○春日委員
井上さんの御答弁によりますと、
法律に違反をする行為を行なう意思はない。したがって独禁法に違反をする
歩積み、両
建てというものが
法律の上に明示されるのであるならば、これを直ちに取りやめることはやぶさかでない、当然のことである、こういう御答弁がございました。なかなか御明確でけっこうだと思うのでありまするが、東さんの御答弁の中では、やはり長い商慣習の実態もあることであるから、これは漸次なくすることのために良心的
努力は払っていくという、いわば
法律に対しまする
一つの認識がこれは画然と割り切っておらない点にいささか遺憾の意を表さざるを得ないのでございます。
金融機関は、総体としてこの
歩積み、両
建てというものが独占禁止法に違反をする疑いがあるものであるということについて、正当な認識において欠けられるところがあるのではないかと私は案ずるのでございます。したがって、私はこの際念のために申し述べるのでありまするが、あなたのほうがこの特殊指定の問題について公取とも御折衝になっておることも
承知をいたしておりまするが、公取がこの問題について介入できまする法的根拠は一にかかって独占禁止法でございます。したがいまして、この
歩積み、両
建てはなぜ取りやめなければならないかという法的根拠を探りまするならば、それは独占禁止法の中の第二条、これは「この
法律において事業者とは、商業、工業、
金融業」をいう、とあなた方の業種を指定いたしております。第二条第七項の五では、「自己の
取引上の地位を不当に利用して相手方と
取引すること。」これは独占禁止法違反であると明示をいたしております。これに基づいて独占禁止法の二条七項の規定による不公正な
取引方法の
一般指定がございますが、
一般指定の第十項には「自己の
取引上の地位が相手方に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な条件で
取引すること。」、これは独占独止法の違反である。このような違反事項があったときには一体どうするのか。これは
法律は
公正取引委員会にこのような権限をゆだねております。第七条は、これは排除
措置である。
公正取引委員会は、
法律に規定する手続に従って、「事業者に対し、届出を命じ、又は当該行為の差止、営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な
措置を命ずることがで「きる。」、そうして、そのような場合、不当な
取引をこうむることによって受けた損害はやはり損害賠償せねばならぬ。無過失損害賠償責任は、第二十五条の中にこれは明確にいたしておりまして、第一項の中に、「事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。」、第二項に「事業者は、故意又は過失がなかったことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。」と明示をいたしまして、四十五条では活動が自由濶達にできることを明らかにいたしております。四十六条は
調査のための強制処分、これまた自由自在にできる。命ずることもできる、委嘱することもできる、自由自在にやっております。そうして罰則規定の中では、これはおそるべきことでありますが、八十九条の中には、「私的独占又は不当な
取引制限の罪」を犯した者に対しては、これは「三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処する。これは第一項の中に「左の各号の一」、これは第一号にありますが、「第三条の規定に違反して私的独占又は不当な
取引制限をした者」、これは三年以下の懲役、五十万円以下の罰金というような、このような重き罪科を科することによりまして、少なくとも自由にして公正なる競争の上に立って公正なる
経済秩序を確立すること、これを
経済憲章たる独禁法は厳然として規定をいたしておるのでございます。
私は、このような明白かつ単純な論理が
金融機関によって正しく認識されていないということは、このことは公取を含め監督官庁たる
大蔵省の職務怠慢のそしりは免れないと思いまするけれ
ども、同時に、少なくとも公共性高き使命をになわれておりまする
金融機関当事者がみずからこのような
法律をそしゃく玩味されて、
銀行の
業務はいかに行なうべきであるかというその自覚の上に立ってみずから適切な
措置を講じられていないということは、きわめて遺憾の意を表せざるを得ないのでございます。ただいま
堀委員の御
質問に答えられた事後
措置なんかも、たとえば相銀
方式によりますと総
預金の三〇%までの
歩積み、両
建てですね。それからまた全銀連
方式によりますると、
債務者預金の中の一六%までの
歩積み、両
建てですね。これが何となく容認されるような方向にあるのでございます。これが制度化されるとは申しませんけれ
ども、ほどほどのことならばいいであろう、この
程度を越すものはこれをなくしていこう、こういうことでございまするから、いわばこれは
程度の問題として扱われておる。きわめてこれは遺憾であるばかりでなく、明らかに
法律違反の事柄であろうと思うのでございます。私は両代表に特に御判断を願いたいと思いますることは、わが国は
法律によって政治が行なわれておりまするし、国民は
法律に基づいて行動しなければなりません。したがいまして、刑法によって、放火をしてはならない、放火をした者はこういう刑事罰に処するとなっておりますると、どんな住家にでも放火してはならないのでございます。あるいは、豚小屋であろうと鶏小屋であろうと放火してはいけないのでございます。どろぼうしたら窃盗だということになれば、五十円盗んでも七十円盗んでもこれはどろぼうでございます。でございまするから、
程度がほどほどであるならばいいということは、火つけも小さいぼやならば放火罪にならぬとか、こそどろならどろぼうにならぬとか、そういうことではないのでございます。このことは本
委員会においてすでに長い間真剣になって論じ合ってまいったことでございますから、十分ひとつ御銘記に願いたいと思うのでございます。私がはなはだ遺憾に思いますることは、あなたのほうの事後通達、これは私は全銀のも相銀のも全部拝見をいたしておるのでございまするが、こと
ごとく不当な
歩積み、両
建てという文言はお用いになっておりません。われわれが指摘しておりまする問題点は、過当な
歩積み、両
建てではございません。過当な
歩積み、両
建てのことを論じておるのではございません。過当なものもとよりいけません。けれ
ども、われわれが本質的に論じておりまするのは不当な
歩積み、両
建てである。すなわちみずからが相手方に対して優越する地位を悪用して正常なる
商習慣に照らしまして相手方に不利な
取引をしいるの行為、これは独禁法違反の行為であるから、やめなければならない行為であると私
どもはこれを指摘しております。すなわち不当な
歩積み、両
建てとはそれでございます。それは過当であるとか何とかいう問題じゃございません。一個の不当
取引でもこれはいけないのでございます。しかるに、不当な
歩積み、両
建てについては何ら触れることなくして過当なものだけを指摘して事後の対象とされておりまするその
理由は何でございまするか、その点についてひとつ御見解をお示し願いたいと思います。