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1964-06-16 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十六日(火曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       浦野 幸男君    大坪 保雄君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    粟山  秀君       伊藤よし子君    大原  亨君       五島 虎雄君    滝井 義高君       堀  昌雄君    八木 一男君       八木  昇君    山口シヅエ君       吉村 吉雄君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金部長)    辻  英雄君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  榮作君  委員外出席者         参議院議員   柳岡 秋夫君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月十六日  委員高田富之君及び山田耻目君辞任につき、補  欠として堀昌雄君及び五島虎雄君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員五島虎雄君及び堀昌雄辞任につき、その  補欠として山田耻目君及び高田富之君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(藤  田藤太郎君外三名提出、参法第一〇号)(予)  労働関係基本施策に関する件(失業対策及び  最低賃金に関する問題)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 きょうはILOのほうもあるそうでございますから、また向こうが終わったら来ていただきたいと思うのですが、社会党は、きょう労働問題全般をそれぞれ分担をして、約一時間ずつの時間で六、七人の者が質問をすることになっております。まず私の分担は、職業安定行政とそれから一般失対の一、二の問題点について質問をいたしたいと思います。  まず第一に、職業安定行政のことについてでございますが、先日池田総理も言われておりましたように、所得倍増計画の中で、これほどまでに労働力不足しようとは思わなかった、特に、所得倍増計画中学を卒業して高等学校その他上級学校に行く人が非常にふえてきておるというようなことを、経済の神様のようにいわれている池田さんでさえも、倍増計画における労働力不足はどうも見通しがつかなかったようでございます。  そこで、私がお尋ねをいたしたいのは、この労働力不足、特に新規若年労働力不足をまのあたりにして、大企業が相当積極的に新規若年労働力吸収政策をとっておることは御存じのとおりでございます。新しく学校を卒業する若い働き手をわれ先に奪い合うばかりでなくして、現実中小企業に働いている若い労働力をもあの手この手で大企業吸収しておるわけです。そこで、今後の雇用安定行政を順当に、計画的に遂行していくためには、無政府的な、無秩序的なこの力づくの大企業新規若年労働力吸収政策について、国が何らかの政策的な配慮をやはりやらないと、日本労働秩序と申しますか、雇用計画と申しますか、そういうものに大きな狂いが生ずることになるわけです。したがって、職業安定行政としてはこれらの大企業の恣意な行動をどう制御し、どのような政策的な配慮現実にしておるのか、まずそれをお聞かせ願いたいと思います。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 最近の求人数の増加に対しまして求職者が十分でない、ことに若年層労働力についてはこれが極端になっておるのでございまして、その結果といたしまして労働力の争奪的な現象が随所に見られることは事実でございます。かくのごときは労働生産性を高めるゆえんでもございませんので、政府といたしましては何らかの行政指導が必要であると考えておるのでございますが、労働省といたしましては、この求人秩序の確立を指導いたしてまいるために、地域別産業別雇用計画を樹立いたしまして、これをよりどころとして今後の職安行政運用をいたしてまいりますとともに、この考え方について大企業はもとより、一般使用者に対しても理解協力を求めたいと考えておる次第でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 まず地域別産業別雇用計画を立てて、そして大企業協力を求めながら職業安定行政を推進していくそうでございますが、この問題はしばらくおいておきます。問題点を先に出しますから。  いま一つは、新規若年労働力が大企業に急激に吸収をせられていく、同時に一方においては中高年齢層が過剰な状態にあるわけです。中高年齢層はどういう形になっておるかというと、技術革新のために大企業から排出をせられておる。同時に、その大企業から主として排出をせられた中高年齢層諸君は、同時にまた炭鉱、鉱山その他の斜陽産業から出てくる中高年齢層一体になって、非常に大きな社会的問題をつくっておることは御存じのとおりでございます。ところが、これらの層がいま開拓をして、一体就職の道をどこに求めておるかというと、結局大企業若年労働力を吸い上げて、そこに欠員のできた中小企業に行っているわけです。こういう傾向が端的に一つ出てきているわけです。そうしますと、御存じのとおり中高年齢人たちはちょうど学齢時の大きな子供をかかえておるわけですから、安い賃金では中小企業に行っても引き合わないわけです。そこで、中小企業にしばらく行っておるけれども、どうも雇用条件自分の思ったとおりに合ってないというのでまたやめることになる。やめて職安に帰る。職安に帰ってまた中小企業に行くというこの悪循環を繰り返しているわけです。そこで、大企業に対する政策的な、行政的な指導によって大企業の恣意的な雇用政策新規若年労働力を中心とする雇用の行き方というものをある程度行政的にチェックするとともに、この中高年齢層を雇わなければ、労働力不足のために中小企業が生きていけないというこの事態の中で、中小企業をどう一体政策的にささえていってやるかという国の政策が、今度は職業安定行政の上から見ても必要になってくるわけです。これを一体どう考えておるのかということです。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働省といたしましては、大企業に対しましても若年労働力のみに依存しようとする傾向をできるだけ是正いたしまして、ある程度中高年齢層に適する職種につきましては、中高年齢層労働力の活用をはかるように指導をいたしておるのでございますが、同時に中小企業等に対しまして、現実中高年齢層労働力に依存せざるを得ない面に対しましては、中高年齢層対象とする職業訓練を施しまして、これによって技術的な労働力を養成していく。そうして若年労働力を雇い入れて、これに訓練を施して初めて労働力として完全に利用ができるのに比しまして、中高年齢者に対しましては直ちに熟練労働力として利用できるような措置を講ずる。これによって中高年齢層労働力の消化を容易ならしめていきたい。こういう措置をとっておるのでございまして、同時に一般使用者に対してもかような現状をよく説明し、また雇用全般的な情勢を説明いたしまして、理解協力を求めておる次第でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 これで大体私はシイーマチックに問題点だけを出したわけです。そこで今度は具体的に職業安定行政というものの上にかぶせてみるわけです。そうするとどうなるかというと、いま大臣の言われたように、まず職業安定行政というものは地域別産業別雇用計画を立てなければならぬだろうし、その雇用計画を立てたならば、一体新規若年労働力というものをどの程度企業配置をするのか、中高年齢層新規若年労働力雇用する大企業にどの程度抱き合わせてさらに持っていくかというような問題にもなってくるわけです。これは非常な説得を必要とするわけです。そうすると、その結果どういうことになるかというと、まず第一に無理が起こってくるのは失業保険の受給をなるべくやらせないようにするという問題が出てくるわけです。このことは当然職業安定行政第一線に携わっている窓口職員というものは、これは非常な説得努力が要る。非常に神経がすり減らされる、こういう状態が起こってきているわけです。いま大臣の言うように、大企業のほうも説得しなければならぬ。労働者のほうもなるべく長い間失業保険をもらわぬように、ルンペン化せないように努力をします。こういうことで第一線職安行政に携わる人というのが非常にノイローゼになってきている。同時に今度は労働者側にいってみると、ノイローゼになった役所職員から失業保険の問題や就職促進措置の問題でつらく当たられることになる。だから労働者のほうもとんがってくるというこういう、状態が、いまや第一線の、特に失業者の多くなっている地帯においてはそういう状態が起こってきているわけですね。一体こういう形を直すためには、やはり大企業がいま、より好んで新規若年労働力諸君雇用しておりますが、政府雇用計画を立てる場合に、大企業中高年齢層を、新規若年労働力を百雇うならばそれに十とか二十とかいう、たとえば身体障害者雇用促進法のような一定の義務的な割り当てを、今後労働力適確配置をやるためには考えなけばならぬと思う。こういう点を考えて職安職員第一線における窓口の負担を軽減するような方策を考えておるのかどうか。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働省といたしましては、今年度の当初以来、すでに大企業に対しましても若干労働力の雇い入れに対しましては抱き合わせ的に中高年齢者の雇い入れをお願いをするという趣旨を明らかにいたしまして、これを東京、大阪において使用者の団体を通じて各使用者に流しておるのでございます。同時に職業安定所に対しましても、今後の職業紹介に際しましてはこの趣旨によって専務を取り運ぶように指令を出しておる次第でございます。もとよりこれは法律事項ではございませんが、運用といたしましてかような心がまえをはっきり打ち出してやっていきたいと思っております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 大橋さんも御存じのように、昭和四十五年になりますと、日本新規若年労働力というのは急激に減少していくわけです。その割合に三十七、八から四十四、五までの高年齢層がふえてくるわけです。これは一番的確に日本役所にあらわれて、役所に優秀な若い大学を卒業した者が入らなくて、役所はいまや三十五、六歳以上の中高年齢層の人で頭でっかちになってそれが人事院その他で言われているわけですが、日本役所に典型的にあらわれてきているわけです。そうしますとやはりこれは今後の政策としては、四十五年をはるか見てみますとそういう状態があるわけです。ですからこの際、政府としてはやはりきちっとした立法措置でも講じて、若年労働力中高年齢層の組み合わせで大企業に対する政策をとらないと、中高年齢層雇用というものは、ますます技術革新が進みまして、——貿易自由化開放経済に向かえば、もう必然的に企業が大規模化して技術革新をやらざるを得ないことは、たとえば電電通あたり無人局という状態役所にあらわれているのを見てもおわかりだろうと思うのです。そうしますと、交換手が要らなくなってしまうんですね。だから自動化首切り法なんていうのが問題になるんです。こういう形ですから、どうしてもそういう立法的な方策を講ずる必要があると思うのですが、どうですか。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまの段階では先ほど申し上げましたごとく行政運用方針によって実施いたしておるのでございますが、将来の情勢を予想いたします立法化につきましても、十分検討の必要があることを痛感いたしておるのでございます。そこで、ただいま労働省といたしましては、雇用審議会に対しましてこの問題を諮問いたしておるところでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ、これについてはあなたのほうの地域別産業別雇用計画が順当に遂行ができ、労働力流動化に対してある程度道を開けるためにはぜひそれをやってもらわなければならぬと思います。ぜひ実現をしていただくように要望をいたします。  それから、この地域別産業別雇用計画というのがもしできておれば、あとで資料として出していただきたいと思います。  この機会に、それに関連をしてお尋ねをいたしておきたいのは、一体三十九年の就職あっせん計画目標というものをどの程度お持ちになっているのかということです。たとえば、職業訓練東京都の状態を見ても、中高年齢者就職促進訓練等はことしの一月で六十八人しか入所していなかったのを、今度は五百十人にふやすとか非常に大幅な訓練体系そのほかをとっておるわけです。したがって、こういうように非常に大きな訓練態勢をとるとすれば、当然就職あっせん計画というか目標というものも非常に大きくなっておるのだと思うのです。まず、そういう目標はどういう形になっているのか。そういうふうに目標が非常に訓練においても就職あっせん計画においても大きくなっておるとするならば、職業安定所における人的、予算的な配置一体それに対応するだけにことしはふえてきているのかどうかということです。
  12. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘のようにことしの促進計画は昨年の下期の計画をそのまま年間に伸ばしまして、十二万人の計画を樹立いたしまして、これで安定所指導しておるわけでございます。  それから、安定所側のこれに対応する人員予算等の問題でございますが、これは人員の点におきまして全体で五百五十人の増員を見ております。それから安定所運営費その他におきましても相当の増額を見ておりますので、これで一般行政、特に中高年就職促進措置につきましては対処してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  13. 滝井義高

    滝井委員 その就職あっせん計画というのはたった十二万人ですか、年間でわずか十二万人ですか、そうじゃないでしょう、それではあまりに少ない。中高年齢ではなくて、全般のことを言っておるのです。
  14. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいまの十二万人というのは中高年促進措置でございますが、そのほかに学卒がことしは中学卒が八十三万人、高校卒が五十四万人、この大部分が安定所扱いということになるわけでございます。そのほか一般求人が大体年間を通じまして百四、五十万人ございますので、それは中高年特別措置を講ずる対象以外にこれだけの一般採用者が見込まれておるわけでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 私は職業安定所における就職あっせん計画目標は幾らですかと言っておるのです。いまの中学八十三万、高校五十四万というのは卒業して就職を希望する人でしょう、全部職安窓口を通るわけではないでしょう。
  16. 有馬元治

    有馬政府委員 就職あっせん計画目標という数字はいまのところ立てておりませんが、従来の実績からいたしまして先ほど申し上げましたような年間規模求職者があらわれるのではないか、こういうふうな予測はいたしております。しかしそれを計画目標として設定し、それによって具体的に月間の目標達成数を樹立して指導しているというようなことはございません。
  17. 滝井義高

    滝井委員 次は、要するに職業安定行政というのが労働省における花形の行政になって、特にいままでは労働力があり余って困っておったのだが、現実はとにかく不足をする、中高年齢層の一部に過剰があるにしても不足状態が出てきていることは明らかです。そういう職業安定行政がいま集中的に一つの問題を形成しておるのはどういうところかというと、結局昨年以来問題になったしわが一般失対にあらわれてきている。  そこでお尋ねしたいのは、一体あの法律にある就職促進措置です。この就職促進措置計画一体うまくいっているのかどうかということ、特に三十九年度予算は五百九十九億の予算を持っているわけです。そして昨年が二十万三千人、本年は一般失対が十八万六千人になっている。この十八万六千人、昨年よりずっと減らしているわけですが、十八万六千人というものは就職促進措置計画の中で大体そのとおりにいっていることになっておるのか、あわせて御説明願いたい。
  18. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま御指摘の十八万六千というのは失業対策事業事業規模が十八万六千でございまして、失対事業のほかに広い意味の失業対策事業といたしまして先ほどの中高年雇用促進措置年間を通じまして十二万人予定しておるのでございます。したがいまして失対事業の十八万六千人という事業規模は大体予算で予定したとおりの遂行を見ておる状況でございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ちょっとお尋ねしたいのですが、就職促進措置申請をしておる人が四月、五月でけっこうですが、その実績一体どの程度あるか。そしてそういう促進措置申請を受けて認定をされたものがどのくらい、不認定がどのくらい、これを説明願いたい。
  20. 有馬元治

    有馬政府委員 五月二十日現在でございますが、申請を受け付けた件数が一万四千七百九十六件でございます。そのうち具体的な指示を受けたものの数が五千五百九十件でございます。それから不認定になった件数が三千七百六十一件でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、一万四千七百九十六人申請をして認定五千五百九十、不認定が三千七百六十一、あと六千ばかりはどういうことになりますか。
  22. 有馬元治

    有馬政府委員 現在認定のための手続中のものが約七千百二十四名ございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 認定のための手続中というのはどういうことを意味するのですか。
  24. 有馬元治

    有馬政府委員 促進措置を講ずるためには各種の資格要件が規定されておりますが、その資格要件認定をするための手続期間原則として二カ月間設けてございます。そういう手続中のものがこの七千という数字にあがっているわけでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、五千五百九十人が指示を受けて、職業紹介とか職業訓練とか職場適応訓練とか就職指導を受けておるわけですね。そうしておまえはもうだめだ、失業者じゃないのだということになるわけですね。三千七百六十一は不認定、そうすると、なお二カ月間の七千百二十四人がおりますから、五月二十日現在で一万四千余り申請したけれども、実質的には一万人をちょっとこえる人たちは、これはだめなものとまだペンディングのものになっている、こういうことになるわけです。そうすると、これは失業者ですね、自分失業者だと思い込んでいるわけですから、これを二カ月間——認定になったものはあとで問題にしますが、促進措置資格条件認定するための手続を、こんなにぐずぐず二カ月もやられたんでは、失業者はひぼしになるわけです。そのうち生活保護へでもいこうかということになってしまうのですね。こういう形は、私がさいぜん言ったように、やはり職安行政における人数が不足じゃないかという感じがするのです。そんなに長くかかるはずはないわけです。これはもう中小企業から出てくる労働者、さいぜん私が御指摘を申し上げましたように、大企業からほうり出されて中小企業に行く、行ったけれども条件が合わぬのでまた帰ってくるという悪循環をしている層が多いわけです。そうしますと、それを今度は手続をするためにこれを二カ月間もおくということでは、これは失業保険ももらえぬわけでしょう。そういうことでは困るので、こういう人たちが七千人もおるということは、どこか職安行政に欠陥があると言わざるを得ないのですが、これをもうちょっと詳しく説明してもらいたいと思うのです。
  26. 有馬元治

    有馬政府委員 先ほど七千と申しましたが、これはちょっと表の見間違いでございまして、七千件を認定をした。認定した数年が七千百二十四件、そのうち具体的な指示をしておる件数が五千五百九十件、それから不認定をしたものが三千七百六十一件、したがいまして、認定と不認定を合わせますと一万ちょっとになりますが、申請件数の一万四千から差し引きますと、約四千が手続中、こういうことでございます。  御指摘のように、二カ月を限度といたしまして失業者認定あるいはその後の手続を進めることにしておりますが、二カ月の期間もできるだけ短縮して、スピードアップして、この措置を急いで講ずるようにということで現在全国の安定所指導してまいっております。最近の情勢を見ますと、新年度に入ってようやく趣旨安定所側にもあるいは促進措置を受ける対象者の側にも徹底をしてまいりまして、相当最近はスピードアップして書ておるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。ぜひひとつその二カ月の期間を短縮をして、やはり一週間か十日ぐらいで認定、不認定をやってもらうようにする。それができなければ、やはり第一線の部隊をふやしてもらう、こういうことでないと、働く意欲があってもそこでぐずぐず窓口でしておればたいへんだし、さいぜん申しましたように、職安職員諸君もなかなか労働強化になってたいへんだ、こう言っておるわけです。これは職員からと失業者と両方の側からわれわれに不満が出てきておるわけでしょう。だからこの点は、ぜひひとつ局長から——これはぜひ大臣に来てもらいたいと思うのだけれども、大臣ILOに行って困っているわけですが、むしろこういうことのほうがILOより大事なんで、ひとつぜひ御注意を願いたいと思うのです。  そうしますと、次に私が問題にしなければならぬのは、いまの四千ばかりのものは、あなたのほうでできるだけ早く二カ月間の期間を縮めて促進してもらえば問題が何とか片づきます。  それから、もう一つ問題は、三千七百六十一件の不認定についてです。一体認定にするための基準というものはどこに置くのか。われわれがこの法律を見てみますと、就職困難な中高年齢人たち、それから身体的な事情または地域的、社会的事情でなかなか就職ができない、しかし本人は就職意欲きわめて旺盛である、こういう人が不認定になるのだということを、緊急失対法の審議のときに私は記憶しておるわけです。こういうものさしではかるときに、一万四千有余の就職促進措置申請した者の中から約その三割近くの人たち、三分の一の諸君が不認定になるというからには、何かそこによほどのものさしがないといかぬことになる。いまのような就職困難な中高年齢層とか、身体的事情または地域的、社会的な事情ということだけではこれだけの者が出るはずもないので、何か不認定基準というものがやはり明らかにされておかなければならぬと思うのですが、これはどういう基準ですか。
  28. 有馬元治

    有馬政府委員 認定基準省令で帆走されておりまして、大体六点ほど基準が設けられております。その第一は、中高年齢失業者その他労働省省令で定める就職が特に困難な失業者であること。それから第二点が、誠実かつ熱心に就職活動を行なう意欲を有すると認められること。第三点が、常用労働者として雇用されることを希望していること。それから第四点が、所得の金額が一定額をこえていないこと。これは大体所得税免税点基準にしております。それから第五点が、従来認定を受けたことがある者については、原則として認定失効の日から一年を経過していること。第六番目に、炭鉱離職者求職手帳の発給を受けている者または受けることができる者は対象外にしております。そちらのほうの援護措置で十分でございますので、そういう六つの認定基準を設けて、そうして認定事務をやっておるわけでございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これらの中高年齢層就職困難な者から以下の炭鉱離職者までの問題を六つのものさしにして当てはめることになったということですが、誠実かつ熱心に求職活動をやる、常用労働者を希望する、これは希望すれば認定になるわけですから、みんなおそらく希望しておると思うのです。それから失対事業も、政府が、あれはもはやいままでの日々雇用のものではないのだ、常用労働者だ、こうおっしゃっておるわけです。そういうことからいうと、初めから失対事業に希望してもいいことになるのだと思うのです。他の者は、どうも私はなれておりません、あれに行きたいのですと言えばやってもいいのじゃないかと思うのですが、最近の傾向で、まずここでちょっとお尋ねをしておきたいのは、今年になりましてから、四月一日以来、失対事業にどの程度新しく入れましたか。
  30. 有馬元治

    有馬政府委員 昨年の法改正によります促進措置を受け終わって、正規に失対事業に入った者は今日までのところまだおりません。ただ従来から失対事業に入っておった者で、また特別措置で失対事業に戻ってきた者は相当おると思いますが、数の集計はまだやっておりませんけれども、正規の促進措置から失対事業に入った者はまだ今日までのところはいない状況でございます。と申しますのは、大体促進措置が半年近くかかりますので、昨年の終わりごろからそういう手続を開始いたしまして、今日ようやくその期限が到来するというふうな事態になっておるわけでございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そこが私は非常に問題のところだと思うのです。じんぜん六カ月を待たなければならぬようなものではないと思うのですよ。さいぜん私が冒頭で指摘したように、現実日本では中高年齢層が非常に滞留するという客観情勢は明白です。しかも行った先はどこかというと、中小企業以外にないわけです。先ほど予防措置を張って大企業と抱き合わせでやってくださいと言ったのは、こういうことがあるから言うわけです。そうすると、これはもう悪循環です。いまの日本中小企業ではかつて炭鉱や鉱山に働いておったほどの高給を出すところはそうないわけです。われわれもずいぶん世話をしてみましたけれども、もとよりがたっと少ないわけです。そうしますと、もう子供も学校に行っている、家も炭鉱地帯にある、それをわざわざ東京まで苦労しに行く必要はない、少し賃金は安くても、住めば都、わが里よということになって、そこに住めばいいのだという人たちまで、職業選択の自由を無視して、六カ月おまえはだめだ、おまえは行くという気持ちにならない限りは何も認定しないぞというような、拷問にかけるような政策はよくないと思う。私はあえて拷問と言うのですがね。キリストならば胸に十字を切って十字架に乗るかもわからぬけれども、お互いに凡人なんだからそうじゃないのです。ここらあたり、いまのようなややっこしいことをやって、中高年齢の人を無理やりに行かせるということは非常に問題だと思うのです。  そこでお尋ねしたいのは、まずこういう形で認定基準をやるからには、失業者というものを一体どう認定するかということですよ。端的に言うとそうなる。労働の意思と能力を持って、そして不就業の状態にある者が失業者だ、こう私たちは思っておるわけです。本人は労働の意思と能力を持っている、しかし不就業だ。日本労働統計その他を見たら、何でもかんでもちょっとでも働いておったら失業者のうちに入らぬのです。そこで労働者にこの不認定をする——逆に言えば認定をする基準が、こういう抽象的なことになってきているのではっきりしないのだから、具体的に失業者の定義をはっきりしなければならぬと思うのです。そこで失業者と思われるようなものを一つ一つあげてみます。  まず第一に、日雇い労働者失業者と認めるのかどうかということです。たとえば、御存じのとおり日雇い労働者の健康保険は、二カ月について二十八日以上働いておったら、印紙を張っておったら、これは失業保険をもらえるわけです。仕事がなければ食わなければならぬのだから、生活保護よりも何ぼかでも働いて食っていきたいという意欲はみんな持っておるわけです。近所の農家が、私のところでこれから田植えが始まるから、あんた加勢に来てくれぬかというようなことで、何日か加勢に行く。あるいはそれが終ったところで、やがて今度は夏場になるから、そろそろわしの家はアイスキャンディーを手広く売る、そこでそれぞれの小売り商にそれを配ってもらいたい、田植えが終わったらわしのところでその配達をしばらくやってくれぬかというようなことで、やむを得ず、そういう不安定なものだけれども、何にも職がないよりかいいのだということで、日々そういうものを転々とする人だっておるわけです。こういうのはどうですか。これは一般失対に入りたいと言ったら、すらっと入れることになるのですか。まずそういうものは失業状態だからすぐ入れてしかるべきじゃないかと私は思うのです。
  32. 有馬元治

    有馬政府委員 失業者認定は非常にむずかしいわけでございますが、従来から失業者の定義については失業保険法の三条が一応その基準になっておるわけでございます。しかし今回の中高年就職促進の措置対象といたしましては、失業保険法第三条の規定だけでは狭いものですから、新たに労働市場に登場してきますところの自営業主あるいは家族従業者、こういうものもわれわれとしてはここでいう促進措置対象者としての失業者というふうに考えてまいりたいと思うのでございます。しかし、そういう人たちが露店商あるいは行商あるいは日雇い形態の労働者といった場合に、どこで失業者と有業者を区別するか、この基準が非常にむずかしいわけでございますが、私どもといたしましては、そういった職業の種類あるいは雇用の形態ということで区別するわけではなくて、やはり日雇いなら日雇い形態で生計を維持することを常態にしておるものは失業者ではないというふうな解釈で認定をいたしております。そこのところが現地での具体的なケースの判定についていろいろと問題があるところでございますが、われわれの考え方としましては、日雇い形態なるがゆえに失業者であるというふうには考えていない、そういう日雇いであっても、日雇い労働者で生計を維持しておるという状態であれば失業者ではないという判断で処理をしております。
  33. 滝井義高

    滝井委員 ここらはなかなか微妙でむずかしいところですけれども、いま申しましたような、アイスキャンディーの持ち運びをやるとか田植えの加勢にしかたなく行くとかいうようなものは、本人がもし私は就職促進の措置をしてもらいたい、一般失対にぜひ行きたいということになれば、私はすなおにやるべきだと思うのです。それはあの法律審議するときに出たように、就職が困難な中高年齢であり、しかもからだの事情、家庭の事情、あるいはその地域の社会的な事情から考えて当然だというならば、私はやるべきだと思うのです。それをやられていないからこそ、五千五百九十人も指示があったけれどもまだ一人も入っておらぬ。去年の十月から九カ月たっているわけです。九カ月たっておって、まだ今年になってから一人も失対事業に入っていないということは、やはりどこかまずかったところがあると思うのです。どこかでやはり泣いておる人があるということがこれは具体的にあらわれておると思うのですよ。私は日雇いだけれどもぜひ失対に入りたいと言っても、いや月に十四日以上働いておるからだめだと言ってけられたり、いままでは行商をやっていたり露天商をやっていた、これではどうも不安定だ、雨が降ったら露天商もできないのだから失対に行きたいと言ったら、いやおまえはもうやっておったのだからだめだと言って入れてくれない。それから、家庭の主婦が、子供も一人学校にあがったので自分が働かないと自分のうちは食えないのだと言っても、主婦はだめだということなんですね。いままで主たる家計の担当者でなければ失対には入れなかったということなんだけれども、この前の法律の解釈で抜けたわけです。そんなものはないのです。だから多発地帯においては、急激に職安の紹介もできないし、職業訓練もうまくいかぬ、それからはなはだつかえてどうにもならぬということになれば、そのまま右から左に入れますと言ってきておったわけです。そういうことをわれわれは法律審議のときにも大臣から説明を聞いておった。ところが、そういうことを聞いておったにもかかわらず、いまのように一人も入れておらぬということなんですから、これは私はどうもちょっと納得がいかない。  それから、そういう失業者というものの認定について、日雇い労働者とか外交員とか行商とか露店商とか主婦とかいうようなものについてなかなか問題があるように、もう一つ問題がある。たとえば、炭鉱で二万五千円もらっておった。ところが、今度新しく職安に行ってみたところが、ここに一万五千円の口がある、それでおまえ行け、こう言うわけです。私は二万五千円もらっておって、そして炭鉱には、その上に水道も無料だし、電気も無料だし、おふろも無料だ。だから六人も七人も家族がいるから一万五千円のところには行けませんと言うと、ぜいたく言うな、一万五千円のところに行くのがいやなら働く意思がない、誠実かつ熱心に就職活動をやっておらぬ、こう言われる。そこで、緊就も男は一万七千円くらいじゃないか、一万五千円くらいのところに行ったらいいじゃないか、行きなさい、こういうことを言われるわけです。これは職安職員も、わんさわんさと来られて、かっかかっかとなっておるから、売りことばに買いことばでそうなってしまう。これは職安職員が悪いのじゃない。そういうことにならざるを得ないという形があるわけです。だから、こういう形をもし職業安定行政がとるとするならば、これは低賃体体制を日本職業安定行政というものが、いわゆる余っておる中高年齢労働者層をてこにしながら日本全国に低賃金体制のローラーをしくことになるわけです。これは一番困ると思うのです。これでは職業選択の自由意思というものを職業安定行政が踏みにじってしまうことになるわけです。こういう点をもう少しここで——私、大臣がいないと困るのですが、もう少し職安局長から明白にしてもらいたい。日雇いの労働者や主婦の皆さんが、家庭の事情その他でどうしても働きたい、私は東京なんかに行きたくない、ぜひ地元で一般失対に入りたいと言えばすなおに入れてやるべきだと思う。それをむずかしく、税金がどうだこうだと言う。税金がたくさんあったってかまわないじゃないですか。働くという人間が一番働きいいところに入れたらいいじゃないですか。それから先は、労働問題は労働問題として、別個に労政局でやるべきだ。職安がそれ以上のことを考えるべきではないと思う。働きたいという人はすなおに入れてやればいいのです。しかもワクがあるのですからね。だからどうもこの点は、今年になってから一人も失対事業入れてないといういまのおことばでは厳重な体制をしいておるとしか考えられないわけです。だからこの状態職安職員からも不満が出、そして職業紹介を受ける一般の失業労働者からも不満が出ている、こういう両方の形になっている。ただ、いま言い出し切らぬだけなんです。だから、これは少しく自己反省をして、謙虚な気持ちでやっていただかないと困る。御存じのとおり、そういう無理な体制をしいているから、最近非常に失対の中に労災が出てきた。四月八日に大牟田で出ておる。三月の五日には飯塚で出ておる。それから大分の四日市でも出ておる。栃木県の宇都宮でも出ておる。がけくずれで死んだり何かして、失対にこういうのが出始めているわけです。これはやはりどこか気のゆるみが全般に出てきている、無理があるという形だと思うのです。それらの問題に対する率直な見解をひとつお伺いをしたいと思うのです。われわれのとこは、池田総理が炭災地を振興すると言いながら、ちっとも振興してくれないために、二万以上の労働者が滞留をしている。そして失対にも入れぬ、緊就も七千から六千四百にワクを縮めたということのために滞留して困っているわけです。これはやはりどしどし予算を組んでおるのですから遠慮せずに、緊就、失対に入れて働いてもらう、どこであろうとも熱心に働ければいいわけですから、そしてもしそこに全日自労に入るんだ、緊就が組合をつくって職安行政を突き上げるんだからということは、それは労働政策労働政策でおやりになるし、労務対策は労務対策でお考えになって、まず入れてやる。そして職業を与えるという政策はとらなければいかぬと思うのです。何か全日自労が強いから、入れることさえも闘争が起きるから押えつけねばならぬ、厳然たる態度で臨めというようなしゃくし定木の訓示を全国の職安課長会議でやっておるそうですけれども、それじゃいかぬと思うのです。ここらあたりはやはりすなおに入れて、それから先は、お互いに話し合いで悪いところを悪いと言って話し合ったらいいと思うのです。だから、入れる闘争をやってけしからぬから、まず入れることを防ごうというのでは問題にならぬと思うのです。そこらのところをもう少しきちっと言明してもらいたい。もう国会が終わったら、われわれが現地に行って、心配要らぬ、困っている人はどんどん失対に行きなさいと言わなければいかぬのです。ところが、こういう形ではそういうことは言えぬ。そんなことを言ったって先生、ことし一人も入っておりませんと言われる。もう戦々恐々としているわけです。どうですか。
  34. 有馬元治

    有馬政府委員 失対で一人も入れないというような指導は私どもいたしておらないので、地区によっては促進措置を経て失対事業に入ってくる者が近々出てくると思います。そこで、先ほど促進措置が拷問のようなお話がございましたが、これはどうも私どもとしてはいただきかねますので、決してそういうふうなつもりで運営はいたしておりませんから、この点は何と言いますか——取り消しという要求はできませんけれども、私どもの考えとだいぶ違うのではないかと思います。  それから主婦の問題とか、あるいは地場相場賃金との問題、いろいろございましたけれども、これは失業者として認定する場合に非常にむずかしい点が家庭の主婦についてはあるわけでございます。しかし働ける態勢になってくれば、これは主婦だからアウトにするということは私どもは考えておりませんし、それから先ほど農繁期にあるいはアイスキャンディーを売って生計を立てている場合どうだというふうな御指摘がありましたが、これは結局先ほど申しましたような生計を維持する状態としてのアイスキャンディー屋であったか、あるいはアルバイトとしてのアイスキャンディー屋であるかということが認定の分かれ目だと思います。したがいまして、あまりそうしゃくし定木に御指摘のような判定はしていないと思いまするが、なお現地においていろいろ無理な判定がございましたら、私どもも是正するにやぶさかでない態度で進みたいと思います。  それから、災害の問題についてお話がございましたが、これはいままでも災害はございまして、傾向としては、必ずしも災害率がふえておるわけではないのでございます。私は、全国の課長会議があるたびに、災害はもう絶対に絶滅すべきだ、失対事業として災害が発生するというのはおかしい、特に、死亡その他の重大事故についてはあり得べからざることだという考え方で、災害防止あるいは災害がもし不幸にして発生したならば、監督者の責任追及というようなことにつきましては非常にやかましく言っておりますので、絶滅までは至っておりませんが漸次災害の発生率を減少させていくように今後とも努力してまいりたいと思っております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 これで終わりますが、あなたの訓示の中で——訓示というのか、死亡、重傷を伴う重大事故が発生した場合には、不可抗力による場合は別として、職安課長にも何らかの責任をとってもらう考えである。なかなかいいことを言っておるわけです。これは当然気をゆるめぬように災害の防止をしてもらわなければならぬわけです。いわゆる職安課長の所管事項でないことでもこれくらい強くおっしゃっておるわけです。したがって今度所管事項である就職促進措置について中央の基準計画等を職安課長が守らぬようだったら、なおお前たちはだめだぞ、こういうことになるので、いま言ったように、あなたがここで答弁するほどの弾力的な窓口の運営はなかなかできないわけです。だからどういうことになるかというと、たとえば失業保険をもらう場合に、自己都合で退職した場合と会社都合で退職した場合とは期間が違うわけです。自己都合ならば七日間、会社の都合ならば一カ月分あるでしょう。そうすると、自己都合か会社都合かということでみんな退職の表に書くときは一身上の都合でと書いてしまうんですよ。そうすると、お前はお前の都合でしておるのだから七日だ、それを過ぎたらだめだ、こうやられているのです。   〔委員長退席、 小沢(辰)委員長代理着席〕 こういうところが、なかなか峻厳冷徹な命令というものはいいところもあるけれども、役所というものは法律で動くところだものですから、政令、省令が出るとそのとおりにやらなければならぬと第一線はなるのです。特にこういうサービス機関である職業安定所、しかも去年ああいう大きな戦いをやった失対の問題については、春風駘蕩とは言わぬけれども、やはりあふれるヒューマニズムを持って第一線窓口を担当してもらう。同時に労働が過重にならないように相当に余裕のある人員配置する。これは人間関係ですから、忙しくてかっかなると奥さんとけんかして出てくることもあるわけです。奥さんは家でネコの頭をなぐっておるでしょう、ネコは障子を破っておる。主人は窓口で今度は失業者に当たらなければならぬ、当たるところがないんですから。課長からぐずぐずしておるとおこられるから、そういうことになるのです。だからここはひとつそういうかゆいところに手の届くような考え方を、ある場合には峻厳であってもいいけれども、ある場合には春風駘蕩たる政策を上から流してやらなければならぬ。そのためには人間の配置予算その他もきらっとしてやるだけの責任をとってもらわぬと、いま言ったように、しわは職安職員と失対労働者に来ておるのですから、その点をひとつ十分配慮して、今後の職安行政をやっていただくようにお願いして堀先生にバトンを渡します。
  36. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 堀昌雄君。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 最近兵庫県の地方最低賃金審議会におきまして、労働者委員全員の反対の中で業者間協定に基づくところの最低賃金の取り扱いの決定が行なわれるという事案がございました。これは尼崎市における関西電力兵庫火力事務所の下請をいたしております兵庫県電気事業関連産業の関係の者、それから尼崎市の機械金属製品製造業の団体であります尼崎中小企業振興会に関連をする団体、尼崎製鉄株式会社の下請でありますところの鉄鋼業関連産業の関係の業者及び日立機電工業の下請であります機械製造業関連産業の関係の団体、この四つの団体の申請によって出されておりました業者間協定に基づく取り扱いについて、地方最低賃金審議会が答申をしたわけでありますけれども、この問題について私はいささか法律の定めておるところに符合しない点があるということを強く感じましたので、本日質問をさせていただくことにいたしました。労働大臣が御不在でありますので、とりあえず事務当局でひとつお答えをいただきたいと思いす。  まず最初にお伺いしたいのは、最低賃金原則最低賃金法第三条で「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者賃金及び通常の事業賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」こういうふうな規定がありますね。ここに掲げられた労働者の生計費という問題、類似の労働者賃金という問題、通常の事業賃金支払い能力を考慮するという、この三つの問題は、おのおの軽重がありますか。大体私はこれは対等の関係において設けられておるものと、こう理解をいたしますが、その点はいかがですか。
  38. 辻英雄

    ○辻政府委員 最低賃金法の第三条に掲げております最低賃金決定の原則につきましては、お話のように、どこだけが重いということではございませんで、これらを総合的に判断をいたすべきものだと考えております。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで実はこの問題が審議をされました経過を調べてみますと、これらの事業の関係につきましては、昭和三十八年五月における調査資料をもとにして、本年の二月以降の審議会で議論がされておるわけであります。最近の御承知のような物価の上昇、それに伴うところの賃金の上昇というものは、九カ月という時間の格差がありますならば、その実態は非常に変化がある。ですから、まず私は兵庫労働基準局が地方最低賃金審議会に出します資料の信憑性という問題につきましては、二月以後に論議をする際に九カ月以前の調査だけで論議をするという点については、やや不十分な点があるという判断をいたしました。その中で実は問題になっておりますのは、四百円の最低賃金をきめたいというのが問題点でございます。ところがその基準局が調査をいたしました資料に基づいて調べてみますならば、先ほど申し上げました日立機電工業の下請の場合を調べてみますと、従業員の総数が二百七十一人でございます。三十八年五月当時でありますが、その調査当時において四百円以下の労働者は三名しかおりません。さらに関西電力の場合を調べてみますと、従業員が六百五十一人おりますけれども、四百円以下の労働者というものは十一人しかいないのであります。尼崎製鐵の下請の場合を調べてみますと、千二百八十七人おります中で、わずかに十八人が四百円以下の労働者でございます。一番多いのがこの中小企業振興会という関連の機械金属製品製造業の小さな会社の集団でございますけれども、これだけが約二百四十名ばかり三千三百二十八人の中にあるわけでございます。この状態を考えてみましたときに、一体九カ月後の二月の時点で、さらに審議会が採決をいたしました六月の時点で、これらの四百円以下の賃金というものはどういう経緯をたどったかということを判断をいたしてみますと、おおむねこれらは四百円以下の賃金ではなくなっておったというふうに判断をされるわけであります。この最低賃金法で書かれております類似の労働者賃金というものは、一体それでは尼崎ではどういうことになっておるのかということについてはちょっと触れておきますけれども、尼崎における、まず失業対策の日雇い労働者の三十九年における賃金状態はイの特一級は八百十一円で、これが最高でありますけれども、最低がホの三級で四百四十六円という日額でございます。  まず、労働者が働いておる職場から首になって、そして失対の日雇いにいったほうが上がるというような、これはどうも私は論理として筋が通らないと思うのです。  その次に、二十次改訂によりますところの生活保護基準は、いま標準四人世帯で一万六千百四十七円というのが生活扶助の額でございます。これに乳幼児加算あるいは教育扶助、住宅扶助等を入れますと二万一千七円になることは御承知のとおりであります。仕事がない、働けないという状態生活保護を受ける四人世帯の標準保護費が一万六千百四十七円、ただいま私が申し上げた四百円は、労働省側は大体二十五日幾らという計算でございましょうから約一万円ということになるわけでありますが、これから見ましても著しく生活保護のほうが高いというのが実態でございます。  さらに、尼市が調査をいたしておりますところの臨時及び日雇い労働者の延べ人員、日給の状態を調べてみますと、全産業におきましては三十八年十二月で延べ人員が三万四千六人ございますけれども、その日給平均は八百三十円でございます。これを業種別に見て最低になっておりますのは電気、ガス、水道業に従事しておるところの臨時、日雇い労働者でございますが、これが十二月現在で九十五人、五百四十七円というのが尼崎市における臨時及び日雇い労働者の日給の一般的な例でございます。  こう考えてまいりますと、まず問題になります点は、尼崎ではいま申し上げたような一万円というような類似労働者賃金というものは第一ございません。年齢的に見ますと、ただいまいろいろと四百円以下で触れました中では十五歳、十六歳の段階のものがやや多いわけでございますが、これらにつきましては尼崎の三十八年七月の調査で、新中卒業者が企業就職をいたしましたときの賃金状態は、二十九人以下で男子が一万七百三十六円、女子が八千八百円ということに実はなっておるわけであります。これは三十八年四月に卒業した者の給与でございまして、本年度についてはまだ集計中で結果が出ておりませんけれども、私どもはおおむね両者とも一万円を下回るような状態ではないという判断をしておるわけです。  こういうふうに考えてみますと、私どもはまず第一にこの法律が定めておるところの類似労働者賃金というものを基準にしてものを考えるという点で、この四百円というものは著しく低いものである、こういうふうに判断をしておるわけでありまして、まずこの法律の第三条に基づき、諸種の客観的な資料に基づいて最賃の金額というものは定められるべきではないかというふうに考えるわけでありますけれども、それについてのお考えを承りたいと思います。
  40. 辻英雄

    ○辻政府委員 兵庫のただいま御指摘のございました件の、最低賃金額四百円をどのような判断でどのように具体的に業者が決定し、あるいは審議会でどのような具体的な御審議がございましたか、ただいまのところまだ報告を受けておりませんので、一般的なことになって恐縮でございますが、一般的に申しますと、御承知のように現在の賃金体系が年功序列型賃金ということで若年層賃金というものは相対的にわりあい低くなっている。そういうところで最低賃金を一本で産業別に決定いたします場合には、どういたしましてもその部分に焦点が合った形の最低賃金制度になるという点に一つの問題があろうと思います。その点につきましては、昨年八月に中央最低賃金審議会からちょうだいいたしました御答申の中にも、そういう若年の十五歳の賃金だけを考えないで、たとえば一応一人前と考えられる十八歳なり二十歳というような部分についても最低賃金を検討するようなことを考えるべきではないかというような御指摘もいただいておりまして、そのようなことも検討いたしておるわけでございます。ただ現実には、いままでにできました一般最低賃金の場合には十五歳のところを押えておりますので、ほかにもいろいろ事情がございますが、その辺で低くなっている点もあろうかと思います。  もう一点は、御指摘の失対労働者生活保護、これは一つの生計費の最低の基準といたしまして、われわれが最低賃金を考える場合に参酌いたすべきものであるという点につきましては、御指摘のとおりだと思います。ただ、失対労働者の場合は、御承知のように世帯主の原則でございまして、ただいま申し上げましたように一般の全部の産業別労働者最低賃金といいますと、どうしても初級賃金になってまいりますので、その辺はそういう点も考慮した上で比較の対象として参考にいたすべきものというふうに考えております。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 私もいまのお答えの点は筋道としては理解ができます。そこで地方の労働基準局が、あなたのいま御答弁のような趣旨を体して資料を整備しておるかというと、実は今回のこの資料を拝見しましても、資料はできていないわけであります。  まず第一に、四百円の問題が出ておりますならば、四百円以下の労働者については少なくともその生計費の問題が第三条でひっかかってくるわけです。ですから、個々の労働者の家族の扶養率なり世帯構成なり、その世帯構成における、要するに賃金労働をしておる者の収入の状態なりというものが分析されておるならば、これはまた一つの考え方も考えられる余地があると思います。ところが実際にはそういう資料は皆無でありまして、何とかこれを比較しようにも比較のできないような資料しかできていない。そのことは、そういう客観的な生活保護なり失対労働賃金なりと比較をしようという姿勢がなく、ただ何となく問題の処理がされたという点が、労働基準局側として、ただそういう資料がないという問題の前に、そういうものの考え方が欠除しておるのではないかという点を強く感じておるわけでありますが、今後これらの最低賃金の問題を取り扱うについては、少なくとも第三条にいう労働者の生計費というものを十分に判断し得るに足るだけの資料が、中央最低賃金審議会においても提出されなければならないと私は判断をいたしますが、それはいかがですか。
  42. 辻英雄

    ○辻政府委員 まことにごもっともでありまして、従来まででき上がりましたたくさんの最低賃金につきましても、ただいま御指摘のような御議論があったわけであります。そこで先ほどもちょっと申し上げましたが、中央最低賃金審議会で、労使三者構成でこの問題を二年ほど御討議になりまして、その間におきましては生計費というものを確定すべきだという御議論もありまして御討議を願ったわけであります。ところが率直に申しまして、労使が納得するという生計費をいますぐきめるということは実際上なかなか困難でございます。そこで中央最低賃金審議会といたしましては、いろいろなものを総合勘案いたしまして、ただいま先生の御指摘のございました失対の賃金、あるいは生活保護基準、あるいはそのほか人事院の出しております公務員の最低標準生計費というようなものをあれこれ全部勘案した上で、ひとつ最低賃金の全国的な金額のめどをつくろうということを御決定になって御答申をいただいておりまして、私どものほうでもそれを受けまして、さらにそういう金額の目安を具体的にどうきめるべきかということを、中央最低賃金審議会で昨年の暮れ以来御討議を願っております。ただいま御調査中でありまして、そうおそくない時期にそういうめどをつくっていただけるように、これが現実的な一つ問題点であろうかと思いますし、処理のしかたであろうかとも思います。考え方といたしましては、先生の御指摘のような考え方も、今後最低賃金行政をやっていく上において、そういうものを十分に頭に入れ最低賃金を運営するということは、これ自体は当然のことだろうと考えております。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで実はこの問題が尼崎市に起きておりますので、尼崎市における実態をもう少し申し上げておきますと、尼崎市の議会は三十七年三月三十日に、「憲法に定められた健康にして文化的な生活をおくるためには、一万円以下で働く労働者が存在してはならないと理解する。よって、市内経営者に対し、一万円以下の労働者をなくする適切な指導を行なわれたい。」という請願が行なわれ採択をされております。  その次に、三十八年三月三十日には「昨年採択された請願にもあるとおり、健康にして文化的な生活をおくるためには、一万円以下で働く労働者が存在してはならないと理解する。故に政府に対して、直ちに全国一律一万円最低賃金制を法制化されるよう要請する決議を議会においてせられたい。」ということで議決がされております。  さらに、本年の三月三十日には、「私たちは、憲法に定められた健康にして文化的な生活をおくるために、一昨年と昨年「尼崎市から一万円以下の労働者をなくす適切な指導」並びに「全国一律一万円最低賃金制法制化措置要求」の市議会請願を行い、市議会の全面的な御理解と御支持を戴きましたが、今日諸物価は大幅な値上りをみております。よって、「尼崎市から一万四千円以下の労働者をなくす指導と、そのための行政指導委員会設置に併せ、全国一律最低賃金制法制化のための市民運動展開の適切な措置をされるよう請願します。」こういう請願がやはり採択をされておるわけでございます。そのことはいま私が最初に触れましたように、尼崎におきましては大体臨時及び日雇い労働者賃金を市が調査いたしましたときにおきましても、もう現実に四百円以下の労働者というものは尼崎市にはないという段階にすでにきておるわけでありまして、さらに市全体市民全体としては一万四千円の最低賃金を目ざしてみなが努力をしておる。市民の代表である市会も行政委員会の設置を認めて、そういう方向で現在措置をしておる中で実はこの問題が出てきたということは、私たちにとりましては、他の市における問題とはいささか問題を異にしておるのではないかと思うのであります。  そこで、まずこの地方審議会の採決の問題については、自主的な問題でありますから、それについていろいろと申し上げにくい点もありますけれども、労働者委員が全員反対をしておるのに私がいま述べましたような客観情勢のある尼崎市における業者間協定の四百円を公益及び使用者側だけが強行して採決を行なったということについては、やや私は問題があるという感じがするわけでございます。というのは、強行しなければならぬだけの一体メリットがどこにあるのか、おそらく採決をされた六月時点ではこれらの各業種には実態としては四百円以下の労働者がないという実態であるときに、四百円という最低賃金をきめることは、私はまぼろしの最低賃金だと思うのです。該当する者がないという状態のものをつくって、一体それで最低賃金というものが確立をされるのかどうか、その点について私が昨日兵庫労働基準局長に申し上げたのは、労働省のお役人というのは一体どういう立場でものを考えておられるのでしょうかということです。私は大蔵委員でここはあまり伺ったことはありませんけれども、労働省設置法の第三条を見ますと、「労働省は、労働者の福祉と職業の確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」こうあるわけでして、その二号には「労働条件の向上及び労働者の保護」となっておるわけです。そうすると、これはもちろん地方最賃審議会がおやりになることでありますから、労働基準局は全然ノータッチでございますということかもしれませんけれども、これは労働基準局長の諮問機関でありますから、私はもし労働条件の向上という問題が労働省の任務の一つとして重要であるとするならば、すでに実態がないものに最低賃金を設けるということが行なわれることがはたして労働条件の向上という問題といかように結びつくのかという点に大きな疑問なしとしないのであります。いろいろ経過があったことと思いますし、それは賃金部長はつまびらかにしておいでになりませんでしょうから一般論としてのお答えでけっこうでございますけれども、労働者委員が反対をいたしましたについては、これらの最賃法第三条に基づくいろいろな客観情勢の中で見て、この際四百円という答申をすることが是か非かという問題について労働者側委員としては賛成ができないということでその全員が反対をした。その中で採決を強行してまでそういう処理をしなければならなかったかどうかという点については、私はやや行き過ぎがあるような感じがしてならないわけであります。これについて、一般論としてお答えをいただいてけっこうですが、労働省側の見解を承りたいと思います。
  44. 辻英雄

    ○辻政府委員 先ほど申し上げましたように、尼崎の件の具体的事実を詳細にいたしませんので一般的にお答え申し上げたいと思います。  私どものほうといたしましては、先生御指摘のように労働省の仕事は労働者労働条件の改善向上にあり、特に最低賃金につきましては、賃金の低い労働者賃金を改善向上することが基本的な目的でございますので、私どもとしては及ばずながらそのようなつもりで行政をいたしておるつもりでございますが、何ぶんにも未熟でございまして、結果的にはただいま御指摘のようなそごのある場合もあるいはあろうかと思います。今後は十分戒心いたしまして、そのようなことのないようにいたしたいと思います。  なお、委員会の会議の問題につきましては、一般的には当該地区の三者構成の審議会でございますので、運営の自主性は私どもとしては尊重いたしておりますが、一般論として実は昨年の秋の全国の地賃の会長さんの会議の席等でも申したわけでございますけれども、できる限り三者で議を尽くして運営をしていただきたい。相なるべくんば満場一致ということを基本的な考え方として運営をしていただきたいということは一般的には申しておるわけでございます。これは地区地区によりましていろいろ御事情もあり、あるいはまたそのお立場などもありまして、若干御反対のあるケースで決定されておるものもございますが、一般的にいま申し上げたように考えておるわけでございます。  なお、最低賃金がつくられましたものの実行性の問題でございます。兵庫の件は私具体的に存じませんが、一般的に全国で従来のものをながめてみますと、それぞれの業種、地域によりまして違っておりますが、平均的に見ますと大体一五%から二〇%の労働者最低賃金の決定によって賃金が直接引き上げられておるというのが従来の一般的な状況でございます。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 前段のほうは一般論としてはさようあろうかと思いますが、いまの後の一五%、二〇%が最賃によって賃金が引き上げられるという点については、私もそのくらいのメリットがあるならば、労働者委員がどういう理由で反対するかは別として、多少反対した場合にも行なわれてしかるべきだと思うのです。しかし、私がさっきちょっと触れましたように、現在この対象になっておりますのが約七千人でございます。そうしてメリットを受けますのが二百八十六人でございますから、そうなりますと四%くらいしか実はそのときにメリットがなかったのです。それはいま申し上げたように昨年の五月の問題でありまして、今年の六月に最賃審議会が採決をした時点では、一年間賃金上昇を見ますと、それも金額的に例示をされておりますけれども、大体三百六十円から七十円、三百六十円以下の労働者はいないのです。その当時でも三百六十円、三百七十円以上になっておるわけですから、一年間で計算をしますと、おそらくことしの六月の時点では全員が四百円以下ではなくなっているのではないか。そうすると二〇%、一五%はおろか、最初に申した五%、四%はおろか、一%にも足らないものしかこれが適用を受けないということは、この最低賃金をこういうかっこうで答申をし、今後は公示が行なわれることになると思いますが、そこには一体何のメリットがあってそういうことをしなければならないかという点が大きな問題としていま残っておるわけです。そこで、私はいま賃金部長がお答えになった中で、最低賃金がきまったことによって、十五歳になっていますから、その他の者にこれが多少影響するというようなことがもし現実に起きておるならば、なるほど四百円以下の労働者は一人もいなかったけれども、最低を四百円にしたために、全体、特に四百円から六百円くらいの間の日給賃金者の全体が少し向上してきたということならば、その最低賃金最低賃金としても、給与の労働条件の向上にプラスになったという面があり得ると私は考えます。しかしそれらについては現在わかっておりませんので、私は昨日兵庫基準局長に対して、今日の時点においてはこれがきまれば四百円以下はないわけですから、四百円から少なくとも五百五十円なら五百五十円までの労働者賃金状態を早急にひとつ調査をしてもらいたい、それが昨年の状態と著しく改善の状態があるならば、それはそれなりに、この四百円というものが最低賃金としては効果がなかったかもしれないけれども、労働条件の向上には効果があったということになり得るわけでありますから、そういう調査を早急に進められたいということを第一点として要望いたしました。そういう要望をあげて、その実態が明らかになるまでは——審議会からの答申か出ておりますけれども、単にそれだけでは、——公示されるということは政府が一応権威をもってその金額を最低賃金として確認をするということになるのでありますから、それについては何らのメリットもないものを公示されるのでは私はこれは法の権威に関することだと思う。ですから、それらの点も含めて多少私も譲歩をして、いまの調査をされた上で——この最低賃金四百円をきめたことによって、何らかのメメットが労働者の側にあるということが確認をせられぬ限り、公示をするということは、最低賃金のほうへ賃金を逆に引き寄せる効果をもたらすという、本来の趣旨に反する作用をもたらすことになるのでは、私はこの問題はいささかあとに問題が残るというふうに感じます。先ほど申し上げた一万四千円以下の労働者をなくしようという努力を片方でしておるときに、一万円ということを決定することは非常に問題がありますので、それらについてひとつ労働省側の見解を伺いたいと思います。
  46. 辻英雄

    ○辻政府委員 先生、御指摘がございましたように、一般最低賃金を決定いたしました場合の効果の中には、直接にそれ以下の労働者賃金を引き上げる、関連といたしまして間接に全体としての賃金を改善するということも当然に予想いたしておるわけでございます。また、最低賃金の設定を契機にいたしまして、企業の労務管理全体が近代化される、それによってまた間接的に労働条件の改善につながっていくというような場合もあるわけでございます。本件につきましては、たびたび申し上げますが、具体的事実を存じませんではなはだ恐縮でございますけれども、先生のおっしゃいましたように、全く効果のない最低賃金を公示することができるかどうかという点につきましては多少問題もあろうかと存じます。また、特になぜ労働者側が全員反対をしたのかということ等もなお検討する必要があろうかと思います。私どもとしましても、一般的になぜ全会一致でなかったのかというようなことは十分慎重に審議をいたしまして、本省でも検討いたします。場合によりましては、それはそれとして、とにかく三者で御決定になったものでございますので、一たんは成立せしめても、非常に早い機会に改定の指導をするとか、あるいはいろいろな改善措置もあるわけでございますから、それらも全部含めまして、ひとつ兵庫の件も具体的な事情を詳細に調査いたしましてから検討いたしたい、かように考えております。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 御検討いただくということで私もけっこうだと思います。特にいま審議会は一回決定されておりますから、それをすぐ動かすということはやや困難かと思いますが、少なくともできるだけ早い機会において再び再申請が行なわれ——私どもも非常に無理なことを言っておるつもりはございません。客観的ないまの情勢を申し上げた上で、四百円ではいかにも低過ぎる。該当者がないような最低賃金では、これはただ絵にかいたもちにすぎないではないかという感じがいたします。いま一万四千円にしなさいということを直ちにどうこうする意思はありませんけれども、少なくともその方向に向かっての前進が見られるような措置をいたさなければ、これは何ら意味がない、私はこういうふうに判断をいたしますので、その点についてはひとつ行政指導によってすみやかにそういう再申請が行なわれる措置を講じてもらいたいわけであります。   〔小沢(辰)委員長代理退席、 亀山委員長代理着席〕 いま申し上げたような最近における現実の時点における賃金の変化の状態を早急に調査をしてもらいまして、その調査結果がわかるまでは公示につきましてはしばらく猶予をしてもらいたい、こういうふうに判断をしますが、その点についてはいかがでしょうか。
  48. 辻英雄

    ○辻政府委員 まことにごもっともでございますので、さっそく調査をするようにいたしまして、かつ調査の結果が判明いたすまでは公示は留保いたすようにしたいと思います。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 大体私が希望いたしました方向で御答弁をいただきましたので、時間もありませんので私の質問はこれで終わりますが、ただ一つ最後にお願いしておきたいことは、いまの業者間協定という姿は、実はもう労働需給の状態が今日のようになっておるときには、最低賃金のあり方としてはやや不十分な状態で、労働力が非常に余っておった段階はともかくとして、年少労働者においては労働状態というのは非常に逼迫をしてきて、条件は変わってきております。そういう意味では少なくともすみやかに十六条方式が転換をされて、やはりいまの状態にマッチするような問題の処理をしてもらいたいということが第一点。  第二点は、池田さんもしょっちゅう言いますが、この四月一日から日本開放経済の中に入ってきたわけです。開放経済ということは単に商品の価格だけの開放ではないわけです。商品の価格の土台になっておるところの労働者賃金というものも当然その商品が開放されたことに伴って、やはりそのエレメントとしての役割りを果たしていかなければならないわけです。御承知のように、いまアメリカでは、日本の鉄鋼生産物についてテープレバーその他の問題を含めてのダンピングではないかという問題が起きておるわけですが、一つの例として尼崎製鉄の労働者の平均賃金は三万六千円くらいだと思いますが、その下請企業の中に最低賃金が四百円などというものがあるのだということがアメリカ側にわかるならば、そういう下請労働者のチープレーバーによって出てきておる日本の鉄鋼製品をわれわれがここで遮断するのはあたりまえだという、開放経済下における重要な問題を提起することになりかねないわけです。ですから今日この最低賃金の問題というのは、単に国内的な問題だけにとどまらず、そういう意味では世界経済の中における開放体制下の日本が、公正なる自由競争をすることを世界的に認識をされるためにも、少なくともこのような非常識な最低賃金が、それも労働者の町といわれる尼崎において行なわれたりすることは、私は労働行政としては非常に重大な問題をはらんでおるのではないかというように判断をいたしますので、今後はそういう世界経済との関連において、日本労働者はやはり不当な低賃金だということを印象づけることのないような最低賃金の取り扱いというものをすみやかに指導されるように強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  50. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 五島虎雄君。
  51. 五島虎雄

    五島委員 堀委員と一緒に昨日尼崎の問題について兵庫の基準局長といろいろ話をして、きょう上京してきたわけですが、辻賃金部長がいま答弁されたことによって、ほぼ答弁についてはそれはそれなりに満足をいたしました。したがって、今後よく指導されて、適切なる措置を講じて、労働者の生活の向上ができるような配慮労働基準局としてお願いしたいと思います。  それからもう一つは、大体業者間協定における最低賃金の規制を受ける労働者を二百五十万すみやかにつくる、こういうように歴代労働大臣は説明してこられた。ところが、もうすでに二百五十万人の業者間協定における関連した労働者は、業者間の最低賃金によって規制されることとなったと思う。私たち社会党は、御承知のようにこういうのは最低賃金ではない、したがってすみやかに全国一律の最低賃金を決定すべきであると結論づけてまいっておるわけでありますけれども、その後最低賃金がそれぞれできたわけですが、業者間協定がどういう比率によりて改定されたか。それからもう一つは、依然として、ただいま堀さんが質問されたように、どこも四百円であるからここも四百円だというように、法益のないような最低賃金が進められているということは、ただ単に業者間協定に関連するところの、この際労働者をできるだけふやしておけばいいというような観念によって最低賃金が全国的に施行される、あるいは実施される、公示されるというようなことがあるならば、ちょっと問題ではなかろうか。したがって、私は労働省がすみやかにこの業者間最低賃金を改定して、現在の近代的な賃金体系を樹立するように改定せいということをおそらく全国に勧告、通達か何かされているのじゃなかろうかと思うわけです。そうすると、いま堀さんが質問されたように、法益のない最低賃金を急いでつくるということ、あるいは労働者代表が全員退席したにもかかわらず、これが多数によって行なわれるということは、法益のことを考えざるところの、ただ単に最低賃金法ができたのだということで、労働者の数をもって国内的にも国際的にも誇ろうとする一つの考えが誤っているのじゃなかろうか、こういうように考えます。したがって私たちは、業者間の最低賃金は最低にしわ寄せするのだと批評をしてきましたけれども、しかし賃金に規制されるところの労働者の生活というものは、現実の問題ですから、できるだけ高いほうがいいわけです。したがって、それを改定するというようなことに地力の基準局あたりは万全をもって指導をしてもらわなければならないと思いますが、賃金部はどういうように指導されておりますか。
  52. 辻英雄

    ○辻政府委員 二つのことを申し上げなければならないと思いますが、一つは先ほど申し上げました、昨年の夏にございました中央賃金審議会の答申に基づきまして、全体としての最低賃金をどのように進めていくかという問題でございます。この点につきましては、答申は二つのことを考えておりまして、一つは、最低賃金をどういう業種につくるべきか、あるいはどういう程度の金額をめどとしてつくるべきかということをきめまして、それによって業者間協定の結果、非常に額が低かったり、ばらばらであったりするような状態をまず改善をしていこう、これを足がかりにいたしまして、全体として、全国の調節をとりながら業者間協定から他の方式——十六条を含めました他の方式による最低賃金のほうに移しかえをしていこうというのが中央賃金審議会の基本的なお考え方でございまして、私どももそのように努力してまいりたいと思っておるわけでございます。これにつきましては、目下対象業種あるいは目安につきまして、中賃で御検討中でございますので、この御答申が得られたならば、すみやかにいまのような方向が具体化できることになろう、かように考えております。  もう一点は、先生御指摘の、いたずらに数だけを追うような問題はどうかという点につきましては、三十八年度まで二百五十万計画をやりまして、これは一応終わったわけでございます。二百五十万以上の最低賃金ができたわけでございますが、これにつきましては一方におきましては、それだけのそれぞれ効果があがってもおることだし、また最低賃金というものを日本中小企業の中になじませたという点につきましては、やはりそれなりに評価すべきものであるというふうに考えております。   〔亀山委員長代理退席、 小沢(辰)委員長代理着席〕 ただ、非常に欠点も多いわけでございまして、基本的には先ほど申し上げたような方向に逐次移しかえをしていきたい。当面のところ、御指摘のように、つくられた最低賃金がそのまま据え置かれて、結果的には、実際はるかに低いところに最低賃金が存在しているという形は、かえって逆効果になりますので、できたものの改定ということにつきましては、本年の春の全国の基準局長会議等におきましても、やかましく指示をいたしておるつもりでございます。現状で申し上げますと、昨年は大体新設と改定とが半々程度にまでなっておりまして、改定のほうがおくれないように今後とも指導をしてまいりたい、かように考えております。
  53. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後一時二十七分開議
  54. 田口長治郎

    ○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。八木一男君。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 この前の国会でわれわれの反対にもかかわらず無理にあのような状態で通った形にされました失対二法のその後の運用について、大臣に御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  まず第一に、私どもが反対しておりましたが、通った形になりましたいわゆる失対二法の中で、大臣の国会における答弁、あるいはまたその他の場における大臣との確認においては、その中でとにかく就職促進措置をとるけれども、たとえばその促進措置をとって後に就労が困難である場合、あるいはまた失業多発地帯でそういうものが就職促進措置をとっても就職をさせることが困難な場合には、失対事業にそれを吸収するということを大臣があらゆる場においていろいろと明らかにしておられるわけでございますが、その後、新法実施後に一人も失業者就労事業に対する新規就労者がないというふうに私ども調べているわけでございますが、そういう点については大臣の御意思が、たとえば局長とか部長とかあるいは末端に浸透していないきらいがあると私どもは考えています。そういう点について労働大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この点につきましては、かねて当委員会においてお答え申し上げておりますような方針をもって進んでおるつもりでございます。ただいままでのところは、まだ新しい法律の実施についての訓練的な期間でございまするので、試験的な意味におきましても、いろいろなことをやってみております。大体見当もついてまいりますれば、はっきりした方針に従って進めるようにいたしたいと思います。あなたの御指摘のような点は改善されると思います。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 しばしばこの委員会において御答弁になったようにとおっしゃいましたが、前の速記録を全部読むひまもありませんので、もう一問確認をしておきたいと思いますが、失業多発地帯に対しては、これは失業者就労事業に直接紹介をする。それからまたその他の地帯において就職促進措置をとった場合においても、そのような就職をすることが非常に困難なときには、失対事業に紹介をするという意味の内容についての大臣の御答弁だったと思いますが、それについてひとつ……。   〔委員長退席、 井村委員長代理着席〕
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 できるだけ促進措置をとるのがたてまえであるけれども、実情やむを得ざる場合には直ちに失対事業入れるということも考えなければならぬ、そういうことのできるようにしよう、こういう趣旨のことでございます。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 前段のことはとにかくとして、そのときにはできるようにしょう、できるようにするという大臣の見解でございますね。そこのところをひとつ、するという御見解を……。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういう趣旨でございます。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 所管局長よく聞いておいてください。大臣の御指示に従って行政を……。  その次に、ところが所管局長の通達では、これは職安局長が昨年の十月一日に職発第七七七号によって通達を出しておるわけですが、「法第十条第三項の規定により、公共職業安定所長が(失対事業の)紹介対象者とすることができる場合は、当該失業者について、適切な就職促進の措置指示することが困難な場合に限るものとし、」−これから先を強調しているわけです。「この「指示することが困難である場合」とは、当該地域における公共職業訓練施設の状況、職場適応訓練を実施できる事業所等の状況、その他の事情からみて、就職促進の措置の実施の能力をこえる場合とする。」というふうになっておるわけであります。前に大国が多発地帯とは切り離しまして一般的な紹介をする場合として、多発地帯の場合と、それ以外で就職促進措置が実効がない場合というふうに二つ言っておられるわけでありますが、この通達の趣旨は非常にあいまいな文言で書いてありますけれども、この文言でやりますと、就職促進措置のことをやっている限りにおいて、形式的にやって失対事業に紹介しないという実情があらわれてくるわけであります。北海道の夕張において実は六カ月をこえてもう就職促進措置が終わっている、訓練指導コースが終わっているにもかかわらず、そこにおいて就職がないのに失対事業一つも紹介をしていないという実情がございます。このような通達だと、何らか形式的にこのような就職促進措置というものによるものがやられている間は、一切直通で紹介しないということになってしまうと思うのです。そういう問題について大臣の御趣旨とはこれは違うと思いますので、労働大臣の御見解をひとつ伺いたい。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私も最近の実情をよくつまびらかにいたしておりませんので、この点はひとつ事務当局からよく実情を確かめまして、前に申し上げたような趣旨で前向きに進めたいと思います。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 北海道の夕張の例でございますと、結局職業指導のコースをやって終わったときに、全然職業はないのに、指導コースを延ばして、ただ漫然とそれに対処をしておるという事実があるわけでございます。そういう就職促進措置をやっておるならば、しなくていいということだけにこの前段の通達が書いてありますので、逆に解すると、そういうような指導コースさえやっていれば全然失対事業に適用紹介しなくてもいい、また紹介しないようにしろというようなことを言っているとしか事実上受け取られないような措置がとられているわけです。それについて大胆から、六カ月終わった場合になければすぐ失対事業に直通するように、ぜひ御指示を願いたい。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 元来就職促進の措置というのは、他に就職できる可能性を頭に置いてそのためにやる措置でございまして、失対事業入れられないからそのつなぎに就職促進措置でごまかしていこうというようなことは、これは全く趣旨に反することでございます。夕張の事案につきましては、取り調べの上、就職促進措置を延長いたしましても、就職の目的を達成し得るはっきりしためどが立たないというような事情でございましたならば、直ちに失対事業に移すように措置いたしましょう。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 私は大臣の御答弁で満足をいたします。それについて大臣から御指令になって、その事情は実は申し上げたとおりでありまして、見込みはないのにのんべんだらりとそういうことをやられている状態でございますので、直ちに命令を出されて、調べられて急速にそれをやっていただきたいと思います。とにかく一週間か十日くらいの間にそういうような措置ができますように、紹介ができますようにやっていただきたいと思います。
  66. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さっそく措置いたします。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 その次に多発地帯の問題でございますが、多発地帯については、失対法の施行規則の第七条の二には、「当該公共職業安定所における求職者数、求職者求人数との比率、求職者のうち就職した者の割合、新たに失業した者の数等を考慮して」指定するということに規則で定まっておるわけであります。ところが現在労働行政の中ではそのようなことをしておられないで、失業保険の受給者の動向だけによって定められております失業保険金の給付期間の延長の地域をそのまま横すべりにしておるというふうに私どもは考えておるわけであります。失業保険の給付期間の延長の条件は何かというと、失業保険の受給者数と失保の適用者数との比率が全国平均の二倍をこえるという場合に失業保険給付期間の延長ということがいま行なわれているわけであります。それが横すべりということは非常に間違っていると思う。大臣の時間がありますからこちらから申し上げますけれども、たとえば失業保険というものは、一部例外的に入れる点がありますけれども、とにかく法的には五人米満は適用がされておらない。失業者というのは五人米満の零細事業所につとめていた人が失業する場合が非常に多いわけでございます。そういう要素を入れていない失業保険の適用者、それから失業保険の受給者、そういうことの比率が全国的の平均の場合にあるからということで、失業保険の適用延長をやるのは、保険だからといって問題があろうかと思いますが、それはそのままおいでおいで、失業多発地帯の認定については、そのような失業保険と全然関係がないということで、失業保険を横すべりさして認定しているということは非常に不十分だと思う。五人未満の事業所がつぶれて失業者が多い、またそういうような状況だから再就職ができない。失業多発地帯は別にきめられているような要件で定められなければならない。そういうような不十分な点を即刻直していただいて、失業多発地帯の指定をふやしていただかなければならない。現にいま炭鉱地帯の一部分が指定をされておるだけで、その他の失業多発地帯が当然立法の中には考えられて入っておったにかかわらず、それが生かされておらない。その中の一つとして未解放部落が多いところは失業多発地帯とするという考え方が、大臣にはおありになっておられたにかかわらず、そのような認定基準に入っていないというように私どもは理解いたしますが、こういう不十分な点を即刻改められて、失業多発地帯がほんとうの立法の趣旨で、あるいはまた大臣と私どもとお話し合いをした理解事項に従って行なわれるようにしていただきたいと思います。
  68. 大橋武夫

    大橋国務大臣 おことばまことにごもっともと存じます。何分にもこのたびの法律の改正は、従来の法律の画期的な大改正でございますので、当局といたしましても実施期日を定めまして、現在実施をいたしてはおりますものの、さて実際といたしましては、実施しながら勉強していくというような状況でございまして、現在の段階ではまだ法の意図いたしております完全なる目的を達するところまでいっておらないのでございます。したがいまして、一応の指定といたしましては、従来からはっきりいたしております失業保険基準によって指定をいたしただけでございます。しかし施行規則にはその他の基準による指定も考えております。そこまで従来まだ決断がつかないという状況でございますが、だんだんに経験を積んでまいりましたので、今後はそうした新しい必要な土地を指定するような段階になる次第でございます。なお今後ともそういう趣旨で改善に努力をいたしていくつもりでございます。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の御答弁非常にけっこうでございます。ただ、毎日非常に生活に苦しんでいる失業者の問題でございますから、多発地帯と認められたならばそれで救われる失業者にとって、非常におくれることは困りますので、少なくともそういうことをお急ぎになり、今月中くらいにそういう多発地帯が拡大するようにぜひやっていただきたいと思います。今月中にやっていただけるようにひとつ……。
  70. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実はこの多発地帯の指定は、御承知のように審議会の意見も聞くことにいたしておりますので、できるだけ早く審議会でも御意見を出していただくようにいたしたいと思います。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 審議会の招集は会長がおやりになると思いますが、労働省からそういうものについて審議をしていただきたいという御連絡をして、諮問なさいましたら即時開かれると思います。そういうことで、いま大臣のお約束いただいたことが実際に来月からでも実行できるように、審議会のほうのことはお急ぎを願いたいというふうに思います。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 できるだけ急ぎます。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 具体的な問題でちょっと伺いたいのですが、先ほど大臣の御答弁で本則のことは非常に前向きなけっこうな御答弁でありましたが、事実を申し上げますと、実は北海道の夕張地区は元来失業多発地常に認められておりますから、この問題で今後すぐ失対事業に直通していただくことをきめていただかなければならないと思います。いままでそういうことが行なわれないで、就職促進措置をとっておられます。それはいいといたしましても、就職促進措置が済んで、この六月からどんどん終わった人が出てくるわけであります。最初六月一日ごろに終わった人の中で認定を取り消されたものがあるわけです。認定を取り消すというのは、結局労働省のほうでは、事情が変わった。たとえば、前には家計の主たる担当者が病気だったので、奥さんのほうにそういう措置をしたけれども、病気がなおったからそういう事情がないのだとか、いろいろな理屈をつけて、そこで認定を取り消してしまうというようなケースがあるわけでありますが、どういう事情があろうとも、だんなさんの病気がなおろうが何がなおろうが、本人が働く意思と能力を持っておって、生活が困難であるという事情があれば、御主人の病気が回復したから奥さんを取り消すということは妥当でないと思う。一方、別のほうの普通の納得できる基準として、所得税を納めていない者についてこういうことを適用するということをやっておられるのですが、事情が、だんなさんが病気でいて、その病気がなおってもだんなさんは所得税を納めていないのです。生活が苦しくて共かせぎしなければならないくらいで、その奥さんが働く意思と能力があるということであれば、当然このような雇用促進の措置、あるいはその後における失対事業に紹介する措置、それが全部適用されなければならないと思うわけであります。その点について労働大臣の御見解を伺いたいわけであります。
  74. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のように、失対事業に従事する者につきましては、ある程度資格要件という定めがございます。この資格要件のなくなった場合には取り消すということは、これは法のたてまえ上やむを得ないことじゃなかろうかと思います。ただし、現実運用にあたりましては、よく生活の実態、また家庭の事情等を十分に調査いたしまして、万遺憾なきを期したいと考えておる次第であります。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 それでは職安局長にお伺いいたしますが、大臣のおっしゃった資格要件というのはどういうふうに考えておりますか。
  76. 有馬元治

    有馬政府委員 先ほど滝井委員にもお答えしましたような抽象的な資格基準認定基準が定められておりますが、その事情が御主人の回復に伴って出てきたかどうかということの事実認定が問題だと思います。したがいまして、いまの具体的な事例につきまして私どもも報告を受けておりませんが、至急調査しまして現地側とよく相談して善処したいと思います。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 重ねて伺いますが、条件は、本人が働く意思があり能力があるということと、いま職業がないということと、あと何か労働省としては考えておられるわけですか。
  78. 有馬元治

    有馬政府委員 六つあるのですが、先ほどお読みしたとおりですが、一つは、公共職業安定所に求職の申し込みをしていること。それから二つが、誠実かつ熱心に就職活動を行なう意欲を有すると認められること。三が常用労働者として雇用されることを希望していること。四番目が本人及び配偶者の経営的所得並びに配偶者の事業所得及び給与所得の合計額が所得税免税点をこえていないこと。それから五番目に、従前認定を受けたことがある者については認実失効の日から一年を経過していること。六番目には、炭鉱離職者については別の問題があるからこれを除外する。この六つでございます。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことでは、たとえばだんなさんが病気がなおったとか、いうものは、直接の条項じゃないわけです。なおったからそれでその人に収入ができて、いま言った収入をはるかにオーバーするようなことになれば、それは適用しないということがいいか悪いかは別として、いまはそういうことになっているのです。ところが、夕張のほうの取り消したほうは、職安局長のほうが、なおった、事情が変更したということを強調しておられるようにはっきりいえると思う。そういうときには切ってしまえというような気持ちを中に含んでいるのじゃないか。その主人が病気が回復しようがしまいが、さっき言った働く意思があるとか能力があるとか、収入がこれ以下であるとかいう場合には、これは問題がない、同じなんだ。病気がなおったって、これは収入がいきなりできるわけじゃないし、なおったときこれを締め出せというようなことに末端がなるような、そういう通達はいけない、なおった前からの基準があるのですから。それは末端は知っているのですから、主人がなおって収入がうんとできれば、そのもとの基本的基準にひっかかることはわかっておる。それに病気がなおったというようなことを指示すれば、末端ではそうなったらやらせないようにするのだというような気持ちで対処するということになる。そういうことで間違いが起こっている。ほんとうの事情一つも変わっていないのに、だんなさんの病気がどうだとかいうことで、前に就職促進の措置を受けておる。今度はその措置のことで労働大臣の御発言のとおり、失業骨就労事業に紹介しなければならない状況にあるときに、そこのところでばっと切っているわけです。それが一般的、基本的原則からはずれているのではなしに、ただ事情に変更があったら切るというようなことが行なわれておる。そういう指導をしないで、最初の基本基準で、末端はちゃんとわかっているわけです。いまおっしゃった条件でそこにそういうことを出されると、とにかく変わったらもうぶった切るんだというふうに末端が解釈をする、末端が解釈をしないでやるとしたら、労働省のほうがそういうふうに、たとえば、さっき滝井君が言ったように、全日自労のほうで失対事業のほうにみな入れる運動をしておる、そういうことがあるから厳重に警戒しろとか、厳格に対処しろとか、そういうことを言っておる。労働省の局長さんや部長さんか、だれが言ったか二人、三人言っていますね。そういうことを育っていることをかみ合わせると、事情が変更したらぱっと切ってしまえというようにとれるわけです。首をかしげておられるけれども、首をかしげておられるように、局長の本旨と合わないのであれば非常にけっこうです。本旨に合わないのだったらけっこうですが、事相変更ということは、その主人の病気がなおったかという事情変更ということは、この就職促進措置なり、逆に失対事業に紹介するなんという条件には直接に一切関係はないのだ、それによって収入がばく大にふえるというようなことで、さっきの基本条件に関係するときにのみ関係があるのだということをはっきりしないと、現場でそういうことが起こっておる。これは大臣にもちろんお願いしたいけれども、職安局長自体、いま首をかしげておられたとしたら、意思のとおりでない状況が現場で起こっておるということなんで、それがわれわれのほうの耳に入っておる。そういう誤解が一切ないように、基本的条件に合いさえすれば、前に言ったように、だんなさんが病気がなおったからやめるというようなことを一切してはならないということを誤解がないように指示、通達、そういうことをやっていただかなければならぬ、それについて局長の御答弁を伺いたい。
  80. 大橋武夫

    大橋国務大臣 夕張の現地におきまして、法の運用趣旨を誤解しておるのじゃないかという実例についてお話がございましたが、私どもといたしましては法の趣旨をできるだけ徹底し、失業者の救済に遺憾なからしめるように今後とも事務当局を督励いたすつもりでございます。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 自民党がもう少し来るまで待ちます。
  82. 井村重雄

    ○井村委員長代理 いま呼んでおりますからどうか続けてください。——それでは本会議散会まで休憩いたします。    午後二時休憩      ————◇—————    午後三時四十九分開議
  83. 田口長治郎

    ○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予備審査のため本委員会に付託されております。藤田藤太郎君外三名提出の国有林労働者雇用の安定に関する法律案を議題とし、審査を進めます。     —————————————
  84. 田口長治郎

    ○田口委員長 提案理由の説明を聴取いたします。柳岡秋夫君。
  85. 柳岡秋夫

    柳岡参議院議員 国有林労働者雇用の安定に関する法律案の提案理由の説明を申し上げたいと存じます。  現存、五十万人に及ぶ山林労働者は、人里離れた山奥で家族と別かれ、昔ながらの封建的身分差別と非近代的な労働条件に苦しみながら、森林資源の造成、木材生産に従事しているのであります。しかし、池田内閣の提唱する所得倍増政策は、山林労働者をも一そうの貧困の谷間におとしいれ、近代文化の恩恵に浴することもなく、生活の近代化は全くの夢物語にすぎない状態であります。すなわち、これらの労働者賃金は、依然として人間としての最低生活を維持するにはほど遠い状態であり、労働条件を規定した労働基準法の中心的な規定であります労働時間、休日休暇の規定は、その適用が除外されているのであります。したがって、これらの労働者は、低賃金実態との関連で、今日でも依然として長時間労働が強要されている状態であります。  わけても十五万人に及ぶ国有林労働者は、国有林に専業的に働き、その生計を国有林に依存し、二十年、三十年の勤続表彰を受けておりながらも、林野当局の降雪、積雪を理由とする休業のため、毎年毎年首切りが行なわれているのであります。そしてその結果は、毎年三カ月から六カ月にわたって失業するという状態が繰り返され、このようにして国有林労働者の身分、生活は極度に不安におとしいれられているのであります。  しかも、これらの国有林労働者は、定長内職員、常用作業員、定期作業員、日雇い作業員、臨時日雇い作業員という雇用区分によって、その労働条件には大きな格差が設けられているのであります。このような国有林労働者の差別支配を強行している当局が、国有林を管理運営する林野庁という名の政府の機構の一部であることは、私の最も遺憾とするところであります。  しかし、最近開催されましたILO国家公務員専門家会議においては、恒常的な職務を遂行するため必要とされる職員は、常勤として採用されなければならないし、その間といえども常勤と非常勤との間の法的身分の違いをもって、賃金労働条件全体について差別の理由とすべきでないという報告をしているのであります。したがいまして、現在、林野庁が行なっております労務政策は、このILOの見解には全く反しているのであります。  このような国有林労働者の現状にかんがみまして、これらの労働者雇用を継続させ、その雇用と生活の安定をはかる必要があると考えるのであります。これがこの法律案を提出する理由であります。  次に、この法律案の概要について説明申し上げます。  まず、国は、国有林労働者として前年度及び前々年度において、それぞれ継続して六カ月以上雇用された者、また前年度において継続して十二カ月雇用された者については、当該労働者が希望するときは、これらの労働者を常時雇用する国有林労働者として雇用しなければならないものといたしました。  第二に、国有林労働者が一年を通じて労働することができるようにするため、国はできる限り、岡が直接実施する国有林野事業事業量の増大及び作業量の平均化をはかる義務があることを明らかにいたしました。  第三には、国は、前年度において継続して六カ月以上国有林労働者として雇用された労働者で、常時雇用国有林労働者対象とならなかった者については、当該労働者が希望する限りは、次年度においても再雇用を保障する義務があることといたしました。  第四には、常時雇用される国有林労働者が、降雪または積雪のために休業をせざるを得なくなった場合には、国は、労働基準法第二十六条の規定にかかわらず、特別休業手当として、平均賃金の六〇%以上の手当を休業期間を通じて支払わなければならないことといたしました。  以上が国有林労働者雇用の安定に関する法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  86. 田口長治郎

    ○田口委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  87. 田口長治郎

    ○田口委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  88. 八木一男

    八木(一)委員 引き続き御質問申し上げたいと思います。  就職指導コースの期間の問題でございますが、大橋労働大臣は、この指導コースについては、地域の雇用情勢や本人の適性等から見て、就職の見込みのないときは、一、二週間程度のきわめて短期間措置をした後、すぐに失対事業に就労させる道をつくるようにしようという意味の意見を前に明らかにしておいでになるわけでありますが、そしてまた中央職業安定審議会でも、これについてはおおむね二カ月ないし六カ月というような答申をして、ごく短期間にすることを指示しているわけであります。ところが、このような労働省職安局の通達は、一律に六カ月にするようにいま指示をしているわけであります。それが大胆なりあるいは審議会なりの指示と違った方向になっている点が、非常に間違っていると思うわけでございますが、それについての労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 講習期間につきましては、習得科目によりまして、それぞれ適当な期間を定めることにいたしておるのでございますが、問題はいろいろな事情から直ちに失対事業につけることが適当だという者も、法律上のたてまえからいって、一応形式的に訓練をしなければならない、その期間をどうするかという点について、私が、それについては実情を見てきわめて短期間訓練で、将来の参考事項を習得させるという程度にしよう、こう申したことを言っておられるのかと思いますが、そういう趣旨運用をいたす方針でございまして、いままでのところはいろいろなやり方を試験的にやっておりますが、逐次そういう方向に進んでいくつもりでございます。
  90. 八木一男

    八木(一)委員 大臣のお考えは、大体において非常に私どもとしては満足した御答弁だと思いますが、実際に労働省でやっておられるのは、審議会においても短期間という指示が出ているのを、六カ月というような規定をし、またそれをさらにどんどん延ばそうとしておるということは、審議会の答申の趣旨なり、大臣のお考えなりに反したことをやっておられるので、指導コースなどをそう長い期間とらないで、とにかく見込みのない人は、すぐ失対事業に紹介するように促進をしていただかなければならない。そういう点について夕張等の実情は非常に——結局指導コースで九千円の手当を支給しているけれども、あとほかのところに紹介するような実績がほとんどないし、見込みもないという状態でございますから、早く失対事業に紹介をして、仕事をしていただいて、その仕事をする人はいまの失対事業の就労で、十分ではありませんけれども月九千円よりはよけいな、それだけのものが収入として入るようなことを促進していただかなければならない。それについて大臣から急速に促進をしていただけるようにやっていただきたいと思います。
  91. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういうふうにいたします。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 それから就職促進措置全体についての問題でございます。これは全国的の問題でございますが、就職促進措置を受けるには、申請をしてから認定までに一カ月かかります。それから訓練コースか指導コースかどのコースが適当かということを検討して指示されるまでに二カ月かかる。そういうことでは失業者がその間生活ができないということになるわけでありまして、こういうことは二カ月でなしに、敏速にやる気であれば現場にはっきりと権限を与えてさせていただきましたならだ、ほとんど即時にできることではないか。少なくともその該当者と訓練場所の適当な判断でも、本気でやる気であったら五日か一週間くらいでできることではないかと私ども思うわけであります。二カ月もその間に収入なしに処置をされないでほっておかれるということは非常に残念なことでございます。これを急速に短縮をして、認定、それからコースが決定するまでに、少なくとも一週間か十日以内にそういうことが行なわれるように、ひとつ大臣のほうから御指示を願いたいと思うわけであります。
  93. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういう目標努力をいたしたいと思います。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 それから先ほど夕張のことで例を申し上げましたけれども、私の調べた例によりますと、夕張のほうで職業の紹介をなさった実例が相当入っております。職安のほうで紹介をなさってその労働者が行きますと、そのときには要ったけれどもいまは要らないのだ、帰れと言われた、そういう例ばかりです。それから賃金なり時間について、職安のほうでこうだから行ってこいと言われたのに、現場に行くとそういう時間じゃない、そういう賃金ではないと追い返されておる、そういう事例がここにたくさんございます。御必要があれば一つ一つ読み上げて申し上げますけれども、そういう事情であることは明らかでございまして、そういうことで夕張地区では就職促進の措置の中のいろいろの訓練なり紹介なりも実際に実効を上げていない状態であります。これは失業多発地帯だからそういうことになる。  そこで、もとの根本的な問題について御質問を申し上げたいわけでございますが、失業多発地帯については先ほどは夕張の例で申し上げましたけれども、大臣が最初から私どもに御説明くださったように、失業多発地帯については失業対策事業に直通して紹介するというようなことが一つのことで、もう一つは、就職促進措置をとっても就職ができなかった場合に、失対事業に紹介をするというようなことが、今度の問題で昨年以来大臣が明らかにされている問題であります。夕張のほうは、実は多発地帯ですから、最初から直通をしてもしかるべきものでありまするのに、それを直通しないばかりか、今度は訓練指導期間などは二カ月でいいというような答申がある。大臣はもっと短くていいとおっしゃっておるのを六カ月も続けてやる。それが済んでからもかってに期間を延期してやっておるという実情であります。そういうことは大臣の意思に合いませんので、多発地帯についてはとにかく見込みを早くつけて、失対事業にすぐ紹介することをやる。それからそのほかの多発地帯以外のところで就職促進措置をやられて、終わった後に就職がないときには、失対事業に紹介するというようなことを、大臣のいままでの御言明いただきましたとおり局長、部長の通達によって末端まですぐそのような措置をぜひとっていただけるように強力に御指示を願いたいと思います。大臣の御所見を承りたいと思います。
  95. 大橋武夫

    大橋国務大臣 かねて申し上げておりますような方針がよく徹底するようにいたしたいと思います。
  96. 八木一男

    八木(一)委員 いま大臣の御答弁をいただいて非常に満足であります。  職安局長の有馬さんに。大臣の御趣旨は国会でそのように明らかにされたわけでございますから、有馬さんはこの問題について一番責任のある補佐官として、その大臣趣旨が末端に徹底されるようにしていただきたいと思いますし、いままで出された通達で大臣趣旨に合わない、あるいは合うようなことを理解しにくいような通達七七七号とか七七五号とかいうのがございますから、そういう点については大臣趣旨に沿うて通達を出し直すということをぜひ職安局長はなさる責任があると思うわけであります。即刻にそれをしていただきたいと思うのですが、職安局長の御答弁を願いたいと思います。
  97. 有馬元治

    有馬政府委員 大臣が国会において答弁された御趣旨に従ってわれわれ法律運用をやっているわけですが、いままで私の名前で出しております通達の趣旨が間違っておるというようなことは基本的にはないと思います。ただいろいろと不十分なところがあったかと思いますので、そういう点は現地の実情に応じて今後ともさらに充足をしてまいりたい。その際には必ず大臣の御答弁の趣旨に従って補充をしていくという基本的な方向で進みたいと思います。
  98. 八木一男

    八木(一)委員 通達について局長としての弁解、これは弁解として私は聞き流しておきます。私どもの判断では大臣の御趣旨が完全に徹底するような通達では明らかになかったと思うのです。ですから大臣のおっしゃった御趣旨に従って新しい通達を即刻出していただくことが、職安局長として大臣指示に忠実で、補佐をする任務に忠実だということになろうと思う。表現は不十分である、不足であるという表現をなさったことは聞き流しておきますけれども、とにかくそういう通達が間違っているか、またそれに対する認識が間違っているかはとにかくとして、現実大臣の御趣旨と違ったことが現場において行なわれておりますので、大臣の御趣旨が徹底するような通達を即刻出していただくことをはっきりとお約束をいただきたいと思います。
  99. 有馬元治

    有馬政府委員 通達の表現の問題というよりは、通達を具体的な問題に適用する場合の運用の問題が相当あろうと思います。したがって、現地の事情、特に先ほどから御指摘のあった夕張地区というのは、全国でもいろいろな条件が一番悪いところでございますので、こういった実情はよく加味して運用で解決をしてまいりたいと思っております。
  100. 八木一男

    八木(一)委員 夕張はもちろんそういう事実があらわれているのですが、そういう事実はほかにもあらわれていると思います。またこれからあらわれても、法の精神で大臣理解し、指示しておられる方針と間違って、いたずらに失業者がこのことで困るということになったら、これは職安局長としての任務の関係上重大なことだろうと思う。このようなことは夕張だけではない。全国的にすでに起こっているかもしれないし、これから起こる。すでに大臣の御趣旨に合わないことが夕張で行なわれているわけでございますから、ほかでは一切起こらないように、大臣の言われた親切な御趣旨が末端に浸透するような指示、そのような通達を即時出される責任があると思う。そういう通達を短時間のうち、少なくとも一週間以内に出していただかなければ大臣のほんとうの御趣旨に合わないと思う。有馬さんはそれを出される責任があると思う。その出される責任を局長として果たされなければいけない。新しい通達を出されるかどうか、それについてはっきりと伺いたいのです。
  101. 有馬元治

    有馬政府委員 先ほどから答弁申し上げておりますとおり、大臣の御意図とわれわれの通達の趣旨が食い違っているということは基本的にないと思います。通達を出すか出さぬかということは、具体的な運用の場面について、通達でもって処置することもありましょうし、全国会議でもって指示することもありましょうし、これは具体的な事例によって、われわれの普通の行政措置によってできるだけ早い機会に改善すべきところは改善してまいりたいと思いますし、それからいままで不十分であったところは現地の実情に沿ったような運用の改作をはかってまいりたい。通達を出す出さぬという形式だけではなくて、そういう趣旨でいろいろな形で運用の改善をはかってまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  102. 八木一男

    八木(一)委員 実は法律とか政令とか規則、その次に通達というものに対して、末端の官庁ではそれに従わなければならないという気持ちを持って末端の行政に当たっている人がやっておられるわけです。すでに法律はちゃんとしている。法律の解釈としての最高判断、提出者である大橋労働大臣の御意思ははっきりしているわけです。それでその通達がすでに出されていることによって——そういう事実がないというなら幾らでも申し上げますけれども、その法律の精神、大臣の御趣旨と違った現象が起こっているわけです。ですから、その通達が表現が間違っているか、あるいはその人がしっかり見なければ表現を間違って解釈するかという状態があることは確かです。ですから、通達を出したものを出し直すと、有馬局長のメンツにかかわるというような問題ではないわけです。大臣の御趣旨のとおりに問題がいかないような、不十分か間違ったか、どちらかわかりませんが、不十分か間違ったか、現地の方がそういうことについてほんとうに白紙で判断をしないで、別のほうで職安局の気持ちを体して、失対事業の全日自労の運動に対して、緊張してそれに当たらなければならないのではないかというような判断があるから、そういうものとからみ合わせて、局長の腹はここにあると思って、それをこういうふうに解釈したほうがいいという判断もあるかもしれません。そういうこと全部をなべて大臣の御趣旨と違うことが現場で行なわれている。行なわれているもとは、間違っているか不十分であるか、そういうことになっている。その間違いを一日も早く、夕張だけではなしに、全国的に正すためには、通達に対しては新しい通達、補充とか補完とかいわれましたけれども、補充とか補完という意味でも何でも、いま大橋労働大臣の言われた趣旨が末端にすなおに、こうは言っているけれども裏はそうじゃないというような判断がないように、すなおにはっきりとそのままわかるような、そういう通達を出すことが一番いいわけです。全国の担当者の会議が、たとえばあしたあるというならば、そういう方法でもということは、私どもも是認をいたしましょう。いつあるかわからない、そういうもので通達を出すことのみに限らないというような御答弁では、通達を出したことについてのメンツがあるから、なるだけ通達は出したくないというような感じを受けるわけです。ですから、すなおに通達に対してはさらに新しい通達、労働大臣の御趣旨がほんとうに浸透するようなりっぱな通達を出す、前との関連については、前はここは不十分だからとおっしゃってもけっこうです。とにかくメンツがあるならば、メンツのつじつまを合わせていただいてもけっこうですが、その労働大臣の御趣旨が完全に末端の担当者である方々に誤解なくわかるようにしていただく必要があろうと思う。そういう意味の通達を急速に、少なくとも一週間以内くらいに出していただく必要があろうと思う。それについての有馬局長の御答弁をいただきたい。
  103. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来、政府の方針が末端の職業安定所において曲げて運用されておる、この点については、当局の通達に欠けた点があるのではないかというお話でございますが、通達につきましては私も一応目を通しておるわけでございまするが、現実にそれが末端へいった場合において、誤った運用が行なわれておるといたしますと、これは単に職業安定局長だけの責任ではなく、労働大臣をも含めまして、労働省全体の責任でございまするので、至急に局長ともよく打ち合わせをいたし、現地の実情等をも確かめまして、労働省として責任ある処置をとりたいと存じまするので、この善後処置につきましてはしばらくおまかせをいただければたいへんしあわせに存じます。
  104. 八木一男

    八木(一)委員 具体的な方法については一番いい方法をとっていただく。しばらくとおっしゃっていただいたのは、急速にやっていただく期間がしばらくという意味と理解しておきたいと思います。それでよろしゅうございますか。
  105. 大橋武夫

    大橋国務大臣 どうぞさように……。
  106. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、一般的ないろいろな就職促進措置その他について、失業者という認定の問題について伺っておきたいと思います。  失業者認定の問題で、家庭の主婦等に関して労働省の通達で、「従来から家庭の主婦等の家事担当者であった者については、新たに生計担当者の死亡、失業等、家計の維持上重大な変化が生じ、かつ、家事労働について代替者を得ることができる等の事情が明らかなため、通常の雇用労働に就くことが必要かつ可能であることを要する。」という、職安局長の七七五号の通達があるわけです。これを一生懸命よく考えてみますと、先ほども少しこれに類似したことに触れましたけれども、行き過ぎであるように思う。というのは、失業者というものは労働の意思と能力を有し、それから通常の雇用労働につくという、そういうことたといいわけでございまするが、そこに「生計担当者の死亡、失業等、家計の維持上重大な変化が免じ、」というようなことは、これはその重大な変化によってがくんと収入が減るというような特別的な例を定めているのであって、失業者というのは就業の意思と能力があって、それからもう一つ、いま生活上の問題はほんとうは考える必要はないけれども、政府のほうでは考えておられるようですが、一般的に所得税を納めることができない家庭状況とか、そこまででとどめておくことが至当であって、その原因が何であるかということを指示されることによって失業者認定が狭まり、したがって失業者に対する就職促進措置、あるいはまた多発地帯、あるいはその措置が済んだあとの失対事業に紹介する措置が制限をされ過ぎることになろうと思う。生計担当者が死亡しようが、失業しようが、そういうことと関係なしに非常に家計が苦しい、本人が働きたい、働く意思があるという場合には、当然失業者に入るべきだというふうに解釈をしておるわけであります。労働大臣のそれに対するお考えを伺っておきたいと思います。
  107. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ここに掲げられておりまする趣旨は、現実に家事に常習的に従事しておる者は、家庭外の労働について継続的に収入をあげるということは事実上不可能な場合が多いわけであります。したがって、実際は働きに出られない者が、自分も働きに出ますということによって失業者として登録されることのないようにしよう、こういう趣旨でございまするから、現実にその家庭における本人の地位あるいは現実の生活状態、そういうものに即応して認定するのが必然だと思うのでございまして、ただ抽象的にこれこれだからこの者は認定すべきだ、あるいは認定すべからずというふうに、字句に拘泥して認定を二、三にすることは、かえって実情にそぐわないきらいがありはしないか、かように存ずる次第でございます。
  108. 八木一男

    八木(一)委員 労働大臣の御答弁は明快だと思うのです。就職の意思と能力があって、生活上働きに出たい、ほんとうにそういう者であれば、それが仮定であろうがなかろうが、これは失業者として扱って就職促進措置なり、あるいはさっき言った多発地帯なり、促進措置が終わったときの失対事業を紹介するところに入らせなければいけないと思う。ただし労働大臣のおっしゃったように、それがほんとうはそういう気持ちがないというときには困るというお話であろうと思うのです。ところがどんな制度でも、一万人に一人ぐらいは法の裏をかいて何とかしたいという者があったり、逆選択があったり、すべての制度にそういうことがございます。しかし、法は、ほんとうにまともにその法の適用を受けたいという善良なる国民がいたずらに疎外されないような運用をされなければいけないと思う。一万人に一人ぐらいの、働く気はないけれども手当だけ取ってやろうというような者を防ごうとして、残りの九千九百九十九人の、どうしても働かなければ生活が困難である、自分は働きたい、働く能力を持っているという人を、ただその人が家庭の奥さんであるとか、あるいはまただんなさんがいきなりぽっくりと死んだとか、そういうような特別な事情がないからといって排除したならば、これは法の趣旨と合わない。具体的にそういう者があるかもしれないということを、こういうふうに指示に書くことによって、そういうようなほんとうに善意であって、失業者としての措置をとってもらわなければ救われないという人たちが救われないということになろうと思う。前に言っているように、ほんとうに働く意思がある、能力がある、それから生活が困難であるということだけあれば、その条件からはずれた者ははずせばいいのであって、そこにこういうような例示をあげるということは、たとえばだんなさんが死亡ということがなくても、その人がからだが弱くなったということで前よりも生活が困難になることもある。失業ということがなくても、賃下げとかそういうようなことで困難になることがある。それから家庭の事情、重大な変化と称していますが、重大なというようなことはみんなさじかげんで、どっちが重大なのか重大でないかということがごしゃごしゃします。そういうものは一切必要ないのであって、本人が働く意思があり、能力があり、働かなければ生活が苦しいという条件があった場合には、これは失業者として認定して、失業者に対する措置をとっていただく。そうしてほんとうに働かない者については、そういう場合に具体的に措置をとってやられればいい問題ではないか。こういう例示をあげるために困ることがある。たとえば、だんなさんがそのままでも子どもが止まれたから家計が苦しくなって、働いていかなければならないという条件も出る。しかもだんなさんが就職していたって、それが三千円の賃金であれば奥さんも働かなければ食えないということがあるわけです。そういうことがあるのに、こういう例示をすることによって、失業者としての認定から排除して、ほんとうに失業者のために立てた対策が実際に動かない。私ども極端にひがんで解釈すれば、そういう法律はつくったけれども、実際に十分動かさないつもりでやっているというふうにすら解釈できるような、こういう具体的な項目はやめにして、働く意思があり、能力がある、それで生活が困難だ、——生活の困難な判定として、所得税の納税基準というものは取っ払ってもいいと思う。いまほかでそうやっておられるならば、労働省はそれを驚いておかれてもまあしかたがないと思うけれども、ほかの、死んだとか失業とかいうような条項をはずさないと、失業者に対する対策を受ける必要がある、受けたいと熱望している善意の人がはねられてしまうおそれがあろうと思う。こういうようなことをひとつ取り除いて、ほんとうの意味の失対二法の運用をしていただきたいというふうにお願いをしたいわけですが、労働大臣の御意見を伺いたい。
  109. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いわゆる失業適格者の認定というものは、失業対策事業遂行におきましては非常に大切なことでございまして、お話しのとおり、ほんとうに働きに出なければならない人、その人の就業を妨げるようなことがあってはならないと思うのでございます。と同時に、失業家庭のための対策というのは失業対策事業だけではないのでございます。実情によりましては生活保護その他の方策もあり得るわけでございまして、それぞれの家庭の事情に応じましてそれぞれ適当な方途が選択実施されるものと思うのでございます。従来からの経験に徴しまして、大体失業者認定につきましては、何と申しましても、本人が働きに出たいと言いましても、実際上出られるか出られないか、家庭の事情が相当支配するものでございますから、それについては、社会常識から見て、この人は働きに出るべき人だとか、あるいはこの人は働く意思もあり、また能力もあるけれども、家庭の事情上どうも働きに出るのは無理だろうというふうに見るべきか、これは結局のところは社会常識によって認定し決定さるべき問題だと思うのでございます。そういう意味で、この項におきましては、一般社会通念から見て必要労働力と認められる者は失業者認定はしない、こういう趣旨でございまするから、このことは的確に正しい観念をとらえていると思うのであります。その余の事柄はそれについての解説的な説明でございます。これもお話しのように、あるいは字句の末節に拘泥して、形式的に解釈をして、ことさらに労働力のある者を労働力なしと認定するがごときことがありましたならば、それはこの趣旨を誤るものでございます。そういうことのないように十分注意をいたしてまいりたいと存じます。
  110. 八木一男

    八木(一)委員 労働大百は生活保護のことにお触れになりましたけれども、これは国政全体としても、特に労働省を担当しておられる大橋さんとしても、生活保護ということは一番どうにもならないときの話であって、国家全体の政策としても、特にその中の労働政策としては、働きたい人が働いて収入を得て生計を維持したいということを最大限度に助長するということが政府の施策でなければならないし、その中で労働省が一番熱心におやりにならなければならない問題ではないかと思うのです。そういう意味で生活保護ということはほんとうにどうにもならなかったときの話で、それは抜きにして、失業者に対する労働省の対処によって、生活保護ということではなしに暮らしていけるということを急速に拡大していただかなければいけないのじゃないかと思います。これは御答弁を請求しなくても、いま労働大臣が軽く首を縦に振っておられたので、そういう御趣旨じゃないかと思います。違いましたらまたあれですが、私はそういう気持ちで言っておられると思ってやりたいと思います。  そこでこういうような例示がありますと、——いま社会通念」ということを言われました。一応いいように思いますが、社会通念ということは非常にばく然としていますので、失業者という、非常に困って国家の失業に対する施策を要望しているような、非常に運が悪いために困難になった人、そういう人から見れば、失業に対する対策の対象者としてもらいたいという気持ちがあります。もしかりに、大橋さんはそういう気持らでなくても、現場の職安人たちの社会通念が一人一人——社会通念というのは普通客観的でなければいけないものですが、一人一人人間が違って認識が違うので、特に予算の問題とかなんとかいう問題があったり、それからまた一万人を救おうとして一人がそこにもぐり込んでもいいという考え方に立つというのが政治の本領でございますけれども、人によっては、三人の法を悪用する人を防ぐために九千九百九十七人が迷惑してもかまわないというようなやり方をしている人もなきにしもあらずです。ですから社会通念ということは、ほんとうに運用されればそれでもかまわないと思いますが、ほんとうには運用されないことが多いわけです。そういう意味で、そういう間違いが生じないようにいろいろな文言をやっていただきたいのであります。それで、いま労働大臣の御意見によれば、本人が死亡しなければできないというようなお考え方ですが、そんなことはない。これは病気のときにも困る。病気でなくて、同じように健康でも、本人の御主人のほうが三千円なり五千円であるとか、中小企業でそこがつぶれかかって賃金のストップがあるとか、いろいろなことがあって、生きていても、病気がなくても失業しなくても兵かせぎをしなければ生活が保てないというような、いろいろな状況があるわけです。  それから本人が働けるか働けないかという問題ですが、たとえば、前は家庭の主婦としてやったといっても、それから子供が大きくなっている。子供がある程度家計を維持する。あるいはまた、例をあげると問題が限定されるからかえって悪いのですが、例をあげたほうが言いやすいのでちょっと例をあげます。これだけじゃなくて同じような例がほかにもたくさんあると思いますが、たとえば、家に病人がいたけれども、病人が少しよくなったということで家庭労働をしなくても済む、しかも非常に貧困で困っているという場合に、一月前まではできなかったけれども、これから後はずっと働きに出て積極的に仕事をして、家庭を明るくしたいという状況があるわけです。それをかってに片方が病気がなおっていないとか、片方は主人が死んだとか、失業していないからというようなことで冷たい判断をされて、当然そういうことで失業者としての対象にすべき者が排除される危険性が非常に多いと思う。このような項目はあって無害なものだ。労働の能力があり、意思があり、それからある程度以下の生活であるということだけで、ほんとうに労働大臣の御心配になるような法を逆用しようとする者があるならばその項目だけで防げるわけです。これは一万人に一人の問題です。それでその項目だけにすることによって、ほんとうに失業者としての対象にある人がはずれることがなくなるわけです。この例示が非常に問題だと思う。この例示というのは人間が観念的に考えるのですから、どんなこともすべて表現するということはできませんし、また著しいという表現はどこが著しいの境かということもわかりませんから、こういう例示はあって役に立つところは一つもなくて、害のあるほうが多いわけです。でありますから、この例示を取っていただきたいということが必要であろうと思います。そういう点について、労働大臣のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  111. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもといたしましては、失業者として働きに出る意思を有し能力を有しておるだけでは不十分なのであって、現実に家庭の事情等から見ても働きに出られる状態にある人であるという認定をしなければならないと思うのでございます。なぜそういうふうにするかと申しますると、御承知のように失対事業は、理想から申しますると、いやしくも失業者がある限りすべての失業者が安心して完全に就業できるだけの規模を持っておることが望ましいのでございますが、現実には国及び地方公共団体の財政の事情または地元のいろいろな事情等からいたしまして、御承知のように決して失対事業のワクというものは十分とはいえないわけであります。したがって、現実に働きに出られない人がそこのワクの中に入り込むことによって、より失業者として取り扱わなければならない人がそれだけはみ出すという結果にもなりまするし、また失業対策事業の運営の計画からいいましても、就労日が全体的に低下するというようなこともありまして、一人二人の例外的な方々にあまり力を入れることによって、かえって大ぜいの失業者に不満足を与えるということも、やはり事業施行者としては考えなければなりませんし、したがって職業安定所といたしましても、そうした点も考えなければならないと思うのでございます。こういう意味から申しまして、ただいまのところはやはり一般社会通念から見て、ほんとうに働きに出られるというような状態にあるという条件入れておくことが必要かと存じまするが、しかしこれの運用につきましてはいろいろ実情にそぐわざる点もあるやに承りました。そういう点は十分に是正をしてまいりたいと思います。
  112. 八木一男

    八木(一)委員 いまおっしゃった実際の予算その他の面についてのお話は、私としては賛成ができません。そういう点で失業者を、いました人も新しい人も全部対処できるようにやっていただく必要があろうかと思います。しかしそれと別に、いま労働大臣が最後におっしゃったことで、実際に働く意思があり能力があり、ずっと働くという状態の人を締め出す気持ちはないということは非常にけっこうだと思います。ですからここに書いてあるこういうような例示によって、ほんとうに働く意思がある、能力がある人が締め出されるおそれがありますので、この例示を取っていただくように御努力を願いたいと同時に、さらに現場でいますぐの問題として、ここに例示をしておるような者、たとえば夫が死亡したとか失業したとかして家計の維持に重大な変更があるというようなものにかかわらず、労働の意思がある、能力がある、それからずっとできるというような者は、これは失業者として認定して就職促進措置、またもう一つ多発地帯のその措置が済んだ者については失対事業に紹介するのだというようなことを末端まで周知徹底して、ぜひ労働大臣の御意思が浸透するように即刻にやっていただきたいと思うわけです。これについての労働大臣の御意見を伺いたい。
  113. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来私が申し上げました趣旨は、よく末端まで浸透するように適切な措置を講じたいということであります。
  114. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十七日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会