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1964-06-09 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月九日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       伊東 正義君    岩動 通行君       大泉 寛三君    大久保武雄君       奧野 誠亮君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       渡辺美智雄君    赤松  勇君       卜部 政巳君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房         財務調査官)  中嶋 晴雄君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 六月九日  委員小松幹辞任につき、その補欠として赤松  勇君が議長指名委員に選任された。 同日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として小松  幹君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月六日  旧海軍文官退職賞与金支給に関する陳情書  (第四九六号)  同(第六四二号)  公認会計士法の改正に関する陳情書外四件  (第五二四号)  外国人旅行者に対する免税物品販売手続き改  善に関する陳情書  (第六四三号)  農業用揮発油免税に関する陳情書  (第六四四号)  公衆浴場業に対する所得税法人税及び相続税  減免に関する陳情書  (第七二六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公認会計士特例試験等に関する法律案内閣提  出第一五五号)  税理士法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)  保険業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一三号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  公認会計士特例試験等に関する法律案税理士法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。有馬輝武君。
  3. 有馬輝武

    有馬委員 資料お願いしたいと思いますが、大蔵省のほうで、政務次官にこの際お願いをいたしておきたいと存じます。が、昨年度の農林漁業金融公庫の十億以上の融資先と、それから、最近五ヵ年間における同公庫総裁、副総裁並びに理事異動状況について、その行き先、それから前歴の概略、これを資料にして当委員会に御提出をいただきますようにお願いを申し上げたいと存じます。
  4. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 ただいまの資料につきましては、できるだけ早く提出いたすようにいたします。
  5. 山中貞則

  6. 平林剛

    平林委員 きょう私は、国税庁職員配置転換の問題につきまして、若干当局のお考えをただしたいと思うのであります。  国税庁の、国税職員配置転換は、他の諸官庁に比べまして、その規模が大きいということ、また、その回転率がたいへん早いということは、常識的に私ども承知いたしておるわけでありますが、この問題について検討してみますというと、毎年のように、国会で歳入歳出予算が可決されたあと、新年度の徴税事務が新たに始まる六月から八月にかけて、国税庁定期異動が始まるようでございます。その規模も一庁十一局五百四の税務署にまたがって、税務署職員五万人のうち約三分の一、一万二千人から一万三千人の配置転換または職種転換があるという話を聞いておるわけでございます。こういうような大がかりな国税職員配置転換、また比較的に広範囲に行なわれるという理由はどういうところにあるのでございましょうか、その目的、理由などにつきまして、長官の御見解を示してもらいたいと思うのであります。
  7. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまお述べになりましたように、大体国税関係では七月に年に一回の定期異動を行なっております。その規模もただいま御指摘になりましたように、大体三分の一近くが配置がえをしているわけでございます。そこで、その理由と申しますのは、戦前から国税については、こういう現象があったようでございますけれども、やは税の賦課徴収という仕事をやっておりますと、長年同一の税務署におりますと、どうしても顔なじみになる、また、知り合いになるというようなことで、やはり仕事がしにくい、やはり二年なり三年に一回所を変えたほうがそういう気がねなく仕事ができる、こういうような理由によるものでございます。
  8. 平林剛

    平林委員 そうすると、この国税職員配置転換というのは、職員の側のほうの希望でございますか。
  9. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 必ずしも職員側希望ではございません。やはりわれわれ当局といたしましても、そういう事情を推察いたしまして異動を行ない、また一部職員の中にも、やはり適当な時期にはかえてもらいたいという希望があることは事実でございますが、しかし、一般的に言って、職員側が全部望んでおるというふうには、私は考えておりません。
  10. 平林剛

    平林委員 税務行政というものが直接納税者にぶつかって仕事を行なう事柄だけに、顔なじみになったり知り合いになったりすることは都合が悪いということで、むしろ管理者の側から判断して、かえたほうがよいだろうということから、こういう大がかりなことをおやりになると私は理解をしたわけでございますけれども、どうなんでしょうか、そういうことをせないと仕事の上においてたいへん困るというような現象を幾つかあなたとしてもお感じになって、従来から行なわれていることでもあるから引き続きおやりになる、そういうことが適当である、こう御判断になっておるのでしょうか。しからば、そういう具体的な例について、どういう現象としてあらわれているかについて説明が必要だと思うのですが、この点はいかがですか。
  11. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私は、この配置転換につきましては若干意見を持っておるのでございまして、必ずしも従来やってきたことをそのまま惰性的に大がかりな配置がえをする必要があるかどうか、その点はかなり疑問を持っております。やはりその部署部署に応じて、たとえば内部事務をやっておりますような部署におる職員でございますと、必ずしもそうひんぱんにかわる必要もないのじゃないか、あるいは僻地とか離島とかそういうところでは、やはり最大限二年くらいでかえてやらなくちゃいかぬ、そういうような具体的な例はございますけれども、しかし一般的に言って、やはりできるだけ配置がえの幅を——幅と申しますか、層を狭くして、やはり職員生活条件に相当な影響がございますので、できるだけこれを小さくしていく。従来のはずみもございますので、一挙には参りませんけれども、そういうふうに努力をいたしておるのでございます。
  12. 平林剛

    平林委員 その点なのですけれども、長官としては一つ意見を持っておるというお話でございまして、この大がかりな配置転換が現在の徴税行政の中で、必要を全面的に認めないわけじゃございませんけれども、なお検討してよい点があるのではないかという心証を私は持っておるわけでございます。そこで、いまお話になりましたように、長官としての御意見はある、けれども国税庁としてこの配置転換につきまして、ある程度基準というようなものをお持ちなのでしょうか。つまり最高責任者がおかわりになると、いやおれは意見を持っておるということで、毎年これだけ行なわれる異動について基準を持ち合わせませんと、その最高責任者判断によって、毎年のように違ってくるということであってはならぬ、また長年こういう問題が行なわれている以上は、一応一定のルールといいますか、一定基準というようなものがおありになって決してふしぎでない、そう思います。そこで、おれは意見を持っておるということでなく、国税庁として何かこれに関する一定基準というものがないのでございましょうか。私は、その基準を御説明いただければ、その次の問題に移ってまいりたいと思うのですが、その基準をひとつお示しいただきたいと思います。
  13. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 国税庁といたしまして特別にきめた基準というものはございません。要は、御承知のように、一年たちますとある署では欠員が生じ、また定員の再配分をしょっちゅう行なっておりますので、ある署におきましては過員が生じます。そこで職員の実質的な稼働率が大体平均的になるように、過員局署から欠員局署に人を移していく、これが基準といえば基準でございますが、そういう考えでやっております。また個々の人を動かします場合には、やはり何と申しましても適材適所ということを限目にして異動を行なっておるわけでございます。
  14. 平林剛

    平林委員 この配置転換の問題につきまして、予算委員会において議論がされたことがございます。昨年の二月二十五日の予算第一分科会において、その記録が残っておるわけであります。このときもこの問題が取り上げられまして、田中大蔵大臣が次のように答弁をされております。「税務職員が非常に努力をしておられることに対しては深い敬意を払っております。税務職員が求められることのみ多くして与えられないということに対しては、私も遺憾と存じておりまして、できるだけこれが安定、優遇に対して施策を行なうべきであるということで検討を進めておる」これは直接この問題には関係ございませんけれども、次いで「もう一つは、税務署職員職掌柄、一年交代、長くとも二年でもって、同一任地に長く置かない、こういうことでもってどんどんと各地方を回しておる。こういうことが一体いいのかどうか。そうしなければ税務署のいわゆる姿勢を正せないのか。こんな信用しないようなことで一体いいのか。」「そうしなければほんとう税務署職員というものの規律は守れないのか、もっと真剣に大蔵省自体国税庁検討すべきである、私はそういうことを言っております。」こういう答弁があるわけでございます。これは先ほどお話しになりました、国税庁長官が私も一つ意見を持っておるということと、大体同じような構想を大臣としても抱かれておるということがわかるのであります。  そこで、昨年予算委員会におきましてこの問題が指摘されたときに、大蔵大臣は、こういう形で検討をするように言っておるというお話でございますので、ことしの配置軽換にはその意向が従来とは違って反映さるべきものと私は期待をしておるわけでございます。この配置転換におきまして、国税庁長官としては、従来にない、いま議会で議論をされました点が具体的にあらわれるという点におきましてはどうであろうか、私どもに対してどういうふうに御説明をいただけますか、この点についてお考えを承りたいと思います。
  15. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私は、ただいま御指摘になりました昨年の二月の予算委員会大臣答弁をしておられますのと同じ意見を持っておるのでございまして、ことに住宅をかわるような場合には、やはり相当考えて、子供の学校であるとかあるいはその人の勤務地住宅等の問題がございますので、やはりよく考え異動をしなくてはいかぬ、こういうことで、先ほども申し上げましたようにできるだけ異動の幅を狭くするようにということを各局指示をいたしております。ただ遺憾ながら、若干は転勤を要する異動というものは減ってきておりますけれども、特に激減するというところまではまだ至っておりません。今後ともそういう点については十分注意をしながらやってまいりたいと存じます。
  16. 平林剛

    平林委員 国税庁として配置転換基準はないというお答えがございましたけれども、基準がないということはいかがでしょうか。何か一応の目安というものをつくる必要があるのじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  17. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまのところは、先ほど申し上げましたように基準というものを特につくっておりません。と申しますのは、各局によってまた各地の署によって事情が非常に異なります。たとえば具体的に一例を申し上げますと、東京でございますと一時間から一時間半というのは普通と申しますかやむを得ないという感じでございますが、いなかにまいりますとこれは相当離れておる、遠いというような事情もございまして、なかなか一定基準というものはむずかしいと思います。それからまた宿命等にいたしましても、わりあいに宿命の整っておるところと、公務員宿舎なり民間宿舎の借り上げが非常にむずかしいというところ、いろいろございまして、一定基準というものはなかなか立てにくいのじゃないか。要は職員の実質的な稼動率が平均化するように、そういう趣旨で毎年一回見直していく、こういうことになっているわけでございます。
  18. 平林剛

    平林委員 いまあなたがお述べになったのは、主として職員の待遇というか勤務条件変化について主体を置かれて、基準ということの困難なことをお示しになったと思うのであります。私いま申し上げておるのは、もちろんそれがこれから議論をしてまいりたいという点でございますけれども、その以前に、国税庁としてこれだけ大幅な定期異動ほんとうに必要であるかどうかという角度から考えて、何らかの目安というものが必要でないだろうか、またそういう方向が示唆されているのじゃないか。たとえば事務所の中においてこういった問題についてはそれほど必要がないが、こういう場合はこうだとかというようなものを御検討になっているべきはずではないか。したがって、そういうものはないかということを主としてお伺いしておるわけでございまして、あなたのお答えになっているのはたいへんけっこうだと思うのすけれども、職員労働条件を中心に宿舎とか通勤だとかいうお答えでございます。私はもっと大局的に見て、そういう基準国税庁として必要ではないか、少なくとも従来大異動が行なわれていたということは、今日の大蔵大臣考え方からいって、またあなたのお気持ちからいって、これだけのものが必要かどうか、そういうことをどうも必要以上にやっているのじゃないかという印象もあるものですから、そういった問題について国税庁としても検討なさっているか、しからば基準について何かお考えになったかということをお尋ねしておるわけでございますが、その点はどうなんですか。そういう基準は必要ないかどうかということでございます。
  19. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 できるだけ大幅な異動をやめて、必要欠くべからざる異動に限っていくということが根本的なわれわれの考えでございます。しかしながら、御承知のように大都市ごと東京、大阪、名古屋というようなところには納税者なり課税対象というものが最近急激に集中をいたしております。しかるに一方、現在の職員配置税務署配置というものは、まだ農業所得が相当の比重を占めておった時代の配置をいたしております。したがって、できるだけこういう時勢の推移に合わせて、納税者なり課税対象の集中していく速度にあまりにおくれることのないようにやはり職員異動というものを行なっていかなくてはならぬと思います。たいへん職員にとっても迷惑でございますけれども、やはり必要最小限度異動はどうしてもやむを得ない。  ただいまの基準というお話でございますが、これはむしろ外的な条件によって基準と申しますか——基準ということばはどうかわかりませんが、外的な条件によって、われわれの配置がえ、異動というものが従属的に受け身的に行なわれていくという以外に、特別に庁のほうで何か一定の尺度をつくってこうやる、ああやるというのは、ちょっと困難かと思います。
  20. 平林剛

    平林委員 そうすると、いままでのやりとりで、いま行なわれておる国税庁の三分の一規模経度異動というものは必要最小限というふうに理解されるのですが、私どうもそれを越えておるように思いますし、また国税庁の今日までのいろいろなお答えなどを総合してみますと、できるだけこれは狭めていきたい、そしてまた従来の慣行としていろいろなはずみというものがありますね、そういうものは少なくとも二年か三年くらいの間に縮めていきたいというような御意向のように承ったのですが、必要最小限というふうにはちょっと受け取れない点があるわけであります。ことしなどはどうでしょうか。そのはずみはやはりとめることができないというお考えでまいりますか、それともいま方向として示唆されたような方向必要最小限異動にとどめるように努力していくというお考えでございますか、その点はいかがですか。
  21. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ちょうどこの七月の異動期を目前に控えております。私は各局指示をいたしまして、職員異動の幅をできるだけ小さくしなさいということを前々から言っておるのでございます。たとえば署長級にいたしましても、従来一年くらいでかわっておった例も相当ございます。一個所あくと順繰りにエスカレーター式に上がっていくというようなかっこうでひんぱんに異動が行なわれておりましたが、これも原則として二年以下でかえてはいけない、また一般の職員人たちに対しても、それ以上に長い期間、希望があればまた別でありますが、できるだけ異動の幅を少なくするようにという指示をいたしておるのでございます。しかしながら、遺憾なことには先ほど申し上げましたような外的な条件がございます。東京あたりは昨年、一昨年ともにほかの管内から職員の方々を出張応援をさせておるような状況でございまして、こういうような状況のもとでは、やはりある程度異動はやむを得ない。ことにA署からB署に行ってまたA署に帰すというような意味のない異動は絶対にやらないように、しかしながら外部の条件変化に応じて課税の公平を期する上からどうしても行なわなければならないような異動、こういうものは必要やむを得ないものというふうに考えておるのでございます。
  22. 平林剛

    平林委員 国税庁配置転換規模があまり大き過ぎるし、いままでの記録検討してみますと、一つ慣行となってはずみがかかっておるような点もございますから、必要最小限を越えた形の異動になっておるのではないか、その結果がいろいろな意味国税庁職員心理状態にも影響を与えているのでないかという点を考えるものでありまして、ぜひいま質疑応答がございましたような方向で善処をしてもらいたい。そうしてやはり私は税務署配置転換についても、そのために必要な基準というものをお持ちになる必要があるんじゃないか。基準というものをお持ちにならぬから結局必要最小限を越える異動という形の傾向を押えることもできないじゃないか、こんなことも考えます。ですからそういう意味では基準をお持ちになることが適当であると思うのでございます。  それから同時に前段でお話がありました、同じところにおると顔なじみ知り合いができて仕事がやりにくいというお話がございましたけれども、もしそれが悪いことを誘発するのを防ぐという意味でございましたならば、そうした問題について何かチェックするということをどうお考えになるかという点が問題になると思うのでございます。この点はどういうような処理をなさっておるのですか。
  23. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私は同じところに長くおると、いまの非行を誘発するということについては、それほど因果関係はないのじゃないかと思っております。やはり何といっても長くおればそれだけ職員心理として、仕事がやりにくくなるという点が主でございまして、非行そのものとは直接は関係がないと思います。やはり非行事件は遺憾ながらございますけれども、これは長くおらなくても悪いことをする人はするのでございまして、この点については仕事の面で相互牽制の方法をとっていくとか、あるいはよく管理に当たる人が事務内容を見て、精査して、そして監督、指導をするとか、あるいは一般的に職員道義心を高めるように施策をとっていくとか、そういうことが非行対策としては重要な点でございまして、そのために転勤をするということは、必ずしも意味がないような気がいたします。  それから先ほど基準の問題でございますが、これはいままでのところは持っておりませんが、何かそういうものができるかどうか、そういう点はひとつ研究をいたしてみたいと思います。
  24. 平林剛

    平林委員 そこでこの配転につきまして、今度は職員の側からいろいろ問題点があると思うのであります。この規模が大きいために、全般の税務行政に携わる職員生活あるいは勤務条件に密接に結びついておるということは常識でも判断できるわけであります。先ほどお話がありましたように勤務時間、通勤の時間の問題もございましょう。また住宅の裏づけがあるかどうかということも大きく響く問題であります。同時に健康、つまり常にそうした保健の面についても考慮してやるというのは、上司として当然の配慮でございますし、いろいろ職員の側からいたしますと、今日の税務署配置転換規模が大きいために、毎年のように極端に言えばそれに大きな関心を持ち、おそれを抱くということもないわけじゃないと思うのですね。そこでできるだけ職員希望というものを反映させる配置転換というものは必要である。この職員希望国税庁責任者としてはどうして反映するように努力をしておるか。この点について今日までの状況お話いただきたいと思うのであります。
  25. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 職員異動は公務上の必要によって行なうものでございますが、ただいま委員から御指摘ありましたように、それにしてもできるだけ職員希望をかなえさせるということは、これは大いに必要だと思います。従来から国税庁といたしましては毎年一回定期身上申告書というものをとっておりまして、それにはどういう仕事の種類を好むか、あるいはどういう勤務地希望するかというようないろいろな希望条項を書いてもらっておるのでございます。それからまた異動前には、その身上申告書内容異動を生じた場合にこれを修正、補正させるということも行なっておりまして、私たちは大体この身上申告書で本人の希望を察知できるものと思っております。また異動に先立ちまして署長内申をとっております。局と署長と面談をして、個々職員異動について相談をいたしておるのでございます。もちろんこの希望を反映させるということは必要でございますけれども、御承知のように、やはり職員希望する署というものは、えてして固まっております。希望しないところはだれも希望しないし、希望するところはうんと集中されるというようなことで、必ずしも職員希望そのままを受け入れるというわけには参りませんけれども、できるだけそれに近いように努力をいたしておるわけでございます。
  26. 平林剛

    平林委員 その身上申告書あるいは署長内申等を通じまして、職員希望を反映しておるというお話わかりましたけれども、あなたは、全般的に総括してどうでしょうか。どの程度の割合で希望を反映しておるとにらんでおりますか。お話のように、だれでもいいところに行きたいという希望はございますから、第一志望というのが必ずしも一〇〇%というわけにはいかないという事情は、私らもよくわかります。しかし第二、第三という志望順位に従って、おおむねどの程度職員希望は達せられているものと思うとお考えになりますか。またそのお考えの基礎はどういうものであるかということを聞かしていただきたいと思うのです。
  27. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 どの程度ということをはっきり申し上げかねますけれども、私は大体において希望に沿うように異動が行なわれておるものと信じております。しかしながら、中には例外的にあるいはその希望に沿い得ない場合、たとえば賦課に回りたい職員が徴収に置いておかれるとか、あるいは都会地を希望しておりながら僻地に回されるとかいうような者が例外的にはございますけれども、しかし大体においては希望そのままあるいは希望に近いところに異動が行なわれておると信じております。
  28. 平林剛

    平林委員 長官の確信ということを別に疑うわけじゃありませんけれども、結局最高の立場におりましてそう思うということの中には、私必ずしも実情に沿わない面もあり得ると思うのであります。そこで、この配置転換を行なったときに、職員希望がどう反映されておるかという確証を得るということが必要である。ところが私率直に申し上げれば、たとえばいま身上申告書が出されておる、それに基づいていろいろ配転が行なわれ、希望の達せられた度合いというのは、いろいろ個人によって違うでしょうけれども、どういうぐあいに結果はなっておるかということを、ほんとう言えば身上申告書と比較対照して調査すれば出てくるはずだ。しかし何万人もいるのをそこまでやるということは容易じゃないですけれども、そのくらいのきめのこまがいものがあって、私にいや大体希望はこういうふうになっておりますと言うならばようございます。しかしおそらくそういう資料というものはないのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  29. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 遺憾ながら私たちのほうでは、身上申告書と実際の異動とをあとづけてみて、その何割が身上申告書に述べられておる希望どおりに配置がえが行なわれたかという数字は持ち合わせておりません。地方の小さい局でありますと、そういうあとづけをしたものがあるようでございますが東京、大阪、名古屋というような非常に大きな局におきましては、遺憾ながらそういう面の資料はまだできておりません。
  30. 平林剛

    平林委員 そうであろうと思うのであります。またできればそういう点まで行き届いた措置をおとりになるのが私は長官として人事を管理していく上においての非常に重要な役割りであろうと思うので、できればそうした問題について検討なさるということが必要ではないか。特に大幅におやりになっておるだけに、長官たる者、絶えず職員の気持ちに接して徴税行政をやってもらう。特に困難な立場にある職員でありますだけに、私はそのぐらいの親心というものがなくてはならぬと思うのであります。したがって、どの程度希望が反映されておるかということは絶えず精査なさるという努力を払ってもらいたいと思います。しかしなかなか大がかりの仕事でありますから、どういうふうに認定するかということもむずかしいと思うので、これは一つの形としてそれが望ましいのですが、逆の形としてそれをつかむ方法はあると思うのです。たとえば配置転換を行なうときに、ある程度事前に職員お話し合いをして意思疎通をはかるということが一つあると思います。もう一つはそれがなかなか行き届かない場合に、苦情処理というような機関を設けられまして、そうしてそこの苦情処理にあがってくるものはどうも困るというようなことで、長官としてはどの程度の意思が反映しているかということを逆説的につかむということもあるわけです。この二つの方法についてひとつあなたのほうで御検討なさる気持ちはございませんか。
  31. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 事前の話し合いでございますが、これは以前に話し合いをした時代があるようでございます。そのときの事情をよく検討してみたのでございますけれども、やはり相当もんちゃくと申しますか、そこにいろいろな紛争が起きておるのでございます。先ほど申し上げましたように、どうしても職員希望が特定の署に集中しがちであり、また離島、僻地等についてはだれも行きたがらないというような事情がございまして、納得をして行ってもらうということは理想ではございますけれども、なかなかそのようにはまいりかねるというのが実情でございます。  それから第二にお述べになりました苦情処理でございますが、私たちは従来から苦情はできるだけ上司を通じて申し出てもらうように職員に呼びかけておるのでございます。しかしながら何といっても自分の直接の上司に自分の一身上のことで苦情を言うということは言いにくい場合もございます。そういう場合を考慮いたしまして、昨年来国税の職場にカウンセラー・システムを導入いたしまして、あるいは監督官あるいは部外の人あるいは税務署にもとおった先輩の人であるとか、あるいは全然部外の弁護士さんであるとかいうような人たちをカウンセラーに委嘱いたしまして、そして職員の苦情——これは何も配転だけではございません、一切の問題を含めた人事相談、身の上相談と申しますか、そういうような苦情を受けておる、これを今後ともよりいいものに進めていきたい、こういうふうに考えております。
  32. 平林剛

    平林委員 私が申し上げました二つの方法を通じて、配置転換における職員異動というものが、長官お話しになった希望を反映しておるという例証として、確認の方法としてどうかという問題についてお答えがございましたが、この問題は私は、すぐ労働組合の性格なり労働組合と当局との関係なりにお逃げになるのは適当でないと思うのであります。やはり五万の税務署職員がおるわけでありますから、国税庁における労使の関係を離れて考えなけばならぬ点ではないかと思うのです。そういう意味では、やはり私は苦情処理機関というものを設ける必要を感じておるわけです。ですから苦情処理機関というものを設けられまして、これだけの大異動がある場合に、人心を収攪し、そして税務行政の円滑化をはかるためには必要な措置ではないか。各官庁もある程度そういうことをやっておりますし、そういう方法をとられることが必要ではないか、こう思うのでありまして、私は、やはりこの問題は真剣に検討すべき問題だと考えるわけであります。  それから同時に、いまカウンセラー方式という問題がございましたけれども、それも一つの方法でしょう。しかしやはり個人でなかなか上司に申し出るということが困難な場合を想定して労働組合というものがあるわけであります。労働組合がこれについて本人を代行することによって結局内蔵させてしまわない、できるだけ本人の意思も尊重してやれるような方式はこれによって代行し得る、そのために労働組合があるというふうに考えるわけでありまして、こういう点はもう一度検討してもらわなければならぬ点だと思うのですけれども、いかがでしょう。
  33. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま御指摘になりました苦情処理機関というような特別な機関を設けることも確かに一つの方法だと思います。ただ国税の内部事情といたしまして、御承知のように組合に加入しておらない人が半数以上ございます。それからまた組合も複数でありまして、非常にいろいろな組合がございます。性格の違ったいろいろな組合がたくさんございます。そういう関係で、一体未加入者の希望、苦情というものをどうとるか、また複数の組合の場合にどういう方式でとっていくかということは、技術的に非常にむずかしい問題がございます。悪い例かもしれませんが一例を申し上げますと、同じ税務署の中にA組合、B組合があったときに、B組合の希望なり苦情申し出というものは実現して、A組合の希望申し出というものが実現しなかったような場合、あるいはその逆の場合、非常にむずかしい問題がそこに起きます。そういうような問題もございまして、われわれ、前に横山委員から苦情処理機関を設けてはどうかという御指摘がありまして一応研究はいたしましたけれども、やはり非常にむずかしい。でき得ればやはり先ほど申し上げましたようなカウンセラーのようなもので、いずれにも属さない機関によって職員個々の苦情を聞いていくということが、そういう変な目で見られないという意味でも一番いいのではないかということで、各局にこの制度を導入したのでございます。
  34. 平林剛

    平林委員 このカウンセラー方式という措置は、各局、各税務署にあるんでしょうか。そして、その運用の状況はどうなっておりますか。
  35. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 カウンセラー・システムは、現在、大阪、札幌、名古屋、金沢、高松、福岡、熊本の七局で実施をいたしております。また、東京の局では、ことしの一月に、局にカウンセラーの専任者を二名設けて近々に実施する予定でおります。残りの三局、関東信越局、仙台、広島、この三局については、現在、研究中の段階にございます。それで、その運用の方法でございますが、これは私たちは、一定の方式をきめてやれということは申しておりません。やはり局によって相当実情が違いますので、局の実情に合った制度を導入しなさい。大体の骨子は示しておりますけれども、しかしながら、形としてはいろいろございます。たとえばカウンセラーに総務課長がなっておるような場合、あるいは監督官がなっておるような場合、あるいは税講の支所長なり首席監督がなっておるような場合、あるいは専任の場合、それから部外者の場合——部外者と申しますと、カウンセラーの専門家とか、あるいは弁護士さんでございますが、そういうような場合、いろいろ局によって違います。将来、何らかの意味で、最もいい方法が見つかりましたならば、これで足並みをそろえるということも考えられますけれども、現在は、各局に実施をまかせておるような状況でございます。
  36. 平林剛

    平林委員 いまお話がありましたように、カウンセラー方式の中に、実際の運用が、総務課長であったり、あるいは監督官でございましたら、やはりほんとうの機能を発揮し得ないことになるわけでありますし、また、かりにその方式を採用されても、押しつけでありましては、職員が進んでそれを活用するということにもなりませんし、結局、あるというだけにすぎないということになりまして、本来の目的が生かされないということになるのでないか。私は、それよりも——その方法にしても、職員全般が納得した形で行なわれるならば、これはまた議論は別でありますけれども、これがあるんだからという押しつけでは、本来の目的は達せられない。そこで、むしろ、職員の団体、あるいは職員の代表とお話しになって、苦情処理機関的なものをつくられるやり方のほうが適切でないかと思うのでございます。どうも国税庁考えの中には、対労働組合政策というものが表に出てまいりまして、その結果、正当にあるべき姿がゆがめられているのでないかという感じを、私は、ここ数年来の国税庁の労使間において見出すのでありまして、やはりそれを表に立てて、曲がった方向というとちょっと語弊がございますけれども、かわるべき措置が何か形式的でだんだん離れてしまうということになることをおそれるわけであります。むしろ、正攻法で、苦情処理機関というものを設けることによって、この円満な人事行政を行なわれたらいかがかと思うのでありますけれども、いかがでしょう。
  37. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、苦情処理機関を設けるということも、私は、確かに一つの方法であろうと思います。しかしながら、現存、カウンセラー制度を導入いたしまして、まだ間がございません。しかも、この制度の利用状況を見ますと、かなりおもしろい数字が出ております。一例を申し上げますと、金沢局の状況でございますが、三十七年の六月から三十八年の六月まで、ちょうど一年間でございますが、苦情を申し出た件数が二百三十七件ございます。それでカウンセラーで解決したものがそのうち百八十一件ございます。それから局へ上申をしてきたものが三十八件ございます。それから未解決のものが十八件となっております。こういうふうになかなか利用者も多いし、また人事、厚生、家族等の関係について相当突っ込んだ解決が行なわれております。もちろんいま申し上げましたように、未解決の事案もございますけれども、しかしこういうこの制度の運用の状況をしばらく見て、それで一体こういう制度が国税の職域内において根をおろす可能性があるかどうか、その点について若干時間の余裕を見ていただいて、その上でもしこれがだめだというような場合に、またいずれかの方法で検討し直すべきじゃないか。現在の状況では、必ずしも、これがわれわれの職場にとって間に合わないものという判断をするのには、若干まだ早いのじゃないかという感じがいたしておるのでございます。
  38. 平林剛

    平林委員 私は、いまおやりになろうとしておるカウンセラー方式については、これは直接、変えたらどうかとかいけないとかいう立場じゃございませんけれども、何かその中の運営状態を見ますというと、いまのお話にかかわらず、やはり上司がいたりあるいは総務課長がいたり監督官がおられるという形では、はたして目的を達するかどうかについて疑問を感ずるのであります。やはり苦情処理機関を通じて行なうという方式、しかも、やはり職員の問題ですから、職員の代表、もしくはその団体である労働組合との間に当局が話し合いをされて、そうして正常な方法でこれが行なわれることが望ましいし、またそれが当然である。今日、国税庁関係は、私はそういう意味では、少しゆがんでおるのでないか。いろいろ原因はあるでしょう。あるでしょうけれども、全般の情勢から見ますと、ゆがんでおる。それはやはり正すべきでないか。長官も、この点については、ひとつ鋭意積極的に誠意を持って、親心を持って解決することを私は希望しておきたいと思うのであります。  そこで、いまお話の中でも、金沢局の例がございましたが、だいぶ苦情があるようでございますね。ということは、私は、そういう意味からいきますと、この配転について私が取り上げた趣旨もあなたに御理解いただけると思うのでありますけれども、これだけあるということを考えますと、ひとつやはりまともな考え方におきまして処理を進めることが必要であるということを強調しておきたいと思うのであります。  そこで、実は卑近な例でございますけれども、最近、水戸の税務署のほうにおきまして、その配置転換をなさった例の中で、どうもやはり大きな苦情になっておる問題がございます。大曾根君という人だそうでありますけれども、この人の苦情では、どうも新たに転勤をさせられたところが、自分の住んでおるところから通勤をするのに二時間四十分かかる、これでは健康のことを考えても、また家庭の都合を見ても、とてもたいへんなことである、上司に対してもそのことを申し出たけれども、まあとりあえず新しい任地へ行ってもらいたいということで、新しい任地へ行かれた、任地へ行かれて、二カ月たち三ヵ月をたち半年たってもそのままに置かれておるというお話を聞いたわけであります。これは一つの例にすぎませんけれども、実情から考えましてどうも適当でないのじゃないか。先ほど申し上げましたように、通勤時間についての一つ基準があれば、こうした問題は起こらなかったであろうし、また住宅について配慮があればこうした問題も不満足ながら解決される場合もあるだろうし、ということを考えるわけであります。こうした例があるということは、私はもう少しこの問題について国税庁当局が取り組まなければならぬという事情を物語っているのではないかと思うのでございますけれども、やはりこういう例が残っておるということをひとつ長官にお考えをいただいて善処すべきだと思うのですが、何か御感想ございますか。
  39. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私はいまの水戸税務署の具体的な事例は詳しく存じませんが、一般的に関東信越局の管内の心情を申し上げますと、先ほど説明しましたように最近東京都内に納税者、あるいは課税対象が急激に集中をいたしております。法人数等も激増をいたしております。こういう関係東京の都内に職員をふやすためには、どうしてもその背後地を関東信越局にたよらざるを得ない。特に東京都に最も近い埼玉県の南部から東京都へ持ってこざるを得ない。そうすると埼玉県南部というものは手がすきます。欠員になります。それを埼玉県の北部、あるいは茨城県の南部から持ってこなければならぬという、こういう事情で、ある程度の無理が関東信越局にかかっておることは、これは事実でございます。それからまた御承知のように、関東信越局は管内が非常に広いわりには交通の事情も不便であります。しかも職員の非常に多くの部分が家屋を持ち、あるいは田畑を所有しておるという関係で、どうしても遠距離通勤者が比較的多い事情にございます。ただいま御指摘事情は私詳しく存じませんが、おそらく一般的なそういう事情からある程度の無理が起きたのじゃないか、こういう感じがいたすのでございます。
  40. 平林剛

    平林委員 それにいたしましても通勤時間二時間四十分というのはこれは極端なことだと思うので、私ども、今日一般の国民の通勤というのは交通事情にもよりますけれども、だいぶ長くなっている実情は承知しております。一時間や一時間半かかっておる人たちもかなりございますけれども、しかし二時間四十分という例は、やはりどうも基準がないとは言うものの、基準をこえ過ぎているのじゃないか。この点は私一つの例として当委員会で取り上げましたので、至急あなたに御調査をいただきまして、たとえ一人といえどもこうしたことがないように、取りあえずおやりになるということが必要なことだと思うのでございまして、ひとつ善処していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  41. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 このいま御指摘職員の人は、公務員宿舎に入れないような事情がありましたのかどうですか。もし宿舎がないためにそういう事情になっておるとすれば、当然これはわれわれとして宿舎を提供するということは必要であろうと思います。またどうしても、宿舎を提供しても宿舎に入れない事情があるのかどうか、そういう点についても事情をよく調査してみたいと思っております。
  42. 平林剛

    平林委員 私はたとえ一人といえども、こうした配置転換において著しい勤務条件変化、あるいは生活上の脅威のないように配慮せられることを希望いたします。特に私、指摘いたしましたような根本的な問題が解決せられるまではどうかひとつ親身になって、またいろいろな感情とかその他を離れてこうした問題は処理せられることが必要であると思いますので、どうか長官もいま御発言になりましたように、この問題の解決についてひとつ結論が出るように心から希望いたします。  これをもって私の質問を終わりたいと思います。
  43. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  44. 有馬輝武

    有馬委員 いま大蔵省の労務管理の問題、労資の問題について平林委員から御質問がありました、これに対しまして、関連して一点だけお伺いをいたしたいと存じます。  政務次官にお伺いいたしたいと存じますこととは、大蔵省は憲法なりあるいは国家公務員法、この国家公務員法に基づく人事院規則を乗り越えてあらゆる権限を持っておられるかどうか。大蔵省の出先はそういう権限を持っておられるかどうか、まず最初にお伺いをいたしたいと存じます。
  45. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 いだいま有馬委員指摘されたような権限は、大蔵省としては持っていないと思います。
  46. 有馬輝武

    有馬委員 こんな抽象的な質問を私がいたしましたのは、実は奈良の財務局におきまして、国家公務員法に基づく職員団体として認められ、それから法によりまして在籍専従を認められておる人が大蔵省の出先であります財務局に、国家公務員共済組合法の問題について交渉に参りました。奈良の財務局の総務課長はその人たちの所属する所轄の庁に対しまして、これは具体的に名前をあげてよろしいのでありますが今仲君、武林君、森田君、これは農林関係とそれから司法関係でありますれども、それぞれの所轄の庁に対しけてこれらの人たちの思想、人物その他の調査を行なっております。適法な職員団体である。しかも在籍専従の人が適法な交渉をする際に、その国公法九十八条の第三項で認められておる交渉をするのにそういった思想調査をしなければならない権限をどういう形で大蔵省は持たせておられるのか、この点をお伺いいたしたいと存じます。
  47. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 ただまま具体的の問題として御指摘をいただきました奈良県の問題でございますが、私いま有馬委員からそのことを初めて聞きましたわけでありまして、有馬委員の御指摘のとおりであるとすれば私は行き過ぎた行為であろうというふうに考えておりますが、もう少し事実を調査いたしました上で適当な御答弁を申し上げたいと存じます。
  48. 有馬輝武

    有馬委員 憲法第十九条では「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とはっきり規定いたしております。その思想の自由というものを、権限もない、しかも他省の人事について容喙する、この態度が先ほど平林委員からみずからのところの諸君の労働条件についてはきわめてルーズでありながら、よその者に対してはその思想なり背景なり経歴まで調査させる大蔵省の人事管理あるいは労使の間の慣行に対する考え方のゆがみというものがここら辺にも出ておるんじゃないか、こう断ぜざるを得ないのでございます。しかも事実を調査してと政務次官おっしゃいましたけれども、総務課長はそのような調査をしたことを認めておるわけです。認めておるからには、大蔵省として上部のほうでそういうことをやってもよろしいという背景があってやられたのだろうと思いますので、そこら辺の考え方についてお伺いをいたしたいと思います。
  49. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 先ほども申しましたように、有馬委員が御指摘された問題がそのとおりでありますならば、行き過ぎた問題であろうということを私は御答弁申し上げたわけでございまして、そういった事実につきまして、ただいまは総務課長がそういうことを認めておるというお話でございますが、これも私といたしましてはその実情を十分承知いたしておりませんので、それらの点につきましても調査の上で御答弁申し上げ、またそれに対する措置をいたしたいと考えるわけでございます。  大蔵省がそういうゆがんだ考え方を持っておるのじゃないか、さようなことを本省として考えて、いわゆる労働管理と申しますか人事管理と申しますか、そういう方面にまでそういう思想のもとにやっておるのじゃないかというような意味の御質問であったようでございますが、そういうことは大蔵省といたしましても考えてはおりません。ただ個人的に何か特別の考えでそういう措置をとられたということがあるいはあるかもしれませんが、これに対しまして大蔵省がそういう指示をしてやらしたというようなことは絶対にあり得ないと存じております。
  50. 有馬輝武

    有馬委員 関連質問でありますので詳しくはお尋ねいたしませんが、国家公務員法第百一条の職務に専念する義務、これの監督をほかの省がやれるものかどうか。そしていま申し上げたようなのは事実であっまして、いつでもその事実を証明することはできますので、まだ地方課長は入っていないそうでありますから、この件について大蔵省は具体的な事実についてどのような考え方を持っておるかを、地方課長が入った際に適当な機会に大蔵省としてのお考えを申し述べていただくことを要望いたしまして、私の関連質問は終わりたいと思います。
  51. 山中貞則

    山中委員長 後ほど計らいます。赤松勇君。
  52. 赤松勇

    赤松委員 保険制度並びに保険行政に関しまして、この際大蔵省意見をただしておきたいと思うのであります。  その前に、委員長はじめ本大蔵委員会委員諸君に対しまして、敬意を表しておきたいと思います。  六月六日の毎日新聞によりますと、本委員会においての銀行の歩積み、両建ての問題について最近にない記事が出ておりました。私ども非常に愉快に思っておるわけでありますので、御紹介申し上げますと、「最近の国会で、世論にこたえた実績を示したのは衆院の大蔵委員会——とくにその金融小委員会である。銀行の「歩積み、両建て」が問題になってから年久しいが、銀行には自粛の気がなく、監督する大蔵省銀行局もウデがないのか、」銀行局長、よく聞いておきなさいよ。「銀行局もウデがないのか、責任感がないのか、さっぱり効果があがらない。とうとう国会の介入となり、三日の金融小委に都銀代表五人がよびつけられ、油をしぼられた。」「いろんな理屈はあっても、これだけのことが実行できないようでは、銀行の社会的良心と銀行局の行政能力が疑わしくなる。「銀行局も歩積み、両建て規制案を行政通達として各銀行に出すといってます。これなら、実績のあがらない銀行を命令違反で罰せられますね。具体的には支店の増設を認可しないという処分ができます」大久保小委員長は銀行家の良識を力説する。たしかに経済の動脈という公共性を持つ銀行が、逆に弱みにつけこんで中小企業を苦しめていることは良心と良識に反する“公害的行為”である。銀行内で金が盗まれるという事件が続出するのも、銀行自体の倫理観の低下からくる自然の結果だろう。大久保小委員長は「これから半年間、銀行の自粛ぶりと、それによって中小企業への貸出し率が下がりはしないか、の二点を注視しています」という。日ごろ悪口をいわれる政治家のほうがよっぽど良識がある。」こういうように毎日新聞は特にスペースをさきまして、当大蔵委員会の御健闘に敬意を表しておるわけであります。  ところが私は銀行局長に、この中小企業の歩積み、両建ての問題だけでなくて保険行政についてただしておきたいことがあるのであります。それは言うまでもなく全国数千万人の被保険者の生命財産に関する問題でありまして、きわめて問題は大きいのであります。したがって、こういう公共性を持つ保険事業は、保険業法によりまして、主務大臣たる大蔵大臣の監督権を明確に規定しております。また保険募集の取締に関する法律によって、保険募集人の行なう募集を取り締まり、そうして保険契約者の利益を保護しようとしております。すなわち保険業法の第八条では主務大臣の報告を徴する権限及び検査権についてこれを規定しております。すなわち「主務大臣ハ何時ニテモ保険会社ヲシテ其ノ事業ニ関スル報告ヲ為サシメ又ハ当該官吏ヲシテ保険会社ノ営業所、事務所其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務若ハ財産ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得」と規定しており、また第九条には、「主務大臣保険会社ノ業務又ハ財産ノ状況ニ依リ必要アリト認ムルトキハ業務執行ノ方法ノ変更又ハ財産ノ供託ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」、と規定してあります。しこうして大蔵大臣の監督、検査の権限は、保険会社が法令等に違反していたかどうか、保険契約者、被保険者の利益保護に欠くるところがないかどうか、そういう点について保険会社から報告を徴し保険会社を検査するのであります。  そこで私は銀行局長にお尋ねしたいのは、この大蔵大臣の監督権に属する規定の中で、保険募集の取締に関する法律で、すなわち保険募集人の行なう募集を禁じておりますけれども、こういう事実があるかないか、もしあればこれに対してどのような監督権を発動しておるか、もしないとすれば全然ないかどうか、こういう点はいかがでありますか。
  53. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 お話しの点は、たとえば融資話法というような不正な手段によって保険を募集する行為を禁止しておるわけであります。そのような事例は全くないかとおっしゃられますと、私どもそういう事実問題につきまして、あらゆる募集人の行為について一切の事実関係を把握するというわけではございませんから、絶対にないかと申されますと、私ども何ともお答えできませんが、絶対にないように監督をしておるつもりであります。そういう事実があるいは間違って生ずることがあるかもしれませんが、監督上は法律にも禁止されておる点でございますので、そのようなことがないように、かねがね募集人等を会社側において厳重訓練指導するように行政指導を行なっております。そういうことを御了承願いたいと思います。
  54. 赤松勇

    赤松委員 そういうことのないように監督をしておるとおっしゃいますが、具体的にどのように監督されておりますか。
  55. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 具体的にどのように監督しておるかとおっしゃいますと、ちょっとお答えしにくいのでありますが、要するに多数の保険募集人がおるわけであります。これはやはりわれわれが個別に監督するよりも、会社を監督する、保険会社がその気になって募集人にその趣旨を徹底させるということでございます。もしもそれにまぎらわしいような事態があります際には、当該会社に対して、そういうことのないように呼び出して注意を与える、こういうことでございます。
  56. 赤松勇

    赤松委員 あなた、何を答弁している。監督権というものはちゃんと法律によって規定してあるのです。保険募集の取締に関する法律というものがあるのです。それを、たくさんな保険募集人だからわからない、しかしあれば取り締まる、それでは法律だけはつくっておいて、実際には監督していないじゃないか。あなたはそうおっしゃるけれども、今日金融をえさとして、どれくらい保険募集が行なわれておるか。これはもう天下周知の事実なのです。それに対して大蔵省は全然監督していないじゃないか。監督しておると言うなら、具体的にどう監督しておるか。あなたのいまの意見によれば、法律には大蔵大臣の監督権をちゃんと規定している。もし出てくればそれについて監督権を発動する。それでは具体的にどんなふうに監督しているのか。答弁にも困りますという答弁であるけれども、困らぬはずなのです。監督しておれば、具体的にこういうように監督しておりますと、その事実をあげてもらえばけっこうなのです。いかがですか。
  57. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私が申し上げたのは、非常に多数の募集人がおります。その個々の問題につきまして、大蔵省か直接に——もちろんこれは法律に反する行為がございましたら直接やりますが、そうでなくて、かねての行政指導とか訓練とかいう問題は、募集上、いわゆる融資を条件として募集をするというふうなことのないように募集人に対して厳重注意をする、そういう点を会社に対して常々注意を与えております。具体的に違反のような事実がございますれば、それに対しては直接やることもありましょうが、原則としては会社に、そのような募集人を処分するとか、とにかく適切な処置をとるように注意をするというのが、私どもの仕事でございます。
  58. 赤松勇

    赤松委員 大体いまの答弁を聞いてみると、保険行政について無関心であると同時に熱意がない。銀行局は銀行に重点を置いて、保険行政については非常にこれを軽視している。保険事業は、言うまでもなく、非常にたくさんな加入者から徴収した保険料を管理運営していく。そうして保険事由の発生に際して、確実に保険金の支払いができることをその仕事としておるわけです。ところが、往々にして不正な手段によって募集が行なわれておる。もう一点、銀行局長に聞くけれども、不正な手段によって募集が行なわれた事実があるかどうか。それに対して監督権を発動したことがあるかないか。あれば、過去十ヵ年間、どれくらい罰したか、監督権を発動したか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  59. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 不正な募集方法を行なった事例はございます。その場合には、募集人の場合には登録の取り消しを行なっております。ただし、いまおっしゃいました過去十年間に何件あったかという資料につきましては、ただいま手元にはございませんが、調べればどの程度の不正行為がすでに起こって処罰を受けたか、お答えできると思います。
  60. 赤松勇

    赤松委員 ほとんど取るに足らないほどしか監督権が発動されていないから、あなたの手元に資料がないのだ。そうでないとおっしゃるならば、私に出しなさい。  それではもう一度聞きますけれども、「保険会社ノ営業所、事務所其ノ場所ニ臨検シ業務若ハ財産ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得」、こういうようになっておる。この点について検査をしたことがあるかどうか。これはいかがですか。
  61. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 保険会社の検査は銀行と同様にこれを行なっております。すべての事業所を検査するのではありませんが、保険会社——生命保険、火災保険それぞれ二十社ずつございますが、それらにつきましては、おおむね二年に一回程度は定例検査を行なっております。成績がよろしくないとか、財産の状況について問題がある場合には、それより期限を短縮いたしまして検査を行なっております。
  62. 赤松勇

    赤松委員 繰り返し申しておきますけれども、保険募集人が融資をえさに保険加入を勧誘したとすれば、保険募集の取締に関する法律に違反することになる。この法律の第十六条第一項第四号に規定する「保険契約者又は被保険者に対して特別の利益の提供を約し、又は保険料の割引、割戻その他特別の利益を提供する行為」は、保険契約の締結または募集に関する禁止行為とされておる。この点について、銀行局長、間違いございませんね。
  63. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 間違いございません。
  64. 赤松勇

    赤松委員 それでは、私はあとで事実をあげてあなたに質問します。  その次に、事故原因の調査にあたって、保険会社の下請機関と見られる正命保険調査協会、保険連合調査会、こういうものに調査を依頼して、あるいは九社、あるいは十社、または単独もしくは合同で調査団を派遣して調査を行なっておる事実がある。この調査を依頼された民間の下請機関は、なるべく保険金を支払わないで済むような調査報告をするであろうし、また保険会社自身の派遣する合同調査団は、共同の行為によって、暗黙の合意をもってそのような結論に導きやすい立場にあるといわざるを得ません。こういう優越的立場にある保険会社の一方的認定によって保険金の支払いがほしいままに決定されるということになりますと、弱い立場にある保険契約者はしばしば泣き寝入りをしなければならないことになる。そこで、保険会社が民間の下請機関を使って一方的に認定をする、これに対抗する手段としては、被保険者は訴訟を起こす以外にはないのであります。ところが訴訟を起こす場合には非常にばく大な費用が要る、あるいはいま言ったように認定がきわめて巧妙に行なわれますために、被保険者は泣き寝入りをしておる事態がいま全国各地にあるわけです。私のところにも数十通の投書が全国から来ておる。  そこで私は大蔵大臣にお尋ねをしたいのだが、なるほどこれは債権債務の関係——一般被保険者からいえば自由意思によって保険契約を結ぶのでありますけれども、国が大蔵大臣の督督権をきびしく規定しているゆえんは、先ほど申し上げましたように、保険事業そのものは公共性を持っておる、国民の生命、財産に非常に大きな関係を持っておるという点からこういうきびしい規定をしておるのであります。ところが現状は、いま銀行局長答弁をあなたにお聞きになったように、たくさんな募集人だから、不正が行なわれておってもよくわからない。その監督権を発動する場合、具体的にどうしているのだと聞いたら、それは具体的に言われましても困ります、こういう答弁です。これでは一体だれが被保険者を守るのですか。保険会社という巨大資本に対しましてだれが国民大衆を守るのですか。私はこの際理屈は申しません。この被保険者を守るために、公正なる調査、査定もしくは判断、審判を行なう保険審判所のようなものを第三者によって設けて、そこで公正なる調査、審判を行なう、そういう意思はないかどうか、このことを私はあなたにお尋ねしておきたい。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 生命保険等の支払いにおいて、これは生命保険だけではなくて、損保も同様でありますが、いざこざがあった場合、裁判の確定を待つというようなことはたいへんだから、第三者の公正な審判機関ということであります。現在でも第三者機関的なものでもって円満に解決するという方法はとられておるわけです。御承知のとおり、生保協会内に苦情相談所がございまして、年間、言い争いになるようなものが百件程度ずつございますが、これらに持ち込まれたものは、大体最終的には円満に解決をしておるということでございます。これを法律的に苦情相談所、苦情処理所といいますか、また審判所といいますか、そういうものをつくる必要がある、こういう考え方はわかりますが、いままでそういうものをつくらなければならないというような大きな問題というのはあまりなかったわけです。大体話はついておる、こういうところでございますが、いろいろ事件があったりして両方でもって話がつかないというような大きな問題がたくさん出てくるということになれば、そういう機関が必要であるかもわかりません。
  66. 赤松勇

    赤松委員 私は、保守党の中でも出中さんは非常にものごとを、善と悪とをきちんときめる人なんで、実は以前から尊敬しておった。あなたは若くして大蔵大臣になった。若いといったって近時若返りがはやって、年寄りは引退してもらえという時代ですが、いまあなたの話を聞くと、あなたは国民生活の実体を何も知らないじゃないですか。そういう大きな事件はない、問題があれば保険協会の相談所がある、そこで百件ばかりやっているという答弁でした。この保険協会の中の相談所というのは一体どういう費用によってまかなわれ、だれによって構成されておるのですか。
  67. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 非常に技術的なことでございますので、かわりましてお答え申し上げます。いま大臣から申し上げました生命保険に関します苦情相談所と申しますのは、保険審議会の意見に基づきまして、三十六年につくられたものでございます。協会内の一つの機構でございまして、その後、私ども大蔵省のほうへも契約者から苦情がまいるのもございます。これもそのほうに回しまして、そこで両者、契約者、会社側の円満な解決をはかるようにあっせんをしておるわけでございます。経費は、これは協会の経費でございますから、したがって保険会社が持ち寄っておるということになっております。
  68. 赤松勇

    赤松委員 保険会社が費用を出して、その保険会社の協会の中に相談所を設けて、適当にやっているというのが実体なんですね。こんなものでもって被保険者の利益を守れるというようなことは、おそらく田中さんだって考えていないと思うのです。そこで重ねてあなたに聞きますけれども、この実体を十分御調査になって、これではいかぬという結論に達すれば何か別な方法で、公正なる第三者によって調査、審判をさせるような、そういうお気持ちはないかどうか。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう問題がたくさんあって、第三者の公正な審判機関式なものが必要であるかどうかという事実認識の問題でございます。これは世界的にもそういう問題があるかどうか、また各国にないけれども、日本には守るために新しい立場でもってつくらなければならぬという御主張なのか、いままでこれらの問題、いろいろなケースの問題がございますが、会社と当事者の間で大体のケースは円満にまとまっておる。中にはまとまらぬものもございまして、相当大きなものもございますが、いままでは大体本人の希望条件が円満に、示談式なもので解決をされておるが、係争中になっておるものもございます。でありますから、裁判という最終確定を待つ以外に、これからはむずかしい問題が出てまいります。いままでよりも非常に科学的にも技術的にもむずかしいものが出てきますので、学者とかいろいろな人たち判断を仰いで各社ともやっておるようでありますが、そういうことでなく、法制上の処置が必要かどうかという問題に対しては、現在まだこれをどうしてもつくらなければならぬという認識はありませんが、あなたの御発言もありますので、事務当局でこういう問題に対して前向きで検討するということは申し上げられると思います。
  70. 赤松勇

    赤松委員 それでは私は具体的に一つの例を示したいと思います。これは昨年の暮れに、この事件の発生いたしました、会社の労働組合が私に依頼をしてまいりました。そこで、私は保険のことはよく存じませんけれども、しかしその事情を聞くに及んで非常に憤慨したのであります。と申しますのは、一億七千万円という保険に入りまして、保険加入一ヵ月後事故が発生したわけであります。この事故が発生したというのは、名古屋市の中川区の五女子町一の七十一、ガス炊飯器メーカーの松広製作所社長松広一三さん、三十二歳であります。これがたまたま機械をなぶっておりますときに、あやまって両腕を関節のところから切断してしまった。これに対しまして、この保険をかけておりました九社が合同調査団を派遣して調べた結果、故意の疑いが強いというわけで、二月末に支払い拒否を通告したわけであります。そこで、保険会社が一番疑問を持っている点は、松広さんが事故の一ヵ月前に一度に高額の保険契約をした、一億七千万円もの保険契約をしたということで、この事情について松広謙志、つまりこの松広一三さんの親であるところの松広謙志さんは次のように言っております。五年前に松広製作所は小牧市から工場誘致を受け、二千八百坪の工場川地を坪千三百円で買った。そろそろ小牧工場を建設しなければならぬと思っているところ住友、千代田、東京、日生、朝日などの各社が熱心に勧誘にきた。勧誘員の話では、加入して一年から一年半ほどたてば保険会社から融資を受けられる、利子は年八分から九分で銀行利子より安い、こういうことです。そこで父親の謙志さんは、大企業と違って、小企業では大黒柱の経営者が倒れたらすぐ経営がピンチになる。二年前に全日空機の墜落事故で、名古屋市の中小企業の社長数人が死亡し、やはり経営が苦しくなって倒産したものもある。これからは会社のために月売り上げ額の半分くらいの保険金はかけるべきだ、こう言って保険加入をすすめたわけであります。そこで松広製作所の月額売り上げ高は約一千万円、その半年分という考え方だと六千万円の保険になる。しかし各社の勧誘員の勧誘攻勢に引きずり込まれて、結局六千七百余万円になってしまった。保障割り増し保険なので死亡、廃疾のときは一億七千余万円になる。掛け金は毎月二十八万円かかる。この資金はこうしてつくった。福徳相互銀行など数社に積み立て貯金をしていたが、その掛け金が毎月四十五万円。これを半分に減らして保険の掛け金をひねり出した、こういうように言っております。明らかにここでは、法律で禁止せられているところの融資をえさに勧誘をしているということが、この父親の証言によって明らかでございますが、この点について大蔵省としてはお調べになる意思があるかどうか。いかがでございますか。
  71. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまあげられました事件につきましては、銀行局といたしましてもある程度調査をいたしております。いまの、本人の父親はそういうお話でございますが、私どもが保険会社から聴取したところによりますと、昨年の契約はすべて本人からの申し出によるものである。会社のほうから、あるいは募集人が勧誘に行って加入した事実は全然ない。むしろ本人から大体の場合には会社に電話がございまして、自分がわりあい高額の保険に入りたい。それは死亡のときはもちろんですが、たとえば廃疾になった場合にはどういうふうに支払われるのかというふうな支払いのことなどについては本人から問いただしてきた。それに対して会社が募集人を派遣して、募集人が参りまして契約の手続をとりまして、会社があとでこれを正式の契約として取り上げたということになっております。この保険に加入した契約年月日を見ますと非常に期日が接近しております。おおむねほとんど同じような日にちに契約が締結されておりまして、八月の十八日から八月二十二日というのが多うございますが、そのほか八月二十三日、大体一番おそい口で九月の四日というのが一件ございますが、同じ会社に対する契約が三日に分かれておりまして、最後の分が、九月の四日というのが一件ございます。あとはすべて八月の十八日から二十三日までの間に締結されております。そしてその一ヵ月余り、九月の二十四日に両手切断という事故が発生したのでありまして、融資を条件に勧誘したというふうな事実は全くないと私ども認めております。
  72. 赤松勇

    赤松委員 あなたはそういうふうに断定をしていいですか。あなたは保険会社を守るというより被保険者を守る立場にあるのですよ。監督権の発動は、言うまでもなく国民大衆、すなわち数千万人の被保険者の利益を守るということを目的としておる。いまの話を聞けば会社からの申し立てだけでございませんか。じゃ松広を調べましたか、いかがですか。
  73. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 本件は問題が問題でありますのですでに訴訟事件になっております。私どもその事実認定というふうな点につきましては監督行政の及ぶところでございません。したがいまして、私が申し上げましたのは、この事故が故意であるか、過失であるかという点ではございませんで、そういう事実認定につきましては、これは鑑定その他いろいろな手続を必要とし、裁判で明らかになると思いますが、私いま申し上げたのはもちろん会社側から聴取したところでありますので、松広氏自身からは聞いておりません。ですから両方に言い分があるかと思いますが、会社側の言うところでは、自分のほうから募集にいって加入したのではなくて、本人のほうから申し出があって契約したということになっております。
  74. 赤松勇

    赤松委員 それじゃ先ほど答弁と違うじゃありませんか。いまの話を聞くと保険会社だけの申し立てを聞いた。まだ本人に対しては調べていない。さっきの答弁では、明らかに保険契約の期日が非常に接近をしておる、そういう点から疑いを持っておる、そして結局融資をえさに募集したものではない、このように私どもは認定します、これは明らかに独断だ。これは裁判の上で非常に重大な問題になるのですよ。このことが一番重大な問題になってくる。政府としてここの大蔵委員会でそういう答弁をなすってよろしいか。しかも保険会社だけしか調べてないじゃないか。一番肝心の被保険者の松広を調べないで、保険会社の言い分だけを聞いて、そして明らかに融資を目的としたものじゃない。そういう勧誘はしなかった、こう言って松広氏に対して決定的に不利な認定をくだしておる。それでよろしいですか、大蔵大臣いかがですか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 この事件は三十八年の九月二十四日に起こったわけであります。そして保険会社との保険金の支払いに対して、係争が起きましたのは、一ヵ月前に多額の保険金がかけられておるということによって、事件は両者の話し合いというのではなく裁判の確定を待っておるわけでございます。でありますから大蔵省としましては、裁判係争中のものに対してとやかく手を入れるということはできません。できませんが、銀行局からは、当然所管の事業でありますからどういう事情なのかということを事情聴取をいたしたわけであります。事情聴取をいたしましたら、いま銀行局長が申し上げたとおり、事故とか、重過失か故意かという問題で、なかなかいろいろな問題がございます。しかしその中でえさをもってつったり、それから融資を条件にやったり、会社側に手落ちはないのか、こういうことを取り調べました結来、会社側はそのような事実はございません、こういう報告があったにすぎないわけでございます。でありますから、大蔵省が現在の立場で御説明申し上げるとすれば、事実をそのまま申し上げただけでございます。
  76. 赤松勇

    赤松委員 いまの大蔵大臣答弁が正しい。裁判で係争中の問題であるから大蔵省としてはこれは過失であるか、重過失であるか、故意であるか、そういう認定はできない。ただ保険会社のほうを調べたところがこういう申し立てがありました、しかしこれは裁判で係争中のものでありますからここでお答えできません、こう答弁するのがほんとうじゃないか。それを保険会社の申し立てだけを一方的に聞いて、そうして融資をえさにやったものではございませんというように認定するとは何だ。取り消しなさい、銀行局長
  77. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 大臣答弁されたとおりでございます。私がもし間違った印象を与えたとすれば、それは取り消します。
  78. 赤松勇

    赤松委員 そこで私は、大臣、この場合ぜひ聞いておいていただきたいのだが、保険契約をする際に、時間の問題というものは、保険勧誘員が融資を条件にしたかどうかということなどもからんでくると思います。しかしそれは裁判中のことだからしばらくおきましょう。そこでだ常識的に判断できることは、保険会社が契約をする場合に現在の契約高は幾らであるか、他社とどれくらい契約をしているかということを調べずに契約するわけがない。後に至って一億幾らの契約をしておったからだからこれは故意だ、こういうような断定は私は間違っておると思う。きっとこのときに調べた。一億七千万円の保険契約があるということを保険会社は知っている。それならば保険会社はそれを拒否すればいい。もし融資をネタに募集をしなかったなら、向こうから頼んできたから契約をしたんだ、しかし契約をしたけれども、契約した以上はこれは支払う義務がある。その支払いの際に金額が大きいからどうも怪しい、こういう議論は私は成り立たぬと思う。それならば契約の際に保険会社はそれを拒否すればいい。保険会社はその契約を拒否することは自由ですよ。こういう点が私は非常に問題になると思うのであります。この点はしかし裁判中のことでありますからここではあまり問題にしないでおきたいと思う。  その次の問題は、これは裁判には関係ありませんが、この調査に当たった調査機関、それから調査を行なった調査員の態度が問題なんだ。これは人権の問題と関連する。これは大蔵大臣、ぜひ考えていただきたいと思うのですが、調査をする場合に、まず第一に本人を犯罪人扱いにしている。それからいま一つの問題は、民間の下請機関でありますから、その下請機関の社長はできるだけ保険会社に有利なように、被保険者に不利なように調査することを目的としているということをはっきり言っている。私はこれを報道いたしました週刊新潮を御紹介申し上げます。「安田生命と千代田生命の二社から依頼をうけて名古屋へ乗り込んだのは、保険連合調査会社長の千々松賢四郎氏である。千々松氏は、女秘書を同行した。」そこで千々松は「「極端にいえば、いかにして保険金を支払わないでもすむかを調査するのが、われわれの仕事なんです」もう一ぺん言いましょう。「いかにして保険金を支払わないでもすむかを調査するのが、われわれの仕事なんですが、相手が病院に入院していると聞いて、病気見舞いというカタチをとったんです。それほど気をつかってやるんですよ。手を切断した本人を前にして因果な話だとは思ったけど、聞くだけのことは聞きましたよ。まず第一に、保険金目当てではないか。そうでなければ、なぜあんな大きな保険にはいったのか、という点です。保険会社は加入させるだけさせておいて、けしからんという考えもあるでしょう。しかし、こんどのような場合、大きな保険にはいり、機械を買って、十日もしないうちに、事故が起きる。それじゃ、その機械は何のために買ったのか。ひょっとしたら……。そういう疑問が起こるのもまた常識ではないか。そこで、そういう常識を私は松広さんに聞いたわけだ。さすがに、「あなた、計画的にやったんだろう」という非常識な聞き方はしない。遠回しに聞いたのだが、加入の原因は二つあった。一つは、中小企業は社長の死が原因でつぶれることが多いので、保険を重要だと考えた。もう一つは、保険会社から大口の融資を受けるのが目的だったというわけです。それは分かりましたが、私の重視したのは、事故発生の原因ですね。つまり、健康な状態で作業をしていてもあの事故は起きるかどうか。私の結論は、重過失ですよ。ナットをしめるのに、モーターのかかっている機械に手を入れることはないじゃないですか。電源をきって、機械の裏へ回ってやればいいことだ。私はここで決定的な重過失だと思うのです(この場合、安田生命と千代田生命では、契約で「故意」と同様に扱うことになっている)。また、本人に聞いた話によると、彼は朝から頭痛がひどく、体がけだるかったといっていた。彼はアトラキシンを月に百錠、睡眠薬を三十錠常用している。これは私が薬屋でも確かめたのだが、その中毒作用が出ていたとも考えられる。それはともかくその日、本人が正常な健康状態ではなかったと私は判断したが、これまた重過失の証拠になるのではないかと思う。しかし、それだけ聞くにも、相手の奥さんは泣き出すし、私の秘書も、「せっしょうなことを聞く」と泣き出すし、私もつくづく因果な仕事と思いましたよ」どうです、この実態は。これでもって、大蔵省の監督権があるのだ、それを適宜発動しているのだ、ぼくはそういうことは言えないと思うのですよ。だから先ほどから問題にしたのですけれども、こういう巨大な資本は、民間下請機関として、なるべく払わないように、払ってもなるべく少なく済むように、そういう調査機関を共同で設けておる。そしていまのように人権を無視して、近所隣を問い合わして、松広は楽を飲んでいなかったか、薬屋まで行ってわざわざそれを調べておる。これに対しては、本人は言い分があります。しかし私はそういうことはここで必要ございませんから言いませんが、とにかく秘書までが、せっしょうなことを聞くと言って泣き出すし、私もつくづく因果な商売だと思いました、——大蔵大臣、現実にこういう調査機関というものが存在しているのですよ。これに対して被保険者のほうは何の調査機関を持っていますか。だれに訴えることができますか。やりっぱなしじゃありませんか。それじゃ法律にたよったらいい、裁判所にたよったらいい、一億七千万円ならば、この訴訟を起こすのに一体幾らかかると思いますか。何百万円かかるのですよ。そんなことは中小企業ではとてもできません。そうすれば、一般国民大衆、被保険者は泣き寝入りになってしまう。ここに問題がある。この点は大蔵大臣の見解というよりも、私は他の委員会でさらに追及したいと考えておりますが、こういう行為は独占禁止法第二条に規定する不公正な取引方法、または第三条に規定する不当な取引制限に該当するという考え方を私は持っている。すなわち独禁法の第二条第七項第五号によると、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」不公正な取引方法に関する一般指定として、「自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な条件で取引すること。」第三条、「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」こういうように、独占禁止法は明らかにこういうような行為を禁止している。大蔵大臣の手元でひとつ独禁法について、はたして独禁法違反になるかならないか、この点をぜひ検討して私に御答弁願いたいと思います。  さらに人権じゅうりんのはなはだしいのは、この千々松という人は重過失という結論を出したが、「かなり強く「故意」という線を出したのは、朝日生命大阪営業局保全課の川那辺源太郎氏だ。この十年間、この種の調査ばかりやってきたベテランだが、“ズサンな調査”ときくとケゲンな顔をしてみせるだけに、川那辺氏の調査は微に入り細にわたっている。「一週間かけて、事故の発生の状況、医者、取り引き先、銀行、従業員、近隣と、徹底的に調査しましたが、いろいろ疑問点が出てきました。まず、事故の発生の状況ですが、九月二十四日の午後四時半ごろ、皆はどうしていたか。弟の寿之氏が工場の片すみでトランペットを吹いていたが、小便がしたくなって、便所へ行こうとしたら、例の機械に兄がよりかかっていて、モーターがうなっていた。そこで寿之氏は、ヘンだと思って父を呼びにいった。父は寝間着にかえて休養をとろうとしていた。と、まあこんな状況なんですが、病院にいた一三氏に「君は弟のトランペットを聞いたか」と聞くと「聞こえなかった」といっていたね。」この保険会社が来て——両手を落として、もう十分すれば死んじゃう重傷人に、もう痛くて全身ふるえておるのに、保険会社がやってきて、おまえトランペットを聞いたか、弟のトランペットが耳に入ったか、こういうことを聞くのでありますから、実に私は不届き千万だと思うのでありますけれども、とにかく聞こえなかったと言っていた、こんな答弁ができるものですか。「また、切断された手は、金魚バチのような箱に入れて病院にあったが、」これは名古屋の坂種病院という病院です。「金魚バチのような箱に入れて病院にあったが、見たところ小さいから『どうも短いね』と医者に聞いたら、『ちぢむのだ』と答えた。『しかし、骨までちぢむのか』ときいたら、医者は黙って行ってしまった。」これはあとで医者は非常に憤慨しておりました。何という非常識なやつだ、こういって憤慨しておりましたが、どうもわからない点が多い。とにかく、もう十分発見がおくれると命がなかったということは、だれもがいっていたが、そこで、私個人の考えをいうと、うまいこと発見したもんやという疑問がどうしても残る」こう言っておる。そこで、松広一三氏のおとうさんがどう言っているか。「「調査は公正を期してくれるものと思い、いわれるとおり、協力は惜しまなかったつもりです。息子の部屋を見たいというから、快く案内した。そうしたら、どうです。アトラキシンの箱を見つけて、「これは?」と聞く。息子は小学生のころからドモリで、それには精神安定剤がよいという薬局のすすめで、三年ほど前から常用している。そこで、そういうと、調査員はさっそく薬局へとんでいって、息子の飲む薬の量を調べてきて、「当日の精神状態がヘンだったのでは」というんだ。また「機械はいつ買ったか」と聞くから、「さあ、八月ごろだったかな」というと、調査員は、機械屋へいって帳簿を調べる。そして、九月十八日だったと分かると、まるで鬼の首でもとった騒ぎだ。親せきや近所のものに知らせなかったのも、私は、一三の容体がきまってからと思って、わざと知らせなかったのを、「作為の証拠」といわんばかりにつつ込んでくる。ある調査員にいたっては、病院へいって、ホルマリンづけになっている息子の手を見て、短かすぎる」と医師につめよったそうですよ。ホルマリンにつけておけば、そうなるのは当然で、これには主治医の先生もムッとして、「そんな知識で、調査員がつとまるのですか」といったそうだ。ところが、そのあとで、その調査員は近所で、「あの家は切れた手を冷蔵庫にかくしていて、あとでもとどおりにするつもりだ」というようなことをいって回っているんですからね。全くどうかしている。近所の人も、「あの調査員はおかしい。裁判になれば証言台に立ってあげる」といってくれておりますよ。もっとも、動いている機械に手をつっ込むということが、あの人たちにはありえないことに思われるところから、いろんな疑いも出てくるのだろうと思うけれど、しかし、それは、あの人たちが知らないからで、町工場ならどこで聞いていただいても分かりますが、中小企業で親会社への納品で追いまくられて仕事をしているところでは、動いている機械に手を入れて、ちょっと調べるというようなことは当たり前のことなんですよ」これは動力スイッチを切って、全部ストップさせて、それから調べるというようなことはなかなかできないのです。ちょっと手を入れて調べるというのが普通だ。一日分を犠牲にしてまで、金をもらって会社を救う。そんな聖人じゃないですよ」というのは、両手首を切断した当の松広一三氏だ。「病院へもきましたが、さすがにここへは花など持ってきた調査員もいましたね。見舞いの言葉もかけてくれましたよ。だがしかし、一人として、私を信用している人はいなかった。私は通称静児というので、病院にもその名札を出しておいたところが、みんなこれについて聞きましたからね。疑わしそうな顔で、「名前が、ちがうのは?」と。女房は情けながって泣いてばかりでしたよ。それに、最近聞いたところでは、調査員が近所を回ったときには、のっけから、「あれは親子でやったシワザでしょう。そんなウワサですが、おたくでは何か聞いておられないか」という聞き方をしているんですね。そうでなければ“重過失”にするために、「あの人は平常から、ちょっとおかしいところがあったでしょう」というような聞き方をしているんです。お陰で、調査マンたちが去ったあとは、私たちは、すっかり近所から白い目で見られるようになってしまいましたしこれが人権じゅうりんでなくして一体何ですか。しかも調査機関を持ち民間下請機関を持ち巨大な資本を持って、一方的にこういう人権じゅうりんの調査をどんどんやっている。一方松広社長は、小さな三十人か四十人の中小企業で、これに対抗する手段は何もないのです。これに対抗するためには、大蔵省がその監督権を発動して、平素からこういう事件の起きないように十分な手当てをしておく必要がある。だから私は先ほどから、第三者による審判所をつくったらどうですか、こうあなたに言っているのです。あなたは幸い検討するということをおっしゃいました。  ここで私は大蔵委員の諸君並びに委員長お願いしておきたいのは、いまのような状態で被保険者はやられっぱなしなんです。自己防衛は全然できません。何かといえば訴訟を起こせばいいと簡単に言いますけれども、訴訟を起こすにはお金が要ります。その金は、とうてい中小企業でまかなえるものではないのです。でありますから保険事業の公共性にかんがみまして、こういう点をどのように改善するか、それは委員会の皆さんの良識にまかせておきますが、ぜひ国民の権利を守るために政府と同時に当委員会におきましてもこの御検討お願いしておきたい、こう思う次第であります。  なお簡単に申し上げておきますが、もう十分すれば命を失うという重病人です。命をかけて一億何がし金をとろうという、そういう勇気のある人間がはたしておるのでございましょうか。しかも松広は食うに困っておりません。工場誘致の要請が市長からありまして、そして小牧に工場をつくり、これから発展しようというときです。これは東邦瓦斯会社の下請をやっております。東邦瓦斯会社め労働組合も、会社の意向で全力をあげて松広をつぶさないようにということで協力をしておってくれております。そこに会社と労働者の涙ぐましい善意が、いまこの松広を包んでおります。訴訟を起こせとすすめたのは、この事件を利用しようとする者が若干出てまいりましたので、私は全部私に委任状を渡せということで、他の委任状を全部取り上げました。そして私もその委任状を私の弁護士に渡しました。そしてただいま無料で弁護を引き受けて、東京地裁並びに大阪の地裁に訴訟を起こしております。  私は、松広さん個人の問題もさることながら、日本の被保険者、国民大衆がこの銀行資本と並び日本資本主義の指導権を握るところの巨大なる保険業者によって徹底的に痛めつけられておる事実を、私の正義感は見のがすことができません。おそらく大蔵委員会の皆さんもそうだと思うのであります。町を歩きましても、銀行や保険会社だけのビルがどんどん建っていく。そのビルやあるいは彼らがいろんなところに投資をしてそれによって利益を受ける、それは全部被保険者が犠牲になっている。いま保険業務は全部民間にまかされている。本来こういう公共性の高いもの、こういう社会的な性格を持つものは国有国営事業にしなければならぬというように私は考えておりますけれども、さしあたってこの問題につきましては党派を離れて、思想を越えて、イデオロギーを抜きにして、ぜひ国民大衆、被保険者のために、この際ただ裁判の結果を見守るというのでなしに、国権の最高機関である国会において、あるいは行政府であるところの政府の責任において、再びこういう事件が発生しないように——先ほど大蔵大臣は、保険協会の中に相談所があるとおっしゃいましたが、そんなものは保険会社がみんなちょっぴり金を出し合って、まるっきりその辺の犬かネコにくれてやるようなえさ代ですよ。そうして保険会社の自由になるようなそういう相談所をつくって、そこに相談にくれば事は足りる、そんなものではありません。私はいま膨大なる保険金を被保険者から取り立てて、これをいろいろな投資に回しておるところの保険業者に対しまして、もっと監督をきびしくしてもらいたい。それと同時に被保険者の利益が全体として守られるようなそういう合理的な方法でぜひ政府及び国会の皆さんに御検討いただきたい。私も検討いたしますが、さしあたり大蔵委員会の大きな仕事一つとして、この歩積みの中小企業対策と同じような、いなそれ以上の熱意を持ってこの問題と取り組んでいただきたいということを申し上げ、最後に大蔵大臣意見をお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 被保険者を守らなければならないということは当然でございまして、大蔵省も被保険者の利益確保という問題に対しては十分注意をいたしておるわけでございます。  それから先ほど申されました独禁法違反の問題でございますが、御承知のとおり事実認定を行なうということで共同調査団をつくっておるわけでございます。真実探求、こういう立場においての仕事でございますから、不公正な対価の決定とか不公正な取引というような独禁法の違反ではないわけでございます。テレビ等でごらんになるように、アメリカのような自由経済の国々では、これは生命保険というよりも損害保険——ダイヤかなくなったと言って実際はなくならなかったというようなものをテーマにして、同じように保険調査官というようなものがございますが、こういう制度をだんだん各社がとって下請式に調査を代行するということになっておるわけでございます。制度の上では真実探求、事実認定ということでありますから、より専門化していくということはあり得ることでございますが、ただこの調査員が警察官のような立場で人権じゅうりんをするということになったらたいへんなことでございます。でありますから、そういう問題に対しては、事実認定をやることにおいて自分たちが検察権を持っておるのだというようなつもりで人権を侵すというようなことがあってはたいへんなことでございますので、こういう問題に対しては保険会社その他に対して十分なる注意を行なって行政的指導もしてまいりたい、このように考えるわけでございます。
  80. 赤松勇

    赤松委員 最後に希望しておきますが、大蔵大臣のことばじりをとらえるわけではないが、いまあなたは独禁法違反ではないと言ったが、しかしこの点についてはさらに議論の余地がある。したがって私はこの点の質問は留保しておきます。  それから民間の下請機関に調査をさせることは保険会社の自由であるという点です。これは保険事業の公共性と関連してここにもやはり問題があるが、これも私は留保しておきます。  それからもう一つの問題は、調べ方に問題がある。これは人権じゅうりんにならないように、人権尊重の立場からやるべきだ、この点は私とあなたと意見が一致した。  最後に、そういう膨大な民間の調査機関を動員して全知全能を傾けてなるべく保険金を払わないように努力することが一方においては可能です。現にやっておる。ところがそれはごく少数の人の利益を守ることで、大多数の被保険者というものは、それを防衛する自己防衛の機関がないのです。憲法でいえば、労働者に団結権と団体交渉権が与えられておる。それと同じように、被保険者は金力、物力によって圧倒されておる、これを守らなければならないというところに問題がある。ですから調査機関というものは民間の企業が自由にできるものだということだけでは政治になりません。自由にやれるものだということだけでは対策になりません。それはほんの少数の重役、ほんの少数の株主を守ることだ。現実に血の出るような金を掛け金している被保険者の立場からいえば、保険契約を結んでおる国民大衆の立場からいえば、自己防衛は自分でしなければならぬけれども、いまのような高度な資本主義のもとで、いまのメカニズムの中で、こういう近代的な、それこそ全知全能を傾けて彼らが共同調査をやるということになれば、対抗できないところに問題がある。この弱者をどうして保護するか、これが政治なんですから、この点についてくどくど申し上げるようでありますけれども、保険会社が金を出して、そしてつくっておるところの相談所、そんなところでもって被保険者の利益は守れない。どうぞくどいようでありますけれども、政府においてはこの点について検討していただきたい。国会においてもこの点について検討していただきたい。いかがでございますか、大蔵大臣
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたが先ほどからずっとるるお述べになりました問題の中で一番重要な問題は、保険会社が調査団を組織をしたりすることによって、事実を曲げても払わないようにしたい、こういうことはもう保険業法のまっこうから違反でございまして、こういう問題はあり得べからざることであるし、また絶対やってはならないことであります。私も、先ほど調査員の某が、われわれの商売というものはなるべく払わぬことだ、また払わないほど腕が上がるのだというような表現を使っておることは、それは非常によろしくないことでございます。また保険会社がそのような、なるべく払わないように調査をしてくれ、こういうことを言うとすれば、当然行政上措置しなければならぬというケースでございます。そうではなく、調査をして真実を探求して事実を認定するのだ、こういうことが調査でございますから、これを逸脱して被保険者の不利益をもたらすというようなことに対しては、厳重に保険会社を行政指導して被保険者の利益は守ってまいりたい、そのように考えております。
  82. 赤松勇

    赤松委員 あなたがそうおっしゃっても、現実にいまの資本主義の構造の中ではそういう方向にいっているわけです。繰り返し言いますけれども、その弱者、つまり法廷闘争といいますか、訴訟を起こさなければ——起こすことだけがただ一つの道として取り残されておる。しかしそれは事実上困難である。金がないために困難であるという場合に、どうしてこの被保険者を守っていくかということについて、再度あなたのお考えを伺いたい。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでの例から申し上げますと、大体うまくいっておるのです。生命保険の場合は、いま申し上げたようなこういうケースは非常にまれなケースでございます。百件程度の苦情がございますけれども、大体最終的には示談で、双方合意で片づいております。ただ損害保険などでは、まず放火か、それから内容が一体そんなにあったのか、それから大きなものを契約はしましたけれども、帳簿には載っておらなかったというようなことで、損害保険の係争はございます。ございますが、生命保険というのは人命に関するものでございますから、いま申し上げたようなものは非常にまれなケースでございます。一つ非常に大きな保険金をかけて翌日か何か汽車から落ちて死んだということで係争になっておったようなものもございますが、これも双方合意で示談で片づいたというようなことが、例としてはございます。被保険者が相当大きく権利を侵害されておるとは考えておりませんけれども、あなたが申されたとおり、いま調査に行った人が警察官のように権力を持つ人と同じような状態で調査をしておるというようなことがありますので、こういう問題は私が先ほど申し上げたとおりますという方向でまいりたい。係争に持ち込まざるを得ないようなケースのものを法律手段に訴えないで何らかの救済の方法はないのか、こういう問題に対しては、私が先ほど申し上げたとおり、どういう方法があるのか、一体世界じゅうはどういうことをやっておるのか、日本に行き過ぎがあるのかというような問題は至急取り調べて検討をいたしたいということを先ほど申し上げたのでございます。
  84. 赤松勇

    赤松委員 あなたの認識と私の認識と違うわけでございますが、そのことはいかんともなし得ません。ただ、あなたは非常に件数が少ないとおっしゃった。しかしこれは泣き寝入りをしておるからであります。それが証拠に、私が一つの方法をあなたに提示しましょう。あすでも、大蔵大臣田中角榮、生命保険並びにその他の保険について不利益な取り扱いを受けた者は、過去あるいは現在でもよろしい、すぐ私のところへ届け出なさい、あるいは訴えなさい、こういうことをあなたは一ぺんテレビかラジオでやってみなさい。全国から相当たくさんのものが出てくることは間違いない。ただ表面に出ていない。あなたは大臣だから、大臣室にいて、国会に来て赤じゅうたんの上をうろちょろしているから、国民大衆の苦労がわからないけれども、われわれは日常接している。ことにあなたは選挙が強いから、あまり選挙区を回らぬでしょう。ところがぼくのように選挙の弱い者は、しょっちゅう選挙民のところを回らなければならぬ。そうするとやはり大衆の間からそういうことをずいぶん聞くわけなんです。だからあなたに選挙に強くさせることも、国家のためにあまりいいことじゃないと私は思うのです。願わくは自民党の方もひとつ強い候補者をそこで立てて、田中先生を危機に追い込んでもらいたい。そうしたら少しは選挙区を回って、そうして国民大衆の声もに入ると思うのでありますが、とにかくいま申し上げました点を十分御検討の上で、第三者をもって構成する被保険者の利益を守るための機関の設置については、真剣にひとつ御検討お願いしたい。銀行局長などにまかせないで、あなた自身の手元でもって十分検討していただきたいということを希望申し上げて、私の質問を終わります。
  85. 山中貞則

    山中委員長 小山省二君。
  86. 小山省二

    ○小山(省)委員 引き続きひとつ逐条に御審議を申し上げたいと思うのですが、まず十三条についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  この十三条は試験に関する条項になっておりますが、今次の税理士法の改正の中の最も大きな一つの重点の項目になっておるわけであります。したがってこの項目の中から幾つかひとつお尋ねを申し上げてみたい点があるわけであります。  第一はこの試験審査会、これは大蔵大臣が五人任命をするということであります。そしてその審査会の会長も大蔵大臣指名する、こういうことになっております。私はできるだけ審査の公正を保つという立場から考えますと、少なくとも委員はもう全体的に大臣の任命ですから、その委員会の会長という制度は委員会の互選にまつということは困難であるかどうか、そういう方向にいけないものかどうか、こういう点が一つ。  それから十三条の六に、「委員は、租税に関し学識経験のある者のうちから大蔵大臣が任命する。」こうなっております。この試験をいたします項目は、八条によりますと、国税一般並びに地方税一般、税理士法、民法及び商法、それから会計学、こうなっておる。したがって委員のあれは、租税に関し学識経験のある者のうち」から、こうなっておるわけですが、租税ばかりでなく、当然試験項目の中にも租税以外のたとえば会計学というものがあるわけですから、やはりこの委員は、租税または会計に関し学識経験のある者のうちから大蔵大臣が任命する、こういうふうに租税に偏重しないように、試験項目に権威のあるそういう専門家を大臣が任命できるというようにこの項目を改める御意思があるかどうか、この点についてお尋ねします。
  87. 泉美之松

    ○泉政府委員 税理士法の第十三条の改正関係につきましては、お尋ねのように従来税理士試験委員の制度があったわけでございますが、今回、試験制度の改正に伴いまして、税理士試験審査会という名称に変更いたしまして、これを国税庁に置くということにしたいわけでございます。御質問の御趣旨は、この試験審査会に会長を一人置くわけでございますが、これを大蔵大臣指名することになっておりますのを、こういう機関であるから学識経験者のうちから互選できめたらどうかという御趣旨と承るのでございますが、税理士試験は国家試験でございますので、他の国家試験の制度もそうなっておりますように、やはりその試験委員長と申しますか会長は大臣指名するのが適当であるというふうに考えまして、こういう御提案を申しておるわけでございます。これは従来の税理士試験の制度もこのようになっておったのでございます。  それから試験「委員は、租税に関し学識経験のある者のうちから大蔵大臣が任命する。」ということになっておりますのは、税理士のおもなる仕事が、また試験の内容が、租税に関するものが多いという点で、このように規定をいたしておるのでございますが、この「租税に関し」ということにつきましては、それほど厳格に、租税のことだけしか知っている人という意味ではもちろんございませんで、租税のことも会計学のことも知っておられる方、そういった学識経験のある方を任命するという考えでございまして、「租税に関し」とあるから租税のことしか知らぬ人ばかりを委員にするのだろうというのではございません。その点は、こういう規定でございますけれども、やはり租税のことも会計学のことも知っておられるような人を任命するつもりであることを御了承いただきたいのでございます。
  88. 小山省二

    ○小山(省)委員 趣旨は私もわからないわけではないわけでありますが、特に条項にそういうふうに書いてあると、ややもすると、租税に関し学識経験者とこうなると、そのほうに片寄る危険がありはしないかというような感じからお尋ねをしたわけでございます。  それからまた会長を特に互選にしてはどうかという点は、今後またいろいろ御質疑をいたします上で出てくるのでありますが、これは附則にもちょっと出るのです。やはり附則の五番目にあるわけですが、「政令で定める基準により税法及び会計学に関し税理士試験の合格者と同等以上の学識を有する旨の試験委員の認定」こういうふうにことごとく審査会というものは——附則には、試験を受けない者を同等もしくはなんということは書いてない。同等以上と最初からそういうふうに附則では認定しておりますが、それらもそういう審査会の権限に属するということを考えると、この審査会の人選というものはできるだけ公正な立場に立っておるという感じを持たせることが必要ではないかというふうな感じから、これが役所の御都合というか、役所のほうに一方的に片寄ったという感じをできるだけこういう試験委員の中から解消するため、もうすでに委員全体が大蔵大臣の任命ですから、この中からどなたか選ばれてもそう特別なあれはないというふうに私は感じたから、せめて委員長くらいは委員の互選というほうが遮断ではなかろうかというふうに考えてお尋ねをしたわけでございます。従来、こうした制度の委員というものが大臣の任命になったということでございますが、今後におきますそういう制度は、できるだけ委員会の総意の上に立った会長という制度のほうが好ましいように思うのでありまして、この点は、ひとつ十二分適当な機会にまた御検討を願いたいというふうに考えております。  それから十七条にも「この法律に定めるものの外、税理士試験の執行並びに試験審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。」こういうふうになっておりますから、かなり役所の考え方というものが、この審査会の中に強く押し出されるように、機構の上においても、人選の上においてもなされておる。ですから、そういう点を考えますと、やはり何らかの形でこれが役所の御都合主義に利用されるのではないかというような印象が、おそらく試験を受ける人の頭には強く響くのではないか。ですから、そういう点を総合して考えて、私は、会長という制度は、できるだけ、そういう役所の御都合主義ではないのだ、りっぱな人が委員の中から互選されるのだ、こういうふうな印象を持ったほうが、よりこの制度が活用されるのではなかろうか、こういうふうな考え先ほど来御質問を申し上げたわけであります。十分ひとつこの点は、税理士法の改正もまたあると思いますが、局のほうでも将来にわたって御検討を願いたいと思います。  次に第二十二条でございますが、二十二条は、税理士会の連合会にいろいろ義務づけた仕事を課しておるわけです。そういう連合会がかなりいろいろな仕事について規定の上で義務的な仕事を課せられておるわけですが、それだけの義務を課しておるわりに、いわゆる義務だけで、連合会の権利というか特権というか、連合会の活用というものが十二分に考えられておらない。いわば連合会というものは役所にかわって一方的な仕事を命令されておるような機関になる。私はもう少し連合会の活用という面について何らかのくふうなり措置なりがなされなければならぬと思うのですが、その点について局長のお考えはどういうふうなお考えですか。
  89. 泉美之松

    ○泉政府委員 まず最初の税理士試験審査会のことのうちに、第十七条の点について申し上げておきたいと思いますが、この「税理士試験の執行並びに試験審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。」ということになっておりますが、これは、もちろん大蔵省の都合のいいようにきめようというような趣旨ではないわけでございまして、税理士試験をいつごろ告示していつごろ試験を行なうか。あるいは試験審査会には臨時の委員と本来の委員とおるわけでございますが、そういった場合に、どういうふうに試験を分担してやっていただくかどうか。あるいは本来の試験委員は五人でございますが、その場合議事運営について全会一致でやっていくのか、あるいは多数決でやっていくのか。こういったようなこまごました事柄でございますので、これは大蔵省令できめていく。もちろんその大蔵省令を定める際におきましては、試験審査会の委員の方々の御意向をくみまして、組織及び運営について御相談申し上げて、大蔵省令を定める、かようなつもりでおるのでございます。決して大蔵省のほうで独断的にやっていくというようなつもりは毛頭ありませんことを御了承いただきたいのでございます。  それから次に第二十二条、登録に関する規定によりまして税理士連合会に大きな義務が課されておるというお話、そのとおりでございますが、これは従来国税庁に登録簿を備えつけまして国税庁で登録を行なっておったわけでございますが、弁護士会などが弁護士の登録を弁護士会で行なうということにいたしておりますように、税理士会の自主性を高めるということからいたしまして、三十六年の改正で、従来国税庁にありました登録のことを税理士会、連合会に移譲いたしまして、税理士会及び税理士連合会の自主性を高めることにいたしたのでございます。お話のようにそういう登録のことを行なうということが、義務ではありますけれども、また一面において税理士会並びに税理士連合会の自主性を高め、権威を高めることになっておるものでございます。また私どもといたしましてはその発録制度のほかに、税理士連合会の自主性を高め、その権威を保持するという意味合いにおきまして、今回の改正におきましても税理士連合会において研修制度を設けるといったようなこと、それから新しく懲戒委員会国税庁に設けます際におきましても、その懲戒委員会委員には税理士連合会のほうから委員になっていただくことを予定するといったようなことなど、できるだけ税理士連合会の自主性を高め、その権威を保つように配慮いたしておるつもりでございまして、今後ともそのような方向でやってまいりたい、かように考えておるのでございます。
  90. 小山省二

    ○小山(省)委員 連合会の自主性を高めるというような趣旨はできるだけこの法案の中に取り入れたというような御答弁でございますが、いろいろ調査をしてまいりますと、弁護士会の規則などを見るとかなり相違点があるわけで、もちろんこれは会の性格によって多少違いますから必ずしも一致すると考えませんが、今後いろいろな条項の中からそれを指摘してお尋ねをしたいと思いますが、懲戒審査委員会、これはもちろんその委員の中に、あるいはそういう形になっておるようにも承知していますが、この審査会というものは単なる意見を徴されるという程度であって、審査会自体にそう大きな権能は持たされておらぬようで、これはその条項のところで詳しくお尋ねしたいと思います。まあ私どもは自主性を高めるというその趣旨については全面的な賛意を表するものでありますから、できるだけ連合会を活用して、大いにこの税理士法の中でそういうことが取り入れられるということについては賛成でありますから、ひとつその点についてはさらに今後とも十二分に御留意を願いたいと思います。  次は二十四条でございますが、二十四条の三号に、「不正に国税又は地方税の賦課又は徴収を免れ、若しくは免れようとし、又は免れさせ、若しくは免れさせようとした者で、その行為があった日から二年を経過しないもの」、それから「地方税の還付を受け、若しくは受けようとし、又は受けさせ、若しくは受けさせようとした者」、 こういう認定は一体だれがするのですか。
  91. 泉美之松

    ○泉政府委員 第二十四条には、税理士の登録申請をする者がございました場合にその登録を拒否するという事由が七つ列挙されておるわけでございます。御質問はその第三号についてでございますが、この登録の申請が税理士会を通じまして税理士連合会にまいりますと、税理士連合会におきましては資格審査会というのが設けられておりまして、その資格審査会におきまして、この人は登録拒否の事由に該当しているかどうかということを審査いたします。それに該当しておらない、登録拒否の事由がないという場合に登録をするということになっておるのでございます。したがってこのような条項に該当するかどうかということは、税理士連合会に設けられております資格審査会におきまして審査をするということになるわけでございます。
  92. 小山省二

    ○小山(省)委員 資格審査会で審査をするといっても、そういうことをだれかが——たとえばこの者についてはこういうあれがあるということをその資格審査会に通報しない限り、資格審査会というものは単独で認定するわけではない。そういう事実があったということをだれかが資格審査会に報告して、初めて資格審査会はその報告を待って事実の認定をする、こういうことになるわけですから、一体そういう登録を拒否しようとする事由があったかどうかということを、資格審査会にだれがそういう通告をするかということです。
  93. 泉美之松

    ○泉政府委員 その点は、国税に関しましては税務署、それから地方税につきましては府県または市町村からこの登録を希望する人について照会状がまいりますので、そういった税務署あるいは府県、市町村から、その人についてはこういう事項があったということを通報することになっておるわけであります。
  94. 小山省二

    ○小山(省)委員 つまり、その登録を拒否される者は、すでに懲戒処分を受けておるという現実の上に立って登録が拒否されるのですか。
  95. 泉美之松

    ○泉政府委員 この「不正に国税又は地方税の賦課又は徴収を免れ、若しくは免れようとし、又は免れさせ、若しくは免れさせようとした」というのは、必ずしも税理士の懲戒処分ということと直結はいたしておらないのであります。たとえば脱税をいたしまして摘発を受けて刑事処分をされた者の場合もございましょうし、あるいは刑事処分にまでいかないけれどもそういう事実があったという場合も含まれますけれども、税理士の懲戒処分とすぐに直結しておるわけではございません。本人自身が自分の税について脱税をはかったという場合ももちろん入るわけでございます。
  96. 小山省二

    ○小山(省)委員 そうしますと、刑事処分を受けた者とか、あるいは懲戒処分を受けた者とか、そういうはっきりした形の上にあらわれているものは、これは当然拒否されることは明らかですが、それ以外のもので拒否をされるということは、ではあり得ないのですか。そういう刑事処分とか懲戒処分を受けたというようなはっきりしたもの以外は登録の拒否というものはあり得ないわけですか。
  97. 泉美之松

    ○泉政府委員 これにつきましては、「徴収を免れ、若しくは免れようとし、」という免れるほうは比較的制定がしやすいわけでございますが、免れようとした、つまりまだ刑事処分にまではされなかった、しかし微罪不起訴であったというような場合、あるいは刑事処分にはされないけれども重加算税の賦課はされたといったような場合、こういった場合は服務上に対してでございまして、刑事処分あるいは税理士としての懲戒処分だけではなくて、もう少し範囲が広く、たとえば重加算税の賦課を受けた、あるいは刑事処分までには至らないけれども、微罪不起訴の扱いを受けた、こういう程度までは含むものと解しておるのでございます。
  98. 小山省二

    ○小山(省)委員 これは非常に重要な点なんです。一体、そういう登録を拒否されるような行為があったということをだれが判定するかということなんです。判定する人によって非常にこれは問題なんです、一方的なんですから。一方的にそういう資格がないものだと認定されるということは、その人にとっては致命的な問題ですからね。ですから、それが公式な機関において、確かにそういう行為があったと認定されたものならやむを得ないとしても、一方的に、特殊な人がそういう申請をすることによって登録を受け付けられないということになっては、これは人権に関する問題ですから、私はそういう点が明確でないと税理士の立場というものはだれも守れないと思うのです。たとえばそのうしろの二十四条の二に「第二十二条第一項〔登録に関する決定〕の規定により登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、国税庁長官に対して行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による、審査請求をすることができる。」とこう書いてある。しかし、今度の懲戒規定の発効の時期を見ると、いわゆる長官が一方的に処分をした、そういうときにもう税理士の資格はなくなるわけです。そうすると、正式にこういう自分のあれはこうだという訴えを起こして、その訴えを起こして審査をしている期間というものは当然税理士としての仕事ができない。いまこの場合においても、自分はそういうあれがないのに、もし税務署なら税務署のある人からこういう事実があったということをこの審査会に通告されて、それで登録ができない。自分はそういうことはないというので、行政不服審査法によって訴えたとしても、これが判決を下す期間というものは税理士の仕事はできない、今度の新法の精神からいけば。そうでしょう。そうすれば当然いままで関係した、関係者のめんどうを見た納税者というものは、これはほうぼうへ散らなければならない。他の人にたよらなければならない。そしてこの審査の結果が判明したときには、もうすでに自分はそういう人との関係を断ってしまわなければならない。旧法の場合においては、それは確定するまでいいでしょうけれども、そういう点から見ると、この登録を拒否されるそういう条件を、審査会に申請するというのが、そういうふうにちゃんと刑事事件として処罰されたとか、あるいは審査会で確かにそういう処判を受けたという、こういうのなら問題はないと思いますが、自分にはそれほどと思ってないようなことでこの資格審査会に——そういう免れようとした行為があったということを一方的に認定されて審査会にそういう通告をされた場合には、税理士の立場というものはだれが一体守ってやるのですか。それは、当然ある控訴する期間がありますけれども、その期間というものは、きょうそういう不服を申し出たからといって、それがきょうあしたですぐ解決がつくようなものではない。相当の期間を要する。そうなるとその間登録を受けつけられない。登録が受け付けられなければ仕事ができない、こうなるわけであります。したがって、この免れよう、あるいは免れさせようとした行為、その行為の認定というものは非常に重要だろうと思うのです。これはどういう人がやるか。たとえば国税庁長官がそういうことを審査会に申し出るとか、そういう責任のある人が申請するという、そういう責任の、つまり申請する人の立場というか責任者というものが明確ならいいのですが、これですとだれが——たとえば税務署の一係がそういうことを言って申請した場合でも、この資格の審査というものは一応ストップということになるように私は解釈しておるのですが、その点をひとつ……。
  99. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、登録を拒否するということは、登録を申請しておる方にとってはきわめて重大な事柄でございます。したがってこの事項以外、それぞれの下頃につきまして登録を拒否するかどうかということにつきましては、連合会の資格審査会で非常に厳密に、またかなり時間をかけて調査することになっておるのでございます。お話のように、最初登録を申請するのでございますから、その方はまだ税理士になっておらない、したがってその人について懲戒処分云々というのは、懲戒処分によって税理士の登録を取り消されたあとでないと、その問題は起きないわけでございます。したがって最初に登録を申請してまいった場合に、その人が過去二年以内においてこういう事実があったかどらかということを調べるわけでございます。その事実は、先ほど申し上げましたように、税務署、府県または市町村からその事実を税理士連合会のほうに報告をするわけでございますが、その事実に基づいてはたしてこれは登録を拒否すべきようなものであるかどうかということの判定は、資格審査会で行なうわけでございます。この資格審査会には、国税庁長官の代理の者が出席いたしておりまして、国税庁といたしましては税務署から報告もあったけれども、この程度なら登録拒否要件に該当するとかしないとかいうことをはっきり申し上げることになっております。したがって、税務署の一係がそういう通知をするというのじゃなしに、税務署はもちろん税務署長の名前で出すのでございまして、一係がそういうことを通知するということではございません。税務料長が報告を出したものにつきまして、資格審査会でさらに検討いたしました上で、さらに国税庁のほうからそれについての見解を申し上げまして処理するわけでございます。したがって、その処理というのは十分慎重に行なわれますので、お話のように税理士の登録を申請する人が不利に扱われるということのないように、十分配慮しておるつもりでございます。
  100. 小山省二

    ○小山(省)委員 時間でございますので、この点で一応切り上げようと思いますが、税務署長がそのような公示をするという場合においては、もう当然幾つかのそういう問題がなければそういう事実は現われてこないわけです。したがって、そういう行為があった人が登録を受けようということは、たいへん私は矛盾するような気がする。つまり不正に税を免れよう、あるいは免れさせよう、あるいはそういう関連した行為をやった者が税理士として登録を申請するということは、現実にあり得ないような感じを持つわけです。しかし署長という責任者がそういう事実があった場合審査会へ申請するんだという、はっきりしたそういうことが確認されれば、もちろん私どもはある程度それは納得ができます。ただこの場合、だれがそういうことを審査会に申し出るかということが書いてありませんから、ちょっと私どもで納得いかなかったわけですが、いま言うとおり申し出る者は税務署長という責任者であるということが明確であれば、私はこの点についてはそうトラブルはなかろうというふうに考えまして了承いたします。  時間ですからあとは次会に質問いたします。
  101. 山中貞則

    山中委員長 次会は明十日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十二分散会