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1964-07-14 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年七月十四日(火曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 堀  昌雄君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       大久保武雄君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平林  剛君    春日 一幸君       竹本 孫一君  委員外出席者         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 高橋局長にお願いしますが、先回第一銀行朝日銀行合併問題がございまして、当委員会でいろいろお伺いしたのでございますが、銀行合併という問題の基準点はどこにあるのか、まずお伺いしたいと思います。この前大蔵大臣からもそういう説明がありましたが、どういうところに銀行合併基準があるか。
  4. 高橋俊英

    高橋説明員 銀行合併するという問題は、戦前におきましては中小銀行が非常に多くありまして、その経営基盤がはなはだ脆弱でございました。そういう弱い銀行を放置しておきますと、取りつけが頻発するということがありまして、この銀行基盤を強化するということが主たるねらいでございまして、今日銀行だけの数をとってみますれば、戦前の姿とは非常に違いまして、数としては決して多いとは申しがたい状態でございます。この場合において、なおかつ金融機関合併が必要であるのかどうかという点は多少問題がございますが、それは銀行の中にもまだまだ経営基盤が十分でないと認められるものがございますし、将来の発展性を考えた場合にも、なおかつ不十分であるという見通しも立つ場合もございます。しかしながら、それ以外に、やはり経営合理化という点、開放体制は直接には金融機関には影響ないように見受けますが、それでもなおかつ、たとえば延べ払いの関係で、外国から攻勢がかかってくる。あるいは自動車の月賦販売という問題につきましても、安くて長い期限のものが入ってくるということもございます。そういうものに対抗いたしまして、国内の市場を撹乱されないという金融体制をとる必要はあると考えられます。でありますから、たとえば都市銀行間が無意味過当競争をやっておる。そういった過当競争のために、かえってコストを高めているという面もないではない。それからまた、経済に対する無用の波乱を生ずるということもございます。でありますから、合併について、すべての場合が非なりとは申しません。確かに非常に有意義と思われる合併もあるかと思います。そういう場合におきまして、私どものほうで一応の基準として考えております点を申し上げますと、まず第一点としては、銀行のそれぞれの当事者が無理なく円満に話し合いが進められるということでございます。今日の段階では非常な無理をして合併するというふうなことは、かえって有益ではないんじゃないかというふうに考えます。  第二点といたしましてはその合併が必要であろう、有益であるという積極的な意義が、当事者の言い分だけでなく、客観的にもそういう必要性が認められるということ。  第三点として、もちろん当然のことでございますが、合併条件が適正でなければならぬ。  第四点といたしまして、これは前に申したこととやや重複するかもしれませんが、合併後のメリット、効果が十分にあるということが認められる。合併後におきまして、合併前に比べていろいろな点で有利な点が多いというふうなことが大体においてうなずける。そういう場合には積極的に認めるという考えでございまして、こういう方針でありますので、すべての合併は否定してきたのではございませんで、昭和三十年に佐賀県に二つあった地方銀行合併して一つ銀行になり、青森県におきましても青和銀行青森商業銀行を吸収合併する、こういうことが三十五年に行なわれております。そういうことでございまして、すべての合併を否とするような態度はとっておりませんが、先ほど申し上げました四つ条件に当てはまるものについては合併は認めるが、それ以外の合併ということになると、その場合によって私どもとしては実情をよく勘案して、プラスのほうが多いか、マイナスのほうが多いかという点、他の銀行等に及ぼす悪い影響があるかないか、そういう点を考えた上で、具体的なケースにあたって認可をするかどうかをきめる、こういう態度でございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように、地方銀行同士合併などということは、いま局長説明されたとおりであると思うのですが、地方銀行には地方銀行としての、地域的な中小企業と密着していろいろな便宜を与えているのですが、そういう点でそういう使命を達成される。大体一県に一行主義という形で今日まできたのですが、このごろ大臣の放言とまでいかないまでも、とにかく銀行合併問題を軽々に言えば、それはやはりひいては地方経済に響くような問題があるのでありますが、そういう点については、大蔵省としては十分な検討をしていただかなければならぬと思うのです。あとで堀君からも質問があると思うのですが、この間ちょっと新聞に、住友銀行河内銀行というのが合併するというような記事があったのでありますが、一体どこまで進行しておるのか。前にも第一銀行朝日銀行との合併のときに、問題がありましたが、せっかく今日地域に密着しておる銀行がそういうような形に出てくるということは、どうも片手落ちのような感じもするのでありますが、一体そういう問題はどのように考えておりますか、伺いたいと思います。
  6. 高橋俊英

    高橋説明員 住友銀行河内銀行合併したいという話は、住友銀行の側からは非公式ではありますけれども申し出がございます。この問題は、にわかに起こった問題とは申しがたく、三十三年に河内銀行経営が不振になりました際に、当時までは河内銀行は、どちらかと言えば三和銀行にある程度たよっておった、援助を若干受けておったのでありますが、それが今度住友銀行のほうに切りかえが行なわれまして、住友銀行から重役も入る、それから支店長も入るというふうなことで、人的にもその支配下に属するようなことになったわけであります。こういうふうに経営がまずくなった場合に、それを救済するような意味で、力のある都市銀行がその援助に乗り出すということは、それ自体としては、銀行行政上必要だと考えられる場合もございます。それが、その当時から実は合併したいという希望もあったやに私は聞いておるのでございますけれども、しかし当時の考え方として、戦後にできたそういう小さな銀行を再びまた大銀行合併を始めるということになると、他に波及する問題もいろいろあるということから、きわめて強い否定的な態度大蔵省は示しておったわけでございまして、その後さたやみになっておった。それが今年になりましてから、ある程度合併も歓迎するといったような大臣談話もあった関係もありまして、またそれならばということで、そういう工作が進められるに至ったものでございます。この問題は、まだ私ども実は結論は出しておりません。いやしくも一つ銀行が、小銀行といいながら、合併されるということについては、いろいろと地元の関係もございますし、それよりも私どもが非常に頭を悩ましますのは、いま佐藤委員が御心配になっていると思われる他の都市銀行への影響という点でございまして、われわれはいままでの金融界のあり方が、とかく大銀行預金面及び貸し出し面における過当競争の弊害に基づくいろいろなまずいことが多いので、競争はいいけれども非常に行き過ぎはいかぬということで、それを是正することに私ども金融政策の重点を置いておるわけでございます。その際に、預金面ではありますが、でき上がっている銀行店舗をそっくりいただくというふうな結果になって、他の銀行から見れば吸収した銀行の側がどうもうまいことをしたではないかというふうなひがみを生ずる、そういうこともありますので、なかなか慎重に扱わなければならないものと思っております。  抽象的に申しますと、都市銀行がそういう地方銀行の小さなものを合併する場合で、やむを得ないとされるものとしては、その地方銀行経営基盤に独自のものを持っていない、それから経営につきまして不安がある、将来を見通した場合においても業績向上も期待できないではないか、そういうふうな状態にあります場合には、場合によっては合併もやむを得ない。しかしそれには、はたから見ましてその小銀行と大銀行との間が、もともと非常に密接な関係にあった、あれは一緒になってもやむを得ないのではないかというふうな多少客観的にも首肯し得るような環境が整っていなければまずいのではないか。朝日銀行と第一銀行の場合で申しますと、幾ぶんかそういった条件に合う点があったように思います。したがいまして、これは私のほうですでに実質上認可を与えておるわけでございまして、八月一日で合併が成立するということに予定されております。今回の河内銀行住友銀行の場合に、そういう点がまた同じような環境と認められるかどうか、それらの点につきましては十分検討を要する。と申しますのは、河内銀行が先ほど申しました経営不振におちいったあと住友銀行援助もありましたが、その後の一般的な経済環境から、三十三年ころからでございますが、経営が二、三年間は非常にうまくいきまして、あの地帯における中小企業中心とするところの発展も相当大きく、河内銀行の当時の不良資産はほとんど一掃されておる。内容的にはもうあまりけちをつけるような状態ではなくて、その上に河内銀行職員たちも非常に張り切ってその業績向上につとめておる。預金量も当時に比べれば、三十数億であったのが二百億をこえるようになったということで、どうやら地方銀行の体をなしてきたというふうな事情もございます。その段階になりまして合併することについては、やはりかなりの積極的な理由が別に見出されないとあまり容易には認められないのではないか。しかしいまのところ、これを否定するとも肯定するとも、結論を出すにはちょっとまだ時間がかかるという感じでございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私どものほうの東海銀行が、先回、第一と朝日銀行との合併の問題のときにいろいろ問題があったということをあとで伺ったのでありますが、御承知のように一つ支店をつくるのにも、なかなか銀行局は綿密にして、容易に一つ支店を許さないというような方針をとっておられるときにこういうような合併が行なわれるということになれば、地方の人に非常に不安を与えると同時に、私は大蔵省方針が一定しないというような不安を持たれると思うのであります。そこで、いま申されました第一銀行朝日銀行との合併のことについての影響とかその後の経過はどうなっておりますか。いま住友と河内銀行との合併に関連して前の問題がどのように処理をされたか、またどういうような影響を与えたかということについて御意見を伺いたいと思います。
  8. 高橋俊英

    高橋説明員 第一銀行朝日銀行の場合には、簡単にそのいわれを申しますと、朝日銀行銀行として存続する——信託部門のほうを別に切り離したわけであります。東海銀行信託部門ども一緒になりまして中央信託というものをつくったわけであります。その設立の際に、分離するにあたりまして東海銀行の側から、これを将来とも銀行として存続せしめるならいいけれども、第一銀行合併するということになると自分のほうとしては黙っておることはできないというふうなだいぶ強い抗議がありまして、当時のいきさつを知っておる者から事情を聞きますと、そういった抗議に対して、まあまあ朝日銀行一つ地方銀行として存続させるのだというふうな約束があったということでございます。どうも、非常に強い意味ではなかったかもしれませんが、そういう気配でありましたので、今日まではよかったのですが、第一銀行合併の話を始めて、非常に短い間に両者合意が行なわれてしまったのです。あまり無理もなく同意ができてしまったということになりまして、東海銀行がこれに苦情を申し入れて、私どもその処理に非常に困ったのでございますが、いろいろな、朝日銀行の前身である第一信託時代占い歴史から見ましても、第一銀行と第一信託との関係は相当強い親戚関係にあったということが言えるわけでございまして、これらの先ほど私が申しました歴史的な事情という点においては、相当因果関係の深いものである。両者合意がきわめてスムーズに行なわれましたのですが、そういう東海銀行苦情につきましても一部もっともな点もあるということから——つまり東海銀行預金量で申しまして五番目であります。第一銀行がその次なわけでありますが、五番目と六番目の地位が、この場合は逆転するには至らないけれども自分うしろにだいぶ距離があると思っていたのに距離を詰められるということになりまして、その意味での関心が深いということなんでございます。この点は非常におかしいのでございますが、当時の分離したときのいきさつから見ますと、東海銀行に黙って合併を認めるというのもどうかということから、結局店舗数で解決しようということになりまして、五番目と六番目との振り合いでありますから、朝日銀行店舗が当時二十八ヵ店ございましたが、そのうちから五ヵ店——これは五ヵ店のうち二ヵ店は、設立の内認可を受けているけれどもまだつくっていないといういわば新設にひとしいわけでございます。その二ヵ店を含めて五ヵ店東海銀行に譲ろうということに結局なったわけでございます。これは両者間の意向を見ながらわが方が間に入りまして、そういうあっせんということになったわけでございます。残りの店舗は当然のことながら第一銀行に吸収合併される、こういうことになりました。また重複店舗も二ヵ店ばかりございますが、これは廃止するというふうなことになっております。そういういきさつでございまして、——この朝日銀行地盤というのは東京都内でございます。言ってみれば独自の地盤としてはあまり目立ったものはない。信託をやっておりますときに特殊性があったわけでございますが、それをやめてしまうと、存在意義が全くないとは申しませんが、あまり独自の地盤がないために、将来性という点からいってもそう十分でない。その上に環境、歴史的な意味というふうな点も相当有利な面がありましたので、合併を認めた。合併にあたっては東海銀行をなだめるというふうなことで、両者の均衡をこわさない範囲でやるというふうなことになったわけであります。確かにこの合併問題、こういうケースにいつも伴いますのは、大銀行間の順位争いというような点がからんでまいりまして、そういう点私どもまことに遺憾なこととは存じております。これらの点は今後十分注意していかなければならない問題点一つではあろうと思います。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先日この銀行合併問題について、高橋銀行局長市中銀行首脳懇談会四つ基準を示めされたようですね。それはいまでも変わりありませんか。
  10. 高橋俊英

    高橋説明員 基本的な線としては変わっておりません。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そういうことになると、今度の住友銀行河内銀行との合併はこの基準からいえばどうもはずれると思うのでありますが、どういうように解釈されますか。
  12. 高橋俊英

    高橋説明員 その点は私先ほど申しましたように、あまり歓迎すべきものとは考えません。しかし結論は出しておらない。簡単には結論が出しにくい事情もございます。と申しますのは、当初河内銀行役職員合併説に対して相当強い抵抗を示したというふうに聞いておったわけです。それであれば問題なしにこれは失格だというふうに考えておったのであります。最近の情勢で、直接には河内銀行のほうから合併を非常に希望するというふうな申し入れは実はないわけでございますが、しかし間接に調査したところによりますと、役職員のそういう反対説はほとんど影をひそめている、つまり合併に対して大体賛成だというふうに踏み切ってしまっているという点があるわけです。役職員気持ちがもしほんとうにそういうことに変わってきてしまっているということになりますと、これを否定し去るにはやはり別の理由、つまりその合併が好ましくないという意味でのほかの条件が非常に不適格であるということが強く出てまいらぬといかぬ。あの地域における河内銀行存在理由、それらにつきましてもっと研究をしてみませんと、にわかに結論を下すのはいかがであろうかということでございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たち専門家でありませんから、各銀行内部事情とかそういうことはあまり詳しくは存じませんけれども、いま支店一つ増設認可されるのにも、大蔵省銀行局は、非常に慎重にいろいろの経済情勢を調べたり、銀行の内容を調べて許可になっているように聞いておりますが、しかしそういう銀行支店を増加するような場合の基準なり、また情勢なりというものはどのようになっておりますか。高橋さんにお伺いしたいと思います。
  14. 高橋俊英

    高橋説明員 支店を設置する場合の一つ基準というものは非常にむずかしいものでございまして、概念的にはあることはあるのですが、天下に公表してはばからないような基準というふうなものはないのでございます。これを具体的なケースについて認めているわけでございますが、とにかくまず銀行がそこに支店をつくることを希望するということが最初に出てまいります。   〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席銀行希望がそれはしばしば重復する場合が多いのでございます。つまり大都市内部はあまり希望しないようでありますが、周辺地区等で非常に経済発展が目ざましいところ、そういうところには各行がそれぞれ設立希望をしまして競合いたします。一時にそういった希望をそのまま認めるということになると、かえってマイナス面が非常に多くなるということから、交通整理という意味では、どうしてもこの点の認可というものは必要であり、そのえり分けをする場合には、いろいろな利害がふくそうしておりますから、こちらの地域をこちらの銀行に認めた場合には、つり合い上こちらにやらなければおさまらないというふうなかみ合わせが非常にむずかしい。簡単な算術で解けないような問題がございます。結局はやはり銀行間のバランスもある程度考えてやりませんと、銀行間のバランスを全然無視してやるということになると非常に不平不満がつのるということから、銀行行政に対する信用がなくなる。ですから公平ということはすべてに同数を認めるということではありませんで、やはり公平を欠いた行政措置にならないように私どもは注意はしております。それで総数といたしましては、それぞれの地域ごとに、ここの地域は一店だけだとか、この地域は二店までよろしいというふうなことがございますので、一がいに総数を押えてかかるわけではありませんが、結果的には増加率として、銀行店舗数に対して本年度の場合ですと大体四%増くらいの割合になる。この程度であれば経済地域的ないろいろな発展情勢等から考えてそう過大ではないのではないかというふうに思いますが、しかし設立認可を受けていて、そしてすぐそれをつくってしまわない、繰り越しになっているというふうな事例もかなりいま生じてきておりますから、総数としての見地からいえば、銀行はかなり十分に店舗認可を受けているというふうな状態ではないか。すべて設立認可と同時にみなつくってしまってまだ足りないというふうな情勢ではないということでございます。これはもう具体的なケースで一々さばいていく問題でございまして、要するにその地域銀行店舗をどうしても必要とするかどうか、そういうことがやはり基本的な条件であることは間違いないわけでございます。ただし、希望はしておっても銀行のほうがそれを選ばないというふうな場合もございます。その地域に対して何か魅力を感じないといいますか、将来の発展性がないというような理由から、住民銀行が少ないのをこぼしているが、銀行の側では希望しないという場合もございます。しかし一般にはそういうのは例外でございまして、大体東京都内その他主要なところではちょうど店舗配置はいま完了したと言ってもいいんですけれども、新しい地域的な発展に伴いまして、都市銀行を入れるか、地方銀行を認めるか、あるいは相互銀行というふうなことになるか、各金融機関バランス等も考慮して、それから住民希望をもある程度そんたくして認めていく、こういうことでございまして、的確な基準というものを持っているわけではございません。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先日金融小委員会銀行代表者の五人の方にいろいろ意見を聞いたのでありますが、その中で、私の持論としては、御承知のように銀行支店目抜きのところへどえらい建物を建てるということについてこういう例はないのではないかというようなことでいろいろ話したのですが、銀行銀行で、魚釣りの場合と同じように、食う場所と食わぬ場所があるからというようなことで逆襲されたのですが、どうも私どもとしては、いまの日本の銀行大都市中心であるということはやむを得ないとしても、やはり目抜き場所、ほとんど銀座でも日本橋でも名古屋なんか広小路あたり銀行はみんな新しい建物競争して大きな支店をつくっておるというようなことを私は苦々しく思っておるのですが、支店認可するなりそういうときの指導的な立場として、銀行局長なんかはそういう制約は一体加えられるものであろうかどうか、この点をひとつ承っておきたいと思うのです。
  16. 高橋俊英

    高橋説明員 ただいまの御意見に対して、私も実は、いままでできてしまったことでございますけれども、あまりにもいわゆる銀行過密地域といいますか、銀行店舗過密地帯がある。これは、そういう中心地店舗を持っておるということは、何か一つの大きな広告塔を持つというふうな意味で値打ちがそれぞれの銀行にはあるのかとも思いますが、経済的なあるいは金融行政の上からいえば必要もないほど片寄っておるのじゃないかというふうな事実を私のほうもよく感じております。これはおかしいという気持ちは持っております。そこで行政上どうかできないかという問題につきましては、前々からはすでにできてしまっておるものをよそへ移せということはなかなかむずかしいと申し上げておりましたか、今後——私個人の考えてございますが、でき得るならば配置転換一つ条件に考えていいのではないか。つまりそれらの店舗における預金量というものは、形の上ではかなり大きいのです。一つ支店資金量があまり少なければ、これはその当該銀行がむしろ自分配置転換希望するのでありますが、数字の上から見る限りは、存外どの店舗もわりあいに成績があがっているようなことです。ただ将来の伸びという点を考えますと、必ずしも有利とは言えないのじゃないか。いろいろいままでの成績とこれからの見通しを考えまして、その資金量をにらんだ上で、これは一つの例でございますが、たとえば銀座にある、目抜き通りにある支店一つ廃止すれば他の非常なこれからの発展地店舗を優先的に認める、場合によったらそれ以外にもう一店舗認めてもいいとか、資金量の将来の伸びを考えたら十分に引き合うような条件を示すことによって、場合によっては配置転換を慫慂するというようなこともやっていいのじゃないかと思うのですが、しかしなかなかこれは実情といたしましては、非常に目抜きの道路にあるということ自体が意味があるということで、それをなくすると、何か銀行としては格が下がったみたいに思う。あまり実益にとらわれないような競争の多い世の中でございますから簡単にはそのようなことができるかどうかわかりませんが、考え方としては指導をしたいという感じを持っております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 各委員の質問がありますから、最後にいたしますが、今度の住友銀行河内銀行との合併問題は、やはり他に連鎖反応もあることでありますし、そういう点も局長も十分認められているようでありますが、銀行合併問題というのは、あなたの言われましたように基準もあることでございますし、それからその他に波及していい結果が出ればいいけれども、連鎖反応を起こしてそうして地方銀行をのんでしまうということになれば、結果においては地元の金融との関係の深い業者が非常に難儀をする。どうしてもやはり大銀行は資本の集中をやる関係上、大都市にどんどん中心を置いて、たとえば東京とか大阪というところが中心地になっているのでございますから、そういう点はいままでも第一銀行朝日銀行との影響があると同じように、やはり連鎖反応が起こるということが考えられるので、ぜひひとつ慎重な態度をとっていただきたいと思うのでありますが、その点は現在の心境はどういうふうになっておりますか、最後に伺いたいと思います。
  18. 高橋俊英

    高橋説明員 つまりこういう具体的なケースが起こりまして、それとあまり変わらないような状態にあるものが他にあった場合、これを認めることによって他のものもみな認めなければならぬというふうになったのでは、確かに悪影響が出てきたといっていいのではないか。そこでこちらが非常に歓迎すべき性質の合併である、歓迎するほどではないが合格しておるというふうなもの、あまり好ましい種類の合併ではないが、しかしそれがやり方によっては一つ合理化にはつながるという場合もあるでしょう。そういった合格すれすれのようなケースに該当するものとしますと、そういうものをほかに誘発しないためには、何かほんとうに他とのバランス——合理化のために一つのきびしい条件を付する。合併のときにきびしい行政上の条件が付されるということになりますれば、波及の程度も相当違ってくるのではないか。合併したほうが常に当該銀行にとっては業容の拡大につながって有利だ、他をしのぐことになるのだというような考えをほかに植えつけないようにするというような配慮で、ほんとうに有益な場合には何ら妨げないかもしれませんが、そうでない判定のむずかしいような場合には、過当競争の弊をもたらさないようなきびしい条件が付されて、それによって他への波及を最小限度にとどめたいというふうに考えます。
  19. 原田憲

    ○原田委員 いまの佐藤委員の質問に関連してお尋ねしたいのですが、いま佐藤さんが指摘されたように、一つ合併が行なわれると、それに関連しておれのところにもやらせてくれという問題が起きてくる。いままでにもその事例は私はなしとしないと思います。地方銀行都市銀行との合併だけでなしに、外国へ支店を出す問題についてもそうです。こういうことについて、銀行局としてのき然たる態度というか、これを許したらこれも許してくれ、あちらも許してくれ、こういうようなことで、野方図に行政が行なわれないように相当腹をきめてやっていく必要がある。本委員会で常に言われておりますように、日本の銀行で順位の発表があるときには預金高をもって一番二番というようにやっている。それが結局そういう問題を引き起こしておる一つの原因になっておると思いますので、銀行局長がいま答弁になりましたことでよろしいようなものですが、かりに一つ銀行合併をされた、そうすると、私のところもさせてくださいと言ってきても、それにはそれだけの理由がなければならないということをはっきりしてもらわなければならぬと思いますが、その点についてもう一度答弁願います。
  20. 高橋俊英

    高橋説明員 全くおっしゃるとおり私ども考えておりまして、無意味に、地方銀行であまり存在理由がないようなものがかりにありますれば、それを合併することは日本経済全体として見れば何らマイナスとは考えません。しかしそれはそれなりにその地方にとって存在理由があるというものを、銀行順位争いといいますか、業容のための競争の見地からだけで合併のための工作を進め、場合によっては株式の買い占めまでやって力を加えてやるというようなことが行なわれれば、これは大銀行のためにはなるのかもしれませんが、全体として見ればマイナスのほうが多いという考え方において全く変わりありません。そういうふうな事態にいかないように合併基準を今後もさらに検討いたしまして、大体持っておるわけでございますけれども、きびしい態度処理したいというふうに考えます。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先日当委員会で、銀行の金庫の金がなくなる問題が一時ずっとありまして、その後問題になつて、最近そういう問題がやはり消えていくかのような情勢でございます。そこで銀行の信用という問題が世上やかましくなりまして、ようやく大蔵省の指導で幾ぶんかよくなったというように思われるわけです。そういう中で銀行合併問題がやはり相当いろいろの問題に波及してくるという立場からも、ひとつ十分に、今度の銀行合併については、慎重な態度でやっていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
  22. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 堀昌雄君。
  23. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまの銀行合併問題、いま佐藤委員のほうで一般的に御質問がありましたが、私もう少し詰めて具体的な点をお伺いしたい。  まず最初に、いま原田委員もお触れになりましたけれども、私は先月の二十五日の歩積み、両建て預金の問題のときに討論をいたしました。そこで討論の中で触れておりました要点の一つは、最近の都市銀行中小企業向け貸し出しがだんだん低下しつつある。例をすでにあげまして、三十七年の三月に、一千万円以下の中小企業に対する貸し出し比率は二四・七%あったものが、三十九年の三月の末には二〇・一%に低下をしている。このことは単に都市銀行だけでなく地方銀行もやや低下をしておりますが、しかしウエートが五〇%くらいはやはり一千万円以下のところにいっておるわけですから、ここに都市銀行地方銀行との差があるし、さらにその差だけではなくて、最近の中小企業向け貸し出しという問題について、だんだんと変化が生じつつあるということを私は指摘いたしまして、歩積み、両建てについて、このような低下傾向が助長されるようなことのないようにしてもらいたい、こういうふうに討論で申しておるわけです。  そこでこの銀行合併問題が当面話題になっておりますのは、都市銀行地方銀行との合併でありますから、当然この都市銀行のこういう中小企業向け貸し出しの低下というもの、地方銀行も多少は低下しつつあるにしても、その低下の率は少ないという点から見て、地方銀行にはやはり地方銀行の役割りがあるはずです。都市銀行には都市銀行の役割りがある。そうするとその合併について、なるほどしばらくの間は、いろいろな諸条件があるから、地方銀行のベースをくずさないような措置がとられるかもしれない。しかし時間がたつにつれてそのことは解消をして、やがては都市銀行ベースの貸し出しということになれば、これは地元の中小企業にとってはかなり大きな問題だと私は思うわけです。  そこで一般論として、そういう都市銀行合併をしてなおかつその地域における地方銀行的役割りというものが長期にわたって維持できると考えるかどうか。それらについて銀行局がどの程度の指導力を持ってそういう地域における中小企業金融について配慮を払うことができるか。この点をちょっと最初にお伺いしたいと思います。
  24. 高橋俊英

    高橋説明員 では具体的に申し上げます。  第一銀行の場合ですと、朝日銀行の本店が、ちょうどたまたま新築されたわけでございます。そこへ一たんは朝日銀行の本店が移りますが、合併になるとそれが支店になるわけです。それを中小企業金融のセンターにするということが条件になっておるわけであります。そこを、もと朝日銀行が取引してきたものだけでなくて、合併後における両銀行中小企業向け金融のセンターにする。これは場所がちょうど八重洲口のそばでありまして都心でございますから、完全に第一銀行の東京方面なら問題なしに全部中小企業を掌握してやるのですからその点はいいと思うのです。当分の間、そういうセンターをつくってやるというからには、そういう中小企業向けの比率が実質的に低下するようなことはやらないと言っております。これは監督していける数字の問題でございますから、中小企業センターまで設けてやっておってどんどん下がってくるというふうなことで、他の銀行との比較をすればわかるわけです。そういう点で監督がしやすいと思います。ただ、たとえば住友の場合でも、河内の河内銀行の本店を中小企業のセンターにするというふうなことを言っておるわけですが、地理的に見ると一体その意味が河内の地区における中小企業向けを確保するという意味なのか、大阪全般を含めてあの辺の中小企業向け全部をコントロールするタワーにするのか、その辺が地理的に見るとおかしな感じもしないわけではない。だからかっこうだけ、中小企業センターをつくるから私のほうはだいじょうぶですと言われても、何かそのときだけの言いわけになるようなことではいかぬのではないか。おそらく今後も、第一銀行のそういう中小企業センターを設けるという例が出てきたのですから、合併をするとなれば必ずそういうことを言ってくるのではないかと思うのです。しかしそれができたら看板はそういうふうにかかったのだからといって、中身はということになると、私ども当分、二、三年の間は文句ないのですが、やはり都市銀行の対象となっておる企業で財閥系企業が多い。それに貸すためにとまではいいませんけれども、相当外部負債を取り入れておるわけであります。それが高い金利を引き受けて、一見どうしても逆ざやになるような借金をしながら金融をしておるという状態のもとで、せっかく自分の範囲に入ってきた新しい預金量が少しもそういうもののプラスにならないという点については、私どもかえって奇異に感ずるわけです。それだけ高い借金をするくらいなら自分の中である程度まかなってしまったほうがいいのではないかという気分におちいりがちです。ですからいまの多額の外部負債をかかえておる地方眼行が中小企業を吸収するということは、長い目で見ると中小企業の方面にはあまりプラスはないのではないか。どっちかというとマイナスになりがちになると思う。それをこっちが一生懸命指導でささえていくというのは、現在の段階なら五〇%も中小企業向けをやっておる銀行があるわけでして、それを都市銀行化してしまわないようにするには相当骨が折れる問題だ、率直に申してそういうふうに思います。
  25. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでひとつ河内銀行の場合に例をとってみますと、二十店舗、二十一店舗ですかが住友銀行という看板に塗り変えますね。いまは二百何十億かの預金がある。現在の預貸率が一つあると思うのです。現在の預貸率は動かさないというような考え方がおそらく出てくるだろうと思います。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが住友銀行という名前によって、今後は二十一店舗分の預金量が増加をしてくるというふうに考えるわけです。しかしこのことは河内銀行があっても増加をする可能性があるものですが、河内銀行から住友銀行に変わったから増加をするかもしれない。しかし増加をしてきたときに、なおかつその地域における預貸率が変わらなければ、地域における何らかの企業の貸し出しになると思うのでありますが、私どうも一つ不安があるのは、だんだんと変わってくるとやはり預貸率が変わってきて、あの地域へ資金を吸収したものがやはりいまお話のような財閥各社のほうに流れていくということになりますと、地方銀行であったときに比べてその地域における産業、特に中小企業の受けるデメリットというものは非常にはっきりしてくるのではないか。ですからこういう点の歯どめがある程度はっきりされてこないと、私はこれを一つの例として取り上げておるわけですけれども都市銀行地方銀行合併の場合におけるその地域中小、零細企業の金融におけるデメリットというものをカバーするだけの何らかの措置がとれるのかどうか。今後のこういう問題を通じて、それについて銀行局として確信があるというのならば、私どもはあまりこの問題というのはそう深く掘り下げなくてもいいと思うのですが、いまちょっと伺った点でも、必ずしもそれらの長期的な指導については確信が持てないということになると、あなたがさっききびしい制限を付するというその制限のあり方が、今度の問題を含めてやはり新たな基準というか、基準との関係における今後の指導方針というか、というものの中で明らかにされてこないと、私は、やはりその地域における中小企業の皆さんはそういうデメリットに対する不安というものをぬぐい切れないのじゃないか、こういうふうに思いますが、その点についてひとつ……。
  26. 高橋俊英

    高橋説明員 長期にわたって監督が十分いくかどうかについては、完全な確信は持ち得ないのでございますけれども、かりに合併を認める場合におきましては、地元金融とか中小金融については条件はむろん非常にきびしくします。それを行政当局がずっと監視していくということはやるつもりでございます。たとえば合併された地方銀行のそれぞれの店舗、これは店舗ごとにとは申しませんが、その店舗は原則として配置転換は認めませんから残るわけです。それの預貸率をまず全体として引き下げない。つまりそこの金を合併した側の銀行に持っていってしまうということがデメリットでございますが、そういうことはさせないということが第一点でございます。そのほかに、そのグループの合併された二十なら二十の店舗における従来の貸し出しの内容、内容と申しますのは、いわゆる大企業分と中小企業分の割合でございます。これも変えない。変えないといいますか、中小企業分を絶対に引き下げない。上回ることがあっても下げることはない。合併前の状態をそのまま維持するということがやはり条件。全体の預貸率だけじゃなくて、その中におけるそういう中小企業分を減らさないという条件がもう一つつくわけです。それ以外に、合併した側の銀行中小企業向けの融資比率を全体として引き下げない。こういうことをきびしく守るということが条件になってこなければいかぬ。認める場合におきましては、そういうことによって地元金融中小金融に悪影響を来たすことは万々ないというふうな誓約を取りつけた上でなければいかぬというふうにいたしたいと考えております。
  27. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、この問題というのは、やはり一つは、いま私が提起をしておりますそういう地方銀行影響下にあった地域における中小企業金融の問題です。もう一つは、そういう問題に端を発して今後の都市における地方銀行のあり方というものを、少し問題として検討しておく必要があるのではないかと思うのです。というのは、最近相互銀行、信用金庫等の中小企業向け金融が非常に発達をしてきて、これはおのおののスタイルというかパターンがありますから、たとえ各都市銀行がありましても、ややこれとは趣を異にしたそういう金融のあり方として伸びていく道はあると思うのです。ところがこの地方銀行というのは、なるほど名称のように地方にある場合、本米地方銀行なのだから、地方にある場合にはこれはなかなかその意義がある。地域における産業との関連、いろいろな面で意味があるけれども都市銀行という名前がついている以上、都市には都市銀行があるのはあたりまえで、地方地方銀行があるということに本来私はなっておるべきじゃなかったかと思う、こういう名前がついておるところから。ところが事実は大きな銀行と小さな銀行というだけであって、都市銀行地方銀行の間にはパターンとしては何ら実質的には差がない。たとえば預金の利子なり貸し出しの利子なりいろいろなものが都市銀行とは別個であるとか、何かそういう点で違いがあるのならばともかく、全然同じ形態の中で、大都市でそうでなくても都市銀行間が激しく競争をしておる中で、片方は、相互銀行、信用金庫が下からどんどんと優秀なものが伸びていく。そうすると、都市における地方銀行はサンドイッチのような形になって今日こういう一つの問題が出ておりますが、将来的には、この都市における地方銀行の今後の問題というのは、あるいは都市近郊における地方銀行の問題というものは相当検討しておかないと、連鎖反応の問題というものはそういう業容拡大という面の問題が一つ大きくありますけれども、また一つの面としては、都市における地方銀行経営上の問題に関連してまたもやこういう問題が引き続き起きてくる可能性は十分あると私は思います。そこでこれらについて、今後都市及びその周辺における地方銀行の指導の方針について、これだけ都市銀行地方銀行合併が問題化しておるならば、銀行局としてはある程度検討して今後に対してのいろいろな方針というものを持たなくしてこの次のこの合併を認めるというふうなかっこうは適当ではないのではないか。やはりある程度今後の起こり得るべき諸条件の分析の上に立って、そしていろいろとそれについての指導なり歯どめの問題等がここで十分検討をされておく必要があるのではないか、こういうふうに思いますけれども、どうでしょうか。
  28. 高橋俊英

    高橋説明員 都市銀行地方銀行というものの関係でございますが、都市銀行は私の理解するところでは、もちろん本店の所在地が大都市、東京、大阪にあるということ。しかしそのことは、都市に主たる支店があってそこで預金を集めて都市の金融をするというふうに解すべきではなくて、いわば全国的な基盤において預金を吸収することが認められておる。なぜかというと、それらの大銀行は、いろいろ立地的な条件に基づくところが大部分でございますが、日本の産業の近代化、巨大化に非常に関係が深い、発展を遂げてきておるそれらのつまり大企業が主たる融資先になっております。大都市に営業基盤がありましても、いわゆる財閥系のような大企業に対して直接結びつきを持っていないというものは、私は地方銀行であると思います。つまり都市における地方銀行というものがそういう意味ではあり得るのであります。現在でも幾つかございます。これらの存在理由は、確かに相互銀行あるいは中には信用金庫等の台頭によりまして、いまおっしゃるように間にはさまれてしまって何か非常に弱い面が出てくるのではないかという懸念、これは私は一部に確かにあると思います。しかし全部がそうなのではございませんで、戦後つくられた銀行の中で、しかも大都市基盤を持ちながらかなりいい発展を示しているところもある。これは現に中小企業者専門に、それからたとえば相互銀行等ではあまりはでにやろうとしない割引というようなものを中心に行なう、中小企業者を相手に割引を主体として銀行業務をやる、いかにも銀行業務らしいやり方をしているために、便利であり重宝がられているという例もあるのでございます。そういう例もあるので一がいには私は申せませんが、相互銀行にもたいした差がなく、しかも相手の企業がほとんど相互銀行の相手方と同じであるというふうな程度の銀行でございますと、実質はもう相互銀行みたいなもので、銀行という名を冠するにはあまりにも脆弱であるというふうな——相互銀行全部を脆弱であるときめつけるわけではありませんが、銀行として看板を掲げているにしてはあまり銀行らしくないというようなものもあるのではないか。そういったものにつきましていままでとってきた方針は、それは経営が弱いから幾らか助けてやろう、存在するからには悪い方向に持っていけないから比較的有利に店舗配置を認めてやるというようなことで助成をはかってきたのが今日までの状況であります。それがうまいぐあいに成功している例もあるわけであります。それから、いわゆる店舗をふやしましても一人当たりの資金の伸びがよくないためにコストとしてはあまり安くない。そういうことから何かお荷物的な、荷やっかいなものではないかというふうな感じのものもなくはない。ですから一がいには申せませんが、私が先ほどから申しましたように、現在の地盤に何らの特殊性がない、融資先にも特殊性がない、そのためにいままでもあまり好成績ではなく、将来のことを考えると心細いものがある、こういうものについては何らかの手段、つまり合併というふうなことがむしろ必要のように考えられるのであります。しかしその合併が常に大銀行による合併だということにならなくてもいいのじゃないか。それは、それらの小さいもの同士が合併してむだを省いて、一人当たりの資金量をふやすということができるのなら、そのほうがむしろベターじゃないかという感じもするわけです。しかしえてしてそういう小さいもの同士は、片方が非常に弱いという場合に、やや強いほうの側がそれを抱いてなおかつメリットを出していくという可能性がある場合は少ないのであります。片方の都市に基盤のある地方銀行がきわめて内容優秀で力があるという場合ですと、それをかかえていこうということになりますが、そうでないと、自分でも一生懸命やってこれだけなのに、そういうマイナス面の多いような銀行自分が吸収してやっていけるかどうかというような不安を抱く向きもあります。そういう難点があります。一方で都市銀行による合併を考えると、先ほど委員からおっしゃられたようないろいろなデメリットのほうがどうも将来心配になるというようなこともございますので、その場合場合によって考えますが、私どもは、理想としてはやはり地方銀行的機能を果たしているもの同士が合併したほうが非常に望ましいのじゃないかというふうには考えております。
  29. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、ある程度いまおっしゃるように、たとえば大阪における大阪銀行であるとか、東京における東京都民銀行のように、まさに地方銀行としてりっぱな役割りを果たしておるものもありますが、私は、今日この問題が出てきて感じますことは、昭和二十六、七年ごろでありますか、二十五、六年から六年、七年へかけて、新たな地方銀行が相当数新設を認められております。その中で、いまのように確かに、たとえば北海道銀行のように、地域的にも非常にりっぱな発展をしておる銀行ももちろんありますけれども、全体として見ると、はたしてこの銀行の新設が適当であったかどうかという点に実は非常に大きな問題がある。これは池田さんが大蔵大臣当時の行政の問題であって、みずからまいた種をいま刈らなければならぬ立場にきておるのだろうと思いますけれども、しかしここで私は問題を一つ提起しておかなければならないのは、都市銀行における地方銀行合併問題というものがこういうかっこうで出てきた以上、今後の銀行の新設問題というのは、ここらでひとつきちんと歯どめをかけておかなければ、つくっては、あとでまた経営不振、合併というようなことを繰り返していくのでは、私は銀行行政として非常に筋が通らない、こういうふうに考えるわけです。広義な政治的な判断によって処理されるといえばそれまででありますけれども、しかし行政の一貫性というものがあまりにそのときそのときにおける政治判断によってねじ曲げられたために、結果としてはあとでこういうデメリットだけが残るというようなことになるのではよくないと私は思うのですが、事務当局としては今後の銀行の新設問題については大体どういうふうに考えておるのかをお伺いしたい。
  30. 高橋俊英

    高橋説明員 確かに、戦後の新設銀行の中には成功したものもあり、成功とはとてもいえないものが幾つかございます。ですからつくらなければよかったじゃないかということさえいまからいえるわけでございますが、当時の事情としては何か一県一行主義になっているところがわりに多かったわけです。そうなると、地域独占といいますか、その県においてはその一行しかない地方銀行の発言力が強過ぎるじゃないか、だから非常に細部に目が届かない、そういうものを穴を埋めるために銀行を新設すべきだということが表向きの理由であったのですが、実はしばしば多いのは、設立運動といいますか、一般的に新設も認めるぞ、こういうと、従来合併によってなくなってしまった銀行の残っている人がまたもう一ぺん銀行をやりたいというふうなことで、設立が進められたような経緯が多いようでございます。これはあまりよくない事例が多過ぎたように私は思います。必ずしも、その地域にとって必要な、非常にいい銀行がつくられたとばかりは限らないというふうに思うわけであります。この一県一行主義とか一県二行というふうなものもございますが、こういったものがはたしていいのか悪いのかという問題、私は合併問題につきましては、地方銀行同士合併もいいのだといいましても、県の存在を無視して、つまり県をまたがって合併をしてしまうと、いずれか一方には本店銀行はないことになる。いまの県民感情というのはかなり強いわけで、経済的な理由ばかりでは解けない問題です。ですから、一方の県に銀行がなくなってしまうと、また自分たちで銀行を持ちたいという希望が当然に出てくるのじゃないか。そういうことから、私は府県をまたがる合併についてはきわめて消極的であるというふうに言っております。府県の単位が変わってくる、府県が合併されるのならそれはけっこうでございますが、それに先走ってやるということはよろしくない。新設運動が起こって、何の合理化にもならない、そういう考え方あるいはこの合併に対する考え方からも大体おわかりのように、銀行の新設というのは、少なくとも当分の間認める必要なしというのがわれわれの結論でございます。従来も、二十五、六年ごろから出てきた新設の分が一わたり済んだあとは絶対に銀行の新設は認めないという方針を堅持しておるわけでございます。これは今後当分の間、その考え方は何ら変わりない、むしろ、一県に二つあるというような場合には合併したほうがいいという態度を示しておるわけであります。銀行の数は多過ぎるとは思わないけれども、幾らか合併する余地はあるようにも考えております。
  31. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今度は、これはさっきも触れられておりましたけれども都市銀行間の今後の競争の問題、今度の事例を見ておりましても、明らかに大銀行間のそういう競争を激化させる要素というものがかなりあると私は思う。原田委員もちょっと触れられましたけれども、私もこの間ここで触れておいたわけであります。「今回の決議の中に示されておりますように、これに協力しない金融機関に対して行政上厳格なる措置をとるべきである、こう述べられているのでありますが、これは単に歩積み、両建てだけにとどまらず、金融機関のあり方として適正であるかどうかにつきましては、おそらく大蔵省の総合的な判断を持っているものと考えるわけであります。そこで、今後これらの問題の経緯と関連をいたしながら、これらの過当競争を是正するための措置として、金融機関における総合的な評価と申しますか、判断の基準となるべき順位等については、少なくとも当委員会大蔵省はこれを発表をいたしまして、現在の金融機関がどのような形で正当な業務を行なっておるかという点について、私どもが判断をし得る資料を提出をする等、あらゆる角度を含めて、金融機関が公正なる業務を行ない得るような措置について、」協力をしてもらいたい、こういうことを実はこの間の討論で申し上げておるわけです。さっきも触れられておりますけれども、第一銀行東海銀行の問題等についても、実は第一が朝日と合併することによって、東海との順位が動くというような問題あるいは今度のような場合でも、三和と住友のような問題でも、いろいろと表に出ておる問題点があると思う。これについても、何か預金量をもってランクをきめておるということがはたしていいのかどうか。私はこれは弊害こそあれあまり利点はない、こう思っておるのです。銀行の問題については、いろいろと逆の面では皆さん方は非常に配慮をしておる、銀行に多少でもマイナスになるようなことが何かできることについては、極力銀行局銀行側の肩を持って押えて、私が発言をしたくてもちょっと控えておこうというような問題を含めて、率直に言ってあるわけです。だから、それならばもう少し今度は大衆の側に立ち、あるいはいまの私のような、公正な競争をさせるようにするために、やはり、あなた方なりのもう少しき然とした行政指導のあり方があってしかるべきである。言うならば、銀行として貸し出しの状態なりあらゆる状態を、十なら十の部分を設けて、それについて採点なら採点をやってみて、そうして総合的には、銀行預金量とか何とかではなくて、ともかく銀行としては最も公正で妥当な銀行であるというような形で、そういうランクをひとつ銀行局でつくって、預金量が片一方にあろうとなかろうとこれを公表する。そうすることによって、私はこの歩積み、両建てによるところの諸問題、預金競争に端を発する諸問題、あるいは今度のような銀行合併その他の問題についても、私はやや態度が変わってくるのではないかという感じがするわけなのですが、この点少しき然として銀行局銀行行政に筋を通すという面でひとつやっていただきたい。やれるでしょうか、どうでしょうか。
  32. 高橋俊英

    高橋説明員 預金量銀行のランクをきめることがよろしくないことは、私どもも同感でございます。それが、従来の銀行行政を私がとやかく言ってもしょうがないのですが、日本銀行の大銀行に対する態度、いろいろ見てみますと、むしろ預金量が大である、得てしてそういうところは貸し出し面においても日本有数の大企業を主たる取引先にしておるという例が多いわけでございます。そういうこともありまして、何となく気分的にはむしろ優遇されるというふうな、預金の非常に大きな銀行のほうが若干優遇といいますか、何か優先性を認められるという点がなきにしもあらずでございます。そういう点につきましては、私どもは、なるほど非常に有力なる大企業のための金融を行なっているという点からいえば、日本全体から見て相当関心を持たざるを得ないけれども、しかしそれらの銀行の貸し出し競争のようなものがしばしば国民を非常に不安な状態に持っていく結果になる。平地に無用な波乱を生ずる一つの有力な原因であるということもいえるわけでございます。それはその面もあるけれどもマイナスを引き起こす点も相当原因しておる、そういうふうに考えるわけでございます。ですから、私どもの考えとしては、非常に健全な経営を行ない、また健全な融資を行なって日本の経済に対してプラスこそあれ、マイナスは少ないというふうな銀行がいい銀行だというふうに考えます。ですから考え方の問題だと思うのですが、その考え方はやはり日ごろの行動にあらわれる。ですから、そういった点を幾つかの要素に分けまして、それらについてまず試験的に採点をする。まあこまかい点数はともかくとして、優良可みたいなそれぞれの項目別に決定をいたしまして、それらを総合して、どこが一番いいかというふうなことの判断の資料にしたいとは考えております。しかしながら、将来の問題としては、そういった中身に突っ込んでいくような審査、調査でございますね。行政当局による評定というものが一つの権威のあるものとなっていくためには、私は自分の部下の訓練等もございますから、あるいは自分自身のいろいろな見方の問題について反省を加えなければいけませんので、しばらくそういったことを実際に内々行ないまして、そうしてこれを公表するのはいますぐというわけにはとてもいかぬじゃないか。私どもが自信を持って公表し得るようになれば非常にけっこうだと思います。しばしばそれが非常に独断であるとか、偏見であるとかいうふうな非難を招くおそれもございます。そしてそれに対する抗議や何やらでもって、てんやわんやになるのは困りますから、私ども内部の判断資料としてはそういうものをつくり上げていく、だんだんに銀行に対する取り扱い、これは行政面には黙って反映さしていきたい。行政上の措置を考えていく、私どもが非常にいい銀行だ、非常に困った銀行であるというふうな判定が下されたときにはそれによって、たとえば店舗の場合においても、いずれを優先するかということは、必ずしも預金量の大なるものを優先しない。同じような支店を設けたいと三つも四つもの銀行から申し出がある場合もございますが、そのときにそのうちのどれを認めるかということはそういうメリット・システムを考えて採用していきたいものである。必ず私どもとしてはそういうふうにやっていくつもりでございますが、ただ公表してやるということについては、いましばらく考えさしていただかなければならない。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題はなるほど新しい試みであるかもしれません。事実私は皆さん持っておると思うのですよ。それがなければ銀行行政、指導できないということで持っておると思うのです。ただそれを外部に公表してはたして妥当であるかどうかという問題についての検討はあるでしょう。  そこで、これはやはり歩積み、両建ての問題と関連もあることでもございますので、ひとつあなた方のほうで一ぺんルールをつくって当委員会に提出してもらいたい。要するにこれだけの要素に、こういうふうに分けます、それについての評価のあり方については、たとえばパーセントや数字はどうせいろいろ出てくるわけですから、これを越えたものについては、ここまでが適正とか、甲、乙、丙、丁とか、何でもいいです。何らかこういうランクをつけて、こういうルールでいまの都市銀行を判断をして評価をします、ルールがきまればあとは議論はないのです。実態の調査に出た数をそれに当てはめれば結果が出てくるわけですから。そのルールのあり方については異論があるかもしれません。そこでひとつ当委員会にそのルールの提出をしていただいて、当委員会として検討をし、さらに銀行協会なり、今度は当事者側の意見を十分聞いて、ルールとして彼らが納得をすれば、それでそこに数を当てはめて発表することは私は問題はないのじゃないか、ルールについては多少いろいろと意見があるかもしれません。このルールを早急にひとつ検討をして、当委員会に提出をしてもらいたいと思いますが、大体どのくらいあれば提出していただけましょうか。
  34. 高橋俊英

    高橋説明員 それらの考え方は頭の中ではあるのですが、これをたとえば当委員会に提出して公表してはばからないような採点のための要因ですね、その要因も実は非常にたくさんあるわけです。ただし非常にこまかいものまであまり並べ立てますと、わけのわからぬものになるおそれがある。やはりある程度整理されておらなければならぬということも考えますと、そう短い期間というものは無理である。私としてはどうしても……。(「だいぶ逃げ腰になってきたね」と呼ぶ者あり)逃げ腰ではありません。そういういいかげんなことを申すわけではありませんから、これでいかがでしょうかというふうに皆さんの前に出すのにはどうしても一、二ヵ月御猶予いただきたい、そういたしませんとこれは検討してもらう必要があるわけでございますから、われわれだけでかってにきめてしまうだけでもいかぬのじゃないかと思いますので、やはり協力がなければいかぬ。銀行の言い分も多少は聞かなければならぬ。その程度の御猶予をいただけばここで御報告申し上げることができるんじゃないかと思います。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 私は二ヵ月ならけっこうでございますから、ひとつ向こう二ヵ月、きょうが七月の十四日でございますから、九月の中旬をめどにそういう作業をしていただいて、当委員会に御提出を願って、われわれも十分検討をして、ルールさえきまればあとは簡単ですから、それによって今後は公式に銀行のランクは発表していただくということになれば、いまの見せかけ上の預金競争が非常に変わると思う。  もう一つは、銀行局のほうから日本銀行にも要するに今後の銀行のそういう取り扱いについては、これは銀行局がそういうランクをつけていろいろやってみたって、日本銀行が知りませんではこれは話になりませんから、近いうちに日本銀行の総裁もお越しいただいて、この問題も含めて検討さしていただくつもりでございますから、日本銀行と緊密な連繋をとっていただいて、やはり行動の上で貸し出しなりいろいろなオペレーションなり、いろいろな措置もそれらのランクが非常に参考になるということにして、やはり銀行が過当な競争を排除しなければならぬことは間違いがないわけでありますから、過当競争を排除するための一つの具体的な手段として連絡を密にしながらいまの検討を進めていただきたいと思います。
  36. 山中貞則

    山中委員長 いまの具体的な基準となりますと、純粋な行政上の分野にも関係がありますから、当委員会に書類提出とかいう形にこだわらないで処理していきますから、よろしゅうございますか。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 それはけっこうです。  それでこの次の問題はこれはわからないことですが、第一銀行朝日銀行合併の場合に、第一銀行側としては店舗が一体幾つふえたのか、その点をちょっと伺っておきたいのです。
  38. 高橋俊英

    高橋説明員 最終的には二十六店舗ふえることになります。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 東海銀行はこれによって何か少しメリットを与えられたというように聞いておるのですが、それの店舗上のメリットというのはさっきちょっとお答えになったかもわかりませんが、もう一回。
  40. 高橋俊英

    高橋説明員 朝日銀行店舗のうちから五ヵ店東海銀行のほうに回ったということになっておりますが、そのうちには具体的な認可がおりてないといいますか、内認可は出ているのですが、まだ土地も建物もないというふうなところが二ヵ店含まれております。それはいわば全然新設にひとしいものであります。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、確かに第一銀行は何にしても二十六店舗ふえたわけですから、他の都市銀行は一年間に五店舗か六店舗くらい平均してふえつつあるだろうと思うのですが、五年分一ぺんに店舗がふえた計算になりますね。そうするとやはりいまの競争のいろいろな条件の中から見るとふえたところは非常にいいけれども、その他から見ると五年ほど立ちおくれたのと同じ結果になってしまうという点に、今後の新設店舗において他との間に権衡を保つような措置を何か講じておられるのかどうか、おるとすれば一体内容はどうなっておるのかお聞かせ願いたい。
  42. 高橋俊英

    高橋説明員 この銀行合併した側の都市銀行から言いますと、確かに一挙に何年分かの店舗がふえた計算になるわけであります。そういう点が他の都市銀行から非常に不公平なような感じで見られるわけです。ただし新しい店舗については一般的には仰制的に扱うという方針には変わりありませんし、その程度は、その合併がわれわれの合併基準から見てわりあい自然である、もっともであるというふうな面が多いか、デメリットもある、いろいろな副作用もある。しかしすれすれで認めざるを得ないかというふうな場合になりますと、その抑制の程度もおのずから非常に強くなって当分ほとんど認めない、二、三年の間は全然認めないとか、全然とは言わぬまでも他が五、六店認める場合に一店しか認めないというような非常にきびしい差をつける、そういうことによって、合併したら必ずその銀行はいろいろな面で得をしたというふうなことが露骨に出ないように、その銀行にとってデメリットもかなりあるというふうにしておけばいい、そのかげんはそのときどきのケースによって違います、こう申し上げておきたいと思います。朝日銀行の場合ですと、まあまあある程度の妥当性がなきにしもあらずでございましたので、抑制の程度は大体にいって半分くらい認める、数はそんなふうな感じで扱っております。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 私は連鎖反応を食いとめる一番大きな歯どめの一つはこれだろうと思います。やはり競争しておる中で、一つはさっき私が問題を提起した順位競争というもの、一般大衆にそういうことで働きかけができないという形のものを確立するということが私は歯どめの一つだと思います。これは全体の問題としてあるべきだと思いますが、同時に、二番目の問題としては、いまの店舗拡大に対するデメリットのあり方によって、やはりあなたのほうで、さっきおっしゃった客観的に有益、必要であるかどうか。それはもう当事者間においては有益であると思うからやるのです。しかし客観的にあまり有益、必要でない場合には、それについてははっきりしたデメリットができて、どうもそういうことは主観的にもあまりプラスでないというところの線に来ておりませんと、やはりやったほうが得なのだということになれば——これは私長い間のことですからいますぐには問題は起きないと思います。住友の場合を例にとれば、第一と朝日の合併ができたとき、二月には住友銀行河内銀行合併しませんということが伝えられておるわけですね。事実はそのときはそうだったらしい。しかしそれが二月で、もう六月になったら合併が起こるわけですから、やはりいまの問題としては私もかなり問題のありそうなところを感じております。感じておりますが、そう次々といろいろなことが第一、朝日の問題を端緒として起きてくるということはやはり問題があろうかという感じがいたしますので、その点についてはただいまの局長の、そういう客観的な分析の上に立ったデメリットによって都市銀行における銀行合併がそろばんの合わないものだということをかなりはっきりさせておく必要があるのじゃないかというふうに感じます。その点は私どもはわかりませんからあなた方の判断にまかすわけでありますけれども、結果としてはしかし少なくとも連鎖反応が起きるようなことのないようにという点についてはひとつ十分の配慮をしていただきたいと考えます。  最後に、この銀行合併の問題で残っております都市銀行地方銀行合併の問題は、いままでのいろんな問題の処理がありますが、地方銀行間の合併といいますか、いま多少問題というとおかしいですけれども、業容必ずしも発展をしない、停滞をしておるというか、そうして今度の歩積み、両建てのような措置をとろうとするならば、一般の地方銀行ならば一年で処理ができるものが、これが二年たってもなかなか処理がしにくいような地方銀行がもしかりにあるとするならば、これらの地方銀行のあり方については、やはりさっきのお話のような、私はもしやるとするならば地方銀行間の合併ということのほうが望ましいし、そのためにやはり今日の時点で、いまの必ずしも業容というか、向上をしない停滞ぎみのそういう地方銀行が、またもやそういう都市銀行にマークをされて、何年か先へ行くとまたこういうことが起きないようにするための、銀行局側としての地方銀行同士合併というような前向きの指導その他を今後少し努力をしてやる考えがあるかどうか、これについてお伺いをしておきたい。
  44. 高橋俊英

    高橋説明員 従来もそういうニュアンスは出しておったのでございますけれども地方銀行同士であって同一行政区画内にあるというものが合併しようということになればそれは歓迎するということを言っておるわけであります。ただ歓迎するという程度では実はなかなかそううまくいかない。いろいろできるにはできるだけの事情があったわけですね。たとえば現在ある地方銀行に対してある程度反感を抱くグループがつくったというふうな事情がありますと、経営者が変わってしまうといいのですけれども、そうでない場合にはどうもあれとは一緒になりたくないというふうなものがある。それから非常に古くから存在しておりまして、別に新設でも何でもなくて合併に至らなかったというものが残存しておるという場合になるわけでありますから、歴史的やいろいろな事情でほっといてはなかなか相互に結びつかないというケースが多かろうと思います。けれども私もまだそれに対しまして、いまの銀行法をつくったときのような勢いで合併促進をやるとまでは、その必要を感じておりませんが、今後の地方銀行合併のあり方としては、幾分地方銀行同士合併が望ましいと考えて、場合によっては、必要とあればそのあっせんの労をとるといいますか、合併を慫慂するというようなこと。それは相手銀行が弱体であるということ、両方とも非常にうまくいっているところを無理やりくっつける必要はないと思います。というのは合併しますと、対等合併の場合にはしばらくの間は派閥が生じたりして、合供によるデメリットが消えるまでに非常に長い年月を要するという事情がございます。合併して派閥を生ずるくらいなら独立してやったほうがよほどいいということもありますから、そういうことのないことを見通した上でやらなければなりません。そういういろいろの観点から、基準としては地方銀行同士合併を望ましいものとして行政上取り扱っていきたいものと考えております。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、今後の問題の中の一つとして、どこかの都市銀行地方銀行合併を申し出てきたときに、いま都市銀行都市銀行の中でサークルがあるわけでしょうから、その都市銀行同士の中で話し合いをして、都市銀行みんながけっこうですというようなことに一体なっているのかどうか。何かわれわれのほうで歩積みや両建ての問題でいきますと、都市銀行の皆さん、非常に団結をして、いろいろおやりになる。こういう内部の問題になったら、はたしてそういう団結を利用して、話し合いをして、調整をしながらそういう問題が提起をされてきたのか。そういうときは、もうお互いのことはほうっておいて、自分のところだけ、こういうことになっているのか。もしそういうことであれば、私は、やはりよくないと思うのですね。やはりこういう問題が提起をされる以上は、それに関連のある、都市銀行の場合は都市銀行同士が十分話し合いをして、ひとつこういう事情だ、それじゃやむを得ないというようなことになるなら、過当競争もある程度防げるかもしれませんけれども、どうもよそのほうはあまり感心しない。この間、新聞で見ますと、この件については、富士銀行の頭取は、どうもこの合併は反対だというようなことが出ているわけですね。そうすると都市銀行の中でも必ずしも——いま問題は、おそらく地域的には、三和と住友というものがあるかもしれません。そうでなくて、いまの上位の四行といわれる三菱でも富士でもはたして、いやこれはけっこうですというようなことなのか。いまの富士銀行のように反対ですというような意見が出ておるというような点は、やはりこれはこういう取り扱いとしては、今後はみんなで話し合いをしてきて、みんながよろしいというのならいいというんなら、これは比較的話し合いはまとまると思うのですが、そういう点についての指導という問題について、銀行局長としてはどう考えますか。
  46. 高橋俊英

    高橋説明員 他の競争関係にある都市銀行に仁義を切りまして、そして積極的に賛成とまではいかぬけれども、やむを得ないというものが非常に多いということであれば、私は、非常に処理しやすいと思うのです。しかしそういうことは、どうも一般に行なわれにくい環境にあるようでございます。あいさつに行くというようなことは、それはもうあるいは事後処理上としてはあるかもしれませんが、事前に了解を受けてこいという指導をしたら、おそらくそれはとてもだめですという話になるでしょう。どっちかといえば快く思わない向きが多いのは当然です、そういうことをやって。自分が、あれが認可されたら、自分もやる、その当てがあって、一向に困らぬというふうなところは、けっこうですと、こう言うでしょうけれども、さしあたり自分の結婚相手が見つからないというところにとっては、自分としては総体的にはどっちみち有利になる話じゃございませんから、だからそういう了解をなるべくとってこいと言いましても、おそらくそれはとれませんということだろうと思います。望ましいことは、そういう都市銀行同士でもいいんですが、よく基本的なラインについても十分話し合って、抜けがけ的なことばやめよう、やるんなら堂々とみんなの前で事情を言って、全員の賛成はともかくとして、多数の賛成を得た上でやるというふうなことになれば、私はたいへん行政上も楽だと思います。そういうふうなことが行なわれるような都市銀行状態には今日までのところではないのです。非常に銀行同士というものは、一面では確かにこの間の歩積み、両建てのごときものは、あれだけ問題にされましたのでやむを得ぬということもございまして、今度はひとつやろうじゃないかといっておりますが、みなすべてが競争にからむ問題を、自分たちの間で調整することがいかにむずかしいものであるか。これは銀行ばかりというわけではありません。あらゆる業界におきまして、ほんとうの意味の協調というものはむずかしい。やはり何がしかの行政上の判断や指導が加わっていかなければうまくいかないんじゃないかという感じがいたすわけでございます。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 実情はそうでしょうけれども、しかしやはり日本の過当競争を取り除いて、都市銀行なら都市銀行自分たちの置かれた責任を公正に果たすということのためならば、私は、一事が万事、そういうような協調によって処理されないところに、実はいまの銀行過当競争の一番大きな問題、貸し出し競争にしても、すべてが私はそこにあると思うのです。だから、あなた方のほうでも協調融資なりいろいろな点について指導されていると思うけれども、やはり私はこの際、われわれもそういう要求をしたいのです。これはただ単に銀行合併の問題という例の上で問題が出ておりますけれども、しかしこれは実は銀行のあり方の基本に触れておる問題なんです。だから、基本に触れているこういう問題を通して、銀行のあり方を正していきたいというのが私の真意でありますから、そういう意味でひとつ銀行局長のほうで、その効果のあるなしは銀行側の努力に待つべきものだろうと思いますが、今後、この問題を含めて、一ぺんひとつ銀行協会として検討して持ってきたらどうかというような問題提起はあってしかるべきじゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。効果については別の問題と考えています。
  48. 高橋俊英

    高橋説明員 一般的な銀行合併問題につきましては、従来のやり方は、協会でそういう相談をして持ってくるというふうな、あるいは協会のある程度の了解を得た上でやるというふうなそういう手順を踏んでいないわけです。今度のような場合に、たとえばこれは預金の過当競争じゃないか、こういうことになると、その点は確かに私は、預金のみならず、預金及び貸し出しの行き過ぎ、過当競争をいかにして排除するかというのは、銀行行政といいますか、金融行政上の一つの重要な課題であると思っておりまして、この過当競争の排除をどうするかという問題としては、銀行協会に十分やってもらわなければならぬ。行政指導もやりますし、また、協会自身として、過当競争をいかに排除すべきであるか、どのような競争はよくてどのような競争は悪いかというふうな点を十分話し合ってもらうという用意はあります。その中の一つの問題として、たとえば銀行店舗を一挙にふやして順位が上がるというふうなことは過当競争一つではないか、変形ではないかというふうなことであるとすれば、こういう問題をも含めて、それらを抑制することについて銀行協会、特に都市銀行のメンバーが隔意なく話し合いをするというふうに指導したいと思っております。ただし、銀行の方には一般にあまり当たらずさわらずの議論をするのが非常に多いようでございまして、これをもっと男性的な活発な議論をするように指導をするのは、なかなかそう簡単にはまいりません。私が幾ら言ってみても、かなり長い間の変な習慣でございまして、あけっぴろげな議論というのはあまりないようでございます。それだけに、自分も他人のことを言わないし、他人に言われるのもいやというふうなことで、非常に過当競争の問題一つがそう簡単には解決されないような——たとえば集金の問題でもそうです。特別に委員会でもつくって討議するというようなことは、だれが見たって、結論を先に出してあとをどうやっていくかということをやればいいと思うのですけれども、そうは簡単にまいらぬ。だから、過当競争の問題を銀行同士が話し合って、具体的にいい悪いの基準をつくり上げていくというふうなことは、これは非常に大きな問題であろう。それに対してできるだけの行政指導は加えてまいりたいと思っております。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  50. 山中貞則

    山中委員長 平林剛君。
  51. 平林剛

    ○平林委員 私は、きょうは、国会の開会中に中途で終わっております質問の締めくくりをいたしたいと思います。  それは、不動信用金庫の解散問題をめぐりまして、金融機関の健全性の保持ということと、また、預金者の保護ということが、金融機関の大切な最低の要件であるという立場から、先般来、大蔵省銀行局当局の行政指導と、この問題の直接の当事者である信用金庫側の処置について、いろいろと問題点を指摘してまいりました。繰り返して問題点を要約いたしますと、第一に、金融機関の指導監督の任に当たる大蔵省銀行局行政指導が、誤った情報とかなり片寄った判断で適切を欠いておるのではないか。  第二に、この問題の処理に当たった全国信用金庫連合会、全国信用金庫協会、東京信用金庫協会のいわゆる三団体が、その内部事情によって互いに責任を回避し、この種の問題の処理に欠陥があったのでないか。  第三に、最終的にこの問題の処理は中央信用金庫という一金融機関がその衝に当たり、このためその解決の手段はいわゆる商業ベースによって、預金者保護という金融機関としての最低の要件はじゅうりんされておるのではないか、これらの点を感ずるのであります。これを具体的に言うと、一部のまた大口の預金者に対していわゆる導入預金というレッテルを張って信用金庫側の共同負担を軽くするような策動が認められるということ、この点については私は大蔵省銀行局側、銀行局直接でないにいたしましても、その関係者において一役買っているのではないかという疑いを持っておるのであります。たとえば不動信用金庫を解散による清算に導いた背景、つまり解散申請の期日と許可の期日がほとんど瞬間的に行なわれておりまして、なぜこの手続が急がれたかという点などであります。いずれにしても、今日大蔵省銀行局の容認という行政権力を背景にいたしまして、大口預金者ではあるけれども、善良なまたお気の毒な事情にある多くの預金者が強者と弱者という立場に置かれて不当な事実に泣き寝入りせざるを得なくなる。金融機関の最低の要件である預金者の保護の精神がすっかり忘れられてじゅうりんされようとしておるということだと思うのであります。きょうはそういう意味であらためて銀行局長に、不動信用金庫に対する比較的大口預金者を信用金庫側が導入預金とみなした根拠について、あらためて御説明をいただきたいと思うのであります。
  52. 高橋俊英

    高橋説明員 従来もその点は御説明しましたが、これを簡単に要約いたしますと、不動信用金庫は最後の段階におきましては、いってみれば後藤観光株式会社のためのトンネル機関みたいなことになっております。検査によってその事実がわかりました。信用金庫協会、信用金庫の方々全部の意思を統合したところでいえば急激に悪くなったわけでありまして、後藤観光株式会社が経理上急激に悪くなった。それを救うために預金を導入したという事実は争えない事実であります。それは形の上からもおおむね判断されるわけであります。従来の預金者の最後に支払ってみますと一人当たりにすれば二、三十万円の預金高である。それに対しましてこれらの導入預金の総額は十二億数千万円でありまして、その人数は四十人足らず、その一人当たりの金額もけた違いであります。そういうものであって、いわれなくそういったあまり健全とは思われない信用金庫に預金をするというからには、何かこれに対する積極的な勧誘があったことは十分うなずけるし、預ける者にとっても何の利息もなしに危険とも思われる信用金庫、これは預金者が一々バランスシートを見る責任もないでしょうけれども、当時の資金量からいいましても、これは御承知のようにあの程度の信用金庫になりますと歩積み、両建ても非常に多い。それでたとえば十二、三億円の資金量があるとしますれば、そのほんとうの資金量ははるかに少ないということなんです。そこに一千万円あるいは場合によったら一億というふうな単位の金額を預金するというのは、普通の事情では考えられない。  しかもそういう客観的な事情がある上に、預けられた預金が、瞬間的にとまでは申しませんが、同じ日、あるいは二、三日分をたばねて後藤観光の貸し出しにそのままなっておる。ですから預け入れの時点と貸し出しの時点との間にかなり強い因果関係が認あられるという点がございます。  そういった事実のほかに、いまは警視庁から検察当局の手にわたっておりますが、理事長が、実は常勤役員が一人であったという点であります。役員はほかにもおるのですけれども、実際に事務をつかさどっておるというのは三輪という理事長一人である。この人物が、別に強制されたわけではありませんが、協会代表者等との交渉の結果、リストをつくった。また導入預金——自分理事長として最高の責任者として取り扱った、これは直接に扱っているわけであります。取り扱ったものの中で、導入預金に該当するものはこれであるというリストを提出したわけであります。これは決して私は脅迫によって書いたものとは絶対に思いません。非常に早い時期にそれを書かしたわけでございまして、その間に不当な圧力をかけたというふうなことはなく、導入預金であることがもう明白でございますから、いわゆる導入預金の解釈にはいろいろございまして、それが犯罪として成立するものかどうかは別といたしまして、実質的にはそういう導入預金の体をなしていることは明らかでございますので、そういうもののリストをつくれということを言ったところが、それをつくった。それがいまだにその点動いてないわけでありますが、すでに三輪理事長はそういう責任者として導入預金を取り扱ったという理由で、検察当局にもあげられておるという事情でございます。  ですから認定に当たっては、私どもはいろいろな事情から判断して、協会がそれらのリストをもとに一応一般の預金者と区別して取り扱う方針をきめたことに対して、これはやむを得ないと思うわけでございます。預金者保護ということばがございましたが、私どもはあらゆる預金者に対して国家保証を与えているわけでも何でもありません。金融機関の預金が支払い不能になるようなことは行政上も最も望ましくないこととは思っております。思っておりますが、しかし一〇〇%の国家保証を与えているわけではないことは、これは御承知と思います。でありまして、責めらるべきは——われわれ監督の手落ちもあります。そういう事態までなぜもっと早く取り締まらなかったかという問題があるでしょうが、しかし現在の検査の時点からそう時を経てないわけでございまして、次の検査に行きましたときにはすでに事重大になっておったということでありまして、検査のほうにも確かにもっと早くやればもっと小さな段階でやれたということはありますけれども、私どもはなすべきことは一応なした。たくさんの金融機関を監督しておるわけであります。一つ金融機関だけを毎日々々見ているわけではございません。前回の検査当時にはそれほど露骨なことはうかがえなかった。後藤観光に対する貸し出しあることはありましたけれども、そうべらぼうなものじゃなかったということから、注意を与えている程度でございます。そういうことで、当該信用金庫の理事者、経営者が責められるべきでございまして、信用金庫協会が責められるというのはいささか筋違いである。そういう非常に不健全だというところに預金をした、その裏利を取ったか取らなかったかは別として、あまりいわれなくして預金をしたという点が一応責められるべきであるが、責められるというほど悪質ではありませんが、そういった預金を平気で取り入れた理事者、経営者の方が非常に責められるべきである。信用金庫協会はむしろかわって一般預金者を全部救済したという点で犠牲を払っているというだけでございますから、預金者保護に欠ける点があると言われましても、それは信用金庫協会としては責められないのではないかというふうに考えます。   〔委員長退席吉田(重)委員長代理着席
  53. 平林剛

    ○平林委員 この問題については、三輪という理事長、これが後藤観光との間に契約をして預金を導入していったという疑いは私もあると思うのです。しかし、問題は三十何名かの預金者がすべて導入屋である、あるいは導入預金であるということについては明確ではない。あなたがいまお話しになりましたように、三輪というその理事長がつくったりリストによってそのレッテルが張られておる、私はここに問題があると思うのです。この点については高橋銀行局長も非常に厳格な意味でそういう判断をしたものではないという答弁をしております。また私どもにもその実態はわからないとも答弁をしています。一応そういうものであると推測するとも答えております。それから銀行局長自身が、これを導入預金と言ったのは事実に反するが、導入預金として扱おうじゃないか、こう言われたのに対し、私どものほうはそれ以上のことは言えない、こういうことも述べておるわけであります。いずれにしてもそういう程度のものであって、この三十八口ですか、三十八名の預金者がいま三輪理事長のリストにあげられて今日不当な解決をされようとしておることについてははなはだ気の毒である、預金者の保護という点が全く忘れられておるというようなことも指摘できるのでないだろうか、こう思うのであります。私もその後事情を聞いたのでありますけれども、たとえば大阪のある預金者は日光見物をさしてやるからひとつ預金をしないか、それは七十歳の老人でありますから、日光見物というような話があったもので預金をした、こう言われておるわけであります。また藤沢のある預金者は人にだまされたらしいのでありますけれども、結局規定の利息さえもらえないでしまっているという実情もあるのであります。また、これはある外国人でありますけれども、神父を職業としておる人が、世界各国の信徒から零細な金を集めて日本の社会施設などに投じて日本のそうした方面に貢献するためのお金を持ってまいりまして、これが結局今回の不動信用金庫の解放、清算によって、しかも三輪理事長という人のリストに載せられたがためにとうとう返してもらえない、こういう事態になっているのであります。問題は、私は銀行当局というよりも三輪理事長がつくったリストにあると思う。このリストの中に掲げられたものをそのままうのみに信用してそして今日の事態を招いた。そういうことで、大蔵省銀行局長としては信用金庫側の意見は聞いたかもしれないけれども当事者たる預金者の人たちの事情というものについては少しも勘案せずに、議会においても導入預金だ、こういうお話をされている。私はそのことについて大蔵省銀行局がどうも一方的な情報をもってものごとを判断しているのではないかと思う。そういうことであれば、政府機関の銀行局が預金者保護についてどれだけ責任を持ってもらえるのかという大きな不安が起きてくるわけでございますが、こういうような事例についてもやはりあなたのほうはお考えになったことがございますか。この事実を知って、なお信用金庫側のやり方というものが、また三輪理事長の書いたリストというものが正しいものだ、こういうふうにお考えになって、いまでも私にそういう答弁をなさいますか。
  54. 高橋俊英

    高橋説明員 あなたの話を聞いていますと、何か私どもがリストだけを根拠にしておる、こういうふうに聞こえますが、そのリストにある預金者のそれぞれについて言い分を聞いたのじゃありません。その金の経路、金がその不動信金に預金された日にちはいつであるか、またその金が——資金繰りという問題はありますけれども、非常に大口で、それぞれが三十万、四十万というふうな、小さなものじゃないですから、それがどういうふうに後藤観光に貸し出されたか、それらにつきましては点検は行なっております。ですから、因果関係があると先ほども申しました。どう見てもその金の動きのぐあいから見れば、後藤観光へ貸し出す目的を持って勧誘され預金されたものである。ただその内容についてどういう動機からどうしたのかということは私も取り調べの権限もありません。かりに聞いたといたしましても、一方の言い分だけ聞いてそれでどうこうというわけにいかない、事実が相違する場合がしばしばございます。いま神父の例も引かれました。私はここでそれについて反駁はいたしません。私どもが聞いていることは事実はずいぶん違います。世界各国の零細な金が集まったものを預金したのだというふうには聞いておりません。これは事実関係でございますからここで私は論議をいたしません。ただ、そういうふうな預金者、いわゆるリストにのぼった人たちの言い分はいろいろあるでしょうが、必ずしもその言うことが事実とは一致しない。じゃその事実を突きとめるにはどうするのがいいか。とても私どもの手に負える問題じゃない。ですから、その辺でそれぞれのケースについては検察当局、警視庁等でいま取り調べを行なっておると思います。これは付帯的に事実関係の調査として行なわれるものと私ども思っております。何の連絡も私はいたしておりませんが、向こうに介入するつもりもありません。そういった事実問題とほんとうの真相を突きとめるということは私どもの手に余る問題だということを申し上げておるわけであります。  それから預金者保護という問題は、従来から不動信金と取引のあったあの周辺の従来からの営業区域内にあった方々には、不動信金の資産がなくても、その支払いにたえるだけの準備がなくてもそれは一切お払いいたしましょうということを金庫の協会がきめたわけです。ですから、その意味においては預金者保護の精神は相当程度貫かれておる。ただあなたのおっしゃるのは、金額的にどうかという問題があるということだと思います。それは導入預金のほうが総額でははるかに大きいのですから、人数はきわめて少数で、千数百人の一般預金者から比べれば四十人にも満たない数ですが、金額のネットでいえば三倍くらいですから、その金額の大きさからいってそれに三割程度しか払わないというのはおかしいじゃないかというお話ですけれども、信用金庫協会がこの事件を取り扱うにあたって考えたことは、預金者保護をするということ、それはいわば信用金庫の金融機関としての信用を維持するにはどうしたらいいか、一切の預金者に対して支払うというのは最高の手段でありましょう。しかし、それについては全員が同意するというふうにはまいらなかった。一つの信用金庫が預かった預金というものはそれ自体の債務——別に信用金庫協会が一団となって保証しておるわけでもなんでもないのです。ですから、そこの残余財産で払うのがたてまえです。積極財産が消極財産を上回る限度において支払いに応ずるのが原則であります。すべての金融機関を国家保証しているわけではなく、信用金庫を信用金庫協会が一〇〇%保証しなければならぬというルールがあるわけではないということでありますので、これは法律問題でないのです。そこまでいきますと法律的には当然のことをしておるわけです。しかも一般預金者に四億円程度の立てかえ払いをやったわけです。残余財産に対して請求する権利がある、それを放棄してもよろしいと協会は言っておる。残余財産はすべて導入預金のリストに載った方々四十人で分けてしまってもよろしい、そこまで譲歩しておる。おまけに導入預金のリストに載った方々に対していままで何回か交渉を行ないまして、そして金庫協会としてできるだけのことをするために、もし普通の清算事務を行なっていきますと延々と延びてしまう場合が多い。会社の解散の場合なんかにしばしばあるのですが、みな食われてしまう。経費に食われる分が多いから、そういうことがないように、それで不安があるというならば、最初三割程度までは何らかの形で立てかえ払いをしてしまいましょう、そして清算をしてしまった上であと残ったならば追加払いもいたしましょう、またその三割を払うにつきましていろいろ話し合いがありまして、これはあなたも関係しておられたようですから、十分御承知だと思いますが、初め一割五分までは現金、あとは一年の定期預金と言っていたものを二割まで現金で払いましょう、一割は一年の定期預金証書でやりましょう。その間におきましても、場合によっては繰り上げて支払うこともある、こういうことまで三十何名かの預金者のためにできるだけのことは協会としても気を使ってやっておるという事実を認めていただかなければならぬ。そうでなければ四億円くらいの金があれば、その割合だけ減るわけでありますから、幾らかでもよくしてあげよう、その分の犠牲は当然に信用金庫協会で分け持とう。しかし、そのうちの全部ではありません。十一ばかりの信用金庫でその損失を分担しようということになっておるのです。これらの信用金庫からいえば都市銀行とは違うわけで、それほど強大ではないわけです。何と申しましても信用金庫というのは小粒なんです。それらのものがはっきり欠損になるようなものを分け持とうというところまでやっておるわけでございます。やはり預金者の保護を貫くために必要な限度までは十分にやるという気がまえを見せてやった。あの会長の方も決して中央信金の理事長だけの立場でそういう立場をとっておるわけではありませんので、そういう損失分担ということも入るわけですから、やはり自分個人の立場ではなく、協会長としての十分な行動をしておられるというふうに私は評価しております。
  55. 平林剛

    ○平林委員 銀行局長、あまり話を誤解をしてお答えにならぬようにしてもらいたいと思います。いま私はあなたとかけ合いをやっておるわけではないのですよ。預金者保護という立場で一つの事例としてあげて、こういう場合、この事態になったときにどう対処するかということを考えてもらわなければならぬということを申し上げておるのですよ。いま私が指摘しましたように、ある預金者は日光見物というようなことで、そうして、それにつられて、不動信用金庫というのは、あなた、信用のない金庫だという話だが、昔は銀行局から表彰まで受けたなかなかりっぱな信用金庫だという話を聞いたことがあるのですよ。中には、不動信用金庫というのは不動産の信用金庫ぐらいに考えて、そうしてお金を一千万円預ければ三千万円は建設資金でもって融資してくれるなんていううまい話を聞いたものだからごちそうまでして預金をしたという人がおりまして、これが今度の問題で預金が返ってこないという事態になっておるわけです。ですから、この預金者の中におきましては、それぞれのケース——私も全部調べたわけではありませんけれども、その中において話を聞きますと、そういう人たちも含まれておるわけです。そういう人たちがまた多いわけです。だから今回の処理をめぐってのやり方について、あなたはいまどこから聞いてきたか、おそらく中央信用金庫の説明だろうと思うのですけれども、そういう話だけをされておったのでは実情に合わないことが出てくるのではないか。私はその偏見をやはり直していかないとこれからの銀行金融行政についても誤りをおかすんじゃないかということを申し上げておるわけなんですが、いかがですか。
  56. 高橋俊英

    高橋説明員 私どもが申しておるのは、こういう一つの信用金庫がつぶれるということになると、預金者に不測の損害を与えるわけです。そういうことは信用金庫としては無視できない問題なんです。銀行であればそういう心配はないが、小さな信用金庫になると、一般にあぶないんだというような認識で見られたのでは、信用金庫という看板を掲げておるもの全部が困るわけです。そういうことから営業上の支障ということがもちろん一つの問題です。とにかく小なりといえども普通の善意の——普通のと言いますか、普通の預金者には絶対御迷惑をかけないようにしようというのが信用金庫の全員の考えであったわけです。私どもも、それはけっこうなことだ、そういう考えでやってほしいということなんですけれども、それじゃ普通の預金者とは目されない、いまあなたも日光見物という例を出されたけれども、何か調子のいいことを言うだけじゃなくて、現実におそらく特利の約束をした例もあると思いますが、特利の約束が全くないというのは、どちらかといえば少ないようでございます。しかし、これは事実はわかりません。だからそういうことは検察当局でほんとうに調べあげなければ事実関係は明らかに出ませんが、何らかの特別の利益をもって誘惑したといいますか、誘ったということは明らかにならないのです。そうでなければ、縁もゆかりもないところから四谷の信用金庫にばく大な金を預けるということがおかしい。そういったような方々の中には、確かに同情すべきもの、あるいは無知からきたものとか、いろいろ確かに非難するにはあたらないものもあるかもしれません。しかし信用金庫協会が考えたのは、どんな場合でも救われるのだということになると、いかなる不純な動機からなされた預金であろうとも——中には高利貸しも入っておるわけです。これはあなたも御承知のとおりだ。中にはくろうとも入っておる。いかなる動機からなされたにしても、全部救済してやるのだということになったのでは困るというのです、信用金庫自体としては。非常に業容の小さなわずか資金量の数億しかないような信用金庫は幾つもあるわけです。地盤銀行のように強固でない。そこに導入預金屋と称するものが入ってきて、これから荒らされるということだって考えられる。つまり存立を脅かされるということだってあるわけです。それを全部いかなる場合でも一〇〇%保証づきみたいにして救済してしまうというのは困まりますというのです。ですから一部不純の動機の、特別の利益を条件に縁もゆかりもないところから大口の預金をしたような方は、今後も必ずしも救われませんぞ。普通の取引をするのはけっこうです。そうじゃなくて不純の動機がからまってなされた預金には、一〇〇%保証は信用金庫協会としてもいたしませんということを明らかにしておきたい。そういうものが介入する懸念は幾らもあるのです。だからそういうものを排除する。われわれはそういうものにはあやからない、全く迷惑であるということを明らかにする意味において、こういうリストに載り、かつ先ほど私が申し上げたような事情のわかるものについては区別して扱いたいという一応の結論だったわけです。私どももその程度であればこれはやむを得ないのではないか。これから信用金庫協会が、信用金庫がねらわれるようなことは将来に向かって排除したいという意図もあるわけです。こういうことだったわけです。預金者保護の問題もあるけれども、いかなる場合でも全部救ってしまうのだということになりませんよ、これを天下に明らかにしておきたいというような考え方に基づいて差別待遇をした、こういうふうに了解していただきたいと思います。
  57. 平林剛

    ○平林委員 そこで悪質な導入屋とかあるいはそれを職業としておるような人たち、これを私どもは擁護したり、弁護したりする気持ちはありませんよ。それはあなたの言うとおり、基本的には通牒をこの間も出したでしょう。導入預金をそういうような批判があるから、これは今度の信用金庫だけではなくて、おそらくどこの都市銀行、中央銀行の中にもないとは言えないわけですね。こういうことについて銀行局でも通達を出されたように、そういうことは——法律に書いてあることはいけませんよ。そういうことは正しいと思うのです。そういう行政指導はどしどしおやりなさい。ただしただリストに載っかったのをこういうふうに取り扱うという中で、いま私が指摘しておるような人たちが含まれておるということに対して、どう考えるかということを言っておるわけです。あなた、リストに載ったから、何でもこういうふうにしてしかるべきものだとか、大義名分のためには親を滅するといって切り捨てにするということが妥当であるかどうかということを言っておるわけです。私は、そういうことであれば、たとえ一人の版金者といえどもそうした信用金庫あるいは金融機関に対して不信を抱くのではないか。この影響をどう考えるか、それを言っておるのです。
  58. 高橋俊英

    高橋説明員 一般の預金者に対しては何の動揺も与えておらないということは、その後の状況によっても明らかであります。ですから、このような措置が行なわれたのもそれぞれの事情はありましょうが、やむを得ないことと私は考えております。
  59. 平林剛

    ○平林委員 先ほど私が申しました神父の例ですが、これも世界の各国から零細な金を集めて社会施設に投ずるという意味で、私、具体的にもお話を聞いたのでありますけれども、すでに学校教育として各県の中に社会施設その他をつくったり、老人ホームをつくったりする資金に充てておる。ところが今回のこの措置によって現在東京の滝野川にある学校を移さなければならない。その敷地を東京都に返さなければならぬ。そうすると二百人ほどの人たちは、新しいところができないというと移るわけにもいかない。一方返さなければならぬということで、結局この人たちの処置をどうするかという問題は、一つの社会問題になるわけです。あなたは社会問題を起こしていないと言うけれども、今後こういう問題が起きてくるかもしれない。国際的にも問題がある。あなたは、私はそう聞いておらぬというけれども、おそらくそれを聞いたのは中央信用金庫側の説明でしょう。これは水かけ論になると言えばそれまでですよ。私は直接この事態を取り扱った人に聞いて知っておるわけです。ですからそういうこともあり、先ほどのように信用金庫側にごちそうまでして預金した人が返されない。これはあべこべですよ、事態が。融資をしてくれるからということでごちそうまでして預金をした人が返されない。あなたのお考えになっているのと全然別な事態がこの中に含まれるわけです。こういうことについて、ただ一律にこれはこうだというきめつけ方で処理することをしてきたのですよ。それがよくない、こういうわけです。そこで今度のような問題を中央信用金庫の理事長の小野さんですか、これにまかした理由はどういうわけでしょう。
  60. 高橋俊英

    高橋説明員 初めは協会としての共同の人を送って処理させようとしたのです。しかしそれはなかなかうまくいくものじゃない。どこかの信用金庫が一手に解決の手続を進めることにしなければ、一々すべてのこまかい点まで全員に相談しながら進めたのでは、一般の預金者に対しても不安を与えるだけで困るというので、そこで協会の決議といいますか、結論に従って、中央信金会長の小野さんがたまたま理事長をしておるわけですから、そこの中央信金が事に当たり、中央信金の特別の勘定においてそれを処理する。勘定を明白にしておけば、その結果は他の信用金庫も引き受けるということで、第一には一般預金者への支払いを迅速、円滑に行なうということです。それがとりもなおさず、いろいろな事態の不安を少なして早く解決する方法だということから、協会できめた手続でございまして、私どものほもそれを了としたわけであります。
  61. 平林剛

    ○平林委員 こういう問題を取り扱う相手として、結局一信用金庫が扱った。こういう姿はいまの信用金庫関係から見て妥当なものと思いますか。
  62. 高橋俊英

    高橋説明員 最初に協会から派遣された方々がいろいろな方と交渉をする、そういうときの不便な事情、それを私はその当時も聞いております。とてもこれでは解決が円滑に迅速にいかないということを知っておりましたので、こういう方法をとったことについて、やむを得ないと考えております。
  63. 平林剛

    ○平林委員 どういう事情でそういうふうになったのですか。その点がわからないのですが……。
  64. 高橋俊英

    高橋説明員 要するに、一つの信用金庫であれば自分で資金の借り入れもできるし、貸し出しも何でもできる、支払いもできる、立てかえ払いもできる。勘定を持たない人がそういう衝に当たれば、一々持ちかえて、この金はどういうふうにするか、不動信金の別勘定にやりますということになるとめんどうだ。そういうことですから、この場合は中央信金の理事長即会長という資格において衝に当たるということは、一つの手段としてやむを得ないのじゃないか。そのほうが便利である。何ら不公正なことがその間に含まれていないと私は思います。ですからそういうことで協会の方々が自分たちできめられたことに対して、当局が異議を差しはさむ余地はないと考えておるわけです。
  65. 平林剛

    ○平林委員 私はこの問題を取り扱って、信用金庫協会の中に複雑な葛藤といいますか、利害関係を伴う対立があるということを承知したわけでございます。信用金庫がこの問題を扱うという経緯についても、信用金庫の理事長みずからが言い出しておる。文書によってもなかなか複雑なものじゃなかったかということを感じた。そして、結局この信用金庫の理事長が、預金者の預金を買い取るという手段でものを解決しようとしておる。つまり、いま銀行局からのリストに載せられたものはしようがないというお墨つきをいただいた、弱き立場にある者たちを、不公正な契約によって、そして少額で買い取られるというような形に追い込められておる。だからそこには、つまり大蔵省銀行局のお墨つきをいただいて、導入預金屋であるというようなレッテルを張らしておいて、弱き立場にさしておいて、一信用金庫の責任者が商業ベースによって買い取る、逆に言えば私は不公正な取引だと思う。法律的にいえばこれはだれも払う者がない。義侠心でおれがやってやったんだということが言えますが、その中に全部が悪い人ばかりではないと考えますと、リストに載せられたのが運命で、そして正当な預金者までがその弱き立場でもって不正当な契約を押しつけられておる。こういうことは私は見ておられない、そういうことを感ずるのであります。こういう事態におちいりましたものには、大蔵省銀行局が一方的な情報だけ、あるいは中央信用金庫側の情報だけを入れて物事を判断していた中に、正鵠を欠いたものが出てきたんではないだろうかと思うのであります。そこで、将来こういうような問題が起きたときにどうするか。たとえば全国信用金庫連合会というものがあるでしょう。それから私も詳しいことは知りませんけれども、いわゆる三団体の中には、当然こうした問題を取り扱う機関としては、全国信用金庫連合会というようなものが一つ経済団体としてあるんじゃないですか。こういう問題の処理についてのやり方を、やはりはっきりさしておく必要があるんじゃないかということを感ずるのですが、その点はいかがですか。
  66. 高橋俊英

    高橋説明員 信用金庫が危険な状態になったときに、その資金繰りのめんどうを見て立ち直りを助けてやるとか、場合によったら、ある程度の援助資金をつぎ込んで預金者に及ぼす迷惑を最小限度にとどめる。そういう配意は私はあったほうがいいと思います。連合会のほうでもある程度の用意はあるのでございますが、しかしこの事件の場合には、導入預金と目されておる方々のために、それらの資金を全部使い切るというふうなことはしないほうがいいというのが信用金庫全体の意思だったのですね。もしそれがそうでないならば、あなたの側から見た場合と、信用金庫の側が考えている面とは多少の食い違いはあるでしょう。これはやむを得ないでしょうね。立場の相違ということもございます。私どもは預金者のほうの立場を考えていますけれども、一方で将来にわたって、こんな不都合な事態が生じないように、またそのためにはどんな預金者でもいつも一〇〇%の支払いは保証されているのだというのは行き過ぎである。導入預金など受けつけるなということを私ども金融機関に指示しております。今回の事件に見るごとく現実にはあるわけです。そういった一部中には悪質なものも含まれるわけです。そういうものの跳梁を許すということのマイナスのほうが大きいと判断して、そういう措置をとったということでございます。将来の問題としても、やはり常にどんな方でも一〇〇%の支払いは保証されるんだというふうにするのには、そういう意味の保険制度でもしかなければならぬのであります。しかし預金保険も前に提案してだめになったことがございますが、全額払うという制度じゃない。預金の保険というものは最高限度そう高くない。二、三百万という程度あればせいぜいだろうと思うのです。現在の立場で考えてですね。一億でも二億でもどんな金額でも保証するというような保険制度というのは外国にも例がないわけです。ですから頭打ちになっている。それ以上高額なものはやはり支払われないというのが保険の制度なのです。保険制度としてはその程度のことしか考えられないわけです。ですから、金融機関がまずくなったときに、一般の零細大衆にはできるだけのことをする。しかし、非常に高額なものは、たとえそれが悪質なものでなくても、やはり打ち切られるというケースはどうしても避けられないというふうに思います。
  67. 平林剛

    ○平林委員 私は、この種の問題について、実際に銀行局長の言うように、悪質な導入預金者といいますか、導入屋というものに対しての態度は、あなたの言うとおりでいいと思うのです。しかし今度のように、あまり信用できないところの三輪という人のリストがもとで、そうしてそのために不当な損害を受けるというようなことは、何としても避けたほうがいいのじゃないか、避けるべきだ。中にはリストに載って、あとで消したなんというのがあるのです。銀行局長は知っているかどうかわかりませんけれども、私はそういうやり方でなくて、今度のような場合において、善良なる預金者を保護するための措置を何か考えておく必要がある。その方法として、全信連の準備預金の運用という点がいま信用金庫界において問題になっておるという話を聞いておるわけです。この運用方法についてこういう声が出てきたのは、伝えられるところによりますと、今回の不動信用金庫の際の処理におきまして、預金制度の救済事項が発動されなかったことが不満で、ひとつこの支払い準備預金というのを、善良なる預金者の預金支払いが不可能になる、信用金庫の社会的信用を著しく傷つけるような場合に、当然発動すべきであるというような意見が起きてきたというふうに聞いておるのですけれども、こういう問題についてどうお考えになっておりますか。
  68. 高橋俊英

    高橋説明員 全信連の中に支払い準備預金制度というのがございます。これは各金庫が預金をいたしまして、異常な事態におきましては預入額の十倍まで、金利は預入定期預金が二銭でございますが、その五毛高の二銭五毛という比較的安い金利で貸し出しを行なうのですが、それはそんな長いことつなぐという意味じゃございませんで、内規によりまして、これは原則として三ヵ月以内に返せということになっております。不動信金の場合には限度は七千二百万円になっておりまして、一時は限度額までそれを利用しておりましたが、いまでは返済済みでございます。非常に短い期間どうしても流動資金が不足するという場合に、その金を借り出して、一時の支払い預金の不足を補うという制度でございます。今回の場合には一たんは限度まで利用しておりましたが、いまはもう返済が済んでおります。
  69. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。田中武夫君。
  70. 田中武夫

    ○田中(武)委員 いまの平林君の質問に関連してですが、答弁を聞いておりまして、ちょっとわからぬところがあるのでお伺いします。  導入預金といっていま問題になっておるのは、預金等に係る不当契約の取締に関する法律第二条の預金契約を言っているんですね。その二条の契約を導入預金というのでしょう。
  71. 高橋俊英

    高橋説明員 いわゆる導入預金とこの法律の関係でいっておりますのは、二条と、三条も入ります。
  72. 田中武夫

    ○田中(武)委員 三条は二条を受けた規定です。それでわかりました。  そうすると、この二条、三条の契約、これは法律で禁止せられた契約であるから無効ですね。しかしこれは自然債務として残るのか残らないのか。自然債務であるならば、裁判上の請求権はないが、相互の間にはこれは債権として、法的の保護はなくても債権はあるわけですね。そうでしょう。だからこれの違反の契約は自然債権として残るのかどうか。あるいはそれが全然無効だということならば、不当利得になるのかどうか。その辺をひとつ……。自然債務として残るのか、不当利得なのか。
  73. 高橋俊英

    高橋説明員 これは非常にむずかしい問題でございまして、この法律自体は取り締まりの関係で罰則を設けて禁止するのが目的なんです。つまり刑事上の制裁を設けてあるということですね。それで禁止しておる。だからこれは一般の民法のあれに戻りまして、公序良俗に反する契約にもなると思うのですが、しかし裁判所の判例は、あまり的確な例はないのですけれども、これは刑事上の制裁はあるけれども、基本となっておる預金契約そのものを消滅させるものではない、こういうことです。預金契約そのものとしてはあっていいのだ。ただしむろん特利をつけたようなもの、その特利の部分は無効です。特利の部分は無効ですが、普通の預金利子を支払う義務はあるのじゃないか。つまり法律上は、この規定によって一切根本的に無効になるというものではないのだというふうな解釈がとられているように——私は非常に詳しく調べたわけではありませんが、そういうふうに大体裁判上の扱いは、一切無効で払わなくてもいいのだということにならない、やはり契約としてはあるのだというふうに解釈されておるように聞いております。
  74. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私もこの問題にあまり実際に関係しておりませんし、平林君が勉強せられて、調査せられてやっておるのを聞いておったのですが、聞いておるうちにちょっとそういう疑問ができたので伺っておるのですが、この法律自体は取り締まり、つまりこの法律違反の契約は民法九十条にもどってやはり無効であると解釈すべきではないか。そうするならば、自然債務として残る、こういう理論が成り立つわけですね。あるいは全然そこに債権は、契約が禁止規定に反するから、存在しなかったのだということになると、不当利得として受け取ったものは残るわけですね。いまのお話であると、この法律はあくまでも形容的な罰則規定であるので、いわゆるこの法律、すなわち金利調整法等をこえたものについては無効である。しかしそれも自然債務としては残るかもわからぬ。利息制限法をこえたものは自然債務だ。だから罰することだから、金利調整法を出たやつは頭から無効ですか、そういう関係。それからこの法律によって認定したいわゆる罰則を受ける場合の認定は、あるいは裁判所等が行なうと思うのです。しかしいまのお話であると、そういうリストをつくるにあたっての基準が何かあるのかないのか。そこで協会と当該金融機関がリストをあげた、そうしてお話では協会がこれを導入預金として認めた、それを公表することによってこういう不当な預金に対しては保護を与えませんということを公表したのだ。したがってそれは適切であると思う、こういうような答弁であったと思うのです。しかしその辺のところの基準をどう置くのか、あるいはこのことについて導入預金としてはどういうことをするのか、これは抽象的に書いてあるだけですね。その基準行政指導として何か出ているのか出ていないのか。その場合にそれでは払っていけないということを協会等が認定することによって法律的な効果があるのかないのかということ、そういうことが疑問になって残るのです。その辺どうでしょう。もし何でしたら次の委員会に私も勉強してあなたに質問をする、そういうことにしたいと思います。私も別に準備をしているわけじゃないので、ちょっと思いつきに六法全書を開いて、あなたに聞いておるわけです。
  75. 高橋俊英

    高橋説明員 預金に特利を付する契約があったとすれば、その特利に相当する部分の契約は当然無効だ、こういうふうに解釈されております。支払う義務はありません。受け取る権利もないということです。しかしそうでない、いわゆる普通の基本契約、預金の契約でございますが、かりにこれで違反だということが明らかになった場合でも、その支払い義務、預金の支払い役務が金融機関にないとか、そういうことにはならない。それはやっぱり債務としてあるんじゃないか。どうも裁判上はそういう判断で扱われるというふうに存じております。  それからもう一点リストの問題です。これは詳しくお話しすると長くなりますけれども、要するに検査にまいりまして非常に悪くなっておる。それがもっぱら後藤観光に対する貸し出しであるということがはっきりしたわけです。そういうことからどう始末をつけるかということについて協会の自主的な結論を持ってくるようにということにしたわけです。もちろんこちらはその間に業務の一部分について停止命令をかけております。これ以上悪い事態が続かないように一応とめておきまして、それから中身もある程度、検査でもわかっておるのですけれども、どの部分がいわゆる導入預金と目されるものかということは三輪理事長が一人でやっておったわけです。ほかに理事がおるのですけれども、常勤理事が一名で、理事長がそれだということです。これは何ら後藤観光とのつながりが表面的にはわからない。しかし、あとから見れば、後藤観光のいわば経理担当者みたいな——信用金庫がなぜ後藤観光の思うようになったかというと、信用金庫は非常に相互組織で民主的なようなかっこうはしておりますけれども、それがそうなっていないんです。実際上御承知でございましょうが、経営権を支配するということがあるわけです。だから後藤観光が実質的に不動信金の経営を握っておったということがあとからわかった。そのいわば後藤観光の代理人みたいなものが三輪理事長であった。これは、後藤観光のほうが非常にどんどん悪くなってきた。それを何とか金繰りでつなぐために三輪理事長が非常に働いた。預金は一応信用金庫に対する預金として預かっておって、これをそのまま後藤観光に流す、そういうことを考えたわけです。それを短い期間にどんどんやった。三十何人でございますけれども、その連中からおそらく何らかの特別の利益をもって誘惑したことは確かなんです。そういう特利とは申しませんけれども、何らか特別の利益がなければ、おそらく預ける人はなかったでしょう。それを預った当の本人である三輪理事長が、これだけは導入預金でございますというリストを出したわけです。そのリストについてただほうっておかないで、それがほんとうに後藤観光に流れたものかどうか、少なくともその点を確めるというので調べてみた。そうするとみな因果関係がある。確かに金は預けるが、翌日か二、三日すると固めるというようなことで、後藤観光にそっくりそのまま回収されておるというのがほとんど全部である。そういう意図で預けられた預金であることは間違いないのです。それを一番よく事情を知っておる、つまり特利などをつける約束をしたかどうかということは三輪理事長が一人でやっておったわけですから、この人が一番よく知っておるわけです。その人間が信用になるかならないかということは別にございますけれども、その後の言動が二転三転したりするからおどかされればどっちにも動くというようなところはあります。しかし最初は、何の脅迫にもよらず十何億もおかしな金があるがこれはどういうわけだ。それを確めてみたら、どうもそれらしい。経理としてはまさに導入預金の経理である。その中にはどういう特利の契約があったか、それは私たちにはわかりません。それは検察当局で調べておるわけです。
  76. 田中武夫

    ○田中(武)委員 事実問題についてはいろいろあったと思います。そこでいま言った三輪理事長は背任罪あるいはこの法律違反等々で起訴かなんか受けておるでしょう。だからそれはいいと思います。しかし、そういうことと一般預金者との関係ですね。それは導入預金であることを知ったいわゆる悪意の預金者はともかく、われわれはそれを別に保護しようとも援護しようとも考えておりません。しかし、善意の預金者、これが先ほど言ったように法律的に債権債務関係は残っておる。その善意悪意を調べずして一方的にリストをつくる、あるいはそれを協会が認定する、そういうことによって、これは導入預金だから払いません、こういうことはどうかということです。したがって、私は事実関係をよく知りません。あとでよく調べまして、あくまでも法律的にその債権がどういうような結果として残るのか。あなたの話では判例もあるようですが、判例は私も調べましょう。そうしてあらためて次の機会に、あくまでも一つの具体的な事実としてでなく、法律論として次に一ぺん行ないたいと思います。ただ、いまのあなたの答弁を聞いておると、世の中の見せしめのために公表したことは決して悪くないとか、そういう話も出ておりますが、一体そういう認定をどこが行なうのか、こういう問題が疑問として残ります。しかもこの法律違反の契約ははたして契約としてどういうかっこうで残るのか。判例にあるそうですか、債権債務関係はそのまま残る。そうならば一方的に支払わない、こういうことが許されるのかどうか。私は悪意の者に対して、事情を知っておる者に対して決して言っておるのじゃありません。善意の預金者に対して、そういう一般的処置を、いわゆるみそもくそもといいますか、行なうというところに何らかちょっと割り切れぬところがありますので聞いてみたわけでありますが、あくまで法律論として申し上げております。
  77. 高橋俊英

    高橋説明員 田中委員の法律論でございますから私も法律的な解釈でお答え申しますと、いま申したように特利部分の契約は無効です。それ以外の普通預金契約は有効であるという解釈でございます。これは、法制局にもその点は確かめたのでございますが、それは有効な契約である。したがいまして、それらの契約に基づく預金債権はいまでも生きているわけです。ところが、いまここに問題になっておりますのは、だれが支払い義務を負うかと申しますと、御承知のように不動信金なのです。法律的にはあくまで不動信用金庫が支払いの債務者です。ですから、これは清算に入っておりますから、いわば清算金の分配を受けるという形に法律的にはなると思うのであります。一般の預金者もほんとうはそうするのが普通の法律上の解釈です。ところが、それでは一般の預金者も一緒に犠牲者になるわけです。何割かで切られてしまう。残余財産が十分にないことは初めからわかっておるわけです。全体で形式的には二十億以上の負債勘定ですが、そのうちで導入預金というリストにのぼっておる大口のものが十二億円余りです。つまり新しい預金です。それが十二億円以上はございますから、一般の預金者の分は、債務を差し引きますと四億くらいなのでありまして、そういうことですから、その四億の部分も十二億何千の部分も、法律的にいえば平等に一定の率で支払われるのが私は法律上の扱いだと思います。その法律上の扱いでいきますとあまりにも一般の預金者に気の毒である。それから、そういうことをやると全体の信用金庫自体の信用にかかわるということから、一般預金者の分については実質的には全部立てかえて払ってしまうということをやった。これは法律上の義務じゃありません。第三者が不動信金にかわって預金者に対して支払いを立てかえてやったという形。法律上の義務の履行ではございません。それでいま問題になっておるいわゆるリストに載った導入預金というものは、法律上の手続きに従って、残余財産につき、その権利のうちの一部分を受け取る。なくなればそれ切りということになるわけですが、それについても立てかえ払いをした側からは四席円の請求権が不動信金にあるのです。それを放棄して分配率を高くしようということを主張し、それから何ならば預金者が同意する限りは三割くらいまでだったら事前に立てかえ払いいたしましょう。それよりこえた部分が清算所得からこえてくれば、無論これは四億円の預金債権は全然発動しないでおいて、全部三十何名の方に差し上げましょう、こう言っておるわけですから、法律上の問題としては何ら不当なことはない。問題は、扱いは法律の義務でない立てかえ払いのようなものをもっと手厚くするかどうかという問題が、いま議論の争点になっているわけです。
  78. 田中武夫

    ○田中(武)委員 くわしいことは、また私も事実関係をよく調べてからあらためてやりたいと思うのですが、いまの話によると、第三者が立てかえて払った。そういたしますと、その人は債権の譲渡を受けているわけですね。したがって、銀行に対して新たな債権者になっているわけですな。その債権と、そしていわゆる導入預金であるということでリストに上がっている人たちの預金すなわち債権、これは平等である、これが原則ですね。代位弁済でしょう。代位弁済だったら、当然債権を引き継いでいますね。どうですか、平等というのは法律上の問題じゃないですか。  それともう一つは、そういうリストを一方的につくったことと、それを協会が発表するとか何かで——それが、公のためにそういうことも十分してもらう必要もあるので、こういうものには最終的には保護はいたしませんぞということを知らすために協会が認めた、何かこういうことですが、その辺のところがもう少しわからないのです。しかし、きょうはいいです、あらためてしますから。何か答弁があったら聞かしてもらいたいと思います。
  79. 高橋俊英

    高橋説明員 一言申し上げますが、やり方としまして代位弁済という形をとりませんで、預金債権を、預金通帳百万円なら百万円という預金を買い取ったという形になっております。つまり預金債権が譲渡された。ですから、中央信金が銀行協会を代表してやっておりますから、形の上から見ますと、中央信金が今度は残余財産に対して、四億円ぐらいの残余財産分配請求権を持っておる、こういう形になつております。
  80. 田中武夫

    ○田中(武)委員 第三者が、名前は使いませんが、あくまでもかわって払ったんでしょう。それでは、中央不動信用金庫ですか、それは支払いの義務があるんですね。その支払い義務を第三者が行なったんでしょう。そうじゃないの、違うの。その預金者から第三者が買い取って、そして、それがいま請求を行なっておるわけですか。それで払っておるんですね。いや、ちょっと待ってくださいよ。その辺の買い取りということは債権の売買になりますね。それはどういうことになっているんですか。売買とは、一方があるものを提供し、片方がそれに対する代金の支払いをすることをもって成立する双務契約ですね、そういうかっこうになっているんですか。
  81. 高橋俊英

    高橋説明員 その点はこういうぐあいです。五十万円なら五十万円の預金の債権を持っている人がいまして、それが実は中身が非常に不良になってしまった。つまり五十万円の値打ちがないわけです。残余財産を清算すれば十万円か十五万円しかない。そういうことがわかっておるんだけれども、第三者の信用金庫が、それじゃその債権を買い取りましょう——しかも額面で買い取る。五十万円を十五万円に値切らずに、五十万円そのままで買い取る。そうすると、当然これは損失がくるわけです。おそらく請求しても二割五分ぐらいしか返ってこないでしょう。その請求権はいまでも持っておるわけです。持っておるのですが、これを請求すれば分配率が下がるわけです。四億円分だけ低くなってくるわけです。その権利は放棄しよう。ですから、買い取っておって、請求権のほうは請求しない。請求すればそれだけ分配率が下がるから、それよりも、それだけ手厚くするために、三十何人の預金者に対する分配率を高めてやろう、こういうことでやっているわけです。
  82. 田中武夫

    ○田中(武)委員 わかりました。債権を持っておる者が権利を放棄することはかってですから、それはそれでいいと思う。しかし、それは、何らかそこにいろいろな親とか子とかの関係があって行なわれたと思うのだが、それを買い取ったのが中央信金ですか。そうすると、そういうことがわかりながら買い取って、それを放棄するということになるならば、当然中央信用金庫側のほうにおいて機関の決定もあるし、あるいは会員からいえば背任行為だとも言えるわけですね。そういうような点は別に問題になっていないというんですか。
  83. 高橋俊英

    高橋説明員 ごくすらっと考えるとそういうふうになるのですね。何の支払い義務もないのに、他人のために全くの不良債権を買い取って、しかも放棄してしまう。こうなると、一体信用金庫としてはマイナスですから、そのマイナスをいわれなくしてしょうのであれば背任だと思います。ところが、この場合、言ってみれば信用金庫全体としての意思の決定に基づいて、そうして信用を維持しよう——たくさんの、五百何十の信用金庫があるわけです。その中にはずいぶん基盤の脆弱な金庫もある。その連中が世間の人から信頼を失うということのマイナスが非常に大きいわけです。一般の千数百人の預金者に何の迷惑もかけなかったという結果に持っていこう、その結果としてマイナスが出てくるわけです。このマイナスを中央信金一社だけでしょうことになると問題なので、そこで一社でしょわないことになる。ただ代表してやったにすぎませんから、その負担の割合が大体きまっておりまして——たとえば東京で申しますと城南とか東調布、八千代信金、上野信金、芝信金その他、全部で十一金庫でございます。その、中央信金を含めて十一の金庫が、つまり東京都内において比較的力のある——何といっても起こった場所が東京ですから、九州のほうにあまり響かぬという理屈もありまして、東京の信用金庫協会の中の有力なメンバーが、自分たちだけでその犠牲をしょおうということで、それぞれ何千万程度の負担割合がきまっておるわけです。それをそれぞれ持ち帰って、これだけのものはこういう事情で、実際は欠損になるわけですということをみんなに報告するわけです。これはいますぐというわけではありませんけれども、結末がついたらそういうことを報告いたす、これは背任にならないという——そういう事情であれば、信用金庫全体の利益、特に東京都内にある信用金庫の信用を維持するために必要の措置であったということが認められる限り、それは背任罪の要件を欠くものとして起訴はされない、起訴すべき理由はない、こういうのが法制局などの見解でございます。
  84. 田中武夫

    ○田中(武)委員 これでもうやめますが、だいぶ事情がわかってきたと思うのです。問題は、起訴するとかしないとかではなしに、それぞれの金庫の機関が決定をし、そうして会員が了承するものならば、こっちの側は問題ないと思う。そのことによって一応連帯責任としての信用金庫の信用を維持するということ、それはわかります。そうすると、導入預金なりと、いわゆる不当契約であるとみなされたものに対しても、払わぬじゃない、それは残された不動信用金庫の債権債務を引いて残った財産において平等に処理をする、そういうことですね。問題は認定の基準とか、そういうところに問題が残ることですが、一応そういうことだな。私はきょうはやめます。こういう問題について、これを一つの問題として深くやりますと、社会党は導入屋に対して肩を持っておるのではないかなんて言われるのもどうかと思いますから、そこのところは別に切り離して、この機会にもっと理論的な、そして今後の行政的なこと、そういうことについてあらためてお伺いします。それから、そういうことを各信用金庫が行なったこと、そのことはいわゆる信用維持のために行なったんだ——そうすると、信用金庫を監督している銀行局、あなた方も、それはやむを得ぬというか適切というか、そう認められたというならば、もうそれ以上は申しません。そういうことですね。
  85. 高橋俊英

    高橋説明員 おっしゃるとおりでございます。
  86. 平林剛

    ○平林委員 結局問題は、今度の不動信用金庫の解散に伴ってつくり上げられた導入預金のリスト、その基準のきめ方、あるいは三輪理事長が言うたのだからこれは正しいとか、あるいは一信用金庫がこれを認定したら支払わなくていいのだというような形で、正当な預金者までが多大の損害を受けるということは、私は問題が残るということをきょうは指摘しておるわけであります。同時に、こうした問題の処理にあたっては、やはり一信用金庫にまかせるということになりますと、そこにその人の人柄とかあるいはその人のらつ腕というようなことから、とかく商業ベースによって強者が弱者を支配するという形から不当な解決に導かれていくことになりまして、そうした人に対する保護を加えることができなくなる。ここにも問題があるから、こうした問題については、やはり信用金庫を例にとれば三団体があるし、この三団体の適当な機関がこうした問題の処理に当たるべきではなかったか。それを内部事情によって一信用金庫の理事長がこれを行なうということの経緯にはいろいろな問題が含まれておる。私はきょうは全部申し上げませんけれども、そうした点を配慮して今後の金融行政をあずかってもらいたいということであります。  それから問題は善意な預金者、まあ大蔵省銀行局長がおっしゃる善意な預金者に対して支払いをした四億円、これは立てかえ払いである。その債権は信用金庫の信用保持のために放棄しよう、こういうお話を私たびたび聞いたわけでありますけれども、これは信用金庫協会独自の判断で、独自で信用保持をしようとする考えでこの措置を決定したのかどうか、これを私聞いておきたいと思う。
  87. 高橋俊英

    高橋説明員 これは信用金庫の協会がそういう——つまりこれは負担をするのが十一金庫あると申しましたとおり、この会長一人の判断ではありません。それらの関係者の同意を得た上で、この際不動信金に対する預金債権を放棄することについて同意を得た上で決心をした、それだけ幾らかでも導入預金のリストに載せられた方々への分配を多くしてあげたい、こういうことの申し出が私どもにありまして、私どものほうも、智さんがそういうふうに自発的におきめになるならけっこうでございます。そういういきさつできまったものでございます。
  88. 平林剛

    ○平林委員 銀行局長のお答えを聞いていると、信用金庫協会の今度のやり口ははなはだきれいなように聞こえるのでありますけれども、私はその点はいろいろ事情を知ったばっかりにそうとばかり理解できない点がありまして、どうもすなおに私の頭に入らぬ。このいまの措置と、大蔵省銀行局長が国税庁長官に対して、金融機関の不良債権償却証明官の指名という通牒が昭和三十九年の二月二十五日に出されておりますけれども、これとの関係はないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  89. 高橋俊英

    高橋説明員 償却証明というのは毎年やっておることでございまして、ことしはことしの分として金融機関の債権資産勘定のうち償却してもやむを得ないと認めるものはこのとおりであるということを、金融機関の場合に限っては、銀行局が、あるいは財務局もございますが、それが国税当局に対してリストを出す、それに基づいて向こうは償却を認めるという制度になっております。この制度はいま新しく始まったものではありません。ずっと前からそういうことをやっております。特に今回のこととは何の関係もございません。
  90. 平林剛

    ○平林委員 この通達が、ちょうどたまたま期日が二月二十五日であるし、金融機関の不良債権償却証明官の指名が行なわれておりますし、この問題については大蔵省銀行局のほうから通知があったから各税務署に通知するという形になっておりますので何か関係があるのではないかと思ったのでありますが、いまのお答えでわかりました。ただ、もう一つ念を押してお尋ねしておきますけれども、たとえば信用金庫側はわりあいにきれいな口をきいているわけですよ。そうして、四億円は自分たちの犠牲において債権を放棄したのだという形で大蔵省銀行局に報告をなさっている。これについてかわりのものを要求するというようなことはないでしょうね。つまり、われわれもこういうふうにして処理したのだから、銀行局においてこういう点をめんどうを見てくれというような要請はこれに関連してはなかったでしょうね。私はその点を念を押しておきたいと思う。
  91. 高橋俊英

    高橋説明員 これに関連しては全くありません。
  92. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 春日一幸君。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 私は、かねて第三相互銀行の株式をある特定の意図を持って買いあさっておりますることに対しまして、そのような資金を流すものがもし金融機関であるならば、銀行法に照らしていかがなものであろうか、また、事実上証券取引法や証券取引所の定めておりまする定款の中に取引の信義則というものもございまして、これまたそのような野望を持って買いあさるものに対して、その意図にこたえて売買した証券業者に対しては、これは過怠金から除名の処分まで定めておるのでありますが、こういう一連の問題について、私は本日これを質問いたしまして政府の善処方を求めようといたしたのでありますが、先ほど高橋銀行局長から、局長の責任において政府において善処するとのことでございましたから、私は、本日は一まずその質問は留保いたしまして、事態の推移を厳粛に監視いたしたいと存ずるのでございます。したがって、本日は、私は、当面いたしておりまする金融上の重要なる三、四点の問題について銀行局長の善処を求めたいと思うのであります。  第一点は、先般歩積み、両建ての自粛規制を行ないましたとき、私は、その討論の中においてその意見を述べて賛成の意思を明らかにいたしたのでございましたが、その中に、不動産銀行と商工中金、この二つの金融機関の行なっておりまする金融債、これの取り扱い、取引のあり方についてでございますが、これは現実の問題といたしまして、歩積み、両建てとその性質を本質的に同じくするものではないかと思うのでありまするが、すなわち、金を貸しましょう、そのかわりこれだけの金融債を買ってくださいということになりますれば、それはむしろ債券の持つ長期性からいたしまして、それは拘束性において、またその貸し出しと、それから金融債の利息との関係において、これは不公正な取引と判断をすべきものであると思うのでございます。したがって、不動産金融債も商工中金の金融債も政府が相当額これを引き受けておりますという立場においても、政府が特にこれらの両機関の金融債の貸し出しについての売りつけ方については厳重なる監視があってしかるべきものであると思うのでございます。先般本委員会で歩積み、両建て禁止のあのような決議がなされたのでありまするが、その精神、その趣意にのっとって、銀行局長は、商工中金に対し、また不動産銀行に対して金融債の自後の取り扱いについてどのような指示を与えておるものであるか、この点まずもってお述べ願いたいと思う。
  94. 高橋俊英

    高橋説明員 いまお尋ねは商工中全と不動産銀行でございましたが、他にも興業銀行、長期信用銀行という債券発行銀行がございます。これらの銀行の間に、そういったいまお話しのようなケースが実情としてはあるように私も聞いております。それでそのままいろいろと言いわけができる問題でございます。と申しますのは、会社によりまして、社員からの退職金の引き当て金というようなものは一応別経理する、要するに何か他人のものを預かっておるような場合には、この分は有価証券に運用しておくのだというふうな経理上の一つのやり方をとっておる会社もございます。ですから一方で長期信用銀行、一般から金を借りている、一方で有価証券を持つ。そうすると有価証券の場合に、金融債は一番安全でかつ融通性が非常に高いからそれを持つというふうなものもあるでしょう。しかし一般的にいいますと、そういうきちんとした考え方から出ているのじゃなくて、融資の児返りに債券を持たされるという例も多いのじゃないかと思います。これは口頭ではいままでもたびたび指示しております。特に商工中金などに対しまして——これは組合員だけが取引対象になっておりますが、そういうことから預金の面においても同様、それから債券の売り込みにおいても、消化においても、そういう融資と引きかえにやるというのは両建てと同じことになる、これは非常に非難の対象にもなっておるからやめるようにということを厳重に申し入れてあります。いままでのところ、まだあるいは改善されていない部分があると思います。今後その点については一般の両建て問題と性質を同じくするものと認めまして、厳重なる指導、監督を行なっていくつもりでございます。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 いま局長がお述べになりました四つ金融債発行の金融機関の中で、なかんずく長信と興銀は中小企業専門の金融機関ではないと思いまするし、また重点も必ずしもそこに置かれてはいないと思いますが、商工中金はもっぱら中小企業専門の政策的金融機関でありまするし、不動産銀行も、われら本委員会銀行設置法でございますか、その当時これを論じたのでありますが、主として中小企業金融機関にというところにその事業目的が置かれてあったことを記憶いたしておるのでございます。そういう意味でこの二つの金融機関が、特にこの中小企業金融について影響力が大きいのでございますから、この二つの金融機関金融債のはけ口を、もしそれ貸し出し先にその対象を求めていこう、消化先を求めていこうというような事実関係がございまするならば、このことは本委員会がさきに決議いたしました歩積み、両建て禁止の精神にまことに逆行するものでございます。したがいまして、私はその事実関係をこの際つまびらかにいたしたいと考えますので、これら二つの金融機関すなわち商工中金と不動産銀行が発行をいたしております金融債の総額の中で政府の持っておるものあるいは金融機関が引き受けておるもの、その他団体もしくは他の機関、そういうようなものが持っておりますものと、それから一般事業者を対象とするもの——必ずしもそれは貸し出しの見返りというものではなくして、一般事業者を対象といたしておりますもの、これと区別していただいて、その対比率も明示されながらひとつリストの御提出を願いたいと思います。これは当然両機関においてそういうような資料はお持ちでございましょうから、ひとつ銀行局長においてしかるべくそれを整理せしめて、金融機関や政府やあるいは保険団体とかいろいろな団体があるでありましょうが、そのような機関引き受けとそれから事業者の引き受けております金融債、その実額とその対比率、これをひとつ御明示を願いまして、後日われわれがこの問題について論ずる場合、その実態を十分把握いたし得るように資料の御提出を願いたいと思います。このことをお願いをいたしまして、なおかついま局長の御答弁によりますと、この委員会決議の精神と趣意にかんがみて、これらの機関に対して厳重なる指導監督を行なっていく、こういうことでございますから、その行政指導の成果に私は期待することにいたしたいと思います。  次は、保証金融の金利についてお伺いをいたしておきたいと思うのでありますが、現在地方公共団体がその指導性を持っている信用保証協会、これがございまして、また保証金融の額も相当大きくなっていると思うのでございます。しかるところ、この保証金融の金利というものが大体において二銭六厘かれこれが基準に相なっておると思うのでございます。そうしてその銀行の貸し出し金利の上積みとして、この保証料が加えられるわけでございますから、したがって、これに二厘なり三厘なり四厘なり、こういう保証料が加えられますと、結局事業者が借り受けをいたします金利負担のトータルは特に三銭かれこれになってくるのではないかと思うのでございます。私はこの問題について大いに考察をめぐらさなければならぬと思いますことは、とにかく中小企業の資金梗塞を打開することのために、この制度が一応政策的にとられておるのでございまするが、同時にこれは中小企業の安定と振興という大目的のための部分的な措置でございますから、したがいましてその金利の問題についてもこれはただ単にその金融をできるだけ疎通をはかるということ以外にも、やはり中小企業の金利負担、企業コスト問題についても、十分なる配慮が加えられてしかるべきではないかと思うのでございます。銀行の貸し出しは大口については一銭八、九厘から二銭五、六厘にわたると思うのでございますが、すなわち二銭とか二銭二厘とかこういう安い貸し出しが行なわれておる。それはすなわち相手の信用度が高いからである。危険率がないからである。もっとも別個にその金融の実額が大きいから、したがって貸し出しコストというものが低いという点もあるところはございましょうが、これらの要素を判断いたしますと、信用保証協会というものが保証するのでありますから、したがってこれを県でやるとか市でやりますとかその信用をもって代位弁済の責任をになっておるのでありますから、これは大企業よりもむしろ大きな信用度を持っておると思うのでございます。それからもう一つ、調査の問題にいたしましても、事実上これは信用保証協会が貸し出すべきか貸し出すべからざるか、これも相当の調査を行なうのでございますから、おのずから金融機関のわずらわすところのその調査コストというものも、その意味において、大きくこれは軽減がされておるものと思うのでございます。だといたしますと、信用保証協会の保証によって貸し出す金利というものは、これは少なくとも最低金利であってしかるべきではないかと思うのでございます。大企業に対する最大の信用、それからまた調査費用においても、信用保証協会のそれぞれの事前調査でありますとか、それぞれの調査が保証する立場において責任的になされておるのでございますから、これも私は金額の多寡にかかわらず、このコストも非常に安くついておると思うのでございます。こういう意味で信用保証協会の保証金融は、これは当該金融機関の貸し出しをいたしております最低金利であるべきであると思うのでございます。ところがそうでないということは私は一個の矛盾であると思うのでございます。言うならば不当利得ではないかと思うのでございます。こういう意味銀行局長金融機関に対して保証金融の金利について何らかの指導を行なう意思はないか。なお私が申し上げました所見に対して何らか御異論があるならばこの際お聞かせを願いたいと思うのでございます。
  96. 高橋俊英

    高橋説明員 ただいまの春日委員のような見方も一面からは私はあると思います。金融をする場合に、最終的にはたとえば政府の保証がついているじゃないかということになれば、内容を見る必要はないのだ、だから全面的に回収が可能であるという点からいえば危険はないのだから、危険料というものは一切省いて最低金利を適用したらいいじゃないかというのは一つの理屈でございます。しかし私どもは、金融というのはそうあるべきではない、保証協会の保証がついておるのだから、自分にリスクがかかってこないなら中身の審査は要らないのだ、こういう考え方で金融をやられてはたまらぬ。むしろ金融をやる金融機関というものはいろいろな見地から考えていかなければならぬ。大きな観点からいえば、それらの企業がうまく発展して国家、社会に役立つかどうか、少なくともその自分の貸し出したものが間違いではない、この金が有効に使われる、その結果業績は好転するのだというようなことを十分に頭に置いて、あるいは場合によっては必要な資料もとって、それぞれ自分の責任において健全なる貸し出しをするということでなければ日本の金融というものは持たない。責任が他に転嫁されるという保証がある限り中身は見ずに貸し出しをしてもいいのだということにならないのと同様に、この保証をするということは、今後歩積み、両建て問題などとからんで、あるいは一々不動産の担保がなければ金を貸さないということになると、この労苦というものは相当なものですから、出すほうもいやでしょうけれども、管理するほうの側でも、担保の管理をするということだけでもかなり手間を費すものです。そういうことがございますので、保証制度というものがもっと発展していけば、担保をとらなければ金を貸さないというふうな機械的な融資はもっと減ってきてもいいというように思います。ですから保証制度というものは私は非常にいい制度だと考えております。だから漸次これを拡大すべきではありますが、そうやって責任がみな保証協会に最後的に転嫁される以上これは審査も手間も要らないのだということではなくて、むしろそういうところに累を及ぼす率を幾ぶんかでも今後は下げていく、危険を下げていく、そうすれば保証料もある程度下がるということになります。これは逆に、元利ともにみんな保証協会から出るのであるから、県か国かが負担するのだから、そんなに十分に審査しなくてもいい、貸し倒れが生じても心配がない、こういう態度金融をされたのではたまったものじゃない。それではお互いに全体のためにプラスにはならないということでございますので、私は、保証があるからというて、いろいろな手間を省くということがあるから金利が安くていいというふうには考えたくないのでございます。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 私は高橋局長はもう少し政策について身を尽くしてとにかく勉強をしていただく必要があると思うのです。あなたとはいままで一年かれこれのおつき合いでしかないけれども、さてそのことが金融機関の不利に属するような理論に対しては、まるっきりこつ然として金融機関の代弁者になって、公正なる政策理論について心を開く態度がありません。私はこのことは日本の金融行政のあり方として非常に遺憾にたえません。と申しますことは、いま申し上げましたように、信用保証協会というものはいかなる政策意図に基づいてこれができたか、これはわれわれ本委員会で信用保証法を制定いたしましたときに、このことを深く論じたのです。中小企業金融が非常に困っておる。すなわち信用度が低いから金融機関が貸し出さない。その信用を補完するために、言うならば、本人が返さないような場合は、地方公共団体が実施しております保証協会がかわってこれを返すというのでありますから、少なくとも金融機関に対して貸し倒れというものは絶対にありません。これは全部かわって代位弁済をするところの契約をきちっと取りかわしておるのでありますから。したがいまして、事故が起きても、多少おそかれ早かれという問題はあるかもしれませんけれども、これは事実上完済ということが原則になっておるのです。貸し倒れの心配はないということですね。それから信用保証協会というものは、政策上必要なりとして、そうした中小企業政策として制度ができておるのですね。この政策の効果を高からしめるためにわれわれは可能の限界をどこに求めていくか。だから金利というものは、事実上信用度の高いものには二銭の貸し出しがなされておるとするならば、地方公共団体や信用保証協会というようなもの、これは三井だとか三菱と対等の信用度を持っておるとみなさなければならない。それから信用の調査という問題についても、このことは代位弁済というような一つのたてまえからいたしまして、むろん金融機関においても調査をするに越したことはございませんけれども、しかし最終的の責任者が信用保証協会であり、しかもそれは国の政策上必要なりと彼らが判断をしてその保証をするというようなことがあれば、金融機関というものは、ただ資金操作上そのような原資の余裕があるかないかというところに、事実上局限されていいと思うのです。取引のないところにも貸していくというのがこの信用保証協会の制度であり機能でありますから、いままで取引のある信用度の高いものであるならば保証をつける必要がございません。信用度もない、取引もない、だから保証してちょうだいということでああやって金融が行なわれるのでありますから、したがってその調査も、私はいいころかげんでいいというわけではありませんが、その本質的な責任というものは信用保証協会にある。しかしそれにさらに補完をするとか、あるいは調査するとか、こういうような意味合いにおいて金融機関もまたその調査を行なうでございましょうが、そういうような意味合いにおいてできるだけこれを安くしていく必要がありはしないか。現在保証協会が金融機関の下請機関に堕落し去っておるということが、それら中小企業金融を保証によって受けておる者の非難事項になっておる。われわれ政策マンもその点について本日まで気づかなかったわけではありませんけれども、特にその機会を得なくして十分論ずることがありませんでした。けれどもこの問題は新しいテーマとして私は銀行当局において十分検討される必要があると思う。とにかく保証金融であるから貸し倒れの必要はないということ——信用保証協会があれだけの調査機関を持って保証するかしないかというので事前調査する。そうして本人が返さなければ私が返すというくらいの確信を持って保証をするものについて、さらに銀行が調べる場合、むろんその調べることは妨げないけれども、それはやはり自己責任というか、債権保全の措置というもの、これとの関係において、その程度というものは、精密か、あるいはある程度の参考的なものであるか、このことは企業に関連いたしましておのずから出てくる問題だと私は思うのです。ですから私は、保証金融の金利はできるだけ下げろ、こういう方向であなたの指導があってしかるべきだと思うのだが、この点もう一ぺん御答弁願いたい。
  98. 高橋俊英

    高橋説明員 金利はどういうふうにしてきまるかということを議論しておりますとたいへんなことになるのですが、確かに信用度合い、相手方の安定度ということですね。これは資金の回収が円滑に行なわれるかどうか、最終的には返ると申しましても、金融をやっておりますと、つまり金はどんどん回転するのが普通でございます。その回転がきわめて不円滑であるということになれば、金融機関自身の金繰りにも影響するわけでして、融資の計画が立たないということになります。ですからこの融資というものは、最終的な保証という観点からだけ金利その他をきめるのだということではないと思うのです。保証協会からいえば、保証協会が何か審査の代理をしているのじゃないかというお話もございましたが、もし金融機関が十分な審査もしない、保証さえとってくれれば自分はどんどん安く貸しましょうというふうなことになりますと、その間にはずいぶん不良なものがまじってくるわけでございます。そういうものにそういう取り扱いをしますと、最終的な弁済保証がついておる限りはいいのだ、それならば優遇しましょうということになる。金利を安くするのだということは優遇するということになる。そうなるとその中には、保証協会さえなんとかすればあと銀行のほうはどうでもなるのだということになりがちでございます。そうしたら、保証協会の制度をやっておりますのは、これは根本は国の制度にもつながるわけでございますから、国の側としてはほっておけないことになるわけです。そうやって元利金のリスクを全部しわ寄せを食ったのではたまらない。こちらとしては非常な経費をかけて保証協会を十分審査をするということになってしまう。これは完全に銀行の業務が保証協会に移ることになってしまって、経費のかかり方は同じことです。そうすると、保証協会は保証料を十分いただかなければ経費を支弁できないということになりかねない。ですから保証をとってくれば優遇しますよという制度では金融のあり方としていささかどうかと思います。これは金融機関の代弁をするという問題ではなくて、金融というものはそういうものではない。従来から一般に都市銀行その他の中小金融を見ておりますと、担保をとっていない例もかなりあります。これはもう明らかに優秀な企業であるという場合には担保をとらない。担保をとらないような企業に対してこそ金利も高くとらないですね。どうも信用度に疑いがあるとなると十二分の担保を提供させる。十二分の担保を提供させるというのは、これは相手の信用度が低いのだということでございますので、したがって実質金利は高いですね。そういうことになるのじゃないか。ですから、そういう点からいいまして、担保と信用保証とはつまり相補うものでございますから、同じような考え方でいいのじゃないかと私は考えております。
  99. 春日一幸

    ○春日委員 私は高橋局長の御答弁を聞いておると、信用保証協会の金利は高くしておいたほうがいいのだ、そうすれば申し込みが少なくなってくるのだ、こういうような逆説にもとれるのですよ、実際問題として。そうでございましょう。あまり安くするとどんどん申し込んでくるからというようなお話もあったわけなんですから、そういうような観念でこの問題を判断すべきじゃないと思うのですよ。とにかく政策上必要なものは、設備近代化資金なんか無利子ででも貸しておるのですから、それが一国の中小企業政策として現在総合的に立てられておる国の政策なんですから、したがってこれを理論的に解明ができるまではできるだけ安くしていくにしかずなんですよ。このことはたとえば貸し倒れの心配、これがない。最終的には信用保証協会が責任を持っておるのであるから、貸し倒れの心配はない。あとの金利の問題は、ただ銀行の収益率の問題だけなんですね。高い金利で貸していけばよけいもうかるだけのことでございまして、それだけに中小企業者というものは金利を余分に払わねばならぬ。金利を余分に払わねばならぬということは、一般市中のそういう中小企業金融の金利で借りれば、この保証金融の場合はその上に保証料を払わなければならない。プラス保証料という負担が付加されると思うのです。だからそういうような意味合いにおいて、いま一方において設備近代化のために無利子でも貸そうというときに、保証はする、保証協会でまた調査もする、それからなおかつ担保の設定も行なっておる。銀行で借りると同じようなことをやっておって、その上になおかつ保証料を払わなければならない実態にかんがみて、これをできるだけ低下をはかるためにはどうしたらいいか。結局金融機関の元金利を押えていく以外にございませんよ。保証協会が保証料によって自主的にその経費を捻出しようというような現在の機構であります限り、これは元金利を押えていくしかほかに方法はございませんよ。これは物理的に歴然事項でございます。だとすれば、金融機関に向かって、これは貸し倒れの心配がないのであるから、さらにまた相当部分にまたがって保証協会の事前調査も行なうことであるから、しかも保証した以上これは政策的に必要な金融と目すべきものであるから、これはしたがってそういう貸し出しについては、できるだけ一般金利よりも安くしていく方向に向かって努力せよ、研究せよ、私はこういうような態度で臨まれてしかるべきだと思うのだが、どうですかその点は。私の理論は間違っていないと思う。貸し倒れの心配がないということ、他は中小企業合理化近代化のために国は無利子の金まで出しておるということですね。調査も事実上やっておるということですね。だからそういうような中において、一般商業金融と同じような金利をもって貸し出して、そして問題があったらば保証協会から返してもらうのだ、こういうようなことになってくれば、まるで銀行の下請機関、下請調査の機関、こんなものになってしまう。これでは中小企業者のための真の保証協会としての本来的使命、その機能というものがそこなわれてくると思う。こういう意味において、いまや信用保証協会による保証金融の金利問題は、あらためて再検討を要すべき段階にきておると思う。この点いかがでございますか。
  100. 高橋俊英

    高橋説明員 先ほどからの御論旨は、保証をつけたものについては金融機関は金利を安くしろという御趣旨と解してお答えしておったのですが、いまのその議論は、先ほど申しましたように保証をするということはどういうことから出てきたかといいますと、担保の提供が非常にわずらわしい問題があるとか、担保が十分にないとか、そういう方々が利用するのに便利だと思う。だから担保にかわるものであると考えていいのじゃないか。担保の場合でも、政府ではありませんけれども、もし掛け目をうんと低くして——現にそういう例がありますが、半年以下くらいしかとらないということをやっておれば、回収自体については実は不安はないわけです。最終的な保証は、担保をがっちり取っておれば保証の不安はない。別に政府に払ってもらわなくても自分でも回収できる。しかし金融というものはどうもそういうものではないのではないか。いわゆる金利のあり方とか信用度というものは、担保を十分に提供しなければ貸さないぞというのはやはり信用度が低い。ほんとうに信用度のあるものは保証協会の保証も要らないというわけです。そういうものがあるわけですね。全然担保も要らなければ保証も要らない、あなたのところはけっこうです、こういうところはむしろ銀行は金利の面から優遇しておるわけです。たとえば、そういう優良企業になってきますと他の銀行に取られてしまう。あまり辛いことを言っておりますとほかはもっといい条件で貸すというようになりますので、どちらかといえば競争が起こるわけです。競争によって比較的いい条件金融を受けられる、そういうものでございますので、逆に今度は保証を取ったほうが一番安い金利の提供を受けるのだということになったら、ちょうどその反対の現象になってしまう。つまり比較的信用度の低い、どちらかといえば何か担保の保証がなければお相手できません、こういう方々のほうが条件がいいのだということになります。金利についても私は競争条件は当然働くべき性質のものだと思います。これは国の機関は別でございます。ですから国が無利子の近代化資金を出しておるという点を引き合いに出しましたが、こういう問題は、そういう政策の問題と民間金融機関中小金融に対するあり方とはやはり同日に論ぜられる性質のものではありませんで、やはり民間金利というものは画一ではありませんで信用度によって差がある。その信用度はどういうことになるかというと、むしろ担保や保証を提供しなくても銀行が喜んで貸す相手のほうがやはり信用度が高い、こういうように一般的に言えるのではないか。しかし御趣旨の中で保証料という問題は、金融機関の代行で金利をかけてまいりますと、あるいは危険の負担の割合がどんどん上がってくるようだと、保証料は引き上げなければなりませんけれども、私どもはそうではなくて、そういう十分な審査もやって貸し倒れの率を少なくする、そうすれば保証料というものはもっと下げられる。保証料そのものにつきましては、できるだけ毎年引き下げをはかるように措置しておるわけであります。わずかではございますけれども保証料そのものはできるだけ、十分引き合うという程度でいいのだ、危険も織り込み経費も織り込んでとんとんでさえあればいいくらいのもので、若干は利益が上がらなければ困りますが、やはり保証協会としてはできるだけ安い保証料でおつき合いできるようにするようにという指導を行なっております。保証協会のいまの力から申しますと、金融機関になりかわって十分な審査をするというところまではいっていないと私どもは見ております。そうだとすると、金融機関に相当審査していただかないと元本の危険がふえて困るというような問題があります。
  101. 春日一幸

    ○春日委員 私の説をとると、そうするといままでなまで金融機関から金融を受けられたものも信用保証協会で保証してもらったほうが金利が安いという変な現象が、起きてきやしないかという御指摘でございますけれども、事実上いままで全然銀行で保証もなまで金融を受けられたものが、保証協会で保証してちょうだいといってくれば、取引の実態からかんがみてこれを直接やってくださいというて、はねればはねられるだけのことでございまして、私はそういうような変わった現象がかりに起きたといたしましてもそれはごく少数の異例のことでございまして、全般的にきた場合においては防遏の手段は幾らでも講じ得ると思うのでございます。ただ私は、金融保証料あるいは保証金融というものは、これは一体何であるか。これは何といっても中小企業に対する政策金融の一種である。そういうものに対して保証料を払うことによって金利が高くついてくればそれだけその企業コストというものを高からしめますから、一連の中小企業政策としてそれは好ましい現象ではない。金は借りられたけれども高い金であるという形になってくるのでございますね。だから、それをできるだけ安くする。その安くする度合いというものはすなわち保証協会の保証料、それから元金利、こういうものを寄せ集めて、一般金融との間の勘案においてアンバランスにならざるように措置もとれると思う。だから私どもは、例の商工中金の金利も国民金融公庫の金利でもあれだけ、一割から九分三厘、九分三厘から三厘下げるということについてずいぶん努力してきたのです。だからやはり中小企業金融の一種であるところの保証金融、こういうものについても事実上これが年利一割二、三分になりましょう、零細金融でありますると保証料が四厘もかかるということになりますれば、まあそういうことになりましょう。国民金融公庫の金利を高過ぎるというて下げてきた事実からかんがみて、やっぱりこういうような政策金融はできるだけその金利を安くするように。しかしその理論は何であるか。それは本人が返さなければ返すんだ、代位弁済を行なうんだというようなことや、保証能力が完ぺきでないにしても事実上調査機関を設けて保証協会が責任的調査をやっておるんだというような事実関係に徴して、すなわち保証金融については一般金利よりもこれを安くするということについて、理論は私は立ち得ると思う。それは第三者に説得力を持ち得ると思う。私はいま、もう時間もございませんからここでそのけじめをつけるといっても、問題なかなか困難でございましょう。ただ私は、あなたはいままで銀行経営者、銀行がいかに健全に経営せられるべきであるか、こういう問題についてはわが国のオーソリティだと思うのです。けれども実際中小企業政策、わけて金融政策、これがいかにあるべきかということについては、中小企業の実情 あるいはいろいろな金利負担というものが彼らにいかに困難を与えておるか、その実感に乏しいと思う。私は、あなたをやゆするというのじゃなくて、事実関係をつまびらかに——これはあなたの判断力をもってすれば容易にできることだと思いますから、どうかひとつ国が中小企業の金利について、いま総合的にどういうような施策を講じておるか。そういうようなときに、この問題についてもわれわれは再検討すべきであると思うが、本日春日の理論は論をなしておる、これは率直に——ただあなたがいままでの考え方を固定せしめないで、やはり時宜に適した流動性を持った実情に即した措置をとられていくよう、なお御勉強あらんことを強く要望いたしておきたいと思います。  それから、私はこの次にやはり中小企業金融、いま堀君からも強い御指摘がございましたが、貸し出しシェアの問題、これはやはり何らかの規制が行なわれなければならぬ。法的措置か、それに至り得ないならばとにもかくにも行政措置か、何らかとられなければ、少なくとも都市銀行が日本銀行から一兆数千億の金を借り入れておって中小企業に対してはわずか二〇何%というようなばかげた貸し出しシェアというものは許されることではないと思うのです。しかし信用度が高いから安全なものに貸さなければ、預金者に対する債権保全の責任が果たし得ないというような観念論をもってすれば、何にも改善する可能性はないのでございます。あなたが銀行局長になられてから遺憾ながらこの貸し出しシェアが悪くなってきておる。大月君のときよりもうんと悪くなっております。あなたの責任は非常に重いのです。  私はここであなたに端的に申し上げておきますが、これは自民党の政策で、社会党もわれら民社党も、中小企業基本法を三党が三案を出しました。そのとき金融に関する事柄として、これは纐纈さんも御記憶があると思うが、中小企業基本法に自由民主党提案としての議員立法の中には、中小企業に対する貸し出しが大企業に比べて不利にならざるよう政府は適切な措置をとらなければならないと一ヵ条あった。それからもう一ヵ条設けて、中小企業に対する貸し出しが大企業に比べて優先して行なわれるよう政府は適切な措置をとらなければならないと、自由民主党の提案した中小企業基本法には、金融に関する章においてそれだけの二ヵ条が定められて国会へ提出されました。これは明確な記録でございます。ところが政府が昨年出してきたのはこれをめちゃめちゃにしてしまってどういう形になってきたかというと、中小企業に対する金融が円滑に行なわれるよう政府は適切な措置をとるものとする。では何だといったらわからぬじゃあないか、いままでとどこか変わるのかという質問をすると、大体いままでどおりということになってしまったのです。これはあなたが大蔵省を代表して自由民主党に所見を述べられたときに、こんなことをしてはだめだというようなことで、せっかくの自由民主党の党議をくつがえしてしまったのかどうか知りませんけれども、いずれにしても、初心忘るべからずということがある。みんなが政策を判断すれば、何とか中小企業金融を打開することのための法的措置を講じなければならぬということは、衆目の見るところ、またすべての党が責任を持って判断すれば、公正な結論というものはそこに帰一するのですよ。ところがそのことがいまなされていない。八割対二割なんということはめちゃめちゃです。資金の源泉が日銀から借りた一兆数千億の膨大なものが、そういう形で偏向的に流れておる。これはやはり何らかの形で調整をはかられていかなければならぬと思うが、いまあなたはこれに対して何か策をとられておりますか。それともこれはしかたがないと見送っておられるのでありますか。この点だけ伺っておきたいと思います。
  102. 高橋俊英

    高橋説明員 中小金融に対する特に金利の問題などにつきまして、私自身の頭があるいは少し固定化しておりまして、もっと弾力的にしなければいかぬというような点があるかとも思います。ただ中小企業金融全体につきましては、私としては、大蔵省というふうにお聞きにならないでいただきたいと思うのですが、一般的にあまりにも包括的に中小企業といって問題を取り上げ過ぎておるのではないかという感じがいたしております。ところが先ほど、保証料の問題、保証があったら金利を大いに安くしてもいいのではないか。私はそういう観点から金利問題を考えるよりは、やはりそれの当該貸し出し企業が、中小企業ではあるけれども、国家的にも、狭い範囲ではありましても非常に有益な事業であり、大いにこれを助成する必要がある、そういうものについては現在の信用度のみを基礎にして金利を高くしたり低くしたりすることはほんとうは望ましくない。しかしこれだけたくさんある金融機関、信用金庫まで含めますとかなりになります、信用組合を入れれば千をこえる金融機関があり、店の数からいえばたいへんな数になるわけであります。それぞれ支店長があるわけであります。これらの多数の人に向かって自分の商売と関係のない観点から、相手の重要度などを勘案して金利の高さなどもきめてやれということを指導するのには、あまりにこれは実際的でないというか、望ましいことであるから私どもは指導としてはそういう指導を精神面ではしていきたいと思います。つまり相手の信用度のみで金利をきめるということではなしに、やはり企業の重要度、それが重要であるということを勘案して扱うべきじゃないか、つまり育てなければならぬというものであれば、あまり高い金利を取ったら育たないわけですから、そういう点はやはり考えていかなければならない。不急不要と目されるものについては、たとえその信用度が高かろうとも、金利を高くしてもいいのじゃないか、これは国全体の見地からいってもそういう考え方を国の決定に取り入れていかなければならぬ問題だと思います。しかしこれは民間の金融機関でございますから、何分にもやはり銀行自身の経営の健全性とかいうことに重きを置きますので、私どもの考え方は述べましても、それがはたして十分に採択されるものであるかどうかということについては疑わしい。しかし全体の問題として申しますと、中小企業については、いま春日先生のおっしゃっている中小金融中小企業問題というのには、大ざっぱに分けて二つの問題があって、一方は国家経済の観点からどうしてもこれは育てていかなければならぬというもの、つまり産業政策上必要と思われる中小企業問題、一方は産業政策上とはちょっといいかねる、やや社会問題として処理を要するような問題、どちらかと申せば後者は零細企業に属するものが私は多いと思いますが、大別してもそういう二つのものがあるのじゃないか、それらについての対策はおのずからやはり少しずつニュアンスが変わってくるのじゃないか。中小企業といえば十ぱ一からげで、たとえばレジャー関係とかいろいろな娯楽関係も入るわけです。そういったものをみなひとしく同じ扱いにすべきかどうかという点については問題がありますので、私の考え方としては、これは私個人の考え方ですが、産業政策上の配慮というものと、社会政策的な見地に重点を置いた配慮というものと、二つに区別して考える必要があるのじゃないかというふうに思います。
  103. 春日一幸

    ○春日委員 高橋さんは遺憾ながら自己過信におちいられておるのです。この点があなたに言うても全然だめなのか、私は絶望的な感じがするので、もしあなたに言うのがだめならば、政務次官以下スタッフの諸君によく聞いておいてもらいたいと思うのです。全然だめならば、もはやあなたの栄転を待つしかないのでありまして……。事実上われわれがパチンコ屋やあるいはバーに低金利で金を貸せなんてばかなことを言うはずがない。またレジャー産業に対しても金を貸せなんてことは、速記録をごらんになってもわかるように、思いもしないし、言いもしない。言いもしないことを、あなたがそんなばかげたことを逆説的に言うてきたところで、一体どういう頭なのか、私はほんとうにあなたの常識を疑いたい。ただ、私はあなたに申し上げたいことは、人の言うことを聞かなければいかぬということなんですよ。われわれは社会党時代からとにかく十数年の長きにわたりまして、中小企業政策を論じてきました。それは深く論じてきました。団体法もつくり、基本法もつくり、二十幾つの法律案もつくり、そうして幾つかのものを成立せしめて、中小企業の実態が何であるか、重点産業が何であるか、その社会性がどういうものであるか、政策とのつながりをいかに結ぶべきか、そんなことは百も承知の上でわれわれはここで論じておる。われわれは企業の重点度と国の政策との結びつきを全然考えもしないで、こういう観念論を吐いているのじゃない。いうならば、われわれは中小企業政策の大先生なんです。だから、われわれが言うことは、ああそうかな、それはうっかりしておったが、これは一ぺんよく調べてみなければならぬ、中小企業庁にも聞いてみなければならぬ、通産省ともよく打ち合わせをしてみなければいかぬという、こういう謙虚な気持ちを持たなければ、相手にばかにされますよ。あなたがここでぼくに反論を言うたら、ああそうか、ぼくらが間違っておったかというふうに、われわれが判断を間違っておれば、なるほどそれは啓蒙される形にもなるし、政府の方針にさらに信頼度を加えていくことになりますけれども、しかしわれわれは確信を持って、相当の調査資料を持ってやってきている、国会にも専門委員室もあり、図書館もあり、立法考査局があり、いろんな調査機関の中で精密な調査をもって、われわれが質問するだけでも、とにかくこれだけの資料を持ってやってくるのですよ。そのときに聞く耳持たぬというような答弁をされておると、あいつは頭がすっぽんぽんだなといって、われわれがあなたに軽べつの念を抱くだけのことでございまして、しかもそのことは、国家の政策の上において大きなマイナスになるのであります。かつて池田大蔵大臣は、われわれがここで論じましたときに、われわれの説が正しいと、なるほどそうかなと言って、翌日すぐ指令を出して直した。われわれの説が正しいとは思いません、けれども、われわれが言うたことは、やはりあなた方行政官は大いに研究してみる、それだけのすなおさと熱意かないと、——そんな、パチンコ屋やレジャー産業に貸したってしょうがない、産業の重点度を勘案して云云と言われるけれども、全然ピントがはずれちゃっているのです。私たちは、パチンコ屋やバーに低金利で金を貸せと言っているのじゃない。たとえば、重点度の高い生活必需産業であるとか輸出産業であるとか、そういうような一連の中小企業産業、政策目的というものはすべてそこにこらされておるのであって、それ以外のものはみんならち外に置かれておる、言わずもがなのことなんです、そんなことは言うばかはいないです。だからそういう意味では、あなたも聰明な方だけれども、いままでの視野が狭い、いままで銀行処理を一生懸命やってこられた、だからほかの政策部門については実感や経験や調査というものが私は十分でないと思うけれども、いまや日本の銀行局長としては、それらのことを十分お知りになるにあらざれば、わが国の経済の円滑なる発展、国民経済の均衡ある発展をはかることができない。あなたがそんな石頭で、固定の観念で、信用度の低いものにはどうとか、レジャー産業にはどうでもいいとか、そんなことばかり言っておっては、重点度の高いそのような中小企業というものが巻き添えを食ってしまって、政策のフェーバーを受けることができない形になっていくのです。だからどうかひとつ、天に口なし、天人をもって言わしめるということがある、いわんや私のような権威者が中小企業政策について論ずる場合には、やはりこれは勉強せねばいかぬ、こういう気持ちで御研究あらんことを私は友人として強くあなたにアドバイスいたしまして、私の質問を終わっておきます。
  104. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 次会は、来たる八月十一日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十八分散会