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1964-10-30 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月三十日(金曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 河野  正君 理事 長谷川 保君       伊東 隆治君    大橋 武夫君       熊谷 義雄君    齋藤 邦吉君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       松山千惠子君    亘  四郎君       滝井 義高君    八木 一男君       八木  昇君    山口シヅエ君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  委員外出席者         厚生政務次官  徳永 正利君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (薬務局企業課         長)      武藤き一郎君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 十月七日  委員大原亨辞任につき、その補欠として松井  誠君が議長指名委員選任された。 同日  委員松井誠辞任につき、その補欠として大原  亨君が議長指名委員選任された。 同月二十八日  委員大原亨辞任につき、その補欠として楢崎  弥之助君が議長指名委員選任された。 同日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  大原亨君が議長指名委員選任された。 同月三十日  委員伊東隆治君、大泉寛三君及び高橋禎一君辞  任につき、その補欠として熊谷義雄君、亘四郎  君及び松山千惠子君が議長指名委員選任  された。 同日  委員熊谷義雄君、松山千惠子君及び亘四郎君辞  任につき、その補欠として伊東隆治君、高橋禎  一君及び大泉寛三君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 時間もありませんし、ごく要点だけをさしあたり伺いたいと思います。  第一の問題は、育成医療関係であります。育成医療の問題が順次進んでまいりましたことは、私も喜びにたえないところでございますけれども、しかし現状まことに困った問題が起きているのであります。まず、今日育成医療は一体どういうようにやっておるか、ごくかいつまんで要点だけをお伺いしたい。
  4. 竹下精紀

    竹下説明員 ただいま御質問ございました育成医療の点でございますが、児童福祉法二十一条の十二に基づきまして、身体障害のある児童に対しまして生活能力を付与するために必要な医療給付を行なっておるわけでございます。大体保健所あるいは県のほうへ申し込みをさせまして、それによりまして育成医療に適当するという診断のある場合に行なうわけでございますが、御指摘のように、まだまだ申請件数に対しまして実際に給付数が少ないということであります。これは主として予算関係で制約があるわけであります。昨年までは、主として身体の外形上の障害に対しまして育成医療を行なってきたわけでございますが、本年度からは、先天性心臓疾患治療につきましても育成医療を行なうことにいたしておりますが、この点につきましては初めてのことでございますので、また予算関係もございますので、本省のほうに協議させましてその結果許可をしておる、こういう実情でございます。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この育成医療については、当然指定医療機関制度があって、今日、私の推定ではほぼ六百有余の施設指定をされておると思うのでありますけれども、この指定基準というようなものはどういうところでしておるか。
  6. 竹下精紀

    竹下説明員 現在全国に七百二十一カ所の医療機関指定されておるわけでございますが、従来、育成医療につきましては、おとなの更生医療と同様な考え方をもちまして肢体不自由、視覚障害、聴覚、音声、言語その他の障害でございますので、整形外科を主体にいたしまして耳鼻咽喉科あるいは眼科、こういったところが医療機関指定基準としてやられておるわけであります。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 本年から先天性心臓疾患というものにも適用されるわけでありますけれども、それならば当然、その心臓疾患手術のできるもの——先天性のものでありますから当然外科手術が主になると思います。当然それを指定しなければならぬのに、そうではなくて整形外科でやっているということはどういうことであるか。つまり整形外科病院では、必ずしも——先天性心臓疾患、たとえばファロー氏病だとかあるいは中隔欠損症だとかいうようなものは非常に大きな手術をする、またそれに必要な人工心肺その他の施設を持っていなければできないという疾患でありますから、そういうようなたぐいのものは単なる整形外科ではできない。特別なそういう施設がなければできないのに、それらに対する指定をしているのかどうか。いまのところ、私の承知しているところでは指定をしていないように記憶しておるが、厚生省では一体どうやっているか。
  8. 竹下精紀

    竹下説明員 御指摘のような点につきまして、最初に申し上げましたように、更生医療指定機関育成医療指定機関が従来同様でございましたので、そういった点につきまして検討すべき問題があるということは承知いたしております。ただ、心臓手術という問題につきましてはまだ一般的に行なわれるわけではございませんし、現在の整形外科を持っておる医療機関で行なっているところがかなりございますので、また県外移送費その他につきましても育成医療の中で考えておりますので、まず本年度につきましては大体いけるのではないかという考え方で、心臓につきまして特別に規定をしなかったわけでございますが、本年度始めました結果によりまして十分その点は検討いたしたい、こういうように考えております。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そこで今日、重大な問題が起こってきている。というのは、いまのような心臓外科手術をする施設のあります病院を必ずしも指定しておらぬので、整形外科のできるところ必ずしも——いまのお話では、整形外科でできるところはかなりあるとおっしゃいますけれども、人工心肺その他の施設というものを必ずしも持っているとは言えない。まずそういう施設の問題が一つ。  いま一つは、先ほどお話し予算の問題。この予算が、全国先天性心臓疾患を持っておる不幸な子供たちを救うだけの予算としてはきわめてわずかであって、とうてい足りない。さらに育成医療ということにこれを適用することになりましたので、非常に困った問題は、いままで、たとえば生活保護によりまして医療を受けておりました先天性心臓疾患を持っている子供たちが、いままで生活保護であり幸したから生活保護法によりますところの医療ができる病院へはどこでも行けた。ところが今度は、育成医療ということになりましたから、指定医療機関でなければそれはできない。しかも予算は少なくて、適用されることは非常に少ない。育成医療ということは生活保護に優先いたしますから、したがって生活保護法では、育成医療という制度ができまして先天性心臓疾患に適用することになりましたから、したがっていままで生活保護でやれていた者あるいはやるという予定で入院をしておりました者が急にできなくなった。育成医療が優先しますために、生活保護はそのあとになりますために手術ができないという事情が起こってきた。ところが御承知のように、小児あるいは幼児、乳児等先天性心臓疾患というものはやるべきときがある、手術をすべきときがある。そのときを失いますと不幸なことになるという、非常に時期の問題があるのであります。でありますから、いまのようで行き方でいたしますと、現在全国相当数先天性心臓疾患を持っております者が、育成医療というものを、この先天性心臓疾患子供たちを救うために適用するということができたばかりに、適期に手術を受けられないという事情が今日起きているのであります。でありますから、私は、これは厚生省のお役人はうっかりして気がつかなかったのだろうと思いますけれども、重大な段階にきておりますから、至急、十分の予算ができるまで、またいまの指定医療機関というものを心臓関係手術のできる病院全部にあらためて適用するまでは生活保護法による診療ができることにしてもらわぬと、不幸な子供全国にたくさんできるという現実にいまきているわけです。でありますから、この問題は至急そういうように変えてもらいませんと、非常に非人道的なことが厚生省方針によってできてしまったということになるのでありますから、これは至急方針を変えてもらいたい。そうしませんと非常に不幸な事件が現在起こっている、きょうも起こっているわけであります。でありますから、その点を至急変えていただけるかどうか、承っておきたい。
  10. 竹下精紀

    竹下説明員 育成医療予算が十分でないという点につきまして、御指摘のような問題が起こっているようでございます。生活保護担当のほうとよく相談をいたしまして、実情に応じた適宜の措置をとりたい、かように考えておりますが、医療機関の問題も至急すみやかに検討いたしたいと思います。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 社会局長に伺いたいのですけれども、いまお聞きのような事情です。きょうは時間がありませんから伺いませんけれども、先天性心臓疾患子供全国にずいぶんたくさんある。私は最近びっくりしている。非常に多い。この数その他も実はきょう伺うつもりでありましたけれども、持ち時間が幾らもありませんから伺いません。いまのように、育成医療を適用しようということから逆に子供たち医療を受けられないという不幸な事件になっておりますから、これは至急児童局社会局と御相談いただいて、そのことを適用するまでは生活保護法でやってよろしい、こういうことをきめていただいて下部に流してもらいたい。そうしないと、県のほうでは受け付けないのであります。あるいは保健所あるいは社会福祉事務所で受け付けないのでありますから、ひとつそれを至急やってもらいたいのでありますけれども、いかがでありましょうか。
  12. 牛丸義留

    牛丸説明員 育成医療を受ける問題と生活保護、これは育成医療の特にそういう内科疾患心臓関係重要性というものは、生活保護で別にそういうものをチェックする趣旨はないわけでございます。その点はもう先生も十分御了解の上での御質問だと思います。したがって、生活保護は結局経費負担でございますから、医療の必要なものはすべて医療を受けていく。その経費負担生活保護で受けるか、あるいは育成医療なりその他の施策で受けるかという経費負担の問題だけが、われわれとの間に関連が出てくるわけであります。しかし、両制度の運用によってただいま御指摘のような支障が起きますならば、これは生活保護の運営から見ても適当なことでもございませんので、十分実情調査いたしまして、御指摘の点がうまく円滑に運営できますように、私どものほうからも研究してそういうふうによく趣旨を徹底させたい、かように考えております。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまも申し上げたように、育成医療が優先するということになりますから、したがって法律だけでやってまいりますと、末端の県及び社会福祉事務所保健所等では受け付けられないというのです。現在そう言っておるのです。それですから、十分研究されておったのじゃ困る。十分ひとつ研究されないで——これはわかり切った問題です。とにかくいま先天性のそういう不幸な心臓疾患心臓の壁に穴があいている、あるいはその他の四つくらいの疾患を一緒に持っておりますファロ−氏病というようなものが出てくるわけでありますから、そういう者が今日実にたくさんあるわけです。この調査厚生省でできておるかどうか存じませんけれども、これは御調査なされば驚くほどある。そしてこれは、ほうっておけば五つ、六つ、あるいは十二、三で死んでしまうという子供たち、そういう子供たち手術してなおしてやれば一生働ける、一生天寿を全うできるという子供たちであります。それが今日、事実そこで行き詰まってしまって手術が受けられないということになっておるのですから、十分検討なさらないで、すぐにこの問題は解決してもらいたい。そうしないと、非常に不幸な子供たちが不幸な転帰を招くことになるということになりますから、至急やっていただきたい。時間がありませんから、そのことを両局で至急十分御相談なさってやっていただきたい。  次には、血液の問題であります。薬務局長に伺いたいのでありますけれども、血液不足現状というものをどういうようにお考えになっておるか、ごく簡単に要領よく説明してください。
  14. 熊崎正夫

    熊崎説明員 いわゆる黄色い血ということで新聞紙上その他で取り上げられましたことしの三、四月ごろからの動きに伴いまして、全国的に献血運動の盛り上がりが見られるようになってまいりまして、すでに保存血液製造量は、量的にはたいしたことはございませんけれども、昨年三%、一昨年二%程度のものが、現在血液献血のほうは八%前後の伸びになってまいっておりますが、ただ片一方におきまして売血というものが非常に減ってまいりましたので、全体から見ますと、確かに血液が若干不足しておるような状況に相なっております。ことしの一月から八月までの血液製剤の量を見ますと、前年度が三十万八千リットルくらいの製造量で、昨年同期が三十九万、ことしは三十万でございますから約七八%になっております。製造量自体は若干減っておるということは考えられますが、この現象は、片一方におきまして従来非常にむだに血液を使っておった——むだと言いますと語弊がありますけれども、必要でない際に血液医療機関で使っておったのが、その必要がない、また医療担当者のほうも、血液は貴重なものでありますがゆえに使用をなるべく差し控えようというふうなこともございまして、全体としてはまだまだ絶対的に困るというような状況に相なっておるとは私ども考えておりませんが、しかし製造量は確かに一、二割は減っておるというふうに考えております。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 おたくのほうでお出しになりました厚生白書の三十八年度版を見ましても、供血者適格率の低下及び一人当たり採血量増加——売血の場合ですが、こういう傾向が著しく近年出ておるわけです。したがいまして、いまの黄色い血の問題その他が出てきて、各新聞が非常によくこれを取り上げてくれまして、全国的に大きな問題となってきました。いま局長は、若干医療用血液不足しているというお話でありましたが、これはそういうような認識では私は困ると思うのです。今日、医療用血液がないために手術できないという病院がずいぶんある。ほとんど軒並みであります。ほとんど軒並みに手術ができない。最近、御承知のように医学の進歩からいたしまして、大きな手術が進んでまいりまして、できるようになってまいりました。したがってまた、相当多量の血液を必要とするという事態が迫ってきている。今日、おそらくどの病院をお調べになりましても、医療用血液不足のために手術ができないという病院がほとんど軒並みだと思うのです。私の知っている限りではほとんど全部です。でありますから、そういうような若干不足という認識では困るのであります。おそらく全国病院をお調べになって、手術を盛んにしておりますから、病院は軒並みできません。そういうような非常に極端な困難な事態に立ち至っているのであります。しかし、幸いにして各新聞等がこの問題を非常に取り上げてくださったために、ようやく国民の中に献血あるいは預血というような制度に対する認識が高まってまいりました。また、血液をある程度差し出しても健康に影響はないということの知識が普及してまいりました。また、人道的な立場から、進んで血液献血しようという人々が非常に多くなってまいりました。いまこそこの国民の盛り上がる機運というものを厚生省はとらえ、これを組織し、そして売血制度を全廃して、全部を献血預血制度に切りかえるという努力を懸命にすべきときだと思うのです。ちょうど予算編成期でありますから、先ほど育成医療の問題とともに、これは私は大臣予算を十分取っていただいて、この問題を画期的にひとつ進めてもらいたい。事実、これは厚生省でお調べになればわかりますけれども、いま申しましたように、手術ができない病院は軒並みであります。ことに交通災害等も非常に多くなってまいりました。交通災害者等傷害者のための輸血というようなことは、非常に必要になってまいりました。こういうことでありますから、私は十分な予算をこの際取っていただいて、そしていまのこの時期をのがしてはならぬ。この時期をのがさないで、将来の日本の医療を完全に行なうために、進んでまいりまする外科手術等医療というものを十分に行なわせるために、この際特別に、この点については大臣の御努力を願いたいと思うのです。また、薬務局長等当局の格段の奮起をお願いしたいと思うのであります。事実今日は、軒並み外科病院におきましては手術ができない、供血不足のために手術ができないという事情になっておるということ、この事態を十分に厚生当局は握っていただきたいと私は思うのであります。これらについて、大臣のひとつ御所見を承りたい。
  16. 神田博

    神田国務大臣 いま長谷川委員から、血液の不十分なために全国公私立病院等において手術が十分に行なわれていない、まことに遺憾であるから、国において予算等十分用意をして、十分な処置をするようにという御意見でございましたが、私も御趣旨はまことに同感でございまして、御承知のように第三次池田内閣に籍を置いたわけでございますが、これは来年度まで待ち切れない、予備費をもってもひとつ解決の一助にしたい、こういうような考えをもちまして、先般予備費約八千万円でございますか、これを大蔵省との御相談ができまして、各都道府県ごと採血車等も補助いたしまして完備するような方途に持っていきたいとただいま準備をいたしております。明年の一月からこれが活動するようになるわけでございます。しかし、いまもお話しのございましたように、それで十分であるというふうには考えておりません。逐次整備いたしましてそして完ぺきを期したい、こういう所存であります。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この血液問題は、先ごろ来オープンシステムでやるというふうなことが巷間に伝えられておりますけれども、これはどうなっておりますか。
  18. 熊崎正夫

    熊崎説明員 オープンシステムにつきましては、去る七月と思いましたが、薬事審議会に諮問をいたしまして、その答申が、一応青空採血はこの際やめるとしましてもこの際踏み切ったほうがいいだろう、技術的な検討は薬事審議会調査会のほうで検討してくれというふうなことになりまして、一昨日の薬事審議会で、調査会で検討いたしまして、それからあと細菌製剤特別部会で検討いたしました中身が薬事審議会答申にして出てまいりました。技術的な基準等もきまったわけでございます。ただ、オープンシステムをやる場合に、これは薬事法構造設備並びに血液取り締まり法の政令その他で法律的な手続が必要でございますので、この方面手続をいま作成中でございます。それがきまりましたならば、直ちにオープン採血は、むろん限られた範囲内でございますけれども、実施できるという見通しを持っております。薬事審議会答申は一昨日いただきました。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大いにそういう方針を進めてもらいたいと思うのでありますけれども、今日の血液関係実情を見ておりまして、私、憂慮にたえないことが二つあるのであります。一つは、日赤血液銀行との間に、必ずしもスムーズに関係がうまくいっていないということから、あるいはなわ張り争いと申しますか、または府県の県境を越えてのいろいろな問題等日赤自体にもいろいろございます。こういうことで、これがスムーズにいかない問題が一つある。この問題をひとつ行政的にスムーズにいけるように、どこからでも一番手近なところで血液の採取ができるように努力してもらいたいということが一つであります。もう一つは、いま巷間こういうことがいわれてきておって、せっかく盛り上がる献血機運をはばむようなことがいわれてきているのであります。というのは、日赤採血車をもってしきりに採決を始めるけれども、これは東南アジア、露骨に言えばベトナムラオス、ああいう方面戦線に持っていくのだ、その意図をもってやられているといううわさであります。私は、おそらくそういうことはないだろうと思います。国内でとりまする血は国内需要に足らないのでありますから、いまのようなベトナムラオス戦線に持っていくというようなことはあり得ないと私は考えるのでありますけれども、そういうことが一部の新聞にも書かれているようであります。そういうことは非常な誤解であり、また、せっかく盛り上がりました国民献血の情熱というものをはばむこれよりひどいものはないと思うのであります。でありますから、この際私は、大臣のおことばとして、そういうことがないならばないということを明確にしておいてもらいたい。そうしませんと、昨日も私はあるところで、相当紳士の人がそういうことを議論しているのを聞いてびっくりしたのであります。でありますから、この際それを明確にしておいていただきたい。国内で採血いたします血は国内で使うのだということを明確にしておいてもらいたい。決してベトナムに持っていくのではないということを明確にしてもらいたい。私はびっくりしたのであります。どうぞひとつ……。
  20. 神田博

    神田国務大臣 いま長谷川委員からお述べになりました現在献血いたしておりますもの、また将来献血採血車等拡張等をいたしまして献血量を増加していこうという、この問題でございます。ベトナムラオス等のほうに使われている、あるいは使うのではないかというようなうわさがあるということ、実は私、これはいま初めて承ったのでございます。何か出ておったそうですが、これを見ないのははなはだどうも恐縮でございますが、断じてそういうことはございませんし、またさせるような考えを持っておりません。先ほどからお話しもございましたように国内で足らないのでございますから、国内でひとつ十分まかなえるようにしていただきたい。しかも国内でまかなったものを、余裕があったから出すのだというような考えも毛頭持っておりません。これはわれわれ民族の一つの誇りとしまして、国内需要をひとつ十分まかなって、不安のない十分な治療を進めていきたい、こういう考えでございます。御了承願いたいと思います。
  21. 河野正

    河野(正)委員 血液問題がいま国民の間でもいろいろ論議を招いておりまして、ムード的には非常に盛り上がってまいったと思いますので、私は、やはりこの際この国民の盛り上がる世論を背景として、この問題に対しまする抜本的な対策を確立しなければならぬ、こういうふうに考えております。  そこで、私も関連をして一、二の点についてお伺いをいたしておきたいと思いますが、この問題の中でいろいろ問題がございます点は、大体集約いたしますると二点ございます。一つは運用の問題であり、いま一つ制度の問題でございます。特にいまいろいろ世間で騒がれております問題につきましては、すでに中央では行管がそれぞれ監査をして勧告をいたしております。その中で、この問題をはばみまするいろいろな原因というものが浮き彫りにされておるわけでございますが、特に先日、社会保障制度審議会の中でも、官房長からいろいろ四十年度予算の要求の中身についての御意見を承った際に、血液問題については将来日赤を中心として強力に推進をする、こういうふうな御意見の開陳がございましたところが、いまこの日赤につきまして、いろいろこの血液問題に対しまする疑惑がございます。特に京都の蜷川知事のごときは、いろいろ日赤の運営について問題があるので日赤を中心とする献血問題、預血問題については協力することはできない、こういうような声明も出されてまいりました。そこで、私も、せっかく国民の世論というものが盛り上がってまいったわけでございますから、この際にそういう世間の疑惑というものを一掃してもらわなければならぬ。その一つとして、いろいろ言われております中に経理上の問題がございます。これは先般の社会保障制度審議会におきまする官房長のお話を承ってまいりましても、献血でございますからただで血をもらうわけですけれども、実際には千六百五十円で売りつけるというようなことで、そういう金の問題が一体どういうことになっておるのか、ここに一つの疑惑がございます。国民の立場から申し上げますと、せっかくただでいろいろ人命を救済しようという善意から生まれた献血でございますけれども、それが一方では千六百五十円でかってに売り渡されておる。しかもその会計の使途というものが必ずしも明確でない。そういうことでは私は国民の善意というものが盛り上がりませんので、そういうことが今後大きく献血問題を盛り上げていこうということのやはり障害となるので、そういう点はひとつここで明確にしてもらわなければならぬ、こういうふうに考えます。たまたま先日の社会保障制度審議会におきまする官房長のお話によりますと、そういう一切の金をもって今後日赤献血に対しまする施設の拡充をやってもらいたい、そういう趣旨でございます。そういう趣旨もけっこうでございますけれども、しかし、いまも申し上げますような会計の使途が明確でないというような疑惑があるわけでございますので、そういう点について、やはりこの問題をだんだんと円滑に発展させていくという意味において、私はやはり明確にしてもらう必要があるのではないか。そういう疑惑に対して厚生省がどういう態度で臨んでまいられるのか、この際明らかにされますならばひとつ明らかにしていただきたい。
  22. 熊崎正夫

    熊崎説明員 お答えいたします。  献血運動日赤を中心にしてやりたいということは、先般八月二十一日の閣議決定できまったことでございますが、その後、御指摘の京都の知事とのお話というものは、最初知事さんは、先生御指摘のような点の疑問を抱かれまして、おかしいじゃないかということをおっしゃっておられたようでございますが、私のほうはやはり現地でお話をしたほうがいいということで、直ちに担当課長が出張いたしましてよく話し合いました結果、中身はわかったということで、積極的に協力するというふうな形に御了解をいただいております。  それから日赤の経理上の問題でございますけれども、御指摘のような疑問の点があったことは、私も従来はそういう点を指摘されておった事実は承知いたしております。しかし、今回日赤中心に大々的な献血運動をやろうということで、先ほど大臣の申されましたような予備費の支出にあたりまして、日赤側と、それから大蔵当局も入れまして、この経理上の問題につきましては、従来のやり方と違いまして、日本赤十字社は、献血事業につきましてはこれを一本の独立会計として運用する。それから千六百五十円の中身の五百円は、何といいますか、いわゆる売血の場合には売血代といいますか、血液代金につきましては、これは使途を明確にいたします。それから日赤の経理全体につきましては、五百円の使途の中身を含めまして、定期的に国民に公開をするというような原則を打ち立てまして、現在の五百円の内訳につきましては、これをたとえば日赤献血手帳とか、あるいはバッジとか、その他いろいろな諸経費の中身を日赤当局と話し合い中でございます。いずれ近く五百円の内訳はきまると思います。それで、それがきまったあと、定期的に中身を国民に公開をするという原則を明らかにいたしたいと思いますので、この点も蜷川知事のほうには御了解をいただいて、よくわかったという話で協力をいただいたわけでございまして、そういうことになりますれば、私は、日赤のこれまで御指摘のような御疑問の点は一切解明するのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。  千百五十円につきましては、これはいわゆる管理費でございますので、日赤が特別会計をやりまして、千百五十円でどの程度の献血をやり、それがどのように人件費として払われ、物件費として払われたかということも、日赤血液事業の公開の原則に基づきましてこれを一切明らかにする、こういうことになっておるわけであります。
  23. 河野正

    河野(正)委員 いまの問題は、私は一例として京都の例をあげたわけですけれども、福岡県についてもやはり九州行管から監査を受けて、そういう勧告が行なわれておるわけです。ですから、これは単に京都のみならず、各地における運用について非常に疑惑があったのだろうと思うのです。そこで、この問題を発展させるためには、やはり国民の十分な納得を受けるということが前提だと思うのです。そういう意味では、その経理問題については、この際、いまいろいろ御説明がございましたけれども、さらに明確にするための格段の努力がほしいというようにわれわれは考えます。  それと同時に、運用上の問題でございますけれども、いま問題となっております点は血液が足りないということが一つと、いま一つは、せっかく輸血はやったけれども、そのあとに血清肝炎を起こしてきたというようなことで、二次的な被害というものが出てまいっております点がまた問題点でございます。ところが、この血清肝炎の原因等については、なかなかいま明確でない点が多いわけです。しかしながら、ここで一、二の点で指摘できますことは、採血する際の運用が非常に悪い、いろいろ欠陥がございます。たとえば医師が基準の確認をやらなければならぬ点をアルバイトの学生がやってみたり、あるいはまた、医師がやったけれども採血者の全身状態あるいは過去における採血の状況等を十分確認せずに採血する、そういうような採血する際における管理が非常に不明朗である、そういうところにいま一つの問題点がございます。ですから、それらの点についても、ここで単に予算をつけたからそういう問題が解決されるということではない。だからこれは、幾ら金をつけてもそういうような管理がルーズであれば、勢い血清肝炎の防止ということはできないわけです。したがって、こういう点は今後行政上どういう措置をするかという点が考慮されなければならぬというふうに考えます。  それから、先ほど長谷川委員からも御指摘ございましたような日赤血液銀行との関係が、必ずしもきちっと整理されておらぬというようなおしかりもございます。これに関連をいたしましては、たとえば地方薬事審議会の構成というものが、非常に問題があるというような点も行管から指摘をされております。というのは、業者関係から出ておるこの審議会の委員が多過ぎるということなんです。そこで、公正な意見というものがなかなか地方薬事審議会から出てこない、こういう点も実は行管から勧告を受けております。ですから、そういう薬事審議会のあり方等についても——これは行管から勧告が出ておるわけです。私はその勧告を読んだのですから、局長が頭をひねられる必要はないと思いますけれども、そういう点を今後どういうように改善されるのかという点もあろうかと思います。  そこで私は、こういう点を考えてみますと、いろいろ関係法案を改善していくという問題点も一つあります。これは先ほど局長からもお話がございました。しかしながら、私はこの際この問題の抜本的な解決に当たっていくという意味からは、やはり血液法なら血液法というふうな一本の立法化をはかることによって、それぞれのいまの問題点を解決していくということが一番望ましいのではなかろうかというふうに考えます。そこで私は、せっかく国民の間でこの血液問題が非常に盛り上がってまいったわけですから、このチャンスを逃がすことなく、やはり血液問題におきまする抜本的な解決をはかっていく、そういうたてまえからは、やはり一本の法制化というものが当然考えらるべきじゃなかろうかというふうに考えるわけでございますが、この点は大臣どのようにお考えでございまするか、ひとつこの際、率直に御意見をお聞かせいただきたいと考えます。
  24. 神田博

    神田国務大臣 いま河野委員からお述べになりましたことは、これは十分検討する必要があると考えております。よくひとつ調査いたしておきます。
  25. 長谷川保

    長谷川(保)委員 看護婦問題、医療費の緊急是正問題等、もう少し伺いたいと思いましたが、もう私の時間がなくなりましたので、次の機会に残余の質問はしたいと思いますが、ただいま予算編成期において、従来やってまいりました厚生省の看護婦対策なんというものは、実に二階から目薬と言う以外にない。全く二階から目薬ということばそのままであります。そのようなことであってはならぬのでありまして、看護婦対策は抜本的な非常な努力をしてもらいませんと動きがつかぬところまできているということ。それから医療費の緊急是正の問題も、緊急是正がいつの間にやらずるずるになってしまって——これはいろいろな原因はもちろんよくわかりますけれども、ずるずるになってしまって、しかも今日の物価高及び人件費増というようなところに両方からはさまれて、病院の経営は不可能です。そうだからといって病院をつぶすわけにはまいりませんから、勢いこれは患者の個人負担というところに追い込まれざるを得ぬという形になっている。最近のような蔬菜の非常な値上がりというようなことでどうにもならぬところにきておりますから、医療費の緊急是正問題は同僚からすぐ続いてお伺いすると思いますので、私はこれらについて厚生当局が格段の御努力を願い、緊急是正が一年もたってしまうということではなしに、すみやかに——ことに入院料を中心とした問題を解決いたしませんと病院は経営ができないという事態に追い込まれる、それを逃げるためには、いま申しましたように患者にしわ寄せせざるを得ぬという事態になって、国民皆保険がどこかにいっておるというのが実情になってきておると思う。至急これらの問題について十分な手を打たれることを切望いたしまして、きょうの私の質問は終わりまして、次の機会に譲ります。
  26. 田口長治郎

    ○田口委員長 八木一男君。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣に御質問を申し上げたいと思うわけであります。  厚生行政の問題は、非常に大切な問題が山積をしており、特にその中の中心的な課題でございます社会保障というものが急速に完全に進まなければならないときにおきまして、神田さんが厚生大臣に御就任になったことについて、私といたしましては大きな期待を持ちたいと思うわけであります。前にも厚生行政を御担当になりました十分な御経験をお持ちでございますし、また政治家としての熱意を非常に多分にお持ちの神田さんでございます。また与党内におしてその意見をほんとうに実際に進める力をお持ちの神田さんに非常に期待を持つものでございまして、この点で社会保障の伸展のために、厚生行政の完備のために、ほんとうにあらん限りの力をもって御努力になっていただきたいと思うわけでございますが、これについての神田厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  28. 神田博

    神田国務大臣 八木委員から過分のおことばをちょうだいいたしまして、どうも恐縮いたしております。仰せのように、厚生行政は幅も広く、また奥行きも深いものでございまして、私の前任当時に比べますと、だいぶ伸展してまいっておりますけれども、しかし、なかなか内外の情勢を考えまして、また今日の経済界の情勢を見ましても、もっとぐんぐん推進しなければならぬことは、もうお述べのとおりだと考えております。私はそういう気持ちをもちまして、微力ではございますが、全力を傾注して邁進したい。皆さん方の御支援と御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御決意を伺って非常に力強く感ずるわけでございますが、非常に各方面、御努力になっていることを私どもも理解いたすわけでございますが、私どものこのように努力をしていただきたいということについては、いままでのところ、残念ながらまだ十分でないというところがあるわけでございます。その点で今後、きょうからでもさらにひとつ御努力をなさっていただいて、国民の要望にこたえていただきたいと思うわけです。  その第一点を申し上げますと、三日前に社会保障制度審議会がございまして、昭和四十年度厚生省予算についての御説明が官房長からございました。その前から新聞情報その他でもわかっておりましたが、今度の閣議におきまして、第一次予算要求額を前年度予算の三割増にとどめるという閣議決定をせられたように伺っております。このような風習は前からございまして、去年、おととし、さきおととしも、第一次要求は各省の前年度予算の五割増しにとどめてほしいということを大蔵大臣から発言をし、それを一応かりに定めて、それから予算にだんだん入っていくという形式をとっておられるわけでございますが、それについて前厚生大臣、それからその前の厚生大臣にも、私どもとしては、その点が非常に間違いであるということを強く申し上げておいたわけであります。と申しまするのは、大蔵省が簡単に予算を編成するために、一律に各省の第一次予算要求を何割増しというふうにとどめて、それから逐次折衝をして実際の予算をきめるということは、大蔵省としてはやりいいかもしれない。しかし、国政全体としてはそれは間違いである。各省であずかっている仕事の中で、現在急速に発展拡大をしなければならない仕事をたくさんかかえている省と、それほどでない省と、またやや完成したものを補完していくようなものをあずかっている省と、いろいろ各省のあずかっている仕事におのずから違いがある。そこを一律に、最初の予算の要求であろうともそういうことにとどめることは、大蔵省が予算を安易に考えて、簡単に予算をやっていこうという精神のあらわれにすぎない。それに対して、非常に大切な仕事をあずかっている省の大臣は、そういうことに対しては抵抗をしていただかなければならない。わが省の場合には前年度の二十割、三十割の予算要求を持つのだ。それを第一次要求とはいえ、五割増しにとどめられることにおいては、後々にほんとうの各省の必要なことが反映をしないおそれがあるということで、厚生大臣はそのような決定をしないようにしていただかなければならないし、今後の厚生大臣に厳重に申し送っていただきたいということを申し上げておったわけでございまするが、申し送りがあったかないかを追及する時間もございませんけれども、非常に熱心な、そして実力のある神田厚生大臣が、このような三割増しという、例年の五割よりも減らしたような第一次要求にワクをはめるというような大蔵大臣の提案に対して、どのような御意見を吐かれたか、そうしてどのような経過でこのようなことがきまってしまったかということについて、まずお伺いをしておきたいと思います。
  30. 神田博

    神田国務大臣 ただいま八木委員のお述べになりましたことは、私も同感でございまして、閣議等におきましてもそういう意見を述べまして、厚生行政の将来の進路をあやまちなからしめたいと考えまして、実は要望してまいっております。しかし、御承知のように、閣議でございまして、やはりおつき合いもございますものですから、いろいろ大蔵大臣とも個人的にも話をし、また総理にも直訴をいたしまして、厚生行政は、ほかと違うのだ、今日予算全体の一二・三%ぐらい占めておりますけれども、国民所得から考えますと、まだまだ幅を持って考えなければならぬ予算だというようなことを申し上げまして、大筋の御了解をつけております。厚生省予算は、君の言うとおりわれわれもそう思っておるから粗末にはしない。しかし、一応厚生省だけ例外にするということはどうも閣議としていかがであろうか。だからつき合いをして例年三割——三割も前年度に比べて伸びた例はないのです。五割ときめたときでも五割伸びた例はないので、大体予算としては一〇%か一五%くらいしか伸びていないのです。だからその中でひとつ相談しようじゃないか、こういうような話がございまして、それならひとつ総額で、内容の問題はまた検討しよう。相談といいますか、予算査定のときに相談をししようじゃないか、こういうような話でございまして、そこで一応閣議としてはそういうようないきさつをたどったわけでございます。これは私ばかりでなく、ほかにも一、二私と同じような意見を述べた省がございます。問題は、三割要求した、五割に比べれば少ない増加額でございますが、これは歩どまりを幾らにするかということが問題ではなかろうかと思います。これはひとつ全力をあげて予算の確保に努力して、そうして厚生行政の伸展に寄与したい、こう考えております。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 政府内でいままでそういう問題についてやってきた間違った慣例、間違った風習みたいなものがありますから、その点の中で神田厚生大臣が御努力になったことは認めるにやぶさかではございませんけれども、そういうような慣例を打破していただかないと、ほんとうの社会保障が進まないと思うのです。その点で、今後、そのようなおつき合いということばを言われましたけれども、前からの間違った風習で大蔵省が簡単に予算を査定する段階をつくっていこうというようなことでは、政治のほんとうの大事なことにひずみをつけるわけでございますから、そういうことを根本的に直すように、ぜひ今後閣議で強力に御主張になっていただきたいと思います。  それと同時に、いま歩どまりのことをおっしゃいましたけれども、その歩どまりの点で断然たる決心を持たれる、それからまた、いま第一次要求をされましたのが概算にして五千百八十六億、そのくらいだそうでございます。それは昨年度予算要求の五千二百億よりも減っているわけでございます。昨年度の第一次要求は五千二百億、それよりも減っておるわけです。そういうようなことで、そういう大蔵省ペースで、やや向こうの作戦にはめられてしまった形があるわけです。作戦にはめられても、今後はこれを取り返していただかなければならない。五千百八十六億を第一次要求のときにやられても、そのときにまだ未解決の問題がある、またそれから発生した問題がある、そういうときにはそれに対して、断じてそれにプラスして、第一次要求分につけ加えて要求をせられるという決心を固めていただきたいと同時に、またその要求した第一次要求についてはびた一文も値切らせない、そのような決心で当たっていただきたいと思う。  いま一三%という数字が出ました。大蔵省はそういうことを振り回すと思いますけれども、一昨年の社会保障制度審議会の総合調整に関する答申及び勧告ではいろいろなことが述べてございますし、そこに試算表がつけてございます。その試算表は、大方の方が不勉強でございまして、非常に努力を要した試算表でございますのにあまり勉強した方がないわけでございます。先日も、内閣総理大臣がこれについて勉強を十分せられておりませんので十分に説明しておきましたけれども、そういう点で、その試算表の中には、昭和四十五年度において、これは非常に遠慮がちの数字でございますけれども、総予算の二六%をこえなければならないということが書いてある。国庫の直接の支出が、社会保障関係で一兆二千五百億というものを支出しなければならない。これは最低のものであるということが書いてある。最低のものというのは、昭和三十六年の欧米諸外国の標準に昭和四十五年、千年おくれて追いつく標準であります。そのような非常に微温的な、勇敢でない答申の内容を実現するために、昭和四十五年度においては一兆二千五百億、しかも昭和三十六年の物価で計算をしてでございますから、物価が上がった場合には、一兆二千五百億というものはそれだけ上げていかなければならないということになる。そういうような情勢でございまするから、大蔵省が一三%を締めておるというようなことに対して、断じてその非を鳴らして、大蔵省が政治の生きたものであるということを知らないで、ただ会計のつじつまだけ合わして、自分の一年、二年の責任だけ果たそうというような主計局の考えに乗ぜられると、国民の要望する大切な政治が進まないということを強く主張していただいて少なくとも今度出された第一次要求の金額はびた一文もまけさせない、それからそのときにペンディングになっていた問題、それから新規に起こった問題についてはさらにそれに加えて要求をする、そうしてそれを実現するという覚悟でぜひやっていただきたいと思うわけです。それについての厚生大臣の御決心のほどを伺わしていただきたいと思います。
  32. 神田博

    神田国務大臣 八木委員からたいへん激励をちょうだいいたしまして、勇気百倍です。十分ひとつ努力いたしたいと思います。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 このことにつきましては、厚生大臣の十二分な御努力を期待いたしまして、具体的な問題に入りたいと思います。  厚生省の行政の中で一番主要な部分は、社会保障政策であることは言うまでもございません。社会保障政策の中にはいろいろな制度がございます。所得保障についても、医療保障についても、いろいろな制度がございます。そのいろいろな制度の中でまだ内容の非常に不十分のものがある、非常にアンバランスがあるという問題について、これを至急に解決しなければならないことは、申し上げるまでもないと思うわけです。その中で、私の理解するところでは、最も取り残されているのが日雇い労働者健康保険の問題であろうかと思うわけです。一般的に、国民健康保険と日雇い労働者健康保険が、他の医療保障に比べて非常にその内容が悪いということは全部の識者によって認識をされておるわけでございますけれども、国民健康保険についてもまだまだ急速にこれを進めてまいらなければなりませんが、最近において世帯主の七割給付あるいはまた家族の七割給付についてやや前進した形がとられて、そのような法律の改正案が提出された。ところが、骨雇い労働者健康保険のほうは、この数年間本格的な改正案が政府から提出をされていないわけです。日雇い労働者健康保険の給付は、厚生大臣が十分御存じのとおりでございまするが、その医療給付はいまだに二年である。この被保険者は、労働条件の激しい、あるいは収入の少ない、そういう人たちが被保険者になっておる。したがって、その間にからだをいためる公算が多いし、そういうことで医療給付が長いこと必要であるという要件が、ほかの医療保険の被保険者の場合よりもずっと多いわけです。ところが、それが反対に、たとえば国民健康保険においては転帰までこの給付が延長されました。ところが日雇い健康保険は、二年間の給付期間ということで、そのままとまったままになっておるわけです。こういう問題を、そのような期間を転帰までとする、あるいは技術的に検討して転帰と同じような方式をとるというようなことを、即刻実現をしないといけないと思うわけであります。その間に、そういうことが改正をされなかったために、その被保険者の人々の中で、長い病気で二年間で打ち切られて非常に困難な状況になっている人がある。この二、三年、四、五年の間に、非常にそういう不幸な人があります。そういう不幸な人に対して政府は非常な責任を感じなければならないと思いますが、そういう事態をなくすために、いますぐにでもその医療給付を長くする、転帰までにするということを考えていただく必要があろうと思う。その点についての厚生大臣のお考えを伺いたいと思う。
  34. 神田博

    神田国務大臣 八木委員から健康保険特に日雇い健保の問題についてお尋ねがございましたが、お述べになりましたようないろいろのことがございまして、そのほかの問題もございますので、日雇い健保の立て直しにつきましては根本的なことを考えなくちゃいけないのじゃなかろうか、こういうような実は考えを持ちまして、いろいろいま検討しよう。だいぶ古い制度でございますし、また、御承知のように行き詰まっておることも事実でございます。といって、それじゃこれはどうするかといっても、簡単にどうこうするというわけにもまいりませんが、しかし、このまま放置しておくと、いま八木委員が述べられたような矛盾がなお重加されていくのじゃないかということをおそれております。そこで、われわれとしては、この機会に十分検討してひとつ前向きで善処したい、こう考えております。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 大臣は非常に何か大事な用事があるということを伺いましたので、大臣のおられる間にひとつ集約的に申し上げます。いま総体的な御答弁をいただいたわけでございますが、さらに一つ問題点を指摘しておきたいと思います。一問一答でやりたいわけでございますが、大臣にどうしても質問をしなければならないので時間を省略しますけれども、ひとつ前向きに御答弁を願いたいと思います。  いま医療給付の問題について申し上げましたが、それとともに傷病手当金の問題が非常に重大な問題であります。この被保険者の方々は、いままでの労働条件も、あるいは生活条件もそう裕福でない人が多い。そういう点で結局蓄積も少ないですし、特に傷病手当金というものが必要な要件が、たとえば政府管掌健康保険あるいは組合管掌健康保険や共済組合の人よりもはるかに多いわけです。それにもかかわらず、傷病手当金の単価も少ないと同時に、傷病手当金は二十二日間しか給付をされていない。同じく出産手当金は二十一日しか支給されておらない。傷病手当金は、政府管掌健康保険では六カ月間支給いたします。また、結核その他の疾病では一年六カ月というような、長期疾病の場合にはそういう特例があるわけです。それから出産手当金は産前産後八十四日間、これは労働基準法の精神に従って規定されているわけであります。そういう傷病手当金、出産手当金が最も必要な労働者に対して、金額が、単価が少ないと同時に、そのような給付期間が非常に少ないという点は猛烈な矛盾だと思うわけです。こういう点について即刻に直していただく必要がございます。社会保障制度審議会では、このような給付を健康保険並みに直ちにすべしということを答申、勧告にうたっておりますし、衆参両院の社会労働委員会でこの法案についての審議が行なわれたときに、両院ともに政府管掌並みに即刻にその給付の内容を改善しなければならないということを、毎回附帯の決議をいたしておるわけであります。そのことを即刻実現していただかなければならない。しかも社会保障制度審議会においても、衆参両院の決議においても、それを実現する財源は大幅な国庫負担率の増大によってこれを実現しなければならない、非常に労働条件の悪い人たちの保険料値上げというようなことを考えるのではなしに、国庫負担率を増率することによって、即刻政府管掌並みにこの給付を直さなければならないということが、衆参両院の社会労働委員会あるいは社会保障制度審議会その他の審議会の結論であります。民主政治を重んぜられる政治家は、このような院における十分な審議の結果の与野党一致の決議、そして審議会における各方面の意見一致による決議、これを実現されることがその責務でおありになろうと思うわけです。残念ながら、いままでそれを申し上げてきましたけれども、この二、三年間それに対する御努力が政府側に見えておりませんでした。内部には御努力になったかもしれないけれども、実をもってあらわれておりません。ぜひこの社会保障に熱心な、そして国民のために非常にあたたかい心を持って、与党の中で正しい主張を押し通す信念を持っておられる神田厚生大臣が、大幅な国庫負担率の増率によって日雇い労働者健康保険を、少なくともいまの政府管掌健保並みの給付にするということについて、またその日雇労働者健康保険法の適用を受けていながら、そしてそれを制定するときからその問題に一番関係をし、その問題を研究し、その恩典を受け、それを喜び、それを出すことに努力をしてまいりました建築関係の労働者が、適用は受けておりまするけれども、擬制適用といってまま子扱いにされておるということを、法的にちゃんと適用できるようにするということについて実現をしていただきたい。次の通常国会に、それに対する根本的な日雇労働者健康保険法の改正案をぜひ出していただきたいということを強く御要請申し上げたいわけでございまするが、厚生大臣の前向きな、強力な御発言をひとつ期待するわけであります。
  36. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  いま八木委員からお述べになりました日雇い労働者のいろいろな処遇ですが、保険上における処遇の十分でない点は私もよく承知いたしております。これはもう全く社会正義から考えても、一日も早く是正すべきものだと考えております。いろいろ先ほどお話しもございましたように、懸案検討中でございますので、成案を得次第またひとつ御審議願いたいと思います。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 先年来、厚生省の事務当局では熱心にこれを検討しておられるらしい御答弁であります。神田厚生大臣はそれをさらによいものにするための御指示、御指揮をしていただきまして、それを実現するために、ひとつ最善の御努力をお願いいたしたいと思うわけであります。  国庫負担率につきましては、私どもは七割五分の国庫負担率が必要だろうと思います。厚生省当局においても、少なくともこれは事務的な段階における御研究だろうと思いまするが、六五%以上の国庫負担は必要だというふうにお考えだと伺っております。私どもは七五%でございますが、少なくともそのような考え方で、そのような出た数字を割ることなしに、大幅な国庫負担率をぜひ実現していただきたい。それの考え方としては、憲法二十五条においては社会保障と定めてあるわけでございまして、社会保険を定めているわけではございません。そういう意味で、ほんとうにそのような最も必要な人に必要な給付がいくように改正することに対して、断じて大きな勇気を持っていただきたいと思うわけです。社会保険という概念で率がどうとかこうとかいうことを、大蔵省の社会保障を理解しないような人たちが言うときもあるかもしれませんけれども、厚生大臣の該博なる知識と断じて動かない信念をもって、この七五%の国庫負担率は必要である、直ちにこのような日雇い健康保険を健保並みにするというような考え方を押し通して、ぜひともこの通常国会にそのような改正案を御提出になるために、ほんとうに最善の御努力をしていただきますことを心からお願いを申し上げる次第でございます。その点についての前向きの御答弁をもう一回お聞かせ願いたいと存じます。
  38. 神田博

    神田国務大臣 いろいろ伺いまして、こまかいことは私はまだ十分でない点がございますが、御趣旨は十分わかりましたので、十分検討いたしてみたいと思います。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣が急な用事で退席されて残念ですけれども、保険局長がおられますから、もう少し詰めて御質問したいと思います。それから、実は先ほど血液の問題が出ましたが、血液の問題についても、後に他の同僚委員の御質問が終わったらひとつ質問をしたいと思いますので、薬務局長医務局長にも出席の準備をしておいていただきたいと思います。これは他の委員の御質問が終わってからにいたします。  それでは小山保険局長に御質問を申し上げます。いま概括的に神田厚生大臣のお答えをいただいたわけでございますが、短時間で十分に具体的な詰めを申し上げられなくて非常に残念だと思いますが、これは次会にまた申し上げますけれども、私の申し上げた国庫負担の増率によって、健康保険並みに日雇い労働者健康保険を改正するための法律案を次の通常国会に出すという御意見を厚生大臣から伺ったわけでございます。それについて、保険局長がこの実際的な点について一番の協力をされる立場にあるわけでございますが、いま申し上げたような趣旨によって最もりっぱな原案をつくられて、それの裏づけの予算を、この予算折衝において確保せられるよう努力をしていただく必要があろうかと存じますが一それについての保険局長の御意見を伺います。
  40. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほどお話がありましたように、いずれにしても現在のこの制度を立て直し、安定させ、しかも先生が先ほどから言っておられるような内容の充実をしていきますためには、大幅な国庫負担の増率をはかることがどうしても必要だという点、これは私どももおっしゃるとおりだと思います。ただ問題は、そういう内容の充実を論議する以前の問題として、現在の状態ですでにもうこのままでは破綻してしまうという状況に置かれておるわけでございますので、この問題を解決しつつ、それとあわせて先ほどおっしゃったような内容の充実を許された条件の中で考えていく、こういうことで考えたい、こういうわけでございます。したがって、国庫負担の大幅な増率は、もちろんこれはすべての施策に先行する条件でございますが、それと同時に、やはり現在の事情に対応するある程度の保険料の調整ということはどうしても考えざるを得ない。両者相まって立て直しと内容の充実を進めてまいりたい、こういう考えでいろいろ検討しております。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 いま日雇い健康保険がどうにもならない状況にきたというのは赤字のことをさしておられると思いますが、これは専門家でいらっしゃいますから説明する必要はないと思います。一般的にこの赤字のことを非常に巨額に方々に宣伝されておるようでありますが、あれは申すまでもなく累積赤字である。毎年度の赤字ではないわけです。累積赤字で一般的に言われているわけです。全般的に大蔵省のペースで、累積赤字でたいへんだなんということを言いますけれども、これは国庫負担率をすでに数年前から高めておいたならば、このような累積赤字は出なかったわけです。そういう点で、もちろん小山さんは担当者ですから十分おわかりですけれども、厚生大臣がひとつ強力な主張をして、大蔵省に対して要求を実現するための十分な補佐をお願いしたいと思うわけです。私ども、いま厚生大臣に申し上げたのは、大幅な国庫負担率の増率によって政府管掌健康保険並みにこの内容を改善することを、即刻にやってほしいということを申し上げたわけです。その点について厚生大臣は賛成の意を表されたわけです。保険局長はそのかなめでございますが、厚生大臣の前向きの姿勢に即応して、いまの保険局の中でいろいろ苦心してつくっておられる原案を、厚生大臣のいまお約束をいただきました線に従ってさらに前向きに発展さした内容で大蔵省に当たっていただきたいというふうに考えるわけです。その点についての十分な御努力を期待したいと思うわけであります。これについて小山保険局長から伺いたいと思います。
  42. 小山進次郎

    ○小山説明員 その点は、先ほど大臣が申し上げたとおりに私どもも考えて、いろいろ施策を進めたいと思っております。ただ、誤解のないように申し添えさせていただきたいと思いますけれども、私ども、累積赤字の問題をことさら大きく考える気持ちはございません。この点については、確かに今年度で約百三十七億くらいの赤字が累積するわけでございますが、いずれにしても、これはもうこの制度自体で解消しようのない問題として切り離して考えるべきだ、こういう態度で終始しております。問題は、それよりもむしろ毎年生じます赤字が逐年割合を増してきているということでございます。最近、実際に必要な費用のうち保険料の収入でまかなわれますものが、今年度の見込みなどで見ますと、すでに三二%を切っているわけであります。つまり三分の一を切る程度しか当該年度の保険料収入でまかなえない、こういう状況になっておるわけでございます。かつては必要な費用の六割二分程度、これは非常な転落でございます。それで、この問題についての考え方も、そうだからといって、単純に過去の姿に戻すということを考えているわけではございません。むしろ逆に、この制度のいろいろな特質等を考えましていろいろ検討いたしました結果、全体に必要な費用のうち保険料でどのくらいを調達し、残りはどういうもので調達するか、そういうことで、先ほど先生おっしゃったような数字程度の国庫負担というものを前提にしなければ成り立たぬ、こういう一わけでございまして、そう先生のお考えと遠いわけじゃございませんが、ただ国庫負担だけで解決するという先生のお話、そのとおりいたしますと、こう申し上げるわけにいかぬので、これだけは若干申し上げさせていただきたいと思います。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 小山さんのいろいろな御苦心もわからないではないのですが、社会保障というものはどんどん伸展していかなければならない。いままでこの日雇い労働者健康保険の給付がとまっていたのは、これは大間違いで、これは政管でも少ないのですが、政管並みにすでに七、八年前からなっていなければならない。それと同時に、社会保険というシステムをいまの日本の制度はとっておりますけれども、これは便宜的にとっている制度であって、憲法でしなければならないことになっているのは社会保障であって、社会保険のシステムというものは便宜的にとられているわけです。ですから、社会保険のシステムを社会保障のシステムに急速に変えていかれなければならないことなんです。ですから、保険料でまかなう部分が減ってきてもこれは当然であって、その傾向をもっとむしろ促進をしなければならない。端的に申し上げれば、私どものほんとうの率直な気持ちを申し上げれば、いまの保険料を半分ぐらいにして国庫負担を九割ぐらいにして、それで内容を政管並みよりもっとよくするというところまでいっていただきたいという気持ちがある。そこまでいま具体的に申しませんけれども、そういうことです。そういう意味で、保険局長はいろいろこの問題で前向きに対処するために御努力になっていることを私も理解はいたしますけれども、さらにいま厚生大臣も言われましたように、前向きの姿勢で保険料の値上げなどをせずに、六割五分じゃなしに、それをさらに七割、七割五分、あるいは八割、九割というふうに高めるような気持ちで進められて、それでよくしていくというふうにひとつ御努力を願いたいと思います。具体的な御答弁はきょうは無理だろうと思いますが、そういう方向で熱心な厚生大臣を権威のある保険局長が十分に補佐されて、日雇い健康保険が非常に急速によくなって国民が喜ぶように、ひとつ努力を期待するわけであります。抽象的でもけっこうですから、概括的な前向きの御答弁をひとつ伺いたいと思います。
  44. 小山進次郎

    ○小山説明員 仰せのような考えでやるべきものだと思っておりますが、やはり先生のようなお考えに立ちながらも、これはある程度限度があると思うのであります。あまりに国庫負担の率を多くしていくということだけを考えますと、実質的にこの制度医療扶助と同じような制度にしてしまうわけであります。そうなると、またああいう公的扶助に伴ういろいろな制約ができてまいりまして、結果としては、社会保険であるということから生ずる一つのゆとりというものがなくなってしまう。これは、ある意味において、今度は被保険者の人々には非常な実質的な転落であります。また、国が費用の八割なり九割を出しているということによって、そのときどきの財政からする制約というものが非常に強まってまいるわけであります。やはり被保険者の立場でものごとを考えていくという自主性というものを持ちながら、先生のお考えに沿ってまとめていく、こういうことで考えたいと思います。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 おっしゃる気持ちはわかります。ただ賛成ではありません。しかし、いろいろ立場は違うけれども、私がさっき申し上げた方向で——あなたは限度があるとおっしゃるけれども、限度には動きがある。だから私のほうに九割九分近づくような限度でひとつ考えていただきたい。一分ぐらいは限度があるという考え方はわからないじゃありませんけれども、そういうことでひとつ御努力をいただきたいと思うのであります。  そこで、やや具体的な問題に移りたいと思いますが、特別療養費というものがございます。特別療養費は、結局日雇い労働者健康保険が二カ月間に二十八日、六カ月間に七十八日という要件を満たしてやるというのがその骨組みになっておりますけれども、ほかの制度から日雇い健康保険制度に達したときに二カ月間医療給付が空白になりますので、先年の改正で国民健康保険並みに五割の給付をその二カ月間はやるということになっております。その当時としては具体的な配慮があった制度であります。ところが、国民健康保険でいま世帯主が七割給付になっておる。この日雇い労働者健康保険の被保険者は、国民健康保険の世帯主に当たる人であります。そういう意味で、国保に入っていた人が日雇い健康保険の被保険者になって、一時的にしろ、二カ月ダウンするということは非常におかしなことだと思う。もちろん各医療保険を十割にするということを私どもは強く主張しているわけでありまして、全部が十割になればこんなことは問題にならないわけでありますが、この過渡的ないまの段階におけるこういうことについて、今度の改正案でこれを調整される必要があろうと思います。少なくともいまの国保並みの七割というものを特別療養費の給付に入れるということを、ぜひ考えていただかなければならない。それについての保険局長のお考えを伺いたいと思います。
  46. 小山進次郎

    ○小山説明員 その点は、仰せのとおり、いずれ時期の問題として考えるべきことだと思います。国民健康保険の七割給付という施策がいま進行中でございますので、およそそれが全国に行き渡りそうな時期になったならば、当然これについても、ある種の調整が加えらるべきものだと思っております。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 たいへん不満足な答弁であります。いま申し上げたことを故意にそらしておられますが、国民健康保険の世帯主の七割給付はすでに実現しているので、日雇い労働者健康保険の被保険者本人は、これは国民健康保険の世帯主と同じ立場にあるのであります。そうなれば国民健康保険の進展の度合いというお答えは出てこないはずであって、直ちにそれは七割にしますという御答弁をいただくのが至当だと思います。ただいろいろの事情があって、いろいろなことをしなければならないので、それで御苦心になっている事情はわかりますけれども、これは正しい理屈の上に立っていることですから、いままでいろいろの用意をされたものに、いままで準備をされていなかったとしても、それをつけ加えて、だれも文句の言える筋合いはないわけです。それをおかしいと言う人がもし大蔵省にあったとしたならば、それはその人が頑迷固陋であるということで笑われるということになる。ですからいままでの準備体制の中になくても、小山さんは相当信念を持った方で、しっかりやられるほうですから、その点についてもう一段勇気を出されて、今度の改正案には七割をやるというふうにされる必要があろうと思います。そういう点で、次の臨時国会もございますから、いまはっきりした答弁をいただきたいのですけれども、いまのお口ぶりですと、まだすぐの返事ができにくいので、この次の臨時国会、これは半月ぐらい先です。そのときには、今度の案では、特別療養費を七割じゃなくて、八割でも九割でも十割でもけっこうですが、少なくとも七割にするということをはっきりと御答弁になられるように事務局段階の準備をされて、神田さんにも御説明になって、それを今度の要求の中にぜひ入れていただきたい、それについての御答弁をいただきたいと思います。
  48. 小山進次郎

    ○小山説明員 御趣旨を尊重して、十分検討させていただきたいと思います。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 この傷病手当金の期間の延長については、現在当然六カ月、それから長期疾病について一年六カ月ということが必要だと思いますが、それについて厚生大臣が大蔵省に強力な要求をされて、直ちに実現されるよう保険局長は十分補佐をしていただきたいと思います。それについてひとつお答えをいただいておきたいと思います。
  50. 小山進次郎

    ○小山説明員 日雇い労働者の健康保険の内容充実といわれるものについて、傷病手当金の期間を延ばすという問題、これは実は私は実質的には一番大きい問題だと思うのです。ほかの問題については観念的には非常にいろいろなあれはございますけれども、実益という点から見れば非常に大きい問題だと思います。そういう考え方に立って十分研究させていただきたいと思います。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 ほかの同志の御質問の時期もありますので、まだ御質問申し上げたいのですが、この問題について本日はこれぐらいにしておきたいと思います。小山保険局長が日雇い健保の改正について非常に一生懸命にやっておられることを私どもも敬意を表しますし、また期待を持っているわけでございます。厚生大臣もあんなふうに前向きに非常に決心を固めておられますので、いままでより以上に勇気を持って、非常に取り残された、おくれ過ぎておりますこの制度が、来年の通常国会でかちっと制度の内容がよくなり、先ほどから意見交換していたそのような線によって最もいい結論で案が出てまいるよう、最大の御努力をぜひ期待するのであります。強い御決心のほどをひとつ伺わせていただきたいと思います。
  52. 小山進次郎

    ○小山説明員 大臣が申し上げました気持ちに立ちまして、十分研究を進めたいと思います。
  53. 田口長治郎

    ○田口委員長 山田耻目君。
  54. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間があまりございませんので、本日は、厚生行政の基本に関します中でかなり条件も整ってきておると思いますので、原爆被爆者の援護関係についてお伺いいたしたいと思います。  特に最近隣の中国が核実験を行ないましてから、かなり原爆被爆者の方々には、一般の国民階層が受けた衝撃以上に、みずからに多くの肉体的な不健康さを内蔵しておりますだけに、一般の方には見られない深刻な衝撃を与えたと思うのです。そういう事情も手伝いまして、予算編成期に向かいます厚生省として懸案の問題をどのように解決をされようとしておるのか。これらについて伺いたいと思います。特に条件がかなり整っておるというのは、さきの国会で、参議院は三月二十七日、衆議院は四月三日、今日の原爆被爆者に対する健康管理の問題で、医療援護の諸政策というのは不十分である、すみやかに援護関係等を含めて生活の不安を解消するようにという決議が、衆参両院で滿揚一致で決議をされております。昨年十二月七日に東京地裁で判決が下されております。本件にまつわるこれらの理由書の中に、戦後二十年たちまして日本が高度経済成長をした今日、国力の不十分さをもって逃げてはならないし、今日の原爆医療制度というのは、よくそうした困難な諸事情の中で国が負うべき責任を果たしていない、このように理由書に書き上げられておりますし、またことしの五月に広島で一日厚生省を開きましたときにも、こうした関係者の熱心な陳情に答えて、当時の小林厚生大臣は現行の医療法は決して十分とは思わない、援護法の制定等についても深い考慮を払いたいという立場を明らかにされておりますし、八月に池田総理が広島の原爆病院を視察なさいましたときにも、陳情に答えられまして同様の趣旨を述べられております。このようにして院の外におきましても院の中におきましても、全国で二十六万近い被爆をなさいました国民に対して、具体的な援護の手を差し伸べようという方向が、条件として整っておると私は判断しておるわけです。これを受けられまして、厚生省はいま具体的な政策をどのようにお考えになっておるのか、それらについて伺いたいと思います。
  55. 若松栄一

    ○若松説明員 ただいまるるお話がございましたように、原爆の被爆者に対する援護の方法につきましては、両院の御決議の線もございますので、私どもとしても省内をあげて検討いたしたわけでございます。なお例に引用されましたような東京地裁の判決というような問題から、国力のまだ低きを理由にしてはならないというお話がございました。私どもといたしましても、決して金の多寡云々を問題にしてこの援護の方向をきめようとは思っておりません。ただ、広島における前小林厚生大臣の御発言あるいは総理の御発言というような点で、援護を強化するというような方向が打ち出されておりますけれども、援護というようなものの内容がどのようなものであるかということになりますと、いろいろございまして、前小林厚生大臣も生活の安定ということで、できるだけの福祉の増進をはかるように積極的につとめろという御指示はいただいております。しかしいろいろ検討いたしまして、なおいわゆる巷間いわれるような援護法というような形にはなかなか一気に踏み切れないだろうというようなことも御承知いただいておるわけでございまして、そういう意味におきまして、この法律を、現在わが国内で施行しておりますいろいろな法律との関連等も考慮いたしまして、さしあたりできるだけ福祉の増進になるように運用をはかれということでございましたので、その趣旨で現在検討中でございます。したがって、残念ながら現在私どもが検討しております内容も、いわゆる原爆被爆者の医療等に関する法律という線を大きく逸脱することはできない状況でございまして、その範囲内におきましてわれわれはできるだけのことはしていきたいという趣旨でございます。なお法律にないようなことでも、事実上できるものはできるだけやっていきたいという方向で、法外の措置等についてもできるだけ検討したいという趣旨でやっております。そういうことで現在のところやっておりますことは、やはり患者の健康管理の強化、したがって、健康診断をさらに強化していくということと、それに必要な交通費その他の手当を支給していくという問題これは御希望によりまして、従来からも健康診断の中には、いわゆるドック式な、入院による健康診断というものも含めております。なお、認定患者の医療手当が低過ぎるという御意見もございまして、これは現在のところやはり二千円から三千円程度に上げたいということを考慮いたしておりますし、また認定患者が受療中に死亡いたしました場合に、ある程度の葬祭料等を支給するということも考えております。なお、法外の援助といたしましては、広島、長崎における原爆病院がなおベッドが足りなくて非常に不自由を与えておるという点から、それらの増強の手当てをしたい。また被爆者に老人が多くなってきて特別に養護老人ホームがほしいという御意見もございますので、これらは社会局と話し合いの上で積極的に推進する考えでございます。そのような医療健康管理という手当てを強化するために、広島、長崎両市の健康管理センターというようなものをさらに増強強化していきたいというようなことを現在考えておる次第であります。
  56. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 おっしゃっていることは、援護法と巷間言われておるようなものについては、まだ深い思索も検討もしていないけれども、現行医療法を少しいじってできるだけ期待に沿うようにというお話なんですけれども、少し局長、ぼくはあなたの表現うまくないと思うんですが、援護法というのは巷間に伝えられておるんじゃないですよ、本院に提案されておる。もちろん社会党の提案でございますけれども、その提案の趣旨を十分そんたくをされながら、片側で検討されていくというのが、いまの整っておる条件の中のあなた方の立場であらねばならぬはずだと私は思うのですけれども、それを巷間に伝わっておるという程度にながめられておったのでは、こういう施策というものが前進しないのは私は当然だと思う。それは軽視をなさっておるということに通ずるんだと私は思うのですけれども、この点についてはやはりあなた方がこれに取り組んでいかれる立場というものをもっとまじめに、もっと院の動向というものを真剣に検討されながら仕事をしていただきませんと、そういうことばが不用意に私は出るのではないかと思うのです。ことばじりをとらえるということで済まぬと思いますが、そのようにこれはきちっと整理をして、これから聞くことにひとつお答えをいただきたいと思うのです。いまの形式としては援護法の形態はとらないけれども、いわゆる現在の医療法を改定をしていきながら、中身を充実をさしていきたいという立場なんですけれども、問題はその中身がやはり一番大切だと思うのであります。あなたがいまここに五、六点申されましたことは、現在の厚生省の態度として現行医療制度を改定するという立場に立って、すでに大蔵省と幾つか必要な予算折衝をなさっておるという事柄を申されておるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  57. 若松栄一

    ○若松説明員 現段階はそのような段階でございまして、私どもが現在大蔵省に概算要求を出している段階でございます。なお私どもは、この問題につきましては、与党の自民党の中に小委員会等を設けられておりまして、その結論もまだ出ておりませんので、その結論等によりましてまた若干の修正が行なわれるということは、あり得ることと考えております。
  58. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 申されておりました中身の一つ一つについては、きょうここでとやかく申そうとは思いませんけれども、健康診断を受けるという場合に必要な交通費の支弁というのは、従来は年二回の定期健康診断ということにほぼ制限がされていたと思うわけであります。それらを、患者の健康状態によっては随時診断を受けるということは当然あり得るわけであります。それと、最近は温泉療養などについて、厚生省もお力添えをいただいておりますので、そういうところに療養に出向いて行くということもございます。こういう場合には、すべて交通費は支弁をなさるという立場で、今日お仕事をなさっておるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  59. 若松栄一

    ○若松説明員 おっしゃるように、公費で交通費等を支給する場合は、成規の健康診断、あるいはそれに伴って精密検査を受ける場合、あるいは新たに認定患者が医療を受けるような場合を想定いたしておりますが、一般的に温泉療養等に行く場合の交通費を支給するいうことは考えておりません。ただし、これが温泉療養が認定患者等の医療の必要上指定医療機関としてそこで行なうという場合でありますと、その場合は支給の対象になるということであります。
  60. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私も原爆手帳の交付を受けておる原爆患者でございます。家内もそうでございます。定期の健康診断ももちろん受けますけれども、春夏秋冬、四季の変化の中にはかなりからだに変調を来たす場合が多いのであります。そうしたときには随時診療を受けなくちゃならぬ。みずからがみずからを防衛する、守るという立場でやっていくのですけれども、そういう場合に診療を受ける場合の交通実費というものは当然支弁をするという立場に立たれておるのかどうか。これは原則的な一つの問題です。二番目には、たとえばいま別府に厚生省のほうでいろいろ配慮願っておやりになっておる温泉療養所がございますけれども、そういうところに出向いていくことを医師が必要とした場合には、実費の支弁を行なっていくという立場をおとりになっておるのか。私は個々の一般論的なものをお伺いしておるのではなくて、原則的な立場はそれでよろしいか聞いておるわけであります。
  61. 若松栄一

    ○若松説明員 ただいまも申し上げたように、その別府のほうは療養所が指定医療機関であって、その療養を必要とするということであれば、従来からも一そう費用も要るという立場で交通費が支弁されるわけであります。
  62. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いま一つは、これもすでに今日まで議論をされてきておるところでありますが、現在の医療手当というものを二千円から三千円に引き上げるように、五割くらい上げるように検討なさっておる。これは今日では今日の物価上昇の状態とかあるいは医療に要するいろいろな家庭経済の負担の過重とか、こういうことを考えまして五千円程度要求をしておる、こういうのが今日医療患者の実態でございますけれども、これらを当面三千円程度にというお考えのように承りましたが、これらについての基準なり判断というものは一体どういう根拠からこういうようにお考えになったのであろうか、あるいは健康手当という立場が二十六万被爆者全体の要求として出ておりますので、こういう事柄はなぜお考えの中に入れられないのであろうか、こういう事柄についてあなた方の作業に当たっておられる立場をひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  63. 若松栄一

    ○若松説明員 最初に健康手当というお考え方から申し上げますけれども、原爆被爆者に対して現在行なわれております諸施策はどこまでも原爆被爆者の健康上の理由ということでございまして、その健康上の理由も健康喪失等によります所得の保障というところまでは現在実は考えておりません。といいますのは、いわゆる援護法というような考え方で、所得保障という線までは到達しておりませず、健康上の問題は原爆被爆者に特にいま問題でありますので、それに対する手当という考え方が限度になっております。したがって、もしも健康がそこなわれた場合には、それに何らかの手当をしようということでございますけれども、所得保障的な考え方がございませんので、現在健康手当あるいは援護手当というようなものを考えていないということでございまして、したがって、この医療手当というものも医療費それ自体を支弁するとか、あるいは医療を受けることによる所得の損失を保障するという考え方ではなくて、原爆被爆者におきましては療養の間におきましてもいろいろ精神的な不安定等がありますために、それらの不安定等を解消いたす必要な範囲内の費用ということに考えておりますので、そういう意味で手当が支給されているわけでございます。そういう意味でやっておりますためにこの金額の計算が、きわめて厳密な計算は持っておりません。この手当が制定されました当初におきましては、御承知のように精神を安定させるためにいろいろな趣味をやるとか、あるいは精神安定に必要ないろいろな策を講ずるという趣旨でございましたので、その当時二千円というものがきまったわけでございますが、このたび三千円ということにつきましては、これもそういろ意味で、どういうために幾ら幾らかかるからという積算はいたしておりません。制定当時の所得の状況と現在の貨幣価値等、あるいはまた生活保護基準等のものをにらみ合わせまして、およそ五割というまるい数で計算したわけでございます。
  64. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 原爆の一般、特別を含めて手帳交付を受け、絶えず健康管理につとめていく、定期診断を受けながら発病を予防するような措置を講じていく、この段階の施策というものと、発病してから認定患者として医療手当をもらいながら措置をしていくという間のけじめがきわめてはっきりしておるのでありますけれども、原爆被爆者が今日原爆を受けたがゆえに発病は直ちにしてはおらないけれども、そのことが自分の身体の健康を管理していく上にたいへんな不安、障害を与える。それが日々の家業に大きな影響を与えてきておるということはあなた方もよく御存じのはずなのであります。このことに対して何らかの保障制度というようなもの、あるいは手当制度というものを講ずることによって、所得の保護と健康管理上の保護を与えていかなければ、こうした人々はきわめて生活的にも健康的にも不安に脅かされているということの事実はよく御存じなはずなのでございますから、それがさきの国会でも委員会に出されました援護法制定の趣旨の中にあるのでございますし、こういうことが全然無視されておるということについてはどうもあなたのおっしゃっていることを厚生省のこうした行政の中核となっておる者の考え方が何かこの被爆者の全体の皆さんに、あるいはこういう問題を取り扱ってきておる多くの人々に対して不信感というものを与えることになっておると思います。そういうことをいま一歩突っ込んで御検討いただくという余裕は今日までの段階では全然なかったのかどうか、これらについてなお突っ込んでひとつお聞かせいただきたいと思います。
  65. 若松栄一

    ○若松説明員 この問題につきましては、先ほど来のお話のように前国会における両院の議決もございますし、あるいは先ほど来のお話のような広島における小林厚生大臣、あるいは総理の御発言もございますので、私どもとしてはできるだけそういう御趣旨に沿っていく方法がないかということを十分検討いたしまして、関係のある各局とも相談いたしまして案を練りました結果、結局一番大きな壁が、先ほど来申しますように援護法というような収入保障、あるいは生活保障的な線にどうしてもぶつかってしまう。そのためにそれを破らないという以上は、遺憾ながらどうしてもこの医療法という線にとどまらざるを得ない。その医療法という線にとどまる場合でも、いかにして多少でも実を獲得するということが私どもの作業の焦点でございまして一その結果先ほど来のような線に落ちついてしまっておるということで、私どもとしてもたくさんの被爆者の方々の日々の生活の心情に対しては十分御同情申し上げておるわけでございますけれども、何ぶんにも国の施策ということになりますと、全般的な関連等のために、なかなか思うようにひとりで進むことがでできない、ためにやむを得ずこのような段階がついたということを私自身もきわめて残念に思っておる次第でございます。
  66. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いろいろ仄聞しますと、そういう一般の被災者に対する援護法というものをつくるということは、他の戦争被害者とのバランスのこともあるし、やはりこれは援護法という立場よりか直接発病した人々を中心にして医療法の中でできるだけめんどうを見ていきたい、こういうふうに考えられることになったのだというふうに仄聞をするわけでありますけれども、しかしこれはやはり私は真実というものを正しく究明をして救い上げて、それを政治施策の中に反映をさせていくということにはなっていない、その力が非常に弱い。特に、あなた方この衝に携わっておられる方々が、今日原爆被爆者の立っておる生活上の不安、健康上の不安、こういうものの深刻さがなかなか御理解願っていないのじゃないだろうか。東京地方裁判所の判決理由書の中にも、いわゆる今日の原爆医療法というものは、こんなものではどうにもならないのだ、しかも原爆を受けた人々の被害、不安、そうして今日の生活態様というのは、とうてい他の一般災害者とは比較にならない、それほど深刻なものであるというのが、東京地方裁判所の判決理由書の中にあるわけです。ああいう裁判所が、裁判をして審査をしていく中で、他の戦争災害とは比較にならないほど深刻なのだという立場を理由書の中に書き上げているということは、ただ単なる一つの客観的な動向であるというふうにながめておられるものだろうか。それとも、もっと国の行政担当者として、そういう方々を含めてきわめて遺憾の意を表明をしながらも、具体的な政治施策の中でこれを救済していく、援護の措置をとっていく、こういう立場を前提に立てられた上で、発病していく人人に対する医療に関する取り扱いをこのようにしようというふうに組み立てられるのが、今日までここの中で審議をしてきた援護法制定の根本の趣旨だったと私は思うのです。それらについて、衝に当たっておられるあなた方がそういう気持ちを十二分に理解されないがゆえに起こっておる今日の非常に跛行的な取り扱いに結論づけられていったのではないだろうかという気がしてなりませんし、これらについてなお格段の御検討をいただくという御努力がいただけないものだろうかどうだろうか。そうしませんと、次の国会にこれらの問題が出てきましたときには、新しい紛糾を呼びまして、問題が非常に深刻になっていくということを御理解願えるならば、いまのこの段階で、もう一歩議論を深めていただいて、もう一歩全体を正しく救済をしていく、そういう立場の施策というものが打ち出されなければならないのではないだろうかという気がしておるわけですけれども、担当局長としてはどういうふうにお考えでございますか。
  67. 若松栄一

    ○若松説明員 重ねて申し上げますように、現在の段階におきまして、所得補償というような点までを伸ばすということが不可能ということになりますと、やはり原爆被爆者が一番心配し、心にかけて不安の種になっておりますものは健康上の理由でございますので、健康上の理由というものを解消するためには、やはり随時健康診断を受けられる、いつでもお医者さんに見てもらえる、また医療費の面でも心配がないということが最大の解消の方法であろうと存じます。そういう意味で、原爆被爆者の不安の最大のポイントは、やはり健康の保持、それから医療の問題ということに焦点があろうかと思います。そういう意味で、原爆医療法の趣旨はそれをねらっておるものでございますので、できるだけその範囲では伸ばしていきたい、手厚くしていきたい、また、運用の面においてもできるだけその趣旨に沿うように運用していきたいということを考えております。
  68. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大体終わりにしたいと思いますが、きわめて遺憾なことでありますし不十分です。しかしまだ過程でございますから、十分事情というのは御理解いただいておると思いますので、取り組みの姿勢というものをもう一度御検討をいただきまして、申し上げた趣旨というものが生かされますように、そういう厚生行政、医療行政というものを国民が強く求めておるわけでございますから、その立場でひとつ御努力をいただくようにお願いをいたします。ただ、形式というものを非常に大切にされております皆さんの中では、特にこの医療法の改正ということの中には、やや援護法で取り上げるべき問題までが何か含まれているような気がいたしております。いずれにしても看板というものの大事さよりか、中身のほうが大切なんでございますから、この医療法の中にある幾つかの手当制度の問題あるいは福祉諸施設の問題あるいは交通費の問題、交通費の場合でも後払い制度という制度があるわけでございますから、直接一時負担をさせずに措置していくという形などもあるわけでございますから、こういうことなどを十分御検討をいただきまして、中身の充実ということにより一そうの努力も願わなくちゃならぬと思います。とりわけ前提として申し上げました援護法の制定の立場で全体の施策を進めていただきたいということをいま一度最後に申し上げまして、これからの作業の進捗の中に一つの状態を確立されていきますように、私のほうからも強く要望をいたして質問を終わりたいと思います。
  69. 八木昇

    八木(昇)委員 ただいまの問題に関連しまして、この機会でありますので四点だけ承っておきたいと思いますが、時間がございませんから質問を羅列して申し上げます。  一つは、原爆の患者の方の健康保険料です。健康保険料は納めておられるわけですね。したがって、治療を受ける場合には無料ですけれども、保険料は負担をしておられるという実情でございますが、いまの原爆病にかかっておられる方々の悲惨な状態、生活の姿というものを考えると、健康保険料は免除できないか、そうなってはじめて文字通り医療費は無料だということになるのだと思うのですが、その点について何らかのお考えがあろうかという点が一つであります。  それから、もう一つの点は、原爆病院です。長崎の原爆病院を私ごく最近視察さしていただいたんですが、歴史的なあの大事件、長崎、広島の原爆落下という、こういう大きなできごとがあって、あの悲惨な事態を生んだ結果できた病院としては、まだ私は非常にお粗末だという印象を受けました。そこで、その内容の充実拡充ということについて、もっと抜本的な方針を持ってもらいたいという気持ちを強く持ったわけですが、その点について来年度どうしたいという、大体のところでけっこうでございます。現在の段階ですから、その方向というものをお聞かせ願いたい。  それからもう一つは、何といいましても、あの原爆問題というのがこれほど国際的に大問題になっておるわけですが、現実に爆弾が落下して、これだけの人間が死んだというのは日本だけしかありませんので、この研究というものは単に日本だけの問題でなくて、全世界的に、全人類的にきわめて重要だと考えますので、この研究費といいますか、そういう点がこれまた非常にお粗末だという感じを持ちましたので、その点についてどういうお考えをお持ちか。その場合に長崎大学等の大学と、それから原爆病院のほうと、それぞれやはり研究をしなければならぬと思いますが、私はやはり実際に治療に当たっており幾多の経験を経ておる病院のほうに、研究のためのいろいろな経費の支出というものに相当のウエートをかけらるべきではないかと、私は個人的には感じたのでございます。その点についてどうか。  それから最後に、特に長崎の場合には特別被爆者というのが、現在機械的に三キロですかの円の範囲内ということになっておりますが、地理的にいってこれは当てはまらない。三キロより相当離れておるところであって、現に原子病にかかっておられる方が実際に相当出ておるという現実でございますので、そういった矛盾した状態について、この際改められるお考えがおありだと思いますが、それについてのお考えを述べていただきたい。  非常に羅列的でございますが、この機会にその四点だけ見解を承っておきたいと思います。
  70. 若松栄一

    ○若松説明員 第一番目の問題で、原爆被爆者が保険料をおさめることの問題でございますが、これは、保険制度というものと原爆医療法による医療制度というものは直接の関係はございませんので、保険医療を必要とする段階があるとすれば、やはり一般の被保険者になっているということは、これはしごく当然のことであろうと思います。ただ認定患者になりますと、全額国費の医療になりますので、その場合には事実上保険料の掛け損というような形に、結果としてなろうかと思います。しかし、認定患者も常に認定患者の状態であるのではなくて、認定患者である症状が治癒すれば、またいわゆる普通の特別被爆者の状態になりますし、その場合に、認定医療でない一般の疾病にかかりますと、当然保険を使って医療を受けるという段階にまた戻りますので、そういう意味で、一般的に保険者でなくてもいいということは、これはあり得ないのではなかろうかと思います。そういう意味で、確かに認定上の医療の場合は掛け損というような点があったと思いますが、これは掛け損という結果にはなりますけれども、事実上一〇〇%の負担をしてもらえることでございますので、費用の出どころがどこであるかということで、本人としては自己負担がなしでいけるという特典がございますので、これはやはり総体といたしまして保険の制度というものと原爆医療法の特別の措置というものは別個のもの、別建てのものと考えて、保険料負担は当然やっていただくのが適当ではないかと私は考えております。  第二の、特に長崎の病院の内容を充実する必要がないかということでございますが、私、どの点が内容が不備であるのか、必ずしもよく存じておりませんが、現在のところ、私どもが聞いておりますことは、どうしても、最近の患者の増によりまして、入院したくても待機していなければいけないというような状況が非常に強く訴えられておりますので、その意味でベッドの増ということを考えておりますが、内容その他についての要望につきましては具体的に伺っておりませんので、現地等に参りまして、また具体的に調査をいたしてみたいと思います。ただし、この内容を充実することについて厚生省として直接的な応援ができるか、あるいはいろいろな方法によってできるだけそういう方向に向けていくかということは、方法論は別に考えなければならないと思っております。  三番目の研究費の問題につきましては、これは基礎的な研究と治療研究があることは当然でございますが、基礎的な研究部門につきましては、先年来広島大学の研究所その他かなり最近充実してまいりまして、建物その他もようやく今明年あたりで完成するというような段階でございますので、今後の充実が一そう期待されるわけでございます。なお、文部省の関係につきましては、これは私ども直接は関与いたしておりませんが、大体の様子は承知しておりますので、側面的に御援助できればそういたしたいと存じております。  なお、治療研究の面で、たとえば原爆病院等において治療研究を充実する必要があるということはごもっともでございまして、従来から若干の研究費は出しまして、関係者の方々で共同で使っていただくという方法をとっております。なお、厚生省関係といたしましては、予防衛生研究所の付属機関として長崎と広島に原爆障害研究所の支所がございますので、その点はABCCと協力しながら充実させてまいりたいと存じます。  なお、最後に特別被爆者の範囲の問題がございましたが、長崎の特殊な事情ということにつきましては、従来からかなり各方面の方々から御意見を聞いております。現地でもいろいろそういう事情がありますが、三キロ、四キロという問題は直接放射線の量を基準にしておりますので、三キロという線におきましても直接放射能の量がきわめて少ないということから、これを四キロに広げるというようなことは、全く学問的には考えにくいという状態でございます。しかも長崎の場合、地形等の特殊な状況から三キロ以上のところでもかなり犠牲者があったということを強調されておりますので、それらの点についても現在も私ども何か方法はないかということで検討をやっております。たとえば西山地区のような特殊な地域に放射能がたくさん集まった、フォールアウトがあって、そこではたくさん集まって相当な放射能があったということは学問的にも実証されておりますが、そこら辺にはあまり問題がなくて、そうでない市街地のほうが問題だということでございますが、これらの点につきましては、いまのところ学問的にどうこうという基準が全く見つかっておりません。そういう意味で私どもできるだけ運用面で、健康診断その他で異常があればできるだけそれを特別被爆者に救い上げていく方向で実は検討いたしておるわけでございます。
  71. 田口長治郎

    ○田口委員長 滝井義高君。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 少しおそくなりまして申しわけございませんけれども、医務局長保険局長薬務局長、できればひとつ大臣も催促をして来てもらいたいと思います。これは大臣に、ぜひ聞いておいて実態を知ってもらわなければならぬのです。話はそんなに長くかかる話ではないと思います。あと八木さんが血液のことをやりたいと言っておりますから……。  最近、主として保険者側に近いと思われる雑誌その他を読んでみても、あるいはその他の雑誌を読んでみてもこういうことが書かれておるわけです。最近、保険診療費の中に占める薬剤費の割合が著しく増大をしてきた。しかもそれが甲乙二表とも一般的に増大をしておる。保険診療報酬中薬剤費が約三割を占め、あるいはこえる情勢がある。その原因は医学技術の進歩に伴い有効な医薬品の誕生によると同時に注射の乱用、投薬の過剰が見られる。昔から無形の技術に金を支払うという習慣というか傾向は日本にはない。ゆえに収入をカバーするために注射、投薬をやらざるを得ないという形があるし、患者もまたそれを切望する。こういうことから薬剤費が保険診療費の中に非常に大きな比重を占め出してきたのだ。同時にそういう傾向に対していま一つ拍車をかける要素がある。それはほとんど無軌道的に近い医薬品の広告、医師の処方せんなしに自由に薬品が大衆の手に入るということ、こういうことが拍車をかけてくる。国民医療が今後医師の技術を中心としたものに再編成されなければ、こういう傾向というものはよくならないのだということを保険者側に近い雑誌等にも書いておるわけです。  この文章の中にはどういうことが含まれておるかというと、まず第一番に、保険の診療費の中に薬剤費が非常に大きな比重を占め出したということが即そのままと言えるかどうかはわからないが、相当大きなファクターとして保険財政の危機をかもし出しておるということを言おうとしておる傾向があるわけです。いま一つは、そういうことをこれは言おうとしておる傾向があるかどうかわからないが、私が見るところによると、厚生省がかつて金科玉条のごとく技術尊重を唱えた甲表が、いまやその技術尊重のにしきの御旗をおろして、いまや物でかせがなければならぬという危機に直面しておるということが一つその中にあるわけです。それからもう一つは、医薬品の製造会社に対しての一つの問題がその中に出てきておるわけです。それから同時に技術を中心とした新しいものの考え方というものを、今後の甘木の医療にはやはり入れなければならぬのだという考え方も出てきておるわけです。とにかくその短い文章の中を見てみますといろいろの問題点が出てきておるわけです。きょうそれらの全貌について御質問申し上げる時間がございません。  そこで、御質問を申し上げたい点は、保険診療費の中における医薬品の問題の中の薬価基準というところに限局をして質問をさせていただきたいと思うのです。あまり昔の歴史的なことを言うと何ですから、局長である小山さんが三十七年の十二月の暮れころの第六回の社会保険指導者講習会等で、制限診療の撤廃論について幾分の展開を試みられておるわけです。当時の小山さんの見解はなかなか私も読んで拍手かっさいをもって迎えたのですが、薬価基準に対しては今後はどしどしと新鋭薬品の追加をしていく、こう、いう御発言が制限診療の撤廃と関連をして行なわれておるわけでございます。お互いに言ったことは実行していかないといかぬことになるわけで、特に政権をとっておる側においては、たとえそれが公僕としての官吏であっても、やはりこれはその内閣を代表した発言と見てもいいわけですから、実施をしてもらわなければならない、そのとおり実現をしてもらわなければならぬことになるのです。そこで、そういうことを前提にして今度薬価基準を近く改正される、こういうことになったおけです。十月十七日の厚生大臣の記者会見の中で、昭和三十五年以来そのままになっている薬価基準を実勢価格に合わせるようにする、この適正化で浮いた財源は医師の技術料に振り向ける、実施は医療費の引き上げと同時に行なう、こういうことがいわれておるわけです。そこでこういう大臣の談話等の発表があるところを見ると、厚生省は薬価基準の改定について相当お調べになり、基礎的な準備もできておられると思うわけです。それから同時に、三十七年の十二月段階における小山さんのいろいろのところにおける演説その他を見てもそういうニュアンス、いわゆる薬価基準の改定については新薬をどしどし入れていくというようなニュアンスもあるのです。  そこでまず第一にお尋ねをしたいのは、いまのような談話もありますから、いま一体薬価基準ではどのくらいの種類の薬品を使っておるのか、これは正確な数でなくてもいいです。おおよそでいいです。
  73. 小山進次郎

    ○小山説明員 現在の薬価基準の収載品目総数は五千四百四十四ございます。このうち構造式及び組成が同じで商品名が異なるものを一項目にまとめて整理いたしますと、実質的な収載品目は五千二百六十五、つまり名目上は五千四百四十四、実質的には五千二百六十五でございます。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、五千四百四十四のうち構造式等が同じもので整理していくと五千二百六十五。薬価基準の最近の収載の歴史みたいなものを——これは確実な新聞でないのではっきりわからないが、見ましたけれども、全面改正が行なわれたのは昭和二十六年八月から三十五年六月までの八回ですね。これは間違いありませんか。
  75. 小山進次郎

    ○小山説明員 さようでございます。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 それから一部改正が三十八年十月のカナマイシン等の結核薬の薬価改正まで二十三回ですか。
  77. 小山進次郎

    ○小山説明員 一部改正の回数はいまおっしゃった二十三回でございます。それから先ほど八回だなというお話に、さようでございますと申し上げましたが、十回でございます。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一番最後の全面改正は三十五年六月、間違いございませんか。それだけはっきりすればいいです。
  79. 小山進次郎

    ○小山説明員 さようでございます。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  そこで薬務局長に今度お尋ねすることになるわけです。日本におきましてはまず薬を医療に使っていいか悪いかということを決定をしていただくためには、それぞれの製薬企業で薬務局のほうに申請をしますね。そして薬事審議会が、これは使ってもよろしい、こういうことになるわけです。これはもうだいじょうぶだと太鼓判を押して、そして市販されることになるわけです。この三十五年の六月に全面改正をされて以来改正されていないわけですね。それからさきはまあ部分的な改正になっておるわけです。したがって、薬事審議会でお認めになってそして現在薬価基準に登載されていない薬が一体何種類あるか。あなたのほうの薬事審議会でこれはパスした、だいじょうぶだ、使ってもよろしいと言われて、三十五年六月以来部分改正しか行なわれていない。まあ中には六百六十品目かな、三十八年一月、何かそのくらい非常に多く追加されているときもあるようであります。そこで現在追加されていない、登載されていない薬というのは何種類ぐらいあるか。
  81. 熊崎正夫

    熊崎説明員 大体千三百品目でございます。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 千三百あるということで、わかりました。これは薬務局にお尋ねをすることになるのですが、薬務局長御存じのとおり、あなたも保険局の次長をやられておる。日本は皆保険です。皆保険ということはすべての国民が保険証を持って保険で治療を受けるということです。これがたてまえなんです。自由診療というのは、保険証を持っている人がやるのはいわばこれはやみ診療になる可能性があるわけです、それだけで。したがって、あなたのほうで——天下の厚生省の薬務局、一番薬については専門家、ベテランです。そこが、これはだいじょうぶじゃと太鼓判を押した薬が皆保険のときに、それが今度は右から左に保険局で採用されないということは、これは一体どういうことになるのかということです。私はこれは医務局にもちょっと尋ねたいのです。皆保険制度をとっておって公認をした薬が保険に使えぬということがおかしなことなんです。これはあなた、その薬は買い手がいないのですよ。買い手があるとすればこれはやみに流れる可能性がある。あとで私はだんだんそれがやみに流れている実態を指摘しますけどね。だからこれに対する薬務局の見解というものは一体どういうことになるのかということです。保険局はあとで聞きます。同じ厚生省の中で一つの局が公認をして天下に出したものが保険になぜ一体採用されないのかということです。それでまた、ただいま千三百もの品目がされないで黙っておる薬務局長薬務局長だと思うのですよ。これは五種類か十種類ならいいです。千三百ですからね。それでいま使っているのは五千二百六十五でしょう。そうすると、ほとんどその五分の一か四分の一に近いものが採用されずにそのまま放置されているということなんですね。これはいままであなた方も、これだけ薬というものが日本の保険経済で大きな問題にのし上がってきているときに、保険局がいまのように手をこまねいている、じっと見ておっていいかどうかということですよ。あなたも保険局の次長におらなければこんなことは言わぬけれども、おったわけですから。いいですか、まずどういうことを書いておるかというと、療養担当規則を見ると、「保険医療機関は、懇切丁寧に療養の給付担当しなければならない。」と書いてあるでしょう。そして今度は十二条の診療の、一般方針を見ると、「保険医の診療は、一般に医師」としての「診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、適確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない。」こう書いてある。そうすると、近代の医学でこの薬はいま一番きくんだということになれば、これは保険で当然使ってやることが近代の学問を研さんした医者としては当然の義務になる。ところがあなたのほうはそれを使ってもよろしいといって売り出しておるが、今度は保険のところへいったら、それは使うことならぬというのですからね。まあこんなことを言っていいか悪いか知らぬが、池田さんがいま保険で入っているそうです。あれは保険医療機関だそうです。これはまあ秘密だから見せられぬでしょう。しかしああいうリニアックその他は一体保険でやっておるのかどうかということです。どういう形で行なわれておるかということになる。これは一国の総理の健康の問題は即——医療には差別はない。身分の高下によっては差別がない。そういう場合に池田さんはそれならばあそこで自由にいろいろなものを持って使われる。しかし他の者は使われぬということではこれはたいへんです。もし収載されていない薬品を池田さんのところで使っておったらこれは池田さんは差額を出しておるということになるんです。皆保険であって一体そういうことが許されるのかということです。私はこれはもう大衆に一番わかりやすいからあえて池田さんを出した。それだったら差額徴収をやることになるんです。公然とそれは差額徴収。なるほど一国の総理はお金を持っておるからいいかも知れぬ。しかしもしわれわれが、万一池田さんよりも貧しいわれわれがああいう病気になったら差額徴収をやるから保険でやってくれと言ったってそれはだめです。こういうことになるでしょう。なるんです。これは近代の医学に対する侮辱ですよ。いわゆる保険という制度が日本の人間の命を断とうとする傾向が出てきておる。それをあなたのほうが黙っておる手はないです。あなたのほうは認めておるのですから。だから私は義憤を感ずるのは千三百種類も何でいままでぼやぼやしておったのだということです。あなたのほうはどんどんお認めになっておるのに何でいままでぼやぼやしておったのだということです。これは保険財政のところはまだ問題はあとです。だからこれを監督する医務局長に来てもらわなければならぬ。一体これで日本の医療機関国民の生命を守る責任が果たせるのかということです。医務局の責任者として果たせるかということです。あなたのほうは認めたら保険に当然入れてくれと言わなければならぬ。入れるべきである。入れなければ何の面目があってわれわれがこれを認めたかということになる。認めたらそれを使う体制をつくることを小山さんのほうに要求するのが今度は医務局長の立場なんだ。だから業務局長医務局長は鼓を鳴らして保険局を責め立てなければならぬ。責めないじゃないか。だから千三百極数もたまっておる。こういうことが私は行政の怠慢だというのです。しかもさいぜん私が冒頭に読んだように、日本の医療費の問題というものはいまや医薬品の問題が最一局の問題になってきておるでしょう。技術料をどうするかという問題とともに最高の問題になって、技術料をこの医薬品の薬価基準の問題で解決しようというところまで問題がきておるでしょう。それを解決の一つの大きな要素とするところまできておるわけでしょう。そういう点でもう少し業務局はふんどしをからげなければいかぬですよ。認めたものが保険に通らないような権威のない認め方はしかたがないと思うんですよ。皆保険ですからね。これはまだ保険が二割か三割で七割か八割が自由診療ならこんなことを言わないです。しかしもはや昭和三十六年四月から皆保険になっておるんですからね。すべての国民は強制的に保険に入らなければならないことになっておるのだ、これは強制ですよ。強制保険ですよ。だからこれに対するあなたの心がまえは一体どうなんですか。直ちにあすでも千三百は入れてくれという要求ができますか。保険局にあすから直ちに入れてくれという要求ができますか、どうですか。
  83. 熊崎正夫

    熊崎説明員 現在薬務局で薬の品目の承認をやっておりますのは大体十万品目くらいあると思います。そのうち市販されておる薬といいますものは、薬価基準に登載されておりますものを含めまして四万品目ぐらいというふうにお考えいただいてよろしかろうと思います。私どもの製薬許可の立場といたしましては、保険のほうに採用になるかならぬかということは全然関係なしに、その薬が業者から申請されまして、有効性が担保されました書類によって審査をいたしましたならば、これはそれぞれ手続に応じまして、その新薬については新薬特別部会、薬事審議会というふうな手続を経まして、厚生大臣の権限で許可をいたしておるわけでございます。許可されましたあと、その薬につきまして、保険のほうでこれは保険薬価として登載するのが適当であるというふうなことが認められますれば、これは薬価基準に新規登載としてなってくるわけでございます。先ほど申し上げました千三百品目程度の従来登載になっておりません分につきましても、それがはたして保険薬価として適当であるかどうかということにつきましては、これから保険当局相談をいたしてきめるわけでございまして、これは従来とも許可されたもの全部が全部保険薬価基準に登載されておることにはなっておりませんので、その辺は保険当局との相談できまってくるというルールに従ってやっておるわけでございます。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 したがって、薬に対する権威は一体どっちが持っているかというと、あなたのほうが持っているのですよ。小山さんのほうは経済を担当するのです。薬の専門家は保険局にはいないのです。薬の専門家はあなたのところにしかいないのです。いま言ったように、新薬の特別部会とか薬事審議会というのは、あなたのところが握っておる。薬を殺すか生かすかということのさじかげんも、あなたのほうが握っておるのです。こちらは、ただ財政的にどうするかということだけなのです。そうしますと、財政上の問題ということは、これは薬を入れたからといって財政がふえることにはならぬと思うのです。それは必ずしも右から左ということにはならぬのです。だから、あなたのほうがきめたものをすみやかに保険のほうと相談して入れなければならぬ。千三百もためるということは怠慢です。一これが五十か百なら、私はこんなことは言わないのです。千三百ですよ。これはだれが聞いたって、そんなにうんとたまっていたのかとみんなびっくりしますよ。いま相談をしてやるというのですから、あしたからでもすぐ相談してやれますか。何ぞちゅうちょせんやですよ。いいことだったら、あしたからでもやったらいいでしょう。何も近代の医学を取り入れることにやぶさかであってはならないでしょう。まずあなたのほうから入れてくれという意思がなければいかぬですよ。これは短兵急だけれども、私はまだあとに保険局から出している文書があるから、それをやらなければならぬ。これは命にかかわることなのです。命にかかわることならば、池田総理一人の病状を見るために、見てごらんなさい、がんセンターのすべてを動員して、力足らぬと見たら、また切替氏、佐藤慈恵医大名誉教授等四人を動員してやるのです。これは命にかかわる問題ですよ。これはこの新薬を使ったら、この患者は助かるという場合もあるでしょう。千三百の場合には、それをぐずぐずとして入れぬというわけにいかぬのですよ。財政の問題は財政の問題で別の問題です。これをきょう入れたからといって、いまの火の車の破産寸前にある保険財政に影響するということはありませんよ、もう破産寸前にあって、これは抜本的に改正をしなければならぬ時期に来ておりますから。これはどうですか、あすからでも局長としてやれますか。
  85. 熊崎正夫

    熊崎説明員 先ほど先生の御指摘にありましたように、このたびの医療費改定の際、薬価基準改定を大臣としては行ないたい、またその際に従来たまっておりました新規薬品につきましても、新規収載をやりたいということで、私ども現在その新規収載の中身のものを業界のほうから取りまして、それを保険当局と一緒に審査しておりまして、次の全面改正のときに新規収載の分を保険当局相談いたしまして、ぜひとも登載していただきたいということで折衝いたしているわけでございます。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、次の全面改正というのはいつやるのですか。  それから千三百種類のものがあって、その中から相当のものが登載されるのに、いまからその製薬会社から取って審査されるなんて、これまた怠慢ですよ。それくらいあなた方は人間の生命を軽く見るのですか。とにかく製薬会社がだいじょうぶ薬事審議会なり新薬の特別部会を通過するだろうというようなものにまで製品として仕上げるのには、実に多くの実験をやり、粒々辛苦してきているんですよ。だから、そういうものがきたら、それはすぐ保険にかけられるわけですよ。それをいまから製薬会社から取ってやるというような、そういうまるっきり牛の歩みよりもおそいようなことでは困る。もういま完了していなければならぬ。大体いつ薬価基準の全面改正をやるのですか。
  87. 熊崎正夫

    熊崎説明員 製薬会社から申請書を取るといいましても、これは新規収載の分について、ぜひ保険薬価のほうに登載してもらいたいという業界のほうの申請書はずいぶん前からきているわけでございます。しかし薬価改定の際に、新規収載をどの程度やるか、それからまた既収載のものをどの程度落とすかというような作業を、この前の大臣談話にありましたように、現在やっているわけでございまして、それを現在作業中だ、こういうことでございます。  それから先ほど申し上げましたが、私どもはやはり製薬許可というものとそれから保険薬価登載というものとは全然無関係にやっているわけでございますし、また製薬許可を申請いたします業界の立場も、これが製薬許可になったら直ちに保険薬として登載してもらえるというふうな期待を持って私どものほうに製薬許可を申請いたしているわけではございません。やはりそれがすみやかに保険薬価に登載されることは、将来期待するでありましょうけれども、しかし許可された医薬品がやはり保険に採用されないままであっても、やはりその薬が医療機関のほうで使われるということを期待しながら、製薬許可の申請をいたしているのが通常でございます。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 それはあなた認識不足ですよ。いま皆保険ですよ。製薬会社がつくった薬品が薬価基準にも登載されずにそのままおるということを願っている製薬会社はありませんよ。これはつくったら、みな——われわれのところだって、これはぜひ登載してもらわなければ困るとずいぶん言うてきておりますよ。学者みずからが来ますよ。それがいまの実情です。あなた方がもしそういう認識を持っているならば、日本の皆保険というものは進まないですよ。薬をつくっても必ずしも保険に登載する必要はないということなら、自由診療をつくる道になるのじゃないですか。しかもいま日本においては、保険において薬がよけいに占めて、どんどん高貴薬が使われて困るということを保険者が言っているんですよ。それが薬務局の認識と保険者の認識とはまるで月とスッポンです。さかさまです。いま製薬企業も、少なくとも医療に使う薬をつくったら、これは保険に使われるということを念願しておりますよ。それが常識ですよ。たまに例外があるかもしれません。特別な高貴薬をつくったら、これは自由にお金持ちだけが使ってくれ、そうしたらもうかるのだというへんちくりんな会社もあるかもしれませんが、しかしそれは認識不足ですよ。これはもう少し薬務局長の洗脳をやらなければいかぬですよ。そういう関係だから、私は言いにくいけれども、法学士が薬務局長になったらいかぬと言うんですよ。こういうところにその欠陥があらわれてきているんですよ。むしろあなたは今度ほかのところに栄転してもらってだれかがなったほうがいいですよ。ほんとうに名医とやぶ医者は紙一重です。私はやぶ医者ですけれども……。やはりこういう薬務行政というものは技術官がなるか法科出身者がなるか、この大事なことがこういうときにあらわれるのです。だから、それはもう少し注意しなければいかぬです。ものごとを法律的に、技術的にだけ見ていって、そこにはヒューマニズムが欠けている。人間の生命を大事にするという、もっと技術を大事にしなければいかぬというすなわち近代の医学が生んだ薬品というものはすぐに技術に提供しなければいかぬというこのヒューマニズムの精神が欠けているのです。そのほかの薬務行政には法学者でもいいのです。しかし一たん緩急ある場合にぼろがあらわれる。もうすでにぼろがあらわれてきているのです。  次にお尋ねしたいのは、どうもそういう点では薬務局長は落第ですね。昔から九仭の功を一簣に欠くということばがある。そのたったもっこ一ぱいの土を盛るか盛らぬかが、やはり人間の命を救うか救わないかのせとぎわになる。この段階になるとオール・オア・ナッシングです。大事なところです。池田さんが二十五日の総合診断で総理をやめると言うたところに、池田さんの声価が上がっている。それが二十七日、二十八日とずるずる延ばしていってごらんなさい。池田さんの声価はがた落ちですよ。大事なところはその瞬間の決断のところです。人間の価値がきまるのはそこです。これはやはり忘れぬようにして薬務行政というものをやって、そうして私の言う薬学士でなくても法学士でできるんだという姿をぜひつくってもらいたいと思うんですよ。こういうところはひとつ大臣に聞いておいてもらわなければいかぬ。  そうしますと、小山さんに聞くことになるのですが、千三百もの種類の薬品が登載されていないですね。そうしますと、この収載をされていない薬品を一体使用することが保険でできるのかどうかです。
  89. 小山進次郎

    ○小山説明員 原則としてはできません。ただし、厚生大臣の承認を受ければできます。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 原則としては使用ができない。そうすると厚生大臣の承認を受けるという、その承認をする条件はどういう条件があったら承認をすることになるのですか。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  91. 小山進次郎

    ○小山説明員 その医薬品を使う以外に代替し得るような医薬品がなく、また診療上他にとり得る手段がない場合においては、そういうふうに承認の申し出があったものについて検討して承認をしております。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、まず代替品がないということなんですね。これが小山さん、抽象論だったらそれでいいです。ところが診療所なり病院の使う薬というものは、一定の、その医者の習慣とか学問の程度によって大体きまっているのですね。普通の診療所に行ってみますと、五千幾らの登載薬品があるからといって、五千はそろえていないですよ。しょっちゅう使うのは五十種類か百種類、そのくらいです。その中でやるわけです。そうすると、たまたま製薬会社の宣伝員がやってきて、今度こういう新薬の非常にいいのができました、これは学界で定評がある、たとえばあなたのほうの保険医の指導者講習会でこれをぜひ使うほうがいいという指導があった。それから同じ種類のものを自分はいままで使っておった。ところが、たまたまそこに患者が来たときにそれがなくなった。そうすると、店に行ってもその薬がないから、これを使う以外にない、たまたまプロパーの宣伝員が来たときに買った薬を使う以外にないという場合でも、申請する以外にない。患者には、きょうはだめだからお前帰れということになる。だから人間の生命というものは——そんなものを一々厚生大臣に申請をして、私は今度こういう薬を持っております。どうかこれを使ってもいいでしょうかと言うて申請をして、そうしてあなたのほうが検討して承認をしなければならぬようでは、患者はよくなってどこかに行ってしまう。保険の診療は一病気については五日以内ですからいなくなってしまう。だからこういう薬までこういう法律的なしゃくし定木で、縛ってはいかぬですよ。私の言うのはここなんですよ。  それから、診療上と手段がないというときには私がこの薬を使う以外にない。とる手段がないということになったらどうしますか。あなたのほうはそんなことを言わなくとも、いままでの薬を買って使ったらよい、私の主観的な考え方です。滝井なら滝井という医者の主観的な考え方です。これ以外にとる方法がないといえばそれで終わりでしょう。だから代替品がないとか診療上とる手段がないとかいうような抽象的なことで第一線の生命と対峙しておる医者をきめるということが間違いなんですよ。こういうしゃくし定木の保険行政が行なわれておるからこそ、技術者の医者を事務屋にしてしまう。これが日本の保険制度、日本の医療というものを後退させ医療を混乱させる原因なんですよ。これもやはり同じですよ。ちょっとしたことですが、名医とやぶ医者の違いはここから出てくる。いま私は具体的な例で質問してみますが、皆さんが全部知っておるアリナミン錠というものがある。これはみんな飲んでおります。からだがだるいと言ったらアリナミンという、ニンニクのにおいがしますよ。それからアリナミン散というものがある。これは錠と散はどちらが安いかというと、錠剤のほうは固型化するだけに手間がかかっておりますから三、四割は高い。そこで医者は、たまたまその錠剤がなかったがアリナミン散が出てきた。アリナミンの錠剤は子供が飲まない。小児科では飲まない、散のほうがよいということで散を使った。これは全く同じです。ところがあなたのほうの薬価基準には散は登載されていないのです。そうすると、これはだめなんです。だめだけれども医者は子供にはアリナミンをどうしてもいまやったほうがよいという判断を下しても、あなたのほうは認めないんですよ。こういうところまで保険行政が関与したら日本の医療はおしまいだと思います。これはいま関与しておるでしょう。これはどうですか。私がアリナミン錠を子供が飲まないというのでアリナミン散を使った場合に認めますか。これはやはり技術的なことになるから、小山さんでないほうがよい。小山さんは聞いておいてもらったほうがいい。
  93. 小山進次郎

    ○小山説明員 現在のやり方では、そういったアリナミン錠というのを砕いてのませることが可能なわけでございますから、現在のやり方で処理できると思います。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 そのアリナミン錠がないときのことを言っているのです。ないときに散で悪いかというのです。そうすると、あなた方はいまの答弁で一これは重大な答弁ですよ。錠を砕いて散にしてやった場合に、それで今度は錠のお金をとっていいのですか。これはとって悪いはずです。インチキです。それは監査にひっかかるのですよ。
  95. 小山進次郎

    ○小山説明員 それはよろしゆうございます。監査でひっかけておりませんん。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 ひっかけていなくても、これはひっかかることになるのです。薬は今度は散でしかとれぬことになる。だから、いまのこの発言は非常に重大だから、次に私は展開しますけれども、そうしますと、錠を砕いて散にして、錠でとってよろしい、こういう答弁ですね。それではもう一つ典型的な例を出しましょう。  アイロタイシンという錠剤は、二百ミリグラムは認めているのです。ところが、アイロタイシンの百ミリグラムの錠剤は認めていないのです。そこで、アイロタイシンの二百ミリグラムがなかったので、百ミリグラムを二つ使ったら、それは二百ミリグラムの錠剤として請求していいのですか。それと同じですよ。こういう場合は請求してはいかぬことになっている。
  97. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 速記を始めて。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 小山さんけっこうです。こういうように、あなた方がそこでやはり鳩首凝議をしなければ解決ができないような要素を持っておる。これは現場では毎日やっておるわけですよ。そこで、こういうように千三百もあるのですから、これはもう医者はもちろん、薬価基準の登載をしておる本と首っ引きで、この薬は登載されているかいないかを見ますよ。ところが学名で記入されているのがあるし、それから売り名というのですか、称号で、普通の呼び名で出ているのがあるから、これは薬価基準に登載されている薬かどうかということはわからない。私はしょっちゅう自分でやっているからわかっているが、それを探すのはたいへんなんだ。ですから、薬価基準に登載されているのかどうかということを薬局に尋ねる。薬局だってわからぬ場合がある。そういう状態ですから、いま言ったように、なるほどアリナミンの散がなく、散が必要なときには砕いてやってもいい、そして、錠でいいということになれば、いまの問題が出てくるのです。あなた方のほうは非常にしゃくし定木に、その代替品がないとか、診療上やむを得ないとか言うけれども、医者のほうが診療上やむを得ないということになれば、それでいいわけです。そこで、私はまず第一にどういうことを言いたいかというと、厚生大臣が定めた薬品以外は、私たちが使ったり処方してはならぬわけでしょう。そうしますと、医者は五つの薬を処方せんに書いた。四つは薬価基準に載っておった。一つは医者が載っておるかど三か知らぬけれども、とにかく処方を書いた。そしてその薬は載っておるものだと思っていた。いま言っておるように、アイロタイシンの百ミリの錠剤をその中に入れて、これが処方料を五・四だけ患者からもらった。そして薬剤師のところに行った。そうして薬剤師もそれが載っておるものだと思って出した。そうして請求書に書いた。そのときに、医者はこれはもう五・四もらっておる。わからぬから収入が入ってきます。ところが今度は薬剤師の診療報酬はどういうことになるかというと、基金の審査委員会に行ったときにストップを食うわけです。四つについては載っているけれども、一つが載っておらないからだめだ、こういうことになるのですよ。いま全部保留ですよ。そういう形になっている。こういう形になると、一体だれが迷惑をするかというと、医者でなくて薬剤師のほうが迷惑をするわけです。医者のほうだっていま言ったように五つのうち一つか二つそういう載っていないもので出せばその請求書は保留ですよ。こういうことになるわけです。それで私はこういう制限をあまりやってはいかぬ、だからまず薬務局で認めたものはすなおに入れたらいいと言うのですよ。落とすものはこれは検討して落していいのですから、入れるのはもう検討が済んでいるのですから、落とすのはその後の変化で検討して落としてかまわない、入れるだけはさっさと入れてもらったらいい、古くなって陳腐になって使わぬものは、登載しておってもこれは使わないのですからたいして影響を及ぼさない。新しい医学、新しい薬学の前進をはかろうと思えばこれを早く入れてやらなければならぬということが一つです。それを怠慢でやっていないということです。それからいま一つは、地方の審査委員会、ここにある程度の自主性を持たせるべきだと思うのです。一々保険局にお伺いを立てなければできないなんというのでは、現場の臨戦態勢に即応できないでしょう。だから今後少なくとも、地方の基金の審査委員会にはあなたのほうの息のかかった技官が入っているのですから、この技官がやはりある程度裁量してどんどんやっていくということでいいのですよ。そんなものを一々中央に聞いて、そうしてまたその地方でやらなければならぬということにしなくても、そこである程度自由裁量にまかしていいのです。もう熊崎さんのほうはパスしている薬なんですからね。それからいま一つは、そういう問題があるのだから、これはやはり少なくとも二カ月か三カ月、おそくても半年に一回ぐらいはできた薬はどんどん追加していかなければいかぬですよ。過去の全面改正の実績をずっと見てみますと、二十六年八月、二十七年九月、二十八年八月、二十九年五月、三十年九月、三十一年九月と皆一年以内にやっている。ところが三十一年からが三十三年四月、三十五年六月、そして今度でしょう。もちろん途中で一部改正が行なわれておりますけれども、全面改正というのは今度なるわけです。三十五年の六月に全面改正をやって三十七年、三十八年、三十九年とこんなに長くなると、いま言ったようにこの薬で医療費の増高というものが非常に大きく左右されることになります。やはりこれにしがみついているグループがあるのですから、これが一挙に切られるということは大きな政治問題になることは当然です。これを半年か三カ月ごとにやっておったら、そんな政治問題も起こらぬで済むわけなんです。そういう点で、むしろ春秋の筆法をもってすれば、現在のこの薬価基準関連する政治問題は、厚生省の薬務局と医務局の学問的なヒューマニズムの欠乏によってこういうものが起こった。しかもそれは、一切のしわが小山保険局長にきておる。むしろ小山保険局長は、自分は保険経済の頭があるわけですから、この人は保険経済のことを考えればいいのです。やはり医学的なヒューマニズムを考えるのは薬務局と医務局なんです。ここがやはり催促しなければいかぬ。その催促をやらなかったところにその両者の怠慢がある。そうしてその一切の罪は、哀れにも、気の毒にも小山保険局長にきておる、こういうことになる。これはそういうことなんですよ。いまや小山さんが一切それをしょわなければならぬことになるのです。だから、そういう点は、やはりおか目八目じゃないけれども、保険経済の火の車の中でそれを一生懸命になっている人は、そんな外のことはわからぬですよ。もうわが道を行くよりしようがないのです。わが道を行く人に横からちくちく言ったって、そんな要らぬ世話をやくなということになる。だから小山さんがかっかとならぬうちに、あなた方が両方からやるということですよ。そうしてトロイカ方式で、三頭立ての馬が神田厚生大臣をきちっと乗せて、足並みそろえて前進する形をつくらなければいかぬ。あなたたち二人がぼんやりしていて小山さん一人がかっかしているから、神田さんが落ちることになるのですよ。だから、そういう点はもう少し、学問を持つ側が経済を握る側に忠告をしなければいかぬということです。それをいままで、怠慢ですよ。どうですか、いま言った点について、これはもう死児のよわいを数えるにひとしいけれども、しかしこれは早く改めることが必要なんです。だから、追加するものは早く追加する、こういう形をとられるのかどうかということです。おろすものはおろすという、全面的な改正をするまではそれは待ってくれということでは私は了承できない。追加するものはまず追加する。全面的な改正の問題をまたあとで一どうせ有沢さんの所見がありますし、これに基づいて公益委員の見解がありますから、それをもとにしてまたお尋ねしますけれども、とりあえず前段の千三百種類についてはまず追加する、こういう方針でいいのかどうか。これはもう全面改正をするまではそれは追加できませんということになれば、きょうはぼくは開き直らざるを得ないのです。
  100. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほどお話、これは滝井先生もたまたま例としてあげられた問題ですが、実はアイロタイシンの問題、ちょっと私ども話を逆にしまして、実は現在百ミリグラムが登載されておるそうでございます。したがって、二百ミリグラムであるならばそれを二個使えばいい。しかしこれは、先生もおっしゃるように、別に単なる事例で、要するにそういうふうな登載していないものがたまたま処方に入り、そしてそれに基づいて調剤が行なわれる、そういう場合に困った問題が起こってくるじゃないか、したがって考えなくてはならぬ問題がある、こういうふうなことを仰せられたわけでありますが、私も現在の仕組みの中でそういう問題があり得るということはそのとおりだと思います。ただ、やはりこれは全体の仕組みとして規格を設けざるを得ないとするならば、どうしてもその問題はどこかで出てくる。したがって、どういう方法でそれを極力縮めていくかという縮め方の問題だと思います。そういう縮め方の問題として、先生が言っておられるのは、一つは新規の登載を敏速にしろという問題私も方向としてはさように考えるべきものだと思います。少なくとも一年に一回、できるならば半年に一回ぐらい、そういうものをやっていく考え方というものは、できるだけ将来生かしてまいりたいと思います。ただ、いまのところは、不幸にしてこれをスムーズに運ぶいろいろな条件がすっかりこわされておりますので動かないでいるわけでありますが、そういうふうな条件を整備することと相まって、なるべくそういうふうにして新しいものが敏速に入ってくるように考えたいと思います。  それから、地方の審査委員会に自主性を持たせるという問題、これは私どもそうは参らぬと思います。これは非常に形式的な問題でございまして、やはり薬価基準に載っているものから選ぶという原則はどこの審査委員会でも守っていただかなければいかぬので、たまたまある地方でだけそれにふくみを持たせるというのは、やはり解決としては適当でないのじゃないか、その問題は全体として解決をしていくということで考えるべきだと思います。  それから、今回の問題について、新規をまずやって、全面的な改正というものはそれと切り離してもいいじゃないか、こういう御意見でございますが、これはいまのところさようにはすべきでない、しかし両方を含めてとにかく非常に近い機会において実施する、こういう気がまえで大臣の指示に基づいて関係局は準備を進めておりますので、結果としては非常に近い時期に両方の問題が解決すると思います。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 アイロタイシンの問題はちょっと私が間違っておりました。百ミリグラムが登載をされておって、二百ミリグラムが登載をされておりません。そこで前の質問を別な言い方をすれば、百ミリグラムが登載されておって百ミリグラム分はなかった、二百ミリグラムはたまたま持っておったというときに、その二百ミリグラムの錠剤を二つに割って、そうして百ずつになるかどうかということなんです。それは逆で同じことなのです。これはやはりあなた方、頭をひねらざるを得ないことになるのです。こういう点については、なかなか問題のあるところなんです。たとえば指導者講習会で、インフルエンザにビルスミンというのがあります。ビルスミン末というのはよくきく、これは私も読んでみましたけれども、流感のときにはこれを使ったらいい、非常にききますということを保険の指導者講習会で学者が推薦しているんですよ。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 それで指導者講習会で使いなさいといって推薦したものをだめだと言うのですから、それなら指導者講習会は一体何を教えたんだということになる。こういう点が、保険行政は学問的に指導のほうは一歩進んでおる、しかし実質的には薬務行政ということで、そんなものはくそ食らえということで整理をしている、こういう矛盾になっているのです。そうすると、流感でこれはたいへんだというときに、緊急な場合だからみずからそれを使った、そして備考欄に、こういう場合には他に薬がなかったから使ったんですということになると、そういう場合にも地方の審査委員会にまかせずに、今度一々中央にお伺いを立てたり、あるいは参勤交代をするかしていかなければならぬという保険行政は、私はいかぬと思うのです。小山さんがそういうしゃくし定木のものの考え方だからいかぬですよ。これは、二十七年の暮れにあなたが言うたことはまるっきりうそだったということになる。私はあのころ、あなたはこれはばかにいいことを言ったと思って、ほんとうに心の中では拍手かっさいを送っておった。それがきょうはまた逆です。制限診療をやる。指導者講習会で言うたものまでやはり中央に持ってきたらだめだ、こういうことになっておる。これは私が聞いたもので、どこかから申請がきて、いますよ。それはだめだという通知を出している。こういう点もフェアプレーでいかなければいかぬですよ。何もかにも私はみんな認めよとは言わない、しかしやはり指導者講習会に出て使いなさいと奨励したもの、あるいは末が認められておって錠剤が出れば錠剤は使ってもいい、錠剤があって末がなければ使っていい、このくらいの弾力性はやはり地方の審査委員会にまかせなければ、これは中央集権になってしまって、何のために地方に審査委員会を置いておるかということになる。しかも地方の審査委員会はれっきとした、むしろ学問的には中央にまさるとも劣らざる人たちが審査委員になっている。それをわざわざ中央に持ってきて保険局の松尾医療課長にお伺いを立てなければいかぬという、そういう僭越しごくな態度をとるべきではないと思うのです。何もかにもとは言わない。やっぱり常識で見て、これは必要だというようなものは認めてやっていいじゃないかというのです。だからそういう点では、もうちょっといまの態度を私は改めてもらう必要があると思うのですよ。あなたのほうで地方審査委員会にまかせるわけにはいかぬということは、いまの反論で何もかにもとは言いません。しかしあなたが言うように同じ性質を持っている、あるいは末は認められておるが錠剤はなかった、しかしそのときに錠剤しかないならば錠剤を使ってもいいじゃないですか。あるいは指導者講習会で出たというものは、みな全国から集まって聞いておるわけです。それを中央にお伺いを立てて、そうしたらみなペケですよ、だめですと言うてきている。だからこれはもう少し改めなければいかぬと思うのですがね。政務次官がいらっしゃっておりますが、これは少し専門的になりますけれども、いまの私のいろいろなあれをお聞きになったからわかると思うのです。こういうことは、しろうとのほうが的確な判断をするのです。小山さんは、いま保険経済が火の車ですから、保険経済が頭にあってヒューマニズムのところは頭にないのですよ。だからもう少ししろうとが、ほんとうに純粋な立場からやるべきだと思うのです。それのためには、私の意見はこういう意見である。いま千三百種類の新しい、学問的に承認された薬が出ておる。ところが、保険に登載されていないから使うことはまかりならぬということ。ところが千三百種類の中には、いま言ったように錠剤はすでに使うことを認められておるが、散薬で出たときには使っちゃならぬという問題が出てきておる。それは散薬を使うとしたならば困るじゃないか。それは錠剤を砕いて使ったらいい。高い薬を砕いて使う必要はないのです。労働力が入っておるから、労働力をむだに使うことになる。だから錠薬を使っていいじゃないですか。それさえ使って悪いということは、私は人道に反すると言うのです。それから指導者講習会でこれは使ってもよろしい、使うべきだとか、流感にはよくきくんだとか指導しておる。今度それを、厚生省と日本医師会主催の指導者講習会でそういうことを習って帰った医者がそれを使って、流感ではこれ以外にないという学問的判断に基づいたものには払わないのです。こういうことは地方の審査委員会に——私は何もかにもまかせろとは言わない、そういう限度においてある程度の自主性というか、ある程度の弾力というものを運営に持たせなさい、それさえも否定するんです。だから、保険経済で頭が一ぱいだからヒューマニズムを失っちゃう。馬車馬になっているからよく見えないのですよ。だから純粋な立場に立って、政務次官のほうにひとつ御答弁を願いたい。そういう場合は弾力的にやっていい、これは人間の命の問題ですから当然のことだと思うのです。どうですか。
  102. 徳永正利

    ○徳永説明員 ただいまのお話のように、錠剤と粉末が全然同じ性質のものを、錠剤でなければ使っていけぬ、私はその辺のこまかい規則なりはよく知りませんけれども、いまお説のとおり、当然のことじゃないかというような気が実はするわけです。なお、むずかしいいろいろな規則があるとすれば、それもよく研究いたしまして、将来はそういうものは善処していかなければならぬじゃないか、かように考える次第でございます。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 それで今度は、政務次官もおられるから具体的に出します。いま、その千三百種類の薬を、たとえばAならAというものをとってみます。そうすると、これはほんとうは認められていないのですから、そんなに保険でうんと使うはずはないと思うのです。ところが千三百種類の中のAならAという薬が非常に使われているのです。非常に製薬会社で売れているんです。これは一体どうしておるかというと、まず第一に考えることは、この薬は皆保険の世の中でありながら保険に使えない。だら自由診療でどんどんやられておるか、あるいはその薬を使うことによって代替請求をやっておる。いわゆるいま言ったように粉末で使って錠剤で請求するという代替請求。これは私は何もかにも悪いところで考えられることを言っておるわけです。代替請求をやる、あるいは現物を買わしてやる、こういうことが行なわれるわけでしょう。皆保険ということは、保険証を持って行ったら最小の経費で少なくとも医療を見てもらえるということです。ところが千三百種類の薬でたまたま見てもらえないがために、患者も保険証を使わずに現金を出さなければならぬということになる。こういう悪を一体皆保険のもとで残していいかということ、保険経済だけの理由で。ここなんです。そこで、そういう新薬が一番使われるところはどこかというと、公的医療機関と大学です。大学と公的医療機関は、一体こういう千三百種類の新しく登載されない薬をどうしておるかということです。これはそれらの機関の用度係がたいへんな苦労をしておる。これは会計検査上は、Aという薬を使ったらAという薬が入庫するわけです。ちょうどわれわれの麻薬の受け入れ払い出しと同じです。Aという注射薬が百本入ったら、その百本が今度は払い出しとして診療で使われておらなければならぬわけです。ところが、そのAという薬を請求したら全部がだめになっちゃう、基金は認めてくれないですから。そこでどういうことになるかというと、公的医療機関がみずから代替請求をやる。公的医療機関が一番やっておるのですよ。大学はそれを一番やっておる。調べてごらんなさい。そうしなければ会計検査上たいへんなことになる。だから、私が冒頭に言ったように、甲表というものは薬を使わぬことが甲表の典型だ。ところが見てみなさい、甲表では六十円以上の薬がうんとある。五割以上六十円以上の薬ですよ。甲表では六十円以下の薬は少ないのです。六十円以上の薬をみな使っておるでしょう。そういう形になってしまう。そういう甲表をとっておるのは大きな医療機関が多い。大きな医療機関がそういうことをやらなければ人間の命を守れないのです。こういう形にあなた方が日本の保険制度を追い込んでしまって、甲表は技術尊重のものだと言ったことが暴露した、いまやうその皮になった。そうして大学やなんかのほうがみなこういう薬を使っておる。医学の雑誌を見てごらんなさい、治験例がみな出ておる。それなら、それを一体患者はみな自分で買うて持っていって使っておるかというと、日本の大衆は治験例になるほどのばく大な薬を買うだけの余力はない。そうでなければ製薬会社が無料でその大学なり医療機関にやるか、それとも保険証を使って代替請求しておるか以外にない。すなわち、日本の医学の中に不正をこういうことで持ち込んでおるじゃないですか。だからこういう点であまり保険経済を中心に考えておると、たいへんなことが日本の医療に起ってきておるということです。だから小山さん、あまりしゃくし定木に考えずにやるということ。それはあなたが疑うならば、あなたの所管のもとにおける健康保険病院を全部洗ってごらんなさい。何なら私も協力していい。そうして使っておる薬を全部洗ってごらんなさい。相当薬価基準に載ってないものを使っている。第一、調べてみたら、薬価基準に載っていない薬がどんどん売れておるのです。日本の大衆は、そんなものをどんどん現金を出してやるほど裕福じゃない。どんどん売れておる。だから、そういう点でもう少し慎重にやっていただく、ぜひやってもらわなければいかぬ。  それからもう一つ小山さんの気に食わないのは、これほど私がヒューマニズムを説くにもかわらず、依然として、薬品基準はやっぱり近いうちに全面的にやらなければだめだ、新しい追加をやらないんだ。一体新しい追加をやったらどこに支障があるのです。いまの保険経済のどこに支障が出てくるんですか。新しくいますぐ追加してどこに支障が出てくるんです。私は、人間の命を救うためには何も間違っていないと思う。すぐ追加すべきであると思う。追加してちっとも支障がないじゃないですか。どこに一体支障があるのです。すぐ追加することで。
  104. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほど来いろいろお話がありましたけれども、私は、現在の薬品基準の中になるべく多くの薬を早く取り入れるという原則については、従来とも努力をしてまいりました。その範囲内においてどの薬をどう使うかということについて、従来とかく制限診療といわれて、いろいろの拘束が事実上加わりがちであったということについては、この際そういうことのないようにという方針を徹底させてきたわけであります。これについても、先生もよく御存じのように、むしろあまりにルーズ過ぎるという批判が出ても、なおかつ昨年の十月ごろから、いずれ来年になると保険財政が苦しくなるので、いま進めておるこの施策に対しては非常な反撃が出てくるのであろうと思うけれども、この考えは貫くのだということで今日まできておるのであります。いま先生が言っておられるのは、薬価基準に登載されていない薬を、しかも現実にはある特定の地方だけが、特定の機関の判断で採用してやっていいのだと称して使ってやっておる、その問題なのであります。それは困ると私は言うのです。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたはおそらく京都のことを言っておると思うのです。何も京都だけの問題じゃないのです。私の言おうとしておるのは——京都の問題と私のいまの質問趣旨を混同してもらっては困る。これは全く別の立場から言っておる。京都でその問題が起こっておることは事実です。京都で使われている薬が関西で使われていない、九州で使われていないか。九州では使われておるのです。しかも私がいま指摘するように、大学とか公的医療機関でうんと使われておる。あなた、製薬会社を調べてごらんなさい。アイロタイシンその他みんな売れておるのです。売れておるから使っておる。それは自由診療で使っておる。保険でも使っておるはずだ。そういうところで使っておってどうしてわからないか。代替請求がきまっておるじゃないですか。だから、そういう悪いことを、学問の道を貫くために、科学者にさせる制度をつくっちゃいかぬというのが私の主張なんです。何も京都だけの問題じゃない。至るところにあるのです。現実に池田総理が入院をした。あなた、行って調べてごらんなさい。聞くところによると、池田総理は入院して差額徴収が行なわれておるはずです。何なら国会で要求して調べてもいいですよ。差額徴収が行なわれておる。一国の総理が入院をしておるところでさえ、差額徴収をやっておるじゃないか。こういうことではいかぬと思う。総理はまずみずから保険証で入院をして、最高の治療を受けられる形をつくるべきです。そういうところは黙って目をつぶっておって、レントゲンでも何でも差額徴収をやる。わずかに医者たちが、錠剤がないから未登載の散薬を使っていいですかとお伺いしたら、だめだと言う。この官僚的、高圧的な権力主義がいかぬというのです。何も京都だけの問題じゃない。日本全体がそういうことです。ただそれをまじめに、そういう闘争の形で出すか出さぬかの違いです。それはあなたの認識不足ですよ。みんな困っておる。たとえば東京大学あたり、行ってごらんなさい。一体どういう実態か、大学の実態を見たらわかるのです。京都だけの問題じゃないのです。だからもう少しあなたはそういうことにこだわらずに、すなおに言いなさい。ぼくらはすなおにものを見て、すなおに言っておるのです。だからもう少しやらなければいかぬです。どうですか。政務次官、いま言ったように薬務局の専門家がこの薬は売ってもよろしい、使ってもよろしいという判断をしたものを、保険の方が、おれのほうの判断がなければだめだと言う権限はないというのです。当然それは採用すべきです。同じ厚生大臣が認めておるのですよ。そして保険に使うかどうかも厚生大臣が認めるのですから、厚生大臣が一方で使ってよろしい、学問的に折り紙がついたからだいじょうぶだと太鼓判を押したものを、どうして保険が使って悪いと言う権限がありますか。これを追加して悪いという理論的な根拠があれば明白にしてもらいたい。明白になれば納得するのです。それを、何か政治的にゆがんで考えるところに問題があるというのです。一つの地方——なるほど京都で問題が起こっておることは新聞にも書いておるし、知っておる。京都の資料も見ました。しかしそれは、一京都だけの問題ではありませんよというのが私の主張なんです。全国どこに行っても、このように薬価基準を改定されるのは困ると言っておる。それでは薬は売れてはおらぬかといえば、薬は売れておる。売れておるからには保険で使われておる。そう判断するのは正しいと思う。それは日本の医者に対しては非常に申しわけないことかもしれませんけれども、やはり誠意を貫くためには、そういうことが行なわれておることを政治の場で明らかにしなければならぬ。それを小山さんは知っておって知らぬふりをして、一地方だけであろうというようなことを言うのは僭越だ。あなたの傘下の健康保険の病院調べてごらんなさい。あなたの外郭として健康保険病院があるはずですから、そこで薬価基準に登載されてない薬を使っていないかどうか調べてごらんなさい。必ず使っておる。そういうものですから、医者は、新しい学問をどんどん雑誌を読んで知ったらそれを使いたくなるんですよ。それを使ったほうがいいような感じがする。われわれも経験がある。それを保険で使うことができないということになれば、学問的な良心を貫くためには、患者のためには少しは不正をしてもやむを得ないという形になって、代替請求すればいい、代替請求すればわからない、注射を打ってやったと同じですから。むしろ気持ちとしては、学問的な良心を貫くために患者を幸福にする道を選んだ。請求において幾ぶん悪いことをしたけれども、その悪はこの善のために慰められるという形になる。だから私は、ときどきネズミ小僧になってもいいということを言っておる。日赤あたりでもときどきやるでしょう。博愛、人道を掲げておっても、経済のために健康保険の患者を入れないじゃないですか。だからそういう点はもう少しあなたも考えて、そんなかたくななことを言わずに、千三百種類をまずおやりなさいよ。あなたがあと医療費の問題で一緒にやると言っても、そんなに簡単にできませんよ。判断としては簡単にできる問題ではないでしょう。だからそれが簡単にすらすらといくならいいが、医療機関の難関もあるし、医療協議会の委員も任命されていない。だから右から左へいかない。第一線においては、日々人間の生命と対峙しておりますから、それを解決してやるべきですよ。追加するだけです。何のことはないじゃないですか。それで大きな隘路がありますか。追加するだけで何もないでしょう。あとのことはあとのことで、二段がまえでやったらよろしい。それでどうですか。私、非常に重要なことで要求しておりますが、大臣は派閥の会合か何かあるらしくて出てこられないが、私は当然これは切り離すべきだと思う。切り離せない理由があれば、国会ですから国民に明らかにしてもらわなければ困る。
  106. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほど来ごらんをいただきましたような事情で、薬価基準の登載整理という問題が、少なくとも三十六年以降円滑に動いていないわけであります。どうしてもこれを動かさなければ全体の仕組みが動かぬという状態においてその問題を考えるわけでありますから、それと一緒にこの問題を解決するというのが、大臣をはじめ私どもの考えでございます。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 どうして動かないのですか。医療協議会の公益側委員の意見の要旨をごらんなさい。新しく追加することをやめろというようなことはどこにも書いてない。いまの購入薬価実勢と薬価基準とが異なっておる、だから新しいものを追加してはいかぬということをどこにも書いてない。そんなことは答申にはないのであります。答申の問題は答申の問題でいまから尋ねますけれども、とにかくヒュ−マニズムに立って新しい薬を使いたいという要望があり、それぜひ使ってくださいという要望が大衆の中にあるのに、それを厚生省は阻止する何ものもないでしょう。それを追加したら一体動かぬようになりますか。そんなことはないはずです。新しい薬品を追加することについて医療協議会が何も言っておらぬ。ただ、現実の薬価基準に登載されておる薬と実勢価格との間にいろいろ問題があるということは言っておる。だからそれをどうしなさい、こうしなさいということは言っておるが、新しい薬の追加のことは言ってないんですよ。それをあなたが結びつけるのはおかしい。お互いにしろうとではないから、専門家同士ですから、そこははっきり割り切って——私の判断では、つけても何ら関係がないと思う。それをあなたが引き延ばすことはおかしい。何も理由がないじゃないですか。いま言ったようなことは何も理由にならない。皆さんここでお聞きになっておりますが、追加すべきですよ。政務次官、もうこれは局長段階じゃないですよ。まさに政治的判断です。さいぜんから私が言うように、政党政治ですからあまり官僚に引きずられたらいかぬです。純粋な気持ちで、やはり判断をしたらこれは一路邁進をしていかなければならぬと思うのです。なるほど薬価基準の全般的な改定についてはいろいろ問題があります。だから私もいまからお尋ねいたしますけれども、いろいろ問題があるし、いますでに千三百種類のものを追加することについては何も問題がないのです。千三百種類のどれとどれを追加するということは、薬務局とあなたのほうと相談してやればいいんです。だから追加をしてください。追加をしたからといって何もあとの薬価基準の改定ができぬことはないのですから、切り離したってちっとも差しつかえない。やはり先にやっちゃって、一カ月か二カ月あとで当たることは自由なんですから、政治的にそれは可能なわけです。追加することまであとのものと一緒でなければ悪いなんという判断は、どこからも出てこないのですよ。理由がないじゃないですか。頭のいい小山さんにしては説明が薄弱ですよ。
  108. 小山進次郎

    ○小山説明員 その公益委員の意見には出ておりませんけれども、中医協の議論の経過からいいますと、支払い側の諸君は、とにかく既収載分の整理をすることが先決だという主張を常に述べてきておるのであります。そういうような事情からいたしまして、その問題については、既収載のものの整理をするとしても、それによって医療費を節減するということをねらうべきじゃないということに重点を置いて書かれたから、その点があらわれたのでございます。したがって問題としては、やはりあの当時から新規登載の問題と既収載の問題とはこの際一括して解決をしていくということが、当時の論議の経過だったのでございます。そういう事情からして、現段階においてこれを切り離して新規登載だけをして、既収載のものの整理はあとに回す、こういう運びは原則的にはできがたい、こういう事情になっておるのであります。滝井委員 人間の生命のほうが大事なんですよ、議論はどうあろうと。現実に使わしてくださいと言って続々来ておるじゃないですか。学者も、おれのつくったこの薬はだいじょうぶだから、滝井君国会で使わしてもらわなければ困ると言ってきておりますよ。あと八木さんもそれに関連して言いますけれども、学者が来ている。われわれの学問の成果を一体何でとめる権利が厚生省の役人にはあるんだと言っております。それを使わせないならば、使わせないだけの学問的な反論をしなければいけないわけです。ただ審議の過程で、そんな論議が出ただけで、結論が出てきてないじゃないですか。結論が大事なんです。論議の過程じゃないのです。だからそれはあなた僭越ですよ。学者も、自分の研究した成果が薬務局をパスして、どうして一体保険に使われないのですかと来ている。二年も前に研究した成果を出しているのに、どうして使えないんですかと学者が来ているんですよ。製薬企業だって、当然これは保険に入れてもらわなければならぬと言ってきている。医者も来ている。患者も使わしてくださいと要望してきている。保険の指導者講習会においても使いなさいと学者が言っている。がんばっているのはあなた一人じゃないですか。しかも患者の身になってごらんなさい。流感があったときに、この薬はいいんだといって医者が習ってきて、それを医者が使いたいというときに、それにストップをかける学問上の権限がありますか。ないでしょう。そこなんですよ。一年も一年半もストップされている。保険のもめごとはいまに始まったことじゃないですが、そんな学問のことまで制御するのは僭越です。私は、これはだれが何と言ったって絶対引かぬですよ。当然使わせるべきです。もしそれをあなたが使わせないというならば、さいぜんの経過的な措置として、それぞれの基金において、少なくとも常識的に見てこれならば使わしたっていいというようなものはやはり使わせるだけの弾力性を与えなければうそです。それもだめだ、それも一々おれのところに許可をとってこなければだめだということになれば、八方ふさがりです。そういうことまで学問に制御を加える権限が保険局長にあるのか、どこに一体そういう法律上の権限がありますか。ありはしない。しかも向こうでは、厚生大臣は使いなさいといって認めておるのですよ。一方においてそれを認めないという論理はどこからも出てこない、厚生大臣が認めておるのですから……。さいぜんから、厚生大臣は認めておりますという証言を熊崎さんは何回もしているのです。だからそうなると、いままでの議論の過程から見ると、あなたのほうがガンになるのです。
  109. 小山進次郎

    ○小山説明員 薬事許可と薬価基準の登載とは全然別であることは、先ほど熊崎局長から申し上げたとおりであります。その意味におきまして、向こうが通ればもう自動的に薬価基準に登載すべきだという仕組みにはなってないのであります。もし日本の薬事許可というものがいままでと前提を違えまして、保険に直ちに登載して差しつかえないという条件を織り込んでやっているというのであれば、それは先生おっしゃるように、一方で許可されておりながら他方で登載されてないということは非常に矛盾だ、こういうことになるのでありますけれども、そうじゃない証拠は、先ほど来お聞きいただいたように、市販されているものが四万あるうちに、現在薬価基準に登載されているものが五千強という状況でもわかるわけであります。この点は、もう先生もよく御存じのとおり、現在の薬事許可そのもののあり方の問題として、やはり一部の学者は議論しているのであります。単に申請があって、しかもそこに言われているような効果があって有害でなければ許可をするという仕組みから、もう少し積極的な意味を持たせて、たとえば従来よりもより薬効が強いとか、あるいは副作用が少ないとか、あるいはより低廉な値段であるとかいうような条件を満たしたときだけに新しい薬の許可をすべきだ、アメリカなんかはそういうふうに非常に厳格にやっているというような根拠に基づいて主張している例もあるわけであります。しかし、それは日本の薬事許可のとっている原則と違うわけでありますから、現在でも厚生省は、従来どおりきわめてその点は弾力的に扱っているわけであります。そうだとすれば、やはり保険のほうでは別の考慮を加えて考えなければならぬ、これは仕組みの上から見て当然でございまして、いまのところではやはり運用上極力必要なものは積極的に取り入れていく、そのスピードを早める、それから取り上げる間隔を縮めていく、こういうことで問題を具体的な形で解決していく以外に方法がないわけでございます。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 それは過去の実績がそうなっていないので言っているわけです。具体的にすみやかにやると言ったって、昭和三十五年の六月に全面改正をして以来やってないわけでしょう。だからその過去の状態を見て、すみやかにいまおやりなさい、こう言っている。しかもさいぜん熊崎さんの答弁の中にもあったように、すでにその保険薬の登載してくださいといって申請書をつけて出しているものがあるというのですから、そういうものさえもやらないというのはおかしいじゃないかというのですよ。もう熊崎さんのところに出すときには、これは保険薬の登載にしてもらいたいという意思表示をしてきているわけですから、それをあなたのほうがする必要がないと言う必要はないわけです。しかもそれを許可されたら——どんどん医療機関は使っておるのですよ。それを使う過程で不正が行なわれる可能性があるから言っている。不正が行なわれているとは言わない、行なわれる可能性があると言うのです。どういう形か、それは代替請求とか、患者に一部負担をやらせるとか、現金で買わしてくるとか、そういうことになってしまうわけです。それじゃいかぬじゃないですかと言っているのです。だからすぐ登載ができなければ、常識的には、いま言ったようにあなたのほうの条件を見ると、代替がない場合はいいとか、あるいは診療上他にとり得る手段がないときにはいいということをおっしゃるならば、その緊急とかあるいは代替がないということの判断を医者に一任しても医者はなかなかでしょうから、その判断は地方の審査会にまかせなさい、こう言っているのです。それをこっちのほうに言ってこなければ使うことができないということでは間に合わぬわけでしょう。流感はなおってしまいますよ。そこを言っているのです。医学というものはいわゆる臨戦体制ですから、そのときに的確なタイムリーの手を打たなければだめなんです。だから見てごらんなさい、池田さんの病状を十月二十五日にやるときに、あの優秀な比企さんや久留さん、相良運営部長だけではできなかったわけでしょう。だから四人も医者を連れてきて最後の判断をしておるでしょう。やはりそこにはタイムリーが大事なんです。だから池田さんは後世に名の残る政治家になれた。あれが医者がぐずぐずして、池田さんがぐずぐずしていてごらんなさい、タイムリーヒットにはいかぬですよ。それと同じですよ。だからもしあなたがタイムリーの決心ができないならば、ひとつ自主的な常識的な線で、全面改定をやるまでのしばらくの間は地方にまかせようということを言いなさい、こういうことを言っているのです。それが不正を防ぐ道なんですよ。それさえもできないというなら、こっちも強引に入れざるを得ないということになる。入れて一体どうして悪いのですか、何も理由はないでしょう。医療協議会でそういう議論があったというだけがただ一つの理由です。医療協議会よりも国会のほうが重大なんです。国会のほうが上なんです。向こうは諮問機関です。国会は国民の最高の意思を決定するところですよ。その最高の意思を決定するところに出てきて、医療協議会はこうだからだめだということにはならぬわけです。政党政治ですから。こうなると政治家の判断をしてもらう以外にないわけです。どちらか、ひとつ政務次官判断をしてください。いま言ったように、そのものを使用する以外に代替の品物がない、それから診療上とり得る手段がほかにないというときにはそれを使ってもよろしいということなんです。しかし、そのときに申請をしなさい、そして小山保険局長——ということは大臣です。大臣の検討と承認を得なさい、こういうことなんです。それじゃ私は間に合わぬと言うのです。だから全面改正をもしおやりになるのであるならば、それは既存のものと新しいものと一緒にしなければだめですというならば、その間は、生命に関することだからできるまでは地方の審査会の自主性をある程度尊重しなさい。二カ月かかるか三カ月かかるか、一週間かかるかわかりませんが、そのぐらいのことはおやりなさい。この主張は無理がないと思うのです。それさえも両方とも拒否するというならば、われわれはここで対決せざるを得ない。あくまでもがんばってやるまでやらざるを得ない。そして何らかの実態調査をやりますよ。公的医療機関がどういう形でやっておるかという小山さんの足元からまず洗ってみましょう。そういう実態があれば、登載薬品以外を使っていればまずあなたのほうから禁止してこなければならぬ。それはなかなか時間もかかってたいへんだから、自主性を尊重してやっていいのじゃないですか。それは期限を切るのですから、全面的な改正まではそうやりなさい、これでいいのですよ。この二本の基準でいきなさいということでいいのです。それをさいぜんのように、それはもう錠剤だったら粉にして使ったらいいということは、不正を奨励することでしょう。散薬じゃないのですから、錠剤を使ったやつを散薬で請求していいということでしょう。そういう不正を厚生省が奨励しているということになればきりがない、限界がないでしょう。それならば、今度は二百ミリグラムのものを半分ずつやってもいいということになる。百ミリグラムですからね。そういう不正をここで、いいと言って許すわけにはいかぬのですよ。それならば、そういうことが正確に行なわれる方法を私は出すべきだと思うのです。これは小山さん、わかるでしょう。だから政務次官、私の言っておることは無理ではないと思うのですよ。だから速急にできないならば、そういう暫定的な措置でもおとりなさいということなんです。そうすれば小山さんの顔も立つ、私たちも満足する、医療機関もそれでうまくいく。そのくらいのことで、いま火の車の保険経済がますます大きな火の車になるということはない。医療協議会の精神もそうでしょう。あなたも満足がいく、私も満足がいく。これは議論をし始めたら際限がない。いまの自民党の総裁選挙じゃないけれども、総裁になる人がみんな互譲の精神で譲り合わなければいかぬのです。おれがおれがと言ったらまとまらぬ。それと同じことですよ。それでひとつまとめましょう。どうでしょう。あなたが全面改正をやるまでは、地方審査会のある程度弾力的なあれを認める。そして事後申請してきなさい、その処置は事後に保険局でやりなさい、これでいいじゃないですか。急場ですから先では間に合わぬのですよ。ただ通達を出しても、その通達が死んだような通達では話にならぬ。現場で生き生きとそれが動き得る通達でなければいかぬわけです。おれのほうに申請してこい、検討してから許すなどといったら、流感はよくなってしまうか死ぬかです。だから、どちらか徳永さんにひとつ政治的な判断をしていただきたいと思うのです。これは政党政治で、もう官僚政治ではないから、ここらあたりはあなたの判断でぴしっとやる、それで日本がひっくり返ることも何もないのですからね。しかしその判断を誤ると、人間の命がなくなることになる。だから人間の命を救うために、徳永政務次官の崇高な政治的判断をお願いしたい。
  111. 徳永正利

    ○徳永説明員 ただいまいろいろお話を承りました。私もそうあるべきじゃないかというような気がするわけなんでございます。問題は、三十五年の全面改正以後、追加が非常に手ぬるい歩みをやってきておったというところにいろいろな問題があろうと思います。いろいろ事情はあるかもしれませんが、大臣ともよく相談いたしまして、検討をさせていただきたいと思います。
  112. 八木昇

    八木(昇)委員 関連して一つだけ局長に伺っておきたいのです。  先ほど局長の答弁は、私は答弁になっていないと思う。というのは、医学にしましても薬学にしましても、日進月歩の世の中ですから、ある短い期間ならば、新しく薬価基準に登載追加をするのがいろいろな事情でおくれるということもある程度やむを得ないと思うのです。ですけれども、もうすでに二年以上にわたってそれが全然追加がなされていない。そうして現在千三百品目がそのままになっているわけなんです。ですから、これはいろいろ不満が出てくるし、矛盾が出てくるということは明らかなんです。しかもごく近い将来に、たとえば既登載分の薬価が実情に合わぬということの修正が解決の見通しがはっきりしており、いつ何日ごろにはその問題が解法をして、その後に、千三百品目の問題は何日ごろまでには当然追加すべきものは追加するのだという見通しでも明らかだというのならば幾らか答弁になりますけれども、それすらも明らかでないわけです。先ほど来のような形式的なことをいろいろ言われましても、それは実質的には答弁になっていないと私は思うのです。ですから、早急に追加すべき緊急の必要性のあるものについては追加する、そのことと、それから既登載分の薬価の修正その他とは切り離して措置するという以外にないのじゃないか。これはいま一度御答弁いただきたい。  それからもう一つの点は、もしそれがどうしても困難だというのなら、一体いつごろには間違いなしにその千三百品目の審議を終わって、必ず追加できるという確たる、責任ある御答弁がここでできるのか、その点も聞かしてください。  それからもう一つは、資料を請求したいと思うのですが、いまの千三百品目というのはどういう薬品名で、どういう効能のもので、どういう製薬会社のものかというのをできれば出していただきたい。
  113. 小山進次郎

    ○小山説明員 これは先生方よく御存じなんで、もう当然ということで申し上げなかったわけでございますが、千三百品目というのが出てまいりまして、これを省内で検討しましたあと、日本医師会の中にありまする疑義解釈委員会の検討にゆだねるのであります。そこでこれを入れようじゃないかというふうにきまったものを登載する、こういう過程をたどっております。したがって、先ほど薬務局長が申しましたように、希望の者は申し出ろという手順をとって、それから申し出てきて、検討して、それについては、今度は登載するとすればどの程度の薬価にするかという見通しをつけねばならぬ、こういうようなことがあるわけです。  なお、千三百品目というのは、従来の例から見ますと、そういう検討を経ますと、疑義解釈委員会でもこの問題はかなりきびしいのであります。そうやたらに薬をたくさん入れるということは適当でない。これはやはりその点は御同意いただけないのでありますけれども、現在の日本の薬事の許可というものと、それから医療上でほんとうにこれを使っていくことが必要だという判断との間には相当の開きがあるわけであります。これは私どもではなくて、疑義解釈委員会の先生方の判断がそういうことなのであります。そういうふうな手順を経ます場合に、必要な期間というものの間に他の薬価基準の問題もあわせて解決するめどをつけたい、こういうことで考えているわけであります。  時期については、先ほど来申し上げているように、非常に近い機会においてこれを解決したい、これは医療報酬の問題も解決をするというかまえで現在やっているわけであります。そういうことで、具体的にいつとは申しかねますけれども、とにかく非常に近い機会においてこれを解決する、こういう考えで準備を進めている、こういうことでございます。
  114. 八木昇

    八木(昇)委員 だからそれでは納得できないと言っているわけです。医療報酬の問題とからめてそれをやろうとすれば、これはあなた自身が答弁できないように、非常に近い機会という抽象的な答弁にしかならないのです。その点、われわれ納得いかぬわけですけれども、これは関連質問ですからあとに譲ります。  それから資料をお願いしたいと思います。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 業務局長は、きょう大阪に行かなければならぬそうです。ところが、われわれもこれは非常に重要なんです。切迫した問題だと思うのです。祝辞を読むくらいなら、かわりをぜひひとつやってもらいたいと思うのです。まだ血液のことを私も質問したいし、八木さんもあるわけです。一カ月か二カ月に一回開かれる委員会ですから、お互いに昼めしも食わないでがんばっているわけです。私もきょう二時からの会議を捨てましたから、あなたも、気の毒だけれども捨ててもらって、そうしてかわりを、ひとつ官房長か、むしろだれかあなたのほうの部下をやって、別に祝辞ぐらいあなたが読まなければならぬこともないと思うのです。お気の毒だけれども、予算編成前ということで国会のほうが重要ですから、ぜひそうしていただきたいのです。八木さんもまだあるのですから、ぜひそうお願いいたしたいと思うのです。  それで、いまのような御答弁ではいかぬのであって、これは政務次官が答弁されたとおり、大臣相談をされて、どちらかをひとつきめてもらいたいと思うのです。私の主張は無理ではないと思います。  もう一つお伺いをいたしたいのは、今度は薬価基準の問題です。現在またもう一ぺんこれに返ってくる可能性がありますから……。一体薬価基準に登載をされている薬価基準の価格と、それから実勢価格との差というものはどの程度あるかということです。
  116. 熊崎正夫

    熊崎説明員 現在、薬価基準登載価格とそれから実勢価格との差を、大臣のこの前の談話がありましたように、薬価改定をやるという方針のもとに業界から取り寄せておるところでございます。非常に品目が多品目にのぼりますので、個々的にこれがこうということは申し上げられませんが、それぞれ現在検討中でございます。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、業界から取り寄せているというと、その実勢価格とそれから薬価基準の価格の差を、ずっと五千有余の品目について全部検討しなければいかぬわけですね。過去の実績から見てどの程度期間がかかりますか。
  118. 熊崎正夫

    熊崎説明員 大体今度の薬価改定の資料になりますのは、三十八年度の薬価調査に基づきました平均指数、それと三十八年度から三十九年度、一年間の差がございますので、その一年間の時差を含めまして、現在の実勢価格に三十八年度の薬価調査に基づきます平均指数を掛けて計算をしていく、こういうことになるわけでございます。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 その計算は、過去の実績から見て一体どの程度期間を必要としますか。
  120. 熊崎正夫

    熊崎説明員 大体期間といたしましては、私ども始めましてから四十日前後というふうに考えております。すでに十月から始めましたので、四十日くらいはかかる、こういうふうに考えております。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、十一月の終わりまでくらいにはその一覧表が出ますね。
  122. 熊崎正夫

    熊崎説明員 大体そのつもりでいたします。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その資料はいつごろ出ますか。これは国会にぜひ提出してもらいたい。四十日程度かかるというなら、十月の初めから始めておれば十一月十日にできますね。
  124. 熊崎正夫

    熊崎説明員 業界のほうにいわゆる公示をいたしましたのが十月の十七日でございます。それで二十四日までに全部提出しろということで二十四日までに提出さしておりますので、それから起算をいたしまして四十日前後、こういうことになりますから、十一月の終わり、十二月の初めにかかると思いますが、それまでには数字は出てまいると思いますので、できましたらお目にかけることはできると思います。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、薬価基準に登載をされておる五千二百六十五品目について薬価基準と実勢価格との差を資料として、十一月の終わり、おそくとも十二月の初めにはぜひ出していただきたいと思います。  そうしますと、お聞きしますが、それからでないと薬価基準の具体的な改定はできないことになるわけですね。それを今度は疑義解釈委員会か何かに出すのですか。
  126. 熊崎正夫

    熊崎説明員 私どもの資料を計算をいたしまして、これを保険局に渡しまして、保険局のほうで薬価基準改定の告示の準備に入るわけでございますが、それは旧来の五千品目につきましてが大体そのくらいの日数がかかるということでございまして、片や新収載につきましては、これは並行的に疑義解釈委員会との議を進めていくというふうなことで、十二月の初めまでを目標にいたしまして新収載についての疑義解釈委員会との話し合いも並行的に進めていく、こういうふうに考えております。
  127. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、十二月の初めまでにあなたのほうが国会にも出してもらうし、その一覧表を保険局に渡す、こういうことですね。そうすると、それは疑義解釈委員会その他にはかけなくてもいい、直接に厚生省に実勢価格との差の表を渡す、それからあとは、保険局が煮て食おうと焼いて食おうと保険局の自由になる、こういうことですね。わかりました。  そこで、ここまでくれば今度は保険局に尋ねることになるのであります。実勢価格と薬価基準との差額を書いた一覧表が出てくれば、それを今度は、あなたのほうはどういう手続で新しい薬価基準に載せることになるのですか。
  128. 小山進次郎

    ○小山説明員 既収載の分については、従来どおり登載を続けていくものは局内で若干の調整を加えるだけで、あとは決定の手順に入ります。それから落とす部分につきましては、そこで疑義解釈委員会と相談をすることになりますが、これはそう時間はかからないと思います。
  129. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、五千余品目のうちの残りの分については、もう全く保険局の自由裁量になる。落とすかどうかという判断は、ある程度意見をおそらくお宅はつけることになるでしょうが、疑義解釈委員会で新しく登載するものもきめてくる。そうすると、疑義解釈委員会というのは、いままでの慣例からいって一体どの程度の時間がかかっているわけですか。
  130. 小山進次郎

    ○小山説明員 これは私のおぼろげな知識でございますから、もし帰って確かめてみまして、間違っておったら次の公の機会に訂正させていただきたいと思いますが、まあ分量にもよりますけれども、おそらく従来の例でございますと、二週間程度以内のうちには調整がついているように私は承知しております。
  131. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、十二月の初めに熊崎さんのほうから出てくる。それから新しく登載されるものを同時に疑義解釈委員会にかける。こういうことでそれが二週間かかれば、十二月の終わりにならなければ結論が出ないことになりますね。大ざっぱに言って、十二月の終わりでなければ新しく登載するものの結論は出ない、こういうことになるのですね。そう理解して差しつかえありませんか。
  132. 小山進次郎

    ○小山説明員 最終的にきちんとけりがつくのは、そのくらいになると思います。しかし、おおよその見当はそれまでの進行過程において逐次ついていくと思います。
  133. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、十二月の終わりに大体そういう形が出てくるということになれば、十七日の厚生大臣の談話によると、医療費の緊急是正というものと同時に行なうことになっているわけですね。十七日の談話はそうなっている。さいぜん熊崎さんは、談話のことはお認めになったわけです。そうしますと、医療費の改定はこれでは一月以降になってしまうわけですね。そうなりますね。いまの薬価基準と同時にやるというのですから、そうなるわけでしょう。いま私は理詰めにずっとやっていった。事務的なことは政治とは別です。きわめて純粋に事務的に事が運ばれていくわけですから、そうなるわけでしょう。小山さんはこれが専門ですから……。
  134. 小山進次郎

    ○小山説明員 そうなる公算が非常に多いと思います。ただし、これは先ほど来申し上げておりますように、全体についての大まかな整理がつけば——同時ということは、文字どおり機械的な意味で同時ということでなく、片方が一カ月くらい先に実施されて、そうしていまの段取りでいった薬価基準の正式の告示というものはそのあとに出るということもあり得ないことではない。この程度のゆとりを持って考えていただきたいと思います。
  135. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、医療費の引き上げというが、医療費の改定と、それから薬価基準の改定は同時に行なうというけれども、事務処理の関係があって、先に医療費を実施して、薬価基準の改定はでき上がって一月からとか二月から実施というようなことになる可能性もある、こういうことですね。わかりました。私はどうしてそういうことを言うかというと、大臣の答弁が、十二月と言ったり参議院では一月と言ったりしている。衆議院では、この前は十二月と言いました。これが一カ月狂うということは何十億という金の狂いです。御存じのとおり、総医療費が八千億をこえているのですから、七百億とかいうような額になるわけです。たとえばその一割としても、七十億とか八十億ですからね。ばく大な額になるわけです。したがって、これは支払い側にとっても担当側にとっても非常に大きな——いつから実施するかということは、私がこの前言ったように、実施の幅と実施の時期と、それから再診料という問題の三つにしぼられてきている。それを一体どうするかということをめぐって、非常に大きなうねりが出てきているわけです。したがってこういう大事な点は、やはりきちっと詰めておかぬといかぬことになるわけです。わかりました。いまの薬価基準の改定と医療費の改定は同時に行なうというけれども、一、二カ月そこにお互いのズレがあっても、それは同時ということなんだということでよくわかりました。お忘れなくきちっと言ったことは守るようにしておいてもらわなければいかぬですからね。  そうしますと、もう一つ、いまの答弁から今度問題が出てくるわけです。この薬価基準の改定が行なわれますと、まず薬価の改定によって浮いた財源をどうするかという問題が一つ出てくるわけです。  それからもう一つ、薬価基準自身の問題の中に、平均薬価をどうするかという問題が出てくるわけです。御存じのとおり、これは購入価格のバルクラインをとりながら、それと見合って平均薬価というものをおきめになっているわけですね。甲表でいえば、六十円以下の薬の場合は、今度は平均薬価は十九円になっているわけです。ここらあたりがきまらぬと——やはり薬価基準がきまらないとここがきまらぬわけです。ここがきまらないと薬価基準が動かぬ。これは相関関係にあるわけですね。一体この平均薬価をきめるときはどういうようにします。当然薬価基準に登載をされている値段と実勢価格との差がある。その差を埋めながら新しい薬価基準ができる。そうすると、当然平均薬価というものが変わってこなきゃならぬことになるわけです。この場合に、甲表も乙表も平均薬価が変わることになるわけです。このきめ方は一体どういうようにやるのです。薬価基準との関連は……。
  136. 小山進次郎

    ○小山説明員 薬価基準が変わりますと、理論的には、おっしゃるように平均薬価が変わる可能性がございます。ただし、これはさめようとします薬価基準がわかりましたあと、今度は実際に平均薬価をきめます場合の薬とそれからそのウエートをとって、実際に当たってみてきめる、こういうことになりますから、実際に変わるか変わらないかというのはやった結果によってきまる、こういうことになります。
  137. 滝井義高

    ○滝井委員 おそらくそういう答弁になるだろうと思うのですよ。そうすると、さいぜんのあなたの答弁に矛盾が出てくるのです。なぜならば、薬価改定というものは、場合によっては一月以降になる可能性がある、しかし医療費のほうはそれよりか先に実施をいたします。こういうことなんです。それで、医療費の改定と薬価基準の改定とは同時にやるんだ、しかしそれは同時にというのは、おくれてもかまわぬということだったのです。薬価改定はおくれてもかまわぬ。医療費のほうが先になり得るということだった。ところが、医療費の改定をやろうとする場合には、平均薬価がきまっておらなければ医療費の改定はできないのです。そこで、どうしても薬価基準の改定と医療費の改定とは同時期にならざるを得ないことになるのです。だから、あなたの前の答弁は修正しなきゃならぬことになる。薬価基準がきまらなければ、いま言ったように平均薬価がきまらないのです。そうすると、平均薬価というものは医療費に関係してくるわけです。そうでしょう。それは薬は全部——六十円以上の薬ならば単価の十円で割ります。しかしそれ以下のものは全部平均薬価です。たとえば注射については、平均薬価が十五円以下ならば一・三、三十円までは二・二、こういうように全部平均薬価がきまるわけです。したがって、平均薬価が移動すればこの点数が全部移動してくるのです。だから、医療費の改定と平均薬価の改定、薬価基準の改定というものは一本に並ぶことになる、私はそういう意味だろうと思っていたけれども、いまあなたは食い違うことをおっしゃった。ここが非常に重要なところなんですよ。これは全部影響してくるのです。だから、ここは小山さん、優秀なあなただから、もうちょっと考えて答弁をしてもらわないと、いまの矛盾が出てくるのです。平均薬価だけはあとで、医療費を実施しておいてあとで薬価基準のときに改定するということは、混乱の起こるもとになりますよ。だから、同時にやらなければならぬことになるのです。ここをもう一ぺん答弁のし直しをやってもらっておかないと——ちょっと勘違いだったろうと思います。善意に、おそらく勘違いだろうと思います。
  138. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほど申し上げましたように、きちんとすべて固まるという時期が十二月の中旬、こういうことでございます。十二月に入りますれば、ものによってはもう見当をつけていくということが逐次できてくるわけでございます。そうしますと、平均薬価に響くようなものをまず先に見当をつけて平均してやっていくという可能性は、調査をある程度進めて整理をしております段階に十分可能になってくるわけであります。したがってその点は、私先ほど申し上げたように、一方が若干先になって他方がおくれるということもあり得る。これはごく単純な問題を一つ申し上げましても、薬価基準ということになりますと、事務上登載するのに非常な部厚なものになるわけであります。医療機関に対する周知徹底のことを考えましても、これはあるいはもし告示をする時期があまりに実施する時期に接近するというようなことになるとすれば、そこでやはり実施上の便宜を考えて、告示は早にするけれども、実施は若干のゆとりをもって行なうというようなことも、そのときの状況によっては考えていく必要があるわけであります。そういうふうなことで調整はつき得る。そして、あとで薬価基準がきまったところで平均薬価をまた変えるというようなことは、しないということで進めていくつもりでございます。
  139. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、薬価基準というものは、ある重要なファクターだけが出てくれば、その重要なファクターを基礎にして平均薬価というものをきめていくのだ、そして薬価基準の最終決定がおくれたために医療費の改定がおくれるというようなことをできるだけ阻止していきたい、こういう、やはり頭が優秀なだけに大した答弁ですよ。そうしますと、今度は平均薬価を改定するのに医療協議会の議を経ることになるのかどうかということです。
  140. 小山進次郎

    ○小山説明員 甲表は中央医療協議会にかけなくてできる仕組みになっておりますが、乙表は点数表の中にそれが組み込まれておりますので、変えなければならぬということになっております。したがって、実際の扱いとしては、甲乙両方とも医療協議会に診療報酬の改定と同時にはかるなり、あるいは一方は報告して事実上の了解を得てということになると思いますが、そこで一緒に提示する、こういうことになっておるわけであります。
  141. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、実質的に、さいぜんの御説明のように、十二月の中旬になればそれらのファクターは固まるというから、医療協議会にかけるのは十二月中旬以降になる、こういう形ですね、実際的にいまの答弁から見ていくと。
  142. 小山進次郎

    ○小山説明員 どういう公算が一番多いかといえば、一番最初に申し上げたように、先生が言われるようになる公算が多いと思います。しかし、必ずしもそうばかりじゃない、こういう可能性はあると思います。その場合には、片方の調査を極力督促をし、そのうち平均薬価をきめる場合に必要なものについての見通しを早くつけてやっていく、こういうことも時と場合によっては考える力いずれにしても、先生も言っておられるように、薬価基準の技術的な調整が事務的におくれているから、これに引っぱられて医療報酬の実施の時期がおくれるというような運びにはしない、こういうことがものごとを処理する原則でございます。滝井委員そうしますと、ここでもう一つ問題になってくるのは、実勢価格と薬価基準に記載されている価格の差というものが、そこにいわば新しく財源として浮いてくるわけです。この浮いた財源については、公益側の意見では技術料に持っていくんだ、こうなっておるわけです。いま、この公益側の意見について必ずしも支払い側は納得していないのです。そこで、この浮いた部分の処置というものは、公益側の出した意見によると、医療協議会に専門の部会をつくって、そこでその使用の技術的方法については検討するんだということになっておるわけです。それはそういうことにおやりになる方針なのか、それともさっき言ったようなことでやることになるのか、ここにもう一つ問題が出てくるわけです。医療協議会にはかけなければならぬことは明らかになってきた。しかも特に乙表についてはかけなければならぬ。ところが、それならば、その平均薬価の前の配分の財源をどこに持っていくかということについて、その財源の使用方法についての検討を専門部会にゆだねなければならぬという問題が出てくるわけです。それは専門部会でこの財源の使用についてまとまらなければ平均薬価が出てこないのです。平均薬価にどの程度の財源を振り向けるかという問題が出てくるわけです。この関係ですね。
  143. 小山進次郎

    ○小山説明員 今回行なおうとしております既収載の薬品についての調整は、従来の原則であります九〇バルクできめるという、その原則に基づいてやる考えでございます。したがってその限りにおいては、中医協の公益委員が言っておられる大規模のものとは違う。したがって、その分についてはそういった特別の委員会の議を求めるということなくして、厚生省において振りかえ案をつくって、それを含めて中医協の議を求める、こういう考えでございます。将来の問題としては、薬価基準をきめる場合に九〇バルクでいいかどうか、あるいは違う方法をやるとしたらどういう方法でやるかということは、やはり公益委員の意見のように、これは中医協で検討してもらいたい。そうして結論が出たならば、その段階においてそれはまた実施に移すことを考えたい、こういう考えでございます。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 これは少しはっきり確認をしておかぬと、そこの態度は、いままでのこれに言うておるあなたの態度と違ってきたわけですね。それは確認をしておきます。公益委員の意見は、現行の薬価基準というものはなるべくすみやかに、できるならばこの緊急是正と同時に改定するように努力するとなっているのです。これは表現としては非常に弾力のある表現ですね。しかも薬価改定によって現行の診療報酬から生じた余裕は技術料部分に振りかえる。薬価改定及び振りかえの技術的方法については、本協議会に専門部会を設けて検討する、こうなっている。ところがあなたのいまの答弁では、今度の既収載のものの検討というのは大規模のものではない、九〇%のバルクラインを基礎としたいままでのとり方を基礎にして薬価基準の改定をやるんだから、したがってそれは厚生省独自でおやりになるという考え方です。それが貫けますか。
  145. 小山進次郎

    ○小山説明員 先生確認するとおっしゃっておるお気持ちわかりますけれども、私もこれをはっきり申し上げているのは、決して一存で申し上げているわけではないんで、この点については大臣——政務次官おいでですが、みな十分各方面から検討して、その点はさように態度をきめております。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この点については有沢会長の意見を無視する、こういうことですね。したがって、専門部会というものは設けないで厚生省独自でおやりになる、しかし、平均薬価その他の問題があるので医療協議会にはかけます。こういうことなんですね。
  147. 小山進次郎

    ○小山説明員 実体は同じことですが、先生が無視すると言われたことはそうじゃないのであります。あの当時、公益委員の人々がいろいろ御議論になっておったことは、九〇バルクというもの自体も根本的にお互いに検討し直そうじゃないか、そしてなるべく技術中心という組み立てにしていこうじゃないか、そういうことがもとになっての御議論であったのであります。時間的余裕があり、しかもすべてそういうふうに運ばれるならば、公益委員がそこで提案しておられるような方法でやることが一番望ましいという考えは、現在の大臣以下私ども持っておりますが、しかし現実の問題としては、それにはまだだいぶ時間がかかる、そうだとすれば、さしあたり九〇バルクといういままできまっている問題の処理は、やはりきちんと解決をしようじゃないか、ただし、その場合の考え方としては、これはすでに実際上医療機関の収入になっているわけでありますから、それをよりすっきりした形に変えるという問題だから、これはかりそめにも医療費の引き上げの際にその財源に使うというような考え方で処理をしないで、それはそのまま技術報酬部分に振りかえる、こういうことで処理しようじゃないか、こういうふうに考えておるわけでありまして、決してこれは公益委員が言っておられることを無視していることではない、公益委員考えておられるのと同じだ、こういう考えでございます。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 少し苦しいようになるけれども、あなたがそういう解釈をされておるということだから、それだけ一つもめる要素がなくなるようです。いずれにしても医療協議会にかけるらしいですから、ぜひひとつすみやかにかけて、そして平均薬価その他もきちんときめて、してもらわなければいかぬということになるわけです。  そうしますと、あなたの長年の保険局長としての経験、それからすでに実勢価格と薬価基準の価格と大きな開きがあるということがいわれて、いろいろな書物にも書かれるし、医療協議会の審議の議題にものぼるということになれば、あなたとしては一体どの程度の差があるとお考えになりますか。はなはだしいのは二割、三割の差がある、こういわれておるわけですね。雑誌その他にもいろいろ書いておりますが、あなたとしては、大まかに、平均したらどの程度の差があるとお考えになっておりますか。
  149. 小山進次郎

    ○小山説明員 その点は、先ほど薬務局長が申し上げましたように、これから詰めに入るわけでございまして、その結果を見ないとちょっと申し上げかねるわけであります。ただし、一部に言っているように、非常に値下がりの激しい薬品だけを取り上げてみて、たとえばそれが半分以下に下がっているからいまの薬価基準と実勢価格の間に非常に大きい差があるんだというふうに言うのは、どうも少し言い過ぎじゃなかろうか、こういうふうに思っておりますが、これは結果を見た上で正確に推定したいと思っております。
  150. 滝井義高

    ○滝井委員 なかなか慎重だけれども、こういうときにおおよそ言うておくほうがいい。最小限このくらいはあるだろうというくらいの見通しがないと、議題にすることさえ失礼に当たると思うのですよ。それはあなたがちょっと言の端に出したように、はなはだしいのは半分もありますという、はなはだしいのをお調べになっておれば軽いのもお調べになっておると思うし、中くらいのもお調べになっておると思うから、まあそこいらを平均してみたらこのくらいだ。——私があなたの保険局長の地位にあっても、当然そのくらいのことを当たっていなければ、大胆な、薬価基準と実勢価格と大きな差があるなんという大臣の答弁は合わせられぬですよ。大臣のこういう記者会見のことばは出てこないですよ。これはあるという実態をある程度知っておるからこそ、三十五年以来そのままになっておる薬価基準を実勢価格に合わせると大臣が言っておるわけですよ。しかもそこからは、財源があるなら技術料に回せるということを公の文書に書いて国会議員に配るからには、およそこのくらいのものはあるでしょうという答弁がなければ、五里霧中ならばこんなことば書かないほうがいいですよ。これはあるということである程度の実態と確信があるからこそ、こういう公益委員の意見になっておるのです。これは小山さん、出しておくほうがいいですよ、どうせ大きい議論になるところですから。当たるも八卦当たらぬも八卦ということがあるかもしれませんけれどもという、上に、あおによし奈良の都はという、あおによしというまくらことばと同じようにつけてもいいですよ。つけてもいいですから、およそ一体どの程度か、これはあなたがだめなら薬務局でもけっこうです。薬務局はお調べになっておるはずですから。そのくらいのことがわからなければ商売にならぬ。
  151. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 薬価基準の改定の準備はこれからやるわけでありますが、十月一日で卸価格、それから各メーカーがきめております値段をいまとっております。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 とってしまったじゃないか、二十四日に出てしまった。
  153. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 いまおくれてきておるのもあります。それに医療指数を掛けましてきめるわけでございまして、一がいに何ぼ下がるということはまだ結論が出ておりません。
  154. 滝井義高

    ○滝井委員 結論が出てからは資料をいただきます。それはもう十一月の終わりか十二月の初めに出ますということを言っておる。ところが、堂々とわれわれ国会議員に配付した文書の中に書いておるわけでしょう。薬価改定によって現行の診療報酬から生じた余裕はこれを技術料のほうに振りかえると書いてある。これが薬価改定によって現行の診療報酬からもし余裕が生じたならば、それは技術料に振りかえることもあり得るというあいまいな文章ならば、そんなことは言わない。しかし明らかに余裕は振りかえますということになっておるわけでしょう。しかも大臣の談話の中に、現行薬価基準と実勢価格の間には差がありますと、こうきておるのですから、大臣が公に新聞記者会見で差があると言う限りは、大臣、一体幾らくらいの差がありますかという質問が出るのは当然です。そのときには腰だめ的な数字、当たるも八卦当たらぬも八卦ということもあるが、当たらないかもしれぬけれどもこのくらいはあるだろうという答弁はしますよ。それは新聞記者の常識です。私が新聞記者だってそれくらいは尋ねます。あなた方薬務局も保険局も、それはまだ卸価格を出させておりますから、出てみなければわかりませんと言うのでは情けないでしょう。これは出ないかもしれないということになる。出ないかもしれぬなら、公益委員のこんなもの、取り消してもらわなければならぬ。出るか出ないかわからないようなことなら、取り消してもらいたい。出るという確信があるからこういうことになっている。それならおよそ一体幾らくらいに出ますかということになる。それは、あなた方薬務の専門家がわからないはずはないですよ。二十四日までの締め切りだから、少なくとも九割か九割五、六分は出てきているはずです。薬務局の権限が強いから、製薬会社はびりびりして出しますよ。それを見てみればおよそわかるでしょう。選挙のときだって、早い者はたったっと自分の名前のほうだけ積んで、三木の指をあげたのが自民党の中だっているじゃないですか。それと同じで、ここで二本か三本の指くらいはあげられるでしょう。
  155. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほども申し上げましたように、公益委員が言っておられるときの前提というものは、現在の九〇バルクというものを含めて、もっと根本的に検討するという前提のときなんであります。現在は九〇バルクでどうかということになるわけでありますので、これは先生あたりの専門的な知識のおありになる方が御判断いただくことで御容赦いただきたいので、われわれがこれについて、かりにも間違った予見をして、そういうものをこういう公の機会にばらまくということになりますと、これはまた非常にいろいろ悪い影響を生ずるということになりますので、この問題についてはあまり予見を持たないで、すなおに出てきた結果をきちんと処理してそこで出す、こういうことでやりたい。これはわれわれかたく守っている原則でありますし、薬務局でもそういうことで考えておりますので、ほんとうにいまのところ、どのくらいというふうに申し上げるめどを確定的に立てておらぬというのが実情でございます。
  156. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、これにこれほどの断定的なものを出さないほうがいいですよ、それくらいあなた方が自信がないものならば。自信があって、政治的に言ったら困りますから、言わせないでくださいというならまたわかる。しかし、いまのように予断をすべきものではないというならば、個々にあるかないか検討して、出たら回しますということにならなければいかぬわけです。それがこういうことになっているでしょう。これがなるについては、一体どこからこういう判断が出てきたかというと、厚生省の資料でこういう判断をしますというのが有沢さんの見解だ。有沢さんが製薬会社を自分で調べ得る余裕はない、あの忙しい有沢さんですからね。石炭で飛び回り、最低賃金の問題でやるということで忙しいから、全部厚生省の資料によりました、それ以外にはわれわれは資料がなかったということを有沢さんは白状されているから、それをそういうことまでおそれる必要はない。もう小山さんはあっちこっちたたかれて、頭が鉄のようなかたい頭になっている。そんなものは、製薬へ行ってたたかれたっておそれる必要はないでしょう。あなたはおっしゃってもいいでしょう。およそこのくらいはあるでしょう、一割から二割くらいの間じゃないでしょうか、二割から三割くらいの間じゃないでしようか、これでもいいのですよ。これを国会でさえもそういうことは言えない。医療協議会では言えるわけでしょう。国会だって言ってもらわなければ審議ができない。だからこれは言ってくださいよ。こんなこと言ってもちっとも差しつかえない。まだこれからもうちょっと私はえぐったところを質問しますから、ひとつ言ってくださいよ。もうこれはきょう質問しなければ、あとは十一月になって、あなた方がどんどん進んでしまうから、きょうはっきりあなた方の言質をとっておいて、われわれはやはりわれわれの頭を練らなければいかぬわけです。お二人おるから、薬務局だってそれがわからないことはないでしょう。だから局長に行っては困ると言ったのは、こういう大事なことがあるからです。
  157. 小山進次郎

    ○小山説明員 これは熊崎がおりましてもおりませんでも同じであります。彼もその点は固定した予見は持っていないと思います。  それから、先ほどから繰り返し申し上げているように、問題は九〇バルクということになると、かりに常識的に実際の値幅と薬価基準の間が多いとかなんとかいわれている、そういう感じと実際に薬価基準をきめる場合との間に、やはりある程度開きということが出てくるのであります。それは、薬価基準がかりに平均できまっているということでありますと、ここでおよそどのくらいという見当を申し上げることが、それほどはずれないと思いますけれども、九〇バルクでございますから、実際上やはり九〇バルクに入るものの上限がどれかということを確かめてみないといかぬわけでございますので、一般の医療機関としては、たとえば副腎皮質ホルモンについていえば、ほぼ半分以下の値段で手に入れるということもあるといたしましても、九〇バルクの境目のところがもっと高ければ、これは一般の受け取り方と違って、薬価基準は現在の四割に落ちるということでなくて、やはりもっと高いところにきめざるを得ないということになるわけでございますので、ほんとうにいまの段階では言うことが非常に無理な問題になっておるわけであります。
  158. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、当初考えておったよりかすっとゆるやかにする、別なことばで言えばバルク九〇でとる、ほんとうは九〇も検討して、八〇とか七〇ぐらいにしたいところだったのだけれども、そういう情勢でないので九〇でとる。したがって世の中ではまあ三割とか四割とか出るといっておるけれども、そんなことはない。結局九〇バルクぐらいにとれば、いまの薬価基準はそう高いものじゃない、普通だ、いまの答弁はことばをかえて翻訳すればこういう感触になります。だから結論的に言うと、思ったほど財源は出ませんよということでしょう。九〇バルクをとるということは、初めに思ったほどの財源は出ませんよ、こういうことでしょう。だから、そこらあたりまではっきり数字が言えるのならはっきり言っておいてくださいよ。これはわれわれだって、こんなにかねや太鼓で薬価基準の問題が大きく出たら、もうちょっと根本をこれから尋ねますけれども、根本にメスを入れなければならぬ段階にきておるわけですからね。
  159. 小山進次郎

    ○小山説明員 率直に申し上げまして、感じは先生言われたとおりでございます。確かにそれは思ったほどは出ませんよということばどおりの感触じゃないかと思っております。
  160. 滝井義高

    ○滝井委員 それでいいです。だから、あまり大臣談話その他でも針小棒大に言っておると、あとでまたインチキが行なわれたというように言われるおそれがあるのです。だからそこらあたりはよほど慎重にしておかぬと、いまや世間では財政が火の車である、財源はやはり国家から出す以外にはないという感触をみな持っておるのです。ところがその感触が裏切られたら、何だ、どこかでまたインチキしておるのじゃないかということで、またあなた方に火の粉がかかってくる。だから、やはり言うべきことは歯に衣を着せずに言っておく必要がある。アメリカ人やソ連の人、外国人はみんな言うときはばさっと言うですよ。やはり思うことをさっと日本人は言わぬから誤解が生ずるのです。だからやはり言う必要がありますよ。たとえばいまの自民党の総裁選挙で、あれをじっと私見ておりますと、一番石橋湛山さんがきれいで勇気がある。私は佐藤さんがいいと、こうはっきりおっしゃっておるのです。あれでなければいかぬと思うのですよ。医療費だってこれでは出ませんよ。出てもおそらく一%か二%ですよ。これを言うのが、事務当局として政治家をほんとうに間違いのない道を歩ませることになるのです。  それならば、今度はそれと重要な関連のあることですが、一体その保険医療の中で薬剤費の占める率というのはどのくらいになるのですか。甲表と乙表の一番新しい三十九年の五月——皆さん方の保険の統計というのは五月をとっているのでしょう。その一番新しい三十九年五月における医療費の中に占める薬剤費の率を教えてください。
  161. 小山進次郎

    ○小山説明員 三十九年の五月の統計はまだ整理しておりませんで、ここで申し上げられるのは三十八年の五月でございます。ここで申し上げられるものの中には、薬のほかに若干ほかのものが入っているそうでございますが、まずほとんど大部分が薬というふうに考えていただいていいわけでございます。三十八年五月で、全体の平均で〇・三一九、入院が〇・一九七、外来が〇・三八八、それから甲表、総数の平均で〇・三〇〇、入院〇・二二一、外来〇・四七〇、乙表、総数で〇・三二八、入院〇・一五九、外来〇・三七三、以上でございます。
  162. 滝井義高

    ○滝井委員 これは甲表の投薬、注射等の薬剤費の伸びが非常に顕著になってきておるわけですね。そうしますと、三十五年五月ぐらいのものをちょっと示してみてください。
  163. 小山進次郎

    ○小山説明員 三十五年五月では、全体の総数が〇・二一五、入院が〇・一三三、外来が〇・二七一、三十六年五月、総数が〇・二五一、入院〇・一六四、外来〇・三〇六、三十七年五月、総数が〇・二八七、入院〇一八一、外来〇・三五四、これが先ほどの三十八年五月の総数の〇・三一九、これにつながるわけでございます。
  164. 滝井義高

    ○滝井委員 私が言うのは、もうほかのはいいですから、三十五年五月の〇・二一五、〇・二二三、〇・二七一を甲表と乙表に分けてちょっとそのときだけを教えてください。
  165. 小山進次郎

    ○小山説明員 甲表、総数〇・二〇二、入院〇・一四七、外来〇・三四六、乙表、総数〇・二二二、入院〇・一〇九、外来〇・二五六、以上でございます。
  166. 滝井義高

    ○滝井委員 この統計数字を見ても、甲表が物を使わないというのはうそであったということがわかったわけですね。これは舘林君がおると、きょうはここで舘林君に手をついてあやまらせなければならぬことになるわけですが、はっきりしてきたわけです。結局甲表は、あなたの先輩の高田保険局長が、甲表というのは技術尊重だ、物を使わないのが甲表の特徴だと言っていばっておったけれども、これは明らかに馬脚をあらわしたわけです。うそになったわけです。甲表も同じように物をうんと使って、しかも外来のごときは甲表が〇・四七〇もあるように伸びてきておるということですね。むしろ、その物の伸びというものは乙表と変わっていないということです。これで結局、あなた方が橋本厚生大臣の時代に、三十二年の十月から実施をした技術尊重の医療費体系というものは破れたわけです。ぼくは、これは必ずこんなことにはならない、甲表もうんと物もふえるのだということを証言をした、いまにして見れば、やはりやぶ医者の滝井義高のその証言が当ったわけでしょう。したがって、こういう実態になった、これは一体なぜこうなったかというと、結局日本の医療費が適正ではなくて、物にたよらなければ、技術が低いために医療の収入が上がらないということを示したわけです。技術尊重の甲表において物にたよらなければならぬ。しかも、おそらくこの甲表の外来の〇・四七〇の中には、六十円以上の薬が、私はさいぜんもちょっと言ったけれども、非常に多くなったわけです。これはそうでしょう。私はそういう確信を持っておるが、六十円以上の薬の占める比率が非常に高くなってきている。これはうしろの方でけっこうですから、それだけをちょっとはっきり……。
  167. 小山進次郎

    ○小山説明員 数字はございませんけれども、傾向としては、おっしゃっておられる傾向にこれは私ども間違いないと思います。また先ほど言われた非常に好ましくない傾向ですけれども、六十円のところに近づくと、とかく六十円をこえたところに持っていくという傾向が、あの仕組みというものによって誘発されがちな部分があるということも、おっしゃるとおりだと思います。
  168. 滝井義高

    ○滝井委員 初めて私の言うことを小山さんは認めたことになるわけですが、これで大体甲表というものは崩壊したと同じです。まあ頭を振っておられるけれども、甲表の金科玉条に掲げたものを使うという精神がここにこわれておる。それはやはり技術が適正ではないということが、甲表がこわれておる原因なんですね。ここまでくれば、私の十年の主張が正しかったことになるので私はこれで満足するけれども、日本の医学はたいへんです。日本の大衆はたいへんです。物で金を出さなければ、とにかくこれは保険の負担がふえることを意味するのですから、正当な平均薬価で払った薬では治療がしてもらえないということですよ。六十円以上の薬が多く、とにかく何らかの形で、頼んででもしてもらわなければ人間の生命が守れないところまできているということですよ。  そこで、最後ですが、こういうように薬価基準を中心にしてざっと見ていっても、非常に多くの問題をはらみ、ここで厚生省がなかなか明確に答弁ができない。しかもその当初のコースとは違ったジグザグなコースを歩まなければならぬという形になってきておるが、もっと根本的なところが今度問題になってき始めたわけです。それは一体何なのかというと、このように日本の医療の中に物というもの、すなわち注射液とか薬物というものが非常に大きな比重を占めてきたときに、この薬物の価格、すなわち医師が使う部面についてメスを入れなければならぬという状態が出てきたわけです。そうすると、一体バルクライン九〇で医者が買うその価格というものは適正かどうかということの検討をあなた方はやったことがあるのかどうか。たとえば、もっと具体的にわかりやすく言えば、甲表で言えば六十円以下の皮下注射は二十七円という平均薬価になってきておるわけです。したがってこの場合は、医療機関は二十七円よりもできるだけ安い薬を使おうとするわけです。そうしなければ損がいくわけです。そこで、この場合はそういう形が出てくるわけですけれども、乙表の場合は、これは小刻みになっておるわけです。十五円、三十円、四十五円、六十円と小刻みになっておるわけです。そこで薬で言えば、十五円以下のものは〇六点、すなわち六円ですね。注射液で言えば、十五円以下のものは丁三点で十三円ですね。こういうことになっておる。そうすると、医師が十三円の支払いを受けるその薬というものは、一体十三円でいいのかどうかという、ここです。この検討は一体やったことがあるのかどうか。この検討は一体何を意味するかというと、製薬企業における利潤が適正かどうかというここにこなければならぬ。御存じのとおり、日本の医療というものぐらい、自由民主党の保険医療政策が世界に悪質なものはないと思うのですよ。それはまず大学を卒業するまでは粒々辛苦、苦学をしたり親のすねをかじったりして出てくるわけです。出てきて免許をもらったら、とたんにこれは保険医にならなければ食っていけないということです。そうして医療金融公庫から金を借りたりなんかして病院をつくる、診療所をつくる。それが保険医療機関にならなければだめだということです。保険医と保険医療機関になります。そこで支払う金は何かというと、厚生省が天下りにきめてくるいわゆる診療報酬単価十円というものが出てくるわけです。その十円というものは右から左へとは入らない。翌々月末しか入らない。利子も何もつかない。税務署だったら二カ月払わなければ追徴金加算がつきますよ。これは翌々月末です。一生懸命診療をやって、そうして今度は月末には丁寧に細大漏らさず書いて請求に出さなければならぬということです。そうして保険医として三十年、四十年やってようやく髪白きを加えて、もはや働けぬということになったときに、一体国がこの保険医に何を見てくれるか、何も見てくれない。もうお前は年をとって保険医ができなければやめてしまえ、お払い箱です。一体こういう制度がありますか。自分で苦労して学問をして、親のすねをかじってようやく卒業して、今度は金を借りて医療機関をつくって保険医療機関になる。そこでは金を出さぬ。翌々月末しかこない。しかもその請求書というものは懇切丁寧に、やったことをそのまま全部書いて、初めて二カ月の後に金がくる。老後はちっとも保障されない。こんな悪質な、こんな安上がりなものはないですよ。そして、その使う薬というものは平均薬価ということできめられておる。それならば、平均薬価というものの前の段階の製薬業の段階ではそういうことがやられておるかというとやられてない。ここはオフリミットです。日本の医療製薬企業は他の産業に比べてどうですか。この一年の伸び率を言ってごらんなさい。
  169. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 本年度九月決算の売り上げの模様は、前期に比べて一〇%の伸びというように思います。
  170. 滝井義高

    ○滝井委員 他の産業に比べてずっとよく伸びておるわけでしょう。いま日本は不況で困っている。九月決算で法人税が少なくて困っておるわけでしょう。そういう形でしょう。そうすると、いわゆる医療のところの問題は、薬で医者がもうけていると問題になるが、その前の段階は問題になっていないでしょう。これは一体どうして問題にしないかということです。日本の製薬企業の三十八年度、三十九年度の総生産は幾らですか言ってみてください。
  171. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 医薬品の三十八年度の生産額は三千三百億、三十九年度見込みは三千九百億に近くなると思います。
  172. 滝井義高

    ○滝井委員 三千三百が三千九百になれば一割以上の伸びでしょう、生産としては。これだけの大きなものですよ。生産原価でこれですからね。消費原価じゃない。医者の買う価格じゃない。医者の買う価格にこれを直したらもっとになります。ここなんです。これに一体メスをどう入れるかということです。これを何もやってないでしょう。自由民主党は何もやってない。そして零細な医者が一年に十万か二十万買う薬の値段については、峻厳烈日の態度をとっている。しかし大企業の製薬企業については何ら一指も触れていないということです。ここです問題は。これに触れずして日本の保険医療の上部機構だけを幾らいじっても、小山さんが火の車になっているが、解決しない。そこでいよいよ機会がやってきた。いずれ私は予算委員会で、新しい総理と大蔵大臣を前に置いて全部保険経済を分析します。さいぜん日雇いの問題をやったのですが、日雇いだって、このごろ厚生省に行って聞いてみたら、当初の見込みよりは医療費が六十一億ふえておるでしょう。六十一億の医療費を一体いま被保険者には五百一円九十銭の賃金しか払ってないから、大幅な保険料の引き上げができるか、できない。もはや保険料による収入は必要医療費の三分の一を割るくらいですから、保険のていをなしてないものを一体どうするか。ここで、こうしますというものは出てこないでしょう。大蔵省に行っても何とかしますと言うだけです。そうすると、大蔵省はそういう医療機関なり大きな製薬企業にメスを入れるかというと大蔵省も入れない。これでは日本の医療というものは絶対直らない。だからもうこの段階にきたら、保険経済を徹底的に洗わなければならぬ。もちろん共済組合も健康保険組合も、そうして政府管掌も国民健康保険も日雇いも全部洗わなければいかぬ。そして洗うと同時に、日本の薬価も洗うし、製薬企業も洗わなければいかぬですよ。保険組合の保養所もみな洗わなければならぬ。そして洗ってむだなものを全部出してくるということです。むだなものを出して、日本の国民医療をどうやるか。これをやらなければ、いままでのような——小山さんたちが来年度予算要求の中に出している政府管掌健康保険を、百億国庫負担をふやしてくれ、あるいは千分の六十三を八十にしてくれとかいう労働者の負担だけで、国庫はちょっぴり金を出して問題を解決しようといっても解決できない。そういうところまで日本の保険はきておる。そういうものに早目に蛮勇をふるってメスを入れないと、とてもたいへんです。長谷川さんもさいぜん言っておったように、そのしわが全部患者にきている。たいへんです。私、きのう討議してみたけれども、炭鉱はたいへんです。健康保険組合をつくった。閉山でどんどん炭鉱がつぶれていく。そこでどういう形が出てきたかというと、炭鉱は病院も何も全部閉鎖してしまいますよ。そして健康保険組合はあるけれども、傷病手当金も医療費の支払いも、はなはだしいところは半分くらいしか出さない。そういう実態になってきたのですよ。あの優秀な健康保険組合の炭鉱の健康保険組合がそういう実態なんです。そしていまや持っている療養所も何もみんな売り払っていますよ。売り払わなければ医療費が払えぬ、そういうふうになってきた。これが実態です。こういう状態になってしまったということになると、これはやっぱり全部ひとつ徹底的に洗って、そして日本の医療を一体どうするかということをやらなければたいへんなことですよ。もうこそくな、医者のわずかの実勢価格と薬価基準の差で問題を解決しようなんということでは、とてもこれは追いつかぬです。もはや根本を洗わなければならない段階が来ているということです。私は、きょうはその薬価基準のちょっと一部だけを出して、そして日本の医療の矛盾、いかにそれが学問を無視し、そして患者にしわが寄るか、患者にそのしわが寄せられないためには、なけなしのさいふの中から金を出して、自分の生命を守ることをやっておるという実態を御説明したわけですが、これはやっぱりそろそろ製薬企業にもメスを入れなければならない段階が来ていると思うのですが、小山さん、あなたそいうふうに感じませんか。
  173. 小山進次郎

    ○小山説明員 表現の強弱という点は若干違うと思いますけれども、やはり先生おっしゃるように、どうしても薬の問題を考えなくちゃならないという時期に来たと思います。その場合に、いまのままの仕組みにしておきますと、薬はいわば自由に先取りをして、残った部分で技術料をまかなうという形が続かざるを得ない。それはやはり考え直して、技術料というものを、全体の中で調達し得るものからいわば先取りしていくという考え方をどうしたら取り入れることができるか。いずれにしても、おっしゃるように、薬の問題にメスを向けなくちゃならぬということを私どもも痛感しております。
  174. 滝井義高

    ○滝井委員 これで終わります。  その場合に、これは率直に言って、日経連の前田さんあたりを呼んで少し教育する必要があるのです。いつか、いまから四、五年くらい前に、保険者、被保険者、健保連、国保連、日経連を呼んでみんなの意見を、いまのようなことで私は聞いてみたのです。全部賛成です。薬にある程度のメスを入れてやらなければ日本の医療というものはだめになるということは、四、五年前から全部賛成です。ただ一つ、日経連が反対なんです。どういう点で反対かというと、それは、なるほど医療というものは平均薬価をとってもよろしいということです。しかし製薬企業というものは、それはとってはいかぬというのです。なぜか、医療というものはサービス業だ、製薬企業は企業だ、そういうわけだからいかぬといって日経連は反対なんです。だけれども、健康保険組合というものは、御存じのとおり重要な、これは昭和二年以来労務政策として出てきているわけです。ただ率直に言って、社会党は力が弱い。資本主義機構のもとにおける健康保険組合というものは、なかなかつぶすことはできないと思います。これを一本にする総合調整をやるとすれば、あなた方のやるようなこそくな、失業者と老人に労働者から取ってきて幾ぶんか分け前をやるということで、国はおつき合いでちょっぴりやるという程度の総合調整しかできないと思うのです。根本的なことはなかなかできないと思う。これは健康保険が根本的には労務政策を背景にしておるからです。歴史的に、そういう前の発展過程をしりのほうにつけておるわけです。なかなかできない。できないけれども、いよいよ健康保険の組合が炭鉱その他を中心にしてつぶれてくるということになると、なかなかそうはいかぬ。やっぱり根本的に検討しなければならぬところに来ておるわけです。だから、そういう点ではむしろこの際日経連の前田さんその他を集めて、あなたがいまの健康保険の実態をよく説明する必要がある。そしてやっぱり大乗的な見地から総合調整をやって、そして保険料であまり大幅な負担というものもできないんだ、いまの限界は保険主義ではだめなんだということを徹底させる必要があるでしょう。そうしないと、とてもこれはだめです。あなた方、大蔵省に行ってごらんなさい。いまは簡単に通る情勢じゃないですよ。だから、あなた方がこそくな方法で来年の予算要求その他をやろうとしたって、それは必ず、被保険者の負担、労働者の負担、保険料の一部負担の形が診療の内容の切り下げの形で危機を切り抜ける以外にないという政策しか出ないのです。それではあまりにも手がなさ過ぎるでしょう。もう少しここらあたりで根本を考える方向に持っていってもらわなければならぬ。その手始めは、やっぱり池田さんの政策に対して佐藤さんが言ったように、歩行者優先の政治をやらなければいかぬ。経済よりも人間が優先だというものの考え方で、保険制度というものを頭に置いて考えていかなければならぬ、こういうことになるのです。  したがって結論としては、まず隗より始めよで、その嚆矢として、さいぜん言った一体すぐに薬価基準に千三百を入れるか、入れなければある程度自主性にまかせるという問題にやっぱり返ってくるのです。事は小さいが、国家の問題から出発しておるのですよ。これは大臣相談して御返事いたしましょうということだから、それまではちょっと待ちますけれども、そういう根本のところにメスを入れなければ、日本の医療というものがもはやだめなところにきておりますよ。それで、そこに手を入れるということになると、これは言いたくもないけれども、独占の反撃というものが非常に強くなってくる。だから、大衆にある程度犠牲をしいるという政策を続けていくのか、あるいは武見さんたちの言う医療機関を集団奴隷のままでやっていくのか、それともある程度独占のほうにメスを入れて、独占の取り分を幾らか少なくすることになるのかということなんです。日本人もばかじゃないので、あまり長らくこういう状態が続いておると、しいたげられた沖繩の国民が昨日は沖繩の議会にすわり込んで、あのアメリカの力をもってしても、かつてキャラウエイが押えつけたような力をもってしても、もはや抗し切れないような状態が日本に起こりますよということです。これが社会保障で起こったらたいへんです。だから、その前に政治家というものは一歩か二歩先に手を打って、そういう混乱の起こらない道をとってください、こういうことです。  これで終わります。
  175. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後四時二八分散会