○平林
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
法人税法の一部を
改正する
法律案、並びに
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案に対しまして、その税制
改正の基本的な誤りと問題点を指摘しながら、これに反対する討論を行ないたいと思います。
最近における国民の税負担の現状から見まして、昭和三十九年度の税制
改正は、どこにその重点を置くべきかという基本的目標につきまして、私どもはまず生計費には税金をかけないという原則に立って、
所得税負担の軽減をはかり、税制面における負担の公平という立場から、従来より大企業に偏向する租税特別措置はこれを大胆に整理するよう政府と論争を続けてまいったのであります。しかるに政府の重点施策としての税制
改正は、この二つの目標に対して著しく背反するものでありまして、この二法につきましても、
所得税における実質的な税負担の軽減を要望する国民とともに、とうてい私どもの容認できないところであります。特に税負担の公平原則から見まして、この二
法律案は、大資本擁護の政策を大量に盛り込みまして、調査会の答申にもない各種の特別措置を乱造創設して税制を混乱させる傾向にある点に私は大きな問題があると思うのであります。
御
承知のように、昭和三十九年度の税制
改正におきましては、その重点を
所得税の
減税を最優先に取り上げるよう税制調査会をはじめ多くの国民世論がこれを要望いたしたのでありますが、政府はいわゆる政策
減税に力を注ぎまして、
田中大蔵大臣のごときは、税制調査会の答申がどうあろうとも、政治生命をかけて資本蓄積
減税を優先的に実施すると初めから勇ましいラッパを鳴らしまして、税制調査会を暗に牽制し、池田総理大臣も租税特別措置の乱造創設に対するわが党の批判に対して、私は税制調査会には意見を聞くだけで、言うとおりにはしません、ときわめて高姿勢の暴論をはくなど、まさに税制における独裁的傾向を示しているのであります。(拍手)その結果、昭和三十九年度における租税特別措置による減収額は、国税におきまして二千五百四十億円、地方税を含めますと、三千八十億円という膨大な金額にのぼり、昭和二十五年当時の十三億円という減収に比較いたしますと、実に百九十五倍、今日まで累積された大企業への恩恵的な
減税は国税だけで一兆四千九百五十一億円をこえるという巨額に達しておるのであります。これは
所得税における初年度の六百四十九億の
減税を昭和三十二年度以降の大
減税であるとみえを切り、昭和三十九年度の税制
改正を、口を開けば中央、地方を通じて二千億をこえる大
減税と、一般の国民に対してあたかも大
減税かのような錯覚と幻想を抱かせておることと比較いたしますと、これこそ私は、大資本擁護にとって史上最大の大
減税というべきであると思うのでありまして、私は政府に猛省を促したいと思うのであります。この際特に注意を喚起しておきたい現象は、池田総理が昭和二十四年、第三次吉田
内閣の大蔵大臣として登場いたしました翌年、すなわち昭和二十五年度から租税特別措置十三億円が税制上に頭をもたげ初めまして、昭和三十五年度その
内閣の首班となりましてから、その減収額が激増しているという経過を見ることができるのであります。私は、この経過から考えまして、今回の税制
改正にあたりましては、特に政治と金との悪因縁を絶つためにも、租税特別措置の全面的な改廃は必要であると痛感をしたのでございますが、政府はかえって租税特別措置の乱造創設をしたのであります。それでは一部の観測にありますように、過般の総選挙でお世話になった財界、産業界に対するお礼の意味と、その論功行賞だという説をくつがえすことができないのではございますまいか。まことに遺憾なことといわなければなりません。
法人税法の
改正におきましては、一見すると中小企業者の税負担軽減の一環として、普通
法人の各事業年度の
所得に対する
法人税の軽
減税率の
適用限度額を、現在の二百万円から三百万円に引き上げ、機械設備を中心に固定
資産の耐用年数を短縮するなど、初年度三百億円、平年度四百九十三億円の
減税となっておりますが、平年度四百九十三億円のうち中小企業者の
減税分はその四〇%の二百億円にすぎないのであります。御
承知のように、
わが国の
法人数は昭和三十八年度六十五万九千八百四、その九八%はまず年間
所得一千万円以下の中小企業者でありまして、年間
所得一億円以上の大
法人はわずかに二%という割合になっておるのであります。そのわずか二%の大企業に二百九十三億円、九八%の中小企業に対しては二百億円と、まことにつり合いのとれない
減税は、中小企業に便乗した大資本擁護というべきだと思うのであります。(「そのとおり。」と呼ぶ者あり)また、
法人税軽減四百九十三億円の大半、四百十億円は、政府のことばでいえば開放経済への移行に備えて企業の内部留保の充実と設備の更新に資するためとして、固定
資産の耐用年数を短縮するところに主眼が置かれておりますが、その具体的な措置はすべて政府が目下検討中の政令、省令にゆだねられておりまして、正しくは
委員会の審議対象とならず、この段階で賛否を決するには重大な疑問が残るわけでありまして、私ども賛成し得ない理由の
一つであります。
租税特別措置法の
改正案におきましては、従来よりガット第十六条四項の輸出補助金として国際的批判の対象でありました輸出
所得控除制度にかえて、新たに海外
取引のある場合割り増し償却等の
改正により百十七億円、特別控除制度の創設で七億円、海外市場開拓準備金制度の創設により百十四億円、また
配当軽課措置の拡大によりまして百十四億円など、合計四百十九億六百万円の特別措置を認めようとするものでありますが、政府提案に対して私ども基本的に容認できない点は、第一に税制調査会の検討を待たず、租税特別措置を乱造創設したことでありまして、かりにその中に多少の必要性を認められるものがあったといたしましても、しからばそれだけ緊急性があるかという点については、多くの疑問があるのであります。私は少なくとも租税特別措置について本格的検討を進めておる税制調査会の答申を待つべきものと思うのであります。いわんや一般の国民が過重な税負担に耐えているとき、いかに
わが国が直面した開放経済への移行という政策要請があったといたしましても、税制の措置に安易に依存する
考え方は基本的な誤りであると思うのであります。国際競争力強化のためにと提案をされました海外
取引等のある場合の割り増し償却、技術等海外
取引にかかわる
所得の特別控除、海外市場開拓準備金制度の創設は、貿易為替の自由化を迎えて輸出の振興の必要性が高いことを認めないわけではあませんが、租税特別措置というのは負担公平の原則や租税の中立性を阻害し、総合累進構造を弱め、納税、モラルに悪影響を及ぼすなど、弊害の多いことは各位の御
承知のとおりでありまして、政府はこの認識に立って、絶えず税制以外の措置で有効な手段を検討し、特別措置の効果を実践で確かめ、特権化しないように配慮してこれを短期に改廃、縮減に努力すべきときであると思います。これをガット第十六条四項の
規定に触れない程度において企業の国際競争力の強化をはかるという基本的な
考え方は、ガット加盟諸国の批判に再びほおかむりする行為でありまして、看板の塗りかえによる措置にすぎないと思われ、国際信義から見ましてもいかがかと思うのであります。
配当軽課措置の拡大その他における
租税特別措置法の不当性指摘に対する政府の
答弁は、先ほどの大蔵大臣の答えにありましたように、自己資本の充実と資本蓄積の必要ということでございますが、私は今日も資本金一億円以上の大企業が
法人全体の七四・九%を占め、総資本の六三・八%、固定
資産の七四・九%、そして純利益の六〇%を独占しておるということを忘れてはならぬと思うのであります。企業資本における自己資本の割合が戦前に比較いたしまして低条件にあるといたしましても、今日までの経過を見ますと、相当の税制上の恩恵でささえられながら歴年低下する一方でございまして、税制上の措置の効果は、私は疑問だと思うのであります。かつその主たる原因は、
わが国の経済発展の速度が早かったことと、政府の
所得倍増計画によって企業の内部資金をはるかにこえた投資に狂奔した結果でありまして、その回復措置を一般の税負担の犠牲に求めようとするのは、私はあまりにも虫のよい要請であるといわなければならぬと思うのであります。かりに開放経済への移行に備えて、資本蓄積の必要性を真に痛感するものであるならば、私は最近の
法人におけるいわゆる交際費に対する政府の態度は、もっと厳粛な措置が必要であると思うのであります。昭和三十八年度における交際費の支出額は、三千八百八十六億、資本金一千万円以上の
法人におきましては、昭和三十年度の七百二十億と比較して約四倍半という激増ぶりを示しておりますのは、
田中大蔵大臣の財政演説にある、企業においては、あくまで自己責任の原則に立って、慎重にかつ合理的な経営を通じて内外のきびしい環境に耐え得ることが必要であるという趣旨からも反しておるのでございまして、今回とられた政府の措置は、なお不十分であり、心がまえにおいて欠けるものがあり、同時に、これは
租税特別措置法に対する政府の基本的なかまえを示しておると思うのでございます。
以上申しました趣旨によりまして、私どもは政府提案の二法に反対しようとするものでございますが、先ほど
有馬委員より提案をされました
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案に対する修正案は、第一に、大企業ないし
資産所得者本位に設けられた偏向租税特別措置は原則としてこれを廃止する、第二に、昭和三十九年度以降における特別措置の新設は一切認めないことを主体としておりまして、私はまことに時宜に適した修正案であると思うのであります。この意味におきまして、私はこの
有馬委員提案の修正案に対しまして賛意を表するものであります。
以上、修正案に対しては賛成、政府提案による二法に対しては反対の討論を終わります。(拍手)