○小川(平)
委員 ところでいまの不当表示
防止法でございますが、これはまさしく
独禁法との関係においては
独禁法を補完する
法律であるに違いない。また母法ということばも答弁のうちに出てまいりますが、まさしく
独禁法はこの
法律に対して母法という関係に立っておるに違いないと存じます。それはこの公取の解説をなさった本を読んでみましても、非常に明快であるような印象を受けます。公取の御本には、この
法律は不当誘引
行為を第一に公正な
競争の確保という面からとらえている。このことは
独占禁止法が不公正な取引方法の規制を公正な
競争の確保としてとらえているのと同じである。したがってこの
法律によって消費者の利益が保護されるとしても、それは間接的である、こういうことが論理的に言えるという御趣旨のことが書いてある。これは幾らか古い本ですが、
委員長にお確かめをする必要もないかと思う。これはきわめて明快な自明のことであるような感じが私はしておるわけです。そういう
意味で、これが
独禁法の補完である。補完するということはどういうことであるか。常識的に、これは
法律そのものの目的、
独禁法自体の目的に照らして、本来なら当然規制をしなければならない、規制したい
行為等も、
法律が不備であるために、足りないために規制することができない。あるいは少なくとも敏速かつ効果的な規制をすることができない。そこでこれを補なうというのが、これが補完するということであろう、私はこういうふうに考えるわけでございます。こういう
意味で、この不当表示
防止法はまさしく補完法でありますけれ
ども、いま御提案になっておる
法案が同じ
意味で
独禁法を補完する
法案であるのであろうか、そういうばく然たる疑問が浮かんでまいります。
第三条に列挙なさっている各号、いろいろここに列挙されておられまするけれ
ども、これらの
行為は非難に値する
行為であるかもしれない。しかし公正な
競争が阻害されるという要件がない限りは、ほかの観点からいかほど不届きな
行為であり、非難に値する
行為であろうとも、これは
独禁法で規制し得る対象にはならない。ならないのみならず、こういう
行為は本来
独禁法あるいは
公取委員会の関知せざる、あずかり知らざる
行為ではなかろうかという感じが私はするわけでございます。そういう
意味で、この御答弁には、これは
独禁法を補完する
法律案であって、その性格は不当表示
防止法と同じだとお書きになっておるので、私はちょっとその点が幾らかわからなくなってきておるのでございます。
もう十二時間近でございまして、時間があまりございませんので、さらに続けて申し上げさせていただきますと、第三条の第一号に、「不当な対価をもって取引すること。」と書いてある。これは
独禁法の二条七項二号と文言は全く同一でございます。けれ
ども独禁法において不当というのはどういうことであるのか、これはにわか勉強いたしまして、ある本を読んでみると、その本には、こういうふうに書いてある。二条七項二号に、いわゆる不当な対価というのは、買い占め及びダンピング、ただいまも
田中さんの御答弁に出てきておりますが、要するに、それによって公正な
競争を阻害するような
行為を引き起こすような、そういう対価を不当といっておるのだ。こういうふうに書いてある。「不当という表現は本来抽象的なものにとどまっているから、そのままでは具体的な
意味もいろいろなふうに解釈される余地があるといってよろしい。ここに公正な
競争を、
独禁法において公正な
競争を阻害するという要件を特に掲げている
意味があるのであって、このことによって不当ということばの
意味が
法律の目的に即して、すなわち
独禁法の目的そのものに即して限定されているのだ、」こういうふうに書いてあるわけです。私はこれを一読しますと事理はなはだ明白であるような感じを受けるわけでございます。要するに
独禁法における不当という概念は、公正な
競争が阻害されるということと切り離しては考えることができないのであろう。ところがこれはその公正な
競争が阻害される要件を欠いておるわけですから、ここに言われる不当ということばについては、何か別の概念規定がなされなくてはならないのではなかろうか、この点については
田中さんに伺ってもみたいとも思いまするが、いずれにいたしましても、これは
独禁法とは縁のない、無縁な概念ではなかろうか、そういう感じがするわけでございます。それで、この不当ということばでありますけれ
ども、常識的には、コストに適正な利潤を加えたものが不当ならざる正当な
価格ということになるわけでありましょう。しかし、そういう
意味で正当な
価格でなくても公正な
競争が阻害されていない限り、これは
独禁法のあずかり知るところではないのではなかろうか、このように考えるわけでございます。
そこで、これを一読いたしまして、この
法律案が
独禁法の目的とは別の、何か異なる観点、たとえば暴利取り締まり的な観点あるいは力の強いものが力の弱いものを支配するという
行為を、それ自体違法な
行為としてつかまえようとする、そういう観点から出てきておるものじゃなかろうか。だから
独禁法がこの
法案に対して母法の関係に立つわけでもないし、この
法案が
独禁法を補完するという関係に立つわけでもない。
独禁法はあくまで公正な
競争の促進ということに焦点を合わせてできている、そういう
独禁法の
体制とは調和することのできないものじゃないだろうか。そこで何か全く異なるもの、異質のものが、ここで結合されようとしているような印象を私は受けるわけでございます。これははなはだばく然たる、きわめて素朴な疑問だと思うのですが、そういう点について若干御教示を願いたいと思うわけでありまして、
板川さんの御提案の
理由を見ますると、「御
承知のように、
政府・自民党は、過般の総選挙にあたり、わが
社会党の
物価問題についての公開
質問状に対し「
管理価格の疑いあるものにはすみやかに検討を加え、もし不当な
価格維持が行なわれていれば、これに対して必要な措置を講ずることは当然である」と回答し、
管理価格の排除を国民に公約いたしたのであります。したがって、本法の制定は、この
政府・自民党が国民への公約を果たすことでもあると存じますので、」とお書きになっておるわけです。私は、この自民党が公約した文章の
あと先を読んでおりませんからわかりませんけれ
ども、ここであらわれている限りでは、こういう強いものが弱いものを圧迫するという縦の関係をそれ自体違法なものとしてつかまえよう、いま
お話に出た西独の
競争制限法ですか、そういう趣旨の
法律案を
提出しようというような大胆なお約束を自民党がやっておるわけじゃなかろう。ここに書いてあることは、
独禁法の運用を真剣にやっていこうということにすぎないのだろうと存じます。だから公約違反云々と言われるのは幾らか酷であろうかと思うわけですが、それはさておき、いわゆる
管理価格なるものが相当広範に存在しており、それによって消費者は非常な害悪をこうむっておるという事実があるならば、これを何かの方法で規制するために前向きの姿で検討するということは、確かに
意味のあることだと私
どもも存じております。しかしそういうことをやるには、これは現行
独禁法との関連で考えていきます場合に、時間をかけてきめのこまかい精緻な理論構成、首肯せしめるに足る理論構成をしなければならない問題じゃなかろうか。あるいはそういう理論をすでに構成なさっておるのかもしれませんが、提案の
理由や
質疑応答の記録を一読した限りでは、この辺がはっきりいたしませんので、ただいま申し上げたような疑問を提起するわけでございます。ひとつ御教示を賜わりたいと思います。