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1964-03-26 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十九年三月二十六日(木曜日) 午前十時四十分
開議
出席委員
委員長
山中
貞則
君
理事
原田 憲君
理事
藤井 勝志君
理事
坊 秀男君
理事
吉田 重延君
理事
有馬 輝武君
理事
堀 昌雄君
理事
武藤 山治君 天野 公義君 伊東 正義君
岩動
道行君 大泉 寛三君
大久保武雄
君 奥野
誠亮
君 押谷 富三君 金子 一平君
木村
剛輔君
木村武千代
君 小山 省二君 島村 一郎君 砂田 重民君 田澤 吉郎君 濱田 幸雄君 福田
繁芳
君 藤枝
泉介
君
渡辺美智雄
君 卜部 政巳君 岡 良一君
佐藤觀次郎
君
田中
武夫君 只松 祐治君 野原 覺君 日野 吉夫君 平林 剛君 松平 忠久君 春日 一幸君 竹本 孫一君
出席政府委員
大蔵政務次官
纐纈 彌三君
大蔵事務官
(
銀行局長
)
高橋
俊英君
委員外
の
出席者
参 考 人 (
日本銀行
総 裁)
山際
正道君 専 門 員 抜井 光三君
—————————————
三月二十六日
委員木村剛輔君及び渡辺美智雄
君
辞任
につき、 その
補欠
として
馬場元治
君及び
中村梅吉
君が議 長の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員中村梅吉
君及び
馬場元治
君
辞任
につき、そ の
補欠
として
渡辺美智雄
君及び
木村剛輔君
が議 長の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
金融
に関する件 ————◇—————
山中貞則
1
○
山中委員長
これより
会議
を開きます。
金融
に関する件について
調査
を進めます。 本日は
山際日本銀行総裁
が
参考人
として
出席
しておられます。
参考人
には御多用中のところ御
出席
をいただき、ありがとうございます。 まず今回の
公定歩合引き上げ
に関する諸問題について
山際総裁
から御
意見
を述べていただき、そのあとに
質疑
を行なうことといたします。 では
山際総裁
にお願いいたします。
山際正道
2
○
山際参考人
御
承知
のとおりに、
日本銀行
では去る三月十七日に
公定歩合日歩
二厘
引き上げ
を決定いたしまして、翌十八日から実施いたしたのでありますが、ここに至るまでの
経済金融情勢
の
推移等
につきまして、
概略
を御説明申し上げたいと存じます。
わが国
の
経済
は、昨年初めから景気が
上昇
に転じましたけれ
ども
、以後
生産
はかなりの勢いで
増勢
を示しまして、このために
国際収支面
では、昨年
夏あたり
から
貿易収支
が、輸出の好調にもかかわらず、
生産増加
に伴う
原材料等
の
輸入需要増大
によりまして、
基調
的な
赤字
に転化いたしたのでございます。これに加えまして、
貿易外収支
の
構造的赤字増大
や、米国の
金利平衡税法案
の提出に伴う
長期資本流入
の頭打ちな
ども
懸念
されまして、
経常収支
に
長期資本
の
流入
を加味いたしましたいわゆる
基礎的収支
におきましても、昨年十月以降は
赤字
に転ずるに至ったのでございます。また
物価
の面におきましても、
消費者物価
が三十六年以来最近まで一貫して
騰勢
を持続し、
通貨価値
の安定という見地から見ましても、見のがすことのできない問題と
考え
られるに至ったのでございます。 かかる
情勢
にかんがみまして、
日本銀行
は昨年秋以来、
債券売買操作等
を
引き締め
がちに運営いたしまして、
金融政策
の運営を全体として
引き締め基調
に移してまいったのでありまするが、
事態
の
推移
にかんがみまして、昨年の十二月に
預金準備率
の
引き上げ
を行ない、
日本銀行
として、はっきり
金融引き締め
に転じたことを宣明いたした次第でございます。さらに本年一月に入りまして、
銀行
の
貸し出し増加額
を一定のワク内に押えまして、その
措置
を実施することによって、
銀行信用
の
膨張
を
抑制
することといたしたのでございます。私
ども
といたしましては、昨年来の
生産
の
増勢
には、
銀行貸し出し
の
増加
がかなり影響しておる点を重視いたしまして、当面は以上の
措置
によって
銀行貸し出し態度
を是正し、それを通じて
生産
の落ちつき、
輸入
の減少を期待しながら、なお
注意
深く
事態
の進展を見守ってまいったものでございます。この結果、
銀行
の
貸し出し態度
につきましては、年明け後引き締まりの方向に転じつつあるやにうかがえるのでありまするが、それにもかかわらず現在に至るまで
企業
の根強い
増産態度
には、まだ
慎重化
の気配が明白にうかがわれませんで、これがために
生産
は引き続いて
増勢基調
を持続しておりまして、
輸入
もまたその
増勢
に格別の
変化
が見られるまでには至っていないのでございます。
引き締め措置
がとられました後も、
生産
がかように衰えを見せないという
原因
につきましては、昨年来の
銀行貸し出し増高
の結果、現在
企業
の
手元流動資金
がかなり潤沢となっておる、また
企業金融
上、まだそれほどの逼迫を感ずるに至っていないという
状態
にあると同時に、いわゆる
企業間信用
の
膨張
が相当可能な
状態
にあったこと、並びに最近における
企業
の
損益分岐点
の高まりや
市場シェア拡大意識
の強まり等から、
企業
がその
増産態度
をなかなか改めるに至っていないということなどに、その
原因
があろうかと思われます。 かかる
情勢
にかんがみまして、
日本銀行
は、まず季節的に
金融市場
の引きゆるみます四月−六月につきまして、
債券
の売り戻しを若干多目に行なうことによって、
金融市場
が一−三月に引き続いて引き締まりぎみに
推移
するように運営していく方針を固めたのでありますが、さらに
引き締め政策
の
徹底
をはかるために、冒頭に申し上げましたとおり、今般
公定歩合
の二厘
引き上げ
を実施いたした次第でございます。今回の
公定歩合引き上げ措置
は、昨年末以来の
引き締め政策
の円滑な浸透をはからんとしたものではありますが、基本的には、
わが国
が四月一日からIMF八条国に移行し、いよいよいわゆる
開放経済
に入るにあたりまして、現在の
国際収支
の
基調
をなるべくすみやかに
改善
いたし、もって円の信任をより強固ならしめんとするところにあったのでございます。
日本銀行
としては、今回の
措置
によりまして、
引き締め
の
効果
がなるべくすみやかに浸透し、
国際収支
の
改善
、
物価
の安定がはかられんことを期待いたしておる次第でございます。
政府
におきましても、
輸入担保率
の
引き上げ
、
現地貸し
の
規制等
、
各般
の
措置
を応じられつつありまして、この点私
ども
としても意を強くいたしておる次第でございます。私は、
産業界
及び
金融界
が今回の
措置
の意図するところを十分理解されまして、これに協力が得られまするならば、必ずや所期の
効果
が実現せられまして、
事態
の
改善
を見るものと確信をいたしておる次第でございます。 ただ今回の
引き締め
は、過去におけるように、
在庫
の
調整
とか
設備投資
の
抑制
とかを通じて、
引き締め
の
効果
が比較的すみやかにあらわれました場合と違いまして、現在の
わが国
の
経済
が、かつて経験しなかったような種々のむずかしい問題をかかえておりまするので、その
調整
には十分な決意を持って当たることが必要であろうと
考え
ておる次第でございます。たとえば最近の
生産
の
増勢
は、
在庫投資
や
設備投資
が過熱的に
膨張
しておるということによってもたらされたものではなく、
個人消費
や官公庁の
需要
な
ども
含めて、
需要
が全体として根強くふえつつあるというためでありまするし、また
企業
の側でも、これまでの巨額な
設備投資
の結果、いわゆる
損益分岐点
が趨勢的に高まってきておりまするので、収益上
操業度
を落としにくいという
事情
にあることも、その
原因
になっておるように思います。
国際収支面
におきましても、
貿易収支
については、
金融引き締め
によってその均衡をはかり得ることと信じておりまするが、それにしても最近の
輸入
には思惑的な
在庫積み増し
のための
輸入
が少なく、反面
消費財
の
輸入
が従来に比べてその比重を高めてきておりますので、過去の
引き締め
時のような
輸入
が急速に減ることを期待しにくいという
事情
もあるように思います。さらに最近の
国際収支
の
悪化要因
のうちには、
貿易外収支
の
構造的赤字増大
という問題も含まれておるのでありまして、
貿易外収支
を含めて、
経常収支
を全体として
改善
せんとするためには、
各般
の
施策
が並行して講ぜられることが望ましいと
考え
ております。 また
消費者物価
の
騰勢
につきましても、その
抑制
のためには、基本的には何と申しましても
金融政策
による総
需要
の
調整
が前提とならねばならぬことはむろんでありまするが、
消費者物価
の
上昇
は、単なる
商品受給
上のアンバランスによるものばかりではなく、
労働需給構造
の
変化
とか、一部
消費財
の
供給体制
や
中小企業
の
生産性向上
の立ちおくれとかいったような
原因
に基づく面も少なくないのでありまするから、その面における対策につきましても今後十分に検討してまいる必要があるものと
考え
ております。 今回の
引き締め
にあたりまして、私
ども
としては特に
中小企業
の問題に深甚な
注意
を払ってまいっております。
解放経済
への移行、
労働需給構造
の
変化
に伴い、
中小企業
の
合理化
、
近代化
は、単に
中小企業
にとって死活の問題であるにとどまらず、
わが国経済
にとり喫緊の
要請
でもあるものと信じております。また
引き締め
のしわが
中小企業
に寄せられる
懸念
もないといたしませんので、
日本銀行
といたしましては、
引き締め
の
しわ寄せ
によって、健全な
中小企業
が破綻を生ずるようなことは絶対避けなければならぬと
考え
ておりまして、この点はすでに
引き締め開始
後再三再四、本
行本支店等
に対してはむろんのこと、各
金融機関
に対しましても、
中小企業金融
に十分な
配慮
を払うように
要請
を続けており、またその
趣旨
で指導をいたしてまいっておるのでありまするが、今後ともその
金融
問題につきましては、できる限りの
配慮
を続けたいと
考え
ております。この点につきましては、
政府
においても各種の
措置
を講ぜられておるのでありまするが、私
ども
といたしましても、
政府
と
十分連絡
をとりつつ、万遺憾なきを期してまいる
覚悟
でございます。このようにわれわれの当面する問題は、なかなかむずかしい問題が多いのでありまするが、
日本銀行
としては
政府
と協力しながら、
事態
の
改善
にできる得る限りの努力を続けてまいる
覚悟
でございます。ことに
開放経済
を迎えるにあたりまして、
経済
の
安定的成長
を維持するために、
中央銀行
の責務が一段と増大してまいります点につきましては、私
ども
といたしましても、この際
覚悟
を新たにいたしておる次第でございます。今後とも
事態
の
推移
に応じまして、
金融政策
を十分弾力的に適実に運用いたしてまいりたい
考え
でおります。同時にまた
経済界
及び
国民一般
におかれましても、
わが国
が現在当面しておる
事態
の
重要性
を十分認識せられまして、貯蓄の増強、
消費
の節約、
国産品
の
普及等
の面からも、
事態
の
改善
に協力せられんことを要望いたしておる次第でございます。 以上、最近の
経済
、
金融情勢
の
推移
につきまして、
概略
を御説明申し上げました次第でございます。
山中貞則
3
○
山中委員長
続いて
質疑
に入ります。 通告がありますので、順次これを許します。
佐藤觀次郎
君。
佐藤觀次郎
4
○
佐藤
(觀)
委員
山際総裁
から最近の
経済状況
の御説明がございましたが、その前に重要な問題は、最近
田中大蔵大臣
からもいろいろ
意見
がございまして、
中央銀行
としての
日本銀行
の
あり方
について、
日銀法改正
ということが問題になっております。これは伝えられるところによりますと、
田中大蔵大臣
ばかりでなく、やはり当の
山際
さんも、現在の
中央銀行
の
あり方
についての
改正
の
意見
を持っておられるという話でございますが、私たちの
考え
方とすれば、まあ
山際
さんは
日銀
の最後の牙城であるというように
考え
ておるわけでございまして、あなたがもし
日銀法
の
改正
を意図されるというならば、一体いまの
田中大蔵大臣
と同じ
意見
で
改正
をされるのか。これは
金利
の問題、
金融
の問題に関しまして、非常に大きな重要な問題がございますので、その率直な御
意見
をまず伺いたいと思います。
山際正道
5
○
山際参考人
私は過日、参議院の
予算委員会
におきまして、
戸叶委員
からの御
質問
がございまして、
日本銀行法
を
改正
することについてどう思うかという
お尋ね
でございましたので、私は、
内容
を申し述べる機会はございませんでしたけれ
ども
、
日本銀行法
を
改正
することは必要だと
考え
るということを申し述べたのでございますが、その一番感じております要点は、はなはだ私事で恐縮でありますが、
日本銀行法
は
昭和
十七年に、私が当時
大蔵省
の
銀行局長
をいたしておりまして、立案の衝に当たりましたものでございますから、何分にもすでに太平洋戦争に突入をいたしまして、この
体制
に対処するために——当時は御
承知
のとおり
国家総動員体制
でありました。そのもとにおいて最も有効に
中央銀行
が働くためには、どうしたらよろしいかという
観点
が主になりましてできましたいわゆる
戦時立法的色彩
が非常に強い
法律
でございます。条文をごらんになりますと、もう第一条からその
趣旨
はおわかりだろうと思いまするが、戦争を終了いたしましてすでに二十年に近く、しかもその途中におきまして相当重要な
改正
がございました。しかしそれは非常に部分的でございまして、すなわちそれは、
日本銀行政策委員会
というものをあの
法律
の中に入れておるのでございます。そうして相当の
自主性
をこの
政策委員会
に与えまして、戦後の
事態
に対応するようにということになっておるのでございまするが、あたかも木に竹をついだような、
ていさい
上のつながりの十分でないところがございます。全体といたしまして現在の
日本銀行法
は、いかにも古めかしい
装い
でございまするので、戦後の
体制
、なかんずく
開放経済
の
体制
に入っていこうという際の
中央銀行
の
法律
といたしましては、いろいろ検討を要する点もあり、また全体としての
装い
が、
総動員体制
は当然に排除すべきものでありまするので、それらの点からいたしまして、この
日本銀行法
の
改正
の必要はつとに感じておった次第でございます。すでに御
承知
のとおり、
昭和
三十五年でございましたか、
金融制度調査会
にこの
改正
の議が付議せられまして、両三年にわたりまして非常に詳細な
調査
が進められておったのでございます。しかしなかなか結論に到達いたしませんで、今日までに至っておるのでございまするが、私はこの新しい
一つ
の段階を迎えました際に、その新しい
観点
をも加えまして、もう一ぺん再検討いたすことは必要だろうと
考え
ております。
佐藤觀次郎
6
○
佐藤
(觀)
委員
金融
で大事なことは、御
承知
のように
日本銀行
の
中立性
ということが第一にあげられると思うのでございますが、これはイギリスのイングランド
銀行
などは、
中央銀行
は御
承知
のように非常に力強くその機能を発揮しておりますが、どうもこの間
田中大蔵大臣
は、
銀行
の
金融政策
というものがある以上は、
責任政治
だから、当然
政府
が
責任
を負うべきだというような御
意見
がありまして、あなたのいままで言っておられる
日本銀行
の
中立性
ということについては、それを認めないような
ことば
がございました。あなたが改革されるという
日銀法
の
改正
の中には、
日本銀行
の
中立性
という問題については、どんなようなお
考え
を持っておられますか、伺っておきたいと思います。
山際正道
7
○
山際参考人
田中大蔵大臣
からいろいろ御発言があったということでございまするが、実はこれらの点につきましても、まだ私は
内容
についてお話し合いをいたしておりません。私の
考え
ておりまする限りのことで申し上げまするならば、私は
日本銀行
の
中立性
を保持するという点をもっとはっきり書く、あるいはまた
通貨
の安定といったような表現を十分に表明するということは、今後の
中央銀行
の
あり方
としてふさわしいことであると
考え
ておるのであります。むろんそれに対する
政府
の一般的な
監督権
は、これはむろん保持せらるべきでありましようけれ
ども
、
日本銀行自体
として、
中央銀行
としての権能を
法律
によって中立的にお認め願うということは、今後の
経済体制
を
考え
てまいります上からいたしましても、私は最もよい
体制
ではないかと
考え
ております。
佐藤觀次郎
8
○
佐藤
(觀)
委員
ちょっと話が飛ぶのでありますが、きのう
山際総裁
は
新聞記者会見
の中で、いま
大蔵委員会
で問題になっております
歩積み
、両
建て
の問題について、
政府
がいろいろ
規制
をしなくても、
炭行
の内部のほうで自分からやったらどうかというような御
意見
が述べられております。しかし今日まで
大蔵省
の
銀行局
を通じて、
歩積み
、両
建て
についてはたびたび指令や
注意
があったにかかわらず、いまなおその根絶ができないという
現状
でございます。
総裁
の
考え
られるようななまぬるいことで、いまの
歩積み
、両
建て
というものがなくなるものであるかどうか。このことについては、御
意見
があろうと思いますが、その点はどういうようにお
考え
になっておりますか。これは現在の重要な問題でありますので、
総裁
から伺っておきたいと思います。
山際正道
9
○
山際参考人
金融機関
の
歩積み
、両
建て
の問題につきましては、昨年の秋でありましたか、私が当
委員会
に伺いましたときに
お尋ね
がございました。私は、これは実質的に
中小企業等
の
金利負担
を減少する意味において、ぜひとも実行する必要があるという
考え
を申し上げました。その後、この問題が
渡辺公取委員長
の
意見陳述
にからみまして、
公正取引委員会
の問題にも現在なっておりますことは、御
承知
のとおりでございます。私
ども
もできるだけ
公取
や
大蔵省
とも協調をいたし、また十分その一緒の
調査等
にも参加いたしまして、この問題の絶滅を期しつつあるわけでございますが、どうも思いますのに、なかなか
経済
的な環境という点が大きく関係いたしまして、
法律
の
規定
だけでは、十全の
効果
を期待しにくい。根本は、
金融機関
がその使命を自覚いたしまして、こういうことをするのは恥とするという
状態
まで持っていきませんと、その
節度
を越えたような
歩積み
、両
建て
をなくするということは、なかなかむずかしい問題ではないかと思います。これを
法律
的にはっきり書きまして、こういうものはいい、こういうものは悪いということが網羅的に書けますれば、これも
一つ
の
方法
だろうと思いますが、
ことば
の性質上、
節度
の問題、程度の問題という部分が非常に多いものでありますから、これはなかなか実は処理しにくいであろうと
考え
ております。私もいろいろな点で、この問題を消滅いたしますることにはきわめて賛成でございますので、私
ども
といたしましては、
金融機関
がほんとうに自覚をいたしまして、みずから
自粛自戒
をいたしまして、
節度
を越えたこの種のものをしないということになりますならば、実は一番望ましい形だと思いますので、その点を力説しておるような次第でございます。
佐藤觀次郎
10
○
佐藤
(觀)
委員
山際
さんは善意な第三者の
ことば
で申されるのでございますが、ここにも
高橋銀行局長
が来ておりますが、この問題は
先国会
から
大蔵委員会
で問題になりまして、
歩積み
、両
建て
をどうやってやめさせるべきかということについて、われわれのほうも
金融小委員会
を開いて討論したり、いろいろやっておりますが、いまの
時代
というのは、昔の
時代
と違いまして、簡単に上のほうからこういうことを命令するからとか、こういうことをやるからと言って、なかなか実行しにくい。ましていま
総裁
がおっしゃるように自粛すべきだと言っても、いまの
時世
はそんな甘っちょろい
時世
ではないと思うのです。これは
山際
さん御
承知
のように、ずっと長い
間大蔵省
におられて、いろいろその衝に当たられた方でございますから、むしろその昔と現在と比べますと、いろいろ御
意見
があると思うのでございますが、こういう
中小企業
を痛めつけるような、法にかなわぬような
歩積み
、両
建て
という問題は、やはり何らかの形でやめさせなければならぬと思うのでございますが、これについてのそういう消極的な
意見
じゃなくて、何かこうやればこうなるのじゃないかというような名案がおありかどうか、この際承っておきたいと思います。
山際正道
11
○
山際参考人
歩積み
、両
建て
の
状態
を、
節度
を越えて実行しておりますものに対しまして、これを法制的に
規制
するということは、それも
一つ
のお
考え
であろうと実は
考え
ておりますが、私も幾たびかその問題を
考え
てみましたけれ
ども
、これはなかなか法制的に
規制
するようなうまい文言が、実はまだ浮かび上がっておりません。
公正取引委員会
の
措置
によってやるということも、むろん
一つ
の
方法
でありましょうし、また御指摘のようにうまい
規定
の
方法
がありますれば、これによって
規制
の基準を立てるということも否定すべきではないと思いますけれ
ども
、これはなかなか
徹底
を欠くので、要は一番大事なのは、
金融機関自身
がそういうことをしない、そういうことをするのは恥だという気分に持っていくことが、根本的な解決だろうと実は思っておりますのですから、むろん私
ども
は、
政府
並びに
公取
と協調いたしまして、この問題の
調査
に当たっておるが、ただいま私
ども
の
立場
におきましては、いま申し上げましたようなことで、なかなか法制的のうまい
制度
はちょっとまだ思いついていないという
状態
でございます。
佐藤觀次郎
12
○
佐藤
(觀)
委員
いろいろ
同僚委員
からも
質問
があると思うのでございますが、これは権威のある
日本銀行
の
立場
として、こういうような慣習が早くなくなって、そういうような
金融界
に
歩積み
、両
建て
というようなことが早くなくなるような
施策
を、ぜひひとつやってもらいたいと思うのであります。 それから先ほど
金利調整
の問題でいろいろ御
意見
がありましたが、御
承知
のようにこの一月、二月は、
日本
では戦後
最高
の
倒産者
も出ておるし、それから
不渡り手形
も出ております。これは一昨年の
金融ストップ
以来、いろいろな経緯がありましたが、私は少なくともこういう問題は、やはり
高度成長
という
一つ
の急激な
計画経済
のような形が生まれて、そのためにいろいろひずみがここに出てきておると思うのでございますが、いまの
経済事情
では、先ほ
ども
総裁
が言われましたように
国際収支
、
貿易外収支
の
赤字
が非常に多いので、なかなか黒字にならぬ。しかも
中小企業
は統計にあらわれているだけでも、
最高
であると同時に、実際にはもっともっと憂慮されるような
現状
でございます。そういうような場合に
公定歩合
の
引き上げ
をやられたのでございますが、その
しわ寄せ
が大きな
企業
に行かないで、
中小企業
にどんどんそのひずみが行くのではないか。おそらく三月
危機
をかすかにのがれて、また五月、六月ごろにその
経済危機
があるのではないかということがいわれております。これは架空的なことでなく、現実にそういうような形が出てくるのじゃないかということが心配されておりますが、
総裁
はそのことをどのように解釈されておりますか。お伺いしたいと思います。
山際正道
13
○
山際参考人
最近起こっておりまするいろいろな
経済
上の困難な問題は、
経済成長
が過去において非常に早過ぎたということから生ずる
一つ
のひずみであったことは私は否定いたしません。できればこのひずみを矯正することによりまして、
経済成長
を安定的に継続したいというのがわれわれの念願でございます。その
調整策
を講じます場合に、ややもすれば
中小企業
への
しわ寄せ
が起こりはせぬかということは、実は私も最初から
懸念
をいたしておった点でございます。したがいまして昨年の十二月にいよいよ
日本銀行
が
引き締め政策
に転換するという際に、特に私はこの点を念を押しまして、また
中小企業関係
の
金融機関
の人々にもお集まりを願って、特に
中小企業
への
しわ寄せ
が過当に、当然及ぶべからざるものにまで及ぶことがあっては、これはまかりならぬことであるから、
十分配慮
を願いたいということをお願いいたしており、またその後も機会あるごとにそれを
要請
いたしておるのでございます。のみならず、私は特にその点を
考え
まして、直ちに全
本支店
へ通知をいたしまして、どうか今回の場合においては、特に労をいとわず個々の
一つ一つ
の相談に応じて、極力健全なる
企業
が巻き込まれていくことのないように
配慮
をしてもらいたい、所在の
金融機関
と十分な
連絡
をとって、万遺憾なきを期してもらいたいということを、繰り返し実は
要請
いたしております。及ぶ限りのことは、これらの
本支店
におきまして実行せられつつあると思うのでありますが、ただいま御指摘のようにやや倒産、不渡り等の目立つ
状態
にありますことは、まことに遺憾であります。しかし今後もなおこの点は十分に配意いたしまして、いつも申しております
ことば
でありまするが、最小限度の摩擦、最小限度の犠牲においてこの
調整
を実行したい、かような
配慮
をいたしておる次第でございます。
佐藤觀次郎
14
○
佐藤
(觀)
委員
公定歩合
の
引き上げ
ということでなくて、そのほかにもいろいろな
原因
があって、今日必ずしも楽観はできないような
経済
情勢
になっておりますが、今度の
公定歩合
の
引き上げ
については、昨年の国会におきましても
総裁
に私が
質問
いたしましたときにも、
公定歩合
の
引き上げ
については、
総裁
としてはあり得るような
考え
を受けとめたのでありますが、ただ問題は御
承知
のように、
田中大蔵大臣
、いわゆる池田
経済
政策
というのは低
金利
政策
をやっておった手前、
日銀
の
山際
さんたちのお
考え
のような方向に持っていくまでには、いろいろな困難があったというようなことを承っておるわけでございますが、今度の
公定歩合
の
引き上げ
の問題について、
政府
とどのような折衝があったか。
公定歩合
の
引き上げ
は、
日銀
独立でやることになっておりますけれ
ども
、何といっても
金融
の大きな問題になるのは、
大蔵省
側に
責任
があるので、当然そういう問題があると思うのでありますが、そういう点については世間にいろいろ伝えられております。まことに言いにくい話でございますが、
山際
さんは自分の職を賭して戦ったといわれております。これはいままでのいきさつ上、良心のある
山際
さんが当然施行すべきことをやっただけだと思うのでありますが、そういうような点について、できるだけのいきさつや御
意見
をこの際承っておきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
山際正道
15
○
山際参考人
昨年の暮れでありましたか、私も当
委員会
に出頭いたしまして、いま
お尋ね
の点についてお答えをいたしたことがあったかと記帳いたしまするが、その際に、やはり
経済
調整
の手段として
金利
操作を行なうということも、むろん
一つ
の
方法
として
考え
るのであるけれ
ども
、全体として見渡すと、何となく現在の
日本
経済
の
状態
には、その基盤において強固でない点がある。したがってあまり大きなカーブを切るということは、これは思わぬ破綻を生ぜしめる、誘発するおそれがあるから、なるべくそこのところは、できるだけは回避したいという
趣旨
のことを申し上げたように思うのでございます。むろん脆弱な基盤ということの中には、単に
中小企業
ばかりでなく、相当大
企業
等も含んで、全体として
日本
経済
の基盤がそれほど強固にはなっていないということをおそれたわけでございました。自来すでに数カ月たっておりまして、すでに
引き締め
の
体制
には
産業界
もある程度の
覚悟
を固め、またそれに処するの道につきましても、大体
体制
を整えつつある段階にきたと
考え
ましたので、
開放経済
に入るに先立ちまして、この時期においてこの
金利
操作を用いますことは、全体としての
調整
の
効果
をあげるにおいて適当であるという判断で、実はいたしたような次第でございます。事柄の性質上、私は常に
金利
操作の点につきましては
政府
と
意見
の
調整
をしながら、今日まで参っております。過去において私は、自身十数回も
金利
操作をいたしましたが、いずれの場合においても、常に
政府
と完全な
意見
の一致に到達いたしました上で実行いたしておりますので、今回の場合でもまたそのとおりでございます。何ぶんにも事柄の性質上、きわめて機密裏に進行いたす
措置
でございますから、巷間いろいろな憶測も行なわれておるようでありますが、やはり私は、従来どおりの
考え
方と従来どおりの
措置
で、今回の実行をいたしたのでございます。
政府
との関連
意見
の
調整
等につきましては、御
承知
のように本行の事務当局は、一定機関におきまして、
大蔵省
の事務当局と常時折衝をいたして、
意見
の
調整
や
時代
の分析
調査
を続けておりますし、また常時開いております
政策委員会
には、
大蔵省
代表として
委員
が列席しておられます。私もまた
大蔵省
首脳部等ともしばしば会見をいたしておりまして、
情勢
等の
推移
をお互いに
意見
を述べ合い、またこれに対処する方策について話し合いをする機会は十分にあるわけでございまして、だんだんにその
意見
が近づき、その機運が醸成されまして、今回の
公定歩合引き上げ
ということになったわけでございますので、その間の過程におきましては、十分にその議を尽くして、
意見
の一致を見たと御理解を願ってけっこうだと思います。
佐藤觀次郎
16
○
佐藤
(觀)
委員
御
承知
のように
日本
の
金利
は、世界で一番高いといわれております。そこでいままで低
金利
政策
が
政府
でもとられ、また今度のいきさつについては、特に池田総理、それから
田中大蔵大臣
も、
金利
の
引き上げ
、
公定歩合
の
引き上げ
ということを、極力避けるような態度でございましたが、もし
総裁
の言うとおりに早くやれば、
公定歩合
一厘の
引き上げ
で終わったのではないか、おくれたために、
政府
がじゃまをしたから、かえって二厘の値上げをせざるを得なかったというような、こういう声もあるわけでございますが、この点についてはどのように
考え
ておられますか、承っておきたいと思います。
山際正道
17
○
山際参考人
私は、
政府
が唱えておられるいわゆる低
金利
政策
と、
日本銀行
が
経済
調整
の手段として行ないます
金利
の操作の問題とは、別の事柄であろうかと実は思っておるわけであります。一番大きな違いは、
政府
のいう低
金利
政策
は、比較的長期の趨勢といたしまして
金利
の水準を下げていこうというお
考え
だろうと思うのであります。
日本銀行
が行ないます
金利
操作は、むしろ短期的に、景気の波なり
経済
のひずみを
調整
するという
措置
でございます。おのずからその目的とするところは異なっておろうかと
考え
るわけであります。この意味におきまして私は、低
金利
政策
の、あるいは修正であるとか、あるいはその撤回であるとかいったような
意見
は、実は
政府
との折衝においても聞いておりません。でありますから、折衝の過程においてはその種の問題は別に起きませんで、私は
政府
のいわゆる低
金利
政策
というのは、そういう
趣旨
のものと理解をいたしまして、
日本銀行
の
金利
操作自身には、支障のない事柄であろうと
考え
てまいった次第でございます。
佐藤觀次郎
18
○
佐藤
(觀)
委員
時間がありませんから、あとは同僚の議員からいろいろ
質問
があるかと思いますから、それ以上はこの問題について言いませんが、もう
一つ
問題になっておりますのは、
銀行
の合併論であります。御
承知
のように
田中大蔵大臣
の
考え
方は、
日銀法
の
改正
と
銀行
の合併論——
銀行
合併論ということで問題になりまして、先日も御
承知
のように第一
銀行
と朝日
銀行
が合併して、これについていろいろ波紋を与えておりますが、
総裁
は
銀行
の合併のことについてどのようにお
考え
になっておりますか、その点もひとつ伺っておきたいと思います。
山際正道
19
○
山際参考人
経済
全体を安定的に成長させる上、もしくは
調整
を加える上において、
企業
の合併提携等の問題は、これはやはり行なわるべき
調整
手段だろうと
考え
ております。むろんその意味におきまして、
金融機関
もその例外ではあり得ないと
考え
ます。ただ沿革的に
考え
ますと、戦前、戦時中を通じまして、
金融機関
の合併ということは相当促進されております。そこで自来今日まで、そうたいして新しいものもふえておりませんので、いわゆる合併をいたしましても、なおかつ、あとそれが積極的にプラスになるような条件を備えた
銀行
の対峙というものは、私は現在の
銀行
界には比較的少ないと
考え
ております。合併は、もちろんそれによって
金融
能力がふえ、また十分
経済
的な奉仕の役割りがふえるような合併でなければ、意味をなさぬわけであります。したがって一番大事なことは、その合併をしようとする当事者間に十分その
趣旨
の理解があり、それによって能率が増進するという場合が、最もふさわしいことであろうと思うのであります。この意味におきまして私はむろん、当事者の見解におきましてその種の基準に合致いたしますものにつきましては、これは大いに促進、協力するのがよろしいと
考え
ておりますが、
現状
から
考え
まして、強制的に合併を促進する段階にはないのではないかというふうに判断をしておるわけでありまして、当事者の十分な成算のもとに行なう合併
措置
については、これはむろん協力すべきものと
考え
ております。
佐藤觀次郎
20
○
佐藤
(觀)
委員
御
承知
のように戦前から戦後にいろいろ
銀行
法の
改正
がございまして、各県、各地方地方に応じて適当な
銀行
の割り当てをやるような
政策
がとられました。昔の
銀行
というのは、——最近はだいぶ昔と変わらなくなってまいりましたけれ
ども
、大
銀行
というものはいろいろその首脳部が変わったり、それから
銀行
の組織というものは変わったような
状態
が出てまいったのであります。そこで
大蔵省
は、——いままでは
銀行
の
あり方
を、なるべく合併をすすめないで、できるだけ独立した
銀行
としての整理をしてきたのでございますが、最近は、大蔵大臣がそういう主張をしてきたのには、何か理由があるのじゃないか。少なくとも
銀行
の新しい編成ということになってきたのじゃないかと思われますが、その
原因
は、ただいま産業の合同ということもあるということも申されましたけれ
ども
、何かそこに意図的な問題があるのじゃないか、私たちはそういうふうに
考え
ますが、
総裁
はどのようにお
考え
になっておられますか、これも承っておきたいと思います。
山際正道
21
○
山際参考人
各種の理由もありましょうけれ
ども
、私が最も重点を置いて理解しておりまする点は、
銀行
間における過当競争というものが相当熾烈にあるということが指摘されております。その過当競争の弊害を除去するためには、やはり合併という
方法
が
一つ
の有力な手段としてあり得るのではないかという点が、その理論の基本をなしておるのではないかと思うのであります。むろんそういう場合も私はあり得ると
考え
ますけれ
ども
、いずれにいたしましても、今日までの成立の経過を経ました
銀行
の
現状
から申しますると、よほど当事者間に十分協力、協調の意思がございませんと、かえってその合併が後にあだをするということもあり得ることでございますから、これは慎重に計らうべきであろうと
考え
ております。
佐藤觀次郎
22
○
佐藤
(觀)
委員
もう一点お伺いしたいのですが、御
承知
のように
日本
の
銀行
は——この前も
高橋銀行局長
に話したのですが、大
銀行
は本店はむろんのこと、支店の
銀行
でも町の中枢部、たとえば銀座とか
日本
橋とか、中枢部の一番目抜きのところに大きな支店を設けて、本店に劣らないような大きなあれを求めておる。おそらく世界にはこういう例がないと思うのでございますが、こういう傾向、つまり
銀行
が都市の目抜きの通りを占領して、しかも本店に劣らないような大きな建物を
建て
てやっておるというような
状態
は、世界にはどうもあまり例がないのではないかと思うのでありますが、そういう点について、
日本銀行
はそういう権限もありませんし、そういうことをどうこうせいということは申しませんけれ
ども
、こういう傾向というものは、
銀行
本来の
あり方
として一体順当なものであるか、あるいは外国に比べて、ロンドンとかあるいはパリとかあるいはニューヨークというようなところに比べて、たとえば東京などの大
銀行
の支店があれほど櫛比して出ているというような、この矛盾をわれわれは感ずるのでございますが、そういう点については
山際
さんはどのような
考え
を持っておられますか。これも私はこの間
銀行局長
に伺ったのでございますが、
山際
さんの御
意見
をひとつ承っておきたいと思います。
山際正道
23
○
山際参考人
ただいま御指摘の点は、私
ども
といたしましても平素から実は
銀行
に対して
注意
をいたしておる点でございます。その
趣旨
は、
銀行
がその信用をそのおります目抜きの場所であるとか、あるいは建物の大きさであるとか、内部の装飾がきれいであるとかということによって誇示する、あるいはそれによって信用を増すという
時代
は、もうすでに
日本
は経過しておると思うのであります。もっと預金者は実質的な点に注目いたしまして、
銀行
の良否を判断しておると思うのであります。かたがた
銀行
の資産の運用から申しましても、今日相当多額のものを不動産に固定するということは、運営上もいかがかと実は
考え
ます。さような対外的な
配慮
や、また内部的の資産運営の点からいたしましても、もうそろそろこの辺で従来の
考え
方には、やはり反省を持ってもいいのではないかというふうに実は
考え
ておりますが、
金融界
においても漸次そういう機運は起こりつつあるやに私は察しておりますが、時を経まするならば、漸次その風も改まってまいるかと
考え
ております。
佐藤觀次郎
24
○
佐藤
(觀)
委員
最後に、先ほど
総裁
からいろいろ
経済事情
の必ずしもよくないということと、
国際収支
の黒字ということはなかなかむずかしい問題であるというような、楽観のできないような御
事情
を説明していただきました。そこで今度の
公定歩合
の
引き上げ
で、
金融引き締め
がまた強くなる。そのために必ずしもそのひずみが大
企業
でない、
中小企業
にいくということは、ほぼ想像ができるわけでございます。また一面において、急激に
国際収支
が黒字になる
情勢
もないということになれば、
日本
の
経済
は必ずしも楽観ができない、明るい面は出てこないだろう。同時に
日本
の
国際収支
といま持っておる十八億ドルは、やがて十六億台ぐらいになるのじゃないかという悲観論も出ております。そこで
情勢
がこのままに
推移
してまいりますならば、また再び
公定歩合
の
引き上げ
をやられる、こういうようなことが起きるのじゃないかということをわれわれは
考え
るわけでございますが、現存の
経済
の行き方と、あるいは六、七月の
経済危機
、そういうものとを勘案されまして、再び
公定歩合
の
引き上げ
をやられる御意思があるかどうかということを——これは予測でありますから、いまから
総裁
はおそらくそんなことは知りませんとおっしゃるだろうと思うのですが、このままでどういうような結論になるかということについての御判断なり、またそういうような見通しなりを伺っておきたいと思うのであります。
山際正道
25
○
山際参考人
ただいま御指摘のごとく、現在の
日本
経済
が当面しております段階は、一面においては、
生産
の過当な増大による
国際収支
の悪化ということがある反面において、これの
調整
過程において
中小企業
への
しわ寄せ
ということが非常に
懸念
されるというような、二つのなかなかむずかしい面を持っておることは、御指摘のとおりでございます。それがどうしてもこの二つを巧みに調節しながらまいりませんことには、
日本
経済
全体の立ち直りはなかなか困難であるということになりますので、目下それをやっておるわけでございます。一般的に申しますならば、
金融
は相当強力に
引き締め
ております。その手段としては、
公定歩合
の
引き上げ
であるとか、あるいはその他窓口指導であるとか、あるいは準備率の
引き上げ
であるとか、各種の
方法
を取りまぜてやっておるわけでございますが、他面、特に
中小企業
への
配慮
ということをいたしまして、一面においてこれが巻き込まれませんように、いわゆるその
しわ寄せ
がここに集中いたしませんような
配慮
もやっておるわけでございます。でありますから、単一の事柄で全体を解決するということはなかなか私はむずかしいと思います。そこにいわゆるきめのこまかい
施策
をいたしまして、大筋は
引き締め
でいくけれ
ども
、具体的にこまかい
配慮
によって、そういう特殊な
事態
には備えながら、進んでいくということであろうかと実は思うのであります。 そこで今日の
引き締め
状態
を続けていって、再度
公定歩合
の
引き上げ
によらざるを得ないようなことにならぬかという
お尋ね
でございますが、私
ども
といたしましては、むろんその点は今後の
情勢
次第とは申し上げるわけではありますけれ
ども
、
公定歩合
の
引き上げ
の点に関しましては、実は三十二年の場合も三十六年の場会も、一回の
引き上げ
で大体回復することができました。今回もむろん私といたしましては、この程度の
措置
で回復いたすことを念願し、またそれをめどにいたしまして操作をいたしておりますので、現在の段階において、さらにこれを
引き上げ
なければならぬ
事態
に追い込まれるであろうというような
事態
は、実は予想しておらないのでございます。
佐藤觀次郎
26
○
佐藤
(觀)
委員
山際
さんは、すでに八年近く
日銀
の
総裁
としていろいろ仕事をやっておられるわけですが、
日本銀行
の
中立性
にかんがみ、また今日まで自分の主張をされてやってこられたと思うのでありますが、どうかせっかくの
日銀
の
総裁
でありますから、ひとつ
政府
のいろいろな宣伝や
政府
の
政策
に利用されないように——そんなことはおこがましい話でございますが、断固とした
立場
でやっていただくことを要望いたしまして、私の
質疑
を終わります。
山中貞則
27
○
山中委員長
平林剛君。
平林剛
28
○平林
委員
私は、いま同僚
佐藤
委員
からもいろいろ
お尋ね
がございましたので、初めに
日銀法
の
改正
の問題について、
総裁
の御見解を承っておきたいと思うのであります。 これは先ほどお話がございました
公定歩合
の
引き上げ
措置
をとられた時期、あるいは今日までの
日銀
の態度などから見まして、
日銀
の
中立性
、
自主性
というのは、今後もきわめて重要な地位を占めるだろうと私は
考え
ますものですから、今度の国会におきまして、あなたがお話しになりました
日銀法
の
改正
は、その方向についてそういう意味で重視をしておるわけであります。
山際
さんは三月九日の参議院
予算委員会
におきまして、現在の
日銀法
は
昭和
十七年制定のもので、実態に即さなくなっておるから、これを全面的に
改正
する必要があり、すみやかに検討したいという
趣旨
を述べられました。大蔵大臣も同じように、この人の持論でありますけれ
ども
、
日銀法
の
改正
を強調いたしまして、
山際
さんの発言もあったものだから早急に成案を得たい、期せずして、従来いろいろの経緯はございましたけれ
ども
、
日銀
当局の
責任
者であるあなたと、
大蔵省
の
責任
者である大蔵大臣との
意見
は、
日銀法改正
という方向においては
意見
が一致しておるのであります。しかし従来の経緯から
考え
てみますと、
日銀
総裁
と大蔵大臣の
考え
ておる
改正
の方向については、同床異夢という感じがすると私は見ておるのでございますけれ
ども
、あなたの
日銀法
の
改正
を行ないたいという御発言の前提は、先ほどの御説明でわかりましたけれ
ども
、具体的にはどういう方向をさしておるのか、これをひとつ御説明いただきたいと思うのであります。昔、といってもついこの間、
金融制度調査会
において出された答申が、一応私
ども
の頭に上がるのでありますけれ
ども
、あのことをさしておられるのかどうか、具体的な
改正
の方向についてどういうお
考え
を持っておるかお示しをいただきたい。
山際正道
29
○
山際参考人
日本銀行法
を
改正
いたしまする場合において、どういう
内容
で
考え
ておるかという
お尋ね
でございまするが、実はただいま御指摘のございました
金融制度調査会
に、
昭和
三十五年でございましたか提出いたしました
日本銀行
側の
意見
というものは、当時私も十分に参画をいたしまして、検討いたしました問題でございまするから、あれに関しまする限りは、いまだに
考え
は変わっておりません。たださらにつけ加えたいと私思いますることは、あの当時今日の
経済
状態
が、いわゆる開放
体制
に今日の段階において入ってくることを予定しての研究ではなかったのでございます。率直に申しまして、その点の検討はまだ現実の
事態
からだいぶ遠いと
考え
られておったために、十分に検討されてはいない、この点の検討はこの際もう一ぺん私はつけ加えるべきではないかと思うのであります。たとえば
内容
を申しまするならば、近来の
金融
は相当国際性を増しております。国際
金融
社会において
中央銀行
が相当発言力を持ち、また行動の自由を持って外国と提携しながら、大きく
経済
の安定に働きかけるといったような機能を持つ必要があると思いまするが、それがはたして現在の
日本銀行法
の認めておる範囲でよろしいかどうか、私はもう少しこれは
考え
直す余地が多いのではないかと実は
考え
ております。また一面において、
通貨
制度
の問題がいろいろまだ不安定な状況にございまして、今日ほどはっきりした観念で、
日本銀行
が
通貨価値
の安定にその主たる精力を注ぐといったような
体制
を、十分に
考え
ておりませんでした。だんだん申し上げましたように、
総動員体制
のもとにおいての立法でございまするから、その点においての
配慮
が十分ではなかったかと実は
考え
ております。今日の場合、従前の
日本銀行
条例とか、あるいは兌換
銀行
券条例等にありましたような
金融
制度
本位に立ち返るということは、なかなか困難でございましょうけれ
ども
、しかしながら何らかの形において
規定
が整備されまして、その
規定
に基づいて、
日本銀行
は当然の職務として、その価値の安定に努力すべきであるというような検討を加えますことは、やはりこの際において、
中央銀行
法をいじる場合において、当然なすべき
配慮
ではないかと思うのでありまして、従前の提出しております
日本銀行
側の
意見
に加えまして、この新
情勢
に応ずるさらに遺漏なきを期するための再検討ということが、私はこの際望ましいことだと
考え
ております。
平林剛
30
○平林
委員
いろいろ
改正
の方向についてお話がございましたけれ
ども
、私が特に重点を置いて
お尋ね
したい点は、従来の
日銀
と
大蔵省
との見解が分かれていた点でございます。この点について大蔵大臣は、
日本銀行
は
中央銀行
としての
中立性
を確保するということは言うまでもない、しかし
金融
を含めた
経済
政策
全般の最終の
責任
は
政府
にある、そういう意味では絶対的な
日銀
の
中立性
というのはむずかしい、大蔵大臣と関係なしの
中立性
などは存在しない、という
趣旨
のことをしばしば述べられておるのであります。この
ことば
から察しますと、
金融制度調査会
の答申の際に
意見
の分かれた、いわゆるA案とB案と仮称いたしますれば、A案を採用したいという気持ちであることは、この口裏から察することができるわけでございまして、かりに
日銀法
の
改正
を全面的に行なっていくということになりますと、当然この問題にぶつかってくると思います。その場合に、あなたが
改正
したいという
意見
を持ち出された
事情
はわかりましたけれ
ども
、この点につきましては
日銀
総裁
として、どういう御見解をお持ちでございましょうか。
山際正道
31
○
山際参考人
ただいまも申し述べましたとおりに、当時私は
日本銀行
の
立場
といたしまして、どちらかと申しますと、いわゆるB案程度で大蔵大臣の職責というものは十分に全うできるものではないかということを
考え
まして、むしろそちらに賛成する態度であったわけでございます。この点は私はいまだにそう思っておりますので、この際に別に
考え
は変えておりません。私は、
中央銀行
の運営上、前段にも申し上げましたが、重大な問題についてはやはり大蔵大臣と
意見
を十分交換し、認識を一にしてかかるということが、その
効果
の上から申しましても、また国民全体の
経済
の安定から申しましても、必要であると
考え
ますので、いかに私自身の、あるいは言い方が悪いかもしれませんが、
日本銀行
自身の
責任
に属することでありましても、重要な関連事項につきましては、常に
政府
と緊密な
連絡
を保つべきであるという
考え
方を実は持っておるわけでございます。たてまえといたしましては、私はそれで十分であろうと思います。あとは運営上それがいかに十分にできるかということにおいて確保すればよいのではないか。これは
一つ
の
法律
の
規定
があるからどうという
考え
方よりも、むしろその程度にとどめて、あとは運営にまかせるという立法のほうが、賢明ではないかと実は
考え
ております。
平林剛
32
○平林
委員
そこで私は、
日銀法
はすみやかに
改正
をされなければならぬ、また
改正
をしたいという方向におきまして、なお
政府
と
日銀
当局の間に重要な点の一致が、必ずしも持たれているとは思いません。ところが大蔵大臣は、この
改正
の方向を進める手段につきまして、今度は従来のように三年間かかって答申を受け、三年間それをあたためておくというやり方をとらずに、
改正
の方向に持っていきたい、具体的にいえば
金融制度調査会
というものに再諮問するという意思はございません、と述べているわけであります。これは諸般の
事情
からいいまして、
日銀
当局と話し合いをすれば
調整
できるものだという理解をしておるようであります。ところが先般、
日銀
総裁
は記者会見において、いまの
日銀法
の
改正
を
金融制度調査会
に早く委嘱するなり、あるいは検討してもらうことが望ましいということを述べられておるわけでございまして、
改正
の手続、
改正
の
意見
をまとめていく方向につきましても、見解を異にしておるわけでございますけれ
ども
、この点はどういうやり方で
調整
をとられていくお
考え
でございますか。
山際正道
33
○
山際参考人
御指摘の点につきましては、過般の両事務当局の会合におきまして、とにかく両方からいろいろ
意見
を持ち寄って、事務的な検討をまず下ごしらえしていこうということを申し合わせておるわけでございますが、私が過般の
新聞記者会見
におきまして、もう一度
金融制度調査会
の
意見
を聞くのがいいのではないかと実は言いましたゆえんのものは、前段御説明申し上げましたように、その当時
考え
られなかった
情勢
というものが、何がしかつけ加わっておるのではないかということを思うのでございます。ところがこの点に関しまする私の
考え
方も、実はまとまっておりません。むしろこれは多くの人々の賢明なる
意見
に耳を傾けることが必要ではないかと思いまするので、そういう新
情勢
と申しまするか、かつて討議せられなかった、そしてまたこの新
事態
において起こってくるであろう問題について、少なくとも御検討願うということが必要なのではないかという
考え
で申し上げましたようなわけでございます。むろんこれは
法律
案を立案せられる
責任
者であられる
政府
のお仕事でありますけれ
ども
、望むらくはそういうことが
考え
られてしかるべきではないかということを私は申し上げました次第でございます。
平林剛
34
○平林
委員
大体
日銀法
について私
お尋ね
したい点は以上であります。 次に、先ほどお話がありました
公定歩合
の
引き上げ
措置
に関連するいろいろの見通しにつきまして、二、三
お尋ね
しておきたいと思うのでありますが、今回とられた
公定歩合
の
引き上げ
措置
は、その時期においてたいへんタイミングがおくれて、むしろおそきに失したのでないかという批判がございます。少なくとも昨年準備率の
引き上げ
を行なって、本年当初におきまして
銀行
の貸し出しの
規制
、いわゆる窓口
規制
を行なったあの当時に
公定歩合
の
引き上げ
をやったならば、もっと
効果
があがったのでないかという批判がございますけれ
ども
、この点につきまして、時期がおそくなったのでないかという批判に対して、どういうお
考え
をお持ちですか。
山際正道
35
○
山際参考人
タイミングがおそきに失したのではないかという御
意見
がありますことは、私もよく
承知
いたしております。さきにも申し上げましたとおり、昨年の暮れに準備率を
引き上げ
ましたときにさえも、すでにその問題は提起されておったわけであります。が、あの当時私が何ゆえにその
措置
をとらなかったかということに対する説明といたしましては、先ほど申し上げましたように、いかにも
経済
基盤において弱点があるように思われるので、あまり急激なカーブを切ることが、かえって不当な弱いところへの
しわ寄せ
を誘起いたしまして、混乱を生ずるのではなかろうかということを実は説明いたしましたので、その時期を少しずらしまして、相当この
体制
にもなれてきた、相当の備えも、何と申しますか、いわゆる織り込み済みの
状態
になっておるという
事態
と、いま
一つ
は、前向きに
考え
まして、開放
体制
に臨んで、国際的に円の価値の信任を厚くするという見地からいたしまして、ちょうどこのころに行ないますることが、むしろタイミングを得ているものだという判断のもとに、今回実行いたしましたような次第でございます。
平林剛
36
○平林
委員
そこでこの
公定歩合
の
引き上げ
措置
、従来の
措置
にあわせて今後も
金融引き締め
の姿勢というものは、長期にわたって強化されていくというお話がございましたけれ
ども
、今回の
公定歩合引き上げ
の
効果
は、いつごろ出てくるのかという点でございます。
政府
のほうでは短期決戦という
ことば
を使いまして、大体
金融界
では量的の
引き締め
が徐々にきいてくる時期、あるいは
貿易収支
のきざしについても好転するのは、大体五月か六月ごろ出てくるのではないかという意味で、短期決戦という
趣旨
を述べられておりますけれ
ども
、
日銀
総裁
としての見通しはいかがでございましょう。
山際正道
37
○
山際参考人
お尋ね
の点は、なかなか判断に苦しむ、むずかしい問題でございまするが、今回の
引き上げ
を必要といたしました理由が、先ほ
ども
申し上げましたが、前回、前々回の場合と異なりまして、単一な、重点がどこにあるということがはっきりいたしておる場合とは、ちょっと実は様子が変わりますので、いろいろな点においていろいろ
調整
を要すべき問題が多いということから
考え
まして、もしこれを抽象的に申しますならば、結局において
企業
の経営の
合理化
をはかり、その体質を
改善
するというところまでいかないと、今後展望される開放
体制
に備えての、十分なる安定的
措置
はできにくかろうという
考え
方に立っております。それからいたしますると、
国際収支
の均衡回復と申しましても、
昭和
三十二年の場合、三十六年の場合には、約半年で実はその徴があらわれてまいったのでありますけれ
ども
、今回は事柄の性質上、いま少しく実は時間がかかるのではないかと思っておるのであります。
政府
は、
国際収支
の見通しにおきまして、輸出入六十二億ドルの線で三十九年度は平衡する、均衡をはかるというお
考え
のようでございまするが、おそくも、それには私
ども
の方針も合致させまして、年度内の均衡ということは、
貿易収支
においては実現させたいものという
考え
方でやっておりますけれ
ども
、この点は、ちょっとまだ
公定歩合
の
引き上げ
が始まったばかりでございまして、今後の見通しを判断いたしますには、材料が十分でないという
状態
にある次第でございます。
平林剛
38
○平林
委員
最後に
一つ
だけ
お尋ね
しておきたいと思うのですが、いまお話のように、
昭和
三十二年当時の景気過熱は
在庫投資
が
原因
であった、三十六年は
設備投資
のふくれ上がりが
原因
であった。今回は、本日御説明になりました諸般の
事情
が潜在をしておる。特に
生産
の
増勢
がなお高まっておる理由につきまして、
個人消費
その他の例をあげられたわけでございますけれ
ども
、私はこれは自分の持論でございますが、こういう
状態
におきまして、
産業界
においてもあるいは
金融界
においても相当自粛をしていかなければ、今日
日本
の置かれておる構造的の病気というものは、回復せないのじゃないか。ところが口では
開放経済
体制
に移向する段階であるからということを申しまして、きびしい
情勢
を訴えておりますけれ
ども
、一方においてはまだまだ、一般の国民
消費
という
趣旨
ではなくて、大きな会社あるいは事業等におきまする浪費というものが、目に余るものがあるように思うのであります。たとえば先般国民生活白書で発表されました広告費の膨大なこと、また最近における法人の交際費です。いわゆる機密費、贈答費、接待費というような交際費は、引き続き漸増しておるわけであります。例を申し上げますと、
昭和
三十八年度におきましても三千八百億円というぐあいに、私は、この交際費というのは税制上の問題もあるでしょうけれ
ども
、
産業界
あるいは大
企業
におけるところの心がまえそのものに欠くる点があるのではないか、こう思うのでございます。
政府
としてもそういう
趣旨
を一部いれまして、今度の税制
改正
におきましては、ある程度損金に算入しないという税制上の
措置
はとりましたけれ
ども
、もし
日銀
総裁
が大きな意味で今後の自己資本充実なり、あるいは国民の
考え
なりを強調せらるる場合におきましては、こういう問題につきましても、どういう
配慮
が必要か、
金融政策
上何かとるべき
措置
はないか、こういう点についてお
考え
をお聞かせいただきたいと思うのでございます。
山際正道
39
○
山際参考人
御指摘の点につきましても、実は私は全く同感に
考え
ておるのでございます。ただそれを
日本銀行
が行ないます
金融政策
によって端的に矯正してまいる手段といたしましては、なかなか直接的には少ないのでございまするけれ
ども
、いまやっております
金融引き締め
も、いわば直接間接に
企業
もしくはそれを取り巻く社会環境の総
需要
を鎮圧するという
趣旨
でございまするから、やはりその方向への
効果
は相当多いものと
考え
ておりまするが、そのほかに、私
ども
といたしましては、いま申し上げました貯蓄の増強であるとか、あるいは
国産品
の普及であるとかといったような問題を大きく
要請
いたしまして、これは主として国民及び
経済
関係各位の良識に訴えるということに相なりますけれ
ども
、つとめてその声を大にいたしておるような次第でございます。今後も御
趣旨
の点については私も十分努力いたしてまいりたいと
考え
ております。
山中貞則
40
○
山中委員長
有馬輝武君。
有馬輝武
41
○有馬
委員
最初に
総裁
にお伺いしたいと思いますことは、先ほど
佐藤
委員
並びに平林
委員
からも御
質問
がありましたが、今回の
公定歩合
の
引き上げ
の時期の問題についてであります。 少なくとも昨年七月ごろから
貿易収支
が
基調
的に悪化をきざし始めまして、それに対して
日銀
としても警戒的な態度をとられたことは当然でありますが、その際にどのような
配慮
をされたのか、私はまずお伺いをしたいと思うのであります。先ほど、
佐藤
委員
に対するお答えの中にも、ただ公式的な態度ではなくて、きめのこまかい
施策
を積み重ねていくことが必要だというような御答弁があったように記憶いたしておりますが、その際にはどのような
規制
が必要であると
考え
られたのか。そしてその
貿易収支
の悪化に対してどの程度と見ておられたのか、その辺について最初にお聞かせいただきたいと存じます。
山際正道
42
○
山際参考人
御指摘のように昨年七月ごろから、
国際収支
の面において多少の
懸念
は出ておったのでございまするが、当時私が
考え
ました点は、実は今日ほど深刻には
考え
ておりませんでした。ちょうどその前の
設備投資
の行き過ぎから、いろいろ
経済界
が
引き締め
にあいまして
調整
をいたしてまいりましたが、これは自主的に相当
調整
が進むものという判断で対処いたしておりましたので、あの当時私
ども
は、主として
債券
の売買の面におきまして、
金融
を
引き締め
ぎみに運営するということでおさまってくるものであって、当然その合理的
配慮
で
企業
自身が
調整
態勢を続け得るものと実は
考え
てまいったのでございます。したがいまして当時、
配慮
といたしましては、まあその程度の、いわゆる量的
引き締め
のはしりでございますけれ
ども
、その程度の
配慮
でやっておればよろしいかと実は
考え
ておったのでございまするが、その後の経過を見ますと、なかなかそれでは
企業
の地産意欲はとまりません。むろん熾烈な競争ということの結果であろうと思いまするけれ
ども
、具体的
方法
としては、あるいは
企業間信用
を増大させる、あるいはまた借り入れ金によって資金の手当てをふやす、この点につきましては、私は昨年下期における
銀行
の
貸し出し態度
にも反省を要するものがあったろうかと思うのでありますけれ
ども
、相当の資金を手当てして、いわゆる
企業
の流動性を相当高める対策に出たわけでございます。この
企業間信用
の
膨張
と、それからいわゆる
企業
の流動性が高くなってきているということは、今回の
引き締め
に際しましても、
企業
の
調整
に対する抵抗力が強まっておるということの証左になっておる次第であります。実はそういう方面に問題が移ってこようということは、昨年七月当時には、私自身として率直に申し上げまして
考え
ておりませんでした。そこでいま申し上げました程度の
配慮
をいたしたにとどまったわけでございます。
有馬輝武
43
○有馬
委員
当時としては七月ごろとしては買いオペをしぼるなり、あるいは貸し出し限度額を引き下げるなりの
措置
で、対処し得ると
考え
られたわけですか。この点をいま一度お聞かせ願います。
山際正道
44
○
山際参考人
昨年七月ごろは、私はいま申し上げましたように、
企業
の自主的な
調整
努力に期待をいたしておりましたから、いまお示しのありましたような程度の
措置
で足りるのではないかと実は
考え
ておったのでございます。
有馬輝武
45
○有馬
委員
昨年十二月十六日から
預金準備率
の
引き上げ
をされましたし、また一月から新窓口
規制
を行なわれたわけでありますが、この七月から十二月の移りかわりについて、基本的に
預金準備率
の
引き上げ
なりあるいは新窓口
規制
を行なわなければならなくなった
事態
について、どのように把握された結果、これを行なわれたのか。その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
山際正道
46
○
山際参考人
いま申し述べましたような
事情
によりまして、昨年の下期におきましては、
企業
の自主的な
調整
に反省を促すなり、あるいはまた
金融機関
の
貸し出し態度
に反省を促すなりということで、実はしのげるというつもりで今日まで
推移
いたしたのでございます。しかしそれではとうていしのぎ切れないと
考え
ましたので、昨年の十二月にまず準備率の
引き上げ
をいたしました。年を改めまして一月に新しい窓口
規制
によって、
貸し出し増加額
の
規制
に着手したという段取りになっておるのでございます。
有馬輝武
47
○有馬
委員
この
預金準備率
の
引き上げ
と新窓口
規制
によりまして、
日銀
総裁
が意図された
効果
がどのようにあらわれたと把握しておられるか、この点をお伺いしたいと存じます。
山際正道
48
○
山際参考人
まず当面の目的といたしまして、
金融機関
の
貸し出し態度
は、大体私
ども
の期待いたしました線に落ちついてまいったと見ております。ただ実際問題といたしまして、いま申しましたような
企業
の流動性が相当高いとか、あるいは
企業間信用
の
膨張
の余地がなおあったというようなことで、借り手側の
企業
自身のほうでの、つまり
需要
側の
抑制
という点において、それだけでは足らぬという現象がだんだん出てまいりましたので、今度はどうしてもそっちのほうを押えないと、両々相まって
調整
がむずかしいという判断に立ちまして、三月の
公定歩合引き上げ
という段取りにいたしたわけでございます。
有馬輝武
49
○有馬
委員
当時、
企業
の資金
需要
をそのままにして、こういった
措置
だけにたよられた、いわゆる供給側のみしぼろうとされた点に、私は足りない面があったのじゃないかと思うのですが、当然そういった点について
配慮
すべきであったのにかかわらず、
配慮
されなかった理由についてお伺いしたいと思うのであります。
山際正道
50
○
山際参考人
いわゆる景気のだんだん
上昇
してまいりました過程におきまして、やはり
企業
間の信用の
膨張
ということが一番大きな要素になっておったと
考え
まして、これを相当抑え込みまするならば、それでもって自然
需要
者側に対しましても影響をもたらし得るという観測であったわけであります。ところがいま申し上げましたとおり、なかなか流動性も高く、また
企業
自身の
企業間信用
膨張
の態度が改まりませんために、案外それに対する
企業
側の態度の変更ということも起こりませんで、ここはどうしても今度は直接に
需要
者側のほうへ影響するような
措置
をとらなければ、
事態
は
改善
できぬという
考え
に至りましたわけでございます。当時といたしましては、私としてはやはり
銀行
の信用の
膨張
ということが、一番重大な要素であったと認識いたしましたわけでございます。
有馬輝武
51
○有馬
委員
いまの点につきまして、当然
高度成長
政策
がとられておりまして、しかもここ数年の膨大な
設備投資
の結果から、やはり資金
需要
というものについては、非常に上向きカーブを描いておる
事態
については、現在も、また当時の
状態
も、ほとんど変わりない
状態
にあったのではないか。そういう点で、
日銀
が把握される
情勢
というものについての見方に、非常に甘い点があったのじゃないかと思うのでありますが、そこら辺については、いまの御答弁ではちょっと足りないような気がいたしますので、その点についていま少しお聞かせをいただきたいと思うのであります。
山際正道
52
○
山際参考人
金融
の
調整
をいたしまする場合に、供給者ばかりでなく、
需要
者の
状態
というものを
配慮
すべきことは、これはもう当然のことでございまして、それについての私
ども
のあとう限りの
調査
は進めてまいっておったと思います。何分にも一番私が意外でありましたのは、やはり
企業間信用
の
膨張
が相当、かくも
膨張
し得るかというくらいに
膨張
してまいって、これは非常に統計がむずかしいのでありますが、ある種の統計によりますと、御
承知
のようにもう十五兆円に達しておるということが言われておりますけれ
ども
、そういうような方策も、実は当時はそれほどまでに
膨張
しようとは予想しておりませんでした事柄でございます。これらの点にかんがみまして、これだけでは防ぎ切れないと思いましたので、今度は直接
需要
者に影響を持つような端的な
措置
に出たという経過でございます。
有馬輝武
53
○有馬
委員
どうもその点が納得がいかないのですけれ
ども
、すぐ今回の
措置
に出たということに結論を急がれるわけでありますけれ
ども
、私がお伺いしたいのは、
総裁
もお話のように、その資金
需要
については、当然何らかの
配慮
が必要であると思う。その
情勢
を見ておられた
企業
間の信用
膨張
についてだけお話がありましたけれ
ども
、当無供給側だけで
考え
ても
効果
は期待できない。もうわかっておったはずなんです。その点についていま一度お聞かせをいただきたいと思うのであります。
山際正道
54
○
山際参考人
先ほど申し上げましたとおり、昨年末準備預金の準備率を
引き上げ
ました際にも、すでに
公定歩合
を
引き上げ
たらどうかという議論がございましたことは、私も十分
承知
いたしております。それに対する私の
考え
方は、先ほど申し上げましたように、なるほど
経済界
の基盤に相当脆弱な点がありますので、あまり急カーブをとることは、かえって必要以上の摩擦を生ずるのではないかという点の
配慮
があったということは、事実そのとおりと率直に申し上げた次第でございます。
有馬輝武
55
○有馬
委員
急カーブをとることを避けられた点については、あとでまたお伺いをいたしますけれ
ども
、この
預金準備率
の
引き上げ
なり新窓口
規制
が、
効果
に、何といいますか、傾斜があることは当然
日銀
としては予想されたであろう。私が傾斜と申し上げますのは、確かに
銀行
の貸し出しが締まってきたことは事実でありまするけれ
ども
、それが
中小企業
なり零細
企業
に対してしわが寄ってきたのではないか。確かに支店の融資ワクを削ったり、あるいは自分の
銀行
が主たる取引をしないところをしぼったり、あるいは選別融資をやったりというような形が出てきましたが、その結果は、
中小企業
だけに
しわ寄せ
がきて、結局大
企業
は
生産
計画なりあるいは投資計画を
改正
するという動きが出てこなかったのじゃないか。具体的なあらわれといたしましては、一月の
生産
が前月比で三・二%もふえておりますし、一−三月の
生産増加
が昨年の十−十二月並みになっておる。こういう
状態
は
日銀
が企図されたことと逆になっているのじゃないか、こういう
事態
に対しまして、私はやはり過去数年間の
事態
に対して、メスを入れるという
配慮
が必要だったのじゃないかと存じますが、この点は、
中小企業
に対する
配慮
をどのようにされたか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
山際正道
56
○
山際参考人
第一は、何ゆえに供給者側の態度をいま少しく探索しなかったかというお話だろうと思いますが、その点につきましては、私は
企業
経営者の側におきましては、実は非常な無理をして増産を続けておるのじゃないかというふうに観察いたしておりました。増産のそういう無理にもおのずから限界のあるべきことを
考え
ておったわけでございます。ただそういう
状態
においても、どうしてもシェア競争その他の
立場
において
生産
も増大する、あるいはいろいろな意味におけるコスト・アップを、増産
体制
によってコストの低減をはかるというような方策に出てくるということが、これほど強いとは実は思っておりませんでした。自来の経過を見ておりまますと、なかなかその勢いが強いのでありまして、もう供給者側における量的資金においては、これで
一つ
の限界に達したかと思いましたので、今度はそれに加えて、
需要
者側の反省を求めるということにいたしましたようなわけ合いでございます。 第二の
お尋ね
は、
中小企業
に対する
配慮
についての
お尋ね
でございますが、これは実は私が基盤が脆弱であると申しておりました点のやはり重要な要素と
考え
ておりましたので、この点につきましては、特に昨年の暮れの
措置
をとりましたときに、
中小企業
を担当しておる各種の
金融機関
の代表者に参集願いまして、どうかこれに対する
配慮
を十分手厚くして、簡単に
しわ寄せ
をしたり、あるいは連鎖反応的にその被害をこうむるようなことがないように、十分の配意を依頼いたしたのでございます。先ほ
ども
申し上げましたように、当時
本支店
に通牒いたしまして、一々所在の
金融機関
と相談をいたしまして、具体的に労を惜しまず、
一つ一つ
についての相談をして、そういう弊害が起こらぬようにという
配慮
を求めたわけであります。今日までのところ、
中小企業
の不渡り、倒産等の現象は相当出てまいりましたけれ
ども
、一々その事例を調べますると、実は他に深い傷を負っておる人々が、残念ながらこの際においてその傷を露呈したというふうな
状態
でありまして、単なる
金融引き締め
によって巻き添えを食ったというようなものは、まだ出ておらぬように思います。しかしこの点は、何月
危機
、何月
危機
と申しておりまするけれ
ども
、
引き締め
の続く限りは当然
配慮
すべき問題であろうと思いますので、要は労をいとわず、
一つ一つ
の相談相手となって、そのような不当な被害を受けぬようにという
配慮
をして進みたいと
考え
ております。
有馬輝武
57
○有馬
委員
いま
総裁
から、労をいとわない、
配慮
を加える、またそのように動かれたというお話でございましたけれ
ども
、少なくともこのような
状態
で締めていると、結局選別融資なり何なりという形で、各行が恣意的に動くことが予想されておりますし、いまの御
配慮
では一応のリミットがあることも
総裁
、十二分に御
承知
のはずであります。当然予想されることに対して
日銀
が果たし得る役割りというものは、そこら辺にあるのじゃないかと私は思うのでありますが、いまの御答弁は、そのときにすでに当然予想されておることでありまして、それに対してどのような
配慮
をされたのか。ただ各行に対する指導なり相談なりということで、このような
状態
を防げると思われたのか。その点についてくどいようでありますけれ
ども
、お聞かせをいただきたいと存じます。
山際正道
58
○
山際参考人
ただいまの
お尋ね
の点についでございますが、
中小企業
への
しわ寄せ
ということは、現在の段階においてややもすれば起こり得る事柄であることは私も当初から
考え
ておりました。極力その方針に対して
配慮
を行なうということは、実は当初から十分
考え
たつもりでございます。そして
一つ一つ
中小
金融機関
とよく話し合いをいたしまして、具体的の事例について
日本銀行
の所在の店がそれに参加をいたしまして、いろいろな
しわ寄せ
の防止なりあるいは存続なりについての
配慮
に出るということは、所在の店においてやっております。現にそのような相談の結果、幾たびか連鎖反応的な影響を受けるのを防ぎ得たという事例も支店から報告されております。この
配慮
は、私はきめこまかく具体的に
一つ一つ
やっていくのが適切ではないかと
考え
ております。同時に、御
承知
のように中小専門
金融機関
に対する財政資金の
配慮
は
政府
のほうからもされて、金は出ております。しかし総体として、一々その
金融機関
の相談相手になり、また
企業
者の相談相手になって連鎖反応を防止するということは、私
ども
の店舗といたしましては当然の
配慮
と
考え
ておりますので、そのような
配慮
を進めております。
有馬輝武
59
○有馬
委員
いま、昨年七月からの経緯についてお伺いをいたしたのでありますが、先ほどの
佐藤
、平林両
委員
の
質問
に対するお答えにいたしましても、この間の経緯についてはきめのこまかい
措置
をとって、急カーブを描くことはできるだけ避けたというような
趣旨
のお答えで一貫しておるようであります。しかし私たちが見ておりますと、昨年九月ごろとられた警戒的な態度、買いオペをしぼったり、貸し出し限度額を下げたり、あるいは十二月の
預金準備率
の
引き上げ
、それから一月の新窓口
規制
、こういったものがやはりそのときどきで時期を失しておる。平林
委員
も指摘いたしましたように時期を失したきらいがある、この点はいなめない事実だと私たちは思うのであります。ではなぜそういう
事態
になったか。そのような
情勢
と見なかったというようないまのお答えでありますけれ
ども
、この点はあとで私たちは
お尋ね
いたしますが、
日銀法
の
改正
もつながってまいります。
日銀
の
中立性
ということが言われながらも、けさの新聞でしたか、記者会見でお話しになっておった。あるいは
総裁
自体のお
ことば
でなかったかもしれませんけれ
ども
、今度の
公定歩合
の
引き上げ
についても、一月ごろが最も適当な時期ではなかったか。すべてが二、三カ月ずつおくれてきた。この経緯については、やはり
日銀
の
中立性
ということを言われながらも、時の
政府
によって強要されるといいますか、今度の
日銀
の御努力については十二分にわかりながらも、タイミングを失したという点で、時の
政府
にあまり顧慮され過ぎる点があったのではないか、こう見ざるを得ないのであります。この点についての御見解をいま一度お伺いいたしたいと存じます。
山際正道
60
○
山際参考人
各種の
日本銀行
のとった
措置
のタイミング問題についての
お尋ね
でございますが、私の
立場
といたしましては、各種の判断に立ちまして、みずから
考え
まして、その時期が最も適当と
考え
ましたときに適当と思われる
施策
を実行してまいったつもりでございます。むろんこれらに対するいろいろな御批判もあり得ることでありますし、またその御批判に対しましては、今後なお十分尊重いたすべきものと
考え
ますけれ
ども
、御指摘のございました昨年来の
施策
の進行につきまして、私自身
考え
ましてそこらがころ合いであると
考え
て実行いたしたような次第でございます。
有馬輝武
61
○有馬
委員
私は、
日銀
の
調査
機能として、そのときどきの
情勢
については正確に把握され、また
総裁
自体としてのお
考え
も十二分にあったと思うのです。それではいま一度具体的にお伺いいたしますが、一月にやられた場合とこの三月とどちらがよかったのでしょうか。
山際正道
62
○
山際参考人
私といたしましては、
公定歩合
の
引き上げ
によって全体に大きな制約を加えますことは、今回の場合がちょうどころ合いであったと思いまして実行いたしたわけでございます。
有馬輝武
63
○有馬
委員
これはいま一度
お尋ね
しても同じ答弁をされるだろうと思いますので、世の良識の批判に待つよりほかないと思うのであります。少なくともその意味で時期を失した、この
原因
についてやはり除去する努力が払われていかなければならぬと私は思うのであります。 それでは重ねてお伺いいたしますけれ
ども
、先ほどの
佐藤
委員
に対する御答弁でもあったと思いますが、こういったきめこまかい
措置
を次々にとらざるを得なかったその根本
原因
は、現在の内閣が進めております
高度成長
政策
にどこかひずみがあるから、
日銀
が動かざるを得なくなるのではないか、このように思うのでありますが、その点についての
総裁
の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
山際正道
64
○
山際参考人
私は、
日本
経済
の持つ体質に応じまして、世界の先進諸国との比較において、高度に成長を遂げつつあるその要素は十分にあるものと思いますが、この成長の速度があまりに急速に過ぎますると、その環境との
調整
において周囲に摩擦を生ずるということも当然
考え
られることでございまして、いま起こっております
国際収支
の問題であるとか、あるいは
物価
問題等も、この成長の過程において生じた
一つ
のひずみと理解しておるのでございます。現在は、
政府
の御見解もいろいろあろうと思いますけれ
ども
、統制
経済
というわけではございませんので、そこで一定の計画に従う
措置
をとっていく場合に、よほど気をつけないとひずみがちょいちょい起こり得ることは、当然予定してかからぬといけないと思いますので、そのひずみを
調整
し、取り除いてまいるのが、
日本銀行
の持つ重要な役割りと
考え
ますが、その
趣旨
におきまして努力いたしておるわけでございます。
有馬輝武
65
○有馬
委員
ことば
じりをとらえるようでありましたらお許しをいただきたいと思います、そのひずみがちょいちょい起こるのではなく、現在進められております
高度成長
政策
自体が、このような大きなひずみを予想しておったわけであります。その点について
総裁
としてどのようなお
考え
を持っていらっしゃるのか。それとあわせて、現在まで池田内閣が進めてまいりました低
金利
政策
といいますか、国際
金利
にさや寄せする方向をどのように見てこられたか、この点についてもあわせてお聞かせをいただきたいと存じます。
山際正道
66
○
山際参考人
成長の速度の問題に対しましては、私は機会あるごとに均衡を得た成長が必要である、言いかえれば、安定した成長が必要であるということを申しておりました。これによってしばしば
経済界
にも働きかけておるようなわけでございます。ただいわゆる統制
経済
といったような
経済
の進め方ではございませんからして、なかなかその十分な均衡が保たれませんので、ちょいちょいひずみがあらわれてまいるということは、先ほど申し上げましたとおりでございます。 いま一点
お尋ね
の
高度成長
自体に当然ひずみが予見せられておるという点については、私は必ずしも実はいまでもそう思っておりませんが、この高度の速度の問題でございますので、この速度が速過ぎますと、四囲の
経済
条件がなかなかその
経済
速度になじみませんために、随所に摩擦現象を起こしまして、それがあるいは
物価
の騰貴となり、
国際収支
の悪化となるということが起こると実は思いますので、それを
調整
してまいるのが私
ども
の任務と
考え
てやっております。あれを進めたら必ずこういうひずみが出るということを当初から予見したかという
お尋ね
でございますると、そこまでは私
ども
は実は予見していなかった。ということは、いわゆる
計画経済
、統制
経済
でございませんので、初めからそこまで予見するということはむずかしいと
考え
ております。現象のあとを追って必要な
措置
をとっていったということに相なろうかと思います。
有馬輝武
67
○有馬
委員
次に、先ほどお二人からも触れられました
日銀法
の
改正
の問題についてお伺いしたいと存じますが、先ほど
総裁
は、
金融
の国際性に適応するということと
通貨
調整
機能について、やはり
日銀法
を
改正
して再検討すべき時期にきておるのではないかというお答えでありました。私たちが憂えることは、
田中大蔵大臣
の長岡談話にもはっきりいたしておりますように、とにかく
政府
の
日銀
に対する指示権というものを強めようとするところに
政府
の意図があることは、これは巷間の事実であります。そういう
事態
を百も御
承知
の
総裁
が、いまあげられたような理由でもって、時を同じくして
日銀法
の
改正
の必要があると発言された点について、私たちは疑問なきを得ないのであります。どうしてこの
政府
の
日銀
の
中立性
を大きく侵していこうとする——それは確かに
田中大蔵大臣
は、
日銀
の権能を強めていくのだというようなことを表面に出しておりますけれ
ども
、その過程において、いま申し上げましたような企図があることはもうはっきりいたしております。その中で同時に、あのような発言をされて、先ほど平林君は同床異夢とまことに的確な表現をされたのでありますけれ
ども
、その同床異夢がとんでもないことになることも、
総裁
としては当然
考え
ておられると思うのであります。そういう点で、
日銀
の
中立性
をどのようにして堅持していこうとしておられるか、この点についてお伺いをいたしたいと存じます。
山際正道
68
○
山際参考人
先ほどの
お尋ね
の一点に実は低
金利
政策
についての
お尋ね
がありましたのを、つい私お答えを落としました。この問題につきましては先ほど
佐藤
委員
からも
お尋ね
だったと思いまするが、一応長期的な
政策
方向と
日本銀行
の行なう
金利調整
の操作とは、おのずから違うということをお答え申し上げたように思います。それによって御理解いただきたいと思います。 次に、
日本銀行法
の
改正
の問題でございますが、私は
政府
の指示権がなければならぬとか、あるいは
政府
の
監督権
をもっと強化していかなければならぬという方向においての
日本銀行法
の
改正
は、実はその必要を
考え
ておりません。むしろだんだん申し上げるとおり、いかにも古い戦争中の遺物をなるべく新しい
事態
に早く衣がえしたいということが主でございますが、あわせて新しい
情勢
に応じた、新しい機能もそこにつけ加える必要があるのではないかという点も
考え
ております。御
承知
のように
総動員体制
のもとにおいて成立いたしました
日本銀行法
でございますから、どちらかと申しますと、たとえば
政府
の認許可事項にかかるような事項が非常に多いのでありますが、これは当時の
体制
からいえば必要があったと思うのでございますけれ
ども
、今日から見ればそれがはたして必要であるかどうか、これらの点も含めまして、それらの点につきましては、さきの
金融制度調査会
に対する
日本銀行
の見解ということで実は表明しておると思うのでありますが、そのほかにまた新たなる
観点
も必要ではないか。それらを十分検討の上での
改正
が望ましいと実は
考え
ておりますので、その点を率直に
考え
まして——たまたま
政府
の
責任
者がどういうふうなお
考え
を持っておられるか、それによってどう牽制されるかという点まで、私が
配慮
いたしませんでしたのは事実でございます。もし
法律
案が提出されますれば、当然国会においての十分な御審議もございましょうし、実はそこまでは何ら
考え
ませんで、率直にお答え申し上げたような次第でございます。
有馬輝武
69
○有馬
委員
その
総裁
のお答えは、どうもちょっと時期的な面でも、しかも
田中大蔵大臣
あるいは
政府
が従来持っておった
考え
については、十分おわかりのはずだと思うのです。少なくとも
日銀法
の
改正
という点については、
総裁
としてそういった十分な
配慮
があってなさるべき筋合いのものだ、また当然それを
配慮
してあの御発言があったと私は思うのであります。そういった御発言がきっかけとなって、特に
金融政策
と
経済
対策というものは高次の統一性を持っていなければならぬとかいうような押しつけがましい態度の中で、せっかくの
総裁
の意図というものがゆがめられるおそれが多分にある。それで私は
お尋ね
しておるのですけれ
ども
、その点でその
中立性
を堅持していかれる御自信があるのかどうか、最後にお聞かせをいただきたいと存じます。
山際正道
70
○
山際参考人
お尋ね
の点に関しましては、私は現在
日本銀行法
によって認められております
立場
というものは、どこまでもこれを守るべき性質のものであって、これを権力によってより小さくすることは適当でないというふうに
考え
ております。
有馬輝武
71
○有馬
委員
終わります。
山中貞則
72
○
山中委員長
堀昌雄君。
堀昌雄
73
○堀
委員
二点だけお伺いをいたします。第一点は証券対策の問題でございますが、
山際総裁
は現在の株の価格は一体これでいいのかどうか、現在の株価がこういう
状態
にある背景は一体何なのか、お伺いをいたしたいと思います。
山際正道
74
○
山際参考人
御
承知
のとおり
わが国
におきましては、株価を決定する方式は、取引所機構において自由なる価格形成を望んでできております。したがって現在あります株価は、関係者、当事者、その他の人々の自然の評価、そのあらわれであると理解すべきものと
考え
ております。現在の株価が、しからばはたして私
ども
の
考え
る
日本
経済
の実情に合うかどうかという問題につきましては、私は株価を対比しては実は
考え
ておりません。
日本
経済
の
現状
が
改善
されれば、自然それに対する評価も高くなるであろうと
考え
ておりますけれ
ども
、実はその両者を結びつけていまの株価が適正な地位にあるかどうかという点についてはまだ
考え
ておりません。
堀昌雄
75
○堀
委員
いまおっしゃるとおり、私は株価というものは取引上における公正な取引の
あり方
できまるということが原則だと思います。ところが実は最近御
承知
のように共同証券というものができて、
日本銀行
から三森さんがこの社長になられております。過般の
公定歩合
操作の際には、共同証券は相当多額の買い出動をいたしておりまして、これまで
公定歩合
が
引き上げ
られて、それが株価に反映をしなかった例はございませんけれ
ども
、今回においては千二百円台を維持するための人為的な操作が行なわれた事実がございます。
山際
さんはこれで株価が公正な取引によって自由な価格できまったとお
考え
になりますか。
山際正道
76
○
山際参考人
私は共同証券の設立目的が、そもそも資本市場の育成であるとか、あるいはまた株価の混乱の防止であるとかいう目的を持って、
経済界
自身の自発的意思によって設立されたものを非常に実は多といたしている
立場
にございます。今回の問題でございまするが、共同証券がそれ自体の
立場
において株界の大きな
経済
条件の変動による混乱を防止するということに働きますということは、やはりその設立
趣旨
の
一つ
の目的であろうと思いますので、これは共同証券のなすところにまかしておけばよろしいという気がいたしましたのであります。何としても一般証券界もその他の業界におけると同じように大きな混乱、変動を避けていくために私
ども
が
配慮
をするということは、やはり当然必要な
配慮
でないかと
考え
ます。これによって私は今回の
措置
が、取引所の機能を阻害しているというふうには
考え
ておりません。
堀昌雄
77
○堀
委員
私は取引所の機能を阻害しておることを伺っておるのではありません。いま前段で、
総裁
は株価というものは自由な取引の
あり方
によって形成されるのが至当だとお答えになった。私も資本主義社会ではさようだと思っておりますのに、共同証券というような形のものができて人為的に株価を操作をするということは、私は資本市場の育成に決してプラスにならないという判断を持っておるわけであります。特に、なるほど千二百円台というものが一体この際適当かどうかという問題が実は私はあると思います。御
承知
のように
国際収支
の状況あるいは
金融引き締め
の状況、さらにその
金融引き締め
になりますならば
企業
のビヘービアは増資のほうに向かっていくというような状況、もっぱら資本市場を圧迫するような条件をつくりながら、そのしりぬぐいを共同証券にさせるというこの
考え
方は、かつて私は当
委員会
で
総裁
とも論議をさせていただきましたが、まさに公社債担保
金融
と同じ性格のものではないかというふうに
考え
ておるわけであります。そこで当然株価というものが自然の形で動いたときに初めて底を入れるところで底が入り、それから上向きになる、これが資本主義社会の原則的な動きではないかと私は思うのでありますけれ
ども
、そこにこれまでのやり方に対していろいろと小手先的なものを行なうために、自然の姿が阻害をされて、かえって適当でない価格の生まれ得る余地もあるのではないか。これは
金融
等についても、しばしば私は
総裁
との間に、現在の
日本
の
金融
の
状態
が決して自由な
状態
になっていないということも、
日本
の
金融
の大きな欠陥の
一つ
であるという論議をいたしてまいったわけでありますけれ
ども
、その点について一体どうお
考え
になっておるのか、もう一回重ねてお伺いをいたしたいわけであります。
山際正道
78
○
山際参考人
ただいまお述べのありましたように、共同証券といったような性質の機関は、自由な株式取引市場のたてまえから申しますならば、緊急の場合にのみ許される例外的な形態であろうと
考え
ております。したがってこれがいかなる目的のために、いつ、どの段階において出動をするかということは、実は最も判断のむずかしいところでありますけれ
ども
、いろいろと
変化
の大きく予想される際に無用の混乱を防止するということは、この段階においてやはり考慮さるべき点の
一つ
であろうと思いますので、そのことのために最小限度共同証券がもしなし得ることがあるなら、それはまたそれで証券全体の発達のために必要な事柄であろうと思うのでございまして、この限界をどこに持つかということは、具体的に非常にむずかしい問題でございまして、共同証券当事者も非常にその点は苦慮しておられるように伺っております。
堀昌雄
79
○堀
委員
実は私は、これまでたびたび証券問題を
総裁
に伺いました。そのときに
総裁
は、いつもはっきり言明しておいでになったのは、
日本銀行
としては、そういう株価の問題については、あまり考慮はしていない、ただし恐慌的と申しますか、一般的な動揺を来たすような
変化
のあるときには、
日本銀行
としても
考え
ざるを得ない、こういうお話を聞いておりまして、私はもっともだと思っておりました。そうすると現在は、そういう恐慌的な段階にきておるということなのでございましょうか。実はこれまで
公定歩合
操作において、
総裁
みずからがこのときに証券問題について言及をされた例は私はたしかなかったと思いますので、これまでそういうことを
公定歩合
操作のときに御発言になったことがあったかなかったか。今回は十八日の定例記者会見で、優先的に資金の援助を見ると御発表になっておりますけれ
ども
、このような
措置
が一体適当であるのかどうか。その二点についてお伺いいたしたいと思います。
山際正道
80
○
山際参考人
私が従来株価の問題についてとりました態度については、御指摘のとおりでございます。ただ例外的に私がこの問題に触れましたのは、昨年ケネディ大統領が死去しました際の混乱を防止したいという気持ちと、実は今回の
公定歩合
操作におきましても、先ほど来だんだん申し上げておりますとおり、必ずしも
経済界
に脆弱点なしとは言い切れない
状態
でございましたので、よって生ずる過大なる、何と申しますか、変動、混乱というものは、やはりあらかじめ防止する
措置
を
考え
ておくのが至当であろうという
配慮
から出ましたのでございまして、それ以外に何ら他意はないわけでございますし、ある程度の株価の値下がりは、むろん当然と実は
考え
ておったのでございます。
堀昌雄
81
○堀
委員
現在の様子を見ておりますと、千二百円台という旧ダウがともかく
一つ
の関門のようになりまして、それを下げないために共同証券は盛んに買い出動しておるようであります。片方で
金融
をどんどん
引き締め
ながら、共同証券に対してはかなり融資が次々と行なわれるようでありますけれ
ども
、この間、三森社長は、
日本
経済
新聞に出ておりました記事によりますれば、このような特別的な
日本銀行
の
配慮
は、今後も維持されるものと思うという発言すら出ておるわけであります。私は
大蔵委員会
におきまして、これまで大蔵大臣に対して、共同証券に対する融資というものは、一体どういう形で出るのかということを尋ねましたところが、これはやはり
日銀
の窓口
規制
のワクの中で、市中
銀行
に出されたものが行なわれる範囲であるという答弁を得ておるわけであります。そうすると、それでなくとも
金融
を皆さんのほうで
引き締め
られておる条件の中で、今後さらに協調融資が二百億、三百億とされるというようなことは、片方では
金融
を
引き締め
、片方ではどんどん証券市場に金を流し込むなどということは、適当でない
措置
ではないか。いまおっしゃるように、非常に異常な
事態
に対しては、私はこれは当然行なわれる
措置
と
考え
ますから、今回のような場合には、あるいはやむを得ないという
考え
方も成り立つかわかりません。しかし今後引き続き増資が行なわれ、協調融資が行なわれて、一体どこまでいけばこれが解決づくかということについては、この問題は最初に触れましたように、来年度およそ六千億に近い増資も予想される。この問題は単にそういう一時的な問題ではなくて、
日本
経済
の構造的な問題と、それに伴う供給過剰の問題に本質的な問題点があるのに、それを維持するために共同証券が
日本銀行
から出てくる金をたよりに買っておるなどということは、私は世界の証券市場で、このような適当性を欠く取り扱いのあるところはないと思うのでありますが、今後共同証券に対して
日銀
を通して、間接的ではありますが、結局融資が行なわれるのでありましょうが、窓口
規制
を行なっておる以上は、その融資先については当然
日銀
としても大体了承されることだと思うのであります。共同証券に対する
日銀
の融資の態度についてお伺いをいたします。
山際正道
82
○
山際参考人
先般申し上げましたとおり、共同証券というものが現実に発動する場合のいろいろな条件というものは、その場合に制定はむずかしいにいたしましても、やはりその限界があろうと思います。その限界において出ます場合には、
日本銀行
はやはり全体の証券市場なり
金融界
なりの安定のために、資金を放出するということになろうと思います。その他の場合にどう
考え
ておられるか存じませんけれ
ども
、何でも共同証券の行なう操作のための資金は、必ず
日本銀行
が供給するというわけではございません。これという場合には本来の使命と私は
考え
ておりますけれ
ども
、そこで共同証券が出ます場合の資金的のめんどうは、
日本銀行
としては相当見るということを申したわけでございます。
堀昌雄
83
○堀
委員
私はいまの問題はけっこうなんです。今後の問題として、これは資本金だけでは実は買っておりません。協調融資が非常に大きな部分になっております。協調融資は市中
銀行
が共同証券に貸し出しをしておるわけでありますが、これは窓口
規制
をやっておられる現在では、百億も二百億もが協調融資で出るならば、これらの市中
銀行
が
日銀
から借りますときには、まあこれは自己の金だけでやっておるのなら問題はございませんが、しかしそうじゃなくて協調融資が土台になっておるから、もちろん出資金もありますけれ
ども
、協調融資のほうがはるかに大きいわけであります。したがってその協調融資でいく場合には、
日銀
もこれは
承知
をされておることだと思うのであります。そこで片方で
金融引き締め
を行ないながら、片方で協調融資でやはり
日銀
がめんどうを見られるわけです。これはオーバーローンになっていなければ、私はこれほどやかましいことは申しません。預金者自身の金で行なわれることならば、これは問題が別でありますけれ
ども
、オーバーローンになっている
状態
の中で、
日銀
が出しておる資金がそちらへ流れるわけでありますから、きわめて重大な問題だと
考え
ておるわけでございます。今後とも増資をし、その増資をもとにしながら協調融資がだんだんとふくらんでいく。一体どこまでいったらいいのかという問題があと出てくるわけであります。
日銀
総裁
は共同証券の今後のそういう問題は、
田中
さんは千億でも幾らでもというような大きなことを何回もおっしゃいました。私はそう簡単なものではないと思うのでありますが、一体どこらをめどとして協調融資その他に応じられる意思があるのか、その点を伺っておきたいと思います。
山際正道
84
○
山際参考人
先ほ
ども
お答え申し上げましたとおり、
日本銀行
が共同証券の活動に対して相当の協力をするという場合、市場安定のために緊急
事態
において出動したというふうなときに行なわれると私は
考え
ております。したがいましてその他のことのために、もしそれが資金を必要として協調融資の
方法
に出ましたといたしましても、それは
日本銀行
が共同証券に寄せておる希望の範囲外でありますので、それらの問題については、その際は普通の
銀行
の融資の範囲で
考え
てしかるべきかと
考え
ます。さらに、しからばそういうことのために一体幾ら金が要るかという見込みでございまするが、これは私は事柄の性質上何とも計算がいたしかねる。千億要る、あるいは五百億で足りるというような大胆な計算はなかなかできないのでございますが、まあやはり
事態
の必要に応じて、緊急
事態
に処するためには応援をする、しからざるものについては
日本銀行
の範囲外だ、こういうことになろう、それによって判断してまいるよりしかたがない、こう
考え
ております。
堀昌雄
85
○堀
委員
では最後にもう一点だけちょっと伺っておきますけれ
ども
、実はこの前大蔵大臣がここで、
公定歩合
の問題について論議をされました報告について、
大蔵省
と
日銀
で共同して特別監査を行なうという答弁がございました。私は前の
大蔵委員会
で、現在の
銀行
検査ではこの問題の行政的な指導は不十分だから、特別の
調査
員を設けて全般的にやるようにという布望をいたしておきましたけれ
ども
、これに
日銀
が一枚加わるということを実は大蔵大臣が発言をしておられますので、
日銀
としては、やはり一種の行政指導のようなものでありましょうが、その
あり方
については
大蔵省
とどのような関係でおやりになるのか。一緒におやりになるのか、別個におやりになるのか。そうしてその結果等についてはどういう形でそれを反映をされるのか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。
山際正道
86
○
山際参考人
銀行
の
調査
あるいは検査等に関して、
日本銀行
がいかなる
立場
において手伝い得るかという
お尋ね
かと
考え
るのでありますが、これは
日本銀行
は各取引
銀行
との間に契約を結んでおりまして、契約上当然なし得る権限として、必要な範囲の
調査
並びに検査を行なっておるわけでございます。
大蔵省
と提携をいたしまして、ある特定の目的のために監査を進めるというような場合におきましても、むろん協力をいたすのでございますが、
日本銀行
が単独でいたしまする場合、あるいは共同でいたしまする場合も、
日本銀行
の職員はいま申しました取引者との間の契約に基づく範囲内において、その権限を実行するという範囲にとどまるかと
考え
ております。
堀昌雄
87
○堀
委員
そういたしますと、大蔵大臣の答弁とややニュアンスが異なるように思いますけれ
ども
、
日銀
としては
日銀
独自の範囲で契約に基づいて行なわれるだけであって、
大蔵省
が行なうそれらとは別個のものと理解をしてよろしゅうございますか。
山際正道
88
○
山際参考人
過去の事例におきましても、大体特定の目的を相談いたしまして、その目的のためにあるいは共同であるいは単独に
調査
に当たるというのが、従来実行いたしてまいった点でございます。ただいまの
お尋ね
に関連いたしましては、
日本銀行
職員は官吏ではございませんし、いわんやその権限を持った当然の職権を実行し得る
立場
にはございませんので、なし得ることは相手方の契約に基づきまして、納得づくで
調査
に当たるという範囲でございますので、おのずからその制約に従うわけでございます。
大蔵省
のほうにおいても、むろんその制約の範囲は存じておられますので、その範囲において
大蔵省
の行なら検査なり
調査
に手伝い得る場合には、協力を求めるということになっております。
日本銀行
といたしましては、その範囲において協力をいたしておるわけでございます。
堀昌雄
89
○堀
委員
その具体的な経過はわかりました。 そこで最後に、先ほ
ども
一応お答えが出ておりましたけれ
ども
、少なくとも不当な
歩積み
、両
建て
については、これを排除するかまえで、それらの指導をなさるお
考え
があるのかどうか、この点だけをお伺いをしておきたいと思います。
山際正道
90
○
山際参考人
節度
を越えました
歩積み
、両
建て
については、当然これはやめるべきものであるという強い態度で指導いたすつもりでやっております。
山中貞則
91
○
山中委員長
春日一幸君。
春日一幸
92
○春日
委員
日本銀行
が
中央銀行
として行使されるさまざまな
金融政策
の中で、わけてこの
金利
政策
というものは
中央銀行
の
政策
の基本的な、かつ正当的なものとして、これが特に活用されなければならぬと
考え
ておるところでございます。したがいまして今回
日本銀行
総裁
がとられた
公定歩合
二厘
引き上げ
の
措置
は、
金融情勢
にかんがみ一個の英断であるとして、われわれはこれを理解いたしております。しかしながら今回の
引き上げ
につきましては、
日銀
総裁
は
政府
首脳部と
十分連絡
をとってこのことを行なったと言われてはおりますけれ
ども
、われわれが国会における審議の実態に徴しまするのに、総理大臣は低
金利
政策
を堅持されておりました。また大蔵大臣も同様でございまして、これはしばしば本
委員会
において、あるいは本
会議
におきまする
質問
に対しても、
公定歩合
の
引き上げ
については消極的でございました。こういうような国会論議に徴しまして、今回ここに二厘
引き上げ
が行なわれたということは、何となくやぶから棒というような印象を受けたのでございました。このことは、われわれが判断をいたしまするのに、
日本銀行
総裁
が
わが国
中央銀行
の
責任
において、またその円価値を護持せなければならないという至上
責任
の上に立って、もはやがまんがし切れなくなった、だからみずから職を賭してでも、いわば進退をかけてでも、このことに踏み切った、こういうぐあいにわれわれはこれを見ておりまするし、また一部新聞論評もその間の消息をそのごとくに伝えておるのでございます。私はこの際、いままで国会におきまして論じられたその
金利
政策
の
質疑
応答の実証と、それから今回
日銀
がとった態度、この事柄について国民の前に
日本銀行
総裁
のその決意とその心境、これをわれわれは明らかにしていただきたい。
山際正道
93
○
山際参考人
日本銀行
が
金融
調節の手段といたしまして、
金利
政策
を中心に大いに
考え
てまいらなければならぬということは、御指摘のとおりだと
考え
ております。したがいましてこの
政策
の活用自身につきましては、非常に慎重であるべきは当然でございますので、私は将来これを上げるとかこれを下げないということを前において約束するかのごとき言説をいたしましたことは、つとめて避けておりまして、ございません。今回の
引き上げ
をいたしましたにつきましても、十分に
政府
当局——私の相談相手は大蔵大臣であるのでありますが、大蔵大臣とはお話し合いをし、各種の
情勢
からいたしまして、この際上げざるを得ないという認識が統一せられまして、そこでこの結論に到達いたしました。その間に十分に意思の疎通がありましたことは御安心願ってよろしいかと
考え
ます。ただ事柄の性質上、大いに機密を要します点で、あらわれました事実だけをごらんになりますと、いかにも突然のようにおぼしめすかもしれませんけれ
ども
、それは事柄の性質上、機密のうちに事柄が進められていたということの結果かと存じます。
春日一幸
94
○春日
委員
とにかく財政と
金融
とは一体である、一体のもとに運用されるということを、しばしば総理も大蔵大臣も述べておられる。また
山際総裁
もそれを述べておられる。そういう中において国会論議では、
公定歩合
の
引き上げ
は行なわないのだ、
開放経済
に立ち向かう
日本
経済
のためには、やはり
金利
コストを引き下げる国際競争力強化のためには低
金利
政策
だと言っておいて、そうしていきなり
公定歩合
の
引き上げ
、しかも二厘のいわばショッキングな
引き上げ
、こういうことになってまいりますと、これは何となく国民を欺くみたいな感じがいたします。幾らこういうような画期的な
政策
をとるについては機密を要することとは言いながら、
政府
並びに大蔵大臣は
公定歩合
を
引き上げ
る意思はないかと言うと、その意思はないと言う。そうしておいてやぶから棒にいきなりばっと二厘
引き上げ
るというようなことは、これは
金融
と財政の一体のもとに運用していくと言うて
日銀
総裁
も、総理、大蔵大臣も論じておきながら、まるで支離滅裂というか、国民をだますというか、私はあまりに国会軽視もはなはだしいと思うが、この点のところの御判断はいかがでありますか。
山際正道
95
○
山際参考人
ただいま御指摘の点は、私と大蔵大臣のいろいろな協議あるいは見解の交換という際においては、私は別に将来を拘束されておりません。たまたま
意見
の一致を見ましたので、一致した線において実行したということにとどまるわけでございまして、実は国会その他においてどういうようなお話をなすっていらっしゃいますか、私は直接には大蔵大臣から一度も承っておりませんのですが、私としてはいま申し上げたような経過で決定いたした次第でございます。
春日一幸
96
○春日
委員
私はこの際、では別の角度から
質問
をいたしたいと思うのでありますが、今回の二厘の
引き上げ
の問題は、何といっても
日銀
がその手段と時期とを誤ったのではないか。いまの同僚諸君の
質問
に答えられておるところによって判断をいたしましても、何といっても
経済
動向の分析と判断、これを誤った。しこうしてこの
公定歩合
二厘
引き上げ
の問題だって、このような手段をとるべき時期というもの、やはりこれが誤られているのではないか、その印象が深いのでございます。申し上げるまでもなく
生産
の
上昇
、それから
企業間信用
の
膨張
、
企業
業績の悪化、こういうようなものは昨年の秋以来非常に顕著な動向でございまして、こういうような動向に微するに、これはあなたは大ベテランでありますから、当然事前的な予防的な
措置
というものは、やはり
金融
調整
手段として、これは早期にとられてしかるべきものでございましょう。また私がここで申し上げるまでもなく、
日銀
の
金融政策
の中で基本的で正当的なものは、何といってもこれは
金利
政策
であり、公開市場
政策
でありますとか、準備預金
政策
というようなものは、要するにこの
金利
政策
の補完的なものである、補強的なものである。したがってあのようなさまざまな、
経済
的に
国際収支
の逆調、これが不安ムードが高まってきておる、
物価
の
上昇
も依然としてとまらない、だから何とかしなければならぬというような声が、国会の中でも高いのでありますし、また論者はそのことを強く主調しておったのであります。特にまた国会においても昨年の暮れあたり
公定歩合
の
引き上げ
、これをすみやかにやるべしと強く論ぜられておったのでありますから、私は
日銀
としては当然そのような基本的、正当的手段を尽くして、予防的、事前的
措置
をとるべきである。あの当時とられた公開市場操作でありますとか、あるいは預金準備荷の
引き上げ
というようなものは、あの当時に判断をいたしましても、まあ
効果
が十分期待でき得ないということは、これは
金融政策
の専門家ならばみなそのように一様の見通しに立っておりました。そんなことをやったってだめなんだ、だからこの際心理的
効果
と基本的
効果
をねらうために、やはり一律的な量的
規制
ができるような、そのような
金利
政策
をとるべきである、
公定歩合
を
引き上げ
るべきであると言っておったと思うのです。にもかかわらず昨年これをやらなかった。そうしてその補完的なものを先にやって、基本的なものをあと回しにし、そうしていまこれをやることによって
経済界
、
金融界
、わけて
中小企業
に大いになる衝撃を与えようといたしておる。私は
日銀
総裁
としてのこの
責任
は非常に重いと思うが、これに対する何らかの御反省はありませんか。
山際正道
97
○
山際参考人
昨年の秋以来、
日本銀行
が
金融
調整
のためにとってまいりました
措置
についての経過は、前段の
お尋ね
に対しまして私は申し答えたつもりでございます。まあ時期を失したかどうか、またその手段をそのときにおいて誤ったかどうかということについては、いろいろ御批判もございましょうけれ
ども
、私といたしましては、先ほ
ども
お答え申し上げましたとおりに、ちょうどよい時期においてちょうどよい
政策
を行なって、今日までまいったというふうに実は
考え
ております。なお御
意見
の点は今後十分に参考に資したいと思います。
春日一幸
98
○春日
委員
私は円価値の護持というこの至上命令を正当に理解されますならば、やはりこの事前的
措置
、予防内
措置
というものに対して、その完璧が期せられなければならぬと思うのでございます。このことは昨年すでに国会においてその問題を指摘し、
物価
の値上がり、
国際収支
の逆調、
企業間信用
の
膨張
、これは何らか
措置
をとらなければならぬ。本
委員会
においても論ぜられ、各
委員会
においても論ぜられました。そういうようなときこそ、やはりそのような基本的な本質的な
措置
をとらるべきである。なれば、私はこの際
立場
をかえてお伺いいたすのでありますが、昨年おとりにならなかった何か積極的な理由があろうと思います。とるべしとるべしと、業界においても、あるいは
経済
、
金融
の専門家たちが、そのことを声を高くして叫んでおりました。あるいは十二月中にとられるかもしれない、あるいは一月にとられるかもしれないと推測がされておりました。ところがあえてそのことがとられなかった。昨年とってはならなかった理由は何であるか、この際ひとつ御説明を願いたいと思います。
山際正道
99
○
山際参考人
ただいま
お尋ね
の点につきましては、先ほ
ども
お答え申し上げた次第でございますが、今回の
金融引き締め
を必要とするに至りました
事情
に関しましては、前回、前々回の場合と違いまして、その
原因
なり様相なりが著しく異なっております。そこで前回、前々回のように、世論の向かうところも必ずしも帰一しておらず、この
原因
の分析に関する判断もなかなかまちまちでございまして、実にその真相を把握しにくい
状態
にあったわけでございます。当時行ないましたことは量的
引き締め
に過ぎまして、あまり
経済
基盤が健全でないときに、大きなショックを与えたり急カーブを切ることは、かえって必要以上の摩擦なり犠牲なりを出すのではなかろうかという判断から、私はそれをあえてとりませず、まず準備率の
引き上げ
その他によって
引き締め
の方策をとるべきことを明示するとともに、漸次その
情勢
をいろいろとつくってまいったという経過に相なっております。
春日一幸
100
○春日
委員
私はあなたの参議院におきまするこの問題についての御答弁も詳細に読ませていただいて、研究をいたしておるのでありまするが、それによりますると、いま御答弁のように、
経済
基盤が弱い。わけて
中小企業
の
経済
基盤が弱い。したがってそういうドラスチックな手段を講ずることによって、
中小企業
へ倒産、不渡り、こういうような一波万波の悪影響が起こることを十分警戒されて、そうして昨年としてはこれをやられなかった、こういうぐあいに理解をいたしておるのでございまするが、大体においてそのようでございまするか。
山際正道
101
○
山際参考人
大体お述べのとおりでございます。
春日一幸
102
○春日
委員
だといたしまするならば、現在のこの時点ならば
中小企業
に対してそのような一波万波の悪影響を及ぼすような心配はないという、何らかの反対のその保証がございまするか。私は昨年の十二月以来、
中小企業
の破産倒産、不渡りの続発、こういうものは一様の
増勢
を続けておると思うのでございます。昨年の十二月、本年一月においてはその心配があったからやらなかった、ところが本三月の時点においてはその心配はないというその実証は何でありますか、これを御説明願いたいと思います。
山際正道
103
○
山際参考人
私は
金融引き締め
を必要とする理由なり、その趨勢なりというものは、当時に比べますると今日ではよほどその
趣旨
が浸透してまいっておると思うのでございます。したがって各
企業
家におきましても、その態勢に備えるだけの準備なり
覚悟
なりというものが、だんだん整備されつつあると思うのでございますので、もうこのころ合いを見はからいまして、
開放経済
に向かうにあたりまして、ここでその態勢を整備するのは適当な時期であろうと
考え
ました次第でございます。
春日一幸
104
○春日
委員
御答弁が私の
質問
に対して正面の御答弁にありませんので、私は
開放経済
全体として云々ということを伺っているのではございません。現実に
わが国
の
中小企業
というものが、このドラスチックな手段によって相当の衝撃を受け、そのことによってさらに
金融
梗塞のしわが寄せられて、
中小企業
の経営条件、
金融
条件をさらに悪化しつつあると思っておるのでございます。一月はそういうことをおもんぱかってなされなかった。いまこれをなされた。だとすれば、
情勢
というものには何らかの
変化
があるのであるか。あるいは
情勢
に
変化
なくんば、そのような
中小企業
者を対象とするところの何らかの特別の
金融政策
というものを用意されておるのであるのか。この点を伺いたいと思うのでございます。御答弁を願います。
山際正道
105
○
山際参考人
御指摘の点につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、
引き締め開始
の当初から細心の
注意
を払いまして、
中小企業
がこれによって不当の
しわ寄せ
を受けないようにという
配慮
のもとに、出発をいたしたのでございます。その後におきましても、自来声を高くいたしまして、大中小を問わず
企業
界全体として、この
引き締め
に備える態度を早く整えてもらうようにつとめてまいったわけでございます。しかもこの
中小企業
の点につきましては、
政府
とも
十分連絡
いたしまして、
中小企業金融
専業機関に対する資金手当等も、時を逸さず実行されますように打ち合わせをいたしまして、漸次進んでおりますると同時に、われわれのほうといたしましても、先ほ
ども
申し上げましたとおり、きめこまかく労をいとわず、個々のケースにつきまして所在の
金融機関
等々と
十分連絡
いたしまして、極力その影響を少なからしめることに努力を続けておる次第でございます。その点は、今回の
引き締め
にあたりまして、私の最も腐心もし、
注意
もいたしてまいっておる点でございます。
春日一幸
106
○春日
委員
そういう
政策
、
中小企業
にしわが寄らざるよう、また寄った場合にそれを排除するための何らかの
措置
を
政府
に向かって
要請
なされておる、適当でございまするが、しかし本
委員会
において、特に
日銀
に対して要望いたしておりますことがございます。これは一個の懸案事項に相なっておりまするが、こんなときにこそすみやかに
総裁
の英断をもって、踏み切っていただきたいと思うのでございます。それはすなわち、
中小企業
専門
金融機関
——相互
銀行
でありまするとか、信用金庫でありまするとか、そういうような機関に対して、
日本銀行
は貸し出しのワクを設定せらるべきではあるまいかということでございます。現在
日本銀行
の貸し出しは、都市
銀行
に集中的になされておるのでございまするが、しかしながらこのような
措置
によりまして、現実的には基盤の弱い
中小企業
者、そうしてこのような
引き締め
が私は反射的に資金
需要
というものを増大してまいると思うのでございます。したがいましてその結果、
中小企業
にそれがはね返って締めつけられてまいります。だとすれば、こんなときにこそかねて
総裁
の念頭にもあったと思うのでありまするが、相互
銀行
あるいは
中小企業関係
の金庫ですね。信用金庫、こういうものを
日本銀行
が直接取引を結んでいく、そこに
日本銀行
の金を流していく、彼らをしてそのような資金源供給の態勢を打ち開いていく、これはかねての懸案でございまするが、いまこそその懸案の解決すべきときではないかと思うのであります。
総裁
の御見解はいかがでありますか。
山際正道
107
○
山際参考人
わが国
の
経済界
における
中小企業
の
重要性
、またその
内容
なりその規模なりの増大してまいる趨勢に対しまして、この問題が
金融
調整
上
日本銀行
の取引対象といたしましても、漸次重要度を増してきておりますることは、私もよく
承知
をいたし、そのつもりで対処をいたしております。したがって中小
金融機関
に対する預金取引、貸し金取引等も、前向きの姿勢で逐次その
内容
の充実に従い、その規模の増大に伴いましてその数をふやしております。漸次その態勢を推し進めまして、いまお話のように中小
金融
の疎通という点についても、大いに将来役立ってもらいたいという意図のもとに進んでまいりたいと思います。
春日一幸
108
○春日
委員
従来正常なる
情勢
のもとにおいて、
日銀
の方針として取引の漸進的増大をはかられてまいったということは、いま御答弁によって
承知
をいたしましたが、私の申し上げておりまするのは、
日本銀行
がその資金使途を明示して、これはすべからく
中小企業金融
に充当すべし、こういうことで
中小企業
の特別資金ワクを設定して、第一番目にはそのような
中小企業金融
の専門機関、そういうところに流していく、第二には、現在の市中
銀行
分を特にそういうような特別ワク——イヤマークのついた金を出していく、こういったような
方法
をあわせてとらるべきであると思うが、これについてお
考え
はいかがでありますか。
山際正道
109
○
山際参考人
日本銀行
の行ないます
金融
調節の
措置
は、一般
金融界
を原則として対象といたしておりますので、自然一般
金融界
に最も影響の多い
措置
をとりまして、その取引を実行いたしておるわけでございます。さような一般的対策のほかに、個別な、起こるいろいろな現象に対して、資金をどうして流すかというような問題につきましては、これはある場合におきましては、私
ども
の資金よりは、
政府
資金のほうが適当な場合もございますし、また各市中
銀行
、地方
銀行
その他の
金融機関
におきましても、
中小企業金融
部門というものがだんだん増大をいたしております。その
金融
の疎通をはかるということもございます。
状態
に応じ、機宜に適した
措置
をとりまして、その方面の
金融
の疎通にも貢献をしていきたいということをあわせて
考え
ている次第でございます。決してこれを
日本銀行
において軽々しく感じておるわけではございません。
春日一幸
110
○春日
委員
時間がまいりましたので、最後に一問して終わりたいと思います。私は
総裁
に申し上げとうございます。
総裁
も日々御研究のことと思うのでありますが、いま
総裁
は
政府
資金を流さるべしというようなところに、一個のアクセントを置かれておりますけれ
ども
、事実上
政府
関係三機関に流したところで、どんなにたくさん流したところで大体一千億とか一千五百億とかというような増量しか
考え
られないと思うのでございます。それもまた飛躍的な増量でございます。けれ
ども
今日
中小企業
が使っております資金量は十九兆五千億の四〇%といたしますれば、ざっと八兆円でありますから、この八兆という膨大な金額でもなお足らないというそのさなかに、千億や千五百億加えたところで絶対量に対する比重は変わらない。スズメの涙、焼け石に水のそしりを免れないのでございます。したがいまして
金融
全体の中において、これは本
委員会
でも論じておりますとおり、
金融機関
の貸し出すところの貸し出しシェア、これを大
企業
偏重の
現状
を
中小企業
にも均てんできるように、漸次是正していくところにあると思うのでございます。五分五分にすれば、現在八兆円使っておりますが、二十兆円の規模の中において十兆ということに相なりましょう。一躍にして
政府
の金に関係なくして、二兆円の資金量を確保することができるのでございます。こういうようなものは法的
規制
が必要ではございましょうけれ
ども
、事実上そういうようなものは、現在の政治
情勢
のもとにおいてはできません。したがって
日本銀行
総裁
が、いわゆる
日本銀行
の
中小企業金融
を重視して、そういうようなところに
日本銀行
の金を注いでいくのだというその姿勢を示されることが、心理的
効果
としてすべての市中
金融機関
にいい影響を与え得ると思うのでございます。こういう意味で、いま相互
銀行
の
内容
よきもの、あるいは金庫連合会等にお取引の中で資金が流れておるようでありますが、どうかこれを積極的に、もう少し意欲的に、しかもまた当面しておる困難を
政策
的に解消いたしますことのためにも、できるだけ
中小企業
の資金増、これを
日銀
政策
の一環の
施策
としてひとつ強力に取り上げていただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
山際正道
111
○
山際参考人
御
承知
のように
わが国
の
経済界
におきまして、
中小企業
の占める地位が年々重大さを増しておりますにつきまして、一般
金融機関
におきましても、当然その融資対象として、この種のものを相手にいたします分野がだんだんと拡大しつつございます。私は一般
金融界
の
金融
疎通をはかることによりまして、当然それらのルートを通じて、
中小企業
の方面への資金的な循環が起こり得ると
考え
ておりますが、何ぶんにも
中小企業
自身の問題は
わが国
の
金融界
、
経済界
におきまして、非常に重要な地位を占めつつあることは、私も全く御同感でございます。今後におきましても、その点は一般
金融
調節をいたしてまいります上におきまして、十分配意してまいりたいと
考え
ております。
春日一幸
112
○春日
委員
終わります。
山中貞則
113
○
山中委員長
これにて
山際日本銀行総裁
に対する
質疑
は終了いたしました。
委員会
を代表いたしまして、
委員長
より一言ごあいさつを申し上げます。
参考人
には御多用中のところ、長時間にわたり御
出席
をいただき、忌憚のない御
意見
をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。 本
会議
散会後再開することとし、暫時休憩いたします。 午後一時十四分休憩 ————◇————— 〔休憩後は
会議
を開くに至らなかった〕