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1964-03-04 第46回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月四日(水曜日)    午前十一時開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中村 幸八君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小笠 公韶君    岡崎 英城君       海部 俊樹君    神田  博君       佐々木秀世君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田中 六助君       中川 俊思君    長谷川四郎君       南  好雄君    村上  勇君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    楯 兼次郎君       華山 親義君    藤田 高敏君       森  義視君    麻生 良方君       伊藤卯四郎君    林  百郎君  出席政府委員         総理府総務長官 野田 武夫君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         通商産業政務次         官       田中 榮一君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         専  門  員 渡辺 一俊君     ————————————— 三月四日  委員楯次郎君、米内山義一郎君及び加藤進君  辞任につき、その補欠として落合寛茂君、華山  親義君及び林百郎君が議長指名委員選任  された。 同日  委員落合寛茂君、華山親義君及び林百郎君辞任  につき、その補欠として楯兼次郎君、米内山義  一郎君及び加藤進君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第二五  号)  中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法  律案内閣提出第七二号)  中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七三号)  中小企業指導法の一部を改正する法律案内閣  提出第七四号)  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七五号)  中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫  法の一部を改正する法律案内閣提出第八七  号)  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八八号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  まず、内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許可いたします。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 一点だけ独禁法に関連しまして御質問申し上げます。  現在不当表示防止法が行なわれて、特に都市中心における土地販売等について不当表示が盛んに行なわれておるということで、この委員会でも再三議論になってまいったのでありますが、不当表示の現在の公取における扱い件数といいましょうか、あるいはその後どういう状況で不当表示が改善されてきたか、一つだけ伺っておきたいと思います。
  4. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 不当表示の問題は、御承知のように法律も別途できております。したがいまして、これによって土地のような不動産あるいは商品その他にわたりまして、われわれのほうであの法律の施行につきましてずっと努力しておりますが、特に不動産の問題は、その性格からしましてかなり不当表示の弊害が激しいものがございましたので、まず最初にこれを取り上げまして、そしてあの法律にも一応公正取引規約のような締結ができることになっておりますので、現在におきましては東京周辺中心とした公正取引協議会、それからその後引き続きまして京阪神を中心とした協議会をつくりまして、この協議会の会員の人たちには、特に、表示するならどういうことを表示しろ、そういう場合の表示についてはこう書けといったような意味規約を全部つくらせてやっております。ただアウトサイダーがやはり相当でございまして、このアウトサイダーのほうにはその規約と違った表示をしているということもございまして、われわれのほうとしましては、インサイダーのほうは協議会中心に、アウトサイダーのほうは公取直接、同時に協議会のほうにも協力を願いまして、その排除につとめている。過去において相当件数排除をやったということは委員会報告したとおりであります。
  5. 板川正吾

    板川委員 時間がございませんから、私簡単に問題を提起して、ひとつ善処を求めたいと思います。  それは、ここにこういう表示がございます。しばしば電車等に掲示されるものですが、あとでよくこれを見ていただきたいと思います。私もときどき通勤する電車の中で、不当表示的なものを再三見ております。この間気がついたから一枚もらってきたのですが、これは東京信用株式会社が広告主ですが、現地案内所が「東北線南浦和駅前」というふうになっております。埼玉県の南浦和駅前現地案内所です。ところが実際に場所はどこかというと、その「学校前団地」と称するのが「埼玉県北葛飾郡杉戸大字目沼字浅間三百十八」、この杉戸町というところは埼玉県でも一番東端の江戸川のへりであります。売るところが埼玉県の中心から一番端なんですね。現地案内所というのは、われわれが普通見ると、現地に一番近い駅であって、そこなら現地に一番近いですよ、ここへ来てもらえば現地へ案内しますよというところだろうと思っておると、そうじゃないですね。この間は距離にして五十キロ以上あるのじゃないかと私は思いますが、とにかくタクシーで行っても一時間はかかります。埼玉県の東の果てに売る場所があるのに、なぜそういう距離を離れた南浦和駅前現地案内所を設けるかというと、案内所はこれは便利です。南浦和駅前へ来て、自動車に有無を言わせず一時間も乗せて行って現地を見せる、そうすると買わないわけにいかなくなる。そういうような欺瞞的な行為が裏に隠されておるのじゃないかと思うのです。こういう広告不当表示というのは、日本至るところに多かれ少なかれある。再三申し上げましたように、いまの公取機能からいうと、なかなかこれを十分に取り締まることができない。善意の市民、国民がこういう悪質なブローカーにひっかかって泣き寝入りをしたり、おどかざれたりする場合が再三あるのですが、法律もできたことですから、ぜひひとつ公取機能を十分拡大して、そういう方面における国民の不安を取り除いてもらいたいと思いますが、この問題は、資料を差し上げますから、調査をしてあとで御報告を願いたいと思います。
  6. 野田武夫

    野田政府委員 ただいまの板川さんの御質問でございますが、実はただいま公取委員長からもお答えいたしましたとおり、公取といたしましては、特に大都市中心でこういう不当表示防止につとめておりますが、お話のとおり、まだなかなか不徹底だと思っております。これはよくわかっております。したがって、こういう種類の、特に大都市中心にこういうことが多いのでございますが、不当表示につきましては、これを厳重に取り締まることは当然でございます。現在の公取機構におきましては、先ほど委員長が申しましたとおり相当積極的にやっておりますが、まだまだなかなか足りないところもあるということはよくわかっております。なお一そうこれらの取り締まりを強化いたしますために、今後十分この機構拡充強化努力したい、こういうことをお答えいたしておきます。
  7. 二階堂進

    二階堂委員長 おはかりいたします。  本案についての質疑を終局するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  9. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、討論に入るのでありますが、通告もありませんので、直ちに採決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認め、よってさよう決しました。  採決いたします。  本案原案のとおり可決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  11. 二階堂進

    二階堂委員長 起立多数。よって、本案原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  12. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、自由民主党日本社会党及び民主社会党を代表して、小川平二君外八名より、本案について附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を聴取することにいたします。小川平二君。
  13. 小川平二

    小川(平)委員 私は、自由民主党日本社会党及び民主社会党を代表して、ただいま可決されました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、その提案趣旨を御説明いたします。  案文はお手元に配付したとおりであります。     —————————————  〔参照〕   私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   公正取引委員会は、物価対策一環としての違法な価格協定の取締り、不当景品類不当表示防止下請業者利益保護等を担当し、最近においては管理価格歩積両建問題に取り組む等、その業務はますます広範かつ重要性を増している。   本委員会は、かような公正取引委員会業務重要性にかんがみ、再度にわたり公正取引委員会機構拡充について附帯決議を行なったが、今回の改正案をもってしてもなお十分ではない。   よって政府は、この際公正取引委員会機構拡充強化するため、抜本的措置を講ずるよう検討すべきである。     —————————————  御承知のとおり、公正取引委員会独禁法に基づいて設置されておる行政委員会でありますが、最近におきましては、物価対策一環としての違法な価格協定取り締まり不当景品類不当表示防止下請業者利益保護、さらに管理価格歩積み、両建て問題等々、その業務はますます広範かつ重要なものとなってきております。しかるに公正取引委員会事務局機構は、地方事務所大阪、福岡、名古屋の三カ所にしかなく、事務局定員も必ずしも十分ではない実情でありまして、このため本委員会におきましても、すでに第四十回国会における不当景品類及び不当表示防止法制定の際及び第四十三回国会における独禁法改正の際の二度にわたり、公正取引委員会機構拡充について附帯決議を行なったのであります。  政府もこの附帯決議趣旨を尊重し、昨年事務局定員を六人増員し、今回また地方事務所の増設、定員十五人の増員等をはかろうとしているのでありますが、これをもってしてもなお十分とはいえない実情であり、さらにこの際公正取引委員会機構を抜本的に拡充するよう検討する必要があると思うのであります。  以上が提案趣旨であります。委員各位の御賛同をお願いいたします。
  14. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で説明は終りました。  次に、本動議について発言を求められておりますので、これを許可いたします。板川正吾君。
  15. 板川正吾

    板川委員 本動議には賛成でありますが、ただいま提案者が申されましたように、公取機構拡充ということについては、前回二回にわたって附帯決議が行なわれてまいったのであります。附帯決議を尊重されたと言いながら、実はまだまだ不十分の状態でありまして、今回三回目になるわけですが、私はこの三回目の附帯決議がぜひ次の機会には政府において尊重されて、次の附帯決議がつかないような状態で抜本的な拡充対策を講ぜられることを希望いたしまして、簡単でありますが、賛成の演説といたします。
  16. 二階堂進

    二階堂委員長 採決いたします。  本動議賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  17. 二階堂進

    二階堂委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、野田総務長官より発言を求められておりますので、これを許可いたします。野田総務長官
  18. 野田武夫

    野田政府委員 ただいま付せられました附帯決議趣旨を十分尊重いたしまして、公正取引委員会機構等拡充につきましては、格段の努力を払う所存でございます。     —————————————
  19. 二階堂進

    二階堂委員長 なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  21. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、内閣提出中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案中小企業指導法の一部を改正する法律案中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案、並びに商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案、以上六法案を議題といたします。  質疑通告があります。順次これを許可いたします。華山親義君。
  22. 華山親義

    華山委員 昨年度の予算編成期と今年度の予算編成期では、中小企業範囲が違っております。拡大されております。それにつきましてお伺いいたしますが、生産にどれだけ中小企業が関与しておるかということが予算編成の際の問題だと思いますが、私この数日間いろいろ資料等調べてみましたが、明白でありませんけれども、一千万円未満中小企業、五千万円未満中小企業におきまして、生産の指標としての出荷高にどういうふうな違いがございますか、教えていただきたい。
  23. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘ありましたように、昨年の中小企業基本法制定に伴いまして、中小企業定義も、従来は資本金一千万円または従業員三百人、こういうことになっておりましたものを、その後の調査によりまして、従業員三百人未満というものの規模に対応する資本金規模を調べてみますと、大体五千万円から六千万円というくらいになっておるわけでありまして、中小企業定義としては、どちらかにひっかかれば中小企業とみなす、こういう考え方でございましたので、むしろ実態に合わせるべく資本金のほうを直したというのがあの基本法のときの国会に対する説明でもあるし、実際そういうことなんでございます。その意味合いにおきまして、工業関係につきましては、資本金を五千万円に上げたために生産額等ウエートがそう変わっておらないと思います。ただ商業関係は、資本金が一千万円かあるいは従業員が三十人未満、どちらかに該当すれば中小企業とみなす、こういう定義であったものを、基本法の際に、従業員は五十人未満資本金のほうは従来どおり一千万円、こういうことにいたしましたので、商業サービス関係取り扱い高あるいは企業数等がある程度ふえております。いまその詳細の比べたデータを持ち合わせておりませんので、後刻取り寄せまして正確な数字を御説明いたしたいと思います。
  24. 華山親義

    華山委員 ただいまの御答弁を伺いますと、資本金を五千万円まで上げたということは従来と何ら変わりはないんで、中小企業範囲拡大したのではないというふうに了解されますが、それでよろしゅうございますか。
  25. 中野正一

    中野政府委員 正確に申し上げますと、やはり資本金一千万円と五千万円では相当違うわけでございますから、工業関係につきましてもウエート変動はあるわけでございます。ただ私が申し上げますのは、数字的にあとで正確なことを調べてから御返答申し上げたいと思いますが、実態的にはそれほど変動がないんではないかというふうに考えております。
  26. 華山親義

    華山委員 私は、予算関係からいたしまして、予算要求される場合に、行政の客体がふえたということであれば、数字をあげて、それに伴うだけの予算の増加というものを求めなければいけないと思う。これはあたりまえのことだと思うのでございますが、そういうことを大蔵省要求されて予算の増額をされましたかどうか、その大蔵省要求された資料等がございましたならば承りたい。
  27. 中野正一

    中野政府委員 いま先生御指摘のように、中小企業範囲商業関係工業関係についてもそれぞれ引き上げたわけでございますので、中小企業に対する助成措置は当然それに伴って拡大をすべきであるという考え方のもとに、われわれとしては来年度の予算要求をいたして、今度の予算ができ上がっておるわけであります。ただ、いろいろな助成策につきましては、これは項目によって違いますが、たとえば設備近代化補助金というような、御承知のように四十五億円でございますが、こういうものは中小企業の中でも比較的中以下の業者に対していろいろの助成をするという制度になっております。そういうような関係で、一千万円から五千万円に上げたから、その関係一般会計上の予算が非常にふえるかというと、それはそれほど影響はないんじゃないかと思いますが、しかし考え方としては御指摘のとおりでございます。財政投融資の面、金融関係等につきましては、特に中小企業金融公庫につきましては、いままで貸し付け限度が一社当たり一千万円までであったのでございますが、基本法でいま言ったように資本金五千万円ということに上がった関係もございまして一また最近の中小企業実態から見て、貸し付け限度一千万円ではどうも少な過ぎるじゃないかという声も非常に強うございましたので、限度を三千万円に上げる、こういうようなことをやっております。したがって、そういう関係から、当然、財政投融資等については、中小企業範囲拡大されたに伴って要求もふやしたということでございます。
  28. 華山親義

    華山委員 私は、いままでの御答弁を聞きまして、まことに残念なのでございますけれども、財政投融資等についてもいまお聞きしようと思っておったのでございますが、私はやはり予算というものあるいは財政投融資というものが、いままで一千万以下であったものを、これは私は根拠のない数字と思うけれども、それを五千万未満に上げたならば、五千万未満に上げたからこれだけ計数がふえたのだという根拠がなければ、私たちはなかなか信用ができない。そういうことにつきまして、いままでの御答弁によりますと、確たる数字的な根拠はないようでございますが、そういうふうに了解いたしましてよろしゅうございますね。
  29. 中野正一

    中野政府委員 五千万円に上げたために、その分がこれだけ予算がふえたとか、あるいはそれでこれだけ要求するという性格のものではないのじゃないか。当然中小企業範囲拡大はされましたし、また、特に御承知のように中小企業と大企業生産性格差を縮小させる、そのために中小企業近代化を大いにやらなければいかぬという情勢でございましたので、そういう点を含めまして、われわれとしては、財政投融資一般会計、また税制、各方面にわたりまして、予算編成にあたっては相当強力な要求をいたしたわけでありまして、そのバック・データ等としては、中小企業実態を明らかにするようなものをいろいろ大蔵省に出して要求しまして、予算獲得努力をいたしたわけでございます。
  30. 華山親義

    華山委員 まことに不満足でございますけれども、それ以上の御答弁もどうかと思います。私も役人をやりましたが、予算の技術として、法律がこういうふうに変わったのだから、今度はこういうふうになるので、これだけの予算をつけてもらいたいということは、これはあたりまえのことだと私は思うのです。それを、いままでの御答弁のようにばく然としたことでは、私は大蔵省に対する圧力はないと思う。そういう意味で、これで私、この問題は打ち切りますが、先ほど申し上げました最近の資本高別出荷高等についての資料を、私さがしましたけれども見当たりませんので、ひとつ至急お調べの上お願いしたい。
  31. 中野正一

    中野政府委員 御要望の資料をできるだけ早く整えまして、提出したいと思います。
  32. 華山親義

    華山委員 この問題について私の言いたいのは、いろいろな点で、まことに微細なものではありますけれども、中小企業対策予算なりあるいは財政投融資が増したけれども、普通の観念といたしまして、一千万から五千万に上げたなら大きくなるのがあたりまえじゃないか、こういうふうな感じが浮かぶわけでございます。その点について私はなお明らかにしていただきたいのでございますが、時間がきまっておりますので、その次にいたします。  第二にお伺いいたしたいのでございますが、この年次報告を拝見いたしまして、非常にりっぱにおできになっていると私は思うのでございます。ただ政策の面につきましてはなはだ不満足な点がございますが、この年次報告を見ましても、私が小さな県の副知事をいたした経験から見ましても、中小企業対策というものが、常に府県に非常に重きをかけているのではないか。これを農業と比べるということは一がいにできませんけれども、農業でございますならば、たとえば近代化にいたしましても五割は国で出す、それに足りない部分の二割は県で出してくれ、その二割は地方交付税算定基準に全額を繰り入れるというようなことをやっているが、しかしこの報告書を見ましても、それから私の経験から見ましても、通産省のやり方は常に府県というものに重きを置いておる。その結果、私の経験によりますれば、中小企業は、金額的の割合からいいますと県が負担するものが最も多いのです。通産省中小企業庁への支出が足りないために、単独事業として県がやる。それからまた、いろいろな補助にいたしましても、それに対するところの県の持ち分というものが、中小企業対策についてきわめて多い。これがコンマ以下と称せられるところの中小企業対策予算の少ないゆえんではないのか。それで私は考えるのでございますけれども、この県の負担というものをもっと少なくして、積極的に、指導的に中小企業庁はやるべきではないか。それで考えられることは、中小企業というものを多数かかえているような、財政のわりあい余裕のあるところの大阪とか愛知県とか東京都とか、そういうところはまだいいといたしまして、地方中小県ではまことにやりようがない、そういう地方負担をかけようという方針をお改めになる気持ちはございませんか。
  33. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 確かに華山委員のおっしゃるとおりに、中小企業はもちろんのこと、この通産関係予算につきましては、どうも地方庁に対する負担というものは、農山漁村予算に比較しますと、地方庁負担額が多いようでございます。これは事実でございます。これは古いいろいろな過去の実績、いろいろの農山漁村実情等からいいまして、国としてこれに対しまして相当大きな予算をつけておったのでございますが、中小企業というものはあくまで自由主義経済の上にということで、できるだけ中小企業者なり業者自主経営という点に重点を置いておりますので、国の援助というものが若干足りなかった点は確かにあると考えております。しかしながら、農山漁村予算額と比較いたしますると、いまお話しのように両者の開きが相当ございますので、まあこれからはそういう点にもひとつ十分考慮いたしまして、特に中小企業関係予算面につきましては、助成補助その他につきましてはもう少し改善の要があるのではないかと考えております。この点は華山委員のおっしゃるとおりだと考えております。
  34. 華山親義

    華山委員 ただいまのお話の中に、もう少しとか若干ということばがございますが、これはもう少しとか若干どころではございません。根本的に考えてもらわないといけないと私は思います。  それから、この年次報告の中を見ますと、地方財政を考慮してということばが出てくる。そうしますと、貧乏な県の中小企業には金を出さなくともよろしい、財政のよけいなところには金を出すという結果になります。こういうことが過大都市の膨張の原因をなしておるのではないか。中小企業というものを地方になるべく置いて、そして過大都市防止しようということであるならば、そういうふうな地方重点を置いた配分をすべきではないか。地方財政を勘案していろいろな予算等を配賦すると書いてありますが、これは間違いではございませんか、ひとつ政策的にいかがなものでありましょうか。
  35. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 確かに華山委員のおっしゃるとおりでございますが、ただ、現在の国の助成方針といたしまして、低開発地域としからざる地域との間の区別をつけてやるということが非常に困難な点がございまして、やむを得ず、現在といたしましては一律に二分の一なら二分の一というような助成の方針で割り当てているわけでございます。ただし、その助成の配分の総額につきましては、低開発地域としからざる地域との間の配分の数量に若干手心を加えまして、できるだけ低開発地域のほうには多額な配分をして、そして幾らかでも育成をいたしたい、こういうような考え方でやっておるわけでございます。
  36. 華山親義

    華山委員 ただいまおっしゃったことは、いつから政策が変わったのかわかりませんけれども、これを見たところでは書いてありません。そして書いてあることは、各府県財政状態を見て配分すると書いてある。そうすれば低開発地域におけるところの中小企業というものができるわけがございません。そういう点につきまして、ことしから政策でもお変えになったのでございますか、伺いたい。
  37. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 別に本年から政策を変えたわけではございません。これはそういうようなことを考慮に入れて配分をいたしております。
  38. 華山親義

    華山委員 それじゃこの年次報告はその点もう少し書き直さなければいけないわけでございますね。ひとつそういうふうに……。私が間違えておれば別でございますが。
  39. 中野正一

    中野政府委員 ちょっと申し上げますが、いま政務次官もおっしゃいましたように、いろいろの、たとえば設備近代化補助金あるいは中小企業高度化の助成金というようなものの配分にあたりましては、各地方実情実情にできるだけ沿うように、われわれとしては各府県ともよく相談をしてやっておるわけでございます。ただその場合に、いまもおっしゃいましたように、富裕府県であれば相当自力でやれる面がありますから、それほど国が助成をしなくても相当の規模中小企業対策はできるという面はございます。それから特に低開発の比較的富裕でない、財政力の豊かでないようなところにおいては、事業をやろうとしてもなかなか金が十分つかないというようなことがございますので、そういうところにはむしろよけい配分をするというふうな方針でおります。ただその場合に、国が二分の一、府県が二分の一の負担と、こうなっておりますので、この原則を変えない以上は、その二分の一の府県負担のほうに問題があって、府県としては、もうちょっとやりたいのだが財政力が豊かでないためにこの程度でがまんするというようなケースが自然に出てくるわけでございまして、したがって、実際の配分の際には地方財政負担力も考えて配分をせざるを得ない。そのことを年次報告で申し上げておるわけでございます。
  40. 華山親義

    華山委員 いまおっしゃった、それが私は問題だと言うのです。そういうことでは、いかに中小企業といえども、大都市等に重きが置かれて低開発地域に重きが置かれない、そこでどんどん都市が大きくなっていく、こういう結果にもなるのではないか。結論的に申し上げますが、もう少し大局的な立場から、中小企業というものは国としていかに配分すべきかという立場からひとつお考えを願いたいと思います。  その次に、近代化のことが出ましたのでお伺いいたしますが、私も県の仕事をやめましてからちょっとたちますので、最近のことは、違っておりますと時間がかかりますので、大体の大綱だけでよろしゅうございますが、近代化資金はどういう貸し付けをなすっていらっしゃいますかちょっと……。
  41. 中野正一

    中野政府委員 近代化資金はというと、広い意味近代化資金、これは現在の法律でいいますと中小企業近代化資金助成法という法律がございまして、その中に二つのグループがございます。一つは設備近代化補助金、これは従来からあるものでございます。
  42. 華山親義

    華山委員 設備近代化だけでよろしゅうございます。
  43. 中野正一

    中野政府委員 これは来年の予算が四十五億でございます。そういたしますと、それに対して同額の府県負担がございますので、府県が四十五億出す、そうすると九十億になるわけであります。それ以外に従来から貸し付けをしておるものの返還金がございますので、それを府県が返還してきたものを、それにプラスするということになりまして、九十億プラスの五十三億——五十三億が返還金でございまして、これは各府県によって、もちろんいろいろ数字が違うわけでありますが、貸し付け規模が百四十三億ということになるわけでございます。ことしはこれに対応するものは、国の予算が四十一億で貸し付け規模が百十四億——百十四億のことしの貸し付け規模が、来年は百四十三億ということになるわけであります。これも先ほど先生が御指摘になりましたように、各府県負担力ということからいうと、まだ一ぱいだとは申しませんが、相当府県によっては、それ以上かりに国が貸し付けても、府県負担力からいってなかなかむずかしいところが出てくるのではないかというくらいに考えております。その点では先ほど先生が御指摘になった、特に低開発の府県等について、補助率等でこれを考えなければいけないんじゃないかというような意味合いの御発言がございましたが、来年の百四十三億は十分私はこなせるというふうには考えております。それから、これの貸し付けでございますが、これは無利子でございまして、その設備資金に貸すわけでございますが、無利子で五年の償還、一年据え置きの四年間の年賦償還という形をとっております。それから対象業種につきましては、業種的にいろいろ指定をいたしておりますが、これは相当広くなっておりまして、地方的な産業等についても指定をいたしております。それから特に来年度につきましては、いろいろ物価対策上必要のある、たとえば食肉加工であるとか、あるいはクリーニングであるとか、そういうような国民生活に密接な関係のある業種も取り上げたいというふうに考えております。それから、これは中小企業のうちでも比較的中以下のものを主として対象にするということで、原則として従業員は百人以下のものに貸し付けをする。そうして一般の金融機関の金融ベースになかなか乗りにくいというようなもの、そういうところの業態のものを取り上げて近代化をやらせよう。それで府県が五年間、無利子の貸し付けをやる、こういうような制度になっておるわけであります。
  44. 華山親義

    華山委員 これはいまお話がありませんでしたが、自己負担部分は幾らでございましたでしょうか。
  45. 中野正一

    中野政府委員 二分の一が自己負担というふうに聞いております。
  46. 華山親義

    華山委員 自己負担分が二分の一、それから一年据え置きの四年、とにかく五年になりますが、大体自己負担分が二分の一だといたしますと、耐用年数の関係からいたしまして十年ということになりますが、耐用年数の関係からいいまして、御承知のとおり大体借金の支払いというものは減価償却の限度ということが常識でございます。四年というものは短過ぎるのではないか。この四年、五年ということをきめられたところの理論的根拠はどういうところにございますか。
  47. 中野正一

    中野政府委員 五年間の償還ということが短過ぎるじゃないかという御議論も、確かに借りて近代化をやりたいという、特に零細な中小企業の方々の立場からいえば、これはもうちょっと長いほうがいいと思いますが、今度、一方国の財政の面からいいまして、無利子で設備資金を貸すということは非常に異例といいますか、これは特別の措置でございまして、ほかにはちょっと例がないんじゃないかと思います。農林関係でも無利子で貸し付けるということはないので、これは私の知っておるところでは、石炭産業の合理化近代化補助金というものがございまして、これもやはり非常な異例の措置として無利子の貸し付け制度があるわけでございますが、やはり五年でございます。特別に国で助成をして積極的にやらせようということで五年間の無利子の貸し付け制度というものをつくったのでございまして、五年でそれを返すというのが酷じゃないかと言われまするが、しからば一般の金融機関にこれを求めようとすれば、五年間も中小企業に貸すというようなことは考えられぬわけでございます。もちろん政府関係中小企業金融公庫あたりは、これは原則として設備資金等については五年以内で貸しております。貸しておりますが、これはもちろん九分の利子を取っておるわけでございます。特別の措置でございますので、五年間ということの取りきめをしておるわけでございます。
  48. 華山親義

    華山委員 私も中小企業を戦後長い間やりましたけれども。銀行から借りる期限が短かいじゃないか、そういうふうなこともおっしゃいます。しかし銀行から貸す金が短いというときにどういう措置をとるのか、それは自己資本、自己資金というものをこれに加えて、そしてそれによって緩和していく、これが実態でございます。ところが中小企業というものは自己資本を持たない。この自己資本の二分の一すらも県庁等において世話しなければ借りられない、入れられない、こういう状態でございます。とにかく、私は皮肉言うわけじゃございませんが、池田さんは革命的なことをやるとおっしゃった。私はそういうことでなければいけないと思うのです。旧態依然として、ただ金額を増したというだけでは、これはよくならないのです。無利子という点もございますけれども、これはいいことでございますが、ひとつそういうふうな中小企業負担というものを軽くしてあげる。私は県庁の仕事をしておりましたけれども、大体二分の一の金を出せないのです。どこから金を出すか。銀行から借りてやらなければいかぬ。この二分の一のある部分は借りてやらなければならぬ。そういう世話を府県の県庁はしている。したがって、これは償還が非常に早いものになります。実態をお調べになりまして、これでは酷じゃないか、こういう点をお考えにならないと……。とにかく一般の経理の関係からいったってそうじゃございませんか。大体十年の耐用年数というものはあまりないでしょう。これは十年の耐用年数にわたるところの償還です。私は中小企業に対しましては酷だと思う。御考慮を願いたい。  その次に伺いますが、各府県におきまして、私の経験したところでは、私の県でもその当時やりましたけれども、国の機械に対するところの手当てが少ないために、地方におきまして機械貸与公社というものをつくりまして、そして県が金を出して、その資金というものを各銀行から仰いで、委員会を通じましてこれに機械を貸しております。ある年限これを償還いたしますとそのまま所有権が移るというふうな方法をとっております。各県はそういうふうなことをやっておると思いますけれども、なかなか資金の面等におきまして窮屈な面があります。こういうものを助成なさるお考えはございませんか。
  49. 中野正一

    中野政府委員 各府県でやっておるかどうか、大阪あたりではたしかやっておると私は承知しておりますが、確かに中小企業者近代化する場合に、機械をいま言われたように一ぺんに買うということになると、その資金の調達に非常に苦労するので、むしろそれを借りて逐次月賦か年賦かで少しずつ金を払って最後は自分のものにするとか、あるいはむしろそういうことからさらに進んで、機械の貸し付けの一つの会社なり機構をつくって、そして近代化するような機械を中小企業者に一定の貸し付け料を取って貸し付けてやる。そういうことも一つの方法かと思いますが、各府県で——私も実は前にそういう構想を考えたことがあるのですが、今度の予算には間に合いませんでしたので、いまの先生御指摘の点は各府県実情もいま調べさしておりますが、今後の施策に重大な御提言として受け取って、さらに詳細に研究してまいりたいと思います。
  50. 華山親義

    華山委員 自分のことは言いたくありませんが、山形県でそういうことをやっておりますので、ひとつ御研究になりまして御批判も仰ぎたいと思いまするし、こういう制度は国で取り上げられるならば国で取り上げ、また地方でやってもらうならば地方でやってもらうことにして、これに対する助成等をひとつぜひお考え願いたいと思います。  その次に伺いますが、中央、地方ということを先ほど申し上げましたとおり、中小企業対策といたしまして大体地方にたよっておる部分が多いのでございますが、地方におきまして非常にこの機関がばらばらなんです。いろいろな機関がございまして、いろいろなことを一生懸命やっておるわけでございますけれども、これをまとめていくということがなかなかできない。特に金融機関等の関係におきましては、県庁等は全然これにタッチすることができません。そういう面もありまして、県にたよられてもなかなかできない面が多い。それで一昨年でございましたか、中小企業庁がお考えになりました、各府県中小企業センターというものを置くというお考えがございましたので、私はこの中小企業センターというものを中心にして、そして統一的な中小企業対策を考えるのに非常にいいことではないかということで、中小企業庁につきましてもぜひ設置していただきたいということをお願いしたのでありますが、さたやみになったようでございますが、これはさたやみになったのでございますか。
  51. 中野正一

    中野政府委員 私もその当時の事情はちょっと詳しくは知りませんが、確かに中小企業の指導面の仕事につきまして各府県いろいろな機構で、たとえば県庁の商工課といいますか中小企業課といいますか、そういうようなところで直接やっておるところもあるし、あるいは府県によっては中小企業の指導所あるいは商工相談所というふうな特殊法人をつくってやっておるところもある、あるいは府県の職員がそのまま指導所の仕事を兼ねるというふうな形もございまして、いろいろな形でやっておられます。この指導面の仕事を全国的に一つの統一した機構にして、しかもそれを相当直接に中央機構というものが指導できるような体制、また金の面等につきましては、そういう機構にいたしますれば相当府県負担も軽くなるのじゃないか。それからもう一つは、府県の職員でありますと、同じポストへ専門家として非常に長くおるということができない。役人でございますので転々として歩かなければならない。だんだん俸給が上がるに従ってよそのポストに行くということがございまして、むしろ専門家をその場におって養成し、その場でだんだん上に上がっていくようなシステムということを考えるためには、何か指導センター的な、県庁の機構と別個のものをつくったほうがいいではないかというふうな議論があったのじゃないかと考えますが、これもいろいろ研究した結果、まあいろいろいい点もあるし弊害もあるというようなことで、また各府県といろいろ相談の結果、なかなか御賛同が得にくかったというようなこともあったのじゃないかと聞いておりますが、いずれにいたしましても、現在のところはそういうことは考えておりません。ただ、先ほど申しました今後の中小企業行政を強力に進めていく、またそのためには相当の金もつぎ込まなければならぬわけですが、そうしますと先ほどから御指摘のように、それに応じて今度はまた府県負担がふえていく。もちろん府県負担がふえていくという分については、地方財政というか、そういう全般の問題として当然これはしりぬぐいというか、めんどうを見るというか、これは自治省のほうでやっていただくのが当然なことだとも言えますが、しかし中小企業行政についてもう少し徹底した、下部へ浸透する政策を強力にやろうと、いま言ったような、しりを全部地方財政のほうへ持っていって自治省にめんどうを見てもらうというようなやり方ではなかなか徹底しないじゃないかというようなこともございまして、いま御指摘になった点は、過去にもそういう議論があったやに聞いておりますが、なお今後の問題として十分検討さしていただきたいと思います。
  52. 華山親義

    華山委員 私聞くとたいへんおかしいのでございますけれども、そのときの長官とおかわりになっておるのかもしれませんが、三年か二年前には予算大蔵省にお出しになったのですよ。そして大蔵省から説得されたのかどうか、そのときには山形県では率先手をあげて、置いてもらいたいというふうなことになったのでございますが、何か、東京に中央指導センターを置くことして、その次の年からはもうやめたということになっているようでございますが、もうあきらめたのでございますか、もうそういうものは置かないたとになすったわけでございますか。それは地方財政を御心配なさることはけっこうでございますが、そのくらいの金は、中小企業者のために事務費程度のものは出しますよ。中小企業に金を貸せとか、たいへんなことを言われると困りますけれども、事務所費的なものくらいは、幾ら貧乏な県でも出します。そういうのをどうしておやめになったのか。私、記憶が違っておりますかどうか、一たん大蔵省にお出しになって、その次の年からおやめになったんじゃございませんか。
  53. 中野正一

    中野政府委員 いろいろその当時いきさつもございまして、昨年中央には中小企業指導センターというものが特殊法人としてできまして、ことしまた予算も相当ふやしましてやっております。地方のほうにつきましては、従来ある各府県の特殊事情で、先ほど申し上げましたように、県庁自身の機構でやっておるところ、あるいは独立の機構を別個つくっておるところ、あるいは兼任のような形で別の相談所というようなことでやっておるところ、いろいろありまして、それを中小企業庁なりあるいは今度中央にできました中小企業指導センター、こういうものがいろいろ連絡を申し上げ、御指導申し上げてやっておるという形でございまして、いま先生の御指摘になったような構想を来年度の予算においてはわれわれとしては打ち出さなかったわけでございます。過去において打ち出したかどうか、実は私、その当時ちょっとよその省へ行っておりまして、おりませんでしたので、申しわけありませんけれども、よく調査いたしまして、四十年度、来年、その次の年度の問題としては十分研究に値する問題だというふうに考えております。
  54. 華山親義

    華山委員 一つお尋ねいたしますが、中小企業を指導する人、指導員といいますか、これは相当の老練の人でなければいけない。相当学識のある人でなければいけない。そういう人を各地方地方に置きまして、そして若い指導者を養成し、そして自分が責任を持ってあるいは会議を開いてこの企業体はどうするのかということを慎重に研究する、一人一人のそういう老練な人が行くわけにはいかないでしょうけれども、若い人でも使って、そして調査をさして、そしてその土地に合ったところの指導方針を立てる、これは私は非常に大切だと思うのでございますが、そういう人は地方ではなかなか得られません。そして、実際問題として相当の高給を出さなければいけない。県庁の役人程度の月給ではそういう人は得られません。私はその意味でも、各地方地方に老練な人が一人でもいいから来ていただいて——高給を出そうといったって県庁では出せません。いろいろな公務員規程や何かで出せませんから、そういう意味で指導センターをつくっていただいて、そして優秀な、老練な人を各地方に配置していただきたい。こういう意味もあって、私は率先その当時、この指導センターを置いていただきたいということを申したのでございまして、各県ともに同じだと思うのです。もう一ぺん地方に各指導センターを置くことについて御研究を願えませんでしょうか。
  55. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 現在地方に行ってみますと、あるいは県の保証協会があり、それからまた政府三金融機関の支店、出張所等があります。それからまた中小企業団体の〇〇県連合会とか商工会連合会、商工会議所とか、いろいろに中小企業関係の金融機関なり指導団体その他いろいろなものがたくさんございまして、いま華山先生のおっしゃるのは、こうしたものがばらばらになっておるから、何かひとつまとめてこれを指導するとか相談に乗ってやるというような団体をつくったらどうか、こういう話だと私は承っておるのであります。現在県庁の商工課でありますか経済課等も常務が非常にせわしゅうございまして、書類の整理とか許可の申請とかそんな処理ばかりやっておりまして、なかなか実際に指導まで手が届かないんじゃないかと考えております。また市や町の当局もそうじゃないかと思います。将来何か適当な指導団体が中心にできまして、そうしたものがそこに全部入り込むといいますか、それに関連しまして、そうしてそこへ行けばすぐ右から左にすべてが解決できるというような一つの機関ができれば、たいへんけっこうなことだと私どもも考えております。ただ、いま申し上げましたように、現在中央には指導センターがようやくできたばかりでござしまして、これをまず盛り立てる必要がございますので、政府としましてはまずこれを盛り立てまして、そうしてそれが整備されまして、地方庁の御意見等も十分にひとつこれから承りまして、また出先の各団体の御意見等も承りまして、そうした必要がぜひあるんだということになりますれば、いま華山先生のおっしゃったような各地にそうした指導団体といいますか、そうしたものを逐次設置する必要があるのではないか、かように考えております。この点はひとつ承りまして、われわれ内部におきましてもよく協議してみたいと考えております。
  56. 華山親義

    華山委員 いろいろお聞きしたいこともありますけれども、話をかえますが、近代化資金にいたしましても、いろいろな政府補助するものにいたしましても、こういう業種、ああいう業種というふうに業種に指定がしてあります、範囲もきめてあります。それを見ますと、大企業の日本の重工業といいますか、そういうものの補助的なもの、そういうものに従来重きを置いたのではないか、中小企業そのものが果たしているところのもの、そういうふうなものはこれを軽視しているのではないか、そういう結果、このたびの物価騰貴におきましても、中小企業が本来持つべきところの日用品、そういうものをつくっているものには中小企業としてのいろいろの処遇がない、政府補助がない。その結果、今日ここに書いてありますとおり、そういう消費部面を受け持つところの商品に対する点が手薄になった、そういうことになったのではないか。従来の補助のしかたが今日の物価騰貴の問題とも関連があるように私思えてならないのでございますが一その点はどういうふうにお考えになりますか。
  57. 中野正一

    中野政府委員 従来のいろいろな助成をする場合に業種指定がございまして、これはそれぞれの助成の方策によりまして対象も幾ぶん違っておるわけでございますが、確かに御指摘のあったような主として輸出産業といいますか、国際競争というような面から見て、大いに近代化をやらなければいかぬというような点をまず取り上げよう。これはうんと金でもあってやる場合は広くやってしかるべきなんですが、実際上は、財政上のいろいろな理由からそうはいきませんので、業種をあとでしぼらざるを得ない。要求は相当多いわけでございますので、その際に、輸出産業あるいはこれに準ずるもの、あるいは輸入を防遏するのに必要な産業というような意味に、どちらかというと重点を置いてやっておったんじゃないか、こういう御指摘は、確かにそういうことが言えると思います。それから最近は、消費者物価の上昇というようなことから、主として消費者物価に関係の深い、いわゆる国民生活に密着をした物資あるいは業種というようなものの中小企業——これは大体中小企業が多いわけですが、そういうものにむしろ重点を指向して、そういうものを重点的に取り上げて、そういうものの近代化、合理化というものをやるべきじゃないかということが、先般企画庁で諮問いたしました物価懇談会あたりでも、そういう話が出ておるわけでありまして、閣議決定にもなっておるのであります。たとえば設備近代化補助金についていいますと、従来は輸出振興及び産業構造の高度化というような見地から、早急に設備の近代化を必要とする業種といたしまして、鋳物製造業等三十三業種、銑鉄、鋳物等百七十品目を指定しておるわけでありますが、この業種のうちで、輸出振興の見地から指定をされておるものがございますが、そういう業種でも、輸出実績がないというものは貸し付け対象にならぬ、こういう運用をしておったのでありますが、来年度からは、そういう業種のうちで消資者物価に関係の深い業種に属する企業に対しては、輸出実績等にかかわりなく貸し付けを行なう。また来年度からは、業種の指定に際しましては、消費者物価の対策の見地から、加工食料品製造業、サービス業等を、国民生活に密着した業種ということで新しく指定業種に加える、こういような方針で考えていきたい。それ以外のいろいろな業種指定にあたりましても、いま先生の御指摘のような点を今後は相当強く取り入れていかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  58. 華山親義

    華山委員 私はおそ過ぎると思います。ほんとうにいままでのやり方というものは——中小企業の地位というものに対する私は認識の問題だと思う。中小企業をよくしなければいけないという認識に立たないで、中小企業を日本の高度成長政策、そういう方面にどういうふうに役立てるかという見地からものを考えている。それだったならば中小企業庁は、失礼なことばでございますが、私は要らないと思う。中小企業庁というものが中小企業を対象として——中小企業に依存しているところの国民はたくさんいる。そういう人をしあわせにしようという観点であるならば、私はそこに中小企業庁の価値があるのであって、単に日本の高度成長政策に対して中小企業を役立たせようということであるならば私は中小企業庁は要らぬものだと思う。  それで、私は伺いたいのでございますが一この報告書の中に、私はさがしてみたのでございますが、ありませんけれども、零細企業の経営者あるいは労働者、そういうものの家計費は一体どういうふうになっておりますか。またどういうふうな格差がありますか、お調べになっておりましたらお教えいただきたい。
  59. 中野正一

    中野政府委員 小規模事業の、特に零細企業といいますか、生業的な零細企業等につきましては、非常に問題点が多いわけでありまして、この年次報告におきましても、いま御指摘のあったような点については十分な分析は、データ等関係でなかなかできかねる点もありますが、しかし、特別に一項目を設けまして、またそういう零細小規模企業の停滞的な傾向が非常に問題であるということで、特に問題点の第一にあげまして、問題点の指摘をし、またそれにつながる政策の拡充ということを大いにやっていかなければならぬという点は指摘をしておるつもりでございますが、いま先生の御指摘なすったような点で、なお不十分な点は今後さらに調査を続けて、もう少し詳細なものをやっていきたいと考えております。
  60. 華山親義

    華山委員 私はお願いするのでございますけれども、中小企業庁の任務は、中小企業者及び中小企業者によって生活しておるところの一般の人々、そこに雇われておるところの労働者等の保護をどうしてやろうかということだと思うが、そういう見地が足りないんじゃないか。中小企業庁というものはそういう見地に立って考えてもらいたい。その点におきまして、これは性質が違うといえば違うかもしれませんけれども、農林省のほうがまだ農家経済というものを考えておる。中小企業庁は、中小企業家の経済、零細企業家の経済というものをあまり考えないのではないか、そういう点につきまして、私はそういうふうに思っておりますし、おまえの考え方は違うんだといえば別でございますけれども、ひとつお考え直しを願いたいと思うのです。中小企業庁というものを設けるのもそこに意味がある。中小企業者の家族、そういうものを保護してくれる役所はないじゃありませんか。組織労働者、また一般の労働者につきましては労働省というものがある。中小企業に従業する者については何にもない。これは私は政府機構の欠階だと思う。そういうことで今後十分に——産業の一部門の補助的な部門であるという考え方から脱却して、中小企業者の生計をどうするかという方面にひとつ考えていただきたいと思うのです。これは私の意見でございますから、御答弁があれば伺いますが、どちらでもよろしゅうございます。
  61. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 今日の中小企業の問題で一番大きいのは、そこに働いております従業員の福祉向上をいかにするかという問題であるかと思っております。今日、中小企業者従業員、労働力を確保する意味において非常に困難な場面に逢着いたしておりまして、中小企業独自の立場において、個人個人が従業員のための福利厚生施設を設置するということも、なかなか経済力の関係からできませんので、今日では、あるいは商店街の組合をつくりまして、その商店街振興組合によります共同施設をつくりますとか、あるいは給食施設だとかあるいは宿泊施設であるとか、そういうようなものをつくることも現在やっております。また現に東京におきましては、橘町、馬喰町、横山町におきましては、従業員のために千葉県に大きな宿泊所を設けるとか、また新宿の商店街におきましては、現に給食施設がございませんので、これらのものが共同出資いたしまして、それから厚生年金からも金を借りまして、相当規模の大きな給食施設、休養施設、教養施設、そうしたものを団体的にいまつくっておるという状況でございます。商店街が中心になり、あるいは商店会が中心になり、あるいはまた組合等が中心になりまして、個々でできないところの福利厚生施設に対しまして、政府の資金を借り、それの力によりまして、現在逐次福利厚生施設を拡充いたしておるような状況でございます。  それからまた厚生省あるいは労働省方面におきましても、特に明年度の予算におきましては中小企業関係のそれぞれの予算を計上いたしておりまして、通産省と協力いたしまして、これらの中小企業従業員に対する福利施設のいろいろな施策を論ずるように、いま十分に連絡を強調いたしまして、今後推進いたしたいと考えておる次第でございます。
  62. 華山親義

    華山委員 私、抗議的なことを申しまして非常に何でございますけれども、人を採るのに非常に困るようになったからこうしたなんというのでは困ると思うのです。それは逆だと思うのです。初めからそういうことをしておれば、人を採るのに困らない。だから中小企業者並びにそこに雇われている人々をどうするかというふうなことで、人を中心にしたものの考え方で出発しなければいけないのであって、人が来なくなったからこうするのだということでは、ものの考え方が逆なんじゃないか。あくまでも中小企業というものを日本の高成政策の道具に使う、こういうものの考え方を改めて、中小企業というものを本体にしたものの考え方をしていただきたいと思います。  それから、これは大蔵省関係の方がおいでになりますかどうか、御所管でないと言われればそれまでございますが、歩積み、両建ての問題でございます。これは非常にりっぱな態度で公取委員会もやっておられるようでございますし、中小企業庁も御自信のようでございますので、私はこれに期待はいたしますけれども、歩積み、両建てというふうなことは、原因は一体どういうところにあるのか、根本的な原因から究明していかなければいけないと思う。それを究明しないで、ただ小手先の取り締まりで、あれは勧告でやろうといったって私はだめだと思う。これは私は病的現象だと思うのでありますが、どういうところに病根がありますか、中小企業庁はどういうふうにお考えになっておりますか承りたいと思います。
  63. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 お答え申し上げます。金融機関の歩積み、両建ては、これは確かに悪弊でございまして、過去長い間、こうしたことが一つの商習慣的なまことに悪い弊害でございます。しかしながら実際問題として、歩積み、両建てというものが事実上存在いたしておりまして、これに対しましては過去何年となく歩積み、両建ては悪弊である、これを廃止すべきであるという声を盛んに立てておったのでございます。しかしながら、これは一応一つの商慣習的な悪弊害でございますが、一つの慣習としてこういうものが存続いたしておりますので、この点につきましては、特に最近中小企業の倒産等も非常に多くなるし、またこうしたことが一つの制度として、慣習として存続することが中小企業のためのみならず、一般の商業界、経済界、工業界、あらゆる方面に悪い影響を与えておることは事実でございますので、この点につきましては、これは主管は大蔵省であるかも存じませんが、通産省はもちろんのこと、公取等も相互に連絡をとりまして、今後極力これが取り締まりに乗り出しまして、この弊害を何とかひとつ一掃いたしたいということで努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  64. 華山親義

    華山委員 いま取り締まるとおっしゃいましたが、取り締まりできるのですか。何かそういうものがございますか。
  65. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 直接これが刑罰法規とかなんとかいうことはないと存じますが、しかしこれはお互いの行政庁としての行政指導によりまして、十分にひとつ徹底していきたい、かように考えております。
  66. 華山親義

    華山委員 非常に長い間おやりになったということでございますけれども、少しもこういうことがなくならないのでございまして、なかなかこれはできないのではないか。私はこの間、大蔵委員で大蔵大臣にいろいろのことをお聞きした。大体歩積みというふうなことは、このごろ銀行はあまり言わなくなったようであります。しかし大体中小企業のいいところであって、都市銀行の例でありますが一都市銀行等から金を借りるには、自分のワクというものがあるのですが、自分のワクの三分の一というものを預金に持っていかなければ、これは貸してくれませんよ。ですから、自分のワクを増そうと思えば預金を多くしなければいけない。私はそういうことを申し上げたのでございますが、この年次報告にも、そのことは私の言ったとおりにきちっと書いてある。私は大蔵大臣に対する質問のときにも商習慣と言ったのでございますが、くしくも年次報告でも商慣ということばを使われておる。そういうふうなことでございます。ところが、これはここでうっぷんを晴らすわけではございませんが、大蔵大臣は何と言ったか。そういう場合は保証的なものは十分の一でいいのだ、三分の一は高過ぎる——三分の一は高過ぎる、十分の一でいいと言ったって、何ともしようがないじゃありませんか。中小企業者が、大蔵大臣がこう言ったから改めてくれと言ったって、改めてくれるものではありません。指導と言われますが、一体どういうふうな強力な指導の方法があるのか、お伺いしたい。
  67. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 これは通達は出しておるのであります。しかし一片の通達だけで事足れりとは私どもは考えておりません。やはりあらゆる機会に金融業者と接触を保ちまして、常にこれを監督いたしまして、またあまりにひどい場合においてはこれに対して勧告もするし、また即刻これを是正させるというような方向で、次第々々にこれを是正させるほかいまのところ手がない。一挙にこれをゼロにすることは今日の状態としては困難な状態でございます。
  68. 華山親義

    華山委員 とういうような面につきまして、大企業についてはそうでなくて、中小企業についてだけこれが行なわれておる。したがって高い金利も払わなければいけない。また私ども経験しておるのでございますけれども、自分のワクというものをふやすためにどうしても銀行に預金しなければいけないが、預金する金がない。しかし現在このような状態では発展しないというふうに考えまして、大企業に頼んで、大企業の子会社になって預金する例さえあるのです。私はこういうふうなことが次第に大企業の領域というものを増してきて、中小企業が大企業の系列下に入ってその支配を受ける傾向になるのではないかと思う。それで、こういうふうな悪習慣を認められた原因は、悪習慣だけでございますか。悪習慣さえやめればそれでいいものでございますか。何かもっと違った原因があるのではないでしょうか。悪習慣とわかっておったらやめればいい。あしたからでもやめればやめられる。子供だって、悪い習慣だといえばやめられる。悪習慣がやめられぬのか、たばこのようなもので、一生懸命やればやめられるのか、ほかに経済的な原因があるのか、そういうことを伺いたい。   〔委員長退席、小川(平)委員長代   理着席〕
  69. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 こういうことを言うと、私はおしかりを受けるかもしれませんが、根本的な原因というのは、やはり中小企業そのものが経済力が乏しいということであろうかと思います。もう一つは、銀行としてもできるだけ預金蓄積量を獲得しておきたいという点、そうした点が重なり合いまして、今日の歩積み、両建てということの一つの悪い習慣ができまして、それがだんだん度が過ぎてまいりまして、いま華山議員のおっしゃったように、ひどいのはもう三分の一以上も歩積みをしなければならぬというような結果になってまいりました。こういう点は、中小企業の経済力を逐次強くすると同時に、金融側におきましても、こうした悪い商習慣は極力矯正するような積極的な態度に金融機関側もなってもらう、それにはやはり政府そのものが強い態度でこれに対して臨まねばならぬ、かように考えている次第でございます。
  70. 華山親義

    華山委員 私はいまどこが病根であるかということはなんでございますけれども、非常に膨大化したところの銀行機構、これを維持するためには資金量が多くなければいけない。私が質問したときに大蔵大臣は、いや歩積み、両建てをやっても、それをみなおろすのだから、そうすれば銀行から借りる金が少なくて済むんだから何でもないようなことを言われた。そういうものじゃないと思う。あの膨大化したところの銀行というものを維持するためには、どうしても資金量も多くなる。これが一般中小企業及び大企業として、資金量が多いということはいいにきまっておりますけれども、そのほかに、そこから利益をあげて維持していかなければならない、そういう面があるのではないか。そこが是正されない限り、今後いろいろやりましょうとも、歩積み、両建ての制度、しかもこれが中小企業にしわ寄せされるという制度は私は直らないと思う。それだけの勇気が政府にございますか、お聞きしたい。
  71. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 今日の中小企業の倒産状況、そのほか中小企業の窮迫しておる状況を考えますと、やはりこうした歩積み、両建てのような悪弊につきましては、ただいま私が御答弁申し上げましたように、政府として強い態度をもってこれに対して善処するということが必要だろうと考えております。
  72. 華山親義

    華山委員 私はそういうことではならないと思いますが、これ以上お聞きいたしましても、現在の経済組織のもとでは何ともならないと思いますからやめます。  次に伺いますが、いま問題でありますところの約束手形の長期化の問題でございます。これは通産省の御専門でございますから、お伺いいたしますが、大企業の振り出す約束手形がこのように長期化している。これは何かの原因がなければいけない。どういう原因でそういうことになっているのか。長期化をやめるとするならば、その病根から手を入れていかなければいけない。どこに病根がございますか、お伺いしたい。
  73. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘のありました手形のサイトが非常に長くなっておる。これは実際には景気調整の過程におきましていろいろ変動がある。したがって、昨年あたりは金融がある程度ゆるんできた時期でございまして、その間に企業間の信用の膨脹がある程度正常化のほうに進むのじゃないかというふうにわれわれも期待しておったのでございますが、実際にはそうでなくて、昨年一年間、企業信用がどんどん膨脹し続ける。現在の数字でいいますと、企業信用が約十五兆くらいになっておるのじゃないかということがいわれておりまして、しかもいま御指摘がありましたように、手形の期間が非常に延びてきておるという事態からいろいろな現象が起こりまして、たとえば大企業から下請をしておる業者あたりが、手形のサイトが延びたために非常に困っておるというような状況がございますので、先般、御承知のように下請代金支払遅延等防止法の運用について、これを強化するということをきめまして、通産大臣と公取委員長の名前をもちまして、法律の施行を厳正にやるという通達を出しました。同時に、親の約二千企業につきまして、中小企業庁におきまして、主として手形支払いの状況等について定期的に親のほうから調査する。いままでは中小企業庁としては、主として下請のほうから調査をするということをやっておったのでありますが、それではなかなかほんとうのことを言ってくれません、真相はつかめませんので、今度は中小企業庁がいよいよ乗り出して、親のほうから定期的な調査をして、そうしていまの方針では、大体百五十日以上の手形を出しておるものは——いまの銀行でいいますと、御承知のように九十日くらいの手形は大体割れますので、これは六十日以内に現金あるいは現金化し得る手形で払えということは法律できまっておるわけですが、そこへ一挙に持っていくことはなかなかむずかしいのじゃないか。きのうも予算委員会で私のほうの通産大臣がお答えになったのですが、百五十日を百二十日くらいに縮める、さらに縮めていくというふうにやっていきたい。もちろん、これをやっていくのには親企業の協力、努力も要りますが、同時に金融機関方面の協力等も要るわけでありまして、現在こういうふうに膨脹し過ぎておる企業信用の問題をどうして少しでも正常化のほうへ持っていくかということになると、これは非常にむずかしい問題でありまして、大蔵省でもいまいろいろな対策を御考慮願っておるようでありますが、われわれとしては、中小企業の立場からいうと、一方的に中小企業のほうにしわが寄せられるということじゃ困るということで、これは中小企業庁だけではなくて、通産省でいうと、原局というのが主として親の、大きいほうの企業を監督しておる、そういう役所もございますので、そういうところからも非常にやかましく言っていただいて協力も得まして、逐次これが改善に向かうように努力したいというふうにして、着々いま手を打っておる次第でございます。
  74. 華山親義

    華山委員 よくわかりますが、そういうこともお聞きいたしておきますけれども、何も好きこのんでそういうことを大企業はやっているのじゃないでしょう。一体何が大企業にそういうことをさせるかということをお聞きしている。
  75. 中野正一

    中野政府委員 これは非常にお答えしにくい問題じゃないかと思うのですが、一つだれが見ても言えることは、日本の経済の場合には親企業についても、中小企業もございますが、いわゆる過当競争というか、シェア獲得の、特に開放経済下に突入するという情勢でこれはやむを得ないことかもしれませんが、各企業とも少し背伸びをするほうに一生懸命になっておる。これは一つは、従来民間の力によるいわゆる高度成長というものをささえてきた大きな原因でありますので、一がいに悪いとは言えませんが、そろそろ開放経済下にあって外国とほんとうの競争にさらされる事態になってくるわけでありますので、そういう点は、私としてはもうちょっと大企業のほうも反省をしてもらいたい。やはりいま言ったような、少し背伸びし過ぎておる、過当競争というような面が一つある。  それからずっと見てみますと、特に大企業については、買い掛けの量より売り掛けのほうが非常に多くなっておるわけです。どっちかというと、年次報告にもちゃんと分析してありますが、中小企業の場合は売り掛け金よりもむしろ買い掛け金のほうが多くなっておる。それは非常にいいじゃないかという説になるかというと、そうじゃなくて、中小企業の場合は、売り掛け金のほうで多くして仕事をふやそうと思っても、銀行は金を貸してくれないわけです。そういうこともあって、やむを得ずそういうことになる。ところが今度は金融が締まってくると、買い掛け金のほうでそれを調整しておったやつがうまくいかないということになって、一つは金融引き締めの過程で倒産に追い込まれるということもあるわけであります。  いずれにいたしましても、これは日本経済全体の問題として考えていかなければならぬ問題であって、われわれとしては大企業側の反省ということがどうしても必要じゃないかということは申し上げておるわけでありまして、特に最近は機械関係等について月賦とか年賦というような割賦販売が非常に盛んになってきた。これもわれわれのほうでは、場合によっては過当競争で非常におかしいじゃないかということを言いますが、ただこれも、開放経済に入ってきまして、外国の輸入の機械と競争しなければいけない、ところが外国の企業は非常に資本力が強いわけですから、政府の援助なしに、長期の賦払いで、安い金利でどんどん品物を売ってくる。それに対抗するために、ある程度そういうことを日本の企業としてもやらざるを得ないという面もあるかと思いますが、それにしても、あまり売り掛け金のほうにどんどん信用をつけてやるというようなことで、どうしても今度は下請であるとかそういう中小企業とか、品物を買うほうへしわ寄せがいくということもあるのじゃないか。これはいろいろ原因は複雑でございまして、一がいには言い切れないとは思いますが、よく研究をいたしまして正常化にひとつ努力したいと考えます。
  76. 華山親義

    華山委員 いま長官のお話から感じたことは、現在の病根としまして、手形が長期化したことについては、日本の高度経済成長政策の結果であるというふうなおことばも、要約しますればあるようでございます。その点はそれでよろしゅうございますが、ひとつお伺いいたしたいのでございますけれども、現在の場合において、政府が何のどろもかぶらないで歩積み、両建てあるいはこの長期化、そういうことについて、ただ訓令、通達では、私はそういうことはできないと思うのです。そこに何かやはり政府がどろをかぶらなければいけない。そして困ったところの状態を打ち切らなければいけないと思うのです。それで私はお聞きいたしますが、今後金融梗塞の状態が続き、貿易の状態等から見て深刻化する、大体そういうものだろうと私には予想されます。それから一面においては歩積み、両建てという面を規制していく、そうすれば資金量が少なくなる、そういうふうなことで、大企業がこの長期資金を短縮していく資金が当然要ります。どういう点でこれを解決なさるおつもりでございますか。片方のほうではサイトを短くしろ、これについて資金が要るということはあたりまえなんだ。片方のほうでは資金を収縮しろ。二つの矛盾した政策が並んでいる。どこでこれを打ち切って調整なさるおつもりでございますか、伺いたい。
  77. 中野正一

    中野政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、私ではちょっとお答えしにくいかと思いますが、いま言われた、片方のほうでは期間を短くする、片方のほうでは引き締め政策を続けていくと言っておるわけですから、そこに解決策が見つからぬじゃないかというおことばでございますが、確かにこれはいろいろな非常に矛盾した面を含んだ問題でございます。その意味合いにおいて、この前の閣議において福田通産大臣が下請代金支払遅延防止法の運用強化について発言された際に、やはり親企業の大所高所からの協力、反省ということが一つと、もう一つは、金融政策というか、金融機関のやり方というか、そういうものについても総合的な見地からこれを考えてやるべきであるということ、今後これに関連していろいろな問題が、そういう政策をとっていけば、そのはね返りとして、いま先生が御指摘になったような問題が当然出てくるわけなんです。それじゃどうするかということを、いますぐ私の口から明快な御答弁ができないのは残念でございますが、特にうちの大臣がそういうことを閣議で言われまして、それはそのとおりだ、大いに政府としてこれは考えなければいかぬじゃないかということで、閣議でも私のほうの福田大臣の発言を了承されまして、研究をするということになっておるわけでございます。それだけお答えしておきます。
  78. 華山親義

    華山委員 長官にお聞きいたしましても全く御無理なようでございますので、これでやめますけれども、私は、それだから病根ということを言うのです。  それで、私、一つ提案があります。私は大蔵大臣には言ったのです。政府がただ通達とかなんとかいうような、あんなタイプライターで打ったようなことではできないのであって、政府が自分でどろをかぶれということを言うのであります。それで私が予算分科会で提言したことは、大企業の出した手形で税金を納めさせろということを言った。幾らかでも助けになるだろうと私は思う。そのことにつきまして、大蔵大臣は考慮すると言ったところが、あわてふためいて大蔵省のお役人が出てこられて、考慮するということもおやめになった。そこで、私は、大企業信用のあるような約束手形で税金を納めることをひとつ提言したい。  もう一つは、公認会計士というものがある。公認会計士は、大企業についてはその確かなるものを報告しなければいけないことになっている。私は公認会計士のことを存じませんから、改正すべきものは改正してよろしいが、公認会計士の手を通じて、この会社はどれだけのサイトの約束手形を出しているか、ひとつ会計の決算報告のときに出すような制度を考えてもらいたい。  それからもう一つは、そういうふうな大企業の金融状態が悪化した場合に、下請だけが影響を受けて資本のほうが影響を受けないということはないはずなのだ、私は、公認会計士等の報告ということも勘案いたしまして、配当金を延期してもらいたい。この配当金を延べ払いにすることによって中小企業に対するしわ寄せをひとつゆるめてもらいたい。  社会党は、対策がないじゃないかと言われるから一以上のことを提案をしておきます。どういうようにお考えになりますか。
  79. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 これは、華山委員の御提案はいずれも大蔵省の所管でございますので、大蔵省にはその旨を私たちからもよく申しまして、善処するようにいたしたいと存じますが、いろいろ大企業のサイトの問題につきましては、ただいま、サイトの長いことにつきましては中野長官からもこまごまと御説明申し上げたのでありますが、通産省といたしましても、今回の通産大臣の閣議発言趣旨に沿いまして、極力サイトを短くするような指導方針というものをつくりまして、現在各地方庁にも流しまして、これが協力を求めるようにただいま努力をいたしておる次第でございます。
  80. 華山親義

    華山委員 きょうは私、いろいろ申しましたけれども、まことに不満足でございます。ひとつ党といたしましてもいろいろなことを考えまして、なお大臣なり大蔵大臣なり、あるいは総理大臣にも御質問する場合もあるかと思いますが、その点保留をいたしまして、私の質問を終わります。
  81. 小川平二

    小川(平)委員長代理 次会は、明後六日金曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会