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1964-09-30 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第61号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年九月三十日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 亀山 孝一君 理事 河野  正君    理事 小林  進君 理事 長谷川 保君       海部 俊樹君    熊谷 義雄君       倉石 忠雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    伊藤よし子君       高田 富之君    滝井 義高君       楯 兼次郎君    八木 一男君       八木  昇君    山口シヅエ君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         防犯少年課長) 楢崎健次郎君         検     事         (刑事局長)  津田  実君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         厚生政務次官  徳永 正利君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 七月三十一日  委員寺島隆太郎君が死去された。     ————————————— 八月一日  委員渡邊良夫辞任につき、その補欠として亘  四郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員亘四郎辞任につき、その補欠として渡邊  良夫君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員小宮山重四郎辞任につき、その補欠とし  て山口喜久一郎君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月七日  委員藏内修治辞任につき、その補欠として鍛  冶良作君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員大原亨辞任につき、その補欠として阪上  安太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員阪上安太郎辞任につき、その補欠として  大原亨君が議長指名委員に選任された。 九月七日  委員鍛冶良作辞任につき、その補欠として藏  内修治君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員大原亨辞任につき、その補欠として秋山  徳雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員秋山徳雄辞任につき、その補欠として大  原亨君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員倉石忠雄君、坂村吉正君、竹内黎一君、中  野四郎君、西岡武夫君及び大原亨辞任につき、  その補欠として熊谷義雄君、小宮山重四郎君、  松山千惠子君、亘四郎君、海部俊樹君及び楯兼  次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員海部俊樹君、熊谷義雄君、小宮山重四郎君、  松山千惠子君、亘四郎君及び楯兼次郎辞任に  つき、西岡武夫君、倉石忠雄君、坂村吉正君、  竹内黎一君、中野四郎君及び大原亨君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件(医療費問題  等)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 本日は、当面していろいろ社会的に問題を提起しておりまする医療費の問題について若干の質問を行ない、そして大臣に率直な御見解を承ってまいりたいと考えております。  この医療費問題というものは、国民の健康に関しますきわめて重大な問題でございます。特に昨年、緊急是正の問題が取り上げられまして、その後、この緊急是正の問題をめぐっていろいろ医療費問題というものが混迷を来たしてまいりましたことは御承知のとおりでございます。そういうことで、私どもも、国民の健康を保持する、あるいはまた国民の健康の向上という点から、このような医療費問題混迷を来たしてまいりましたことをきわめて遺憾に感じておったのでございます。ところが、神田厚生大臣がこの十八日、いわゆる神田構想なるものを実は発表されたのであります。内容といたしましては、緊急是正引き上げワクの拡大、八%に上積みする、いま一つは、基礎診察料を新設する、こういう内容考え方というものが構想の中で明らかとされてまいりました。そこで、昨年から続いてまいりました医療費緊急是正問題がやや鳴りをひそめたようなかっこうでございましたけれども、この神田構想の発表を契機として医療費問題が再び混乱を起こす、こういうような空気というものが非常に濃厚になったのでございます。新聞の社説等によりますると、せっかく傷薬を使ったけれども、その傷薬はかえって傷を大きくするんじゃないか、こういうような憂慮もあるようでございます。  そこで、私はこの際、そのような医療費問題混乱を防止する、そうして医療費問題国民の健康に重大な関係がございますし、そういう意味では、医療費問題に関連する諸団体の問題もそうでございますが、国民のそういった不安を除去する、そういう意味からも医療費問題についての厚生大臣の率直な腹がまえというものをひとつあらかじめお聞かせを願いたい、かように考えます。
  4. 神田博

    神田国務大臣 ただいまお尋ねのございました点についてお答えいたします。  医療費の問題、お述べになったようなことを、私は去る十八日でございましたか、記者会見自分考えておりますことを率直に申し上げたわけでございますが、これが神田構想というようなことで紙上に伝わったことは御承知のとおりであります。私はこういうふうな基本的な考え方を実は持っておるのでありまして、まだこれが、私の考え最終決定だというような幅のないものではございませんが、大体、就任以来いろいろ調査研究いたしましたその結果、今日の段階ではあのようなことではどうだろうか、こういう所信を表明したわけでございます。御承知のように、医療費問題も多年の懸案でございまして、何とかこれをひとつ支払い側医療側の円満な話し合いと申しましょうか、また担当省としての厚生省、三者一体解決を念願してまいったわけでございますが、なかなかうまく運んでこなかった、もうかれこれ五年近くもごたごたが続いておることは、御承知のとおりであります。そこで政府も昨年中央医療協諮問等方法によりまして、これは答申があったわけでございます。答申も再検討いたしまして、私ども中医協答申は尊重する、しかしその後の情勢の変化、諸情勢考えまして、若干のプラスアルファというものを加えることが問題の解決する点ではなかろうか、こういうような考えのもとに、いまお述べになりましたようなことを表明したわけでごでざいます。この問題がスムーズに片づくということには、相当の時間がかかると思っております。また、私といたしましても党のほうとも十分連絡いたさなければなりませんし、また政府間、特に財政当局との折衝段階も経なければなりませんので、最終決定は、それらの機関を経てこういうふうになるということでございます。いろいろその間、なおまた支払い側あるいは医療側にも十分御納得のいくようにして処置いたしたい。同時にまた、中医協再開もいたしまして、そしてそれらの諸機関を経て円満解決したい、こういう考え方でございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣は、この問題の収拾というものは中央医療協議会答申を尊重しながら、しかも客観情勢にそういう推移があるので、そういう点を加味してプラスアルファということで解決してまいりたい。それがさきに発表されました神田厚生大臣のいわゆる神田構想というものだというようなお答えでございました。ところがこの月末、全国一斉に神田厚生大臣を激励する会というものが医師会歯科医師会薬剤師会、いわゆる三師会合同のもとで開催をされてまいったような経緯もございます。ところが今度の神田構想というものは、元来神田厚生大臣そのもののアイデアではないのだ、むしろ神田構想に盛り込まれております内容というものは厚生省事務当局構想である、したがって神田厚生大臣自身は、医師会歯科医師会あるいは薬剤師会、こういう三師会にもっと近いものだ、そこでこの際神田厚生大臣を激励することによって、その本来の神田厚生大臣の主張というものを実現せしめてまいりたい、こういう意味でこの神田厚生大臣を激励する会、これはいままでの医療費問題のいろいろな紛争にはなかったような経緯でございます。歴代の厚生大臣というものは、史上最低大臣であるとか、あるいはまたアイヒマンであるとか、こういうふうな極端な表現で今日までの厚生大臣というものはいろいろと非難をこうむったのでございますけれども、今度の三師会の動向というものは、従来の経緯とやや違った事情がございます。それで、いま厚生大臣としては、中央医療協議会答申というものを尊重しながら解決してまいりたい、それが自分構想だとおっしゃっておりますけれども、その構想に対します取り組み方というものはやや違っておられる。このような問題が依然として紛糾を続けるということは、国民の健康を守っていくという意味からも適当ではございません。そこで私は、この際厚生大臣の率直な真意というものが伺いたい、かように考えるわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  6. 神田博

    神田国務大臣 いわゆる神田構想というものが私の真意かどうか、これを明瞭にせよというように承りました。あれは私の、文字どおり構想でございまして、私の構想でむしろ事務当局を納得させた、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  7. 河野正

    河野(正)委員 そういうことになりますと、私はやはり非常に大きな問題があると思うのです。それは、このたび発表されましたこの神田構想なるものにつきましては、支払い側でございます健保連をはじめとしての諸団体というものが、強く不満の意を表明いたしております。また一方、診療担当側不満の意向というものを表明いたしておるわけです。さらに問題でございますのは、政府与党たる自民党のほうも、特に医療問題議員懇談会が、入院、外来、注射、投薬、処置手術等のいかんにかかわらず診察のつど診察料十点を算定する、こういう態度というものを決定して依然その態度を変えておらない、こういうことが政府与党でもいわれておるわけでございます。そういたしますと、支払い者側のほうも反対である、診療担当者側のほうも不満である、それからまた、神田構想を守るべき筋合いでございまする政府与党たる自民党のほうもその構想とは違った決定をなさっておる、こういうことになりますと、はたして責任政治時代厚生大臣としてこの神田構想なるものについて一体責任が持てるのか、こういう危惧を私ども持たざるを得ないと考えております。単なる観測気球というようなことでございますならば、これはまさしく、無責任時代でございますけれども責任というもはなはだしい。そうしますと、結局医療混乱厚生大臣がお持ちにならなければならぬということに、この筋道をたどってまいりますと、残念でございますけれども、そういう点を指摘せざるを得ないと思うのでございます。そこで、このいわゆる神田構想なるものは四面楚歌というような立場でございますが、はたしてこの構想に対して確信のほどがございますかどうか。ないとするならばきわめて遺憾でございますし、無責任であるということを感じますので、特にその確信のほどをお聞かせいただきたい。
  8. 神田博

    神田国務大臣 私の表明した所信について確信があるのかないのかというお尋ねでございますが、私はああいう考え方で党もまとめるように努力し、また支払い側医療側についても十分折衝してまいりたい。ただ御承知のように、私の構想で党なり政府なりの一致を見ないとなかなか——結局これは金額の問題になってまいると思います。最後は、八%プラスアルファというものが一体幾らになるかということが問題でございます。そういうことについて見通しがつきますれば直ちに折衝いたします。ただいまお話がございましたが、紙上伝えるところによれば四面楚歌ではないか。そういうふうに私も率直に認めます。しかし声なき声といいますか、なかなか大胆に思い切ったことを言っておるじゃないか、あれでやれという強い支持もないわけではございません。何はともあれ、支払い側といたしますれば中医協答申どおりやれということでございますから、これはいまの段階ではどういう案でも相いれないだろうと思います。また医師会のほうも、再診料は毎日入るという原則論は譲っておりません。しかしこれはプラス・アルファの額がきまりますれば、両者よく十分お話し合いいたしまして、不満足な満足というか、政府がそういうような考えであるならば——このたびは緊急是正でございますから、根本的なことは早急に、何らかの方法で早くスムーズにいくような措置をとりたい。いまの段階では、中医協答申どおりにやるということはむしろ混乱が生ずるのじゃなかろうか、こういうような前提にも立っておりますので、お話もございましたが、私といたしましては最善を尽くしまして円満打開をしたい、こういう所存でございます。
  9. 河野正

    河野(正)委員 大臣医療問題の混乱を防止するためにも最善を尽くしたいという、こういう誠意につきましては、私どもも敬意を表します。しかし、ただそういう尽くしたいということではなくて、現実にその問題を解決できぬことには話にならぬわけですから、そこで私も、そういう医療費問題根本的解決をはかっていく、そういうような建設的な立場からいろいろお尋ねを申し上げておるわけですが、いま大臣お答えになりました点から、私どもはやや疑惑を持たざるを得ない点がございます。  一つは、中央医療協議会答申を尊重しながら、それに客観情勢等も加えてプラスアルファをつけて解決するんだ。それらの点は、大体予算ワク八%の上積みということであろうというふうに私どもも理解をいたします。ところが、いま一つお答えになった医療費問題の根本的な解決については、近い将来何らかの措置構じたいというようなお答えでございました。ところが、このほうは、診察料の設定という問題は構想の中にもあるわけです。これは、ややもいたしますと、私どもは、やはり基本的な解決方策の具体的な一例だというふうにも法律的には理解せざるを得ない。そうしますと、一つには中央医療協議会答申を尊重すると言われておることと、それから根本的な問題については何らかの措置を早急に考えていきたいと言われておりますことと、やや中身については矛盾する点が出てまいります。そういう矛盾する点が出てまいりますことは、大臣からの中央医療協議会再開をして、その中で議を経てひとつ解決をはかっていきたいということになりますと、やはりいま私が指摘いたしました二つ疑問点というものは、その中でも大きな論議を呼ぶ可能性が出てまいります。そうしますると、先ほど私は、大体の今度の構想に対して大臣確信を持っておるのかどうかというようなことをあえてお尋ねいたしましたが、どうもそういう危惧というものが一そう濃厚になってくると思うのです。でございますが、いまのような中央医療協議会答申を尊重する、あるいはまた医療費の根本問題については早急に何らかの処置をはかっていきたいとおっしゃっておることと、実際神田構想で示されております内容というものには矛盾がございます。その矛盾を一体どういうふうに克服なさるつもりでございますか、これは私どもはやはりこの問題の早急解決をはからなければならぬという意味でぜひひとつお聞かせをいただきたい、かように思います。
  10. 神田博

    神田国務大臣 医療費問題解決中医協答申が、こざいましたいわゆる八%という常識論がございます。それにプラスアルファをしてみたい、こういう考え方、そこにこれは両者御納得いくような、あるいは不満足の満足というか、とにかく最悪の場合にそういう努力をしてみたい。それには、まず私は党内調整をはからねばならぬと思うのです。それから、また同時に政府との折衝がございます。これについては私も一人でやっているわけではございませんので、確信があるかというお尋ねでございましたが、十分その見通しのもとでやっておるということをはっきり申し上げたほうがよろしいじゃないか、こう思います。  それから、中医協でやりながらなお他の方法考えていくようなことは矛盾考えないかというようなことでございますが、何といいましても医療問題は大きな問題でございまして、しかもここまで参ればこれは政治問題だと私は考えております。大きな当面の政治問題だと思います。当面の問題は、いま申し上げたような趣旨でこれを処理いたしまして、そうして第二段階として、私はいまの保険関係のいわゆる点数のあり方自体考えましても、これは改善といいますか、改めなければならぬことは非常にたくさんあるように考えております。また問題は大きくなるようでございますが、薬価基準の問題もございます。ずいぶんこれは押せ押せになっておる。こういうこともひとつ抜本的に考えたい、解決していきたい、こういうことも考えますので、そういうこともあわせて申し上げておるわけでございまして、理論的にはあるいは多少矛盾のようなことが感ぜられるかもしれませんが、現実問題としては、そういうような処理をすることがむしろ妥当なんだ、それ以外にないのではなかろうか、こういう考えのもとにいま作業を進め、また諸般施策を進めておる、こういう段階でございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 先ほど、大臣からいずれ中医協の議を経て解決をはかっていきたいということになりますと、やはり私が御指摘を申し上げましたような矛盾というものがその論議の対象になる、それが解決をはばんでいく、そういうことを私は憂えるがゆえにそれらの点について御指摘を申し上げたわけでございます。  そこで、この中医協答申に関連してでございますが、そういう私がいま申し上げましたような危惧等もございますので、あえてお尋ねをいたしておきたいと思いますが、中医協公益委員でございまする前会長有沢、それから会長代理寺尾両氏がもうすでに任期満了で欠員でございますことは、御承知のとおりでございます。そこで、中央医療協議会答申を尊重するというお答えでございますけれども神田構想の中にはいま申し上げますようないろいろな疑問点がございます。そういう情勢の中からこの公益委員再任というものが可能であるのかどうかという問題が、やはり一つの問題として起こってこようと思う。この再任が困難である、不可能であるということになりますと、これは御承知のように中央医療協議会の構成ができませんので、したがって中医協再開をすることができないということで、大臣お答えになりました中央医療協議会再開して、その中でいろいろ相談をして最終的に解決をはかっていきたいということでございますけれども、その基本になる中央医療協議会開催というものが不可能になりますと、勢いこの問題の解決というものが不可能になる。そういうことで、この中央医療協議会答申と関連をして、一体公益委員再任というものがどういう形になるのか、そういうような見通しについてどういうようにお考えになっておるのか、この際これもあわせてお尋ね申し上げたいと思います。
  12. 神田博

    神田国務大臣 お尋ねでございました公益委員再任の問題につきましては、重ねてお願いしたい、こう考えております。有沢さん、寺尾さん両氏再任をお願いしたい、こういうふうに考えております。なお、公益委員三好委員辞任を申し出てこれを受理いたしておりますので、三好委員の後任をだれにするかということもいま選考中でございまして、そういうことがきまりますれば一括して政府の意見をまとめまして、議運のほうに御相談して諸般の手続をとりたい、こう考えております。
  13. 河野正

    河野(正)委員 ところが、私ども仄聞する範囲では、この中央医療協議会答申が尊重されるならば再任することにやぶさかではないけれども、しかしながら中央医療協議会答申が尊重されぬということであるならば責任が持てぬということで再任を渋っておられる、こういう事情等も私ども仄聞をいたしておるわけです。そこで、神田構想が表明される以前と、神田構想が表明をされました後の今日とでは、有沢会長寺尾会長代理、こういう方方の心境等もやや変わってきておると思うのです。それらの点について正確に把握されてそのようなお答えをなさっておられますのかどうか。できますれば中央医療協議会の議を経て円満に解決する、しかも早急に解決するということが私どもも望ましいわけですから、そういう意味で建設的な立場からお尋ねをいたしておるわけでございますので、ひとつ率直にお答えをいただきたい、かように思います。
  14. 神田博

    神田国務大臣 たびたびお答え申しておりますように、中医協答申は尊重いたします。ただし、若干のプラスアルファというものはこの段階では必要だ、こう考えております。そういうことで十分経緯お話し申し上げれば御了承願える、こう考えております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 そこで、もう一つ問題でございますのは、この神田構想の中で、早ければ十一月、おそくとも十二月、いわゆる年内実施ということで努力をいたしてまいりたい、こういうような御見解が述べられておるわけでございます。ところが、いま私が御指摘申し上げましたようないろいろな疑問点があるために、あるいは論理的な矛盾があるために公益委員再任ということが困難になっておるということになりますと、勢い時間的に十一月実施とかあるいは十二月実施とかいうような、年内実施というような問題が困難になる、こういう情勢というものが当然予想されると思うのです。そこで、私は、先ほど申し上げましたようないろいろな矛盾点をあえて取り上げたわけではございませんけれども、そういう問題があるために、あるいは医療費問題年内解決ということが非常に困難になるんじゃないかというふうな感じも強く持っておるわけでございます。そういう意味でこの年内実施というものが可能だというふうにお考えになっておるのかどうか、これも非常に重大な問題でございますから、あえてひとつお尋ねをしたいと思います。
  16. 神田博

    神田国務大臣 医療費問題諸般事情解決して実施するのは一体いつか、年内にできるかというような御趣旨のように承りましたが、私は年内にやりたい、おそくも十二月一日からやりたいということで作業を進めております。まあ非常に大きな問題でございます。これは私が申し上げるまでもなく、来年度予算編成の問題とかね合いになっておりますので、そこまで申し上げてはどうかと思いますが、米価問題と医療費問題というものは来年度予算編成二つの重要問題だ、こういわれているくらいでございますから、そういうような意味合いで、あるいはおくれることがあることをおそれまして、これは特に緊急事態なんだから、ひとつ緊急に処理すべき事項だ、そこで、どんなことがあってもひとつ十二月一日には実施したい、そういうような意気込みで諸般の準備を進めておる最中でございます。
  17. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣からもお答えになったのでございますが、この年内実施というものが不可能になりますと、来年一月からは消費者米価が二〇%引き上げられる、あるいはまた鉄道運賃、バス運賃、そういうような公共価格というものが引き上げられる、さらにまたいよいよこの臨時国会で問題になるわけでございますけれども、人事院勧告によりまして公務員のべースアップが実施をされる、もちろん公務員のべースアップが実施されますれば民間にも波及をいたしてまいります、こういうふうに来年に入りますと諸物価が高騰する、あるいはまた人件費が高騰する、そういうことで現在でも医療経営というものが非常に危機に逢着をしておる、こういうふうにいわれておりますが、現在でもきわめて重大な危機に逢着をいたしております医療経営というものが、一そう重大な危機に到達することは、これはもう何人も否定することのできない事実であろうと考えております。そういたしますると、年内実施という問題ができるかできぬかということは、まさしくいまの医療経営の危機を救うかあるいはまた崩壊に導くか、こういう重大な問題点でもあろうかと考えております。ところが実際に十二月一日から実施するということになりますと、その一月前にはこの決定をしないと、それぞれ各組合に対する予告期間というものが当然必要でございますけれども、手続上から申しますと、やはり十月一ぱいには決定を見なければならぬ、こういうことだと思うのです。そうしますと、私はどうしてもいま——なるほど大臣は誠心誠意十二月一日には実施したいというお話ですけれども、手続上至難なわざであろうと考える次第でございます。そうすると、来年一月からはぎりぎりの段階でございます。そうすると、どうしても手続上、中医協補欠人事の問題、あるいはまた、この中火医療協議会が成立をいたしましても、中央医療協議会の中におきまする論議の問題、これらの問題がございまして、今月一ぱいにこの問題が一応事務的に解決することは、なかなかむずかしい問題ではなかろうかということを考えるわけです。そうした場合には、大臣としては職権を賭してもという決意でおられるのか、やはり職権ということは将来禍根を残すので、どこまでも中央医療協議会の議を経てという考えでおられるのか、その辺を率直にお聞かせいただかぬと、世間に疑惑があるようですから、世間の疑惑を一掃するという意味で率直に御表明を願いたい。
  18. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  いまのお尋ね、御心配の点、これは私も全くそのとおりに考えております。そこで急いでいるわけでございます。私どものほうの準備、予算折衝をする準備は大体できております。そこで、十一月に臨時国会をやって災害その他をやるといっておりますが、その予算に剛に合うように折衝をしたい、こう考えております。そうすると十月中にはどんなにおそくとも予算の数字が固まるのではなかろうか、こう思っております。中医協答申を求める御相談をするにいたしましても、これは十一月からかけることができますから、そう一カ月もかかるようなことはないのではないか、こう考えております。できるだけ御勉強していただいて、十一月中に中医協を通していただければ十二月から実施できる、こういう段取りに考えております。
  19. 河野正

    河野(正)委員 神田厚生大臣はその方面の知識がまだ少し薄いので、そういうお答えがあったと思いまするけれども、やはり十二月一日から実施するならば、十月一ぱいにきめて十一月にはすでに予告するということにならぬと、これは医療支払いその他が困難になると思います。ですから、手続はやはり十一月中には中医協決定してもらって、そして十一月にはそれぞれ各方面に予告をするということにならぬと、これは十二月一日から実施するといいましても、なかなかスムーズに事務運営ができぬというふうに私どもは判断いたしております。そういう意味から、どうも十二月一日という問題は非常にむずかしい情勢にあるのではなかろうか、私どもはこういうふうな感じを持っておるわけでございます。それらの点については、ひとつ十分お考えおきを願いたいと思います。  それから職権行使でもおやりになるのですかというようなこをお尋ねしたわけですが、それについてお答えがなかったのでございます。と申し上げますのは、この中央医療協議会をどういう形で構成されようとお考えになっておるのか私ども承知をいたしませんけれども、御承知のように、この公益委員の二名の方はすでに四十六国会の中で任期切れになっておるわけです。法律のたてまえでは、任期満了いたしました委員については国会の承認の事項でございますから、当然国会の承認を受けなければならぬということでございます。ところが、法のたてまえとしては、休会中は政府で任命をして自後開催されます国会で事後承認を求めるということは可能でございますけれども、しかしながら私ども社会党としては、国会の開会中に任期が満了したわけですから当然国会の開会中に承認を求むべきだ、こういうような要請を時の大臣でございました小林厚生大臣に対して強くしておるわけであります。そこで神田厚生大臣がどういうふうな御見解であるかわかりませんけれども、これらの委員再任についても、実はいま申し上げましたような事情等があって、一応そういう手続をお踏みにならぬことには任命ができぬという事情にございます。それらの点もあわせて考えてまいりますと、簡単に後任の委員再任を求めて直ちに中央医療協議会開催して、そして承認を求めていくということにならぬと私は思うのです。それをどうも、これは社会党を軽視されておるのか無視されておるのか知りませんけれども、そういうことでこの問題を取り運ぼうといたされましても、これはまた国会でも混乱が起こってくると私は思うのです。そういう事情を十分御承知の上でそういうお答えをなさっておるのかどうか、私ども若干疑問を持っておりますので、その辺の事情等もこの際明らかにお聞かせをいただきたい。
  20. 神田博

    神田国務大臣 いま御例示されたような事情も実はよく聞いております。そういう関係もありますから、臨時国会待ちといいますか、それともう一人の選任もあわせてしたいと考えております。いまの社会党の意のあるところもよく承知いたしておりますので、これはそういうことも調整しながら円満に施実施していきたい、こう考えております。
  21. 河野正

    河野(正)委員 そういう過去の事情等もございますし、特に同僚からもいろいろ政府態度についての非難等もございます。そういうような事情からして、十一月の臨時国会の中でそういう後任人事の選定に当たっていくということでございますならば、これはもうちょっと十二月一日というようなことはお控えにならぬと、せっかく大臣が誠心誠意おやりになりましてもから手形ということになって、かえってこの問題に対して混乱を与えるという結果になりはしないかと私は思うのです。ですから、やはり大臣としても、おやりになるならおやりになるで確固たる御自信を持っておやりを願いたい、こういうふうに考えます。いろいろ事情の複雑さ、困難さというものがあろうかと思いますけれども、残念でございますが、どうもその辺については十分納得できません。いずれにしても、この医療問題については、私のみならず同僚議員からもいろいろ各面にわたります御指摘がございますから、さらに進めてまいりたいと思います。  先ほどから、この医療費の問題については中央医療協議会答申というものを尊重しながらそれに若干プラスアルファをつけていくのだ、こういうような御見解でございました。ところが一説では、すでに八%の上積みというものは一二%であるとかあるいは一四%であるとか、こういうことが実はいわれておるわけでございます。しかも予算の大蔵折衝に対する態度というものもすでに御決定になっておると思いますので、一体具体的にどういう根拠でどういう数字をお考えになっておるのか、この辺も事と次第によってはこれが紛糾の原因にもなってまいりますから、この際、具体的にどういう根拠で、どういう数字をお考えになってこの問題の処理に当たっていかれようとしておるのか、その辺も私どもに率直にお聞かせいただきたいと思います。
  22. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの河野委員お尋ね、意のあるところは十分私も了承いたしますが、これは試算でいろいろの数字が出ておることは事実でございますが、そのどれをどうするかということはなかなか微妙な点がございます。そういう点で党と十分意思調整しませんと大蔵省に対する予算要求も、ただこっちの出しっぱなしだというようなことでもどうかと思いますので、厚生大臣の独走になっても予算効果というものがなかなか——御案内のような事情がございますから、十分党内の意見を調整いたしまして、一丸となって所期の目的をあげ得るというような態勢にしたい、こう考えておりまして、しばらくの間、そういった数字が固まりますまでお答えしにくい事情であるということもひとつ御了承願いたいと思います。
  23. 河野正

    河野(正)委員 これはいろいろ作業をされる過程の中で最終的にきまると思いますけれども、もうすでに八%の上積みというものは一二%であるとか一四%であるというような一応の方向が出ておるわけです。これは私どもがいろいろこの問題について検討もしなければならぬわけでありますから、どこでそういうような放送をされたかわかりませんけれども、私ども会議員としてこの問題を審議する立場であるわけですから、やはりどういうことをお考えになっておるかくらいのことは、お聞かせになっても私はけっこうだと思うのです。そうしませんと、これが全く雲をつかむような話ならいいですけれども、もうすでに新聞紙上でも厚生大臣の腹づもりというものは一二%から一四%だ、こういうような意味の数字が出ておるわけです。出ておるわけですから、これは当然、その方面も若干そういう見解を承ってそういう数字というものを発表しておると思うのです。しかし国会のほうでは全然言われぬのだということでは、私ども国政審議に携わる者としてもこれは承服するわけにはまいりません。ですから、大体どのくらいのことを考えておるのだ、最終的にはこれは作業の結果きまることですから、われわれがここで一三・五%というようなことは聞きません。ですけれども、何らかの根拠があって何らかの作業をされておると思う。ですから、大体の方向くらいお示しになってもけっこうだと思いますが、この点いかがです。
  24. 神田博

    神田国務大臣 率とか金額のことについては、私いままで一回も漏らしたことといいますか、語ったことはないのでございます。ですから、新聞紙上その他でこのくらいじゃなかろうかというのは、単なる推測であるということをはっきり申し上げます。国会を私は重視しておりますから、国会におきまして、できるだけ考えておりますことを申し上げることはお尋ねのように当然だと考えておりますが、先ほども申し上げました事情等によって本日はまだまだその段階ではない、私のほうの党の意見調整をしませんと独走した数字になるおそれがございますので、その点もひとつ御了承願いたいと思います。
  25. 河野正

    河野(正)委員 しかし自民党では二〇・五%ということを決定しておるわけです。ですから、新聞その他で取材するとすれば、二〇・五%が与党態度ですから、そういうことで発表しそうに感じられるわけですが、一二か一四、これは大臣が口をつぶってお答えにならぬでも、官僚は適当に発表していると思うのです。官僚は適当ににおわしておると思うのです。ですから、そういう意味からいうと、全くわれわれ国会議員のほうが、それこそ厚生省から軽視されておるわけです。そういう意味からも野党からいろいろ批判が出てくると思いますけれども、どうもそういうことではほんとうの国会の審議にならぬと思うのですが、やはり結論だけを野党に押しつけるのではなくて、大臣所信というものを御披瀝になって、そしてそれが国会で一致して承認されるかどうか。これは国民医療国民の健康を守る重大な問題ですから、やはりこういう点は超党派で当然検討しなければならぬ問題だと私ども考えます。そういう意味で、これらの点について明確にされぬことを私どもは非常に遺憾に感じます。
  26. 神田博

    神田国務大臣 いまの河野さんのお気持ちは、重々、私も国会議員の一員としてもう同感であります。しかしこの作業はごく首脳部の数人でやっておりますので、私は漏れていないと考えております。もし御心配の点がございますれば、担当局長が参っておりますから、担当局長からひとつ答弁させたいと思います。
  27. 河野正

    河野(正)委員 それから医療の問題は、やはり人命尊重の問題でもございます。そういう基本的な非常に重大な問題でございます。そこで同僚議員からいろいろな御質疑等がございますから、私からいろいろ申し上げませんけれども、一、二の点だけここで取り上げて、率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。  たとえば、この緊急是正の中で、神田厚生大臣構想によりますると、初診料というものは人命尊重の立場から実施していかなければならぬ。やはり技術というものが医療の根幹でございますから、私もどの考え方については全く同感でございます。特にいま初診料の一例が出てまいりましたけれども、初診料が六点、六十円、こういう点、私ども国民立場から見てまいりましても、このような点は、人命尊重と言うに値しないということは否定することはできない事実でございます。そこで、やはりこの医療費問題というものは人命尊重、したがって医療技術の適正評価、こういうことが基本にならなければならぬというふうに私ども考えるわけでございます。そういう意味で、今度一カ月ごとに基礎診察料が設定されるということでございますが、人命尊重という立場から、はたして今日の医療技術の適正評価というものが行なわれておるというふうにお考えになっておるのかどうか。それからもう一つは、人命尊重の立場をとって考えておるんだ、そういう意味基礎診察料の設定というものを考えたんだというふうにお考えでございますならば、しからば一体基礎診察料というものはどういうことを意味するのか、ひとつその辺をこの際お聞かせいただきたい。
  28. 神田博

    神田国務大臣 いまの行なわれております医療方法が、実際に人命尊重の立場からいって、あるいはまた医師の技術というものを尊重するというような大事なものを一体十分見込んでの診療体系であるかということにつきましては、いま河野さんのお述べになりましたように、私もこれは非常に疑問に思っております。これは申し上げると長くなりますが、私は国民皆保険を踏み切ったときの——当時八年前でございますか、七年余になりますが、当時の厚生大臣といたしまして、当時石橋内閣が踏み切ったわけでございますが、そのときに、このままの姿で皆保険に踏み切るということは、日本の医療制度の問題、また人命尊重の立場からいって大きな疑問を持っている、だからどうしてもこれは制度を改定しなければいかぬということを申し上げた。これは当時、内閣においてもそのとおりである、また医師会からも当時十分な意見具申がございまして、それらの問題は込めて相談した上で諸般処置をとろう、また日進月歩の世の中でございますからそれに対応した処置をしようというようなことで、あの画期的な皆保険に踏み切ったわけでございます。その後の推移を見ますと、それじゃそういうような皆保険を進めた意気込みのような医療制度がずっと行なわれてきたかというと、私はそういうふうに考えていない。ますます、何といいますか、対立といいますか相互不信といいますか、むしろ激化してきたというように考えております。これを正常化すると申しますか、両者の異なった意見を厚生省が調整して、あるべき姿にすべきものだという考えに私は変わりないわけでございます。  そういう観点から考えますと、いまお述べになったとおりで、これは私は初診を六十円に見る、ほかのほうでも見ているのだから初診は六十円でいいのだというような議論をなすことについては断固賛成できない、そういう観点に立って、初診料を相当大幅にというか、これは相当見ていいんじゃないか、こういう考え方であります。  それから、初診料をある程度見るということにいたしますれば、再診を医師会の主張しているような毎日見ていく、これは私は技術尊重の立場から見ればそういう議論も成り立つかと思っておりますが、しかし日本のいまの段階諸般情勢考えた際に、はたして適当かどうか。これはむしろもっと真剣に取っ組んで、本格的改正のときに検討すべきものじゃなかろうか、こういうふうに私は考えたわけでございます。一カ月ということは、これは皆保険前におおむね一カ月という制度が行なわれておったわけでございますが、一回初診料を取ればあとはもうずるずるべったりにいくのだ、こういうことじゃ、私は一体人命軽視ではないかと思う。やはりある期間にもう一ぺん、日々見ているにしても再検討する段階があると私は思うのです。そういう一つの制度を置くことが医師の技術尊重にもなり、また患者の生命尊重にもなる、こういうことで、妥協したのではないかということを言う方もございますが、しかしそういう制度がこの段階においては適当じゃなかろうか、これは緊急是正でございますから。そこでそうしたような構想を打ち出したわけでございます。そこでいまの口々の診察料をどうするか、医療をどうするかというようなことは、今後の調査会で十分検討していただいて、そしてきめるべきものじゃなかろうか、こういうふうに私は考えております。
  29. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣がおっしゃった医療技術、特に診察料のごときは人命尊重の立場から解決をはかっていかなければならぬ、そういう基本的な考え方は私どもも同感でございます。しかしながら、それならばこの診察料あるいはまた今度新設されます基礎診察料というものが、人命尊重というたてまえで実際に評価されるのかどうか、この辺が一つ問題だと思う。ですから、今度お考えになっております構想の中で、医療技術の適正評価という形でこの問題が処理されますかどうか。頭だけ出した、中身は全く人命軽視というようなかっこうでやられても、これは全く仏つくって魂入れずということになりますから、いまの主張というものがやはり具体的に案の中に盛り込まれなければならぬ。これが非常に重要な点だと思うのです。そういう意味で、どういう形でこの初診料ないし基礎診察料をお考えになっておりますかその辺をひとつお聞かせいただきたい。
  30. 神田博

    神田国務大臣 専門的になってくると、これは私より河野先生のほうが御専門ですから、私が申し上げるのもどうかと思いますが、お尋ねでございますので……。  さっき少し説明を申し上げたのが足らなかったかと思いますが、私は、一カ月ごとに基礎診察料と申しましょうか、初診料を新たにするという考えの前に、医師会の言うような毎日が一体適正なのか、あるいは一週間ごとにするのがいいか、あるいは十日ごとにするのがいいか、そういう点も実は検討したのでございます。いろいろ検討してみたのでございますが、そういうことはこの緊急是正のあとで総合的な改正をしたいと思っておりますので、そのときにもう一度調査会で十分考えていただいたらどうか、こういう気を持ちまして、とにかく一カ月ということに再診料をやっていく。だらだらべったりにいったのでは——これはそうでないから医師が緊張しないとか、患者がどうとかいう意味じゃございませんが、何かやはり区切りというものは必要じゃないかと私は思うのです。技術料を見るにしても、また患者の生命の安全を守る、あるいはもっと前向きにその回復を願う意味からいっても、やはり私は区切りがあることがいい、こういう意味で、両者共同という意味で一カ月ごと、こういうことを考えたのです。一カ月ごとを出すまでには、日日の問題も検討すれば、一週間がいいのじゃないか、あるいは十日でどうだろうか、あるいは半月でどうだろうかというようなことも込めていろいろ相談いたしました。しかし結論はいま申し上げたようなことで、やはり上積みの額にもよりますし、緊急是正という答申を尊重しながら上積みして解決をするということになると、そこに自分もどこかで引きとめられるところが出てくるということになります。そういう意味でひとつお考え願いたいと思います。問題はあとに一つ残しておるということになります。
  31. 河野正

    河野(正)委員 本質的には、やはり診察のつど診察料というのがあるのが最も正しいと私は思うのです。たとえば精神科のごときは、一人診察する場合には三十分、一時間かかる。しかしそれが現在認められるということですから、本質的には、診察すればそれ相応の技術というものが尊重されなければならぬということだと思うのです。そこで、いま大臣お答えになったように、基本的にはそれぞれ診察をするのだから診察料を認めるのだ、しかしそれは基本に関するから別の機会にというようなお話で、それならば一週間で区切るのか、一カ月で区切るのか、あるいは十日で区切るのかというような点についてもいろいろ御検討なさったということですが、それならば、この診察料というものが大体幾らくらいだというようにお考えになっておるのか。私の仄聞するところによると、三百円だとかいうことであります。どこからか出ておると思いますけれども、そういう話もございます。大体、この診察料というものを幾らが適正評価だというふうにお考えになっておりますか。これはいまの区切りの問題と関連してきますから、そういう意味でこの際お答えをいただきたいと思います。
  32. 神田博

    神田国務大臣 先ほどお答えしたのとだんだん裏表の問題になつてまいりますが、いまの物価から見まして、一体幾らが適正か、これは日本の相場というよりも、日本が輸出をしている相場から見れば大体どのくらいがいいだろうかというような考え方、 ワンダラーがいいのかいまの三百円がいいのか、あるいはその他の業種に比べた場合に、これが一体幾らがいいのかということについては、それぞれ見方によって議論はあるかと思っております。しかし、それでは厚生省は、大臣としては一体どのくらいがいいかというお尋ねでございますが、それを申し上げますとすぐ額の問題がわかってまいりますものですから、先ほどもお答え申し上げたように、ここしばらくは、折衝の過程でございますのでその点ひとつ差し控えたい、こう思っております。
  33. 河野正

    河野(正)委員 私ども、武士の情けでお尋ねしませんけれども、しかしながら、巷間伝うるところでは診察料三百円というようなことも伝わっております。そうしますと、なるほど当初大臣は、診察料については人命尊重というたてまえから考えなければならぬ、解決をはかっていかなければならぬという、非常に高邁な理想でございましたけれども、一月三百円ということになりますと一日が十円、そういうことで、三百円がここで決定的でございませんから一例をとって申し上げますが、三百円といたしますと一日が十円、十円がはたして人命尊重という立場から処理されたというふうに考えられるのかどうか。だんだんせんじ詰めていきますと、なるほど大臣の高邁な御見解はわれわれは了承いたしますけれども、具体的には一つもその高邁な理想が生かされておらぬ。これも三百円——あるいは三万円ということになるかもしれませんから、ここで断定的に申し上げませんけれども、これは大体不可能でしょうから、そういうことを考えてまいりますと、なるほどいろいろ構想の中に示されております御見解というものはりっぱでございます。しかし実際には、いま申し上げますようになかなか理想にほど遠い、そういう数字も出てくる可能性というものが非常に濃厚だと思います。そういうことで非常に残念に感ずるわけですけれども、しかしいずれにしても、いま私が聞きますように、一日の診察料が十円というようなことでは、これは全く人命尊重ということばとはほど遠いのでございまして、私はやはり人命尊重のたてまえから、医療技術の適正評価というものを行なっていかなければならぬ、こういうことを強く主張をいたしてきております。大臣もその旨十分御尊重せられることを期待いたします。  それから、医療経営の危機という点からいろいろな問題点が提起をされておるわけでございますが、特に最近神田厚生大臣を激励する会では、再診料十点、経済変動に対処する入院料の是正、それから歯科補綴等緊急是正、それから基本調剤料五十円の設定、こういうような大体四つの要望というものが集約をされて、これをひとつオリンピック開催までに断行しろ、こういう強い要請のようでございます。私どもも、いろいろ事情を承ってまいりましても、たとえば専門外の分野といえども、歯科補綴のごときは、マル公で金を手に入れて入れ歯をしますと、全然手数料、技術料というものは評価されないというような、具体的な数字等も承っております。それから調剤料の点について、いろいろ私ども具体的に実情等を承っております。それから入院料の問題は、御承知のように、来年は消費米価その他公共料金の引き上げ等で非常に重大な事態が起こってくる。現在も非常に窮屈ですけれども、来年から非常に重大な事態が起こってくるというような点から、これらの要請が強く表明をされたというように考えておりますが、これらの要請について、総括的に申し上げてどのように配慮されようとしておりますか。これは総括的でございますけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  34. 神田博

    神田国務大臣 いまお尋ねのございましたような点も、それぞれ実情に即するといいましょうか、初診料の上がった率に応じて、若干いま触れた点にはさわってみたい、こう考えております。
  35. 河野正

    河野(正)委員 中身については、もうすでにいろいろお尋ねをしておりますので、あえて申し上げませんけれども、そういう非常に重大な事態にあるわけでございますので、私どもも、時間的にもやはり早急に解決するということが望ましいし、強く要請をいたしておきます。  そこで、最後に一つぜひお尋ねをしておきたいと思いますのは、以上申し述べてまいりましたように、なかなか予算上の問題も伴ってまいりますし、それから大臣が非常に御苦心なさっておる点はわかりますけれども、しかし支払い者側診療担当者側、それから与党立場、それから国会の立場、いろいろございます。そういうことで、この問題の解決というものは、非常に私はむずかしい重要な問題だということは十分承知をいたしておりますけれども、しかし、むずかしかろうと微妙だろうと、やはり国民医療というものを守っていかなければならぬ、国民の健康というものを守っていかなければならぬという立場からこの問題の早期解決、これもぜひお願いを申し上げておきたいと思いますが、しかし、どうもいまの状況を見てまいりますと、入院中の池田総理も、医療費の引き上げは世論の動向を見た上で慎重に処理するよう、こういうような意向であるかのごとく報道されております。そこで結局は総理大臣の裁断によって解決する以外なかろうというような憶測も行なわれております。最終的にはそのようになるのかもわかりませんけれども、しかし、そのようなことならそのようなことで早く処理してもらいたいと思います。その辺はいかがでございましょうか。
  36. 神田博

    神田国務大臣 いろいろの場合があり得るかと思っております。いずれにいたしましても事態が事態でございますから、すみやかに解決できるような方向に努力をいたしたい、こう考えております。
  37. 河野正

    河野(正)委員 結局、総理の裁断がなければ党内事情も許さぬというような実情ではなかろうかと思うのです。それならそれで早く裁断を願って、一挙に解決するという処置をとっていただきたいと思うのですが、その点はいかがですか。
  38. 神田博

    神田国務大臣 これは先の先のことでございますが、とにかく急ぐ問題でございますから、そういう事態が早く解決がつくということならば、そういう場合もあり得ると考えております。
  39. 田口長治郎

    ○田口委員長 小林進君。
  40. 小林進

    ○小林委員 お尋ねをいたしますが、やはり緊急医療の是正の問題についてお尋ねするのでありまするけれども河野委員がお聞きになりましたから、なるべく重複をすることを避けるようにして私は厚生省側の御意向をお尋ねしたいのであります。  まず第一番目には、中央医療協答申がこの四月の十八日に出て、あなたの前任者でありまする小林厚生大臣はこれを受けて、そして六月の何日でしたかには少なくとも緊急是正答申作業に入って、十月からこれを実施したい、こういうことをしばしば言明をされておったのであります。それがたまたま総裁選挙が済んだあとで閣僚の入れかえがあった。総理大臣には変わりがございませんし、自民党内閣には変わりがないわけでございます。大臣がおかわりになっただけであります。新大臣をお迎えすると、その前厚生大臣からの引き継ぎがどういうぐあいになったのかは知りませんけれども、十月実施、大体八%の値上げという線が消えてしまった。いま御答弁にありましたように、診察料という新大臣の新構想をお盛りになって、まだ実施期日もさだかではない、できれば十二月一日からでも実施したい、そういうお考えなのでありますが、大臣がかわればものごとも変わる、自民党内閣が社会党内閣になるなら、ものごとが変わっていくことはわかるわけでありますけれども、同じ政党の中でかくもものごとが変わっていくという這般の事情はどういうことでありますか。派閥が変わったからかくも変わった、それも一つの案でございましょうけれども、そこら辺を、少し国民の納得がつくような形でお聞かせを願いたいと思うのであります。これは私ども想像がつきますから、大臣、花ことばは要らない、正直なところをひとつお聞かせ願いたい。
  41. 神田博

    神田国務大臣 いまのお尋ねでございますが、小林前厚生大臣も、答申どおりでできることならすぐおやりになったと私は考えております。答申どおりにできないところで引き継ぎになったと私は考えております。また前大臣もそう申しております。そこで私、はからずも責任者になったわけでございまして、客観情勢をにらみまして、そして先ほど来河野委員お答え申し上げたような考え方趣旨でこれを運んでいきたい、こういうことでございます。
  42. 小林進

    ○小林委員 私はしごく率直なお答えだと思う。そのとおりだと思う。私は派閥の関係ではないかと思いましたけれども、それはそれでなくて、やはり中央医療協答申だけでは、三者ですか担当者、保険料支払い者側がどうしても納得ができないというところで、新たな打開の方策を新大臣が御苦心になって、非常に御苦心になったその結果で、いまお話のようなそういう妥協案といいますか、妥協案と言っちゃ失礼でありますけれども、何か八%を一二%程度に引き上げる、再診療でございますから、三十日ごとに切りかえて三百円を——いま乙表は六十円でございますけれども、甲は二百円でありますから、甲乙の初診療をなくして一本にして、できれば三百円ぐらいに引き上げて同額のものを一カ月ごとに払うように持っていきたい、そういう構想をお出しになったのでありますけれども、しかしその構想をお出しになったことによって一体妥協の道が発見できるのかどうか。中央医療協のままではできないが、この新構想でできるのかどうか、これがやはり私どもの重点であります。先ほどから一生懸命河野さんとあなたの問答を聞いておりますと、どうもきちんと核心に合うものがない。声なき声もあるようだし、あるいはわたしのところは激励している者もあるといろいろお話がありますけれども、それは大ぜいの中でありますから声なき声もありましょうし、特に大臣におべっかをかねて、いいことをやったというのもありましょう。いろいろなことはありますけれども、やはり政治は力でございますから、これを押し切ってほんとうにやるだけの確信と信念と腹がまえをお持ちになっているのかどうか、さもなければ、混乱にまた一つ混乱の渦巻きを大臣が巻き起こされただけに終わってしまう。これを私ども非常におそれる。先ほど派閥の話がございましたけれども、特に新大臣は有名な大野伴睦氏の右腕で、あの方はなくなられた方でありますが、非常にりっぱな方であります。特にあの人の信念は妥協にあった。足してぱっと二で割る、これが大野先生の政治家としての妙たるゆえんであります。あなたはその薫陶を受けられて、しかも最右翼に列せられる子分中の子分です。清水一家で言えば、大政、小政の大政くらいに該当される方でありますから、この一二%何がし、一カ月で再診料をくれなどという案が大野方式から出てきたのじゃないか、そう私は受け取ったわけであります。決して大野方式が悪いと言うわけではないのでありますけれども、おやりになるならば、やはり大野さんのように大きな政治力とそれを突き抜けていくという力をお持ちにならないと——私は、なくなられた大野さんを決して誹謗するわけではありませんが、大野さんには若干知性、科学性が欠けていた。現代民主政治においては、いわゆる科学性、巧みな理論というものが必要です。理論がなければ人は納得しない。科学性がなければ人は納得しません。いまあなたがおっしゃった一カ月ごとに再診料を振り回すということは、どう考えたって理論的な裏づけがない。あなたのほうに小山さんというかみそりのように切れる答弁をする人もおりますけれども、彼がどういう答弁をするか知らないが、彼にしたって、一カ月ごとに再診料をくれなどということは、科学的、論理的に裏づけられるものは何もないと思います。これは妥協案ですよ。あなたがいみじくもさっきおっしゃったように、高度の政治理論というのはそのとおりなんです。高度の政治理論です。あと残るは妥協です。腹です。情念です。その信念をお持ちになっておられるかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  43. 神田博

    神田国務大臣 激励をちょうだいしたわけでありますが、政治はやはり現実でございますから、そういう現実と、いまお述べになりましたように実行でございます。政治は実行でございます。現実の問題を処理するところに政治の妙諦があり、また必要性があるわけでございます。そういう意味で私は、不退転の決意でこの問題は私が処理したいと考えております。したがいまして、支払い側にもまた診療側にもひとつ十分納得していただく、また中医協に対しても所信を十分述べまして、そして最悪の場合でも、不本意だが厚生大臣がそういう熱心なことであるならばひとつ暗黙の了解をしようかというところまではつけたい、私はこう考えております。そういう所信で邁進したいと思っております。
  44. 小林進

    ○小林委員 私はまずそこに至る難関の一つとして、いまでも支払い者側は、これは労働組合側あるいは経営者側を含めて、いずれも中医協答申そのままに実施をしてもらわなければわれわれは応じられぬ、重大なる決意があると言っているのです。これは、われわれのほうに直接にはきませんけれども、間接にかすかに聞こえるところでは、どうも従来にない強硬な態度で臨んでいるようでございます。この点、一体中医協答申というものはどの程度に厚生大臣を拘束するものであるか。どうしてもその答申どおり実施をしなければならぬ——あなたも先ほど言われたように八%を尊重する、それを尊重しながらなおかつひとつ上積みをしよう、こういうことを言われておるけれども、その上積みはいわゆる中医協答申に対する裏切り行為だ、断じてそれは認められないと一方の支払い者側は叫んでおるのであります。こういうふうなものの法律上の解釈と言ってはなんでありますけれども、正確な解釈を承っておきたいと思います。
  45. 神田博

    神田国務大臣 厚生行政の責任者は厚生大臣でありますから、中医協に諮問して中医協の御意見を聞き、中医協の御意見を尊重することも大事なことでありますが、厚生大臣諸般情勢をよくしんしゃくいたしまして、そうして多少の変更を加える場合には、これはこのほうがベターだということで削るものは削るし加えるものは加える、しかし根本の精神は尊重していく、こういうことであってかまわないのじゃないか、一〇〇%尊重しなければならぬというような拘束はございません。またこれは、ひとり中医協だけに限らず、すべての調査会を通じた一貫した考え方だと思います。そこは私はき然として考えております。もし中医協の言うとおりにやるならば、厚生大臣責任問題だと思います。むしろそういうひきょうなことをやりますと、保険局をもっと縮小してもよい、それだけで行政をやっていくのかということになる。ここらはやはり理屈を言うとそういうことになりますが、しかし私はそういう理屈まで申し上げないで、よく実情を責任者としての私の立場から申し上げて御了解をつけたい。最悪の場合でも不満足の満足はとれる、あるいはもっと満足していただいてもけっこうですが、そういうかたい決意で解決したいと考えております。
  46. 小林進

    ○小林委員 私は大臣のその精神はごもっともだと思います。それは米価審議会においてもしかりです。他の審議会においても、やはり答申機関というものは大臣をそのまま拘束するものではないと思います。精神を尊重するということで十分だと思います。  そこで、これは私の質問を続けていく一つの過程におきまして必要なものですからお尋ねしますが、ほんの事務的質問でありますが、三十九年度の総医療費は大体どのくらいになりますか。来年の三月までのことですから予想がつきますね。
  47. 小山進次郎

    ○小山説明員 いろいろ動く因子が入りますけれども、大体九千三百億程度と一応いまのところ推算しております。
  48. 小林進

    ○小林委員 その九千三百億というのは、例の中医協答申の八%を十二月からでも実施をする、それを加えておっしゃったのか、それを全然加えないで、現在のままの診療報酬医療体系で三月末になったら九千三百億になるとおっしゃったのか、その点をもう一回伺いたい。
  49. 小山進次郎

    ○小山説明員 いまおっしゃったとおり、引き上げを含まないで予想以上に大きくなっておるという印象を持っておりますけれども、大体ならしてみますとそのくらいにいきそうだ、そういう推算であります。
  50. 小林進

    ○小林委員 ちょっと計算のほうが弱いものですからお尋ねしますが、そうすると中医協に基づく八%を、十月はできませんけれども、かりに十月から実施したとしたら、九千三百億円にどれだけのものがプラスになるのか。厚生大臣は先ほど数字を明らかにおっしゃらなかったが、一応三十日ごとに更新をするという再診料も含めて、大体一二%を十二月から引き上げると仮定いたしますと、三月末日に総医療費はどのくらいになるか、ちょっと頭のいいところですっと計算してください。
  51. 小山進次郎

    ○小山説明員 十月から八%の引き上げをやりますと、ただいま申し上げました数字に二百五十億程度加わることになります。
  52. 小林進

    ○小林委員 総費用ですね。
  53. 小山進次郎

    ○小山説明員 もっともこれは、いまの私の申し上げ方がちょっと不正確でしたが、この中にはたとえば労災とか自費とかあんまとか、そういうものが含まれておりませんから、二、三十億加えて考えなければならない結果になるかとも思いますが、労災はいまのところ社会保険と別にきめておりますので、すぐにこれが上がるということはないと思いますけれども、やはり一方が上がれば向こうも何らかの意味において影響される、こういうことにはなると思います。  それから、いまおっしゃった一二%十二月実施ということになりますと——十月じゃいけませんですか。十月なら控えがございますが。
  54. 小林進

    ○小林委員 十月でもいいですよ。
  55. 小山進次郎

    ○小山説明員 十月でございますと、先ほど申し上げた八%の二百五十億というのに対応するのが、大体三百七十五億でございます。
  56. 小林進

    ○小林委員 総医療費は大体一兆円の線に近づいております。たいしたことではございません。そこで私は、実はいままでは、中医協答申があったり厚生省が苦労をされたりいたしまして、長い間疑問を持っておりました点をここで御質問申し上げることを若干遠慮したのであります。その遠慮をいたしておりましたということは、この中医協答申の中にも非常にふに落ちないことが幾つもある。いよいよ新大臣をお迎えいたしまして、大臣も非常にかたい決意でこの問題に取り組んでいられるようでありますから、私はここで率直に、この医療問題を解決する過程において解明をしておかなければならぬ問題としてひとつお尋ねをいたしたいのでありますけれども大臣承知のとおり、私はお医者さんでも何でもない。医療担当者でもない、もちろん私は保険者でもない、そういうことでありますから、私自身の言うことは一体だれを代表して言っているかというと、私自身もわからない。だが、私は、御承知のとおり国民健康保険の被保険者です。被保険者で一番多額の保険料を私は払っている。国民健康保険被保険者の中の最高料を私は払っている。だから私は、気持ちの中では、医療担当者や支払い者側と称する市町村や日経連や経団連、そういう方々の気持ちよりは、医者にかかる国民健康保険の被保険者という立場の色彩が一番濃い。これをひとつ大臣はお認めをいただきたい。この立場で私が御質問しているというふうに御了解いただければ、やや私の気持ちが通じるかと思うのであります。  この気持ちで御質問を申し上げたいのでございますが、医療費というやつがいま一番問題になっている。この医療費というものは公共料金なりやいなやという問題、これは政府が昨年の十二月に公共料金なりという見解を明らかにしたのでありますが、この問題は医療費をきめる上において重大なる一つのポイントと見ております。これはほんとうに公共料金とお考えになっておりますか。大臣お答えになるのがめんどうくさいならば、うしろにいられます小山保険局長に納得のいくような説明をしていただいてもけっこうでございます。
  57. 小山進次郎

    ○小山説明員 医療費をきめる場合に、国民のうち特に需要者の立場に立っていろいろ考えなくちゃならぬ面がある、こういうことは、いかなる場合においても議論として一つあり得ると思います。ただそれを公共料金というふうに言うか言わぬかという問題は、実を申しますと、公共料金の定義のきめ方にかなりいろいろの考え方があるわけであります。政府がこの問題を扱うことになりました場合でも、そこの点は、結局議論としては詰まっていないのであります。公共料金の中に入るのか、あるいは公共料金ではないけれども、公共料金について考えるようないろいろの考慮を特別に加えなければならぬものという意味で、公共料金等の中に入れるかという点は詰まっていないわけであります。結果として扱いは、等の中に含まれたもの全体を通ずるような扱い方でさしあたりは今年度扱う、こういうようなことであの閣議決定がされたわけでございます。
  58. 小林進

    ○小林委員 公共料金という概念は、あなたのおっしゃるとおり実に不正確なものだ、政府自身が便宜的にかってにきめて、自分たちの値上げしないもの、やや国民にアピールするものを公共料金だと称して一年間ストップするというふうな、明確な学問的な根拠を示したものは非常にあいまいでありますけれども、ただ公共料金という名前を冠して、ともすると供給者や需要者の切実な要求や願望を、そういう権力的な名前で押しつぶそうとする、そういうにおいが私はけしからぬと思っている。そこで、医療費というものは一体何かという問題なのでありますけれども、これを自由診療のときで考えてみると、そもそも医療費の発生というものは医師と患者の自由な話し合いの中できめていくわけでしょう。これは需要者と供給者の取引なんです。その間の中できめなければいけない。だから同じ診療を受けても、同じとんとんを受けても、昔は金持ちと貧乏人では医療費が違ったのです。それから名医といいますか、専門医と一般の医者の間でもちゃんと料金は違った。だから個々の契約なのです。民法上で言えば契約でしょう。民法上で言えば、医師の行なう医療というものは、ぼくの調べるところによると準委任契約であるという。これが妥当な解釈です。この準委任契約は、特別の信頼感と尊敬という精神的要素が強い契約関係だ。したがって受任者は、労務の対価としての報酬を受けるのであって、単純な労務の提供をするのじゃないのです。それに対する支払いが医療費じゃない、その中には尊敬だとか信頼だとか、もろもろの精神的要素が入っているのだ。だから医者は単純な労務者でないのです。その報酬の中には謝礼だとか、時には車代といったようないろいろな要素が入っておりまするし、委任者もまた金銭ずくめでなくて、尊敬をあらわしてお願いをするという態度でこの診療報酬というものは定められていた。どうでありますか。これが診療報酬の本質ですよ。それが保険診療になると、患者を含めて被保険者が支払いをするのだ、これが保険料であります。健康保険の場合には雇い主が半分払う。国庫負担として税金からも支払う。地方自治体も支払いの中に入る。医師はその中から医療費を受け取る。よって国民の側からすれば、どれだけ出せば完全な医療が受けられるのか、またその負担がどの程度に耐えられるのかということを問題にしてくる。これは当然であります。しかし、そのために一体どれだけ負担すればいいのかという財政の面ばかりに重点を置いてくると、先ほども河野さんの質問にあったように、生命や健康は軽視されてくるという最も重大なポイントに突き当たる。いま医療費の問題、支払い者側も担当者側もここで騒いでいる問題は、いわゆる財政の面に重点を置いて、人間の生命と健康を軽視するかどうかということです。人間の生命と健康を大切にしなければいけないから、金よりは命だ、こういうことが摩擦の焦点だというふうに私は解釈をしているのだ。だから医者の側からすれば、近代的な科学の進歩によって、最高の診療を行いたいという本能がありますよ。その大事な仕事が一定の予算のワクの中に——小山さん、あなたがそのワクをつくるのですよ。そのワクの中に押し込めてその中でまかなえというのだ。どうも医師の意思というものはない。契約の本質はここで失われている。一方的にワクをつくって、この中でやれ、この中でやれというのです。そうでしょう。そこに問題がある。だから、ここには、医療の本質を尊重するという最大のものが置き忘れられている。私は、いまでも医者の味方じゃないのだし、保険者の味方じゃない。私は一被保険者だ。国民健康保険の被保険者としてこの争いを見ていると、一番大切な医療の本質を尊重するという面が置き忘れられているのではないか。  そこで、私は自分の意見を述べながらあなた方にお尋ねするのでありまするけれども最終的に、医療費決定については、被保険者と雇い主とが医師と相談して自主的にきめていく、私はやはり本質はそれでなくちゃならぬと思う、これが困難であろうとも。いま別なことばで言えば、供給者と需要者ですよ。これがやはり納得の上で話をきめて、私は医療費というものを幾ら払います。幾らもらいましょう、そのかわりあなたの生命と健康は責任を持ってやります。そういう形のものが、私は医療費決定する原則でなくちゃならぬと思う。どうですか。私はそう思う。しかし私は、だからといって中央医療協というものを否定しようというものではないのです。三者構成ででき上がっているけれども、いまでき上がっている三者構成の医療協の答申というものは一体何ですか。肝心のいわゆる第二委員ですか、医療担当者、専門技術とその労働を奉仕する供給者側の意思というものを無視して——そうでしょう。三者構成といえども公益委員と称する者といわゆる支払い者側、この側だけがあの八%引き上げだ、入院料だ、やれ補綴だ、やれ初診料を若干上げます、こういうようなことをして、それは三者構成で多数決とはいいながら、その内容を詰めていけば、供給者側の意思というものは全部土足にけられている。そうでしょう。支払い者側公益委員と称する第三者みたいなものだけれども、これは供給者じゃない。この諸君だけで一方的に医療費というものをきめている。これは、医療費の本質をきめる意味において、私は、ここに問題が混乱している根本の理由があるのじゃないかと思うのです。どうですか、大臣。これは大切なことなんですよ。こういう三者構成の審議会なり協議会なりというものに対する矛盾は、私は非常にあると思う。この医療費というもの、診察費というものは労働賃金とは違うのです。全く違うのです。これは労働賃金も含めてもろもろの要素が入ってくる。これはまたあとで御質問しましょうけれども、それにしても、その労働賃金で労働者は労働を提供する。資本家や国家は労働者の労働の提供を受けるが、その賃金も、いわゆる原則は労使対等の立場で自主的にきめなさいというのが労働法の原則だ。そうでしょう。けれども、国家公務員なんかにはもろもろの要素があって第三者の人事院というものを設けているけれども、しかし人事院が、いわゆる第三者機関としていろいろ労働者の賃金を決定する。労働者はいやなら人事院の決定に服しませんよ。われわれはいやだと言う権利はある。同じように、医師側だってそうですよ。第三者機関とはいいながら、医師の意思を無視して支払い側公益委員と称する者で一方的にきめて、医者は何でもいいから医療を提供しろと言ったって、医者はいやですよ。提供いたしませんと言って反対する権利はある。だから、そんなことを、やれ中央医療協答申だ、やれ公共料金だという形で一方的に押しつけたところで、問題は解決するはずはないと思う。しませんよ。米価審議会だってそのとおりだ。米価審議会だって、やはり生産者と消費者と、あるいは公益委員と三者構成でやっているけれども、農民側だって、いかに米価審議会の答申だって、供給する農民の納得できないような答申に対しては農民は納得しません。いやだと言って抵抗する。抵抗するのはあたりまえです。これが原則です。これは労働者の賃金の場合においても、米をつくって提供する農民の場合だって同じです。農民の意思というものは、納得ずくめの賛成というものがその価格の中に認められないなら、その賃金の中に認められなければ、問題はすなおに解決するはずがない。そういうわかり切った理屈を、あなた方はこの医療費決定の中に、そういうだれでもわかる矛盾をいま繰り返している。大臣どうですか。それを前の小林厚生大臣なんというものは、中央医療協決定したのだから、これは一部も動かすわけにはいかない。そのままを必ず実施するという、肝心な供給者側の意思というものを土足にけって、思い上がったことを言っている。そんなものは行政じゃないですよ。私の主張が間違っていますか。大臣がごめんどうなら、小山さんどうですか、ひとつ答弁してください。
  59. 小山進次郎

    ○小山説明員 話の筋道として、先生お話しになったことは、私もそのとおりだと思います。ただ事実について、先生のおっしゃっていることは少し異論がないわけではないのであります。  先生のお考えを最も忠実に実行に移そうという提案が一部から行なわれているわけでありまして、元来、先生が言われたような非常に貴重なものを含んでいる医師と患者の関係であるのだから、そこに第三者が結果的に介入せざるを得ないような方式というものは、この際考え直さなければいかぬ、こういう考え方なんであります。そういう考え方からくる提案の一つは、保険というものをいまのように現物給付にしてしまうというのは、非常に狭い範囲について行なっていたときに可能な方式なんであって、国民全部が医療保険の中に入ってくるというような時期になるとなかなか無理があるぞ、こういうふうな考えから、むしろ両者基本関係を尊重するという考え方に立って、それは患者と医師との関係においてきめる。あと患者と保険者との関係においては、その間一定の基準に従って金の決済をすればよろしい。これは普通現金給付といわれている方式でございます。ただ、これにはこれで非常に問題があるわけであります。しかし、非常にきれいな関係を成立させようとすれば、これはやはり一つ考え方であるわけであります。  それから後の問題については、私も基本的に、特にいまの国民医療における供給者と需要者との関係考えてみると、何といっても供給不足ということは否定できない事実なんであります。数年たったってこれは改善される見込みはない事実であります。そうだとすれば、大まかな考え方として、あまり需要者側のことだけを考えたのでは問題が片づかない。やはり供給というものが順調に続けられていくということを確保することを常に考えておかなくちゃならぬ。そこまでは先生おっしゃるとおりだと思うのであります。ただ現実の中央医療協の運び方が違うとおっしゃる点が、おそれ多いのでありますが、小林先生少し言い過ぎだと思うのであります。それは、やはり先生のおっしゃるように、供給者である医療担当者側がこれこれにしろ、これこれにすべきだという要求をし、これに対して支払い側は、われわれはこれこれしか出せない、こういうふうになって両者の意見が対立したので、これを調整する役割りを持っている人が一つの案を提案して、それに同調する者が結果的に支払い者側だったというので、ああいうかっこうになったわけであります。これはやはり基本的には、先生がおっしゃる関係が成り立っているわけであります。とは申し上げても、現実の問題としてどうかという、先ほど来の大臣と先生との間の政治論の問題というのは、これはあり得ると思いますが、ただ事実はそういうことだったということを私としては申し上げたいのであります。
  60. 小林進

    ○小林委員 小山さんの局長の立場としては、一応中医協がやっぱり公益委員を入れて公平な立場で判断をしたのであって、担当者側の意思も十分反映しているというくらいに答弁しなくちゃならぬと思いますけれども、われわれは、結果から見れば、残念ながらそう見るわけにはいかないので、支払い者側公益委員が一緒になって、肝心の医師側の意思を全然緊急是正の中では認めなかったことが、私は医療費の本質論から見て若干間違っておるのではないかというふうに考えたのであります。ここまで解明していけば、第一の問題は明らかになりましたから、大臣、やっぱりこういうことをよく考えて、何といっても生産者や労働者や——医師は労働者じゃありません。ありませんけれども、そういうものを供給する側の意思というものを尊重しないで価格をきめるなんということはだめです。そんなものはきまるものじゃありません。そのところを、いま少し最初の診療費、医療費の本質論をよく研究していただいて、間違いのない筋を追ってきめるようにしていただきたい。  それから第二番目の問題について、これもお尋ねしたいのは緊急性の問題なんです。この緊急性の問題について、私は非常にふしぎでならない。この緊急性の問題としても、中医協が御答申になったのは、結局入院料、初診料、往診料等の診察料、歯科の補綴、インレー、充てん、調剤技術料、こういうふうに四点をあげられたのであります。もちろん入院料、そのとおりです。いまの池田内閣で物価が値上がりしている。食費が上がる、人件費が上がる、調味料が上がる、材料費も上がるでは病院も困りましょう。でありますから、われわれの仲間であります労働団体の結成をいたします労働福祉中央協議会、こういう諸君も、八%の値上げは早く実施されるようにひとつお願いする。その理由はと言えば、入院料の差額徴収が行なわれているじゃないか。食事も低下を来たして、われわれはこんなまずいもので生きていけないじゃないか。その他の被保険者がもろもろの被害を受けている。とても労働者の立場じゃたまらぬから、早く値上げをしてくれというのでありますが、そういう気持ちは私は十分わかる。十分わかりますけれども、しかし今日の医療体系の中で、一体入院料や歯科補綴を上げることが一番の緊急大事であるかどうか、私は非常に疑問を抱いておるのであります。  具体的な例を一つ申し上げましょう。私、この休みじゅうに方々を回ってみたんだけれども、まだ私の郷里の山村なんかにいきますと、いわゆる医者のいない山、村がたくさんあります。一つの例を申し上げますと市です。もう大臣はよく御存じですが、小千谷市です。市の二里山の中に入っても、そこでは二十戸か三十戸の家しかない。自動車なんか行かない。私は市民ですけれども、ジープなんかに乗ってはとてもあぶなくて、見渡すようながけですから、おりていったのですけれども、そこに行きますとちゃんと学校はある。生徒が何人いるかと言うと、一年生から六年生まで二十五人、先生が二人だそうです。ところが、市が財政困難だからというので、先生を一人減らすといったら、部落の全部が市役所にむしろ旗を掲げてすわり込んだ。おれたちの子供も、子供のかわいさには変わりがないのだ。おれたちの子供の教育を軽視するような市長に対してはただおかぬ、命を覚悟せよという、それほどの勇ましい勢いで談じ込んで、とうとう先生一人減らすことを押えちゃった。彼らはそれほど教育に対して権利意識がある。自分たちの子供も教育を受ける権利があるという権利感意識が強いから、断じて引かない。  ところが、そのために先生一人減らそうとした部落に一体医者がいるか。医者はさっぱりいない。おまえたちは一体国民健康保険に入っているのか。いや入っています。とにかくこの村は貧乏村で、住民税、市民税を払わない者が半分だ。免除です。あとの半分は、均等割住民税四百円しか納めていない。あなたたち、一体国民健康保険に加入して幾ら納めておるか。一戸平均年間四千円でございます。大体月四百円です。いわゆる住民税の十倍から十二、三倍払っておる。そうか、それほど高い国民健康保険料を払っておるのなら、病気になったらすぐ医者は飛んでくるだろうと言ったら、飛んで参りません。電話がありますから、急病だからひとつ医者に来てくれと言うと、どこだ、これこれだ、とてもあんなところには医者は行けない、医者の行くところではない、おまえたちほんとうに苦しいのだったら、村じゅうの人が戸板に乗せておりてこい、それなら見てやる、それでなければだめだ、こういうことを言われますから、われわれは、医者なんかにかかるものだとは思っておりません。それでやっぱり年に一人か、ともすれば二人くらい、医者が間に合わないで死んでいくのがこの部落にあるという話です。そんなことをやられて、諸君らは一体あたりまえだと思っておるのか。だけれども、医者が来てくれないからしようがありません。それなのに高い国民健康保険税を払っておるのか。取りに来るのだから払わざるを得ません。こういう話なんでありますけれども、君たちは、自分たちの子供の教育に対してはそれほど自分たちの権利を主張する力がありながら、しかし、子供の教育より大切なのは人間の命だ、君たちの健康なんだ、命なんというものは教育よりももっと大切なんだ、その命を虫けらのように扱われておって、一つも保障もされないでそういう高い税金をふんだくられていて、その権利を主張しないで、あなた方いいと思っているのか、矛盾と思っていないのか、これは厚生省が悪いのじゃない、厚生大臣が悪いのじゃない、あなたたちが一番悪い、せっかくこんなにいい新憲法が定められても、その憲法を活用する権利意識がないあなたたちが一番悪い。私はこう言ってきましたけれども大臣、私は長い話を申し上げませんけれども一つの例ですから申すのです。医療費の緊急ということなら、私はこれが一番緊急性だと思っておる。そうじゃないですか。住民税も払わないような低生活にいる低所得者から、四千円も五千円も血の出るような保険税をふんだくっておって、そうしてその人の命を虫けらのごとく扱っておって、これで緊急性がないとおっしゃるのですか。一年間に一人か二人は、医者に間に合わないで必ず死んでいきますと言っている。人間の命は地球より重いとだれかが言いましたけれども、いかに貧乏人であろうと、山の中であろうと、人間に変わりがないでしょう。そういう現実があるのに、厚生省はなぜやらないのです。きのうきょうの問題じゃない。病院の入院料が商いの安いの、それももちろん緊急でしょう。歯を入れることも緊急でしょうけれども、こういうふうに高い保険税を収奪せられながら虫けらのように投げ出されている人間の命に対しては、緊急性がないというのですか。小山さん、緊急性があるかないか、ひとつお聞かせ願いたい。
  61. 小山進次郎

    ○小山説明員 そういうことについて解決の道を考えるということは、非常に緊急なことだと思います。
  62. 小林進

    ○小林委員 なぜ一体、あなたは大臣のそばにおる側近第一号として、緊急性のあるこういうことの答申を求められないのですか。経済成長政策に基づく何とかの医療費緊急是正云々などといって、それほど経済の成長に基づく医療費の緊急性があるなら、なぜ一体こういうことをまっ先に答申を求めないのか。はなはだ悪いけれども、私に言わせますれば、いま支払い者側——保険庁の保険部長おるかい。あっちこっち資料飛ばして、いわゆる政府管業保険が赤字になっておる、どうにもならない、やれ組合保険も赤字になってどうにもならない。そんな赤字が重大問題ですか。人間の命に関しますか。赤字になったら、政府が金を出してやればいいじゃないですか。私に言わせれば、組合保険が赤字になったから早く医療費緊急是正せい、政府管掌保険が赤字になるから早く緊急是正せいなんというのは、いわば国民の中の中産階級だ。医療が潤沢と言っては悪いですけれども、相当に恵まれている諸君だ。いつでも、かゆくなれば医者、痛くなれば医者、かぜを引けば医者にかかる、こういう社会保障の恩典に浴している諸君が、医療費緊急是正なんと言っていま大騒ぎしているけれども、その下にいて、声も出せないでいる、命を虫けらのように扱われておる諸君の緊急是正というものをなぜ考えないか。庶民不在の医療費緊急是正じゃないか。私は少し言い過ぎかもしれませんけれども、あなたが取り組んでいるのは中産階級だ。むしろ医療保障の恩典に浴している上流階級の諸君の運動の中にだけ巻き込まれて、ほんとうに医療を必要とするこういう人たちのために、一つもこれを是正しようということがない。そんな緊急是正が一体どこにありますか。そんなのはだめですよ。この前でも、私はいま思い出したわけじゃないが、無医村地区の問題はどうするか。今度の三月の通常国会で言いましたよ。都会の中だって医者がいなくなっているじゃないかと前の厚生大臣に言ったのです。小山さんに言ったのです。都会の中に無医村があることを知っていますかと言ったら、答えられなかった。冗談じゃありませんよ。東京のまん中だって医者のいないところがたくさんある。夜の十二時、一時になって、腹が痛い、盲腸だなんて電話をかけても、医者は来ませんよ。それは産婆さんの往診よりも金にならないから、そんなところに、夜の夜中に起きて眠い思いをして聴診器を持って飛び出すようなばかばかしいことはない。医療は天職でございますなんと言って、医者がばかづらこいて夜の夜中走って歩きませんよ。そしていわゆるわれわれ国保の被保険者などというものは、都会のまん中においても生命の保障が与えられない。これが緊急性がないとおっしゃるのですか。ないとおっしゃるなら、国民皆保険なんかやめてもらいたい。私に言わせれば、あなた方の国民皆保険というのは、国民一人残らず保険料で税金をふんだくるための皆保険だ。医者にかかれないような皆保険でいい、保険料だけはふんだくってやれ、こういうような残酷非道な医療行政がそのままに放任せられているという、この事実であります。大臣、この緊急是正の問題をどう処置してくれますか。緊急性がないとおっしゃるなら、ないでよろしゅうございます。私も覚悟がございますから。ひとつお答え願います。
  63. 神田博

    神田国務大臣 いま小林委員のおっしゃったようなことは、私も耳にいたしております。これは非常に遺憾な点でございまして、しかもその主たる原因がどこにあるかという問題です。結局医療の適正保障がない、こういうところに基本的な問題があるのじゃないか。そこで緊急是正をしたい、しこうしてまた、その次に急いで本格的にあるべき姿にしたい、こういう私の所存でございます。そしてひとつ逐次改めてまいりたい、また無医村等についても十分ひとつ善処いたしたい、こう考えております。
  64. 小林進

    ○小林委員 大臣が十分誠意を持って御配慮になるということでございますので、この問題は確証をとって云々すべき問題ではありませんから、ひとつ大臣の誠意に待ちますけれども医療行政というものは、緊急の名において本末を転倒しているのじゃないかということを痛切に感じますので、この点はどうかひとつ御考慮をいただきたい、こう思うのです。  私が中医協答申に対して疑問にたえない第三の問題は、医業の実態調査の問題であります。これも私、わからないのです。それで厚生省にお伺いしますけれども厚生省は今年の二月二十四日に医業実態調査要綱というものを発表された。これはあなたの前任者のときです。それによりますと、調査は、全国の病院、診療所を経営主体別、規模別などに分けて無作為に抽出し、病院は六百六十施設——病院は六千六百ありますので、その施設の十分の一です。一般診療所は内科の施設四百三十で、四万三千施設のうちの百分の一です。内科以外の施設二千四十、これは二万四百施設のうちの十分の一です。歯科診療所は百四十施設で、二万八千施設のうちの二百分の一です。総計三千二百七十施設について医業実態調査をする。第二項の調査要領としては、第一には施設の概況、第二には経営収支、第三には財政の状態、第四には診療行為別(投薬、注射等の別)頻度、第五には職員の給与、第六には稼働状況の各調査。第三に、時期といたしましては昭和三十九年六月一ぱいにこれを実施する。第四に、原則としては、医療費の適正化に着手する以上、その判断の基礎となる医師の経営実態調査は不可欠であるとなし、その結論が出ないうちは、現在日本医師会中央医療協で要求する再診料の問題も含め一切の適正化に応じないという態度を堅持している、こういうことだ。なお第五番目としては、厚生省はこれに並行して、一に保険財政及び国民の負担に関する調査、二に医薬品等価格の調査、三には社会保険各法及び生活保護法による薬品の使用状況調査なども実施をする、こういう要綱を発表せられた。これは小山さん、六月一ぱいにおやりになるということですが、おやりになりましたか。
  65. 小山進次郎

    ○小山説明員 それは私の担当でございませんので、あまり断定的なことは申しかねますけれども、必ずやるとはおそらく発表した人間は言っていないと思います。やりたいということで、これから関係団体と協議に入るのだということで言っているはずであります。われわれの省内できめられたことはそれだけであります。
  66. 小林進

    ○小林委員 保険局の担当でなくどこの担当ですか。官房ですか。
  67. 小山進次郎

    ○小山説明員 ほとんど全部が医務局でございます。それから先ほど先生がおっしゃった最も緊急だという問題も医務局の担当でございます。   〔委員長退席、長谷川(保)委員長代理着席〕
  68. 小林進

    ○小林委員 これは医務局を呼ばなければいけませんな。医務局がいませんければ来ますまで、これは重大な問題でありますので、ひとつ次に移りますけれども、それでは私は大臣お尋ねいたします。  前の小林厚生大臣は、いまお話がありましたように、医療費の適正化のためにはその判断の基礎となる医師の経営実態調査は不可欠である、その結論が出ないうちは再診療を含む一切の適正化に応ずることができぬという態度を堅持する、こういうことを言われておるのでございますが、新大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  69. 神田博

    神田国務大臣 従来の厚生省の方針がそういうことであるということを、いま変更しようという考えは持っておりません。
  70. 小林進

    ○小林委員 前厚生大臣の御見解をそのまま踏襲せられて、やはり医業の実態調査をおやりにならない限りは、先ほど河野さんにお答えになりました医療費基本的な調整等には着手せられない、こういうことでございまするか、いま一回お聞かせを願いたいと思います。
  71. 神田博

    神田国務大臣 そういうふうに一応きまっておるとすれば、私もちょっとここのところはまだ勉強が足りぬところがあると思いますけれども、そういう方針をいま変更しようという考えを持っていない。そういう方針であればそういう方針でまいりたい。変更する事情があれば、これはまた別でございますが……。
  72. 小山進次郎

    ○小山説明員 私もそのときに関係しておりましたので、正確に申し上げたいと思いますが、再診料云々というものを、少なくとも医業の経営実態調査にからませて言ったことはないのでございます。適正化という問題は医業の実態をつかまなければきめられないことだ、こういうことは繰り返し確かに前大臣は言っております。それから、それはそのときによって若干のニュアンスの相違があると思いますけれども、着手をしないというふうに言い切ってはいないと思います。ただ適正化ということは、やはり経営の実態調査というものができなければできないことだ、こういうことでございまして、それをやらない限りは適正化に着手をしないというふうには言っていないように私は思います。
  73. 小林進

    ○小林委員 私はこの問題についても非常に疑問を持っておる。医業という行為の中には医業の報酬、技術料と申しますか、その人の持つ高度の学問と技術そのものと、これに要した費用の実費支弁と、私は二つの要素があると思う。たとえば薬剤とか材料の原価だとか、あるいは介助者の報酬だとか、あるいは入院だってそうだと思う。入院した場合には、やはり医者の技術そのものと、これに要した費用の実費支弁、薬剤費、材料の原価、あるいは介助費、そのほかに入院に対するサービス、入院料だとか、看護サービス料だとか、寝具サービス料だとか、食事サービス料その他、医業ということばの中にはそういう要素が含まれている。その中の薬剤だとか材料だとか、あるいは寝具だとか食費だとか、あるいは看護のサービスだとか人件費だとか、こういうものはいまおっしゃる医業の実態調査をおやりになって、一体物価の値上がりはどうか、寝具の料金はどうなっておるか、食事の値上がりはどうなっておるか、材料の値上がりはどうか、だから経営が赤字になるとか黒字になる、こういう調査はいいだろう。私が申し上げる医業に含まれている前半の報酬そのもの、いわゆるその医者の持つ技術そのものの実態調査を一体どうしてやるのですか。この実態調査をどういうふうにおやりになるのか、これは私はどうしてもわからない。これをひとつお聞かせ願いたい。
  74. 小山進次郎

    ○小山説明員 先生がおっしゃるそういう技術に対応する報酬というものが、結局その技術者の生活というものを成り立たせるわけであります。この生活をどういうふうに成り立たせなければならぬかということが、やはり一つの観点になるわけであります。およそ世界各国を見渡してみて、最高の技術ともいうべき医療技術者というものはどの程度に社会的に処遇されることが適当かというような観点というものが、やはり医療報酬の決定には一つ入ってくるわけであります。そういう場合において、現実の問題として、日本のそういう人々が純粋に技術だけで押えられておるものとしてどれだけ収入があるのだろうかということをつかまなければ、現状がいいか悪いか——これは大方の判断はあまりよくないという判断のほうが多いようでありますが、それと、それからどの程度に悪いか、それをどの程度によくしなければならぬか、こういうふうな議論が発展していかないわけであります。そういう意味で医業の経営調査というものが必要だ、こういうことがいわれておるわけであります。そして、個々の行為そのものに対する対価をどうするかということを、実態調査でやろうとしておる考えを持っておるわけではないのであります。おそらく先生おっしゃるように、盲腸なら盲腸の手術というものだけを切り離してみて、そしてそれが幾らであることが最も適当だというような議論はなかなかしにくいものであろうと思います。そういうふうに考えてやっておるわけであります。
  75. 小林進

    ○小林委員 小山さん、私はこの問題に関する限りはあなたの答弁でも納得できない。その医者の技術が社会的にいかに処遇さるべきや、これはそのとおりです。この医者の技術が社会的にいかに処遇されるべきかというその標準は、いまの焦点ではないけれども、端的に言えば、世界の水準といいますか、これは一つの参考でありましょう。ただしかし、その医者が経てきた長い間の学問あるいはその学問を経た後の経験、そういうものの社会的地位というか評価、あるいは信頼、尊敬等も含めたときには、お医者さんなんというものは宗教的な価値もある。その人の前にすわっただけでも病気がなおる、あるいはその人に前にすわってもらっただけで死んでも極楽に行ける、こういう宗教的な要素もやはり診療報酬の中に換算しなければならぬ。そのお医者さんの小林進のような張りのある声を聞いただけでも、なおったような気がするという哲学的な要素も医者にはなければならぬ。医者というものは、音声から態度までが全部病気に影響してくるのですから、そういう目に見えない精神的な要素もやはり報酬の中に加えなければならぬという問題が出てくる。だから最高の学問的な、学術的な評価、その最高の技術専門に対する評価、宗教的評価から哲学的評価、相談役としての要素もある。医者に患者が向かい合って、先生私の病気はこれからどうだろう、その相談に応じてやはり病気をなおしていく相談料も含めていく。もろもろの要素が入って、そこでそれを総合して診察料というものが出てこなければならぬと私は思う。それをあなた方の医業の実態というのは、何か聞いてみると診療行為、稼働状況、医者が何十人診療したかというような稼働状況を見る。医者が単純な労働者になって、いわゆるスクーター医者とか神風医者とか、何でも走り回った医者が収入が多いなどという状況、医者の報酬をきめるようなあなた方の実態調査が、つとめてそういう神風医者を促進するようになってしまうということを私はおそれるのです。小山さん、あなたにそういうことを言っては釈迦に説法だが、ここに一つ物があって、この物は一万円の材料で一日かかってつくった製品だ。これを千円で三十分でつくった製品と並べてみれば、一万円かけて一日かかった製品のほうがりっぱで優秀なものであることは間違いない。けれども、これが医者の場合になってくると、一万円の材料を使って一日かかって手術をした結果と、千円の材料で一時間でもって手術をした。その手術が結果において同じだった場合には、これは千円で一時間のほうがよっぽど価値があるのです。名医なんです。ところが、そういう名医のその技術がいまの診療報酬の中にあらわれてきますか、医療費の中にあらわれてきますか。腕が悪くて、一万円の材料を使って一日かかったほうがよけい診療報酬、技術料をもらうのです。巧みな神わざをもって千円で一時間でぱっぱっと仕上げた医者が満足な診療報酬ももらえない。それが今日の医療体系じゃないですか。そういうような矛盾をそのままあなた方は解決しようとしないんだ。そうしてその神風ドクターが医者の中から哲学をなくし、近代性をなくし、科学性をなくし、尊敬と信頼をなくして、何でもいい、ちゃかちゃか万年筆を持って、ペンを持って飛び回っている医者だけがもうけるような、そういう診療報酬をおつくりになろうとしておる。その考え方が大きな間違いなんです。私の言うこと、大臣、間違っていますか。
  76. 神田博

    神田国務大臣 私もそういうふうに考えております。全く同感でございます。
  77. 小林進

    ○小林委員 そういうふうにいま大臣に同感をいただきまして、私も光栄の至りでございます。そういうことで御賛成をいただきますならば、そういう立場に立ってひとつ私はこの技術、医療の実態調査などという、あまり愚にもつかぬことをおやりにならぬで、経済関係はいいです。経済関係は、物価の値上がりその他で変動がありますからそれはいいが、最高の学問、最高の技術を受けた医者の報酬、技術に対する技術料というものは、先ほど小山さんが前半に言われた、いわゆる社会的にいかに処遇すべきかという、その面でいいのです。私ども会議員だってそうじゃないですか。国会議員はいま本俸十八万円もらっている。おまえたちの生活の実態を調査してからおまえたちの俸給をきめろなんて、だれかそんなことを言った人がおりますが、失敬なことを言うな。絵の値段をきめるにしても、梅原龍三郎に、おまえの生活実態を調査しなければおまえの値段はきめられない。大学の総長をつかまえて——あるいは大学の教授でもいいですよ。この学問という崇高なものに携わっている学者の報酬、賃金、月給を定めるときに、おまえの生活状態を見なければきめられぬと言って、学者のうちに行ってみんな調査したら学者は受けますか。やはり最高のそういう技術、学問を修めてきて、人間の生命と健康、多くの信頼と尊敬の中で、それを責任を持ってやっていこうというお医者さんを、裏の台所のなべかままでひっくり返して、かまどの灰まで見なければその診療報酬をきめられないなんという、そんな愚劣な政治であるからいけないのです。繰り返しますけれども、私は医者の味方じゃないですが、そんな愚劣なことをやってはいけません。どうか大臣、そういうことで、この医者の技術料などということであまりわれわれの神経を悩ませないように、やはりちゃんとしたものをきめてください。  あまり私だけやっておりますと皆さま方にいやがられますから、やめておきたいと思います。  そこで私は四番目として申し上げたいことは、国民の健康を保障する国の責任が一番悪いということを大臣に申し上げたいのです。大臣は、いま緊急是正の問題ですから、大蔵大臣関係して、また六十億出せの百四億出せのと予算折衝で御苦労だと思いますけれども、この際ひとつ社会保障の中の医療制度というものをいま少し高度の立場から考えていただきたい。一番悪いのは、支払い者側や担当者側や被保険者側に立つわれわれが、こうやって声を大きくしてがちゃがちゃ言わなければならない根本の理由は、社会保障と銘を打ちながら国は何も責任を持っていないということなんですよ。国が、やれ組合健康保険だ、やれ政府管掌健康保険だ、国民健康保険だ——市町村が保険者になっておる、責任者になっておる国民健康保険にしても、三割、三割五分までは国が持つ、そうして各町村別、各医療団体別、みんなでこぼこの乱脈のような医療制度をそのままに放任しでおくものだから、われわれのことばで言えば、これは厚生省の分裂政策だ。だから組合健康保険は組合健康保険で、自分たち優秀なものだけ守っておる。こっちの健康保険と一緒になるのはいやだ、あっちの健康保険と一緒になると赤字になってしまう、こっちのほうだけは赤字にならないように何とかしなければならない、そういうような各個ばらばら、組合は組合同士いがみ合って争いをしておる。厚生省はお手並み拝見。支払い者側が立ち上がって反対して、医者が悪いのだ。医者のほうは医者のほうで、労働組合がけしからぬ、いや、日経連がけしからぬと言っていがみ合っておる。本質はあなた方が一番悪いのです。厚生省が一番悪いのです。出すべきものを出せばいいのですよ。それを出さないで、いわゆるこの社会医療制度のしわ寄せというものを、貧乏な低所得の被保険者、七万人のお医者さんにしわ寄せして、そうして両者を戦わしておる。そんな社会保障というものがありますか。社会保障というのは、憲法の二十五条にあるじゃないですか。健康にして文化的な生活を国が保障する責任と義務があると書いてあるじゃないですか。何も責任を持たないで、そうして両方をかみ合わせておる。これが私は、非常にいまの医療制度が混乱をし、混迷をしておる根本の理由だと思います。大臣、どうかひとつ——あなたは七年前に大臣になられて、神田厚生大臣の名声はかくかくたるものでございました。今日再度大臣をお迎えいたしまして、私ども欣快でございます。歴代大臣の中で、私は神田厚生大臣に一番期待をいたします。あなたはやはり政党人として、大野伴睦先生と一緒に苦労をなめてこられた。人の気持ちがわかります。それは小林前厚生大臣の官僚内閣とは違います。その意味において、この際ひとつあなたにがんばっていただきたいのはこの問題ですよ。あなたに言うのは釈迦に説法ですが、英国あたりは御承知のとおりです。英国の社会保障サービス法なんかでも、被用者、一般住民を問わず、もう国民は全然差別しないで、全部国が医療費を持っておる。そうして平等な、しかも日本の組合健康保険よりも一つと優秀な医療を全部給付しておる。医が一本になっておる。そうなると被用者保険、組合健康保険、政府管掌保険だと言って国民同士がいがみ合っている必要はない、国が全部責任を持って平等の医療を無料で供給しておるのですから。私は早く国が医療の担当者になって、あまねく平等の医療を山の中にもやるという英国式ですよ——ソビエト方式になればもっと優秀ですけれどもね。ソビエトは憲法で禁じておる。どんな者からでも医療費は取ってはいけない、金を取ることは罪悪だ、取れば監獄にぶち込まれるということで一銭も取らない。完全な医療費を提供しておるというけれども、日本だってせめて社会保障くらい、すべて完全にというわけにはいきませんけれども医療体系くらいはひとつ貧乏人も金持ちも、山の中も都会のまん中も、国のおかげさんで安心をして医者にかかって生きていけるというような制度をひとつおつくりにならなければ、私はこの問題の解決にならないと思う。そのためにあなたは、金はいつもも——保険問題は金が要るのです。さっきも計算しましたら、三十九年度はいよいよ一兆円の医療費、その一兆円なんか何ですか。こんなものは高度成長政策のこの過程の中において、国民の生命と健康を守るためには、一兆円の金くらいは鼻うた歌っても出せる金です。あのニュージーランドにおいても、国家総予算の三分の一以上は社会保障費に使われております。イギリスでも北欧の三国でも、国家予算の中にはみんな三割以上の社会保障費というものが含まれている。あなたの自民党内閣は、三本の柱の中に社会保障政策を一つ入れた。重要な政策の一つだと言いながら、三兆三千億円に達するような膨大な予算の中に社会保障費というのは四千億足らず、一〇%そこそこじゃありませんか。そんな恥ずかしいような予算の中でことしはまた二〇%伸ばそう、そんなけちな構想ではなくて、全然構想を新たにしてください。戦争中には、御承知のとおり、例の軍事費というものが国家予算の中で半分以上占めておりました。あれはいい悪いは言いませんでした。軍事費というものは国家予算の中に半分以上占めているものだと思って、だれもいい悪いは言わない。さわらぬ神にたたりなし。その軍事費が新憲法とともになくなった。その軍事費のために国民は泣かされた、私の兄弟も死んでいった。これは悪かったというので新しい国家が生まれて、今度は人民大衆を大切にしましようというので新憲法がしかれた。人民を大切にする方法は社会保障しかありません。ならば今度の新予算の中には、社会保障費が軍事費になりかわって国家予算の五割くらい盛ったっていい。それくらいの構想でこの問題にぶつかっていただかなければ、私は医療費問題解決にはならないと思います。大臣にあまり思い切ったことを申し上げて失礼でありますが、特に御奮闘をお願い申し上げたいと思います。時間がありませんので、御答弁を一応お聞きしておきます。
  78. 神田博

    神田国務大臣 小林委員から烈々たる激励をちょうだいいたしまして、私も先年欧米あるいは北欧等を回りまして、日本の将来もああいうものにできるだけすみやかに持ってまいりたい、こういう念願でございます。そういう線で大いに検討いたしたいと思っております。社会保障の問題はいわば超党派の問題ですから、前進また前進、こういうことと考えております。いろいろありがとうございました。大いにがんばります。
  79. 小林進

    ○小林委員 大臣の心強い御答弁を承り、私も安心いたしました。私も超党派的に、国の重点施策の重要なものになるようにしむけてまいりたいと思います。ますます御奮闘願います。  時間がありませんから簡単に申し上げますけれども、自治省にお尋ねいたしたいのは、ほかでもない、九月二十一日に自治省が発表になられた保険給付を半額負担、国保財政の改善策、事務費負担もふやす。自治省は非常にけっこうなことをお出しになったと思って、私はあなたを激励に来たのですが、これは真意なのかどうか。ちょっと読み上げますと、自治省は最近著しく悪化している国民健康保険財政の改善策を検討していたが、このほど対策をまとめ、四十年度から実施するよう厚生省との話し合いに入った。この改善策は、一は保険給付額に対する国の負担率三五%を五〇%に引き上げ、国民負担の増加を防ぐ。それから二番目には、国保運営の事務費について国庫負担を規定どおり増額し、市町村の持ち出しをなくす。この二点が骨子になっておるのでございまして、いろいろございますが、この問題は確かにおきめになって厚生省折衝に入られたのか、新聞の報ずるとおり間違いがないかどうか、お知らせを願いたいと思います。
  80. 柴田護

    ○柴田説明員 前々から、国民健康保険財政につきましては国会方面でも御審議をわざらわしておりますし、私どもも、実はこの問題につきましては非常に心配をいたしてきたのでございます。前に国民健康保険税の低額所得者に対する負担が非常に重いということで、国民健康保険税を、一昨年でありましたか、低額所得者につきまして軽減をいたしました。それについて調整交付金でもって補てんをいたす措置をとってまいりました。それに引き続きまして、三十九年度から市町村民税の負担の調整という形で、三十九年度と四十年度の二カ年にわたりまして、市町村民税の課税方式統一という問題を打ち出してまいりました。現に法律案を提案いたしまして御賛成をいただきました。本年度は第一年度の課税方式になっておりまして、それに着手いたしております。ところがその後におきまして、低所得者の国民健康保険税の軽減措置をとりました後におきまして給付率の引き上げ問題が起こりました。そこで、給付率の引き上げ問題につきまして私どもがとやかく言うわけではありませんけれども、ほうっておきますと、それだけのものが国民健康保険ではね返ってくる。そうすると、国民健康保険税の負担の合理化、次いで住民税の負担の合理化という方向で持ってきました低所得者対策というものに対して逆の結果が出てきはせぬか。かたがた、私どもがその実態を調べてみると、国民健康保険財政のために赤字がだんだんふえてまいりました。これはたてまえ上いままで財政計画のワク内に置いておきましたし、また措置といたしましても、それだけで始末するたてまえになっております。このたてまえそのものに問題がないわけでございませんが、そうした意味合いにおきまして措置をいたしていきますと、結局一般会計から国保会計に持ち出すということになります。そうすると、政府の期待いたしました財政措置というものが、運用上におきましてそのとおり行なわれないことになります。そこで、国保財政につきましてはこの辺で、現在のたてまえをとっております以上におきましては、国庫負担金というもののあり方をもう一ぺん再検討してもらいたい、こういうことから私どもといたしましてはお話のような案を事務的にきめまして、厚生省にもお話し申し上げておる次第でございます。
  81. 小林進

    ○小林委員 その構想は実によろしい。本来はむしろ厚生省が先になってやるべきことを自治省が先べんをつけられて、厚生省より頭がいいのですが、その発表によると、あなた方の所見によると、三十七年度決算によると赤字額が全国で九十三億円、赤字団体の数は千五百六十八団体にのぼっておるということでありますが、三十八年度の決算はできておりますか、まだありませんか。
  82. 柴田護

    ○柴田説明員 現在はっきりいたしておりますのは三十七年度の決算であります。三十八年度は現在集計中であります。
  83. 小林進

    ○小林委員 集計ができましたならば、お忘れなく報告書をいただきたいと思います。あなたはちょいちょい忘れるけれども、お忘れなく出していただきたい。  そこで、自治省によると、保険財政悪化の原因は、国民全体として医療内容が向上している、二番目には、国保加入者は老人、子供を中心に低所得者が多く、疾病率も高い、三には、事務費に対する国の負担が不合理である、こういうことがあげられているのと、昨年十月、国保の給付率を本人について五割から七割に引き上げたことから、国保財政の悪化が強まってきた。厚生省の四カ年計画で、家族に対する七割給付が四十年一月から実施されれば、国保財政の赤字がさらに大きくなると見られる。こういうことで、いま市町村の間では国民健康保険返上の声も出ている。これはいいところを見られたが、非常に多いのです。返上論が非常に多いから、自治省がこれを重視して対策に乗り出したことは非常にけっこうでございますが、私どもは、いま申し上げますように、根本的には市町村が保険者になっていることは反対です。大臣の言われるとおり国自体が保険者になって、最終的には保険者を一本化して、全国一律に責任を持たなければなりませんけれども、当面は国庫負担五割という出し方はよろしいと思っている。事務費は大幅に実費補償をしなければならない。こういう二つ構想はよろしいが、これは、自治省は厚生省のどなたと交渉になられましたか。
  84. 柴田護

    ○柴田説明員 保険担当局であります。
  85. 小林進

    ○小林委員 それじゃ小山さん、それに対して厚生省のお考えはいかがでございますか。
  86. 小山進次郎

    ○小山説明員 国民健康保険の財政が全般として悪くなっていることは、御指摘のとおりであります。ただ、悪くなっている程度の判断については、若干違うようであります。私どもが見ているよりも、自治省が見ているほうが大きいようであります。これは私、少し大き過ぎると思っております。それから来年度の対策としては、事務費を完全に解決するということは、われわれ、どうしてもやるべきことだと思っております。来年度の予算要求でも、例年の規模では考えられない大きい事務費の増額を要求しております。これは来年度一挙に解決するつもりでございます。いまの予算額でございますと、実際に市町村で使っている事務費の四九%程度でございます。かつて七二%であったときが数年前にあるのでありますが、毎年三%なり六%落ちてきまして、とうとう四九%まで落ちたわけであります。事務費だからというので、とかく最後になるとこれが控え目にされたという結果がこうなったのでありますけれども、このことによる市町村の持ち出しというのは、思いのほか大きいわけであります。したがって、ことは事務費であるけれども、いまの国民健康保険の財政問題の解決のための基本的なことの一つだ、こういう意味で来年これを解決するということにしたわけであります。  それから給付費の問題については、現状は、ごく大まかに言いますと、七割給付をしているという前提に立ちますと大体四割五分の補助をしている結果になっているわけであります。定率の基本的な補助が二割五分、それから世帯主の七割をしている場合にはそれの四分の三、したがって一五%、一割五分、それから世帯員についてやる場合には同じく一割五分、したがって世帯主のほうも世帯員もやっているということにいたしますと、七割給付に対して二割五分と一割五分を足したもの四割、このほか調整交付金が五%ありますから四割五分(「一割」と呼ぶ者あり)いや、しかし一割の中には世帯主に対する補助金の分が入っておりますので、それが抜けるとちょうど一割か五分くらいに、自動的に計算上は落ちるかっこうになるわけでございます。問題は、これを将来どう整理するかということでありますが、七割給付の問題は、四年計画でいまやっております。この七割給付を法律で制度化いたしますときには、いまの問題はあわせて制度化する。その場合に、これはもちろん大蔵省には非常に言い分もあるわけでありますが、われわれは、現状でもすでに四割五分大まかに言って補助をしているんだが、これでも非常に苦しいという実態があるとすれば、当然四割五分にさらに五分程度を加えた、総体として七割給付に対して五割という補助というものは当然現実論としてあり得ることだ、こういうふうには考えております。ただ、これを自治省が言うように来年度からやるかやらないかということについては、われわれはやらないということをきめて、そしてさらに先の問題としていま準備を進めておる、こういう状況でございます。
  87. 小林進

    ○小林委員 残念ながら私は、いまの小山さんの答弁はまことにいただきかねる。自治省は自治体の実際を見て、非常にいいところをつかんでおられる。小山さんががちゃがちゃ言われたその数字のほうは、私はいささか弱いのであります。もっばら地方自治体に住んでおる住民が、住民税と国民健康保険税、年金税がどんな比率に個々の国民の生活を圧迫しておるか、私は去年から一生懸命に資料を集めておるのでございますけれども、私どもの結論も自治省の結論に近いものが出ておる。返上論が出るのもあたりまえ、やはり厚生省は、同じ内務省の分かれでもこうまで違うかというくらい考えが違っているのは残念でありますが、時間がありませんので、私は自治省の主張が通るように、私も鼓をたたいて自治省を支援いたしますし、厚生省小山局長の蒙を開くように今後もこの委員会で大いに発言を重ねていきたいと思います。  本日はこれで質問を終わりたいと思います。大臣、たいへんどうもありがとうございました。
  88. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員長代理 午後二時まで休憩をいたします。    午後一時二十五分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  89. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。滝井義高君。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私、官房長官を総理のかわりにお呼びして、やはり内閣としての医療費問題に対する考え方を聞きたいと思いましたが、何か総理との連絡があって来られないということで、これは次会に回さざるを得ませんが、午前中における河野君の質問を通じてある程度の厚生大臣考え方は理解することができましたけれども、もう少し詰めて質問をしておきたいと思います。何せ一カ月に一回しか開かれない委員会ですから、したがってやはりわれわれ野党としても、この問題に対する党の態度決定なりわれわれ自身の方向も決定しなければなりませんので、政府のものの考え方なり資料というものをある程度出してもらって、同じ土俵の上でものを考え実施に移していくことが必要だと思いますから、少し詰めて質問をしたいと思うのです。  本年の四月十八日に答申が出まして、その答申に基づく質問を四月二十二日にいたしました。当時、小山保険局長は、この答申によれば引き上げの幅は八%である、しかし一割を上回ってはいかぬ、こういう御答弁があったわけです。したがって、そこに二%の弾力を持っていることになるわけです。ところが、この八%ないし一割の引き上げの幅に対して九月十八日の神田構想は、きょうの河野君の答弁にもありましたとおり、プラスアルファを加えるということになったわけです。したがって、このプラスアルファを加えるということは、昨年高度成長に伴う医療費緊急是正をやるときの資料というものは昭和三十五年と三十七年の医療経営の実態調査、主として病院の実態調査から資料をとって、そういう八ないし一〇が出てきたという御答弁があったと記憶しておるわけですが、そうしますと、その八ないし一〇にプラスアルファを加える理論的な根拠というかファクター、昨年いろいろな資料をとって検討した当時、四月十八日の答申以後においてどういう情勢の変化があったからプラスアルファの上積みが必要だ、こういうことが出ておらなければならぬと思うのです。われわれが見得る情勢としては、公共料金が軒並み上げられようとする情勢がある。すでに一部バス料金その他上げられたものがある。あるいは生産者米価がすでに上げられているわけです。消費者米価も上げられようとしている。   〔長谷川(保)委員長代理退席、委員長着席〕  人事院はすでに勧告を出したわけです。七・九%のアップを出した。このことは、公的医療機関医療従業員の給与体系というものは国家公務員に準ずるということに多くなっておるわけです。したがって昨年より七・九%上がる公務員給与は、実施の時期が五月になるか十月になるか、あるいはその中間になるかという問題だけであって、大体七・九%上がるという客観情勢は明確になってきている、こういうファクターはわれわれは常識としては考え得るわけです。しかし厚生省としては、やはりこれは神田さんが言われるように医療協議会の答申を尊重するという立場に立つからには、上積みをするファクターというものを国民に明示する必要があると思うのですね。これは一体どういうファクターをお考えになって、その後の情勢の変化としてプラスアルファを加えることになるのか。
  91. 神田博

    神田国務大臣 いわゆる稗田構想プラスアルファは理論的にどういう構想かというお尋ねでございましたが、私、中医協答申の本文を見ましても、御承知のようにああいう経緯を経た答申でございまして、少数意見が付記されたことは滝井委員承知のとおりだと思います。二十対三の少数意見というものがついておりました。納得できない。しかもこの納得できないという少数意見は、さっきもいろいろ質疑応答にもありましたとおり、保険側と支払い側医療関係側ということに考えればフィフティ・フィフティなんです。力関係から言えば、半分ずつの力であります。まあ公益委員が中に入って、そして支払い側が同意して多数決というか、そういうような情勢から打ち出されている。ですから、理論的に根底をなすものは、その答申案そのものの中にも私は要望があると思うのです。少数意見というものは、諮問に対する答申でございますから、やはりある程度検討を加える必要があると私は思うのです。それからお述べになりましたような公務員のベースアップというようなこともしんしゃくする必要がございます。その他いろいろ諸般情勢を勘案いたしまして、そしてプラスアルファにしたい、こういうことでございます。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 いままでの厚生省の答弁というのは、数字に基づいていまのようなあいまいな、政治的答弁が行なわれていないわけです。それだけに神田さんは非常に弾力を持ち、政治性を持っておるとわれわれは思うわけです。だから一応議論の過程というものは、ある程度積み上げたものになっていって、厚生省としては一割二分の結論を出しました。医療協議会は八分ないし一割でございます。厚生省の数字を積み上げたら一割二分でございました。客観的に政治的に見ると、これは一割二分では事態の収拾がつかないので、一割三分に政治的にいたしますというときなら、いまの答弁でいいのです。しかしいま私がお尋ねしているのは、この前の答弁は八分ないし一割、一割を上回らぬというのが小山さんの答弁だったわけです。それをまた当時の小林厚生大臣は納得をしておったわけです。ところが、私実はその添付意見、少数意見の取り扱いを聞こうと思ったら、先にあなたが、支払いと受け取り、需要と供給の関係から言えばフィフティ・フィフティだということで、そこに公益委員の意見が加わったので、答申というものに比重か加わっておるというようなニュアンスの御答弁があったわけです。実は私は少数意見はどの程度に尊重するのだということを聞こうと思ったら、フィフティ・フィフティで非常に尊重する御答弁があったから、これはいいわけです。ところが事務的に、いま言ったようにどの程度引き上げるかという、その引き上げのファクターをやはり説明しておいてもらわぬと、四月二十二日の政府の答弁ときょうの答弁とは、国民が速記録を読みますと飛躍があるわけです。これでは神田さんが医師会に味方しておるのじゃないかと痛くもない腹を探られる。われわれもまたそんな感じがしたわけです。そこで、政治的な答弁としてはいいのですが、これは事務的な積み上げの答弁としてはどうもぐあいが悪いのですね。そこでこれは小山さんにこの前の委員会で御質問を申し上げたときに、四月の段階では、六月には具体的な作業を完了いたします、そしてそれを医療協議会にかけて、公示して実施するには一カ月くらいかかります、こういうお話があって、これはおそらく十月くらいになるのじゃないかというようなことを推定しておったわけです。ところがあなたのこの前の結論では、大臣も変わったし内閣の改造もあったのだから、私にも検討の時間を与えてくれ、滝井君、自分の結論を出すのは八月の終わりか早くても九月の初めだ、こういうお話があったわけです。そこで九月十八日にあるいは一つの結論として神田構想が出たかと思いますけれども、それならば八ないし一〇にプラスアルファをつける、何かやはりここに数字上のものが事務当局としては出てきておらないと大臣の裏づけにならぬ。私はそれを聞きよるわけです。それを今度は与党なり支払いなり受け取り側なり、全体の日本国民の世論を見ながら、大臣最終的に総理と相談して裁断をきちっと下すという段階ならば、いまの答弁でいいのです。少数意見もあったし、それから答申内容等も十分勘案するし、公務員のベースアップ等のファクターもあったので、自分事務当局の出した案をこういうふうに手を加えて政治判断でやったのだ。大臣、答弁が一歩早いのですね。だから事務当局はどういうファクターで修正する意思があるのか、それを聞かしておいてもらわぬと、われわれは国民に説明できない。前のものならば一割を上回らぬという言明がここでありたわけですから、これは同時にやはり需要側、支払い側を納得させる上においても非常に必要だと思うのです。
  93. 小山進次郎

    ○小山説明員 午前中の質疑応答でも明らかなように、いわゆる神田構想といわれるものは、非常に高度な一つの発想であります。そういう発想に基づいて何とか具体的な案をまとめてみようというのが、いま私どもに与えられている指示でございまして、いまのところまだ先生おっしゃるような意味では話しておりません。いろいろ考えておるところであります。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この前に質問をしたときに、九月の初めまでには事務的な詰めができるということを言われたわけですよ。ところが、きょうになると何もない。そうわれわれを、四月−九月、やがて十月になんなんとしているのですが、そう気やすく引っぱられちゃ困るのですね。こういう問題はガラス張りでやらなければいかぬのですよ。一国の予算の根本をゆるがす大問題です。一円上げたら、あなたの午前中の説明だったら、九千三百億ですから、九百三十億上がることになる、算術計算でいけば。これは一国の予算の根本をゆるがす大問題ですよ。だからここである程度事務的に詰めたものを説明するくらいでなければ、医療協議会には資料を出すけれども、国会のほうには見ざる、言わざる、聞かざるの三猿主義で何も言わぬということでは審議ができないのですよ。ですから、そういう点をもう少し小山さん、明らかにしておいてもらわぬとどうもならぬですね。  それじゃお聞きしますが、その答申は御存じのとおり入院料とそれから初診、往診料等の診察料と歯科の補綴、インレー十点と、それれから調剤技術料と、四つの項目に限って手直しをすることになっておるわけですね。その場合に、人件費、物件費が上がり、専門技術者としての医師の所得を確立して、そして同時に、医師の稼動時間が他のものよりか非常に長くなりながら生活の向上をはかっているというのを是正しなければならぬ。そのためには次の四項目をやりなさいというので、いまの四項目を是正することになったのですね。その場合に、一体政府としては、入院料についてはどういう項目を中心に直そうとするのか、まず御説明願いたい。
  95. 小山進次郎

    ○小山説明員 入院料は、基本的な入院料も低いということで問題になっておりまするし、また基準看護、基準給食あるいは基準寝具、そういうものも少ないということが言われておるわけでございますが、入院料といわれる場合には、それら全体についてそれぞれの各科のバランスがなるべくとれるように、こういうような考慮が基本になってそれぞれの点数がきめられる、こういう順序であります。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 それはわかるのですが、どこに重点を置いて——いま言っているように入院料というものは、あなたの言われるように基本の入院料があるし、それからそれに基準の給食がつくし、それから基準看護がつくし、いろいろのものがついておるわけです。人件費、物件費が上がる、そして医師の稼働時間が非常に長いために、それを是正しなければならぬということになっておるわけです。それを是正するためには、入院料の中心は一体どこに置きますかということなんです。是正の中心は——これは数字を聞いておるわけじゃないのですよ。ものの考え方を聞いておる。もう結論が出ておるはずです。入院料は、たとえば給食を中心に直すなら給食を直しますということが出てこなければならぬ。小林君が言っておったように、われわれ労働者は給食が悪くなって困っておるじゃないかということを言っておったのですが、どこを中心にお直しになるのですか。
  97. 小山進次郎

    ○小山説明員 全体について、それぞれ同じ程度に考えられるべきものだと思います。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。そうすると入院料については、基本入院料その他それぞれ寝具とか給食とか看護とかありますが、それらのものについては均等に同じ程度に直していく。そうしますと、次の初診料と往診料等の診察料と、この前から質問をいたしました「等」の中にはこれは全部入るんだ、いわゆる点数請求表の中にある診察料の項目にあるやつは全部入ります、いわゆる分べん監視のところまで全部入ります、こういうことだったわけですね。そうすると、あなた方としては、当時、しかし答申では再診料というものについては反対です、「等」の中には全部入りますけれども、再診料については反対です。こう言われておったのです。今度は一体どれとどれとどれをお変えになるのですか、ここでひとつ変える項目だけお教え願いたい。
  99. 小山進次郎

    ○小山説明員 初診料は、いずれにしても、午前中大臣お話しになったように、これは変えられるべきものだと思っております。それから往診料については、私どもいまの研究の段階では、これは今回は含めるべきではない、やはり純粋に基礎診察料といわれるものを審議の対象とすべきだ、こういう判断でございます。したがって、いまいろいろ私どもが検討しておりますのは、この初診料と、いわゆる神田構想といわれる一つ基礎診察料、そういったようなものを検討しておるわけであります。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも世にもふしぎなことが行なわれることになるわけですね。「初診料、往診料等」と書いておる、その初診料はやらぬということになったわけです。その前まではそんなことはおくびにも出さなかった、初診料、往診料をやる、やらぬのは再診料だけだという御答弁だったわけです。今度は往診料はやらぬということになって——この前はもちろんやるとは言いませんでしたよ、しかし、往診料については否定はしなかった、私は一つ一つ尋ねたのですから。そうして、それなら「等」の中には全部入りますねと言ったら、全部入りますと言うので、それならば、全部入りますなら、それから先はわれわれは全部政治的に判断しますと言うたら、小山さんは、いや、医療協議会は再診料は認めぬということになっております。ああそうですかということで、私はすわったわけです。そうすると、それくらいの弾力が、厚生省当局も、初診、往診料等と書いておる初診は当たるけれども往診はだめだ、こういう自由裁量がある程度できるということになると、これはそうたいしてめくじらを立てて議論をするほどのことはないのですね。ですから、ここで大きく答申の二項における——しかもこの前の御答弁では、入院というものは病院関係、初診、往診等は主として私的医療機関、開業医関係、それから歯科の補綴その他は歯科、それから調剤技術科は、これは私は医者にも適用するかと言ったら、医者には適用しない、こういう御答弁があったわけです。そうすると、医療担当者側の重要な往診についてはやらずに、今度は新たに神田構想が加えられることになるわけですが、その場合に初診というのは、これは甲表、乙表一本にするのですか。片や二十点、片や六点、われわれは昭和三十四年十一月以来甲乙表の一本化を主張して、国会は議決をしておるわけです。当時の大臣は、すみやかに国会の議決に従って実施をいたしますという答弁をした。サボタージュをやっておるわけです。そうして舘林君にしたら、いやいや、おりに触れて検討しております。まるで風のまにまに検討するようなことを言っておったからぼくは怒ったのですけれども、あれから三十四、三十五、三十六、三十七、三十八、三十九年と、もう生まれた子供が数え年六つになる。何人保険局長がかわったかわからぬです。そうしてまだおやりにならぬわけです。そうしますと、私は、緊急是正というものの中に、将来の甲乙二表一本化の展望というものをやはり持つ必要があると思うのです。そうするとこの際、初診料甲と乙とを一本にしておくことは非常にいいことだと思うのです。どうですか、もしあなたが否定する気持ちがいままでなければ、これは私の質問でするほうがいいと思うのです。この際思い切って二十点の初診料と六点の初診料を——あるいは減るほうがあるかもしれません、あるいは両方ともふえるかもしれません、いろいろの方法があると思うのですが、これは一本化することが非常に必要だと思う。これが甲乙二表の一本化の一つの足場になると思う。だから、何だったら甲表と同じように乙表を二十点に引き上げてもいいんです。この際、初診の頻度はそう多いことはないんです、一回きりですから、これを引き上げるということも一つ方法だと思う。何か緊急是正をやったら、それを足場にして将来の展望を開いておかないと、それはそればかりで、次は次で新しくというような行き方では、これは芸がなさ過ぎると思うのですよ。
  101. 神田博

    神田国務大臣 いまの滝井さんの御意見、ごもっともだと思っております。十分検討したいと思っております。
  102. 滝井義高

    ○滝井委員 検討するのでなくて、そういう一本化をする意思があるのかないのかということですよ。それならば、逆にお尋ねすれば、二十点のほうもいじって、六点のほうもおいじりになるんですか。往診はいじらぬということははっきりしたんです。変更するのは二つしかない。初診と基礎診察料をつくりましょう、こういうことでしょう。これは賛否ありますよ。賛否ありますけれども神田厚生行政の基本的な構想としては、そういうことですと事務当局大臣も一致しておるわけです。そうすると、初診における甲表と乙表二つとも変更がありますかということです。
  103. 小山進次郎

    ○小山説明員 甲表も乙表も変更があります。それから、将来の展望を持つということは、つとめてしたいと思います。ただし、それは両方が同じになるということではないのです。こういうことに考えております。
  104. 滝井義高

    ○滝井委員 甲表も乙表も変更したい。しかし、将来の展望を持ちたいが、甲表と乙表を一本にするということではないとおっしゃるんですね。御存じのとおり、問題は総医療費のワクの中で勝負をすればいいんです。そうしますと、甲表の中心になるものは入院料です。これはもういままでの経過からいくと、乙表は初診料と基礎技術料以外はないわけですね。大体、大局的に見るとそういうことになる。そうすると、甲表で初診料を上げてやるか、下げれば入院をふやせば同じことになるんですね、総医療費のワクの中で考えればいいんですから。甲表全体の総医療のワクの取り方を、入院と初診で勘案すればいいんですから。この際、緊急是正は、供給側にしても支払い者側にしても、総医療費の一二%にするか一四%にすれば、納得すればそれからの配分は、私はそう大きな問題ではないと思う。そう大きな問題じゃない、取り分が同じになればいいんですから。そうしますと、入院と初診あるいは基礎診察料のところのバランスの取りぐあいで、甲表と乙表との初診料をできるだけ近寄せておくことが非常に大事なんです、一本にしなくても。そういう考え方はあるんですね。
  105. 小山進次郎

    ○小山説明員 初診料というものの中に含まれているもののうちで、本質的なものは、つとめて同じにするという方向でいろいろ検討すべきものだと思います。
  106. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、初診料の中に含まれる本質的なものは、一体何と何と何がありますか。
  107. 小山進次郎

    ○小山説明員 初診料の中に含まれる本質的なものは、これは何といっても基礎診察料的なものだと思います。それ以外のものは、先生よく御存じのとおり、いわば点数払い的な処理によって初診料という項目の中で甲表に含ましめるということになっているようなものがそれに当たると思います。
  108. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、乙表の六点の中には付加的なものはほとんど入っていないですね。ほとんど大部分が基礎診察料。われわれがいままで政府のほう、あなたの後輩なり先輩なりの答弁の中に、六点の中にたとえば検査料が入っているということは聞いたことがない。二十点の中にはいろいろなものが入っております。何が入っておるかわからない。答弁ができなかった。これは私が言ったように全くつまみ金でございましたという答弁を、現在年金福祉事業団の理事長になっている高田さんが保険局長時代におやりになった。それから舘林さんも、医療課長時代にしたかどうかちょっと記憶が明らかでないですが、とにかく先輩は私にしておる。したがって、共通のものは最大見ても六点です。そうすると、あと十二点がプラスアルファとして甲表に加えられたということになるわけですね。それは検査料その他のものもいろいろ加えられたわけでしょう。ささいな技術料的なものも加えられておるでしょう。そうすると、乙表については、六点の上に加えたって、それは基礎技術料のいわゆる国民生活水準の上昇に伴う上昇にしかならないのじゃないですか。たとえばプラス三点か五点加えたって、そういうことにしかならぬでしょう。
  109. 小山進次郎

    ○小山説明員 乙表の初診料の中に基礎診察料以外のものが入っていないという点については、私も同様に考えます。おそらくこれはほとんど議論の余地はないと思います。甲表の中にはそれ以外のものが入っておる。ただし、甲表の中に入っている基礎診察料的なものが乙表の六点だけに限られるのか、あるいは乙表では、ほかにいろいろな形で入っているはずの基礎診察料的なものがそこにかき集められたものがさらに入っておるのかという議論になると、それは先生おっしゃるように——少し先生のおっしゃり方はきついと思うのですけれども、必ずしも非常にきれいなかっこうで分解してお示しするということを従来の厚生当局ができなかったということは、おっしゃるとおりだと思います。それで今後の処理としては、基礎診察料的なものは十分重視してまいりたい、初診料についてもそれを重視していきたい、それはつとめて両者が同じようなものになっていくということを考えつつ午前の大臣お話にもありましたように相当これは姿の整ったものにしていこう、こういう考え方に沿っていろいろ作業している、こういうことでございます。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。そうすると、こういうことになりますね。乙表の六点はほとんど一〇〇%、九割九分九厘までが基礎診察料だろう、したがって基礎診察料、初診料を改定する場合には、たとえば乙表を六点に五点を加えて十一点にしたという場合には、当然甲表の二十点についてもプラス五点プラスアルファがつくことになる。それはそうならざるを得ないでしょうな。乙表で純粋にいくものは五点です。ところが六点に見合うところの二十点の甲表の中のものはそれでいいわけです。ところが残りの十二点の中にも相当基礎技術料的なものがあるわけですから、したがってそれも当然アップをするとすれば、十二点の基礎技術料に見合う分もアップしなければならぬことになるわけです。したがって、もし乙表に五点加えるとすれば、甲表は五点よりプラスアルファを加えたものにならざるを得ない。理解のしかたはこうなるですね。
  111. 小山進次郎

    ○小山説明員 乙表の問題については、先生のおっしゃった具体的な数値は別として、それはそういう考え方だと思います。それから、その場合に、それに匹敵する程度の基礎診察料的なものが甲表の中に含まれるようにしていくということも、おっしゃるとおりと思います。ただ、それに加えて従来初診料の中に含ましめておったものとして、さらにそれが上積みになるか、あるいは乙表における処理が基礎診察料的なものに限られる——これはおそらく有床診療所なんかもありますから若干その問題があるにしても、大部分が基礎診察料的なものに限られるというようなことになるとすれば、甲表の中における基礎診察料的なものでない部分の初診料部分というのをふやすことはしないで、そうして全体としてのバランスをここでとる、こういう考え方もあり得るだろうと思います。これは、いずれにしてもまだいろいろの考え方はあると思いますけれども、要は、繰り返し申し上げたように、基礎診察料的な部分は、つとめて乙表、甲表で同じにするようにしていって、将来の一本化の場合のもとにすることは頭の中に置きながらいろいろ作業をしたい、かように考えております。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に、私が希望しておきたいのは、したがってあなたの先輩なり後輩は、甲表の二十点の内容分析は、あなたもわからないように、わからないわけです。やっぱりこれは医療の技術評価における混迷を来たすわけです。したがって、でき得るならば今回は、乙表においては基礎技術料的なものがもう初診料においては九割九分九厘ですから、それに見合うものをやはり甲表でもきちっと出して、プラス基礎技術判以外のものが幾ら——たとえば甲表の初診的なものが十点なら十点になる。基礎技術料が十点になる。乙表が十点になる。そうすると、甲表も十点にして、それはそれで十点としてある。十二点というものは、基礎技術料以外のものなんだ。そして、甲表の初診料は二十二点なら二十二点、こういうようにぜひしていただきたいと思います。そうしますと、ここからやはり一本化の方向が出てくるのです。そうすると、将来十二点の問題はどうすればいいかという、十二点の問題だけに議論が限定されますから、小山時代にそこだけでもひとつ明らかに確立をしておいていただきたいと思います。  それから、歯科の補綴、インレー、充てん、それから調剤技術料、こういうものは一体どこが中心になって変更の重点を——これも基礎技術料に置くんだと思うのですね。まさか充てんをする金そのもの、金属に置くんじゃないと思うのです。それは当然、金属類、金その他の薬物資材は原価主義ですから、したがつて、技術料の評価になると思うのです。その評価のしかたは、当然、初診料その他の評価のしかたと同じような基礎技術料的なものがアップされることになると思うのですがね。これは調剤技術料についても同様だと思うのです。それはそういう考え方でいいのですか。
  113. 小山進次郎

    ○小山説明員 歯科の補綴、インレー、充てんの場合には、物の価格に該当する部分は、それはそれだけ必要な部分が控除されて、残りを技術料としてどう処理するか、こういうわけでございますが、いま言われたこととほぼ同じになるんだろうという見当ではあります。補綴、インレー、充てんというようなものの技術料がふえて、同時にまた、歯科においても初診料等の診察料も、これはふやさなければならぬわけであります。そういうことが全部処理されて、全体の引き上げ率が所定のところでおさまる、こういうふうになるのだろうと思います。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 それは調剤技術料についても同じになるのですね。調剤は、薬の原価とそれから処方料と、それからすりばちでこする調剤技術料と、三つに医師の側はなっておるわけですね。そうすると、薬剤師の側は処方がないわけですね。薬の原価は同じです。薬剤師のほうが幾ぶん高くそれで請求をする、取っているわけです、医者は別に注射その他もありますから。それから技術料も、それだけで食わなければならぬので医者よりか高く取る。当然、薬を除いたそれらのところで、その技術料のところは相当高く評価をしていくことになると理解をして差しつかえないですか。
  115. 小山進次郎

    ○小山説明員 引き上げの対象になるのは、いまおっしゃった調剤の技術料でございます。それがどの程度になるかというのは、これはやはり何といっても基本になる医師、歯科医師の引き上げ率というものが大体めどがついたところで、それとのバランスを考えながら処理される、こういうことになるだろうと思います。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、いまの医師の基礎技術料になる初診料その他と現在の調剤技術料とのバランスを考えながらやっていく、こういうことですね。
  117. 小山進次郎

    ○小山説明員 初診料、診察料等の引き上げそのものとバランスをとるということになるのか、そこらの点は、どうももう少し考えさせていただかないとはっきり言いきれない気がいたします。しかし要は、ほかの技術料的なものの引き上げというものとバランスを考えながら処理していこう、こういうことになろうと思います。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大体基礎診察料という、いわゆるいままでの初診料ですね。これは基礎的なものを引き上げていくというので、いまの六点にプラスアルファが加わっていくことはわかったわけです。そうすると、プラスアルファを加えて、それがアルファが五点とすると十一点になった、あるいは甲表は二十点なら二十点が二十二点になったという場合に、それは神田構想における基礎診察料として毎月取るものそのもの、同じ額を取ることになるわけですね。
  119. 小山進次郎

    ○小山説明員 先ほど申し上げたように、いわゆる神田構想はまだいわば発想があるだけでございまして、手足のほうをいま一生懸命つくっておるわけでございますから断定的には申しかねますけれども、ただ、いまの大まかな感じとしては、いま先生のおっしゃったようにならぬと思います。やはりそういう場合には、乙表における初診料相当額というものがいろいろものごとを処理する場合の一つのめどになる、こういうふうなぐあいになるだろうと思います。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そこからいわば一本化の一つの共通面が出てきますね。したがって、たとえば乙表で初診が十一点になった。そうすると、それが翌月になったときに取られますと、武見さんじゃないけれども毎月の家賃じゃないか。まるきり医療の家賃払いみたいじゃないかということを武見さんが言ったのを新聞で見ましたが、十一点の同じ初診料が、一カ月以上続くものについては翌月に取られていく。そうすると、乙表の十一点が甲表のほうでもそういう形になる。甲表は二十二点じゃなくて十一点なんだ、こういう形になるということですね。
  121. 小山進次郎

    ○小山説明員 くどくど申し上げた留保のついていることは御了承願いたいと思いますが、大まかな考え方としてはそうなるのじゃなかろうかということで、いまいろいろと作業をやっております。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。そこで、そのものの考え方に対してこういう考え方はなかったかということを聞いておきたいのです。それは、やはりものごとは円満に全体をおさめなければいかぬという政治的な観点が必要なんですね。そうしますと、あの医療協議会における議論の過程で、こういう神田構想を持ってくることは、あの議論の過程から考えると、医療費体系の根本をゆるがすものなんだという議論があるわけでしょう。それは一体なぜ根本をゆるがすのかということが私にはわかりかねるのですが、この前の小山さんのあれでは、あるいは個人的に私に教えてくれたのかもしれませんが、それは新しいものをつけ加えるから医療費体系の根本をゆるがすことになるんだということをあなたは言ってくれたのです。根本をゆるがすというのはそういう考え方ですか。
  123. 小山進次郎

    ○小山説明員 いま反対をしている人人が考えている考えの論拠になっているのは、そういうものであると思います。しかしその点については、先ほど来繰り返して申しましたように、大臣が言っておられるのは一つの政治的な高い立場からの発想であります。これの消化のしかたというものがどのくらいまで現行体系と調和できるかという問題は、ある程度まで今後のいろいろなくふうにかかっているわけでございまして、およそ体系と抵触するとかしないとかいう問題は、やはり最後の姿を見た上でもう一回静かに考え直していくというだけのゆとりを持ってもらうことが必要だと思います。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 大体私の言ったような意味だということがわかればいいのです。そうしますと、ここで私の言いたいのは、あの医療協議会では、現体系をこわさない程度でならばいいじゃないかという意見があったわけですね。そうすると、現体系をこわさずに神田構想と類似のものを実現しようとすれば何があるかというと、甲表では六点の再診料があるわけです。これは取ってもいいんですね。乙表は再診料はあるのですが、投薬、注射がない場合に三点を取ってもよろしいということでしょう。そうすると、「注」を削ったらどうです。現体系をこわしていない。投薬、注射というところを削ってしまうと、三点が取れるわけです。これは毎日取れるということになってはぐあいが悪いので、注を変えたらどうです。そして同時に、三点のワクを直すということも可能だし、私はここでどう直せとは言いませんよ。注を消して、投薬、注射のない場合について三点を支給するというのを、投薬、注射のないというのを消してしまうと、三点支給することができることになる。そして下に、三点を支給する場合はこういう場合だ、たとえば神田さんが言っている一カ月に一回とか、あるいは三日に一回とかいうことですね。それならば現体系をこわしていないわけです。注のただし書きのうちの投薬、注射のない場合というのをどけるだけです。甲表で取れておるものを乙表で取れないという理由はないわけです。甲表に厳然としてあるものを乙表に、厳然と言うよりもまあかすかに置こうということでしょう。それのほうが少し合理的で、納得させる上に楽じゃないですか、基礎診察料、こう銘打つよりか。そうすると、お互いに納得させることができるような感じがするのです。
  125. 小山進次郎

    ○小山説明員 先生がおっしゃる考え方というのは一応あり得ると思うのでありますが、いま現行体系に触れるかどうかということで関係者が一番争って議論いたしました点は、再診に対する対価というものが再診料といわれるものだけに入っているのか、あるいはそれ以外のところにも入っているのかという点が、うんと議論されているわけなんであります。そしてそういう点から見ると、甲表においては、再診に対する対価というのは全部再診料というものに集められておる。したがって、それは点数を上下するということだけで問題は片づく。ところが乙表においては、再診に対する対価というのは、再診料といわれておる部分にはきわめてわずかしか入っておらなくて、大部分がほかのところに入っておる。それを処理しなければ問題を解決することができないということが論議の中心だったわけであります。ですから、先生のお考えというのも一つのお考えとは思いますけれども、そういうふうにそこに焦点が置かれて議論されたという経緯から考えますと、非常に成り立ちにくいことになる考えじゃないかと思います。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じのとおり、甲表というのは最近できたものなんです。乙表というものは、ずいぶん昔からずっと伝統的にきておるものなんです。乙表の中には、再診料という思想は、われわれの議論の過程の中から一回も——私も十二年間国会議員をしておるけれども、投薬、注射の中に再診料が入っておるという議論は一回もなかった。それでみんな御存じのとおり薬は原価でしょう、それから注射料は注射の技術料として入っております。その中にも六点という再診料が入り得る要素があるかといえば、ないわけです。これは一・八とか二とかいう技術料ですから、ないわけです。そうすると、甲表は新しくできた、新しい医療費体系の思想に基づいてできた、サムスがやってきて以来の伝統的なものです。ああいう考え方は乙表にないわけです。だからあれは、再診をやるという考えはないのですよ。いままであなたの先輩なりわれわれの議論の中から、十年間一回も、投薬技術料の中に、あるいは注射技術料の中に再診料が入っておるという議論をした人は一人もない。曽田さん以来ずいぶんこまかく議論をしたけれども、歴史的に見てその議論の展開はないわけです。
  127. 小山進次郎

    ○小山説明員 それは滝井先生、誤解しておられると思います。甲表、乙表の問題はそこからまさに出てきたわけなんでありまして、いまの乙表というのは、医師会がつくったその表をそのまま受け入れて発展させた表なんです。その当時から再診に対する対価というようなものを込めて、薬代、薬治料の中に含めるのだ、こういうことであれはきめたのです。記録にもそうはっきり出ておる。あれをきめたときの医師会の北島理事長が、役員会でみんなに説明をしている文書が残っているわけでありますから、それにも明瞭に出ているわけです。ただ問題は、そういう点で発展してきた表ではありますけれども、遺憾ながら今日どの部分にどれだけ入っているかということになると、これが非常に人によって説が分かれるというところに問題炉あるわけでありますが、入っていることだけは間違いないわけです。決してきのうやきょう出てきた議論ではなくて、これは昔からずっとそういうことで通ってきたわけであります。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 寡聞にして、どうも勉強不足でその資料を見たことがないのですが、いままでもわれわれ議論をしましたけれども、あなたの先輩は一回として私に、たとえば注射の技術料というものは、皮下だったら一・八か二でしょう、この中に一体再診料がどうして入れますか。再診料は甲で六点ですよ。これは純粋な再診料ですね。この六点が一体どうして一・八とか二の中に入れますか。だからそれはもう全く詭弁で、当時そう言ったかもしれぬけれども、それは結局実体のない抽象論です。それだから最近は、どの部分にどれだけ入っているかさっぱりわからないということは、入ってないのと同じことです。念のために、なお議論を詰めなければいかぬですから、その資料があればひとつ出してもらいたいと思うのですね。至急ひとつ、あとでいいですから、あしたでもぜひ出してください。  問題は、だからいま煮詰めていきますと、実施の時期と幅と再診料ということになるのですね。その実施の時期については、これは希望的観測として十二月だ、そういうことを、けさの河野さんの質問に対しておっしゃっておるわけですね。そこで大蔵省に来てもらったわけです。ほんとうは大蔵大臣に来てもらい、官房長官に来てもらって政府の明確な態度をもらわなければならぬのですが、中尾さん御存じのとおり、これは昨年の夏以前から緊急是正の問題が問題になって、去年の十二月にようやく諮問をするようになって、四月十八日に結論が出たわけですね。厚生省としてはできるだけ早くやって、いまもそうですか、年度内にこれを実施する、当初は十月ごろから実施するということであった。ところが、池田さんの病気のために残念ながら長引いておるわけです。こういうことのために池田さんに心配をかけて病状を悪くしてはいけませんので、これは池田さんの耳に入れずに、大蔵省なり大臣責任を持って解決してもらわなければならぬということになるわけですが、大蔵省としては、一体緊急是正に対応する予算というものはどういう準備をされておるか。巷間三百億の予価費の中に医療費というものは入っておるのだということを言われておる。自民党の幹事長その他も言っておるということは、巷間、言われておる。災害、新潟地震その他もありましたからだんだん予備費も減っておると思いますが、もしこれを十月とか十二月に実施すれば、すぐに対応できるだけの予算の準備態勢というものは大蔵省としてできるのかどうかということです。沖田さんは十二月からやりたい、こう言っておるわけですが、これはなかなか主計局の次長さんとしてはきわめて政治性の高い問題で答え得ないと思うけれども、それはあなたが厚生省担当の主計局次長として、いわば主計局で言えば最高責任者です。実施の時期がきまれば、予算的な対応がすぐできる態勢にあるのかどうかということです。
  129. 中尾博之

    ○中尾説明員 問題は、実はお話もございましたことで、緊急是正答申も出ておるわけであります。それを政府といたしましてどうお受けいたしまして、全体的な施策に具体化していくかということの段階にいまございまするけれども、それを予算的にどうこうと申しますことは、金額に関係することであります。したがって、そういう意味におきまして正確にこれはどうであるということを申し上げることは全然できない。ただ問題は、緊急是正を必要といたしますものがあれば、しかもそれにつきまして厚生省とされましてもいま御答弁もありましたなかなかむずかしい問題でもございますので、諸般情勢を御検討になりながら、何らかのアクションをとっておられるように私は新聞あたりでは拝見しておるわけです。したがって、それらのものを実施いたしますという場合に、ああいうことはとてもやる余地はないのだというようなことを申し上げるつもりは決してございません。具体的な問題が固まりますときに当然財政面からの検討を必要といたしますが、これは厚生省と十分協力をいたしまして、そして解決に持っていきたいというふうに考えておる次第であります。ただ、ただいまお話がございましたようなことでございまして、事柄はまとまる前の段階、非常に微妙な段階にございます。  それから予備費の中に入っておるかどうかというようなお話もございましたが、予備費は御承知のとおり、予算の編成の際に予測できないものに充てるということで予備費は用意いたしてございます。これは何らこれに直接充てるものであるというようなひものついたものでもって予定をいたしておるというようなことは制度上もございませんし、実際にもそういう経緯はございません。ただ、この問題は昨年度の予算の際にも実は一応問題になるだろうということでございまして、厚生省としても案がまとまればということで追加要求の留保があった問題であります。しかしながら、残念なことですが、それがそのままになっておりますので、そういう問題がなお残っておるということは十分承知いたしておるわけであります。  現在の段階におきまして申し上げられますことは以上のとおりでございます。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと厚生大臣は急ぐから厚生大臣に聞いておきますが、いま御指摘申し上げますように、だんだん議論をして煮詰めていきますと、実施の時期をいつにするかということと、八%ないし一割の幅の上に幾ら一体上積みをするかということと、それから基礎診察料的なもの、これは再診料的なものとも言えるかもしれない、そういうものをどう実施するかという三つに問題はしぼられてきておるわけですね。そこで、実施の時期については、年内にやろうと一月からやろうと五十歩百歩です。これはもういまの段階ではそんなにめくじらを立てることはない。とにかく昭和三十九年度中に政府実施をしなければならない形だ、こう判断する。そうすると、あと幅と再診料的なものです。幅を幾らにするかということは、即うらはらの関係で再診料的なものになる。そこでいま需用側が一番反対するのは医療費体系の根本をゆるがすというところに問題がある。それと幅を八%以上上げるのはけしからぬじゃないか、こういう形がある。  そこで神田厚生大臣の気持ちをもうちょっと聞いておきたいのですが、このあなたの構想の新しい部分については支払い側はなかなか納得をしないわけです。そこで新聞等を見ると、保険料の支払い停止をやるということも出ている、医療協議会の委員を引き揚げるということも出ているわけです。まあこれは、国から補助金をもらっている健康保険組合や国保連合会が保険料の支払いを停止することができるかどうかなかなか問題ですけれども、監督官庁がそういうこともなかなかさせないだろうと思いますが、やはり再診料的なものを新しくつけ加えれば、それだけ保険経済に負担がかかってくるというところに一つ難点がある。そこで、とりあえずあなたの構想の再診料的なものは全部国が見ましょう。これは私はそう大きな額ではないと思う。全部国が見ましょう。というのは、わが政府管堂健康保険は、大蔵省に数年前から三十億くらいの金をもらうことになっておるが、もらっておらぬのです。法律ではくれることになっている。私は予算編成のたびごとにもらいなさいと言うけれども、小山さんの先輩はみんなできるだけ早く何とかしましよう、大臣もそう言われますが、全部もらっておらぬ。実を言うと貸しがあるのです。池田さんも一萬田大蔵大臣も、おれの目の黒い間は滝井君心配するな、健康保険の会計が赤字になろうと黒字になろうと、この三十億は必ず出すと言ってきたのです。いつの間にか小山さんの保険会計がちょっと金持ちになったら、みんな返して取られてしまった。そういう貸しがあるのですから、保険経済も苦しくなっておるのですから、そのあなたの構想の一番反対を受けておる部分は、大野伴睦先生じゃないけれども、腹をたたいて、神田博、男でござる、よろしくみんな引き受けよう、これですよ。これならば、あなたにいま四方八方から——小林さんは四面楚歌と言ったけれども、今度は四面歓喜に泣く。やはりこれくらいのクリーンヒットを、この混乱しておる医療問題を解決するために打つ必要があるのです。池田さんも今度はのるかそるか、内閣を投げ出すかどうか、喉頭のパピロマというのですか乳頭腫ができて、いま医療の問題について非常に関心を持っておる。病人は寝たら医療の問題しか関心を持たない。だからチャンスとしても一番いいことです。この際あなたが病気全快祝いのつもりでこれを出す、これを出せば病気がなおります。病気全快祝いのつもりでこれを出そう、こういう気持ちになられることも必要だと思う、これだけもめておるのですから。それでこれは大蔵省にも聞いておいてもらいたいと思って、私はきょうわざわざ呼んでおるのです。これは小山さん、再診料的なものをいま言ったように初診料的なもので出していく、たとえば十点なら十点出すといった場合に、あなた方は頻度と額をどのくらい考えておりますか。あるいはそんなことを言うと、滝井のやつ十点と言ったら十点出すということになったと言うかもしれぬけれども、六点でもいいです。いまの初診料の六点をそのまま一カ月に一回ずつ出すということになった場合、私はこの構想には異論があるのですけれども、そういう場合に国庫負担をやりますという道を開くためには、およその腰だめ的な数字くらいはつかまなければならぬ。ですから、六点なら六点でやったときに、初診の頻度と同じものが次に出てくるわけです。初診は総額どのくらいです。甲表、乙表の初診の総額は六点にした場合、さいぜんの考えでいった場合にどの程度になりますか。
  131. 小山進次郎

    ○小山説明員 ただいまその資料を持っておりませんので、後ほどお届けいたします。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、いま一番問題なのは保険の負担になるということなんです。しかも世間は、医者に行ったたびごとに再診料的なものを患者が負担しなければならぬのはまっぴらだ、この負担増に問題があるわけです。ところが一カ月に一回というなら、そんなに一カ月以上の疾病というものは多くないから、たいして予算上の負担はかからない。ここを国庫負担でやるという一つのアイデアを出せば、神田構想は画竜点睛を欠かないのです。これをやってごらんなさい。たいして反対はない。どうです、それを御検討の余地がありますか。
  133. 神田博

    神田国務大臣 滝井委員から先ほど来るる診療報酬の問題につきまして名案の御説明がございましたが、私はそこまで、正直のところ気がついておりませんでした。この問題を進めていく際にいろいろのことが出てまいると思います。ひとつ十分検討いたしまして研究したい、こう考えております。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと小山さんに聞いてもらいたいと思いますが、とりあえず今度緊急是正を年度内におやりになる、そうしたら次には抜本的な対策に入るということを再々言われておる。医療協議会でも言われておるわけです。いままでしょっちゅうそれを言われてきたわけです。それで社会保障制度審議会でも、八木先生もおられますけれども、総合調整をお出しになったわけです。出たのはおととしですね。一向に総合調整もできないわけです。あれは何か日曜休診をやったときも医療の抜本改正をやるというので、医師会と当時の灘尾さんと三木さんなんかが政調会長か何かで、契約か何かしましたね。文書の取りわかしをやったですね。その声明をしたのがうそだ、ほんとうだということを言って、ごたごたしたのを記憶しているのですが、いつも抜本的なことをやるやると言うけれども、こそくなことで終わってしまう。  そこで、いま何といっても医療費の中で一番大きな比重を占めるのは薬価なんですね。技術料を確立するという前に、やはり薬価の適正化という問題が論議をされなければならぬことになるわけです。私はずいぶん材料をそろえて、前にも森本さんが薬務局長のころにはやってきたわけですが、薬価の合理化をやると言うけれども、なかなかうまくいかぬ。そうしていつの間にか薬価基準はバルクライン八〇とか九〇とかいうことでどこかできめられて、薬価基準表の中に載ることになるわけでしょう。そこで、これから国の財政が非常に苦しくなってくる。財源がないですからね。消費者米価を上げなければことしは予算は組めませんよと田中大蔵大臣がおどされておるわけですよ。そうしますと、今後やはり医療費のロスをどこからか出さなければならぬ。私はロスを出すところは三つあると思うのです。一つは事務の簡素化です。その事務のために、医師のうちの人件費がどれくらい食われているかわからぬですよ。これを保険者がうんと言わぬと小山さんよく言われるけれども、これはやはりうんと言ってもらわなければいかぬですね。そして、もちろん供給側も公正な、正直な医療費の請求方式をとらなければならぬと思うのです。この事務の簡素化をすれば、二十億、三十億はすぐ浮くですよ。それからいま一つは薬価です。小山さん御存じのとおり、ブドウ糖ならブドウ糖の五管入りの箱を買いますね。そうするとブドウ糖の五管入りは実にがんじょうな、りっぱな箱に入っています。それから中にアンプルカッターが入っているですね。ブドウ糖の効能書きが書いてありますよ。そうしてブドウ糖はアンプルの中に入っているわけです。そうすると、薬だけ取り出してごらんなさい。薬だけなら、おそらく二十銭か三十銭しかしないでしょう。それが包装を入れてアンプルカッターがついて効能書きが入ると、この二十銭ぐらいの一本のブドウ糖が一円五十銭、二円になるでしょう。そうしますと、保険に使う薬はそんなにがんじょうな箱に入れる必要はない。百本入りにして、アンプルカッターを一本つけたらいい。ブドウ糖は医者は知っているから、効能書きは要らぬですよ。そういう製薬過程におけるロスを全部省いてしまうと、おそらく薬は三分の一かそこいらになっちゃう。その分については、適正な利潤は製薬企業に処置しなければならぬから、九千八百万の国民医療をして生命を守ろうとする製薬企業に対しては減税措置を講じ、ある程度研究費の補助金を出してもいいじゃないですか。それのほうが、長い目で見たらどのくらい医療費のロスが省けるかしれません。いま医療費はぐんぐん上がる。このごろまでの説明では八千何百億でした。きょうの説明では九千何百億。千億上がっているでしょう。そうすると、あなた方が知らぬ間に保険経済が赤字になる。ウナギ登りに上がっているのは何が一番大きなファクターになっておるか。薬です。そうすると、この製薬企業がいまの段階では自由企業でしょう。あなた方は手を染められないでしょう。薬価基準だけでしょう。しかもそれが原価計算を医療によって使うときには、そのものは原価主義だと言っておるけれども、製薬企業において原価主義をとっておるか、とっていないわけでしょう。この一番大事な基盤をそのまま放置して、その上に社会保険医療というものをそびえ立たせようとするところに、現在の日本の社会保険の悲劇があるわけです。このロスを何とかしなければならぬ。そうすると事務の簡素化、薬価基準におけるいわゆる原価主義を貫いていって、その利潤の減少する部分については、研究費とか減税の措置をとって製薬企業を保護していく。いま一つは、病院の乱立ですよ。こういう点でばく大な国費が、国民の血税が浪費されているわけですよ。これはもう国家公務員の共済病院を見ても、そのほかのいろいろな病院を見ても、公的医療機関にそれが多いでしょう。こういうところに保険当局なり大蔵当局がメスを入れなければだめです。そうすると、そこからロスが浮いてくる。これらのロスが浮いてきたものを国民医療の前進と技術料の確立につぎ込むという形をいまにしてとらなかったら、もうだめですよ。これは小林さんの言うように、いまの状態では貧しいところに医療はいかないのです。そして貧しいところに医療のいかないいまの形で、保険経済が苦しいからといって現物給付をやめて、一部裕福な階層には現金払い制度をとる、療養費払い制度をとったら、もう日本の保険制度はだめになってしまうです。それはいま会社の社長とか重役はみなどういうことをしておるかというと、率直に言いますよ、ある医者が言った。そういう会社の重役とか部課長さんのように、薬びんをさげて料亭に通う人を患者に持つのが一番いいと言っている。こういう人たちも健康保険ですよ。医者に来るときには、外車の千万も千二百万もするようなデラックスのものに乗ってくる。そして耳の治療をしてくださいと言って、払うときには十円払って帰るでしょう。デラックスな自動車に乗ってくるので、ガソリン代のほうが悔い。そしてその人たちは必ず高貴薬を要求しますよ。全部高貴薬を出しますよ。池田さんがいまがんセンターに入院していますけれども、おそらく国民健康保険の被保険者だと思いますが、国民健康保険でやっているかということです。一国の総理が、国民健康保険でみずからの生命の病気をなおせる程度に日本の医療がいっておったら、これは私は池田内閣のために万歳を唱えたいと思います。おそらく池田さんは健康保険ではないと思うのですよ。あのくらいの治療が国民健康保険でできているなら、非常に信頼が出てきますよ。ところが、そういう上の人はそれでできるのです。いま言ったように、病院に行ってクロマイとかなんとかかぜの段階でもらってしまう、こういう、いわゆる貧民と貴族の医療の状態になってしまっているでしょう。だからこういう点にもう少しメスを入れて、そして零細な医療費国民にほんとうに均等にいくような姿でつくりかえてもらわなければいかぬと思うのです。これは緊急是正のときから相当勇断を持って進まなければいかぬですよ。それにはやはり保険局長の首が二つ、三つ飛ぶ覚悟で、いつも滝井義高だけに小山保険局長不信任案を言われて、あなたものうのうとしておるけれども、それではあなたもいかぬので、そしてあなたもほんとうに日本の医療行政をあれするならば、保険局長を棒に振ってでも自分所信は貫いていく、国民医療を貫いていくという形をとらないと、とてもどうにもならぬですよ。壁は厚いですよ。もう保険経済は赤字でどうにもならぬ状態である、国の財政はもはや弾力性を失っていかんともしがたいという客観情勢がある。国民医療はまさに農村その他では待望されておる。全部八方ふさがりですよ。だから、そういう点ではひとつぜひがんばってもらって、この際けちなことを言わずに、何はさておいても人間優先の政治ですね。これは佐藤さんも言ったでしょう。池田さんの政治は歩行者優先の政治じゃない。今度は池田さんもみずから病気をされて、歩行者優先の政治がわかったと思うのです。ですから、ぜひ歩行者優先の政治ですね。先日社会党の勝間田政審会長が言っていたが、自民党の政策には人間を大事にする政治がない、いまや人間復興の時代だ。そうですよ。だからこの段階医療費は何ものにも先んじて予算に先取する、いつもあとじゃないですか。だからこの際、米価問題その他に優先をしてひとつ確立する、そして人間を大事にするという形をぜひ厚生行政でとってもらいたいと思うのです。大臣がいませんから、あなたから十分大臣に言ってもらって、あなた方の所信が貫けぬようだったら保険局長辞表だというぐらいの意気でやってください。そうすれば、あなたが辞表を出しても、あと拾い手は幾らでもおりますよ。あなたのような優秀な人だし、国民大衆のために保険局長大臣とともに首をかけてやったということになれば、これはもう九千八百万国民は、あなたを直ちに来年の参議院選挙にかつぎ出しますよ。社会党が公認しますよ。だからそのくらいの意気を持ってぜひひとつやってもらいたい。緊急是正をしたらそれが緊急だというのに、八カ月も一年もかからなければ結論が出ないなんという政治は、政治不在ですよ。だから、そういう点でもむしろあなたは、だらしのない与党に対して辞表をたたきつけなければいかぬですよ。私からばかり不信任、不信任と言われて、野党の滝井だからほおかぶりしていこうという安易な気持ちではいかぬですよ。これだけ言って私のきょうの質問を終わって、あとは次会にやります。
  135. 田口長治郎

    ○田口委員長 本島百合子君。
  136. 本島百合子

    ○本島委員 本日、二つの点についてお尋ねしたいと考えておったのですが、一つは流感の問題、一つは興行場法に関連いたしまして、社会問題となりつつある深夜興行の点でございます。あとの点については、実は大臣の決意のほどを聞きたかったのでございますので、あとで関係の方々、お伝えくだすって御回答をいただきたい、このように思いますので、先もってお願いいたします。  流感の問題でございますが、ことしの一月ごろから流行しておったかぜは、少しもやむことなく続いてきたような感じです。過日厚生省で発表されましたものによると、種類が違うんだというような発表であるわけです。そういたしますと、実は私の居住地である世田谷の経堂小学校がつい二、三日前、全校休校いたしておりますし、その前に九月の二十二日、調布の小学校でも休校いたしております。このかぜが一体一月、二月に流行したものであるのか、現在厚生省でおっしゃっておるA2型であるのか、こういう点まだ判明しないと思いますけれども、一応どういう調査になっておるかをまずもってお尋ねいたします。
  137. 若松栄一

    ○若松説明員 ただいま、世田谷の経堂小学校で休校しておるけれども、これはインフルエンザであるかどうかというような御質問でございましたが、私どもも、世田谷経堂小学校のみならず、都内の数校で一部かなりの欠席者が出ているという情報をいただいております。世田谷の経堂小学校では、千八十七名の在籍者中百三十四名が欠席したという報告がございます。これが、このころによくございますいわゆるプール熱というようなものであるのか、あるいはインフルエンザであるのか、あるいは単なるかぜ引き、季節の変わり目でございますのでかぜ引き等が多発しているのか、そこらのところは現在なお明確でございません。この経堂の小学校は、プールは使用しておりますが、最近は使用しておらないようでございまして、患者の発生がごく最近であるところを見ますと、プールと直接関係なさそうでございますし、また症状から見まして結膜炎等の症状が全くございませんので、いわゆるプール熱というようなものではなかろうというふうに考えております。それならばインフルエンザはどうかということでございますが、これはいまの状況では、私どもインフルエンザに関する情報らしい情報は何も聞いておりません。したがっておそらく比較的単純な、季節の変わり目等によるかぜ引き等が多いのではないかと存じて、現在文部省並びに都を通じて詳細な調査を依頼中でございます。
  138. 本島百合子

    ○本島委員 実はいまプールに関係ないかぜと、こうおっしゃったのですが、地元ではプールかぜなんということを、言っておるような状況なんです。そこでなるべく早い機会に究明をしていただいて、予防等に万全の措置を講じていただきたいと思うのです。  同時に、過日発表されたインフルエンザの問題について、十月から十一月で全国千二百万人の予防注射をする、これも特に小中学校、幼稚園、保育園の園児を主体としてこうなっておるのですが、現在の流行の傾向を見ますと、これはおとなも相当かかっておるわけなんです。一月にかかった者たちが繰り返し繰り返しやられているという感じで、はっきりした区分がつかないというのが現在の病状でないでしょうか。そういうような点で、厚生省発表によってもB型であるのか今度のA2型であるのか、こういう点を研究しておる、こう発表されておりますけれども、こうした見通しとしてどういうふうな考え方でいらっしゃるのか。ワクチンはそういう二つのものを兼ね合わしておるというような発表でありましたけれども、一般の人からすれば、どこへ行ったらば予防注射を受けられるのか、それでなおるのか、こういう単純な質問が出るものですから、こういう点をいま少し明確にして、またこの予防等についてのPR活動をしっかりとやっていただきたい、こう思うものですから、その点ひとつ承っておきたいと思います。
  139. 若松栄一

    ○若松説明員 インフルエンザ全般のことになろかと思いますが、本年の初めは、御承知のように九州地方を中心といたしましてインフルエンザB、しかも私どもが天草株と称しました新しい種類のビールスの流行がございました。しかしこれは幸いに、新しいビールスでございますけれども、在来のビールスとの抗原構造、つまり免疫の構造がかなり似通ったところがありましたためか、予防接種等の効果も重なりまして、あまり大きな流行でなく済んだことは非常に幸いだと思います。なお、そのような流行がございましたので、またそろそろ秋口、冬にかかりますので、今年度の予防対策を考える上に現地の方々や専門家の方々の御意見をお伺いしようということで、九州地方の衛生研究所あるいは大学の先生並びに中央のインフルエンザの専門家に集まっていただきましていろいろ御意見を伺ったわけでございます。その結果、ことしの流行はBであったが、同時にことしの春にもAの流行も、ごくわずかではあるが、あったようであります。ところがA2という流行株は、御承知のように昭和三十二年にアジアかぜというもので大きな流行を起こしました。その後三十五年、三十七年に相当な流行を起こしました。したがって、その後八年、九年とすでに二カ年を経過しておりますので、当時の流行である程度免疫があったとしても、もうそろそろ免疫がなくなるころだ、そういう意味からいうと、A2の流行ということもかなり考えておかなければならぬじゃないかという意見が出たわけでございまして、それが厚生省の新聞記者クラブでいろいろとお話を申し上げておるときに、A2の流行が起こりそうだというふうにとられて新聞発表等が出たわけでありまして、私どもはA2の流行が起こるとは考えておりませんが、それも考慮に入れておかなければならないという意味で申しました。  なお、ワクチンにつきましては相当量のものを確保いたしておりますが、流行が起こってきまして非常に大きな需要でも起こりますと、これは幾らワクチンがあっても足らなくなります。そういう意味で、私どもはできるだけ流行それ自体を押えていきたい。流行それ自体を押えるためには、インフルエンザの流行というものは、ある意味ではどこかで実は増幅作用といいますか、どこかへ入るとそれがぐっと広がるという増幅作用というようなものが考えられます。それが一番感受性の強い小中学校あるいは幼稚園というところになるわけでございます。したがって、流行を大きくしないためには、増幅機能を果たすような小中学校あるいは幼稚園等の生徒に予防接種をやっておくことが一番有効的確であるということで、私どもは現在そういう対象に予防接種をしてもらって、そうして学童等で十分な資力のない人一〇%程度は、公費でめんどうを見ようという方針をとっておりますが、そのほかには、お話しのようにおとなでも当然かかります。しかし一億の国民全部がやるわけにはいきませんので、おとなにつきましては医療従事者であるとか、あるいは交通通信の関係であるとか、あるいは接客業者であるとか、そういうような対象を重点的に勧奨でもって接種を受けてもらうという方針をとっております。そのほか一般の方々については、これは特別に私どもめんどうは見ておりません。しかし一般の方々が医療機関等で接種を受けたい場合には、医療機関が求めればワクチンを入手できるだけの余裕は持っております。そのようなことがワクチンに対する対策の概要でございます。
  140. 本島百合子

    ○本島委員 大体わかったようですけれども、ことしの一月ごろのものでは大体死亡者三百人、こうなっていますね。かなりの率を占めていると思います。いまの御説明を聞いておって、病弱者、病気でなくても弱い人、それから集団的勤労者たち、こういうような人々にはなるべく予防接種を受けてもらいたいというようなことが書いてあるのですけれども、いまの説明では、おとなの分野では非常に心細い感じがするわけです。たとえば、もしそれがあまり大きく範囲が広がらなければいいけれども、広がった場合においては、いまの御答弁を聞いていて、なかなか安心して厚生省の言い分にまかしているというような気になれないのですけれども、この点どうなんでしょうか。いつでも学童等が全校休校に入ってくる、それから騒ぎ出す、もうそのころには重病者が出て何名か犠牲で倒れる、こういうかっこうをとっておる。これをいま御説明のあったように、もう何年となく繰り返してきていることですから、ここらあたりで流感なりこういう病気に対する絶滅ということはできないものか、そう私たちは考えるものですから、その点もう二度聞かしてもらいたいのです。でき得るならば、私は全員こういう予防注射を受けていくことができるように、そうすれば罹病率が、受けた人の場合は大体二〇%から三〇%だ、それから受けなかった場合においては五〇%から七〇%発病する、こう発表されたのです。そうすると、やはり人間の心理ですから受けておこうという気になるわけです。こういう点で非常に不安な気持ちを巻き起こしておる。どこへ行ってもかぜですからとか、かぜぎみですから、危険ですから、こういうことばを聞くもんで、そういう点で何とかその予防接種を受ける方法はないか、こう言われるわけです。その場合に、いまもしそういうことが周知徹底された場合にはワクチンは足らないのじゃないだろうか、このように思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  141. 若松栄一

    ○若松説明員 お話しのように、全国民が思うときにいつでも受けれるという状態にあるかといいますと、残念ながら必ずしもそこまでいっていないと思います。ワクチンの生産は大体計画的にやっておりまして、私どもが、いま申し上げましたような流行の増幅作用を押える純粋に予防的な意味を非常に強調しております対象としては、千数百万ということになります。しかしこれも量によって、多少子供が多いものですから、人分で言うとそれよりずっと少なくて済みます。そのほかに、先ほど申しましたように特殊な対象はできるだけやっていただくとかいうことと一般の需要も考えまして、大体二千万人程度くらいのワクチンを製造しておくのが例でございます。ことしも大体二千万人プラス若干ということが、ことしのワクチンの手持ち量だと思います。そういたしますと、一億の全部の方々が受けようと思って受けれるわけにはまいりません。そういう意味でわれわれとしては予防的な意味の重点だけを行政的にやる、あとはある程度自主的にやっていただく。この予防接種はもちろん法律の根拠がございませんので、全く任意の予防接種でございますので、これは個人の衛生的な意識におまかせするというたてまえをとっております。しかし、申し上げましたように、特にはやってきたというような場合に全国一ぺんにはやるわけではありませんので、かなりそういう住民が恐怖を覚える、あるいはパニックを起こすというような場合には、そういうところに重点的にワクチンが出回るような操作は、私ども指導いたしてまいりたいと思います。
  142. 本島百合子

    ○本島委員 この問題についてはこの程度にいたしますが、何しろ経堂小学校にしても調布小学校にいたしましても、距離的には接近しているのです。そうしますと、世田谷は非常に学校の多いところで、また学校が接近して立っている特殊な状況にあるわけです。そういう意味で早く病菌をお調べくだすって、他の学校に流行しないようにひとつ特段の防疫陣を張っていただきたい、こういうふうに要望いたしまして、この質問を終わりたいと思います。  それから、興行場法の問題について御質問いたしますが、最近深夜興行というものが、これまた非常にはやっておるようでございまして、都内でも数がふえて、八月に比べて倍とはなっておりませんが、八月がたしか八十館ぐらいだったでしょうか、九月に入って百二十館か百十四館くらいでしたか、ちょっと明確に覚えておりませんが、そのくらいになっておると思います。   〔委員長退席、長谷川(保)委員長代理着席〕 これは終夜興行でございますから、夜明けまでやっておるのがかなりあって、このことが社会的に及ぼす影響というのは相当な問題だろうと思うのです。たとえば深夜喫茶店の問題で風俗営業法の改正をいたしましたときに、私ども、この委員会ではありませんが、地方行政委員会に出張りましていろいろの観点から検討し、特に公衆浴場法の改正あるいはまた興行場法の改正、こういう問題については何とかしなければならぬと思うと、前の大臣もおっしゃっておったわけであります。もちろんトルコぶろの問題あるいはヌードスタジオの問題、こういう問題等は相当な世論を巻き起こしておりますので、今後改正できるだろう、こう私どもは希望的観測を持っておったわけです。ボーリング等については、いま規制がないためにスポーツとして考えられておる、興行としては見ていないというようなことで、それでは困るじゃないかということでこれも検討します、こういうような答弁をいただいておったわけです。ところが御承知のとおり風営法の改正後、深夜喫茶店等が廃止になりましてからだんだん町のぐれん隊も減り、あるいはまた泥酔者も減ってきた。非常に夜の環境がよくなったといわれておるやさきに、こういう映画館等が映画なりあるいは演劇なりを終夜行なうということが別の角度から台頭してきた、こういうことになりますと、一体どういうところにこの問題が発生してくるのか、それからまた、これに対して行政指導だとかあるいは特別の規制をするような面があるのかないのか、こういうことが問題になってきて、私ども実は衆参婦人議員で映画館にも参りましたし、またセクシー映画等についてもいろいろの検討をいま加えておる最中なんです。ところが深夜興行の場合に、大体深夜やるのですから、そういう映画館ではいい映画をあまりやっておらぬようです。いまの場合ではまあエロ、グロ、変態性なんというものを主題とするような映画がほとんどかけられておる。こういう状態になって、ここに入っておる人々に青少年がいないのかというとちゃんと入っておるわけですからこういう点でまた形の変わった青少年問題がここで生まれてくるのじゃないか、現に生まれておる、こういうことなんです。これを一応認識していられるのかどうか、認識していられるとするならば、一体どういう状況になっておるか、ひとつ御報告願いたいと思うわけです。
  143. 舘林宣夫

    舘林説明員 最近、深夜興行をする映画館がふえてきたことは御指摘のとおりでございます。その原因を聞かしてほしいというお尋ねでございますが、一番心配になりますのは、先般東京都等において条例を設けまして、トルコぶろ等が深夜営業締め出しというようなことがあったわけであります。また喫茶店も深夜を、風営法の関係で、青少年のこれらに対する出入りを考えて、特定の地域に限って許す、こういうことになったわけでございますが、こういう場所から締め出された青少年がこういう深夜興行の映画館へ入り込むようなことになっておるかということを私ども心配いたしておるわけでございますが、警察庁等から伺ったお話では、深夜喫茶等から流れていった者が映画館に入っておるようには思えない、こういうお話でございます。  しからば最近、このように深夜興行をする映画館がなぜふえておるかという問題があるだろうと思います。最近映画界は不況のようでございまして、昭和三十五年に全国で九千四十二軒映画館がございましたが、昭和三十八年は七千六百九十二軒というように非常に大幅に減っております。そういうことで、営業上の目的から深夜興行をするように思われるわけであります。御承知かと思いますが、深夜興行をしておる映画系統は、全部ではございませんで、ごく一部でございます。また、都市におきましても大都市しかやっておりませんが、大都市の中でも東京と福岡だけであります。東京では五百四十八軒の映画館がございまして、普通の日はわりあい深夜営業をする映画館は少なくて、土曜日が多いわけでございます。午前一時以後も営業を続けております映画館は、土曜日は十五軒、普通の曜日では三軒でございます。十二時から一時までで打ち切る映画館は、土曜日は三軒、月曜日から金曜日までは一軒でございます。したがって十二時以後も営業を続けております映画館は、五百四十八軒のうち、月曜日から金曜日までの間は四軒、土曜日だけが十八軒、こういうことになっております。したがいまして非常に多いという状態ではございませんが、従前はこういう深夜営業はなかったわけでございまして、このごろふえてきたという実情でございます。
  144. 本島百合子

    ○本島委員 いま御報告のことが事実であるとしても、軒数は非常に多くないとしても、今後ふえていく傾向ではある、こういう一般の見方が強いわけです。同時に、一体衛生上の管理をどうしているのだろうかという疑問が生まれるわけなんです。それからもう一つは、青少年が入ってはならない、見てはならない成人向き映画、これがずいぶんかかっているわけです。しかし入ってみれば青少年が入っておる。映画館の前には未成年者入場お断わりとは書いてないのです。こういうものが深夜に行なわれているという傾向が多いのですが、こういう点で、衛生上の管理、こういうことは厚生省の管轄であろうと思います。もう一つ、成人向き映画に対して看板を掲げていない、そうして青少年が入っておる、これは法的に言えば業者の話し合いで成人向き映画であるかどうかということをきめる、業者同士で自粛した意味での看板をかけるのだから、自分のところは自粛しないでかけないのだといえばかけないで済む、こういう状態にあるということを言っておるようですが、こういう点はいかがでしょうか。
  145. 舘林宣夫

    舘林説明員 興行場法によりまして、興行場の営業を営む者は公衆衛生上必要な措置を講じなければならないということになっておりまして、いろいろの規定があるわけでございます。そういう観点から、換気、採光その他の注意は、昼間における場合と同じように、夜間も同じ注意義務があるわけでございます。ただ問題となりますのは、夜間こういう興行をするということによって、本来睡眠をとるべき人たちがこういうところに出入りをして睡眠不足になる、健康上よろしくない、こういう意味合いでの規制ということは行なわれてないわけでございまして、これらの方々はいずれは寝なければなりませんので、昼間は寝ておって適当な時間に働き、夜間むしろ起きておる人たちが多いのであろう、かように思うわけでありまして、そういう意味合いから、健康上の理由で夜間興行を禁止するということは、それが公衆衛生上非常に弊害があるという状態でございますれば、私どもとしても考えなければならぬところでございます。  いまのお尋ねは、これに青少年がどう出入しておるか、こういうことでございますが、お話しのとおり、条例等で夜間は青少年が入らないようにという規制はございませんけれども、一応東京都では業者のほうが自粛をして青少年は入れないつもりである、こういうことを言っております。しかし、入り口で正確に年齢を把握することは困難でございますので、当然年齢の若い者が入り得る余地はあるということでございまして、これによって青少年の健康がむしばまれる、あるいは精神上もよくないという事態がございますれば、私どもとしても何らか措置をしなければならないということで、注意はいたしておりますけれども、いまのところそういう法律に基づいた規制をいたしてないということでございます。
  146. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、行政指導面におきましても特段な考慮は現在払ってない、こういうことですね。現実に行ってみまして、空気は非常に悪いということがわかるのです。それから、こういう人々が昼間働いて夜いこいの場所として行ったと考えられないわけです。いまの御報告を聞いていて私違うのじゃないかと思うのは、これは私の聞き違いかもしれないのですが、大体日中は喫茶店やその他でうろうろしていて、深夜喫茶店がいまございませんから、それからのこのこと映画館に来る、夜じゅう映画館にいて、朝になるとモーニングサービスで、ちょうど五時ごろになってくると喫茶店が開く、そこへ飛び込む、こういうことをやっている者が多い、こういわれておるのです。そうすると、正業について健全な家庭の暮らしをしている者とは考えられない、そうなってくると、映画館の中でも寝ておる、簡易宿泊所に行けば金が高い、映画館なら安くてちょうどいい、合い間、合い間には映画も見せてくれるのだ、そういうような考え方も半分以上はある。これは統計をとってまた特別な調査をした結果ではございませんから、全部がそうとは申しませんけれども、大半のものがそういう傾向であるということが言われているのです。こういう場合において、貸し席にもなっていない映画館で寝泊まりをするという傾向、これは一体興行場法にひっかからないのですか。こういう点のお考えはどんなふうでしょうか。
  147. 舘林宣夫

    舘林説明員 映画館に入る目的が映画を見るためではなくて、別の目的で入るというような客が非常に多いという状態で、それを映画舘も承知の上でそういう営業をしているということでございますれば、当然別個の、旅館業になりますか、あるいはいまのお話のような貸し席というような取り締まりの対象になるものと思います。今日のわが国の、ことに東京の風潮が、これを放置しておいて国民の保健福祉上も、また精神衛生上もよくないという事態でございますれば、国として何らかの措置考えざるを得ないと思うわけでございます。これらの取り締まりの度合いは、それぞれの国内の環境全体を考慮してきめるべきことと思うわけでございまして、たとえば喫茶あるいはバー等の営業にいたしましても、文明国でも深夜これを許しておる国もあれば、これを禁じておる国もあるというように、その営業が深夜やっておりましても国民の心身をそこなうおそれがなければ、必ずしも法律で取り締まる必要はなくて、国民の自覚によってそれらが健全に運営せられていくことが期待できるわけでございます。そこで、この興行場が、今日深夜そのような営業をしておるためにわが国の国民の心身がむしばまれるという事態があれば、これは法律上もある程度の規制をする必要があるかと思いますが、私どもとしては、十分それらの点を考えて、実情を調べて、もしもそういうおそれのある事態を見出せば、至急に適当な措置をとる必要があると思っておる次第でございます。
  148. 本島百合子

    ○本島委員 そこで警察庁の楢崎さんにお尋ねいたしますが、いま著しい弊害があればと言われたわけなのですけれども、非行青少年の統計で参りますと、映画館での問題がかなり比重を占めておると思います。いままで非行の群れに入った動機の調査によりますと、映画館でというのがかなりの数字を示していた年代があったと思うのですが、そういうことを考えてみますと、深夜興行の場所において、そういう青少年が健全な状態で暮らしておるというふうには考えられない。これはもうだれが見てもそう思えるのです。特に、これは余分なことですが、外国映画で上映禁止になっておったものが、日本では堂々と上映された「沈黙」という映画、これはごらんになったかどうか知りませんけれども、この映画で問題になった点は、劇場での男女の情事というものを目撃して刺激された一人の女の情事が描かれた映画なのです。これは非常に社会問題的な問題を引き起こした映画であったのですけれども、日本では堂々と上映されていたのです。あの映画ばかりでなく、そういう内容を持つものはたくさんあるわけです。一つの悪の温床とまでは言わなくても、健全な一流館、二流館ではそうないと思いますけれども、小さな小屋というような状態のところ、あるいは設備が十分でないというようなところにおいては、かなりこうした非行に入る動機が、映画館の中で、あるいはまた婦人の場合で、転落した女なんかも映画館の中でいたずらをされたというような原因が多くあるわけです。そういうような意味からいけば、深夜興行そのものが、あなたのおっしゃるようにひどく放置しておいたならば困るような事態を引き起こす、そういうことがあれば法的措置をしなければならぬと思う。こういう上品なことを言っていても間に合わないという気がするのですけれども、こういう点について、楢崎さんのほうからひとついままでの統計に基づいてどうお考えになりますか、また統計がありますれば、そういうことの原因によって非行青少年になったとか、あるいは転落したとかいうようなことをひとつ知らしていただきたいと思います。
  149. 楢崎健次郎

    ○楢崎説明員 非行少年の原因別の資料の中に映画館でという項目をただいま持ち合わせておりませんので、正確な数字はちょっと申し上げかねますが、一般的に申しまして、先ほどお話しの八月一日からの風営法の改正によりまして、青少年が深夜喫茶等を締め出されまして、それがどういうところに行くかということにつきましては、私どもは非常な関心を持っておりまして、風営法の施行前と施行後の深夜の青少年の動きについては、現在いろいろ調査しております。まだ法律施行後日も幾らもたちませんので、たとえば先ほどお話しになった、特に八月以降深夜映画館の中に少年がふえたという統計も出ておりません。一部には、深夜映画館に少年が増加したという報告も聞いておりますが、一般的な傾向として指摘するほどにはまだ数字はまとまっていないようでございます。私ども今後そういう状況を厳重に視察しまして、もし今後傾向として深夜映画館なんかに非行少年の問題が非常に多くあるというようなことであれば、これはいろいろな対策を講じなければならぬというように思っております。現在でも、御承知のように全国で約三十県ほど青少年保護育成条例というものができておりまして、その条例ができた県では、たとえば深夜少年は外出してはいけない、あるいは深夜興行場、映画館などに入ってはいけない、あるいは指定された映画については興行主はこれを少年に見せてはいけない、そういう条項がございます。それに従いまして警察はあるいは取り締まり、あるいは深夜映画館における少年の補導というものを重点的に行なっておる、こういう状況でございます。  東京につきましても、十月一日から新しい青少年の保護条例ができますので、できますれば、いまの深夜映画に対して青少年を入れておるそういう興行場に対しては取り締まりができます。また、もちろん中に入っておる青少年について、警察の従来の、補導ということをもっと積極的にやる、こういうことになろうかと思います。  たいへん抽象的でございますが、一般的に深夜少年が映画館の中で、ことに終夜営業の映画館の中で遊んでおる、あるいは映画を見ておるという状態は決して健全な状態とは思われません。できるだけ保護育成条例の活用あるいは青少年の補導その他によって、警察としても積極的にこういう状態をなるべく未然に防止するように、あるいは映画館等に対する保護育成条例等の活用によって、そういう状態のないようにしていきたいと考えております。
  150. 本島百合子

    ○本島委員 いまの統計のことは、風営法の改正のことを申し上げたのではなくて、従前のもので見ていった場合に、映画館でのという条項があって、統計はたしかあったと思います。それがもしちょうだいできれば、ちょうだいしたいと思うわけです。いまの御報告では、どうも風営法改正後のことをおっしゃっておるように思いましたので……。  そこで、地方条例等にまかせていろいろやってみるというような傾向が非常に強いのですが、風営法を審議するときにも、地方条例でまかせるということは非常に危険ではないか、むしろ本法で規定するのがいいのではないかという論議もあったくらいなんです。そういたしますと、ちょうどこの深夜喫茶店というものは、一応曲がりなりにもかっこうがついてきた、しかも地方行政委員会で、九月の十日でしょうか、その後の問題についての審議がありましたときに、この改正後においては非常によくなったという報告をされておるわけなんですね。その報告の中で、私非常に気持ちがよかったのは、おとなの酔っぱらいも減ってきて非常にいいのだ、それからもちろん、ぐれん隊というものも、盛り場でいままでたむろしてうろうろしていたのがなくなってきた、青少年はもちろん減ってきた、そういうような御報告があったのを読みまして、これは私ども思い切ってやってよかったのだという気がするのです。これと同じように、今日の深夜興行ということは、かつての深夜喫茶店ができたときと同じような形を生むのではないだろうか。しかし、数から見れば、映画館のことですから数は少ないのです。収容力は多いのです。飲酒はあまりさせませんから、先ほど聞きましたように酒類等を飲まさないからいいわけで、あばれたりなんかすることも少ないだろう、そのかわり内向的な犯罪が行なわれるだろう、これは考えられるわけです。もう一つは、青少年ばかりを考えないでおとなの社会から考えても、深夜そういう映画館に行って夜明けを待たねばならぬというのも、ほんとうは正しい姿でないのです。そこで、先ほどから放置していて非常な悪影響がある場合においては、法律的な措置もしなければならぬだろうと言われた問題に返るのですが、いまからそれをやるという意思にはなれないでしょうか。これは憲法上の問題が出てくるので、いつも職業の自由選択ということ、それから規制を受けないというようなことでひっかかってきて、深夜喫茶店等についても現にまだ裁判を受けておるなんという状況が残っておるわけですけれども、私どもは、憲法十二条の解釈というものはほんとうに真剣に考えなければいけない。自由と権利というものが与えられている、しかしそのことは、公共の福祉に沿うようにしていかなければならぬ。公共の福祉を考えた場合に、深夜興行というの。が体公共の福祉に何の役立ちがあるのだろうか、こういうふうに考えるのです。悪は芽のうちにつめということを裁判所等でも最近特にきつく言って、青少年の犯罪なんかは、初犯であって軽いものであってもなかなか許さないという傾向なんです。一方、そういうきついものをやっておりながら、社会の流れとして営業というものが出てきた場合においては、これは実にゆるやかなもので、何か悪影響がほんとうに出てくるまではほうっておくのだ、その間に数は増してくるのだ、またそこが根城になって悪の温床になるのだ、こういうことがわかり切っておるのですけれども、どうすることもできないというのが現在の法律のようでございますが、こういう点についてどうお考えになりましょうか。このことにつきましては、法務省のほうにも、いままで申し述べた観点に立ってひとつ御見解を述べていただきたいと思います。
  151. 舘林宣夫

    舘林説明員 先ほど申し上げましたように、青少年が深夜に各種の施設に出入りして、それによって心身がむしばまれるという事態は放置できないわけでございます。ただ、映画館だけについて申しますと、先ほど来申しておりますように、今日では東京と福岡だけのようでございまして、ことに東京につきましては、ただいま警察庁のほうからお話がございましたように、青少年に対する特別規制の条例が十月一日から有効になる、こういうことでございまして、したがって国が法律でやります前の段階で、今日は地方的な特殊な状態にとどまっておるわけでございますので、この条例の進展の度合いも私どもとしては見てまいりたいと思うわけでございますが、なお深夜興行が全国的に広がり、それが青少年に悪響影を与えるということでございますれば、当然私どもとしては国の法的な規制も考えていかなければならない、かように考えます。
  152. 津田実

    ○津田説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、法務省として主として考えますものは、やはり社会の道義的に許されない行為は何かということを中心にしてものを考えることを主として所管いたしておるわけであります。その意味におきまして、かような興行場の取り締まりというような問題につきましては、主管省の行政あるいは主管省によりますところの法規制というものを第一義的に考えまして、その場合に、その行政なり法規制を確保するための処置といたしましてどういう罰則を設ければいいかというような点は、私どもも御相談に応じているところでございます。  そこで、いまの深夜興行の問題あるいは青少年の不良化防止の問題ということになってまいるわけでございますが、まず青少年不良化の防止というものにつきましては、ただいまもお話に出ました保護育成条例というようなものによりまして、その地方地方の実情に応じて、あるいは深夜の興行場その他の立ち入りを禁止する、あるいは興行主等に立ち入りをさせない措置をとらせるというようなことがぼつぼついたされておるわけでございまして、御承知のように、東京都においても明日からそういう条例が施行になるというふうに承知しておりますが、その点につきまして、さらにまた一般の方々が一体深夜に興行を観覧する、深夜に娯楽を求めなければならぬという必要性がどの程度あるかというような問題があると思います。しかし、この点につきましては、いろいろただいまお話しもございました業者側から申せば職業の自由があり、またそれに需要があるという点で、その需要そのものが、私ども考えから申せば道義的に許されない動機から出た需要であろうかどうかということになりますと、非常にそこはむずかしい問題だと思うのでございまして、一般的に需要があるところのものを禁止するということが、はたして現在の状態において適当であるかどうかという点については、私どもとしても、なお行政の実態なり主管省の考えを十分伺った上でないといかんとも申し上げかねるというような意味でございます。したがいまして、一般的に国民生活あるいは青少年の生活を保護いたしますことについては、第一次的にはそれぞれ専門の省におまかせしまして、それがさらにもうその限度を越して、道義的に許すべきではないという状態に対しては、私どもとして何らかの手を打ちたいという次第になるわけでございますが、現在のところ、まだそこまでちょっと踏み切るという段階には至っておらないというように考えておるわけでございます。
  153. 本島百合子

    ○本島委員 厚生省の答弁を聞いておりましたら、ちょうど深夜喫茶店の問題が出てきたときと同じようなことをおっしゃっていると思うのです。あのときは、東京と大阪だけで、あとの都市には出ておりませんから心配要りませんと、こういう答弁であったのです。それが五年前にあの風営法を改正いたしましたときに、相当の論議をして、これはもうどんどん増加していく、そして健全なものの考え方を持つ人たちが、深夜喫茶店は必要であるかないかまで論議されたのです。その場合に、今日改正されたような状態のところまでしかたがないじゃないかという意見もあったのですけれでも、五年前のときにはそれがうまくいかなくて、五年の間に今度の改正を見る、こういう状態に立ち至っておるわけです。私どもどの経緯を知っておるものですから、今回のような深夜興行というものは必ずまた流行の傾向にあるだろう、そういうふうに思われるわけです。ですから、いまのうちに——法的根拠がないという理由によって放置をしておくことはいかがか、こう考えるわけです。  同時に、もう一つ法務省の方にお尋ねしたいのは、最近私ども行ってみて非常に感じたことは、深夜興行の場合に、先ほども申し上げたように、いい映画はあまりかかっておりません。心の琴線に触れるような、感激するような映画というものは深夜にかかっておりません。大体セックスの問題を取り上げたものが多い、こういうことになるわけです。そこで、いま、これは社労委員会の所管でないかもしれませんが、法務省のほうからおいでになっておるのでお尋ねします。  「白日夢」が問題になりましたときに、私ども婦人議員が一応取り上げてやろうかという話も出ました。けれども、「温泉芸者」のときのことを御承知であろうかと思いますが、あれは心身障害者を特別に故意に取り扱っておかしな雰囲気をかもし出した映画で、身障者を侮辱する映画として私ども取り上げたわけであります。ところが、その取り上げたところから、これは映画をもうけさせる手段だ、婦人議員が騒げば必ずもうかるんだから、こういう声に私ども一時たじろいだわけですけれども、やはり心身障害者を侮辱するような映画は悪であるということで、やろうじゃないかといってやったわけなんです。ところが、今度の「白日夢」が非常に問題になりましたときに、私どもはこれをほっておいたわけなんです。自然に社会が制裁を加えてくれるだろうというぐらいに思っておったわけでありますが、あれで松竹が赤字を挽回して何億とかもうかったというので、それからわっと各社もセックス映画をとるようになってきたわけなんです。現在上映されておるセックスに関係あるものは、二十本以上あると思うのです。それは外国映画、日本映画、ともども合わせてそうなんです。それは私どもから見れば、軽犯罪法に触れる点がたくさんあるわけなんです。それが何ともされないで放置されておるというようなことで、過日映倫に参ったわけなんです。映倫で相当論議をいたしましたが、映倫としても、尽くすだけ尽くしてみたけれども、相手が聞いてくれないのだ、こういうわけです。それから警視庁に参りました。警視庁では、当然そういう点にひっかかる。特に「白日夢」の場合においては、私どもが見ても六カ所ぐらい軽犯罪法に触れるような点があるわけです。しかも私ども婦人議員は、半数の方が、気分が悪くなった、吐きけを催したなんといって飛び出したくらいですから。そういう映画でも、とにかくどうすることもできない。こういうわけで、実は婦人会の人たちが映倫にも相当陳情し、警視庁にも行ったはずなんです。そこで警視庁としては、法務省にこれは何とかならぬかというような御相談があったと聞いております。法務省の言い分では、いま検討中であるということで、検討中が今日まで続いておりまして結論が出てこない。その間に全国ほとんど回ってくる。大体映画一本、日本全国を回るには、あれが一年の歳月で回ってしまうそうです。現在では、もう中都市より小都市のほうまで行っておるわけなんです。これだけの期間たっておりますけれども、何ら法務省の見解が出されていないというようなことを聞き及んでおるわけなんですが、こういう点はどうなんでしょうか。特に私が深夜興行に関連して申し上げるのは、そういう映画が深夜興行の場合に多く使われておるからです。だから、私は、これで純風といいましょうか、善良なる風俗というか、そういう点で、ほんとうに健全な映画の映画館としての運営であろうか、こう思うものですから、こういう点、この際承っておきたいと思うのです。
  154. 津田実

    ○津田説明員 ただいま御指摘の映画の問題でございますが、全般的に見まして、最近一部には好ましくない映画が相当出ておるということも、私どもは一応承知いたしております。ただいま御指摘がございましたので、具体的映画のことについての御質問でありますから、その問題について現在どういたしておるかということを申し上げるわけでございますが、この映画につきましては、検察庁方面におきましても、法務省におきましてもこれを検討しておることは事実であります。  そこで、映画の上映がどういう形で規制されるかと申しますと、規制そのものは何らの価値はないわけでございまして、これはもとより映倫の活動、結局業者の自制的な処置によるほかはないというのが現状でございます。したがいまして、事前におきまして映画の上映が禁止されるということはあり得ない。業者自身が自制する場合は別です。そういたしますと、これは上映したものが犯罪になるかどうかという観点からものを見ていかなければならない。検察庁の活動といたしましては、むしろそのほうからとる。もちろん警察の場合におきましても同様でございます。  そこで、現在刑法のわいせつ物罪で取り締まるということになるわけであります。御承知のようにわいせつの概念、これがどういうものであるかということについては、いろいろ議論がございます。現在最高裁判所においてとられておるところの態度は、これはすでに御承知でございましょうが、例のチャタレー事件において出てまいりましたところでありまして、そのわが国の裁判所判例の伝統的解釈ということになりますと、過度に性欲を興奮または刺激させ、それから普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する、この三つの要素が必要である、その場合にそれをわいせつと判断することができる、こういうことになるわけです。しかし、これは裁判所の判例によりますところの抽象的な基準でありまして、具体的にこれを当てはめた場合にどういうことになるかという問題がある。そこで、ただいま御指摘の映画につきましてこの三つの全部に該当するかどうかという点につきましては、これは見ました者につきましていろいろ議論があるわけであります。そこで議論をするのみならず、現在裁判所がするところの刑法の正当な解釈として、これがどういうふうに判断されるのかということは、その具体的映画について決するのほかはないわけです。  そういたしますと、あの映画につきましてこの三つの要素に照らして考えます場合に、いろいろ問題点が出てまいります。これは積極的な考え方からの問題点もございますし、これを打ち消すような消極的な問題点もございます。したがいまして、俗に申せば、全く限界線を縫っているような映画というふうに言えるのではないかということが考えられる。そこで、その限界線を縫っているものに対する処置としてどういたしますかという問題でございます。これはもちろん、これを起訴いたしまして、最終的に有罪判決になるという場合もありますが、また逆に無罪判決になるという場合も考えられる。そこで取り締まるほうの立場から申しますと、無罪判決になったという場合の影響ということを考えますと、これは非常にいろいろな問題が出てくるわけでございます。第一、表現の自由の限界というものに対してある程度の違う判断をしたというような問題にもなりますし、他方、もしそれが許されるものとすれば、業者の正当利益と申しますか、ある程度の利益を害するというような問題が出てまいります。また将来の問題として考えます場合において、この限度までは一応差しつかえないんだというような意味において、ますます同種の映画を助長するんではないかというような考え方もあるわけでございます。あれやこれや考えますと、いま何を考えておるんだというようなおしかりもあるかもしれませんけれども、なかなか決しがたい問題になってくるわけでございます。そういう副次的な効果といいますか、影響というものも十分考えました上で処置をいたしたいと思いますけれども、せっかくいま警察方面とも協議をいたしておる次第でございます。私どもとしては、決してあれが好ましい映画とは思っておりませんし、またああいう映画が続出することは決してよくないことだと思いますが、しかしながら、これまではいいんだという限界をこの際確立することも、これは非常に問題だというような意味において、若干の慎重な検討をいたしておるというのが現状であります。
  155. 本島百合子

    ○本島委員 この問題でもうちょっとお聞きしたいんですが、いま御答弁で今後そういうものを助長して出てくるということも困ることだとおっしゃったのですが、まずごらんいただいたんでしょうか。
  156. 津田実

    ○津田説明員 私は見ました。
  157. 本島百合子

    ○本島委員 ごらんになりましたか。そのあとに「紅閨夢」というのが出ておりますね。それからその他の映画会社から、あれは同性愛の変態を取り扱ったんでしょう、「卍」とかいう映画、それから「女体」という映画、それから「砂の上の植物群」ですか、いろいろ出ておるんですね。たとえば外国映画で「ショック」という映画、これは外国では全然上映されなかったんですけれども、日本では堂々と上映されたんです。それは見て耐えられるようなものじゃない。常識のある人の感覚から見れば、もう見られたものじゃないんです。それほどひどいものなんです。ところが、いまの見解でチャタレー夫人の例をとられましたが、チャタレー夫人の場合は後に映画になりましたが、あれは裁判があってから後の映画であって、あの本が裁判になったわけですね。本というものは一人一人が買って読むので、映画館のように五十人以上百人、二百人と大ぜいの人に一ぺんに見せるものじゃないんです。ところが、映画というものは、何人でも映画館に入れかわり立ちかわり、入っている人たちが全部一ぺんに見るものなんです。しかもすれすれとおっしゃるんですが、そのすれすれの度合いを越しているということは、もう常識ある人はみんな言っているんです。だから、それを何で法務省がにぶっているのか。まず最大原因は、もしそれが負けた場合においては、これまではいいんだという裏づけになるからだというしり込みだということは聞いておりますけれども、しかし英断を持って勝ち抜くだけの論拠は確かにあると思うのです。そういうものをひとつ論陣を立てて、ああいうあくどい映画というものを追放するのだというぐらいの決心でやってもらったらできるんだ、私はこう思うのですれども、いまの御答弁では歯がゆくて歯がゆくて、青少年に対して成人向きの映画なんとおっしゃるけれども、映画館に行ってみれば、絶対に未成年者は入場しちゃいけないなどと書いてありませんし、入ってみれば、若い人はみんな入っております。そして、あの映画の影響は善良なる家庭の中にまで持ち込まれて、自分の親たちがあんなことやっているのかなんてやられて、親のほうが困っちゃっているという御意見まで出ているくらいです。こういうことを判断していけば、確かに悪いものだ、悪いから追放したらいいだろうが、追放しようとしてもできない。そこで映倫というお話がありましたけれども、映倫も最大決心をして努力をしているのですが、あの監督におどかされ、第二の映倫をつくるなんといっておどかされているのですね。映倫規定を読んでみますと、やはり性的なものを取り扱うには、こうこうしてはいけないということが書いてあるのですけれども、そういうものを乗り越えたものなんですね。そういう映画が約二十本近くも出ている。そうして深夜興行では大体そういうものをやっている、こういうことになっている。ですから、単に深夜興行というものが他に影響を及ぼす経過を見てと言われるのですが、見なくてももうはっきりしている。もちろん行って見ていただきたい。そうしてどういうものを上映しているのか、深夜までごらんにならなくてもよろしいから、どういう映画をやっているのか、これを見るだけでもいいのです。そうして早い時間に行ってみて、どんな若い連中が行っているかということをごらんになってくださってもいいのです。そうしてごらんになったならば、その実態はおわかりになると思うのです。ですから、私は、こういう場合においてはやはり勇気を持って、社会から非難を受けるというようなもの、こういうものを排除するだけのものは、憲法上私どもは許されておると思うのです。そういう観点でいま一度聞きたいのですが、いまの御答弁ではやはり仄聞しておったところとちっとも変わらない御答弁をいただいたわけで、はなはだ残念に思うわけです。もっと憲法十二条のあの精神を生かすということになれば、公共の福祉のために勇気を持たなければならぬじゃないだろうか、こう思うものですから、いま一度映画の問題で御見解を聞かしてもらいたい。
  158. 津田実

    ○津田説明員 ただいま御指摘の映画と文書、つまり書物というような場合の影響の違いというようなことにつきましては、私どもも十分理解をいたすわけでございます。もちろんその判例にあらわれましたところは、映画についてはただいままでございませんので、いまの文書、つまり「チャタレー夫人の恋人」の本によっておるというわけでございます。従来のわいせつの考え方によりますると、あるいはからだの部分、あるいは動作というような個々の点をとらえまして、あの部分がわいせつになるとかならないとかいうことが主として問題になるわけです。例のチャタレー事件につきましても、多くはそういう点が問題にされた。ところが、ただいま御指摘の映画につきましては、私も現実に見たわけでございますが、これは公的にと申しますか、率直に私の感じを申し上げますと、確かに非常に不愉快な映画でありまして、ああいうものは二度と見ようと思わないという感じを持つわけです。映画を見たあとのあと味が非常に悪いということになるわけですね。そこで、そういう点は確かに御指摘のとおりあるわけです。それから、かりに性欲に関する描序にいたしましても、非常に異常な描写がなされているということはあるわけです。しかしながら、従来の観念から申しますると、からだの部分あるいは行為というものについての従来の観念からするわいせつという場所は、これは場合によって、場所によってはあると指摘されているところもありますが、非常に薄くなっている。これは極端に申しますと、そういうような異常に進んでいるような映画も、ときどきはあるといわれているわけです。そこで、そういう意味におきましてあの映画をとらえることは非常に困難であります。だから、問題としては、結局あの映画が、全体として先ほど申し上げました過度に性欲を刺激または興奮させるというような点に当たるかどうかということを問題にしなければならぬということになりますと、現在の判例上あるいは裁判上の問題としては、かなり画期的な問題になるのじゃないかというふうに考えるわけです。その意味におきまして、またほかに先ほど申し上げましたいろいろな影響を考慮いたしまして、両者かれこれ考えまして、いまのところ慎重に検討しておるというふうに申し上げるよりしかたがないわけでございまして、私ども何らかの形においてかような映画がはんらんしないことを希望いたすわけでございますけれども、やはり法の安定性ということを考えますると、感情を持って云々するということはできませんので、そういう意味におきまして、慎重に各方面から検討いたしておるというのが現状でございます。
  159. 本島百合子

    ○本島委員 法の盲点というか、法のすれすれでなされた映画だということを言われておりますけれども、何らかの規制はしていただかなければならぬのじゃないだろうかという感じが私ども強くするわけなんです。たとえばイタリアに出しましたときにこれは拒否されたわけです。上映禁止になっておる。この国は、御承知であろうかと思いますが、四十年以前からこういう映画に対しては潔癖なほどの感情を持っておる。そういうことで、向こうでつくったものでさえも上映しない、禁止になったものが日本では堂々と上映される。そうなってくると民族性ということになってくるかもしれませんが、しかしやはり法的な根拠が、こういうものに対して何ら規制するものを持っていないというところに大きな原因があるのだろうと私は思うのです。だから憲法に違反しない程度のある程度の規制はできると考えておるのですが、現行法ではないということで私ども非常に歯がゆくて、何とかしなければならぬという気持ちを持つわけですが、ひとつこういう点についても特段の御考慮を払ってもらいたい、これは要望でございます。  そこで、もとの問題に戻りまして、深夜興行というものが大体いま申し上げたようなものを多く上映しておるところであるし、しかも終夜やっておるので、設備としては換気その他を考えて、厚生省あたりで行政指導されておると思いますけれども、これから冬場に向かっていきますし、宿屋としては一番安上がりだ、しかもこの映画館での雰囲気というものはまた特別なものがある、そういうようなことで今後どのくらい件数がふえるかわかりませんが、深夜喫茶店と同じように、かつては東京と大阪しかなかった深夜喫茶店が全国的に中小都市まで及んだ。今度は、深夜興行は東京と福岡だけしかない特殊な例であるからというようなお考えというものは、やはり払拭していただかないといけないのじゃないだろうかと思うわけであります。そして青少年を守るという立場からいたしましても、何とか興行場法の改正をしてもらいたい、そういう意思があるかどうか。一番最初に申しましたように、風営法の改正のときに興行場法の改正もしたい、また公衆浴場法の改正もしたい——トルコぶろの問題は地方条例にまかせました結果、依然として解決していないのです。そして個室におけるいろいろの想像、また現実に理解できないところのトルコ嬢の収入、こういうような点を考えてくると、何となく疑惑を持たれるものである。法の盲点といっても、一方公衆浴場法があるのですから、こういうものは改正できるはずだ。また興行場法もあるのですから、こういうような場合に一つの規制をする。健康な国民をつくり上げていくためには、そうした不健全なものがなければならぬという理屈はないはずです。ただ自然発生的に生まれてきつつある問題に対して、断固としてこういうものを禁止するというぐらいの決意があっていいのではないだろうか。これは大臣に決意を聞くべきことですが、いま一度局長さんの意向を聞いておいて、そして次の機会に大臣見解をただしてみたいと思うわけです。ボーリングの問題についても、文部省の所管だといっておるけれども、文部省の所管になっておらない。スポーツだという軽い意味での観点になっておるのです。そして依然として青少年が入るし、そこから小づかい銭ほしさの犯罪があとを断っていない、こういうことになっておるわけです。そうして深夜喫茶店から締め出された人たちが、今度深夜興行に行くということになるわけです。ですから、あの深夜喫茶店の問題の解決ができたときに、その数が減ってきたというこの現実に目をおおうてはならない。そうすれば、やはりいま生まれようとしておるこうした変則的な、あるいは脱法行為と私たちは言いたいが、法律に規定してないそうですから脱法にはならないが、法の盲点をついてやってきたのですから、こういうものに対しての規制というものを案外早い機会にやってもらわなければいけないのではないか。それをやる意思があるかどうか。トルコぶろあるいはまたボーリング、ヌードスタジオ、そして深夜興行、こういうものも一連の関連のあることですから、こうした点についての見解をひとつ述べていただきたい。時間もたいへんおそくなっておりますから、また大臣が出られますときにそのほうの問題を聞かしていただくつもりでありますが、一応あなたから大臣に言っていただいて、あなたはここでどういう考え方か、改正する意思は全然ないとか、あるいは多少でもあるとか、そういうことの表明をしてもらいたいと思うわけです。
  160. 舘林宣夫

    舘林説明員 お話しのように、問題は映画館だけでなくて、最近、戦前あるいは戦後の一定の時期に比べて、深夜営業をする諸施設が多くなったように感ぜられるわけであります。それは喫茶店のみならず、映画館、ボーリングもお尋ねのとおりでございまして、青少年がそういうところにたむろするという目的で映画館をもしこの際法的規制をすれば、これがまたボーリングに行くというようなことで、深夜営業であって青少年が入りやすいような施設全般的な問題であろうと思うわけであります。こういうものに対して国として何らかの規制をする必要があるかどうかという判断でございますが、これが好ましいものでないことは申すまでもないことでありまして、かなり青少年に対して悪影響があるという事態があれば、ちゅうちょなく何らかの措置をする必要がある、その際には一興行場法上の問題ではなくて、別個の観点から、青少年を保護するという意味合いから全般に通ずるような法的規制がむしろ望まれるのではなかろうかと考えております。  しからば、それが今日そういう事態であるかどうかという判断でございますが、確かに、終戦後のわが国が今日まできた過程における今日の事態というものは、従来より以上そういうことを放置できない事態が醸成されておるかと思います。私どもとしては、この問題は厚生省だけの問題ではなくて、むしろ風営法を主管しておられる警察庁あるいは法務省、あるいは文部省等、関連する各省がございまして、政府全体としてこれをどうするかということは考えていかなければならないことでございますが、青少年の心身の健全化ということは、国全体の大事な題目として考えておる次第でございまして、手おくれにならないように私どもとしては絶えず注意をしておる必要があるということが、基本的に申し上げられると思います。しからば今日どうするかということでございますと、実情をもう少し検討させていただきたい、かように申し上げたいのでございます。
  161. 本島百合子

    ○本島委員 最後に要望ですけれども、御承知のとおりオリンピックも間近にきておるわけなんです。それで、これも興行主との話し合いできまることと思いますが、意見は述べていただけると思うので言うわけです。映画館の看板をごらんいただくと、かつて私どもが映倫に抗議を申し込んだときに、絶対に横たわつてキッスをしておる場面あるいは情欲をそそるような風景は出しません、こう言ったのですが、今日はそんなのばかりです。それがオリンピック道路といわれるようようなところにずっと立っておるので、ほんとうに恥ずかしと思うのですが、あれの撤去はできないのですか。興行主等にそういう話し合いをすることはできるだろうと思いますが、これは法務省か警察庁かどちらかでそういう打ち合わせをなさったように聞いておるのですけれども、どんなでしょうか。ああいう絵を外国人の目で見たときに、いい日本民族の風習とは考えられないと思うのです。何とかあれを撤去して、もっと情緒豊かなきれいな絵でもかけてもらいたいと思いますが、あと十日間くらいしかありませんから間に合うかどうか知りませんが、何かそういう御相談ごとがあったと聞いたので、そういうことについてどういうふうになさっておるのか、もししてなければ急遽それをしていただいて、ほんとうにあくどい看板等は、この際全部おろしてもらうようにひとつ勧告できないでしょうか。法的にできなければ、何かそういう話し合いの機会を持ってでも急遽やっていただきたい。これは要望ですけれども、そういう方法があるかどうか、またいままでにそういうことをなさったかどうか、ちょっと聞かしてもらいたいと思います。
  162. 楢崎健次郎

    ○楢崎説明員 御指摘のように、映画そのものもさることながら、映画の看板が、大衆が通る目の前でたいへん好ましくない状況で掲げてある、私ども、これについてもいろいろ関心を持っております。法的にどうするかという方法につきましては、警察としましては主として行政指導として、たとえば著しくわいせつ的な広告であればそのつど警告をし、あるいは注意をして取り払わせるというような措置を現在もとっております。それは事実上の指導としてやっておるわけでございますが、そのほかに、先ほど申し上げました青少年保護育成条例、その中には、有害広告物についてはこれを委員会が指定して撤去を命ずることができるというような条項がございまして、保護育成条例の活用されておる府県では、たとえば大阪とか、名古屋は非常にこれを活用しておりますが、保護育成条例のある府県についてはこれを活用し、警察からも積極的にそういう広告物の有害性を指摘して、委員会にこれを指定してもらい撤去を命じてもらう、こういう措置を現在もとっております。東京については、先ほど申し上げましたように、十月一日からということで新しくこの規定が動き出すということになりますので、御指摘のような問題について保護育成条例を活用するということについては、私どもも十分努力したいと思っております。それから少ない例でありますが、たとえば「白日夢」の看板について、あるいは「赤い殺意」というものの看板については、これは刑法のわいせつ物の違反のおそれがあるということを警告して、撤去させた例がございまます。いろいろ行政的に、あるいはそういった法規をたてにいたしまして指導する、あるいは必要に応じて撤去を命ずるという措置はかなりとっておるつもりでございますが、数もたくさんございますし、まだ十分ではない。むしろこういう、ただいまの保護育成条例の適用あるいはわいせつ罪に触れるということを警告し、もっと積極的にこれを指導によって撤去するというような努力をして、十分に注意するように——こういう点については最近私ども取り上げまして、全国にもそういう指導をしております。
  163. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十月一日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時四十三分散会