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天日参考人 井手先生の御質問にお答え申し上げます。
昨日私が諸
先生に申しました
お願いの中に、
鉱害賠償基金から
鉱害復旧事業団に対しまして、
工事資金の
貸し付けができるようにお取り計らいを
お願い申し上げた点でありますが、何分にも一
鉱害賠償基金は三十八年七月に発足いたしまして、まだ満一年も経過いたしておらぬ
状況でございます。したがいまして、
鉱害賠償基金から
鉱害復旧事業団に
貸し付けいたしております実例は、いまだないわけでございます。その必要があると考えております点を申し上げますと、従来
鉱害復旧事業団は、昨日申し上げましたとおり、
炭鉱側の
納付金が一時に納付できない場合に、
復旧工事を推進いたしますためには、どうしても
工事費の立てかえが必要となるわけであります。その間の事情を、
政府御当局でも、また
国会方面でも一お認めになりました結果、数年前から
鉱害復旧事業団が大蔵省の
資金運用部から
資金を借りまして、
炭鉱に
貸し付けをいたしてまいっております。
貸し付けいたしたということは、
炭鉱に対しまして、三カ
年間で
貸し付け額を返させまして、一方におきましては
工事施行に当たります、あるいは直接
工事に当たります
工事人に支払いをいたしてまいったわけであります。当初は延べ払い、われわれ延納と申しておるのでありますが、この金をお借りするにあたりましては、当初は
政府から
鉱害復旧事業団が直接お
貸しをいただくことができなかったのであります。これに対しまして、私は就職いたしましてから間もなく、御
承知の
資金運用部資金法という
法律がたしかございまして、その第七条の第七号かと思いましたが、
鉱害復旧事業団のような、特別の
法律によって設立されておって、かつ
債券の
発行権が認められているところの
特殊法人に対しましては、この
資金運用部資金法によりまして、
資金運用部はその
債券を引き受けることができる。また、同様の
性格を持っておりますところの
特殊法人に対しましては、
資金運用部は直接に
貸し付けをすることができるという御
趣旨の
規定になっておったと記憶しております。さようの点からいたしまして、数回にわたりまして、
政府からお
貸しいただくことの
方針をおきめになったからには、
鉱害復旧事業団に
資金運用部から直接
研要の
額——所要の額と申しますのは当然
関係の
役所で御
査定があるわけでありますから、必要な限度の額を直接お
貸し願いたいということを
お願いしておったのでございます。しかしながらその当時のお扱いでは、
鉱害復旧事業団に直接金を貸すことはできないということでありまして、
関係の県にまず
政府がお
貸しになりまして、しこうして
関係の県から
復旧事業団はまた借りをいたすという方式をとられておったのであります。しかしながらどう考えても一、
法律の
規定から見ましても、また
復旧事業団という特殊の
法人の
性格から見ましても、
政府から直接お借りすることができるはずであるし、またそうされて支障ないはずであるということをるる陳弁いたしました結果、その後お取り扱いが改まりまして、
資金運用部から
鉱害復旧事業団に直接お
貸しをしていただくことができるようになったのは、
一大進歩であったと思うのであります。しかしながらこの
資金運用部からお借りいたしました金につきましては、その
用途の指定がございます。ということは、いま申し上げたとおり、
炭鉱が
納付金を一時に納めることができない場合に、
炭鉱に立てかえて
貸して
工事を進めるという、その
用途に制限があります。その
性格を持ってお借りしたわけであります。それでやってまいったことは申し上げたとおりであります。しかるに、なぜ今回
鉱害賠償基金から
復旧事業団に
貸し付けすることにいたしたいと考えるかと申しますと、昨日も申し上げましたとおり、
鉱害復旧事業団が最近の
情勢からいたしまして、非常に多く、いわゆる
無権者工事というものを早く取り運ばねばならぬという
情勢になったことは、御
承知のとおりと思うのであります。しこうして非常にふえました、
年間九州だけでも二十六億二十七億にのぼる
工事を、しかも大半は御
承知のとおり
耕作地、
農地でございますので、従来のごとく稲の刈り入れの済んだあと、おおむね十二月末から一月くらいになるのでありますけれども、なお詰めて申せば、一月から三月までの一・四半期の
期間だけで非常に多くの
農地の
復旧工事をいたすということは、量的にも、
工事能力の面から見ましても、はなはだ短い
期間に集中、片寄りますので、非常に困難を感ずるわけでございます。したがいまして必ずしも一−三月といわず、できまするならばいわゆる
春工事と申しますけれども、四月、五月、
当該年度の稲の植えつけをする前の時期でも可能なものは
復旧工事をいたすのが、一番適切だと思うのであります。また土地の
状況によりましては六月、七月、八月、九月でありましても、可能なものは
復旧の
工事をいたすことが必要であると思うのであります。さような場合に、御
承知のごとく、
復旧工事の
工事費の
財源は、
農地を一番わかりやすく例にとりますれば、
政府の
補助金と
関係府県の負担される
補助金とまた
炭鉱つまり義務者側の
納付金と、三つの
財源をもって
工事に充てるわけでありますけれども、
実情は、はなはだ恐縮で申しにくいのでありますけれども、諸般の
実情からいたしまして、
補助金の
お下げ渡しに相なりまするのは、すべての
所要なる
手続、すなわち
基本計画の
認可申請なり、またそれの御
認可なり、またそれに続くところの
実施計画の
認可申請、またそれに対する
実施計画の御
認可というような
段階を絡まして、初めて
補助金が
お下げ渡しになる、当然のことでありますけれども、さような
仕組みであります。しかるにかかわらず
実情を申しますると、ある
程度の
関係のお
役所の御了解を得たと考え得られます場合においては、
ことばははなはだ不適当でありますけれども、
事前着工、これも率直に申し上げざるを得ないと思いますけれども、
成規の
手続のすべてが一〇〇%終わる前に
工事に着手いたすことが必要になるわけであります。さような場合におきましては、
補助金の
お下げ渡しもいまだなし、また
実施計画の
認可がありませんと、
事業団は
炭鉱に対しまして
納付金の
納付告知書を発行することもできない
仕組みになっておりますので、したがいまして
工事資金、毎月
工事が進行する度合いにしたがいまして
工事請負人に払うべき
工事資金の
財源に事を欠くわけであります。かような点からいたしまして、
補助金の御下付がなるべくすみやかになるように努力はいたしておりますけれども、また
関係のお
役所とされましては、
農地などにつきまして一筆ごとにいろいろな計算をなさる必要もございまするし、また現地御
査定も必要でございますので、
認可をいただくまでに相当の時日を要するのでありまして、これがずいぶん以前からみますと短縮はされましたが、なお昨日申し上げたとおり、一週間十日をもって御
認可をいただくには至りがたい。お
役所もさような御
措置はいたしがたい点が多々あると思うのであります。これらを考えますと、
鉱害賠償基金から
鉱害復旧事業団に対しましてある
程度の
工事資金の
貸し付をさせていただいて、
工事を取り進めてまいりたい。それが、極端に申せば一町歩でも多く、一日でも早く
鉱害復旧の実をあげる
ゆえんであるし、またせっかく
国会等で御承認になりました
復旧補助予算を完全に消化して、
当該年度の
使命を達成するのに最も適切な
ゆえんであろうかと思うのであります。
なお昨日、私
ことばが足りませんでしたために、
多賀谷先生から御
指摘を受けたのでありますが、
鉱害賠償基金から
復旧事業団に金を
貸したならば、
鉱害賠償基金から
鉱業権者なり
租鉱権者に
貸し出すべき
使命があるじゃないか、そのほうの金に食い込んできて、本来貸すべきところに貸す金が足りなくなってきたのでは不都合千万じゃないかという
趣旨の御
指摘があったのであります。私自身は、昨日もちょっと申し上げたのでありますけれども、本来
賠償基金として
貸し出すべき先として当然考えております
鉱業権者でありますとか、
租鉱権者でありますとか、こういうところの向きがこの
法律の
規定に従って
鉱害の
賠償を進めるための金に事を欠かさせる
趣旨では毛頭ありません。しからば、その金に食い込まないようにするためにはどうするかという点が、残ってきた
方法論であろうかと思うのであります。そのためにこそ、
政府の御出資をさらにふやしていただきたい、また
政府から
鉱害賠償基金に対しまして、三十九年度は五億円という
ワクをお認めいただきましたけれども、その融資の
ワクをさらに拡大していただいて、
鉱害賠償基金としましては運転し得る
資金量を増大いたしまして、よってもって、
鉱害賠償復旧事業団にも一時の
貸し付けをいたす、そして
工事を進めさせる。また、
鉱害賠償基金から
復旧事業団に
貸しました金が回収ができなくては、それはたいへんなことでございます、御
指摘のとおりでございますけれども、その点は
鉱害復旧事業団に
貸しました金は、要するに
補助金の
お下げ渡しができるまで、また
炭鉱の
納付金が入るまでの間のつなぎと考えられるわけでありますからして、
復旧事業団に
貸し付けました場合において、これが
長期にわたって返済が滞るということは、まず考えられないと言うとはなはだ言き過ぎかもしれませんけれども、十分これは予防回避できる、かようにも考えておりましたので、
鉱害賠償基金の
理事長としてこういうことを言うてははなはだ不適当でないかというおしかりの声もありましたけれども、
実情から考えましてこれが最も適切な
方法であり、またその弊害は十分に防止し得るし、不測の損害を生ずることを避けることに
かなり十分な
措置がとり得る、かように考えております。
要は、くどいようでありますけれども、
鉱害復旧事業というものを促進いたすのに、大きな
潤滑剤と申しましょうか、必要な原動力、
一つの大きな歯車となる、かように考えていただきたいということを
お願いいたす次第であります。