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1964-06-10 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       大久保武雄君    奧野 誠亮君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    島村 一郎君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    福田 繁芳君       渡辺美智雄君    卜部 政巳君       小松  幹君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  荒井  勇君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    中嶋 晴雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公認会計士特例試験等に関する法律案内閣提  出第一五五号)  税理士法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)  保険業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一三号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  公認会計士特例試験等に関する法律案税理士法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。卜部政巳君。
  3. 卜部政巳

    卜部委員 冒頭に、参考までにお伺いいたしたいのでありますが、形態別会社現況をお伺いをいたしたいと思います。それは株式会社幾らあるのか、有限会社幾らあるのか、さらに合資会社合名会社とありますが、そういうふうに回答していただきたいと思うのであります。
  4. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 お答え申し上げます。  生命保険会社は二十社ございまして、うち十六社が相互会社式になっております。残りの四社が株式会社でございまして、有限会社その他はございません。なお火災保険会社につきましては、十八社が株式会社でございます。二社が相互会社式になっております。
  5. 卜部政巳

    卜部委員 質問の要旨をひとつじっくり聞いていただきたいのでありますが、私は参考のためにということを申し上げておるのであります。言うならば、保険会社の二十社あるということはもうすでに提案理由の中に、さらに大蔵省の調査の中でその点は明らかにされておるところであります。私の聞いておるのは、形態別株式会社有限会社さらには合資合名というのがたくさんありますね。その全体がいま幾らぐらいあり、さらにその点について合名株式というふうに逐次項目別に分けてひとつ参考までにお知らせ願いたい、こういうふうに申しておるのであります。
  6. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 一般会社全体につきまして有限会社幾らあるか、合資会社幾らあるかということは、どうも私どもいま的確に把握しておりませんので、お答え申しかねます。
  7. 卜部政巳

    卜部委員 銀行局長、的確に把握できていないんですか、どうなんです。株式会社が何ぼ、さらには有限会社幾ら、さらに合名合資とかいうのがたくさんありますね。そういうふうな会社が全体でいま日本に幾らあるのかということを把握できておらないのですか。
  8. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまここに持ち合わせがございませんが、それは概数は把握できていると思います。ことに租税関係を通じても会社登録数はわかりますが、実在する会社となると、登録を取り消しておる株式会社などがかなりありまして、実際に存在する会社の数は的確には把握できません。しかしいわゆるその登録数で見た限りにおいては株式合資合名等の仕訳ができておるはずでございます。それはもし必要とあらばいまでもひとつ調べさしていいと思います。
  9. 卜部政巳

    卜部委員 そういたしますと、私は続いて資本金別の会計の現況をお伺いしょうと思ったのですが、それとてもいまお手元にないというふうに考えますが、それでいいですね。いまそういうものはございませんね。持ち合わせもないし頭の中にもない、こういうことですね。
  10. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 資本金別経理状況というのは法人企業統計で出ているわけでございまして、手元にいまその法人企業統計を持っておりませんが、必要とあれば取り寄せます。
  11. 卜部政巳

    卜部委員 いま高橋銀行局長は御答弁の中で概数が云々と御答弁になったわけでありますが、すでにそういうものははっきりしておりますね。私は規模別さらに会社別パーセンテージ別、さらには資本別、これが十万円以上の会社百万円以上の会社、一億円までの会社、一億円以上の会社というふうに分けて把握をしておると思うわけであります。いま株式会社さらには有限会社の問題がこの法案の中に出てまいりますので、相互会社は有限というふうに考えておりますが、その点で私は十分把握されているだろうというふうに考えて質問をしたわけなんです。そういう問題についてははっきりしておる、こういうふうに考えております。そこでひとつ株式会社有限会社との形態内容比較をお聞かせを願いたいと思います。
  12. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 御質問なさっている御趣旨が、この保険会社に関連いたしまして相互組織のものと株式組織のものとこういう御比較ではないかと思うのです。有限会社というのは別だものでありまして、相互組織会社株式会社という比較でございますれば申し上げて……(卜部委員「持っておる有限だということですね」と呼ぶ)有限という感じとは違うのであります。相互組織ということは、この場合で言いますとその会社と取引する者、つまり契約を行なう者がすべてその相互組織会員である、こういう形になっておるわけです。株式会社ですともう御説明の要もなく株式資本を分割いたしまして、それを自由に一般的にだれにでも保有せしめる、こういう形でございます。株式という形をとる場合とこの会員組織のものとは根本的に形は違っております。
  13. 卜部政巳

    卜部委員 そういうことはこれはもう最低の常識ですよ。私の質問しておるのは株式会社といわゆる有限会社相互会社でもいいですが、それの形態内容比較を聞きたい。すなわちこれの社員構成だとか出資関係等の多多ある比較を私はお聞きをしたい、こう言っておるのですから、その点お聞かせを願いたい、こう思います。
  14. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 株式会社については申すまでもないのでありますが、いまのお話では有限会社の中に相互会社が入っているかのようなお話でございますが、相互会社は独立の会社形態でございます。
  15. 卜部政巳

    卜部委員 いわゆる有限責任だということは間違いない、そういうことですね。
  16. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 出資という形をとっておりまして、相互会社はその出資限度において責任を持つという点から申しますれば、責任は有限じゃないかということになるかもしれませんが、いわゆる有限会社考え方とはたいへんに違うわけでございます。「会社債務ニ関スル社員責任ハ保険料限度トス」、保険相互会社につきましてはこういうふうに規定されておりまして、また「社員ハ保険料払込ニ付相殺以テ会社ニ対抗スルコトヲ得ズ」、このような一種独特の会社組織でございまして、有限会社法にいう有限会社制度とはたてまえとしてはやはり違っているのじゃないか、かなり根本的に違っておるというふうに申して差しつかえないと思います。
  17. 卜部政巳

    卜部委員 それはそれでいいでしょう。ですから、今度は社員構成だとか、さらには出資関係等についての具体的な比較をひとつお聞かせ願いたいと思います。たとえば株式の場合には七人以上とか、そういうのがありますね。その点の比較はどういうふうになっておりますか。
  18. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 保険業法の三十七条に「相互会社設立ニハ百人以上ノ社員アルコトヲ要ス」というふうになっております。したがいまして、創立の際には百人以上、実際は現在は各社とも数万人、数百万人になっておりますけれども、最初は百人以上あることを要するわけであります。
  19. 卜部政巳

    卜部委員 そうすると、高橋銀行局長どうなんですか。有限会社相互会社は違うということをおっしゃったのですが、大体内容的には一緒じゃありませんか、全然一緒じゃありませんか、その点はどうなんですか。
  20. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 有限会社の場合には商法規定されておりますが、株式会社と違うところは出資という形をとっております。その出資は一口の金額がみな同額でございます。その点も株式と大差ないわけでございますが、その出資の譲渡その他いろいろの点で株式と違いますし、運営その他におきましても株式会社の総会あるいは取締役会のようなそういうものと違う。  それから社員権利義務でございますが、出資金額限度として責めを負うという点は、これは本質的に考えれば、株式の場合でもやはり株式限度でございますので変わりはないわけでございますけれども、相互組織の場合ですと、初めに出資がございましてそれを償却していくというふうなことになっております。有限会社の場合ですと、その出資金というものは特に減資手続はあると思いますけれども、その場合に償却するということはない。つまり出資元本はこの会社が存続する限り続いていくわけでございます。その点、株式会社において株式資本が、特に減資手続をとらない限りそのまま続いていくのと非常に似ているわけでございます。相互会社の場合にはその点が違っております。
  21. 卜部政巳

    卜部委員 ちょっとわかったようなわからないような御答弁なんですが、そうすると、こういうことなんですか。株式会社相互会社とは出資者出資金限度とする責任を負う点では一致している、この点はいいですか、どうなんですか。
  22. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 保険会社の場合には、これはいわゆる出資限度というのではなくて、保険料限度でその責任を負う。保険料がつまり責任限度だ、こういうふうな、つまり契約をいたしますと、保険料を支払う義務が生ずる、その保険料を支払う範囲においては責任があるのだ、こういう一種独特な方法でございまして、有限会社の場合のように、一口の金額がきまっておりまして、その金額限度において責めを負うというのではなくて、保険料がその責任限度である、こういうふうな構成になっておるわけでございます。非常に理解しにくいかもしれませんが、それが相互会社という非常に独特な組織の骨子になっておるわけでございます。
  23. 卜部政巳

    卜部委員 そういたしますと、今度改正されますのは、この三十七年四月の商法の一部改正から提案されております内容そのものの中へ、今度は、いわゆる株式会社にも適用されたというものを相互会社にも準用をしようとする、こういうことになるわけでありますが、私はこの意図がそういう面から考えてまいりますとちょっとわからない点があるのですけれども、それはどういう根拠ですか。ただここに提案されておるところの根拠だけでは私は若干、若干というよりも納得がいかないわけですが、事務的な問題ではなくて、むしろそのほかに何か意図があるのではないかというふうに考えられるのですが、その点はどうでしょうか。
  24. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 相互会社株式会社である保険会社、この両者を比較いたしますと、相互会社の場合には大体基金というものがございまして、その基金は三千万円以上、人数は百人以上でなければならぬ、こういう形になっておりますが、一方株式会社は御承知のとおり資本金というものがある。それが今度の改正、これは経理関係商法規定から適用を除外しておりました部分をやはり相互組織であっても同じであるというふうな観点に立ちましてこの法律を出したわけでございます。その経理の、つまり評価をどうするかという点、資産評価についての規定などにつきまして、つまり運用財産でございます。その資本金のというよりは、契約に従って払い込まれた保険料、その保険料を集めるという点では相互組織であると株式会社であると何ら異ならない。相互会社が特に小さいとか大きいとかということではなくて、要するに保険契約の多寡によってそのそれぞれの会社運用資産の量が規定されるわけでございます。ですからもととなる、中核となる最初基金とか資本金においてはなるほどその構成が異なりますけれども、運用財産ということになりますと、そういった会社構成とはあまり関係がない、ほぼ相似たようなことになるわけでございます。一部は貸し付けに回し、一部は株式あるいは不動産に運用する、その運用収益をもって、保険契約の際に約束いたしましたところの契約者に対する配当、またそれを上回るところのいわゆる余分な配当をいたしておるわけでございます。契約の最低限を越える配当をいたします。そういう契約者配当の財源を生み出す。株式会社と違いますのは、株式会社の場合には株主配当する、つまり契約者であるないにかかわらず、別途に株主というものが存在いたしまして、それらに対してはいわゆる普通の株主配当をするわけであります。相互会社にはそういうことはございません。全運用財産がそれらの構成員であるところの契約者に帰属するというふうな、抽象的にはそういうことを申すことができるでしょう。ですからその財産の帰属につきまして若干の相違はございますが、運用資産健全性をはかるという目的においては、何らその組織のいかんには関係がないというところから、商法のこの前の改正の際にはずしておきました相互組織の体系につきましても、今回は原則的には全面的にこの商法改正規定適用するのである。株式会社についても同様である。しかし保険会社の場合には、一つだけ特別な制度を特別に認めていいのではないか。商法例外規定として株式評価についてだけは特例扱いをする、それ以外の点はすべて株式会社について定められました改正商法の現規定をそのまま相互組織保険会社にも適用するのである、こういうのが今回の法律改正目的でございます。
  25. 卜部政巳

    卜部委員 よくわかりました。先ほどの御答弁の中に、生命保険会社は二十社のうち四社が株式会社で、十六社が相互会社であるということがありました。しかし実際問題としてこの生命保険会社が三十七年度から急速な伸びを示しておるということは、これは銀行年報を見ても明らかなとおりです。そういたしますと、大多数の保険会社がそういうような状態に三十七年からなったということですね。三十七年度からそういう業績が著しく向上しておる。そういう中で三十七年の四月二十日に公布された商法の一部改正のときになぜそういうものを一緒にしなかったか。二年経過した今日の中で突然とそういうものが出てくるということは、政府株式市場育成を行なっておる、こういうような状態から政治的な配慮として、いわゆる保険金株式市場への導入というようなことも考えてこれが提案されておるのじゃないかという私は危惧を持つのです。なぜ三十七年の四月二十日のときにそういう問題が考慮されなかったか。当然そういうような状態であったのですから、そういう点はどうかということを私は質問したいと思います。
  26. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 御質問のように商法改正は三十七年の四月二十日に公布されております。ただその内容は、実は三十八年の四月一日以降に始まる事業年度のものにつきまして、一つ事業年度を経過しましてその次から適用するということに附則でなっております。したがいまして、保険会社につきましては、本年度つまり昭和三十九年四月一日以降に始まる事業年度につきまして初めて適用があるわけでございます。商法改正がございましたときに、これを相互会社適用するかどうかという点につきましては、政府部内で議論をしたわけでございますが、株式会社につきましても四月一日以降でなければ適用にならない。したがいまして、その間約二年間の時間がございますので、その間十分検討いたしまして、適用するかどうかを考えようということで当時は見送ったわけでございます。したがいまして、ただいま局長から答弁いたしましたように、相互会社株式会社を通じまして、保険会社としてはやはり計算規定を明確にして商法規定にのっとるべきであるという観点から、この際これを統一したいという考え方でございます。
  27. 卜部政巳

    卜部委員 当時、政府においても論議をされたということでございますね。それがやはり今回になって急に持ち上がってきたというのは、そこに政治的な配慮——もちろん政治的な配慮がなければできないのですが、そこに株式市場育成という問題が出てきておりますがゆえに、その問題と関連が大いにあるのではないか、こういうことを私は思うということです。これはそうなんじゃないかということですが、どうなんですか。
  28. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 先ほど三十七年度に非常に保険会社業績伸びたのじゃないかというお話がございましたが、実際にそういうふうに報告がありました。それは三十七年度の伸びもよかったのでございますが、ここ数年間の推移としては、保険契約はそのときどきの経済情勢の変化に関係なく伸びております。非常にコンスタント伸びております。最近におきましては、伸び率としては、新規契約伸びといたしましても、運用資産総額伸びといたしましても、若干ずつ縮小してまいりました。しかし伸びる額としては、元本資産が非常にふえてまいりますので、毎年前年度を上回るような成績コンスタントに続けておるわけであります。でありますから、三十七年度の成績とこの法律改正とは特に何らの関係はないわけでありますが、株式市場との関係につきましては、そういう株式市場対策というような意味でこの改正が考えられたわけではない。原則的に相互会社にも商法計算規定——これはこれから適用になるわけでございますが、それはそのまま適用を受ける。しかし問題となるいまお尋ね趣旨が、あるいは評価益金という点を突いておられるのかもしれませんが、これはなるほど株式市場状況と長い目で見て全く無関係というのではございません。というのは、生命保険会社相当量株式を持っております。これを、利益を出そうとしても出す目的が、たとえば責任準備金のまだ積み足らざる分を補う、いずれにしても契約者の勘定のためにやるわけでございますから、株主というよりはむしろ契約者のために利益を出さなければいけないというふうな場合に、株式売却によって利益を出すかわりに、評価益を出してその利益の計上を認めるという点が、今回の改正の中での主たる特色のあるところでございます。これは実際に株式市場が案外に不振であるという場合に、比較的多量の株を現実に売却するということになりますと、株式市場を一時的に圧迫するということもございましょう。そして非常に巧みに売り抜ければそういうことがないのに、急に押し詰まって売るとしますと市場をいたずらに混乱せしめる結果になり、実際は出たであろう利益もみすみす十分に確保できないことがある。そういうかわりに、無理に売却しなくても評価で、つまりこれは非常に健全主義に基づく評価でございますが、あまりにも帳簿価格が安くて市価との開きが大き過ぎるという場合にその利回りとしては非常に高いものになりますが、しかし運用上高い利回りで経営の腕があるかのごとく思っておったら間違いであって、言ってみればみな契約者の過去の積み立てた資産がそういう利益を生んでおるわけであります。責任準備金のほうを見ると十分ではない。まだまだ積み方にいろいろな方式がありまして、それぞれの方式によっては一応積んでおるのであります。もっと十分に積むべきであるという場合に、利益をたくさん出すというのもいいけれども、評価の面でその水準を充実する、これは契約者のものであるということをはっきりさせる、そういう場合に、売却を要せずして利益を出すことができるというふうな規定保険会社の場合にだけ限って認めようというのがこの法案の中に入っておるわけであります。
  29. 卜部政巳

    卜部委員 それはこの調査室のほうからも出ているし、政府提案説明の中にも、くどいように書いてある。ですからそれは私は十分に承知している。しかしそうではなくて、先ほど質問をしておりますように、いわゆる計算規定の統一ということがいま行なわれるのであれば、三十七年度の時点においてもこれは当然考えられてしかるべきであったのではないか。政府が検討されて、二年間を経過した今日突然出てくるというのは、株式市場育成という問題の中にこの問題が何だかんだと言いながらも、事務的のように見えて実はそうではなく、そういう配慮があるのではないかということを私は指摘をいたしたのであります。そしてまた、その点については必然な成り行きがそういうふうになるだろう。私はこう思っておりますが、これは議論になります。そこで私はそれ以上のことはこの問題で申し上げませんが、ひとつここで角度をうんと変えまして、いま保険会社から政治献金が出ておるわけでありますが、政府は、自民党がそれを幾らくらいもらっておるかをお聞かせ願いたいと存じます。幾ら保険会社が出しておるか。
  30. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 政治資金の問題は政府のほうでは、私は少なくとも承知はいたしておりませんが、御承知のように自民党といたしましては、国民協会がございますので、そのほうである程度資金は集めておるかと存じますが、その数字は私はよく承知しておりません。
  31. 卜部政巳

    卜部委員 私が知っておるのですから、あなたが知らぬというようなことはおかしいじゃありませんか。わからないのですか。
  32. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 私はあまり関心がなかったものですから、はっきりした数字承知いたしておりません。
  33. 卜部政巳

    卜部委員 では局長にお伺いしますが、保険会社のほうから何ぼ政治資金は入っておりますか。その点は詳しいでしょう。幾ら出ていますか。
  34. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 お尋ねの点は私ども調査したことはございませんので、お答えいたしかねます。
  35. 卜部政巳

    卜部委員 調査をしていないというのですが、ではどういう科目から出ておるかというようなことなんかも当然私は銀行局などとしては関心を寄せていなくてはならぬところだと思うのですね。そうすると、政治献金調査をしていなければ、何ぼでもふんだんに出てもいいということなのですか。出してもいいということですか。どうですか。
  36. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 一社ごとに、監査などは各社別にやるわけでございますが、非常に巨額のものでありますと、これは目に立つわけでございますが、一般経費として支弁して差しつかえない程度のものである、たとえば一社で見た場合に五万円とか十万円とか月に出しておるという程度のものでございますと、これは普通の経費の中に入っております。特にこちらからそれを目当てに調べない限りわからない。個々の支出、月々の小さな金額保険会社経費支払い総額というのは非常に大きなものでございますから、五万円、十万円というふうなものでございますれば、これはそのつど意識しない限り把握されていないというような、これはもちろん各社別に申した場合でございまして、一社別にもっと巨額なものが出ているということでありますと、これは調べてもいいと思いますが、そんなようになっております。
  37. 卜部政巳

    卜部委員 先ほど保険会社が二十社ということでございましたのですが、二十社で五万円ということになりますと幾らでございますか。百万円でしょう。しかし実際問題として出されておるのは毎月単位が違いますね。銀行局長も知っておられるはずですよ。私は知らぬとは言わせないですよ。知らないですか。私はちゃんと知っておるのですから、銀行局長もちゃんと知っておられるように私は記憶していますがね。ただ銀行局長はそういうような政治資金を出したという、そういうことについて一緒に同席されておるところでも発言があったから、おそらく知らぬということではないと思います。
  38. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまの御質問、ちょっと何か非常に意外なんですが、何か私がいるところで政治献金の話が出たということでありますと……(「前の質問で」と呼ぶ者あり)私は全然記憶はない。ただ私が正確ではございませんが、承っておるところでは、何か各社別に出したものを協会が取りまとめて献金しているじゃないか……(「知っているじゃないか」と呼ぶ者あり)だからやり方としてはそうである。それをそういま驚くほどの金額のものではないという程度までは知っておりますが、正確に幾らだということを申し上げるわけにはいきません。私としてはまだ実態を全然聞いたこともございませんし、わからないと申し上げてはなんですが、金額的に幾らであるのか、ただいまのところちょっと申し上げるようにはなっておりません。御了承を願いたいと思います。
  39. 卜部政巳

    卜部委員 驚くべき金額でないということは、局長なんかの考え方からすれば、一千万円や二千万円は驚くべき金額ではない、それは重箱のすみをつっついたような金額だ、こういうことですか。毎月一千二百万円くらい、今度一千三百万円か一千四百万円になるかしれませんが、そういうようなものが保険会社から政治献金されておるということは、そういう金額というものは小さな金額ということなんですか。大したとるに足らぬ、そんなものは私たちから言わせれば五万円程度のものだというように解釈するわけですか、どうなんですか。それは巨額ですか、それとも小額なんですか。その千二百万円くらいの金はどうなんですか。
  40. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 お話は、もし月額千二百万円ということでありますと、あまり小さくないというように思いますが……。私数字がわかりませんので、いまお話しのようなことになるのかどうか、問い合わせてみたいと思っております。  なお、ちょっと話の途中で恐縮ですが、先ほど会社の数がわからないというお話でございました。国税庁の統計年報の数字を申し上げてみたいと思います。三十七年一月末でございます。全法人数といたしましては五十七万八千二百四十一社、そのうち合名会社は非常に少のうございまして、九千八百七十二、合資会社は四万三千五百八十八、株式会社三十一万二百五、有限会社が二十一万四千五百七十六社、こういう内訳になっております。
  41. 卜部政巳

    卜部委員 局長のほうから重要なときに、えらい変な報告をされたので、若干熱がさめるようでまことにいけないのですけれども、わかりました。ではひとつ金額の問題は別といたしまして、直接会社の営業なり取引の関係ないものに支出をする根拠は一体何にあるかをひとつお聞かせを願いたい。どういう科目から出ているか、私はこれはわからないですよ。あなたたち調べたことはないですか。
  42. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 そういう会社のこまかい経理になりますと、私もあまり得意ではございませんが、寄付金というものは通常会社の支出として著しくその会社目的をはずれるというか、厳格に申せば、確かに会社の定款に定める業務の範囲であるかないか問題ではございますが、寄附金をするということは、通常経費としてある程度までは支弁し得ることになっております。そういった問題につきまして、かつては八幡製鉄ですか、訴訟を提起したという問題もございますので、厳格な意味で議論をすれば、会社の定款違反じゃないかというふうなこともございますが、通常ある程度の規模の会社であれば、政治の目的のためにも多少の献金はなし得るものというのが通念ではないかと思います。ただその金額が著しく巨額であって、経費として適当でないというふうなことが場合によってはあると思います。寄付命として処理しておるものと私は思っております。
  43. 卜部政巳

    卜部委員 寄付金であるにせよ、会社が少なくともそういうことをやろうとする以上は、何かそこに恩典があるからやるんでしょう。たとえば税金でいろいろ恩典を受けておるから、ひとつ寄付をいたしましょうというような理由があるはずです。全然何もないのに、実際問題として政治献金をする理由がないわけですからね。しかもこのいわゆる生命保険会社なるもの、さらに生命保険会社に限りませず、保険会社というものは公共性を持っておるわけでありますから、その点について、率直に言って私は政治献金というものがあまりぴんとこないのです。そういう点で、いま税金という問題を出しましたから、ちょっと脱線するようで恐縮ですけれども、お聞かせを願いたいのは、三十七年度の保険会社の税金引き当て金が幾らになっているのかをひとつ伺わしてもらいたいと思います。
  44. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 生命保険会社の法人税申告額で申しますと、三十六年度決算分につきましては、十四億二百四十五万八千円、三十七年度決算分につきましては十二億七千四百二十三万四千円、こういうことになっております。
  45. 卜部政巳

    卜部委員 銀行局の年報にある四十七億というのは違うのですか。
  46. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいまの数字は私、生命保険会社二十社の総計を申し上げましたが、損害保険会社のほうがこれより税額が多いのでありまして、いまお話しの年報にある数字は四十社を集計した数字でございます。
  47. 卜部政巳

    卜部委員 その中で実際納めた国税、これは大体幾らぐらいになっているのですか。
  48. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 三十六年度で申し上げますと、ただいま局長から申し上げましたように、算出税額は法人税十四億余でございます。ところがこれは源泉で納めたもので、控除するものがございますが、これが十八億八千七百万ございます。そこで差し引き四億くらいな還付超になっているわけでございます。実際は会社別にそれぞれ異なっておりまして、納めたものが五億、還付を受けたものが九億という形になっております。
  49. 卜部政巳

    卜部委員 そうしますと、営利会社とは違っておる関係からいたしましても、これだけの恩典といえばおかしいのですが、ほんとうに納めた金額というのは営利会社とは違って少ないと思うのです。そういう点で、私はたまたま税金という問題が出たから脱線をしたわけでございますが、その点について、恩典がある云々ということは私はわかると思う。しかしながら、話をもとに戻して、株主の立場からすれば、会社利益関係のない政治献金を行なうことについて疑義を感ずることについては、私は当然だと思いますが、その点どうですか。
  50. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いま調査官から説明しましたように、保険会社が逆に支払いの段になると受け取り超過になる、つまり税を払うのじゃなくて、逆に戻してもらうものが出てくる。だからこれは実際に払った額は非常に少ない、マイナスじゃないかということでございますが、営利会社じゃないから、つまり公共性があるからそういう扱いを受けているのだということではございません。これは普通の法人税の計算上そうなるわけであります。特にその原因というのは、要するに保険会社が持っておりますところの株式配当がすでに法人税を支払われているということから、これは一般の場合も同様です、だれが株を持っていても同様ですが、法人が受け取る配当については益金不算入が大きいわけです。ところがこれが一部数年前から変わりまして、支払い配当について全額を課税してないというところから、一部支払うほうにおいて損金として計上を認められているところから、その部分に相当するものについては今度は受け取ったほうが払う、こういう複雑な仕組みになっております。そこでずっと以前をとってまいりますと、生命保険会社などはほとんど税金を払わなくて済んだ。ところがだんだんにそういうふうに変わってまいりましたので、とにかく算出上は法人税額が十何億出るということになったわけであります。ところが源泉でとられたものその他を差し引くと逆に受け取りのほうが多くなってくる、こういう計算になっております。  それから、政治献金との結びつきでありますが、ここで私どもが答弁するのは適当でないかもしれませんが、保険会社が何か非常に特権を与えられているから政治献金をするというようなことではなくて、一般の産業会社等で直接何らそういう税法上特別な恩典などないという会社におきましてもやはり政治献金をしているということは、きわめて普通にあるように私は見受けます。詳しい内容は存じませんが、それぞれの業界等において大体のバランスをとりながら政治献金をしているというふうに見られますので、保険会社が、もしお話しのように特別に業界として非常に巨額であるとすると問題でございますが、そうでなければ他の業界等とのバランスから見て不当でない範囲内であれば、まあまあ常識的に許さるべきじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  51. 卜部政巳

    卜部委員 しかし率直に申し上げて、八幡製鉄の一株主が提訴しておりますね。さらには第一審の判決が出ておるわけでありますが、これによりますと、当然いまの銀行局長答弁は当たらないことになるのです。その金額が少なければ、また、当然やっておりますなんというようなことは、私はこれはちょっと問題がある発言だと思います。そこでひとつ纐纈政務次官にそのいわゆる第一審の判決をどのように政府は受けとめるか、この点をお伺いしたいと思います。
  52. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 政治資金の問題につきましては、まあ理論的にいえば確かに卜部委員お話しされることも理由があるようにも考えられるわけでございますが、これはまあ昔からの一つの慣行であろうと思うわけでございます。そこでいま八幡製鉄の問題が出ましたが、これが裁判においてまあ八幡が敗訴になったようでございますが、この問題は控訴中のように聞いております。そこでまあこれに対する可否というものはこの最終裁判の決定によってきめられるものと考えておるわけでございます。さような意味合いからいたしまして、もとより理論的に言いますればいまお話しのように利益を受けるからそのためにやるんだとかいうようなことになりますれば、また一そう問題がおかしなことになるわけでございまするし、まあ従来そういった慣行で行なわれてきておりまするし、また党の運営につきましても相当の資金を要することはもう卜部委員も十分御承知のことと思うのでございますので、かれこれ申しまして論理的にいきますればどうかと思いまするが、実際問題としてなかなかこれを絶無にするということはむつかしいことじゃないかというふうに考えます。
  53. 卜部政巳

    卜部委員 まあ委員会の席上がざわめいておるのか、それから纐纈政務次官の声が、故意に小さくされたのか知りませんが、聞き取れないのです。私、一生懸命にこう両手でやっておるのでありますが、そこでちょっと小さい声で、当然のように云々ということを聞いたのでありますが、何が当然なんですか、その点を明らかにしていただきたい。
  54. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 大きな声で言います。どうも地声が小さいものですから……。ただいま御答弁申し上げましたことは、いまの八幡の判決は控訴中でございまするから、その裁判の結果を待ってこの政治献金というものの法律的の判断というものが行なわれることでありまするから、その結果に待つべきであろうと思います、ただ従来政治のあり方といたしまして、これはおそらくわが国に憲法発布されて以来政治に対しましては国民も関心を持っておるわけでございまするし、いま論議されておりますような政治献金というものが長い間の慣行として行なわれてきておることでございまするので、これを実際問題といたしまして絶対にいかぬものだというわけにもいけないじゃないかということを私は申し上げたつもりでございます。その点はおそらく卜部委員政治献金、政治に対する費用が非常に要るという意味合いからいたしまして、資金に対しては相当集めることを要することは今日の私は常態であろうと思いまするので、さような意味合いからいたしまして、これを根本的に絶無にさせるというということは実際問題として困難ではないかというふうに考えておるということを申し上げたつもりであります。
  55. 卜部政巳

    卜部委員 従来から慣行で行なわれておる、だからこれはあたりまえだというような考え方が充満しておるその中に立って鉄槌を下すかのようにこの第一審の判決が出ておるわけですね。それは誤りなんですよということなんです。その点についてそこに反省の色があるというなら話がわかるけれども、その点については慣行でございますからこれはもう絶無を期すというとは困難である、まあその点についていま控訴審の中で審理されております。こういうことなんですが、法律的な問題は別といたしましても、そういうものが正しくないというこの第一憲の判決の結果として出ておるわけですから、銀行局長もそうですか、纐纈政務次官も何か第一審の判決は問題でたいというような御答弁が言外にちらほらするわけです。そういう点について、私は第一審の判決が出た、さらに控訴審の判決はまだ出ておりませんけれども、少なくともそういうひとつの、いわゆる第一審の判決による反省などがあってもしかるべきではないか、そうすればそういう点についての行政指導なんかも私はあってしかるべきではないかと考えておるのに、しかもあたりまえだなどということをおっしゃられたことについて私は納得がいかぬわけであります。この点について政治献金は巨額のものでなければ、ばかでかいものでなければいいとする考え方というものを私は払拭する必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、この点私の理解と同じだということでよろしゅうございますか。
  56. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 私個人としての考え方といたしましては、まあ政治、ことに選挙に金が要り過ぎる、こういうことがやはり政治を汚す一つの原因になるだろうということを私は衷心からまじめに考えております。まあさような意味合いにおきまして、これはおそらく私一人の考えでない、相当、全国民の大部分の正しい考え方だろうと私はみずからそう自負しておるわけでございますが、まあさような意味合いからいたしまして、私どもは政治を明るく正しいものにするという意味合いにおきましては根本的にやはり政治に金を、いままでのようにことに選挙に際して金を使わないようにする選挙をすることにいたさなければならない。そうなりますれば、その根本の問題が解決すれば、いま卜部委員が指摘されましたような非常に巨額な政治資金を集める、無理に集めるということがなくなるだろうと私は思うのでございまして、私といたしましては、趣旨におきましてはまあ異論はございませんし、ぜひともそういうふうに政治の浄化の意味合いからいたしまして、もっともっと金のかからぬ選挙をいたす、正しい選挙をいたしていく方向にわれわれ政治家としては進んでいくべきものであろうというふうに考えております。
  57. 卜部政巳

    卜部委員 わかりました。そこで私は申し上げたいのは、いま纐纈政務次官が申されたように、金のかかる選挙、さらにまあ政治資金、こういうものが出てくる背景というものを私は考えてみたときに、即恩典がなければ政治資金なんかは出す必要はないと私は思う、率直に言って。やはりその点に対する、いわゆる政治資金を出した見返りとしては法案を変えたり、さらには免税措置をするための特別な法律等をつくるということは、これはもう私はちょうちょうと申し上げる必要もないのであります。御承知かと思いますが中小企業の合理化機械化法案なんかについても、大企業と同じような機械を使っておってもそのためにさらにそれが部分品、さらにまたそれが下請だというようなことの理由のもとにおいて、これが免税措置が加えられない。さらに耐用年数も長くなるというような、こういうような不合理がたくさんあるんですよ、実際問題として。そういう問題について大企業のほうは政治献金を出したがゆえに優遇されておる。そんなばかげた政治がどこにあるかと私は思う、率直に言って。そういうように下請という名があるばかりに、同じ機械を使っておりながら、同じような完成品をつくりながら税金をとられ、耐用年数が長引いていくというようなそういうばかげたことが私は許されてはいけないと思う。そういうことについて、これは枝葉がつきましたけれども、この政治献金の問題は、やはり政治というものを不明朗にします。さらに一部の大企業、一部の資本家のために有利に政治を持っていこうとする意図が多分に見える、そこでこの問題については政府のほうでも厳に慎しんでもらいたいし、同時に八幡製鉄の一株主からの提訴があり、さらには第一審の判決が出ておりますように、この点については私は十分な監視をこれから続けていきたい、このように考えておるわけであります。そこでもう一つお聞かせ願いたいのは、この政治献金の問題でありますが、これが総代会なり株主総会において当然議題にのぼるだろうと思うのでありますが、こういうものが議題にのぼるのでありますか、のぼらないのですか、この点はひとつ銀行局長のほうからお答え願います。
  58. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 総会などにおいて議題になることはないと思います。特にそういうことについて質問が出て、経営者側がそれに答えるということはあり得ることでございますが、そうでない限りそれを議題とするということはございません。
  59. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。武藤山治君。
  60. 武藤山治

    ○武藤委員 ちょっと関連して。いま政治献金の問題に対する局長答弁は不満足でありますから、ひとつこれからの決意のほどを承っておきたいのですが、実は二十社のうち五万とか十万というこまかい政治献金ならばそれほど問題にしなくてもいいと思うのです。いまの法人税法第九条によって、寄付というのはこれだけやれるという規定があるのですから、その法律の範囲内においてやることはいいということをかりに是認いたしましても、半期六ヵ月間に一千二百万からの政治献金をこういう会社が出すということです。しかも生保という会社はどういう性格の会社であるかということを検討した際に、非常に公共性が強くて、しかも相互組織になっておるから株主総会で文句も言えない。こういう特殊の性格の機関が、時の権力に結びつくために政治献金をするというこの行為は、やはり監督官庁である程度チェックする必要があると私は思う。それが学術とか社会福祉事業とか教育とか、そういうものに対する献金ならばいざ知らず、特に政治献金という名のつくものに多額のものを出すという点については、銀行局として、政府機関の性格上、今後一定の基準をつくって取り締まりをもっと厳重にすべきではないか、かように考える。それについて銀行局長はどうお考えになっておりますか。
  61. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ただいま自治省に対して正確な数字を問い合わせております。最近の数字では、ある半期には全然なくて、三十八年の上期には生命保険協会はないのです。下期はまだ調査が済んでおらぬ、こういうことでございましたが、それ以前の三十七年はどうであったか、三十六年はどうであったかという点はただいま問い合わせ中でございます。それでいまのお話の千二百万というふうな数字がかりに出ましても、それが一社であるのか、保険会社全体で、そしてそれが半年分であるのか、一年分であるのか、そういう点を確かめてみませんと、いま御質問趣旨に対しまして、これから規制すべきであるかどうかまだきめかねますので、いましばらくその点御留保願いたいと思います。
  62. 武藤山治

    ○武藤委員 いまの卜部委員質問の基礎資料は、三十六年度の資料で数字を申し上げたわけです。私は三十五年から全部の官報をとって、実は昨年七月のこの委員会であなたに質問したわけです。ですから三十五年、三十六年、おそらく三十七年の下期までは連合会として出している。個々の会社で出しているのではない。個々の会社で出しているのは、一万円だ、五万円だといって右翼団体にざっと出していますよ。しかし大口というのは、連合会でまとめてぽかっと半期で一千二百五十万。二年間に二千四百万とか出しているわけです。それが三十六年から委員会で問題になり、予算委員会でも私は問題にして、総理大臣にも質問したわけです。今度は、会社の名前がわからないような形の寄付におそらく切り変わっていますよ、三十七年下期から。すなわち国民協会というものに寄付をする。そうすると国民協会は自治省に、総額で何ぼ寄付があったかということだけで、内容については官報に出なくなってきているわけです。そこらは決算書から調べていかないと、今度はどういう形で幾ら出てくるかということはなお不明になってきたわけです。そういう点も頭の中に入れてひとつ十分監視してみてください。私はやはり公共性からかんがみて、こういう点に対してはある程度基準を設ける必要がある、こういう点を十分検討してもらいたいと思います。
  63. 卜部政巳

    卜部委員 では次に進んでいきたいと思いますが、先ほど総代会なり株主総会ということばを使ったわけでありますが、株主総会のほうは、率直に申し上げて、株主に対しまして株主総会に参加してくれという通知がきますね。ところが総代会につきましては全然通知がこない。これは率直に言うならばそういうシステムになっていない。それぞれに各地方にさらに各支部に一名ずりの人が会社から指名をされるようなかっこう、公示という姿は出ておりますけれども、事実は全員が参加できないような仕組みになっておるわけですね。こういう点について私は不合理だというふうに考えるわけであります。なかんずく二十社のうちに四社が株式会社、十六社が相互会社である、こういうことになっておりますが、ことに実際の運用については異なるところがほとんどないと言われておるだけに、こういう問題も私は不合理ではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  64. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 生命保険会社のほうの相互組織の場合には約百名程度の総代をやりましてこれを公告をする、保険契約者が全部社員というようなことになっておるわけであります。これは格別に異議を申し立てない、ずいぶんおかしな話でございますが、実際にこれは郵便でもけっこうですが、反対であるということで、それが圧倒的多数であれば、過半数を占めればその公告どおり成立しないわけでありますから、実際問題としてはもう公告どおりきまっておるわけでございます。つまり総代の選び方がいわゆる民主的手続によらないという点については私も全く同感であると申し上げるほかない。ただ実際の運用面は、そういう総代会を招集いたしまして、そこに重要事項を付議するわけでございますが、それが株主総会にかわるものとして認められているという点ですね。株主総会のほうはどんな端株を持っておりましても総会の通知はいくわけでございます。だから株主総会は一応全株主によって構成される。それにかわってこちらは一部の選ばれた総代百名程度の人だけでそれを代行するというふうな仕組みになっております。しかしながらこれは一つの理屈を申し上げて、実情について申し上げますと、株式会社株主総会なるものは、実態ははなはだ非民主的であり、ごく一部の者だけが出席いたしまして、その中で発言をしたり何かするのが職業的ないわゆる総会屋というようなものによって占められているというようなことも事実でございます。むろん株式会社の場合には株数がものを言いますから、内部で対立抗争によって社長を争うというようなことになりますと、お互いに株を集め合う、委任状を集め合うというようなことをやるわけであります。株主総会といえども実際に十万あるいは二十万人というふうな人数にのぼるわけでございまして、これがほんとうに出席したらたいへんなことになる、そのようなことは全くないようでございます。それに比べれば比較的少数の方々が出て、しかも特別な争いがなければ、もう異議なし、異議なしで会社の提案がそのままきまってしまう。たとえば取締役をきめたりあるいは社長になるべき候補者を取締役に選任するというふうな場合におきましても、だれが実際にそれをきめているのかという点になりますと、これらの相互組織の場合と、実態はあまり変わらないのじゃないか。多数の株主はそういうことに無関心であるといいますか、ほとんど白紙委任状を出すか、あるいはそれも出さずにほうっておくというふうなのが、いまの株主状態になっております。特別な争いがない限り、一部の人だけの意思で重要事項もすべて決定されていくというのが株式会社の実態でございます。これは株式会社制度株主の立場というものが、当初つくられました株式会社の精神とは実態においてはかけ離れたものになっているという実情、それらを考えますと、相互会社が現実に民主的と思われるような総代の選び方とその運営によって重要事項を決定していることが、株式会社の場合と著しく違うということにはならないのではないかというふうに考える次第でございます。しかしこれらの制度の不合理という点については、私どもも十分感じておりまして、何らかの改正を施すべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  65. 卜部政巳

    卜部委員 そうすると、何らかの改正を施すということを確約できるわけですか。よろしゅうございますか。
  66. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いま保険につきましては、いろいろな募集の面、あるいは経理の面等につきまして、保険審議会におはかりしていることが、いろいろございます。時期を見まして、この問題につきましても私どものほうである程度検討いたしました上、保険審議会におはかりいたしまして、何か名案はないかという点を御相談願いたいと思います。改正すべき点があるように、私どもは考えますので、保険審議会の御意見などでその方向をきめたいと思っております。
  67. 卜部政巳

    卜部委員 いま銀行局長が具体的に申されたように、そうは言いながらも、株主総会の場合には総会屋なんかおっても、それに対する対処などというような緊迫した状態も出てくるし、さらに会社側としてもこの点についてはかなり勉強して出てくるというようなこともあるわけですね。しかし、率直に言うならば、総代会の場合は会社の指名によって総代会の代議員がきまるというのが現実です。そういうことでは、私は民主的ではないと思います。そういう点をひとつ十分織りなして、欠点は欠点として是正をし、長所は長所として生かすような配慮のもとに、いまの局長の、改正を考えておるというそのことについて私は了解をいたしたい、このように思います。  最後に申し上げますが、これは現在某保険会社が行なっておるのですが、テレビのコマーシャルで氏名をあげて、満期になっておりますからこの人をお知りの方は連絡してくださいなんということを呼びかけております。御存じかと思いますが、特に某会社ということに申し上げておきます。私はこれを見て、実に情けなくなることがあります。ということは、決して金額を明らかにしません。そうして、この方は昭和二十年におかけになったものでございます。などということを言っております。率直に言うなら私は、昭和二十年などにかけて満期になったというような金が、現実にいま何ぼになっておるかということだと思うのです。そういうことからして、あの人たちはいわゆる所在不明ではないのです。私の知っておる人なんかも、ばかばかしくて行かれない、いまごろそんな金をもらってどうするんだというのが現実なのです。それをいまごろになって、得々と、こういうように親切にやっておりますよと言うけれども、私はそれを見るたびごとに、ほんとうに恨みの一言も言ってやりたいという気持ちになります。当事者はそういうことになるだろうと思います。その当事者も言っておるわけであります。この原因は一体何かということです。それも、戦後における状態の中でもそういうことが言えるわけであります。戦前保険に入った人なんか冷たくあしらわれておる。外地において保険に入った人なんか全然無視されておるような状態が出てきておるわけであります。しかし、そのことはさておいても、とにかく戦後においてもそういう状態が出てきておる。これは率直に言うとインフレのもたらした結果だろうと私は思うわけであります。昭和二十年ごろにおきましては、三千円という金額は多額な金額でもありましたし、五十万あれば一生涯利子で食っていけるなどとうわさされたものであります。現実にいま五十万で一生食えるなどと思う人はだれもおらぬわけであります。こういうようなことを考えたときに、これから私たちの先輩の委員がいろいろと保険業法の問題について質問をされると思いますが、少なくとも保険業というものは、安定した政治、そしてまかその経済の中に初めて成り立つというふうに私は考えておるわけであります。その面で、これはちょっと申し上げにくいのでありますが、現時点におきましても刻々とインフレーションの傾向にあります。そしてまた、私たちが納めておる掛け金というものは、実際問題として、将来においては、私が冒頭に申し上げたように、もうとりに行きたくないという気持ちになる危険性さえ出てくると私は思うのであります。こういう点でほんとうに保険そのものの持つ本質的な問題が全然ぽかされてしまうことになると私は思います。この点について、私は保険業法改正とはかなり違った面から申し上げておりますけれども、少なくとも政府は、契約者にそういう苦汁を一回ならず二回、三回、四回となめさせることのないように、現在の段階で投資純増は千数百億、そういうものがいま出ておるわけでありますが、こういうものは少なくとも契約者に還元をしていく。さらに公共投資でありますから、先ほど武藤先輩が言われたように、少なくともそういう点については、公共事業に対する政治献金ならばいいのでありますが、そういう方向に向かって還元していくことが必要ではないか。このことを特に強調して申し上げておきまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  68. 山中貞則

    山中委員長 武藤山治君。
  69. 武藤山治

    ○武藤委員 今回上程されております保険業法改正案を中心にして少々御質問をいたしたいと思います。  いま卜部委員からもいろいろ御質問かございましたが、当大蔵委員会で保険業務に関する根本的な質疑、討議がなされたのは、おそらく昨年の六月が最初ではないかと思われるほど、保険の問題は複雑でむずかしくて、なかなか討議しにくい案件でありますので、どうも内容の把握が十分できないうらみがあります。そこで大いに大蔵委員会で今後この問題についても質疑をすべきではなかろうか、かように考える次第であります。とりあえず、昨年の質疑を通じて銀行局も非常に努力をなさいまして、今回の改正で、あるいは四月一日から生命保険料率を引き下げる。あるいは六月一日から損害保険の料率を引き下げる、こういう措置をとったということは、銀行局長の努力を称賛するにやぶさかでないと考えるわけであります。  そこで私がまず冒頭に伺いたいと思いますのは、四月から生命保険料の率を引き下げる、こういうことが金融財政事情で報道されておるわけであります。四月一日から普通養老保険の料率を一万円当たり二十円程度引き下げる方針だ、大蔵省はそういう行政指導を行なっている、こういう記事が報ぜられておりますが、その後どういう内容で、どういう目標でこの料率の改正が行なわれたか、これをひとつ最初に承っておきたいと思います。
  70. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 生命保険料の料率の引き下げは、本年の四月以降の契約につきましてすでに実施しております。これをごく簡単に申しますと、養老保険につきましては、要するに死亡率が、非常に古い死亡率を適用しておったのを改めるという点でありますが、従来第九回生命表というのがございます。それをそれでなしに、第十回生命表に改める。つまりそれによりますと、死亡率が下がってまいるわけでございます。それが第一点。  それから予定の維持比率を、従来千円につき五円という計算でやりましたものを、四円に引き下げます。しかしながら五十万未満の契約につきましては、いろいろと各社それぞれ経費の事情を調べました結果、やはり無理があるという点から、従来どおり五円として据え置いております。  それから一部の会社でございますが、予定維持率というものがございますが、従来四%であったのを若干引き上げる。そのようなことによりまして、養老保険として引き下げを行ないました。  なお定期つき養老保険につきましても、死亡率の表を変えるとか予定維持比率を変えるということで、定期つき養老保険についても引き下げを行なっております。これを標準的なケースに当てはめてみますと、養老保険の場合保険金額対千円、すべて保険の場合千円につきということを申しておりますので、それで申し上げますと、三十歳加入で三十年満期の養老保険に入りました場合、現行では二十八円九十銭、これが今回の改正によりまして二円余り引き下げられまして、二十六円八十銭、五十万円未満の場合にはそれが一円ばかり違いまして、二十七円八十銭、二円十銭ないし一円十銭引き下げを行なっております。四十歳加入の三十年満期の場合には、その引き下げの金額は五十万円以上では二円四十銭、五十万円未満では一円三十銭の引き上げとなる。このような程度の引き下げを四月一日から実施をいたしたわけでございます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  71. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいまのような引き下げの措置を日生、第一、住友、明治、朝日の大手五社、こういうところは大蔵省の指導どおりに、直ちに実行ができるだろうと思う。それ以外の小さい会社の場合もただいまの発表のとおりに改定をいたしたわけですか。二十社全部一斉に同じ指導方針に従ったわけですか。
  72. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 別に保険会社の共同行為を云々するわけではありませんが、ずっと以前はすべて歩調を一にしておった。ところが最近は競争的な意味もありまして、やれるところは、たとえば死亡率の表を新しい表でやるのはよろしいというのでやっておりましたが、今回の場合に従来やっておりました、すでに下げておったところも若干ございます。それらは従前どおりでございますが、それ以外のところ、たとえば死亡率表を十回の生命表を使っていないところは、全部十回の生命表を使うということにいたしまして、一応四月以降の状態を見ますと、全社についてこういう引き下げが行なわれた結果に相なっております。
  73. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、従来十回生命表を使っていた社が何社で、今回九回から十回の生命表に切りかえたものが何社でというでこぼこ是正のための措置だと受け取っていいわけですか。それをちょっと……。
  74. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 ただいま局長から申し上げましたように、途中ではいろいろいきさつがございましたけれども、結果として全部十回表に落ちついたわけでございますか、それまでにすでに十回表をやっておりました社が一社ございます。あとの十九社が十回表になりましたので、それでそろった、こういうことになっております。ただし、これは養老保険についてでございまして、その他のいろいろな保険の種類につきましては、各社とも第十回表を使っておる会社が大部分でございまして、養老保険につきましてこのたび全部そろったということになっております。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 損保のほうの問題については、あとで料率改定の問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、今回の改正のねらいとする商法改正に準拠して改正をされるという点が多いわけでありますが、まず五点ばかりの改正点の中で、第一に、従来の原価主義というものを、時価主義と原価主義の低いほう、どちらでもとってもいいというのが第一点のようでありますが、これは資本維持というか、そういう面からの改正点だと思いますが、低価主義を認めることによって、会社の経営内容にどういう貢献をするのか。どの程度生命保険会社に対する貢献率があるのか。そういう点をできるだけ実態的にひとつ説明をしてもらいたい。この改正でどういう影響を受けるのか。
  76. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 技術的な点でございますから私から申し上げたいと思います。お話のように、低価主義をとるということは、企業経営を非常に健全化いたします。その際の価格を低い時価で評価するわけでございますから、資産内容が非常に堅実になることはお話のとおりでございます。保険会社の場合は、低価主義をとります場合にも、切り離し方式とか、洗いがえ方式とか、いろいろ方式がございますけれども、話が技術的になりまして、はなはだ恐縮でございますが、その年の期首の時価が低いときにはそれによるという、いわば切り離し方式をとっておりますので、したがいまして株価が非常に低落した場合、この三十八年度末というような場合には、そのときの株価水準で、保有しております株の時価で、三十九年度期首の取得原価がきまるわけでございます。したがいまして、かりに株価が全体といたしまして三割水準が下がったといたしますと、三割分だけ堅実になると申しますか、かたい数字が出てまいる、かようなことになります。
  77. 武藤山治

    ○武藤委員 現在われわれのわかり得る表では、三十七年度の数字しか出ておりませんから、かなり数字には食い違いがあると思いますが、銀行局発行の金融年報に基づいて、少しお尋ねしてみたいと思いますが、生命保険会社が、三十八年三月三十一日現在で持っておる有価証券、これが二千八百五十二億ございますね。これをおそらく計上しておるのは取得価格じゃなかろうかと思うのですが、とりあえず、この計上されておる二千八百五十二億円というものは取得価格ですか、それとも時価ですか。
  78. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 実はこの法律改正をお願いいたします前におきましても、保険会社は低価主義をとっておりまして、これは低価主義に基づく数字でございます。したがいまして、そのときの取得価格あるいは取得価格よりも時価が低いときには、その時価によっておる、かような数字でございます。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 生命保険会社は、今回の改正がなくても従前に低価主義をとっておったのですか。これは別に商法改正とかあるいは財務諸表の手続とか、会計経理原則とか、そういうものに反しないわけですか。すでにそういう処理のしかたをしておっても……。
  80. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 御案内のように評価方法にはいろいろございまして、原価主義あるいは時価以下主義、時価主義あるいは低価主義とございますが、その中で堅実なものはやはり原価主義であり、同時に原価以下の低価主義であろうと思います。商法の原則はその中の一番堅実な原価主義をとっておるのでございますが、保険会社につきましては実はそれまで時価以下主義をとっております。しかしながら現実の運営はやはり他の金融機関と同様に低価主義によって現実にはやっておるわけでございます。したがいまして、制度の上では原価主義、時価以下主義でございましたが、実際には低価主義、かように考えております。
  81. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると低価主義を選択して、どちらでもいいわけですね、低いほうですからね。そういう手続は別に法律改正しなくても、何か政令なりあるいは財務諸表処理規程なり、そういうものでやれるわけですか。今回のような、今回は法改正じゃないのですか、今回初めて低価主義になられるのかと思っておったのですが、それは何か別な手続規程、細則か何か規則でやられたわけですか。
  82. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 いままでは行政指導によりましてそういう形をとっておったわけでございますが、しかし法律改正で原価主義がはっきり打ち出されますと、それ以外の評価方法はとれない、かようなことに相なりますので、従来とは結果的に違うというふうに考えております。
  83. 武藤山治

    ○武藤委員 すると、従来は行政指導でやれた。そうすると現在でも法改正商法が変わっても別に法律改正しなくとも金融機関と保険会社は低価主義はとれるわけですね、理屈としては。
  84. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 保険会社の中で株式会社につきましてはもちろん商法規定がそのまま適用になりますから、したがいまして、この四月以降の決算年度におきましては原価主義がそのまま適用になるわけでございます。相互会社のほうにつきましては、実は時価以下主義がそのまま残っておるわけでございまして、そこに法律上の食い違いが実は出てまいるわけでございます。したがいまして、これを統一的に処理するためにはやはり法律の上で制度的に原価主義をとるほうが適当であろう、かように考えて改正をお願いしておるわけでございまして、事実は運営上は実は両方の相互会社株式会社の間でそごを来たさないような指導方針は従来もとってまいっております。
  85. 武藤山治

    ○武藤委員 話が別にそれてまいりますが、せっかく有価証券の問題にいま論及したものですから、ひとつ有価証券の問題で少しお尋ねいたしますが、いま生命保険会社が持っておる三十八年三月末現在二千八百五十二億円の有価証券のうち、株式、これは株式が大半だと思うのですが、昨年一ヵ年間の株の変動によって今年末の評価額、まだわかりませんか、三十九年三月は。わかっておったらこれを比較して、どういう経済情勢の推移がこれにどういう関連を持っているか、影響を与えているか、それをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  86. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 三十八年三月末の有価証券は、お話しのように二千八百五十二億でございます。このうち株式が二千六百三十一億円ございまして、これが一年後の本年三月末におきまして有価証券総額が三千五百五億円になっております。内、株式は三千百七十九億円、伸びにいたしまして一九%程度伸びを示しております。
  87. 武藤山治

    ○武藤委員 その一九%程度伸びは、新たに増資としての取得なのか、それとも株の自動的変動による上昇によって金額が一九%伸びたのか、その辺はどういう関係になっておりますか。
  88. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 実は御案内のようにこの一年間非常に株価の変動がございまして、株価水準が下がったわけでございます。このように申し上げております数字は、いわゆる記帳価格で申し上げているわけでございますが、実際の含み率はかなり下がってまいっております。しかしながら一方やはり増資の払い込みをとり、さらに新しく株を買うというものがございまして、もちろん売ったものもございますけれども、差引純増がこの程度になっております。
  89. 武藤山治

    ○武藤委員 私が聞いているのは差引純増はわかったわけですけれども、問題は株の下落により損の部分に当たるもの、それから新たに増資として取得したものの金額、それを分けて、株の下落によって一体損を受けてないのか、それとも実際は株を持っておったけれどもいいところの銘柄であったから下落はないという数字のウエートのほうが大きいのか、その辺の関係がもしわかったら明らかにしてもらいたい。というのは、あとでこの利益が結局契約者に戻るか戻らぬかという問題にも関係してくるわけですからね。結局保険契約者自体の問題にも間接的には関係があるのです。そういう観点から聞いているわけですから、わかったらその中身もひとつ。
  90. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 実は三十八年度の決算につきましてはただいま集計を終わったばかりでございまして、まだ実は大蔵省としても発表いたしておりません。なまの集計した数字を申し上げたわけでございますが、その内容の分析につきましては今後これを行ないまして、いまのお話のような点を調査してまいりたい、かように思っております。現在のところございません。
  91. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 どうも私が補足することもなんですが、ここにある一つの例を申し上げまして、株式の下落がどういう影響をもたらしたかという点、これはある会社の例でございます。三十八年三月、つまり昨年の三月におきまして、株式の簿価は幾らであったかと申しますと、三百五十四億であった。それに対して三十八年十二月という数字ではなはだ残念なんですが、十二月でございまして、四百二十八億に薄価はふくれております。簿価の点からはふくれておるのですが、今度はその時価はどうなったかといいますと、八百九十八億円が八百億円に減ったわけです。簿価の上ではふえておりまして、この簿価が計上されているわけでございますが、時価を見ると逆にこれは下がっておる。そのために含みの率が、昨年の三月には簿価に対して一五三%あった、それが十二月になってまいりますと八六%に下がってしまっておる。こういうことでございますから、時価の変動の影響がいかに大きいか、これで大体想像ができるのじゃないかと思いますが、なお全部の社につきまして増資払い込みあるいは新規に買い入れたものが幾らで、それにまた変動がございますが、株式の下落によってどれだけの差が生じたかという点をよく調べてみたいと考えております。
  92. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 関連質問を許します。田中武夫君。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと先ほどの武藤委員の質問に対する答弁について、関連してお伺いしますが、先ほど答弁で、株式会社たる保険会社商法の規正によってそのまま受ける、相互組織による保険会社、これは前から行政指導でそういうようにしておった、こういうことですが、株式会社商法改正以前からそういう行政指導をやっておられた——もし商法規定にかかわらず行政指導をやっておられたということならば、その根拠はどこにあるか、根拠法を示してください。
  94. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 先ほどのお答えが若干不正確でございまして、いまお尋ねのような点が出てまいったかと思いますが、実は商法改正いたします前から、低価主義を保険会社はとっております。ただし株式会社につきましては、三十七年の改正によりまして原価主義以外はよれないということになったわけでございます。この規定は本年四月以降の株式会社たる生命保険会社適用になるわけでございます。このままほうっておきますと、相互会社たる保険会社につきましては、旧商法規定によりまして、時価以下主義の規定適用になるわけでございます。しかしながら行政指導は従来は低価主義によっておったわけでございますが、これを制度的に原価主義に合わしたい、言いかえますと、株式会社たる保険会社に合わせて、相互会社たる保険会社経理も同じ基準で制度上やっていきたい、かような点が今回の改正の眼目でございます。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 その改正の眼目はわかるのだが、実際は改正以前から改正と同じような行政指導をやっておりました、こういうことでしょう。そうするなら、かりに株式会社にしても、三十七年の改正以前に、行政措置をもって、行政指導をもって、商法規定と異なることがやれるのですか。
  96. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 従来の改正以前の商法は時価以下主義でございます。その場合におきまして、保険会社は時価以下主義をとっておりまして、時価以下主義の中で——中でと申しますか、低価主義をさらにとっておった。原価よりも時価のほうが下の場合には時価をとるというのが低価主義でございまして、そういう意味での低価主義をとっておったわけでございます。したがいまして、旧商法のもとでもその規定はございますし、商法違反という問題は起こらないというふうに考えております。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 旧商法規定がある。それは両方含んでいるわけですね。そのうちで原価主義ということを前から指導しておった、こういうことですか。さっきの答弁では、改正前から原価主義を指導しておりました、こういうことでしょう。
  98. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 先ほど答弁、なお速記を調べて、もし間違っておりましたら訂正いたしますが、従来から低価主義を指導しておりましたと、かように申し上げたつもりでございます。原価主義でなく低価主義でございます。今度は原価主義になるわけでございます。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 いまの株の保有の問題で、今回の改正の中で、取引所の相場ある株式についての評価の特例ということが出ておるわけです。その場合に、評価益というものが出た場合に、責任準備金かあるいは契約者配当準備金か、いずれかに入れるということのようですが、銀行局としては、その場合、準備金を積み立てなさいと行政指導する場合に、どちらにウエートをかけるわけですか。そのウエートのかけ方によって、責任準備金に入れても契約者配当準備金に入れても、結果的には契約者の立場は同じなんだということになるのか、違うのか、そういう点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  100. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この評価益を出す目的は何かということでございますが、会社によりましてその目的が少し違ってくることも考えられます。しかし私ども行政指導の立場から申しますと、一般的には責任準備金の積み方に、いわゆるチルメル方式と申しますか、非常に手厚い積み方をするものと、気の長い方式、年月をかけて不足分をだんだんに埋めていくというふうな積み方といろいろあるわけでございます。その変化がございます。そこで、十分に積んでおるところは責準をさらに積む必要がないわけでございます。しかしそういう会社はわりあいに少なくて、どちらかと申せば長いチルメル方式をとっているところが多い。そういうところにおきましては、この際五年以上十五年チルメルであるとか二十年チルメルであるとか、非常に積み方の薄いところには責準をもっと積ませるようにしたい。しかしこれはもちろん株式のほうに非常にたくさんの含み益があったわけでございます。含み益の割合が非常に高いにもかかわらず責準のほうの積み方は少ないという会社につきましては、これは責準のほうに入れるように指導したいと思っております。しかし、それとは別の問題といたしまして、最近株式が下がったために含みの割合が非常に薄くなってきた、そういうことですぐに実現はむずかしくなりましたけれども、これはまた事情が変わりますれば再び問題になると思うのですが、一体いまの株式などの含み益——実際は株式だけではございません、ほんとうは自分の業務用でない不動産なんかにもやはり含み益があるわけです。しかし、これらの不動産は評価益を出してやるというのは適当じゃないから、これはやめておいて、株式だけについてもせめてある程度評価益を出して、それを現在の戦後からの契約者にある程度還元すべきじゃないかという意見が以前あったわけであります。含み益を非常に置いておきながらやるということは、かえって経営を安易にする、いままでたくさん含み益を出したのはだれのおかげであるか、それはこれまでの契約者のものではないか、いつまでもそれを置いておきますと、会社の存立という点からいえば非常に健全でいいのだけれども、契約者が本来取得すべきものを次のゼネレーションに送ってやるということになる。それは日本全体として見ていいことだけれども、ある程度契約者に現実の利益を分けてやったらどうだ、こういう意見もあるわけであります。それはいまのところ鎮静しておるわけでございますが、しかしまた、そういう必要がいつ起こってくるかわかりません。そういう場合には契約者配当の準備金に繰り入れることになると思います。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、現在評価益が出た場合、銀行局としては一般指導として、現在の時点は契約者配当準備金のほうに入れる、どういう経済情勢の場合には責任準備金のほうに入れる、そういう何か一定の基準というようなものを考えているのですか、それとも会社の個々の経営実態によって、おまえらすきなほう、どちらでもその評価益は入れていいのだ、こういう指導をするのか。というのは、私自身また責任準備金契約者配当準備金の本質的な違いがはっきりしないので、それもあわせて聞かしてもらいたいと思うのです。
  102. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 責任準備金は、要するに契約者から保険料を集めて、それを、二十年あるいは三十年といったある年月を経た後において全額支払うわけであります、また途中で死亡のような事故が起こったときには全額支払う、そのために必要な、つまり常時保有すべき準備金は幾らか、これが技術的な計算によりまして保険計算から出てくるわけでございます。責任準備金は、これだけの契約に対して初年度においてこれだけ、第二年目はこれだけというのがあります。それを総合いたしましたのが責任準備金の必要額になり、その積み方に、全く健全な、最初から必要な額全額を積んでおく、五年たってから大体適正水準にいく、ひどいのになると、長いのは二十年たってようやくその水準に達するのではないかというような積み方の差がございます。これは各社はそれぞれ自分で選択していいことになっております。健全なものばいいのですけれども、十五年とか二十年とか、非常に長い期間でようやくその必要水準に達するというふうな方式をとっておるところは、いってみれば責準の積み方が薄いわけでございますから、こういうものは契約者配当するよりも、むしろ責任準備金の積み方式をもっとよくするというほうに使ったらいいじゃないかというふうに思っているわけであります。もうすでに十分に積んであるというところでございますと、それ以上に責準を積むということもおかしなことになりますので、そういう余裕のあるところでございましたならば現在の契約者にある程度配当してやりたいというふうな場合が出てくるかと思います。そういう場合に契約者配当準備金に回すことを認める場合もあります。しかしその数はあまり多うございません。そういう純保険料方式というものによっておりますものは、生命保険の場合ですと二社しかございません。あとはみな九年とか十年、十五年、二十年というようにそれぞれ分散しております。
  103. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう評価益の差は、しろうと考えからいけば契約者配当準備金のほうにできるだけやったほうがいいような気がするのですが、責任準備金のほうは三社は十分積み立てたけれども、あとの十八社はまだ十分という態勢にはいっていないわけですね。——それで間違いないわけですね。  それからもう一つの項に、その他契約者準備金というのが生命保険内容表に出ておりますね。その他契約者準備金というのは一体どういう性質の準備金なんですか。
  104. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 そのほかにたとえば支払い予備金というものがございます。これは支払いが確定しておってなお支払っていない金額の勘定であります。たとえば生命保険で申しますと、死亡がすでに起こって支払うべき保険金がきまっておりますものがまだ支払い済みになっていない、それを支払うまでの勘定を支払い予備金と申しておりますが、そういうものが契約者勘定としてございます。
  105. 武藤山治

    ○武藤委員 すでに死亡してまだ保険金を支払っていないという金額が三十八年三月末で七千六百万円というわけですね。わかりました。  それで、この配当準備金が多くなるということは、会社がそれだけ契約者に戻さなくてはならないから、経営自体としてはあまり充実できないという方向に進んでいるわけですね。契約者配当準備金をうんとふやしていくということは、やがてこれを契約者に戻していくわけですから、会社のとっておる金がそれだけ減るわけですね。そういう方針をあまり強くやっていくと、会社自体の内容というものは苦しくなる。そこでそこらの限度を行政指導として、国際的に見て日本の保険業界というものを勘案した場合に、どの程度まではこの契約者配当という形に戻していこうかという指導を考えておるか、その辺はどのような見解を持っておるわけですか。
  106. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 先ほど局長から答弁いたしましたように、契約者勘定といたしまして責任準備金を積みますか、あるいは直接契約者にその際払い戻す契約者配当準備金をふやすか、これは非常にむずかしい問題でございます。各国の例を見ますと、大体生命保険が成熟期に達しておりますので、責任準備金が相当たまっておるというのがほかの先進国の現状でありますが、わが国では戦後のインフレによりまして生命保険会社が大恐慌を来たしたというようなこともございまして、責任準備金の積み増しがなお不足しておるというような感じを持っておりますので、今後責準の積み増しは大いにやってまいりたい、かように考えております。しかしながら契約者配当と申しますのは、そのときどきの保険料をなるべく安く修正していく一つの手段でございまして、これも決してないがしろにはできないわけでございます。したがいまして、この両者を会社経理を見ながら適当に案分してまいりたい。実は責任準備金をふやすことによりましても、責任準備金を基準にいたします利差配当はふえてまいるわけでありまして、この間には関連ばあるわけでございますが、行政方針といたしましては、責準の積み増しを行ない、同時に契約者配当のほうにも遺憾のないようにしたいというように考えておるわけでございます。
  107. 武藤山治

    ○武藤委員 それから話が戻りますが、先ほどあなたはこの生命保険会社内容の二千八百五十二億円という数字は時価だと言いましたね。
  108. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 簿価です。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 武藤山治

    ○武藤委員 簿価ですか、そうすると、今度この法律改正が通ると、時価に直す会社も出てまいりますね。低ければ時価に直す、高ければ原価にしておく、どちらをとってもいいわけですか。
  110. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 申し上げました数字は、全部いわゆる記帳価額と申しますか、簿価であります。今度法律改正になりましても、低価主義をとった場合においても、その低価主義は記帳いたしてそれが簿価になるわけであります。したがって原価主義の場合もそれが簿価になるわけでありますから、申し上げる数字は全部簿価ということになるわけであります。それから時価が下がった場合には低価主義をとります。その低価主義を帳簿に記帳いたしまして、したがってそれも申し上げれば簿価ということになるわけであります。
  111. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、いまの株の保有金額を時価に直したら一体幾らくらいになりますか。その時価に直した場合の差益というものは、いつまでも処理しないでそのままずっと保有しておくわけですか。
  112. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 含み額を申し上げてみたいと思います。ですからこの簿価に含み額を加えたものが時価であるというふうに御了解願いたいと思いますが、三十七年度末の場合は三千百四十億四千九百万円でございましたが、三十八年度末においては二千二百十六億三千六百万円に減っております。それから含みの率から申しますと、前年度の三十七年度においては一一九・四%あって、時価は簿価の二倍以上だったのでありますが、今度は六九・七%に低落いたしております。
  113. 武藤山治

    ○武藤委員 時間がたいへん経過いたしておりますから要点だけかいつまんでまずお尋ねしておきますが、損保のほうの会社利益の処分というものを見てみますと、配当に制限があると思いますが、最高の配当をしておる会社が一二%、最低が五%でございますね。そうすると最高は一二%で押えておるのですか。配当を出す場合に一二%が限度なのか、この限度法律できめておるのか、政令でやっておるのか、何できめておるのですか。
  114. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 はっきり申し上げますれば、一%の配当率は一応それが適正限度じゃないかということで行政指導で押えておると言ってもよいかと思います。しかし、それは利益のいかんにかかわらず押えておるというふうな問題ではございません。損保会社株主勘定に帰属すべき利益状態から見ますと、大体いいところでも一二%くらいの配当率にすることが適当じゃないか。もっとその利益が高ければ配当率を上げることも考えられますが、これからの保険料の引き下げも若干やったわけでありまして、そういうことなども考えまして、やはり次の期の損益状況などを考えますと、いまのところでは一番いいところでも一二%に押えていくということが適切であろう、こういう判断から指導しておるのでございます。
  115. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、従来最高に配当を出したものは一二%を上回った年もありましたかね。戦前戦後を通じて最高の配当を出した会社というものは何%まで出しましたか。
  116. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 これは戦後の数字でございますが、昭和二十八年度の当時——これは二十九、三十年度ぐらいまで大体それに近いのでありますが、一割五分の会社が大部分でございました。例外はもちろんございます。無配の会社がやはり三社ございましたし、それから一%という会社もございましたが、圧倒的に多いのは一五%でございました。またそれ以前の状態でございますと、二十六年、七年当時は上位の会社は一割八分の配当を行なっております。
  117. 武藤山治

    ○武藤委員 生命保険会社のほうは相互会社が多いから配当というのはないわけでしょう。会社配当というのが二社はあるわけですが、その二社の配当率と損保のほうの配当率と比較した場合に一体どういう関係が出ておりますか。
  118. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 生命保険のほうの株式会社は四社ございますが、そのうち一社は無配でございます。それから一割配当会社が三社ございます。ただしこれは創立記念何周年と申しますもので二%増配をして一%にしておる会社もございますけれども、ベースは三社が一〇%、一社が無配ということでございます。
  119. 武藤山治

    ○武藤委員 そうするとどうですか。相互会社の場合と株式会社の場合、もちろん株式会社法があるから当然配当されてもやむを得ないのですが、同じ内容の業務をやっておって、片方のシステムは配当を出してもよろしいし、片方は契約者に全部還元をするということですね。そういう場合アンバランスというものは当然あってもいいのだという是認をする指導がいいのか、それとも公共性が非常に強いから配当は禁止して、それで相互組織と同じような形に統一していくという方向が好ましい方向なのか、今後の保険業というものを指導する場合にはどちらに向けていくのが妥当な方向だとお考えになっておりますか。
  120. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 保険会社形態として、相互会社がいいか株式会社がいいか非常にむずかしい問題でございます。相互会社が全社員のために運営をするのだというたてまえになっておりますことは非常にけっこうだと思いますけれども、現実にそういう運営が担保されておるかと申しますと、なかなかこれはむずかしい問題もございます。一方株式会社のほうは利潤を上げてもよろしいという形でございますから、その意味では契約者のほうには、監督行政が十分でございませんとあるいは不測のことが起こるかもしれないという危惧がございます。したがいまして、一長一短でございますけれども、世界の各国の情勢を見ますと、株式会社のものにつきましては契約者配当などあまりしなくてよろしいのだ、そのかわり保険料は安いのにしよう、安い保険料で売り出して、配当はあまりしないでもうけは株主配当しましょう、こういう会社も相当あるようでございます。したがいまして、その辺は日本の株式の運営とは違っておるわけでございまして、日本の場合は生命保険会社につきましては相互会社が大部分でございますので、株式会社形態のものは規模も比較的小そうございますし、そういう相互会社の運営に引きずられて契約者配当もきめ、その残余で株主配当をしているという状況でございます。実は経理のやり方としましては株式会社におきましては契約者配当は損金に入り、相互会社におきましては剰余金の処分として出てまいるという形態の違いがございますが、統計上はこれを一本にまとめまして申し上げておる次第でございます。
  121. 武藤山治

    ○武藤委員 どちらも一長一短だと言われるわけでありますが、私の見解では相互組織のものと株式組織のものと二種類ある、相互のほうは多いから、どっちかといえばいまの段階では多いほうに引きずられる。しかしだんだん自由化の傾向というものが強くなってきて、会社はとにかくもうけ本位でやっていいんだ、アメリカあたりでもそうなんだ、そういう風潮が日本にもかなりこれから入ってくると思うのです。そこで私は相互組織の場合と株式会社の場合との調整点を行政指導だけじゃなくて、やはり何か一つ検討する必要があるのじゃなかろうか、こんなような感じを持っておるわけです。そこらについて、なにいまのままで自由競争でずっと波が強くなってきても、常識でもって多いほうの相互会社株式は右へならえするだろう、だから手放しにしておいてもいいのだというのか。配当利益率によって必ずしも一二%とばちっと押えているわけじゃない、法律があるわけじゃないのだから、会社がそれをやった場合にいかぬといって取り消しすることばできぬわけでしょう、行政指導ですから。そこらをやはり検討する必要があるような気がしますが、いかがですか。そこらはこれからの問題として。
  122. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私どももこの両方がこもごも存在する、生命保険は全部相互で、損害保険が全部株式だというならまだわかりいいかもしれませんが、少しずつ反対のものがまじっているわけです。ところが日本では生命保険についてはわりあいに早い時期から相互組織に切りかえちゃった。スタートはともかくとして大会社がみな相互会社組織に変わってしまった。だから支配的な勢力を持っているものが相互組織で、損害保険の場合にはそれがさかさまになっている。株式組織のほうが大きい。それらが指導的な立場にあるということです。この損害保険と生命保険との違いは私は若干あるのじゃないかと思います。非常に海運関係などから損害保険が発達した。イギリスあたりで非常に損害保険の歴史が古いわけです。仕事の性質上そもそもが国際的な、再保険というようなものも国際的に行なわれているわけであります。その場合に相互組織でやることがはたしていいのかどうかという点になると私ども実ははっきりわからないわけでございます。株式組織でやった場合の一つの難点は、責任準備金とか異常災害準備金とかいろいろございまして、言ってみれば、普通の会社であればたいへんな含みがあることになるわけです。それらの資産が一体株主に帰属すべきものなのかあるいは契約者に帰属すべきものなのか、契約者と申してもそれは単年度主義で見るべきでなくて、その会社が存続する限り次々と契約が毎年行なわれておるわけです。そういった将来の契約者のために会社の安全を期するという点から、十分な、内部留保とは言いませんが、準備金をたくわえる、これは株主のものではないのだというふうな通念で私どもは指導しておるわけでございます。それは解散したときにどうなるか問題はございます。とにかく株主財産であるというふうに見るべきものでないのだ、株主勘定は大体この辺までだというふうなことで指導しておる。そういう点で会社財産の帰属について、相互組織ならこれは要するにだれのものでもない、会社自体のものといっていいが、全契約者のものであるということになるわけで、帰趨が特定の株主のものじゃないということははっきりしております。株式会社の場合にはそういうことは言い切れない。したがいまして損保の株が、たまたま来日した外人の目から見ると非常な含み資産があるのじゃないかということで高く買われてしまったということもあるわけです。なかなかむずかしい問題を含んでおりますが、一般的に損保については株式会社でやってきていままで支障もない、相当大きく伸びてこれからも発達していくだろうというふうな会社が見られるわけでございます。さしあたってこれを相互組織に切りかえなければいけないという積極的な理由が見当たりません。同じようなことが生命保険の場合の相互組織についても言えるのでありまして、いま直ちにこれに何らかの改革を加えるということを申し上げる段階ではないように考えます。
  123. 武藤山治

    ○武藤委員 いま諸外国、アメリカを除いてイギリスあるいはデンマーク、スエーデン、ノルウェー、すなわち混合経済、修正資本主義の体制の国、かなり社会主義を強く取り入れている国、そういう国の生命保険というのけ一体どういうシステムになっておりますか。
  124. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 国の行政組織によりまして、特に調べたことはございませんが、大体ヨーロッパ大陸では、保険に関する国の規制は非常にきびしゅうございまして、これは保険料率あるいは責任準備金の積み方、それから資産運用方式、それぞれ非常に厳格な規制を行なっております。日本の保険業沖も大体そういう大陸の法制をまねてつくったわけでございまして、大体同一ような感じがするわけでございます。それからイギリスにつきましては、これはむしろ経験の積み重ねでいろいろ保険事業をやっておるという面が強うございまして、ヨーロッパ大陸とは若干それが変わっておるように承知しております。
  125. 武藤山治

    ○武藤委員 完全な民間会社にまかしておるという国のほうが、ヨーロッパ大陸の場合、まだ多いですか。それとも公社制度——公社みたいな形にして国が非常に介入をしておる、そういう制度の国、もしわかっておったら、そういう国をひとつあげてみてください。
  126. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 英米はもちろんでございますが、ヨーロッパ大陸におきましても、民営が主でございます。国営保険につきましては、日本の簡易保険のようなものがありますかどうか、ちょっといま資料がございませんが、記憶いたしますところでは、イタリアでは、一時、大きな会社を接収いたしまして国営にしたことがございます。これは実は成績が悪くなりまして、その後不振を続けておるというふうに聞いておりますが、はっきりしたことは、現在承知いたしておりません。
  127. 武藤山治

    ○武藤委員 私、堀委員との時間の約束がありますので、一応この辺でやめますが、資料をこれから要求をいたしたいと思いますから、ひとつ出していただきたいと思います。  一つは、損害保険関係で、六月一日から料率が変わる、特に住宅は一〇・六%、店舗が五・九%引き下げになる。ただし地域によっては引き下げが全く行なわれない地域もある。そこで、一体行なわれない地域とはどういうところかということを明らかに、ひとつ資料でけっこうですから、あとで出してもらいたい。  それから、今回等級を分けたわけでありましょうが、そういう等級の市町村別の等級差が全部あるわけでしょうから、それをひとつお出し願いたい。全国で大体百五十町村か何かですか、すぐわかるでしょう。改正になったところだけでいいですから……。  それから第三には、株式保有の限度が大体三割限度といわれておるのですが、これも行政指導でやられておるわけですね。実際簿価にして総資産の三割まで株保有と認めている。実際にはそれを上回っておっても行政指導だからかまわぬということになっておるようですが、株価の変動の激しいときには、これの問題についても一定の基準が必要ではなかろうかと思うのです。そこで、その行政通達を出しておる従来の基準等をお示しを願いたいと思うわけです。特に生保は二二・一%、損保は現在の保有が三八・七%といわれておるので、一体三〇%というワクはどの程度までシビアーになっているのか、その辺もひとつ通達など全部出してもらいたい。  それからもう一つ、今回の改正で負債性引き当て金の計上を認めて、その場合には、それを取りくずしたとき、それを載せたときに、目的を貸借対照表に明らかにする。その目的に違った使用をした場合が認められておるわけですね。目的に違った使用というのは、一体どういうことがあり得るのか、例を幾つかあげてもらって、不当にそれが利用されないような考慮が必要ではないだろうか、そういう心配から、それをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。  その他、大臣が待っておるので、先に聞きたいのでありましたが、もう一つの問題は、これは大臣にちょっと聞いてもらいたいのでありますが、兵庫県神戸だと思いますが、須磨寺というお寺の百万人講が解散をしたわけなんです。これは講というものを取り締まる法律がない。いまの市中の個人金融というものも、県に届け出をすれば、いつでも開業ができる。これにやや類似した講というものによってたいへん便利を受けるというので、零細業者が講に入っておる。全国の数字はおそらく銀行局、把握していないのではないかと思うのですが、講の現在の状況などもひとつ明らかにしてもらいたい。神戸の場合の百万人講がつぶれたために、七億四千万円も被害をかけた。会員がそれぞれ金を出したものが一切パーになってしまって困っておる、こういう問題について、大臣おそらく耳にしておるかと思いますが、こういうような場合に、これを何らかの方法で救済をする方法なり、もし救済する方法が全然ないとすれば、どこか法律の盲点があるわけですから、そういうものについて今後検討しなければならぬ問題があるのではないだろうか、そういう感じがするわけですが、大臣は一体この報告なりこれを耳にされて、どんなことを感じておりますか。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 頼母子講の問題だと思いますが、大蔵省ではいま全然関係をしておらぬわけであります。またいまあなたが申されたこと、事実もまだ承知いたしておりません。しかし世の中に頼母子講というものが昔からあるということは私も承知しておりますし、これが普通でしたら、初めに講を落とした人は、物価がこういうふうに上がってまいりましたから、当然掛け金をかけておくということは常識にもかかわらず、かけられなくなってしまった、こういうようなことが起こっておることも承知しております。これは庶民生活の間には相当あるわけでありまして、質屋とかそれから市中金利に対してはだんだんと法制を整備してきておりますのに、誰そのものに対しては、いま法律はきっとなかったんだと思います。でありますから、こういう問題はやはり十分実情を検討しながら、何らかのやはり措置が必要だということは考えます。
  129. 武藤山治

    ○武藤委員 最後に銀行局長、いまの須磨寺百万人講がつぶれた問題については報告を聞いておりますか。その内容について、幾らか、ははあこれはこういうところに原因がある、こういう場合には法のこういうところに欠陥がある。この法律はひとつつくるか、検討しなければならぬ、そういうような協議は一切銀行局としてはしたことがございませんか。
  130. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 残念ながらいまの事件につきまして全然、いま初めて承ったわけでございます。いわゆる頼母子講のようなものについては、いまのところでは大蔵省の監督がないわけでございます。問題は、それがたとえば出資の受け入れその他の例の法律がございますが、大衆から金を集めてはいけないという法律があるわけです。それに一体触れるようなものであるかどうか、研究の余地があると思う。それがたとえばかなり巨額のものを集めまして、そして無責任な結果を引き起こすということであれば、解釈のしようでは、ああいう法律に触れる場合があるのではないかと思いまして、そういう法律的な見解についてもう一度よく確かめてみたいと思います。
  131. 武藤山治

    ○武藤委員 これで終わりますが、ただいまの講の法の不備につきましては、金融証券小委員会で十分ひとつ銀行局と討議をしていただきたい、かように考えます。これで質問を終わりたいと思います。
  132. 山中貞則

    山中委員長 堀昌雄君。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が十分ありませんので、少しはしょってやりますから、答弁のほうも少し能率的にお願いをしたいと思います。  最初にお伺いをいたしますのは、大蔵省設置法に基づきまして保険審議会というものがございます。この保険審議会の委員の名前は私もわかっておりますけれども、この保険審議会の委員の任命のしかたその他については、一体どういうルールによってやっておるのか、ちょっと最初に伺いたいと思います。
  134. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 保険審議会は、御案内のように大蔵大臣の諮問機関でございまして、大蔵大臣が委嘱して任命することになっております。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、それはわかっておるのです。ただ委員が何名かありますけれども、これは一体学識経験者が何名とか、そういう関係で何かあなた方のほうでルールをきめて委嘱をしておるのだろうと思いますが、そのルールをお聞きしたい。
  136. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 保険は非常に特殊な知識を要する分野でございますので、商法学者、それから学識経験者さらに業界から生・損保とも三名程度ずつということでやっておるわけであります。  もう少し数字ではっきり申し上げますと、業界が六名、学界が三名、産業界その他契約者代表が八名、言論界が二名、計十九名、定員は実は二十名でございますが、現在十九名になっております。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 なるほどこれはいろいろ非常に複雑でありますからかなり専門的な知識を要すると思いますが、業界からは六名出ておられる。学識経験者というのとそれから被保険者を代表するものが八名ですか、そうなっておりますね。  そこで私は、いまの保険審議会の構成の問題について、なるほど確かに問題がありますけれども、もう少し被保険者の立場、それからもう一つは、これを見ますとこの中で働いておる人たちの意思を代表するものは率直にいって何もないですね。私はこの問題を少し分析をしてみまして、いまの保険業、二つありますけれども、きょうは当面生命保険のほうを先にしたのであります。  生命保険業の問題について第一の問題点は、保険審議会の答申があります。生命保険募集に関する答申というものがありますけれども、生命保険募集に関する答申の中を読んでみましても、もう一つやはりこの対象になっておる外務員の人たちの意見なり考え方というものが、率直に言いまして実はあまりここに出ていないと思うのです。出ていない理由をちょっと調べてみますと、何か審議会に一ぺん代表が呼ばれて少し話を聞いてもらったけれども、十分に自分たちの意が尽くせないというような状態で終わっておるようです。あとでこの状態を見ると、業界の代表者は六名も出ておられて、そういう点でやや不十分な点があるし、もう一つはいまの被保険者の立場というものが、やや比重が少な過ぎるのじゃないかという感じがちょっといたします。そこらの点については今後の問題として、私この前も証取審議会のときにも、これは内閣委員会に参りまして、要するに投資家を代表するものの比重が少し少な過ぎるのじゃないか。どうも大蔵省の各種審議会は、ややもすると業界側の代表が少し多過ぎるんじゃないかというような感じがあるのです。結局そうなると、そういう投資家なり被保険者の立場を大蔵省が何か代弁をせざるを得ないというようなかっこうになっているのじゃないかという感じがするのです。これは大蔵大臣、これは何も保険審議会だけでなく、全体の流れとして、もう少しこういう審議会にそういう投資家であるとかあるいは被保険者であるとか、そういう国民の側を代表する立場の者を、もうちょっと比重を重く見る必要があるのではないかという点について、原則論ですけれども伺います。
  138. 田中角榮

    田中国務大臣 労使間のような立場で使用者を入れるならば、労働者も入れるのがより合理的である、こういうお考えに立って一般大衆、こう言われるのですが、学者とかそういう方々が入っておりますから、そういう方々の考え方はおおむね被保険者の代表をされる、こういうふうに考えてもいいのじゃないかと思います。特に業界代表が多いと言われますが、大蔵省の考え方は官庁の中でも官僚的だ、こういわれているくらいに専門的なものでございますから、業界の代表がよけい入るということに対しては、私はある意味において正しい行き方だ、こういうふうに考えるわけです。しかも専門的なものが非常に多いわけでございますから、そういう意味では全くしろうとが出ても、なかなか発言をしたりそれを具現したりすることがむずかしい。ということで、結局専門家という意味で業界代表が多くなる、こういう傾向があると思います。でありますから、私はいまの状態でも遺憾があるとは思いませんが、被保険者というような、いわゆる会社とか行政の上でなく国民大衆の側からの声を聞かなければいかぬじゃないか、こういう公聴会式なものでなく、委員自体をして権限を持つものとして入れたらいいじゃないか、こういうことでありますが、考えることはいいことだと思います。しかしなかなか被保険者の代表を入れるとか、契約者を入れるとか、それから契約員そのものを入れるとか、こういうことをやって実効があるかないかという問題があるわけであります。しかし一方的な話であっても、聞くことは非常にいいことだという考え方もありますが、何分にもやることが非常に専門的なものであるので、それを理解できるという人にしぼっておるということだと思います。何も他意があってやることじゃないわけであります。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと具体的に。さっき産業界と学識経験者八名とおっしゃったのですが、学識経験者というのは何名で、産業界何名ですか。八名の内訳……。
  140. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 産業界その他契約者代表ということで、これは委員の色分けなかなかむずかしゅうございますけれども、たとえば石坂泰三会長、それから日本郵船の社長の兒玉さんが産業界代表でございます。大原委員が一時やっておられましたが、いまはやめておられますので、石坂委員、兒玉委員、岡松委員、三人が産業界代表ということでございまして、そのほか一般の学識経験者ということになっております。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとあと五人が学識経験者ですか。
  142. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 純粋に消費者代表と申しますか、契約者代表といえる方は、主婦連におられました戸田委員だけでございます。あとの方は職業を持っておられるわけでございます。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 これは時間がきょうはありませんから、こまかい議論は少しあとに延ばしますけれども、私はやはり委員の構成を見ておりまして、まさに何か産業界関係というか、そっちのほうに非常に比重がかかっておるような感じがいたしてなりません。率直に言うと、学識経験者なりあるいは被保険者を代表するものは、場合によっては新聞社の関係とか、そういう方であっても私はいいと思います。おそらく新聞記者の方であっても、これは生命保険にも入っておるでありましょうし、そして同時に世論を背景にする立場ということもあるでしょうから。この中をざっと見たところでは、そういう方がきわめて不十分なような感じがいたします。二人でしょう、二人くらいですね。だからもうちょっと、私はそういう意味で、そういう方や、要するにもう少し被保険者を代表する者が入るようにしてもらいたい。もう一つは、業界から六名も出るのなら、やはり私はその中の一名くらいは労務側が入っておるということが、こういう制度は人間によって成り立っておる機構でありまして、要するに機械が動いて物が動いているという制度ならこれはまた別でありますけれども、まさに現在の生命保険というものは何によって成り立っているかといったら、外務員によって成り立っているわけです、率直に言えば。その外務員によって成り立っている制度が、その外務員の意向が保険審議会の中へ少しも出てこないということは、私はちょっといかがかと思いますので、これはひとつ検討してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか、大蔵大臣。
  144. 田中角榮

    田中国務大臣 検討はいたしますが、外務員といってもだれを出すか。外務員経験者でも相当な方がおります。昔の渡幸吉さんとか、非常に偉い人がおるわけですから、そういう方を入れるということになれば、学識経験者でもあるし、外務員経験も非常にあるということですが、渡幸吉さんのような方よりも、あなたの言われるのは、実際の第一線におられる人ということでありましょう。そういう方を委員にするほうがいいのか、また部会などをつくってその中に専門員式に入れてやるのか、いろんな問題があるでしょうから、検討はいたします。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 現在、聞きますと、十九名で一名あいているようですから、二十名定員だそうですから、ひとつ私はそういう人が入っても、この人たちも保険業を自分たちの業としてやっておるのですから、保険業自体の発展の方向にマイナスになるようなことをやられるわけじゃないですから、そこら少し前向きにひとつ検討をしていただいて、幸いにしていま一名あいておりますから、それをちょっと御検討願いたいと思います。なぜ私がそういうことを最初に触れておるかというと、これからの本論に非常に影響があるわけです。  さっそく本論のほうに入りますけれども、保険審議会は、これは大臣の諮問機関ですが、この答申というもの、これは当然答申が出たら具体化するというのが大蔵省の一つ責任でしょうね。私そう思いますけれども、大臣どうでしょうか。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 大体問題のありそうなものを諮問するわけでございますから、答申が出れば大いに尊重する、こういうことでございます。また向こうから一方的に勧告とかいろんな要請等があれば、もちろん重点的にこれを配慮するということであります。
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。私もきょうは少し間口をしぼりまして、募集関係の問題にしぼってちょっと伺うわけですけれども、生命保険募集に関する答申というのを私は拝見いたしまして、この中を流れておる考え方については、おおむね私も同感でございます。そこでここでちょっと提起をされております中に、こういうふうな部分があるのです。「将来の外務員制度は専業的外務員に基礎を置くべきであるとの観点にたって、外務員に対する教育訓練を更に外務員全般に及ぼし、その資質を向上するとともに、良質契約の確保維持が外務員給与に一層反映するよう給与体系を改善し、」ここがちょっと問題ですが、「外務員がその職場に定着できる体制を確立しなければならない。」こういうふうに答申されているわけです。そこで銀行局はこれを受けて、いま一体どういうふうに具体的に考えておりますか。
  148. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 その答申に基づきまして、外務員は従来だれでも志願さえすればなれたものですが、一応協会が行なう試験に合格しなければいかぬ、募集の資格が与えられぬということになったわけです。しかしいままでのところ、保険会社が未亡人の救済機関であるわけじゃないのですが、実際問題として登録人員五十何万というふうな膨大なる人員になっております。そしてまことに、あわのように出ては消え出ては消えというようなことで、おかしなことになっております。それを何とかよくしていかなければいかぬという努力は、いまその緒についたという段階でございまして、試験の結果などを見ますと、一応合格者が圧倒的に多いわけです。落第する人はきわめて少ない。しかし、とにもかくにも試験を受けるとなりますと、一応の予備知識が必要であるということから、教育的効果としてはかなり上がっているように思います。将来これを専門的な、つまり十分それだけで飯を食っていけるような、そういう地位に引き上げていかなければいけない。そうしなければ、いつまでも実際問題として自分の親戚縁者をあさり尽くすとそれであと募集ができないというふうなことでございまして、非常にむだが多いように思います。そういうことから、この試験制度もいまは最初ですからその程度でもって大目に見ておりますが、だんだんにそれを辛くするといいますか、資格を引き上げまして、だれでもが募集に従事できないように、そしてだんだん優秀な者だけが募集員として資格を与えられるように——実際問題として五十何万人なんという募集員は働いてはいません。実働は三十万ぐらいだと思いますが、三十万でもべらぼうに多いわけです。そんなに必要でないと思います。専門的な募集員ができれば、もっとはるかに少ない人員でやれる、したがってそれに対する報酬も一人当たりとしてはふえていく、十分な生活の根拠が得られるのではないかと思います。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局も一応検討しているのでしょうが、私、試験制度なんというものは、いまのあなたのお話のように、やらないよりはやったほうがいいでしょう。しかし、率直にいって、いまのこの問題の解決にはならないと私は思っております。試験をむずかしくしたといたしましょう。しかし、それでもし通った人が、ただ試験だけ通ったらはたしてそれがいい、能力のある外務員であるかどうかということは、率直にいいまして私は疑問が残ると思うのです。そこで、ここではいみじくも触れているのですよ。中にたくさん書いてありますけれども、要するに一つは給与体系の問題ですね。これが私はやはり非常にいまの生活に関係がある。給与というか、報酬といいますか、問題があると思います。  そこでちょっとお伺いをいたしますが、解約失効というものが現在生命保険では相当多額にのぼっておりますね。そこで、いつの時限でもいいですが、二ヵ月目の解約率の一番少ないのが何%、一番多いのは何%、大体モードはどこらにあるかということをちょっとお答えいただきたいのです。
  150. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 お答え申し上げます。二ヵ月目に、月払い契約の継続率で見てまいりますと、九九%の歩どまりのあるのが一番よろしゅうございます。つまり一%脱落しておるということでございます。それから悪いほうで見ますと、八五・四%という会社がございます。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまの答弁のように、一%や二%なんというのは、これはもう問題になりません。しかし、八五%とか八七%とか、要するに一割以上が一回かけただけであとは継続していないというのは、これは私かなり重大な問題だと思っております。  そこで今度はもう一つお伺いをしたいのは、解約失効の場合の返戻金と既払い保険料は大体どういうことになっているのか。一ヵ月のとき、六ヵ月のとき、一年目のとき、どこかの標準でちょっと説明をしていただきたいと思います。
  152. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 最近は月払いが多うございますので、月払いで申し上げますと、大体一年十ヵ月ぐらい払い込みましても、それまでのイニシアル・コストのほうが多くなってまいりますので、したがって解約返戻金はゼロになります。それから次第に返戻金が出てまいりまして、契約開始後五年まではある程度の解約に対するペナルティがございますが、五年を過ぎますと、繰り込んでおります責任準備金金額契約者に返ってまいる、かような仕組みになっております。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、今度は一年十ヵ月までは返戻金ゼロですから、ほんとうは私ここで一年十ヵ月目の解約率を聞きたいのですが、そういう資料はないでしょうから一年目を伺います。一年目において、解約率の最小のところと最大のところをちょっと教えていただきたい。
  154. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 継続率のいいところを申し上げますと、一年目に七割五厘という会社がございます。悪いところで見ますと、これが最低であるかどうかちょっと私調べておりませんが、五二%という会社があります。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、一年たちますと、一番いいところでほぼ三割近くは解約している。ひどいところは半分解約している。半分解約した人は保険金を一年分とられて一文も返してもらえない、こんな状態が、大蔵大臣、生命保険の現状なんですよ。この状態を一体どうやって改善するのか。これは私どもがここで保険行政をあんまりやらなかったものだから、今日まで放置されてきておる。これは大蔵大臣もおわかりのように、重大問題ですよ。要するに、入った者の半分は、一年間掛け金だけとられて一文も返してもらえない。保険会社経費がかかったかどうか知らないけれども、とにかく取り上げたには相違ない。ですから、これはたいへんな問題である。ではこういう問題がなぜ起こるのかというところが、審議会の答申の中にいろいろ書いてあるわけです。そこで私はちょっとお伺いをしておきたいのは、あなた方のほうでこの原因について調査をしたことがありますか。解約をした人たちがずいぶんたくさんいるわけですよ。この人たちに対して、あなたはなぜ解約をしましたかという調査をしたことがありますか。
  156. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 解約をいたしました契約者につきまして、原因を一々調べて歩くということは、実はしたことがございません。ただし、原因は大体わかっております。これは保険審議会の契約部会におきましてもいろいろ議論がございましたように、やはり保険会社のいままでの営業方針と申しますか、そういうものが、新契約を獲得することを第一に考えておる、かような点に一つの原因があるわけでございます。いわば戦後の生命保険事業が、量的に拡大していく過程で、やむを得ずそういう無差別に人を採用して無差別に契約をとっていった、そういうことが、いまおっしゃるような弊害を生んでおるのだ、かように実は考えております。  そこで、これにつきまして、私ども決してこのままでいいというふうには考えておりませんで、何とかこれを改善してまいりたいということで保険審議会でも答申を願ったわけでございますが、結局継続率のいい良質な契約をとるように保険会社を指導しなければならないし、保険会社もそういうふうに頭を切りかえてもらわなければならぬ、かように考えております。しからば、いかにしたら質のいい保険がとれて、いま仰せのような非常に解約失効の多い、むだなことが防げるかという点でございますが、一つ先ほどお話がございましたように、外務員の給与につきまして、もう少し継続率に重点を置きました継続手数料と申しますか、最初にイニシアル・コスト的に給与を出さないで、その契約が長く続くにつれて少しずつでも、月々あるいは年々給与を出していくというような形の給与体系をもう少し大きく認めるとか、あるいは固定給の比率をふやすとかいうような形でいい契約をとっていく、つまり量よりも質のほうに転換すべき時期にいま来ておるのではないか、かように考えております。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほど武藤委員等の質疑の中でも、西欧型、大陸型の保険のスタイルをとっておるので、大蔵省としてばどちらかというと強い監督をしておる、こういうお話でした。私どもこれまでこういう状態を見ていて、ちょっとひどい言い方ですけれども、実際被保険者の代表の側に立って、一体何を監督しておられたのか、ふしぎでしかたがないというくらいに感じるわけです。戦後すでに二十年たっておるわけですよ。それでいまの程度の御答弁では、率直に言って私は満足できないのです。なぜかというと、いまわれわれ、銀行に対しては、歩積み、両建てについて、御承知のようにきびしい追及をやっておるわけです。そうしてその中で、成果のあがっておるところは、自分のところの預金が減っても、なおかつわれわれの言っておることに協力をしておる金融機関だってあるわけです。ここまで来ましたら、まずこういう解約失効率をなくすために、この次には金融小委員会でこの問題を歩積み、両建てに準じて取り扱って、一つの問題を出していくくらいの考え方をしなければならぬところへ来ておると私は思うのです。それも、いま私が申し上げたのは、一年のところの解約率ですからね。あと一年十ヵ月の資料を出してください。一年十ヵ月目における解約の状態というのを全部出してもらいたい。さらにふえますよ。場合によったら、二年目で見ますと、あなたのほうから言っていただいてもあれですが、半分を割っているのがあるわけですから、全体としてさらに低くなってくるものだと思っておるのです。だからこの問題については、大蔵大臣、もっと腰を入れて考えていただかなければならぬ。なぜ保険審議会の問題について被保険者代表に比重をかけてもらいたいかというところは、率直に言うとここらにあるわけです。なるほどそれは、業界の皆さん方から見られればやむを得ずということでしょうが、やはりこれは過当競争の一つのあらわれだと思うのです。あなたはこの間銀行大会で、過当競争は大いに慎めと大みえを切っておられますが、これは単に銀行に限らないのです。これは各種金融機関、日本の産業全体に通ずると思いますけれども、過当競争を戒めてもらうためには前向きの検討が必要です。  そこで、時間がありませんから、私は一つの提案をしようと思います。どういう提案かというと、保険外務員の中にはプロパーとデビットという二つのスタイルがありますね。デビットというのは固定給で常勤職員的な待遇を受けている者、プロパーというのは非常勤職員的な待遇を受けている者で、労働基準法その他、いわゆる雇用条件が全然成り立っていない状態にあるわけですね。これではこの人たち自身も、ここに書かれてあるように、その職場に定着できる体制にないわけです。まずその職場に定着できるような状態にするためには——さっきのお話では、大体三十万くらいが外務員に入ってくる、二十五万くらいがやめていく。おそらく資料をお持ちでないと思うけれども、この登録外務員の分析というものがなされておる。要するに、勤続の状態は一体どういうことになっておるか。半年でやめる者、一年でやめる者、一年半、二年、三年、五年、十年というように登録をしているわけです。全然あなた方はノータッチではないのですから、登録している以上、現在の外務員の勤続状態がどういうふうになっておるのか、その状態に応じて給与の条件がどうなっておるのか、長ければどうなっておるのかということがおそらくわかっていないのではないかと思うのですが、わかっていますか。
  158. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 先ほど局長から申し上げましたように、五十数万人の中で年々二十五万人程度が脱落して、三十万人程度が流入してくる。非常に変動の激しい募集の分野でございます。大体どのくらいつとめておるであろうかというその平均は、ちょっといま出しておりませんが、給与につきましては大体のことが私どもわかっておりますので申し上げてみたいと思います。  普通の場合は、採用いたしますと、六ヵ月くらいは保証期間がございます。これはもちろん試験をし、登録をした後でございますけれども、その間に訓練をするわけでございます。そうしてある程度の実績が出てまいりますと、たとえば三ヵ月くらいの間に月々平均七十万あるいは八十万程度の実績がございますと、二級職員という待遇になって固定給がつくということになります。さらに歩合給が、もちろん成績があがるに従ってこれにつくわけでございますが、それがさらに、たとえば月平均百万円程度ということになりますと、すなわち年間に保険金で一千二百万円以上というところになりますと一級職員ということになりまして、給与がさらに上がって、固定給が上がってまいるわけでございます。大体この辺で固定給が全体の三分の一程度、固定給と比例給の割合が一対二くらいな割合であろうと思います。しかしながら、そういう成績のあがらない外務員もあるわけでございまして、そういう状態が長く続きますと、これは嘱託に落とされるわけです。しかし落とされても一年間は身分が保証されましてある程度の給与があるわけでございますが、かりに月に二十万も三十万もかせげないという程度になりますと、これはやはり給与を払うだけのあれがございませんので解約ということになって脱落していく、大体こういうような状況になっております。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまのは非常にあらましであって、私も資料を持っておりますから、少し時間があれば申し上げたいのですが、時間がありませんからきょうは省略をいたします。  そこで私はどういう提案をしたいかといいますと、大体三年くらいで短期的な人はやめていくんではないか。いまの出入りの状態を見ますと二十五万くらいのものは入ってきて最大二年待遇をしたら出ていく。その二年間にともかく親戚縁故というのを一斉にやってしまって、それでもう行くところがないからやめてしまうというのが二十五万くらいあるのではないか。この部分に実は一番問題があるわけです。この部分で、実はいまの一年で五〇%程度に落ちてくるというところに一番大きな問題がある。そうすると、この部分の比重が下がって固定した部分の比重が、審議会の答申のように専業的な外務員というものがふえてくればくるほどこういう問題は合理化されてくるわけです。ところが現在の状態は、いまのあなたのお話でもわかるように保険会社はあまり古いほうにメリットをおいていないわけです。そこで私は提案したいのは、このプロパーという外務員の制度を二本立てにして、基準をどこに置くかは別として、二年くらいのところになるかもしれませんが、そこまで二年いた人は、そこで研修や講習を一ぺんやりまして、そして二年いたということは、少なくともそれでまだやれるという見通しのある人というのは、これは能力のある者だと思うのです。能力のないというのは二年以前に落ちてしまうと私は判断する。そこらの時限は検討の余地がありますから、保険外務員の分析をしてもらわなければわかりませんが、一ぺん入って落ちてしまって、残っておる人たちに再教育をして、そうしてこの人たちに対してはもう少し労働条件その他の雇用条件を安定さして、メリットをこっちへ少し高くする。そうすれば自然といまのこちら側の人の努力があがればあがるほど、短期のもののほうをたくさん取らなくても保険会社としての効果があがるし、コストも安くつくということになるのではないか。そこらについて、そういう制度等を導入するような検討を一ぺん進めてもらったらどうか。要するにこれは保険審議会にあることを私は多少具体的に提案をしておるだけであって、保険審議会の答申に反対しているわけではないのです。何かそういうことをしないと、ここに「更に、将来の外務員制度は専業的外務員に基礎を置くべきであるとの観点にたって、」と言ったって、実際上はまだされていない。試験をやったって、そんなものは専業外務員とはつながらないのですけれども、どっかにつながるワンステップをこの際前向きに検討してもらいたい。そういう人たちに対しては労働基準法によるところの諸条件なり失業保険なり、あるいはやはり労働者としての身分の確立をすると同時に、給与体系については、やはりかなりの配慮をするということになったときに、私はこの問題が一歩前に具体化されるのではないか、こういう判断をするのですが、大臣、いかがでしょうか。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの言うとおりですが、非常にむずかしい問題でございます。保険会社も専業外務員を養成するためにはどうすればいいかということに対して明治から長いこと検討しておるわけですが、どうもいま銀行局長が言いましたように試験をするというのですが、試験に通るようなのは、あまり外務員に向かないのです。これは全然逆な方向であります。これは非常にむずかしいのです。世界的に私も検討したことがございますが、確かに五十五万のうち三十万もかわる。理屈からいいますと、未亡人だとか、いろんな方々、特に町村会の議員をしておるとか、名誉職みたいなものをやっていない人は、なかなか勧誘できないといいますが、その人たちのやれるものは、あなたがいま言ったように親類縁者を回ればおしまいということになる。外務員というのは非常にむずかしい仕事でありまして、これは全く専門化ということは、渡幸吉さんが保険の外務員はどうなるかということを講演して回りました。私も話を聞きましたが非常にむずかしい。また、あのくらいの人になると何でもできる、こういうことになるわけです。ですから、一年か二年でもって契約をしたものは半分、こういうことになりますが、私は、いまあなたが言った労働条件とか、それから雇用の状態とか、また継続責任給とか、いろんな問題を加味しなけばならないと思いますが、やはり片手間仕事でもってやっておるということにある程度見切りをつけまして、やはり大学を出たような人たちで、外務員に向くような人を養成していくということを会社が積極的にやらないと、この問題はどこまでいっても片づかない。戦後の問題ではありません。戦前もそのとおりであった。でありますから、私はこれはやはりそういう制度、しかも私もいろんな選挙区の人たちから話を聞いたことがございますが、十ヵ月くらいは返せないのですから、十ヵ月以内の掛け金はやめて、最低掛け金を十ヵ月以上、こうすれば非常に延びる、継続する、こういう議論がありますが、そうなってしまうと契約率はうんと下がってしまって、国民大衆で零細な人たちは加入ができない、こういう障害があるわけです。ですから、いろいろな制度保険会社そのものも検討しておりますが、私はやはり保険業界としまして共同で——過当競争をやっておることよりも一歩進めまして、共同でやはり外務員制度というもの自体を抜本的に検討をして、そういうものに費用をさくならば、相当の投資をするということでいかないと、私はなかなか理論としては検討いたします、何とかいたしますと言いますけれども、この実際を前向きに転換させていくということは非常にむずかしいものでございます。でありますから、試験制度をするということよりも、外務員の実態というものを十分把握をして、外務員でもってずっと定着するようにするにはどうするか。身分の問題、先ほどちょっと中嶋君が御答弁をしましたが、継続率給与をずっとやっていくということになれば、固定給を上げるということよりもある意味においては非常に定着するということもあり得るわけです。でありますから、こういう専門的な問題も真正面から取り組んで、どうすればいいのかという問題はひとつ検討してまいりたいということを申し上げておきます。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 非常にむずかしい問題であることは私も十分了解をいたします。ただ、いまのままでは、おそらくこれはなかなか転機がこないと思うのです。だからこれはある時限を限って何かやってもらわないと困る。  そこで銀行局にひとつ資料を要求しますが、さっき申し上げた一年十ヵ月までの解約に伴う解約金の生命保険全体における一年間の金額を出してもらいたい。要するに保険者全体として一年間にかけたけれども解約になったもの、これは月がけも、あるいは年がけなら一回かけた分についてはどうなるかよくわかりませんが、要するにかけてそれが解約になったけれども返戻をしてもらえない金額の総計を一年間について、生保二十社について一ぺん出してもらいたい。これは相当多額の金額にのぼるのではないか。そのことは、それでは保険会社が得をしたかというと、保険会社は得をしていないわけでしょう。だからそこに問題があるわけですから、そこらの点については、これは非常に重大な問題でありますから検討をしてもらいたいし、同時にのんべんだらりとやっておったのでは解決はつきません。これは十年たったって、私はおそらく何らの進展を見ないということになるのではないかと思いますので、ここらはひとつ少しドラスティックにやはり考えてもらいたいし、特に格差がだいぶあります。いまの問題について、要するに五〇%と七〇%と二〇何%も差があるということは、少なくとも低いほうについては、この解約率の問題については、率直にいって何らかの適当な行政措置を必要とするのではないか。だって同じようなやり方をやって七五にとまっておるというのは非常にけっこうだと思うのです。努力が何らかされておるのだと思いますが、そういう努力をされておるところもおらぬところも同じというようなことでは、これは問題解決にはなりません。今度の歩積み、両建てでも成績が悪いところはともかく、店舗の開設も認めないくらいですから。これは同じような式でやはり解約率の高いところには行政指導上適当な措置をとるというくらいの少し強いかまえで、これらの問題の前向きの解決にひとつ努力してもらいたい。時間がありませんから、その次にいきます。生命保険についてのもう一つの問題点というのは、卜部君の質問に対して銀行局長もちょっと答えておりますけれども、時間がないのであれでありますが、相互銀行の仕組みの問題点というものを実は少し調べてみました。どうも形式上株式会社株主になれば株主総会に出られるという一つの道が開かれておりますし、取締役その他の選任、会社の重要事項については株主総会で発育することが制度上は認められております。ところが相互会社については、総代会が全部処理をして、一般社員はタッチすることが制度上できない仕組みになっておる。  そこで法律のほうから申し上げますと、保険業法の十二条でしたかね。十二条で「保険会社が法令、主務大臣ノ命令若ハ第一条第二項ニ掲グル書類ニ定メタル特ニ重要ナル事項ニ違反シ又ハ」云々ということで罰則規定一つあるわけです。その中で第一条第二項というのは、「前項ノ免許ヲ受ケントスル者ハ申請書ニ左ノ書類ヲ添附スルコトヲ要ス一定款ニ事業方法書三」云々こうなって、定款というものは言うならば法律の一部のようなかっこうに実はなっておるわけです。  そこで、この生命保険会社社員総代会に関する定款を見てみますと、ずっとこれは選挙によって行なうということが実は明らかにされておるわけです。そうして「社員社員総代を選挙すべき権利は各々1個とする。」ということで、社員についてはその権限を明らかにしておるわけであります。ところが、「社員総代の選挙に関する細則は、別にこれを定める。」とありまして、社員総代選挙細則というものがまたあるわけです。ところが、この社員総代選挙細則というものもずっと「選挙期日及び定数」それから「選挙権及び被選挙権」「選挙の方法」「選挙公告」「選挙査員長」「選挙委員及び選挙係員」「選挙場へ入場しうる者」「選挙権の行使」「投票の要領」等ずっと第一条から第十三条まで選挙についての規定が設けられておる。ところが突然として第十四条にいきまして、「指名による選出」十五条「推薦による選出」というものが出てくるわけです。これは定款が最初には昭和二十二年ごろにできたものでありましょう。細則が昭和二十二年五月二日の制定となっておりますから、そうなっておるのですが、一体この相互会社は総代の選挙を行なったことがあるのかどうか、これを一ぺん最初に伺っておきたいと思います。
  162. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 細則の例には、直接選挙の方法並びに推薦制による場合、指名による場合が書いてございますが、そのうちで直接選挙をしたことはございません。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから議論は少し簡単にしたいと思うのですが、この第十四条には、「第3条の規定にかかわらず、選挙場に入場した社員の過半数の同意があったときは、選挙に代え社員総代の指名を選挙委員に一任することができる。」これは一応同意があったということが第十四条のほうは確認ができます。ところが十五条は「前各条の規定にかかわらず、当会社は評議員会に相談し社員総代の候補者を推薦し、選挙権者の承認があったときは投票による選挙に代えることができる。」「前項の場合会社は官報並びに主要都市において発行せられる1以上の新聞に社員総代候補者の推薦に関する事項及びこれに対する異議申出の期間、方法その他の事項を公告する。」だから公告をしておいて、何にも言ってこなかったら同意をしたものとみなすのだ、こういうことになってきておるわけです。おまけに選挙でないと書いてある。「選挙に代え」ということになっておりますから、選挙ではない。そうすると定款のほうは選挙をやるんだと書いてある。選挙の細則だときている。「選挙に代える」ということになっていると、選挙ではないということで、これは法理論から見てちょっと私は問題があると思うのです。  そこでちょっと法制局が見えておりますから伺いますが、「選挙に代える」という表現は、少なくとも十四条、十五条、私がちょっと読み上げたものは選挙ではないのですね。「選挙に代える」と、こう両方とも書いてありますから、どうですか。
  164. 荒井勇

    ○荒井説明員 一番実態の面で問題があるのは……。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 私の言ったことだけに答えてください。
  166. 荒井勇

    ○荒井説明員 十五条の規定についてでございますが、その中では単純に「選挙に代える」ということは書いてありませんで、「投票による選挙に代えることができる。」こう書いてございます。選挙とは何であるかという本質に入りますが、それは選挙入団ともいうべき多数人が特定の地位につくべき人を選定する行為及びその手続を総称するものであるというふうに言われております。選挙は多くの場合は投票によって行なわれるということになっておりますが、諸制度をいろいろ通観してみますと、必ずしも投票によらないで、たとえば地方自治法の百十八条の指名推選による方法でありますとか、あるいは国会法の場合でも、多年の慣行先例等によりまして議長に一任する方法であるとか、各種の方法があるわけでございます。その意味で投票という方法にかえるというけれども、その本質はやはり選挙人団ともいうべき総社員という一団というものがある。その一団によって特定の地位につくべき人を選定する……。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がないからその辺でいいです。そこで、私は何も法律論だけを議論しているわけではないのだから、大体体系として見て選挙するように書いてあるわけだ。定款もあるいは細則も、十三条までずっと選挙の方法が書いてある。一ぺんもやらぬことを書く必要は初めからない。こういう方法でやりますということに定款がなっておれば、こういう定款をそのままほうっておる大蔵省がどういうことなのかということに実際問題としてなるわけですよ。しかしこの前私は生命保険協会の会長にそのことをひとつ聞きましたら、うちは社員が四百五十万もありますから選挙はたいへんだ、こういうことになっておる。ところが制度として見ますと、アメリカの制度を調べてみますと、アメリカでは選挙をやっているわけです。非常にたくさんの、やはり四百五十が、五百万でも制度として選挙をやっておる。やり方については問題がありますよ。それは時間がないから触れませんけれども、アメリカでは選挙をやっておる。私は相互会社というのは非常に民主的な形態だと思っているわけです。きわめて民主的な形態、しかし保険会社において、さっきいろいろ議論があったように、そのいろいろな内部留保について帰属は全部被保険者に返る仕組みになっておって、きわめて民主的な制度になっておるのであります。そこでただ一つ民主的でないのはいまの総代会の問題なんです。取締役会がきめたという評議員会というものは総代会の一部なんですが、それは大体推薦によって出た総代会の人がきめるわけだから、総代会と取締役会というのは交互に内部交流をしておって、何らチェック・アンド・バランスということにはならない。チェックするところが一つもない。取締役会が私はあなたを総代に任命します。そうして総代会が私があなたを今度取締役に任命します。両方でやっておれば、一つのワクの中だけでクローズされてしまって、ともかく外からは何にも問題が入らない仕組みに今度通常がなってきておるわけです。だからこれは私は、いまの株式会社でもそうではないか、株主が百万いるか、五十万いるか、十万いるか知りませんが、そんな人がみな出てこないじゃないかということですが、出ていきたければ、こちらのほうは出ていく道が開かれておる、株式会社のほうは。こっちは出ていきたくても道が開いていないのですよ、制度としてクローズされているものですから。これはやはり相互会社というものの一人は万人のために、万人は一人のためにというのならば、やはり私はそれなりの制度の改善あってしかるべきではないか。こんなやりもせぬ選挙について定款をつくらしておいて、例外規定だけしか使ったことがないというような定款をそのまま大蔵省が認めたりしておることは私は問題があると思うのです。方法はいいですよ。方法はいいけれども、総代選出の方法について、ひとつ私は保険審議会にもかけてもらいたいし、何らか民主的な法の制度として確立のできるような措置を講じてもらいたいと思いますか、大蔵大臣どうでしょう。
  168. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう御意見、しごくごもっともでございます。がしかし、改善の具体策ということになると、なかなかむずかしい問題でございますが、保険審議会に諮問をする等、慎重に考慮したい、こう考えます。これは、これと同じことは前に日本赤十字社の社員総代会をどうするかということでさんざん議論した問題でございます。ただ、私は本件につきましては、就任をしましてから、相互会社というものと株式会社というのは一体どういうふうにあるべきか、しかも将来の保険会社形態はどうあるべきかということを検討いたしました。その結果、保険会社の首脳部に対しまして、私のほうから、株式会社にしたほうがいいというようなことは申し上げられませんが、将来の形態はどうあるべきかということをあなた方自体が検討してほしいということを正式に申し入れてあります。それはどういうことかというと、あなたがいま言ったようなこと、形態は非常に民主的なようでありますが、ある意味において永久政権のような事実を露呈しておるわけです。でありますから、ある意味から言うと、理論とは違って、株式会社よりもより非民主的になる可能性が存在する、こういうことで、私は就任直後に、相互会社というものは戦後新しい形態として採用されたけれども、こういうものに対してより合理的にするにはどうあるべきかということをあなた方みずからひとつ正式な議題として検討してほしいということを申し入れてあります。
  169. 堀昌雄

    ○堀委員 検討してほしいといっても、なかなかむずかしいから、これもなかなか結論が出にくいと思うのですが、やはりどこかで結論を出してもらわないと、そういう制度上の矛盾を知りつつもそのままでいいということにはならないと私は思います。ですから、この点についてもひとつ御検討をいただきたいと思います。  生命保険の問題は以上にいたしまして、最後は損保の問題の問題点だけにちょっと触れておきますが、実は三十六年ですか、五年だったか、税制調査会において、損保の異常危険準備金についてはずいぶんたくさん積み立てられているけれども、火災の分については取りくずしがないから、ひとつこれについては他の準備金との権衡から洗いがえをしたり、いろいろなことによって異常危険準備金をあまりたくさん積めないような制度にしたほうがいいのではないかということで、実は税法等の改正が行なわれて今日に至っております。私も昨年実はちょっと議論をいたしました。そのとき実は高橋さんから、いまの準備金その他を含めての問題ですが、ただいままで保険審議会では募集の問題などを主としてやってまいりました、これからはそういう経理問題など相当こまかく突っ込んでやるということで、それを十分審議できる体制にあります、こういうふうな御答弁があったわけです。おそらくいまやっていただいておることだろうと思うのですが、しかし、少し分析をしてみますと、いまの契約者勘定、株主勘定の分け方というものについて必ずしもなかなか簡単にいかない問題も出てくると思います。ただ一つこのことだけは私は言えるのではないかと思うのは、税制調査会の資料を見ると、異常危険準備金というのは世界に例がなくて、日本だけだ、こうなっておるわけです。全くそうでしょう。しかしまた、日本は木造の家屋ですから、よその国と比べてそういう異常な大火の起きやすい客観的条件も一つあるということで、これはある程度やむを得ない。しかし戦後の状態を見ると、そうはいいながらもだんだんと防火建築も普及してきて、大火とはいっても、現在四百五十億くらい積まれておるのじゃないかと思いますが、そういう異常危険準備金を全部吐き出してしまわなくても、これは再保険その他の問題もありますから問題はないのじゃないかと思うのですが、ただ、日本の場合には地震その他実は不測の災害というものがもう一つあるわけです。ところが現在地震についてはあまり特約というかそういうことができない仕組みになっておるのじゃないかと思います。そこで、異常危険準備金の問題は、そういう一つの新しい段階、地震その他のようなものをも含めて新しい契約ができるというかっこうになるならば、これは被保険者側としてはそういう不測の事態に備え得るわけでありますから、そういう準備金があって、地震で家がこわれたり火災にあったときでも保険がもらえる仕組みになることは、日本に住んでおります者にとってはやはり前向きの問題ではないか、私はこういう考えがするわけです。だから、私も、現状においてはいま主税局のとっております税制の処置についてはある程度やむを得ない問題だと思う。要するに、そういうものに発展をしない限りは、火災だけに限定するならば、いまの異常危険準備金をもってしてもあるいは足りるのじゃないか。だから、制度上一〇〇%積めるものが実際は積めないような仕組みになっておるという点に制度上の問題としては多少異議がありますし、別に考えていい点があると思いますけれども、今後の問題として、そういう損保が地震等を含めての損害保険というものを考えるという時点においては、私は、それの見合いで異常危険準備金の積み立てについてはやや別の角度から処理する道を開いてもいいのじゃないか、こういうふうな考えを持つのですが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  170. 田中角榮

    田中国務大臣 異常危険準備金につきましては、御発言もございましたように保険審議会にいま諮問しておりますので、これらの結論を待って税制上の問題として検討したいということでございます。地震国でありますので、地震保険というのは長い間検討されてきた問題であります。簡易保険といわれた簡易生命保険等においても災害保険、地震保険というものをやらなければいかぬということも検討されてきております。大蔵省でも検討しておりますし、業界そのものにも検討を命じておるということでございます。がしかし、地震保険というものは非常に大きいものでありますので、一体保険会社がこの地震の損害に対してたえ得るのかという根本的な問題がございます。もう一つは、国の財政的給与措置とかそういうものとの関連があるわけでございます。でありますから、いま検討中でございまして、結論をいますぐ出せるということはございません。ただ、あなたのいま異常危険準備金制度との関連においても考えられるじゃないかということは一つの説だと思います。でありますから、現状をいま検討中と申し上げるわけであります。
  171. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうはちょっと時間もございませんでしたので、少しはしょって問題点だけにちょっと触れただけでありますから、きょう問題を提起いたしましたものにつきましては、日をあらためて時間のあるときに大蔵省側に資料等も十分要求をいたしまして、もう少し建設的に、しかし被保険者の利益が最大に守られ、そして民主的な運営によって問題が処理されるようなあるべき保険業のあり方ということを今後も少し論議をしてまいりたいと思いますが、本日は時間の関係もありますので、この程度で終わります。
  172. 山中貞則

    山中委員長 小山省二君。
  173. 小山省二

    ○小山(省)委員 前日に引き続き質問を続行したいと思います。  第二十四条の二の二項「第二十一条第一項の規定による登録申請書を提出した者は、当該申請書を提出した日から三月を経過しても当該申請に対してなんらの処分がされない場合には、当該登録を拒否されたものとして、国税庁長官に対して前項の審査請求をすすことができる。この場合においては、審査請求があった日に日本税理士会連合会が第二十二条第一項の規定により当該登録を拒否したものとみなす。」こういう規定があるわけです。私はこの条項を読んで非常に疑問に思ったことは、第二十二条で一体その登録を申請した場合に、それに対して拒否をした場合——登録を受理した場合には登録証を交付するけれども、拒否した場合にはそれを通知しなければならぬ、当該申請者に通知をする義務を第二十二条で負わしているわけです。したがって申請者は登録書をもらうか、それが受理されないという通知を受けるか、いずれか、何らかの形で通知を受けることになる。にもかかわらず三月通知が来なかった、これは申請者の怠慢ではなくて、申請を受理したほうの連合会の怠慢に基づく事項なんです。いいですか。その結果がどうなったかというと申請者が登録を拒否されたものとして扱う、こういうのです。通知をする義務を連合会に負わしているわけです。登録証書を渡すか、そうでなければこれは受理できないものとして通知をしなければならないと完全に義務を負わしているわけですね、そういう仕事をやるということを連合会に。さすれば通知が来なかったということは連合会の事務上の怠慢に基づくかいずれかは別として、申請者に何もこれに対する責任はないわけです。その責任のない申請者が拒否されたものとして取り扱われる、こういう規定になっているわけです。日本の人権というものが極度に圧縮された、制限をされたかつての戦時中においても、いろいろな届け書類を官庁に届けて、そして相当長期間にわたって何らの回答がない場合には、それは許可されたものとして扱ってよろしいという規定があった。戦後の新しい憲法のもとで人権というものが大幅に認められたような時期において、その申請者に何も罪のない、申請者の手落ちのないような届け出の事項について、それが三ヵ月相手の都合で、受理したほうの事務上の手落ちでもし来なかったとした場合に、それはもう完全に登録を拒否されたものとして扱わなければならぬ、資格審査委員会に不服審査法によって申し出をして争え、こういうきめ方をされている。これは私は申請者の権益というものは完全に無視されたことになると思うのですが、この条文を設けたそういう考え方についてひとつお伺いしたいと思います。
  174. 泉美之松

    ○泉政府委員 その点はいささか誤解がおありになるのではないかと思うのでございますが、お話しのように税理士の登録を申請いたしますと、先日申し上げましたように税理士連合会におきまして資格審査会を開きまして、そこで登録を拒否するかあるいは登録するかということの決定を行なうわけでございます。したがってその決定によりまして登録を拒否する場合にはその拒否の旨の通知をいたしますし、また登録をいたします場合には登録をいたしまして、税理士の登録を行なった旨を、またそして税理士の証票等を交付することになるわけでございます。ところが申請をいたしましたがいつまでたっても登録するとも言ってくれないし、あるいは拒否したとも言ってくれない。これでは登録を申請した者にとって非常に不安な状態が続くわけでございます。いつまでも通知を待っていなければならぬかというと、それでは困りますので、申請をいたしましてから三ヵ月もたってもそういった処分がなされないときには、自分は拒否されたものとして次の手段に訴えることができるのだということで、登録を申請した人の権利をむしろ保護するためにこういう規定が設けられておるのでございまして、弁護士の登録を行なう場合にもこういう規定は同じようになっておるのでございます。これはむしろ登録申請をする人の保護の規定でございまして、権利を侵害するといった性質のものではないのでございます。
  175. 小山省二

    ○小山(省)委員 それはちょっと考えが一方的じゃないですか。二十二条に義務を課しているのですよ。連合会に登録を申請した者はそのいずれか一つをしなければならない、受理して登録証を交付するか、拒否した場合にはその拒否したという理由をつけて通知しなければならぬ。是か否かの態度を明確に義務づけているのです。そうでしょう。さすれば何もしないというのは、これはどっちの罪なんです。連合会の罪でしょう。登録者の罪じゃないのだ。その手落ちはあげて、それは受理した連合会の責任になるわけですよ。それは法律上何も義務を課していなければ、通知してもしなくても、長年通知しないから当然当事者がいろいろな不便を受けることになる。少なくとも法律が是か否かの義務を連合会に課している以上は、そのいずれかをしなければならぬものがいずれかの何もしないでいたことが、その申請者を保護しているというが、申請者はこれによって、行政不服審査法によってあらためてその審査を請求する法律的な別な手段に訴えなければいかぬわけです。そうでしょう。また出すというのじゃないでしょう。こういう不服の審査法によってそういう法律的な手続を踏まなければいかぬ。そういうことをやらせる一体過失なり、責任なりが申請者にあるのなら私はこれは当然だと思う。そうじゃないのですよ。法律では二十二条にちゃんとそういうことを明文化しているのだ。これは連合会の責任なんだ。連合会の過失なんだ。何かしなければならないものを、さすればこれは申請を受理したものと扱うのが当然ですよ。一般的に過失の起こったことは、申請者に何もそういう手落ちがないとすれば、これは三月も放任しておいたのだから、当然受理したものとして、従来の慣例もそういうのがほんとうなんで、もしそれと違ったことを弁護士会がやっているとすれば、これは弁護士会の規則が間違っていると思う。常識上本人に何の過失もないものが、あらためてそういう行政不服審査法などの法律によって、そうして自分の正当性を主張しなければならぬような、そんな人権を無視されたことは私はないと思うのだ。むしろ連合会に処罰の規定を設けるべきですよ。当然なすべき義務を怠ったのだから、連合会がその責任をとることをむしろ法の上に明文化すべきものだ。私は理論としてはそれは当然だろうと思う。何も過失のない者が、どういう事情か事務上の手落ちで、そういう通知が来なかったということがかりにあったとすれば、それは当然申請者の責任に負わせるべきものじゃないと思う。重ねてひとつ見解を承りたい。
  176. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話しのように、税理士の登録申請をいたしましてから三ヵ月もの長い間、登録するか、あるいは登録を拒否するかということの決定がなされない場合はほとんど考えられないくらいでございまして、その間に処理が行なわれるのが通常でございます。ただそういう処理が行なわれないで、もし何らかの事情によって三ヵ月を徒過したという場合にそれではどうするかというのは、お話しのように三ヵ月を徒過したら登録されたものとみなすというのも一つのやり方でございましょうし、それからこの法律規定にありますように、拒否されたものとして次の手段に訴えて、登録の申請をしたということの目的を達成するもう一つの手段をとるということにするのも一つの方法だと思うのでございます。ただ税理士という国家的な制度登録のことでございますので、登録したということになりますと、それに基づいて税理士証票を交付され、それを得て税理士の業務を行なうことになるわけでございますが、しかし登録されたものとみなしても、税理士連合会のほうでそういう手続をとっておりませんので、実際上そういう効果を生じさせることができない。したがってそれは法文でそういう登録されたものとみなすと言っても、それは何ら次の手続がとれないことになりますので、どちらかというと登録を拒否されたものとして、そうして行政不服審査法によって訴えて、その手段に訴えることによって初めて登録を拒否するか、あるいは登録するかの処分をきめてもらうということが望ましいのではないか。したがって、弁護士の場合の規定あるいは税理士の場合の規定が、そういうふうに拒否されたものとみなすというのは、ほんとうにそこで拒否してしまうのだというのではなくて、拒否されたものとみなして、次の手段に訴えることによって登録するのか拒否するのかを明確に早くさせるのだ、こういう保証になっておるのでございまして、三ヵ月過ぎて何らの手段もとられないからそれはもう拒否されてしまったのだというのじゃない。次の手段をとる方法としてあるわけでございまして、それをお話しのように、それは申請者が何ら過失がないのだから、連合会のほうの責任なんだから登録されたものとみなしたほうがいいのじゃないかというのは、一つの御意見かとは存じますけれども、実効が上がらないと思いますので、このほうが実効的であるというふうに考えるのでございます。
  177. 小山省二

    ○小山(省)委員 実効の問題もそれは一つ考え方としてあると私は思うのですが、一体当人その者に何らの過失がない場合に、処罰を過失のない者が受けるというその考え方なんです。登録を受けたところで、登録はいつでも取り消されるのですよ。もしそれが正当な書類でなかったという場合には、一たん登録されたらその登録というのは永久不変なものじゃないと条文にあって、いつでも抹消できる。そういう申請の条件に当たってないものはいつでも処分はできるようになっているのです。ですから三月もたってそれは申請を受け付けたほうの側の責任においてそういうことがあったならば、当然その責任をとる意味において登録——その後そういう事実に反することならばいつでも取り消しができるのです。次の手段ができると言いますけれども、それはどんな犯罪だってできますよ。かりに犯罪を犯したって、その一審で次の方法がとれないようには書いてない。やはりその途中でまた次の訴える方法をちゃんと明示してあるのです。ですから第三者の過失によってあと訴える道がないなんということはあり得ない。ですけれども、この行政不服審査法なんという法律によって規定手続をとるということはなかなか容易なものじゃないですよ。ですからこういう場合における処置というのは、やはり責任のある立場の方がしょうべき性質のものなんです。ですから三月もの間通知する義務を連合会が通知しなかったならば、それは当然登録されたものとみなして、そしてその後において調査をして、もし事実に反することがあったらばいつでも登録を取り消すことができるわけです。そういうことが当然だろうと思うのです。これは十分にひとつ御検討願いたいと思う。どうも私はいまの局長お話しではちょっと納得ができにくいのです。それでは次に行きます。三十三条、これは税理士が税務を代行する場合における責任のたてまえからだろうと思う。自署あるいは自己の印を押さなければいけない。署名押印を義務づけている。しかしこれはその三十三条の四にありますとおり「第一項又は第二項の規定による署名押印の有無は、当該書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。」署名押印しましたことの有無は当該書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない、大体官庁の考え方というのはこういうふうになっておるわけですが、私はこの考え方にいま少し弾力性を持たしたらどうかという考え方なんです。なるほどその書類の効力に影響を及ぼすというところまで自署押印したものが効力を持つとは考えませんが、少なくとも自分がその書類に正確性、信憑性を自認して書いたとすれば、それをできるだけ重要視してやるという方向に持っていかない限り、私はその内容というものが向上してこないと思うのですね。自分が書いたものに絶対の責任を負えるのだということ、またそれを当局において認めていくという方向が今後におけるところの税務行政の向上になるのではないか。そんなものを書いたって判を押したって署名したところで、それはもう何もその効力自体、その書類自体の信憑性には影響ないんだという考え方、これは私は今後の税務行政を向上させる上においては決して好ましい方向ではないと思う。ですから効力を持つという意味ではないが何らかの形でそういう責任を帯びた書類というものは重要視してやる、これをできるだけ認めていこうという方向ですか、考え方、そういうものをこの制度の中に取り入れてもらいたい。このことを私は強く要望しておきたいと思う。  それから三十四条ですが、三十三条から添付制度に入るわけですが、三十四条「税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し第三十条の規定による書面を提出している税理士があるときは、あわせて当該税理士に対しその調査の日時場所を通知しなければならない。」これは今度の添付制度一つの特色といいますか、いわゆる当該税理士に対して調査の日時場所を通知しなければならぬ、こうなっておるわけです。これは私は法律で特に通知しなければならぬ。従来よりは一歩前進していると思いますが、むしろ責任をもってその書類をつくったという税理士に対しては、あらためて当該税務署なり係官が調査をする場合に、むしろそれに対する意見を徴するという制度を用いたらどうか。その添付された書類がついた……。租税に関する調査をする場合においては、それは官公署の当該職員があらためて調査をするぞ、いついつするといった通知だけでなく、こういうことが今後のこの添付制度を生かしていく私は一つの道だろう。やはり今度の案を見ますと非常に税理士にたくさんの義務が課せられている。その税理士にたくさんの義務を課する反面に、やはり税理士の職責というものを重要視してできるだけこれを登用するという考え方。したがってそういう書類が添付してある、それを調査する場合においてはその当該税理士の意見を徴するというところにもう一歩前進の方法を考えてみたらどうかというふうに思っているんですが、これに対する御所見をひとつ伺いたい。
  178. 泉美之松

    ○泉政府委員 まず先ほど登録拒否の点につきましては、これはひとり税理士法だけでなしに、そういった場合、たとえば行政処分を請求した場合に何らの処分がなされないといったような場合にどういうふうに行政の手続を進めていくかということについて、日本の行政不服審査法を中心とした体系はすべてそういった場合には拒否されたものとみなして次の段階へこうやって進んでいくんだという組み立てになっておりまして、したがって、ひとり税理士法だけでなしに、すべての法律がそういう傾向であるということを御了承いただきたいのでございます。しかしそれが行政のやり方として適当でない、したがってそういう行政不服審査法の体系を改めるべきだという御意見なれば、これはまた税理士法だけでなしに全体の行政の進め方の問題として考えなければならない問題であろうと思うのでございます。  それから三十三条の規定、これは従来税理士が税務代理をする場合におきまして、税務官公署に税務書類を提出する場合には署名押印するということになっておりましたのを、今回は単なる署名押印でなしに、その責任を明確にするという意味で自署して自己の印を押してくださいということにいたしておるのでございます。ただその自署押印をしたことが「当該書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。」と申しておりますのは、その自署押印がなかったからといって、たとえば申告書が申告なかったことになるということになってはたいへんでございますので、自署押印の有無にかかわらずその申告書は申告書として出されたものであるということには効果を及ぼさないということにしておるのでございます。しかしお話のように自署押印するということにして税理士の責任を重からしめると同時に、そういう自署押印のある税務書類につきましては税務署においてよく尊重してやっていくということが必要なことは申すまでもございません。しかしこれは法律制度としてそういうことをやっていくにはなかなか骨が折れますので、どちらかと申しますとそういうことは税務の実行におきましてそういう自署押印のある書類というものを尊重するたてまえでやっていく、そういう行政の慣行が、よき慣行が生まれるという方向に努力するのがいいのではないか、かように考えるのでございます。  それからなお三十四条の事前通知の点につきましては今回特別に改正をいたしておるのではないのでございますが、お話のように今回この三十三条の二の規定を設けまして、計算事項、審査事項等を記載した書面の添付制度を設けることにいたしたのでございます。これは結局税理士の方が納税者から依頼を受けまして申告納税する場合の申告書を作成する、そのときに申告書の作成に関して、計算した事項あるいは整理をした事項というものを書きまして申告書に添付していく、そういう書類の添付のある申告書については、税務官公署においてできるだけそれを尊重する方向で、先ほど申し上げましたようによき行政の慣行をつくっていくことが望ましいということでございまして、そのために三十五条のほうの規定におきまして、そういう添付書類がついております場合におきましては、税務署長あるいは地方公共団体におきまして更正決定をしようというような場合におきましては、その税理士に「意見を述べる機会を与えなければならない。」ということにいたしまして、そういった添付書類のついておる場合におきましては税理士の意見をできるだけ尊重するという方向でやっていこうということになっておるのでございます。まさにお話のような趣旨にできておるわけでございます。
  179. 小山省二

    ○小山(省)委員 三十三条の二、あるいは二の2に、いずれも「申告書に添附することができる。」となっておるわけです。したがって添付することができるのだから添付しなくてもいい。できるのだからしなくたっていいわけでしょう、これは。この添付制度が任意制である、自由だ。添付しようとしまいと自由だ。添付したものについては三十五条で多少のそういうものについての特典といいますか、意見を述べる機会を与える、こうなっておるわけです。私はどうもこういう字句を見るたびにその字句の中に何か国民に一方的にものを与える——できるのでなくそれだけの特典が当然、徴されなければならない、その添付した書類があるものについては。それを更正決定しようと、一方的に違ったと認定した場合には、その自署押印した書類が添付されたものは、その意見を徴さなければならないという義務づけをできないものか。機会を与えるというのですからとにかく一方的におまえにやってやるぞというような解釈なんです。同じ字句なら意見を述べる機会をつくってやらなければいかぬのだから、これはやはり義務づいてるんです。「意見を述べる機会を与えなければならない。」と書いてあるから、これはどうしてもその機会を与えなければならない。そうすればそういうことに対して意見を徴さなければならない。このほうがもっと私は字句の上において一そう明確になるような気がするのですが、どうもこういう字句を見るたびに何か恩恵的に天下り的なような表現のしかたが非常に多いですね。その責任を高く買ってやる、評価してやる、こういう意味での代償ならば、当然それは意見を徴さなければならない。今度は片方の課税しようとするほうの側が義務化してくるんです、その行なうことについて。それを恩恵的に与えてやるんだ、意見を述べる機会を与えるんだ、こういう考え方がどうもちょっと私は官僚的なような、ややもすると世上、官僚ということばが表現される、こういう字句の上に何かものを割り切れないような感じがするのですが、私はぜひ意見を徴さなければならないというふうに義務づけてもらいたいというふうに考えております。  それからなお三十五条によりまして、更正決定その他の処分に関しては、その結果を代理人たる税理士に報告することになっておるのですか、どうですか、その点について。
  180. 泉美之松

    ○泉政府委員 最初の三十五条の規定が「当該事実に関し意見を述べる機会を与えなければならない。」というのは官僚的な表現ではないかという御指摘でございますが、これはひとり税理士法だけでなしに、法律でだれだれに意見を徴するという場合には意見を述べる機会を与えなければならないという、これは法制局の問題でございますけれども、法文の構成になっております。と申しますのは、お話のように意見を徴さなければならないという条文にいたしておりますと、意見を申し出ていただけないならばいつまでたっても更正ができないということになるわけでございます。したがって、意見を述べる機会を与えなければならないということは、まさに徴税当局に対してそれだけの義務を課しておるのであります。しかし、意見を述べる機会を与えたけれども全然意見を述べなかった。意見を述べなかったら更正ができないかというと、それはちょっと困るわけでございます。したがって、法文はすべてこのような構成になっておるのでございます。したがって、それだからといって官僚的であるという御非難は当たらないと思うのでございます。  それからなお更正を行ないます場合、あるいは決定を行ないます場合には本人に対して通知するのでございまして、税理士に対して通知するという規定は設けられておりません。
  181. 小山省二

    ○小山(省)委員 税理士に対しては相当いろいろの条項の中で義務を課しておるわけです。したがって、税理士の権利というか権限というか、そういう面も対象的にできるだけ考慮して差しつかえない。なるほど納税者に通知すればそれで納税者からまた代理人に通知されると解すれば一応それでいいわけですが、できるだけ早くその納税者にかわって一切の仕事をしている代理人に通知することが好ましいわけです。したがって、当然通知を出すのですから、私は納税者と同時にその代理人に更正決定になったことを通知するということは、親切に越したことはないわけで、その程度のことは官庁の、役所のほうのたてまえからいって困難であるのかどうか、将来そういうふうなことを考慮される御意思があるかどうか、その点もう一度お尋ねしてみたいと思います。
  182. 泉美之松

    ○泉政府委員 税理士が納税者の代理として仕事をやっておるという場合におきまして、更正あるいは決定を行なうというときに、本人に通知するほかにさらに当該税理士に通知すべきかどうかという点につきましては、税理士会のほうからいろいろ御要望があることは私も承知いたしておるのでございます。ただ、こういう問題は税務署とそれから当該税理士との間のいろんな問題があるわけでございますが、その両者の間の信頼関係がうまくいって、両者が相ともに携えて適正な納税義務の実現に協力していくというような関係にあることが前提でございまして、そうでなくて、いまの自分は代理人なんだから代理に先に通知せよ、本人に通知しないでも代理人に通知しろということになりますと、はたしていかがであろうかというような点もございますのと、税務署のほうから本人に通知すると同時に代理人に通知するということは多少は手数でありますけれども、手数だからやれないというほどの問題はもちろんございません。したがって、そういった点につきましては今後なお検討すべき問題が残っておるとは思うのでございますが、しかし要は結局税理士さんとそれから税務官公署との間の相互の信頼関係が芽ばえていって、お互いがお互いの立場をよく知って、相ともに協力して適正な納税義務の実現に努力するというような体制になることがまず先決問題ではないか、かように考えるのでございます。
  183. 小山省二

    ○小山(省)委員 よく趣旨はわかるのですが、私は今度の税理士法改正によって税理士に対する義務という面が非常に重くなってきている。たとえば税理士の懲戒の効力の発生などは従来から見るとかなり強いわけです。認定されれば直ちにその効力が発生するわけです。そういうようにいろいろの点を拾ってみますと、税理士に対する義務は相当重く見られてきている。ですからやはり反面に税理士の職責をある程度高く評価してやって、できるだけ税務行政が円滑にいくように、私はそういう親心を持ってほしいと思うのです。そういう意味において、やはりその税理士に通知をしてやるということは、これは一つのプライドの問題で、その責任を持って代理をした立場から見ますと、それに対する決定を納税者から通告を受けて初めて承知するというのではなくて、むしろそういうことを代理人のほうが先に知って納税者に報告するというぐらいに私は税理士の立場というものは認めていいのではないか、そういう意味において、先に通知することも事実上困難でしょうから、同時に代理人と納税者に通知するというような親切さをぜひ大蔵当局において用いてもらいたいと思う。これは要望でございますが、いずれにしてもこういう法律はときどきその経済状態、時勢に応じて変更するわけですから、今後における改正にあたっては十分ひとつ考慮してほしいと思います。  次には四十条ですが、事務所の設置義務ですね。四十条の3に「税理士は、いかなる名義をもってしても、二個以上の税理士事務所を設けてはならない。」こう書いてあるのですね。説明書の中には、今後は税理士事務所は一ヵ所だ——これを一ヵ所にしぼるのは別な政令か何かできめるのですか。
  184. 泉美之松

    ○泉政府委員 税理士が仕事をする場合の事務所、これにつきましては、従来名称がきまっておりませんでしたので、今川税理士事務所と称するということにいたしますとともに、従来は二ヵ所以上の事務所を設ける場合には、国税庁長官の許可を受ければそれができるということになっておったのでございますが、しかしそういうふうに二ヵ所以上の事務所を持っておりますと、結局税理士の方が自分でその事務所のめんどうを見て事務員と接触を密にしながら仕事をやっていくということができなくて、ついそこにいる事務員まかせということになりがちでございます。そうなりますと、その及ぶところが、そのまかされた事務員がにせ税理士行為を行なうということにもなりかねないのでございます。したがって今回税制調査会の答申におきましても、税理士事務所は一ヵ所にすべきだということでございますので、二ヵ所以上の税理士事務所は設けてはいけないことにしたわけでございまして、一ヵ所に限るという趣旨がこの規定にあらわれているわけでございます。同時にその点につきましては、税理士連合会からそういうふうにしていただきたいという要望もございましたので、そうなっているわけでございます。それから、現在におきまして二ヵ所以上の税理士事務所を持っておられる方が若干名ございます。そこで、その場合におきましては経過規定を設けまして、原則として三年以内に、二ヵ所以上の場合には一つだけ残すように、他のものを閉鎖しなければいけない、しかし、当分の間国税庁長官が特に必要があると認めた場合にはそうでなくてもいいという規定が、附則の十項及び十一項に規定されておるのでございます。
  185. 小山省二

    ○小山(省)委員 その点で、原則として一ヵ所、特に国税庁の長官が認めた場合——その特に認めた場合という例外規定を設けるというその実例、こういう場合にどうしても二ヵ所以上の必要性があるんだ、したがって制度の上でその権限を長官の権限として残しておきたい、こういうことになるわけですが、その点についてひとつ御説明願いたい。
  186. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、従来は二ヵ所以上の税理士事務所を設ける場合は国税庁長官の許可を受ければいい、許可する場合の運営方針といたしましては、できるだけもとの事務所の近くにあって、その税理士の方が責任を持ってめんどうを見ることができるというような要件であったわけでございますが、今度の改正を行ないますと、その点がかわりまして、従来許可を受けて二カ所以上持っておったものも三年以内に一ヵ所に整理しなければならない。しかし特別の事情がある場合には整理しなくてもいい。その特別の事情があるというのは附則の十一項にありますように、その地域の納税義務者の数に比してその地域内の税理士事務所を有する税理士の数が著しく不足しているとき、その他特に必要があると認めたときというふうになっておるのでございまして、税理士の方の数が納税者の数に比べて少ない、あるいは全然その地域に税理士の方がいないというようなところもございますので、そういった場合にはその近くに税理士事務所を持っている方の増設事務所というものを認めるということでできておるのでございます。したがって原則はあくまでも一ヵ所ということでございまして、二ヵ所認めるということにはそういった特定の事由がない限りは認めないということになるわけでございます。
  187. 小山省二

    ○小山(省)委員 四十条の事務所の制限というものの考え方、制限をしなければならないというのは、当該役所のいろいろの取り締まり上、たとえばにせ税理士というか、そういう不祥事が起こる件、そういう点から事務所の数を制限する、あるいは納税人、つまり納税者自身の立場から考えるべき問題である、これを私は十分検討しなければならないと思う。事務所の数というものは、むしろ納税者、納税する人の便宜からまず考えていくべき性質のものである。事務所の数が多いからそういう不祥事件が起こるということは、関連性が全然ないとは私は言わぬけれども、それはやはり人の問題であって、事務所の数によってそういう不祥事件が起こるとは考えにくい。むしろいかにしたらば納税者の利益が守られるか、納税者の便宜がはかられるかというところに考えの基本を置いて、そうして税理士の事務所というものは制限をすべきかという考え方にいくのが私は本来の趣旨ではなかろうかと思うのです。これはいささか役所の都合というか、取り締まりの都合というか、そういう面が主になって、納税者の都合とか利益ということは従になっておる。たとえば弁護士だっていまのあれは二ヵ所持てるんでしょう。弁護士はやはり一ヵ所ですか——そうですか。私は弁護士のほうは二ヵ所持てるというふうに思ったのですが、それは私の間違いですか。  私はこの改正は、つまり事務所の制限をしたことは一体どっちの立場が守られているんだろう、納税者の利益、便宜が守られているのか、役所の取り締まり監督のほうを主体としての考え方かという疑問を実は持ったわけなんです。いま、長官が特別に認めた場合というそういう例は、都心部においてはさほどそういうことはないのです。しかし農村あるいは地方に参りますとどうしてもそういうことが必要性を感ずるわけなんです。ですからそういう場合に一ヵ所に制限するということによって納税をするほうの多くの国民の便益が守られないということは、私はたいへん遺憾だというふうに考えて実は御質疑をしたわけですが、そういう点に不便のないようにひとつ十分今後事務所の設置を許可する場合においてはお考えをいただきたいということを特に希望しておきたいと思います。  次に四十一条の二で、使用人の監督義務です。これはたしか答申の中にはなかったわけですが、今回税理士がその使用人あるいは従業者の監督あるいは必要な注意をしなければならぬという条項を設けたわけです。これは四十一条の二で、そういうことをしなければならぬと義務づけただけで、ほかに別にそれ以上のことは何か政令その他細則できめてあるのですか。ただ監督をしなければならぬということをうたっただけですか、その点をひとつ……。
  188. 泉美之松

    ○泉政府委員 まず先ほどの事務所設置の点でございますが、これはもちろん納税者のためというのが第一義でございまして、税務行政上の取り締まりの便宜という点は第二義的になることは申すまでもございません。税理士の仕事というのは弁護士の仕事と同じように、その御当人である税理士の方と納税者との間の信頼関係のものでございますので、したがってその事務所に行けばその税理士さんにいつでも仕事をお願いできるという体制が望ましいわけでございます。そこで、あまりたくさん事務所があって、いつもどこにおられるかわからぬというのでも困ります。したがってできるだけ一ヵ所にして、そこに行けばいつも御相談にあずかっていただけるという体制にしておく、しかしお話しのように都会ではともかく、いなかになりますと税理士の方が非常に遠い場合もございます。あるいはその当該町村に全然おられないといったような場合もございますので、そういった場合にはできるだけ増設事務所の許可をいたしましてやっていくということになるわけでございます。  それから四十一条の二は、お話しのように今回新設することとした規定でございますが、税制調査会の答申にはございませんでした。なぜこの規定を設けておるかと申しますと、これは税理士の方が仕事をやっていく場合におきまして、使用人その他従業員を使っていくということは当然あることでございます。そういう使用人または従業員を使っておる場合におきましては、その使用主として当然その使用人その他の従業員を監督し、その業務の遂行に欠けることがないように注意をしなければならぬことは申すまでもないと思うのでございます。しかし今回特にこの規定を設けましたのは、従来この税理士の方の使用する使用人が相当数多くなってまいっておる状況にございますので、そういう使用人について十分監督して業務の遂行の適正を期するようにしていただきたいという精神的な注意規定を設けたのでございまして、これに違反したら直ちに罰則というようなことはございません。そしてまた従来この監督その他従業員について届け出をするとかどうとかいったような事柄につきましては、四十九条の二の第二項の六号のほうにございますが、これは税理士会の会則においてきめることになっております。従来の税理士会の会則を見ましても、そういった使用人その他の従業員に対する監督規定がいろいろ入っております。したがって、これは税制調査会の答申にはない事柄ではございますけれども、従来ある程度行なわれておることでもございますし、それからまた特に罰則を設けないで、精神的訓示規定としてこういうことを設けておいたほうが、使用人としての税理士さんも、また使用される方もそういった点を十分注意していくことになって、望ましいのではないかというのでこういう規定を設けることとしておるのでございます。
  189. 小山省二

    ○小山(省)委員 その趣旨は私もよく了解しました。私しろうとですから、法律的な用語というものがたいへんむずかしいものだということを痛感しているのですが、これを読んでみまして、ここに出る、字句、たとえば使用人。一口に使用人、使用人とこう書いてある。戦前の考え方ですと、使用人ということばは別に何も感じないのですが、戦後における労使関係というものばきわめて対等な立場に立ってものを評価し、考えなければならぬ。こういう場合に使用人ということば——そういうことは法律上の用語として使うのでしょうけれども、感じ方というもの。従業者とか従事する人とかいうことの表現。たとえばこれは全然違いますが、名称というものを非常に重要視するということは、かつて監獄というものを刑務所に改めた。同じことなんだけれども、できるだけ表現をやわらかにしようという感じから、いろいろ名称というものは順次時世に応じて変えていくわけです。税理士が監督の義務を負うにしても、使用人という表現は何かとげとげしい感じがする。もう少し、税理士がその税理業務を行なうために従事する職員とか何か——そういう点は法律用語として従来別に問題なく使われている用語だと思いますが、何かそういう感じがしますので、できるだけかどばらないような表現をしてほしい。しろうとの要望ですが、一応要望しておきたいと思います。  それから次は、四十二条「租税に関する行政事務に従事していた国又は地方公共団体の公務員で税理士となったものは、離職後二年間は、その離職前一年内に占めていた職の所掌に属すべき事件について税理士業務を行ってはならない。ただし、国税庁長官の承認を受けた者については、この限りでない。」「国税庁長官の承認を受けた者については、この限りでない。」というこのただし書きはどういう場合において、法律で禁止したことを長官の考えだけで許可できるのか。そういうこのただし書きの事項に該当するような問題について、一、二の実例をあげてひとつ御説明いただきたいと思います。
  190. 泉美之松

    ○泉政府委員 その点につきましては第二項で、「前項ただし書の承認は、同項本文に規定する者において当該事件につき税理士業務を行なうことが当該事件に係る納税義務者の便宜を図るため特に必要であり、かつ、当該業務が適正に執行されることが確実であると認められる場合に限り、行なうことができる。」ということでございまして、従来は、公務員であった者が税理士を行なう場合の業務制限につきまして、離職後一年間は、その離職前一年内に占めていた職の所掌に属すべき事件については業務を行なうことができないということになっておりましたのを、今回は「離職後二年間」というふうに、その制限を強化するというのが第一点でございます。  もう一つは、従来はそういう「離職後一年間」の制限があったわけでございますが、ただし書きで国税庁長官が承認をしたらいいということになっておったわけです。ところがその承認の基準について法律的に規定が設けられておりません。取り扱いといたしましては、もちろんどしどし許可するというようなことはいたしませんで、今回規定をいたしましたと同様の内容の、つまりその地域に税理士の方がいない、したがってその人が税理士として仕事をしていくことになれば、納税者の方が非常に便宜を受ける、しかしまだその人は税務署をやめてから一年たっておらぬというような場合がありますので、そのときに許可をするということにしたのでございまして、過去の事例から見ましても、その承認の件数はごくわずかでございます。しかし法律的に見ますと、国税庁長官に全権委任したような形であるのは適当でなかろうということから、今回は第二項の規定を設けまして、その承認する場合の基準というものをきめまして、国税庁長官が承認する場合にはこの基準に照らして承認を与えることができるのだということにいたしたのでございます。
  191. 小山省二

    ○小山(省)委員 次は第四十五条懲戒に関する事項であります。「国税庁長官は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは、一年以内の税理士業務の停止又は登録の取消の処分をすることができる。」こういうふうに規定しておるわけでございます。この長官が一方的にそういう違反した行為を是認してその処分をすることができるという、これはきわめて一方的な処分で、むしろこれはそういう行為があったと認めたときは審査委員会にその処分を請求することができる、つまり審査委員会にそういう事実を報告して、審査委員会をして処分をさせるというような方向に向かうべきではなかろうか、こういうふうに考えています。お考えをひとつ伺いたい。
  192. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように脱税相談などをいたしました場合の懲戒のあり方は、国税庁長官がそういう処分をするということでございますので、国税庁長官に大きな権限を与えていることになるわけでございます。これは従来からもそうなっておったわけでございますが、今回の改正におきましては、先ほどちょっとお話がございましたが、懲戒の効力の従来は確定を待つということで、したがってそれが争いになって裁判に係属した場合には、裁判の確定を待たなければ効力を発生しないということになっておりましたのを、今回の改正におきましては——処分が行なわれてから裁判になりますと、十年もたって業務停止であるとかあるいは業務の禁止という処分が行なわれるわけでございます。その間十年間も大手を振って仕事ができるということは、徴戒という行政処分の手続として適当でないということから、処分の効力を直ちに発生させることにしたわけでございます。それとの関連におきまして、従来は国税庁長官が専決事項でそういう懲戒処分ができることになっておったのを、今度は国税庁に税理士懲戒審査会というものを設けまして、この審査会において懲戒処分について審査を行なって、国税庁長官はその審査会の意見を徴して処分を行なうということにしたわけでございます。したがって、国税庁長官の大きな権限ではございますけれども、それを懲戒審査会にはかるということによって独断におちいらないで、審査会の公正な意見を待ってそれによって処分を行なうということに計らっておるものでございます。お話は、税理士懲戒審査会に処分権を与えて国税庁長官が処分するのではなしに、審査会が処分権を持つようにしたらどうかという御意見、一つの御意見と思うのでございますが、行政処分でございますので、行政機関が行なわねばならない。その行政機関の長が国税庁長官であるわけでございます。税理士懲戒審査会というのをそういう意味での行政機関にするということがはたしていいかどうかということ、いろいろ検討いたしましたあげく、国税庁長官は懲戒審査会の意見を徴してやっていくということによってその処分の公平を保つ、そしてやり方としてはやはり行政機関の責任において行なうのが適当であろうというふうにいたしたのでございます。
  193. 小山省二

    ○小山(省)委員 私は今度の法改正一つの重点的な項目だろうと思っているのですが、一体長官と税理士の立場というのはどういう立場にあるか。税理士というものは納税者の利害を代行するわけです。常に納税者の利益というものが当然念頭に置かれておる、私はそう解して差しつかえないと思う。さすれば、反対の立場にある徴税者の長官の一方的な解釈の上に立って懲戒処分が行なわれるということは、これはきわめて非民主的な考え方だと私は思うのです。一体だれがそういう事実を認定するか。これは長官が一方的に認定できるようになっているわけです。今度の制度の中で審査会ができた。確かにその審査会の意見を徴するという、それはあくまで意見を求める程度であって、決定権というものは長官にあるわけです。形の上で幾分かその公正さと民主化をはかったということは言い得ると思うのですが、それによって真に納税者の利益が守られ、税理士の権益が守られたとは私は断じがたいと思う。ですから、幾分かは前進したということは言い得るけれども、これでは私はほんとうに国民の利益というものが守られたというふうには解釈ができにくいのです。ですから、これはあくまでそういう事実があったということを知るのはやはり徴税者の側ですから、そういう事実を審査会に報告して、こういう事実があったのだという一種の告発権といいますか、そういうものを役所のほうで持って、そして第三者を入れた審査会においてその事実を徴してそこで処分が行なわれるということならば、私はその効力発生の時期が従来と違った形において行なわれても、ややその処分のあれは公正を保っておるということを言い得ると思う。しかし一方的な考えで、人間の感じというものは、一たんそう思った感じというものは、なかなかそう簡単に第三者の意見を聞いて変わるものではない。ですから往々にしてその考え方が強く押し出される。処分を請求すれば、あるいは審査会にそのあれを付託すれば、自分の考えを貫こうという、それはもう当然なんですから、形式的には審査会の意見を徴されるでしょうけれども、実際上においてはなかなかその意見が重要視されないというのが私はほんとうだろうと思う。そういう点から考えまして、ことにこの効力発生の時期が改正されるということになると、この処分というものは税理士にとっては死刑の宣告ですから、これは私は国税庁のほうで考えるような簡単なものではないと思うのです。従来はそういう処分がなされてもそれに対して公式の裁判なりあるいは先ほど言った行政不服審査会なら審査会に出して、その期間は従来仕事がやれていたし、結果においては、一方的に処分されても第三者の機関によって最終的な判決があるまでは従前の仕事ができるわけですから、どういう形をとっていてもそれは別に問題じゃないと思う。そうでしょう。最終的の判決は第三者の機関によって判決されるのでしょうけれども、それまでは従来と同じように業務ができるわけですから。そうすると今度の場合においては国税庁長官の一方的な考えによって、直ちに本人に処分をされると税理士としての仕事ばできなくなるわけです。そうでしょう。あとあらためて裁判に訴えてもその間はもう仕事はできないわけですから、その仕事を停止されるのですから、これは従来よりもはるかに税理士にとっては重い処罰になるわけです。利害の全く相反する人の一方的な解釈によってその業務を停止されるということになるわけなんです。形の上では審査会ができたからきわめて民主化されたような、公平化されたような形は一応整った。一応は整ったけれども、あくまで処分権というものは、処分する権利というものは国税庁長官が持っているのですし、その意見というのは審査会の意見をただ徴するだけ、意見を聞くだけなんです。その処分をする決定権には何も影響はないのですよ。このあれでいきますと参考として長官が聞くだけなんです。そうでしょう。そうしてそれは直ちに効力が発生するともう税理士としての業務は停止されてしまう。これは見方によると、税理士のほうの立場から見ればはるかに重い懲戒規定になるわけです。従来のは、いま繰り返したように最終の判決が下るまで全然停止ができないのです。事業をやれるわけです。税理士としての業務を続けられるわけです。ここは立場の相違ですがひとつよくお考えをいただかなければならぬ点だと思う。ですから、これが審査会の決定によってその処分をなされるというのならば、直ちにその処分によって効力が発生してもこれはいわゆる第三者の立場において審査するわけですから、私はある程度税理士の側も納得できると思う。この点大いに局長のお考えとわれわれの考えるところと食い違っているわけですが、もう一度お考えを承りたいと思います。
  194. 泉美之松

    ○泉政府委員 こういう職業会計人といいますか、自由職業を行なっておる場合におきまして、それが法に反するような行為を行なった場合、いかにその処罰あるいは懲戒を行なうかということにつきましては、御承知のようにいろいろな例がございます。一つは弁護士法の例でございまして、これは弁護士会自身がそういう弁護士の中で法律に触れるようなことをした人がおる場合に懲戒を弁護士会として行なう、これが一つのやり方でございます。ただこれは弁護士だけの特例でございます。と申しますのは弁護士には監督官庁がない、そういう事情に基づく特異の例でございまして、それ以外の自由職業人の場合にはそういう監督官庁というのがあるわけでございます。したがって法律に反するようなことをしました場合には監督官庁が処分するというのが通例でございまして、公認会計士の場合におきましても同様になっておるわけでございます。小山委員は、国税庁長官がそういう処分をすることができるということになりますと、何か国税庁長官が一方的な判断に基づいて、——と申しますのは納税者の利益を擁護しようとする税理士と、それと対立的関係にある国税庁というふうにお考えのようでございますが、私も国税庁におりまして、こういった事案の審理に当たったことがございますけれども、決してそのような一方的な判定を下してやるものではございません。非常に慎重審議を尽くします。というのは、あとになって裁判になって、裁判所でこれがくつがえされるというようなことがないように気をつけてやらなければならないものでございますから、非常に慎重審議をもってやっておるのでございます。今度は、従来国税庁部内において慎重審議を行なっておったのを、さらに税理士懲戒審査会を設けまして、その審査会の意見を開くということにしたわけでございますので、さらに一そう慎重な手続になると思うのでございます。なるほど法文におきましては、意見を聞かなければならないということになっておるだけであって、審査会の決定どおりしなければならぬというふうにはなっておらぬではないかというふうに、法文の形の上だけから言えば、お考えになるのもごもっともでございますけれども、こういう審査会が設けられまして、国税庁のほうでこういう事実がございましたという報告をして、審査会の委員の方の御意見を求め、その御意見が出てまいりますれば、国税庁長官はその御意見を尊重するというのは、これはもう当然のあり方でございます。したがって、規定上必ず意見を聞かなければならぬのだというふうにしなくても、行政の実際というものはそういうことでうまくやっていけるものというふうに考えておるのでございます。  なお先ほど、今回懲戒処分の効力の発生を早めたことについて、税理士に対して非常に重いというふうなお話がございました。なるほどそういう見方もあろうかと思いますけれども、しかしこれは行政処分でございます。行政処分というのは、結局最後には裁判所の判決によって、最終的に決定されるわけでございますので、その裁判所の判決が決定されるまでは、たとえば一年以内の業務の停止をしたというような場合にも、行政処分だけでは何らの効力が発生しない、十年もたってから、裁判が確定したから一ヵ月なり二ヵ月の業務停止をするというのでは、いかにもおかしな姿になるわけでございます。したがって、そういう行政処分につきましては、行政処分の通知が相手方に届いたときに効力が発生すゑしかしそれに対して不服があれば、それも裁判所で争ってもいいが、効力自体は一応行政処分としては発生する。もしそれが裁判所でくつがえることになりますれば、それによる損害賠償とかいろいろな問題が出てくるわけでございます。したがって、国税庁が一方的にその事実を認定して軽々しく懲戒処分をやるというようなことは、とうていあり得ないわけでございます。懲戒処分をするには、それだけ手を尽くして慎重に事を運ぶつもりでございます。それによって、従来より以上に税理士の方が非常な苦痛を受けるというようなことはないものと考えておるのでございます。
  195. 小山省二

    ○小山(省)委員 局長説明員はわからないわけではないのですが、この審査会を設けたことと処分の効力の発生の時期、これはみんな関係を持ってくるわけなのです。したがって、確かに旧条文から見ますと、そういう審査会という制度を設けて、第三者が十分に審議をして、その意見を徴して長官が処分をするということですから、おそらく私が危惧したような問題は起こらぬと思う。起こらぬとは思いますが、その効力の発生の時期が従来と同じであるのなら、私は何をか言わんや。効力発生の時期は、長官が処分を決定した日からその効力が発生するのです。したがって異議を唱えるということは、実際問題としてはもはや手おくれということなんです。いま言うとおり、役所のほうからいくと、処分をしても、また正式な裁判に訴えて、五年も十年もかかって判決では、処分の意味がないということです。それは役所の立場から言えばそういうことが言い得ると私は思うのです。しかし、逆な立場から見れば、やはり自分の権利は最大限守りたいというのは当然だろうと思うのです。それは全部の人がそういう疑問を持つ判決とは考えないけれども、たまたまそういう場合があったとしても、そういう一方的な処分によって税理士としての事業を行なうことができなくなるわけです。そうしてこれが正式裁判に持ち出された場合においては相当の年月がかかる。こういうことを考えますと、いろいろな問題があっても、基本的な人権というものは守っていかなければならぬということなんです。従来裁判というものに対していろいろな形において批判はあります。判決が非常に長いとか、手数がかかるとか、費用もかかるとかいうことはあるけれども、やはりその精神においては、いろいろな問題、隘路があっても、基本的人権を守っていくということが最終的にあるから、そういう段階が設けられているわけです。懲戒処分というものは、役所にとっては、確かにそういうふうにしなければいろいろな点で支障があるかもわからない。税理士の基本的な権利を守るという立場からいけば、国税庁長官の一方的な処分によって直ちにその効力が発生するということは、その権益は守られない、一方的な処分を強要されるというふうな解釈が必ず行なわれると思うのです。ですから、そういう解釈がないとするなら、やはり国税庁のほうで一歩譲って、いま言ったような税理士の処分をしても、何年もやられたのでは困るでしょうから、効力発生の時期は早めても、その処分のし方というものは他から一点の非難も受けないように、要するに、第三者によってせっかく審査会を設けるのだから、もしそういう事実があり、処分しなければならぬということならば、堂々とそれは審査会に、長官は長官の立場で言い、税理士は税理士の立場で主張して、初めて審査会が下したその処分について直ちに効力を発生する、こういうことでなければ、私は役所の考え方だけではなかなか納得ができにくいと思うのです。効力発生の時期が従来どおりなら、審査会ができたことは非常に民主的です。前進だから非常にけっこうだというふうに考えております。そういう点でどうもなかなか納得がしにくいように思うのですが、もう時間もきましたそうですから、一応質問はこれで打ち切らしていただきます。
  196. 泉美之松

    ○泉政府委員 ちょっと申し上げておきますが、小山委員のお話のように、行政機関のやることでございますから、全然誤りがないということはもちろん保証できませんけれども、先ほどからるる申し上げますように、お話しのとおり、税理士の懲戒処分を行なうということは、ひとり税理士個人のみならず、その家族の方にとりましても非常に大きな問題でございますので、国税庁は従来から非常に慎重な手続をとっております。また今後もより一そう慎重な手続をとることになるわけでございます。と同時に、一方的に処分するのではございませんで、この四十七条の第六項の規定にありますように、そういう処分をするときにはあらかじめその税理士に弁明の機会を与える。そうして税理士としては、こういうのでやったのであって、脱税相談にならないというような弁明の機会を十分与えました上で、審査会の意見を徴して処分をするわけでございます。そして先ほど申し上げましたように、こういう審査会ができますと、その意見どおりしなければならぬということには法文上はなっておりませんけれども、実際上はその意見を尊重してやっていくということによって手続は非常に慎重に行なわれる。したがって税理士の方が御心配になるような事態は起こらないであろうというふうに考えておるのでございます。ただこれは立場が逢いますので、税理士の方としてみれば、いかにそういっても自分らとしては不安だという面があるいはおありになるかもしれませんけれども、しかしこれは懲戒審査会を設けましてその実行によってそういう御心配がないということを表明していくよりほかはなかろうと思うのでございます。
  197. 山中貞則

    山中委員長 次会は、明後十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十九分散会