運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-03-11 第46回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十一日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 有田 喜一君 理事 始関 伊平君    理事 中川 俊思君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 中村 重光君       大坪 保雄君    木村 守江君       澁谷 直藏君    壽原 正一君       田中 六助君    野見山清造君       三原 朝雄君    井手 以誠君       細谷 治嘉君    八木  昇君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         参  考  人         (九州鉱害復旧         事業団理事長         鉱害賠償基金         理事長)    天日 光一君         参  考  人         (福岡鉱害対         策被害者組合連         合会会長)   三村  保君         参  考  人         (福岡鉱害家         屋被害者組合連         合会会長)   石川 八郎君         参  考  人         (佐賀鉱害被         害者組合連合会         理事)     梅崎 事一君         参  考  人         (江北鉱害被         害者組合組合         長)      百崎 晴雄君         参  考  人         (石炭鉱業合理         化事業団理事) 佐藤 京三君         参  考  人         (福岡総務部         鉱害課長)   柴田 文雄君         参  考  人         (全国鉱業市町         村連合会理事) 村坂ながえ君     ————————————— 三月十一日  委員周東英雄辞任につき、その補欠として大  坪保雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大坪保雄辞任につき、その補欠として周  東英雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月七日  炭鉱坑内特殊防爆型照明非常警報電灯設備  に関する請願進藤一馬紹介)(第一〇四五  号)  産炭地域自治体及び住民に関する請願多賀谷  真稔君紹介)(第一一〇一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第七一号)      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として審査を行ないます。  本日は、特に本案審査のため参考人として、九州鉱害復旧事業団理事長鉱害賠償基金理事長天日光一君、石炭鉱業合理化事業団理事佐藤京三君、福岡総務部鉱害課長柴田文雄君、全国鉱業市町村連合会理事村坂ながえ君、福岡鉱害対策被害者組合連合会会長三村保君、福岡鉱害家屋被害者組合連合会会長石川八郎君、佐賀鉱害被害者組合連合会理事梅崎事一君、佐賀江北鉱害被害者組合組合長の百崎晴雄君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず遠路わざわざ御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。御承知のとおり本委員会におきましては、ただいま石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案審査をいたしておりますが、本案に関連してこの際鉱害問題についてそれぞれ関係を持っておられる参考人各位の御意見を拝聴し、もって本案審査参考にいたしたいと存じますので、各位にはそれぞれのお立場から鉱害全般について忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  参考人各位には最初一人十分程度意見をお述べいただき、あと委員の質疑に応じていただきたいと存じます。  それでは天日参考人からお願いいたします。天日光一君。
  3. 天日光一

    天日参考人 ただいま委員長殿から御指名がございました天日光一でございますが、委員長お示しのごとく、一方におきまして特殊法人でありますところの鉱害賠償基金理事長を命ぜられております。また、かねて九州鉱害復旧事業団理事長もいたしております関係上、両方の立場から申し上げたいと思います。  すでに皆さん方承知のことではございますけれども、御質問をいただく前にごく簡単に概略の状況からまずお聞きいただきたいと思います。きわめて簡略に申し上げますので、あるいはことばが足りない点があるかと思いますけれども、御了承いただきたいと思います。  まず、ただいまお示しのごとく、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の御審議をお願いしておる関係上、この賠償担保等関係のほうの基金の点について概略先に申し上げさせていただきたいと思うのであります。これはすでに関係のお役所のほうからも御説明をお聞き及びになっていることと思いますけれども、担当の理事者として、ごくかいつまんで申し上げたいと思います。  昨年、国会の御審議の結果成立いたしました鉱害賠償基金につきましては、さっそく成立いたしました予算によりまして三億円の出資をいただきました。  また法律規定に基づきまして、鉱業法によりまして各地の法務局に供託されておりましたところのいわゆる供託金、これの取り戻し事務に鋭意努力いたしたのでありまして、供託金はおおむねお役所の想定に近いところの五億円の程度をただいまのところ取り戻しております。しかしながら、なお若干取り戻し未了の分があることを申し添えねばなりません。その理由といたしましては、何ぶんにも古きは二十年も以前にさかのぼったものもございまするし、また北海道を除きまして全国各地に広くまたがっておる問題でありますので、中には関係書類の焼失等々の関係からいたしまして、各地供託局の書類と必ずしも直ちにつき合わせ符合がいたさぬ部分等もございまするし、またそれぞれ誤記等事情もございますので、目下そのほうの整理を急いでおるわけでございます。  それから第三点といたしましては、御承知のごとく法律に基づきまして、新たに鉱業権者または租鉱権者方面から積み立て金を受け入れておるわけでございます。これは当初の政府の御計算によりますると、三十八年度は何ぶんにも発足いたしましたのが七月でございましたので、全年間、すなわち十二ヵ月ないわけでございますので、三十八年度といたしましてはおおむね三億八千万円の予測が立っておったのでございますが、ただいまのところ約一億五千万円程度を受け入れております。その数字の差と申しまするのは、これは御承知の方が多いかと思いまするけれども、法律規定によりまして積み立て金分割納付が許されておるものでございますから、炭鉱事情によりまして分割納付の願い出を関係のお役所へ出された向きがありまして、許可になっておりますのが相当多いために、今後これから収入いたすべきものが相当あるわけであります。さような状態でございます。  それから一方、業務の他の大きな面でございます貸し出し業務でございますが、これはせっかくかような法人が設立され、特にその使命を負わされました趣旨にかんがみまして、昨年十二月までに大部分の調査を完了いたしまして、十二月中に約五億円近い金額を貸し出しいたしたのであります。その後さらに年が明け本年に入りましてからも、なお適格なものには貸し出しをいたしまして、ただいまのところ貸し出し合計額はおおむね五億八千万円ほどに相なっております。また、現に貸し出しの申し込みがございますものにつきましては、逐次審査いたしております。適合いたすものには今後も貸し出す予定に考えておるわけであります。  業務概略を申し上げたのでありますが、なお貸し出しにつきましては、それぞれの規定に従いまして処置いたしておるわけでありますけれども、大きな点を申し上げますならば、関係のお役所の御承認をいただきましたところの業務方法に従いまして、最長二カ年の据え置き以内、全償還期間五年以内という条件のもとに貸し出しいたしております。  なお、貸し出しの金額の回収の確実をはかることは当然のことでございますので、それぞれ担保物件審査をいたしまして、われわれは鉱業財団抵当権を設定いたします、あるいは土地その他の物件につきまして抵当権を設定いたすという担保措置をとっておるわけでございます。  なお、次に、三十九年度の業務の概要を申し上げまするが、これは実は政府の御出資をさらに増大していただきたいということを、特に関係方面にお願いいたしております。当面の段階におきましては、二億円の政府出資の御追加をお願いいたしたい、かように存じておったのでありますけれども、関係方面の御努力も願ったのでありましたが、ただいま国会において御審議に相なっておりますところの三十九年度の予算におきましては、政府出資一億円をさらに追加するという御案が出て御審議を願っておることと思うのであります。しかしながら、この追加一億円をもちまして、昨年の政府の御出資と合わせますると四億円になるわけでございまするが、四億円をもって足れりとは考えておりません。さらにもっと多くの御出資を願いたいと存じておる次第でありますが、今後の御支援と御審議によりまして、この念願がすみやかに達成せんことを念願してやまない次第であります。政府出資の増額を願うゆえんのものは、もとより需要があるからでありまして、需要があるということは必要があるからでございますが、これはぜひ今後も格段の御支援をお願いいたしたいと思っております。  なお明三十九年度は、いま申し上げた政府出資の追加一億円と、そのほか積み立て金も入ってまいりますが、なおさらに政府国会方面の御配慮によりまして、五億円の大蔵省の融資のワクをおきめいただくことになっておりますので、それこれ合わせまするとおおむね十億円程度貸し出しは三十九年度において可能かと考えております。しかしながら、この十億円も必ずしもこれをもって余れりといたすことは毛頭ないのでありまして、最近の鉱害復旧事業量の増大、その必要性からかんがみまするならば、これもさらにより多くの融資のワクを期待いたすことは当然のことでございます。なお、この辺の数字につきましては、おそらくは関係のお役所のほうから御説明があったことと思いますので、詳しいこまかい数字は省略さしていただきたいと思います。  基金につきましては業務の概要は以上で省略させていただきまして、しからば今後基金というものについて何を特に念願いたし、お願いをいたしたいと思っているかという点につきましては、前段申し述べましたごとく、政府出資のさらに増額と、それから融資ワクの増大であります。それからさらに、いささかこまかい点ではございまするけれども、鉱害賠償基金から各地鉱害復旧業務を担当いたしておりまするところのいわゆる鉱害復旧事業団という別法人に対しまして、工事資金貸し出しされるように願いたいと思っております。この点はいろいろ論議のあるところでございまするけれども、鉱害賠償基金から鉱害復旧事業団工事資金貸し出しがありませんというと、鉱害復旧事業の迅速、円滑な推進にどうしても支障、障害が多いということでございます。と申し上げまするのは、鉱害復旧事業団は、御承知のとおり、現在四つございまするけれども、それぞれの地区におきまして鉱害復旧事業の推進をはかっておるわけでございまするが、やはり工事資金といたしましてかなり資金を用意いたしませんというと、事が迅速に運ばないという点がございまするので、ぜひこれは達成いたしたいと思うのでございます。  なお、これはいま申し上げたことのいささかの裏づけかと思いまするけれども、例の鉱害復旧関係法律、いわゆる臨鉱法と略称いたしておりまするけれども、臨時石炭鉱害復旧法の中には、復旧事業団鉱害復旧債券を発行できるというりっぱな規定があるのでございまして、その債券発行規定が当初から設けられたゆえんのものは、法律にも書いてありまするとおり、鉱害復旧事業団工事施行者になった場合に、その工事施行に必要な資金を調達するためという趣旨の目的を書いてあるわけであります。これらを考えてみまするならば、当初からして、かような工事資金が要るということは法律御制定の当初、昭和二十七年の当時においてすでに予見されたことであるわけであります。しかしながら、諸般の事情からいたしまして、この債券発行規定は生きてはおりません。といいまするのは、債券の発行に関する諸手続等のことは政令をもって定むということになっておりまして、その政令は今日まで出ておりませんのであります。法治国の日本としてはふしぎな現象の一つと、これは余談でございますが、思っております。ただしこれも政府から、資金運用部から融資をされておりまするので、債券発行にかわることとなってはおるわけであります。これはこれでよろしゅうございますが、何にいたせ、工事資金が要るということが根本の理由になっているわけであります。それば当然認めておることでありますからして、鉱害賠償基金から復旧事業団工事資金を貸し出すことの実現することが望ましいということを常に念願しておる次第であります。なお鉱害賠償基金につきましては、発足いたしてようやく十カ月ほど経過したのでありまするので、今後の実績も上がりまして、法律御制定の御趣旨、また、になわされた使命の達成に一段の努力をいたす考えでおりますので、これらの点をあと申し上げまするところの鉱害復旧事業の面とあわせて、石炭政策の一環としての大所局所からの御判断によりまして適切な態勢、また御措置をお願いいたしたいと思っておるのであります。  基金につきましては以上をもちまして終わらせていただきまして、お尋ねがありましたならば、後ほどまた申し上げたいと思います。  なお、もう少しく時間をちょうだいいたしまして、鉱害復旧そのことにつきまして若干御報告申し上げ、またお願い申し上げるところをお聞き取り願いたいと思うのでございます。  これもかいつまみましたものはお手元に差し上げてあるかと存じますので、はしょらしていただく点が多いかと思いますけれども、御承知のごとく石炭及び亜炭の採掘に伴うところの鉱害というものは、何回かの政府の御調査によりまして、既発生鉱害があるいは二百数十億となり、あるいはまた今後発生する鉱害が同じく二百数十億となりまして、両者を合わせまするとおおむね五百億円をこすかと思われる数字が出るのでありますが、もとよりその間に毎年政府の、また地方自治団体その他の御補助、また炭鉱納付金によりまして、鉱害復旧は推進してまいっておることは御承知のとおりでありまして、二十七年に九州中国宇部鉱害復旧事業団ができ、その後岐阜、愛知を地域といたしました東海鉱害復旧事業団ができ、また両三年前に茨城、福島県を主たる地区といたしまするところの常磐鉱害復旧事業団、この四事業団ができたことは御承知かと思うのでありますけれども、その中で九州は、何と申しましても従来の長い石炭の採掘の歴史からいたしまして、全鉱害量の九割と申し上げてよろしいと思います。端数は省略いたしますけれども、まあ九割が九州でございまして、またその九割のうちのやはり九割と申し上げたほうがよろしいかと思いますけれども、これは福岡県下の鉱害でございます。かような状況でございまして、努力はずいぶんいたしてまいり、復旧いたしてまいりましたものも、九州だけの事業団につきましてもおおむね累計百五十数億に相なるわけであります。またそのほかに、御承知の方も多数おいでかと思いますけれども、ただいま行なわれておる鉱害復旧法律のほかに、戦前に特別鉱害復旧という制度がございまして、戦時中のいわば強行採炭による鉱害、これにつきましては特別の法律があったのであります。これでもやはり百億をこす復旧事業を完了いたして法律が廃止になったわけでありますけれども、合わせましたならば、すでにやはり少なくとも二百数十億の復旧はいたしてまいっておるわけであります。それにもかかわらず、なおかつ、前段申し上げたとおり、まだ膨大な鉱害復旧量残存量があるということが、大きな国土保全あるいは民生安定というような見地からいたしまして、大きな問題を残しておるわけであります。  なお、いささかてまえみそで恐縮でありますが、これは感謝のことばでもって申し上げるものでありまして、九州事業団につきまするというと、ただどの程度伸び方をしておるかということの一端だけの申し上げ方でありますけれども、発足いたしましたところの二十七年におきましての年間の事業量は八千七百八十万円ほどであったのでございますが、昭和三十八年度におきましては、事業量が二十二億円をこしておりまするからして、二十五倍に相なったわけでありますが、三十九年度の政府補助金予算等から推算いたしますると、九州事業団といたしましては、二十六億円をこす事業量を消化いたすことに相なりまするからして、発足当初の昭和二十七年を一〇〇といたしますると、指数は三〇〇〇をこすわけでありますからして、三十倍の事業をやらしていただくようなことになったわけであります。これは自慢で申し上げるのではなく、これだけ伸ばしていただいたということを、お礼の意味をもって申し上げるのであります。  なお、この内訳につきましては、金額だけじゃありませんので、しからばそれによって何をどう直してきたか、品物を物件別にお手元に書いて差し上げておる次第でございますけれども、ごく概略申し上げますならば、農地におきましては、おおむね二千八百七十七町歩、かなりの面積を復旧いたしてまいったのであります。そのほか、読み上げを省略いたしますけれども、農業用のため池でありますとか、農業用水路でありますとか、あるいは農道でありますとか、河川でありますとか、道路でありますとか、上水道でありますとか、下水道でありますとか、鉄道でありまするとか、学校でありまするとか、それから公共・公用の建物でありますとか、一般の、通俗に申して民家、これが家屋等という用語になっておりますが、かようなものを含めますと、かなり物件数復旧いたしてまいっておるのであります。  また、これまでの事業をやらしていただくにつきましては、政府その他の方面の御理解によりまして、立てかえ工事と申したほうが一番わかりがいいかと思うのでありますが、事業団政府からお金を拝借してまいりまして、炭鉱が一時に納付金が納めがたい事情にあるものにつきまして、その適格さを審査いたしまして、貸し付けいたします。貸し付けと申しますのは、工事費を立てかえて工事を進めてまいるということであります。許された方法によりますれば、貸し付け先炭鉱からは、三カ年で均等償還という方式をとっておるのであります。ただ、前回御喚問いただきましたときにも申し述べたと思うのでありますけれども、途中政府の御方針の扱い方の変更がありまして、政府からお借りする金は、いわゆる短期資金、一年ごとにお借りし一年ごとにお返しするというような、短期資金という性格になったのであります。しかしながら、いま申し上げましたとおり、炭鉱から回収してくるのは三カ年間ということでありますので、三尺のものが要るのに一尺のものを借りたというような、はなはだ卑近な例を申し上げて恐縮でありますけれども、さようなことでありますので、しからばどうしておるかと申しますると、毎年三月下旬に政府のほうへその年度にお借りした金をお返しいたすわけでありますけれども、炭鉱のほうから返ってくる金は、概算で申せば三分の一しかその年度の分につきましては返ってこないはずであります。あとは市中銀行からいわゆるつなぎ資金を借りまして、耳をそろえて政府に元利をお返しいたすということをいたしております。そのかわりに政府からは、三月下旬にお返しいたしまして、翌月四月のなるべく早目にお願いいたしまして、また政府からお借りいたしまして、即日銀行に返すという仕組み、ころがし方式をとっておるわけであります。  なぜそうしなくちゃならぬか、急がなくちゃならぬかと申しますると、政府からお借りいたします金は六分五厘でありまするけれども、市中銀行では六分五厘では貸してくれませんので、いわゆる通俗に申しますると、逆ざやになるわけであります。かような負担を極力避けるためには、銀行から借りている期間をできるだけ、一日でも短縮しなくちゃならぬというような要請がなされておりますので、これもずいぶん前から長期資金——長期と申しましても、十年、十五年というような長期は考えませんが、せめて三年くらいの資金ということは念願してまいってきたのであります。いわゆる延納制度、立てかえ制度というものが鉱害復旧の促進に効果があったことは、これは広く認めておるところでありまして、事業の消化のできたこと、伸展したこともかかってこの延納制度延べ払い制度と申しておりますけれども、立てかえ工事ということに大きな力があったと思うのであります。  なお、省略いたしておきまするけれども、数年来いわゆる炭鉱離職者鉱害復旧事業に使用いたすという方式を、中央政府からも関係方面からもお示しがありましたので、どれどれの仕事にはどの割合で、いわゆる熟練工はどの割合、不熟練工はどの割合というような、離職者吸収といいますか、就労と申しますか、かような点につきましてもかなりいろいろとやってまいってきておるわけであります。  以上はいままでの概略のことを申し上げたのでありますが、一点、鉱害復旧事業団理事者として格段の御配慮を特にお願いいたしたいと思う点が当面いたしておるので、一点だけ申し述べさせていただきたいと思うのであります。それはこういうことでございます。  この鉱害関係法律が御承知のとおり二十七年にできましてから、おおむね十年経過いたしておるわけでありまするが、この間におきまして、私の記憶によりますると、七回か八回この法律部分改正をしていただいております。一つの法律が十カ年間に七回、八回と手入れをしていただいている法律というものは、あまりほかに例はないようであります。この点は、国会及び政府がこの鉱害復旧ということに対しまして非常な関心をお持ちくだすっておりましたところの証左でありまして、これはひとしく感謝いたしておるところであります。しかるにもかかわらず、なおいまだに幾多の問題が残っておるということを申し上げてお願いしなければならぬ情勢、また今日特にお呼び出しいただきましたゆえんは何であろうかと考えてみますと、鉱害復旧という問題がそれほど複雑にして多岐、また困難であるということ、また国土保全というようなこと、また社会的に治安、民生というような見地からいたしまして、なおかつ幾多の問題が残っておるということであろうかと思うのであります。国会のおことばを拝借してはなはだ恐縮でございまするけれども、何回かの法律改正のときには、特別の御考慮をもちまして附帯決議をおつけいただいたことが数回ございました。大きな点についてずばりと御指摘いただいた点が多々あったと思いますが、その中に何回かは、抜本的な対策を講じろというおことばがあったことを承知いたしておるわけであります。七回も八回も改正がされてなぜ問題が残っておるかといいますと、おそらくはかなり抜本的なところに近づいておったのであろうと思います。思いますが、なお問題が残っておるということは、石炭界の情勢が当初予想されておったよりもさらに困難、深刻を加えてきつつあるがためであると私は解釈いたしております。申し上げるまでもなく、合理化法が制定されまして石炭企業そのものの骨格改善、あるいは体質改善とでも申しましょうか、そういうものは、政府の御努力とまた国費の投入によりまして大きな成果をあげつつあることは御承知のとおりでございます。また、それに関連いたしまして発生いたしましたところの離職者対策、これにつきましても、御承知のごとく特別の法律の御措置がとられ、また多くの国費が投入されて万全に近い対策が講じられております。若干残ってはおりますが、時間が必ずやこの離職者問題も解決いたすことは期待し得ることであると思います。その次に生じましたのがいわゆる産炭地振興、従来石炭鉱業によって地方の繁栄あるいは地方経済が維持されておりました地域におきまして、石炭鉱業が次第になくなりましたのに対応いたしまして、新たなる産業、新たなる工業を培養、誘致するという、いわゆる産炭地振興、これが当面大きな問題となっておるのは御承知のとおりでありまして、これにつきましても多くの施策、対策、また国費の投入がなされておりますから、おそらくは石炭鉱業の合理化、離職者の問題、それから産炭地振興、これはあと残っているところは時間の問題で、必ずや相当の成果があがることと思うのであります。しかしながら、これらの結果生じた余波と申しますか、反射的の影響とでも申しますか、御承知のごとく、九州の石炭鉱業の企業数がおおむね半減しておると聞いております。大小合わせまして四百近く、あるいはそれ以上あった石炭企業というものが、半分近くにもなっておるということであります。ということは、いわゆる終廃山が非常に多く出てまいったということであります。これは二十七年当時、この法律ができましたときあたりは、かような状態に突入することばあまりに予想されていなかった事態であったろうと私は思うのでありまして、この終廃山炭鉱が非常に多くなったということが、鉱害復旧の面におきますと、いわゆる通俗にわれわれは、無権者鉱害と無資力鉱害と申しておりますが、一口には無権者鉱害と申します。無権者鉱害というのは、要するに責めに任ずべき鉱業権者が所在しない、所在不分明なのを申します。あるいは無資力鉱害というのは、鉱業権者鉱害復旧の責めに任ずるに必要なる資力を持たない、資力不十分だというようなものでございますが、これが年々非常に大きな数字にのぼりつつあるのであります。これが鉱害復旧事業団に大きな影響を与えております。それは後ほどまたお尋ねに応じて申し上げたいと思うのでありますけれども、鉱害復旧事業団というものは、実は他の公社、公団、事業団と違った点がありますのは、政府出資が一円もないということであります。特殊な仕組みになっております関係上、この無権者鉱害というものを今後処理していきますためには、非常に大きな経費の面におきます困難を伴うのであります。こまかい数字は時間もありませんから省略いたしますが、これらの点につきましてはお役所のほうから御説明があると思いますけれども、ただいまのままで推移いたしましたならば、事業団は破綻せざるを得ないと私は思っております。理事者としては、いまの段階において申し上げますならば、責任を果たすことにはならぬと思っておるくらいでございますので、これは後ほどお尋ねがありましたらとくと申し上げたいと思うのであります。  要するに、石炭業界の大きな情勢の変化がかようなしわ寄せを生じておるということ、その他の点につきましては他の方がそれぞれの立場で御陳述になると思いますし、また、特に御注意があったようでありますけれども、鉱害問題の今後をいかにすべきかということが残っておって、まだ申し上げておりません。これはまたお尋ねがありましたら、自分自身としての考えの一端を申し上げたいと思います。おそまつでありましたが、よろしくお願いいたします。(拍手)
  4. 中村寅太

    中村委員長 御意見をお述べくださる参考人の方々に申し上げますが、御意見は大体十分程度にお願いいたしたいと思います。  三村保君。
  5. 三村保

    三村参考人 御指名いただきました福岡鉱害対策被害者組合連合会会長三村保でございます。本院における石炭対策特別委員会鉱害に対する意見を述べさせていただく機会を与えてくださったことについて、組合を代表いたしまして衷心よりお礼を申し上げます。  九州における石炭採掘による鉱害復旧は、臨時石炭鉱害復旧法制定されましてからもすでに十年を経過し、終戦後のように一見して大被害の集団と思われる地域は少なくなり、水没していた農地が美田になったことに深く感謝しておる次第でありますが、石炭採掘が続けられております関係上、新しい鉱害が次々に起こってまいりますために、鉱害量そのものは少しも減っておりません。この鉱害処理に対して意見を述べさせていただくわけでございます。  第一点は、鉱害処理方法についてであります。  現地の鉱害被害者は、炭鉱の盛況時には間接的には利益を受けたことがあると思うのでありますが、被害者はおしなべて利益を受けたとは考えていないようであります。被害者個人には関係なく鉱業権が許可され、採掘が行なわれ、知らぬ間に農地や家屋の下に眠る石炭資源は採掘され、国家に石炭は奉仕したと思うのでありますが、被害者には鉱害のみが残されておるのであります。閉山になっても、鉱害復旧政府補助金増額されただけであって、中小企業に対する措置、労務者対策措置というような特別の対策措置してもらえないという不満をぶちまけておるようであります。従来どおりの鉱害対策では結局救われないと思っておるのであります。いままでの鉱害対策は、鉱業法に定められておる賠償義務、すなわち鉱業権者の賠償責任を追及するたてまえをとっておると私は思いますが、この考え方ではとうてい解決し得ないと思われるので、抜本的な方法を考えていただきたいと思うのであります。賠償責任を追及します結果、賠償義務者である鉱業権者は、採掘行為に基因する鉱害影響線を固執したくなるのであります。鉱害の理論も確立され、鉱害角線は計算され、実地においても確認されておりますが、それは判明しておる採掘による鉱害影響線を確定することに役立ちますが、現に起こっておる鉱害問題の解決にそのまま全部が援用されるとは思われません。福岡県のように、明治初年より採掘され、鉱業権者が幾変遷したため、採掘範囲、鉱害発生の時期の不明のまま現在の鉱害と重なっておるのに、判明しておる採掘影響線内のみを復旧しても、完全な効用回復を期待することはむずかしいし、それかと申しまして、不明のものまで現鉱業権者に負担させるのはいかがかと思うのであります。石炭鉱害に対しましては、この際全部国が責任を持って復旧に当たる方針を打ち立てていただきたいと思います。国土の保全、民生の安定をはからねばならないいまの事態に合う施策を行なうためには、現行鉱業法に拘束されない方策、前にも述べました鉱業権者に肩がわりして国が鉱害賠償、復旧する方針をまず決定し、鉱害賠償責任、義務の追及は、鉱害賠償積み立て金あるいは石炭合理化臨時措置法による保留金の現金賠償を必要とするものを差し引いた残額から徴収する等、別途に考えていただくようにすることにして、基本的には国が賠償、復旧に対し責任を負うようにしていただきたいと思うのであります。  第二点は、石炭鉱業合理化臨時措置法による閉山炭鉱鉱害処理についてであります。  政府がとられておる石炭鉱業合理化政策は予想以上の進展を示しておりまして、三十九年度でほぼ目的に近づくであろうという感じがするのでありますが、それだけに閉山炭鉱が続出し、加えて石炭鉱業合理化臨時措置法の前年の改正もあって、複雑な鉱害問題を惹起しており、現地における混乱は避け得ない情勢であり、社会不安はますますその度を加えております。鉱山が稼働しておる間は、徐々に復旧を進めることによって、鉱害被害者も鉱山が誠意を示し復旧を実施することを期待することによりまして混乱が避けられるのでありますが、炭鉱が閉山して業者が去っていくということになりますと、全面的に鉱害賠償の完全履行を要求するのは当然の成り行きだと思うのであります。言いかえますと、石炭合理化による閉山は、鉱害賠償、復旧を急速にかつ大量に解決を迫る結果となりますので、石炭合理化の進展と並行して鉱害の処理を進める必要があると思います。  法によりまして閉山の告示が行なわれますと、定められた期間内に鉱害の申告をし、事業を廃止した鉱業権者は、原則として鉱害被害者の同意を得た弁済計画を立てねばならぬことになっておりますが、鉱害賠償の全部が一時に要求されるのと、繁雑な賠償交渉に同意が必要なため、弁済計画の樹立が非常におくれており、閉山告示後一年以上も経過しながらいまだ弁済計画が樹立されない鉱山もあります。特に累積した鉱害をかかえている炭鉱、鉱業権譲渡後の閉山炭鉱租鉱権者の閉山等、鉱業権者で解決をせねばならぬ諸問題があると思いますが、弁済計画の樹立がおくれると鉱害賠償が遷延することになり、必然的に復旧がおくれてまいりまして、被害者の打撃は大きくなるばかりでありますので、考えてみる必要があると思うのであります。  石炭鉱業合理化臨時措置法による整理促進交付金については保護規定が定められておりますが、鉱害被害者から見て不審に感ずる面もあるのであります。と申しますのは、閉山前に鉱区が分割される場合があるのであります。もちろん、分割は正当の手続によってなされていると思うのでありますが、分割のやり方によって、一方の廃止鉱区は、鉱害が少ないため、鉱害賠償充当金、つまり保留金に余裕を生じ、余裕分は廃止事業者が取得することになるのでありますが、他の分割された鉱区は、鉱害量が保留金より上回り、あるいは極端に保留金が不足して、弁済計画樹立に行き悩んで被害者に迷惑をかけている実情があるが、閉山手続上一考を要するものと考える次第であります。  次に社会不安をかもしている問題は、閉山はしたが、保留金では鉱害賠償が不足し、支払い能力がないため、鉱害賠償について無権者、無資力の取り扱いをせねば被害者が救われない問題の処理であります。現在無権者、無資力の鉱害復旧は国と県の負担によって行なわれておりますが、閉山が進むにつれまして量は増すばかりであります。私どもは無資力鉱害量を約五十億円と推定しておりますが、閉山が進めばなお多くなると考えております。昭和三十九年度の無資力、無権者鉱害復旧は、九州鉱害復旧事業団では約六億円を予定しておるにすぎません。これは政府予算割り当てからはじき出されていると思うのでありますが、もし不幸にして三十九年度予算程度復旧が今後続けられたならば、相当の年次を要することと思います。無資力鉱害になった後は、早急に復旧されることが一番望ましいことであります。復旧がおくれて鉱害保留金を食いつぶしたあと、農民は復旧されないままの減収田、水没田をかかえ、生活保護世帯に落ち行くよりほかいたしかたがないと思うのであります。第一点で述べました国が復旧の責任を持つことがいますぐに困難であるならば、せめてこの際、閉山炭鉱鉱害処理に対しては、弁済計画の樹立を待つことなく、国費により鉱害復旧を行ない、あとで弁済計画が立ったならば、臨鉱法による、復旧に要する納付金を納入する方法をとってもらいたいものであります。つまり、いまの臨鉱法による復旧納付金を前取りしているのでありますが、復旧を先にして、あと納付金を弁済計画樹立後の保留金で納入させる方法にしてもらいたいと思うのであります。保留金が不足する場合もあると思うのでございますが、こんな場合、大部分は無資力鉱害に落ちると考えるので、無資力復旧に切りかえるというようにすれば、被害の処理はいまより相当早くなると確信するものであります。  次に、産炭地の農政問題として次のことを考えていただきたいと思います。  賠償基金の設立によりまして、将来の鉱害は見通しをつけることが可能であると思いますが、いままでに累積した鉱害が解決されるとば思えません。農民は現在の鉱害復旧していただかなければ、生活ができないのです。特に農地は大きな被害量を占めているため、炭田地帯の農業基盤は破壊され、農業構造改善事業に取り組むにいたしましても、農地が復旧されなければ有機的経営が困難であり、せっかくの政府の農業施策についていけない悩みがあります。閉山炭鉱中には、戦前より鉱害賠償をより少なくするため、かなりの社有農地を持っており、福岡県下では約三百町歩と私は推定しております。終戦後の農地解放にも、石炭採掘による不安定、または事業予定地ということで社有農地として残っております。閉山すればその必要もなくなることと思いますが、社有農地でありますゆえに、鉱害復旧の対象にはなりません。これを復旧の対象にして完全な農地にし、炭鉱離職者で帰農する人たちに与えたり、あるいは鉱害による耕作反別の減少者に与えることができれば、農業基盤確立の一助になると考えます。疲弊した産炭地農業のてこ入れの一部として、農政上からも考慮していただきたいと存ずるのであります。この場合、もちろん農民は農地としての適正価格を支払うことを前提として申し上げておるということをつけ加えさせていただきます。  第三点に、復旧工事について簡潔に申し上げます。  今日の農地の鉱害復旧を見ると、鉱山ごとに単独に復旧計画標高が定められて、他の鉱山の復旧計画との連絡が不十分のため、用排水の水利系統が混乱を来たし、農地が十分に活用できない場合や、家屋、公共施設と農地の復旧出来高に関連がないためさらに手直しを必要とするものもあるので、同一水系の計画標高となるべき基本標高をあらかじめ設定し、総合的な復旧基礎調査をなす等の事前措置をする必要がありますので、この措置を国で実施していただいたならば有効な鉱害復旧ができると信ずるので、考慮していただきたいと思うのであります。また、復旧に関連してでありますが、復旧後の救済措置として、農地に関しては、追加工事を行なう必要がある場合、現行の関係法では救済の方法がないように思われるのであります。農地復旧については、効用回復に至るまで種々複雑な要因を含んでおりまして、復旧工事計画の時点において効用回復を期待した計画が定められるのでありますが、周囲の鉱山の閉鎖等により湧水個所の変動のため湿田化したり、あるいは傾斜田を直す場合、高いほうと低いほうのかさ上げ土量が一様でないため、圧密沈下等予測しなかった事態を招くものがありまして、実情においてこれを示しております。臨鉱法は一応の救済規定を定めておるのでありますが、これは暫定補償金を追い払いすることであって、効用回復を期待することができません。臨鉱法では、再採掘による鉱害があらわれた場合のみ再復旧ができるのであって、前に述べた原因による被害は復旧の対象外となると思われます。そうであるならば、効用未回復の損傷はいつまでも残ることとなりますので、だれの責任でもないと考えてよいこれらの鉱害復旧田に対しては、国が被害者に手を差し伸べて復旧手直しすることが、真の鉱害復旧の精神に沿うものと考えられますので、ぜひ取り上げてほしいと思う次第でございます。  最後にお願い申し上げたいことは、農地復旧にあたりまして、政府補助対象額は、数度引き上げられて現在は反当三十五万円でございます。補助対象額以上の費用が必要である場合、有資力炭鉱では炭鉱が負担しております。無資力鉱害復旧のとき、政府補助対象額を超過するような復旧工事をいたします場合に、費用の負担をするものがないのでございます。被害者に負担させることはあまりにも残酷だと思うので、無権者鉱害復旧の場合、補助対象額を限定しないようお願い申し上げる次第であります。  これで公述を終わりますが、まことに不弁かつ要領を得なかったと、恥ずかしく思っておりますが、お聞きくださいましたことをありがたく感謝申し上げます。(拍手)
  6. 中村寅太

  7. 石川八郎

    石川参考人 私は石川八郎でございます。前者のお話がございましたが、私と同じような立場でございますから、重ねて先生方にくどく申し上げることもないと思いますけれども、私は鉱害家屋の関係で、農地と少し趣旨の違った点がございます。  そこで、今度鉱業法改正問題がちょうど出ましたから、この際に、政府が三億とか五億とかそういうようなほんとうにわずかな金の援助をするよりも、根本的に鉱害復旧はすべて国の責任でやってくれ、こう申したいのでございます。なぜならば、鉱業権を許可したのは政府でありますから。被害者は別にこの石炭産業があろうとなかろうと、お頼みしたのではない。ほんとうに純真なる私たちが、交渉をすればいろいろな点において人の口の端に立たねばならぬ。どうして国が責任を持てないのか。補助金とか、あるいはまたわずかの援助金、そう言わずに、すべて鉱害復旧は国の責任でやってくれ。その責任というのは、大体において基本的には経済力になりましょうが、現在使っているいろいろの処理方法がありますが、一銭の金も鉱業権者にやる必要はない。大手も中小も一〇〇%全部国の制度に切りかえまして、基金の十億円捻出をはかるようにする。私はそういうことを悪いとは言いませんが、もうすでに炭鉱はほとんど最終的になっております。いまから鉱業権者がたくさんできるのではなくて、石炭産業はもうほとんど筑豊から消えてしまいます。ここで十億の金がありましても、何の役にも立たぬと私は考えます。ことばを多く言いませんが、国が責任を持ってくださらぬというと、閉山になりましても、その閉山の処理を、福岡におりまして、局のほうとの話し合いもございますし、やっておりますけれども、私はここ十カ年間鉱害処理に専念してきましたが、被害者から喜んでもらったことは一ぺんもありません。みな不足で今日まできております。ここに炭鉱の最終的の段階に来てまだわずかの補助金だとか、そういうけちくさいことを言わずに、責任は国にございますから、どこまでも全責任を国がとってください。そうして国がこれの復旧計画を立て、総合計画を立てる。現在私たちが考えますと、鉱害賠償くらいむずかしいものはない。九大の先生、熊大の先生あたりのおえらい先生の意見を聞きましても、科学的科学的と言いますが、科学的とはどんなものでございましょうか。私はまだ科学的というものを食うたことはございません。私は調査員をしておりまして、各地方へ調査に参りました。家屋調査をやったんだが、私の地域もどうも科学というものに対してわからぬ点がございますから、科学庁のほうに一件だけ出しまして、先般東大の伊木先生、それから総理府のほうからも役人が見えまして、日鉄並びに住友方面のクラブを回りまして、科学的ということがどんなことでございますかと私二、三回質問したことがございますが、ボーリングを打つんだという。これが科学的でしょうか。そんなことはもう徳川時代の昔からやっております。しかし私も、仲介に立つ場合にはやはり被害者をおさめねばなりませんから、いや君、そんなことを言っても、ほんとうに国のほうでは親切に、たくさんの費用と学者を使って科学的にやったんだと、こう言わざるを得ませんが、何かわけがわかりませんね。いろいろの先生方とも私は始終やっておりますが、下のほうには何とか博士とかついておりますが、何も知っちゃいません。ほんとうに知っちゃいないのです。そういう人が後生大事にされます。とにかく私は先生方にもお願いしたい。この前にも緊急認定法が五十何条ですかできるようになりましたが、こういう使えもせぬ法律に時間とひまをかけて、頭が悪過ぎます。使えぬような法律で、何にもなりません。わざわざ国会でこれをきめられました。私もあまり知恵はありませんが、先生方もあまりおつむのいいほうではございません。また、政府役人もなっていませんですね。私は、もし一切これをやめまして、野人になって攻撃の立場になるならば、福岡通産局にはものを言いません。言わせません。秘密じゃございません。ずるさ。とにかくもう問題になりません。私はもうすべてこまい議論は言い尽くしてあると考えますから、鉱害賠償に対しては、これはすべて国の責任だ、国庫から金を出してください。労働問題でも、ほとんど完全に近いように処理ができたではないか。どうして鉱害の被害だけを残せますか。二十世紀は鉄の時代、鉄と石炭は兄弟分でございます。日本国民が石炭によって受けた恩恵というものは、今日一兆円、二兆円税金から出しましても、これが不当でございましょうか。私たちは十カ年家屋の問題で戦いましたが、最初のうちは、議会に行きましても、あれは私企業の私権だ。私企業の私権が人の品物に害を与えますと、これは犯罪行為になります。そういうことを責めますと、無過失賠償だ。よく抜けます。そして、とにかく知恵のいい人ばかり寄ってございますけれども、出た問題があまりにあほらしゅうて……。今度鉱業法改正問題が出ましたが、この際どういう改正法ができましても、私はいやです。とにかく第一ぺ−ジに、国が責任を負って処理をする、この原則ができぬ限りは、ほんとうの鉱害の賠償はできません。これはこのまま放置しますと、各地にいろいろの問題がございますが、暴動が起こります。私も年も七十になります。暴徒の先棒をかついで出ても、もういい年でございましょう。とにかく、こういういまのような処置は、役人さんたちは役職をこしらえて、うば捨て山をこしらえて、いろいろのものをこしらえますけれども、鉱害によって食いよる役人が幾人おるか。やめさせてしまえ。やめさせてもいいのですよ。一本にして、総合してやれ。天日さんには済まぬけれども、こういうことではいけません。そういうような理屈は要りません。それは向こうのかってです。こういうばかばかしいことを国の費用をもって先生方にお願いするということは、恥ずかしいような気持ちがしますけれども、生きて恥をかく私の立場から考えるならば、とにかく理屈はもう言い尽くしております。先生たちもよく知っておりますから言いませんが、とにかく制度化してください、政府の責任によって鉱害復旧のできるように。もう一度申し上げておきますが、鉱害賠償はいかなる理由があっても、国の責任ですべてこれをやってください。政府の責任です。  最後に一つ申し上げておきますが、私は七年間、家屋関係で農地のように迷惑料をひとつ担保を出してくれぬか。どうしても担保できません。いろいろ政府にお願いしましたができなかったが、今月、三月六日に通産省のここに来ている課長さんに会って、ひとつこれは迷惑料を払うようにしてくれぬか。七年目に課長さんが気持ちよく、それは鉱害だ、こういうことを言って、それは当然だからどこにも迷惑かけぬ、こういうありがたいことばを聞いておりますから、目の前で、ここで再確認しておきます。くにに帰ってのおみやげ。これは五百億くらいの金額になりますでしょう。これをまとめて一度に払ってもらいますから、一度先生方にもお伝え申し上げておきます。迷惑料は、鉱害だ、支払うべきものだ、こういうことでございます。  私はこのくらいで一応やめることにしまして、いろいろまだ申し上げたいのでございますけれども、あとから、お尋ねになったら申し上げることにいたします。(拍手)
  8. 中村寅太

  9. 梅崎事一

    梅崎参考人 私は、佐賀県小城郡小城町鉱害組合長梅崎事一でございます。本日は、委員の皆さま、関係者の皆さまには、国政審議のお忙しいところに、私ども被害者の意見をお聞きいただきますことを光栄に存じます。ここに被害者を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  小城炭鉱は、多久市、小城郡小城町、小城郡三日月村の三カ市町村にわたり、被害農地三百四十三町歩でございまして、約十億円、被害家屋五百九十八戸、約五億円にのぼっております。したがいまして、閉山に際しましては、減収補償等の現金賠償は一億七千五百万円必要でありましたが、交付金の関係上、一億三千二百万円の打ち切り補償を受けた次第でございます。  以上のような鉱害補償の実情と、炭鉱経営当時十数年にわたる会社側との鉱害交渉の経験を考えますと、被害者にとりまして一番大事なことは、私ども農家は先祖伝来農地を耕して生活しておる農民でございますから、炭鉱の経営状況とは全く別に、鉱害に対する完全な賠償をしてもらうことです。そのためには、炭鉱鉱害賠償に見合う積み立て金を強制的に実行させ、鉱害が発生した場合は、国、県、市町村等で直ちに鉱害を認定し、復旧に着手することができるようにお願いいたしたいと思います。このような意味で、提案されております法律案は、一歩前進でございますから、賛意を表します。できますれば、さらに基金を増加していただきますとともに、鉱害認定について第三者の機関をつくっていただければ、被害者はたいへん助かることと思います。  なお、この機会に小城炭鉱鉱害復旧をお願いいたしたいと思います。  小城炭鉱は、さきに述べましたとおり、十五億円にのぼる甚大な鉱害でありますから、第一に、減収補償は四十二年度分までしかいただいておりませんので、四十二年度までに必ず鉱害復旧もお願いいたしたいと思います。  第二は、年間を通じて事業をやっていただくことが、事業の進捗上必要と考えますが、そのためには、表作の休耕補償をぜひ出していただくことをお願いいたします。なお、被害農地の平均反収は三石二斗でございます。  第三に、地元負担金は出す必要がないと聞き及んでおりますが、地元被害者や産炭地市町村にはその力と理由が全くございませんので、よろしくお願い申し上げます。  第四は、事業を早く進行させるためには、機械化公団に事業をやっていただくことに被害者も了承いたしておりますが、大事な農地のことであり、事業を急いだために農作物の収穫が落ちることのないよう、入念慎重にやっていただくようお願いいたします。  第五に、当地方は農業構造改善事業を実施し、また計画している地区でもあり、せっかく復旧していただくからには、事業費の関係もあるとは思いますが、原形復旧にとらわれず、農業構造改善事業にふさわしい区画整理をあわせて取り上げていただくよう切望いたします。  最後に、被害地区内の峯山の頂上付近に鉱害のため亀裂を生じており、年々幾らかずつ亀裂の個所が拡大していく徴候が見られ、付近四、五十戸の住民は不安を感じており、不安を除去するための対策をお考えくださるようお願いいたします。  以上述べましたが、被害者一同の切実なる叫びとお聞きいただき、よろしくお取り計らいくださるようお願いいたします。(拍手)
  10. 中村寅太

  11. 百崎晴雄

    ○百崎参考人 本日は、衆議院の石炭対策特別委員会の皆さまには、国政審議の多忙のおり、私ども鉱害被害者の意見をお聞きいただきますことを心から厚く御礼申し上げます。めったに得られない機会でございますので、被害者の窮状を若干述べさせていただきます。  私は、佐賀県杵島炭鉱関係の杵島郡江北鉱害被害者組合組合長の百崎晴雄でございます。  江北町は、いわゆる佐賀平野の穀倉地帯でありまして、鉱害は、昭和十五年杵島鉱業第五坑開さく以来発生したものでありまして、現在までの被害は、耕地千三百町歩のうち、脱水陥没のものを加えますと六百七十町歩、家屋一千五百戸のうち約六百九十戸、ため池二十三カ所、その他中学校、道路、水路等、ばく大な被害を受けておりますが、このうち、昭和二十五年以来特鉱並びに臨鉱その他で復旧または工事中のものは、耕地において約九十七町歩、ため池におきまして八カ所、家屋は、打ち切り補償分まで含めて三百四十戸、中学校は目下移転改築工事中でございます。今後復旧を要するものは、農地二百二十町歩、ため池十五カ所、家屋三百五十戸、その他道路、水路等多数に及んでおり、復旧進度は三〇%にも足らない状態でございます。鉱害復旧並びに賠償関係につきましては、数年前よりこれが促進方を杵島炭鉱と交渉を重ねておりますが、会社側は資金繰りが悪いなどの理由におきまして復旧は遅々として進んでいない状態でございます。  私たち農民は、先祖伝来の土地を守り、かろうじて糊口をしのいできたわけでございますが、現在は、収穫寸前に冠水して稲は腐れ、家は傾き、四季を通じまして冠水するような状態でございまして、老父母は嘆息しており、青年は希望をなくし、よそに出ていきます。家業を継ぐにしましても、嫁にきてくれる人さえない状態でございます。  以上のような実情でございますので、私ども農民としては、鉱害が発生するようなところは採掘してもらいたくないのが本心でございますけれども、農民の意思に反して採掘されるならば、発生した鉱害は直ちに認定して、減収の完全補償や復旧工事を完全にしてもらわねばなりません。ところが、資金繰りの都合で認定が何年もおくれ、見舞い金程度で過ごされた例もあるわけでございます。復旧工事が遅々として進まない状態は、農民の気持ちからも、生活の上からも耐えられないことでございます。したがいまして、今回提案されました石炭鉱害賠償担保等臨時措置法改正案は、鉱害復旧資金を強化する意味でまことにけっこうなことと喜んでいる次第でございます。できますれば、鉱害のひどい地区には、それに相当するような担保制度を強化していただきますとともに、鉱害が発生した場合には、被害者と炭鉱側の利害相反する両者の交渉じゃなくして、公正な第三者の立場から、そういう機関のお方が鉱害の認定と復旧工事ができるような措置を講じていただきたい、被害者はこういうことを切望しているのでございます。  なお、この機会に諸先生や通産省関係御当局の方々にお願いしたいことがございます。  杵島炭鉱は、昨年から、国鉄長崎本線肥前山口駅周辺の人家の密集地帯から線路を越えて 反当四石四斗の収穫を得られる穀倉地帯に堀進を計画しましたので、地元約六百戸は、佐留志地区採掘反対協議会をつくって、採掘反対運動を続けてまいりましたが、昨年末福岡通産局から施業案が認可されました。私どもはやむを得ずただいま条件交渉を重ねておりますが、いまだ了解点に達しておりません。  私たちの要求しておる主要な点は、次のとおりであります。  第一、家屋密集地帯及び唯一の用水源たるため池の直下並びに周辺の採掘をやめていただきたい。  第二に、この地帯は、有明海面と農地の地盤標高との差がわずか一メートル程度でございます。かつ有明海の干満の差がひどく、現状では特殊な樋門によりまして干潮時だけ排水しているわけでございますから、まあ一日のうちほぼ半日くらいしか排水能力がないのでございます。今回の採掘による陥没は、少なくとも一メートル五十センチの地盤沈下が予想されますので、排水施設や減収補償、さらに鉱害復旧について万全の措置を講じていただきたいと思います。  第三には、井戸水の枯渇によりまして、飲料水及びかんがい用水の不足は免れません。その他、蔬菜、果樹、畜産及び農産加工なども大なる支障があるものと思われます。この点も万全の措置をしていただきたいものであります。  なお、いままでに申し述べましたことは、杵島炭鉱も善処する旨申しておられますが、判然とはしておりません。基幹産業でありますところの石炭産業に協力はしなくてはなりませんが、地上被害に対する臨時鉱害復旧措置法が非常に被害者の立場から見まして矛盾点が多いと、先ほど福岡県の方からも言われたとおり、国のほうから保護をしていただかなくては、地上権者であるところのわれわれはほんとうに窮状に押し込まれるのであります。百姓というものは、他産業へ転換をして食う能力は非常に少ないのであります。先祖から譲られたその農地だけにたよって食っているのでございます。これを剥奪されたならば、ほんとうに百姓は死ねということでございます。私はこういう気持ちからてまえがってなことばかり申し上げまして、非常に御無礼でございましたけれども、そういう点をお含みの上、適切な立法改正措置をお願いしたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  12. 中村寅太

  13. 佐藤京三

    佐藤参考人 ただいま御紹介いただきました石炭鉱業合理事業団佐藤でございます。本委員会意見を申し述べます機会を得ましたことは、まことに光栄に存じております。  鉱区を抹消することによって炭鉱整理促進交付金を交付することに石炭鉱業合理化臨時措置法が改正されました昭和三十七年度から、本年二月末まで交付決定通知をした炭鉱は、百四十九炭鉱ございます。その年間生産数量は、六百四十六万二千トンとなっております。この鉱害量は、当団の概算額でございますが、五十八億一千六百万円になっております。このうち、宇部地方、九州地方で五十七億三千万円、ほとんどが九州、宇部、特に九州地方にこの鉱害問題が集中しておるという状況でございます。したがいまして、宇部、九州地方を中心にして御説明申し上げます。  大手炭鉱が十一炭鉱スクラップいたしまして、この鉱害概算額が十八億三千二百万円になっております。中小炭鉱は九十八炭鉱で、三十八億九千七百万円という概算額であります。この中小炭鉱のうち、他にも炭鉱を経営しているものが十五炭鉱ございます。この十五炭鉱のうち、スクラップ炭鉱鉱害量が八億二千万円、この十五炭鉱と、ただいま申しました大手十一炭鉱鉱害総量が二十六億五千二百万円ほどになるわけでございます。  この鉱害処理のためには、残務整理事務所等を設けておりますので、これらの負担と鉱害債務は、当該企業のビルド鉱あるいは維持群炭鉱の負担において処理することになると思います。現在このビルド鉱あるいは維持群炭鉱の借り入れ金残額は千数百億に達しておると思うのでございます。大体この鉱害量はそれらの二、三%程度であろうと思いますけれども、現在のコストを維持していくということになりますれば、さらに企業努力が必要であるということでございます。  次に、一社一山のスクラップ炭鉱は八十三炭鉱、その鉱害量は三十億七千七百万円となっております。このうち、無資力あるいは一部無資力と推定されるものが十三炭鉱で、十九億三百万円となっております。無資力炭鉱鉱害復旧は、事の性格上、早急に復旧されることが望ましいことは当然でありますが、無資力炭鉱の分が早急に復旧される結果は、相対的に有資力炭鉱復旧がおくれるという事態も考えられますので、このためにビルド鉱あるいは維持群炭鉱の負担増をさらに来たすということも考えられますので、こういうことのないような措置が望ましいというふうに私は思っております。  第三点といたしまして、有資力炭鉱の賠償は、当事者の交渉によって決定されるので、おのずから常識的なと申しますか、あるいは慣行的なことで結末を見ることと思いますが、無資力炭鉱については、交付金から配当する賠償の充当額が鉱害引き当てのための留保額の多寡によって決定されるということで、無資力炭鉱であっても非常に被害者に不均衡を生ずるということがあります。これについても何らかの対策を必要としないかどうかという研究問題が残っているのじゃないかというふうに思います。  以上、要約して三点申し上げましたが、ただいま御説明いたしました鉱害量は、炭鉱申し出のものを当団の立場で検討した結果の数字であります。  御承知のように、九州地方の石炭採掘は、明治年代から続いております。しかも鉱業権者はそれぞれ交代変遷激しく、現実に個々の鉱害を処理することになった現在においては、これが最後の賠償であるということになりますと、いろいろなトラブルも生じましょうし、また、予定どおりの結末がつくとはちょっと思えないというふうに私は思いますということをつけ加えまして、陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  14. 中村寅太

  15. 柴田文雄

    柴田参考人 私は、福岡総務部鉱害課長柴田文雄であります。石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案の御審議にあたられまして、鉱害問題について意見を述べさしていただきますことは、まことに感謝にたえないところでございまして、委員の先生方に対しまして、心から敬意を表する次第でございます。  まず、残存累積鉱害について申し上げます。  福岡県における鉱害に対しましては、戦時中の乱掘から発生しましたいわゆる特別鉱害につきましては、特別鉱害復旧臨時措置法によりまして、昭和二十五年度から昭和三十二年度までに、全国の復旧額約百五億の九〇%に当たります約九十五億円の鉱害復旧していただいております。その他の一般鉱害につきましては、臨時石炭鉱害復旧法によりまして、昭和二十七年度から昭和三十八年度までに、全国の復旧額約百四十億円の七五・七%に当たります約百六億円の鉱害復旧していただいておるわけでございますが、昭和三十五年度通産省で調査されました三十四年末の全国鉱害事業量調査によります福岡県の鉱害事業量が、既発生鉱害量で二百六億円、将来発生鉱害量二百三十八億円、合計四百四十四億円に及んでおるのでございます。ところが、昭和三十五年度から昭和三十八年度までの賠償義務者によりますところの自己復旧、打ち切り賠償等につきましては詳細に承知いたしませんが、臨鉱復旧額は、三十五年度から三十八年度までにしていただきました額は、六十二億円にすぎないということから考えますと、その後の終閉山の進行、採掘計画の変更などによりまして事業量に異動があるとは思いますが、昭和三十八年度末における安定鉱害で未復旧となっている事業量は、相当巨額な金額にのぼるものと推定されます。昭和三十七年十一月福岡県下の六つの農林事務所で調査をさせました、鉱害による被害を受け、その鉱害が安定していると認められる未復旧農地は、約四千五百町歩にも及んでおります。昭和二十七年度から三十八年度までに臨鉱復旧でやってもらいました農地は約二千三百七十町歩でございますので、安定鉱害農地で未復旧となっている割合は六六・六%にも及んでおる次第でございます。  次に、鉱害処理について申し上げます。  昭和三十八年五月、衆議院石炭対策特別委員会におかれましては、臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に対しまして、石炭鉱業合理化の進展に伴う終閉山炭鉱の続出並びに鉱害問題、特に無資力鉱害の激増等の事態により、地域住民の不安が増大している実情にかんがみ、政府は、この際民生安定の見地から、鉱害処理の抜本的対策を確立するよう早急に結論を出すべきであるとの附帯決議をしていただきましたが、福岡県における石炭鉱業合理化による炭鉱整理の状況を見ますと、昭和三十九年一月二十日現在におきまして、旧方式、新方式及び保安方式を加えて、全国の整理トン数千三百六十万トンの四六%に当たります六百二十五万トンにも達しております。そして、整理の対象となった鉱山の数は百九十三炭鉱にも及んでおります。しかも、そのうちかなりの数の炭鉱が無資力となり、さらに、今後無資力となると予定されるものが多数にのぼるものと予測されます。だから、地域住民の不安は増大し続けております。附帯決議で御指摘になりました鉱害処理の抜本的対策の確立を渇望する事態が到来しておるものと思われます。政府におかれましても、これらの事態に対応するために、昭和三十八年六月、臨時石炭鉱害復旧法の一部改正にあたりまして、鉱害復旧促進地域指定の制度を設けられ、三十九年度においてその基礎調査に必要な経費を予算化され、また、昭和三十八年七月、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法制定せられまして、鉱害賠償の促進をはかられ、昭和三十九年度予算で、鉱害賠償基金に対する出資の増加及び財政融資措置を講じられ、さらに無資力鉱害の処理につきましては、これが促進をはかるため、三十九年度予算において無資力復旧分の経費を大幅に増額する措置がとられておりますが、この程度対策では、累積鉱害の処理と激増する無資力鉱害の処理には十分ではないと思います。昭和三十九年度の全国復旧予算を見ますと、昭和三十八年度予算に対しまして、総額では二二一三%の伸びを示しておりますが、有資力分の伸びは一〇%にすぎません。ほとんどの被害民が究極のお願いとしております臨鉱法による復旧に対しまして、鉱害賠償基金による恩恵がいささか少ないように感ぜられます。ことに、物件別鉱害量中約六〇%近くを占めます農地に対する有資力分の復旧費の伸びは〇・二%にすぎないわけでございます。ただし、三十八年度予算に対する三十九年度予算の上昇率も、将来における物価の上昇等を考えますと、復旧事業量は前年度よりかえって減少するのではなかろうかと憂慮する次第でございます。  一例として、福岡県の無資力鉱害状況を申し上げますと、三十九年度予算におきまして、全国七億円の無資力復旧費の七〇%に当たります約五億円の復旧費が割り当てられる予定と承っておりますが、すでに無資力と認定されているもの、また近く無資力認定を予定されているものの復旧費は、約二十九億円に達すると承っております。もしその数字が正しいといたしますと、この鉱害復旧するだけでも、昭和三十九年度程度予算では約六年を要することになります。ために、多数の被害民、特に農民は、閉山した年度ぐらいは交付金から、減収に対しますところの年々賠償がもらえましょうが、次年度からは年々賠償ももらえなくなります。しかも、その後長期間、復旧もしてもらえないということになり、生活不安を招き、国や県や炭鉱業者に対する不信、不満を増大させていくことになると思われます。また、炭鉱の経営状態が悪く鉱害賠償基金貸し付けの対象とならないために、鉱害賠償が著しく遅延しているものが出ております。そこで、この際、たとえば巨額の累積しておる安定鉱害を早急に一掃するために、特別鉱害復旧のときのように、国が復旧の対象を認定して、しかも高率の補助を出して復旧をはかっていただくか、あるいは国策として強力に遂行されております石炭鉱業合理化政策に伴って整理される鉱山等の鉱害復旧については、国が納付金も負担して先に復旧を行ない、あとで賠償義務額等を国に返還させるというような対策を樹立されたいと思います。  次に、臨時石炭鉱害復旧法の問題点について申し上げます。  第一に、地方公共団体の財政負担についてでありますが、急速な終閉山に伴いまして鉱害処理による地方公共団体の財政負担が激増するということにつきましては、さきに地方財政法を改正していただきまして起債の対象とするとともに、地方交付税法を改正いたしまして、起債の元利償還金を補てんするという措置がとられておりますが、なお最終的な地方公共団体の純負担率は、地方公共団体負担額の三八・四%程度となるわけでございまして、財源の枯渇いたしました産炭地域の地方公共団体の財政を圧迫することになりますので、この負担軽減のために、復旧費に対する国庫補助率を大幅に引き上げるとともに、鉱害復旧事業債に対する普通交付税の額の算定上の種別補正を公共災害復旧事業債並みに引き上げていただきまして、起債の元利償還金をまるまる普通交付税で見るというようにしていただきたいと思うわけでございます。  なお、現行の負担割合は、無権、無資力復旧がきわめて僅少であった時代に制定されておるために、公共施設及び家屋復旧の場合、すなわち地盤等復旧費の無権、無資力の負担割合は、有資力の場合の賠償義務者の負担分を、国と公共団体とで折半するということになっております。すなわち、地盤等復旧費の場合を例にとりますと、有資力の場合は、国が四〇、県が一〇、賠償義務者が五〇、こうなっておりますが、無権、無資力の場合は、国が六五、県が三五となるのでございます。このような比率は公共団体に非常に酷であると思われますので、改正をしていただきたいと思います。  第二に、鉱害復旧水道及び終閉山に伴う引き継ぎ水道について申し上げます。  鉱害復旧水道に対しましては、昭和三十九年度も、前年度同様、有資力の場合は二五%の国庫補助が考慮されておりますが、他の公共施設に比しまして著しく低率でございます。これは収入を伴う事業であるというために低率に押えられておると思いますが、復旧の対象が、有資力、無資力ともに累増しておりますし、前述いたしましたとおり、無権、無資力復旧の場合には、市町村の負担は三七・五%にも達するわけでございまして、現在の疲弊しております市町村財政では負担にたえ得られませんので、この際国庫補助率を引き上げていただきたいと思います。聞くところによりますと、地盤沈下による工業用水道の復旧費につきましては、国庫補助率が三十九年度から三〇%に引き上げられたということでございますが、そういう事例がありますれば、鉱害水道の復旧についても特別の措置を強力に進めていただきたいと思うわけでございます。  また、終閉山に伴う引き継ぎ水道の問題につきましては、昭和三十八年五月の臨鉱法の一部を改正する法律案附帯決議で、「終閉山後の上水道等を地元市町村に引き継ぐにあたっては、市町村の過重負担とならないよう適切な措置を講ずること」と指示されておりますが、昭和三十九年度においては、やはり三十八年度と同様、便宜的に二五%の国庫補助金が、総額で一千万円計上されているにすぎません。福岡県下では、昭和三十九年度で十三の市町村が工費一億九千万円で引き継ぎ水道の施設の改善を計画せざるを得ないような状態に追い込まれておるわけでございます。こういう状態でございますので、さしあたり国庫補助金の確保をはかってもらいますとともに、将来はぜひとも高率の国庫補助制度化を実現していただきたいと思います。  第三に、暫定補償費、かんがい排水施設の維持管理費の問題について申し上げます。  現行法によりますと、無権、無資力農地復旧の場合の暫定補償費、かんがい排水施設の維持管理費につきましては、鉱害復旧事業団事務経費で措置されているにすぎませんが、復旧工事に要する他の費用と区別すべき理由に乏しいことからいたしまして、石炭鉱害対策審議会の答申にもあるとおり、有権、無権、無資力を問わず、これらを国庫補助の対象として鉱害復旧の促進をはかるべきであると思います。  第四に、特別鉱害復旧臨時措置法によって設置いたしましたかんがい排水施設の終閉山後の維持管理について申し上げます。  このことにつきましては、昭和三十八年五月の附帯決議で「終閉山後のかんがい排水施設の維持管理については、臨時石炭鉱害復旧法規定による維持管理の方法に準じて適切な措置を講ずること」と指示されておりますが、特別鉱害復旧臨時措置法で設置したかんがい排水施設につきましては、三十九年度においても当該年度における維持費のみが予算措置され、恒久的な制度としての維持管理基金を設けるまでには至っておりませんので、現行法で新たにかんがい排水施設を設けた場合と著しい差異があり、施設の更新及び管理費の負担について将来に不安を残しておりますので、国庫補助による維持管理基金を設定していただきまして維持管理の主体を明確にするとともに、終閉山する鉱山が従前から維持管理の経費を負担しておりますプール資金制度及び鉱害賠償の解決手段として設置しましたかんがい排水施設につきましても、同様の措置を講ぜられるべきだと思います。  第五に、鉱害家屋自体の復旧費と営業補償費の問題について申し上げます。  家屋の復旧の場合には、家屋自体の復旧費が補助の対象となっていないことによりまして、地盤を復旧するときは、それに伴い家屋についてもある程度の手入れができますが、その地盤の被害があまりにも大きくて復旧できないというような場合には、家屋の移転、改築その他の手入れができないという矛盾がありますので、鉱害家屋自体の復旧も国庫補助の対象とされますとともに、営業補償費についても同様国庫補助の対象とされるべきと思うわけでございます。  どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
  16. 中村寅太

    中村委員長 村坂ながえ君。
  17. 村坂ながえ

    村坂参考人 炭鉱所在市町村、全国鉱連を代表いたしまして村坂が発言をさせていただきます。こうした私たちの悩みを知っていただく機会をいただきましたことを、まことにありがたく存じます。いろいろ先ほどから前者の方々からお話がございましたので、できるだけ重複を省きまして、地方公共団体といたしましてのお願いを申し上げたい、かように存ずるわけでございます。  先ほど石川さんが非常にきびしい発言をなさったようでございますが、臨鉱法とかいいまして、生まれました法律が一応年を切りまして時限法になっておるということでございます。おそらくこの時を切られるということは、少なくともこの期間に、それらの発生するであろうという諸問題を解決されるという前提の上において、この時限というものが設定されておる、私はかように解釈するわけでございます。そういたしますと、はたしてこの時限内にそうした計画の線によって復旧というものが完全化されるかどうか。おそらくそういうことは織り込まれておるのではないかと存じますが、私たちの想像しまするところでは、そうした期間内になお自後存続していく炭鉱経営のある限り、そうした時限法によって処理できるのかどうなのか、非常に疑わしく存ずるわけでございます。時限の切れます際には、私たちは忙しい中を自後の処理のために、また多数の者が出かけてまいりまして、御列席の諸先生その他の御先生方を通じまして、延期の問題等で終始何回か運動を続けてまいりました。血のにじむような思いをいたしまして時限の延期をお願いしておる、こういうことでございます。しかし私は善意に解釈いたしまして、この時限法が生まれた以上は、将来へかけての問題はこの時限内においてある程度の解決を見得るものだという、ありがたいという気持ちを持っておるわけでございます。  同じ被害者と申しましても、地方公共の被害は一番弱い被害者でございます。一般の被害者と事変わりまして、炭鉱経営者はやはり同じ地区住民でございます。したがって炭鉱不振のかどによりまして税金等が滞納になりました場合に、強制執行等のことをやりまして炭鉱を閉山に押し込むというようなことはやり得ないわけでございまして、そういう際にはおおむねやはり一般の被害者は、被害の問題で炭鉱側に押しかけていっておるわけでございまして、私たちはそれを無視しなくてはなりません。そうしますると、最終的な閉山処理の段階になりましたときに、何も得るものがないといったような状態になっておるわけであります。些少のことについては私たちは決して、炭鉱経営者に対しまして協力を申し上げる意味で、申し出はしておりません。  しかしながら、終末処理に対しまして一番私たちが迷惑に感じますことは、合理化事業団でございまするが、この合理化事業団は終末処理のために、最終処理のために、必ず打ち切り補償的な同意承諾書を炭鉱側からもらいおるわけでございます。しかもその内容たるや、将来恒久的にこの鉱害に対しては異議は申し上げません、こういうことが一点と、とき変わりまして、ほかの一点は、鉱害はない、鉱害地でないというひとつ証明をもらいたい。私たちは通産省の役人でも何でもございません、そうした証明を書くゆえんはないわけでございまするが、しかしそれをやってもらわないとあとの処理ができない。被害者も非常に困っておる、すべての処理は終わっておる、こういうことになりますので、最終的には、一札ください、いかなる場合におきましても御迷惑をおかけいたしませんので、ひとつ証明だけには判を押していただきたい、こういう事例があるわけでございます。しかもその証明も現状において支障がないというような範囲であれば、私たちも問題はございませんが、そういう合理化事業団あとくされを断つための処理にそういう圧力がかかってくることには、大きに迷惑するわけでございます。この辺はひとつ、幸い合理化事業団のほうからもお越しでございますが、十分お含みをいただきまして、そういうことのないような方向にいっていただきたいと存ずるわけでございます。  それから、次の問題といたしまして私たちの一番悩んでおりますものは、先ほどから問題になっておりました、有資力者で鉱害はある、認定はされておるけれども、鉱業権者の承諾を得ないためにどうしても復旧ができない、こういう場合にはむしろ、無権者であり、無権であったならばこういう面の問題が解決できるのじゃないか。先ほど鉱害課長が申しましたが、それによる地方財政の圧縮についてはお考えをいただかなくてはなりませんが、やはり鉱業権者が承諾をしないから復旧ができないというこの内容、処置に大きな問題があるのじゃないか、かように考えるわけであります。したがって、前者のことばをかるようでございますが、少なくとも今後の問題といたしましては、鉱害である、復旧を要するという認定をいただくならば、業者がこれを肯定するといなとを問わず、合理化事業団なり、あるいは復旧事業団においてその工事の施行のできるような方向に持っていっていただきたい。ことばをかえて申しますならば、国の責任においてこうした工事の施行をやっていただきたい、これをお願いしたいと存ずるわけでございます。  それから次の問題といたしましては、この鉱害賠償が金銭賠償によって行なわれておるということであります。この金銭賠償によりまして行なわれておるあとの処理が、たいして支障のないものもありますが、これが大きく当地に影響を及ぼす事態がたくさんあるわけでございます。道路が沈下をして、金銭賠償によって話はついておる。ところがその地点は沈下しておりますので、道路のかさ上げをやらなくてはならない。かさ上げをやりますと、家が沈下をしておるので、その地区民は道路を上げてもらっては困ると言う。自然、沈下しておるその周辺は、やはり排水が思うようにまかせませんので、通行人も大きな迷惑をこうむっておりますが、同時に疲弊きわまりないものがあるわけでございます。こういうことを考えあわせますときに、たとえ事業者なり被害者が強圧するといなとを問わず、やはり金銭賠償によって解決すべきであるか、絶対に復旧に持っていかなくてはならないのであるか、この二点は十分調査検討される必要があるのじゃないか。これにより私たちの地方公共団体が大きな迷惑をこうむっておることは、非常に甚大なものがあるわけでございます。十分ひとつお含みを願いたいと存ずるわけでございます。  その他の問題といたしましては、鉱害の対象にはなっておりませんけれども、水洗をやるために遠賀川のごときは非常に汚濁度が高いわけでございます。地区民の要請によりまして上水道の設置をしておりますが、汚濁度が高いために、伏流水で緩速濾過でやれるものが、急速濾過の設置によってこれの建設費が相当高く、あるいは維持管理費が相当普通の水道設備に比べまして高く上がりまして、地方公共団体の大きな財的な負担になっておる、こういう点について検討いたしておりますが、そうしたしわ寄せの面を十分お考えを願いたい、かように思うわけでございます。  次には、先ほど県のほうから出ましたが、閉山によりまして水道移管の問題が生まれております。三十八年度に全国で十三カ市町村がこれの工事に当たったわけでございますが、実は、法律措置をとるまでは、その実を結ぶまではということでございましたけれども、緊急やむを得ざる事態のために、三十八年度にそれらの町村では、工事の施行をやっておるわけでございます。これに対しまして簡易水道並みの処置を講ぜられておりますので、私たちは厚生省に参りまして、あるいは通産省に参りまして、三分の二の高率補助をお願いしたい、しかもその事務費を削るとは何ごとぞというような御相談を申し上げまして、大蔵省の主計官ともお会いをいたしました結果、かろうじて事務費だけは認められております。ところがすでにこうした既成の事実を見ました場合に、今後たくさんのこの終閉山により処理しようという改良水道の面を、四分の一の現行の政府補助によって、地方財源を継ぎ足してやれるだけの可能性があるかどうか、非常に疑問視されておるわけでございます。背に腹はかえられないという観点から、十三市町村は三十八年度に施行いたしましたけれども、三十九年度におきましても同じようなケースがとられておりますが、ぜひともこれに対する高率補助の点はお考えを願いたい、かように思うわけでございます。  いろいろこうした処理のお願いを申し上げましたことは、私はやはりこれの処理をするためには、少なくとも権威のある、もう少し権力を与えた機関が必要ではないか、かように思うわけでございます。もしそういうものができないとするならば、現在の合理化事業団あるいは通産省、鉱害復旧事業団、これらのものが認定をしたものについては、先ほど申し上げましたが、鉱業権者が承諾するといなとを問わずに、これにかわって施行し、あるいは先ほど申し上げました金銭賠償等もあわせまして、そういうものをよく調査をされて進まれるというのか、あるいはもしそれができないならば、こうしたものを処理する一つの別途の機関を設けまして、基礎的な調査をいたしまして、そうして基金に対するところの積み立て金等の要請等もさせる、こういうふうな方向に持っていかれることが、この処理の上において非常によろしいのじゃないか。そうでございませんと、復旧事業団復旧事業をする、一方の縦の線のほうは終始一貫して進んでおります。合理化事業団はその合理化についての事務処理一辺倒である、あるいは通産省、通産局のほうでは通産事務の一方的な歩きであります。さらにわれわれの要望、被害者の要望というものがその頼っておるところの、直管しておる関係省の一つ事務配慮の中に事態の交渉があったところに、この被害者に対する諸問題というものの解決が遅々として進まないのじゃないか、かように存ずるわけでございます。  問題の要点を集約して申し上げますと、願わくば国の責任において、先ほど前者が申しましたように、この鉱害復旧に対しては国が責任を持ってその工事復旧に当たっていただきたい。もしそれができないならば、それにかわる別途の機関か、あるいは先ほど申し上げました合理化事業団復旧事業団、通産省通産局、その三者が一体となって、そういう権威のある復旧工事の施行の線に進んでいかれますことを特にお願いを申し上げたい、かように存ずるわけでございます。私たちが特にこの復旧を急いでおりますのは、御承知のように、現下の炭鉱所在市町村は、産炭地の振興に懸命の努力をしております。工業誘致にも懸命に努力いたしておりますけれども、精密機械等をやるところの企業では、沈下のおそれがある、陥落をしておる、こういうことによりまして、現在ではそういうふうな高度な工業誘致ということは望み薄な状態であります。こういう面等を考え合わせますときに、少なくとも私たちはそうした基礎条件確立のために、少なくともこの鉱害復旧につきましては、全面的なる諸先生方の御理解により、新しい立脚点の上に立ちまして、強固たる基礎の上に立ちまして、一日も早く鉱害復旧ができますように切にお願いいたしまして、時間の関係で私の意見の口述を終わります。(拍手)
  18. 中村寅太

    中村委員長 これより質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君。
  19. 井手以誠

    ○井手委員 復旧事業団天日さんに、事業団の経営について一点だけお伺いいたします。  復旧事業団業務法律改正でだんだんふえてまいりました。あなたの口述のとおりです。それからまた合理化事業団佐藤さんの話では、無資力炭鉱鉱害は、五十八億円という鉱害に対して十九億円、福岡県の鉱害課長の話では福岡県下だけで無資力鉱害が二十九億円だと言われておりますが、こういう無資力炭鉱からは、鉱害の賦課金はとれないと思います。そうなりますと、事業団の経営がなかなか窮屈になりますから、とってはならない被害者や市町村に対して、賦課金を強制したり寄付金を強制されておる事実があります。この点については別個に私は審議したいと思っておりますが、本日は天日さんも時間の関係で申し落されたのかもしれませんが、一番大事な復旧事業団の経営について、いわゆる事務経費の補助が現在一・八三でございますが、無資力炭鉱がこれほどふえてまいりましてはとてもやっていけるものではないと、私は実は同情申し上げておるのです。それでは一体いまの経営の状態はどういう内容であるのか、どのくらい国庫の補助があればやっていけるのか、その点について理事長のお考えを承っておきたいと思います。
  20. 天日光一

    天日参考人 井手先生のおしかりとお尋ねに対してお答え申し上げます。  おしかりと同時に、非常に御理解のあるおことばでありまして、おわび申し上げると同時に、感謝申し上げなければならないと思いますか、先刻来他の方からも、私が申し上げなければならぬはずのところを、省略して抜けておった点を申し上げてくだすったのでありますが、どれも事業団関係がございますが、いま先生のお尋ねになりました根本の問題はしばらくおきまして、当面増大しつつある無資力鉱害復旧事業団の責任において進めてまいりますためには、何といっても一年でも早く、一日でも早く処理しなければならないわけでありますが、核心に触れまして、事務経費の点でありますが、事業団事務経費というものは、実は有権者がある場合の炭鉱からの賦課金といたしまして四・八を認可を受けてもらっております。それが一つの財源であります。それからもう一つは、工事施行者を通じまして政府から、いまお話のありましたとおり、一・八三%を事務経費補助という形でいただいております。これがおもだと思うのであります。そこで無権者鉱害増大に伴いまして、実は法定支払い義務と私は個人で名前をつけておりますけれども、一つは無権者家屋を復旧いたします場合には、炭鉱がありました場合には炭鉱が負担すべきはずの部分でありましたものを、復旧事業団がある部分を負担するように先年の法律改正でおきめになっておるのであります。第二点は、先刻お話が出ましたとおり、昨年の法律改正によりまして、非常にいいことではありますが、無権者鉱害の賠償、農地の場合におきまして、従来は出ませんでしたところのいわゆる暫定補償、法律の中には暫定補償という用語はないのでありますが、七十三条の規定によって計算さるべき補償金ということでございますけれども、復旧いたしましても数年の間は、熟田化するまでにはある時間を要する、その間は鉱害発生前の生産量を回復するには至らない、鉱害発生前の生産量よりは生産量が落ちておる、その落ちておる度合いを金銭に換算されまして、農林大臣から事業団に支払うように通知をいただくように法律ではなっております。その支払いをしていただくように法律改正されました。それからもう一点は、先刻お話が出ましたとおり、かんがい排水施設の維持管理の基金ではございませんが、その毎年のポンプの運転費用と申したほうが早いであろうと思いますが、その費用を支払うようにという、以上三点が法定義務として加わったわけであります。これに対しまして、政府のほうからは、従来事業団というものが設立の当初から一%の事務経費の意味で補助をいただいておりましたのが、昨年、あとから申し上げた無権者の暫定補償とかんがい排水施設の支払いが法定義務として課せられましたのに伴いまして、〇・八三を加えて一・八三%になったのでございます。しかしながら計数的に比較いたしますと、一・八三%程度では私が申し上げた三つの法定支払い義務を履行してまいるには不足だと思うのであります。その不足の状況は、年々の総事業量、有権者の事業量、また無権者の事業量によりまして異なりますが、私が概算いたしましたところによりますと、三十八年度から四十六年度まで一応押えてみたのでありますが、この間におきまして、この三つの法定支払い義務を履行するためには、私の計算によりますと四億三千二百九十四万円、これはこまかい数字でありますけれども、私の計算によりますとそうなるわけであります。これに対しまして一・八%でいただく金額は一億五千百四十五万円、端数は省略させていただいてけっこうでありますが、この程度になろうかと思います。差し引きいたしますと、二億八千百四十九万円の不足という数字になるわけであります。これは三十八年から四十六年までを一応想定いたしたわけであります。しこうして、三十八年度はまさに終わらんとしております。それから三十九年度予算はすでに国会に提出されて御審議になっておりますので、これはにわかに三十九年度において改善、改良されることばいささか御無理かと推察いたすのであります。したがいまして、もしも手をお加え願って、この事務経費の補助率が改正されるといたしましても、その時期は四十年度以降でなくては実現いたしにくいのではないか、これは野人としてそう思うわけであります。さような計算でまいりますと、年によって、率によっていろいろ変わりますけれども、おしなべて、総平均として考えてみますと、当初からありました一%に不足部分をカバーして、まずとんとんになるという数字を生み出すためには、私の計算によりますと、四・二、三%くらいになろうかと思います。これをラウンドに考えまして、四・五あたりがまず適当なところではないかと思うのであります。少しく四・二、三と四・五とは開きがありますけれども、無権者鉱害復旧はふえることはあっても、減ることはないだろうということを一つ胸に描いております。と申しますのは、そのような試算をいたしましたその翌日からすでに、無権者鉱害はお前が考えておったよりもふえているということをしきりに聞くわけであります。これは先刻来お話がありましたとおり、無権者が当初三十何億という想定であったのが、それがあるいは四十億台になったり、五十億台になったりいたします。そのようなことで、いま申し上げたのは、私個人としての概算の率であります。  なお、もう一つおしかりをいただきましたが、そういうものでありますから、法律的には強制すべきものでもなく、また率直に申し上げますと、お願いをしたことは決して否定いたしませんが、できることならば、無権者鉱害地区におきまして事業団が仕事を進めていくのには、人手もよけい要ることでありますから、ある程度事務経費の御援助を願えればしあわせであると、率直にお願いしたことはいなめません。また事実過去におきまして、あるところの例でありますけれども、当時無権者鉱害復旧がようやく緒についた、取り上げられたばかりでございまして、やはり困難を感じたものでありますから、いろいろ地元の方々にお願いをいたしましたところが、あるところでは町の規程をおつくりくださいまして、ある程度金額を被害者の方からお納め願いまして、そのうちのある部分事業団にお渡しいただいたことがあります。したがって、これらの収入は法規に基づくものではございませんので、当然寄付金という形でちょうだいした性質のものだと言うべきだと思います。いまもお尋ねがありましたが、そんなことは強制できるものとは夢さら考えておりません。全くお願いした気持ちであります。なおその間に、事業団状況をおわかりの方が、事業団に理解と同情のあまり、事業団にかわっていろいろと地元のほうにお話をしていただいた御好意の結果で、この点感謝すると同時に、私のほうの関係の者がことばの足りなかった点、あるいは態度に欠くるところがあった点は、この機会におわび申し上げておきます。とりあえずこれだけお答えいたしておきます。
  21. 中村寅太

    中村委員長 滝井義高君。
  22. 滝井義高

    ○滝井委員 天日さんにひとつお尋ねしたいのですが、いま石川さんからも鉱害というのは全部を国がやるべきだというお話がありましたが、法律的には旧方式では、炭鉱が第一の賠償の責任を持ち、炭鉱がやれなければ、その炭鉱を買い上げた復旧事業団が連帯責任を持って復旧したわけです。ところがそういう連帯方式では事務が渋滞をするというので、これを新方式に改めて、交付金と鉱業権者の財産で鉱害復旧を全部おやりなさい、合理化事業団は連帯責任なし、こういうことになったわけですね。この結果、一体鉱害復旧が進捗する情勢が出たのか出ないのかということです。お聞きしたいのはそこです。  それからついでに、今度佐藤さんにお尋ねをしたいのは、さいぜん三村さんからもお話がございましたが、鉱区の分割ですね。炭鉱がいよいよあなたのほうに売りに出そうという二、三カ月前になりましてから、急にAという鉱区を——ABCと三つに分けることも可能だし、二つに分けることも可能です。そうしてできるだけ鉱害の多いところ、それから住宅の密集しているところを分割して、他の、滝井義高なら滝井義高という別の鉱業権者にやってしまうわけです。そうしてあと売りに出して、あなたのほうから交付金をもらう。今井さんが石炭局長の時代には、こういう形のものはやらないように指導します、こういう方針だったわけです。ところが最近新しく、第二会社方式というのが非常にはやってき始めたわけです。そうすると、今度は第二会社というのが残るわけですから、そこで鉱害の多いところは第二会社に残して、鉱害の少ないところを売りに出してしまう。そうすると、大手なら大手で第二会社をつくると、大手は今度はその責任を免れるわけですね。これは連帯責任がありますけれども、もう大手の山を解いてしまって東京へ行ってしまったら、なかなか被害者はあとを追うことができない、こういうことになるわけです。こういう場合の処理方針ですね。鉱区の分割は、いま言ったような責任をのがれる一つの変形ですよ。第二会社に鉱害の多いところを残してしまう。そうしてできるだけそれを先に延ばすか、あるいは免れる方針をその間にゆっくり考える。いわばこれは少し悪質になるわけですけれども、そういう場合には、分割したその鉱区を買ってはいかぬのじゃないかと思うのです。やはりその大手なら大手のものにしておいて、最終的に処理をする。その間はいま言った基金から金を借りてあなたのほうがおやりなさい、こういう形にしておいてもらわぬと、これを三つも四つも大手が分割してしまって、そうして石炭の残っておるところと鉱害の多いところだけを第二会社に残していかれ始めたら、これはたいへんなんです。こういう点を一体どう考えておるのか。  それからもう一つ佐藤さんにお尋ねしたいのは、さいぜん村坂さんですかどなたかからあったんですが、合理化事業団が最終的に買収した炭鉱と市町村との間で公共施設を片づけさせるときには、まず物件を列記しますね。何々川の何橋、どこの道路、どこの公民館、どこの学校、そしてこれだけのもの以外はもう鉱害がありませんということで、鉱業権者と市町村とが契約を結んで、その契約書を今度は合理化事業団がとらないと、交付金をもらえないわけです。そこでじょうずの手から水が漏れるというか、町村はこれだけ列記しておったらたいがい大丈夫と思っていたところが、二年ぐらいたってみると、どっこいそうはいかない。あの橋もあの学校もあの炭鉱鉱害のためだということを言ってみても、あとの祭りです。合理化事業団にいってみたところが、交付金は払ってしまって、ほかにはありません、あなたのところは鉱業権者とこういう契約を結んでおるじゃありませんか、こうなった場合には、その自治体というものはもうお手あげなんです。こういう場合もやはり、あなたのほうが責任を持ってくれる形をとらないと、いかぬということになるわけです。そこでこのことは一番初めの質問に返ってくるわけです。もとの方式のほうがよかったんじゃないか。いわゆる最終的に無資力に追い込んでいってやろうということがだんだん流行してき始めたとするならば、鉱害の最終責任というものは、できるだけ鉱業権者にやってもらうけれども、鉱業権者がもうお手あげになったならば一切国が責任を持つという、もとの連帯方式に返ったほうが、時代の進運に合っている、こういう感じがするわけです。ひとつその三点を佐藤さんと天日さんからお答え願いたいと思います。
  23. 天日光一

    天日参考人 滝井先生のお尋ねの第一点につきましてお答えいたします。  私は、こう思っております。合理化法が一部改正になりまして、いわゆる新方式が採用されたのは御指摘のとおりでありますが、旧方式におきましては、売り渡した炭鉱と合理化事業団鉱業法上の連帯責任があったことは、御承知のとおりであります。しかるに政策的に新方式というものが採用されたのだと、私は思っております。しかしながら私の未熟な法律的知識をもって判断いたしましたときには、ことばが悪いかもしれませんが、はなはだ奇怪なことであったと実は思っております。と言いますのは当時、これは誤聞であれば取り消しますけれども、私が聞きましたのは、なせそうなったのかという理由といたしましては、道聴塗説であるかもしれませんけれども、新方式においては合理化事業団において買い上げる場合に、鉱害量の算定とか調査にはなはだひまどって買い上げ業務の進行がおくれるから、それは合理化の推進がおくれることだというふうに、記憶違いでなければ、聞いた記憶がございます。しかしながら考えてみますならば、それに対処する方法といたしまして、調査のほうがおくるたために買い上げがおくれるなら、調査のほうを促進する対策をまず考えて、それが不可能な場合においてこそ第二段の対策に入るべきだった。日本の法律上におきましては、鉱業法が厳然として原則法として残っておったわけでございますけれども、鉱業法上の連帯義務がありましたのに特別法をもってお変えになったのは、政府並びに国会の、国家の最高の意思だと私は了承いたしております。ただし、法律論として疑義のあるところであったと思っております。私が当時あるところで聞かれましたときに、それは鉱業法の精神に反する措置ではないのかと言いましたが、一野人の布衣の言は天下に通りませんでしたけれども、結果としましては、大きな合理化ということを推進するためにはより大きな法益を保護される御趣旨だと私は了解しておったわけであります。  ただ、お尋ねの核心に触れまして、それが鉱害復旧のためによかったのか悪かったのかという点になりますと、職責上もう少しお答えしなくちゃならぬわけでございます。この点は数量的にはちょっといまにわかに申し上げかねまするが、合理化事業団が連帯責任がなくなりました関係上、いわゆる政府から新方式で取り次がれまするところの整理交付金だけでは鉱害処理ができなくなってきたものが、無権者鉱害復旧の処置にだんだんなりつつあることは、御承知のとおりであります。しこうしてこの無権者鉱害復旧のためには、御承知ごとく、政府補助予算も次第に逐年増大いたしてまいっておりまするから、量的には、もとのままであったほうがよかったのか、新方式、いわゆる無権者復旧という形に入ったほうがよかったのかということは、数字を申し上げてお答えするにはもう少し調査を要するかと思いまするけれども、方法としましては、いいか悪いかは別としまして、国家のあたたかい手が別途差し伸べられることにはなっておるわけであります。ただそれに関連しまして、先刻来お話しが出ましたとおり、交付された整理交付金をもって何年間補償がまかなえるかとか、あるいはその場合に、鉱害としての申し出についてある程度の、何ということばが適当か存じませんが、工作といいますか、話し合いと申しますかが行なわれることについての弊害が伴っておることも、一面事実のようでございます。しかしながら、法律上はおそらくこういうことになっておると思います。その鉱害の申し出がかりに所定の時期になくても、法律的には義務は解消をしてないはずでありまして、残存しているわけです。ただ資力がないために、それは無権者扱いをせざるを得なくなった、こういう点から見まして、復旧事業団にその分のしわが寄ってくるという帰結であろうかと思っております。量的にどちらがよけい復旧したであろうかという点は、数字を調べてから申し上げさせていただきたい、お許しを願いたいと思います。
  24. 佐藤京三

    佐藤参考人 ただいま滝井先生お話しの、第一点の鉱区分割問題なんですが、私いま条文を記憶しておりませんのでお答えできないのですが、確かに今井局長がお話になったような意味のことが、若干どこかに盛られておると思います。ただ合法的に分割されてくるというときに、全部の買い上げができないというような法律構成になっておるということでございます。したがって、あと鉱害処理をどうするかという問題が残るわけなんですが、たとえばA鉱区とB鉱区に分割された場合に、A鉱区の交付決定とB鉱区の交付決定がわりあい近いという場合は、同一鉱業権者であるし、その交付金をプールして賠償処理計画を設定したらどうかというような方針でおります。  それから第二会社の問題も、法律的に買わないというような根拠的なものはないのじゃないか、おそらく話し合いというようなことにしかならぬのじゃないかというふうに思います。  それから第三点の、旧方式のほうがよかったんじゃないかという御意見なんですが、私は、連帯責任自体が非常に問題がある、事業団立場からいえば、そう言えると思うのです。というのは、事業団はたしかに従来、鉱区買収は鉱業法上の連帯責任をとった。しかし事業団の鉱区買収というものは非常に制限されて、単に鉱区だけを保有しておるという鉱業権者にすぎない。しかし鉱害賠償を完全に済ませるという機能を持たせるならば、先ほど来参考人の方からもお話があったように、一つ鉱害対策の面として処置していくという話であればわかるような気がするのですが、単に鉱業法上の原則で、連帯責任をとるのだということでは、そこに何らの対策がないのじゃなかろうかというふうに私は思います。  それから公共施設の問題です。これは現行法のたてまえが、当事者賠償主義をとっておるわけでございますね。それですから加害者と被害者がそこで、鉱害じゃない、あるいは賠償しないという契約があれば尊重せざるを得ないという、当事者賠償の原則から私はきているというふうに理解しております。
  25. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に、あとでわかってくるわけです。これは鉱害であった。たとえば浅所陥没なんか起こった場合、あなたのほうが責任をお持ちになるわけです。ところが町当局と鉱業権者とが契約を結ぶ場合に、列挙主義です。列挙しています。何々小学校、何々橋、何々道、何々公民館、これだけが鉱害であって、これ以外は鉱害はありません、こういう契約を結んで、それによってあなたのほうにその書類鉱業権者が出しています。ところがずっと一年か二年してから、浅所陥没と同じように鉱害が起こってくる。その場合に一体その責任というものは、明らかに鉱害があるんだから合理化事業団にとってもらいたいといっても、事業団は、あのときの契約があるからだめです。こうなると、これはたいへんだ、こういうことなんです。その場合は、鉱害があるということがはっきりすれば、認めてもらわなければいけません。そういうことを言っておるわけですよ。  それからもう一つは、前のほうで私がお尋ねをしておるのは、鉱害復旧事務量が、無資力で肩がわりをされたと天日さんおっしゃったけれども、その無資力にするのにたいへんな事務が要るのです。連帯責任なら、その事務が要らぬわけです。被害者は合理化事業団にいきさえすればいいのです。ところが無資力にすると、いま言った年々補償の問題とかいろいろの問題が、鉱業権者ではなくして自治体が相手になってくるわけですから、違ってくるわけです。そこで事務処理からいっても、連帯責任のほうが、佐藤さんのほうにいけば全部問題が片づく。しかしそれだけ佐藤さんとしてはめんどうくさくなるけれども、その分は人数をふやしてこれに当たってもらったらいい。だから鉱業権者は、無資力という形じゃなくて、厳然と、鉱業権者イコール国の代理である合理化事業団、こういう形にしてもらったらいいんじゃないかということを聞きたいのです。
  26. 天日光一

    天日参考人 先刻の私のことばが足りなかった点もあると思うのですけれども、ただ私は、率直にこう感じます。いま先生のお話になりましたのは、合理化事業団は即国家のようなお考えに近いように思うのでありますけれども、合理化事業団はやはり資金的の制約がございまして、これはいつの時代か知りません。はばかりあると思いますけれども、合理化事業団というのは営利会社でなくて、性格上天下の公器のはずだと私は思っております。したがいましてここに、法律によって、あるいは業務方法に従って業務を進めてまいりまして、当然に負担すべきものが生じまして、その場合に生じたもしも赤字があったといたしましても、それをもって合理化事業団理事者を責めるべきものではないのではないか。合理化事業団に国の代行機関たる使命をもしも与えておるとするならば、その損失額は合理化事業団に補てんなりなんなりして、それでこそ初めて責任が一貫してとれるのであって、それを責める時代があったようにも私は聞くものでありますからして、国会政府の最高の御意思の判断にお従い申し上げたというように考えておるわけであります。  もう一つ、私の感じでは、前の方法、旧方式が正当であったとしたならば、新方式に直せば、新方式はより以上有力な法律的根拠、財政的根拠がなければならないはずである。あとがよければ前のほうは当然間違いであって、前がよければあとのほうば当然おかしい。これは論理の当然の帰結であって、何もギリシャ人の論理学を学ばなくてもわかることだと私は思っておりましたけれども、最高の国会の御意思に従って進んでおって、その結果、無権者鉱害に別途の手が差し伸べられて、いろいろ滝井さんの御指摘のような付随的な問題は、何とかして解決したいと思っておるわけです。
  27. 佐藤京三

    佐藤参考人 先ほどの滝井先生の問題ですが、契約当時に鉱害原因があって、その鉱害原因をもとにして契約が結ばれておるということであれば、当事者が請求権を放棄したということだろうと思うのです。しかし新しい鉱害原因があれば、これは別だろうというふうに理解しております。
  28. 中村寅太

  29. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 天日さんにお伺いしたいのですが、天日さんがさつき公述されたとき最後に言われたこと、どうもちょっと聞き捨てならぬことだと感じたことは、いまの状態であれば事業団は破綻せざるを得ない、こういうことをおっしゃったが、なぜ破綻をせざるを得ないのか、どうすれば破綻しないで復旧事業団の目的、使命を達成することができるのか、それをごく簡単に言ってください。どうもあなたの話を伺っておると、あれこれあれこれとあまり豊富であるのか、私はわかりませんが、ひとつなぜ破綻するのかということを、はっきり端的におっしゃってください。それからこうすれば破綻しないで復旧事業団の目的、使命を完全に達成することができますと、これだけをごく一言だけでよろしいですから、言ってください。
  30. 天日光一

    天日参考人 お答え申し上げます。  端的に申し上げますと、破綻するということばははなはだ奇怪な、過激なことばのようでありますけれども、計数から見まして私はそう感じたのであります。といいますことは、先刻申し上げたとおり、いまのままで推移いたすならばという前提条件を置いていることを御承知おき願いたいと思います。いまのままということは、いま想定されておる今後の年々の九州としましての一般的な総事業量、その中での無権者鉱害増大割合のふえ方、またもう一つの要件といたしましては、事務経費の補助等が、いまのままでの率で推移いたすということ、また賦課金の率がいまのままで推移いたすということ、これらの現実の諸条件と今後の推移が想定されておる。そのままでいったとしたならば、数字的に申し上げたとおり、究極におきましては二億幾らの不足を来たすということになりますと、わが事業団は出資金がある団体でもないのでありますからして、当然のことといたしまして、残余財産が債務を完済するに足りなければ、これは破産の規定に従わざるを得ないという帰結になるわけであります、というのが申し上げた趣旨であります。  しからばいかにしたならばそれが免れるかということは、いま申し上げた中に当然含まれておるわけでありますけれども、現在の置かれた条件を直されて、たとえば事務経費の補助率が引き上げになって、赤字を来たさないようになれば、破綻はいたしません。ですからバランスがとれれば破産いたさないということはきわめて簡単なことなのでありますが、この補助率の引き上げということはいろいろな点で、要望いたしておりますけれども、困難な点があると思います。一つこういう点を実は考えておるのであります。それは無権者鉱害は今後ふえても減りっこないといたしますと、たとえば来年七億予想いたしましても、諸先生の間ではそんなことで足りるか、もっと早く片づけいとおっしゃれば、十億も十五億も用意しなければならぬということになる。そうなると、いまここでそろばんをはじきますと、予想に属する部分が多ございますから、それを避けるためには、無権者鉱害復旧処理の費用として払うべきものは、事業団の中に区分計算をいたしまして、それから減ることもなし、補うこともないというとんとんバランス方式をもしとっていただければ、独立会計と言うと非常にきらわれますから、いま申し上げますように、事業団の中でその部分だけを別に計算して、よくある例でありますけれども、それがとんとんになるようになれば、破綻に瀕するなんということばは喜んで撤去いたしたいと思っております。
  31. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたのいろいろいままで国会側に出された書類もありますし、それから長々とあなたの能弁を伺っておったんだが、いまあなたが最後に言われたその一番大事な点を、あなたがいままで出された書類なり、いままで言われたうちに、しぼった点を書いてないが、その一番大事なことを何で忘れておるのですか。一番大事なことを今度ひとつ入れて、それだけでよろしいから、今後この点でこうしてくれれば、復旧事業団の計画は、あるいは無権者、無資格者鉱害がこれだけふえていっても、これを何年計画で必ず完全に完成させることができるというようなこと等を、しろうとわかりのするようにひとつはっきり大事な点だけを——きょうあなたが言われたことは速記に残りますからよろしいが、そういうことをはっきり出してください。
  32. 天日光一

    天日参考人 ちょっと伊藤さんに申し上げておきますが、これは実は差し上げた最後のページの十行ばかりのところがさわりでありますけれども、さわりを初めから出してしまうとあとがいけませんので、これは戦術戦略と言っては恐縮ですが、質問をいただくことによって皆さんの御認識を一そう深める戦術に出たということであります。
  33. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 天日さんのその点は、いま私が言ったことをひとつ十分含んで、今後事業団の目的完遂のために、あまり政府に遠慮せないで、どこにも遠慮しないで、あなた独自の立場なんだから、こうせなければおれのところの事業団使命を果たすことはできないということを無遠慮に、大胆率直に要請されることをきょうは強く、今度は私のほうからあなたに要請しておきます。  それから佐藤さん、小さいことかもしらぬが二、三点ちょっと伺いたいのは、あなたのほうで買い取られた炭鉱で、大手のほうはないだろうと思うが、特に中小の場合に、買い取り価格が安いというのか、あるいは未払い賃金がたまり過ぎておったというのか、借金が多かったというのか、それはそれぞれの炭鉱によって違うだろうが、とにかく山は合理化によって買い取られた。それで今度は鉱害復旧資金はこれだけ納入さしたいと思うが、なかなかそうはいかぬ、あるいは半分もない、あるいはもっとないというのは、結局無権者というか無資格者鉱害ということになるんですが、その辺の点が、今度また天日さんのほうで受け取る場合になかなか容易でないという問題が一つあるのですね。そういったような取れない鉱害額というものが、総額どのくらいあるかということが一つ。  それからもう一つは、たとえば山を合理化にかけて買い取ってもらいたい。ところが、鉱害復旧のそういう納付金をしておらない。納付金をしておらぬものは、それを納めなければ買い取っちゃやれぬ。それなら抵当物件か何かあれば、抵当を入れればそれでよろしいが、抵当物件もない、納付金も納めておらぬ。それだから買い取ることはできぬ。買い取ることはできぬということになると、今度は労働者は未払い賃金なり労働者の退職金ももらえないから、どこにも行けない。全くそのままの状態で、それこそどうすることもできないという状態にあるというのがありますね。それからいま一つは、たとえば一億円で買い取った。借金が十億円ある。この問題でいろいろ横やりが入ってくるために、労働者への未払い賃金、退職金というのがやれないので、労働者はそのまま動くことができない、こういう具体的な問題があるが、こういう問題の処理というものをもっと私は、やはりそれはそれ、これはこれで片づけてやるべきだと思うのだが、なかなかそういっていないことをわれわれのところによく陳情されてきておるが、こういう点の、いま私が三点あげたことが、どうしてできないのか、ひとつお聞かせ願いたい。もしあるいは石炭局あたりが、石炭局長もおられるが、監督官庁のほうがなかなかやかましくて、それはそれ、これはこれで片づけてやるべきものをやらぬなら、ちょっと政府のほうに一言なかるべからずということになるので、これは政府のほうはあとでやりますから、いいです。  それから、これはどこで答弁していただくか、たとえば合理化事業団にいまお話しましたような鉱害の問題で当然なにしてくれ、それから天日さんのところで復旧事業を当然やられる、それらが関連して産炭地振興の事業とも非常につながるわけであります。その辺について石炭局あたりから、あるいは合理化事業団鉱害復旧事業団、あるいは産炭地振興事業団、そういうところでやはりこれは三者一体になった話し合いの上にこの事業を進めていくということが、この三者一体の目的を達成する、これが当面するこの重大な問題を解決する一つになる、そう思うのだが、そういう機関というものを構成されて話し合いをやられておるかどうか。やられてなかったとするならば、ちょうど石炭局長がおられるが、石炭局長などが主力となってそういうものをつくらして、三位一体になってその解決をされるということが非常に大事じゃないか。私はこう思うが、そういうことを天日さんや合理化事業団では話し合いをされたのですか。
  34. 天日光一

    天日参考人 いま伊藤先生から御指摘の点につきましては、不十分かもしれませんけれども、従来も、たとえば買い上げ炭鉱についての鉱害復旧問題は、合理化事業団と私のほうと話し合いをいたしてまいる方式をとっております。たとえば一つの例として、合理化事業団が買い上げられた炭鉱におきまして、臨鉱法による復旧を希望するという申し出が被害者の間からありました場合には、その復旧費用の見積もり等は一応当事業団でいたすようにというような方式もきめてあります。また、現地におきましては、両事業団の間におきまして、事務連絡、打ち合わせを相当やっておるわけであります。産炭地事業団との関係におきましては、皆さんもお聞き及びと思いますけれども、たとえばボタ山をならして工場用地なり何なり造成する場合に、そのボタを利用して、陥没地帯に埋め込んで活用できないかというようなことの指摘をよく受けるわけですが、この点につきましてもいろいろ考えておりますけれども、ただ、農地というものはいろいろ耕作条件がございまして、ボタならボタをそのまま入れたのでは、湛水力あるいは漏水力等が問題になります。いま九大におきまして、ボタを水田に入れるということを試験されております。ただその場合、生ボタではいかぬので、一応火をかぶった焼きボタでなくちゃいかぬということを聞きまして、これは科学的にも、ある専門家から私が聞いたところが、やはりそうでなければいかぬということで、逐次そういうことをやっております。  それから、通産当局から現地において、われわれ三事業団にしょっちゅう御指導もありますし、これは余談でありますけれども、現地におきましては、四事業団のわれわれと局長が毎月一回寄りまして、忌憚なくお互いの希望とか、また役所が講じてほしいということを申し入れてはおるのでありますが、不十分な点はさらに充実してまいりたい、さように私は思っております。
  35. 佐藤京三

    佐藤参考人 伊藤先生の第一点の問題を端的に申しますと、先ほど無資力となると思われる炭鉱が十鬼炭鉱ございまして、鉱害総額で十九億と申しましたが、これに見合う鉱害留保額が四億一千五百万円、ちょうど二二%くらいにしかなっておりません。それで御答弁になるかどうか……。  次は、納付金の問題でございます。この未納納付金のあるものを整理交付金の対象にしないという意味ではございません。ただいま数字で申し上げますと、三十七年度の整理ワクが三百二十万トンでございまして、その際の申し込みが五百六万トンございます。それから三十八年度は、四百八十万トンのワクに対しまして六百九十九万トンの申し込みがあった。したがって、納付義務を果たしているものから優先的にやっていくという措置をとったわけでございます。  それから、ただいま例で申されました、一億の交付金額で十億円の災害があった場合はどうするかということでございますが、各省の次官通牒によります債務処理要領がございます。原則的なお話を申し上げますと、一億の三〇%は一般債務の財源に充て、あとの七〇%は未払い賃金と鉱害債務に充てる、こういうことをやっているわけでございます。それで、一億の三〇%、三千万円で十億の債務処理をする、こういうところに非常に問題があるようでございますけれども、どうせとれない見込みの炭鉱であれば三千万円でもがまんするというようなことで、債務処理でスクラップが困難だという事例はありますけれども、そのためにスクラップにならないという事例はあまりないのじゃないかというふうに思っております。  それから、第四の点につきましては、天日さんからお話がございましたが、事務的には通産局のほうに閉山処理部というのがございまして、そこと私のほうと復旧事業団事務担当者が常時連絡会をやって、緊密な連絡をとっております。
  36. 中村寅太

  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二、三点お尋ねいたしたいと思います。  「鉱害賠償基金をして鉱害復旧事業団に対し復旧工事資金貸し付けを許すこと」、これは天日さん、と言っても二人おりますが、鉱害賠償基金理事長天日さんということが出ておる。その考え方は賠償法金をつくった趣旨に反するものであると思います。復旧事業団政府資金を直接お借りに。なったらよい。この賠償基金というのは、民間の会社に資金を貸すためにつくったものである。それを復旧事業団が横からその基金をよこしてくれと言ったら、民間の資金は枯渇するわけでしょう。あなたのほうは毒にもならぬからそういうことをお出しになったのだと思うけれども、これはむしろ、九州鉱害復旧事業団理事長が書くならよいが、賠償基金理事長がそういうことを言ったのでは、これはけしからぬ話である、私はそう考える。その考え方は制度を乱すものですよ。  もう一つは、工事立てかえの場合ですが、これこそあなたのほうの復旧事業団として主張をして、ころがし式ではなくて、やはり財政投融資を受ける、むしろこういう制度の確立が必要ではないか。長期資金の借り受け制度を確立する。そうしないとどうにもならぬ。もう一つは、それだけではできぬわけです。あなたのほうの復旧事業団がやるなら金を借りて将来返せるかといえば、ちょっと返す方法がない。事業費の立てかえならよい。しかし普通の、どうにも苦しいから金を借りるという場合には、返すめどがない。これは補助率を上げなければ返せない。一般会計から金を支出しなければ返せないという問題がある。工事立てかえの場合は直接、長期資金の借り受けを政府からする、こういうことが必要ではないか。あなたのほうは両面を陳情されているけれども、賠償基金から復旧事業団に金を貸すなんということは、この制度そのものに対する背反ではないか、こう思うわけです。  それから、先ほどから皆さんの間で議論になっておりました例の旧方式、新方式の問題でありますが、佐藤さん、あなたはたしか鉱害課長であったから御存じのように、大体事業団にも連帯責任があるということで法律は了承されたのですよ。ですから、どうにもならぬ場合には、最終的には政府政府といえば合理化事業団が連帯保証をするのだから、そういう方式でもよかろうということは、合理化事業団がある程度金を政府から受けて賠償の任に任ずるのだという前提があるわけです、法律制度としては。ところが、その合理化事業団が、要するに交付金の中で処理しようとするから問題が起こっているわけです。ですから、一体いままであなたのほうで交付金の留保額以上に一般会計からもらった金は幾らあるのか、これをひとつお聞かせ願いたい。  もう一つは、石川さん、三村さん見えておられますが、仲介あっせん人として、いまの制度でほんとうに仲介あっせんの機能が果たされておるかどうか。ともかくきわめて複雑で、しかも利害関係が対立し、そうして鉱害の認否についても、また、その操業の行なわれた時期についても非常に長い。そういう中で、あの程度の機構で、はたして十分なる機能が果たされておるかどうか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  38. 佐藤京三

    佐藤参考人 いま先生のお話しの、旧方式、新方式についてのお話なのですが、旧方式は確かに連帯責任を前提としての立法であることは、これは間違いないと思うのです。それで、連帯責任の義務を果たしてまいったわけです。その場合に、一般会計から幾ら補てんしたかという御質問なんですが、これは一億七千万円ほど補てんいたしております。それから新方式については、これは連帯責任というものが法律的にないのでございまして、これは別に一般会計から補てんという事実はございません。
  39. 三村保

    三村参考人 ただいまお尋ねの、和解仲介員の制度を、現行のままでいいかということでありますが、いまの制度ではほんとうの解決ができていない。もちろん鉱害理論は相当確立されてはおりますが、そこの土地、あるいは採掘年次、状況等でかなり変わってまいっておりまして、ただ鉱害影響線が六十度とかあるいは五十五度とかというようなことだけでは解決せられないのが現状でありまして、特に地下水等に関します限り、もっと鉱害理論が究明されなければ、ほんとうの鉱害認定ができないといううらみを持っておるわけでございます。私どもはかねがねこういう地下水あるいは鉱害理論をもっと国家の手で進めていただきたい、こう要望してまいっておりますが、もっと強力な鉱害理論の究明機関をつくっていただくと同時に、いまの和解仲介員の人数というようなものも不足しますし、また通産局の陣容を見てみましても、われわれから見て、多少手不足ではないかというようにも感じられますので、そういう点を補っていただければ、もう少し進んだ仲介和解が出ると同時に、また、和解仲介は拘束力を持っておりませんので、もう少し強い、裁判にまでいかないでも、和解仲介員が中正な意見を出しましたならば、そのとおりに尊重し得るような、法的まではいきませんでも、もう少し強い方法にしていただいたならば、もっと解決が進むと考えております。
  40. 石川八郎

    石川参考人 私は三村さんと少し意見が違いまして、いまの仲介案に拘束力とかそういうものを持たしたときには、とんでもないものができます。たった一ぺん現地調査に行きまして、あれは鉱害だといって額を決定する。そんなことよりも——私はむしろいまの状態でいいんだ。しかし、その裏づけを考えなければなりません。一ぺん出ますと、そのうしろはどうなっているかというと、事業団関係、あるいは個人の関係、この資金面を考えなければなりませんが、これは全くゼロですね。私は七十にもなりますから、もうすぐ死ぬのですが、いままでうそを言って、被害者のほうに、あれはこういうふうなものだ、鉱害的にはこうだ、科学的にはこうだというようなうそは言っておりますけれども、死ぬ前にはほんとうのことを言いたいのでございますから、そういうふうに国が責任を持ちまして、金を出して、良心的に復旧をしてくれないと困ります。
  41. 天日光一

    天日参考人 いま先生から、おまえの考え方は間違っているじゃないかと御指摘いただいたのですが、これははなはだ僭越な申し分でありますけれども、私のいまの心境ではそれほど間違っているとも思いません。これはうそを申し上げるわけにいきませんから、正直に言います。というのは、お話しのごとく、鉱害復旧事業団が直接に政府資金を借りられればよろしいわけでございます。戦後借りておったのでありますが、従来借りておった金は、炭鉱納付金立てかえる分という条件つきで借りておったという制約があるのであります。今後延納に充てる資金は貸さないという構想がいま出ているわけです。そうしますと、復旧事業団としましては、ことに無権者鉱害の農地の大量な工事などは、稲を刈り取ったあとの一月から三月までの短期間ではすこぶる完了が困難なので、できるものならば春工事でも、あるいは夏工事でもいたしたいのであります。もっと早く工事に着手しなければならぬというためには、補助金が下がるのを待たずに工事に着手しなければならぬ。しからば補助金が早く下がる手続をとったらいいじゃないか、おまえたちが怠慢じゃないかと言われますと、ほんとうの現実を暴露したくありませんが、実施計画の認可までに要した日数等も私は調べたものを持っておりますが、認可が必ずしも一週間や十日でおりないのが現実の姿であります。そこで基金は、大蔵省から融資ワクを認められることとなりましたので、基金のほうで貸していただいて、その基金から鉱害復旧事業団に一時の工事資金を貸すことといたし、特に無権者鉱害復旧の促進に資したい考えであります。先生が御懸念になっておるように、民間会社にいく金を横取りするという考えは毛頭ございません。必要な分だけよけいに貸していただいて、補助金が下がったらお返しする、善意に出ておることでありますから、その点はどうぞ……。
  42. 細谷治嘉

    ○細谷委員 きわめて事務的な質問と、それから資料をお願いしたいと思うのです。  第一は、天日さんですか、きょういただいた資料の四ページ、貸し出しの条件、二年据え置きで三年償還とあるが、利子はどのくらいですか。  それから、鉱害のほうの六ページの表があります。年度、全事業量、無資力復旧工事割合とあって、四十三年になりますとこの割合が五三・一%になっておるのですが、全事業量は半分になっておる。鉱害は全事業量が減るどころでなくてふえなければならぬのに、どうしてこういう数字になったのか、あるいはこれは私の思い違いかもしれませんが、その点を伺いたい。  それからお願いしたい資料は、天日さんにお願いしたいのです。先ほど伊藤先生が質問いたしました法定支払い義務が追加された、そういうことなり、あるいは無資力、無権者の増大で百分の四・二か四・三、プラスアルファを考えると四・五だ、これも書いてあるのですが、これだけでは資料としてあまりにもぼうっとしておりますので、項目ごとに積算された資料をいただきますと、私どもとして判断できるのじゃないか。  柴田課長にお願いしたいのですが、先ほど臨鉱法等についての問題点ということでいろいろあげられたのですが、資料としてお願いしたいのは、二十九億円程度の無資力関係のものがある。その具体的な内容と、それからあなたが改正してもらいたいと言った、地方財政に関連した問題として、交付税がこうなるから純負担はこうだということばだけ聞きましたが、これだけではちょっと判断に困る。もっとわれわれが的確に判断できる資料をひとつ、四点ばかりあげられておりますが、それについてぜひ詳細な資料を出していただきたい、こういうことでございます。
  43. 天日光一

    天日参考人 第一の利息の点でありますけれども、いま貸し付け利息は六分五厘といたしております。それから預かった金につきましては、四分五厘の利息をつけるという利ざやの関係になっております。積み立て金につきましては、細目について申し上げますと、取り戻した供託金はもとの法律そのままで二分四厘かの利息がつくということになっております。  それからもう一点、資料の点でありますけれども、それは便宜三十九年、四十二年、四十五年と、概観するために省略いたしたので、もとより途中の表を持ってのことであります。しかして四十何年になって事業量が半分に減っているのはおかしいというお尋ねは、非常に肯綮に当たったお尋ねでありまして、これをお待ちしているわけであります。これは実は別途申し上げますけれども、現在あるところの想定が、そういうような段階でいくということに言われておるのであります。それをとりまして、したのであります。これは私の空想ではなくて、一つのある想定からきた、そういう表があるところにあるので、それをとってきたのであります。毎年度出して見ておりますけれども、それを全部あげたのでは、ごらんになるのになにだと思って、三年だけ、大勢観察に資するために申し上げたのであります。表は持っておることを申し上げておきます。
  44. 柴田文雄

    柴田参考人 細谷先生のお尋ねの資料でございますが、臨鉱法の問題点についての資料は、私のほうでつくって差し上げますが、先ほど無資力鉱害が二十九億と申しましたのは、これは私が資料を持っておるわけでございませんで、ある席上で、責任のある方から聞いた数字でございますので、内訳を申し上げるということにつきましては、御了解を取りつけ得れば差し上げられますが、もし御了解が取りつけられなかったならば、お許しを願いたいと思います。
  45. 中村寅太

    中村委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  なお、天日光一君及び佐藤京三君の両参考人には、御多用中まことに恐縮でございますが、明十二日も参考人として、午前十時三十分に御出席いただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次会は明十二日午前十時より理本会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十三分散会