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1964-04-08 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月八日(水曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       宇都宮徳馬君    大泉 寛三君       大久保武雄君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    木村 剛輔君       木村武千代君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       渡辺美智雄君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局経済課         長)      塚本孝次郎君         大蔵事務官         (理財局証券部         長)      加治木俊道君         大蔵事務官         (理財局証券部         証券第一課長) 細見  卓君         大 蔵 技 官         (造幣局作業管         理部長)    葛城 一郎君         大蔵事務官         (造幣局東京支         局長)     石橋 大輔君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    東村金之助君         参  考  人         (東京証券取引         所副理事長)  田口 真二君         参  考  人         (大阪証券取引         所理事長)   駒村 資正君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月四日  公認会計士特例試験等に関する法律案内閣提  出第一五五号) 同月七日  公務員共済組合長期給付に要する費用の国庫負  担分増額等に関する請願岡本隆一紹介)(  第一八七三号)  同(堂森芳夫紹介)(第一八七四号)  同外一件(野原覺紹介)(第一八七五号)  同外四件(松原喜之次紹介)(第一八七六  号)  同(柳田秀一紹介)(第一八七七号)  同外一件(横路節雄紹介)(第一八七八号)  同外一件(阪上安太郎紹介)(第一九一五  号)  税理士の試験制度改正反対に関する請願外二件  (田中武夫紹介)(第一八七九号)  同(田中武夫紹介)(第一九六二号)  揮発油税等増税反対等に関する請願外六十八  件(横山利秋紹介)(第一九一六号)  同(川村継義紹介)(第一九六一号)  国立学校特別会計法案反対等に関する請願外七  件(久保三郎紹介)(第一九一七号)  同外二件(長谷川保紹介)(第一九一八号)  同(勝澤芳雄紹介)(第一九六〇号)  同外三件(勝間田溝一君紹介)(第一九八三  号)  同(久保三郎紹介)(第二一九七号)  生活協同組合に対する租税特別措置に関する請  願(有馬輝武紹介)(第一九四二号)  減税と税制民主化等に関する請願外三件(山口  丈太郎紹介)(第一九六三号)  入場税撤廃並びに労音、労演に対する不当課税  の取消し等に関する請願谷口善太郎紹介)  (第一九八四号)  酒類販売免許制度存続に関する請願佐伯宗  義君紹介)(第二〇三七号)  同(正力松太郎紹介)(第二〇三八号)  同(内藤隆紹介)(第二〇三九号)  同(佐野憲治者紹介)(第二二一五号)  戦傷病者国税等減免に関する請願今松治郎  君紹介)(第二一〇三号)  同(加藤常太郎紹介)(第二一〇四号)  同(佐伯宗義紹介)(第二一〇五号)  同(高橋清一郎紹介)(第二一〇六号)  同(中馬辰猪紹介)(第二一〇七号)  同(寺島隆太郎紹介)(第二一〇八号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二一〇九号)  旧令による共済組合等からの年金制度に関する  請願金子一平紹介)(第二二一六号)  同(中村幸八君紹介)(第二二一七号)  同(小泉純也君紹介)(第二二一八号)  同(小宮山重四郎紹介)(第二二一九号)  同(田口長治郎紹介)(第二二二〇号)  同(中嶋英夫紹介)(第二二二一号)  同(前田榮之助君紹介)(第二二二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  証券取引に関する件  金融に関する件  造幣事業に関する件      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  参考人には、定刻前よりご出席いただきましたのに、開会がおくれまして申しわけありません。おわび申し上げます。  証券取引に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として、田口東京証券取引所理事長及び駒村大阪証券取引所理事長がそれぞれ出席されております。  両参考人には、御多用中のところ御出席いただき、ことに駒村理事長には、わざわざ大阪から御上京賜わりまして、まことにありがとうございました。  まず、両参考人から、当面の証券行政について御意見を述べていただき、そのあとに質疑に入ることにいたします。  それでは、田口参考人からお願いをいたします。
  3. 田口真二

    田口参考人 ただいま委員長から御指名ありましたので、私から、最近におきます証券市場の概況について、簡単に御説明申し上げたいと存じます。  皆さま、御存じのとおり、証券市場は、戦後のわが国経済の急速なる復興に伴いまして、目ざましい発展を遂げてまいりました。たとえば、東京証券取引所における一、二の数字を見ましても、これは明らかなことでございまして、年間の一日平均売買株数あるいは上場会社上場株式数におきましても、非常な数の増大を来たしております。  しかしながら、昨今の証券市場は、御承知のとおり、このように規模が大きく拡張はいたしましたけれども、一方、かなり長期にわたりまして株界低迷を続けまして、現状に至っておる次第でございます。  昭和三十三年以来、証券市場は、高度成長に伴いまして非常な活気を見たのでございまして、三十六年の七月、御承知東証株価平均指数は、旧ダウで千八百台という高い上昇を見たのでありますが、それ以後、国際収支改善のためとられましたいろいろな景気調整というような政策から、金融が漸次引き締められまして、経済成長のテンポも漸次ゆるみました結果、これを頂点といたしまして、漸次株価は下降に転じてまいりまして、それ以後、いわゆる低金利政策による公定歩合の引き下げが数次行なわれました。これらの金融緩和措置影響から、景気回復への期待がちょっとありまして、市場がやや活況を帯びたこともあったのでございますが、昨年の二回にわたるいわゆるケネディ・ショックと、そのほか、国際収支改善のための昨年末以来とられました金融引き締め実施、こういったことから、証券界は、引き続き二年半余にわたりまして、総じて低迷を続けてまいったのでありまして、証券界をはじめ、各方面の御協力で、市場安定策もとられたのでありますが、不況はかなり深刻化してまいりまして、ただいまのような長期的な不況状態を続けておる実情でございます。最近の売買株数も非常に少なくなりまして、三年ぶりに一日平均の出来高が一億台を割るような状態になりまして、株価につきましても、いろいろの要因もございますけれども、総体的に見て、経済の実勢以下に下回っておるんじゃないかというふうに考えられるほどにその不振はきわめて深刻な状態に移っておるわけでございます。  もちろん、このような事態に対しまして、私ども証券界といたしましても、市場振興のための努力はずっと続けてまいったのでございます。取引所中心といたしまして、いろいろ施策を講じましたことを簡単に列挙いたしてみますると、三十七年に、流通市場に関する特別委員会というものを取引所で設けまして、この検討をいたしております。そのほか、三十六年以来、企業増資調整を提唱いたしまして、きょうの新聞でも御承知のとおり、増資等調整懇談会を開くというような段階になっております。そのほか、公社債担保金融の拡充を要請いたしましたり、あるいは日証券融資ワク拡大ということを要望いたしました。また、金融機関に対してその間、買い出動を要請するというような施策もございました。また、証券事故が非常に多うございますので、証券界事故防止対策の種々の方策を講じまして、すでに決定を見て実行に移しておるものもございます。また、証券業税制特別委員会を設けまして、いろいろ税の問題についての検討をし、これに対する要望もいたしてまいりました。なお、昨年来から、資本市場対策特別委員会というものを設けまして、いろいろの問題について、これはいま検討中でございます。そのほか、配当分離課税の実現についての要望、こういったことも随時行ないまして、これらの委員会設置あるいはそれらの要望を相次いで行なってまいったのであります。  さて、戦後、証券民主化推進とともに、証券投資一般国民大衆にまでかなり普及いたしたのでありますが、同時に、今や、本格的に開放経済体制に入るに及びまして、企業自己資本他人資本の比率というものは非常に悪い状態でございまして、長期的安定資金をすみやかに供給して、各企業資本構成を早く是正しなければならない、このことは、私ども証券界に課せられた使命であると思いまして、重大なる責任感じておる次第でございます  その意味におきまして、私どもとしては、いまの証券市場長期的な不振が、一般投資家株式投資に対する不信感あるいは不安感というものを生ぜしめておりまして、ひいては証券市場機能を低下させておりまして、産業資本調達の円滑を欠くような事態に当面するのではないかとおそれておるわけでございます。  こういった意味におきまして、先ほど申し上げました資本市場対策特別委員会というものを設けまして、これに、取引所に答申をしてもらうように諮問しておるわけでございます。この委員会におきましては、資本市場におきますところのいろいろの問題の抜本的対策を講ずるべく、目下いろいろの具体策研究しておるわけでございます。  大体この委員会でどういったことをやっておるかというようなことを御参考にちょっと申し上げますと、その第一は、当面の市場対策といたしましては、証券業者経営基盤強化する、また対顧客関係正常化などによる証券業者経営適正化、こういったものも問題として取り上げております。第二には、買い上げ機関設置増資調整なとによる株式需給アンバランス是正方策。第三には、株式担保金融拡大、これには信用取引改善あるいは日本証券金融融資量拡大といったものを含んだ一般証券金融対策というものも、研究課題にいたしております。第四には、配当分離課税、その他資本課税改正によりまして、貯蓄性資金の積極的な企業への導入ということをはかりたいということで、これらのことをいろいろ研究いたしておるわけであります。このうちには、たとえば先般日本共同証券というものが設立されまして、いまその需給面においての一つ方法は講ぜられておりますが、また増資調整も、先ほど申し上げましたとおり、すでに懇談会を開く段階になっております。なお証券取引責任準備金制度というものを設けていただきまして、証券会社基盤強化についても一つのめどがついたわけでございますけれども、なお、部分的解決はいたしましたが、全般的の解決に至りましては、これから証券界としても大いに努力する必要があると思うのでございます。  それから第二には、長期的視野から見まして問題点がまだあるわけでございます、これにつきましては、第一に金融界との業務分野調整ということがございます。金融界証券界協力体制の確立というものは、長期的視野からしてないがしろにできない重大な問題でございます。第二には、上場審査基準検討とかあるいは売買仕法改善とか、またいま問題になっております市場第二部のあり方検討、あるいは事務的な問題に至りましては株券振替決済制度、こういったものの推進、あるいは投資信託改善の問題とか、あるいは先ほども言いました広い意味での証券金融公社債市場育成というような問題が残っておるわけでございます。そのほか、先ほど申し上げました経営基盤強化というようなものを中心にした証券業者あり方というものも、長期的視野からも深くドラスチックに研究する必要があると思うのでございます。そのほかでは、時価発行の問題とかあるいは配当指令算入などを含めた発行会社との問題も多々あるわけでございます。  以上述べましたような多くの問題が残されておるわけでありまして、証券界及び取引所といたしましても鋭意努力いたす所存でございます。もちろん、これは私どもに課せられた課題でございまするが、具体的な施策をする上におきましては、やはり何と申しましても、問題は取引所ないし証券界だけでなく、各方面、特に政府並びに国会のいろいろの御理解また御指導、御鞭撻がないとできないわけでありますからして、この席を拝借いたしまして、今後ともよろしくお願いいたしたいと思うのでございます。証券税制の問題、特に配当源泉分離課税の問題もその重要な一つでございますし、証券金融拡大というものもその重大な一つの問題であるということでございます。  最後に、最近の証券市場実態に照らしまして、資本市場育成拡大のための諸政策、そういった証券界実態に即した政策及び証券界公共性重大性にかんがみまして、業者の体質の強化育成ということにつきましては、弾力的なしかも育成という意味で、長い目でこれを御指導願いたいのであります。これは皆様も御承知のとおり、証券界というものは非常にフラクチュエートの多い商品を扱っておる関係上、業者あり方というものは非常にむずかしいわけでございます。こういつたことを、いろいろきめのこまかい配慮から、証券界育成ということをあわせてお願いいたしたいと思います。  最近の事情を御報告申し上げがてら一言お願いを申し上げまして、私の御説明といたします。(拍手
  4. 山中貞則

    山中委員長 次に、駒村参考人お願いいたします。
  5. 駒村資正

    駒村参考人 駒村でございます。御指名によりましてただいま田口さんからお話がありました証券界現状並びに対策その他のことにつきましては、いま申されたとおりでございまして、重複を避けて端的に皆様方に対して希望を申し述べまして、お考えおき願いたいと思っております。  御承知のとおり私まだ証券業界に入りましてからわずか一年半余りでございまして、他のベテランの方のように証券業界のいろいろな事情によく通じておるわけでもございません。目下ぼつぼつ勉強いたしておる次第でございますが、しろうとなりに入ってみまして、証券業界をながめてみますと、まさに証券業界は相当な病人になっておるんじゃないかというふうな感じがいたします。それは、過去の急激な大発展のリアクションと申しますか、反動を受けて、いまやまさに正常化された安定線に戻りつつあり、あるいは多少行き過ぎた点もあるかとも思われる程度まで安定性を非常に発揮しておるんじゃないか。この形は、長い目でながめますと必ずしも悪いものでなく、いつかは過去の大発展の結果として経なければならない段階であるのでないかと私自身は考えておる次第でございます。急激な大発展と申しますと、業界といたしましてもそれにミートするために人もたくさんかかえて、また店舗も多くこしらえてきた。相当な人をかかえて好況のときに対処してこられたのが、現在では一般投資家のストック・マインドと申しますか、それが冷却しつつありますし、また事態が安定の方面に傾いて、一時のような、成長性を高く評価されて、利回りの水準なんかも二%そこそこ、三%以下のところまで株価が上がったという時代から、ようやく金利水準まで引き下がってきて、七、八分程度、また六、七分程度のところまで落ちついてきたという姿でございまして、私は、いま低迷いたしておりますが、この株の値段は必ずしも非常に安くなったともいえないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。しかし、何せそういう意味合いにおきまして、多少病人になっておるということを御記憶願いまして、すべての施策、すべての行政指導、その他証券業界公共性その他のことについて改善しなければならないようなこともずいぶんあるのでございますが、それらのことを実行に移しますときに、非常にからだの強いものに対してやる方法と、からだをいたわりながらなおしていかなければならぬという扱い方の区別を十分お含みおき願いまして、今後各方面安全性をはかり、また内的には証券業者健全性を増していくという方面施策、御指導に対しまして、そういうふうなこまかい御配慮をひとつお願いしたいと思う次第であります。  そういうことに関連いたしまして、先般来問題になっております配当分離課税の問題も、池田総理にはなかなか御承諾願えぬようでございますが、やはり証券業界がにないまする重大なる産業経済界における使命、これをやはり発展さし、開放経済に突入して堂々と各国と争っていかなければならない経済競争の上からは、税制の理論から申しまして、あるいはいろいろ批判を受けて、現在も受けておるのでございますが、そういうような問題でも、一時的の時限法として育成のためにやってみようか、またやらしてみようかというお考えをぜひ持っていただきたいと思うのでございます。と申しますのは、銀行にいたしましても、銀行預金の利子がああいうふうなことになって、それがために産業経済界に非常に大きな貢献をしておられると私は思うのであります、銀行を通じてああいうふうな貢献をあげておられるのでございますから、ぜひ源泉分離実行をやっていただきまして、証券界を通じて、また一般産業経済界に対する貢献をさしていただくような生きた例が銀行にあるのでございますから、ぜひ実行していただきたいというふうな希望を持っておる次第でございます。  なお、証券金融のことにつきましては、清算取引の上におきまする日証金大阪証金のような金融機関をもう少し拡大していただきまして、活動しやすいようにしていただくと同時に、一般証券保持者一般投資家に対する証券金融というふうな意味合いにおきましても、現在は非常に窮屈なのでございますが、これをもう少し自由にしていただくようなことができれば非常にけっこうなことだと思っております。  なお、最後に、非常に手前がましいことでございますが、そういうふうなことで、病人であるというふうな考え方から政府行政指導をしていただく上におきましても、取引所は御承知のとおりに会員組織でございまして、会員証券業者とはごく密接不可分な関係があり、いろいろなことがよく手近にわかっておるのでございまするので、行政指導その他のことにつきましても、できるだけ取引所を通じて証券業者に行き渡るように、また政府のお考え取引所を通じて一般に普及させるようにするというお考えをしていただきますれば、病人病人らしい看護をしつつ、またいろいろなところへ気を配りつつ、取引所がいろいろな手当てをいたしますれば、直接政府がおやりになるよりもこまかいことまで行き届くのじゃないかというふうな気がいたしますので、この点もひとつ御配慮していただきたい、こう思う次第でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  6. 山中貞則

    山中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますのでこれを許します。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    堀委員 最初に、本日は証券全体の問題についてお伺いをいたしますけれども、特に最近問題になっております二部の市場の問題について、最初少し全般的にお伺いいたします。  二部市場は、三十六年の十月に開設をされまして以来、一時は非常に高騰して、株不足等のために異常な状態を呈しておりましたけれども、その後だんだんと低迷をして、昨日はダウで百五十円二十七銭、修正九十六円七十八銭というたいへん低い状態になってまいっております。  そこで、この二部市場新聞等を見ましても、値つきのつかない株が過半数に達しておるというような状態で、これではどうも流通市場としての役割を果たせないのではないか。こう出合いがないということになれば、少し売りものがあれば一挙に値段が下がるし、少し買いものがあれば一ぺんに値段が上がるということで、取引所としての機能をやや喪失しかけておるのではないかという感じがいたしますけれども、これについてまず田口東証理事長のほうから、現在のこういう状態でいいのかどうか、今後はこれが改善される見通しがあるのかどうか、それらの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  8. 田口真二

    田口参考人 ただいまの御質問でございますけれども、第二市場の最近の沈滞、これは第二市場だけでない、第一市場もともに沈滞しておる状態でございますが、特に御指摘のとおり第二市場沈滞をいたしておりまして、値つきも非常に悪うございまして、売買高も非常な減退を来たしております。これは一般投資マインドが減退しておるということに起因することむろんでございますけれども、第二市場発足当時、第二市場売買高も一時非常に多く、また価格についても第一市場よりはなやかと申しますか、そういった状態がございまして、むしろその反動を多く受けておるというようなこともあるの、だろうと存じます。  それから、第二市場上場についてのいろいろの条件というものもいろいろ問題になっておりますけれども、それらのすべての問題がからみまして——第二市場企業は御承知のとおり中小企業の堅実な企業上場されておるわけでございますけれども、今回の不況に対する影響が特に中小のほうにしわ寄せされておる結果もあらわれておるのではないかと思うのでございます。先ほど申し上げましたとおり資本調達が非常にむずかしい。資本に対して借り入れ金が非常に多いのは、大企業も同じでございますけれども中小上場会社も同じ状態でございまして、こういったような不況期におきましては大企業との——あるいは近ごろ申されております企業間の信用の大きな膨張も、こういったときには両方の面で中小企業影響を及ぼして、皆さんお骨折りの中小金融対策もやっておられるような状態でありますので、そういったようなしわが非常に多く出ておる。そういったことから株価も非常に低落しておる、低落すれば投資マインドも萎縮して価格形成もむずかしくなっておるという状態ではないかと思うのでございます。この改善を一口にどうということもなかなかむずかしい問題でございまして、それに関連するいろいろな問題につきましては、これからも鋭意研究をいたしてみたいと思うのでございます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 いまお述べになったようにいろいろと原因があると思います。ただ私は、最近二部市場の問題、非常に矛盾に逢着しておるんじゃないかと思う。といいますのは、二部に上場をしたい企業というのは、大体市場に出すことによって増資が行なえて資金の調達ができるということを一つの目的としておるわけでありますけれども、実はこういうような状態でここへ上場してもあまり調達ができないような全般的な地合いになっておる。しかしそこでもし資金を調達しようとすればどうも少し無理がかかっておるのではないか。その無理のかかった処置がはね返ってきた場合に、最近における大阪市場の高森産業のような事件が生じてきておるのではないか。ですから二部市場の問題というのは、まさしく一面的には資金調達希望する企業の問題でありますけれども、しかし片面的にいえば、これだけ低迷をしておると資金調達機能を十分果たせるだけの力がいま二部市場に非常に薄くなっておるのではないか、こういうふうな感じがするわけです。そこでいまちょっと取り上げました高森産業の問題について、大阪取引所理事長のほうでひとつ簡単に御報告をいただきたいと思います。
  10. 駒村資正

    駒村参考人 お答え申し上げます。  高森産業は御承知と存じ上げますが、去年の末に上場の申請がございまして、いろいろ取引所といたしましても規定どおりの審査もいたしましたし、また取り扱い業者といたしましても山一証券大阪の大井証券の両者で正副の幹事を引き受けて周到な調査の上上場される結果になったのでございますが、この一月の初めに増資された後のあり方並びに社長の高森さんの私的な取引の結果御承知のような非常に不祥事が起こりまして、われわれといたしましても、取引所といたしましても、非常に残念に思っておる次第でございますが、これは一般上場されます前までの書類その他銀行による調査あるいは経理士の報告その他につきまして周到な綿密な検討をいたした結果、いずれも適格でありまして、上場には差しつかえのないものとして考えられておったのでございますが、何ぶん帳簿外の経理の面でも取引がございまして、非常にわかりにくいような状態でございましたので、こういう結果になったのでありまして、取引所といたしましても、今後はさらに審査を厳重にいたしますとともに、取り扱い業者としての幹事会社に対しましてもいろいろの説明と始末書までとりまして、理事会におきましても一応の釈明と申しますか、今日に至った実情を詳しく説明してもらいまして、そして今後再びこういうふうな不祥事の起こらないよう各自が注意をしていこうというふうなことにいたしておる次第でございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 実は問題がたくさんあると思いますけれども、まず最初の一点は、やはりこういうことが起きますと、それでなくても投資家が不安に思っておりますものを非常に不安を増大させることになるわけですから、これは非常に問題は大きいと思います。別にその責任を追及するわけではありませんけれども、その責任の所在はそうすると一体どこにあるという点が第一点出てくると思います。これはもちろん幹事会社が一応幹事として引き受けの手続等を取引所にするのでありましょうから、幹事会社にも一応の責任があるかと思います。しかし上場基準に照らしてともかく上場を適当と認めるのは取引所でございましょうから、取引所もやはり一半の責任があると思います。それを大蔵省に申請をいたしまして、大蔵省がこれを認めるということでありますから、これは大蔵省にもやはり責任がある、私はこのように考えるわけですが、ただここで私資料を拝見しまして感じますのは、たいていこれまでも、どこでもそうでありますけれども、公認会計士が監査報告をいたしておりまして、おおむね適正であるというかっこうの監査報告がついておるものでなければ、皆さんのほうでおそらく取り上げられるわけはないと思うのです。ところが事実は、そういう適正であるという監査報告がついておった会社で、さっきもちょっとお融れになりましたけれども、二重帳簿があるのか何かわかりませんけれども、事実と相違した内容が出てくる、こういうことでございますね。高森産業については、ことしの一月決算というものの一応外に出されておりましたものと事実とが著しく相違をしておるということがどうもあるようでございますが、そういたしますと、これは表面的に幾ら調べてみても今後こういうことをチェックできないのではないか、一体どうしたらこういうことをチェックすることができるのかということが、私は今後の問題として非常に重要な問題点になってくると思うのです。上場基準をいろいろとまたお考えになりましょうけれども、しかし上場基準としてのルールの上に出てくるものと実態との間に差がある、その差をどこでどうやって見つけるかということの方法がない限り、これは私は、上場基準をどうさわってもおそらくそれに合うような処理をして申請は出てくるだろうと思います。その点、これは先にいま高森産業の問題を取り上げておりますので、大証の方にお伺いをいたしますが、具体的にはその事実と、それから公表されておる書類との間のギャップをどうやって発見することができるのか、未然にそういうことを紡ぎ得るのか、それらについて御検討をしておられるか、何かお考えがあれば承りたいと思います。
  12. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。  事実はいまおっしゃるとおり非常につかみにくいものでございまして、こういう問題が起こりますと立ち入ってでもいろいろな調査をすることができましても、平常問題が起こらないで、何か隠れてちょっとスムーズに行なわれている間、たくさんの上場会社に対しましていろんな疑惑の眼を持って内部の監査をしていくというふうなこともなかなか現実にしにくい問題でございますので、まずやはり上場いたします事前に今日以上の厳重な審査をいたしますとともに、絶えず上場株に対して値動きその他のことで注意を払っていって監視していくということを厳重にやりたいと思います。  なお一口申し上げますが、今回の高森産業につきまして幹事会社のとられた処置に対しては、十分究明いたしておるのでございますが、道義的に非常に悪いというふうなことは発見できませんでした。一にかかって高森社長の行為の結果であるというふうに私は考えておるのでございますので、幹事を引き受ける会社その他に対しましても厳重に申しますと同時に、取引所といたしましても、いま申しましたとおりに、さらに一そう調査の行き届くような方法考えまして、また当局にも御批判を仰ぐことにしていきたいと思っておりますので、よろしくどうぞ。
  13. 堀昌雄

    堀委員 上場しましてからの問題は、これは私は率直に言いましてどうにもならないと思います。だからこういうものが上場されないようにしなければならぬということがこの問題の問題点だと思う。実は資料によって見ますと、私も異常に思う点があるのでございますけれども、さっき触れました三十九年一月の決算は、税引き後の純利益が五千五百五十六万五千円の利益になっておったのは、一億二千万円水増しをされておったためで、実際は七千万円の赤字であった、こういうことが会社のほうから述べられておるわけでございますね。実は私もこの資料を見ましてちょっと得心がいきませんのは、昭和三十七年の七月期の決算によりますと一二%の配当をしておりますね。その次に三十八年の一月期決算で一八%の配当、三十八年七月期の決算で二四%、二割四分の配当昭和三十七年に入って景気がおおむね低迷をいたしておりますときに、一年間に配当を倍にしてくるなどということは、われわれ第三者が見ましてもやや異常ではないかという感じがするわけです。その二四%の配当をさらに一月期に維持するために一億二千万円の水増しをして、七千万円の赤字のあるものを、五千五百万円の利益があるとして決算をしようなどというようなことはまことに問題の会社であって、私はこれらを拝見をいたしますと、幹事会社側においても取引所においても十分調査をしたけれども瑕瑾がなかったといわれても、これはちょっと問題があるような気がしてならないわけです。  そこでちょっとお伺いしておきたいのですが、二部を含めまして、上場株式会社が三十七年にやっておりました配当を一年間に倍にできた会社が止揚株の中にあったかどうか、大阪市場でお答えをいただきたいと思うのです。
  14. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。  いまお尋ねの一挙にして倍額の配当をしたという会社のあるなし並びにどれだけの数があったということは、取り調べましてあとから御報告を申し上げることにして、いまはよくわかりませんが、この会社自体は何ぶんにも特殊な仕事をしておる会社でございましたので、あるいはそういうふうな飛躍的な配当ができる可能性もあるかのごとく、また二部に上場されるこういう小さい会社におきましては、一般から見ましてそう大きくない利益が、配当の上では、率の上では、無理をすればかなりの増配もできるというようなことも考えられますので、注意を怠ったのかもわかりませんが、今後こういうことは取引所といたしましても一そう注意をしてやっていきたいと思います。
  15. 堀昌雄

    堀委員 大蔵省に伺いますが、この高森産業昭和三十八年の七月期増資の状態が私よくわからないのですが、三十九年の一月に増資をしております。その前に二億二千五百万円の資本になったのは一体いつですか。
  16. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 お答え申し上げます。  三十八年の七月期に資本金が二億二千五百万円になっております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、三十八年の七月期に倍額増資をしておきながら配当が倍になっておるわけですね。要するに、配当負担としては四倍になったと同じ現象が起きておると思うのですけれども、どうもそこらは、こういう問題をお調べいただいた取引所側として、さような状態が適当であったかどうかについては、いま少し調査が十分行なわれてよかったのではないかという感じがいたします。大蔵省が取引所から出てきたものを認めたのは一体どういう理由ですか。それをちょっと大蔵省側から答えていただきたい。
  18. 細見卓

    ○細見説明員 お答え申し上げます。  大蔵省が上場銘柄について上場承認をいたしますときは、原則として当該取引所実態の調査をしてもらいまして、取引所として上場にふさわしい銘柄であるということをきめまして、それを財務局に申請する。財務局はそれを大体上場基準と同じ審査基準によりまして審査をして、それを大蔵大臣に申請する、手続はそういうわけでありますが、この高森産業につきましてわれわれが承知しております限りは、大阪証券取引所において十分な調査をした結果、企業内容は健全で、今後も相当いい業績を続けていく発展力のある企業だ、調査の結果がこういうふうになっておりましたので、われわれもそれに従って判断いたしたわけであります。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまの話を聞いておりますと、大蔵省は取引所が大体いいと言えば大体いいという、要するに、それでは大蔵省が上場を認めるとか認めないとかいう権限を持つ必要はないというふうに実は聞こえるわけです。取引所がいいと言ったら、それでいいということだけで通るようなら、大蔵省は認可するのをやめたらどうでしょう。いまの問題について責任とれないでしょう。いま私が明らかにしているように、われわれのようなしろうとで、何ら内部のことがわからなくても、この異常な配当状態、増資の状態をにらみ合わせてみるならば、この経済情勢の中でちょっと異常だろうということを感ずるほうが普通の冷静な立場じゃないか。それをただ上場基準に合っています。審査基準には合っています。最近三期間一〇%以上継続して配当している。一〇%以上配当しているということは、一〇%以上であればいいんだということではないと思うのです。一〇%以上の配当ができる客観的な情勢、その会社にそういうもののほうに問題があるのであって、あなたのいまのお話を聞いていると、おそらく取引所でもそうだったろうと思うのですが、この配当で三期間一〇%以上、かつ継続して配当する見込みのあること——実は継続して配当する見込みがなかったのでしょう。一月期決算で七千万円の赤字が出ている会社が配当できるわけがないのですから、そこのところに問題があると思うのです。それはやはり過去の分析が、少なくとも私どもはいまここに出たからと言えばそれまでではありますけれども、ちょっと東証の田口さんにお伺いしますが、東証の上場株の中で三十七年の七月から三十八年の七月までの間に、要するに増資をして、なおかつ配当を倍にした会社というものはありましょうか。私は一社もないと思うのですが、ちょっと一ぺん伺いたいのです。
  20. 田口真二

    田口参考人 お答え申し上げます。  ないと思いますが、はっきりした記憶がございませんで、明確なお答えはいまのところできませんので、後刻御報告申し上げます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 それはそれでけっこうですが、常識で考えて、東証上場株が幾らありましょうか。いま千以上でございましょうね。そのくらいあると思いますが、日本の一流の企業で、そして一部に上場されておる。二部にも六百近くのものが上場されておる。それだけの会社ができないことをよそにできるものがあるということは、やはりこれを取り扱う場合には何かちょっとおかしいという感じを持つというのが常識ではないかと思うのですが、大証ではそういう点については何ら疑惑をお持ちにならなかったのでしょうか。
  22. 駒村資正

    駒村参考人 しごくごもっともの御質疑でございますが、大証といたしましても、この会社に対しましては、幹事会社はもとより、市中の取引銀行に対しましてもいろいろと調査をいたし、聞き込みもいたしておりまして、全部非常にフェーバラブルな回答を得ておりまして、大蔵省に対しましても、大証といたしましては確信を持って申請し得たという状態であったのでありまして、その点は平常取引しておられる銀行さんなんかの意見が非常に強くわれわれのほうにも反映してまいりますので安心しておったというふうな状態で、結果的にこういうことになりましたことに対しては非常に残念に思っておる次第でございますが、将来はとにかく再びこういうことを繰り返さないように最善の注意を払いたいと思います。
  23. 堀昌雄

    堀委員 そこで時間がありませんので結論だけ伺っておきますけれども、日本不動産の問題で、実は昨年私はここで論議をいたしました。この日本不動産の問題も今回の高森産業の問題も、上場日ならずしてこういう形になっておりますから、非常に問題は似ております。しかし善良なる投資家に与えた影響というものは、私はたいへん大きな被害があったと思います。今回の高森産業でも、配当落ちでも百六、七十円くらいであったものが、昨日は十九円まで下がっております。ですから善良なる投資家としてみれば非常な損害を実は受けた。しかしこの人たちは少なくとも二部上場銘柄だということで取引所を信頼して株を買ったと思う。こういう善良なる投資家に対して何らかの措置がとられるのかどうか。そこでこれは日本不動産の場合にもおそらくそういう何らかの措置がとられたのではないかと思うのでありますが、日本不動産の場合について、東証のほうでひとつ、具体的な、こまかいことはけっこうですが、大まかなことでもけっこうですが、どういう措置がそういう善良なる投資家にとられたのかをお伺いしたいと思います。それからそれに基づいて大証のほうでもそれについての幹事会社等を含めての今後の措置をひとつお伺いをしておきたいと思います。
  24. 田口真二

    田口参考人 お答え申し上げます。  日本不動産、あの事件は東証としても遺憾に思っておる次第でございます。この処理につきましては、その当時の幹事証券会社が株式を公開する手続をとりましたほかの証券会社を通じまして、見舞い金ということで、その事件の後に、その投資家に渡った株券についての買い戻し、あるいは売却した金額に対しての差損を見舞い金として渡した例がございます。これは取引所あるいは協会が指示したわけでございませんで、その会員独自の考えでそういうことをやられた例がございます。まあ、事後の措置はそういうことでございますが、問題は、事前にこういうことがないということに万全の注意を払うのが問題の重点だと思うのでございますけれども、これにつきましては、上場基準の改正も必要だと思いますし、さっき堀委員の御指摘のとおり実態と調査の結果とが違っておるということを把握するのが、われわれの必要なこれからの措置であろうと思うのでございまして、それにつきましては、幹事会社の上場会社との接触面におきましてのいろいろな情報あるいは長い事情も知っておると思うのですが、そういったようなことも取引所で把握いたしまして、あるいはその事業会社の同業種との関係の比較調査も厳重にするとか、あるいは会社経営者の人格と申しますか、経営ぶりと申しますか、そういったようなものも厳重に、やはり数字的な調査以外のそういったような調査事項も、項目を多く検討いたしまして、万全の注意を払いたい、こう思っておる次第でございます。
  25. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。  今回の高森産業のケースにつきましては、山一証券が特におすすめして買ってもらったというふうな先に対しましては、個々に対策を講じて話し合いを進めておられるというふうに報告を受けております。一般的にこういう不祥事が起こりましたときに賠償するとかいうことは、道義的にはいろいろな責任はあると思いますが、強制的にこういうことを実行するということはなかなかしにくうございまして、そういうことになれば、なかなか引き受け会社とか、幹事会社というものになるものがほとんど少なくなるようなことになりまして、中小企業資本調達の場面としての用もなくなってくるのじゃないかというような気もいたしますので、ひとつよろしくお考えを願いたいと思います。
  26. 堀昌雄

    堀委員 最後一つ要望いたしておきますけれども、今度の高森産業の経過を資料で拝見いたしますと、ともかく社長だけがわかっていて、あとの重役はほとんど会社の内容がわかっていないというような事実が少し出ております。おそらくこういう中企業上場になる場合にはワンマン経営の場合が多いのも事実だろうと思います。しかし少なくとも今後は上場していただく会社は、社長以外にはその会社の内容が全部つかめないというほどのワンマンの会社、言うならば相互牽制が全然行なわれないような会社を上場させるということは、私は今回の例から見ましてもきわめて危険だと思うのです。今後は上場基準をお考えになる際には、少なくともその会社が社長を含めて数名の重役によって、取締役範囲においては相互牽制が可能であって、一応社長がどういうことをしておるかが、少なくとも取締役か主たるものは、それがわかっておる程度でなければ、これを上場させないというくらいの方針にしていただかないと、先ほどお話のように、あれは社長個人が悪いんですなどというようなことで問題を解決するにはあまりにも問題が大き過ぎると私は思っておるのです。ですからそういう点は、今後上場に際しては十分——上場基準の問題もありましょうけれども、内容的にそういう条件を把握して、善良なる投資家に今回のような迷惑を二度とかけないように、ひとつ皆さん方のほうで十分御配慮願いたいと思います。  私の質問を終わります。
  27. 山中貞則

  28. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの堀君の質問に関連をいたしまして、両参考人並びに政府に質問いたしたいと思います。  一番最初にお伺いいたしたいのは、第一部だとか第二部だとか特設ポスト、こういうのがあるようでありますが、私、証券のことはしろうとでございましてよくわかりません。まあ第二部は中小企業だ、こういう常識的なことがいわれておりますが、一部、二部、特設ポストにつきまして、何らかの基準がありますか。そういう基準はどうしてきまるのか。そうして特設ポストというのは一体何を意味するのか、両参考人にお伺いいたします。まず、東京からお伺いしましょうか。
  29. 田口真二

    田口参考人 お答え申し上げます。  上場基準の内容について詳しく御報告申しますと、時間がございませんのであれでございますけれども、いま御指摘の第一市場、第二市場上場基準というのがございまして、上場基準は、第二市場上場するという基準がございまして、第一市場上場の基準を変える、また第一市場へじかに入るものもございますが、その基準がおのおの別にございます。たとえば資本金につきましては、第一市場上場は十億以上とか、あるいは第二市場につきましては一億以上とか、その他株式の分布状態、いろいろな条件がございまして、この上場基準の規定につきましては、取引所理事会で決定いたしまして大蔵省の承認を得ておる次第でございます。  それから特設ポストというものにつきましては、これはたとえば不渡りが出たとかというようなことで、上場を廃止する前提で特設ポストへ入れまして、そこで売買をいたす。これはそういう条件を投資家に周知徹底するために、一般のポストとは隔離いたしまして、そこで売買をいたしております。これは、特設ポストに入りますと、一定期間、ただいままでは三月の後には上場を廃止するという前提で、そこで売買をさせておるような次第でございます。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 大阪も大体一緒ですか。
  31. 駒村資正

    駒村参考人 同じことでございます。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 一部とか二部とか、これの基準は大阪も東京も一緒ですか。
  33. 田口真二

    田口参考人 同じであります。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどの話では、一応東京は東京、大阪大阪というようにきめて大蔵省の認可を受ける、こういうように理解したのですが、そうでなく取引所理事会できめるとおっしったのですね。取引所というのは、東京と大阪とは人格が別ですね。そうすると別々にきめるのですか。それは何らかの連絡の上できめるのか、それともむしろ基準というものが大蔵省等で一応示されて、それにのっとってきめるのか、その辺はどうなんですか。
  35. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  御指摘のとおり東京は東京の理事会にかけて決定いたします。大阪大阪の理来会にかけて決定いたします。ただし、この基準につきましては、両大市場でございますので、基準の変更の案につきましては、お互いに意見を交換いたしまして連絡をとりまして、この案をつくって、大蔵省並びに理事会の決定を待って、大蔵省へ持ち出す、こういうふうにいたしております。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵省にお伺いいたしたいのでありますが、そういう申請が出てきたときには、大体どういう点に基準の査定といいますか、調査といいますか、観点に立ってきめられるのですか。それを少し法律的に言ってください。証券取引法何条に基づいて、あるいはその法の意義を受ける何々省令に基づいてというように言って下さい。
  37. 細見卓

    ○細見説明員 お答え申します。  証取法の条文で申し上げますと、百十条でございます。「〔有価証券上場についての承認〕」ということで、大蔵大臣が上場を承認するわけです。その場合に、各取引所上場基準というものを定めまして、もう先生よく御存じのことで繰り返しになるかと思いますが、証取法はいろいろな権限を証券取引所及び証券業協会に初めから授権するたてまえでできております。したがいまして上場につきましても、取引所上場基準を定めて、それを大蔵大臣が承認して、取引所は、その上場基準に基づいて審理を行なうわけであります。大蔵省といたしましては、さきに承認いたしておりまする上場基準に基づいて、取引所が十分厳正な調査が行なわれておったかどうかという点について、ここにございますように承認ということでありまして、もちろん直接審査することもできるわけでございますが、現状におきましては、原則として事実の審査は、取引所上場委員会制度なり、あるいは決定をするのは理事会になっております。そういうものに基づいて上申がございますときに、それを財務局が下審査をいたしまして、大蔵大臣がそれを最終的に承認する。そういうことになっております。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 あまり長い答弁は要りません。百十条と言われたら、私も持っているのですから……。私の聞いているのは、百十条から一部とか二部とかいうのは、どうして出るのです。
  39. 細見卓

    ○細見説明員 取引所の定款で、取引所は一部、二部の二つの市場を開設することが定められておるわけでございます。二部と一部と申しますのは、これは便宜区分をいたしておるわけでございまして、市場としては一部も二部も、いずれも証券取引所が開設する市場に変わりはないわけで、二部と一部と便宜分けておりますのは、すでに御承知かと思いますが、一部の上場基準がかつて資本金が七億以上というようなことになっておりまして、中小企業の株式がなかなか上場できない。その結果でありますか、あるいはそれに藉口してでありますか、いずにいたしましても、中小企業の株式が証券会社の店頭において相当活発に取引されておったわけであります。その結果それが善良な投資家を保護する点におきまして売買管理が十分でございませんのでいろいろ問題があるということで、さきに本委員会からもいろいろ御指摘を受けまして、そうしたものを証券取引所の取引機構の中へ入れて、それを売買管理すべきであるというような御意見もございまして、それに従い、また証券取引審議会におきましてもすみやかに上場して基準を引き下げて、それらの銘柄がすべて取引所取引として行なわれるようにして、原則として青空市場が発生しないような措置も考えるべきだというような答申もございまして、それらを受けて取引所に一部及び二部の市場が東京、大阪、名古屋にございまして、それ以外の取引所は二部の上場基準と大体同じ基準まで上場基準がなっておりますので、一部及び二部の市場を設けております。これは原則として売買管理の便宜上の問題でございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 一部とか二部とかというのはあくまでも取引の便宜上である。先ほど理事会できめて大蔵大臣の承認を得るのだ、こういうことだったのが、いまの話ではまず定款に一部、二部の定めがあるんですね。そうしてその一部、二部をいまでは十億以上とか未満とかということは、そういう基準はそのつど理事会できめるのですか。私まだ取引所の定款というのを見せてもらったことがないのでわからぬのですが、どういうことになっておるのですか。定款によって定まっておるのですか。
  41. 田口真二

    田口参考人 お答え申し上げます。  いまの証券取引法に規定してありますものを受けまして、取引所の定款で上場規定を設けることになっております。その定款に基づきまして上場審査基準というものもきめておりまして、その上場審査基準の中に一般上場審査基準とそれから上場株式の中の第一市場、第一銘柄の指定基準というものを設けまして、また非常にこまかくなりますが、第二部への指定内基準とそれから上場廃止基準、こういうような区別をいたしまして規定を設けておりますが、非常にこまかい規定でございますので、御参考にまた……。よろしゅうございますか。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 届きましたからよろしい。  そうしますと、先ほど話題に出ました高森産業ですが、これを二部に上場する、こういうことにあたっては、その定められた基準、調査等々をやられた結果大臣に対して上場承認を求めて上場した、こういうことですね。はっきりとうつむかないで答弁しなさい。
  43. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  そのとおりでございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 それが三カ月もたたないうちに、いわゆる証券界の牢獄と言われる特設ポスト入りをしなければならなかったということについては、そこに何らか大きな変動がなくちゃいかぬと思うのです。あるいは基礎それ自体に、あなた方がいわゆる上場基準だとかあるいは調査だとか、いろいろ調べた上できめられたと思うのです。それが十分でなかった結果か、あるいはそれが十分であったとすれば、証券界にいまなお黒い霧がある。それが意識的にやった、こうとしか考えられないのです。あなた、駒村さん、大阪取引所長としてこの高森産業事態を見ておって、あなた方が出発にあたって上場基準等を調査したところに抜かりがあったのか、それとも上場した結果その売買が開始された後に欠陥が生じてきたのか、いずれと考えておられますか。
  45. 駒村資正

    駒村参考人 お答えします。  上場に先立ちまして万端の調査は取引所といたしましても行ないましたことは、先刻来お答えしたとおりでございます。また幹事会社におきましても、いろいろ規約に照らしまして調査をして、基準に合格いたしておったわけでございますし、また現実には会社の人にも出てきていただいて、そうして取引所といたしましても、将来の見通しその他についても話し合いをして話を聞かしていただいておりますし、さらに先ほども申しましたが、有力な銀行からも当社に関するインフォーメーションを得て、その範囲内におきましては疑う余地が全然ございませず、確信を持って大蔵省にも申請したわけでございますが、不幸にしてこういうことになりましたことに対しましてはまことに遺憾に存じておる次第でございますが、一応できるだけの調査ということはいたしたことだけは御回答申し上げることができると思います。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 いま私借りました証券小六法に、有価証券上場審査基準あるいは上場株券の第一市場の基準だとか、第二市場の基準だとかありますね。こういうことにのっとって万遺憾なきを期して、自信を持って大臣に申請をし、そうして上場した。それが三月を出ずしてこうなった。それに対してあなたは、まず出発に手抜かりはなかったのだ、調査その他に対して手落ちはなかったのだということになると、それでは第二市場におけるいわゆる関西の優良株といいますか、一つの寵児として踊り出てきたところの高森産業が三月を出ずしていわゆる監獄入りをしたということ、特設ポスト入りをしたということには、そこに何らか人為的な操作があった、こういわざるを得ないと思いますが、そういうことについて何かあなたは心当たりはありませんか。
  47. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。  私の知る範囲内におきましては、先ほどもお話しございました高森産業の社長が会社の帳簿を離れた取引でもって金融を市中から受けておって、その金融業者の手にかかった株券が市場にあらわれてきて、初めて事態が非常に問題になってきたというのでございまして、そういう先ほど堀先生からのお話もございましたとおりにワンマン的な会社の取り扱いについては、今後心せなければならぬというふうに考えております。はなはだ残念には思っておりますが、出発の当時といたしましてはやむを得なかったというふうに申し上げることができます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 割り当てられた時間がないので答弁も簡単に願いたいと思います。私も簡単に伺いますが、この高森産業の社長が自殺未遂で日光の病院で語ったところによると、私はたたき屋にやられた、こう言っておる。現在たたき屋というもの、すなわち悪いニュースを流して買いたたく、こういうのをたたき屋というそうですが、そういうものが現実に証券業界にまだあるかどうか。  それからこれは参考人というよりかむしろ大蔵省へ聞くことになろうと思いますが、高森産業の社長が株券を抵当にして、担保にして町の金融業者から金を借りた。ところが私はそれは商法の二百七条による記名株式の質入れだと思います。どういうことになっているのかしりませんが、それを今度はその金融業者が売っておる。いわゆる質権として入れたものを、他人名義のものを売ったということになると思うのです。そういうことで金を借りた。こういうことでたたき屋とそれから貸し金業者がいわゆるツーツーといいますか、そういうことで悪い情報を流す。そういうことで値を下げていくといったような状態があったように伺っておりますが、そういう点はいかがです。
  49. 駒村資正

    駒村参考人 この問題につきましても、問題が起こってから大阪取引所といたしましてはだれが売りだれが買い、どれだけの株がどういうふうな形で取引が行なわれたかということは精密に調べたのでございますが、とにかくかりに担保としてとっておった人が市中で売って、そして御承知のとおり四日間の受け渡し期日がありますので、それをまたその四日間の間に値下がりしたものをまた買い取って、現物をまた買い戻しするというようなことがあるいは行なわれるのではないかというふうにも考えられて、非常に心配しておったところでございます。
  50. 細見卓

    ○細見説明員 お答え申し上げます。  事実関係が実はよくわかりませんのではっきりしたことを申し上げられないのでございますが、あるいは質権じゃなくて譲渡担保にしておったのではないかと考えますので、その辺事実を確かめないで申し上げておるので恐縮ですが、譲渡担保であればやむを得ないことだと思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 これは高森社長が病床で語ったことの記事を見たわけなんで、その辺のことは担保にしたものを売らないと思っておったら売っておったということを言っておったわけです。おそらく記名株式の質権じゃないかと思うのです、担保じゃないかと思うのですが、その辺のところを一ぺん調査してもらいたいと思います。譲渡担保であったのかどうか。  それから株券の譲渡については現実の引き渡しと裏書き、これがなくては第三者に対抗要件を持たないと思っておりますが、商法ではそうですね。
  52. 細見卓

    ○細見説明員 そのとおりでございます。もっとも今度商法が改正になりますとその点は若干簡単になります。現行法はそのとおりでございます。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと証券取引所は他人名義の証券の売買も引き受けるのですか、受けるというかそれは会員がやるのだろうが、その会員が他人名義でやっても受け付けるのですか。
  54. 駒村資正

    駒村参考人 会員の取引でございますので、現物が授受されたらそれで取引がスムーズに行なわれていると私は解釈いたしております。同時に今回のときにはそういうふうなものがあらわれておったようには調査の上では出ておりませんです。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員長 いや、譲渡担保であったのか、あるいは単なる担保、いわゆる質権として入れたのかということは調査しておかぬとしても、有価証券の第三者対抗要件は裏書きですよ。だからおそらくは現実に金融業者から出たときの名義は高森の名義になっておったと思います。それを第三者の名前で売るということはチェックできないのですか。証券取引所もそういう機構になっているのか。  もう一つ、先ほどおっしゃったように売るということを言っておった。ところがそれはまた下がるので買うてまた売るというような行為があったように思うと言われた。
  56. 駒村資正

    駒村参考人 そういうことを想像できると答えました。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 それは証券法で禁止されているのではないのですか。
  58. 駒村資正

    駒村参考人 裏書きのないものは受け渡しにあたりまして実行できないので、やはり先生おっしゃるとおり裏書きがあったものがするわけでございますので、今回の件に関してそういうことができるかもわからないと、私が申しましたことは事実あったということではございませんので、御了承願いたいと思います。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 裏書きの問題をもう一ぺん聞きます。もう一つは売るといっておって、下がった、また買って売るという一括しての委任行為ですね。あるいは証券会社からいえば委託行為、そういうことはできないたてまえではございませんか、証券法では。
  60. 駒村資正

    駒村参考人 売り買いは自由にできると私は解釈しております。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 売り買いは自由にできるのではなしに、売るといっておいてすぐまた買って売るというようなことはできないのではないですか、できますか。
  62. 細見卓

    ○細見説明員 お答え申し上げます。株式は原則として売買は自由でございますから、いかなる株式も売買できます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 どこか条文にそういうような一括して売るとか買うとか、両方のことを委託できるか、それはできないということになっているはずですよ。ノミ行為じゃありませんか。そうじゃなくて……。
  64. 細見卓

    ○細見説明員 お答え申し上げます。それは双方代理ができない。証券取引法の上で双方代理ということばを使っているわけですが、しかし現実の株をあるときに買って若干期限が経過して売る、あるいは売ってまた買うということは自由でございます。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどの駒村参考人の意見では四日間かかるのでしょう。いまの制度では現実の株を買ったときには四日後に入ってくるのですよ。そしてまた売るのでしょう。それを途中で四日を経ずして売った、買った、売った、こういう行為があったように思う、こう言たのでしょう。
  66. 駒村資正

    駒村参考人 そういうこともできるのではないかということを申しましたので、高森産業のケースにおいてそれがあったというのとは意味が違っております。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことが想像できるということならば、そういう事実があったかなかったかをひとつ調査をしてもらいたい。  それからもう一つ、大蔵省が先ほど言ったように高森産業金融業者に渡した株券が譲渡担保であったのか、あるいは単なる質権であったのか、その点を調査してもらいたい。  それから証券取引法の百二十五条の二項の二号ですね。「当該有価証券の相場が自己又は他人の市場操作によって変動するべき旨を流布すること」これが違法となっており、罰則において三年以下の懲役になっておるはずです。そこでたたき屋というのが実際あるのかないのか、こういういろいろな記事を見ますとたたき屋というのがある。それが黒いニュースを流す、たとえば高森産業は町の金融業者、高利貸しからも金を借りておる、あるいは不渡りを出すのじゃなかろうかというふうなことを流布しておる、そういう事実がわれわれは察しられるわけなんです。また新聞、週刊誌等ではそのように報ぜられておるのです。そういう事実があるとするならば、いま申しました百二十五条二項二号によって私は処罰の対象になるのではなかろうかと思う。もちろんそれも程度の問題であり、的確な構成要件を満たすかどうかわからぬ、そういうことについても調査をしてもらいたいわけです。割り当てられた時間がありませんからもうこれでバトンを渡しますが、私はいま申しました三つを宿題としてお預けしておきます。  もう一つ、きょうは銀行関係来ておりませんが、あらためて委員長にも相談をしてやりたいと思うのですが、やはり問題を起こす中心はいつも町の金融業者いわゆる高利貸しというものにある。これもそうなんです。出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の適用を受けるいわゆる町の金融業者、その町の金融業者に対してまた金を貸すボスといいますか、こういうのがおる。そういうような問題につきましてはまた別の機会にやりたいと思っておりますが、そういうのと町の金融業者といわゆるたたき屋が組んで一つの芝居をやった、その結果が高森産業の倒産、会社更生法を適用する申請ということになってきた、こういうようにわれわれは見ております。したがいまして、またあらためて、町の金融業者に対して一体大蔵省はどういう態度をとっておるのかという問題、それからたたき屋の問題について究明することといたしまして、佐藤さんが待っておりますのでかわります。
  68. 山中貞則

  69. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 あまり時間がありませんから要点だけお願いするのでありますが、先ほど細見君から大蔵省の態度について答弁がありました。こういう不正な事件が実は去年もあったし、またことしもあるわけなんですが、こういう不正事件が起きるということは取引所のほうが何も取り締まらなかったからということですけれども、今度御承知のように証券局ができれば、そういう監督を厳重にするということが必要だと思う。そういう点について大蔵省はもっと責任を持つべきじゃないか。いま証券界が不振であるということは大蔵省にも責任があると思うのですが、そういう点についてあなたはどういうふうにお考えになりますか、まずそれだけ聞いておきます。
  70. 細見卓

    ○細見説明員 私が答えるのに適するかどうか、大きな問題でございますが、われわれといたしましても、二部に上場される会社がいろいろなうわさを起こすということが証券界にどれほど大きな害を流すかということは十分承知いたしておりますので、この際われわれとしての審査もさらに慎重を期してまいりますと同時に、先生すでに御存じのとおり、上場に際しまして申請する書類が上場前の決算期のものでありますから、その後、この高森産業などのように、現実に上場になるときとの間に相当期間が経過しておる、昨今のように経済界が非常に変動が激しいときでございますと、上場申請をしたときに添付しておりまする決算の状況と、現実に上場された後の会社の状況というのがかなり違うという事態もございますので、その辺につきましては幹事会社において、十分その後の事情について取引所なり大蔵省なりに責任ある態度で事態を説明してもらう、そういうものについての責任を持っていただく、そういうようなことを考え、それによって——もちろん会社か詐欺、不正等の行為をやっておりますときには、そのようにいたしましてもなかなかむずかしいことは、すでに本委員会で税の調査についていろいろな御指摘もございますように、相当強い権限をもちましてもなかなか裏操作というのはわからないのが実態でございますから、どこまでできるかは今後十分研究してまいらなければならぬと思いますが、そういう点で考えていきたいと思っております。
  71. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 田口さんにお尋ねするのですが、いま言いましたように、この監督が厳重にやってもなかなかむずかしいということで、証券業者を登録制から免許制にしてはどうかというような意見があるわけです。これは銀行なんかの意見があるのですが、そういう点については田口さんと駒村さんどんなような意見を持っておられますか、伺いたいと思います。
  72. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  免許制につきましては、御承知のとおりいま証券取引審議会のほうであのような答申が出ておりまして、これから大蔵省がどういう御方針で決定になるか存じませんが、要は、証券会社の姿をすっきりした、不況に耐え、また投資家に対しても迷惑をかけないような姿に持っていくことが終局の目的でございまして、免許制がよいという御意見もございますし、またいまの登録でもいいという御意見もございます。免許制にすることも私はけっこうだと思いますが、その際には証券業者育成ということをきめこまかくやっていただきませんと、先ほども堀委員の御質問に対してお答えいたしましたが、証券界というものは非常に変動の多い業種でございまして、このくらいむずかしい業種はないと私は思うのでございます。ほかにもあるかも存じませんが、非常にむずかしい業種であることは御承知のとおりでございます。そういった観点からしてこれを直す、いま姿勢を正すといっておりますか、これは当然やるべきでございますが、ただ不況のときあるいは好況のときと時宜適切にいろいろの配慮をわずらわしていただきたいと思うのでございまして、またきめのこまかい、いわゆる愛情のある育成方針をとっていただきたい、こう思うのでございます。
  73. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。  ただいま田口さんのお話のとおり、私も同じ考え方をいたしております。ただ認可制に移行いたします際には現在の業者をどういうふうに取り扱うか、これをさらに一応審査して認可するか、あるいは現在もうすでに仕事をしておる人に対しては特別の処置をとるかというようなことにひとつよく御配慮を願いたいと思う次第であります。
  74. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 田口さんにお尋ねするのですが、共同証券ができて、これによって相当株の操作がうまくいくだろう、証券がもっと上向くだろうという期待もあったのですが、一体現在の影響はどのようになっておるのか、これが証券の現在の不振から共同証券のあれによっていい影響を与えておるかどうかということを現実の立場からお伺いしたいと思います。
  75. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  共同証券が一月に設立いたされまして、現に共同証券が発注いたしまして株式を買い入れております。   〔委員長退席、古田(重)委員長代   理着席〕  最近の情勢では株式市場沈滞し切っておりますが、共同証券が設立されまして買い入れを発動したということにつきましては、一般投資家株価の下落もとまるのじゃないかという非常な期待感もございますし、そういった意味では、従来どおり市場の秩序を維持するためにもああいうものができまして発注したということはいいことだと存じます。これによって株価が上昇するということはなかなかむずかしい問題がありまして、株式の需給というもののアンバランスはまだまだこれは是正しなければなりませんで、先ほど申しました増資調整ということもございますので、一般的なあらゆる方策を講じませんと需給のアンバランスを解消するのはむずかしいと存じますが、一般投資家の不安を除去するという面においては非常に効果があったと私個人としては考えております。
  76. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私どもはちょうど昨年の夏アメリカに行っておりましたときに、御承知のように利子平衡税の問題が大きくクローズアップされまして、それの影響——直接の影響がどれぐらいあったかどうか知りませんけれども証券が下押しになってきた。ちょうど波が寄せるような形で、デリケートな問題があると非常に変動するというのが証券界現状であります。実はちょうど一年ぐらい前に銀行業界の代表の人を大蔵委員会に呼んだのですが、そのときにはまだ銀行が尾羽打ち枯らしておる中で、証券界は非常に活気を呈しておったわけでございます。そういう点で非常にデリケートな問題があるのでありますが、アメリカの利子平衡税というのは今度向こうで通過して、現在日本に影響を来たしておると思うのです。これは大衆投資家に相当悪い影響を与えると思いますが、これは一体どういうようにお考えになっておりますか。これは田口さんにお伺いしたいと思います。
  77. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  利子平衡税の問題は、すでに昨年に株価については織り込み済みではないかと思うのでございまして、要は三十六年の引き締めから株式市場にしわ寄せがすべてまいりまして、金融が詰まる場合には、すべてのしわが証券界に寄ってくるというようなことじゃないかと思うのでございます。これの是正策は、いわゆる企業があまり借り入れ金に依存しておるという結果で、先ほど第二市場の問題も出ましたけれども、やはり借金過多ということ、無理な借金がそれにつけ加わってくるという結果で、こういう不況時にはことさらにそういったような企業にしわ寄せがきて株価にも影響してまいるのだろうと思うのでありまして、もし資本市場をもっと早く育成して、自己資本の比率を——現在ではもう自己資本は三割を割っておる状態でございます。これを維持するためには、本年の年間増資七千億を必要とするともいっておられるのでありますが、現在調整という矛盾した政策をやらなければならない羽目になっておりますので、これも需給のアンバランスを直す上においてはやむを得ない処置でございますけれども、むしろ七千億、八千億の増資を希望するのが証券市場としての本意であろうと思うのでありますが、そういうこともできない状態であります。そういうことでも、資本市場を、自己資本をもっと調達しておれば、あるいは金融逼迫あるいは開放経済体制に向かいましても、より以上強固なささえになっておったのではないかといまさら遺憾に思っておる次第でございます。
  78. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 駒村さんに伺うのですが、われわれ東京証券取引所などをたびたびいろいろの関係現状を見せてもらったわけです。私は名古屋の近くでございますが、名古屋などの地方的な事情それから大阪の特殊事情などというものは非常にあると思うのです。あなたは実業界で昔相当活躍された——昔といってはおかしいのですけれども、最近証券業界に入られて一年半くらいになられるそうでありますけれども大阪の特殊事情というものか何かあって、今度の高森産業のような問題が出た——そういうことではないと思うのですが、そういう点について大阪における証券界の問題について伺いたいと思います。
  79. 駒村資正

    駒村参考人 お答え申し上げます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、現状大阪証券市場と申しますと、過去の反動が相当強い影響を与えておりまして、御承知のとおり証券市場全体が大、中、小と、資本金の上において非常に格差もありますし、必ずしも不安定なものではないということも言えるのでございます。一体に沈滞いたしておりますが、特殊の事情があってどうこうというよりも、事業なり大会社が東京に本社を移したり、東京に営業所を設けたり何かするようなことが行なわれてきておりますので、そういうかげんで東京の取引高と大阪の取引高との間には相当の格差ができ、大阪市場が非常に衰微しておるような形があらわれてきておるのでございますけれども、これから先そういうところにも大阪なり関西の産業経済人の方も力をいたして、いわゆる失地回復というふうな意味合いで、また企業の分散というふうな意味合いで計画を立てておられますので、今後は市場といたしましても何とか本日までのようなスピードで凋落していくようなことはないだろう、こういうふうに考えております。ただ非常にむずかしい点は、先ほどもお話がありましたとおりに、非常にデリケートな業種でありますので、たとえばこの間の共同証券のできるという声だけで、市場では一文の株も買っておらないにもかかわらずタウで百円以上も値上がりするというふうな、非常にデリケートな動き方もするところでございますので、すべてのことに非常にこまかい注意をしてやっていかなければならぬというふうに考えております。特別にどうこうという事情は私は認めることはできないのでございます。
  80. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ちょうど昨年ニューヨークで取引所を見学したのですが、私たちが十年前に見たときと今度とは機械的に非常に違っておりまして、私たちが想像する以上に非常に進歩して、これ以上機械化することができないくらい取引所の中でも機械が非常に活躍しておるわけです。そこで私たちが感ずることは、東京はいままで政治都市で、大阪経済都市と言われております。いまあなたの御説明のように、四大証券はみんな、東京も大阪も、おそらく本店は東京にありますが、そういう関係で取引の面もだいぶ昔と違って減ってきたという事実は、名古屋もそうでございますが、そのほかの地方の取引所というのは、東京などに比べるとほとんどわずかな取引でしかないということになっておるわけですが、こういう点について、何か取引所の中で改革する道があるのじゃないかというように考えるわけです。これは駒村さんにお伺いしたいと思うのですが、そういう点について何か御所見がおありになるかどうか、これも伺っておきたいと思います。
  81. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。  特にこういうことを考えておるというふうなことを申し上げるような資格もございませんが、まずこの際は、先ほどもお願いいたしましたように、いろいろこまかい扱い方をしていただきたいと同時に、業者といたしまして、自己の体質を改善して、そうして一般投資家信用を得るように証券業界が進んでいかなければ、何と申しましても信用市場でございますので、自己の改革、改善、自分の信用を増すことのために、いろいろと業者自体もくふうしてもらうように、取引所といたしましても、業者の反省を促すべきことは促し、指導すべきことは指導して、及ばずながら最善を尽くしておるような次第でございます。
  82. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に、田口さんにお尋ねしたいと思うのです。実はこれは財政金融委員会といった当時に、証券の大衆化というような問題がありまして、その当時には、戦後でございましたから、あまりたいした直接的な影響はなかったのです。このごろの証券というのは軒並み大きな店を持ってわられておるわけですが、この一年半くらいは非常に尾羽打ち枯らしたと言いましょうか、とにかく非常に証券界が下火になってきたような傾向にあります。一体こういう隘路がどこにあるか、東京ではそういうことをお調べになったことがあるかどうか、それを最後に伺っておきたいと思います。
  83. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。北常にむずかしい御質問でございますけれども証券界がこの不況に対して正常にあえいでおるということは事実でございますが、先ほど申し上げましたとおり、証券界は昨今のごとく一日に五千万株、六千万株しかできない場合もございますし、一朝変動率が向上いたしますと、一日に四億、五億という購買も行なわれることもございます。そういったことで、売買が多く出ますときに、投資家の要請にこたえるためには相当の店舗、人員の準備もいたしておかなければならないのでございますけれども、こういった一たん不況になりますと、すべてのしわが証券界に参りまして、こういったような不況期が続くということになりますと、投資家のためにも、また株主のためにも、その会社を維持していかなければならないという非常にむずかしい業種でございますので、すべて証券界というものは非常に好不況の波の多いものでございますから、これは私の考えでございますけれども、すべてやはり合理化をして、こういった不況にも耐え、しかも出来高の多いときには投資家の要請にもこたえられる——なかなかむずかしい注文でございますが、そういった体制をできるだけ整えなければならないと思うのであります。それにはいろいろの組織を変える——ここでは一がいには申し上げられませんが、いろいろ組織を使った合理化、たとえば取引所におきましては振替決済制度というものをいま考えております。あるいは各証券会社でも機械を使っておりまして、機械化によりまして、機械の償却をして平準的な仕事に耐え得るような体制をつくるというようなことも一つでございますし、あるいはいろいろの機構について、いま大蔵省でもいろいろ検討されておるような証券業者あり方の再検討というようなこともあわせて、今後はそういったことに重点を置いて、こういった不況町にも耐え得る体制を早く整うべきだ、この思う次第でございます。
  84. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 先ほど堀委員からも要望がございましたが、毎年一つ、二つぐらい不正な事件があって、そういうのが相当大衆に不安な影響を与えておると思うのであります。これは東京の取引所大阪取引所というだけの問題ではなく、やはり大蔵省が十分監督を厳重にして、大衆に迷惑のかからぬようにしてやっていただくことを要望して私の質問は終わります。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 春日さんの了解を得まして、ちょっと補足だけをしておきますが、先ほど私の最後のところで、調査をしてくれ、こう言ったことについて、ちょっと舌足らずだったと思うので、その点だけ補足して確認をします。私が、証券取引法第百二十五条二項二号の違反ではないか、こう言ったのは、高森社長が町の金融業者から金を借りて、その町の金融業者が、いわゆるたたき屋と言われる——週刊誌の記事でもっていうならば、Zという人にそのことを通報した。高森産業に対して自分のところから幾ら貸しておる、こういこうとを言った。そこでZというのが、高森産業は町の高利貸しから金を借りるような状態である、したがって近く不渡りを出すのではなかろうか、こういったことを流布して株価の引き下げをはかった。そうして値ざやというのですか、そのことによってZなる者は、本人も言っているようですが、七百万円くらいはもうけさしてもらった、こういうことなんです。だから、そういう事実があるのか、調査してくれということです。そしてそういうことが事実であるならば、証券取引法百二十五条二項二号の違反ではなかろうか、こういうことなんですから、ちょっと補足しておきます。
  86. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 春日一幸。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 証券行政の問題につきましては、本委員会でも、大蔵省でも、また取引所でも、いろいろと研究が進められておると思うのですが、特に取引所の問題、証券業者の問題、取引資本の問題、売買資本の問題、いろいろと改善、改革を要すべき点が実にあると思うのでございます。したがいまして、これについてはわが国産業経済の健全な発展をはかりますためには、われわれも大いに調査研究を進めますけれども、何と言っても取引所が象徴的中核体でございますから、大いにその気になって御研究を願わなければ相なりません。本日は時間がありませんので三、四の要点について両責任者の御見解をただしたいと思うのであります。  まず第一番に取引所の管理機構の問題でございます。現在の取引所会員組織としてなされておりまして、上場手数料、あるいは出来高に応じた拠出、こういうものによって取引所が運営されておると思います。しかしその使命というものは証券の公正な取引と円滑なる流通ということで、使命というものは公共性が非常に高い。言うならば、国家的、公的機関と言っても言い過ぎではないと思います。ところがその運営の経費というものは会員の拠出によって行なわれておるというこの実態の中から、したがって大会社の支配力というものが現実に大きくウエートを占めておることは、これはいなみがたいことであろうと思うのでございます。そういたしますと、やはり隠密の間に、何と言ってもその相場に対する影響力というものは、大証券会社、大いなる費用を負担いたしております会員の手によって操作されるということ、これまた避けがたいと思うのでございます。したがいまして、この問題は根本的な解決を要するではありましょうけれども、しかし当面運営の面においてもそういうような片寄るような傾向を是正することのための方法は絶無ではない。たとえば取引所理事の構成でございますが、東証は十名、大証は十八名、この中で公益代表というものは二名しかございません。他は六名が非会員理事によって占められている、こういうのでございますが、この際、何と言っても取引所の公共的高き使命観におもんみるならば、公益代表が理事全員の中に占める割合をもっと多くふやさなければならぬのではないかと私は考えるのでありますが、この点について両氏の御意見はいかがでございますか。なお時間がございますればあと二問ございますので、簡単に御見解の開陳を願いたいと思います。
  88. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。理事の構成につきまして御意見がございました。私からこれをお答えするのは非常にむずかしい問題でございますが、御指摘のとおり取引所公共性を持ったものでございますので、従来とも会員組織の起こり得る弊害を除去するように努力いたしまして、理事長の権限を強化いたしております。いま春日委員の御質問のとおり、売買その他については証券業者の大きなところが相当の手数料を払っておりますが、理事長の権限を相当大幅に強化いたしております。それによって取引所の管理を公共的な性格に持っていくべく努力をいたしております。  なお、公益理事につきましては、先般来公益理事を二名就任していただいておりますが、私どもも一極の公益理事というような立場で、常勤理事でございますので、もとより会員自体も公益性をよく周知してもらって、会員理事もそういった気持ちでやっていただくということが会員組織のよき面を発揮するのではないかと思うのでございますけれども、春日委員の御質問の、公益理事をふやすということについてのお答えは、私としてはここでちょっと御遠慮申し上げたいと思います。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 時間がありませんので、後ほどまた駒村さんから御答弁をいただくことにいたしまして、いままで委員諸君によって御質問がございましたが、何といっても証券市場不振の一半の原因は、やはり人気の離散の問題がございましょうし、第一番は御指摘になりましたような、いわば上場株が不渡りを出すというような現実の面からくる不信感、これが大きく災いをいたしておると思うのでございます。三十七年度では六社、三十八年度に六社、日本製紙、山口自転中、岩手窯業、日本不動産、改源、富士ホーニング、こういうものがずっとございます。いま堀君からも田中君からも指摘されたところでございますが、いずれにしても、これは公認会計士の監査の証明がある。幹事会社もそれを監査するであろう。それから、大蔵省がそれを認可するその前に、取引所で審査委員会がある、こういうような幾つかの段階を経て精査されながら、なおかつこんな大きな不渡り会社が続出してくる。本年に入ってから、いま御指摘のような二、三カ月を経ずして破綻を生ずる。これはまるで八百長をやっているみたいな印象を多くの投資大衆に与えることは当然のことであろうと思うのであります。私はいまこそ、やはり取引所に対します不信感を一掃いたしますことのためにも、上場過程の各段階においてそれぞれの書類がやはり根拠になるのでありますから、その責任を持ったものに対する何らかの処罰規定と申しますか、とにかくそれがそうでなかった場合において、責任というものの所在を明らかにしなければならぬと思うのでございます。大蔵省もめくら判を押しておるということならば、当然そのようなめくら判を押しておる者を罷免しなければならないだろうし、あるいは公認会計士が監査の書類を添えたといたしますならば、あるいはそのような免許を取り消すとか、あるいは幹事会社がずさんな八百長的な申請をしたとおぼしきときには、これを除名するとか、私はそういうような国民の前に責任を負うの態勢を、やはり取引所としての最終責任の立場から、その点が明確に処断されてしかるべきことと思うが、現行の制度でいいと思うか、なお改善の必要があると思いますか、この点について御所見を伺いたいと思います。
  90. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  先ほど来の御質問の事件につきましての責任は、これは取引所責任があるわけでございます。また幹事会社としても責任があると思うのでありますけれども、その責任程度責任の所在というものの判定は非常にむずかしいのでございます。先ほど大阪のほうの高森産業の例もございましたが、最近の上場されたものが不渡りになったというようなものにつきましては、これはなかなか経済の変動に伴うものが多いのでございまして、それらにつきましては逐次上場会社の内容についての審査、あるいは評判がでた場合の審査、あるいは金融機関との折衝においての借り入れ金の把握、それはいたしておりますが、上場後間もなくああいった事態が起こっておるということは、これは非常に遺憾なことでありまして、取引所はむろん責任感じております。幹事会社の責任ということもなかなかこれはむずかしいのでございまして、幹事会社の責任ということもいろいろ検討をしなければならないのでございますけれども責任以前のことをむしろ私どもはいま研究しておるわけでございます。上場にいくまでの過程において、把握すべきものをまだ把握していなかったんじゃないかというようなことがむしろ皆さん方御疑問だろうと思うのでございまして、その点においては幹事会社により一そう——上場するについて、紹介する会社の経理的な面、人的な面においても、より審査を厳重にする、こういうふうにいたしたいと思っておるのであります。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員   長着席〕
  91. 春日一幸

    ○春日委員 現実に取引所というのは信頼度が高いのでございます。さればこそ、形式的には幾つかの個々の段階がとられておるのであります。上場されたからだいじょうぶだというので、大衆投資家はそれに対して売り買いに出てくる、その結果大損害を国民が受けておるのでありますから、その責任は非常に重いのでございます。やってみたんだが、公認会計士のあれが間違っておった、幹事会社がいけなかったというようなことで、国民に対してそのような大きな損害を与えた場合、その責任取引所として重いのでございます。したがいまして、その認識がありますならば当然現行制度について——現に三十七年六社、三十八年六社、本年にまいりましてすでに幾つか出ております。こういうような点から考えまして、やはり猛烈な再検討があってしかるべきだと思います。  それから次は、ディーラー業務とブローカー業務の分離の問題については、すでに本委員会においてもしばしば論ぜられてまいりました。本委員会は投信の証券会社との分離の問題を強く指摘いたしまして、これは数年前実現の運びを見たのでございますが、しかし、これもいまなお最終的な完全分離はなされておりません。しかし、いまやこのブローカー業務とディーラー業務とは分離しなければ、これは筋が立たないのではないかと思われるのであります。民法には双方代理禁止の原則等もございまして、利害相対立するものが一個の人格においてその仕事がなし得るというようなことは、これは証券取引の公正性を確保いたしますためには、むしろこれは許されておってはならぬことであると思うのでございます。幸いにして理論が熟して、投信も段階的ではありますが、分離の手続を踏まれたことでありますから、この際ブローカー業務とディーラー業務を分離することのために、そしてその取引の公正性に一歩前進をはかることのために、ひとつ英断をもってそういうやり方を進めていかれる方針はございませんか。田口さん、御意見はいかがですか。
  92. 田口真二

    田口参考人 お答えいたします。  ディーラー業務とブローカー業務の分離、実はこれは取引所の副理事長として私お答えするのは適切かどうかと思うので、これは私の個人的な意見としてお聞き願いたいのです。むしろこれは証券業協会あるいは大蔵省の問題ですけれども取引所会員もございますので、そういった意味でお答え申し上げます。  御指摘のとおり、ディーラー業務とブローカー業務とを分離するのが私はむろん理想だと思います。ただ、現実におきまして、先ほど来申し上げましたとおり、証券業者の性格というものが非常にむずかしい商売でございまして、早急にこれを分離するということもなかなか経済上その他からむずかしい問題がございます。好不況のときに、ディーラー業務の活動を多くし、あるいはブローカー業務の活動をこのときには大きくするということで補って現在までやっておるような実情もあるわけでございまして、それらのこと々勘案して徐々にそういった方向に向かうことは好ましいことと思うのであります。たとえばディーラー業務、ブローカー業務の両方を兼ねておりましても、その内容について明らかにするとかいう方法一つだと思うのでございます。こういうことを私が答弁するのはどうかと思いますけれども、ちょっと……。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 よく私もわかります。それはあなた方が現行制度に対して反逆的意見をここで述べられるということはこれは許されないことと思いますけれども、しかし、いろいろな改善改革を行ないますにあたりましては、やはり取引所業者がその認識を持ってその気になっていただくのでなければ、大蔵省はほとんど無力、凡庸でございまして、われわれが何べん正論をはいても、あなた方の抵抗によって何にもなされ得ないのでございます。こういう意味から業界の御認識を求めておるのでございます。  もう一つだけ申し述べてお漏り願いたいと思いまするが、証券取引法の百二十九条がのみ行為を禁止しております。ところが取り引き規定の三十五条、三十六条では大体においてそのことを認めるような形になっておると思います。私はその問題を投げかけておくという形でございますので、どうかひとつ御研究を願いたいと思うのでありまするが、あなたのほうの業務規程では、依託者のためそのことが有利かつ公平と認められる場合には突き合わせをしてもよろしいというならば、本質的にのみ行為を容認しておる。いま田口さん御説明のとおり、理論としてはいけないのだけれども実態はやむを得ずこういうことがなされておると思うのでありますが、私は証券取引所の重要性、公共性にかんがみて、理論は貫かれていかなければなりません。理論を軽視して実態になずみますと、結局は大きな公的使命はそこなわれていきます。この問題はいかがでございますか。証券取引法百二十九条ではのみ行為を禁止しております。ところが取引所の能力その他の実態にかんがみて、こののみ行為を、本性的なのみ行為でないといたしましても、それは取引所を通じて行なわれるという形式を保ちまするがゆえに、のみ行為ではないといたしましても、実質的なのみ行為は三十五条、三十六条で認められております。そのことがいわゆる寄託者の利益であるのか、公平であるのか、すなわち第三者的、客観的立証が私はないと思います。何か取引では、そういうふうな突き合わせでありますると、のみ行為類似の行為でしょう。そういうものについての公正性について点検がなされますかどうか、この点お伺いをいたしたいと思います。
  94. 田口真二

    田口参考人 お答えをいたします。  御質問のいわゆるのみ行為は戦前からございまするけれども、そういったのみ行為ではないのでございまして、非常に技術上、実際上の問題としての取り扱いということなのでございまして、これにつきましては、今後研究いたしたいと思っております。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 では結論にしますが、現実にはその行為は単純なのみ行為ではないでございましょう。取引所を通じて行なわれる形式を保ちますがゆえに、単純なのみ行為ではないと思う。けれども、実際のそういう証券業者の手持ちにおいて自在な操作がなされておるという点については、実体的に、本質的にのみ行為と何ら異なるところはないと思われます。私はやはり独占禁止法の第二条第七項は、その取引の対価というものが不当なものでないかどうか、この点はやはりその取引所において十分御注意願わなければならぬ問題ではないかと思います。不当な対価をもって取引をすること、これは明らかに独禁法違反の取引である。したがいまして、その突き合わせの対価というものがはたして有利なものであるのか、公正なものであるのか、あるいは真近値段というようなものと照し合わせて一体だれがこれはよろしいと言って証明をするのか。そういうことが取引所の中の機構として確保されておりません限り、ここに独禁法違反の取引がなされている疑いなしとは断じがたいのでございます。私は何と言っても取引所の信頼を高めることが証券に対する大衆の投資意欲を確保する唯一の道であろうと考えますので、信用確保のためにもこの点について十分の御検討がありますように、強く要望いたします。
  96. 田口真二

    田口参考人 いまの問題は、いわゆるバイカイという形の問題があるわけでございまして、バイカイについては、いま御指摘のとおり、一般市場価格によって行なわれているかどうかという問題は従来あったわけでございます。取引所におきましては、この数年来バイカイについて非常な規制を設けまして、売買につきましては、すべて市場集中ということで集中いたしまして、競争売買によって、公正な決定によって投資家の売買をそこで実行するということに重点を置いているわけであります。  したがって、バイカイ規制につきましては、市場でできた値段によってやらなければならない、またそのときの値段またそのときの買い手、売り手に競合さした結果においてバイカイをつけ足すという方式をいまとっております。これはこまかい規定がございまして、いまここで短時間では説明できませんけれども、非常に詳細な規定をつくりまして、いまやっているような実情でございます。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 最後に、これは取引所なんかの資料によりますると、昨年の三、四月に大商いがありました当時には、大体その中の五割がバイカイである。それが秋以後の平均指数では四割程度がバイカイである。その中の一体どの程度のものが営業用なのであるか。これはなかなか識別困難であるといわれております。だといたしますれば、こういうような情勢のもとにおいてバイカイの規制措置が、三月でありまするか、なされたそうではございまするけれども、しかしバイカイの本質についての何らの反省がなされていないのでございます。  したがいまして、このことは証券取引法百二十九条の本旨にかんがみて、バイカイの本質、根源に触れて、しかもそのバイカイのなされておりまする疑義を有する取引自体がそのような圧倒的膨大な指数を示していることにかんがみて、このことはわが国産業経済発展の基礎をなす証券市場、しかも証券業界全般の帰趨を決する大問題でございますので、十分御検討あらんことを強く要望いたしまして、質問を終わります。
  98. 山中貞則

    山中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  午後二時より再会することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後二時二十五分開議
  99. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  造幣事業金融及び証券取引に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  念のため申し上げますが、出席者は纐纈大蔵政務次官、吉岡理財局長、石橋造幣局東京支局長、葛城作業管理部長、東村労働基準局監督課長、以上の諸君であります。平林剛君。
  100. 平林剛

    ○平林委員 初めに私は、オリンピックの記念貨幣の問題について、政府当局にに若干お尋ねをしておきたいと思うのであります。  実はきのうの新聞を見て私びっくりしたのであります。なぜびっくりしたかというと、オリンピック東京大会準備促進特別委員会のほうで、記念貨幣の発行に関する法律案が可決をされたからです。これは本来大蔵委員会に送付されて、この委員会で審議をさるべきものと思っておりましたところが、むこうの委員会に付託をされた、だれに文句をつけていいかちょっと困るわけでありますけれども、少なくとも、オリンピック東京大会準備促進特別委員会というのは、オリンピック東京大会津価促進のために設置をされておるのでございまして、そこで臨時補助貨幣の発行に関する法律案を審議をするというのは少し適当ではないのではないか、こう考えるのであります。そこで、私は委員会の名誉のためにも、本委員会におきまして若干の質疑をしたい、こういう考えを持ったのであります。  まず初めに承知いたしたいのは、急に上程をされまして委員会付託をされ、きのう可決をされたその委員会において、どういう審議が行なわれたか。会議録はまだ印刷されておりませんし、私も新聞で読んだだけでございますのでわかりませんから、どういう審議の状況であったか、どういう議論がされたか、そして可決に至ったか、その経過につきまして御報告をいただきたいと思うのであります。
  101. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 オリンピックの記念貨幣の鋳造につきましては、党内でもいろいろ議論がございまして、大蔵委員会にかけるべきだろうということも討議されたようでございますが、結局オリンピック特別委員会ができましたために、オリンピックに関係する問題はそこで一括上程するというような、実は国対との話し合いでございますが、そういうことでオリンピック特別委員会に付託されて審議をいたしたのでございます。  第二番目の御質問につきましては、昨日実は午前中に、大蔵大臣が出席されまして、おそらく一時ごろまでかかりまして、そこで全会一致で採決をされたということを承っておりますが、審議の内容につきましては私詳しく存じませんので、当時その席におりました事務当局のほうからお答えさせます。
  102. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 オリンピック委員会におきます、オリンピックの記念貨幣の問題についての審議の状況を御報告申し上げます。  どういう大きさのどういう程度のものを出すかというような御質問、それから各国ではどういう例があるかというような御質問、それから特に二、三の方から問題になりましたのは、オリンピックを記念する図案で貨幣を出したあとで、その図案を使いましてそれと同様のと申しますか、バッジとかほかのものにその図案を使った場合にはどうなるんだ、その辺はどう考えるかというような御質問がございました。
  103. 平林剛

    ○平林委員 私がこの大蔵委員会で審議すべきものであるという考えを持っておりますのは、今回発行される千円の臨時補助貨幣の枚数にも一つの理由があるわけであります。  それからこの補助貨幣が発行された後におきまして、わが国の流通貨幣としてどういうような地位を占めるかということを考えますと、当委員会の当然審議の対象にならねばならぬ。同時に大蔵大臣は、しばしば、かりにこの流通段階において、今回発行しようとする補助貨幣がプレミアムつきでもって高値を呼ぶようなおそれがある場合には、さらに追加生産も考えるということになってまいりますと、私はやはりオリンピック準備促進の委員会でやるべき性質のものではない、こう考えまして注意を喚起し、同時にわれわれの職責を果たしておかなければならぬ、こう考えるわけであります。  そこで、その中においても最小限こういうことが言えるかどうか政府に確めておきたい。  今回提出されたオリンピック東京大会記念のための千円の臨時補助貨幣の発行に関する法律は時限立法として取り扱うかどうか、かりに将来千円の補助貨幣を発行する場合には、あらためて法律案を大蔵委員会に提出をして、これを審議するかどうか、この二つの点について明らかにしておいてもらいたいのであります。
  104. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お尋ねの点につきまして、最初の補助貨の体系と申しますか、補助貨としてこの千円が非常に特殊なものであるという感じの御質問があったと思いますが、私どもといたしましても仰せのように考えております。  御承知のように、ただいまの補助貨の体系は百円が最高でございます。もしこれに補助貨を追加いたしますとすれば、おそらく五百円というようなことが考えられるかと思いますが、今回のオリンピックの記念のための千円の補助貨幣を出すようにというお話は、実はオリンピック委員会で与野党を通じての御要望と申しますか、話は、フィンランドあるいはオーストリアで出しましたオリンピック記念の貨幣と比べまして遜色のないと申しますか、りっぱなものを出すようにというお話がございました。そういうことから考えますと、どうも金額としては千円になる。補助貨の体系と申しましても、この記念通貨と申しますのは全部が流通するとは限らないわけであります。ある意味では大部分が退蔵となることを前提として出す非常に特殊な貨幣でございます。そういう意味でこの千円を考えておりますので、私どもとしては臨時通貨法の改正をして出すというような感じではなしに、やはりオリンピックのための非常に特殊なものであるという感じから、法律も単独法の形態をとったわけでございます。  それからプレミアムがついてというお話でございましたが、確かに出します枚数に関連をいたすわけでございますが、ただいまのところ、われわれとしては一応千五百万枚を鋳造する予定でございます。フィンランドの場合は六十万枚を出しております。それからオーストリアの場合には二百五十万枚を出しております。フィンランドの場合等は一九五二年のことでございますが、いまでも金融機関に行くと交換をしてくれるそうでございます。そういう意味で、外国ではそういう少ない枚数でプレミアムがつかない状況であるようでございますが、日本の場合は何ぶん初めてのことでございますし、ちょっと見当のつきかねることでございますけれども、まずまず千五百万枚という大量のものを出せば、そうプレミアムがついてどうこうというようなことはないのではないかという感じがいたしております。ただこのことは大蔵大臣が申しましたように、もし希望が多くて足りなくて、プレミアムがつくという事情がありましたら、オリンピックの期間には造幣局の能力等から間に合わないかと思いますが、その後の追加鋳造を考えております。  なお最後にお尋ねがありました、今後もし千円の補助貨を出す場合のことでございますが、ただいま申し上げましたように、非常にオリンピックのための特殊なものという扱いをいたしておりますので、今後補助貨の体系上の問題として千円を出すというようなことになりますれば、もちろんこの法律でない別の法律によってやることになると思います。
  105. 平林剛

    ○平林委員 その点ははっきりいたしましたから、私もこれ以上この法律案の取り扱いについては議論をいたしませんけれども、ただ大蔵省は、当初補助貨幣をオリンピックのために出すことについては、相当反対の議論があったと聞いておるわけであります。枚数は百円硬貨の場合には八千万枚、これは模様を変えるということだけで済むわけでございますけれども、千円の場合には千五百万枚にいたしましても、流通貨幣としてどういう地位を占めるかという点から考えて、相当な反対理由があった。私の承知しているところでは、その反対の理由として、第一に貨幣の流通性を阻害して、プレミアムつきの退蔵貨幣をつくることになるのではないか、第二には、造幣局の硬貨製造能力がなくて、もし記念貨幣を製造すれば、一円、五円、十円などの製造能力に影響をして、この硬貨不足は避けられない、こういう事情もあったと聞いておるわけでございますが、今回百円並びに千円のオリンピック記念の貨幣を発行するにあたって、その心配は解消されたのであるかどうか、その心配がなくなったために、こういう措置に踏み切られたと理解せざるを得ないのでありますけれども、心配が解消された根拠というものをお示しいただきたいと思うのでございます。
  106. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お尋ねのとおり、私ども事務当局といたしましては、最初に一月の中旬に、オリンピック委員会のほうから御要望がありました際、いろいろ検討いたしましたところ、お話のような点からちゅうちょをいたしたのは事実でございます。第一点の流通手段である貨幣を、退蔵を前提としたようなものを出すことは、いかがかという点でございます。オリンピック委員会等で御希望になっておりましたのは、外国で出しましたような、せいぜい数十万枚あるいは数百万枚のものをお考えになっておったようでございます。当然退蔵になる、場合によってはプレミアムがつくというようなものをお考えになっておったようでございます。われわれといたしましては、そういう意味でちゅうちょをいたしたのでございます。ただ流通手段である貨幣を、退蔵を前提とした貨幣という議論につきましては、その後いろいろわれわれといたしましても検討いたしました結果、わが国においては記念貨幣というものの前例はございませんが、諸外国ではいろいろな意味で記念貨幣を出しております。貨幣の観念の中にいわゆる流通手段としての本来の貨幣のほかに、こういう意味の記念貨幣と申しますか、装飾的貨幣ということばを使っておるようでございますが、そういう貨幣の観念もあって、そう窮屈に考えることもないということになったわけでございます。  それからプレミアムの点も考えまして、諸外国の例から申しますと、数倍にもなる千五百万枚というような大量のものを出すことにいたしました。その辺で踏み切ってもよかろうかということで検討した結果、考え直したわけでございます。  それから第二の造幣局の能力の点が最初ありましたことも事実でございます。御承知のように、補助貨は一般的に非常に不足をいたしております。造幣局といたしましては、ある意味で全能力をあげて補助貨の鋳造につとめておる状況でございますので、こういう千五百万枚というようなものが予定外に追加されることによります造幣局の能力という点が非常に心配だったわけでございます。その点も造幣局といろいろ相談をし、造幣局で検討いたしてもらいました結果、ただいま一円貨幣を約十九億枚製造する予定にいたしておりますが、このうち約九億枚を外注をする予定にしておるのでございます。その外注の状況等をその後いろいろ検討いたしました結果、外注の余力がまだ多少ありそうだということで、その辺を検討しました結果、一円を外注にもっと出すということによって造幣局の能力の余力ができる、その余力の範囲内でつくろうということで踏み切ったわけでございます。
  107. 平林剛

    ○平林委員 造幣局の当事者、責任者がお見えになっておりますから、造幣局の硬貨製造能力について私はいろいろな角度から検討した結果心配しておるわけでありますが、いま大蔵省の理財局長がお話しになった点のとおりであるかどうか、当事者としてひとつこの機会にお話をしておいていただきたいと思います。
  108. 葛城一郎

    ○葛城説明員 ただいま御質問の要綱は造幣局の能力に関してでございますが、ただいま理財局長からお話ございましたように、造幣局は全能力をもちまして、既定の二十億枚の貨幣を製造いたしておりますので、この千円の記念貨幣につきましては余裕がございません。しかし、そのときに一円貨の十九億のうち九億を外部に完全外注をお願いいたしておるわけでございますが、その枚数をふやしまして、造幣局の作業に足らないところを完全外注のほうをある程度ふやしますと、そこに作業量の余裕ができるわけであります。この余裕をもちまして、ただいまの千円の新しい記念貨幣を労働強化にならない程度につくりますと、ちょうどその予定の枚数がございますので、この千五百万枚の枚数は完全外注をふやすことによって製造可能と信じて、そういうふうに実行したいと考えております。
  109. 平林剛

    ○平林委員 造幣局の製造能力の点についてはあとで触れますけれども、いまのお話によりますと、一円貨は十九億円の製造計画を現在九億外注しておるけれども、さらにそれをふやしてその能力を千円の臨時補助貨幣の鋳造に充てる、こういう御説明でございますけれども、これはどちらのほうへ外注をされるのですか。前々から私この点は多少議論もしなければならぬと思っておったのです。新聞報道を見ると、刑務所のほうでつくらせたり、あるいはその他外注されたりするということでございまして、国の最も信用中心である貨幣を安易に外注する考え方というのは適当じゃないのじゃないか、こう考えておったわけでございますけれども、どの方面に委託されて鋳造なさろうとしておるのですか。
  110. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいまの造幣局の外注の問題についてでございますが、私どもといたしましても国の貨幣でございますから、原則としては造幣局でつくるべきものだと考えております。ただ最近の一円貨の不足が非常に急激なものがございまして、毎年三十六年度は六億枚、三十七年度が六億五千万枚、三十八年度が九億七千万枚というような数量をつくってまいったのですが、なお一円の不足の声が消えないというようなことで、ある程度一円を急速につくる必要ができたわけであります。そして昨年の秋に外注に踏み切りまして、ある程度のものを外へ注文を出すということをいたしたわけであります。昨年の秋に初めて発足をいたしまして、入札によりまして民間の会社に外注をいたしたわけでございますが、そういう意味で昨年の秋初めてやりましたことでありまして、当初は外注の数量についてあまり自信がなかったのですが、その後だんだんなれてまいりまして、相当なものができるということがわかりましたので、外注をふやせるという判断で今度のことに踏み切ったわけであります。ただ一円貨は、ことしの製造計画は昨年の九億に比べて十九億という倍くらいなものを予定しておるわけであります。こういう数量を一体毎年つくっていかなければとても一円貨は不足をするかと申しますと、これはなかなかわかりませんけれども、ある程度一時的にたっぷりつくって流通場裏に出せばその後はそんなに増加はしないかもしれないということがあるわけでございます。したがいまして、原則として国の貨幣は造幣局でつくるべきだと考えておりますけれども、そういう意味で、一時的な急激な作業量の増加に応じまして人員、設備等を増加いたしますと、その需要がある程度おさまりましたあとにまた今度縮小しなければならぬ、あるいは人員整理というような問題が起こりかねないおそれがあるものでございますから、原則はそうでございますが、一片的にこういう急増に対しましては、外注で処理いたそうということにしておるわけであります。
  111. 平林剛

    ○平林委員 いまあなた入札によりと言いましたけれども、間違いありませんか。
  112. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 造幣局でやりましたことなんで、あるいは間違っておったら訂正してもらいますが、私の承知しておるところでは、入札によって数社が応募したように聞いております。
  113. 平林剛

    ○平林委員 造幣局の責任者、入札でおやりになっておりますか。
  114. 葛城一郎

    ○葛城説明員 お答えいたします。  ただいま理財局で申されましたとおり、入札によりまして外部の会社に出しております。
  115. 平林剛

    ○平林委員 責任者がそう言うのだから、そういうことにしておきましょう。今度の千円は、外注しないで造幣局でおつくりになりますか。
  116. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 これも造幣局からお答えしたほうがいいかもわかりませんけれども、造幣局の能力から申しまして地金をつくる。これは圧延をいたします段階最後に刻印を押す段階とあるわけでありますが、圧延の段階はおそらく外注することになろうかと思います。最後の刻印を押す部分は幣造局で受け持つということになろうかと思います。
  117. 平林剛

    ○平林委員 私はどこの会社でするか知っているのですよ。そしてそれが入札によるものか、そうでないかということも大体承知しておりますが、私の言わんとすることは、それに対する追及じゃありません。ただ日本の造幣局というものが、国の流通貨幣の最も中心であるものをそう安易に外注で製造するということが適当かどうかということに対して警告を発しておきたいのです。造幣局の工場へ参りましてもまず大正時代の機械が並んでいますよ。そうしてこの製造能力がいまないという理由でもって外注されておりますけれども、その前になぜ施設を拡大し、近代化していくような努力をしないか。この件につきまして、私はやはり造幣局当局もしっかりしてもらわなければ困る、大蔵省のほうもこのことについてもっと積極的な努力をすべまだということを申し上げておきたいのです。こういう問題につきましてどうですか。いま造幣局としては製造能力の拡大についてどういう努力を払っておるか。政府としてはこの問題についてどういう積極的な態度をとっておるかという点を、私はきょうは少し聞いておきたいと思います。
  118. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 造幣局の能力の強化につきましては、ここ数年来われわれといたしましてはせい一ぱいの努力をいたしておるつもりでございます。おっしゃるようにまだ古い機械もあろうと思いますが、三カ年計画を立てまして、設備の近代化のためにある意味で非常に従来から比べますと画期的な近代化をはかっておるつもりでございます。おっしゃるようにまだ不十分な点はございますけれども、三、四年前の造幣局の能力、設備等とお比べ願いますと、かなり改善されてきているのではないかと考えております。なお今後ともそういう意味で設備の近代化には努力をいたしてまいりたいと考えております。
  119. 平林剛

    ○平林委員 私、造幣局の機械購入費をちょっと調査してみたのですが、三十九年度で七億六千万円、三十八年度が約九億九千三百四十万円、三十七年度で四億一千三百万円、三十六年度が三億九千七百万円、三十五年度でこれはけたはずれに一億円にも足りない程度でございます。この程度の予算で将来日本の貨幣を造幣局がやっていくというような体制がとれるとお考えになっておるのですか。それとも何か具体的に他に、いまお話しした以外にもこういうことがあるということがありましたら御説明をいただきたい。いずれにしても私は外注にどのくらいの経費を考えているかわかりませんけれども、もっと積極的にこうした面について改善措置、製造能力の拡大について努力すべきものだと思うのですが、いかがですか。
  120. 葛城一郎

    ○葛城説明員 ただいまの御質問の趣旨は、造幣局の能力がこの三カ年間、三十六、七、八年にわたりまして、先ほどおっしゃられました古い機械が相当ございましたのですが、それを新しく入れかえまして、最新式の貨幣をつくる機械に入れかえつつございまして、三十九年度にほとんど切りかえは済みますが、引き続き三十九年度におきましてもそれを整備する予定でございます。そういたしますと、日本の造幣局がその設備、機械といたしましても他の諸外国に劣らないようなりっぱな設備を、最大の貨幣製造工場としてはずかしくないような工場にすべくいま鋭意努力中でございます。たとえば板を延ばす場合の機械につきまして、現在まではインゴットを圧延しまして、適当な長さに切断して製造いたしておりましたものを、大きいインゴットをそのまま圧延機にかけまして、切断せずに百メートル以上にも延ばしまして、それを巻き取りまして次の工程に移すのでございますが、いままでのごとく短い板を延ばしまして、それを打ち抜きます場合よりも、いま申しましたような遅き取り装置を使いまして長くした仕上げ板を使います場合は、非常に能率的に効果がございます。そういう方法をとるべくいま鋭意設備中でございまして、完成の暁は貨幣製造工場といたしまして、以前と比べて相当能率的なものになるように現在努力中でございますで。
  121. 平林剛

    ○平林委員 鋭意努力中はいいけれども、私がいま申し上げておるように日本の造幣局で全部これをまかなっていけるということについては、その計画でもって自信がおありなんですか。
  122. 葛城一郎

    ○葛城説明員 ただいまの補助貨幣の需要が急に大きくなりましたことは世界各国とも共通でございまして、日本におきましても同じように補助貨幣の需要が非常に膨張しております。それで現在やっております整備計画によりまして、この需要がまかなえるかまかなえないかということは、その補助貨がどのくらい要るかということに尽きると思います。将来のことはある程度わかりませんですが、その期間現在における需要の増は外注等の方法によりましてやりまして、将来造幣局をどのくらいの規模にするかということは世界各国の造幣局をわれわれ調べまして検討中でございまして、現在われわれかやっております設備能力におきまして最善であろうと信じております。将来補助貨幣の流通状態は国情によって違うと思いますが、不足の分は外注に現在のところ置いておるのでありまして、はっきりした趨勢はちょっと造幣局といたしましては……。
  123. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいまの点について、私どものほうで貨幣製造計画を担当しておりますので、補足して御説明申し上げたいと思いますが、ただいま造幣局で製造いたしております計画は、総体で枚数で申しますと三十九年度は約二十九億枚でございますが、そのうち十九億枚が一円であるわけでございます。実は一円の製造にかなりの手数をかけている現状でございます。ところが一円の流通高を申し上げますと、ことしの二月末で約四十二億円でございます。この四十二億の流通高に対しまして一円不足という声が多いわけでございますが、それを補うために三十九年度は十九億という大量のものをつくる予定でおるわけでございます。これだけ大量のものをつくりまして投入いたしますと、あるいは三十九年度だけというわけにはまいりませんで、もう一年あるいはもう二年そうした大量のものをつくらなければいけないかもしれませんが、流通高等から考えますと、そういう大量のものをつくればおそらく一円の需要増というものはある程度緩和していくのではないか。そうしますと造幣局でいまかなりの手数を要している一円のほうの作業量が減りまして、そのほかの補助貨の製造のほうに向かえるわけでございます。そういう点を考えますと、ここ一、二年特殊な一円不足のための外注という問題がありますけれども、これが一段落いたしますれば——将来の補助通貨の需要量の想定は非常にむずかしいのでありますが、一応われわれとしてはいまの程度の近代化の努力をしていけば、日本の通貨の製造は造幣局でまかなえるのではないかと考えているわけであります。
  124. 平林剛

    ○平林委員 確かに一円のアルミ貨幣は昨年の製造計画から見ると二倍になっておるから、かなりふえていることは事実です。ただ私、今度の千円の臨時補助貨幣の鋳造についてこれを外注にした理由がわからないのです。いま外注するものは板にしたりなんかするような作業であって、比較的仕事としては楽なほうの仕事を外注されるわけでしょう。私の承知している限りでは、この程度の仕事ならいまの造幣局の労働者は協力する、こう言うておるのです。外注をされるようになったのですけれども、労働者のほうは協力するといっているのになぜ外注なさるのですか。
  125. 葛城一郎

    ○葛城説明員 お答えいたします。その点は、もし造幣局でいたしますと昼夜勤の夜勤作業が入ります。夜勤作業が主になるわけであります。現在大阪の本局で千円は担当いたしますが、昼ある程度超勤いたしまして、五十円及び百円の、今度は記念貨幣になりますが、それを昼間におきましてある程度時間延長でフルにやっております。もし新しく千円貨幣を納期にできますように製造いたしました場合、大阪本局におきます作業形態は溶解及び圧延工程が夜間に入らざるを得ない、そういうふうに考えますので、夜間作業はやはり労働条件といたしまして極力避けるべき観点のもとに、昼間だけで千五百万枚千円の全貨幣をつくるためには、やはり溶かしまして板にするまで外でやっていただかなければ、造幣局で行ないました場合、溶解及び圧延を昼夜兼行でやらなければならない、こういうことになりますので、溶解、圧延を外注に委託した次第でございます。
  126. 平林剛

    ○平林委員 造幣局が、かなり月間にしても残業をして業務量を処理しておるということは承知しています。しかし、この問題については協力しようという態度をとっておるのにかかわらず、外注をされてしまった。いまお話を聞くと、夜間作業をしなければならぬということですから、その限りにおいてはなるほどとうなづけるけれども、では、なぜ労働組合との間にそういう相談をなさらなかったのですか。私はその点で、あなたのほうが外注をしなければならぬ理由が夜間作業ということであるならば、労働者の諸君とそういう点よく相談されたらよかったのじゃないですか。その上でどうするかということをきめればよかったのだけれども、夜間作業というだけで何も相談をしなかったのですか。
  127. 葛城一郎

    ○葛城説明員 前もってそうはっきりした相談はいたしませんでしたけれども、やはり夜間作業につきましては組合のほうからもなるべく——現在圧延の業務をやっておりますが、できるだけ早くやめるようにということがございましたし、そういう労働時間の延長というのは、いままでわれわれとは話し合いの途中で極力避けるというふうに、そういう話し合いが常に行なわれておりますので、この千円をつくり始めましたときにはいま申されました組合とまずもってはっきり相談はいたしませんでしたけれども、やはりそういう原則のもとに夜間作業を極力避けるために外注に踏み切ったというそういうことでございます。
  128. 平林剛

    ○平林委員 この点は私の聞いた話と少し食い違っておりますから、いずれまた調整をしてあなたのほうに私の見解を申し上げておきたいと思います。  ただ、こういう話を聞いたのですけれども、真相はいかがでしょうか。たとえば、銀貨を鋳造することを外に注文する場合に、何か工業減というのがあって造幣局でおやりになる場合と外に出す場合では工業減というものの割合が違ってくる。造幣局では千分の二ぐらい見ておるけれども、外へ出すとそうはいかない。そこで、銀の輸入制限があるものだから民間では銀がほしい。そこでいろいろ運動をして外注にしたというような話を聞いておるのですけれども、今回の場合はそういうことはございませんか。
  129. 葛城一郎

    ○葛城説明員 現在の段階におきましては、外部でやってもらう工場一軒だけではございませんので、いずれ入札できまると思いますけれども、工業減につきまして、ただいま造幣局で実験中でございまして、千円硬貨の貨幣は最近つくっておりませんので、新しく千円硬貨に相当する品位のものをいま試作しております。そのときに工業減その他のデータを出しまして、もちろん民間でやっていただく場合、民間の工場も視察いたしまして適当なる貨幣を出すべくいま研究中でございます。
  130. 平林剛

    ○平林委員 私が指摘をした点については、やはりいろいろそういう場合もあるのではないですか。
  131. 葛城一郎

    ○葛城説明員 この銀の溶解は、相当量溶かしますが、工業減、特に溶解の工業減が一番大きな問題になりますので、現在妥当な工業減をいかにすべきかということにつきまして、鋭意本局におきまして研究中でございます。外部に出す場合、その適当な工業減を出しまして、その工業減のもとにそこでやってもらうように考えております。
  132. 平林剛

    ○平林委員 いずれにしても私は、日本の貨幣をやたら外に出すことに賛成しないのです。どうしてもことしのように、一円のアルミ貨幣が、去年九億七千万枚ぐらいのものが、十九億枚ということになれば、多少製造能力その他から考えてみて、外注することもやむを得ないかなという感じはいたしますけれども、今回の千円の臨時補助貨幣につきましては、やはり内部でやらせるほうが適当だった、適正である、こういうふうに考えるのです。特に、いろいろな話を聞きますと、溶解、圧延などに要する工業減などで変な話を聞くわけです。だからその点については、私は事、貨幣の問題でございますから、そういう話はあまり聞きたくない。そういう話を聞かないためには、やはり造幣局が鋳造するのが一番よろしい、こういう考えなんです。そのためには先ほど指摘をいたしましたように、造幣局の製造能力というものをもう少し拡大をしていく必要があるのではないか、造幣局も大蔵省も、その面にもっと積極的な態度をとってもらいたいということなんですよ。政務次官からもひとつ私のこの見解に対して見解を述べておいていただきたいと思います。
  133. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 平林委員のお話、まことにごもっともと実は考えているのですが、今回の記念貨幣につきましては、御承知のように、非常に急にそういう問題が出てまいりましたし、先ほど政府委員のほうから御答弁を申し上げますように、昨年末特に一円硬貨、また五円硬貨も相半不足を生じたというようなことで、そのほうに重点を置いて非常に張り切って硬貨をつくっているようなわけでございますが、いやしくも国が貨幣をつくるということについては、基本の方針は、私は造幣局おいて全部やることにいたさなければならぬということは御同感でございます。先ほど来お話しの中に——私も実は造幣局を見てまいりましたが、先ほど来御答弁申し上げましたように、新しい機械を実はどんどん入れてまいっておりまして、非常に大量にりっぱな貨幣ができているようでございますし、毎年大蔵省におきましては、造幣局において大試験をやりまして、補助貨幣の品位を調べておりますが、実にすばらしい成績を持っておりまして、この点につきましては、世界的にもおそらくかくのごとき補助貨幣におきましても品位を保っているということは、誇るに足るべきものだと思います。そういうふうにいままでも十分に注意して貨幣をつくっております。  今回の問題は特別の事情といたしましてやむを得ざるに出ているということについては、ひとつ御了解をいただきまして、先ほど来の計画によりまして、今後とも補助貨幣の鋳造等につきましては、十分工場も整備し、機械も新式の機械をつくってそうして御期待に沿うようにしようということに努力いたしているわけでございますから、いやしくも貨幣につきましては、造幣局において必要なものをつくるという御意見につきましては賛成でございます。
  134. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。只松祐治君。
  135. 只松祐治

    ○只松委員 関連しまして一、二お伺いをいたしますが、今度の記念の千円硬貨の中身と申しますか、実際の値打ちは幾らくらいになっておりますか。新聞ではいろいろ言っておったり世間でも三百六十八円程度ではないかということを言っておりますが、ひとつこの際にお尋ねしておきたいと思います。
  136. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 千円の純分、大きさその他につきましては、実はまだ最終的に決定をいたしておるわけではございません。ただ私どもが一応考えておりますことを申し上げますと、話の起こりがフィンランドあるいはオーストリアで出しておりますものに遜色のないりっぱなものをというお話だったことから、大体純分は千分の九百二十五、量目が二十グラム、直径が三十五ミリというふうな程度のものを考えております。御参考までに申し上げますと、フィンランドが純分が千分の五百、量目が十二グラム、直径が三十二ミリでございます。オーストリアのものが純分が千分の九百、量目が二十グラム、直径が三十四ミリというようなことになっております。そこでまだ決定いたしておりませんが、ただいま申し上げましたようなことで計算をいたしてみますと、おそらくお話のように経費は四百円以下で済むのではないかと考えております。
  137. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、一つには四百円もするということで平林さんからお話がありましたように、先ほどあなたの答弁の中にも圧延の段階では外注をするという御答弁がありましたが、そういう相当高価な資材を外注するということになれば、そういう資材の管理はどういうふうにしておやりになるか、さっき横流しというような話もありましたけれども、こういう面については私たちも率直なところ造幣局の組合の人たちからも危惧の念を表されました。したがってそういう点について十分な管理の見通しその他があるかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  138. 葛城一郎

    ○葛城説明員 お答えいたします。  工業減を造幣局で実際にやりまして妥当な工業減を得ました場合に、外部に委託しました場合はその工業減以内にやっていただく。結局簡単に申しますと、たとえば純分量として百トンの銀を渡した、それから工業減を引いたものをまた造幣局に持ち込んだ場合には目方をはかりますから、その工業減以外のものは外部に委託した場合でも、外部は加工をやりまして工業減はやむを得ず認めます。それ以外は、出した量と造幣局で受け取った量を較量いたしますと横に流れる材料はあり得ないと思います。その点は外に出しましても不安はないと思います。
  139. 只松祐治

    ○只松委員 ひとつぜひそのように御努力をお願いしたい。  それから千円のうち四百円以内だといたしますと、六百円以上もうけることになる。こういう記念のものにこういうふうに政府がもうけていいものかどうか、あるいはそういうことが妥当なものと思われるかどうか、さっき平林君からいろいろ話がありました一般の貨幣価値の問題等とも関連してまいりますが、きょうはそこまでの関連でございますから論議はいたしませんが、この際一応お聞きだけはいたしておきたい。
  140. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 先ほど申し上げましたように、記念のための非常に特別か特殊な通貨ではございますけれども、あくまでも補助貨でございます。したがいまして補助貨としての純分の程度あるいは素材価値の程度というものが、ある程度の基準があるわけであります。たとえばいまの百円銀貨について申し上げますと、これは三十二年につくり始めたわけでございますが、当時百円の銀貨の素材価値が約三十円程度でございました。大体補助貨というものはその程度のものだと御承知願いたいと思います。
  141. 只松祐治

    ○只松委員 なおこの際、せっかく造幣局関係の方がお見えになっておりますので、一言だけ御要望いたしておきますが、国の一番基本をなす通貨をつくる造幣局、こういうところへ私たちが行ってみますと、旧態依然たるとは申しません、多少継ぎはぎに新しい建物もでき、機械も多少はできておりますけれども、町工場の気のきいた程度のものとしか私たちは見ていない。あそこにはたいへんいろんな見学者やなんかも来ておりますけれども、少なくとも国の貨幣をつくる、こういうところはもう少し工場全体も整備整とんし、それこそ銀行なんかああいう町かどにすべて建つということが必要ではなくて、銀行であればむしろ裏通りにあっても金を借りに来る人は多いわけですから、私は銀行行政というものは非常に誤っておると思っておりますが、こういうことを対比いたしましても、紙幣や硬貨をつくっておるところがあまりにもみすばらしい、こういうふうに思いました。ひとつ品位を保つにふさわしい工場をつくるように御要望をいたしておきます。
  142. 平林剛

    ○平林委員 なおこの問題につきましては、円というものについて諸外国に比べてわが国の地位というのは東南アジア諸国にも劣るのじゃないかということからアルミ貨幣についても議論したかったのですけれども、予定の時間がありますからこれ以上申し上げません。また外注の問題について造幣局の規則からいってコインなどについて貸与できるかどうかという問題もあるわけでございますけれども、これまた他日にいたしましょう。ただこの際私要望しておきたいことは、今回の製造の範囲というものは、百円については八千万枚をオリンピックの記念貨幣に振りかえる、千円の貨幣については千五百万枚である、こういうふうにお聞きをしておるわけでございますけれども、大蔵大臣の言を借りるというと、もしプレミアムがついて高価を呼ぶようなことになればさらに発行するというようなことですけれども、その場合には諸般の事情から造幣局の作業能力という問題になってくるわけでございます。当然それを仮定してやれば労働者の協力ということも必要である。この点について私は、そういう変更がある場合にはやはり働いている者とよく相談をしてやってもらいたいということを最後に確認をしておきたいと思うのですけれども責任者にお答えをしてもらいたいと思います。
  143. 石橋大輔

    ○石橋説明員 ただいまの点につきまして新しい千円のコイン、それから百円の新しいコイン追加発行につきましては、先ほど理財局長が御説明申し上げましたように、一応プレミアムがつかないで終わるのじゃないかということでありますので、われわれといたしましては追加発行はないのじゃないかと思いますが、ただ、今回の記念貨幣だけじゃなしに、貨幣全体につきまして、そういったものを幾ら発行するかということにつきましては、これは管理運営面の問題でございますから、本来管理者がきめる問題でございますけれども、実際には、現実の労働組合でございますね、そういった面にも説明していままでやっておりますので、説明はして、できるだけ協力してもらうようにやっていきたいと思っております。
  144. 平林剛

    ○平林委員 私は補助貨幣の一円を何枚発行するか、あるいは五十円、十円をどれだけ鋳造が必要かなんということを労働組合と相談せよと言っているのではないのですよ。そういう計画なり計画の変更に伴って、たとえば夜間作業をしなければならぬとか、何十時間時間外の労働をしなければならぬとかいう場合には当然伴ってくるわけですから、労働者との間に相談をしてやるべきものである。それをただ頭から、管理運営事項であるからということでとびらをふさいでしまって、そのことについて相談をなさらないということはまことに適当でない、だからそれが結局外注というような方向になりまして、私らがいろいろな面で注意しなければならぬ問題が発生してくるわけですから、そういう点でもう少しあなたのほうは労働者との間の意思疎通をはかって、そして相談すべきものは相談してやっていく、こういうことを希果しておきたいと思います。
  145. 石橋大輔

    ○石橋説明員 先ほど先生のおっしゃいました点でございますけれども、だいぶ外注の点についておしかりを受けたのでございますが、この点につきましては確かに一円の需要がふえましたので、外注せざるを得なかった。その前提といたしまして、われわれといたしましても組合に協力を得まして昼夜勤をやりまして、なおかつ足りない部分は外注した。と申しますのは、この点につきましては先ほどから御説明申し上げておりますとおり、ある程度暫定的なものじゃないか、これに見合うような人員をもし現在ふやすといたしますと、将来何年か先にはまた定員を削減するというような問題も起こってまいります。これは非常にゆゆしい問題でございますので、予備的な考えで、その分をいつでも落とせるというような意味で、その分を外注に回したのであります。この点につきましては、先ほど申し上げましたように管理運営事項でございますから、団体交渉とかそういう問題じゃございませんけれども、職員全体にできるだけ理解を得るようにお話しいたしまして、できるだけ協力を得るようにしているつもりでございます。
  146. 平林剛

    ○平林委員 それではこの問題についてはこの程度でおくことにします。  次に、私さきの委員会で問題を提供いたしました社内預金の問題について、若干大蔵当局とそれから労働省にお尋ねいたしたいと思うのです。  初めに社内預金の総額について、私、銀行局長にお尋ねいたしましたところ、最近の預金総額は約四千七百四十億円という御答弁があったのでありますけれども、一説によると、一兆円になんなんとしているなんということもございまして、さてあとでいろいろ記録を調べてみましたところが、一兆円と四千七百幾らではずいぶん違う。これはどういうことであるかということをはっきりさしていただきたいと思いまして、再度お尋ねをいたしたわけであります。
  147. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 社内預金の今回の調査によりますと、労働省でやっていただいたのですが、四千七百四十億。ところが、ちょうど一年くらい前のことでございますが、その前に調べたときの調査によりますと、その調査した抽出率から逆算すると数千億、しかも一兆というのは、調査漏れを入れますと一兆にもなんなんとする額じゃないかということがございました。結局それは調査方法の差異だと思います。今回の調査方法は、これは労働省の専門の課長さんが来ておられますから、そちらから御説明いただいたほう、かいいと思いますけれども、今回のは、抽出のやり方、もちろんランダム方式でございますが、上位にいくほど調査率は高くしていきます。そういうことで比較的科学的なものになっているのではないか、法人企業統計なんかもそういうやり方をやっておりますが、それから逆算した総額がこのくらいになる、引き延ばしたわけでございます。ですからこれは悉皆調査ではございませんので、正確な数字であるということは申し上げられません。おそらく漏れもございましょうから、それより少なくはないという程度、しかし一兆にはとてもならないということでございます。
  148. 平林剛

    ○平林委員 それにしてもどういう抽出方法で調査されているか知りませんけれども、一兆円と四千七百四十億円では二倍も違うわけでしょう。私はやはり実数をつかんでないのではないかという気がするのですよ。一体どうしてこんなに違いが出てきたのですか。
  149. 東村金之助

    ○東村説明員 お答えいたします。ただいま銀行局長からお話がございましたように、四千七百億という数字は私ども昭和三十八年三月三十一日末現在で押えた数字でございます。これの調査の方法でございますが、御承知のとおり社内預金をする場合には監督署に届け出をすることになっておりますが、その名簿が監督署にございますので、それを前提にいたしまして平均で十分の一程度の実数を拾い上げましてその会社について調査したわけでございます。十分の一という抽出は調査技術的にはかなり密度が高いわけでございまして、平均的な数字からいったらほぼ実態を反映していると私ども考えております。
  150. 平林剛

    ○平林委員 その違いの理由、一兆円と四千七百四十億円じゃずいぶん違うから、そこのところをひとつ……。
  151. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 先ほども申しましたが、しかしあの一兆円という数字は私どもが申した数字ではございません。私どもとしてはあの当時はたしか、はっきり記憶しませんが、推計でいけば五千億ないし六千億くらいじゃないか、ところが、たしかこの委員会でございましたが、どなたかが、いやもっと多いのではないか、一兆円近いのではないかというような話を確かに私も承ったことがございます。非常にその辺はラフな推計であったと思います。今回のほうはもっと調査密度が高うございますので、今回の数字が大体正確な数字であるというふうに考えております。
  152. 平林剛

    ○平林委員 一兆円になんなんとしているということをしゃべったのは大蔵大臣の田中さんです。それで私はたいへんな違いがあるということを疑問に思ったのです。そうすると現在のところは労働省が調査をされた四千七百四十億、多少届け出のあるものとないものとで違いがあってもその線くらいが正確なものである、こう理解してよろしゅうございますか。
  153. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 現在のところ私はそれが一番真相に近い数字であると思います。
  154. 平林剛

    ○平林委員 かりに、四千七百億を少し上回る金額にいたしましても、相当の金額が日本の各事業場における社内預金の総額であるということがわかるわけであります。しかもその規模別にこれを調べてみますと、全国の事業場約三万三千ほどの中で一人から二十九人くらいの規模を持っておる専業場が一万をこえているわけであります。また三十人から九十九人くらいでも約一万三千事業場くらいございまして、社内預金のある事業場総体の約七割くらいはたいへん規模の小さい事業場のものであるということは労働省の調査でも私は承知をしているわけであります。そうなりますとこういう事業場についてかなり金融の問題からも議論があり、あるいはその預金をしている人の保護という面でも問題かある上に、規模が非常に小さい、一体労働省はこれに対してどの程度の把握をして預金者の保護に当たっているかということは私はかなり問題があるのではないかと思う。いま一兆円あるいは四千七百四十億につきましても、もっと議論すればはなはだ問題がある。実態をつかんでいないのじゃないか、こういうことが言えるのじゃないかと思うのであります。そこへもってきて最近のように中小企業の倒産ということがありますと、私は、いよいよもってこれに対する取り扱いというものは、相当政府としても考えていかねばならぬ問題である、こう考えるわけであります。そこで、あまり正確に把握していない労働省に対して、私は少し注文をしたいと思うのでありますけれども、会社の破産だとか倒産があった場合にどうやって保護してくれますか、この保護の問題についてどれだけ責任を持ってやってくれるかということを、あなたじゃちょっとかわいそうなくらいだけれども、きょうは基準局長かあるいは労働大臣にでも来てもらってお話を聞きたかったのでありますが、どういう保護をしていくつもりかということを、あなたの責任においてお答えをいただきたいと思います。
  155. 東村金之助

    ○東村説明員 お答えいたします。ただいま御指摘のように会社が倒産して会社更生法等の適用を受けるというような問題がございました際に、われわれとしては、こういう問題は賃金の不払いと同様、早く問題を把握して早く処理をするという基本的な能度をとっております。そこで会社について何らかの問題が起こったということがわかりましたならば、そういう態度で、破産であるとか会社更生法の手続が開始される前に、何とかこれを措置をするということをやっておりますし、かなりこの点は実効があがっているとも思っております。ただし会社更生法の適用を受けた場合におきましては、これは共益債権としての扱いを受けますから、それはそれで特別の保護を受けておるわけでございます。それにいたしましても、こういう問題につきましては、賃金不払いの問題と同様、われわれは最優先に労働者保護に任じている次第でございます。
  156. 平林剛

    ○平林委員 会社更生法の適用以前にもやはり問題があると私は思うのです。なるべく早い機会に問題を把握して、早くこれを処理するという御方針はあなたの御説明にございましたけれども、それならば、最近の倒産状況から見まして、東京商工興信所の調査によっても、二月の倒産件数は二百三十八件、負債額七十億円を筆頭に一億円以上でも会社の倒産は七十件とある。これは二月ですけれども、三月だって引き続いて倒産しておるわけであります。これについて社内預金の問題についてはどうなっているかというような調査なり、問題の検討なりをおやりになっておりますか。
  157. 東村金之助

    ○東村説明員 お答えいたします。社内預金の返還が不能になったかどうかという問題は労働者の請求にかかわらしめる問題でございますので、原則としては労働者の申告を待ってこれを取り扱うことになっておりますが、申告はあまりございません。ただし、ただいま先生がおっしゃいましたように、倒産ないしはそのおそれがあるという問題がございますので、いま御指摘の東京商工興信所でございますか、私どもも手に入れまして、具体的な、会社についてこういう問題が起こっているということを下部に指示いたしまして、すみやかに当ってごらんなさいということで監督をさせ、問題があったら中央のほうにあげる、こういうことで実はことしの一月末に特別に指示してございます。
  158. 平林剛

    ○平林委員 私は、労働者の請求があればこれについてやるという考え方は、社内預金の現状から見て適当ではないと思います。しっかりした事業場において、そうして労働組合でもあって、会社との間に労使対等という立場から社内預金についての取り扱いが取りきめられているところはまあいいでしょう。しかし私が先ほど指摘しました一人から二十九人という小規模な一万をこえる事業場において、はたしてその原則が守られておるかどうかということになると、私はその実情はあなたが把握されている以上の問題があると思うのであります。むしろどこへこれを持っていったらいいかわからぬというようなところがございまして、これら社内預金の保護というものは万全を期していくわけにいかない。そこでいま一月あたりに調査をするようにということでございましたけれども、迅速に把握をし迅速に処理される労働省としてどういう状況になっておるか、現況の御報告をいただきたいと思う。
  159. 東村金之助

    ○東村説明員 その前に一言お断わりいたしますが、労働省の統計におきまして零細企業の割合が非常に多いのではないかという御指摘がございましたが、私どもの統計で規模と申します際には、それは事業場の規模、こういうふうに呼んでおります。それはたとえて言いますと、大きな銀行等で支店があるような場合には、その支店を一つの規模ととらえているわけであります。したがいまして必ずしも企業というわけではございません。そこでただいまの御指摘の問題でございますが、われわれといたしましても、何も労働者の申告を持つことなく、おそれがある場合には積極的に問題を把握するというたてまえでやっておりますが、現在までのところ、現地のほうからそういう事例はほとんど報告されておりません。今後あるいはそういう事例なり報告が出てくるのではないかというふうに考えております。
  160. 平林剛

    ○平林委員 労働者の請求がないということは、私、先ほど申し上げたように問題があるから、預金者の保護という立場から積極的に労働省はこの調査に乗り出してもらいたい。これができないようなら、大蔵省はいよいよこの社内預金の問題についてシビアーな態度をとっていかなければ問題が大きくなると思うのですね。私の希望に対して、あなたではかわいそうだけれども、ひとつはっきりしてもらいたい。
  161. 東村金之助

    ○東村説明員 ただいま労働者の請求があってと申し上げましたのは、法律のたてまえからいきますと、労働者の請求にかかわらしめて不払いかいなかの問題が起こる、そういう趣旨で申し上げたわけでございまして、実際問題といたしましては、事実上そういう請求があった場合に不払いになるそうであるということは、お説のとおりわかりますので、われわれとしては、先ほどの資料等を中心にしながら、積極的にそういう問題が起こらないように事前に監督なり指導をしておる、こういう段階でございます。
  162. 平林剛

    ○平林委員 いずれ私も倒産あるいは破産をした各企業の状況を調査いたしまして、その実例の上に立って政府当局に対して責任を追及していきます。いずれにしても、あなたも労働大臣にもお話しになって、この問題は、労働省もひとつ真剣に取り組んでもらいたいということを希望をいたしておきたいと思います。  大蔵大臣がお見えになりましたから、ちょっと大臣にお聞きしたいのですけれども、この間も田中大蔵大臣としては、この問題について適切な把握をなさっておりまして、私、感心をしたわけでございます。廃止の方向に持っていかれるというのは自分の持論であるというお話でございましたけれども、去年も実は大蔵委員会において同僚の横山委員が質問をされたときに、これについて具体的に廃止をする方向に持っていきたい、そして元本の払い戻しあるいは利子の確保についても、制度上の条件を検討していきたい、こういうお話をされておるわけであります。そこでもうそろそろこの問題については腹をきめて、具体的な措置を検討していく必要があるのじゃないか。特に四千億か一兆円かわからないくらいの現状でございまして、これがどういうふうに各事業場で使われておるかということも把握できないと、全般の経済動向なんていうものはとてもつかんで仕事をやっていくわけにまいりません。そういう意味ではそろそろ一歩進めて具体的な廃止の方向に持っていく措置を検討しなければならぬと思うのですけれども、大蔵大臣として具体的な検討を去年から一年間おやりになっているわけでありますから、どこいら辺まで進んでおるか明らかにしてもらいたいと思います。
  163. 田中角榮

    田中国務大臣 こういうことは好ましいことではないということ申し上げております。できれば全廃をしたいということでございます。しかし、できれば全廃をしたいという基本的な考え方、そういう希望というものと現実が必ずしもいますぐマッチをするということでもないわけでございます。こういうことが一体いいかといえば、好ましくないことである。しかし実情なかなか廃止をすることにすぐいかないということで、労働基準法に特にこういう十八条以下の規正を設けざるを得なかったという実情に徴しましても、私がいま申し上げたとおり、基本的な考え方と実際がなかなか合わないということでございます。でありますから、これはやめることにできれば、労働、大蔵両省の間でもって話をしまして、何年間にやめるということになりますし、いまあなたが倒産その他に関して言われたとおり、やめるにしても現在の問題に対して処置をしろということになると条文にもう少しはっきりしなければいかぬわけです。これこれの利息を付すべし、これ以上の利息を付したものには罰則を課するということになるわけです。そうすると、一方廃止したいということと、そういう現状に対処して条文を整備していきますと、逆にそれが安定していいという相反する面が出てきますので、とつおいつ考えながら、なかなか条文の整備までいかないというのが現状であります。これは昨年の委員会で労働大臣と私、一緒に申し上げたはずでございますが、行き過ぎたもの、歩積み、両建てのようなものでありましても、過当なものは少なくとも絶滅を期したい。もう一つは、労働組合の預金というものに対して、現実問題としてこの利益を守るような措置を考えなければいかぬ。それから、これが乱に流れて、社員以外のものが高利を目当てにこの中へ入ってくるものは排除しなければいかぬ、こういう問題を前提といたしまして、将来この社内預金の制度がどうあるべきかということに対して、前向きで対処いたします、こうお答えしておるわけであります。私はこういうことはあまり好きじゃないのです。実際において銀行金融機関というものは他に法律があるのですから、社内預金が、愛社心のために、金融もなかなかたいへんであろうから、われわれが預金をできるものは社の発展の一助にもなり、そうすることがわれわれの利益を守ることだという、いい意味の立場でも社内預金が行なわれておるわけでございますが、同時に倒産をすれば、少なくとも税金等には優先しないということであります。非常にむずかしい問題ではありますが、何とか解決をしていこうという気持ちであることは間違いないわけです。でありますから、銀行——これはあまり声を大にしますと、銀行局はどうも銀行の味方をしているようで、なかなか言いにくいということは事実のようであります。労働省は現実的にやっているんだから、これは取り上げることは、いい時期であれば別だが、いまの金融引き締めなんというときに、こういうことはとてもいけないということでなかなか前に進まないわけです。ですから、これは事務当局だけでやる問題ではなく、もう少し高い立場からどうあるべきかということの検討を必要とする段階かもわかりません。いずれにしましても、影響するところは非常に大きいし、現実問題として、解決しなければならない問題がたくさんありますから、一年と言いましたが、なかなか一年で片づくような問題ではないわけです。引き続いてより合理的な金融制度を乱すようなものであってはならないし、同時にいま預金しておる人たちの利益は守らなければならないというようなところに主点を置いて解決をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  164. 平林剛

    ○平林委員 いずれにしても早晩解決しなければならない社内預金だと思うのでありますけれども、それにしても私は、この間においてだれが責任を持ってくれるのか、だれがその実情を把握してマークしていくのかという点について、どうもこれら預金をしておる何百万の人たちにとっては、大きな関心事であろうと思うのであります。たとえば、いま大蔵大臣は社員以外の人が入っておるのはけしからぬ、これは法に触れるのではないか、こうお話しになるけれども、労働省にちょっと聞いてみましょう。一体そういう事業場が幾らあるのか、そうしてそれに対して、もし法に触れるものがあれば中止命令を出すことになっておるけれども、中止命令を出した事例があるかどうか。つまり問題把握をどの程度しておるかということを私は答弁から想定をしていきたいと思うのであります。  もう一つは、だれが把握しておるか知りませんけれども、四千七百四十億でもようございましょう。そのお金は各事業場の経営者は何に使っておるのか。たとえば回転資金か、あるいは評価投資か、こういうような用途ですね。こういう実情については、どういうふうに把握されておるか。そういう二つの点について、これはどっちが管理しておるのかわかりませんけれども、実情をつかまなければどういうふうにしていくかという次の対策が出てこないわけです。私はこういうことをやらしておきながら、実情を把握していないということはあまり無責任だと思いまして、この二つの点をこの際政府当局のほうからはっきりさせておいていただきたいと思うのであります。
  165. 東村金之助

    ○東村説明員 前段の問題についてお答えします。  つまり労働者以外の第三者から社内預金というようなかっこうで受けておる事業場は幾らあるか、この問題でありますが、先ほど申し上げましたように、私どもは抽出調査をしたわけですが、その抽出調査三千前後のところ、約三百五十前後がそういう事業場でございました。これに対する関係者といいますか、それは約九千人前後でございます。
  166. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 大蔵省は要するに労働基準法に基づく従業員からの預かり金に対して私ども関係するのは、出資の受け入れ等のことで、要するに金融機関みたいなことをしてはならない。つまり第三者からストレートに預かると法に触れるわけです。それから第三者からストレートに預かるという問題もむろんのことですが、従業員の名前を用いて、その人間が会社から受け取っておる給与からではなく、それ以外の財産的な自分の資産を預けるということは、本来の趣旨と違うと思うのです。かりに本人の財産としましても、給与と全く関係のないものを持ち込んできて、金利が高いという理由で預けるというのは何か非常に筋が違うのではないか。そういう点から申しますと、この前も通牒を出したわけで、先生御承知だと思うのですが、無制限な借り入れ、受け入れというのはどう考えてもおかしい。金利についても私は問題があると思うのです。六分以上でなければならないというのは、どういうところからきておるのか、私は若干疑問に思います。と申しますのは、本来の趣旨が預金を拘束してはいかぬ、預かり金を拘束するのはいかぬというので、いつでも求めに応じて払い出さなければならぬということが厳重に書いてある。つまり言ってみれば当座制の資金みたいなものでございますね。それに対して六分以上付するというのは、銀行でいえば一年定期預金よりも高い利率を最低にするというのはおかしいと思うのですが、しかし実際にたとえばこれは普通預金の金利以上でありましても、安い金利だったら預けないわけです。金利が高いから喜んで預けるのですから、そこでその限度を相当厳格に定めるようにしたらどうだろうか。先ほどのこれを漸次解消の方向へ持っていくとしたならば、法律でやることは大臣も言いますように適当ではありませんが、実際上の監督として、これは基準監督署にはたいへん負担になるかもしれませんが、それぞれの預かり金をやっておる事業場は、どういう限度で預かることにしておるのか、それを事業場からとる、それを出さないところ、言ってみれば無制限にやっておるということになりますから、どういう限度でやっておるか、月々の、あるいは年間でもいいのですが、年間における預け入れ額は、年間の従業員に対する給与総額の、たとえば常識的にいえば半分が最高であるとか、勤続年数が長くなりますれば最高限度はどの辺までというふうな点、私ども銀行などでもやっておりますので調べてみますと、比較的銀行は良識的な限度を定めておりますところが多いわけです。大体勤続年数が長いところでも、三百万円以上は預からない。二十五年、三十年勤続した人でも最高限度は三百万円に押えるというふうな銀行もございまして、そういった制度を一般的に守らしたらどうだろうか。これは法律上の強制力は何もありませんけれども、常識を逸したような金額に達するということは先ほど言ったように法律に触れる問題でございますから、そういう点はたいへん御苦労でございますが、直接の監督をしておるのは労働省でございますから、そちらのほうの組織でそういうものを調整する、場合によったら年に何回か預かり金の総額を報告させる。権力に基づくあれじゃありませんけれども、その程度指導をやっていただくと非常によくなるんじゃないかということを考えます。
  167. 平林剛

    ○平林委員 大蔵大臣の予定の時間もあるそうですから、きょうはこの程度でやめたいと思いますけれども、私はまず第一に社内預金の現状をしっかり把握してもらいたい。それはいま申し上げました点もそうですし、それからどういう使途に使われているかというような点もやはり相当やっておかないと、労働者の福祉のために社内頭金が設けられたといいながら、実際にはそうじゃなくなっている。あるいはそうでない事態が起きるかもしれませんということを考えますと、しっかりした責任のもとにこの実情を把握するということが一番大事なことだと思うのであります。それから、他面、これから直面する経済の中で、これら預金者が十分保護されるということについて、万全の措置を講じてもらわなければならぬ。第三に大蔵大臣は公約でもございますから、廃止をする方向にもっていく努力をする、これは口で言っておるだけではなくて、具体的措置としていろいろな対策検討して、少なくともまだ一年待たない間に何か処理をするようなことは、やはり大臣の責任においてもっていただきたい、こう思うのでございます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕 適当な時期にもう一度私はこの問題を取り上げて、政府当局の一歩促進された考え方をお聞きしたいと思いますから、それまで質問を留保して、きょうはこれで終わっておきたいと思います。
  168. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 小松幹君。
  169. 小松幹

    ○小松委員 大臣にお尋ねします。株の問題についてお尋ねしますが、銀行よさようなら、証券よこんにちは、という時代は一昨年の秋から消えてなくなったようでございますが、そうして一年以上、二年にわたって株価は、株の市場低迷をしておるわけなんですが、この原因は一体何か。一向に株価が異常な高騰を示したのは別にしましても、とにかく一昨年の秋から今日まで、非常に株に対する一般の関心も薄らぎ、あるいは業界低迷だと、こういっているその最大の理由は何であるか、これを大臣にお伺いしたい。
  170. 田中角榮

    田中国務大臣 最近の株価の低落状況は何に原因するかという御質問でございますが、国際、国内両面にわたる経済還境の変化が一つあると思います。それから資本市場への資金流入の変化、資本市場に金が入ってこない、投資者の嗜好が変わってきておるというような問題がこのような市況低迷というような状態の原因であろうというふうに考えられるわけでございます。
  171. 小松幹

    ○小松委員 先般私は本会議の質問で、株価の問題についてお尋ねしたら、大臣は、株価のことについてはわしの責任ではないというような御答弁もあった。確かに株価の上げ下げの問題についての小手先のことは責任はないかもしれませんが、今日株価低迷しておる、株の市場がいかにも不活発であるということについての原因が、いまあなたが言った経済環境の変化である、あるいは資本市場の問題、あるいは証券に対する一般大衆の嗜好が変わっておるという説明でありますが、それらは皆池田内閣なり、そういうものの責任ではないでございましょうか、政治をやっておる者の責任がなしとすれば、はなはだ責任の所在を突ききわめなければならぬが、私は今日の株価低迷というのは政治をやっている池田内閣が経済環境の環境づくりを誤り、しかも経済の流通までにいろいろな支障を来たした結果、波及的に株の不振を買い、あるいは低落を招いたのではないかと思うのですが、その辺大臣、あなたはその間の大蔵大臣でありますが、責任なしと逃げるおつもりなんですか、どうですか、これは池田内閣の責任じゃないのですか。
  172. 田中角榮

    田中国務大臣 責任のあるなしを申し上げる前に、まず株価というものはどういうものかといえば、需要と供給のバランスの上に立って株価が形成せられておるわけであります。政府は株式市場育成強化資本市場強化施策を行なっておりますが、株価には関与しないということでございます。また株価低迷するような経済環況をつくったのは政府責任ではないかという、雨が降れば何とかというような御議論でございますが、しかし私自身は日本の経済の戦後をずっと見てまいりまして、また将来を見ますときに、正常な経済発展をしていくという考え方に立っておるわけであります。でありますから一時のように、株というものは三カ月持てば五割になるのだというような状態がございましたが、株というものはそんなにうまいものではない、またそのような状況が続くものでないことは世界各国の市場がこれを証明しておるわけでございます。でありますから株というものは非常にうまいものだ、買えばただもうかるのだというような考え方からしますと、いまの株はもうからぬなというような気持ちになると思うわけであります。動あれば反動あるということで、市場低迷を来たしておる一つの原因だと思います。しかし私は日本の経済というものが過去のように超高度というような成長でなくても、八条国に移行して正常な経済発展が続いていくのでありますから、国民各位が、日本の経済実態、真相、こういうものをじっと見ていただいて実態を把握せられれば、株式市場にもこれが影響してくるだろうという考え方でございます。でありますから非常に株がよかったときも自民党内閣のおかげとも言いませんでした。同時にいま低迷を続けておりますからわれわれ政府のおかげであります、こういうことにもなかなかならぬわけでございます。やはり長い意味で日本の経済実態をあらわすのが株式市場でございますから、やはりそういう意味でひとつごらんいただきたい。ただ一部においては国際収支があぶないとか、八条国に移ったらたいへんだろうとかいう、とにかくみずから身を引きしめる、こういうことは少し鳴りもの入りでやっておるというところで、多少、ひとつ時期を見ようかという投資家もあるようであります。しかし幾ら株が下がったといっても、銀行金利くらいにはなりますし、しかも非常におもしろみもありますから損をしてもおもしろいほうをという人もありますから、私はそういう意味で日本の将来の経済を見まして、これからの証券市場というものに施策よろしきを得ればやはり実勢を反映するようになるだろう、またそうしなければならないというふうにいろいろ考えておるわけであります。
  173. 小松幹

    ○小松委員 やはり株価の問題は、信用という問題が私は大事だと思う。買い手があり売り手があるのですから、いまは売り手のほうが多くて買い手が少ないから株価低迷するのでしょうが、その前提には、やはり経済信用を失墜しておるのだと私は思うのです。一般にしても、企業そのものに対しては、企業自体の失墜はそれほど大きな問題になっていないと思うのです。会社の成長、たとえば、何々会社、何々製作所というものは相当成長しておりますから、一般信用はやや現在でも高いと思うのです。けれども、その企業信用よりも、もう一つ、株の上がったり下がったりするのは経済全体の信用で、私は問題があると思うのです。もちろん、企業そのものが信用が失われてくれば、これはもうおしまいです。しかし、まだ企業信用はあるけれども、その上の、いわゆる経済信用等が薄らいできておるというところに、やはり今日の政府責任があると私は思うのです。この辺をはっきりしておかないと、株価の問題は政府責任はないんだ、それは売り手、買い手の問題だ、企業の問題だ、すべてを他人ごとにいえば、やはり相場というものは、そのときの経済信用で動いているのですから、だれも損をするところに金をかけるものはないでしょう。それは田中さんだけでしょう。もうけようと思って一つ投資をするのですから、それにはどうしてもやはり経済信用というものが先行しなければならぬ。その信用をやや失墜しているのじゃないか、いや多分に失墜しておるのじゃないかと思うのです。ここが私は田中大臣に強く言いたいところなんです。ということは、一昨年の秋に大体株価はばあっと落ちた。それから後に、一応引き締め政策もゆるんで、ずっと一年間たって、大体もとに戻って、経済というものをゆり戻して戻してきた。けれども、それにしても株価は上がらない。そこにまた、もう一つ今度は大きな引き締めが来たということで、いよいよこれは歯の立てようもない。上がろうと思えば先をたたかれるというかっこうになっておるのじゃないかと思う。もはや株だけの問題をとっても——資本主義の経済は株が根源である。資本主義を論ずるものは株が問題であると思うのです。その株が今日の大衆に受けなくなったということは、池田内閣も、資本主義社会のチャンピオンとしていく以上は、株の低迷は池田内閣の死命を制せられたとしてもいいのじゃないか。私は、引退すべきときがきたのじゃないか、こう考える。これは株だけの問題から考えてですよ。資本主義は株なんですよ。その株が今日足踏み状態になっているということは、池田内閣の政策としては、信用を失墜したと私は考えるのです。これは、私は、そうでないかと思うのです。そうでなければ、株は上がったり下がったりするんだから、それはもう向こうのかってだ、おれは別個な経済政策をやっているんだというわけにはいかないと思うのです。そういう意味で、やはり政策的な一つの欠陥なりあるいは不信用を招いたんだ、こう考える。で、田中大臣は、これは将来の問題をもっと考えて、長い目で見てくれということを言った。それじゃ、将来に、いまあなたの大臣の責任において、一体株の信用拡大するというポイントについて、具体的なものを何かお持ち合わせになっておるのですか、その点、将来のことをお聞きします。
  174. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ株というものは上がったり下がったりするものであるということは、確かに御指摘のとおりでございます。ニューヨーク株式は史上最低に下がりましたが、現在は、わずか一年半の間に、史上最高でございます。こういうふうに、あまり大きく上げ下げするのはよくないということでございます。これは上げっぱなしであればいいのですが、下がるということが前提にあると、これは上がるときは非常に大衆がついてきながら、下がるときにはおつき合いしたくないというのが人の気持ちでございますから、そういう意味ではなかなかむずかしい問題でございます。しかし、あなたが言われた、資本主義において株価というものは、その経済の実勢をはかる一つのバロメーターだ、それはそのとおりであります。でありますから私は、いままで金融機関証券市場が対立しておる、こういう状態に対しては、あまり快く思っておらなかったのです。証券市場金融機関が敵対関係にあるなんて、だれも、世界の経済考える人は、そういうことはあろうはずはないわけであります。このごろは、共同証券等に一切のものが入っていくというふうになってきましたから、やはり証券市場育成ということば日本の経済のために必要なんだということがだんだんとわかってきたのだ、こういうふうに思います。ただ、いままで急に下げたのは、これはケネディ・ショックというものを契機にしてでございますが、いままで非常に急速に上がったということで、売買益というものが相当高かった。先ほど申し上げたのですが、ちょっと買って三カ月たてば何割かになる、こういう考え方は、そんなにうまいことばかりないということが、一つ投資家意欲を少し沈滞せしめたことであろうと思いますし、もう一つは、八条国移行ということで、これからは裸になってたいへんだろう。たいへん、たいへんということで、マスコミあげていわれておりますから、そういう意味で、まあたいへんなんだろう、こういう考え方もあると思うのです。もう1つは、国際収支が悪い、悪い、どこでも悪いということばかりでございますから、えらい人がそういうことを言うのだから、国際収支が悪いかもしれぬ、こういう考え方はあります。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕 それは私の前で、一般の国民が私にそう言うのですから、ですから、そういう意味で、証券市場に流れる金が相当程度減ってきたということでございます。しかし、私は、経済の実勢ということを考えると、アメリカが、史上最低から史上最高にニューヨーク市場がよくなったといっても、一体どの程度経済成長率が伸びたのかというと、一%ないし一・五%しかふえておらぬのであります。三・五%の経済成長率を四・五%ないし五%に上げるために、一大減税も行なっている。そういうことで、株価は史上最高といっておるのであります。イギリス、イタリア、フランス、西ドイツ、こういうところ、イギリスは、国際収支の不安が長いことでございました。イタリアとかフランスとか西ドイツに対しては、もう日本は、なぜ一体西欧のそれらの国に見習わないのかと言われておりましたが、この半年ばかりにおいて、イタリア等は、非常に国際収支が不安で、一大政策転換をやらなければならないというような状態になっておることは御承知のとおりでございます。西ドイツにおいても、コスト・インフレ問題では、一番先に取り組まなければならない状態になっておる。こういう世界の経済成長状態考えるときに、ちょっと安定成長などといえば、一二・三%もいってしまう、まあ公定歩合二厘を引き上げて、ようやく名目九・七%の成長で押え得るか、こういう実態を比較してみますと、世界の経済というものも、引き締めをやるときに、外国の経済が悪いときは非常に困るのですが、外国の経済が比較的に好調であります、そういうときに八条国に移行しまして、そうして公定歩合も引き上げるようなな措置をとりながらも、世界で例のないような突貫七%以上の成長を続けられるという日本の経済実態考えますときに、私は、今日の株式市場低迷というものは、やがて低迷から脱却して、前進態勢に入るだろう、こういうことを考えることは、私は、池田内閣の閣僚として、夢を見たり、希望的観測に立っておるものではないと思います。私は、そういう実際の数字の上に立って、日本の株式市場証券市場というものが、どうも少し低迷し過ぎておる。まあそれはものを知るというか、日本人はなかなか国際的な視野にも立っておりますので、何でも知っておりますから、ころばぬ先のつえということで、相当引き締めておるということが事実であるというふうに考えていただくことが、私は、一番正しいことではないか。やがてはよくなる、またよくしなければいかぬ、こう考えております。
  175. 小松幹

    ○小松委員 私の聞いたことに対するお答えではなかったようであります。それで、いまはしなくもあなたがおっしゃったことで、これで論争するつもりはないのですけれども、アメリカあたりは、成長率が五、六%だけれども株価は最高なんだ。日本の場合は、経済の成長率は十何%で高いのだ、こういうことをおっしゃる。経済成長率が高ければ、すべてそれでいいのだという前提を持っておれば、そういうことが出てくると思う。経済成長率だけがばか高くなったら、経済はそれでいいのだということなら、それはいいでしょう。そうじゃないのです。経済というのは、やはり国民の各層にわたってバランスをもって調和して成長していかなければならぬ。片足なり片腕なりが大きく成長したから、その人間は成長したといわれるわけじゃないのであります。そういう意味からすると、むしろ異常に成長率が、一部特殊なものだけが十何%に成長することの誤りが、他の面に波及して、かえってがたが来ておるのではないかと思うのです。これは論争になりますから、質問に移りたいと思う。  そこで、私は大臣に具体的なことをお尋ねしたのですが、これからの株に対する対策は何かおありになるのですか。こういう具体的な問題、これからよくなるであろうという希望的観測でなく、政府の政治行政としてどういうことをやります、そうして株式市場をどのようにして強化をします、あるいは株価に対してはこんな配慮をしていきますというものを言っていただきたかったのであります。
  176. 田中角榮

    田中国務大臣 まず国際収支長期拡大安定施策を行ないます。同時に物価の抑制策に努力をいたします。日本の経済成長が跛行的にならないように、正常な安定成長を続けていくということであります。  なお証券市場につきましては、証券業者自体の体質の改善投資勧誘態度の適正化、なお証券市場の環境整備、そういうものをあわせて行なっていくことによりまして、将来の日本経済資本調達の場としての証券市場育成強化をはかってまいりたい、こう考えます。
  177. 小松幹

    ○小松委員 ちょっと抽象的で、それはいつも言われることで、具体的にいま何をやるかということを、もう少しその対策を聞きたいのであります。現実の具体策を聞いたのですが、あなたのほうは抽象的に、論理的に、去年もそれは言われるし、来年もそういうことは言われる、いつでも同じことです。そう問い詰める必要もなかろうと思いますが、そこで具体的に一つだけ聞いておきます。  いま大体証券市場は相当株が——あるいは売り手のほうが多くてだぶついておる、あるいはもてあましておるとも言い得るでしょうが、千億とかあるいは二千億もある、こう言われておるのですが、そういうときに——それはもてあましているというのは語弊であって、持ち続けることができるでしょうが、三十九年度の増資ということが直接問題にかかってくると思うのです。ややもてあましぎみというところに持ってきて、増資が六千億とか五千六百億とか言われておるのですが、四月からの第一・四半期あたりはこのまま増資はすべっていくでしょうが、その辺の具体的な数字なり現状というものを、これは事務当局にでもお聞きしますが、大臣には、そういういまの現状から将来にわたっての、このまま六千億なりの増資を、現状でいけるかどうか、そういうところを……。
  178. 田中角榮

    田中国務大臣 四−六月の状態を見ましてから、六、七月になりましたら、調整を必要とする段階であれば調整をしようということでございます。いままだ五千億になるのか——きょうあたりの新聞では三千五百億程度というようにも報じられておりますし、これらの問題は業界自体の自主的な面から、現在統計数字を集めておる段階でございまして、四−六を見てからということになるのではないかと思います。  先ほど言われた証券市場に株がだぶついて困るぐらいじゃないかというようなことでございますが、これは少し変わっておるのです。大衆からの売りは出ておらぬようであります。ところが東京などは大体一日最低でも一億五千万株、合理的にいうと二億株の商いがないと、証券会社は支払いができないですから困るわけです。ですから、きょうあたりでも、五千五百万株、ないときには、土曜日などは三千万株というような状態もあったわけであります。でありますから、実際のところはよくつまびらかにはしておりませんが、大体の数字を見ますと、証券会社自体が金繰りのために売るとか、あるいは場合によっては半くろうとが売り買いをしておるということで、株不足だという状態がありますことは、きのうの夕刊にも明らかでございます。そういう意味で非常に片寄った状態を続けておるということは事実でございます。戦前の六一%も六二%も自己資本比率があった時代と比べて、現在二五%を割っておるというような状態から考えて、株が証券市場で大いにだぶついておるというようなことであると、将来の問題としても考えなければならぬいろいろな問題もあるわけでありますが、現在株がだぶついておるというような状態ではないようであります。
  179. 小松幹

    ○小松委員 株がだぶついておるというのは、結局売りも買いも活発でないからだ。しかも売り買いがあって——取引がなければ取引市場としては意味がないのです。安かろうが高かろうが売り買いがあって、そこに証券市場が活発化するわけで、それがやはり経済に対する信用——いま売っていいのか、いま買う時期かという判断もいろいろあるであろうから、いま大臣がおっしゃったように、くろうと筋か、あるいは換金のためかというような筋だけの動きにとどまると思うのです。だから増資が受け入れられる余裕があったとしても、やはりそれは増資のための受け入れであって、ほんとうに活発化しなければ証券市場というものは意味が薄らいでくるのだ。やがては証券のいわゆる増資に関しても信用に関しても薄らいでくるのじゃないか、こういうように考えると、やはり株価あるいは株全体を考える場合には、何といっても、先にもあとにも、経済信用以外にないのじゃないかと私は思うのです。いろいろ小手先はあってもですね。経済信用というものをほんとうに池田内閣がぴしっと打ち出していかなければ、なかなか低迷期は脱せぬのではないか、こういう意味信用をどのように確立するか。どっちかというと、いまは池田内閣の高度成長政策はもはや行き詰まり、ザ・エンドのときではないか、こう言われておる、あなたはいろいろ宣伝だとおっしゃる、あすこもここもエコノミストが宣伝するから悪いのだ、実質はそうじゃないのだという言い方をされておるけれども、これは宣伝もさることながら、実際的には信用が薄紙をはぐようにだんだんはがれてきておるのではないか、私はこういうように考えざるを得ないのです。そこで直接の信用というものを失墜した、そこにやはり、池田内閣の経済成長信用をも失墜したけれども証券業者の取り扱いの操作でも信用を失っておると思うのです。というのは、おととしあたりでも少し株が下がりかけてあぶないと思ったときに、ふたをあけてみると、証券業者の従業員が保護預かりしておるのを適当にのみ行為をやって、あけてみたら転売をしておった。それが支店長も従業員も一緒になってうちょうてんになってのみ行為をしておったという事実が出て、そういう犠牲者も出ておりますし、あるいは従業員の不正もずいぶんあったと思うのです。これは不問に付して、表へ出たものは山一証券あたりの一、二のものが出たか、あるいは少しは地方で出たかもしれないが、大部分は不問に付せられております。そこで取り扱い業者あるいは取り扱いをしておる人たちの信用も失墜しておると思うのです。だからその点について、私は、保護預かりについてもう少し厳格にできないものかどうか。たとえばしろうとをだますのですから、適当に保護預かりしておきながらそれを転売して、調子がよければ、どうせ投信ですからほかのものにかえて売って、そうしてとにかく利ざやだけは本人に渡せばいいということで、保護預かりがずさんになっていき、のみ行為が行なわれておったのです。これに対して、今後はどういう処置をしたらいいのかという問題、このままいけば少し株の調子が出ると問題が出てくると思うのです。最近は従業員の登録制なんということも言われて、実際やっているかどうか知りませんが、その辺は技術的な問題ですから、大臣がお答えにならぬでもけっこうなんですが、実際監督官庁としての行政指導は、保護預かりについてどうするのか、あるいは株券業者に対する指導はどうしているのか、この点をお伺いしたい。
  180. 田中角榮

    田中国務大臣 私も大蔵省に参りましてから、直ちに証券業者を呼びまして、事故を起こさないように、事故を起こした場合には、法律的にどうかということよりも、証券業自体の信用を失墜する、株式市場の失墜ということになって、みずから首を締めるということになりますから、事故を起こさないことがまず必要であるが、事故を起こした場合には、会社全体として、また業界全体として前向きに解決せられたい、こういうことを言ったわけでございます。しかし昔から証券業者は行儀が悪い、こういうことが言われておるわけでございます。どういうふうに行儀が悪いかといえば、金融機関と比べて行儀が悪い、こういうことになっておるわけですが、やはりこれからの金融資本市場が新しく発展する、日本の経済の二大支柱になっていくということから考えれば、やはり証券業者も姿勢を正して、国民の信用を獲得するという方向に向かわなければならないということは言うを待たないわけでありまして、私は言いにくいことではありますが、口をすっぱくして証券業大会に出てさえも、世に証券業者は行儀が悪いといわれておるのだから、このような世論を排除するために格段の配慮を願いたい、こう非常に強く言いずらいことをみずから言っておるのは、かかる立場に立ってでございます。  保護預かりの問題につきましては、これは事務当局から申し上げますが、これはいろいろ確実な方法考えております。これはもう盲点があるわけであります。現物を引き渡すことが一番いいのでありますが、税金問題等で、なるべく配当さえもらえれば名前はだれかにしておいてください、こういう考え方を逆用して、それを転売してしまう、こういうことになるわけであります。ですから、やはり自分の財産でございますから、金を渡したならば何日以内、三日以内くらいに現物を渡すということになっているのですから、やはりその現物をもらうということに徹底をするということが一番好ましいことでございますが、お互い信用の間で毎日来ているのだから、二回も三回も間違いがなかったから今度もないでしょう、こういうことが非常に大きな問題になっております。でありますから、一つは個人が行なった事故に対しては会社が責任を負うこと、こういうことを言っておりますし、もう一つは保護預かりの制度そのものをより合理化しようということでいま立案をし、また一部実行に移しているものもあると思います。
  181. 加治木俊道

    ○加治木説明員 保護預かりの問題、ただいま大臣から申し上げましたようなことでございまして、実際問題として、証券会社に預けてくるという慣行が多分に行なわれておるのであります。これは証券会社からしても、お客を把握しておくという便宜がある。それからまた、お客の側も自分のうちの金庫に入れておくよりは安全だということと、それから株券を売ったり買ったりする人にとっては、一々株券を証券会社に持っていく繁雑が避けられるということで、お互いの便宜のためにそういう形が実際に行なわれておるわけであります。保護預かりですから、それに手をつけるということは、もちろんあってはならないわけでございますが、そういう事故を起こしました動機といいますか、原因は大体われわれが承知している限りでは二つあると思います。一つは全くそのお客さんがいいようにやってくれという、俗にまかせ玉と言っておりますが、株の実際の扱いをまかしてしまう。会社の特定の人にまかせる。これはかつて三十五、六年の当時は、非常に株価も成長した時期で、大体まかしておってもかなりもうけてもらえた、そういうことからそういったことがひんぱんに行なわれるようになったのでございますが、そういうことで、ついお客のものでありながら自由に扱うという風習がまま事故を起こす原因になっております。  それからもう一つは、信用取引でありますが、信用取引には証拠金の代用として有価証券を預けることができるのでありますが、これは保護預かりとは厳密に言えば違うのでございますが、実際は保護預かりの中から信用取引の買い立てを立てるときに、それからこちらの代用有価証券のほうに入れて、そうしてお客の信用取引をやっているということがある。その信用取引が、これも三十五、六年当時のように、常に買い方に回ってもうけられるというような時期ではなくて、実際にお客の計算において失敗の結果に終わる事例が多いわけです。こういう場合に、セールスマンがある意味責任感じて、その穴埋めをやってやろうという意味で自由に動かした結果、穴埋めができないで、ついほかの人の玉に手をつけるという例が実際あるわけであります。したがって、これは実際には信用取引については、お客さんのほうといえども十分注意してもらいたいし、セールスのほうにも会社が十分監督してもらいたい、これは協会に対してもそういったことを十分徹底するようにということを要望しておりまして、最近までに信用取引及びまかせ玉についての規制は、規定の上ではかなり強化されてまいっております。できれば今後協会等の検査権を強化して、実際の実施の状況の検査を徹底させる、こういうことをやってみたい、かように考えております。
  182. 小松幹

    ○小松委員 これは双方に問題点があるということは確かです。しかし一般大衆、特に投信あたりをまかせきりにしてやっている者は、セールスマンあたりを信用するなといっても、それは一般の者は、銀行員はみな姿勢がいい、行儀がいいから、銀行員は間違いがないだろう、証券セールスマンにもどうも危いという考え方はない。相当信用して、あるいは会社を信用して、山一なら山一、大阪屋なら大阪屋を信用する、それほど深い——職場でも毎月新聞を出して、株が上がった下がったこいうことで、株の論議に花が咲いた時代があるのです。それほど論議しながらも、やはりそのセールスマンなり、その証券会社というものを信用して、保護預かりをしたり、あるいは現なまを託してきた。それが最後になって、何十万円というのがただ取りされた。いわゆる自転車操業的な行為をやっておった。のみ行為もとにかくやればもうかったのだ。あとからあとから自転車操業で金を集めて、それをぶち込んでいって、決済していけばいいのだ。株が上がっているときは、自転車操業もいいが、少し下り坂になれば、自転車操業はできなくなるということで、やはり証券業者——証券業者といえば大きくなりますけれども、ここではセールスマンを含めて証券業者と言いましょう。そこでそういうものに対して、やはり証券取引の基準というものももう少し明確にして、しかもその明確な基準をきちっと守らせるということが第一義であり、それが最終の義であるように仕向けていかなければ応用ができるようなことでは、金銭取引というものは、応用していけば、どういう羽目になるかわからないと思うのです。だから特に証券は上がったり下がったり、か激しいのですから、そういう応用、くずしの態勢をすすめたのでは意味がないので、やはりほかのものならくずしてもいいが、この証券取引はくずしを教えないで、正確な基準できちっと預かるものはきちっと預かる、発行するものはぴしっと発行する、渡すものはぴしっと渡すというような確実なルールというものを証券業者が体の中にしみ込ませるような態勢でいかなければ、そのときそのときでくずして応用していったのでは、株に対する信用はいよいよ下がると思う。この点についてどのような指導をしているか。一部株式業者の中では、従業員の登録制をやるとも言ったし、またこれは行政当局の指導も強く働かなければならぬと思う。要は証券に関する限りは最終は信用である。経済信用するが人も信用しなければならぬ、機構も信用しなければならぬ。信用なきところに株価が上がる、あるいは株価にほんとうに証券市場としての働きがないと思うのです。こういう意味でやはり信用第一に考えなければならぬというところなんですが、その点についての行政指導をどのように考えているか、また今後どのようにするか、この点を明確にしていただきたい。
  183. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、金融機関と同じように国民の信をつなげるような体制に早くしなければいかぬ。そのためには免許制度の問題も考えられておるわけであります。ですからこれをいますぐやるということはなかなかむずかしい問題でありますが、やはり方向としてはそういう方向で相当強い態度で臨むべきだと思います。また事故に対しましては会社に責任準備制度等を設けまして、会社自体がこれを解決するという原則を貫きたいと思いますし、セールスマンの登録という問題に対しても現在これを実行しようということでございます。なお過当競争ということもありますし、戦後急激に証券市場が発達をしたということで、従業員そのものの接客態度、お客に対する勧誘のしかた等に対しても相当問題がありますので、これらの問題に対しても相当強い態度で臨む、そうすることが日本の証券市場拡大育成することであり、また証券会社そのものの将来のためにもなるわけでありますので、積極的な施策を行なってまいりたいというふうに考えます。
  184. 小松幹

    ○小松委員 ことばじりではないけれども、いま登録制ということをちょっと言いましたが、証券業者の登録制は実施する考えですか。
  185. 田中角榮

    田中国務大臣 そうでなくて、セールスマンの登録制度を考えたいということでございます。
  186. 小松幹

    ○小松委員 いま言ったのはセールスマンの登録制で、証券業者の免許制ということを大臣は言いましたね。それをする考えがあるのですか。そこをはっきりしておきたい。
  187. 田中角榮

    田中国務大臣 これは現実問題としていますぐというわけには参らぬと思いますが、私はこれからの証券の将来を考えますときに、やはりある時期に免許制度に切りかえていくべきだろうという考え方を基本に持っております。
  188. 小松幹

    ○小松委員 そういう大臣のお考えは個人のお考えですけれども、いま大臣の個人のお考えを聞くよりも大蔵省として、大蔵大臣として免許制度に将来はいくという考え方に立っておるのかということです。ようございますか。
  189. 田中角榮

    田中国務大臣 ようございます。
  190. 小松幹

    ○小松委員 別に私は免許制度を強調するわけじゃないけれども、ずいぶん証券業者はつぶれたりあるいは廃止になったり、消えていくのもたくさんあるのです。最初から名を連ねたけれども、現在はその名は雲散霧消しているのがずいぶんたくさんあるわけです。その辺の数はどうなっていますか。いま現実に証券業者の数と実際つぶれていった数がありませんか。
  191. 加治木俊道

    ○加治木説明員 最近では全体で三十九年二月末の数字が五百九十四でございます。いままでの累計で申し上げますと、新規登録いたしました件数は千五百六十六ということになっております。この中で自分でやめたものが六百四十八、残りが処分の結果やめております。
  192. 小松幹

    ○小松委員 これでやめますが、いま言ったように千五百もあったのがいまは五百、その間に雲散霧消していくのがあるわけなんで、ここに免許制にするか、いまのような形にするかというポイントが出てくるのではないか。この点は研究する余地はあると思いますけれども、要は証券取引信用を確立するということにウエートを置いてもらいたい。経済信用証券取引信用というものが確立することによって株式市場というものは漸次活発化してくるのじゃないか。先ほど大臣が言ったように経済はやはり成長しておるのですから、私がさっき言った、企業信用あるのですけれども企業の上の信用がないためにそうした今日の低沫があるのですから、これを回復する以外に方法はないのだろう、こういうふうに考えます。以上をもって私の質問を終わりたいと思います。
  193. 山中貞則

  194. 堀昌雄

    堀委員 ただいまやや抽象的にいろいろと大臣がお答えになっておりますが、私、少し具体的にお伺いをしたいと思います。  昭和三十九年二月十二日に証券取引審議会は大蔵大臣に対して答申をいたしました。いまお答えになったいろいろな問題について、有価証券外務員の制度について、外務員等の行為に関する証券業者責任について、証券業務会の組織及び運営について、証券業者の免許制について、各項目について実は答申が行なわれておるわけです。すでに外務員登録制ということはおっしゃいましたけれども、これはこの中にも出ておりますけれども、協会で登録制にする場合と、大蔵省が登録制として取り扱う場合と二つあると思います。抽象的ですから大蔵省の現在の考えはどちらであるか。部長でもいいです。
  195. 加治木俊道

    ○加治木説明員 現在は協会で自主的に登録制をやっておりまして、法律上は届け出です。答申の趣旨は、場合によれば大蔵省登録も考えるべきではないかということを言われております。これは本業といいますか、会社のほうの免許制の問題とも制度的に関連してきますが、その辺との関連で登録制の場合に二つのあり方がある。場合によれば大蔵省登録も考えたらどうかということです。
  196. 堀昌雄

    堀委員 私は答申の説明を聞く意思はないのです。いまのは説明なのですよ。いま小松さんのおっしゃったように、私は証券問題の今後のビジョンというものが非常に重要だと思うのですけれども、そういうビジョンを考える場合に一番重要なのは、やはり証券業者自体があるべき姿になっていないと、そこがきちっときまっていないところに上にビジョンをかこうとしてもかけないのです。だからどうしても低迷している中へ、まずどこへ石を置くかということ、証券業者というものをきちんとして、信頼される、あるべき証券業者の土台の上にいろいろな今後の問題を積み上げていくなら、下がきっちりしているから間違いがない、私はこういうことになると思うのです。そこであわせて総括的に、いまおっしゃるように、この外務員登録制で大蔵省に登録をするという問題と免許制の問題はつながっておる。そこで、大臣はいま免許制にするということはお答えになっておりますが、私はここで、少し具体的な提案をしたいのです。  実は先般の委員会で、財務比率の通達の問題につきまして私は問題を提起をいたしました。大臣も現状ですぐ急いでそれを実行するについては多少無理もあるから考える、こういうお話でしたが、実際はどうも考えているかどうかわからないような行動が行なわれておるわけです。新聞紙上では行なわれておる。末端では、私が聞いておる範囲では、財務比率で売りなさいという指導が行なわれておる事実もある。それはいいですが、私はその問題を単に財務比率だとかあるいは資本金の増額だとか、ぽろりぽろりとあの手この手でこの問題をやるような段階は、率直に言って過ぎたと思っている。そういうものを総括的にして、そうしてあるべき証券業の姿を政府はかかなければならぬ段階にきておると思うのです。  きょうは午前中に春日委員も指摘をされておりますけれども、少なくとも現在の証券業者が、時によってはディーラーでもうけ、現状のようになれば、やむを得ぬからブローカーでもうけ、場合によってはアンダーライターでもうけよう。そのアンダーライターでもうけようということが、ややもすれば第二市場にいろいろ問題を起こすようなことにもなりかねないというような実情を考えていきますと、ディーラーならディーラーだけでやれといっても現状ではできません。ブローカーならブローカーだけでやれといってもできません。しかし少なくともディーラーを主体にしておる業者は、そんなにあっちこっちに支店を持つ必要はないのです。ディーラーなら本店と主要なる事業所があればできるわけです。ブローカーを主体にしておるものならば、やはり店舗を設けて全体との関係考えてやらなければならぬという問題も出てくるだろうと思うのです。  そういうふうに、もはやここらにきましたら、免許制の問題をいつかはやらなければならぬという問題ではなくて、私はひとつ提案をいたしますと、こういうやり方を考える必要があるのじゃないか。まず皆さんがあるべき証券業者資本金は大体このくらいだ。いまの財務比率はこういうことだ。業種的な配分については、ディーラーを八〇%やるものはブローカーは二〇%くらいにしろとか、あるいはブローカーを主体にするものはブローカーが八〇%、ディーラーは二〇%以内で押えるべきだ。アンダーライターをするものはどうであるとか、証券、投信の分離の問題も、もう少しきちんとしてもらわなければならぬ。投資信託の問題についても、もう少し本格的に分離をするかっこうにならなければならないとか、やはりこれらの問題をここで大蔵省がかかなければいかぬのです。こういうあるべき姿が私は免許の基準だと思うのですよ。しかしそうだからといって、いまたくさんの業者がいますから、これに合致するかといえば合致はしない。しかし少なくともここで免許制度に切りかえるという線を出して、現在あるものには一応仮免許をやりましょう。これからつくるものはもう仮免許はやりませんよ。本免許に合致したものでなければ、これからは認めません。しかし現在ある人には仮免許をやりましょう。それから二年なら二年適正な間隔を置いて、その先でいま私の言ったようなあるべき証券業の姿にならない人は仮免許のままで本免許はできません。そうすると、その間に資本金、財務比率その他で必要なものは統合をされましょう。どうしてもだめなものは御遠慮願いましょう。自発的なそういう彼らの自主性にまかした期間を、自主的に経過措置を設けて、ある一点においてはっきりした証券業のあるべき姿を書くということがもしできるならば、大衆は将来を見出して、なるほど証券業というものは、業態自体から政府がそこまで土台をつくってくるということならば、いまのようなことでなくて、もう少し安心して将来的な展望のもとに立って、投資をやってもいいんではないかということになるのではないかと私は思うのです。だからきょう私は抽象的な、免許をやりましょうというようなことを聞いたって、現状ではへの突っぱりにもならないと思うのです。  そこで私がいま——これは私の提案ですから、何もこのようにしなさいとは言いませんけれども、少なくとも私の言っておる趣旨をひとつ生かして、大蔵省として抜本的な姿勢を正すような証券対策の一端を、ここで大蔵大臣に述べてもらいたい。これは事務当局の問題じゃない。政治的な問題ですから、大蔵大臣ひとつ……。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 政治家ですから、あなたも大体私の考えておるのと同じことをさっと述べられたわけであります、いままでは確かに私も大体あなたと同じ考え方を持っておるのです。持っておるのですが、いままで証券ブームでありましたし、それから低迷状況が続いてきたり何かしたので、どうも首尾一貫しないということは、現状にとらわれるということは、確かにあるわけであります。それから証券業者等の意見も聞こうということでございましたが、答申も出たのでありますから、利はじんぜん日をむなしゅうしていこうという考えではないのであります。うちの事務当局は、時期としてはなかなかたいへんなんでして、免許制という問題に対しても、これは来年やりますとか、二年後からやりますよときょう答弁されたら、大臣困りますよ、とさっき言ったのですが、そういう問題をいつまで延ばしておって、きまりがっくものではないのでありまして、これまでも私自体も、一年半も証券業者には口をすっぱくして言うだけのことを言ったし、聞くだけのことを聞いたわけでありますから、また答申も出たのでありますから、やはり現状にだけ目を奪われないで、ある時期を目してやらなければいかぬという考えです。それでいつかというと、大蔵省設置法が出ておりまして、証券局でもできたらひとつ取り組もう、こう思っておったのです。ところが現在御審議中ということで参っておるわけでございまして、私は証券局を実際一日も早く通してもらえれば、第一の仕事としてこれを具体化しよう。この程度のものができなくて証券局存在の理由もないという考え方を、大臣としては持っておったわけであります。きのうもきょうも私は証券部長を呼んで、いろいろ私の考えを言ったり、事務当局からの話を聞いたりしておるわけでありまして、いつまでもただおるわけではなく、やはり資本金の問題もございますが、いまの二千万というものが一体いいのかどうか。これを一億に引き上げろといっても、これはつぶれますよという議論につながるものですから、三年間に一億になるかという問題は、これは常識問題として考えられるわけであります。銀行法によって銀行がどうして今日育成されたかという事実に徴しても、結論が出るわけでありますから、私は長い時間かけようという考えではございません。そういう意味——しかしこういう証券業界育成強化ということを発言するだけでも、なかなかいま敏感でございまして、悪いほうにだけしかとらない。私は非常に遺憾だと思う。そういう本筋の問題には堂々と取り組んでいく。同時にその瞬間における事態に対しては、臨機応変に処置をしていくということの二本立てでいくべきだという考えでありますので、いつまでもやろうということじゃございませんから、どうぞひとつ設置法のほうもよろしくお願いいたします。
  198. 堀昌雄

    堀委員 そこで、設置法が通ればどうやら踏み切るようなかっこうですから、検討は私は必要だと思います。思いますけれども、いま大臣のおっしゃるように、私案はあなたと一年前にこの問題でやったわけです。そうしてともかくもあのときにすでに免許制に早くやらなければならぬ。——それで一年たったわけです。率直に言って、この調子でいったら十年たってもできないわけですよ。これは少しドラスティックな処理かもしれませんけれども、しかし私は、それによって何か敏感に変なふうに作用するなら、作用するものが悪いのであって、筋をちゃんと通して、ビジョンを明らかに立てて、その方向に向かって協力しないようなものは、私はしかたがないと思うのですよ。そういうものではないと思いますので、ひとつその点は私と同感ということでありますので、お考えを願いたいと思います。  その次に、いましかしそうは言いましても、実は証券人口十万近くあって、現在売買高は東京取引所五千万株程度ですから、これでは実は率直に言って証券業者なかなかたいへんだと思う。そうだからといって、ダウは上がるかというと上がる見通しは私は半年はないと思う。場合によると一年間もないと思う。これは下をささえる共同証券が一応ささえるだけであって、私は率直に言って、これは証券取引法第一条に違反しているのじゃないかという気がしてしかたがない。公正なる価格を形成するということが証券取引法第一条にある。ところが公正なる価格じゃないのですよ。いまはともかく下げてこようと思えば、共同証券が買うというようなことで、ダウ千二百円の下にかんぬきが入っておるというような条件は、これはだれが見たって証券取引法違反です。こういうようなことは、やっぱり私はまずいと思うけれども、いまの段階だからしかたがないかもしれないけれども、そういうことで、一年は率直に言ってまあまあよくはならぬですよ。そうすると私は、証券業者も店舗を縮小したいというものがかなりあるだろうと思う。ところが大蔵省の店舗行政というものはたいへんしちくどいものらしいので、ここに店舗があるが、あそこに移転しようといっても、なかなか移転さしてもらえない。業者の諸君の話を聞くとなかなかたいへんなことらしいですよ。それはいろいろ財務比率に関係することもあるでしょうけれども、私もどうこう言いませんが、店舗を減らしたいというときに、よしや減らしなさい。ただしそれだけあなたのところに保留してとっておいてあげましょう。いま調子の悪いときにどんどん減らすなら減らしなさい。今度調子がよくなったら、その分は黙ってふやしてあげましょうとプール制にしておいて、その程度の弾力をつければ、私はいま合理化というものがちゃんと進んで、彼らとしてもやりやすい条件が出てくると思う。その点について、これはきわめて政治的ですが、よし、あなたの言うように、たな上げしておきましょうという少しはっきりした答弁がほしいわけですよ。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 整理して合理化をはかることは大賛成ですから、どうぞおやりください、こう言っております。どうもそれが業容が大きくなってきて、内容がよくなれば自動的に店舗に認めるのですから、どうも業者はそういうところがまだ進化していないのです。もらったものは既得権である。だからつぶしたらいかぬ。その数は持っていなければならぬ。そういう弾力性のない行政は大蔵省はやっておらないのです。必要があれば幾らでも差し上げます、こう言っておるのであります。ただ店舗ばかりりっぱなものをつくって、そうして誇大広告と同じような立場で大衆を引きつけることはよろしくないんだ、銀行の店舗そのものも簡易店舗にしなさいということで、もうほとんど無制限というくらい法律で大蔵大臣が認可をするということになっておりますが、ほとんど業者の要求どおりに出しておるというような状態でありまして、何か証券業者が、いまつぶしたらそれをたなの上に置いておかないといつでも使えないという考え自体がもうまずいのです。ほんとうに支店をどんどんふやせるような状況であるなら幾らでも差し上げるということを私が言っておるのですから、いやしくも国務大臣が公式の席上そう言っているのですから、少し信用してもらいたい。こういうことで、あなたのところにいろんなことが入っておるかもわかりませんが、大蔵省はそういうつぶしたらもうつくらせぬというような狭義なものの考え方は持っておりません。必要があれば幾らでも許します。こういうことですから、どうぞ合理化を進めていただきたい、こういう考えでございます。
  200. 堀昌雄

    堀委員 私はここで実は大臣なり部長なりと論議しておりますと、非常に話はわかっておるわけですよ。ところが末端から返ってくるやつは、先生話しているようなことはないですね、こういうのが常に返ってくるわけです。やはりそこに多少疑心暗鬼といいますか、やはり信頼感の問題というものが私はいまの行政の中に率直に言ってあると思うのです。だから、そういうものがあるから、そうは言われても、やはりここをつぶしてしまうと次に出すときにはまたたいへんだという抵抗がなければ彼らだって思わない。歴史的に見て抵抗があったのです。これは銀行だって、私はだいぶ経験していますから、銀行でも、相互銀行でも、信用金庫でも、これまでの店舗行政も非常に締めてやっておる。だからそういうことは、私はちょっと聞いたからやっているのじゃなくて、実際には過去の経緯があるわけですよ。だから、その点は私はたな上げしておいてやったってちっともかまわないと思うのですよ。必要でなければ彼らだってやらないわけだから、だからその点はたな上げでよろしい。ともかく減らすことについては、そう将来のことを不安なくやる方法ですから、だからそのことは私はたな上げをするということを言ったところで、どうせ必要があればあなたのほうは認めるというなら同じだから、表現の方法の差にすぎないから、それなら疑心暗鬼を取り除くような方法考えておいてもらったほうがいいんじゃないか、前向きじゃないかと思うのですが、どうぞひとつ……。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 業務の合理化のために店舗をつぶしたというような場合は最も優先的に考えるということは、お答えできると思います。それがたな上げだということであるなら、そういう方法考えてもけっこうだと思います。
  202. 堀昌雄

    堀委員 その次に、きょうはちょっと通産省と農林省にも来てもらっておるわけですけれども、御承知のように信用取引を含めて株が低迷をしてきましたし、二部市場が一時は非常に株数が少ないものですから、やや投機的な市場のようなかっこうになっておったときは、ある資金というのは、ここの株式市場にかなりあった。ところがここが低迷をしてきて、どうもうまくないというので、いまは商品取引のほうに、私はホット・マネーみたいなものだと思うのですが、そのホット・マネーがいま相当いっておるわけですね。ところが商品取引の様子を私少し調べてみますと、どうも証券関係のものに比べると、まことにここはルーズになっていますね、率直に言って。そのうちに農林大臣、通産大臣に並んで一ぺん来ていただいて——やはりこういう清算取引が片方にあり、そこへ持ってきて、規定によりますと、売買証拠金は株が代用に入ることになっているわけです、率直に言いますと。私はこういう問題は、これまでおそらく論議をされたことはないんだと思いますが、ともかくも何も株のほうをどんどん投機的にしろというのじゃなくて、あまりそういう投機的なことがあるために私どもテレビで「赤いダイヤ」なんていうのを見せてもらって、ははあアズキの商品取引というのはこういうこともあるのかなと思ったのですが、しかし現実にはこれまでアズキについては、ホクレンの組織のないような時代にはある特定の業者が大量に取引をしながら、自分で相場をある程度動かし狩る条件があったわけです。そういうことで非常にもうけておる事実があるわけです。そうなってくると、これは非常に問題がある。だから、ひとつ清算取引、商品取引の問題は、証券の問題を含めて、少なくとも相バランスをとった状態考えるような方向で政府は一ぺん検討する必要があるのではないかということが第一点。  第二点は、その証拠金は、倉荷証券はいいと思うのですよ。これは現物ですから。倉荷証券または現金に限ることとして、証券代用はこれを認めぬことにすると、私はこれはかなり現実的な問題になる、こういうふうに判断をいたしますが、これは大蔵大臣がいまよその所管のことまで言えないと思いますから、まず先に通産省のほうで、いまの私の意見、それに対してどういう考えがあるか、一ぺん答えてください。
  203. 島田喜仁

    ○島田政府委員 御承知のように、商品取引につきましては、商品取引所法に基づきまして運営をされておるわけでございます。仲買い人も登録制になっておりますし、外務員も登録制になっております。ただ、ただいまのお話しの、取引をするにあたりまして売買証拠金というのがございますが、この売買証拠金は法律上現金その他有価証券でよろしいということに実はなっております。元来、証拠金は売買証拠金のほかに委託証拠金がございますが、法律のたてまえからいいますと、委託証拠金などは、はっきり書いてございますが、担保として委託者から委託を受けるということになっております。売買証拠金のほうは、担保であるかないかという点ははっきりいたしておりませんが、やはり担保という考え方がまず前提になっておりまして、ただいまの過当投機というような問題はむしろ従的に考えておったのではなかろうかと思います。ただ、たとえば委託証拠金につきましても、本証拠金でございますとか定時増し証拠金等につきましては、これはまだ相場が平静にあれしている場合、普通の取引の場合でございますが、ただ臨時増し証拠金とか追い証拠金というものがございますが、これは私どもといたしましては、担保のほかに、やはりただいま先生のお話しのございました、取引所の相場というものが適正な価格が形式されまして、そしてその商品についての生産並びに流通が円滑に行なわれるという、そういう趣旨に基づきまして、運用といたしましてはそういう場合にはそういうものをとりまして、場合によりますとそれをさらに増額いたしまして、本来の趣旨に合うような運営をいたしておるわけでございます。ただ、ただいま申し上げました担保ということになりますと、御承知のように現金のほかに株券その他の有価証券も担保の能力を持っておるわけでございますので、私はそういう意味では当然有価証券も担保として売買証拠金なりあるいは委託証拠金として授受することが当然であると思います。ただ、それだけではなかなか過当投機が防げないという問題になりますと、売買証拠金はただいま法律ではとることになっておりますので、法律を改正しない限りは有価証券はいかぬということには相ならぬと思います。ただ、ただいまの申し上げました、前の委託証拠金につきましては、実は法律ではっきり書いてございませんので、そこには多少問題は残っておると私は思います。したがいまして、特に委託証拠金、委託者から仲買い人が委託を受ける等の場合につきましては、ただいまお話しの、今後商品取引所が過当投機、本来の目的を逸脱して過当投機をする、あるいは不当な価格を形成するというような場合におきます抑制方策といたしまして、検討はいたしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  204. 堀昌雄

    堀委員 大臣、ひとつこの問題は閣議で一ぺん提案をしていただいて、これはやはり商取法の改正等の問題を含んでくると思います。商取法第七十九条に「売買証拠金は」云々ということで、いま企業局長の御答弁になったようなことが書かれておるわけです。だから全部担保が証券であってはいかぬというのじゃないのですけれども証券だけなら、いま実際にはかなりあるわけですね。だからそれをやはり現金をもって増し担保をとるなり、何かそういう形になってきたときの措置というものがもう少しとられていないと、それがホット・マネーのかっこうであっちこっちに動き回ってそして事実はこれは資力のある者が勝つのですよ。つまり金のある者、場合によっては倉庫を持っているような業者がこれをやれば、過去においてもこれはたいへんなことになっておるわけです。そういうことは片面に善良な被害者も出てくるわけです。このごろのように、株はもうだめだ、まあひとつ現物にいらっしゃい、商品市場にいらっしゃい、清算にいらっしゃいというようなことで宣伝をして、そういうかっこうになってくることは善意のある人たちも被害を受けることになりますから、そこらについては閣議でもひとつ過当な投機にわたらないように——アメリカの農商務省はCEAという制度を持って、かなりこの面については厳重な取り締まりをしているようですが、どうも日本の状態は必ずしもそういう点に十分な目が届いていない。特に清算取引については問題があるという感じがいたしますので、その点はひとつ要望いたしておきます。  最後に、時間がありませんので、もう一問だけ伺っておきたいのは、実は本日午前中に第二部市場の問題で、上場してすぐ手をあげた高森産業の事件、それから一昨年私はここで取り上げて日本不動産の問題等は少し議論をいたしました。この上場の問題について一つ私は疑問がありますのは、いずれも公認会計士の監査報告が出ている会社なんです。そうすると公認会計士が適正だと認めたものは一体何を適正だと認めたのかという問題が出てくるわけです。ただ表に出された書類だけをさっと見て、その書類のバランス・シートはちゃんと合っています、このあれはどうですということで適正だというようなことで公認会計士の仕事が済むなんということなら、私はもうあまり公認会計士制度なんと言って大騒ぎをするような問題じゃないのじゃないかと思う。あのむずかしい試験をやって公認会計士の制度を置き、監査報告をやらせる以上は、少なくとも会社の実態と粉飾された決算との間の問題がてんでわからぬような程度のことでは、私は公認会計士制度なんというものは安心のできぬものだという感じがしてしょうがない。だからこの点は実はきょう経済局長にちょっと聞いたところが、日本不動産の問題は、その後公認会計士を追加をしていろいろ調査をしているけれども、まだ結論が出ない——冗談じゃないですよ。私は去年の六月に議論をして、さっそくに調査をして報告をいたしますというのに、一年たって今日まだ調査中なんという公認会計士の制度なら、なくてもいいじゃないかと私は思うのです。公認会計士制度の法律も出てくると思うのですが、もう公認会計士の問題というのは姿勢を正されるようにしてもらわないと、何のための監査制度かちっともわからぬと思うのですが、大蔵大臣これはどうでしょうか。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうことをひとつ当委員会で御審議をいただくということでございます。あなたも大体実情を知っておっての御発言のようでございますから、なかなか適切に私も表現することがむずかしいと思います。実際にはこの高森産業につきましては、三十八年の十二月に証券取引所に上場されて、三十九年の一月三十一日に増資を行なったわけです。それから二、三カ月たって破綻してしまった、こういうことであります。この公認会計士の監査証明は、書類によりますと三十八年七月決算期に対するものであって、七月決算期までの営業成績は適正に表示しておる、こう書いてあります。しかしこれはあなたが公認会計士法の審議をされ、また税理士法や計理士法でいろいろな問題があって、長いことかかって御審議を願ったわけでありますが、実際、新商法で監査役の地位を非常に低めた、これはなくてもいいが、しかし公認会計士は法律的に絶対必要だ、この会計監査が法律上有効である、こういうふうに認めておる現状を見ますときに、一体これでいいのかということは議論として当然起こるわけであります。実際問題として私はこの間一つの会社の状況を個人的に検討してみたのですが、約六千種類も営業品目がある。従業員は一万人ないし下請が二万軒もある。こういう実際動いておるものを事実在庫たなおろしをして適正に監査ができるのかという問題に対して、私もどうあればいいかという問題にぶつかったわけでありますが、こういう問題が起きますと、公認会計士制度そのものに対しての議論にも波及するわけであります。でありますから、公認会計士というものは、会計検査院と行政府のように、まさに独立した権能を与えておるけでありますから、大衆資本を集めておる、それによって運営せられておる一定規模以上の——一億円以上でありますが、御承知のとおりその決算は公開をすることになっておりますし、同時に公認会計士の監査が法律上要求をせられておるのでありますから、やはり適正な監査をしてもらわなければいかぬということ、情実等があってはならないということは、これはもう当然のことだと思います。実際膨大なもので、まあわからぬということもありますが、この程度のものがわからぬということは、とてもこれは弁解になりません。大蔵省はどうしてそんなものを認めたのだということになれば、これは違法はないようにここにちゃんと答弁はできますが、しかしそれで解決はできるわけではないのでありまして、やはり制度のほうで十分御審議をいただいて前向きの結論を出すべきだろうと思います。
  206. 堀昌雄

    堀委員 実は日本で世銀借款を受けております会社はアメリカの公認会計士が来て監査をするわけです。これはアメリカの公認会計士が来ますと、アメリカの連中はともかく何百万円、何千万円の費用をとって、たくさんの人間を使って、いまおっしゃったようなことをやっておるわけです。日本の場合は公認会計士のほうもだらしがないと思うのです。とるべき報酬もようとらないでおいて、不十分なことをやって、それで被害はだれが受けるかといったら、率直に言って投資家が受けるわけです。だからその問題は、公認会計士のほうの問題でありますけれども、これはアメリカの公認会計士制度を持ってこられてこういう制度ができているが、向こうは責任をとってきちんとやっているわけですよ。とるべきものはきちんととって、そのかわり大衆に対して責任をとっている。日本の公認会計士はこれは一体何だろうか、まあ計理士でいいんじゃないかというようになりかねないですよ。これは午前中にちょっと論議をしましたけれども、その前の三十七年一月の決算で一割二分の配当をしている。七月決算が二割四分になっている。しかしその間に増資がある。だから実際には配当を倍にしたいというのじゃなくて四倍にしているわけですよ。倍額増資をしているから。そんなことをやっておいて今度の一月決算でも利益があるといって実は五千万円の黒字を出しているわけです。ところがこの問題が起きて調べてみたら、一億二千万円の水増しがあって、実際は七千万円の赤字だというのですね。三十七年の七月決算では、二割四分というような、四倍にしても配当がやれるようなものを出しておきながら、それが六カ月先には七千万円の赤字が出たりする、無配に転落するようなものを適正だという。このことの議論はいろいろあるでしょうが、私はこんなことでは監査なんというのは何のためにやっているかといわざるを得ないと思います。この問題だけではありません。そうして日本不動産の問題だって、去年の六月に私が問題を提起しても、まだ監査報告がもたもたして十分に出ないということでは、これは制度自体をともかく少し考え直さなければならぬというくらいに私は感じておりますので、大蔵省側におきましてもひとつ十分姿勢を正して、証券取引法がいうところの大衆投資家を正確に保護するということを具体的にやっていただかないと、これも証券界低迷させる大きな一つの条件になっておるわけですから、そこらはひとつ十分姿勢を正してもらいたいということを要望して、時間がありませんので本日はこれで終わります。
  207. 山中貞則

    山中委員長 次会は、明九日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会