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1964-06-09 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月九日(火曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       伊東 正義君    浦野 幸男君       大坪 保雄君    川崎 秀二君       熊谷 義雄君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       松山千惠子君    粟山  秀君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         労働政務次官  藏内 修治君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 六月五日  委員松山千惠子君及び八木一男辞任につき、  その補欠として福田繁芳君及び山崎始男君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員福田繁芳君及び山崎始男辞任につき、そ  の補欠として松山千惠子君及び八木一男君が議  長の指命で委員に選任された。 同月九日  委員藤本孝雄辞任につき、その補欠として川  崎秀二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として藤  本孝雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月六日  所沢基地労務者人員整理対策に関する陳情書  (第四九四号)  国有林労働者差別待遇撤廃等に関する陳情書  (第  五三二号)  同外三十一件  (第五三三号)  上水道事業に対する国の財政措置強化に関する  陳情書  (第五三四号)  し尿処理施設に対する財政援助強化に関する陳  情書  (第五三五号)  あん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法  の改正に関する陳情書  (第五三六号)  同  (第五三七号)  全国一律最低賃金制法制化に関する陳情書  (第五三八号)  同(第五三九  号)  同(第五四〇  号)  同(第五四一  号)  同(第五四二号)  同  (第六六一号)  同  (第七二九号)  原子爆弾被害者援護法早期制定等に関する陳  情書(第五四三  号)  同(第五四四号)  同(第五四五号)  同(第五四六  号)  同(第五四七  号)  同(  第五四八号)  同(第五四九号)  同(第六五四  号)  同(第六五五  号)  同(第六五六  号)  同  (第六五七号)  同(第  六五八号)  同(  第六五九号)  同(  第六六〇号)  社会保障制度充実強化に関する陳情書  (第五五〇号)  生活環境施設整備充実に関する陳情書  (第五五一号)  厚生年金会館の設置に関する陳情書  (第五五二号)  駐留軍従業員雇用安定等に関する陳情書  (第五五三号)  国民年金事務費国庫負担金増額に関する陳情  書(第五五四号)  国民健康保険事業事務費国庫負担金増額に関  する陳情書(第五  五五号)  国民健康保険事業国庫負担額増額に関する陳  情書(第五五六  号)  同  (第五五七号)  同(第  六六二号)  重度身体障害者の救済に関する陳情書  (第五五八号)  生活保護費支給基準引き上げに関する陳情書  (第六四九号)  国立療養所用途変更に対する事前協議に関す  る陳情書  (第六五〇号)  療術師営業法制定反対に関する陳情書  (第六五一号)  同  (第六五二号)  駐留軍従業員の雇用安定に関する陳情書  (第六五三  号)  理学療法士及び作業療法士法制化等に関する  陳情書  (第六九九号)  公衆浴場営業用上水道及び下水道料金減免に関  する陳情書  (第七二八号)  医療費緊急是正答申即時実施に関する陳情書  (第七三〇  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働災害防止に関する法律案内閣提出第六  号)      ――――◇―――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働災害防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 労働災害防止に関する法律案を、前回時間がなくて途中までで終わっておりましたので、きょう簡単に二、三点お尋ねいたしたいのです。それは五十四条に関連をする点でございますが、「政府は、労働災害防止団体に対して、労働者災害補償保険特別会計予算の範囲内において、その業務に要する費用の一部を補助することができる。」こうなっておるわけです。この五十四条で、今回のこの法律によって生まれる協会補助金を出すことになるわけでしょうが、この予算書を見てみますと、労働災害防止対策費として今年は一億八百四十一万二千円あるわけです。それから労働災害防止対策費交付金三億四千万円あるわけですね。この両者関係労働災害防止対策費というのと、労働災害防止対策費交付金二つ項目があるわけです。保険施設費八億八千九百八十七万円の中にこういう二つ項目があるわけであります。この関係両者とも協会関係があるのか、それとも交付金だけが協会関係があって、防止対策費のほうは全然関係がなくて、これは行政のほうで使うことになるのか、どういうことになるのですか。
  4. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働災害防止対策費交付金三億四千万円が、労働災害防止協会に対して交付される金額でございます。その内訳は、中央協会に対して一億円、業種別協会に対しまして二億四千万円交付されるということに予定されております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その対策費というのはどういうことなんですか。
  6. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働災害防止対策費のほうは、たとえば労働災害についての特殊研究を行ないますための研究費であるとか、そういった直接行政活動と結びついた経費ということでございまして、協会に支出する金ではないわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、昨年三十七年度予算で一億五千万円の交付金予算として載っているわけです。これは法律が通っていなかったのでどういうことになったのですか。この予算は繰り越しになってしまったのか、それとも大蔵省に返還することになったのか。
  8. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 繰り越すことなく不用になったわけでございます。大蔵省に返還する、こういうことでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、今度中央協会に一億円、業種別協会に二億四千万円のお金を労災特別会計から出すことになったわけですが、問題は、私がきょうお尋ねをいたしたいのは、そういうように事業主団体労災特別会計からお出しになる金があるとするならば、労災はまず防止が第一だと思う。防止に努力をしたけれどもうまくいかなかった場合に、災害最小限度に起こってくる。最小限度に起こった場合に、その災害補償労災特別会計でやることになる。したがって、予防が第一であることはわかるわけです。しかし、すでに予防をしたにもかかわらず、相当の労働災害が起こっておることは冷厳な現実の事実です。そうしますと、起こった災害に対して、一体現実にうまくその処理がいっておるかどうかということでございます。御承知のとおり、昭和三十五年の四月であったと思いますが、じん肺法予防健康管理だ、それから起こったものについては、そういう脊椎骨折とかじん肺の重症なものとかいうようなものは、これは長期治療を要するので、じん肺法予防健康管理中心法律にして、そして長期のそういう補償については労災法の中に長期補償制度を取り入れよう、しかしこれは暫定措置でございましたが、こういうことで三十五年の四月に法律が発足したわけです。その後、たぶんあの法律の中に、社会保証に関する制度全般調整機会においてこれらの長期のものは暫定的なものなんだから恒久的に検討をしてやるのだということを、附則か付かに書いたような記憶があるのです。こういうように予防のために労災保険特別会計から三億四千万円の金を使うならば、まず現実じん肺なりけい肺なり脊椎骨折で悩んでいる人たち対策というものも、同時にこれは方針を立てなければいかぬわけです。すでに法律に規定しているわけですから。その方針が出ていないですね。これに対する対策というものを一体あなた方はどうするのかということです。御承知のとおり昭和三十七年八月に社会保障制度総合調整に関する答申と勧告が出ているわけです。これにおいても明らかに、労災についても総合調整をやりなさいという意見を出しているわけでしょう。ところがそういうものについては、三十七年の八月ですからもう三十八、三十九と二年にもなるのだけれども、それについては何もされていない。こういうように予防も大事だけれども、現実に起こっている労災保険自身の運営を一体どう考えるのか。長期給付対策を一体どうするのか。物価池田さんが四年前に天下を取ったとき以来三割以上も上がって、なお依然として上がる情勢は濃厚でしょう。いま池田内閣が一番困っているのは消費者物価の安定を一体どうするか、国際収支の均衡をどうとるか、労働力不足をどう一体カバーしていくかという三つが大きな問題点であるということは経済企画庁長官の言っているとおりです。そうしますと、労働力の順当な回復をはかっていくための、この労災というものに一つ方針を出す必要があると思う。労災防止対策を講ずるとともに、現実労災を受けた人の対策もあわせて出す必要があると思うのです。それに対する政府見解をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  10. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のように、わが国の労働災害補償制度につきましては、さらに改善向上するという余地があるわけでございまして、今後におきますところの労災保険制度をどうするかという全般の問題につきましては、昨年十二月に労災保険審議会に諮問をいたしまして継続審議をお願いしておりまして、われわれといたしましては八月ごろまでに審議会答申をお願いしているところでございます。そこで、こういう協会に対する交付金よりも災害補償内容そのものをさらに充実すべきではないかという御指摘の点につきましては、労働省といたしましても、ごもっともであると考えておるところでございまして、ただいま申しましたように、給付内容改善につきまして検討をわずらわしておるところでございます。また、昭和三十五年の労災保険法改正に際しましても、附則第十七条で、国庫負担等の問題について「社会保障に関する制度全般調整機会において検討するものとし、」という一項目が規定されておるわけでございまして、内容としましては、国庫負担金をどうするか、つまり三十五年の改正の際には、従来ございましたけい肺等特別保護法国庫負担金を大体従来のような形において新しい労災保険法に採用いたしましたので、それを今後どうするかという問題が一つございますのと、厚生年金その他地の保険との調整問題がございまして、それをどうするかという二つの問題があるわけでございます。社会保障全般調整検討をするという場合の検討事項はその二つ中心にして行なわれるものと考えておるわけでございますが、それらの点につきましても、現在労災保険審議会におきまして種々検討をわずらわしておるところでございます。近い機会答申が出ますことを期待しておる次第でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 私が言いたいのは、そういういま言った社会保障制度審議会答申、勧告なり、附則十七条で規定したようなことをあなた方が一生懸命にやってもらうことはもちろんです。同時に、そういう長期の見通しに立った立法の処置とともに、現実昭和三十五年当時に発足をした労災法の中における長期給付が、三十五年のときからいまの現実状態を比べてごらんなさい、非常に物価が上がっておるでしょう。当時のままで、たとえば傷病給付状態を見ても、第一種傷病給付だったら一年に二百四十日、第二種の傷病給付でも一年に二百日でしょう。当時の安い賃金基礎にして、こういう形でもらっておれば、この人たちは食っていけないわけです。あるいは十分な治療もできないわけです。それをそのまま放置しておるところに問題があるわけです。しかも、有効的確なスライド制もないわけですから。だから、池田さんが天下をおとりになって四年間になるのに、物価は三割以上も上がっておる。なお、さいぜん私が指摘申し上げたように、なお上がる情勢にある。そういう中でこういうものを、二百四十日、二百日をそのままにしておいたのではたいへんだから、何か臨機応変の措置を講じてやらなければなりませんよ。同時に、長期のものに対する対策というものを、たとえば、いま、ことしの八月と言ったが、当然これは次の通常国会には労災法抜本改正を出すのだ、こういうことになるわけでしょうね。だから私の言いたいのは、まず当面すぐこれらの困っておる人たちに応急の対策を講じてもらいたい。長期のものはひとつ次の通常国会に出すのか出さぬのか、こういうことの答弁を求めたいわけです。
  12. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 じん肺患者でありますとか、せき損患者長期療養を行なっております者につきましては、特にそのような疾病発生時点における賃金の問題とも関連いたしまして補償額が低いじゃないかという問題が従来ともあったわけでございます。その点につきましては今日まで大体三つの点からいわば補正措置を行なってきたわけでございます。  第一点は、平均賃金の額をできるだけ実情に合うように調整するということでございます。この点につきましては、百三十三名のじん肺患者に対しまして平均賃金是正を行なったところであります。  それから第二の点は、長期傷病補償を行なうにいたしましても、金額そのものが低いじゃないか、それでは療養に十分でないという者に対しましては、その実情にかんがみまして、それぞれ通院の場合と入院の場合に分けまして、はなはだしい不足分労災保険保険施設費をもって補てんするという制度を考えておるわけでございます。すなわち、通院療養援護金という制度及び入院療養援護金という制度がそれでございまして、ただいま御指摘のような経済的諸情勢の変化、それから従来の平均賃金が低いといったような点から考えまして、療養生活に無理があるという面につきましては、保険施設費のほうからただいま申しました援護金を支給いたしまして是正措置を行なっておる次第でございます。しかし、今後におきましてなおこのような問題が継続すると思いますので、現状としても御指摘のような点について補正措置はやっておるのでございますが、今後さらに抜本的にどうするかという点について審議会で御検討願うと同時に、結論を得ましたならば、労災保険法改正法案を次の通常国会に提出したいという考えを持っておるわけでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 いま三点と言って二点だけ答えられた。平均賃金の額の調整長期傷病者補償補正という二点で、入院通院療養援護費を出す、もう一点何かあれば言ってみてください。
  14. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 通院援護入院援護二つ合わせて申し上げたのですが、さらにつけ加えさせていただきますともう一点あるわけでございます。  それは、先生御承知のように、賃金上昇等に伴いまして長期療養補償しておりますと、ずいぶん古い昔の、平均賃金基礎にして計算するということによって非常なズレが生ずるわけでございます。この点については御承知のようにスライド制を採用いたしておりまして、現在においても療養開始時点からその後におきますところの賃金上昇に見合ったスライド制を行なっておるわけでありますが、このスライド制につきましてもさらに改善するように、もっとスライド率を低下いたしまして、賃金額上昇に敏感に反応するようなスライド制に変えてもらいたい、こういう意見もありますので、そのスライド制のあり方につきましても労災保険審議会で御検討いただいておるような次第であります。
  15. 滝井義高

    滝井委員 池田内閣賃金を押えておるので、賃金上昇で、あれは二〇%のワクだったと思いますが、なかなかひっかからないのです。だから一〇%くらいにしてくれという要望も非常に強いわけです。いまのようなことはもう三十九年度から実施しておるのですか、それともこれからやろうということなんですか。いま通院療養援護費とか入院療養援護費というようなものを補てんしたいというようなことばだったと思うのですが、現在やっておるということではなかったようです。したがって、いまのようなことではちょっと歯切れが悪い。しかも保険施設費でしょう。こういうことは私は気に食わないのです。いま労災の問題をやり出したら限りがないし、十一時までにやめなければならぬのであれですけれども、これは非常に問題のあるところです。そこで来年の国会労災補償を抜本的におやりになるが、その前にとりあえず、その法律の成立する前に、二百日とか二百四十日をもらって長期療養をやっている労災患者に対しては、ぜひひとつ何らか的確な行政上の措置を講じていただく、そしていまのようなことは、説明すると時間がなくなりますから、あと資料で見せてもらいたいと思います。それで、ただあなた方が、今年度からこういう長期療養をしておる労災患者の困っておる者についても行政でできるだけの援護措置を講ずるという言明をまずしておいてもらえばそれでいいです。具体的なものはあとで聞きます。今度やるかどうか。
  16. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 行政措置によりましてできるだけの援護措置を講じたいと思います。資料は後ほどまた……。
  17. 滝井義高

    滝井委員 次は、ほんとう救急医療のことを尋ねたいが、時間がないから予算だけに触れていきます。  私が問題にしたいのは、ことしの労災予算を見ると九百三十三億円の予算総額なんですね。九百三十三億の予算の中で、一体国庫はこれに幾ら入れておるかということです。じん肺等長期傷病者補償の十一億あまりだけではないかと思うのですが、ほかに何か入れておるのがありますか。
  18. 石黒拓爾

    石黒政府委員 労災保険のうち、国庫負担しておりますのは、御指摘の十一億、長期給付に対するものであります。
  19. 滝井義高

    滝井委員 お聞きのとおり、わずかに十一億ですね。そして今度は歳出を見ると、いまのようにこの金は事業主が出した金だから、本来は労働者のものになるものなんですね。災害を受けた労働者に全部給付するものなんです。ところが、ここはほんとう大蔵省に来てもらってやらなければいかぬところだけれども、歳出のほうを見ますと、まず業務の取り扱いのために三十七億の金を使っている。ほんとうは、これは法律にはないですけれども、社会保険における事務費というものは全額国庫負担をやるというのがたてまえなんですね。そうすると、私は労災も広義の社会保険だと思うのです。こういうものを労災に一文も国庫から出さずに——九百三十三億の中で長期給付だけにわずか十一億の金しか入れてないのですよ。しかも一千万をこえる労働者災害補償する国の重要な労災防止と関連ある政策の立法でしょう。それが業務費の三十七億というものをこの労働者給付改善に使わなければならぬものから出している。さらに四億の庁舎等新築費営繕費を出すでしょう。公務員宿舎までは私は目をつぶりたいと思う。これは国設宿舎の新営費ということで九千九百十一万八千円、ここまでは私は目をつぶりたいと思うけれども、労働基準監督署庁舎を建てる金を、この労災保険料としてちょうだいした金でやるというのも権威がない話だと思うのですよ。こういうことをやるから事業主に頭があがらぬことになってしまう。おれらの金でおまえらの住んでいる庁舎を建ててやったんだ、こう言われたら二の句が継げませんよ。そして私がもうちょっと気に食わぬのは、保険施設費で今度は長期労働患者の暫定的な改善をやらなければならぬというのもおかしなものですよ。これはよく器具や機材が人件費に化けるということをいうことがあるけれども、施設費患者補償費に化けるということもおかしなことだと思う。労働省としては権威がなさ過ぎる。それならば、暫定的にそういうのをつくってやらなければならぬ。それから労働福祉事業団出資ですね。こういうところへ出資するでしょう。こういう金は私は当然国庫が持つべきものだと思うのです。それをこういう労働福祉事業団出資から、庁舎を建てる金から、事務費から、全部この労災の金でまかなうということは、私はそれだけ労働者給付改善が停滞をし、後退をしているといわざるを得ないのです。だからこういう点はもう少し一ほんとうはきょうは大蔵省に来てもらって、少しやかましく言わなければならぬところだけれども、時間がないから、問題点はそういうところがある、これをあなた方はやはり改善してもらわなければいかぬと思うのです。したがって、この労災法自身が不備です。私この法律をずっと見てみましたが、四章の費用負担を見ると、事務費等はこれを負担するとなっていないのですね。いつか一ぺん指摘したことがあるのだけれども、きょうで二度目ですが、失業保険なんかだって事務費負担することになっておって、労働省はやらないんだから……。これはあなたのほうは厚生省を見習わなければならぬ。法律の出し方は厚生省労働省を見習えばいい。労働省は懇切丁寧に逐条的にかゆいところに手が届くような出し方をするけれども、その点は厚生省は見習わなければならぬ。しかし、社会保険関係事務費をとることについては、厚生省は大体とっている。あなたのほうはとっておらぬ。特に労災においては法律においてさえ書いておらない、こういう点ではぜひひとつ書いてもらいたい。そして事務費は当然国庫からもらう。それからいわゆる事業主の無過失賠償責任論をとっているわけですから、したがって、事業主責任でない部分については、国が国庫負担を出してくれ。だから庁舎を建てる分とか、そういう長期のものとか、あるいは出資金とかいうものは、国庫一般会計から入れさせなければ話にならぬでしょう。そういう点はむしろこの際、局長よりか藏内政務次官見解を伺っておいて、そうしてこれは来年度予算編成にもがんばってもらう。そうして労災のほうの改正にはそれだけのものを入れてもらいたい、入れなければわれわれは修正しますよ。ひとつはっきりしてください。
  20. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 非常に理論的な問題とも関連することですから、私から御答弁し申上げますが、御指摘内容の点は二つあると思います。一つ国庫負担をどうするかということ、一つ保険施設費に多額の支出をしているので、それが補償費のほうに圧迫を加えておるではないかということであろうと思います。  第一の国庫負担の議論につきましては、学問上争いのあるところであります。つまり使用者の無過失賠償責任に立脚するならば、それは使用者全額保険料負担すべきであるので、従来はそのたてまえが一貫して貫かれておったわけでありまして、失業保険とか社会保険とかとは違う労災保険制度特殊性はそこにあるわけでございます。そこで国庫負担を導入しろという場合に、労働者負担も考えたらどうかという議論を誘発するということになりますと、労働者災害補償制度の本質が転換する、こういう問題もありますので、便宜的に国が出したらよかろう、こういうことではならぬのでありまして、この点はさらに十分検討する必要があろうかと思います。ただ問題は、昭和三十五年労災保険法の現在の改正が行なわれました際にも非常に議論されたところであるのでありますが、長期傷病者給付については、従来のけい肺特別保護法令については国が見るべきだということで国庫負担制度が導入されたような次第でございまして、なおこれは便宜論ではなくして、災害補償制度の本質に触れる問題でございますから、十分検討さしていただきたいと思います。  第二の保険施設費予算を回す関係上、補償費が圧迫されるのじゃなかろうかという点については、これは全然そういうことはないのでありまして、保険料率を決定する際には、補償費保険施設費とを合算したものを含めまして保険料率を決定いたしておるのでありまして、保険施設費が相当部分ふえましても補償費を圧迫するということはないのでございます。これが御承知失業保険のように料率が法定されておりますと、そういうようなことが生ずるかもしれませんけれども、労災保険におきましては保険料率は法定されておらず、毎年毎年補償費施設費等の総額を見まして業種別保険料率が決定されておるのでございます。ことしもこれの検討をしておるわけでございまして、保険施設費がふえたから補償費が圧迫されるというようなことは労災では全然ないのであります。しかも過去の実績を見ますと、保険施設費等直接補償費以外のものは一五%程度を目標にしておったのでございますが、現在は過去の一五%という補償費以外の部分がさらに低下いたしまして、たしか二二%台であるわけであります。保険料率決定の基礎になります直接補償費以外の負担ワク一五%という線から見ましたならば、今後なお直接補償費以外のものはもっと増額してもいいという結論になるのでございまして、その点は他の社会保険保険料率決定の仕組みも違いますので、補償費が圧迫される云々というような懸念はないというふうに私どもは考えておる次第でございます。しかし、広い立場から先生御指摘のようないろいろな御議論があると思います。確かに傾聴すべき点もあると存じますので、審議会の審議決定の場におきましても、そういった点につきましても十分さらに御検討を願いたいと思います。
  21. 滝井義高

    滝井委員 無過失賠償責任の場合の責任論をとれば当然事業主が全額持つべきであるとわれわれは主張したけれども、政府自由民主党はそれを納得しなくて、そうして、そうじゃない、そこまで無限に事業主責任を持っていくとすれば、事業主がとても納得しないしだめですということで折れて、この十一億の金をここへ持ってくることにしたのはあなた方なんです。われわれは、むしろ全部事業主責任にして、死ぬまで見てくれという主張をしたわけです。そういう議論をすると、今度は労働者が金を出さなければならぬと言うけれども、鉱害関係はそんなことはない。鉱害賠償では無過失賠償責任論で鉱業権者と国庫負担をしている。たとえば、農地の復旧等でいえば国庫は六割ぐらい出すのではないか、四割は鉱権者負担です。無過失賠償の責任論でそうなんです。国土保全でこうです。人的資源を大事にする意味で、労災で当然これは出していいでしょう。炭鉱の場合はそういう議論がまかり通っているのに人間さまのほうにまかり通らぬというばかな話はないです。人間のほうが大事なんです。炭鉱のほうでそれが通って人間のほうでそれが出てこぬはずはない。頭を振るけれども、炭鉱の鉱害の場合は出ておる。これは同じく無過失賠償の責任論ですよ。それからメリットシステムをとっているから保健施設に出していいというけれども、それ以前にそれを二百日、二百四十日を大幅に引き上げてくれないかといってもなかなかやらないではないですか。  それから医療だって、労災医療についていま十円を十一円五十銭という制限をしているわけです。そうしてこれは自由診療の形で税金を取られている。こんなばかなことはない。普通の社会保険は二八%しか税金を取れない。ところが労災は自由診療で税務署の自由裁量でしょう。労働力の順当な再生産をはからなければならぬ労災医療にこそ社会保険よりもっと自由な非課税にして、早く治癒するような形にして自由な治療をさせてやらなければならぬ。ところが十円を一円ちょっとだけ上げて十一円五十銭にして、そうして税金がかかるでしょう。だから、労災診療というものは一般の社会保険診療より、医者というのは税金をよけい取られて負担が大きくなってきている。こういう形態ですよ。だから、そういう点は無過失賠償の責任の立場をとれば、石炭の鉱害における無過失賠償責任の場合より医療の面において後退している。社会保険医療より自由診療になってそれだけ税金をよけい取られて医者は不満がある、そういう形です。それならこれはあなた方が大蔵省と、折衝して二八%にできますか。
  22. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 単に税の面からだけではなくして、労災の医療費の支払いとも関連しておる問題でございますが、御承知のように保険法の場における問題と、労働基準法の場における問題があるわけです。考え方としては、保険者のほうが直接医療費というお金で払うか、直接医療をやってやるかという二つ制度が考えられる。使用者の場合も同様でございます。ですから、使用者が直接療養してしまうというような場合にはお金で処理されないと申しますか、お医者さんに支払うという問題が労働者との関係には起こってこない、こういう問題がありまして、健康保険のような一律な給付体制にはなっていないわけであります。そのような特殊性がありますので、確かに医療費の算定方式としては、健康保険法の場合に準じた扱いをしておりますけれども、税制の特例措置を認めるためには全く同じな体制になっていなくてはいかぬと思うのですが、その点必ずしも同一でないという問題がありまして、御指摘の二八%の問題も、私が労災補償部長時代もいろいろやってみましたけれども制度論的に全く同一でないという観点から実現を見なかったのであります。しかし実質的に必要経費をどう見るかという問題がございますので、必要経費の見方が不適正であるならば、医師に対して過重な負担になるわけでございます。必要経費の見方について適正に処置してもらいたいという点については、もう五年ぐらい前でございますが、申し入れをし、是正方を国税局のほうで取り計らっていると私どもは考えているわけでございます。しかしながら、もちろんこの問題は税の問題ばかりでなくて、現在の医療費の計算方式そのものに問題があるという点に基本的な問題があるようでございます。そこで、労災保険としましては、一応便宜的に健康保険の点数単価制度を基準にしつつ、各地における指定医と労働基準局長との契約によってそれぞれ決定をするという立場をとっているわけでございまして、実情に合わないということでございますれば、是正するにやぶさかでございませんけれども、健康保険における点数単価の問題もございますので、そういった情勢をにらみつつ適正な医療費の支払いは行ないたいというふうに考えている次第であります。
  23. 滝井義高

    滝井委員 これで終わりますが、御存じのとおり、そういうように健康保険よりか労災の医療については、非常に自由になっているようであって、これは自由診療で税は五割五分以上対象になる。健康保険は二割八分しか対象にならないのですからね。そうすると、一円五十銭だけ一いま大体健康保険に準ずると言われているとおり健康保険に準ずる。いわゆる何というのですか、診療報酬は健康保険の診療報酬でやるわけです。そうして十円が十一円五十銭になる、そういう形でやられる。ところが税の場合になると、これは自由診療でやっていくわけですね。自由診療として取られる。だから五割五分を所得と見るわけです。そういう形で取られてくるわけですね。片一方は二割八分が所得でしょう。五割五分以上所得と見る税務署もあるわけです。そうすると、この労災医療というものは非常に虐待を受ける形になる。だからこういう点については、もう少し労働省当局としては大蔵省当局と折衝して、そんなに多い額ではないのだから、やはりこれをある程度優遇する。そうしてうまく患者が順当に労働力の再生産ができるように、再回復ができるように措置を講じてやる必要がやはりあると思うのですよ。  私は実はきょうは国税庁も呼びたいと思ったのですが、時間がないから呼んでいないのです。そうすれば、十一円五十銭の健康保険体制に準じた形でやっても、それだけ治療を担当するほうはゆとりができるわけです。そうすると、それだけ患者がよくなるということになるわけです。こういう点についても、もう少し積極的にあなたのほうでやらなければならぬし、それから私がいま言うように、事務費その他についても、失業保険だって取っていないのですから、労災は規定がないのだからやはり規定ぐらいつくってやるのが当然ですよ、これはどこから見ても税金ですから。同じようなものですけれども、その事務費の分はメリットシステムになっておっても当然経費の改善に使う、こういうふうにすればいい。そういう点ははっきりしてもらいたい。  それから無過失賠償責任論については、いずれ労災保険の根本的な改正をやるでしょうから、そのときにもう少し議論をさせてもらいます。きょうは並行線のようになるから、議論はそのときにさせてもらいますが、いまの税の問題や、事務費、官庁の営繕費、建物の建設費、こういうようなものは当然国から出すべきものですよ。どうですか。
  24. 藏内修治

    ○藏内政府委員 滝井委員の御質問、非常にごもっともな点があろうと思います。私も労災関係の医療の諸経費を一般会計から支出すべきか、特別会計から支出すべきか、これらをもっとすっきりしたほうが——確かに法理論としてはいま基準局長から申し上げたような問題点があろうと思いますが、政治論あるいは政策論からという立場からすれば、滝井委員の御主張もまことにごもっともであり、納得を得る面が確かに多いと思うのです。そういう点については、労災保険審議会でただいま御審議を願っているのでありまして、根本的にひとつ今後のあり方を検討していただきたいと思っております。  それから、いまの労災診療に対する課税の問題でございますが、これは委員指摘のとおりいろいろ医師会、お医者さんの立場からも要望が出ておることも私もよく承知をいたしております。その点につきましては、できるだけ御希望に沿うように今後改善をしてまいりたいと思っております。
  25. 田口長治郎

    田口委員長 吉村吉雄君。
  26. 吉村吉雄

    ○吉村委員 まず初めに、現在の政府労働災害防止に対するところの政策の中心をなしているものは一体何ですか。
  27. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働行政の中におきますところの災害防止問題は、御承知のように労働基準法の中に安全衛生という観点から規定が設けられ、その労働基準法に定められた諸規定の実施監督という点から問題が取り上げられておるのでございます。しかしながら労働基準法なり労働行政におきまして災害防止の問題を取り上げるという考え方の基本にございますのは、何と申しましても労働者の生命、身体を保全するということ、これを憲法上の規定までさかのぼりますならば、労働者の生存権を確保するという点にその最も窮極の根源を求めることができるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。理念的にはさように考えつつ、行政的には個別的に規定されました労働基準法の定めるところに従いまして監督実施をいたすというところであろうかと存じます。
  28. 吉村吉雄

    ○吉村委員 労災防止の基準になるものが基準法である、あるいは労働者の人命尊重であるということはそのとおりだろうと思うのですけれども、具体的にその政策を推進するにあたって行政上いろいろな計画なりその他のことを持ち合わせているはずだと思うのです。ですから、そういうものがどういうものであるかということをお尋ねを  しておきたいと思います。
  29. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいまの御質問は非常に広範多岐にわたる基本的な問題であろうと存ずるのでございますが、従来まで労働省がとってまいりました基本的態度といたしましては、個別の使用者に対する安全衛生関係の義務規定を使用者に順守させるといういわば個別企業の場において問題をとらえ、それをどう処理するかということに重点が置かれておったように思うのであります。しかしながら、最近における災害発生の状況にかんがみまして、個別企業重点でよろしいかどうかという点につきましては、さらにさらに広い見地から問題を考えるべきであるという御意見もございましたので、今後労働省として労働災害防止対策を推進するにあたって、どのような点に問題意識を置き、どのような対策を講ずるのが妥当であるかという点に基本的な反省を加えまして、御承知かとも存じますが、労働省の中央労働基準審議会に諮問を出しまして、その答申を得たのでございますが、その大綱につきましては去る五月二十日に労働基準審議会答申をいただいたわけでございます。  それに指摘されておりますように、第一には人命尊重観念の高揚ということが基本的に重要であり、次に産業の体質及び労働事情の改善という角度から問題を取り上げる必要があり、さらには数企業にわたる阻害要因の排除を行なう必要があるといったような、個別企業の場を越えましたところの大局的立場からの改善を要望せられておるのでございまして、そのような観点からの対策を推進すると同時に、従来行なっておりました個別企業における労働災害防止活動をさらに積極的に推進するということでなければならないと思うのであります。  しかしながら、そのような項目について、個別的な対策を今後検討いたしますについても、これをある程度の目標を設定し、計画的に実施していく必要があろうかと存ずるのでございます。こういう点からすでに昭和三十八年を第一年とする新しい産業災害防止五カ年計画が設定され、その線に沿って災害防止対策を進めておるような次第でございまして、その計画推進にあたりましては労働基準監督組織が中核となりつつ事業主及びその団体、それから労働関係の諸団体にも広く呼びかけて御協力を得まして計画的に災害減少につとめてまいりたいと考えておる次第でございます。
  30. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大体の構想といいますか、そういうものは大まかではありますけれども説明があったわけですが、この労働災害防止にあたって、労働省が従来五カ年計画を樹立をし、現在新五カ年計画のもとでその推進をはかっておるわけですけれども、この新五カ年計画を進めるにあたって、現在審議されておりますところの労働災害防止に関する法律の位置づけというものはどのように理解をされておりますか。
  31. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま申し上げました新産業災害防止五カ年計画は、直接はこの法案とは関係なく、すでに三十三年から実施されておりました過去の五カ年計画がございますが、その古い五カ年計画の実績をもとといたしまして、総理府に設置されておりました産業災害防止対策審議会におきまして、古い五カ年計画の実績を参照しつつ、三十八年を第一年とする新しい計画を策定したわけでございます。そのようなことで、新しい計画はそれなりの背景とそれから計画推進のにない手と申しますか、そういう審議会中心になって、労働省のみならず政府全体を包括したところの計画を立てた、こういういきさつがあるわけでございます。  ところで労働省としましては、いわゆる労働災害を前提としましたさらに具体的な計画をつくっておったわけでございます。そこで新たにこの法案が提出されまして、その中に五カ年計画を策定する、そうして毎年具体的な実施計画を策定する、こういう内容の規定が設けられておりますので、労働省としましては、現在の計画の目標率とか、その進め方につきまして、これはかなり抽象的なものでございますが、それをさらに具体的に各産業別に目標を設定しますと同時に、それをどのように進めていくか、そうして対策の重点をどこに置くかという進め方、重点の置き方等をさらにこまかく定めましてそれを公示する、公に明らかにしまして、そうして各業界におきまして、そのような方向に沿って実施していただく。一方使用者のみならず広く一般にもお示しをし、それから特に労働諸団体の御協力も得たい、こういう方向に今後は持っていきたいというふうに考えております。
  32. 吉村吉雄

    ○吉村委員 労働災害防止にあたっての新五カ年計画というものがあるわけです。それは政府全体としての取り組む一つ中心をなしておるわけですけれども、いまのあなたの答弁からいたしますと、労災防止法とはこの中でどういう位置にあるのかという話をしましたら、それとは直接関係なしにという趣旨の答弁がありました。私は労災防止という非常に重要な政策を推進するのにあたって重要な事柄が三つあると思います。一つは、何といいましてもその作業に従事しておるところの労働者個々が、それぞれの経験の中からこうしなければならないという労働災害防止にあたっての意見、体験というものを持っておるはずである。これを最大限に法的に保障をして実施をしていくという方向が一つ必要であろうと思うのです。それからいま一つは、何と申し上げましても、災害の発生というのは、今日の社会のもとでは、労働者を雇用するところの使用者責任として、企業主自体が自主的に労働災害防止対策をみずから考えていかなければならないということが一つ、さらに三番目には、先ほど局長が言われましたけれども、政府として行政機構の中で監督行政というものを強化をしていくということがどうしても必要であろう、この三本の柱を完全に実施をしていかなければ、労働災害というものはとうてい防止するわけにはいかない、こういうふうになるのではないかと私は考えますけれども、大まかではありますけれども、いま私が申し上げました監督行政の強化、使用者の自主的な対策の樹立、あるいはまた労働者意見の尊重、こういうことが必要であるというふうに考えるのですけれども、局長としてはその点はどのように考えておられますか。
  33. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点、まことにごもっともであると考えておる次第でございます。この点は今後災害防止対策の具体化にあたりまして心がけなければならない最も重要な三つの点であるというふうに考えております。
  34. 吉村吉雄

    ○吉村委員 だといたしますと、この労働災害防止に関する法律というのは、その三つの柱の中の一つ、すなわち業者が自主的に労災防止対策、いろいろ活動をしていくというふうにしむけていきたいということになっておるわけです。私がお尋ねを申し上げたいのは、この労働災害防止のための政府の中核的な計画であるところの新産業災害防止五カ年計画、これをずっと通読をいたしまして感じまするのは、単に企業主、使用者の活動に待って労働災害というものを防止していかなければならないという事柄が、約七分どおり占めているというふうに言わざるを得ない。今日の日本で、私は三つの中で最も重要なのは監督行政の強化であると思っておるのです。監督行政の強化の問題については、この五カ年計画の中ではあまりに触れられていない、こういうふうに見ざるを得ないと思うのですけれども、私のこの見方というものについて間違いがありますか。
  35. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のとおり、災害防止計画そのものを見ますると、行政機構については比較的触れるところが少ないのでございます。これは計画自体が使用者及びその団体を対象としておるという点から考えまして、また計画策定当事者に近い各省みずからが、自分のところの定員予算をふやすということについてあまり立ち入った表現をするのはいかがかというような配慮もあってかと存じますが、計画そのものについては行政機構をどうしろということはあまり出てないのでございます。しかしながら事の重要性は行政当局としては当然十分認識いたしておるような次第でございまして、なお御審議いただいております法案におきましても、そのような点には触れておりませんが、事柄といたしましては法律という手段によって実現しなければならない事柄に明定いたしておりますので、法案そのものには出てないわけであります。しかし今後定員の増加、予算の飛躍的な拡大といったような点につきましては、法律の問題としてでなく、行政部内における予算措置等の問題といたしまして、今後できるだけの努力を払っていきたいと考えておる次第でございます。
  36. 吉村吉雄

    ○吉村委員 各省それぞれの予算獲得の事情等もあるという話ですけれども、そういうことは、政府部内の事情であって、あまりどうこう言ってみてもしょうがない話で、この新産業五カ年計画は閣議決定として出されておるわけでしょう。ですから、それは当然政府方針として出されたものであって、この計画樹立にあたって各省の利害がどうこうということを局長から答弁をされるというのは、私はどうも納得できないのです。やはり政府の全体の責任としてこの計画が樹立をされ、その推進の一環を労働者がになっておる、こういうふうに理解しなければならないと思う。この五カ年計画の中で、私は非常に問題だというふうに考えましたのは、労働災害防止にあたって、もとより、これは新産業災害防止計画ですから、労働災害だけを含めたものとは言い得ないかもわかりませんけれども、鉱山労働あるいは船舶その他を考えてみましても、現在の労働災害というものが非常に多いということは言うまでもないわけです。そのような今日の労働災害防止あるいは産業災害防止という観点からするならば、監督行政というものを強化していくということがどうしても強調されてしかるべきである。その強調された計画が出されて初めて予算の裏づけというものが獲得されてくるのではないかと思うのです。その中心がこの五カ年計画であって、その五カ年計画の中には、業者の自主的な努力にだけ期待をするような計画を立てておいて、あとで監督行政強化のための金を云々ということは首尾一貫しない理屈だと言わざるを得ないと思うのです。こういうことから、私は本年度の予算の問題等についてもたいへん労働省は強調しておりますけれども、監督行政の問題については、予算的な裏づけというものはさっぱりなっていない、こういうふうになってくるのではないかと思うのです。ですから、政策の基本になるところの予算の裏づけをしていこうとするためには、まず中心になるところの計画をりっぱなものに立てておかなければならないだろう、そういう意味では、この計画というものが監督行政の強化の問題については触れられていないという点は非常に問題が多いと言わざるを得ないと思うのです。ですから、そういう点につきましては、先ほど局長が初めに答弁をしましたけれども、現在の労災防止中心的な考え方は何かというふうに問いましたら、それは基準法の尊重であり、その実施であり、企業については個別企業に対するところの指導である、こういうふうに言われます。しかし、基準法の完全実施あるいはそのための監督行政というものを強化をするということについて全く手を抜いているといわれてもしょうがないと私は思うのです。たとえば、監督の人数等につきましても、非常に少ない数にしかなっていない。こういうような実態について、基準法に基づけばどうしても監督行政を強化しなければならないはずなんですから。ところが計画のもとではそれがおろそかになっている。しかも予算の面についても、本年度の予算についても、これもたいした予算の裏づけがないということになるとするならば、基準局長が幾らここで口でこうしようと思っていますとか、ああしようと思っていますとか言っても、それは絵にかいたもちにすぎない、こういうことになってしまうのではないかと思うのですが、新産業五カ年計画とそれから労働省労災防止に関する予算、そういうものを見ただけでも、いま私が申し上げたようなことが言い得ると思う。こういう実態なんですけれども、次官は一体——大臣はいないようですから、こういう状態の中では毎日毎日発生しているところの労働災害、しかも増大しているところの労働災害というものをどういうふうにして防止しようとしているのか。私はこの労災防止法という法律労災防止という政策の中のごく一部分を分担するにすぎないと考えておるのです。だとするならば、労災防止のことを論ずるとすれば、もっと大きなことを徹底的に議論しなければならない、こういう立場であるのですけれども、次官、いままでのやりとりを通じて、まあいままでのことはどうにもしようがないとしましても、これからどうしたならばいいのか、どこに重点を置いてやっていくのかということについて、ひとつ責任ある答弁をお伺いしておきたいと思います。
  37. 藏内修治

    ○藏内政府委員 御指摘の点、まことにごもっともであろうと思います。政府の監督行政の強化につきましては、監督官の増員等予算の範囲内においてできるだけの努力をいたしておりますが、まだいわゆる数字的には手薄の観を免れない点も多々あろうと思います。そういう点も多々あると思うのでありますが、要するに政府の監督行政使用者側の災害防止対策、これらはいずれも表裏一体の関係にある点もございますので、そういう点からひとつ使用者中心とした災害対策の体制をつくらせたいというのが、この法律作成の動機でございまして、その点をひとつ御了承願いたいと存ずるのであります。
  38. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いまの次官の答弁では私はどうも納得はできません。労災防止法を提案した趣旨というものについては、いまの説明で理解をします。しかし、私はだ労災防止という重大な政策推進にあたって、もっと全体の立場からどうあるべきかということを労働省責任者からお聞きしたかったわけです。労災防止の問題については、先輩あるいは同僚議員がずいぶん質問をなされていますから、私はなるたけ重複を避けようと思っています。  そこでこの法案の中でこの法案の骨格をなすものは一体何かということですけれども、これは労働災害防止をするのに業者の自主的な発意、くふう、こういうものを基底として、労働災害防止規程というものをつくらせて、それを労働大臣が認可をすることによって、その防止規程をその協会の会員、そこで働く労働者に適用することによって災害というものを少なくしていこうということがねらいのようでございます。これも一つの方法であることは私は決して否定はいたしません。しかし、そういうふうな業者に労災防止規程をつくらせてやっていくという場合に、どういう問題が起こるのかということを、今日の日本の社会情勢、産業界の情勢の中から考えてみなければならぬと思うのであります。  そこで、私がおそれるのは次のようなことなのです。たとえば、この前の三池の災害その他の災害というようなものを見てまいりましても、生産というものが非常に上がってきている企業、ものすごい急ピッチで生産が上がった、上がったところがああいう重大災害が起こった、こういう事例が非常に多いのです。これはどういうことを意味するのかといいますると、やはり生産を増大させていくために、災害防止に対する資本投下というものが軽視されている。使用主自体にそういう考え方が、意識的であるか無意識的であるかを問わず、結果的には生産が増大をする企業ほどこの災害というものが多い。必ずしも一定のカーブではないけれども、そういうことが間々見られるということです。たとえば、いま東京周辺でたいへん災害が多い。毎日毎日くらいに災害が起こっておる。その原因は何かということを考えてみると、いろいろの原因があるでしょうけれども、期間がきまっておるのだけれども、仕事はしなければならない。どうしてもそこに無理が働く。したがって、災害防止に対するところの予防措置、教育あるいは設備、こういうものが軽視されて、生産すなわち仕事だけが急がせられる。そういうところに災害発生の最大の原因というものがひそんでいるのではないかというふうに私は思うのです。このような状態の中で、業者が自主的に災害防止規程をつくるということは、結局は生産に見合ったような、生産を増大しやすいような規程をつくりかねないというところに、私は非常に危険を感じてしょうがないのです。これは私の危惧だけで終わればいいと思うのですけれども、もしそういう施工方法なり何なりというものがどんどん変わってくるために、現在の安全衛生規則だけでは間に合わないとするならば、労働省自体が労働研究所等をもっと動員をして、その機能を強化して、新しい施工方法に見合った安全対策というものを規定化して、これを業者に順守させていくということのほうがより重要ではないかというふうに私は思うのです。ところがそちらがむしろおろそかになって、そうやらなければならない作業を業者の自主的な努力に依存していこうとする、その考え方は、かりに善であっても、業者自体としては生産を上げなければならない。中小企業になればなるほど、大企業から圧迫されるから、どうしても安全等に対して資本というものを投下する余裕がない。そういうことで生産と災害関係、それから中小企業ほど災害が多くなっているというこのごろの特徴は、そういうところに原因があると私は思うのてす。  そのような角度からこの法律というものをながめてみますると、私は非常にしり抜けだと思う。労災防止の部分的な役割を果たすには違いないかもしらぬけれども、本質的な役割を果たせない、こういうふうに考えざるを得ないのです。だから、先ほども申し上げましたように、こういうことをやるのだったら、労働省の機能というものをもっと強化することによってそういう規程をつくり、充実をし、これを業者に守らせるための監督行政を強化する、こういう方向に行くべきじゃないかと思うのです。私がいま申し上げた労災防止規程を業者にだけ委任してやらせる、こういうことに対する危惧について局長はどう考えておりますか。
  39. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御懸念の点はまことにごもっともだと考えております。ただ、私どもの考え方は次のような考え方でございます。安全衛生に関する法令はできるだけ整備したいという観点から、ほとんど毎年二つくらい新しい規則をつくっております。できるだけ産業界の現状に即し、できるだけきめのこまかい安全衛生規則を制定していきたい。現在も検討を継続しておる規則がまだ幾つかあるのでございます。しかしながら、法令形式をとります場合に、これはどの法例もそうでございますが、内容が平準化されるということないしは一般化されるということ及び法令形式としてどうしても固定化せざるを得ない、こういう平準化、一般化、固定化という法令形式に随伴する問題が当然あるわけであります。しかし、各産業の実情を調べてみますると、それぞれの職場における使用機械の特殊性、作業方法の特殊性がございまして、共通な線は引けないが、その業種グループに横断的な一つの基準設定は可能だというものがあるわけであります。そういう点から見まして、法令形式をとった場合には、一般化、平準化でレベルが低くなってしまう、どうしても共通な事項しか書けない、こういう悩みを解消するために、災害防止規程というものを考えてみたい。それはアメリカで一般に行なわれておりますセーフティーコード、これは法律命令の形式でなくて、業者の団体がそれぞれの特殊性に応じてさらにきめのこまかい安全基準をつくったものでございます。そのようなものに期待するというのも一つの考え方ではないか。またアメリカのように、労働協約が内容的に非常に充実したものであって、作業方法とか、換気、採光、そういったこまかいものまで労働協約で規定しておるというのであれば何をかいわんやでありますが、そのような段階に達していないわが国においては、この法案で考えておるような業種別に業種の特殊性に応じたきめのこまかい災害防止規程をつくるということも、現状から見てやむを得ない措置ではなかろうかという観点に立脚してこの制度を考えておるのであります。したがいまして、この災害防止規程をつくったから監督をゆるめるという性質のものではないので、監督機関としましては、従来安全規則しか手がかりがなかったものを、今後はさらに災害防止規程に定める基準に手がかりを求めまして、さらに監督を徹底することが可能になるわけでございまして、監督の手がかりがさらに一つふえるということでございます。そういう意味から考えますと、事業主団体をつくりまして、自主的にやらすのだということの意味が、かってに、恣意に事柄を運ばすというのではなくて、いわば自分の手かせ足かせの規範をもう一つ設定するのだ、それが監督活動と相まちまして、もう一つの規制という一つの網が加えられるということであると私どもは法律的に考えておるわけであります。そういうような仕組みをさらに新しく考えると同時に、監督体制につきましては、先ほど来御指摘がございましたように、過去の実績に対しまして反省を加えまして、今後新しい決意を持って体制の整備に当たりたい、こういう観点から、御指摘のように五カ年計画の中には監督体制云々をうたってないじゃないかというような点につきまして、私どもはみずから反省を加えまして、今後は積極的な体制整備につとめたい、こう考えておりまして、そういう観点から、先月二十日にございました審議会答申の中におきましても、災害防止行政体制の整備という観点から、行政機関の充実、その中では特に大幅な労働基準監督官の増員の問題、それから専門官制度の拡大という点につきまして、数字は示されておりませんけれども、大幅なとかあるいは画期的なとか、いろいろその気持ちを適切に表現されました文章が示されておるわけでございます。このような審議会答申を拝見いたしまして、決意を新たにしまして、御指摘のような問題点是正していきたいと考えておる次第でございます。
  40. 吉村吉雄

    ○吉村委員 画期的とかあるいは大幅なとかいうのは、政府の計画をなにする場合には年じゅう出ていることばなので、それこそ画期的ではないことなんであまり信用はできないのです。私は、そういうことばの問題よりも、それを具体的に裏づける予算の問題等を見ればとても信用するわけにはいかないと申し上げておるのであります。いま重大な決意を持ってというお話がありました。基準局長はどのくらいの決意を持って監督官の増員に当たるのかわかりませんけれども、まあなまやさしいことではことしと同じように五十人くらいの増員でやむを得ませんでしたという答弁をこの委員会でまたせざるを得ないということになるのだろうと思います。それが今日の池田内閣、自民党内閣の労働災害に対するところの考え方というものがきわめてなっていないということを意味していると思うのです。私は、この労災問題ばかりでなしに、交通災害その他船舶の災害等のことを全部調べてみましたら、驚くべき数の人命というものが毎日毎日失われておるわけです。まさに、こういうことをこのまま放任するというなら、政治というものはないと言っても過言ではないと思うのです。警視庁からきょうの交通事故は何人死にましたということを毎日毎日発表するというような、そういう政策というのは一体何だろうかというふうに考えざるを得ない。しかし、人命というものに対して人命軽視の思想というものがびまんしている。日本人はあまりそういうことを気にしていないのですけれども、しかし重大な問題がそこにひそんでいると思うのです。労働災害の問題はやはり人命を尊重していくという思想が欠如しているところかこういうことになってきておる。ですから、取り組む姿勢としては基準局長の決意だけの問題ではない。やはり政府全体として、すべての労働災害をはじめ、人命が失われていくことに対する対策というものともっと真剣に取り組んでいかなければならないはずだと思うのです。これは、災害防止五カ年計画が閣議了解事項となっている以上は、政府方針であるはずです。その政府方針の中で、先ほども申し上げたように、政府自体がなすべき努力の問題についてはあまり触れていないから、私は重大だというふうに申し上げたわけです。さっきの話に戻りますけれども、災害防止規程ができる、そうすれば安全衛生規則のほかに、それぞれの業界に見合った災害防止規程をまた労働省の監督官が監督することになるから、その意味では前よりも充実してくるはずだという答弁でございます。私はそのような効果が全然ないとは申し上げない。部分的にはあるだろう。ただ私のおそれるのは、先ほど触れましたけれども、現在の業界のいわゆる使用者のものの考え方で災害防止規程というものをつくる場合にどうなるのであろうかということを考えてみると、災害防止ということをやっていくためには、投下しなければならない資本も必要になってくる。一体、そういうことに金を使うようになるのだろうか。特にこのごろの災害というものは中小企業ほど多い。これは労働省も数字をもって示しているとおりです。中小企業はそういうようなことについて、一体自主的に災害防止対策というものをやっていくために資本なり何なりというものを投下し得るそういう余裕があるのだろうか。こう考えてみると、結論的に言い得るのは、自主的にやるならば、やはり仕事しやすく生産が上がるという範囲の中での災害防止規程しかできないだろう。こういうことを私としてはおそれざるを得ないということは強調している。ですから、もし災害防止規程というものが業界の自主的な発意によってできて、そうしてそれが効果がある、大いに期待ができるというのであるとするならば、この災害防止規程といえども労働省が目を通してでないと認可をしないわけですから、労働大臣が認可をするということでしょう。認可をするということは、労働省の担当者が見てこれならいいだろうということになるはずだ。そうだとするならば、労働省のその担当者自体がその規程をつくってもいいということになるはずだと思うのです。だから、そうでないと、業界自体のこういう実情面からこうでなければならないという規程を持ってくる、それをめくら判的に認可をしてしまう、こういうことになるならば、これは百害あって一利なし。だから、労働大臣の認可ということになるとするならば、労働省がタッチするのだから、最初から安全衛生規則なり何なりを充実し、もっと労働研究所等を充足していくことのほうがむしろいいのではないか、こういうことを申し上げておるわけです。
  41. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点非常に重要な問題が二つあると思います。第一は、生産活動の活発化ということと関連して、災害対策に対する投資がかえってきつくなるといいますか、閑却されるのではないか、あるいは中小企業はどうするのだということと、災害防止規程の問題でございます。  後段の災害防止規程につきましては、全産業について災害防止規程ができるわけではございません。特に災害の多い特殊な業種につきまして協会を設立し、その協会災害防止規程が作成されるわけでございます。現時点におきまして予定しておりますのは、たとえば建設業であるとか、陸上貨物取り扱い、港湾荷役、それから林業、鉱業といった五つの業種を考えているわけでございます。そのような業種の中で、特に港湾荷役でありますとか、建設関係におきましては、安全衛生規則を作成いたしますについても内容が非常に多岐にわたりますし、法令形式を採用いたします際にどの程度の線を引けばいいかというような問題がいろいろ出てまいるわけでございます。これに違反した場合には当然基準法上の罰則の適用があるということで、災害防止規程と労働省が策定いたします省令形式の安全基準、ここに大きな差があるわけであります。でありますから、法規違反として罰則の適用という段階にはないが、しかしこの程度のものならば事業主も順守できるというような基準設定は、設定が可能なものもあるはずでございます。そういうものにつきまして、私どもは災害多発業種につきまして防止規程が作成されることを期待しているのでございまして、しかもその規程違反につきましては、会員に対する制裁制度であるとか、これは法律の三十七条第二項で規定しておりますが、そういう制度が別にある。あるいは規程に違反した就業規則の効力を否定する、そういう法的な処置もこの法案であわせて考えているような次第でございます。そのようにあれこれ考えまして、災害防止規程の厳格なる実施ということについては配慮をしている次第でございます。安全衛生規則にしろ、こういう問題につきましては、先ほど申し上げましたように、法令形式として採用した場合も、一般化、平準化の問題、規程化の問題、罰則適用の問題、いろいろ関連いたした問題があるわけでございます。労働省としては、規則は今後どんどんつくっていかなければならぬというのが基本姿勢でございますけれども、直ちに整備できないというものについてどうするかという観点から防止規程を考えているということであるわけでございます。  なお、生産を高めるために安全問題が犠牲になるのではないかという点については、中央労働基準審議会答申におきましても、明確に「経営者団体においても、人命尊重を生産に優先させることこそ新しい経営のあり方であるという経営理念の確立をはかるよう、働きかける」というような点も指摘しているのでありまして、人命尊重ということを特に強調いたしているような次第でございます。災害が発生するような職場は実は生産が上がっていないのでありまして、生産諸力の結合関係がなめらかに行なわれ、災害のない職場こそ生産が上がっているのでございます。技術的な観点から見ましても、災害防止することが、また結果的に見ますると災害が発生していない職場こそ生産が上がっている職場であるという実績がございますので、私どもそういう趣旨から、この点につきましては使用者並びに使用者団体に今後さらに積極的に呼びかけ、啓蒙指導をいたしたいと思っております。  なお中小企業は金がないために安全施設改善ができないじゃないかという点につきましては、御指摘のとおりでございます。これにつきましては災害防止施設整備のための特別融資制度がすでに行なわれております。わずかでございますが、約十億のワクで特別融資を実施してまいりました。しかしこれもなおかつ不十分であるという御指摘がございますので、中小企業を対象とした特別融資制度を今後さらに改善、完全なものにしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  42. 吉村吉雄

    ○吉村委員 局長のいまの答弁から私が危惧しておることについて、はからずもそれを裏づけるような答弁をあなたはしておるのですよ。私が心配するのは、企業家自身が同種の企業で協会をつくる。その協会に加入している人たち自体が守り得る範囲の規程はつくり得るはずだということを言いました。私は、その規程というものは生産を阻害しない、こういうものになる危険性を持つことになるだろうということを申し上げておるのであります。だから、いまの日本の企業者の労働安全に対するものの考え方というものを改めていくためには、そういう審議会あたりのいろいろな答申の中で、人命尊重を主にしなさい云々ということも必要ですけれども、労働安全対策というものを確立していかない企業については企業として認めない。監督官の強化によってそういうものは仕事の一時中止とか、そういう強硬な対策というものを打ち出していくことが必要ではないかというのが私の考えなんです。それだけでいいというふうに申し上げているのではないですよ。業界自体の自主的な努力というものも必要だけれど、それにあまり依存をし過ぎては困るということを申し上げておるのです。この労災防止法は業界が自主的に労災防止規程をつくって、その防止規程を監督行政の中で監督をしていくというシステムになっていますけれども、もっと本質的なものは、規程みずからはやはり労働省なら労働省がもっと陣容を強化して、その基準に合ったもののこまかい点をむしろ企業のほうにつくらせる、こういうことが必要なのではないかというふうに私は考えておるのです。そこが逆になっているようだ、また逆になっていく危険性を持っておる、こういうふうに私は考えるのですけれども、この点はだいぶ意見が食い違っておるようです。しかしいままでの労働災害の発生の原因というものを調べていけばわかるだろうと思うのですが、もし安全衛生規則というものが完全に実施をされておったら、あるいは監督官がもっとひんぱんに臨検等を行なっておったならば、防ぎ得たであろうという災害が非常に多いことも、あなた方は知っておるはずだと思うのです。そういう点から考えていけば、この法律の実施というのが重点でなくて、もっと監督行政というものを強化する、あるいはそれに対する労働安全研究所ですか、そういう機関もあるのですから、そういうところを充実していくことのほうがより大切だというふうに申し上げておるのです。  それと関連がありますけれども、昭和三十七年ですか、労働安全衛生に関する行政監察というものが行なわれています。ここでもどういうことが指摘されているかというと、監督官というものが二千何百名かおるけれども、そのうちに労働安全のための仕事に従事する者は千四、五百名しかいない、こういうことを指摘されておるわけです。さらに重要なことは、この新産業災害防止五カ年計画というものの推進の過程にあたって、いろいろなことが言われておるけれども、もっと関係各省間の連携を重視するようにすべきであるというふうな指摘もなされておるわけです。ところが、これらの事柄について、行政管理庁の指摘について、その後の労働行政の中で改まっておるのかということを考えてみますると、遺憾ながら改まっていない。改める努力をしていることは認めます。本年五十名ふえたということはその努力の一端だろうと思いますから、それは認めますけれども、ここで言っておることは、もっと本質的なことを私は言っておると思うのです。だから新産業災害防止五カ年計画を樹立するにあたって、産業災害防止対策審議会の出した答申を見ても、もっと本質的なことに触れて言っているはずなんです。ところが、それらに対する政府全体としての取り組み、あるいは労働省としての監督行政を強化するための予算的な裏づけ、こういうものについて見るべき結果が出ていない、こういうところにたいへん問題があると思うのですが、この行政管理庁の監察結果について具体的にどういう——この指摘に対してどういうふうにやってきたのかもあわせてお聞きしておきたいと思うのです。
  43. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 三十七年の十二月行政管理庁から監察結果報告が提出されたわけでございます。その中でいろいろな点が指摘されておりますが、特に事業主の安全管理体制については、事業主の自主的推進、組織運営の整備強化という点が指摘されておるわけでございます。現在御審議いただいております事業主団体の整備強化という問題も、実は監察結果報告で指摘されたその線に沿うての具体化というふうに私どもは考えておるわけでございます。しかしそれはそれといたしまして、御指摘のように監督行政体制が十分でないとか、多々問題があるわけでございます。その点につきましては、私どもも十分反省をいたしまして、先ほど申し上げましたように、根本的に問題を考えなくてはいけない、その点について問題意識をどのようにお持ちかということが出発点であるというふうに考えまして、労働基準審議会問題点を提起して、その対策についての見解を求めたわけでございます。先ほども申し上げましたが、非常に広範、多岐にわたり、かつ基本的な問題が非常に数多く提起されております。労働省としまして、審議会答申に見られるようなこういう広範、多岐にわたる、しかも根本的な問題を提起され、対策の確立を迫られたということは、画期的なことであろうというふうに私どもは考えまして、先ほども申しましたように、非常な決意と努力と研究をなさなければ、この答申に沿うた対策は実現しないというふうに考えまして、今後あらゆる努力を傾注しまして、災害防止対策全般の問題を研究いたしたい、こういうふうに考えております。過去についてはいろいろ御批判、御指摘はあろうかと思いますが、少なくとも現時点におきましては、非常に積極的に前向きに考えておりますので、よろしく御了承願いたいと思います。
  44. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今度の労働基準審議会からの答申の問題については、あとで同僚委員からも触れる予定になっておりますから、私は多くを申し上げません。ただこの労働災害防止に関する法律が、だいぶ長い時間かかって今日に至ったわけですが、この法案を労働省が提案をして得たものが一つあると私は思っておるのです。もし昨年の通常国会でこの法案があのまま通ったならば、労働災害防止という問題はたいして議論もされないで、いま局長がたいへん重要視をしている審議会からの答申などというようなことにもならなかったかもしらぬ。これは結果ですからそういう判断もできるわけです。社会党がこれに対して問題を提起して、この労働災害防止法というものは非常に重要な問題を含んでおるということで反対をし、時日を長くかけたことによって、労災の問題というものが非常にクローズアップされて、労働省自体も本気になって取り組まざるを得なくなる、こういうふうになってきた効果だけは、この法案のいままでの過程で、あったというふうに私は思うのです。そこで基準審議会からの答申が出されておりますけれども、この実施というものについては、なおいま局長が答弁をされたように、種々広範な問題あるいは予算的な問題、そういうものを含んでおりますから、労災防止という観点からするならば、最低限度の施策として早急にそれらについては実施をしてもらわなければならないと思います。詳細については同僚議長から触れるはずですから、私は申し上げません。  そこで、次官にお伺いしたいのですけれども、労災防止という問題をもっと政府全体として真剣に取り組むような機構、体制というものをつくり上げる必要があるのではないかと思うのです。現在内閣委員会に産業災害防止対策審議会の設置期限延長の法案が出ております。この産業災害防止対策審議会は、政府全体としてどうあるべきかということを諮問をし、それに対して答申をする機関ですけれども、いままでのこの審議会の活動あるいは答申というものをずっと見てまいりますと、いろいろのことを確かに答申もし、上申もしております。問題はそれを具体的に実施をするということに欠けているというところにある、このように言わざるを得ないと思うのです。私は与党の中にも人命尊重対策特別委員会という委員会があるのを聞いて知っています。私どもは労働災害防止あるいは交通安全のための特別委員会というものを設置をして、種々この問題と取り組んでまいりましたが、何と申し上げましても、いま経済がものすごく発展をし、繁栄をしているという中で、毎日毎日人命が失われていくということに対して、もっと真剣に政府が取り組む姿勢、そのための体制、機関というようなものが確立されていないということでは、私はこれはもう政治というものはないにひとしいと言わざるを得ないと思うのです。ですから、産業災害防止対策審議会というものをそのまま存続をしていくということも必要ではありましょうけれども、これを受けて立つところの政府のもっと統一的な機構というものをつくり上げなければならぬのではないか、こういうふうに考えて、私どもの官房長官に対するこの申し入れについては、長官もたいへん賛意を表してだけはおったのですけれども、それを具体的に実施するかどうかということは関係各省の努力がどうしても必要だろうと思います。特に労働省労働災害防止責任を持った官庁でもございますが、これは労働省だけでやろうといってもなかなかできる相談ではない。金もかかり、いろいろなこともあるわけですから、政府全体として各種の災害防止のための機関、事前に予防するための措置、研究、こういうものを強化するための体制、そういうものをつくり上げなければならない、こういうふうに考えます。大臣がいまいないのですけれども、ぜひ次官が真剣に努力をして、政府の中にそれをつくってもらいたいと思うのですけれども、どうですか。
  45. 藏内修治

    ○藏内政府委員 広い意味の産業災害の中で、特に労働災害という部門につきましては、労働省が実質的に対策検討しておるわけでございます。各省にまたがります、たとえば公害の問題であるとか、あるいは交通災害の問題、これらの点を広く取り上げる機関として内閣にただいま御指摘の産業災害防止対策審議会というものがございますが、この実質的な機関というものが確かに御指摘のとおり薄弱な点もございます。これらの機構の整備、そして一元的な産業災害防止体制を政府において確立するという点が非常に重大な問題であろうと思いますので、これらの点も含めてただいまその審議会に御審議を願っておるわけでございまして、できるだけ御趣旨に沿うような方向に向かって政府といたしまして善処をいたしたいと思っております。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
  46. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いまの問題は、こういう議論を委員会でやっているということは、もうおそきに失していることなんで、私が言った、言わないにかかわらず、あるいはだれが言ったという問題でなしに、もっとこの人命尊重という観点に立ったところの施策、それを推進するために真剣に考えて、いまの次官の言ったことは実現をしてもらいたいと思うのです。もしそういうことすら池田内閣がことばだけでやれないというのであるとすれば、それは国民のためというようなことを幾ら言うても、実際にはそうではないということを私どもは言わざるを得ない。政策の問題以前の問題として、少なくとも人命を尊重するという立場の問題ですから、これは無条件にやってもらう必要がある、このように考えます。  そこで、いま一つ次官からお聞きしておきたいのは、先ほど局長の答弁によりますと、監督行政というものを強化をしなければならないのはそのとおりでございますけれども、さらに決意を新たにして監督官の増員というものに骨を折りたい、こういう趣旨の答弁がございました。非常にこの監督官が少数のために、いまそれぞれの地方で問題を起こしておることは、私が言うまでもないことです。ですから、労働災害防止の重要な一環として、特に政府として責任を持つべき分野であるところの監督行政強化のためには、それこそ相当思い切って監督官というものを増員をしなければ、先ほどの局長が答弁をした趣旨のことは実際に実現をされていかないと思います。大臣がちょうど見えましたから、大臣からその点はあらためて私は確認をしておきたいと思いますけれども、大臣、こういうことです。労災防止にあたって重要なことは幾つかありますけれども、この労災防止法という法律は、業者の自主的な創意くふうに基づいて防止規程をつくって、それを自主的に守らせると同時に、監督行政を強化していこうという労災防止政策の中の一部を分担するものである、重要な事柄はやはり労働者の体験に基づくところの意見をもっと尊重するような政策を確立すること、いま一つは監督行政というものを強化すること、こういうことであろうということについては、基準局長からもそのとおりだという答弁がございましたけれども、大体三つの柱であろうと私は思っています。その中で、防止規程は防止規程として、労災防止法は労災防止法として部分的な役割りを果たすけれども、しかし根本的には監督行政を強化しなければならない、そのためには監督官というものを大規模に増員しなければならないということについても、基準局長からそのとおりでございますという話がありました。さらに決意を新たにして努力をするという話ですけれども、これは本年度五十五名の増員だけに終わっているわけです。ところが適用事業所はどんどんふえていく。監督官はこの七、八年同じで、ことしようやく五十名ふえた、こういう程度ではとても労働安全の確保のための監督行政というものは全うし得ないと思うので、相当思い切った増員をしなければならない、その努力をしてもらわなければ困る、こう思うのですけれども、その点について、ちょうど大臣が来ましたから、大臣から答弁をしていただきたい。
  47. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今度の災害防止の法案でうたっておりまする災害防止規程というものは、これは使用者側において順守すべき事柄を業者間の話し合いを通じてきめていこう、そしてこれは使用者責任として、当然守るべきことを守るように励行させるということが主眼でございまして、災害防止の根本は、一つには使用者の注意、第二は労働者側の協力、第三には行政機関の監督ということであると思うのであります。労使の協力ということに監督を肩がわりさせるという考えはもちろん私どもはございませんし、またそうあるべきものではない、現状から言って、使用者の一そうの努力、また労使の一段の協力が必要であるということは、同時に監督の強化ということがさらに一そう必要だ、こういうことを意味するものと考えておるのであります。  そこで、今年度におきましては、労働省といたしましても、監督官の増員をお願いいたしておるのでございます。なるほど予算折衝の結果、他にもいろいろ重要なる項目がございまして、それらにも予算をもらわなければならぬ都合上、わずか五十名増員にとどまったことはまことに遺憾でございますが、しかし何と申しましても、労働基準監督機構ができまして以来、最近までの情勢は、むしろ日本の産業を発展させるためには、労働基準監督のごときは、あまり厳重にやってもらっては困るのだ。むしろ逆に大目に見るのが当然なのだという実情でございまして、場合によっては基準法をうしろ向きに改正しなければならぬじゃないかという論さえ出ておった状況なのでございます。そういう状況において、行政整理等によって基準監督官が減少の一路をたどってきておりまして、それを逆に五十名であってもふやしたということは、基準監督強化についての労働省の熱意の一端を、これによっても御理解いただきたいと存ずるのでございます。今後また皆さまの御鞭撻、御協力を願いまして、大いに前向きに強化いたしてまいりたいと存じます。
  48. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いま大臣から答弁がありましたような空気、すなわち基準行政をあまり強められては困るという動きが、産業界にかつてあったことも事実であります。しかし同時に、基準監督行政を強化をしてもらわなければならぬという声も、社会党あるいは労働者中心にしてあったことも事実なんです。そこで、労働省はどちらの立場に立つかということになれば、大臣が言ったように、もっとゆるめなければならないという声があったけれども、それを飛び越えて五十名ではあってもふえたのだから、それを評価してくれという趣旨の事柄ですが、それ自体私はその努力を認めないとか何とかというものではありません。しかも政府全体としては、日本の経済は非常に大きく成長しておるということを言っておる。その反面にこういうようなとうとい人命がどんどんと失われていくという状態に対して、これをもっと真剣に政府が取り組んで、この災害発生というものをなくしていかなければならないというのは、私はすべての政策に先んじてなされなければならないものだと思うのです。先ほども大臣が来る前に、その点については議論しましたけれども、もっと人命尊重という気風を国民の間に起こさせるような施策、あるいはそういうことを背景にして、政府全体として産業災害防止のための一元的な行政機構というものを確立する、こういうこと等をもっと真剣にやってもらわなければならない、こう思います。さらにその一環として、労働省としての労災防止に必要な政策として、あるいはこの行政のあり方として監督行政というものを強化する。とにかく事業所がどんどんふえていくのですから、しかもその施行方法等はどんどん変わるという状態のもとですから、監督行政強化のためには、監督官というものを飛躍的に増大をしてもらう努力がどうしても必要だ、このように私は申し上げておるのであります。事は人命に関する問題ですから、閣議その他関係各省との折衝にあたっても、どうかひとつそれを強調してもらって、監督官の増員にはさらに積極的な努力を特に要望しておきたいと思います。  それからいま一つは、この法律には直接の関係はないのですけれども、私はこの法律は、労災防止のごく一部を分担するという認識でおりますから、さらに労災防止という対策をやっていくために、労働者の発言権というものをこの法案の中であるといなとを問わず、労働者が長い間作業に従事をしておって、こういうふうにすればこの災害は防げるとか、危険でないということは、やはり体験上体得しておるのが数多くあると思うのです。それを各事業所の災害防止規定の中に織り込むための発言権というものが尊重される、そういう仕組みにしなければならないだろうと思います。これは答申案の中にも出てくる問題ですから、これ以上は触れませんけれども、そういう点についても特段に大臣の努力をお願いしておきたいと思います。私の質問は以上で終わります。
  49. 井村重雄

    ○井村委員長代理 八木昇君。
  50. 八木昇

    八木(昇)委員 だいぶ時間もおそくなっておりますので、総括的にできるだけ内容をはしょって最終的に御質問いたしたい。  大臣も御承知だと思いますが、先般総評が産業災害防止対策審議会活動の強化についてということでもって、内容項目にわたる申し入れを実は内閣にしたわけであります。それは現在内閣の総理府のもとにある、産業災害防止対策審議会内容をもっと強化しろ、一口にいえばそういう要望でございます。その六項目の申し入れというのは、御承知だと思いますが、あらためて申し上げますと、こういうことになっておるわけであります。この総理府に設置されておる産業災害防止対策審議会は、公、労、使それぞれ同数の委員を持つ構成としてもらいたい。それから二番目は、その審議会の中に公労使それぞれ同数の委員からなる専門家会議をつくってもらいたい、それから三番目は、審議会は、産業安全研究所、労働衛生研究所に所要事項について検討させることができるようにしてもらいたい。それから四番目は、審議会は、安全監督行政に携わる監督賞の勤怠について査察する権限を持つようにしてもらいたい。五番目は、審議会及び審議会の中につくられる専門家会議は、最低月一回の会議を開くようにしてもらいたい。六番目は、審議会及び専門家会議等の対策と活動の推進にあたっては予算をもっと大幅にふやしてもらいたい。こういう内容の申し入れであったわけであります。この申し入れに対して、内閣から官房長官を通じて次のような回答があったわけであります。この回答は五月十一日になされておりますが、いまの六項目の申し入れのうちの一及び二については、問題によっては公益的立場の専門家の数をふやす等の必要もあろうから、厳格に公、労、使三者同数とすることは困難な場合があるが、趣旨に沿うようにする。なお、専門家会議ないしは専門委員会の所掌する状況に応じ幅広く考えたい。それから総評申し入れの第三項目目については、異議なし。それから第四項目目の点については、審議会が各種安全監督行政につき十分に実情を調査、把握し、これに関する改善意見を積極的に出すことはけっこうである。五番目については、趣旨に賛成であるが、状況に応じて機動的に開催する必要がある。六番目については、趣旨に沿うよう努力する。こういう回答が内閣からなされておるわけでございます。  それで、この回答については、当然内閣からなされておる回答でございますし、もちろん労働大臣としても内閣の一員としてこれを確認しておられると思うのでございますが、この点をまず確かめておきたいと思います。  なお、現在内閣委員会のほうにこの産業災害防止対策審議会の事項については法案がかかっておりますから、内閣委員会においても、直接担当大臣である総理府総務長官等には質疑をいたしまして、さらに内容を確かめたいと思っておるのでありますが、労働大臣としてこれを確認しておられるかどうか。さらにこの確認の上に立って今後積極的にどのような努力をしようという心がまえでおられるか、その点をまず明らかにしていただきたい。
  51. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 総評から総理大臣に提出されました要望並びにこれについての官房長官の回答につきましては、すでに事務的に労働省へおりてきております。労働省といたしましては、今後その趣旨に沿って進んでまいりたい考えでございます。
  52. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、この審議会についてでございますが、この審議会は産業災害防止活動の充実をはかっていく、そういうための審議会ということにむろんその目的はあるわけでございますが、ただ私どもが感じておりますことは、労働災害、それから炭鉱、金属鉱山の鉱山保安、それから交通安全、さらにでき得べくんば公審問題をもひっくるめて、これら全体を総合しての統一的な対策というものをこの際どうしても推し進めてもららわなければならない。それがために実際にどういう活動をやっていくかということをこの審議会で審議をしていただくことはむろんでありますけれども、それと同時に、この際これら全体の問題をひっくるめての一種の基本法というべき方途というものがやはり樹立せらるべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。この基本法の制定があって、さらにそのもとに労働災害防止法というものが存在するというような、一口に言えばそういう体制というものがどうしても望ましい。そこで、特に労働大砲としては積極的にその点の考え方を持ってこの審議会の審議もわずらわせるというような方向に積極的な努力をすべきではないかという考えをわれわれは持っておるわけであります。そういう点についての見解を承りたい。
  53. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 産業に伴いまする災害につきましては、ひとり従来からの労働省所管の労働災害防止ばかりでなく、各省を通じて産業に関連するあらゆる安全衛生の問題も総合して考えるべきである。またそうした考え方に立ちまするというと、当然災害防止についての基本法というような考え方が出てまいると思うのでございます。そうした基本法が制定されるということになりますと、私はこれはまことに効果的なものであると考えるのでございます。しかしこうした考え方に向かって進むということになりますと、どうしても災害防止対策審議会で御検討をいただかなければならぬ問題でありますが、この御審議に際しましては、労働省といたしましても積極的に協力いたしたい考えでございます。
  54. 八木昇

    八木(昇)委員 まあひとつ積極的に本日の御答弁のように今後——これは短時日でできることではないかもわかりませんが、ねばり強く執拗に努力をしていただきたいと切実に念願をするわけでございます。  そこで、労働省としまして、私から言わせればまことにおそまきであったと思うのでありますが、というのは、昨年の十一月九日の総選挙のまつ最中に魔の土曜日といわれた日に三池三川鉱で四百数十名の死亡者が出る、同じその日に国鉄鶴見では百六十何名の人が死亡する国鉄事故が発生する、そういうような大惨害というものが起こる以前に、やはり交通安全、鉱山保安、それから一般的な労働災害全体をひっくるめて、もう少し真剣になった施策というものがあってしかるべきであった。生産性向上運動というようなものが非常な熱意をもって叫ばれ、それが推進され始めてからすでに十年近くたっておるわけでありますが、生産性向上運動、企業の合理化運動、そういうものにあわせて当然各種災害防止運動というものが同じ比重あるいはそれ以上の比重をもって進めらるべきであったにかかわらず、それが見るべき対策が抜本的に打たれなかったということがあの悲惨事を生んでおると私は考える。したがって、非常におそまきになったのでありますけれども、最近本年三月に至って労働省がとにもかくにも「労働災害防止上の問題点対策」なる案を作成して、中央労働基準審議会にはかられたということは、私も賛意を表するわけであります。しかし、これはまことにおそきに失しておる。しかも、その内容を見ますと、ああしたい、こうしたいというような内容でありまして、さらに非常に抽象的な部分がまだ非常に多い。そこで私は、労働省が中央労働基準審議会にはかったこと自体については賛意を表するし、また、そのはかられました案に対しては、基準審議会としても、労働者委員を含めて一応満場一致、大体ほとんどそのとおり賛成する答申をしておるわけでありますから、それ自体について、きわめて不満足とはいいながら、この際異論を申し上げることは差し控えたいと考えておりますが、しかし、この諮問された案、そしてさらに基準審議会から答申された案、これに関連して、この際六、七点承っておきたい、そして労働大臣から明確なお答えをいただいておきたいと考えるわけであります。  まず第一は、この中央労働基準審議会から労働災害防止対策について労働大臣になされました答申なるものの内容は、非常に広範にわたっております。そこで、この答申を受けて、これが実現のために労働省としては今後具体的にどういうふうにやっていくおつもりであるか、その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  55. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 五月の二十日の中央労働基準審議会労働災害防止に関する総合的、抜本的対策につきましての答申でございますが、この内容はかなり広範にわたっておるのでございまして、これを実現いたしまするためには、法令の改正を要するものもあり、予算措置を必要とするものもあります。さらには、行政運営の改善によりましてこれが実現をはかり得るものなどもあります。いずれにいたしましても、労働省といたしましては、取り急ぎこれらの各項目につきまして、具体的な案を取りまとめたいと思うのでございます。この具体案に基づきまして、問題によりましては、さらにあらためて中央労働基準審議会に御検討をお願いしなければならぬ事柄もたくさんあろうと存じます。いずれにいたしましても、法令の改正予算措置行政運営の改善、これらはできるだけ急速に実施してまいりたい、かように考えます。
  56. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、当然労働基準法を一部改正する、あるいは安全衛生規則を改正する部分、あるいは来年度の国の予算に関連するものとか、こう出てくるわけでございますので、これは非常に急を要すると思うのですけれども、特に予算関係あたりは、もう秋には政府予算案というものの骨予ができ上がる、こういうようなわけでありますので、時期的にはどういうテンポでこれをやろうとお考えになっているのか、お尋ねいたします。
  57. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 来年度から実施できるものが相当にあると思います。これらにつきましては、至急法案につきましては法案の準備をいたしますし、予算については予算の要求をいたしたいと思っております。特に法案の準備を要するものにつきましては、事柄の性質上、当然基準審議会でもう一度具体的な法案について御検討を願わなければならぬと存じますから、それは法案のでき次第送り込みまして御検討をお願いしたい、そうしておそくとも年内には結論を出していただきたいと思うわけであります。
  58. 八木昇

    八木(昇)委員 次に、第二番目の御質問をいたしたいと思うのですが、中央、地方及び業種ごとに、この際、安全衛生審議会といいますか、あるいは略称安全センターとでもいうべきものをぜひ設けてもらいたいという希望をかねて申し上げておったわけでございますが、これについてのお考えを述べていただきたいと思います。
  59. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、中央、地方の労働基準審議会に公、労、使三者構成による安全衛生部会を常設いたしたいという考えを持っておるのでございます。この部会には、必要に応じまして専門委員ないしは業種別の専門委員会などを置くことができるように措置したいと存じます。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕  部会の設置に関しまして必要な事項は、労働法準監督機関令、これは政令でございますが、この政令の改正によっていたしたいと存じます。
  60. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、ただいまの御答弁けっこうでございますが、やはり一番問題は、現場にきちんとした安全衛生のための委員会というようなものが漏れなく設けられるということが、実際問題としては一番重要だと私どもは理解をしておるわけであります。特に労働災害の最近の状況を見ておりますと、業種別には鉱業、林業、貨物取り扱い業、建設業、こういうのに多いわけですね。それから企業の規模別に見ますと、中小企業に多い。わけてもその小零細企業に、一般的に申しますと多いのですね。それから今度は労働者の年齢別あるいは習得技術別といいますか、そういう面から見ますと、低年齢層、そうして勤続年限も比較的短くて、当然不熟練労働者というものに割合が多い。それからそれを今度は本工、社外工という形でこれを区分けをしてみると、どうしても臨時工とかあるいは社外工というようなのに多い。大体大ざっぱにそういうことが言える、こう思うわけです。そこで、どうしても職場段階に安全衛生委員会というものを漏れなく設置させるように義務づけるべきだ、しかも、それはもう一言にして言えば基準法の適用事業場全部、従業員十人以上が働いておるような事業場には全部この安全衛生委員会というものの設置を義務づける、こういう措置をぜひこの際すべきだというふうに考えるのですが、その点についてお答えをいただきたい。
  61. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 災害の最も多く発生するところへ重点を置くという趣旨から考えましても、安全衛生委員会労働者十人以上を使用する事業場に強制的に設置するように義務づけるということは、将来の理想としては私そうありたいと思っておるのでございますが、たださしあたりの措置といたしましては、少なくとも災害が特に多発しておりまする業種を中心といたしまして、使用者災害防止に関する事項につきまして関係労働者意見を聞くために、労働者の選んだ委員が参加しております安全衛生委員会を設置することを義務づけるような措置を講じたいと考えております。この安全衛生委員会の設置に関する必要な事項は、労働安全衛生規則を改正して、これにはっきりした規定を置きたいと思います。なお、安全衛生委員会を設けるべき業種、規模、委員会の構成等、その運営の基準につきましては、重ねて中火労働基準審議会安全衛生部会に御検討をお願いしてはどうかと思っております。
  62. 八木昇

    八木(昇)委員 ただいまの御答弁でまあやむを得ないと思うのですが、しかし将来はぜひどんな小さな企業あるいは職場においても、安全衛生委員会というものは人が労働するところには必ずある、こういう形にまでしていただきたいと考えるわけであります。  そこで、四番目の質問ですが、現在の制度によりますと、安全管理者、衛生管理者、これらは現行の制度では常時五十人以上の労働者が働く事業場に設置しなければならぬという制度になっておるわけであります。安全衛生委員会を全部どういう職場にも設けるということは不可能にしても、少なくとも安全管理者、衛生管理者ぐらいは十人以上の事業場に全部配置するというようなことに、これはぜひともしてもらいたいという考えを持っておるわけですが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  63. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在は安全管理者、衛生管理者は常時五十人以上ということに相なっておりますので、これをより広範に設置させるような措置を講じたいと思います。また都道府県労働基準局長は、必要あると認めた場合には、法令上安全管理者の選任を義務づけられていない事業につきましても、特に安全管理者の選任を命令することができるようにいたしたいと思います。  なお、安全管理について、事業の規模によりその人数をふやすということをいたしすとともに、その際には主任安全管理者をだれにきめるというこの主任安全管理者の選任を義務づけるようにすべきだと思います。安全管理者、衛生管理者に関する必要な事項は、労働安全衛生規則を改正して規定するような措置を講じたいと存じます。
  64. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、いまの御答弁に関連してこの際ちょっとつけ加えて聞いておきたい点は、現存の規則では常時五十人以上となっておるのを、今後はより広範に設置させるようにしたい、こういうお答えですが、より広範にというのは一体どの程度にお考えになっておるのか、その点をちょっとお答えいただきたいということと、それから、次は五番目の質問ですが、先ほどお答えのように、今後は安全衛生委員会というものが各事業場にできていくわけでございますが、その安全衛生委員会の議を経て産業災害防止規程というものの作成を義務づけてもらいたいと私ども考えておるわけでございます。というのは、現在の状況では就業規則というのがありまして、就業規則でいろいろこまごましたことを規定しておりますが、その就業規則の中で、安全衛生に関する部分というのはもうほとんど何も書いてないのです。何か抽象的なことがちょっと書いてあるだけ。こういうことになっておるので、それではいけない、でき得べくんば就業規則とは別に産業災害防止規程というものは単独のものを、いかなる事業場においてもこれを設けるということにしてもらいたいと思うのであります。もしそれができないまでも、就業規則の中で産業災害防止規程部分というものを明確にして、そうして、その中に書き込むべきうたい込むべき事項の基準は適当な機関で明瞭に示してもらわなければならぬというふうに考えておるわけでございますが、その点についてのお答えをいただきたい。
  65. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まず安全管理者、衛生管理者の選任を義務づける事業場の規模の問題でございまするが、規模につきましては、業種により一律に決定することが適当かどうか、これはさらに検討の余地があるものとは考えますが、大体におきまして、やはり制度として拡張いたしてまいる事柄でございますから、階段的に進めるという意味で、さしあたりは三十人程度を目安と考えておりますが、具体的には中央労働基準審議会で御検討いただきたいと思っております。  それから、個々の事業場におきまする安全衛生に関する基準としての就業規則の災害防止部分の取りきめについて、安全衛生委員会検討をすることを義務づけられてはどうかという点でございます。災害防止部分を規定するにつきましては、まず具体的な基準の確立ということが先決問題として大事であろうと思います。これにつきましては、災害防止協会の設置される業種については同協会防止規程をつくることが適当でございます。その他の災害多発の業種に関しましては、その基準の大綱を労働基準審議会の安全衛生部会で相当立ち入って作成して基準を示すことが必要であろうと思っております。これはぞひ基準審議会に御勉強願いたいと思っております。これらの基準の確立と見合いまして、一定の業種、規模の事業について災害防止規程を作成することを義務づけるようにいたしまして、この災害防止規程の作成に関しては労働安全衛生規則を改正して適当な規定をいたしたいと思っております。もとより安全衛生委員会というものを設置いたします以上、これに実質的に十分な協力の道を開くことは考えなければならぬと思っております。
  66. 八木昇

    八木(昇)委員 一番最後のところの御答弁の意味は、労働災害防止規程は安全衛生委員会の議を経て基準監督官庁に届け出る、そういう手続をするという意味でございますか。
  67. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 そういう趣旨で中央審議会検討していただきたいということでございます。
  68. 八木昇

    八木(昇)委員 国鉄総裁なども来ておられて時間がないそうでありますから、あと項目だけとりあえず伺っておいて、小林委員とかわって、あとまた若干質問したいと思うのです。  第六番目は、私どもかねて非常に強力に主張してきたのでありますが、労働災害防止の仕事は事業主使用者が本来やらなければならぬ仕事だ、それはそうだ。しかし、ともすれば事業主というものは企業間の競争があるし、できるだけ諸経費を省きたいという本能を当然持っておるわけだから、その事業主労働災害防止の仕事を義務づけると同時に、その労働災害防止についての事業主の活動を労働者が監視する必要があるということをかねて強く主張してきたわけであります。なぜかといいますと、たとえば三池の大災害の場合を考えても、三池の会社側のほうは鉱山保安に関する事項については団体交渉を事実上拒否してきたという経過もある。団交すら拒否をしている。おれだけにまかせろということでやってきたわけだけれども、事実はああいう大災害を起こしておるということを考えると、当然労働災害の問題については労働者使用者と話し合う団交権を明瞭に確立するだけでなく、さらに加えて使用者のやるところの労災防止活動を労働者が監視する必要があるということを強く主張してきたわけです。そこで労働組合代表者の参加する監視員制度、最近安全パトロール制度ということがよくいわれておるのでありますが、そういうものを設ける考えがこの際労働省にないかどうかという点について見解を述べていただきたいと思います。
  69. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 安全について監視員制度が必要だということは私どもまことに同感でございます。その監視員をどういうふうな人たちから選ぶか、またどういう形でこれを運営するかという点についての問題だと存じます。労働省といたしましては、監視員制度については現在安全指導員などによりまして職場の巡回をいたしておるのでございますが、今後はその実効を期しますために、まず第一に資格について再検討をいたしまして、労働組合の代表者をもこれに入れたい。そうしてこれらの監視員については必要に応じて適当な研修を行ないたいと思っております。  第二に、巡回は主として中小企業を対象といたしまして、労働基準審議会の議を経て作成した一定の計画に基づいて行なうようにいたしたいと思っております。  第三に、指導員はその巡回の際に、基準法違反の事実を発見した場合には、監督機関に通報する等の措置を講じたい。それで監視員制度の運営につきましては、できるだけ早く改善をいたしたいと考えております。
  70. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで現在あるところの安全指導員といいますか、そういうものは全国に約三千名くらいの人が任命されておると聞いておるのでありますが、聞くところによりますと、手当が年に千円だそうです。そして実際は有名無実と申しましょうか、そういう状態にあるということをわれわれ聞いておるわけであります。そこで労働組合の代表者をこの際安全指導員にしたいという話でありますけれども、当面一体何人くらいを考えておられるのか。またその指導員が出かけていっても、指導員の法律上の権限というものが必ずしも明確でありませんから、事業主によっては立ち入りをお断わりしますというような場合もあり得るわけであります。そういうような場合に、実際問題として一体どういうふうにやられるおつもりであるか、そういう点をもう少し明確にお聞きいたしたいと思います。
  71. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 予算等の関係もございますので、事務当局から念入りにお答えさせます。
  72. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 現在安全指導員は御指摘の人数程度が置かれておりますが、労働組合の代表者については今後数百名程度を考えております。しかしこれは業種別にいろいろ事情があることでございますので、具体的な人数等については、今後中央労働基準審議会検討をわずらわしたいと考えております。また手当等につきましてきわめて僅少であるという御指摘もございますので、手当の改善等につきまして、今後来年度の予算等を通じまして改善いたしますように極力努力いたしたいと考えております。
  73. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで最後に、これは局長でけっこうでございますが、現在労働基準監督官に対する申告制度というものがあるのです。これはわれわれ労働者のほうも関心が薄いために、そういう制度があること自体を労働者もほとんど知らない。また労働組合もそういう制度があることの効用を労働者に啓蒙していないという点もあるわけでありまして、それはわれわれのほうが将来努力をしなければならぬと思うのでありますけれども、実際に職場に基準局の監督官が出かけてきたような場合でも、この人に対して何らかの申告をしようと思っても実際問題としてこれがほとんど行なわれがたいという実情が多いようであります。いつ監督官が来ておるのか、申告しようとすればどういう時間にどういう方法でこの申し川をすればいいのかというようなことについても、労働省自体、職場の労働者に対する周知方が不十分である。これらの問題について、もっとこれを実際の用をなすように今後してもらわなければならぬと思うのですが、その点についてどういうお考えかを伺いたい。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは、私どものほうでも、実際に申告を容易ならしめるよう、今後のやり方について具体的に研究をしてみたいと思います。
  75. 八木昇

    八木(昇)委員 なお局長のほうから具体的に何かいま考えがあれば……。
  76. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の申告制度は労働基準法の百四条に定められておるところでございまして、「申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。」ということで、使用者の差別取り扱い禁止の規定までも置いておる次第でございます。最近の傾向として、申告はかなり増加の傾向にございます。しかしながら、このせっかくの制度が活用されないということについてはいろいろ問題がございますので、三十九年度における労働基準監督行政の基本方針にもこの申告制度の活用を示しまして、第一線の監督機関においてこれを末端まで浸透いたしますように努力すると同時に、労働関係団体等につきましても協力を求めたい、かように考えておる次第でございます。
  77. 小林進

    ○小林委員 関連で申し上げますけれども、国鉄の総裁はILOの質問のときにもおいでにならなかった。前から出席を要望しておりましたけれども、あなたはこのときにもおいでにならなかった。それから五月十九日の社会労働委員会における労働災害防止に関する法律案の審議、このときにも運輸大臣と総裁の出席を要望しておいたが、このときにもおいでにならなかった。いまこの労働災害防止に関する法律案が上がるのです。いま上がるときに、私どもが出席をしてあなたに質問しょうというときに、あなたがおいでにならなければ、結局来ないっぱなしという形でこの労働災害防止法が上がってしまう。そういう形じゃ、われわれ委員としてそれを見のがすわけにはいかない。そういうわけでありますから、実は私は、同僚委員の非常に重大な質問のさなかにそういう関連質問をやりたくなかったけれども、自分の気に入らない委員会ならうまく逃げて逃げおおすという考え方であっては、これはどうも国会の審議はうまくいきませんから、それでいまも私は来てもらった。来てもらったらあなたは、参議院の運輸委員会で一時からやるから十分か十五分でがまんしてくれ、こういう御要望なんでありまして、実に私は不満でたまらぬのであります。そうしてこの五月十九日の私の速記録を見てください。あなたに対する質問は全部空白になっています。労働大臣がかわってお答えになっているけれども、最後にいったら、労働大臣は、国鉄の問題は私にもよくわかりませんと速記録に書いてある。労働大臣がわかりませんと言われるならば、どうしても国鉄の問題はあなたに聞かなければならないし、監督官庁の運輸大臣にも来てもらって、所見を聞かなければこの法案の仕上げにならぬ、こういうわけで来ていただいたわけでありますけれども、せっかく本会議が開かれるので法案も上げなければならぬ。私どもも、実に残念でありますが、やむを得ないこととして、そこで人の質問に迷惑をかけるわけにいきませんから、かいつまんで申し上げます。  三河島事故とかその他大小の事故を含めれば、カラスの鳴かない日があったって、国鉄の汽車がダイヤどおり動いた日なんかありませんよ。その原因が一体那辺にあるかということをお聞きしたいのが第一点です。これは労働大臣との質疑応答の中でわかった。第一は過密なダイヤをつくったことに原因がある。第二番目には、いわゆる安全施設が不足をしておるために事故が多くなっている。これが明らかになった。この原因に間違いありませんか。私は限られた時間ですからあなたの答弁も含めて言いますけれども、これが間違いがないならば、一体過密ダイヤを組んだのはだれなんだ、安全施設の不足をそのままに放任しておいたのはだれなんだ、この責任が明らかになららい以上は、何ぼたったところで国鉄の人命が失わはる事故はなくならないのじゃないか、私の申し上げた原因に間違いないならば、その責任者に一体国鉄はどういうふうに責任をとらせているか、どのように処罰をされたかということを私はお聞かせ願いたいと思う。
  78. 石田礼助

    ○石田説明員 私は三度呼ばれたが一ぺんも出なかった、こう言うのだが、私の記憶するところによると、欠席いたしましたのはたった一ぺんで、これもからだのぐあいが悪かったという不可抗力によるものでありまして、決して回避したとか、あるいはなまけた次第ではありませんので、その点はどうぞ十分に御了承を願いたい。  いまの過密ダイヤの問題でありまするが、三河島事件にしても、あるいは鶴見事件にしても、とにかくあの事故があれだけ拡大した一大原因というのは、確かにこれは過密ダイヤであります。この過密ダイヤというものの原因はどこにあったかというと、つまり国鉄というものは戦争中にぶちこわされた。終戦後においてはろくすっぽ修繕せぬ。また輸送需要がふえておるにかかわらず輸送力の増強もしない。一体だれがこういうことにやったのか。これは過去における立法者がやった。予算を請求したってくれやしない。運賃の値上げをして自己の収入をふやして、それによって修理もし、輸送力をふやそうとしても、一向それも承認してくれなかった。結局、忌憚なく言えば、過去における投資の不足の堆積がああいう過密ダイヤということになった。これはそれだから、だれの責任かといっていまここで申し上げることはむずかしい問題で、政府責任であり、国会責任じゃないか、あるいは同時にこれは国鉄の責任だ、そうするとすべての責任だ、こういうことになると思いますが、それを解消すべく努力し始めたのが昭和三十二年。これもしかし修理がおもであって、輸送力の増強というものには手が回らぬ。これは予算関係です。しかも一方に経済の発展というものはしんしんとして進み、あるいは輸送需要というものはふえる。それで輸送力というものはふえない。そこにおいて国鉄としては、輸送の任務を果たすべく過密ダイヤを作成して、またさらに、スピードアップしてこれに応ずるために最善の努力をした、こういうことなんで、これをあたかも国鉄だけの責任であるがごとくに言われるのは、私ははなはだ心外であります。どうかその点は御考究を願いたいと思います。  それから安全施設の問題でありまするが、確かに、これだけの安全施設においては欠けているところがある。これは過密ダイヤと同じように、予算関係そのものの原因もありまするが、最近においては、三河島事故を起点といたしまして、私は非常にこれは進歩していると思う。これは幸いに三十八年度の予算なんぞにおきましても、大蔵省はほかの予算は削ったが、この安全輸送については、われわれが要求したものだけは十分にやる、一〇〇%くれるということになって、最近における安全輸送の設備というものについては、非常に進歩しているということを私はここで確言申し上げて間違いない。特に一番問題になるのは踏切事故、これも特に複線等で事故が起こって、連鎖反応が起こって大きな事故になるようなところに対しては、三十九年度において全部するだけのことはする。要するに、自動車の通る道を整備して、通るところに遮断機をつけるとか適当な設備をつけてこの事故の発生を防ぐ、こういうようなことでありまして、この安全設備についてさらに申し上げたいのは、運転の安全設備であります。つまり自動停止機、自動警報機というようなものが、最近相当の速度をもって施設をやっているのでありまして、これは将来において事故の減少に寄与するところ大なるものがあるというふうに確信しております。
  79. 小林進

    ○小林委員 過密ダイヤを組んだのは政府責任じゃないのです、歴代の責任じゃないのです。これは国鉄における管理運営の問題である。公社における管理者が、管理運営の一環として、そういう危険を承知しながらも過密ダイヤという計画をつくるから、事故が起きたのじゃないですか。あなたはいま荷物が多いとおっしゃった。その荷物が多いということで人の命を粗末にしたからです。人の命よりもその多い荷物を運ぼうというところに、あなた方の資本主義的なものの考え方がある。荷物を早く運ぼうという考え方が先に立つから、人間の命を大切にしようという考えがあと回しになった。それで事故が起きたのです。老朽になって政府が金を出さなかったら、その老朽のダイヤに合い得るだけの、そのレールに合い得るだけの、あなた方はダイヤを組めばいいじゃないですか。いかに荷物がふくそうしようとも、人間の命を危険にさらしてまで、そんなに荷物を運んでくださいとはだれも国民は要求しておりませんよ。私はヨーロッパ諸国を回ってまいりました。社会主義の国を見てきた。ちょっとでも天候が悪ければ、飛行機は飛ばしませんよ。ちょっとでも気候が怪しいとかあそこに事故があるといえば、汽車は動きませんよ。人命の尊重については、どんなに急用があろうが、どんなことがあろうが、社会主義の国家では——社会主義の国家なんてあなたはきらいでしょうけれども、社会主義国家なんか実に人命尊重については至れり尽くせりだ。百分の一、千分の一でもあぶないと思ったら、飛行機は飛ばしません。車なんて動きません。断じて過分の荷物なんか積みませんよ。それをあなた方は、そういう過剰のものを積むから問題が起きてくる。しかも事故が起きてくれば、だれが見ても過密ダイヤの結果だ、安全の設備を怠った結果だといって、その過密ダイヤを組んだ責任者が、一体刑事責任を問われたり監獄に引っぱられたりしたことがありますか。せいぜい行政処分で、右から左へ左遷されるか右遷か、そんな程度で終わっているのじゃないですか。私はこの前も労働大臣に、ここで、一体ほんとうに、国鉄の事故をなくしたいのならば、こういうような事故を起こしている最高責任者である国鉄の総裁あるいは副総裁も、これをみんな行政処分にして首を吹っ飛ばすとか、刑事責任にして監獄にぶち込んだらいい。ここまでやったら、国鉄の事故は半年たたぬうちになくなりますよ。どんなに事故が起きたところで、国鉄の総裁は処分を受けたということはない。刑事責任一つ受けたわけじゃない。二十年、三十年、四十年、営々として働いている機関士が、赤だか黄色だか青だかの、そのダイヤを見誤ったとか、やれものの注意力が足りないといって、一生を棒に振るようなそういう人の処分だけに力を入れておいて、そしてあとは、あなたはお泣きにならなかったけれども、前の総裁は事故が起きれば遺族のところへ行って、あるいは慰霊祭のときにハンカチを持って涙をふいている。国鉄の総裁は泣くのが商売なのか。テレビを見ながら大衆は、事故が起これば泣くのが国鉄総裁の商売ですかと言っている。そういうことを続けてきたからこそ問題が起こる。私のこの質問に対して、歴代の政府が金を出さぬからとか、歴代の国の責任だとか、顧みて他を言うようなことでは、まだまだ人間の命というものをまともに考える姿勢じゃないと思うのであります。私の言うことに間違いがあるかどうか、よく考えてください。
  80. 八木昇

    八木(昇)委員 関連しまして、鶴見事故のとき、百六十川名のお客さんがなくなった、この合同慰霊祭の際、慰霊をされる人の中に運転をしておった運転者は除かれているそうですか、そうでしょうか。はたしてそれは運転者個人のミスであったかどうか。かりにミスであったとしても、合同慰霊祭の百数十名の中から運転者を除くのですか。
  81. 石田礼助

    ○石田説明員 あとのほうからお答えいたします。  運転手に対する慰霊祭というものは、一緒にはやりませんが、あとで丁重にやっております。決してこれをわれわれはゆるがせにしたわけではない、そういうことだけは言っておきます。(「なぜ一緒にやらないか」「差別的な考えがあるからだ」と呼ぶ者あり)別に差別的な考えはありません。それは国鉄の殉職者とお客さんというものとを別にしただけの話で、一緒にやらなければならぬという必要は私はないと思います。  それからさらに、過密ダイヤの点につきましては、確かに大きな事故は過密ダイヤ、過密ダイヤの原因というものは輸送力の不足、輸送力の不足というのは予算の上からきている、こういうことでさっきお答えしたのであります。何もわれわれが好んで過密ダイヤをやっているわけじゃないのです。国鉄というものは、日本の輸送需要を満たすべく、輸送の責任を持っている。だからしてわれわれは、安全と考えることにおいて、安全と確認する程度においての過密ダイヤをやっているのであって、決して危険を予期してやっているわけじゃない。あやまってこういうことになったので、これはもう少し寛大な気持ちを持ってお考え願わなければならぬと思います。
  82. 小林進

    ○小林委員 これは基本的な問題ですが、そういう、必要に応じては人の命を幾ら殺してもよろしい、そこから過密ダイヤを組んでやるのだという、そういう考えでいられる限りは、われわれがここで労働災害防止法案なんかつくって、一生懸命になって災害防止を考えたところで全くむだだ。あなたたちがそういうお考えでいらっしゃる限りは、全くむだだと私は思う。けれども、これはしかし重大問題でございます。きょうは時間もないからなんでありますが、これは重大問題だ。運輸大臣、あなたは監督官庁として、そういう過密ダイヤを組んだり、そして安全の装備を怠ったりしている責任者——いまも言うように、運転手はみんな死んでおりますよ、死なない運転手はみんな処罰を受けておりますよ。その根本の原因をなした過密ダイヤを組んだり、安全の装備を怠ったりしたのをそのまま見のがしていたような責任者を、あなたは監督者として処罰したことがありますか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  83. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 その責任の軽重によって適当にやっていると考えております。
  84. 小林進

    ○小林委員 聞こえませんな、何とかおっしゃったが聞こえませんでした。
  85. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 責任の問題につきましては、その事件の軽重によりまして、適当に国鉄総裁はやっておると私は確信をいたしております。
  86. 小林進

    ○小林委員 私は、こういうような事故に対する——三河島だけではございません、国鉄だけではないのでございまするけれども、そういう経営者や管理者や最高の責任者が、いま国鉄総裁がいみじくもおっしゃったような、そういう姿勢やそういう考え方でいらっしゃる限りは、断じて事故はなくなりません。でありまするから、この問題は、私はきょうは関連でありまするから終わりまするけれども、国鉄総裁もいま少し人間の命を大切にするという基本的な考えになっていただくまで、私は場所をかえてこの問題を徹底的に追及いたしたいと思います。
  87. 石田礼助

    ○石田説明員 われわれ国鉄人は、人命の尊重に関しまして決して人後に落つるものでないと考えております。たとえば国鉄における最近の傷害事故の件数を御参考に申し上げますと、三十八年には四千六百五十三件、数としては非常に多いのでありまするけれども、三十四年に比べると五六%。また殉職者の数でありますが、戦時中は問題にならぬのでありますが二千人以上、終戦当時においても毎日一人ずつの殉職者が出ておったのでございます。その後極力いろいろの手段を講じました結果、年々ステディに減ってまいりまして、三十八年度においては八十八人であります。それで、また傷害度数の率から申しましても、日本における輸送業務をやっておる民営の鉄道、あるいは一般貨車、貨物自動車輸送、こういうのに比べると国鉄が一番少ないというぐあいに、いかにして傷害事故を防止するかというこの対策、そしてまたその傷害を受けた者に対する取り扱いというものに対しては、国鉄としては決して人後に落ちないということを申し上げておきます。
  88. 小林進

    ○小林委員 私は時間がありませんからやめまするけれども、あなたが先ほどおっしゃった、ここへ呼ばれても一瞬休んだだけで、あとは休んだことがない、これもうそだ。五月十九日には、私はちゃんと出席を要求しても、またおいでにならない。ILOの場合には、あなたは前の日だけは来られたけれども、次の日はかぜを引いてお休みになったということだけれども、もしあなたがそうおっしゃれば、あなたの部下がみんなうそを言っておる。大体、私は言いますけれども、その事故防止の数字だって、そういうような、ここで大手を振って、国鉄事故は他に比して少ないなどというおこがましいことを言われるような現状じゃありませんですよ。諸君がみんな総裁にそういうものを読ませるので、あとで私は言いますけれども、この前も副総裁に言っておいた。あらゆる公社の中で国鉄が一番ふまじめだ。理事者の中で、国鉄公社の理事者ほどふまじめな者はない。三河島事件が起きておるときにも、選挙運動に飛び回っておる理事者がいる。その証拠がある。あなたはもう少し足元の問題を整備していらっしゃい。私は具体的に次の委員会で全部問題を出してお伺いしますけれども、事故の問題も、全部私には資料があるのだから、問題をやりますよ。なおこの会議において、運輸政務次官、労働政務次官、それと他の政務次官にもここにおいて資料を要求しても、その資料を出さないのは国鉄だけだ。そういう状況でありますから、いま少しあなたの足元の問題をきちっときめてやってきていただきたいと思います。  私は、きょうはこれで終わります。
  89. 八木昇

    八木(昇)委員 いよいよ時間が迫ってきておりますので、ほんとうはまだ私も、七つ、八つ労働大臣に確めておきたいと思うのですが、三つばかりに縮めまして、あと十分ばかりで終わりたいと思っております。いま上程されておりますこの労働災害防止法案に関連して、二、三点お伺いいたしたいと思います。  まず第一点は、当然、この労働災害防止するためにはILO百十九号条約、防護装置の不十分な機械の使用、売買、賃貸の禁止に関する条約の批准というものが行なわれねばならぬと思うのでありますが、その批准をするということはたびたび御答弁になっておりますが、これはいつ百十九号条約の批准をされるおつもりであるか、お答えいただきたいと思います。
  90. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ILO百十九号条約でございますが、この条約は、作動部分上の突起部分並びに危険を与えるおそれのある動力伝導装置及び調速装置に適当な防護が施されていない機械の販売、賃貸及びその他の方法による移転並びに展示を禁止をするとともに、危険部分に適当な防護装置が施されていない機械の使用を禁止いたしたものでございます。この条約は、労働災害防止上、有効かつ適切であると考えられるものでございまして、わが国におきましても、労働基準法その他の関係法令により、その内容とする趣旨はすでにおおむね実施されているところでありまするが、適用範囲などにつきまして若干問題がございまするので、国内関係法令の整備につきまして中央労働基準審議会検討を求めまして、それを待って批准の運びに進むべきものであると考えておるのであります。ただし、現在におきまして、この条約をすでに批准いたしましたのはグアテマラ一国だけだそうであります。しかし有効適切な条約でございまするから、できるだけ早く批准をいたすようにいたしたいと思います。
  91. 八木昇

    八木(昇)委員 それについてももっと意見を言いたいのですが、省略いたします。  そこで、いま上程中の労働災害防止法案でありますが、まことに大きな名前がついておるのですが、この中身を見ますると、もうまことに単純なもので内容二つ一つは、労働大臣が五カ年ごとに労働災害防止基本計画をつくり、さらに毎年その実施計画をつくるというのが一つですね。もう一つ内容は、使用者事業主団体によるところの労働災害防止協会をつくるというのが、二つだった。この法律はこれだけのものですね。内容を見るとその二つである。しかも第一の、労働大臣が五カ年ごとに労働災害防止計画をつくる云々というのは、今日すでに実施をされておる、七年も前から。最初に第一次の労働災害防止五カ年計画が行なわれました。それから新労働災害防止五カ年計画が去年から実施されて、ことしが二年目だというわけで、何もこと新しい問題じゃない。そうすればこの労災防止法なるものは、これは労働災害防止団体法といいますか、単純なそういうものにすぎない、まあ私どもはそういうふうに理解するのであります。したがって、第一、名称が大それておる、掲げておる第一条の目的の項目が、これまた大それておる、まあ私どもはそういうふうに考えておるのであります。その点について、ひとつ大臣の御見解を承りたい。
  92. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働災害防止につきましては、たびたび申し上げましたとおり、現状はこの法案だけで足れりとするものではなく、労働行政といたしましては、広範かつ根本的な再検討の上に立って、法令につきましても全面的に整備する必要があるのでございます。その全般の構想から申しますと、今回の法案で取り扱っております事柄はそのうちの一部にすぎないのでございます。その点から考えると、名前が大き過ぎるという御批判もわからないわけではございません。ただ私どもは、法律をつくるわけでございますので、事務的にこれを取り扱うにあたりまして、便宜上法律の名前、こういう意味で掲げたものにすぎないわけでございます。
  93. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、あと二点聞きたいと思います。  そのうちの一つですが、これはいま私が申し上げましたように、昭和三十三年に廃業災害防止五カ年計画というものが立案をされたわけです。その計画は五カ年後には労働災害を半減するという目標——労働災害を四十三万件に減らしたいということであったのですが、事実五カ年たった後の昭和三十七年末を見ると、半減どころか、災害が八十万件くらいあったのでしょう、表を見れば正確ですが……。うたい文句だけで全然実効が上がっていない。むろん災害千人率というのは若干下がっておるようでありますが、計画とはあまりにもほど遠い。問題にならない。それから、去年から新産業災害防止五カ年計画というものを設定したわけです。それで過去の五年前のものがあまりにも恥ずかしいような結果しか川なかったものだから、今度は災害率を半減させるということに、少し手前遠慮をした計画になっておるようであります。そこで、今度この労災防止法によって、災害防止の基本計画、五カ年計画をお立てになる、そうして将来災害を半減する、こうおっしゃるのだけれども、一体その自信がありますか。今度は間違いなしに災害を半減させてみせるというきめ手は一体何ですか。いろいろうまいことばの表現での答弁はできるかもしれませんよ。ですけれども、いまのこのようなことでは、五年たっても災害件数は半減しておらぬじゃないかとわれわれからきっとやられますから、間違いなしに今度は半減させてみせるというきめ手は何かということを明快に答えてください。
  94. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 今後における計画達成の手段といたしましては、具体的に問題を処理するという一言に尽きるかと思いますが、さらに申し上げますと、第一には災害防止のためにとるべき手段、それから対象としまして、産業別でははなはだきめが荒うございます。それを規模別に、産業別にとらえるというとらえ方——先ほど冒頭の御質問にもございましたように、中小企業に多発しておるという点から、産業別をさらに規模別に下げまして、重点をとらえる。それから第三には、その対象として作業内容についてまで掘り下げるということでございます。たとえば金属製品については、プレッシャー災害、電離放射線障害、有機溶剤災害、騒音といったような各種の事項が明らかにされておりますが、そういった計画実施対象を明確にしつつ、手を打っていきたい。しかも毎年実施計画をつくりまして進めるのでございますから、その具体性、実効性につきましては、従来とほとんど比較にならぬほどの状態ではなかろうか。それらの内容はすべて労働大臣が告示するという形式をもちまして一般に呼びかけ、労使の広い御協力を得たいと考えておる次第でございます。精神的には労使の御協力ということが最も大事であろうというふうに考えておる次第でございます。
  95. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは最後にお伺いをいたします。  この法案の四十七条にあります参与の事項については、先般滝井委員の質問に対して労働大臣がお答えになった点を確認いたしまして、あらためて問いただすことはこの際はやめたいと思いますが、そこで船員、漁民、こういう人たち災害というのが相当あるわけであります。これは今後どういうことになっていくのか、この労災防止法、それからその他各種の施策との関連、これを最後に承って終わりたいと思います。
  96. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 船員につきましては、船員法適用のある者としからざる者とあるわけです。そういう点におきまして、船員でかつ労働基準法上の災害補償問題が生じます者、労災保険の対象になっております者、これにつきましては、従来同様労災保険の対象として、給付内容につきましては先般の給付引き上げと関連して処置したい。農民につきましても、農民の中での雇用労働者の処遇につきましては、同様労災保険の対象といたしまして、災害補償の実効ある実施をはかっていきたい、かように考えておる次第であります。
  97. 八木昇

    八木(昇)委員 終わります。
  98. 田口長治郎

    田口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  99. 田口長治郎

    田口委員長 ただいま委員長の手元に、本案に対し、澁谷直藏君、八木昇君及び吉川兼光君より修正案が提出されております。
  100. 田口長治郎

    田口委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。八木昇君。
  101. 八木昇

    八木(昇)委員 労災防止法案に対する自由民主党、民社党、社会党三党共同修正案について、その提案の趣旨を説明いたしたいと思います。  先ほど来、私御質疑をいたしましたように、この労災防止法というものは、労働災害防止対策に値しない内容のものであります。私はきわめて遺憾に思っておるところであります。しかしながら、労働災害に対する対策は非常に広範にわたるわけでありますし、一朝一夕にして直ちにこれが完ぺきを期するということもなかなかむずかしい問題ではないかと思います。そこで関係者の非常な努力によって、内閣のもとには産業災害防止対策審議会が、その内容を非常に強化したものとして今後も存置されるということになりましたし、また労働省当局としても、今後の労働災害についての真剣な取り組みの姿勢も見えますし、またそれぞれ相当具体的な対策を大臣から明快にお示しをいただきましたので、この労働災害防止法案については、次のような点を修正の上、賛成をすべきものではないかとわれわれ考えるのであります。  その修正の趣旨は、この労災防止法は、その内容となっておるおもな点は労働災害防止団体に関するものであると私ども考えますので、そういう内容にふさわしいような形に修正をするという趣旨であります。  修正案文を読み上げたいと思います。    労働災害防止に関する法律案に対する修正案   労働災害防止に関する法律案の一部を次のように修正する。   題名を次のように改める。    労働災害防止団体等に関する法律   第一条中「労働災害防止する」を「労働災害防止に寄与する」に改める。   第三十八条に次の一項を加える。  4 労働大臣は、第一項の認可に関する処分又は前項の規定による変更の命令若しくは認可の取消しをしようとするときは、中央労働基準審議会意見を聞かなければならない。   附則第三条、附則第七条から附則第十条まで、附則第十二条及び附則第十三条中「労働災害防止に関する法律」を「労働災害防止団体等に関する法律」に改める。以上でございます。各位の御賛成をお願いいたします。
  102. 田口長治郎

    田口委員長 修正案について御発言はありませんか。     —————————————
  103. 田口長治郎

    田口委員長 御発言がなければ、これより労働災害防止に関する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  申し出がありますので、これを許します。谷口善太郎君。
  104. 谷口善太郎

    ○谷口委員 三分間で反対討論をやります。実は私、病気をしておりまして、労働大臣にたいへん御迷惑をかけて、大いに質問しようと思っておったのですが、時間がなかったので、無理に委員長にお願いして反対討論の時間をいただいたわけであります。簡単に読みます。  労働災害が毎年増加しつつあることは、本委員会の審議を通じましても明らかになりました。政府の統計によりましても、昭和三十年には五十五万九千余件、そのうち死亡者が四千四百九十五件の労働災害がある。三十六年にはこれが九十六万七千余件にふえております。こういうふうにして毎年災害がふえておりますのは、災害がふえてないというふうに、いろいろな資料やあるいは発言で言っておられる政府の言明とは違っている事実があるわけであります。労働災害のこのような累年にわたる増大の原因は何か、一口に言えば、日米経済協力に基づく軍国主義復活のための経済的土台を築く池田政府の所得倍増政策、人民を犠牲にして経済の拡大をやり、独占集中、技術革新あるいは残酷な合理化政策にあると思うのであります。一々例をあげませんけれども、一つのことを申し上げましても、たとえば、三井三池の大災害のごときは、採炭夫の能率を三倍近くにしたにもかかわらず、保安要員がむしろ三分の一くらいに減らされるということが、坑内に炭塵が充満する結果を生んで、爆発が起こったということは天下周知の事実であります。国鉄におきましても同様な事情がございまして、人間の能力を越えた過酷な過密ダイヤを組んだ上に、独占メーカーの利益のために、使っておりましたA型車警なるものをやめて全機関事に危険なS型車警を採用する、これはもう従業員諸君がすべて反対をしているのでありますが、そういうことをやっているというようなやり方でおりますが、こういうことが事故を起こす必然の事態であろうと考えておるのであります。官庁や商社、あるいは保険、銀行、貯金同等におきます電子計算機を用いる事務の機械化、こういうやり方でも新しい職業病が起こってきている。たとえば、キーパンチャーのごときは、全く人間に対する労働じゃないのでございまして、一つの消耗品のような形で酷使されている。総理府統計局の中のキーパンチャーの実情を見ましても、実にこの状態が明らかでありまして、安い賃金の上に非常な酷使をされておりますので、六〇%に近い者が、たとえば斜角筋症候群とかあるいは腱鞘炎というような病気にかかっている。にもかかわらず、よそへ夜間アルバイトに出なければならないというような状況にありまして、三年くらいの間に人がかわっていくというような状況にあるのは事実であります。  こういうふうにして、新しい合理化の中で、あるいは機械化の中で新しい職業病ができておるのでありますけれども、これも職業病などと認められていないというような状況で苦しんでおります。だから労働災害と申しますけれども、汽車がひっくり返るとか、あるいは炭坑が爆発するというようなことだけではなくて、日々目に見えない中で新しい肉体的消耗が行なわれているというような状態が、全産業にわたってあるのであります。  なお、そのほかに申しますと、有害な薬品を使った化学工業などでは、そのいろいろな薬品による中海症状が起きておる。これなども、職業病としてすみやかに認めて対策を講じなければならないにもかかわらず、これはなかなか認められぬというような状況にあります。  この法律案は、二百にして申しますと、こういうような残酷な、しかも普遍的で必然的な労働災害防止対策する、こう言っておるのでありまして、しかもそれが、資本家の自主的活動に一任しようというところに本質があります。これはこの委員会でも、どの委員も非常にやかましく言われたところでありまして、労働者のいない防止対策——労働者の不在というようなことばを使っておる人もありますが、そういう労働者のいない資本家が、使う側が労働災害対策をやろう、こういうのがこの法案の本質であります。一体政府は、資本家とか使用者というものをどう考えておるか、どういうものだというふうに考えておるかということを私は聞きたいと思うのです。彼らが労働者を雇い、事業を経営するのは利潤追求が目的であります。それ以外の何ものでもないのであります。彼らにとって、雇い入れた労働者は投下した資本の一部にすぎません。工場を建て、機械を買い入れ、あるいは原料を仕入れるということと何ら違わないのであります。したがって、災害防止のために何かの対策を立てるという場合には、これは利潤に関係がある場合である。政府のほうの指導も、災害防止のために何かのことをやることは、諸君のほうのもうけになるのだという指導をされておるようでありますが、そういうことは非常に本質をはっきりあらわしておると思うのであります。したがって彼らは、労働者を人間とは考えておりません。だから、もしも利益のために災害防止をやらなくて人が死んでもかまわないという状況であれば、災害防止をやりません。これが大体本質であります。  こういう労働者階級の生命やあるいはその権利を認めないという立場に立っている本質を持っている資本家や使用者に、労働災害防止のための実際の権利、実際のそれの実権を与えるようなやり方をやろうとするような法律案というものは、とうてい私どもは認めるわけにはいきません。  近代社会の中では、労働者の権利の問題が相当問題になりまして、労働災害の問題につきましてもこうして問題になってきておるのでありますが、これは資本家や使用者労働者を人間として考えてきたからではなくて、労働者階級が非人間的な立場におけるこういう自分の立場を自覚して、資本家に対して、長い百年にわたる血の闘争をやって獲得したからでありまして、これを無視して、そうして資本家に一切のものを一任する、災害対策についてのそういうものをまかせるというようなやり方、これは全く本末転倒、逆行しておるのでありまして、どうしてもこういう法律を私どもは許すわけにはいきません。これが第二点であります。  それから第三点になりますが、私どもの考えによりますと、したがって労働災害の実際の防止あるいは対策ということをやり得るのは、実際に働いておって、毎日命をそれにかけておる労働者が一番知っておる、この労働者の発言、労働者の要求、労働者の行動、労働者の声、これをもとにして考えていくのが基本でなければならぬ。これは社会主義諸国のことを皆さん御承知だと思いますけれども、社会主義諸国におきましては、各企業におきます労働組合の中に災害対策委員会がございます。ここで一切の原因、設備や工場の衛生環境や、あるいはそれに対する対策を考え、これが法的根拠を持って管理者、政府を支配するのであります。こういう立場に立つのがほんとうだと思います。これは単に社会主義社会だけではありません。日本の労働組合の強いところでも、この間、私ある経営を見に行きましたが、これはやはり労働者が強いから、そこでの非常な労働災害のおそろしい状態につきましては、労働時間や労働賃金や、あるいは休憩の問題で相当有効な利益をかちとっている。この点が一番大事じゃないか。
  105. 田口長治郎

    田口委員長 結論をひとつ……。
  106. 谷口善太郎

    ○谷口委員 労働組合の自主的活動というものを基本にして労働災害対策をやる、そういう法律を考えるべきである。そういう立場に立って新しい法律を出され、この法案を撤回されることを希望します。  なお、三党提案の修正案もございますが、この基本問題には何ら有効な効力を持つものじゃないのであります。この修正案を含めまして、共産党は本案に反対するものであります。
  107. 田口長治郎

    田口委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、澁谷直藏君、八木昇君及び古川兼光君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  108. 田口長治郎

    田口委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  109. 田口長治郎

    田口委員長 起立多数。よって、労働災害防止に関する法律案は、澁谷直藏君外二名提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、さように決します。   〔報告書は附録に掲載〕
  111. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後二時一分散会