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1964-03-31 第46回国会 衆議院 商工委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月三十一日(火曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長  二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 中川 俊思君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君    理事 中村 重光君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       岡崎 英城君    海部 俊樹君       神田  博君    田中 正巳君       田中 六助君    中村 幸八君       長谷川四郎君    南  好雄君       大村 邦夫君    加賀田 進君       沢田 政治君    楯 兼次郎君       藤田 高敏君    麻生 良方君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       竹下  登君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         工業技術院長  馬場 有政君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村井 七郎君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 三月三十日  日本電気計器検定所法案内閣提出第一四九  号) 同月二十八日  姫路皮革工業協同組合施設近代化に関する請  願(田中武夫紹介)(第一六一七号)  物価安定等に関する請願淡谷悠藏紹介)(  第一六六四号)  同(安宅常彦紹介)(第一六六五号)  同(川俣清音紹介)(第一六六六号)  同(佐々木更三君紹介)(第一六六七号)  同(島口重次郎紹介)(第一六六八号)  同外一件(千葉七郎紹介)(第一六六九号)  同(西宮弘紹介)(第一六七〇号)  同(山中吾郎紹介)(第一六七一号)  同(米内山義一郎紹介)(第一六七二号)  同(日野吉夫紹介)(第一七三二号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一七三三号)  同外三十九件(千葉七郎紹介)(第一七五五  号)  同外一件(栗林三郎紹介)(第一七八一号)  同(華山親義紹介)(第一八二四号)  同外四件(山中吾郎紹介)(第一八二五号)  同(川俣清音紹介)(第一八四三号)  電気工事業登録制度法制化に関する請願(海  部俊樹紹介)(第一六七三号)  奄美群島電気事業に関する請願伊東隆治君  紹介)(第一七六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本電気計器検定所法案内閣提出第一四九  号)  日本貿易振興会法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九一号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  昨三十日に付託になりました内閣提出日本電気計器検定所法案議題とし、まず通商産業大臣より趣旨の説明を聴取することにいたします。福田通商産業大臣。     —————————————
  3. 福田一

    福田(一)国務大臣 日本電気計器検定所法案につきまして、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  電気の公正な取引を確保するため、家庭用電気メーターをはじめとする取引用電気計器につきましては、電気測定法に基づきまして一品ごと検定を受けなければならないこととなっております。現在、通商産業省工業技術院電気試験所がこの検定を行なっているわけでありますが、検定のための一品ごと試験の実施は、特定のものに委託できることとなっており、現在、東京都及び社団法人日本電気協会がこの委託を受けまして、電気試験所とともに、検定のための試験を実施しているわけであります。  このように試験が三機関において実施されておりますために、設備の重複その他の弊害も生じてまいっておりますし、年々増大の一途をたどり、かつ、その内容につきましても精密化多様化傾向を見せております電気計器検定の一そうの充実をはかりますためには、これらの機関を統合して、電気計器検定のための一元的機関を設置することが必要であるとの判断に至ったものであります。また、科学技術会議の答申その他におきましても、このような定型的、大量、かつ機動性を要する業務は、国の試験所から分離して、特殊法人等に移すことが望ましいとの方向が示唆されております。  以上のような観点に立ちまして、電気試験所及び社団法人日本電気協会検定部門を合体し、その資産職員等を承継いたしまして、公正中立かつ能率的な運営が行なわれる特殊法人として日本電気計器検定所を設立し、電気計器検定の一元化をはかり、もって電気計器検定の効率的かつ近代的な体制を確立いたしたいと存じ、本法案を提出する次第であります。  次に、この法案概要を御説明いたします。  第一に、日本電気計器検定所資本金は、政府及び社団法人日本電気協会からの出資の合計額とし、いずれも現に検定等の用に供している資産を現物出資することとなっております。  第二に、検定所の行なう業務でありますが、その中心となりますものは、電気測定法に基づく電気計器検定であります。このほか、検定と密接な関連を有する依頼試験調査研究等を行なうことといたしております。  第三に、検定所は、通商産業大臣監督を受けることとなりますが、この監督につきましては、役員の任命その他の人事面からする監督業務方法書監督命令等による業務に対する監督、予算、決算その他の財務会計上の監督等に関する規定を設けており、検定所の公正かつ堅実な運営をはかり得るものと確信しております。  以上のほか、設立手続関係法規改正等所要規定を設けております。  以上、この法律案提案理由及びその概要を御説明いたしました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願いする次第であります。
  4. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  5. 二階堂進

    二階堂委員長 内閣提出日本貿易振興会法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  本案審査のため参考人より意見を聴取することとし、出席を求める日時、人選、手続に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、質疑の通告がありますので、これを許可いたします。久保田豊君。
  8. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ジェトロについての直接の御質問もありますけれども、主としてその前提としての貿易の問題について私はお伺いをいたしたいと思います。  御承知のとおり、現在日本経済で一番問題になっておる大きな問題点は、何といっても国際収支の問題、この国際収支の一番要点になるものがいわゆる貿易外経常収支大幅赤字ということにあることは、これは大臣も御承知のとおりであります。しかし、やはりこれを立て直していく一番根幹になるのは何かということになれば、貿易収支をどういうふうにしていくかということがやはり私は基本だと思うのであります。そこで当面の開放経済体制の中におきます貿易の問題について、輸出輸入その他の問題について、問題点をあげて御質問申し上げますから、大臣得意の、あっちでもよし、こっちでもよし、その場その場でうまくやっていきますよという御答弁では困りますので、ひとつはっきり御答弁をいただきたい、こう思います。  そこで、第一にお伺いをいたしますが、政府の三十九年度の経済見通しによりますと、大体三十九年度の輸入を六十二億ドルに押える、こういうわけです。ところで、これがはたして六十二億ドルに詰められるかということが第一の問題であります。御承知のとおり三十八年度は、政府見通しを大幅に上回りまして、輸入総額は大体五十九億ドル、その中で、通産省の試算によりますと三十八年度限りの臨時の、つまり輸入増分というものが、たとえば小麦であるとか砂糖であるとか、あるいは消費物資、こういう問題で大体四億から五億ドルくらいあるという見積もりのようであります。それを引きましても、三十八年度は大体五十五億ドル見当のあれになるわけです。要するに水準がそこまで上がっているわけです。この水準から出発して、三十九年度を六十二億ドルという点に押えていくということになりますと、いろいろ政府は施策を講じておりますけれども、その前提としては、今年度の鉱工業伸び率政府予定しております九%から五%程度まで落とさなければ、この六十二億ドルのワクの中にはおさまらない、こういうふうに、私なりの詳しい計算もありますけれども、大臣に御質問ですから、結論だけを申し上げる。ところが、実際にいまの国内鉱工業生産状態を見ますと、御承知のとおり特に石油部門であるとか、自動車部門であるとか、その他いろいろの日の当たる産業面ではまだ需要が相当盛んであります。決して国内需要は落ちておりません。しかも企業自体は非常に損益の分岐点が高くなっておりますから、操業を落とすわけにいかない。そうすれば利益が落ちてくる。しかも輸入原材料在庫率は昨年の暮れでもって七七・二、こういうように非常な低い水準です、もっとも一月、二月で相当の積み増しにはなっておりましょうけれども。これらの状況からみると、私は輸入総額をこの開放体制下におきまして五十五億ドルのレベルから六十二億ドルのレベルに押えるということは、よほど政府が思い切った政策をやらない限り困難じゃないかと思う。この点についての政府側見通しなりなんなりはどうなんですか、この点を第一にお伺いいたしたいと思います。
  9. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは久保田委員も御案内のように、一つ見積もりでございまして、これはあなたからのお話も、私の御答弁申し上げるのも、一つ見積もりということに相なろうかと思います。これはどちらのほうが正確かということになりますと、一年たってみないとわからないということになると思うのです。しかし、政治をやる上からいえば、一つ方向とか、そういう見積もりなしにやるということはとうていできるものではありません。そこで、われわれがどう考えておるかということをお答えを申し上げてみたいと思います。  ただいま久保田委員が、ことしは輸入は五十九億ドルとおっしゃいましたが、私は少しふえるのではないかと思います。五十九億五千万ドルくらいに相なろうかと思います。そこで、いま久保田委員が仰せになりました砂糖の値上がりであるとか、小麦輸入であるとかいう食糧関係、それから消費物資等関係で、いわゆる臨時的な、特に三十八年度において一応臨時的なものと見られておるものは、やはりお説のとおり三億五千万ドルくらいありますか、四億前後、ということは、実際は、普通の姿であれば五十六億ドルくらいになるであろうと思います。一方輸出のほうも見てみますと、これがまた当初の予定の五十五億ドルをだいぶ上回って、ほとんど五十億ドルくらいになるであろう。いま数字が詰まらないところですからあれですが、大体同じレベルになっておる、こう見ておるわけでございます。  そこで今度は輸入のこの押え方でございますが、われわれとしては、製品在庫が御案内のとおり相当ふえておる。もちろん原材料在庫は七八%か七%でございますから低いレベルでございますが、製品在庫が相当ふえております。それに今度の公定歩合引き上げ等々の引き締めをやりました関係上、企業のほうでも、大企業は昨年の七月ごろまでは設備投資を相当強くやってまいりましたが、八月から今日、二月ごろまでの状況を見てみると、自動車石油化学というような面の部分はかなり伸びておりますけれども、あと部分は、実際は非常に大企業のほうが下がっております。前年同期に比して二〇%ぐらいずつ伸びておったのが、自動車などを除きますと五%以下、非常に下がってきておる。それに今度の公定歩合引き上げ等のことがございますから、経済関係で見ましても、あまり物をよけいつくっても売れるかどうかという問題がかなりある。確かに設備が大きくなりましたから、その設備を動かさないと赤字になるということも事実なら、しかし設備を動かして品物が滞貨されてそれが売れなくなったら、この赤字もたいへんでございます。そういうことから見ると、いままで設備をたとえば——これはたとえばの例でありますが、八五%動かしておった、八五%を動かせば、たとえば一割とか一割五分の利益があがったという場合に、八〇%にすれば一割しか利益があがらぬという場合でも、私は、その五%くらいはやはり稼働を減らすというような空気が出てくると思うのであります。これは私は経営者として当然の措置であると思う。そういうことを見てみますと、来年の原材料輸入の率の上がり方がかなり違ってくる。これは現実には、そうは言っても、機械をどんどん動かして仕事をやっている段階ですぐには出てこない。四月、五月、六月、三カ月ぐらいたって、七月ごろになってからだいぶこの傾向が出てくるのじゃないか。しかも日銀においても、またわれわれもそう考えておりますが、今度の公定歩合引き上げといいますか、引き締めは、そう簡単に急にまたどんどんもとへ戻すというようなものでもないと私は思っております。もちろんそういう時期がくれば戻しますが、見通しを言えと言われれば、これは相当長く続く。相当長く続いて、そういうような空気でずっとあらゆる面を通じて流していくわけであります。経団連とかあるいは同友会とか、東京商工会議所とか、いろいろなものがありますが、そういう面を通じて出ております。そうすると、原料面輸入というものはかなり落ちつくのではないかという見通しをわれわれとしては持っておるのでありまして、その場合に鉱工業生産を、九%では多過ぎるではないか、五%にしたらいいんじゃないか、こういうお話でございますが、まあまあこの程度鉱工業伸び率を見ていっても、大体五十六億ドルから六十二億ドルということであれば、六億ドルの輸入増ということで、これはパーセンテージにすれば一二%ぐらいの増でありますが、その程度で押え得るのではないか、こういう感じがしますが、あるいは少し無理が出て六十三億ドルになるかもしれません。これはどうもあまりはっきり申し上げるだけの見通しを私自身持っておるわけではありませんので、これはむしろ企画庁の長官あたりが申し上げたほうがいいのではないかと思います。私としては、あるいはちょっとふえるのではないかという感覚はございますが、大体のところはそれくらいで押えられると思います。ところが輸出のほうを見てみますと、六十二億ドルといっておりますが、輸出のほうは割合に……。(久保田(豊)委員輸出のほうはまたあとで聞きます」と呼ぶ)そういうことで、輸入は大体いま言ったように考えまして、いささか強含みにはなっても、大体その程度で押え得るのではないか、こういう見通しを立てておるわけであります。
  10. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは見通しの問題になりますから、おれのほうはこういうふうに見通しを立てておるといえばそれまでの話であります。しかしいまのように大体五十六億ドル程度水準から六十二億ドルということになりますと、その伸びの幅というものは非常に少ない。それに見合う日本生産伸び率というものを考えてみますと、政府見通しのように九%ではとても無理だ。九%やるには、原材料輸入伸び率が、私の計算ではどうしても十億近くになります。これでいくと、五%ないし六%の間ということでおさまらざるを得ない。輸入を押えていけばどうしても生産を落とさざるを得ない。伸び率を落とさざるを得ない。こういう情勢ではないかと思う。そうすると、かりに六%といたしましても、この前の三十三年ですか、あのときの伸び率を見ますと一〇%でしょう。そうすると三十八年度の伸び率からいいますと一四、五%落とさなければならぬ。これは相当困難だ。それの見通しがはっきりしないと、ただ輸入を押える輸入を押えるといっても相当困難ではないかということを申し上げているわけであります。しかしこれは時間の関係もありますから、これ以上——私の計算の基礎をここではっきり申し上げて論議をしてもよろしゅうございますけれども、時間がありませんから、さらにその次の具体的な問題に入ってまいりたいと思います。  そこで、御承知のとおり八条国に移行したわけですが、そこで問題になるのは、百八十二の品目がまだ自由化されておりません。そのうち三十七品目かが当面非自由化品目になっておる。あとの百四十何品目というものがいわゆる自由化品目になっておる。これは一度にやるはずもなかろうと思うが、これは非常にデリケートな問題でありますが、これから先の自由化していく見込みというものは、大臣としてはどういうふうに考えておられるのか、この点も非常に重要な問題ですから明らかにしていただきたい。
  11. 福田一

    福田(一)国務大臣 実はあすからでございますけれども、また八品目自由化をいたしたいと思っておるわけでございます。品目が必要であれば局長から発表いたさせますが、そうしますと、品目は百八十二から八つ減りますから百七十四になります。したがってこれから自由化をしなければならないのは百三十七でありますが、通産省関係品目は五十九、農林省関係が七十二、その他ということになるわけでございまして、通産省としては、かなり自由化をしておる。御案内のように農業関係はいろいろの事情がありまして、これは久保田委員の専門のことですからおわかりと思いますが、いろいろな事情があってなかなかそういかない。工業製品については今後もできるだけ自由化をやりたいと思っております。ただ、いままでにEECにしても、イギリスにしてもあるいはアメリカにしてもそうでありますが、日本に対してはかなり差別待遇をいたしております。そういうような状況でありますので、そこら辺のところもにらみながら、そうあわててやらねばならないとは私は考えておらないのでありまして、特に自由化によって外貨事情が悪化することも頭の中に入れておかなければいけませんし、しかも輸出がそれだけ伸びないということであれば、われわれとして、もう欧米先進工業国に比してそうひけ目を感ずる自由化率ではないのでありますから——もうほとんど九三%近くになっております。きょうで九二・七か八になったと思います。だからもう九三といってもいいかと思うのでありまして、そこまできていれば、そうそうあわててやらぬでもいいのじゃないか、こういうような感触を持っておるわけでございます。
  12. 久保田豊

    久保田(豊)委員 通商局長から、いまの八品目内容をひとつ御説明願いたい。
  13. 山本重信

    山本(重)政府委員 明日から自由化をいたす予定にしております品目は、ブラッセルの関税分類表によりますと八品目になります。その内容は、まず第一が木炭銑、銑鉄の中で木炭を使ってつくりますものでございます。それから次がビデオテープレコーダー石油ガス、これはいわゆるLPGでございます。それから炭化タンタル、それから炭化タンタルを含む金属炭化物混合物、それから次は樟脳、亜麻糸——麻の種類でございますが、亜麻糸及びラミー糸、それにいぐさ、以上の八品目でございます。  なお、そのほかに、分類の中で一部分自由化をいたすものがございます。御参考に申し上げますと、ボイラー、蒸気タービン発電機等で出力が二十万キロワットから四十万キロワットまでのものをこのたび自由化いたします。いままでは二十万キロワット以内でございましたが、その限度を四十万キロに引き上げるものでございます。それからカラーテレビ受像機、それからカラーテレビ受像機用の部品、陰極線管、それから揮発油及び灯油でございます。それから抗生物質、これはペニシリン等々でございます。それからインシュリンの製剤。以上は分類のうちの一部分に該当いたしますので、品目計算上は特にあらわれてまいりません。以上でございます。
  14. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで、その次にお伺いいたしますが、これからこういう自由化が進んでまいり、IMFの八条国に移行する、こういう段階になって一つ問題点は、内国延べ払いつき輸入についてどういう態度をとっているかということが、これはいろいろな意味におきまして一つ問題点になろうかと思います。これに対しては、政府の統計によると、昨年末でこれが十億九千六百万ドルですか、このくらいあるようです。日本側のほうは十億一千二百万ドルということで、約八千万ドルの差があるわけですね。その残が大体八千万ドルばかりの差があると思います。残はいずれにいたしましても、今後この種のものについてはどういう政策をもって臨まれるかという点をひとつ御答弁をいただきたい、こう思うのです。
  15. 村井七郎

    村井説明員 輸入延べ払いのお尋ねかと思いますが、数字的にいま私手元にございませんが、従来の方針は、輸入延べ払いにつきましてはそう厳格な規制をしない。主として機械その他のいわゆる輸出延べ払いに相当するような品目、つまり重い品目でございますが——軽い品目につきましては延べ払いは通常認めませんが、そういう重い品目につきましてはあまり厳格な規制をしないというのがたてまえでございました。これからの場合につきましても、重機械類につきましてはそう規制をしないという従来の態度を続けてまいることになろうと存じております。
  16. 久保田豊

    久保田(豊)委員 一般抽象的にはそういうことでしょうが、これは日本のこれから一番伸ばしていかなければならぬ要するに重機械部門ないしは大規模の機械部門の発展については、これは非常に大きな問題です。外貨を節約するということについては、延べ払いにして外国からどんどん入れたほうがいい。しかし、それは外貨の節約にはなるが、逆に日本国内のこれから先先伸びていかなければならぬ一番重要な部面について大きな障害になってくる。ですから、ここらについてはどっちを、外貨事情中心に考えるのか、国内のそういう、これから日本として一番伸ばしていかなければならぬものを伸ばしていくことにするのか。これらが、直接ではありませんけれども、下請関係等には非常に大きな外圧になっているわけですね。これに対抗するために日本のこういう連中もどんどん延べ払いをして国内でもやらなければならぬ、外国にも延べ払いしなければならぬ。ですから企業間信用下請をどんどんたたかざるを得ない。要するに輸出競争力の一番ポイントをなしておるものはこれです。これに対してどういう態度をとるか。外貨面中心にしてとるのか、あるいは将来の日本基幹となるべき産業面を生かして、また将来輸出の一番伸ばさなければいかぬ基幹部門をどう防遏しながら伸ばしていくか、これらに対するはっきりした政策がないということでは、これは大臣のことばじりをとってひやかすわけではございませんけれども、結局貿易政策なり産業政策というものが行き当たりばったりになってしまうじゃないかというのであります。ここではっきりしたお答えをいただかなくてもけっこうですから、ぜひこの点については——外貨事情は確かに苦しいから、まずまずそのほうにおんぶしてという考えもあるでしょう。しかしまた半面から、長期に見る場合には、この問題が非常に大きな問題になってくる。せっかく延べ払いで外へ出しても、国内でも延べ払いをまた片方の延べ払いから持ってきたら、清算してみたら何も得がないということになる。現にその帳じりをとってみれば、さっき言いましたように、昨年末で延べ払い輸入支払い残が大体十億九千六百万ドル、それに対して日本のは十億一千二百万ドルというように、八千万ドルもここに赤が出ておる。こういう事情ですから、この点についてどういうふうに対処するか。困難な問題ではあるけれども、将来の大事な問題を当面の問題としてここで行き当たりばったりでいってはいかぬ、こう思うのですが、ここらに対してお考えがあれば、抽象的でもけっこうですが、ひとつお考えを述べていただきたい。
  17. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かにいま日本が当面している、われわれの最も注意をしなければならぬ問題であると思うのでありますが、ただ御案内のように、どうしても日本は重化学工業化をしていかなければならない、こういうことになっておりまして、重化学工業部門に対する手当ては今後も続けていくわけでありますが、そのうちでも最近特に伸びたのは機械部門でございます。機械部門が特に伸びましたが、日本輸出できる機械部門というものは、どちらかといえば低開発国向けの問題であり、日本延べ払い輸入します機械類というものは概して精密機械が多いわけでありますので、日本でできるものはまだ一段クラスが下である、これは残念なことであるが事実でございまして、それは低開発国向け、それから先進国から入ってくるものは精密機械が入ってくる。もっとも精密なものが入ってくるから低開発国へ機械が出せるということも言えるわけでありまして、ここら辺はある意味では相関関係があるわけであります。そこで外貨の問題から考えてみますというと、仰せのとおり、できるならば国内の製造工業が買います機械類というものを、国内機械製造業者がつくって延べ払いで売るということも考えなければならないわけですが、これは一部手当てをしておることは、あなた方も御承知のとおり予算措置もとっておるわけであります。ところが日本国内ではまだできないものがある。こういうものはどうしても海外から買わなければいけない。私たち、たとえば発電機等においても、できるだけ海外から買わないで、日本でできるものは日本でやれというような指導をいたしておりまして、なるほど一台は海外から買っても二台目からは全部国内でつくるようなふうに指導もいたしておるわけであります。そういうふうに、手はいろいろとこまかくやっておるつもりですが、何といってもやはり日進月歩の技術の発達というものはすばらしいもので、どうしても日本でできないものがある。そのものは輸入せざるを得ない。その場合に、海外でもそういうものを売ろうとするときにはお互いが競争いたしますから、延べ払いでやってくる。日本はそういう意味ではいい市場と見ておるわけであります。そこで入ってくるものを全部チェックし切れるかというと、なかなかこれはできないということもあるわけでありまして、これはあなたの仰せになったとおり、非常に外貨の問題とも関係がございますから、やはりできるだけそういうものを、少なくとも同じ機械ならば国内のものを使うというふうに、また少しぐらい高くてもほんとうは国内のものを使うように指導していきたいと思いますが、しかしこれは独立採算といいますか、ふつうの会社を経営している者からいえばそうはいかないかもしれませんけれども、そいうこともやりたい。一方、国内の製造工業でできるだけ精密なものをつくれるようにして海外のものをチェックするというくふう、そのためには技術導入ということはどうしても必要になります。こういうことも考えてみる必要がある。同時に、国内向けに海外が延べ払いするなら、国内もまた延べ払いするという政策もやる等々考えながら、ひとつできるだけいまおっしゃったような、外貨が流出しないような方策を進めてまいりたいと思います。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私がいま申し上げましたのは、抽象的にはそういう方針になっておることは私は御承知いたしております。たとえば発電機のごときものも、十七万五千だったのが、いま三十五万のレベルに来ておりますから、これは一台は入れて、それをまねてというと語弊がありますけれども、一台はこちらでつくる、そういう技術的にどうしてもおくれているものはしようがない。そうじゃなくて開放体制になって、そうして今度は条件が日本延べ払いよりいいわけですね、日本企業から見れば。金利も安いし、相当いい条件のものが来るということになると、なかなかこれは押えるという手がなくなるんじゃないか。いままでは為替で押えていけばできたけれども、これからはできなくなるんじゃないか。そういう押えることのできない必要なものは、これは入れなければならぬと思います。いま申しましたように、特に日本の技術水準なり産業のそういう機械の規模を大きくし、あるいは精密度を上げていく、こういうような新しいものは入れていかなければできないのですから、これは当然の話だと思う。しかしそういうものだけでなく、今度は開放体制になると、正直言いまして表面から押える手はなくなる。向こうは延べ払いにして、その条件は日本の銀行で金を借りるよりよっぽど有利だ、こういう体制になってくると、これがふえてくる公算が非常に多いんじゃないか。これに対する対策というものは明確に立てておかなければいかぬじゃないか、こういう意味ですから、さらにその点に焦点を合わして御答弁をいただきたい。
  19. 福田一

    福田(一)国務大臣 二通り問題がその場合考えられると思うのですが、延べ払いにしても、いろいろ延べ払いの種類がございます。ものによってはあまり長期に、あまり額が大きい、金利がどうとかいうような場合には、これはまた外資の関係等から外為のほうで押えることができるわけであります。それからもう一つはそれより——いまもう残っておるものは五十九しかございませんけれども、そういうものを全部ばらして自由化してしまうというわけじゃないので、やはり日本の工業である程度はできて何とか対抗できるというものから自由化していくわけですから、これは何でも残っている五十九は全部自由化しなければならぬ、またそういうことを世界が要請するわけではありません、イギリスだって相当品目は残っておるわけでありまして、各国も残っておりますから、そういう一部のどうしても対抗できないものは残す、それから残せないものについても、ある程度以上のものは外為のほうで押えていく、こういうような方策をとってみたいと思います。
  20. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いま外為で抑えられるというのですが、これは自由化をされて、自由化品目ならそれは外為で押えられるでしょう。今後は数量割り当てということをされるということですが、そういう場合の数量割り当てというものの対象にならぬのですな。そういう場合に押えるというのは、具体的にどうやるのですか。外為で私は押えられないように思うのですが、どうやるのですか。非自由化品目なら押えられるのですか。
  21. 山本重信

    山本(重)政府委員 輸入を普通の支払い条件でいたします場合には、自由化をいたしました品目についてはこれをチェックする方法がございません。ただしその場合の支払い条件が、いわゆる通常の商業条件をこえる長期の延べ払い等を伴います場合には、その点につきまして許可制度にしてよろしいというのが、実はOECDのほうでもそういうことになっております。ただいまの日本の制度では六カ月、非常に短期間になっております。しかし、これは国際的に見てそのままでいいのか、あるいはもう少し延ばさなければいけないのかという点は、今後の検討問題としてございますけれども、方法としてはそういう方法がございます。
  22. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その次にもう一つ、似たような問題ですが、自動車等に関係して問題になりますのはノック・ダウン方式によるいわゆる部品輸入、これは名前は預かりますけれども、アメリカのある会社と日本のある会社とはすでに契約ができて、近くノック・ダウン方式によってアメリカから主要部分品を入れて、日本で一部の部分品をつくって安く売り出すということ、またもう一つの会社についてもそういううわさが立っておるわけです。このノック・ダウン方式はいまのところ自動車だけです。ほかのところにそうたいして出るものじゃない。しかし、ものによりましては、今後その以外の面にも部分的に出てくる公算があると思うのです。これに対してはどういう態度をおとりになり、方針をとるつもりか、この点もはっきりお伺いしておきたい。
  23. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは自動車の問題について、われわれとして慎重でなければならない問題の一つだと思っておるわけであります。これはいまそういううわさといいますか、話は出ておるのですが、具体的にどこまで進んでおるかということについては、われわれとしてもまだつかみにくい面が非常にあります。たとえば、特に名前は言われませんでしたけれども、フォードであるとかクライスラーというものが出てくるという説があるのでありますが、フォードの場合は、横浜にある土地を売って四十億円ほど金をつくって、それでノック・ダウン方式による自動車生産をやろう、こういうことらしいのですが、私、それがどの程度まで進んでおるかまだ聞いておりません。それから、その土地がはたして売れるのかどうか、売れないとすれば、これは外資で入ってくるわけでありますから、外為法その他でもう一ぺんチェックできましょうし、——円でやる場合はできません。しかし、その場合でも技術導入の問題がどうしても出てきます。技術導入の問題については、これはわれわれとしても検討を加えることができるわけでありますし、それはOECD加盟のときも留保の条件となっておりますから、こういうことはできます。等々いろいろございますが、実はまだ具体化しておらないというか、そこまで話がいっておるように聞いておりません。しかし、私たちとしては、もしノック・ダウン方式で入ってきて日本自動車業界が非常に影響を受けるという事実が明らかになれば、これは円ベースでやる場合はチェックできると思いませんが——円ベースでやっても、いまのような技術導入へのひっかかりがある場合はチェックできるわけですから、そういう点を考えながら処置をしてまいりたい。ただ、大きく言えば、日本自動車業界も、相当大きい会社はかなり力がついてまいりましたから、いまのところでは、価格、品質等々考えてみると、もう日本自動車は、もう一割ぐらい値段を下げるということであれば、大体中級のものは外車に対抗できるんじゃないかという感触があります。しかし、全部の会社ができるかということになると、これはいろいろ問題がある。そこに、こんなことを申し上げては失礼ですが、われわれ心配して、特定産業振興法というのを出している意味もそういうところにあるのですが、とにかくノック・ダウン方式で入ってくるということについては、自動車のみならず、いまだ自由化しておらない品目につきましては、特にそういう点を注意しなければならないし、また、たとえ自由化しておりましても、お話しのような技術導入問題がからんでまいります場合は、われわれとしてはやはりよく研究をした上で認可をする、こういうふうに相なろうかと思うのであります。
  24. 久保田豊

    久保田(豊)委員 外務省の経済局長、来ていますか。
  25. 二階堂進

    二階堂委員長 要求はいたしておるわけですが、まだ見えておりません。
  26. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それではなるべく早く呼んでください。  そこで、通商局長答弁できるかどうかわからぬけれども、問題の一つは、これからの日本輸入に大きく響いてくる問題としては、御承知のとおりアメリカとEECの間に、関税一括引き下げの交渉がすでに始められておる。日本側としては、これに対してどういう見通しを持っておるのか、また態度はどうか、これらがまとまった場合における日本貿易全体、特に輸入に対する影響をどういうふうに踏んでおるのかという問題です。これは非常に重要な問題ですから明確にしてもらいたい。
  27. 山本重信

    山本(重)政府委員 関税一括引き下げ問題はただいまガットで話が進められておりまして、つい数日前ごろまで今後の関税引き下げの交渉をするためのルールをきめる会議が行なわれておりました。ただいまのところ、重要な問題についてまだアメリカとEECとの間の話がきまっておりませんので、今後なお引き続いて交渉が行なわれることになっております。  その第一点は、久保田先生よく御存じのことでございますが、関税格差の問題でございます。アメリカの関税は比較的高うございますし、EECのほうは比較的低い状態になっておりますので、現在の格差のあるままの状況で五〇%引き下げをするのでは、EECの立場からいいますとお互いに不公平である、したがって関税一括引き下げをする前に現在の格差是正をすることを考えろ、こういうのがEECの強い要望でございます。その考え方につきましてはアメリカ側も了承いたしまして、何らかの方法で調整をしましょうということにはなっておりますが、具体的にどういう方法をとるかということについてはまだ話がついておりません。つい最近の進展では、格差があるというのはどういうことで判断するかといいますと、二国間の関税で一方が片方の倍高い、しかもその差が一〇%以上——ダブル・テンと申しておりますが、そういう基準で格差を考えるということをEECのほうが言っております。それに対しましてアメリカのほうは、なるべく格差が存在するというケースを少なくしようということから、例外を設ける。それに対しまして、たとえばいま申し上げましたような格差がある場合でも、高関税の国が低関税の国から現に相当輸入している場合、これは関税の差が若干あっても特に格差是正をする必要がないじゃないかという点。それからもう一つは、低関税国が主たるサプライヤーでない場合、第三国が主たるサプライヤーである場合は、そういう格差の規定の適用をしないでいいじゃないか。この二点を中心といたします修正案を出しておりました。一ころに比べますと、お互いにかなり歩み寄りを示しておりますので、この格差の問題は比較的早いうちに話がつくのではないかと見ております。  それから第二の点は、農産物の取り扱いについてでございまして、この点はまだまだ話が本格的に進んでおりません。アメリカは従来から農産物をヨーロッパ、特にEEC諸国に今後大量に売り込みたいという気持がかなり強うございますので、農産物も同じように扱うということを最初から主張しておりました。これに対しましてEECのほうは、農産物は別だという考え方を言っておりました。最近になりましてアメリカのほうも、農産物については一括引き下げでなく、個別に引き下げの方法を検討しようという提案を非公式でございますがいたしております。しかしこちらのほうは本質的に利害の対立が相当はっきりいたしておりますので、まだまだ調整には時間がかかるのではないかと思います。  日本の立場でございますが、日本といたしましては、基本的には、関税の大幅引き下げが今回行なわれまして貿易が盛んになることは長い目で見て有利な点がございますので、できるだけ前向きで参加したいという意向は表明いたしております。しかし同時に、関税の大幅引き下げによりまして日本の産業が受ける被害を十分に検討してみなければいけませんので、日本としては今度の関税引き下げの例外品目をなるべくたくさん確保するということに一番の力点を置いてこの会議に臨んでおります。日本といたしましては、国内の産業の立場、それからもう一つ日本の特殊な立場といたしまして、関係各国から差別的に輸入制限を受けておりますが、輸入制限を受けております限りにおきましては、相手が関税を一括下げてくれましても、日本からの輸出が数量制限で縛られてしまいまして、関税引き下げの恩典に浴さないということになりますので、差別を撤廃することをこの機会に強く要望いたしております。かりにもしその差別撤廃が一挙にいきません場合は、残ります差別につきましてこれに相応する代償を日本としては要求する。つまりその分だけ日本は例外品目をふやすとか、関税引き下げの幅を少なくするということを主張するという考え方でこの会議に臨んでおります。  昨年五月のガットの大臣会議では、具体的な交渉は五月の四日から始めることになっておりますが、しかし最近の状況から判断いたしますと、おそらくまだまだ相当延びそうでございまして、まずアメリカのほうは、六月には関税引き下げについての具体的のオファー・リストを出そうとしておりまして、アメリカが出しますと、しばらくしてまた、おそらくEECも出すのではないかと思います。その段階では、日本もおそらく何らかのかっこうで、ほかの国のオファー・リストの内容もよく見ながら、日本としてのオファー・リストの準備をしなければならないかと思います。具体的な交渉は、おそらく九月になっていよいよ本格的になろう、このように考えております。
  28. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いろいろ詳しい説明があったわけですが、見通しとしては、関税一括引き下げはどの程度まとまるというふうに見ておるのか。これは交渉ごとですから、いまから見通しは困難だといえばそれまでの話ですが、やはりある程度相手の出方を見て、それに合わせていくという行き方では、日本の主張は弱くなると思う。この見通しについてどう見ておるかということ、いまお話しのように、日本に対しては欧米が非常に輸入制限をしておるわけですから、日本としては、これとひっかけて例外品目をたくさんとるとかいうこともあろうと思いますが、これらについての見通しなり、それからもちろんその影響について具体的に検討されておることと思いますが、これらの見通しなり何なりはどう見ておるのか。時期はどうだとか、会議の進行状況はどうだとかいうことは別問題といたしまして、どの程度まとまるのか。これは全然まとまらないということもなかろう、かといって、いま出しておる問題がそのまますっとまとまるともわれわれは考えないが、どの程度まとまっていくのか、こういう点について確たる見通しを持っておるのか、持っておらないのか、そういう観点から見て、日本として、いま出しておる交渉に対する態度をどの程度貫けるのか。場合によったら、どの程度譲ってどういう点をはっきり確保しなければならぬかという点等を具体的に説明が願えれば願いたい。これは交渉ごとですから、いまの段階ではあまりはっきり言えないといえばそれまでですが、さしつかえない範囲でその点を具体化しておくことが必要ではないかと思いますが、どうですか。
  29. 山本重信

    山本(重)政府委員 お話のように交渉ごとでございますので、なかなかこちらとしての見通しを立てることもむずかしい段階でございます。先生のお説のように、日本の産業に相当影響があり得る問題でございますので、私たちといたしましては、内部でいろいろな前提を置きまして、かりにこういうことになった場合にはどの程度の影響があるかというようなことは従来から何回となくいろいろ検討しております。そうした点から判断いたしますと、アメリカが少なくとも当初言っておりましたように、五年間に五〇%一律に引き下げるというようなことをいたしますとたいへんなことになりますので、その点につきましては日本としては絶対譲れない線があると思います。最近の進展状況は先ほど申し上げたような状況でございますので、少なくともアメリカが当初考えておったよりはかなりいろいろな意味で留保がつき、条件がつき、緩和されたかっこうで結論が出されるのではないかというふうに一応考えております。しかし、これも今後の会議の進行状況でどうなるか全くわかりませんので、われわれとしましてはその点に一番注意を払って、この会議に臨んでおる次第でございます。
  30. 久保田豊

    久保田(豊)委員 日本として譲れない一線というものを一番はっきりしなければいかぬが、交渉ごとだから、いまここでこの点だけは譲れないというても、これが結局これからの国内のいろいろな産業の国際競争力の上での一つの大きなめどになるわけですから、この譲れない一線というのはどういう点か。これは抽象的にしか言えないかもしれぬが、産業別にこの線はこうだ、この線はこうだということはかなり業者のほうから聞いております。いまのケネディラウンドで、この点がアメリカの主張のようになればわれわれのほうはこうなるとか、いろいろなことを聞いておりますが、その譲れない一線というのをはっきり、これは具体的にはいまの段階で言えないかもしれないけれども、もう少し具体的に説明ができればしてもらいたいと思う。
  31. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいまの進行状況から判断いたしますと、五年間で徐々に引き下げを行なうわけでございますが、一番早い場合で六六年一月から始まるということが予想されます。そういたしますと、五年間の引き下げの完了は一九七〇年になるわけでございます。したがいまして、その当時の状況において日本の各産業がどれだけの競争力を持つことになるか、また外国のほうの産業がその間にどのくらい競争力を増してくるかということを判断することになるわけでありまして、実は見通しはたいへんむずかしい、いろんなファクターが入ってございます。しかし一応現段階におきまして各業種ごとに、これは通産省の中でも通商局だけでなくむしろ官房を中心にいたしまして、各原局で品目ごとの検討をいろいろやっていただいております。しかしまだこれは内部でも、ではどの産業とどの産業は絶対例外にすべきであるとか、それからこれは引き下げ率を一般のルールよりも少なくすべきであるとか、その最終的な結論にまでいっておりません。しかし相当程度ともかく例外をたくさんにとらないと、日本の場合はあぶない、こういう感じを持っております。
  32. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私はもう少し具体的に突っ込んで聞きたいが、それ以上言っても交渉ごとですから、あまりはっきり言っても困るかもしれぬから、これ以上聞きません。  そこで、これに深い連関のある最近の大きな動きとして、いわゆる低開発国を中心とする国際貿易開発会議、これの問題点が御承知のとおりいろいろ出ておる。これはまたガットとも非常に関係を持つわけです。これに対する見通しない日本政府としての態度なり——今度のああいう大がかりな会議が簡単にうまくまとまるとは私も考えておりません。しかしそうかといって、ガットもある程度の歩み寄りをいま見せつつあるようですけれども、あの低開発国の要求というものは今後あらゆる機会に強くなってくると思う。いま提案をされているようなあの五つの議題、これがそのまままとまるということはなかなか考えられぬと思う。が、これらに対しては日本政府としてはどういうふうな見通しを持っておられるのか。あるいはこれに対して日本政府としては、新聞等に伝えられるあれだというと、なるべく拘束的な決定に至らぬように、ざっくばらんにいって、そうやられては困るんだ、だから、なるべく議論ばかりにして実効のある結論は出ないような態度でいくんだというようなことですが、これはまとまるのは非常に困難な会議だと思います。そんないいかげんなことで、いま独立した低開発国はなかなかおいそれというわけにはいかないと思います。かりに今度の国際会議で具体的な結論が出ないまでも、おそらくこの会議で示された、事務局長のプレビッシュですか、あの人の考え方というものは、まとまる、まとまらないにかかわらず、今後低開発国の基本的な動きとして先進国に対してくるものだと思う、先進国がこれをどう受けるか、これはまた別問題ですが、非常に重要な問題だと思いますが、この点については、日本政府としてはどういう見通し態度を持っておるのか、またこれの影響はどういうふうに見ておるかという点、これは実際は宮澤さんに聞かなければならぬ問題ですけれども、宮澤さんはおりませんし、通産大臣もおりませんから、あなたに聞くわけです。
  33. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいまお話しの国連貿易開発会議は、日本にとりましてたいへん重要な意味を持っておる会議でございまして、今回宮澤企画庁長官を長として日本の代表団が向こうに行かれるのにつきまして、日本がどういう態度で臨むかということにつきましては、実は関係各省で何回も会議をいたしました。そしてその結果、一つ日本政府態度というものをきめまして行っていただいておるわけでございますが、何にいたしましても、今回の会議は非常に政治的な色彩の濃い会議でございます。また各国がどういうふうに出るかが、なかなか想像できない点もございますので、代表団に対する訓令も、実は従来の普通の国際会議と違いまして、比較的抽象的、一般的になっておりまして、情勢の進展に応じて場合によれば現地で相当大幅な権限を持って動くようにしたほうがいいだろう、そういうような内容のものになっております。  今回の会議にあたりましてプレビッシュ事務局長が出しました報告は、先生のいまのお話のように、おもな点は五つあるかと思います。  その第一は機構の問題でございまして、プレビッシュ・レポートによりますと、従来のガットの機構では不十分である、新しい機構をつくるべきであるという提案をいたしておるのは御存じのとおりでございます。なお暫定的な措置として、国連貿易開発会議そのものを常設的なものにしてしばらくやって、そしてある時期は恒常的な国際貿易機構をつくるということがその要点であろうかと思います。この点につきましては、各国の動きも十分に見なければなりませんけれども、日本態度としては、従来からこうした問題はガットを中心にしてやってまいっておりますので、現存の機構を十分に活用する方法をまず考えるべきであるという考え方でおります。  それから第二の点は一次産品の買い付け促進の問題でございまして、この点につきましても、プレビッシュ報告は相当画期的な、大胆な提案をしております。日本といたしますと、この点につきましては、特に東南アジア、アフリカ、中近東等の各国とも貿易の面でも非常に深い関係がございます。また場合によりますと、日本輸出だけが非常に伸びて、向こうからあまりものを買いませんために、方々で片貿易になって問題が起きておりますが、一次産品の買い付けには従来も努力してまいっておりますので、日本で考えまして適当かつ可能な範囲では、この線は日本としてもできるだけ協力していく必要があるのではないかと考えております。ただ品物によりまして、また国内の農業その他への影響等も十分に考慮しなければならないのは当然でございます。  それから第三の問題は特恵制度の問題でございます。今後後進国が工業化を進めてまいります段階で、その製品、半製品を先進国が何とかして買いやすいようにする。そのためには、先進国が関税制度の面におきまして、低開発国からの輸入品に対してだけ特恵的に安い関税あるいは無税の制度をとる、同じ品物についてそういった差別をして低開発国からの輸入を促進しようという提案でございます。この点は日本としては非常に重要な点でございまして、たとえば例をとりますと、アメリカがかりにもしこの制度を実現いたします場合に、アメリカがインドから繊維製品を買う場合は無税であって、日本から繊維製品を買う場合には一〇なり一五%税がかかることになる。そうなりますと、特に日本の産業の中では中心的な性質のものでございますので、一番あおりを食うわけでございます。これはほんとうの仮説に基づいた計算でございますが、低開発国がこれからつくるであろうと思われます製品、半製品について全面的にこの制度が適用された場合に、日本の産業にどういう影響があるかということを計算いたしてみました。それによりますと、繊維品とか雑貨類で今後低開発国が工業化に乗り出そうとしておると思われますものの日本輸出額が約十三億ドルございます。かりに特恵制度ができまして低開発国のほうが有利な扱いを受けるということになりますと、いろんな意味で日本輸出が影響を受けると思います。かりに一割影響があるといたしますと一億三千万ドル日本輸出が減る。それを各産業別に一応ざっと計算してみますと、雇用にいたしまして約二十五万人くらいの雇用に響いてくる、こういう計算も成り立ったわけでございます。したがいまして、日本としてはこの特恵制度が今度のプレビッシュ提案の中では一番注意をしなければならない点かと思っております。  それから第四の点は補償融資の制度でございまして、低開発国が輸出します産品は値段が非常に不安定である、それが予想以上に下がりましたような場合に、先進国のほうがそれだけ高く買ってやる、こういう制度でございます。これは財政の負担を直ちに招来するものでございまして、日本としては十分にこれは慎重に考えなければならない、むしろこういう制度は低開発国のためにもあまりイージーゴーイング過ぎるのではないかという考え方をしております。  それから五番目に地域統合の問題を取り上げております。低開発国が低開発国同士でまとまりまして、お互いにその地域の中で国際分業を発展させ、そうして工業化を促進させるという構想でございまして、日本の立場から見ますと、基本的方向としては決して悪いことではないと思います。ただこれがうっかりいたしますと、たとえばフランスの旧植民地が固まりまして昔からのいわゆる特恵制度をまた復活するというようなことになってきますと、これは非常に封鎖経済的な弊害を持ってまいりますので、その点は日本としてはむしろ反対をすべき点ではないか。  非常に広範な報告についてのコメントでございますので、はなはだ簡単でございますけれども、いま私たちのほうで考えておりますのは、そんなような感じでございます。  この会議見通しでございますが、これは先ほど申し上げましたガットの会議見通しよりももっと見通しがむずかしゅうございまして、たまたま最近外国政府から日本に来られる経済局担当の人たちに見通しをこちらから聞いてみますと、いずれもみんな、これはいつになって結論が出るかとてもわからぬというような見方をしておるようでございまして、その見通しがはっきりしない点はおそらくどの国も同じではないかと思っております。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この点はまたあとでもう少し具体的に触れますから、その程度でやめておきます。  そこで、その次は、今度は輸出の問題をひとつ取り上げてみたいと思う。三十九年度の政府輸出目標は六十二億ドル、輸入も大体輸出と同じにいく、これでとんとんにいく、こういう見通しですが、これははたしてうまくいくと見ておりますかどうですか、というのがおもな問題です。特に最近新聞等で見ると、やはり貿易外経常収支を黒字にするということは非常に困難だ、しかもこれは長期にかかる。また、同時に、その貿易外経常収支赤字を資本収支で埋めていくというのは、結局借金の穴埋めをするのにまた借金をしていくのと大体において同じことになるわけですね。ですから、先にいけば、その元利を返すときにますますひどいことになっていくのはもうわかり切った話だ。そこで政府も財界も最近まで盛んに輸出第一主義に徹しようというようなことで、大体輸出目標は来年度、つまり明日から六十四億ドルないし五億ドル程度に設定をして、これを第二目標ということにして、これの実現のために非常に骨を折ろう、こういうような意見があって、あなたのほうでも近く最高輸出会議等にはかって、こういう新しい目標を設定する。これは事実上経済見通しそのものもいわゆる目安だ。今度のものも、かりに六十五億ドルときまっても、これは目安です。目安ですから、それがそのままいくかどうかは非常に疑問ですが、私は、こういうふうに輸出の目標を輸入よりもはるかに高くするということは賛成です。これをやらなければ、その企画なりその方向へのはっきりした歩みがなければ、日本外貨問題というのが根本的に片づくときはいつの先かわからない。こういうことですから、こういう目標を掲げることはけっこうですが、ただ目標を掲げてわあわあやるだけではこれは実現はしないと思うのです。  そこで私、大ざっぱな話をしますと、日本輸出構造というものは御承知のとおり大体その五〇%は軽工業品ですが、これは頭打ちです。この二年ぐらいの間ほとんど伸びていない。おそらくまた今後も伸びるめどがない。日本の工業が重化学工業化すると同時に、輸出伸びというものは重化学工業が大体において中心になってくるわけですね。これが約五〇%、そうすると、実際に政府の当初の見通しのように一三%程度伸びを今年確保していこう、さらに六十五億ドルということになれば一八%程度伸びを確保しなければならぬということになりましょう。この大部分というものは要するに重化学工業品の輸出を伸ばしていかなければならぬということになるわけです。そうなると、いままでもそうですが、大体いままでのここ二、三年の日本貿易伸びというものは、大部分が重化学工業品でやっている。そうすると、一年間に大体において二〇%ないし三〇%以上の伸びを示さなければならぬ、こういうことです。今度さらにこれを六十五億ドルということにもし新しい目標を設定するとすれば、今度は重化学工業のほうは、いままでも二〇%、三〇%以上の非常な伸びを示したものを、さらに四〇%程度伸びということを続けていかなければならぬということになる。そうなると、世界の貿易全体の伸びが五%かそこらぐらいでしょう、そうするとそれの八倍ないし十倍程度伸びを重化学工業品が主として背負ってやっていかなければならぬということになるわけです。これにはいろいろ問題点がありますが、その問題点についてはあとでお伺いしますけれども、そういうことがいまの世界の経済情勢の中でそうたやすくできるものではないと私は思う。これに対しては国内でどういう体制をとるのか、あるいは対外的にどういう体制をとるのかということを、よほど腹をきめてかからぬとできない、目標だけは立ってもできないと思うのです。これに対して最初に、いろいろ具体策はありましょう、具体策については次々に聞きますが、そういう具体策は抜きにして、六十二億ドルないし六十五億ドルにいまの五十五億ドル台から伸ばしていくということははたして可能かどうかという点をどういうふうに見ているのか。苦しまぎれに目標だけ、数字だけ上げて、みんなのしりをひっぱたいたって、それだけではうまくいきません。やはり経済の合理性に合った一つの施策を対内的にも対外的にもとっていかざるを得ないということになる。これらの問題点についてはあとでお伺いしますから、私は、そういう新しい非常に高い目標というものが、はたして今日の段階政府としてはできると見ておるのかどうか、この点だけについてお伺いをしてみたいと思います。
  35. 山本重信

    山本(重)政府委員 昭和三十九年度の輸出目標は、為替ベースで六十二億ドルと相なっております。最近、新聞紙上に努力目標としてさらにこれよりも高いものを何かつくるようにしたらどうか、何か通産省でそういうことを検討して、近く最高輸出会議に出すというふうな記事が出ました。実はただいまのところ、私たちのほうで六十二億ドルと別に新しい目標をつくるかどうか、まだ方針、態度を決定いたしておりません。そういうことも含めまして、なお最高輸出会議までに検討をいたしたいと思っております。六十二億ドルという数字は、対前年の伸び率でいきますと一二・七%の増になるわけでございます。これをつくりますときにはいろいろ議論をいたしまして、どっちかといいますとやはり先生のお話のように、相当努力を要する数字であるというふうにその当時考えたわけでございます。過去の趨勢を見てみますと、日本輸出は幸いにしてかなり順調に伸びてきておりますので、もし国際的な情勢が許せば決して不可能な数字ではないけれども、しかし、どちらにしても相当努力を要する数字であるというふうに考えております。それから輸出商品の構造が重化学工業のほうにウエートがだんだん移っているという点は、まさに先生御指摘のとおりでございまして、金属、これは主として鉄鋼でございますが、金属及び同製品、それから機械類、この二つの品目を合わせましても、七年前には両者で三三%だったものが、ただいまは四〇%ちょっとこえるところまでいっております。今後ともこの傾向は続くかと思います。逆に繊維及び同製品は、三四%から二五%に下がっております。したがいまして、重化学工業品の輸出振興には相当に力を入れていかなければならないかと思っております。しかし、幸いにしまして国際環境はただいまのところ比較的明るい見通しでございますので、日本国内輸出体制を十分に整備して、そしてさらに海外での活動を続けていくならば、決して不可能な目標ではないというふうに考えております。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで、ひとつ重要な問題点を二、三お伺いします。  第一は、重化学工業品を中心にしてもっと輸出を伸ばしていこうということになると、これに対する、軽工業もそうですが、各国の日本品の輸入に対する規制がまだ非常に多いわけです。ガット三十五条の援用国もまだ相当ある。あるいはアメリカのように自主規制、こういう点をやっている国もある。また欧州各国のように、やはりいろいろな点で日本品の輸入制限を実質上しておるというところもたくさんある。特に注目すべきは、最近鉄に対するアメリカのいわゆる反ダンピング法の強化の動きが非常に強くなっている。一州に対して、ある地方に対してだけ相当のあれをしたものも、全国的にこれをダンピングとして規制をするとか、あるいはアメリカ向けの輸出をさらにふやそうというので工業の施設を拡大したものについても、これをさらに反ダンピング法にひっかけてやっていくというようなことでやっている。ところが、こういうように輸出を六十二億ドル、かりに六十五億ドルとすれば、これは実質的な点はどうか知りませんが、外国ではいやおうなしに、これは一種のダンピングと見ざるを得ないと思う。これは非常にむずかしいところです。ここらが今度のILOの問題等も相当問題になってくるところだと思うのですが、そんな問題はきょうは別といたしまして、こういう各種の輸入制限について日本側としては、特にアメリカの動きに対してはどういう態度を持っておるかということが一番問題です。いままでの大体日本側態度というものは、アメリカを基本的には信用する。だから向こうで何とか善処するだろう、だからこっちもやむを得ない、自主規制その他の形でこっちも自制するから、向こうもあんまりめちゃなことをするな、こういうように、ある意味で非常にわかったような態度でおった。ところが、ことしあたりの日米の経済貿易の合同会議等の内容を漏れ承っても、はっきりしたことはわかりませんけれども、なかなかそんな、向こうとしては甘いものじゃない。どうも日本態度がそういう点についてき然とした、はっきりしたものを、場合によっては報復処置をとるというくらいの気持を持っておらなければやれないのじゃないかというように思うのです。これらに対して、必ずしもすぐに報復処置をとるだけがいいことじゃありません。これは協調ができれば、できるだけ協調していくのが当然ですが、世界景気は全体としていいと言っておりますけれども、その底にいろいろ問題がすでに出てきておる。そういう段階でいくと、こういう点についての政府の基本的な態度をもう一度再検討する必要があるのではないか。その再検討をした、はっきりした基本方針の上に立って、交渉なり何なりはやわらかくやることは当然だろうと思う。いままでのように基本の方針がぼやぼやしておって、口先だけ強そうなことを言ってかけ引きしてみたって一向に実績はあがってない。ますます日本の商品に対する輸入制限が強くなる傾向が非常に強い。さっきガットの関税一括引き下げについて、できるだけ数量制限をとっていくが、とれないものはその代償としていわゆる例外品目をよけいとるというお話もありました。そこらの問題も一つですが、基本的にこういう輸入制限に対して、日本としてはどういう態度をきめていくかということが大事であると思いますが、これに対してはどうですか。
  37. 山本重信

    山本(重)政府委員 アメリカの日本に対する輸入制限がいろいろなかっこうで行なわれておりますことは、ただいま久保田先生御指摘のとおりでございます。私のほうで計算をいたしてみますと、アメリカ側のほうの何らかの動きがありましたためにやむを得ず輸出規制をしておりますものは、対米輸出の中の三〇%を占めております。今回の日米閣僚会議の席におきましても、日本側からアメリカに対して特に強く要求する問題の一つといたしまして、アメリカの対日輸入制限の問題を取り上げたような次第でございます。実は福田通産大臣が閣僚の中でも直接この担当でもございますし、一番強く主張いたしまして、相当先方には強烈な印象を与えたように私も列席しておりまして見受けた次第でございます。そのときに、こちらから主張いたしましたのは、アメリカはしきりに自由貿易ということを言っておるけれども、結果において日本に対していろいろな制限を実際に行なっておる。これではアメリカの自由貿易という原則に反するということで、具体的な問題をいろいろ取り上げて議論をいたしたのでございます。いまお話しの鉄鋼のアンチ・ダンピング法につきましては、先方でいまのダンピング法をさらに改正しようというような動きもあるやに聞いておりますので、その点も先方に問いただし、そしてそれには絶対日本としては反対だということをはっきり向こうに申し入れをいたしました。  それから自主規制の問題も、今回は特に新しい観点から取り上げまして、日本がアメリカ側の輸入制限運動、特に業界のいろいろな動きを考えまして、やむを得ず始めました自主規制品目の中には、比較的うまくいっておって毎年毎年かなりの数量増加を見ておるものもございますけれども、中にはもうそろそろやめてもいいようなものもありますので、そういうものは個別に検討をして、日本の判断でもうやめていいと思うものは自主規制をどんどんやめますよ。その場合に、日本が自主規制をやめるからといって、アメリカ側の業界が騒がないように、また騒いでも取り上げないようにしてもらいたいというようなことも、この前申し入れた次第でございまして、なるべく日本としてはいまの不自然な対日制限をはずさせるように向こう側に要求いたし、また日本側でできることは自主的に判断してはずしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そういう主張は当然しなければならぬことです。ただ問題は、主張だけで向こうが聞かなければそれっきりの話です。だから向こうのどこか痛いところをぴっと一本やるだけの根性がこっちになければ、幾ら話し合いをしても向こうが聞かなければしようがない。結局結果はそうなるでしょう。だから私はそこが大事だと思うのだが、この点についても、あなたに聞いたのでは無理だと思うから、これはあと大臣に聞きましょう。  そこでその次に、大きな、特に重化学工業品の輸出をふやすために重要な問題は延べ払いの問題です。大体ことしの延べ払いのワクはどのくらいにしているのかということが第一点。  それからIMFのほうで、御承知のとおり、この日本延べ払いは輸銀というつまり国家機関あと押しの延べ払いだ、こういうので、これに対してはいわゆる全面規制というような動きもあるやに新聞等で報道しておる。これらに対する交渉なり見通しはどうなるのかという点が一つ。  それからもう一点は、延べ払いで、いまは大体頭金二、三〇%、そして五年ないし六年というのが一般でしょう。ところが最近の欧米、特に欧州各国の延べ払いのやり方というのは非常に長期になって、しかも弾力的になってきておる。日本のように頭金が二〇%程度で、あとは五年ないし六年というワクでは対抗できない。こういう要件が至るところに出てきておるわけです。こういう点について日本政府としては、こういう相手側の出方に対してどういう対処策を立てておるのか、また立てようとしておるのかということです。  それから特にもう一つの点は、対共産圏諸国に対する延べ払いです。まあソ連についてはある程度実施ができておる。ところが中国とか北鮮とかベトナムとか、こういうところの延べ払いについては、特に日本政府としては非常な厳格な制限を実質上加えておる。ところがこれに対しても欧州各国——アメリカはそうでもありませんけれども、欧州各国は実質上非常に弾力的な長期のこういう対策をもってどんどんいま進出を始めておる。特に中国がその一つの大きな目標になっておることは、具体的な例は時間がないからあげませんけれども、この点は日本としては非常に立ちおくれておる。特にアメリカのごときは、ソビエトに対しては十五年ぐらいの長期の相互的な延べ払い協約みたいなものを結んでやっておる。またキューバに対しましても、御承知のとおりトラックその他を、アメリカがあれだけ反対して頼んだにもかかわらずへいちゃらで出しておる。またフランスは中国に対して、政府間協定で、延べ払いを含んだ相当長期のプラントなり重化学製品を入れてこようとしておる。これに続いて、西ドイツはいま黙っておるが、しかし私どものほうへの情報では、近く大規模の経済使節団を中国に入れて、そうしてこの立ちおくれを一挙に解決しようという下心といいますか、計画を現に進めておるやにわれわれのほろでは聞いておる。それに対して日本では、やれ台湾に遠慮してみたり、アメリカに遠慮してみたり、あっちにいったりこっちにいったり、たった一つプラントを出すのに、決定をして出すまでに半年もかかる。こんなことをやっておったんでは、とてもこれから貿易輸出第一主義だの何だのということは、政経分離その他の政治問題は別にしまして、商売としても言えないのではないか。これらに対して、これはあなたではしゃべれないところもあるかと思うが、ひとつできるだけの範囲で事務当局として考えておるところを述べてもらいたい。
  39. 山本重信

    山本(重)政府委員 御説のように、これからの日本輸出としては重化学工業品、特に重機械、プラント類が主になっておりますので、したがいまして延べ払いには今後大いに力を入れなければならないという点はそのとおりでございます。三十九年度の延べ払いにつきましては、輸出入銀行に所要の資金手当てをいたしまして、三十九年度としては千六百億円の貸し出しワクを予定いたしております。もしこのワクがかりに足りない場合、これよりも案件が多くなりました場合には、適宜さらに追加の資金手当てをしようということで、その点を大蔵省のほうと話し合いをいたしております。  次に、国際的に、延べ払いについて何か規制をするような動きがあるのではないかという御指摘でございます。現在OECDにおきまして、信用供与についての作業部会が持たれております。いままで二回ほど会議があったと思いますが、ただいまの段階ではまだ具体的に規制をしようという話までいっておりませんで、お互いに五年をこえる延べ払いをした場合に、情報交換をしようという話が出ておりまして、日本としては、それに積極的に参加するのがいいのかどうか、まだ政府部内で検討中の段階でございます。  それから次に、延べ払い条件の問題でございますが、ただいま延べ払い条件のきめ方はこういうふうになっております。通産省が許可をいたすわけでございますが、その場合に、大蔵省の同意が必要になっております。一つ一つの案件について同意を得る手続を省略いたしますために、包括同意という条件を内々にきめておりまして、ただいまちょうど先生がお話になりましたような、二、三〇%の頭金で五年ないし七年という程度のものは、機械の種類によって違いますけれども、大体その包括同意の中に入っておりまして、通産省が適当と認めれば、通産省の一存でできるようにいたしております。最近では、お話のように国際的にどんどん延べ払い条件を緩和する動きがございます。この包括同意の条件をこえる条件でないと国際競争に太刀打ちできない場合がだんだんふえてまいっておりますので、それにつきましては、毎週定期的に両省で連絡会をいたしておりまして、そこで懸案事項を持ち寄っては決定をいたしております。必要によりまして、できるだけ国際情勢に合わせていこうという努力をいたしております。  それから最後に共産圏に対する延べ払いの御質問がございました。ソ連に対しましては、通商協定もできておりまして、すっかり軌道に乗って動いておるのは御指摘のとおりでございますが、あとの中共、北鮮、ベトナム等につきましては、別のいろいろ政治的な配慮等もそれにからんでまいっておりますので、いまの段階では、まだ私たちの事務レベルだけで右から左に処理することがむずかしい状況になっております。通産省の立場といたしましては、できるだけ政経分離というたてまえで、少なくとも西欧並みの条件でなるべく実施したいという気持ちでおります。しかし問題が多くの場合に外交等の関係がありまして、ほかの省との関連がございますので、その点は各省間の連絡をとりながら話し合いをいたしておる状況でございます。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一つ輸出増進策の一つとして、最近円借款によって事業計画その他を認めて、これを拡大していこうという動きがあるそうですが、こういう点について、円借款というのは、いままではインドとかパキスタン、それからセイロンですか、そんなところだろうと思うが、これをどういうふうにやっていくか。この効果は外貨獲得上どういう効果があるのか。売る面については、いろいろな点で非常に有利な点があると思うが、この点はどういうふうに考えて、どういう方針で今後やっていくつもりか、この点についてもひとつここで説明を願える範囲で説明をしてもらいたいと思います。
  41. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま円借款を実施いたしておりますのはインド、パキスタン、この二カ国でございます。これは外貨の面からいいますと、いわゆるひもつき借款と申しますか、借款を与えた相手から見ますと、日本からの品物あるいは役務を買う場合だけしか使えない。いわゆるタイド、ひもつき借款という意味でございまして、日本としては借款を与えるけれども、外貨の面では一つもマイナスにならないという点で利点があるわけでございます。また同時に、相手といたしましては、ある程度まとまったものを長期に、しかも条件がほかのものに比べると有利でございますから、それだけ先方としても有利な条件になっておるわけでございまして、最近の趨勢を見ますと、従来の日本のやり方のように、原則として延べ払いで、シッパーに対してそのつど借款を与えるというやり方から、相手の国あるいは相手の公団とか何かに一応ワクとして借款を与えるというやり方をだんだん加味していかなければいけない状態が出てまいっております。たとえばメキシコの場合に、日本では、従来の方式で考えて延べ払いでやろうと思いましたけれども、フランスでしたかが、直接相手の、向こうの電電公社か何かに思い切って長期の借款を与えるということで、向こうのほうが条件がいいものですから、先方に取られてしまったというようなことがございまして、今後こういう方向を拡充していかなければならないというふうに感じておりまして、内部で検討しておる段階でございます。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この点もう少し突っ込んでやりたいが、時間がありませんから、もう一点、輸出、特に重化学工業の輸出をやる場合に非常に大きな問題になるのは経済協力基金の活用をどうするかということですが、現在どうなっておるのか。今後どうするつもりか。特にこれは低開発国に対して非常に重要な問題になってくる。まあいままでのところでは、できたはできたけれども問題にならぬ。この前も御質問申し上げたとおり、韓国に対するいわゆる民間有償供与の二億ドルはこれでやるのだということをちゃんと発表しておる。そこらにも非常に大きな矛盾がある。このやり方をどうするのか、今後どういうふうにやっていくのかということは、特に低開発国に対するやり方としては、貿易をふやしていくという点については私は非常に大事な問題だと思うが、これはどうなっておるのか、今後どういうふうにやっていくつもりか、これもひとつ御説明願いたい。
  43. 山本重信

    山本(重)政府委員 経済協力基金の資金は約百七十億ございます。その中で二月末現在では貸しつけ額が四十二億円でございます。従来貸しつけが思うように順調にいっておりませんでしたが、一つには経済協力基金が対象にいたしまする案件はどちらかといいますとむずかしい案件でございまして、なかなか話し合いが進まないことが多いのでございます。最近になって、一ころに比べますとかなり順調に進み出してきております。それからもう一点は、輸出入銀行との分野が必ずしも明確でございませんでしたので、どちらがやるべきかというようなことで若干事務的に手間どったりしたこともございますが、その点は先般両方の理事の間で話がつきまして、そして両者間で定例的に理事連絡会をいたしまして、早目にこの案件をどちらが扱うかということをきめるようにいたしましたので、今後はいままでよりは円滑に進むことになると思います。  それから韓国の経済協力の問題でございますが、ただいまのところでは、経済協力基金の計画の中に特に韓国の分をまだ含めて考えておりません。ですから、もし具体的に固まりますれば、そのときに現在ある資金のワクの中で融通をするのか、あるいはどうしても足りなければさらに追加をするか、その点はまた韓国との問題が確定したときにあらためて検討されることになろうと思います。
  44. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間もございませんから最後に、これはちょっと大きな問題ですけれども、日本国際収支の問題について伺います。これの相当長期な均衡のとれた、同時にほんとうの貿易の振興計画というのも、いままで各歴代通産大臣等に聞いてみますと、ある意味での行き当たりばったり、調子のいいときにはそれに乗っていくというようなことで、ほんとうに世界のいまの情勢の急激な変化に合わして、貿易で飯を食っていかなければならぬという基本的な性格を持っておる日本としては、これではいかぬ。あなたのほうでも、最近何か中期の貿易計画的なもの、まあ中期というのは五年か何年かわかりませんけれども、そういうものを立てられた。私はその考え方は非常にいいと思う。いままで毎年毎年ただ行き当たりばったりで、やってみなければ結果がわからない、幸いいままではうまくいったというような程度ではこれからの世界情勢に対処できない。ですから、はっきりした目標と計画と政策を立ててやらなければならぬ、こう思うのですが、これはどういうふうに進めていくつもりですかということです。そこで私はその中における問題を三、四ひっぱり出して、そしてこれに対する皆さんのほうの研究がどの程度進んでおられるのかという点をひとつお伺いいたしたい。  第一の問題は、輸出品目としては当然何といっても重化学工業品が中心になるが、具体的にどういう重化学工業品に今後中期計画においては重点を置いてやっていくのか、これが第一点。第二点は、今度は輸入の面では、大体国内のそういう態勢の変化、その他いろいろ経済情勢の変化の中でどういう点に、どういう品目に重点を置いてこの中期計画というものを立てていくのかという点が第二点です。第三点は、いまの日本貿易構造というのは、これは地域別に見て、また品目別に見て非常にアンバランスになっておる。いままでは貿易のあれとしては少なくともアメリカ第一主義です。その次に重点を置いてきたのは、金額は小さいけれども欧州です。つまり先進国同士の貿易ということに最重点を置いておられた。重化学工業品、中心にしてやるということになると、これは根本からくずれざるを得ない。軽工業品を中心としたならば先進国でよろしいかもしれない。しかし日本のいまの技術水準その他から見て、日本よりもっと進んだいわゆる先進国同士の重化学工業品の取引でやっていこうというようなことでは、私は間違いだと思う。同時に、どうしてもこれから一番重点を置いていかなければならぬのは、日本としては第一に低開発国地域だ。特に東南アジアだ。こういう地区は今後日本の重化学工業品のまずまず大きな市場と見なければならぬ。同時にこれと匹敵をする、あるいはそれ以上に大きなウエートを持ってこなければならぬのは共産圏です。こういう点で、日本の産業構造なり貿易品目的の構造が変わってくるに従って、私は当然日本貿易の国別のあれが変わってこなければならぬと思う。しかも日本としては、一番理想とするのはいわゆる重化学工業製品を売って、その見返りとして重化学工業その他日本の必要とする原料を、何というか輸入輸出がバランスのとれるかっこうで購入していくよりほかにない、こう思うのです。こういう点について、実際にはこういう計画がいま検討されつつあるのかということですね。こういう点を私ははっきりこまかくお聞きしたいのですが、あまり時間がありませんから、私はこの程度で、これは主として大臣にもう少し問題をしぼって聞きたいのですが、私は中期の貿易計画というものをぜひ立てるべきだ、いままでのように毎年毎年行き当たりばったり、そしていわゆる所得倍増計画なるものを私はこの前二回にわたって通産大臣や経企庁長官に詰め寄ってみましたけれども、数字や紙の上の文章ではある、しかし生きた計画ではない、来年はどうなるかわかりませんというやり方です。それと平仄を合わしたように、貿易そのものもいままでは行き当たりばったり、これじゃ日本のいまの貿易構造のほんとうの発展、いわゆる国民経済の質の変化、構造的な変化に合ったようなものはできない、こういう点について、まだたくさん問題点はありますが、こういう基本点についての検討をすでに進めておるのか、あるいは今後どういうふうにやっていくのか、これに対する具体的な一々の対策というものはまだ立っていないと思うが、どうなのかという点だけをお伺いしておきます。
  45. 山本重信

    山本(重)政府委員 お尋ねの国際収支に関する中期計画の問題点でございますが、実は本件は、経済企画庁におきまして、所得倍増計画の検討という作業の一環といたしまして、国際収支の問題についての作業を始めております。その場合に、当然貿易の問題が一番中心になるべきはずでございまして、これから本格的な作業に入る段階でございます。実は所得倍増計画におきましては、ちょうどいま先生御指摘のような考え方が一応入っておったのでございますけれども、必ずしも十分に検討されて、そしてそれのまた実現のための実施方策等が練られていなかったうらみが率直に言ってあったかと思います。この際さらにこれを期間を短縮したベースで検討いたしまして、さらにその実施のための措置もあわせて検討するということが必要であろうかと思います。すべて今後これからの問題でございます。具体的な点はよろしゅうございますか。
  46. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もうこれは大臣がおらぬですから、これ以上いろいろ具体的な問題を突っ込んで聞いてもしようがないですから、残余の質問を保留をしまして、一応きょうの質問はこれをもって打ち切ります。
  47. 二階堂進

    二階堂委員長 暫時休憩いたします。  再開は放送をもってお知らせいたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕