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1964-05-28 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十八日(木曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 田中 正巳君    理事 河野  正君 理事 小林  進君    理事 長谷川 保君       伊東 正義君    浦野 幸男君       大坪 保雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       松山千惠子君    粟山  秀君       渡邊 良夫君    伊藤よし子君       大原  亨君    滝井 義高君       八木 一男君    山口シヅエ君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君  委員外出席者         厚生事務官         (年金局年金課         長)      曾根田郁夫君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  重度精神薄弱児扶養手当法案内閣提出第一一  二号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。
  3. 西岡武夫

    西岡委員 議事運営について。社会労働委員会がいままで——私も何回か出席していないということは深く反省いたしまして、その上に立ちまして、今後の議事運営について要望したいと思います。  と申しますのは、十時に開会という場合に、たいがい、四十分、一時間、ひどいときにはいつまで待っても開かれないという状態がほとんどでございます。したがいまして、今後——いままでの習慣から申しまして、十時きっちりということは当然無理だと思います。ですから、ある程度の時間を切りまして、それまでに成立しない場合は、その日は散会ということにしていただきませんと、ずるずるべったりになりまして、非常にいろんな点で、勉強をする時間もございませんし、ほかの委員会との関係もございますので、善処されんことを要望いたします。  以上であります。
  4. 田口長治郎

    田口委員長 ただいま西岡委員要望に対しましては、できるだけ十時に開会するということにつきましては、委員長委員各位もひとつ一段と御努力を願いたいと思います。しかし何かの事情で、ある時間どうしても開会ができない、こういう事情に立ち至った場合に委員会をどうするかということにつきましては、西岡君の御意見に直ちに賛同するわけにもいかないので、なるべく十時にきちっと開く、そういうことにお互いに努力したいと思います。
  5. 西岡武夫

    西岡委員 むろん十時きっちりということは、交通事情その他で、私自身も無理な点がございます。したがいまして、三十分とか四十分というふうなことで、それ以上の場合は、やはりある程度のけじめをつけていただきたいということでございます。
  6. 田口長治郎

    田口委員長 ひとつなるべく十時に開会ができるように、委員諸君の御努力をお願いいたします。
  7. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 関連して。ついでに西岡君に引き続いてお願いいたしますけれども、先日から野党の方々の質問の中で、非常にダブっている面がございます。これも質疑の妨害と言っては非常に失礼ですけれども、同じことはたいがい一ぺん聞けば済むと思いますので、よほどの重要案件でない限り、野党側もお一人が聞かれたことは、それで終了にしていただきたい、このことをお願いいたします。
  8. 田口長治郎

    田口委員長 内閣提出重度精神薄弱児扶養手当法案を議題とし、審査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 重度精薄児扶養手当法案に関しまして、厚生大臣並びに政府委員に御質問申し上げたいと思います。  精神薄弱の問題が非常に重大な問題であることは申すまでもございません。いままでは政府施策が非常に乏しくて不十分であるということでございましたけれども、それについてこのような法案を出されましたことの契機は、水上勉さんの「拝啓池田総理大臣殿」というところから発したように承っております。このように世の中の正しい要望を取り上げることはけっこうでございまするけれども、そのような要望国民から出るまでに、政府としてはあらゆる施策を充実していかなければ、ほんとう責任を果たしたことにはならないと私は思うのであります。いままで、精薄の問題について非常に乏しかった厚生行政について、どのように考えておられるか、厚生大臣から伺いたいと思います。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 いまのお尋ねでありますが精神薄弱児問題についての施策が非常に不十分であった、こういうことは十分反省もし、また私どもは昨日も申し上げたのでありますが、今度こういう問題を当面の課題として取り上げたのは、必ずしもあの手紙によって政府が動いたということでなくて、従前からこういうことの必要を認めておった。そこにたまたまああいう申し出があったということでありまして、前からその必要を認めておったということは特に申し上げておきたいのでございます。特に私自身といたしましても、実は厚生省に参る前からいろいろの機会にこの問題に接触をいたしまして、この点においてほとんど何もしておらぬ、こういうことについて非常に不満を持っておったのであります。とにかくこの内容につきましては昨日もいろいろ御不満が述べられておるのでありますが、一つのこれが前進のきっかけとしてこの施策が十分に拡充されていくように希望しておるものであります。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 ただいまの御答弁のようなことでこの法案は出されたわけでございますが、このような所得保障あるいはそれに類するものを出される以前に、それと同様に、あるいはそれ以上に精薄対策について大事なものがあるということについて十分にお考えであろうかと思いますが、どういう点について施策を充実していかなければならないという決心をお持ちか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  12. 黒木利克

    黒木政府委員 昨日も申し上げましたように、精薄児に対する施策につきましては従来は施設収容をして保護するという施策をやってまいっておったのでありますが、軽度、中度精薄児に対しましてはすでに全県的に施設ができまして、最近におきましてはその内容を職業授産的なものにまで発展せしめておるわけでございます。残されました重度の問題につきまして収容法をどうしたらいいか、単独収容施設をつくったがいいかあるいは既存施設を活用して総合的に運営していったがいいか、まだ各国も方針をきめていないようでございます。わが国でもいろいろなことを試みたわけでございますが、結局両建てでいく以外になかろうということになりまして、実は一昨年から単独重症施設既存施設に併設をするという二本建てでまいっております。なお親の立場からどうしても子供と一緒に生活をしたいというような人たちもおりますので、在宅精薄児対策あるいは在宅重症精薄児対策につきましてだんだん手を伸ばしてまいりまして、親の会たる育成会に対して国から補助金を出しまして、在宅精薄児いろいろお世話をしてきたわけでございますが、これも継続して強化してまいりたいと思います。そうして今回は特に重症精薄児に対して手当制度を始めるということに相なった次第でございます。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 昨日の御答弁にあったのではないかと思いますが、私は建設委員会質問に参っておりましたので伺っておりませんが、いまの御答弁の前に、このような精薄者が出る原因の探求をもっと精密にし、その結果に基づいて、またいまわかっていることに基づいて母性に対する、あるいは妊娠分べん、そういうことに関することについて万全の措置をして、精薄者が出ないようにする、それがまず第一のことだろうと思う。そのほかいまおっしゃったように施設に入れ、あるいは在宅精薄者の人ができる限り普通の能力を持っている人と似たような状態能力を発揮して、一個の人間としてある程度の働きをして生活ができるというところまで持っていくことが大切でなかろうかと思います。このような研究をする施設人員、そういうものを確保し、これに基づいてまた母性の保健の対策をしっかりするということ——施設はいま大体完備したようなことを言っておられますけれども、絶対量が少ないことは明らかでありますし、そういう施設の絶対量を引き上げて、施設なりあるいは在宅指導をする人員の確保、その人たち指導能力の向上というようなことをやってそれを万全にしていかなければならないと思うのでございます。御答弁が少し欠けておりましたので、そういう点についても完全にやっていかれる所存かどうか承りたいのであります。
  14. 黒木利克

    黒木政府委員 精神薄弱児発生原因研究予防対策につきましては、昨日も伊藤委員の御質問に対して詳細にお答え申し上げたのでありますが、国としては国立精神衛生研究所精神薄弱部を設けまして、これが研究にいままでつとめてきたのであります。最近におきまして精神薄弱発生原因とその予防対策という研究結果をまとめまして発表いたしております。厚生省もこれを採用いたしまして、それぞれの施策をやっておるのでありますが、なお研究につきましては精神薄弱児を含めまして、異常児発生原因研究するために、全国の優秀な学者を動員いたしまして研究班をつくってもらいまして、厚生省から研究費を助成いたしましていろいろな研究をしておるのでありますが、きょうの新聞に出ておりましたように、フェニールケトン尿症の問題につきましては、昨日研究報告がございましたので、行政的な措置をさっそくいま打ちつつあるところでございます。その他国立秩父学園に臨床に基づく精薄児発生原因研究をやるために調査課がございまして、ここでもかなり成果をあげておるわけであります。  それから脳性麻痺研究につきましては、東京小児療育病院脳性小児麻痺研究センターができまして、これも研究を始めておりますから、国からも積極的に援助してまいりたいというようなことで、研究につきましては一応の体制ができておるのでありますが、しかしまだまだ不十分でありますから、さらに強化してまいりたいと思います。これに基づく対策につきましては、遺伝の問題につきましては、これに優生保護の問題になりますが、そういうことでいろいろな措置をとりたい。それから胎生時の障害、それから出産時の障害出産後の障害それぞれにつきましていろいろ対策を講じておるのであります。従来これがばらばらでございましたから、先ほど申しましたように、中央児童福祉審議会に諮問いたしまして、一元的に総合的な対策についての答申を求めておるのでありますが、いずれ母子保健法的なものの立案が必要であろうという答申を受けるだろうと思いますが、それに基づきまして必要な立法措置なり行政措置を準備してまいりたい、かように考えております。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 いま精薄全体の問題についていささかの質疑応答をいたしましたが、これについては昨日伊藤委員から相当の分量の御質問があったそうですし、また後に長谷川委員その他から御質問があろうと思いますので、その点は本日は私は保留いたしまして、所得保障関係について、この問題を伺ってまいりたいと考えております。  重度精神薄弱児扶養手当というものが出ましたけれども、ここですぐ気がつくことは、精神薄弱児の親に激励手当というような意味手当法案が出た。それ自体は悪くありません。しかしながら所得保障という観点に立てば、親の扶養を受けているもの以上に自分が支出しなければならない年齢に達している重度精神薄弱児、あるいはすべての精神薄弱児、この所得保障について考えていくのがまず先であろう。同時にできてもちろん差しつかえありませんが、このような精神薄弱者所得保障について一切手をつけなかったことは非常に欠陥であろうと思います。その点について小林厚生大臣のお考えを伺っておきたい。
  16. 小林武治

    小林国務大臣 手をつけなかったわけではありません。手をつけたのでありますが、ことしはこれの審議をお願いするに至らなかった、こういうことで、私はやはり子供の問題と同時に、あるいはそれ以前にもいまのことはいたさなければならぬ問題であろう、かように考えておりますが、遺憾ながらまだお願いをするような段階になっておりません。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 どういう方法で手をつけようとされたかを伺っておきたいと思います。
  18. 小林武治

    小林国務大臣 私は昨日もお答えしたのでありますが、私が最初考えたのは、要するに障害福祉年金でひとつやれないか、こういうことでいろいろ相談をしたのでありますが、何かいろいろ議論がありまして、保険事故にはしがたいというふうな議論があって、やむなく私はこの法律を出す前に重度心身障害者、こういうことでいまの手当等の方策を講じたい、かように考えたのでございますが、それがだんだん削られまして、これだけになってしまったということであります。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 保険事故というような妙な議論があったのは、厚生省内ですか、それとも内閣全体の中ですか。厚生省と大蔵省の関係ですか。
  20. 小林武治

    小林国務大臣 いま私が主として相談をしたのは厚生省内、厚生省内はむろん外部のそういういろいろの理論を持っておられる、すなわち外部理論がこうであるというようなことが厚生省内でも議論された、こういうことであります。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 外部というのはおもにどこですか。
  22. 小林武治

    小林国務大臣 外部というのは、厚生省外学者その他の者のことと考えております。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 外部というのは参考にされたのでしょうけれども、そういうことを参考にするというならば、一番権威のある機関社会保障制度審議会でなければならない。私も社会保障制度審議会委員の一員でありますけれども、いまだそのことについて正式に厚生省から御相談にあずかったことはございません。権威のない外部のいいかげんな意見で支配されるような厚生省研究態度はよくないと思う。厚生大臣もそうお思いになると思う。その点について……。
  24. 小林武治

    小林国務大臣 いまここで、そういう御議論を聞くことはけっこうだと思います。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、私は年金局長出席がぜひ必要なのであります。厚生大臣は、完ぺきとは言えませんけれども、相当前向きで考えておられたのを、厚生省内の議論、しかもわけのわからぬ外部意見に支配された、厚生省内の議論によってそれをチェックされた、重大な問題であります。それについて年金課長から、どのようなことで、厚生大臣が熱意を持っておられるのに、事務当局ブレーキをかけたか、外部のどのようなでたらめの機関がそれにブレーキをかけたか、それについて明らかにしていただきたいと思います。
  26. 曾根田郁夫

    曾根田説明員 いま、外部のほうにも国民福祉年金で取り上げることについて若干の問題があるというあれもございましたけれども、率直に申し上げまして、外部審議会その他よりは、むしろ私ども事務当局内部のほうに議論があったように御了解願いたいと思います。それではどういう点が問題になったか、端的に申し上げますと、当初福祉年金体系でこの問題を扱ってはという話がございまして、私どももいろいろ検討いたしましたが、二つの点から、これはいささか福祉年金のほうでやるのには問題があるのではないか、二つの点から問題にしたのでございます。  一つは、いわゆる保険主義といいますか、保険事故になじむかなじまないかという点で、まずこの点を申し上げますと、御承知のように、現在の福祉年金制度の立て方があくまで拠出制国民年金を補完する、拠出制を補う制度として組み立てられておりますので、福祉年金で取り上げるべきものとしては、当然その前に、拠出制国民年金のほうで保険事故として取り上げるべき性格のものでないと、これとうらはら福祉年金のほうにも乗りにくいという事情がございます。その点からいいますと、現在生別母子が死別と違いまして、生別ということが人為的な事故保険事故にはなじまないというような点から、ちょうど扶養手当福祉年金と別にできておるというのと同じように、精薄という一つ事故は、これは医学関係者の御意見も承ったわけでございますけれども原則的には二十歳以降には起こり得ない事故である。したがって、二十歳以降の国民対象とする拠出制国民年金保険事故にはなじまないではないか。そうすれば、そのうらはら福祉年金のほうで取り上げることにも若干問題があるのではないかということが一つでございます。しかし、これは一部で御指摘がありますように、そんなことを言っても、たとえば現在すでに内部障害先天性奇形児なんかもございますし、これを現実に見ておるじゃないかという御意見がございまして、そういう点をおっしゃられますと、確かに理論的にはどこから見てもそれで問題がないということではないので、あくまでこれは原則的な考え方ではないかと思います。しかし、いずれにしてもそういう問題が一つある。  それからもう一つ、いろいろな考えがございましたけれども、当初は精薄というものをおとなにするか子供にするか、いろいろ問題があったのですが、まだいろいろな意見があった段階でございまして、その際に、かりに福祉年金でやるということにいたしましても、第一の問題点は、とにかく一応これは何とか乗り切って福祉年金でやるとしても、どうしても起こってくる問題は、国民年金体系でやる以上は、二十歳未満の者には年金を出すことはできない、これは制度の立て方がはっきり二十歳以上だけを限定対象にしておりますから、そこに一つ問題があるのじゃないか。  そういったような二つ問題点があったというので、これは国民年金体系よりはむしろ別制度でやったほうが、一貫した精薄に対する対策ができるのではないかということで、私どもがいささか消極的といいますか、年金局としてはそういう問題があるということで臨んだわけでございます。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 非常に自信なげに答弁されておるように、これにブレーキをかけられた完全な理由はないと思う。世の中が非常に要請しておることで、主管大臣が熱心にやっておられることを、確固不抜たる理論があればともかく、そうじゃないものでブレーキをかける、そういうようなことはとんでもないと思う。それはもう実にけしからぬ。あとのほうの理由ですね、二十歳以上は福祉年金を支給できないということは、第十義的くらいな理由になろうと思う。それならそれで、この法律精薄者まで全部出るようになっておれば、第十義的な妙な理由に対する答弁になってくる。ここは子供だけしか出ていない。おとなの問題がはずれておるから問題にならぬ。しかも、子供に関してはこの手当を出しても、おとな福祉年金考えてもいいわけです。そうしなければならない。それを、大事なほうをほっぽり出して、理屈をつけて、両方一つ制度にしたいから片方があれだという、そういうふうなことは理由にならない。おとな精薄者については当然年金の支給をしなければならない。そこで厚生大臣はまず第一に福祉年金でと言われたけれども、それでは私が申し上げたように不十分です。拠出年金考えなければならない。拠出年金考えるときに保険事故というあいまいもことしたばかみたいな観念論ブレーキがかかっておるという点に問題があろうと思う。だけれども原則としてというふうにいま課長が言われたように、原則の前にもうそれよりもはるかに高い次元の原則確固不抜としてこれをゆるがすことができない原則がある。それは憲法第二十五条の一項の精神に従って、また二項に社会保障ということばを使ってある以上、社会保険という概念からきた保険事故社会保障制度の中にそういう概念が入っておること自体が間違いだ。便宜的に資金を集めるための保険料徴収という社会保険、それはいま過渡的に認められるとしても、給付の面において、保険事故じゃないから給付ができないというようなことは、憲法二十五条の精神から見てこれは断じて許されない。しかも国民年金法第一条には、憲法第二十五条の精神をうたって書いてある。それを書いてある法律はほかにほとんどありません。国民年金法に特にうたってある一番の原則からはずれているわけです。二十歳以後にいろいろな心身障害になろうとも、二十歳以前になろうとも、どの原因でなろうとも、そういう心身障害労働能力を喪失し、生活が困難であるから所得保障が必要なことはあたりまえで同じだ。それを観念的な人間ことばブレーキをかける。国民に対する反逆ですよ、そんなことば考え出したということは。厚生省がそういうことを言っておるもとは、いわゆるわけのわからない社会保険学者がそういうことを言っておる。そんなことは社会保険学者がうわごとを言っておるだけの話で、社会保障制度審議会答申や勧告をしたわけでもなんでもない。そういうような表向きの権威みたいなものでほんとう社会保障の進展にじゃまになるような議論に支配されることはない。そういう意味では国民年金法拠出年金福祉年金とも所得保障の必要なものに必ず支給するという方面に向かって急速に前進しなければならない。この精薄の問題を取り上げられたときに、大臣は初めその全部について御理解が完全に、十二分じゃなくて、この福祉年金でというお考えを持っても、さらに前進的に拠出年金へ入れましょう、保険事故という意見を、そういうようなつまらないものをここに撤廃して、必要な人に必要な給付を受けさせるために拠出年金に入れましょうということを進言するのがあたりまえだ。しかも大臣福祉年金に入れようというのをさらにブレーキをかける、そういう態度ではいけないと思う。今後そういう態度を改められて、大臣を前向きに積極的に補佐するという必要があろうと思う。これは年金局長に言わなければならない。年金局長を至急呼んでください。そういう点で年金局はいままでの誤った概念を完全に払拭して、大臣を十二分に補佐をして、こういう問題について対処をしなければならないと思いますが、大臣に御質問申し上げます。局長がいないので、かわりに課長がいままでのことを完全に改心をするかどうか、それから改心をした立場に立って推進をし、大臣を補佐申し上げるかどうか、はっきりとお答えを願いたい。
  28. 小林武治

    小林国務大臣 私はあまり率直にものを申し上げて恐縮でございますが、私どもは中で十分に議論を尽くさなければならない、こういう制度をつくるには。私はそういう希望を持っておったが、話し合いの上で、私も一応省内意見としてはそれに統一した、こういうことでございます。しかし私は今後に望みを持っております。また今度独立の法を出したのも、いま申すような成年以上の者も何とか制度対象にしたい、こういうことで、中には省内では児童扶養手当法の中に入れればいい、この程度のものであればそれでいいという議論があったのでありますが、それはそれだけで終わってしまう心配がある。したがってまた身体障害重度子供も入れたいし、また成年者精薄者も入れたい。こういうような大きな希望を持っておるので、その火種と申してはどうでありますか、そういうものでもって一応出発したい、こういうことでありまして、ここのところは私は省内意見をさようにまとめてきた、こういうことであります。いま八木さんの御意見は十分に参照いたしたい、かように思います。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 年金局長はまだですか。年金と関連が非常に多いので、最高責任者大臣はおられるけれども、やっぱり技術的な点になると事務局のほうの責任者を……。
  30. 田口長治郎

    田口委員長 いま強く要求しています。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の御答弁事務局をカバーせられ、大臣責任を明確にされて、前向きの考え方で努力をするということを言われておる。この点非常にけっこうだと思うわけです。しかし賢明な大臣でございますけれども、さっき言ったような保険事故という俗論がずいぶん多いので、それから権威者といわれる方にそういう俗論を吐いておる連中が多いので、しばしば牽制されると思いますので、なお詰めて、大臣にひとつこの問題について私見を、くどいようですけれども、もう一回申し上げて、御勘考を願いたい。  前にも年金法のときに申し上げましたからもうそんなにくどくは申し上げませんけれども、とにかく憲法第二十五条第一項で、健康で文化的な最低生活を保障するということ、これはもうゆるがせにできない、完全にそれをやらなければならない大前提であります。第二項はそれを受けて、社会福祉、社会保障を推進するということになっているのであって、社会保険を推進しろという文言は一つ憲法に載っていない。社会保障を進めるために、いままで過渡的に社会保険システムがとられておる。第一義的に社会保障を進めるために、その具体的な方法として社会保険システムがとられたのが、それがちょうど下克上になって、いまの社会保険というものが大事なものみたいにいままでの厚生行政では間違った空気が蔓延をしているわけです。それはあくまでも間違いであって、国民年金法やこの法案に関連してだけでなくて、すべての点で、まず社会保障、その方法として社会保険をとっているのであるから、社会保険社会保障精神に従って、具体的に申し上げますれば給付が必要な人に給付が完全に無条件でいくという方向、保険料を幾ら払ったとか、払ってないとか、いつごろ、保険料を払ってない時期に事故があったとか、そういうことは一切抜きにして、給付が必要な人に必要な給付が無条件で迅速にすぐにいく。全部がそういかないにしても、それに向かってどんどんと邁進をしていくというふうにしていただかなければならないと思うわけです。  そこで、ここにこの問題に関連してまいりますると、たとえば障害の問題については国民年金法拠出年金のほうでは、とにかく拠出年金に入ってからの事故という概念に立っておる。ところがこれはあくまでも国民年金法であって、あとで間違った規定があるにしても、国民年金法であって保険法じゃない。社会保障というのは国民年金法でありますから、それから後の障害にしか支給しないという制度は非常に間違いなんです。いままで間違ったほかの制度を横すべりにして持ってきているためにこういう間違いが起こってきていると思う。これはすべての面で改組していかなければなりませんが、特に国民給付の面においてこれをまっ先に改善していかなければならない。そこでとにかく事故ということば法律に使ってあるかどうか、私ちょっといま忘れましたけれども概念にあったとしたら、保険事故という概念ではなしに、給付が必要な状態給付をするという概念にこれを変えます。変えますれば一切が解決がつくわけです。解決がついて、救われるのは一番気の毒な人が救われるわけです。ほんとうに両眼が見えないとか両足がだめだとか、そういう人たちが救われるわけです。ですから金持ちに給付をするような変わり方ではなしに、一番気の毒な、救いたいけれども現行法上の体系で救えない人が救えるわけですから、そういう概念にぜひ大臣厚生行政の全体が切りかわっていくように御命令になって、そしてそれをなまけないように御指導になって、推進していただきたいと思うのですが、大臣のお考えをもう一回——大体非常に前向きのお考えを持っておられますが、御決心を伺っておきたいと思います。
  32. 小林武治

    小林国務大臣 これはこの席でも幾度も申し上げたのでありますが、社会保障というものは保険とは違う、こういうことはお話しのとおりでありますが、日本はそれの十分な財源を持たないから、それを併用していま制度ができ上がっておる。国庫負担なり国庫補助がふえてまいるということがいまの問題の解決になるので、たとえば国保のごときも三割以上と、こういうふうにふえておる、国民年金も三割の補助をしておる、この負担がどんどんふえていけば、要するに社会保障の実現になる、こういうことでありまして、私は、いまの国庫負担をふやすということはお話しのような方向にいく一つの道である、こういうふうに考えておりまして、もし十分な財源があれば、お話しのような方向に理想として向かうべきものである、こういうふうに考えております。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の御答弁、大部分けっこうなんですが、聡明な大臣にしては、私のお伺い申し上げたこととちょっと食い違っているわけです。というのは、財源の問題はもちろん社会保障全体を進める意味において必要であります。それから特にそのひずみを直す点に、国庫負担を入れてひずみを直すという方法もけっこうであります。その前に、概念の問題でございまして、いまの制度考え方で、保険事故という考え方があるために、国の行政としても、支給しなければならない対象の一番密度が深いものと思われながら、そういう制度のためにこれにブレーキがかかっておる。もちろん国庫負担はどんどんふやして、大臣がおっしゃるようにやっていただきたいが、ひずみを直していただくために、保険事故ということば概念じゃなしに——保険事故というのは、保険に入っている人がその給付を受けるような事故を負ったというような意味と解釈して間違いないと思いますが、保険ということじゃなくて、それを抜きにして、給付を受けるような状態になった者に給付をするという概念に切りかえることによって、一番気の毒な人が救われるということになるわけです。それはもちろん財源が必要です。しかし総体的な制度を非常に大幅に前進するに比したら、この費用は微々たる費用です。それからまたその費用をたとえばいまの費用の中でやり繰りをしても、ある程度はできるものなんです。ある程度はできるものだけれども、やはりそれだけ金が要るから穴をあくじゃないかといえば、いまの制度で気の毒な人を救い上げるぐらいのものは、小林厚生大臣の政治力をもってすれば来年度は一ぺんに解決がつく、大蔵大臣がよっぽど気違いでもない限り、解決がつくという問題だろうと思うのです。そういう点で概念の切りかえをしていただきたいということ。  それから保険の問題について、これは何回も申し上げて恐縮でございますが、いま保険システムをとって、保険料を取ること自体を全面的に否定しているわけではございません。全部保険じゃなしに、全部が給付ができるようになったらいいと思いますけれども、現段階では給付をふやすために財源が必要だ、国庫負担もできるだけたくさんにしていただかなければならないけれども、それでもまだ足りないので、給付をふやすために保険料を取るということを、全面的に否定しているわけじゃないのですが、保険料を取ったから、保険料を取った割合に応じてこれを給付する、保険料を取った人だけに給付をするという考え方に、いままでの制度が固着しているために、一番気の毒な人が捨てられるということになるわけです。その考え方を財源としてとるのはいいけれども、とにかく渡すほうは一番必要な人に必要な給付をするという社会保障的な考え方に諸制度をできるだけ早く切りかえていただくように御指導をいただきたいということでございます。ぜひ御理解を賜わって、そのような方向で今後の社会保障制度の前進をはかっていただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。
  34. 小林武治

    小林国務大臣 いまの問題もお話しのとおりでありまして、保険ということにとらわれて社会保障の実を失わないようにしなければならぬ。すなわち、その辺には相当の弾力性を持たせなければならぬ、こういうふうに思います。またしかし、保険料に比例してだけやるということもだんだん変わりつつありまして、たとえば国民健康保険のごときは、九万円以下の所得の方は保険料を減免税する、そういう制度が行なわれているのが、いまお話しのようなことが実現されつつある、こういうことでございます。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことで、もう一つ事例を申し上げますと、障害年金の場合に、たとえば一回入って——たしか、前に三年間保険料を払わないとだめになったのですが、だんだんこれが修正をされまして、とにかく一回払って一年たてば、その間に残念ながら自動車事故か何かで両足が切れたというような場合には入るわけです。それが国民年金の掛け金を一回分しか払ってないわけです。結局それによって、あれは年数によって違いますけれども、二千何百円から四千円ぐらいのものが毎月入ってくる。ですから、そこになると保険的概念は全部はずれているわけです。もらうほうは少ないけれども、ゼロから比べれば相当の金額になっていて、払ったほうは百五十円の一年分ぐらいしか払ってないわけです。それをもっと進めれば、前に払ってなくても、障害の人がその年齢——自分で働いて食べる年齢に達したならば、拠出制障害年金をもらうというようになってちっとも差しつかえないわけです。そこの線を渡るのに古くさい間違った概念がじゃまをしておりますので、その概念を突破していただけると思いますが、ぜひお願いをいたしたいと思います。  次には、いま年金局長が見えましたけれども厚生大臣に丁寧にまた熱心に申し上げております。課長も聞かれましたけれども、とにかく最高責任者である厚生大臣年金制度について補佐されるのがあなたの最高責任ですから、もう一回時間の関係上詳しく申しませんが、十分に課長の御報告を聞かれ、厚生大臣の御命令を聞かれて、このようにやっていこうというふうにしていただきたいと思います。  次に、そういう点で、精神薄弱者の場合に、そういう方向をとることによって拠出制国民年金、あるいはまたほかの、精神薄弱者の場合に就業している人は少ないでしょうけれども、そういう場合には、まれな場合は厚生年金とかほかの年金制度に該当することもあろうと思いますが、拠出制国民年金はじめ、その他の拠出制年金の、そのような障害年金が当然支給されるという道をぜひ拠出制年金に開いていただきたい。  第二段の問題として、今度福祉年金という考え方で考えておられる、これは福祉年金のほうで精神薄弱者の問題が今度の法律に一緒になって出てまいりましたならば、百点といわないにしても、七十点ぐらいのものになっておったと思うのですが、この点について、いま課長の説明によると、拠出制年金に基づいて福祉年金考えられている、だからということになる、ところが課長が言われたように、必ずしも全部、福祉年金拠出制年金によっておらないわけです。たとえば、五歳のとき両足が切れたというときに、福祉年金対象になっておるわけです。厚生大臣にぜひ拠出制年金に来年度からやっていただきたいけれども、かりに残念ながらそこまでいかなくても、それが再来年になろうとも、一年でも問題はゆるがせにできませんから、少なくとも福祉年金精神薄弱者が入るようにぜひしていただきたいと思うわけです。拠出年金にならうというのは原則であって、例外があると言われた、そういう原則を立てることが大体大間違いでありますが、とにかくその大間違いの制度でも、原則をはずして、必要なものについては原則からはずれた給付をしているわけですから、精神薄弱者が当然障害福祉年金対象者として今年度にそれを給付するような法律案が出てきてもちっとも間違いではなかった。それについて厚生大臣の御意見をもう一回伺っておきたいと思います。
  36. 小林武治

    小林国務大臣 私個人としてはそうしたかったが、ことしはそこまでの論議がまとまらなかった、こういうことであります。最近参議院でもいまの問題がやかましく言われたのでありますが、いまはできなかったが、次の機会にまた適当なひとつ結論を出したい、こういうことでございます。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 では拠出制年金について、とにかく精薄だけでなしに、この年齢に達する以前の障害のことについて前向きに猛烈な努力をしていただく、その努力は来年から実を結べば一番けっこうでございますが、かりに残念ながら結ばないときには、来年度からでもこの福祉年金のほうに過渡的に必ず実現をしていただくというふうにしていただきたいと思いますが、厚生大臣の前向きの御決心をもう一回聞かしていただきたい。
  38. 小林武治

    小林国務大臣 まあどういう方法によるか、これはこれからの論議の問題でありますが、成年に達した精薄者についてもひとつ適当な措置考えたい、そういうふうに考えております。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 まあいろいろな考え方があろうと思います。精薄者全体について所得保障考えるという考え方もあろうと思いますが、これは御研究によってよりよい方法であればこれは文句を申しませんが、私の感じでは、これを精神薄弱者の場合は所得保障のほうに——児童のほうは別に切り離しても、精神薄弱者のほうは所得保障障害給付に入れるといったほうが、所得保障全体が前進したときにそれによって前進する大きな可能性があると思います。そういう点でひとつお考えになっていただいたらいいのじゃないかと思いますが、非常にいろいろな関係がございますから限定はいたしませんけれども、何はともあれ精神薄弱者所得保障が働くにも一番いい方法でされる、それからまた、将来の発展性があるという方法で、前向きにぜひお考えを願いたい、こういうふうに思うわけです。いま首を縦に振っておられますので、そのようにしていただけると思いますが、もう一回、一言でけっこうです。
  40. 小林武治

    小林国務大臣 そういう問題はある程度やはり理論の裏づけが、筋が通らなければいけません。ただ大臣が命令してどうこうということでなくて、みんなで論議して、そしてしかるべきところに落ち着ける。私個人の意見を申し上げれば、あなたのおっしゃったような方法で私はいきたいと思う、こういうふうに思っております。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 年金局長、いま大臣の御答弁を一言漏らさず聞いておられたと思います。大臣を補佐して、それが完全になるように十二分の補佐をするという覚悟をひとつはっきり明確にさしておいてもらいたいと思います。
  42. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 いま伺いまして、問題は相当あると思いますので、なお十二分に研究をいたさなければならない面があることは先生もおわかりであると思います。もちろん大臣の御意向に従いまして最善の努力をいたしたいと思います。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 問題はあろうと思いますというのは、問題というのは世の中の無理解のやつとか、全然わけのわからぬくだらぬ理論を立てるそういう連中があるだけの話で、それ以外問題はありません。ごく問題はないのです。ほんとうに問題はないです。  その次に、いまの、もし障害福祉年金を支給するとするならば、内部障害について規定されたあのような規定じゃぐあいが悪いわけです。内科の結核その他胸部疾患に基づく障害という書き方をしているわけです。そういうような書き方をしているから疾病に基づかない障害は入らない。それは入れないつもりでああいうような書き方をしたのか。そういうことになったらゆゆしき問題だし、ああいう妙な表現を使わずしてこれは障害が起こった時点でものを書くといいのです。原因だとか、いつだとか、保険事故考え方もそうですね。いつ発生したとかどういう原因だというような書き方をしないで、所得保障というのは現在そういう労働能力を喪失して所得が少ないから困ることに対処する問題ですから、現在の時点で書けばいい。その原因で書くからそういう問題が入ってこない。そういうことで大臣、何といいますか事務当局のほうは、ものを書くときに昔の既成概念にとらわれるおそれがありますので、とにかく社会保障概念に従って、労働能力、所得能力を失った、あるいはなくなった、あるいは減少した、そういう問題について給付をするというような、そういう社会保障の線から見た書き方をさしていただきたいと思います。それを原因が幾つかというような考え方に準拠してやっておると抜けが起こるわけです。そういう点で今度は法律内部障害が少し前進したのはいいですが、そういう書き方ですぐチェックをされますから、書き方を変えるなり——変えないで精薄を入れるとしたら、並びに精神薄弱者については、昔病気であったとか何とかいうことは一切言わない、そういうことも書く、きっぱりした規定を入れる、そういうことで書いていくように御検討願いたいと思います。とにかくいまの福祉年金は昔の病気に基づいたという妙な概念に堕しているために精神薄弱者が入らない。前の保険事故の問題と同様にそういうものが入らないというように私ども理解しておるわけです。こまごま変なことを申し上げましたけれども大臣、そういう点で精神薄弱者がいま言った対策福祉年金へ入れるというような方針にもしなりましたときに、そういうようなことでまたチェックされるといけませんので、現在の状態、現在の所得能力喪失状態でいくという概念でぜひやっていただきたいというふうにお願いいたしたいと思います。大臣のお考えを承りたい。
  44. 小林武治

    小林国務大臣 国民年金法に、内部疾患による障害福祉年金対象にしたのは、これはまあ国会で前々から附帯決議でそういうことをお書きになった、これを実行に移した、こういうわけでありますが、あの中には、私は今度逆に質問申し上げて恐縮ですが、精薄者はどういうふうにお考えになっておったかということです。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 精薄者は私はあの中にぜひ入れるべきだと思います。内部疾患に基づくというそういうことばの遊戯をされてしまっておるからぐあいが悪いので、国会の論議は内部障害内部疾患に基づくというような決議はしていないわけです。目が見えない、足がとれている、手がないというのは外部から見える外部障害内部障害に対して障害年金を適用しようというのが国会の決議です。それを政府が出してこられたときには、内部疾患に基づく障害とされたので、精薄は疾患じゃないということで抜けてしまう。そういうことばの使い方が間違っておる。現象でいま障害があるから労働能力が少なくて所得能力が少ない、だから所得保障をしなければならないというすっぱりした概念に立てばそういうものがはずれるわけはないわけです。それをそういう変なことをやっているわけでしょう。ですから今度は精薄福祉年金に入れるようにぜひしていただきたい。
  46. 小林武治

    小林国務大臣 これは重ねてのお尋ねでたいへん恐縮ですが、あの決議をされたときに精薄も含まれる、こういう意味——私は当時の事情を役所で聞けばわかりますが、それはいま聞かないで恐縮ですがあなたにお聞きするのですが、そういうものは当然入る、こういうおつもりで決議されたかどうかということをお聞きするわけです。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 内部障害精薄も含まれる、内部障害全体が含まれるということで決議をしたと私ははっきり確認をいたしておきたいと思います。附帯決議案をつくりますときには、同僚の熱心な方と一緒に私も参加をしておりますので、それははっきり責任を持って申し上げられるわけです。
  48. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 ただいまの八木先生のお話でございますが、精神障害となっておりまして、原因は入っておりませんから誤解のないようにお願いしたいと思います。ただ結核性疾患の場合は呼吸器だけに障害原因が限定されておりまして、全部に広がっておりませんから、これに基づくとありまして、それが全部に広がりましては原因というものは全部なくなりますので、そういうふうな法律の構成になっておりますので、御了承願いたいと思います。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことでしたらけっこうでございます。しかしいま厚生大臣とお話をしていましたこととは、本質の問題とか一切の問題関係ありませんので、厚生大臣がいま私に意見を聞いていただいた点は、国会の意思は内部障害全体に障害福祉年金を適用すべしというつもりで決議をされているわけでございますので、国会の決議を尊重されて、それをもとにして実現していただくようにぜひお願いをいたしたいと思います。  それではさらに質問を進めたいと思います。今度はこの法律の中に入りたいと思いますが、まず第一に金額の点です。月一千円ということで支給される。これはどういう意味で一千円になったのか。私の考え方では、少なくともこういうものは年金法と別なワクで——これは年齢がこういう若いときですから、本人じゃなしに親に支給されるということになるから、別な法律をつくられたのはこの時点においていたし方なかったと思うのですが、やはり金額は当然一級障害の千八百円に合わして出されるべきであったと思うのですが、いかがですか。
  50. 黒木利克

    黒木政府委員 実は先ほども申されましたように、この法案の最初の段階ではおとなも含むために社会局で要求したのでありますが、当時社会局では障害福祉年金の千八百円というものをめどにいたしまして、単価を要求したのであります。しかし子供だけということになりまして、児童局がそれを引き継いだわけであります。実は私どものほうでは、先ほど来のことと関係がございますから、児童局としての立場を申し上げますが、児童局では、児童の関係では児童手当というものを社会保障の本筋のもの、本格的なものと考えましてその準備をいたしておるわけであります。したがいましてこの重度精薄児手当法案というものも、児童手当ができましたならばその際これを吸収する、児童手当ができるまでの間の緊急性に基づく過渡的な措置だというようなことで考えておるわけでございます。ところが、従来の児童手当の先行的なものとしては、児童扶養手当というようなものがございます。これの単価が千円でございますために、これとの均衡をとるという意味で実は千円になったというようないきさつでございます。  それから先ほど八木先生の御意見承りましたが、精薄者の問題について将来国民年金に入れたがいいか、あるいは児童手当の中で、精神年齢は児童でございますから、この精薄者も吸収していったがいいか、これはいろいろ考え方があるわけでございまして、現在のところでは、児童局としては、児童手当というものの中で精薄者精神年齢が児童だということで吸収ができるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 いまの後段のほうについてですが、精薄者精神年齢が児童だからというようなことは、ことば上のひっかかりになるかもしれませんけれども所得保障制度としてはやはり自分で生活する年齢以上の者は、いまあらゆる制度が不十分ですが、それで完全に健康で文化的な生活ができる——所得能力は一番重度が少ないのですから、そういうたてまえでいかなければならぬ。児童手当という考え方でいくと、あくまでも親の扶養がある。だからそれの一部分の手助けだというような考え方にならざるを得ない、その概念からして。それでは将来の発展性が少なくなるであろう、そういう点で児童局が熱心に考えておられることはけっこうであります。けっこうでありますけれども、これは児童局の問題、年金局の問題というより、厚生省全体の問題であって、精神薄弱者人間として、日本国民として健康で文化的な生活をするために、いま乏しい所得保障制度をこれから一生懸命やって乏しくないようにしていかなければならないのです。そのルートに乗るためにやはり年金制度のほうが二十歳以上の場合には適当ではないかと私は思う。そういう点で、非常に熱心な人格者の両局長ですから、セクショナリズムの争いはないと思いますが、セクショナリズムの争いは一切捨てて、精神薄弱児所得保障が完全にいくような方法でやっていただきたい。概念としてそうでございますし、いまの大蔵省の予算折衝、法律折衝のたてまえでいくと、ほんとうに気の毒な問題を直視しないで、ほかの問題とのバランスを考えてとかいう悪いくせがあります。ですから、そうなると、あくまでも具体的に年金法にくっつけていかないと、金額の前進が減ると思います。そういう点についての厚生大臣のお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  52. 小林武治

    小林国務大臣 これは厚生省でそれぞれ検討の段階でありますが、これも私の個人的意見を申し上げれば、やはり生理年齢というものは絶対的なものでありますので、いまのような擬制的なことでやってはいけない、すなわち成年者成年者として扱うのがいいというふうに考えております。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 その次に先ほどの千八百円で御要求になった、これは至当だと思います。大蔵省あたりで児童手当に関連して過渡的になんていうような、とにかく金を惜しむだけのへ理屈でやるということはけしからぬと思います。この問題について大蔵大臣出席を求めてこの点についての理解の不十分、そういう点について徹底的に追及をしたいというふうに思うわけであります。  社会労働委員長、大蔵大臣出席をお願いします。きょうできなかったら次でもけっこうですけれども、とにかく要望申し上げておきます。
  54. 田口長治郎

    田口委員長 後刻理事相談いたします。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことでこれは児童という点よりも、常時介護を要するという理由でやっておられますね。そうなると非常に重度の、一級に当たるわけですが、身体障害の範疇それに属するという概念のほうがはるかに密接でなければならない。そういう点で千八百円という厚生省の要求は当然の要求であろうと思う。それをわけのわからぬ理屈でただ値切るだけで千円にブレーキをかけたという点は、大蔵省に非常に間違いがあると思う。この間違いを急速に正すように厚生大臣の全面的な御努力をお願いしたいと思いますが、厚生大臣のお考えはいかがですか。
  56. 小林武治

    小林国務大臣 これは私は政府部内のお話を多少申し上げておきたいのでありまするが、実はこの問題は全然大蔵省は受け付けません。したがって何度かの事務折衝の間に、最初からほかの予算というものは幾ぶんずつ認めるものでありますが、これは最後まで全部ゼロであったわけであります。それで明日予算をきめようという前に、私が田中大蔵大臣と直接折衝して、ようやくこれだけ大臣の非常にあたたかい考え方によって特に認められた、こういう事情でありますので、あの際の事情としては、わずか三十分か一時間の間に幾つか残った問題を折衝して、そしてその中でこれができたというような——どもとしては田中大蔵大臣の特別なお計らいでできたということで、非常に感謝をいたしておるのでありまして、この際金額の問題について、大蔵大臣も十分心得ておられますので、お責めになることは私としてはどうも申しわけないことでありまして、これができた、これからの含みも相当ありますので、私のわがままを申せばその問題だけで大蔵大臣をここでもっていろいろ仰せられることはどうかと私は考えるのであります。それでこの問題について大蔵大臣は非常に理解を持っておられるということも、特に申し上げておきたいと存じます。そういうことで金額も私は不足であり、大蔵大臣もこれでいいと思っておりません。その際、もっと申し上げれば、事務当局に非常な圧力を加えて、それじゃこの程度ということでようやくきまったという事情もありますので、その辺の事情はひとつ御了解くださいまして、この際大蔵大臣をお責めになるということは、ひとつ私からお許しを願いたい、こういうふうに存じます。それだけにこの問題について大蔵大臣非常に責任を感じておられるのでありまして、八木委員の言われるような、御期待に沿うような措置が漸次とられる、こういうように考えますので、御了承願います。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 この問題について厚生大臣が熱心に努力をされて、また大蔵大臣が非常にそれについて理解をされたという経過は、いまのお話で十分に理解いたしました。何といいますか、議会の野党政府委員というような形では、私に関する限りはそういうことはしないようにしたいと思います。ただ大蔵大臣が主計局長その他うるさい連中にブレーキをかけられないように、今後激励をするというような意味質問を大蔵大臣にはしたいと思っておりますが、いまおっしゃったことは、私の義務じゃありませんけれども、腹を割ってのお話でございますから、十分配慮して質問をしたいというふうに思います。  それからその次に、ここで公的年金については原則として併給しないようなことが書いてある。併給をしないというのは非常に間違いだと思うわけです。ただしかし、技術的に原則として併給をしないというから、例外はあると思う。例外についてひとつ……。
  58. 黒木利克

    黒木政府委員 この第四条のただし書きの場合でございますが、政令事項になりますが、現在考えておりますのは、母子福祉年金で現在廃疾の場合に年齢延長の取り扱いをいたしますが、精神薄弱児がこの範囲に取り入れられていないのであります。したがいまして、重度精神薄弱児は廃疾の状態にありながら、十五歳に達した日の属する学年の末日で母子福祉年金加算の対象から除外されるのであります。十六歳になりますと、母子福祉年金の加算の対象から除外される。そこで母子福祉年金を受給しておる母親が従来その給付額の加算の対象となっておりました重度精薄児の十五歳に達したときには、その加算の対象からはずされて、その給付の額がそれだけ減額されることになります。これでは不合理だと思いまして、こういう場合に特例を設けたのであります。この場合は母子福祉年金の場合のみならず、児童扶養手当の場合にも同じことが言えるのでありまして、国民年金法児童扶養手当法のいま申しましたような場合を例外として併給をするということに考えておるのでございます。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 例外が非常にたくさんあるかと思ったらそれっぽっちというのでがっかりいたしました。そんなとんでもないことはないと思うのです。なぜ併給しないか。それについて厚生大臣はなぜ併給しないようにこういう妙な法律をおつくらせになったのか、ちょっと厚生大臣に伺いたい。
  60. 小林武治

    小林国務大臣 私はこの手当ての性質からしてさような制限をしたくありません。ただどうも、やはり横のいろいろな権衡とかなんとかでもって、やるときには必ずこういうものをくっつけられて、非常に不本意でありまして、できたらこの問題なんか当然いまのような制限をすべきものではないというふうに私は思っていますが、一応これでいまはがまんをしたわけでありますが、これはよろしくないと考えております。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の併給すべきだというお考えは非常にけっこうだと思います。これは併給がいかぬということになったのは、厚生省の中の議論ですか、大蔵省との交渉の関係ですか。
  62. 黒木利克

    黒木政府委員 この重度精薄児手当法案に関する限りは、実は私のほうは併給、差額支給ということも検討してみたのでありますけれども大臣同士の話し合いでは従来の児童扶養手当法の基準によって万事きめるのだという条件がございましたから、結局それに押し切られたという事情でございます。従来児童扶養手当法でも、あるいは国民年金法でも併給の規定がないのでありますが、これは同じ所得保障で重複するのはおかしい、もちろん一つ手当てだけで十分な生活ができるということが前提であるはずなのですけれども、将来そういうことになるということを予想して、所得保障が重複するのはおかしい、こういうような抽象的な考え方からこういうことになっておるのではないかと思うのであります。しかし、私のほうでも、大臣が申されましたように、この手当額がいずれも低いのでありますから、差額支給なり併給について今後とも大臣の御指示によりまして努力してまいりたいと考えております。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 この併給の問題について一つ一つの問題を取り上げていくといろいろな問題が出てくるかもしれませんが、とにかく公的年金の中で特に老齢年金が中心ですから、老齢年金、退職年金、そういうもので併給は親のほうの年金にかかるわけですね。それはあくまでも親の老後の生活の資金であって、その親が老齢年金をもらうころには残念ながら子供は孫みたいになって、子供対象者は少ないかもしれないけれども、とにかく親のそういうような生活を保障すべき所得保障と常時介護を要するからというような概念が違うわけですね。これはあくまでも併給になるべきものだ、概念が違う。一歩下がってみて、所得制限がありますね。親の公約年金が猛烈に多かった場合に、所得制限と合致しないということを言うような人も出てくるかもしれませんけれども、それはとにかくとして、親のほうの老齢保障の分とこの子供の常時介護の分、これは概念が違うわけですから、当然二つ併給すべきものだというふうに思うわけです。それについての厚生大臣のお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  64. 黒木利克

    黒木政府委員 先ほども申しましたように、社会保障というものが最低限度の生活の保障、一つ制度で最低限度の生活が保障されるということが私は理想であると思いますが、そういうことが前提で所得保障が重複するのはおかしい、こういうことで今日のような結果になっておるのではないかと思うのであります。そこで、同じような性質のものは重複する。しかし先生のおっしゃるように、親と子に対する、あるいは性質の違うものなら重複してもいいのではないかというような御意見でありますが、私も賛成でございます。そこで重複の場合には、むしろ差額支給というような考え方が考えられるわけでありますが、そういう点を突破口にして、実は差額支給もいろいろ財務当局に折衝した経験があるのでございますが、これもなかなか容易ではないのであります。それから、同じような性質ならそういう差額支給が考えられますが、違う性質のものなら私は重複ということも考えられることだと思うのでありますが、現在のところはなかなか話し合いがつかないということでございます。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 非常に局長の御答弁けっこうだと思う。話し合いがつかないのはどことつかないのですか。
  66. 黒木利克

    黒木政府委員 実は私のほうは児童扶養手当法で、いろいろこういう差額支給なり併給の問題を論じたのですけれども、いろいろな案を検討してみたのですけれども、いろいろな案も、結局はやはりいろいろな問題点がありまして、なかなか理論的に割り切れない。結局は社会保障が、先ほど申しましたように、一つ制度で、たとえば年金ならフル年金、フル・ペンションといいますか完全年金年金だけで最低限度の生活ができるということが理想なのでありますから、そういうようなことを理想としながら、なぜ他の制度で重複してやらなければならぬかというようなことに結局なりまして、過渡的な段階ではいいんじゃないかということですけれども、過渡的段階をどう判定するのかというようなことで、結局は、社会保障のそれぞれの制度で行なわれる限度というものがまだはっきりいたしておりませんから、そういうところで行き詰まって、いつも具体化できないのであります。これは過渡的な社会保障の国家においては、どの国でも経験する事例ではないかと思いますが、いまわれわれとしては、そういうことで事務的にもなかなか一致した結論が出ないということでございます。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、そういう方向でひとつ御努力を願いたいと思います。年金局長、非常に関係が深いと思いますが、厚生大臣がいま承諾をされました方向、児童局長の非常に熱心な方向に従って、年金局としてひとつお手伝いをしていただきたい。お手伝いについて一生懸命にやられるお気持ちをひとつ表明してもらいたい。
  68. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 いまの併給という問題は、先生も言われたように年金という性格と、それから今度の手当というものをどう理解するかによって相当変わってくるのではないか。これは私も詳細に知りませんけれども厚生省考え方と大蔵省の考え方は非常に違うかもしれません。その辺のところから変わってくる。それから金額が、現実問題として千八百円と千円で、差があるということで併給はしないという考え方、私もこれはふしぎだなと思うわけでありまして、そういったところに問題があると思います。私のほうも、そういうように、この法律が将来よくなる方向につきましては御協力を申し上げたいと思います。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 もっと具体的な問題に下げますけれども、たとえばいまの原則から例外というのがごく少ないので、ほんとうにがっかりしたのですが、たとえば老齢福祉年金をもらっている、そして親御さんが死んで孫が残ったときに、当然おじいさん、おばあさんが扶養しているときには、児童扶養手当法の適用を受ける。そのおじいさん、おばあさんが月千百円の年金をもらっている。その孫にこういう人がいた場合に、このたてまえだとこの千円の併給にならないわけですね。そんなむちゃくちゃなものはないと思うのです。とにかく具体的な一例を出しましたけれども、まだあります。障害者のほうで、おとうさんとおかあさんが子供を養育している。それが全育であって両足がない。極端に言えば両足、両手、両眼がないというような親の子供重度精神薄弱者、その場合に千八百円しかいかない。そんなものでは話にならない。不完全だが、少なくとも福祉年金とこれの併給ということは、ことしからでもやらなければ筋が通らない。福祉年金は絶対的に金額が少ない。そしてその福祉年金というのは、この扶養している人の老人なり、あるいは障害者なり、そのための所得保障としてほんとうに九牛の一毛にも足りない金額だ。このような重度精神薄弱児がいた場合に、その併給をしないでこっちをとめてしまうということでは、一番気の毒な精神薄弱児並びに扶養者にこの手当法案は何も役に立たない。少なくとも今度は、福祉年金との併給だけでもやらなければ仏つくって魂入れずで、一番気の毒な子供と親をほったらかしておくことになる。その点について厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  70. 小林武治

    小林国務大臣 具体的問題につきまして、ひとつ局長からお答えいたさせます。
  71. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに先生のおっしゃったように、私たちも割り切れない感じを持っておるのです。そこで、重度精薄児手当の性格を所得保障的なものではないのだ、何か別の知恵をしぼりたいと思ったのですけれども、要するに監護料的なものということになりまして、結局は広い意味所得保障になるのであります。同じように、老齢年金障害年金も、所得保障的な同じような性格のものである。したがって、従来の原則に従って併給ができないのだということで、結局理論的にも行き詰まったのですが、そこで監護料と言いながら一種のエンカレッジング・マネー、激励的なものだ、だから所得保障とは少し違うのだという理屈も考えられるのですが、エンカレッジング・マネーと言いながら、結局そういう障害者の所得に関連があるのだから、やはり所得保障的なものではないかということで、これも結局は行き詰まってしまって今日の結果に至っておるわけでございますが、そういう問題も、ひとつ今後はさらに併給なり差額支給の問題なりで前進するために努力してみたいと思っております。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 エンカレッジング・マネーですか、鼓舞激励というものですか、そういう考えでいけば当然併給にしなければならない。所得保障概念で言っても、そんな一級障害者の目が見えなくて、足がなくて、手がない、その子供重度精薄のときに、親に千八百円いっておるから千円をやれない。こんなことでは全然話にならない。自由民主党の先生方や社会党の同志や民主社会党の方も、そんなものはとんでもないとお考えになるに違いない。当然私も一生懸命やりたいと思うのですが、ここにおられる先生方全部、これは絶対に併給させなければならない。併給させないような法案であったら、させるまで審議しなければならない。大蔵大臣も呼んできて、総理大臣も呼んできて、こんな結果を池田さんは知らないのか、知ったらすぐ直さなければならないということを与党の方も言われると思うのです。当然修正になると思うのですが、修正になるときに大蔵省はまた金がどうとかこうとか言うだろうけれども、金額は少ないはずですから、そういう準備を事務当局は、委員審議に便利なように、修正になるものとして確信を持って準備を進める。われわれはその資料を使って総理大臣にもただし、また大蔵省のわからずやもしかりつけて、これを進めるというふうにしたいと思いますから、そういう点の準備を完全にしておいていただきたいと思います。
  73. 黒木利克

    黒木政府委員 実は先生の御意見を技術的に法律制度として考える場合には、年金の加算というか、そういうような重症子供を持った場合の加算制度ということでも、解決ができることでもあろうかと思います。そういう問題がありますから、私のほうでこの手当の額の引き上げについては今後努力をしたい、あるいは併給や差額支給等についても努力をいたしたいと思いますが、先ほど来大臣が申されますような経緯で、とにかくこういうことでスタートしたのでありますから、ひとつこれを種にしてこういう精薄児精薄者所得保障について前進をしてまいりたい。いろいろな方法はあり得るわけでありますが、とにかくこういうことでスタートしたのですから、これを種にして、とにかく拡大、前進をはかってまいりたいというふうに考えております。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣にお伺いします。いま福祉年金だけのことを申し上げましたが、たとえば厚生年金もいまのところでは非常に金額が少ない。これから改正されようとしております金額もそう多くはない。それから船員保険その他もそうですから、当然そちらのほうの併給ということも考えなければならない。われわれは与党、野党あわせてここに修正しなければ、私は通すべきではない。もちろん、これはつぶしてはいけない法律です。断じて修正をして通すということにしたいわけですが、それとともに、話が一ぺんにことし一〇〇%いかなくても、八五から九五くらいしかいかないこともありましょう。そういう場合に、厚生大臣がこうした問題の併給、いま論議されたような問題について、来年度においてわれわれに苦労をさせない、一ぺんに政府からこういう改正が出ましたというような努力をぜひしていただきたいと思います。厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  75. 小林武治

    小林国務大臣 これは先ほど来申し上げましたように、もうわれわれの原案から非常な後退をした案でございますので、われわれの考え方はおわかりいただいておると思います。したがいまして、とにかくこれをまず拠点として前進させたいということでありますから、当然、次の機会においては相当な前進をさせなければならぬ、そういう決心をいたしております。
  76. 八木一男

    八木(一)委員 次に、それに関連して非常に重大な問題がございます。というのは、生活保護を受けている者が——私これを一通り読みましたが、ここをさがしてみますと特例の規定もございませんので、生活保護のほうの扱いを変えない限りにおいては、この手当生活保護を受けている家庭で受けたときに、これだけでは収入認定をされるおそれがある。そういうことであっては断じてならないのであって、国民年金法福祉年金のときに、生活保護のところの人たち福祉年金をもらうと収入認定をされる。老人も障害者も、実際に入ってこないから生活が楽にならない。それではならないではないかということで、時の総理大臣の岸信介さんと坂田道太さんに質問をして、当時はそこで確約をさして、少し時間がずれて生活保護法の老齢加算、母子加算、障害加算があったものを少しふやす、ないものを新設するという形で補てんを見た。その後、国民年金法の改正があるたびにそういうことについて対処をされた。それは、最初半年か一年ずれたことは非常に残念でしたけれども、その後そういうことになったことばけっこうでありますが、今度の場合、半年でも一年でもずれたらたいへんなことであって、同時に、生活保護のほうについて同様の加算制度をつくって、この重度精薄児をかかえて一番生活が苦しい、貧しい家庭にこれと同じような趣旨の金が入って、その親を鼓舞激励できる、そういうふうにしなければならないと思うわけであります。それについて厚生大臣はどのように考えておられるのか、伺いたいと思います。
  77. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 この金額に相応する分を生活保護の加算といたしまして収入認定をしない、この法律制定施行と同時にその方針でいきたいと思っております。
  78. 八木一男

    八木(一)委員 社会局長の御答弁で非常に安心をいたしました。それば間違いないと思いますが、絶対に同時に発足していただかなければならないと思います。生活保護法において、この重度精神薄弱児をかかえておられる生活保護家庭に、これと同じ金額が入るような措置をこれの発足と同時に考えるということについての厚生大臣責任のある、明白な御答弁を願いたいと思います。
  79. 小林武治

    小林国務大臣 社会局長の申したとおりいたします。
  80. 八木一男

    八木(一)委員 非常に前向きでけっこうです。いま局長の御答弁大臣の御答弁で非常に安心をいたしました。まず絶対に確実だと思いますが、なおまた内閣総理大臣に御出席を願って、がっちりさせるかもしれません。  引き続き御質問を申し上げます。支給制限についてでございますが、受給資格者が、前年度において十八万円をこえる所得を有したときには支給しないこととするということがあります。国民年金法の改正案が本国会に出されまして、地方税法の改正に従って本国会で修正をして、十八万円が二十万円になったのであります。当然、同じ意味からして、これは十八万円を二十万円に限度額が引き上げられるべきであるというふうに考えておりますが、厚生大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  81. 小林武治

    小林国務大臣 そのとおりでございます。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 これについては、また与野党相談して修正をするというようなことを考えていかなければならないと思います。  次に、もとに戻りまして題名でございますが、重度精神薄弱児扶養手当法案ということになっております。この題名がついたのは、いろいろないきさつがあってついたと思いますが、なぜ重度とつけたか。重度とつけないでおいて、内容規定で重度にしておけば、中度に及ぶ可能性が多いと思います。初めから重度じゃ困る。それについて、なぜこういうような狭い題名をつけたか、厚生大臣のお考えを伺いたい。
  83. 小林武治

    小林国務大臣 前に申し上げたとおり、狭くしなければ通りにくかった、そういうことでこういうことになったのであります。
  84. 八木一男

    八木(一)委員 局長、これについて……。
  85. 黒木利克

    黒木政府委員 実は精神薄弱児ということばを表に出すことは、精神薄弱児を持った親たちに対する感情上の問題があってどうかという議論がありまして、したがって児童手当法の中に入れたほうがいいのではないか、それが理論にも発展したわけでありますが、しかし、こういうような制度によって親たちも子供を隠さないで、やはり国のこういうような施策を理解して、これを子供のために活用するというようなことに前向きで、むしろ親たちにも向かうべきではないか、また親たちに望むべきではないかということから、精薄児ということば法律の名称として採用したのでありますが、重度をつけるつけないの問題は、先ほど大臣が申されましたように、大蔵省が子供に限る、しかも重度に限ってということで実質がこういうふうなことになりましたから、したがいまして、法律も実質にふさわしい法律の名前にした次第であります。
  86. 八木一男

    八木(一)委員 重度というのは、きのうの御質問にあったのではないかと思いますが、私、建設委員会質問に行っておりましたので、いろいろな判定する基準であるとか、どこから重度が入ったのですか。
  87. 黒木利克

    黒木政府委員 実はわが国では、こういう重度中度、軽度というような分類のしかたというものは最近でございまして、従来は、御承知のように魯鈍、痴愚、白痴というような分類をしておったのでありますが。最近アメリカの精神薄弱児協会で軽度、中度重度というような分類にいたしまして、軽度というのは教育可能、中度というのは教育はむずかしいが訓練可能、重度というのは教育も訓練も不可能というようなことで、こういう分類を行政的にしているようであります。そこで、今回私たちもいろいろ専門の学者相談しました結果、従来のような白痴とか痴愚というような分け方では不十分だから、アメリカの方式がいいのではないかというようなことで、こういうように軽度、中度重度と分けたのであります。  それから、社会局から私のほうで引き継ぎました当座は、重度という場合に、知能指数だけによりまして、知能指数が二五以下の者というようなことで引き継いだのでございます。しかし、児童局としてはできるだけその範囲を拡大したいというようなことで、いろいろ学者意見等も聞きました結果、単に知能指数だけでこの問題は判定ができない、やはり医学的な判定あるいは社会生活能力の判定というものが必要だ、したがって二五というものに必ずしもこだわる必要がないというような結論が出ましたので、財務当局と折衝の結果、知能指数は一応三五以下、これを今度の法案対象重度精神薄弱児ということにしたのであります。そのほか医学的な判定、あるいは社会生活能力についての判定というような三つの方面から判定をするというようなことで、こういうような基準をつくっておる次第でございます。
  88. 八木一男

    八木(一)委員 そうなると三つ要件がある。知能指数、医学的、社会的、いろいろな要件がある。そうすると、三五以下ということになると、三六は入らない。三六のことについては、精神医学の大家の河野先生なり、社会事業の大家である長谷川先生なりの御指摘があろうと思いますから私は深く触れませんけれども、そこでしろうと考えで、三五、三六というのはほとんど違いがないのではないかと思うわけです。そういうことで御努力によって折衝して範囲が幾ぶんふえたということは、とにかく財政に縛られて、その程度の範囲にとどまったと反面からは解釈できると思います。そういう点でこういう範囲を今後極力ふやす、拡大をするというふうに努力をしていかれる必要があろうと思います。それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  89. 小林武治

    小林国務大臣 御意見のとおりだと考えます。
  90. 八木一男

    八木(一)委員 私ども精神薄弱児を、施設なんかでいろいろその状態を拝見したことがございます。その中に、程度の強い子供とそうでない子供とがありますけれども、私どもしろうと判断から見て、中度とか軽度に属するような人でも、私ども考えで見ると相当に親の負担が重い。そのような親の激励手当というものを出す必要があるのじゃないかというふうに思うわけです。重度で縛ることによって非常に幅が狭くなるということは、非常に残念だと思うわけです。重度を題名からはずし、いろいろな項目からはずして、精神薄弱児として認定によって——ことしはこれであっても、将来いわゆる中度あるいは軽度までこれが拡大するという道をぜひつけておく必要があろうと思います。法律の題名としては、このように政府としては出されたわけでございまするから、その問題にずばりと御答弁される立場にないと思いますが、考え方として、われわれの考え方と同じような考え方をしていただかなければならないと思いますが、それについての厚生大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  91. 小林武治

    小林国務大臣 お話のとおりでいいと、こういうふうに思います。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、少しまだ時間があるようですからもとに戻りまして、長谷川先生や伊藤先生の専門の部門についてちょっと申し上げておきたいと思います。まだ時間があるといってもそうありませんから、要約して申し上げまするが、精神薄弱者の問題は、最初に申し上げたように精神薄弱児が生まれる、それが生まれないように——精神薄弱児が生まれないというのは語弊がありますが、精神薄弱児として子供が生まれてこない、健康児として生まれてくるように、母性の保健ということが大事だろうと思います。原因を探求して、母性の保健をとにかく妊娠時、分べん時その他非常に完全にして、そういう不幸な能力状態で生まれてくる子を少なく、健康な状態で生まれてくる子を多くということをまずしなければなりませんし、そういう点について、先ほど御答弁にもありましたように、いろいろの優生学上ということばがありましたけれども、こういうことだけでは片手落ちだと思います。私、医学者じゃございませんから、いろいろな原因について全部知悉しておるわけではございませんが、妊娠中における母親の栄養が悪い、からだのぐあいが悪いということについても、こういう精神薄弱児の生まれてくる危険性があるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。そうなりますと、たとえば、わが党のほうでいま出しておりまする母性の保健及び母子世帯の福祉に関する法律案の内容に盛ってありまするような、母性の妊娠時あるいはそれ以後の保健について、積極的に、具体的に考えていくことがぜひ必要であろうと思うわけであります。それについて厚生大臣なり児童局長なりの御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  93. 黒木利克

    黒木政府委員 確かにお説のようでございまして、本人のためのみならず、国家的に考えましても予防にしくはないのでございます。そこで、先ほども申し上げましたが、これにつきましては、原因もいろいろ探求をわが国でも、あるいは国際的にもやっておるわけでありますが、何よりも遺伝的な問題がありますので、これは今回も、婚前指導といいますか、行政的に未婚の男女に対しましてグループ分けをするというような行政施策も実は昨年から始めておるのでありますが、こういう意味の優生結婚と申しますか、そういうものを行政としてさらに進めてまいりたい。さらに、胎生児の問題がございまして、これにつきましても、妊娠しました場合の登録制度、あるいは妊婦に対する保健指導につきましてのいろいろな施策をやりたいということで、実は保健所の行政では網の目が荒過ぎますから、最近は保健行政を市町村におろしまして、母子健康センター等をつくりまして母子保健等の指導網を整備してまいりたい。これも実は数年前からやっておるところでございます。  それから、出産時の原因がもとで精薄児になるケースが非常に多いのでありますが、そういう場合は、施設分べんと申しますか、医者の立ち会いのもとの分べんということが非常に必要になってまいります。そのために、先ほど申しました母子健康センターあるいは施設分べんというものについての施策をやっておるのでございます。  それから、出産後の問題で、特に新生児対策等につきましても必要であるというようなことでそれぞれの施策をやっておるのでありまして、従来ともやっておりましたが、ただ一貫性が欠けておる、ばらばらであったというようなことで、何らかやはり一つ体系にしたがいいというので、社会党でもお考えになっておりますような母子保健の単独立法をひとつ考えてもらいたいというようなことで審議会に諮問をしておるのでありまして、事務当局としてもいろいろ原案を整理いたしておるのでありますが、近い国会に御審議をお願いすることにいたしまして、それにふさわしい予算措置を講じてまいりたいと思っております。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 具体的な問題として、いまおっしゃったことみな大切だと思います。それとともに、妊娠時の母性に、たとえば乳製品その他良質のたん白質を無償で提供するというようなこともぜひ進めていただきたいと思います。金のかかることになるとほっておいて、金のかからないことだけでお茶を濁すという行政が、方々で行なわれておることが多いわけです。金がかからないでも有効なことはもちろんどんどんやっていかなければならない、し、一番大事なのは、金だけで判定される問題ではないと思いますが、少なくとも金の問題、いろいろな問題で利益になるようなものはぜひやっていただきたい。  この精薄予防対策についての予算は、大体完全なものはどのくらいおありになりますか。
  95. 黒木利克

    黒木政府委員 まず母子栄養の問題で、低所得者の妊婦に対する栄養の支給は、この両三年の間予算要求をしておるのでありますが、ついに実現を見なかったのであります。これは、諸外国におきましてもすでに戦後直ちに実施をして、かなりな成果をあげておるのでありますが、わが国におきましてもユニセフ・ミルクが支給されておりまして、諸外国のこれにかわる制度をやっておるのでありますが、これが本年限り廃止になりますので、これにかわる制度もやらなくちゃならぬというようなことで、明年度も予算獲得を努力してみたいと思うのであります。従来のいろいろな経験にかんがみまして、低所得者に対しまして、母子栄養につきましては二重価格制と申しますか、そういうことも一案ではないかということで、いまそういう案を作成中でございます。  それから、母子栄養の関係は実現を見ませんでしたが、その他の母子保健対策につきましては、この二、三年の間に数倍の増額を見ておるのでありまして、先ほども申しましたように、妊産婦、乳幼児の登録制度もスタートしておりますし、その他妊娠中毒症対策も一昨年から実を結んでおりますし、従来の妊産婦の指導もさらに強化をしておりまして、この総額は、いろいろ各分野にわたっておりますので、総計をしたものはまだ手元にございませんが、この二、三年特に重点を置きまして、かなりな増額になっておるのでございます。特に、先ほど申しました母子保健法を立案するにふさわしい内容だけは、予算措置はすでにできておるわけでありますから、あとはこれを中心にしまして体系化すれば、一応かっこうがつくという段階にまできたということであります。
  96. 八木一男

    八木(一)委員 予算の絶対額の非常に少ないことは、少な過ぎることは申すまでもないと思います。そういう問題について、ぜひ十分なものを急速に推進していただきたいと思います。厚生大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  97. 小林武治

    小林国務大臣 予算も十分配慮しなければならぬと思っておりますが、何しろやることが多過ぎまして、あれもこれもということで、どうしてもそれぞれの項目について思うようにまいりませんが、必要なものはあくまでも要求する、こういう態度でいきたいと思います。
  98. 八木一男

    八木(一)委員 いま申し上げたことは根本的な問題でして、国の政治が国民のために行なわれる。国民で健康な人がいろいろなことをするために——道を歩くのに都合がいいとか、何をするのに都合がいいとか、いろいろなことが行なわれていますが、根本的に、人間能力が少なくて生まれてくるということが、一番重大な問題だと思う。それを、予算を非常に増加させることによって、精薄児として生まれるのが健康児として生まれてくる可能性があるわけですから、そういう問題について、ほかの問題があるからというようなことでほっとくことは許されない問題だと思います。厚生大臣はもちろん熱心にやられると思いますが、これを大蔵省や何かが、ほかの既定のいろいろなものと同じように考えて、予算を切るというようなことは許されないと思う。また、切られるであろうということで、原局が非常に憶病なものを出すことも許されないことだと思います。そういう点について、いままでの考え方ではなしに、ほんとうにそれを完全に解決するという意味で、制度を確立するなり予算の裏づけをするなり、邁進をしていただきたいと思います。  その次に、今度は施設の問題でありますが、施設についてはいろいろ処理いただいております。一つ一つ数字をあげることも必要だろうと思いますが、ちょっとおなかがすいてまいりましたから抽象的に申し上げますが、とにかく絶対量が絶対に足りないと思います。各地にいろいろなものができましたとおっしゃったけれども世の中精薄児で、施設収容したならばさらにいろいろな点でよくなるだろうという数は、施設数よりもずっと多い。そういう施設が少ない。これは急速に解決をしなければならないと思いますし、公立というものが多くなっておりますが、少なくとも一番モデルになるようなものを国立で相当にたくさん建てて、また公立が各府県なり市町村でできるように、十分な手当てをすることを急速にしなければならない。いまの施設をどのくらいにしたらいいかということは、数字で御説明を伺ったら出てきますけれども、少なくともこんなものじゃいけない。百倍から千倍ぐらいにしなければいかぬというふうに思っております。それとともに、重度精神薄弱者の保護手当てが、子供に対する一般的な施設が少ないほかに、重度精薄施設が非常に少ない。そういう点で、そういう気の毒な人に対処している厚生省でありながら、行政自体は一番気の毒な人をほったらかしにしておる。これは断じて改めていかなければならないと思います。施設について、これから施設を急速にふやす施策をどのようにとっていかれるか、具体的なものがあったら知らしていただきたいと思います。
  99. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに御指摘のように、重度精薄施設につきましてはまだ実施がおくれておるのでありますが、本年度から、実は従来の施設整備の補助金のやり方を改めまして、社会局、児童局の施設整備の補助金を一括いたしまして——これが二十五億円余りになりますが、その中で重度精薄施設には最優先権を与える。それから精薄施設についても優先権を与える。したがいまして、県なりあるいは民間団体なりが設立をしたい場合には、それを認めないということがないほど優先順位を与えるという運営を、ことしから実は始めたのでございます。したがいまして、財務当局に言わしむれば、二十五億を全部精薄対策に使ってもいいんだというぐらいの考えでその設置を奨励しているのでありますが、残念ながら、県なり民間団体の設置の要望というものが、われわれが期待したほど実は本年度はなかったのでございます。いろいろ調べてみますと、やはり職員の確保の問題等で自信がないというようなことがわかりましたので、昨年から職員の養成を心がけまして、特に養成所までつくっておるわけでありますから、これはいささかどろなわになったのでありますけれども、この養成施設をさらに整備し、また要員の確保に努力をいたしまして、各地におきまして必要な施設が、希望すれば必ずできるように取り計らってまいる。現在いろいろ年次計画等もつくっております。ただ、自治体が申請をいたしませんと私どものほうで命令設置ができませんものですから、結局は自治体なり民間団体にお願いする以外にないのでありますが、それにしても国でやれることにつきましては、できるだけこれを整備してまいりたい。そこで、国立秩父学園というのがございますが、これもひとつ本格的に整備をしていきたい。それから肢体不自由児の関係で整肢療護園という施設がございますが、これも本格的に整備してまいりたいということで、実はこの点についても大蔵省と大体の話し合いがついておるのでありまして、来年度は国立でも相当な整備ができる、したがって自治体に対しましても、それに右へならえさせまして、大いに奨励をしてまいりたいと思います。
  100. 八木一男

    八木(一)委員 施設で働く人たちの教育といいますか、研究といいますか、そういうのは大体どのくらいの年限が必要でございましょうか。
  101. 黒木利克

    黒木政府委員 これは特に医師なり看護婦なり、あるいは指導員なり保母なり、いろいろな職種によって違いますが、主として保母さん、看護婦、児童指導員というものが中心でございますから、それについて申し上げますと、保母さんにつきましては、高等学校を出まして例の二年の養成課程の施設と、短期大学を指定いたしまして養成いたしておるのでありますが、これは大体二年程度でございます。今度私のほうでつくりました国立の養成機関は、主としてそういう保母さん等の資格を持っておる人たちをさらに一年なり訓練をしょう——現任訓練と言っておりますが、そういうことでございます。それから児童指導員等は、主として大学を出た者あるいは大学の学部の者が中心でございますが、これは四年制の大学の者が現在中心になっております。それから看護婦につきましては、これは看護婦の養成所を出た者を予定しておりますから、大体三年でございますが、しかし、こういうような特殊な業務でございますから、先ほど申しました国立の養成機関あるいは現任訓練機関で、さらに半年なり一年訓練をするということを考えておる次第であります。
  102. 八木一男

    八木(一)委員 そういたしますと、じれったいような思いもいたしますけれども、いまから一生懸命かかれば、どんなに少なくとも三年以内に新しい人が要員にできる、いろいろな点で、職種によってはもっと短くてできるということになっておりますか。
  103. 黒木利克

    黒木政府委員 さようでございます。
  104. 八木一男

    八木(一)委員 大臣に御要請申し上げたいのですが、私は、直ちに施設に入る必要のある——精神薄弱児だけじゃないんです、薄弱者全部を含んで、施設に入る必要のある人が全部入れるようにしなければいかぬ。ただ、施設でいろいろなことをしていただく人がなければ、仏つくって魂入れずになりますから、そちらのほうが非常に少ないということを伺っておりますから急速に養成していただかなければならぬ。そうすると、本格的に考えれば、三年以内にいろいろな施設に入る人は養成できるわけであります。三年間ほっとくわけではなくて、来年も同じようにふやす、再来年も同じようにふやす、三年目には確実に確保できるという体制に持っていっていただかなければならぬ。いまから直ちにそういう考え方のもとに、たとえばいま御答弁中におっしゃったように、予算は取っておいても県や民間のほうで申請がないとできないというようなことではなしに、絶対にそれはできるという体制をつくっていただかなければならない。ですから、三年の間はいろいろ段階的に上がる方法でもよろしゅうございますが、私はしろうとで三年と言いましたが、ほかの方が言ったら二年とおっしゃるかもしれませんが、そういう施設で働いていただく方の養成できる時点に合わせて、またそれまではふえた分に合わせて、二年なり三年後に、収容を必要とする人が完全に全部収容できるという体制をぜひつくっていただきたい。それには金を用意するだけではなしに、申請をしなければできないというのなら、国立で全部つくってもいいです。そういうふうに見通されるなら、全部国立でできる。しかし、申請者でできる、公立、私立でできるというお考えを持っておられれば、それが有効であるとお考えでございましたならば——少なくとも府県には、人口比率で精神薄弱児の数は大体わかる。大きな数ですから大体間違いない。少なくとも二年後あるいは三年後までにこれだけの人員収容できるものをつくらなければならない、それ以上つくってもかまわない、かまわないけれども、民間のほうでできている分、それ以上できていればそれでいいけれども、少なくとも府県でそれ以上のものを、二年後か三年後に絶対つくらなければならないというような法律規定をぜひやっていただきたい。それについての厚生大臣のお考え、御決意を伺っておきたいと思います。
  105. 小林武治

    小林国務大臣 お答えは簡単でございますが、実行はきわめて困難であります。現在でもわずかに四分の一か五分の一しかないので、これをたとえばベッド百つくるにも、すぐ五、六千万円要るというような状態でありまして、われわれの努力目標とはいたしておりますが、なかなかこれは困難な問題であります。ことに人の問題も、若年労働力はこの方面においても非常に困難である。ことし国立秩父学園で募集いたしましたが、やはり定員になかなか満たない。いろいろな共通な問題がありますので、私どもはお話のようにしたいと思って、またそういうふうにいたしましょうと言うことは簡単なお答えでありますが、実行はきわめて困難である。これはあらゆる面においてわれわれも努力をしなければならぬ。お話のように金は簡単だと言うけれども、金もなかなかたいへんです。ことしわずか二百ベッドつくるにも、どうしてもやはり一億円ぐらいすぐかかる。そういう問題もあります。しかし、これは国会方面の御協力も得まして、ぜひ実現に向かって進まなければならぬ、こう思っております。
  106. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は、そういう御答弁はなさらないで、前向きにやっていただきたいと思います。大蔵大臣は無理解にそういうことを言うこともあろうと思いますが、非常に正直な厚生大臣だからそうおっしゃるけれども厚生大臣が一番の責任者であって、厚生大臣が断じてやるのだという考え方で引っぱっていかなければ、問題はとまってしまいます。ですから、そういうことをブレーキをかける者があれば、それはけしからぬのだ、厚生省は断じてやり抜くんだというふうにぜひやっていただきたいと思います。そういう点で、たとえば国で全部やるということ、それが検討してどうしてもできなかったら国で半分やる、あとの問題については、地方公共団体も住民のためにやらなければならない任務が十分あるわけですから、それに責任を負わせて、全国的にそういうものが、あらゆる責任を持って施設を完全にして、そういうようにやるというふうな前向きの決心をぜひ伺いたい。国民の中に、統計によれば三%あるとか、統計によれば一%であるとか、いろいろありますけれども、とにかく出生のときの不幸な原因で、人間として、国民として生まれていながら、いろいろな点で人権が実際上制約をされている。実際に人間らしく働けないという人に対しての金ですから、予算上ほかのところがぐうすかぐうすか、どこか大企業がどうだとか、へったくれだとかいうこととは違うわけです。そんなものは待たしても、ほんとうにそういう人たちが、人間としても気持ちよく生きていけるような金は最優先でなければならないと思うのです。道路がどうだ、あるいは農業がどうだ、あるいは中小企業はどうだ、おのおの大切でありますけれども、それ以前に、精神薄弱者がもしいろいろなことを理解する力があったとするならば、ほかのことはどうでもこのからだがなおったならば、能力が普通になったらばと思うし、その家族にしてみたら、ほかのことが、たとえば学校がちょっときれいになるよりも、それよりも先にこの子が普通の状態になったらということを思っているわけであります。そういうような人たちは、統計によれば国民の三%、統計によれば一%ある。その一%、三%の人たちを総予算と比較してみたら、その人の気の毒な状態を見てみたら、ほかのものと競合してそういうものの予算にブレーキをかけるということはあり得ない。厚生大臣ほんとうに確信を持って、総理大臣や大蔵大臣に当たってもらいたい。そういう勢いでぜひやっていただきたい。いま申し上げたように、いろいろな従業員の養成、いろいろな人の養成、それから施設のことについても、一両年のうちに必要な人は完全に施設に入って治療をして回復をしてもらう等、いろいろな点で人間として自立する道が少しでも多くできるように、全力をあげて邁進されるという御決意をひとつ伺っておきたいと思う。ぜひ前向きの御答弁を願いたい。
  107. 小林武治

    小林国務大臣 お答えとしては、全力をあげてやる、こういうことをお答え申し上げておきます。ただ、八木委員ほんとう重度精神薄弱者あるいは薄弱児をごらんになったかと思いますが、従業員としても、きのう伊藤委員はよくおやりになっているということをおっしゃいましたが、とにかくこのことは、本人のためにやるのか、だれのためにやるのか、こういうふうな疑問さえ抱いている人もある。何も反応がない、うれしくもなければ喜ばしくもない、そういう方々をただ相手にしている人の感じというものは、私どもはいろいろお察しがつく。要するに、ありがたいとかよかったとか、そういう感情はありません。したがって、そういう者を扱うという言葉でいいのじゃないかと思いますが、扱う人を得ることはなかなか困難な問題です。たとえば身体障害者とか、あるいはその他の知能のある方は、何をしてもらっても、ありがたい、よかった、こういうふうな喜怒哀楽がありますが、ほんとう重度の方にはそういうものがないので、扱う人がいかにも張り合いが悪い。私はこれほど張り合いの悪いことはないと思う。何をやってあげても反応がない、こういうのがいま言うほんとう重度障害者でありまして、したがって、そういう従業員というものは、よほどの方でなければだれでもいいというわけにはいきません。こういうことで、私どもは、人を得たいということを非常に考えていろいろ募集に苦心もしておりますが、なかなかこれは普通の人ではできません。いま言われたことも、やはり宗教団体等を非常にたよりにすると申しますか、そういう状態でありまして、私は金の問題も申し上げましたが、とにかく人の問題が一番大きな隘路になりはせぬかと思っております。それは要するに、対象者がそういう人たちであるということが、感情を持たないということが非常に大きなハンディキャップになりますし、私もいま、これらの施設をいろいろ視察した際に、一体われわれは何のためにこれをやるのかというふうな疑問さえ抱いております。結局私の得た結論は、これは家族を解放するのだ、家族に社会に復帰してもらうのだというふうなことを考えて、そうしてこの問題に対して張り合いを持ってまたやらなければならぬというふうな結論になりました。本人のためにやるというふうなことでは、なかなか——いまの反応のない人たちを相手にした従業員の気持ちも察すれば、そういうことも私ども考えなければならぬと思うのでありまして、私は、これはやりますというお答えはいたしますが、ことに人の問題で非常な隘路があるのだということは、あらかじめひとつ御了察願っておきたいと思います。
  108. 八木一男

    八木(一)委員 最初に全力をあげてやると言われた、そういう御答弁はけっこうであります。ぜひひとつやってもらいたい。あとにおっしゃったところの、本人に反応がないのでありますから、具体的には家族のためだとおっしゃったこともわからないではないのでありますが、やはり私は、本人のため、または家族のためということになろうと思います。それは大臣もそういう意味でおっしゃったのだろうと思うのでありますが、そういう本人のため、ひいては家族のためという概念でやっていただきたいと思います。  それから、そういう気持ちに非常に熱心な方でなければできにくい仕事であるということはわかっておりまするが、そういう方々が、ほかの要件あるいは経済的ないろいろな要件によって御苦労が増すようなことがないように、経済的な待遇だとか、その人の住居だとか、そういう問題について万全を期して、それを一生懸命やれば、そういう人に後顧の憂いなしにそういうとうとい難儀な仕事をやっていただける、その面のことも含めて先ほど申し上げましたので、そういう点についてがんばっていただきたい。
  109. 本島百合子

    ○本島委員 関連して。ただいま八木先生が申されたように、重度心身障害者の問題については、地獄の若しみと普通に言いますけれども、それ以上だということになるわけです。そこでお尋ねいたしたいのは、民間に対する補助はあまりなかったとおっしゃるのですが、現に、私どもの知人の中には民間でやっていらっしゃるのです。ただし、職員の問題では、御承知のとおり適格な職員というものはほとんど得られない。そこで、そうした子供を持った親たちが協力し合ってつくっておるわけです。それに対してでも、全国から子供も背負って、とにかくここに置いてもらわなければ帰ることもできないと言って子供を置いていく人があるという状態です。いままでは政府のほうから少しも援助がなくて、民間の協力でぽつりぽつりつくってきたわけです。こういう点については今後どういう民間に対する援助をしていただけるのか、金額の基準もあるでしょうが、そのあらましを聞かせていただきたいと思います。
  110. 黒木利克

    黒木政府委員 この事業の特殊性は、先ほど大臣も申されましたように、官僚的な仕組みではなかなか困難な面もありますので、民間団体に期待するところが非常に大きいのであります。しかし民間団体の場合にも、個人立の場合には憲法なり地方自治法に基づいて国から公金が出せないものですから、どうしても福祉法人になってもらわなければならない。もう一つは、継続性、安定性がなければ個人や民間の場合はいつでもやめられるわけでありますから、せっかく入りました子供や親のことを考えますとどうも困る。そこで、継続性なり安定性のある社会福祉法人に限りまして、従来補助金を出すというような方針でおります。ところが現在の社会福祉事業法では、社会福祉法人が新しく事業を始める場合には補助金が出せない、増改築の場合に限って公金が出せるのだというような法律の規定がございます。これはむしろこちらのほうを改正すべきかと思いますが、いろいろないきさつから、従来社会福祉法人に対しても公金は出してはならぬという厳重な解釈からだんだんこんなふうに緩和してまいっておるのでありますから、急に新築の場合にも出すということになりますと学校の場合にもこれは波及いたしまして、いろいろ問題がございますから、やむを得ざる段階に現在なっております。しかし、たてまえはそういうことですけれども、ある程度民間で苦労しながらおやりになって、継続性がありそうだというような判断をいたしますと、政府が積極的に建設の設備費、運営費等について金を出す道は開かれたわけでありますから、先ほど申しました二十五億円の設備費の補助金につきましても、精薄施設に対しては優先的に、公私を問わず補助金を出したいということで今後運営してまいりたいと思います。
  111. 本島百合子

    ○本島委員 いまお答えになったところがたいへんなところにひっかかっておって、いままでこういう人たちを預かる施設が民間ではおくれてきたわけですね。やりたいという人はたくさんあったわけですが、それができなかった。ようやくにしてつくってみたところが、どこからも援助がない。個人の慈善事業みたいに、個人の寄付を仰いでかろうじてたどりついてきておる。こういうのが中央にも見受けられるわけです。ただ預かり置くというような程度では、またどうしようもないことだと思いますが、それにしても親の立場からすれば、この子あるために自分たちも地獄の苦しみで、生活も低所得に転落せざるを得ない、その子にかかりきりでございますから、そうしてやっていっても、医学的にどういうことになるか私どもわかりませんが、その寿命はあまり長くないといわれておるのです。二重、三重の苦しみにあえいでおる子供たちは、寿命は短いと言っておる。ですから親の身にすれば、この短い寿命の間に、せめても何かこの子供希望と光をという願いを込めてやっておるわけです。そうして施設がないために、民間の規格に合わない施設でも預かるところがあれば預けるというようなかっこうになっておるわけですから、これはひとつ十分な御調査をいただいて、法人がどうとかこうとかいうことを抜きにしてでも積極的に補助の手を差し伸べてもらって、とりあえず預かる場所ができたならば、適当な資格のある方々を指導に差し向けるというような形でも考えてもらわなければならぬのではないか。統計によってもさっそく入院させるべき者は三万幾らと出ておりますが、はたしてそれだけの施設がこの三年間にできるかといえば困難なことですから、そういう意味では大幅な法律的な解釈を別途考えていただいて、とにかくその施設をふやすということ、同時に適正な指導者を差し向けて指導しながらでもやらせる、こういうように幅を広げて考えてもらうことができるかできないか。この法律が通過された場合に当然起こってくる問題ですから、この点もお聞きいたしたいと思います。
  112. 黒木利克

    黒木政府委員 実は従来、各国とも次のような弊害があったわけであります。一種の預かり業と申しますか、これを商売にいたしておりまして、親からすれば捨て子みたいなかっこうになりますし、また無責任な預かりをしておるというようなことで弊害がわが国にもあったわけでありまして、これは各国共通であります。そこで、やはりこういうような事業は公立でやるなり、あるいは継続性のある安定した民間団体にやらせなくては、かえって弊害があるということで今日おるわけですし、それからもう一つ、実は法律技術的にいままでこういう欠陥があったのであります。それは、従来収容分類と申しまして、精薄児精薄児だけ、肢体不自由児は肢体不自由児だけのそれぞれの施設がありまして、精薄児と肢体不自由児の場合はどっちの施設もめんどうを見てくれないというようなことで、またこの両方の症状の子供を預かる施設法律的には認めることができないというようなことで、今日までこういうような両方の症状の子供を預かる場合の法律の地位が不安定であったわけであります。しかし、先ほど申しましたように、精神病院なりその他安定性、継続性のあるところならどこに預けてもいいではないかというようなこと、またその必要があるのではないかということと、もう一つは、この収容分類をある程度打破いたしまして、こういう二重障害の場合には、既存のいろいろな施設で特別の加算をいたしまして収容ができるような法的措置なり予算措置を講ずるということを実は昨年ころからやり始めて、たとえば島田療育園にしましても、成り立ちは個人の経営が法人の経営になり、国からも補助金を出すということになったのでありますが、最近は東京都内の問題で秋津療育園というのがございますが、これもようやく継続性、安定性が認められまして、東京都が補助金を出すようになりましたから国も補助金を出すようになったのであります。したがいまして、今後も、民間の団体で個人でやっておる場合には法人にそれを組織がえして、地元の自治体が補助金を出すようになりましたら国も補助金を出す、法律的にもそれを正式に認めるというようなルールはつくったわけでありますから、今後はそういう方法によって施設の整備に努力してまいりたいと思います。
  113. 本島百合子

    ○本島委員 要望しておきますが、とにかくそういうお子さんを持った家庭では、どこか預かってくるところはないか——さっき前段でおっしゃったように、捨て子みたいなかっこうになる場合もあるということでしたが、そのとおりだと思います。とにかくこの子さえどこかで預かってくれれば、自分たちは生計もある程度立てていけるのにというのが低所得層にかなりあるわけで、そういう人たちほんとうに困っておる。施設と言わないまでも、個人的に預かっておられる場所がかなりいままであったと思うので、そういう点をお調べいただいて、収容が全部可能とならないまでも、暫定的にでも何らかあたたかい手を差し伸べてもらって、もう少し安定性を持たせてもらいたい、こういう要望がおかあさんたちから起こったものですから、それを要望したいと思って関連質問をさせていただいたわけですが、万全を期してやっていただきたいと思います。
  114. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 関連して。いま本島先生、八木先生のお話を聞いておりまして、私も、つい最近局長からお世話になりました子が精神薄弱児の病院へ入らせていただいたのですが、その母親を見ておりますと、非常に子供に会いたいという気持ちが切実で、私のところにも泣いて電話をかけてきておりました。私の選挙区の所沢に秩父学園という国立の病院がございますけれども、そこに中間の家という、この患者の父兄あるいは篤志家によってつくられました親を泊めるところがございます。そこで、これは篤志家の方々の力ででき上がったのでありますが、いろいろな方々の話を聞いてみますと、特におかあさん方は、小さいお子さんを何としても自分が抱いて寝たい、日本全国から見えておりますが、自分で世話をしたいということでそういう熱意のある方々のお力ででき上がったのでございますけれども、現在その運営資金という面で非常に困っておるということであります。これは御質問というよりも、大臣局長がいらっしゃいますので、何とか少額でもよろしいから運営資金を政府のほうでめんどうを見てやってくれないものか。そういう方々の実情を見ておりますと、何とかいろいろ運動をしておりますけれども、家はできたけれども運営がなかなか困難だということで、何とか方法を講じていただけないかということであります。
  115. 小林武治

    小林国務大臣 私は最近あの家も見てきました。非常にいい考えだと思います。ことに、先ほど私が申し上げましたように、重度のものはもう子供自体にも反応がないし、親もだんだん離れてしまう。したがってこの子供にだれが関心を持っておるか、親からもお礼を言われ、ありがたがられれば、これもまたけっこうなことでありまして、世話をしておる人は多少張り合いがありますが、親もいつの間にか離れてしまう、子供は反応がない、こういう状態では、やる人はきわめて気の毒だと私は思う。そういうことで、秩父学園のように親が来てとにかく会ってやろう、こういうことはいい。ことに働く従業員としても、こんなに張り合いのあることはない。とにかく従業員自体が非常に感謝をされておるということで、だんだん親が離れつつあるのに、あそこでは、とにかくあそこへ行って子供に会ってやろう、ああいう考え方は非常にけっこうだということで、せっかくできたものでありますから、私どもは、あれができて、そしてできるだけ秩父学園でも、あなた方親を呼び寄せるようにしなさい、そしてもっと子供に会わせてもらいたい、親はだんだん離れていきますか、施設のほうから親を刺激していかなければならぬ、そういうような状態でございますから、こういうものがあって、そして親が来て会いやすくなる、また一日でも一緒に暮らせる、こういうことは考えとして非常にいいと私は思うので、あれをむしろ奨励もしたい。したがってまだ結論は出ておりませんが、あの運営費等をぜひ心配してやりたい、こういうふうに考えております。
  116. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 ぜひやっていただきたいと思います。
  117. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる六月二日、火曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時二十四分散会