運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-02 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       伊東 正義君    岩動 道行君       宇都宮徳馬君    大泉 寛三君       奧野 誠亮君    木村 剛輔君       小山 省二君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    渡辺美智雄君       小松  幹君    田中 武夫君       平林  剛君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (為替局長)  渡邊  誠君  委員外出席者         通商産業事務官         (中小企業庁計         画部長)    井上  亮君         国民金融公庫副         総裁      酒井 俊彦君         中小企業金融公         庫総裁     舟山 正吉君         中小企業金融公         庫理事     馬場 靖文君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  井上  薫君         参  考  人         (全国相互銀行         協会会長)   東 令三郎君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 四月一日  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一五〇  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月一日  農地の細分化防止のための贈与税廃止に関する  陳情書(  第三〇五号)  砂糖消費税及び関税の引き下げ等に関する陳情  書  (第三〇七号)  揮発油税等増徴反対に関する陳情書  (第三  三七号)  同  (第三三八  号)  同  (第三三九号)  同  (第三四〇号)  同  (第三四一  号)  同  (第三四二号)  同  (第三四三号)  同  (第三四四号)  同  (第三四五号)  同  (第三四六  号)  同  (第三四七  号)  同  (第三四八  号)  同  (第三四九号)  同外一件  (第三五〇  号)  同  (第三五一号)  同  (第三九七号)  同  (第三九八号)  同  (第三九九号)  同  (第四〇〇号)  税理士法改正反対に関する陳情書  (第四二四号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一五〇  号)  金融に関する件(歩積・両建問題等)      ――――◇―――――
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は参考人として井上全国銀行協会連合会会長及び東全国相互銀行協会会長がそれぞれ出席されております。両参考人には御多用中のところ御出席をいただきありがとうございます。  御承知のように、歩積み、両建ての問題は、現在政府をはじめ、各金融機関においてその是正につとめておられることも承っておりますが、なおその自粛措置につきましては、種々議論のあるところであります。本委員会といたしましては、現下の金融情勢にかんがみ、本問題についてすみやかにその是正をはかるため、慎重かつ熱心なる議論を重ねてまいったのでありますが、本日、両会長より御意見を伺うことは、本委員会調査に多大の参考になるものと存じます。両会長におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  それでは両参考人より、本問題についてそれぞれ御意見を述べていただき、その後に質疑を行なうことといたします。  ではまず井上会長にお願いをいたします。(拍手
  3. 井上亮

    井上参考人 私、全国銀行協会連合会会長井上でございます。  歩積み、両建て預金の問題につきましては、皆さま御承知のとおり、以前から大蔵省の通達や臨店検査によりまして行政指導を受けるとともに、われわれ自分でこれを自粛するということにつとめてまいったのでございます。昨年三月には全銀協といたしまして、自粛措置を新に定めるとともに、これが励行につとめてまいってきたのでございます。私どもといたしましては、取引上必要な債務者預金あるいは担保として必要な拘束性預金以上に、お取引先に強制してよけいな御負担をかけるというようなことがないように注意をしてまいっておりましたが、数多い取引先、これは貸し出し口数で申しますと、全国銀行でおおむね八百五十五万口ほどございます。これくらいの数になります貸し出し先のことでございますから、中には必ずしも自粛趣旨に沿はない取り扱いもあり、あるいは不当なものもあったかとも存じます。  そこで銀行協会といたしましては、昨年の十二月にあらためてこれから申し上げます三つ措置をきめた次第でございます。  その一つは、これまでの自粛措置、これは従来ずっとやっておりました歩積み、両建てについての自粛措置をわかりやすく書き直しまして、いままではなかなかわかりにくい点もあったのでございますが、これをできるだけわかりやすく書き直しまして、各銀行の支店の末端まで徹底させるようにいたしたことでございます。歩積み、両建てという事柄の性質上、自粛措置を文章にいたしますと、どうしても非常に複雑なものになるのでありまして、これをできるだけわかりやすくいたしまして、過当なものは預金貸し付けを相殺してこれをくずしてしまう。あるいは不当に拘束しているものは拘束を解きなさい。これらの措置のとれないものについては、手形貸し付け金利を下げる。金利を一銭六厘ないし小口のものについては一銭七厘、こういうところに押えてもらいたい。それから手形割引については拘束預金に見合う部分割引金利を、約定金利より三厘以上引き下げてもらいたいというふうにいたしまして、各銀行窓口の第一線で忙しく取引先と応待する係員にも理解してもらって、実効をあげていこうというふうに考えて、その措置をとったのでございます。  第二には、自粛措置を補完する意味におきまして、取引先が過当な歩積み、両建てについて苦情があります場合、いろいろ不平があります場合に、これを取り上げて解決していこうという趣旨から、苦情相談所を設けることにいたしまして、全国各県にございます。十一の銀行協会に、この窓口をつくりまして、また全国銀行協会の中に苦情処理委員会を設けまして、これは先月から取り扱いを始めたわけでございます。まだその後日も浅いために、一般にPRが行き渡っておりませんために、現在までのところ銀行関係ではわずか一件でありますが、これは話し合って解決しておるのでございますけれども、なおそのほかの金融機関関係するものが四件ほど相談がございましたが、それぞれの協会にお回しして処理を願っておる次第でございます。  第三には大蔵省指導もありまして、個々に過当な歩積み、両建て自粛するほかに、全体として大きな網をかぶせて、過当なものをなくしていく方法といたしまして、いろいろ相談の結果、債務者預金のうちに占める拘束預金比率銀行でお預かりしております債務者からの預金と、そのうちに占める銀行拘束しております預金比率を出しまして、これを昨年の十一月末を基準として、この比率――その当時の銀行全体での比率は二四・四%になっておりますが、これを毎半年ごと調査をいたしまして、向こう二カ年間にこれを頭から二割を減らしていこうということをきめたのでございます。拘束性預金比率規制方式としていま申し上げたことをやっております。これも過当な歩積み、両建て預金自粛していく一つ方法になろうかと考えておるのであります。  以上のように、大体三つ措置をきめまして、各銀行とも従来に増してさらに前向きに過当な歩積み、両建て預金をなくしていこうということにせっかく努力しておるところでございます。  すでに十分御承知でございましょうから、申し上げるまでもございませんが、預貸金業務の双方を取り扱っております民間金融機関といたしましては、債務者からも預金をしていただくことや、債権確保のために担保として預金拘束するということも、これは業務性質上あり得るわけでございますが、私どもといたしましては、商習慣限度を越えるとか、担保として常識を越えて多く拘束して、金利の上でも不当に取引先に御迷惑をかけるというふうな部分がありますれば、こういうものをなくすることには決してやぶさかではないのでありまして、今後とも十分に自粛して、その実をあげてまいりたいと存じております。  なお、公正取引委員会からもいろいろと御質問やら御注文がございまして、目下銀行取引実情等について、公取のほうに御説明を申し上げているところでございますが、毎日変化をする取引先預金とか貸し金を通じての取引関係には、それぞれ事情もありますので、一律的な基準処理をされるということは困る。そういうことがないようにという御配慮をお願いしておる次第でございます。  なお、先般公定歩合が、輸出関係手形を除きまして日歩二厘引き上げられたので、これに伴いまして銀行といたしましても、輸出関係を除いて、市中貸し出し自主規制金利最高限度日歩二厘引き上げることといたしましたが、中小企業金融につきましては、現段階におけるその重要性にかんがみまして、円滑な疎通をはかるため、金利及び資金量の両面にわたって格別の配慮を加えていくことといたしております。すなわち、資金量の面につきましては、全国銀行貸し出し総額中に占める中小企業向け融資割合を、現在より低下させないというふうに努力をしてまいりたいと思っておりますし、金利の面につきましては必ずしも一律一斉に二厘引き上げることをしないで、貸し出し先状況に応じて弾力的に取り扱うよう十分配慮をするとともに、歩積み、両建て預金自粛措置徹底化をはかりまして、この面から実質金利の上昇することのないようにつとめていきたいと考えております。この点もあわせて御了承いただきたいと考えております。  以上で私の説明を一応終わらしていただきたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 山中貞則

    山中委員長 次に東会長にお願いいたします。
  5. 東令三郎

    東参考人 相互銀行協会会長の東でございます。  平素は諸先生方に、相互銀行指導、発展について、一方ならぬお力添えを願っておることをこの機会に厚く御礼を申し上げます。せっかくの機会でありますので、まず相互銀行現況、並びに当面の諸問題の幾つかについて、ごくかいつまんで申し上げさせていただきたいと思います。  相互銀行現況については、お手元に差し上げてあります資料によって大要をおわかりいただけるものと思いますが、この二月末現在で相互銀行も、全七十二行の資金量が二兆三千七百十億円、融資量が二兆百八億円という規模に達しましたのでありますが、このため金融界における地位も著しく向上いたしまして、幸い日本銀行の取り引きも逐年増加してまいっておるような次第であります。また地方自治団体やその他の公共的機関との接触も非常に深まりつつあるような状態であります。また御承知のとおり、昨年四月以降、一部の相互銀行準備預金制度の適用を受けるような状態になりました。  業務内容について簡単に申し上げますと、資金吸収面では、御承知のとおり、大衆貯蓄性預金が主体となっております。また融資面では、貸し出し金のうち期間一カ年以上のものと、本来長期金融に利用されております給付金をあわせますと、総融資中に占める割合は、その一年以上のものの長期貸し出しが、全体の三四%六にのぼっております。質的には長期資金としての融資高が非常に高いことが明らかでありますが、これが現在相互銀行のいわゆる特徴であります。  業種別融資状況では、一時とかく批判されましたサービス業に対する貸し出しは、非常に逓減してまいりました。製造業など、いわゆる第二次産業に対する金融の比重が非常に高まっておることであります。ただ、最近における相互銀行資金量伸び率が総体的に見ますと非常に逓減してまいっております。  後に申し上げたいと思いますが、この資金量伸び率の逓減ということについては、いろいろな理由もありますが、最近相互銀行体質改善ということのための、いろいろな措置強化してまいっております。こういうような事情が非常に影響しておると私は考えております。また経費切り詰めによりまして、資金コスト引き下げ努力しておりますが、やはり貸し出し金利引き下げなどによりまして、運用資産利回り低下が、非常に大きく最近は響いてまいりました。したがって収益力もかなり低下してきておる状態であります。  次に、当面の諸問題でありますが、いよいよ開放経済に入りまして、わけても中小企業近代化合理化による二重構造の是正競争力強化ということが焦眉の急務でありますおりから、これらに対する政府の諸施策に呼応しまして、私ども中小企業金融を円滑に果たし得るよう、そのため体質改善を急いでおります。その第一は、経営長期計画を立てまして、コストダウンをはかることでありますが、これは昭和三十八年四月に立てました三カ年の長期計画でありまして、年ごとに更新いたしていくものでありますが、この計画ではまず経費率引き下げ、また経常収支の安定、融資利回り引き下げ支払い準備充実自己資本内部保留充実ということを柱としています。これらの柱については、具体的に指標を設けまして、その達成に努力しておる状態であります。  第二に長期計画上の柱としての融資金利引き下げでありますが、貸し出し金利は昨年一月引き下げ申し合わせまして、その徹底をはかっております。大体相互銀行金利は、景気変動関係なく、昭和三十年以来一貫して引き下げてまいっております。もちろん今回の公定歩合の引き上げに際しましても、中小企業向け金利を上げるようなことはいたさないことにいたしております。一そう今後も金利引き下げをはかりまして、一般市中金利とのさやを縮めるために努力を続けてまいりたいと思います。  次に、相互掛け金契約に基づく給付金金利についても、昨年四月以降の新規の契約分については、全部金利計算残債方式に切りかえておる次第であります。さらに実質金利引き下げでありますが、これはさしあたって昨年四月歩積み、両建て預金自粛についてあらためて申し合わせを行なう一方、これを徹底させるため毎期末その報告各行から徴取することにいたしております。参考までに数字を申し上げますと、第一回の報告、すなわち昭和三十八年の五月末では一般預金が一兆八千八百四十三億円のうちで拘束預金は七千二百四十三億円でありました。一般預金に対する比率は三八・四%で、そのうち自粛措置でいいます自粛対象とされるものは千三百四十六億円であります。これは一般預金に対して七・一%にあたるわけでありますが、なおこの拘束預金中に占める自粛対象預金、すなわち当然自粛せられなければならない預金は一八・六%であります。これが三十八年九月末には一般預金が二兆七百十億円、そのうち拘束預金は七千七百六十億円であります。その一般預金に対する比率は三七・五%と相なります。その拘束預金七千七百六十億円のうち自粛対象とされる分は九百九十七億円でありまして、一般預金に対する自粛預金比率は四・八%となっております。またその拘束預金に占める自粛預金比率は一二・八%になっております。したがいまして、一般預金増加に応じて拘束預金の額もややふえてまいりましたが、構成比からみますと大体この半年のうちに一般預金に対する拘束預金割合は約一%、また自粛対象預金は二・三%低下しております。自粛対象とせられる預金は実際額においても減少しておりますが、これは各行ともできるだけこれを早期に解消するよう、協会といたしましても指導してまいっておるからであります。  第三は債務者預金率引き下げでありますが、これは債務者預金によるいたずらな業容拡大ということを大いに自粛しまして、本源的である預金、すなわち純預金増強によって資金の質を是正して、経営内容向上をはかることを主眼とするものでありますが、これに合わせてただいま申し上げました拘束預金の解決にも間接的に役立てていこうという趣旨のものでありまして、要するに債務者預金率引き下げということは、純預金増強によりまして体質改善を前向きに積極的にはかっていこうという点にあるわけでありまして、それとともにあわせていわゆる歩積み、両建てをも解決していこうという趣旨のものであります。具体的な申し合わせ内容は、三十八年九月末の債務者預金率が三〇%を超過する銀行は、今後二カ年にその超過分の三割相当分引き下げていくということになっておりますが、三十八年九月末の定期性預金のうちの債務者預金は八千四百九十三億円で一般預金の四一%を占めております。この定期性預金比率が高いということも、これは相互銀行特異性とも申されるわけでありますが、各行ともこの申し合わせに従いまして毎期低減するよう計画しております。  次に、第四として資金運用の問題でありますが、これは預貸率の適正化をはかって資金のポジションの改善につとめてまいっております。そうして預貸率の改善によりましてそこに自然に生まれる余裕資金は今後公共的な要請にこたえるため、できるだけ有価証券に振り向けることとなっております。この点につきましては昭和三十七年の九月以降、毎月の増加資金量一定割合有価証券消化に充てるということに申し合わせておるわけであります。また三十八年度以降は政府保証債消化に協力いたしております。三十八年度は五十億円実行し、三十九年度は六十五億円を予定しておる次第であります。  相互銀行は以上申し上げましたような線に沿いまして経営力向上につとめておりますが、さらに本年度におきましては長期経営計画に基づきました体質改善を推進するとともに、取引先に対するサービス向上をはかること、政府中小企業振興助成施策に積極的に協力すること、並びに中小企業近代化促進に資するために経営指導相談に応じるような体制の強化をはかることなどを大体経営基本方針として努力いたしたい所存であります。  以上、少し長くなりましたが、近況並びに当面の問題について一応御説明申し上げた次第であります。     ―――――――――――――
  6. 山中貞則

    山中委員長 続いて質疑を行ないますが、質疑慣例どおり参考人に対して主として行ないますが、質問者の便宜上出席者を申し上げますと、纐纈大蔵政務次官高橋銀行局長井上中小企業庁計画部長竹中公正取引委員会事務局長酒井国民金融公庫総裁舟山中小企業金融公庫総裁並びに馬場中小企業金融公庫理事の諸君も参っておられます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    堀委員 ただいま銀行協会並びに相互銀行協会のほうから、最近の歩積み、両建て中心としての金融情勢について御報告がございました。そこで本日は、主としてこの問題にしぼってお尋ねをしたいと思います。  銀行相互銀行につきましては、一律に論議をいたします点には、いささかそのパターンが違うと申しますか、中小企業金融の面におきますいろいろな性格の相違がございますので、個々に分けてお伺いをいたしたいと思います。  最初に、銀行協会のほうにお伺いをいたしますけれども、実は最近の中小企業向け金融が、中小企業庁が出しております年次報告によりますと、中小企業向け金融貸し出し割合がだんだんと下がってまいっております。昭和三十年には、全国銀行では大体三六・三%くらいでございましたものが、三十七年度の終わりには大体二七・三%くらいに、都市銀行だけでこれを見ますならば、三十一年度の末に三一・二%であったものが、三十七年度末には二〇・五%まで実は低下をいたしておるわけでございます。このことは同時に運転資金等貸し出し状態におきましても、低下をいたしてまいっておるわけでございますが、中小企業向け金融がこのように全国銀行の全体のワクの中で低下をしてまいりました主たる理由は一体どういうわけでございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  8. 井上亮

    井上参考人 いまの堀先生お話のように、確かに数字で見ますと、全国銀行中小企業向け融資比率低下していることは、いなめないと思います。ただこれは、中小企業というカテゴリーに入ります企業が、経済全体が変化しておりますために、漸次規模も大きくなる、あるいは貨幣価値が変わってくるというふうなことで、いままで統計にとっておりました限度は、たしか資本金千万円以下ということを基準としておるわけでございますけれども、この千万円で、貨幣価値も変わりない、あるいは経済も成長しないということでしたら、あるいはそういう統計でよろしいと思いますけれども、ほんとうならば千万円が二千万円になり、あるいは三千万円になる。そこに中小企業の限界を設けなければならぬということになると思うのでありますけれども統計はそういうことをいたしませんために、中小企業であっても、漸次非常に大きくなってまいりまして、あるいは中堅企業になるものもございます。また貨幣価値自体が変わっております。そういうことで、統計上はいまお話のように金融比率は下がっておりますけれども、いま申し上げたようなまわりの情勢変化によって統計数字が下がっていくということになると思うのであります。  それで去年中小企業基本法ができまして、この統計限度を五千万円に上げましたが、政府のほうもいろいろの情勢変化によって資本金限度を五千万円以下を中小企業とするというふうに法律も変えられておるわけであります。その五千万円という限度でとってまいりますと、最初に千万円でとった統計と、比率はほぼ合っております。大体三二、三%になりますが、その程度を保っておるわけでございます。そういうふうに御了承いただきたいと思っております。
  9. 堀昌雄

    堀委員 この間中小企業金融の問題というのは、相互銀行等中小企業専門機関が非常に大きくなっておりますので、その点は相当補完をされておると思いますけれども、この歩積み、両建ての問題というのは、大企業にはあまり行なわれていないのではないか。やはりどうしても担保性の問題というものがこの歩積み、両建て中心になるということになりますと、企業信用性と申しますか、そういうものの程度は大企業のほうに高く、中小企業のほうに弱いということになりますから、必然的にこの問題は、中小企業、特にいまお話しの三十七年までは一千万円以下ということで中小企業を考えておりまして、いま五千万円までになりましたけれども、問題としてはやはり大体一千万円以下のほうに問題が多いのではないか、こういうふうに考えます。  先ほど債務者預金拘束預金との比率が大体二四・四%というふうなお話もございましたけれども、この拘束預金というものが、もちろん全体としてあるわけでございましょうけれども、どちらかといえば、やはり下のほうに多いのではないかという感じがいたしますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  10. 井上亮

    井上参考人 確かに仰せのように、私ども歩積み、両建てをよんどころない、必要ありと考えておるわけでございますけれども、そのうちで歩積みと申しますのは、御承知のとおり、割引をしたつどでありますとか、貸し金をしたつど、二、三%あるいはその前後をとっております。これはむしろ債務者の信用補完のほかに、債務者としても少しずつは内部蓄積をしていきたいという気持ちもありますので、慣習になっておるわけであります。こういうものはもちろん大企業にはございませんから、歩積みというのはおっしゃるとおり小企業あるいは中企業くらいにほとんど限られておると言ってもよろしいと思います。両建て預金のほうになりますと、これはむしろ資産内部留保を厚くしていこうというほかに、やはり信用補完という線から出ておりますために、これもやはり中小企業には多いかと思いますけれども、しかし、大企業にいたしましても、御承知のとおり最近世銀あたりでもそういうことを言っておりますが、企業体質改善といいますか、結局流動比率を高めるということは戦後特に各企業においては必要なことでございますので――流動比率といいますのは、御承知のとおりに流動負債に対して流動資産がどのくらいあるかということを始終見ております。これは会計学上も当然のことで、この流動比率が高いほうが企業の健全性が保てる、こういうことでございますので、そういう意味から申しますと、やはり流動資産をできるだけ多くしていこうということは、企業のほうの経営上の要請になっておりますために、一方に債務があって、短期債務、これは流動負債でございますけれども、それに対して短期資産、いわゆる売り掛け金もございましょうけれども、やはり銀行預金の形において資産を保留しておくということは必要でございますので、そういう流動性向上という意味からも、これは小企業に限らず大企業においても努力しておるわけでございまして、歩積みについては、繰り返して申し上げますけれども、小企業においてかなり負担が多い。しかし、歩積み全体というものは、これも統計がございますけれども、非常に少のうございます。拘束預金の中でも歩積みの金額というものは、一〇%以下、四、五%になりますか、非常に少ない数字になっております。大部分が両建て預金ということになっております。これもどちらかと言えば、信用補完という意味においてとります場合は中小企業に確かに多うございます。しかし大企業においても相当な額に達しておることは申すまでもないと思います。
  11. 堀昌雄

    堀委員 ただいまの御報告の中で、相互銀行のほうでは自粛対象と思われる拘束預金の金額あるいは割合等のお話がございましたけれども全国銀行のほうでは、ただいまの自粛対象となる拘束預金とそれから拘束預金全体、パーセンテージは三十八年十一月末で伺いましたが、実額で承れますか。
  12. 井上亮

    井上参考人 債務者預金昭和三十八年十一月末で全国銀行で七兆一千五百五十二億二千六百万円、それから拘束性預金が一兆七千四百六十三億九千三百万円、それから拘束性預金債務者預金比率が二四・四%、これは先ほど申し上げました。自粛対象になりますのが、去年の十一月末で六百八十二億九千八百万円ということでございます。比率を申し上げますと、債務者預金に対する自粛対象になりますのがちょうど一%になります。拘束性預金に対する自粛対象になります預金比率は三・九%、そんなことになるかと思います。
  13. 堀昌雄

    堀委員 そこで今度は相互銀行のほうにお伺いをいたします。  相互銀行はこれまでの相互銀行の形態の発展の沿革からいたしましても、債務者預金が相当大きいであろうというふうに私たちも想像いたします。そこで、この債務者預金をいま三〇%を上回るものにつきまして、二年間に三割をひとつ減らそうということで自粛措置をおきめになっておるようでありますけれども、私ども歩積み、両建ての問題を考えております上では、実はその債務者預金比率が下がるということは、銀行経営にとっては当然非常にいいことだと思うのでありますけれども、そのことと歩積み、両建てによる不当なる部分が減るということとは、間接には関係あると私思いますけれども、直接にはこれはつながっていないように感じるわけでございます。  そこで、ただいま御報告のございました九百九十七億円とお考えになっております自粛対象のこれらの拘束預金、これが今後皆さんのお骨折りによって、どういう形で解消されるのかということが、実は私どもにとりましては一番大きな関心事でございます。そこで、これはいろいろと歩積み、両建てが行なわれております中には、これまで私ども委員会におきましていろいろ議論をいたしてまいりましたようないろいろな問題点があることはよく承知しておりますけれども、一応いろいろな論議の末に自粛対象として、皆さん方のほうで自発的にお考えになった金額でありますから、一応これだけがなくなることが、当面私たちとしては望ましい姿であるというふうに考えざるを得ません。この金額はもちろんいろいろな補完的な方法がなければ、そう簡単には減らないと思いますけれども、いろいろな補完的な方法をこれから政府あるいは日本銀行その他で検討していただくという前提を含めまして、一体どの程度の期間があればこれをなくすることができるのか。これはいま私非常に複雑なお伺いをいたしておりますれけども、ただ私どもは、不当だと思われる拘束預金を、一日も早くなくしてもらいたいという言い方では、実は自私身はちょっと満足できないわけでありまして、ともかく一年なら一年、二年なら二年というめどを置いて、ひとつこの不当だと思われる拘束預金をなくしましょう。しかしそれをなくするためには、こういうことをやってもらわなければ銀行側としてもこれをなくすることは非常にむずかしいと思いますというような、諸条件が私はおのずから伴ってくるのではないかと思う。そこでひとつ相互銀行といたしましては、そういう補完的な措置を含めて御要望いただいてけっこうでございますし、そういう前提のもとに立つならば、大体どのくらいの期限で、この九百九十七億円の不当と思われる拘束預金を解消することができるめどがおけるかという点について、お伺いをいたしたいと思います。
  14. 東令三郎

    東参考人 御質問に対してお答えいたしますが、先ほど問題の概況について御報告申し上げましたとおり、相互銀行自粛を要する拘束預金額というものは、昨年の五月で千三百四十六億円、この比率が七・一%であります。これが昨年の九月末には約半年の間に千億に減少しております。したがいまして、一般預金に対する比率も、四・八%という低下をいたしております。もっとも昨年の上半期におきましては、この歩積み、両建て問題について、いろいろ国会においても論議され、また当委員会におかれてもいろいろお話があって、非常にこの点について自粛措置の要望が高まってまいった当時であります。したがって相互銀行としてもやはりこの自粛について一段の努力をした結果、こういうような意外に順調な自粛の成績があがったわけであります。しかし、こういうような比率で今後かりに自粛が進行するとしますれば、先の見通しは非常に明るいわけでありますけれども、いよいよ本年から開放経済になり、非常に企業の逼迫情勢が著しくなってまいりましたのですが、必ずしもこの率によって、この自粛すべき預金が解消するかということは、私としても自信が持てるわけではありませんが、大体この比率でかりに解消されるものとしますれば、少なくとも一年間あるいは一年半のうちにあるいはできるのじゃないかという感じも持っています。しかしこれは一面非常にきびしい経済情勢に立ち至りますと、このテンポは多少おくれるとも考えられますが、しかし誠心誠意努力しておるその事実は十分御了承を得られるものと私は考えております。協会としても当局によく協力いたしまして、早い機会にこれを解消していきたいと考えております。これにつきましては、相互銀行としましても普通銀行と比べますといろいろな点において営業上不利な点もあります。たとえば公金預金や準公金預金取り扱いの面、また日銀との取引、特に信用取引というような面においてもだんだんそれが解決し、またわれわれの希望がいれられることになりますれば、相互銀行向上体質改善ということも非常に促進されるのではないか、こう私どもは考えておる次第であります。またその面について極力努力を続けておる次第であります。  以上、はなはだ簡単でありますがお答えを申し上げます。
  15. 堀昌雄

    堀委員 ただいまのピッチでいくならば、一年か一年半くらいで解消するだろうとおっしゃっていますが、私は最初のうちの一千二百億ありましたものが一千億程度になるところは楽だと思いますが、これから先はだんだんと減少をさせることがいろいろな点で困難になることが予想されるわけである。こういう場合に、いま前提として何かある措置がとられなければうまくいかない場合もあるかと思って私は念のためにお伺いをいたしましたけれども、確かに公金等は取扱いができておるはずでありますけれども、不十分な点があると思います。銀行局長にお尋ねいたしますけれども、いま全国銀行相互銀行とに分けて、公金の取り扱い状態というのは一体どのくらいの金額になっておりますか。
  16. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 御質問は公金の取り扱い割合でありますか。
  17. 堀昌雄

    堀委員 量です。量がわかれば割合は大体わかる。
  18. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 その点は国の分と地方の分がございますが、金融機関別に国の分がどのくらい、地方の分がどのくらいというのは非常に調査が困難でございまして、その資料はいまございません。ただ一般的には府県については銀行が扱うものが非常に多い、市町村でも比較的規模の大きいものは銀行で、小さいものには相互銀行等が関係しておる、そういうことだけは申し上げられます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 銀行局ではわからないようですが、相互銀行のほうでは一体年間の取り扱いがどのくらいあるのかおわかりでしょうか。
  20. 東令三郎

    東参考人 私どものほうで調べましたところによりますと、これは預金性質上確定したものではありませんが、各金融機関の公金預金残高は昭和三十八年十二月末で都市銀行では約一千四百八十七億円、地方銀行で二千九十四億円になっておりますが、これに対し相互銀行はわずかに二百六億円を前後しておるような状態であります。
  21. 堀昌雄

    堀委員 お話を聞いておりますと、相互銀行全国銀行とのウエートがもちろん相当違いますから、そのウエートに置き直してみないとわからないと思いますけれども、要するにこれは資金量の問題の関連だと思います。日銀の問題もいまお話が出ておりましたけれども。これらについては確かに問題があると思いますが、中小企業金融の問題を私少し調べてみますと、いま銀行協会のほうからお答えもございましたが、やはり全体量としては、いま相互銀行中小企業専門金融機関のほうに比重が少しかけられてきておるということは、年次報告等で相当明らかになっておるわけです。そこで、こういう歩積み、両建てを解消させるためには、ただやめろやめろとかけ声をかけてもなかなか排除できない問題も私はあると思うのですが、その面について、公金の取り扱い等はこれは地方自治体の自主的な判断ですから、なかなか簡単にいかないと思うのですけれども、日銀等の貸し出し等を多少こういうことの排除の見合いとして、たとえばいまここで千億不当だと思われる拘束預金が残っておる。不当なんですから、一応自粛しようと思っておられるのですから、解消することが望ましい。しかしそれを解消できない要素というものの中には、要するに資金量の問題が不可分になってくる。そうすると、この程度のものを日銀が補完をしてやれば、場合によっては六カ月くらいでばさっと落とせるものではないかという感じがしますが、中小企業金融が、ことに今後の状態として非常に問題になる時期に来ていると思います。不渡り手形状態、倒産の状態を見ましても、いずれも最近の状態は、不渡りの増加率は、前年に比べますと十月は一四・九%、十一月は少し減って一二・三%ですが、十二月が一九%、一月が一二%、二月が二七%、三月が三〇%、前年比で見ると不渡り手形というものはいまどんどん増加しております。倒産件数も一月が百九十八件、二月が二百三十八件、三月が二百七十五件、倒産の件数もどんどんふえております。ですからこのことは何といいましても、中小企業問題としてやはり一面的には金融の問題というのが大きな条件になっておると思うのでありますが、そういう点について、片面ではそういう問題がある。金融が引き締まって窮屈な問題がある反面、依然として歩積み、両建てが千億あるという問題は、やはり早急に解決しなければならぬ問題だと思う。しかし解決しなさいと相互銀行のほうに申しても、いろいろやはり問題があるでしょう。そこで、それを一つ日銀等で、これを配慮することによって早急に減らすというような方向を政府側としては考える余地はありませんか。
  22. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 歩積み、両建てと申しますが、実態は歩積みはそう大きなものではない。主として両建て預金の問題であると思いますが、いまおっしゃいました日本銀行取引ですか、そういうことによって解消するという問題は、私としては中央銀行取引、特に貸し出しを行なうというふうなことについては、そういう観点からだけ考えるべきものではないんじゃないか。日本銀行貸し出しの対象とすることについては、もっといろいろな角度からの慎重な配慮が必要である。いまのところ、地方銀行につきましてもごく一部のものを除きましては、日本銀行貸し出しを行なっておりません。したがいまして、相互銀行等にその貸し出しの道を開くというふうなことは非常に重大な問題でございまして、歩積み、両建て問題とは一応別個に考えたいと思うのでございます。  それで、両建て問題について、いま代表の方が公金預金等についてというような話もございましたが、私どもとしてはいまの数字一千億にわずか足らない九百九十数億円というものを、これがはたして実態であるかどうかにつきましても疑問を持っております。実態はもっと多いんだ、両建てというものはその程度の軽微なものであれば、そんなに問題にならない。ただ、これはあくまで銀行協会がそれぞれのところから自主的に提出させた数字を合計したものである。ですけれども、前前から私ども申しておりますように、両建てがあるのかないのか、つまり債務者の意思に反して拘束されたものであるかどうかということの認定は非常に困難でございます。検査を行ないましても、一件、二件の問題でも相当実は時間のかかる問題であります。だから、単純に各銀行等から提出された数字を合計しますれば、一応それがもっともらしく聞こえますけれども、私どもは、おそらく委員の方もそう思うでしょうけれども、二兆何ぼのうちで非常に不当に拘束されたものが千億そこそこであるということについては、実態とかけ離れているんじゃないかという感じです。ですから、実はもっと深いものである。したがいまして、ほんとうの意味での債務者の意思に反した拘束預金を解消しようとすることは、これはそのままやりましたならば、実質金利の大幅な引き下げになる。相当な差があるんじゃないか。それで、いま引き締めをやっておりますが、引き締め態勢下であるということばかりではございませんが、この段階において中小企業に対する――中小企業等と申してもよろしゅうございましょう。これはそれぞれの階層別に、つまり企業の信用度に応じまして差がございます。比較的中堅の企業でありましても、そろそろ経営が不振であるという場合には、相当多額の両建てを要求されます。実質金利が上がるわけでございます。ですから、一がいにわずかとばかりは申せませんが、信用度によって両建てを強制される割合は非常に違うわけでございます。その格差が幾らであるかということを私ははっきり申し上げられませんけれども、中には五割をこえるというふうなものもあるわけでございます。それで、これを全部解消するということはなまはんかなことではできない。この引き締めの態勢下においては、特に実質金利中小企業であるからという理由で、信用度に関係なく大幅に引き下げるということについては、これは考えなければいかぬ。そう軽々しく言える問題ではないと思います。したがいまして、問題は、この日本の金利の格差が非常にあいまいな方法で行なわれている。表面金利だけ申しますと、たとえば銀行の場合には、自主規制の金利は並手の二銭二厘であります。そうしますと、大企業中小企業を問わず、そう差はない。一件三百万円以下の場合は二銭三厘まで許されますけれども、表面上の金利においてほとんど差はないような金利体系になっておる。それを両建てでもって格差を一応つけておる。おそらくその格差は倍くらい私はあるだろうと思います。金利の表面に対する実費金利の差というものはかなり大きなものである。ですから、これはどこの国でも多少の債務者預金はございますから、一がいにその全部を解消するというわけにはいかないでしょうけれども、あまりにも実態と表面金利が違い過ぎるというような点に問題がある。つまりやり方が不明朗であるということに尽きると思うのです。ですから私は、表面金利についてはある程度表面に出す、そのかわり行政的な措置といたしましては、岡建て部分を思い切って減らすようなことを強く要求します。その結果やむを得ず実質金利を上げない範囲において――おそらく少し下がると思いますけれども、表面金利を上げるというふうな指導を行なっていくことが一番すっきりした方法ではないかと思うのでございます。少しくらいのてこ入れで解決できるような問題ではないと私は見ております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 私もこれが自粛対象の全部だというふうには理解しておりませんが、一応金融機関がおっしゃっておるものだけは、これはすみやかにどけてもらわなければならぬ。金融界自身も不当だと思っておるものすらも解消ができなければ、その下にある不当だと思えるものはとうてい手が届かないので、順序からいえば、銀行協会でおっしゃった十一月末の六百八十二億は少なくとも早急に解消してもらわなければならぬ。相互銀行でも約一千億は解消してもらわなければならぬ。しかし、そのあとの問題については、これはわれわれのほうは、率直に言うと、一体どこまであるかないかがわからないわけです。その点は銀行局や日銀が監査をやる場合に、ケース・バイ・ケースで見るよりほかない。抽象的に議論はできないと思いますが、しかし、ここの点はやはり重大だと思うのです。不当だとみずからおっしゃっておる部分をどうするかという点は非常に重要だ。  そこで、銀行協会のほうにお伺いいたしますが、十一月末に六百八十二億ございました不当だと思われる拘束預金、これの解消はいつごろをめどにお考えいただいていらっしゃいましょうか。
  24. 井上亮

    井上参考人 これはできるだけ早く絶滅といいますか全部なくそうというふうに努力しておりますけれども、定期預金なんかで期限がきてないものがたまたま相殺できないというものもございます。言いかえれば、一年以内に定期の期限がまいりますものは相殺できます。それ以外のものも全部なくすということに私ども全力を尽くしてやっておるわけでございます。非常に早くなくなるというふうに考えております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 いまの銀行協会の話では、要するに時日的な問題としての問題が残っておるだけであって、そういう時間等がくればおのずから解消するものだというお答えでございますから、その分については一応そこまでにいたしまして、あわせて政府関係機関にちょっとお伺いをしたいのでありますけれども、実は設備投資の貸し出し金について、これは中小企業白書のほうで見たのでありますが、「政府関係金融機関は伸びなやみ状態で、三〇年度末三四・七%から三七年度末二六・四%」に中小企業の設備資金に対する貸し出しが減ってきておる。こういう事実が白書で出されておるわけでありますけれども、この点は私はいまのお話のように、この問題の一番大きなものは両建てにあると思うのでございます。その両建てというのは設備資金等の場合に特に大きく要求をされておるのではないか。そうすると、そういう資金貸し出し政府関係機関が補完をしなければならぬ、両建て等が行なわれて非常に金利負担が高くなっておるときに、政府関係機関は両建てをしていないのでありますから。当然安い金利で借りられる部分が減ってくるというのはどういうわけであるか、ちょっとその点を、中小企業専門政府関係金融機関という表現になっておりますから、中小公庫と国民公庫側からお答えいただきたいと思います。
  26. 舟山正吉

    舟山説明員 中小企業金融公庫の実情を御説明申し上げます。  御承知のとおり、中小公庫といたしましては設備資金を主として扱っておる、これは長期資金を扱うからそういうことになるわけでございますが、もう一つ中小公庫のたてまえといたしましては、市中金融の補完をやっておるということ、市中へまかないのつかない長期資金を供給するということになっております。そこで金融情勢によりまして、この中小公庫の貸し出しというものも非常に影響を受けるわけでございます。近い例をとってみますると、昨年の春からこの夏ごろにかけましては市中金融がゆるみましたために相当部分の設備資金も市中でまかなわれた。しかし、お示しの統計をそのまま分析して申し上げるのが筋かと思いますけれども大勢を申し上げますと、中小企業も大企業の設備投資に伴いましてそれに追いついていかなければならぬという意味、それから世間で言われておりますように、労賃が上がりましたために厚生施設等も支出しなければならないというようなこと、それから近代化、機械化をはかりまして労働力の節約をしなければならぬといったような点で、施設投資意欲というものが非常に昨年あたりから強かったのでございます。ただ過去において鉄鋼、機械のようなある程度先を見越しまして設備投資を先行したといったような部面につきましては、昨年あたりの景気状況にかんがみまして、景気調節の段階におきましてはさらに追加して設備投資をするという意欲は少なかったのでありますけれども、たとえば繊維産業におきまして合繊方面の新しい要求に応じまして設備投資をする、こういったようなことはあったわけでございます。それからさっき申しました近代化、機械化といったようなことの設備投資意欲があったのでありますけれども、昨年の春から夏にかけましては、大体において市中で相当部分がまかなわれておった。ところが暮れからことしになりますと市中でそれが調達できませんために、また中小公庫に対する要望が大きくなった。こういったような実情でございまして、中小企業全体として見ますると設備資金の需要が減ったと言い切るわけにはまいらぬ。むしろある部面では依然として資金の需要の旺盛なものがある、こういったような状況でございます。  そこで次に、むしろ政府機関において市中金融機関民間金融機関資金を補完しておるようなかっこうになっておるのじゃないかという御疑問でございますけれども、その点は国民金融公庫と私のほうの中小公庫とは若干性質が違うと思います。私どものほうの設備資金の出し方は、長期資金を出しまして、収益還元主義をとりまして設備をつくりましたら、それをうまく稼働すれば、何年間にどれだけの収益を生じてくるかという計算をいたしまして、あえて長期の償還期限を与えるわけでございます。その間に当該企業におきまして資金の余裕があった、それを取引金融機関に預けたというようなことがありましても、金繰り償還でありませんから、それを取り上げるということは私のほうではしておりません。それでありますから、また直接に政府資金を種として歩積み、両建てをするということは厳にこれを禁止しておりますので、それはもう非常に少なくなっております。ほとんどなくなっておるのであります。そういうようなことで、政府資金が民間機関のために利用されておるというようなことはほとんどない、こう断言していいかと考えております。
  27. 酒井俊彦

    酒井説明員 国民金融公庫の設備資金貸し出しでございますが、大体の傾向といたしましてはただいま中小公庫の総裁からお話がありましたとおりでございます。昨年の春ごろまではやはり大企業に多少おくれまして近代化合理化というような面で設備資金の需要が相当ございましたけれども、ここのところにまいりまして、御承知のとおり昨年の秋からだいぶ金融情勢が逼迫してまいりましたので、むしろいま運転資金貸し出しのほうが非常に多うございます。もっとも私のほうの金融機関は商業関係が半分以上を占めております。そこで従来の割合で見ますと、運転資金貸し出し中心でございまして、設備資金は三十五年度におきまして総貸し付けの三三%、三十六年度も三四・八%、三十七年度も三三・四%、この二月は三八・六%、若干高いのでございますけれども、全体を通じて見ましてやはり三十八年度も三分の一程度ということで、別段設備資金について特に最近減らしておるという傾向はございません。
  28. 堀昌雄

    堀委員 私は、これ、中小企業庁年次報告を信用して話しているので、これは政府機関だから資料として間違いないだろうと思っているわけですけれども、この中では民間の金融機関は三十年度末の四一・八%から三十七年度末は五〇%に約九%ふえている。政府関係のほうは減っているのだ、こういうことはここにはっきり出ているわけですね。私どもはいまの両建てを解消する一つ方法の中に――どうも私これを読んでみますと、実は政府関係機関が補完しているのじゃないような感じがしてしかたがないのですよ。ほんとうはもう少しこっちが前へ出てくれば、いまの相互銀行を含め民間の専門機関のほうも、片方は両建てがあって片方は両建てがないのが二つ、どっちでも借りられるということになっているならば、まず先に両建てのないほうへいくのが私は当然じゃないかと思う。ところが中小公庫のほうで、それを減らしてきたわけじゃないけれどもここまででおしまいと言えば、しかたがないから両建てを取られても相互銀行なり信用金庫なり中小企業専門機関のほうへいかざるを得ないということが、私の感じとしては言えるわけですね。だからこれ、逆になっているならいいのですけれども、民間の専門機関のほうがどんどんふえて、それに見合っただけ政府機関のほうは減ってきているということは、やはり私これは問題点があると思う。だから補完であると私も思っておるのですよ。ところが補完じゃなくて、どうやら政府関係金融機関の補完を民間中小企業専門金融機関がやっているのじゃないかという感じがしてしかたがない。だからそれでなければ経済ベースで合わないという感じもしますが、時間がありませんからまたあらためてやらせていただきますけれども政府関係としてはこれは十分ひとつ考えていただいて、皆さんのほうでてこになって、両建てが減る条件を、金融が締まっている間はなかなかむずかしいかもしれませんが、多少ゆるんでくるならばそういうことは非常に急速に起こってくるのじゃないか。やはりそういう、何と言いますか、自然な競争の中で問題が出てこなければむずかしいのではないかという感じが私はいたしますので、きょうは特に政府関係金融機関にもお越しを願ったわけであります。  そこで私、時間もございませんので最後に一つだけお伺いをしておきたいのでありますけれども、実はいま政府のほうで指導いたしておりますところの指導方法が、銀行相互銀行、信用金庫等はいささか相違がございますけれども銀行のほうでは債務者預金拘束預金比率で二〇%をこえる分について二年間に二〇%減でございますか、こういうふうなお話になっておるようでありますけれども、さっきお話のありました二四・四%、これは平均値でございますから各行別々でいろいろ違いがあると思うのでございますけれども、二四・四%というものに対する二〇%というのは、上に出ました分だけですと四・四%しかないわけでございますから、それが二〇%は減るというのは、どうも全体として見るとごくわずかな変化しかこの二年間に起きないのではないかという感じがいたしますけれども、実態としてはいまの自粛申し合わせ措置というものはどの程度の――いまの不当と思われるものは減ります、自動的に減らしていただくことだと思いますけれども、それ以外にどのくらいの、この割合から見まして二年間に拘束預金がどの程度減るということをめどにお考えになっておるか、この比率だけでございますとわれわれちょっと頭にぴんとまいりませんので、金額として概算をいたしますと、いまお考えになっておる二年後に大体予測せられるものはどの程度のものになるのか、もしお答えいただけるようでございましたら、ちょっとラウンドナンバーでけっこうでございます。
  29. 井上亮

    井上参考人 さっき申し上げましたように二四%余りを二割減らすわけでございますから、大体一九%くらいになるわけでございますね。ですから私どもこれも繰り返して申し上げることになりますけれども、先ほどのお話しのように、自粛対象になっておりますものは、これは全部なくそうということでございます。それ以外のものは歩積み、両建ていずれもそれぞれの根拠があり、また必要性があってやっておりますことで、これは個々のケースについて不当なものはもう落としていくという考え方でおりますので、実は二〇%減ということは理屈から申しますとおかしいわけでございます。二〇%が悪いというような計算でございませんので、ただ頭からともかく多いのじゃないか、一般の感じとして多いからこれをできるだけ減らそうというたてまえで考えましたのが二〇%減ということでございまして、不当なものがあるから減らすという線で考えたわけではございません。しかしそれもむろん中小企業のためになることであるから、できるだけ措置をして減らしていこうという、これは一種の理屈ではございませんで、できるだけ減らそうというたてまえでやっておりますることでございます。ですからこれは先になって預金金額もふえますわけでございますけれども、結局その当時の拘束預金債務者預金との比率の一九%くらいに押えようという考え方でございます。
  30. 堀昌雄

    堀委員 時間がありませんから終わります。
  31. 山中貞則

    山中委員長 春日一幸君。
  32. 春日一幸

    ○春日委員 両代表にお伺いをするのでありまするが、この不当な歩積み、両建てをなくすべしとの問題につきましては、これは中小企業金融に対する実質金利を低くいたしますることのためにも、またわが国の産業経済の中において公正なる取引の秩序を確立するというこのためにも、各界各層からも強い御要請がありますばかりでなく、本院は各委員会においても、本会議においても強くこの問題を指摘をいたしてまいったのでございました。かくて本日の情勢のもとにおいては、かねて御承知であられましょうが、渡邊公正取引委員長はこの不当な歩積み、両建ては独占禁止法違反である、したがって何が独占禁止法に違反をする不当な歩積み、両建てであるのか、これは特殊指定を当面第一手段としてこれを行ないたいと述べております。その方針を明らかにいたしました。しこうしてこのほど大蔵省は、この不当な歩積み、両建てをなくすることのために銀行の抜き打ち強制検査を行なうことによって、この不当な歩積み、両建てをやっておるような金融機関に対しては、銀行業務の免許の取り消しあるいは役員の解職、このことも念願に置いて、言うならば強硬な態度でこれに臨む、こういう方針を明らかにしたこと御承知のとおりであろうと思うのでございます。いまや開放経済に対処いたしまして、わが国の中小企業の国際競争力を強めなければ相なりません。またわが国の金融の現状がいよいよ引き締め体制を強化いたしてまいっておるのでございまするから、この中においてやはり中小企業経済力の強化をはからなければならぬのでありまするから、したがってこの問題を解決することの意義というものは非常に重大なものになっておると思います。また国会内におきまするいろいろな論議の経過に徴しましても、これが解決をはかることは緊急焦眉のことに属すると思うのでございます。しかしながらいままで相互銀行協会並びに全国銀行協会等においてそれぞれ自粛措置なるものを示されてはおりまするけれども、これらのことが公取委員長の本院において明言せられました方向とも全然これは合っておりませんし、また国民の強く要望いたしておりまするものにもまたかなってはいないと思うのでございます。私は、この際冒頭に、全国銀行協会連合会会長相互銀行協会会長は、それぞれこの問題の認識をどのようにとらえておるのであるか、この不当な歩積み、両建てというものが独占禁止法に違反をする行為であるということについて、正当なる認識をお持ちになっておるのであるか、この不当な歩積み、両建てに対する独禁法との関連における御認識をこの際明らかにいたされたいと思います。
  33. 井上亮

    井上参考人 、不当な歩積み、両建てが独禁法に違反するという、これは法律上そういう解釈も立ちますわけでございます。この問題につきましては、私どもこの法律の範囲でいろいろ考えていかなければならぬわけでございます。もちろんこれはいまの銀行の優位な立場を利用して、その消費者である債務者に特別な負担をかけるということは独禁法の趣旨に反するわけでございます。そういう意味で不当な歩積み、両建ては全部なくそうというように努力をしております。これははっきり申し上げてよろしいと思います。ただどの線から不当であるか、あるいは過当であるかというような問題になりますと、いろいろ取引上の習慣であるとか、その他債務者の都合であるとか、なかなか線が引きにくい。公取さんのほうでもその点について検討しておられるようでありますが、私どももそれについていろいろ意見を申し上げておるわけであります。この線さえはっきりして、これがそれ以上のものが過当なあるいは不当なものであるということになれば、私どもは絶対にそういう歩積み、両建てを要求することはいたしませんわけでございます。
  34. 東令三郎

    東参考人 御指摘のとおり歩積み、両建て預金というものの性格から見ますと、そこに不公正あるいは違法という点については、これは当然そう解釈されることもやむを得ないと思いますが、しかし不公正、違法と認められるこの歩積み、両建てというものも、これはいろいろわが国の特異な経済情勢から見ますと、一面慣習的にそういうものが温存されているというふうにも考えられますが、しかしともかく公共性を持つ金融機関としては、こういうような問題点はあくまでも自主的に良心的に解決していくべき性質の問題だと私は考えておる次第であります。
  35. 春日一幸

    ○春日委員 井上さんの御答弁によりますと、法律に違反をする行為を行なう意思はない。したがって独禁法に違反をする歩積み、両建てというものが法律の上に明示されるのであるならば、これを直ちに取りやめることはやぶさかでない、当然のことである、こういう御答弁がございました。なかなか御明確でけっこうだと思うのでありまするが、東さんの御答弁の中では、やはり長い商慣習の実態もあることであるから、これは漸次なくすることのために良心的努力は払っていくという、いわば法律に対しまする一つの認識がこれは画然と割り切っておらない点にいささか遺憾の意を表さざるを得ないのでございます。金融機関は、総体としてこの歩積み、両建てというものが独占禁止法に違反をする疑いがあるものであるということについて、正当な認識において欠けられるところがあるのではないかと私は案ずるのでございます。したがって、私はこの際念のために申し述べるのでありまするが、あなたのほうがこの特殊指定の問題について公取とも御折衝になっておることも承知をいたしておりまするが、公取がこの問題について介入できまする法的根拠は一にかかって独占禁止法でございます。したがいまして、この歩積み、両建てはなぜ取りやめなければならないかという法的根拠を探りまするならば、それは独占禁止法の中の第二条、これは「この法律において事業者とは、商業、工業、金融業」をいう、とあなた方の業種を指定いたしております。第二条第七項の五では、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」これは独占禁止法違反であると明示をいたしております。これに基づいて独占禁止法の二条七項の規定による不公正な取引方法一般指定がございますが、一般指定の第十項には「自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な条件で取引すること。」、これは独占独止法の違反である。このような違反事項があったときには一体どうするのか。これは法律公正取引委員会にこのような権限をゆだねております。第七条は、これは排除措置である。公正取引委員会は、法律に規定する手続に従って、「事業者に対し、届出を命じ、又は当該行為の差止、営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることがで「きる。」、そうして、そのような場合、不当な取引をこうむることによって受けた損害はやはり損害賠償せねばならぬ。無過失損害賠償責任は、第二十五条の中にこれは明確にいたしておりまして、第一項の中に、「事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。」、第二項に「事業者は、故意又は過失がなかったことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。」と明示をいたしまして、四十五条では活動が自由濶達にできることを明らかにいたしております。四十六条は調査のための強制処分、これまた自由自在にできる。命ずることもできる、委嘱することもできる、自由自在にやっております。そうして罰則規定の中では、これはおそるべきことでありますが、八十九条の中には、「私的独占又は不当な取引制限の罪」を犯した者に対しては、これは「三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処する。これは第一項の中に「左の各号の一」、これは第一号にありますが、「第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者」、これは三年以下の懲役、五十万円以下の罰金というような、このような重き罪科を科することによりまして、少なくとも自由にして公正なる競争の上に立って公正なる経済秩序を確立すること、これを経済憲章たる独禁法は厳然として規定をいたしておるのでございます。  私は、このような明白かつ単純な論理が金融機関によって正しく認識されていないということは、このことは公取を含め監督官庁たる大蔵省の職務怠慢のそしりは免れないと思いまするけれども、同時に、少なくとも公共性高き使命をになわれておりまする金融機関当事者がみずからこのような法律をそしゃく玩味されて、銀行業務はいかに行なうべきであるかというその自覚の上に立ってみずから適切な措置を講じられていないということは、きわめて遺憾の意を表せざるを得ないのでございます。ただいま堀委員の御質問に答えられた事後措置なんかも、たとえば相銀方式によりますと総預金の三〇%までの歩積み、両建てですね。それからまた全銀連方式によりますると、債務者預金の中の一六%までの歩積み、両建てですね。これが何となく容認されるような方向にあるのでございます。これが制度化されるとは申しませんけれども、ほどほどのことならばいいであろう、この程度を越すものはこれをなくしていこう、こういうことでございまするから、いわばこれは程度の問題として扱われておる。きわめてこれは遺憾であるばかりでなく、明らかに法律違反の事柄であろうと思うのでございます。私は両代表に特に御判断を願いたいと思いますることは、わが国は法律によって政治が行なわれておりまするし、国民は法律に基づいて行動しなければなりません。したがいまして、刑法によって、放火をしてはならない、放火をした者はこういう刑事罰に処するとなっておりますると、どんな住家にでも放火してはならないのでございます。あるいは、豚小屋であろうと鶏小屋であろうと放火してはいけないのでございます。どろぼうしたら窃盗だということになれば、五十円盗んでも七十円盗んでもこれはどろぼうでございます。でございまするから、程度がほどほどであるならばいいということは、火つけも小さいぼやならば放火罪にならぬとか、こそどろならどろぼうにならぬとか、そういうことではないのでございます。このことは本委員会においてすでに長い間真剣になって論じ合ってまいったことでございますから、十分ひとつ御銘記に願いたいと思うのでございます。私がはなはだ遺憾に思いますることは、あなたのほうの事後通達、これは私は全銀のも相銀のも全部拝見をいたしておるのでございまするが、ことごとく不当な歩積み、両建てという文言はお用いになっておりません。われわれが指摘しておりまする問題点は、過当な歩積み、両建てではございません。過当な歩積み、両建てのことを論じておるのではございません。過当なものもとよりいけません。けれども、われわれが本質的に論じておりまするのは不当な歩積み、両建てである。すなわちみずからが相手方に対して優越する地位を悪用して正常なる商習慣に照らしまして相手方に不利な取引をしいるの行為、これは独禁法違反の行為であるから、やめなければならない行為であると私どもはこれを指摘しております。すなわち不当な歩積み、両建てとはそれでございます。それは過当であるとか何とかいう問題じゃございません。一個の不当取引でもこれはいけないのでございます。しかるに、不当な歩積み、両建てについては何ら触れることなくして過当なものだけを指摘して事後の対象とされておりまするその理由は何でございまするか、その点についてひとつ御見解をお示し願いたいと思います。
  36. 井上亮

    井上参考人 法律が厳粛なものであり、またわれわれは法律に絶対に従わなければならぬということは、私どもも当然強く考えておりまするわけで、銀行協会でも始終これは、むろん銀行協会理事各位その点については強い認識を持っておるわけでございますけれども、またこの歩積み、両建て問題を中心といたしまして、常にその問題を取り上げ、また法律に従ってやっていく、法律が厳粛だということについては繰り返し私どもも話し合っておるものでございます。  それから、ほどほどだからいいというふうに先ほどの私のお話をお受け取りになったとすると、実は私説明が足りなかったかと思っておるわけでございまして、もちろんほどほどであるからいいということは考えておりません。不当な歩積み、両建てがいかぬということで、しかもこれを絶滅しようというふうに努力しているわけでございます。ほどほどだからいいと思ってやっているつもりは全然ございません。先ほども申し上げましたように二〇%減らすということは、ほどほどのものを少し減らすということではございません。現在認められておりますものでも、多過ぎるから、これはもう消費者であるところの債務者のためにできるだけ負担を減らしていこうという考え方で、さらにその上に不当なものでなくても減らそうという考え方でやったことでございます。
  37. 春日一幸

    ○春日委員 私は現在認められておるという井上さんの御答弁でございますが、それは一体だれが認めたのでございましょうか。私はこの点はひとつ明確にしておかなければ相ならぬと思うのでありますが、独占禁止法は、その行為が、言うならば脅迫あるいは詐欺、そういうような犯罪に当たります行為の結果なされた場合はこれは刑法で処断されるのでございます。けれども、独占禁止法は全然別の観点でございまして、たとえば民法上契約自由の原則によってその者が自由に契約をいたしましたものであって、刑法上あるいは民法上何ら非の打ちどころのないような取引でございましても、しかし、これを客観的に打ちながめまして、これが力関係によって不当に圧迫の結果そのような結果になったものであるという、そういうようなものを禁止しておるのが独禁法でございます。このことは、ひとつ明らかに御認識を願っておきたい。すなわち、独禁法は民法的意味において契約自由の原則の名によって行なわれる独占や支配を実質的に排除するための法律でございます。したがいまして、その行為の適法性というものはやはりこれは独禁法が判断をするものであって、そのような現在行なっておる歩積み、両建て公正取引委員会かどこかが認めたのでございますか、あるいは大蔵省でも認めたのでございますか。独占禁止法は、このような不公正な取引に基づいて取引行為を行なってはならない、これは第二条第五項、それに基づいて一般指定、それで禁止しておるのでございますね。この程度のものはいいということは、一体どこでだれが認めたのでございますか。認められておるという理由は、何が根拠になるのでございましょうか。
  38. 井上亮

    井上参考人 これは厳格にいいますと、公正取引委員会が査定といいますか、決定すべきことでございますけれども、しかし法律がございますし、私どもの商行為としましても、みずから反省してこれ以上のものは不当なものだというふうに考えた部分をなくそうということでございます。法律的に解釈いたしましてどういうことになるかわかりませんけれども、とにかく私ども銀行取引先関係において不当であるというものをなくそうというふうに考えておるわけでございまして、厳格に申しますれば、たぶん公正取引委員会が認めるといいますか、決定いたしましたものについて、私どもは、なくするとか、あるいはその線まではいいというふうに考えるわけでありますけれども、現在までのところは、まだ公正取引委員会からこの線まではいいとか悪いとかいうことは明示されておりません。したがって、私どもといたしましては、私どもの決定いたしました自粛措置を、一応正しいといいますか、法律の線に沿うものと考えて措置を講じておるわけでございます。  それから、先ほど不当と過当の問題がございましたが、私ども、これも法律的に必ずしも詰めたわけではございませんけれども、かなり常識的な問題になりますけれども、私どもは過当というほうが広い範囲になっているのじゃないか、つまり常識的なことばで申しますれば行き過ぎたものというふうに解釈しまして、この過当ということばを使っておるわけでございます。
  39. 春日一幸

    ○春日委員 これは本委員会でもしばしば論究した点でございますが、この過当ということと不当ということとは全然別の内容を持つのでございます。これは井上会長において御判断がむずかしい問題ではないと思うのでありますが、不当ということは、これは読んで字のとおり、当を得ないものであるということでございます。いけないことであるということでございます。過当ということは、ほどほどならばいいけれども、度を過ぎてはいけないということであります。そういうことでございますから、したがって、この不当ということは、当初的に、本来的に、本質的にいけないものである。ところが、その過当なものはいけないということは、やはりこれはある程度のものはいいけれども、度を過ぎたらそれが質的変化をして、いけないものになる。ある程度のものは善良なものであり、度を越すとそれは悪いものになる、質的転換がある一定の限界においてもたらされるものがこの過当ということでございます。でございますから、過当なものの取り締まりによりまして、あるいはその自粛によりまして不当なものが根絶されるのではございません。異質のものが一つ方式によって同時並行的に解決し得るものではないのでございます。この点はひとつ十分御銘記願いたいと思うのでございますが、その点いかがでございますか。
  40. 井上亮

    井上参考人 仰せのとおり不当というものが問題になるということ、私ども法律的な線に沿って考えますればそういうことになるかと存じます。私どもも今後はそういう方向でいきたいと考えております。ただ、これは決して悪意といいますか、平たいことばで言いますれば、ごまかしをするために過当というふうなことばを使っているというふうなもし御認識がございましたら、そういうことでございませんので、その点をひとつお含みを願いたいと思います。
  41. 春日一幸

    ○春日委員 井上さんの個人としての御意思は私としてわかるのでございますが、しかし公正取引委員会は過当というふうなことばを使っておりません。また独禁法は過当というふうなことばは他の場所に使っておりますけれども、ここでは使っておりません。不当な歩積み、両建てはいけないのでございます。不当な取引はいけないのでございます。しかるにあなたのほうの通達はことごとく過当という文言を用いられている。ただ当初の一回だけかろうじて不当ということばがございます。一カ所にございます。あとはことごとく過当、過当ということになって、不当という文言は姿を消してしまっております。したがいまして、このことはほどほどのものを処理しよう、ほどほどの限界において処理していこう、絶滅ということではないのであるという意識が歴然たるものがございます。したがって、このことは本質的に本委員会で論じまして、渡邊公取委員長が不当な歩積み、両建てとは何ぞや、これは法律基準がない、明示されるところがないから金融機関も国民も準拠しようと思ってもよるべがない、したがって特殊指定は、現在新聞を相手にいたしまして、あるいはその他十何種の業種、業態を対象といたしまして特殊指定がなされておることにかんがみまして、金融機関における不公正な取引における特殊指定というものを第一段階に出そう、こういう方向を本委員会において明言されました。これは先々週の本調査の結果でございます。  それで私はここに一つ伺いをいたしたいのでありますが、われわれが仄聞するところによりますと、金融機関公正取引委員会が独禁法に基づいて特殊指定を行なわんとすることに対して何となく反対的である、特殊指定を行なわないでもらいたい、こういうような立場において公取との接触がなされておるやにわれわれは伺っておるのでありますが、特殊指定に対してためらわれる、あるいはこれを反対されるという積極的理由は何でございますか、あるいはそのようなことは全然なくして、実はわれわれも法律基準が明確にされたいのである、さすれば法律にのっとって運営するだけのことである、だからわれわれは積極的に特殊指定の宣告、告示でありますか、これを待ち望んでおるというのであるならば問題はないのでございますが、もしそれ、反対であるとか、ためらっておるとかということでありますならば、その積極的理由をここで国民がわかるように明らかにいたされたいと思います。
  42. 井上亮

    井上参考人 全銀協といたしましては、公取あるいは独禁法による特殊指定をできるだけ避けたい、つまり特殊指定を発動しないでほしいということを考えておりますし、また公取にもそういう希望を申し述べたことは事実でございます。それはどういう理由かと申しますと、実はこれはすでに御承知のとおり、私ども金融機関一般指定を受けておるわけでございます。その範囲で公正取引委員会あるいは独禁法の条文に従っていろいろな措置を受けるわけでございまして、銀行の検査も受けあるいは公取委員会からいろいろな忠告、勧告その他を受けるということになるわけでございます。そういう措置が現にあるわけでございます。それで、その上に特殊指定をかけられますということは、これはかなり常識的なことになりますけれども銀行というものは社会の信頼の上に立っておるのだ、銀行のみならず、金融機関全部がそうでございますけれども、そういう非常にデリケートな営業をしております関係で、何か金融機関が不当な、あるいはけしからぬことをしているというふうな印象を与えますことは、国民経済としてもよろしくないというふうに考えましたので、特殊指定はできるだけしないでほしいというふうに考えておるわけでございます。これは消極的な意味における私どもの特殊指定を避けようという考え方の根本でございますけれども、もう一つ積極的といいますか、私ども銀行その他の金融機関は、国民経済の大きな部分として、またかなり大切な部分を預っておるものでございます。御承知のとおり自由経済というものは非常に自由な動きをして、そしてその生産能率あるいは配分の能率をあげるということがたてまえでございます。金融機関全体に特殊指定という、いわば大きな網をかけるということは、ともすればこの自由な経済の動きを鈍らせるということにもなるのではないかと考えております。あくまでもこの自由経済のダイナミックな動きを維持するというふうな考え方からいたしましても、いまの法律の範囲においてやっております一般指定でやっていってもよかろうじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  43. 東令三郎

    東参考人 特殊指定を受けるということは、先ほど井上さんから言われたとおり、公共性を持つ企業として非常に面目上残念なことであります。また不公正な、違法な取引金融機関はやってきておるとかいうようなことで、いわば、らく印を押されるというようなことはどうも面目上これは耐えられないことであるということについては御了承いただけることと思います。なお二元的な監督を受けるということは、受ける身になればその間にいろいろの矛盾とか撞着、あるいはそれから予期しない問題がいろいろ起こってくるのではないかというようなことを危惧しております。なお私どもは誠心誠意いわゆる自粛の目標を立てていま努力しておるわけであります。あくまでもこの問題は自主的に解決すべき問題で、責任があるということを十分自覚しておるわけであります。したがってこの責任感なり意欲に対して、ここに二元的な監督を受けるということは、私どもの意欲をついばむという結果にもなるのではないかと思います。幸い私どももかなり自粛面においては実績をあげてまいっておるわけでありますから、必ず御期待に近い線に達することも十分自信を持っておるわけでありますから、この際私どもとしては、銀行局並びに公取委員会の二元的な監督行政を受けるということは好ましくないと思います。なお中小企業金融に関する限りにおいては、特殊指定の対象となるいわゆる基準というものの設定ということは事実上非常に困難な問題であります。かりにその基準ができて、一律にそれが監督されるということになりますと、これが中小企業の円滑な金融疎通について思わぬ障害にならぬとも限らないと思います。そういう点については諸先生方も十分御了解いただけることと思いますが、私はそういうような三つの点から、指定を受けるということに対しては好ましくないという点をはっきり申し上げておきます。
  44. 春日一幸

    ○春日委員 井上さんも東さんも、金融機関の公共性の高さにかんがみて特殊指定を受けることが何か不名誉処分の刻印を押される、こういう感じがするので避けたいという御意見のようでありまするが、私はこんなものはそのような感情で受けられることは不適当ではないかと思うのであります。御承知のとおり公共性は非常に高い新聞なんかに対しましても、その不公正な取引とおぼしき押し紙等についてはこれは禁止する、これこれは不公正な取引であるといって新聞業務に対してもそういう特殊指定を厳然と行なうことによってそういう不公正な取引を禁止しておるのでございます。天下何ものをもおそれない無冠の帝王といわれる新聞社に対しても、公正取引委員会は、国の公正な経済秩序というものが何よりも大切なのである、新聞社よりも金融機関よりも何よりも大切なのである、こういう立場からそういう特殊指定を行なっておるこの事例は、十分これを判断される必要があろうと思うのであります。わけて私がこの機会に強調いたしたいことは、とにかく歩積み、両建てが正常な商習慣といったところで、それは現在行なわれておるからこれが商習慣というのではございません。公取でいう正常な商習慣とは、客観的に見て道義的にも条理的にも、また法律にはむろん違反がないが、道義、条理に照らしてこれは何人も納得できるというのが一個の商習慣でございます。したがいまして、この独禁法にいう正常なる商習慣というものは、その観念の基礎となるものはやはり道義、条理でございます。私は両首脳に御判断願っておきたいことは、金を借りたい中小企業者、これも一年もので五分五厘、定期を集めてこれを貸し出すときにはざっと九分五厘といたしますれば、さすれば利ざやが四分でございます。これはこの間の本委員会において高橋銀行局長が答弁されたところによると、債務者預金の中で拘束性のものはグランド・トータルでざっと三兆円に達すると考えると述べられております。それは相銀と全銀と信用金庫と合算するのでありましょうが、さすれば三兆円というようなこの両建て――歩積みも一部含んでございますが、この利ざやは一千二百億でございます。一千二百億ということは十年間に一兆二千億、これは複利にいたしますればざっと二、三兆円という膨大な中小企業の得べかりし利益、彼らの膏血、これが金融機関の不当と覚しき歩積み、両建てによってなま血が吸われ、その肉がむさぼり食われておった、こういうふうに理解をなさる必要があると思うのでございます。今日、金融機関の収益性というものは非常に高くなっております。これは国の経済のために喜ぶべきことでありますけれども、今日中小企業者の経営の実態がどのようになっておるかというと、従業員の所得格差はひどいものでございます。昭和三十七年度においては、大企業のそれに比べて四九・三%、三十七年度の賃金格差は五七%、半分しか払い得ておりません。このことは労働問題であり、社会問題であり、今日大いなる政治問題になっております。今日このような所得格差を生じておるのはやはり企業格差が大きいからである。企業格差は何か。何兆円という膨大な金を金融機関中小企業からしぼり上げ吸い上げていってしまうから、結局得べかりし利益が得られないのである。今日金融機関経営というものは、営業収益は非常に高いのでありますが、それが外面的にあらわれて、相互銀行も信用金庫も大銀行も、りっぱな町かどをことごとく占められておる。そこにはほんとうにマーブルな建物で、国会のこんなくさったようなじゅうたんではなくして、まことに輝かしい雰囲気の、エアコンディションの中で最高の経営がなされておるのでございます。あなた方の仕事は公共的地位が非常に高いのでございます。使命が非常に大きいのでございます。日本の金融機関が幾ら繁栄したところで、日本の経済というものは、中小企業関係従業員千七百万で、賃金、労働条件が悪く、四百万の経営者が不渡り手形を出しっぱなしで、きょうは倒産あしたは不渡りといろいろな状態の中で苦しんでおって、それが一体何になるでございましょうか。あなた方は国の指導者として、一金融機関というような狭い範疇から脱せられて、そうして国全体の経済を円滑かつ健全に発展せしめるために、われわれがいままでやってきたこと、また現にやっていることを何とかため直さなければならない場所はないか。ここに国会の論議があり、公取の指摘がある。だとすれば、それはすなおな気持ちで国の経済の建設のために御努力願うべきではないかと思うのでありますが、この点の御認識はいかがでございますか。
  45. 井上亮

    井上参考人 私は、先ほども信用機関であるということで特殊指定を避けたいというふうに申し上げたので、むろん公共的性格を持った企業でございます。そのほかに特別国民の信頼といいますか、信用を基礎とした金融機関であるからそういった特殊指定――とにかく日本国民、一億に近い人が見ておりますので、その中には正確な認識のある方もありましょうし、またいろいろそうでない方もありますが、そういう人にまで不安感を持たせるとか、銀行に対する不信の感を持たせるということは避けたいということで申し上げたのでございます。新聞のほうは無冠の帝王といいますか、非常に強い立場にあるわけでございます。そういう意味において、私どもは非常に弱い立場にあるということも御認識いただきたいと思います。  それから三兆円近い拘束預金から不当な利益、マージンを受けておるが、それは千二百億に達するのではないかということでございます。そういう点もむろん私どもは常に反省しております。でありますから、この金利措置といいますか、過当、不当な歩積み、両建て全体についての金利指貫を講じておりまして、定期預金担保については一厘ざやというように、ほとんど利ざやのないような営業貸し金をしておるわけでございます。金利一厘ざや、一銭六厘あるいは七厘ということは一厘ざやでありますけれども、もしもこれを同率にしたらどうか、あるいは逆に債務者が利益になるような金利にしたらどうかというふうにお考えになるかもしれませんけれども、同率にいたしますればこれはどこまでふえるかわかりません。むしろまた逆ざやに債務者が利益になるような金利銀行が不利になるような金利を出しますれば、借りるほうは借りれば流動性は非常に数字の上では高まるわけでございますから、非常に高くなる、むしろ最小限度の利ざやというふうに考えておるわけでございます。そういうことまで考慮に入れますと、三兆の中で私どもがいまおっしゃったような不当な利益をとっておるというふうな計算は少し筋が通うかとも思います。それから銀行も、おっしゃるとおりに利益は安定はしております。しかし非常な高い収益率ではございません。またこの景気の波動いかんによりましては、銀行のほうは収益率が高いようにもなりますけれども、平均いたしますればそれほど高いというふうなものでもないのでございます。また現在われわれのほうも、銀行その他の金融機関は、御承知のとおり外部流出については非常に強い制限という大蔵省指導も受けておるわけで、配当も現在都市銀行については九%というふうな行政指導を受けております。そういうことで、利益がありましても、ほとんど大部分を内部留保に入れて、それが社会資本として経済界に回っておるわけでありまして、この点はひとつ御了承いただきたいと思います。  また建物なんか、ずいぶん豪華なようにおっしゃいますけれども、これも全部ごらんになると、なかなかちゃちなものもございます。これも経費関係その他で大蔵省行政指導もございます。できるだけ質素なものにしていこうという方針でやっております。ただ、これは利益で出ないものであります。計算上は資産になるわけでございまして、利益のあるなしということとは直接関係がありません。しかしそれにいたしましても、ぜいたくなものとか、またよけいな経費がかかるようなことはいたしませんようにつとめておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもは、お話のように国家経済のために働いておる、またそのためになっておるというような自信と、また義務を持っておることを痛感しておるわけでございます。
  46. 春日一幸

    ○春日委員 私はもう少しお伺いをしたいのでありまするが、ただいま委員長から指令がありまして、非常にいい質問内容で残念に思うけれども参考人の御迷惑をおもんぱかってやめろということてございますので、二問だけお伺いをして結論にいたします。  ただいまの井上会長お話でありますと、この預貸金利の格差の圧縮措置もこの自粛通達の中に出しておって、営利、利潤を目的とするものではないというところにちょっとアクセントを置かれての御答弁でありましたが、だとすれば、やはりこのことは高橋さんにも聞いておってもらいたいと思いますが、何のためにこの歩積み、両建てというものが意欲的になされるのであるか、われわれもこういう問題についてはいろいろと研究いたしました。  第一点には、貸し出し債権保全のための担保ということ、これはすべての借り受け人というものが他に根抵当を設定して債権保全の道は別途講ぜられております。したがいまして、純粋に預金担保となる場合は、これはまた少数異例のこととしてあり得るでございましょうが、しかしこれは債権保全のための根抵当が設定される場合は理由になりません。  それからもう一つは、資金量の増大という目的があるでございましょうが、しかしその資金鐘の増大は一体何をねらいにするのか。銀行貸し出しをするための原資を確保するということでもありましょうけれども、それはすべからく金の要らない人を対象としてその預金を収集することに焦点を合わせらるべきであって、金を借りたい人に預金せしめることは論理が合わないし、筋道が立たない。この点も異議のないところであります。  それから第三点の、これから申し上げる実費金利の引き上げによる収益性増大の問題であります。私は金融業務が営利事業であります限り、営業収益増大のために利ざやをかせがんとしてこういう悪慣習が十数年間、戦後ずっとなされてきたことを認めます。しかし今度はこれをやめなければならぬ。公取からも来ておられると思いますが、しょせんは公取がこんな重大事を見のがしておくはずがない。渡邊公取委員長は、本委員会において、第一次手段として特殊指定を行なう気がなければ審問、審決して断を下すと言っておりますから、あなた方の御反対がありましても、結局はやってくると私は思うのでございます。そうしてこれがなくなってくれば、結局銀行の収益性が減ってくるから、したがって、あなたのほうでは表面金利を上げなければ銀行業務がなし程ないとすれば、表面金利を上げるべきである。表面金利を低くしておいて、実質金利を高めるというようなカンニングな銀行行政は、その公共性の高さからかんがみて許さるべきものではないのでございます。だから私はいまここでちょっと伺っておきたいのでございまするが、かりに歩積み、両建てをなくした場合、銀行の実質収益が減ってくる、そしてその収益性を阻害する、その健全なる運営を阻害するというおそれがある場合、やはり表面金利を引き上げることによって歴史なる運営というものを確保していかなければならぬ。われわれが仄聞するところによると、大蔵省はそういう場合においては表面金利を若干高めることもやむを得ないのではないかというような御方針もあるやに伺っておりまするが、歩積み、両建てを絶無にした場合、表面金利を高めることについてあなたのほうはどう考えておられるか、これは高橋さんの御答弁もあわせてお願いいたしたいと思います。  それからもう一点は、粉飾預金、あそこは資金量が多い、あそこは預金の額がこういうふうに多いのだ、いわゆる銀行のランキング、六大銀行だ、十一大銀行だというような銀行のランキング慣習というものがやはりこういう不当なあるいは不公正な、ワクをも越えて預金収集に狂奔せしめるような一要因になっておりはしないかどうか。この二つの点についてひとつ御見解をお述べ願いたいと思います。  一つは、歩積み、両建てを全廃した場合、表面金利を高くするの必要はないかどうか、それからいまの銀行のランキングというような一個の慣習が結局このような粉飾預金収集に狂奔せしめる一要因になっておりはしないかどうか。
  47. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 先ほどもその点ある程度触れましたので、簡単に意見を申し上げますと、いまの春日委員の御発言まことにごもっともだと思います。両建てという方法実質金利の格差をつけておる、そのことを預金をふやしておるという面で公正な取引じゃないという見方もあり得ると思いますが、私どもはたとえば二銭五厘の金利をとる、片方の業者からは三銭五厘の金利をとるとする、三銭五厘の金利をとることが不公正であるといえるかどうか、これは全然話が別になってくるのであります。でございますから、要するに金利格差をつけておる方法が明朗でない、実態がほんとうに契約して取引をしてみないとほんとうの金利はわからないということにもなる。二銭五厘であると思って契約しておったところが、実際は三銭をはるかにこえておるじゃないかというふうないろいろおもしろくないことがあるわけでございます。でありますから、私は表面金利でできるだけその格差をはっきり出すべきである、そしてそのかわり両建てのような方法は、全廃と申しましてもどの程度全廃できるかわかりませんが、とにかくいまよりは相当大幅に減らすということが必要であると思います。  もう一点、大銀行等のシェア競争といいますか、順位争いがこの両建てという方式をなかなかやめさせない一つの原因であるという御見解はそのとおりであると思います。やはり預金量の増大を誇るということが長年の悪習となっておりまして、その弊害は単に両建て歩積みの点だけでなく、末日における預金の取り合い、そのための非常にむだな競争を生んでおります。でありますから、こういった風潮はこれをできるだけやめさせていく、銀行のよしあしはその経営内容によるものであって、必ずしも量的なものによるものでないというふうな考え方を強く推し進めていく必要があると思います。そういう点で御意見に全く賛成でございます。
  48. 井上亮

    井上参考人 表面金利を引き上げる必要が起こってきはしないか、歩積み、両建てを整理していったら、そういうことになりはしないかというお話でございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、現在の歩積み、両建てについては金利措置を講じておりますが、これを減らしましても、それからくる銀行の収益上の負担はそれほど大きくないかと思います。むろんある程度はございます。一厘ざやでも現在ございます。それが減るということになります。また先ほど申し上げましたように、三厘以上約定金利から下げておけというようなことも、これも両建てを整理してまいりますれば減ってまいりますから、むろん影響はございますけれども、それによって表面金利を特別現在引き上げなければならぬということにもならぬかと思います。しかし金融機関はたくさんございます。いろいろな種類がございますから、これはいまの採算でもあるいは手一ばいというようなところの金融機関においては、そういう必要が出てくるかと思います。これは銀行の種類あるいは金融機関の種類により多少違うかと考えます。都市銀行においては、現在歩積み、両建て自粛したからすぐに表面金利を上げなければならぬというような情勢でもないかと思いますが、これらは非常に種類が多い金融機関のことでございますから、一律には申し上げかねるかと思います。  それから銀行間のランキングといいますか、順位争いといいますか、これがありますことは、率直に申し上げて確かにございます。しかしこれは日本ばかりではないようでございまして、海外においてもランキング争いというものはあるようでございます。ことにアメリカあたりは相当激しいように聞いております。イギリスにおいてもコンペティションということは非常にきびしいということをいっております。しかしこれもむろん程度問題でございます。日本のように激しいところはあるいはないかもしれませんけれども、ほかの国においてもないわけではございません。しかしこれは私どもいいというふうにはむろん考えておりません。いま局長のお話にもありましたように、金融機関というものはその内容を誇る、あるいは健全性を誇る、あるいは得意先の質のいいことを誇るというふうないろいろな質的な面における競争がもっとあってもいいとは言えませんけれども、ただ預金額だけを争うということは決して妥当、正当でもないというように考えております。また戦後の傾向としまして、預金量をいたずらに争うということは、これは必ずしも形式だけ、名目だけの問題ではなくて、やはりそれから生まれる利益が多いというようなことが伴っておったわけでございますが、今後こういう開放経済体制になり、また自由化が進められてまいりますれば、金融機関としてはそういうことよりは、内容を争うというようなことに興味あるいは経営の焦点が変わってくるかと思いますので、今後は私ども漸次努力もいたしますし、また客観的に見ても、そういうふうな傾向は漸次変わってくるものと私は考えております。
  49. 春日一幸

    ○春日委員 どうもいろいろとありがとうございました。  ただ、私は最後の結語として御要望申し上げたいことは、何といっても、金融機関の本来的使命は産業に奉仕されるところにあるのでございます。だから主客転倒になりませんように、わけてわが国の産業の原動力は、雇用において、生産において、流通において、貿易において、中小企業が圧倒的地位を占めておるのでございます。こういう中で中小企業に不当な不利益を与えておりますこの歩積み、両建て、これはすみやかになくすることのために全力を傾倒されんことを強く要望いたします。  なお、同じような性格の事柄として担保の過大徴求、過小評価の批難事項がございます。あわせて善処されんことを強く要望いたします。  なお金融債発行の政府関係金融機関、それから政府の関与しております金融機関で、金融債の押し売りあるいは歩積み、両建てにたぐいいたしますような金融措置、こういうようなことがございましたら、これこそ重大問題でございます。纐纈政務次官、高橋銀行局長におかれましても、十分厳重なる措置をとられることをあわせて御要望いたしまして、私の質問を終わります。
  50. 山中貞則

    山中委員長 これにて両会長に対する質疑は終了いたしました。  両会長には御多用中のところ、長時間にわたり御出席いただき、参考人としての御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  参考人並びに関係出席者は御退席いただいてけっこうでございます。      ――――◇―――――
  51. 山中貞則

    山中委員長 次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。     ―――――――――――――
  52. 山中貞則

    山中委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官纐纈彌三君。
  53. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  国際開発協会が、昭和三十五年十一月の創立以来、長期かつ低利の融資を通じて、低開発地域の経済開発の促進、生産性の増大及び生活水準の向上のために果たしてきた役割りはまことに大きなものがあります。わが国も、その原加盟国として、同協会を通じて低開発国援助のために応分の寄与をいたしてまいっております。  しかしながら、低開発国の国際収支事情よりいたしまして、同協会の行なう融資に対する需要は年を追って増大し、その保有する交換可能通貨による資金は遠からず全額貸付約定される見通しとなりました。ここにおきまして一昨年九月の年次総会におきまして同協会の増資が提案され、以来、その具体案作成について同協会理事会及び加盟先進国会議等におきまして検討が重ねられました結果、昨年九月九日の理事会におきまして、総額七億五千万ドルの資金追加及びその分担について各国の合意が成立し、これを内容とする国際開発協会資金追加に関する決議案は、直ちに総務会の投票に付されました。わが国は十二月十六日に賛成投票をいたしましたが、各加盟国総務の投票も逐次行なわれ、さる三月一日に至り、国際開発協会協定の規定に基づく多数、すなわち、過半数の総務による総投票権数の三分の二以上の投票が行なわれ、かつ、その過半数が賛成投票であることが確認されました。ここにおきまして、わが国といたしましては、決議の定めるところに従い、同協会に対して新たに四千百二十五万ドル相当額、百四十八億五千万円の追加出資を行なうため所要の国内措置を講ずる事由が生じたのであります。  したがいまして、この法律案により、新たな出資についての規定を設けることとし、この法律案の成立を待って、日本国政府として出資分担を引き受ける旨の正式通告を同協会に対して行ないたいと考えております。  なお、今回の追加出資は、全額を円貨で行なうこととしておりまするが、実際の払い込みは昭和四十年度以降三カ年度にわたり均等分割して行なうこととなっております。かつ、当初はその全額を通貨代用国庫債券により行なうことが認められておりまするので、昭和三十九年度については特に予算上の措置を講ずる必要はありません。  以上がこの法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  54. 山中貞則

    山中委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は次会に譲ります。  次会は、来たる八日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五分散会