。こういうものの調整をどうするかということとは取り組んでおるわけでございますので、御了解をいただきたい、こう思います。  道路整備の問題については、いま埼玉県の例を引かれましたが、御承知のガソリン税の中で地方道路税というものを目的税として現行制度上置いておるわけであります。しかし国道だけではなく、このごろ右回り禁止ということで、地方道、町村道、里道までトラックが通っておる。これは確かに新しい事態であります。私自身もこの事実は十分承知しておりますが、道路整備の改定計画、四兆一千億の五ヵ年計画では、主要財源をガソリン税に求めておるという特殊性を考えますと、なかなかいまあなたが御指摘になったものをどこでこれ以上カバーするかという、非常にむずかしい問題があります。それは、ガソリン税を採用しますときにもうすでに、東京とか大阪とか二大都市において何十%もガソリン消費をするのだから、その金を持っていって北海道や九州で道路をつくるというのはおかしいじゃないかというようなこともございましたが、現行制度になったわけでございます。でありますから、道路整備というものと道路整備の地方の負担分というもの、また現行道路五ヵ年計画との問題、ガソリン税という特別財源との問題、こういう問題は、これからひとつ十分検討すべき問題であろうというふうに考えます。
  82. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 平林剛君
  83. 平林剛

    ○平林委員 きょうは先輩の佐藤さんはじめ多数の委員から御質問がございましたから、当面の財政金融問題について大かた質疑をし尽くした感じがございますが、私なるべく重複しない範囲におきまして、大臣の御見解を承っておきたいと思います。  まず最初の問題は、来年度予算編成がすでに今週から本格的作業に入っておるという話を聞いておりますし、田中大蔵大臣も、一連の予算編成基本方針をあらゆる機会に明らかになさっております。きょうも大体予算編成における基本的な考え方をお示しになったわけでありまするけれども、最近の経済情勢から考えまして、一番国民が関心を持っておるのは何といっても物価に与える影響であろうと思うのであります。先ほど来お話しになっておりました予算編成の中身をあっちへやったりこっちへやったりすることに対しては、国民はそんなに関心はありません。むしろ先ほどお話しになりましたように、消費者米価の借上がりであるとか、あるいは公共料金一年間ストップの政策をくずしていく場合に、どういうふうに物価というのは変わってくるだろうか。いわんやそこに一〇%程度の増でありましても、先ほど来お話しになったような予算編成が行なわれ、それが実行段階に入っていった場合に物価はどうなるだろうか。これは率直な国民の大きな不安であります。池田内閣の物価政策は今日まで正直に申し上げまして、見るべきものはありません。何か少しはおやりになったようでありますが、効果というものはない。かなりむずかしいものであるということはわかりますけれども、実際に国民の不安というのはいまもって消すことができないし、むしろ新しい物価に対する不安というものを感ぜざるを得ない情勢が近づいておると私は思うのであります。そこで来年度予算編成におきまして、大蔵大臣は特にこの問題にどういう形で意を注ぐか。財政金融全般にわたって物価抑制についてはどういうお考えを持ってこれからの財政を行なおうとしているか。私はそういう角度から国民の不安を解消するような御答弁をいただきたいと思うのであります。これをまずお尋ねします。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘がございましたように、物価の抑制ということは非常にむずかしい問題でございます。むずかしい問題でございますが、重大な問題でありますので、積極的に取り組んでおることも御理解いただけると思います。  まず具体的にどう考えるかということは、大蔵省で考えられる問題を申し上げますと、財政が景気を刺激する、物価影響があるような状態で予算編成はできない、こういうことでございます。でありますから、財政の基本方針は、健全均衡の線を貫くという考え方、また内国債等の発行は、これをやりたくないという姿勢を正しておるわけでございます。  その他の物価問題で第二の問題としては、公共料金のストップの問題があります。これは一年間ストップしたわけでございますが、一年間というのは一月一日から十二月三十一日までということでありますから、一月一日になれば全部これが洪水のごとく上がるのか、こういうことではないわけであります。物価抑制というのは一年間に限ったことではなく、将来とも物価の安定ということを十分はからなければならないわけでありますので、その意味物価に対する影響というものを十分に一つ一つ個々に検討しながら、この公共料金のストップ令を解除するというような場合においても、しごく慎重でなければならぬという考え方でございます。  それから第三点は金融政策でございますが、金融につきましても財政と金融一体の理論の上に立って円満な運営をはかっておるわけでございますので、少なくとも一部においては内閣改造の時期を契機にして金融緩和というような声もちらほらありましたけれども金融の状態を現在考えますと、質も相当高い水準にございますし、生産も高い状態における横ばいということから考えますと、また消費も相当程度高いということがございますので、金融調整というものをいま直ちにはずすというような考えにないことも政策の一つであります。  それから消費の問題もございますが、消費も相当な堅調でございます。その意味で、資本蓄積とか貯蓄とかそういうものの増強ということが、ひいては物価の安定、予算のコスト低下とか国際競争力の培養につながるものでありますので、資本蓄積及び貯蓄の増強に対しても遺憾ない措置をとってまいりたいということであります。  あとは、消費の中で一番大きい学校の問題とか住宅の問題とかいろいろな問題がありますが、住宅に対しても、先ほど申し上げたように民間の資金で住宅が建つためにはどうすればいいか、また公営住宅千万戸計画のピッチをあげるためにはどうすればいいのかという問題も検討してまいります。学校に対しては先ほど佐藤さんから御指摘がございましたように、すべてのものを授業料の値上げということでまかなうべきではないので、税制上もまた財政上もこれらの問題に対して私学振興等格段の措置をやろう、こういうことでありますから、きめこまかく考えれば、政府が何もしておらぬというのではなく、相当努力しておるわけでありますし、またこれからも引き続いてかかるこまかい問題から基本姿勢に至るまで、物価の安定に対してはたゆまない努力を続けてまいりたい、こういう考えであります。
  85. 平林剛

    ○平林委員 大体常識的に見ますと、いまお話しになったようなことであろうと思いますし、まだ物価の問題については、政府自体に対し私どもいろいろな角度から要求しておることもございますから、それもあわせて考えなければなりません。しかしきょうはそこを深くは申し上げませんけれども、いまお話しになった中で、たとえば公共料金については来年の一月になれば一ぺんにくずしてしまわずに慎重にやるんだと言うけれども、抽象的でありましてどういうことかわからぬのであります。その慎重にということは一体どういうことであるか。それからもう一つは、消費者米価の値上げについては、総理大臣は慎重だけれども私は値上げをしなければならぬという気持ちです、こういうお話がございました。しかしこれも、もしかりに生産者米価の引き上げに要したものをそのまま消費者に転嫁いたすといたしますと、二〇%くらいのはね返りがある、もしかりに消費者米価だけのはね返りを仮定いたしますと、いろいろな経済論説を述べる人の説に従えば、また物価は六%以上はどうしても上がるということは避け得まいというお話もございます。そこであなたは、一体消費者米価については引き上げざるを得ないというお考えのようですが、生産者米価そのままを消費者に転嫁するという気持ちで先ほどのお話があったのか、いやそうではなくて、それにはくふうが何かあるのか。少しこまかくなりますけれども公共料金について慎重とは一体どういうことか、消費者米価の値上げをせざるを得ないというけれども、生産者の米価の値上がりそのままを消費者米価にぶっかけるということなのか、それには何らかのくふうがあるのか、そういう点をこの際明らかにしてもらいたい。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 公共料金のストップということは、現在は十二月三十一日までやらない、こういうことでありますが、しかし一月になればせきを切ったようにという説を出している人もありますからそういうことはないようにいたします、こういうことを申し上げておるわけであります。でありますから、仮定論でありますが、鉄道運賃が上がるとしたならば一体どうなるのか、そうすると東京と主産地との間の交通がどのくらい確保されるか、それによって東京に入るところの流通圏が幾ら下がるか、こういう問題があるわけですから、こういう問題はひとつ十分に考えます。しかも一日三時間かかる通勤が二時間になる。一体一時間をどういうふうに考えられるかというようなこまかい専門的な問題まで今度は政府は検討しよう、ただ財政上こうだとか、それから五ヵ年計画を改定した場合にはどうしても何十%は値上げにまたなければいかぬという単純な理論ではなく、こまかく消費者物価というものや、それから卸売り物価にはね返るとしたならば、どういう理由でどのようにはね返ってくるのかということをひとついまから検討しようということでございますから、やみくもに一律に引き上げるという考えではございません。ただ具体的に消費者米価の問題を申し上げますと、まあ総理は先ほど申し上げたとおり非常に慎重であります。消費者米価を上げるとなったら次は鉄道運賃、さらにはバス料金、水道料金、医療費、こうなるのだから、非常に慎重にやりなさい、先ほど言ったように、こまかい影響力を十分検討しながらやらなければいかぬという考えに立っておることは申し上げたとおりです。ただ財政的に考えまして、三千億、三千五百億という農業政策費を考えるときに、二千億に近い食管の費用というものが繰り入れそのままで一体いいのか、それから来年度は一体どうなるのか、そういう問題はやはり真剣に検討しなければならない問題であります。それで食管制度の問題ももう両三年前から食管制度調査会の法律を出しながら全然これはもうどうにもならない、前進をしておらぬということでありますから、こういう問題に対しても検討しながら、また一面においては減税財源との問題もございます。そういう問題も十分加味しながら考えますと、どうも消費者米価は引き上げざるを得ないのではないか、こういうことを私だけが考えているわけです。主計局ではもう少し私よりも前向きに考えているようですが、いずれにしてもそういう態度であります。ただそれを、生産者米価が上がったらそのまま上げるのか、八百五十億全部上げればいいのか、これはそんなことを考えているわけじゃないのです。これは予算との考え方。主計局の純技術家が考えておることは、二〇%程度上げてもらえばいいですな、こういうことを大臣に言っておりますが、私は返事をしておりません。そういうところでございます。ですからまあ生産者米価は御承知のとおり一昨年は千百二十四円、それから昨年は千二十七円、今年度は千八百円に近い引き上げということになっているわけですから、三年間ずっと考えますときに、消費者米価はその間に一体幾ら上がったか、一三%余上がっているわけです。ですから、そういう生産者米価を約四千円余上げて、そして消費者米価だけは四年間において一三%しか上げていない、こういうことになると、一体どこまででも食管の赤字はふえていっていいのかという全く大きな財政問題、政策論争になるわけでありますので、それらをひとつ皆さんの御意見も十分聞きながらまあ消費者米価の問題は決着をつけたいということで、上げただけ上げるとか——いま農林省ではスライド制ということも考えております。スライド制という問題に対しては米価審議会で小委員会を設けていま検討しておりますので、この結論を待って農林省と大蔵省でもって話もし、これは当然閣議にもかかる問題でありますし、またこれから米価決定までの間には皆さんから何回も御注意なり御質問があるわけでありますから、そういうものも十分しんしゃくし遺憾なきを期したいという考えであります。
  87. 平林剛

    ○平林委員 これらの問題についてはきょうは私、意見を述べる余裕がございません。またすでに何回もあなたには申し上げてきておりますから、われわれの意のあるところは十分腹に入れておるはずだと思うのであります。ただ私は、来年度予算編成するにあたっていまお話ししたような問題もあり、またこれからの財源ということを考えますとなかなか苦しいというお話でございまして、まあ一〇%増程度に押えるなんというお話がありますが、むしろ一〇%程度にしかならぬというほうが正直な話ではないだろうかと思うくらいでございます。しかしやはりこの予算編成にあたりまして絶えず国民が深い関心を持っておるのは、これからの日本経済というむずかしい問題よりは物価、それによって与えられる国民生活への影響というところにあると思うのでありますから、私はその点は持に大蔵大臣として配慮しながら予算編成作業を行なってもらいたい。このため、伝えられるところによりますと新たに各省が予算の概算の要求をするときには何十%に押えろというような指示をなさったそうで、はなはだけっこうなことだと思うのでありますが、その基本理念をくずさず最初からその指示どおりに押えて、そうしてまず各省から不必要なものの予算要求は押えていくという態度で、予算規模はなるべくふくらましていかないという強い態度編成作業に臨んでもらいたい。あとでくずれないように、私は特にその点はお願いしたいのであります。ただ私どもこれからの予算規模を考える場合に、それが国民生活に与える影響という角度から政府の、特に大蔵大臣のお考えの中に、予算規模そのものは一〇%増程度に押えるというお考えを貫く傾向にあるようでありますけれども、しかし公債発行という点はどうか、あるいは外国為替特別会計などの繰り入れ分、いわゆるインベントリーの取りくずしはやらぬというようなことはどうかということになりますと、多少大蔵大臣の考えが、時間の経過とともにぐらつくのでないかという心配をしておるわけであります。一般的な公債の発行はしないということはきょうお聞きしましたから了承します。しかしあなたが三たび大蔵大臣になられた当時は、外国為替特別会計の繰り入れ分、これはもうインベントリーの取りくずしはやらぬというお話でございましたけれども、最近の新聞を読むとそういう取りくずしのしかたについても検討するという報道がございまして、総理あたりから強い要請があったのじゃないだろうかという気もするのですけれども、そういう点はいかがでございましょうか。もし予算規模をかりに押えるといたしましても、そうした面で膨張していくということになりますと、最初の意図がそこからくずれてくるわけでございますから、そういう点はどういう変化があって最近の報道になっておるのだろうか、その経緯についてひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 インベントリーを取りくずすということは、私の口からは一ぺんも言ったことはございません。これはもう公式、非公式を問わずございません。ございませんがしかしそういう議論が生まれておりますのは、輸出振興のために相当大きな金が必要であるとか、中小企業に抜本的な施策を行なう場合、民間資金を導入するとしても、いわゆる中小企業債の発行をするとしても、一体その利息の差額はどうなるのか。いま輸出金融は四%くらいの金利でございますが、民間の常識金利、標準金利は八分ちょっとくらいでありますから、そういう差額について、金利分が倍になるじゃないか。それを一般会計から繰り入れるというだけでもって一体カバーしていけるのか。いままではもう十分やってきたわけですが、そういう意味で画期的な中小企業、農業政策、それから輸出振興政策、こういうものをやる場合に一体どうか。まあ輸出等に対してそういう政策をとった場合、ガットの問題等もあるということも議論されております。中小企業にはそういうものは一体どうするんだ。そういう場合に一般会計から農林漁業金融公庫や中小企業金融公庫、国民金融公庫、それから輸出入銀行等に繰り入れておるわけですが、こういうことだけで一体可能なのか。可能でなければインベントリーの取りくずしもあり得るのじゃないかという議論は私ではなくこれは別なところ——これは総理でもありません。そうではなく一〇%で押える押えるといっておって画期的にやるというから、そんなところに穴があるのじゃないかというように先ばしって検討しておられる在野の財政学者がおることは事実です。これは私に対して、テレビやいろんな座談会等でも出てまいりますからそういうところからきておるのだと思う。  それからもう一つ予想すると、国民所得の一%、約六億ドルに近い低開発国援助をやる、こういう場合に一体政府の財政資金だけでもってやれるのか。何か民間に協力を求める、そういうような場合に利子補給というのはできないのか、これはやってもガット違反にはならないぞ、これはガット違反ということも貿易開発会議でもって一%前後ぜひやろう、こう言っておるのだから国際取りきめになるのじゃないか、こういうような非常に先を見た議論からインベントリーの取りくずしもあり得るという議論が存在するようですが、現在まだ予算規模を一〇%程度に押えたいということで各省からの要求も三〇%に押えてほしい、こう言っておる現段階においてインベントリーを取りくずすというような考え方を持っておりません。かといって、取りくずさない、こういうことを申し上げるわけにもいかないのですが、現在取りくずすというような考え方は、私は研究しておりません。こういうことでございます。
  89. 平林剛

    ○平林委員 米価の値上げのときに、私、大蔵大臣のところをお尋ねして、この次の大蔵大臣になるやつはえらいひでえ目にあうぞというお話をしたことがございます。現に昭和四十年度予算編成をするときには、財源の問題は頭にきて、だれが大蔵大臣をやっても相当やせる思いをせにやならぬというお話でございまして、もっともだと思うのです。そこで、かりに予算規模を押えましても、その他の抜け穴といいますか、画期的な政策を行なうためには何といっても財源が必要ですし、きょう議論をしてまいりました税の自然増収、それも昨年から比べると少ない。そんなに少ないわけじゃない。いろいろなことをやればある程度のものはございますけれども、それにしてもある程度重点施策を実行していく上には足りぬ。そこからいろんな説があり得るといまお話しお聞きしました。しかし、同時に大蔵大臣は昔から財政と金融の一体的運用ということを持論としてお持ちになっておるようでありますし、またばく大な民間資金を放置せずに国の施策に沿って効率的な運用をはかるということ、あるいは効率的な配分をするということは必要なことだというのはあなたの持論と拝聴しておるわけで、こういうときはきっとそういう腕をふるうんじゃないだろうかと思われるのであります。特に民間資本の活用につきましては、池田総理も輸銀債やあるいは農林漁業金融公庫債の発行や中小金融公庫債の大幅な拡充ということを指示しておるという新聞報道などもございまして、そういう点で私ども興味を持ってながめておるわけでございますけれども、こうした点についてはどういうふうにお考えでしょうか、ひとつこの際あなたのふだんのうんちくのあるところを傾けてこれからの財政と金融の一体化についての御議論を聞かせていただきたい。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 財政と金融との一体化ということは前々から申し上げております。方向としては既定の事実として運用をやっておるわけです。がしかし、財政金融の一体化ということからいって、資金統制をやったり、政府が一方交通でいこうという考え方は全然ないです。これは広い立場から国民各位、機関各位の共感と共鳴を得てこういう方向に持っていかなければならぬという姿勢でおります。しかし、現実的な問題を申し上げますと、輸銀資金に対して輸銀債を発行するとかいろいろな問題がございますが、先ほど申し上げましたとおり、金利は約倍だということは一体どうするのだということはすぐ論じられなければならぬわけであります。ただ、大きく考えると、政府財政資金だけでもって輸出金融をまかなっていくということは世界に例がないわけであります。経済協力基金とか、輸出入銀行というものは森永現総裁が新聞か何かにある一文を書いておりましたが、輸銀や開発基金というものは当然政府ベースで後進国援助とか、そういう輸出のもとになるような長期投資の分野を受け持つことこそ望ましい。しかし、現状の段階からそれは言うべくしてすべて望めるわけではないのだ、こういう議論をしておられますが、これば全く純粋な議論で、大体どこの国でもみな民間ベースでもって輸出金融はまかなっております。日本でも民間ベースでやっていないことはありませんよということを言いますが、反面かえって逆に輸出入銀行法を改正して民間出資を肩がわりしたり、また保証してやったり、そういう方向になっております。これは一体どこで調整するかという問題がありますから、私はやはりその民間資金というものを少なくとも輸出金融には高度にこれを活用するということは必要だと思います。直ちにその利子補給の問題があるから、それはだめなんだという考えではなく、どうすれば一体民間資金の活用ができるのかという考え方はやはり検討をして実施に移すように努力をしていきたいという考え方です。  それから金融の正常化ということも一つの考え方であります。金融の正常化を進めておりながら、なかなか金融の正常化がうまくいかないという問題があります。これはオーバーローンの解消だけで、いわゆる自己資本比率を上げるという問題が解決しておりませんし、もう一つは社債等の市場が確立をしておらぬために、結局間接金融にまたなければいかぬということで、非常に声を大にしながら金融の正常化がはかられないというところであります。中小企業専門機関とか、系統金融公庫のコールが高度に流れておって、都市銀行はそのコールを相当額とらなければいかぬ。コール市場は常に繁忙という、こういう問題がたくさんありますので、一挙にどうするというわけにはいきませんが、もっと起債市場を確立をして、公社債市場の確立とか、それから民間資金を活用導入する場合はどうすればいいのかというような問題は絶えず検討を進めていくべきであります。そういう意味で証券との懇談会を開きましたり、金融機関の意見も十分に徴したりということでやっておるわけでございますし、また政府保証債の発行に対しては各受け入れ機関の意見を十分に事前に徴して、納得のいく状態においてこの総ワクをきめるというようなことをやっておるわけであります。いま日銀がやっておる買いオペレーションの制度につきましても、これは財政資金をもってやっておるわけでありますが、これが必要なところに一体流れておるのか。中小向け金融機関に多く拡大されておるわけですが、これは一部にはコールに流れておるのではないか、こういう意見もありますし、こういう機関の中、組織の中の姿、流れの状況を十分検討しながらこの正常化もはかるというようなこともあわせて検討いたしておりますので、十一月、十二月の予算編成期までには、いまよりもより合理的な状態をつくりたいという考えであります。
  91. 平林剛

    ○平林委員 民間資金の活用について、もう少し突っ込んだ質問をしたいのですが、時間がありません。ただ輸銀債にしても、あるいは政府保証の農林漁業金融公庫債の発行であるとか、あるいは中小金融公庫債の大幅の拡充といいましても、一体どの程度の幅を考えておるのか、そしてまた、今日の財政金融の中で、先般来当委員会で議論をいたしておりましたように、大銀行はほとんど日銀の貸し出しを独占しておりながら、中小企業に対しては歩積み、両建てというようなことをやっておる現状において、こういう民間資金の活用についてどの程度政府に応ずるのかという点がございます。そういう場合に、政府はどういう措置をとるのかということなども、できればお聞かせいただきたいと思うのですけれども、時間もあまりありませんから、もし御発言があれば補足してお答えいただきたいと思います。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 時間がありませんから、あまり専門的な問題に対して深い広範にお答えする時間がありませんが、私が昨年銀行合併ということを発言をしたわけであります。一年間に行い歳月を経たわけでございますが、やはり開放経済に向かって金融の正常化をはかり、また歩積み、両建て等も早急に解消し、真に民間金融機関としての国際的な機能を整備するためには、銀行の合併もある場合必要であるという考えは、都市銀行間に起きておるようであります。これは各銀行からもいろいろなお話も聞いております。そういうものは唐突なようでありますが、金融正常化というようなものの中の考え方として、一般のものが合併だけがいいことではありません。合理化ということがどういうふうに一体必要なのかということで努力をしておるときに金融機関だけが必ずしもいまのままでやっていけるということではないわけでありますから、そういう問題で私のほうからは一方交通的な意見は絶対に出さないということで、事務当局もそういうことを指示しておりますが、やはり開放経済に向かってどうすべきかというようなことは真剣に考えられております。同時に先ほどちょっと申し上げましたように、財政資金をもってやる買いオペレーションはマーケットがないのです。ですからこういうことをやっておって、これが実際的に要るところに金が集まらないで、そうしてコール市場に出ておるのじゃありませんか、出ておるとしたらその目張りはどうするのです、財政資金をもって金融調整を行ないながら逆に中小企業に流れないとしたならば、こういう問題に対してはどうすべきかというような非常に建設的な意見も出されております。それからあなたがいま申されたとおり、また当委員会の決議を中心にして歩積み、両建ての排除ということを強く言っておりますし、ピッチを上げてこれに対応いたしますと言っておりますが、一面において、都市銀行等に対してはそういう業績が上がっておらぬ。そういう面に対してどうするのかという問題を突き詰めますと、結論的には五千万円以下の中小企業に対して歩積み、両建てをやってはいかぬということが一番手きびしい問題になるわけでありますから、少なくとも十二月までにわれわれがすべてのものを立案をしますということよりも、一歩進めて中小企業に対しての歩積み、両建てというものに対してはもっと積極的に実行案を出してもらいたい、しかもそれはもうただいまからでも歩積み、両建てという問題に対しては具体的な整理を進めてもらいたい、こうい姿勢をとっておりますので、いままで口では言うけれどもさっぱりやらぬということではなく、今度はよくやったな、そこまで行ったかと言われるような状態をつくりたといいうことで努力を続けておるわけであります。
  93. 平林剛

    ○平林委員 必ずしも私の質問に対して満足な答弁ではありませんけれども、最後に減税問題についてお尋ねします。  先ほど只松委員からもお尋ねがございまして大体尽きておりますけれども、最近の新聞報道を見ますと、いろいろな形であなたの腹が書いてあるわけです。ほんとうにしゃべったのか、それとも腹を推測されて書かれたのか、あなたの腹が出ておりまして、大蔵大臣は相変わらず政策減税推進の腹だと書いてあるわけです。私どもこれは前から大蔵大臣に注文しておったところでありまして、これからの税制あるいは今日の税負担の現状をどう打開するかについては税制調査会が専門的に政府の委託を受けておやりになっておるのですから、少なくとも犬の遠ぼえじゃない、権力を持っておられる大蔵大臣が、遠ぼえならいいけれども、相当影響力のあるような発言をなさらぬでもらいたいということをしばしば注文しておった。しかるに最近は腹を見られてやたらに方々に書かれておるわけです。きょうも、一体どの程度減税規模になるのか、新聞では一千億円程度減税規模を考えておるということを伝えられておりまして、これを只松委員お尋ねすると、いろいろな関係もあるから所得税重点に置くけれども、バランスを考えるということをおっしゃるし、卵と鶏の例を言われて、あたかもにおうかのごとく政策減税の必要性を強調される。こういう点は私はまことに遺憾なことなんであります。大蔵大臣としてはやはりこの際は、今日まで当委員会において議論をせられてまいりましたように所得税減税を優先して、ともかく国民の生活現状を少しでも軽くしていく、救っていくという考え方がなければならぬと思うのです。私は大蔵大臣にむしろ逆に所得税優先減税をするというような声を、腹を出してもらいたい。もっと突っ込んで言えば、所得税減税優先という国民の声をあなたはどういうふうにして反映するつもりか、何か具体的におやりになるつもりはないかということを、きょうは追及的に聞きたい気持ちなのであります。あなたとしては国民がひとしく要望しておる、また税を専門に検討しておる税制調査会意向もそういう方向であるということも頭に入れられまして、所得税減税優先、またこれについては相当規模をやるというような積極的な意思を、これはどういうふうにして具体化していくか、ひとつその意思を聞かしてもらいたいと思います。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 新聞その他に書かれております私の腹というのですが、これはしゃべらぬほうが一番いいというお説でございますが、どこへ行っても減税はどうするんだと一番にくるわけであります。ですから、税制調査会答申待ちです、三年もやっておって一体どうですかと言われるものですから、いろいろな話をぽつぽつとやっておるとそんな記事になるので、こういうことをひとつ御理解をいただきたい。所得税が優先である、所得税が重要であるということは、これは前々から内閣も言っておるのです。所得税はできるだけやらなければいかぬ、どんな場合でも所得税減税をやろう、こういう姿勢は過去のわが党内閣の歴史の示すとおりでございます。でありますからそれはもう論じなくともそういう姿勢で今日まできており、過去十年間に一兆何千億という大減税を行なっておるということをお考えいただきたいと思います。理論的に申し上げて、税制調査会で御検討になっておりますから、答申を尊重いたします。そしてその過程において政府も意見を述べますし、向こうの意見も聞きます。お互いに新聞を通じてだけ三角関係になっておるということよりも、もう少し新しい道を開いて私たちの意見も聞いてもらう、向こうの意見も事前に大いにひとつ検討さしてもらうというようなことも、ある意味では積極的な姿勢だろうというふうに考えておるわけです。
  95. 平林剛

    ○平林委員 税調意見に沿う、税調答申を尊重する、こういうお考えはしばしば私も聞きましたし、きょうも大蔵大臣からそういう趣旨の御発言がありました。  ではもう一つ突っ込んで聞きますが、先回おやりになったように、税制調査会答申した以外の政策減税なんということはつけ加えるようなことはせないとお聞きしてよろしゅうございますか。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 それはちょっとおかしいのです。そういうことは御答弁できません。税調はいろいろなものを持ってやっております。でありますから理論的にも、今日の段階においてこれは最小限必要である、最大限じゃない、最小限必要であるということでございますから、最小限はもちろん政府は答申を尊重いたします。その上に、より広い立場から、米の値が幾らか上がった、そうするとそこにこれだけの金が出てきた、これはどういうことによって減税政策をやれば何倍になって返ってくるかということは、こういう計算は政府が国民に向かっての義務でありますから、そういう意味では、税調答申は尊重いたします。その上になお内閣として高度な立場国民福祉のために寄与すべしと判断したものは、これはあとから削るのじゃなく、つけ加えるということでございますから、前向きな減税ということで御理解いただきたい。
  97. 平林剛

    ○平林委員 それが私は税制調査会を侮辱するもはなはだしいものだと思うのです。税制調査会国民経済全般にわたっていろいろ必要な資料を用意し、検討して、政府が任命した人たちでおやりになっておるわけでしょう。だからそこの税制調査会答申を尊重する、その意に沿うというならば、それに書いてないようなものを政府がかってにやるならば、初めから税制調査会なんかつくらなければいいのですよ。大体あなたは佐藤派でしょう、自民党でいえば。私はこの間の総裁公選のあったときに、佐藤榮作さんの「私の政治理念と政策」というのを克明に読んだのです。この人の考え方をちょっと参考のために申し上げますと「開放体制にはいり、日本経済は産業構造の高度化によって、国際分業に参加する方向となった。新しい経済発展の原動力は、自己責任と、創意をもった自由な経済活動に求めねばならない。  国の役割りは、このような経済活動に対する障害を取り除くことにある。」減税三千億円というのはこの新聞記事から抜けていまして、幾らか放言に類するものだったと思うのでありますけれども、一時は減税は三千億円程度やるというお話もあったわけです。私はここでこんなことを言うのは失礼かもわかりませんけれども、大体大蔵大臣は佐藤派だということで、おそらく佐藤さんに一票投じたとすれば、この方針というものを御支持なさっているものだと思います。ところが今日の政策減税というものは、私はあまりにも日本の産業資本家を甘やかし過ぎているのじゃないかと思うのです。行き過ぎているのです。少なくともその自己責任に立って経済の運営をはかるというような立場に立たなければならぬのを、今日のいろいろな租税特別措置法その他には行き過ぎた政策減税が多過ぎるのです。甘やかし過ぎているのです。そういう点から考えますと、今日少なくとも財源の少ない中で減税ということを考える場合は、さっきあなたがお話になったように政策減税は一年か二年でやめて、自然発生的な創意工夫と自己責任でやらせてみるべきです。むしろ今日の当面の急務は所得税減税重点を置いて、余裕のある財源はこれに振り向けるという厳然とした態度でもって臨んで、初めて今日の国民生活における希望をかなえることができるのですよ。私に言わせると、自民党はこれをおやりにならなければ今度は壊滅ですよ。国民気持ちはみんな離れますよ。その点はちょっと行き過ぎましたけれども、しかし国民の意のあるところをくんで、減税についてひとつ大蔵大臣たる者はおやりになっていただきたい。それを鶏と卵の例を用いて、あたかも将来の卵が幾つもふえるかのごとき幻想を振りまきながらそういう話をなさるものだから、新聞にはあなたの腹を見透かされるのです。そうしてまたあなたの言われるようなことをしばしば政治的な圧力として税制調査会審議影響させようとねらっておるのです。そう言われてもしかたない現象が起きているのです。大蔵大臣は少なくとも今日景気を刺激しない、そして景気を刺激しない範囲において予算編成をする、こういう立場であるならば、あまりにも行き過ぎた恩恵的な政策減税というものをすみやかに中止をする。少なくともここ一、二年はストップさせて、もっぱら国民生活の向上をはかって日本経済のゆがみを直していく、こういう考えに立つべきだということを強調しまして質問を終わります。
  98. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 卜部政巳君。
  99. 卜部政巳

    ○卜部委員 先輩並びに同僚議員のほうからいろいろと質問がされておりますので、簡単に要領よく質問を申し上げます。したがいまして、ひとつ御答弁もそのように御答弁をしていただきますように。  そこで先ほど平林委員のほうからの質問にもありましたが、三十九年度の産米、この生産者米価の引き上げによりまして、年度間の食管会計の赤字が千九百億に近い。こういうふうなことに対しまして、赤城農林大臣の談話等にも見られますように、どうも来年はスライド制にしようじゃないかなどという、こういうにおいを出しつつあります。おそらくこれは食管会計そのものに対する問題を、撤廃というところまでいかないにしても、何かそこに食管会計の赤字にからめて、この食管会計というものを大きく後退させようとする姿勢が、この発言の中ににじみ出ていると思うのです。その面でひとつそういうことはどのようにお考えなのかを質問をいたしたい。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 赤城農林大臣がいま御指摘のようにスライド制をお考えになっておるということは事実でございます。私たちもおおむねお話は聞いておりました。しかしこれがいいというふうに結論を出しているわけではありません。しかし三十九年度米価格を引き上げますときに、米価審議会の中に小委員会を設けまして、専門家に検討していただくということになっておるわけでありますから、これらの問題はこの小委員会の研究、決定ということにゆだねられておるわけであります。ただ大蔵省は財政的な立場から見ますと、この小委員会結論を待っているというだけでは、なかなか予算編成作業も進まないわけでありますので、八月三十一日の概算要求を待ちまして、消費者米価はどうあるべきかという問題に対しては検討をいたします。農林省とも十分打ち合わせをし、これだけの問題でありますから閣議全体できめておる公共料金ストップ令との関係もありますので、こういう問題もあわせて検討したいという考えであります。食管に対しての基本的な考え方は、食管制度問題調査会というものを法律でもってお願いしたいということで、両三年来お願いしておりますが、まだ御審議をいただけないということでありますので、これをなしくずしに何とかしてしまおうという前提に立つものではありません。
  101. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうするとこの食管会計の制度そのものについて、なしくずしにやらないということについては明快である、こういうことでよろしゅうございますね。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 食管制度に対しましては食管制度問題調査会等の法律案を早急に出しまして、国会でもってひとつ審議してもらって、農政の中にある食管制度とは一体これでよいのかとか、時代も変わったからもう少しこうあるべきだとか、いろいろな問題があると思うのです。そういう問題すべてひとつ国会の御判断を仰ごう、こういうことをいま考えておるわけであります。
  103. 卜部政巳

    ○卜部委員 これは大蔵大臣も、米価の問題をお伺いしたときに触れておられたようでありますが、率直に言っていまの食管会計の中で赤字だ赤字だといっても、現実に食糧庁の職員の人件費がある。さらに証券の利子がある。さらに肥料の問題がある。倉敷料がある、こういうようないろいろな問題を含めての食管赤字というかっこうになっておる、これは事実だと思うのです。そういう問題については少なくとも分離すべきだ。私は制度そのものの撤廃というものはやるべきではない。これは自民党の持っておる中では一番いい社会保障なんです。これ以外にはないのです。実際これはいい社会保障です。したがって、これを直ちに撤廃すべきではない、しかし少なくもそういう面の改正は私はしてしかるべきだと考えるわけです、その点について大臣も若干なりともその意見に賛成だったと思う。そうするならばそういう問題をすみやかにそういう方向に結びつけるとか何かの措置はとってしかるべきではないか。それをただ法律の問題でございますからということは、私は若干問題がある、こういうふうに考えるのですが、そういう積極的な意思というものはないのですか。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 食管問題は非常に歴史もありますし、政治的な大問題でございます。でありますので調査会等をつくっていただいて、そこでもって第三者が慎重に検討されることこそ望ましい、こう考えております。しかしその法律さえ出ないのだから何もやらぬのかというものではありません。砂糖類勘定を特別に分けたほうがいい、こういうことで内容、経理区分を明らかにする、そういうことで今度の生産者米価の引き上げによる食管の繰り入れは八百億でありますというような計算はきちんとできるようにしております。ただ、いまあなたの言われたポイントは人件費とか何とかをぱっと分けたらどうか。これは分けても、ではその以外のものは全部自動的に上げてくれるのだという制度にはならぬわけです。そういう問題もひっくるめてみな検討するということでお願いしておるわけです。これは長い間あなたのようなお考えもありましたし、私たちも党におりましたときには、十分検討していまより合理化にならないものかというようなことを考えたのですが、結局生産者米価は年々上がる、消費者米価は三年に一ぺんくらいしか上げられない、これでは人件費を分けて財政負担にすると、もし仮定な議論ができたとしても、あとはどうしてくれるのか、あとはあとだ、こういう話じゃあまり前進にならない。しかし計算はちゃんとしております。いわゆる人件費は幾ら、倉庫料は幾ら、運搬料はどう、それから諸経費が幾らということで、生産者米価をきめますときにも、そういう内訳によってきめておるわけであります。
  105. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣、えらいわかったようなわからないような答弁をしておるけれども、どういうように判断していいのかわからないのですが、まず、ひとつ私は私なりに整理をしていきたいと思いますが、そういたしますと、この食管制度そのものについては、現在現存をしておる限り、厳正に守っていく、こういう考え方を持っていいわけですね。次の質問がありますから……。よろしゅうございますね。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 食管制度は持続をしてまいります。
  107. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、食管法の第四条にありますように、国民生活の不安の除去などというこういう問題からするならば、米価を上げるということ自体がおかしいのじゃないのですか。これは明らかに食管法の四条の中にあるのですから……。当然そのためにこそ食管法が設けられたというやつがあるのです。それをなぜ上げるのですか。新米価消費者米価をどうして上げるのですか。この点はどうなんです。ただ財政的な問題ということはわかっていますよ。それは答弁はわかっているのですよ。ただ私の言うのは、食管制度があって、食管制度の中にははっきりとそういうことが明確にされておるんだから、何も消費者米価を上げなくてもよろしいじゃないか、こういうことを私は申し上げているのです。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 家計の安定をはかるということは、食管制度ができましたとき、この法律ができました当時の状況を考えれば、これはもうだれでも首肯すべきことでございます。それから日本の状態もよくなってきたし、この法律のこの条文が制定せられた当時の精神はもちろんいままでずっと生きておるわけでございますが、状態は相当よくなってきておるという事実は事実であります。それから値上げというのは、食管制度を守っている間は絶対しないんだ、こういうことは、いままでも、食管制度はありましたが、ずっとやってきたのです。どこかから金がきまして、食管制度の中でもって金でも採鉱しておれば別ですが、そうじゃないのですから、これはやはり政策の上で——いまの憲法の中で、お互いは最低生活は必ず確保されるんだ、お互いはとにかく文化的で、こういう生活をしなければならぬ、こういう条文と同じことであって、これは家計の安定のためにこそつくられた食管制度でありますから、政府も国民もそういう気持ちで運営をしなければいかぬということは理解いたしますし、政府もそのためにこそ、三ヵ年間生産者米価は上がっているのに消費者米価は一回しか上げない、千九百億から二千億になんなんとする一般の税金からまかなっておっても、消費者米価は、少なくとも十二月三十一日まで上げません。こういうのはその条文どおりにわれわれは解釈しているからやっておるのであって、一切、いままで上げたのもみんなおかしいんだ、どんな赤字が出ても一般税金でまかなうべきものだという条文ではないということだけは、これは明らかであります。
  109. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣米価は毎年毎年上がったとおっしゃいますが、毎年上がりましたか。そのことをお伺いしたいのです。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 それは食管制度ができてから毎年上がったか、こう言われればまた別でありますが、御承知の三十六年は六百円、三十七年は千二百円、三十八年は千二十四円、三十九年は千八百円弱、こう上がっておりますから、やはり生産者米価は四年間毎年上がっておるわけです。ところがその間において、消費者米価は一三・六%上げたにすぎない。これは事実です。
  111. 卜部政巳

    ○卜部委員 じゃ事務当局のほうにお伺いしますが、毎年上がっていますか。
  112. 澄田智

    ○澄田説明員 お答えいたします。  いままでの例では、三十一年に、前年の石当たり一万百六十円が一万七十円と下がっております。それ以外は、きわめてわずかな引き上げの年はございますが、全部上がっております。ことに三十六年以降は、大臣が答弁いたしましたとおり六百円、それから千二百円、それから千二十四円、それから千七百九十七円、こういう大幅な値上げが毎年行なわれております。
  113. 卜部政巳

    ○卜部委員 私は大臣の言葉じりをつかまえるわけではなかったのですが、食管制度ができてから、いま事務当局が言われたように下がったところもあるわけですね。しかも三十年から三十五年の間の上がりというものは実際問題として微々たるものですよ。そういう中でも物価は上がっているのですよ。率直に言って物価は上がっているでしょう。そのことを私は指摘をしようとしておるわけではありません。時間もございませんから次へ進んでまいりたいと思います。  そういたしますと、いま申し上げておりますこの統計をとってみましても、毎年毎年でありますが、米を消費をするという方が年間七十万から八十万ふえておりますね。いま米を食べられる方が——これは専門ではございませんから、農林大臣のほうにお伺いをいたしたいのですが、大臣はそういうことまでは知らぬと思います。こういうふうにふえていっておるわけですね。そういう中で消費者米価が上がってきます。こういうことでもって、いま言う四条の問題等もあるから——私は何も上げるということについて財政的な措置から、いま平林委員のほうからも指摘をされたそういう面の問題で大臣が答弁をするということはわかるのですが、これは基本的に考えたときに、私は誤りだということを御指摘をいたしたいと思います。ここに明らになりましたけれども、今度は制度の問題について、大臣はそういうように慎重に取り計らいたい、こういうことで来年度あたりのスライド制と食管会計制度との問題がごっちやにならないということを、私はこの委員会で確認をしたいと思います。よろしゅうございますね。ごっちやになって、しまいにはそういうものが浮かび出てきたということではなくて、将来にわたってこの制度は持続していく、最低としては存続していく、こういうことです。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 食管制度は守ってまいりますということでございますが、食管法の改正もやらぬ、こういう考え方ではございません。またやるという考え方でもございませんが、私のほうの考え方としましては、政府として食管制度の調査会をつくっていただこうという法律を国会に出そうとしております。いつまでたっても出せないということだけでございまして、ですからすべてのものが四十年度予算関連法として、どういうような答申が出ても、どういうような小委員会結論が出ても、何もできないのだというふうに拘束的にお考えになることはないんじゃないかと思います。
  115. 卜部政巳

    ○卜部委員 この問題は少し掘り下げたいと思いますが、与えられた時間がきわめて短いのでございますので、次のほうに進んでまいります。  次に大蔵省の今度の重点目標の中に、新聞に報道されておりますが、治山治水新五ヵ年計画なるものがありますね。この概略の構想というものはどういうものでしょうか。概略でけっこうです。
  116. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、治山治水十ヵ年計画を策定をいたして閉講で決定をいたしております。この前期五ヵ年計画が終わるわけでございますので、新しく建設省及び農林省で治山治水五ヵ年計画の改定案というものをいま検討しておるようでございます。私たちは新しい治山治水五ヵ年計画に対してはまだ承知をいたしておりませんが、八月三十一日の概算要求の中にはきっと出てくる、こういうふうに理解いたしております。
  117. 卜部政巳

    ○卜部委員 これはちょっと本筋からはずれるかもしれませんが、今回北陸、山陰地方を襲った集中豪雨から発しておる災害の問題でございますが、ことに私、島根の出身なんですが、特に三十六年の災害のときに、山に亀裂が入って、これはどうしても直してもらわなくちゃならぬ、危険であるなどということも考えてはいたものの、いわゆる政府の採択というものが、基準が八十万以上でなければならぬ、県の場合は五十万以上でなければならぬ、しかも自己負担が三分の一、町村が三分の一というこういう状態の中では、国のほうは当然この基準には触れませんし、県のほうにもそういうかっこうにならない。おのずから貧農の方々が自分で山を直すなどということはとうていできないということから放置されておった。このことが私は三十九年度の災害の被害を大きくしたものだと思うのです。だから私は言うならば、この災害を天災じゃなくて人災とさえ言いたくなるほど、実地のいわゆる視察をやってみたときに、水害で水が引いていった、そういうところはたいした問題ではないと私は思います。ただ新潟の場合の死者が四十五名といいますけれども、島根の場合の死者は百五名であります。その百五名のうちの百三名がみんな山くずれによる下敷きになった、こういう悲惨な状態というものを私は大臣にまず状況として申し上げて、おそらく大臣も新潟の震災によるそういうものを視察されておりますから、よくおわかりだと思います。そういう状態の中で、山がくずれると溶岩のように田畑に流れ込んで収穫皆無だ、こういうような状態の農家というものがたくさんあります。そういうようなときに、私は率直に申し上げて、収穫皆無ということは、十月の出来秋のときに何も収穫物がない。収穫物がないということは一文も入らないということ、家を倒され、死者も出る、加えて田畑は埋没をしてしまう、こういうような状態のときに、私は政府としては何らかの措置をすべきではないか、援護策をすべきではないかと思います。いろいろとこの間災害特別委員会の中で、事務当局と話し合ったにしましても、この問題の解決はなかなかつきません。大蔵大臣にひとつこの点については何とかして政府も援助をすべき手段というものを講じてもらえないだろうか、また講ずべきではないか、こういう点で質問をしたいと思います。いかがでございますか。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 農業災害の悲惨な状況は私も承知をいたしております。私もおととい新潟の集中豪雨地帯、地すべり地帯等を見てまいりましたが、特に山陰は三百ミリの集中豪雨ということであればどのようなものか、また被害の写真等も十分見ておりますし、人的被害も大きかったということに対して、実情は理解をいたしておるつもりであります。これらの問題に対しては、農業共済組合による共済金の仮渡しとか、農業共済組合連合会の保険金の仮渡しとか、国の災害保険金の概算払いとか、こういう問題については遺憾なく手を打っておりますが、あなたが言われたとおり、実際収穫皆無になった人の飯米はどうするのか、これからの復旧費だけではなく、現金収入が全然ないのでこれを一体どうするのかという問題、一年間収穫皆無になったら、昔ですと十年間その農家はだめになってしまうという歴史もあるわけでありますから、こういうものが現行法で救済できるのか、これはひとつ十分検討してほしいということで、事務当局にも天災融資法の問題とか自創資金の問題とか、こういう問題も実情に合って——これが離農するというようなことになったらたいへんなことになりますから、こういう問題に対して、できるだけ実情に即して農民が大きな災害を受けながらも、そこに定着しながら再建の意欲を燃やしていけるようにどう措置すべきかということに対しては真に前向きで検討するようにということを指示しておるわけであります。農林省の統計部でいま検討しておりますから、被害状況が判明すれば、これらの措置に対してはできるだけ遺憾なき措置をほんとうにとっていきたいという考え方であります。
  119. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま大臣は、農業共済とか概算払いとかそういうお話があったわけですね。事実農業共済の場合、収穫皆無の場合には、一反当たり私が計算すると大体七千円という形になります。山くずれにあって死者が出た、家屋が倒壊をした、田畑が埋没をしたというところは、やはり二町も一町も耕しておる方々じゃないのですね。大体四、五反百姓、こういうことになっております。その中で、一反当たり七千円という形だったら、五反として三万五千円あまり、食えといっても食えるものじゃないのです。三万五千円くらいといいますと、おそらく収入大臣の半日分の私は金じゃないかと思うのです。そういうことで食えるはずがないのです。そういう点を前向きの姿勢云々ということを——気持ちとしてはわかります。大臣がやっていただこうとする気持ちはわかりますが、何としてもこの問題を放置をしておったら、これは人権問題ですよ。率直にいって食えないということですから、この点をひとつ大臣に特に、ただことばだけの問題で前向きだとかさらには善処するということではなく、その被害の調査の全貌というものが明らかにされたなら、そういう問題についてはひとつ十分な措置をとるようにお願いをいたしたいと思います。  大臣は二時四十分までということで、もう時間もございませんから、大臣に対しましてひとつ要望を申し上げておきまして、次にいろいろと倒壊した農家の問題もありましょうし、収穫皆無の中で、今度は生活があすからもう夜露もしのげないという状態の中で、やはり三十六年の災害、加えて集中豪雨、こういうかっこうで能力というものは、もう借りる金というものはみな借りておるわけです。今度は借りても返済できないという問題もありましょう。と同時に大臣がいまおっしゃられたように、一ぺんそういう目にあったら十年間は復帰できないのだということも考え合わせるならば、そこにやはり税金の免除とかさらに西ドイツがやっておりますグリーン・プラン、そういう方向で姿勢というものを前向きにしていただきますことを特に要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  120. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 次会は、来たる九月十五日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十七分散会