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1964-03-25 第46回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 有田 喜一君 理事 上林山榮吉君    理事 神田  博君 理事 始関 伊平君    理事 多賀谷真稔君 理事 滝井 義高君       壽原 正一君    田中 六助君       藤尾 正行君    三原 朝雄君       井手 以誠君    楯 兼次郎君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         通商産業政務次         官       竹下  登君         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         大蔵事務官         (主計官)   田辺 博通君         厚 生 技 官         (環境衛生局水         道課長)    大橋 文雄君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         通商産業鉱務監         督官鉱山保安         局石炭課長)  佐伯 博蔵君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    東村金之助君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君         参  考  人         (九州鉱害復旧         事業団理事長鉱         害賠償基金理事         長)      天日 光一君         参  考  人         (石炭鉱業合理         化事業団理事) 佐藤 京三君     ————————————— 三月二十五日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第七一号)  石炭対策に関する件(亜炭鉱保安問題等)      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  亜炭鉱保安問題等について質疑の通告がありますので、これを許します。楯兼次郎君。
  3. 楯兼次郎

    楯委員 私は、すでに通産省関係当局では御承知と思いますが、岐阜県の可児町あるいは御嵩町の中小亜炭鉱において、去る二十一日、四名が落盤のために死亡するという事故がありましたので、これを中心にいたしまして、亜炭関係一般のことを御質問いたしたいと思います。  これはいまさら新しく取り上げられました問題ではなくて、二、三年前にも私は商工委員会で、何とか行政指導をしてこの種事故がなくなるようにしなければいかぬのではないかというような質問をしたことがあるわけでありまして、極端なことを言いますると、もう毎年こういう事故があるわけであります。新聞では三名、四名あるいは十名等の死亡事故の場合には大きく取り上げられておりますが、一名ないし二名というような事故は、マスコミ新聞等の片すみに出ておりまして、あまり目につかないと思いますけれども、ほとんど落盤事故は絶えない、こういう状態であります。ついででありますから簡単に言いますると、戦争中あるいは戦後数年間、政府等奨励もありまして、乱掘乱掘を重ねてハチの巣のようになった土地の上に、人間が三万なり四万なり住んでおる、こういうのが該地方の実情であります。  まず最初に、この事故の詳細を御承知になっておるか、どういう原因があるかということをお尋ねいたしたいと思います。
  4. 川原英之

    川原政府委員 ただいま楯先生から御質問のございました岐阜県の片野炭鉱及び新大桜炭鉱の第一坑事故に関して四名の死者が出ましたことは、まことに遺憾に存じております。現在、直ちに名古屋の担当の監督部に調べさせておりますが、私が現在までに承知いたしておりますものは、まず片野炭鉱でございますが、同鉱山隣接鉱山共立炭鉱が三十二年閉山によりまして水没いたし、これと関連する採掘あとより浸水があり、この浸水が予想より早くございましたために、目下撤収状況にあったものでございます。このため作業個所を新たに開発するべく坑道を掘進する予定でございましたが、これに先立ちまして、掘進あと処理も考慮して、斜坑の両側の保存炭柱採掘し、硬袋を設けることにいたしましたところが、そこで昇り向き採炭に四名が就業しておったものでございますが、採掘個所天盤は約十五センチメートルの粘土がついておりますが、この粘土が突然崩落いたしまして、左側の二名が埋没し、一名が死亡、一名は脱出後坑口で死亡いたしたのであります。他の一名は待避をすることができまして無事であったのであります。坑道支保残柱払いの変則的な個所でございましたために、支柱の規格がなお不明確でございまして、木柱五本程度支保をしておったものと思われます。なおその後の詳細につきましては、監督部に命じまして取り調べ中でございます。  次に、新大桜の第一坑におきましてやはり死者一名を出しましたことは、これはまことに残念でございますが、災害発生個所残柱式採炭個人切り羽でございます。個人切り羽の幅四メートルの昇り払い個所でございます。この採炭方法はボタの中落としをやり、その上部ろう石、厚さ約〇・六四メートルを打ち落とした後に採炭する方法でございますが、当日は中落としを行ない、上部ろう石落としているときによけ損じまして倒れ、不幸にして落ちた石が頭に当たりまして、そのために死亡いたした事故でございます。  亜炭鉱山につきましては、昨年一年間に七名の死亡者がございますが、今年に入りましてからはずっと死者を出さない状態で、ぐあいがいいと思っておりましたところが、はなはだ不幸にも先生の御指摘事故が一挙に発生いたしまして、四名の死亡者が出ましたことはまことに遺憾に存じます。
  5. 楯兼次郎

    楯委員 いま局長さんの答弁によれば、昨年七名の死者を出した。われわれが承知をしておる亜炭落盤あるいは水による大きい事故で、三十一年六月に大和炭鉱で五人が生き埋めになって、そうして百時間の後生還した。これは新国劇等もこの状態を劇に組んで、テレビ等全国放送をされたことがあります。それから三十二年十月には森山炭鉱で十一人が死亡しております。これも廃鉱の水が炭鉱に流れ込んで十一人死亡。三十四年一月、同和鉱業で五人が同じような状態死亡しております。こういうマスコミに大きく取り上げられたほかに、昨年は七名も死亡しておる、こういう状態であります。お手元資料がございましたら、少し四、五年さかのぼって、こうした亜炭鉱業における死亡事故はどのくらいかということを、参考までにお聞きしたいと思いますが、過去五年ぐらいの資料がお手元にございますか。
  6. 川原英之

    川原政府委員 現在私の手元にございます資料によりまして、先生指摘昭和三十二年ころからの死亡者を申し上げますと、三十一年に十二名、三十二年に三十五名、この年はただいま御指摘のあった事故が起きております。三十三年に十六名、三十四年に二十名、三十五年十一名、三十六年十六名、三十七年十一名と続いておりまして、私のほうといたしましても、いろいろ監督を厳重にやらしてまいりました。三十八年にいきまして七名、決してゼロとはいきませんでしたが、七名と減少いたしましたやさきに、今年、先ほど御指摘の四名が発生いたした次第でございます。
  7. 楯兼次郎

    楯委員 私は通産局だけが悪いとは思いません。ここであなたのほうをけしからぬといって追及するわけではないので、通産局だけが悪いとは思いませんけれども、しかしこうして亜炭というのは、戦後数年以後は、需給関係からもう縮小の一途をたどっておるわけです。全国に散在はしておりますが、従業員がきわめて少ないと一あとでお聞きしたいと思いますが、私は予測をしております。そうした従業員の中から、多いときには三十五名、あるいは二十名近い死者を出しておるということでは、これはあまりにも一たまたま国会あるいは県会等で取り上げられましても、これはそこで質疑応答を重ねるだけで終わるという結果をあらわしておるのではないかと思うわけです。これはだれが見ましても、こういう落盤その他の亜炭鉱における事故が起きまするのは、保安設備管理が不十分である、それから廃鉱管理が不十分であるという二点に尽きると思うわけであります。通産省保安設備管理にどれぐらいの行政指導についての責任があるか、私はその度合いは知りませんけれども、とにかく保安設備管理廃鉱管理だけは——だれがどういうふうに責任を分担するか私は知りませんけれども、とにかくやらなければこうした死亡事故は絶えないと思うわけです。この点どうお考えになりますか。
  8. 川原英之

    川原政府委員 ただいま亜炭鉱山保安に関してどういうふうな監督をしておるか、こういう御質問であるかと存じます。現在、先生承知のごとく、石炭亜炭につきましては、鉱山保安法に基づきまして、さらにその保安法を受けまして石炭保安規則、これに基づきます監督を厳重にいたしておるわけであります。具体的にはいろいろ鉱山で守るべきことがそれぞれその石炭保安規則にこまかく明示されております。御承知のごとく、亜炭につきましては主として中部地方、ことに名古屋岐阜地方と、それから仙台管内に多いのでありますが、この仙台名古屋のそれぞれに監督部がございます。この監督部でそれぞれ山によりまして巡回密度は若干相違がありますが、二カ月に一回、多いのは毎月そういう巡回検査をいたしまして、この法規上義務づけられた施設が守られておるかどうかということの監督検査をいたします。と同時に、それに対しましてもし違反があれば、指示をして直させるという措置をとっております。
  9. 楯兼次郎

    楯委員 鉱山保安については、保安法あるいは保安規則によって、それを一カ月か二カ月に一回巡回をして監督をしておられる、こういう説明ですが、私の想像では、詳細には私いま保安法保安規則をここに暗唱はいたしておりませんが、その規格に合わなければ採掘ができないということを厳格にやったら、いまの亜炭鉱においてはほとんど採掘不能になるのではないか、こういう気がするわけです。これは私の誤解であったら改めますけれども、私の勘としては、法規にきめられた保安設備を厳重に整備をしなければ採掘ができないというふうに監督を厳重にしたら、いまの亜炭現状では採掘不能になるのじゃないか、そのぐらいの状態ではないかというように想像されるわけですが、その点どうお考えになりますか。そういうことはございませんか。
  10. 川原英之

    川原政府委員 もちろん鉱山保安法並びに石炭保安規則を制定いたすにつきまして、これは保安の見地から定めておるものでありますが、現在の法律を厳重に守って採掘ができないということはないと存じます。むしろその保安規則を厳重に守って採掘ができるような採掘をしていく、少なくとも保安的に見まして災害を起こさないという方法で掘ってもらうことがわれわれとしては希望いたしたいところであります。
  11. 楯兼次郎

    楯委員 法律がありますから、守らなくちゃならぬ、それから通産局は定期的な巡回をしてこれを監督をし、指導しなければならぬ、これはわかります。わかりますが、私は、何も通産省が怠慢であり、あるいは炭鉱経営者が怠慢であるということを言っておるわけじゃないわけです。これはあとで申し上げますが、その法規にきめられた保安条件を具備するだけの能力がないし、さりとてこれを停止したら、これはいろいろの要素があると思いまするけれども従業員自体もその土地を離れることができないというようないろいろな条件があって、困る。非常に低額であろうとも現金収入の道がなければ生活ができないというような条件がここに総合されて、監督大目に見る。業者のほうも、不安を感じながら採掘を続ける。従業員も、これはいつくるかわからない。これはもう合いことばなんですよ。それまたあったのかといって、われわれが現地にまいりましても、落盤するのが当然であるがごときことがいわれておるわけです。さりとて働いて金を取らなければ生活ができ得ないという全部の不備が総合されて、事故が起きるがまあ大目に見ておけ、不安であるが仕事を継続し、働く、こういう状態がいまの日本の亜炭業界における、率直に言って私は実態ではないかというふうに考えますが、通産省責任者としてはこの席上では言えないけれども監督に不行き届きはない、それから、たまたまほかの原因事故が起きたのであって、保安設備については何ら手落ちがない、こうういふうに断言できますか。私の先ほど申し上げました状態ほんとう亜炭業界実情である、こういうふうにお考えになりますか、どうですか。
  12. 川原英之

    川原政府委員 ただいま楯先生から御指摘のございました、取り締まり上手心があるのじゃないかという御指摘だと思いますが、先ほども申し上げましたように、現在名古屋及び仙台鉱山局がそれぞれ巡回監督をいたしまして、保安法にきめられておる施設に違法なところはないかということを、絶えず見ておるわけでございます。しかもなおこういう事故が発生いたしましたことは、まことに遺憾でございますが、われわれといたしましてもやはり、その法規の厳正に守られることを確保するべく鋭意監督をいたしておる次第でございまして、そういう趣旨で監督に当たっておりますことを申し上げておきたいと思います。
  13. 楯兼次郎

    楯委員 これは通産省責任者としては、実情はそうであっても、楯の言うとおりであるとは答弁ができないと思いますし、あるいは私の申し上げることに多少の間違いがあるかもわかりませんので、これはそのままにしておきます。  そこでこの可児町、御嵩町のこの事故の大きな原因というのは、いろいろの、柱を立てて落盤しないようにとかなんとかというほかの原因もありますが、廃鉱に水がたまってその水が流れ込むというのが、新聞等を見ますると、大きな原因になっておるようであります。したがって、あとでこれもお聞きをしたいし、またお考えを願いたいと思いますが、廃鉱における処理、たとえば排水組合をつくって、そうして廃鉱その他の排水をやっておるけれどもあまり金がかかるので、最近実際に水をくみ上げておるのは、三十ぐらいあるところで二つしかない。こういうようなことも新聞は報道をしておりますが、その数の的確不的確は別といたしまして、われわれも現地を知っておりますけれども廃鉱に水がたまる、それがいま採掘している炭鉱に流れ込んでくるというのが、過去に起きました大きな事故の大半を占めておりますし、また現地を知っているわれわれとしては、そうであるというふうに思うわけです。したがって、この鉱害復旧等あとでお聞きをしたいと思いますけれども廃鉱をこのままにほうっておいては事故は相次ぐと考えられるわけです。さりとていま採掘をしておる業者に、あるいは町に排水組合、そういう機関をつくって事故の起こらないようにせよといっても、これは不可能に近い議論だと私は思うわけです。したがって何らかの、この災害原因である廃鉱に対する政府としての行政指導といいますか、援助といいますか、何かなければ、これはまだ来年も再来年も事故が起きると考えられるのでありますが、この点どうお考えになりますか。
  14. 川原英之

    川原政府委員 廃鉱につきましては、現在監督局におきまして図面を作成いたしまして、これが対策は講じておるのでございますが、この廃鉱から流れ込みます水が、ここに一つ問題がございますのは、これは鉱害と見るべきものであるのか、あるいはそうでないのかという問題が一つあるかと存じます。この点につきまして、現在岐阜県の場合には共同排水施設によりましてその処理に当たっている、ところが四鉱山の中でやめる鉱山が出てきて、排水施設維持費について非常に困難がある、こういうお話を実は承っております。われわれといたしましても、この問題はそれが鉱害であるのか、あるいは相互の賠償関係の問題であるのか、この点の法律的な解釈はいろいろあるかと思いますが、これについていろいろとお話を伺いまして、以来検討はいたしておる次第でございます。なお共同排水費そのものは、原則的にはそれぞれの炭鉱が持ってもらわなければいけない性質のものだと思いますが、これに対して、もしかりに中小企業近代化資金というような措置がとり得ますならば、これもあるいは一つ対策になろうかということで、現在検討いたしておる次第であります。
  15. 楯兼次郎

    楯委員 労働省の方に従業員労働条件をお聞きしたいと思いましたが、まだ見えておりませんし、時間がたちますので次に進みたいと思いますが、私はいま業者といいますか、企業者のことを主として御質問いたしましたが、働く人たち労働条件労働基準法であるとか、あるいはその他のきめられました法規というものはおそらくはとんど適用になっておらぬのじゃないか、また、それを適用していけば採算が合わぬのじゃないか、そのくらい落ちぶれているのではないか、口が悪いようですが、お聞きしたかったのです。これはあとでお聞きしましょう。  それでは現在の亜炭現状ですが、生産量労働者数あるいは企業者、どれくらいありますか。
  16. 新井眞一

    新井政府委員 三十八年の状況を申し上げますが、現在約百万トンの生産。精密に申しますと九十万トンくらい。三十三年ころは御承知のように百五十万トンくらい出ておりましたが、急激に減少いたしまして約九十万トン。炭鉱の数が、私ども手元にありますものによりますと、二百二十六でございました。御承知のように仙台地区名古屋通産局管内に集結をいたしておりまして、仙台のほうと名古屋、大阪を分けまして、大体五分五分程度生産でございます。特に顕著な事項は、仙台のほうは三十三年度六十六万でございますのに、三十八年度四十六万、約五十万ということで、減り方は少のうございますが、先生の御指摘名古屋地区におきましては、三十三年ころは約七十五万トンくらいの生産のものが、半減いたしておりまして、三十八年度三十六万という形に相なっております。炭鉱の数におきましても、名古屋地区は三十三年に百三十二ございましたのが、現状三十六というような形になっておる次第であります。  なお御承知のように、仙台のほうは暖房用と申しますか、土地特産産業として近所の暖厨房用にやっておりますので、かなり需要があり、むしろ木炭を亜炭で追っかけている、そういう意味味エネルギー革命をやっておるという状況でありますが、名古屋地方におきましては、工業用に消費しておりますので石油、石炭その他の問題でかなり疲弊をいたしておるという状況であります。
  17. 楯兼次郎

    楯委員 従業員数はわかりますか。
  18. 新井眞一

    新井政府委員 現在従業員は約四千名でございます。かつて三十三年におきましては約一万人おりましたものが、三十八年度におきまして二百二十六炭鉱、約四千名、したがいまして二百二十六で割りますれば約二十人弱と申しますか、平均の規模がさようなものでございます。
  19. 楯兼次郎

    楯委員 三十三年と比べますと、半減をしております。特に名古屋地方は陶磁器といいますか、陶器の燃料等にも使っておりましたが、政府の大きくいえばエネルギー政策の転換といいますか、重油奨励があって重油に転換したために、石炭と混合してたいておったのが、急激に需要がなくなってきたというので、いまあなたがおっしゃいましたように、半減をしておるわけです。あと家庭用燃料等に使っておるらしいのでありますが、こういう状態です。  そこで次にお聞きしたいのは、三十三年から今日半減をした。この将来の需給見通しは、一体通産省はどんなような観測であるか、わかったらひとつお聞かせ願いたいと思います。
  20. 新井眞一

    新井政府委員 亜炭需給見通しでございますが、なかなかむずかしゅうございます。石炭のほうにおきましては、全体的な国のエネルギー政策の面でいろいろ資料もございますが、亜炭のほうはその土地土地のいわば地区産業でございますので、なかなか長期の見通しは立てがたいというのが実情でございますが、一応私どもといたしまして、工場なりあるいは暖厨房用等に、あるいは繊維、食料品、パルプ、そういった中小の形で、しかも近くの短い輸送距離でやっていけるというふうなことを考えますと、おおむね六、七十万トンくらいは何とかなっていくんじゃなかろうかというふうに考えております。これもほんとうに腰だめでございまして、精密な見通しではございません。
  21. 楯兼次郎

    楯委員 そういう将来の見通しは、一言にして言えば、非常に暗いということですね。ところが現地実情というものは、企業者も私は困るだろうと思います。法規にのっとって保安設備近代化をやればいいでしょう。しかしそれだけの設備をする金もなければ、また金を使いましても、暗い将来の需給見通しでは、採算の点においてそれが可能であるかどうかという問題もあると思います。  それから働く人たちは、主として三反、五反の、家族が農家をやって、口のほうだけは食わしてもらえる。ところが現金収入金が要るというので、おやじさんが働きにいくという人が多いわけです。一家あげて亜炭に専従をしておるというような人は、だんだん減ってまいっております。そういう人たちはいかに労働条件が低下しても、やはり現金収入ということを考えれば離職することもできない。この仕事があるうちは、そこにおいて働かなくちゃならぬ。そういう環境下にあるわけです。したがって、非常に小さい企業であり、人も少ないけれども、きわめて日の当たらないどころの騒ぎではない、もう前途不安でどうしようか、これは関係者全部がそうだと思います。最近の中小企業の倒産は戦後最高というようなことがいわれておりますが、岐阜県においては、相当長く亜炭の商売としておる人が倒れておるような現状もあるわけです。したがってこういう状態を、たとえ対象の数は少なくても、監督官庁としてはどういうふうに行政指導をし、どうしてこれを円満におさめていくかといいますか、処置をしていくかということが、大きな問題であろうというふうに考えるわけです。何かこの亜炭の将来に対して具体的な善処方処理方法をお考えになったことがあるか、あったら具体的にひとつ御提示を願いたいと思います。
  22. 新井眞一

    新井政府委員 御指摘のように、まさにこの亜炭鉱業の将来は縮小の過程をたどってまいりますので、おっしゃいますように、日の当たらない産業であろうかと私も思います。石炭のほうもたいへんな問題をかかえておりますけれども亜炭のほうもなかなかたいへんな問題でございます。いろいろ私どもなりに従来やってまいりましたことを申し上げますと、一つ中小炭鉱合理化指導ということをやりました。それから先ほど保安局長からもちょっとお話がございましたような、中小企業振興資金助成関係、それから特に税制面におきまして電気ガス税の免税、それから特別償却、この関係亜炭鉱業設備をその対象にいたしております。それからなお、先ほどちょっと先生お話にございました鉱害につきましては、石炭鉱害と同様の実施をやっておりまして、御承知のように、東海鉱害復旧事業団というものが設置されております。いまのところさような個々の政策をやっておるわけでございますが、何とか私どももこれをもっと指導していかなければならぬというふうには考えておりますけれども、やはり中小企業対策としていろいろやっておられますその中でやっていく以外には、やりようがないのじゃないだろうかというような考え方に立っておるわけでございます。
  23. 楯兼次郎

    楯委員 的をはずれておるかもわかりませんが、あるいはいろいろな系統といいますか、法体系の上からいって無理かもしれませんが、私どももちょっと手抜かりであったかと思いますが、石炭亜炭とは将来性が違うと思うのです。もう亜炭というのは石炭どころの騒ぎじゃない。ほんとうに将来、相当好意的に考えても、縮小の一途をたどらざるを得ないという状態であろうと思うのです。だから少なくとも石炭に過般来いろいろ制定された法律なり擁護政策が、亜炭は数が少ないのでありますから、そう国家の財政に大きな影響があるとは思われないのです。だから、たとえば石炭の離職者対策、あるいは合理化事業団、産炭地の振興——鉱害の復旧は石炭に準じてやっておるという答弁がありましたが、これらの三条件石炭に準じて、数が少ないし、財政の面からいったってそう影響はないのですから、通産省は率先して亜炭にも適用すべきではないか、亜炭もこの石炭に準じて、要求がなくても当然これを挿入すべきではなかったか。われわれも手落ちがあったと考えますが、どうですか。過去においてそういう議論は出なかったのか。あるいは今日の事故を契機として、当然これは石炭に準じて同じような国家の取り扱いをすべきである、これは私は当然だと思うのですが、そういうお考えがあるかないかお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 新井眞一

    新井政府委員 石炭鉱業につきまして各般のエネルギー対策上の施策を講じておることは、御承知のとおりでございます。考え方といたしましては、何とか国産のエネルギーというものを五千五百万トンの高能率高賃金にするという意味から、非能率炭鉱をスクラップ化いたしまして、そうして高能率炭鉱のほうに集約生産をしていこうという考え方で、しかもその費用たるや、業界からもトン当たり幾らの金を出し、それに国も補助金を与えて、そういう仕組みとそういうねらいで進めておるのが基本でございます。したがいまして、それから来る産炭地振興の問題とか、その他いろいろな問題がこれに関連をして石炭政策が進められておりますことは御承知のとおりであります。したがいまして、その考え方からいたしますと、むしろ亜炭というものは全部なくなってしまって、そうして高能率の石炭鉱業に集約生産をするということになろうかと思います。いろいろな対策というものがその基本に立っておるものでございますので、先生よく御承知だと思いますが、石炭合理化のときにも亜炭のほうは、いやでございます、そういうことをされたら高能率のほうにどんどん集中されて私どもたまりません、なお納付金も納めなければならなぬし困りますといういきさつもあったやに聞いておりますけれども、一応そういうようなことで、石炭亜炭というものは、カロリーの点では違うとはいいますものの、よく似たものでございますが、一方は性格上特産的な土地産業、片一方は国のエネルギーのあれだということで、きわめて明確に線を引いて施策をやってまいっておる次第でございます。そこで、石炭に準ずるという考え方は私どもとしてはないわけでございますが、先ほど申しますように、ほうっておけませんし、なかなかたいへんな苦労でございますので、中小企業政策の面で十分ひとつ何とか指導し、合理化をしていきたい、こう考えております。
  25. 楯兼次郎

    楯委員 いま石炭を基準にしてお答えになりましたが、私は石炭でも中小業者はたくさんあると思います。しかし一般論としては、石炭のような大資本と、地方産業といいますか、局地産業の小さな亜炭では比較にならぬと思います。まず第一、多少の補助をやろう、助成をやろう、そのかわりにお前も金を出せといえば、これはお断わりしますと言うのは当然です。もう今ですら、先ほど来申し上げましたように、まあ業者はおこるかもしれませんが、私の目から見ると、それは気息えんえん仕事をやっているだけであるという状態じゃないかと思うのです。それでエビでタイをつるということはありますが、たとえ大きな金を出してやろうとしたって、呼び水すら出し得ないというのが現状ではないかと思うのです。したがって、何も石炭と全部同じやつを適用せよとは言いませんけれども、少なくとも近代化資金による助成というようなこと、あるいは産炭地の振興、あるいは鉱害復旧は石炭と全然同じかどうか知りませんけれども、そういうものについてはその支障なく政府として措置できると思うのです。たとえばこれは一つの例でありますが、いまお隣の多治見地方は陶磁器が非常に盛んです。すでにこの産炭地までタイル工場あるいは陶磁器の工場が進出をしていっているわけです。したがって、私がこうやれと言うわけじゃないけれども一つの例として、いろいろの条件はあるでしょうけれども亜炭業をタイル工場なりあるいは陶磁器工場に転換をする。そのための工場用地の造成なり、あるいは企業貸し付けを行なうというようなことをやれば、これは転換できると思うのです。このほかにもいろいろあるでしょう。もうすでにこの産炭地帯にそういう産業が進出しておるのですから、そういうことが必要じゃないかというふうに考えるわけです。私は中小企業の助成策についてこまかいことはしろうとですから知りませんけれども、立ち話程度でこういう人と話をいたしますと、助成金か近代化資金か知りませんが、それをもらったら多少はゆとりができるというような話も聞くわけです。ところが、それがもらえるような話になっておってもらえなくなった、だから困った、こういうような話も聞いております。したがって正確な名前はわかりませんが、もしそういうものがあったら、これは人命に関することでありますから、ほうっておけば、幾ら一、二月ごとにに巡回して監督したといったところで、現状ではもう事故は続くと私は断言してはばからないのであります。そういう状態でありますから、ぜひそうした擁護策といいますか、助成策があったら、まあ業界の代表もおることでしょうから、ひとつ指導をし、援助をしてやっていただきたい、こう思います。  それから鉱害復旧ですが、各所とも戦時中、戦後の短期間に乱掘をやりまして、中小なるがゆえに、当時の責任者はもうおらない、あるいは次から次に人手に渡って、いまやっておるのは、負担金といいますか、それだけの能力がないというので、不在地主といいますか、主のおらない穴だらけの炭鉱に困り果てておるというのが該当地の実情なんです。こういう点についてはどういうような措置がとられますか。
  26. 新井眞一

    新井政府委員 何かいろいろなくふうもあるだろうから、ひとつよく指導なり助成をやれという御意見につきましては、私どもも同感でございまして、よく私どもお話を承りまして、何らかの改善を加えてまいりたい。特に中小企業政策の面でいろいろやってまいりたい、こう考えております。  なお、いまの鉱害の問題でありますが、御承知のように、鉱害につきまして、やろうと思ってもその者が資力が全然ない場合には無資力の認定をいたしまして、国と地方公共団体とが一緒になりまして、賠償義務者にかわって行なう無資力復旧という制度が昨年から設けられましたので、それの運用をまちまして処理をしてまいりたい、かように考えております。
  27. 楯兼次郎

    楯委員 繰り返すようでありますが、正確な名称は私は知りませんが、お笑いになるかと思いますが、選挙が近ずくと、そういうものは適用してやるぞというようなことで、これはあり得ることですが、これで一息入れられる、多少はいいと思ったところが、選挙が済むとそんなものは何もこないという、笑い話ですが、そういうことをよく聞くわけです。だから私は法の解釈いかんといいますか、解釈を拡大をしなくても何らかの措置はあると思いますので、放置できない今日の現状でありまするから、ぜひひとつ業者の方の代表ともよく話し合って、再びこの事故を繰り返さないように、ただ巡回監督ということだけでは救われぬと思うのです。ひとつ措置を願いたいと思います。  労働省の方せっかくお見えになりましたが、あなたは前後の私の質問をお聞きにならないのでわからないと思いまするけれども、もう一言でけっこうです。というのは、二十一日に岐阜可児御嵩町で、亜炭落盤事故があったわけです。これは毎年繰り返しております。全国で約四千人の従業員のうちで、一年に二十人から三十人死亡している状態です。これは企業者の資力も微弱ならば、働く人たちも、労働基準法であるとかその他の当然与えられるべき法律の基準が、こういう業界にはないじゃないか。昔のようなやり方でやっておるのではないかと想像をしておるわけです。話が大体終わりましたから、簡単でけっこうですが、労働省が見た亜炭業界労働条件はどういう状態にあるかということを、ひとつお答えいただきたいと思います。
  28. 東村金之助

    ○東村説明員 ただいま御指摘亜炭業における労働条件の問題でございますけれども、私ども亜炭と一般の石炭と区別することなく、全体的に労働条件の問題を考えております。労働基準法には御承知のとおり、坑内労働については特殊の規定がございまして、十八歳未満の労働者を使ってはならないとか、残業等でも一日二時間以上延長してはならない、こういうような規定がございます。われわれといたしましては、こういう坑内労働、広い意味の石炭鉱業については、行政の重点業種として取り上げております。各山に対しまして、少なくとも年一回以上の監督を実施する。一般的にはなかなかそうもいかないのですが、こういう特殊な危険な鉱山に対しては、そういう態度で実施しております。その結果いろいろ違反が発見されるわけでございますが、賃金不払いであるとか、いま申し上げました労働時間の問題であるとか、健康診断の問題であるとか、いろいろ違反が発見されております。これらの違反に対しては、われわれ監督官でございますから、すぐ是正するような措置を講じておるわけでございますが、ただいま先生お話のように、いわゆる石炭山よりも小さいようなところでやっておりますので、石炭山に比較いたしまして総体的に労働条件が悪いということを言わざるを得ないと思います。しかしいま申し上げましたような態度でやっておりますし、先般三井三池の災害が起こりました直後、こういう亜炭山を含め、一斉に監督を実施し、できるだけ労働条件の向上、労働基準法の維持ができるような措置を現在指導監督をしておる段階でございます。
  29. 楯兼次郎

    楯委員 終わります。      ————◇—————
  30. 中村寅太

    中村委員長 次に、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として、前会に引き続き質疑を行ないます。  本日も、本案審査のため参考人として、九州鉱害復旧事業団理事長、鉱害賠償基金理事長天日光一君及び石炭鉱業合理化事業団理事佐藤京三君の御出席をいただいております。  それでは、質疑の通告がありますので、これを許します。伊藤卯四郎君。   〔委員長退席、神田(博)委員長代   理着席〕
  31. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 労働大臣にこれから四、五点の問題点について御質問をいたしたいと思いますが、実は通産大臣が一緒であると、関連することが多いので能率的にも、また政策の上からいってもそれがいいと思いますけれども、通産大臣がおいでになりませんから、労働大臣のみに限って質問してみたいと思います。  御存じのように、金属鉱山もそうですけれども、特に炭鉱の場合においては、いま坑内夫、これを直接夫と言っておりますが、若い人々が坑内で働く、あるいは採炭というか、掘進というか、仕繰りというか、そういう直接夫の人々がだんだんいなくなってしまう。したがって、年寄りだけが山に残る。これでは一体炭鉱の将来はどうなるだろうかということが大きな問題になっております。したがって能率も落ちるという形になってきておるわけです。それを非常に無理をして能率を出しておりますが、若い人々を炭鉱にとどめる、あるいは希望を持って永住さすというか、あるいは他からも若い諸君が炭鉱に魅力を持って就職を希望するというような状態というものは、これは解決をしなければならぬ大きな問題点だと思う。これらの点について労働者、労働大臣はどういうようにしたらこの大きな悩みになっておる問題を解決できるか、そういうことについてのいろいろお考えがたくさんあるだろうと思いますから、そのお考えをひとつ先に十分お聞かせ願いたい。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 最近合理化の急進展に伴いまして、むしろ合理化の速度以上に炭鉱労働者の離職者がふえているということを承っておるのでございますが、この原因は、炭鉱における労働条件の現在の状態が好ましくないということが、まず一つ原因でありますが、特に若い人たちにとりましては坑内労働の将来性について大きな不安を持っておられることによると思うのでございます。それと同時に特に昨年の三池災害以来、炭鉱の坑内の安全ということにつきまして非常な不安がありまして、老年者などはもうしかたがないが、しかしこれからの若い者がああいう危険なところへ好んでいく必要がないではないかというような空気も相当あるやに聞いておるのでございます。したがって、若い労働力を鉱山に吸収いたしますには、これらの原因についてに十分考慮する必要があると思うのでございまして、第一には労働条件の改善を真剣にはかっていく必要があると思います。賃金、労働時間等重要なる労働条件について改善しなければならぬことは当然でございまするが、そのほかの福利施設であるとか、あるいはいろいろな社宅その他の施設であるとか、また若い者のためには、人里離れた特殊な地帯に集団生活をするということはいろいろ精神的な悩みもあるわけでございまして、こういう面をいかに解決するかというようなことにつきましては、使用者の側においても真剣に御研究をいただく面があるのではないか、こういうふうに思っておるのでございます。  賃金につきましては、何と申しましても、賃金のもとになります炭鉱の経営状態というものがすみやかに改善されることが前提になると存じますが、しかし特に最低賃金というような問題、また退職金の問題、あるいは諸手当の問題、こういった点についてもいろいろと問題があるのじゃないかと思っておるのであります。   それから炭鉱の求人でございまするが、お話しのように、若い人の炭鉱志願者というものが非常に減ってきております。これに対しましては経営者のほうにおかれましても、特に若い人たち、それも技能者というような面に力を入れて訓練あるいは養成につとめておられるようでありますけれども、しかし現在の段階ではそれは思ったほどの効果をあげておらないようでございます。労働省といたしましても、こうした面にも将来できるだけの御協力を申し上げなければならぬと思っておるのであります。いずれにしても、賃金その他の労働条件というものが問題になりまするし、それから炭鉱労働の将来性という点になりますると、これは新しい高能率高賃金というものを柱にした合理化された炭鉱が、真に合理化の趣旨に沿うて運営されていくというような状態を早くつくり上げることが、何よりも大事なことだと思っておるのでございます。これにつきましては労使の協力が必要であると思うのでございます。  それから、先ほど申し上げました保安の問題でございまするが、何ぶんにも、日本の炭鉱の中では最も安全であると考えられておりました三池の爆発事故、それも炭じんによる爆発事故があったということは、これは鉱山労働者にとりましては非常なショックでございまして、ひいてはこれが求人の面にも非常なさわりとなっておると思うのでございます。労働省といたしましてはかねてから、鉱山保安の問題は通産省の所管になってはおったのでございますが、しかしああいう災害がありますと、やはり災害保険法その他労働省の所管事項にも直ちに影響いたしてまいりまするし、ことに今度のように、これがために求人面においても非常な支障を生ずるということになりますると、雇用対策はもともと労働省の所管事項でもございまするので、鉱山保安の問題は労働省として非常に大きな関心事に相なっておるのでございます。通産省に対しましては、すみやかに鉱山保安法の改正その他の措置を講ぜられるようお願いいたしてあるわけでございます。何ぶん職業安定所におきましても、できるだけ鉱山の求人を充足していくという面等から考えまして、鉱山保安について労働省がもっと密接な、もっとより多くの責任を持つべき立場に立つということが、どうしても必要ではないかというふうな感じを持っておるような次第でございます。労働省としても、この鉱山労働の将来についていろいろ検討すべき事項をたくさんかかえておるのでございますが、一応御質問に対しまして思いついた点をお答え申し上げた次第でございます。
  33. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま大臣の御意見を伺っておりますと、高能率高賃金ということを言われております。それは当然なことであると私は思います。ところが、現実にはそれが逆な状態の出ておることを御存じであろうと思います。たとえば大手筋が第二会社に落としていく。大手が直接経営しておるときは、たとえば一人当たり一カ月二十トンくらい。第二会社に落としたところが、それがあるいは三十八トン、四十トン以上、とにかく倍くらい能率があがっておることは、これはそのほとんどがそうであるといってもいいのです。ところが、一つの例をあげますと、三井山野鉱業所が、会社直営のときは一人当たり二十トン弱でしたが、現在では四十一トン以上出ておるのです。賃金が平均して二万八千円くらいであったものが、二万三千円くらいに落としております。福利厚生施設が三千六百円くらいであったものが、六百円くらいに落としております。これは一つの例をあげたわけでありますが、こういう例はほとんどと言ってもいいと思うのです。こういう事実があらわれておるわけです。こういうことでは長続きするものではありません。でありますから、そういう状態のところにおいて、労働省として、その行き方は、高能率高賃金のたてまえからいっても、またそれに伴う福利厚生施設の上からいっても、それは全く時代に逆行するものである、したがって、そういう点から中年あるいは若い者がいなくなってしまうのであるから、そういうものに対してはすみやかに、いま労働大臣が言われた高能率高賃金というたてまえに立って、それらの労働条件がよりよく取り扱われるように勧告をし、もしくはそういうことについて十分御注意をされたという例がございますか、あったらそれをひとつお示し願いたい。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 何ぶん第二会社ができてからまだ操業期間が至って短いので、この間におきまして労働省として、その労働条件について注意を喚起するとか、あるいは勧告をした例はございません。しかし労働省といたしましても、石炭業の安定のためには、労働面に課された大きな使命を果たしてまいらなければなりませんので、今後こういった労働条件につきまして十分に注意をいたしまして、いろいろな機会に労働省としての考え経営者に示し、労働条件の改善をはかり、あわせて労務の充足を容易にするように、経営者の協力もお願いしてまいるようにすべきだと存じます。今後さような方向へ進むようにいたしたいと思います。
  35. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 経営者がかわったばかりと言われるが、山野の例は、私は一例をあげたにすぎないのであります。大手筋炭鉱が、直営では赤字になる。そこで第二会社に落として、炭だけをとる。そうすると、直営では赤字であるが、第二会社に落として、炭だけを親会社のほうがとってやるということになると、ほとんどが黒字になっているのであります。そうすると、一体だれがその犠牲者になっておるかというと、親会社がやっているときより能率を二倍に上げて、賃金をはじめ労働諸条件、福利厚生施設などこれを犠牲にされておるというところから実はそういう結果が出ているわけですから、こういうことについて、やはり労働省としては何もきのうきょう始まったわけではなく、これは三年も四年も前から、炭田地帯が老朽化した方面においては、合理化にかけるか、あるいは保安法によってつぶされるか、それ以外のところは大手筋でもこういうやり方をほとんどとってやってきております。でありますから、労働省のほうではこれは十分おわかりになっておるはずです。でありますから、こういう現実の事態に対して、やはり労働省として十分監督をし、あるいは注意し、警告をして、そうしてこの労働諸条件を守ってやる、しかも労働大臣が言われた高能率という点においては、親会社がやっておるときの倍の能率を上げておるのですから、そうしていまお話しするように、労働賃金、待遇はぐっと切り下げられておるのだから、こういう点は当然労働省として実態調査をされるか、あるいはそれらに対するところの、炭鉱労働者の生活を守ってやるというか、あるいは保護してやるというか、そういうことをおやりになるところに初めて、若い諸君も炭鉱に働きがいがあるから残ってやろうという、そういう空気ができると思うのです。ところがいま私が申し上げているようなことが平気で行なわれておるところに、だんだんだんだん若い諸君がいなくなっていく、もう年をとって、町方に出ていっても雇い手もないという諸君だけが残るということになってしまう。ですからこういう点に対する注意の努力を労働省として怠っておられることははなはだ私遺憾に思っておる。  それから最低賃金の問題についても、大手筋はなるほど最低賃金を実施しています。あの程度の最低賃金というもので、炭鉱の危険作業の坑内夫として妥当適正な賃金と思っておられるかどうかという点。それから中小は四十年からでなければこれを実施しないというが、私は、炭鉱に若い諸君がいなくなる、そういう状態から見て、あまりに怠慢であるという気がするのです。だから中小にも昭和四十年といわず、この三十九年度からでもこれを実施さすというようなお考えがあるかどうか。  それからさらに、どうもさっきから伺っておっても経営優先で、労働賃金はその経営に準じて支給されるもの、こういう観念のようでありますが、私はやはり炭鉱を人的に若返らしていくという点などから考えて、経営が優先して、経営が支払い得ないものはしようがないのじゃないかというようなことではなくして、やはりそれだけの賃金、待遇を与えなければ、炭鉱に若い者をとどまらすことはできぬ、さらに若い者を炭鉱に吸収することもできぬと思う。こういう労働者のたてまえであるならば、やはりそういうたてまえに立って通産大臣などとも話をして、そうしてそれだけの賃金給与を支払い得る状態炭鉱経営というものを持っていかす。これについてはわれわれにもいろいろ意見がありますが、労働大臣の所管でありませんからきょうは申し上げませんが、少なくとも労働大臣としては、いま私がお話しておるような点等を十分お考えになって、そうして通産大臣と十分話し合いをされて、こうした問題を解決するということにどういう努力をされてきつつあるか、そういう点もひとつお聞かせ願いたい。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まず第一の、第二会社の賃金の問題でございますが、御承知のとおり賃金につきましては、労働省といたしましては、これは労使間の自主的な団体交渉によって決定されるべき事柄であって、役所において上げろとか下げろとかというようなことを指図するべき立場にはないという原則に立っているわけなのでございます。もちろん最低賃金が実施をされておりますので、最低賃金以下の賃金を支払うということは違法行為でございますから、これが取り締まりのために監督をいたしておるのであります。労働時間、残業手当その他につきましても、労働基準法等の適用を厳密に監視するという意味の監督はいたしておるのであります。したがって先ほど来のお話のような、能率は倍加しているのに賃金は逆に低下している、これはけしからぬではないかという御趣旨でございましたが、それについてまで労働省として積極的に介入しようということはさしあたり考えておらないし、また、そこへ介入するだけの権限も与えられておらないわけなのであります。  第二の、中小炭鉱における最低賃金の適用の問題でございますが、御承知のとおり、最低賃金の決定にあたりましては、中央最低賃金審議会の意見を聞くことに相なっているのでございまして、一昨年の暮れに開かれました中央最低賃金審議会におきまして、労使公益三者の代表者が集まって御相談の結果、現在の四十年の中小炭鉱への実施時間がきめられているわけでございます。したがいまして、労働省といたしましては、ただいまのところ、せっかく労使の話し合いによって円満に決定したこの最低賃金の実施時期につきまして、これを変更しようという考えは持っておりません。しかしながら、同時に、当時の中央最低賃金審議会の了解事項といたしまして、四十年度になっても、実情を調査した結果、場合によってはさらに延期することができることに相なっておったのでございますが、これは今後実情を調査してみなければ、いま直ちに結論を申し上げることはできませんが、しかし一たん御相談してきまった事柄でございますから、特別の支障のない限り、当初決定どおり四十年度から中小炭鉱にも最低賃金を及ぼすようにいたしたい、こう考えておるのでございます。もっともこれに関する調査はこれから着手いたすことになっておるのでありまして、調査の結果をいまから予言することはできませんが、気持ちといたしましては、差しつかえない限り、できるだけ四十年から中小炭鉱にも実施するようにいたしたいという気持ちだけは持っているわけなのでございます。  それから最後に、高能率高賃金ということで、賃金をよくするためにまず経営をよくすることを優先的に考えるのではないかという御趣旨の御批評でありましたが、私の申し上げたのはさような意味ではございません。まあいろいろな経営というものの原則から考えまして、高賃金を持続的に安定さしていくことについては、やはり経営が安定することが必要じゃなかろうか。そこで経営の安定については事業主も大いに努力をしてもらいたい。むろんそれについてわれわれがどうこう言うべき筋合いではありませんが、われわれといたしましては、高賃金が安定的になるために、経営者は自己の責任において全力を尽くして経営を安定させるように努力してもらいたい。そうしてわれわれとしては高賃金が安定することを希望しておる、こういう趣旨を申し上げたのでございまして、私どもは労働行政の運営にあたりまして、経営優先というような考えは毛頭持っておらないことを御了解いただきたいと思います。
  37. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣の答弁を伺っておりますと、そういう労働省の、また大臣のお考えであれば、私が一番悩みとして先ほどから申し上げておる、中年以下の若い坑内夫の諸君を炭鉱に足をとどまらせ、さらに外部から炭鉱に希望を持って就職させていくということは全然不可能だという気がします。というのは、たとえば能率がこれだけ上がっているのに賃金が下げられてあっても、それは労働省に与えられた法制上の権限でないことであるから、いかんともすることができないということであれば——したがって労働省というものは、単に法律上の違反行為であること以外の点についても、やはりそこに働いておる労働者の安全、生活、それを守ってやる、また、今日のように若い者がどんどんいなくなってきて、また他からも炭鉱に若い者が職を求めてくるというようなことがない、これでは国策としてほっておけないというような場合には、労働省としては、主管大臣である通産大臣あるいは関係閣僚との間においての話し合いをされる、あるいは閣議においてでも将来大きな問題となってくるこうしたことについては、政府としてもそういう国策的要請の上から見て、こういうことを解決するためには当然かくなければならぬということを取り扱われてこそ、初めてその実情に即した政治であるい私はこう思います。労働大臣というのは何も一事務官、行政官じゃない。やはり労働行政についてその政治をおやりになるために労働大臣はおられるわけだから、国の政治の立場からかくなければならぬという場合においては、あるいは局長あるいは課長という労働省におられる事務官とは違って、やはり池田内閣に労働大臣としてあなたが担当されておる以上は、労働行政の全般の上に立って、特に炭鉱あるいは金属鉱山等に、そういうような私がいま質問しておる憂慮すべき問題があるならば、これらを解決するためにどうしたらいいかということについて、いま私が話をしておりますような点などを十分お考えになって、解決策を政府としてやっていくというようなことこそが労働大臣の任務、使命だろうと思いますが、そういうお考えに立っておやりになるという考えはないのですか。やはりあくまで一事務官として法制上許されてある点以上のワクに出て問題を解決しようということについては、それは労働大臣としては行き過ぎだ、こういうお考えですかどうですか、これをちょっと聞かしてください。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 伊藤先生の仰せられることは、私は行き過ぎであるとは考えておりません。しかし、これらの事柄は法令に基づいてやる行為ではなくて、法令外の政治的な行動としてやるべき事柄じゃないか、こういうふうに思うのでございまして、先ほど来申し上げましたのは、法令に基づいて労働省の事務としてやる事柄を一応お答えいたしたわけでございます。むろん事務的にも労働条件の指導について労働省として力を働かせる余地はあるのでございます。それは、御承知のとおり今日、職業安定所を通じまして労働者の雇い入れに労働省が関与いたしておりますから、その企業体の労働条件について、そういう条件では人は来ない、お世話をしようにもできないということを言うことによって、間接的に労働条件を引き上げていくということ、これは十分に事務当局だけでできる事柄だと思うのであります。ことに安全の問題等につきましては、新しい求職者は非常に不安を持っておるのでございまして、現在の状態といたしましては、本人の不安を押し切ってまで、職業安定所が若い人たち炭鉱に入れということをすすめるだけの確信を持てる段階にまだ至っておりません。したがって、そういった面からも若い人を炭鉱に供給するということについては困難があるわけでございます。しかしこれらの事柄は法令による権限ではなく、実際上間接的にこちらの影響力を使用者に与えるということだと思うのでございます。その影響力を与えるということが、はたして労働省として当然になすべきことかどうか、その影響力を与えるということも、経営者に対して命令的な立場でやるべき事柄でないということは明らかでございまして、これはむしろ勧告とか、あるいは好意的な忠告というような形でやるべき事柄だろうと思うのでございます。それらにつきましては、まだ労働省として十分確信を持って忠告を行なうというところまで準備が整っておりませんが、お話の次第もございまするので、できるだけすみやかに実情を調査して、われわれとしてもそういった面から、できるだけ労働条件をよくするという面に働きかけていきたいと思っておるのでございます。私も、できれば来月の初めころには北海道及び九州の関係地域に参りまして、いろいろ実情等もよく視察し、また問い合わせまして、そういった面にまで力を入れてみたい、かように存じております。
  39. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま大臣が最後に意見を述べられたその考えには、私、賛成です。また、それは責任をもってみずから解決に当たらなければならぬと強くお考えになっておる点だろうと思うのです。そこで、この問題を解決することは、たとえば労働省の局長あるいは関係責任者の諸君では、いま大臣が答弁されておるように、法制上以上のことは行き過ぎだという点等で縛られておるからできないということは、これは私は百も承知しております。そういう場合にやはり池田内閣として、また内閣の中における日本の労働行政あるいは労働問題、これらの全体をやはり解決するという、その政治をやるのが労働大臣の使命だと私は思っている。でありますから、行政上どうすることもできないという状態になっておるなら、それは内閣として、それから内閣の中の労働大臣として、政治的にこの問題を解決するということは、これは労働大臣が当然なされなければならぬことであることは申すまでもないと思うのです。でありますから、各炭田地区を大臣みずから見に行かれるということもけっこうですが、見に行かれなければわからないということではなくて、おそらく私はもう大臣の耳にたこが寄るほど聞かされ、それからまた、書きものでもお読みになっていると思うのです。でありますから、この問題はやはり内閣として解決をするということでなければ、炭鉱に若い者をとどまらす、また就職を求めさす——あるいは大臣もお聞きになっておるかと思いますが、いま炭鉱に行ってごらんなさい。現在働いておる炭鉱の坑内夫の諸君は、自分の子供はどんなことがあっても坑内夫にせぬ、炭鉱に働かせぬというようなことで、ほとんどといっていいくらい自分の子供を外へ出しておるじゃありませんか。私の知る限りにおいては、とにかく自分の子供だけは自分のようなこういう危険作業というか、あるいはこういうひどい労働はさせたくないというので、これはもうほとんどといっていいくらい外へ出しております。おそらく労働省でもお調べになっておると思うが、どこの山へお行きになっても、その子供に二代を継がすというようなことを言うところは、私まあ雨の夜の星ほどもなかろうと思っている。そういうことではとても、炭鉱にみずから働いておる者が、自分の子供あるいは自分の親族の若い者でも引っぱってきて働かしたということがないのに、それほど不安定なところに若い者がおる道理もないし、また他から行く道理もありません。まあ率直に話しますと、たとえば現在働いておる諸君が、これも具体的な例をあげてもいいんですけれども、名前をあげるのは省いておきますが、坑内現場で働いておる賃金よりいい、これはひとつ、いまやめて失業保険の最高額をもらおうといって、失業保険をもらうためにやめちゃう。働くより失業保険をもらったほうがいい、失業保険が切れたら、今度は生活保護を受けたほうが、働いておるより安全だし、生活が安定する、そういうような空気が相当老朽炭田のほうには支配的になっておる。この現実、こういうことなども、私は労働省では御存じになっておると思うのです。そういうようなことは、国の労働対策としてもゆゆしき問題であるのみならず、直接の炭鉱としてはなおさら重大な問題である。さらに退職金の問題についても、炭鉱で一番いい退職金を出しているところと、それから町方の大工場の退職金とを比較すると、いいところで半分、あるいは三分の一、あるいは五分の一、あるいはゼロ。中小になれば、ゼロと言ってもいいところがあります。そういうような退職金の不安定な状態。それから老齢年金があって老後の生活が保障されるという社会保障が確立しておるわけでもありませんから、したがって、年をとって定年になるまで働いて、わずかばかりの退職金をもらってどうすることもできないという不安定があるわけであります。でありますから、せいぜい三十代ぐらいのうちにできるだけやめていこうというようなことで、中年の諸君も炭鉱を去っていくというのは、そういう打算の上からも、また自分の将来というものを考えた上から、そういうことが行なわれておるわけです。ですから、こういう点等についても私は労働省は百も承知であろうと思うから、一体どういうふうにお考えになってこうした問題を解決されようとしておるのか。これは行政官の諸君だけではやれないことでありますから、こういう問題等はやはり総合して、労働大臣が政治としてこの解決をするのに、この現実に対してどんな努力をされておるか、こういう点をひとつお聞かせを願いたい。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、法令によりますと、労働条件については労使間の自主的な団体交渉できまるべきものでございまして、行政機関からかれこれ指図すべき事柄ではございません。しかし、いまの段階において現在の労働条件で十分なる労働力を確保できないということは、ほとんど明らかになってきておるのでございます。したがって、この労働条件の改善ということは非常な急務になっておりまして、これがあって初めて石炭山の再建が可能になるということは申すまでもないのでございますが、先ほど来申し上げましたるごとく、労働条件については労使間の話し合いできまるべきものだという現在の制度を立てていきます限りは、少なくとも労働省が労働条件の改善に異論のないことはもちろんでございますが、使用者の側においても、労働条件の改善についてその必要性を十分に自覚し、積極的にこれを実現するという熱意を持ってもらうということが、改善が実現する前提に相なるのではなかろうかと思うのであります。かような意味におきまして、労働条件の改善についての実際上の労働大臣としての今後の行動というものは、結局使用者に労働条件の改善について熱意を持って当たってもらうということにあるわけでございまして、これはあくまで命令ではなく、勧告であり忠告であり、説得であると思うのでございます。それにつきましては、説得をする側であるところの当方においても十分実情を把握し、また、現場の人たち考え方、あるいは中小企業主の考え方、そういうものを十分に頭に置き、その上に立って説得工作を進める必要があると思うのでございます。いや自分の事業は将来どうなってもかまわぬ、とにかくいまのところもうければいいのだというようなことでは、幾らこちらが説得してもなかなか効果があがらないと思うのでございまして、それらの現地の使用者側の気持ちというものをある程度伺いにまかり出る、この耳をもって直接お話を伺って確かめるという意味から申しましても、実際やはり早い機会に現地へ行って、十分関係者の方々の御意見、お話等を伺って、私自身としても自分の考えを一段と確かめたい、かような気持ちを持っておる次第でございます。
  41. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そこで、私はいま一点だけ伺っておきたいと思います。さらにもっと具体的に掘り下げていろいろ労働大臣にお伺いしたいことがございますけれども、時間も限られておるような状態でありますから、これが最後ということでなくて、一応後日にまたお尋ねするということにしておきたいと思います。  いま一点お伺いしておきたいことは、やはりこれは労働大臣と通産大臣が話し合いをされなければ、炭鉱における若い諸君あるいは中年の諸君を、希望を持って足をとどめ、働かすということはできない。それからまた外部からもこの募集に応ずる者はない。だからこれらの問題を解決するということは、やはり経営に伴う問題でもあります。石炭を斜陽産業と言って、非常に不安を与えてしまった。そういう不安の中から、炭鉱労働者の若い諸君にこうした、他に出て行こうという一つの空気を起こさせておることも事実です。さっき大臣から、いまもうけるだけもうけておけばいいというお話もあったようですが、私は別に炭鉱経営者をひいきするわけではないけれども、いまもうけているという炭鉱は幾つもないだろうと実は思っています。むしろいかにして健全経営を維持するかということについて苦労しておるだろう、私の知る限りにおいては、私はこう思っております。なるほどもうけておるところもあることもわれわれは知っておりますけれども、これはごく少数です。そういう中において、この炭鉱労働者問題を解決するということは、池田内閣として政治上どういうふうに石炭問題を解決するかということと相伴っていかなければならないことも、われわれは十分存じております。でありますから、労働大臣と通産大臣とが話し合いをされて、これだけの労働諸条件を整えなければ炭鉱は人的に老朽、老廃してしまうぞ——だからやはり、これだけの諸条件炭鉱側が労働者側に与え得るだけの経営を行なわせなければならない。そのためには石炭問題というものをやはり国策として、数量の保証というか、価格の安定というか、あるいは熱ネエルギーの非常な倍増に伴う石炭需要度をどういうふうにふやしていくか、こういう問題とやはり伴っていく問題でありますから、したがって労働大臣の立場から、そういう意見を強く通産大臣に要請され、あるいは閣議等においてもそれを強く主張されていくところに、初めて炭鉱労働者問題の解決、ひいてはその母体である炭鉱経営上の問題もおのずから解決ということが、政治上の責任の問題として起こってくると思います。だからそういう点について、過去において通産大臣と話し合いをされたことがあるかどうか、さらに今後そういうことの話し合いをして、通産大臣とも意見が一致し、そして石炭問題、炭鉱労働者の問題を一体として解決するためにはかくなければならぬということなどを、閣議の問題として解決しようというようなお考えがあるかどうか、この点ひとつ伺っておきたいと思う。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来から、炭鉱の問題につきましては労働問題が非常に大きな部分を占めておりまするし、また炭鉱における労働問題の解決につきましては、通産大臣の関係するような事柄と非常にかかわりがございますので、労働、通産両省では、大臣間においてばかりでなく、事務当局の間におきましても絶えず連絡をとり、話し合いをし、意見を調整し、また意見の一致したる場合におきましては、それを基礎として大蔵省その他の関係方面とも協力して実現に当たるというような、非常に緊密な関係を保つことができたわけでございます。これが今日まで石炭問題を解決することのできました大きな力になっておると確信をいたしておるのでございます。ただいま炭鉱に起こっておりまする労働問題は、従来の問題と変わった意味の問題が逐次大きくなりつつありまするが、この問題につきましても従来の問題の解決と同様、両省間の緊密な連絡をとってまいりたいと思っておるのであります。労働省といたしましては、今後は根幹となるべき基幹労働力の充足ということが石炭業界の労働問題の中心の柱になる、これを中心として、労働条件その他労働問題全般を展開させていかなければならぬ、かように考えておるわけでございまして、そういう立場からまた通産省の協力を得なければならないこともたくさんあると思います。そこで労働省といたしましては、まずわれわれの立場から十分に石炭界の現状を念には念を入れて確かめまして、その基礎に立って通産省と話し合いをし、今後協力いたしてまいりたい、かように考えます。
  43. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私の質問はこの程度にいたしておきます。
  44. 神田博

    ○神田委員長代理 暫時休憩いたします。    午後零時四十一分散会