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北村参考人 私、先ほど
委員長から御紹介がありましたミシンの連合会の専務
理事をやっております
北村富営であります。本日ミシン
業界の現状を聴取していただく機会を得ましたことを深く感謝いたします。ミシンの全
業界をあげましてこの
法律の通過を希求しております
状態でございまして、私、
業界を代表いたしましてここに現状を申し上げるとともに、お願いを申し上げたいと思います。
日本の家庭用ミシンの
業界は、昨年一年間におきまして三百三十五万三千台と非常に驚異的な
生産を達成したのであります。そのうち、約五九%になります百九十大万一千台を
輸出しておりまして、
生産、
輸出ともにこれで世界第一位という地位を獲得したわけであります。これは
中小企業を主としましたミシン
業界がからえた最高の名誉じゃないかと自負しておる次第であります。
私は、本日ここで世界のミシン
業界において非常にこうした注目をあびております
日本のミシン
業界の
実情を御説明申し上げます前に、まず世界のミシン
業界を簡単に御説明申し上げまして、いまのミシン
業界が当面しております諸問題の中で
日本のミシンがどういうように処していくべきか、またこうした
法律のささえがありまして、これをどういうふうに活用して今後さらに伸びていくべきであろうかというような点を考えまして、簡単に世界ミシンの
状況を御説明申し上げます。
自由世界におきますところのミシンの
状況でありますが、総
生産としては大体八百万台くらいの
生産があるといわれております。おもな国としましては、
先進国が多いのでありますが、イギリスの八十万台、これは有名なシンガーがありますが、そのほかジョーンズという民族資本の会社もあります。そのほかにアメリカ、これは当然シンガーの強固な本拠でありますが、これが七十万台。それから
ドイツが五十万台、これはパフという世界的に非常に古い会社がありますが、パフ、アンカーフェニックスというような会社、その他シンガーの
ドイツ工場もあります。イタリアは四十八万台、これは今回の混合関税問題で非常に
日本に反対を唱えておりますネッキ等があります。そのほかにスペインの三十万台、スイスの十八万台、フランスの十六万台というような形で、大体三百十二万台くらいこれらの国がつくっておりまして、
日本の三百三十五万台にやや匹敵するような数字を持っておるわけであります。
こうした世界の
生産の大体の
状況でありますが、
市場としても最も大きいアメリカにつきまして簡単に触れてみますと、
日本の最もお得意先がアメリカでありまして、アメリカから徐々にヨーロッパその他の地域というような形で
輸出が伸びてきております。そのアメリカでございますが、ここ十年間くらいの数字を見てまいりますと、大体百四十万台から百七十万台くらいの
需要を持っております。アメリカの輸入
状況でありますが、大体百四万六千台、この中で大体八〇%の八十二万台近い数字を
日本が
輸出している。そのほかにヨーロッパの十七万一千台というのが占めておるわけですが、かつて、これは六、七年前になりますが、一九五六年ごろですと、
日本のミシンは六五%くらい、ヨーロッパ品のほうが三三%くらいで、まだ非常に高い地位を占めておったのでありますが、徐徐にヨーロッパ
製品を駆逐いたしまして、
日本品がアメリカの大半の
市場を押えているという形をとっております。かつてはシンガーの牙城でありますし、シンガーのほかに、アメリカにはフリー・ソーイングマシン、ホワイト・ソーイングマシンというような大きな会社があったわけでありますが、
日本のそうした進出によりまして、
日本のミシンを取り扱ったほうが有利であるということから、現在
日本ミシンの販売
業者という形で行なっております。そのほかにアメリカの特徴としましては、アメリカの大
企業でありますシアーズローバックまたはモントゴメリーウォーズというような全米に何千という組織を持ちました
企業が
日本のミシンを真剣に取り扱っておりまして、これらが年間二十万台、三十万台という台数をそのルートでさばいております。こうした形に乗り移り得たということがヨーロッパ系のこうしたミシンの衰退ということにもつながってくるのではないかと思います。
そういう意味で、本拠でありますヨーロッパの事情についてまた簡単に触れてみますと、ヨーロッパにつきましても、戦争の影響その他でミシンにつきましての
需要が非常にふえているということで、想定でございますが、大体七百万台くらいの
需要があるのではないかといわれております。現在のところですと、年間、EEC
関係で百四十万台くらい、それからEFTAその他入れまして百万台、合計二百四十万台くらいの
需要を持っております。
日本のいまの進出といいますのは、
ドイツを中心として徐々に出ておる、
数量は非常にわずかなものでありますが、十数万台ヨーロッパに出ておりますが、将来これが、アメリカの百七十万台における八十万台というように、二百四十万台のうち何割か相当な比率を占めていこうという勢いで進出していっているわけですが、これも、
日本のこうした進出につきまして
ドイツメーカーその他からの相当な反対がありまして、例のMT問題、ミシンの混合関税問題というような問題も提起しているような
状態であります。
さらに話を転じまして、後進国の
実情につきまして簡単に触れてみますと、後進国といいましてもインドのウシャという工場がありますが、この辺で四十二万台くらいの年間
生産を上げております。その他ブラジル、アルゼンチン、メキシコというところで四、五十万の数字を
生産しております。これらを振り返ってみますと、
日本の
部品を当初買い入れまして組み立てを覚える、それから徐々に
自分の国で
生産を始めるというような形をとりまして、インドにしろ、ブラジルにしろ、メキシコにしろ、ミシンの
生産国となっていっているわけであります。これは普通の簡単な直線縫いミシンといいまして簡単なミシンでありまして、より以上高級なものはまだまだということで、
日本の
業界としましてはこの辺についての考え方としては、
日本のミシンの高級化という点で、これらの後進国のミシン
生産を凌駕していきたいというような気持ちでやっております。
現在世界のミシン
業界におきましていろいろな問題が提起されておりますが、それらのほとんどが新興ミシンの
生産輸出国
日本に対して、先進諸国がいかにして
日本の進出を食いとめるかということと、後進国がまたこれに対して、
日本のミシンから自国産のミシンに切りかえようという
二つの大きい戦いの中で、ミシン
業界がいま非常に努力しているわけであります。
大体このような各国の世界の
状況下にありまして、それでは私
たち日本のミシン
業界ははたしてどうかということを簡単に触れてみたいと思います。
日本のミシン
業界は、御存じのように、終戦後ほんの短期間に非常な発展をしました産業でありまして、これはもともと言いますとアッセンブル
企業、
部品は
部品屋さん、組み立てば組み立てということで、ただいまの三百三十五万台というような台数につきましても、二百点近いミシンの
部品をそれぞれ二百万個ぐらいずつ、数社の
部品屋さんがこれをつくっていくというために、月産二十万、三十万というふうに数がふえまして、精度も上がる、コストも下がるというような形で、世界的に驚異的な国際
競争力をミシンが持ち得たというところに、先ほどのミシンの驚異的な非常な発展があったということでございまして、台数から言いますと、
昭和二十一年には三万七千台くらいしか
生産してなかったわけでありますが、二十六年になりますと百万台をちょっとこしまして、昨年は三百三十万という驚異的な伸長を遂げておるということでございます。それは一面いい面ではありますが、反面、こうしたアッセンブル
企業というのは組み立てならば組み立てを幾らでもできるものですから、潜在的な過剰
生産といいますか、新規
業者なら
自分たらが組み立てをすれば幾らでもつくれるということで、そうした
過当競争要因なり潜在的な過剰供給力という、みずからが
合理化された
合理化そのものに悩まされるという
状態がありまして、
業界としてはこうしたアッセンブル
生産方式を採用する二十四、五年ごろからスイスの時計工業を研究して、何とかスイスの時計工業のように整然と
部品、組み立て、完成、これらが一体となった形をとりたいということで、たびたびいろいろな代議士さんにお願いしまして、ミシンもスイスの時計工業のような単独立法をお願いしたいということを再三お願いしたわけでありますが、なかなかミシンだけではどうにも取り上げられ得ませんで、たまたま
昭和三十四年にこの軽
機械の
輸出振興法ができますと、この中にミシンが飛び込んだという気持らは、ミシンが
最初からアッセンブル方式に踏み切った当時から、スイスの時計工業をまねしましてあのように全世界を抑えていきたいという、そうするためには潜在的な供給力、潜在的な
過当競争を何らかの形でチェックされない限りミシンが崩壊してしまう、みずからの
合理化のためにみずからが崩壊してしまうという矛盾が生ずるというような点で、こういう点からこの軽
機械法に
業界としては満腔の敬意を表して飛び込んでいったわけでございます。
御存じのように、現行法では登録制と
振興事業協会の
二つの柱がありますが、登録制につきましても
業界としてはできるだけの人がこの
法律に乗っていく、そしてこの機会に世界的な産業、世界的な
企業としての体質を備えるためには、どうしてもある程度の設備が必要だという点から、
組合内部で融資をいたしまして、設備の足らない人にはお金を貸して設備を整えるという形で、登録基準そのものも
業界の要望を相当入れていただきましたために、あまりりっぱなものとも言い切れませんけれ
ども、それにすべて到達して全員合格した登録工場になり得たということであります。一応その登録工場になりましても、ミシン
業界としては、登録を受けたからそのままということではいかぬというようなことから、さっそくさらに国際的な商品の
メーカーとして、あくまでも個別
企業の体質を強固にしなければいかぬというような点から、なるべく多くの皆さん方が集まって、合同で
企業の体質を強くしようじゃないかという点が
業界に充溢いたしまして、
業界としては
企業の合同を促進するという形から、三十五年に四十二社ですかが合同をしまして、発足当時御存じのとおり百二十一社というものを現在は六十六社にまで減らしておりますが、今後まだまだ減らしていくという形をとって、体質を改善するという意味からそういう方向をとっていきたい、こう思っておるわけであります。
輸出振興事業協会につきましては、当初の、先ほどから申し上げましたミシン
業界をスイスの時計工業という
生産体制の面以外に、販売面におきまして、終戦後ミシンといいますか、
日本の産業はいわゆる海外販売機構が
日本国内にもありませんでしたし、ましてや海外に対してはめくら
貿易であった、その中で、こうしためくら
貿易をやっていたのではいつまでたっても
外国の従属産業でしかあり得ないという
観点から、何らかの形で、
日本の国内から
日本の
メーカーが団結をして海外に積極的に売り込んでいくという姿をとりたいというようなことから、軽
機械法発足と同時に
振興事業協会という場を使いまして、それが
一つの
業界の恒久的な協同の積極的な
PR機関であり、積極的な
調査機関であり、積極的な販売促進機関であり、
市場開拓機関であるというふうに持っていくつもりで、ここ五年間やってまいっておりますが、今後もこうした形で十分なる成果を上げていきたいと思いますし、この
法律がもし五年、十年でなくなったとしましても、こうして築いた機関といいますか
中小企業でありますから、どうしても単独に
市場調査機関なり、いま言ったような開拓機関を設けるわけにはいきませんので、
中小企業として恒久的にこの機関を設置していくつもりで、
法律のあるないにかかわらず育てていかなければならぬ。といいますのは、ただここでお願いしておきたいと思いますのは、せっかく生んだ機関が育ちませんで、一本立ちになりませんうちに
法律から解放されてしまう、補助金も何もなくなってほうり出されてしまうということになりますと、せっかくここまで五年なり十年なりの間に築いて、
中小企業が寄り集まって、大
企業に対抗する販売機関、
市場調査機関、あるいは品質の協同研究機関なりを設けましても、中途にして、魂を入れるその寸前に崩壊ということがないように、ひとつ皆さん方の絶大な御協力をいただきたいと思います。
ミシンにつきましても、アメリカその他に対して、
PR一つ例にとりましても、毎年非常にわずかですが二方五千ドルずつをつぎ込んでおりまして、
業界としては二万五千ドルは非常に大きいものでありますが、アメリカ
市場に二万五千ドルというのは非常に微量なものです。しかしこの効果とその熱意というものが相当
輸出の伸張という面にあらわれまして、極端にアメリカをマークするということで、アメリカに重点を置いたこともありますけれ
ども、アメリカヘの
輸出の伸びといいますのは、三十五年が七十六万、三十六年が七十七万、三十七年が八十五万、三十八年が九十三万、こうぐんぐん伸びている。それも非常に値もよくなって、内容的にも落ちついてきている、安定ムードに向かっているということが言えるんじゃないかと思います。そのほか、
事業協会としましての
調査団なり、
市場調査というものを十分やりまして、この機会にお見せすることはできませんが、私がいままでしゃべりましたいろいろな世界の情勢その他も、すべてこれは
事業協会が生まれまして、その機関でキャッチしました情報でありまして、また
業者が海外
調査団として出てまいりますのにも、
中小企業としては海外に死ぬまで一度も行けないというのが普通だろうと思うのですが、たまたまミシンという事業をやりまして、この
法律のおかげで海外を見てくることができる。ただ海外を見ろというだけで、
輸出産業に携わる
中小企業者が非常に大きく視野を広めると同時に、
自分の工場なり
自分の
製品なりに対しての積極的な面が非常に強く出ている。私希望するのは、こういう機関を通じましてみんなの人に一回は行かせてあげたいというふうにまで考えております。現在まだ三十六名程度しか行っておりませんが、あと半分くらいはぜひとも出してあげたい、また二回、三回できれば出してあげたいというふうにも考えております。
時間がありませんので、非常にはしょっておりまして、つじつまが合わないところがあって、わかりにくかったと思いますが、そうした意味におきまして、ミシン
業界としましては、これは
部品の
業界、それから
完成品の
業界、それから
輸出組合といいますか、
消費者の段階の
組合、いろいろありますが、これはあげましてこの
法律を延長していただきたいということをあらゆる機関を通しまして決議し、さらに
振興事業協会の評議員会においても再三これを決議しておりますので、その
趣旨を御了承いただきまして、御尽力いただきたいと思います。
御清聴を感謝いたします。