○
泉政府委員 同族会社の留保
課税につきましては、いろいろの御
意見のあることは
承知いたしております。この点につきましては二つの面があるわけでございます。
一つはいま
佐藤委員の仰せられましたように、中小の同族会社としては外部から資金を導入することができないものでありますから、自分の得た
所得のうちからそれを留保することによって初めて自己資本をふやし、生産の
増加、経済の成長ということをはかることができる。ところが留保
課税を受けるとその点が阻害されるではないかという点が一点でございます。それからいま
一つの面は、同族会社の場合には、上場会社と違いまして、配当を行なうことについて株主からの強い要望がございませんので、また同族会社という
性格上比較的社内に留保することができやすい。その留保ということはいま
お話しのような
目的があることはたしかでございますが、しかしあまり多額な留保を行ないますと、それが配当された場合に、個人に対して配当
所得として総合
課税をさるべきものが総合
課税されないということに相なるわけでございます。そういたしますと、もし個人に配当すればもっと高い
税率で個人の総合
所得として
課税を行なうべきものが留保されたためにいつまでも
課税が行なわれないということの結果になるわけでございます。これでは個人事業を営んでおる者が
所得税の負担をする場合に比べて、同族法人の場合には負担が軽くなり過ぎるということは適当でない。そこで、いま申し上げました二つの面を考慮いたしまして、ある
程度の留保に対してはこれを控除いたしまして
課税をしない、一定の留保をこえる部分に対してのみ
課税を行なうということによりまして、あまり多額な留保をした場合には
課税するけれども、
相当程度の留保に対しては
課税しない、その
相当程度の留保ということにつきましては非同族会社の場合の留保傾向を見まして、それとのバランスにおいて考えておるわけでございます。現在はそれを一五%または年百万円、そのいずれか大きい
金額までの留保に対しては
課税をしない、その額をこえる留保に対しては
課税するというたてまえをとっておるわけでございます。その点をいろいろ
検討してみますと、最近における非同族会社の留保傾向は、いまの一五%の控除をきめました当時に比べてふえておりますので、それとのバランスを考えまして一五%という控除を二〇%にまで上げようというのが、今回の
改正案でございます。
なお、同族会社数が約五十四万五千六百ほどございますが、そのうち約一割ちょっとの六万二千ほどが留保
課税を受ける見込みでございまして、その点から見ますと、同族会社の留保
課税といいましても、その
課税対象になる同族会社というものは、割合からいきますときわめて少ないということが言えるわけでございます。その点からいたしますと、いま申し上げました控除によってそういった
程度の蓄積は行なわれて、先ほど申しました二つの面のバランスははかられているのではないかというふうに考えておる次第でございます。