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滝井委員 そうしますと、たいして
理由はないわけですね。丁寧に見ていきますと、いまのようにわれわれ
法律のしろうとが見ても
在職期間というならわりあいすぐわかるわけです。ああそうか、
勤務していた間だなと。ところが、わざわざ「
勤務していた間」ということになりますと、
在職期間という
ことばが前に出ていなければいいけれども、出ているわけです。そうしてこういう違ったものを書いてきているわけですから、何かこれは特別な意味があるな、こう見るわけです。ところがいまのように
在職期間の一部で特別な意味がない。ただ、「海外にあって
復員するまで」というのが前にあるから、それで調子を合わしたということのようです。わかりました。
それから三十九条の二の一項一号の「
昭和十二年七月七日以後における
在職期間内に
公務上負傷し、又は
疾病にかかり、当該
在職期間内又はその経過後二年以内に死亡した
軍人軍属又は
軍人軍属であった者の
遺族。ただし、重大な過失によって
公務上負傷し、又は
疾病にかかった者の
遺族及び当該
公務上の負傷又は
疾病に
関連しない負傷又は
疾病のみにより死亡したことが明らかである者の
遺族を除く。」こうなっているわけです。この「
公務上の負傷又は
疾病に
関連しない」というところなんですが、「重大な過失によって
公務上負傷し、又は
疾病にかかった者の
遺族」だから、これはいままでは救われなかったわけですね。今度は救いましょうということでしょう。これは私は重過失かどうかということはわりあいわかりやすいと思うのです。これは特別な場合で、ここで言うにたえない場合だってあるわけですから。ところがその次の項で、いま言いました
公務上の負傷または
疾病に
関連しないものは、「負傷若しくは
疾病のみにより死亡したことが明らかである者の
遺族」は除かれることになるわけです。そこで、この
関連しないということの問題ですが、これはさいぜん御
質問申し上げた逆になるわけです。
遺族としてみれば、おまえの
むすこは重大な過失で死んだんだぞ、こういうことが明らかになれば、これは
むすこの罪だといってあきらめるわけです。ところが、
戦地で死んだんだけれども
公務上の負傷または
疾病に
関連しないんだということの
証明は、たまたま
証拠の
書類がないということでこうなるわけです。
証拠の
書類がありせば当然
公務上負傷し、または
疾病で死んだんだというので
公務扶助料その他全部もらえるけれども、この場合は一時金だけになる。一時金をいただけるようになったことはいままでよりは前進です。前進ですけれども、ここらあたりはさいぜん申し上げたことと同じになるのだが、よほどひとつしっかりした態度で——厳重にやられると
遺族はやはり泣かなければならないことになる。この前
小林君が言っておったようなことになるのですね。だからこの前とうらはらの
関係ですから、ぜひ注意をしておいていただきたい。
そこで私はここで
一つの実例を出すわけです。これは
援護課長の木暮さんの前の
援護課長のときから私が交渉しておる問題ですが、これがなかなかきまらないのです。どういう例かというと、大腿骨の盲管銃創をやったわけです。すなわち大腿骨の複雑骨折です。そうして軍隊で治療のしかたが悪くて
復員をしてきた。しかしこれは
御存じのとおり大腿骨の複雑骨折だってある程度の一定の年限がたつと自然にまずい治療でもびっこ引きながら治癒することになるわけです。ところが帰ってその男が運搬夫——いわゆる石炭のトロッコが坑内から上がってくる、それを選炭機の方向へ持っていく。相当足を使わなければならない、鉄道線路みたいな凸凹のところを動くわけですから。そうすると帰ってしばらくやっておったら足が痛み始めたわけです。そこで足が痛んだので
陸軍病院へ行ったら、これは温泉に行きなさいというので別府かどこかの陸軍の温泉に行ったわけです。そうして行って間もなくそこで心臓麻痺で死んだのです。そこで私はその
死因を見ると、右か左かの大腿骨の盲管銃創兼心臓麻痺と書いてある。ところがあなたのほうはこれは職務に
関連はない心臓麻痺だからだめですとこうなっておるわけです。ところが私の主張はそうではない。大腿骨の複雑骨折が起こると神経痛が起こる。これは坐骨神経痛が起こる。神経痛が起これば痛くてめしが食えない。めしが食えないから衰弱する。だから
診断書には大腿骨の複雑骨折、非常に衰弱しておると書いてあるのに、この者が陸軍の温泉の療養所でなくなっておるのにこれを
公務関連とは認めない。そうして却下をして御両親は泣いておるわけです。こういう場合、われわれ
医者が見ても当然
関連があるという主張なんだが、一方においては恩給局その他が、過去においてこういう裁定をしておるからというメンツばかりにとらわれてなかなか認めない。もう三年になるのです。
先生、待ってください、結論を
出しますまで待ってくださいといって認めない。これがどこにもからだに傷がなく帰ってきてやったというのならいいのです。帰ってきて心臓麻痺でなくなったというのなら、それはもうなるほど
公務に
関連がないということになるのです。ところが複雑骨折があって、しかも大腿骨の盲管銃創ですから、まだたまは残っておる。あるいは大腿骨に腐骨ができておるかもしれないのですよ。当時の兵馬倥偬の中における医学のやり方ですから、そんな複雑骨折を金属で骨と骨とを連結するなんていうことをうまくやっておるはずがないわけですよ。こういう場合は、私は当然過去の行きがかりにとらわれずに認めるべきだと思うのですが、なかなか認めない。言を左右にして認めない。私は恩給局へも言っておるけれども認めない。も
うちょっと待ってくださいという
うちに
援護課長が三代かわったのです。それでいまの木暮さんになった。私が言ったら木暮さんは知っていました。だから前から事務の引き継ぎはあったらしい。らしいのだけれども、そういう状態であります。
診断書に盲貫銃創兼心臓麻痺と書いてある。主病は何かというと盲貫銃創なんです。そういうのを認めない。だからしたがって私は、そういうときはやはり
大臣の
政治的な判断を下すべきだと思うのです。それを専門家が言うのでどうしてもだめだ、こうおっしゃる。しかし無傷で帰っておるというならともかく、盲貫銃創があって本人が別府の温泉療養所か何かに行ってそこでなくなった。しかも陸軍省の所轄病院でなくなっているという。これを認めないというばかなことはないと思うのです。どうですか、これはひとつやり直しますとはっきり言ってください。もう三年以上かかっている。