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1964-05-21 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十一日(木曜日)    午前十一時一分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君    理事 小林  進君 理事 長谷川 保君       浦野 幸男君    大坪 保雄君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西村 英一君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       粟山  秀君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    伊藤よし子君       滝井 義高君    八木 一男君       山口シヅエ君    山田 耻目君       吉村 吉雄君    本島百合子君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      伊部 英男君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会保障研究所法案内閣提出第一〇七号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出社会保障研究所法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 社会保障研究所法案について、厚生大臣政府委員に御質問いたしたいと思います。  社会保障研究所法案政府から提出になりましたことは、一歩前進としてよいことだと私は考えておりますが、しかし、この研究所法案内容を見ますとまだ欠点も残っておりますし、またそれをお出しになりました提案説明をお読みしますと、この中に、厚生省社会保障に対してどのように取っ組もうと考えておられるかという思想があらわれております。この点についてなおただしておく必要があると存じますので、そういう点について御質問を申し上げたいと思います。  社会保障研究所法案提案理由の中に、「御承知のように、わが国社会保障制度は、経済高度成長国民生活向上に対応して近年かなりの整備拡充が行なわれ、制度的には一応国民保険、皆年金の体制が確立を見るに至ったのであります。しかしながら、その内容をしさいに検討いたしますと、各種制度間に著しいアンバランスが認められるなどいまだ解決を要すべき問題は少なくありません。」とございます。確かに事実を正しく、まともに指摘している点でこのことばは悪いことばではありませんが、「各種制度間に著しいアンバランスが認められるなどいまだ解決を要すべき問題は少なくありません。」と言った背景に、アンバランス調整ということを考えて、制度の飛躍的な前進ということにやや消極的であるというような考え方底流をしているように、この文章は読めるわけです。なおその次に、「今後西欧先進国水準への到達を目ざして社会保障制度計画的、合理的な発展をはかるためには、」という文言で埋め合わせはしてございますけれども、前にこのようなアンバランスということを抽出をして特に書いてあるところを見ると、近い間はそのことに専心をして、全体の引き上げ、全体の向上のほうには消極的だというような考え方底流にあるように考えられるわけです。そういうことがあっては非常にゆゆしき問題だと考えますので、厚生大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のとおり、アンバランスというのはいまある制度の間の問題でありますから、一応の問題になりますが、目標ではありません。これは社会保障制度全般をよくする、こういうことに目的がありまして、それへ到達するまでの間にいろいろなアンバランスが生ずる、現にもう生じておる、こういうことも一応の考え方の中に入れて直すことを考えなければならない。しかし、アンバランスを直すということは、いまある制度アンバランスの問題でありまして、将来の問題ではありません。将来は全体をよくするというわけでありまして、それに到達するまでにもアンバランスを直していきたい、こういうことであります。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣提案理由説明は、これは厚生大臣も目を通されると思いますが、おそらく原局がつくられると思います。そこで原局のほうに、こういうときに、各制度がいまだはなはだ低水準であり、かつその間にアンバランスがあるのでというような文言が、社会保障についてほんとう意味で熱心に取り組む考え方があれば、当然出てくべきものだということなんです。それがアンバランスだけを特徴的に書くというところに、消極的な考え方底流があらわれている。厚生大臣はそうでなくても、各原局でそういうようなことがあると、これからの予算要求でいつも消極的な要求しか出さない。しかも消極的な要求が削減をされても、それに対して強い抵抗を示さないということの原因がここにひそんでいると思う。こういう点は、提案理由を各原局が書く場合においても、あらゆる制度全体が、その中においてバランス上少しよく見えても、本質的に見れば、はなはだそれが低いのだという考え方厚生省の各担当者——考えではわかっておられるとしても、いつも頭の中にあって、いつもそれが口に出る、いつも文章にあらわれるというような勢いで、社会保障制度問題に取っ組んでもらわなければならないと思いますので、どうか厚生大臣からそういう問題について担当各局各部の人に、そのような意味で積極的に取り組むべしというような指示とか訓示とか、そういうものを強力に与えていただきたいと思いますが、それに対する厚生大臣の御意見を伺いたい。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 お話のとおりでありまして、その向きのことは私も担当局長等にも十分指示をいたして、さような目標に向かって努力することを要請することにいたします。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 社会保障の問題について、厚生大臣一つ一つの問題ではお答えにならなくてもけっこうですけれども、大体どういう筋の問題について大きな欠陥があるというふうにお考えになっておられるか、お考えがあったらひとつ伺わしていただきたいと思います。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 これはもう前々から申し上げておるように、いまいわゆる社会保障の問題としては、生活保護の問題と医療保障の問題、所得保障の問題、これが三本の柱として行われておるのでありまして、ひとつ十分にこの問題を解決するということでなければなりません。生活保護の問題は毎年問題になる問題でありまして、これもいまの程度でとどまるべき問題でないことは当然でありますし、ただいま提案しておる厚生年金の問題は、これを契機として国民年金の問題に波及というか、それの解決をしなければならぬということと同時に、医療保障給付にしても不十分である、こういうふうなことを考えております。これは一般国民に対する関係でありますが、そのほかいわゆる身体その他においてマイナスを背負っておる人々、これを一般人並みにやらせる、暮らさせる、あるいは社会に出れる、こういう二つの問題を総括的に申せば推し進める、こういうことになると思います。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の御答弁、その面においてそれが積極的に取り組まれればけっこうだと思いますが、考え方を、別な考え方で私としては質問をしておったわけです。全体に給付程度が非常に低いという問題、急速にこれを変えなければならないという問題と、それからいろいろな仕組みが社会保障に徹底しておらないで、往々にして相当部分社会保険的な考え方——社会保険ならまだいいですが、私企業保険的な考え方があって、必要とする人に給付がいかないというような欠陥があらゆる制度に多いというような問題、それからこの基準といたしましては、憲法保障されている健康で文化的な最低生活保障は、生活保護法のあらゆる保障にこれが合わなければいけない。したがって、積極的な所得保障は、それを上回る健康で文化的な相当程度でなければならないという問題、そういう問題も考えて、積極的に推進をしていかなければならない問題だと思います。それとともに、所得保障医療保障——所得保障のほうをおもに申し上げましたが、医療保障のほうは、最新の最も有効な医療が、少なくとも一番最初には病気になった人がその家庭の一切の金銭の負担なしに、すぐに給付が完全に具体的に受けられる状態になって、金の問題のブレーキはかからない、近くに診療所がないというブレーキがかからない、手続上めんどうくさいというようなブレーキがかからないというようにやっていただきたい。そういうようにして、病気あるいは負傷という状態のときに、金の心配など一切なしに最新にして最も有効なる治療が施される、それとともに、病気にならないような予防あるいは病後のいろいろな回復のためのあと保護、あるいはリハビリテーション、そういうことが完全に行なわれるということが必要だろうと思う。狭義社会保障においてそういうことが直ちに必要でございますが、さらに社会保障の対象としては、所得医療だけの問題では足りないと思う。社会保障考えるときに、まだほかに考えなければならないことがたくさんございます。厚生省所管事項以外にもたくさんあるわけでございます。厚生大臣としては、社会保障推進する意味において、ほかのどういうものを積極的にこれから考えよう、そうして推進しようとされておられるか、ぜひひとつ伺っておきたいと思います。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 これは理想を言えば切りがございません。私はいつも考えておるのでありますが、いわゆる福祉国家というものは国民所得がやはり相当なければできない、こういうことでありますので、理想理想として、財政との調整というものはどうしても必要であります。お話のように、日本社会保障というものは社会保険の要素が多く含まれておる。これはやはり国の財政が許せばそんなものはせぬでもいいわけでありまして、社会保障だけでいってもいい。しかし、とにかく日本国民総生産なり所得がそこまでいっておらぬ。しかしながら、漸次これは向上させなければならぬ、こういうことでありまして、これらの所得保障なり医療保障なりも、いわゆる社会保障部面がだんだんふえつつある、またこれからもふやさなければならないということは当然でありまして、国民健康保険のごときも、もうすでに三割三分何厘というようないわゆる社会保障の面が入ってきておりまして、今後、社会保険的な部分に依存するよりも、やはり国家財政に依存しなければならぬ部面相当ふえてくる。これは当然の傾向であり、社会保障のたどるべき道である、こういうふうに考えております。  これは、いま私ども狭義社会保障を申し上げたのでありますが、予防方面とか、あるいは、ことに私どもが御協力をいただいております環境衛生の問題などは、全くこれは広義社会保障——健康にして文化的な生活を営むには、環境を整備しなければできないということは当然でありまして、いまでも予防衛生の問題と環境整備の問題というものが厚生省としては広義社会保障であるということで、非常な力を注いでおることは御承知のとおりでございます。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 前に財政の問題と社会保険の問題を言われましたけれども財政の問題は、財政論全体で、さらに高額所得者とか非常に所得の多い企業には相当の税金を負担させる、ほかの非常に生活の苦しい人々には減税をするという関係で、財政全体で支出をふやすことを考えられると思います。また不要な、不当な支出をほかの点で削減することによって、最も大切な社会保障に持ってくるということでも解決ができるわけであります。しかし、そのほかに、この部門だけでも財政的に解決できる道があるわけであります。社会保険主義ということでございますが、財源を得るために保険料負担をさせるということを、現在の段階において私どもは否定をいたしておりません。それで、財源を得ることはいいけれども、その財源保険料の納入に比例して給付を行なうというような私の保険的なそういう概念を脱却していけば、財源保険的に保険料から収入を得ても、給付は必要な人に必要な給付をするという道を大きく進めることができるわけであります。そういう意味で、社会保険社会保障的に変革していくということをもっと急速にやっていただきたいと思いますとともに、また長期の給付に関しては現在がいろいろの建設過程である。いろいろの点で財政が苦しいとしたならば、諸外国でもやっておるように、完全積み立て金方式賦課方式にする、あるいは修正賦課方式にするという方式によって、そういうことを解決する道もあるわけであります。一般財政的に解決の努力をする。それから、保険によって得た資金の分配について、必要な人に必要な給付がいくという社会保障的な制度の変革をする。さらにそれでも足りないときは、賦課方式方向に向かうということによってこの問題を大きく進める道があるわけです。そういう点についてもっと積極的に御検討になって、社会保障を積極的に推進していただきたいと思うわけであります。それとともに、いま狭義社会保障以外のことで、厚生省のほうの関係として、公衆衛生なり環境衛生という問題を言われました。これを積極的に推進されることは非常にけっこうであります。しかしながら、それ以上に、それと同等程度以上に厚生省所管外考えなければならぬ問題があります。端的に申し上げますと、住宅の問題であります。住宅の問題は、当然社会保障の範疇に入る問題であります。残念ながら、いま建設省というようなそれに適当でないところの所管になっておりますので、量の絶対量をふやす、それも非常にふえ方が少なくて、世の中一般住宅不足に苦しんでおる状態でありますけれども、それは社会保障的な考え方で行政を推進すべきであります。ただ建てればいい、建てても一部の余裕のある人がいい家に入れるだけの結果である。ほんとう住宅に困っている人が入れない。そういう人たちの問題については、そう一生懸命に考えないという性質を持っている省に所管事項としてあるというようなことは間違いでありますが、社会保障のおもなる官庁である厚生省は、あるいはまた国務大臣としての厚生大臣は、社会保障概念から住宅の問題を大きく推進していただかなければならないと思うわけであります。そういう点についての厚生大臣の御所見を伺っておきたいと存じます。   〔委員長退席井村委員長代理着席
  12. 小林武治

    小林国務大臣 これはそのとおりでありまして、もとは、いわゆる小住宅というものは厚生省所管であったそうでありますが、いつかこれが建設省に移った、こういうお話でありまして、工事をする面に重点を置くか、目的重点を置くか、こういうふうな問題があるわけであります。現在のような状態において政府人つくりをいろいろ唱えておりますが、人つくりにはまずもって家庭というものが大事だ、家庭のもとは住宅だ、こういうことで住宅第一主義というようなものを政府は取り上げておりますが、ただ、これをつくるという、そういう方面に重きを置いてその目的が十分に反映しておらぬ、こういう欠陥があるのであります。小住宅というようなものは、当然、いわゆる社会保障の一環として厚生省相当発言権を持ってしかるべきだ、こういうふうに私は考えておるのでありまして、現在でも、ここで問題になります母子住宅とかあるいは老人用住宅とかいうようなものが、若干われわれの主張によってそれの割り当てをもらう、こういうことでありまして、きわめて不十分であります。私は、小住宅についての所管の問題、あるいはいまのように建設省の専管、こういうようなことは適当でない、せめて共管にでもして両方でこの問題を進める必要がありはしないか、こういうことを考えておるのでありまして、政府におきましても、あるいは国会においても、私はこの問題について十分注意を喚起していただきたい、かように思っておるものでございます。厚生省といたしましては、厚生年金還元融資、こういう問題がありますので、このほうへは相当程度力を入れて、住宅融資をいたしたいとわれわれのほうで計画を進めております。こういうことでありますが、一般におきましても、とにかくいま必要なのは大きな住宅である。要するに、中小企業以下低所得者のための住宅が非常に必要を叫ばれておる。こういうことを考えますれば、住宅目的からいたしまして、私は所管等についても再検討いたす時期である、こういうふうに考えております。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 そのお考えは非常にけっこうでございますが、それを強力に、具体的に進めていただきたいと思うのです。社会保障の問題で、われわれは医療とかあるいは所得とか失業とか、そういう狭義社会保障について論議をしておりまするけれども住宅の問題は、実際的な意味ではそれらの問題に劣らないほど、憲法二十五条の精神に非常に重大な関係がある問題だと思う。家というものが安定していなければ、生活の根源が立たないし、その家が近いところに行けないために就職の条件が悪くなったり、乗りものに乗る時間が多くてからだをこわしたり、あるいはそれで収入が実際的に減ってしまったり、こういう問題もありますとともに、病気になった場合に、厚生省でたとえば濃厚感染論について心配をしておられるけれども、その問題の底流で、小さな借り間に一世帯が入っているところで伝染病が家族にうつるという問題もございまするし、また子供が勉強できないという問題もありまするし、とにかくおとなと子供生活で、同じ場所でできない問題が解決しないという問題もございまするし、若い人が結婚できないという問題もありまするし、根本的な問題であろうと思います。衣、食、住と言われますけれども、着物のほうと食べもののほうは——それも、非常に貧困な人に対する対策、あるいは労働者に対する対策が少ないから十分ではございませんけれども、とにもかくにも、食べるほうと着るほうは何とかできるようになりました。住のほうだけがどうにも解決できない、かなり恵まれた状況にある人でも、一生涯かかって、自分の住みたいところに住みたいようなかっこうの、ある程度住宅をつくり得るかどうかということが、一生涯の目的になっております。その目的を果たすのは五十、六十になって果たせる人が一部分、一生涯の目的を果たせないで間借りなり、条件の悪いところに住んで一生涯を送ってしまう人が大部分という状態であります。日の当たらないようなところとか、大きな声で話したら隣に聞こえるから遠慮をしなければならないところとか、若い夫婦と年寄りあるいは小さな子供一緒になって、いろいろな点で夫婦生活まで遠慮をしなければならない状態であるとか、片一方で勉強したら片一方で仕事ができないという状況であるとか、そういう状態であります。そうなりますると、それをこのままにじんぜんとして放置することができないのであって、社会保障をおもに所管しておられる厚生大臣としては、どんな事情があろうとも建設省のなまけ、内閣のなまけからは許されない、少なくとも二年、三年の間に全部の人に一世帯に一住宅を与えるという施策を、いかなる困難を乗り越えてもやらなければならないし、それだけでは済まない、将来は一人一室というところまで進まなければならないという勢いでやっていただかなければならないと思う。どうかひとつ閣議で堂々と主張をしていただきたい。いまの住宅政策は、たとえば第一種公営住宅に入りたい人が入れない。間借りをするよりも、また小さな家を借りるよりも一種公営住宅に入ったほうが安い。一種に入れない人は、ほかのところで借りるよりも公団住宅に入ったほうが安い。公庫住宅をつくるには、土地がなければ、頭金がなければ借りられない。金のある人に金を貸して、金のない人が金が借りられないという状況社会保障の観点からすれば、全くさかさまの住宅政策をそのまま許しておる。こういうことでは厚生大臣は責任を果たしたとは言えないと思う。この際、河野一郎君がどんなことを言おうとも、あなたの住宅政策は間違っておる、すぐ直すか、責任とってやめなさい。総理大臣に対しても、池田さん、あなたが直さなければいかぬというようなことでやっていかなければならないと思う。そういう点で、住宅政策について強力に推進をしていただくことを要望するわけでございますが、もう一言御答弁を願いたいと思う。
  14. 小林武治

    小林国務大臣 御趣旨はよくわかりました。さような方向に進みたい、かように存じます。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、少し具体的な問題に入りたいと思います。  事務局からでもけっこうですが、この中の実際の研究をする人の人数と、部門別にどのように御研究願うように原局としては考えておられるか、その問題についてひとつ伺いたいと思います。
  16. 梅本純正

    梅本政府委員 研究所の人員でございますが、本年度予算におきまして、役員として所長一名、理事二名、監事一名、職員としまして研究員五人、事務職員五人、それから非常勤研究員十人、非常勤の顧問一人、それから非常勤評議員三人、こういう構成になっております。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 これはもちろん、研究所ができて所長理事一緒理事会ではかって、いろいろな計画をつくられると思いますが、とにかくいまは、たたき台みたいなものを準備をされておるのじゃないかと思う。五名の常勤研究員、十名の非常勤研究員の方々に、おもにどうした面について御研究になっていただくのがいいかという原案など用意しておられるのじゃないかと思うのですが、それについてひとつ。
  18. 梅本純正

    梅本政府委員 昨日も申し上げましたが、この研究所の主要な研究項目といたしまして、西欧諸国における社会保障の現状と動向という点を一つの資料として考えております。また当面のわが国社会保障につきましての問題点という意味で、もう少し具体化しました問題といたしまして、社会保障国民経済への影響、たとえば消費、貯蓄、投資等への影響、それから社会保障所得格差是正機能、それから社会保障企業福利厚生施設との関係、それからいわゆるわが国の二重構造の緩和と、社会保障構造改革としてどういう役割りを果たし得るかというような問題それから社会経済発展段階社会保障の規模との関連、それから、よくいわれます人口構造の変化に伴う社会保障役割り、それから地域開発推進社会保障役割り、あるいは低所得層動向と低所得対策方向、こういうような点を研究テーマにいたして考えたらどうか、まあ、たたき台という意味でわれわれのほうでは考えております。  先ほど申し上げました研究員でございますが、常勤研究員五名は、平年度に直しますと十二名ということになります。非常勤研究員常勤を合わせまして二十二名ばかりの要員ができますので、その辺の委員専門別としましては、経済学財政学社会学統計学、法学、こういうふうな関係専門学者をお願いして、テーマごとに、いままでなかったこういうおのおのの専門家の立場からの御研究を総合的につくり上げていく。きのうもいろいろ議論になりました厚生科学研究費との関係、あるいはおのおの試験研究機関との関係というものもございますが、いままでの研究は、たとえば経済学者のグループにお願いをしておった、あるいは社会学者にお願いしておった、そういういきさつになりましたのは、御承知のように社会保障学であるとか、そういうふうにまだ社会保障としてまとまった学問体系ができておりませんので、いままでの関連のある学者にお願いしておりましたが、この研究所のねらいますところは、先ほど申しました大きなテーマにつきまして、従来からあります学問体系の中の専門家が御研究を願いました角度をぶつけ合っていただいて、批判し合っていただいて総合的なものをつくり上げていったらどうかというのが、大体われわれの考えておる構想であります。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 もちろん、どういうふうにやるかということは、研究所自体でおきめになることであって、その一番最初の御協議になることについてのたたき台意味で、御用意になっておらるべきものであるというふうに私考えますが、厚生大臣も、それからまた官房長も、そのようにお考えでなければならないと思いますが、いかがでございますか。
  20. 小林武治

    小林国務大臣 そのとおりであります。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、いまのような分け方でやられたのは、いろいろ学問的に研究される点において一つの適切な方法ではないかと思いますが、私が、学者ではございませんが、この問題に私なりに一生懸命取っ組んでいる者としての考え方で、社会保障のいろいろの影響というふうになりますと、社会保障というものの概念がはっきりしていない。狭義のものもあるし、関連とかいろいろことばを使っておるものもあるし、かっちりとした定義がないわけです。その場合に、私がいま言ったような住宅の問題なり——おそらく公衆衛生環境衛生はもちろん入るでしょうけれども住宅の問題なり育英資金の問題なりあるいは食糧費の問題——たとえば消費者米価というものは、いまはそれほど具体的な役割りを果たしておりませんけれども、戦後においては、実際的な社会保障役割りを非常に果たしておったわけです。今後、たとえば乳幼児とかあるいは妊産婦、そういう人たちの、主食とほとんど同じような重要な栄養品である牛乳その他の乳製品、またそれにかわるべきたん白資源、そういうような問題について、やはりこれも社会保障概念として考えなければならない問題になろうかと思います。食糧の問題、住宅の問題、それから教育の問題の中の育英というような問題は、これは完全に社会保障概念考えなければならない。また別な、憲法条文による義務教育無償というような点がございますけれども、義務教育が実際上は無償で行なわれていないという条件も、これはまた考えていかなければならない。そういうところで学者の先生方は十分御研究になるということを期待もし、予測もしているわけでございますが、元来、社会保障という概念人々によって違う。それで政府の扱いがまた違う。また、先年のこの前の国会において、失業対策費というものは、明らかに予算条項においては社会保障費に入れておきながら、あれを雇用問題として社会保障制度審議会にかけないというような、政府みずからの意識の不統一がある。でございますから、そういう点について、ほんとう社会保障という、ほんとうの精神に合うように、あらゆる関連のものについて御調査を願う必要があると私は考えるわけです。そこを、いろいろの原局の説明なり、あるいはまた説明の行き過ぎなり説明の不十分なり、そういうようなことで、学問に熱心な先生方が、その一番最初の大事なところで、社会保障狭義に解するか広義に解するかということでチェックを受けないで、最も広義の問題について最も大切な基礎的な、総合的な研究ができるように、そのようになっていかなければならないと思う。その点について厚生大臣や官房長の意見を伺っておきたい。
  22. 小林武治

    小林国務大臣 それは、社会保障研究所が自主性と申しますか、独自性を持ってやるんだ、そういう中立性あるいは独立性というものを考えて、こういうふうな特殊法人にしたんだということになっておりまして、ただ、こういうものをつくる場合には、一応皆さんからも何をやらせるんだと言われるからして、こういうことを考えておりますということを例示しただけでありまして、研究自体は、研究所の自主性によって行なわれるということは当然であります。いまのところ私ども、こういうことをやってもらいたいと委託することも考えておりませんが、そういうこともあり得ると思いますが、研究の主力というものは研究所の自主性に待つ、こういうことは当然なことであります。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 その厚生大臣の御答弁は非常にけっこうなんです。原則として、大前提としてそれがなければならないと思う。ただ、私のいま申し上げたのは、それにつけ加えて老婆心の心配を申し上げているわけです。学者が、ほんとうに学問的良心に従って、いろいろな制約を受けずに研究をされるであろうと期待はいたしております。しかし、社会保障という概念が、定義がはっきりしていない。狭義社会保障、まん中辺の社会保障広義社会保障、たとえば広義になれば、いまのところ一般概念で、これも定義じゃありませんが、住宅の問題は完全に入る。ところが、狭義となると、住宅が入らないような扱いをされていることが多い。そういう点で、私は、いまは何ものにもとらわれずに、ほんとう憲法二十五条の精神に従った社会保障という、最も広い概念に従ったものについて基礎的な、総合的な、中立性を保った研究がされる機関になってほしいと考えるわけです。そこで、いま厚生大臣にこういう論議をしておくことによって、少なくとも住宅が入らないというような変なブレーキがかからないようにというような認識にしておきたいと思う。そういう点で厚生大臣にひとつ伺っておきたいと思う。
  24. 小林武治

    小林国務大臣 これはもう、研究所ができますれば、研究所の運営については国会の論議等も、当然速記等も読んで参酌をしてやられる、こういうふうに思うので、こういう論議は私は非常に大事なことだというふうに考えております。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は、住宅の問題や何かが研究所の問題と——住宅の問題とか育英資金の問題とかあるいはまた乳製品の問題は、広義社会保障になると考えておられると思いまするが、それについて厚生大臣のお考えを伺っておきたい。
  26. 小林武治

    小林国務大臣 広義社会保障に入ると考えております。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、さらに具体的な条文に入らせていただきたいと思います。  第一条の目的であります。第一条には、「社会保障研究所は、社会保障に関する基礎的かつ総合的な調査研究を行ない、及びその成果を普及し、もって国民の福祉の向上に寄与することを目的とする。」まあどこのところにもあるような文言を書いておられるわけです。そこで、私のひっかかりますことは、「及びその成果を普及し、」、この「普及し、」というところにあるわけです。「成果を普及し、」ということは、日本語でありますから、幾らでも解釈のしようがございまするけれども、「成果を普及し、」というと、純粋の学問的な基礎的な調査、中立的な態度によって調査されたというものとぴたっとマッチしないような気がする。成果となると——首をかしげなくて、私のことばをそのまま聞いていただきたいと思う。全然白紙で聞いていただきたい。普通の概念だと、「成果を普及し、」ということになると何か非常な、最も具体的な目的を持っていろいろなことをやった、それについての「成果を普及し、」というように、日本語の通常の人間の解釈だとなると思う。いわゆる法律用語とか役所用語というものじゃなくて、ほんとう日本語の普通の解釈だと、「成果を普及し、」となると、非常に具体的な目的を持った何かが行なわれて、その成果を普及するというふうにとれるわけです。いま厚生大臣のお考えで、中立的ということばをみずから厚生大臣が二、三回言われましたから、小林厚生大臣なり現在の厚生省考え方がそのような危険性のないことは、私はわかりまするけれども厚生大臣は将来かわるのでありましょう、また現在の事務局の方もかわられるでありましよう。そうなった場合に、そういうことを明らかにしておかないと間違いが起こる。「成果を普及し、」ということは、何か具体的な目的を持ってこれを普及する。そうすると、そのときに権力をとっていた内閣のやり方、その内閣のやり方がいいのだという裏づけをする研究に堕するおそれがある。またそのようなつながりを持った研究成果をずっと普及するということによって、ほんとうの政策を立案するところは、立案の責任は役所にあるわけです。その前に企画、立案その他について社会保障制度審議会にこれは当然諮問をし、答申を受けなければならない。そういうような、もとの法律にきまったりっぱなそういう審議会がある。それからそれに基づいて政府がいろいろな政策をつくり、法律を出さなければならない。国会が審議をするというものがりっぱにあるわけです。この研究所は明らかに総合的な基礎調査、あくまでも中立的な立場に立った総合的な基礎調査でなければならない。それを参考にして国会が論議をする。それをもとにして制度審議会が答申もし、勧告をする。それをもとにして厚生省は具体的な立案をされる、また法律案をつくられるということになろう。その前に基礎調査の普及宣伝という必要があるかどうか。これは学問的なほんとうの基礎調査、その基礎調査に基づいて論議がせられ、政策が出され、また審議がされるわけです。その前に発表したものを普及宣伝するということになったら、何か作為があるということになるわけです。このものについては、前に社会保障制度審議会で現局のつくられた方と論議をしたことがある。方々の研究所でこういうものをつくっておる、使っておるから、そういうものを使わなければならないという意味が多いらしい。決してあなたの心配しているような気持ちはありませんということを言っておる。その気持ちは純粋に間違いはないと思う。間違いはないと思うけれども、そういう間違いがないものを表現をするのにこういう文句を使わなければならない、それが法制局のマンネリズムだ。内閣の法制局というのは、昔の法律と同じ文句を書かなければ気が済まない。世の中が動いていることを知らない。世の中について、昔の制度についていろいろ間違いがあり、批判があった点について知らない。何でも同じ文言にすれば無難だと思う。そういうことで、「成果を普及し、」ということを入れなければ法制局が承知をしない。またそれに対して現局が中立性を考えていながら、こういう中立性をあるいは疑わしめるような条文を、積極的に排除する努力をほんとうにしっかりされておらないという点に非常に心配を感ずるわけです。私としては、直ちに「その成果を普及し、」という文言は削除をすべきだと思う。それについて、法律を出したからそれにとらわれるという考え方ではなしに、私のいま一生懸命申し上げたことをまともにお聞きになって、役所的考え方にとらわれずに、厚生大臣として、あるいはまた現局としてお答えを願いたいと思う。
  28. 小林武治

    小林国務大臣 私はこれにそう大きな意味があると思っておりません。研究の結果は公表しろ、世間の社会保障に関するいろいろの関心を高めるようにしろ、あるいは認識を深くしてもらいたい、こういうふうな研究の結果はしまっておかないで公表をして、世間にも知らして、そうして社会保障全体に対する問題についての世間の認識を深めたい、こういうふうな意味に私は考えております。お話のようにこういう法律をつくれば必ず前のやつのまねをして、説明の場合には、前はこうなっておりましたと言えば一切政府機関は通る、こういうような安易な考え方からして同じような条文が出ておると思って、お話のようにもっと再検討をすればよいということもいろいろの場合にあります。ただ、どうしても法律案がつくられるときには、何でも政府は先例先例、これはあそこにありましたと言えば一応通るということで、これもそれを追っておると思いますが、いろいろ心配があればまたこれは考えてみなければならぬ、こういうふうに思っております。要するに、社会保障研究所をつくるのは、研究もむろん必要でありますが、社会保障制度審議会にしてもこういうものにしても、これをバックにして世論も高め、政府の行政も進める、これも社会保障に対する政府の姿勢を強化する一つの手段——と申してははなはだ語弊がありますが、そういうものにも一面において非常に役に立つ、こういうことに考えております。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 いま厚生大臣の、そっちにもこっちにも考えられる御答弁ですが、御答弁をされた気持ちは純粋で、私の質問意味もわかっていただいて、それから政府のいままでのマンネリズムもわかっていただいてのまともな御答弁で、お気持ちは非常にけっこうだと思います。ただ、そのマンネリズムがとれないという問題はまだ残っていると思います。この普及の点についても、研究したものを世の中に公表することはあたりまえであって、それからあらゆるそういう関係者に知らせる、あるいはまた新聞その他でこれがどんどんそういう状態にあるということが発表されることは、非常にいいと思います。ただ、その普及を目的の中に加えるという点に問題があるのです。あくまでも目的は中立的な、基礎的な、総合的な調査であって、調査を発表することは、どこのところに何も書いてなくてもあたりまえの話です。それを普及するということになると、場合によって内閣がひん曲がった内閣であり、厚生大臣や現局がひん曲がっていると、自分の貧弱な政策を弁護するためにそれを使おうとしたりということも起こらないとも限りませんし、そういう点で心配が残ろうと思う。役所にそれをさせたら、また逆な点で心配も起こります。学者が、純粋な研究所自体が発表したほうが中立的な発表をし、説明をするからいいという面ももちろんありまするけれども、普及宣伝ということは、何らかの目的——調査研究目的でなしに、何かそこの成果の普及宣伝が目的のように並べて書いてありますが、そのようになりますと色がつくような危険性があります。これは先の話でわかりませんが、私の心配したことは十分大臣も現局の方もおわかりでございましょうと思いますから、全然色がつかないように、ひとつぜひ厚生大臣も現局も、次々の方に厳重な申し送りをされるとともに、役員の方々に、もちろん純粋な学者だからそのようなお気持ちだろうと思いますが、そういう御説明をやっておいていただきたい。  その次に、役員の任命でありますが、「所長及び監事は、厚生大臣が任命する。」「理事は、厚生大臣の認可を受けて、所長が任命する。」ということになっております。そうなると、非常に大切な研究所の運営をする人が、ほとんど直接または間接に厚生大臣によって任命されることになる。厚生大臣が非常にりっぱな厚生大臣小林さんもその一人でございますが、そういう方でございましたらいいのですが、そうでもない方が厚生大臣におつきになることも絶対に絶無ではないと思う。それで色づきの役員を任命したり何かして、大事な研究所の任務が曲がることがあってはたいへんだと思いまするが、それについて厚生大臣のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  30. 小林武治

    小林国務大臣 これもいろいろな、いわゆる準政府機関、全体の経費が政府の補助によってまかなわれる、こういうふうなたてまえから言うて、ある程度こういうふうな措置もやむを得ぬじゃないかというふうに考えております。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 実際に所長が任命されるとき、また所長が他の理事を任命するときに厚生大臣の認可を受けられるとき、そういうときに厚生大臣としては、各般の意向を聞いて参考にされて、それで所長の任命あるいは所長の持ってまいります理事の任命をされることにならなければならないと思いまするが、厚生大臣のお考えのほどを伺っておきたいと思います。
  32. 小林武治

    小林国務大臣 事実問題としてそういうことはあると思うのでありますが、ただ、法文の上にあらわすことはどうかということで、こういうふうになっております。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 法文の上ではこうです。これはわかっております。わかっておりますが、社会保障研究所を主宰する人はだれが適任者であるかということは、厚生大臣が長いこと厚生行政を引き続きやっておられれば、その点の一番適任者が自分でぱっと頭に浮かぶと思いますけれども所長の改選期一週間前に厚生大臣になられたというようなことでは、なかなか頭に浮かばないと思うのです。そういうときに、おそらく普通されることは、たとえば厚生省の方々、局長や次官にもいろいろ意見を聞かれると思うのです。だけれども、そういうことよりも、これは法律上の問題ではございませんけれども、たとえば社会保障制度審議会の会長であるとか、そういうような方にも伺われて——あくまでもこれは参考でありますが伺われて、最後に自分で判断をされるということになろうと思います。普通だと、役所の担当局に伺われるということにすぐなってしまうのでございますが、そこの考えも参考として伺うのはいいと思いますが、民主的な権威のある審議会なり、あるいはその他の権威ある方々なりに参考意見を伺われて、それで厚生大臣として御決定になるというような、よりよき慣習をつけていただきたいと思います。それについて厚生大臣考えを伺いたい。
  34. 小林武治

    小林国務大臣 当然そうなると思います。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、予算について、ここに載っておりますが、一応原局から御説明を願いたいと思います、項目はごく簡単でいいですから。
  36. 梅本純正

    梅本政府委員 本年度予算といたしまして、これは補助金になっております。総額千六百万円。この内訳といたしまして、設立準備費百七十六万一千円。この設立準備費の内訳といたしましては、委員手当、職員給与、事務費、委員等旅費というのが内訳となっております。それから研究所運営費千四百二十三万九千円。その内訳の大きいものとしましては管理事務費でございまして、これが九百八十万四千円。その管理事務費の内訳といたしまして、非常勤給与、それから職員給与、庁費、初度調弁費というのが内訳となっております。それから管理事務費に対応いたします項目として事業費がございますが、四百四十三万五千円。合計千六百万円でございまして、これは三カ月予算になっております。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 補助金で千六百万円。三カ月予算で、平年度に直すと六千四百万ということになるわけですね。
  38. 梅本純正

    梅本政府委員 事務的な試算で延ばしまして三千七百万円でございます。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 最初、この予算のときには出資金で要求になったのではないかと思いますが、その経過をちょっと……。
  40. 伊部英男

    ○伊部説明員 この予算がきまりますまでの経過を御説明申し上げますと、当初十億の出資金を要求いたしまして、この内訳は二億が建物でございます。それから八億の利子、約五千万円強になっておりますが、それで運営をするという予算要求をしたのでございますが、事務当局といろいろ相談をした結果、建物は必ずしもすぐに要らないのではないか、それは建物を借りてもいいんじゃないか、それから他の研究所につきましてそういう出資をした例はございますけれども、その後人件費の増加等によりまして、結局利子は全体の事業費のうちでもって非常に少ない割合であります、やはり国庫補助金がふえる、多くなっていくという傾向がございますので、財務当局としましては、こういう研究所に対する出資をするということは若干問題があるから、そういう実績にもかんがみて、今回は補助金でいくということを考えてはどうかというお話がございまして、結局そういう形になったわけでございます。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の都合もありますから早くまとめますから、御答弁も簡単でけっこうですが、たとえば常勤研究員の方、それの年間の給与はどのくらいになりますか。
  42. 梅本純正

    梅本政府委員 常勤研究員といたしましては、大体が国立大学の教授、助教授と同じ給与でございます。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 国立大学の教授、助教授、何と言いますか、実際に学生を教育するという大学の教授、助教授と一緒なんですか。大学の教授、助教授ですと、自分の研究をされる、それとともに、自分の非常に信頼できるかわいい弟子を育成する、それから一般的に、そういう学問を直接若い人たちに植えつけるという非常に積極的な意義があるのです。それから別な意味研究費が出る。そういう点で、大学の教授、助教授と同じ程度では、非常に優秀な人に喜んで来ていただけないのではないかというふうに思うわけでございますが、それについて、どなたでもけっこうです、御答弁を願いたい。
  44. 伊部英男

    ○伊部説明員 一応予算の積算の基礎といたしましては、地方公務員の給与体系に準じて予算を組んでおりますけれども、その点、先生のお話のような例がございますればなお引き続き改善をしたい、こう考えております。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 小林厚生大臣、いま事務局のほうからお答えがありましたが、全部申されておりませんけれども、大学の教授となると自分で研究をされる、それからほんとうの自分の後継者になるような者の研究室での教育ができる、一般的に学生に自分が正しいと信ずる学理を教えられるというようなこと、それから大学のほうの費用で別の自分の独自の積極的な研究ができる、また収入の上ではそういう出版をする、それが入る、またほかの大学の講師になるというようないろいろな点、それから一般的に研究所で非常に大事なことをしておられるけれども、狭いところでやっておられるのと違って、大学の場合には、ある意味では非常に上品な明るい舞台なんですね。ですから、よほどこちらの研究所のほうも、こういうような研究がしやすいように、その方が後顧の憂いなしに研究に邁進できるような体制をつくらないと、りっぱな学者に、しかも継続的に一生懸命に取っ組んでもらわなければならないわけですが、そういうところに喜んで来てもらえる状態にならないのではないかという心配があるのです。形式的に大学の教授、助教授と同じ待遇でいいということでなしに、ほかの大学の教授は、別な点で非常に魅力があるわけでございますから、それと対応して、すべての点で、こっちに来てこの社会保障相当長期間取っ組んでいただく点において、学問的な良心以外に、あとの点も全部満足してやっていただけるような体制をつくらなければならない。そういう点で、処遇がこのままでは十分でないと思う。これは常勤研究員についてそうでございますから、非常勤については、さらにこの度が増すと思うのです。その他事務局の人についても、そういうことになろうかと思います。そういう点もそうでございますし、また建物がないというようなことでは非常に不安定だと思うのです。そういう点で予算が非常に少ない。どんなに少なくてもこの十倍は要る。理想的に言えば、三十倍くらいは要るというふうに考えるわけです。その点で、予算を来年度において飛躍的に増大させていただく必要があろうと思いますけれども、それについての厚生大臣の積極的な、前向きな御答弁を伺っておきたいと思います。
  46. 小林武治

    小林国務大臣 いまの処遇の問題等は、御注意も聞き、十分ひとつ配慮をしたいと思います。  予算の問題でありますが、昨日も滝井委員からお話がありまして、少なくとも一億円ぐらい、うんと低く見積もってもそのくらいなければいけない、こういうふうなお話もあったのでありまして、私も昨日、ものが通るときは、からだをすぼめなければ狭い穴は通れないのだということを申し上げたのでありますが、そういう趣旨でこれをよくしていくということに努力いたします。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、質問をちょっと保留しまして、一応ここで中止いたします。
  48. 井村重雄

    井村委員長代理 滝井義高君。
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 昨日の続きをさらにやらしていただきます。法案を上げるために与党に協力を惜しまぬわけですから、しばらくごしんぼうを願いたいと思うわけです。  昨日は十五条の代表権のところまでいっておったわけですが、次は、第十六条で「研究所職員は、所長が任命する。」ということになっておるわけですが、昨日の御説明によりますと、所長及び監事は厚生大臣が任命するが、理事厚生大臣の認可を受けて所長が任命するわけです。そうしますと、研究所職員所長が任命するという、この場合の職員の中には理事も入るのかどうか。
  50. 伊部英男

    ○伊部説明員 十六条の職員には役員を含まないと解されます。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ここの職員の数は何人になるのですか。昨日の説明でわかってきたのは、所長が一名で、理事が二名で、監事が一名、そのほかに評議員みたいなものと研究員がいるわけですね。そうしますと、この研究所職員所長が任命するという、この職員の範囲に入るものはだれとだれですか。
  52. 伊部英男

    ○伊部説明員 常勤研究員非常勤研究員、それから事務職員、そのほか評議員等もこの中に入ると思います。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、結局この十六条の職員というのは、研究所所長一人と理事二人、監事一人を除く以外は全部職員になる、こういうことですね。それから評議員というものの役割りをちょっと教えてくれませんか。
  54. 伊部英男

    ○伊部説明員 これは研究所ができまして、その定款によって設立される見込みのものでございますが、評議員の仕事といたしましては、直接研究所を監督する方はもちろん所長及び理事の役員になるわけでございますが、いわば学問的なそれぞれのリーダーとして評議員に入っていただきまして、常勤及び非常勤研究員研究の御指導を仰ぐというような方を念頭に置いているわけでございます。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そういう研究所研究費の学問的な指導をしていただくというような重要な役割りを演ずる人が、全然法律の面に顔を出してこない、それは定款でつくられるということにやはり問題があると思うのです。他の法律ではみな評議員会というものが出てきているわけですが、この法律は、他のものと違って、昨日あなた方も御説明になったように、基金をつくって利子でまかなっていくものではない、国の補助金体制をとっていくのだ、こういうことになっております。ところが、その研究所の学問的研究のリーダー格というようなものが所長の任命する職員になっている。しかもそれが非常に重要な役割りを演ずるとするならば、少なくとも九条の中に役員の職務、権限という項が書かれておると同じように、評議員があれば、やはり評議員会というものがあると私は思うんです。だから、そういう役割りをここでもう一条設けて、「役員の職務及び権限」の次のところにつくる必要があるんじゃないかと思うんです。それが全然ないのですね。しかもその評議員というのには、非常勤の給与をお出しになるわけです。それから当然評議員会というものをつくって、集団的に指導体制を確立するだろうと思うのですが、そこらは一体どうなっておるのか、評議員会は構成をするのか、それから評議員は何人置くのか。
  56. 伊部英男

    ○伊部説明員 他の研究所におきましても参与等の例がございまして、これも定款で設置をしておる例がございます。先ほど御答弁申し上げました中で、リーダーと申し上げましたのはいささかことばが強いかと思いますが、相談役程度のことかと思いますけれども評議員は三名の予定でございます。特別に評議員会を設けるということを描いているわけではございません。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じのとおり、医療費の基本問題研究員制度というものをおつくりになって、そして研究員は、小山さんが来ればわかるのですが、それぞれ独自の立場で研究をするという説明をしたのです。しかし、役所のほうには今度会をつくっておるのです。役所のほうには、当時の太宰次官を長として、医療費基本問題研究員制度の発足に伴って医療費基本研究連絡会議というものをつくっておるのです。そしてここの研究員については、独立して研究させるとなっておるわけです。そうなりますと、一体どちらがリーダーシップをとるかというと、役所のほうがリーダーシップをとってしまう。各局から出てきて討議をして、そして討議したその結論に基づいて研究員を補佐していくわけですから、逆に補佐するほうが指導性をとってしまう可能性が出てくるわけです。だからいまあなたが言うように、評議員を設けてリーダーシップをとってもらおうとすれば、やはり評議員会をつくって基礎的な討議をして、その上でこういう方向に行くべきだというサゼスチョンをしてもらう方向に持っていくほうがいいんですよ。私は、医療費基本問題のところはどうも逆になっておるので、これはいずれ小山さんに聞くつもりなんだけれども研究員のほうはばらばらにさしておって、自分たちのほうは団結を組んで補佐するというのはちょっとおかしいので、その独立性を阻害することになる。だからここの研究機関をほんとうに権威のあるものにし、その独立性を保持しようとしていけば、やはりその研究所内部におけるリーダーの集団指導体制というものを確立する必要があると思うんです。そうすると、評議員会というものをつくらなければいかぬ。これは顧問も置くわけですね。顧問はいま一人のようである。おそらく一人だろうと思うのですが、あるいは二人置くのか知らぬけれども、顧問制度というものは法律には出ていないわけです。ところが、予算面では顧問が出てきているわけでしょう。こういうふうに、顧問というものも法律には出てきていないし、評議員というものも出てきていない。それから専門委員というようなものも出てきていないのです。ところが、そういうものがあるわけです。それは中央社会保険医療協議会で、専門委員を置くことができるとちゃんと法律に書いてある。だから私は、こういう研究機関にはそれも書くべきだと思うのです。それを書くほうが、予算が取りやすいのです。それにも金が要るわけなのです、専門部会をつくらなければならぬわけですから。そういう法律にないものがあって、そこに給料を払っていくという形になっておるので、こういう職員の内部構成を、柱だけぐらいは法律にもうちょっとはっきり書く必要があると思うのです。評議員をつくったら評議員会を構成する、その役割りはどういうことだ、学問的指導なら指導をやる、これだけでいいです。詳細なことは定款か何かで定めてもらったらいい。しかし、大筋だけは法律に書いておく必要があると思うのです。それから顧問なら、顧問若干名を置くということを書いてもらっておいたほうがいいと思うのです。それは定款で定めるといえばそれまでなのですけれども、そういう点がどうしてこれは抜けておるのですか。もう少し大ざっぱな職員の構成ぐらいは、予算を見なければわからぬということでは困るのじゃないかと思うのですがね。
  58. 伊部英男

    ○伊部説明員 これも他の研究所の例によっておるわけでございますが、広い意味におきましては、顧問、評議員非常勤職員になると思います。しかし、非常勤研究員という肩書きでは、いろいろお願いいたします先生のいままでの学問上における地位あるいは評価等もございますので、それにふさわしく、いわば肩書きをつけて気持ちよくやっていただこうというような趣旨で、たとえば顧問とか評議員という名前を定款の中で設けてはどうかというぐあいに考えておる次第でございます。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、評議員というのをつくらないでも、専門委員でもいいわけです、専門におやりになられるわけですから。ここにおられる方だって国会の専門員でしょう。専門委員でいいと思うのですよ。それを評議員専門委員研究員として、そして評議員の給料が一人一カ月六千円、専門委員が一人一カ月一万二千円、研究員が一人一カ月一万二千円、これが非常勤だ、こういう形になって、これは実費程度を差し上げるということになるのだろうと思いますけれども、こういうようにたくさんつくらなくてもいいのじゃないか。いまのようなお話になりますと、まず一番上のランクは評議員だ、学問的なリーダー、その次が専門委員、それから研究員、こういうようにランクがついておるわけです。あなたのいまのようなおことばで言うと、やはり大学のプロフェッサーあたりに来てもらうのに、普通の研究員とかなんとかいうのではぐあいが悪いだろうから評議員にいたしますというと、評議員になってきたのだから少しは研究所の運営その他にも関与できるものかと思ったら、いやそうじゃないのです、あなたは全く学問のことだけですよということになると、それはやはりちょっとプライドを傷つけられるです。そのときには、やはり評議員会というものをつくって御意見拝聴といくことが、私はじょうずな人間の使い方だと思うのです。ただ名前だけは評議員とくれたけれども、一カ月六千円で、専門委員よりか、研究員よりか一カ月の手当は半分だったというのでは、何か花を与えてだんごはくれとらぬということになる。そういう点でも問題があると思います。しかも三人で、リーダーシップをとってもらうのだというのが同じ非常勤で六千円、それは、そういう人のほうは一カ月に一回とか二カ月に一回来てもらえばいいんです、しかしお金だけは六千円差し上げます、こういうことになるのかもしれません。ただアクセサリーでは困るのです。だからわれわれは、こういうものをつくるのならばアクセサリーはあまりつくる必要はない、ほんとうに実質的にやる専従の研究員制度というものを確立すべきだというのが主張なのです。そのためには給料をよけいにお出しなさい、だから予算もよけい要りますよ、少なくとも地方の大学の総長クラスを所長に持ってくるというなら、やはりそこに五万なと十万なとやる、専従の研究員をたくさん置くということにならないと、何か研究所は、顧問とか理事とか監事とか評議員とか専門委員とか、たくさんおるけれども、それらの者はただアクセサリーであったということでは困るのじゃないかという感じがするのです。そういう点ではこれは修正ですな。評議員会をやっぱり入れてもらって、評議員会でやる。他のものにも評議員会というのはありますよ。参与を置くなら参与を置く。参与でもけっこうです。法律に参与と書く。今度労働省は、労働組合を参加させるということで、労働災害防止法では、前の国会で文句を言ったら参与と出し変えてきた。だからあなたのほうも、これはやっぱり評議員か参与か、評議員が悪かったら参与でいいです、そして参与一本にして、研究員常勤非常勤を置くということで、あまりこういうところにたくさんの階層を設けることは問題ですよ。顧問、理事、監事、評議員専門委員研究員常勤理事常勤研究員、それから事務職員というように、まるっきり小さな千六百万円くらいしか予算のないところに、こういうように何か役職ばかりたくさん置くのは問題だと思うのですよ。簡素化してほんとう研究体制をとっていく、こういうことが私は必要じゃないかと思うのです。この点は修正ですな。どうですか。
  60. 梅本純正

    梅本政府委員 いまの先生の御意見でございますけれども、この研究所を特殊法人にいたしましたにつきましては、われわれの構想としまして、やはり基礎的な研究をやっていただくというので、おっしゃいましたように一応事務を簡素化したつもりでございまして、所長理事、この辺のところも一定の学問の専門家を集めて、一面理事なり所長という形で運営をしていただく。したがいまして、この法人の執行機関は所長理事ということになっております。  先生がおっしゃっておりますように、基礎的な研究でございますので、その運営について議論が沸騰し、評議員会を設けて運営をきめなければ進まないというふうな、普通のいわゆる社団法人なり、あるいはもっと激しい協議会なり、あるいは審議会なりというふうな構想でございませんで、むしろ財団的なもっと静かな基礎的な研究をされる学者の集まりというものを根底に置きまして、先ほど御指摘のように予算もわずかでございますので、非常に簡素化した形で法文に書いたわけでございます。  先ほどちょっと伊部審議官から、学者のリーダーと言いました点が非常に強く響いたと思いますけれども研究員研究していただく上につきまして、今後の人事の問題としましても、やはり各大学との交流というふうな点もあらわれてまいりますので、従来からの学者のランクというものも一応ございますので、迎える形として、顧問あるいは評議員というふうな名称を使ったほうが機動力があるのではないか。それほどの意味でございまして、常駐の制度ということで法文にまで制度化するについて、この運営について非常にむずかしく利害の対立があるので、理事会のほかに監事会なりあるいは評議員会なりを設けて運営する必要があるというふうな点は—— われわれの構想としては、先ほど申しましたようにもっと静かな財団的な構想をしておりまして、ちょっと先生のおっしゃる点とはわれわれの考えは異にしておりますので、その点御了承を願いたいと思います。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 私の言うのは、ここの研究所の役員、あるいは所長が一人で——あなたの昨日の構想では、理事二名のうち一名は常勤、一名は非常勤だ、こうなっておるわけです。これをわれわれは二名とも常勤にしなさい、こういう主張をしておるわけです。そうしますと、所長一と常勤理事二の三人の指導体制になってくるわけです。ところが、その三人だけでは、なかなか十分な学問的な広い社会保障を、必ずしもこなし得るとは限らぬ場合が出てくるわけです。そこであなたのほうとしては、評議員というものを設けて、ある程度の学問的な指導をいただこうというわけでしょう。そうすると、学問的な指導をいただく場合には、評議員というようなばらばらのことでは困るだろうから、やっぱり研究所が、各国の社会保障動向なりわが国社会保障の当面する問題点は、一体何が一番当面必要な研究テーマなのか、基礎的な学問の研究テーマなのかということは、あなた方のお示しになったとの社会保障国民経済への影響という問題一つをとっても、たとえば貯蓄とか投資とかいうようなものをとっても、やっぱりどういう方向研究するのかということは相当議論の分かれるところと思うのですよ。そうしますと、そこで所長、二名の理事の諮問的な機関として評議員会なり参与会というものをお置きになる。ここに大学の先生方の学問的な深い経験の成果を持ってきてもらって、意見を述べていただく。そして学問的な指導の方向をいろいろ述べてもらう。その述べたものを、所長なりお二人の理事がおまとめになって、研究所方向をおつくりになることが必要なのじゃないか。そしてつくったものを、今度は常勤なり非常勤研究員に具体的なテーマとして与えて研究さしていく、こういう形をとるほうがいい。それをばらばらに——こういうことでは系統的じゃないのじゃないか、こういうことを言っておるのです。私の言うのはそこなんです。何も研究所予算の問題から運営の問題まで、この人たち評議員関係させなさいと言っておるのではないのです。これは伊部さんの言われるように、学問的な指導ということばが強いというお話だけれども、そういう指導体制の確立のための意見を求めることにしたらいい。これなら各大学から来てもらっていいわけです。委嘱してもいい。何も東京大学に限る必要はないのだから、広く日本全国のそういうことに関心を持っておる経験の深い方々を委嘱するのは、これは三人である必要はないのです。三人なんかということのほうがけちなんです。これは十人でも二十人でもいいのです。予算がないというのならば、とりあえず六千円を三千円にしてもいいじゃないか。他に実費その他の旅費を差し上げれば、日当は三千円なら三千円でいい。国会に出てくる参考人というのは、あれは千円か二千円しかやらないのですからね。そういう点があるわけですから、そういう形にしてもらうと、こんなに階級を評議員専門委員研究員とつける必要はない。まず顧問が必要ならば、顧問はお置きになってもとにかくとして、所長理事二名と監事、そしてあとは評議員若干名、これは十人でも二十人でもいいのですよ。必要な人はとってくる。そしてその下に、研究員常勤非常勤がおる。将来はできれば常勤にしていく。そして非常勤的な面の活用は、評議員のところで補っていくということにしておったほうがいい、こういうことなんです。いままで私たちは、これをもらう前までは、ここは所長理事二名と監事一名、そしてあとは職員でまかなっていくのだ、その職員も、これは主として事務職員か何かだろう、それからここにあらわれておらぬけれども研究員がおるというような、こういう単純な考え方をしておったわけです。ところが、昨日この予算の給与の内容をもらってみると、何かたくさんな人ができておるので、こういうことではどうも運営が複雑になっていかぬ、いわゆる学問的な運営が複雑になっていかぬ、もう少し簡素化すべきであるという意見なんです。したがって、簡素化したものは法律に載せなさい、労働省あたりも、参与というものをちゃんと今度法律に載せてきておるのですから。そういう意見なんですよ。だから誤解のないように申し上げますが、この予算から運営にまで、その評議員学者あるいは参与というものを関与させる意味ではない。むしろ学問的な意見を聞く諮問的な機関にしなさい。そうすると、顧問なんか要らないものになる。学者を集めるためにいろいろ名前をつけなければならぬというほど、日本学者はまだワッペン・ブーム——子供の中にワッペンがはやっておりますが、勲章ブームに毒されておりませんよ。あまり学者をばかにしないでくださいよということを、同時に私は言いたいところなんです。だからこれはむしろ学者を冒涜することになる。お気の毒です。これは意見が違うかもしれないが、われわれも研究して、これはちょっと修正を要するんじゃないかという感じがするのです。やはり諮問機関を置かなければいかぬです。独立性を保たせるという形を強くするためには、そういうことが必要なんです。どうですか。
  62. 梅本純正

    梅本政府委員 ただいまの先生の御意見よくわれわれのほうもわかりましたが、ただ研究所につきましては、当初に申し上げましたように、従来の個別的な分野の、たとえば経済学なら経済学学者のグループにいろいろ研究をお願いするというふうな観点から一応運営として考えておりますのは、経済財政社会、統計、法制、そういういろいろの専門学者のおのおの専門の立場からの御議論をぶっつけ合っていただいて、総合的な研究をやっていただくということが一つのねらいになっておりまして、運営の点は所長理事でやっていただいて、あとのほうはさっきおっしゃいましたワッペンになりますか、レッテルになりますかなんですが、やはり法制的に諮問機関的なものあるいは監事的なものを設けることは、かえって複雑になるのじゃないか。と申しますのは、みな学者の集まりでございますので、たとえば非常に具体的に申しますと、諮問機関的な委員社会医学と心理学と社会福祉の専門家、そういうふうな形の学者が入られる。そうしますと、今度はそれが諮問機関的になりまして、研究の場合に政治学と法制専門の人が研究員だということで、おのおの専門の立場の学者の集まりにつきまして、運営につきましては、できるだけ所長理事の運営でおまかせをして、それについてまた諮問的な機関についてどういう専門学者を入れるかというふうな形になりまして、われわれのほうとしてはかえって複雑になってあまり意味がないのじゃないか、率直に申し上げましたけれども、そういうふうな感じがいたします。ただしこの種類の研究所につきまして本年度が発足の年でありまして、前に申し上げましたように不十分な点が十分がございます。予算的に見ましても、そういうことでございますので、われわれのほうも今後の問題としては十分検討させていただきたいと思いますが、スタートの点につきましては、一応この程度の組織でスタートをさせていただいたらどうかというふうな感じでございます。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 いままでの厚生省の行政は、あとでも触れますけれども、いたずらに経済財政の問題ばかりが多くなって、心理学とか医学とかいうような技術系統が軽視されておるところに厚生行政の非科学性があらわれてきておるわけです。だからしたがって、参与会というものを、いまのように複雑になるんじゃなくて、心理学者も医学者も出てきて、そして財政学者なり経済学者の意見も聞く、こういうこと。何も自分が知識がなかったら、黙って聞けばいいのです。たとえば社会保障国民経済に及ぼす影響というような一つテーマを持ってきて論議をする場合に、一体どういう方向で貯蓄の問題なりあるいは財政投資の問題をとらえるかという場合に、経済学者財政学者だけのものの見方ではうまくいかぬ場合があるわけで、天下に有名な有澤さんが、有澤調査団が、石炭のことはおれにまかせておけといって出ていったけれども、どれ一つとして調査団の報告は合っておるものはなかった、こういう場合がある。だからしたがって、やはりしろうとも聞かしておいていいのですよ。目的は、また参与は同じなんですから、社会保障を学問的に研究しようという情熱については同じだから、知らないことなら発言せずに黙って参与会に来てすわっておればいい。すわっておるだけで、財政経済専門家の意見を聞けば、それだけ心理学者は偉くなるのですからね。目的は同じなんです。富士山に登ろうという目的は同じなんです。富士山に登るという場合に、ただ裏のほうから登るか、表のほうから登るかという違いがあるだけで、同じなんですから。そういう点ではあまりあなた方がこだわるから、厚生行政がいつも間違って、出た答申がものの役に立たぬことになるのですよ。だからもう少し気持ちを大きく持って、みんなの意見は十分フランクに聞きましょう。自分たちの出したものが金科玉条で一歩も修正は許さぬという態度だからいけないのですよ。これはメンツも何もないから、やはりやったものはよければよいのであって、それを聞いていくという態度をとらなければならぬ。これは研究所です。ですからこれは参与制度——評議員とかなんとかをやめて、ぜひ一つにしてもらいたいと思うのです。これは法律にないことが予算に出てきたから知ったのですが、予算もこんな複雑にする必要はない。これは大蔵省で文句を言えば大蔵省に出てもらって、いまからわれわれ大蔵省を説得します。こんなに顧問から理事から監事から評議員から専門員から研究員までつくることは反対。簡素化して、もう顧問は要らぬ。参与あるいは評議員一本にしてもらって、あとは常勤研究員非常勤研究員、そうして大学の偉い先生も評議員か参与になってもらう。それで三人なんというけちなことはいけない、こういう意見です。これはわれわれもひとつ党に帰ってあれします。  次は十七条の二項です。「研究所は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、厚生大臣の認可を受けなければならない。」ということになっておるわけです。研究所が第一条の目的を達成するために必要な業務をやろうとする場合に、これは研究所ですから、学問的基礎研究も業務になるわけです。一々厚生大臣の許可を受けなければならぬというばかなことを——学問の研究にこういうことを入れるということがもうそもそもけしからぬことなんです。すでに社会保障制度審議会  の答申の中にもあったように、あるいはあなた方もここで再三にわたって説明していたように、この研究機関の独立性と権威を高めるということは再三にわたって説明したわけだ。ところが、条文の中には大臣の認可を受けなければならぬという。これは研究の自由を阻害しているじゃありませんか。
  64. 伊部英男

    ○伊部説明員 十七条の第二項で掲げておりますのは、前項四号の業務でございます。第一項四号の業務は、社会保障に関する基礎的総合的な調査研究、情報及び資料の収集、業務にかかわる成果を普及するという本来的な業務でございます。一、二、三号の本来の目的を達成するために付随して行なう仕事、たとえばいろいろな研修会を行なうというようなことがあり得るわけでございますが、そういう場合に、その四号の業務が非常に大きくなり過ぎて一、二、三号の本来の業務との関係が不均衡になってはいけないという趣旨で第二項が設けてあると考えるわけであります。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 研修会をやろうと何をやろうと、これは第一条の目的を達成するためにやるのですから、それを今度一々これは基礎的な研究か、これは総合的研究か、これはそうでないのかというような区別というのは、学問的には簡単にはつかないのです。それは予算のときにおきめになればいいのであって、それを、予算のきまったあとにやろうとする場合に、一々厚生大臣の認可を受けなければならぬ、こういう研究所にするならば特殊法人はやめたほうがいいのです、これを私は言うわけですよ。医療協議会だって、この前小山さんにだいぶ文句を言ったけれども医療協議会をつくって、公正な機関である公益委員は国会の承認まで取るようにしたのに、みんなどこの資料を使うかというと厚生大臣の資料を使ってやったのだ、ほかにはないのだというような権威のないことをしては困ります。ここでも同じですよ。独立の機関でやります、だから特殊法人にしておるのです、こう言っておるくせに、第一条の目的を達成するために必要な業務でさえも一々大臣の許可を受けなければならぬというようなことはないのです。こういう点は、どうもわれわれ議員が勉強しないだろうと思ってこういうことをしているのだろうと思うのだけれども、そうはいかぬですよ。天網恢々疎にして漏らさずというやつです。だからこれは削除すべきだ。そんなものまで一々厚生大臣の許可を受けなければならぬということはない。予算のときにやればいいのであって、こんなことをしておると必ずこれはいろいろなことにいちゃもんをつける。だからこういうところはもう少し信用しなければならぬ。あなたの特殊法人なんですよ。あとにはまだ立ち入り検査なんというけしからぬことを書いておる。それほど信用のできないものなら、これは初めからやらぬほうがいい。顧問とか評議員とかいう名前はくれているけれども、うしろに大きなひもがついているのじゃ困るわけです。だから学者は来ないのです。これはもう全くわれわれは納得がいかない。こういう研究所をつくっておやりになるというならば、そうこまかいところまで厚生大臣が一々認可をしなければだめだという処置をやる必要はないのじゃないかという感じがするのです。これも一つの問題です。  それから十八条です。「研究所は、委託に基づいて前条第一項各号に掲げる業務を行なうことができる。この場合においては、あらかじめ厚生大臣の認可を受けなければならない。」こうなっておるわけです。この「委託に基づいて」というのはどういうことですか。これはあるいは厚生大臣の認可が要るかなという感じもしているのですが……。
  66. 伊部英男

    ○伊部説明員 委託に基づきますものとして、たとえば社会保障関係のいろいろな団体等があるわけでございます。そういう団体等から委託を受けるというようなことがあり得るということを考えた次第でございます。その場合におきましても、その研究は基礎的かつ総合的な調査研究であることは当然でございます。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に大臣が許可をしないというのはどういう場合ですか。許可をしない基準について伺いたい。
  68. 梅本純正

    梅本政府委員 研究所には、本来の事業計画に基づいてその年間にやります調査、研究というのがございますが、予算その他の関係で当該年度の事業計画に含まれていない業務で、しかも本研究所研究能力に余力があるというふうなことでありましたならば、委託を受けておやりになることはいいと思いますけれども、受託ばかりが非常に大きなウエートになって、それが主たるものになってしまっては困るということがありました場合には、厚生大臣が認可を与えないということもあり得ると思います。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、厚生省の委託を受ける場合はどうなるのですか。
  70. 梅本純正

    梅本政府委員 受託先の機関は先ほど申し上げましたあらゆる団体が予想されますし、たとえば社会保険庁、そういうふうなところの受託も受け入れていいと思いますが、そういう場合にもやはり厚生大臣の認可が必要であると思います。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、これはあとにも出てきますが、当然利益を生ずることがあるのですね。委託をするときには無料じゃないわけです。おそらく相当金を出すと思うのです。そうしますと、ひとつ私のほうから研究員もつけましょう、ぜひともこれをやってください、こういう場合だってあると思うのですよ。研究員もつけるし、金も出しましょうという場合だってあるはずです。いまあなたのほうから、余裕があるときはいいだろうという御説明があったのですが、これは研究所になるのですからね。この研究所社会保障研究所と銘打っておるので、他のことはそうやらぬと私は思うのですよ。たとえば、医務局はこういうことを監督しているかどうか。労災病院と銘打って労災保険のお金で労災病院をつくった、ところがその病院は労災患者は全患者の四割そこらしか入ってない、あと六割は労災でない患者が入っておる、そういう場合だってある。これは労働大臣どうしておるかというとどうもしておらぬ、医務局は監督しておるかというと監督しておらぬ。これが実態でしょう。厳重に監督しなければならぬところがしてないのです。学問的な問題をやろうという場合に、これだけを締め上げていくということは非常に問題があると思う。こういうところは、重箱のすみをほじくるようなぐあいに一々厚生大臣の許可を受けなければならぬ、認可を受けなければならぬという形を研究所にやることがいいのかどうかということです。こういうところで委託を受けるということは専門的なことしか受けないのです。そのことは同時に非常に研究に役立つということだと思うのです。私はこの条項は不必要だとは申しません。必要とは思いますけれども、しかしこういうことであまり研究所を締めつけないようにする必要があるということを一応言っておきたい。  それから、二十二条をごらんになると、「研究所は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。」こうなっておる。ここに経営ということばが出てきておるわけですね。条文に経営ということばが出てきたからには、これは商売を相当やるということを考えなければならぬ。そうしますと、前の十八条の委託というものが相当あると考えなければならぬことになる。それは何も民間から委託するばかりではなくて、厚生省自身が相当委託する場合があると思う。さいぜんあなたもいみじくも指摘されたように、保険庁あるいは保険局でもあると思う。この利益ということをあなた方は一体——ことしの予算には別に何も出ておらぬですが、どういうぐあいに見ておりますか。
  72. 梅本純正

    梅本政府委員 この法文の経営上の利益と申しますのは、いわゆる俗に申します商売上のもうけということでは絶対ございません。これは研究所の経理が国の一般会計の場合と異なりまして、こういう特殊法人という制度を創設いたしますについては、いわゆる企業の会計の原則で損益計算を行なうということのたてまえを大体全部とっております。したがいまして経営上の利益といいますのは、損益計算上総益金から総損金を差し引いた差額、こういう意味でありまして、これはいわゆる損益計算上の用語と申し上げたらわかりやすいかと思いますが、そういう種類のものでございます。したがいまして、利益のあった場合は繰り越し欠損金を埋める、残金は積み立て金として整理する、利益を国庫に納付しないでよろしいというたてまえになっておるわけでございます。  それから立ちましたついででございますけれども、先ほどの十七条の四号の業務の認可、あるいは先ほどの委託の認可ということで、重箱のすみをつつくようなということでございますけれども、滝井先生よく御承知のように、民法法人と異なりまして、特殊法人を創設する問題につきましては、従来の法制的な前例によりまして、非常にこまかい立法の担保のもとに新しく法人格を創設するということと、また一方、国の補助金を相当多額につぎ込むということにつきましても、一面特殊法人としての法制的な担保ということもうらはらになっておりますので、その辺の呼吸は十分御承知かと思いますので、この際に申し上げておきたいと思います。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 総益金から総損金を差し引いた差額、これを積み立て金にする、それは国庫に入れなくてもよいというのだが、その総益金の中には、そこに経営上利益を生じたというときには、国の補助金から必要な経費を差し引いたというだけの単純なものではないと思うのです。たとえば委託を受ければ委託料が入ってくると思うのです。そうすると、おそらく定款か何かで、委託の手数料といいますか、委託料金、これをやっぱりはっきりしなければならぬと思います。一件について、どういう問題については幾らもらうのですということをはっきりしなければならぬのじゃないか。というのは、あなた方が厚生科学の研究をお頼みになる場合に、研究費を出すときは、高いのは二、三十万円から百万くらいお出しになるわけです。それと同じように、個々に委託研究を頼むところは、保険庁であろうと、あるいは財界からであろうと、どこか研究機関からであろうと、研究団体からであろうと、民間の団体からであろうと、何ぼか金は来るわけです。したがって、一般会計からの補助金のほかに委託料金が入ってくるし、それからここに書いてあるように、情報及び資料の収集をやるということは、同時に自分のところの資料もよそに出すことになるので、したがってそれは出版の経費が要るが、同時に出版の利益が出てくるわけです。これは出版とは書いておらぬけれども、情報なり資料を集めるならば、自分のところの資料も向こうにやらなければならぬことは明らかだから、そこに現金の授受が伴う。そうすると、一種広義の出版になる。したがって出版の収入が入ってくる、そうでしょう。そうすると、それらのものが経営上の利益として入ってくる。あるいはこれを貸借対照表的に見れば、補助金も一つの利益として入ってくるかもしらぬ。計上し得るものから、人件費やら事務費、その他その経費を全部差し引いて、残りが積み立て金として残ってくる、そうでしょう。そうしますと、そういう場合に、これは出版をするということになるので、十七条の三に「前各号に掲げる業務に係る成果を普及すること。」ということで出版等も入ることになるのか。それとも出版は、一々本を出すたびごとにあるいは資料をつくって配付するごとに大臣の許可を得なければならぬことになるのかという疑問が出てくるわけです。
  74. 伊部英男

    ○伊部説明員 研究成果を出版いたしますのは三号にあります。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三号で出版ができるということになれば、出版の利益が出てくる。経営上の利益を生ずるということは、相当範囲の広いものになってくるわけです。そういう出版もする場合には、大臣の許可は要らないわけですね。しかし委託を受けるという場合には大臣の許可が要る。しかしそれは手がすいておる場合はよろしい。その委託が社会保障に関する基礎的、総合的な研究のものであるというときにだっていいことになる。しかもそれに金がついてくるということになって、研究の成果が非常にあがってくるということになれば、そういうところまで一々大臣の許可を受けなければならぬという締めつけにあうと、研究機関というものはなかなか苦しくなるわけです。そういう運営のしかたについて、相当配慮をしておいてもらわなければならぬという問題がそういうところから生じてくる。学問というものは御存じのとおり、あまりしゃくし定木にいくとほんとうの成果はあがらぬわけです。学者というものは、みずからの所信を貫くという信念の人が多い。我説を固持して譲らないから、あまり役人の許可をあっちこっちもらわなければならぬということなら、あんな研究所におったってしようがない。教室におってゆっくり研究したほうがいいということになる。そういう気持ちを持っておる人が相当ある。優秀であればあるほどそういう気持ちを持っておるのです。だからあなた方も、なかなか学者諸先生方は思うようにならぬでしょう。そうすると、あなた方はそういうような利益をどのくらいあると見ておりますか。
  76. 梅本純正

    梅本政府委員 まだその辺まで予測しておりませんが、当分の間はほとんどないのじゃないかと考えておりますし、われわれの希望といたしましては、研究題目が山積いたしておりますので、やはり当分は基礎的、総合的な研究の最も根本的なものに専念をしていただきたいというふうに考えております。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、地方自治体でも借り入れ金の限度というのを設けておるわけですね。二十三条に借り入れ金があるわけです。厚生大臣の認可を受けて借り入れ金をやる。これも当然だと思う。その場合に一時借り入れ金を当該年度内に償還しなければならないことになっておるわけです。そうしますと、この借り入れ金というものは、予算の範囲内でしかできないことになる。この前国立予防衛生研究所の部長さんの意見をいろいろ聞いてみたら、さあ、ポリオ等が起こって、野外実験をやりなさいと言われても、そんな金はないわけです。しかしやらなければならぬ。やるからには一時借り入れ金へいかざるを得ない。学問はそれを要求しておるけれども厚生省や大蔵省の関係で、予算がどうにもならぬ、こういうことだってあるわけでしょう。そうすると、当該年度でどうしても予算のやりくりがつかない場合には、厚生省は補助金でも出してやるということなんでしょう。当該年度内に払うのですから。それとも予算の範囲内でしか一時借り入れ金は許さぬということになるのか。
  78. 伊部英男

    ○伊部説明員 ここで考えております一時借り入れ金というのは、先生のおっしゃるとおり、一時のつなぎ資金でございます。予算の交付期等の関係におきまして、一時資金に不足するという場合のつなぎ資金でありまして、したがって当該事業年度内に償還をするということでございます。この研究所は、自然科学系統の研究所と違いまして、主として本とペンと紙が中心になるわけでございますので、お話のようなことはこの研究所に関する限りはあまりないように思いますけれども、もしそういう問題が緊急に生ずれば、それは予備費なり補正予算なりで、当該年度内にそういうものを追加しなくてならぬということになると思います。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 したがってそういう緊急な場合には、予備費なり補正予算で追加する、これひとつ忘れぬように覚えておいてくださいよ。そういうことになったときに、与党の諸君が、いや、それはだめだと必ず言い始めるから、与党の諸君もひとつよくいまのことばを聞いておいてください。必ず出るんだ。ぼくはいまから予見をしておくが必ず出る。そのときは、ひとつ政府は、昭和三十九年の今日この日、伊部説明員が、二十三条の一時借り入れ金については、予備費あるいは補正予算を組んで年度内に償還のできる態勢をつくります、こういうことなんだから……。  次は、二十八条の立ち入り検査ですね。こういう研究所に、やはりこういう規定が必要なのかどうかということなんですがね。「厚生大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して報告を求め、又はその職員研究所の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。」という、これは他のこういうのに全部同じようにあるんですか。
  80. 梅本純正

    梅本政府委員 私のほうで調べましたところ、国民生活研究所、アジア経済研究所、理化学研究所日本原子力研究所、農業機械化研究所、こういうほかの特殊法人にも全部この規定がございます。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省の中の人口問題研究所やなんかにありますが、よその省のことはとにかくとして。
  82. 梅本純正

    梅本政府委員 人口問題研究所その他の試験研究機関は、あれは厚生省の付属機関でございます。したがいまして、これは特殊法人でございますので、こういう規定がございますが、あれは付属機関でございますから、その必要はございません。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも、付属機関だからなくて、特殊法人だからと言うけれども、大事なところはみんな大臣の許可を必要とすることになっておるわけですね。まあこういう規定は、そう発動しないのかもしれませんから……。  それから、税金のことです。法人税と地方税の関係で、この「社会保障研究所法案関係参考資料」の二八ページをごらんいただくと、二八ページの「法人税(公益法人等の非収益事業所得の非課税)」の第五条ですね、「左に掲げる法人の所得で収益事業から生じた所得以外の所得に対しては、各事業年度所得に対する法人税は、これを課さない。」こうなっておるわけです。そこで、この委託を受けて、委託の手数料をもらう、委託料をもらう、あるいは出版をして、出版の利益をあげるということになると、これは収益事業になるわけですね。したがって、これは法人税と地方税がかかってくることになるわけです。これは間違いないんでしょうね。かかってくるんでしょうね。
  84. 伊部英男

    ○伊部説明員 委託費にいたしましても、別にそれで研究所がもうけるというわけではございませんので、いわば実費を徴収するということでございますし、それから、出版にいたしましても、研究所でたとえばリポート、あるいは何年報告というようなものを出しましても、それは主として、たとえば社会保障制度審議会でございますとか、そういう関係のものに配付をすることが大部分であろうと思いますので、ここでいう収益事業には該当しないというように考えるものでございます。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、附則の十条とか十一条とか十三条というような、こういう税金関係のものは要らぬことになるわけです。ころばぬ先のつえだということならそういうことかもしれぬけれども、しかしこういう研究所ができて、そして相当の成果があれば、ぜひその成果を分けてもらいたいというところにあなた方が全部無料でやるかというと、これはなかなか無料ではやらぬわけですよ。政府関係の出版物というのはどんどん売っておるでしょう。ちゃんと特定の店ができて売っておるわけです。それと同じで、やはりこういう条文を入れるからには、収益があると見なければならぬし、それから、さいぜん私が御指摘申し上げたように、二十二条には、「利益及び損失の処理」ということがあるんだから、利益を予想せずにこういう条文は、いまのような御答弁なら要らぬことになるわけです。ここらあたりは、研究所だからといって、何も私は商売をして悪いとは言わぬわけです。商売をするからこそ、大臣の許可を委託のときは受けなければならぬということ、あんまり商売ばかりをやって本来の研究をやらなければ困るというさいぜんの御答弁があって、こういうことをやった。ところが、そんなことは要らぬとなれば、こんな十八条なんか要らぬわけです。だから、私は、つじつまが合うようにちゃんと条文はできておるのですから、これは本来の目的に沿うならば、利益を上げてもいいのじゃないかということなんです。したがって、税金を課すというなら払いますよということでいいのじゃないかと思う。こういうことは割り切っておいたほうがいいのです。それとも、もう税金を課さぬというならば、こんな法人税なんか全部のけてしまって、これは課さないのだというたてまえをとっておいたほうがいいのです。ところが、引用しておる条文は、収益事業から生じた所得以外の所得に対しては、これを課さないのであって、収益事業は課すというなら、収益事業に課すということを予想しているのじゃないか。そうすると、収益事業は何かというと、結局、委託を受ける、出版をするということから出てくるのです、いまのこの機関で、われわれのこの条文から見て考え得ることはですね。
  86. 梅本純正

    梅本政府委員 また少しぼやけてまいりますけれども、税金の関係は、やはり税金を徴収する官庁の個々のケースの判断ということが、原則的には中心であります。おっしゃいましたわれわれのほうの考え方としては、委託の関係は、収益事業ということには入らないのではないかというふうに解釈をするわけであります。ただ、出版事業につきましては、思いつきの例でございますけれども、実費で出版をしておるというときには問題はないと思いますが、国際会議なりあるいはオリンピックでいろいろな方が見えるというような場合に、英訳をして外国人に、これは実費で配る必要はないので、少し売ってやったらどうかというような議論が出てきて、それもよかろうということになれば、いわゆる先生のおっしゃるような収益ということも、非常に思いつきのケースで申しわけございませんが、そういう場合もあり得るというふうに考えられます。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、人口問題研究所等は、これは付属機関だから、そこがいろいろやったって、税金はおそらくかからぬでしょうね。そうしますと、すでにある、きのうも言いました、通産の委員会にかかってこのごろ衆議院を通過しましたアジア経済研究所、それから日本労働協会、これらのものはたくさんの出版物を出しているのです。特に日本労働協会なんか出版物を出しているのです。これは出版物を出すことが一つの大きな目的にあるのです。こういうものは一体税金がかかってますか。これは特殊法人です。特殊法人で税金を払っておるものがありますか。
  88. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま手元に資料がございませんので、調査いたしまして御連絡申し上げたいと思います。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 これは国税庁を呼んでもらってはっきりしておく必要がありますね。そうしないと、これがだんだん発展をして大いに研究成果をあげようということになったときに税金がどんどんかかってくるということになると悲鳴を上げることになるので、これはあとでちょっと国税庁長官を一ぺん呼んでいただきたいと思います。  大体条文はいまのところで私の問題としておった点は終わりました。なお答弁の未解決のところ、私の納得のいかないところは相当ありますが……。  次に、三十七年の八月に御存じのとおり「社会保障制度の総合調整に関する基本方針についての答申および社会保障制度推進に関する勧告」が出たわけです。そして大内兵衛先生を中心としたこの社会保障制度審議会は、社会保障の組織化の問題についていろいろ討議をした。ところがどうも日本では資料が足りなかった。そこで社会保障に関する有力な調査研究の機関をつくる必要があるという提唱が行なわれて、今度これができてきた、こういう経緯があるわけです。そうしますと、この研究所はこの社会保障制度審議会の答申の趣旨に沿ってできたものであろうと思うのですけれども、一体これは沿っておるですかね。
  90. 梅本純正

    梅本政府委員 われわれのほうは社会保障制度審議会の答申の御趣旨を受けて設立したつもりでおります。すでに、社会保障制度審議会におきまして本法案の御審議を願いましたときの審議会の御意見も「当審議会は、かねて社会保障研究所の設置を要望してきたが、本案はその趣旨にそうものとして了承する。」というふうに、審議会もそういうふうに了承していただいております。
  91. 滝井義高

    ○滝井委員 それはどうもちょっと——審議会はこういうことを書いておるが、何か誤解があるのじゃないか、というのは、審議会自身が書いておるのを見ると「これからの社会保障には技術面の配慮がとくに肝要である。所期の目的を達するためには、どんな方法が最も効果的か、理論と実際とをどう調和するか、これらの点について不断に工夫をおこたるべきではない。」ずっと書いてあって「まずもって有力な調査研究機関の設置を提唱する。この機関をして、社会保障のどのような方法がどのような階層に対して有効であり、どのような対象についてどのような組織で対処すべきかについて、専門的、実証的に検討させることが必要である。」と書いてある。きわめてこれは具体的なんです。いわゆる抽象的な学問的な基礎的な研究じゃないわけです。いわゆる社会保障の技術面の配慮なんですね。だから、私は社会保障制度審議会は自分で書いておって少し間違っておりはせぬかという感じがするのです。できたものとは全然ニュアンスが違う。できたものは基礎的、学問的なものをおやりになる、こっちは技術的な側面で具体的に一体どういう社会保障制度をどういう階層に適合していくか、こういうことをやってもらうのだ、こういうことなんです。いわゆる学問的な基礎的な研究の上に技術的な側面も加味して具体的にこれを現在の日本の諸階層に当てはめていこうという研究機関をつくりなさい、こういうことなんでしょう。私は社会保障制度審議会は、うちの八木先生もおられるけれども、自分で書いて自分で納得して、ちょっとおかしいなと思うのです。それであなたのほうもこれをうのみにしてこういうものをつくっておるけれども、あなたのほうも節穴じゃないかという感じがするのです。これはニュアンスが全然違うのです。これはお読みになると、まず「技術面の配慮がとくに肝要である。」と書いておる。
  92. 梅本純正

    梅本政府委員 その点は社会保障制度審議会の御意見にしましてもこちらの勧告のほうにしても非常に文章が短いので、十分その点意を尽くしていないと思いますけれども、本案の審議の過程におきましても、先ほど八木先生が申されましたように、本研究所は基礎的、学問的な研究をやる、それを制度として政策として取り上げる場合には社会保障制度審議会において審議もし、それを法文化しあるいは行政として執行するという場合には厚生省としてやる、また労働省は労働省の関係でやるということで、決してこれは社会保障制度審議会がこの研究所によって要らなくなる、そういうことでもございませんので、社会保障制度審議会が政策なり制度を審議される場合、基礎的、学問的の研究をやるようにというふうな御趣旨であったと考えております。
  93. 滝井義高

    ○滝井委員 私は社会保障制度審議会は要らぬと言っておるのじゃないのです。第六章の「社会保障の組織化」ということの中に、有力な調査研究機関の設置を提唱しておる。ところがその提唱した趣旨は「この機関をして、社会保障のどのような方法がどのような階層に対して有効であり、どのような対象についてどのような組織で対処すべきかについて、専門的、実証的に検討させることが必要である。」ということなんです。これはきわめて具体的なんです。抽象的、学問的ではないのです。技術的な側面なんです。だから、これはニュアンスが違うでしょう。この文章は明らかに違うのです。これは私の頭が悪いせいかもしれませんけれども、私が読んで受けるニュアンスと今度あなた方の出しておるこの法文から出てくるニュアンスとは全然違う、いままで説明したものとは。それでいまあなたの御指摘のように、社会保障制度審議会は偉い人ばかり集まっておるのだけれども、どうもおかしなことになっている。これは趣旨に沿って了承すると書いてあるけれども、幾分は沿っているが、自分たちの言うたことにはちっとも沿っていない。この文章のニュアンスとは全然違うということは明らかだ。これはあなた方に言ってもしようがないけれども社会保障制度審議会がそのように了承しておるようであるけれども、それは悪いことばでいえばあなた方の目も節穴だということになる。これは読んでみると違うでしょう。あなたは同じと言えるのですか。この文章はぴたっと書いておるでしょう。社会保障のどのような方法がどのような階層に対して有効であるかということは——社会保障制度審議会は階層を三つにお分けになっておる。社会保障というものは普通の階層と中ぐらいの階層、それから貧困階層との間にそれぞれ当てはめる政策を今度のこの勧告は具体的にしておるのです。ところがそれをやる場合に資料がなかったから、具体的な資料をつくる調査機関をつくりなさいということだと思うのです。それで出たものをあなた方が具体的にそれをさらに精密な政策として制度審議会におかけになる、こういうことだと思う。これはあなた方の目も節穴であったという証拠です。  次は、きのう以来留保しておいた医療費の基本問題研究員制度との関係です。まずお尋ねをいたしたいのは、今度の研究機関もそれぞれ研究員が独立して研究するらしいのですが、日本社会保障の中で医療費の問題というのは非常に重要な問題になってきておるわけです。したがってこれが国民所得との関係というものが重要であるように、今度の社会保障研究所も、先日以来の御説明によると、各国の社会保障制度の現状と動向とか、わが国社会保障制度の当面する問題点、特に基礎的な研究所ですね、それから社会保障国民経済への影響、それから社会保障所得の格差、それから人口構造の変化に伴う社会保障というように、非常に広範な研究をおやりになる。そうすると、医療費の基本問題研究員制度においてもこれと非常に関連のあることをおやりになるわけです。いままでわれわれが小山さんからお聞きしたところによると、これはそれぞれ個々の研究員に四つの問題のテーマ研究してもらうのです。だから別のことばで言えば、社会保障研究所研究員を委嘱したと同じような形になるわけですね。医師の適正な働きぐあいと医療費についての考え方、まず第一にやるのはこれですね。それから医学の技術進歩に医療費をどのように織り込んでいくか、経済成長とのからみ合い、それから国民所得国民医療費をどんな比例関係に置くか、国民所得の中で総医療費というのは何%くらい占めたらいいのか、どの程度負担の能力があるのかというような点が検討されるのだと思いますが、こういう四つの項目に重点を置いてやるのだという説明を、幾分ことばは違うけれども、そういう意味の御説明があったわけです。この医療費の基本問題研究員制度というものは、いまどの程度の進捗状態になっておるのか。そして同時に、今度できる社会保障研究所との関係は、同じようなことを社会保障研究所も今度はやるわけですから、ここもさいぜんから御説明になったように、経済学者財政学者が中心になるわけです。医療費の基本問題研究員制度のほうも主として財政経済学者が中心になってきているわけです。この関係は一体どうなっておるのかということと、もう一つ厚生科学研究費の中で同じような研究がことしやはり行なわれる。昨年も行なわれているのです。たとえばことしは国民保険下における自由診療の動向に関する件、保険医療における入院の病床、寝具及び給食の適合性等に関する研究社会保険制度に関する障害等級区分の基礎理論に関する研究、こういう具体的な問題を研究しようとすれば、やはり世界各国の動向なり国民所得国民医療負担能力という問題との関連が出てくるわけです。いままでは厚生科学研究費と小山さんのほうの医療費の基本問題の研究、二つでよかったが、今度はその中に社会保障研究所が入ってくるのです。小山さんのほうと社会保障研究所との調整ですね。
  94. 小山進次郎

    ○小山政府委員 まず最初にお尋ねの医療費基本問題研究員研究の進行状況を簡単に申し上げます。この研究員による研究は昨年の八月上旬から開始をいたしております。これは御承知のとおりいろいろの事情からいたしまして実際の研究員がきまりましたのが八月の上旬でございましたので、研究が始まりましたのが去年の八月上旬からでございます。それで研究を始めるにあたりまして、研究員人々が集まって研究の態度、あり方等について基本的な相談をしたわけでありますが、その際に特に研究員人々が明らかにいたしました点は、自分たちは厚生大臣から個々に研究を委託されている。このたてまえはあくまではっきりしていこう。しかしながらお互いの研究というものには相互の関連があるから、お互いの研究成果というものを効果あらしめるためには、前提となるような事項の認識については、できるならば共通の認識に立って研究を進めていくという努力をしようじゃないか。その上で、研究結果について所見を異にするということが出てくるならば、これはその点はっきり研究報告を出そうじゃないか、これが一つでございます。  それからもう一つは、特に研究員の一部の人からこの点を明らかにしてほしいということで明らかにされたのでありますが、自分たちの研究というのは当面の中央社会保険医療協議会の審議というものと直接の関係は持たないのだ、この点をはっきりしていこうじゃないか、こういうようなことで研究に取りかかったのであります。その場合に、大まかな分け方といたしまして、研究は八月から開始して四十年の三月までに報告を提出するというこの予定というものは守っていこう。そういうふうにするためには、全体の期間を大きく前半と後半に分けよう。前半には、おもにおのおのが研究をするにあたって持たなければならぬ共通の基本的な事項についての認識をなるべく一致させるということに主眼を置いて、いろいろの方面から話を聞きながら、同時に自分たちも自由討議をしながら共通の認識を持つように努力をしていこう。それから後半には、そういった整備された共通の認識に立って各人の個別研究を進めていこう。各人の個別研究を進めていく場合に、厚生省の省令で明らかにされている事項をもう一回自分たちが学問的な見地に立って再構成してみて、おのおのの学問的体系とのつながりからいって最も効果的なようなぐあいに再構成をして、そしてそれぞれ研究の分担というものをきめて、なるべく相互に関連があるようにしていこう、こういう打ち合わせをしたのであります。それでいま申し上げました前半の研究については、昨年の八月からちょうどことしの二月一ぱいまで、たぶん全部の人々が集まっていろいろ話を聞いたり討議をしたりしたのは十三、四回あったと思いますが、そのほかに二、三の研究員が集まってやるというような会合も四、五回入ったようでありますし、またその間に若干の視察というようなものも入ったようでございますが、大体それで一通り共通の認識というものを整理をした。その概略を申し上げますと、まず医療というものの長期間にわたる需給の趨勢というものを明らかにして、将来日本医療の需要と供給とがどういうふうに動いていくかということについて研究をしよう、これが一つでございます。この場合に長くといっていましても、資料の関係がございまして、大体研究員人々が詰めました範囲では、日本のこの種の資料で信頼できるものはやはり戦後のものに限られるし、しかも戦後のものでも、昭和二十二、三年のものは信頼度は必ずしも十分でないし、あととの比較もできぬ、したがってまず大体信頼度の置ける、利用価値のある三十年度くらいのものから始めて、将来のものとしては少なくとも昭和四十五年くらいまでの趨勢というものを判断してみよう、ごてごて申し上げましたがそれが一つでございます。  それから第二の認識は、こういった需給の動向とでも申しますか、そういうものを頭の中に置きながら、そういう動向のもとで、なるべく完全競争に近い状態において、病院、診療所というものがそれぞれ十分な機能を果たしていき、また医療担当者がそれぞれの役割りを十分に果たしていけるというために必要な医療の技術的な組織というものがどうなるかということと、それからそういったものを可能にする医療の経営というものがどういうものであるかということを明らかにしていこう、そうしてこの場合においては特に医療の経営に伴うフェアリターンの問題あるいは医療担当者の適正な所得とか社会的地位といったような問題を明らかにしていくことに重点を置いていこう。  それから第三点は、元来ほかであるならば自由であるところの分野に、いろいろの国の権力に基づく法制というものが加わってってきておるのは、それ相応の理由があるということは明らかであるけれども、その理由というのは、一口にいうと公共性という観念がもとになっているというふうに理解すべきだと思うので、医療関連して考えられる公共性というものはどういうものであるかということを明らかにしよう、これが第三点でございます。  それから第四点としては、いまのような医療に関する供給の条件というようなものを満足させる医療の需要の組織というものはどういうものになるべきであろうか、これを現状を考慮しながらひとつ検討してみよう。  大体かいつまんで申し上げますと、この四つにこれらの方々の共通の認識を整理いたしまして、そしてこれをお互いが分担しながら研究を進めていって、しかるべき時期にもう一回相互の研究の間の調整をはかっていくことにしようということで、一番最初に申し上げました医療の長期趨勢の問題は東大の嘉治助教授、それから二番目の医療に関する技術的組織の適正化という問題については、慶応大学の外山教授、それから経営の適正化という問題は、上智大学の高宮教授と横浜国立大学の伊藤助教授、それから三番目の公共性の観念については、一橋大学の高橋教授と慶応大学の大熊教授、これに必要に応じてほかの人も議論に参加する、それから四番目の需要の組織の適正化の問題については、一橋大学の高橋教授と慶応大学の外山教授が担当する、こんな分担で進めようじゃないかということで、いまちょうど各人の個別研究に入り、ときに集まりながら、自分はどういう方針で自分の個別研究を進めていこうとしているかという問題についての方針みたいなものを、ほかの人から若干批判を聞きながら今後の研究を進めていく、こういう段階に入っているようであります。いまのところはこういう研究を進めていって、大体ことしの秋から年内ぐらいに各人の構想をまとめ、相互の調整を終えて、来年の一月からそれぞれ自分の分担についての研究結果の報告の起草にかかって、おそくも三月中には提出をする、大体こんな進行状況でございます。  それから二番目の問題としての医療費基本問題研究員研究と、現在御審議をいただいております社会保障研究所法案による研究所研究関係でございますが、ただいま申し上げましたように、医療費基本問題研究員人々によって行なってもらっております研究は、適正な診療報酬の決定に資するという当面の政策目的にかなうための研究をしてもらう、その意味で個別的であり、多分に実用との関連というものがそこにはっきり出ておるわけであります。そういうような意味で、社会保障研究所において研究すべき事項に比べると、やや個別的で、応用的な傾向が強いものになっておる、こういう関係でございます。もし社会保障研究所ができましたならば医療費について私どもぜひやってもらいたいと思っておりますのは、私も正確に知らないで、ことばだけ言うので恐縮ですが、実は医療費のマネーフローというのをぜひやってもらいたいのであります。この研究日本では遺憾ながらどこでもやっておらないのでありまして、医療費の問題というとすぐ負担能力がどうとかこうとかという議論ばかりで、医療費というものが経済全体の循環の中で一体具体的にどういうふうに流れているかという基礎的なものが固まっておりませんために、いかにも学問的な扮装をこらしていわれている議論も、実はよく洗ってみると、肝心なところはかなり腰だめてやっている、こういう傾向があるわけでありまして、このために、どうも医療費の問題が、ほんとう意味で基礎のがちっとしたものになり得ない。そういう意味で、現在私どもが、研究所ができたらぜひ手をつけてもらいたいと思っているのはそういうことでございます。非常にむずかしい研究でございますが。それから厚生科学研究費で今年度やってもらおうと思っておりまするものとの関係は、先ほど私が、現にこれらの人々によって進められておりまする研究の概要を申し上げたことで明らかでありますように、いまのところ直接これらのものは含まれていないのでございます。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、医療費の基本問題研究員の成果というものは、四十年の三月までに結論を出すというけれども、これは学者も忙しいので、必ずしも出るとは限らぬわけです。しかも医療費の算定のルールをつくることになっているわけです。そうすると、いまのようなことではなかなか簡単にルールが出てこないわけです。臨時医療報酬調査会がああいう形になって、政治的に西村さんが——きょうはおられぬけれども、つくったわけでしょう。いまのようなことではルールは出てこないわけでしょう。そうすると、いつの日にルールが出るかわからぬので、ずっと研究していく、来年三月になってやめるわけじゃないでしょう。結論が出ても出なくても、来年三月にやめるのですか。
  96. 小山進次郎

    ○小山政府委員 医療費算定のルールということばにいろいろな意味を持たせて使われておりますので、私どもは、研究員制度を発足させます際に、この点は非常に注意をしたのでありますが、少なくともそういういままで言われておったルールというものを必ず研究員人々によってつくってもらおうという前提でこの制度はスタートしておりません。いまの医療報酬の問題の基礎になっているいろいろな問題のいわば区画整理というものをなし遂げてもらって、そうして医療費問題というのを秩序ある取り扱いで進められる基礎をつくってもらいたい、こういうことでございます。したがって、これらの人々によってなされます研究の結果が、いわゆる医療費算定のルールといわれるような形のものになるか、あるいは通常ルールといわれているものを考えていくための基礎的な考え方を整理するというものになるかという点は、今後の研究の結果を待たなくてはならぬと思います。  なお、これを将来とも続けるかどうかという問題につきましては、お願いするときに、いずれの方も非常に忙しくて、しかも長期間にわたってやることは非常に困難だというのを、ぜひということでお願いをしてやっておりまするので、少なくともお願いしている人たち関係においては、これは二年間で一応ケリをつけます、その上でもし出てまいりました結論にさらにいろいろな研究をつけ加える必要があるということでありまするならば、これは将来の問題ではありますけれども、しかも現在のこの制度に関する問題の担当者としての私だけの考えでございますが、一応これはこれにして、あらためてどういうふうにするかということを考えるべきではなかろうか、かように考えております。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、担当者としては来年三月までだ、それから先はそれから先で担当者として考えたい、こういう御発言があったのですが、実は高橋さんが主任ですね。一番ハウプトみたいになっている。その高橋さんの談話の中に、これは七月十八日ごろの談話ですが、研究成果は医療協議会にかける——医療協議会にかけるということがどういう独断から出てきたのか、私にはちょっとわからぬのです。それから医療費の適正化、医業の経営の二点にしぼって研究する、それから一年半で結論を出す、こういうことになっておるわけです。したがって、これは基礎的な、いまのように区画整理の研究であって、これが医療協議会にかけられる筋合いのものでもないし、医療協議会とは何の関係もないわけです。ところが本人たちはそう思い込んでいるのです。医療協議会にかけるという談話を発表している。これは健康保険組合から出ておる「健保ニュース」というのがありますね、あの中にちゃんと出ておるのです。だからそういう関係があるわけですね。  そこでいまのように、あなたの言われるような——これは官房長よく聞いておいてもらいたいのですよ。医療報酬の基礎的な研究をやり、医療費の算定の基礎的な考え方ということになると、これは社会保障の基礎的な研究をあなたのほうはおやりになってこういうものをつくったのです。だからこれをわざわざ残さずに、そのまま高橋さんなり、外山さんなり、大熊さんなり、嘉治さんなり、高宮さんなり、伊藤さんなり、七人のはずだからもう一人いるはずなんですが名前がわからぬ。こういう方々を研究員にお願いして、そうしてあなたのほうでひとつおやりになったらいいのです。それをわざわざ医療費の基本問題研究員として置いておくとなかなか問題になるのです。だから、ここでひとつゆっくりおやりになったらいい。これは何もあわてて出す必要はないのです。一年半とかなんとか——一年半でできなかったらまた考え直さなければならぬ、またもめるのですから、もうこの際こういう社会保障研究所というものができるのですから、ここでひとつゆっくり研究員になって研究してください、こういうことでいいと思う。そうしてこういう厚生科学研究費——これは昨日は三千七百万とか五百万とか言っておったけれども、あれは間違いだった。これは私も調べてみたら三千三百九十万円です。そこで三千三百九十万円の中に、もう医療費のことを出さずに、関係者にこれだけのお金を出すならこの金を研究所でもらって、ここで総合的にやっていくという態勢をとるほうがいいのですよ。そうしないと、われわれも資料を医療費の基本問題研究員のももらわなければならぬ、厚生科学研究所のももらわなければならぬ、それから今度は社会保障研究所のももらわなければならぬということでは困ると思うのですね、どうせ委託しておるのですから。だから高橋先生たちに、今度所管がえをしてここでやっていただきましょう、その成果は官房で握る、そうしてそれを各局に持っていく、こういう形にして、いま小山さんの御説明になったようなことならば、何もあわてふためく必要はないのですから、とりあえずこれは十月には設立の準備委員会ができるのでしょう。そのときになれば、これは吸収してもらって、そうして一月に発足するときには正式にそこの——どうせ厚生省研究員になっていただいておるのですから、非常勤研究員ですか、なってもらっておやりになっていいわけでしょう。そういうようにこういうものができれば、やはりなるべく一本に簡素化して統合してもらって、そうして研究の自由を確保していただく。さいぜん小山さんの御説明の趣旨というのは、この研究所の趣旨とちっとも変わらぬわけですよ。小山さんのほうでもこれは支障はないと思うのです。まさか厚生省の特殊法人である社会保障研究所になったからといって、おれはもう研究をやめるというそれほどけちな学者はいないと思う。そういう学者ならもう研究をやめてもらってけっこうじゃないですか、それほど感情的になるのなら。どうでしょう、それはできるでしょう。
  98. 小山進次郎

    ○小山政府委員 まず最初に、先生のお読み上げになったものでございますが、私それは間違いだと思います。明瞭に間違いでございます。中央社会保険医療協議会との関係を一番はっきりしたいという主張を持っておられる方が高橋教授なんでございまして、その当の高橋教授が……。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと待ってください。
  100. 田口長治郎

    ○田口委員長 暫時休憩いたします。    午後一時五十二分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕