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1964-05-07 第46回国会 衆議院 商工委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月七日(木曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小沢 辰男君    大石 八治君       海部 俊樹君    神田  博君      小宮山重四郎君    田中 龍夫君       田中 六助君    中村 幸八君       加賀田 進君    加藤 清二君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       島口重次郎君    森  義視君       麻生 良方君    伊藤卯四郎君       加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房         参事官)    宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君  委員外出席者         議     員 板川 正吾君         議     員 田中 武夫君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  市場支配的事業者経済力濫用防止に関する  法律案板川正吾君外十二名提出衆法第一二  号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    ○二階堂委員長 これより会議を開きます。  板川正吾君外十二名提出市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許可いたします。始関伊平君。
  3. 始関伊平

    始関委員 市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案という名の、まことに注目に値する法律案が提案せられましてから何回目かの委員会で、きょう提案者代表田中板川委員に対しまして若干の質疑を試みる機会を得まして欣快に存じております。  この法案は名前が長いので、以下社会党案と呼ばせていただきます。  この社会党案提案理由によりますと、わが国産業構造重化学工業化が進み、資本生産集中系列化が強化され、独占資本の支配する体制が強化されておる、そこで、いわゆる市場支配的事業者経済力乱用防止するための必要がある、こう申しておるようであります。ところで一方、これまた数年前から政府のほうではいわゆる特振法案を出しておりますが、その背景となっておる考え方は、最近わが国でも技術革新近代化が相当進んでまいっておるけれども、何と申しましてもいまだに過小規模、過当競争弊害を免かれない、開放経済下にあって国際競争力の見地から問題が多いというのが政府のほうの見方と申しますか、認識のようであります。これはたての両面を見ているということもいえるかと思いますけれども見解認識が非常に違っておりまして、むしろ真正面から対立しておる、このような感じがいたしますので、その辺のところから問題に入ってまいりたいと思います。  もし提案者の言われるように、日本経済少数企業独占的支配下にあるということでありますならば、その当然の帰結として当該物資価格のつり上げないしは価格硬直的傾向などが起こるはずであります。こういうことが、いわゆる独占支配の一番顕著な影響と申しますか、弊害としてあらわれてくるはずでありまして、その点は社会党案提案理由にもはっきりと指摘してあるとおりだと考えるのであります。そこで一般的に申しますと、日本でも今日まで若干の物資について価格の硬直的な傾向が見られ、公取委員会でもこれが措置に苦慮されたというふうな事実のあることを私も承知をいたしておるのでありますが、ただ、社会党があの提案理由の中で市場占拠率五〇%以上ということで指摘しております十幾つかの業種について調べてみますと、たとえば鉄鋼製品の中で珪素鋼板などは横ばい的傾向にあるという事実もありますけれども、概して申しますならば、価格は逐次低落の傾向をたどっておると私は見ております。その理由は申し上げるまでもございませんが、これらの業種はいずれも最近非常な生産増加がありました。これに伴っての業者間の売り込み競争、さらに海外市場からの輸入圧力というふうなものがその理由であるというふうに考えておるのでありますが、議論の出発点といたしまして、こういう点についての提案者の御所見を伺います。
  4. 田中武夫

    田中(武)議員 ただいま始関委員から、まず最初に、始関君の考え方とわれわれの考え方真正面から対立しておる、すなわち日本経済独占企業が支配しておると言うわれわれの考え方に対して、そうではないと言われる。これは対立しておってあたりまえなんです。もし始関君と私が同じ考えであるならば、始関君が社会党へ入るか、私が自民党へ入らねばならないことになろうと思います。だから対立しておることは当然であります。  そこで、始関さんは価格下落の方向をたどっておる、こういうようなことを言っておられますが、どういう資料に基づいておられるのか、こちらからお伺いしたいと思うのですが、日銀卸売り指数の中で、価格の硬直したものをあげたのがあります。これは昭和三十年から三十七年までの八年間の記録でありまして、そのうち全く動かないもの、あるいはほとんど動かなかったものが二十五品目あります。それからほぼ横ばい状態のものが二十八品目あります。上昇傾向を示しておるものが十一品目あります。したがいましてナイロンならナイロンテトロンならテトロンブリキあるいは板ガラスあるいはバターチーズといったような面におきまして具体的に商品を指さして言っていただきますならば、お答えいたしたいと思っております。
  5. 始関伊平

    始関委員 私が先ほど過小規模、過当競争ということを申しましたのは、私の見解でもありますが、政府案がそういう見解の上に立っておることを申したのであります。私が価格を問題にいたしますのは、あらゆる種類の物資について広範な意味でいま問題にいたしておるのではないので、あなたのほうで、市場における占拠率の大きいものということに着目して、それがこの法案一つ出発点になっておると思いますから、あなたのほうのあげられた品目について問題にいたしておるのであります。それならば申し上げますが、たとえば肥料、それから銑鉄、各種の鉄鋼製品、セメント、乗用車、これらはだれが見ても下落傾向が顕著であって、特に鉄綱製品などは、薄板などを中心にして価格が下がり過ぎて、ただいま鉄鋼業界は困っておるということが新聞紙上にも伝えられておるのでありまして、こういったようにあなたのほうが指摘された品目についての質問、こう了解を願いたいのであります。
  6. 板川正吾

    板川議員 補足いたしますが、私ども提案理由の中で申し上げました「最大五社で市場の五〇%以上を占めている業種」として説明しておりますのは、こういうような寡占体制が行なわれておるという意味で申し上げておるのであります。これは提案理由をよく読んでいただけばわかるのですが、ただその占拠率が高いものについては、すべて値上がりか現行維持というが、しかしそれが下がっておるではないか、こうおっしゃっておるのであります。なるほどそれは部分的に見ればそういうものもございます。しかしいま田中議員からも説明しましたように、別の例をあげることもできるのであります。たとえばナイロン繊維は、市場支配率が二社で一〇〇%ですが、この八年間値段はほとんど動いておりません。テトロンの長繊維も二社で一〇〇%の市場支配力を持っておりますが、これも八年間一つも動いておりません。テトロン繊維、はがね、矢板、これらもテトロンは二社で一〇〇%、あとは四社で一〇〇%ですが、これまたいずれも八年間値段は動いておりません。そのほかブリキあるいは時計、小型四輪トラック等におきまして市場支配的な集中度の高いもので、八年間に生産は相当上がったけれども価格は少しも変動しない、こういうものもあるのであります。ですからこういう例示しました中の一つの部分をあげて、下がっているじゃないかということで、われわれのねらっておる管理価格を規制するという法律が無用じゃないかということにはならないと私は思います。例は幾らでも逆の例があります。ですからこういう場合には、そういう部分的な例をあげてあげ足とり的な質問をなさるよりも、実際に日本経済全体として生産が上がっておるのに物価が下がらないのはどうかということでマクロ的に見る必要があるのではないか、こう思います。そこでわれわれが資料で検討いたしてみまして、もちろんわれわれ政府側ではありませんから、みんな自分で計算したのですから十分なものではないかもしれませんが、たとえば鉱工業生産は、三十年を一〇〇としますと三十八年度は三一九になっております。鉱工業生産指数は、この八年間で三倍になっております。生産性は、これは労働省で一発表したものですが、三十年を一〇〇としますと、一六三に労働の生産性が上がっておる。実質賃金は同じく三十年を一〇〇として一三八であります。この間輸入物価は、主として原材料輸入されますが、三十年を一〇〇としますと三十八年は八〇に下がっております。また生産能力は、設備がふえて、これは三十年を一〇〇とする資料がございませんが、三十五年を一〇〇としますと三十八年は一四二・六、四割もこの三年間にふえておる。しかしこの間に第一次製品というか、卸売り物価は、三十年を一〇〇とすると三十八年が一〇三・六であります。三・六%八年間に上がっておる。こういうふうに上がっておりますが、本来から言えば、私は物価がもっと下がるべきだと思う。こういうふうに生産性が上がったんですから、卸売り物価は下がるべきだと思う。それがこの八年間の統計を見ても、逆に上がっております。その上がっておるのは何かというと、これは指数が、稼働率が三十五年を一〇〇として、三十八年は九四・二、稼働率が低いのです。本来ならば生産能力がふえた割合で、稼働率が同じ率を維持しておれば、ずっと生産がふえるわけです。しかし稼働率を押える、そういうところで物価の下がるのを押えておるということじゃないかと思うのです。だから、なるほど私どもがあげた二、三のものが例示的に下がっておるというのはありますけれども、それは鉄鋼とか異常な設備投資をしたところは稼働率もそれほど下がっていないかもしれません。しかし日本経済全般のとらえ方としますと、やはりもっと下がるべきものが、原材料は下がっており、生産性は逆に上がっておる、それで卸売り物価というものが下がらないということは、ここにいわゆる管理された価格というものがあるからじゃないか。そういうものをわれわれはとらえて規制しようという考え方で、この一、二の例でこの法律が必要がないということは言えないと思います。
  7. 始関伊平

    始関委員 私も別に最初の問題だけで、あなたのほうの法律が必要であるとか必要でないとかいう結論を出そうと思っているわけではない。ただあなたのほうの提案理由を見ますと、独占寡占体制というものがきわめて強化されて、なおかつそれによって上がっておるということをおっしゃるから、それはそれだけのものではあるまいということを言っておるわけであります。  もう一つ、いま物価の値下げの幅が少ないというふうなお話がございましたが、それならば、これは日本価格水準の基準というものをどこに求めるかということになりますが、それはまたあと機会に申し上げることにしまして、価格の上がる理由としてあなたは二つのことをおっしゃったわけであります。一つは、設備投資が多過ぎて経済政策がうまくいっていないからということをおっしゃった。もう一つは、管理価格的な傾向があるからとおっしゃったが、私はきょうはあなたのほうの法律の趣旨に即して、それをいわゆる市場支配というものとの関連においてこの問題をとらえていこう、こういう立場でありますので、御了解願っておきます。これは前提としての一つの問題でありますから、この程度にしておきますが、この際ついでに、いわゆる特定産業振興法案適用業種が六つか七つありますが、これについての価格動向を一応参考のために伺っておきたい。これは通産省に伺います。
  8. 島田喜仁

    島田政府委員 いま特振法によってその適用を受けようという業種が七つほど予定されておりますので、ただいま御質問価格動向につきまして簡単に御説明を申し上げます。  まず第一は、合金鉄でございますが、私どものほうで調べました調査に基づきまして以下申し上げたいと思います。合金鉄につきましては三十五年の第一・四半期に高炭素フエロマンガン二号が六万八千円でございましたのが、三十八年の第四・四半期には六万六千円になっております。同じく同年同期を比較いたしますと、高炭素フエロクロムが九万二千円であったものが七万九千円となっています。これは工場渡し価格でございます。それから特殊鋼でございますが、三十五年三月に機械構造用炭素鋼が六万一千円でございましたのが、三十八年十二月には五万四千円になっております。それから構造用合金鋼は、同年同月で比較すると、八万九千円でございましたのが七万円になっております。  それから四輪自動車でございますが、代表的なブルーバードトヨペットクラウンについて申し上げます。ブルーバードにつきましては、気筒容積千百八十九CCのものが三十四年八月に六十九万五千円でございましたのが、三十八年九月には五十八万三千円、それから三十三年十月にトヨペット気筒容積千四百五十三CCのものが八十五万円でございましたのが、三十八年九月には七十九万円になっております。これは需要者渡し価格でございます。なお気筒容積は、トヨペットクラウンにつきましては、三十六年四月に千四百五十三CCから千八百九十七CCに大きくなっております。それから自動車タイヤ、チューブでございますが、トラックバス用タイヤ乗用車タイヤを申し上げます。トラックバス用タイヤの中で八、二五−二十、十四Pといわれますものは、三十五年の第一・四半期は二万四千六百九十円でございましたが、三十八年の第二・四半期は一万七千六百三十円、それから乗用車用タイヤの五・六〇−十三、四Pは、同じく三十五年の第一・四半期は三千九百円でございましたのが、三十八年の第二・四半期には二千六百円、指数でいえば、前者を一〇〇とした場合、六六・七になっております。  それから石油化学ですが、これは三つほど申し上げます。ポリエチレンは三十五年にキログラム当たり三百十三円てございましたのが、三十八年の十二月には百六十八円、それからポリスチレンは、三十五年平均は二百五十九円でございましたのが、昨年十二月には二百三円、アクリロニトリルは、三十五年平均が二百九十六円でございましたのが、昨年十二月には百六十九円になっております。  それから電線は、一例をとりますと、OW電線二・六ミリのものは、三十五年平均が七千六百七十五円でございましたのが、三十八年十月には六千五十円になっております。次に化学繊維は、ナイロンの十五デニールを申し上げますと、三十四年にキログラム当たり四千六百三十円でございましたのが、三十八年の上期には二千五百五十五円に相なっております。それから後ほど説明を申し上げますが、テトロン繊維は、三十四年千百八円でございましたのが、三十八年の上期には八百六十四円に相なっております。と申しますのは、日銀指数によりますと、一応建て値なりあるいはフィラメントの価格を一応形の上で会社から報告することになっておりますが、実は実勢価格につきましては、ただいま申し上げたように下がっておるわけでございます。と申しますのは、御承知のように、ナイロンの場合を申し上げますと、合繊メーカーは、ナイロンの糸を実は糸売り買い戻し形式の委託加工を行なっておりまして、従来統計局提出しておりました資料は、商社マージン計算のための仮仕切り価格であったわけです。ところが、合繊メーカー加工賃を支払って委託加工業者から受け取り、市場に流す製品実勢価格は、実は下がっておるわけでございます。いま申し上げましたような関係から、日銀、企画庁とも指数のとり方につきまして相談をいたしております。  簡単でございますが、大体以上で価格動向説明を終わります。
  9. 始関伊平

    始関委員 次に、私は提案者にこういうお尋ねをいたしたいのであります。これはある意味ではわかり切ったことのようでありますが、こういう質問をいたします私のつもりは、自由貿易体制下において市場支配的云々というようなことはなかなか実現しにくいんじゃないか、こういうつもりで申し上げますので、お答えを願います。  それは貿易自由化体制下においては、海外市場からある物資輸入現実にあればもとより、現実になくても、一種の潜在的な競争によって、原則としては国内物資価格影響がある、こう思いますが、これはそのとおりだという御返事だろうと思いますけれども、一応念のために伺います。しかしながら、すべての場合に影響を受けるのかというと、私はそうではないと思うのでありまして、その場合としては、第一に国内市場価格のほうが割安であるとき、第二に、国際的に供給余力がない場合には、供給余力のない期間、第三に、新規の業種であって、これは化学繊維なんかに例があるようでありますが、日本企業が製造の特許権と同時に、国内市場独占権を得ている場合、それから第四に、販売網国内生産企業独占しておるような場合には、その期間、まだあるかもしれませんが、大体例外として海外市場からの影響を受けない場合というのはむしろ限定的である、このように考えておりますが、この点、簡単でけっこうでございますから、御所見を伺います。
  10. 板川正吾

    板川委員 自由化になって一応何でも輸入できるという条件が整えば、たとえば輸入されなくてもそれが圧力になって価格影響を及ぼすじゃないか、これはごもっともでございます。私もそうだろうと思います。それと、しかし、自由化されても幾つかの条件の中で、実際は自由化影響が与え得ない場合がある。いま質問者のおっしゃった数点については同感であります。確かにそのほかあるんじゃないかと思うのですが、国外の値段国内値段が、こっちのほうが多少高くても、運賃やあるいはいろいろな諸経費や販売ルートの確立というようなこともあって、実際は入らない場合があります。それから販売網が、これはなかなか一朝一夕にできるものではございませんから、実際は販売網を確立しないために、輸入すれば安いけれども、売れないという場合もあります。そういう意味で、自由化されても幾つかの条件の中で自由化影響がないという点については私も同感であります。
  11. 始関伊平

    始関委員 いま板川委員の答弁の中に出てまいったのでありますが、たとえば国産自動車ニッサンニッサントヨタトヨタでそれぞれの販売網を全国的に張りめぐらしておりますね。そこで、いまのままでは自動車自由化になっても、外車というものはそうおいそれとたくさん入ってくるかどうか疑問だと思いますが、それで私は、外車フォードならフォードシボレーならシボレーが独自の販売網をつくるのは比較的簡単なことじゃないかと思いますが、これは通産省がどう見ておるか伺います。  それから公取委員長に伺いますが、いま出てまいりました例の中で、たとえば化学繊維の、何があるのか知りませんが、テトロンならテトロンについて、外国から特許権と同時に国内独占権を得ているというような場合には、私は純粋な法律的な意味ではなしに、常識的に申しまして、一種独占的な状態、あるいは市場支配状態が起こっておると思いますが、これについての所見と対策をお尋ねいたします。
  12. 島田喜仁

    島田政府委員 ただいま始関先生からお話がございましたように、乗用車はほかの機械と違いまして割賦販売資金の調達が必要でございます。同時に、割賦販売手続がございます。また、自動車の登録の手続等もございます。また、アフターサービスを販売店が委託しなければならぬというような面から、他の商品に比べますと、やはり販売網もしくはサービス網整備ということが売り込みの非常に重要な条件になってくることは事実でございます。御承知のように、ただいま乗用車自由化をいたしておりませんが、すでに割り当てで入ってまいります外車販売網国内にでき上がっておりまして、近く自由化を前にいたしまして外車販売網整備拡充が着々行なわれているようであります。同町に、わが国乗用車競争が激しいために、販売網の全体としての整備がまだ不十分であると考えられます。したがいまして、もし今後自由化が行なわれまして、国産車販売網整備拡充が急速に行なわれない限り、やはり外車販売網拡充が行なわれまして、価格も下がってまいります。性能も御承知のように日本のものよりすぐれておりまして、わが国高速道路整備と相まちまして輸入量増加は避けられない、こう判断をいたしております。
  13. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 御承知のように、独禁法の二十三条には「この法律の規定は、著作権法特許法実用新案法意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。」という帆走がございまして、したがって、これらの法規に基づいて起こる一種独占的な行為というやつは独禁法の外にあるわけであります。ただ一言つけ加えて申しますならば、これはやはりその法律に基づいて与えられたそうしたフェーバーを正当に行使する場合でございまして、その範囲を逸脱する場合におきましては、公正取引とかという問題になるということもあり得るということは御承知のとおりであります。
  14. 田中武夫

    田中(武)議員 質問者は盛んに、開放経済貿易自由化のもとには国内における独占ないしは寡占はないと……。(始関委員「そう簡単に結論を出しているのではないのです。」と呼ぶ)そういう見解があるようでありますが、そうではないのです。あり得るのです。現にあるのです。また、そういうことに対応してなお独占あるいは寡占状態を強化するように業界は動いております。その代表的なものは御承知の三菱三市工の合併、こういうものであります。したがいまして、開放経済下にあってはそういう状態はないということは言えないと思います。
  15. 始関伊平

    始関委員 いまの問題は、またあとで問題にいたしたいと思います。  それから、これも本論に入ります前に伺っておいたほうがいいという意味お尋ねするのでありますが、最初公取委員長お尋ねをいたします。これは市場占拠率の問題でありますが、社会党の言っておられる最大五社の市場占拠率の五〇%以上のものというものにつきまして、この数年間の傾向をちょっと簡単に伺いたいのです。これは占拠率が増大しているものと、下がっているものと、横ばいのものと、三つあるはずだと思いますが、これはお宅のほうに資料があるようでありますから、きわめて簡単でけっこうでございますから、その傾向お尋ねいたします。  それから特振法案候補業種についても同様の説明を伺いたいのですが、これは島田局長、簡単でいいです。
  16. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 一応提案理由説明の中にあげられている品目で私のほうの調査ができているものを中心としてお答えいたします。  バターでありますが、三十四年が九一・三、三十七年が八八・二、チーズは私のほうの調査に載っておりません。ビールは御承知のように現在で五社、かつては四社、したがって五社の集中度をとりますと、これは三十四年、三十七年とも一〇〇でございます。ナイロンは二社でございますが、これは三十四年、三十七年とも一〇〇、テトロンも二社、ビニロンも二社ですから、五社集中度という観点ではいずれも一〇〇です。それから硫安でございますが、これは三十四年が五〇・四、三十七年が四八・八、尿素は三十四年が七〇・七、三十七年が六六・五、銑鉄は三十四年が八二・九、三十七年が八三・八、粗鋼は三十四年が六三・九、三十七年が六四・九、アルミは三社でございますから、三十四年、三十七年とも一〇〇です。セメントは三十四年が六三・三、三十七年が六二・九、軽三輪車という名前が載っておりますが、私のほうの調査は軽四輪車が出ておりますので、これでかえさせていただきますと、三十四年が九九、三十七年が九一・八。それから普通車、私のほうの普通車というのはトラックのことですが、これが三十四年が九二、三十七年が九〇・五、それから小型の四輪車、これが乗用車と呼ばれているものでございますが、三十四年が九五・六、三十七年が九二・四。造船関係でございますが、鋼船で三十四年が四四・一、三十七年が五一。重電機でございますが、これは私のほうのやつは幾つかに分かれておりますが、発電機が三十四年が八六・六、三十七年が八七・六、電動機が三十四年が七六・一、三十七年は七四・七。調査の結果はそうなっております。
  17. 島田喜仁

    島田政府委員 公取委員長とダブるかもしれませんが、先ほど価格の推移を申し上げましたときの七業種について申し上げますと、三十四年から三十七年の五年間で集中度が上昇したものは、自動車用のタイヤ、チューブが五年間で三・二%集中度が高くなっております。それから合成繊維が五年間で一・一%集中度が高くなっておる。それから電線の中で銅圧延伸線製品が五年間で一・七%集中度が高くなったのを除きまして、合金鉄特殊鋼、四輪自動車、これは普通車の小型四輪車、軽四輪車、いわゆる石油化学、ポリエチレン、塩化ビニール樹脂、石油製品、それから電線の中でも電線ケーブル、これはむしろ大企業が多いわけでございますが、これらはいずれも集中度は低くなっております。わずかにエチレン、ポリスチレン、ナイロン、エステルが横ばいでございます。
  18. 田中武夫

    田中(武)議員 いま公取委員長から御答弁がありましたが、これを集約して申し上げますと、集中度の上がったものは七つ、下がったのが八つ、不動が五つ、したがって五と七と足したものは八よりは多いということです。
  19. 始関伊平

    始関委員 私は実は集中度というものを議論するのはあまり意味がないということを申し上げたいのでありますが、今度は提案者に御質問申し上げす。  五社の占拠率がどんなに高くても、相互に相当な販売競争が激しく行なわれるというのがむしろ今日の経済の実情だと私は考えております。生産が非常にふえたのでありますから、そうなるのは当然であります。そこで五社の占拠率が高いということは市場支配ということと直接の関係がないというふうに考えます。と申しますのは、占拠率が高くなれば——これは公取の所管になりますが、カルテルとかなんとかの結成が容易になる、管理価格的なものが出やすいという傾向がないとはいえないと思いますが、これについては公取委員会独禁法の運用によって措置を構ずべきであって、その意味において間接の影響というものはあり得るかもしれないけれども占拠率がどんなに高くなろうと、そのことは、あとのほうでおっしゃる市場支配ということとは直接の関係がないと考えるのが妥当だと思いますが、この点について提案者並びに公取委員長の御所見を伺います。
  20. 板川正吾

    板川議員 始関委員占拠率市場支配力とは関係ないということですが、どうもその点は私どもと重大な見解の相違があります。占拠率市場支配力が関係あるというのがいまの世界的な常識じゃないかと思います。たとえばアメリカにおいてミーンズという学者が、価格生産との関係がある、その価格はまた占拠率との関係がある、こういう議論を展開したことがあります。管理価格というものを最初に取り上げた学者でありますが、生産が上がれば価格は下がるという原則がある、集中度が高まると、物価の下方硬直性、上方弾力性、上に上がるほうは非常に弾力的に上がる、しかし下がるほうは下がらない、こういう議論を展開して、今日においては世界各国の経済学者もそういう見解をとっておると思う。だから占拠率市場支配力が関係ないという議論はないんじゃないか。しかし経済全般を見ずに部分的に取り上げて、占拠率が高まったからこの価格は下がったじゃないか、こういう議論を展開されるものがあります。それは例外もあります。しかし経済全般の見方として見る場合には、占拠率が高まれば市場支配力は強まるというのがどこでも通用する議論だろうと思います。そういう意味占拠率市場支配力の関係は大いにあります。ないということはないと思います。
  21. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 お答えしますが、市場支配力ということばは、この提案されている法案意味か、あるいは常識的な意味か、これがかなりいろんな解釈のしかたがありますから、私は、あなたの御質問市場支配力云々ということをもう少しお教え願いませんと言い得ないと思いますが、ただこういうことは言えると思います。いわゆる寡占的な状態になります場合においては、その状態なりに相当の競争が行なわれる場合と、寡占状態なるがゆえに比較的カルテル的なものをつくりやすい、あるいはそのカルテルがいわゆる地下カルテルといいますか、表面にあらわれてこないカルテルなるがゆえに、われわれとしてなかなか取り上げにくい、しかし、地下カルテルであれ、表面にあらわれたカルテルであれ、カルテルの結成がそこにある——いろんな形のものがあろうと思いますが、ということであれば、これはいずれにしても公正取引委員会の責任の範囲である、同時に権限の範囲であると思っております。ただ、そういったこともない寡占状態においての、しかも相互において何らいわば競争状態——ただいわゆるプライスリーダーシップというかっこうで、単純な形で、ある会社が一つのプライスリーダーになって、そしてあとがそれをフォローしていくという姿、それはカルテルでない場合もそこにあり得ますが、これをもってさらに市場支配と言うか言わないか、これは観念のつくり方ですから、何とも私としては申し上げかねます。ただドイツのカルテル法などでは、市場支配という問題の場合におきましては、やはりその寡占状態においてもそこに実質的な競争がないといったようなことを一応の前提としているようでありますが、市場支配ということばにいろいろな解釈の余地がありますから、御質問市場支配力ということについても、どんな観念を持っているかという点でお答えが違ってくると思います。
  22. 始関伊平

    始関委員 私はきわめて常識的に、日本の実情では、五社もあればその間に相当激しい販売競争が行なわれるというのが実情だから、それはそのまますぐには市場支配ということにはつながらぬだろう、集中度が高くなることによって、その途中にカルテルとかそういう意思の疎通が行なわれやすくなる、そういう段階を経て市場支配的になるということももちろんあり得るでしょう。しかしこれは別に法体系があるのじゃないかということを申し上げたのでありまして、大体いまの御答弁でもけっこうであります。  ときに、私は生産だけの市場集中度ということを考えてどうのこうのという議論をするのはおかしいので、たとえば国産原油についていいますと、帝石と石油資源開発で九八%から九九%の生産集中いたしております。しかしそれだからといって、国産の二社が国内の原油市場を支配しているという場合、これはこっけいなだけの話で、そういう意味で私が御質問を申し上げたわけであります。  それで、以上のように考えてまいりますと、私としては市場支配的事業者というものは抽象的にはと申しますか、頭の中では考えられるけれども、実際にはどうもぴんとこないんじゃないかという気がいたします。そこで私は提案者に伺いたいのでありますが、こういったような立法をされる場合には、市場支配的事業者というのは何かということをもっと詳細かつ明確に規定しておかないと、実際問題として、この法案がかりに通ったとしても、公取では非常にお困りになるだろうと思うのでありますが、その点いかがでしよう。
  23. 田中武夫

    田中(武)議員 質問者に、まずわが党案の第二条を見ていただきたいのです。そこに市場支配的事業者の定義をいたしております。それは「商品又は役務を供給する事業者であって、その商品又は役務の供給量、設備の規模、資本の額等」から見まして、そうしてその業界における支配的な力を持っておると公正取引委員会が判断をした場合に指定する、そのことによって、この法律でいう市場支配企業ということになるわけであります。この立案過程にあって、たとえばシェアを二〇%以上持つものというふうにしようかという考えもありました。しかし、ただ単におっしゃるように二〇%シェアを持っておるからといって、それが必ずしも支配的でない、こういうことで、そういうのを抜いたのであります。しかし、いま申しましたような二条のそれぞれ掲げてあります項目を見まして、そして検討した上で公正取引委員会が指定する、あるいは公正取引委員会は指定するにあたって公正取引委員会が独自にやってもよろしいし、六条の市場支配基準審議会に相談をせられてもいい、こういうように考えております。
  24. 板川正吾

    板川議員 補足しますと、市場支配的とは、われわれの考えでは、西ドイツの競争制限法がございますが、そこでも同様の規定がございます。市場支配的事業者ということで、大体われわれの考え方は西ドイツの規制と軌を一にして、同じ考えに基づいております。それは、市場支配的とは、一事業者が特定の種類の商品または役務に関し競争者を有しないか、または当該事業者が本質的な競争に直面していない場合をいう、こういう規定がございますが、こういう思想の上に立っております。
  25. 始関伊平

    始関委員 ただいまの板川委員の御説明は非常に明快でございますが、私の疑問は、この法律独禁法適用のない場合に適用されるのだということとあわせ考えまして、いまおっしゃったような場合というのはどうも現実にはあまり考えられないということを申しておるのでございますが、この点はその程度にいたしておきましょう。  その次に、ただいまもお話が出たのでありますが、この社会党案独占禁止法との関係というものを一応問題とせざるを得ないと思います。この両者の関係については、ある経済行為が社会通念上望ましからずとして法律上の問題となる場合に、ちょっと言い方はおかしいかもしれませんが、まず適用せられるのは独禁法である。独禁法適用なき場合、すなわち独禁法違反とならない場合にのみこの社会党案適用されるものと解すべきであると思います。これはそのとおりだという御返事だと思いますが、一応お伺いしたい。  それから、いまも板川君の御返事が先にあったようなかっこうになっておりますが、これを裏返して申しますと、ある望ましからざる経済行為独禁法上問題となるのは、私的独占の場合と、カルテルの場合と、不公正競争の場合と、三つございますが、競争者間に意思の疎通のある場合、それからもう一つ、ある企業だけの単独の行為であるが、自由な競争または公正な競争を阻害するおそれがある場合、この二つの場合と考えられると思うのであります。そこでその残った部分と申しますか、そこに入らない部分について社会党案適用せられることになると思うのでございますが、それはいまお話がございましたように完全独占の場合と、それからもう一つ、ある企業の単独行為であって、競争阻害条件がある場合の二つであると思いますが、この点いかがでございますか。  それからいま板川委員の後段におっしゃったのは、完全独占の場合と、ほぼこれに準ずる場合と、こういう意味でございますか、その点を伺います。
  26. 田中武夫

    田中(武)議員 わが党案と独禁法との関係でございますが、提案説明でも申し上げておきましたように、わが党案は独禁法の補完法であります。したがいまして、その態度は、もちろん独禁法では十分に取り締まることができないものに対して取り締まりをやろう、監視をしよう、こういうことがねらいであります。そこで、あなたもおっしゃったように、独禁法では一つの制限があります。公正な取引を阻害するとか等々の、すべて制限がついております。この法律ではそういうことがなく、不公正な取引、いわゆる三条各号に掲げておるようなことがあるならばそれでやるということであります。そこで独禁法の考えておるのは、いわゆる取引関係において、買う場合と売る場合、両方考えられます。しかしわれわれの案でいきますと、巨大産業、市場支配企業が買う場合は問題にしていないのです。売る場合を問題にしておるのであります。それから法律適用でありますが、補完法でありますので、その上に立って両者の調整をやっていきたい、こう考えております。したがいまして、ある一つの問題につきましては、ある点においては、わが党案は独禁法の特別法とも甘えますから、そのほうが優先して適用せられる、こういう場合はあり得ると思います。
  27. 板川正吾

    板川議員 完全独占の場合とそれからこれに準ずる場合も、複数であっても、実質的に競争がなくて完全独占と同じ形態の場合には当然これも入る、こういうふうに考えております。
  28. 二階堂進

    ○二階堂委員長 小川平二君。
  29. 小川平二

    ○小川(平)委員 この法律案はたいへん評判のよい法律案だそうでありまして、ただいま聞きますと、朝日新聞等にも、議員立法はとかくそまつなものが多いけれども、これは検討に値する法案である——もっとも内容について論評は加えておらないそうですが、そういう社説があったそうであります。そこで、御努力に敬意を表しながら、さしあたりまして、提案者の意図しておりますことを理解する手がかりとしては、本会議質疑応答記録、それから提案の理由、こういう文書を拝読をいたしたのであります。読んでいますうちに、これはきわめて素朴な疑問に属する種類のものと思うのですが、疑問が浮かんでまいりました。いまの始関さんとの質疑応答に若干関連をするわけですが、ひとつ御教示を順いたいと思います。これはあくまで御教示を願いたいのでありまして、私が勉強不足ですから、あげ足とりというようなおことばもさっき出ましたが、そういうことをやろうという気がまえ、気魄は全くないわけです。ひとつお教えを願いたいのですから、田中さんもあまりこわい顔をなさらずに……。  そこで、まずお尋ねをいたしてみたいのですが、田中さんの本会議における浦野君の質問に対する答弁を見ますと、また、ただいまのおことばにもあったわけですが、この法案独禁法を補完する法案であって、その性格はさきに成立した不当景品類及び不当表示防止法と同じである、こういう御説明をなさっておりますが、そのとおりと承ってよろしゅうございますか。
  30. 田中武夫

    田中(武)議員 独禁法の補完法的なというか、補完法としての性格においてはおっしゃるとおりであります。
  31. 小川平二

    ○小川(平)委員 ところでいまの不当表示防止法でございますが、これはまさしく独禁法との関係においては独禁法を補完する法律であるに違いない。また母法ということばも答弁のうちに出てまいりますが、まさしく独禁法はこの法律に対して母法という関係に立っておるに違いないと存じます。それはこの公取の解説をなさった本を読んでみましても、非常に明快であるような印象を受けます。公取の御本には、この法律は不当誘引行為を第一に公正な競争の確保という面からとらえている。このことは独占禁止法が不公正な取引方法の規制を公正な競争の確保としてとらえているのと同じである。したがってこの法律によって消費者の利益が保護されるとしても、それは間接的である、こういうことが論理的に言えるという御趣旨のことが書いてある。これは幾らか古い本ですが、委員長にお確かめをする必要もないかと思う。これはきわめて明快な自明のことであるような感じが私はしておるわけです。そういう意味で、これが独禁法の補完である。補完するということはどういうことであるか。常識的に、これは法律そのものの目的、独禁法自体の目的に照らして、本来なら当然規制をしなければならない、規制したい行為等も、法律が不備であるために、足りないために規制することができない。あるいは少なくとも敏速かつ効果的な規制をすることができない。そこでこれを補なうというのが、これが補完するということであろう、私はこういうふうに考えるわけでございます。こういう意味で、この不当表示防止法はまさしく補完法でありますけれども、いま御提案になっておる法案が同じ意味独禁法を補完する法案であるのであろうか、そういうばく然たる疑問が浮かんでまいります。  第三条に列挙なさっている各号、いろいろここに列挙されておられまするけれども、これらの行為は非難に値する行為であるかもしれない。しかし公正な競争が阻害されるという要件がない限りは、ほかの観点からいかほど不届きな行為であり、非難に値する行為であろうとも、これは独禁法で規制し得る対象にはならない。ならないのみならず、こういう行為は本来独禁法あるいは公取委員会の関知せざる、あずかり知らざる行為ではなかろうかという感じが私はするわけでございます。そういう意味で、この御答弁には、これは独禁法を補完する法律案であって、その性格は不当表示防止法と同じだとお書きになっておるので、私はちょっとその点が幾らかわからなくなってきておるのでございます。  もう十二時間近でございまして、時間があまりございませんので、さらに続けて申し上げさせていただきますと、第三条の第一号に、「不当な対価をもって取引すること。」と書いてある。これは独禁法の二条七項二号と文言は全く同一でございます。けれども独禁法において不当というのはどういうことであるのか、これはにわか勉強いたしまして、ある本を読んでみると、その本には、こういうふうに書いてある。二条七項二号に、いわゆる不当な対価というのは、買い占め及びダンピング、ただいまも田中さんの御答弁に出てきておりますが、要するに、それによって公正な競争を阻害するような行為を引き起こすような、そういう対価を不当といっておるのだ。こういうふうに書いてある。「不当という表現は本来抽象的なものにとどまっているから、そのままでは具体的な意味もいろいろなふうに解釈される余地があるといってよろしい。ここに公正な競争を、独禁法において公正な競争を阻害するという要件を特に掲げている意味があるのであって、このことによって不当ということばの意味法律の目的に即して、すなわち独禁法の目的そのものに即して限定されているのだ、」こういうふうに書いてあるわけです。私はこれを一読しますと事理はなはだ明白であるような感じを受けるわけでございます。要するに独禁法における不当という概念は、公正な競争が阻害されるということと切り離しては考えることができないのであろう。ところがこれはその公正な競争が阻害される要件を欠いておるわけですから、ここに言われる不当ということばについては、何か別の概念規定がなされなくてはならないのではなかろうか、この点については田中さんに伺ってもみたいとも思いまするが、いずれにいたしましても、これは独禁法とは縁のない、無縁な概念ではなかろうか、そういう感じがするわけでございます。それで、この不当ということばでありますけれども、常識的には、コストに適正な利潤を加えたものが不当ならざる正当な価格ということになるわけでありましょう。しかし、そういう意味で正当な価格でなくても公正な競争が阻害されていない限り、これは独禁法のあずかり知るところではないのではなかろうか、このように考えるわけでございます。  そこで、これを一読いたしまして、この法律案独禁法の目的とは別の、何か異なる観点、たとえば暴利取り締まり的な観点あるいは力の強いものが力の弱いものを支配するという行為を、それ自体違法な行為としてつかまえようとする、そういう観点から出てきておるものじゃなかろうか。だから独禁法がこの法案に対して母法の関係に立つわけでもないし、この法案独禁法を補完するという関係に立つわけでもない。独禁法はあくまで公正な競争の促進ということに焦点を合わせてできている、そういう独禁法体制とは調和することのできないものじゃないだろうか。そこで何か全く異なるもの、異質のものが、ここで結合されようとしているような印象を私は受けるわけでございます。これははなはだばく然たる、きわめて素朴な疑問だと思うのですが、そういう点について若干御教示を願いたいと思うわけでありまして、板川さんの御提案の理由を見ますると、「御承知のように、政府・自民党は、過般の総選挙にあたり、わが社会党物価問題についての公開質問状に対し「管理価格の疑いあるものにはすみやかに検討を加え、もし不当な価格維持が行なわれていれば、これに対して必要な措置を講ずることは当然である」と回答し、管理価格の排除を国民に公約いたしたのであります。したがって、本法の制定は、この政府・自民党が国民への公約を果たすことでもあると存じますので、」とお書きになっておるわけです。私は、この自民党が公約した文章のあと先を読んでおりませんからわかりませんけれども、ここであらわれている限りでは、こういう強いものが弱いものを圧迫するという縦の関係をそれ自体違法なものとしてつかまえよう、いまお話に出た西独の競争制限法ですか、そういう趣旨の法律案提出しようというような大胆なお約束を自民党がやっておるわけじゃなかろう。ここに書いてあることは、独禁法の運用を真剣にやっていこうということにすぎないのだろうと存じます。だから公約違反云々と言われるのは幾らか酷であろうかと思うわけですが、それはさておき、いわゆる管理価格なるものが相当広範に存在しており、それによって消費者は非常な害悪をこうむっておるという事実があるならば、これを何かの方法で規制するために前向きの姿で検討するということは、確かに意味のあることだと私どもも存じております。しかしそういうことをやるには、これは現行独禁法との関連で考えていきます場合に、時間をかけてきめのこまかい精緻な理論構成、首肯せしめるに足る理論構成をしなければならない問題じゃなかろうか。あるいはそういう理論をすでに構成なさっておるのかもしれませんが、提案の理由質疑応答の記録を一読した限りでは、この辺がはっきりいたしませんので、ただいま申し上げたような疑問を提起するわけでございます。ひとつ御教示を賜わりたいと思います。
  32. 田中武夫

    田中(武)議員 小川委員から模範的質問の態度を教えていただいたような感じがします。今後君たちが委員会政府委員なり大臣に質問をするときにはこういうふうにやるべきではないかというようなことを教えられたような感じがいたします。  それはさておきまして、まず独禁法との関係でございます。御承知のように私的独占禁止法の第一条には、その後段でもって、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」云々とある。したがいまして今日の私的独占禁止法では、消費者の利益が十分に守り得ておるかどうかということを考えた場合に、それはイエスとは答えられないと思うのです。しかもこの独禁法は、御承知のように最初成立してから後に大改正をなされています。すなわち後向きな改正がなされておるわけであります。そういうことをも含めまして、この法律独禁法が意図する消費者の利益を十分に守るために、独禁法ではなお手の届かないところへ手を伸ばす、こういう意味におきまして独禁法の補完立法だと申し上げておるのであります。  それから、正当なということは、法律的に申しますならば、社会通念、商慣習、こういうことになろうと思います。いま小川さんのおっしゃいました私的独占禁止法では、先ほど来申し上げておりますようないわゆる一定の取引の分野において自由な競争を阻害する、こういったような制限といいますか、こういうものをかぶっておるのであります。そこで同じ不当な取引、こう申しましても、社会党案のほうが広い意味においてこれを考えておる。したがって同じ不当ということばでも、独禁法における不当とこの法律にいう不当とは若干意味が違いまして、その範囲はわが党案のほうが広いということは御承知願いたい。したがって、それはどういうところにあるかといえば、いま申し上げましたように、この法律自体の性格としての消費者の利益保護、こういうことを行なうということは、たとえば俗に言われている管理価格でありますが、これは独禁法ではできません。あるいは二条五項でしたか何かでできるのじゃないかというどこかの裁判所の判事さんの意見もあるようですが、できません。そこでそういう点にまで手を入れて、そうすることによって消費者の利益をより一そう保護していこう、こういう意味でございます。  それから板川君に対する御質問は、あと板川議員が答弁をせられるであろうと思いますが、選挙にあたりまして、あなた方は物価についていろいろと公約をし、またわが党の質問に対して回答をしておられるわけです。その思想から言うならば、当然こういった社会党案のような物価、ことに管理価格にメスを入れていく、そのことによって経済的に弱い消費者の利益を守るというような法律は、むしろ自民党が公約に基づくならば率先をして成立をはかるべきである、こういう意味で申し上げておるのであります。
  33. 板川正吾

    板川議員 私への質問は、自民党が公約した管理価格についてメスを入れるということは、必ずしも前後の文脈が明らかでないから、いわゆるこの法律でそのような管理価格を解消するようにやるといったことはないだろうというような意味だと思います。昨年の総選挙で物価問題が論争の大きな中心であったことは御承知のとおりであります。新聞の報道を拾ってみますと、十一月七日に朝日新聞でこういう報道をしております。「物価対策は、こんどの選挙の一つの焦点となっている。ある程度の物価値上りは高い経済成長のもとではやむを得ない、といっていた池田首相も、去る四日の福島県下の遊説では「大企業による管理価格を、公正取引委員会調査させる」といって、物価抑制へ熱のあるところをみせた。当の公取委では、今年一ばいにも管理価格の問題点をまとめ、来年度から本格的にこの問題と取組むことにしているが、通産省も来年度から管理価格の実態調査に乗出すという。」こういう報道をしております。それから一週間後の十一月十三日の新聞には、社会党幾つかの政策について公開質問状を出して、その中でこういうふうにいっておるのです。自民党の回答といたしまして、「わが国の卸売物価が、諸外国に比較して安定的である最も大きな理由一つは、わが国市場構造が、非独占的、競争的であることによるものであり、社会党のいうような独占的な価格形成が一般化しているとは考えない。」と言って、一応反論いたしております。しかし、そのあと次に「管理価格の疑いのあるものについてはすみやかに検討を加え、もしも不当な価格維持が行なわれていれば、これに対して必要な措置を講ずることは当然である。価格の維持が共同行為」、すなわちカルテル「によって行なわれている場合には、独占禁止法を厳正に運用して行く。」こういうふうに、あとのほうで二段に分かれております。要するにカルテル価格については独禁法を運用していく、しかし、管理価格については不当な価格維持が行なわれていれば、これに対して適当な、必要な措置を講ずるということを言っておるのでありまして、これは独禁法でやれるということを言っているんじゃないんです。そういう意味で、私は、今度の管理価格に対する規制というのは、この自民党の公約もそれを指しておるのじゃないか、ここではカルテル価格と明らかに別な考え方をとっておる、こう言いたいのであります。
  34. 小川平二

    ○小川(平)委員 田中さんの御答弁ですが、消費者の利益を保護するということが独禁法そのものの目的であるのかどうかという点について幾らか疑問を持っておるわけです。私は正直のところ勉強不足でありますから、おそるおそる伺っておるわけなので、たいへん態度がいいとほめていただくのは当たらないんですが、しかし、それはさっき私が引用いたしました例の不当表示防止法についての公取の御説明、この法律は問題を公正な競争が阻害されるという点でつかまえておるんで、消費者に対する効果は間接的である、こういう御説明があります。私は、きわめて常識的に、この消費者の利益を保護するということは、独禁法の目的そのものではないのではなかろうか、公正な競争を確保することこそが目的であって、その効果として消費者もまた利益を受ける、そのように解釈すべきではなかろうかと思う。これは公取が不当表示防止法について言っておられることと照応するように、私はそういう感じを受けるわけでありまして、少なくともこれが自然な解釈であり、ろくに本を読んだわけでもありませんが、それが多数の専門家の意見じゃなかろうかと思うわけですが、委員長がおられますから、ひとつこの点お教えをいただきたい。
  35. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 公取法は、これは私の解釈としてお聞き願いたいと思いますが……。
  36. 小川平二

    ○小川(平)委員 個人の御解釈では困るので、権威ある最終的な確定的な御意見を、ひとつこの際せっかくですから伺いたい。
  37. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 公取委員長個人の意見として……。独占禁止法は御承知のように競争の自由といいますか、自由な競争を促進するというところに一つの大きな線を持っているわけです。したがって、それに伴いながら、それによって結果として消費者保護あるいは経済の民主化ということが出てくる。ねらいとしては一応経済の民主化、消費者保護ということは、これは独禁法の当然のねらいなんですが、しかし、同時に、独禁法のそういう消費者保護あるいは経済の民主化というものを打ち立てるミッテルとして一応自由な競争を促進する、そういうことと離れては独禁法というものはあり得ないんじゃないか。消費者保護ということからいえば、あるいは場合によっては暴利取り締まりも消費者保護でありましょうし、あるいは必要があれば物価統制ということも消費者保護でありましょうが、いろいろなことが消費者保護の目的としては考えられるわけです。独禁法のねらいとしては、自由な競争を促進することによって、そこに生産性の向上も期待するとかいろいろなことを考えながら、同時に消費者保護、経済の民主化を考えていく。したがって、私としては、競争の自由の促進ということを抜きにした独禁法ということは考えられないのじゃないか、かように考えております。
  38. 田中武夫

    田中(武)議員 私どもも先ほどから始関委員の御質問等に答えて、独禁法には一定の取引分野における競争阻害、こういうものがかぶさっているということは申し上げております。しかし、この独禁法の性格といいますか、ねらいといいますか、これを一口に言うならば、経済的強者から経済的弱者を守っていく、こういうことであろうと思うのです。その一つの手段として、公正な取引分野における云々ということになると思います。そこでわれわれは、経済的強者から弱者を守るためには独禁法ではなお足りないところを補っていくのだ、そうしてその行為については、独禁法で言う不公正な取引とみなして、独禁法上の措置及びそれにまさる措置を講ずる、こういう考え方であります。したがって、独禁法との関係は補完であり、あるいはこの法律が成立した場合の所管は、現在では公正取引委員会よりほかにこういうことをやるところはない、こういう考えから言っても独禁法の補完である。ただ、あなたがあげておられる不当景品類及び不当表示防止法は、この独禁法手続を簡略にしてどんぴしゃりとやろうというようなところで、ある意味においてはより強い補完法的な感じを受けられるのではないかと考えますが、われわれは、この法律は決して独禁法とは離れて存在するものではないというふうに考えます。
  39. 小川平二

    ○小川(平)委員 お話のとおりですと、私がいままでるるお尋ねをした疑問というものは氷解をするわけでございますが、いまの田中さんの御意見は、どうも独自のきわめて大胆な解釈ないしは御提案ではなかろうかという印象を実は十分払拭できないわけでございます。そこで、時間がすでに十二時を過ぎておりまして、始関さんもなお若干の御質問があると存じまするので、この点はこの程度にとどめますが、おそらく皆さんの範をとられたに違いない西ドイツの競争制限禁止法と同じ趣旨のものを立法化なさろうとするについては、これは繰り返しになるのですが、ちょっと時間をかけて、きわめて精緻なる、多数の人を十分首肯せしめるに足る理論構成をなさるべきではなかろうか。そこで、これは特振法案とたまたま時を同じくして提出されているのですが、皆さんの前向きの意図そのものは、われわれの先ほど申し上げるとおりきわめて高く評価せざるを得ない。お手伝いをする余地があればいかなるお手伝いもしなければならぬと存じますが、じっくり時間をかけて検討すべき問題のような感じを受けるわけです。それよりも、特振法案については始関さんより、前向きな積極的な意義を肯定する角度からいろいろ御質問が出ているわけです。ひとつフランクに御検討いただきまして、足りないところや何かがあれば、これは私個人の意見ですけれども、直すにやぶさかではございませんから、御審議を願いたいものと切望いたします。  実は、この三条についていろいろまだ伺いたい点がございます。たとえば現行法では指定の制度が設けられておりまして、いわば二段がまえになっている。二条でいろいろ列挙してあります行為は、これは公取が主張する場合のワクあるいは基準にすぎない。ここに掲げておる六項目のどれかに該当する行為現実に取り締まりの対象になるためには、この六項目のワクの中から公取があらためて具体的に指定しなければならないというようなたてまえをとっておるわけですが、お出しになっている法案にはそういうふうなたてまえをとっておられない。それには何か積極的な理由、根拠がおありなのかとか、いろいろこまかい点がございます。しかし、こういうことは考えてみればむしろさまつな問題ではなかろうか。まず何よりも伺ってみたいと思ったのが先刻来お耳に入れた問題です。  本日はこの程度にとどめさしていただきます。
  40. 田中武夫

    田中(武)議員 まずこの社会党案を十分審議をしろ、こういうことはこちらからも望みたいと思います。そうして私の解釈が独断的だとおっしゃるならば……(小川(平)委員「独断ではなく独自と言ったのです」と呼ぶ)だから独禁法の大家あるいは学者、こういうものを呼んで十分に検討してもらったらけっこうだと思います。この法案に対する審議はきょう一日でなく、疑問の点があれば自後自民党の各委員全員に質問をしていただくことを希望いたします。同時に、特振法案とは全然時を一にしたというだけでなく、私は、ねらいを異にするが、関係あるものだと思っております。したがってそれも一緒に学者等の意見を十分に聞こうということならけっこうでございます。  さらに第三条等で御意見がございましたが、まず三条の五号に「公正取引委員会が指定する不当な行為」ということをあげておりますので、やはり指定の道は開いております。さらに第三条と独禁法の二条七項との間において重複しているのではないかという御疑問でございますが、これは先ほど来申し上げておりますように……(小川(平)委員「そうは言いません」と呼ぶ)同じ不当な行為の中であっても、独禁法上のものとそれからはみ出す行為がある。そのはみ出す行為に対して社会党案は指摘をしておる、こういうことであります。
  41. 始関伊平

    始関委員 法案の内容に入りまして、私ももう少し質問をいたしますが、この法案の眼目は第三条の第一項第一号だろうと存じます。そこで先ほど来お話がございますように、社会党案でねらっております領域と申しますか分野が理論上あり得るということは私も一応了解できるのでございますが、しかしそれが具体的にどういうものであるかということはなかなかわからない。そもそも市場支配的事業者そのものが実際上不明瞭な概念でありますから、市場支配的事業者が自己の取引上の地位が優越していることを利用して不当な対価をもって取引するといっても、ぴんとこないのじゃないかと思うのです。  そこで私は提案者お尋ねをしたいのでありますが、先ほど板川委員は、これは完全独占もしくはこれに準ずる場合である、こういうふうにおっしゃったのでありますが、第二条にいう定義は、先ほど田中君から説明がございましたが、結局いま板川君が申されましたような内容であるのかどうかという点を一点伺います。  どうもこれは私のにわか勉強で不勉強でありますが、実際にはどういうものをいうのかということがさっぱりわからないので、何か適切な例をお持ちでしたらお話を願いたい、これが第二点であります。  第三点といたしまして、ただいま田中君の御答弁の中に非常に重要なことがあったと思うのであります。それは、いわゆる管理価格独禁法のほうではいけないので、この法律でやるんだ、こういうお話ですが、いわゆる管理価格が完全な独占支配の場合の管理価格であるならば、おそらくお説のとおりであります。しかし、私は管理価格という概念はよく存じませんが、これはどうも業者間に意思の共通があるらしいけれども、実際上その立証はできないというような場合に、管理価格とか価格硬直的傾向とかいうんだろうと思いますが、そうであるとすれば、私はさっき申しましたように独占的事業者もしくはこれに準ずる事業者というのでありますから、三つなり五つなりの事業者があって、その間に意思の連絡があるらしいという場合は、この法体系の中に入らないはずだと思うのであります。要するに、どうも犯罪があるらしいけれども捜査ができないという場合にこの第三条の一号で持ってくる、しかも条件は三人なり四人なりの間の意思の共通があるらしい、こういう場合にはやはりあくまで独占禁止法の問題であって、捜査能力があるかどうかという問題でありますけれども、法体系としては向こうに入るべきはずだ、こう思うのでありますが、以上三点について、提案者と、最後の点につきまして渡邊委員長から簡単に御説明いただきたいと思います。
  42. 田中武夫

    田中(武)議員 三点とおっしゃいましたので、落ちておればあとで御指摘願いたいと思います。  まず、われわれの問題にしております管理価格であります。価格の形成にはいろいろと要素があります。いわゆる独占あるいは寡占価格、これがカルテルによる価格とそうでないのとあります。カルテルによるものであるならば独禁法で排除ができます。しかし、そうでないもの、カルテルとはいえない、しかし何だか、たとえば鉄鋼の建て値制度とかなんとか等々ありますが、そういうようなむしろ行政的措置をも含めて、カルテルでなくして独占者——独占者にはカルテルという観念はないと思いますが、寡占者において価格をきめている、これはいま問題を議論するまでもなくおわかりだと思うのです。そんなものはたくさんあります。これを一つかみにして管理価格といっているわけなんです。それを対象としておるということ、さらに、ものの売買は、民法の思想からいけば、一方が商品を渡す、片一方がその価格を払うということで成立するものであります。ところがこの種の製品は一方的にきめられておるのであります。相対取引ではないのであります。そこに経済的な強者と弱者との関係、あるいはいままでもよく申しました、その企業の持つシェア、これによって左右せられておると思うのです。そういうことに対して経済的な弱者を守っていこう、こういうのがねらいであります。何回も申しておるとおりであります。なお足らぬところがあれば御指摘願いたいと思うし、板川委員から補足していただきたいと思います。
  43. 板川正吾

    板川議員 管理価格というものの実態がどうもよくわからぬとおっしゃっておるのですが、これはどうも法律的にいうと先ほど言ったような言い方になる。しかし具体的にいうとわりあいにわかりやすい、こう思うのです。  われわれが考えておる管理価格の具体例をたとえば幾つか取り上げてみますと、条件としては、第一に企業が非常に少数であるということ。それからその中にプライスリーダー、第一位を占める大企業価格決定にあたって常にリーダーシップをとる。そしてその他のものがこれに追従する。追従しなければ今度は逆に第一位の一番優位の会社から報復的に安値をされますから、結局それは追従せざるを得ないというような状態、したがって表にあらわれたかっこうとしては、価格が長期的に変動しない、そのほかいろいろ要素もあるだろうと思います。この点については、通産省見解と公取の見解が若干食い違ったりしておりますが、管理価格と趣いうものについて法律的にぴしゃりという概念はまだきまってないようであります。ただし、実態としてはわかると思うのですが、たとえば珪素鋼板の場合をあげてみますと、珪素鋼板は三十年を一〇〇としますと三十七年では四七七、約五倍近く生産がふえております。そうして集中度を見ますと、八幡が五四・四%、川鉄が四五・六%、両方合わせまして一〇〇%を占めております。そして操業率はどうかというと、三十七年現在におきまして八幡では四九・三%しか操業しておりません。川崎が七七%であります。一面原材料指数を見ますと、三十年を一〇〇としまして、川鉄が七八に三十七年は下がっております。それから珪素の鉱石が三十年を一〇〇としまして八九、一割ほど下がっております。これは珪素鋼板の例であります。また板ガラスの例をあげますと、三十年を一〇〇としまし、生産指数は三十七年は一九二で約二倍になっている。集中度は旭硝子が五七・一、日本板硝子が四二・九でありますから、これが二社で一〇〇%になります。先ほど珪素鋼板の場合ちょっと見落としましたが、価格指数を見ますと、三十年を一〇〇としまして三十七年が一〇五ないし一一〇、板ガラスの場合は三十年を一〇〇としまして三十七年が一〇〇でありまして変動ございません。操業率は旭硝子が六六%、日本板硝子が七二%、それから原料は旭硝子では三十年一〇〇が八六になっている、日本板硝子では三十年一〇〇が九四になっている。こういう例をちょっとあげてみたのですが、こういうように非常に生産性が上がっておる。しかし、価格は長期的に変動しない、業率はあまり高くはない、原料は下がっておる、しかもその会社は相当な利益をあげておる、しかも集中度は二社で九〇何%、一〇〇近い。価格の要素がほんとうに自由であれば、競争状態にあればこういうような価格というのはな恥のじゃないか。それは独占しておりますから、二社で一〇〇近く集中しておりますからこうした価格維持ができるのではないか。これは現在の法律ですと独禁法で取り締まれないはずはないという意見も一部にございます。これはある裁判官や学者でそういう議論を展開する者もありますが、しかしこれの運営は公取でありまして、公取としては御承知のように価格の協定をしたものは共同行為が伴うからこれは独禁法違反だと言うが、この二社の場合には価格協定する必要がないのです。お互いに共通の利益なんですから、相手が値段を下げなければ下げる、こういうことになっておるのでありまして、独禁法では共同行為が伴うものは取り締まりができるが、共同行為がないと取り締まれないという立場をとっております。御承知のように新聞値上げの場合には共同行為があっても拘束力がないから、これは共同行為があったとみなさないなんて、こういう議論さえ前の委員長は声明で発表しておるのであります。だから、われわれとしては共同行為がないものを野放しにしてはいかぬではないか、こういうふうに集中度の高い、明らかに管理価格と目されるものについては、これに何らかの社会的な規制を加えることは決して不当ではないのじゃないか、こういう考え方になったわけであります。
  44. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 私に対する御質問に対してお答えします。  先ほども申しましたが、結局寡占状態における企業の間に何らかの形において申し合わせといいますか、意思の疎通といいますか、それがあれば、これは当然独禁法の対象になると思います。しかし単純にプライスリーダーがありまして、それに他の人たちが追従していく、たとえばアメリカの管理価格委員会調査した報告を読んでみますと、御承知のようにゼネラルモータースが一応プライスリーダーである、デザインリーダーである。ゼネラルモーターズは自分のコスト計算と利益計算を入れて一応の値段をきめる、それでクライスラーはゼネラルモーターズの値段がきまりますとそれに追従した値段をきめていく、一応あのレポートによれば、ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラーお互いの間に話し合いがあったという事実は見受けられぬようでして、結局ゼネラルモーターズが一応まずその値段をきめて、フォード、クライスラーは自分たちのコスト、利潤ということは一応この次にしてその値段をきめていく、こういうふうなかっこうのものも一応管理価格の名前で呼ばれておるわけでありますが、このあとのような例があったとしますと、これはちょっと独禁法適用の外ではないか、取り締まり得る範囲の外ではないか、かように考えております。
  45. 田中武夫

    田中(武)議員 なおちょっと補足をいたします。  始関委員は、この質問にあたっては昨年の衆議院の本会議における私の答弁をお読みになったと思うのです。三十八年五月十七日の衆議院会議録四ページ以下をお読みになったかどうかわかりませんが、読んでいただいたとするならば御了解願えると思うのです。あなたはいま盛んに、いわゆる第二条の定義に基づいて具体的にどういうものを考えておるのか、こういうことなのです。そこで、本会議において、実はいま私の隣にすわっている板川君が当時は提案者ではなくして質問者でありまして、その板川議員質問及び民社の春日一幸君の質問に答弁しておりますので、何ならそれを全部お読みいたしましょうか。——それでは三十八年五月十七日の衆議院会議録第二十四号の四ページをごらんください。
  46. 始関伊平

    始関委員 第二条の定義が独占もしくはこれに準ずる場合というのだから、一社ないし二社の場合にはいまの御説明を一応了解できると思いますが、しかし非常に多数の当事者がある場合に、第三条の一号の規定を適用するのは、これは市場支配的事業者ということの定義からいっても私は無理かと思います。  それから第四条二項の「必要な措置」というのは、価格の規制命令を言うのかどうかという点をあわせてお答えいただきたい。
  47. 田中武夫

    田中(武)議員 まず第二条の問題につきまして、おっしゃった点はそのとおりでありまして、ある種の業界にあっては何社、あるいはある種の業界にあっては何ぼというように具体的にきめていかねばならぬ。ただ何社ある、だから何社以下で何ぼ独占率を持っておればこうだ、支配率を持っておればこうだというようには考えておりません。法律のたてまえも、御承知のように、だからこそ公取委員会が独自で指定するとか、あるいはまた六条の審議会にはかって指定する、こういうようにいたしておりますので、それはそれぞれの業界によって若干の指定に至る数といいますか、寡占の率というものについては変わることを前提といたしております。  それからこの四条二項について、差しとめ命令等のほか必要な措置——私は、必要ならばそれを公表する、あるいは必要ならばもちろん価格引き下げ命令が出し得ると、これまたその前日かの浦野君の質問に対して、本会議で答弁いたしております。したがって、それもお読み願いたいと思います。
  48. 始関伊平

    始関委員 その点につきましてはもう御答弁を要求いたしませんが、もしそうだとすれば、これはまあ局部的ではありますけれども一種価格統制に入るわけでありますから、コスト計算が必要となり、また妥当な利潤とは何ぞやというようなこと、それから適正な賃金とは何かというような問題にも入らざるを得ないことになりまして、少なくとも今までの独禁法の精神、たてまえと非常に違ってくる、公取委員会のいままでの性格とも根本的に違ってくる、こう思うのであります。実はあとのほうにまだ大事な質問がありますから、御答弁は要求いたしません。なお、この点は小川委員質問ともダブることでありますが、私はそういう感想を持っております。  それからこういうややこしい法律体系でやりますよりも、たとえば一社しかない、あるいは二社で管理価格的な傾向が出るといったような場合には、私は、こういうような問題の多い立法によるよりもむしろ関税の引き下げとか、あるいは自由化の促進とか、競争者の導入の促進とか、そういう行政上の手段によって競争条件というものをつくり出していくということが、自由主義経済をたてまえとする以上は、そのほうが有効であり、かつ適切である、このように思うのでありまして、そうすることのほうが、私は、社会党提案者の平素の御主張にも合うのではないかと思いますが、ちょっと簡単に言うてみてください。
  49. 田中武夫

    田中(武)議員 御答弁申し上げます。  いま始関さんのおっしゃったこと、そのまま受け取るならば、重要な問題が出てくると思うのです。と申しますのは、価格引き下げ命令を出し得るとするならば、適正な利潤とか適正価格、これをつくるのがたいへんだとおっしゃるのですが、それができないとするならば、現在の硫安の価格あるいはまた現に当委員会提出せられておる新電気事業法案でも適正な価格ということがうたってあるのです。そうするなら、この法律も出直してもらいたい、こう言わざるを得ないのです。さらに競争をさすような行政措置をとれ、そういうことも一つの方法でありましょう。しかし、特振法はそれをなくしようという法律じゃないですか。そうでしょう。合併さしていって、国際競争力に名を借りて、そして寡占状態をつくっていこうという結果になるのでしょう。だからあなたの意見をおっしゃるならば、特振法案も電気事業法案も出直してください。
  50. 始関伊平

    始関委員 どうもあまり議論はしたくないのですが、電気事業法案は、これは行政監督の規定でありますね。それから肥料もそうでありまして、何と申しますか、半分司法機関的な性質を持った公取の所管であり、かつ、こういったように限りなく拡大するおそれのあるものについては、電気事業や硫安の例で律するのは適当ではないと思います。その点はこれで打ち切りまして、ひとつ先に進ましていただきます。  そこでひとつ、先ほどから特振法案の関係が出ておりますから、この法律案考え方社会党案考え方との関係というようなことで、二、三お尋ねをいたしたいと思いますが、まず最初提案者お尋ねをいたします。  提案者は、日本の産業について、資本生産集中あるいは系列化が強化されて、独占資本の支配する体制が確立しておるということをしきりに強調されておるわけでありますが、国内だけを見ずに、国際的な視野に立つというと、一体どういうことになるのか。提案者は、一方において日本の産業のあるものが国際的競争力の現状において、はなはだ不十分な点がある、これについて何らかの手を打っていく必要があるのではないかというふうにさだめしお考えだろうと思うのでありますが、そういう点についてお尋ねをいたします。
  51. 板川正吾

    板川議員 さっきの質問に対してちょっと補足したいのですが、自由化になれば、こういう法律で規制するよりも、関税の引き下げを行なう、あるいは新規企業者の参入を奨励する、こういうようなことでその独占を排除するようなやり方のほうがいいのじゃないか、そういう質問でありました。われわれも、そういうことをやってはいけないということじゃございません。それは行政措置として第一段にやっていただくことになりましょう。しかし、そういう措置をとっても、しかし、独占的な地位を確保できる、しかしそれを乱用するということがあり得るのです。たとえば、さっき四点あげましたね。外国において輸出能力がない場合もそうでしょう。それから日本における国内市場販売ルートもなかなか確保できない。しかし、確保しようと思えば、たとえばビールの場合に、「宝」が出ようとしたら、販売ルートを押えて、なかなか販売させないというじゃまをするという場合もあり得ると同じように、それと、もう一つは、ガラスのような場合には、こわれやすくてかさばるもの、重いもの、こういうものには運賃がかかって競争力が持てないのですね。ビールなんかもそうじゃないかと思う。これまたこわれやすく、重いものですから、値段が、容量、重さに比較して安いものですから、輸入するわけにいきません。こういうようなものは日本条件に合って、非常に社会的な独占という利益を与えられておるのですね。だから、これが関税の引き下げをしても、自由化しても、あるいは新規企業者の参入を奨励しようとしても、ビールにしてもガラスにしても、非常な装置産業ですから、膨大な装置がかかります。しかも、売り出そうとすると、優越した先発会社が安く売ってそれを押えていくというような形をとりますから、そういう措置をとってもなかなか競争が行なわれるということにはならないのです。だから、そういう、とてもだめな立場には本法が発動する。とてもだめで、しかも優越した地位を乱用して管理価格的と目されるものをやっておった場合には、これに規制を加えていくという考え方でございまして、自由化、新規企業者の参入、関税引き下げをやれば問題ないじゃないかということじゃない、こう思います。  それから、国際競争力わが国の産業で問題がある、国際競争力というものを、どういうふうに、どこを基準に考えておるか、この点は疑問だと思います。また、あらゆる産業が世界一流のいい条件のもとで、たとえばアメリカにおける自動車、西独における機械日本における繊維製品、こういうふうな一番いい条件のものと比較して、それで国際競争力があるかないかという議論は、どうも私は適当な議論じゃないと思う。そういう意味で、どこの国でも、すべての製品国際競争力を持てるとは限りません。アメリカでも、御承知のように繊維製品では日本や香港に負けておる。最近はイギリスでさえ負けておるのですから、そういう意味では、国際競争力が全製品にあるかどうかということの質問だとすれば、おかしいと思うのですが、しかし全般的にいって国際競争力は持っておる。しかし、あるいは部分的に弱いものもあるかもしれません。部分的に弱いものもあるかもしれませんが、まあこれは私らの予測ですが、自由化した場合に、外国の品物と日本価格との関係で、実は少しひどいかなと思ったのが、一、二あったけれども、まあまあ今日まであまり大きな被害がない。ある産業が全滅したというようなことはないですから、なるほど苦しいかもしれませんが、日本の産業は、今日においては、少なくともヨーロッパ諸国に比較して国際競争力はあり得る。日本の工業設備にいたしましても、アメリカから見れば低いけれども、ヨーロッパ諸国から見れば、そう悲観することはないのでありまして、そういう意味では、私は、国際競争力は大体においてある、こう思っております。
  52. 始関伊平

    始関委員 まあここは独禁法との関係において問題を出しておるわけですから、私が問題としておりますのも特振法の適用業種なのであります。  そこで、これは最後の締めくくりのようなところに入るわけでありますが、島田局長に伺いますが、特振法の対象となっておる業種について、国際競争力の点ではきわめて問題が多いんじゃないかと思うのであります。たとえば一番問題になると思われます自動車については、まだ自由化になっていない。それからさっき問題といたしました国内における販売網がいずれはできるのじゃないかと思いますが、そういういろいろな点を考えますと、かなり問題があるのじゃないかと思いますが、その点をきわめて簡単に御説明を願いたい。  なお、それに関連いたしまして、これらの候補業種というものは、国内においては大企業と言えるかもしれませんが、国際的に見ると中小企業の域を脱していないものが多いのじゃなかろうかと思いますが、経営規模、生産規模などの現状の国際比較を簡潔にひとつお話しを願いたい。
  53. 島田喜仁

    島田政府委員 先ほど来御説明を申し上げておりますように、いまのところ特振法適用業種が七業種ございますが、国際競争力の現状はどうかということを、簡略にというお話でございますが、どうも説明があまりうまくございませんので、七業種につきまして、私といたしましては簡単なつもりで御説明をさしていただきます。  まず合金鉄でございますが、まず価格関係が、輸入価格国内価格とがどうなっておるかということを簡単に申しますと、フェロマンガンで南ア連邦からの輸入品——これから申し上げます輸入価格というのはCIF、関税を加え、諸掛かりを加えた価格でございますが、南ア連邦に対しまして約二割前後高くなっております。それからフェロシリコン等につきましても、ノルウェーあるいは南ア連邦に対しましては一割もしくは二割五分程度高くなっております。と申しますのは、御承知のように、合金鉄と申しますのは、普通鋼もしくは特殊鋼に欠くことのできない原料でございますが、わが国における企業の数は三十九ございます。その中で大企業が二十六、あとの全体の約三分の一の十三が実は中小企業でございますが、もともと国内原鉱石にたよっておりましたが、御承知のように日本は貧鉱でございまして、インドあるいは南ア連邦、ソ連等の品位の高い原鉱石を大量に生産をする各国が合理的な生産体制をとりまして、いま日本市場目当てに攻勢に出ております。わが国合金鉄企業は、ただいま申し上げましたように三十九ございますが、過当競争をやっておりまして、過去の立地条件等から見ましても、国際的にはとうてい太刀打ちできないような状況になってまいりました。今後価格も関税も下がっていくという情勢に対処しましては、何とかこれをグループ化するなりあるいは専門生産体制をとるなり設備の共同化をはかっていかなければならぬ、こういうふうに判断をいたしております。  それから第二は、特殊鋼でございますが、これは御承知のように最近わが国経済成長のにない手であった機械原材料でございます。特殊鋼をつくっている企業は、実はわが国に全部で六十二ございます。大企業がやはり三分の二、中小企業が約三分の一であります。合金鉄と同様でございますが、特殊鋼につきましても実は過当競争の状況でございまして、封鎖経済のもとでは、それでも経済の成長をになっておりましたけれども、なかなか機械工業の発展に追いつかない状況でございます。これを価格的に国際価格と一応比較いたしますと、高速度鋼、合金鋼等につきましてみますと、やはり輸入価格に対して一割前後高くなっております。これも今後関税が下げられていく情勢下で、現在六十二企業が、はたしてこれに対処できるかどうか問題でございます。そこで特殊鋼のあり方につきましては、一例を申し上げますが、やはり製鉄工場等との提携によって、溶銑をそのまま利用することによって、マス・プロをし、コストを下げる、あるいは特殊鋼メーカーの間で設備を共同に利用いたしまして、そうして早急に国際的な規模、国際的な経済単位におけるような企業にしようという次第でございます。こういう状況を頭におきましたときには、現状はむしろ過当競争になっておりまして、やはり少品種多量生産にはなっておらないわけでございます。むしろ多品種少量生産というかっこうでございます。機械工業の発展に伴うわが国特殊鋼の品質の向上、技術の結集等も含めまして、早急に品質の向上と価格の低廉化をはかる必要がある、こういうふうに考えております。それから問題の乗用車でございますが、乗用車につきましても、まず経営規模を、先ほど委員長から話がございましたジェネラルモータースあるいはクライスラー、フォード等に比べますと、もうここで御説明を申し上げるまでもなく、およそ規模が違う、経営規模はもちろんのことでございますが、生産規模から見ましても同様でございます。ちょっと参考に代表的な車種で申し上げますと、ゼネラルモータースのビュイック月産二万一千台、シボレーは十二万五千台、クライスラーのダッジが二万一千台、フォルクスワーゲンが七万台、ワイアットが二万二千台でございますが、日本のビッグメーカーでございますトヨタトヨペットクラウンは四千七百台、日産のセドリックが三千台、ブルバードが一番大きいわけですが六千六百台というわけで、問題にならないのでございます。自動車は御承知のように、マス・プロによりまして合理化をはからなければコストは下がらぬという典型的な業種でございますが、そういう状況でございます。なお、価格の面で一体どの程度に判断をしたらいいかということでございますが、一応これは通産省にありました産業構造調査会の自動車政策小委員会調査研究をいたしました結果は、もしかりに今後自由化をいたしました場合に、外国の自動車の性能評価も、むずかしい問題でございますが、いろいろ検討をいたしました結果、やはり千ccから千五百cc前後のものが一番問題になるわけでございます。これは現在の価格を一〇〇といたしまして、今後自由化をされて完成車が輸入された場合には、これは機種によって違いますが、やはり大体二割程度外国の方が安くなる、あるいはものによりましては大体とんとんになるものもございます。つまり、大体二割から同じ程度の間に価格関係がなるという推定をいたしておるわけでございます。なお、ノックダウン方式で入ってまいりますと、さらにこれから一割程度下がると推定されます。したがいまして、何としても早急にこの自動車の性能を上げ、そうして価格を下げなければなりません。しかも御承知のように、世界でわが国のように人口が多くて成長が期待されておる市場は、外国資本こそまだわが国市場に入ってきておりませんけれども、外国から一番ねらわれておるわけでございます。  それから自動車タイヤについて申し上げます。乗用車用だけでございますが、やはり一割自動車タイヤが高くなっております。御承知のように自動車タイヤにつきましても、自動車の態勢と相まちまして、品種が千数百ございますが、これをやはり三分の一程度にしないと、とても少品種多量生産ができませんので、品種を整理統合することがまず必要であり、同時に設備拡充近代化をはかっていくことも必要です。また道路のよくなる問題、自動車の高速化等を考えますと、日本のタイヤは技術的にもまだ外国には劣っておりますので、こういう面のレベルアップもあわせまして競争力をつける必要があると考えております。それから石油化学でございますが、御承知のように、ただいま原料転換あるいは技術転換によりまして、企業石油化学工業にラッシュをいたしておりますが、技術の面あるいは設備等の面で、やはり国際的な単位に達していない現状にあります。そこで、達するように努力はいたしておりますが、年とともに国際単位が大きくなりまして、たとえばナフサ・センターの規模について申しますと、初め二、三万トンから始まったのが十万トン、二十万トンと大きくなっております。このまま自由に設備投資をやっておりますと、結局設備のロスが出てまいります。あるいは国際的な設備規模から見まして、どうしても劣るということになり、合成繊維の原料価格の引き下げ等に関連しましても、やはり問題があるということになるわけでございます。なお、電線ケーブルにつきまして一言申し上げますと、電線ケーブルは全部で三百八十社ございますが、その中で中小は三百五十二社、大部分が中小でございます。二十社が大企業でございますが、これも御承知のように、数だけを考えていただいても、たいへん企業規模が小さいということがおわかりになると思います。したがって今後需要の伸びる電線ケーブルについても、早急に国際競争力をつけなければなりません。  以上、電線ケーブルまで申し上げましたが、化学繊維につきましては業種内部の問題のほかに化学工業から供給を受ける原料にも国際競争力の点で問題がございます。ただここで化学繊維について、ほかの業種についても問題は同じでございますが、化学繊維自体を最終製品として売るわけではございません。やはり最終製品としては衣料品なり、あるいは産業用の製品として売るわけでございますが、その加工段階におきましては、いままでの労働集約的な優位性というものがだんだん失われてまいりますので、最終製品として国内に安く売る、あるいは輸出をするということになるためには、どうしても原料を安くしなければならぬというところに、やはり合成繊維あるいは化学繊維の重要なポイントが実はあると考えます。  なお、いま申し上げました電線を見ましても、特殊鋼を見ましても、あるいは合金鉄を見ましても、中小企業も含めて全産業の国際競争力をつけるということ、つまり大企業だけではございません、中小企業も含めて、これに国際競争力をつけるというところにこの特振法のねらいがございます。この点もひとつ御理解を願いたいと思います。
  54. 田中武夫

    田中(武)議員 質問者の意図は、社会党案審議に名をかりて政府提出の特振法をPRするという意味であったようでございまして、その目的は達せられたのではないかと思います。しかし先ほどの始関委員の御質問に対して私は反駁をいたしたい価格引き下げ命令までも含むことはどうかというようなことでございますが、先ほども申しましたように、いま商工委員会提出をせられております電気事業法の十九条第二項一号は、「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。」と明確にうたっております。したがって、行政庁において適正な価格を指示することはかまわないが、公取委員会では違うというようなことをおっしゃったように思いますが、許可認可にかかわるもの、こういう料金はすべて政府においてあるいは当該の担当行政庁において価格なるものをきめておるのであります。これは公共のためだとおっしゃるかもしれません。しかし私は始関君とは若干意見を異にいたしまして、先ほど来問題にいたしておりますような巨大企業は私はやはり社会性を強く持たなければならない、こういう上に立って、同じように考えている。また公正取引委員会では独禁法第二十条において、いわゆる値上げをした場合には原状回復、差しとめ命令が出せるのでございます。そこで、もう一歩前進せしめて、公取委員会において価格引き下げを命ぜしめるというようなことは不合理ではない、こう考えておるわけでございます。なお始関さんの、国際競争力とか開放経済とかいう問題とわが党案の関連でございますが、わが党案は、いま迎えておるところの開放経済に対して決して目をつぶっておるのではありません。だがしかし、わが党案が問題にいたしておるのは、そういった輸出輸入の関係ではありません。国内においていわゆる巨大産業、巨大企業がその独占あるいは寡占経済的優位性を乱用いたしまして、国内の消費者に対して、一般大衆に対して経済力を乱用するのを防止するという意味でありますので、若干観点が違うことを申し上げておきます。これであなたの意図は達せられたと思いますが、私のほうは、答弁者としては不満足でありますので、もっともっと引き続いてこういう機会を持ってわが党案に集中して質問してもらいたい、こう思っています。
  55. 始関伊平

    始関委員 先ほど独占禁止法と社会党案との関連をお尋ねしたような意味において、社会党案と特振法との関係をいま問題にしておるのでございまして、PRする意味ではない。最後の締めくくりの分になりますが、この点につきましては提案者とあわせて、通産大臣がお見えになっておりますから、政府側からも御答弁を願いたいのでありますが、要するに社会党考え方は、独占支配というのは非常にいかぬのだ、特振法はそういうものを助成するおそれがあるのじゃないか、こういうお気持ちですね。そこで候補業種のうちで——これからは私の見解でおそらく御賛成願えると思うのですが、今日タイヤというのは自動車製造業に対して下請的、あるいは従属的立場にある。これはタイヤ業者に聞いてみてもわかりますが、自動車製造業が、百十五万円を十万円値下げして百五万円にしようというときに、タイヤのほうは、おまえ幾ら値下げしろというようなことを無理やり押しつけられるようなことであって、自動車産業に対して、下請ではないかもしれませんが、下請ないしは従属的立場にある。それからフェロアロイ、これは小規模の乱立でございますが、製鉄業に対して同じく下請的な立場にある。これはタイヤよりももっとはっきりしておると思います。それから特殊鋼——特殊鋼全部がそうであるとは思いませんが、機械工業に対して同様の状況にあると思います。それから、いま島田局長からもお話がありましたように、自動車製造業は外国からの競争の脅威にさらされて、今日でもまだ自由化もできないような状態であります。い話がありましたが、企業規模の国際的比較とか、いろいろな点、諸般の点から考えてみると、これらはあなたのほうでおっしゃる市場支配的事業者とはおよそ縁の遠い存在であろうと思いますが、その点について提案者と通産大臣の御意見を承りたい。
  56. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  その前に私は一般的に社会党のお出しになっている法案と特振法との概括的な関係を見てみたいと思うのです。  社会党の言っていられるのは、独占的な、あるいは寡占的なもので、いわゆる国内の消費者に悪影響を与えるようなものについては、これを何とか考えなきゃいけないということでありますから、何も特定産業振興法とは直接関係のないことを規定されようという意図を持っておられるのだと思います。したがって、これを特定産業と直接お結びつけになるということは意味がないので、特定産業のうちにも確かに社会党の言われるようなものもあるかもしれません。あまりないとは思うが、あるかもしれない。しかし事実社会党の言っておられるのは、むしろ特定産業ではなくて、特定産業も含まるかもしれませんが、ほかのものも含めて別の問題を取り上げておられるのでありますから、これをあまり因果関係を持たせて議論をしていくということは、私はあまり意味がないことではないか、こういうふうな感触を持っております。ただしかし、特定産業振興法を出したのに関連をして社会党がお出しになったのですから、それはやっぱり関係があるんだ、非常に関係が多いんだというふうに社会党提案者の方はお考えになっておるかと思いますが、私は特定産業でいま指定をしようとしておる業種では、始関委員からお話があったように、それほど独占的な価格形成をして影響を与えるようなものではないのではないかと考えておるわけであります。したがって、私は、社会党のお方もこの点をよくおわかりを願って、いわゆる特定産業のような弱いものは一方においてこれを育成するという考え方を持つ。また一般的に日本経済において弊害があるようなことについては、別に方途を講じて一般的にこれを是正していくように考えていく。こういうことでむしろ御提案があったものであると私は理解をいたしておるのであります。こういう意味から言えば、私は考え方としては社会党の言っておられることは決して間違いではないと考えております。
  57. 板川正吾

    板川議員 大臣が、特振法と社会党提案の法律案は特別結びつける必要はないじゃないかとおっしゃったのですが、それはいろいろ考え方であり、見方であります。われわれのほうとしては、特振法は当初御承知のように独占禁止法にバイパスをつけて穴あけをするんだという考え方で立案されたと承知しておるのであります。特振法の内容は、御承知のように企業集中化、カルテルを強化しょうというのが主たる内容であります。だから、これは独禁法を骨抜きにする、あるいは緩和する、そういう方向をさしておることは明らかであります。われわれのほうは、現在の独禁法体制の中でも企業集中というのが行なわれ、カルテルが一般化しておるじゃないか。だからこの機会に、その中で特にひどい管理価格を維持する寡占体制に対して独禁法を強化して規制を加えるべきじゃないか、こういう考え方に立っておるのであります。独禁法を緩和する特振法と、独禁法を強化する経済力乱用防止法は、そういう意味で対比はでき得ると思うのであります。それから第二点の、始関委員が言わんとするところは、そういう意味ならば特振法で予想しておる指定業種業種は下請関係的なものが大部分であって、独占的な、あるいは寡占体制じゃない。したがって管理価格というものはこの中では生じないのじゃないか、こういう第二点の質問であったと思います。質問の趣旨はそこにあったと思うのですが、この法律は、制定されれば独自に動きますから、たとえば、そういう電線とか特殊鋼とか、そういうものが百億円以上の会社があるかどうか知りませんが、おそらくあまりないと思いますが、あったとしても、それが市場支配的な体制を持ち、管理価格的な状態がなければこの法律は動かない。そういう意味では、特振法で指定業種が全部市場支配乱用防止法にひっかかることはあり得ません。その点は誤解ないように願いたい。
  58. 田中武夫

    田中(武)議員 板川議員の御答弁で大体御了解願ったと思いますが、補足して申し上げますと、いまもそれぞれ御発言になったように、私たちも、政府案の特定産業振興法の指定業種即ちわが党の第二条の市場支配的の業種であるとは考えておりません。その中に、いわゆるわが党案の二条に当てはまるものもあるだろうし、ないのもあるだろうと思います。その点はおっしゃるとおりであります。しかし、かりにこの政府案がこのまま成立したといたしまして、その結果があるいはわが党案の第二条でいうような支配的なものになるかもわからない。そういう点においては、この法律がかりに成立した場合においては関係を持ってきます。  それから、わが党が政府の特振法案に対して対案として出したという点、先ほど板川議員も申しましたが、この特振法の大きなねらいは独禁法の緩和である。こういう点に対しまして、われわれは何度も申し上げておりますように、独禁法を骨抜きにしていこうとする政府の意図に対して、なお弱小の中小企業なり、あるいは一般消費者を守っていくという立場に対してまさに対案である、こう考えておりますが、おっしゃるように業種業種が刺し合うとかそういうことはありません。したがって、この法律政府の特振法とは、やはり先ほど申し上げましたような点においては関係を持ちますので、これは十分にお互いに検討してもいいんじゃないか、こう考えております。これは小川さんの提案にもありましたが、学者等も入れて十分検討してもいいんじゃないか、こう私は考えております。
  59. 始関伊平

    始関委員 たいへん前向きの姿勢の御答弁をいただいて、ありがとうございました。おそくなって恐縮ですから、これ一言でやめますが、大事な点でございますので、ちょっとがまんしていただきます。  その前に、先ほど法律案の内容につきましてお尋ねをしておるときに申し上げるべきでございましたが、ちょっと申し忘れましたので、こういう問題点があるということだけを指摘しておきますが、第三条の二号ないし四号、ないしは五号、これは公正な競争を阻害するおそれがないということでありますから、こういう独自の一つの領域、分野があるということは私ども了承いたしますが、しかし、ここに掲げられております行為自体は、それ自体として競争阻害的な要素を持っているから、大体において独禁法のほうでいけるので、ここにこれを規定いたしましても、その実益というものは比較的乏しいんじゃないかという問題点として、御答弁は、おそうございますからよろしゅうございますが、ひとつ申し上げておきます。  それから肝心な点ですが、私どもは要するに海外からの強力な競争に脅かされている場合、これは自動車のような場合ですね。次にユーザー産業が強力である場合、これは合金鉄電線など、ユーザーが九電力、電源開発、それから電々公社というようなことで、この範疇に入れていいと思いますが、いま申し上げましたような二つの場合においては、私は市場支配的事業者というのはなかなか成立しない、特に成立しにくいんじゃないか、こういうふうに考えておるのであります。ただいま独禁法に穴をあけるんだというようなお話でございましたが、しかし合併というようなことが独禁法の振興基準として初めのころは少し強調され過ぎた、現在では合併というようなことではなしに、やはり規格の統一とか生産の専門化をやれば、一つの品種については合併しなくたって大量生産になるわけですから、そういう実際的なことをねらっているんで、合併というようなことはそれほどねらっていないんじゃないかと思いますが、その点についての通産大臣の所見、それから、かりに合併ということが考えられるにしても、これは特振法の適用としての合併ということはめったにないと思いますが、そうであるといたしましても、独禁法が、いま申し上げましたように候補業種が海外からの強力競争にさらされておるということと、ないしはユーザー産業が強力であるということがございますから、かりにたとえばフェロアロイについて合併がなったということがあっても、それが市場支配になるという心配は、私は絶対にないと思います。  それから、なおついででありますから、特振法の第十二条にいう合併判断の基準とはどんなことを考えておるのか。これはおそらくいま申したようなことであろうと思いますが、この点もあわせて御説明を願っておきます。  また、カルテルでございますが、独禁法や特振法にいうカルテルはいわゆる合理化カルテルでございまして、別に価格カルテルでも何でもないんです。そういうことは認めておらぬわけですから、そういう独禁法に穴をあけるんだ、そして独占支配的になるという心配をなさるのはいささか的はずれではないかと思いますが、その点につきましては、御迷惑ですが渡邊公取委員長から一応お考えを伺いたい。
  60. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いろいろの御質問でございますので、十分お答えいたす時間もありませんし、それから、あるいは抜ける場合もあるかと思いますが、法律が作成せられる過程におきまして、独禁法に穴をあけるというようなことばが出たり、またそういうようなことがあったことは事実でございますが、しかし、実際に今度は提案された法律になるまでには、最初考えておったのとはずいぶん形が変わっておったことも事実だと思うのであります。そこで私はお願いをいたしたいのですが、政治家というものは発言をしたらそれには責任を持つべきではありますが、しかし、人間のことだから、たまには間違いもあるだろうと思うのであります。そういう間違いがある場合に、それを最後まで、形が変わっていってもそうなんだというふうにしてきめつけていくということは国民に誤解を与えるだけであって、政治としては一つもプラスにならない。やはりお互いが認識を改めて、よくわかったならばそれをさらっと流すという雅量があってもよかろうと私は考えているわけでありますが、こうして考えてみまして、今日出ておりまする特定産業振興法というものを見てみますと、私はそこに、いわゆる独禁法に穴をあけるというようなことは、あっても百分の一くらいになってしまったんじゃないか、ほとんどなくなっている、そういう感触はなくなっているのじゃないか、われわれは提案者でございますから、こう申し上げるのは恐縮かもしれませんが、そういう感じでおるわけでございます。でございまして、ただいま始関委員から、海外から競争があったり、あるいはほかの産業との関係においてそう強い産業ではないのだというお話がございましたが、いわゆる特定産業として考えているものはそれほど市場支配的なものになるかどうかということはかなり問題だと私は思います。それから、市場支配的なものがあって、それが弊害を出すということであれば、これに対しては政治としては当然何らかの措置をとるべきだと私は思うのであります。これは法律でやる場合もあるでしょうし、行政措置でやる場合もあるだろうと私は考えております。こういう意味では、実際はもう少し通産省あたりがしつかりそういう面のことをやっていく必要があるのじゃないかということは私たちもよくわかるのでございまして、そういう場合にわれわれが報告を求めようとしたときに、会社のほうで、そんなものは出しません、そういう報告もやりません、こういうことになれば法律というものも必要になってくるでありましょうが、始関さんが言われたように、行政措置でやれるものならばなるべく法律なんてものはよけいつくらぬほうがいいのではないかと思っているわけであります。これは決して、社会党さんがお出しになった法案が無意味であるとか、あるいは必要がない、全然考える必要はないという意味で申しているのではないのでありまして、法三章と申しましょうか、あまり法律法律で縛らぬでも、行政的に効果があがるならば、また効果があがるように野党がよく監視をされるならば、それで一つ法律効果というものはあがっているのじゃないか、今日こういうような案をお出しになった御趣旨というものは、私は、先ほど来申し上げているように、考えてみる必要があるのじゃないかということを申し上げているわけでありますから、私の気持ちもわかっていただいて、そうして法律でございますから内容等も十分吟味をし、しかるべきときにまた考えていくというようなことも一つ考え方ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。いろいろ御質問がありましたが、これで答弁になっているかどうかわかりませんが……。
  61. 田中武夫

    田中(武)議員 大体始関さんの質問は二点だったと思います。そこでまず最初の、わが党案の第三条、これはあまり意味がないのではないか、こういうことですが、そうではありませんしこれは何回もいままで申し上げましたように、独禁法一つ条件をかぶっているわけです。これは条件をかぶっていない。さらにもう一つは、先ほど申しましたように、独禁法の取引ということは、買う場合も売る場合も想定している。われわれの場合は売るときだけ価格形成を問題にしているわけです。それから特に第三条の二号は、これは独禁法にはない、すなわち抱き合わせ販売を実施するわけです。そういうような観点でものをおっしゃるならば、政府案の第九条、すなわち特振法の共同行為も一から六までありますが、これとて厳格に言うならば一、二を除いては独禁法でやれることです。だから、そういう点においては別に始関さんの疑問のような点はないと思います。すなわち、このわれわれの三条で考えているのは独禁法より範囲が広いんだ、こういうことです。そこでこれを問題にしておられたようですが、質問せられなかったけれどもお答えをしておきます。不公正な取引とみなすということばが間違いじゃないか、こういうようなことを考えておられるようでございますが、先ほど申し上げましたように、それは独禁法の範疇と違う、もっと広い、そこでみなすということばを使っておるのです。法律上のみなすということがどういう意味かということは、いまさら申し上げなくともいいと思いますが、わからなければ法学通論でも読んでいただけばいいのじゃないか、こう思うわけです。それから第二の点でございますが、私たちは何もこの政府案、特振法の成立過程において——成立というか提出過程において、大臣が言われたことばをとらえて言っておるのじゃありません。先ほど来大臣からもそれぞれの立場からの御発言がございました。しかし私はこの政府案は二つに分けて、その一つはやはりトラストである、合併を独禁法のワク外において認めようということ、もう一つは共同行為独禁法のワク外において認めようというねらいは、トラストとカルテルであります。この双方において独禁法の除外の規定があるわけであります。したがって大臣が何とおっしゃったとかということでなくて、この法律自体がやはり独禁法の緩和であることは言を待ちません。そういう意味において、その代案としてのわが党案を提出いたしておるのでありますので、ひとつこの点も御了解願いたい。  それから、先ほど大臣が言われたこともわからぬではないので、ひとつ大臣とも、あるいは皆さんともよく話し合ってもいいのじゃないか、こうも考えておりますが、われわれの言っておることは、大臣のことばじりをとらえて言っておるじゃない、そういうことだけははっきりしておきます。
  62. 板川正吾

    板川議員 始関委員が盛んに御奮闘されて、特振法を何とか宣伝しようという——きょうは特振法じゃなくて、市場支配的な事業者の乱用防止法についてですが、ただどうも一言御説明しておかないと肯定したような形になりますから、一言言っておきます。  先ほどちょっと説明の中にも、自動車の場合には自由化の危機にさらされておって、しかも企業局長の御説明によると、大体世界の一流の会社の値段から見るとまだ二割程度高い、こういうようなことだから危機だ、したがって特振法によってこれを救うほかはないというような意味をおっしゃっておる。私は特振法で救えるとは思いませんが、まずそれよりも、いまの自動車を私はそう危機とは見ていません。それはなるほど値段の開きがあることは事実であります。しかし最近は、それほど変わらなくなってきたことも一つであります。自動車の場合には、やはりサービス網が充実していなければ、これは外車がきたって、故障した場合に一々東京や大阪のところへ持っていかなければだめなんです。地方でも何でもサービス網が全部確立しなければ、そう売れ行きがふえるはずがない。だからそれほど外車の進出というものはない。それよりもわれわれが問題にしたいのは、いま自動車会社が高率配当をして、非常にもうけております。このもうけておる会社をなぜ特振法で救う必要がありますか、こう思うわけです。最近は高率配当のほかに、本来なら値段を下げるべきだけれども、そのうち自由化されると競争力をつけなくちゃならないから、社内留保をうんとしておく時期だといって、盛んに償却をふやしたり、社内留保をやっておるのじゃないですか。で、これをなぜ危機というのか。そうすると、今度は一、二の小さい競争力のないと思われるものを保護しなくちゃいけないと大臣もおっしゃるのですが、そこを保護して、そこを一つの基準にして政策を立てれば、日産、トヨタの大資本というものは全くぼろもうけになる、これがカルテルの悪さなんです。低いところへやっていくような形になる。うんと能率のいい会社がもうける、しかしそれでは競争力がつかない。だから私は特振法がそう競争力をつける効果を持つとは思いません。まあ自動車が非常な危機であって、これが特振法で救われるのだということの御意見のようでございますが、私その意見には同調できないと思います。
  63. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 合併の問題でございますが、特振法で規定しておりますのは、合併の基準を公表しろという意味でございまして、したがいまして、合併の場合においての制限の要件は、これは独禁法がそのまま働くわけでございます。それにこの独禁法の十五条が特振法でもってかわるという問題はございません。それから特振法で認めようとしておるカルテル、これは私はやはり合理化カルテルの一連だと思っております。そして相当やはり厳格な消極的な要件といいますか、カルテルを認めてはいけないという要件が出ておりますから、運用の適正を期すれば、そこに大きな弊害はなしに済まし得るのじゃないか、かように考えております。
  64. 二階堂進

    ○二階堂委員長 次会は、明五月八日金曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十七分散会