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1964-04-20 第46回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十日(月曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 上林山榮吉君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 中村 重光君       澁谷 直藏君    壽原 正一君       塚田  徹君    中村 幸八君       橋本龍太郎君    藤尾 正行君       三原 朝雄君    沢田 政治君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局石         炭課長)    佐伯 博蔵君     ————————————— 四月十八日  委員木村守江辞任につき、その補欠として西  岡武夫君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員周東英雄君、野見山清造君及び岡田春夫君  辞任につき、その補欠として橋本龍太郎君、塚  田徹君及び沢田政治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員塚田徹君、橋本龍太郎君及び沢田政治君辞  任につき、その補欠として野見山清造君、周東  英雄君及び岡田春夫君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 四月十六日  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五二号)  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  まず、去る四月十六日付託になりました内閣提出鉱山保安法の一部を改正する法律案を議題とし、政府提案理由説明を求めます。     —————————————     —————————————
  3. 中村寅太

  4. 福田一

    福田(一)国務大臣 鉱山保安法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  労働者の人命の尊重は、申すまでもなく何よりも大切なことであります。このため、政府といたしましては、これまでも鉱山保安確保につきましてはできる限りの努力を払ってきたところであり、この間において、鉱山保安の状況は漸次改善されてきているのでありますが、鉱山、特に石炭鉱山における重大災害の発生はなおあとを断たず、特に昨年十一月、不幸にして三井三池炭鉱におきまして多くのとうとい犠牲者を生じましたことは、深く遺憾とするところであります。  政府といたしましては、今後このような大災害を再び繰り返すことのないよう保安監督の強化、保安教育の徹底、保安融資充実等を中心として鉱山保安行政を一段と強化したのでありますが、鉱山保安に関する法規につきましては、鉱山における保安確保の基礎をなすものでありますので、特にその万全を期すべく、鉱山保安法改正及び運用の各般にわたりまして、各界の専門家からなる中央鉱山保安協議会に慎重な検討をお願いいたしておりましたところ、今回保安管理組織整備等、当面法改正を要すべき事項につきまして答申を得ましたので、本答申に基づいてこの法律案を提出することといたしました。  改正の第一は、保安統括者制度を新設する等、鉱山における保安管理組織を整備したことであります。  現行法におきましては、鉱山における保安管理体制の頂点に立つものとして保安管理者及び副保安管理者制度を設けているのでありますが、これを技術的有資格者に限定しております関係上、鉱業所長とその鉱山保安最高責任者が必ずしも一致しないといううらみが生じてまいったのであります。もとより鉱山における保安責任者は、同時に資金、労務その他鉱業実施全般事項についての最高責任者であることが望ましいのでありまして、このため、この際新たに保安統括者制度を設け、鉱業所長鉱山長等をもってこれに充てることとし、さらにこれを技術面から補佐するものとして、保安技術管理者及び副保安技術管理者制度を新設し、保安管理者及び副保安管理者制度は廃止することとしたのであります。  改正の第二は、保安監督員補佐員制度を新設して鉱山における自主的な監査組織を整備したことであります。  鉱山における自主的な監査組織といたしましては、現在保安監督員制度が設けられておりますが、災害、特に日常発生する事故の未然の防止をはかりますためには、現場に働く鉱山労働者保安に関する意見がこの監査機能にさらに十分に反映することが望ましいと考えられるのであります。このことが今回保安監督員を補佐するものとして補佐員制度を新設し、その一人は鉱山労働者の過半数の推薦により選任させることを企図いたしました理由であります。  以上二点がこの法律案改正要旨でありますが、この法律改正と相まちまして、さらに石炭鉱山保安規則等関係省令についてもその整備充実をはかり、鉱山保安行政の万全を期してまいる所存であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願いいたします。
  5. 中村寅太

    中村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 中村寅太

    中村委員長 次に、石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭対策基本施策について質疑の通告がありますので、これを許します。伊藤卯四郎君。
  7. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 私はこれから五、六点質問大臣にいたしたいと存じますが、私が質問をしてまいります内容については、大臣自身ももう耳の穴にたこが寄ったというほど各同僚から聞かされておられるわけでございます。私もまた同じようなことを繰り返して言わなければならぬことは、実ははなはだ遺憾に思っているわけです。ところが、どうも具体的にその実行政府側として行なっておられない。どうも国会答弁はその場限りというようなこととで、一向に国権の最高機関である立法の府の私ども意見というものを、忠実に行政のほうが取り上げてやっておられないというような点から、実は再度また質問を繰り返すという点も多々あります。この点ははなはだ私は遺憾というか、残念に思っておるわけでありますが、さらにきょう質問をいたしますから、それについてできるだけ大臣はやはり責任を持って、また実行のできるかできないかということを相当明確に、ひとつ行政の府をわれわれに信用さすためにも私は、ひとつそういう考えに立ってこれからの私の質問に御答弁を願いたいということを要請をいたしておきます。  第一に質問をいたしますのは、これは昨年の通常国会のときであります。それからまた本国会においてもでありましたが、池田総理にこの二回の国会にわたって出席を願って質問をし、総理大臣から答弁を得た案件でありますが、それは、総合エネルギーを調整するために強力な国家機関をつくって、エネルギー界混乱を防ぎ、あるいは数量、価格、そういうものの安定をはからなければ、この混乱を救済する、解決することはできないぞということについての私の意見でありました。それに対して福田通産大臣も、昨年の通常国会のときにも、これは雑談まぎれでありましたけれども伊藤さん、あなたは総理から一本とったぞというようなことをおっしゃったような気がいたします。そのとき総理もやはり、それが必要であると思うから、そういう機構つくります。こういうことでした。一年たってもそれが明らかになりませんので、本国会で先日再度池田総理質問をいたしましたところが、近くつくってお手元にお渡しをいたします。それを見てください、こういう御答弁でした。そこで、これは池田総理がおつくりになるわけではございませんので、やはり福田通産大臣手元においてつくらされるわけでございます。総理が二回にわたって、そういう責任ある答弁をされておられる。しかもそれは福田通産大臣もお聞きになっており、また政府委員の各位もそれをお聞きになっておることでございます。ところが、間近くということを言われておったのですが、一体いつごろまでにそれをおつくりになって、私どもにそれをお渡しになるのか、また対社会にもそれを御発表になるのか、そのことについてひとつお伺いをし、それからこれは別に秘密を要することでもありませんから、どういう構想のもとにそういう機構をおつくりになって、これならば大体エネルギー界混乱を防ぎ、安定を維持して、産業生命というか心臓部的役割りをつとめるエネルギーに対するところの万全の処置をなし得るとお考えになっておるか、そういう構想等もあわせてこの機会にひとつはっきりお聞かせを願っておきたい。
  8. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは、伊藤さんからそういう御要望のあったことは了承いたしておるのでありますが、御案内のように通産省におきましては、産業構造調査会というのがございまして、産業の各部門がいろいろございますが、その中においてエネルギーが占める重要性にもかんがみまして、エネルギー部会というのをつくりまして、そのエネルギー部会の中において石炭、電力、油あるいは原子力等々を含めまして、今後どういうふうに政策を持っていったらいいかということを十分に御審議を願いまして、その結果昨年末に答申が出たわけでございます。ところが、この調査会期限が、もう答申は全部出ましたが、この期限も切れてまいりますし、そういうこともございまして、われわれといたしましては、今回は産業構造審議会を起こしまして、そうしてその中において産業に関するあらゆる問題を検討いたしたい、大体十一ぐらい部会をつくる予定と考えておるのでございますが、もちろんそのうちには、エネルギーに関するものもこれをつくる考えであります。   〔委員長退席上林委員長代理着席〕  私は、伊藤委員の言われる意味は、産業の中においてもエネルギーは特に重要性があるから、そういうような産業構造審議会と相対するぐらいの委員会一つつくって、そうして十分な研究調査を進めるべきではないか、こういう御意見かとも承っておるのでございますが、これはいろいろ考え方のあるところでありまして、エネルギーも大事でありますが、エネルギーとたとえば鉄鋼なら鉄鋼造船繊維等々の産業が一体どう結びついていくか、また、これらのものが相関的にどう結び合うかということも非常に大事だと思うので、こういうものを総合的に、各部会関連性を持ちながら、産業構造全体をりっぱに育てていくというやり方一つ考え方ではなかろうか。その中において、いわゆるエネルギー部会等におきましては、伊藤委員の言われるような重要性も十分認識いたしまして、これが十分なる組織と活動ができるような措置をとるつもりであります。人選等についても、特に十分われわれとしては配慮をいたしつつ、相当重点を置いてこの部会をつくってまいりたい、このようにいま考えておるところでございます。
  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 いま大臣の御意見を伺っておると、産業経済のそれぞれ種別をされたそのうちの一つとして、それの中にエネルギーのそういう調整する国家機構というか、そういう機関つくりたいということを言われておるようでありますが、御存じのように、エネルギーの原動力なくして産業の動くものは一つもないのです。でありますから、このエネルギーというものが日本産業経済にとって心臓部的また生命的役割りをつとめておることは私の申し上げるまでもない、それほど重要なものでありますから、それぞれの種別産業に関する機関をおつくりになるという全体のことより、むしろこのほうが重要であることは、お考えになればこれはわかることであります。  そこで、昨年の国会から今国会までというと一年、池田総理が私に確約をされてから一年たち、それからこの間のときには、いま申し上げるように、近くあなたの言うなにに対してそういうものをつくってお見せします。こう言われておるのですが、いま福田通産大臣の御意見を伺っていると、まだかなりのろのろとしておるようですが、エネルギーのそういう機関をつくる重要度と、それから大体いつまでにそれを責任を持って政府としてわれわれ国会側に、あるいはまた対社会にこれを明確にされるつもりであるか。というのは、たとえば一昨年つくった石油業法だって、政府がせっかくわれわれにつくらせておいて、この法律の成果は行政的に一つもあげていません。私この間政務次官の答弁を伺っておったところが、あれはざる法でございまして、とか言う。一体ざる法というようなものをわれわれに提案をし、われわれに審議、議決をさせておいて、そうして今度はこれを受け取って行政的に執行しなければならぬ責任者が、あれはざる法でございましてというようなことを言うことは、これは国会側に対してもはなはだ無責任じゃないか、また行政への信頼ということもできないのじゃないか、こういうこと等も考えます。それらをいまここで追及しようとは考えませんが、そういうこと等もあるわけでございますから、いまの点についてもう少し明確にしていただきたい。
  10. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、総理がどういう御返事を国会においてなさっておられたか、過怠にしてつまびらかにいたしておりません。したがいまして、総理とも十分まだ連絡をとらしていただきまして御答弁を申し上げるほうがいいのではないか。もとよりあなたのおっしゃるような意味で、エネルギーに関するものについては、特にエネルギー産業全般に占めるウエート、エネルギーなくして産業を論ずることはできないということはよくわかります。たとえば繊維がなくても鉄鋼は育ちます。あるいはまた造船はやれるわけであります。しかし、エネルギーがなくちゃこれはできない。これはよくわかるところであります。したがって、エネルギー重要性というものはよく認識いたしておりますが、しかし全般としてみな相関性を持っておりますので、われわれとしては一応そういう審議会をつくって調査をいたしたいと思いますが、その中においてもエネルギーの問題については特に重点を置いて問題を解明し、また計画を打ち立て、さらにまたこれを実行に移すくふうをいたすように考えておる次第でありますけれども、われわれとしては、要はこれが実効があがって、いま委員が言われるような目的が達成せられるようには、もちろん努力をいたす考えでありますが、そういうようなエネルギー対策特別審議会とか委員会とかいうものをここでつくるべきであるかどうかということについては、いましばらく時間をかしていただきたいと思うところであります。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうもくどく質問するようでありますけれども総理大臣が、福田通産大臣お聞きであったように、あれほど明確にお答えになり、この間の今国会でも、近くつくってお手元にお渡しして見ていただきます。こういうことを非常に明確におっしゃったのです。しかも総理大臣がです。それが、いま福田通産大臣に伺っておると、どうもだんだんぼやけてきて、何だかはっきりしないようになってきますが、そういたしますと、私はどうしてもこれは池田総理を呼んで、あなたの非常に強い答弁福田通産大臣答弁との間においてはどうも非常にこれはぼやけてきてしまっておるようだが、一体どうなんだということを聞かざるを得ないということにもなりますが、一体およそいつごろまでにあなたのお手元でそれがつくられて、私どもにそれを見せていただくことができるか。総理大臣は近くと、こうおっしゃっていたのですが、それをひとつ。私はそうむずかしいことは言いませんから、大体においていつごろまでに見ていただくことができるだろうと思いますというくらいのことは、御答弁できないことはないと思う。私がなぜそういうことを言うかというと、総理大臣答弁をして一年たっておるのに、どうもいま伺っておるとぼやけてきておるようだから、いよいよもってその辺のところをもう少し明確に聞いておかぬと、やはり立法の府の者として、行政の府との間に信頼できるかどうかということ、また立法の府の者に対して行政の府の者が、どれだけ責任を持ってやろうとしておるのかどうか。そういう点は、立法の府のわれわれとしては非常に重大な問題ですから、重ねてその点をもう一回お聞かせ願いたい。
  12. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほどもお答えをいたしたのでありますが、私がなまけておるために、連絡総理から十分に受けておらない面もあるかと存じますので、よく総理とも御連絡をいたしまして御答弁申し上げたほうがよろしいのではないかと、先ほど実は申し上げたところであります。ただ、目的を達するという意味では、伊藤委員の言われるような趣旨のものは、すでに官制で審議会を設置することはきまっております。予算等もついておりますので、私はこれは早急に設置をいたしたいと考えておるところでありますが、五月中にはつくりたいと考えておるところでございます。その中において委員の言われる趣旨のことを十分半かすように措置いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 次に、エネルギーの量の問題について、それからそれぞれの分野の位置づけというか、そういうことについてでありますが、これは大臣すでに御存じでありましょうが、昭和四十七年、というといまから七、八年後になりますが、そのころになりますと、エネルギーは現在の二倍に増加するということを、これは政府側のほうでも明らかにされておるようでございます。  現在エネルギーか消費されておる量は、石炭に換算することが一番早わかりすると思いますが、七千カロリーの石炭として、現在二億二千万トンに該当するくらいのエネルギーが使われておるということが言われておるようであります。それが昭和四十七年になると、その二倍、四億五千万トンに該当するエネルギーが消費されるのではないかということでございます。これはそれだけ日本産業経済がそれこそ倍増していくことでありますから、まことに喜ばしい次第でありますが、そういうようにエネルギーが増加をしてまいりますのについて、一体この組み合わせの問題、あるいは油をどのくらいにするのか、あるいは石炭をどのくらいにするのか、あるいは火力、水力をどのくらいにするのか、あるいは可燃性天然ガスをどうするのか、あるいは原子力問題等もありますけれども原子力の問題は、大臣御存じのように、いまちょっと行き悩みの状態になっておる。そうすると七、八年後のことでございますから、私はそう遠い夢を言っておるわけじゃありません。きわめて現実的であります。これが年々増加していくわけでありますが、そこで石炭数量、その位置づけの問題については、一向これはふえるようなものが出されてない、また考えられていないように私は思う。そうすると、一体この倍増していくエネルギー需要増を、何を一番増加させようとしておられるのか。多分油の問題だろうと私は想像しますが、さて油の問題にしましても、これは国内では、御存じのように、かなりやられておるけれども石油のほうはなかなか思うように生産ができない。可燃性天然ガスのほうは予想以上に発見されていきつつありますが、これとて全体量のふえていく点から見ると、国内における石油天然ガスはたがが知れています。そうすると、石炭の問題を一応取り上げざるを得ないということになります。たとえば水力だって、もうたいていのところはやってしまっておりますし、これからやるということになると、小さいか、非常に高い金がかかって、採算上非常に高いものになるということは、これは明瞭に出ております。そうすると石炭のほうは、老朽化したところもありますけれども、まだ今後無限大と言ってもいいくらい埋蔵量があります。特に海岸線に向かってあるということは、大臣もお聞きになっておられるところだと思う。ところが石炭のほうはその数を五千五百万トンと論じられましたが、政府はせいぜい五千二百万トンくらいじゃなかろうかという腹があったものだから、一向ビルド増産対策を立てておられなかった。そういう点から実はこの三十八年度はむしろ石炭はある意味において足らなくなってきておる。そこで足らなくなったものを、三池災害が起こったからと、そういうことでお茶を濁してしまおうとしておられるが、そういうことははなはだこそくなやり方であって、政府自身が五千五百万トン以上要るなと思えば、その目的を達成するために、私はやはりビルド対策というか、今後開発あるいは残る山、そういうものに対する増産対策というか、そういうものを立てられる必要があると思う。そこでいま私が申し上げた、このエネルギーが七、八年後に倍増する、これに対して一体どういうような組み合わせを一応お考えになっておるのか。当然組み合わせがあると思います。でありますから、これはいますぐといっても大臣もお困りになると思うが、一応のお考えと、それからどのエネルギーをどういうようにふやしていくのかということは、これはひとつ資料をおつくりになって、そうして一応の組み合わせの倍増の計画をひとつ資料でお出しをいただきたい。  そこで一応大臣として、いま私がお尋ねした問題についての構想というか、その考え方についてお聞きかせを願いたい。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま伊藤委員からもお話がございましたとおり、エネルギーといえば石炭電気、油あるいは原子力、こうなるでありましょうが、原子力の問題は、伊藤委員もおっしゃったとおり、そう急速に安定しかも廉価なエネルギー源として利用でき得るかどうかということは、まだ問題が残っておるやに聞いておるのであります。  そこで、さしあたりの問題としては石炭電気、油、こう三つがおもな柱、三本の柱となるわけでありますが、日本におきましては、石炭は御案内のようにスクラップ・アンド・ビルドという方式をとって、四十二年をめどとして安定して、しかも相当廉価な、安いといいますか、安いというとおかしいが、高くならない、現在の値段を基準として、精炭にして五千五百万トンの石炭を掘り出す、これができた暁においては、石炭産業自体も相当いわゆる生産性の高い産業になって、ここに働く人たちにも相当な高賃金が支払い得るような産業になるということを目途として、ただいまいわゆるスクラップ・アンド・ビルド計画が進行いたしておる段階であります。これを四十七年度——四十二年度から五年たった後を目途として考えた場合に、この五千五百万トンでいいかどうかという問題がここに出てくるわけでありますが、これは、私は石炭の場合においては、ようやくいま業半ばといいますか、スクラップ・アンド・ビルドが大体進んでまいりまして、見通しがつきつつある段階でありますから、この段階から調査を始めまして、そうして四十二年、あるいは四十二年を待たず四十一年ころからでも何かここに新しい施策を展開する必要があるかどうかということは、われわれとしては十分研究をいたさねばならないところであると考えておるのであります。  したがいまして、今回も通産省としては、欧州並びにアメリカにおける石炭産業あるいはエネルギー問題等研究するために、調査団を派遣をいたしまして、約二カ月にわたってその調査を行なってくるように依頼をいたしておるわけでございます。これらもそういう含みを持って、ただいま伊藤委員が仰せになったような、いわゆるエネルギーというものを今後どうしていったらいいか、そのうちにおいても特に石炭をどう見ていったらいいかというようなことを、欧米各国実情等もにらみ合わせながら研究を進めるという第一歩をここに踏み出したと御理解を賜わってけっこうだと思うのであります。  一方、今度は電力でございますが、電力のほうは、仰せのとおり、水力発電はもうすでにある程度限界にきておりますが、それでもなおかつピーク時の電力をいかにして供給するかという観点に立ってものを考えてみますと、どうしてもまだまだ水力の開発をしなければならない。また開発し得る地域がまだある程度——これは人によって意見が違いますが、私は千万キロくらいはまだできるんじゃないかと考えておるところでございます。こういう開発を順次進めてまいらねばならないと考えております。  一方火力でございますが、火力発電といえば、これはすぐ石炭と結びつき、油と結びつくわけでありますが、こういう場合におきましても、石炭の問題がここにクローズアップされてくるわけでありまして、たとえば外貨が非常に不足をいたすというような段階において、いわゆる外貨の支払いを節約するというような観点に立ちますと、できるだけ国内エネルギー資源を使う方途を講ずる必要もあるわけであります。われわれとしては、ただいまのところは輸出を強力に押し進めることによって、いわゆる外貨事情の悪化を防ぐと同時に、日本の外貨を一定数量で安定させ、さらにその上に上乗せていくというような方向に持っていきたいとは思っておりますが、しかしなかなか問題はそう簡単ではないので、外貨節約ということが一つの大きなテーマとなっておるその観点から考えてみると、今後はいわゆる石炭を火力に使い、そして電力に変えてエネルギー源として使うというくふうは、一そうこれは強力に進めなければならないという意見もあるわけでございます。こういう点を考慮しながら、火力発電の問題もまたわれわれとしては考えていかなければなりません。もとより油を使いますれば、現在の石炭を使うよりは安い電力を得ることができますけれども、しかし何か事故があるとか、大地震があったとか、あるいは何かの変動があったというような場合に、あるいは昔あったようなスエズの運河の問題が起きたとか、あるいはパナマの運河に問題が起きたというようなことがありますと、これはエネルギー源を大きく油にたよっているということが、非常に一時的なショックを国の産業に与えるというような事態も考慮しなければなりません。したがってある程度はこれは国内資源、いわゆる国内エネルギーにたよらなければいかぬ、こういう観点からものを考える必要もあるかと思われるのでありまして、外貨の問題あるいはそういうような一時的な不幸な事態も考慮しながら、ある程度石炭に依存するという問題も考慮しなければならないことかと存じておるのであります。  一方、油の問題でありますが、油のほうはこれは国内の油というものは非常に少ない。わずか百万キロリットル前後しかできないわけでありますが、必要量はぐんぐん伸びている。いまに一億キロリットルになるだろう、いまは四千五百万キロリットルとか五千万キロリットルとか言っていますが、これが倍増する状態になっている、こういうわけであります。そこで民族系の資本が出てまいって開発をいたしておりますアラビア石油、これがわれわれの見るところでは千五百万キロリットルくらいまでは近々のうちに増産することができるであろうと考えるのであります。しかし、これがたとえ二千万キロリットルになったと仮定いたしましても、もし一億キロリットルの油が要るということになった場合には、これはわずかに二割にしかすぎない。国内のものはほとんどふえないでありましょう。私はいかなる場合においても、われわれがコントロールできるといいますか、資本の関係においてコントロールができるなり、あるいは何らかの方法において強力にコントロールできるような油が、量のうちで三割は持ちたいものだ、こう思っておる。そういう点から考えてみますと、いまの民族系が影響力を持っておる油というものは、まだ三割には達しておりません。こういうことを打開するためには、もっと海外において日本の民族系の会社が出ていって仕事をし、油を掘ることが必要である。こういうような意味で、今年度の予算におきましても、それらの措置をいささか講じてまいったつもりであります。  こういうことを考えますと同時に、一方においてはこの油の問題では、配給機構問題等考える必要がいささか起きておるのではないかと思っております。それは大きい油の会社は、そのような販売機構を持っております。ところが小さい民族資本といわれるような会社は、販売機構が十分に備わっておらないというような状況でありまして、これが石油行政をやっていく場合において一つのネックになっているように、私は最近の実情から見て考えておるのでありまして、何らかの販売機構を整備することも必要であるかと思うのであります。  一方、外資が入ってくる会社、いわゆる外資による石油会社というものについては、私は必ずしもこれを頭から否安してかかる必要はない。これからは日本は開放経済体制になるのでありますから、日本自体も海外へ投資をする必要があり、海外からも日本に資本が入ってきても、それが有害でなければ、日本産業に対して悪影響を与えるという明らかな事態が出てこない限りは、私はそういうものをチェックする必要はないのではないか、こういう考えで見ておるわけであります。もちろん油につきましてはまた設備の問題、その他いろいろの問題が含まれております。その既設の会社をそのまま育成して、一億キロリットルと倍にもふえるときに既設の会社だけでこれを供給させる姿がいいかどうか、こういうような問題も今後は一つのテーマになってくるだろうと私は考えておるのでありますが、いずれにしましても、石油いわゆる油、電気石炭、これらを総合しながら、日本産業の発達に伴って十分にして、しかもできるだけ安いエネルギーを供給するような方途を考えていかなければならないと存じておる次第でございます。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 いま大臣の御意見を伺っておりますと、かなり油の海外開発ということについて関心というか、重要視しなければならぬというふうに受け取りましたが、御存じのように、いまアラビアにおける油、それから最近はスマトラ、あの方面における開発も、全部外国の資本によって開発されたものを買っておるわけです。いわば請負掘りを向こうにやらしておるということでありますから、かなりそういう請負掘りをやっておる外国開発会社というものは利益をあげて、その上前を相当はねられてそれを持ってくる、こういうことになっておるわけです。   〔上林委員長代理退席、委員長着席〕 一般の人々はスマトラ、あっちのほうに最近日本がだんだん出ていこうとしておるというが、それはすべて英国資本といいますか、いわゆる向こうの開発会社がやっておる、それに技術屋というか、そういうものを日本から貸してやっておるというか、働きに行っておるというか、調査をしておるというか、そういうことでありますが、いま大臣も積極的な意見であるということになりますと、今後の海外における油の開発というものは、その国の政府日本関係会社というか、そういうところとの間において、あるいは鉱区開発それから技術、資本一切を日本の力でみずから開発して、その油をこっちへ持ってくる、そういう計画をもって今後相当思い切ってやる、こういうお考えですか。その点をひとつ。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、国内にある資源であれば相当われわれの自由になりますが、外国との関係においてやります場合には、いま先生が言われたような方法によるのも一案ならば、アラビア石油のような方途による場合もあるでしょうし、あるいは外国の石油会社と協力する場合もある、いろいろの方法があると思いますが、いずれにしても、われわれが直接間接にできるだけ関係をするというか、協力の体制において日本側のわれわれの影響力が及び得るものをできるだけ多くしたい、こういう考え方でございます。
  17. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 なお引き続いて伺いますが、これも昨年の通常国会のときに、池田総理が私に対する答弁で明確に発言されておる。これは福田通産大臣も御一緒でしたからお聞きになっておられたわけでございますが、つまり産炭地振興等の問題に関連をして、産炭地に火力発電をつくるということです。それについて現在の電力会社が、産炭地につくられては困る、揚げ地発電にしてくれということの強い意見が出てきました。結局政府は板ばさみみたいになってしまって、どうすることもできないということで産炭地火力発電をとりやめたわけであります。そこで私が質問をいたしましたのは、結局は、産炭地に火力発電をつくったのでは、現在の送電線の程度ではこれを送電しかねる。よって、今後産炭地に火力発電をつくるということになれば、その送電をするところの超高圧線をつくり上げなければそれは送れない。それは現在のつまり民間資本によるところの九電力会社では、とてもようやり切らぬ。産炭地に火力発電をつくるということは、確かに経済的でもあるし、また便利でもある。しかしそれには、その電力を送るということについて超高圧線工事というものをやらなければならぬ。ところが、これは膨大な金がかかるから、現在の九電力会社ではとてもこれをようやり切らぬ。そこで私は、その超高圧送電というものは国が——たとえばいま青森から下関までというか、つまり日本の山脈地帯に最近は盛んに道路を建設されておるわけです。ああいう高速道路というものがどんどんつくられていっておりますが、これはある意味においては輸送を解決し、またその地方を開発するという意味において役立つものだろう、こう思っております。私は超高圧送電線をつくるということは、国が国道線をつくると同じ考え方で、国の予算をもって超高圧送電線を建設をして、それから産炭地において、国家機関であるところの電源開発会社に思い切り火力発電をやらして、この超高圧送電線をもって需用地に向かって電力を送る。それを現在の電力会社に配給というか、これを売る、こういう形をとるということになれば、この問題の解決が最もできやすいのじゃないかという意見池田総理にお話しをしましたところが、池田総理は、伊藤さん、それは私が通産大臣をしておるときに考えた案ですということで、非常にわが意を得たりとばかりに池田総理も賛成をされておりました。そこで、伊藤さん、その問題はひとつ私のほうでも大いに研究をして何しておきます。こういうことを答弁をされております。だから、これは池田総理みずからやられるわけではなくて、私はやはりこれも福田通産大臣手元においてその案をおつくりになる以外にはないと思うのですが、そういうことについて、池田総理がそういう答弁をされておりますし、それから大臣もお聞きになっておられたししますが、その後この問題の解決について、どういうようなお考えを、総理大臣から指示されておつくりになるというか、あるいはその構想をお持ちになっておるというか、何かそういうことについてそれを進められておりますかどうか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは池田総理もお考えになっていられるでありましょうが、電気を勉強してみますと、電力をむだのないように使う、むだのないように開発する、こういう意味からいいますと、どうしても超高圧送電線の問題を考えざるを得ないわけでございます。ただ、そこで問題は、超高圧送電線で二つの問題がある。一つは、非常な金がかかります。御案内のように、建設するという場合に非常な金がかかります。それだけ金のかかるものを国の財源がどの程度許すか、こういう問題が一つあるわけでありまして、青森から九州までつなぐ送電線ができればこれはまことにけっこう、私ももろ手をあげて賛成でありますが、これには何千億という金がかかるのであるまいか。私、計画を具体的にしたわけでありませんが、九州と大阪を結ぶだけでも二百何十億という金がかかると、たしか計算をいたしたことがございます。そうすると、やはり相当な金がかかる。それに見合って利益がどれくらい出てくるかということになると、まずさしあたり問題になるのは、九州と大阪をつなげばある程度効果がある。いま伊藤委員も言われたように、九州は産炭地でありますから、産炭地発電をやるということであれば、九州で発電する、九州ではそれだけの電力は消化できませんから、これを関西に持ってきて消化するということになれば、九州と大阪との超高圧送電線をつくるということになる。ところが、それをつくるには非常に金がかかる。しかも、その金を出してどれだけの利益があるかということになると、やはりまだ揚げ地発電のほうがよろしい。それをつくらないで、一応ある程度有利なところまで持っていって、そこで発電したほうがよろしい、こういう案がよかろうということでございまして、今度御案内のように、電発に火力発電を行なわせる、揚げ地発電を行なわせる、こういうことにしたわけであります。したがいまして、今後、私は何といっても、技術の面から見ても、日本の狭い国土が一体になってあらゆる産業をうまく運営していくという観点から見ましても、超高圧線、いわゆる四十万ボルト以上のものをつくる必要があると考えでおるのでありまして、これは今後とも国の財政の許す限度を見ながら、われわれとしては強力に推し進めていかなければならない政策の一つである、かように考えておるところであります。
  19. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 いま大臣の御答弁を伺っておると、私の申し上げておるのにちょっと誤解があるようでありますが、私が青森から九州まで云々と言ったのは、山間地帯に国道線をつくろうという話が進み、またそれがそれぞれ、部分的でありますけれども、どんどん進められておる。いわゆる僻地の山間部の開発と、それから輸送を便にするという一つのものが国の力でやられておるわけであるから、それと同じように、産炭地において火力発電を起こして、それを大口需用地に向かって超高圧送電で電力を送るということを考えると、むしろ超高圧送電というものは、これは国としては、国土開発のために山間地帯に国道を国がつくっていくと同じような考え方に立ってやるべき国の仕事ではないか、こういうことを私は言ったわけでございます。大臣がいま言われたように、産炭地区から大口需用地に向かって、この超高圧送電線を敷いて送って、それを現在の電力会社に売る、これがその地区の工業を一そう盛んにするというために必要であるということは、これは私どもも同感でございます。これは今後の大きな問題でございますから、これ以上私の考えを述べましても、これはあまり無理を言うというか、考えが違うという問題も出てきますから、これはこの程度にしておきます。  そこで、私が次にお伺いしようとしておるのは、この間私は大橋労働大臣の御出席を願って質問をいたしました。そのとき福田通産大臣もおいでを願えば非常によかったと思いますが、ちょうどそのときに大臣は参議院のほうか何かの御都合でおいで願えませんでした。そこで私が、炭鉱から中堅以下の若い諸君がいなくなってしまう、これがいま残っておる炭鉱の大きな悩みである、いまのままであれば、炭鉱は人的に老朽、老廃してくる、山はビルド山として大いにやろうという意気込みを持っておっても、大切な働く人々が老朽、老廃化してきてしまう、この問題を解決しない限りにおいては、ビルド山の名に値する若々しい炭鉱というものにはならぬぞということについて、私は、たとえば炭鉱の特殊な危険作業に対する最低賃金の問題、あるいは月々の所得、収入の問題、あるいは都会地よりもむしろ炭鉱のほうが暮らしやすいというようなことで、かえって希望を持って炭鉱にも就職希望者がふえてくる、あるいは自分の子供も炭鉱で働かすようにしようというためには、これこれの条件を備えてやらなければだめですぞということを、労働大臣にいろいろ話しました。大臣も大いにこれに共鳴されたようでした。そこで自分も炭鉱のほうに直接視察に行きますということを言われて、おそらく行かれたんじゃないかと私は思っておりますが、それほど熱心ぶりをお見せになったわけです。そこで、私が通産大臣にお伺いするのは、一体なぜ炭鉱から中堅以下の若い者が出ていってしまうのか、またそういう者が希望を持って来ないのかということは、これは炭鉱労働者の待遇問題にもあります。また、危険作業という問題等もあります。けれども一つのムードとして支配的になっておるのは、どうも炭鉱は斜陽産業ということで、これがいつだんだんと縮小されていってしまうか、山が合理化され、閉山になるかわからぬわけです。だから、これはもう将来の見込みがない、こういうところから、一つのそういう空気が支配してきているわけです。これはやはりスクラップというあの合理化、買いつぶし、あれを非常に力を入れてやったということが一つ。それから斜陽産業ということはどこからつくられたことばか知りませんけれども、私どもは斜陽産業ということばはあまり使ったことはないつもりでおりますが、とにかく斜陽産業ということばがえらく使われてしまいました。そういうところから若い人たちが、将来性のない炭鉱におったってつまらぬというところから、だんだんいなくなってくるという、そういう一つの空気ができてしまっていることはいなめない事実でございます。  先年、日本でも世界石炭会議が開かれました。これは大臣御存じ政府の人々も御存じと思いますが、あの会議を通じ、世界のいずれの国の状態を見てみましても、石炭産業を斜陽産業と言っているところは一つもございません。やはりこれはエネルギー産業として、非常に重要な役割りをつとめているものである。斜陽産業どころではない。油だってガスだって、やはり無限大だと一体言えるか。ある層をだんだん掘ってしまえば、これはなくなってくる。だから、いま油がはなやかであるけれども、いつこれが少なくなってくるかということは予測できない。また、そうなる。だから、やはりその国にある石炭というものを重要視しなければならぬということは、世界あげて一致している意見でございます。でありますから、斜陽産業ということをもし政府のほうでもお考えになっているとするなら、それが与える影響は非常に重大なものがあるから、そういうことばは使わないでもらいたいという意見を私は持っております。  それから、この不安を一掃するためには、ビルド山、いわゆる今後残る山、開発する山、こういうものに対して、国は石炭エネルギー重要性考えて、積極的に計画開発、計画増産をやっていくのだ、こういうことを政府の方針として強く打ち出されていけば、いまの斜陽産業ということばはすっ飛んでしまって、やはり炭鉱も将来性があるのだということになり、それから労働賃金を初め待遇諸条件においても、都会にいるよりも経費がかからぬからかえって暮しやすい、こういうような状態をつくれば、自分の子供も坑内夫にしよう、あるいは若い諸君も山に行って大いに働こう、それからまた町方からも農村からもやはり、若い諸君が山に行って働こうじゃないか、こういう一つの空気ができてくると私は思うのです。そうしますと、いまの炭鉱に対する不安ムードというものは吹っ飛んでしまうと思うのです。でありますから、したがって、いま申し上げるように残っている山、開発する山、それに国として石炭は重要だからこういうふうに力を入れてやるのだぞという、そういう一つビルド山対策というものについて、積極的な政府の炭鉱対策というか、石炭施策を強く出されるということが、これらの問題を一掃し、新しい希望を持たす上において非常に重要な段階ではないか、こう思います。  そこでいま五千二百万トン、五千五百万トンという議論の中に、これは当然今後あるいは五千五百万トン、五千七百万トン、六千万トンというものが出てくると思うのです。だから、そういうこと等もあるわけでありますから、そういう一つ考え方に立って、石炭対策ビルド山対策というかそれをお立てになることが最も今日重要である、私はこう考えるが、大臣、この点についてはどうですか。
  20. 福田一

    福田(一)国務大臣 政府といたしましては斜陽産業などということばは使ったことはないのでありますが、これはPR関係の方面においてそういうことばがしばしば出ておるようであります。われわれとしても、スクラップ・アンド・ビルドとは申しますけれども、もちろんビルド山に力を入れていかなければならない段階でございまして、今後とも大いにそういう方面に力を入れる、同時にまた、石炭産業が順次立ち直りつつある姿が、特にビルド山などではだんだんと出てくるものと期待いたしております。そういうことも大いにPRをいたしまして、世間の誤解を一掃するように努力をいたしてまいりたいと思います。
  21. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 これも一つの具体的な問題になるわけですが、たとえば老朽炭田の中に、ビルド山として今後やはり十年、二十年あるいは三十年といって残る山があります。その残る山はいずれも、わずかばかりの石炭じゃなくて、やはり一千万トン、一千何百万トンというふうに、相当の可採炭量というか、いわゆる掘り出せる埋蔵量を持っておる山があります。これはやはり、エネルギーの国家資源としても重要であります。だからどうでもやらせなければならぬというので、国としても力を入れて、それを直そうとしてやっておられることはわかっています。ところが一つ問題なのは、あたり近所がずっとやめてしまいますと、坑内というものはほとんど貫通しておるといってもいいわけでございます。半里離れておっても、一里離れておっても、ずっと坑内というものは、大体炭層というのは一つの炭層が続いておるわけですから、中に幾分ところどころに断層があったとしても、炭層というものは一里でも二里でも続いておるものです。でありますから、そこに保安炭柱という炭柱をこれだけ残せということがありますけれども、この保安炭柱を残しておるところは、率直に言ってありません。どっちかが、早い者勝ちで大体保安炭柱を取っております。でありますから、坑内はほとんど、山が二里離れておっても幾ら離れておっても、貫通しておるといってもいいのです。そうすると、あたり近所の山が全部やめてしまいますと、まん中に残っておるビルド山、千何百万トンもある、二十年三十年もあるというこの山に向かって、あたり近所のやめた山の水が、やめますとどうしてもみんな一ぱいたまってまいりますが、その水が押し込んでくるわけです。そうすると、自分のところだけの水であれば経営が完全に成り立っていきますけれども、そのあたり近所の水が坑内で貫通しておるところからここへずっと押し込んできますと、水を三倍四倍揚げなければならぬということになります。そうなりますと、実はやっていけなくなるわけです。これは私が具体的な例を一つあげます。大臣もお聞きになっておられるかと思いますが、三井の田川というか、三井の山野というか、あるいは貝島あたりもそうなるかと存じますが、とにかくその残る山にいまのような水が押し込んでくるので、水を三倍四倍揚げなければならぬ、そうするとその水を全部揚げたのでは——能率は、たとえばいままで二十何トンのものが、四十何トンに一人当たりの生産がふえております。労働賃金はどうかというと、平均賃金二万八千円のものが二万三千円ぐらいに切り下げられてくる、福利厚生施設は三千六百円ぐらいの恩恵を受けておったものが、六百円ぐらいに切り下げられてまいります。能率は倍あげております。それでもなかなかやっていけぬという状態が出てまいっております。そうなってくると、能率は倍あげて、賃金は五千円も下げられ、福利厚生施設は一カ月に三千円の恩恵も受けられなくなる。そしてなおかつしんぼうしていけといっても、これはしんぼうできるものではありません。限度があります。そういう山の場合においても、その貴重な石炭をとるほうがいいのか。いやもうそれは、水がそう三倍もくるなら、国がそれではその電力料金の一部を見てやるというか、何かそういう坑内の水の鉱害というものを国が見てやれぬから、それはもう千何百万トンの炭が水没してしまってもしようがないじゃないかというようなお考えなのか。それからそういう場合には、それが労働者の犠牲のみでなくてやれるような対策を国としてお立てになるのか。私の考えとしては、やはり貴重な国家資源でありますから、何とかこういう貴重な資源というものは、これは掘り出すべきである、一ぺん水没させるともうやれません、こう思いますが、これらについての具体的なことをお答えになるということはいま私は求めようとはしませんけれども、一応そういう場合に対して、国としての考え方としてどうすべきか、あるいは主管大臣として、そういう場合に一応その炭を掘ったほうがいいとお考えになるか、水没させてしまったほうがいいとお考えになるのかどうか。この点をひとつ。これは具体的なことを聞こうとするとちょっとやっかいですから伺いませんが、大体そういう場合に、右するか左するかをお聞かせ願いたい。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 石炭を掘るという関係だけから見ますと、なかなかむずかしい問題になると思います。いまその水を何か利用するくふうがないだろうかということとあわせまして、調査を進めたいと考えておるところであります。
  23. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 そうすると、何とかその水を利用して、その貴重な資源はやはりとるべきである、こういうお考えですか。
  24. 福田一

    福田(一)国務大臣 とるべきであるというよりは、そういうことによって水が利用できれば——いま産炭地では水が少ないというので、非常に困っております。そういう水に利用できるかどうかということを調査して、態度をきめたいと考えておるわけであります。
  25. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 まあ、この点はこの程度にいたしておきましょう。いずれまただんだん具体的に御相談をするということにいたしておきます。  それから、これは福田通産大臣もおっしゃったと思っております。新聞に出ておりましたが、おっしゃったかどうか、まあ新聞を見たところでは、福田通産大臣と田中大蔵大臣の談話として新聞紙に出ておったことであります。地元の九州では何段抜きかで大きく出ております。これは昨年の国会でしたか私が、この炭田地区に炭鉱にとってかわる近代的な工業を起こす、工場団地などをつくって起こさす、そのためにはやはり国の直営工場というものを一つでも二つでもいいから建設してやる、これはある意味において民間工場を誘致する上に一つのポンプの迎え水みたいな役割をするのじゃないか、そういう意味においてやってもらいたい、やられたほうがよくはないかということをお話しましたとき、池田総理も、それはひとつ大いに考えましょうというような答弁をされたようでした。その後福田通産大臣の名と田中大蔵大臣の名をもって、産炭地に政府の直営工場、たとえば造幣局あるいは専売局の工場というか、自衛隊のたしか被服工場というようなことも書いてあったと思いますが、いずれにしましてもそういう産炭地に、炭鉱にとってかわる近代的な政府の直営工場を一つでも二つでも建設してやりたい、こういうことが新聞に出ておりましたが、これらについて昨年の総理答弁といい、両大臣の談話が新聞に出ておったことといい、地元ではかなり大きな期待というか希望を持っておりますが、これらの点についてその後のお考え、あるいは政府の方針はどうなっておりますか、これをひとつお伺いしたい。
  26. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かに政府機関を何らか持っていきたいという考え方で、造幣局の問題とか、あるいは汽車の修理工場でありますとか、いろいろの問題を考えてみたのでありますが、いろいろ立地条件あるいはその他の面から見てなかなか適当な案を得ることができません。したがって、九州においてはフィルター工場を、これは下請みたいなものでありますが、これを一つつくる。それからまた自衛隊の移駐を行なうというようなことは実現を見ましたけれども、当初予定したような案はなかなか実現が困難であったわけであります。
  27. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 最後と言ってもいいわけでございますが、もう一点ひとつお伺いをしておきたいと思います。  それは産炭地振興の事業についてであります。これは大臣をはじめ政府委員の皆さんもいやというほど押しかけられてお聞きになっておられると思いますが、どうも産炭地振興というものは当初大きく期待をしたようになかなか進まない。なぜ進まないかというと、資金の問題と、それから団地造成という問題とで問題があります。これはお聞きになっておると思います。いままでの政府の方針は、おそらく産炭地振興というものは、中小工場、そういうものを対象として誘致建設さすというようなお考えではなかったかと思うのです。その資金の貸し出し量を見ましても、いずれもみんな二千万円以下であります。二千万円以下で今日工場をつくるということは、中小工場のうちでも小に位するものじゃないかと思います。そういうものを対象にしておられるわけです。なるほど、昨年は十七億でしたか、本年度は二十七億ですか、しかしながらこの程度のものであると、やはりいまの中小を対象としたもの以外には考えられぬわけです。ところが一億以上というか、二億以上というか、それに応じて相当まとまった建設資金を貸してやるということになりますと、大工場も出ていくわけです。大工場が出ていきますと、おのずからそれに関連する下請その他中小が、だんだんタケノコが生えてくるようにそれに伴って出てくるものです。中小だけでやると、それとの関連が出てこない。でありますから、やはり産炭地振興事業団にやらす今後の事業計画、方針として、中小を対象としたものでなくて、やはり大工場もできるだけ誘致をさすというか、建設さすというか、そういうことでひとつやらなければ、炭鉱にとってかわる産炭地振興事業としての工場ができない。特に北九州の場合を見ますならば、北九州にあれだけの大工場地帯があるわけでありますから、したがってこれらに関連するものを持っていくとすればやはり中以上、大以下というか、大の下というか、そういうものが持っていけるわけであります。ですから、これは資金関係に非常に影響しておるわけである。でありますから根本的な方針としては、中小を対象としての産炭地振興の工場建設ではなく、あるいは一億でも二億でも、そういう大工場が持っていけるようなものについては、それらに対して大きな工場をむしろ積極的に政府が腰を入れて建設の方向に努力をしてやる、こういう方針をおとりになれば、それこそ炭鉱にとってかわる近代的な産炭地振興工場というものが発展してくるのではないかと思うのです。それについて、中小を対象とされておる二千万円以下ではなくて、やはり建設資金の上においてそういう大きなワクをひとつ考える、あるいは二十七億くらいではなくて、五十億円でも六十億円でも——私どもが聞いてみますと、産炭地振興事業団としてもぜひそうしてもらいたいということを、陳情など聞きながら、そう言っておるように私は聞いております。ですからこれはぜひ従来の考え方を発展させて、そういう大きな建設についてもやはり積極的にあっせんしてやる、ついては貸し出し建設資金も思い切ってあるいは十倍とかそういうものをやはり見てやる、これをやられることが非常に大切な現状にきておると思っております。そういうお考えで今後おやりになるかどうかということをひとつ伺っておきたい。  それから、いま一つ通産省と農林省との関係であります。工場団地をつくらなければならない、あるいは住宅団地をつくらなければならぬということは当然なことです。ところがさてボタ山をくずして工場団地をつくる、住宅団地を幾らか広げていこう、山を切り開いていく場合にやはり耕地にかかるということは当然です。そういう場合になりますと農地の問題がなかなかやかましくて、農林省との間でこの解決ができぬわけである。そこでやれぬという問題がある。でありますから、地元の市町村との間で、あるいは農民との間でその解決ができるものであるなら、またそういうところから要望するものであるものならば、むしろ通産省は工場団地、住宅団地をつくる、そういうたてまえから地元側でそういうことが解決するなら、通産省が主管庁としてその産炭地振興事業を解決する意味において農林省との間に話をつけていく、あるいは政府の方針としてひとつこの解決をつける、こういうことをやってもらいませんと、この工場団地、住宅団地というものがなかなかつくりにくい。これができないと、産炭地振興で近代工業を持っていこうといったってなかなかできないことになります。山だけ開くなら別です。そういう点等がありますから、こういう場合に対してやはり通産省として、いま申し上げたようなことで主導的立場に立って、農林省との間に政府の方針としてこれを解決するというようなことについてやっていただかないと、これはできぬことでございますから、これは大臣もお聞きになっておられるかどうかわかりませんけれども、そういう根本的な問題に、難問題にぶつかってきておるということを十分お含み願って、今後解決されるようにしてもらいたいと思っております。  それから、これは毎度言っておることですけれども、やはり産炭地振興事業のために工場団地、住宅団地をつくり、あるいは工場をそれぞれ持っている人も、鉱害の問題が解決しないと、実は陥落するようなおそれはどうかというような心配があるわけです。でありますから、鉱害復旧というものを、鉱業権者の負担がどうの、地方自治体の負担がどうのといって、この案分比例の問題でやっさもっさやっておったのでは、なかなかできません。いますでに炭鉱から出た石炭一トン当たりに鉱害復旧事業資金として経営者側から取る金は取って積み立てておるわけです。足らざる分については、これは無資格者鉱害というか無資格者鉱害というか、そういう一つの観念の上に立って、この古い鉱害はやはり国が責任を持って早くこれを復旧してやって、そうしてりっぱな田畑にしてやる、りっぱな道路、住宅を不安のない状態にしてやる、そういうことをあわせてやられるところに、この炭鉱地区にも明るさも出てくるし、それからいまの工場団地、住宅団地をつくる上についても非常に一つの基礎的な何ができてまいりますから、この鉱害の復旧というものを、前のような考え方でなくて、もう古い鉱害は国がやってやる、こういう上に立っておやりにならないと、これはなかなかできません。この間、参考人に九州鉱害復旧事業団の理事長の天日君を呼びましたときも、石炭局長もお聞きになっておられましたが、とにかくいまのような状態では、この復旧事業団は破産以外にありませんということを長々言いましたが、私は、天日君は聞き捨てならぬことを発言されておるが、そういう状態であるならばとても復旧なんぞ及びもつかぬことになるではないかということを天日参考人に聞いたことがございました。そういうことでございますから、一つの鉱害の復旧というものを、古いものが非常に残っておるのですから、こういうものはいま申し上げるようにもう無権者、無資格者鉱害としてとにかく国の責任において復旧するという、この根本的な考え方を新たにひとつ持たれる必要があると私は思っております。こういう点について大臣はお聞きになっておられると思うが、一応こういう現状においての大臣考え方はどうかということを、以上最後に三つほどいま私があげた例についてお聞かせ願いたい。
  28. 福田一

    福田(一)国務大臣 まず産炭地振興の問題で、いわゆる資金の供給が十分でないために小企業しかいっておらないという話であります。われわれもできるだけ大きい企業を持っていくようにしたいと思いますが、資金も無制限ではございません。ただいままでは二千万円を限度といたしておりましたが、最近は一億まで、あるいはいささかそれ以上にのぼっても認めるという方針に変えまして、順次委員の御趣旨のように努力いたしてまいりたいと考えております。  一方また、いわゆる住宅団地あるいは工業団地の問題等に関する農林省との関係でございますが、これはそのつど申し入れをいたしまして解決に当たっておる次第でありますが、今後も農林省に対しまして十分、できるならば原則としては言いたいところですが、なかなか役所同士そこまで話がつくかどうかわかりませんが、努力をいたしてみたいと考えるところであります。  さらにまた鉱害の問題でございますが、鉱害を受けた地域の振興をするということになりますと、お説のようにすみやかに復旧しなければならないということになるわけです。これには国でやるのが一番手っとり早いのでありますが、これは予算の関係等もございますので、できるだけ前向きに、積極的に進めてまいりたいと考えるところであります。
  29. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 以上で終わります。
  30. 中村寅太

    中村委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十分散会