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宮澤国務大臣 たいへん広範な
お尋ねでございますが、できるだけ御
趣旨に沿いまして簡略に
答弁を申し上げます。
国連の
貿易開発会議で、
わが国がただいま御
指摘のような特殊な
立場にあるということは事実でございます。それはしかし、別に
わが国としてそれを恥じるとか反省するとかいう必要のある問題ではないと思っております。すなわち
有色人種として、ただいまのところただ
一つの
先進国であるということから問題が起こっておるわけでありますが、これは他の
有色人種からいえば、将来
自分たちが進みたい道を進んだ国である、こういうふうに
考えられておるわけでございますから、そのこと自身をもちろん恥じるとか反省するとかいうことではないと思います。ただ
現実には、それがある
意味で多少羨望を受けたり、あるいはまた嫉妬を受けたりするようなことがないわけではございません。そこでこの
会議は、やはり第二次
大戦後に多数の国が必ずしもしっかり
経済的基盤を持たずに独立をして、それらの国が持っておる
地域格差、あるいは
所得格差をこういう
会議の形で
是正をしたい、
是正を要請するというよりは、むしろ
是正を
要求するというふうな零囲気のものになっております。しかしこれは、従来こういう問題は戦争という形で解決されたことがあったわけでございますけれども、第三次
大戦がないであろうと
考えられるいまの
段階において、ある
意味で私どもは
同情を持って
考えてやらなければならない問題だ、基本的にさように
考えますし、また第三次
大戦がない限り、このような低
開発国側の
動きというものは歴史的な
必然性を物語っておる、後退することは将来ともないであろうというふうに認識をいたしておるわけであります。そこで
わが国の場合、必ずしもそういう問題について十分に対処し得るだけの
国内体制が整っておるとは私は申せないように思うわけであります。すなわち
農業、
中小企業にいろいろな問題がございますことは
桜井委員のよく御
承知のとおりでございますから、深く
同情はし、
共感はいたしますけれども、さればといって具体的に彼らの
要求を一々のんでいくというようなことはなかなか困難であります。同じことは、程度の差はございますけれども、
アメリカにも
イギリスにもあるいは
EECにもあるわけでございます。
そこで、
会議の最初の一月半は、ほぼ低
開発国側のいろいろの
要求を
先進国側が聞く、そしてそれについてとうてい実現不可能だと思われる分については、いろいろな批評をし、批判をいたしておるわけであります。ちょうどだだいま、ここらあたりから
先進国側の何かの合理的だと思われる対案をぼつぼつ出さなければならない
段階に立っておるというふうに
考えます。そこで朝
海大使に
帰朝を命じましたのは、
先進国の中にも、ただいま
桜井委員が御
指摘のように、ここらで何か案を出さなければなるまいという
動きがあれこれの問題についてございますし、また低
開発国側も、
最後まで実現不可能な案を固執するよりはある
段階で妥協をしようということに出てくることがあるかと思います。したがってそういう
段階に処して
わが国として、三月の末に
政府がきめました
訓令の
範囲ではそれらの
動きに対処できませんので、そういう現状を
現地の
代表から報告をしてもらい、また
政府としてこの
段階に立っていかに対処すべきかということを決定いたしますために、朝
海代表の
帰朝を求めたわけであります。
それから次の問題でありますが、まず
わが国の
農業との
関係はどうかということになりますと、非常に大まかに申せば、彼らの
要求しております一時
産品の
輸出は、概して
熱帯産品が多いわけであります。また私ども極力これを
熱帯産品の
範囲に限っていこうと
考えておるわけでございます。と申しますのは、そうしておきますと、大まかに申して、
わが国の
農業と
競合する
部分がそうたくさんはない、こう
考えておるからであります。しかし、たとえば茶でありますとかいうものはもちろん若干の
競合がございます。砂糖も全くないとは申せないかと思います。少し極論をいたしますと、コーヒーとかココアとかいうものも、
国内の
清涼飲料と
代替関係にあるというふうな議論もございますけれども、そこまでは
考えなくてもよろしいのではないかと
考えます。またタピオカのようなものは、
国内の澱粉との
競合が
考えられるかと思います。それから幾つかの、そう大きくはございませんが触れ合う
部分がございますが、概して申せば、
熱帯産品について
わが国の
農業とそんなに
競合するものはないと印してよろしいのではなかろうか、こういうふうに
考えております。
また次に、
特恵の問題につきましては、ただいま
後進国側七十五カ国が出しております案は非常に急激なものでありまして、たとえば一〇%以下の関税は
即時撤廃をする、それ以外のものは五〇%引き下げを五年以内に行なうというようなきわめてラジカルなものでございますので、とうていこれを受けるわけにはまいらない。御
承知のように
わが国は
特恵という制度を持ったことがございませんために、ただいま御
指摘のように
英国などが
特恵というものを扱っておる、そういう経験となれを持っておりません。したがっていま低
開発国が言っておるようなことは、これは
わが国のみならず、
先進国はどこも受けようとは思っておらないわけでございますけれども、もっとよほど緩和された形で案ができました場合には
考えてみてもいいのじゃないか、しかしこれは
案いかんによるというふうに私は
考えておるわけでございます。
それから
補償融資につきましての
お尋ねがございました。この問題は、
補償を
要求するという
考え方が
プレビッシュの
思想でありますけれども、それは幾ら何でもひどいじゃないか、何か
先進国側にあやまちがあって、それに対して償いをしろという
考え方は間違っておるのではないかということについては、双方である程度
考え方が近寄ってまいりまして、
補償と言わず、何か足らざるところを補ってやる、現在使われております
ことばは、サブリメンタリー・ファイナンスという
ことばが使われておるようでございますが、そういう
思想に立っての事柄を何か
考えてよいのではなかろうか。この点につきましては、
英国は第二
世銀の基金を使って
融資をすることを
考えてはどうかといった、大まかにそういう案、
アメリカはもう少し
原則論で、
援助条件などをいろいろに
考えたらどうかということでございますが、
わが国は当初の
訓令がこの点について非常に消極的でありましたために、二、三週間前まではこれに同調を差し控えておったわけでありますが、私戻りまして、これについては同調したほうがいいと
考えましたので、
外務大臣から同調して差しつかえないという
訓令を出しております。
アメリカに一時そういう
動きがありましたことは
桜井委員の御
指摘のとおりでございますけれども、いまの状況はそういうことになっておるわけでございます。