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1964-05-14 第46回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第20号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十四日(木曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 有田 喜一君 理事 神田  博君    理事 始関 伊平君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 中村 重光君       澁谷 直藏君    周東 英雄君       壽原 正一君    田中 六助君       中村 幸八君    西岡 武夫君       野見山清造君    藤尾 正行君       三原 朝雄君    井手 以誠君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君  委員外出席者         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    森田三喜男君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局石         炭課長)    佐伯 博蔵君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    東村金之助君     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五二号)      ————◇—————
  2. 中村委員長(中村寅太)

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出鉱山保安法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君
  3. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 鉱山保安法の一部改正については、すでに同僚議員から改正点などについて質問があったろうと思いますので、重複を避けて、関連する問題二、三についてお伺いをいたします。  第一には、鉱山保安法によるいわゆる両罰規定で今日までどういう処罰が行なわれたか。最近相次いで大事故が起こっておりますが、免責されない鉱業権者並びに租鉱権者の、従事者は別です、それはよろしゅうございますが、鉱業権者などの処罰がどういうふうに行なわれたのか、いままでの実績をお伺いいたします。
  4. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 五十八条の問題についてただいま井手先生から、両罰規定に基づく処分がどういうふうにかかっておるか、こういうふうなお尋ねでございます。現在までの一応の実績に基づきましてお答えを申し上げます。  御承知のごとく、法令違反が起こりますと、これに対しまして具体的に、鉱業権者それから法律特定義務を明定いたしておりますそれぞれに各項目について該当の違反あるいは過失があるかないかということ等を調べまして、それに対して送致をいたすわけであります。従来までの段階でございますと、これは昭和二十四年から三十六年までの統計でございますが、送致人数六百五十六人でございますが、その中で鉱業権者送致されました者が百三十七名、それから鉱業代理人、すなわちこれは多くの場合は鉱業所長でございますが、これは六十二名、それから上級保安技術職員が七十二名、係員が二百四十二名、その他の責任者が四十一名、それから具体的な労働者が百二名、こういう数字になっております。この送致いたしました者に対して、検察庁のほうでこれを起訴するかしないかということを、これは検察側のほうに移るわけでありますが、現在までの結果によりますと、起訴されました人員鉱業権者六十名、鉱業代理人二十四名、保安技術職員が二十二名、係員百四名、その他の職員が十六名、労働者が四十四名。このうち刑を科せられました者が、これはいろいろ刑罰の種類によって違っておりますが、一応総計が一万円未満が百十一名、これは罰金刑でございます。大体起訴人員は二百六十九名、一つだけ無罪がございます。懲役、禁錮を受けました者が六名でございます。
  5. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 鉱業権者起訴が六十人、鉱業権者処罰がいかに行なわれたかの内容を承りたい。
  6. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 統計によりますれば、一万円未満罰金十一名、三万円未満が三十一名、五万円未満が六名、五万円以上十万円が六名、量刑がまだはっきりしておりませんのが五名、懲役が一名ということでございます。
  7. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 経営者懲役刑は一名だということですが、それはどういう関係の人ですか、個人経営ですか。
  8. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 御指摘のとおり個人経営でございます。
  9. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 株式会社の場合はどうなりますか。
  10. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 株式会社の場合は、おおむね罰金刑でございます。
  11. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 私はその点を聞きたかったのです。鉱山保安規定においては、たとえ注意を払っておってもその責任は免ぜられないのであります。免責規定はございません。それほどの重要な鉱山保安法律に、株式会社法人には体刑処分が行なわれないということは、これは法律欠陥ではないかと私は思う。最近相次いで行なわれる大企業災害について、単に罰金で済むということでは、私はいかに法律改正しようと、あるいは注意を促そうと、利益の追求をたてまえとする株式会社において、営利会社において体刑処分が行なわれないということならば、これはせっかくの法律も仏つくって魂を入れないのじゃないか、私はそういう気がいたすのでありますが、これについて局長から、あなたのほうの考えを聞いておきたい。
  12. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 この問題は、司法当局裁判の問題でございますが、一応五十八条におきましては「法人代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本案の罰金刑を科する。」というふうになっておりまして、法人代表者その他の違反者は当然罰することができるようにはなっておるわけであります。鉱業権者法人の場合でございまして、法人違反がある、しかもその法人代表者代表権限についての違反事項があるという場合の処罰があるのかどうか、これはもっぱら事件内容によってきめられるものであるというふうに考えております。
  13. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 事件内容によってきまるべきものであるというお話ですが、私はさようには考えません。いままでの実績から申しまして、体刑を受けた者は、起訴六十人に対してわずか一人。株式会社、大企業のものに災害がなかったはすはございません。鉱山保安法五十六条によるこの罰則、これは第四条に定める鉱業権者措置義務、それを、第三十条によって規定された鉱業権者順守義務を怠った場合に、体刑があるはずです。
  14. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ただいまも申し上げましたように、法人そのものにつきましては体刑が科せられないわけでございます。具体的に、その鉱業権者法人であって、法人代表者としての行為について責任がある場合に、これはその事件内容によりますが、裁判によりまして体刑を科する場合もあるわけでございますが、これは法人そのもの体刑ではなくて、法人代表者としての体刑はあるわけです。
  15. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 しかし、法のたてまえは鉱業権者責任があるわけですね。鉱業権者とは法人名でしょう、株式会社名でしょう。それは法律の字句の解釈じゃございませんよ。私は立法論として申し上げているのです。  政務次官、こういう問題です。鉱山保安法は、鉱業権者過失がなくとも、その保安重大性から、鉱業権者とその従業者を罰するという両罰規定になっておるのです。ところが、最近相次いで行わなれる大会社の、いわゆる株式会社事故に関しては、個人じゃございませんので、鉱業権者体刑は科せられない。そこに問題があるのではないか。いかに法律改正しようとどうしようと、罰金で済むじゃないかということになりますと、保安を軽視されるおそれがある。人を使い、人の生命を守っていかなければならぬ、そういう順守義務があるにかかわらず、罰金で済まされるという法のたてまえは、これは立法的に欠陥ではないか、それをいま尋ねておるわけでございます。  そこでこれは、解釈はどうですとか、あるいはこうでございますとかいうことではなくして、鉱業を行なっておる法人代表者はもっと責任を持つべきである、体刑を科されていいではないか。その例がないのです。あるのは、ただ個人経営の一人だけ。今日まで相次いで行なわれた炭鉱災害については、個人経営でわずか一人だけしかないのです。そういう鉱山保安のたてまえであっていいのかどうか。私はいかに法律改正しようと、仏つくって魂入れずということを申し上げましたが、やりそこなったならば、注意を怠ったならば自分も体刑になるぞという、そういう責任感処罰考えて、かねがね注意を怠らないところに鉱山保安があり、鉱山災害の予防があると思うのですよ。そういう点について、政務次官はどうお考えになっておるか。
  16. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 われわれ一般感情論といたしましては、まさに井手先生のおっしゃいましたように、大きな法人組織鉱業権者において何か災害が起こったような場合、しかもそれが重大なる過失等によって災害が発生したというようなときには、現在の一般刑法のたてまえからいたしますと、お説のように、法人そのもの体刑を科することができないことはそのとおりでございます。ただし、もしもその法人代表者の側におきましてきわめて重大なる過失があったというような場合におきましては、これはまたその法人代表者といたしまして別な観点からいわゆる処罰を科する問題が起こり得るものと思っております。それからまた、その鉱業権者に使用せられております従業員、あるいは一般監督者、それらの者がさらに重大なる業務上の過失等におきましてかかる災害を惹起したという事実がはっきりいたしました際には、もちろんこれらの者に対しましては業務上の過失傷害といったような刑罰法規というものが当然科されるものと考えております。ただ現行法のたてまえから申しまして、いまもおっしゃったように、法人組織鉱業権者というものに対する体刑が科せられないということは、どうも現在の法のたてまえ、また法人そのもの本質からして、現在のところといたしましてはやむを得ないと考えておりますが、さりとて、その法人代表者体刑が科せられないという、そうした隠れみののようなもとにおいて、こうした災害防止について等閑視するということは当然なすべきことではないのでございまして、こういう点につきましてはさらに通産省側といたしましても十分に行政上の監督を厳重に行使いたしまして、将来こうした災害が発生しないように未然に最大の注意を払うべきことは当然だと考えておる次第でございます。
  17. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 当座の答弁としては、また政務次官お答えとしては、その程度でしょう。けれども、鉱業権者、いわゆる法人責任を持たねばならぬたくさんの人を使い、そしてその人命を預かっておる経営者が、十二分の注意施設の完備をはからねばならぬのに、最近では経営上の問題はもちろんございましょうが、保安よりも生産に重点を置かれておるということが盛んに言われております。そのためか、相次いで大災害が起こっておる。その大災害施設の不十分さ、あるいは経営者の心がまえに足りない点があったためであり、そういう問題が起こったときにただ罰金で済むという、この法のたてまえは、私ははなはだ立法的に言っても欠陥があるのではないかと思う。これは悪く見るならば、それじゃ新聞のように代理人をつくったらいいじゃないか。新聞発行名儀人で前科五十犯というような人もおりますが、そういうことであってもいけない。経営者自身刑罰が及ぶ。もちろんすべてがそうであるとは言わないけれども、はなはだ施設を怠ったような場合には経営者体刑が科せられるという法の体系でなければならぬのではないか。何回も申しますが、いまもお話のように、いかに行政上の監督を厳になさり、あるいは法の改正を行なわれても、この法の第四条というもの、あるいはその内容については規則に三百十カ条にわたって書いておりまして、非常に重要なものが盛られておりますが、それを怠ったために災害が起こった。そこらに対して刑罰の面から締めていくことが必要ではないか。教育刑ということばもありますけれども、そういう意味においても必要である。ここで法律根本論を論じようとは考えておりませんが、大きな会社になればなるほど責任が分散されて、現場に責任を負わせられるような組織は、鉱山保安の上からとるべきはないと考えております。私はここで鉱業法改正案のように法律でいろいろ追及するつもりはございませんが、通産省として、あるいは鉱山保安当局として、この点に、法の問題について検討なさる御用意があるかどうか。いまのままではこれは不十分であるから、鉱業権者をしてさらに奮起させるような法の改正をお考えなさる御用意があるのかどうか、私はその点にとどめておいてもいいと思うのです。きょうはそう詰めた問題ではありませんからそうとことんまで申しませんが、いかに法律案改正なさっても、罰金で済むのではないかというようなことでは——そんな者はいないとおっしゃるかもしれませんけれども、しかしいまの世の中にはそれが多いのです。そのお考えがおありになるかどうか、根本的にお考えなさるお考えがあるかどうか。ほかの経営の場合のいわゆる免責規定などと違って、一時に百人も二百人も死亡するという大災害が起きる鉱山保安の問題ですから、この両罰規定を真に生かす意味において、鉱業権者代表者にも体刑が及ぶという法の体系が必要ではないか、これを申し上げておるわけであります。
  18. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 ただいまの御意見は御意見としてひとつ私承っておきまして、本件につきましては、いわゆる刑罰本質に関する問題でございまして、一般刑法並びにその他の諸法令との関連性もございますので、こうした問題につきましては、単にこの法案だけというわけにはまいりませんので、他の法令との関係あるいは一般刑法刑罰論とも関連性がございますので、大体法務省関係になってくるように思いますが、そういう方面にもよく意見を徴して、先生の御意見は御意見として、私どもも他日開陳の機会を得て、どういう意見を持っておるかということを政府としても考えていかなければならぬと思っております。この点はしばらく検討さしていただきたいと思います。
  19. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 宿題としておきましょう。  その次に、これは合理化問題で取り上げたことがございますが、この総則の「処分等の効力」、第三条の二になりますが、鉱山保安重大性にかんがみて、鉱業権租鉱権が消滅したあとも五年間はその責任があるという規定です。ところが閉山になりますと会社解散する、無権者になる。その場合、合理化に伴って閉山した炭鉱については、五カ年間の責任が免除される。炭鉱はやめても五年間は鉱山保安責任がありますよとまで規定したこの第三条の二が、合理化によって閉山無権者になる、会社解散してしまいます場合に、だれがその五年間の責任を持つか。これはこの委員会でも一、二回論議されたことがあると私は記憶いたしておりますが、この法の精神を生かす意味において、そういう場合は局長どうお考えになっておりますか。
  20. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 御指摘のごとく、鉱業権が消滅して後のその鉱業から発生する責任という問題でございますが、現実にはその場合に鉱業権そのものが消滅してなくなっておりますので、その承継者がもしあれば当然その承継者にいくわけでございますが、承継者も何もない場合に、そのいわば所有者のないものから出てくるいろんな問題、この責任の問題は、御指摘のごとくなかなかむずかしい問題であると思います。現実の問題といたしましては、その鉱業権が消滅しておりますので、保安法によってこれを追及するものでもございません。一例を申し上げますと、昔の廃滓等によりましてそれが問題になるという場合に、これはだれの所有になるかという問題につきましては、鉱業法上もいろいろ問題があるように聞いております。無主物の場合にはこれは国に帰属するのか、あるいは土地に付着した場合には土地所有者に帰属するのか、そういう点についてはいろいろ従来の判例もまだ明確じゃないように存じておりますが、ただ現実問題といたしまして、現にそういう廃鉱と申しますか、鉱業権が消滅してしまってその主体がない、承継者もないという場合には、これは別個の観点から措置するほかはないような感じがどうもいたします。
  21. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 局長さん、お答えは簡単でよろしゅうございます。知った仲ですから。お話のとおりですよ。鉱山保安については鉱業権が消滅してもなお五年間は責任を持たせるという精神からいけば、合理化によって閉山解散無権者、こうなった場合の責任をどう追及するのか。この場合はこれでいいのだといえばそれまでですが、しかし最近の炭鉱鉱業権の消滅というものはほとんど合理化による閉山ですから、これをしようがないばかりでは私は済まされぬと思うのです。能力があるかどうかは別にしても、やはり鉱業権者代表者責任が及ぶ体制をつくっておく必要はないのか。それは法律上なかなかむずかしい点もあるかもしれません。けれども、名前は株式会社であっても、実体は鉱主という者がおって、炭鉱とは別に何億円という財産を保有しておる者がございます。私は知っております。炭鉱実権はその人にあったというのがある。炭鉱解散した、無権者になった、五カ年間の保安責任は免除されるという一方において、その人は依然として裕福な生活を続けておるという事例がございますが、やはりだれがその実権者であるかということをつかんで、その人に責任を追及するたてまえは一応とっておくべきではないか。実際問題としては、それはいま無主物であるとか、あるいは国に帰属するという問題が出てくるでしょう。しかし法のたてまえからは、一応そういう規定を盛っておくべきではないのか。十中九分九厘までは合理化による閉山解散無権者、そういうことを考えてまいりますと、この規定を生かすためにはもっとくふうすべきじゃないのですか。
  22. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 井手先生のただいま御指摘になりました、事実上そういう実権者がいるのにほうっておくのか、こういう点につきましては、御指摘意味は私もよくわかるような気がいたします。ただ、これは一般会社法全体の問題でもございますが、法人の性格、かりに法人解散してしまったという場合に、これをその代表者であった者に対して追及していくということにつきましては、まず事実の認定の問題ももちろん起こりましょうけれども、一般会社法人そのものとの全般的な法制との関係ももちろんあろうかと存じますので、非常にむずかしい問題でございます。研究させていただきたいと思います。
  23. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 よろしゅうございます。研究とおっしゃれば、それでけっこうです。法人というのはなかなか都合よくできたもので、利益に関することはとことんまで追求できるけれども、反対に義務の点については逃げられる組織になっておりまして、鉱山保安法だけで解決するとは思われぬけれども、しかし先刻もお話し申し上げたように、両罰規定すら設けておる、免責規定すら排除しておる鉱山保安法であるならば、そこまで追及するような立法上の努力をすべきではないか、これを強く要請しておきます。  その次にお伺いしたいのは、第四条の鉱業権者措置しなくてはならぬ三百十カ条に及ぶ保安規則、この中に漏れておるものはないか。私は地方の実情から次の二つをお聞きしておきたい。  一つ騒音防止です。コンプレッサー、それから選炭機扇風機など、所によっては、会社側防止をしない場合に六十三フォーン出たと言っております。近所の人は眠れない。神経衰弱になった人もおります。その炭鉱は全国でもきわめて有名な炭鉱ですが、やろうと思えばできるのを、住民の迷惑というものをほとんど考えない。再々注意を受けてやっと若干の設備の変更をしたという事例がありますが、町の中心部炭鉱を設けたために、この騒音のためにたいへん迷惑をかけておる。この騒音について全然この保安法に触れてないじゃないか。当然これは公の害であり、あるいは鉱業による被害ですから、これは保安の立場から、地上設備の中にボタの集積場まで保安義務があるわけですから、作業による騒音については当然保安規定を設くべきではないか。最近騒音防止といういろんななにがあるから、まとめてこれをやりたいということではいけません。不特定でなくて、炭鉱選炭機あるいはコンプレッサー扇風機などの騒音は、設備の当初から迷惑をかけることは明らかでありますから、一般的な問題じゃございませんので、この保安法規定なさる御用意があるかどうか、これから承っておきましょう。
  24. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 騒音の問題につきましては、ただいま御指摘がありましたように、最近非常に、鉱山に限りませず、ことに都市その他一般におきましてもこのことが問題になっております。ただ現在の段階におきまして、これはいろいろ研究すべき問題があろうかと思いますが、法制的にまだ騒音防止を取り上げている他の法令は、私あるいは強勉不足かもしれませんが、ないように存じます。特定の、非常に稠密な市街地その他におきましてそういう条例をもって規制をしておる例はあるように思いますが、騒音防止につきましては、いま先生の御指摘の点は私もよく理解できるのでありますが、ほかのいろいろな関連その他その影響等につきましてもう少し、先生の御指摘の点を十分頭に入れまして、これも検討をいたしてみたいと思います。
  25. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 それは少しお答えが不十分ではないかと思います。なるほど社会生活が複雑になってまいりますと、全般的な騒音の問題が出てまいりますが、私が申し上げておるのは、この鉱山保安法の第四条には「鉱業権者は、左の各号のため必要な措置を講じなければならない。」として、ずっとたくさんの事例をあげてあるのです。その中に騒音がなぜ入らないのかと私は申し上げているのです。当然最初から考えねばならぬ問題じゃないのか。炭鉱の操業のために近所の人が眠れないような、ノイローゼになるような、六十数フォンも出るような騒音を立てて、てんとして恥じないような鉱業権者、それに措置を講じさせる義務があるではないか、こう申し上げているのです。ここにずっと書いてあるじゃございませんか。一、二、三、四、五、六、七と、詳細に書いてあるのですよ。機械、器具のことまで書いてあるならば、なぜ騒音がこれに入らないのかと、私は申し上げているのです。いや一般のほうでいま検討されておりますということでは済まされない。当然ここに騒音防止についても必要な措置を講ずべきではないか、これを入るべきではないかと私は思うのです。私はこの項目の中に、比較するなら騒音のほうがもっと先に書くべき問題だと思う。なぜ鉱山保安法にそれを書かないのか。いままで不十分であったなら、いまお書きになってもいいのですよ。私はこれは今度の場合にぜひ入れてもらいたい。町のまん中で選炭機を操作する、コンプレッサー扇風機、どんどん、どんどん夜中の一時二時までも、いや二十四時間やっているのですからね。それは当然第四条にいう、必要な措置を講じなければならぬ事項であると私は思う。ほかの一般製材所であるとか、自動車修繕工場とは違うのです。これは特定のもの、初めからきまった問題です。二十四時間運転ですよ。十二時まではがまんできますけれども、一晩じゅう寝られぬという場合、それは予想される問題ですから、川原さん、当然ここに書かねばいかぬですよ。
  26. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 その点につきまして私の御答弁の不十分でございましたことはおわびをいたします。御指摘のごとく、騒音防止に関する規定が欠けておるではないかという問題でございますが、これは少し無理な読み方になるかもしれませんが、「機械、器具、建設物及び工作物の保全」というようなことで、規則段階で、規則改正をいたします際に、先先御指摘の問題について検討さしていただきたいと思います。
  27. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 いや、ちょっとそれは無理でしょう、これだけ列挙主義でやっているのですから。保全ということには無理なんですよ。保全じゃないのです。やはり鉱害の防止ということ、それから公の害を予防するということの立場に立たなくちゃならぬわけですから、ちょっと無理でしょう。あなたのほうがそういう考えであれば、また、ここは国会ですから、検討してみたいと思う。これはやはり抜けておるのです。政務次官、大体同じ意見ですか、意見だけちょっとお聞きします。方針はかまわぬから……。
  28. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 確かにお説のとおりだと思います。私、しろうとでわかりませんけれども、鉱山以外の一般の住民のほうに及ぼす影響もございましょうし、また鉱山の掘さくに従事する従業員のためにも、やはりある程度の防音装置というものが必要じゃないか、これは私、しろうとの考えでございますが、両面から必要かと思っております。それでこの第四条に現在そうした明文がございませんから、いま局長の言われたような点、それからこれは私見でございますが、第七号の「土地の掘さくによる鉱害の防止その他の保安」という条項がございますが、そうした七号の規定等もひとつ運用いたしまして、そうしたこともできないことはないと思いますが、しかしやはり解釈上にも相当無理があると思いますので、この点はやはり私は明文上入れたほうがいいような気がいたします。将来この鉱山保安法改正の機に際しまして、そういう点につきましてもやはり明文に入れたほうが安全じゃないかと考えております。その点はひとつ検討さしていただきます。
  29. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 私のほうでもその点は検討さしていただきます。  次に、ボタ山のボタの集積場の問題です。これは言うてどうか知りませんが、局長のおひざもとの問題を事例にあげます。佐賀県と長崎県の境にある伊万里湾の入り口に元冠の戦いで有名な鷹島、福島というところがありますが、その島に炭鉱がたくさんあります。ほかにも例がたくさんございますが、その島の炭鉱がボタを全部海に捨てております。この国会においても、この特別委員会に実地にそこを調査いたしまして関係者を呼んで警告を発したことがございます。しかし、最近回ってみましても、依然として島の横に三角形のボタ山がたくさん海の中にできている。そして、そのために魚が非常にとれなくなった。漁業に重大な影響を及ぼしております。その土地は港湾の区域ではございません。いろいろ検討した結果、これは一般の国土保全の立場から建設省の主管になっております。しかし、その海中に積まれたボタは、これは公有水面埋め立てで免許を得ておりますが、そのボタは波によって時日の経過とともにくずれて海中が非常に浅くなる。三十メートルの水深が一千五メートルになり、二十メートルになる。第二種重要港湾といわれておる伊万里湾が浅くなって、今後の回航に非常に重大な影響を及ぼすというので、地元では非常に心配いたしております。いま実情を簡単にお話し申し上げました。このボタの集積場について、規定に足らないところがあるのか、あるいは監督に不十分な点があるのか、注意してもなお依然として行なわれておるというこの事実。福岡の森本局長は非常に心配されて、現地も見てもらいました。しかし、一応注意いたします、関係県では、石垣を、防壁をつくらせますと言っておっても、現実には行なわれないのです。したがって、この鉱山保安法規定に基づいて、それを事前に明確にすべきではないか。これはいま鉱山保安規則の何条であったかよく私は記憶いたしませんが、それほど詳細に書いてあるボタの集積場規定でございますから、もう少しその辺は明確にすべきではないか。沿岸漁民はもう泣き寝入りです。たまに組合の幹部が呼ばれて食事をともにすることはあり得るかもしれませんが、それでほとんど終わりなんです。みんな心配しております。ひとりこれは伊万里湾の問題だけではない。よそにもある。ところが、これが港湾に関係がない、漁業にもあまり関係のないところは、これは等閑に付せられても問題はそう起こりませんけれども、港湾の入り口などでやられたらたいへんです。伊万里の市の岸壁から湾の入り口を見てごらんなさい。湾の入り口に三角の山がたくさんできておる。しかし、それは港湾の区域に入っていないから、港湾法上の制約は受けない。しかし、そういうボタの集積場であっていいのかどうか、私はその点について、法の欠陥であるのか、運営の欠陥であるのか、お伺いいたします。
  30. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ボタの集積につきましては、ただいま御指摘のございましたように、種々これの捨て方、捨てる場所等につきましての規制を現実には行なっておるのでありますが、ただいま御指摘のございました伊万里湾の中にボタが集積されて、その集積されたボタが流れていろいろ問題を起こすという問題につきまして、これはさらに詳細に調べました上で、必要があれば、いろいろそのボタの被害予防についての措置をとり得るようにいたしたいと思います。
  31. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 必要があればというおことばは私は気に食わぬのですが、それはいいです。初めそれは施業案とともに認可を受けるはずですね。その場合には、県の公有水面埋め立ての免許書を添付することになっております。なっておるけれども、その免許書の添付だけではだめなんですよ。それは、その海面、いわゆる公有水面を埋め立てる免許の資格は持っておる。持っておるそのことで保安上安全だとは言えないわけですよ。海の中にボタを捨ててごらんなさい。ずるずると流れてしまうでしょう。その区域だけに捨てるといっても、捨てた場合はその区域ですよ。しかし、それが半年たち一年たちますと、ずっと区域外に流れていく。流れるものをいつも監視しておれるものじゃございませんから、公有水面埋め立ての免許があったからといって、私は認可すべきものではないと思う。石炭で一番助かるのは、ボタを捨てることですよ。運搬賃がかからぬから、それはもうかるのです。水洗炭だってそうです。よその玄関先にごみを捨ててごらんなさい。捨てた人間は自分は関係ないでしょうけれども、捨てられた人間は、地元のほうはどうでしょうか。その点は多くは言わぬ、もう論議された問題ですから。とにかく不十分ですよ。いまからあそこに石がきを積めといったら、それは破産するでしょう。そういうところに捨てさせる考えが間違いではないか。海中にボタを捨てさせるという考えが当初から間違いではないか。海の中に何を捨ててもかまわぬという考えが、私は当初から間違いであったと思う。太平洋のまん中に持っていくなら、私は文句は言わぬ。海岸線なんです。港湾の入り口なんです。よその玄関口なんです。もう多くは言いません。十分ひとつその点は注意してもらいたい。  それから、これはこの特別委員会の宿題になった問題ですから、田中政務次官局長もここでお約束がございましたが、ボタ山危険防止について、五〇%の補助の対象を用地買収あるいは石がきなどの防壁の、いわゆる受け入れのほうにまで対象にしてもらいたいという、この委員会決議じゃございませんが、ほとんど全員の希望に対して、どういう結果になったのか。さらに残る五〇%の地元負担については県、地元が折半して、やむを得ない、いやだけれども、しなくては危険だからというので、しぶしぶ受けるという状態でありますが、それを救う道として、特別交付税で地元負担を半減程度すべきではないかという要望の交渉が、その後どうなったのか。この機会に承っておきたいと思います。
  32. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 先般当委員会におきまして井手委員その他からお話がございまして、まことにごもっともな御意見考えまして、通産省といたしましては、その後直ちに大蔵省当局並びに自治省とも折衝を重ねております。現在でもなお重ねておるのでございますが、大蔵省側におきましてはほぼ通産省側意見を了承いたしていただいておるのでありますが、自治省側におきまして若干、特別交付税の問題につきまして、特別交付税の性格からいま直ちにオーケーということはなかなか言いがたいというようなことで、若干難色を示しているわけでございますが、これはやはりもう少し時期を待ちまして、なお折衝は続ける予定でございますが、今後ともさらに折衝を重ねて目的を達成いたしたいと考えております。  それから、なお起債につきましては、佐賀県、長崎県両県から実施計画を聴取いたしまして、個々のボタ山について検討の上これを決定しようじゃないかという態度になっております。県によりましては非常に協調的に通産当局の意見を了承していただいておりまして、多少難点もございますが、私どもの見通しとしましては、終局的に通産側の意見を地元においても十分御了承を願い得るものと考えております。折衝の経過その他の詳しいことにつきましては、鉱山保安局長からお答え申し上げたいと思います。
  33. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げましたことで大体すべてを尽くしておりますが、入れものを補助の対象にするという問題につきましては、これは産炭地事業団がつくります敷地でなく、県が自分でその入れものの土地をつくる場合には補助対象に見ようということで、大蔵省は了解をいたしております。  なお、ただいま御意見のございました起債につきましても、土地造成事業という問題として起債を認める方向で、現在それぞれの県から、具体的な工事計画につきまして詳細な設計書をつくりまして、近々のうちに自治省に提出をしてきめる段階に相なっております。  特別交付税につきましては、いまお話がございましたように、特別交付税そのものが年度末にきめられる性格上、いまここで明確に約束するというわけにはまだいかないということで、現在いろいろと御相談を申し上げておる段階であります。
  34. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 具体的に念を押しておきたいと思いますが、入れものについては用地買収費、石がき等は含むかどうかということ、それから起債は全額認められるのかという点、それをお伺いいたしますとともに、政務次官にひとつ承っておきたいのは、たとい交付税の決定が来年の春になろうと、方針というものは年度当初にきめておかねばならぬ性質のものでございます。したがって、これに対してはお互い超党派で協力するにやぶさかではございませんので、五月一ぱい、この会期中——まあ十七日までですからそう言っても何でしょうが、まだ延長がきまったわけではございませんが、ここ二週間程度のうちにはきめていただきたい、これを申し上げておきます。
  35. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 先ほど私から御説明申し上げましたとおりに、特別交付税というものは大体におきまして、従来の慣例からいたしまして、年度末に各省からいろいろな要求を持ち出しまして、その要求を大体見てとりまして、ある程度のワク内にそれをぶち込んでいくというような自治省のやり方でございます。したがって、いま先生のおっしゃったように、当会期中にこの問題を持っていって自治省の確約を求めるということが実際問題としては非常に困難な点がございますので、私どもとしましては当委員会の御趣旨を尊重いたしまして、必ず実現ができますように、ひとつ責任をもって最善の努力をいたすということをここにお約束申し上げておきたいと考えております。
  36. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ただいまお尋ねのございました補助対象でございますが、買収費及び土どめも含みます。それから起債でございますが、県が入れものをつくります土地造成事業を行ないます場合に、土地造成事業及びボタ山の工事費というものの総額から補助金を引いたもの、つまり地元負担額を起債の対象とするということにいたしております。
  37. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 もう時間がきましたが、あと一点です。  産炭地振興事業団がボタ山危険防止の作業をする場合に、その所有権はだれに帰するのか。補助金は五〇%もらう。そして所有権は全部産炭地振興事業団に帰属するのかどうか。その点を明らかにしてもらいたい。
  38. 新井政府委員(新井眞一)

    ○新井政府委員 産炭地振興事業団で土地造成をやります通常の場合は、御承知のように、産炭地事業団が自分の所有権でやりまして、そしてあとで自分の所有権を譲渡するという形になります。いま先生の御質問のものは、その辺の関係とどうなりますか。県のほうで産炭地事業団と一緒になって土地造成をやる場合という御質問かと思いますが、それはその状況によって考えなければならぬと思いますけれども、通例はそういう場合には、産炭地事業団が参加する場合には事業団の所有である。と申しますことは、委託造成ということをやっておりませんので、自分の所有権としてやっていくのが通例でございますけれども、これも具体的事例によりましてどう考えていくかという問題だと思います。
  39. 井手委員(井手以誠)

    井手委員 産炭地事業団の経営と申しますか収支の問題についてはいろいろ意見もあるし、われわれも援護したいという気持ちは持っておりますが、その所有権のことになりますと、そう簡単なことでございませんので、国の補助を得て、たとえば半額補助で半分を事業団が出した場合に、所有権が産炭地振興事業団に全部移る。あるいは県と共同でやった場合に、委託を受けたから産炭地事業団の所有になるということでは、ちょっと問題があると思います。これは普通ならば出資、あるいは平たく言えば犠牲の限度において行なうべきではないか。おれのほうで仕事をやったのだから、おれのほうで委託を受けたのだから、おれのものだということでは済まされませんよ。それをひとつ研究して、あまり甘くしてもらっては困りますから、結論はきょうはお聞きせぬでもよろしいですが甘くしないように、問題の起こらないように、その限界というものをはっきりしておいていただくことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  40. 中村委員長(中村寅太)

    中村委員長 滝井義高君。
  41. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 鉱山保安法の一部を改正する法律案について二、三質問をしたいと思います。  労働省がいらっしゃっているから、労働省のほうから先に伺います。鉱山保安法の五十四条の関係、労働大臣及び労働基準局長の勧告でございますが、いままでこの五十四条が具体的にどういうように動いたか、ひとつ御説明を願いたいと思います。過去の三池の災害とか上清炭鉱災害とか、いろいろ大災害があったわけであります。その大災害にあたって、鉱山保安法の五十四条、労働大臣及び労働基準局長の勧告というものが、具体的にどういう形で発動されていったか、それをまず御説明願いたい。
  42. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 鉱山保安法第五十四条の規定に基づきまして勧告を実施いたしましたのは、三回でございます。すなわち、昭和三十一年二月二十四日に行ないました勧告は、九州炭鉱高陽炭鉱ほかのガス爆発事故発生を契機といたしまして、勧告の内容としましては、ガス爆発の危険のある鉱山監督指導の強化、ガス抜き施設の整備等の事項を勧告いたしました。第二回は、昭和三十五年十一月二十五日でございます。これは上尊鉱業の豊州炭鉱ほかの坑内出水及びガス爆発事故にかんがみまして勧告を行なったものでございます。これは旧坑把握の徹底であるとか、坑内電気設備、ガス自動警報機の設備等について勧告を行なっております。第三回目は昨年の三井三池鉱業所の炭じん爆発事故にかんがみまして、本年二月五日に行ないました勧告でございます。この勧告におきましては、保安管理体制の確立ほか十二項目にわたりまして勧告を行なったような次第でございます。なお勧告の形式は、この三つともいずれも労働大臣の命を受けまして、労働基準局長が鉱山保安局長に勧告を行なったということになっております。
  43. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 過去、三回五十四条が発動されておるということでございますが、その場合にこの五十四条は、勧告をするのには地上におって勧告することでは意味がないので、やはり実態を相当調べなければいかぬ。立ち入り検査ですね。こういう問題については鉱山保安監督行政を握っている通産省と、それからこの勧告権を発動する労働省との関係です。この立ち入り検査の実態というものは、一体どういうようになっていますか。そういう、過去三回にわたって五十四条を発動した場合の立ち入り検査の状態その他というものは、どういうように通産省と調整をしてやっておるか。
  44. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 御承知のごとく、鉱山保安そのものについては、労働省並びに労働基準監督官には監督権限がないわけでございます。しかしながら労働時間その他の労働条件に関しましては、労働基準法の適用が鉱山においてもなされておりますので、たとえば労働時間関係の交代制の問題等につきましても、鉱山におけるそのような状況を知悉する必要がございますので、坑内に立ち入るという監督はしておるわけでございます。そのような関係におきまして、事実上坑内の労働状態を労働基準監督官は知ることができる、こういう状態になっておるわけであります。大体権限上は直接監督の権限がないわけでございますので、その点につきましては、鉱山保安局と連絡をいたしまして、事実上実態把握につとめておるということでございます。
  45. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 そうしますと、いまの御説明から、労働基準監督官は坑内に立ち入り検査権を持っておる。その立ち入り検査権というのは、労働時間などの労働条件に関することについては立ち入り検査権を持っておる。しかし鉱山の危害を防止するいわゆる保安行政については通産省にあるので、自分のほうにはない。しかしこれは勧告権が五十四条にあるから、労働条件の実態を見るために立ち入り検査をしたときに状態を見て勧告をする、こういうことになるのですか。何かちょっと隔靴掻痒の感なきにしもあらずですが、そこらの両者の申し合わせというか、そこらは責任の区分をはっきりしておかなければならぬと思います、何せ主体は人間なんですからね。私少し専門的に調べたことがあるんですが、鉱山においても、それから石灰石を採取する山においても、災害が起こるのは、月曜の日によく起こる。軍隊でも、馬から落ちるというやつは月曜の日によく起こる。それから飯を食う前の十一時くらいになると、よけい災害が起こる。それから勤務が終わる四時から五時にかけて起こるんですよ。そういうように、やはり労働時間、労働条件というものが、災害に密接に関係をしてきておるわけです。したがって、労働条件を立ち入り検査をしてだんだん調べていく過程の中で鉱山保安を見ていくということになると、何かちょっといいようにあって悪いような感じがするのですが、そこら何か両者の明白な申し合わせがあるのですか、あればかきっとした申し合わせをここで御説明願いたいと思います。
  46. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 御承知のように監督責任は、鑑山保安につきましては通産省にあるわけでございます。そのことは監督関連いたしまして、法違反は是正するという責務を半面伴うものでございます。しがたいまして監督、法違反の是正ないしは司法処分の執行というような一連の行政責任がございますので、鉱山保安についてのそういった一連の関係から見まして、労働基準監督官はそれにはタッチしないという法律上のたてまえをとっておるわけでございます。しかしながら全然他人のような状態であって、連絡も何もとらないということではないのでございまして、ふだんから第一線の鉱山保安監督機関と労働基準監督機関とは、連絡を密にしておるということでございます。法律上権限の区分が明確になっておりますので、これをどのような形で連絡を密にするかという点については、行政部内の内部的な申し合わせということでございまして、これは労働基準局長と鉱山保安局長と行政部内の申し合わせといたしまして連絡を密にする、こういうことにいたしておりますけれども、行政部内のことでありますので、その形式はどうこうということは明確にいたしておりません。
  47. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 陸の上のことを言ってみますと、選炭場ですね、それから炭鉱の寮ですね、こういうところはあなたのほうの所管に属しますか。属しないでしょう、ここは。
  48. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 その付属施設の中でどの程度のものが労働基準法の適用を受け、どの施設鉱山保安法の適用を受けるかという点については、これは省令で個別的に定めております。そういたしまして、権限の紛淆を来たさないように配慮をいたしておるわけでございます。
  49. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 いま私が言ったように、坑内に一番近いところは巻き上げとか選炭機ですよ。選炭機には相当たくさん働いておるわけです。まず、あなたのほうがある程度労働条件について監督行政を行使しようとすれば——やはり坑内までは、一挙に労働省に移管をするというわけにはいかぬと思うのです。これはやはり順を追って、それぞれ労働基準監督官炭鉱になじませるというか、ならさなければいかぬと思うのです。そしてその上でだんだん権限を、もらうものはもらう。最近権限を移せという意見が相当強かったわけです。労働省もその気持ちはあったと思うのです。しかし、いま一挙にそういうことをすることも、通産省のメンツもあることだし、そうもいかぬだろう。とすれば、徐々に監督行政を労働省に移そうとすれば、まず選炭機のところまでぐらいは労働省に移したほうがいいんじゃないか。そうしますと、坑内から上がってきたところがすぐに選炭機になるわけですから、そこらあたりまでしておると、じかに坑内の状態を皮膚に感ずることになる。そのことは、五十四条の鉱山における危害の防止に関して勧告をする場合も、非常にかゆいところに手が届くような勧告ができるんじゃないかという感じがするんです。そういう点について、いま私ちょっとどういう施設まで労働省の所管になっているのかよく知りませんが、選炭機までぐらいの保安が労働省にいくことが必要じゃないかという感じがするんです。これについて通産省の見解と、あわせて労働省の見解もお聞かせ願いたいと思うのです。
  50. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ただいま基準局長からお答え申し上げましたように、現在たとえば病院でありますとか、診療所でありますとか、寄宿舎、そういうもの及び鉱物掘採と緊密な関連を有せず、あるいは遠隔の地にある付属設備、独立製錬所、これは個々に、具体的に、省令によって一件一件指定いたしまして、その分は鉱山の対象からはずすという形で労働基準法の適用を受けておるわけであります。ただいま御指摘のございました点は、御意見として私も承りますけれども、やはり作業の実態その他から、全般的にどういうふうにしたら監督がスムーズにいくかということを主眼に置いて考えるべきものであろうかと存じます。
  51. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 鉱山保安法の適用を受ける付属施設としからざるものとの区分につきましては、いま鉱山保安局長から答弁がございましたとおりでございます。したがいまして、先生指摘のような施設は、鉱山保安法の適用を受けておるわけでございます。この点につきましては、私ども労働基準法関係の問題でも同様でございますが、安全とか衛生とかという問題の性質は、かなり専門的な知識経験を必要とする業務であるというふうに考えております。いわば、判断力と指導能力を有する専門家がこれに当たるのでなければ、真に的確な指導監督は行なえない、こういうふうに考えておるわけでありまして、所管がいずれに属するかというよりも、そういった実体面における監督指導能力の状態をどう考えるかという点に配慮すべきではなかろうかと考えておるような次第でございます。しかし、先生のような御意見もあることでございますし、われわれは常常研究を怠らないつもりでございまして、そういった点についての特に専門的知識及び能力の養成といったような問題から、まじめに問題を考えていきたい、かように考えております。
  52. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 なかなか権限の交錯するところですからね。炭鉱の病院、診療所、寄宿舎、これは省令で鉱山保安行政から切り離されている、選炭機鉱山保安行政の中に入っておる、こういうことになっておるわけです。実は私も前に、再々災害が起こったときに、保安行政をこの際労働省に移したほうがいいんじゃないか——鉱業権者通産省というのは、同じ立場というか、一方は監督者ではあるけれども、労働省に比べたら比較的利害が、一致しているとは言わぬが近い。そういう意味で、いまの鉱山保安局が、ある程度厳格な監督ができないとは言わないけれども、再々の被害の状態から見て、一挙に労働省に移したほうがいいという相当の世論があったわけですが、専門家に聞いてみましたところ、やはり一挙にやることは問題である。いま基準局長が言われるように、安全衛生の専門的な知識その他も必要とするので、一挙にやることは無理であろう。そこで、いま言った選炭機というぐらいのところまでまず労働省に移してみて、その上で通産行政における保安行政がうまくいくかどうかということをしばらく見るほうがいいだろう。その上でなお爆発が起こり、落盤が多いということになれば、ひとつ今度は労働省に一ぺんかわってやってもらったらどうか、こういう漸進主義のほうがいいという意見を、相当知識ある人から聞かされたわけです。私は炭鉱の医者をしておったことがあるのですが、まあ選炭機までならば、そう鉱山保安局のメンツをつぶすこともないであろう、そこらあたりが限界だなと、私は私なりの判断を持ったわけです。ところが最近は、そういう鉱山保安行政を労働省に移せという意見は幾ぶん下火になっておりますけれども、そのくらいのところまで一応いって、通産省の緊褌一番の努力を促してみるというところがいいところじゃないかと、私は率直に考えておるわけです。選炭機までならば、わりあい坑内の息吹きを感じますから、同作に労働省の労働条件の監督行政もうまくいく。特に今後炭鉱の労働力が少なくなって、そうして池田さんじゃないけれども、だんだん日本の国民の消費が上がる。バナナが四千四百万ドルも輸入をされる、エビが二千二百万ドルも輸入される。非常に消費が上がって喜ばしいことだが、どうもわが高度の経済成長政策で見誤っておった、見そこなっておった。昨日の社労委で言ったのだけれども、労働力の不足がこれほどになろうとは思わなかった。特にそのことは炭鉱で言えると思うのです。あの経済の名人の有沢さんさえも予測しなかったことが出ているのだから、それだけにやはり労働条件の厳重なる監督、低賃金を防止し、組夫を入れたりするようなことは防止してもらわなければならぬということになれば、坑口のところまで労働省が来ておるという形が、私は非常に必要だと思うのです。そういう点で、今度は労働省と通産省と話し合ってもらって——これは省令で変えることができるんでしょう、法律でないんだから。話し合いでできるんでしょう。そこらまでは、どうでしょう。私はいってもらう必要があると思うのです。坑内までは、これはしばらく様子を見て、どうしても通産省ではぐあいが悪い、災害が頻発するということになれば、これはもう一ぺん検討して労働省に入ってもらわなければならぬことになるだろうが、いまのところは、坑口のところまで、選炭までだという考えを持っておるのですが、通産省考えはどうですか。選炭機を移す意思はありませんか。
  53. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 これについてはいろいろ御意見があろうかと思いますが、先生のほうがよく御承知でございますが、選炭場は多くの場合、特に近代的な炭鉱におきましては、ベルトコンベヤーによりまして坑内と直接につながっておるものであります。したがいまして、これをその途中から切り離して監督をすることがより効率的であるか、あるいはいいのかという点になりますと、なお技術的に見ましてもいろいろ問題があろうかと存じます。一応御意見は私として承って十分研究はいたしたいと思いますけれども、現在技術的な問題その他を伴いますので、非常にむずかしい問題が多いのではないかと思います。
  54. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 労働省のほうはどうですか。
  55. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 私が鉱山保安法解釈的なことを申し上げるのはいかがかと思いますが、鉱山保安法の第二条第二項を見ますと「鉱物の掘採と緊密な関連を有しない附属施設」云々という規定がございますので、そのような施設関連を有しないかどうかという点については解釈としても問題があるところでございましょうし、鉱山保安局のほうで処置をされるにつきましても、はたして省令で除き得るかどうかという点についての解釈の問題があろうと思います。また実態的に見ますと、安全監督保安監督の問題は、そういった施設なり機械が設置されるときから継続して監督しておきませんと、施設が備えつけられたあとで監督をすると申しましても、なかなか改善に困難なような問題がございます。したがいまして、たとえば最近巨大なクレーンなどが設置されておりますが、あのようなクレーンの設置は、設置するときに認可制をとりまして、最初から危険のないように配慮をいたしておるわけであります。したがいましてそういった機械施設の所管につきましては、備えつけられたあとだけ見るというのではなく、設置する時期から許可認可制といったような制度との関連におきまして考えなければならないのじゃないかと思うわけであります。したがいまして直ちに結論的なことをお答えするのはいかがかと思いますので、さらに検討してみたいと思います。
  56. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 三池の災害等から、世論としてこの際労働省に坑内の保安行政をやらしてみたらという相当強い意見があったわけです。しかしわれわれもいろいろ考えてみた結果、一挙に持っていくことは困難だろうということで控えておるわけですが、といって世論を全然無視して何もしないわけにはいかぬだろう。二条に書いてあるように、地上設備は直接石炭の採掘には関係ないわけです。掘ってしまったものを持ってくるわけですから。したがって選炭場で大きな災害が起こるということはめったにないのです。何といったって坑内だから、この際やはり通産省の全力を坑内に置いていただいて、坑外のほうは付属設備を全部一応労働省にやってもらう、そしてその余力で坑内の保安を強化していくということのほうがいいのじゃないか。あとで質問しますけれども、鉱業権者とかあるいはその鉱山労働者に、いろいろ統括者とかなんとか名前をつけたところで、事態は解決する方向にない。なぜならば、炭鉱は経済的に行き詰まっておりますから、どしどし国が監督官を坑内に入れて、いろいろな災害防止するという体制をつくる必要があると思います。そういう意味で坑外のことは労働省におまかせする、坑内はおれのほうにまかせろ、こういうすっきりした体制のほうがいいのではないか、わずかの坑外設備を持っておってそれに目をやることはぐあいが悪いという感じがする。きょうはここで結論をぜひ得たいとは思いませんが、ぜひひとつ両者の間でざっくばらんに、フランクな気持ちで話し合っていただいて、鉱山保安行政は坑内でがんばろうという形にぜひしていただきたい、そういう希望を申し述べて次に移ります。  次は、労働省もいらっしゃいますので関係のところを先にちょっとやりますが、この鉱山保安法の四十五条を見ますと、鉱山保安協議会というのがあるわけです。これは非常に重要ないろいろな事項について諮問を受けることになるわけです。これは中央と地方に置くことになるわけですが、これと労働災害防止法に出てくる業種別の労働災害防止協会、この関係は一体どういうことになるのかということです。最近は労働災害防止しなければならぬといって、こういう審議会がにわかにクローズアップされてきたわけですが、労働災害ということをとってみますと、まず労働基準法関係の面で労働基準審議会があるわけです。これは労働災害を議論するわけだ。同時に、労災保険の面で同じく審議会がある。これも労働災害防止についてやるわけです。それから総理府に産業災害防止対策審議会があるわけであります。それから今度新しく労働災害のことをいろいろやる団体として、労働災害防止協会ができるわけです。それから中央鉱山保安協議会というものがある。それぞれこれは災害防止のために、多くは三者構成になってやっておるわけですが、船頭は非常に多いが災害は減らない。増加の傾向にある状態だ。どうも船頭さんが多くて船が山に登るようなかっこうになるわけですが、労働災害防止協会と鉱山保安協議会との関係ですね。協議会は法律上のものです。労災の防止協会は自主的に業者がつくる団体です。しかし団体にしても、防止のためのいろいろの規定をつくっていきます。労働災害防止規程その他をつくって、これは労働協約には負けるが、就業規則より優先するものになり、非常に力強いものが出てくるわけです。そうすると、こういうものとの関係はどういうことになりますか、これはどちらが答えていただいてもかまいません。
  57. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 まず第一の各種の審議会とか協議会があるという点でございますが、労働災害を含む産業災害につきましては、各省にまたがる事項が多うございます。総理府に産業災害防止対策審議会を設置しておるわけでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、災害防止対策はかなり技術的な面もございまするので、それぞれの所掌する機関におきまして審議会等を設けまして、さらに細部にわたる審議調査を行なうという体制ができておるのであろうというふうに考えておるわけでございます。  ところで第二の、労働災害防止協会ができた場合に、鉱業関係においてはどうなるかということでございます。現在の状態を申し上げますと、一応労働省関係予算におきましては、業種別の災害防止協会を五つ予定しておりまして、その中の一つ鉱業関係が予定されております。この鉱業協会の経費につきましては、労災保険特別会計から補助金を支出するということになっておるわけであります。そういった関係から、労働大臣もこの防止協会に対しまして監督権限を有するわけでありますが、協会の行なう業務の中の実体的なものとして、特に労働災害防止規程の作成及び運営という問題がございます。この点につきましては、御指摘のように労働省で所管するのか、通産省で所管するのかという点につきましては、この関係を明確にしておく必要がございます。そこで労働災害防止に関する法律案におきましては、第六十八条におきまして、防止規程に関する事項につきましては通産大臣がこれの監督に当たる、こういう考え方を六十八条の規定で明らかにしておるような次第でございます。要しまするに、鉱業におきますところの災害防止協会につきましては、予算その他の事務的な面につきましては労働大臣、労働災害防止規程という鉱山保安と直接関係のあります部分については通商産業大臣が直接関与するという形をとっております。それを法律上明確にしておるわけであります。
  58. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 六十八条は、労働大臣とあるのを労働大臣及び通商産業大臣と読みかえることになるわけです。両者が監督権を持つことになるわけです。そうするとさいぜん御指摘申し上げた五十四条との関係があって、保安行政は通産大臣、それから労働条件については労働大臣であろう、こうことばの上ではなるけれども、鉱山の労働災害防止協会というものは労働省所管で、労働省の予算からできてくるものなんです。したがって石炭業者がつくったこの協会というものは、労働省に頭が上がらぬわけなんです。こういう点で通産省と労働省が交錯をする点が出てきておるわけなんです。さいぜんから私が言っておるのは、ここなんです。こういう施策が新しく労働省から出されてきておるので、やはり労働省もある程度坑内までいくという形が、すでに事業主がそういう形で握られればできてきておるわけです。できてきておるけれども、一挙にいかせることは問題だから、選炭機のところまででひとつとめておく、それから先は鉱山保安局責任を持ってもらいますよ、こういうことなんです。そういう裏づけのために、一歩踏み込んでいったわけですよ。踏み込んでいくと、いま御指摘になったように、六十八条で両者の監督に今度はなってきたわけです。これはなるほど頭の中では保安行政と労働条件と、こう分けられますけれども、事業主からいえばそうはいかないのです。金をもらってやるところのいろいろな事項は、労働災害防止規程ばかりでなくて、今度は機械器具についての試験、検査、労働者の技能講習、情報、資料の収集及び提供、調査及び広報というように、非常に範囲の広いものをこの協会はやることになるわけですから、そうなりますと、ここらあたりで両者の重なりが出てくる可能性が出てくる。そうして同時に、中央の鉱山保安協議会や地方鉱山保安協議会は三者構成です。事業主も労働者も入っています。そうすると事業主は、こちらの協会の意見というものを鉱山保安協議会にやはり反映せざるを得ない。それは労働省の監督を受けておって、労働省からこういう指導を受けて、その指導に従わなければ金をもらえないのだから、そういう点でここに非常に問題が出てくるわけです。こういう点ももう少し意見を調整しておかぬと非常に複雑になってくるのです。最近労働省のいわゆる労働災害に対する考え方が、労働組合、総評その他から非常に広範に要求されてきておるわけです。労働省は、広範なものを受けて立たなければならぬということになると、やはりそういうものにこたえて審議会その他、内閣にも産業災害防止対策審議会というように、非常に大きなもので今度はいろいろそういう方針を決定するわけでしょう。そうすると、総評その他はそういうものを今度は監視する中央安全衛生審議会というようなものを要求してきておるわけでしょう。非常にたくさん並んでくるのですね。そうすると、われわれが客観的に見ると、一体どこが労働災害防止する主体であるのか、こういうようにいろいろ審議会が交錯してきてわからないようになるのです。いま労働省と通産省とこういう同じような法律、片や鉱山保安法、片や労働災害防止法、それからいまいったように鉱山のほうはやはり労働省の中に入ってくるわけです。しかもそれは事業主中心で握られる。労働者は参与という形で参加させられるという形になれば、この構成は三者構成でない、二者構成だけれども、これは強く労使の意見が反映をしてきて、今度は中央の鉱山保安協議会というものに影響を与えてくることになる。影響を与えてもかまわないわけですけれども、しかし両者の関係というものを密接にしておかぬと、ここでやはり権限争いが起こる可能性が出てくるのですよ。しかも金は労働省が出すのですからね、労災の金の中から。ここらの関係を少し明確にしておく必要がある。たまたま私が社労の委員で、労働災害防止を少し勉強しておるからこういうことがわかるので、そうでなかったら、これは何にもわからぬでいってしまう。だからここらはもう少し両者の間で、その権限等を明確にしておかないと、一方は協議会ですけれども、協議会といってもこれは相当権限があるのですよ。鉱山保安法の重要な条項についてここでみんなやることになっておる。中央地方の鉱山保安協議会のところでやることになっておるわけです。  それと関連をしてもう一つ問題が出てくるのはどういうところに出てくるかというと、この保安の技術上の監督者あるいは保安監督員と、労働災害防止法の中で出てくる安全管理士と衛生管理士との関係です。これがまた問題なんです。との関係をあなた方討議したことがあるかどうか。
  59. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 まず第一に、このような協会が生まれることによって審議会との関係その他複雑になるのではないかという点でございますが、これは鉱山のみならず、たとえば建設業それから港湾荷役業、そういった業種についても業種別の協会ができると思うのでございます。したがいまして、そういう業種を所管しておる所管省との関係があるわけでございます。しかし事柄自体は安全、衛生という技術的、専門的な事項につきまして、使用者相互間における啓発、教育につとめ、安全水準を高めていく、こういうことでございますので、事柄そのものについては困難を来たすことがないと思うのでございます。しかも先ほど私ちょっとことばが足りませんでございましたが、一般の産業につきましては労働災害防止規程の作成を明確にしておりますけれども、鉱山保安につきましては鉱山保安法との関連がございますので、先ほど申し上げました第六十八条の規定の次に六十九条の規定を置きまして、その規定の第二項で労働災害防止規程にかかわる部分は適用しない、これは鉱山保安法関係のいわゆる鉱山保安については適用しないというふうに、適用除外という措置を講じておりますので、労働災害防止規程の作成云々につきましては、労働省と通産省との関係においてまぎらわしい関係が出てくるということはないと思うわけであります。  次に、安全管理士、衛生管理上等についてはどうかということでございます。その資格は労働省令で定めることに相なっておりますが、鉱山保安につきましては、先ほど来お話がございますように、特殊な地位を占めておりますので、この点につきましても混淆を来たさないように処置いたしておると考えておるわけでございます。  なお審議会なり協議会の構成員とこの協会との関係でございますが、この点につきましてはすでに民間団体として、たとえば全安連すなわち全国産業安全連合会といったような安全団体もあることでございます。そういった民間団体が存在いたしましても、たとえば労働省の労働基準審議会であるとか、あるいは通産省鉱山保安協議会といったような審議機関の構成員の問題につきましては、現在でもすでにそのような民間団体の関連が問題になるわけでございますが、ほとんど問題がないという現状から考えまして、将来においてもおそらく御指摘のような非常に複雑な状態になるというふうには、私どもさしあたっては考えておらないということを申し上げたいと思います。
  60. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 今度の労働災害防止法でできる業種別の協会の中に、特に鉱山が出てきておるわけです。普通の大ざっぱな安全、衛生をやるというものとはちょっと違ってきたわけです。鉱山という特定のもの、土木事業、建設事業と、こう特定のものをさしてきているわけです。したがっていまの基準局長のような大ざっぱなものではなくなっておるわけです。なくなっておるだけに、ここに「鉱山保安法第二条第二項及び第四項の規定による鉱山における保安に関しては、適用しない。」こう書いておりますけれども、しかしそれならば労働災害防止するのは地上だけの、坑外の施設だけかというと、そうじゃないわけです。もし鉱山のほうの協会で地上の労災だけだ、坑内は別だということになると、これは仏つくって魂を入れないことになってしまう。当然坑内が一番問題なんだ。坑内が問題だからこそ、われわれは大臣なりあなたに向かって、石炭のほうもぜひつくってもらわなければいかぬという要求をしている。だから、あの要求の出る前からこの条文はあっておるので、私に言わせれば、むしろこの条文は修正しなければならぬところでしょう。これはむしろ除かなければならぬところなんですよ。そして坑内の保安もやはり、協会にはやってもらわなければいかぬ。私は、これはほんとうは社労でやるところなんだけれども、保安法が上がるというものだから、前もって言っておかなければいかぬ、あなた方も準備をしてもらわなければならぬから言っておるわけです。この保安法二条の石炭山の保安に適用しない、協会は立ら入らないんだということになれば、たいへんです。これは事業主の団体だから当然やってもらわなければいかぬ。いまのようにやらぬのだということになると、鉱山には要らないことになる。そういう意味で、やはりそこらは少し考え直してもらわなければならない。そうなると、今度はさいぜんの安全管理士ないし衛生管理士は坑内に入っていけるかどうかという問題になってくる。おそらく坑内に入っていける、いけなければうそだと思う。坑内に入っていくと、今度改正になる統括者あるいは技術管理者、保安監督員、監督員補佐員、これらとの関係が問題になってくるわけです。
  61. 石黒政府委員(石黒拓爾)

    ○石黒政府委員 社会労働委員会で御審議をいただいております。労働災害防止法の法律案の条文の点につきまして御説明申し上げます。  鉱山につきまして、御指摘のごとく若干の特例を定めておりますが、適用を除外いたしておりますのは、労働災害防止規程に関する部分に限ると、第六十九条の二項に書いております。及び四章であります。労働災害防止規程は協会が自主的につくる、いわゆる自主ルールである。それに相応するものは、鉱山保安法の中におきまして、すでに保安規程の作成が鉱業権者義務とされております。自主ルールを二重につくる必要はないという趣旨から防止規程だけをはずしたのでありまして、そのほかの協会のいろいろな業務というものは、すべて地上のほかの業種別協会と同様に行なわれる。すなわち労働災害防止に関する技術的な事項についての指導、援助をはじめといたしまして、試験、検査、技能講習その他の事項は、鉱山に関する業種別協会ができました場合には、すべて地上と同様に坑内の保安に関しても行なうのであります。抜いてございますのは自主ルールだけで、これは保安規程があるから要らない。そのほかの点はもちろん坑内が大部分でございまして、坑内のために業種別協会は種々の防止活動をすることになるわけでございます。  なお御指摘の安全管理上、衛生管理士と鉱山保安法上の保安管理の責任者との関係につきましては、御承知のごとく、地上でも一般にそうでございますが、なかんずく鉱山におきましては、保安管理者というものがすなわち生産の責任者として生産の指揮をする立場にあるものでございます。災害防止法に基づきます安全管理士は、これはいわゆるコンサルタント的な活動をするものでございまして、生産そのものについての責任を負うものではない。会社の指揮系統の中にある人たちが生産と保安とを同時にやっておるのに対して、こういう点はこういうふうに直せばもっと安全度が増すじゃないかというような、わきから勧告していろいろ教えてあげるというのが安全管理士、衛生管理士の任務でございまして、これはもちろん鉱山につきまして、坑内のことに重点を置いてそういうコンサルタント活動をなすものとわれわれは考えております。
  62. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 それはよくわかるわけです。しかし坑内の保安統括者なり技術管理者なり保安監督員が独断であっては困るわけで、当然この高度の学識経験を有する安全管理士なり衛生管理士の言うことに耳を傾けてもらわなければ困るということがある。したがって、そういうものとの関係を明確にしておかぬと、このほかに役所自身からの監督官も行くわけですから、そうすると三者の意見が違う場合がある。そういうときにだれが一番力を持つか。事業主のほうから来ている、高度の技術を持った、労働大臣に資格を認定されているそういうコンサルタント、それから役所から来る人、それから、これはおれの炭鉱だからおれが指揮をするのだと言っておるそういう管理者、この三者が坑内でけんかしても困るわけでしょう。そういう調整の機能というものが一番強いのは、おそらく役所から来る監督官が一番強いことになる。これは権力を持っている。しかしお互いに技術者であるならば、そこに意見の相違が出てくると思います。やはりそういう調整の配慮というものを、ある程度しておいてもらわなければならぬのじゃないかという感じがするわけです。ただ一つの対象に対して、いろいろの人が意見を言うことはいいです。しかしさいぜん言うように、その責任体制を確立をして、あまり船頭が多くないような形にしておく必要があるのじゃないかということです。いまのような御意見もございますから、ひとつ運営は十分注意をしていただきたいと思います。  次は、十二条の二、これは労働省じゃなくて鉱山保安局長に伺いますが、「鉱業権者は、省令の定めるところにより、鉱山において、保安統括者を選任しなければならない。」こうなっているわけです。この場合に「省令の定めるところにより」というのは、どういうことになるのですか。その保安統括者というのは鉱業所の所長とか鉱長とかいうことですが、鉱業権者そのものは保安統括者にはならないのですか。そういう「省令の定めるところ」というのはどういう基準で保安統括者を定めるのか、それをひとつ御説明願いたい。
  63. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 十二条の二におきまして、保安統括者を選任することに相なっております。具体的にどういう項目がこれに該当するかということでございますが、たとえばこの保安統括者をどういう鉱山について選任するか、これはたとえば現在の保安管理者につきましては石炭鉱山、金属鉱山、非金属鉱山、石油鉱山、それぞれ一定の規模を指定しております。こういう場合に、保安統括者を選任いたす場合はどういう場合であるか。ただいま先生の御指摘になりました鉱業権者自身がなる場合というようなことも、具体的には、たとえば個人の山等におきましては、その鉱業権者が直接山元におりまして指揮いたしておるというような場合は、当然これは保安統括者に相なってくると思いますが、具体的にどういう場合に保安統括者を選任するかというその規模の問題、それから現在考えております具体的な問題は、主としてその各鉱種によりまして、石炭、亜炭、金属、非金属、石油、いろいろ鉱種が異なっておりますが、その具体的なそれぞれの鉱種についての規模がおそらくおもな内容になろうかと思います。なおこれは今後本法案がもし制定いたされました場合には、具体的な省令として鉱山保安協議会に検討をお願いいたしますことによって、その結論を得た上で決定いたすことに相なるかと思います。
  64. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 鉱業権者保安統括者をきめる場合に、一体どういう基準できめるのかということがわからぬということでは、話にならぬと思うのです。やはり基準を明確にしなければいかぬと思うのです。どうして私がそういうことを聞くかというと、十三条をごらんになると「鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長は、保安のため必要があると認めるときは、鉱業権者に対し、保安統括者、保安技術管理者、副保安技術管理者又は係員の解任を命ずることができる。」ということになっているわけです。そうしますと、解任を命ぜられたときは、その人は一体首になるのかどうかということです。
  65. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 御指摘のごとく、その鉱山に関しましては、もし解任を受けた場合にはその鉱山鉱山長はやめるということになるわけであります。ただそれには、重大なことでありますので、いろいろ公開による聴聞を行なった上で、客観的に解任の理由がある場合には解任を命ずることがございますけれども、御指摘のように解任命令が出た場合にはそこの所長はやめるということに相なるかと思います。
  66. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 したがって、保安統括者というものをまずどういう基準で任命をするのか、それがやはり明らかにならなければならぬわけです。同時に、今度はそれが明らかになれば、当然保安技術管理者なり、副保安技術管理者及び係員の選任についても省令で定めることになっているわけです。したがって、どういう基準でこれを選ぶのか、さいぜん安全管理士、衛生管理士のことを言ったが、これは相当の資格を持っていなければならぬということが書いてあるわけです。そうすると、それと同じように、そういう人たちがコンサルタントの意見を消化できる体制になれば、これらの保安技術管理者についても相当の資格が要るということになるわけです。それがいない炭鉱には、資格のある者を入れさせるようにしなければならぬわけです。だから、こういうものをつくるならば魂を入れなければならぬので、したがって統括者なり保安技術管理者以下について、省令の定めるところの基準をきちっとしておいてもらわぬと、ただ保安法を通したが実際にはいままでどおりだったということでは、私は困ると思うのです。やはりそれだけの資格のある者でなければいかぬ。それから、解任をされた場合には当然鉱業所長等はやめなければならぬ、こういうことになれば、たとえば滝井義高が個人鉱山経営しておるということになれば、滝井義高が鉱長であり経営者であり統括者になるわけです。そうすると、滝井義高が解任を命ぜられたときには、鉱業権は取り消すのかどうかということが問題になるわけです。その場合は滝井義高の鉱業権を取り消すことにならなければ意味がないわけです。
  67. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 この具体的な資格については、もちろん先生の御指摘のように、保安技術職員については一定の資格を現在でも要求いたしておるわけであります。たとえば国家試験を通って一定の経験年数を持ち、その職責を全うし得るような経験を持っておるというようなことが、その具体的な、客観的な資格の要件であります。また、保安統括者につきましては、この条文で明示しておりますように、その鉱山におきまして実際にその鉱山を統括しておる者、具体的には鉱業所長ということになりますが、所長が即統括者になるということで、これは所長という形においての資格を有しておるわけであります。ただいま、鉱業権者と統括者が同一人であった場合に、統括者がかりに首になった場合に鉱業権が取り消されるかということでありますが、この保安法といたしましてつかまえておりますのは、所長としてその鉱山保安全般を見ておるこの機能に対して保安統括者という制度をとっておりますので、その場合にはほかの所長を置くということに相ならざるを得ないかと思います。
  68. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 そういう論理になると、論理がおかしくなる。滝井義高が鉱山経営をして、同時に滝井義高が所長になって、そして滝井義高が保安統括者になっているというときに、滝井義高が首を切られたときに滝井義高の鉱業権がそのまま生きていって、他の者にかえていいということは、これは問題だと思うのです。健康保険法にこういうのがあるのです。病院なり診療所が保険医療機関になる。そうすると、その病院、診療所を経営している滝井義高は保険医に指定されるわけです。これを二重指定というのです。そうすると、まず保険医の首をちょんと切られる場合が一つあるわけです。そのときは、滝井義高は別な保険医を置いてやればいいことになる。ところが、個人の場合は、滝井義高がちょんと首を切られると、保険医療機関が生きておったってこれはだめなんです。どうにもならぬ。これは悪質だからといって、同時に保険医療機関の指定も取り消される。こうなるわけです。健康保険はそうなっている。したがって鉱業の場合も、保安統括者に自分がなっておって、そうして何回も注意をされておって、聴聞会にまでかかった、そうしてやっぱりこれは悪質だからだめだという統括者を、統括者さえかえればいいのだ、その鉱業を続けていいのだということになれば、——医療機関よりか大きな被害を大衆に与えるのです。保険医が水増し請求をしたというだけで、医療機関ともばっさりやられてしまうのです。保険医の取り消し、それから指定医療機関の取り消しもやられる。そうして医師の免許だけが残る。ところがこちらは、いま言ったように、そんなに労働者に迷惑をかけ、大衆と国に迷惑をかけておいて、そうして保安統括者の首を切られた、ところが鉱業権は残っておって、他にかえたらもういいのだということでは、意味がないと思う。やっぱり聴聞会まで開いてやるというならば、これは鉱業権の取り消しの要件に当たるはずなんです。鉱業権者として風上に置けない、こういうことになるのだと思うのです。そういうくらい厳重にやっておかぬと、何回も起こるのです。社長だけやめたらあとはいいのだというわけにはいかぬと思うのです。これは非常にむずかしいところだけれども、医療機関でもそうなっておる。だから、鉱業権はまたしばらくすれば、罪を悔悟すれば申請ができるのでしょうけれども、そういう点はやっぱりある程度厳重な処断をやるというくらいまでいかぬと、保安行政はうまくいかぬと思う。そういうところであなた方がちゅうちょするから、もう労働省にやらしてみたらという意見が出てくるのです。だから、そのときにはもう全部鉱業権者をかわってもらうというくらいでないと、かえさえすればいいというのだと、むすこにかえればいいのです。むすこにかえ、て実質的に自分が監督すればいいのです。資本主義というものはそういうものだ。だから弊害がなかなか除去できない。むすこや奥さんに名前をさっとかえますよ。そういうことでは、やはり私はいかぬのじゃないか。多くの人、何百人の労働者を殺し、国にも迷惑をかけた場合には、もう鉱業権を取り消す、その者にはやらせない、他の者にやらせるのだというぐらいの裁断、処置をとる必要が私はあるのではないかと思うのですよ。聴聞会にかけたけれども、ただ統括者だけを首切ったというだけなら、何もちっとも実利がない。これは法律で統括者というものをきめるのですから、なりたくないやつを無理にならせるのですから、ならせておいて、首を切ったら、他の者にかえたらいいというなら、こんな改正は要らぬのです。何にも役に立たぬ。やっぱり聴聞会にまでかけてやるのですから、そういう場合は鉱業権を取り消しますよというくらいなことをしなければいかぬ。それから社長が統括者でなければ、そういう場合は、社長は株式会社の社長をやめてもらいたいというくらいのところまでいかなければ、話にならぬと思う。それだったら、役所で汚職が起こったときに、課長補佐がビルから飛びおりたり、首をつったりするのと同じです。課長補佐までしかいかぬのだ。あわれな課長補佐の死だということになってしまう。こういうことではいかぬと思う。何かそこはひとつ明確な方針を出してもらう必要があると思うのです。
  69. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 私がお答えいたしましたのは、ちゅうちょするということではございませんで、この法案の法制的なたてまえから申しますと、そういうことになろうかということでございます。なお、これは別途に御審議をいただいております鉱業法の中に、鉱業権の取り消しという問題につきましては、今度新しくそういう重大災害、悪質な災害を起こしました場合には、鉱業権そのものを取り消すという措置を加えておりますのも、ただいま先生が御指摘のような場合が今後あることに備えてのわれわれの気持ちでございます。
  70. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 再々災害が起こるのですから、少しは厳重にやったって、国民は支持しますよ。少し厳重にやって、たるんでおる鉱業権者をひとつ引き締めてもらいたいと思うのです。  それから、時間がないからだんだん先に行きますが、十五条の二です。「保安監督員補佐員のうち一人は、その鉱山鉱山労働者の中からその鉱山鉱山労働者の過半数の推せんにより選任しなければならない」ということになっておるわけですが、保安監督員補佐員というのは、何人置くことになるのですか。
  71. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 これは条文におきましては御指摘のごとく「補佐員のうち一人は」という書き方をいたしております。これは法律として要求する最低限の数字を規定いたした次第であります。もちろん、何人置くかということは、先ほど申し上げましたように、石炭、金属、非金属さらに石油、それぞれ鉱種によりましていろいろ事情を異にいたしております関係もあります。また御承知のごとく非常に大きな、何万という労働者を持っておる山もございますし、そうでない非常に小さな山もございます。そういう具体的なそれぞれの規模によりますが、これ以上何人置くかということは、むしろ具体的にはそれぞれの山の事情によりましてきめてまいることに相なろうかと思いますが、われわれとしましては、これは、現在監督員につきましては一定の規模がきめられておりますが、その規模以上のものにつきましては、その数字をどういうふうにするか、これはもっぱら省令にまつわけでありますが、これは一人は必ず置かなければいかぬという意味の強制規定であります。もちろんそれ以上何人補佐員が置かれましても、人数的な制限は上限はつけていない次第であります。
  72. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 そうしますと、この十五条の省令の定めるところにより、鉱山において、保安監督員及び保安監督員補佐員を選任しなければならぬという、その省令には、鉱山の規模によって最低このくらいの人数を置かなければならぬというように人数をうたうのですか。
  73. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 この省令におきましては、これは今後さらに保安協議会の諮問を経るわけでありますが、置くべき鉱山の規模、これについて規定をいたすつもりでございます。石炭については何人以上の鉱山、それから金属鉱山については何人以上の鉱山、こういう鉱山の規模を指定いたすつもりでございます。
  74. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 いや、その規模によって補佐員の数も違ってきますかと、こういうことなんです。一人はその鉱山労働者の中から選任しなきゃならぬことになっておるが、一人はということでは、何人置くかがわからぬわけです。一人は置くということはわかるけれども、鉱山の規模によって、たとえば五百人なら一人、千人なら二人置くんだというような書き方を省令できめますか、こういうことなんです。
  75. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 これはまあ今後の審議に待つわけでありますが、省令におきましては、置くべき規模だけをきめることに相なろうかと思います。いま監督員もそういうきめ方をいたしております。ただ実際は、これを何人置くかということは、もちろん保安委員会やその他労使間の話し合いというものも当然行なわれましょうし、実際上これの人数と申しましても、それぞれの山の構成もまた違っておりますので、  一律にきめることが非常に困難でありますが、具体的には各鉱山ごとの労使の話し合いというようなことが、その実質的な中心になろうかと思います。なお、もし必要がある場合には監督局長は増員命令を出すことができるように相なっておりますので、この増員命令によって、特に問題のある具体的な山については処置をするということに相なろうかと思います。
  76. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 私がこうくどく聞くのは、先日参考人に来ていただきました井上さんが、労働者保安監督員に選任することは問題がある、これは経営権との関係がありますということを言っているわけですよ。したがって、経営権に介入をするおそれがあるということになれば、事業主の側は、鉱業権者側はできるだけ労働者保安監督員補佐員を少なくしようとするということになるわけです。したがってこれは力関係からいくと、最近の鉱山というのは御存じのとおり壊滅的な打撃を受けて、だんだん力が弱くなっておるわけです。昔の炭鉱労働者組織とは違うわけです。そういう意味でやっぱり労働者の発言の場を、私はこの際力をカバーして法律できめる必要があると思う。五人つくればやっぱり少なくと二人か三人はその中に労働者が入っておる、保安監督員補佐員の中に入っておるということでなければならぬと思うのです。先日私もちょっと質問をしたいと思っておったのですけれども、他に会議があったためにできませんでしたけれども、保安監督員というのは施業案に関係を持つのだ、この施業案というのは企業の問題だ、そこに労働者が入ってくるということはやはり経営権との関係で非常に問題がある、純粋の保安の上から考えるということであれば、これは補佐員を置いてもいいですという御意見だったわけですよ。したがってそういう考え方を経営者が持っておる限りにおいては、これはなかなか簡単には補佐員をつくっても権限も与えないわけです。これはもう三池の問題が具体的にそれを示したわけです。労働者はみずからの命を守らなきゃならぬので、池田・太田会談でも、労働災害防止の問題をやっぱり六項目の中に入れざるを得ないということになってきておるわけでしょう。そういう意味で、あの申し合わせの一つの具現の場所として、まず災害が一番象徴的にあらわれる鉱山における補佐員の中に、やはり労働者の代表を入れる、こういう形になってきておると思うのです。したがって、これは一人を置かなければならぬ。しかし五百人に一人ならば、千人ならば二人だとかいうふうに、私は省令できめるべきだと思う。少なくとも最低それだけは置かなければならぬ。上はきめる必要はない。それをあいまいにしておくことはいかぬと思うのです。これ以上言えば、これは経営権の介入とか何とか言いますから、それ以上は言いませんけれども、ぜひひとつ省令をつくるときには、一人でなくて、段階を設けてだんだん人数をふやさなければ、三池のように何千人もおるところで労働者代表が一人では、とてもうまく補佐できませんよ。  そうなりますと、この統括者は一人だけれども、技術管理者は何人置くのか。あるいは監督員は何人置くのか。補佐員をいま言ったように省令で数をきめれば、当然監督員も問題になる。監督員なり技術管理者はどのくらい置くのですか。
  77. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 現在、これは鉱山によって非常に差異がございます。大体中程度の、坑口が一つというような山におきまして一人ないし二人、それから非常に大きい鉱山におきましては監督員も四、五名置いておる状態であります。この監督員の数につきましては、これはまさにその鉱山の規模及び鉱山の所在が一つ鉱業所で幾つもの場所に分かれておるとか、そういういろいろな条件によって具体的にはきまっている次第でございますが、おおむね最低一人、多いところは四、五人を置いております。技術管理者その他につきましても、各鉱山によって具体的には必要数がきめられている次第でございます。
  78. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 ですから、そこを自然発生的なものにせずに、こういう法律をおつくりになるのですから、やはり最低限のものは置かなければならぬということにしないと意味がないと思うのです。ぜひ最低限のものを置くようにしてもらいたいと思うのです。そうしないと統括者は一人置いた、ある山は保安技術管理者も一人だった、しかし人間は二千人もおるんだということでは、意味がないと思うのですよ。ところが、片方は五百人に一人置いておる。そういうアンバランスでなくて、最低限のものはやはり置く。そして保安体制を確立していく。同時に役所のほうの監督官もふやすという、こういう形をとるべきだと思うのです。それはできるわけでしょう。
  79. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 現在でも必要があります場合には、増員命令を出してその必要に応じた数を置かせるようにいたしております。ただいま滝井先生の御指摘のございました点は、私ここで十分拝聴いたしました。なお省令につきましては今後さらに中央保安協議会に付議いたすことに相なっておりますので、その意見を聞きました上で取りきめたいと思います。
  80. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 ぜひひとつ、保安技術管理者、副保安技術管理者、それから保安監督員、保安監督員補佐員、最低限これらの人数の義務規定だけはつくってもらって、そして保安行政を全うしていただきたと思います。  次は、保安法の二十五条の三です。「鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長は、鉱山における被災者を救出するため必要があると認めるときは、鉱業権者に対し、必要な措置を講ずることを命ずることができる」とあります。いわゆる救助作業です。それで、三池その他を見ても救助作業がなかなかうまくいっていないのです。その救助作業を鉱業権者鉱山保安監督局長なり鉱山保安監督部長は命令することができることになっておりますが、一体救急医療体制というものはどういうようになっておるのですか。三池の一酸化炭素中毒の患者を坑内から運び上げてきた、ところがてんやわんやで何ら応急処置がとれなかったのですね。そしてああいう非常に悲惨な状態が起こっているわけです。今後だってああいうことは起こり得る可能性があるわけですが、この二十五条の三で必要な命令をして救出をしてきた、そうすると一体、鉱山保安法における救急医療体制というのは、これはどこがどういうぐあいにやるのか。これはこの前も私予算委員会指摘をしたのだけれども、はっきりしない。厚生省もそんなことをやる金はないという。労働省のほうも、もちろんこれは安全衛生の規則か何かで、ほんとは労働省のほうの労災のほうでやることになっておるわけですが、これもはっきりしない。労働省は手足を持たない。そうすると、あなたのほうは救い出してきたけれどもだれも来てくれない。鉱山の、鉱業権者の持っている診療所、病院だけでは手が足らないというときの体制がはっきり確立されていないのですよ。ほんとはこれは労働省のほうの所管なんです。ところがあなたのほうは、労災病院はぽつんぽつんとしか持たないのですから、命令を出したってだれも動かないわけです。そうするとみんなが、だれかがやるだろうといって逃げちゃって、一酸化炭素中毒の患者は、脳に酸素が行かないうちにああいう悲惨な状態におちいる。こういうことですから、あなたは救い出したらどうするかということを考えておかなければいけないわけです。
  81. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 もちろんその場合に、救護隊あるいは救急車を用意いたしまして、坑外に救い出して、鉱山所属の病院もございますし、またもよりの医療施設に直ちに連絡をとって救護をお願いするということにいたしておるわけであります。
  82. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 もよりの病院に連絡してと言うけれども、もよりの病院が満床だったらどうしますか。鉱山災害が起こったときに、病床をあけて待っておる病院なんてありやしないです。だから、ここらあたりの対策というものがないのですよ。ほんとはこれは労災だから、すぐに基準局のほうで対策を打たなければならぬ。それも基準局は、いま言ったように、鉱山の内部にまで行ってやっておるわけではないのだから、地元の基準局は災害が起こったぞということで行くんでしょう。労働条件その他しか主管はないのですから、起こったときは勧告するというわけでしょう。そこで、厚生省がこの前出ていったわけでしょう。ところが労働省のほうとの関係があってやろうかやるまいかと遠慮しておった。どこもみんな遠慮しておって、やり手がないということでは困ると思うのです。だから、ここらあたりの体制をすみやかに確立する必要があるのです。坑内で爆発があった場合に、救い出した患者を一体どこが責任を持って、どこが金を出してやるのだという体制がないとだれもやらないですよ。これはこの前の大牟田のときには、われわれが言ったからこそ、厚生省がしぶしぶと内村さんの医療調査団を出した。そして一酸化炭素中毒に対する医療体系をつくらなければいかぬということで、労働大臣に言って、ああいう独立の病院に移そうということになったのでしょう。あれじゃ手おくれですよ。それから一酸化炭素中毒の患者の解剖も何もできなかったでしょう。だからこういう点はやはり、あなたのほうが中心になって運び出すことは運び出すのですからね、運び出した患者の処置をしてもらう道をどこかきちっとつけておかなければならぬですよ。つけるのは労災だ。ところが労働省は、いま言うように、そういう手足を持たないのですよ。労働基準監督署の署員が来たってどうにもならない。医者が来なければならぬ。そうすると、一体医者をどうして来させるかということです。それはやはり厚生省と労働省ときちっと話をつけて、労災の問題は厚生省なら厚生省に移すという取りきめをきちっとしておかぬとどうにもならぬですよ。だから患者側の手当てがうまくいかぬでおくれると、全部あなたのやり方がまずかったと、あなたのほうの責任になっちゃうんですよ。だから、こういう点はぜひひとつやってもらいたいと思うんです。  そうなりますと、いまあなたは救急の問題を言いましたが、消防法との関係が出てくる。一体鉱山の中に火事が起こった場合に、消防は鉱山の中に入ることができますか。
  83. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 現在消防法との関係におきましては、事実上二重の規制になっておりますが、入ることはできるわけであります。ただ実際問題といたしまして、坑内の火災は特殊なものでありますし、消防車が入っていける場合といけない場合とございますので、現実にはあまり入ったことはないように聞いております。
  84. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 坑内には入らぬけれども、救急は消防に頼まなければならぬわけでしょう。救急というのは消防法なんですから、救急車その他は消防に頼まなければならぬ。あなたのほうが運び出す、運び出したのは、炭鉱の救急車だけでは間に合わぬのです。百人も二百人ものけが人が出てきた場合には、当然消防との関連が出てくるわけです。そうでしょう。
  85. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  86. 滝井委員(滝井義高)

    ○滝井委員 そうしますと、対消防との関係というものを密接にしなければならぬ。あなたの言われるように、消防は坑内に入ったことはない、こうおっしゃる。なるほど入ったことはないけれども、救護班というんですか、そういうのが来ることがおそかった場合には、やはり消防団員に入ってもらわなければならぬというときがあるわけですよ。そうすると、鉱山地域における消防団に対しても、絶えず連携をとりながら、坑内に入ってもらわなければならぬ場合もあり得るし、いま言ったように大量の死傷者が出たときには、救急措置でやはり協力を求めなければならぬということが出てくるわけですよ。実は私のところで、豊州炭鉱ですよ、あの豊州炭鉱で地下の石炭が燃え始めたのです。地下の石炭が燃え始めて、付近の井戸が全部四十度くらいに熱くなってきたわけです。そこで、地下の石炭が燃えているということがわかった。そうすると、これはだれが消すのかということが問題になった。地下の石炭が燃えているということがわかったから、当然これはだれかが消さなければならぬ。ところがだれが消すんだという、消す主体がはっきりしなくなっちゃった。そこでいろいろ考えた結果、通産局のほうで、これは消防法で市町村が消せということになったんです。そういう例があるのですから、対消防との関係というものは、今後の鉱山保安行政の上で十分やはり考えておく必要がある。労働省にやられると、自分のほうの権限がとられるようなことになるから、労働省には言わぬ、おれひとりでやるんだと思っておると、これは何もできなくなるんですよ。火事を消せなくなる。だから幅広く保安行政を踏まえて、消防にも連携をとるし、労働省にも連携をとりながらやっていくという形をつくっておく必要がある。  それから、いま言ったような労災の問題等は労働省の所管であるわけですから、坑口のところまで労働省に来てもらっておくほうがいいと私が言うのは、そのためなんですよ。労働省は労働条件だけだといって、坑口から遠い病院とかあるいは労働時間だけをやっておると、坑内のことはわれ関せずになっちゃうんです。ところがいざ鎌倉のときには、労災はすぐあなたのほうではできないのですから、労働省と密接な連携をとらなければならぬという問題があるわけでしょう。ぜひひとつそこらをやっていただいて、救急医療体制というものを労働省、厚生省と連絡をしてすみやかにひとつ確立をしてもらう。いざ鎌倉のときにはすぐに出れるという形を、少なくとも炭鉱町においては確立しておく必要があるんですよ。もう大牟田の例で、いやというほどあなた方は辛酸をなめたと思うのです。特に、石炭局長おられますけれども、非常に苦労したと言われておる。なれない仕事をやらなければならなかったということで、苦心談をいつか述べられでおったでしょう。だから、そういう苦心をしないように、やはりとうとい経験を生かして、すみやかにその体制を炭鉱町においては、特に大牟田のようなところは確立をしておく必要がある。そういう点を要請しておきます。あと三つ四つあるけれども、これでやめます。
  87. 中村委員長(中村寅太)

  88. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 三池炭鉱の爆発の実情にかんがみてこれらの法案の整備をされたというのですが、一体保安法改正点は、これ以外にどういうものを考えられておるのか、さらにまた、全体としてどういう保安対策に対する整備を考えられ、予算措置を講じられたか、これをお伺いいたしたいと思います。
  89. 福田(一)国務大臣(福田一)

    ○福田(一)国務大臣 御案内のように、審議会にもいろいろはかりまして、その上で今回このような改正案を提出をいたしたわけでございます。したがって、いますぐに、これ以上に何をするかということについては考えておりませんが、今後とも必要が起きれば、私は保安法については随時改善を行なって、保安の万全を期するように努力いたさなければならないと思っております。また保安設備改善その他につきましては、政府としても今後できるだけ予算等の面においても善処をして、万全を期するように努力をいたしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  90. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 この法案による保安管理体制の強化だけですか。その他保安規則改正、あるいはまた予算処置、こういう全体の保安対策の体系をお示し願いたい。そしてまた現在保安法改正について、この点は意見の一致を見て一応保安協議会としても答申をしたけれども、まだまだ現時点においては問題点を討議しているんだ、こういうことであるかどうか、これは局長から御答弁願いたい。
  91. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 法律の問題につきましては、現在中央鉱山保安協議会で意見の一致を見ました点を改正いたすということでございますが、今後、技術の進歩等もございますし、いろいろ起こりますれば、その事態に応じて常時その改正考えるということは当然であろうかと思います。  なお、この法律改正に並行いたしまして、現在省令の改正を検討を続けております。この中には、従来いろいろ問題になりました諸般の問題、炭じんの問題でありますとか、救命器の問題でありますとか、さらに救護隊でありますとか、いろいろな具体的な問題について現在検討を進めますと同時に、今後の保安管理体制の問題についても、当然省令の中に入ってまいりますので、あわせて中央鉱山保安協議会で意見も聞いた上で検討を進めるということでやっております。  なお、今後の指導監督の態様でございますが、現在すでに石炭鉱山の保安緊急対策を実施いたしまして、具体的な事項についての監督を強化してまいっておりますが、なお、今年は各山の保安計画を中心にいたしました監督を強く行なっていきますと同時に、保安融資制度をさらに活用いたしまして、なお今後この保安融資を逐次拡張いたしまして、炭鉱保安設備の万全を期することの方向に向かって諸般の体制整備を進めたい、かように考えております。
  92. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 きわめて抽象的にお述べになりましたけれども、技術の進歩に相応する法律改正というのは当然ですけれども、現時点においての問題点は、法案については管理体制であったのか、こう聞いておるわけです。さらに、規則については、その管理体制の強化に伴う省令の改正は当然でしょうけれども、いま、炭じん、救命器あるいは救護隊を御指摘になりましたけれども、三池の災害にかんがみてどういう点を改正しなければならぬから、こういう方向で審議をしておる、あるいは諮問をしておる、こういった点をもう少し詳細にお述べ願いたいと思います。
  93. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 法律につきましては、現在管理体制の整備ということをもって足りると思います。  なお、省令の改正につきましては、三池の災害の経験にかんがみまして現在検討をいたしておりますものといたしまして、救護隊の問題、退避の問題、災害発生時におきます連絡の問題、それからガスの規定及びガスカウンターその他の問題をどういうふうな形に変えていくか。さらに、これは非常に技術的にむずかしい点もございますが、炭じんの規定及び炭じんの基準、これを具体的にどういうふうにきめるか。さらに電気に関することで、これは主としてケーブルの問題でございますが、ケーブルの架設に関する規定、運搬ことに巻き上げ機に連結いたしますロープ、車両その他の巻き上げ機械に関する規制を強化するというような諸点につきまして、現在検討を続けております。
  94. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 保安法の体制強化と並行して、労働省のほうではどういうことをお考えになっておるか。炭鉱保安は当然鉱山保安局でおやりになるんだけれども、さらにそういう点を検討して、基準法並びに安全衛生規則等ではどういう改正を予定されておるか。鉱山保安法鉱山保安法、労災のほうは労災というだけではないと思うのですね。やはり呼応した体制というものが必要じゃないかと思う。一般災害の激増といえば、あなたのほうは漸次数が減っておるとおっしゃるけれども、しかし、交通機関あるいは建設等よりはふえているわけです。それらについてもどういうふうにお考えであるか、あわせて一般産業における災害の面も御説明願いたい。
  95. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 ただいま御指摘のように、鉱山保安関係につきましては二月五日に勧告をいたしまして、その中の保安管理体制につきましては、鉱山保安法の一部改正を行なうということで進行いたしておるわけであります。しかしながら、他の一般産業については労働省はどのような考えでおるかという点でございますが、労働省としましては、御指摘のように最近労働災害によります死傷件数は、実数として若干減少しておるのみならず、年千人率から見ましても相当の減少傾向を示しておるのでございます。しかしながら、最近における新技術の導入あるいは新しい原材料の使用等によりまして、新たなる災害の発生も予想されますし、また目下活発に行なわれております公共土木事業などにおける災害等等いろいろ問題もありますので、この際総合的かつ体系的な労働災害対策を確立したいという見地から目下労働基準審議会において検討をお願いしておる次第でございます。その順序といたしましては、対策を確立する前提といたしまして、まず問題点についての認識をある程度共通のものにしていただくということが、対策樹立の大前提であるというふうに考えまして、三月十三日に労働基準審議会に労働災害防止上の問題点を提起いたしまして、まず問題点についての御審議をお願いしたわけであります。そしてほぼ問題点についての労使、公益の御意見をお伺いいたしました上で、さらに四月十七日に問題点に対策を付加いたしまして、労働災害防止上の問題点と対策という原案を提示いたしたのでございます。その内容におきましては、従来災害問題を技術的なないしは個別企業の場における問題としてとらえる傾向が強かったのでございますが、今回の労働省の考え方といたしましては、基本的には人命尊重観念ないしは安全思想の普及徹底という問題、それから建設業その他におきますところの産業の体質、労働事情の性格からくる問題点といったような幅広い問題から、さらに個別企業の場を越えた数個の企業にまたがるような問題、いわば企業外における問題点といったことから、さらにはオーソドックスな方法であります個別企業内部における問題として安全管理体制、それから施設改善の問題等々を問題として提示し、その対策を一応お示ししたようなわけでございます。しかしながら災害対策の具体化につきましては、問題の性質によりかなり長期を要するものもあろうかと思います。そこで労働省といたしましては、まず大体の方向を対策としてお示しし、審議会の検討をいただくと同時に、その大綱につきましての御了承をいただきましたならば、さらに個別対策について引き続いて審議会で検討をいただく、その結果あるものは法律、あるものは規則、あるものは行政指導、あるものは予算といったような各種の手段、方法を講じまして、その具体化をはかっていく必要があろうかと考えております。さしあたりのところは、大綱につきましてまず審議会の結論を得たいというふうに考えておる次第でございます。
  96. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 そういたしますと、労働省は労働省で独自におやりになっておるわけですから、鉱山保安法による、たとえば統括者であるとか監督員の補佐員というような制度に呼応する制度改正は、現在のところ部分的に扱うということは考えられていないかどうか。
  97. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 今回の鉱山保安法の一部改正法案におきまして、統括者といったような新しい構想も提起されておるわけでありますが、それと対応した関係におきまして、一般産業におけるところの安全管理体制が現状のままでよろしいかどうかという点につきましては、いろいろ御意見もあるようでございます。したがって個別企業内部におきますところの安全衛生管理体制の強化につきましては、事柄といたしまして改善の要ありとし対策要綱の中に示してあるわけであります。それをどのように行なうかという点につきましては、災害発生の程度、各種産業の特殊性などいろいろございまして、御承知のように、非常に各般にわたります事業場を対象といたしておりますので、そういった特殊性、災害発生度合いといったようなものを勘案いたしまして、さらに個別的に審議会の御検討をいただきたいと考えておる次第でございます。
  98. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 監督員の補佐員に関連して若干質問をしたいと思いますが、ILOの勧告三十一号、すなわち産業災害の予防に関する勧告、この中で、その二十一項ですけれども、「各国に最良く適合せる方法、例へば公の監督機関に於ける地位に資格ある労働者を任命すること、労働者が望ましと認むるときは監督機関若は他の権限ある機関の職員の臨検を求むることを之に認むる又は監督官が企業を臨検しつつある際之と面会する機会を労働者若は其の代表者に与ふることを使用者に求むる規則を定むること、規則の施行の確保及災害の原因の確認の為の安全委員会労働者代表を加ふることに依り、安全規則の遵守を確保するに付労働者をして協力することを得しむる為法律上又は行政上の措置を為すべし。」こういう規定があるわけですが、この規定について鉱山保安法関係法令並びに労働基準法並びに安全衛生規則、この両面において、ここに書いております方法がいま日本においてはどういう現状になっておるか、これをお聞かせ願いたい。
  99. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ILOの勧告と鉱山保安関係の制度がどうなっておるかという御指摘であります。現在その中にございますような労働者意見を反映するシステムとしまして、すでに御高承のように、各鉱山には保安委員会を設けておりまして、これには労働者の推薦する委員が半数出て意思を反映する、あるいは今回新たに御審議をお願いしております監督員補佐員という形におきまして労働者の意思を反映したい、さらに一般的には申告制度というものをとっておりまして、その申告制度によって反映をしていくという組織をとっておるわけであります。なお一般的な監督その他につきましては、勧告ではたしか安全管理となっておると思いますが、そういう問題はわが国におきましてはすでに鉱務監督官、そういう外からの監督機構及び各鉱山それぞれにつきましても、監督局長の認可いたします安全規程というものをつくりまして、それに基づいた諸種の管理機構を整えておりまして、私どもといたしましては、そのILO勧告が求めております範囲のことは現在の保安法ではおおむね該当するものを持っておるように考えております。
  100. 村上(茂)政府委員(村上茂利)

    ○村上(茂)政府委員 御指摘のILO三十一号勧告の第二十一項の点でございます。この規定の趣旨は、要するに労働者が安全衛生問題につきまして意見を表明したり、あるいはこれに協力するという関係につきまして、適当な方法としてどのようなものがあるかという事例を例示いたしますと同時に、法律または行政上の処置をなすことを勧告いたしておるわけであります。現在の労働基準法につきましては、先生御承知のように、非常に広範多岐にわたります各種の産業を包括規定いたしておりますので、石炭鉱業のように一律に制度を設定するということについてはいろいろ問題があろうかと思います。しかしながら基本的な点といたしまして、労働者が安全衛生上問題があるときに監督官に臨検をしてもらうという制度につきましては、御承知のように、労働基準法の中に労働者の申告権を確立しておる。また事業場におきまして安全委員会を設ける場合には、労働者を参加させるという制度を安全衛生規則上設けておるというように、その具体化をはかっておるわけでございます。その他の点につきましては一律に行なえない面もございますので、一般産業には実現いたしておりません。しかし要は労働者意見表明の機会が担保され、問題が円滑に処理されるということにあろうかと思いますので、このような点に関しましても、先ほど申しました、今後における労働災害防止対策の一環といたしまして、いろいろ御論議をいただきたいと考えておるわけでございます。
  101. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 臨検を求めることを認めている、こういう点が実は案外やられていないわけです。三池の場合も保安監督局長に相当、労働組合としては危険であるということを申し入れておる。ところが実際はそれが動いてない。そして事故のある前に、じゃ総合的な検査をいたしましょうということを約束したけれども、残念ながら事故が先に起こった、こういうことになっておるわけですね。申告制度はあるけれども、これらが実際行なわれていないのじゃないか、こういう感じがするわけです。ですから、この点は若干の弊害はあるでしょうけれども、事安全ですから、申告し、臨検を求めた場合はすみやかにとにかく現地に行って見る、こういうことが必要ではないか。この点は制度があるけれども、どうもこれが実施されていないきらいがある、こういうように思うわけです。  それから保安監督官が来た場合に、保安監督官が当該保安管理者並びに企業にいろいろ勧告をする。その勧告文はぜひ組合に、写しでけっこうであるから送付してもらいたいということをかねがね言っておった。ところがそれは問題がある、こういうのですね。本来企業に勧告をしたものを労働者側に知らすというのはおかしい、こういうことで、結論的にはわれわれの意向が若干くみ取られて、保安委員会に提示いたしましょう、こういうことになった。しかし私は、そういう回りくどいことをしなくても、これだけ労働者の意思の反映ということをILOでも言っておるのですから、こういう勧告をしましたという写しを当然率直に組合に送付してもしかるべきではないか。こんなことをこだわるから災害が起こる。あぶないものはあぶないと指摘をする。それは隠す必要はない。ですから、これは経営権の範囲内であるとか、それは秘密であるとかいう性格のものじゃないと思う。そういったところに災害の起こる原因をかなりつくっておる。労働組合に知らせればすぐそれを直さなければならぬということで、企業だけでそれを伏せておる。こういう点は非常に問題じゃないかと思うのですが、どうですか。
  102. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 われわれといたしましては、具体的にはいま御指摘のありましたような保安委員会に通達事項はすべて報告させる、つまり保安委員会がその鉱山における保安に関する一つの討議の場であるということを考えまして、法律上はそういう仕組みにいたしております。なお御指摘の点につきましては、具体的な指導の問題になるかと思いますが、もちろん現在でも極力組合のほうとも、求めがあれば一緒に坑内を回るという指導をいたさせておる次第であります。
  103. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 時間もないようですから最後に、これは大臣がいらっしゃらないので政務次官になると思いますけれども、私は、幾ら号令をかけても、法律改正しても、坑内の保安の実態はだんだん悪化の一途をたどるのではないか、こういうように思う。第一に労働者の質、と言うと人間に差をつけるのではなはだ悪いのですけれども、保安訓練ができていない労働者を雇わざるを得ない現状になっておる。いままで長い間訓練をした労働者は、大部分炭鉱から出ていった。そこで仕度金を出して、とにかく人間さえ集めてくればいいという調子で集めてくる。そして坑内に入れておる、こんなことをしておれば、いつどういう災害が起こらぬとも限らない。これを一体政府としてはどういうように考えておるのか。経営者も困っておる。組夫は坑内の継続作業には入れてはならぬということになっておるが、しかし現実には組夫を使わざるを得ない状態になっている。それは一歩を譲るにしても、訓練をさせないでどんどん坑内に入れる、こういうことが現実に行なわれておる。それをしなければ五千四百万トン、五千三百万トンの確保ができない。これは重大な問題にきておると私は思うのです。ですから、外部から入れた者は相当の訓練期期を経なければ坑内に入れない、訓練期間はどの程度だ、そして訓練の実施状況は保安監督官が見に行って、このくらい訓練をしておればよろしい、こういうようにして入坑させるような方法を講じないと、いままでのような労働者とは違うのです。ただ人間さえ集めてきて坑内に入れば、スコップで何とか炭を掘るだろうなんという考え方で人を入れておる。そうすると、またけがが起こる。ですから、私はその点を十分考えていかなければならぬと思う。いまかり集められておる人が、全然しろうととは私は思いませんよ。やはり小山なんかにおった人が来ておるんで、案外保安について、あるいは山の経験は長い人がおるかもしれない。しかし何にしても刻々変化のある、また各山によって違う保安状態、山の勢いが違うわけですから、私は、訓練期間を強制して、そして保安監督官が現実に行ってその教育を認めなければ坑内で普通の作業はできない、こういうくらいにしないと、保安の万全を期することができないと思います。これは一体どういうようにお考えですか。
  104. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 現在の労働力不足の現状からいたしまして、各山におきまして夫訓練の労働者を採用せざるを得ないようなまことに苦しい現状でございますが、ただ一面、現在の石炭鉱山の経営困難によるところの閉山あるいは合理化閉山等によるところの余剰力をそのほうにできるだけあっせん就職せしめるという手もございますが、しかし何と申しましても、専門的な技術を要する鉱山労務者でございますので、いまお説のようなことにつきましては、現地の鉱山保安監督当局に十分に監督せしめまして、できるだけその実際の就労につきましては訓練に十分な時間を与えた上で就労せしめるというような方向に、ぜひとも持っていきたいと考えているわけでございます。現在のところ、あるいはそうした未訓練の労務者を入れている炭鉱等もまだ相当あるのじゃないかと思いますので、そういう点は特に現地の保安監督当局をして十分に調査せしめまして、今後さようなことのないように最善の努力をしていきたいと考えておる次第でございます。
  105. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 現状にかんがみまして、単に規則にあるとか、法律規定しておるということだけで、訓練せよと書いてあるからだいじょうぶだろうなんというわけにこれはいかないと思うのです。ですから、新しく来た人は少なくとも何週間なりあるいは何日は訓練期間を置け、それを現場に保安監督官が行って訓練状態を見る、そうして、これならいいだろう、こういうことで平常作業につかす、こういうふうにしないと、ただ通達くらい出しておったのではとても間に合わないと思うのです。これは局長、一体どういうように指導されますか。
  106. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 ただいま多賀谷先生から御指摘のございました未訓練労働者の訓練の確保でございますが、私どもとしても全く同感でございまして、これを具体的に教育させるということが必要だと思います。現在、先般の石炭鉱山保安緊急対策におきまして、そういう問題は必要があれば常に監督官が行って立ち会って教育状況を確保しようということを、監督局長に対しても申し渡しておるのであります。もちろんまだ先生指摘いただきますように、これが完ぺきであるというふうには申し上げられないと思いますが、そういう方向で現在監督局は保安教育の問題については特に気をつけて監督をやっておる次第でございます。なおいろいろ請負の問題につきましても、いま御指摘のございましたような方向で規制を実施する。法律上の問題でなしに実質上の規制は、これは法律の定めるところによりまして強化していくという方針でおります。
  107. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 あなたのほうの案によりますと、保安監督官というのは、いままでの仕事の三倍くらいになっておるわけです。あれもやらせます、これもやらせます、それも監督いたします、答弁ではそうなる。現実にできるのですか。人数は一つもふやさないで、そうして義務だけは、仕事量は三倍くらいにはなっておる。それは局長は上から、やらせますという答弁で済むでしょうが、現実監督官はそれだけ事務量がふえて、一体できるのですか。あなたのほうの通達の消化ができるのですか。
  108. 川原政府委員(川原英之)

    川原政府委員 二月に緊急対策を実際に行ないまして以来、具体的な監督の方法がシビアーになっておることは事実であります。これにつきまして、監督官がとても数が間に合わぬのじゃないかという御指摘でありますが、いろいろな従来の経緯にもかんがみまして、鉱山を特に重点的にやることは当然考えなければいけませんが、そういったふうな全体の各鉱山ごとの問題点を保安計画によりましてあらかじめ把握した上で、特にこの問題について突っ込んでいくというやり方をいまやっておりますので、そういう方法によりまして私は監督の強化は困難ではない、かように存じます。
  109. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 しかし、現実にあなたは部下を把握されておるから、私のほうから言うのはどうかと思いますが、それはたとえば臨検を求めるなんといいましても、あの手帳を見ればとてもだめですよ。ずっと予定が組んである。労働省関係監督署はなおそうですよ。とても、来て下さいなんと言っても、じゃ行きましょうというようなひまはないですよ。ちょっと手帳を見てごらんなさい。これはとても間に合った話じゃないんですよ。ずっと行く予定が組んであるんです。それじゃ、そんなにあぶないならひとつ行って見ましょうなんという状態にないですよ。ことに、保安のほうは少しは炭鉱の数が減っておるからという問題もあるけれども、一般労働災害の場合はとても……。現実に行く監督官というのはわずかですからね。それは事務をやっておる人とは違うのです。普通あそこで労災の保険の支払い等がある、それでわりあいに多いように感ずるけれども、一般の基準監督署の場合、現実に動ける人というのはわずかしかいないのですよ。ですから、私が現実に行ってみて、ではここの調査をして下さい、日にちを繰ってもらっても、とても間に合いっこないんですよ。私たちが行ってそうですからね、一般労働組合が行っても、とてもそれに応じて、じゃ何日に行きましょうなんということはできないのです。ですから、これもやはり足らぬ分は、そういう答弁をしないで、予算が足りませんから次には要求するというくらいまで言わぬと、幾らあなたのほうで答弁されても、現実にそれだけの仕事量を与えて、動けないような体制にしてはいけないと思います。これはひとつ次官から答弁を願います。
  110. 田中(榮)政府委員(田中榮一)

    田中(榮)政府委員 通産省側といたしましても、実は三十九年度予算におきましては、三池三川炭鉱の爆発事件その他の事故の点を考慮いたしまして、十分その監督の徹底を期するという意味におきまして相当な予算の要求をいたしたわけでございます。ところが一方におきまして石炭山の合理化閉山等で事業所がだいぶ減っておるということで、なかなか大蔵省のほうでも認めてくれません。しかし事業所の減ったことによって監督の事務が楽になったかというと、決して私はそうでないと考えております。したがって現状としましてはやむを得ませんので、やはりこの監督事務というものを、われわれ自体もひとつ事務の合理化をいたしまして、できるだけその余力を生み出して最も重点的な監督事務をやらせる、なおかつ今後もひとつ大蔵省に対しましては、現在の事故防止の点からいたしまして、監督官庁としての増員のほうは、十分われわれも責任を持って増員の予算要求につきましては引き続いて努力をいたしたいと考えておりますので、その点ひとつ御了承願いたいと思っております。
  111. 多賀谷委員(多賀谷真稔)

    ○多賀谷委員 保安の問題はやはり、石炭政策を離れては考えられないと思うのですね。ですから、ひとつ別の機会に総理に来ていただいて、それから各大臣立ち会いのもとに、今後どうするか、炭鉱をどういうように持っていくか、ことに、有沢調査団ができて、答申が行なわれて、そして現実の姿というものは、いわば五年計画が一年で完了したというような状態で、それだけにしわ寄せがいろいろな面にいっておるわけですから、ひとつそういう機会をすみやかに持っていただきたいことをお願いしまして、質問を終わります。
  112. 中村委員長(中村寅太)

    中村委員長 いま多賀谷委員のおっしゃった方向に持っていくために、近く理事だけぐらいで懇談会をして少し問題を煮詰めまして、そうして政府のほうにもこれを示して実のある答えをとるように、そのときに総理にもぜひ出てきてもらって、石炭問題の全般をひとつ締めくくりをしたい、かように考えております。御了承願いたいと思います。  これにて、本案に対する質疑を終局するに異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 中村委員長(中村寅太)

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  次会は、明後十六日土曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時一分散会