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瓜生参考人 ただいま
委員長から御
指名にあずかりました炭職協の
瓜生でございます。
初めに私
どもの所属団体について明らかにしておきたいと思います。
全国炭鉱職員労働組合協議会略称して炭職協と申しておりますが、この内部構成を大きく分けますと、炭労、全
炭鉱、前二者は御
意見を述べていただきましたが、それに
中立の三つのグループ、さらに明確に申し上げますと、
石炭大手十六社と中小で
組織しております。その特色といたしましては、
坑内外の第一線
現場におきまして直接
保安、
生産両面の指揮
監督に携わり、またはこれらの計画に参画をする係員の職能別
組織、こういうように御
理解を願いたいと思います。
まず第一の、
保安統括者制度及び
保安技術管理者並びに副
管理者等に関する
改正についてでありますが、これは相互に関連性を持ちますので、一括して申し述べたいと思います。
まず結論から申し上げますと、
改正案については
賛成をいたします。
賛成する理由といたしましては、
法律案の
提案理由の中に述べられておるところでございますけれ
ども、まず
鉱業所長とその
鉱山の
保安最高
責任者とが必ずしも一致していないという欠陥も是正をされる。第二は、
保安の最高
責任者は同時に資金、労務その他
鉱業全般についての最高の
責任者であることが望ましい、こういう二つの重要な点が、私
どもの
考え方、従来の
主張と一致をするからであります。
こうした
改正が行なわれるといたしますと、必然的に、
経営計画の策定にあたりましても、従来より以上に高い次元で
保安対策に積極的に取り組まざるを得ない。言いかえますと、
統括者の
責任制という面からもその取り組む
姿勢が高まってくる、このように見られます。いま一つは、
保安委員会の
議長を原則的に
統括者が担当することになりますので、
保安委員会の
運営もしくは刷新あるいは
委員会の論議経過等が、特に
鉱山労働者の身近な
意見についても、
統括者みずからが直接把握をする、こういう利点が生じまして、その結果
保安に関する取り組む
姿勢というものが高まってくる、こういうように期待をいたすものであります。
さて、私は以上のように
賛成をしながらも、なおかつ不安があります。その一つといたしましては、
管理機構の次元が単に一
段階上がったという形だけのものに終わらせては意味がないということと、その点は一体大丈夫だろうかというような疑問が残ります。それは
管理組織上の欠陥を追及する以前の問題ともいうべき点でございまして、はたして
保安最優先ということで
経営が対処し得る状況に
石炭産業全体が、あるいはその政策との関連も含めて、あったのかなかったのかということとの関連で、この点を
考えなければならないところだと思います。私は
石炭企業の力量とその限界意識から、
保安面が逃避する傾向の継続することをおそれるものであります。千二百円のコストダウンあるいは能率アップ、こういう問題につきましては、私たちにとってたいへんなものでございます。
合理化に次ぐ
合理化の過程で、赤字山はつぶす、こういう政策がとられますと、もう
保安的に問題を見ますと、これは決定的なものを意味します。生き抜くためには、わかっていながら無理をする、こういう
思想につながってまいります。
石炭鉱業調査団の答申は、
生産の基調は
保安であるということを強調してくれました。
政府もまた、これにこたえております。しかしながら、
政府当局の
保安財政措置等の補助政策、あるいは個別
企業に対する指導という面におきましては、あまりにも性急さが求められ、かつ指導措置が不十分ではなかったという点を指摘せざるを得ません。
炭鉱労働者の
労働条件はきわめて劣悪な状態にありますが、たとえ他産業並みの賃金に上げたといたしましても、職場の安全性、
労働者の生命の保障、こういうものが展望されない限り、
炭鉱労働者は山を去っていくと思います。私は人的側面から
保安問題を中心にいたしまして、
石炭産業の危機的要因があることをおそれておるわけです。願わくは、こうした
石炭産業の矛盾というものに再度メスを入れられまして、
石炭政策の補完策との結合
関係において、
保安統括者をトップとして
企業内の
保安対策が密着をし、実効を期し得る
体制となることを希望してやまないものであります。
次に、第二の問題であります
保安監督員補佐員に関連して御
意見を申し上げたいと思います。まず、原則といたしまして
保安目的を達成する、こういう角度からとらえてみますと、
鉱山労働者の
保安に対する意思反映のルートというものも不十分というように見られます。自主
保安の推進、なかんずく
企業内
監査というような面につきまして、
経営のかまえについても改善の余地が残されておるというように
考えるものであります。
保安委員会について申しましても、これは
労働者が
保安に関与し得る唯一の場でございますけれ
ども、その開催は月に一回か多くて二回、しかもその果たすべき機能と役割りというものをとらえてみますと、大局的な問題、いわば計画的
段階における意思反映と、
あとは同種
災害を繰り返さないという
立場からの事後処置というように範囲がとどまっております。そうして刻々変化する
現場の中で対応的な予防
保安あるいは頻発
災害という問題をとらえますと、この事前防止という面には手が届いていないと言うことができるのではないかと思います。先ほ
ども東海林参考人が申し上げましたが、
労使間協定とはいいながら、
保安委員が常駐制をとりまして
鉱山内を巡視をしておる、こういう例などは、この
委員会の持つ欠陥を補整する措置とも見られるわけでございます。
また、
保安監督員の活動につきましては、本席でまことに失礼かもわかりませんが、法が期待する方向での活動はなされていないという私
ども内部からの指摘も行なわれております。私
どもといたしましては
保安監督員センターをつくって、それから各
鉱山への派遣という
制度を
考えたらどうか、あるいは半官半民という資格を付与して
監督員の身分保全をはかるべきではないか等等について
意見もあります。このような問題に対しましても諸矢生方に御
議論願うのも意味がないとは
考えておりません。私は、
保安委員会における高い次元での
保安方針の決定と、その決定に基づく職制
機構を通した実行、その実行過程における
保安監督員のチェック、こういう活動が互いに効果的に結合することによって
保安対策は前向きで回転をしていく、こういうように
考えますが、現実的にはそうは行なわれていないというところに、
監督員補佐員の
制度化という要求も出てまいりましょうし、あるいは必然性があるといったほうが適切かとも思います。私
ども係員といたしましては、
人命保安最優先を基調にいたしまして、事このことについては非妥協という
思想で
経営活動に対しましても臨んでおります。流動的に変化する
作業態様の中で、チェックの目が拡大されるということは、未然に事故を防止し得るという成果にもつながるだけに、その本質的な意味を正しくとらえた上での今回の
補佐員制度化という問題につきましては、
賛成をいたします。
ただ、今後のこの
制度の
運用にあたりまして望んでおきたい点といたしましては、中央
協議会の
段階で討議の過程で、
補佐員の服務基準あるいは
管理体制の中における
補佐員の位置づけ、こういう問題について問題がなかったわけでもございません。これらの問題は
省令に委任をするということになっておりますけれ
ども、中央
協議会の答申にも盛り込まれておりますが、特にこの問題につきましては純粋に
保安確保の
立場から
運営される、いやしくも
保安に名をかりて
経営への介入をするとか、
労使闘争の具に供しない、また
鉱業権者側といたしましては、
現場労働者の身近な声を積極的に
保安面に反映する、こういう基本的な基調が十分尊重されなければならないというように
考える次第です。以上、
法改正点に限りまして御
意見を申し上げましたが、さらに
保安対策の一そうの充実を期すために二、三
意見を述べさせていただきたいと思います。
第一は、
保安委員会の正常かつ効果的な
運営という問題についてでございます。時間の制約がございますので要点だけを申し上げますと、
保安委員会が形式的に開催されるというような取り組み方では意味がないということを率直に申し上げるとともに、またそのような態度あるいは
運営とが関連をしますと、まことに雑な言い方でございますが、
保安委員会頼むに足らず、そして
保安団交優先という結果をもたらしておるという側面も重視しなければならないということを
考えるわけです。結論的には、
保安問題につきましては
労使が超党派の
立場で共同して対処する、こういう
決意と
体制が確立されることを希望してやみません。
第二の問題は、今次
法改正によって
管理体制の強化が行なわれようとしておりますが、このことは、必然的に
現場を担当しております係員についても、その職務が円滑に遂行できる
体制に整備される必要があると思います。その理由の一つといたしましては、
管理密度上の問題があります。
坑内保安係員一人当たりの
管理密度の強度率を私
どもで調べてみますと、
昭和二十八年を基準にしまして三十七年を対比いたしますと、一・八九倍強まっています。約二倍、強度率が拡大をしております。それは三十七年との比較ですから、三十八年、三十九年というその後の
合理化の推移、あるいは
昭和三十七年度を一〇〇としますと、四十二年度では能率は八割も引き上げられる、こういう
合理化の構想から推定をいたしましても、非常に問題のある点ではないか、
保安的に見ても問題のある点ではないか。こういう傾向につきましては、係員の
現場における指導能力を弱めますし、日常
現場での
保安指導あるいは
監督という面に間隙を生じて事故、
災害を起こす、こういうことを私
どもはおそれるわけです。
その二といたしましては、
責任遂行上の問題に関連をしますが、
保安管理者あるいは
保安監督員、こういう上級
保安技術職員における従来まで果たしてきた役割り、権能、こういうことは先ほど申し上げましたような実情にございます。まして一般係員のそれは、職制
機構の中でよほどの
決意と態勢とがなければ没入をしてしまうという危惧もあります。なお
加藤参考人も申されたところですが、職責権限の明確化という問題と関連して、係員は結果的
責任の矢面に立たされておるというような実情でございます。私
ども係員といたしましては、人の命を預かっておるわけでございまして、権者からの分掌事項あるいは係員固有の
責任については、あくまでも
企業の内外で体現をしていく、こういうかまえでございますが、今後の
規則改正にあたりましても、そういう面の御配慮を
お願いしたいというところでございます。
第三は、
保安教育についてさらに強調いたしたいところであります。現在のような状況の中で、
技術革新と呼ばれますが、日進月歩、採鉱
技術自体も進歩しています。
企業の行なう
保安教育は、十分とは言えない
実態にあります。
保安教育センター等を拡充強化していただいて、国による再教育
制度特に係員の再教育という問題について、必要であるというように
考えます。
第四の補足
意見といたしましては、国による
保安監督の強化が、
三池事故以来非常に強められています。そのことはきわめてけっこうであり、歓迎するところであります。それらが実行に移し得る
体制というものについて、たとえば
保安監督官の増員とか、あるいは待遇の改善、こういうものがなければ、こうこういたしますということが作文倒れになるおそれもある。そういう面について十二分に解明をしていただきたい。さらに、率直にこの
委員会で御
意見を申し述べさしていただきますが、特に先ほ
ども法に合致する
炭鉱云々ということで
東海林参考人が指摘されたところと関連をいたしますが、特に
監督の強化とあわせて、中小
炭鉱の場合をとってみますと、それについていけない。それはやはり
保安的な財政融資等の措置が並行的に進められることを意味しています。
最後といたしまして、
保安と
生産との一体的な
姿勢というものが、国策的に進められる必要がございます。端的な問題提起をして恐縮だと思いますが、
石炭鉱業審議会、これは
石炭産業の整備あるいは
生産計画等を論ずるところでございまして、もちろん
保安問題についても論議がなされておるというように判断をいたしますが、私
どもの
考え方からいたしますと不十分である。特に
石炭審議会の中に、なぜ
保安部会というものが独立してないのかという気もいたします。
保安部会等を審議会に設ける。一方においては法、
規則の
改正の場である中央
協議会との提携強化という形で
保安対策上の解明がなされて、そこから
生産計画あるいは
合理化計画という基本的な計画が提示されるのが至当ではないか、こういうように私
どもは
考える次第です。特に先ほ
ども若干触れましたが、
保安上の財政措置等を含めまして、この際
石炭対策について全体の再検討を
お願い申し上げまして、あわせまして本法の
改正について一日も早く成立されることを望みまして、私の
意見を終わりたいと思います。(
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