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赤松委員 そこで私は、
大臣、この場合ぜひ聞いておいていただきたいのだが、保険契約をする際に、時間の問題というものは、保険勧誘員が融資を
条件にしたかどうかということなどもからんでくると思います。しかしそれは裁判中のことだからしばらくおきましょう。そこでだ常識的に
判断できることは、保険会社が契約をする場合に現在の契約高は幾らであるか、他社とどれくらい契約をしているかということを調べずに契約するわけがない。後に至って一億幾らの契約をしておったからだからこれは故意だ、こういうような断定は私は間違っておると思う。きっとこのときに調べた。一億七千万円の保険契約があるということを保険会社は知っている。それならば保険会社はそれを拒否すればいい。もし融資をネタに募集をしなかったなら、向こうから頼んできたから契約をしたんだ、しかし契約をしたけれども、契約した以上はこれは支払う義務がある。その支払いの際に金額が大きいからどうも怪しい、こういう
議論は私は成り立たぬと思う。それならば契約の際に保険会社はそれを拒否すればいい。保険会社はその契約を拒否することは自由ですよ。こういう点が私は非常に問題になると思うのであります。この点はしかし裁判中のことでありますからここではあまり問題にしないでおきたいと思う。
その次の問題は、これは裁判には
関係ありませんが、この調査に当たった調査機関、それから調査を行なった調査員の態度が問題なんだ。これは人権の問題と関連する。これは
大蔵大臣、ぜひ
考えていただきたいと思うのですが、調査をする場合に、まず第一に本人を犯罪人扱いにしている。それからいま
一つの問題は、民間の下請機関でありますから、その下請機関の社長はできるだけ保険会社に有利なように、被保険者に不利なように調査することを目的としているということをはっきり言っている。私はこれを報道いたしました週刊新潮を御紹介申し上げます。「安田生命と千代田生命の二社から依頼をうけて名古屋へ乗り込んだのは、保険連合調査会社長の千々松賢四郎氏である。千々松氏は、女秘書を同行した。」そこで千々松は「「極端にいえば、いかにして保険金を支払わないでもすむかを調査するのが、われわれの
仕事なんです」もう一ぺん言いましょう。「いかにして保険金を支払わないでもすむかを調査するのが、われわれの
仕事なんですが、相手が病院に入院していると聞いて、病気見舞いというカタチをとったんです。それほど気をつかってやるんですよ。手を切断した本人を前にして因果な話だとは思ったけど、聞くだけのことは聞きましたよ。まず第一に、保険金目当てではないか。そうでなければ、なぜあんな大きな保険にはいったのか、という点です。保険会社は加入させるだけさせておいて、けしからんという
考えもあるでしょう。しかし、こんどのような場合、大きな保険にはいり、機械を買って、十日もしないうちに、事故が起きる。それじゃ、その機械は何のために買ったのか。ひょっとしたら……。そういう疑問が起こるのもまた常識ではないか。そこで、そういう常識を私は松広さんに聞いたわけだ。さすがに、「あなた、計画的にやったんだろう」という非常識な聞き方はしない。遠回しに聞いたのだが、加入の原因は二つあった。
一つは、中小企業は社長の死が原因でつぶれることが多いので、保険を重要だと
考えた。もう
一つは、保険会社から大口の融資を受けるのが目的だったというわけです。それは分かりましたが、私の重視したのは、事故発生の原因ですね。つまり、健康な状態で作業をしていてもあの事故は起きるかどうか。私の結論は、重過失ですよ。ナットをしめるのに、モーターのかかっている機械に手を入れることはないじゃないですか。電源をきって、機械の裏へ回ってやればいいことだ。私はここで決定的な重過失だと思うのです(この場合、安田生命と千代田生命では、契約で「故意」と同様に扱うことになっている)。また、本人に聞いた話によると、彼は朝から頭痛がひどく、体がけだるかったといっていた。彼はアトラキシンを月に百錠、睡眠薬を三十錠常用している。これは私が薬屋でも確かめたのだが、その中毒作用が出ていたとも
考えられる。それはともかくその日、本人が正常な健康状態ではなかったと私は
判断したが、これまた重過失の証拠になるのではないかと思う。しかし、それだけ聞くにも、相手の奥さんは泣き出すし、私の秘書も、「せっしょうなことを聞く」と泣き出すし、私もつくづく因果な
仕事と思いましたよ」どうです、この実態は。これでもって、
大蔵省の監督権があるのだ、それを適宜発動しているのだ、ぼくはそういうことは言えないと思うのですよ。だから
先ほどから問題にしたのですけれども、こういう巨大な資本は、民間下請機関として、なるべく払わないように、払ってもなるべく少なく済むように、そういう調査機関を共同で設けておる。そしていまのように人権を無視して、近所隣を問い合わして、松広は楽を飲んでいなかったか、薬屋まで行ってわざわざそれを調べておる。これに対しては、本人は言い分があります。しかし私はそういうことはここで必要ございませんから言いませんが、とにかく秘書までが、せっしょうなことを聞くと言って泣き出すし、私もつくづく因果な商売だと思いました、——
大蔵大臣、現実にこういう調査機関というものが存在しているのですよ。これに対して被保険者のほうは何の調査機関を持っていますか。だれに訴えることができますか。やりっぱなしじゃありませんか。それじゃ法律にたよったらいい、裁判所にたよったらいい、一億七千万円ならば、この訴訟を起こすのに一体幾らかかると思いますか。何百万円かかるのですよ。そんなことは中小企業ではとてもできません。そうすれば、一般国民大衆、被保険者は泣き寝入りになってしまう。ここに問題がある。この点は
大蔵大臣の見解というよりも、私は他の
委員会でさらに追及したいと
考えておりますが、こういう行為は独占禁止法第二条に規定する不公正な取引方法、または第三条に規定する不当な取引制限に該当するという
考え方を私は持っている。すなわち独禁法の第二条第七項第五号によると、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」不公正な取引方法に関する一般指定として、「自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な
条件で取引すること。」第三条、「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」こういうように、独占禁止法は明らかにこういうような行為を禁止している。
大蔵大臣の手元でひとつ独禁法について、はたして独禁法違反になるかならないか、この点をぜひ
検討して私に御
答弁願いたいと思います。
さらに人権じゅうりんのはなはだしいのは、この千々松という人は重過失という結論を出したが、「かなり強く「故意」という線を出したのは、朝日生命大阪営業局保全課の川那辺源太郎氏だ。この十年間、この種の調査ばかりやってきたベテランだが、“ズサンな調査”ときくとケゲンな顔をしてみせるだけに、川那辺氏の調査は微に入り細にわたっている。「一週間かけて、事故の発生の
状況、医者、取り引き先、銀行、従業員、近隣と、徹底的に調査しましたが、いろいろ疑問点が出てきました。まず、事故の発生の
状況ですが、九月二十四日の午後四時半ごろ、皆はどうしていたか。弟の寿之氏が工場の片すみでトランペットを吹いていたが、小便がしたくなって、便所へ行こうとしたら、例の機械に兄がよりかかっていて、モーターがうなっていた。そこで寿之氏は、ヘンだと思って父を呼びにいった。父は寝間着にかえて休養をとろうとしていた。と、まあこんな
状況なんですが、病院にいた一三氏に「君は弟のトランペットを聞いたか」と聞くと「聞こえなかった」といっていたね。」この保険会社が来て——両手を落として、もう十分すれば死んじゃう重傷人に、もう痛くて全身ふるえておるのに、保険会社がやってきて、おまえトランペットを聞いたか、弟のトランペットが耳に入ったか、こういうことを聞くのでありますから、実に私は不届き千万だと思うのでありますけれども、とにかく聞こえなかったと言っていた、こんな
答弁ができるものですか。「また、切断された手は、金魚バチのような箱に入れて病院にあったが、」これは名古屋の坂種病院という病院です。「金魚バチのような箱に入れて病院にあったが、見たところ小さいから『どうも短いね』と医者に聞いたら、『ちぢむのだ』と答えた。『しかし、骨までちぢむのか』ときいたら、医者は黙って行ってしまった。」これはあとで医者は非常に憤慨しておりました。何という非常識なやつだ、こういって憤慨しておりましたが、どうもわからない点が多い。とにかく、もう十分発見がおくれると命がなかったということは、だれもがいっていたが、そこで、私個人の
考えをいうと、うまいこと発見したもんやという疑問がどうしても残る」こう言っておる。そこで、松広一三氏のおとうさんがどう言っているか。「「調査は公正を期してくれるものと思い、いわれるとおり、協力は惜しまなかったつもりです。息子の部屋を見たいというから、快く案内した。そうしたら、どうです。アトラキシンの箱を見つけて、「これは?」と聞く。息子は小学生のころからドモリで、それには精神安定剤がよいという薬局のすすめで、三年ほど前から常用している。そこで、そういうと、調査員はさっそく薬局へとんでいって、息子の飲む薬の量を調べてきて、「当日の精神状態がヘンだったのでは」というんだ。また「機械はいつ買ったか」と聞くから、「さあ、八月ごろだったかな」というと、調査員は、機械屋へいって帳簿を調べる。そして、九月十八日だったと分かると、まるで鬼の首でもとった騒ぎだ。親せきや近所のものに知らせなかったのも、私は、一三の容体がきまってからと思って、わざと知らせなかったのを、「作為の証拠」といわんばかりにつつ込んでくる。ある調査員にいたっては、病院へいって、ホルマリンづけになっている息子の手を見て、短かすぎる」と医師につめよったそうですよ。ホルマリンにつけておけば、そうなるのは当然で、これには主治医の先生もムッとして、「そんな知識で、調査員がつとまるのですか」といったそうだ。ところが、そのあとで、その調査員は近所で、「あの家は切れた手を冷蔵庫にかくしていて、あとでもとどおりにするつもりだ」というようなことをいって回っているんですからね。全くどうかしている。近所の人も、「あの調査員はおかしい。裁判になれば証言台に立ってあげる」といってくれておりますよ。もっとも、動いている機械に手をつっ込むということが、あの
人たちにはありえないことに思われるところから、いろんな疑いも出てくるのだろうと思うけれど、しかし、それは、あの
人たちが知らないからで、町工場ならどこで聞いていただいても分かりますが、中小企業で親会社への納品で追いまくられて
仕事をしているところでは、動いている機械に手を入れて、ちょっと調べるというようなことは当たり前のことなんですよ」これは動力スイッチを切って、全部ストップさせて、それから調べるというようなことはなかなかできないのです。ちょっと手を入れて調べるというのが普通だ。一日分を犠牲にしてまで、金をもらって会社を救う。そんな聖人じゃないですよ」というのは、両手首を切断した当の松広一三氏だ。「病院へもきましたが、さすがにここへは花など持ってきた調査員もいましたね。見舞いの言葉もかけてくれましたよ。だがしかし、一人として、私を信用している人はいなかった。私は通称静児というので、病院にもその名札を出しておいたところが、みんなこれについて聞きましたからね。疑わしそうな顔で、「名前が、ちがうのは?」と。女房は情けながって泣いてばかりでしたよ。それに、最近聞いたところでは、調査員が近所を回ったときには、のっけから、「あれは親子でやったシワザでしょう。そんなウワサですが、おたくでは何か聞いておられないか」という聞き方をしているんですね。そうでなければ“重過失”にするために、「あの人は平常から、ちょっとおかしいところがあったでしょう」というような聞き方をしているんです。お陰で、調査マン
たちが去ったあとは、私
たちは、すっかり近所から白い目で見られるようになってしまいましたしこれが人権じゅうりんでなくして一体何ですか。しかも調査機関を持ち民間下請機関を持ち巨大な資本を持って、一方的にこういう人権じゅうりんの調査をどんどんやっている。一方松広社長は、小さな三十人か四十人の中小企業で、これに対抗する手段は何もないのです。これに対抗するためには、
大蔵省がその監督権を発動して、平素からこういう事件の起きないように十分な手当てをしておく必要がある。だから私は
先ほどから、第三者による審判所をつくったらどうですか、こうあなたに言っているのです。あなたは幸い
検討するということをおっしゃいました。
ここで私は大蔵
委員の諸君並びに
委員長に
お願いしておきたいのは、いまのような状態で被保険者はやられっぱなしなんです。自己防衛は全然できません。何かといえば訴訟を起こせばいいと簡単に言いますけれども、訴訟を起こすにはお金が要ります。その金は、とうてい中小企業でまかなえるものではないのです。でありますから保険事業の公共性にかんがみまして、こういう点をどのように改善するか、それは
委員会の皆さんの良識にまかせておきますが、ぜひ国民の権利を守るために政府と同時に当
委員会におきましてもこの御
検討を
お願いしておきたい、こう思う次第であります。
なお簡単に申し上げておきますが、もう十分すれば命を失うという重病人です。命をかけて一億何がし金をとろうという、そういう勇気のある人間がはたしておるのでございましょうか。しかも松広は食うに困っておりません。工場誘致の要請が市長からありまして、そして小牧に工場をつくり、これから発展しようというときです。これは東邦瓦斯会社の下請をやっております。東邦瓦斯会社め労働組合も、会社の
意向で全力をあげて松広をつぶさないようにということで協力をしておってくれております。そこに会社と労働者の涙ぐましい善意が、いまこの松広を包んでおります。訴訟を起こせとすすめたのは、この事件を利用しようとする者が若干出てまいりましたので、私は全部私に委任状を渡せということで、他の委任状を全部取り上げました。そして私もその委任状を私の弁護士に渡しました。そしてただいま無料で弁護を引き受けて、
東京地裁並びに大阪の地裁に訴訟を起こしております。
私は、松広さん個人の問題もさることながら、日本の被保険者、国民大衆がこの銀行資本と並び日本資本主義の指導権を握るところの巨大なる保険業者によって徹底的に痛めつけられておる事実を、私の正義感は見のがすことができません。おそらく大蔵
委員会の皆さんもそうだと思うのであります。町を歩きましても、銀行や保険会社だけのビルがどんどん建っていく。そのビルやあるいは彼らがいろんなところに投資をしてそれによって利益を受ける、それは全部被保険者が犠牲になっている。いま保険業務は全部民間にまかされている。本来こういう公共性の高いもの、こういう社会的な性格を持つものは国有国営事業にしなければならぬというように私は
考えておりますけれども、さしあたってこの問題につきましては党派を離れて、思想を越えて、イデオロギーを抜きにして、ぜひ国民大衆、被保険者のために、この際ただ裁判の結果を見守るというのでなしに、国権の
最高機関である国会において、あるいは行政府であるところの政府の責任において、再びこういう事件が発生しないように——
先ほど大蔵大臣は、保険協会の中に相談所があるとおっしゃいましたが、そんなものは保険会社がみんなちょっぴり金を出し合って、まるっきりその辺の犬かネコにくれてやるようなえさ代ですよ。そうして保険会社の自由になるようなそういう相談所をつくって、そこに相談にくれば事は足りる、そんなものではありません。私はいま膨大なる保険金を被保険者から取り立てて、これをいろいろな投資に回しておるところの保険業者に対しまして、もっと監督をきびしくしてもらいたい。それと同時に被保険者の利益が全体として守られるようなそういう合理的な方法でぜひ政府及び国会の皆さんに御
検討いただきたい。私も
検討いたしますが、さしあたり大蔵
委員会の大きな
仕事の
一つとして、この歩積みの中小企業対策と同じような、いなそれ以上の熱意を持ってこの問題と取り組んでいただきたいということを申し上げ、最後に
大蔵大臣の
意見をお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。