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1964-03-17 第46回国会 衆議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十七日(火曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小笠 公韶君    岡崎 英城君       神田  博君    佐々木秀世君       田中 六助君    野見山清造君       長谷川四郎君    南  好雄君       大村 邦夫君    加賀田 進君       沢田 政治君    島口重次郎君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君    麻生 良方君       加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         中小企業庁長官 中野 正一君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君  委員外出席者         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 三月十三日  アジア経済研究所法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七八号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  アジア経済研究所法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七八号)(参議院送付)  中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法  律案内閣提出第七二号)  中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七三号)  中小企業指導法の一部を改正する法律案内閣  提出第七四号)  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七五号)  中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫  法の一部を改正する法律案内閣提出第八七  号)  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八八号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  去る十三日付託になりました内閣提出アジア経済研究所法の一部を改正する法律案議題とし、まず通商産業大臣より趣旨説明を聴取することにいたします。福田通産大臣。     —————————————
  3. 福田一

    福田(一)国務大臣 アジア経済研究所法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び要旨を御説明いたします。  わが国経済を長期にわたって拡大発展させるためには、官民一体となって貿易の順調な拡大をはかることがきわめて重要でありますことは、いまさら申し上げるまでもありません。政府といたしましては、今後とも貿易拡大のための諸施策の実施に引き続き努力する所存でおりますが、特に低開発地域、中でもわが国と地理的にも歴史的にも関係の深いアジア地域との経済交流の推進が必要であります。このためには、アジア地域等経済に関して十分な調査研究が必要と相なるわけでございます。  特殊法人アジア経済研究所は、昭和三十五年に発足して以来、これら地域経済に関して基礎的かつ総合的な調査研究を実施するとともに、多方面にわたる資料の収集を行なってまいりましたが、これら業務は、発足後三カ年を経過いたしました今日、当初に比べて倍増いたしておりますし、今後もさらに充実させる必要がございます。  したがいまして、政府といたしましては、かかる業務の増大に対処して、この際当研究所理事を増員し、研究体制を強化することにより、その業務の円滑な遂行をはかることといたしたいと考え、この法律案を提案いたした次第でございます。法律案要旨は、現在「二人以内」とされている理事の定数を「三人以内」に改めようというものでございます。何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  4. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  5. 二階堂進

    二階堂委員長 内閣提出中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案中小企業指導法の一部を改正する法律案中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案並び商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案、以上六法案を議題として審査を進めます。  まず参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  以上の各案について参考人出席を求めることとし、日時並びに人選等に関しましては委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、質疑の通告がございますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  8. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、中小企業関係の三月危機といわれておる憂うべき今日の状態下におきまして、中小企業のこれから先の倒産状態に対する政府見通し、あるいはそれに対する政府対策、さらには二月二十八日の本委員会において私が質問をいたしました中小企業関係の雇用問題、こういったところを中心として質問をいたしたいと思います。  まず第一に、政府見解をいろいろ新聞その他で拝見いたしておりますと、中小企業企業倒産見通しについては、これから先それほど、三月危機といわれるほどの状態は起こらないのだ。過般の大蔵大臣発言を聞きましても、三月に入れば中小企業倒産件数というものはむしろ減るんだという意味発言をなされておるようであります。これはひとり特定各省大臣発言として受け取るわけにはいかないのでございまして、この種の重大な問題、わけても昨年の総選挙で池田内閣国民に対する公約として、中小企業問題は非常に大きな公約として国民の前に提示された課題でございますので、これらの問題に対する見解というものは、池田内閣の統一した見解として、あるいはその見通しについて国民の前に明らかにすることが大切ではないかと思うわけです。そういう見地から福田通産大臣お尋ねをいたしたいのは、これから先の企業倒産見通しについて、まだ上昇すると見ておるのか、あるいは高原的な状態を持続すると見られておるのか、それとも大蔵大臣の言っておるように下降状態に入ると見ておるのか、その見方についてお尋ねいたしますと同時に、もし下降するとするなれば、あるいは高原状態を続けるとするなれば、いかなる条件のもとにそういう見通しが出てくるかということをお聞かせ願いたいと思うわけです。
  9. 福田一

    福田(一)国務大臣 大蔵大臣がこの問題について発言いたしておりますのは、いまあなたの御説明を聞けば、いまのままの程度であって、急い上昇するというようなことはないというような発言と聞いておるのです。下降するというような発言はいたしておるとは私は思っておりませんが、私はやはり今後それほど急激な増加が起きる、急激な規模によって倒産がふえていくとは考えておりません。また大体いままでの統計等から見ましても、経済規模が非常に大きくなってきておりまして、手形交換割合等を見ましても最近は倍になってきておるというような状況でありますから、そういうようなことから見ますと、絶対値はふえてはおるが、比率というものは必ずしも大きくなっていない。これは数字がこれを示しておるのであります。比率関係でいうと、一番大きかったのが三十年ごろの五%というのが、いまのところ二%、これは何だったら事務当局説明させますが、絶対値が上がっておることはお説のとおりでありますが、しかしパーセンテージはむしろ下がっておる。そこで今後の問題としまして、開放経済体制に向かい、さらにまた国内が相当設備過剰ぎみに陥っておるというような段階において設備を押え、景気の行き過ぎをある程度押えていくということになりますので、いままであまりにも信用膨張を極度にはかって仕事をしておったような中小企業はなかなか資金繰りが苦しくなるというか、いわゆる自転車操業的な仕事がやりにくくなって、その倒産が起きるということはあり得ると思うのであります。したがってこれがすぐ下降ぎみに転ずるかどうかということは私は疑問を持っておりますが、大体六月ごろまではこの種の状態が続いておるが、その後においては大体もう一応うみも出し切って、むしろ下降するような状況になるのではないか、こういう見方をしておるわけであります。
  10. 中野正一

    中野政府委員 数字を申し上げます。まず手形不渡り状況でございますが、いま大臣からもちょっと御指摘がありましたように、手形交換高そのものが相当ふえておりますので、不渡り手形金額等は相当多くなっておりますが、取り扱い高に占める比率を申し上げますと必ずしも上がっていないということを御指摘なさったのだろうと思いますが、過去において、まず枚数で申し上げますと、昭和二十九年が一・三八%、三十年が一・二五という数字を示しておりまして、三十八年が相当不渡り手形が出た年でありますが、一・〇八ということになっております。一月の数字を申し上げますというと、枚数でいいまして一・一九という数字になっておるわけであります。それから金額のほうでございますが、これは昭和二十九年、三十年の景気調整のときでありますが、このときに、二十九年が金額で〇・五六%、三十年が〇・三七%、これが三十八年には〇・二九%になっております。これを最近の一月の数字で申し上げますというと〇・二八%ということで、大体パーセンテージはあまり変わっておりません。ただ倒産のほうの数字は戦後最高ということを言われておりますが、そういう数字が現出しております。御承知のようにこれは負債金額一千万円以上のものの調査でございますが、一月が百九十八件、負債金額が二百八十二億、二月が二百三十八件、三百五十一億ということになっておるわけであります。三月に入ってからの数字はまだ集計の操作が完了しておりません。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いま中小企業庁長官のほうから数字的な説明がありましたが、それによっても明らかなように、いわゆる一月と二月の倒産件数の、あるいは負債総額対比をいたしましても、戦後最大と言われるこの二月の倒産件数というものは、前月対比において、件数対比において二割ちょっとこえております。負債総額においてこれまた二割五分程度上昇を示しておるわけです。いま大臣答弁によりますと、高原状態は続くかもしれないけれども、上昇することはないだろうということで、大蔵大臣見解と同じ意思表明があったわけですけれども、こういう状態に対して、政府はこういう現象をどういうふうに受けとめ、どういうふうに把握しておるかという認識問題に、私は率直に申し上げて疑問を持つわけです。戦後最高と言われる倒産状態が起きておる状態に対して、政府は三月危機というものを否定するという意味において、この上昇することはないだろうという政治的発言のように聞えてならないわけでありますが、今日ただいまの状態をいわゆる中小企業一つ危機として御認識になっておるのかどうか。やはりそういう事実認識の中から次の対策というものが生まれると思いますので、今日の状態に対する認識をひとつお聞かせ願いたいと思うわけです。
  12. 福田一

    福田(一)国務大臣 今日の危機がいわゆる中小企業に来ておる、その理由を示せということでありますが、われわれは、今度の倒産で一番大きかったのは繊維関係に特色があった、これは暖冬異変による見込み生産が違ったというところに一つの大きな問題があったと思います。それから、いろいろ調べてみますと、やはり資本金が一千万円前後で何十億という借金をして、そうして仕事をしておるというような、いわゆる不健全な経営のあり方というものもかなり影響し、倒産件数のうちでは多いパーセンテージを占めております。私は日本経済が伸びていく段階でありますから、その間にあって中小企業としてもやはりそれに対応して背伸びをしていかなければならないことは、これは当然だと思いますが、しかし力以上のことをしておりますと、何かの動機に急にそういう問題、ちょっとしたつまずきから倒産するというような場合が起きると思うのでありまして、まあそういう意味で、中小企業をおやりになる人のうちでも非常に健全に仕事をなさる人と思惑をなさっていらっしゃる方とがあるように見受けられます。こういう点が一つの今度の特徴ではなかろうかと思いますが、いずれにしてもいま日本経済は非常なスピードで伸びておりますから、その伸びに合わせていく段階でありまして、これが中小企業にも何らかの影響を与えないではおかないのでありますから、私はそういう意味において、中小企業にだけいわゆる危機が来ておる、そういうような感じではなくて、日本経済全体としていま注意をしなければならない段階であると思っておるのであります。決して中小企業と言われる五千万円以下の資本金のところだけが問題なのではありません。やはりそれ以上の資本金を持っておる相当な企業においても、いわゆる大企業に次ぐ中小企業との間の企業等でも、なかなかむずかしい問題が相当あるものと思っております。また大企業自体にもそれ相応の問題がある。これは私は今日のごとく日本経済が伸びていき、また開放経済へ入ろうとしておる段階においては、起こってくる一つ現象であろうと思っております。そういう意味において経済全体の問題を考え、なおその中において中小企業が受けるであろう被害ということを考えつつ、特に中小企業の問題では金融を何とか円滑に実施するようにしたい。そこで中小企業の、いわゆる国の関係しておる三機関についてある程度融資を、われわれとしては相当がんばって融資をさせ、三月にはいわゆるそういう措置をとりまして、また四月にも、きょう閣議できめたのでありますが、市中金融機関に対する買いオペを中小企業関係では認める、こういうようなことをいたしまして、また支払い期限の来ておる債務繰り延べをする、こういうようなことをやっておるわけであります。われわれとしてはもちろんこれで足りるかどうか、よく事態を把握しながら、その後においてもそれぞれ対策を立ててまいりたいと思うのでありまして、注意を怠らず対策を時期を失しないように措置いたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今日の状態に対処する部分的な対処のしかたについて大臣答弁がありましたけれども、私はしつこいようですがあえて重ねてお尋ねをいたしますのは、先ほど大臣答弁を聞きましても、今日の中小企業倒産状態というものが、上昇もしなければ下降もしないかもわからぬけれども、少なくとも今日の状態が続くのではなかろうかという一つ見通しを立てておるようであります。そういうことになりますと、戦後最高倒産状態が起こっておるということは事実でありますから、一月から六月に向けて約半年間もそういう状態が続くということは、これは中小企業にとっては危機として、三月危機とか四月危機とか、月別の危機を唱えることはどうかと思いますけれども、やはり一つの周期的な危機として把握することが正しいのじゃないか。そういう認識のズレがあったのでは、先ほど指摘をされた金融機関に対する協力要請あるいは債務繰り延べ等についても、おのずからそこに施策の軽重というものが生まれてくると思うわけです。そういう点について、私はやはりこれは戦後最大危機として受けとめるべきでないか、そういう認識の上に立って中小企業対策についてさらに努力を払うべきではないかと思うわけですが、その点についての認識を率直にお聞かせ願いたいと思うわけです。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 こういう事態危機として見るか、あるいは非常に苦しい時代であるという表現で見るか、これはおのおののものの考え方、認識のしかたによると思うのであります。ただ中小企業倒産が非常に多い——もちろん経済自体が非常に大きくなっておりますから、倒産件数が多いからといって比率がそれだけ伸びておるかどうかということは、先ほども申し上げたように疑問があると思いますが、しかし倒産がある事実だけは認めなければいけません。そういう事態に対処するにはどうしたらいいか、一つの悪い事態であることだけはわれわれも認めておるのであります。これを危機と言っていいのか悪いのか、これは私は表現のしかた、認識のしかたの問題だと思います。事情がちょっと悪くなっても、やはりわれわれ政治をやる者として対策を立てるものは当然でありまして、私たちとしてはとにかくいまはいい時期ではない、悪い事態であるという認識に立って処置をいたしておりますから、あなたのおっしゃる危機説認めようが認めまいが、やるべきことはやらなければいけないわけなんです。私たちはそういう意味で、この事態をさらに悪化させないように、極力そういう意味での手を打っておるわけでございます。したがってどうしても、これは危機なんだから打ったんだろうとおっしゃれば、あなたの御意見に賛成しても少しも差しつかえございません。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 政治的な答弁としては、大臣としてもなかなか苦しいようでございますので、それ以上のことは申し上げませんが、いずれにしても中小企業のみならず日本経済全体にとっても非常に注意しなければならない状態になっておるということをお認めになられたということは、ある意味では私は非常に重大な発言だと思うわけです。しかし私は決して政府あるいは通産大臣責任を追及するという立場でなくて、やはりお互いの事実認識というものは客観的に、苦しいときには苦しいということを認め合いながら、やっていくところに前進があると思いますので、そういう意味では一つの事実をやや的確に把握して、そういう見解を正直に表明される大臣の態度に対しては賛意を表する者ですが、さりとてやはり政治的な立場から言うならば、日本経済全体にとっても注意をしなければいけない事態にきておることは、ことばをかえて言えば、池田さんの一枚看板であった高度経済成長政策一つの大きな穴があいたといいますか、大きな盲点があったというふうに理解せざるを得ないわけですが、そのように理解してよろしいかどうか。またその盲点は特に中小企業に集中されたというふうに理解してよろしいかどうか。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 池田内閣高度成長政策に対して、これが一つ盲点になるといいますか、いわゆる政策が間違っておったということを認めざるを得ない立場になっておるのではないか、こういう御質問と思うのですが、私はそういうふうには考えておりません。なぜ考えていないかというと、経済というものは決して平たんな道ではございません。いつでも山もあれば谷もあり川もあれば、いろいろなものが歩む道にはあるわけであります。その場合において、山があったからこれはたいへんだとか、谷があったから、これはたいへんだとか、こういうふうにはわれわれは思わないのであります。そういう意味から言って、いま日本経済成長しつつあることは、これはあなたもお認めを願えると思います。その経済規模拡大しつつあるということは、お認めを願えると思うのであります。いわゆる国民総生産とか、そういう意味においての成長というものは認めておられる。こういう成長をなくして所得をふやしていくという道はありません。またそういう成長をしていくことによって所得を伸ばそう、実際の所得を倍にしよう、こういう十年間に倍にするのだという一つの目標を池田総理が掲げられたのでありますが、その道に向かって、いま四年目にかかろうとしておるが、まあその間にいろいろな起伏があったとしても、一応順調に進んでおるのではないか、大きな意味では一応目的を達しつつあるのである、そういうふうに私は認識をいたしております。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、やはり経済というものは山もあれば谷もある、このことは、ことばをかえて言えば、今日の中小企業倒産状態という非常に憂うべき状態というものは、谷に当たると思うわけです。池田内閣所得倍増政策というものが、そういう山あり谷ありの過程を経ながら順調に進んでおるというふうに言われるとするならば、やはり所得倍増計画の中には、中小企業のこのような倒産状態が起こるのは当然だ、これは当初の計画からそういうことが起こってもしかたがないのだ、所得倍増計画のいわゆる大資本の利益を追求するという目的を達成するためには、こういう状態が起こってもやむを得ないのだということを、順調ということば表現しておるように理解せざるを得ないわけですが、そのように認識してよろしいかどうか。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 山があれば谷があります。谷があればまた山がある、また上がる時期があるわけであります。だからこれは表現でなにしてはあれですが、私は何も大企業がいま楽な立場にあるとは決して思っておりません。ただ苦しみの度合いがどう違うかということのあれでありまして、いまたとえば窓口規制をしなければならないなどということは、やはり日本経済全体としての問題であって、中小企業には幾らでも貸していいのだ、あるいはまた大企業はもう規制するのだ、そういう意味じゃないと思います。できるだけ平均にやるようにしたい、こういうことでございますからして、大企業はいま楽なんだ、わりあいに助けておるのだ、あるいは先に日を当てるのだ、あるいは大企業の負担は軽くするんだ、こういう意味経済成長というものを見ておるのじゃない、経済というもの全体を見て、そしてそれに波があり起伏がある、こういうことを申し上げておるので、中小企業だけに起伏があるとは考えておりません。その証拠には、最近は株などを見ても、大企業の株でも配当をどんどん減らしておるというような事実をごらんになれば、これは明らかにされておると思うのであります。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは山登りと違うので、同じ山あり谷ありと言っても、普通の登山をするときの山と谷というふうなわけにはいかぬと思うのです。現実の問題として、やはりいまの金融引き締めの中で一番苦しい状態に置かれておるのは、これは相対論としても現実問題としても、大企業中小企業を比較した場合には、中小企業零細企業に対するしわが現実に寄ってきておるということは大臣もお認めになると思う。これはあえて繰り返しませんが、私は前月の末にここで質問をいたしましたときにも申したとおり、ここ数年来の中小企業向け金融機関貸し出し状況をずっと統計資料で見ましても、やはりそういうことが具体的な事実の中で指摘できるわけでありまして、いま言ったように、抽象的には、一般の何か座談会討論会みたいなところで大衆を何というのですかごまかすような答弁をする場合にはそういうことでよろしいかと思うのですが、やはり中小企業庁をかかえ、そして中小企業の育成を中心になって考えていかなければいけない所管の省として、あるいは大臣としては、私はもっともっと中小企業に対する熱意というものがあってもよろしいのじゃないかと思う。そういう点では、単なる一般論としての比喩ではなくて、もう少し今日の事態というものは、一つ中小企業危機状態があらわれておるのだ、こういう認識の中から出発することのほうが、より適切な施策というものが生まれてくるのではないかと思うわけですが、あらためてその点についての御認識を伺いたいと思います。
  20. 福田一

    福田(一)国務大臣 もとより私は通商産業大臣でありますから、中小企業問題を最も責任を持って見ていかなければなりません。しかし同時にまた、そういうことを言っては笑われるかもしれませんが、やはり国務大臣であります。国全体の動きがどうなっておるかという観点をまず持って、その上での中小企業というものを見ていく、こういうことでなければなりません。じゃ私がそう言ったから中小企業は楽なんだ、こういう認識に立っておるかというと、そうじゃない。やはり相当苦しい立場にあるということは先ほども申し上げておる。だからこそ金融関係においても大企業のほうは窓口で規制をするが、中小企業関係は買いオペをやったり、あるいはまた債務の期限の到来したものもその期限の延長をはかるというような措置を、きょうも閣議できめてまいりました、こう申し上げておるのでありまして、秋は苦しい立場におられる中小企業のためには極力努力をしなければならない、こういうことは強く認識をいたしております。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではこの点についての質疑は、中小企業自身が非常に苦しい立場に置かれておる、そういう事実認識の上に立って当面の対策を講じていく、こういう答弁を一応了といたしまして、角度を変えて質問をしたいと思います。  この中小企業倒産理由につきましては、先ほど大臣答弁の中で、暖冬異変であるとか、あるいは設備投資の行き過ぎによる不健全経営が原因したとかという答弁がありましたが、政府各省大臣の考えを、国会答弁なりあるいは新聞その他で拝見をしておりますと、政府が今日とっておる金融引き締めによって今日の倒産状態が起こっておるんだということを回避しようとする、回避しておるのではないかというふうに受け取れる向きがあるのでありまして、それはあえて申しますなれば、田中大蔵大臣発言を引例して失礼でありますが、設備投資の行き過ぎを中心とした過去何年かの赤字累積というものが中小企業倒産の一番大きな原因だというふうに、こう強調され、そしてそのことは直接金融の引き締めは影響がないのだというふうな言い方をされておるわけですけれども、私はそうは思わないのです。結局設備投資の行き過ぎということは、その企業にとっては資金が固定化して、そうして運転資金の資金操作が困難になる、そういう一つの因果関係を生んできておる、そのことが今日の金融引き締めに当面して、倒産という状態を惹起しておる、こういうように正しく理解しないと、これから先の金融対策についても適切な措置というものが打てないのではないかと思うわけです。そういう点からいって、やはり今日の中小企業倒産最大の原因は政府金融引き締めにあるのではないかと理解するわけですが、それに対する見解をお聞かせを願いたいと思います。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 私が大蔵大臣答弁を聞いておって、またいろいろ閣議等で大蔵大臣の考え方を聞いておって理解するのは、いささか違っております。それは大蔵大臣が言っておりますのは、資本金が百万円か二百万円のものが十億円くらいの借金をして、そして投機をやったり、あるいはまた設備を無理に拡充して、そうして運転資金も十分できないような立場仕事をしておったりするというのが相当ある、そういうのがかなり倒産の原因になっておるのだ、こういうことを言うておるのでありまして、金融引き締めというのは御案内のように十二月前後からの問題でございますが、金融引き締め一つの原因にはなるだろうと思いますが、必ずしもあなたのおっしゃるようにおもな原因になる、こうは私は考えていない。金融引き締めがなければみな助かっておるかというと、そうではありません。金融引き締めをしないときでも、いままでも、件数は少ないかもしれない、また金額は少ないかもしれないが倒産は続いております。倒産のない月などというものはありません。それが非常にふえてきておるというのは、先ほど申し上げたような暖冬異変であるとか、あるいは思惑をやり過ぎておる、あるいは自分の資本金が百万円くらいのものが十億の金を借りて仕事をしておれば、それはどこでつまずきが起こるかわからない。大体こういうことから言えば銀行もあまりよくないと思うのです。そういうものにむやみに金を貸す。一千万円の資本金しかないところに三十億、四十億なんという金を貸した例があって倒産したものもあります。こういうことは双方が実は——銀行もどういう関係でやっておるか、それはいろいろ理由がありますが、銀行経営の面においても将来考えるべき面が多分にあると私は思っております。そういういわゆる高望み過ぎる仕事をしたために倒産が起きておるということもあるのであります。ただそういうふうになる原因が何かと言えば、やはり開放経済体制に向かって、このままでいってはいかぬからひとつここいらで設備も完全に世界並みのものにしてやっていこうというような意欲を燃やしてやられた、中小企業者自身が悪意でやっておられるのではない面もあると思いますけれども、しかしそれにしてもあまりにも自分の力以上のことをする、一ぺんに一丈も二丈も飛ぼうと思っても飛べないのだから、三尺くらいずつ五、六度で飛ぼうという仕事のしかたをしてくれれば、こんなこともないのではないかと思います。しかしそこにはやむにやまれぬ事情があったかもしれぬ。私はそういう意味に聞いておるのでございまして、必ずしも大蔵大臣金融引き締めが全然影響がないというふうなことを言っておるかどうか疑問だとは思っております、聞いてみなければわかりませんけれども。これも原因の一つにはなるが、大きな原因とは考えておりません。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 金融引き締め一つの原因であることも事実でありますし、いまの答弁に沿ってそのことが最大でないとするにしましても、いわゆる設備投資を資本力以上に、力以上にやったということが大きな倒産の原因であるということは、これは国会答弁を通じて各省大臣答弁態度であります。この設備投資の行き過ぎというのは、それでははたしてどこから起こったのかと言えば、やはり池田内閣高度経済成長政策をとる限り、大企業設備の近代化のために技術革新をやり、設備の更新をやっていく、そうすれば、その系列下にある中小企業あるいはその下請会社は、当然その大企業の下請をやる以上はそれに即応した設備の更新をやらなければ、これは下請として成り立たぬわけなんですね。そういうことからいきますと、これはやはり池田内閣のとった政策中小企業が忠実であった、こういうことになるわけですから、池田内閣政策に忠実であったものが結果的にこういうばかをみるという状態が起こったのではないかと思うのですが、その点についてはどういうお考えですか。
  24. 福田一

    福田(一)国務大臣 これはそこで問題はもう一つ大きくなるわけですが、高度成長政策というのは経済拡大する方向でありますが、経済拡大していかなかったら、一体今日どういうことが起きておったか。ちまたに失業者が満ちておる、賃金は上がらず、生活はますます苦しくなる、こういう事態が起きておるだろうと思うのであります。私はそういう姿が全体としていいのか、高度成長政策をとっていくことによって、順次そういうような失業者がないようにしながら、日本国民所得をふやすような政策をとるのがいいのか、これが私は根本の議論だと思う。その二つのいずれをとるかということが、一番論点になるべきだと思うのであります。そこで、私たちはやはり成長政策をとることが国のためにも、また経済のためにも、国民生活のためにもよろしいのである、こういうことであります。  しからば、その成長政策をとった中でひずみが起きたときに黙っていていいか。それは黙っていちゃいけません。それに対しては中小企業の場合に対しても、大企業とは別に金融その他の措置をとっておるわけでありますが、そういうふうに、そのほかいろいろ措置をとらなければなりません。そのひずみを直しながらやはり成長させていく、こういうのが日本のためになるのだ、こういう考え方をとっておるのでありまして、それが結果において成長政策の誤りである、誤りであるから、それはやめるんだ、こういう結論にはなっていかないと思います。成長政策の誤りであるから、これを是正しなければならないという議論は出てくるかもしれませんが、それだから成長政策をやめろということには、われわれは賛成いたしがたい。そこで成長政策をとりながら、そのひずみを直すために努力をする、こういう考え方に立っておるわけであります。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 問題はやはり相対的な議論になろうかと思うのですが、高度成長政策の中で、俗に言ってだれがもうけたか、だれが利益を得たかということになれば、それは一つ段階としては、前時代的な企業状態にあった中小企業も、若干一時的にはふところぐあいがよくなったかもしれぬけれども、大企業の利益を追求したという点と比較するなれば、これはもうけたはずれの利益を追求しておるわけでありまして、ちょっと風が吹けばこういうふうに倒産状態が起こるということは、やはり私は高度経済成長政策一つの失敗として認めていくことのほうが正しいのではないかと思うわけです。そういう点についての御見解をいま一度お聞かせいただきたいのと同時に、先ほど大臣のお話では、設備投資を中心とする中小企業の育成策についてはお話がありましたが、私は通商産業省が非常に定見を持たれた指導をしておったとするなれば、これはたいへん皮肉な指摘であるかもわかりませんが、通産省のモデル工場であった石田バルブが、あれだけ大きな、中小企業の中でも中以上、大の部類に属する企業が、昔で言えば通産省のお墨つきをもらっておったこういうモデル工場が倒れたということはどういうことなんですか。これは通産省の行政指導の誤りというものが極端に言えば出てきたのではないか、そういうふうに思うのですが、この点についての見解を聞かしてもらいたいと思います。
  26. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は中小企業というものが、いわゆる大企業と比較いたしましていろいろ格差が出てきた、あるいはいろいろな問題が出てきたとよく言われますが、しかし中小企業のうちで最近ずいぶん育ったものがたくさんあります。優等生は全部中小企業でなくなってしまう。御案内のようにどんどん規模拡大してまいります。増資をしたりあるいはまた半額増資をしたりというようなことをしながら、最初二百万か三百万の資本金で出発したものが、今日十億、二十億の会社になっているのはざらに、たくさんあります。石田バルブのように、なるほどそういうモデル工場であってもうまくいかないのもありますが、うまくいったのは全部もう中小企業でなくなるので、平均点をとると、昔からずっと中小企業だったのでよくなったのも中に入れてほんとうは平均点をとらなければいけないのですが、そのいいほうはみんな抜いてしまって、残ったかすだけで、というのはおかしいのでありますが、残ったものだけで平均点をとるというところにまた一つの問題があろうかと思います。だから私たちは、その残ったものはいろいろありますが、そういうものをどういうふうにして育成していくか、最後に至るものにも幸福を与えなければいけない、そういう政治の根本原理に立って、とにかく残っておるものにどんどん何とかしてしなければいけない、こういう考え方を持っておるのでありまして、私たちとしてはこれが失敗である、いわゆる経済政策の失敗であるとは考えません。今後ともやはりいま中小企業であるものがどんどん成長していくように努力をいたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。  それから石田バルブの場合は、これは私具体的には知りませんが、やはり経営が必ずしも十分でなかったといいますか、その具体的なことはあとで事務から申し上げますが、私が答えようとするところは石田バルブだけの問題ではありません。そういうモデル・ケースである、モデルになっておるから、なっておらぬからというだけで、それで絶対にその企業は栄えるとか栄えない、そういうものではない。場合によっては、それにかわる新しい技術が世界のどこかで発明されたというようなことになれば、いままではそれがいかに優秀な企業であったとしても、これは立ちおくれてしまう場合があり得る、こういうことは中小企業だけではございません。相当大きな企業、たとえば特殊鋼などの場合においては現にそういう例はたくさんございます。私はそういう意味で、石田バルブの場合は、説明を事務にさせますけれども、原則からいって、一応モデルの企業であるからといって、その企業は絶対に倒産しないとか、あるいは将来も必ず成長するとか、そういうものではなかろう。経済は生きものだということがここで証明されるわけであります。
  27. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は大臣答弁を非常にまじめな答弁として理解をしようと思っておったのですけれども、石田バルブの件については、率直にいって私は詭弁に近いと思うのですよ。やはり通産省がモデル工場として指定をすれば、世間的にはどういう評価をするか、やはりこのような金融引き締めが起こっても、通産省のモデル工場として指定をされたような工場は、国の方針あるいは指導というものを適切に受けて、そうして最後まで残るような工場として指定しておるんじゃないか、こういうふうに一般は評価すると思うのです。そういう一般の常識を越えて、経済は生きものだとか、政治は生きものだとか、そういう抽象的なことでこういった問題をごまかすのではなくて、やはりモデル工場として指定するのは、そういう企業の実力の面においても、世間的にも十分信頼できる、あるいは通産行政に対する指導性、そういうものについて信頼のおける工場をモデル工場として指定するのじゃないのか、そうあるのがあたりまえであって、ちょっと今度のような状態が起きれば、その企業倒産の第一号にあがるようなものを通産省のモデル指定工場にするということになれば、モデル工場の指定のしかた自体に問題が起こってくると思うのです。そういう点について、モデル工場に指定した条件なり考え方を聞かしてもらいたいと思います。
  28. 中野正一

    中野政府委員 これは企業診断をいたしまして、モデル的なものとして指定をしておるわけでありますが、先ほど大臣からも御指摘がありましたように、その大部分は相当優秀な成績で育っていっておるわけであります。石田バルブの問題につきましては、個々の会社の問題を国会の席で申し上げるのはどうかと思いますが、私の見たところを率直に申し上げますと、一つにはやはり設備投資の手を広げ過ぎた。ところが売れ行きのほうは去年の中ごろから非常によくなるようなつもりでおったのが、なかなかうまくいかなくなった。そのために金詰まりに逢着をして、ある程度の安売りに追い込まれるというような結果、たしか去年の十一月だったと思いますが不渡りを出したわけであります。これは個人的なあれになりますので、御説明になるかどうかわかりませんが、私の見ているところでは、責任者であり、専務をやっておられた方が急になくなられたというようなこともありまして、また、石田さん自身が中小企業のいろいろな政策方面に非常に幅広く活躍しておられまして、家業がおろそかになったという面もあるのではないか。今度は一切公職をやめられまして、頭もそられまして、会社更生に専念をしておられます。私が関係者から聞いたところでは、りっぱにこれは立ち直る見通しがあるということを聞いております。われわれもそういう面で今後会社の立ち直りにはできるだけの援助はしていきたい。ただ、モデル工場の指定にあたっては、確かに先生御指摘になったとおり、設備あるいは技術だけでなくて、人、技術、設備の三位一体とした総合的な近代的な経営力というようなものにいくような見込みのあるものを指定するように今後はなおさらに努力いたしたいと思います。
  29. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この代表的な例として石田バルブの例をあげたわけですが、これはいまの中小企業庁長官答弁にもありましたように、やはり設備投資の行き過ぎ、それが大きな原因になって金詰まりで倒れた。ですから、私の理解のしかたとしては、率直に答弁をそのまま受け取って、通産省のモデル工場がやはりこの金融引き締め、金詰まりによって倒れた、こういうふうに理解をいたしたいと思います。この点はあえて答弁を求めません。ただ、いま最後に長官が言われましたが、やはり通産省のモデル工場に指定するということになれば、世間的に客観的に十分設備投資の面についても、資本の面についても、技術の面についても、人の面についてもりっぱな工場として存続することができるんだ、そういう条件のものをモデル工場として指定していかなければ、世間は通産行政に対して非常な不信感を抱くと私は思うのです。この点については単なる政治的な指定のしかたではなくて、やはり経営という立場から実体論に即してモデル工場の指定を行なうように、これは要請をしておきたいと思います。  次に私は、時間がありませんので、この問題については本来的に言って、それでは金融の面について、あるいは税制の面について、どういう対策を講ずべきかという点についての質問をしたかったわけですが、この点はいままで部分的に大臣のほうから御答弁がありましたので一応次会に譲ることにしまして、続いて私は中小企業の雇用問題について質問をします。これは去る二月の二十八日に私が触れたところでありますが、特に中小企業の若年労働者の求人率においては、中卒で三・九倍、高卒で三・四倍、これは平均です。しかし東京、大阪、愛知といったような労働の過密地帯では、十倍ないし十五倍の求人率だといわれておるわけです。この求人難の原因は何にあるのか、この点をまずお尋ねしたいと思います。
  30. 福田一

    福田(一)国務大臣 求人難の原因は、やはりだんだん人手不足といいますか、そういうことによって初任給その他が方々上がってきておって、なかなか中小企業では雇い切れないというようなところに大きな原因があると思います。
  31. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これはもう全くいまの答弁では、幾ら頭がよくとも理解できないと思うのです。何のことを答弁されたのかさっぱりわからぬ。これはあらためて大臣に具体的にひとつ御答弁をしてもらわなければなりませんが、このことは、あとで触れますけれども、ひとり通産行政という立場からでなくて、労働省にも非常に大きな関係があろうと思うわけです。きょうは労働省のほうからもお見えになっておるようですが、労働省の立場から、この今日の雇用問題における求人難はどういうところに原因があるか、ひとつ御見解を聞かせてもらいたい。
  32. 大宮五郎

    ○大宮政府委員 ただいま通産大臣がお答えになりましたように、これは表現としては確かにおかしいのでございますが、基本的には需要が非常に大きくなってまいりましたのに対して、供給が頭打ちになってきておる。したがいましてそのような状況のときには、どうしても雇用の面から見ますと、労働条件等に差があります場合には、そのすぐれたほうに優先的に充足が回りがちでありまして、労働条件その他労働者として関心を持つような条件につきましてややおくれた分野では、なかなか人が取れなくなるわけでございます。したがいまして全体としての学卒に対する求人倍率は、先生先ほど指摘になりましたような倍率に本年三月卒の分についてはなっておるわけでございますが、昨年の三月卒の状況について見ましても、大きなところは大体求人の半数くらいを充足することができておるのでありますが、小零細企業のほうにまいりますと、充足率は二割を割るというような結果になっておるわけであります。もちろんこれは労働条件の差ということだけでは解釈できないと思いますが、その労働条件の差というのがかなり大きな問題であることは事実であろうと思います。したがいまして中小企業としては、それらの不足の中から人を確保するために最近労働条件を引き上げてきておりまして、初任給等につきましてはすでに三十七年三月卒の場合について大体同じくらいになり、その後はむしろ企業によりましては、小さな企業のほうがやや多目に出すといったような状態にまでなってきておるのであります。しかし全体として見ますと、まだまだ中小企業が大企業に比べて劣っておることは事実でございまして、今後そのような条件も、逐次全体の経済成長の中でさらに改善されることが——それだけでは求人確保の問題は解決できないとは思いますけれども、その問題にもかなり大きな寄与をすることになるのではないかと思います。
  33. 藤田高敏

    藤田(高)委員 労働者は、やはり雇われる以上はその企業の労働条件がどういうものであろうか、これがやはり一番大きな指標になると思う。そういう点から見ますと、いま抽象的な答弁でございましたが、やはり賃金においては、労働省自身がついこの間発表された資料によっても、たとえば三十六年が、製造業をとりますなれば、五百人以上を一〇〇として、百人から四百九十九人までが七七%、三十人から九十九人までが六九%、五人から二十九人までが五七・七%、こういう状態が、三十八年の平均では若干向上をして、百人から四百九十九人までが二年前の三十六年の七七に対して八一・九%、三十人から九十九人までの六九%に対して七六%、五人から二十九人の五七・七%に対して六七%、こういうふうに漸次向上しておることは、私は非常にいい傾向だと思うわけです。しかしながら依然として相当大きな、賃金の面においてはこのような格差があります。したがって、あなたがいま答弁された、初任給は大体同じなんだと言うけれども、労働者というのは、終身雇用ではありませんけれども、初任給ももちろん大切です、しかし入ってからの賃金の上昇カーブというものはどういうものになるのか、また退職金において、その他の福利施設においてどういう条件があるのかということによって、やはり自分の職場の選び方というものはきまるわけでして、そういう点からいきますと、賃金においてもそれだけの格差がある、加えて退職金についても——これもごく最近の官庁資料ですが、一つの例を取り上げますなれば、新高卒のところで、五百人以上を一〇〇として、たとえば二十年だったならば二十年の勤続年数でどれだけの開きがあるかといえば、高卒のところで五六・五%、これは半分ですね。そして新卒の場合もその程度、こういうことで、今日時点においても退職金は——これは断わっておきますが、労働者を常時百人以上雇っておる、先ほどのモデル企業ではないけれども、おそらく二千四百くらいの企業ですから、ややモデル企業に近いところをとったと思うのです。そういうところでさえ半分程度なんですね。いわんや中小企業立場から言うなれば、中小企業退職金共済法に基づくこの共済金を適用しておるところからいえば、これは五百人以上を一〇〇としたら、二割か三割以下の退職金にしかならない。さらに加えて住宅とか病院とか、あるいは中小零細企業の共同保養所といいますか、こういった厚生施設においては、ほんとうに見るべきものが、ない。こういう総合的な労働条件の劣悪さがこの求人難を来たしておるのではないか、これはまさにそのことが最大の原因ではないかと思うわけですが、労働省の見解を聞かしてもらいたい。  それと、時間がありませんので質問点を集約して申し上げますが、特に中小零細企業の近代化を促進していく大きなてことして、私は全国一律の最賃制というものをしく必要があるのではないかと思うわけです。この点についての労働省の見解と、あわせて大臣の二月二十八日の答弁では、私は率直にこの答弁自身を奇異に感じておるわけですが、念のために議事録から御披露しますと、いま私が言ったような質問に対して、「あなたが立っておるスタンド・ポイントといいますか、いわゆる統制的なものの考え方と、われわれがいま立っておりまする自由主義的な考え方との問題に帰着してくるのではないかと思うのであります。」こういうふうに福田さんが答弁をされておるわけです。私は、これはどういうことを言っておるのかさっぱりわからぬのです。というのは、最賃制というのは自由主義経済下においてこそ初めて最賃の必要というものが生まれるのであって、いわゆる社会主義的な計画経済の中では、そういう最賃の必要というものはさしてやかましく言われなくとも、労働者の賃金問題については優先的に考えていくという経済システムの中で、あえて言えば資本主義経済の中においてこそ最賃制というものはやかましく言われるのではないかと思うわけですが、その点についてのお考えをひとつきょうははっきりしてもらいたいと思う次第です。
  34. 大宮五郎

    ○大宮政府委員 まず第一点につきましては、確かに大企業中小企業との差につきましては、いわゆる定期的な給与ばかりでなくて、広い意味の労働条件一般の差が問題でございます。先生御指摘のように、退職金等につきましては、いわゆる定期給与の差よりもまだ大きな差がございます。さらに福利厚生等の問題につきましても、大企業と比べますと中小企業はまだまだ相当なおくれがあるわけでございます。中小企業の方々自体としてこの求人難に対処するために、広い意味の労働条件について、その改善、向上に努力してきておられるわけでございますが、中小企業の方々独自の力ではなかなかうまくいかない点もあるわけでございます。これは政府全体として、それらに対していろいろな角度から御援助申し上げるようなことをやっておるわけでございますが、労働省といたしましては、たとえば退職金の問題等につきましては、零細なところはなかなか独自の退職金制度を持つことができませんので、中小企業退職金共済法によりまして、その退職金にかわるような制度を外から援助申し上げるようなことをやっておるわけでございます。さらに人を集める場合には、最近は遠隔地から集めてこなければならない状況になっておりまして、そのためには宿舎の施設が必要でございます。それらの雇用確保のための宿舎につきましては、融資制度等を通じまして御援助申し上げ、また個々の企業の力ではなかなかできない場合には、それを共同してやるといったようなこともおすすめしておるわけでございます。その他福利厚生施設につきましても、雇用確保ということのために改善努力されるような場合に、資金が足りないというときには資金面の御援助を申し上げるといったような、各種の御援助を申し上げる対策をほかの省の対策とあわせましてやっておるわけでございます。  それから第二の最低賃金の問題でございますが、現在の最低賃金法は四つの決定方式を規定しておるのでございますが、実際問題としましては、その大部分は九条の業者間協定でやるものによって占められておるわけでございます。これは日本のように非常に大きな賃金格差が地域別、業種別あるいは企業別等にございます場合に、最低賃金というものを進めていく手がかりとして、ぜひともそういうところから手をつけていかざるを得ないんではないかという当時の労働問題懇談会の先生方の答申等の示唆もございまして、そういうことで実際上はスタートしてきたわけでございますが、先ほど来問題になっておりますように、労働力の需給関係の変化ということを契機にいたしまして、中小企業の特に初任給等は著しい改善を見せてきておるわけであります。そこでこれからの最低賃金としまして、いままでのやり方だけでいいかどうかということにつきましては、労働省としても大きな関心を払いまして、昨年最低賃金審議会に、これからの最低賃金をどうやっていったら適当であるかという諮問をいたしまして、昨年その答申を得ましたので、現在では職権に基づく最低賃金決定方式、これを具体的に進めていくにはどういうふうにやったらいいだろうかということをさらに検討を進めておる段階でございます。それらにつきましては実情調査も十分いたさなければなりませんので、その実情調査につきましても、現在すでに地方の局を通じまして調査を進めておるところでございまして、それらの結果が出ましたならば、最低賃金審議会の先生方のほうにもう一回御相談申し上げまして、さらに今後の新しい展開の方向を具体的に打ち出していきたい、こういう方法で進んでおるわけであります。
  35. 福田一

    福田(一)国務大臣 私がこの前のお答えをいたしました気持ちを申し上げますと、最低賃金制をすぐ実施したらいいではないか、 こういうお話であったと承りましたので、それは地域別あるいは企業別にいろいろ格差がある段階において、一挙にこれをやるというわけにはいきません、たとえば国営とか国家管理とかいうような形にすればこれは一挙に解決ができるかもしれぬが、そこのところが自由主義経済のたてまえでやっておりますから、地域的にもまた事業的にもみなそれぞれ経営の規模も違うし、それから経営力も雇うし賃金負担能力も違うでしょう だから一挙にはそれはできないんです、こういう意味を申し上げたいと思って、私はそこが違っておる、いわゆる統制経済的に完全にものごとを統制してやるなら一挙にこれを実現できるけれども、いまのような自由主義経済において一挙にすべてを同じ賃金にしてしまうということができるかどうかということは問題であろう、こういうことを申しておるのであります。企業によっては、最低賃金のきめ方ではその企業自体がつぶれてしまう場合も起きる。そこら辺に最低賃金のきめ方にも問題がある。いまでも、最低賃金は五千円だ——五千円ではこれでは非常識です。そういうきめ方なら問題はないでしょう。そうでなくて一万何千円にしなければならぬということになった場合に、はたしてそれでみんなやっていけるか、企業がやれない場合もあるわけであります。そういうようなことを考えると、やはり業種別にそれぞれ最低賃金をきめる、あるいは地域の問題も考慮してきめる、こういうことが必要になるでありましょう、こういうことを申し上げたかったから、そのように申し上げたのであります。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の持ち時間もきておりますので、最後の集約に入りたいと思いますが、大臣認識の中に、私はどうしてもきょうの持ち時間の中では消化できない面があろうかと思いますが、率直に言って——これは釈迦に説法ですが、私はここに私なりに最賃制をしいている国の国名と、いつやったかというようなことを調べてきておりますが、ここに調べておるだけでも二十何カ国あるわけです。そして大臣がこの間答弁されたこの趣旨からいくと、資本主義的な経済の中では非常にむずかしいのだという意味のことを言っているが、いわゆる資本主義国家のチャンピオンであるアメリカを筆頭に西ドイツ、イタリア、オランダあるいはスイス、カナダ、イギリス、フランス、私がいま読み上げただけでも、これはもう典型的な資本主義国家だと思うのです。そういう国においても、すでにもう十何年も前に、あるいは早いところでは三十年も四十年も前に最賃をしいているわけなんです。そしてきょうのお互いの質疑討論の中でも盛んに高度成長政策を強調され、あるいは開放経済に移行する日本資本主義がなぜ全国一律の最賃がしけないのか、ここに私は一つの問題があると思うのです。それに加えて、なるほど一気に高いものをやれば中小企業がある意味においては倒産する状態が生まれるかもわからない。しかしそこは通産あるいは労働行政という総合的な立場から、中小企業に全国一律の最賃をしいた場合にはどういうネックがあって中小企業倒産をしなければならなくなるか、こういうことを浮き彫りにするところにやはり中小企業の近代化を促進さしていく大きな理由があるのではないかと思う。そういう作業もしないで、つぶれるところがあるのでやらないのだということは、これはやはり前向きの姿勢でこの最賃に取り組んでいるといえないのではないか。この最賃は所管としては労働省かもわからぬけれども、私は通産行政の立場から見て、地域最賃の低いところには人は寄らぬと思う。さっき私が指摘したように、中小企業の求人難が東京、大阪、愛知等においては十倍も十五倍にもなるという一つの条件は、地域最賃が高いわけです。そして他の地域はあまりにも低いわけです。ですから労働力もやはりそういったところへ偏在をしておるわけでして、そういう意味からもやはり全国的に均衡のとれた産業経済の発展をもたらすということであれば、全国一律の最賃を早急にしくように、通産省としても労働省としても格段の努力を払うべきではないかと思うわけですが、その点についての見解を最後に承りたいのと、いま一つ中小企業の退職金共済はべらぼうに条件が悪いと思うのですよ。時間がありませんから言いませんけれども、たとえば二十年たって十一万円くらいしかもらえないような、こんな悪い条件では——これがあるために、民間の中小企業で退職金制度をつくる場合にかえってじゃまになる。したがって、そういう実情からいって、この中小企業退職金共済法による別表一ですか、この条件を大幅に引き上げる用意があるかどうか、これをお尋ねいたしたい。  それと最後に、中小企業の厚生施設あるいは保養所、こういったものについては、いろいろ政府施策一般予算の中でも若干の見るべきものが——見るべきものといいますか、若干の前進の方向が見られておりますけれども、この厚生年金の還元融資等を大幅にワクをとって、そうしてこれら中小企業向けの福祉施設を充実さしていく、そういう政府施策によって中小企業の総合的な労働条件というものを改善して、そうして今日の求人難緩和に役立つようなことをすべきではないかと思うわけですが、時間がありませんので、私の見解を申し上げて、そうして大臣及び各省の意見をお聞かせ願いたいと思うわけです。
  37. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほども申し上げましたように、最賃制の問題は、私は頭から否定したわけではない。すぐにやったらどうか、こうおっしゃるから、それは無理でしょう、私はそういう理解のもとに御答弁をいたしておるのであります。そうでなければ、政府部内、労働省でそういう問題の審議会までつくってやっているのに、私がそれに反対しておるということはないのです。私はその理解を、なぜすぐやらないかというふうにあなたがお聞きになったと思ったから、それは一挙にやるわけにいきません、地域とかあるいは企業の格差とか……。
  38. 藤田高敏

    藤田(高)委員 三十四年からこの問題は起きておるのです。
  39. 福田一

    福田(一)国務大臣 三十何年からやっておろうと、いますぐにやったらどうかということをおっしゃるから、それは無理ですということからああいうような答弁をいたしたわけであります。でありますから、何もそれ自体に反対をしておるわけではありません。しかし先ほど申し上げたように、企業とか地域の格差がある、最低賃金制をしいても、それがはたして公平になるかどうか、むしろ逆に問題もあるわけです。これはたとえば交通関係とか、いろいろ問題がそのときに起きるでしょう。私はそういう意味で、慎重にこれを検討しながら進めていくということに反対を申し上げたのではない。すぐにやれない理由をああいうふうに説明をいたしたと御理解を賜わりたい。  それからもう一つの、厚生年金その他を通じて大いに福利施設を中小企業のためにふやしていくことはどうか、これは大賛成でございます。われわれも今後もひとつ——いままでもやっておりましたが、今後も大いに努力いたしたいと思います。
  40. 大宮五郎

    ○大宮政府委員 最低賃金の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、前回きの姿勢でこれからの方向をもう少し具体的に検討してみようということで、実態調査も現に行なっており、それの結果を待って、最低賃金審議会で検討していただくことになっておりますので、そのような方向で進んでまいりたいと思います。  それから中小企業退職金事業団の問題でございますが、これはすでに法案といたしまして、給付改善及び適用の拡張を主たる内容とするものを提案いたしておりますので、その改正が認められるならば、先生の御指摘になったような方向、もちろん御満足になるかどうかは別でございますが、方向としてはそういう方向への改正になるように考えております。
  41. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最後に一つだけ大臣質問をいたしますが、最賃の問題は、これが国会で論議をされたのは、たしかずっと以前からであったと思いますが、具体的に法案として問題になってきたのは、数年前から問題になってきたと思うのです。そういう点からいけば、大臣の御答弁趣旨に沿った措置というものが今日の段階でもっと積極的になされておってもよろしいのではないか、そういうふうに思うことが一つと、それからいま一つ、これはここ何年来の政府に対しての要求でありますから、もういますぐというよりも、去年あるいは二年、三年も前にやってもらいたかったくらいの要求でありますが、いま大臣の言われるように、いますぐできないのであれば、全国一律の最賃をしくために、いつごろを目標としてそういう努力をなされるのか、この点最後に誠意ある御答弁をお願いしたいと思うのです。
  42. 福田一

    福田(一)国務大臣 将来いつやるかということについては、やはり調査を慎重にいたしました上で結論を出すべきである、前向きで解決をしていくのでありますが、実態に合わないようなことをして、いわゆる角をためて牛を殺すようなことはできないから、それを慎重に調査を進めた上でやってまいりたい、こういうように考えております。
  43. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これで終わりますが、最賃の問題については抽象的な答弁で非常に残念でありますけれども、労働大臣に四日ほど前にお会いしたときには、それ以上の条件を聞いているわけであります。ですから、これは労働省と通産省と見解が違うこと自体おかしいと思うのです。やはり池田内閣の統一した見解を承りたいのですが、労働省としては何年を目標として、あるいはいつごろを目標として全国一律の最賃制をしこうとしているのかという点の見解をお聞かせ願いたい。私は前週の木曜日に大臣に直接会ってお話を聞いているのですから、その点は慎重な答弁をしてもらわないと、その間の食い違いができた場合には責任問題が起きますから、そういう前提に立って答弁をしてもらうことを要求いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  44. 大宮五郎

    ○大宮政府委員 事務当局といたしましては、先ほど申し上げましたような線でとりあえず進めておりまして、それ以上のことにつきましては、まだ具体的に私ども大臣のほうからもはっきりした指示を受けておりませんので、あらためて大臣によくお伺いしたいと思います。
  45. 森義視

    ○森(義)委員 ちょっと資料要求を…。中小企業の雇用問題について労働省からひとつ資料を出していただきたい。それは若年労働力の定着率ですが、それも単なる若年労働力の定着率ではなしに、特にこういう資料を出していただきたい。というのは、最近中小企業は、いまの質疑応答の中にもありましたように、労働力を吸収するのに非常に困っている。たいへん苦労して集めた労働者が、大体一、二年にしてAクラスは中、大企業に移動する。中小企業は、あたかも職業訓練所のようになっている。こういうふうに中小企業家は優秀な労働者をよそにとられてしまうということで非常に困っているのです。そしてこういう移動する優秀な労働者をジプシー族と言っておりますが、そこでこれをA、Bクラスに分けて、Aクラスがどのくらい定着している、Bクラスがどのくらい定着している、こういう形のものができないものかどうか。もしできれば、そういう資料を出していただきたい。単なる定着率ではなくして、優秀労働者、非優秀労働者。そしてもう一つ、できればそれが単に個人の意思で移動したのか、あるいは強力なスカウトで移動したのか、そういうこともわかれば一番いいのですけれども、そこまでは非常にむずかしいと思うのです。だからAクラスの移動とBクラスの移動をできれば資料として出してほしい。いつごろできますか。
  46. 大宮五郎

    ○大宮政府委員 先生の御要望のような点は、皆さんからばかりではなくて役所自体も非常に必要としておりますが、実はその辺の資料が非常に欠点になっておるわけです。そこで来年度雇用動向調査という予算をいただきまして、いま先生の御指摘になりましたような関係数字が得られる調査を実施しようと思っておるところでございます。その結果は、年二回に分けてやりますので、前半の分が出るのが今年の末ごろになるんではないかと予定しております。それからその場合にも、できるだけ労働者の持っている技能の種類とかあるいは年齢別とか、そういう形でもって移動の状況をつかんでみたいと思いますが、いわゆる優秀なAクラス、Bクラスというような分け方はできないかもしれませんが、労働者の種類はできるだけ分けた形でやってみたいという予定でございます。
  47. 二階堂進

    二階堂委員長 加藤進君。
  48. 加藤進

    ○加藤(進)委員 それでは藤田委員先ほど質問に続きまして、私も中小企業関係の諸案の上程にあたりまして、特に以下四つの点について御質問を申し上げたいと存じます。  第一の問題は、藤田委員も問題として出されましたような、中小企業倒産にあらわれるような現在の中小企業が当面しておる問題でございます。それから第二の問題は、やはり藤田委員の出されましたような中小企業における労働力の確保の問題、第三番目に、中小企業の中でも特に広範に存在する零細企業の問題であります。最後に開放経済の問題、その問題の中に置かれた中小企業の当面しておる問題について御質問を申し上げたいと存じますが、時間の都合上、最初の二つの問題につきましては、藤田委員質問と重複するような点をできるだけ避けまして、簡潔に質問を申し上げたいと考えます。特に政府委員におかれましても、できるだけ簡単明瞭を旨としてひとつ御回答をいただきたいと考えております。  第一の倒産の問題でございますけれども、ただいまの御答弁にもその点が触れられておりますが、私はこの相次いで起こっておる中小企業倒産という事態は、決して従来のようななまやさしい事態の問題ではない、こう考えております。   〔委員長退席、小川(平)委員長代   理着席〕 御承知のように、昨年十一月には戦後最高倒産を記録いたしました。しかもその倒産がそれで終わらないでいよいよ深刻化し、また慢性化しておるという事実でございます。すでに本年の二月には、さらに昨年十一月を上回る戦後最高を再び記録いたしました。しかしそればかりではなく、もしこの調査に含まれておらないような中小零細企業倒産や店じまいをこれに加えるならば、その規模の広さと深刻さはさらに一そう明らかになると私は考えております。また倒産にまで至らないにしても、倒産寸前の状態に追い込まれている経営、またその経営の危機と不安を訴える中小零細業者の声が日増しに高まっておることは政府も十分御承知のとおりでございます。ところが、池田総理は予算委員会等におきましてこう言っております。景気調整時の倒産の増加はある程度やむを得ない、倒産の増加ということについて政府はやむを得ないことだ、こういうきわめて冷酷な答弁をしております。私はそこで、このような中小企業の相次ぐ倒産慢性化という現在の深刻な状態について、それが一体どこから起こってきておるのか、どういう原因からこれが発生しておるのか、こういうことをあらためてお聞きしたいわけでございます。しかしこの問題につきましては、すでに先ほど藤田委員答弁の中にある程度含まれております。福田通産大臣答弁によりますと、暖冬異変がこのような倒産の原因だと言われております。まさに自然現象でございます。こういうところに原因を求めていいのか。またこう言っております。力以上の設備投資をやった、不健全な経営だから倒れた、いわば中小企業そのものに責任がある。しかるにもかかわらず、通産大臣の心の中にさえそればかりでは割り切れぬ問題がある。すなわち大資本池田内閣の高度成長の結果伸びつつある、その伸びに見合ってどうしても中小企業倒産は起こらざるを得ない、こういうことを答弁の中に含んで言われてまいっております。私はこの点についてあらためて通産大臣のはっきりとしたお答えをお願いしたいと思います。
  49. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたとおりでありますが、大企業が伸びる中において中小企業倒産はやむを得ない、そういう考え方は私は持っておりません。経済全体の動きから見て、いま高度の経済成長をいたしておりますから、その中において順次移りかわりというものもできるでありましょう。またやり方のへたな人もあるでありましょう。それはどうしても起こり得る事態でありまして、人為をもってしてはなかなかできない。これを全部国家管理か何かにしてしまっておればそういうことは起きないでありましょうが、自由主義経済の中において、自分の能力においてそれをおやりなさいという姿で経済をやっております場合においては起こり得る。そのかわり大企業でも起こり得るのでありまして、何も中小企業だけで起こる事象ではございません。
  50. 加藤進

    ○加藤(進)委員 これ以上、大臣からの御答弁をこの問題についてはいただくつもりはございません。しかしこの企業倒産といういまの事態は、私は従来もあったとか、従来からその数はそう変わらぬとか、またパーセントから言うならばむしろ減っておるとかいうような安易な態度で、この問題を通産大臣ないし通産省は見のがしてもらっては困るということであります。いま中小企業の経営のほとんどが、ほんのちょっとした資金繰りの手違いでさえ経営の破綻や倒産に追い込まれておるという事態を深刻に考えていただかなければならぬと考えております。中小企業が、今日高度に成長を遂げた独占資本に見合って、どうしても無理な設備投資をやらざるを得ないような状態に追い込まれてきておる、こういうところに私はこの中小企業倒産最大の原因を見なくてはならぬ。しかも親企業からは下請単価は切り下げられております。支払いの条件は悪化する一方です。しかも、資金のみではございません。労働力もまた独占資本に集中され、奪われているといっても過言ではありません。したがって、中小企業は必死になって賃金の引き上げに努力し、また退職金その他の問題について苦慮し、福利厚生施設の拡充を自力で行なわなくてはならぬ、こういう状態に追い込まれてきておるのが中小企業の実態ではないか。この点私は、中小企業庁はじめ通産省がはっきりと認識をしていただかなければならぬと考えております。中小企業の当面しておる危機はまさにここです。すなわち、独占資本のかって気ままな横暴、池田内閣の独占資本本位の政策、こういうことの結果が、必然的に中小企業にこのような危機倒産をもたらしている、この認識の上に立って初めて私たちはこの中小企業倒産について対処できる問題がはっきりするのではないかと考えております。その点について、あらためて一言御返事をいただきたいと思います。
  51. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、大企業が横暴であるとか、あるいは大企業のための政治をしておる、こういう考えは持っておりません。日本経済全体を、大も中も小も含めてりっぱに高度成長させるような努力をいたさなければいけない、またそういう政治をやっておるのであります。
  52. 加藤進

    ○加藤(進)委員 時間がございませんから、この問題につきましては別の機会に譲りまして、第二の問題に移りたいと思います。私は特に中小企業庁の長官にこの問題についての主とした御答弁を賜わりたいと考えております。  それは、先ほど藤田委員指摘されましたような、現在の中小企業の深刻な一つの問題、すなわち雇用問題、労働力の不足の問題であります。この問題につきまして、通産大臣は、求人難の原因は人手不足だなどというようなまことにみごとな御答弁をされましたけれども、この問題は決してそのような答弁において明快になるとはとうてい考えられないわけであります。そこで私は、政府、特に中小企業庁長官が、中小企業のためにその労働力を確保するのにどのような努力を払っておられるのか、またそのための予算の措置をどのようにしておられるのか、そのことを私は中小企業立場からお聞きしたいわけであります。
  53. 中野正一

    中野政府委員 確かに先生御指摘のように、最近の中小企業経営の最大の問題は、必要な労働力が十分確保できない、また賃金が上がって、そのためにやはり人件費等が非常に上昇しておるという問題があります。中小企業対策を進めていく上に、どうしても労働力の確保、あるいは働いておる労働者の福利厚生施設の向上というような点が非常に大事な問題となってくるわけでありまして、実は私も着任をいたしましてから、さっそく、この問題は大事であるというので、労働関係の、いま言いましたような問題を取り上げる、これは通産省だけじゃできませんので、これは主として労働省、それから厚生省、それから住宅問題については建設省、自治省というところの関係の局長に集まっていただきまして、現在連絡協議会を持ちまして、これを定期的にやりまして、実は来年度の予算確保のときにも、われわれとして相当各省の予算獲得に応援をいたしたのであります。十分横に連絡をとりながら施策をやっていくつもりでおります。ただ、中小企業庁自身としても、たとえば高度化資金の中に組合の共同施設の助成金がございますので、ここらあたりで、たとえば給食の施設等については今後大いに助成していきたい。それから、先ほどほかの先生から御指摘のありました厚生年金の還元融資、年金福祉事業団の融資拡大、建設省所管の中小企業者向けの住宅の資金の確保、さらに労働省の雇用促進事業団を通ずるやはり主として住宅等の資金の確保、これは御承知のように非常に長期低利の金でございまして中小企業者に喜ばれておりますので、そういうものの全体のワクを広げる。同時に、これが中小企業向けに多く融資されるように努力をいたしまして、そういうような方面で中小企業に働く人々の福利厚生の向上という点についても十分努力をいたしたい。また、退職金事業団の法の改正等につきましても、われわれとして労働省にいろいろお願いをいたしまして、現在改正の法案を出しておりますが、あのような結論を得たわけであります。非常に不十分であると思いますが、今後ともそういう方面には力を入れてまいりたいと思っております。
  54. 加藤進

    ○加藤(進)委員 長官も、きわめて不十分ながらということを率直におっしゃいました。私は、現在の中小企業の求人難という問題は、いま言われたようなささやかな措置や努力だけではとうてい中小企業の要望にこたえるものではない、こういうように考えております。では、大企業はどうであるか、大企業にも求人難の状態は同じようにある、こういう御説明先ほどありました。しかし、大企業はその資本力にものを言わせて、もう至るところに駐在員を配置しております。ありとあらゆる手を使って勧誘運動をやっております。あるところでは在校中の中学生に対してまで、新聞で青田刈りといわれるような求人さえ公然とやっております。ところが、これに対して政府は、電子計算機まで使っておられるそうでございますけれども、労働力の流動状態を全国的に調査して、その調査の結果は大企業向けの労働力確保のために使われてきておる、こういうのが実情ではないのでしょうか。中小企業は、こういう大資本の求人攻勢に自力ではとうてい立ち向こうことのできない実情にあるということは、皆さんも御承知のとおりです。したがって、もし中小企業が求人難を解決しようとするならば、それは経営の状態に目をつぶりながらあえて賃金の引き上げをやり、厚生施設その他の拡充のために必死の努力を払って、その結果は経費の異常な膨張というような危険にさらされるか、それとも企業を縮小するとか転廃業を行なうとか、そのいずれかの道に追い込まれざるを得ない、こういうのが実情だと私は考えております。政府説明のようなささやかな対策や予算措置で中小企業の労働力を確保できるなど、私はとうてい思いもよらざることであると考えております。したがって、このような状態で、中小企業の求人難に対してこそくな手段しか講じておらない結果どういうことになるかといえば、帰するところは、国内の労働力はあげて大資本に集中され、大資本に独占されるという結果になることは言うまでもないことであります。中小企業の労働力を真に確保するためには、どうしてもやらなければならぬことがある。それは先ほど藤田委員指摘されましたように、大企業との賃金格差をはじめとして、労働条件の格差を改善して、中小企業に働く労働者でも生活の安定と張り合いのある労働条件の中で働くということを保障していく以外には私はないと考えております。しかし、こういうことが言われても、これを中小企業自体に自力でやれといっても、これはとうていできるものではございません。それには政府が進んで中小企業といわず、大企業といわず、すべての労働者に、憲法で保障された健康で文化的な最低生活を保障するという、藤田委員指摘されましたような全国一律の最低賃金制を制定し、これを実施する、こういう責任のある態度をとる以外に私は解決の道はないと考えております。なるほど最低賃金制が制定され、そしていわゆる業者間協定という最低賃金制度があるところで実施されております。しかし、このような最低賃金制さえ労働者が抜きにされて、資本家と政府がかってに話し合って労働者の賃金をさらに押えていくというような結果におちいっていることは周知の事実です。しかも、こういう最低賃金制が資本家の予想しておったような実際の効果をあげておるかどうかという問題があると思います。まさにそのような効果さえいまは発揮できないような状態にある。したがって、このような業者間協定による最低賃金制は、中小企業の労働力不足を解決することもなく、また、その流動化を食いとめることができないというような事態にあることも御承知のとおりであります。あえて全国一律の最低賃金制を保障していくということは、中小企業を守るという立場から見て、どうしても実現されなくてはならない、こういうふうな問題であり、これは中小企業の業者ばかりでなく、中小企業で働く全労働者の死活の問題である。このことを強調したいと考えます。  第三の問題に入らしていただきます。零細企業についてお尋ねをいたします。御承知のように、中小企業の中でもその七八%を占めるのは零細企業の存在でございます。政府はこのような零細企業を、また、政府ことばによれば小規模企業を、産業としてこれを維持し、育て上げていこうとするような御決意があるのか、その対策と将来の見通しについて私は中小企業庁の長官にお聞きしたいと思います。
  55. 中野正一

    中野政府委員 いま先生が御指摘になりましたように、いわゆる小規模事業、これは今度出しました白書でも出しておりますが、従業員四人以下のものとして全体で七八%、二百四十五万の企業数があるわけであります。   〔小川(平)委員長代理退席、委員長   着席〕 非常に大きなウエートを占めておるわけであります。その意味合いにおきまして、小規模事業に対しましては特別な配慮を加えるように、基本法でも特別の一章を設けてあるわけでございまして、われわれとしましても基本法の趣旨に即しまして、一般的な中小企業施策というものを講ずるにあたりまして、十分に小規模事業者に対してこれが適用されるように配慮をいたしておるつもりでございます。たとえば無利子の貸し付けであります設備近代化補助金という制度がございますが、本年度政府の金が四十五億でございます。貸し付け規模にしますと、府県を通ずる貸し付けの規模は百四十三億になりますが、これも実績を見ますと、貸し付けの対象企業数で約四割が二十人以下の小規模事業者に貸し付けをしております。また、企業診断事業ということを相当拡充するようにしておりますが、これについて数字を申し上げますと、商店の診断について言いますと、従業員五人以下の商店が約六割が対象になっております。それから工場の診断につきましては、従業員二十人以下の企業が約四割を占めておる、こういうふうなことでございまして、これらの対策以外に、たとえば商工会あるいは商工会議所等を通ずる経営改善普及事業についてこの体制を強化するというようなことをやっております。特に問題は、やはり税制の面と金融の面で小規模事業者にどういうふうな政策をやっていくかということが大きな問題の焦点になるわけでありますが、金融面につきましては、国民金融公庫に対しまする財政投融資の増大、それからもう一つは信用保険公庫を通じまして地方にありまする保証協会の小口保証保険というものをやっておりますが、これの限度が低過ぎるという声がございますので、これを二十万円を三十万円に上げる。同時に小口保険に必要な資金を大幅にふやして、これを保証協会に貸し付けるというようなことをいたしまして、小規模事業者の金融がこの程度のことで十分いくとは考えませんが、できるだけそういう面に配慮することにいたしております。特に来年度税制面につきまして、家族専従者の控除を引き上げて十二万五千円を十五万円と、ほかの扶養控除等と違いまして、相当大幅な引き上げをやっております。また地方税につきましても、事業主控除の引き上げというようなことで、小規模事業者の税負担の軽減措置というようなことも考えておるわけでございます。これらいろいろの施策をやることによりまして、非常に多数を占めております小規模事業者の事業というものが、できるだけ国民経済全体の発展の中で成長いたしますようにわれわれとしては考えてまいりたいというふうに考えております。
  56. 加藤進

    ○加藤(進)委員 零細企業の全体の総数が二百四十五万に達するということは、中小企業庁の長官も十分御承知のとおりだと思います。たとえ金額が何億とか何十億とか申しましても、もしこれを零細企業の全体に割って見るならば、たとえば一企業に対して千円ずつ出すとしても二十四億五千万要るわけです。このことを考えて見るならば、いま出されたような金額がどれだけ中小企業、いや、その中での零細企業に役立っておるかということははっきりすると私は考えます。中小企業白書の中にこういうことが言われております。二十三ページです。ここには、政府零細企業を社会保障の対象と考えておるという考え方がはっきり出ております。そこで働く労働者は再訓練をして、大企業の労働力に吸収すべきもあだ、こうみなす考えがはっきり出ております。このことは、予算の措置をとったとか、税金の恩典を与えたとか言われておりますけれども、中小企業に対する政府の根本的な考え方をはっきり示しておると私は考えます。まさにこれは問うに答えず語るに落ちると言っても過言でないと考えております。しかもこの白書には、零細企業には減税政策をとるべきであると言いながら、高物価、金融難に悩んでおる零細企業者にいま特に耐えがたい税収奪がきておるということは、これは万人の見ておるところでございます。しかも零細業者の組織である民主商工会に対しては、その組織にさまざまな分裂や破壊の工作が行なわれてまいっております。このことこそ私は零細企業を権力によって、また重税によってつぶそうとする姿であると言わざるを得ないと考えます。現在大資本は生産から流通過程に至るまで中小企業の分野に進出して、中小零細企業を現在押しつぶしております。その中で、大企業の高度成長に役立つ業種と企業だけが選別されて、これが近代化の美名のもとに育成されております。つぶれて倒産していく中小零細企業は、その経営者、労働者を問わず、いやおうなくもう一度労働力として大資本の搾取にさらされて、労働力として役立たぬものは、これは社会保障の対象に組み込んでいく、これが政府の言ういわゆる革新的な中小企業政策の正体だと私たちは見ております。大企業中小企業零細企業の格差の是正などと言われておりますけれども、政府は一体どこに大企業に従属しておる中小企業の従属を断ち切って、中小企業がほんとうに独自で自主的に伸びていくような方策と道を示しておられるのでしょうか、私はその点を一言お聞きしたいと思います。
  57. 中野正一

    中野政府委員 今度出しました中小企業白書を引いての御質問でございましたので、その点についてちょっと申し上げます。二十三ページに書いてございますが、要するにここで言おうとしておりますことは、零細企業層の停滞傾向、中堅層の発展傾向というものが、いろいろ分析いたしますと出てまいっておりますので、その点を申し上げておりますので、この零細企業に対します対策というものが今後大きな問題となるという指摘をいたしております。しかもまだ零細企業層の停滞があるということにつきまして、なお潜在的な不完全な就業形態のものが相当残っているんじゃないか。一般的にいえば、先ほど来御説明がありますように、最近の成長の結果、相当労働の需給の関係というものが根本的に変わってきております。したがいまして、白書に指摘しておりますように、その面からいわゆる二重構造というものが解消する契機が出てくるんじゃないかということを指摘しておりますが、ここで申し上げておりますように、零細企業につきましては、業種、業態別の施策の実施につきまして、なおきめのこまかい施策を行なう必要がある。と同時に、先ほど私が申し上げましたような経営技術の改善、小口金融の円滑化あるいは組織化等による安定というふうな施策をやりますと同時に、減税の政策あるいは社会政策等の拡充強化が要請される。先生が御指摘になったのはその次のところじゃないかと思いますが、さらに零細企業に従事しておる労働力の中で不完全就業の形態のものについては近代的な就業構造の伸展に見合って、その中に円滑に吸収されるように職業訓練とか職業紹介等の機能を強化することが必要じゃないか、こういうような政策を全般的に行なうことによりまして、わが国零細企業というものが初めて徐々に近代的な形に移り変わってくるんじゃないだろうか、またそうやるべきである、こういうことを申し上げておるわけであります。  それからなお後半で申されました、いわゆる中小企業の大企業への隷属性というものを何とかして断ち切って、ほんとうに自主独立の中小企業に育てるべきじゃないかというのは、お説のとおりでございまして、この白書の端的に言っておる点もその点でございます。ただ下請の問題につきましては、それでは、いま何か抜本的にこの関係を一挙に解決するいい方法があるかということになると、これはなかなかむずかしい問題でございまして、実は本日中小企業政策審議会を開いていただきまして、私は国会の関係で出られませんでしたが、下請小委員会というものをつくりまして、真剣に本日から長期的な課題、あるいは短期的な問題も含めまして下請関係の適正化、これを通じましてほんとうに近代的な、いわゆる西欧的な、部品工業といいますか、自主性を持った、しかも関連企業との関係においては近代的な関係を持ったような中小企業に育てていきたいということを念願しつつやっておるわけであります。
  58. 加藤進

    ○加藤(進)委員 時間の都合上、第四番目の問題に入らせていただきます。いわゆる開放経済の問題でありますが、開放経済というのは、私の意見では、何よりもまず日本の独占資本が、アメリカを先頭とする世界の独占資本集団に進んで参加していくということであります。第二番目に、そのための国際競争力を強化しようという美名のもとで、独占資本政府が手厚い援助を与えて独占の集中合併を一そう促進するものである。第三番目に、そのためのあらゆる障害を取り除くことによって日本の産業と経済を外国、とりわけアメリカの商品と資本の進出に明け渡すことである。したがって、このことはまた、アメリカの侵略政策に従って反共、反社会主義の立場で新興諸国への帝国主義的な進出を企てようとする結果になる、こういうことを私は、この開放経済の問題に対して断言できると考えております。このような開放経済のもとで、ただでさえ無防備というような中小企業が、どうして外国資本の急速な進出を防いで、先ほど中小企業庁長官の言われたような独自の発展を遂げることができるかどうか、私はまずそのことをお尋ねしたいと考えます。政府はこれに対して、ではどのような措置をもってこれに対処しようとしているのか、その点をひとつ通産大臣にかわって御答弁を願いたいと思います。
  59. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 加藤委員も御承知のように、今年の四月から日本はIMFの八条国へ移行いたすべく準備を進めております。それからまた近くOECDへも正式に加盟をいたしまして、ヨーロッパ六カ国との間の貿易も相当自由活発に今後行なわれるものと考えておりますが、そうした場合に為替の自由化、貿易の自由化に対処いたしまして、日本の産業、経済のこうむる影響というものはどうであるかということにつきまして、いろいろ通産省といたしましても、これが対策につきまして慎重に検討を加えておるわけでございます。そしていまお説のように、その結果が産業の大部分を占めるところの中小企業に対してどのようなしわ寄せが来るであろうかということにつきましては、これは特に重要なる課題として、われわれとしては真剣に検討を続けておるわけでございます。従来も、あるいはアメリカの資本の国内の進出等につきましては、外資法に基づきまして、国内の中小企業に及ぼす影響がきわめて大きいというような点から、これはある程度進出を防止いたしまして、国内の中小企業の擁護に当たってきたわけでございます。今後もそうした問題が相当頻発するおそれもございますので、こうした場合におきましては、ひとつ十分に国内の中小企業に及ぼす経済的な影響等を勘案いたしまして、ケース・バイ・ケースで問題を取り上げまして、適当に措置をしていきたい、かように考えておるわけでございます。と同時に、やはり中小企業の国際競争力に耐え得るような、いわゆる力を、基礎を養っていく必要があると思うのであります。これは大企業中小企業も同様でございますので、設備近代化促進法その他各種の中小企業基本法をめぐるところの関連法を活用いたしまして中小企業の体質の改善を行ない、設備の近代化を行ない、そうして中小企業経済的、社会的地位の向上をはかり、よってもって競争力に耐え得るような体制を整備したい、かように考えているわけでございます。
  60. 加藤進

    ○加藤(進)委員 要するに、開放経済のもとで中小企業がきわめて困難な状態におちいるであろう、その点を慎重に検討しつつあるというのが御答弁趣旨だと考えております。しかし検討をされておる間に、一日一日とこの開放経済の名のもとでわが国における中小企業にきわめて重大な打撃が次々に与えられてきておることは、これは新聞の日々報じているところでも明らかであります。しかし私は政府にこの対策がないとは考えておりません。対策がある。その対策中心は何であるかというと、いわゆる革新的といわれる中小企業の近代化であるということを私は指摘申し上げたいと思います。この中小企業の近代化ということは、開放経済を目ざして独占は強化、育成され、しかもこの強化、育成された独占に見合った中小企業だけには十分な援助を与えるということ、ここに私は中小企業の革新的近代化の意味があると考えております。したがって、これが池田内閣のいう開放経済に対処すべき中小企業対策であると考えております。しかしこのことは、ことばをかえて言うならば、独占資本の利益のために見合う中小企業対策でしかない。したがってこれに見合わないような、これに合致しないような残る中小企業はどうなるかといえば、それはいまの答弁にあるように、慎重に検討するという以外に対策はないのではないか、こう言って差しつかえないと私は考えます。私は、相次ぐ中小企業倒産ということを一番前に申しましたけれども、その倒産は、こういう中小企業に対する政府政策の貧困と、政府政策が大企業本位であるという結果、あえて起こった端的な姿を示すものだ、こう言って過言ではないと考えます。  私は最後に、中小企業に活路を与える道はそういうものではないということを強調したいと思います。では、中小企業の生きる活路はないか。私はあると考えます。第一には、それは大独占、大企業に対する従属を断ち切って、金融、労働力、税制など、あらゆる面で中小企業が、企業庁長官がおっしゃいましたが、自主的に発展できるような抜本的な、具体的な方策を政府が立てなくてはならぬということであります。第二には、開放経済の名のもとで強行されているこのような自由化をやめさせ、中小企業へのさまざまな迫害、圧迫に対して、これを阻止するような具体的な防衛措置を直ちにとらなくてはならぬということであります。第三番目には、アメリカに対する従属を断ち切って、不当な貿易経済に対する制限を撤廃させなくてはならぬということであります。東西貿易拡大させて新興諸国に対する私心私欲のない援助を与え、平等互恵の貿易を促進するという道、この道が中小企業に活路を与えるただ一つの方策であると私は考えております。しかもこのような条件は、いまやアジアにおける新興諸国の中で、日本中小企業のすぐれた伝統と技術に対する期待は非常に高いという事実であります。この方向に真に政府が努力するかどうか、ここに私は中小企業の生きる道を切り開く方途がかかっておると考えております。  以上の点を強く政府に要望いたしまして、限られた時間の私の質問を終わらしていただきたいと考えます。
  61. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいま、今後の中小企業に対する対策といたしましては、活路としては三点を御指摘に相なったのでございます。中小企業は自主的発展をさせるような施策政府としては立てる必要があるのではないかという御質問でございますが、この点につきましては、政府の現在行なっております政策は主として、中小企業にあくまで自主的に立ち上がってもらいたい、こういうような施策を現在中心にしで行なっておるわけでございます。そのほか中小企業がどうしてもできないことにつきましては、政府があらゆる保護育成をはかっていきたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二の、自由化をやめてこれを阻止する防衛策を講じたらどうかというお話でございますが、この点につきましては、現在各国がすでに自由化を推進いたしておりまして、この前福田通産大臣がこの席上からお答えを申し上げましたとおりに、先方が門を開いておるのであるからして、日本もやはり門を閉じておってはいけない、やはり開いて、自由な交易を行なうことによって相互の繁栄をはかるのが貿易としての原則である、こういうようにお話しになったのでございますので、この点は福田大臣答弁をもってかえさせていただきたいと思います。  第三の、日本政策は常にアメリカに対する従属的な地位によって、その言うがままになっておるというようなお話でございますが、私どもはさように考えておりません。あくまでアメリカに対しては日本の自主的立場を常に主張いたしまして、またアメリカに対する要求もいたしておりますし、相互に協調いたしまして円満なる貿易の伸展をはかりたい、そうして両国の繁栄をはかりたい、これがわれわれの政策であると考えております。アメリカに従属をしているようなことは絶対にないと考えます。
  62. 二階堂進

    二階堂委員長 次会は、明十八日水曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することにいたし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五分散会