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1964-03-03 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月三日(火曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 臼井 莊一君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 吉田 重延君    理事 有馬 輝武君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奧野 誠亮君    金子 一平君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       岡  良一君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       野原  覺君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    川村博太郎君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      半田  剛君         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    堀口 定義君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十九日  委員砂田重民辞任につき、その補欠として周  東英雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員周東英雄辞任につき、その補欠として砂  田重民君が議長指名委員に選任された。 三月二日  委員砂田重民辞任につき、その補欠として江  崎真澄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員江崎真澄辞任につき、その補欠として砂  田重民君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員石田博英辞任につき、その補欠として小  川平二君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十八日  公庫予算及び決算に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一一八号) 三月二日  国家公務員共済組合法長期給付に関する施行  法等の一部を改正する法律案内閣提出第一二  四号)  国有財産法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公庫予算及び決算に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一一八号)  国家公務員共済組合法長期給付に関する施行  法等の一部を改正する法律案内閣提出第一二  四号)  国有財産法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二五号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三六号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する  法律案内閣提出第一七号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第九八号)      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  公庫予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案国家公務員共済組合法長期給付に関する施行法等の一部を改正する法律案及び国有財産法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 山中貞則

    山中委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官纐纈彌三君。
  4. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 ただいま議題となりました公庫予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案外二法案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  まず第一に、公庫予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  国民金融公庫ほか七公庫予算作成及び執行並びに決算作成は、公庫予算及び決算に関する法律の定めるところによって統一的に処理されておりますが、法律の制定以後における各公庫予算及び決算事務執行状況等にかんがみ、その業務の一そうの能率的、かつ、適正な執行に資するため、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案概要は、公庫支出予算につきまして節の区分、支払いの計画及び繰り越しの制度を廃止することとし、予算総則につきまして、固定資産の取得に要する金額限度に関する事項を削除することとし、決算完結期につきまして現行の七月三十一日を五月三十一日に改め、さらに、公庫大蔵大臣提出する財務諸表及び決算報告書につきましては、これに監事の意見を付さなければならないこと等を内容とするものであります。  次に、国家公務員共済組合法長期給付に関する施行法等の一部を改正する法難案について、御説明申し上げます。  この法律案は、国家公務員共済組合法長期給付に関する施行法昭和三十七年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正し、別途本国会提案審議を願っておりまする恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案により行なおうとしている給付の改善と同様の措置恩給法適用を受けないこれらの法律適用者に対してとろうとするものであります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。  まず、国家公務員共済組合法長期給付に関する施行法の一部改正におきましては、外国特殊機関における職員期間恩給法改正措置に準じて、共済組合組合員期間に算入するよう所要改正を行なうこととしております。  次に、昭和三十七年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律の一部改正におきましては、昭和三十七年の改正で、旧勅令に基づく共済組合員等年金額恩給の年額の改定に準じて、在職公務員給与がいわゆる一万五千円ベースであったときの本俸相当額基準とするものから、在職公務員給与がいわゆる二万円ベースであったときの本俸相当額基準とするものに引き上げました際、六十歳未満の者については、増額分を停止し、七十歳未満の者については、その増額分の二分の一を停止するという制限をつけておりましたが、今回の恩給法の一部改正と同様に、旧勅令に基づく共済組合等年金者につきましてもこの年令制限を解除することといたしております。  次に、公共企業体職員等共済組合法の一部改正におきましては、国家公務員共済組合法長期給付に関する施行法の一部改正と同様に、外国特殊機関における職員期間共済組合員期間への算入について、所要措置を講ずることといたしております。  最後に、国有財産法の一部を改正する法律案について、御説明申し上げます。  国有財産管理及び処分適正化並びにその運営の円滑化に資するため、国有財産にかかる総合調整の手続きを整備するとともに、地方公共団体等災害応急措置等のために使用する国有財産について、貸し付け料無償とすることができることとする等の必要がありますので、ここに国有財産法の一部を改正する法律案提出いたした次第であります。  以下、この法律案概要を御説明申し上げます。  まず第一に、大蔵大臣が、国有財産管理及び処分の適正を期するため必要があると認めて、各省各庁の長に対し、その所管に属する国有財産について、用途の変更、用途廃止所管がえその他必要な措置を求める場合、閣議決定を経て、これを行なうことになっておりますが、今後、大蔵大臣各省各庁の長に対して直接、措置を求めることができることとし、さらに必要があると認めるときは、閣議決定を経て、必要な指示をすることができることにしようとするものであります。  第二は、公園または広場である公共用財産の減少及び皇室用財産増加に関する国会議決を要しない金額限度額は、従来それぞれ一件当たり三百万円米満の財産で一年間の財産合計額が三千万円に達するまでとされておりますが これを、それぞれ三千万円及び三億円に引き上げるとともに、皇室用財産増加については、購入、新築等予算に計上されて国会議決を経たものを除く寄付、交換、所管がえ等予算に計上されていないものについてのみ、国会議決を要することとしようとするものであります。  第三に、各省各庁の長が、特別会計所属普通財産である土地または建物の貸し付け、もしくは、貸し付け以外の方法により使用もしくは収益をさせ、又は売り払いをしようとする場合は、あらかじめ大蔵大臣と協議して行なうこととして、普通財産管理及び処分を適正に行なうようにしようとするものであります。  第四に、行政財産を、その用途または目的を妨げない限度において使用または収益をさせる場合は、現行法では私法契約によることも可能でありますが、今後はすべて行政処分たる許可によることとし、あわせて私権が排除されることを明確にしようとするものであります。  第五に、地方公共団体等に対して、災害が発生した場合に、応急措置を実施するために必要な普通財産無償貸し付けることができることとするほか、ごみ処理施設及びし尿処理施設の用に供するために必要な普通財産無償貸し付けもしくは譲与することができることとし、さらに行政財産についても、その用途または目的を妨げない限度において道路、水道及び下水道の用に供する場合は、これを無償で許可することができるものとしようとするものであります。  以上が公庫予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案外二法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 山中貞則

    山中委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  各案に対する質疑次会に譲ります。      ————◇—————
  6. 山中貞則

    山中委員長 次に、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案及び物品税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 法人税質疑をする前に、物品税について、少し関連があることがありますので質問したいと思います。  物品税の問題は、前からいろいろ問題がございまして、社会党は物品税廃止という意見を持っておりますが、その後政府では、なかなかそう簡単にいかぬと見えまして、これがずっと続いておるわけです。この物品税というのは非常に不公平な税金で、ある品目だけに税金がかかって、当然かかるべきものがかからないというような非常に不公平な面があると思うのです。私たちは物品税廃止するという案を持っておりますが、主税局長はどんな御意見を持っておりますか、まずそれを伺いたいと思います。
  8. 泉美之松

    泉政府委員 物品税につきましては、特に課税品物を選びまして、その奢侈的ないし便益品という性格に注目いたしまして、消費税として課税しておるものでございます。これにつきましていろいろの御意見のあることは承知いたしておるわけでございますが、しかし、三十七年の間接税関係の大改正を行ないました際、物品税につきましては、課税を適当としないようなものは課税対象品目から除外いたしますし、またその担税力が弱いと認められるものにつきましては、比較的軽い税率ということで、思い切った改正をいたして今日に及んでおりますので、現状におきまして物品税廃止するということは考えておらないわけでございます。物品税の税収も、今年度の見込みにおきましては千五百十三億という大きな金額にのぼっておりますし、その課税対象も、いま申し上げましたような点からいたしますと、現在の段階においては課税されてもしかたない性質のものではないかと思っておるわけでございます。ただ、物品税につきましては、経済の動きに応じましていろいろ消費態様等も変わってまいりますので、その様子が変わっていくことに応じましては配慮をいたしていく必要がいろいろあろうかと思うのでございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ただいま泉さんから奢侈品に対して税をかけるというようなことを言っておられますが、一体そのぜいたくとか奢侈というのはどういう観点からこれを考えられるのか。貧乏人にとって自動車はあるいはぜいたく品であるかもしれませんけれども、相当な人にとってはやはり自動車奢侈品でないということがある。それからまた、写真機とか楽器なんというものは、これは御承知のように国民一般に通用いたしておりまして、大きなピアノだったらぜいたく品かもしれませんが、オルガン程度のものなら、ぜいたく品だとか、奢侈品だということは言えないと思うのであります。そういう観点が大きな問題になると思うのですが、その点はどのように考えておるか。この一種、二種といろいろ区別がしてありますけれども、どういう観点でそういうことがきめられるのか、伺っておきたいと思います。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 私は物品税課税対象奢侈品とだけ申したのではないのでございまして、奢侈品及び便益品——それを使用することによって便益相当受けるという品物課税対象にしておるということを申し上げたのでございます。もちろんお話のように、奢侈品であるかあるいは便益品であるかということは、その人の個人的感覚だけではなかなかきめることのできない要素を含んであります。お話のように、自動車に対して課税する場合にも、一部の人はもう当然必要な品物だというふうにお感じになることがあろうかと思います。しかし、社会全般基準にいたしまして考えますと、やはり自動車奢侈品ないし便益品として課税対象にすべきものであろうというふうに考えられると思うのでございます。結局、その個々の人でなしに、社会全般消費水準といったようなものを考慮して、奢侈品ないし便益品に対して課税するのも、諸外国の例もございますし、やむを得ないところではないかと思うのでございます。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 奢侈品だとか便益品だとすれば、ジュースなんかにも清涼飲料として税金がかかっておりますが、これはどう説明されますか。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 清涼飲料に対しまする課税につきましては、御承知のとおり長い歴史があるわけでございます。かっては清料飲料税という税法がございまして、それに基づいて課税が行なわれたことは佐藤委員承知のとおりだと思うのでございますが、その当時の課税趣旨は、炭酸飲料が酒類とともに飲用されるということで、その消費担税力があるということから課税が行なわれておったと思うのでございます。その後、嗜好飲料として物品税の中に織り込まれて今日にまいっておるのでありますが、今日の税率は御承知のとおり従価一〇%の税率になっておるのでございます。その嗜好飲料を飲むことによって気分が爽快になるというような事情を考えますと、一〇%程度の税は負担していただいてもがまんしていただけるのではないか。たとえばこれを諸外国の例と比較してみますと、イギリスにおきましては、従価に換算いたしまして約一五%の課税が行なわれております。またフランスにおきましては、従価に換算いたしますと二七・五%くらいの課税が行なわれております。こういった点からいたしますと、日本においては一〇%程度課税するのはやむを得ないことではないかというふうに考えておるのでございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この物品税というのは泉さん御承知のとおりここれは昭和十二年の日支事変を中心として、当時ぜいたく品という形で取られた税金でありまして、その歴史的過程から考えましても、戦後二十年にもなっておる今日にこういうものを残しておくということは非常に不公平ではないか。これはアメリカでも、フランスでも、売り上げ税というような税金がありまして、どんなものにも売り上げ税をかけるこういう方式ならば納得がいくのでありますけれども、私、大蔵委員を長くやっておりますが、ずいぶんいろいろな品目が削られてきました。いま残っておるのは六十数品目かと思いますが、どうもその点が不公平じゃないか。ぜいたくとか奢侈品とかいうような問題は、社会の変化によって通念が変わってくる。このごろ写真機なんかをぜいたくだとか奢侈品という考え方は、私ちょと不穏当じゃないかと思うんです。こういう点について、やはり物品税というのはどうもだれが考えてみても税としては非常に不公平だ、私はそういう考えを持っておりますあなたはまだいまの現状で、非常にたくさんの千五百十三億、国税総収入の四・九%という税金を取っておるから、やむを得ないと言うかもしれませんけれども、一部の品目だけがこういう不公平な目にあっておるような感じがするのですが、こういう点について検討されたかどうか、これについても伺っておきたいと思います。
  14. 泉美之松

    泉政府委員 物品税課税品目は、お話のように昭和十二年、この税目が起されまして以来、戦時中非常にたくさんふえまして、また税率も非常に高くなっておったのでございますが、戦後だんだんと品目を整理しますし、またその税率もだんだんと緩和いたしまして、今日におきましては、御承知のとおり製造課税の場合には最高が四〇%、小売り課税の場合も最高が二〇%といったような軽い税率になっております。また品目といたしましては、六十三品目というのは三十七年の改正前の数字でございまして、三十七年の改正後は五十九品目になっておるわけでございます。もちろんお話のように、物品税を今後そのまま続けていくべきか、それとも諸外国の例にありますように、売り上げ税ないし付加価値税といったような形に持っていくべきか、この点は税制上きわめて大きな問題でございます。税制調査会におきましても、そういう方向をとるべきかどうかということにつきまして、常に検討はいたしておるのでございますが、この点につきましては、何しろ新税を起こすことでございますので、それを必要とする大きな財政需要がある際でないと適当ではないのではないか。たとえば社会保障を画期的に充実するとかいったような何か大きな財政需要がある場合に、それを理由にしてそういった売り上げ税ないし付加価値税といった方向検討するのが適当ではないか。現状においてはもし物品税に不合理な点があればその不合理な点を是正することとして、古くからある税を続けていくのがいいのではないか。御承知のとおり、新税は概して国民に受け入れがたい、古い税は何といいましてもその間に長い間の経験を積んできておりますので、国民の受け入れやすい点がある、こういった点を考えると、そういう方向でやっていくべきではないかというのが現在における税制調査会検討内容になっております。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから今度の一部を改正する法律の中で軽減税率適用期間を延長していた七品目のうち、三品目だけ適用されることになっておりますが、どういう理由でこの三つだけが残っておるのか。そのもの一つ一つについて、私の納得のいくように御説明願いたいと思います。
  16. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり、昭和三十七年の税制改正の際、現在暫定税率をとられております。品目につきましては、他品目との権衡上新たに課税することにいたしたのでございますが、新たに課税を起こす関係上、暫定的に軽減税率適用して、二年間ほど軽減税率で一〇%でやってまいったのでございます。ところが軽減税率適用期限がこの四月と十月に到来することになりました。そこでこれをどうするかいろいろ検討いたしたのでございますが、七品目のうち、まず第一の品目でありますいわゆるステレオ、これにつきましては、御承知のとおり今回FM放送が開始されることになりましたので、従来のステレオ装置の上にさらに一つの新らしい装置をつけ加えないとうまく聞けないといったような点がありますので、従来の値段の上に、そういった新しい装置を加えることによる価格の上昇があるわけでございます。それと外国品相当入る可能性がございます。外国品との競争関係を考えますと、ステレオにつきましてはなお暫定軽減税率適用するのがいいのではないかというふうに考えらまれすので、これを適用期限を延長することにいたしておるのでございます。その次にカークーラーにつきましては、御承知のように最近自動車消費がふえております。また諸外国との競争上からいたしましても、わが国自動車がかなり輸出できるような態勢にあるわけでございますが、その自動車カークーラーをつけることによってますその効用が上がるわけでございます。これまた外国との競争上、また輸入防止という見地からいたしまして、暫定軽減税率を延ばすことにいたしたのでございます。それから冷房装置につきましても、いま申し上げましたカークーラーの場合と同様、輸入品相当増加する傾向にございますので、輸入品との競争上からいたしますと、現在の暫定税率廃止しますと、輸入品との対抗が困難になってくるということが考えられますので、暫定軽減税率をなおしばらく延長するということの措置をとったのでございます。もちろんそれ以外の品目につきましても、メーカーとしてはいろいろの事情があろうかと思うのでございますが、われわれ客観的に考えますと、この三品につきましては、いま申し上げましたような国際競争上の理由、それから今後この生産をそういうことによって伸ばしていけば将来わが国の輸出の上において大きな寄与をするということが期待できる、こういった面が考えられますので、この三品目に限りまして暫定軽減税率適用期限をさらに延長することにいたした次第でございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そのほかの四品目というのはもう全然心配はないということになるのですか。どうもそこのところが私はわからないのですが、何か三品目だけは陳情して、まあこれだけは気の毒だから何とかしてやれというような簡単なことできまったのではないかと思われるのですが、そういうようなことではないですか。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 もちろん三品目以外のものにつきましてもいろいろと検討いたしたのでございますが、その検討の結果は、たとえば冷風扇でございますが、これは扇風機とルームクーラーとの中間をいき、まあ低所得者層に喜ばれるであろうということから冷風扇が売り出されたわけでございますが、どうも湿気を伴いやすいということからいたしまして、その消費があまり伸びておりません。その消費があまり伸びておらないという点におきましては、メーカーとしては気の毒という点があることは事実でございますが、しかし品物自体から見ましてこれをさらに今後助長していくべき性格のものとも考えられません。したがって冷風扇につきましては暫定軽減税率を延ばさなかったのでございます。それから芝刈り機につきましても検討いたしましたが、これはまずまずその心配はないというふうに考えられるのでございます。それから脱水洗たく機につきましては、物干し場が要らないということからいたしますと、将来相当伸びが期待できるのでございますが、電気洗たく機の構造でございますが、一槽式のものは百ワットという電気使用量関係からいたしまして非課税となっておるのでございますが、二槽式軍機洗たく機脱水洗たく機として課税になるわけでございます。このほうは値段の点からいたしましてもかなり高いものでございますので、相当所得の者でないと買わないであろうと考えられます。その伸びはあまり期待できないのではないのかというふうに考えられます。したがって、これについては特に軽減税率を設けて、その生産を増加するというようなことは期待できないと考えられるのでございます。それから冷水器につきましては、水道管と直結しております。いわゆるプレッシャー方式のものは非課税とされておりまして、貯蔵式のものが、たとえば水道の設備のない、ゴルフ場といったようなところに設けられる程度で、これにつきましても軽減税率を二年間適用すれば、その後の消費がそう大きく伸びるとも期待できませんし、またその置かれる場所の性質等から考えて、まあ本来の税率に戻すのもやむを得ないところではないかというふうに考えた次第でございます。  以上のように、ほかの品目検討いたしますと、この際軽減税率をなお延長いたしまして、その生産を助長することによって、将来それがわが国の国際収支の上に大きく寄与するといったような品目としては、先ほど申し上げましたステレオカークーラー、パッケージ型ルームクーラーという三品目があげられるわけでございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まあ税金は安くするにこしたことはありませんけれども、片寄りがないようにしていただきたいと思いますが、最近五カ年間において物品税の推移はどういうような形になっておりますか、簡単な数字でけっこうですから。去年は千五百十三億になっておりますが、この五カ年間ではどんなような傾向になっておるのかということが一つ、それから物品税は脱税の問題がよくあるのですが、脱税の防止をどのような方法でやっておるか。これは国税庁になるかもしれませんけれども、その二つをちょっとお伺いしたいと思うのです。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 課税額で申し上げたいと思います。予算に計上いたしておりますのは収入額でございますので、収入歩合が一〇〇%でございませんので、収入は若干ずれておりますが、それを御了承いただきまして申し上げますと、昭和三十二年に三百七十六億でございました。それが三十三年に四百五十七億、三十四年に六百二十三億、三十五年に八百十三億、三十六年に千六一億、三十七年には改正がありまして、相当軽減されましたので千九十二億、三十八年に、これは目下のところ課税見込みの数字でございまして、実際には年度を経過しませんとわかりませんけれども、一応課税見込みとして千二百八十四億円を見込んでおるわけであります。三十九年におきましては、予算課税見込みといたしましては千五百七十億を見込みまして、そのうち収入になりますのが、もちろん前年度以前に課税したもののうちの収入になるものを含めまして一収入額としましては千五百十三億、こういうふうに見込んでおるわけでございまして、課税額といたしましては、昭和三十二年を一〇〇といたしますと、三十七年の改正前の三十六年に二八一、三十九年には四一六ということになりまして、昭和三十二年の四・一六倍ということになっております。
  21. 半田剛

    ○半田説明員 ただいまの佐藤先生の御質問のうちで、脱税関係についてどういうふうになっておるか。これは結局一つは検査取り締まりの充実、これはもちろんでありますが、いま全国で間税関係は酒を入れまして約五千人くらいです。消費税関係はその半分でございますが、それで検査取り締まりの充実を期しておる、これが第一点でございます。もう一つは、税法その他通達等の趣旨を十分に徹底する。特に申告納税になりましたので、これを十分徹底するというのが第二の方法でございます。それから脱税防止に備えまして物品税証紙、すなわちゴルフ用具、ピアノ等につきまして、物品税証紙を使用いたしまして脱税防止に備える、この三つに大体分かれております。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いま泉さんの御説明の、この四年間に大体四倍になったという大きな数字は何が大きな原因でございますか。その点を伺っておきたいと思うのです。
  23. 泉美之松

    泉政府委員 物品税課税品目では五十九品目という数がございますが、そのうち約十品目が収入の相当部分を占めておるのでございます。そのうちでも自動車、ことに小型自動車とテレビ、これが一番大きな品目になっておりまして、それに次ぎまして電気冷蔵庫、写真機、それからフィルム、電気器具、化粧品、こういったような品目がつながっております。何と申しましても一番大きいのは、三十九年度の見込みでは、小型自動車最高でありまして、先ほど申し上げました千五百七十億という課税臓見込み額のうち、小型自動車が三百七十八億で約二四%になっております。それからテレビが二再四十九億、約二百五十億でございますが、これが一六%、電気冷蔵庫が二百十四億でございまして、これが二三・七%、こういった三品目がきわめて圧倒的でございまして、あと写真機が七十八億といったような数字で、ぐっと差がついておるわけでございます。
  24. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この十年間に、いろいろ時代の推移でそういう物品税に対しましても内容が非常に変わってきたのですが、私は先ほど清涼飲料水のことを申しましたのですけれども、自動車などと比べて、同じく物品税の中でもあまりに相違があるということと、同時に、全体の率としてはわずかなものだと思うのですが、物品税の中で清涼飲料水くらいはとってしまうような考えはできないものかどうか。物品税は、われわれは原則としてかけるべきでないと思っておりますけれども、どうも清涼飲料水のようなものは、前にはラムネなんかもついておりましたけれども、ラムネなんかはずしたことがありますが、そういうようなことを考えると、物品税の中で何となく変わったもののようにも考えられますが、それはどうですか。
  25. 泉美之松

    泉政府委員 清涼飲料に対する物品税課税額といたしましては、年間約十三億程度でございます。これはここ数年あまり変わらない金額でずっと推移いたしております。それで清涼飲料に対する物品税課税について今後どうすべきかという点につきましては、御意見の点も拝聴いたしましたが、これはほかのコーヒーとかココアに対する課税こういった嗜好飲料清涼飲料とのバランス、こういった点にいろいろ問題があろうかと思うのであります。もちろんお話のように、かってはラムネが課税されておったわけでございますが、現在はラムネに対しては課税いたしておりません。問題がございますのは、概して嗜好飲料のほうにつきましては大企業が生産するのがわりあい多い。ところが清涼飲料のほうにおきましては、中小企業が生産するものが、比校的多い。そこに、物品の性質としましては似たような性質がありましても、その生産者であるものが違っておるために、何と申しますか、消費税の本来の目的でありまする税の転嫁という点にいろいろ問題があるようでございます。これらの点につきましては、転嫁の状況等も今後さらに十分検討いたしたい、かように考え、その転嫁の状況等を考慮した上で、将来物品税についてどういうふうな方向でいくべきか検討いたしてみたい、かように考える次第でございます。
  26. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ意見がありますが、そういうような観点からお考え願いたいと思う。  次に、法人税の問題についてでありますが、あなたのほうから資料をもらったのでありますが、税制調査会において法人税の問題に触れるような意見が出たか、こまかいことはけっこうでありますが、こういうような意見があったというような重要な意見の経過を、この中を読んでもそういうことはわかりませんので、泉さんは出ておられたと思いますが、どういう点が大きな問題だったかという点を御説明願いたいと思います。
  27. 泉美之松

    泉政府委員 法人税につきましては、この前から当委員会で申し上げておりますように、多くの問題があるわけでございます。  まず第一は、法人税をどういうふうに観念すべきか、御承知のとおり、わが国税法はシャウプ勧告以来法人擬制説的な考え方のもとにやられておるわけでございますが、それをほかの国に例がありますように、法人を実在説的に考えて、法人税を観念すべきかどうかという点が一番根本の問題でございます。  それと同時に一実在説的に考えようともあるいは擬制説的に考えようとも、法人、個人との間の二重課税の問題をどう考えるべきか。もちろん擬制説的に考えれば、この二重課税を調整するという点が強く出てまいります。実在説的に考えれば二重課税なんてないんだというふうに考えることもできます。しかし諸外国の実例を見ますと、擬制説的立場に立っておる場合におきましても、完全なる二重課税の調整をしておるのはイギリスだけであります。そのほかの国はそこまで徹底しておらない、日本もまた同じでございます。それから本来実在説的な立場をとっている国におきましても、若干の二重課税の調整を行なっております。アメリカがそうでございます。もっともアメリカは昨年提示されましたケネディ教書に基づく大減税が今度成立するようでございますが、それによりますと、配当控除を百ドルまで行なうことにしまして、あとの四%部分の配当控除は将来行なわなくなる様子でございますが、いずれにしても、そういった若干の二重課税の調整を行なっております。その点をどう考えるべきか、これが第二の問題でございます。  それから第三の問題は、法人の税率をどうすべきか、そのときに一般的に税率の問題と、それから当委員会で先般来問題になっておりますように、中小法人に対して特に税率を軽減する必要があるかどうか、こういった税率の問題が三番目の問題でございます。  それから四番目の問題としましては、課税標準の計算について、いろいろ租税特別措置などにおきまして特例が設けられておりますが、その租税特別措置の特例をどうすべきか。整理することのできるものは整理すべきであるが、最近の経済情勢、特に開放経済体制に向かう段階において特別措置の設置の要望がたくさんあるわけでありますが、これについてどういうふうに処理すべきか、こういった大ざっぱに分けまして四つの大きな問題が論議されたのでございます。
  28. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 どうも法人税の税の負担が、中小法人にはつらくて大法人には楽じゃないかというように考えられますが、この点について泉さんどういうふうにお考えになっておられますか。中小法人と大法人との間の税の均衡がとれないようにわれわれは考えますが、その点はどうお考えになっておりますか。
  29. 泉美之松

    泉政府委員 おことばではございますが、先般竹本委員にお答えいたしましたように、大法人と中小法人との間でかねてからいわれておりますことは、大法人は租税特別措置の特典を受けやすいが、中小法人は租税特別措置の特典を利用できない面が多い。そのために実際問題としては大法人の場合の三八%の税率、中小法人の場合には所得二百万円までは三三%、今度それを印三百万円までは三三%という軽減税率にすることになっておりますが、そういった程度では実効税率としてみた場合に、大法人は租税特別措置による特典を受ければ三八%という税率がもっと低いものになってしまう。ところが中小法人は租税特別措置による特典を受けにくいので、三三%とあまり変わらない実効税負担となっておるというような御批判があったわけでございますが、われわれはその点につきまして租税特別措置がひとり大法人のためにだけ利用されるということのないように、中小法人もそれの特典を享受することができるようにいろいろ配慮をいたしまして、御承知のとおり中小企業用合理化機械の特別償却であるとか、あるいは中小企業合理化促進法による中小企業者の割り増し償却であるとか、貸し倒れ、退職、こういったものも中小企業で利用できるような配慮を加えて今日に至っております。その結果、この前申し上げましたように、三十六年から三十七年までの間の決算法人について大法人と中小法人とを比べてみますと、大法人の場合の課税標準が特別措置適用を受ける前の所得一〇〇に対しまして特別措置適用を受けた結果八二になるのに対しまして、中小法人の場合、特別措置適用を受ける前の総所得の一〇〇に対しまして八八といった課税標準になっております。その結果は、大法人の場合所得が十億ぐらいでありますと三一・五%程度の実効税負担になります。中小法人の場合、それが年所得六百万円とかあるいは三百万円というような場合には二九%程度の負担になるわけでございます。その点からいたしますと、表面上の三八対三三という差は非常に縮まっておりますけれども、まだ大法人と中小法人との間に実効税率で逆転するといったような事実はないように見受けるのでございます。しかしながら逆転しないということだけでは十分でないというふうにも考えられます。今後中小法人に対してどういうふうに考えていくべきか検討すべきであると思うのでございますが、先ほど申し上げましたように、この問題は法人の本質というものをどう観念するか、法人擬制説に基づいて考えるか、法人実在説に基づいて考えるか、この根本の問題が解決されないと、どういうふうにこれを持っていくべきか結論が出ないわけでございます。これらにつきまして税制調査会審議をすみやかにお願いしたいというふうに考えておる次第でございます。
  30. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同族会社の留保所得課税についてちょっとお伺いしたいと思いますが、現行法においては同族会社が一定の金額をこえて利益を留保した場合には、その留保した金額に対して特別な課税が行なわれることになっておりまして、今回の法人税法改正によってその税負担の軽減が若干はかられることになっておりますけれども、もともと同族会社つまり中小法人は公開市場で広く一般から株式資本を募ることができる大企業と違って、自力で資本を充実するよりしかたがないのであります。しかし自己資本の蓄積の方法としては、毎事業年度の利益を留保していく以外に道がないのでありますが、この留保所得課税を行なうということは、中小企業の資本蓄積を妨害するものであって、また経営者の企業意欲を阻害し、かえって経費乱費の傾向を生むようなことが出てきて百害あって一利なしということになるのであります。このような留保所得課税の制度はすみやかに撤回してなくしたほうがいいと思うのですが、これを泉さんはどんなようにお考えになっておりますか、ちょっと詳しく御説明願いたいと思います。
  31. 泉美之松

    泉政府委員 同族会社の留保課税につきましては、いろいろの御意見のあることは承知いたしております。この点につきましては二つの面があるわけでございます。一つはいま佐藤委員の仰せられましたように、中小の同族会社としては外部から資金を導入することができないものでありますから、自分の得た所得のうちからそれを留保することによって初めて自己資本をふやし、生産の増加、経済の成長ということをはかることができる。ところが留保課税を受けるとその点が阻害されるではないかという点が一点でございます。それからいま一つの面は、同族会社の場合には、上場会社と違いまして、配当を行なうことについて株主からの強い要望がございませんので、また同族会社という性格上比較的社内に留保することができやすい。その留保ということはいまお話しのような目的があることはたしかでございますが、しかしあまり多額な留保を行ないますと、それが配当された場合に、個人に対して配当所得として総合課税をさるべきものが総合課税されないということに相なるわけでございます。そういたしますと、もし個人に配当すればもっと高い税率で個人の総合所得として課税を行なうべきものが留保されたためにいつまでも課税が行なわれないということの結果になるわけでございます。これでは個人事業を営んでおる者が所得税の負担をする場合に比べて、同族法人の場合には負担が軽くなり過ぎるということは適当でない。そこで、いま申し上げました二つの面を考慮いたしまして、ある程度の留保に対してはこれを控除いたしまして課税をしない、一定の留保をこえる部分に対してのみ課税を行なうということによりまして、あまり多額な留保をした場合には課税するけれども、相当程度の留保に対しては課税しない、その相当程度の留保ということにつきましては非同族会社の場合の留保傾向を見まして、それとのバランスにおいて考えておるわけでございます。現在はそれを一五%または年百万円、そのいずれか大きい金額までの留保に対しては課税をしない、その額をこえる留保に対しては課税するというたてまえをとっておるわけでございます。その点をいろいろ検討してみますと、最近における非同族会社の留保傾向は、いまの一五%の控除をきめました当時に比べてふえておりますので、それとのバランスを考えまして一五%という控除を二〇%にまで上げようというのが、今回の改正案でございます。  なお、同族会社数が約五十四万五千六百ほどございますが、そのうち約一割ちょっとの六万二千ほどが留保課税を受ける見込みでございまして、その点から見ますと、同族会社の留保課税といいましても、その課税対象になる同族会社というものは、割合からいきますときわめて少ないということが言えるわけでございます。その点からいたしますと、いま申し上げました控除によってそういった程度の蓄積は行なわれて、先ほど申しました二つの面のバランスははかられているのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  32. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連。先ほどの佐藤委員の質問に関連してお伺いいたしますが、佐藤委員の質問に対して、局長の答弁を聞いておりますと、法人課税において法人擬制説の上に立っておるのか、実在説の上に立っておるのかがもうひとつ明確でないので、一体どちらの学説の上に立っておるのか。それを民法の法人における、ことに四十四条の法人の不法行為能力、これに関連してひとつお答え願いたいと思います。四十四条の法人の不法行為能力をどう解釈するかによって、実在説であるか擬制説かということが分かれてくると思うのです。その法人の基礎は民法でまずきまっておるわけです。したがって民法解釈をもって当たらなければいけないと思うのですが、その法人実在説なのか擬制説なのか、ちょっとお伺いします。
  33. 泉美之松

    泉政府委員 私どもが法人税に関連して法人実在説的な立場をとるかあるいは法人擬制説的な立場をとるかと申しておるのでございまして、民法の立場におきまして法人実在説をとるかあるいは法人擬制説をとるかということと、法人税法の上におきまして法人実在説的な立場をとるか、法人擬制説的な立場をとるかということとは、必ずしも直接に関連はいたしておらないのでございます。したがいまして、民法の四十四条の規定によりまして法人の不法行為能力についてどう考えるかということと、法人税についてどう考えるかということとは別の問題でございまして、これはおわかりのように、わが国の民法の四十四条の規定が変わらなくても、シャウプ勧告前は法人について実在説的な考え方をとり、シャウプ勧告後におきましては法人について擬制説的な考え方をとっておるということからいたしましても、われわれの申しまする法人税についての擬制説的な考え方あるいは実在説的な考え方と、民法の法人実在説あるいは擬制説ということとは直接結びつかないのでございます。
  34. 田中武夫

    ○田中(武)委員 法人というものの基礎は民法によってきまるのでしょう。その上に商法があり、特別法がありまして法人が成り立つわけなのです。したがって法人の性格を論ずるのにはやはり民法の規定に戻って法人の本質についてまず解釈を出し、その上でないといかぬと思うのです。そうでなければ、法人税において——民法においても実在説と擬制説があるわけなのですね。それをシャウプ勧告から擬制説をとるというなら、法人税の中において特別にそのような態度をとったということが明確に解釈ができる規定がなくちゃいかぬと思うのです。そういう解釈はありますか。シャウプ勧告以来とおっしゃるが、あれはあくまで勧告なのです。法人税法を読んだ場合にあなたの答弁のようなことが出てきますか。やはり法人というものの性格は民法に戻ってやらなければならないと思うのです。そうでなかったら、そういうときの税金の取りやすいほうにしたがって適宜やるんだということじゃ了解できません。
  35. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、民法におきましても、わが国の民法が法人実在説に立っておるのかあるいは法人擬制説に基づいておるのかという点につきましては学者の間に争いがございます。私どものほうは、民法のほうについてそういう学説の争いがある点は別としまして、法人税のほうでその点を考えておりますのは、擬制説的立場に立つという場合におきましては配当につきまして配当控除を行なう、あるいは法人間配当の場合に益金不算入にする、この点が擬制説的な考え方に基づく法人税の取り扱いの違いになるわけでございまして、その点は法人税法にシャウプ勧告が行なわれましたあとそういう新しい規定が設けられておるのでございます。同時に額面超過金の益金不算入の制度とか、そういった新しい制度がシャウプ勧告に基づく昭和二十五年の税制改正で設けられましたので、そういった点からしてわが国法人税法は擬制説的な立場に立っておるということを申し上げておるのでございます。ただイギリスの法人税の考え方とは違いまして、イギリスの場合におきましては、法人が配当を行ないました場合に、その配当の金額をもとの法人の段階の所得にまでクローズアップいたしまして、そこから個人の所得税率適用いたしまして、そうして法人のほうで納めた税金率を引くということによりまして、完全なる二重課税の調整が行なわれておるわけであります。しかしわが国の場合におきましては、現在では個人が配当を受けますと、配当のうちの一五%を税額控除するという方法をとっておりますが、この税額控除の方法は概算的な控除の方法でございまして、イギリスのような完全なる二重課税の調整にはなっておりません。そこが、擬制説的立場をとっておりますけれども、イギリスほど完全な擬制説的見地には基づいておらない、こういうことを申したのでございます。
  36. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連質問ですから、あらためてまとまった質問をしますが、それでは法人とはどういうことです。——笑いごとでなく、いままで長きにわたって法人税をとってきたのでしょう。法人とは何ぞやということがはっきりわからなくて、法人税をかけてきたのですか。一体法人とは何です。法人とは何ぞやということから議論しなければいけないと思うのです。ところがいま議論は、あなたのほうに余裕がないようでございますから、あらためてやります。やりますが、何といったって法人は何かということなら、民法の一番最初のところにきて、まず法人とはこういうものである。民法の規定にも言っておるように、やはり民法または特別な法律によってのみと、こういうことなんです。だからそのほかのいろいろの法律がある。ある特殊法人がある。そういうところから出てきて、法人、その中でまたたくさんの法人の中から特に非課税にする法人がこうだと法人は書いてあるでしょう。そうすると法人とは何か。実在説の上に立つものか、擬制説の上に立つものなのか、こういうこともまた検討しなければいけないと思います。あなたが例として出されましたいまの二、三の例は必ずしも法人擬制説の上に立っておるものとは考えられません。新しい学説からいえば、実在説のほうが強いですよ。そういことについてはあらためて行ないますから、あたもよく勉強しておいてください。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 また同じく同族会社に関する問題として、同族会社がその同族関係者等に対して支払う給与の多寡に問題があります。そこで支払いを得た給与の額が、過大と認められるときには、いわゆる同族会社の行為計算否認の規定によって、適正と認められる額までしか、その損金算入を認められないことになっております。この場合幾らまでが適正な額であるかどうかということは、まず実際上の問題になっておりまして、絶えず税務当局と納税者との間にいろいろなトラブルかあるということは御承知のとおりであります。政府はこの問題を可及的すみやかに、この給与に関する具体的な統一のとれた基準を設けるべきであると思います。この点は御承知のように税制調査会でもいろいろ問題になったところでありますが、どの程度まで検討しておられるのかこれも伺っておきたいと思います。
  38. 泉美之松

    泉政府委員 同族法人であると非同族法人であるとを問わず、その法人税法及びその施行規則におきましては、給与と申しますか、過大な報酬等の支払いの場合につきまして、規定を設けておりますのは三点でございまして、一つは過大な役員報酬の場合で過大な役員報酬につきましては、損金に算入しないということ。それからいま一つは、役員賞与、これは本来損金に入れないという性質のものでございます。それからいま一つは、役員の退職給与金のうちの過大なもの、退職という名目で過大な退職給与金を出したというような、この三つの場合につきまして、法人税法施行規則の十条の三ないし十条の五におきまして規定を設けておるのでございます。そのほかには、一般の従業員に払った給与が過大であるかないかということにつきましては、税の執行上いろいろ問題になることは、佐藤委員承知のとおりでございますが、これにつきましては、結局同種の事業を営んでおりまする他の企業とのそういった給与のバランス、それから利益の状況、こういったものから見て適当でないと認められるものに限って否認するのでございまして、そういった点から見て著しく不当でない限りは、否認をしないということにいたしておるのでございます。この点につきましては、税の執行上のいろいろな問題があることは私も承知いたしておりますが、これはどちらかというと、国税庁のほうからお答えいただいたほうがよいかと思います。ただ過去におきましては、そういった点がいろいろ問題になりましたけれども、ここ二、三年来はそういった点についての紛争は、きわめて少なくなってまいっておることは御承知だろうと思います。そのことだけ申し上げておきます。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど中小法人が大法人に比して過重が大きいと言いましたから、私はそう言ったのですが、大法人に対して超過所得税をかけてはどうかという問題が一つ残っております。  超過所得税の復活の問題は、私がここで言わなくても、シャウプ勧告による廃止後幾たびか議論があったことは御承知のとおりでありますが、それが税制一つの合理的な根拠を有する考え方であることは、わが国歴史がこれを物語っております。もっともこの制度は、わが国法人税の構成が法人擬制説の立場をとっておる現在では、若干矛盾の点もあろうかと考えられますが、この点を調整して、法人の所得額が一定の基準、この基準は中小法人に負担をかけないような配慮をする必要がありますが、その超過分を超過所得として、これに一定の累進税率による税をかけることが、大法人と中小法人との負担の公平をはかるという意味で私は正しいと思うのでありますが、泉さんはどういうようにお考えになっておられますか、重要な問題でありますので、ひとつお伺いしたいと思います。
  40. 泉美之松

    泉政府委員 法人の超過所得税と申しますか、あるいは超過利得税と申しますか、そういった課税の問題につきましては、いま佐藤委員の仰せられましたように、わが国法人税が現在のように擬制税的な立場に立っております場合におきましては、そういった超過所得税ないし超過利得税というものを設けることは、税制のたてまえからしてできないと思います。かりにそれでは実在説的な立場をとった場合にはどうかということになりますと、これはかってシャウプ勧告前にわが国が超過利得税を設けておりましたように、実在説的な立場をとりますと、超過所得税ないし超過利得税の考え方が出てこようかと思います。しかしこの場合にも、中小法人と大法人との間の税負担のバランスということではなくて、超過所得をあげるような収益率の高い事業を営んでおる法人と、そうでないような事業を営んでおる法人との間のバランスの問題になるわけでありまして、決して大法人と中小法人との税負担のバランスというわけではございません。  ところで、そういった超過所得税ないし超過利得税を設ける場合におきましては、過去のわが国の経験からいたしますと、何を基準に超過所得と見るべきか。現在のように資本主義の場合には、投下資本に対して一定率の収益をあげるのが普通なんだから、その一定収益率をこえる収益をあげる場合に、それに対して課税するということは、実在説的な考え方に基づく一つの考えであろうかと思いますが、その基準を何にするかということが、非常にむずかしい問題でございます。わが国の過去の経験からいたしましても、ある時期を基準にいたしまして、その時期の収益をこえる収益をあげた場合、これを超過利得として課税する。ところがその基準はだんだんと時が経るに従って役に立たなくなってくるわけでございます。それからまた投下資本に対する一定収益率というものを基準にいたす場合におきましても、御承知のように今後企業の収益率は低下していく傾向にあろうかと思いますので、そういった点から見まして、一定収益率というものを固定していくことがなかなかむずかしい問題になってこようかと思います。そういった点を考えますと、実在説的な立場をかりにとるとすれば、考えられないことではございませんけれども、その執行の面等はなかなか困難の多い問題であろうかと思います。いずれにしましても、結局は法人をどういうふうに観念するかという根本問題にからみますので、こういった根本問題との関連からきわめて慎重に考えなければならない問題であるというふうに考えております。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 なお、公益法人あるいは租税特別措置のことについていろいろ伺いたいと思いますが、それは次の機会に譲ることにして、きょうはこれだけにしておきます。
  42. 山中貞則

    山中委員長 午後一時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時二分休憩      ————◇—————    午後一時二十三分開議
  43. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  44. 只松祐治

    ○只松委員 主として法人税関係の徴税問題についてひとつお伺いをいたしたいと思います。  勤労者や零細企業者は働けば働くほど非常に徴税がきびしくて、たいへん苦しい生活に追い詰められておる。しかし大法人というのは決してそういうふうにはなっておりません。法人税はもちろん申告税でございまして、特にほとんどの巨大資本の法人というのは、自分たちの申告したままで査察調査その他の実績等ほとんどない。そういう中で日本の徴税というのはきわめて不公平に行なわれておるということは皆さん方御案内のとおりでございます。全く巨大資本に奉仕する徴税の現在の実情だと思います。  そこでまずお尋ねをいたしますが、国税庁あるいは局あるいは税務署、そういうところにおける調査あるいは査察、そういう機構がどうなっておるか、あるいはその人員というものはどういうふうになっておるかお尋ねしたいと思います。
  45. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 国税局署におきます法人関係の調査あるいは査察の機構につきましては、御承知のように各国税局に調査査察部というのが設置されておりまして、調査関係につきましては資本金五千万円をこえる法人につきましては、局の所管として局で調査をいたしております。それ以下の資本金の会社につきましては、各税務署におきまして調査をいたしております。査察につきましては、これは局にだけ査察官が置かれておりまして、これが大中小を問わず脱税の査察に当たっております。
  46. 只松祐治

    ○只松委員 現在までに昨年度中行なった査察の件数、それからおもな査察の対象となった会社名、それから摘発なり調査した対象の実態、それから件数がわかれば件数、それから更正その他決定をしたりあるいは脱税の罰金を課したならばそういう額、そういうものについてひとつお答えをいただきたい。
  47. 堀口定義

    ○堀口説明員 いまの御質問にお答えいたします。まず査察の着手件数でございますが、これは年度で申しますと三十七年度に百四十七件、三十六年度が百二十九件ということになっております。それから対象となりました規模でございますが、これは資本金別で考える場合と、それから売り上げ階層別と申しますか、法人税一般につきましてはその会社の事業活動の大きさを階層別に拾っておりますけれども、売り上げ階層別で見た見方と二つあるわけでございます。資本金別で見ますと、三十六年度につきましては一千万円以上が二十二件ということになっております。それから三十七年度について見ますと 三十一件というふうになっております。全体の数はさっき申しましたように三十六年度では百二十九、三十七年度百四十七ということでございます。それからその着手いたしました会社の個別の名前でございますが、これはこの場でちょっと申し上げにくいものですから、ごかんべん願いたいと思います。あとどの程度増差が出たかというような問題でございますが、これも階層別に見ますと、もちろん査察の入ったものにつきましては、告発にならないものでも重加算税であるとかあるいは青色申告の取り消しということは、大体において行なっております。  それからちなみに告発の率ですが、これは最近非常に高くなりまして、着手したものの五割以上は告発に回っております。  それからその増差の金額ですが、これは一件別に見るのもむずかしいので、全体として見ますと、四百万円以上の増差というのが八九%、それからそれを七百万円で切ってみますと七七%、それから八百万円以上の増差というのが七四%というふうになっております。これは三十八年度の九月三十日現在で調べてみましたが、大体そんなふうなのがこの査察の内容でございます。
  48. 只松祐治

    ○只松委員 先ほどの中で私は調査査察部の機構と人員をお尋ねしたのですが一人員のほうをひとつ御答弁願いたいと思います。
  49. 堀口定義

    ○堀口説明員 人員でございますが、定員で申しますと、地方局合わせまして、調査関係が千二百四十三人、それから査察関係が四百三十五人というふうになっております。
  50. 只松祐治

    ○只松委員 ただいまのものは法人関係だけの人ですね。
  51. 堀口定義

    ○堀口説明員 査察のほうの関係につきましては、所得関係に含まれております。それから法人のほうは現在では多いわけでございますが……。
  52. 只松祐治

    ○只松委員 会社数は五十七万三千三百六十三社、昨年度でもそんなにたくさんございます。あとでお尋ねをいたしますが、ここの中で欠損会社数は十五万二千百三十二社、この多きに達しております。ところがいま御説明を聞きましても、三十六年度で百二十九社、三十七年度で百四十七社、こういう程度でございますが、これで十分法人関係の査察ができておる、あるいは調査の実態がとらえられている、こういうふうにお考えでございますか。
  53. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 もちろん定員がより多ければ、より充実した調査ができますけれども、現在のところでは、大体この程度の調査の陣容でもってそれほど支障なく調査が行なわれておるというふうに考えております。  実際に調査をいたしました割合で申しますと、先ほど申し上げました税務署の所管分につきましては三六%強、それから調査課の所管分につきましては五五%強の調査割合になっておりまして、大体調査は支障なく行なわれておるというふうに考えております。
  54. 只松祐治

    ○只松委員 所得税は一つも抜け穴のないように取られております。あるいは個人商店あるいはいわば零細な法人、こういうものは非常にきびしい調査が行われていることは御承知のとおりです。青色申告をいたしましても、それはみなし課税、こういうことで、現実には青色申告もそれほど重要視されておらないといいますか、皆さんのほうでは認めない、こういう状況にあるわけです。しかし法人関係では、いまある程度調査をして、それで十分だ、人員の足らないのはあるが十分だ、こういう御返事でございますが、それに食い違いはございませんか。
  55. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 十分だということではなくて、ただいま申し上げましたような実際の調査の割合になっておりますので、大体税務署所管分では三年弱で一巡、調査課所管分では二年弱で一巡というような調査の割合になっておりますので、人員等の不足によって法人の調査に支障を来たしているというふうには考えておりません。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 これは大蔵省の資料によりましても、三十七年度の会社数のうちで欠損会社が、先ほど申しまたしように十五万二千百三十二社もございます。これは結局端的にいえば税金が取られていない、こういうことになるわけです。この欠損会社についてどの程度皆さん方のほうでお調べになりましたか。ひとつその実態をお聞かせいただきたいと思います。
  57. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 欠損申告をいたしました会社が、大体税務署所管、調査課所管を合わせまして、全体の約三割になっております。これは常識的に考えまして、全法人の三割が欠損を出しているということは、いささか常識的でないというふうに考えられます。その欠損申告をいたしております会社の約二割を調査いたしております。そのうち調査の結果所得がある、黒字であるということになって、処理をいたしたものが一割弱という数字に相なっております。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 その欠損会社の中でさらに十億以上の欠損法人が百二十三社ございますが、この十億以上の法人についてどの程度お調べになりましたか。
  59. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 十億以上の会社、これは個々に資本階級別で調査割合をとった数字がございませんので、ちょっとこの点は御説明いたしかねます。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 小さい企業あるいは個人には、先ほど申し上げましたように、苛斂誅求といっていいくらい、非常にシビアに調査をするし、あるいは徴税してくる。ところが十億以上の資本で、国税庁長官が百二十三社もあると先ほど言いましたように、全法人の三割がとにかく欠損をしておる。ある意味から言うならば、脱税的な方法も講ぜられて、こういうことになるわけです。ほとんど調査がされていない。特にいま言うように、十億以上の会社の具体的な内容が全然わからない。これはきわめて怠慢ではないか。重大な問題だと思いますが、即刻そこで関係者と打ち合わせて答弁するか、あとでその問題について明確なお答えをひとついただきたいと思います。
  61. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと私から申し上げておきますが、先般武藤委員からお話がございまして、資本金十億以上で欠損会社があるのはどういうあれかということでございますが、資本金十億以上の欠損会社百二十三社のうち、事業別に申し上げますと、化学工業の四十三社が一番多いわけでございますが、これは御承知のとおり、化学工業は最近になって設立されました新設法人が多うございます。設立当初間もない期間におきましては欠損であるというわけでございます。その次に多いのが運輸、通信、公益事業でございます。これは海運が多いわけでございますが、これが十九社ございます。それからその次に多いのが金属機械工業、これも新設法人が比較的多いわけでございます。その次はサービス業などの十二法人、その次が鉱業でございますが、これが八社、こういった新設法人ないしは海運業あるいは石炭鉱業のように最近欠損が出て収益のあがっておらない法人が相当多いわけでございまして、これらが合計いたしまして百二十三社あるわけでございます。その調査状況につきましては国税庁のほうからお答えいたします。
  62. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたが、手元に資料を持っておりません。十億円以上の会社、ことに主税局長から説明がありましたように、化学とか海運とか石炭とか、こういうのが主でございますけれども、これの調査の状況につきましては、現在手元に持ち合わせておりませんので、後ほど御報告をしたいと思います。
  63. 武藤山治

    ○武藤委員 関連して伺いますが、百八あるいは百二十三の十億以上の欠損会社というものがどういう内容であるかという個々の会社の名誉に関するようなことはここでは遠慮したいと思いますが、それにしても、現在国税庁で査察以外の調査班がありますね。調査課というのが。これは、大体所得五百万以上ですか、それとも資本金がこれは調査課の対象、これは税務署の対象と、所得でやっているのですか、資本金でやっているのですか。
  64. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 資本金五千万円以下の法人につきましては税務署で所管いたしております。それから五千万円をこえるものについては局の調査課で所管をいたしております。
  65. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、局の調査課でやっておるとすれば、大体資本金一億円以上の会社数はそうはないのですから、大体どの程度調査課で更正決定をしたのか、これはわかりますね。その更正決定をした件数と金額をまず先に教えていただきたい。
  66. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 更正決定の割合でございますが、調査課で所管をいたしておりますいわば大規模法人に属する法人の割合が八〇・八%、これは三十七年度実績でございます。それから税務署の所管をいたしております法人で更正決定をいたしました割合が三五・二%でございます。
  67. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしてみますと、調査課で調査をした場合のほうが所得額が発見されるこの率からいくと、それは明らかにパーセンテージで出ておりますね。その中で特に協議団に対して一応申請をしている件数はどの程度ありますか。調査課が調べた中で、どうも不満だ、協議団にどうしても提出して戦う、こういう件数はどのぐらいありますか。
  68. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 協議団にかかっておりますものにつきましては、総体の件数は出ておりますけれども、資本階級別の分数はいたしておりませんので、お答えいたしかねます。
  69. 武藤山治

    ○武藤委員 件数でひとつお願いします。
  70. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 昭和三十七年度で六千五百三十二件でございます。これは再調査を含めたものでございまして、協議団にかかわるいわゆる審査件数は、三十六年度が千五百三十六件、三十五年度が千八百七十六件、三十四年度が千八百八十八件、こういう数字に相なっております。
  71. 武藤山治

    ○武藤委員 関連ですからこれでやめますが、国税庁長官、主税局から私たちがもらったこの表を見ると、非常に資本金の大きな会社で欠損処分をしておる会社の率が高過ぎるような気がするわけです。このような欠損処分を受けている会社が——あとでいろいろお聞きしますが、政府金融機関やあるいは租税特別措置の恩典を受けたり、かなりそういう恩典を受けておりながらも、さらにこういう赤字が出ているということは、どうも税金を納める国民の側から見ると納得がいかないのですね。こういう状態はあまり理解しにくい情勢ではないかと思うのです。こういう点について大ざっぱに、国税庁長官はこの表を見て、こんなにも欠損処分がある会社は徴税のほうの手心が加えられているのではないかとというわれわれの疑いに対して、大体どんな御意見を持っておりますか。
  72. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 欠損が出ているということは、たとえば十億円以上の会社について百二十三社出ておりますが、これは先ほど主税局長からお答え申し上げましたように、特殊の法人、業況が非常に悪いとか、海運のように終戦後の特別の事情によるもの、あるいは新設された会社であっていまだに収益が伴わないもの、そういうものが主でございます。国税庁の調査といたしましては、やはり小よりも中、中よりも大という方向に、実際の調査の割合あるいは調査の一件当たりにかける日数あるいはそれに携わらせる職員の質等に注意をいたしまして、やはり高額の所得を得ている会社には重点的に調査力を振り向けておりますので、われわれとしては、こういう大法人に対して特に手を抜くというのではなく、むしろ特に重点的に調査力を振り向けているというふうに確信を持っております。
  73. 武藤山治

    ○武藤委員 これを最後にしますが、確かに設立当初の会社は欠損だ、あるいは特に国策に沿ったような会社の場合で利益を度外視した会社もあり得る、百二十三の中にはそういうものもあると思います。しかしながらこの百二十三の中には、公表では利益が出ておるというような会社が税金が一切かからないというのは二重ですか。公表のほうは上場しておって一応利益が出ておる。ところが課税のほうは一銭もかかっておらぬ、こういうような場合には国税庁長官としてどうお考えになりますか。
  74. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 公表上で当該事業年度に黒字が出ておる場合でも、繰り越しの欠損をかかえておるというような場合もございますので、その点はやはり相当長期間にわたって見ざるを得ないというふうに考えております。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 これは公表利益を上げておる会社の個々の問題にあたりますから、あとで長官のほうに個人的に、この会社はどうして利益が出ないのかという点は質問をして明らかにしたいと思います。  では関連はこれで終わります。
  76. 只松祐治

    ○只松委員 法人の会社の約三割が欠損になり十億以上で百二十三社も欠損になる、これはふしぎにお思いになりませんか、それがまず第一点。それからこの中で、二年以上あるいは三年、四年、ずっとわかればなおさらけっこうでございますが、欠損を続けておる会社が幾つあるか、特に一般のやっと十億以上の会社で二年以上欠損を続けておる会社がおわかりになればお答えをいただきたい。
  77. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、全法人のうちで三割程度の欠損会社があるということはやはり調査の必要があると思います。ただ二年以上にわたって欠損を出しておる会社が幾つくらいあるかという点は、これもそういう統計のとり方をしておりませんので、ここで直ちにはお答えいたしかねます。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 常識的に考えても、二年も三年もあるいは五年も会社が赤字で続く道理がないのです。そうすると、そういうふうに赤字を出しながら会社が存続しておるということは、徴税する側から見るならば疑問を持つのはあたりまえだろうと思うそれを一つもふしぎに感じないということはどういうことですか。ふしぎにお感じになりませんか。
  79. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そういう意味で、先ほど申し上げましたように、この欠損会社についても特に調査をしておるわけでございまして、やはりよくその経営の内容を見て、そして赤字がよって来たる原因を突きとめて、どうもおかしいと思うようなものはさらに再調査をいたしまして、先ほど申し上げましたような更正をすべきものは更正をしておるわけでございます。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 国税庁としては本年度だけじゃなくて、二年目が幾つある、三年目が幾つある、あるいは五年の長きにわたって欠損を続けておるということを考えるのは、徴税者として当然だろうと思う。当然ならばこれはその統計表があってしかるべきです。これがないということはそういう法人に対する徴税がきわめて怠慢である、こういうそしりを免れないと思いますが、そういうふうにお思いになりませんか。
  81. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 各局なり税務署におきましては当該法人の税歴の調査簿がございまして、前期あるいは前々期どういうぐあいであったかということは十分調査をいたしておるわけでございます。ただ私が申し上げましたのは、統計として二年あるいは三年あるいは四年欠損を続けた会社がどれくらいであるかという統計をとっていないというだけでございます。各局署におきましては当該法人が過去何年間にわたってどういう状況であったかという各社別の税歴表をつくっております。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 全体的なものがわからないとするならば、少なくとも国税庁はこの十億に及ぶ会社の百二十三社のうち、二年以上欠損を続けておる会社が何社あるか、これくらいはおわかりだと思いますからひとつお答えをいただきたい。
  83. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 あとで集計をいたしましてお答えをいたします。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 なければ、お答えだけではなくてひとつ資料として提出をお願いいたしたいと思います。
  85. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 資料として提出します。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 私の聞くところによれば、法人の調査対象というのは主として小から中に上がる程度、こういうところが一番国税庁の調査対象になっておるということであります。ところが大企業につきましてはほとんどその調査が行なわれておらないというふうに聞いております。もしたとえば三井、三菱、住友、日立というところで具体的に調査を行なわれた会社があるならばその名前を教えていただきたい。
  87. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまのお説とわれわれの仕事の調査のしかたとは全く逆でございます。数字でもって申し上げますと、先ほど申し上げました中小法人で税務署が所管しておるもの、そういうものの実際の調査割合は三六%強、それから五千万円未満二千万円以上というところが五一%強、それから一億円未満で五千万円以上というところが五一%強、一億円をこえる資本金を持っておる会社に対しては六五%強、百億円をこえるものについては一〇〇%、それからなお一件当たり調査日数をどれくらいかけておるかという点につきましては、中小の税務署所管分が三二日、五千万円未満二千万円をこえるものが一〇・七日、一億円未満が一二・二日、一億円をこえるものが二〇・三日、それから百億円をこえる資本金の会社に対しては一八八・六日、こういうふうに調査の日数もかけておりますし、調査の割合もかけております。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 この調査の内容でございますが、いまその日数の一端をお話しになりましたけれども、この場合本社だけの調査にとどまっておるわけですか。それとも支店、出張所、全国のその会社組織に及んで調査をされておるか、伺いたい。
  89. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 こういう超大法人になりまして各地に事業所、工場等を持っておる会社につきましてはもちろん本店だけの調査では十分でございません。したがって各事業所にわたって調査をいたしております。
  90. 只松祐治

    ○只松委員 会社には、一億以上の場合公認会計士、一億以下の場合は計理士というものがついております。お互いこれは小さい会社は小さい会社なり、大きい会社は大きい会社なりに、先ほど武藤委員から話がありましたように、株の操作上は利益金を多く発表いたしておりますが、何とか納税額を少なくするために利益を少なくする。たとえばある会社なんかが百億の年間利益があったのに、研究費その他余分にとって二億円しかその年の利益を計上しなかった、こういう会社があるやに聞いておりますが、そういうことをご御存じでざいますか。
  91. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 どういう会社か私聞いておりません。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 いま一例を申しましたが、調査の内容について、これは租税特別措置とも関連をいたしますけれども、こういうふうに実際上は純益を生みながら、そういう調査研究費その他いわゆる脱税の名目を設けてその会社の損益をつくっておる。こういうことに関していままで皆さん方がどういう調査をなされたか、全然そういうことがなければないでけっこうでございますが、あればお聞かせ願いたい。
  93. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 どういう会社か具体的に私わかりませんので、はっきりしたことはお答えいたしかねますが、通常の試験研究費であれば、これは経費として損金に見るということが例でございまして、特にどういう会社でどういうふうにして研究費という名目で出したか知りませんが、非違行為があったかということになりますと、私具体的な事例を知りませんのでお答えできません。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 きょうはそのことだけ聞いて後日またその点についてお尋ねいたしたいと思います。  それから、この欠損会社の中で租税特別措置法適用を受けている会社はどの程度でございますか。お教え願いたい。
  95. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 欠損会社のうちで、どれとどれが租税特別措置法適用を受けているかということは、そういう統計ございませんが、調べてみればわかるかと思います。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 たいへん不謹慎な答弁で、調べてみればわかるとは国税庁長官のことばとしてはたいへん不謹慎です。全然いままでそういう調査をなさったことないですか。
  97. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そういう意味での調査をして統計をとったということはございません。
  98. 只松祐治

    ○只松委員 先ほどから申しますように、零細企業にしてみれば水も漏らさない所得税の徴税というものを行なっておって、先ほどから話をずっと聞いておると、調べておりません、統計がありませんというようなたいへんずさんな答弁が多いわけでございます。欠損を出して赤字にしておる。しかし税金は租税特別措置で全部のがれておる。こういうことが平然と行なわれてその調査の内容もわからなければ統計も何もない。こういうことで国税庁は、税の大原則である公平の原則が行なわれておる、こういうふうにお考えでございますか。
  99. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 租税特別措置法適用があります会社、これは法律ではっきりきまっておりますし、それからまた欠損が生ずるか、あるいは黒字であるかということは、やはり会社、会社の特殊の事情によっておのずからきまってくることでありまして、租税特別措置適用と、当該会社が赤字であるか黒字であるかということとは、私たちはそれを直接結びつけて考えてはおりません。おのおのの法律の条項にしたがって執行をしておるわけであります。したがって申告された赤字が正当なものであるか、あるいは実際は黒字であるのに赤字として申告されたものであるか、そういう点についての調査は綿密にいたしますけれども、租税特別措置法との関係において特に調査をするということはございません。
  100. 只松祐治

    ○只松委員 きょうはあとで租税特別措置法を若干お聞きいたしますので、徴税問題の具体的な問題についてはこの程度で終わりますが、また他日御質問をいたしたいと思います。ただ、いまの答弁から明らかなように、非常に統計もないし、ずさんな答弁が多いわけです。もう少し徴税ということは公平に、零細なものやあるいは個人には非常に強く、大資本に対しては非常にあいまいな答弁しかできない、こういう徴税の方法でないようにひとつ強く要望いたしたいと思います。  続いて租税特別措置法についてお伺いをいたします。  まず租税特別措置法については、これが制定されてからいろいろ変遷をたどってきておりますけれども、現在もなおかっこういうふうに世界で一番多く租税特別措置をしなければならない、——主要な項目だけを見ましても、三十二項目にわたる租税特別措置が行なわれております。このうち一般の国民あるいは農民、中小企業者、こういうものに対する租税特別措置というのはわずか三種にしかすぎないわけで、あとはほとんど法人関係の特別措置、こういうふうになっている。ひとつこの租税特別措置の基本的な考え方についてお伺いをいたしたいと思います。なおこれをさらに強めていく方針であるか、あるいはこれを弱めていく方針であるか、基本的な立場、考え方についてお話を伺いたいと思います。
  101. 泉美之松

    泉政府委員 租税特別措置につきましては、只松委員承知のとおり現在のところ三十七の特別措置がございます。もっともこの租税特別措置のうち、租税特別措置法規定いたしておりまするものと、それから所得税法あるいは法人税法、その施行規則等で規定いたしておるものと、いろいろ態様がございますが、私どもといたしましてはいわゆる租税特別措置というのは、貯蓄の奨励であるとか、産業の助長であるとか、技術の振興といったような、特定の政策目的を達成するために、所得税法なり法人税法の一般原則に比べて特別の措置をとるものが、特別措置であるというふうに考えておるわけでございます。この租税特別措置につきましては、おことばではございましたが、利子所得あるいは配当所得に対する所得税のほうの特例が相当多いのでございまして、法人税の特例ももちろん相当ございますけれども、この前申し上げましたように、三十九年度において、租税特別措置による減収見込み額は、二千九十八億に相なっておるわけでありますが、そのうちでは何と申しましても、所得税の利子所得の分離課税、配当所得に対する軽減税率、生命保険料控除、こういったものが非常に大きなウエートを占めておるわけでございます。  いずれにいたしましても、しかしそうした租税特別措置につきましては、三十二年以降できるだけ従来の租税特別措置はそれを整理合理化する。と同時に新しく設ける租税特別措置につきましては、真に必要やむを得ないものに限る。こういう方針を打ち立てましてやってまいっておるわけでございますが、ただわが国の場合におきましては、只松委員承知のとおり、開放経済体制に移行するということからいたしまして、いままで為替その他で保護されておりましたのが、いよいよ裸の姿で諸外国の企業と競争しなければならない。こういう状態になりますために、そういったことを考慮して、できるだけ租税特別措置によって輸出の振興であるとか、あるいは経済基盤の強化をはかる。こういう点からいろいろ要請が強くなっています。そのために本年といたしましても貸し倒れ準備金とか、あるいは重要産業用合理化機械の特別償却のように、整理合理化の方針を貫いたものもございますけれども、新しく租税特別措置を設けた点もあるわけでございます。  ただ私ども主税局といたしまして、基本方針といたしましては租税特別措置は今後とも整理合理化する方針をもってまいりたい。ただわが国の置かれた特殊な経済情勢のために、当分の間はいまの租税特別措置を全廃するということは困難であろうというふうに感じておるわけでございます。
  102. 武藤山治

    ○武藤委員 関連。いま特別措置を今後ふやすつもりか、減らすつもりか、またどういう目的でやっておるのかという只松委員の質問に対して、ほんの原則的な見解をお答えになったのですが、それをもう一歩具体的に、私、聞きたいのであります。  租税特別措置法によって二千九十八億円の減収になる。そういう減収とは別に、このいまの法人税法施行規則あるいは細則によると、国税庁長官の認定によって、大幅に耐用年数の短縮とさらに増加償却ができる。こういう規定が二十一条の二項、さらに細則のほうでは七条の二項がありますね。それによる減収額あるいは承認額、こういうものが三十七年度だけで千四百五十七億七千四百万円ある。さらに耐用年数のほうの短縮申請金額で三十三億八千八百万円ある、こういう資料を主税局からいただいたのでありますが、かなり膨大な金額になるわけであります。  これだけの特別に償却を認めるという方法が、国税庁長官にまかされている、規則や細則できめられているというところに、私はかなりな問題があると思う。その場合に何を基準にしてこういう認定をするかというと、七条の二項によると、固定資産の材質、製作方法、こういうようなものが他の資産と著しく異なっておる。さらに第二には 地盤が隆起したり沈下するような場所にある資産、こういうようなことがずっと七項目まで基準が一応きめられておりますが、一体この千四百五十七億の償却額というものは、このうちのどれに該当する部分が一番多いのか、これが一つ。  さらに、この千四百五十七億の金額をランクをつけて一応発表してもらうと、さっき言った大企業、かりに一億円以上の資本金の会社あるいは一千万以下、こういうような形のランクをつけて、どういう形でこれが分配されるか、分布されるか、そういうような点を少し調べないと、どうも国税庁官にこれだけの、短縮の権限を与えるということが、どうも法定主義の立場からいって好ましくないような気がするので、そこらをひとつ主税局長に詳しく御説明願いたい。
  103. 泉美之松

    泉政府委員 いまお話の、国税庁長官法人税法施行規則の規定に基づきまして、増加償却の承認をした金額をおっしゃいましたが、その金額の千四百五十七億というのは、これは試算額でございまして、それに基づくところの償却額というのは、またそれよりぐっと小さい。償却率からいたしますと、平均して一割ちょっとでございますから、それより少ない金額であるということを御了承いただきたいのであります。
  104. 武藤山治

    ○武藤委員 正確には幾らになるか。
  105. 泉美之松

    泉政府委員 これは増加償却の率によって違いますので、あとで調べて申し上げたいと思います。  それではなぜそういった増加償却なり、あるいは耐用年数の短縮の権限を国税庁長官にゆだねておるかという点につきまして申し上げますと、わが国の耐用年数は、ほかの国と違いまして法定耐用年数というものをとっておりまして、きちんきちんと、いかなる設備については何年ということを法律できめておるのであります。ところが各企業が実際使っておりまする設備というものは、法定耐用年数をきめる前提として用いましたところの、たとえば機械であれば機械の材質、その材質が、工作機械でいえば直経何ミリのどういう硬度の材質ということになっておるわけでございますが、その場合に硬度が、たとえば歯車なんかで硬度が低いということになりますと、摩滅が早いということがありますし、それから場合によっては、かねの材質で使うということになっている場合に、木の材質を用いておるというよう場合がございますから、法定耐用年数できめておることは、必ずしもその企業の原価償却費を計算する場合の実情に合わない場合があるわけでございます。そういうことからいたしまして、そうした材質が異なる、あるいは法定耐用年数を計算するときに用いたところの機械の構成内容があるわけでありますが、ところがそれと違った構成の機械になっておるというような場合におきましては、やはりそれに応じた償却をさせることが、企業の実態に応じたことであると思うのでございます。外国におきましては、一応国税庁の通達に似たようなもの、たとえばアメリカにおきましては、従来ブレティンFというのがございます。これで耐用年数をきめておりますが、企業が税務官庁と相談いたしまして、ここの企業であれば、ブレティンFによらずして、こういう耐用年数でやるということができるということを協議いたしましてきめるというようなことができるわけでございますが、わが国では法定耐用年数で一律になっておりますので、そうまいりません。そこで、企業のほうから申請を出させまして、自分のところの機械はこういう内容のものであって、法定耐用年数決定の前提条件のものと違うから増加償却を認めてもらいたい、実際いままで使った機械の状況から見ても、十二年もつとおっしゃるけれども、十二年もちませんというようなことがある場合には、その申請を出させましてそれを認めるというのが実情に適しておるというふうに考えられるわけでございます。耐用年数の短縮はそういうことでございます。  また増加償却の場合におきましては、耐用年数を法定する場合におきましては、機械の稼動時間を一日たとえば八時間であるとか、ものによって十六時間であるとか、そういう稼働時間を前提にして摩滅度というものを計算して法定耐用年数をきわめておるわけでございますが、企業によりましては八時間稼働という法定耐用年数の前提に対しまして、十六時間稼働であるとかあるいは二十四時間稼働する機械があるとか、こういった特殊な事例がございますので、そういうふうに稼働率が違うことになりますれば、当然摩滅が早くなるわけでございますので、そういった場合には償却の増加を認める必要があろうということが考えられるわけでございます。そういう点からいたしますと、なるほどこういう権限を国税庁長官が持つということについていろいろ御疑問があるかもしれませんけれども、われわれとしては法定耐用年数という、日本の耐用年数をきめておる性格から見れば、これくらいのことをしなければ実際の企業の実情に応じた償却の計算ができないというふうに考えておるわけでございまして、この円滑なる運営をむしろ望んでおるわけでございます。
  106. 武藤山治

    ○武藤委員 それは泉さんの気持ちはよくわかるのです。ただ、私が問題にしようとしているのは、こういう個々の判定を税務当局にそのままこれだけの抽象的な基準でまかしておるわけですね。いまあなたのおっしゃったのは機械のことだけ、しかもいまは技術革新で機械の摩滅度が早い、あるいは機械の更新率が早い、そういう点だけを指摘して答弁しているわけです。しかし細則からいうとそういう機械だけではない。材質や製造方法や、あるいは地盤の沈下とか隆起の場所とか。そこで、一項目から六項目までの項目別に許可した金額は幾らか、この資料もぜひ出してもらわなければいかぬ。そこで、金額がわずかなものならば私はそれほど問題ではないのですが、年々増加の傾向にあるのですよ。昭和三十五年度は四百四十二億円、評価額ですね、税額じゃないですよ。三十六年度は六百九十一億、三十七年度は一千四百五十七億と、この国税庁長官の認定範囲というものはどんどん拡大される傾向にあるところに問題がある。そこで、いつまでもそういう抽象的な基準だけ置かれるのは好ましくない。私はそう思うのですよ。しかし、その本官的な問題については時間のあるときにゆっくりひとつ大臣にも聞いてもらって、こういうものはやっぱり省令に入れるべきだ。省令に入れて耐用年数別表二の中にきちっと入れて、どの業者もなるほどこういう恩典があるのかということを気がつくようにしなければいかぬ。特に早くこういうことに気がついた業者なり、税務署と懇意になっているやつだけが、こういう方法がありますよ、こういう耐用年数をとれますよといって、懇意な会社はどんどんだせるが、そういうことを知らなかった者は知らずに過ぎてしまう。  そこで、もう一つ、時間がありませんからお尋ねしますが、第七項目に、「その他前各号に準ずる特別の事由があること。」こういう抽象的な判定で、だれがきめるかといえば税務署長、それがさらに上司にいって国税庁長官の認可ということができるわけですから、こういう白紙委任みたいなかなり広い耐用年数、増加償却を認めるということをまかせておくということは、われわれ立法府から見た場合には好ましくない。しかしそのことを論争をしてもいまここでは結論が出ませんから、まず与党の理事諸君も、さらに民社党の方にもよく検討してもらって、あとでゆっくりこの問題については質問をしたいと思います。  ただ、一つ泉さんにお尋ねいたしますが、それではたとえば温泉地などの場合ですね。非常に塩分が多い温泉地とかあるいは湿気が非常に多い、こういう温泉地におけるふとんにしても建物にしても非常に耐用年数が通常の場合よりも短い、こういう不満を旅館の業者などに聞くわけですね。そういう旅館などでこれを適用されて増加償却を認めておる金額がありますが、この一千四百五十七億の金額の中に含まれておりますか。おそらくこれは大企業だけの、特に税務当局と知り合いの関係の深いところに承認がどんどんいっておるのではないかと思うのですが、温泉などでそういうものがありますか。特に零細や中小企業でそういうものがあったら具体的な金額、例、これをひとつ示してもらいたいと思います。
  107. 泉美之松

    泉政府委員 この増加償却なりあるいは耐用年数の短縮等につきましても、税務署なりあるいは国税局が懇意なところだけ知らせて、その他のものに知らせないというようなことはもちろんいたしてございません。これはこういうことについて業界を通じましたりまた税務署で説明会をいたします際に、それぞれ納税者の方にこういう道がございますということをよく御説明申し上げておるはずでございます。  それからいまお話の温泉地の旅館のふとんの場合、これはそういうことはあり得ることかと想像いたすのでございますが、現在のこの耐用年数短縮の承認の件数三十二件のほうに上がっているかどうかにつきましては、国税庁のほうで聞いてみませんと私のほうでわかりかねますが、国税庁のほうに確かめまして御返事いたしますが、この耐用年数短縮の理由のほうで申し上げますと、三十二件のうち法定耐用年数決定の前提となっておるものと機械等の構成が違うものというのが一件、材質が異なるものが四件、それから手入れ不十分のために耐用年数を短縮せざるを得ないというのが十四件、それからその他の事由に基づくものが四件、こういったような数字になっておるのでございます。
  108. 武藤山治

    ○武藤委員 その数字は大体資本金別でいったらどの程度の事業が多いですか。おそらく私は従来の意味の、去年の中小企業基本法ができる以前の中小企業の範疇、いわゆる資本金一千万円以下、そういうようなところでこの恩典を受けておりましようが、それをひとつ、いまわからなければ後刻資料としてこの内訳をできるだけわかりやすく、たとえば増加償却の場合の百九十三件を企業別に、大体どういうものをやっておるか、他の産業と比較してどういう特別な違いがあるか、それを承認した理由はこれこれこういう理由である、こういうことをひとつ説明してもらいたいと思うのです。それでないと租税特別措置法はある、それ以外に国税庁長官の認定でさらに特別な償却が認められる、これでは私は少し乱脈に過ぎるような気がする。やはり統一すべきものはできるだけ統一して、ほんとうに万やむを得ないというものだけを認定の最小限の範囲にとどめなければならぬ、こういう立場からひとつ中身について詳しくこれを細分化した資料をもう一回ほしいと思います。委員長ひとつお取り計らい願いたいと思います。
  109. 泉美之松

    泉政府委員 これは私のほうではやっておりませんで、国税庁のほうにしか資料がございませんので、国税庁と相談いたしまして、そういう資料があるはずでございますから資料をつくるようにいたさせたいと思います。
  110. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連して、ただいまのお二人の質問に関連してですが、法人税法施行規則の二十一条の二、それからもう一つ細則ですが、細則の七条二、こういう大幅な権限が国税庁長官に委任せられておる。そのもとになるものは法人税法の九条の八ですが、いま申しましたような規則あるいは省令、これは法のどの委任を受けているのですか。
  111. 泉美之松

    泉政府委員 これは法人税法の九条の八に減価償却の方法がございまして、これによって命令に委任されておるわけでございまして、その命令が政令なりそれから省令になっておるわけであります。
  112. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この条文は昭和二十五年に追加になっておりますね。あのときにはあなたは担当でなかったかもしれませんが、特に昭和二十五年からこういう規定ができたということにはそれ相当理由があったと思うのですが、それ以前はそういうものはなかったわけですね。そうすると、九条の八というものは昭和二十五年の法七二号によって追加せられたわけですね。その昭和二十五年には特にどういう理由のためにこういう条文を置いたか、あなたは調べておりますか。
  113. 泉美之松

    泉政府委員 昭和二十五年のシャウプ勧告に基づく税制改正によりまして、わが国法人税法の体系が整ってまいったのでございまして、それ以前のわが国法人税法法律的に見ますと、ただいま田中委員のおっしゃいましたように、減価償却に関する規定法律に置かずして、法律におきましては、法人の所得の計算についてはある程度基本的なことを書きますけれども、その他の減価償却費の計算等につきましては全部政令以下に委任いたしておったのであります。それを二十五年のシャウプ勧告の税制改正に基づく法律改正におきまして、かように大幅な政令委任をすることは適当ではないから、少なくとも基本のことは法律に書いて、そしてそれを政令委任するようにすべきである、こういう考え方のもとに、いまの九条の八とかいうような規定が追加されたわけでございます。ただそういうふうになりましても、まだ法人税法自体は相当たくさんの規定が政令委任になっております。その点につきましては、現在の法体系として見た場合にあまりにも法律以下に委任されている面が多い。したがってこれについては根本的な税法整備をして、もっと税法の基本が法律を見ればわかる、こまかい計算についてはこれはまあ政令あるいは省令でやってもいいでしょうけれども、税法の基本は法律を見ればわかるというふうな形にすべきであるということからいたしまして、一昨年から所得税法及び法人税法の整備に関する小委員会というのを設けまして、税制調査会において検討されております。実は昨年末一応の答申が出たのでございますが、なお検討すべき点が多うございますので、これらの法律的な整備につきましては、できれば来年の国会にお願いいたしたいというようなつもりで、私ども法人税法及び所得税法の整備という問題として取り上げていきたい、かように考えておるわけでございます。
  114. 田中武夫

    ○田中(武)委員 いまの答弁で、そういう作業が現に行なわれておるというならば、これ以上は追及はいたしません。だが少なくとも、租税法定主義の上に立って法律を見たときに、大体の状態がわからなければならないと思うのです。法の九条の八、これを見ただけではわからない。そして省令あるいは細則等によってまかされておるところが多いということは、あまりにも法の体系から見て、租税法定主義からいって適当であるかどうか、大いに疑問を持つ。それをいま検討しておられるというならけっこうですが、これはこれだけではないと思うのです。いろいろな点にあると思うのです。  そこでシャウプ勧告によって二十五年にこれを追加した、こういうことも関連をいたしまして、資料として要求をいたしますが、シャウプ勧告とそれから現在作業を進めておる過程において、これは全部発表する段階でないかもわかりませんが、それについてどういう方向をとりつつあるかということをひとつ知らしてほしい、こう思います。そうでなかったらわれわれのほうからこれは議員立法ででも改正せなければいかぬと思うのです。こんなばかなことはないです。基本が一条だけであって、しかもこの読み方を見ると、命令の定むるところにより、とこういうことで、よらなければならないようになっている。だからぐっと締まったような法文でありながら、片方はぱっと開いたような条文になっておるのです。これは法の九条の八を読んでごらん、ぐっと締まった書き方です。ところが省令あるいは政令、細則になると何ぼでもあいている。さっき武藤君が指摘したように、何条かを持ってくるとばっと開いたようなばく然たる規定を置いている、こういうことは許されないと思います。したがっていま検討しておるなら、どういう方向によってしているかという点について、発表できない点があるかもしれませんが知らしてほしい。もしそれが十分でなかったら、これは理事会等にも相談して、われわれの手で直さなければならぬ、このように考えております。
  115. 泉美之松

    泉政府委員 税法整備小委員会の答申は委員の方にお配りしてあると存じますが、それに基づきまして具体的に税法を書く作業をやるわけでございますが、まだそれではでき上がっておりません。税法整備の考え方は、この答申をごらんいただきますとおわかりいただけると思うのでございます。  それから、それに基づいてどういうふうに規定を変えていくかということにつきましては、いま田中委員のお説もございましたように、法律を見れば基本の事柄はわかる。具体的なこまかい計算のやり方、これは政令に委任する、こういう基本的な考え方でやっていきたいと思っております。ただ申し上げておきたいことは、減価償却、特に耐用年数につきましては、これはもう先般もお話がございましたが、機種が現在は千ほどございます。この千ほどある機種のものを三百四、五十から四百四、五十くらいまでに圧縮したいと思っておりますが、耐用年数につきましては、これはなかなか法律で定めることは非常に困難でございますので、これにつきましては従来どおり大蔵省令で定めるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  116. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そういう整備に関する答申が出ておって、いまの耐用年数の点等についてどういうことになっておるか、私まだこれは初めてですから、よく検討してみたいと思います。しかし、法九条の八が「命令で定める」となっているところは、ちょっと気にかかりますね。法律の下に政令というのがあるのですよね。政令を飛ばして命令ということになっているのはどういうわけですか。この命令の中には政令と省令とを含むのですか。ところが実際は省令で出しているのですね。
  117. 泉美之松

    泉政府委員 法人税法で「命令で定める」という場合におきましては、それは政令で書くか省令でかくか、両方とも含むことになっております。こういう書き方でいくのは古い法律の形でございまして、最近の法律の形は、田中委員がおっしゃるとおり、政令で書くところは政令の定むるところによりというふうになっております。こういった点も考慮して、今後法人税法及び所得税法について整備をはかりたい、かように考えておるわけでございます。
  118. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そこで九条の八を見た限りにおいては、命令は政令及び省令、こう読めますが、実際は省令で定めておるのですね。法人税法施行規則はどうなっているの。
  119. 泉美之松

    泉政府委員 政令の二十一条の二です。
  120. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それでは施行規則は政令だな。  そうすると、法から命令に委任して、そのうち政令に委任したのと、それから受けてまた省令に委任したのとあるわけです。そういうふうになるのです。施行細則というのは省令でしょう。省令においても、七条の二ですか、そういうことで特別の償却ができるのでしょう。そういうような点を整備をしていく必要があるから検討しておるということならいいですけれども、これはちょっと見たところおかしい。ことに大幅な権限を一行政官といいますか、国税庁長官等に持たすというのは、これは大げさに言うならば憲法の租税法定主義にも反する、そう言わざるを得ないと思う。そうでないとおっしゃるなら、いまから一々議論をしてもけっこうですが、いかがでしようか。
  121. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、施行規則、これは政令でございますが、政令の二十一条の二におきまして「青色申告書を提出する法人は、その有する固定資産がその構成、材質、製作方法等について大蔵省令で定める特別の事由に該当するため、」という規定になっておるわけでございまして、大蔵省令におきましては、そういう特別の事由を掲げておるだけでありまして、増加償却ができるということは、この政令の二十一条の二の規定に基づきまして承認を得て、その承認を得た結果増加償却ができるという規定になっておるのでございまして、単に省令の規定は、その「特別の事由」というものを政令でこまかく書くと条文が長くなりまして繁雑になりますので、省令に譲ったという形でございまして、その点はそういう形になっていることを御了承をいただきたいのでございます。なお国税庁長官にそういう権限をゆだねるのが適当かどうかという点につきましては、先ほど武藤委員にお答えいたしましたように、減価償却ということ、これは本来各企業の個々の実情に応ずるのが最も適当なやり方でございます。企業の懇意にわたることになっては適当でございませんので、法定耐用年数というやり方でやる。そしてその法定耐用年数に合わない場合に、国税庁長官の承認を受けて増加償却なりあるいは耐用年数の短縮ができる、こういう構成をとっておりますので、さよう御承知いただきたいのであります。
  122. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この施行規則の二十一条の二で「大蔵省令で定める」とあって、それによって施行細則ができておるということはわかるのですよ。それを言っておるのじゃないのです。そういうようにまた委任、また委任というようなかっこうで、しかも武藤委員が先ほど指摘したように、細則の第七条の二の七号は考えようによっては無限に広がるような解釈すらできるわけです。そうでしょう、違いますか。「その他前各号に準ずる特別の事由があること。」こうなっておるのでしょう。そうすれば、ますます広げていこうと思ったら拡張解釈ができると思うのです。大体法律で定めることを原則とする。それを政令に委任するということは一体どういうときに委任するのですか。法律と政令との関係はどういうことなんですか。
  123. 泉美之松

    泉政府委員 法律と政令とどういうふうに事柄を書き分けるべきかということにつきましては、立法政策上いろいろ問題のあることと存ずるのでございますが、現在の法人税法あるいは所得税法の考え方におきましては、たとえば減価償却の方法に定額法と定率法と生産高比例法とがある、こういう方法があるということを政令に書きまして、その生産高比例法というのはどういうふうにして計算するかというようなこまかい手続を政令あるいは省令で規定いたしておるのでございます。ただお話のように、立法政策的に見て計算のこまかいことは政令に委任するのは従来どおり適当だろうと思われますけれども、基本的な事柄、たとえば申し上げました定額法、定率法、生産高比例法といったふうな減価償却の方法につきましては、現在では政令で規定いたしておりますけれども、こういった事柄は法律にあげるべきではないかといった考え方は当然起こり得るわけでございます。私どもといたしましても、現在税法整備の考え方からいたしましては、そういった基本的な事柄はできるだけ法律規定いたしまして、政令におきましては、計算のこまかいやり方、ことに法人におきましては、御承知のように事業年度が六カ月事業年度のものもあれば、一年の事業年度のものもある。あるいは事業年度を変更する場合には、必ずしもそうした六カ月とか一年でなしに、三カ月の場合もあれば八カ月の場合もある。こういったような事情がございますので、そういった計算をいたします場合に、当該法人の事業年度の月数を十二で除してとかいうようないろいろなこまかい書き方をいたしておりますが、そういったことは政令にゆだねざるを得ない、法律に基本的な事柄を書くような方向で考えたい、かように思っておるわけでございます。
  124. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そういうことで改善というか、その方向に向かって審議会等で検討をしておるということですから、一応その方向は認めたいと思います。しかしこれは重要なことですから、いまは関連でやっておりますので、これは一ぺんまとめてやる必要があると思うのです。特に租税法定主義をとっており、憲法において特に「法律の定めるところにより」とあるように、これは法律によってその基本を示さなければならない。したがってそれが命令、すなわち政令なり省令に委任せられることによって、いわゆる行政意思が租税の基本といいますか、結局はそれが金額に関連すると思うのです。そういうところにあまり行政意思が入るような政令はおかしいと思うのです。とるべきではない。行政意思によって納税額が大きく左右せられるというようなことは租税法定主義に反する、私はそういうように考えます。そこでいま申しましたように、関連でもあるし、これはひとつまとめて議論いたしたい、このように思っております。
  125. 只松祐治

    ○只松委員 たいへんあいまいな基本方針というのをさっき御説明になったわけですけれども、事務当局ですからこれ以上追及してもあれですから、この程度にとどめておきたいと思います。そこでいま関連質問の中から出ましたように、税制調査会がいま作業を進めておるおもな租税特別措置の今後の立法化についてのおもな状況を文書として御提出をいただきたい。それが一つ。それから諸外国でもいろいろ租税特別措置が行なわれ、それからまた検討がされておるわけでございますが、これについての諸外国との対比と申しますか、諸外国のやつをひとつ資料として出してもらいたい。  それから次に、いまいろいろ同僚議員から発言がございましたように、租税特別措置法がこういうふうに大まかに書かれて、あとこの具体化というのは、国税庁あるいは通産省、こういうところで、全体を合わせれば二千億からの、昭和二十五年からだけでも一兆二千億という膨大な額が一行政官によって左右されてきておる。こういうことはもちろん税の法定主義にも反するだけではなくて、たいへん日本の政治を誤るものだと思います。これは皆さん方だけではなくて、いままでの政治家というものがこういう行政面まできびしくタッチしなかったところにも大きな原因があろうかと思って、われわれ自体も反省しなければならないことだと思いますけれども、ひとつ租税特別措置法以外に、省令あるいは政令、その他昔の命令ということばが使ってあれば、そういうことでこの租税特別措置法関係する適用法をひとつ資料として御提出をいただきたいと思います。
  126. 泉美之松

    泉政府委員 御要求の資料は提出いたしますが、最後にお話のありました租税特別措置についての資料は、先般差し上げてあるはずでございまして、それに、たとえば貯蓄の奨励でございますと、二番目の少額貯蓄利子の非課税二百三十億でございますが、これにつきましては所得税法六の二とございます。それから有価証券譲渡所得の非課税につきましては所得税法六とございます。それから生命保険控除につきましては、所得税法の十一の七、そういったものがございます。(「そうじゃないんだ」と呼ぶ者あり)  それから、いまお話の耐用年数の国税庁長官の権限による短縮あるいは増加償却ということは、結局法定耐用年数が画一的でありますのを、企業の実態に適合させるものでございまして、これは決して特別措置というべきではなくて、これは企業の実態に即応した減価償却計算を行なわせるところのものでございます。もしそういうことを講じなければ、きわめてこの法定耐用年数というものが硬直性を帯びてしまって、企業の実情に合わないということになりかねないのでございます。これはほかの国の例を見ましても——先ほどアメリカの例を申し上げましたが、ブレティンFを用いまして一応の耐用年数は出しておりますけれども、企業がそれでやっては自分のところのほうは困るんだということを申し出れば、その実情を考慮いたしまして、ブレティンFならブレティンFの耐用年数の前提になっておりまする機械の材質、構造、設置場所、稼働時間、こういったものと比べまして、その企業の具体的な実情に応じ減価償却を計算する場合には、法定耐用年数は十二年となっているけれども、その企業としては十年でやっていかなければいけないんだろう、あるいは償却率もそういう前提であっては困るだろうということで、増加償却を認めるという性質のものでございますので、これは特別措置ではございません。特別措置といわれるものにつきましては、現在お手元にお渡ししてございます資料に書かれておるものがこれでございます。
  127. 只松祐治

    ○只松委員 そういう説明をいま聞こうとしておるんではなくて、先ほどから言っておる特別措置法以外に、政令、省令その他のものがあればひとつお出し願いたい。なければ、これはしようがない。あれば出していただくと同時に、先ほどから申しております税制調査会において調査、立法化を進められておる現状を御説明いただきたい、こういうことを言っておるわけです。その資料をひとつ出していただきたい。  それから、特別措置をほとんど受けておると思いますけれども、特に大幅に、たとえば新規重要物産というような適用を受けておりながら配当をしておる。この前一例を申しましたけれども、租税特別措置を受けながら三割配当を行なっておる、こういうような会社もあるように聞いております。租税特別措置を受けながら配当をしておる会社は相当数に及ぶと思いますが、その状況が全部わからなければ、特徴といったようなものでけっこうですからお知らせをいただきたい。資料要求をいたします。  先ほど国税庁長官にお尋ねしたときに答弁がなかったことと関連いたしますが、ひとつあなたのほうからでも、特別措置法を受けながら赤字を計上して、いわば税を納めておらない会社がわかりましたならば、資本金別でも、小さい会社はわからなければ、一億以上なり十億以上でもけっこうですけれども、ひとつお教えをいただきたい。これも資料として要求いたします。
  128. 泉美之松

    泉政府委員 いまの資料、個々の会社ということになりますと、名前を出すのはいわば税法執行上の秘密の関係もございますので、できれば業種別とかなんかに区分させていただきたいと思います。その辺は御了承いただきたいと思います。  それから只松委員のおことばではございますが、租税特別措置適用を受けるということと、赤字があるということと、それによって法人税を納めないこととは、一応別の事柄だと思うのでございまして、租税特別措置所得の計算についての特例を設ける場合が多いのでございます。重要物産の免税はこれはほんとうの免税でございますけれども、それ以外の特別償却あるいは課税標準の計算の特例といったようなものは、すべて課税標準である所得の計算についての特例でございますので、これの適用を受けて欠損であるのはおかしいというわけにまいらないのでございます。むしろその適用を受けるからこそ法人の公表決算では利益が出ておるけれども、税の申告のほうでは欠損になって申告が出る、こういう事例が出てまいるわけでございます。そういった点で必ずしも租税特別措置適用と、それから法人の公表の損益ということとはちょっと関係がございませんので、その点御了承をいただきたいのでございます。
  129. 只松祐治

    ○只松委員 三時までだそうでございますから、これで質問を終わります。  そういう言いわけを聞いておるのではなくて、あとでいろいろ本格的なこれの質問をする場合の資料として出していただきたい、こういうことを言っておるわけですから、ぜひお願いをいたしたい。
  130. 田中武夫

    ○田中(武)委員 先ほどの関連質問で私の言ったようなことについて、税制調査会の答申が資料に出ておりますから、こういう答弁であったのですが、おそらくあなたの言われるのは三十八年十二月の答申の二十六ページの1ということで「現行税法では、固定資産の範囲について規定を設けず、減価償却を行なうことができる資産(減価償却資産)について具体的に規定しているが、次のように政令等において固定資産の範囲及び減価償却資産と非減価償却資産の区分を明らかにすることとする。」云々とありまして、あなたはこれをおっしゃったのだろうと思いますが、私の言っておるのはこれじゃないのです。この資料が出ておりますとおっしゃったのは、これの何ページに私の尋ねたことが出ておりますか。
  131. 泉美之松

    泉政府委員 この第一ページに「法律規定事項と政令等規定事項との配分」ということがございます。ここで法律規定すべき事項と政令規定事項、あるいは省令規定事項との配分につきまして、一応の原則を立てておるわけでございます。  政令規定事項といたしましては、「法律で詳細までを規定するには余りに専門的、技術的な事項」それから「法律規定している事項を敷えんして補足する解釈的な事項」「法律規定している趣旨を時宜に応じて実現するために弾力的な運営を必要とする事項」、省令で規定する事項は、「書式に関する事項」「申告書、申請書の記載事項の細目等単純な手続に関する事項」それから告示事項としましては、「具体的な処分、指定及び決定に関する事項」であります。これはきわめて抽象的な表現でございますから、これを実際に具体化するにあたりましては、いろいろ問題のあることもあろうかと存じますが、これが一応抽象的ではありますけれども、基準として出ておるわけでございます。
  132. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この資料をもう一度私ども検討してみたいと思うのですが、いまあなたがこの資料を読まれた範囲においても、現在の法人税の法と政令と省令、規則と細則、これにおいてはだいぶ違いますね。細則では、答申としてはいわゆる手続事項だとか告示事項だとか……。そうじゃなしに細則で、すでに判断を許しておるわけですね。そういう点から言って、いまの細則は少しおかしいということは言えると思う。だからこそこういう答申は出たのですね。そこで私はあくまでも、これも抽象的な言い方ですが、言えることは、租税法定主義とは、ともかく税は法律によってかけられるのだ、したがって政令あるいは省令においては、あまり行政意思によって租税の負担が左右せられないということがたてまえじゃないかと思うのです。そうじゃないでしょうか。抽象的な言い方ですが。したがって技術的な問題、そういうことが委任せられるのであって、あまり行政主義によって法の解釈を変えるといいますか、あまりにも幅広く行政意思が動くようになることは許されない。これは抽象的な言い方ですが、そういうふうに考えておりますので申し上げておきます。
  133. 泉美之松

    泉政府委員 租税法定主義を税法の上でどういうふうに実現していくべきかということにつきましては、いろいろの見解があろうかと思うのでございます。私ども、税法の上で租税法定主義をとるたてまえといたしましては、課税のおもなる要件でございます。だれが納税義務者であるかということ、それから何について税がかかるか、所得に対して税がかかるのか、資産について税がかかるのかといった、その課税標準であるもの、それから税率が幾らの税率でかかるのか、それからそういったところの課税標準に税率適用しまして出てきました税額というのは、いつどのようにして納めなければいけないのか、この基本的な事柄は法律に書かなければならないというふうに思っております。しかし、御承知のように、たとえば所得課税標準といたしました場合に、その所得内容、性質というものが実に千差万別でございますので、法律に一々その所得の計算のこまかい手続を規定することはなかなかしにくい。そこで法律におきましては、所得の概念というものはこういうものだということを書きまして、その計算に関しましては政令に委任するという措置は、ある程度どうしてもとらざるを得ないのでございます。この点は、ことに税の計算は数字が多いことでございますので、そういった数字的な事柄にわたる技術的な事項は、法律規定することはどうしてもできにくい、政令に譲らしていただかなければならぬ面が多かろうと思います。そういう技術法としての性格税法に強いということは御了解いただきたいのでございますが、お話のように、私がいま申し上げました、だれがどういうことについて、どれだけの税を課せられて、それをいつまでに、どういう手続で納めるかという、この基本的な事柄は当然法律規定しなければならぬものだ、かように考えております。
  134. 田中武夫

    ○田中(武)委員 いまあなたのおっしゃったことはほんとうの基本ですね。したがって税率ということが法律できまると、一面いま言っておるような耐用年数を動かすことによって税率が変わるということと同じ結果が出るわけです。いまあなたの答弁の中で技術的なということばを使われた。狭義な意味において技術的なものは政令以下に委任するのだ、そういうことは私もそうだと思っております。あくまで技術的なもの、手続的なものが政令以下に委任せられるものである、そういうように解釈しております。したがって、抽象論としてはあまりここでやりとりしてもどうかと思いますので、一応私も答申を拝見し、そしてなお根本的な、あるいは大臣にも来てもらって立法論的なことを論議する機会を留保しておきたい、このように思います。      ————◇—————
  135. 山中貞則

    山中委員長 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案及び揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案の五法律案について、来たる六日、税制調査会会長中山伊知郎君を参考人として委員会に出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明四日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時七分散会