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江守政府委員 今回
国有財作法の
改正を御提案いたしました第一の問題は、ただいま仰せになりました
大蔵大臣の
総括権、
総括権と申しておりますが、
総括権の
強化の問題であります。ただでさえ
大蔵省は
権限が強いというふうにいわれております。そこへもってきて
大蔵大臣のこういった
権限を
強化するということは、ますます
大蔵省を強くするのではないかというようなお
気持ちが一部にあるということも私どもは
重々承知をいたしておるのでございます。ただ
国有財産に対します
大蔵省の
関係、これは
国有財産の
管理、
処分ということをいたしますと同時に、
国有財産全般につきまして、
国有財産について
責任を持つ
大蔵大臣として、
各省に対していろいろ御
協議にあずかる、あるいは
お話を申し上げるということをすることは
国有財産を
管理する
大蔵大臣の
責任として必然といわれる節もあるのでございます。
現行の
国有財産法上いろいろな点につきまして
大蔵大臣が
各省大臣に対してものを申し上げる、あるいは何かなさる際に、御
協議を受けるということはすでに
現行法上行なわれておる点でございます。今回この
総括権を強めます
一つの
方法といたしまして、従来
閣議にはかっておるというものをはずすという点がございます。これはまだはずしていないのでございますが、はずす点を申し上げますと、従来、たとえばほかの省で
官庁の
敷地として非常に広大な
敷地を持っておる。その際に、最近のように非常に
土地が少ない状況でございますと、これを有効に使わなければなりませんので、
大蔵省としては、非常に広過ぎるからこれを
大蔵省に返していただく。売ったり貸したりいたしますためには、各種の
行政財産を
大蔵省に返してもらわなければできないことになっておりますので、
大蔵省の
普通財産に返してくれということを申し上げるわけでございますが、これはいまもやっております。やっておりますが、また
各省の
立場になりますと、
大蔵省ではそう言うけれども、おれのほうはこういう目的でぜひこれは持っていたい。またこういうふうに使うのだというような
お話がありますと、その
お話はそのままになるわけでございます。
現行法上はそういう場合はしかたがないから、そのままになってしまうか、あるいは
閣議に持ってまいりまして、
閣議でおきめ願って
大蔵大臣が
各省にそういったお願いをするというふうなたてまえになっておるわけです。今回これをはずすと申しますのは、
閣議にはかって、
大蔵大臣が
各省に対してそういうことを申し上げる前に、一応
大蔵大臣が
国有財産を
管理するという
立場から、ひとつ
法律上の背景を持ったいわゆる
措置要求と申しておりますが、
各省に対してこういうことをしてはどうかということを
法律上の問題として申し上げるということでございます。現在事実上の
お話として申し上げるのは
法律上のバック・グラウンドを持ったものとして申し上げるということでございます。
各省はこれに対してやはりおれのほうでこれが要るんだということならば、要るということをおっしゃれば
大蔵大臣はそれ以上のことはできないということはいまと同じでございます。ただ、いままで事実上の話し合いであったのを
制度的に明確にするという点でございます。したがって強くすると申しますけれども、
法律的に非常に強くなるということではない。現在やっておることの筋道がはっきりするというような
意味合いでございます。したがって、
大蔵大臣が、今回の
改正によって
閣議にはかる前に
措置要求をするということにいたしましても事態は解決されない場合がございます。そういう場合におきましては
現行法と同じように今度は
閣議に上げまして、
閣議で
お話をいただいて、それがよかろうということになったならば、
大蔵大臣がそれに基づいて
各省に指示するということになっておりまして、
総括権を
強化すると申しますけれども、これはそういった今度の
改正で
閣議をはずすということばから受けるほど非常に強い
強化ではないのでございます。それが今回の
改正の眼目の
一つでございます。
それからもう
一つは、
先ほどお話がございました
特別会計の持っておる
財産について、従来は
特別会計が持っておりました
普通財産を
処分するという場合には、
大蔵大臣に
協議なくしてそれぞれ
特別会計を
処分しておる。
大臣が独自の
判断でこれを
処分なさっておったわけであります。このことについては
大蔵省の持っております
普通財産につきましては
国有財産審議会というのがございまして、
処分する際にはこれにはかってやっておる。ところが、
特別会計のほうについてはそういった
役所だけの
判断でやっておって、
第三者の方にそういったことがいいかということを聞く
機会がないという点はどうかという
批判がございます。
それからその
批判は別にいたしましても、
財産を
処分するという
立場だけから申しましても、
普通財産の
処分と申しますことは、現在の
措置上から申しましても相当広い
立場から計画的にやる必要があるわけでございます。
特別会計でおやりになっておることももちろんそういったことをお
考えになってやっておることはもちろんでございますけれども、やはり
国有財産全体を総括するところの
大蔵省という目から見ても、やはりそれに合致するというようなことでなければ困る場合があるわけでございます。したがって、そういうものについて
大蔵大臣に
協議をしていただく、
大蔵大臣に
協議をしていただくことによって
国有財産審議会の諮問も受けるし、また国全体の
立場からその
措置が一番有効に利用されておるかということも
判断し得るということを
考えておるわけでございます。
それからその次の点は、従来
予算で御
審議を願いましておるほかに、それとまた別に
国会の承認を受けておる公園その他を減少する場合、
皇室用の
財産を
増加する場合、これらについて
国会の御
審議をいただいておるわけでございます。それを今回はずそうという点が、
改正の第三の問題でございますが、このことは、現在の
法律がそのようなたてまえになっておるということは、現在の
法律をつくりましたときの
立法の当時の状態というものを振り返ってみませんと、なかなか私ども理解しにくいと思うのでございますが、現在の
国有財産法を制定いたしました
昭和二十四年ごろにおきましては、たとえば
皇室用財産の
増加というような問題につきましては、その当時の
占領下にある特殊の
政治事情、あるいは国内の
政治事情といたしましても、
皇室用財産が非常にふえるというようなことについては特別に心配される向きがあったのでございます。したがって、
予算で
審議するほかに、また特別に
皇室用財産の
増加という点については入念に審査をしようというような、また、それが国民全体の意思を反映させる
方法であるというようなことであったのでございますが、その後現在に至りますと、その当時の
政治事情も変わっております。また特別の、
予算のほかの御
審議をいただいております事案の
個々のことを
考えてみましても、そういう心配はないというようなことで、今回これをはずしていただいたほうがよかろう、
国会の中でもかつてそういったお
考えもあったように承っております。
以上申し上げましたような三点が、今回
国有財産法を
改正しようという点でございまして、特に
大蔵省の
権限を強くするというような
気持ちはもちろんございません。従来持っておりました
大蔵大臣の
総括権というものを
整備するというようなこと、あるいは
普通財産の
処分について
特別会計の持っておった
処分の仕方を合理的にして有効に
活用しよう、それから従来御
審議を願っておりましたような点が、
立法の当時においては
意味があったけれども、いまはいたずらに煩瑣の点もある。またそれを省略しても
予算審議の際において十分御
審議をいただくのであるから、十分の御
審議をいただけるのではないかというような点を
考えて、今回の
改正案の御提案をした次第でございます。