運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-06-09 第46回国会 衆議院 商工委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月九日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    大石 八治君       岡崎 英城君    神田  博君      小宮山重四郎君    小山 省二君       佐々木秀世君    田中 龍夫君       田中 正巳君    竹内 黎一君       中村 幸八君    野呂 恭一君       橋本龍太郎君    長谷川四郎君       三原 朝雄君    南  好雄君       村上  勇君    大村 邦夫君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       島口重次郎君    楯 兼次郎君       泊谷 裕夫君    藤田 高敏君       森  義視君    麻生 良方君       佐々木良作君    加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  荒井  勇君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         建設事務官         (住宅局長)  前田 光嘉君  委員外出席者         通商産業事務官         (公益事業局公         益事業課長)  有馬 駿二君         通商産業事務官         (公益事業局業         務課長)    井上  保君         通商産業事務官         (公益事業局需         給課長)    山中 正夫君         専  門  員 渡邊 一俊君     ――――――――――――― 六月九日  委員佐々木秀世君、田中正巳君、南好雄君及び  米内山義一郎辞任につき、その補欠として橋  本龍太郎君、小山省二君、竹内黎一君及び泊谷  裕夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小山省二君、竹内黎一君、橋本龍太郎君及  び泊谷裕夫辞任につき、その補欠として田中  正巳君、南好雄君、佐々木秀世君及び米内山義  一郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月六日  鉱業政策強化拡充に関する陳情書(第五七一号)  中国地方総合開発促進に関する陳情書(第六六八号)  公衆浴場業に対する特別融資並びに電灯、電力料金軽減に関する陳情書(第七三一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  電気事業法案内閣提出第一三六号)      ――――◇―――――
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出電気事業法案を議題として審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 総理を呼んで電気事業あり方について伺いたいと思ったのですが、多忙のようでありますから、担当の経済企画庁長官に、まずこの電気事業企業体制あり方という点をひとつお尋ねをいたしたいと思います。  宮澤長官は三十七年八月、東北電力料金値上げの際に、これは値上げしてもやはり東北電力は一時的なものであって、いまの体制でいけばまた再値上げをせざるを得なくなるんじゃないか、したがって電力企業の一社化とは言わないまでも、とにかく東北電力矛盾を解消するためには、東京電力合併することが望ましいんじゃないか、合併はのがれ得ないだろう、こういう趣旨の発言をされておるのであります。また、池田総理は参議院において、三十七年八月二十七日社会党委員質問に答えて、私は九電力分割、再編成当時の責任者である、当時の情勢としては電力編成はやむを得なかった、しかしここ数年間、三、四年前からどうも九分割のままでいいのかという疑問を持っておるんだ、そこで今後慎重にこの問題について研究検討してみたい、こういう社会党羽生議員質問に対して答弁をしております。  それで、こういった点から見ますると、池田総理宮澤企画庁長官も、従来の九分割企業体制というもののあり方に対して若干の質問を持たれておる、そういう趣旨がうかがわれるのであります。したがって、今度の法律は御承知のように九電力編成当時のままで、若干の矛盾はいわゆる広域運営によって解消するというたえまえをとっておりますが、企業体制について宮澤長官及び池田総理がその後検討した——検討する場合には当然経済企画庁長官には相談もあると思うのであります。総理なりあるいは長官なり、企業体制あり方についてどういう御意見を持たれておるか、伺いたいのであります。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三十七年の八月に委員会田中武夫議員からそのようなお尋ねがございました際に、東北電力料金値上げ検討いたしてまいりましたが、東京東北関係、なかんずく只見川電力のもっと合理的な利用のしかたがあるのではないかということを感じました、私企業あり方に直接もの申すつもりはございませんけれども、ほんとうの意味での広域運営ということがもっと行なわれなければならないので、それが別々の会社で可能でないということであるならば、おのずから企業形態についても関係者が考慮をされることが望ましいのではないかと思います、そういう趣旨答弁を申し上げた記憶がございます。その後、しかし幸いなことにこの只見川電力利用をめぐりまして東京東北両者関係が非常に円滑になりまして、世論あるいは人事の異動などもございましたことも関係があるかもしれませんが、只見川利用の問題について東京電力東北電力並びに電源開発、三社の協議がきわめて円滑に行なわれることになりまして、当時私の申しました問題は、そういう形でその後に合理的に解決されて今日に至っておるように考えるわけでございます。したがって今日の状態では、東北電力について再び値上げをしなければならないというような事情は解消いたしたように思いますし、また東京電力につきましても、当時考えておりました幾つかの水系開発もその必要がなくなって開発資金合理化もできるようになったというのか今日の現状であるというふうに考えるわけでございます。したがって、そういう面から見ました東京東北関係は、きわめて合理的な、いわゆる真の意味での広域運営がその後今日までなされておるというふうに考えますので、当時、あるいはと申し上げましたような理由は、両社に関する限り解消しておるように思うわけでございます。その他の全国の各社について、私も詳しいことをただいま存じませんけれども、そういったような形で解決をしなければならない問題はない、全般的に広域運営というものがかなり実質的にうまく動き出すよりになった、このように見ております。
  5. 板川正吾

    板川委員 そうしますると、当時経済企画庁長官心配されたように、東北電力は一時値上げしても、やがてこのままでいくと再値上げしなくちゃならない、こういう予想があるから合併をすべきだという議論であったが、しかしその後広域運営によってそういう心配はなくなったから、まあ現状でいいのじゃないか、こういうことだと思うのです。そうしますと当分、とにかく東北電力はこれから、ほかが一般に上がるときは別としまして、料金値上げはないものと、こういったふうに見てよろしいのですか、そういうふうに見ておられるのですか、現在。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はさように承知をいたしております。
  7. 板川正吾

    板川委員 それでは、それはその後の情勢を事実によって見るほかはないのですが、もう一度今度は別の角度から伺いたいのです。電気事業、これは運輸事業などよりも完全な地域独占形態です。こういう事業は、われわれのほうはいわゆる一社化したほうがいいんじゃないかというたてまえをとっておるわけです。そのほうが広域的運営が完全に行なわれる。また、九電力分割されたままお互いに広域運営といっても、それは私企業の中における広域運営であって、限界があります。したがってわれわれのほうは、一社化したほうが合理的かつ総合的な経済性が発揮できるんじゃなかろうかというたてまえをとっておるわけであります。一社化なりという企業形態が悪いという考え方について、大臣はどうお考えですか。一社化が悪いというが、一社化になるとどういう点が悪いというお考えですか。経済企画庁長官としての見解を伺いたい。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、やはり基本的には経済と申しますか、思想関係があるのではないかと思います。私どもは、一般にものを考えます場合に、現にある現状というものは何かの理由があってそうなったのであって、これを変更するという場合には、それがそのことばかりでなく、全体にどういう影響を及ぼすかという、そのプラス・マイナスを考えて変更するなら変更する、しかし一般的に現状現状であることは、過去からの蓄積、いろいろな理由によるものであるから、これを変えるということにはよほど慎重でなければならない、本来そういう考え方を持っておるわけでございます。これが保守主義というものの考え方の本質ではないかと思うわけでございます。したがっていまの九電力あり方につきましても、本来特に弊害がない限りはこれを変更する必要はないであろうという、基本的にはそういう思想一般論として持っておりますし、また経済あり方については、できる限り私企業に近い形で運営されることが望ましい。公益事業でありましても、なるべく私企業に近い形で運営されることが望ましいのであって、全国一社というようなものの考え方はできるならば避けたい、これも一般論としてそういうふうに考えるわけでございます。したがって、そういう両方の理由から現状を特に変更する必要はないであろう、こういう考え方をいたしておるわけでございます。板川委員の言われますように、しかし全然別の思想的な観点に立って、それならば一社で何が悪いかというお尋ねであれば、それは理想的に運営される限り、想像の問題として必ずこういう弊害が起こりますというようなことは、これは申し上げにくい。やってみなければわからぬのでございますけれども、私どもはやはり現状を変えなければならない理由は特にないではないかというような考え方をいたすわけでございます。
  9. 板川正吾

    板川委員 現状を変える理由がないじゃないか、こういう点のようであります。しかし総理意見といい、かつて宮澤さんが疑問を持たれた点からいいましても、現状に疑問を持たれておったんじゃないですか。総理も、九分割当時はやむを得なかったが、しかし三、四年前からこれはこれでいいのかという疑問を持っておったのだ、こう言っておられる。だからその疑問をどういうふうにその後検討をし整理をされたかということが実は聞きたいのであります。なるほど現状を変える必要がないという、あるいはそういう強い要求なり声がないというのですが、それが保守主義だというのですが、しかし政府はいま保守党でありながら資本主義政党でありますから、経済性というのを強く考えておるわけであります。これも保守的な経済性というよりも、国民経済的な立場というのを重要視しているのが政府立場だと思うのです。ですから国民経済立場からいえば、私は一社化のほうがより合理的であり経済的であり総合的じゃないか、こう考えておる。ただ、一社化するとサービスが落ちるとか運営がうまくないとかいう不安がある、心配があるということを言っておるのです。なるほどサービスの面が——それは国鉄私鉄とどっちがサービスがいいか、私は私鉄出身ですが、そう大差はないと思うのです。経済性という立場から見れば、こういう基幹産業の場合、サービス業じゃないのですから、基幹産業立場からいえば、サービスの面というよりも、より安い電力というものを供給することが最大サービスになる、こう思うのです。だから私はそういう意味で、末梢的なサービスの、面よりも、経済性を追求して、そういう企業形態をとって安い電力を提供することが最大サービスになるだろう、なぜ政府はそういうような方向を打たないのか、こう思うのです。たとえば九電力、これは配当も全部制限されておりますから同じであります。それから供給規程も、それは九社とも業務の内容は同じようであります。それから賃金においても同じ水準であります。違うのは、地域的に料金が違うだけです。だから、料金を一本化する、一律化する、平準化する、こういう必要もある。東北東京電力と問題があったんですが、違うのは料金だけだ、だから、私は一社化することのほうがより経済的であって、本質的には国民サービスになるんだ、こう思うのです。それと、電気事業の場合には、安いということと同時に、供給安定性という問題が重要だと思うのです。私は、これはエネルギーに関する原則だと思うのです。安いエネルギー供給すると同時に、それが安定するという条件の中で調和されなくてはならないと思うのです。いまの九分割のままですと、産炭地から——実際とういう数字になっているか別としまして、九州から東京まで石炭を持ってきて発電をする。また、安定供給のたてまえからいって、石炭利用というのは当然してもらわなくてはならないものです。それから、いまや水力開発が高くなってまいりました。高くなったけれども、では一切輸入の石油でまかなうということ、それも問題がありますから、水力開発をして、安定的な供給のベースをつくらなくてはならぬと思うのです。それから原子力も将来安定的なエネルギー供給の分野を担当すると思うのですが、こういう安定供給という立場から石炭利用があり、水力のコストが高くついてもさらに水力開発しなくてはならない。さらに原子力開発をしていかなくてはならない、こういうたてまえ。石炭を使う場合に、いま言ったように、九州から東京まで持ってきて石炭をたく。それより九州なり四国なり、近い地方で主として石炭を使って、東京で主として重油をやる。しかも、それをもって総合的な配電関係を調整するということであれば、そのほうが国家経済立場からいってもより合理的だと思うのです。そういうたてまえをとろうとすれば、どうしても九電力がいまのままでは、いかに広域運営をやるといっても、それは不可能だ。そこまではできない。だから、そうした矛盾しているところの、北海道の石炭九州石炭東京へ持ってきてたいておるというようなこと、また、九州石炭をたかずに——石炭もたきますが、原油をもって発電するということも行なわれておる。それが全国一社化であれば、そういう調整が可能になると思う。そういうことによって、より安いエネルギーを安定的に供給する立場が立つんじゃないか、そういう考え方に立ちますと、私は一社化のほうが国民サービスの上から、国家経済の上からいっていいんじゃないか。一体一社化のどこが悪いんだか、われわれは具体的に理由がわからないんです。経済企画庁長官として当然、こういった国家経済の基本的な体制の問題でありますから、御見解を持っておることと思いますので、ひとつその点についての御見解を承りたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国民経済全体にロスのあるようなことがあってはならないということは、私ども板川委員と全く同様に考えておるわけでございます。したがって、昭和三十七年の八月ごろに申し上げましたような、たとえば東京東北間の、だれが見ても明らかなロスだと思われるようなことは、何かの形で改められることが望ましい、こう考えておりました。そうしてそのことは、幸いにして広域運営の形において改められておりますので、現在国民経済的なロスがその間にあるとは思わない、その問題は解消をいたしたというふうに考えるわけでございます。  さて、しかし、板川委員の仰せられますように、一般論として全国一社になることがどこが悪いか。一般論として御提起になりますと、それを反駁するということは、私はなかなか簡単な問題ではなかろうと思います。そのほうが能率的ではないかというお尋ねに対して、ことに超高圧送電というようなことが可能になったりしてまいりますと、いや、それは絶対にそうではございませんと申し上げることは、抽象的には私は困難であろうと思います。けれども、私ども経験及びよその国でやっておりますようなことを見ておりますと、いわゆる全国を一社にする、一つ企業体にするといったようなことは、現実に企業体として動きました場合に、いろいろな弊害を呼ぶ場合が多い。これは運営のいかんでございますから、必ずそうだということは申しかねますけれども、そういう場合が多いというふうに私ども考えます。しかし、他方で、たとえば最も独占を厳密な意味できらっております米国においても、私企業で明らかに独占をいたしておりますものにたとえば電話会社がございます。ベル・システムは私企業でありながら、常に独占形態をとっておるわけでございます。これなどは、おそらくやってみて、それのほうが国民経済に奉仕するからという考え方でございましょうから、一般論として何が悪いかと仰せられますと、これはなかなか簡単に、かくかくでございますからと申しかねることであって、やはり経験法則に照らしますとどうもうまくいかない公算が多いのではないかと思いますと、かように申し上げる以外に方法はないかと思います。
  11. 板川正吾

    板川委員 どうもそれでは、私どもは一社化について、一社化が国民経済的な立場からいってどこが不合理だかわからない。経験的にいっても、一社化でやった戦争中の時代が御承知のようにあるのです。ただ、戦争中、一社化になるとサービスが悪いというのがイコールといふうに思われていた。確かに戦争中一社化を強行し、戦争中は電気事業ばかりでなくて、すべての企業においてサービスが低下した時代ですから、やろうとしてもできなかった時代ですから、一社になるとサービスが悪くなるんじゃないか、官僚化して悪くなるんじゃないか、こういうようなイメージが浮かぶのですが、しかし、それは時代が違います。さっき言いましたように、国鉄が特別にサービスが悪いわけじゃないでしょう。私鉄だってもっと悪いところもあるでしょう。また、部分的にいえば私鉄がよくて国鉄が悪いところもあるし、一社だから悪いとかいいとかいう議論じゃない、こう思うのです。過去においても一社化をやった経験がある。最近においてはイタリアにおいて、六二年に一社化の法律を通して、いまや一社化が着着行なわれておる。イギリスやフランスにおいても国営的な運営がされておる。そういう資本主義国におきましても、電気事業のような場合には、これは競争して、サービスがいいからそっちを買うというものじゃないのだし、また自家発電をしたほうが安いというわけじゃないんですから、だから、私は一社化することが一体どこの姿が悪いんだろうか。池田さんも、とにかくいまの体制に疑問を持っておると言うんだから、そのブレーンである企画庁長官池田さんのあれを受けて、一社化の方向にいま少し突っ込んだ検討がなされていいと思う。一社化が悪いというが、それでは現状にそういう不合理な点があるなら、その辺で経済企画庁長官としてもっと突っ込んだ検討をされてみる必要があるのじゃないか、私はそういう感じがいたします。これはどうも大臣の説明だけではわれわれ納得できないし、実際的には一社化のほうに反対できないのじゃないかと思うのであります。ひとつ今後の御検討を要請して終わりましょう。  それでは次に、順序が狂うけれども局長にお伺いいたしましょう。  電気事業法の五十八条以下に「土地等使用」という節があります。ここで、土地の一時使用とか、公用地使用という点には規定があるのですが、公共用地使用した場合のもの、一時的に土地使用した場合の補償しかた——なぜ恒久的な土地使用をしておる問題についてこの条項の中にそれがないのかふしぎでならぬ。附則的なものが載っておって、一番大事なもとのほうに触れてない。これはどういう理由ですか。
  12. 宮本惇

    宮本政府委員 御指摘のように、非常に大きな部分が抜けておるという点は、全くそのとおりでございます。ただ御承知のように、現在土地収用法という法律もございますし、またその特例法というものもございまして、多くの場合はそちらでやっておるのでございますが、実は立法の当初のころは、われわれ自身といたしましてはいろいろなことを考えた次第でございます。たとえばこの間も新聞に出ておりましたように、まぼろし部落と申しますか、ダムの予定地へ新しく家が建つ、こういうものを何とか追い払うと申しますか、方法がないだろうかということもいろいろ検討いたしまして、これはものになりませんでしたが、たとえば電源開発予定地域制度というようなものを考えまして、あらかじめ予定地域になったところはその補償対象にならないというような制度考えたわけでございますが、結局これは何も電気だけの問題ではございませんで、たとえばオリンピックその他のためにいろいろ収用とか使用という問題がございます。そういう共通の問題であるというようなことから、法制局段階におきまして、これは別途共通問題として議論しようじゃないか、また電気事業法だけでやっておりますと時間がかかるというようなことから、一応この法律ではおりまして、また次の検討に待つということになったわけでございます。したがいまして、この法律自体といたし、またもう一つ線下補償問題等もございますが、これも実は初めは、われわれといたしましては、具体的に個々の土地その他につきまして協議で話し合いの上に補償していくという考えをとったのですが、これも法律的に言いますと、いわゆる対価主義ということで全国一律の基準がなければいかぬというようなことから、その全国一律の基準をつくることが非常にむずかしいというようなことで、今回これもおりてしまったというような形で、御指摘のように、この法律にありますこと自体は、はなはだお粗末と申しますか、わずかのものしか載っていない。しかしわれわれといたしましては決してあきらめたわけではなくて、今後関係省、特に土地収用法あるいは臨時措置法その他将来の場合は電源開発促進法というようなもので、電源開発の場合にそういった問題についてできるだけよい解決をするための研究というものは今後も続けていきたい、こう考えておる次第であります。
  13. 板川正吾

    板川委員 この補償問題で、これから開発しようという電源開発地域補償問題がございますし、それから現に使用しておる高圧線下線下補償の問題あるいは電柱、鉄塔といったものの補償問題もありますが、これに対して何ら基準がないのはおかしいと思っておるのです。しかし電力とやや似ておりまする電話線冠注等使用料、こういう問題については公衆電気通信法一つ基準がありますね。だからそういった基準をこの法律の中にうたえなければ、政令で定めるなり省令で定めるなりやってやれないことはないじゃないか。大事なことを逃げておるのじゃないか。しかし電源開発地域を大きく網を張って、そこにうちをつくった場合には一切電源開発関係のところに届け出なくてはならぬということになると私権の制約になりますが、こういう点は権利と権利の競合になりますから、なかなかむずかしいと思います。むずかしいと思いますが、現に行なわれておる電柱なり鉄塔なりあるいは繰下補償といった問題は、避けて避け切れるものではないですね。だからこういう法律の中で取り組んで、そうして法律の上で一つ基準を明示したほうが両方にいいのではないか。基準というのははっきりしたほうがいいではないですか。電力会社でも、はっきりしてもらうなら法律ではっきりしてもらったほうが、その法定されたものを払えばいいのですから、そういう意味では無用な紛争がなくなるのではないか。支払われる側からいえば、もしそれが低ければ法律を変えて上げてもらうなりすることになるでしょう。だから私は、重要な問題を避けて、しかもそれに一言も触れてないというのはかえっておかしいじゃないか、こう思うのですが、この点いかがですか。
  14. 宮本惇

    宮本政府委員 御指摘のとおりでございますが、われわれとしてはこれは立法の問題で、その辺の、たとえば一律の基準というものをある程度成案を得た上でないとなかなか御提案ができないという事由から、とりあえずこの程度にいたした次第でございますが、先生御指摘のように、たとえば送電線の建設の初めにはいわば不毛の地であったのが最近はだんだん宅地化してくるということになれば、電力会社として、客観的条件の変更のあった場合にはその土地相応のものを支払うのは当然でありますし、またその場合に一定の基準があったほうがよろしいということも全く御指摘のとおりでございます。ただ、その基準ということになりますと、たとえば全国一律に宅地幾ら、山林幾らというような具体的な基準をつくりますためにはなかなか時間もかかるということで、今回は法律の提案に間に合わないというおそれもありましたので、とりあえずこの形にしておきまして、将来は先生御指摘方向でわれわれも十分に検討いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  15. 泊谷裕夫

    泊谷委員 関連してお尋ねしたいと思うのですが、電気事業法が提案されまして——数多い変遷をたどってきましたこの法律が一たん廃案になった。それはGHQの勧告もありまして、公権力の強いのを何とかしなさい、こういうことだったが、憲法上の規制もありまして、公共事業に用いる場合は適当な補償が条件になっています。いま板川先生が触れられたように、監督官庁として当然その対策が明らかにされていなければならぬと思うのですが、その議論は先輩議員の皆さんに譲りまして、特に問題があると思います北海道の問題について二、三お尋ねしたいと思いますので、お答えをいただきたいと思います。  北海道は、実態論で申し上げますと、米一俵五百円当時に、農民の皆さんが何とか農村にも電灯をつけていただきたいということで、当時としては一万から五万程度の負担金を持ちまして、その施設費の全額は農民負担でしたものであります。なお、その施設を無償で、しかも電力会社の資産として、さらに補てん金まで渡した、こういう実情でまいっております。しかもその支柱物である電柱使用料も無償のものがいまだ数多く、残っておるのです。しかし施設当時と現在では電気供給事情は大きく変わっておりますし、農村における電気量も増大しております。これらの事情から、従来無償扱いの電柱について、当然有償に考えられなければならぬ時期に至ったと思うのでありますが、監督官庁の皆さんとしてどうお考えであるか、そのお考えを明らかにしていただきたい。
  16. 宮本惇

    宮本政府委員 先ほど板川先生にお答え申し上げましたとおり、確かに、その当時はたとえ無償でおっても、現在の諸般の経済情勢あるいは客観情勢の変化というようなことから、その土地あるいはその地帯が非常に開けてくる、そういう場合には当然有償でなければならぬということは私も全く同感でございまして、そういった線で今後指導していきたい。ただ具体的問題といたしまして幾らがいいかとか、その辺の問題はいろいろお話し合いもございます。ただ、北海道電力の管内の線下補償をいま一挙に全部やるということになりますと、またこれはいろいろな問題がありますが、方向といたしましては、それはある程度お話し合いでございますが、それぞれお話し合いによって適当な対価を支払うということは当然であり、また今後そういうふうに指導していきたいと私は考えております。
  17. 泊谷裕夫

    泊谷委員 ただいまの答弁でそのくだりはわかりました。  その次の問題として、北海道では農山村地帯に建設されている電線の関係施設の補償について、十数年いさかいを起こしておるわけでありますが、北海道の実態を見ますと、電柱敷地料の基準料金は、木柱で田の場合三十円、畑の場合二十円、山林その他十円ということになっておりまして、これは九電力会社の中でも最下位にあるわけです。ほかの電力会社と対比してみますと、二分の一ないし三分の一という料金になっております。先ほども板川先生からちょっと触れられましたけれども、日本国有鉄道の場合は昭和二十六年から五回にわたりまして、それから日本電信電話公社は二十八年から三回にわたって、この料金改定を行なっております。一昨年には電電公社の場合、田で八十円、畑五十円と改定されておるわけです。北海道電力は、これに比べてみましても、田の場合で三七・五%にしかなりませんし、畑も四〇%という少額の支払いになっておるわけです。電電公社の八十円の算出基礎を見ますと、これはすでに御承知でありましょうが、借地料相当分、労力損失の二本の柱で組み立てられておるわけでありますが、その中の労力損失だけ取り上げてみましても、農民の一日平均の労働賃金を三百八十三円三十銭、こういうことにしておりまして、一時間当たり五十一円ということに算出しておる。労働省の労働統計調査、これは都市製造工業五人規模以上の男女込みの平均賃金でありますけれども、昨年三月からことしの二月までの一時間当たりは百四十三円十二銭となっております。実際に今日では援農の日雇いを一日頼んでも千三百円ないし千五百円というのが昨年の実態であります。かく考えて電電公社並みの算式でこれを除してみますと、一時間当たりは百八十六円六十七銭ないし二百円ということになるのです。かりに田の場合に例をとりまして、借地料相当分を電電公社並みに押えたとしてみましても、この労働省で発表しました労働損分百四十三円を足しますと最低で百七十五円以上ということになりまして、百八十円は下らないことになると思うのです。そこで数多いデータは別にして、電電の料金でさえ一応改定されなければならぬ客観的なデータがそろっておると思うのでありますが、それよりも低く、同企業内の九電力会社の中で最も低いということでは、どう説明しようとも数多い農民が納得しないのは無理ないことでないかと思うのであります。こういう実情に立って、監督官庁であります皆さんのほうで、この料金の改定についてもすみやかに作業を進めなければならぬ時期だと思うのでありますが、いかがお考えであるか、考え方を明らかにしてほしいと思います。
  18. 宮本惇

    宮本政府委員 われわれのほうの調べでも、北電が安いということはおっしゃるとおりでございます。国鉄なり電電は御指摘のように確かに全国一律でございますが、地域の地価の差その他もございますので、全国一律がいいかどうかということはしばらく検討させていただくことといたしまして、北海道電力でも、実はわれわれも申しまして、現在検討中でございます。十分御相談の上、横並びと申しますか、あるいはまた電電公社のいろいろな料金その他も考えまして前向きに至急解決したい、こう考えておる次第でございます。
  19. 泊谷裕夫

    泊谷委員 いまのお答えで大体了解いたしましたが、通俗的に土地の話が北海道と本州の関係で出されるのであります。これも正確なデータを調査いただくと大差ないと思いますけれども、先ほど申し上げました算出基礎は土地の部分に触れずに申し上げたので、その点お含みおきいただいて御検討いただき、適切な御指導をいただきたいと思います。  次に、これも先ほど板川先生が触れられましたが、高圧送電線下の農地使用料の問題、俗にいっております線下補償の問題でありますが、これは昭和三十四年に全国農民連盟、農民の団体でありますが、その被害実態調査を入手したのですが、それによりますと、農作業に与えられる被害として、大雨時に恐怖心で作業を中止したものが全体の六五・六%を占めております。それから線下作業中に、もし切断したらという恐怖心を持っている人々は五〇・六%という数字を示しました。農作物に与える被害として、雨降りのときの大粒しずくが落ちて収穫が減るもの、これが三五・九%、雨のしずくで種がはじき出される、これが二四%、それからスズメが他の地域より多く集まりまして、収穫量に対する被害は三二・八%に当たると発表しておるのです。家屋建築及び農地売買に与える被害として、宅地にできなかったものが二一・二%ある、線下のために不利になったもの一五・四%、こういう実態調査が出ておるのであります。北海道でもカラマツは通常二十五年が好ましいのですけれども、線下空間確保のために十五年で伐採しておる。こういう実情にありまして、植林についての規制、建造物の施設が現実に規制されておる。さらには農地売買に際し、高圧線路下の農地は減額されておりまして、宅地売買では近隣の売買実例価格と比べてみますと、五〇%相当減額されておるというのが実態であります。建設省の公共用地審議会補償基準委員会の報告書によりますと、昭和三十五年十月十四日、これは大阪府の収用委員会の裁決例でありますけれども土地収用法の規定の精神及び正当な損失補償の算定の可能な期間の限度として、十年間を使用期間の限界としております。損失補償はまず電線路(空間)となっておりますけれども使用については、土地価格に年六分を除して得た額の三分の一とし、そして補償金の一時支払いをするために年六分による使用期間の複利年金減価率(七・六三倍)を乗じて土地使用量を算定するのを相当とする、こういうふうに裁定をされております。そのほかに、監督官庁の指導もあったと思われますが、昭和三十五年の東京電力の中之条県営発電所から高崎までの補償、それから昭和二十九年の四国電力の西条市の補償など、こういうものを具体的に見てまいりますと、北海道電力管内におきます繰下補償の問題につきましても、かりに価格が違ったとしても、繰下補償について具体的にその懸案の処理に当たる時期にきていると思うのですが、先ほど板川先生からお話がありましたように、関係官庁の具体的な調査に基づいて十分討議をして設定をしなければならぬものとは理解しますけれども、当面の措置として、十年以上目をつぶっております問題に何らかの措置をとることが望ましいと思うのでありますが、これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 宮本惇

    宮本政府委員 線下補償というのは、確かに御指摘のように最近はいろいろ問題がございます。全国的に申し上げますと、送配電線の下にある土地が現在一億五千万坪ということで、かりに一坪四十円といたしましても六十億円ということで、なかなか容易な額でございません。しかし、これをほうっておくわけにはまいりませんので、政府といたしましても、実は三十七年の六月閣議決定で公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱というのをきめまして、空間の使用にかかわります補償、つまり線下補償はこれに該当するということが規定されておるわけです。内容といたしましては、正常な地代または借り賃による土地利用が妨げられる程度に応じて、適正に定めた割合を乗じて得た額をもって補償する、そういうことで、要するに妨げられる程度に応じて地代に幾らかの割合をかけたものを補償額とする、というふうな抽象的な一応文句となっております。また、空間の使用が非常に長期にわたるときには土地の正常な取引価格に相当する額に、土地利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額ということを一時払いとする、というような抽象的な基準はつくったわけでございます。ただやはり方々の地方によりまして土地の値段その他が変わりますにしても、今後の方向としてはやはり一定額の線下補償というものを払うべきであるということは、損失補償基準にも出ておるわけでございまして、今後そういった方向で具体的に、全国一律と申しますか、そういうものの基準ができるかどうかは別として、至急に何らかの結論を得るように措置したい、各電力会社とも相談をいたしまして、目下作業を進めておるところでございます。  ただ、電線の下の農作物がどういう被害を受けたか、いろいろな実例も伺っておりますが、その辺もなかなか具体的にきまりません。また、最近では送電線の下に家を、八万ボルト以下の送電線の下ではたとえば碍子を整備するとか、そういうことで家が建てられるようにだんだんなってきております。その辺はいわゆる電力側の技術の進歩と相まって、特にこれからますます土地が少なくなってくるということから、電力側もそういう努力でなるべく御迷惑のかからぬような技術的研究も一方に進めまして、そして補償すべきものはするという方向で具体的に進みたい、こう考えておる次第でございます。
  21. 泊谷裕夫

    泊谷委員 質問は以上で終わりますが、最後に一つ要請をしておきたいと思うのです。  全国的な趨勢だとは思うのでありますが、特に北海道の場合、北海道第二期総合開発計画に伴いまして、この法案とはちょっと関連が薄れると思いますが、実態としてお聞き取りいただきたいのですけれども、従来勤労者の所得が当面三十二万のものを昭和四十二年には年間五十二万ないし六十万にしようというキャッチフレーズで作業が進められておるのであります。しかしその数多い農民、約四分の一の農民の人々は、わずか年収十五万というのが実態であります。農民の皆さんは開発計画の犠牲にされて、しかも電気を引いてもらうのも恩恵的なもので、自分たちが負担金を持たなければならぬのになぜ私どもが税金を納めなければならぬのだろう、こういうささやきが出てまいりました。しかし、往年は、農民の皆さんは、すべてのものは、都心部から離れますと電気一つつけるにしてもそれを見合わせられるという体制をとられましたので、全国的な電力会社の趨勢はわかりませんけれども、北電の場合には農民から具体的な要請がない限り、こういう全国的な趨勢というか客観情勢の変化に伴いまして質的な変化をなしておっても、要請がない限り放任をしておくというのが実態でありますから、監督官庁の皆さん方のほうとして、この問題については従前と態様も変わっておるということを十分御承知おきいただきまして、その業者であります北海道電力について適切な御指導をいただきたいということを要請いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  22. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ちょっと関連をして。  線下補償の問題は、私どもが長年農民運動の一環としてやっておるのでありますが、特にほかのほうは、いまお話がありましたように、三十七年六月二十九日の閣議の決定を大体土台にして、郵政省のほうはすでにその政令が出ておるわけであります。それから運輸省のほうも出ておるわけであります。ところが、これは電力のほうは経費が非常に重いということもあって、いまお話のあったように、私どもの調査したところでも、これは三十七年当時の調査ですが、大体線下幅を四メートルと見て、これが全国で大体一億五千万坪あるだろう、こういう推定です。電柱にいたしましても膨大な数、それがおそらく今日では二億坪以上になっているんじゃないかと思う。それにもってきて御承知のとおり大容量化してまいりましたから、非常にあれが上がったわけですね。したがって非常に障害がよけいになってきた。同時に、特に山の中の事情も変わってきましたし、純粋な農村地帯、それからさらに都市近郊の地帯、それから都市、こういうふうに事情が変わってきた。いままでのように線下の土地が農業上多少支障があるという程度の問題じゃなくなってきた。そういうところはもう土地も売れないんです。価格も押えられちゃう。これは線下土地だけじゃない。それに関連する地域では同じような被害を受けてきた、こういうことです。ですからあなたのほうでも三十八年のたしか四月かに、一応新しい通達を出していますね。あれはごちゃごちゃとごまかせという通達でしたね。これじゃしょうがない。そこで非常にむずかしい問題ですが、これはあなたのほうでも何回か手をつけかけようとしたができない。これは電力会社にすれば、電灯料まである程度変えなければ、根本的な解決がつかないかもしれない。しかしこれ以上ほっとくというわけにいかない。そういう経済事情が全般に変わってきたのと、これに関係をする人たちの、要するに権利意識というものが変わってきている。私ども調査したときは、線下土地の九四%はざっくばらんに言って無補償です。そういう状態をこれ以上放置することはできない。不満足であっても、私は、閣議決定のこれがはたしていいかどうか疑問です、疑問ですが、そういう状況の変化を考えて、これは早急にあなたのところで政令をつくる必要がある。通達じゃなかなかだめです。政令を早急に、少なくとも線下補償についての政令くらいのものをつくらなければ問題の解決がつかない。そのために毎年各地でいわゆる線下補償闘争というのをわれわれはやっておる。実際はどうかというと、強く当たればよけい出す。だまっていれば出さない。ボス連中が会社といいかげんな交渉をすればそこだけは出す。あと善意の連中は、何とかいまに解決するだろうとだまっている連中のところには一つも出さない。電力会社のそのほうの係に聞いても、実際問題として四苦八苦です。ここらで何とかはっきりした基準を出すことがぜひ私は必要だと思う。ぜひこれはひとつ思い切って、むずかしい問題ではあるけれども、しかし、この際政令等をはっきり整備する必要があると思う。これはひとつ大臣に、この点についてのお考えをはっきり聞かしておいてもらいたい。これは非常に大きな問題です。
  23. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は、ごもっともな御趣旨であると思いますので、何とか実現をいたしたいと思っております。ただ法律の条文等々の問題もございまして、条文にあれがないとなかなかむずかしいこともあるわけです。これは電源開発促進法などを改正いたしますときには、ぜひあなたのおっしゃる趣旨を取り入れて善処いたしたいと思います。
  24. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点だけ。これの六十二条に損失補償の規定があるんですね。これは一時使用その他についてのやつです。これには線下補償は入ってないのでしょう、解釈として。ここに逃げ道がある。本来なら私はこれを議員修正をしたいのです。したいけれども、もうこう追い込まれたんじゃちょっとだめだと思う。だからとにかく政令の制定をするくらいでないと、いままでの通達程度ではなかなかこれは実行できません。このままおけば、だんだん全国的にこういう線下補償闘争というものが大きくなって、われわれはずっといままで十年間指導してきたのですけれども、ますます解決がむずかしくなり、不均衡になって、結局は、最後は、どんなにやっても電力会社の経理に相当大きな影響を及ぼすことになろうと思う。いろいろ電力については、土地その他の補償問題はむずかしい問題が非常に多い。しかし、これが何と言っても一番大きな問題ですから、ぜひ早急に、あなたのほうで何回か手をつけておることは知っておる。知っておるが、途中でみんな腰が砕けて、結局、電力資本の問題があって、腰が砕けてごまかしてしまう。そうして今日までごまかしてきたが、とにかく、ほかの官庁ではすでにやっておるわけですから、あなたのほうだけできないということはないでしょう。この際ぜひこれらは本気に考えてやってください。
  25. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御趣旨に従って、行政面においても一そう強力に推進いたしたいと思います。
  26. 板川正吾

    板川委員 補償問題は確かにそういった条項がないのです。ほかの法律では、公衆電気通信法及びその施行令ですね。これで料金基準というのがある。これは電力と電信との、弱電と強電との差もありますから、それはイコールというわけにはまいりません。しかし、そういう一つ基準があり、また、全国的に調査をしてみますと、やはり一応の基準は出ておるのです。九電力について補償問題の全部が出ておるとは申しませんが、たとえば電柱の敷地料等については全国的に一つ基準らしきものがすでにできておる。あとは線下補償問題等が加味される。それから発電の場合に、一般公共用地補償等についてはいま政府考えておる、こういう形だと思うのですが、いま、久保田、泊谷委員も申されたように、この補償問題をいつまでこのままほおかぶりしておくわけにいきませんし、早急に法を整備してもらいたい、こう要請をいたします。  そこで、補償の問題はそのくらいにしまして、この補償関係法律の中で一つだけ疑問点を伺いたいのです。  この六十四条では原状回復してやるのを原則にしておる。しかし、回復しないときは、通常生ずる損失を補償して、その土地を返還すると、こうあります。原状回復できない場合がある。物理的に不可能な場合がある。その場合、通常生ずる損失を補償する。しかし、その通常生ずる損失について意見が食い違った場合にはどうなりますか。ここで意見一致しない場合、六十三条は、六十二条のことにひっかかっておるのです。六十二条の場合は、通常生ずる損失を補償しなければいけない。六十三条で、前条の規定による損失について意見が一致しない場合には、都道府県知事の裁定を申請することができる、こういっておって、六十四条の原状回復の義務のところで、物理的に原状回復が不可能な場合、山をくずして何かに使った場合に、もとのとおりにするわけにいかないという場合に、補償をしなければいけない。この補償する場合に意見が一致しない場合には、六十三条の手続がとれないのじゃないですか。それは六十三条で、前条の規定による損失の補償については都道府県知事、この場合、どうなりますか、六十四条の場合に。
  27. 宮本惇

    宮本政府委員 この六十四条の場合には、もしその損失補償問題でトラブルが起きた場合には普通の一般訴訟という、民事上の損害賠償請求という形をとるということになるわけでございます。
  28. 板川正吾

    板川委員 六十四条を六十三条に持ってきて、六十三条を六十四条にするというようなことではおかしいのですか。同じ土地の一時使用のところでしょう。本質的に違っていないじゃないですか。
  29. 宮本惇

    宮本政府委員 何と申しますか、理屈を申し上げますと、使うまでのことで済んでしまったものは、つまり六十三条までですね、一時使用とか伐採とかあるいは立ち入り、通行ということで、一応それが終わりましたので、こういう原状回復という場合には、それからあとへ持ってきて、一般の訴訟にするという法律体系と解釈するわけです。
  30. 板川正吾

    板川委員 土地の一時使用が終わったときは原状に回復をして、回復できないときは通常生ずる損失を補償して土地を返還しなければならない、これが一般の訴訟によるとかえってめんどうな場合があって、まあ省略的かもしらぬが、六十三条で知事の裁定のほうが簡略じゃないかな、そんなふうに思うものだから……。ではその点はそれでいいといたします。  時間の関係大臣に伺います。いま経済企画庁長官に来てもらって、電力事業企業体制あり方について意見を承りました。私どもが理解に苦しんでおるのは、一体、一社化というのが、どこが悪いので一社化がいけないのか、これがはっきりしないのです。まあ大臣は、いままでの答弁によると、一社化してごたごたすると二、三年は企業もごたごたして調子が出ない、あるいはサービスが低下するとか、いろいろなことを言われました。しかしそれは、電力事業国家経済における影響ということからいえば末梢的な一時的な問題です。国家経済立場からこれのほうが合理的で経済的でいいというなら、私は、一時的なそういう多少の混乱があるとしても、それをやるのが当然の任務じゃないか、こう思うのですが、一社化でどこが悪いのか、大臣にひとつその理由が伺いたい。
  31. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 エネルギーのことでありますから、安定して供給が行なわれ、十分に供給が行なわれ、しかも低廉であるということ、これが主たる目的であると思うのであります。こういう点から考えてみまして、安定して供給が行なわれるというのは二つ問題があると思うのです。その一つは、供給でございますから、まず建設が十分行なわれなければならない。需用に応じた建設がまず行なわれなければならない。それからもう一つは、その行なわれた建設に基づいてできてくる発電電力が不安のない形において消費者に渡るようにしなければならない。これが私は安定した供給意味だと思うのであります。一方、低廉であることは、これはエネルギーというものの性格からいって当然のことであります。こういう大きな目的を実現をいたしていくのが、これが趣旨でなければならないのでありますが、しからば一社化した場合に低廉になるかどうかということから考えてみたときに、私は政府がこれに対して相当な援助を与え、あるいは資金をうんと出しておるというような場合には、これはできるかと思いますが、いまの形における九社と電発を含めたものを、ただ合併したということで低廉ということは私はあまり望み得ない。現実にこれをやってみても、すぐ低廉になるかどうかというと、それはなかなか困難な面があると私は思います。ただ、もし低廉になり得る道がここに存在するとすれば、電気発電する場合に、たとえば東北で雨が降っておって関東で雨が降らないというような場合に、東北の流れ込み式の発電所は、どんどん水を流して発電をする、むだがないように使う。そうしてできるならば東京における火力発電なんというものは一応セーブするというような形にすれば、その意味においてはむだがなくなる。むだがなくなるということはすなわちこれが低廉な電気という、いわゆる原料が安くなるということに相通ずると思うのであります。この点は確かに一社化の利点であると思っておりますが、しかしその場合においても、もし公域運営というものがかなり徹低して行なわれるということになれば、相当程度この弊害というものは防ぎ得る。いわゆるうまく利用ができると考えております。一方今度は各電力会社発電をするという場合、それから一社化してしまって発電をするという場合、これがどのようなふうにうまく行なわれるかということになりますと、私は一社化した場合も計画的にやればそれでできるとは思いますが、かなりこれは問題が起きてくる。政治的な介入が非常に多くなるということが、実は日本発送電をやっていた時分に、そういう問題がしばしば出たのであります。政治力がものをいいやすくなる。もちろん九電力とか電発にしておいても政治力というものはある程度ものをいいます。いいますけれども、一社化になりますと完全にそこで統一をしてしまうということになって、そういう意味で、私はこの電力を建設する場合にはたして合理性が保てるかどうかというところにまた問題があると思うのであります。もちろんこれは人の問題でもあるし、政治の問題にもつらなると思います。でありますが、そういう弊害が起こり得る可能性が多分にある。私は一社化して発電所を建設をするのがいいかどうか、あるいは九、十の電力会社があって、それが相互に協力をして発電所を作るようなやりかたがいいかということも、これは研究すべき課題の一つではあると思っております。現実にはどうであるかというと、必要な電力というものは、十の電力会社発電をいたしました電力で、一応十分需用に応ずるだけの供給をいままでにいたしておることは御案内のとおりであります。それからもう一つ。先ほど申し上げましたように、今度は安定した電力供給できるかどうかということになりますと、私は一社化をした場合も、十の電力会社あるいは九つの配電をやる電力会社というものを一応想定した場合においても、一社化の場合と同様に、安定した電力供給はどちらでもできると思います。ただ問題は、安定した電力という場合において消費者の便利を考えるということになりますと、一社化した場合にはとかくいはゆる官僚統制というものになりがちでありまして、サービス面が非常に悪くなるおそれがある。私はこんなところで言いたくはないけれども、たとえばガス会社などというものは、ガスを引いてもらいたいなどと言っていきますと、たいてい一カ月から一カ月半くらい前に頼んでおかないとなかなかやってくれないという苦情がよく出ておるのであります。私は、そういうことでは困るからできるだけそういうことをしないようにと言っておりますが、案外そういう面でのサービス不足がガス問題などについてはしばしば起きております。しかし電気の問題は、九分割をするときに消費者の便益ということを非常に実は強調いたしておりますので、もちろん十分だとは申しませんけれども、私はかなり消費者のことを考えながらやるという点に力を尽くしておると思います。もちろんその場合でも経費の関係がありまして、なかなか電気料金値上げができない等々のことから、財政的な余裕がないと十分なサービスはできませんけれども、かなり今日ではそういう面にも気をつけておるし、それからいわゆる一社化であった時分から見ますと、そういう点もかなり改善されたように私は思っておるのでありまして、この場合において配電も含む、発送電も全部含むような一社化がはたしていいかどうか、こういうことはやはり研究をしてみなければならないと思います。  それから今度は発電だけの一社化をしたらどうか。一社化、一社化と言いましてもいろいろあるのでありまして、発電だけの一社化をする、そうして今度は配電の部分は分けてやるようなやり方、これもまた分けて考えてみなければならないと思います。これは実を言いますと九分側のときにもそういう説が多分にあったのでありまして、府県単位の配電会社にしてしまってはどうかという意見も実はあったわけでございます。こまかくするというとかえってそのほうがサービスがよくなるんじゃないか。あんまり大きいずうたいでやるよりも、そのほうがいいじゃないかという意見もあったのであります。  こういう意見も私は研究に値いする一つ意見だと思っておりますが、いずれにしましても今日の段階において考えてみますと、電発のほかに九つの電力会社があって、そうしてこれが発電並びに配電をやっておりまして、そうして一応その地域における需用にマッチするだけの発電をいたし、またサービスの面においてもそれほど特別目に見えて悪いということは出ておらないと私は思っております。もちろん個々の問題はございましょうが、いわゆる一社化をしなければ絶対にできない、一社化であればここがこれほどごうよくなるというような点についての問題点は、私はそれほどまだ出てきておらないと思っております。が、従来ずっと申し上げておりますように、電気の特質というものからいえば、電力というものは発電をしたらもうすぐそれが消費されなければならないという特質を持っておりますから、いわゆる貯蔵しておけないというその特質をどういうふうにして生かすのがいいかといえば、これは分かれておらないで一社にして、そうして全部をうまく有効に利用するのが国のエネルギーを有効に利用するゆえんであるということにおいては私は賛成しておるのであります。しからば、いまここですぐにそういう形に持っていった場合の功罪というものを論じてみると、私は急にそういうふうに持っていっても、はたしてそういう点で実効が上がるかどうか。また今度は、その面で実効がいささか上がっても、ほかにマイナス面が出てこないかどうかということについて、まだ確たる解答を得ておらないのであります。だから、一応ここに出しましたような九つの電力会社並びに電源開発というものをして発電をいたさせる、また配電を九つの電力会社にいたさせるという形をとりつつも、一社化の利益であるところのいわゆる電力をむだに使わないようにする、すなわち広域運営を順次押し進めていく。私は四ブロックでやるのが、これがもう全部を一ブロックにするような形に、広域運営は前に進むべきであると思っておるのであります。そういうふうに順次この広域運営ということをやることによって、分割されておることによる弊害を除去してみるという努力をこの際やってみる。そうしてどうしてもそれでうまくいかないという場合には、そこでわれわれとしてどうしたらいいかということを今後ずっと研究を続けていってはいかがか、こう考えましてこの法案を出しておるわけであります。
  32. 板川正吾

    板川委員 大臣の説明でも、私どもしろうとですからどうもよくわからないのです。それは国の政策の上からいって、基本的にはエネルギー政策というものは、まず豊富に供給することである。これは当然ですね。第二は、その供給が安定的でなければいけない。第三は、しかもそれが安く供給されなければならない。豊富であり、安定的供給であり、低廉な価格による供給、これがエネルギーの大きな原則だと思うのです。これは何人も否定する者はない。そういうたてまえからいうと、私は一社化のほうが実はそういう原則に沿うのじゃないかという考え方をとっておる。大臣は、いまの九社をただそのまま合併をするというような意味のことを言われておりますが、それは一社化する場合には一社化のような運営のしかたは考えなくちゃいけない。ただ九つを一つにしたというだけではいけない。あくまでもその三原則ですか、これに合うような運営にしなければいけないと思うのです。そういう方向——ただ九つを一つにしたってどれだけ得があるかわからぬということじゃ、どうも私どもは納得ができないのです。たとえば今度の法律による広域運営というのは、開発広域運営というのが中心でしよう。これは電力を融通し合うとか、特殊の場合にお互いに助け合うとかいうのは従来もやっていることでしょう。それで広域運営を大きく評価しようというのは、開発を合理的にやるために、東北における高い開発をやめて東京から安いものをやるという場合もある。東北で二十万キロワットの発電所をつくるなら、東京で五十万キロワットの発電所をつくって、場合によってはそれを送ったほうがいい。こういうような運営をやろうというのでしょう。だからその発電の広域的な運営というのは、結局それを突き詰めて言えば、発電の一社化なりということに通ずるのじゃないですか。そのほうが私はより合理的な——いま全国的に超高圧送電という施設なんかもできつつあるようでありますから、そういう地域的に分散するということより、一番経済的に条件のいいところへ発電所をつくって、それで方々へ送電するという形のほうが、安い電力を国民に供給するということになるのじゃないかと思うのです。サービスが悪いとかいうことを言うのですが、どうも私は一社化したところでサービスがそれほど悪くなるものじゃない。ただ、戦時中一社化したときにサービスが悪かった。これは電気事業ばかりじゃない。あらゆる企業が戦時中はサービスが悪かったのですから、戦時中の電気企業の一社化のためにサービスが悪かったということから、いまの時代でも当然悪いんだというふうに持ってくるのは私は当を得ていないのじゃないか、こう思うのです。たとえば一社化した場合には、先ほど経済企画庁長官にも言ったのですが、この安定供給をはからなくちゃいけないのですね。これは当然です。そのために石炭を相当量使用しておかなければいけない。全部石油でまかなうというわけにはいきません。もし石油がとまったら電力までとまるということになると、たいへんなことになりますから。そういう意味で、私は石炭を相当量使ってもらうということは当然だと思う。それから水力開発だって、コストは高くつくが、これまた水力開発していかなければ安定供給の一役をになうわけにまいりません。もちろん原子力も、高くても研究開発をしていかなくちゃならないですが、こういうように安定供給を確保するために石炭を使ったり、高い水力開発したり、原子力を採算に合わなくてもやっていくというようなことになっていく、こうなるとどうしても高いコストにつくわけだ。しかしまた一面、石炭産炭地発電する、そしてたとえば石炭東京まで運んで、東電で混焼して発電に使う、北海道の石炭をここまで持ってくる——北海道は、地域が、送電線がつながっていないから別としても、それならば私は九州で主として石炭を使い、あるいは四国で、西のほうで石炭を主として使い、東京ではいわゆる重油専焼の発電所を主として使う。そしてそれのコストをプールして、全国的なプール計算した結果、安いものを使うということになれば、石炭の何百万トンを東京まで運ぶことはないと思う。従来は高圧送電というものが技術的に限界がありましたからなかなかむずかしかったかもしれませんが、いまや超高圧送電というものも可能となっておるのですから、そういうようなことを、安い魅力を国民に供給するのが最大サービスなんですから、そういう意味では一社化のほうが私は国民の要望に沿い得るんじゃないかと思う。末梢的な、注文してすぐ工事をしてくれないとかいうようなことは、これは運営でもって改善できるものじゃないだろうか。根本は安定した、しかも安い電力を豊富に提供するということであれば、私は九電力事業形態よりも一社化の企業形態のほうが、国家経済の上からいって好ましい方向じゃないかと思う。経済企画庁長官は、特に問題がないから従来の体制でいくんだ、これが保守正議だ、こう言っておるのですが、それは少しも経済企画庁長官としての任務じゃないと思う。国家経済国民経済というたてまえからいえば、私は一社化のほうがより合理的で経済的である、こう思うのです。もう一ぺんひとつ大臣から……。
  33. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 あなたは私を専門家だなんて言われるが、こっちはちっとも専門家じゃありませんから、私は御答弁しても御理解をしていただけるかどうかわかりませんが、板川さんがいま言っておられるようなことはみんなやっておることなんです。いまあなたが御指摘になったようなことは、九分割のいまの時代において全部やっております。これは、たとえば東北の仙台で非常に電力が必要だというようなときに、これは例でありますが、東京からこの電力供給するという場合には、まず送電線の問題を考えてみる。送電余力がどれくらいあるかということを考えてみる。送電余力がなければこの点もつくらなくちゃならない。それじゃ新しい送電線を一本つくったらどれくらい経費がかかるか、その場合のプラス、マイナスの問題がすぐ出てくる。それならば福島県の一番突端か、あるいは茨城県の境でもってやって、あそこで発電所をつくって、火力発電でもやったらどうだろう、こういう研究はすぐ計算で出るわけであります。もしそれが有利であるということになれば、それじゃそこで発電しましょう。こういうことは、いわゆる電源開発審議会で、計画はいまでも実はやっておるわけであります。  それから、いま板川さんが仰せになったけれども九州でもって発電して超高圧で持ってこよう、お考えは非常にけっこうです。われわれもずいぶん勉強いたしておりますが、これはどれくらい金がかかるかというと、送電線に二百億円の金がかかります。二百億円の金をいまかけて、はたしてそれでいいかどうか、船で持ってきて揚げ地発電でやったほうがいいかどうかということになると、ここにも経済性の問題が出てきます。そのときにこっちのほうがいいということになれば、それは中国でやるかあるいは関西でやるかということになって、それはやはり電源開発審議会でそういうことをいろいろ勉強しておるわけであります。だから発電の問題について、発電所をつくるという場合については、かなりそういういわゆる一社化的な運営がもうすでに行なわれつつあります。たとえば北陸で油でもって発電しよう、いわゆる火力発電しようというような場合に、大阪に頼んで、大阪の地域で発電してもらう、そうしてそれを北陸へ供給する、こういうこともしております。そういうようないろいろなことをいままでもやっております。それから電気の融通の問題も、いままでもやっておるわけであります。ただそれをもっと一そう強力に推し進めていこうというのがこの法案の内容でございまして、独立した中部なら中部、あるいは中国なら中国というところの発電所あるいは配電とか、そういうようなことではいままででもやってはおりますが、しかしこれがやはり経営者のいわゆる考え方等によっては、どうもそういう面がうまくいかぬということもあるので、今度は法文の上に明らかに広域運営という点を打ち出しまして、そうしてそれをちゃんとやってごらんなさい、やりなさい、こういうことを書いておるわけでありますから、それをやってみてどうしてもうまくいかぬということになれば、これはもう板川さんのおっしゃるように進んでいかなければならないと思う。私はあなたのお考えに何も反対してこういうことを言っておるのじゃありませんけれども、こういう意味じゃ保守的といわれるかもしれぬけれども、一応うまくいっておるのに何でまたそう新しいものをつくらなければならぬのですか、こういうような感覚がありますので、一応やらしてみたい、こういう考え方であります。
  34. 板川正吾

    板川委員 この問題は水かけ論のようです。ただ一つだけ誤解のないように。それは、揚げ地発電の場合に、いまの計算でいえばそういう場合があります。送電費用にたくさんかかる、品物を持ってきてやったほうがいい、そうじゃなくてそれとは別、私の言うのは。九州で主として石炭をたき、石炭を運ばなくちゃならない東京なら東京では重油なり石油でやって、そうして高い九州電力東京の安いのと、一社ならばそれが平均した値段で国民に供給できるじゃないか、そういうことが一社なら可能じゃないか。そうすれば、何百万トンか知りませんが、九州から東京まで持ってくる膨大な輸送費というものは、これが国民経済の面からいえばなくて済むようなかっこうになる。それがために送電の費用は多少かかるかもしれませんが、いずれにしましても国民経済国家経済という上からいってそのほうがプラスじゃないか。だから、これを永久に続けるとそれだけマイナスの面もあるんだから、といって石炭はある程度確保しなければ安定供給になりませんから、そういう意味で私は一社化のほうがより経済的じゃないか、合理的じゃないか、そういう議論を展開したのです。しかしこの点については水かけ論で、何回やっても結論が出ませんから、これはけっこうです。  時間の関係で、広域運営について大臣に伺います。この広域運営をやれば、これを強化していくことによって、現在九分割の状態の電気企業におけるいろいろの矛盾がおおむね解消できる、こういう気持ちでしょうか。
  35. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私はある程度解消はできると考えております。
  36. 板川正吾

    板川委員 ある程度——それはやらないよりは、やればある程度は解消できると思うのですが、具体的に一体どういう効果を考えておりますか。たとえば、それはお互いに電力を融通し合ったり発電の相互の提携をして、非能率的な発電所を閉鎖し、能率的な発電所をふやす、そういうこともあり得るでしょう。しかも企業のワクをこえてそういうことを相互にやることによって、国民経済的な立場からいってプラスがありましょう。しかし具体的に、たとえば電力料金の格差でありますが、たとえばラジオですね、一般国民大衆のラジオ一台ついての一カ月の電灯料は二百五円だそうです。ところが、九州地区では二百九十八円、これは約五割増しですね。東京電力及び関西電力が二百五円で、九州電力の場合には二百九十八円、約五割増しです。東京とか大阪とか、国民所得の非常に高い地域は安い電力を使っておる。それで九州のように、全国平均からいうと半分以下だというような国民所得の非常に低いところには高い電力料を払わせている、こういう矛盾があります。広域運営によってこうした料金の格差が是正できる可能性がありますか、具体的にお伺いをしたい。
  37. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 具体的にとおっしゃるとなかなかむずかしい問題ですが、たとえば東北と関東、あるいは北陸と中部と関西というようなところでならば、かなりそこの問題が解決できると思いますが、北海道とかあるいはまた九州のような——北海道の場合は独立しておりますから特にそうでありますが、送電線でつながっておるとは言いながら、送電をすることによってロスが非常に多いというようなところでは、電力融通の関係だけでこの格差の是正ができるかということになると、なかなかむずかしい問題があると思います。しかし、たとえば中国はいま相当もうかっておる。だから中国でもし発電所をつくってもらいまして、そうして九州のほうへ送ったら、場合によっては私は格差の是正に幾ぶん役立つことはあり得ると思います。ただ、問題はこれだけでは片づかない。ということは、先ほどあなたが御指摘になったように、石炭という問題があるんです。九州には石炭がたくさんある。だから、どうしても石炭を使わなければ損だというので、九州方面では石炭火力というものが非常に多い。もちろん水力もございますが、ほとんど油よりは石炭でやっておるというようなところがございます。こういう面を考えてみて、そういうようなところに対しては、今後は何らかの措置をとって電力料金の格差の是正をはかるというようなことは、九分割をしておく姿においては、私は少し政策としては考えなければならないだろうと思うのです。しかし、これは広域運営のこととか、あるいはまたいま言いましたように電力融通、電源建設というような面からこれを解決しようとしても、九州の場合とかはなかなかむずかしい問題があると思います。しかし、それにしても九州の場合よりは、たとえば北陸などはずいぶん料金が安かったんですが、だんだん料金を上げなければやっていけないような段階になってきて、そうしてその格差がぐんぐんと狭まってきておるということは事実でありまして、格差を挾めるというのには二つの方法があるわけであります。安いところを上げるのもさることながら、高いところが据え置きで、安いところがどんどん上がってくれば、格差は是正ざれるわけであります。高いところが下がらなくても、安いところが上がっていくというような形において、いまのところ格差は順次是正はされておるわけでありますが、しかし、広域運営という形においてこの問題が全部解決できるかということになると、私は相当問題があると思います。
  38. 板川正吾

    板川委員 格差是正というのは、大臣、やはりさっき言ったエネルギーにおける三大原則ですか、豊富、安定、低廉という原則の上に立っての議論なんですね。なるほど全部値上げをして幾らにしろと、値上げをすれば全部格差はなくなりますよ。しかし、値上げをして格差をなくすというのは、これはさっき言った原則に反するんです。だから、格差是正というのは、私は現状の段階で、値上げをしないでそういうことができぬだろうかというのです。広域運営全国の五割も高いところがある。少なくとも関東、関西、中部、北陸等では二百五円です。だから、日本の半分以上のところは国民が一カ月二百五円払っている電灯料金を、九州の人は五割増しも払っているんです。だから、いま言った広域運営ではこれを解消できないんじゃないだろうか。解消できないとすればどうするか。大臣は、九州石炭を使うからある程度高いのはやむを得ないと言う。だから、そういう石炭を使うから高いのはやむを得ないというのを、さっき言った一社化ならば、安いところと高いところと調整ができて、料金制度というのが格差のないものができる。だから、結局それは現体制矛盾をあらわしておる。しかも、その矛盾広域運営では解消できないということをみずから証明しているんじゃないでしょうか、その点どうでしょう。
  39. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は格差の是正というのは、二つ分けて考えておかなければならぬと思います。一つ会社の経営の内容の格差と、それから今度は料金の格差であります。いまあなたのお話しになっておるのは料金の格差の問題だと思うのでありますが、これは九分割をされた後は順次——最初は、北陸を一としますと、たしか九州が二・二ぐらい、二倍ちょっとになっておる。それがいまのところは一・六になっておる。実をいうと、北陸のほうがそれだけに上がってきたわけです。逆に上がった。何も九州が下がったわけじゃないのでありまして、上がった。だから、そういうふうな傾向には向かっておりますということを申し上げた。だから、料金を全部一緒にしなければいけないんだということでありますれば、これは一社化ということでなければいけないんでしょう。しかし、いまそういうことをした場合に、料金を一緒にするんだということにしたならばどういう料金になりますか。おそらくは、たとえば東京が二百五円で九州が二百九十八円ならば、九州にさや寄せするんだ、九州に右へならえするんだと言ったら、そんな合併ならやめてくれというのが関東で油然として起こってきます。関東の人は、そんな料金が高くなってくる場合には、平均でいこうじゃないか、二百五円と二百九十八円の中の二百五十円でいこうといっても、九州の人は大喜びだが、やはり関東は反対します。そんなばかなことがあるか、これはわれわれの一つの既得権だということで、そこいらに、実際の政治運営の面でのむずかしさがある。そんなものは国で全部補給してしまったらいいじゃないか、そんなものは国で出したらいいじゃないか、そういうことを言われても、なかなか国で(板川委員「国で出せということは言っていませんよ」と呼ぶ)国で出せということになると、私は実際問題として、一社化することは非常に困難であると思います。たとえば東京が二百九十八円だ、九州は二百八十円だ、このくらいになってからの合併ということになれば、そんなに大した問題は起きないけれども、これだけの格差があるときに、それを一社に合併しようということになって、しかも国が補給しないということになったら、これはどこかがよけい持たなければならない、いままでの電気料金よりはよけい持たなければならない、よけい持つところからは猛然として反対が起こる、これは火を見るよりも明らかであります。そういうことからいっても、料金格差をだんだんなくしておいてからでないと、現実には合併するということはなかなかむずかしいのじゃないか、私はそういうふうに考えておるわけであります。したがって、いまこの段階において、こういう姿において順次料金格差を是正する方向をとる、そしてなおかつ運営がうまくいっていないということであれば、そのときになって考えていいのではないか、こういうところでありまして、何もあなた方と方向が変わっておるものではない。ただ私のほうはカメみたいなもので、あなたのほうはウサギみたいなものだ、しかしウサギはあまり飛びますと案外川へ落っこったりするかもしれませんから、そこらはぼちぼち堅実に、スロー・アンド・ステディという足取りでいきたいと思います。
  40. 板川正吾

    板川委員 いま私はラジオの一基についての値段を言いました。そのほか電力料金にいたしましても、九州全国の平均から見ますと一七%も高い、それから業務用電力料金においては二二%高い、小口電力料金は三五%も高い、大口は二〇%高い、こういうふうに高いのです。こういうラジオばかりでなくて、全部が九州は高い。これを合併したから、一社化したから、とたんに翌日から折半して料金をまん中にすると言うのじゃない、それは過渡期という段階が必要でしょう、何カ月か何年か知りませんけれども料金を是正するために過渡期的な段階が必要であります。合併したからといって、とたんに片方を上げて片方を下げるという思想は、われわれ社会党が天下をとった場合でもしないと思う。ただ、いまのままで電気料金の格差是正が広域運営じゃできないのじゃないか、だからラジオの例にとって、いまの電気料金の例にとって、広域運営でできますかと言ったら、大臣はできないと言うじゃないですか。できないというのに、電気料金の格差がなくなってからでなければ合併はなかなかむずかしい、しかしいま言ったように広域運営電気料金の平準化ができますかと言えばできない言う。そして料金の格差が一致しなければなかなか合併なんかむずかしい。その点、論旨に矛盾はございませんか。
  41. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は事実をもって御説明しておるのでありまして、料金の格差は順次解消しておりますということを申し上げておるのであります。最初二・二倍であったのがいまは一・五倍くらい、いわゆる五割高くらいにきておる。そういうふうに解消のしかた、料金格差の問題は、平準化という方向はいろいろあるけれども、格差はだんだんなくなってきておりますよ。これを順次なくするような形をしておいてから考えないと、もし国家から金を補給するということでなければどうしても一部のところは高い料金を払わなければならないということになる。私は、高い料金を払うということになればすぐに問題が全国一社化するのだ、三年後にはあなた方こういう高い料金を払えと言ったら、なかなかそうは簡単にいかないと思います。そこで私が申し上げておるのは、経営の合理化とかいろいろな問題もあるし、広域運営もありますけれども、それだけで何も格差がなくなると申し上げておるのではなく、やはり順次、そういうように国としての資金のつけ方とかいろいろな問題があります。これは料金関係、金利の関係あるいはまた会社経営のやり方、または将来安い発電方法があればそこへ重点的に採用するとか、いろいろの問題があると思うのです。私はその料金の格差是正という意味でも積極的に——消極的な面では片方が上がってきたから格差がなくなった、こういう場合もあり得る。いずれにしてもそういう現実に一社化をする場合には、やはりある程度格差の是正というか、料金格差がなくなったところで踏み切らないと現実問題としては非常な困難に当面する。政治といものは現実であります。理想を追っておるわけにはいかないのです。現実を踏まえたときにはやはり一歩一歩と近づいていくよりしかたがないのではないか、こういう考え方を持っておるわけであります。
  42. 板川正吾

    板川委員 それでは伺いますが、あなたは具体的に事実をお答えするというから、具体的にお答え願いたいのです。九州の高い電力料金全国平均から見ますと二割も三割も、場合によっては五割も高いこの電力料金をどういうような形で具体的に安くできますか。これはたとえば中国、四国と三社を一社化してそういう中でコントロールして、ある期間の中で平準化をはかるというような方法考えられませんか。この点は大臣はどうですか。
  43. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 それも一つ考え方でありましょう。それから電力というものはずっとこう非常にスピード早く融通されてきますから、東京が非常に力を入れて中部に力をつける、今度は中部が関西と一緒になって中国に力をつける、中国が今度は九州をカバーしてやる、こういう形においてもできるでしょう。だから私はやろうと思えばできないことはないと思う。しかしそれは株主の利益とかいろいろな問題がありますからなかなか困難な面もあるでしょうが、たとえば九州の場合は、いまなどは中国が非常に黒字を出しておるというようなことであれば、これは中国がある程度カバーしてやるということはできると思います。それはいわゆる発電の場合においてもあるいは融通の場合においてもできる。それはすでに東京東北に対して相当なそういう措置をしておることでもおわかり願えると思います。私はそういうことはやり得ると思っております。だからある程度はできる。しかしそれで全部のいわゆる格差の解消ができるかということになると、これはなかなか問題がある。そういうふうな積極的に解消する道もあれば、今度は片一方は、東京なら東京のほうは値段が上がるが、九州のほうはそのまま据え置きであるというようなことで料金の格差是正が行なわれる場合もあるし、いろいろあると思います。だから私はそういうような四ブロックの構想によって——日本の一社化をする前に、やはり四ブロックにしてやったらどうか、こういう考え方が出てくるのも一つ考えであるとは思っております。しかしそういうことをやる場合にも、いま私が申し上げましたように料金の格差というようなこととか、その他その場合においてこの四社を四つでやるのがいいか、一社でやるのがいいか、またまとめてやる場合にはコントロール・タワーか何をつくって、コントロールする規格をつくるとか、いろいろ問題があろうかと思います。いまやっておる広域運営ということは、ある意味ではそれをやるための前提とも言えるわけです。しかしもし一社化が実現するとすれば大きく前へ進むだろうと思っております。しかしいまの姿でうまくできれば何も無理をしなくてもいいではないか、こういう考えをわれわれは持っておるわけであります。
  44. 板川正吾

    板川委員 われわれの立場では、広域運営はうまくいかないだろう、いまのいろいろな矛盾広域運営という限界の中ではおそらく解消できないのではないか、こういう考え方に立っておるんですよ。大臣はこれをやってみてうまくいけばこれでいいではないかと言うのですが、将来の見通しとして広域運営はあくまでも私企業を前提にしております。さっき言ったように、片方を助けるために自分のほうで高い料金をやったらそれは利用者が文句を言う、そんなことはそういう経営が悪くなるような会社はうんと言わない、こう言うのです。しかしいまその考え方はいわば広域運営の限界を示しておる。広域運営はもうかったところで料金を平準化するために、ある程度もうかっているところはもうけを少なくしてがまんしてもらって、それをもうけの少ないところへ流して、そして平準化しようというのが広域運営でやっていこうというのでしょう。今度の場合にはそういうことも考えている。たとえば従来はメリットを折半主義であったけれども、今度はその利益は七分、三分で分けて、三分のほうでも、半分じゃないけれども従来よりはましだから、幾らか利益になっているんだからがまんしてもらって、七分のほうを悪いほうに回そう、こういうことも広域運営でやろうと言っておられる。しかしそれは大臣がさっき言った議論からいうと、割り前を少なく取ったほうの会社は経営が悪くなる。悪くなるというより、あるべきものからいえば、それは低くなる。だから、そこは文句を言いますよ。場合によっては、たとえば東京電力の株主としては、安いのを向こうへ流したために一割二分だ、——配当の制限があるかどうか知らぬけれども、配当はもっといいはずだ、あるいは株価がもっと上がってもいいかもしれないけれども、それが上がらないのは、広域運営で利益を大半向こうへやったからだ、こういう議論になるでしょう。だから、それは大臣がさっき言ったように、九州とそのほかを合わせて一緒にして二百五十円、片方は上げて、片方は下げる、そうすると高いほうは文句を言うだろうという。なるほどそれはそうでしょうが、それはやはり広域運営というものの限界を示しているのだろうと思う。そういう意味で、いま言ったような広域運営をやって平準化をねらおうとしても、不満が出てきますから、実際はなかなかそれに期待するわけにはいかない。だから、やるとすれば、やはり運命共同体的な一社化になっていけば、そこで時間をかけて平準化すれば、そのほうがスムーズにできる。だから、広域運営料金の平準化をはかるということは、私は実際には不可能じゃないか、広域運営をしなくても過去のように自然に平準化する場合はありますけれども、関西、東京のようなところと北海道なり九州なり東北なりという地域とは立地条件が違いますから、平準化はできない、平準化しようとすれば、これを一社化なりあるいは一社化の方向を向いた四ブロックなりの方向に前進しなければならぬのじゃないか、こう思っております。その点いかがですか。
  45. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は広域運営ではできないとおっしゃれば、これも少し言い過ぎだろうと思う。私はできる面があると思います。たとえば、いまあなたがお話しになったように、東京電力は一割の配当をしておる、しかしそれが現実に一割五分とかあるいは二割配当できるだけの余力があった場合に、五億や十億の援助をいわゆる融通の関係で向こうに回しても、法文の中に広域運営ということが書いてあるんだから、今度は非常にやりやすくなる。これがないと、何だ、会社はかってにやってはいかぬじゃないか、実はこういうふうに法文にも書いてあるので、われわれとしてはあなた方に配当ができないようなことはしておりません、ちゃんと配当もあるし、留保金も大いにつくっております、だからこの程度はやってもいいじゃありませんかということは言える証拠ができてくるわけです。私は、それですべての問題が解決するとは申し上げません。先ほど来申し上げておる。しかしこれでできないということじゃない。一歩大きく前進するということは御納得が願えるのではないかと思っております。
  46. 板川正吾

    板川委員 私は、今度の法律でそういう条項が載っておるからやりよくなるということはわかります。しかし考えてみると、これは商法よりも憲法上の問題がある。たとえば、いまの例でいえば、東京電力の株主とすれば、この法律自体に憲法上の疑いを持ちます。だから、それが一社ならそういう矛盾はないんじゃないか。そういう考え方です。それはいいでしょう。  そこで大臣料金格差と経営格差があるが、経営格差の現状をどういうふうにお考えですか。経営形態あり方を見ますと、供給規程はほとんど同じです。それから賃金水準もほとんど同じですね。そのほか税金等はもちろん差別はない。そうすると、経営の格差というのは発電コストと電気料金関係、こういう形になってくるんじゃないでしょうか。発電コストが安くて電気料金が高ければ経営内容がよくなる、格差がますますつくということになるが、経営格差の平準化ということに対して大臣はどういうお考えを持っておりますか。
  47. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は、経営格差の問題は、いま御指摘になったように、安い発電所、安い電力供給できるかどうかということ、それからどういうふうに高く売れるかということ、いわゆる利潤の問題だと思いますが、利潤の問題では、電気には二つの問題があるのでありまして、工業用の電力と家庭用の電力というものがあります。家庭用の電力と工業用の電力というのは料金がかなり開いておりまして、家庭用の電力がどんどん伸びる会社は非常にやりよくなっております。だから関西あたりは両方——経営のやり方もよかったが、安い発電所をまず持っておった。同時にまた家庭用の電気が非常にふえていったということから、関西が一番よろしい。その次は中国がいま非常にいいと思いますが、それから東京というような順になるでしょう。悪いほうからいえば、北陸とか中部とか東北あたりはかなり苦しい。また九州もかなり苦しいかもしれません。いずれにしても、いま御指摘があったような意味において格差がございます。格差があればいいところは少しくらいは一そういう意味広域運営をやるのなら、今後はひとつある程度はそういう広域運営的なやり方をしてもらう、あるいはそれ以上にでももうかるのなら、場合によっては料金の引き下げという問題もやってちっとも差しつかえないと私は思う。経営がうまくいって非常にもうかるということなら、料金を下げるというなこともあってしかるべきではないかと思っておるわけであります。
  48. 板川正吾

    板川委員 大臣指摘されましたように、定率法による減価償却を一〇〇として、それで経営格差を見たのです。そうすると、北陸が五七、中部が五八、東北が七六、北海道が七七、九州が八七、非常にいいのが中国の一一八、関西、東京が一〇〇という償却率になっております。中部と北陸が悪く、関西が非常にいいということになりますが、同じ地域の三社の経営格差というものを、広域運営によって改善できる方法がございますか。どうでしょう。
  49. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私はそれはある程度はできると思います。それは経営者の考え方にもよるし、——これはわれわれが強制するというわけにもいかないでしょう。しかし、ある程度私はできると思います。
  50. 板川正吾

    板川委員 私は、この電気事業企業形態の諸矛盾というのを、政府広域運営で強化して、これで解消していこうという法律でありますから、一体中国なり北陸なり、現状こういう経営の格差がついておるものを、ある程度それはやらないよりやったほうがいいかもしれませんが、どういう具体的な方法で格差の平準化というのを考えておられるのだろうか、実はそう思ったわけです。
  51. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 やはりこれは料金の値下げとか値上げという問題になるでありましょう。
  52. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、北陸、中部というのは、将来値上げ考えないと格差解消にならぬ、経営格差が解消にならぬという予想でありますか。
  53. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 まだ何とも言ってきておりませんから、私としてはそれは勉強した上でないとお答えできないのであります。
  54. 板川正吾

    板川委員 これは結論がさっきと同じようになるのだが、隣に関西電力というなかなか経営のよろしいところがある。こういうところだとたとえば当面一社化することによって、そういう値上げを阻止し得る余地があるのじゃないですか。こういう場合に、経営形態をそのままにして値上げせざるを得ないということになると、国民の立場からいえばまことに困るのであって、それは電気事業者が安い電力供給するというたてまえからいえば、企業形態は一社化が経済的なら一社化すべきじゃないか、こういう国民の声が起こるのは当然だと思う。
  55. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いや、国民の声、国民の声とおっしゃるが、国民にもいろいろございますから、使用者の側にもいろいろある。安いところ、たとえば関西なんかは、このままでよろしい、けっこうだ、こう言うかもしれない。中国あたりもこれでけっこうだ、そんなことはごめんこうむる、こういうことを言うかもしれない。私はそうじゃない。問題は、関西がよくなったというのも、実はポツダム政令によって、あの水源を分けるときに、関西に非常に有利に分けられたということが、今日関西の非常に優秀性をもたらしたわけなんです、東京でも同じであります。あのときに、実を言うと、北陸や中部はあまり分のいい分け方をしてもらえなった、分け前が悪かった、それが一つの大きな原因になっていると私は思います。そこで、電気は何としても、ほしいといえばどんどん売らなければいけません。売るには電気が必要だ。高い電気であろうが何であろうが、発電コストが高かろうが何しようが、とにかく売らなければならぬ。そこでつくっている。そこにつらさがあるわけですから、そこでどうしてもやっていけないということになれば値上げを認めざるを得ない、こういうことに帰着するわけであります。もっとも北陸あたりはまだ電気料金が安いわけですから、まだ上げたからといっても急に一ぺんによそよりは高くなるものではないでしょうが、いずれにしても格差の是正ということになりますと、やはりある程度料金に手をつけないと、料金自体の格差の是正もしなければ、経営内容、いわゆる会社内容の格差の是正ということもなかなか困難な面もあると思われるのであります。
  56. 板川正吾

    板川委員 もう一問だけで午前中は一応打ち切りたいと思うのですが、ちょっと料金の問題に戻るのですが、家庭用電気料が全国平均でキロワットアワーが十一円九十五銭、ところが大口の電力料金は三円六十七銭、その割合は百対三百二十六ですから、三倍以上になります。これは計算の事情はよく知りませんが、通産大臣の認可を得た料金でありますから、そういう制度が許可されておるということは、私はそれぞれの科学的な検討の結果だと思うのです。しかし、一般の人はこの家庭電力料が一般の大口消費者に比べまして三倍以上だということは、どうもどういう計算かなという気持ちを持っておると思うのです。  もう一つは、かつて電気、ガスということで同じ公益事業令に載っておりましたガスの関係ですが、ガスの場合には最低七十二立米が二十二円何がし、それでその百倍大口消費者七千二百立米、これが十九円何がしで、その差は約一割です。ガス料金の場合には大口消費と一般の小口消費との関係は一割です。先ほど大臣からガスの場合には一社化になっているからなかなかサービスが悪いというお話がありました。これは東京ガスならということでしょう。しかしガスの場合には、人のうちの軒下を通ったりしてパイプを通す場合に、万一おれのうちの軒下は通さぬという地主さんがいて使わせない、パイプを通さないという場合があるのです。だから、そういう障害があると申し込んでも急にはガスがつけられないということがある。これは私もガス会社を起こしたことがありますので、都市ガスをつくったことがありますから、それでなかなかむずかしいのです。そこにいくと、電力の場合には電柱を立ててやればいいのですから、まあ異論はありましょうが、比較的やりやすい。ところが、そのガスの場合には大口消費と小口消費との関係はそれほど差がないのですね。しかしこれも計算をすればあるいは大口がもっと安くなっていいのかもしれませんが、しかし、あれも大臣の認可を得ておりますから、計算をした結果なんでしょうが、とにかく一割しか差がない。そこで、電力の場合、一般の家庭使用者が大口消費者の約三倍の料金を支払っている理由というか、その根拠は一体どこにあるのでしょうか、これをひとつわかりやすく説明をしてもらいたい。
  57. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 まずガスの場合でございますが、ガスの場合は発生したガスをタンクにためておくことができる、それから圧力はどこも、大口であろうが小口であろうが同じであります。ところが電気の場合はそうはいかない、とめておくわけにはいかない。それから家庭にあれします場合は、変電所その他いろいろの設備も要りますが、とにかく細い線で持っていく、そして消費は非常に少ない。大口の場合には非常にたくさん消費してもらえる、そして一定の量をいつでも使ってもらえるということがあります。家庭の場合は全部消しておかれたってしょうがない。そういうことを言いますと、これはいろいろ問題があるのですが、実はそういう面がございまして、ガスと電気とは違うことはおわかりだと思います。また電気の場合に、大口と小口となぜそう違うのだろうということになっておるのは、いま言ったような理由のほかに、とにかく家庭に電線でもって電柱から持っていって、そうして一灯一灯つけて使うというのは、ある意味で非常にロスが多いわけであります。そこで電気の場合はやはり大口のところでどんどん使ってもらえる場合にはそういう面が非常に少なくなる、それから手間もかかりません、建設費もかからない、いろいろな意味においてよほど違いが出てくる、そういうのを現実にどういうふうに計算するかというのは、これは一つの方式がございますから、その方式を聞いていただくよりほかしかたがないのでありますが、一般論的に言えば、いま言ったようなことでどうしても差が開いてくるわけであります。
  58. 板川正吾

    板川委員 ではどうしてそういう単価になるか、ひとつ具体的な計算例を示して、あとで資料として出していただきたい。説明はいいです。  もう一つ、この間参考人を呼んだときに議論になりました遅収料金料金の収受のあり方ですね。電気、ガスは同じような供給規程でそういう計算方法になっておるようであります。それは検針をして二十日以内に金を納めた場合には、早収料金と称する普通の料金を取られます。しかし二十日以後一月間おくれますると、電気料金が一割増しになります。一カ月で一割という割合は、年十二割、複利で計算すればさらにふえるが、まあ年十二割に匹敵するんですね。とにかく三十日おくれると一割取られるんですよ。それはじゃ一年おくれたら十二割という意味じゃないんです。しかし、その一カ月間だけを言うと年十二割の割合になるというんです、一割よけいに取るんですから。これはどうも少し暴利じゃないか。金利取締法では日歩三十銭、これが最高の利息ですね。これ以上取ったら犯罪になりますが、この日歩三十銭より多い。割合からいうとこれは独占企業として少し行き過ぎじゃないかと私は思う。昨年通産省が、大臣は御承知かと思うのですが、ガスのほうは遅収料金一割はいかぬから半分くらいにするようにという通達を出して、ガス会社のほうはいま五%下げてきておる。ところが電気料金の場合には、東京東北九州、この値上げしたところだけは五%にしているんですが、それ以外のところは一割遅収料金として取っているんですね。これは私は、ガスの場合と同じように全国的に一割というのはやはり取り過ぎじゃないかと思うので、これはまあ五%よりもっと安くしたほうがいいと思うが、当面は五%程度全国一律にするように指導さるべきではないか、あるいは今度の法律で、大臣が、そういうふうに申請しなければ、変更できるという一項目があるようですから、それを私は全国五%程度に当面は指導の上で変更させるべきではないかと思う。東京九州東北ばかりじゃなくて、ほかの六社も。この間の木川田さんですか、そういう政府の御指導があれば、そういうこともしましょうという意味のことを言われておりますから、政府がイニシアチブをとって、ガスと同様にぜひ指導すべきではないか、この点どういうふうにお考えですか。
  59. 宮本惇

    宮本政府委員 実は早収料金、遅収料金という制度のことでございますが、終戦後御承知のように経済が安定していない時代におきまして、昭和二十四年に電気料金の集金率を高めるというためにアメリカの制度を実はならって採用されたものでございます。古い供給規程におきましては、実は遅収料金というものが一応基準であって、検針の翌日から二十日までに納めたのはいわゆるサービスとして一割まける、こういう頭でずっと来ておったわけでございます。しかし、先生も御承知のように、現在では大体早収内に入ってくるので、新しい料金制度におきましては、いま先生御指摘のように、早収料金というものを原則として、あとはその後何べんも取りに行くというような費用は多少算定のときに、配分の際に考慮するということで割引率を五%下げたわけでございます。したがいまして、いま御指摘のように、東京九州東北はやっておるのですが、残りの六つがまだ古い供給規程で、これはやっておりません。これは早く一緒にしろという御意見、まことにごもっともでございます。ただ、御承知のように、供給規程を直すということになりますと、従来の解釈でいけば、結局は総括原価まで上がるということになりますと、値上げが出るところもございますために、電気事業審議会あたりにおきましても早く新しい料金制度に移れと言われましたけれども、現実の値上げという問題も起きる場合もあるものですから、いままでおくれておったわけでございますが、そういう今後の問題といたしましては、総括原価に響かない範囲でそういうふうな、つまり消費者のためになるような制度を大いにやれということが言えるかどうか、なるべく言いたいわけでありますので、その辺は特に消費者に対するいろいろなサービスの条件が新料金のほうが進んでおりますだけに、早くそういう面でなるべく一緒にしたい。ただ、これがやはり総括原価に響くということになります場合もありますので、その辺は慎重に検討いたしまして、なるべく早く全国一本の料金制度にいたしたい、こう考えております。
  60. 板川正吾

    板川委員 なるべく早くというのは、いつごろになりますか。これは全くなるべく早くやってもらいたいが、二年も三年もかかりますか。一年あるいは次の料金値上げがあるまではやらないのですか、従来のように。
  61. 宮本惇

    宮本政府委員 総括原価をいじるということになりますと、やはり値上げの問題がありますので、そうじゃなくて、一般に概して軽微なものは別に直せるかどうか、たとえば今度できます審議会あたりでも御検討願って、そうしていつということを具体的に申し上げることはいまできませんが、至急検討いたしたいと思います。
  62. 板川正吾

    板川委員 中国や四国は経理内容から言ったってできるんじゃないですか。中国はさっき言った目一ぱいの定率法から言ったって一一八で有税償却もしておる。四国は定率一〇〇%の償却をやっておるでしょう。だから、こういうところでいま言ったようなことができないはずはないじゃないか。
  63. 宮本惇

    宮本政府委員 電気事業の会計というものは、たとえばいろいろな事情によりまして、あるときには事情が非常にいい、たとえば定率をこしておりますと、それだけダイレクトにもうかっておるかというと、実は過去の償却不足を補うというようなこともございまして、一がいに申せません。しかし、将来の二年間くらいを見通しまして総括原価で差しつかえない範囲のところは、やはりできるだけ早く新しい制度に移るように考えていきたいと思います。
  64. 板川正吾

    板川委員 これはひとつ、次の料金改定を待つということでなくて、できるところは早急に指導してやってもらいたいと思います。  それと、こういう制度が入りませんか。それは検針に来た場合には幾らかということがわかりますね。わかったら、それを指定された金融機関に払い込んだら、それは片方の電気会社のほうは集金手数料もないわけですから、この場合にはそれは割引してやるような制度があったら、集金手数料もなくなって、特に銀行が近所だとかあるいは郵便局が近所だとか、金融機関が近所の人なんか、非常に助かる。取引のあるところもついでに集金を待たずに振り込めばそれは手数もかからないし、危険もないわけです。そういう制度を組み入れて、そういう場合には一割でも安くして、それこそまさに早納料金として一割ぐらい安くしてやるような方法はありませんか。
  65. 宮本惇

    宮本政府委員 いま板川先生御指摘のように、金融機関に振り込むという制度は、現にやっておるところもあります。
  66. 板川正吾

    板川委員 割引しておりますか。
  67. 宮本惇

    宮本政府委員 割引はいたしておりません。ただ、これは平均的な問題でございますので、その点も、全体として全部がそういうふうになれば非常に集金の費用も助かるわけでございますが、個々の問題として検討いたしたいと思っております。
  68. 板川正吾

    板川委員 午前中はこれだけで終わりまして、午後また触れたいと思いますが、とにかく二十日から三十日おくれれば一割よけい取っておるのだから、検針に来たら即座に払うとかあるいは一週間のうちに払った場合には一割引くとか、何かそういうこともなければ一方的じゃないでしょうか。そういう点がある意味では、独占化のためにサービスが悪くなっておる。だから今度の電気事業法ではさらにサービスを強化するということが強調されておりますから、そういう制度も私は考えるべきではないか、こう思います。これについて大臣どうですか。
  69. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 今後御趣旨に従って検討いたしたいと思います。
  70. 二階堂進

    二階堂委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十二分休憩     —————————————    午後三時開議
  71. 二階堂進

    二階堂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出電気事業法案に対する質疑を続行いたします。外保田豊君。
  72. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大臣が来ませんから、少し事務的なことについてお伺いをいたしておきます。  まず、この料金制度関係ですが、これは省令が出ておりますね、この省令は今度新法が出たので、変えるのか変えないのか、この点をまず第一にお聞きしたいと思います。
  73. 宮本惇

    宮本政府委員 現在ございます電気料金の算定基準に関する通産省令でございますが、これは昭和三十二年ごろから、いわゆる電気判金制度調査会というものをつくりまして、二年間にわたって検討いたしました結果、答申された答申に基づきましてつくっておるわけでございます。現状から申し上げますと、新しい供給規程でやっておりますのが、御承知のように九州東京東北と三つでございまして、実は早急に新しい電気料金制度に移れというのが当時の答申であったわけでありますが、何分にも算定方式その他が多少違いまして、早急に移りますと、大部分の場合に料金の引き上げという結果になるということで、料金値上げのたびにこれに移っているというのが現状でございます。現在のやり方といたしまして、そのときの答申が今日でも妥当するとは思っておりますが、いずれはまたその後の事態、その他を入れまして新しくできます電気事業審議会等におきまして、根本的な検討はいたしたいと考えておりますが、現在のところすぐこれを変えるという気持ちは持っておりません。
  74. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると、三十二年ごろからできたいまの電気料金に対する省令、これは変えない、大体においてこういうことですね。そうすると、それに連関してもう一つ、いまお話が出ましたが、午前中板川君の質問の中にもあったわけですが、この新料金の省令に基づいて、要するに現在の料金のきまっておるのは東京東北、それからもう一つ九州、この三つですね。あとは全部二十九年の十月のいわゆる旧省令に基づくものですね。これは電気の審議会の答申によると、大体できるだけ早く現行の省令に基づく料金制度に改めたほうがいいと思う。ただし料金制度が、上がる公算が非常に多いので、時期等については非常に慎重に考えねばいかぬ、こういう答申が行なわれているわけです。そこで私は第二段としてはっきりお聞きしておきたいのは、現行の省令は変えないという前提ならば、現行の省令でなくて、それ以前の古い供給規程に基づいて行なわれておりまする現在の六電力料金は、これは当分の間、当分の間というのはいつであるか要するにわからないが、変えるのか変えないのか、これが非常に問題になると思うのでありますが、この点をはっきりしておいてもらいたい。
  75. 宮本惇

    宮本政府委員 先生のおっしゃいましたように、すぐ移りたいのはやまやまなのでございますが、御承知のように料金引き上げというものを来たす結果になる可能性がございますので、まあずるずるで今日まできておるというのが実情でございます。したがいまして、実はこの新しい電気事業法の制定を機に、本来からいえば一挙に新しい料金制度に乗り移るのが望ましいということは、われわれの立場から申しますと言えるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、ところによりましては料金引き上げを来たす結果にもなる。これは現在の政府の公共料金制度一年間の抑制という問題もございますので、そういうことのないところについてどうするかということは、これは最後には大臣のおきめになる問題でございますが、一応問題点を明らかにして早急に結論を出したい、こういうふうに考えております。
  76. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 非常に重大な御答弁です。大体いまの現行省令は新法ができても変えないという御答弁でしたが、これは間違いありませんね。そうすると、この新省令に基づく六電力料金改定を新しくやるということならば、大体口の子勘定でどのくらい上がりますか。年間総額でどのくらい上がるか。相当私は上がるんではないかと思う。新法が出たために、法律が改まったために必要欠くべからざるあれがあるならいざ知らず、法の体制を整えるためにこういう電気料金——さっきのお話では研究をして早急に結論を得たい、結論次第によっては上げるかもしれない、こういうことです。こういういいかげんな答弁では、今度の新法の意味は何も意味がない、こういうことになるのです。この点はもう一度局長から御答弁をいただいて、その結果によっては大臣からはっきり御答弁いただきたい。
  77. 宮本惇

    宮本政府委員 私は、決して新法ができて新しい電気料金制度に移行の機会に、六電力を全部、たとえば料金を上げるというようなことを印したわけではございませんので、実は新しい噴気料金制度は、先ほど来板川先生からも御質問がございましたように、消費者の面でかなり進歩しております。したがいまして、現在におきましても、すでに実施いたしました三つの会社以外は、確かに電力をお使いになる方々は御不便を感じておる面もあるわけでございます。ただ、たびたび申し上げておるように総括原価を当たってみないとわからないわけでございますが、これをやることによっては、場合によっては値上げということも起こり得るところがある。したがって、そういうところはなかなか一挙にはできないわけでございます。したがいまして、消費者の利便等のために総括原価をいじらなくてもやれるかどうかといった点で検討いたしたい、こう申し上げたのは、決して値上げを前提にそういうことを申し上げておるわけではございませんし、また、これは先ほど来申し上げておりますように公共料金の抑制の政府の方針もございますから、新法ができた機会に値上げをするということは、私としては先ほど来申し上げておりません。
  78. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大臣に念を押して聞いておきますが、御承知のとおり、今度新しい法律料金体系もはっきりしたわけです。しかし、その一番根本的になるのは三十二年に出た省令でありまして、現在の電気料金の算定に関する省令がございます。これが土台になって現在のいわゆる供給規程ができておるわけでありまして、そのうちで、新省令によっていまの電気料金をきめておるのは、東京東北九州、三つで、あとの六社はきめてないわけです。旧法に基づいてやるわけです。電気の審議会では、これを早急に新規程に改める必要があるんじゃないか、現在の六社のものは二十九年の十月にやっておるものです。旧の供給規程に基づくものであります。だいぶ違うわけですね。そこで、できるだけ早く新省令に基づいて料金制度を変えたほうがよろしいという答申があることは御承知のとおり。ただし、この時期については、料金等の値上げになる県もあるので慎重に考慮しろというただし書きが、答申にはついている。いま局長に私がお聞きしたのは、新しい法律ができまして、それの料金の実施規程としては現在の省令を当分の間はそのまま使う、こういうお話です。そうすると、それに基づいて、六電力について現行の供給規程というものを変えなければならぬということになると、私の大ざっぱな見通しでも相当料金が上がるんじゃないか。各企業企業格差をどうするこうするという話が、午前中の質問にもありましたけれども、これも電気料金を上げて企業格差をなくなすなら、ばかでもできることです。そういうことでなく、電気料金を下げる面で、電気料金全国的統一なり企業格差をなくしていくというなら話はわかるけれども、だんだん上げる方向へ持っていってやれば、企業格差もなくなるし、全国的な電気料金の統一もできる、こんなことはわかり切ったことですし、そんなことはいまのあれではないんですが、そこで、はっきりお聞きしておきたいのは、六電力に関しますいまの供給規程、確かに現行省令は以前のものであって、古い。古いが、これを改めない。改める場合には、少なくとも現行料金よりは六電力が上がらない程度の保証を政府はする必要があると思いますが、この点についての大臣の御見解はどうでしょうか。
  79. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は電気料金の問題で、将来これを上げるかあるいはまた下げるかというような問題については、いまの料金規程というものがございますが、その料金規程によってこの問題をすぐに検討するという意味では、審議会の考え方はなかったと思っております。要するに、どうしても新しく電気料金の問題を取り扱い、もう一ぺん改定させなければならぬような場合においては、新規程に基づいてやったらいいだろう、こういうように私は解釈いたしておるのでございまして、したがって、さしあたりこの新しい法律ができたからといって、残りの六つの電力会社料金の問題をすぐ洗って問題を処理しよう、こういう考えは持っておりません。
  80. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは、料金制度について大臣の来る前に局長にお伺いしましたので、続いて料金制度についてお伺いをいたします。  この料金制度法律に基づく基本原則というのは、大体において三つあるわけですね。適正な減価償却をやれということ、それから適正な利潤ということ、それから需用者を平等に扱え、この三つが原則になっておることは御承知のとおりであります。そこでお伺いしたいのは、旧法には適正な利潤ということばが出ていないんですな。省令には、たしか三条でしたか、四条でしたかにちゃんと出ているが、少なくとも本法には、適正な利潤なんということばはなかった。ところが、今回は十九条の一項に、料金の一番基本の条項をきめたやつに、特に「適正な利潤」ということを入れたのはどういう意味か。
  81. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 電気の持っております公共性といいますか、純然たる私企業とは違うんだ。すなわち利潤を上げるということにのみ力をいたしてはいけないのであって、やはり先ほど示されましたような三原則は守らなければいけませんが、しかしながら、それなりの利潤をあげるということだけではなく、「適正な利潤」という意味は、あまり利益の追求を急いではいけないというチェックする意味を含めて、むしろ省令などに譲るよりは本文の中で——独占企業として、一定地域を独占さして仕事をさしておるんだから、もうけようと思えば、ある意味では幾らでももうかることにもなる、そういうことではいけないんですよということをはっきりさせる意味で入れたわけでございます。
  82. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そこで、これは実際の料金との関係で言うと、この十九条の二項の適正な原価と適正な利潤ということが、総括原価主義というかっこうで出てくるわけであります。この総括原価主義というのは料金の大本であります。これを分析してみると、このくらい手厚く法律の保護を受けている私企業会社というものはないと思うのであります。御承知のとおり電力会社というのは、地域的な独占体であります。地域だけじゃない、あらゆる意味において独占体であります。しかも、ほかに供給者がないんですから、ほとんど全住民に関係をしてくる一つの特異な独占体であります。その独占体の料金をきめる土台が、要するにこの総括原価方式というものできまっておるわけですね。これを十九条は保障しておるわけです。この総括原価というものの中身を見ますと、省令の四では減価償却費と事業報酬と諸税金、それから営業費、これだけを要するに総括原価として全部ぶち込め、こういうことです。これをさらに分割してみますと、大体減価償却というものの中はどういうことになっておるかというと、第一に電気工作物といいますか、電気施設をするために外部から借り入れた借入金ないしは社債、そういったものの全部の元利償却分が入っているわけです。それから今度は、自己資金に相当する分ですね。これは要するに増資分と社内留保分、これも全部この減価償却の中へ——ほかの面もありますけれども、これが全部入っている、こういうことになるわけです。もちろん事業費であるとかあるいは諸税金、これも全部入っております。これはまあ当然でしょう。しかし、この減価償却と事業報酬ですね、この事業報酬の中には三つの要素がはっきり入っているわけです。私はまず第一に事務的にお伺いしたいのは、要するにこの減価償却は、いわゆる固定資産その他の評価額の——大体いま定額で言っているわけですが、定額というのはどういうふうにしてとっておるのかということを、まず第一にお聞きしたい。定率法その他の関係で、その違いと、実際にこの定額をどういうふうにとっておるのか。端的にいえば、いま行なわれている料金の算定の基礎になっておる年間の定額分は、現実に幾らかということをはっきりお聞きしたい。
  83. 宮本惇

    宮本政府委員 御承知のように定額法と定率法の相違は、毎年の償却を、たとえば二十年なら二十年の耐用年数に従って算術的に割るのが定額でございますし、あるいは毎年平等に平均して償却していくのが定率でございます。定率は特定の率でやってまいりますから、初年度が非常に多くてだんだん楽になるということでございます。それで、現在のこの料金に関する省令によりますと、値上げを申請する場合には、主として定額法によるという形をとっております。  ここでちょっと最近の数字を申し上げます。定率でまいりますと、これは三十八年度の下期の決算の結果でございますが、八五・八%、それから定額に比較いたしますと、一四三・九%、こういう数字になっておるわけでございます。したがいまして、なぜこういうことになったかということでございますが、御承知のように、たとえば料金の算定をする場合には、将来二年間のいろいろな要素その他からきめまして、一応料金をきめるわけでございますが、いまも申し上げました六電力会社の場合は、昭和二十九年当時の料金制度でいきますと、一年間のあれでございます。したがいまして、そのときにきめられました値段、電気料金が今日の実情に合っているかどうかといった点は、本来からいえば、もう一ぺん総括原価を見直すことになるわけでございますが、その辺が多少のギャップが出てきております。それは会社によっていろいろ事情も違いますし、先ほど来大臣もおっしゃいましたように、たとえば関西電力のような場合は非常に有利に出ているということで、こういう差が出てきておるということでございます。
  84. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私がここで特に総括原価主義というので問題にしたい点は、大きく言って二点あるわけです。一つは、私企業といえども、普通の会社といえども、これだけ手厚く何でもかんでも料金に、ぶっ込める、しかもこれは法律でですよ。ですから、いま言ったように、とにかく固定資産税評価額は三兆か幾らになっているでしょう。しかし、二十九年といたって、年々三千億ぐらいずつやっていますから、大体いまの約半分ぐらいしかないはずです。半分から六割だ。そのときに出した定額料金は、分け方の問題はまたあとから言いますが、私に言わせれば、それでも赤字が出ないというのはおかしいぐらい、その大もとが実はたっぷりいろいろなものをとってあるんですよ。そのうちで特に問題になっているのは——いわゆる借りた金をだんだん定額なり定率で返していくことは当然でしょう。しかし、同時に、御承知のとおり相当額の増資分をやっております。その増資分については、これはちゃんと一〇%の利益配当の保証ができておる。それは税金の関係や何かで非常にコストとの高いものになっておる。こういうものもちゃんとこれで返還ができるようになっておる。そのほかに内部留保というのがどんどんふえて、ことしあたりでは大体二千億ということでしょう。そうすると、ことしあたりの算定を大ざっぱに見ると、九電力全体の売り上げの総額というものは八千億ぐらいです。それでいわゆる経費諸掛かりと称するもの、経常費に相当するものがそのうちの大体六千億ぐらいでしょう。あるいは五千五、六百億ということだろうと思う。二千五、六百億円の経常的な余剰が出るわけですね。その中から、いま申しましたような借りた借金も確実に返済をしていく、それから減価償却分と称して社内留保にやったものもちゃんとやっていく。この社内留保がことしあたり約二千億くらいになる。それからさらに配当が半期一〇%ですから、年間にすると約九百億、利子がどのくらいになるかというと、これが約千二百億、そうすると、借り入れ金の元金の償却部分が千八百億、それから固定資産でもって、いわゆる内部留保でやるものが大体二千億、そして配当で払うものがかれこれ九百億、さらに利子として支払うものが大体において千二百億、合わせまして膨大なものがこの中に含まっておるわけです。もちろんそれでは足りませんから、新規の借り入れをしていることはよくわかります。しかし、こういう手厚い、しかもその中で何が保証されているかといえば、株券、株に対します増資分に対する一〇%の保証金というものがはっきりあるわけです。これを会社のほうから見れば、資金コストで見れば、二二、三%になっておって、べらぼうに高いものです。こういうものまで含めてちゃんとした保証をする。これはいわば賃金の原資です。これを法律ではありませんけれども、政令ではっきり総括原価と言って保証するいまのやり方というのは非常におかしいじゃないか、そうして、特に年々一応の総括原価を出して再検討はされるでしょうけれども、たとえば現在行なわれている料金制度というものは、六社については、二十九年ですから、現在から言うと五年か七年、相当前にできたものです。それから年々約三千億くらいの投資が行なわれているから、原資の土台になるところの評価額というものは相当変わっていなければならぬ。しかも、変わっていなければならないにかかわらず変わらず、料金制度はそのまま持っていってやるということはどういうことですか。よほどの余裕がなければそういうことはできないじゃないか。したがって、やはりここで問題にするのは、いまの一〇%という、これは法律で規定したわけじゃないでしょうけれども、一応のあれがあるわけですね。そういう一〇%の配当保証みたいなもの、実質上は保証していないけれども賃金で、料金ではっきり保証しているわけです。これはそれだけ入れていいということですから、保証していると同じことです。さらにいま言った報酬率の八%なり何なりというものはもう一度再検討する必要があるのではないか。特にこれが連関してくる問題は、こういう点はどうなんですか。大体借り入れ金が大部分というものを見てみますと社債ですね。社債の場合は七年でしょう。それからほかの長期借り入れというものは、実際は長期借り入れだけれども、実際この形は一年間の借りかえということにいっている場合が多いのじゃないかと思う。少なくとも七年ないしはそのくらいでやらなければならぬ。ところが、この規定によりますと、減価償却あるいは定率等を、あるいは報酬率等をきめる場合の年限というものは固定資産税の年限だ、こういうことですね。そうすると、固定資産税は水力発電については四十五年でしょう。火力発電が十六年ですか、二十年くらいになるでしょう。そういうふうなもので計算をしなければならぬはずです。もとのいわゆる財産——ところが実際に返すほうは少なくとも七年で返さなければならぬ。せいぜいやって十年で返さなければならぬ、ここに非常に大きなギャップが出るのではないかと思うのですが、こういう点から見て、総括原価主義というのはいかにも非常に合理的なように見えるけれども、内容はかなり怪しいものじゃないか、こう思うのですが、この点はどうなんですか。
  85. 宮本惇

    宮本政府委員 いまやっておりますいわゆる料金算定基準の方式というものは、先ほど先生お話がございましたけれども、たとえばガス事業においても適正なる利潤という形をとっているわけでございます。この制度は大体各国共通の制度でございますが、実はそもそものお話になるわけでございますが、電力会社、ガス会社のようないわゆる公益事業ということになりますと、しかも地域独占であるということになりますと、やはりそれぞれの地域において責任を持っているわけでございまして、したがいまして、普通のほかの企業のようにたとえば優勝劣敗でつぶれるというようなことが許されない会社でございます。したがいまして、やはりもうけ過ぎてはいけないけれども、損をさせてはならないというのが一応の原則だと思います。ただ実際の問題として、考え方としては一応公益事業である以上はとにかく一割が多いか少ないかは別でございますが、とにかく一定の原価に適正な——決して多過ぎてはいけないわけでございますが、一応適当な利潤を絶えず保証してやるということによっても安心してやっていけるのではないかということで、これは電気事業ばかりではございませんので、ガス事業も大体そういう算定方式に従っております。ただ問題は、御指摘のように料金というものはそうしょっちゅう上げられるものではないので、ギャップの出るそういうものが今日の実情に合っているかどうかという問題になるわけでございますが、本来ならば二年ごとに上げ下げして、とにかく絶えずこれをマッチさしておればいいのですけれども、なかなかそういうわけにまいりません。したがいまして、実情は料金をきめました当時とはだいぶ違っております。しかし経理的に非常に楽じゃないかという御指摘でございますが、やはり非常な膨大な設備産業でございまして、絶えず増大する需用に対して、いつでも開発をする開発資金というものは、なるべく内部留保によってやることによって、健全なると申しますか、とにかく安定した発展ができるということでございます。したがいまして、これを事務的に考えます場合に、ほかの私企業並みにそういうものを一切はずしてしまうことがいいかどうかにつきましては、公益事業の性質上やはり問題がございます。  それから配当が一割保証されておるという点、確かにある意味ではそうでございますが、絶えず膨張する電源開発資金をまかなうためには、たとえば増資をするにしても何にしてもやはりそういうものが急に下がったりするということになりますと、資金調達のほうはともかく、実はだいぶ前に一割二分であったものが一割に下がりましたために、社債市場その他におきまして電源開発資金の調達に非常に苦労した面もございます。たとえば銀行なりほかのそういう公益的な企業におきましても、一割とかある程度そういうものは実際問題として保証されておるという例から見ても、電気事業の特殊性から見て、やはりこの程度の保護は許さるべきではないか、ただしあまりもうけ過ぎたときには、また将来にわたってそうであるときは、大臣が申しましたように、むしろ料金の値下げという方向にいくべきであって、この程度の保護は決して手厚きに過ぎると考えておるわけではありません。
  86. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点はいま少しくこまかく事務的に聞きたいのですけれども、時間がありません。ただいまのお話で一割二分を一割に下げたからこの程度やらなければならぬというけれども、これは年々四、五百億ずつ増資をしておるわけです。御承知のとおりこれは二割の無償をつけておりますよ。そうすると資金コストはべらぼうに高いので、これを持つのは大部分銀行だろうと思う。銀行が自分のところで金を貸せるのはせいぜい一割、ところが増資に応ずれば一割五分から一割七分ぐらいに実際には回るのじゃないか、私は少なくとも一割五分ぐらいには回るのじゃないかと思う。結局両方で一生懸命やって、銀行へ元を返す、そういうかっこうで銀行に利子と両方で御奉公しているのは、実質上二千億をここえるのじゃないか、社債もおそらく大部分は銀行その他が多いのじゃないか、だからこういう点では少なくとも日本の金融資本というか、銀行資本のいろいろなあれから見て、これはもう少し考える必要があるのじゃないかという点が一つ。その土台になるのはいまの定額なり報酬率という問題になるので、この点は再検討する必要があるのではないかということを言っておるわけであります。  時間がありませんので次に移りますが、各個別配分ということ、これも要するに省令でやっておる。これは追っていってみると実に合理的にできている。このくらい合理的で公平にできているものはないと思います。しかし公平にできておること自体が実は非常な不公平じゃないか。もしこういう方式でやるならば毎年毎年要するに料金の配分を変えていかなければならない。ところがそんなことは事実上できるわけではない。現行のものは二十九年につくって、それをそのままやっている。その間に銀行の資産状態というのはどう変っておるかといえば約倍になっておる。にもかかわらず料金の配分は同じで固定しているということは、そのこと自体が大きな矛盾を持っておるのではないか。この前からずっと聞くと、あなた方は料金については政策を入れる余地は一つもない、これは全く事務的に、いわゆる合理性に基づいてやっておると言っておられる。ところがいま言ったような総括原価という料金の大もとのきめ方の中にも非常に政治が入っている。同時にこういう分け方のうちでも、とにかくもとの固定資産の評価額が倍になっても配分のしかたは全然それと同じだということは、非常な不均衡があるということを裏から実証しているものだと思う。また事実上この配分方式を正確にやるということになれば、少なくとも二年に一回は料金制度の改定をしなければならぬということになるはずです。それでなければほんとうのものは出てこないわけです。ところが事実上できるものじゃない。一回つくった料金というものは少なくとも五年なり十年というものはそのまま固定する。その間にいまのように電気の需用もどんどん変わってくる、激変をしておるという中で、この料金制度だけが固定をしておるというのは、そこに大きなギャップが出ると思う。したがって私はこの両面から見て、料金制度には現行のいわゆる経済的合理主義、公平の原則というほかに少なくともある程度政策的な考慮を加える余地があり、同時に加えざるを得ないというふうに考えるのだが、この点はどうですか。
  87. 宮本惇

    宮本政府委員 久保田先生のおっしゃったように、理屈といたしましてはとにかく十年前に一応きめた料金が現在あるわけでございます。その後の会社の経理なり内容が変わってきておるのは事実でございまして、本来の趣旨からいえば二年ごとに総括原価を見直して、そのつどそのつどやっていくのがいいという議論も成り立つわけであります。しかしながら電気料金はやはり公共料金、基礎エネルギー料金として長期安定が望ましいということで、現実の運用といたしましては、どうしてもそれがやっていけなくならない限りそれで参るというのが現状でございます。したがいまして、それがいいか悪いかという判断は別途されるわけでございますが、やむを得なかったのではないかと思っておる次第でございます。  それからいま先生のおっしゃいました政策料金をぜひとれという御意見でございますが、結論から申しますと非常にむずかしい。なぜかと申しますと、一定のきめられたワクの中でどこかを下げればどこかが上がるという形になりまして、結局ほかの負担者にしわがいくということよりは一応公平にこういう基準で分けたものをそのまま忠実に守っていく以外には現在の段階ではしょうがないのではないか。ただしそういう政策料金の問題その他を今後の新しい電気料金制度としてどうするかということは、将来また電気事業審議会その他でも御検討に値する問題だということは十分承知しておりますが、現在の段階ではこのシステムのもとにおいては政策料金の導入はむずかしいと考えておる次第でございます。
  88. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私はこまかく数字を用意してきたのだけれども、それはやめておきますが、要するに総括原価ということの料金の大もとのつかみ方がかなり可変的要素が入ったもので大体つくられておる。そうして今度は配分をするほうは、五、六年前と今日とは条件が違ってきておる。そこに相当の理論上の経理上の一つの余裕が当然できて変化があってしかるべきだ。これをどこへどう配分するかということは、やはり政治の問題だと思う。ですからこの点についてはどういうふうな方向にやっていいか、私個人の考え方とすれば、少なくともこういう面から考えてみる限り、一般家庭料金、特に四十ワット以下の最低額料金は外国に比べて向いのですからこれを下げることです。それから未点灯農家というものは、いま国が別に金を出してやっておるそうです。未点灯農家や何かは九州と北海道が重点ですが、ここらには特別な措置をしなければならぬと思うが、こういう点も、要するに内容にこれだけの幅があれば計算面は詳しくあなたのほうはやっておるのでしょう、しかしもとが狂っちゃっているのだから、しかもそれは経理上はつじつまが合っている、こういうことです。しかも経理の内容は年々よくなっているというのが今日の実情です。そういう中では、こういう問題も電灯会社の負担において解決すべきで、それに国が補助するという程度のことがいいのではないか。確かに未点灯部落と共同受電の問題については、政府はよく努力しております。私はこの点を大いに追及しようと思って資料をとってみた。しかし、ほかの面に比べると、この点は比較的よくやっておられるので、私はこの問題に触れることはやめます。こういう点は、あとわずかな金です。おそらく全額入れても百億にはならぬじゃないかというふうに思われます。こういう問題については、一年でやれということは無理ですけれども、やれるものなら東京電力等は現にそういう問題の解決に自分から着手しているわけですから、こういうことをやったらどうか。  もう一つの問題は、これは何といってもこの前も話がありましたとおりに、フェロアロイとかあるいはその他の電気を少ないコストでもって少なくとも三〇%以上使うような、いわゆる生産コストにおいて三〇%ないし二五%程度電力を食っている、しかも外国で非常に安いキロ当たり大体五十銭とかあるいは一円とかというところが相当あるようであります。こういうことについては、日本のこういう特別な部面の産業の電力というものは、私はまけてもいいんじゃないか、こういう点は政策的に今日の段階で調整すべき問題であるというふうに考えますが、この点について大臣はどう考えますか。これは大臣に聞いたほうがいいのかどうかわからぬが、局長でもどっちでもいいです。
  89. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 未点灯部落の問題は、今後も大いに努力したいと思います。  産業用電力料金値上げの問題でありますが、それは私はなかなかいろいろな問題があると思うので、簡単に御趣旨に沿うには、いろいろの措置をしてかからねばなるまいと思います。
  90. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それではこれから主として大臣にお伺いします。大臣に一番最初にお伺いいたしたいのは、企業体制の問題、これはいろいろの角度からの質問がすでに集中しておる。結論はどういうことかというと、私どもの見るところによると、しろうとかもしれませんけれども経済的に見てもあるいは財政的にみても、特に技術的に見れば全国一本化の条件というものはできている。ですから当然そっちへいかなければならぬというふうに思うのですが、この移行の過程や移行後の経営をどうするかという問題は、これは相当むずかしい問題です。これについてはもうあらためて聞きませんが、大臣どうですか、今度できる電気審議会でやはり全国一本化の問題、これを議題として真剣に取り上げて再検討する段階がぜひ必要じゃないか、こう思うのです。確かに電気審議会のほうでも一応触れてはおります。触れてはおりますけれども、これはまだ抽象的な触れ方であって、事実に基づいてやったのじゃない。少なくとも今度できる審議会においてははっきりこの一元化問題について検討すべき段階にきていると私は思いますが、大臣検討をさせる腹があるのかないのか、まあまあそういう問題は当分の間ごまかしておこうという考えなのかどうか、この点はっきり聞いておきたい。
  91. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いままで私からしばしば申し上げておりますので、この問題に対する考え方はわかっていただいておると思います。したがいまして、そういうものを審議会にかけるかどうかということについては、今後検討をさしていただきたいと思います。
  92. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点はあらゆる面から真剣に御検討の上で真剣にひとつやってもらいたいと思います。  そこで私は、今度の法律そのものについて言いますが、今度の法律を見ると、確かにいままでの法律よりも新法のほうがていさいが整っております。しかし私は三つの点で大きな後退をしておるのじゃないかと思うのです。一つは、どういう点かといえば、いま申し上げましたように、もう日本の電気事業を制約をしておる内外の諸条件というものは、特に技術的条件というものは、当然全国一元化、一本化ということをやらなければならぬ段階にきておるにもかかわらず、これに対しましては、いわゆる広域運営というふうな程度でお茶を濁しておるという点ですね。こういう点で一歩の後退をしておる。しかもこの広域運営ということを法律できわめて抽象的に規定をしておるという点では、非常に後退をしておると思うのであります。もう一つは、今度の法案全体を通じて、いままでの法律よりは非常に公益性というほうが薄くなってきて、私企業性といいますか、こういうものが非常に強く出てきております。この点についてはあとで具体的にお伺いしますが、料金制度その他についてもそうですけれども、非常に公益性が薄くなって、そうして非常に私企業性というものが強められておるという点が今度の法案の特徴です。これもいまの置かれた電気事業の産業的、経済的地位から見ると、決して適当ではない。もう一つの点は何かというと、これは電気事業の特質、法律の特質からやむを得ないことかもしれませんけれども、国の監督や、あるいは電気事業の公益的事業としてこれに加えるべき監督権なり、介入権の具体的な内容というものは、ほとんど全部省令にまかされておる。この法律の本文の中にはきわめて抽象的にしか書いていない。このことはどういうことかといえば、これは官庁がしっかりして、通産省がしっかりしておれば、これはますます電気事業の公益性をそういう面から具体的に監督、介入ができるということですが、へたをすれば通産省が、全くこれは九電力の下請になってしまう、あごで使われるという結果にならざるを得ないのでありまして、現在すでに——今度の広域運営の一番骨子になっておるのは何かというと、とにかく高い水力なりあるいは揚げ地火力なり、あるいは全国的な超々高圧送電線なり、こういう高いものはみんな電発でやらして、そして比較的有利な問題だけを九電力にやらせる、こういう体制の中で初めてあれがあるのであって、結局これは国家の犠牲によって九電力が非常にいい地位に立っておる。こういう基本的な構造になっておる。その構造を前提にして、今度の法律案を見てみると、私は以上の三点は非常に後退しておると思うが、この点については大臣はどう思いますか。
  93. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 広域運営というのを後退とごらんになるか、あるいは前進とごらんになるか、これは考え方の問題になろうかと私は思います。  それからいわゆる私企業の優先の形がこの法律に強く出たというお考えのようでございますが、われわれとしては、むしろ公益性のほうを強く前に押し出した考え方を持つわけでございます。  それから第三点の、これは通産省がまるで九電力の下請みたいな形になってしまいはしないかということでありますが、これは私は政治の姿勢だと思うのであります。私は自分に関する限りは、断じて九電力の下請などはやるつもりはありませんし、またやったこともないし、将来やらせようとも思っておりません。
  94. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私も福田大臣自体が九電力の下請になるとは考えておりません。しかしながら省令の一つ一つを全部あなたがお書きになるわけではないし、実行するのはあなたであるわけでもない。大体通産官僚と、いうものがやるわけですね。そうしますと、そういうことで、午前中にちょっとお伺いしましたが、たとえば、線下補償の問題一つをとりましても、ほかの省ではすでにやっておるのに、こっちはむずかしい点もあるかもしれませんが、まだ手をつけていない。こういう状態にあるのです。電力会社はこいつを一生懸命逃げて逃げて逃げ回っているのが実情です。こういう切実な問題一つについても、省令は一つもできていない、できてもなかなか実行できるような——この前、去年の八月でしたか四月ですか、やったのもいいかげんなもので、あれじゃ役に立たないというようなことになってしまった。こういう点で省令の内容は非常に重要なる内容を持ってきます。それにほとんど全部移しておるという点についてはあまり適当でないじゃないか、こういうことを申し上げておるわけです。そこで、私は私企業性を非常に強くしたという点について私の疑問に思うところを二、三お伺いしたい。  旧法では、電力会社の増資とか社債、長期借り入れ金、利益金処分等についてはすべて通産省の事前の認可もしくは許可が要ったはずであります。ところが今度はこれを全部とっぱずしてしまって、認可も許可も事前に要らないわけです。これはどういうわけですか。この点は私企業性が強くなったという一つのいい例だと私は思うのですが、その点はどうですか。
  95. 宮本惇

    宮本政府委員 御指摘のように、旧公益事業令におきましては、ただいまおっしゃいました点は確かに一々許認可にかけておった次第でございます。実は、いままでの旧公益事業令の規制のしかたがむしろあまりにもうるさ過ぎたという点もございまして、今回はそういう面につきましては、いわゆる行政簡素化という見地から一から十まで押える必要はないということで、必要なキーポイントだけを押えておるつもりでございます。ただ、ちょっと余分になりますが、先ほど来私企業性が強くなったと仰せでありますが、そのほかにいままでにない、たとえば業務の改善命令とか、そういう命令がいろいろ入りまして、われわれから見ますと公益性はむしろ強くなったのじゃないかとさえ考えている次第でございます。
  96. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 冗談じゃありませんよ。増資とか社債をどういう条件でどうやるかということは、要するにその会社の経理に非常に大きく影響してき、同時にこれは料金に大きくはね返ってくるわけです。長期借り入れ金、利益金の処分についてもそうです。これをただ行政簡素化のために取っ払って、それでもって公益性を強くしたなんというのは全く詭弁ですよ。そういうでたらめなことを言ったってだめだ。少なくとも公益事業である限り、国が相当の財政投融資もしておるという際には、これは会社経理の一番基本に関する問題です。この基本に関する点について届け出も何にも要らないなんというべらぼうなことはないじゃないですか。どうしてそういうめちゃなことをしたのだということを私は聞いておる。
  97. 宮本惇

    宮本政府委員 いま御説明申し上げましたように——いまそのほかに利益金処分の問題も認可制をやめたということをおっしゃったようでございますが、要するに、これにつきましては減価償却命令あるいは積み立て命令ということで、別の形で十分押え得るということでございます。たとえば株式の総数の変更、社債の募集あるいは弁済期間一カ年以上の資金の借り入れというようなことは、大体行政指導と申しますか、最後に結局利益金処分の認可にかわるような全体の帳じりを見ておりますので、そこまでこまかくやらなくても、決してルーズにしたわけではないわけでございまして、そういう株式の総数の変更——これは増資の問題もからむわけでございますが、そういうものは公益事業局の監督で十分目を光らしていけるという確信のもとであり、またほかのたとえば銀行なり鉄道なりのあり方を見ましても、そこまでこまかい規制をしているところはないために、そういうところは一応はずした、しかし最後のポイントは押えておる、こういうふうに考えている次第であります。
  98. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもいまの点は納得できない。  もう一つ、今度の新法では兼業禁止は前と同じように入っておりますね。これは事前の大臣の許可が要る。ところが投資については何の規制もない。これは悪く考えれば、電気事業が関連事業にどんどん投資をするということはあり得る。これをやり出したら、いまの一般産業と同じになってしまう。公益性というものはある面では確かにプラスになる点はありますが、この点の投資規制を全然抜いてしまって兼業規制だけにとどめたという点も、利益金の処分等の関係その他をずっと考えてみると、これは私企業性を強くしたというよりほかにない。この点を特にこういうふうにしたのはどういう意味ですか。
  99. 宮本惇

    宮本政府委員 確かに御指摘のように、従来も投資の規制はなかったわけでございます。兼業の規制だけあったわけでございますが、兼業のほうはみずから経営をする、投資のほうは、投資をした結果、たとえば何かはかのことをやったためにそちらで穴をあけて、公益事業の基礎をあやうくするということを押えるのが精神でございますが、そういう点につきましても、いままでの例からいってもそうたくさんはないということと、もう一つは、役人の能力からいって、一々この投資がいいか悪いかということの判断をするのは、実際問題として非常にむずかしいわけでございます。しかしながら、その辺はいままでに増しまして監査その他を十分に充実いたしまして、そういった逸脱のないようにいたしたい。また特に電力会社がたとえば特定のあるもののメーカーを始める、それが中小企業に圧迫を加えるというような点もないように、これは監査を通じて十分なる行政指導でやっていける、こう考えまして、いままでなかったものを特に新たに入れるというようなことはいたしませんでした。しかしながら、それはやはり厳重に監視はしていくつもりでおります。
  100. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大臣にお伺いします。  いまの投資の問題ですね。電力会社の資産内容が最近はずっとよくなっております。そうすると、私は必ずこの問題が出てくると思う。これを許したらたいへんなことになる。少なくともここで大臣は、関連投資といえども原則としてやらせないということくらいのはっきりした言明があってしかるべきだと思うが、どうですか。
  101. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は電力事業を監督するという立場から考えてみまして、兼業といいますか関連会社に投資するというようなことは、いままでもたくさんはやっておりません。そういうことをむやみにやるような電力会社の社長は、経営能力があまりない者だ。だからそういう意味で通産省は今後見ていくでしょう。しかし、それは全然そういうものを禁止すべきかということになると、私は事情によっては許してもいいものもあるだろうと思いますから、それはやはりいわゆる運営の面において十分監督いたしてまいりたいと思っております。
  102. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私は、電力会社の関連投資というものは厳格にとめるのがほんとうだと思う。そうでないと、とんでもないことになりますので、これは運営の面で適当にやるなんということでなくて、もっと電力一任の公益事業としての特殊性なり、地域独占事業としての特殊性なり——さっきも言いましたように、料金というものははっきりいいますと税金です。税金をとってやる会社が、これがもうかるだろう、あれがもうかるだろう、このほうが有利だろうということでやり出したら、とんでもないことになりますので、運営の面だけでなくて、もつと深刻に考えてもらいたい。  それに連関して、法令の違反に対する処分としては、十五条で事業の許可の取り消しということが規定してあります。ところが実際は事業の許可の取り消しなんてほとんどできるものじゃない。法令の違反とか不当なあるいは適当でない経営をした場合に、役員の解任命令というものを規定するのがやはり正しいだろう。せんだって木川田さんは、官僚の役員人事に対する介入は望ましくないということを言っておりましたが、電力事業がこれだけ非常な重要性を持ってきた段階においては、法令違反の場合はもちろん、不当な経営をしたとか不正の経営をした場合においては、当然役員の解任命令というものが大臣に出せるようにしておくのが、公益事業に対する国の介入の一つのポイントだと思う。これを特にはずして実際にできもしない——十五条の事業許可の取り消しなんというのは、何も実効のない規定です。これをきめてお茶を濁したのはどういうわけですか。
  103. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 非常に厳重な処罰でございまして、こちらの正当な監督に服さないというときには、いざというときには事業を取り消し得るんだというところまで規定してあるのですから、これは通産省の意向は十分に反映できる、法に規定いたしませんでも、そういう不当なことをしておるような重役がそのまま残っておるべき筋はない、そういう者は解任いたし得るものである、また現実にいままででもそういうことはやっております。だからこれであまり支障はないのではないかと思います。
  104. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私は、そうおっしゃるが、ほんとうの公益事業ということになれば役員の解任権くらいは持っておるのが当然だと思うし、全般として見ても、私はこまかく言いませんけれども、今度の規定は私企業性ばかりうんと強くして、国が公益事業として当然これに介入したりあるいは監督をしたりするという規定が非常に後退しております。いまさらこれをかれこれ言ってもむずかしいことでしょうから、私は言いませんけれども、この点は運用上からも、あるいは政令をつくる場合にはよほど注意してやってもらわないと困る問題だと思いますので、よく注意していただきたいと思います。  それから今度の電気の工作物の安全性に対する規定というものは、大体においていままでよりはかなり完備したようなかっこうになっておるわけですね。これはいいことだと思いますが、ここでお伺いをいたしておきたいのは、五十二条の四項というのがあります。これは保安規程です。電気事業者並びにその従業員は保安についての特別な責任を負うという四項があります。これはへたにすると、労働組合の弾圧法規に使われる危険性が相当多い。現在でもスト規制法がこれにかけられておるわけですが、もう今日の段階で電気事業だからスト規制をなくしてはいかぬという考え方は私は古いと思う。その上にさらにこの五十二条の四項で、ストライキその他に対して弾圧するという可能性は相当ある。これについては大臣としてはどういうふうにお考えになっておるのか、この四項の運用について特にはっきりさせておいていただきたいと思います。
  105. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御承知のように保安ということは、電気ばかりではありませんが、あらゆる事業にわたって保安の重要性ということが今日強調されておるところであります。そこで今回の電気事業の場合においてもこの保安の規定を置いたわけでありまして、その趣旨は人命尊重というような点に重点を置いておるので、労働組合の弾圧というような見地からこの規定は全然考えておりません。でありますから、その点は明らかにいたしておきたいと思います。
  106. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ところがたん保安規程が規定をされて認可になる、そうしますと、ストその他の場合において、労働組合といっても多くの場合は保安要員だけ残します。ところがこの保安要員をどれだけ残すかということの決定権は、おそらく会社の業務命令というかっこうで出る。この点について必ずしも組合側の保安に対する見解一つでない場合が相当出てくる。そういう場合に、この四項が非常な組合弾圧に使われる危険があるわけです。だからこれについては、保安規程の中にそういう労働組合の弾圧には使わないという一項を入れてもらえるかどうか、これをはっきり返答してもらいたい。
  107. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 お気持ちはわかりますが、そこまでは私は無理かと思います。しかし、ここで私がはっきり言明をいたしておるのでありますから、そういうことは法文の解釈の上においてもあらわれてこないと思っております。
  108. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 立法というものは、そこで幾ら立法者がどう言ったって、法律になって出てしまえばそれでもってやられるのですから、これはどうせ保安規程というものをあなた方のほうはつくるわけだろうから、そういう場合は使わないといって特にはっきり断わることはできないかもしらぬけれども、少なくともこれを労働運動の弾圧のよりどころにするというようなことだけは、厳に慎んでもらいたいということを申し上げておきます。  それから主任技術者というのがきめられる、これは非常にいいことだと私は思う。しかし、この人たちがいろいろ間違ったことをやった場合に、この主任技術者の解任というのは規定がない。間違ったことをやったり大きなミスを犯したりした場合にはどうするのですか。
  109. 宮本惇

    宮本政府委員 その点につきましては、実は解任命令の問題もございますが、主任技術者の免状そのものを取り上げてしまうということで十分やっていけるのではないか。解任という場合には、そのポストを解任されてまたよそへ行くという可能性も考えられますが、最悪の場合は免状そのものを取り上げてしまうということが規定してございますから、その点は心配はないと思います。
  110. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点の免状を取り上げるということは、その人の一つの資格というものを取り上げる、これは最悪の場合には当然でしょう。しかしながら、免状を取り上げるとまでいかぬまでも、当然解任をするという規定があっていいのではないか。資格は持っておるけれども、大きなミスをしたとか、あるいはサボったとか、あるいは何かという場合にこれを解任するということは、行政監督上当然やるべきことじゃないか。それを特に抜かした理由が私にはわからない。
  111. 宮本惇

    宮本政府委員 役所が解任命令を出さなくても、その会社あるいは電気事業自体が解任すればいいわけでございまして、特に役所からの解任命令でやめさせる必要はないのではないかというふうに判断したわけでありまして……。(久保田(豊)委員会社にまかせる……。」と呼ぶ)もちろんその点はこちらが見ておるのでありますから、そこまで直接におまえやめろということは、会社の人事権に対する一種の侵害ということもあって、やめたということであります。
  112. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一つ電気工作物について、今度は特に大きな事業会社、工場等との間にはあまり起こらないと思いますが、一般との関係で起こるのは、つまり電気の保安調査については指定機関を指定することができる、こうなっておる。この指定は会社がやるのか、それとも政府がやるのですか。それとこの指定を受けた機関のいわゆる経費というものはどこが持つのですか。この点をまず第一に事務的にお聞きしたい。
  113. 宮本惇

    宮本政府委員 この指定は政府がいたします。その経費というのは、要するにいままで御承知のように電気料金供給規程の中に当然こういうものの分がとってあるのでございますから、ここから出すので、別に国が出すわけではございません。したがいまして、ただ実際問題としてこういうものがどうなるかということは、そういうりっぱなものができるために初めて指定するので、しゃにむに頭からこれをつくろうという意味ではなくて、そういうものができたらそれにやらせるということで、実際問題として電力会社がやるのと何ら変わりはないということにいたしたいと思います。
  114. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると、いまのお話では、もうすでに十九条でそういう金が会社のほうでとってあるから、会社のほうから結局金を出すということですね。そうすると、会社の下請になってしまいませんか、それでいろいろの問題でもって事業者が会社側の意図ばかり受けて検査をやるということになりますと、非常な圧迫をこうむりはせぬかということが一つ。もう一つは、問題が起きまして、たとえば配電施設から火事が起きたというときの責任はだれが負うのですか。いままでは会社です。会社が負うのか、この指定機関が負うのか、あるいは個人が負うのか、この点が必ず問題になる。もう一つの問題は、従来電気の工作物についてのいろいろな電気工事の代金については、見積もりについての紛争が相当出る、これは中小企業に多い。その場合のいわゆる調停というものは、いままで主として通産がやっていたわけですね。ところが今度はこれをどこでやるのか。この三点について明確にしてもらいたい。
  115. 宮本惇

    宮本政府委員 確かに業務の委託は電力会社がいたしますが、いま先生の御心配のような点にならないために、特にこの法律で条文をつくって、われわれの監督権を厳重にいたすわけでありますから、その御心配はないと思います。  それから第二点の、責任はだれが負うかでございますが、従来でも電力会社が負っておったわけで、当然この指定調査機関が負う、したがって、もし何か起きた場合に、十分補償なり何かやれるような経理的能力を十分しんしゃくした上でやりたいと思います。  それから第三の点は、いままでと何ら変わりないので、やはり通産省が間に入るということになっております。
  116. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると、配電の工事のミスで火事が起きた場合、これはだれが弁償するのですか。会社ですか、それとも指定機関がやるはずはないと思うが、どうなんですか。
  117. 宮本惇

    宮本政府委員 このミスの原因によるわけでありますが、従来と同じでございまして、会社に責任がある場合には会社が負う、それから設置者に責任がある場合にはということで、その点は従来と何ら変わりはないと思います。
  118. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは最後にもう一つだけお聞きします。  私はこの前の参考人のときにもちょっとお聞きしたのですが、たいしてはっきりしなかったのですが、これからの電気事業の国民的な見地から見て一番重点になるのは、何といっても電気公害の問題ではないかと思うのであります。御承知のとおり、非常に電気が大容量化してきた、ふえてきたということ、容量が非常に大きくなったということ、それからさらに石炭も、また特に重油もよけい使うようになったというようなこと、それからさらに発電自体が山の中ではなくて、町の近くにどんどん出てきたというようなこと、こういう観点から見て、この公害問題をどう解決するかということが、私はこれからの非常に大きな基本的な、最も重要な課題ではないかと思う。これに対していままで会社も、役人も、同時に一般もわりあいに無関心できました。しかしながら、これから急速にこの問題が具体化せざるを得ない段階になってきておると思います。そこで私は二、三具体的な点をお伺いしたいのですが、そのうちでも特に一番問題になるのは何かというと、やはり重油発電所から出る亜硫酸の問題だと思う。ここで私はまず第一に、いまの大気のばい煙規制法に基づくと、あの政令で御承知のとおり、この排出基準は〇・二二%ということにきまっておるわけです。ところがあの〇・二二%というのは、大体発電所からいえば、せいぜい二十万キロ程度のところなら、あれでもどうやら役に立つ場合もあり得る。ところが現在のように容量が大きくなって、百五十だあるいは何だということになると、かりに逆転層その他の気象条件の特別の条件がなくても、いまのここではとうていこれはだめです。これではだめということになる。そこで、私は、これら公害についてまず第一に必要なことは、やはり公害防止と——いまは大体公害防止についてはたくさんの法令に書かれてきておりますが、法律としてはばい煙防止と水質汚濁と二つです。ところがこの電気に対する公害は非常に種類が多いわけです。種類が多いが、こういったものを総括をした防止規定というものを法律でつくる必要があると思う。特に本法においてもいろいろ人命にどうだとかこうだというようなことがあるが、この中には事業計画を出す場合においても、あるいはこれを認可する場合においても、いわゆる公害防止というものを含めてないように私は思う。この点はどうかという点、この規定の中に保安その他の規定がたくさんあります。これには公害防止ということはほとんど入ってないように思うが、どうなんですか。
  119. 宮本惇

    宮本政府委員 この四十八条の第二項の第一号に「電気工作物は、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。」という規定がございます。実際問題といたしましては、ここできめられます技術基準の中に、それぞれほかの法律関係その他を含めまして、そういう技術基準をつくりたい、それによって規制をしていきたい、こう考えております。
  120. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これはもうただ単なるそういう技術基準を規定したってだめです。大体発電所の立地、それから発電所の工事計画の中にいわゆる公害防止の規定が織り込まれていなければ実際には何もならぬ。ですから、そういう点から見ると、私は、これらの問題についてそれぞれの政令をつくるでしょう、そういう場合に、単なる技術基準を持ってきても、これは技術そのものの内容といいますか、手続基準が中心になりそうな心配があるのです。そうではなくて、これは別個のこういう公害防止の法律をつくるのが、私は一番いいと思う。少なくとも電気工作物についてはそういう公害防止をはっきりと織り込んだものをつくる必要がどうしてもあるように思う。ただ保安とか、電気工作物の維持とか、ここだけでは不十分でありますので、この点はもう一度真剣に考えてもらいたいと思うのでありますが、どうですか。
  121. 宮本惇

    宮本政府委員 その点は御指摘のとおりでございまして、全体の発電所の立地そのものが、たとえば通産省の所管になっている産業立地計画その他とも十分関連がございますし、またそれらの点で、公害の問題は沼津その他にも調査団が出ておる次第でございますから、そういうところは横の連絡を十分にいたしまして、そういうことのないようにいたしたいと思います。
  122. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 時間がありませんからこれでやめますけれども、公害問題については、いまのような程度の取り組み方ではだめですということを、はっきり申し上げておきます。とにかく、第一に、公害については基本的な総合的な法律をつくる必要がどうしてもある。それはなかなかむずかしいでしょうが、少なくとも電気公害というものは非常に重要なウエートを持っていますから、電気については少なくとも独特の総合的な規定なり何なりをつくって、そうして発電所の立地から工事計画から保安規程から、その他一切を統一するものをつくらなければだめだということが第一であります。そしてその中では、いまのばい煙規制法で言っておるような〇・二二では、これからの大容量の発電所には役に立ちません。かりに気象条件が非常によくても、現在のような煙突を高くしてやるとか、拡散させるとかいう程度の施設ではだめであります。私もいろいろ研究してみましたが、あれだけでは少なくとも五十万ないし百万以上の大容量のものではだめになってしまう。こういう点は新しい基準をここでつくる必要がある。それから、何といってもそういう公害防止の施設をつくると同時に、いまの段階における公害防止技術の完成をするよりほかない。ところが技術というものはまだ始めたばかりでほとんど何も緒についておらない。この技術を、官民合同して早急にこの公害防止の技術対策をつくる必要がある。それからもう一つは、とにかくいま官庁なり会社のこれに対する取り組み方が不十分である。通産省でもどのくらいのことをやったかというと、産業公害課というものができて、その今年の予算は幾らかというと全体で千八百万円です、千八百万円では今度の伊豆の調査をやるだけでも五百八十万円かかるのですから、一カ所やればあとは何もできないことになる、こういういいかげんな貧弱な予算や機構ではこれはとうていだめです。ですから、私は、これは決して公益事業局長という一局長の問題ではなくて、少なくも内閣としてこの問題については本格的に取り組む必要があると思う。そして、問題の解決東京とか大阪みたいにもう公害が病膏肓にいって、ちょっとやそっと手をつけたって効果があがらないというようなところは、あと回しにするよりほかしかたがない。むしろこれから新しくできる新産都市とか、工業整備地域とかこういう地方の、公害がまだ十分出ないようなところについて最初から計画的に、根本的にすべての公害というものの防止ということを入れてこなければ、これは問題にならないと思う。そういう意味で、いまの政府というのはへっぴり腰で話になりません。ことしどうというわけにはいきませんが、特に電力問題が公害問題についてはどうしても中心になる。ですから、これについては通産大臣として、もっとずっと違った広い視野からこの問題の重要性と取っ組んで、いまから準備をしてもなかなかうまい芸当にはいかぬと思いますけれども、この点については特に真剣に取っ組んでいただきたいと思います。少なくとも来年度から画期的にこういう点で準備をしてやらす必要があると思いますが、この点はどうですか。
  123. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御趣旨全く賛成でございます。
  124. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは私この程度にしましょう。
  125. 二階堂進

    二階堂委員長 加賀田進君。
  126. 加賀田進

    ○加賀田委員 先般、電気事業法に基づいて、わが国の電気事業の将来のあり方について大臣にいろいろ質問をいたしたのですが、そういう基本的な問題はもう私も質問いたしました。  具体的な問題に入りたいと思うのですが、先般最終的に、時間もございませんでしたが、いわゆる電源開発あるいは送電線下の問題等について、特に用地収得について、地方公共団体と電源開発を行なおうとする九電力並びに電発等に、いろいろ補償問題についての矛盾の点がたくさんある。いわゆる電源開発をしようとすれば、それに便乗して、すでに耐用年数を経たような公共施設を、開発しようとする電力会社に負担させようというような状態がある。もちろん電源開発をしようとすれば、長い将来にわたっては地方公共団体あるいは地域的に非常に貢献する点もあるでしょうけれども、当面の利害関係で、通産省と自治省とが絶えず論議を展開しなければならぬということが起こっておる。また従来も起こっております。あとで同僚議員も質問があると思いますけれども、公益電気事業の復元問題においても、これは十数年にわたって通産省と地方自治体を代表する自治省とが相当論議を展開したという問題が起こっております。そういう意味で、大臣は努力いたしますという簡単な答弁で、私は終わったわけですけれども、これは何としても地方公共団体を統括しているのは自治省ですから、自治大臣と通産大臣とが相当腹をきめなければ、そういう矛盾解決をすることが私は困難だと思う。したがって、この際明確にしておいてもらいたいのは、大臣として、一体どのように地方公共団体と電源開発をしようとする事業との間に起こる用地買収等についてのいろいろな矛盾解決しようとしているのか。この点を明確にしておかなければ、将来またぞろ同じような問題がずっと継続されてくるのじゃないかと思うので、大臣として明確に御答弁願いたいと思うのです。
  127. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 地方公共団体との間でいろいろの問題が起きておることは事実でございます。しかし、これを通産大臣の権限と自治大臣の権限とをどういうふうにかみ合わせていけばいいかということになりますと、なかなかむずかしい。ということは、自治大臣というのはそれだけの権限があるかどうかということが、まず第一に出てきます。自治大臣に完全な権限があれば、少なくとも電力会社のほうはわれわれのほうで押え得ると思うのでありますが、なかなか自治大臣というものはそれだけの権限はない。ある程度勧奨はできるし、無理を言うなということぐらいは言えると思いますけれども、地方の長官が断じてそれは困りますと言ってがんばった場合に、はたしてどこまでやり得るか、なかなかむずかしい問題であります。要するに、これはお互いが常識をもって無理をあまりしないというところへ順次落ちつけて話し合いをつけていくということが、現段階においてはやむを得ない姿ではないかと思っております。
  128. 加賀田進

    ○加賀田委員 地方自治団体が財政的に単独事業で規制されているものについては、そういうことが私は言い得ると思うのです。しかし、学校にいたしましても、文部省が二分の一とか三分の一の補助金を出して改造や新築をする。あるいは橋梁にいたしましても、やはり建設省などの基準に基づいて補助をしなければならない。ところが、今日地方自治体の財政的な貧困の中で、そういうことができない状態がここに起こっておるわけです。政府として、その補助金を、耐用年数が来ていわゆる重量規制までしているような橋でも、政府が補助金さえ出せば自治体としてやりたい。しかしなかなか補助金を出してこない。単独事業として自治体が独自にやるだけの財政的の能力がない。そういうような場合には、やはり何としても政府の施策の一環として問題を処理すべきが私は妥当であると思うのです。この際電力会社がうまくやるからそれにまず便乗しよう、こういう意思も働くでしょうけれども、まず政府の全般的な政策の中でそういう財源的な裏づけをある程度やって、全部を電源開発に負担さすような態度というものは、私は是正しなければならぬのではないかと思うわけです。そういう点で私は質問しておるのです。
  129. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御趣旨は全く同感でございます。そのとおりであるべきでありますが、なかなかいまのいわゆる選挙制度によります知事あるいはまた県会議員とか、そういうようなものは、やはり地方の利害の問題にかなり重点を置いていく場合がありまして、また現実の部落あるいは村民あるいは町民というようなものが非常な反対をする。そして何とか電源開発をやりたいというと、じゃまをする。しかし、電力会社というものはどうしても電力供給しなければならない義務があるものですから、ある程度そこで妥当する一定の時期があります。やはりいつかはきめなければならないということなんです。だから、問題は、そういう問題については公共補償基準をつくるということが一番大事です。これは内閣におきましてもいまそれをやらなければいけないといって、われわれは努力をいたしておるのでございまして、私は、自治大臣との話し合いではなかなか問題は解決いたしかねる、かように考えておるのであります。
  130. 加賀田進

    ○加賀田委員 了解しました。  それでは、先般もちょっと質問に入ったわけですけれども、民有地あるいは家屋等の補償について、先般新聞にもまぼろし部落とかいろいろな問題が出ておりました。既存のそういう土地とか家屋については当然適正な補償をしなければならないと私は思うのですけれども、それに便乗した、いわばそういう計画をうまく察知して、事前にその重要な一部の土地を買い取るとか、あるいは買収目的に不必要なバラック等を建設するとかいういわゆる不正な問題について、聞けば法的な措置がないから、電発等ではこれはしょうがないというようなことを新聞等で見ておりますけれども、そういう補償獲得の計画性のあるような悪質なものについても補償する必要はないと私は思うのです。その点について、政府として今後どう対処するか、法律的な規制がないからやむを得ない、それは電力会社とそれらの人々との折衝にまかすのだという従来のような態度であるのか、この点を明確にしてもらいたい。
  131. 宮本惇

    宮本政府委員 先ほども申し上げたのでございますが、ただいま御指摘のまぼろし部落というような問題につきましては、われわれといたしまして、電気事業法をつくりますときに、実は電源開発予定地域というような制度を設けて、あらかじめ予定地域に指定したら、あとから入ってきてももう補償はやらぬというような制度ができないだろうかということを、いろいろ研究いたしたのでございますが、やはり何ぶんにも私権の制限というようなことになりますことと、またまぼろし部落ばかりではなくて、ほかの道路の問題でも同じような問題があるので、これは別途共通の問題として、たとえば土地収用法を強化するというような方向で別に検討しようということで、この法律からは漏れたわけでございます。したがって、政府全体としては、そういった点をどうするかは今後慎重に検討して、何とかそういう制度をつくりたいというふうに現在は考えておる次第でございます。
  132. 加賀田進

    ○加賀田委員 考えているだけでは困りますから、そういうことについて、正は正、不正は不正として明確な態度でやはり処置すべきだと思います。もしそういうことが許されるとするならば、結局法の裏をくぐって非常に悪いことをした人が得をする、そういう悪い思想というものが出ることがありますから、ぜひともそういう問題は早急にしてもらいたいと思います。  それから線下補償の問題についても、すでにいろいろ質問がありましたけれども、大体戦後の、相当民主主義が発展して、一般意見を述べるような社会通念になった範囲では、繰下補償というものは相当なされている、いろいろその価格については問題がありますけれども。しかし、いわゆる終戦前の送電線等については、まだ線下補償等もなされていない。やはりこれは人間として比較して、不平等のものについては相当不満が出てくるだろうと思うのですが、相当膨大な金額になってくるんじゃないかと思う。聞きますると、電発においてもすでに線下補償が年間百五十億とかなんとかいうことを言われておりますが、そういう膨大な財源を必要としますけれども、戦前の送電線等における線下補償というものが最近意見として出ておりますが、それらに対してどう対処するのか。財源が相当要ってもするのか、あるいはそういう問題については、戦前のことだからということでしんぼうさすのか、その点をひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  133. 宮本惇

    宮本政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、もちろん実際に電線が通っておる場所によって、すぐ金を請求される場合と、そうでない場合とございます。しかしながら、たてまえとして全部ただでいいということは、これはなかなか申し上げられないわけでございまして、その辺は実情とにらみ合わしてだんだんと解決をしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  134. 加賀田進

    ○加賀田委員 これに関連して、一つの問題としていまも起こっておりますが、これからなお起こってくると思うんですけれども、都市の建設がだんだん拡張をしていく、あるいは新しく新産都市等ができてくる、こういうことになってまいりますと、前にあった送電線が、工場が建ったり住宅が建ったりして、非常に国民生活に迷惑をかける点が起こってまいります。いまのところ都会の中心地は、いわゆるケーブルによって地下送電をやっておりまするけれども、地下送電の意義というものがもっと拡大されてくるという傾向に今後あるんじゃないか。東京においても、あるいは各都市においても、そういうものは都会のまん中からケーブルで入ってくる、こういう実情が今日あります。こういうケーブルで送電するということは、やはり都市である以上そういうことが必要だということで、やはり送電されているわけですから、今後それらの問題についてどう処置されるのか。すでに都会が拡張されて相当住宅等が密集した後において、そういう地下ケーブル等を設置するということは非常に困難な状態が起こってくる。だから、都市拡張建設等とあわせて、ケーブル問題が具体的になされなければならぬ状態ですが、今日それがなされていないのですが、その点に対してどうこれから指導されていくか、明らかにしてもらいたいと思います。
  135. 宮本惇

    宮本政府委員 御指摘のように、密集した市街地におきましては、ケーブル化すれば一番いいわけでございますが、いままでは何ぶんにも経済的に、普通の線を空にかけるより十倍くらいの経費がかかっております。しかしながら、だんだん送電線用地の取得も困難になりますし、昨年実は共同溝の整備に関する特別措置法というようなことで、交通が頻繁な道路には、何と申しますか、ガスと電気と電話と水道ですか、そういう共同のみぞをつくってやろうという法律もできまして、今後それぞれ分担をしてそういう共同溝を持つという形になってきておりますので、今後の新産都市あるいはそういうところにおきましては、できるだけそういう地下にやっていくという方向で指導したいと思っております。なお、送電線その他線下の問題につきましても、最近は技術の進歩で、八万ボルトまでは下に家が建ってもあぶなくないというふうになりまして、その点も絶対に建ててはいけない時代よりはだいぶ進歩してきております。
  136. 加賀田進

    ○加賀田委員 これはなかなか、局長、指導すると言いますけれども、もちろん新しく都市を建設するときは総合的にそういう計画等もできるでしょうが、東京等はマンモス都市としてだんだん拡張してきた。しかも都内の近くまですでに高圧線が引かれてきておる。送電線がある。いまさら地下にケーブルを敷設しようとしても、なかなか道路を掘ったりするのも困難だし、費用も非常に高くかかる。以前はやはり送電線は空中で送電されてきたというようなことで、実際の現在の九電力はそれを負担するだけの経済力を持っていますか。そういうことがもし実際とすれば、何としてもこれは金の問題でありますが、持っていないとすれば、やはり何かの方法によって、国家的な援助をするとか、政策を施すとかいうことでやらなければ、とてもそういう地下ケーブルという、相当の資金の必要な、しかもあらためて送電力が多くなるとか、あるいは需用にこたえるだけの内容ができるとかいう発電施設とまた違うのですから、既存の電力、もちろん、それは地下ケーブルにする場合には、そういうものも計画に入れるでしょうけれども、既存の送電をそのまま地下に入れて膨大な金をつぎ込むのですから、採算面を見てもとても私は耐えることができないと思うのです。実際問題として努力するという答弁しかできないかもしれませんけれども、それはできるのか、できないのか。しかもこれは新しい近代都市をつくるとしてもぜひ必要だと思う。今日やはり高圧の下ではテレビが見にくいとか、いろんな面が現在起こっております。そういう点について、やっぱりもっと明確な答弁をしていただきたい。
  137. 宮本惇

    宮本政府委員 いま空を走っておりますのを一挙に地下ケーブル化するということになりますと、たいへんな費用がかかることになりますが、現在程度、電柱その他につきまして、この状態では何とかやってはいけると思います。ただ、しかし、これ以上非常に混んでまいるということになりますと、どうなるかということは、ちょっとまだ見当がつきませんが、十分に電力会社とも相談いたしまして、支障のないようにしていきたいということしか、現在は申し上げられないと思います。
  138. 加賀田進

    ○加賀田委員 それが支障がないと言うが、実際支障があるのですよ。昔は田畑の途中から送電線が地下にもぐっていたのが、いまは都会のまん中からもぐる。そういたしますと、どうしても地下ケーブルをしなければならぬという実態があるわけです。そういう要素が、ずんずんと都会が拡張いたしますから、伸びるわけです。したがって、いま申し上げたように、民間の方々が非常に迷惑をこうむっている、それで要求する、いや予算がない、そういうことをすれば電気料金が高くなるということで、都会の人々はそれをしんぼうしなければならぬというのが現状なんです。だから、それはやはり九電力の今日の資金力に依存してこれを実施するということは非常に困難じゃないか。したがって、いまいろいろ問題があるでしょうけれども、別個に政府としてこういう問題についての解決方法を講じていかなければ、九電力にやれと言ったってとてもできないと思う。そういう意味で、やはり政府として、この問題に真剣に審議会として取り組んで、財政的裏づけをどのようにしていくかということで、皆さん方の御協力を願いたいと思います。  それと同時に、委員長が時計ばかり見ておりますから、話は飛びますけれども、いまダム建設において多目的ダムがずいぶん設計されております。いわゆるかんがい用水とか、あるいは治水用とか、工業用水とか、それに加えて、その落差を利用して発電を行なうというところもあります。これは大体地方公共団体が建設し、その計画と送電だけをやっておると思いますが、そのダムの水位の操作について、操作権は知事が最終的には決定するのでしょうけれども、実際は発電所が、発電能力とか、発電の将来について水位というものを操作する権限があります。そのためにやはり被害をこうむったこともあると私は聞いておりますが、そういうダムの水位操作について一体どのようにこれから指導されるのか。発電用としてのみこれを見るのか、あるいは治水災害防止という形の中で、事前に放水しなくちゃならないのに、相当雨量が出てまいりましてから放水する、そのためにダムの治水という使命が侵されてくる、こういう状態が起こっているわけですが、これらについて、通産大臣として、通産省として、いかに指導される意思があるのか。これは今日まですでに起こっておる問題ですから、明確にしてもらいたいと思います。
  139. 宮本惇

    宮本政府委員 多目的ダムの場合は、御承知のように地方建設局長あるいはまた地方自治体がその操作の権限を持っておるわけでございまして、したがいまして、そのダムにダム水位の主任技術者というものがおって、そうして地方建設局長あるいは自治体の指示を受けて操作をしておる、こういうのが現状でございます。
  140. 加賀田進

    ○加賀田委員 ところが、やはり発電技術というものは特殊な技術に依存しなければなりません。したがって、一定の電力発電するためには一定の水位というものが必要なんだというので、もう雨が来るかもわからない、そういう警報があっても、もう少し待ってくれというような形で、放水しないのです。また技術的に監督の人はわかりませんから、それもそうかと思って、やはり相当の雨量が出るまで放水することを避ける。そのために治水用としての使命というものが大きく侵されて、下流の住民は非常な被害をこうむった、こういうようなことが起こっておるわけです。ですから、その点、法律的には知事とかあるいは管理者があって、電力関係には影響ない、指示権がないのだ、指導権がないのだと言っても、実質的にはそういうことが現在行なわれておるわけですから、それはただ法律的解釈だけでなくて、実行面としてどのように指導されるかということを質問しておるのです。
  141. 宮本惇

    宮本政府委員 現在はそういうダムにダム操作規程というものが置かれておるわけでございまして、大体そこにおります技術者は、おそらくその場合は、単なる電気だけ、あるいは電気の見地のみならず、治水とかあるいは利水の見地も考慮して、こういう場合には一定の水を放水するという操作規程もあるはずでございますので、それに従ってやるということであります。
  142. 加賀田進

    ○加賀田委員 これはやはり国民生活に重大な影響のあるものですから、十分その点は、もちろん発電としての能力もその多目的ダムの中には入っておるわけですけれども、それだけを確保して他の目的を阻害されるということは、これは今後十分慎んでいただかなければならないと思うのです。  それから、ちょっといま久保田委員からも質問がありましたが、兼業禁止の規定が今日ございます。しかし、前の旧の公益事業令に基づいては、これに対して相当の株の、いわゆる資本の増加とか、借り入れ金が一年以上必要な場合には、そういう借り入れ金をした場合には、大臣の許可制ということになって、もしそれを犯した場合には、金額は三十万円ですが、三十万円以下の罰金に処す、こういうことになっておったのですが、今度のそういう規制については三十万円という罰金がはずされていると思うのです。なぜそういうものをはずしたのか、またそういう必要が今日までないのかどうか、そういうことに対して御答弁願いたいと思います。
  143. 宮本惇

    宮本政府委員 先ほど申し上げましたように、いままでの電力会社のいろんな経理内容に対する規制が強過ぎたと申しますか、こまか過ぎたといった点で、われわれといたしましては、その一々の資本金の増額あるいは一年以上のものの借り入れの認可というようなことはなくても、全体をにらんでおると申しますか、積み立て命令あるいは償却命令ということを最後の手段として、それを持っていれば十分である。また一々資本金額の変更その他をとらなくとも十分にらんでいけるという意味で、それをはずした次第でございます。
  144. 加賀田進

    ○加賀田委員 久保田委員質問いたしましたけれども、投資の面についてどうも不明確な点が私はあるのではなかろうかと思う。やはり経理面においても相当監督権を持っておるわけですから、いままでに九電力が、自分の下請企業企業について、あるいは関係のないゴルフ場とか、いろいろな観光施設について、相当投資をされておるということを聞いておりますが、それらの総ワクについてひとつ御説明願いたいと思います。
  145. 宮本惇

    宮本政府委員 ちょっといまトータルが幾らか集計いたさなければわからないわけでございますが、いずれにいたしましても、たとえば東電の場合ですと、原子力発電会社とか、あるいは東光電気、あるいは関東電気工事というようなことで、大体その関連会社のみでございます。ただ、それぞれの電力会社と申しますと、その地域の随一の大会社というようなことで、多少はおつき合い的なこともあることは事実でございます。しかしながら、全体といたしまして、そうはみ出たようなことはいたしておりません。また、もし電力会社がその膨大な資本力にものを言わせまして中小企業を圧迫するような産業をやるというようなことは、われわれもそのつど注意いたしておりますので、いままでも規定がなくとも、その点は逸脱はしてないものと確信いたしております。
  146. 加賀田進

    ○加賀田委員 電力事業関係のあるところの、いわゆる電気工事会社とか、そういうものについて、資金が足らない、十分に需用家のサービスができないという場合に、ある程度援助をすることは、これは私はやむを得ないと思うのですけれども、全然関係ない観光施設等に金を出しておるというようなことは、単に、すべての国家政策を離れて、私企業という形に置けば、それは了解することができると思うのですけれども、財政的にも、金融面においても、あるいは行政面においても、相当国が援助を行なっておる企業が、全然関係のない産業に設備投資をやっておる。反面は、資金が足らないから電源開発も十分できない。電発をつくって、政府が半分資金を出して援助をしなければならないという現状の中で、そういう産業に資金を出すということは、私は許すことはできないと思うのですが、その点はどうなんです。
  147. 宮本惇

    宮本政府委員 おっしゃるとおりでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、多少のおつき合い程度というものは、これはあることは事実でございますが、決して先生のおっしゃいましたような御心配の起こる程度にはいたしておりません。ちょっと数字が手元にございませんが、全体にして非常にわずかでございます。  それから長期投資の問題でありますが、全体で、九電力関係の投資は、現在五百六十六億円でございます。これは固定資産額が二兆一千億というのに比べますと、二・七%でございます。そういう意味におきまして、先生のおっしゃる方向でわれわれも厳重にやっております。したがいまして、いわば税金にもひとしいような金が変なところに流れるということはさせない覚悟で、指導いたすつもりでおります。
  148. 加賀田進

    ○加賀田委員 五百六十六億も流れておるのですから、結局電源開発を行なうことは、この資金だけでもってできると思います。相当の金が、いま申し上げたような電気事業関係のない事業に私は流れておると思うのです。体育館を建てるからといって、それに対しての資金を出したり、あるいは京都なんか文化観光会館を建てる、こういうことで相当の金を出したりしておるわけです。それは、いま申し上げたように、いろいろ政治的な背景が私はあると思います。政治的な背景はあろうとも、法的な表面の理論としては、そういうことは私はしてはいけないと思う。いま申し上げた、局長も言った税金に匹敵するような一定の利潤、利益を法律では認めておりますけれども、しかしそれは全部株主に還元するという、そういう性格のものじゃなかろうかと思うのです。それを関係のない事業に金を出す。こういうことは、今日の九電力としては、私は許すことはできないんじゃないかと思います。一体今後そうしたことが許されるのかどうか。あるいは通産省として、その問題について将来確固たる信念を持ってこれを指導されるのかどうか。それをひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。
  149. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 関係のない事業には実は出させておりません。今後も関係のない仕事には出させないつもりであります。
  150. 加賀田進

    ○加賀田委員 それは大臣、建物を建てれば電気を使います。電気を使えば電力会社関係があると、こういうことでしょう。関係あるなしというのは私はそんなものじゃないと思うのです。一般私企業が相当の収益をあげて、その資本を効率的に利用しようといって出すのは、われわれとしては何も文句を言う必要はないと思うのです。いま申し上げたような非常に公益性の強い九電力会社独自で、すべての送電から配給を全部やっておるとするならば、これは相当の財力を持ち、何らの懸念もないのですから、余裕金ができたらやるということは私はできると思うのですけれども、これだけ国家的な保護を受けている私企業が、そういう一般の公共企業体やその他の事業に金を出していく——電気を使うと言うけれども電気を使う施設に対しては電力会社は金を出すのだったら、電気を使うのは一般の家庭だって使いますよ。住宅建設とかその他に全部資金を出しますか。そういった枝葉末端の関係で私は問題を論議しているんじゃないのです。したがって、大臣は、全然関係のないところへは金を出しておりませんと言うけれども、事実出しているのです。局長出していませんか。
  151. 宮本惇

    宮本政府委員 要するにいま先生のおっしゃいましたようなものへの金額は非常にわずかでございます。具体的にちょっと東電の例を申し上げますと、東電が七十五億七千二百万円というものをやっておりますが、一番大きいのは原子力発電会社に二十億円、姫川電力に十八億円、常磐共同火力に十億円というようなことで、以下東電フライアッシュとか関東電気工事、その他東電広告というようなところが大部分で、その他わずかなものが二千七百万円程度ということでございます。したがいまして、先生のおっしゃたような御趣旨でいままでもやっております。ほんのわずか、おつき合い的に、たとえばゴルフ場に出したというようなこともないとは申し上げませんけれども、根本的には、先生のおっしゃったように、むしろ必要なところへ出しておるという次第でございます。
  152. 加賀田進

    ○加賀田委員 この公営電気事業の復元問題については大村君のほうから詳細な質問があると思うのですけれども、それらの問題を通じて、やはり相当の金が流れているでしょう。結局そういう復元問題にからんで、復元はどうにも送電の関係上困るというが、十数年来、自治省のほうでは、何かそれについて復元をさしてくれとか、あるいは相当の金の援助をせよとかいうことで、電力会社を回ろうとする、通産省は、将来の電力料金にも影響するし、発電にも影響するから、それは困るということで、結局政治的解決を通じて、そしてそういう金が他の事業に全部流れているわけです。だから、そういう政治的な背景については、あらためて同僚の議員が質問いたしますけれども電力会社自体が、表面的に見ますと、そういう関係のない事業に金を出しております。わずかであろうと——わずかじゃないです。それは現在の九電力の資本金から比べればわずかかもしれませんけれども、金がなくて九電力電源開発等ができないから発電ができたのでしょう。政府の資金が投入されてきたのでしょう。そういう九電力が、いま申し上げた政治的な背景があるとは言いながらも、不明朗な解決方法というものは、私は許すことはできないと思うのです。だから、そういう面では、監査権があるのですから、通産省としては会計監査等において十分メスを突っ込んでいかなければならないと思うのです。ところが、現在の通産省の監査官は、会計監査その他の業務の監査に行っても、十分にそれをなし遂げていない。電力会社とグルになって、ほとんど監査がなされていないということを私は耳にするのですが、局長としては、そういうことをお聞きになりませんか。
  153. 宮本惇

    宮本政府委員 監査ということについては、われわれとしてはきわめて厳重に指導をやっておるつもりでございます。ただ先般参議院の決算委員会でその問題の御指摘がありました。そういった点につきましては、われわれとして厳重に注意いたしておりますが、実際問題といたしまして、監査というものは、監査計画に基づいて厳重なる警告もいたしております。いま手元に持っておりませんけれども、少なくとも監査がでたらめであるというようなことは絶対にないものということは申し上げられると思います。
  154. 加賀田進

    ○加賀田委員 参議院の決算委員会の問題が出ましたが、これは一つの氷山の一角、一つの例だと思うのですが、私もその議事録を読みました。昭和三十八年度の上期の会計監査のために、通産省のほうから三名の監査官が派遣されておるはずです。ところが、その三名の監査官が、こぞって四国電力の職員とマージャンをしたり、あるいは忌まわしい、一緒に酒を飲んで遊んだり、しかもそれは監査を終わった後ではなくして、監査前にすでにそういうことが行なわれておる。局長も参議院の決算委員会において答弁されたとおり、あとから旅費等を払った、宿泊料を払ったという非常に不明朗な態度をとっております。みずから監査をして監督の立場に立つ人が四国電力に行って、そうして監査すべき責任者が、旅館で事前にそれらの監査される人々とマージャンをしたり遊んだりしておるというようなことで、適正な監査業務が行なわれていると国民が見ると皆さんは考えますか。それは局長がいかに、いやそういう不正がないと思う、あるいはそういうことを私は聞いておりませんと答弁しても、その行為自体を見ても、国民としては、電力会社に適正な監査というものがなされていないと、こう見るのは社会通念でしょう。一体局長としてその問題にどう対処されたのか、明確にしてもらいたいと思います。
  155. 宮本惇

    宮本政府委員 監査はいたしたのでございますが、確かに御指摘のように、関係会社の者と一緒に泊ったというようなことはまことに不謹慎であるということは、おわび申し上げたいと思います。したがいまして、あの事件以来、いやしくもそういう疑いの起こらないようにいたすよう、いま全員自粛をいたしまして、これからの監査については厳重にやるということをいま申し渡して、実行しておる最中でございます。まあああいった点がありましたことは、私の監督不行き届きでございます。今後は私も責任を持ちまして、いやしくもああいう疑いを受けることのないようにいたすことをお誓い申し上げたい、こう考えております。
  156. 二階堂進

    二階堂委員長 加賀田君、大体申し合わせの時間が参りました。御協力願います。
  157. 加賀田進

    ○加賀田委員 それでは大臣お尋ねしますが、これは衆議院においても参議院の決算委員会においても相当問題になって、大臣自体もそのことは遺憾なことだと遺憾の意を表明されたのですが、一体その後、名前は申しませんが、その三名の監査官についてどのように処置されたのか、出処進退を明らかにしたのか。やはりそういう事態を皆さんがよく御存じなんですから、単なる訓示だけで終わったのか、その点について明らかにしてもらいたいと思うのです。
  158. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私も、参議院の決算委員会でそういう事情を聞きまして、非常に遺憾に存じております。局長をして十分戒告をさしておると存じております。   〔加賀田委員局長どうですか」と   呼ぶ〕
  159. 二階堂進

    二階堂委員長 局長から何か答弁せよということですから……。
  160. 宮本惇

    宮本政府委員 三人を呼びまして厳重に戒告をいたしました。それから今後の公益事業全体の綱紀粛正について厳重に注意し、また出張いたしますときにも一切そういうことがないようにやるということで、厳に実行いたしておりますので、今後はああいうことは二度と起こさないようにお誓い申し上げたいと思います。
  161. 加賀田進

    ○加賀田委員 そうすると、局長としては、三名の監査官に対して、しかりおくという程度で問題は終わったわけですね。
  162. 宮本惇

    宮本政府委員 三名の問題につきましては、私といたしましては今後十分注意をするということで、まあ本人たちも十分に自戒をしておりますので、現在までのところはそういうことでとめおいている次第でございます。
  163. 加賀田進

    ○加賀田委員 こういう監査官の派遣の場合には、何といっても三名なり四名なりの人が、事前通告というよりも、突如行って監査すべきが私は正しいと思うのです。今度の場合では一人だけ一日先に行っていますね。そして四国電力と会って、あとからまた二名を追加するという形ですが、従来そういう方法でやっていたのですか。事前にちゃんと通告をして、いつ幾日に行くからそれの用意をしろというような形でやっているのか、一名先に行って事前打ち合わせをして、そしてあとから二名なり三名の人が一緒に行って監査するという態度をとっているのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  164. 宮本惇

    宮本政府委員 大体監査をやる場合には、われわれといたしましては、年間の監査計画を立てまして、大体その日時は連絡しております。これは普通の場合と同じでございまして、たとえば会計検査院の監査がいつあるというのと同じように、あらかじめ予告はいたしております。今度の場合に一人が先に行ったというのはちょっとつまびらかにいたしませんが、大体予定の日に一緒に行くというのが原則であると思います。
  165. 加賀田進

    ○加賀田委員 こういう重要な仕事の場合には、局長は知らないのですね。課長の裁量によってその出張を認めていくのですか。大体一名だけ先に行くということは、個人の意思だけでなくして、やはり課長か局長の意思に基づいて行ったと思うのですが……。
  166. 宮本惇

    宮本政府委員 私は、出張命令は出しますが、個々のどの人間がいつ行くということまではちょっと聞いておりません。その辺は担当課長が配慮したものと思いますが、決して先に行っているということはないと思います。——今度の場合は、実は監査にまいりましたのが、業務担当あるいは経理担当それぞれ分かれておりますので、業務の者が先に行ったということのようでございます。
  167. 加賀田進

    ○加賀田委員 それでは先に行った土屋君というのは業務ですか。
  168. 宮本惇

    宮本政府委員 さようでございます。
  169. 加賀田進

    ○加賀田委員 これはちょうど局長が口をすべらして参議院の決算委員会のことを申されたから、私は申し上げたのですが、こういう状態がやはり九電力に対する疑義をいろいろ生むと思うのです。私企業というものは公益事業として国民に非常に大きな影響をもたらしてくる、こういうことでいろいろ疑義が起こってくるわけです。こうして企業の利益だって適正利潤とこう言っておりますけれども、適正利潤とは、一割以下に押えられている配当をする範囲の利益を言っているのか。あるいは社内留保をやってある程度の資金確保をして、電源開発等において自己資本を相当導入するだけの体制を整えることを目的としているのか。一体どの程度の企業利潤というものを通産省としては考えているのか。これをひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  170. 宮本惇

    宮本政府委員 これは、いわゆる正当なる報酬というものは八%ということで、料金算定基準に明記されている次第でございます。
  171. 加賀田進

    ○加賀田委員 そこで、疑義を持つのは、電力料金というのは御存じのように原価方式になっておりますね。そうすると、八%という利益が保証され、しかも原価計算でずっと数字をあげて出てくるわけですね。その金額が申請されて審議会にかかり、いろいろ公聴会等を開いて使用者の意見等も聞いて相当もめる。もめにもめ抜くと、今度はその申請された電気料金よりも何%か減った形で、この電気料金というものは従来きまってきているわけです。私は、利潤がきまる、原価計算の基礎がきまってきたら、これは不動なものでなければならないと思うのですが、どうも政治的に使用者等が非常に電気料金値上げについて——これは社会性というものを認めているのだったら別です。政治性というものをその中に認めているのだったならば別として、これは方式として出てくるわけですよ。それがなぜそういう形の中で下げられ、それが了承されて、しかも九電力がやはり一定の利益をあげつつ運営していっているのか。もちろんそれは企業努力だ、こう言います。企業努力でそういう利益を別個に自分たちはあげたんだと言うけれども企業努力の余剰というものを九電力が相当見込んで、そういうものをやるのか。二年間の電源開発の必要性とか、需要の状態とか、あるいは今後の技術革新における方向とか、いろいろな二年間の見通しの上に立って、原価というものは私はきまると思うのですが、そう簡単に企業努力——そういう大きな見通しの上に立ってきめられた電気料金というものが、わずかの間で変更されて、しかもそれになお相当の利益をあげていくというのが、どうも私はその点がわからない。電気料金を査定するときには、それが一体どのようになっているのか、明確にしてもらいたい。
  172. 宮本惇

    宮本政府委員 御承知のように、電気料金を申請いたします場合に、やはり会社の見方と役所の査定する側の見方とちょっと違うことがございます。たとえばいまの報酬率八%というものも、真実有効なる資産に対する八%ということになっておりますが、われわれの見ました場合に、それを厳重に査定をしていく。あるいはまた営業費その他もやはり役所の側から相当厳密に査定いたしました結果が、申請に対して幾らということになるんで、その辺はやはり役所側として妥当だと認められる点にのみ査定が行なわれますので、開きがあるということは現実問題としてあるわけでございます。
  173. 加賀田進

    ○加賀田委員 それは電力会社が出した申請の内容で役所のほうで査定したのが正しくて、それで実施するんだ、こうなれば、別に電力会社が申請する必要がないでしょう。役所のほうが正しい、これが明確だ、不動のものだ、こういう信念があるなら、別にあらためて九電力会社に申請さすということは必要がない。役所のほうでそういう信念があるのだったなら、すっきりときめたらいいじゃないか。そこにやはり一つの問題が起こってきているのじゃないか。どうでしょう。
  174. 宮本惇

    宮本政府委員 料金を改定する場合には、これは手続も問題になりますけれども、一応電気事業者が申請をして、そして通産大臣が必要と認めた場合に許可をしなければならない、こういうふうになっているわけなんで、もちろん今度の法律の場合にも、たとえば供給規程の改善命令というような規定があるわけでございます。そういう場合には役所から出ますけれども、通常の場合には、会社から申請を受けてこちら側がきめる、こういう形をとっておるのであります。
  175. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういう形を変えたらどうです。そういうようなものだったら形式だけでしょう。九電力会社が一生懸命に自分の企業の内容を検討して二年間の見通しを立てて、そして出した。ところが役所のほうの見方が正しいんだということで——その基礎というのは原価計算でしょう。すぱっとやっぱり理論的に出てくる問題でしょう。理論的に出ないのだったら、私はこれはいろいろ見方があるから、いろいろ困難な問題があることだろうと思うのですけれども、原価計算方式に基づいてすぱっと出るものが、少々のロスがある、それは役所のほうが正しいんだ、こうなれば、ぼくはこういうものは変えたほうがいいと思うのです。電力会社は要するにもっと仕事をどんどんしてもらったほうがけっこうだと思う。
  176. 宮本惇

    宮本政府委員 それは、たとえば実際問題といたしまして、人件費の問題だとかあるいはいろいろな問題で、会社の申請をするのと役所のと違うのが非常に多いわけでございます。また、いままで過去の公益事業令以来、ずっと電気料金問題は供給規程の変更というような形で会社が申請をして大臣が認めるという形をとっているので、この法律体系もそういうふうになっております。それをやむなく、いきなり頭から通産大臣がきめてしまうのがいいかどうかは、これは制度の問題としてあるわけでございますけれども、現在の問題としては、いままでどうりのやり方をやっておる、こういうことしか申し上げられない。
  177. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますと、裏返して申し上げれば、電力会社の申請というものは含み申請があったというわけですか。そう見ていいのですか。
  178. 宮本惇

    宮本政府委員 含み申請があるというふうには別に解釈いたしておりませんが、やはりいろいろな見方でやや多目に出てくるということは事実かもしれません。しかしながら、やはりわれわれとしては、会社の言いなりではなくして、厳重に査定をしてやっておる、こういうふうに考えております。
  179. 二階堂進

    二階堂委員長 加賀田君、時間に御協力願います。
  180. 加賀田進

    ○加賀田委員 それは通産省が信念を持ってやるのが正しいのだということになれば、通産省の査定が電力会社の申請より高くなる、そういう場合もあると思うのですが、ずっと低いのでしょう。そうすると、やはりぼくは含み申請というものはその内容としてあったのじゃないか、そうとしか私は考えられないのです。もっとも、電力料金を通産省の査定のときに下げるという、そのいわゆる要素は、今日までどれが一番多いのですか。
  181. 宮本惇

    宮本政府委員 実際問題として、やはり役所か厳格に査定をして——もちろん個々の項目によりましては、たとえばふやすという場合もございますが、全体としては申請に対して査定をするという場合が全く多いわけでございます。
  182. 加賀田進

    ○加賀田委員 じゃ大臣にちょっと、大臣電気の専門家だといわれておりますので、ひとつお聞きしたいと思うのですが、御存じのように周波数が五十サイクル、六十サイクルに日本の全地域が二つに分断されております。これはいろいろの経過があると思いますが、今日広域運営をするためにサイクルの統一ということ——サイクルが二つあるということは、非常に私は障害になっておるのじゃないかと思うのです。たとえば今次国鉄の新幹線ができた。これは聞きますと、交流の二万五千ボルトということで、関西のほうはいいとしても、関東のほうでは六十サイクルの二万五千ボルトに統一するという場合に、五十サイクルを六十サイクルに変電をして使っているわけです。もし全国的に五十サイクルあるいは六十サイクルに統一されたとするなら、そういう必要はなくなるし、もっと広域運営というものがスムーズにいく面がたくさんあると私は思うのです。六十サイクルと五十サイクルに分かれたために、いろいろと電気工具についても支障を来たしておりますので、専門家の大臣は、これを五十サイクル、六十サイクルどちらでもけっこうですが、統一されるようなことを考えられるかどうか。重大な問題だと思うのですが、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  183. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 これは技術的な問題ですから、私実は詳しく説明できません。あなたは私のことを専門家だ専門家だとおっしゃいますが、とうていそんな専門家ではございません。これはどういうふうにしておるかといいますと、直流でつないで転換をはかりながら使っておる、そういう施設をいましておるわけでございます。大体あなたの御趣旨のように私は実現化していくものと考えております。詳しいことは技術長がおりますから、技術長からちょっと……。
  184. 加賀田進

    ○加賀田委員 それは大臣、直流じゃないですよ。いま使っている電気というものは交流ですよ。だから新幹線のそれは二万五千ボルトで使っています。東海道線は全部、いま大臣の言われたように交流を直流にして千五百ボルトに変電をして、そして使っておるわけですから、これはモーターさえ五十サイクルか六十サイクルに使えば、直流に変電することは容易なことだろうと思うのです。今度の新幹線は確かに交流そのままで使って、そして汽車の中におけるモーターで直流に変えてこれを使うということになっております。そういう不便なことを、小田原かどこかでサイクルを変更するための施設をいま建設中だということは聞いておりますが、どうでしょう。そういうことについてひとつ、これはいわゆる電力事業としての将来に大きな課題といいましょうか、発展に大きな問題が提起されてきていると思いますが、そういうことができるものか、できないものか。あるいはするとするならどれだけの財源というものが要るのか。私はあまり要らないと思うのですが、この点についてひと……。
  185. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ちょっとその数字を申し上げるには、非常に大きな数字になってしまう。発電所を全部やりかえなければいかぬということになりますが、これはたいへんなことになる。われわれの見通しでは何兆円というような金があるいはかかるかもしれないと思っておる。不便なことは確かにおっしゃるとおり不便でありますが、いま急にこれをかえるということは、その仕組みを全部変えて統一するということは非常に困難ではないだろうか。困難というのはできないという意味ではございませんが、経済的に損が大き過ぎはしないか、こう考えておるわけであります。
  186. 加賀田進

    ○加賀田委員 私、大臣ほど専門家じゃございませんけれども、これは発電機全部をかえなくてはいかぬのですか。ブラシとか、その他の一部分をかえれば可能な範囲じゃないかと私は思うのですが、これはひとつ専門的な方にお願いをいたしたいと思います。
  187. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 これはもう私から答弁するより、技術者がおるから、そのほうから答弁したほうがいいのですが、それはちょっと加賀田委員のお考え違いかと思います。ほとんど全部かえなければいかぬということになると、これは大事業でございます。
  188. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういうことで相当膨大な金が要るというお話ですが、できればそういうことで、今後広域運営ということで、ずっと全国の地域において発展する場合に、電力の融通にサイクルの相違というものが非常に大きな障害を私は将来来たしてくると思うのです。関東以北は五十サイクルですが、そういうことで関東と関西との電力融通をしようとするような場合には、サイクルの変更を行なって融通しなければならぬという不便な問題が起こってくる。だから、そういうことでは膨大な金が要るというお話ですから、今日の財政力から困難な点はあろうと思いますけれども、日本の電力事業の発展のためには、ひとつ検討してもらいたいと思います。        指定調査機関のことがちょっとお話が出ましたけれども法律で見ますと、一般の家庭用の場合に、絶縁等を調査しに行く場合に、拒否したらやむを得ぬという法律になっていますね。そうすると、責任はどうなるのです。拒否した人に、災害等が起こった場合は責任があるわけですね。
  189. 宮本惇

    宮本政府委員 拒否した場合には、何か起こればその持ち主ということになるわけであります。
  190. 加賀田進

    ○加賀田委員 初めて施設する場合には、これは許可が要りますから、送電しない。これをやはり定期的に調査するという意思を持っているのですか。その定期的な調査の機関等について、ひとつ明確に説明してもらいたい。
  191. 宮本惇

    宮本政府委員 御承知のように、定期的に調査する場合に、いままでも電力会社は義務を負っておったのでありますが、もしそうしたしっかりした調査機関ができれば、それにかわらしてもいい。そのかわり、その責任は、その回る調査義務というものは課しておるわけでございます。したがいまして、現在そうたいした変化はないと思っております。
  192. 加賀田進

    ○加賀田委員 家庭の施設というものは、昔は電力会社がほとんどみな持っておったわけですから、全責任を電力会社が負っておった。今日の電気施設というものは、民間であればほとんど民間の一般家庭の人が持っておる。しかし、実際には電気に対してはしろうとですから、やはりその危険度とかあるいは絶縁の有無とかいうようなものについては定期的に調査して、その危険がないようにすべきが妥当だと私は思うのです。だから、一年に一回とかあるいは二年に一回とか、やはり法律的に制定して、条令で明らかにして、そういう調査機関というものを設けなくてはならぬと思うのですが、その点はどうなんですか。
  193. 宮本惇

    宮本政府委員 その点は省令で、一般は二年に一度、それからたとえば人の密集いたすような場所には一年に二度というふうに、実際に省令の段階できめていきたい、こう考えております。
  194. 加賀田進

    ○加賀田委員 屋内に入ることを拒否しても、いまメーターはほとんど外へついておりますね。そういう場合には、メーターの入り口で絶縁を何メガと、メガによって調べることができるんじゃないですか。
  195. 宮本惇

    宮本政府委員 技術的な専門的なことを私はわかりませんが、何か聞きますと、引き込み開閉器のところでなければだめだということで、いずれにいたしましても、とにかくもしそういうものを調べて、通産大臣が直せという場合には、命令を出せるということになっております。
  196. 加賀田進

    ○加賀田委員 だから、法律のたてまえで、屋内で絶縁調査の場合に、中へ入ることを拒否されたという場合には、今日の憲法のたてまえ上、ああさようですかと帰ってくるよりしょうがないという無責任な態度じゃなくて、大体開閉器の引き込み口のところでヒューズをはずせば、そういう絶縁に万全を期されておるかどうかということは、個個の問題としてはわかりませんが、総括的にはわかるんじゃないかと思います。だから、そういう意味では、やはり拒否されたからといって、感情的にはおもしろくないでしょうけれども、やはりそのまま帰るんじゃなくして、もっと親切な態度というものが必要じゃないかと思いますが……。
  197. 宮本惇

    宮本政府委員 確かに調べにいって入れないという場合には、やむを得ないのでございますが、六十八条の技術基準適合命令というのがございまして、これは別途、もしここはおかしいなというときには、大臣の命令でできるというたてまえをとっておりますので、御指摘の点はないんじゃないかと考えております。
  198. 加賀田進

    ○加賀田委員 だから、これはやはり定期的に調査するわけですね。最近家庭ではおふろ等もありますし、当初工事をしたときには百メガもあって完全だと思っても、湿度の高い部屋も相当あるために、やはり相当障害が起こる場合も起こってくると思うのですね。定期的にして、しかもしろうとに安心さすような態勢というものをつくる意思があるのかどうか。
  199. 宮本惇

    宮本政府委員 まさにそういう御趣旨のためにこういうものをつくってやらせたいという、こういう次第でございます。
  200. 加賀田進

    ○加賀田委員 それではもう一点。現在電柱が道路を使用しておりますね。これは地方公共団体へ道路使用についての使用料を払っておるはずだと思うのです、一本に対して二百円とか三百円とかという協定をして。しかし、現実には、その一本何ぼということはきまっておるけれども、現在東京都なら東京都内で、こまかく何本使っているかということは、なかなかわからないでしょう。一体そういうものの調査機関というものはあるのか、電力会社の申請に基づいて、そのまま地方公共団体が了承しているのか、それはどうでしょう。
  201. 宮本惇

    宮本政府委員 その点は、現実に何本あるかということはわかっておるはずでございます。それで規定の料金に従って払っておる。たとえば関西電力の場合に、土地使用料の値上げというような問題でごたごたはいたしましたが、きまったところで払っておると思います。
  202. 加賀田進

    ○加賀田委員 払っているのはわかっているんですよ。ところが、実体論としては一千万円とか二千万円とかいって——そういう個々の法律に準じて、何本あるから、それに基づいて一本二百円だったら何ぼだという、そういう自動的に使用料というものは出るんじゃなくして、何だか電力会社と地方公共団体とが、ことしは何ぼだ、その他何ぼだというような形で支払われているといわれているんですが、そういうことでは実際に即していないと思うのですが、どうでしょうか。
  203. 宮本惇

    宮本政府委員 実際具体的にこまかくどうやっておるかは存じませんが、ちょっといま担当の課長に聞きますと、やはり条例によって、一本幾らということでちゃんと支払っているそうでございます。
  204. 加賀田進

    ○加賀田委員 そこで、そういう電柱の土地使用料電力会社が地方公共団体に出しておるという電柱に、東京都内等には相当の広告が張られておりますね。今度はその広告料を——広告料といいましょうか、そういうものを電力会社がまた広告をされる方から取っておるという、こういう弊害があるが、これはどうでしょう。
  205. 宮本惇

    宮本政府委員 広告につきましては、たとえば東電の場合は東電広告という会社がやっておるようでございます。具体的なことはよく存じません。
  206. 加賀田進

    ○加賀田委員 それは広告会社がやっておりますけれども、その電柱そのものに広告するのに、いかに地方公共団体に使用料を払っておるといいながらも、電柱の横に広告を張るのにまた金を取っておる。しかもどうしても張らなくちゃならない選挙なんかのときには、また金を取るという。電力会社というのは、電力を起こし、送電をし、需用家にそれを渡して電気料金を取って商売をしておるのに、広告料で営業をやるというのは、そういうことは許されるのですか。それは兼業じゃないのですか。
  207. 宮本惇

    宮本政府委員 御指摘のように、電力会社というのは、確かに電気を起こし、そして金を取るというのが商売でございまして、直接にはやっていないようでございます。子会社がやっておるという形になると思います。しかし、たいした収入と申しますか、そういった点で、いずれにいたしましても、電力会社の本来の趣旨とは別に違反していないんじゃないかと思います。ただいまの広告問題につきましては、私詳しいことは存じませんので、よく調べまして、もしおかしな点があれば調べるのにやぶさかでありません。
  208. 加賀田進

    ○加賀田委員 兼業の話が出ましたけれども、兼業とは、兼業をやったために、電源開発とかその他の送電施設の、国民の要望にこたえ得ないような実態が起こったら困るから、兼業というものをある程度規制しておるのか、電力会社それ一体でやれ、全力を注げというような趣旨でやっておるのか、そのどちらをとっているのか、ひとつ……。
  209. 宮本惇

    宮本政府委員 兼業の規制の目的は、たとえばほかのよけいな仕事をして、極端な場合穴をあけて、それが全体の経理を悪化させるということを防止する。これが第一の趣旨だと思います。しかしながら、それと同時に、先ほど申し上げましたような、関係のないと申しますか、つまりほかのほうに圧迫になるようなことは、これはやはり極力避けるべきである、こういうふうに考えております。
  210. 二階堂進

    二階堂委員長 あと一問くらいにお願いします。
  211. 加賀田進

    ○加賀田委員 それじゃ、ずっと答弁を聞いておりますと、今日のこういう九電力にほとんど委譲された電気事業として、もっと国家的な見地から計画や指導やあるいは建議をする機関というものが、どうも要るんじゃないかと思うのです。近ごろいろいろ論議されている中で、今日電源開発促進法に基づく電源開発調整審議会等にもっと力を与え、あるいは本法に基づく審議会等にもっと指導的な権限を与えて、電力全般に対しての行政やその他の開発の指導というものをやらなくちゃいかぬじゃないか。法律のたてまえでいえば通産省が相当掌握をするようですが、指導あるいは監督する法的な強い機関というものが見られない。こういうことでは、広域運営そのものにいたしましても、将来の電気事業の発展にいたしましても、相当危惧する点があるんじゃないか。九電力会社は相当多くの力を持ってきた、政治的な相当の背景も持っておる、そういう状態の中で広域運営等行なう場合に、こういう審議会等その他に明確な機関を置いて、そしてそれを指導する、こういう態勢というものがどうしても要るんじゃないかという意見が相当多いのですが、通産省としては、この法律そのままで今後とも自信を持っていけるのかどうか、あるいはできれば審議会等にもっと強い発言権を与えるような別個の機関というものを置く、質疑応答の中でそういう意思を持ったかどうか、この点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  212. 宮本惇

    宮本政府委員 通産省といたしましては、とにかく先ほど先生のおっしゃいましたような、国家的な意思で十分やっていくということは十分今後ともやっていきたいと思いますが、先ほど御指摘のように、審議会、たとえば広域運営基準とか、そういった問題については審議会等で十分に御検討をいただいて、その線でやっていくということで十分御期待にこたえ得るんではないか、こう考えておる次第であります。
  213. 加賀田進

    ○加賀田委員 相当質問があるのですが、本日はあげるとかなんとか言っておりますので、最後に通産省に要望しておきたいのです。  われわれからいけば、もっと社会化の方向に大きく踏み出してもらいたいと思っていたわけですけれども、残念ながら現在の電力事業あり方そのままが法律に規制された、こういう状態でありますから、これからの通産省の行政指導というものが非常に重要な役割りを果たしていくのではなかろうかと私は思うわけです。巷間伝えられるところを聞けば、九電力というのは相当力を持っているので、通産省がある程度の指導強化をしようとしても、なかなか抵抗が強くて通産省としても困難だ。いま指摘されたとおり、管理監督の立場に立つ通産省の職員も、この点はどうもなまぬるい点があって、電力会社が迎えに来て、マージャンをしようかと言うと、ついそこへ入っていくという状態の中では、非常に将来の電力事業について不安をわれわれは持たざるを得ないと思う。したがって、やはり通産省としては、この電力事業の将来の発展のために相当英断をふるって、行政面におても、職員の指導の面においても、十分やっていただかなければ、私は成果があがらないと思う。ぜひ通産省として、その点について英断を持って断行してもらうことを心から要請して、質問を終わりたいと思います。
  214. 二階堂進

    二階堂委員長 大村邦夫君。
  215. 大村邦夫

    ○大村委員 私は、電気事業の公営、国営問題についてこれから御質問申し上げますが、たまたま私と同県の田中議員もこの問題について非常に心配をしておられました。質問が重なるようになりまして、いろいろ両者と話し合いました結果、じゃあ大村君、ひとつ私の意のあるところも述べてほしい、こういうことでありました。いわば与野党超党派的にこの問題に関心を持っておりますので、具体的に、しかも的確に御答弁を得、善処をお願いしたいと思います。  質問に入る前にまず一つお尋ねをしておきたいのは、今回新たに電気事業審議会が、新たにというより内容的に強化をされる。つまり諮問機関であったこの審議会は建議をすることができるというように、かなり積極的になっておりますが、この電気事業の審議会の内容であります。どういうものを取り扱うのか、その点についてまずお尋ねをしておきたいのであります。
  216. 宮本惇

    宮本政府委員 具体的に申しますと、やはり当面は、先ほど来御指摘のありますように、いろいろたくさんな政令、省令がずいぶんあるわけでございます。そういうものを一応全部その審議会にはかり、それからまた将来の広域運営の方針とか、あるいはまたさらに電気料金制度をどうするかというような場合には、当然その審議会におはかりをする、こういうことでございます。
  217. 大村邦夫

    ○大村委員 それでは、この復元問題との関係はあるのかないのかお尋ねしたいと思います。
  218. 宮本惇

    宮本政府委員 復元問題につきましてはいろいろ過去いきさつがあったようでございますが、現在の通産省の態度から申し上げますと、一応昭和三十二年の五月に宮崎県と九州電力の話がつきまして以降は、各電力会社と地方公共団体が、自主的に経済協力と申しますか、そういう線で解決をするということになりまして、一応それ以降は通産省は直接はタッチしておりません。ただし、なるべく早く片づくようにというので、それ以来いろいろ片づきまして、現在残っておりますのが四県ございますが、それだけでございます。したがいまして、現在の段階といたしましては審議会でどうこうという問題は起きないんじゃないかと考えております。   〔委員長退席、始関委員長代理着席〕
  219. 大村邦夫

    ○大村委員 御答弁にありますように、確かに四県が残っています。私は山口県の出身でありますが、地域代表として申し上げるわけではございませんが、この残っておる県の解決の見通しですね。どういうように把握をしておられますか。山口県等におきましては、かなり意見が食い違っておりまして、このままでいけば、利害相反しますから並行線になる可能性が非常に強い。そういうことでありますので、ひとつ見通し等についてお伺いをしたいと思います。
  220. 宮本惇

    宮本政府委員 現在残っておりますのは、御承知のように東北電力と宮城県、それから東京電力東京都並びに山梨県の都留市でございます。宮城県の関係は、先般青森県と東北電力が片づきました後を受けまして、いま円満に交渉が進んでおるという報告を聞いております。それから東京都のほうも、実は昨日でございますか、木川田社長と東京都の交通局長が会われまして、一歩前進したということを聞いております。それから都留市のほうもやはり進行中でございます。山口県につきましては、先般も会社の者と県会の電力委員長の方でございますか、五月十五日にお会いになった。日は違うかしれませんが、お会いになって話を進めておられるというふうに聞いております。
  221. 大村邦夫

    ○大村委員 大臣お尋ねします。残った四県についての進捗状況は抽象的にいま答弁がありました。私は山口県の実情を知っておるので、このままでいけば簡単に話し合いがつかないんじゃないかという質問めいた意見を申し上げましたが、御承知のように、昭和三十六年五月十八日、自民党の幹事長益谷さんから電気事業連合会の会長菅礼之助さんにあてて、いろいろこの種の問題について私信か公信か知りませんが出ています。それによりますと、三十六年現在のことですが、「爾峡四ヶ年に垂々とする今日、一部会社に於て妥結したる外、未だその大部分が未解決のままにある由を承り、誠に遺憾至極に存じます。併し何時までも解決しないようでは吾党の面目上並に国策遂行上黙視し得ないものと存じますので、此の際」云々となっています。そういうように積極的に指導され、あるいは一時は政治問題化した問題でありますが、数的には四県だということでありましても、もう数年かかっていますから、ここら辺でやはり円満に妥結をさせなければならないと思います。それを話し合いでだんだん進んでおるんだがという程度ではうまくいかないんじゃないか。この点について——といって政府が強制的にこうせいああせいというのはなかなかむずかしい問題と思いますけれども、はっきり言って利害相反していますから、対立していますから、そこら辺についてかなり強力な行政指導を行なわなければならないんじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょう。
  222. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御案内のように、最近復元も十五県くらい片づいております。いま四県残っております。それもほとんどだんだん前へ進んでおると、こういうことでございまして、われわれとしてもできるだけ解決促進するように側面から御協力を申し上げたい、かように考えております。ということは、通産省は何も命令権があるわけじゃないのでありますから、そこら辺はやはりよく両者の間を取り持つという形以外には、いまのところ方法がないと思うのであります。両者それぞれ良識の範囲で話し合いが進められれば、だんだんと解決方向に向かっていく。われわれとしても、ひとつそういう意味で側面から協力をする、こういうことにいたしたいと思っております。
  223. 大村邦夫

    ○大村委員 御答弁にありますように、強制的な措置を講ずるということはできないと思いますが、といって、これは仮定の話になりますが、もしこの問題がある県で解決をしないという場合に、依然として両者の協議にゆだね、側面からという程度で終わるのかどうかです。あなたのほうも、話し合いがつくだろう、話し合いによって解決がつくだろうという観測に立っておられますから、仮定の問題ではありますが、一応そのときの態度をお聞きしておきたい。と同時に、財政保証及び経済協力等についても具体的に指導する腹はないのかどうか、その場合。
  224. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 これはその仮定——われわれとしては解決してもらうようにお骨折りをする、それを解決しないときにはどうするかということになりますと、それは解決しないことを前提にしてしまいますから、あくまでも解決をしてもらうというたてまえで努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  225. 大村邦夫

    ○大村委員 その程度の御答弁では、私はきわめて不親切だと思います。といって、したらどうするか、こういうことになるから、問題は姿勢の問題です。ずいぶん長いことは、大臣も御承知のとおりです。かなりの問題が解決したことも事実です。だから、残っておるところは、かなり問題があるから残っておるのでありまして、いままでの調子で解決ができるかどうかということは、私はきわめて疑問だと思うのです。それは山口県の実情を知っておるからであります。このことを大臣と論争してみたって始まりませんが、いずれにしても公益性の強い電気事業、そして、この中に介在するこういう紛争というものはできるだけ早く解決しなければならないということは、大臣も賛同していただけると思います。そういう面において、もう一ぺん——片方の電気会社のほうが取り上げたんだから、強いかもしれませんけれども、そういう強い立場だけが生かされることのないように、十分御配慮をしていただきたい、指導していただきたいということを申し上げておきます。  次に、もう一つだけ質問さしていただきます。これは広域運営の問題ではありませんが、いつか自民党の伊東委員から質問が出ておったことでありますが、奄美大島の問題、大島電力の問題であります。これは御承知のように奄美大島が、敗戦によりまして一時日本と離れ、祖国復帰が非常におくれておりまして、その間にいろいろ電気事業におきましても変遷があり、そこで開発等についても非常な格差が生じたことは御承知のとおりであります。そして、今日九州電力等の協力必ずしも十分でなくて、奄美大島の諸君はこの電気関係については非常に困っておるのも、これまた御承知のとおりであります。ところが一方、今度の新法によりますと、広域運営というのがまず前面に打ち出されて、金科玉条のようになっております。この広域運営と、今日奄美大島の置かれておる九州電力との関係、いわゆる狭域運営といいますか、この関係はどうお考えになりますか。つまり九州電力は大島電力に積極的に協調してやる必要があるんじゃないか。それが実際にはそうもならないし、なかなかそういかない。他の面においては、他の各電力会社間においては、そのことはある程度は効果を上げることができると思いますが、あまりにも地域的な条件があるので、協調融資なりあるいは広域運営を言ってみたところで、これはむずかしいだろう。では奄美大島について一体どうするか、そういう点についてお伺いしておきたいと思います。
  226. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 奄美大島の問題は、この前も御質問がございまして、前向きに解決するということを申し上げておきました。これはいろいろ方法があると思います。そこで、具体的にどういう方法でこの問題を解決するかということは、これは早急にやりたい。また、九州電力のほうでもそういう気持ちになっておりますので、私は、いまここで具体的なことは申し上げませんが、早急に解決するように指導をいたしたい、かように考えております。
  227. 大村邦夫

    ○大村委員 時間の関係がありますから簡単にしますが、大いに期待をいたします。ただ、ここで指摘をしたいのは、大臣は私の顔を見ると、また一社化かと言われるかもしれませんけれども私企業なるがゆえに、九州電力に幾ら広域運営なり法の趣旨を説いて説得をしても、やらないんですよ。これがもし国有、国営、一社化でやったら、私は簡単にいくと思うのですが、その点に対する見解を伺いたい。
  228. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御信頼を願いたいと思います。
  229. 大村邦夫

    ○大村委員 国有、国営、一社化でやったら、そういうことは簡単に解決がつくんじゃないか、私企業なるがゆえに利潤を追求するから、いつまでたっても料金の格差なりあるいは協調的な面が実施できないんじゃないか、そのことについてお尋ねしたのです。そのことずばりに……。
  230. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いま一社化であれば解決するかもしれませんが、いま九分割の姿においても、日ならず解決するつもりでございます。
  231. 大村邦夫

    ○大村委員 その解決するというのは、料金問題が中心になりますが、現在奄美大島では、九州電力に比べて大体二・五倍程度の料金格差がありますが、これは料金がかなり縮まるということですか。
  232. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 その過程において、どういう措置をとるか知りませんが、これはできるだけすみやかに解決するようにということを九州電力に言っております。九州電力のほうでもそうする考えで、いま調査を進めておる段階でありますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  233. 大村邦夫

    ○大村委員 福田通産大臣を信頼いたしまして、期待いたしておりますから……。
  234. 始関伊平

  235. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 建設省関係、自治省関係、内閣法制局関係、呼んでありますが、見えておりますか。
  236. 始関伊平

    始関委員長代理 建設省は前田住宅局長、法制局は荒井第三部長がまいっております。
  237. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは、それに関係する問題から片づけたいと思います。  六月三日の朝日新聞をごらんになっただろうと思います。まず通産大臣に伺いますが、六月三日の朝日新聞の三面記事のほとんど半分を費して、北山川の七色ダムの開発地の記事が載っておりまして、「ダムを食うまぼろし部落」という見出しのもとに、百七十七戸、四百七十一人の登録済みの人がここに住んでおって、いずれこれが補償が取りつけられるというので虎視たんたんとねらって、ここにまぼろし部隊が住居しておるそうであります。これは電源開発会社の仕事になるわけですが、通産大臣は、これらの補償目当てのいわゆるまぼろし部隊に対して、補償の対象にさせるように取り計らわれるつもりでありますか。
  238. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 電源開発のことがきまりますと、補償を目当てで新戸をつくるということがどこでもよく行なわれておる。これは私は大きな弊害だと思います。しかし、法制的に見てこれを取り締まる規定がないのであります。そこで、この問題は何らかの法的措置を講じたいというので、ただいま研究をいたしておる段階であります。
  239. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 法律がないという話でありますけれども、明らかに悪いということが行なわれておるのを黙って見ておるということはあるまいと思います。念のために伺いますけれども、現実に電源開発公社の場合に、半分政府が仕事をやるような状態になっておる。しかもそれに対しては百七十七戸と新聞に出ておる。それからこの北山川の七色ダムの関係は、そのまま大臣、おたくの一番足元である九頭竜川の開発がすぐ予定されておりますけれども、おおかた同じようなまぼろし部隊が蟠踞しておるやに承っております。これに対して本格的な補償をするということになれば、それはそのまま電気料金の高騰をもたらすことである。しかも明らかな補償目的で、補償金目当てでここで居住するものであるとするならば、法律があるとかないとかいうことでは問題は許されないと思いますが、大臣の御所見はいかがですか。
  240. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 お説のとおり、われわれとしては普通の補償とは基準を変えてしなければならない、こういう考え方に立っておるわけでありまして、最小限移転費ぐらいで処理をいたしたい、こういう考え方を持っております。
  241. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 建設省の住宅局長、お見えのようでありますから承りますが、ただいま質問しておりますのは、六月三日の朝日新聞で伝えられておるところの北山川七色ダムのまぼろし部落という記事についてであります。これは建設省で住宅を建てられたり、あるいはその他の建設をやられる場合に補償問題の一つとして、あらためて新聞をごらんにならなくても、重大なる問題としてよく御承知のことだろうと思います。こういう問題に対して建設省は、必ずしも電源だけではないかもしれませんけれども、どういう見解をお持ちになっておりますか。現行法で取り締まる規定ありやないやを含めて承りたいと思います。
  242. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 七色ダムの件につきまして新聞紙上等で承知しておりますのは、水没地帯に補償金目当ての急造の住宅が建てられておるようでありますが、現在、建築につきましては建築基準法という法律がございまして、これによって確認をし、一定の場合に許可をいたしております。現行法におきましては、都市計画区域の中にあります場合には、小住宅建築の場合にも確認を要しますが、そうでない地域、本件のような山間の地におきましては確認をいたしておりませんので、建築基準法上は事前にこういう建築物をチェックする法的根拠はございません。ただ、都市計画区域以外の場所につきましては、あるいは病院であるとか、学校であるとか、映画館であるとか、特殊な建築物につきましては、これは確認をしております。そういう関係で、本件につきましては一応建築基準法のたてまえからいたしますと、特に事前にこれを押えるということは現行法ではできないわけでございます。
  243. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ほかのことはよろしい。要するに川の中に、これまで人間が一匹も住んでおらなかったところにこつ然として部隊があらわれたことだけは事実だ。そうするとこの建築は現行の基準法では取り締まれない、こういうことですね。
  244. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 その建築が構造上極度に危険であるとか、こういう場合には、あとでこれを是正する措置は法律上できます。しかし、それを許可をするとか、あるいは事前に押えるという手段はございません。
  245. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 余分なことは時間がございませんから答えぬでもよろしい。建築があぶないとかあぶなくないとかいうことを聞いておるんではない。初めから川の中に補償目当てで建てている家を、それをいまの建築法上ではそういうものを建ててはいかぬということはできないのか。できないということですね。
  246. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 できません。
  247. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 建設省がダムをつくられる場合に、そういう部隊があることはいいことですか、悪いことですか。
  248. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 この問題は建築基準法の問題という観点からでなくて、特定の事業をする場合に、公共的に事前に押える必要があるならば押えるという制度かと存じます。
  249. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 建設省が一番公共事業を遂行されております。道路の建設なり河川の改修なり、あるいはダムの建設なり、そういう事業を遂行されている。その場合に、このような補償目当ての行動については別にどうともこれまでお考えにならなかったのか。
  250. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 その問題は、個個の事業を遂行いたします場合に、その事業の執行を促進する、あるいは計画を除去するという観点から検討すべき問題かと存じます。
  251. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ですから大臣を呼んだのだが、大臣が見えなかったからかわっておいでを願ったわけだ。したがって、大臣答弁を要求するわけじゃないのですけれども、包括的にお答えを願いたいが、たとえばそういうダムをつくる場合に、建設省がやられようとする場合に、そういうまぼろし部隊がおって普通の補償をせいという要求をされるということは正しいことではないとお考えになりますか。
  252. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 本人の土地所有権についての問題と、本人の考える要望の問題がございまして、非常に困難な問題だと思いますが、私は、現在の建築法規上からいたしまして、全般的にこれを押えるということは困難と思います。
  253. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 建設局長のたてまえからはなかなか御答弁はむずかしいと思いますが、社会的に見ていいことではないことは事実でしょう。  今度は自治省にお伺いいたしますが、自治省の関係法律、たとえば知事その他の地方長官の指導であるとか、あるいはどう言いますか、警察関係といいますか、そういうようなことでは、いまのようなものを取り締まったり指導したりするくふうはありませんか。  委員長に要望いたしますが、早く自治省を呼んでくれないと、二時間たっても三時間たっても終わりませんから、早く呼んでください。  それでは内閣法制局にお伺いいたしますけれども、現行法によっていまのような行為を取り締まる方法はありませんか。
  254. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点は、土地収用法の適用を適確に行なおうとすれば、土地収用法の規定によって一定の行為の制限ができる、あるいは補償についての限定というものができるということはあるわけでございます。それは事実認定をし、「土地細目の公告があった後においては、何人も、都道府県知事の許可を受けなければ、公告があった土地について明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更をしてはならない。」という規定が土地収用法の三十四条に書かれておりますし、「土地所有者又は関係人は、」その「土地細目の公告の後において、土地の形質を変更し、工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは大修繕し、又は物件を附加増置したときは、あらかじめこれについて都道府県知事の承認を得た場合を除くの外、これに関する損失の補償を請求することはできない。」というような制度が現行法制度としてございます。すなわち、土地細目の公告という各種の権利調整というものを周到に配慮して、そのような制度の適用をした後においては一定の制限をすることができるということが現行制度上の問題としてはあるということがこれについての現行制度の問題でございます。  それからさらに言えば、補償基準というものが従来やや甘いといいますか、放漫な面があったのではないか、それがこういうまぼろし部落とか幽霊部隊というものを誘発する要因になったのではないか、そういう面から厳格な執行をはかるということが必要ではなかろうか、そういうふうに考えます。
  255. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これまでの補償が甘かったからまぼろし部隊が出現したというお話がありましたね。これまでどういうふうに取り締まっておったらそういうまぼろし部隊が出現せずに済んだと思いますか。
  256. 荒井勇

    ○荒井政府委員 現実論は別といたしまして、法律論として聞かれました限りでお答えいたしますが……。
  257. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 法律論として伺います。  土地収用法によってある程度の措置が可能だと言われたが、ある程度の措置が可能であるにかかわらず行なわれずに、なぜ実際面ではその法律によって妥当の措置がとられずに、現実にまぼろし部隊ができておるのか、どうお考えになりますか、法律にどこか欠陥はないのか。
  258. 荒井勇

    ○荒井政府委員 従来、土地収用法の発動についてややちゅうちょするような傾向が一般的にあったのではないか。その点、土地収用法という法制はできておるわけでございますから、それを的確に行なうということができれば、そういうふうに……。
  259. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 わかりますが、土地収用法のいまのような方法では、ほんとうはこういうテンポの激しい世の中では間に合わぬということです。一年ダムの建設がおくれれば、このまぼろし部隊の補償を十分やるよりも金は高くつくのですよ。そういうのに、そういう法律があるからだいじょうぶだという認識ではだめだ。法制局は何をしておるか知らぬけれども、要するに法制上の、現在のテンポに合った仕事をするための適当な方法がないということじゃないですか、ありますか。
  260. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点につきましては、公共用地の取得というものが非常にテンポのおそい制度ではいけないというような意味で、土地収用法の改正を今国会に提出してお願いしておりますし、それから公共用地の取得に関する特別措置法というものも御改正願ったということでございます。
  261. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて伺いますが、いまいろいろ法制局言われるけれども、要するにいまの法律では間に合わぬわけだ。だからそこのところをちゃんとまぼろし部隊長さんか何か知らぬけれども心得て、経験的に知っておられる。ともかくそこに蟠踞しておられる。蟠踞しておって何かそこでごねておりさえずれば、事実上ダムをつくる場合に、ダムを建設する費用と、都合によって一年も半年も延びるというその期間の金利を考えるならば、まあまあ泣く子と地頭には勝てなくて、ここで適当な補償をやって建設をしてしまったほうが得だというそろばんが立つわけです。ダム建設というのはあくまでも経済的な行為なんです。経済的な行為とするならば、当然そういう措置が行なわれるのはあたりまえの話です。またこの委員会その他で、そういうつまらないものに銭を出すのはけしからぬと言ったところで、一年おくれてダムを建設するならば膨大な金利を払わなければならないということになる。しかも政府の決定で、事実上は電源開発調整審議会の議によって、大体何年の何月ごろまでにこのダムを建設せいという事実上の建設命令みたいなものが与えられるわけだ。その間にこういうものを措置せいと言われても、権限的な措置のないものには措置できない。おそらく土地収用法のある程度の改正があっても、この問題は事実上非常に困難だ、土地収用法のような一般的な法律でもってこれを阻止することは非常に困難だと思う。  そこで、重ねてまず通産大臣に伺いますが、この問題は立法の過程における審議会でも問題になっている。しかも補償審議会でも問題になっている。そして法案の前の原案には、こういう問題について電源開発予定地域制度を法制化しようという考えがあったが、おりられたのはどういう理由ですか。
  262. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 この問題は電源開発だけの問題ではなくて、公共事業全般に通じてこういう問題がまま起きておりますので、これを全般的に考えてみたほうがいいということだと思います。
  263. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 全般的にと言われるけれどもほんとうはそうではなくて、問題は残っておって、本来ならばこれは電源開発促進法の問題だろうということでむしろ問題を回避されたのではないかと思います。それはいずれでもよろしゅうございますが、この電源開発予定地域制度というものについては、本格的に法制化して執行を非常に厳密にする場合には、また私権の制限というような法制上の問題もずいぶんあろうかと思います。そこで私は伺いたいのだが、建設省、自治省がこれから実際にやられる場合において、ほんとうに私権を制限するようなことになる心配があるかどうか、私は法制局としては当然に私権の拘束あるいは制限という問題は考えられると思います。しかし実際問題としてこういう部隊は非常に明らかなんで、けちをつける、へ理屈はつけるけれども、行ってごらんなさい。実態は一目りょう然だ。だれが何と言われようとも補償目当てのまぼろし部隊だ。それに対して私権の制限もへったくれもないわけだ。そういうふうに私は考えるのでありますが、実際問題として建設省、自治省はどういうふうに考えられますか。
  264. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 土地収用に該当する問題につきましては、ただいまお話がありましたような法律がございますが、一般的に建築法規のたてまえからこれを制限することは現在の法制及び私権の保護の面から困難であろうと思います。ただし、各事業法によりまして、その事業促進上必要な場合の建築行為の規制ということは、現在も都市計画の場合とか、ある場合もございますので、そういう個々の事業につきまして慎重に検討するわけであります。
  265. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はそういう一般的なことを聞いておるのではない。建設省が建設をしようとした場合でも通産省がやろうとした場合でも、現実に私権を拘束するような事由にならぬ。ところが施行者であるところの建設省、自治省あるいは電力関係者そのものがはっきりとその立場をとらない限り、法制局としては私権制限の危険を一〇〇%前面に押し出さざるを得ないのです。そのために現実に社会悪がはびこっておることは事実でしょう。だれも責任をとりたくないから、百戸も二百戸も部隊がいいかげんなところに家を建てて、国費をかけ、料金を上げさせておるわけだ。そういう社会悪を放任しておることになるわけだ。やろうとする者が本格的に責任を持ってこれはこうだと言い切れないから、安全、安全と見ていくと、法制局流に私権の制限ということになり、何もできなくなってしまうということになる。本来私権の制限的な観点をもってすれば、もっと広範囲に考えるならば、ダム建設も道路建設も何もできぬことになる。ここに私権と公共との関係の適当な調節を見出すわけだ。まぼろし部隊というものに対しては、ほんとうの意味においては何の考える余地はないと思う。問題は勇断をもってこういう法制をつくるかつくらないかというだけになってくると私は思います。それで内閣法制局に、現実に問題になった電源開発予定地域制度というもの、必ずしもそうでなくてもよろしゅうございますが、そのまぼろし部隊みたいなものを、そういう社会悪を起こさせないための法制化をすることの必要性について伺いたいと思います。
  266. 荒井勇

    ○荒井政府委員 そういう社会的な実態があるということについて、何らかの措置を要するのではないかという御主張の点につきまして、私どもはその内容に別の意見を持っておるということではございませんで、それは同様に感ずるわけでございます。その場合に、適確な規定を設けて私権の保護をはかると同時に、いかにしてそのような社会悪を排除するか、その社会悪の排除というものを実効性あらしめることにするかという具体的な方法について慎重に検討する必要性があるであろうというふうに考えておるのでございます。そういうことが別に憲法上不可能であるというようなことは毛頭考えておらないのでございます。と同時に、それがどの法律で規定するかというような段階になりました場合には、それは公共用地の取得に伴う一般問題ではないかという意味で、たとえばそのような公共用地の取得について特別の措置が認められておる、収用なり使用なり認められておる事業は、土地収用法だけでなくても四十二ばかりありますし、そのほかに特別法がいろいろある。そういうものを全体として、合理的な制度というものはどういうものであるかというのを検討するのが一番本筋であると内容的に考えておりますが、基本はそういうことでございます。
  267. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がありませんから、結論を申し上げて御検討いただきたいと思います。どういうふうに理屈を言われても、まぼろし部隊は守らなければならぬという理屈は成り立たぬ。そうしてそのために慎重に検討したり何かしておった日には、一年ダムがおくれると電気代に直して何ぼになるか、とんでもないことになるわけだ。役所の金みたいに利子のつかぬ金はないわけだ。金は生きておるわけだ。そうするとタイムリーにダム建設をやらなければならぬということになれば、どれほどの至上命令になって事業者にくるかということの認識が、ほんとうは私は足りないと思う。その意味において、現実に社会悪がここにある。現実に社会悪がここにあるとするならば、それを退治するための法制化というものが、これはまたあとの技術的な問題になりますから、その意味で十分考慮されんことを望みまして、なお建設省、自治省関係にも同じ問題が起こるから、よそごとみたいなことを言っておらずに、本気になって考えられんことを特に強く希望申し上げたいと思います。  関連して、建設省に、これは大臣でないとぐあいが悪いのですが、ちょっとお伺いいたします。先ごろ来電源開発なり事業法なりというものを審議をしておると、電気をいじめられるばかりになってくるわけで、私はぎりぎりしているのです。電気料金が高くなるとかなんとかということになってくると、それで補償が十分でないというようなことになってくる。その意味でひとつお伺いしますが、ダムを建設する場合に学校が水没するとする。普通の家が水没される場合には、その水没される家の評価をもって補償するわけだ。ところが学校の場合には、当然のように鉄筋コンクリートのまことにりっぱな学校が必ずこつ然としてでき上がる。もとの学校の価値と新しくでき上がった学校の価値というものは、月とスッポンほどだ。ほんとうであるならば、私は最も役人的にやかましく言うならば、決算委員会なんかで、これはおかしいじゃないか、もとのものよりうんと払って、これはほんとうは払い過ぎじゃないかと言って、電源開発会社補償者がしかられたってほんとうはしかたがないくらいのものだ。ところが実際を言うならば、実際のダムの建設費に比べれば学校の一つや二つ安いのだから、りっぱな学校を建て直してもらわなければならぬみたいで、そういう補償が行なわれておる。それは全部電気料金の中に加算されて原価になってくる。同様の意味において、今度は道路のつけかえというものがある。普通ならばキツネやタヌキが歩くくらいな道しかなかった。それが水没するからというので、今度はトラックが堂々走るような道路を建設して、つけかえ道路をやるのでなければこれを許さぬとくる。まず大体において、ほかの例ならば水利権をくれ、建設省というよりは、これは知事さんはまず水利権をくれませんわ。泣く子と地頭には勝たれぬ。それをまたいまのダムをつくって電気を起こすことに比べれば、経費は何とかごまかせそうだというのでやる、新しい堂々たる道路をつくって、それが補償費になって、料金に化けていく、皆さんのところから徴収されるという理屈になってくるわけだ。本来なら、それは普通の考え方から言うと、補償の払い過ぎだ、こう私は考える。もし補償の払い過ぎであり、ほんとうにその必要がありとするならば、学校を建てかえる場合には、もとの学校の費用くらいなものを補償者は払って、県なり地方自治団体がそのあとをめんどうを見て、そこで一軒の家、学校、公共施設が建つのが普通だと思うが、その辺の御見解を承りたい。
  268. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 現在の補償につきまして各地区により、あるいは事業によりまして、いま御指摘のような差等があるようでございますので、建設省が中心になりまして一定の基準を設けまして、公共補償等につきましては、その基準に従ってあらゆる事業が同じような基準で評価され補償するような措置をとってまいりたいと思います。同時に、しかしながら、これはやはり第三者的な機関が実施をすることが最も適切でございますので、できる限り土地収用法によりまして収用委員会が客観的な判断をするという措置を講じまして、できる限り収用法の手続によって補償をきめていくという方途によりまして、ただいま御指摘のような弊害のないように努力してまいりたいと思います。
  269. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この問題について最後に通産大臣に伺いますが、実際は通産大臣、これはみんなこういう泣く子と地頭に勝たれぬで、片っ端から補償費に化けて、それは全部料金に化けつつある。私ども予算を審議している場合に、公共事業費というものがある。河川改修費、それから橋をかけたりする費用、これは全部公共事業費として一般に出る費用なんだ。そういう普通ならば公共事業費的な性格のものが、たまたまそこに今度は発電所をつくるという名目であるがために、もう少し悪いことばで言うならば、ほんとうは官僚のセクト主義の影響もあって、それが電気の責任にされて、費用をこれにぶっかぶされて、それで電気料金の高騰を招き、そのために電気事業自身に対して大きな批判が向けられるということが間々ある。この補償問題、格別公共補償問題というのは、水力開発はいまほんとうは頭打ちになりつつある、費用がかさみつつある一つの大きな原因でなかろうかと思うわけであります。したがいましていま建設省からも発言がありましたように、今後道路建設、その他公共の土木工事のために私権を制限せんならぬいろいろな問題があるわけでありますが、その中において、従来電気事業が泣き寝入りさせられておったような公共補償の面について格段の考慮を払われたいと思うのでありますが、ひとつ大臣の御所見を承りたいと思います。
  270. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御指摘のとおりでありまして、私たちも非常に遺憾に思っております。ただその法制をつくって、これをすぐ国会を通すというような段階になりますと、なかなかそこにいろいろのセクト的な問題が起きたりして、実はいままで実現をいたしておりません。私はあなたの御意見にはまことに賛成であります。
  271. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がありませんので、わが党の発言は私だけで終わるものでありますから、ちょっと原則論だけに触れさしていただきたいと思います。  電気事業は、その本質でありますところの公共性、基礎産業性から強く社会化の方向が要請されておるものでありますし、またその他地域独占的性格から、全国の一元的運営が同じように強く要請される産業であるわけであります。したがいましてこのような観点に立って、過去におきましても御承知のように国家管理が行なわれた経験もあり、また現在におきましても似たような感覚でもってこの問題が検討せられて、ほんとうは理屈で詰めてまいりますと、その合理的最終形態としては、どうしても一元的な国有、国営が理想案として浮かび上がらざるを得ないわけであります。通産大臣も前にずいぶん似たような検討をされまして、似たような感覚を少なくとも持たれたことがあったことを私は承知をいたしております。しかしながら、そういう理想案が浮かび上がざるを得ないのでありますけれども、本事業法案の立案に当たりましたところの電気事業審議会は、この基本的な問題に対しましては、たびたびの検討の結果、むしろ結論を得がたいというほどの消極的な意味においてであろうと思いますが、現在の民有九電力、一電発という形を是認する立場をとっておるわけであります。ここで私は、大臣も御承知のように、もともと国有国営論者であります。したがってこれまでそういう立場から電気事業を批判し、推進してまいりました。しかし実際に私は電源開発会社という、言うならば私の考え方に一歩前進するような電源開発会社をつくって運営をしてみた、みずからも運営してみて経験をいたしました。同時にまた私が組合当時に主張しておりましたいわゆる全国一社化案なるもの、ほとんど私の案と形の上では同一と言っていいようなものが実際は公社というような形で誕生をし、その結果を私は現在までながめ、その運営の状態を見ておるわけであります。そうしておりますと、私はこれらの実験の中から、最近におきまして、この基本問題に対しては、ほんとうは完全なる懐疑論者にいまなっておるわけであります。少なくとも政権の性格と無関係事業形態の理想を追及することに対する疑問を私はむしろ非常に強く感じておるわけであります。したがいまして、私はこういう立場から見まして、現在自民党の政権下だ、この現在の自民党の政権下において一応現状をオーソライズしようとするような、いま出されておる法案の立場というものを、私は消極的ではありますけれども、やはりいまのところしかたないという是認の考え方に立っておるのであります。実際に私は、社会党の同僚の議員諸君が次々に立って質問をされたことは、一々ごもっともであり、私もかつて同じ立場から同じ質問をして、非合理的な答弁にあって、ずいぶん腹を立てて追及した。しかし私が現実に電源開発等を運営してみると、今度はそのさかさまの感じが痛切に出てきた。一つたとえて例に言いまするならば、先ほど加賀田さんが兼営事業、付帯事業の問題について、電気会社というのは電気を起こしてこれを供給すべき任務を持っているものだ、ほかの事業をやるのはけしからぬじゃないかと言われた。確かにそのとおりだ、私はそのとおりであると思うが、電源開発会社をこしらえて、一番最初の佐久間ダムを建設するにあたって、これは記録をとって外国向けに宣伝すれば相当のものになるだろうと思って、記録映画をずいぶん強引にとった。   〔始関委員長代理退席、委員長着席〕 記録映画をとったところが、大蔵省の係官から、目から火が出るほどおこられた。電源開発会社電気をつくり、それを供給する会社だ、映画をつくる会社じゃない。ぼろくそにどなられた。私は腹が立って、よしそんな金は一文も要らない、映画を売って金もうけしてやろうと言った。ほんとうに配給に出したら、実際にうんと金が入ってくる。そうしたら今度は役所のほうから、その金を入れるところがないと言われた。これはどうにもこうにもならぬ感覚でもって、私は何としたものかと思った経験があるわけであります。それだけではありませんけれども、いろんな意味におきまして、ほんとうはいまの社会党の同僚諸君の言われておりまするように、もともと国営であり、国営の立場から、旧公益事業令の根幹がそれに似た感じであったものだから、今度の事業法というものはその意味からいうと、私は相当な後退だと思うのです。それは要するにあのときの反動みたいなかっこうで、実際は私企業にこれをもっと積極的に運営さしてみようではないかという感じがあって、それがだんだん出てきて今度の法案となっておりまするがゆえに、言われるように、そういう立場、社会化の方向という立場から見るならば、私は確かに後退的な印象を受けざるを得ぬわけであります。しかしながら、私は先ほど申し上げましたような意味において、後退の感じも含めて、まあまあ問題点はたくさんあるけれども、ここに結論を出しがたいという意味で、基本的な企業形態論についてはむしろこれをたなに上げて、たとえば電気事業会社企業格差の問題がずいぶん論ぜられておるけれども企業格差の問題をむしろたなに上げて、前向きに料金格差、国民自身がそれによってどれほどの不利益を受け、そしてどうすればその不利益なりあるいは不平等が解消できるかという、電力会社の直接の行為がそのまま国民につながるような施策のほうを中心に目下のところは検討したほうがいいのではなかろうか、観念的な企業形態論より、自由民主党内閣であるから、それのほうが私はいいんじゃなかろうか、こういう観点に立ってこの事業法を見ておるのであります。しかしながら、それにもかかわらず、やはり私は料金政策、あるいは電源開発政策、それらの電気事業の理想でありますところの豊富にして低廉、良質なる電力供給という目的のためには、もともとの電気事業法関係から一歩も半歩も前進しておらぬという感じを持って、ほんとうはくつの裏から足をかくような感じを持ってながめているわけであります。  したがいまして、まず質問の第一は、私はそのような意味で、企業形態論はたなに上げておるつもりでありますが、それにしても事業の理想というものは、あくまでも豊富、良質、低廉そして国民に不平等でないような電力供給をすべきだ、こういう観点から事業法をつくらねばならぬ、こう考えるのでありますが、御意見はどうでありましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  272. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御指摘のように、豊富、良質、低廉な電気供給するというのを目的として、いかにしていったらいいかということを現実の立場から考えてみて、このような方向がいいということでありますので、この法案を提出いたしたわけであります。
  273. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて大臣にお伺いいたしますが、私企業的な性格が強まったこの事業法において、最も反省を要し、今後注意をしなければならぬのは、同僚からの質問にもありましたように、これまでややもすると電気事業経営者は片面においては公共性の名に隠れ、片面においては私企業の名に隠れて、それを非常にうまく使い分けをした。そうして政府なりあるいは役所なりにもの申すときには、私企業のたてまえをもって非干渉、干渉するなという立場を最も強く要求し、一般の需用家からの要望に対しては、公共事業であるがゆえに、その大本は電力政策であり、エネルギー政策であり、政府並びに行政府がその実態を握っておるのであるから、われわれ経営者がとてもじゃないがやってもうまくいかぬのだ、こういう意味で、公共性と私企業性をさかさまに使い分けながら、責任を回避しておった面が私は間々あったと感ずるわけであります。今度の事業法のたてまえで私企業性がむしろ強化される方向をとるとするならば、この事業責任という問題について確固たる方針を持って私は臨まれなければならないと思いますが、重ねて大臣の御所見を承りたいと思います。
  274. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いままでにもそういう傾向があった、そういう例があったことは私も認めております。しかし、それだからといってすべての人がそうであるとは思っておりません。まじめにやっておられる人もある。今後の問題にしても、今度の法律ができたのについていかに電気事業者が処置をしていくかということによって、私は今後の問題が決定されると思っております。電気事業者がもしいま言ったような意味においてこの法律をうまく悪用するというような立場をとるならば、われわれとして一断固としてこれに対して措置をとっていくべきものであると信じております。
  275. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 基本的な大臣のお考えを承りましたので、今度は二番目に、先ほど申し上げましたように、企業形態の問題から離れましても直接国民の利害問題については追及されるというふうに承りましたから、その第一の問題は料金の問題であり、料金政策の問題だと思います。料金政策というものの一番根本問題を、従来あったところのやり方の原価主義というものに固執されているあまり、ほんとうは質問でいろいろ言われていることに対して十分なる政策がとりがたいのだろうと考える。  そこで私はまず第一に、大臣の、約束でなくていいです、率直なお考えをお聞かせ願いたいと思うのでありますが、実際問題として九つの電力会社があって、九つの違った料金が施行されておるわけでありますが、少なくとも家庭用の電灯、電力というのは、いうならば米みたいなものだ。どうしてもこれは食わなければならないし、つけなければならない、そういう必需品だ。この家庭用の電灯、電力につきましては、原価のたてまえを相当弾力的に考えても、全国一律的な方針をとられ、そして画期的な低廉の方向をとられるべきだ、こういうふうに考えるわけであります。家庭用の電灯、電力をいかほど低廉化するか、どれくらいの値段にきめたらいいかという問題は、現在のところは税金と同じようにとるほうの立場だけを考えられておるけれども、家庭用の電灯、電力というものは、むしろ支払う側に立って、日本の一般の家庭がどれくらいの電力料金に耐え得るか、消費者の立場に立って、その値段を大体全国一律にきめられるべきだ、こういう観点で家庭用の電灯、電力料金はきめられる方針をひとつ新たに考えられるべきだ、私はこう考えるわけであります。念のためにもう一つ言っておきますが、したがいまして、逆に産業用の電力につきましては、いまの原価主義を全部くつがえすというわけにも参りますまいから、原価主義を弾力的には考えるが、残った分の産業用電力については、相当に商業ベース、採算ベースで考えられてよろしい。しかしこの場合もまた、産業政策並びに地域の開発政策等との関連において、これも相当思い切ったところの政策料金制を考えられるべきだ。そうしてこの家庭用の電灯、電力の問題と産業用電力の問題とあわせて総合料金制のたてまえをとるということは、そんなに困難ではない。こういう意味で、私は従来の料金関係考え方について、ひとつ基本的な考え方を変更すべきだ。格別、電気事業のいまの企業形態論をたな上げしているわけでありますから、企業形態論はたな上げしたかわりに、むしろその問題は十分考えられるべきだ、こう考えますが、御所見を承りたいと思います。
  276. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私はいわゆる家庭用電力をできるだけ一元化するといいますか、同じようにしていくということはけっこうなお考えだと思っております。またそういうふうに指導をいたしていきたい。それはけっこうでありますが、しかしいまあなたが言われたように、しからばその残った今度はいわゆる産業用の電力、工場用の電力についても政策的にものを考えていく、こういうことになりますと、いわゆる九分割をしている一つ一つ会社の経営ということについて私は非常に問題ができてくると思うのであります。それが九電力を認めておいて、しかもなおかついま言ったような問題を解決するということになりますと、電源開発株式会社が相当な送電線を持つというような形をとるか、あるいはまた全部の料金をプールするような一つ考え方をとるか、いずれの方法をとるか知りませんが、なかなか思い切った案にいかなければならないだろうと思っております。これは私は将来の問題として、もし九電力というものを認めるという形でありますならば、あなたのおっしゃることを実現する意思があるならば、そういう方向研究をいたしていかねばなるまいかと思います。
  277. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 大臣はずいぶん思い過ごして心配をされているようだけれども、私はそんなに深く心配せぬでもよろしいと思う。大体家庭用の電灯電力の高いところと安いところと、九地域の格差というのは、いまのところそれほどありはしませんよ。だからこれを大体原則的に一律みたいなところに持っていくことによって、今度は事業間の格差というものはそれほど大きく出てきはしません。あるいは相当大きく出てきたところで、その次の政策料金の問題というのは、同じ産業であるから、全国的に同じにせよと私は言っているんじゃないのです。交通条件によって産業立地がよかったり悪かったりするんだから、したがって特別な産業については電力料金のたてまえから立地がよかったり悪かったりするのはあたりまえのことだと私は思うのです。したがいまして、むしろ産業用電力の問題についての料金をうんと弾力的に考えられるならば、決して私はその第一の家庭用の電灯電力の低廉化、均一化というものは困難ではないと思う。  したがいまして、時間もございませんから先を急ぎますが、私はそういう総合的な問題もさることながら、いまや電気に対して最も強く要望されているものは、家庭用の電灯電力だ。家庭用の電灯電力が第一高過ぎる。その高いか安いかというのは、取るほうの料金の徴収の立場考えないで、支払う側の、どれだけいま光熱費に対して支払い能力があるか、こういう観点に立って、観点を変えて考えられて、家庭用の電灯電力の問題について、全国を均一化する方向で低廉化の方針をとられたい。強く希望を申し上げ、同時に政策料金について検討されたいことを申し上げるわけであります。  自治大臣がせっかくおいでになりましたから、念のためにお伺いいたしたいと思います。自治大臣、先ほど申し上げておったのは、六月三日の朝日新聞をごらんになりましたか。この三面記事でありますけれども、その半分くらいは北山川開発で七色ダムの建設について、まぼろし部隊なる、言うならば補償金目当ての部隊がどっと入り込んで、そしてここに大かた二百戸の家を建設して、四百数十人が登録して住んでおる、この事実。そしてこれはほんとうは似たような状況が次々に起ころうとしておる。この次に一番大きな電源開発は九頭竜です。九頭竜にも似たような状態が起ころうとしておる。今後建設省においても、もしダムをつくられようとするならば、似たような状態が起こる危険性が多分にある問題だ、補償というのはすぐ移りますから、したがいまして、伺いたいのは、このことは明らかに社会悪でしょう。取り締まる方法があるかないかということをさっき聞いておったけれども、何ともならないみたいな話をされる。ないみたいな話をされるけれども、このことが明らかに社会悪であることは事実だ。そしてその社会悪を一応是認をして——是認というわけではないけれども、取り締まる方法がないんだから、認めざるを得ないわけです。これを認めて、ダムの建設費の中に補償費として入ってくるというのは、国民がそのままほんとうはまぼろし部隊に費用を払っているようなこと、になるわけです。したがって、その対策を要求しておったわけであります。建設省として、住宅局長の話によると、いまの法律ではなかなか取り締まりがたい、こういうことらしい。しかし同時にまた私は、地方長官に対する指導という問題もあり得ると思う。ともかく法律がないからいまの悪をそのままほうっておくということは、良識をもって私はできぬはずだと思う。最後になれば、法律的にいくならば、権利の乱用ということになる。だから私は、これは本来は放置しておくということは許されないと思う。ところが、役所の行政その他がみんな逃げて逃げておるものだからまぼろし部隊はますます盛んになろうとしておる。この状態に対して建設省として手がないのか。ないとするならば、今後これを一番取り扱われるのは建設省ですから、どういう方針、どういう考えで臨まれるのか伺いたい。
  278. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は建設大臣ではございません、自治大臣でございます。実は私は公営電気か何かの問題だと思って出てきたわけですが、そういう問題だといたしますと、私がここでお答えすることもどうかと思うのでございますが、御指摘のとおりに、社会悪と言えば言えると思うのです。戦後日本に新たな現象の一つとして、いろいろな補償屋というものができてまいりました。これはいま御指摘のまぼろし部落だけではない。ただ私たち、たとえば基地に関する、あるいはその他いろいろな補償、問題が起きました場合に、やはり考えることは、とにかく補償補償と言う人は、大なり小なり貧乏な農民なり漁民なものですから、とにかく少し無理だけれども出したらどうだというようなことを私たち自民党員としてずいぶんやった記憶があるわけでございます。しかしながら、これが商売となって電源開発が行なわれると予想された地域にすぐ何か補償目当ての建物を建てる、あるいは道路が予定されたらすぐ早耳でかぎつけてきて、そこに何らかのことをやって、そうして補償金目当てにやるというようなことは、御指摘のとおりに、私は社会悪と考えられると思います。ですが、やはり私権をこういった場合に制限いたします場合には、私どもはここで簡単に答弁申し上げて御理解を願うようなことはできぬわけでございまするけれども、しかし、土地収用法にかけるにいたしましても、強制収用の措置をとるにいたしましても、やはり補償問題ができてくるわけでございます。そういう前段階において、そういう一つの計画的なことをいたしますことを何らか防げないか、こういうことについての御質問だと思うわけです。ただこれも、都道府県あるいは所在市町村がこれを指導するといっても、なかなかそれに限界があるわけでございますので、何らかこれを法律によって強制措置がとれぬか、こういうことであると思います。しかし、現にこういう補償目当てのものが次々に起こってくる場合におきましては、ただいま佐々木委員が御指摘になったように、何らかこれに対する措置は考えなければならぬと思いますが、ただ冒頭に申しましたように、私は自治大臣でございまするので、すぐそれに対しては自治行政の面でどうするかということはちょっとお答えできかねる。ただ、こういうことの起こらないようにという指導は私の責任においてやらなければならないと考えておりますけれども、立法ということになると、ちょっと私の立場ではどうも申し上げかねる次第であります。
  279. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 内務省というものがなくなって、建設省、自治省に分かれたものでありますから、なかなかこの関係はむずかしいと思うのです。しかし、実際問題としまして、法制化ということになると、必ず安全を見込まれまして、先ほど言ったのだけれども、法制局の立場から見るといまの私権の制限ということがすぐぴんと頭にくる。しかし、実際に建設省が仕事をしようとする場合、自治省でその内容を見られる場合、それはあくまでも実際問題としてそこえ行ってみれば一目瞭然です。いいも悪いもへったくれもない。もしつくったその法制を乱用するというなら、乱用するほうが悪いけれども、大体公的な立場法律をつくられて実施しようとする場合には、施行者が公的な立場をとる場合には大体の見当はつくわけだ。したがって私は、こういう補償屋がばっこするいまの世の中から見て、何らかの法制が私は必要ではないか、こう考えておるわけであります。しかしながら、これはなかなかむずかしいものであるから、通産省も建設省も自治省もほんとうはまあまあとしり込み主義だろうと思うのですが、法制局においても考えておるようでありますので、私は関係各省が真剣にこの補償問題に、格別そのような明らかに社会悪と見られる問題について取り組まれんことを希望いたします。  それから、せっかく見えて、その質問があるだろうと思っておられたということでありますから、念のために伺いますが、いま社会党の同僚議員からも、復元の問題と、県営、市営等の電気事業の問題についての質問がなされておりました。ほんとうは県営、市営、つまり、自治体の運営する電気事業というものは、昔はいろいろな問題があったけれども、いま見ると、まあ一番悪いものの言い方をするならば、事業は食いものみたいになって、本来の事業でなくて、要するに補償がどんどん補償屋が盛んになるのと同じような意味で、一つ事業についていろいろな問題があり過ぎて、私は必ずしも好ましい現象ではないような気がしているのです。たてまえから見ると、自治体営というものは、国営にいく一歩前進みたいな形でいいように見えるが、実際は最も無責任な経営が行なわれるような気がして私は心配なのであります。そういう府県営、自治体営に対する自治大臣の率直なお考え、それから、復元問題というのは大かた終わりかけておりますけれども、いま御質問も出ておったようでありますが、これに対するお考えがありましたら承っておきたいと思います。
  280. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 企業は何でもかでも公営で取り上げていくということは、私は反対でございます。よほど公共性が高い、住民の福祉に特に密接な関係があって、しかもこれが私企業としてはなかなか成り立ちがたいというものを特に公営とすることはあり得ますけれども、町村の財政がどうも少し窮屈だから、川が一本あるからここで電気を起こして、そのあがりで町村財政をまかなっていこうなどという考え方を起こされますと、調子がいいときはいいけれども、ごらんのとおりいま公営企業は軒並みに赤字を出してきている。必ずこういうことになるわけであります。いま佐々木委員がどういう意味で御指摘になったか存じませんけれども、やはり私は電気の場合は、その性質上公営ということはあながち否定はいたしません。しかし、御案内のとおりに、これはキロワットアワーが一体どれだけでできるかということが問題でして、しかもそれぞれなまの電流のままで住民にこれを流すということでなしに、たいていその地に所在する電力会社と売買契約を結んでやっておると思うのです。そこでその契約はいつも相当単価の高いものになっておるはずですが、それでもって将来補償してくれるというなら別ですけれども、これは水力の場合に資本費が相当かかるわけです。しかもいま火力、重油のなまだきなんかになりますとコストは非常に安い。将来が非常に案じられるわけであります。ですから私は、電気などを今後市町村などが公営でどんどん計画するということに対しましては、相当大幅にブレーキをかける——と言えばいままでやっておる諸君が不安になるでしょう。いままでのところはいたし方がありませんから、何らかの形でこれが安定していきますように、これが市町村の大きな負担にならないように、いま自治省設置法一部改正の法案を皆さま方に御審議を願っておるわけでございます。この問題もあわせて御検討願って、そこで結論を出したい、かように考えております。
  281. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 自治大臣、ありがとうございました。  最後に通産大臣に、もう一つの問題を伺っておきたいと思います。  先ほど、企業形態問題をたな上げはするけれども、直接国民の利害に関係ある電力政策をとられたい、こういう意味で、料金政策に対する希望を含めて御質問申し上げました。もう一つの重力政策の柱になるのは電源開発の問題であります。電源開発もまた、いま開発調整審議会というものもありますけれども、その基本がやはり私企業であるがゆえに、へたをすると私企業性が出過ぎて、私は長期の電源開発計画に対して誤りを犯す危険性を感ずるわけであります。ちなみに承りますけれども、今年度の新規の着工計画は、水・火力別にはっきり覚えておりませんが、多分ことし着工するのは、火力が二百二、三十万キロ、水力関係は二、三十万キロじゃないですか。つまり私の申し上げたいのは、ことしだけの断片を見ても、火力と水力の比が、火力が二百二、三十万キロを着工しようとするのに対して、水力は二、三十万キロという小さいものだ。長い目で見て電源開発というものは非常に長期なものでなければならぬ。現在水力と火力のその採算というものについては、確かに一つの例が出るような結果がそろばんの上で出てくるかもしれない。しかしながら、四、五年先あるいは十年先におきましては、このような状態とは違った状態が出得ることも考えられるわけです。その意味において私は、電源圏発というものが、私企業が中心になって、採算ベースで近視眼的に行なわれるのではあるまいかという心配を持つわけであります。そのような意味において、まず第一に、ことしの着工についての関係から見て、水・火力の比率に対してもっと長期の立場から検討を加える必要ありやなきゃ。あるのではなかろうかと思うが、大臣の御所見いかん。これが第一点。  あわせて、御承知のようにことしは不景気だ。株もいま下がっておる。これまでの電源開発の状況を見ておりますと、不景気な時期においては必ず電源開発計画がうんと圧縮されるわけです。一般経済界は不景気の状態から数年後には必ず景気上昇の空気になるわけです。ところが圧縮された開発計画はちょうどそのときに実を結んで建設が完了する状態になるわけです。そういう長期の見通しから言うと、経済の不景気なときに計画を圧縮し過ぎた罪が、今度経済が上昇過程にあるときに電力不足を招く、こういう結果になるわけでありまして、これをそういう立場に放任しておくわけにはいかないと私は思う。現実にこれまででも、そのような波が逆の波を打ったことが考えられると思うのです。したがいまして、電源開発調整審議会だとかあるいは通産省の指導だとかいうて、そういうことはうまく穴を埋められることにはなっておるが、先ほど加賀田さんから、電気会社に振り回されておるのじゃないかという質問がありましたが、そういう感もなきにしもあらずで、どうしても不景気のときにはぎゅっとしぼり過ぎになってしまう。そういうことで長期の観点から見ると、私企業のしわ、長期電源開発に寄るうらみを感ずるわけでありますが、それをないようにすることがいま当面の重大なる問題だろうと考えます。したがいまして、この観点に立って、現在の水・火力の比率の問題、長期開発計画の問題について御所見を承りたいと思います。
  282. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 先ほど電気料金の問題で、家庭の電気が非常に高い、払うほうの立場に立てとおっしゃった。これはあなたも電気のことをやっておいでになったからでありましょうが、それだけに私一言だけ申し上げておきたいと思います。  比率から言うと電気料金は非常に安いのです。戦前の料金と比べて電気料金と他の公共料金との値上がりの比率を見ると、従量電灯が一一八、大口電力が、二三二、小口電力が一三一です。ところが国鉄が一七六、水道が一八八、都電が二一四、ガスが二七一、こうなっておる。だから、払う側から言って、非常に高いのだということはちょっと言えないのじゃないか。比率の問題を言っておるので、私は何も安くしていけないと言っておるのじゃございませんから、誤解のないようにお願いいたしたいと思いますが、それだけに、こういうふうに安いのはどうして安いかといえば、これは国が相当力を入れたということであります。国が相当な資本力を投入したということがこういうことになっているんだから、必ずしも電力会社の経営者がよかったという意味でこういう数字が出ているのではありませんから、私は将来また十分警戒するというか、監督を厳にする必要があると思いますが、これはまずもって一応おわかりを願いたい。  それから今度は新規開発現状でありますが、お説のとおり、ことしは二百六十万のうちで水力二十万であります。こういう比率というものは、私は実は電源開発といいますか、電気の問題をそうしょっちゅう見ておらないものですから、ちょっと抜けておりますが、私から見ると、少なくとも四十万キロくらいは水力をやらねばいけないのじゃないか、こういう感じがいたしております。しかしこれも、なるほど事業費の関係その他からいって、あるいはまた利益を追求するといいますか、安い電気を、いわゆる火力をうんとつくりたいという空気がここへ出てきておるのではないかと思うのでありますが、こういう点は長期的な観点から是正をすべきだというあなたの御意見には全く賛成であります。特に、景気が悪いと建設計画が少なくなり、景気がよくなった時分にはふやす。これがいつもちぐはぐになって料金をかえって上げる結果になっておる。景気の悪いときにこそ大いに建設をすべきではないかという御意見はごもっともな御意見だと私は思うのでありまして、今後十分注意をいたしてまいりたいと考えておるのであります。
  283. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私が電源開発問題の長期の見通しについて格別に当局側の十分なる指導を要請するのは、先ほど来の質問にもありましたように、電力供給責任ということが今度の事業法の中で明確でないわけだ。電力供給責任は一体政府にあるのか事業者にあるのか、電力供給を拒むことを得ないという条文にはなっておるけれども、積極的な供給責任というものはほんとうはぼやっとしておるわけだ。したがって、決して電気が足らないようにならないために、あらかじめ電源開発を進めておかなければならぬという責任を事業者にほんとうに持たしていいかどうかは、もしこれが普通の株式会社であるということならば疑問です。といって、政府が持つかというと、持ったところで大臣が次々かわってしまうし、どうということはないみたいなことになってしまう。その意味で、ほんとうは電力供給責任については、この事業法のたてまえは必ずしも明確でない。私は今後の問題として十分ひとつ御検討を願いたい、こういうわけであります。  それからもう一つ電気料金の問題は、大臣、私の感覚はこういうことなのです。家庭用の電灯電力の問題については、生計費の中に占める光熱費の割合、普通の生計費の中に光熱費は大体どの程度持ったらいいかという観点に立ってこれを考えろ、こういうことです。過去の料金と比較しているのじゃない。過去は、あなた、高いにきまっている、こんな明るいものはないということで電気は貴重品だったんだから。今度は必需品になるに従ってだんだん安くなるのはあたりまえの話です。しかしながら料金のたてまえは、原価主義のたてまえからやはり取るほうの総合原価の中に入るたてまえになっている。私は、家庭用の電灯電力の費用というものは、ほんとうの見方は生計費の中に占める食料費に似たような考え方で見ていいのではなかろうかと思う。そういう観点に立って電力料金の中で格別家庭用の電灯電力についての考え方をひとつ変えたらどうか、こういう提案なのであります。私はいろいろ申し上げたいと思いましたけれども、時間もきたようでありますから、いまのと関連して最後に一つだけ大臣のお考えを聞いておきたいと思います。  先ほど開発問題を言いましたけれども、いまのような考え方水力開発をふやそうと思っても事実上困難だと思う。それはもっと観点を変えて水力開発についての基本的な再吟味をしなければ、従来の考え方でそろばんを持つと、だんだん減って、二、三十万キロしかなくなるので、その意味で、いまあるのは多目的ダムみたいなものでありますが、そういう非常に広範な、公共的な開発という問題を含めて、水力開発というものについて根本的な吟味をする時期に来ておるのではないかと思うが、大臣の御所見を最後に伺っておきたい。ただ申し上げておきますけれども、従来から多目的ダムの方式はありました。私も現に実際にやったことあるけれども、役所のなわ張りがどうにもこうにもならぬほどに入っておって、一つのダムの費用をいわゆるアロケーションと称して三つにも四つにも分けて、それの経済効果がどうのこうのと頭のいい役人がそれだけにかかってはじいてやっておった日には、多目的ダムなんかできやしません。そういう観点でなしに、もっと包括的な見方で多目的ダムを強引に開発できるような考え方をしなければ、水力開発についての基本的な吟味はできないと思うのでありますが、それも含めて水力開発についての再吟味をする用意ありやなしや、最後に大臣の御所見を承りたいと思います。
  284. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 残っておる水力は千八百万キロくらいあるのでありますが、これがみんなコストの相当高いものになっておるわけであります。しかし将来の日本のエネルギーというものを考えてみた場合、電力の持つエネルギー、火力発電の増大ということを考えてみた場合に、やはりピーク時の電力を必要とすることは当然でありますから、この意味からまず一点考えてみなければならないことがある。  それからもう一つは、いまあなたが言われたように、多目的ダムというようなやり方がはたして時勢に合っておるかどうか、またそのやり方がいいか悪いかという問題も一つあります。と同時に、相当コストの高いものをやらなければいけないという場合においては、コストの安い火力とのアベレージということを考えながら電源の開発をしていかなければならないということもあると思うのでありまして、これらの問題を全部含めつつ水力発電の問題をもう一つ考えていく。そしてそれがどうしてもなかなかむずかしいという場合になったならば、もう一度電源開発株式会社が持つ役目を考えてみるというようなことも一つ考え方ではなかろうかと思いますが、いずれにいたしましても、御趣旨のような点を考えながらこの問題に対処してまいりたいと思っております。
  285. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 なお質問は残っておりますけれども、約束の時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。
  286. 二階堂進

    二階堂委員長 加藤進君。——簡潔にお願いいたします。
  287. 加藤進

    ○加藤(進)委員 いつも時間の制限をきびしくやられるのでございますが、きょうはまだ時間も相当あるようでございますから、実は非常に詳細にわたりましてこまかく質問したいわけでございますけれども、そこは信義を重んじまして、できるだけ重複を避けて重点的に質問申し上げたいと思います。  第一の問題は九電力社会の経理内容、営業資産の内容についてです。これはすでに同僚委員の方たちからそれぞれある部分は質問をされております。しかし国民の目から見ますと、九電力会社の経理内容や資産、営業内容については、きわめて深い疑惑が常に起こってきております。これは先ほどある委員からの質問にありましたような、四国電力との関係における汚職問題というようなきわめて局部的な問題ではございません。私はその点につきまして証拠を数字の上で申し上げたいと思います。  いま毎年のように株の利益配当一割を続けておるような会社はわが国においてざらにございません。また借金の利子をどんどん平気で返されるような会社もない。しかもこの三十六年、三十七年にわたって、鉄鋼と並んで池田内閣の高度成長政策の重要な柱として、年間四千億に及ぶような設備投資が行なわれております。こうして固定資産は年々累積いたしまして、現にその固定資産は二兆九千億に達しております。これは事実の数字でありまして、否定できないと考えております。またこの九電力の三十八年度三月期の決算を見ますと、九電力の税引き経常利益金だけで二百四十五億円、これは昨年の同期に比べて十二、二億円の増加でございます。しかし利益金は決してこういう表にあらわれた、公表された利益金だけではありません。たとえば減価償却の超過分、こうして二百三十七億円というものが現に存在しております。また各種の引き当て金がさまざまありまして、これを合わせてみるならば、優に半期の利益金だけで五百億をこえると推定できると私たちは考えております。半期で五百億、すなわち一日々々三億を優に上回るような利益がこの九電力会社によって累積されつつある。これは事実だと私は思います。(「ほんとうかな」と呼ぶ者あり)ほんとうかどうかを確かめていただきたい。こういう利益金があるために、この利益金の隠し場所がいろいろやられております。その隠し場所の最も大きな内容が、先ほども委員から追及されましたような社外投資になってあらわれてきております。これは、東北電力の一昨年の電力料金引き上げのときに、世間の非難が非常に高かったというのは、当時御承知のように、東北電力東北随一というようなマンモス・ビルディングをつくった。こんなに金があるくらいなら、なぜ電気料金の引き上げをやるのか、こういう追及を受けた結果、電力会社はどうしたか。わざわざこのビルディングを別の会社名義にして、自分たちの経理から切り離した。こういうことが平気でやられておる。これは一例でありますけれども、こうして私の知り得た資料の中から見ましても、持ち株二〇%以上の株を持っている会社昭和二十六年には二十五社しかなかった。ところが昭和三十八年にはそれが五倍、百二十六社に及んでおる。これは事実です。東京電力などは十六社に及んで、その総計は六十一億に達しております。これは電力関係は関連の企業や関連の産業に入れたといわれておりますけれども、しかしその内容を見たら明らかです。不動産業、これはどういう関連があるのでしょうか。広告業、運送業、ホテルや食堂まで経営しておる。観光事業から印刷会社、こういうところに、いわば電力料金や国民のあたら血税によってつくられた国費から投入した資金によってつくり上げ、積み上げられた利益が投ぜられておる。しかもこのような社外投資につきましては、おそらく通産大臣もこれについて十分に監査権を持って、監査、そして内部点検をやられたという実例があるかどうか、私はお聞きしたいと思っております。こういう状態です。こういう点につきまして、単に九電力内部の経理の問題、営業の状態ばかりでなく、関連する社外投資全般を含めて、公益事業という名前のもとに、国民の立場から見たならば、政府は十分にこれに監査のメスを加えて、その内容を国民に公表する必要がある。私はそう考えますが、その点について通産大臣のお考えはどうか、お聞きしたい。  まだまだあります。
  288. 二階堂進

    二階堂委員長 質問を急いでください。
  289. 加藤進

    ○加藤(進)委員 こうしてつくり上げられた利益金は、少なくともまず第一に政府の大きな援助によって行なわれております。膨大な利益金の相当部分は、少なくとも国庫に返還さすべきである、国民に返さすべきである、こういう決意と用意があるかどうか、ここを私は大臣にお聞きしたい。  ところが、今度の電気事業法案は、こういうような膨大な利潤を九電力に保証しながら、しかもそれをさまざまな形で隠匿するようなことを従来続けられながら、今度はどうか。新しい電気事業法案においては、こういう利益金を計上するその過程の中で、まんまと電力会社に内部保留というような形で、減価償却費などを不当にもふやすというようなことをぬけぬけとさせることができる、引き当て金の増額もできる、こうして電力会社に隠し利益をますますふやさせるような道を、この電気事業法案はつくっているのです。これはどういうわけなのか、その点をまず第一にお尋ねしたいわけです。
  290. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいま二百四十五億円の利益が上がったと言われますが、確かに利益は上がったが、資本金は四千億円以上であります。四千億円に二百四十五億円上がったから、非常に利益を得ておるとは言えないでしょう。しからば四千億円の資本金を持つということはなぜかということになれば、これは日本のエネルギーの大宗をなしておる電力会社のことでありますから、これがなかったならば、何十万、何百万の労務者を雇うこともできなければ、またわれわれが輸出をすることもできないでしょう。これによってどれだけの人がどういうふうに生活をされておるか、またそれによる利益というものを考えられたならば、必ずしもその資本金は膨大であるとは言えないと思います。しからばその資本金が膨大でなければ、二百六十億円くらいの利益が上がったとしても、私はちっとも不当な利益あるいはたいへんな利益を上げておるとは言えないと思います。  それからもう一つ、あなたは社外に投資をしたとおっしゃいますけれども、先ほども申し上げましたように、三兆円の投資をしておるうちで約六百億ほどが、確かに電力会社自体以外のものに入っております。しかしそのうちで、数字をあげて言ったら、ほとんどがもう直接電力会社にとってどうしても必要な、たとえば火力発電会社であるとか、それから先ほど局長が申し上げましたような必要性に基づいた金がほとんどでございます。だからといって、私はその不必要なところに出したのをいいと申し上げておるのではありません。たとえば東北電力値上げの問題のときに、実を言いますと、あなたが御指摘になったところのビルディングをつくったというようなやり方は、私は不当であると思います。だから私から警告を発しました。そして結果においては、社長はあのときに交代しておるではありませんか。私は、そういうような不当な措置をとったときに、これをただ黙視しておるというわけではありません。これなどは二十億でございましたけれども、しかし私はあの会社の内容から見て、二十億の社外投資をこういうビルディングにするということはけしからぬと思っておる。だから私はこれに対して厳重な警告を出し、またその処置をとらしておるわけであります。  それからもう一つ、あなたは償却部面が非常に多くなる、そしてそこに隠し財源が出てくるではないかということでありますが、これはいままでも、御案内のように、会計検査院が会計検査をいたしております。今後におきましても、私たちとしては厳重な監督を加えていくつもりでありまして、決してそういうような不当な利益を得させて、黙ってこれを見ておろうという考え方は毛頭ございません。
  291. 二階堂進

    二階堂委員長 できるだけ簡潔にお願いいたします。
  292. 加藤進

    ○加藤(進)委員 わかりました。  いまお答えの点につきましても、あらためて質問したいと思いますけれども、続いてほかの質問に移ります。  それは電気料金値上げの問題であります。これもすでに同僚委員の諸君からいろいろ質問がありましたので、私は重複を避けて、簡潔にお答えをお願いしたい点があるわけでございます。  その一つは、何と申しましても、大口電力に対する料金一般の電灯料金との間の格差がきわめて激しいようであります。これは、たとえはイギリスの場合におきましても二倍をこえてはおりません。しかし日本は三倍以上に達するというような格差の非常に激しいということが顕著です。しかもこの料金の決定ということについて、大体電力社会はまず全体のワクをきめて、そのワクの中で大口料金をどうするかということを最初にきめて、そのいわばあおりと申しますか、その結果それを今度は電灯の零細消費者にかける、こういう形のことが公然と従来も行なわれてきております。そこで、その中で、それだけの格差があるのにもかかわらず、何がゆえに大口電力消費者の四〇%にあたるところに特約料金制というものを設けて、さらにこれに恩典を与えてきておるのか、こういう点が第一。それから電気事業審議会の答申によりますと、今度新たに大口電力の個別契約制度というものを実施しようとしている。個別契約ということを公然と認めるならば、それは電力会社と従来いろいろな因縁関係のあるような会社に対して、これに過分の優遇を与える、こういうようなことは当然起こり得ることであって、そういうことを規制するような何らの処置もないのではないか、こういうことが今度の電気事業法の中にはっきりと出てきている。これは料金公平の原則に反するものだと私は考えるが、その点はどうか。  以上のような点から見て、現在の電力会社の経理内容その他利益金等々の関連から見ても、また大口に対する優遇措置から見ても、現在の全国民のほとんどにわたる電灯利用者、一般の電灯料金の消費者に対して、大幅な料金の値下げを行ない得るということを私は確信しております。こういう点について、通産省は、九電力会社に対して、あるいは値下げをするというような気配があるのに対しては、値下げよりも設備の充実だ、サービスの改善だというようなことでこれを押えたり、値上げをしようというものに対して、これをはっきりと押えるようなことを十分にやられておらない、こういう点を私たちは感ずるわけでございますけれども、私があえて言いたいのは、この際大胆に全国民の要望にこたえて、料金の値下げを九電力会社に対してはっきりと通産省から要求するということ、こういう配慮と努力をされる用意はあるかどうか、この点をお伺いしたい。
  293. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 まず結論から申し上げますと、そういうような考えは毛頭ございません。そういうようなことをしてはたいへんであります。また、あなたが仰せになりましたけれども、特約料金の問題のことでまずお答えをいたしますと、私たちは東北電力値上げを、私が大臣になってからやりました。そのときに、まず大口電力のほうをきめて、そのあとで電灯料金のほうをきめられたとおっしゃったが、実は私は電灯料金をうんと下げるのを一番先にやった、そのあとで大口の料金の問題を決定したのであります。全然やり方は逆でございますから、この点は御心配ないようにお願いをいたしたいと思います。  また、特約料金の問題でございますが、これはあなたは御案内だと思いますが、昔、水力電気をやっておりましたときに、夜の水はほとんどむだになっておりました。そこでむだになりますから、夜使ってもらう工場には、うんと安い料金で使わせておったわけでございますが、その形態がいま残っておる。ところが、今日の電気発電形態が変わったからといって、今度は全部それを御破算にして高い電気でやれと言ったら、その工場はつぶれてしまいますか、またその工場は運営ができなくなるという事態にもなりましょう。それなど一つの例でございますが、この特約料金という問題が残っておるわけでございます。しかし特約料金があるからといって、何もそういう大きな会社に利益を得させようというような意味考えてはおりません。そういうことは全然考えておらぬ。また、個別契約ということは、いままだ何ら決定も何もいたしておりません。そういう話があるというだけでありまして、私たちはそういうことをいま考えてはおりません。
  294. 二階堂進

    二階堂委員長 加藤君、時間でございますから、あと一問だけにお願いいたします。簡潔にお願いいたします。
  295. 加藤進

    ○加藤(進)委員 電力は、御承知のようにわが国の第二次エネルギーのうちで、今度の計画によりますと、昭和四十七年度には四七%を占めるというふうに私たちに聞いております。ということは、日本の第三次エネルギーの半分は電力で握るということであります。まさに日本のエネルギー電力によって決定される、これだけの比重があるということを私たちは見なくてはならぬと思います。したがって、日本の産業と日本の経済が自主独立の立場に立って考えていくならば、このような重大な比重を占める電力エネルギーを、日本の産業、日本の資源に依存して、その上に私たちは大きくこれを育てていくという十分な方針をもって臨む必要があると考えております。ところが、現在電力におきましても、相当開発の余地のあるところが非常に多い。また、石炭におきましても、御承知のようにアメリカの石油がどんどん進出してきた、エネルギー革命だということばのもとで、日本の石炭産業が現在のように斜陽化しつつあるということは、もうだれしも知っておるところであります。この石炭に依存して電力エネルギー開発するということにつきましても、あまり積極的な努力が払われておらない。火主水従ということばが言われておるが、その火主水従も、あげて石油中心の火主水従に大きく転換してきておる、これは私は否定できないと思っております。しかもこの火主水従、石油中心でありますけれども、先進諸国との比重を見て、私はこの数字の上で驚きを新たにするわけでありますけれども、アメリカでは、電力の石油による開発は七・四%です。イギリスでは二・八%です。ソビエトにおきましても一〇・四%です。これが日本におきましては四四%に達する。しかもその石油資源なるものは一体どこからくるのか。ここに、私は日本のエネルギー資源、エネルギー開発という問題について重要な問題があると考えております。しかも同時に、石油でございますけれども、石油専焼というような設備のやり方で電力開発しておるところは、アメリカは言うまでもなく、ほかのところでも非常に少ない。日本では重油専焼の火力発電が六二%に達しておりますけれども、西ヨーロッパにもアメリカにもこういうのはとんどない、こういう状態です。したがって、その結果は一体どういうことになるのか。まず石油はアメリカを中心とする国際的な石油資本に依存しなくてはならぬ。タンカーも外国にたよらなくてはならぬ。しかも、重油専焼というような発電の設備につきましては、特に最近の去る五月十三日の発表によりますと、電源開発調整審議会において、今度の昭和三十九年度の電源開発計画が出されたと聞いておりますが、これには世界最大級の超臨界圧設備というものが東電、中電、関電に設けられるということが決定されたと聞いております。これに匹敵するものはアメリカに二つしかない、こういうふうに言われております。しかも、こういう発電設備に対して、日本の重電気メーカーさえ、こういう設備やこういう機械に対して、これをつくることはいまの技術段階においては不可能である。結局のところ、これはアメリカの機械、アメリカの設備に依存し、アメリカの借款に依存しなくてはならぬ……。
  296. 二階堂進

    二階堂委員長 加藤君、質問を急いでください。
  297. 加藤進

    ○加藤(進)委員 こういうことが重電機メーカーの中からさえ出ておる。私は、ここに、総合エネルギー計画の中で電力の占める重要な役割りを考えてみるときに、根本的に考え直す必要がある問題があると思う。私は、これは宮澤経済企画庁長官お尋ねすべき問題かもしれませんけれども電力に関する限りは、通産大臣が責任をもってお答え得られると考えております。私は、日本の経済、日本の自主独立、そういう根幹が、一つには食糧にある、同時に産業の基礎をなすエネルギー開発である、こういう点から考えて、以上のような状態に非常な危惧の念を持つわけでございます。私は、すべからく願わくは日本の政府、通産省がこういう点に心をいたして、日本の産業の基盤を、自主独立の立場に立って自立的な産業経済の建設という立場に立って、十分な配慮を払われることを心から期待するわけでございますが、その点についての御所見を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  298. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 どうも、加藤さんのお話は、少しわれわれ理解いたしかねます。日本とアメリカを比較されたり、あるいはソビエトと比較されたり、これはエネルギーというもの、エネルギー源が実際問題として違うのです。そうして向こうにはたいへんな大きな水力があり、また広大な地域で、しかもたくさんな資源を持っておる。そういう国と、日本のようなこういう狭いところで、しかもたくさんの人がいるところで、そうしてそこでエネルギーの問題を解決しようという場合、全然これはあなた、そういう比較をされたのでは問題になりませんよ。これは私は、もう一ぺんお考え直しを願いたい。われわれのほうこそ一生懸命勉強しております。その点では十分努力をいたしておるつもりであります。したがって今日の、いまの日本のエネルギー政策は、この問題点をいろいろあげればいろいろございましょうけれども、われわれとしては自信を持ってこのやり方でやれる、こう考え、またこれが最善の方法である、こういう考え方で処理をいたしておるわけでございます。
  299. 二階堂進

    二階堂委員長 おはかりいたします。  本案についての質疑を終局するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 二階堂進

    二階堂委員長 異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————
  301. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、自由民主党を代表して、神田博君外六名より、本案に対する修正案が提出されております。     —————————————     —————————————
  302. 二階堂進

    二階堂委員長 まず、提案者より趣旨の説明を聴取いたします。神田博君。
  303. 神田博

    ○神田委員 ただいま提出されました、自由民主党提出にかかる電気事業法案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案の内容は、お手元に配付されておるとおりであります。  本修正案の趣旨は、電気事業の公益性を重視するとともに、その運営をより民主的に行なうため、本案附則によって通商産業省設置法を改正して、電気事業審議会を設置することになっておるのを、本文中に明記し、機構、権限等を明確にしたことであります。  また、電気主住技術者資格審査会に関しても、保安体制の確立という見地から、電気事業審議会と同様に本文に明記し、その機構等を明確にしたことであります。  何とぞ、全会一致御賛成くださいますよう、お願い申し上げます。
  304. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  305. 二階堂進

    二階堂委員長 これより、本案並びに本案に対する修正案を一括して、討論に付します。浦野幸男君。
  306. 浦野幸男

    ○浦野委員 私は、ただいま議題となっております電気事業法案に対する修正案並びに修正部分を除く原案に対し、自由民主党を代表して賛成の意を表するものであります。  御承知のとおり、電気に関する法制は、戦後の占領終了時における特殊事情のため、昭和二十七年に旧公益事業令が失効し、一時無法律の状態になったのでありまするが、この状態に対処するため、電気及びガスに関する臨時措置法が制定せられ、これによってすでに失効した旧公益事業令の規定の例によって法規制を行なうとともに、電気工作物については昭和六年制定の旧電気事業法の規定の例によって規制を行なうという、法形式的に全く類例を見ない特異な法制になっているのであります。  従来、電気事業法案の作成については、政府においても検討されてきたのでありまするが、諸般の事情のため国会提出にまで至らず、今回ようやく提出の運びに至ったのであります。  この間、電気事業は、かつての電力不足の状態を克服し、量の確保から質の確保に重点を置くようになり、年々急増する電力需用に対応し、電源の開発、設備の拡充等につとめ、わが国経済の発展に大きく貢献してきたのであります。しかして今日においては豊富、良質、低廉な電力供給という電気事業の使命はほぼ達成されておりまするが、今後なお電気事業に期待するところは大きいのであります。  申すまでもなく、電力はすべての産業活動の基礎となるエネルギーの中心であり、日常生活に必要不可欠なものであります。したがって、電気事業あり方についてはいろいろ議論の分かれるところでありますし、料金サービス補償等、多くの問題のあることも事実であります。しかし困難な事情にありながら、よく電気事業としての責任を果たしてきた過去の実績、あるいは広域運営のような企業相互間の連携による自主的な経済性追求の努力等は、高く評価してしかるべきであります。また、各種の問題は、電力のような国民生活並びに産業活動に不可欠なものに関する産業においては、ある程度避けられないところであります。これに対しては誠実をもって解決に当たるべきであり、現に電気事業はその方向で努力しているのであります。  今後、電力需用は、経済の発展に伴いますます増加すると予想されまするが、電気事業者はこれに対応し、十分その責任を果たすだけの能力と体制を持ってると思うのであります。  本案は、かような電気事業の実態を基礎として、従来きわめて異例な形式をとってきた電気事業に関する法制を、今日の情勢に即応するよう、広域運営等新たな制度を加え、新電気事業法として制定するものであります。  また修正案は、本案附則による通産省設置法改正によって設置する電気事業審議会、電気主任技術者資格審査会を本文に明定するとともに、その機構を明らかにするものでありまするが、電気事業審議会の重要性、また保安確保の見地から、まことに適切なものであります。  以上、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成の意を表し、討論を終わります。(拍手)
  307. 二階堂進

    二階堂委員長 加賀田進君。
  308. 加賀田進

    ○加賀田委員 ただいま議題となっております電気事業法案につきまして、日本社会党を代表して、修正案に賛成し、修正部分を除く原案に反対の意見を表明するものであります。  まず、修正案についてでありますが、電気事業の公益性並びに保安体制の確立という見地に立って、電気事業審議会並びに電気主任技術者資格審査会を本文に明記し、電気事業に関する重要事項等を民主的に審議せしめようとするもので、われわれとしても、当然の修正であると思いますので、賛成するものであります。  次に、修正部分を除く原案についてでありますが、現行の電気に関する臨時措置に関する法律は、御承知のとおり、昭和二十七年十二月に制定され、すでにそのときより、恒久的基本法が早急に制定されるよう望まれていたのであります。自来今日まで実に十余年を経過しておりまして、その間いろいろな問題があってなかなか成案を得るに至らなかったことは、私も承知しております。  去る昭和三十七年の五月、電気事業審議会が発足し、鋭意検討を続け、昨年十月、その結論を得、これに基づいて本案が提出されたのでありますが、まさに正直に申し上げまして、私はこの法案に非常な期待を抱いていたのであります。これだけ長年月を費やし、権威ある審議会まで設けて検討されたのでありますから、電気事業に関する抜本的な規制が盛り込まれ、新たなる観点に立脚した法案となるであろうと思っておったのであります。  しかるに、本法案はその期待を全く裏切ってしまいました。内容的にほとんど旧公益事業令以下のものでありまして、企業体制はあくまでも現在の九電力体制を維持し、わずかに広域運営によって当面の諸矛盾解決しようとして立案されているのみでありまして、わが国の現状に即した電気企業の社会化、一社化の方向は無視されているということであります。実に国民とともに嘆かざるを得ません。池田さんの言う寛容と忍耐も、ここまでくればもはや近代政治の限界を越えた保守政策のあらわれであり、前進を少しも見ないいざり法案と言わざるを得ません。発送電技術の長足の進歩、発電方法の変化、電力会社間の企業格差等々を勘案いたしますと、現行体制では無理があると考えるのであります。電気事業者みずからがこの矛盾を自覚し、電力経済性を追求するため、広域運営をすでに実施しているのであります。  本案においても、広域運営の必要性を強く主張し、現行体制の不備を何とかカバーしようとしており、審議会の答申においても、もし広域運営が円滑に実施されないならば、合併もしくは一本化に踏み切るべきであると指摘しているところであります。本案の立案にあたっては、まずこの点を強調すべきではなかったかと思うのであります。  質問の過程において、一社化の功罪については、通産大臣の所見を伺ったのでありますけれども、一社化に反対する論拠は、無用の摩擦を生じ、電気事業が混乱する、サービス及び経営能率が低下する等の理由でありまして、あまりにも消極的な反対論ではなかったかと存じます。サービス及び経営能率の低下は、はたして致命的な原因と言えるでしょうか。現在の電力会社地域独占という特権を持っており、補償解決電力供給契約、燃料入手方法等、また末端のサービス面におきましても、きわめて官僚的であるやにも聞いているのであります。一社化することによって、国家的見地に立って、電源開発、一次エネルギーの調整、企業格差の是正等がスムーズに行なわれ、電気料金についても、最も所得の少ないといわれております鹿児島県、宮崎県の住民が、日本一高い電力料金を支払うというようなことは避けられると存ずるのであります。  以上、企業形態の面より見ましても、本案には賛成しがたく、その他具体的な広域運営規定の不備、用地等の補償規定の欠除等々を大きく考え合わせますと、わが党としては、本案に対して反対する次第でございます。(拍手)
  309. 二階堂進

  310. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、民社党を代表いたしまして、修正案に賛成、修正部分を除く他の部分は、原案に賛成の討論を行ないたいと思います。(拍手)  現行の電気事業法は、言うまでもなく、事実上のポツダム政令であります。国の経済及び国民生活の根本に触れる電気事業が、戦後二十年を経過しようとしている現在、なおそのような形で規制されているということは、はなはだ遺憾なことでありまして、事情のいかんにかかわらず、それは立法府の怠慢のそしりを免れないものでありまして、このまま放置することは断じて許されないと考えます。  政府提案の今度の事業法は、幾多の疑問点を持ち、なお検討を要すべき数多くの宿題を残しているにもかかわらず、私はあえてこの法案に賛成し、一日も早く成立せしむべきであるという観点をとる理由がここにあるのであります。したがいまして、私はこの事業法に対する態度としては、まず法案を成立せしめ、その後なお問題点を掘り下げ、研究を進め、順次改正を加えて、みがき上げていくべき法案であると考えるのであります。この意味におきまして、本法案が規定するところの電気事業審議会の今後の任務はまことに重大であると思うのでありまして、この点を中心とする修正案は、かねてからのわが党の主張でもありますし、あらゆる問題点を、この審議会の今後の検討にゆだねる意味をもちまして、私はまことに適切なる措置と考えるのでありまして、修正案どおりに修正をし、他の部分は原案どおりに成立せしむべきものと考えるのであります。  なお、先ほどの討論にもありましたように、基本的な電気事業あり方につきましては、わが党も多くの基本的問題を持っておるものであります。しかしながら、私はあえて申し上げますが、現在の自由民主党の政権のもとで、電気事業の国有、国営または一社化を進めるということについては、私ははなはだ危険を感ずるものであります。したがいまして、現在の時点におきましては、むしろ企業形態問題は明確にたなに上げて、そうしてその他の問題について検討を進める態度が、わが党の考え方であるわけであります。  なお、修正部分に賛成をして、それから残った原案には反対という態度もあるようでありますけれども、それは、言うならば修正部分以外に対する対案がないわけでありますから、いうてみれば、ちょっと幽霊みたいな法律になるわけでありまして、私は、態度としてはやはり疑問を感ぜざるを得ないわけであります。したがいまして、修正案に賛成し、残った部分はやむを得ず原案どおり成立せしむべし、こういう態度をとるものであります。  しかしながら、先ほども申し上げましたように、私は今後審議会を中心にいたしまして、電気事業の目的であり、理想の形でありますところの、豊富にして低廉、良質なる電力を十分に供給する目的をもって、まず料金の低廉化、全国的な均等化、格別、家庭用電灯電力については一そうの低廉化、そういう観点に立って料金制度検討し、同時にまた産業政策や地域開発の問題に関連をしながら、政策料金制の考え方を十分に取り入れるべきこと。さらに、第二番目には、供給責任の明確化という点は、確かにこの法案は欠いておるわけでありまするので、開発責任という問題を含めまして、今後この供給責任の明確化をめぐって、私は電源の開発並びに他の公益との調整の責任の明確化をも含めて、同時に先ほど質疑でも申し上げましたように、補償問題でありますとか、多目的ダムの問題でありますとか、あるいは火力の公害問題でありまするとか、これらのあらゆる問題につきまして、要するにどこが責任を持ってするのか不明な点がきわめて多いわけでありまするから、電気事業供給責任を明らかにする観点に立って、これらの責任を明確化するために、またさらに、第三番目には、質疑の過程でも多くの諸君から述べられましたように、保安責任につきましても、同様に、私は明確を欠く点が多々あると考えるわけであります。したがって、これらの点につきましては、申し上げましたごとく、今後審議会を中心に真剣に検討が重ねられ、適切なる改正措置がすみやかにとられんことを強く希望いたしまして、討論を終わります。
  311. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で討論は終局いたしました。  採決いたします。まず、神田博君外六名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  312. 二階堂進

    二階堂委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  313. 二階堂進

    二階堂委員長 起立多数。よって、修正部分を除いては、原案のとおり可決され、本案は修正議決いたしました。  おはかりいたします。本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  314. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  315. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、小委員会設置の件についておはかりいたします。  理事会において御協議願いましたとおり、中小企業に関する問題等の調査のため、小委員九名よりなる中小企業問題に関する小委員会を設置することとし、小委員並びに小委員長の選任に関しましては、委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  316. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  小委員並びに小委員長は追って指名いたします。  次に、小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じた場合の、参考人の出席を求める日時、人選、手続等、並びに小委員辞任の許可に関しましては、委員長に一任することとし、小委員及び小委員長に欠員を生じました場合の補欠選任に関しましては、委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  317. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、明六月十日水曜日午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十分散会