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1964-02-21 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十一日(金曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 臼井 莊一君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       大久保武雄君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    金子 一平君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    渡辺美智雄君       小松  幹君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁直税         部長)     鳩山威一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十日  委員小川平二君及び竹本孫一辞任につき、そ  の補欠として石田博英君及び小平忠君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員小平忠辞任につき、その補欠として竹本  孫一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出等  三六号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。金子一平君。
  3. 金子一平

    金子(一)委員 所得税法人税改正法に関連して、若干の問題につきまして、政府の所信を伺いたいと思うのでありますが、まず第一に、今度の税制改正にあたって大蔵省がとられた基本的な態度というか、考え方というか、それをまず最初に伺っておきたいと思うのであります。  先般来の当委員会議論を通じて、政府所得減税中心にやるべきであるという税制調査会意見を無視して、政策減税重点を置いてやったじゃないかというような議論が盛んに出ておったのでありますが、おそらく先般の本会議で、池田総理が答弁せられましたように、ひとしからざるを憂えるが、同時に乏しきを憂えるというのが政府気持ちだろうと思います。そこら辺の点をもう一度はっきりと御答弁いただきたいと思うのであります。これは政務次官からひとつ……。
  4. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 お答えいたします。  税の中心は、御承知のように所得税でございまして、所得税減税重点を置くことは申すまでもないことでございます。今度の政府減税方針といたしましては、御承知のように、従来国税と地方税とを見まして、特に地方税のほうに対しましても、住民税の不合理と申しますか、それを是正しようというようなことに相なっておりまするし、同時にまた中小企業、また農山漁村に対しまするいわゆる中産階級以下の方々に対します減税を主とする、こういう方針のもとに今回の税制はきめられたのでございます。詳細に検討いたしますると、必ずしもその線を貫いておらないといううらみもあることはあると思われますが、それもやはり国の財政関係からいたしまして、一部そういった点が見られます点も、大蔵省といたしましてはやむを得ざる措置であったというふうに承知いたしておるわけでございます。
  5. 金子一平

    金子(一)委員 二十日の日経新聞を見ますと、これは纐纈さんもごらんになったものと思うのでありますが、大蔵省では、従来税制調査会が打ち出しておった租税負担率を二割ということで従来から言っておったのですが、必ずしもこれにこだわらないで、新しい基準を打ち出したいということで作業を進めておる、検討を続けておる、それは今後の財政需要、特に社会保障充実とか、あるいは公共土木事業の推進だとか、そういった点から、大体四年間に一%くらい上がるのはやむを得ない、こういう気持ちで、新しい方向を打ち出せないかということで検討を続けておるということが記事に出ておるのでありますが、いまの点、このような考え方を持っておられるわけですか。
  6. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 ただいまのお話のように、実は税の国民所得に対する率は二〇%程度が適当であろうということは、政府としましても十分承知いたしております。しかし御承知のように最近経済界動きというものは、ややもすれば特異の形をもって財政も伸びてまいっておりますし、同時にただいま御質問の中にもありましたように、いままでおくれております社会資本充実あるいは社会保障の拡充というような点におきまして、いわゆる歳出の面におきましても非常に高額の金を要するというような状態でございまして、それらの点につきましても、今回の来年度予算におきましては、相当考慮をしまして予算を編成したのでございますが、それにもかかわりませず、なお歳出の面について不満であるというような点がございます。さようなことを勘案しまして、結局この二〇%ということは、一応は適当な目標ではあろうかと思いますが、やはりそうした社会の要請また金融財政の全般から考えてみまして、御承知のように来年度は二二・二%という率になっているわけでございますが、もとより政府としましても、二〇%程度までできるだけ早く税負担を引き下げるということが目標であると思うのでございますが、来年度予算におきましては、先ほども申しましたような意味合いからしまして、二〇%を上廻る二二・二%というような線が出たような次第でございます。
  7. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと補足して申し上げておきますが、先般当委員会で御質問がございましたように、所得倍増計画におきましては、昭和四十五年度におきまして国民所得に対する租税負担率を二一・五%ということで倍増計画ができているのでございますが、その後の経過を顧みますと、わが国財政事情からいたしますと、先ほどお話のございまましたように、今後社会保障費を増大し、立ちおくれております公共投資の増額をはからなければならないという事情からしまして、すでに三十九年度におきましても、二二・二%というような負担率に相なりますので、四十五年度に二一・五%という負担率にすることは非現実的ではなかろうかという感じがいたしますので、この際所得倍増計画アフターケアとしまして、中期計画が立てられることになっているのでございますが、その際に国民所得に対する租税負担率はいかにあるべきかということを再検討いたしたい、かように考えているのでございます。ただ再検討内容につきましては、新聞が報ずるがごとく、四年間に一%上がるのはやむを得ないというような考えはまだ持っておりません。これは単に過去の経過からいたしますると、昭和三十二年を基礎たしまして、大体四年間に一%ずつ上がってきている実績がある、こういうことだけでございまして、将来どういうふうにあるべきかということにつきましては、所得倍増計画アフターケアとしての中期計画を作成する際に、十分検討いたしたいと考えておるのでございます。その意味で、大蔵省として国民所得に対する租税負担率が四年間に一%上がるのはやむを得ないというふうな考えを持っておるかのごとく解されるのは誤解でございますので、御了承いただきたいのでございます。
  8. 金子一平

    金子(一)委員 御承知のように、日本所得構造と申しますか、所得分布状況は、非常に急激なピラミッド型の、しかも末広がりの構造をとっております。しかもそのすそ野のほうに重い負担がかかっておることは御承知のとおりなんです。アメリカの例のエンパイアステートビルのような、ああいう真四角の上のほうにだけかかっている税負担と違うのです。国民大衆としては身をもって税負担が重い点を痛切に感じておるわけですが、大蔵省としても、税制の今後のあり方については、相当長期の恒久的な、税体系をどう持っていったらいいかということにつきましては、一つビジョンを持っておられるに違いないと思う。たとえば直接税と間接税の割合をどうしたらいいとか、企業課税に対するあり方をどうしたらいいとか、いままでいろいろ税制調査会等を通じて議論もされておると思うのでありますが、そういった大蔵当局の持っておられる税制に対するビジョンというか長期計画というか、そういう点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  9. 泉美之松

    泉政府委員 税制についてのビジョンということでございますが、まず私どもが現在の税負担についてどのような感触を持っておるかという点から申し上げてみたいと思うのでございます。  お話のように、わが国税体系におきましては、直接税が五五、六%、間接税が四十数%という段階になっております。ところが御承知のように、直接税のほうは所得がふえますとそれに対して税収もふえる、いわゆる弾性値が非常に高いのでございまして、その関係からいたしますと、ともすれば所得税法人税をはじめといたしまして直接税のほうの収入がふえがちであります。そこでわが国税制としては、まだアメリカのように所得税中心を置いた、直接税に中心を置いた税制にはなかなかなりにくいので、ある程度間接税を配さなければならない。しかしながら間接税と直接税との国民に対する税負担の点から申し上げますと、申し上げるまでもなく間接税逆進的効果が強いのでございまして、そういった点からいきますと、間接税にはある程度の制限を設けておかなければ、直接税とのバランスにおきまして逆進的効果が強過ぎても困る。そこにはやはり直接税が五十数%をあまり多く出ないほうがいいのではないか、そのためには毎年あるいは少なくとも何年かおきには直接税についての相当減税をやっていく必要があろうか、かように考えるのでございます。それからまた各税の内容につきまして検討いたしますと、特に所得税につきましては、御承知のとおりわが国の一人当たり国民所得が低いという関係もございますが、わが国の場合におきましてはいわゆる課税最低限が諸外国に比して低いのでございまして、御承知のようにアメリカの場合におきましては、標準世帯課税最低限わが国貨幣価値に換算いたしまして百二十万円でございます。イギリスの場合が七十三万円、西ドイツの場合が八十三万円、これに対しましてわが国標準世帯におきましては、課税最低限が今度の改正によってようやく平年度四十八万五千円ということに相なるわけでございます。これらの点からいたしますと、さらにさらに課税最低限引き上げる必要があろうかと考えておるのでございます。その課税最低限引き上げとともに、もう一つわが国所得税で問題になりますのは、四百万円以下くらいの所得に対する税率がかなり急激に累進しておる点でございます。その点は御承知のとおり八%が十万円まで、それから急激に上がっていっておりますので、この税率について累進度を特に四百万円以下くらいの所得のところでは緩和する必要があろう、かように考えられるのであります。そのほか法人税につきましては根本的な問題がございまして、これは税制調査会のほうの今後の検討にまたなければならないのでございますが、法人を擬制説的に見るか、実在説的に見るか、今後根本問題を検討してまいりたい。これにつきましては、まだ今後どういう方向でやっていくべきだという確たる見通しは持っておりません。ただ三十六年以来問題になっております借り入れ金資本調達を行ないます場合と、増資によって資本調達を行ないます場合との差異、これがわが国企業資本構成に及ぼす重大なる影響等につきましては今後さらに検討いたしまして、借り入れ金の場合と増資の場合とが企業に及ぼす関係があまりに差異を生ずることのないような方向検討していくべきではないか、かように考えておる次第でございます。
  10. 金子一平

    金子(一)委員 国民所得の中で給与所得事業所得、あるいは農業というように所得別一体税務署ではどう把握しておるか。最近の納税者所得把握一体どのくらいになっておるか、ちょっとお聞かせください。
  11. 泉美之松

    泉政府委員 税務署で実際に把握しております所得が、各種の所得者間でアンバランスがあるのではないか、給与所得はいわばガラス張りで源泉徴収されておるのに対しまして、営業所得あるいは農業所得その他の事業所得の場合には必ずしも所得が正確に把握されておらないのじゃないかというような世間批判がございます。あるいは九・六・四とかいうような比率があるかのようにいわれておるのでございますが、税務署といたしましては、正しい所得把握するのには十分な努力をいたしておるのでございますが、何分にも記帳が必ずしも完備されておらないといったような点がございまして、十分正確な所得把握しておるかどうかにつきましては、私どもとしても常に反省をいたしておる次第でございますが、さりとて世にいわれるごとく、その間大きな差異があるとも考えてはおらないのでございます。ただ、どの程度差異があるかということになりますと、その差異がわかればもはや問題はないのでありまして、その差異がわからないところにむずかしい問題がございます。現在の段階においてどの程度把握しておるかと言われますと、正しい把握をするのにつとめておると言う以外に申し上げようがないのでございます。
  12. 金子一平

    金子(一)委員 泉主税局長からお話しのように、今後のあり方としては、納税者課税最低限をうんと上げて、納税者の数をある程度整理していきたいというようなお話も出ておりましたが、全く同感でありまして、特に最近週刊誌等で問題になっておりますような民商動き、これはあとで長官からもお伺いしたいと思っておりますが、こういった問題とも関連して、税務執行面からも私は相当考えていただきたい、またいくべきであるというふうに考えておるのであります。  そこで基礎控除問題や勤務控除の問題、こういった点につきましては、当委員会ですでにいろいろ議論が出ておりましたので、繰り返してここで申しません。ただ一つ質問いたしたいと思いますのは、配偶者控除でございますけれども基礎控除の額と同額にすべき性格のものであるということをかねがね大蔵当局は説明しておられたのでありますが、今回の改正にあたりまして、幾らですか差等を設けられた、この理由をまずひとつ承っておきたいと思います。
  13. 泉美之松

    泉政府委員 配偶者控除につきましては、三十六年の改正の際におきまして、外国夫婦合算二分二乗課税方式等関係からいたしまして、わが国におきましては、夫婦合算二分二乗方式課税方式をとることは適当でないけれども配偶者所得者と同等の控除を認めるのが適当ではないかということからいたしまして、同額控除を設けることとされたのでございます。これは皆さま御承知のとおりでございますが、その後世間批判等からいたしますと、必ずしも配偶者控除は本人の基礎控除同額である必要はないではないかというような批判もございます。  今回の改正におきましては、御承知のように、昨年の改正の際に基礎控除配偶者控除との間に五千円の差ができた。これは御承知のとおり税制調査会におきましては、基礎控除配偶者控除も一万円ともに上げるようにという答申があったのでございますが、基礎控除の一万円引き上げ答申どおり実施せられましたが、配偶者控除につきましては五千円の引き上げにとどめられました。その関係で五千円の差ができたのでございます。今回配偶者控除につきまして五千円を引き上げるという方向検討いたしたのでございますが、わが国税負担の実情からいたしますと、さらに基礎控除引き上げる必要があるというので、基礎控除のほうを一万円引き上げましたために、三十八年では五千円の差であったのが、今回一万円の差に相なったということでございます。私どもといたしましては、いろいろ批判はございましょうが、できれば配偶者控除基礎控除同額にする方向が、夫婦合算二分二乗課税制度をとらない以上は望ましいのではないかという考えは持っております。ただ配偶者控除をさらに一万円引き上げることといたしますと、約百億円の減税財源が要る関係になりますので、全体の減税財源との関係からいたしまして、この際は配偶者控除を一万円さらに引き上げることは見送ったような次第でございます。
  14. 金子一平

    金子(一)委員 いま主税局長は、各国でやっておるような夫婦所得を合算して二分二乗するというやり方、これは日本に適していないということを言われたのでありまするが、私はむしろ逆じゃないかと思う。おやじの所得は、これはもう半分は細君の所得考えるのが日本でも常識的であろうし、特に中小企業——まあ大蔵省のお役人は、月給は自分一人で稼いでいられるつもりかもしれませんけれども、われわれこういう代議士稼業をやりますと、半分は女房用なんです。そういうところから言ったって、二分二乗方式をとるのが天下の大勢だと考えておるのであります。そういう点もう一度主税局長の御見解を承っておきたいと思う。
  15. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、アメリカ西ドイツにおきましては夫婦所得を合算いたしまして、二分二乗方式を適用いたしておるのでございますが、夫の所得に対しまして妻が相当の貢献をいたしておることはお話のとおりでございます。私どももその事実を認めるにやぶさかではないのでございます。ただ夫婦所得一体としてみて、それを合算して二分二乗方式をとるかどうかということになりますと、わが国の場合特にそうでございますが、これによって利益を受けるのは高額所得者が一番多くの利益を受けることになるわけでございます。わが国税制のたてまえからいたしますと、まだそこまでいくのは早過ぎるのではないか。中小所得者がなおかなり重い負担をいたしておる場合に、大きな所得者だけが非常に利益を受けるという税制改正はいかがなものであろうかということが一つ。  いま一つは、これを採用いたしておりますアメリカあるいは西ドイツでも批判されておるのでございますが、夫婦者とそれから独身者との場合の税負担バランス、これが夫婦者の場合が非常によ過ぎはしないかという点があるわけでございます。そのほかこの制度をとりました場合に、手続その他が非常に繁雑になる、こういった点を考慮いたしまして、二分二乗方式をとるのはまだ早きにすぎるという考えを持っておる次第でございます。
  16. 金子一平

    金子(一)委員 高額所得者日本の場合特に得をするから、夫婦所得合算、これは困るというお話ですけれども高額所得者の場合は、大蔵省お得意の徴税方法は私は幾らでもあると思う。むしろ中小所得者のためにも、これはひとつぜひ今後の問題として、ことしはしようがありませんが——日本税制の場合は、昔から世帯単位課税ということが頭にこびりつき過ぎているから、泉さんいまのような意見が私は出るのではないかと思うのです。この点はもう少し御検討いただきたいと思います。
  17. 岩動道行

    岩動委員 関連して。ただいま金子委員から課税最低限に関する御質問があったわけでありますが、私もこれに関連しまして若干の点について御所見を承りたいと思うわけであります。  大体課税最低限の算出につきましては、税制調査会あるいは大蔵省におきましても、マーケットバスケット方式を一応の基準として減税額等検討をしておられると思うのであります。このマーケットバスケット方式によりまして計算した生計費との関係におきましては、税制調査会改正案によりますると、現行法による課税最低限度額と、それから消費支出金額との差額は、初年度におきましては五千百五十四円、平年度におきましては、二万二千八百四十九円という数字が出ておるわけであります。しかしながら、この調査会答申とは別途に大蔵省改正案ができ上がっておるわけでありまするが、それぞれの五千百五十四円と二万二千八百四十九円に対応する金額幾らであるかをまず伺いたいと思います。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように税制調査会答申におきましても、給与所得控除につきまして定額控除を二万円いたしました後の給与収入金額、現在は四十万円まで二〇%でございますが、それを五十万円まで二〇%にいたしまして、現在最高十二万円でありますのを、十五万円にいたすような答申になっております。その関係からいたしまして、税制調査会答申によりますと、五人世帯の場合におきましては、われわれがマーケットバスケット方式による食料費基準に算出いたしました基準的な生計費課税最低限との差につきまして、お話のとおり平年度の場合二万二千円、初年度の場合が五千円という差があったのでございますが、政府所得税改正法案は先般申し上げておりますとおり、定額控除二万円の後の給与収入金額四十万円まで二〇%、四十万円超二〇%、最高十二万円ということにいたしてございますので、このほかの世帯には響かないのでございますが、五人世帯の場合だけ課税最低限税制調査会の案より下がりまして、その関係からいたしまして平年度の場合三万二千円というのが一万四千二百六十一円、保税最低限のほうが生計費より高い。それから初年度の場合におきましては、五千円というのが二百六十九円というようになっております。
  19. 岩動道行

    岩動委員 五人世帯におきまして、初年度ではわずかに二百六十九円という数字になっております。一方、三十九年度物価上昇率政府において予定をしておりますのは四・二%と承知をいたしておるわけでありますが、これによりますと食料費だけの値上げ、これはマーケットバスケット方式に採用されておりますところの三十八年の献立による二十二万三千六百八十二円というものに対するそれだけの一応四%程度値上がりという仮定の計算をしてみましても、約八千九百円という金額がここに出てまいっております。したがいまして、初年度この二百六十九円という差額が直ちに物価騰貴によって消されてしまうおそれがあるのではないか、さらにまた、平年度におきましても、この点につきましては差額がほとんどなくなってしまう。つまり四十年になりますと減税効果が減殺されてしまうおそれがこの数字の上からも予想されるというような事態が考えられるわけであります。低額所得者に対する減税ということはきわめて重要なことでありまして、われわれ自民党といたしましてもこの点には最大の考慮を払って減税方針をとってまいったのでありますが、給与所得者につきましては、この四月からはっきりと減税効果が出てまいりますのでまだよろしいのでありますが、一般の事業所得者については、これらの物価値上がり等が直ちに影響してくるという点も考慮されますので、今後低額所得者に対する減税ということを考えます場合にも、特にこの物価情勢等関係を十分に配慮してやっていただかなければならない。大体政治家国民に先んじて憂え、後に楽しむというのが政治家の真の姿であります。池田総理大臣はりっぱな傑出した政治家であると思うのでありますけれどもいろいろと税の面におきましても先んじて憂えていただき、そういう意味におきまして物価値上がりをさらに十分に考慮して、先んじて減税方法考えていただかなければならない、かように考える次第でありますが、ただいま私のかりに示しました数字から、はたして減税効果がほんとうに減殺されてしまうのか、あるいはそれは私の誤りであるのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように所得税減税をいたしました場合におきまして、物価が騰貴いたしますと、その減税効果が減殺されるではないかということはお説のとおりでございます。ただ物価の騰貴による生計費に及ぼす影響を所得税の軽減だけで全部カバーしようということには、私はなかなか無理があると思うのであります。御承知のとおりわが国の最近の実情からいたしますと、国民所得相当に増加いたすわけでございます。したがって、物価騰貴がございましても、国民所得が上昇しますれば、もちろん国民所得がふえますれば所得税はその名目所得に対して課税されますから所得税も増加しますけれども物価騰貴より多い割合で所得が増加いたしますれば、その影響はあまり受けないということになるわけでございます。先般も申し上げましたとおり、三十九年度におきましては、給与所得の増加は九・一%であるというふうに私どもは見込んでおるのでございます。消費者物価が四・二%騰貴するといたしましても九・一%の所得の増加のほうがはるかに割合が大きいので、それに所得の増加によってその物価の騰貴が差し引きされるものというふうに考えておるのであります。ただしかしそのように所得が増加いたしましても、物価の騰貴が著しければ、所得の増加の影響が薄れてしまう、実質所得の増加が低くなるということになると、所得税が名目所得課税される関係上、その実質的な軽減の意味が少なくなるということは心配いたさなければならないのでございまして、私ども所得税改正にあたりましては、常にそういった面を検討しながら考えておる次第でございます。たとえて申しますと、三十八年に所得百万円であった人の場合を考えてみますと、これが夫婦、子三人の世帯であるといたしますと、三十八年の所得税は七万百二十円であります。これが三十九年に所得が九・一%増加いたしまして百九万一千円の所得になったと仮定いたしますと、物価騰貴が三十八年と三十九年と両方重なってまいりますので、合わせまして計算いたしますと、百九万一千円という所得は、実質所得に換算いたしますと百四万七千円ほどに相なるわけであります。そこで百九万一千円に対する所得税税制改正をしない場合の税負担額を見ますと、それは八万八千三百三十四円になるわけであります。実質所得の百四万七千円の場合の税制改正をしない場合の税負担額から見ますと、それは七万九千七百三十五円になるわけでございます。これを今回の税制改正によりますと、百九万一千円の場合の税負担額は三十九年度分の所得とした場合には七万九千二百九十四円の税額になるわけでございます。税制改正をしない場合の八万八千三百三十四円の場合に比べまして、九千四十円の軽減になっておるわけでございます。なるほど三十八年の所得税の七万百二十円に比べますと、七万九千二百九十四円というのは負担はふえておるわけではありますけれども、名目所得の増加するわりあいには負担がふえないようにいたしておるわけでございます。これによって所得がふえ、物価が騰貴いたしますことを考えましても、実質的には負担が軽減されておるという数字に相なっておるのでございます。
  21. 岩動道行

    岩動委員 いずれにいたしましても、物価の上界を極力押えてまいるということは経済の最も大きな役割りであろうと思いますが、最近は国際収支の点を除きますと、かなり鈍化の傾向を示してきておりますので、この点は経済の引き締め政策がやや効果をあらわし始めたのかとも考えられるわけでありますが、春闘等を通じてまた賃金の異常な上昇というようなことになりますと、賃金と物価の悪循環がまた刺激されるおそれが多分にあるわけであります。したがいまして、今回の低額所得者に対する減税という大きな目標もこれらの経済の総合政策の中において十分に確保されることがきわめて肝要であろうかと思うのでありまして、財政需要がきわめて強い今日、なかなか大幅な減税もいたしかねるという点もございます。したがいまして、物価政策その他の経済政策において十分に減税効果あるいは所得の実質的な向上がはかられることが必要でもあり、さらにまた、社会保障等の充実によりまして低額所得者の生活水準の内容向上ということには特別な配慮が必要であろうということを特に申し上げて関連を終わります。
  22. 金子一平

    金子(一)委員 開放体制に備えて中小企業に政策の重点を置こうというのが内閣の基本方針だろうと思うのですが、税制面において一体それがどういうふうにあらわれておるか、ひとつ簡潔にお話を願いたいと思います。
  23. 泉美之松

    泉政府委員 中小企業に対しましては、池田総理が申されておりますように、所得倍増計画の推進にあたりましてとかく立ちおくれがちな中小企業農業重点を置いた三十九年度予算編成が行なわれておるわけでございまして、中小企業に対しましては国税、地方税を合わせまして六百億円をこえる減税を行なっております。  その内容につきましては、まず所得税におきまして基礎控除配偶者控除引き上げるほかに、専従者控除につきまして青色申告の場合には二万五千円、白色申告の場合には一万五千円と相当金額引き上げておる点が第一でございます。  そのほか、法人税の場合におきましては軽減税率の適用範囲を広げ、同族会社に対する留保所得課税の軽減をいたしております。また耐用年数の短縮にあたりましても、中小企業の場合も相当短縮する予定でございますし、御承知のとおり、中小企業の場合におきましては中小企業用合理化機械の割り増し償却と、それから中小企業者の機械設備、工場、建物を含んだ割り増し償却、両方設けておるわけでございますが、これも範囲が拡大されるわけであります。  それからまた、地方税のほうにおきましても住民税の不均衡是正、あるいは個人の事業税の事業主控除引き上げ法人の事業税の場合、従来百万円まで六%でありましたのを、百五十万円まで六%とするというふうな各般の軽減措置がとられておる次第でございます。
  24. 金子一平

    金子(一)委員 画期的に中小企業には重点を置いていろいろな施策を施すのだと言っておられる。税制面においてもたとえば青色の専従者控除ですが。二十歳以上十二万五千円を今度は十五万円に引き上げる。相変わらずちびっておられるのでありますけれども一体二十歳以上で月一万円少々というようなことで現実に即した給与を認めたということが言えましょうか。その十五万円と出された計算の根拠をはっきり承っておきたいと思います。
  25. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように青色申告の専従者の場合に十五万円という限度がはたして適当かどうかという点、いろいろ問題があろうかと思うのでありますが、一つには、御承知のようにわが国の現在の状況におきましては、親族従業員に対しましてその労働の価値を適正に評価した給与が払われておるかどうかという点にいろいろ問題があるように考えるのでございます。これを限度を設けないといたしますと、えてして名目的な給与を支払っておるということだけで税負担の軽減をはかろうとすることも行なわれるのではないかということも心配されるわけでございます。その点につきましては、金子委員承知のとおり税制のほうばかりが先走りすることは必ずしも適当ではないのでございまして、世間の一般の常識と世間の慣行というものと相伴っていくことが必要であろうかと思うのでございます。したがいまして、現状におきましては最高限を設けるのもやむを得ないのではないかというふうに考えておるのでございますが、社会、経済の進展に伴いまして親族従業員に対する給与の支払いが一般的慣行となるというようなことが考えられます場合におきましては、限度を設けるのは適切でないと考えておるわけでございます。しかしその場合におきましても、単に名目的に給与を払ったということだけで税負担の軽減をはかるというようなことがないような措置は講じなければならぬのではないかというふうに考えておる次第でございます。  なお、十五万円とした根拠につきましては、同族会社の親族従業員に対します給与の支払い状況を調査いたしまして、その調果の結果、これは申し上げるまでもなく男子の場合、女子の場合、それから年齢の相当多い者あるいは年齢の低い者、それぞれ千差万別でございますが、十五万円といたしました根拠から申し上げますと、同族会社の親族従業員に対する給与の支払いを見ますと、多い場合は二十二、三万円の支払いもございますし、それから十八万円、十五万円ぐらいの支払いもございます。少ない場合には十一万円、九万円といったような支払いも見受けられるのでございまして、平均いたしますと約十五万五千円程度になるように見受けられます。その点からいたしまして、まず十五万円くらいが適当ではないかということにいたしたのでございます。
  26. 金子一平

    金子(一)委員 給与の支給状況に関する資料は調査会のこの印刷物で私拝見しているのですけれども、おそらく主税局としては、各税務署からこういう資料をおとりになっていると思うのですが、あなたのほうにいえば、民間の中小企業給与の支給の実態はかくかくしかじかとおっしゃるけれども中小企業者に言わせれば、税務署が認めてくれぬからこの程度しか払っていないというのが多いんですよ。たとえばいま高等学校なら高等学校を出てほかへつとめれば二万何千円もらえるというのがうちにおれば三千円か五千円ぐらいの給与しか認めないというので、結局ほかへ働きに行ったほうが得だということになっているのが現実の姿なんですけれども、こういう点は、もう少し率直に最近の給与の実態をごらんになって、主税局長先ほど税はあとから追っかけるものだとおっしゃったが、まさにそのとおりなんですよ。最近の実態はずいぶん変わってきているのですから、そこら辺におくれることのないようにトレースされてけっこうですが、実態に合うように考慮されたらいかがかと思います。私は会社形態をとれば給与はまるまる損費になるが、会社形態をとらぬ限り十五万円なら十五万円で押えるという姿はおかしいと思う。それからこれは企業課税全体について問題ですけれども先ほどもちょっと主税局長も触れておられましたように、中小企業については法人も個人も実態的にはあまり変わらないのでありますけれども、しかしいろいろな面でまだ格差を認められている場合があると思うのであります。ただ一時ほど法人成りは最近ふえていないのじゃないか、それだけ税の問題が落ちついてきたのじゃないかという感じもいたしておりますが、最近の法人成りの状況の何かの数字がありましたらお聞かせいただけませんか。
  27. 泉美之松

    泉政府委員 青色申告の場合の専従者控除あり方につきましては、貴重な御意見を拝聴いたしまして、今後ともそういうことを参考にいたしまして、検討いたしてまいりたいと思います。  それから最近の法人成りの状況でございますが、金子委員承知のとおり昭和二十五年から三十年ごろまでは、税負担の重かった点もあろうかと思うのでございますが、法人成りが非常に多うございまして、毎年五万あるいは四万という程度法人成りがあったわけでございます。それが最近は若干少なくはなっておりますが、しかしたとえば三十五年におきましては三万七千、三十六年におきましては三万五千、こういった約三万程度法人成りは毎年まだあるようでございまして、若干低目にはなりましたけれども、まだ法人成りが減ってしまったというわけではございません。
  28. 金子一平

    金子(一)委員 主税局長中小企業も本来的には法人になっておっても、法人経営は全くの擬制だと考えられるようなもの、これは線を引くのはなかなかむずかしいかと思いまするけれども法人税税率でも所得税税率でも、納税者の選択によって自由にできるようにおやりになる気持ちはありませんか。あるいはまたそういうことを真剣に検討してみようというような気持ちになられませんか、どうでしょうか。
  29. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように個人事業者の場合と中小法人の場合との税負担バランスをどういうふうにはかっていくべきか、これはなかなか大きな問題でございまして、私どもといたしましても真剣に企業課税あり方一つの問題といたしまして検討をいたしてまいりたいと思っておるのでございます。御承知のように、アメリカにおきましてはそういった中小法人の場合におきましては、個人課税との選択ができるような制度もとられておるわけでございます。わが国の場合にそういう制度をとるのがはたしていいかどうか、なお今後検討すべき問題であろうかと思うのでございます。ただ御承知のようにわが国の現在の法人税考え方は擬制説的な立場をとっておりますが、だんだん擬制説的な立場と違った措置もいろいろとられてまいっております。そういう関係がございまして、企業課税の根本的なあり方について検討すべき点が多いように思うのでございます。ことにわが国の場合には、中小法人こそ擬制説的に考えるべき実態を有している。ところが中小法人の場合におきましては、実際は配当を行なわないで、給与といったような形で所得を得ておりますために、配当控除制度による恩典が実際には及んでおらない。そうして本来擬制説的に考えるべきでないと思われるような大企業の場合において配当が行なわれて配当控除の特典が与えられておる。そこにわれわれは企業課税あり方として根本的に考え直さなければならぬ点があろうかと思うのでございます。こういった点につきましては、お説の趣旨をくみながら今後十分検討してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  30. 金子一平

    金子(一)委員 いま主税局長が言っておられるように、私どもの個人的な気持ちとしていまのような法人税の立て方で日本の場合すっきりした課税ができると言っていいのかどうか、非常に疑問に思っております。そういう面でこれから大いに御検討いただきたいと思うのでありますが、中小企業課税の問題に関連してひとつ申し上げておきたいと思うのです。相続税の課税の場合に、大企業のほうはそのときの株式の時価で評価しておりますけれども、個人に近い中小企業の場合は、まるまる財産の価格を洗い出して課税をする、中間のものはその中間をとるというようなことで、法人の相続税の課税の場合に、いつも中小ほど痛めつけられているのではないかという感じを私は率直に持っておるのでありますが、これは個人との関連になりますから非常にむずかしい問題ではあるが、一方において大企業の場合と中小零細の企業の場合とのバランスがいかにもおかしいのではないかという感じを持っておるのでありますが、今後こういう点についてどういうように考えていかれるのか、御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  31. 泉美之松

    泉政府委員 中小同族法人の株の評価の問題は、むしろ国税庁のほうからお答えいただいたほうが適切かと思うのでございますが、お話のとおり事業を営む形態が大企業であるか、中小法人の形をとるか、あるいは個人企業の形をとるか、それによってその間の税負担あり方が非常に問題になるわけでございまして、この三者の間のバランスを十分とってまいらなければならないということはお説のとおりでございます。これはひとり相続税の場合だけでなしに、法人税の場合、あるいは所得税の総合課税の場合、すべての場合において、そういった点を十分考慮してまいらなければならぬと思うのでございます。ただお話のとおり中小法人の場合におきましては、個人企業の場合の相続税とのバランスからいたしまして上場株式のように市価がございませんのでやむを得ずその資産価値からいたしまして評価をせざるを得ない点があるわけでございますが、そして資産価額から市場に上場されておりまする株式とのバランス考慮しながら評価していくという現在の制度になっておりますが、それではこれをどうやったらいいかということになりますと、金子委員承知のとおり昔からなかなかむずかしい評価の問題があるわけでございます。もちろんわれわれといたしましてはそういった点につきまして、今後とも改善をはかっていくという気持ちは持っておるのでございますが、それでははたしてどのようにすべきかということになりますと、なお検討すべき余地が多いように思っておる次第でございます。
  32. 金子一平

    金子(一)委員 直税部長、どうですか。
  33. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 相続税あるいは贈与税の株の評価のことにつきまして、金子委員よく御存じのことだと思うのであります。現在この点につきましても内部で検討は積んでおるのでありますが、現在のたてまえは中小、あるいは小法人につきましては個人と全く同様の評価方法をとりまして、それを株数で割ったものが一株当たりの価額ということにいたしております。大法人の場合は、これは御存知のとおり上場株につきましては、問題なくその株価をとるわけでございますが、上場されてない株につきましては上場会社との基準の価額を求めまして、中法人につきましては準資産の方式との混合方式をして処理しておるわけでございます。この基準の出し方につきまして、株価が非常に高い場合は比較的高く出るけれども、株価が全般的に、今日のように低落した場合には大会社のほうは低く出るというような傾向もあるかと存じます。しかしこれはいろいろ影響するところが大きい問題でありますので、今後慎重な検討を重ねて、直すべき点があれば直したい、各界の専門家の御意見も承っておる最中でございます。
  34. 金子一平

    金子(一)委員 今度の改正で譲渡所得について、三年未満の保有にかかる資産の譲渡所得、これを別に切り離して全額課税方式をとられたことは一進歩かと思うのでありますが、ただこの際これに関連して私伺っておきたいと思いますのは、相続税の物納でありますとか、借金のかたに取られて競売に付されるというような場合には特別の例外措置を講ぜられると思うのでありますが、この件はどうなっておりますか、伺っておきたいと思います。
  35. 泉美之松

    泉政府委員 お話のとおり、今回三年未満の譲渡の場合には、従来のごとき半額課税方式をとらないということにいたしたのでございます。その趣旨は、最近の急激な地価の騰貴に対処いたしまして、投機的な取引から生ずる所得に対しましては、半額課税方式をとらないほうがいいのではないかという考えに基づいておるわけでございます。したがいまして、競売による譲渡の場合などにおきましては、新しい方式によって全額課税するということは適当でないと思います。したがいまして、そういった場合のいろいろな例外が考えられますので、そういった例外的な場合におきましては政令できめまして、その適用除外をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  36. 金子一平

    金子(一)委員 それから従来ときどき新聞に出ておりますのは、大蔵省が最近の地価の抑制について、何らかの新しい税金を考えておるのだ。たとえば空閑地の利用とか、不動産の増価税だとか、何かそういうような記事がちらほら見える場合があるのですが、この点に対するはっきりした大蔵省の御見解を承っておきたいと思うのです。私は率直に申しまして、地価の抑制は税金だけの問題ではないし、税だけでやろうと思っても簡単にできる問題ではない。むしろ今回の短期保有のキャピタル・ゲインに対する課税等によって、間接的にはかれば十分だというふうに考えておるのですが、その点の御見解はどうですか。
  37. 泉美之松

    泉政府委員 最近の地価の騰貴が激しいものでございますので、世間では土地増価税を設けよ、あるいは空閑地税を設けたらどうかといったような御意見がございますし、また現にフランスあるいは西ドイツにおきましては、そういった意味での税を設けておるのでございます。私ども検討いたしました現在の段階におきましては、そういった土地増価税あるいは空閑地税を設けましても、わが国の場合土地に対する需要が非常に大きいために、地価が値上がりいたしておるのでございますので、税を設ければ設けるだけ地価に転嫁される。したがって、必ずしもそういう税を設けたから地価が安くなるということにはならないのではないかということが考えられますので、むしろ地価抑制のためには宅地造成を大規模にやるとか、そういった方策が立てらるべきであって、税制から地価の抑制をはかろうとすることはなかなか困難である。したがって今回新しく設けようといたしております三年未満の保有の場合、譲渡所得に対する課税を全額課税とすることによって、そういった投機的な取引が行なわれないようにするということがむしろ適当ではないかというふうに考えておるのでございます。もちろん諸外国の土地増価税あるいは空閑地税につきましては、なお資料を取り寄せまして検討はいたしてまいるつもりでおりますけれどもわが国の現在の段階におきましては、そういった新しい税を設けることが必ずしも適当とは考えておらないのでございます。
  38. 岩動道行

    岩動委員 ただいま金子委員の譲渡所得に関連いたしまして、私も一、二点伺っておきたいのでありますが、短期保有の資産譲渡についての今回の全額課税方式をとりました場合に、具体的に現行法改正案でどれだけの税額の差が出てくるのか、これを具体的な実例をもってひとつお示しをいただきたいと思います。
  39. 泉美之松

    泉政府委員 まず税収のほうから、これは三年未満の短期保有による譲渡所得がどの程度あるかということにつきましては、必ずしも十分的確な資料がないのでございますけれども、一応私どものあります資料を集めまして検討いたしました結果、三年未満の保有資産に対する譲渡所得二分の一課税を廃止することによって、この改正は一月一日以後の譲渡に適用されることになっておりますので、平年度初年度同額になるわけでございますが、一応六億程度の増収があるというふうに見込んでおるのでございます。具体的に申し上げますと、たとえば二十八年の取得価額百万円の資産というようなものが譲渡所得の計算のベースになるわけでございますが、三年末満の保有の場合には、そういったベースはとれないわけでございまして、たとえば昭和三十九年中に譲渡いたしました場合には、その前三年でございますから、昭和三十六年のその対応日以後の取得の分になるわけでございます。その取得価額と譲渡価額との差額につきまして、従来は二分の一課税しております。それからまた、それが特定公共土地収用に該当するような場合におきましては、二分の一をして、さらに二分の一をする四分の一課税という特例になっております。それが三年未満の保有の場合におきましては、たとえば一千万円で取得いたしたものが二千万円で売れるということになりますと、従来のやり方でございますと、その差額の一千万円——もちろんそれには譲渡に伴う経費などもございますから、そういったものを引かなければなりませんけれども、大ざっぱに申し上げまして、差額が一千万円といたしますと、それから十五万円を控除いたしました後、その半額の五百万円に対しまして税率を適用するということになっておるわけでございますが、今度の改正によりますと、差額が一千万円でありますれば、その一千万円から十五万円の控除をいたしまして、それに税率を適用するということになるわけでございます。したがいまして、半額課税しないことによる税負担の増加はかなり大きくなるわけでございます。
  40. 岩動道行

    岩動委員 そこで私は、特に伺いたいのでありますが、先ほど金子委員お話のあれで、競売等については政令で除外することも考慮されるというふうなお話しでございました。今日やはり宅地の登記ということがきわめて大きいのでありますが、一方において宅地の造成、あるいは工場用地の造成ということも、国民生活の安定あるいは経済の発展の上において、きわめて重要な問題になるわけであります。たとえば、今回日本開発銀行におきましても、土地造成のための資金をかなり大幅につけるということになり、法律改正も用意されているというような時代でございます。したがいまして、このような民生の安定、あるいは経済の発展に寄与するような土地造成を行なってこれを売買する、このような場合があったときにこれを政令で除外をするというようなお考えがあるのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  41. 泉美之松

    泉政府委員 お話のような場合、その土地造成をするのは、個人ではなくて、おそらく法人だと思うのでございます。そういたしますと、譲渡所得の本来半額課税制度もございませんし、これは当然土地造成をいたしました法人所得として、普通の課税を受けることになるわけでございます。したがって、そういったのは政令で除外するわけではございません。たとえば、現在租税特別措置法によりまして、資産の買いかえをする場合に特例が認められて、譲渡いたしましても他の資産を買いかえますと、譲渡がなかったものと見るというような制度が設けられておりますが、三年未満の保有資産につきましても、そういった特例はもちろんできるようになるわけございます。したがいまして、政令によって除外いたしますのは、競売であるとかいったようなごく限られた事例になろうかと思います。  なお、先ほどちょっと申し上げましたが、収用の適用がある場合におきましては、従来は四分の一課税制度がとられておるわけでございます。また収用によって取得しました補償対価をもって他の土地などの資産を取得いたしますれば、これは譲渡がなかったものと見ることになり、その点は変わらないのでございますが、もし他の資産を取得しなかった場合におきまして、四分の一課税の従来の方式は、今度は三年未満の保有資産につきましてそういう収用等がございました場合におきましては、譲渡所得として二分の一課税はございませんけれども、収用としての二分の一課税制度がなお残りますので、四分の一の課税はしないけれども、収用として二分の一課税の適用は受けることになるわけであります。
  42. 岩動道行

    岩動委員 地方に参りますと、よく個人が住宅地を造成しておるような例が最近見受けられるわけでありますがこれらは今後政令の除外に十分考慮していただきたいと考える次第であります。  なお、この固定資産にかかる譲渡所得の適用の期限でございますが、この法律案の付則によりますと、四月一日からこの法律の適用が行なわれることになるわけでありますけれども、ただいま泉主税局長お話によりますと、これは一月一日から遡及して適用されるということを伺ったわけであります。これははたして妥当な扱いであるかどうか、何ゆえ短期の保有資産の譲渡に関する部分だけが遡及適用になるのか、たとえば、退職所得等については特別の恩典を受けることになっておりますが、これが三割、約六億円の増収になる。また、個々の例をとってみますと約倍近い増税になるわけでありますので、この増税のやり方を過去にさかのぼって適用することについて、はたして適当なことであるかどうか。この点について御所見を承りたいと思います。
  43. 泉美之松

    泉政府委員 税制改正を行ないました場合に、それぞれの改正事項をいつから適用するかということにつきましては、従来からいろいろなやり方があるわけでございますが、相続税、贈与税などにつきましては、年分の関係からいたしまして、一月一日にさかのぼって適用することになっております。また、所得税の場合、控除などにおきましては、たとえば基礎控除配偶者控除につきましては、四月一日から実施するのでございますが、退職所得控除につきましては、一月一日以後適用するというようなことにいたしております。したがって、三年未満の保有にかかる譲渡所得につきましても、一月一日にさかのぼって適用することにいたしてございますが、なぜそれでは一月一日にさかのぼって適用することにいたしているかと申しますと譲渡所得は年分でやりますので、一月に譲渡したものと四月に譲渡したものとで非常に差を設けることは適切でございません。一年間の譲渡につきましては同じような扱いをするのが適当である。また、一般にもすでに昨年末そういう三年未満の保有にかかる譲渡所得については二分の一課税方式をとらないということを税制改正要綱で表明いたしておりますし、またこの税制改正法案が出ました後において、かりに四月一日から適用するということになりますと、その三月までの間の脱法的な行為が行なわれないと保障し得ないので、そういう点を考慮いたしまして、この課税は一月一日にさかのぼって適用することといたしておるのでございます。こういった事例は過去の改正の際にもいろいろあるわけでございます。
  44. 岩動道行

    岩動委員 ただいますでに昨年の税制要綱等において発表してあるというようなお話でありますが、これは国民全般が知るすべもない。やはり国会において税法が成立して初めて国民はこれを知る機会があるわけでありまして私は、増税の措置が過去に遡及して行なわれるということについてはかなりの疑問があるということを、特にこの機会に申し上げておきたいと思います。
  45. 金子一平

    金子(一)委員 次に、損害保険料の控除が今度新しく設けられましたけれども、この問題に関連して一つお伺いしたいと思いますのは、これは非常に大きな朗報だと思うのでありまするけれども、従来からありました生命保険料控除の額に比べて最高限がいかにも少ないような感じがするのであります。短期、最高二千円、十五年以上の長期五千円となっておるのですが、この計算の根拠をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  46. 泉美之松

    泉政府委員 今度設けることになりました損害保険料控除制度につきまして、この趣旨はもう御承知のとおりでございますので、申し上げないことにいたしますが、生命保険料控除に比べて控除限度額が低いのではないかというお話でございますが、御承知のように、生命保険の場合におきましては保険金額幾らにするかということは契約者の自由でございますが、損害保険の場合におきましては、家屋並びに動産がそれだけの価値がないと、その保険に入れないのでございまして、百万円しか価値のない家屋につきまして五百万円の保険をかけようなどということはできない仕組みになっております。そこでもし限度を設けませんと、非常に高額な資産を持っておる人ばかりが控除の特典を受けやすいということになりますので、ある程度限度を設ける必要があろうかというふうに考えまして検討をいたしたのでございますが、その検討の結果といたしますと、現在の短期の保険の場合におきましては、損害保険金の掛け金の平均額は六十九万九千円に相なっておるのでございます。その保険料は二千円程度になっておるわけでございます。そういった点を考慮いたしまして、平均の保険額程度まで控除することにすれば適当ではないかという考え方に立ったのでございます。もっともこの保険料は御承知のとおり建物が堅固な建物であるか、あるいは木造の建物であるか、あるいはその建物の付近が過密住宅であるか、あるいは独立家屋であるかによりまして、保険料の金額は著しく相違するのでございまして、最低の場合の保険料に比べまして、最高の場合の保険料は約十六倍に相なっております。そういった点を考えますと、この限度を設けることはなかなかやっかいな問題であろうと思いまするが、私どもとしましては、初めて設ける制度でもございますし、そういった点を考慮いたしまして、いま申し上げましたような平均の保険の掛け金額基準にいたしまして、平均の保険料で計算いたしました二千円という限度を設けたわけでございます。  長期の場合におきましては、農協が行なっておりまする建物更生共済の例以外は民間の二つの保険会社だけがそういった長期の保険制度を設けておるのでございまして、まだ建物更生以外には十分な資料がございませんので、建物更生共済の場合を基準にいたしたのでございますが、その共済の平均額は三十五万一千円になっております。その掛け金額は九千三百二十三円となっておるのでございますが、これは農家の作業場など、事業用の建物の部分も含んでおるわけでございまして、御承知のとおりそういった事業用の建物の保険料の部分は、農業所得課税に当たりましてすでに経費として差し引いておるというような関係からいたしまして、この九千三百二十三円という金額をそのまま保険料の限度額とするのは適当でない。そこで住宅部分についてだけ見た場合にどの程度になるかということを考えまして、その部分を算出いたしますると約五千円に近い数字になるので、五千円の限度を設けるということにしたわけでございます。
  47. 金子一平

    金子(一)委員 長期の分につきまして平均の共済金額が三十五万一千円、これは私の持っている数字と大体合うのですが、掛け金が平均九千三百円だが住宅部分だけにすると五千幾らになる、こういうお話でございまするけれども、その住宅部分とそれ以外とを区別された根拠は何なんですか。それをちょっと伺いたい。
  48. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように事業用の建物の部分につきましては、保険料をすでに農業所得課税に当たりまして経費として差し引いておりますので、今回新しく設ける部分につきましては、これはひとり農家に限らず中小企業の営業者の場合も同様でございますが、住宅の部分についての損害保険料だけ控険するということにいたしておるわけでございます。そういった点からいたしまして、農家の場合におきましても九千三百二十三円のうち住宅部分についてだけ適用を認めることにしたわけでございます。そういたしますと五千円の限度が適当ではないかというふうに考えられるわけでございます。
  49. 金子一平

    金子(一)委員 もう一度重ねてお伺いしますが、その住宅部分だけは何によってお調べになったのですか。いまの数字を見ますと大体六割近くが住宅部分だということになっておるのですけれども、私どもの持っておる最近十カ年の契約について調べますと、そうならないのです。四割がいまの納屋だとか作業場だとか、こういうことにあなたのほうでは見ておられるのですが、何によってそれをお調べになったか、それをひとつはっきり言ってください。
  50. 泉美之松

    泉政府委員 これは各部調査によりまして農家の建物のうち住宅部分とそうでない部分との数字がございますので、それからいたしますと農家の場合住宅部分は六〇%という数字になっておるわけでございます。
  51. 金子一平

    金子(一)委員 農林省の農家経済調査報告によれば、あるいはあなたのようなことになるかもしれないけれども実際の建物共済の契約の実態を調べてみると、あなたのおっしゃっているようになってないのです。数字をはっきり申し上げましょう。住宅部分は大体九五%ですよ。これは私は主税局長の説明どうも納得いきませんので、あらためてひとつはっきりした数字をあなたのほうから伺いたい。これはきょうすぐと言っても無理だろうと思いますので…。いずれにしましても結論的に申し上げましたならば、いまの五千円という数字には少し無理があるのじゃないかとはっきり申し上げておきたいと思います。  それから次にひとつお伺いしたいと思うのでありますが、この前の火曜日の本会議場において、池田総理は、配当所得に対する分離課税の問題に関連いたしまして、配当所得は分離課税をする意思はないということをはっきり言われると同時に、資料の提出限度だったかと思うのでありまするが、相当金額まで引き上げることをも考えておるということを言明されたのでありまするが、大蔵当局としては具体的にどのようなことを考えておられるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  52. 泉美之松

    泉政府委員 配当所得の支払い調書につきましては、現在所得税法の省令におきまして年間一万円、短期事業年度の場合には五千円までは支払い調書の提出を要しないことになっております。しかしながら事業会社が支払い調書を作成して税務署に提出する手数等それから、その資料が提出されて税務署に多数の資料が集まりましても、少額な配当でございますと配当控除の結果総合課税しようとしても、実質的に総合の意義がないといった点がございますので、それらを勘案いたしまして、支払い調書の提出限度を引き上げるということを検討いたしております。
  53. 金子一平

    金子(一)委員 具体的にひとつどれくらいまで引き上げられるのか、総理が本会議ではっきりと言明されたことであります。金額を承りたい。
  54. 泉美之松

    泉政府委員 調書の提出限度を幾らにするかにつきましてはなお現在慎重に検討中でございます。この点につきまして具体的に金額を申し上げることはこの際差し控えきせていただきたいと思うのであります。
  55. 金子一平

    金子(一)委員 いまの建物共済の点につきましては、私は主税局の原案には納得しかねますので、この点は質問をさらに留保させていただきたいと思います。  次にもう一つ伺っておきたいと思うのでありますが、最近の週刊朝日に「春は税金の関ケ原」という題で大きく取り上げておる問題として、税の無法地帯が東京都並びにその周辺地区にある、こういうことでございます。税務署が調査に参りますと署員が多数の民商の事務局員あるいは組合員に包囲されてばりざんぼうを浴び、場合によっては身辺の危険も感じかねない場合が多かった。中には告発事件、刑事事件になっておるケースもあるということでございますが、私はもうこういう事態はなくなっていると思っていたのでありますが、ひとつ長官からはっきりと実情をお話しいただきたいと考えます。
  56. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 最近の週刊朝日にただいま御指摘になりましたような記事が出ております。私も読んでみましたが、内容相当事実と相違しておる面がございますけれども、全国的、一般的に申しましてただいま金子委員の御指摘になりましたように、全商、民商税務署の調査に対する妨害、拒否等が相当活発に行なわれていることは事実でございます。
  57. 金子一平

    金子(一)委員 刑事事件になったものもあるというふうに出ておりますが、あるいはまたテープレコーダを持って、携帯用無線機も持って追っかけ回されておるというようなことも聞いておるのでありますが、事実そうですか。もう少し具体的にこの際はっきりと税務執行の状況をお聞かせいただきたい。というのは、それはさっき私が申しました現在の税制との関係の矛盾が私は税の執行面に、特に中小企業、零細企業中小所得者についてありはしないかというところから言っておるのであります。いまの答弁ではちょっと不満なんです。
  58. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 具体的な事例を申し上げますと数限りもございませんが、そのうち代表的なものを二、三御説明申し上げたいと思います。  これは私が川崎の税務署に参りまして、民商の会員の宅に調査に伺った調査官吏から直接に聞いた話でございます。一例として申し上げます。  署員が税務署の門前を出ますと見張りがついておっておってそして尾行がつく。その尾行者は小型無線機を持っており、また小型の四輪車を使用しておる。それで署員が会員の納税者宅に臨場をいたしますと、数分ならずして民商の事務局から事務局員あるいは会員がやってくる。多いときには二十名くらい、少ないときには五、六名から十名というものがやってまいりまして、そして調査の職員が相手の人にいろいろ質問をしたりあるいは帳簿の呈示をお願いしますというと、横あいから口を出して、そういうものは見せる必要はない、質問には答える必要はない。また場合によると写真機、小型のテープレコーダーを持ち込んで署員を写したりあるいは署員の発言等を録音したりするといういやがらせをやります。それから場合によると道路に対してマイクを出して放送をいたします。いま税務署の役人がやってきてこういうことをやっておる、こういうことを聞いておるというようなことを放送するわけであります。それから質問を始めるというと耳元へ口を寄せて大声でわめく、また取り巻いてばり雑言、脅迫じみた言動をする。それで床を踏み鳴らしたりして、とうてい調査ができないので帰ろうとすると、ぞろぞろうしろからついてきて道路上でもって、前を行くのは税務署のやつだ、みなよく顔を覚えておいてくださいというようなことを大声で言うそうであります。その調査官吏の実感として私に申したところによりますと、全くこういう状態は法治国としては考えられない、いわゆる無法状態である、ちょうどアメリカ映画の西部劇に出てくる恐怖の町と同じだというようなことを、実感をもって私に申したのであります。  全国的に見まして過去において税務署員を傷つけたりあるいは署員の顔につばを吐いたり、そのほかいろいろの妨害、いやがらせ、脅迫等を行なっておるわけであります。ただいまお話に出ました中野の民商の事務局員で告発された事例はどういう事例であったかということを御説明いたしますと、税務署の調査官吏が民商の会員の宅へ調査に伺ったときに、民商の事務局の次長がこういうことを言っております。これは二階で調査をしたのですが、上から下へ落ちてもらってもいいんだぜ——これは突き落とすという意味であります。それからまた、前の川で泳いでもらおうじゃねえか、涼しくなったからちょうどいい、泳がせようか、K君、どうだいというようなことを言っている。それからやゆするような点としては、黙ってねえで何とか言え、右から聞いて左に抜けるんだろう、きょうきげんが悪いところを見ると、おかあちゃんとうまくいかなかったなというようなことを言っている。それからまた帰りに橋のところで待っているぜ、泳いでもらうぞ、あるいは夜は月夜ばかりじゃないというような、(笑声)これはここで申し上げるというと笑い話のようになりますけれども、実際に十人くらいの人に取りまかれてそういうすごんだことを大きな声で言われるということになりますと、調査官としてはかなり精神的にも恐怖感を抱かざるを得ない、こういうような状況であります。
  59. 金子一平

    金子(一)委員 いま長官お話を聞いて、予想以上にひどい状況であるのに私も驚いておるのでございますが、きょうは時間もございませんので、あらためてまた一体国税庁当局はどういうような対策を現在とり、また今後もとろうとしておられるのか、そういった点についても質問してみたいと思いますが、きょうはその質問を留保いたしまして、ただ一言。りっぱな税法をつくりましても執行当局が腰砕けになっては何にもならぬのであります。あくまでも忠誠的な態度で、その指導者がどういう方面の分子であるにせよ、私は富貴に淫せず権力に屈せず、あるいはまた暴力に負けず、ひとつ堂々の道を行っていただきたいということを要望しておきます。  以上で私の質問を終わります。
  60. 山中貞則

    山中委員長 ただいまの金子委員質問は、与党委員としてはなかなか出色のできばえでありますから、いずれ機会を見てまた続行することを予約しておきます。  午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ————◇—————    午後一時十八分開議
  61. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 政府は本年度画期的な減税を行なった、こういうことでいろいろ宣伝をされております。しかし本年度の自然増収その他はかってない六千八百億という大規模なものであり、租税負担率というのが二二・三%、あるいは実際上はこれ以上になるというふうに言われておりますが、いまの見通しでも大体そういうことです。はたして大蔵大臣はこれを実際上減税になるというふうにお思いになりますかどうか、この点についてお伺いいたします。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 減税規模が非常に少ないというようなことも申されますけれども、御承知のとおり六千八百二十六億のうち千八百億余の前年度の減収がありますので、差し引きをいたしますと四千九百億近くしか歳入財源としてはないわけであります。この歳入財源が四千九百億弱しかないものから、当該年度における国税の減税による減収額を考えますと、この比率は一七.一%になるわけであります。そういたしますと、昭和三十二年以降毎年減税をやってまいりましたけれども、そのうちで最も高い減税を行なっておるということは、この事実からも十分御理解願えると思うわけであります。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 減税と税の調整ということがいろいろな角度から言われておりますけれども、私たちからすれば、これは減税ではなくて、物価の上昇その他に伴う、経済構造の変動その他に伴う税の調整、こういうふうに見るのが一審正確なことではないか、こういうふうに思うわけです。いわゆる減税の意義といいますか、ただいわゆる学問上のあるいはそういう理論条件でおっしゃるのか。あるいはあとで御質問いたしますけれども、前年度と対比して税額その他が下がった場合に減税とおっしゃっておるのか。どういう立場から減税政府はおっしゃっておるのか。ひとつお聞かせをいただきたい。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 只松さんも御承知のとおり、理側で申し上げるわけではありませんが、減税とは、名目所得に対しての税法による税率がかけられておるわけでありますが、その税率を引き下げたりすることを減税というわけであります。しかし減税考える過程におきまして、物価の上界等があります場合には、この影響等も十分考えながらいろいろ検討いたすことは事実でございますが、いずれにいたしましても、その意味課税最低限引き上げ等も行なっておるわけでありますし、過去十年以上歴年減税をやっておるわけでありまして、政府がいま国会にお出しをしておる減税法案は、国税、地方税を合わせて平年度二千百八十億余になる大幅な減税案である、このように理解いたしておるわけであります。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 本年も中山委員がお見えになって意見を申される予定になったようでございますが、昨年度の議事録を見ましても 中山委員は本委員会において、政府物価上昇見積もりは二・八%である、したがって昨年度の当面の最低限の減税の勧告といいますか要望にいたしましても二・八%で計算をしておるのだ、二・八%の計算でしかも税制調査会が勧告したとおりになってぎりぎりの減税、税の調整ということになる、しかしこれが三%以上になるならば減税にはならない、こういうことをおっしゃっております。そうすると、去年は物価は八%前後上がっております。さらに調査会が勧告したとおりに減税というものは行なわれておりません。昨年度減税をしたとお思いになりますか。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 昨年度減税をいたしたと思っております。ただ、国会の御審議にもございましたとおり、税制調査会答申をしましたものから幾らか削った面はございますけれども、他の企業減税等も将来の国民所得を増すために、また物価を安定せしむる等のためには必要やむを得ざるものとして、バランスをとったわけでありまして、間違いなく減税をいたしたという考えであります。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 中山委員は二・八%の場合に減税になる、しかも調査会が勧告したとおりに行なった場合に初めて減税になるのであって、これが二・八%をこし、前年度すでに前々年度を合わせて一二%をこしておる、そういうふうに三十八年度の見通しがなるならば、これは減税にならない、実質上増税になる、こういうことを言っておりますが、そうすると政府の諮問をされておる税制調査会の会長である中山さんの意見政府の見解とは全く相反する、こういうことになりますが、その点どうですか。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 中山さんのお考えは私も承知いたしておりますし、その見解につきましては去る国会でいろいろ御質問をいただいたこともございます。できるだけ税制調査会答申を尊重いたしたい、またいたすという政府の基本的な方針は変わらないわけであります。ただ中山さんが言われておりますそのことと、政府が行なっておる、行ないました最終減税案というものが、全く食い違うものかというと、そうは考えておらないのであります。一つの時点において、その一コマをとって議論をすれば中山さんのような議論もありますし、また政府もそういう御議論に対しては耳を傾けておるわけでありますが、その年度だけでもって減税をやっておるのではなく、過去十年にわたって単純累計一兆一千億にも上る減税をやっておるのであります。また今年の減税に引き続いて、来年も再来年もできるだけ減税はやってまいりたいという姿勢でありますので、そういう観点から、政府が企図いたしております減税案と、中山調査会長が考えておられるようなものの考え方は、本質的に違いはないという考え方に立っておるわけであります。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 大臣は減税を昨年度もしたし、本年度もする、あるいは過去もした、こうおっしゃっておる。ところが制制調査会はいわゆる物価の上昇その他経済の変動とにらみ合わせて、税制調査会の案でも最低限であって、これがいれられない場合は減税ではなくてこれは増税になる、こういうことを言っておるわけです。したがって大臣はさっきから減税した、減税したと言っておるけれども、これは私の言ういわゆる税の調整は行なわれたかもしれないけれども減税というものではない。こういうふうに私は思うし、調査会の中山さんもそのとおりおっしゃっておる。大臣は減税とおっしゃるけれども減税ではなくてあくまでこれは税の調整であって、実質上は税の増徴になっておる、こういうふうにお思いになりませんか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 中山さんの発言に対して私がとやかく申し上げたくはありません。中山さんを長とする税制調査会答申は、基本的にも実際的にも答申尊重というたてまえをとっておりますから、あまり議論めいたことを申し上げるということは差し控えたいわけであります。原則的には私は中山さんが答申をされた税制調査会答申は尊重しており、また将来も尊重していきたい、こういうことで中山さんの発言とあまり食い違っておらぬ、こういうことの観点に立っておるわけであります。  中山さんがこう言っておるではないか、同じ時点で同じ表現で同じものの考え方で答えてごらんなさい、政府とは違うじゃないか、こう言われれば、どうもそれは議論になります。いずれにしても物価値上がりということで、数字の上から見ると増税になるというような表現を用いておられますが、税に関するエキスパートで、税法上の考え方からすれば増税になるなどということではなく、減税とは名目所得に対する税率でありますから、そういうものの考え方はありますけれども、何と言いますか、私のほうでは、どうも政府はそのような表現は使っておりませんし、そういう表現は妥当でないという考え方を従来とも明らかにいたしておるわけであります。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 そうすると、結局税制調査会考え方、思考方法を否認するということが一つ出てまいりますし、それから税制調査会で出されておるデータそのものにも誤りがある、こういうふうにお考えになるわけですか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 そうは考えておらないのです。私は先ほどから申し上げておりますように、税制調査会答申はできるだけ尊重いたしたい、こう言っておりますし、三十九年度減税につきましても、答申尊重の上にプラスアルファをつけたという考え方をとっておるわけであります。ただ、あなたがいま増税論というような、中山さんの御発言の記事の中の、増税になる、こういうことを指摘せられて御発言がございましたので、税制考え方からして、増税論というような表現を政府は従来使っておりません、こういうことを申し上げたわけであります。
  74. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと補足して申し上げたいと思うのでありますが、減税と申します場合に、法律上の用語として用います場合は、明らかに現行法による税負担額に対しまして、税制改正を行なった場合の負担額の軽減というのが減税であるということは、これはもう只松さんも御異存ないと思うのでございます。問題は、そういうふうな法律上の減税額が、経済的に見た場合に、物価騰貴などがありました場合に、法律上減税を行ないましても、経済的に見れば、減税効果が薄れるではないか、こういう点であろうかと思うのであります。そこでその場合に考えなければなりませんことは、なるほど減税を行ないましても、物価騰貴がありますれば、減税効果は薄れるわけでありますが、同時にその際賃金ないし所得の増加があるという面を考えなければならないと思うのでございます。もちろん所得が増加いたしますれば、所得税は名目所得課税されますので、名目所得に対する税金も増加いたします。しかしながら、所得ないし賃金が増加することによる実質生計費の増加も大きいわけでございます。そこで所得の増加と物価の上昇、それと税の改正による負担の軽減、この三者をにらみ合わせて検討すべきものであろうかと思うのでございます。なるほど昨年は当初予算におきまして、政府といたしましては、二・八%の物価上昇を見ておったのでございますが、給与の面におきまして、六%の上昇と見ておりましたものが、結果的には一二%の所得の増加になっております。その点を両方考え合わせまして、税制改正による負担の軽減等を見比べますと、これは実質的に所得が増加いたしておりますので、負担の軽減がはかられておるということに相なるわけでございまして、物価だけを見て、それによって減税効果はなくなっているというわけには参らないと思うのでございます。
  75. 只松祐治

    ○只松委員 法律上の用語解釈はそのとおりでありますが、私が言っておるのは、実質上の国民生活の観点から言っておるわけなんです。物価上昇とともに、いま言われたように、賃金が上昇する、そうすると累進課税でございますから、税率が上がってくる。そういうものを総合して、この税制調査会は、昨年度の案が完全に実施されないならば、事実上国民の税金というものは重くなるんだ、こういうことを言っておるわけなんです。本年度調査会の勧告の中で、給与所得控除が、平年度三百二十億というものが、これが一番目か二番目に大きいわけですが、これが勧告案から除外されておりますね。こういうことになってまいりますと、その最低限の勧告をいれられてとんとんだ、こういうこと。去年です。おそらくことしお見えになっても、そういうことを言われるだろうと思う。そうなってくると、その最低限度さえいれられないという場合には、去年度は二・八%の物価上昇も算定して、とにかくいれられない場合には増税だ、こう言っているわけです。七%、八%の物価上昇、それに対応して賃金の引き上げも多少皆さん方の計算よりも上がっておるわけですね。政府は初めそんなに賃金は上げない、こういう方針だったわけです。しかし物価が、この前も答弁があったように、今年は四・五%ですから、人事院の勧告も大体出ない予定だ、こういう答弁を田中さんはされたわけです。ことしも四・八%ですかの物価上昇だけれども経済界ではおそらく七、八%ぐらい上がるだろう、こういうことを言われておる。こういうふうに、物価だけでなくて、賃金も、名目賃金は大幅に上がってきている。そうすると、累進課税相当課税が増大をされておるわけです。事実、政府の見積もりよりも税収は多くなってきておるわけです。そういう、いわゆる国民経済の観点から、名目上はいわれているように減税ということをうたわれておるし、あるいは法律解釈上はそういうことになるかもしれぬけれども、実際上としては増税になってないか、こういうことを言っておるし、ぼくは増税になっておる、こういうふうに言っておるわけです。それをお認めになりませんか。
  76. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、税法改正しても、物価の騰貴あるいは賃金の上界があった場合にどういうふうに軽減になっておるかという点でございますが、これは先ほど申し上げましたように、税制調査会答申の際の前提となっておりまするのは、賃金が三十八年度中におきまして六%の増加、物価が二・八%の上昇、こういう前提のもとに税制調査会答申が生まれたわけでございます。もちろんその場合におきましても、絶対ぎりぎりというのではなしに、多少の余裕をもって減税を計画しておることは申し上げるまでもございませんが、その後の経過動きは、御承知のように給与所得は一二%も上昇いたしまして、それから物価はもちろん二・八%でとどまらなくて、八%程度に上昇いたしておるわけでございまますが、しかしそれにしましても、賃金の上昇が大きい関係からいたしまして、実質上におきまして、軽減は行なわれている。ただ、当初予定しておったほど軽減の幅が大きくないというだけでございまして、実質的に増税になっているということではございません。
  77. 只松祐治

    ○只松委員 それは、賃金の上昇その他総合的なものを勘案すればということですが、賃金の上昇だって政府がしたのではなくて、いろいろな、結局私たちからすれば弾圧の強い壁を破って労働者がかちとったものだ。別に政府がくれてやったわけではない。それから物価の上昇にしても、人事院勧告はそれに見合う、これをオーバーするだけのものを出しておるわけではないのです。またその内容に至っては、御承知のとおり高級公務員には非常に厚く、下級官吏には非常に薄い給与体系、こういう勧告が出ておることは御案内のとおりです。そういうところから、過日来先輩各位がいろいろ論議しております課税最低限の問題、その他の論議が行なわれておるのですが、ぼくはそういう個々の内容は他の議員がいろいろ質問をいたしましたから、そういう点にまで触れようと思わないのですが、とにかく繰り返しもう一度お尋ねしておきますが、名目上は減税ということになっておっても、実質上は増税ということ、これは今度中山さんがお見えになれば、そのときもお互に論議し合ってもいいことでございますが、そういうふうになっておると思います。あくまで皆さん方のほうでは減税になっておる、こういうふうにお思いになりますか、その点もう一度……。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 実質的にも減税になっておるという考えであります。
  79. 只松祐治

    ○只松委員 それでは次に、減税をしたしたとおっしゃるけれども、事実上税収というのはふえております。その中で一番ふえてきておるのは、所得税あるいは法人税関係が多いと思いますが、その内容についてひとつ御説明願いたい。
  80. 泉美之松

    泉政府委員 税収の一番増加いたしておりまするのは、申し上げるまでもなく法人税でございまして、たとえば昭和三十年を基礎に申し上げますと、その当時法人の税収は千九百二十一億、約二千億であったわけでございますが、これが三十九年度予算におきましては一兆百五十億円と実に五倍以上の増加になっておるわけでございます。これは結局わが国法人企業が戦後の回復期を経まして最近目ざましい伸展、成長を遂げた結果、このように所得がふえ、したがってまた税収もふえたものと思われるわけでございます。それからそのほかの税でもふえているのがございますが、所得税のほうはどの程度かと申し上げますと、昭和三十年におきましては二千七百八十七億で、法人税よりも所得税のほうが多かったのでございますが、この関係昭和三十二年から逆転いたしまして法人税のほうが多くなりました。そして昭和三十九年の予算で見込んでおります所得税収入は七千七百二十三億でございまして、昭和三十年当時の二千七百億円に比べまして二・五倍程度になっているわけでございます。これは結局、法人税のほうはその間あまり減税を行ないませんで、所得税のほうを毎年減税いたしましたために、個人所得は増加はいたしましたけれども、税収の伸びは少ないということになっておるのでございます。もっともその間年々所得税減税は行なっておりますものの、賃金あるいは所得の増加は著しくなっております関係上、特に給与所得税の税収が著しく増大いたしております。そのために、たとえて申し上げますと、源泉所得税納税者昭和三十年におきましては八百五十五万人であったのでありますが、これが昭和三十八年の実績見込みにおきましては千六百四十四万人と約倍以上になっておるのであります。また三十九年度におきましては、税制改正を行ないましても千六百八十一万人という程度に増加いたすのでございます。
  81. 只松祐治

    ○只松委員 昨年度のあれを見ますと、所得税納税者数は当初一千四百七十三万人、こういうふうに見込んでおるわけでありますが、実質的には千七百万人近くの千六百四十四万人、こういうことです。ことしは減税して大幅にそういう課税対象者が減るとかなんとかいうことですが、それでもなおかつ千六百八十一万人ということで若干ふえます。見積もりより去年は二百万くらいふえておるわけですが、いわゆる名目賃金の上昇、あるいは新規卒業者による所得税対象者の増大、こういうことでこの一千六百八十一万人という見込みどおりにいくとお思いですか。それともいままでの実績から見るともっと大幅になると思われるのですか。それはどうですか。
  82. 泉美之松

    泉政府委員 給与の源泉所得税の人員は、昨年の当初予算におきましては千五百三十万人と見込んでおったのでありますが、実績見込みにおきまして千六百四十四万六千人と約百十万人のそごを来たしたのでございます。これはどうしてそのような差ができたかと申しますと、実は御承知のとおり昭和三十六年以降初任給の引き上げが非常に大きく行なわれたわけでございます。ところが昭和三十八年年度当初。予算を作成する当時におきましては、そういった昭和三十六年以降の初任給引き上げによる納税人員の増加ということが統計的にまだ正確に把握されておらなかったわけでございますので、昭和三十五年以前の数字をベースにいたしまして、このように三十八年の当初予算におきまして千五百三十万というふうな見積もりをいたしておったわけでございます。しかしその後三十六年の実態がわかりまして、また三十七年の源泉所得税収入ぐあい等から見ますと、これではいけないということから、いまの三十八年の実績見込みを出し、そしてまた三十九年の課税見込みを算出いたしておりますので、したがいまして三十九年の改正法による場合の給与所得の源泉徴収人員千六百八十一万一千人は三十六年以降の初任給引き上げ相当見込んだ数字でございますので、これにそのような大きなそごを来たすことはないと思っております。三十八年はいま申し上げましたように統計がまだ不十分であった当時の見込みでございますので、その点御了承いただきたいのでございます。
  83. 只松祐治

    ○只松委員 三十八年当時はわからなかったのでずさんだった、今後はそういうことはない、こういうあれですが、いやしくも国の財政の基本をなす、しかも一番大きなウエートを占めておった所得税の対象者がわからない、こういうことはきわめて空疎怠慢のそしりを免れない、不謹慎なことだと思います。その点十分反省し注意をされるとともに、だからといっていま大体そごはないと思います、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、三十五年以降の昨三十八年度でも百万人からの見込み違いを来たしておりますね。本年もおそらくそういう点が出てくるのではないかと思います。ことしも相当大幅に新規採用者なりいわゆる初任級の引き上げというものが行なわれておるわけですが、ことしは絶対に間違いない、こういうふうに思いますか。
  84. 泉美之松

    泉政府委員 おしかりはごもっともでございますが、何ぶんにも三十六年以降の初任給の引き上げというものは急激に行なわれたわけでございます。私ども収入を計算いたします場合には賃金が比較的平均的に上昇するものと見ておったわけでございますが、三十六年以降の賃金の引き上げは初任給のところで著しい引き上げが行なわれたのでございまして、その点従来と状況が違っておったため、その結果人員に見込み違いが生じたのでございます。そうした点を十分勘案して見込んだ昭和三十九年におきましては、そのような大きなそごを来たすということはあり得ないことと確信をいたしております。
  85. 只松祐治

    ○只松委員 この納税者の数は全勤務者の大体何パーセントになるか、そこからこのパーセントは世界のおもな資本主義国の納税者のパーセントと比較してどういうふうになるか、ひとつお伺いいたします。
  86. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり昭和三十九年度の雇用者総数は経済企画庁の見通しにおきまして二千七百十八万人ということになっております。それに対しまして源泉徴収の所得税の納税人員が千六百八十二万人ということでございますので、この割合は六二%に相なっておるわけでございます。諸外国の比較でございますが、必ずしも十分正確な統計と言えるかどうかわかりませんけれども、私どもが持っております資料からいたしますと、諸外国における勤労者のうち源泉の所得税納税者の割合はわが国の場合より少し多い目で、六八ないし七〇くらいになっておるように考えられます。
  87. 只松祐治

    ○只松委員 時間があまりありませんので少し飛んで大臣のところだけを聞いておきたいと思います。  池田総理は、減税というのは日本が一番やっている、こういうことを非常に誇張しながら、その基本的原因として、日本には軍備がないからだ、軍備がないから減税ができておるんだ、こういうことをおっしゃっておりますが、大臣もそういうふうにお思いになりますか。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 歳出も非常に伸びておりますが、比較的に社会資本が不足をしておる日本もだんだんと充実をしてまいりましたし、また社会保障等も相当大幅に伸びております。その中において逐年減税ができるということは、一つには歳出総額の中に占める防衛費等の割合が非常に各国に比べて小さいという面が相当大きな作用をしておるということは当然考えられるわけであります。
  89. 只松祐治

    ○只松委員 池田総理一つの大さなウエートではなくて、昨年度の本委員会において、軍備がないから減税ができるんだということを強く断言をしておられる。いまの大蔵大臣の答弁とは多少異なってくるわけでありますが、私たちは池田総理がおっしゃっておるとおりに、軍備がないということが最も大きな原因だと思っております。大蔵大臣は総理と考えが違いますか、それとも総理と同じように、やはり軍備のないことが一番基本的な原因とこういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 国民所得に対する軍事費の割合を見ますと、アメリカが一九六一年をとりまして、一一・八%、イギリスが八・一%、フランスが七・六%、イタリアが四・二%、西ドイツが五・四%であります。日本の防衛費の総額は一・四%であります。そういう意味からいって、これらの費用が各国に比べて非常に少ないということによって減税もでき、同時に歳出面における社会保障公共投資等が大きく伸びておるということは総理の考えどおりであります。
  91. 只松祐治

    ○只松委員 軍備が少ないということは、現行憲法によって再軍備が規制されておる、そういうことにこれまた大きく基因するということをお考えになりますか。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 軍備という、日本のは防衛費といっておりますが、俗にいう軍は憲法によって禁止をせられておるわけであります。防衛に必要な費用として防衛費が計上せられておるわけでありまして、あなたが言われるような海外派兵とかいろいろな当然国際的に義務を負うような状態であれば、防衛費も軍備も大きくなるわけでありますから、そういう意味では憲法上の制約も相当働いておるということは事実であります。
  93. 只松祐治

    ○只松委員 次に、この憲法では男女平等ということがうたわれております。その方式そのものにはいろいろ各国によって議論がございますけれども西ドイツアメリカ等では二分二乗方式というものが採用されております。先ほど金子委員のほうからも御質問があって、関係者からお答えがありましたけれども、この方式を将来とるということをお考えになりますか。
  94. 泉美之松

    泉政府委員 午前中金子委員の御質問にお答えいたしましたように、夫婦合算二分二乗方式西ドイツ及びアメリカにおいてとられておる制度ではございますが、西ドイツ並びにアメリカにおきましてもいろいろ批判のある制度でございまして、これをわが国に取り入れるということは必ずしも適当でないというふうに現在の段階では考えております。
  95. 只松祐治

    ○只松委員 それと関連いたしまして、現在非常に共かせぎというものが多くなっております。いわゆる御主人と奥さんと、特に若い人はほとんどといっていいくらい多くなっております。これとの関係をどういうふうに現在お考えになっておるか。あるいは将来もっとそういう状態が多くなってまいると思いますけれども、そういうことに対して調整方法その他どういうことをお考えになっておりますか。
  96. 泉美之松

    泉政府委員 共かせぎいたしておりましても、現在の所得税のたてまえにおいては、各人ごとに課税していくというたてまえでございますので、それを合算して課税するというようなことはいたしておらないのでございます。したがいまして、御主人と奥さんと二人がつとめておられれば、それぞれ別々に所得税課税いたします。扶養親族である子供さんがおられれば、そのいずれの扶養親族にするかは、それはその所得者の任意にきめることができるというようにいたしておるのでございます。
  97. 只松祐治

    ○只松委員 時間がございませんので、最後に一点。  所得税は申告であり、事実上強制徴収が行なわれておるわけでございますが、私たちが末端においていろいろ徴税方法を見ておりますと、非常に強制的な方法がとられております。特に税務労組その他に対して、私たちから見るならば、組合分裂あるいは組合干渉というようなことも非常に行なわれて、徴税の強化というものがもくろまれておるように見受けますけれども、これ以上苛斂誅求になったのでは全くやり切れないわけですが、そういうことをお考えになっておりますか、あるいはそういうむちゃな徴税はやらないということをここで断言されますか、ひとつお伺いをしておきたい。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 どういう立場から徴税強化と言われるかわかりませんが、いやしくも徴税強化と言われるような徴税をしてはならないことが原則でございます。いろいろのお説がございますが、将来とも苛斂誅求というような徴税は絶対にいたさないということだけ申し上げておきます。
  99. 山中貞則

    山中委員長 次会は、来たる二十五日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十八分散会