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山本(重)
政府委員 ただいま
お話しの国連
貿易開発
会議は、
日本にとりましてたいへん重要な意味を持っておる
会議でございまして、今回宮澤企画庁長官を長として
日本の代表団が向こうに行かれるのにつきまして、
日本がどういう
態度で臨むかということにつきましては、実は
関係各省で何回も
会議をいたしました。そしてその結果、
一つの
日本政府の
態度というものをきめまして行っていただいておるわけでございますが、何にいたしましても、今回の
会議は非常に
政治的な色彩の濃い
会議でございます。また各国がどういうふうに出るかが、なかなか想像できない点もございますので、代表団に対する訓令も、実は従来の普通の国際
会議と違いまして、比較的抽象的、一般的になっておりまして、情勢の進展に応じて場合によれば現地で相当大幅な権限を持って動くようにしたほうがいいだろう、そういうような
内容のものになっております。
今回の
会議にあたりましてプレビッシュ事務
局長が出しました報告は、先生のいまの
お話のように、おもな点は五つあるかと思います。
その第一は機構の問題でございまして、プレビッシュ・レポートによりますと、従来のガットの機構では不十分である、新しい機構をつくるべきであるという提案をいたしておるのは御存じのとおりでございます。なお暫定的な措置として、国連
貿易開発
会議そのものを常設的なものにしてしばらくやって、そしてある時期は恒常的な国際
貿易機構をつくるということがその要点であろうかと思います。この点につきましては、各国の動きも十分に見なければなりませんけれども、
日本の
態度としては、従来からこうした問題はガットを
中心にしてやってまいっておりますので、現存の機構を十分に活用する方法をまず考えるべきであるという考え方でおります。
それから第二の点は一次産品の買い付け促進の問題でございまして、この点につきましても、プレビッシュ報告は相当画期的な、大胆な提案をしております。
日本といたしますと、この点につきましては、特に東南アジア、アフリカ、中近東等の各国とも
貿易の面でも非常に深い
関係がございます。また場合によりますと、
日本の
輸出だけが非常に
伸びて、向こうからあまりものを買いませんために、方々で片
貿易になって問題が起きておりますが、一次産品の買い付けには従来も努力してまいっておりますので、
日本で考えまして適当かつ可能な範囲では、この線は
日本としてもできるだけ協力していく必要があるのではないかと考えております。ただ品物によりまして、また
国内の農業その他への影響等も十分に考慮しなければならないのは当然でございます。
それから第三の問題は特恵制度の問題でございます。今後後進国が工業化を進めてまいります
段階で、その製品、半製品を先進国が何とかして買いやすいようにする。そのためには、先進国が関税制度の面におきまして、低開発国からの
輸入品に対してだけ特恵的に安い関税あるいは無税の制度をとる、同じ品物についてそういった差別をして低開発国からの
輸入を促進しようという提案でございます。この点は
日本としては非常に重要な点でございまして、たとえば例をとりますと、アメリカがかりにもしこの制度を実現いたします場合に、アメリカがインドから繊維製品を買う場合は無税であって、
日本から繊維製品を買う場合には一〇なり一五%税がかかることになる。そうなりますと、特に
日本の産業の中では
中心的な性質のものでございますので、一番あおりを食うわけでございます。これはほんとうの仮説に基づいた
計算でございますが、低開発国がこれからつくるであろうと思われます製品、半製品について全面的にこの制度が適用された場合に、
日本の産業にどういう影響があるかということを
計算いたしてみました。それによりますと、繊維品とか雑貨類で今後低開発国が工業化に乗り出そうとしておると思われますものの
日本の
輸出額が約十三億ドルございます。かりに特恵制度ができまして低開発国のほうが有利な扱いを受けるということになりますと、いろんな意味で
日本の
輸出が影響を受けると思います。かりに一割影響があるといたしますと一億三千万ドル
日本の
輸出が減る。それを各産業別に一応ざっと
計算してみますと、雇用にいたしまして約二十五万人くらいの雇用に響いてくる、こういう
計算も成り立ったわけでございます。したがいまして、
日本としてはこの特恵制度が今度のプレビッシュ提案の中では一番注意をしなければならない点かと思っております。
それから第四の点は補償融資の制度でございまして、低開発国が
輸出します産品は値段が非常に不安定である、それが予想以上に下がりましたような場合に、先進国のほうがそれだけ高く買ってやる、こういう制度でございます。これは財政の負担を直ちに招来するものでございまして、
日本としては十分にこれは慎重に考えなければならない、むしろこういう制度は低開発国のためにもあまりイージーゴーイング過ぎるのではないかという考え方をしております。
それから五番目に地域統合の問題を取り上げております。低開発国が低開発国同士でまとまりまして、お互いにその地域の中で国際分業を発展させ、そうして工業化を促進させるという構想でございまして、
日本の立場から見ますと、基本的
方向としては決して悪いことではないと思います。ただこれがうっかりいたしますと、たとえばフランスの旧植民地が固まりまして昔からのいわゆる特恵制度をまた復活するというようなことになってきますと、これは非常に封鎖
経済的な弊害を持ってまいりますので、その点は
日本としてはむしろ反対をすべき点ではないか。
非常に広範な報告についてのコメントでございますので、はなはだ簡単でございますけれども、いま私たちのほうで考えておりますのは、そんなような感じでございます。
この
会議の
見通しでございますが、これは先ほど申し上げましたガットの
会議の
見通しよりももっと
見通しがむずかしゅうございまして、たまたま最近
外国政府から
日本に来られる
経済局担当の人たちに
見通しをこちらから聞いてみますと、いずれもみんな、これはいつになって結論が出るかとてもわからぬというような見方をしておるようでございまして、その
見通しがはっきりしない点はおそらくどの国も同じではないかと思っております。