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1964-02-27 第46回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十七日(木曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 有田 喜一君 理事 上林山榮吉君    理事 中川 俊思君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 中村 重光君       木村 守江君    壽原 正一君       中村 幸八君    藤尾 正行君       三原 朝雄君    細谷 治嘉君       八木  昇君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   田辺  博君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      海堀 洋平君         厚 生 技 官         (環境衛生局水         道課長)    大橋 文雄君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         労働事務官         (職業安定局雇         用調整課長)  遠藤 政夫君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 中村重光

    中村委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。石炭対策基本施策について質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 通産省のところだけを先にひとつやらしていただきます。  まず第一に、最近閉山が相次いで出まして、その結果、残った炭鉱に異常な状態が起こってきたわけです。それは御存じのとおり、筑豊における遠賀川の両岸にたくさん炭鉱がある間は、それぞれの炭鉱が毎日水を揚げておったわけです。そのために各山の揚水量というのは、それぞれ分担をされておるので、大して多くなかったわけです。しかし付近炭鉱がやめてしまったために、まず第一に、石炭生産部面にどういう影響があらわれてきておるかというと、一番典型的にあらわれてきているのが、三井山野です。これは石炭局長御存じのとおりだと思うのです。付近の大手の山が全部やめたために、一切の水で三井山野に集約されてくるわけです。したがってこれを揚げるのに、せっかく第二会社として雇用安定、地域経済の安定をはかるために残ったその山が、莫大な揚水のための電力料金を必要とするために、なかなか経理上ぐあいが悪い、こういう問題が起こってきたわけです。こういう場合に、雇用安定上どうしても第二会社は残さなければならぬ、地域経済に及ぼす影響が重大だから残さなければならぬということで残した。ところが残ってみると、揚水費に莫大な金が要るということになると、この山は維持していけなくなるわけです。そこで、こういういままでよりか異常に揚水費がふくらんできた場合には、政府はそれに対して何らかの補償措置というか、そういったものを考える必要があるのではないかという問題が一つ出てきておるわけです。これを一体通産当局としてはどう考えておるのか。これをひとつお答え願いたい。
  4. 新井眞一

    新井政府委員 周囲炭鉱が動いておりますときには自分排水をしておるのであるが、それが閉山をすると、ほかに残った炭鉱にどんどん水が出ていって、その炭鉱が非常に大きな排水のための費用がかかる、これをどう考えておるか、こういう御質問でございます。具体的には三井山野の第二会社がいま問題になっておりますが、この件につきまして、まことに私も同情をするわけでございますが、一つ考えられますのは、ほかが閉山をして、それによってそこの水を排水する金がたくさん要るのだということからいたしますと、まず第一に周囲の山に対する損害賠償請求と申しますか、そういう炭鉱間の問題が一つあろうかと思います。ただしその際は、すでに閉山をしてどこへいったかわからぬという山もありますし、山野の場合は、周囲に三菱のあと炭鉱もございまするし、そういった有資力炭鉱と、迷惑を受けておる炭鉱との損害賠償の問題が一つあると思います。もう一つは、これは鉱害ではないか。閉山をして、どんどん水をその炭鉱に持っていくわけだから、閉山をした山のあと鉱害にはならぬかという考え方一つあろうかと思いますが、この点はいろいろ検討を加えましたが、いわゆる臨鉱法による効用回復のための鉱害判断することは非常に困難な状況でございます。ただし先ほど申しますように、鉱業法上の金銭による賠償、この関係はまさしくそうであろうと思いまするけれども、特異な法のねらいのある臨鉱法関係鉱害としては、判断が非常にむずかしい問題があるわけでございます。そこで一体どうするのだということになるわけでございますが、私どもとしましては何とか——ちょうど筑豊地帯は、御承知のように水がなかなかないところでございます。非常に水がございません。山野の場合を計算いたしますと、山野側の数字を見ますとかなり多くの水がございまして、毎分約二十二トンぐらい、これを日量に直しますと三万五、六千トン、日量四万トン近い水というものはたいへんな水でございますので、これを少し利用するような方向で何か考えられはしないかというような判断をいまいたしておるわけでございまして、幸いそのための調査費等もございますので、調査をいたしまして、水を出すだけではなくて、その水を利用することによりまして、当該炭鉱負担の軽減といいますか、一挙両得の姿でやっていこう。それがそういうふうにうまくいきますか、水質の問題もありますし、使い方もいろいろございましょうが、そういう方法解決いたしたいと思いますが、あまりゆっくりもしておられません。いま二億ばかりその炭鉱でもよけいに金がかかっておるようでございます。なるべく急ぎまして、そういう方向で早急に調査を進めて解決をしていきたい。ただその炭鉱に対して、自分のためではなくて、ほかの炭鉱がつぶれたために水が出る、だから国が何とかしろということでは、補助金はなかなかむずかしいと思いますが、先ほど申し上げましたような方法解決したいと考えております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 これは新説を聞いたわけですが、なるほどこれは考え方によっては鉱害だと思うのです。いま一つ、今度は地上の例を出しますが、いまは地下の例を一つ出してきておるわけです。その地下の例は同時に地上にあらわれる例に関連があるということになるわけですが、いま言ったような、鉱害である、したがって典型的にあらわれた三井山野のような場合には、鉱害とすれば、現金賠償をやる。そうするとその現金賠償の場合、有資力炭鉱と、付近の無資力になった炭鉱とがある。したがってその場合には有資力の分の及ぼすであろう鉱害、それから無資力の分の及ぼすであろう鉱害、これはなかなか測定がむずかしいけれども、神様がやれば可能かもしれないが、とにかくそういう二つのものの要素で、被害が集約的に三井山野の坑内に揚水という形で出てきている。こういう形が一つ解決方法だと私は思うのです。そうしますと、有資力の者に負担をさせ、無資力分を国が出せば解決することになるわけです。しかしその場合、県なり市町村の負担が出てくる。ここにこの問題の解決隘路があると思うのです。そうしますと、いまの後段のこの水を利用する、その水を売って、お金を何らかの形で山野に出す。その揚水設備その他については、特別のケースであるので、揚水設備その他についてある程度国が設備費をつくるならつくる。たとえばダムをつくるのと同じなんだから、これはあるいは立法を要するかもしれないですけれども、不可能ではないと思うのですね。この問題はやはり、三井山野運命というのが、そう三十年も五十年もあるわけじゃないと思うのですよ。したがって、速急に解決をする必要が出てきていると思うのですがね。局長、問題は、水を売るにしても、買う先をきちっとしなければ、料金を払ってもらわなければならぬわけですから、ここらにも隘路がある。ところがあの地区御存じのおとり、水を持っていくとすれば、北九州まで持っていけば、これは右から左に売れることになるわけです。しかしそれは二、三円、四円くらいの料金で、それ以上のものになると、また問題が出てくると思うのです、工業用水にしても。だからここらあたり速急にやってもらわなければならぬが、おやりになるとしても一体いつごろまでにそういう見通しが立ちますか。
  6. 新井眞一

    新井政府委員 水というのはなかなか始末が悪くて、特に地下のほうは、こっちを出すとどこかで井戸が枯れるとか、かなり広範囲に全般のあれをしてみませんと、水利権の問題とかいろいろ困難な問題がありますので、先生のおっしゃるとおりうまくいくかどうか、私もさっき申しましたが、一挙両得が一番いい解決方法でありますけれども、それがうまくいくかいかないか、この辺かなり調査をいたさないとわからないのじゃないか。しかし早急に調査をしまして、そういう一挙両得方法解決するのが一番いいんじゃないかと思っております。しかし、いつだ、そうおっしゃられますと、少し調査の上で考えなければならぬかと思っております。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、調査経費はことしの予算に出ておりますか。
  8. 新井眞一

    新井政府委員 これは産炭地事業団事業調査費がありますので、それを少し検討いたしますれば使えるのじゃなかろうかと思います。その面を使ってやりたいと思います。調査は早急にやりたいと考えております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ至急に調査をやって、やっぱりこれは二年も三年もかかるということでは、三井山野運命、あるいは二億円もよけいに要るということになると、とても採算がとれぬので早く閉山したほうが得だということになりかねないのです。したがってこれは至急調査をやって、一年以内くらいに方針を出すというくらいのあれをしてもらいたいと思うのです。それだけの心がまえでやっていただきたいと思うのです。  次は、同じ水の問題で、今度は地表にあらわれてくるのですね。いまから三十年も四十年も前は、率直に言って湿田であった。そして裏作はできなかったのだ。表作だけしかできない。米だけしかできなかった。ところが筑豊炭田一帯炭鉱ができたために、その湿田がいつの間にか乾田になってしまった。そして三十年来米と麦ができるようになったのだ。そうすると、三十年前は米だけしかできなかった湿田が、炭鉱ができたために裏作もできるようになった。その炭鉱がやめてしまうと、これがまた昔の湿田に返り始めたわけですね。そればかりでなくて、かつて湿田でなかったところにやっぱり湧水をしてきて、湿田化が起こってきたわけです。地下の場合は、いまの三井山野のような方法解決を待っていいと思うのです。ところがこれが地表にあらわれてきた場合、一番典型的なのがたぎり、これは泌泉と書きますが、冷たい水がわき出てくる、これはわれわれのことばで言うとたぎりと言うのです。そのたぎりを中心として、そういうところが出てきたわけです。そのたぎりの付近ばかりでなく、他の地区にもそういうところが出てきたわけです。それは御存じのとおり筑豊炭田の、特に田川炭田中心として、基盤が石灰石なのです。したがって、鐘乳洞がたくさん地下にあるわけです。それが炭鉱採掘をしたために、鐘乳洞の諸所に土砂の陥没が行なわれて、その地下水の流れる道が変わってきたわけです。したがっていままでAという地区にたくさんな湧水があったのが、このAの地区には湧水がなくなって、今度全く新しくBの地区に、湧水が起こる、こういう現象が起きてきたわけです、炭鉱をやめたために。その湧水地区はいままでは特鉱ポンプがありまして、そうして下側から水を揚げて、かんがい用水にしておった。ところがそういう湧水が出たために、特鉱ポンプも必要とするけれども、同時に湿田化の傾向が出てきた。これは何十町歩湿田化が出てきた。そこでこういう場合の処置は、一体どうするか。これはそこにおられる佐成課長さんに中心になってやっていただきたい。付近の山が全部つぶれておるわけですが、つぶれた山で、合理化事業団買い上げたのもあります、あるいは買い上げずに無資力になっている炭鉱もある。七つ、八つの炭鉱がその付近にあったのがやめたわけですから、これをどう処理していくかということが、一つの大きな問題点になったわけです。これは率直に言って、その地表湧水してくる水をどこかへ抜くことができて、工業用水に利用できる形ができれば、これもまた一つ方法なんですね。ところがこれは地下の問題ですから、科学的な調査をやらなければなかなかむずかしいという問題があるわけですが、いわゆる地表にあらわれたものに対する対策を一体どうするか。乾田湿田化してくる問題ですね。
  10. 新井眞一

    新井政府委員 先ほど申しました例とこの例はかなり違っておりまして、農地に対する被害でございますので、これは臨鉱法上の鉱害でございます。ただその鉱害というものが、どの範囲自然条件の問題であるか、どの範囲石炭採掘による鉱害であるかというふうな科学認定範囲の問題が非常にむずかしいと思います。それからきわめて広範囲地域にまたがっての問題でございますし、さらに地元といたしましては、先生承知のように、ゆっくりしておっては困る。早く何とか金銭でもいいから補償してもらいたいというようなところもございます。その辺を考えつつ処理していかなければならぬかと思っております。いずれにいたしましても、先ほど出された炭鉱炭鉱との関係ではございませんので、これは臨鉱法上の鉱害としての筋の通った処理をやってまいりたい、かように考えております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 この場合、今後たぎりばかりではなく——あのたぎりのような大規模なものはそうないと思いますが、一町歩そこらくらいの小規模のものは出てくると思うのですが、この場合はすでに鉱害復旧してしまっておるわけです。それでこれは臨鉱で、新しく今後採掘が行なわれない限りは、損害賠償請求することができない形になっておるわけです。そういう形で、臨鉱復旧を完了したところに湿田化が起こってくる。そうなった場合の補償の問題ですね。六俵の米ができておったものが五俵しかできないのだ、その一俵を一体どうしてくれるのだという問題が出てくるわけです。その補償の問題は一体どういうぐあいに解決していくかということですね。このたぎりの場合も非常に解決に苦労をして、幾ぶん政治的な解決が行なわれてきたわけです。しかし今後、こういうものをやはり政治的にばかり解決するわけにいかないと思うのです。徐々に小規模に出てまいりますと、当然これは何らかの筋道を立てた解決が必要になってくるんじゃないかと思うのですがね。
  12. 新井眞一

    新井政府委員 一たん鉱害復旧いたしましたあとで、さらにまだ実際の耕作から見ますと、そこに完全な効用回復ができておらぬということは、先生御専用でございましょうが、鉱害暫定補償という制度がございますことは、御承知のとおりでございます。それで私どもは、その暫定補償制度の運用でそういう問題を解決をしていきたい、こう考えております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、炭鉱合理化事業団買い上げられて、そして合理化事業団留保金を持っておれば、これはいいわけです。ところが、もう御存じのとおり、筑豊の山は買い上げられて、そうして全部臨鉱復旧を完了して、留保金も、それから滝井義高という鉱業権者一文もない。そういう完了して一年ぐらいしてから、あるいは二年、三年たってから、付近湿田化が起こってくる。そうしますと、いまの暫定補償というのは、有資力の場合には滝井義高が払わなければならない。ところが払えない。それから合理化事業団買い上げられた場合にも、合理化事業団はもう留保金一文もありません。こうなりますと、払いようがないわけです。御存じのとおり、合理化事業団は金がないわけです。こういうものに出す予算措置がないわけです。そこでこういう場合はじんぜん日を送って、引き延ばされてしまうわけです。こういう場合の合理的な解決方法というものを、今後考えておかなければならぬ。そのためには、こういう暫定補償的なものをあとで出す。一番典型的なものは浅所陥没ですね。もう鉱害全部完了しておったんだ。ところが、いつの間にかたんぼや家屋、土地などに浅所陥没がぼつぼつ起こってくるわけです。その場合には、これは合理化事業団がやることになっております。小さな陥没ならばそれでいいんですけれども、こういう一町、二町のたんぼ湿田化して、そして復旧するためには、過去にさかのぼって、三年五年の暫定補償を出すということになりますと、合理化事業団もなかなか簡単にいかない。こういう場合の予算措置をしておく必要が私はあるんじゃないかと思うのです。今後の鉱害復旧を円滑に、しかも事後処理を、しりぬぐいをきちっとやっていくためには、そういうものが必要じゃないかと思うのですが、そういう経費合理化事業団にはないわけでしょう。どうですか。
  14. 新井眞一

    新井政府委員 いまのお話ケースでございますが、七十四条によりますと、三年を経過するまでは、いま言った再検査請求いたしまして、鉱害復旧はされておるけれども効用回復いたしておりませんということの再検査請求ができる。特に農業のそういう関係につきましてはできるということになっておりますので、現状それで処理をいたそうと考えておりますが、いま先生のおっしゃいましたように、三年も過ぎておる、そしてさらに効用回復が十分でないという事態がその後に起こってくるというような問題があるかと思いますが、これは非常にむずかしい応用問題でございまして、もうすでに鉱害が安定をしておるのに、さらにそういう事態がほかの要素で起こっておるのか、あるいは石炭採掘によって、長期間にわたってそういうものが出てくるとすれば、これは鉱害が安定していない間に起こったということもございましょうし、あるいは考え方によりますと、およそ復旧工事それ自体が、やはり三年の間はわからなかったけれども、そのあとでそういう事態工事自体の中にあったんじゃないかというような問題もありましょうし、なかなか判断はむずかしい点があろうかと思いますが、ただ私どもとしては、そこでもう一回新しい鉱害が出てきたのではないかという考え方も、とれないことはないのじゃなかろうかと思います。これはケース・バイ・ケースで、実際にそうであるかどうか検討しなければならぬかと思いますが、そんな面でいろいろ考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、そういう問題については、それらに対する対応策と申しますか、そういうものは現行の法律体系でできるかどうか、かなり検討いたさなければ相ならぬかと思っております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、たとえば一町歩たんぼが、三年前に臨鉱復旧してしまった。ところが、その三年後になって湿田化してきた場合にこれをどうするかというと、割り切り方は、たとえば付近の山が全部がやめたために湿田化が起こってきた。暗渠排水をやればいいんだ。この暗渠排水施設をつくる仕事は、たとえばそこらあたり炭鉱は無資力であるとか、あるいは資力があれば、これは臨鉱で何とか工事だけはやれるのです。ところが、いま言った暫定補償等現金支払い部面について難点が起こってくるわけです。この金銭支払い分を一体どう解決するかということが、筑豊地区における鉱害解決の一番の隘路なんですよ。その金の出所がない。合理化事業団は金がない。復旧事業団も金がない。農林省ももちろんそういう金の出しようがない。一体どうするんだ。これで交渉が進まない。行き詰まってしまう。だからここを、幾ぶんでも合理化事業団に金をプールしておく。そういう復旧はできるけれども現金支払い分がどうにもならぬというときに、やはり弾力的に使用し得る金を合理化事業団に留保しておいてやらぬと、合理化事業団仕事が進まないのですね。今後の買い上げ事後処理を円滑にやろうと思えば、それをやらなければいかぬわけです。そうしないと、交付金弁済計画が立たない。もしそれが、すぐにそういうものが隣の地区にあったなんということになると、そこから異議が出て、そうして交付金の額は決定したけれども、その具体的な弁済計画が立たないというのは、農地のはっきりとした復旧計画が、隣のそういう問題があるために解決ができにくいという問題が出てきて、買い上げ事務自体の遅延を来たすことにもなるわけです。だから私は、今後何かそういうものをつくり、プールした金を合理化事業団に置いておく必要があると思うのですが、どうですか。
  16. 新井眞一

    新井政府委員 復旧事業団のほうで収入としてとる金と、それから先生のおっしゃいますように、どういう点で自腹を切っていかなければならぬかというのは、一つのシステムがあるわけでございまして、いまお話暫定補償、これは復旧事業団として自分でかぶって出さなければならぬということになっておるわけであります。復旧事業団の実入りというか収入になりますものは、交付金とか公共団体負担金、そのほか、先般三十八年度に補助率の引き上げをいただきました復旧費の一%から一・八三%までの上昇分というもので、いまのような暫定補償でございますとか、あるいは復旧事業団事務経費でございますとか、あるいはかんがい排水施設維持管理でございますとか、こういうことをまかなっていかなければならぬわけであります。いまおっしゃいますように、かなり無資力がふえてまいりますし、それから、おっしゃいますような暫定補償のそういうむずかしい問題も出てまいりますので、その面は復旧事業団としても、収支相償うかどうかという点を、事業団自体の台所をよく見て全体的に考えていかなければならぬかと思います。それだけを取り出しましてどうのこうのということは、また別の問題でなかろうかと思います。私ども、だんだん復旧事業団仕事がふえてまいりますので、その辺は検討しなければならぬかと思っております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 いまの復旧事業団にも事務経費が要るわけですね、暫定補償その他。それから合理化事業団にも、これは現金賠償的なものをやらなければならぬ場合があるわけですよ。たとえば買い上げられて合理化事業団連帯責任のあるところに、湿田化が起こってきたという場合には、合理化事業団が当然金を出さなければならぬことになる。ところが、そういう金はなかなか合理化事業団にはないわけですね。右から左に出せるような経費がないわけです。そこで政治的な解決ということになる。だから一々政治的な解決でなくて、やはり正規のルートを通じて会計上きちっと出せるようなルールをつくっておく必要があるわけです。できるだけ政治的な解決を少なくする意味において、そういうことが必要だと私は思うわけです。ところがいま合理化事業団にも、なかなかそういう右から左に出せる金はない。それから復旧事業団もことしは四千八百万円かそこらあるわけですが、四千八百万円くらいで、三十億の鉱害復旧をやろうという場合に、とてもこれは特鉱ポンプ維持管理費から——三十八年度は百二十万円ぐらい別に予算があるようですが、ポンプ経費から普通のポンプ維持管理費、それから農地暫定補償、それから休耕補償も出すわけでしょう。休耕補償農林省だそうですか、こういうようなものを一括してまかなっていくということになると、とてもあれだけでは足らない。このごろ福岡県のほうから言ってきておったが、四千九百万円ことしは要ります、これだけでも足りませんと言っておった。だからあそこにもう少し金を置いて、そうしててきぱきと片づけるような形をとる必要があると私は思うのですよ。何十町歩という美田その他をうまくやって、農民をして今後の生産に奮起せしめるかどうかという重要なポイントにもなるわけですから、こんなものに一億くらいの金を出しても、三兆をこえる予算ですから、私はそう心配はないのじゃないかという感じがするのですが、あまりにもここらあたりはみみっち過ぎると思うのです。問題は、四千八百万円くらいでやりなさいと言うが、こういう金は国土の保全ということで使うわけですから、そういう点ではもう少し出すべきだと思うのです。いまあなたのほうは、これは何とかしなければいかぬ、こうおっしゃっているわけですね。といってこれは事務経費を、あのワクは七%までとってもいいということになっているわけです。それがいま四%くらいしかとられていないわけでしょう。だからあと三%くらいあるからそれをとれといっても、炭鉱が経理が非常に悪いのですから、それは無理だと思うのです。だからそれ以上のものはやはり政府の一般会計から出してやって、そうしてやるという方向にいくべきだと思うのですが、これは石炭局長さん、さいぜんの答弁をもうちょっと明確に答えておいていただきたいと思うのです。
  18. 新井眞一

    新井政府委員 先ほど申しますように、復旧事業団のほうもかなりそういう経費がふえてまいりますので、結局賦課金をふやすことも、地方公共団体負担金をふやすということもなかなか困難な状況にございます。国の復旧事業団に対する補助率、先ほど申し上げましたように、現在一%から一・八三%になっておりますけれども、この問題について努力をしなければならぬかと思っておりますが、これも先ほど申しますように、復旧事業団の全般の台所をよく勘案をいたしまして、その上でどうこうするというふうに結論を出していくのが筋だと思います。そういう面で私どもは努力をいたしたいと考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 この経費をぜひひとつふやしてもらいたいと思うのです。大蔵省が来たら、なおもう少しこれを大蔵省に言いますが……。  それから、いまのようなぐあいに、とにかく炭鉱がやめることによって坑内にも、それから坑外のたんぼその他にも異常な状態が起こってまいるので、これらの問題はひとつぜひあわせてすみやかに実態調査をやって、これが具体的な解決策を立てていただきたいと思います。  次は、炭住の問題です。相次いで炭鉱閉山をしていくために、この炭住すなわち住宅問題が産炭地に起こり始めたわけです。それのまず第一は、事業団の買い上げた炭住ですね、これは一体現在その運命はどうなっておるかということです。ずいぶんたくさん事業団が買い上げております。一部筑豊には養鶏等が流行し始めて、その養鶏の鶏舎をつくるために相当売っております。あるいは現実に、その買い上げた炭住にはもとの労務者が住んでおります。あるいはもとの労務者以外の人も、住宅がなくてそこに入ってきております。こういうように千差万別ですが、こういう買い上げた炭住の運命というものは、いまは一体どういうふうになりつつあるかということです。これを先に答えていただきたい。
  20. 新井眞一

    新井政府委員 御承知のように、先般石炭の合理化政策をやります際に、合理化事業団のほうで炭鉱並びにその関連施設買い上げてスクラップをしていくという方式と、それからそういうものじゃなくて、新しく交付金を与えて処理をしていくという、二つの方式がございますが、いまお話しの合理化事業団のほうで買い上げたと申しますのは、前段のいわゆる旧方式と申しておるものでございます。これは御承知のとおりでございます。事業団の買収いたしました炭鉱住宅が、一万二千七百三十四戸ございます。これを金額で見積もりますと、五億九千七百七十万円程度でございます。それに対しましてすでに売却をいたしました分が一万一千九百六十五戸でございまして、この一万一千九百六十五戸の金額判定をいたしますと、これが五億五千百万円程度になるわけでございますが、この五億五千百万円程度のものを実際に売却いたしました額を申し上げますと、一億三千五百万程度でございますので、本来の金額のものに対しまして二四・五%ぐらいに割安に売却をいたしたということになるわけでございます。したがいまして、まだ未処理の炭住が七百六十九戸でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 旧方式で買い上げられた炭住は、七百六十九戸残っておるだけで、大体片がついてきたわけですね。そうしますと、もう一つケースであるニュー・スクラップ方式で閉山をした炭鉱の炭住というものは、買い上げの対象にしていないわけです。鉱区だけですから、したがってその炭住は残っておるわけです。それからいま一つは、旧方式にも新方式にもかからなかった経営者の炭住ですね、自然閉山をしたというような炭住がある、こういう炭住がまだ残っておるのです。そして閉山をしたままで、そこへかつての炭鉱労務者が入っておる、こういう二つのグループが残っておるわけです。そこで旧事業主は、多くこういう炭住というものは国税で差し押えをされたり、あるいは市町村、県等の滞納の差し押えの対象になったり、あるいは市中銀行のほうの抵当物件に入る、とにかく債権者に差し押えをされたり何かされておりますよ。そういう形のものが残っておるわけです。全然そういう形でないものもあります。一体こういう炭住の解決をどうするのかということです。現在こういう問題が起こっております。その鉱業権者が、もうこの炭住は労務者に売ってもよろしい、だけれども労務者に売るといったって、労務者は生活保護やあるいは緊就、日雇い等に行って、とても一時にそれだけの金は払えないのだ、だからこれを市町村がとってくれぬか、そうすればこれは安く売るが、こういうことなんですね。安く売るがというけれども、いまの旧方式で五億のものが一億そこそこで二割四、五分で買えるというようなぐあいにはならないのですよ、この場合は。ここに一つ隘路が出てきたわけです。そこで私は、政策としては、これはしまったと思ったのです。鉱区と炭住だけは買うという方式をとってもらっておったら、この問題はもういまごろは解決しておったのだけれども、どうも鉱区だけにして炭住を残してしまったものですから、市町村にその問題が重大な問題としてしわ寄せして残りつつあるわけです。だからこれを岡田さんのほうに持っていくと、岡田さんのほうはどう言うかというと、これは滝井さん、石炭政策のやったことをそうわれわれの自治体ばかりにしわ寄せされては困りますよと言うのですよ。なるほど地方行政の立場からいったら、全くそうだと思う。まず通産省がやはりこういう炭住問題をどう解決するか、地域住民の非常に重要な炭住ですから、どう解決するかという基本方針を出して、その上で今度は地方財政との関連を考える方針を出してもらわなければ困ると思うのですが、これは石炭局としてはどういうように処理される方針なのか。そしてもし、現在旧方式で買い上げになった炭住がどの程度残っておるかということがおわかりになれば、同時にそれを御説明いただきたいと思います。
  22. 新井眞一

    新井政府委員 いまお話の炭住でございますが、これは私どもの手にかかっておらぬことでございますので、総体どのくらいあるかということは、先ほど申しましたように、ちゃんと把握しておりません。実際問題としては、炭鉱をやった方の処理ということになるわけでありますので、それをこちらでどの程度行政指導をしていくか、基本の筋はそういうことだろうと思います。したがって、個々のケースとして、先ほどおっしゃるように、滞納処分になった、ところが市町村のほうはそれを何とか買いたい、しかし金がない、そういった個別処理の問題といたしまして話が出ました場合にはごあっせんを申し上げるというような形での政策以外には、石炭局としてもちょっととりようがない実情でございます。できるだけ現在居住しておられる方にそれをなるべく合理的な値段で売るとか、あるいは市町村のほうにそれを合理的な値段で買ってもらうというような、これも政府の行政指導でありますが、そういうことでいかざるを得ぬのじゃないか。詳細に実態把握ができておりませんし、またやる手もそれ以外にはなかろうと思っております。そういう場合に、市町村のほうでどうも金がないのだという面につきましては、前から自治省のほうに非常に御迷惑をかけておりますが、特別交付税等で御勘案をいただいてやっていただくよう、そのつどお願いはいたしておるような次第でございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 私が非常に心配するのは、旧方式で買い上げられた炭鉱の労務者の住宅を手に入れるのは、非常に安く入るわけです。五億のものが一億になるのですから、五分の一で買えるわけです。ところが今度は新方式になったために炭住は買い上げられない、だから炭鉱労務者がそれを買おうとすれば、少なくとも合理化事業団の評価よりはるかに高いものでしか手に入らぬわけです。評価よりはるかに高いものになるわけです。したがって、五億の評価をしておれば、十億くらい出さなければ買えないということになるのですよ。そうすると、同じ閉山炭鉱炭鉱労務者でありながら、たまたま旧方式にかかった者は得をして住宅がもらえる、新方式の者は住宅はもらえない、むしろ追い出されてくる、こういう形が出てくる。この石炭政策の結果出てきた労務者の受けるしわ寄せが、機会均等でないじゃないかということなんです。私はやはり今後閉山をやる場合には、特に炭住について相当考えてもらう必要があるのじゃないか、あとでまた水の問題が出てきますから、特にそれを主張するわけですが、これはどうですか。私はきょうこれの回答を求めなくてもいいのですが、ことしも三百何十万トン買い上げられていくわけですから、そうすると労務者は相当失業してくるわけです。それらの人々の住宅を、買い上げられたときに考慮して、山のニュー・スクラップ化をはかっていくという政策を当然とるべきだと思うのですよ。こういう非常に突っ込んだ質問ですから、きょうなかなか回答はできないと思うけれども、これは石炭政策をやる上に当然考えておかなければならぬ問題だと思うのです。いままでは住宅を売ってくれたのですが、今度は労務者は売ってもらえないのです。売ってもらえた場合にしても、非常に高いから買えないのですよ。だからここに、市町村が出てくることになる。市町村が出るとすれば、市町村としては一般財源でそれを買うということはとても不可能です。なぜならば、炭住は御存じのとおり、相当荒れておるわけです。もう山が売りに出るころには炭住は荒れておる。そうすれば市町村が買い入れても、ばく大な修理費が要るわけです。それで家賃が確実にとれるかというと、生活保護者その他の人たちですから、家賃はとれない。買い上げる費用はかかる、修理費はばく大に要る、家賃はとれないということになると、市町村はお手上げです。ですから市町村は、さわらぬ神にたたりなしで、住宅には全然触れないで逃げてしまう。そうすると、炭住に住んでいる人は哀れなものですよ。こういう問題が起こってきている。だから石炭政策をやる、閉山の政策をおとりになろうとすれば、まず鉱区と住宅を必ず頭に置いて石炭政策をやっていただく。ところが保安の措置でやられた場合なんか、もっと深刻です。保安の措置は突如としてやられるわけですから。こういう点ぜひひとつ御検討いただきたいと思いますが、どうですか。
  24. 新井眞一

    新井政府委員 新方式を旧方式から切りかえたのは、それ相応のいろいろな議論もある、こういうことで新方式に切りかわってきているわけでありますから、したがって、これをどう変えるかという問題は、やはり根本問題になろうかと思うわけであります。いまの旧方式の場合と新方式によって炭住の関係でバランスがとれぬのではないかというお話は、これは全くそうでありますけれども、しかし考え方によっては、そういう炭住にずっと残っておられるには、これまた家族の問題とかいろいろな問題があろうかと思うのですけれども、むしろ再就職計画なり、あるいはその後の身の振り方に伴う住宅政策として考えるべきであって、いまの炭鉱住宅も相当悪いのがたくさんあると思いますが、そういうものの中に住宅政策のバランスをとっていくのだという考え方はいかがかと思うわけであります。これは別の問題として、再就職に伴う住宅政策としては考えていかなければならぬと考えますが、いまのは、処理していく段階で旧方式と新方式は、それ相応の理由でもって分かれておるのだということでございます。ちょっとその点は先生の意見と私は違う考え方を持っております。
  25. 滝井義高

    滝井委員 私が言うのは、離職者の対策対策でいいわけです。ただ問題は、旧方式で買い上げられた労働者については、炭住を買いたいと思えば、合理化事業団が売ってくれるわけです。しかもいまあなたが御説明になったように、五億のものが一億で買えるわけですから、非常に安く、評価額の五分の一で買えるわけです。ところがたまたま新方式で買い上げられた炭住は、追い立てを食ったらそれまでです。いま追い立てを食っているところがあります。上三緒というところですが、追い立てられている。上三緒の炭鉱は、そういう形が出てくるわけです。そうすると、そこに社会不安ができるでしょう。いまあなたの言われるように、いわゆる炭鉱労務者を全国に四散させる、あの筑豊の状況の悪いところに置いておいたら社会不安が起こるという政策をとっておった政府、ところがその政策が失敗した。もう四十をこえたら、二割そこらしか就職率がない。三十五歳までの者なら八割くらいある。したがって、どうしても中高年齢の者がしばらく残らなければならぬわけですけれども、しばらく残るのに住宅がないわけです、追い立てられるから。その者に炭住を安くやっておけば、その者が今度新しい職場に行くときに、旅費くらいは出てくる。たとえばいま合理化事業団から買うときは、あの一棟四軒から五軒ありますものが、一万円くらいしかしない。そうすると、一戸が二千円で買えるわけです。それをもらえば、自分が大阪かなんかに就職して出ていくときには、売ろうと思えば五万円くらいで売れる。筑豊だって住宅がない。日本全国で三百万戸も不足しておりますから、筑豊も不足ですよ。だから出たあとすぐかわりが入ってくる。家一軒五万円で買えれば安いから、右から左に売れる。そうすると、出ていく旅費ができる、それだけまた生活が安定するという安定感もできるのです。あばら家でも、自分の家だということはなかなか大事なことです。いま五十五で定年になって、百万か百五十万の退職金をもらっても、東京近郊で家を建てようといっても家が建たないでしょう。サラリーマンのむなしいながらも一つの夢は、わが家を持つことです。それは炭鉱労働者だって同じですよ。炭住一つでも、自分のものになったということは非常な強みです。しかしそのことは、幾ぶん定着するということになるかもしれぬけれども、いい機会があって、いい就職の口があれば、やはりそのくらいのものは捨ててでも行きますよ。もう少しこれはきめのこまかい配慮を、合理化政策をおやりになるときにはしてください。何も旧方式に帰れというのではなくて、鉱区だけをお買いになるが、そのときには、炭住というものに目をつぶらずに、炭住もできれば何らかニュー・スクラップ方式の政策にひとつ加えておいてください、こういうことなんです。そしてそれがまた労働者の手に入るような方法を考えてもらっておけば一番いいんじゃないか、こういうことなんでございます。どうですか、そういうことなら別にあなたと意見は違わぬと思うのですがね。
  26. 新井眞一

    新井政府委員 かねて滝井先生には非常に炭住問題でこまかいお世話なり御指導をいただいておることは、私どもよく承知しておりまして、いまのようなお話で、私ども極力新方式で買い上げる場合におきまして、あとの炭住の問題を、なるべくそこに残る方の安定のためにも配慮をするというようなことを行政指導でやってまいりたいと思います。高く買うとおっしゃいますが、これも一つはやはり取引でございますから、それをこちらで、これで売れというわけにはいかぬのでございますけれども、なるべく合理的な値段で民生安定になるように、これはきめのこまかい行政指導を必要とすると思いますが、そういう配慮を加えてやってまいりたい、こう思います。
  27. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつそういう配慮を加えてください。  次は水道です。炭鉱地帯には、炭鉱の専用水道というのがたくさんあるわけです。その専用水道というのが、鉱外地にも水を供給をしているし、それから自己の炭鉱に働く労務者の住んでいる炭住にも水を供給しているわけです。こういう形になって、炭鉱地帯の水道というのはあるわけです。したがってこれは鉱外補給水の役割も演ずるし、自己の労働者の生活を安定するための水も供給する、こういう二本立てで供給が行なわれているわけです。あるいはそれが二つ切り離されて、鉱外だけの水道、炭鉱だけの水道、こういう独立の場合もあり得るわけです。いろいろコンビネーションはある。しかし、とにかく炭鉱地帯におけるその水道の問題についてですが、炭鉱買い上げられて、そして交付金が相当ある、あるいはその炭鉱がまだ資力があるという場合には、これは当然水道法によってその水道を市町村に引き継ぐわけですから、引き継ぐについては、水の打ち切りの金を、五年なり十年なりの分を被害者に鉱業権者が払うことになるのです。同時にその施設を水道法に適合するようにきちっとして、市町村に移管をするわけです。こういう形になれば、これは問題ないわけです。その場合でも、一体何年分の打ち切りの水の料金を出すかということが、いつも問題になるわけです。一体、国の指導方針というものは、力関係にまかしていくのかどうかということです。
  28. 大橋文雄

    ○大橋説明員 実は閉山炭鉱の専用水道についてでございますが、これの打ち切りの場合の、たとえば閉山に伴いまして専用水道の管理主体が消滅し、当該水道施設が市町村に移管する場合の補修あるいは改良、場合によってはこれを新設するという事業に対しましては、国が補助金あるいはその裏づけの起債をもってこれを取り扱っていくというふうにしてございます。その裏づけの予算措置についてでございますが、昨日も……
  29. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと間違わぬようにしてもらいたい。いま私はもうできてしまった場合を言っているのです。起債も補助金ももらって水道ができてしまいました場合に、鉱業権者は水の打ち切りをやるわけでしょう。いままで炭鉱が無料で被害者に水を飲ましておったわけです。無料で飲ましておったのを、今度は炭鉱の専用水道をやめて、水道法に基づく市町村営の新しい水道をつくるわけです。そうしますと、いままでただで水を飲ましてもらっておったのが、市の水道になれば、今度は水道料を払わなければならぬわけです。その場合に一体政府としては、行政指導をおやりになる場合に、炭鉱に対して、こういう鉱外水道を市営水道に切りかえた場合には、料金炭鉱が何年持つということを指導されておりますか、こういうことなんです。
  30. 新井眞一

    新井政府委員 炭鉱をやめますときに、いまおっしゃるような問題で、いままでその水を飲んでいた方に対して今後の水道料金を何年分くらい渡すか、こういうお話でありますが、これはそのときそのときの炭鉱権者とそこの住民の方との話し合いできまっておりまして、こちらのほうでどのくらいだというふうな基準も何もございませんが、できるだけ御迷惑をかけないようにやるようには言っております。何年分というようにはっきりきまったものはございません。
  31. 滝井義高

    滝井委員 問題はそこなんですよ。したがって、これは炭鉱被害者との力関係になってくるわけです。あるいは炭鉱の財政力も非常に影響を及ぼしてくるわけです。だから、あるところではもう、水道をつくってやるのがせいぜいだ、それから先はもうできないから水道料を払いなさいというところもあります。またある紳士的な炭鉱は、よろしい、十一年分を出しましょうと、十一年分出してくれるところもあるのです。大手の炭鉱でも、みんなまちまちなんですよ。これでは紛争が起こるのです。Aという炭鉱は十年分出したじゃないか、お前が一年分も出さぬとは何事だ、こういうことになるのです。それからこの水道を受け入れる市町村側も、受け入れるについては議会の議決を必要とするわけです。そうすると、一つの市に三つの炭鉱があった、一つ炭鉱一文も打ち切りの水道料を出さない、一つ炭鉱は十年分出した、一つ炭鉱は三年分出したといったら、これは市会は紛糾のもとですよ。ここに、一体行政指導をどうするかということが問題になってくるわけです。たとえば、この間から農林省に私宿題としてお願いしておるのですが、ナシの木ならナシの木、あるいはブドウの木ならブドウの木、いわゆる果樹等における被害をどの程度に見るかということも、基準を出してもらわないとだめなんですね。こういう問題は当然水道についても、これは法律学者の中には十三年が普通だということを言う人もおるのですよ。こういうように水道を打ち切るときには、鉱業権者はこのくらいのものは出すことが、行政指導上好ましいぐらいでもいいから、何かそれをしておいてもらうと、非常に紛争が少なくなるのです。そこらがいまあなたの言われるように力関係だということになると、鉱業権者のところにすわり込んでがんばったら、がんばるほうが得になるのです。ところが悲しいかな、いま鉱業権者はみな引き揚げてしまったから、すわり込もうにもすわり込みようがないという、被害者も弱い立場になってきておるのです。抵抗しにくいのです。しても、ぬかにくぎという状態になってきた。そこでこれはやはり五年分なら五年分は必ず積まなければならぬ、財政余力があれば十年なら十年分を積みなさいというくらいの、何か大まかな行政指導をする必要があるのじゃないかと私は思うのですが、どうですか。
  32. 新井眞一

    新井政府委員 ほかならない飲み水でございますし、かなり市町村といたしましては重要な問題だと思いますので、まあこれは国のほうで、それは石炭が原因だということで何でもかんでもというのはあれでございますが、私どもも研究もし、努力もいたしたいと思いますけれども、むしろ市町村住民の基本問題であろうかと思いますので、市町村のほうでかなり御努力いただきたい、特に鉱業権者と話し合っていただきたいと思います。私どものほうもお話の点につきましては研究もし、指導もいたしたいと考えておりますが、何よりもひとつ市町村のほうでやっていただきたい。これは重要な問題だと思いますので、私ども一緒になって努力もいたしたいと思いますが、さように考えておるわけであります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 岡田さんのほうの市町村にだんだんしわがいくことになると思いますが、そうしますと、市町村が指導をしてくれ。するにしてもやっぱり何かこういうものは、常識的な線が全国的に普遍的にあることのほうがいいのですね。大体、こういうものはいろいろのものがあるのですよ。あることが普通なんです。そして、過去の慣例をお調べになると、力関係とは言いながら、大手の各山だって、一体おまえのところは何年分出しておるか、おまえのところは何年分だと、それぞれ大手は連絡をとり合っていますよ。だからそこにおのずから、長い明治以来の問題だし、それから最近こういう鉱害の水道問題というのは非常に大きくクローズアップされてきておりますから、したがっておよその線は出ておると思うのです。だから、一ぺん各社の水道の打ち切りをどの程度出しているのだということをひとつお調べになって、そして参考資料として出していただきたいと思うのです。それによっておよそ全国的な水準がきめられるのじゃないかと思うのです。それをひとつ資料をぜひ出していただきたいと思う。  次は、この水道がいまのように有資力の場合は問題ない。いま言ったように、何年間か無料で飲む水道料まで炭鉱負担するわけです。ところが今度は無資力になった場合に、同じ市の中に、いまいうように十年分もらうところがある。ところがすぐ隣の地区では、その炭鉱が無資力になったために、すぐあすから金を払わなければならぬ。こういう場合が出てくる。その場合にもう一つの問題は、これは鉱害被害住民だけに水道が行っておるときは問題ない。ところがその水道が炭住の中に行っておるときは、一体この炭住の水道はだれがどういう形でやるかということが問題になってくるわけです。無資力ですよ。そうすると、臨鉱法で無資力でやる場合には、御存じのとおりあれは三二・五でしたかね。
  34. 佐成重範

    佐成説明員 六二・五%だったと思います。
  35. 滝井義高

    滝井委員 六二・五は国が見ます。それから三七・五は市町村が負担することになるのですね。こうなるのです。ところが一体炭住はどうなるのかというと、炭住の水道は、鉱害ではないのですから臨鉱の対象にならない。この解決を一体どういうぐあいにやる方針であるかということです。
  36. 新井眞一

    新井政府委員 いまの御質問はちょっとよくわかりにくかったのでございますけれども、無資力の場合に、炭鉱住宅に残っておる、おそらく昔は炭鉱の従業員であったかと思いますが、現在は従業員でなくて市町村の市民になっておるわけでありますけれども、そこに対してと、それから市民とは別に変わった点はないのではないかと私は普通は考えますけれども、もうすでに従業員でなく、何々町の町民になっていたり、市民になっている場合がございますので、その辺が何か差別をいたしておりますかどうか、差別すること自体がおかしいのじゃないかと思いますが……。
  37. 滝井義高

    滝井委員 鉱害ですから、水道を引くところは、そこの下の石炭を掘って、そして断水が起こって井戸の水がなくなった、したがって鉱業権者は、その鉱害被害地の住民に対して水道を引いてやっておるわけです。そこで、その山が無資力になれば、当然その水道は国と市町村が金を出し合って水道を復旧するわけです。したがって国の六二・五というものは、その被害住民を基礎にして予算が組まれて出されるわけです。そうすると、その地域の横に炭住があった。ここに千人の人が住んで水道をまかなっていたのだ。この同じ炭鉱の水道でまかなわれていたというときには、ここに新しく水道をつくらなければならなくなる、これは鉱害地でないわけです。したがってここには、国は三二・五は負担をしないわけなんです。しないことになるわけです。これはできればいいわけですよ。ぼくはここが言いたいところなんです。そういう場合には当然この炭住地区も一本のものとして鉱害で見てもらわないとたいへんだ。こういうことなんです。
  38. 佐成重範

    佐成説明員 ただいまの御質問でございますが、鉱害対策につきましての国の補助は、鉱害と認定されました部分につきまして、その鉱害と認定されました部分に対応する事業量に対して、ただいまお話がありました無資力の場合には六二・五%、有資力の場合には二五%というような補助を出すことになっております。鉱害と認定できないような部分につきまして鉱害予算の中から国の補助を出すということは、補助の体系から申しますと、いたしかねるわけでございます。その場合に、そういたしますと、無資力の山におきまして、いまお話しのような例といたしまして、鉱害の部分と鉱害でない部分と併存しておる。この鉱害でない部分につきましては、それまで稼働しておりました山が、炭住その他に、あるいは町のために水道を布設いたしておった。それが山がやめることによって維持管理主体がなくなる。これを引き継ぐという場合にあたりまして、閉山炭鉱におきます水道の維持管理に伴う改良費の補助という予算がございまして、それは厚生省の予算ではございますが、二五%の補助が出ることになっております。この一本の水道にいたします場合に、したがいまして、鉱害復旧という部分と、それから閉山炭鉱が維持しておりました水道の改良更新の補助という部分と、二つが総合的に組み合わされる形になります。したがいまして、両方の予算をいかにうまく総合いたしまして一本の水道として仕上げていくかということは、これは両省協議いたしまして今後検討すべき課題かと存じております。
  39. 滝井義高

    滝井委員 これはこういうことになるわけでしょう。もっと厳密に言えば、A地区鉱害住民が住んでおる地区、B地区は炭住地区、そうして二千万円の水道をつけるのに、A地区千万円、B地区千万円だ。そうするとA地区鉱害被害住民の住んでおるところは、六百二十五万円は国が出します、三百七十五万円は市が持ちなさい、こうなるわけですね。それで片方は、四分の一は国が補助する、一千万円の四分の一、二百五十万円は出すが、あとの七百五十万円は全部市が出しなさい、これは起債とか交付税とかありますが、お出しなさい、こういう形になるわけです。そこで、ここに問題が出てくるわけです。だから市は、こういうことになれば、私は水道を受け取りません、こうくるわけです。なぜならば、炭鉱自分がどんどん炭を掘って、炭住に労務者を置いておいて、いまになって、炭住だけ置いて、今度水道のほうを私のほうで全部やれといったって、いまのこの財政ではできません、何とかしてください、必ずこうなってくるのです。そこでこういう場合には、この一千万円の炭住地区についても、これは多かれ少なかれそういうところも、厳密に見れば鉱害があるわけです。ところが鉱業権者鉱害を認定しない。買い上げるときにはその炭住からは、鉱害については一切ものを申しませんという一札をとらないと、事業団は買い上げないのです。そういう手かせ、足かせをはめられてしまっておる炭住ですから、鉱業権者はおくびにもここに負担金を出してくれなんて言えないのですね。こういう理由があるのです。したがってここは、厚生省当局もあまり行政を厳密にやらずに、二千万円の水道をやるときには、炭住地区にも鉱害があったということにして、ぜひ六二・五に当たる分をこの炭住の一千万円についても見てやる。隣接地区鉱害があるのですから、こういう政策を当然とるべきだ。これはだいじょうぶでしょうね。
  40. 大橋文雄

    ○大橋説明員 実は厚生省の予算といたしまして、簡易水道施設等の補助金というのがございまして、この補助金の内訳といたしまして、一般簡易水道施設、飲料水供給施設閉山炭鉱水道施設、こう三つがございます。この閉山炭鉱水道施設につきましては、補助率はいまのところ四分の一、ただし裏づけが一般簡易水道に比較しまして、一〇〇%という利点がございます。なお、そのほかのことに関してはいろいろ関係省、特に大蔵省、自治省とも協議いたしておりますが、できるだけ閉山の水道施設というものを有利に取り扱うというふうに努力したいと思っております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ、炭住だけをはずさずに、一体のものとしてやってもらいたいということです。どうしてかというと、そういう場合は多く水源地が一本なんです。したがって水源地の設備、それから、そうなると浄水場の設備まで一本になるのです。一番金のかかる水源地から浄水場の設備まで一本になるのです。そして配管までいくのですが、配管のところだけが違うわけです。あとは全部一体なんですね。それを補助金を分けられるときに差別をされるということになると、市町村の負担が多くなってやれないということになってまいりますから、ぜひそうしてやっていただきたいということです。いま、総合的に検討してくださるそうですから、ぜひそうしていただきたいと思います。  そうしますと、いまの閉山炭鉱の水道の施設、ことしの予算を見ると、たった千万円しか組んでいないわけですね。これではどうにもならぬわけです。しかもその補助が四分の一だ、こういうことでしょう。こういうものの中で、今度の地盤沈下による工業用水道ですか、あれは幾らになっていますか。
  42. 新井眞一

    新井政府委員 場所によって違いますが、たしか二〇%の上が二五%、一番高いのは三五%でございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 これは、工業用水をくみ上げて地盤沈下が起こる、それでその水道には三五%出しておるわけでしょう。こうなると、どうして炭鉱が二五%かということがまた問題なんですね。そこで、これは大蔵省の主計官にお願いするわけですが、この水道の補助金をどうしてもう少し上げられないのかということなんです。しかもその予算はわずかに一千万円、これではとても炭鉱地における水道の需要を満たすことはできないわけですね。それで、最近筑豊炭田、北海道等から産炭地の公共事業の金をもう少しふやしてくださいという要望が相当強かったわけです。だけれどもそれはとてもだめだ、こんなものをやったら他のものにも波及してだめだという御意見だったわけですよ。ところがいまの地盤沈下によって起こった工業用水道の場合は最高三五%というならば、少なくともそれと同じくらい、ないし四割くらいの補助金というものは、私は当然出すべきだと思うのですよ。これがどうして四分の一、しかもたった一千万円なのか。ことしは生活環境施設整備をやるのだということで、かねや太鼓でやったわけです。その生活環境が一番悪いのは、都市でなくて、ああいう炭住のようなところです。あるいは金け水といいますか、赤い水を飲んでいる筑豊の山々なんですね。私はこれはもう少し出すべきだと思うのだが、いかなる理由によってわずかに——去年はワクは三千百万円くらいあったでしょう。ところが三千百万円あったワクがことしは一千万円に減って、そして補助金工業用水の場合よりか低い。これは私は理論的に成り立たないと思うのです。いま速急な事後処理がいわれているときに、予算の削減をし、その上に率は依然として工業用水よりか低い。工業用水ということは大企業がやることですから、そう補助しなくたってできるわけですよ。ところが、市町村の貧しくなった、鉱産税もなくなる、住民税も少なくなる、失業者と生活保護者は多くなるという炭田で、たった四分の一。石炭局長さんが言うように、水道は市町村で世話せよというけれども、国はちょっとも見ておらぬですね。ほかのところと同じです。それでは話が通りませんということなのです。私がきょうどうしても大蔵省にきてもらったのは、私多賀谷君と言っておったのだけれども予算を修正してもらうか、予算は修正できないとすれば、ことしの水道の金は十九億あるのですから、その中から予算の移流用でもやってそのワクをふやしていく。そして四分の一というものを、もう少し無資力的な要素を見て拡大をする。無資力でも六二・五見るのですから、やはりこのくらいまではいってもらう必要がある、こう思うのです。筑豊はそういう運営さえしてくれれば、無資力にかけ得る要素というものは非常に多いのです。それは、付近に無資力炭鉱がたくさんあるのです。引っかけようによっては、無資力で水道をつくり得るわけです。
  44. 田辺博

    ○田辺説明員 お答えの前に一つお断わりしておきたいのですが、私、工業用水、通産省の関係予算を担当しておりますが、簡易水道、厚生省の関係の担当をしておりませんので、そちらのほうのお答えははっきりしたことはできないわけです。ただし、工業用水道につきまして今回補助率を上げたということは、これは相当問題がございましたが、工業用水道の補助の制度は、特に地盤沈下の地帯におきましては、従来からとっておりました井戸水その他の水をくみとることを法律的に規制される、禁止される、そういったことでやむなく工業用水道にたよらざるを得ないという問題がございますので、非常な負担の増加が起こる、そういった点を考慮いたしまして、特に地盤沈下対策としまして引き上げたわけでございます。一方、簡易水道の補効率は現在二五%に相なっておりますが、上水道一般につきましては補助がないようでございます。いろいろな事情を考慮して二五%ときめたものだと思います。ですから、先ほどの炭住の上水の場合でございますが、これは鉱害の対象として取り上げられる水道とそうでない水道とは、やはり制度的にものの考え方を分けていかざるを得ないのではないか。現在はそうではないかというぐあいに考えております。  なお、簡易水道につきましての予算が足りないではないか、少額ではないかという御意見がございましたが、これは担当の主計官によくお話をしておきたいと思いますが、これは一般的な簡易水道に対する補助の中の一項目としての産炭地域の終閉山に伴う部分というものの割り振りの問題だと思っております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 法律的に工業用水の場合はその付近の井戸のくみ上げを禁止しておるというけれども、結果は同じなんですね。水が飲めなくなるのです。禁止されて水が飲めなくなる。炭田地帯は水がないのですから、法律的に禁止しなくたって結果は同じなのです。飲めないという点においては同じです。水を飲めないという点について同じものが、一方は三五%やるんだ、一方は二割五分というのがおかしいのです。そこがおかしい。しかも一方は、大企業がやるわけでしょう。一方は零細な炭田の貧しい失業者や、生活保護者の人たちの問題なんですからね。だから、これは当然同じに上げるべきなのです。こういうところに大企業優先の池田内閣の高度成長経済政策のあれが、はしなくもあらわれておる。いわゆる衣の下によろいが見えておるわけです。だから、工業用水三割五分をやった通産省が、どうして水道に三割五分ができないんだということになる。だから、いま大臣がおいでになったけれども、大臣はまだ聞いておらぬから、政務次官どうですか、これは当然あなたのほうから要望をして上げるべきだと思うのです。
  46. 田中榮一

    ○田中(栄)政府委員 ごもっともと思いますが、工業用水につきましては、いま主計官からお話がございましたとおり、やはり地盤沈下によりまして非常な災害が起こるおそれが多分にありますので、災害防止という点から、と同時に法律の規制によりまして、従来は井戸水、地下水をくみ上げて工業用水に使っておったのでありますが、今度工業用水を使用するということになりますと、これに要する施設を相当つくらなくてはならぬ。そういう関係で、相当な施設費が要るわけでございます。したがってまた、それと同時に、工業用水を使用するための用水費と言いますか、これが一トン当たり五円五十銭、安くても五円、六円五十銭というような莫大な工業用水を使用するための費用がかかるわけでございます。そうした観点から、一般の飲料水と異なりまして、補助率というものを今年初めて、大都市におきましては二〇%を二五%に、それから二五%を三〇%に、三〇%を三五%に、何年かかかりましてようやく上げたような次第でございます。したがいまして、工業用水を使用する地域における一般の飲料水等につきましては、やはり補助率においては同様な補助率でやっておるのじゃないかと考えておりまして、工業用水をこの例にとることは、少し事例が違っておるのじゃないかと考えております。以上をもって私の答弁を終わります。
  47. 滝井義高

    滝井委員 地盤が沈下することは、上に水を揚げて、揚げた水を捨てると同じことです。だから、地盤が沈下する。そしてやっぱり水が飲めなくなっているわけです。だから水が飲めなくなるという結果については、同じような感じがするのですけれどもね。しかも、わずかに一千万円ですからね。あまり額が少ないですよ。これは厚生省だけれども、厚生省担当の主計官が、船後さんがいらっしゃっていないから、田辺さんを責めてもしようがないのだけれども、これはぜひひとつ、私は機会をあらためてもう一ぺんやりますけれども、やっぱりこのワクをふやさなければいかぬと思うのですよ。そう何十億という金が要るわけじゃないですからね。補助率をもう少し上げてすみやかに水道設備を完備してやって、貧しい中にも水ぐらいは、金け水でない、においのしないきれいな水の飲める施設をしてやることが当然だと思います。厚生省の大橋さん、あなたのほうも、三千百万円昨年あったものが一千万円に削られる、工業用水のほうは補助金が三割五分に上がった、自分のほうは依然として二割五分だということでは、あまりにもあなたのほうが政治力がなくて、福田さんのほうがばかによかったような感じがしてくるのですが、もうちょっとふんどしを締めてやってもらわなければいかぬと思うのですが、あなたのお感じほどうですか。
  48. 大橋文雄

    ○大橋説明員 この予算の件に関しましては、簡易水道等施設補助金の中に含まれておりまして、実施計画の段階において大蔵とも今後話し合いをいたしまして、この件につきまして検討を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしてもらいたいと思うのです。  そからもう一つ。その補助を上げてもらわないと——いまのように鉱害地と炭住地がループしておる場合、連結されておる場合にはいいんです。そうじゃなくて、炭住だけに行っている水道があるのです。これは山が閉山になりますと、そっくりそのまま市町村が受け持たなければならぬことになる。そうすると、事業主がこれを支払う能力があればいいんですが、最近は中間炭鉱というやつが出てきた。買い上げられて、有資力ならいい。いっそ何もなければ、炭鉱が無資力になるのです。ところが有資力でもなければ無資力でもないのを、中間炭鉱というのです。これが出てきた。こういう炭鉱は、炭を掘って、そして掘り尽くしてしまったら、事業主がどこかへ行っちゃっていなくなる。炭住はもう国税庁か何かに差し押えられておって、電気も切れば、水道も切って、どこかへ行っちゃうのです。この炭住の水道や電気をどうするかということが、社会問題になってくるわけです。電気は何とか片づきます。しかし水道は、水源地から何からきちっとやることになると、金が要るわけです。そこでやみ水道ができてくるわけです。住民が金を出し合わせて管理をして、やみ水道になるわけです。こういう形はどうして起こるかというと、四分の一しか補助がないから、市町村がやれないわけです。やみ水道は福岡県にたくさんあるでしょう。やみ水道というのが一体どの程度ありますか。通産省知っておるはずですよ。
  50. 新井眞一

    新井政府委員 やみのことはわかりません。
  51. 滝井義高

    滝井委員 わかっていますよ。調査すればたくさんありますよ。流水をとったり何かして、炭鉱がかつてつくってやっておったものがそうなっておる。大手の炭鉱もそれをやりよるのですが、ここで名前を言うと気の毒ですから言いません。それで相対で約束をして、水道をやっておる。これを町に移すとたいへんなことになるので、そのままお金を住民にやるのです。運営費、いわゆる電力料と維持管理費をやる。たとえば百万なら百万を、これであなた方運営しなさいと住民にやってしまう。そうすると山の流水をとりながら、たとえば百戸なら百戸の人たちがそれを維持管理して水道をやるわけです。ところがその流水が今度は何かの拍子でなくなる。あるいはその地下水をくみ上げておったのが、すべての炭鉱がやめたり何かして、地下水が金けの水になって飲めなくなる。そうするとそこの住民は、あの炭鉱から百万円もらっておったけれども、われわれは水が飲めぬようになったからと、今度は合理化事業団に押しかけてくる。こういうのはざらです。これは大手もやっています。一々言いませんけれども、あるわけです。こういうことは、今度赤痢なんかが流行してみなさい、たいへんですよ。一体あの水道はどこが監督しておったのだ。いや、あれは保健所に持っていって検査してもらったらよかったから、ああしておったのだ。そこで厚生省の公衆衛生局が、一切の責任を負わなければならぬことになる。だからこういうやみ水道を置かないためにも、すみやかに補助金を大幅に増加して、そうしてほんとうの正規のルートに乗せることが当然のことなんですよ。こういう人間の命に関連をし、伝染病の流行のもとをつくるような水の問題を、みみっちいことで、千万円、四分の一の補助金でやるというのではなくて、そう莫大な金がかかるわけではないのですから、産炭地についてはぜひひとつ特例でやる、こういう腹がまえを持っていただきたいと思います。それをひとつ言明だけしていただきたい。
  52. 大橋文雄

    ○大橋説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、今後この件に関しまして大蔵省と検討いたしたいというふうに考えております。
  53. 滝井義高

    滝井委員 どうも土手の手から水が漏れて、大蔵省の船後君に来てもらっておらなかったのが残念ですけれども、仕方がありません。  次に、海堀さんに来ておっていただいておりますので伺いますが、昨日福田通産大臣と委員会で、質問の終わりあたりにやったのですが、産炭地における開発銀行の貸し付けの利率は八分七厘なんですよ。いま産炭地における企業というのは、家計補助的な企業が多く誘致されておるわけです。賃金を調べてみると、一万円前後の、主として中学校等を出た若年労働力のいわゆる縫製工場、こういうものが多いわけです。そこで、一家をささえるような仕事をあそこに誘致するということになると、いま一番先に目につくのは何かというと、セメント工業です。それは筑豊炭田には石灰がたくさんありますから。そうしますと、御存じのとおり、セメント工業は非常に近代化されておるわけです。これがやってくるためには——最近の通産省の工業配置の計画をごらんになっても、あの新産都市を十二か十三くらい指定しましたね。指定をしたけれども、私の見通しでは、これは金がつかないからだめですよ。なぜならば、開放経済に向かうと、長野のような内陸地帯に新産都市をつくったって、これは競争ができないですよ。そこで、どうしても臨海工業地帯の、いまの関東地区とか、あるいは名古屋とか、近畿地帯を拡大強化して、もっとスケールを大きくして、そこに公共投資をやる以外にない。急激な開放経済体制に向かう場合には、ばらばらな新産都市では太刀打ちができない。これは通産省当局も気づいて配置計画の変更を最近検討中でしょう。そういう状態ですから、筑豊地帯に今度は普通の競争のベースでやろうということになると、あそこは内陸地帯なんですから、門司とか苅田とかという臨海工業地帯と違うわけですね。それよりか条件が悪いわけです。そうしますと、石灰石の原料は豊富にあるわけですから、やっぱり利子ぐらいは安くしてセメント工業をつくるということになると、どういうことになるかというと、これは何とか太刀打ちができるわけです。産炭地振興事業団は六分五厘です。自己資金でつくると、市中銀行から相当高い金を借りなければならぬ。ところが頼みの綱の開発銀行が八分七厘ということになると、できたけれども、なかなかそう雇用をふやすわけにはいかぬ、こういうことになる。そこでキルンをよけい据えてだんだん雇用を拡大していくためには、工業用水の問題もありましょうけれども、やっぱりこの利子の問題というのが相当重大な役割りを演じているわけです。昨日、福田さんとだいぶ意見が違っていたわけですけれども、しかしこれは主管は大蔵省です。海堀さんのほうですから、何かこれは、一挙に利子をまけられないならば、六分五厘に一挙にならなければ幾分でも下げる、あるいは利子の支払い方法その他についても、ずっと年限を長くするとかやってもらいたい。昨日私は、韓国の有償二億ドルの問題を出したんです。有償二億ドルを三分五厘の海外経済協力基金でやる。お隣の韓国に独立のお祝い金として三億出した。そのほかに、二億ドルの有償の借款をやろう。それが三分五厘なんですからね。三分五厘とは言わぬ。まあ六分五厘かそれに近いところぐらいは、一衣帯水を隔てる九州なんだから、隣りの韓国にやるのならば一衣帯水を隔てる同じ民族の、あの苦しんでおる炭田にどうして六分五厘をやれないんだ、こういうことなんですがね。
  54. 海堀洋平

    海堀説明員 政府関係の金融機関、これは政策的な金融もしくは補完的な金融というものを行なっているわけです。これの金利をどういうふうに定めるかということは、やはり政策的な考慮から種々検討を重ねられて現在の体系になっておると考えます。その場合に、たとえば開銀の地域開発の融資がいま御質問の点じゃなかろうかと思うのですが、地域開発の金利をその地域によってさらに差を設けるということは、非常に困難である。ということは、産炭地の振興も非常に重要でありますが、また現在新産都市の建設だとか、あるいは後進地域の、たとえば北海道の開発だとか、そういういろんな地域開発、あるいは北東公庫の融資自体にも、その地域開発融資に期待されている政策というのは、単に産炭地振興だけではなくて、種々の政策要請がなされているように思います。したがいまして、そういう地域開発という一本の融資の姿は、やはり単一の金利で貫いていくというふうに考えていかざるを得ないだろうと思います。ただ、産炭地振興という問題が現下の非常に強い政策要請を受けておりますので、別途に産炭地振興事業団というものを設けまして、これは、資金量はまだ発足当初でございますのでそう大きくはございませんが、率としましては、ことしは非常に大幅に増加させております。このほうは六分五厘という、地域開発とは違いました低い金利を適用しているわけでございます。ただ、地域開発の融資自体、どこにどういうふうに配分し、あるいは条件といたしましてどの程度の割合で、どの程度の期間貸すかというふうなことは、相当開銀の自主的な判断に、あるいは北東公庫の自主的な判断にまかされている面がございます。したがいまして、その融資の割合といいますか、たとえば、ある産炭地域に進出する企業の設置いたします設備に対する開銀融資の割合というものにつきましては、開銀がその必要ありと判断するような場合には、ある程度弾力的に措置がとり得るんではないかと存じます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、八分七厘の利子は動かすわけにはまいらぬ、開銀の地域開発の金利というものをそう地域によって変えるわけにはまいらぬから、変えるわけにはいかぬ。しかし融資の割合、それから期間等については考慮の余地あり、こういうようなニュアンスに聞こえたのですが、総裁の平田さんは有沢調査団の一員ですよ。非常に理解をお持ちなんです。いまの日本の工業立地の趨勢は、太平洋ベルト地帯に六割から六割五分ぐらい生産を集中しておるわけです。しかも、そこにほとんどの投資が行なわれているわけでしょう。特に急激に疲弊をしようとしている産炭地に対して、太平洋ベルト地帯——広い意味で筑豊炭田も、北九州のヒンターランドとして太平洋ベルト地帯に入るかもしれませんが、何といっても門司、小倉という臨海地帯に比べたら、内陸部分ですから条件が悪い。したがって、そうなりますと何らかの考慮を払わないと、あそこの石炭にかわる振興政策というのはほとんど見つからぬわけです。さいぜん言ったように、縫製工場みたいな家計補助的な工業は来ます。しかしセメントというようなものは、資源があるにもかかわらず、利子が払えないということになれば、なかなか来たいと思っても二の足を踏みます。そこで最近、たとえば日本セメントあたりもかわら工場というので、一つキルンをふやしたのです。これは開発銀行から借りたかどうか知りませんが、ふやした。ところが、自治体がこれに対して、企業誘致をすれば、各市町村が条例をつくって固定資産税をまけるわけです、固定資産税を八百何十万円免除したわけです。ところが、法律的に私詳しいところはわかりませんけれども、新しく設備をしたら、二十人以上雇用がその会社でもってふえないと、交付税の対象にならぬというのです。その町は、セメントのキルンを増築したために、固定資産税を免除してやったわけですよ。ところが、セメントは非常に近代化され、合理化され、技術革新されておるために、雇用はふえないのです。新しいキルンに対して配置転換だけです。そうしますと、地方は八百万円以上の固定資産税をまけた。当然その分の補てんとして交付税がもらえると思っておったところが、交付税は雇用がふえていないのでだめだ、こういうことになっておるのであります。市町村さえもそれほどの忍従をしておるわけでしょう。固定資産税をまけて企業誘致をやった。しかし雇用はふえなかったけれどもやむを得ぬ、こういう形になっておるわけです。したがって、国の機関である開発銀行が——産炭地振興事業団は六分五厘、ところがこれは、ワクは一億でしょう。たぶん貸し出しの最高額は、一億ぐらいしか貸さないんじゃないですか。二十億も三十億も貸しはしないです。資金量が小さいから、非常にワクが小さい。セメント工場を一つつくるとしたら、一億や二億じゃできないことは、海堀さん御存じのとおりです。五十億、六十億ですよ。そうすると、一分利子が違うだけでも、経理にばく大な影響が及んでくるわけですよ。したがってここらあたりをもう少し——市町村は工場誘致をして固定資産税をまけてしまっておる。そしていま言ったように、配置転換しかないけれども自分の鼻血を出してでもやむを得ぬ、雇用のためにはやむを得ぬ、あるいは地域経済を安定するためにはやむを得ぬといって、誘致してきた。そしてこれを家計補助的なものから、ほんとうに一家をささえるおとうさん、おにいさんが働いていくという形を確立した。ところが、今度はその会社が利子がなかなか払えない。立地条件が幾ぶん臨海地帯よりか悪いために、会社の経理がどうも苦しくなるというようなことで、また合理化がそこで行なわれるということならば、意味がなくなるわけですよ。だから、したがって、しばらくの間でもやはり利子というものを、これは大企業に限ってもいいんですが、たとえばこれから五年以内に石炭鉱業の合理化が進行すれば、五年以内に行った企業だけでも、六分五厘なら六分五厘にする、それだけでもけっこうです。それとも産炭地振興事業団に、何十億の金を貸すようなワクをつくってくれるかということです。通産大臣はこのワクをつくれば一番いいとおっしゃるんだけれども、それはあなたのほうで資金の計画その他があってなかなかうまくいかないでしょう。だから、ここらの打開策というものを何か考えてもらわないといかぬ。たとえばいま、三井セメントができました。ところが七千人おった三井田川の従業員を、セメントとタイルと三池に配置転換をすることにしたために、そのセメントなんかでも、百何十人雇うと言っておったのが、五十人か百人しか雇わぬ。ぐっと減っておるんです。これはやはり金利その他の関係があったんです。もっと安ければ、もっと早くやりたいがというところがあるわけです。だからこれはケース・バイ・ケースでいける問題じゃない。あなたの言われるように、地域開発の一般論に及んできますけれども、何かやはり特殊性を加えて、そして期限を切ってでもいいんです、昭和四十三年なら四十三年までの、石炭鉱業の合理化の進行の過程の中における期間だけを限って、その間に行くそういう企業について開発銀行が貸す場合には、これはひとつ六分五厘でもいい、あるいは七分でもけっこうですから、やる。こういう形にしてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  56. 海堀洋平

    海堀説明員 いま例として開銀の地域開発だけをあげられましたが、たとえば多少小さな企業を考えてきますと、中小企業金融公庫の融資というふうなことも考えられると思います。何も大企業だけが雇用を吸収するのではくて、中小企業が進出してもいいわけでございます。結局そうなりますと、要するに産炭地に対する政府関係機関の融資の金利をほかと区別をしておく、こういう御要請になろうかと思うのでございますが、これは産炭地振興の必要性ということは確かに十分に政府としても認識いたしておりますが、開銀の地域開発の金利なり、あるいは中小企業金融公庫の金利なりというものはやはり一本で、統一した金利で考えていかざるを得ないと思います。通産大臣が、産炭地振興事業団からの融資について非常に配意するのが最も妥当な方法だとおっしゃられましたのは、方法としてはやはり別途のそういう機関があるのでございますから、そちらの方法で考えていくというのが考え方としての筋じゃなかろうかと思います。ただ企業が進出するかしないか、あるいはその企業が成り立っていくかいかないかということは、単に金利だけの問題ではなくて、すべての立地条件、すなわちそこに水があるとか、電気が安いとか、交通が便利であるとか、そういうすべての立地条件が総合されて初めて、そこに企業の経済性というものが論議されるのだろうと思います。したがいまして、もし、通産大臣のおっしゃられましたような産炭地振興事業団の融資を拡大していくというふうな方向を考える場合におきましても、そういった全体的な立地条件に対する施策と総合的に考えていかないと、単に金利だけを不当に下げるというふうな形、あるいは産炭地振興事業団からの融資のワクを単にふやしていくということでは、問題の解決にはならないのではなかろうか。産炭地の振興につきましては、やはり総合的な観点からものごとを見ていかなければならないのじゃないかと考えます。
  57. 滝井義高

    滝井委員 そのおとりです。交通とか水とか、そこの原料、労働力、これらのものを勘案しなければならぬ。金利だけではない。しかし、御存じのとおり、アメリカの利子平衡税があれほど大きな問題になっているわけでしょう。金利というものがいかに企業の死命を制しているかということです。もしそういう理論ならば、利子平衡税をあれだけ問題にする必要はないわけです。しかし、アメリカの利子平衡税というものが、日本が外債をアメリカで募集する場合には非常に大きなネックになるのだということで、あれほど大きな、大平外務大臣がアメリカへ参勤交代をしなければならぬというような状態が起こっているわけでありますから、このことは海堀さんは一番よく知っておられる。だからあなたの言われるとおり、交通、水、原材料あるいは労働力、こういうようなものと金利とは全部総合的に考えなければならぬけれども、しかし、金利というものがやはり非常に重大なものになっている。臨海工業地帯、門司なり苅田につくる場合と、筑豊の山の中につくる場合と比べたら、運賃だけでも違うことはわかるわけです。しかし運賃くらいは、利子が安かったらカバーできる。そこで解決方法としては、開発銀行ができないとするならば、産炭地振興事業団が二十億も三十億も貸してくれますか。このワクはやはり一億限度でしょう。限度は一億じゃないですか。どうですか。帳炭地振興事業団は幾らぐらいまで貸してくれますか。
  58. 海堀洋平

    海堀説明員 おおむね一億円ということにいたしております。
  59. 滝井義高

    滝井委員 だから、一億だからいま言ったように、中小企業はいいですよ。六分五厘でみないけるわけですよ。ところが、五十億、六十億かかるセメントその他の——私が言いたいのは、筑豊に基幹的な産業がこないということです。一家の生計をささえる産業がこないということです。それをこさせるためにはどうするかというと、まず第一の突破口はセメントであると私は見ております。あるいは機械工業だ。そうしますと、この開発銀行の利子が他の地区と同じだということになれば、こないですよ。臨海工業地帯に行ってやったほうが得なんですよ。だからここを何とかひとつ考えてください、こういうわけです。そうしますと幾ぶん不利でもやってくる、こういうことになるわけです。きょう結論が出なければ、また大蔵大臣を呼んで食い下がらなければならぬことになるわけです。基幹的なものをこさせようとすれば、この利子を下げるよりほかにないのです。水の問題その他はいまいろいろ議論してきたのですからね。どうですか、きょうは返事はできぬですか。これは海堀さんに返事を求めるのは無理かもしれぬけれども……。
  60. 海堀洋平

    海堀説明員 やはり地域開発、あるいは中小企業金融公庫、そういう一般的な地域開発のための融資の金利を、ある地域によって差等を設けるということはできないと存じます。ただ、あくまで開銀の地域開発融資も補完的な融資でございますので、その地域の実情に応じまして、何といいましても八分七厘という金利は市中金利よりも安く、実質的にはさらに安いと存じますから、これを地域の実情に応じて、より必要な地域に、より高い割合で融資するというふうな運用は、可能ではなかろうかというふうには考えられます。ただ、金利を地域によって違えるということは、制度の性格上できないと存じます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 やっぱり海堀さんはなかなか答弁しにくいのですから、次はひとつ平田総裁や大蔵大臣に来てもらって、少しやりたいと思うのです。あるいは、これは総理のときでもかまわぬと思うのです。政府がかねや太鼓で産炭地振興を唱えながら、産炭地に今度は開発銀行がお金を出す場合には、金利が他の地区と同じだということでは話にならぬと思うのです。だからきょうはこの程度にしておいて、まだ鉱害に入っておらぬのですけれども、入り口だけであれですが、次会にします。
  62. 中村重光

    中村委員長 次会は来たる三月四日水曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会