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1964-05-27 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十七日(水曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 河野  正君    理事 小林  進君 理事 長谷川 保君       伊東 正義君    大坪 保雄君       熊谷 義雄君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    松浦周太郎君       粟山  秀君    亘  四郎君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木 一男君    八木  昇君       吉村 吉雄君    本島百合子君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  重度精神薄弱児扶養手当法案内閣提出第一一  二号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出重度精神薄弱児扶養手当法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。伊藤よし子君。
  3. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 私は、重度精神薄弱児扶養手当法案につきまして御質問を申し上げたいと思うのでございますけれども最初に、この法案は、昨年ある月刊雑誌に、有名な水上勉さんという作家が「拝啓池田総理大臣殿」という一文を載せられまして、それがきっかけになりましてこの重度精神薄弱児扶養手当法案ができたのだと新聞などは盛んに書き立てておりました。その経緯がどのようであろうとも、従来非常に顧みられませんでした重度精薄の問題を、政府としてもお取り上げになったという点につきましては、私もその点は非常にけっこうなことだと思うわけでございます。しかし、たいへん期待を持ってこの法案を拝見いたしてみますると、何と申しましょうか、非常にお粗末な法案のように感じられます。これは私が申し上げるのではなくて、今年の二月七日でございましたか、社会保障制度審議会の御答申がございましたけれども、この中に尽きていると私は思うのでございます。ちょっとこれを読ませていただきますが、「本案は、これまでほとんど顧みられなかった面に一歩を踏出したものとして、了承する。しかしながら、精神薄弱者対策全体の関係をどうとらえるか、施設収容との比重をどう配意するか等の基本的な考え方が不明瞭であって、いささか思いつき的の観を免れない。また、給付も甚だ少額であり、支給条件もきびしく、単独法とすることはかなり疑問であり、むしろ児童扶養手当法中にふくめ、今後本格的制度の確立を急ぎ、その際改めて単独法とするほうが適当と考えられる。」という答申がございましたことは、よく厚生省御存じのとおりでございます。私もまさに同感でございまして、私の御質問も大体それに尽きるようなわけでございますけれども、以下、少し詳しく一つ一つについて、私は私なりの立場で御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  第一に私がお伺いしたいのは、このような不幸な子供あるいは人たち福祉考えるということも非常に大切なことでございますけれども、それと同時に、こうした精薄児が生まれないように、その発生原因を探って予防していくという方面から力を入れていくことも、非常に私は大切ではないかと考えるわけでございます。その点、有名な、一九六一年の十月でございましたか、なくなったアメリカケネディ大統領が、精神薄弱者に対する国家計画の必要に関する声明というものをお出しになったことは御存じのとおりでございますけれども、これを見てもわかりますように、精薄というものは精神病とは違って病気ではない。それを何とか精薄が出ないようにするためには、すぐれた科学者教育者、あるいは心理学者法律家、あるいはまたその面の非常に指導的な立場に立っている人たちを招集して、そういう非常に広範な人たちを結集したような委員会を招集してこれから検討していくというようなことをあの声明の中に言っておられますけれども、私はあれらを拝見いたしましても、この精薄の問題というのは非常に広い範囲にわたって、その原因の追及というのは国際的に言ってもなかなかたいへんのようでございます。こういう点について、日本では現在、厚生省としては、福祉の問題と同時に発生原因を探って予防をするというような方面ではどのような対策をおやりになっておりますか、またお考えになっておりますか。これは非常に重要な点だと思いますけれども、まず第一に、そういう点について厚生省のお考えあるいは対策がございましたら、お答え願いたいと思います。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 私は、先ほど冒頭にお話しのあったことについて一応申し上げて、私ども考えを申し上げておきますが、この問題が単なる思いつきだとかいうようなことを言われておりますが、実は正直に申して、あの拝啓何々から問題が発したと私は考えておりません。私どもは、前々からも、こういうものはぜひやらなければならぬということを信念的に考えておったのです。たまたまタイミングがそれに合ったということでありまして、世間の関心を集めたのはあれが大きかったとは思いまするが、政府がこれを発意してこういう対策をしようということは、あれにもとを発したのじゃない、前々からこういうことの必要は痛感しておったのでございます。ことに私は、先年来、手をつなぐ親の会等の会合に出まして、これらの問題がいかに家族にとって悲惨なことであり、また社会に対するこれらの人の活動を妨げておるか、こういうことを強く考えておったわけでございます。また、この手当がわずかであって粗末である、こういうことを申されますが、それじゃいままで何をされておったか。出発するときはすぐに悪口を言う、これだけのものでは何にもならぬ。それじゃいままで何をしておったかといえば、何にもしておらぬ。これだけでも私は大きな政府施策である、かように確信をしております。  また、こういうことは初めてのことでありまして、この法律なりこの予算なりを通すにつきまして、政府部内においても、またわが自民党の中においても、どれだけの困難な論議がかわされたかということも私は申し上げておかなければなりません。ことに大蔵省方面においては、このことは将来に非常に大きな尾を引くのだ、こういうことでこれに対して非常な賛成についてのちゅうちょをされたのでございまして、そういう意味では実は児童扶養手当の法の中に入れていいんじゃないかという議論がありますが、私は将来を考えて、あえてこの独立の法を選んだ。すなわち私は、重度精神薄弱児だけを相手にして、対象にして考えたのではありません。これらの成年についてもぜひこの問題の中に包含させたい。すなわち二十歳以上の精薄者については、いまだに福祉年金支給がない。これらを私は一緒に包含をしたい。また現に、御承知のように、二十歳未満重度身体障害者については、これはいま何も手当てをしておりません。年金もくれておらぬ。それで私は、たとえこの法律が通っても、今後の問題として成年に達した精薄者の問題が残っておる、また二十歳未満身体障害児の問題が残っておる、これらも私はどうしても解決をしなければならぬ、こういう責任を感じておりまして、その暁においては、私は、重度精神薄弱児でなくて、重度心身障害者に対するかような制度に補完をさせたい、こういうふうな考え方を持っておるために、いろいろ議論があったが、あえて独立法律を選んだ。すなわち出発は小さいが、将来の成長と申しますか、こういうことに非常に大きな期待を持っておるためにかような形を選んだということも、ぜひひとつ御了解を得ておきたいのでございます。  それにつきましてただいまのお尋ねでありますが、とにかくお話しのようなことはたいへん必要なことでありますが、このことは、いわゆる先進国アメリカにおいてもいまさらこういうことを持ち出して騒いでおるような始末でありまして、どこの国においても同じ悩みを持っておるのでありまして、私ども、いまのこの問題の予防ということは非常に大事なことであるが、まだ研究が非常におくれておる、いまだに日本では、妊産婦の健康管理あるいは出産の場合のいろいろな注意、こういうようなことにとどまっておるのでありまして、まだこれを科学的にほんとうに検討するということは将来の問題に属するので、これは日本ばかりではないと思うのであります。しかし、とにかく出ておる数十万人の者に対する対策は緊急を要する、こういうことでかようなお願いをしておるのであります。  多少冗長にわたって恐縮に存じますが、こういう法律単独に選んだということにつきましての事情もひとつ御説明を申し上げて、御了解を得ておきたいと存じます。
  5. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 厚生大臣から精薄あるいは心身障害者に対する熱意をお伺いして、その限りではたいへん安心をしたわけでございますけれども、ただ現実に、申し上げましたように、これは新聞で伝えられたところを言っただけでございまして、そういう御熱意を伺って私も頼もしく思います。しかし、あらわれたこの法案自体は、たいへんお粗末な内容しか持っていないと思うわけでございます。その点をいま申し上げたわけでございますけれども、私どもも、どのようなきっかけにしろこういう法案が出てきたということについては、最初に申し上げたように喜んでいる一人でございまして、ぜひとも将来、これをきっかけとして、ほんとう精薄者全体の福祉考えられていくようにお願いしたいと思いまして、そういう趣旨で本日御質問を申し上げる次第でございます。  それから、いま申し上げましたように、できれば精薄者をつくらないような、予防というものが非常に大切だというふうに考えます。現在の精薄者に対する福祉考えていくこともやっていっていただかなければなりませんけれども、同時に、ただいま大臣の御答弁にもございましたように、その点私は非常におくれているのではないかと思います。それでこの点は、ただいまのような御熱意をお持ちでございますれば、この機会にもっと積極的にやっていただきたいと思うわけでございますが、現状において少なくともどのような対策をおとりになっているか。あるいは医務局長おいでにならなければ御答弁ができなければ、あとでもけっこうでございますけれども、その点を特にお伺いしたいと思います。
  6. 黒木利克

    黒木政府委員 精薄児原因研究につきましては、実は先ほどお話のありましたアメリカ精神薄弱児協会原因研究発表がございましたから、それをわが国国立精神衛生研究所で参考にいたしまして、最近研究結果の発表をいたしておるのであります。これはさらに継続して研究を進めてまいるという予定でございます。  なお、児童局所管といたしましては、国立秩父学園という重度精薄児保護施設がございますが、ここに調査課がございまして、ここでも臨床研究をやっておるのであります。最近では東京小児療育病院という、これは主として脳性麻痺児治療施設でございますが、ここに脳性麻痺研究所をつくったばかりでありますが、政府も積極的に授助をしてまいりたいと思っております。  それから学界との関係につきましては、先天性異常児予防なり対策研究を、各専門医者の集まりに厚生省から研究の委託をいたしまして、着々その成果をあげておりますが、その一つに、精薄児原因考えられておりましたフェニールケトン尿症というものがあるのでありますが、最近はこの原因もわかり、また治療法もわかり、特殊のミルクを飲ませればいいのだということもわかりまして、行政的な措置をとるばかりになっておるわけでございます。  なお、こういう問題も含めまして、こういう原因を根本的に排除したり積極的に予防するために、母子保健につきまして、ただいま大臣が申されました根本的な対策を立てるために中央児童福祉審議会に目下厚生大臣から諮問をいたしておるのでありまして、来年度予算には間に合うように、御指摘の、特にこういう精薄児予防対策について、行措措置としてとるべき方法、あるいは立法措置について答申を受けまして、積極的に前進をいたす所存でございます。
  7. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 私が特にお伺いいたしたいのは、国立精神衛生研究所でございますか、あの中に精薄部というのがございますね。ああいうようなほんとうに根本的な、医学的な研究機関をもう少しあらゆる方面に広げていただいて、もちろん私は医学のことは専門でないので全然わかりませんけれども、もう少し一貫した、単に小児科だけではございませんで、母胎にあるときからずっと一貫したような、全体としての研究機関というものをお持ちになっていく必要があるのではないか、そういうものがほんとうに欠けているのではないかと思うのですけれども、そういう点について、あそこの陣容も、精神薄弱部というのはまだ人数も少なく、研究費用ども非常に少ないのではないかと思うのです。そういう点について、将来もう少し積極的にその予算なんかをふやしてやる必要があると思うのでございますけれども、この点の力の入れ方がまだ足りないのではないかと思うのです。特に大臣からああいう熱意ある御答弁がございましたので、福祉施設と同時に、むしろこれをもっと強力に、そういう点で専門的に一貫したその予防治療のための研究組織というものを、国家的な立場で、もっと基礎研究なんかからも——まだ原因がいま十分に究明されたということではないようでございますので、こういう点は非常に膨大な施設やら費用やら、また期間が要るのではないかと思うのでございます。ですから、精神衛生研究所の中の精神薄弱部というようなものをもう少し大きくなさっていき、そういう基礎的な研究にもぜひ熱意を持って、また予算をかけてやっていっていただきたいと思うわけでございますけれども、その点、特に厚生大臣の将来にわたってのお考えを伺っておきたいと思います。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のとおり一番おくれている部面で、精薄関係については政治があまり及んでおらぬ、こういうことがはっきり言えるのでありまして、現に収容数等も必要な数の四分の一か五分の一しかないというようなことでありまして、施設そのもについても非常に不十分で、これを施設に引き取りさえすれば一家が救われる、また一家社会復帰が十分できるということでありまして、施設問題につきましても非常におくれているのを取り戻し、基礎研究をしなければならぬのはお話のとおりでありまして、現にやっと東京小児療育病院でございますか、あそこの脳性麻痺研究所も本格的に私どもも補助いたしたいと思っておりますし、国立秩父学園においてもこれらの研究をようやく始め、精神衛生研究所におきましても同様でございますが、特におくれている分野であるからして、それだけに力を入れてこのおくれを取り戻す努力をいたさなければならぬということでございます。お粗末な法律でありますが、やっとこれでその方面の第一歩を踏み出す、こういうことで、これからこれを拡充しなければならぬということは私ども強く考えておりますので、ぜひひとつ御協力を願いたいと思っております。
  9. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 大臣の御熱意ある御答弁を承って心強く感ずる次第でございますけれども、この点は非常におくれております。いまちょっと児童局長のほうからもお話がございましたように、遺伝の場合もございましょう。しかし、胎生児と申しましょうか、胎生期と申しましょうか、おなかにある間のいろいろな状態によって発生するというようなことも最近はだいぶわかっておいでのようでございますので、そういう点からも母性保健ということ——せんだって母子福祉法のときに、私どものほうから母性保健母子福祉法案を出しておりますけれども、こういう精薄児などを出さないようにするためにも、母性保健という点にもぜひひとつお力を入れていただきまして、そうしてまた、出産時あるいは誕生してからあとのいろいろな病気のために精薄児が起きる場合もあるようでございますので、私は、そういう点はひとつ一貫してずっと研究できるような組織を、ぜひこの際力を入れて、これを契機に積極的にやっていただくということを特に御要望申し上げておきたいと思いますし、その点ひとつ大蔵省あたりから予算を大きく取っていただくように、私どももバックアップしてまいりたいと思いますけれども厚生省としても、自信を持ってそういう方面へ政策を進めていただきたいと存じます。  次に御質問申し上げたいのでございますけれども、この法案関係いたしまして、従来からの精薄者対策の全体との関係はどうなっていきますか。精神薄弱者福祉法というものも先年出ておるようでございます。また今回は重度精薄者に対する対策でございますけれども、軽度あるいは中度の者との関係とか、あるいはそういう精薄者全体の対策との関係、現在どういうふうになっておるかというような点も、ひとつざっとでけっこうでございますけれども、お答えを承っておきたいと思います。
  10. 黒木利克

    黒木政府委員 竹内委員からの御要望で、重度精薄児扶養手当法案関係資料というので、わが国精薄者精薄児等に関する統計資料の要約をしたものを差し上げておきましたが、この(二)にございますところが精神薄弱者関係資料でございます。精神薄弱児数、十八歳未満全国で九十二万人おる。そのうち中度及び重度、軽度というふうに仕分けしてございます。それから精神薄弱者数が総計百八十一万人おる。そこで行政的には、精神薄弱児は、従来は児童福祉法対象にいたしまして、収容を要する者は収容施設がございます。また、在宅におります者は、在宅についての医療援護措置をやっておるのでありますが、このおとなのほうは、御承知のように精神薄弱者福祉法というのがありまして、これは主として保護を要する者を収容いたしましたり、あるいは訓練授産をするというような施策をやっておるのでございます。  そこで、児童局関係精神薄弱児対策でございますが、その(三)にありますように、要保護精神薄弱者数の中の精神薄弱児施設収容児数というのがありますが、四万八千人と推定されております。現在は施設が百八十二カ所ありまして、一万一千人余りを収容しておるのであります。それから精神薄弱児の、在宅に夜はおりまして、昼間は通園して訓練を受けている者、この必要な数が一万八千人と推定されておるのでありますが、それに対して施設は五十カ所、二千三十人であります。これはそれぞれ増設の計画を持ちまして、この要保護あるいは要通園児童数に充足できるように整備をいたしておる最中でございます。  それから、このハの重度精神薄弱児の問題につきましては、最近ようやく全国で二カ所、重度と申しますか、むしろ重障と称しておりますが、精薄児であり肢体不自由児であるというような子供たち収容施設を、ようやく本年度またふやしまして、全国にいま四カ所ございますが、それに既存の施設特別病棟というようなものをつくりまして、収容してまいるというような方針を打ち出したばかりでございます。  なお、在宅の者につきましては、今回の手当法というものを適用するということでございます。  それから、このほか訓練可能あるいは教育可能な者につきましては、文部省所管養護学校とかあるいは特殊学級というのがございます。それから職業訓練等の可能な者で社会復帰可能性のある者につきましては、労働省におきまして、こういうような訓練施設をつくりたいという計画がございます。これは、昨年は厚生省労働省両方から訓練授産施設を要求いたしまして、調整がつきませんために予算化できませんでしたけれども厚生省におきましては、精薄児施設の中に職業訓練の部門を設けまして、たとえば岐阜とかあるいは滋賀県等におきましては、窯業地におきましてこういう窯業等関係職業訓練現実にいたしておるのでありますが、将来はこれをだんだんふやしてまいりたいと考えております。  それから在宅保護収容保護との関連でございますが、これは世界各国、まだどちらに重点を置いていいか方針がきまっていないようであります。親たちの中にも、自分たち手元では保育しにくい、あるいは一家の非常に破綻になるというので施設に出したがる親と、こういう子供ほどなおかわいいというので、親の手元から離したがらないという親がございまして、やはり両方とも無理がございませんから、在宅援護収容援護と両建てでいかざるを得ない。またその中間形態として、夜は家庭、昼は収容施設というので例の通園施設考えたわけでございます。したがいまして、どちらに重点を置いていったらよいか、まだ方針はきめかねておりまして、三様の保護形態で現在参っておるのであります。最近、文部省におきましては、こういう子供義務教育を徹底したいというので、昭和四十五年までに、こういう精薄児教育可能な者は義務教育で全部教育をするという方針をきめておられます。したがいまして、従来の厚生省通園施設も、文部省のそういう方針によりましてだんだん形を変えざるを得なくなってまいりまして、一種の精薄児の保育所的なもの、あるいは就学前の精薄児を預かるというような方向に、だんだんいま転換をいたしつつあるような状況であります。
  11. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 先ほどちょっと御質問申し上げたことにもつながるわけでありますけれども早期に発見すれば治癒も可能だというものもあるようでありますが、数年前から、何ですか三歳児の健診ということが行なわれておるのでございますね。それから就学前の六歳の子供健康診断でございますか、そういうこともやっておいでになりますが、それについてその状況と効果といいますか、そんなようなことをひとつ伺いたい。
  12. 黒木利克

    黒木政府委員 一昨年から三歳児の全国一斉健診をやっておりまして、昨年度からさらに精密健診というような制度をつけ加えておりますが、現在のところ、全国的に受診率はまちまちでございますが、平均すると七五%くらいになってまいっておるのであります。ここで問題児あるいは異常児を発見するケースが多くて、肉体なり精神問題児というものは約二割近くおるということがわかりました。その結果いろいろ病院等に紹介をするのでありますが、どうも徹底しないということから、昨年さらに精密健診をするということにいたしたわけでございまが、お話のように、これでかなり精神薄弱児早期発見をすることができるようになっております。
  13. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 私はよくわからないので、その点もうちょっと詳しく御説明願いたいのでございますが、その場合、三歳になると保健所からだれか行って、だれでも三歳児は健診を受けることになっておるのですか。無料でやりますか。
  14. 黒木利克

    黒木政府委員 これはまだ法律的な制度にはなっておりません。予算的な措置として保健所でやらしておるのでございますが、ある月に満三歳になりました場合に、その満三歳児をある場所に、保健所なりあるいはその区内の適当な学校なり公会堂等に集めまして、保健所及びもよりの小児科なり精神衛生医者協力を求めまして、無料で健診をやっておるわけでございます。
  15. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 就学前の六歳はどういうような方式ですか。
  16. 黒木利克

    黒木政府委員 学校に入る直前に健診をやっておりますが、これは文部省所管でございます。そこで実は中央児童福祉審議会に諮問いたしまして、現在の三歳児の健診あるいは就学前の六歳児の健診、それにことしから母子健康センターを設置した町村では、二、三歳児、乳幼児の登録制度を始めました。こういう関係をどうやって一元化していったらいいか、そういうことをいま諮問をいたしておるのでありますが、私のほうでは大体一元化の計画もできておりまして、来年度の予算等では何らかの法的根拠で効果をあげるようにいたしたいと思っております。
  17. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 ぜひその点は一貫して、そして親のほうから申し出なくても、十分にできるように徹底をさしていただきたいと思うわけでございます。  それから、先ほどちょっと大臣もお触れになりましたけれども、私ども、最近各施設を七、八ヵ所見たのでございますけれども、その中で非常に感じますのは、精薄者になりますと、おとなになってくれば多少違ってくると思いますが、特に精薄児の場合には身体の障害と重なっている。聴覚とか視覚とか言語など、肢体の不自由というようなのと精薄が重なっているのが非常に多いわけでございます。特に小さい子供では区別がつかないような場合もございまして、その心身の障害児に対する全体の施策、あるいは心身障害者に対する全体の一貫した政策というものが必要ではないかということを私は痛感する次第でございますが、こういう二重苦、三重苦の心身の障害児あるいは者に対して現在どういうような対策をとっておいでになるか、その点をひとつ伺っておきたいと思います。
  18. 黒木利克

    黒木政府委員 実は二重以上の障害を持っておりまするいわゆる重症心身障害児につきましては、いろいろその数字の推定をいたしておるのでありますが、専門家の意見によりますと、少なくとも二万人は全国におるだろうというようなことでございます。これに対してどういう施策をやっていったらいいか、世界各国のいろいろな事例を研究しておるのでありますが、各国ともまだ確たる方針をきめかねております。こういう子供さんを家庭に置くよりも、収容施設で見たほうがいいという説は各国とも共通のようでありますが、しかしその場合に、収容施設単独のこういう子供さんだけを収容するのがいいのかどうか、あるいは軽い子供さんも一緒に収容して総合的な施設の運営をやったらいいのか、各国でいろいろ失敗した事例等がございまして、わが国でも方針をきめかねておったのであります。したがいまして、現在島田療育園、びわこ学園という二ヵ所がございますが、これについても一昨年までは、研究の段階にあるといって、研究費補助金という名目でこの二つの施設のやり方をいろいろ研究しておったのでありますが、一つのやり方としては意味がある、少なくとも全国の各ブロックに一ヵ所ずつはつくったほうがよかろうということになりまして、昨年から全国各ブロックに一ヵ所ずつこういうものをつくっていこうという方針をきめたわけであります。しかしこの問題は、実は職員の確保の問題で世界各国とも行き詰まっておるらしくて、私のほうでもこの職員の確保という問題で行き悩んでおるのであります。重障だけの子供を取り扱いますと、厭世観を抱いたり、自殺をしましたり、職員がとにかく困った状況になるということでございますから、そこで昨年から、そういう単独施設全国的にあまり普及性がない、各県ずつにつくるということはむずかしかろうということで、ブロック程度にとどめまして、あとは既存の施設を活用するのがよかろうというので、一昨年から実は精神薄弱児施設にこういうダブルハンディの者あるいは重障の子供を特別に取り扱う特別な病棟をつくっていって、その整備費なりあるいは運営費の加算というような問題を解決したのであります。本年度からは、肢体不自由児施設につきましても同じようなやり方をやろうということになりまして、その必要な予算措置をしておるのでありますが、残念ながら単独施設は三十九年度までに二百九十床でありますが、そのほか精薄児施設の特別の病棟は、本年度まで全国で十一くらいになります。それから肢体不自由児施設のほうも、十一カ所ことし予算措置をいたしましたから、七百床くらいのことには今年度末ではなろうかと思いますが、そういう二本立てで進めてまいりたいと思います。  なお、職員の問題につきましては、国立秩父学園の中にこういう人たちの職員の特別の訓練養成施設を付置いたしまして、現在教育中でございます。  なお、脳性麻痺等につきましては、整肢療護園というのがありまして、ここに一昨年から職員の訓練施設をつくってまいりましたが、あとは職員の待遇改善の問題とか、いろいろそういうことで職員確保に万全の措置を講じてまいりたいと思っております。
  19. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 ただいまお話がございましたように、重度の中で、特に心身の障害児の場合には単独でいいかどうかということは、ただいま御研究の結果、精簿児施設の中に併合したような形でやっておいでになるということも私はやはりいいのではないかと思いますが、幼児の場合には非常に区別がつきかねておりますので、この点は、従来のあるところへ、いまおっしゃったように特に二重の心身の障害児も含めてやっておいでになるということでもけっこうでありますから、いずれにいたしましても心身の障害児に対する対策というものも、これは重度の精簿のみでなくて、ぜひ同時に対策なり福祉考え施策をやっていっていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、今度の重度精簿児扶養手当法と現在の施設との比重を、今後どういうふうにやっておいでになるお考えか。この点、私どもが漏れ聞いておるわけなんでございますけれども、当初厚生省でお考えになりましたときには、相当な予算をお組みになったようでございます。しかし現実には、大蔵省の関係か何かで現在のようなものになってきたわけでありますけれども、当初の御計画はどのようなお考えでございましたか、その点ちょっと伺いたいと思います。
  20. 黒木利克

    黒木政府委員 実は先ほど大臣が申されましたように、精簿児対策につきましては、昭和三十四年度の予算が実はわずかに四千百万円であったのであります。それが三十九年度は四十九倍の十九億八千万円、全体から見ればまだまだわずかでございますが、四十何倍近くこの数年に飛躍をいたしております。なお、昨年の重度の精簿者の手当予算でございますが、これは当初社会局で要求をいたしまして、最後の予算の折衝の段階で、児童だけを対象にするというので児童局に引き継がれたものですから、実は当初の予算の総額等も手元にございませんので、必要でございましたら社会局から資料をいただいて御報告を申し上げたいと思いますが、そういうようないきさつで、私のほうで要求しましたのはすでに子供だけにして、しかも知能指数その他も三五以下というようなことでワクがきめられて予算措置をしたのでありますから、大体児童局で要求したものは一応認めてもらったというかっこうで、ございまして、当初の要求等のいきさつは、まだ私のほうでははっきり資料を持っていないのでございます。
  21. 小林武治

    小林国務大臣 いまの問題でありますが、当初私は、これを精神薄弱者、要するに心身障害者というふうにいたしました関係上、これらは大体福祉年金に準ずるもの、こういう考え方で一人千八百円要求を出しておるのでございまして、これは今後とも、少なくとも障害福祉年金との権衡を得るような方向でいきたい、これが厚生省考え方、したがって、最初は薄弱児だけでなくて、重度心身障害者全部のものを出しましたから、相当の金額になっております。しかし、いずれにしろ金額は障害福祉年金に準ずるものをいたしたい、こういうのが私ども考えでございます。
  22. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その点は、私ども社会党が心身障害者全体の——これはたいへん大きな構想でございますけれども、そういう全体の福祉というものを考えていくようなことを検討してみたいといま考えておるわけでございます。しかし政府におかれましても、ただいま大臣からお話がございましたように、心身障害者全体の福祉というような総合的なもの、そういうところに進んでいくようなきっかけになりますように、当初お考えになりましたようにお進みいただくよう、今後ぜひ御努力を願いたいと思うわけでございます。その点はぜひお願いしたいと思います。  それから、先ほどの御答弁の中にすでに出ていたわけでございますけれども、いまのことにも関係してくるわけでございますが、この法案では二十歳までの重度精薄児でございますね。特に精薄者の場合には、成人になりますと非常に人数が少なくなってきて、あるいは軽度のものはほとんど訓練によっては社会復帰もできまして、非常に数が少なくなっていくわけでございますけれども重度精薄者の場合には、ほとんど二十歳になったからといってなおるわけではございません。むしろ年齢が多くなればなるほど、その家庭で非常に困るような状況が出ておりますし、施設の中でも、重度の人の場合には、特に二十歳になったからもう外へ追い出すというふうに、現在の精薄児施設などではなっておりますけれども、この点は非常に問題があると思います。これはどこの施設へ参りましても共通した悩みのようでございまして、特に重度の者にはそうでございますが、ただいま申し上げますように、精薄者全体から見れば成人になりますとたいへん少なくなっていくわけでございますから、重度の者で二十歳以上でも残っていく数はそんなに多くはございませんので、ぜひ重度精薄児に対しましては、二十歳になったからといってもその精神年齢というものは五、六歳の子供のままでございますから、こういう点については、今度の法案の中で一番問題になるのは、二十歳までは扶養手当が渡りましても、二十歳をこえたときからは渡らなくなるわけでございまして、こういう点に一つの大きな問題がありますし、今後に問題が残るんじゃないかと思います。いま厚生大臣もこの点についてはお触れになりましたけれども、特に今後この点を、精薄者全体の福祉という点で、精薄児だけではなくてやっていただきたいと考えるわけでございますけれども、特にこの点、もう一度厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  23. 小林武治

    小林国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、おとなの子供でありますから、これをいま福祉年金対象にもしておらぬということは、私は非常に大きな誤りと申しますか、欠陥であると思っております。なぜこれを福祉年金に入れないのだと言うと、まだ世間では、精薄は保険事故じゃない、こういうふうな学問的の理論でございますか、そういうものが出ておりまして、私はこれをぜひ福祉年金の中に入れてもらいたいということを強く主張いたしておるのでありますが、まださような学問的の議論もございまして入っておりません。したがって私は、冒頭申し上げましたようにこの中に精薄者も入れたい、こういうことを考えておったが、それがまだできないのでございます。  それで私、始終精薄関係の方々から聞くことは、親御さんが生きているうちは何とかやっていく。この子を残して私はいかれない、こういう声を始終聞くのでありまして、全く私はそのとおりであると思います。ですから、私は、これをいわゆる保険事故の年金にしなくても、これから先、年金制度等をつくって精薄者だけを何か考える必要があるのではないかということで、私は事務当局にも何かこういうものを検討してもらいたいと言っております。たとえこれを福祉年金に入れても、わずか千八百円にしかならない。将来このワクはふえると思いますが、そういうふうな問題ではなくて、もっと大きな配慮を加える余地はないか、こういうふうなことをやっておりますし、外国でも、最近においては精薄者の特別な年金みたいなものを考えておるところもあるようでありますので、私はそういうふうな別の方途を講じたらどうかというふうに思っております。  いずれにしましても、現在の精薄者については、多少の援護施設訓練施設があるだけでありまして、この点に大きな国家の手が伸びておらぬ、こういうふうに思うのであります。さしむき私は、せめて福祉年金でも上げられるようにしたいということを考えておりますが、しかしそれ以上の制度考えなければ十分な対策でない、こういうふうに考えております。
  24. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 年金の点も問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私は最近七、八カ所の施設を視察して歩きました。各施設の中で、従来小さいときから一貫して預かっているところは、子供の性格なんかわかっているわけでございます。ところが二十歳になって、措置ができなくなってどうしても外へ出さなければならないということになりましたときも、一度外へ出てしまいますと、ある程度、軽度の者の場合でございますけれども社会の悪習というのですか、そういうものに染まりまして、私立などで、一度外へ出てから再び帰った場合など非常にやりにくくなるという点があるようでございますし、また施設に現在おりまして、ただいま申し上げましたように一貫して子供の性格がわかっているわけでございますから、たとえば例の島田療育園の場合などでございますけれども、おしめや衣類を洗たくしたあとなど、それをたたむというような仕事ならば、相当重症な精薄子供でも喜んでする場合もあるようでございます。そうして一貫して子供の性格やら能力がわかっておりますので、ぜひともそこに置きたいという希望を園長はじめ持っておりましても、措置がなくなるために施設から出さなければならないというような実態にあるようでございます。この点は、ぜひ精薄者全体の年金等も考慮していただくと同時に、現在の施設の中にいる子供で、どうしても外に出せない子供を置くというようなことに対する格別なる措置というようなものも、ぜひお考えをいただきたいと思うわけでございます。  それから、こういう点を特に伺っておきたいと思うわけでございますが、社会局の関係になるか存じませんけれども、大体精薄者あるいは重度心身障害者などというものが発生する家庭の状況でございますが、非常に低所得の家庭に多いというようなことを伺っておりますけれども、そういう点についての何か御調査がございますか。
  25. 黒木利克

    黒木政府委員 精薄者なりあるいは精薄児の属しております家庭に低所得者が多いことは事実でございまして、これは精神衛生実態調査でも報告がございますから、資料を差し上げたいと思います。  なお、精神薄弱児精神薄弱者の行政の一元化の問題は、確かにおっしゃるとおりでございまして、現に私のほうの国立秩父学園においては、児童福祉法の中で、満二十歳をこしましてもこの施設に継続して収容ができるというような特別の規定をいたしております。したがいまして、近い将来精神薄弱児精神薄弱者との行政の一元化を目ざしまして、現在社会局ともいろいろ話し合い中でございますが、大体了解が得られそうでございますから、近い機会にひとつ一元化してまいりたい、かように考えております。
  26. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その点は、ぜひひとつそういうように実現いたしますように御努力を願いたいと思うわけであります。  それからまた、それに関連してでございますけれども、将来重度の者のためには、特にただいまお話がございましたように、低所得者の場合などは——低所得者ではございませんでも、精薄児、心身障害児があるというようなことで非常にその家庭全体が暗くなりますし、特に低所得者の場合には、両親が働くこともできなくなって、それがますます貧困の原因にもなってまいりますし、そういう意味で、社会復帰ができないような重症の人たちに対するコロニーなどを設けるという点なども、将来ぜひ御検討を願っておきたいと思うわけでありますけれども、そういう点についてもただいま何かお考えがございますか。
  27. 黒木利克

    黒木政府委員 実はこういう精薄児重度の者が、親がなくなりました場合に——非常に親御さんも不安でしょうし、子供たちにとっても不幸でございますから、大臣から御指示がございまして、生命保険会社といろいろまた相談をいたしまして、イギリスでやっておるような保険でこれを見るというようなことも一案だし、それから親の会で考えておられます精薄金庫と申しますか、親が在世中に能力がある場合に、ある程度掛け金をしておいて、そして親がなくなった場合に、その信託された金で死後のめんどうを見る、専門家にまかせるというようなことで現在計画をいたしておりますが、私のほうでもそれに参加いたしまして、いろいろ相談に乗っておるような状況でございます。  それからコロニーの問題も、結局軽い者、重い者、お互いが共同して、あるいは共済というような考え方一つの集落をつくっていくというような計画もありまして、これは各地でそういう民間の団体側、親の団体側で計画をいたされておるようでありますから、厚生省として積極的に協力をしたい、後援をしたい、かように考えております。
  28. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 それから中度の、学校就学できない子供さんたち、そういう方たちの職業訓練や雇用の面でございますけれども、私は信楽学園でございますか、あれを拝見して、非常に子供さんたちが明るくて、そしていろいろ訓練を受けながらまた生産の仕事にも携わっておりまして、あの人たちが非常に明るく暮らしているのを見て、たいへん心が明るくなったように思うわけでございますけれども、ああいうような施設を今後もぜひたくさんつくっていただくように、そうしてまた実際上、収容施設の中で、社会との関係で何らかの生産の仕事に従事さしていくということが必要だと思うのです。信楽学園は県立のようでございますけれども、こういう施設を各県などにもどんどんつくっていただきたいと思うわけでございますけれども、そういう点について具体的に何かいま計画をお持ちでございますか。
  29. 黒木利克

    黒木政府委員 これは実は厚生省労働省文部省三つにわたっておりまして、文部省労働省等が従来あまり積極的におやりにならなかったために、厚生省が主として引き受けたようなかっこうでございます。御承知のように、精神薄弱児施設職業訓練的な部門を持っておるところが多うございますが、厚生省としては、本年度から、個々に職業指導員を置く場合には、指導費の中でこの運営費、人件費等のめんどうを見るというような制度も、実は予算化に成功いたしておるのでありますが、これは従来どおり続けてまいりたい、さらに積極的にやりたいと思っております。  それから文部省のほうでは、従来の養護学校の中で職業教育というものを重視してまいりたいということで、これは現在、養護学校の数もまだまだ少ないのでありますが、総数で、精神薄弱児養護学校全国でわずか三十六しかございません。特殊学級が四千八百九十一名、結局は五万名余りの子供文部省系統でめんどうを見ておるにすぎないのでありますが、これも先ほど申し上げましたように、四十五年までには義務教育を完全に実施するようにという計画でやっておりますから、この中学部なり高等部に職業訓練的なことを重視してまいりたい。これは厚生省からも要望いたしまして、そういう方針をきめておるようであります。そうなりますと、この中学部あるいは高等部を出て社会に復帰する間に一つの盲点ができるわけでありますが、つまり中学部を出ましても十六歳、高等部を出ても十八歳ですから、成年になるまでに二、三年かかる。その間何とかしなければならぬというので、実は厚生省からも、そういう間隙を埋める職業の訓練施設の要求をいたしたのでありますが、労働省も同じような要求をいたしまして、先ほど申しましたが、両方とも調整してこいということで、調整がつきませんでことし予算化ができませんでしたけれども、来年度からはこういう問題もひとつ調整して予算化をしてまいりたいと思います。しかし、いずれにしても、厚生省文部省労働省協力してやりませんと、施設の数が少ないわけでございますから、三省が協力して職業教育的な面にさらに重点を置いてまいりたいと思っております。
  30. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 ぜひそのほうも御努力願いたいと思うわけでございます。  それから、現在国立は秩父学園一つのようでございますが、できるだけ、こうした国立あるいは県立というような公立のものを建てていただくことが私は必要だと思います。なお、特に精薄などの施設というものは、これに携わる方が愛情を持って、ほんとうにこれに使命感を持ったような方が、私立ではやっておいでになる方が多いわけでございますけれども、これは非常に大事なことだと思うのです。施設自体、建物自体をつくっていくということも大事でございますけれども、やはり愛情を持って、ほんとう精薄者に対する福祉のために献身的に働いていただくというような、各所にそういう私立の施設がございますが、幾ら献身的なそういう精神を持っておいでになりましても、そういう人たちが経営のためにお金を集めて歩いたりしていらっしゃる限り、ほんとうにその効果が出ないわけでございますので、そういう私設のものに対しまして、公立同様な国の援助、補助を厚生省としてはやっていただく必要が、特にこういう重度精薄施設などにはあろうかと思いますけれども、そういう点についてどのような御対策がございますか。やっておいでになるか、今後どういうようなお考えおいでになるか、伺いたいと思います。
  31. 黒木利克

    黒木政府委員 この精薄施設、特に重度精薄児施設を私立でやるか、あるいは公立でやるかということはちょっと問題でございますが、結局は、わが国では両建てでいこうということで国立施設もつくったわけでありますが、さらにこれも整備してまいりたいと思います。なお、私立のほうでは、単なる熱情や愛情だけでは、継続性がない場合に、事業を開始したけれども途中で投げ出すというようなことで、かえって子供に不幸なことになりますから、継続性なり安定性のありそうなものを取り上げて、積極的に御援助しておるのであります。最近では宗教団体で計画をされていますから、政府も積極的にいま援助いたしておりますが、たとえば神道関係では島根県で一つそういう施設をやりたい、それからカトリック関係では、長崎とか三重県で具体的に重度施設をやりたいということで、この前定礎式もやったくらいでございまして、そういう宗教団体で継続性のあるものにつきましては、国も積極的に援助してまいりたいと考えております。
  32. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その点、国立、県立のものを補う意味におきましても、また精薄などの施設の持つ性格から言いましても、ぜひ従来もあります、あるいは今後もできますそういう使命感を持ってやっていらっしゃる、あるいはやっていく私立に対しても、特に御援助をしていただきたいと私は思うわけでございます。  それから、この法案に入るわけでございますけれども、月額千円という額でございますが、先ほど来の御答弁の中でも、これではたいへん粗末だと厚生大臣自身もおっしゃっていることなんでございますから、重ねて追及するのもあれだと思いますけれども、少なくとも現在のように日本の経済が高度に成長いたしまして、一般の国民の生活水準も上がっておりますし、世界で二、三番目だという工業国にもなって、池田さんも先進国並みになったと言ってたいへん得意になっていらっしゃるわけでもありますので、私は、この重度精薄児扶養手当法というものが、最初に申しましたように、どのようなきっかけにしろできたということについてはけっこうだと思うのでございますけれども、その中身の手当が月額千円ではあまりに少のうございまして、これではほんとうにおやつ代にも当たらないと思うのです。特に重度の場合には介護を要するわけでございますから、あまりにも低いと思うわけでございます。この点について、今後と申しますより早急にこの額をもっと上げていっていただきませんと、せっかくおつくりになったのもあまり意味のないようなことになるのじゃないかと思うのですが、この点についてどのようにお考えになっておりますか、また将来どうしようと思っておいでになりますか、特に伺っておきたいと思います。
  33. 小林武治

    小林国務大臣 私もあまりに少ないと思っています。最初とにかくせめて福祉年金に該当するように、また福祉年金の幅もあのまま据え置かれるとは思いませんから、少なくともこれに準じた金額を出したい、こういうふうに考えております。  この多少のいきさつを申し上げれば、実はこの法律なり予算というものは非常に困難でありまして、大蔵省においても最後までこれば絶対認めないということで、いろいろのいきさつの結果やっと通った、こういうことでこの問題に関する限りは針のめどがいかにも小さかった、こういうことでやむなく今年はこれでがまんしたという事情でございますので、御趣旨のとおりに私は思いますから、これの増額等もやはり最近の機会に考えていきたいと考えております。
  34. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 ぜひその点はひとつ御努力を願いたいと思います。  そこで、やはり法案関係いたしますけれども、わずか千円の手当で、しかも支給の条件がたいへんきびしくなっておるようであります。各種年金や扶養手当等の併給を禁じておるようでありますけれども、特に老齢とか母子福祉年金あるいは身障者の年金との併給ということは、これは今回何とかこれだけでも改正していただきませんと、母子福祉年金をもらっておる人が精薄児であった場合に、重度精薄であっても手当がいただけないということになりますと、かえって一般よりも母子家庭のほうがつらいというようなことにもなりかねないのでありまして、この点はぜひ今回でも私は改正をしていただきたいと思うわけでありますけれども、これはたいしたことはないからいかがでありましょうか。何とか併給ができるように、特に先ほど申し上げましたように、低所得者の階層に多いということと母子家庭などに多いのじゃないかという感じがいたしますけれども、この点いかがでございましょうか。
  35. 黒木利克

    黒木政府委員 実は先ほど大臣も申されましたように、この給付額なり給付の条件等は非常に制限的でございまして、児童扶養手当の給付額が第一子が千円であるものでありますから、結局それに右へならえさせられてしまったのであります。  それから所得制限等につきましても、結局児童扶養手当と同じようなことになってしまったわけでありますが、これは御意見のように非常に不満とするところでありまして、何とか今後改善してまいりたいと思います。ただ、私たち児童局が引き受けましていろいろがんばりました結果、この併給の関係で突破口をちょっと認めてもらいましたのは、実は母子福祉年金で、満十五歳になりますと精薄児子供を、たとえば長男が精薄児で、二男が正常児であった場合に、年齢延長が精薄児にはございませんから、母子福祉年金の併給ができないことになってしまうのでありますが、これをただし書きで救済をいたしまして、満十六歳以上になりましても満二十歳までの間はこの手当支給できるというようなことを、ただし書きで追加をしたのでありますが、そういうことで、徐々にではありますが、この併給の問題は改善をしてまいりたいと思っております。
  36. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 これは少なくとも母子福祉年金などとは併給ができますように、年齢の制限が幾らか延びたという程度ではあまりにわずかでございますので、あと同僚の委員からも御追及があると思いますけれども、この点はぜひできたら今回でも改正をしていただきたいと思うわけでございます。それは御要望を申し上げておくわけであります。  それから、これは一番大きな問題でございますけれども、こうした各種の養護施設とか肢体不自由児精薄児施設、身体障害者の施設など、この制度ほんとうに生かしてまいりますのは、一にかかって人の問題だと思うのです。これは、私は今度各所の施設を回ってみまして一番痛感することでございまして、やはりほんとうにいい人がなければせっかく制度ができても生きませんし、りっぱな建物ができましても、そこにそれを動かしていく人がなければほんとうに実効があがらないと思うのでございます。この精薄施設は、特に重度人たちにとってはそうだと思うわけでございますが、御承知のように、先ほど出ておりました秩父学園の場合でも、いつか前に新聞にも大きく報道されたところでありまして、せっかくいろいろ新しく職員の研究施設などをおつくりになりましても、そこに入る人が足りないというような記事が出ておりましたのは、こういう点につきましてこれは非常に大きな問題だと思うのです。私ども回ってみまして、実際よくああいうところで働いていらっしゃると思うくらいでございまして、この点はいかがでございましょうか。一般の福祉施設の中で、現在ある精薄児施設など、特に重度のものなどに働いている職員の手当と申しますか、そういう点はどういうような状況になっておりますか。そしてまた、現在そういう人が、経済の成長の過程で特に人手の足りないときでございますから、十分に充足されているでございましょうか。そこらの状況を伺いたいと思います。
  37. 黒木利克

    黒木政府委員 実はたしか新聞は、阿久津療育園という重度精薄施設が最近新しくできまして、国からも援助をすることにいたしたのでありますが、職員の募集をいたしましたところが、なかなか応募者がなかったということがございます。これは一つは、大体保母の就職の時期というのは、各地の学校と同じように、三月に卒業いたしまして四月でございますが、それがたまたま八月とか九月に昨年来から募集したとか、そういうようなことで、保母の供給の時期とズレがございまして、応募が十分でなかったという事情もございます。  それからもう一つ、整肢療護園、肢体不自由児施設で、四月に看護婦が大量にやめるというような記事がございましたが、これも新聞に看護婦の募集をもっと効果的にやってもらいたいための工作をしたのでありますが、たまたま四月は、先ほど申しましたが、看護婦さんなり保母さんなりの入れかわりの時期でございまして、こういう時期に結婚とか、その他他に職場を変える場合が多いのでございますが、こういう場合にぶつかりましてそういうことが新聞記事になったのでございましたが、現在では各施設で、私のほうに相談を受けておる限りにおきましては、そんなにまだ窮迫をしていない模様でございます。しかし、だんだん昭和四十年以後になりますと若い働き手が少なくなりますから、そういう点も考慮いたしまして、処遇改善につきましての特別の考慮を払わなければならぬというようなことから、たとえば保母さんにつきましては、昭和三十四年以来約倍額の給与のアップを見ているのでありますが、これも不十分でございますから、来年度以降何らか特別のことを考えたり、あるいは特別の俸給表にするか、特別の手当と申しますか調整号俸にするか、こういう処遇改善の問題がやはりお説のように根本でございますから、来年度以降何とか解決をしたいと考えております。
  38. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 これは必ずしも偶発的なことではなくて、どこの施設でも持っている悩みでございまして、看護婦さんの問題もそうだと思うのです。そういう保母とかあるいは看護婦さん。そしてそういうところに働いている職員でございますが、これは必ずしも時期とかいう問題ではなくて、全体としてそのあとをやってくれる人がもうなくなりはしないか、続くかどうかというのは、どこの施設でも大きな悩みでございます。特に、公立、官立よりも私立におきましては、その悩みはまた深刻でございます。私、一度その点を伺いたいのでございますけれども、一般のこういう社会福祉施設に働いている人たちの給与の現在状況が、公立とそして一般の民間の施設と、これは相当差があると思うのでございますが、この点について御調査がございましたら、ちょっと伺いたいと思います。
  39. 黒木利克

    黒木政府委員 実は社会福祉職員の不足の問題と確保の問題については、大臣からの御指示がございまして、現在緊急対策を検討中でございますが、この四月に社会福祉施設の給与調査を実施いたしておりまして、現在集計をし、分析をしておるのであります。これに基づきまして来年度予算で解決したいと思いますが、従来の調査では、やはり平均して二割程度のまだ開きがあるということでございます。そこで、従来は、公、私立を差をつけることは現在の措置費の運営では困難であったわけでございますが、そうも言っておられませんので、来年度ではこの公立と私立の差につきましては国から何らかの特別の措置をしよう、ただし従来のように八割の国庫負担でなしに、補助金ということで解決しようということで現在検討中でございますから、来年は必ずこういう点について前進をしたいと思っております。  なお、職員の問題は、単に待遇だけの問題でございませんで、やはり使命感と申しますか、世間のこういう職員に対する評価あるいは尊敬の念というものが根本だと思いまして、実はこれも大臣の指示で、来月、精薄児なり肢体不自由児なりあるいは僻地等の困難な場所、地域に勤務しております女子職員に対して、東京に集めましていろいろ激励をし、慰労もしたいというようなことも計画いたしておるのでありますが、やはり国民の理解なり、あるいはこういう人たちに対して支持を与えるというようなことが根本ではないかというので、そういう点の啓発と申しますか、努力も続けたいと思っております。
  40. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 一般的に申しまして、日本の場合、看護婦さんがいま全体として非常に不足のようでございますけれども、こういう施設に働く人も、保育園の保母も含めまして、なかなかなり手がないというような状況でございます。これはただいまお話がございましたように、最初は若い人たちが、特に精薄施設などは使命感を持って入っていらっしゃるようでございます。そういうこともあるようでございますけれども、実際そういう使命感とか愛情を持つというのは、現実の問題として長くいつまでも続くわけではございません。普通の施設よりは特に重度の高い者を扱っております施設などにおいては、先ほども申し上げましたように、全くよくしんぼうしておられるというような状況でございますので、そういう社会的な、看護婦さんやあるいは保母さん、お世話をする職員の地位というものを高めるということも大切でございますし、それと、そういう養成所を幾つもつくっていただいて、専門の職員を養成するということが一つ対策ではないかと思います。そういうのにも力を入れていただきたい。ただいま秩父学園でやっておいでになるような施設をもう少し大きくいたしまして、そういう対策をしていただくと同時に、また待遇の点でございますけれども、普通の一般の福祉施設よりも、少なくとも、こういうところの方は仕事が違いまして非常にたいへんでございますから、待遇の点でも特別な配慮をしていただきたいということ。  それから、これは一般の福祉施設に働いている、特に二十四時間勤務のような現在施設に泊まり込んでいる人たちでございますけれども、この定員というものが、一応基準があるようでございますけれども、現在の基準では、もしそれが十分に充足されたといたしましても二十四時間勤務すると同じで、夜になりましても同じような注意を払っていかなければならないわけでございますから、交代ができるような定数を確保するということが非常に重要ではないかと思うのです。そういうことが十分やられていきませんと、せっかく使命感を持って入っていく人も、そうして若い情熱を持って入っていった人も、やはり長続きがしないでやめていくというような状況にあるのじゃないかと思いますので、この点は、ただいまお話しのように御努力はなすっているようでございますが、まだまだ非常に不十分だと思いますので、今後格段な御努力を願いたいと私は思うわけでございます。それらの点について、いま一度御対策をお聞かせいただければしあわせです。
  41. 黒木利克

    黒木政府委員 この保母さんなり児童福祉施設の要員の養成につきましては、看護婦の問題にこりまして、実は短期大学を養成所に指定いたしまして、盛んに最近養成所を拡張しておるような次第でございます。もちろん中心的な保母さんたちは従来の養成所式でやりたいと思っておりますが、だんだん養成機関を広げてまいりたい。  それから待遇の関係で俸給の基本的な改善の問題もありますが、こういう特殊の働き場所なり地域につきましては、何割増しかするという調整方法の問題も現在検討いたしまして、これも昨年からのいきさつで、ある程度見通しが明るいのでございます。  それから、こういう収容施設で交代制度をやったらいいか、あるいはむしろ、二十四時間拘束というのが本来の施設職員のあり方でなければならぬというような考え方もありまして、拘束の場合の特殊手当と申しますか、これは防衛庁の国境警備の拘束手当なりあるいは特殊の俸給表の例がございますから、そういうような収容施設にはこういう拘束手当的なものも新しく考えてまいりたいということで、いろいろ具体的に改革案もいま検討いたしておるわけでございます。最近、個々の事例におきまして、たとえば精薄施設等におきまして看護婦が足りない場合に、次のような募集方法をやって成功した事例があるのでございますが、こういうことも一般的な制度の改善以外に積み重ねてまいりたいと思います。それは、老後の心配を看護婦さんなり独身の保母さんがいたしておるのでありますが、年をとっても特殊の老人ホームで一生めんどうを見てあげるという条件で募集いたしましたところが、五倍くらい申し込みがありました。こういう独身の女性にはかなり老後についての不安があって、こういう点の解決をするならば、かなり職員の確保ができるのではないかということを感じたのでありますが、これらについて、来年はひとつ新しい方策を打ち出してみたいと考えております。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
  42. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 少しくどいようでございますけれども、現在の精薄施設だけでなく、社会福祉施設全体の中で、養護施設などを含めてでございますけれども、二十四時間勤務の施設で働いている方は、厳格に言えば労働基準法も無視されていて、非常に前近代的な状態に置かれているのが多いように思うわけでございます。これを何とか根本的に解決をしてまいりませんと、最初に申し上げましたように、施設ほんとうにうまく運営されていかないし、実効があがらないと思うのでございます。問題は、具体的に申しますれば定員を多くするということでごございます。夜の交代の時期——私が回りました各施設などにおきましても、夜は一人とか二人やはり夜通しついていなければならないし、特に重症の場合には特別な手間がかかるわけなんでございますから、同じ労働時間でもたいへんなところへもってきて、夜勤に対する交代がないというような点は、どこも共通したような問題でございます。ぜひとも、この問題は、もっと本気で具体的に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。定員をふやす、この点は、いま保育所が何人に対して何人ということがございましたね。あれは、精薄施設の中に中度の者あるいは重症の者がまじっているのが現状のようでございますけれども、そういう場合に、いまの定数では、厚生省のほうでおきめになりました基準では非常に足りないと思うのです。特に言語もわかりませんし、ものを飲み込むこともできないというような場合が重症の場合にはあるわけでございますから、一対一というようなことでないとやれないと思うのでございますけれども、こうした基準を上げるというか、改正していくというようなお考えはございますか、その点について伺いたいと思います。
  43. 黒木利克

    黒木政府委員 これは児童福祉施設の最低基準の問題と称しておりますが、先生お説のように、子供何人について保母さん何人、看護婦さん何人というような基準がございまして、これの改善をどうしたらいいかということで中央児童福祉審議会に諮問をいたしまして、その答申があったわけでありますが、実は児童福祉法ができて最低基準ができましてから、十五年も何ら手が加えられなかったのでございますけれども、ようやく本年度からこの最低基準の改善というものを答申どおりやろうということで、大体二カ年計画で改善をするということでその初年度がことしでございます。たとえば盲ろうあ児施設につきましては、従来子供十人について保母一人というのが、今度は子供六人について保母一人というように定数が倍近く増員されたということで、精薄施設もそういうことで、二年計画で増員をするというようなことで初年度がスタートしたばかりでありまして、これも必ず来年度は答申案のような解決をしたいと思います。もちろん、答申案も、四、五年前にあった答申でありまして、時代もだんだん変わっておりますから、また新しく基準についても答申をしてもらいたいと思っております。  それから、先ほど申されました、こういうことで交代要員まで含めて、三交代制度にして職員をふやすということが本筋なのか、あるいはこういう児童福祉施設のおかあさんがわりでございますから、保母さんが一日のうちに三回もかわるということになりますと、子供に対して必ずしもいい影響はない。これはいろいろ子供の意識調査をやりますと、おかあさんがわりの保母さんが昼と夜とかわるのは困るというようなことで、また学会に聞きましても、子供の養育上好ましくないということであります。それで結局、先ほど申しました収容施設は二十四時間拘束というようなかっこうになりますから、そういうことを覚悟の上で来てもらいたい、かつそういう意味の処遇もするということで拘束手当的なものもいま考えておりますが、しかし、施設によりましてはウェットなところとドライなところがありまして、やはり両建てでやってみようということで、実は現在までのところはどちらにも割り切りませんで、施設のいろいろな自主性をたっとびまして両建てできておるのであります。その意味で、また予算措置もなかなか困難な場合があるのでありますが、しかしこの拘束手当と、基準を改善いたしまして交代制を実現するようなことと、両建てで今後しばらくは参りたいと思っております。
  44. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その点は、ぜひ私は御努力願いたいと思うのでございます。特に精薄施設などは、非常にへんぴなところにございまして、そこに働いている若い人たちに、何の慰安の施設もないところがほとんどのようでございます。こういう点についてもひとつ十分な御配慮をいただきまして、たとえば拘束手当が出たにいたしましても、そういう人が自分の健康も保って、そしてほんとう熱意を持って働いていかれるような条件がございませんとこれは長く続かないわけで、子供さんにとっては、もちろんなるべくならかわらないほうがいいでありましょうけれども、保母さんなり看護婦さんなりの立場になりますと、これはたいへんなことでございますので、この点は収容児のしあわせも大切でございましょうが、そこに働いておる人が、ほんとうに気持ちよく働けるという意味でその人たち福祉も十分に考えてあげないと、せっかく精薄や不幸な人のために働く人がまた不幸になったり、からだを悪くするという事態になっては、これは問題であると思いますので、いろいろ慰安の施設等も含めて十分なる手当——少なくとも現状においては、いまのような実態では私は問題にならないと思いますので、この方面に格段の御努力を願いたいと思います。この点は特に御要望申し上げておくわけでございます。  それと同時に、いまの重症の者の場合には、もう少し基準を——先ほど来年度には改めていくというようなお話がございましたけれども、この点は、もう現状のような基準では問題にならないと思いますし、実際、私どもは見てみてほんとうに痛感いたしますので、ぜひともこれは基準をもう少し、少なくとも重症の場合なんか一対一というようなところまで高めていっていただきますように、その場合には全体として、理想で言えば、収容児よりも多いようなところも外国なんかにあるようでございますけれども、十分定員を確保していただくということが大切だと思います。そしてまた手当等の問題でも、それぞれ仕事に区別があるわけではございませんけれども、重症の場合、僻地の場合などにはそういう特別な配慮をしていっていただきたいと思います。  それともう一つは、私の手元にある資料などによりましても、明らかに公立と私設の場合には相当な差が現在もあるようでございますが、この点、縮めていかれるような御努力を願いたいと思いますが、そういう点についてちょっと……。
  45. 黒木利克

    黒木政府委員 実は本年度から、施設整備費というものは社会局、児童局一本にいたしまして、しかも各省のいろいろな施設がありますが、これも緊急性のあるものから補助金をつけるということで、たとえばこういう重症の精薄児施設は最優先でございますから、都道府県あるいは民間団体が申請をすれば、施設費の補助につきましてはその要望が満たせるというような行政的な措置がとられたのであります。ところが現実にやってみますと、各県なりあるいは民間団体から、思ったような申請がない。その根本は、結局はその職員の確保難ということから、先ほどたびたび御意見がございましたように、職員の処遇の問題なりあるいは気分転換なり、レクリエーションなり、老後の問題なり、最重点考えて検討いたしておるのでありますが、大蔵省のほうでもこういう点を十分に見てくれまして、その整備費のいわゆる画竜点睛をやりたいというので、国内留学とか、あるいは気分転換のための何らかの措置とかいうことでいい案があるなら、協力するにやぶさかでないということでありますから、問題は知恵の出しようということでございまして、いま知恵をしぼっておる最中でございます。  なお、公、私立の差の問題につきましては、先ほども申しましたが、ひとつ来年は、思い切ってこういう差をなくするための特別の補助金制度というものを考えたい。これは、文部省のほうで私立学校の振興のために特別な措置をしておるようでありますが、これを参考にして何らかくふうをしてみたいと思います。ただ一つ難関は、実はこういうことで私立に対して特別に国が措置をしますと、それが保育料と申しますか、父兄の負担にはね返ってくるのでございます。つまり国が補助金を出しましたり負担をしておりますと、その費用の一部は負担能力のある者は負担しなくちゃならぬというたてまえでございますから、したがって私立だけ特別に公立よりもめんどうを見ますと、それだけ保育料が高くなるというようなことがありまして、こうなりますと、私立のほうが公立よりも経営的にも非常に不利になるわけでございますから、この問題を何とか解決しなくちゃならぬというようなことでいろいろ難関があるのでございますが、一応文部省等の先例もあるようでございますから、来年こそは、何とかこの差を縮めてまいりたいと思っております。
  46. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 その点は、たびたび申し上げるようでございますけれども、現状におきましては、ほんとう施設に働く人たちを何とかよくしていきませんければ、そしてまた定員をふやしていかなければ、このせっかくの施設等も生きていかないと思いますので、ぜひ格段の御努力をお願いするわけでございます。  だいぶ長い御質問をいたしましたが、私はまたあとできようの御質問のことを整理いたしまして、私がまた言い足りない点がいろいろございましたら、その点についてあらためてさしていただきたいと思いますので、大体この程度で留保して本日は終わりたいと思うのでございますけれども、最後に、心身障害者全体を含めての福祉対策ということを確立して、総合的に——現在いろいろ法案ございますけれども、それが個々ばらばらになっているように考えます。きょうは身体障害者のほうの問題には触れませんでございましたけれども、身体障害者福祉法との関連もございますし、心身障害者全体としての福祉法というものが将来まとまったものとしてできていくことが、私は行政上も必要ではないかと考えます。そういう点について、最後に、特に厚生大臣の将来にわたってのお考えを伺いたいと思います。
  47. 小林武治

    小林国務大臣 これは、そのときどきの必要によっていろいろな法律が出てきておりまして、その間の権衡も欠けておる、こういうことでございますので、これはこれからの問題として、一つの全体を包含した法律制度にしなければならぬ、こういうことは考えております。たとえば援護法などもさようなことをいたしておりますし、母子福祉法どもそういう方向に進みたい  と存じますので、お話のようなことは、これからの問題としてぜひ検討いたしたいと考えております。
  48. 伊藤よし子

    伊藤(よ)委員 それではまた続いていたしますが、留保いたしまして、本日の質問はこれで終わります。
  49. 井村重雄

    ○井村委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十八日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会をいたします。    午後零時二十八分散会