○小山
政府委員 まず最初にお尋ねの
医療費基本問題
研究員の
研究の進行
状況を簡単に申し上げます。この
研究員による
研究は昨年の八月上旬から開始をいたしております。これは御
承知のとおりいろいろの事情からいたしまして実際の
研究員がきまりましたのが八月の上旬でございましたので、
研究が始まりましたのが去年の八月上旬からでございます。それで
研究を始めるにあたりまして、
研究員の
人々が集まって
研究の態度、あり方等について基本的な相談をしたわけでありますが、その際に特に
研究員の
人々が明らかにいたしました点は、自分たちは
厚生大臣から個々に
研究を委託されている。このたてまえはあくまではっきりしていこう。しかしながらお互いの
研究というものには相互の
関連があるから、お互いの
研究成果というものを効果あらしめるためには、前提となるような事項の認識については、できるならば共通の認識に立って
研究を進めていくという努力をしようじゃないか。その上で、
研究結果について
所見を異にするということが出てくるならば、これはその点はっきり
研究報告を出そうじゃないか、これが
一つでございます。
それからもう
一つは、特に
研究員の一部の人からこの点を明らかにしてほしいということで明らかにされたのでありますが、自分たちの
研究というのは当面の中央
社会保険医療協議会の審議というものと直接の
関係は持たないのだ、この点をはっきりしていこうじゃないか、こういうようなことで
研究に取りかかったのであります。その場合に、大まかな分け方といたしまして、
研究は八月から開始して四十年の三月までに報告を
提出するというこの予定というものは守っていこう。そういうふうにするためには、全体の期間を大きく前半と後半に分けよう。前半には、おもにおのおのが
研究をするにあたって持たなければならぬ共通の基本的な事項についての認識をなるべく一致させるということに主眼を置いて、いろいろの
方面から話を聞きながら、同時に自分たちも自由討議をしながら共通の認識を持つように努力をしていこう。それから後半には、そういった整備された共通の認識に立って各人の個別
研究を進めていこう。各人の個別
研究を進めていく場合に、
厚生省の省令で明らかにされている事項をもう一回自分たちが学問的な見地に立って再構成してみて、おのおのの学問的体系とのつながりからいって最も効果的なようなぐあいに再構成をして、そしてそれぞれ
研究の分担というものをきめて、なるべく相互に
関連があるようにしていこう、こういう打ち合わせをしたのであります。それでいま申し上げました前半の
研究については、昨年の八月からちょうどことしの二月一ぱいまで、たぶん全部の
人々が集まっていろいろ話を聞いたり討議をしたりしたのは十三、四回あったと思いますが、そのほかに二、三の
研究員が集まってやるというような会合も四、五回入ったようでありますし、またその間に若干の視察というようなものも入ったようでございますが、大体それで一通り共通の認識というものを整理をした。その概略を申し上げますと、まず
医療というものの長期間にわたる需給の趨勢というものを明らかにして、将来
日本の
医療の需要と供給とがどういうふうに動いていくかということについて
研究をしよう、これが
一つでございます。この場合に長くといっていましても、資料の
関係がございまして、大体
研究員の
人々が詰めました範囲では、
日本のこの種の資料で信頼できるものはやはり戦後のものに限られるし、しかも戦後のものでも、昭和二十二、三年のものは信頼度は必ずしも十分でないし、あととの比較もできぬ、したがってまず大体信頼度の置ける、利用価値のある三十
年度くらいのものから始めて、将来のものとしては少なくとも昭和四十五年くらいまでの趨勢というものを判断してみよう、ごてごて申し上げましたがそれが
一つでございます。
それから第二の認識は、こういった需給の
動向とでも申しますか、そういうものを頭の中に置きながら、そういう
動向のもとで、なるべく完全競争に近い
状態において、病院、
診療所というものがそれぞれ十分な機能を果たしていき、また
医療担当者がそれぞれの
役割りを十分に果たしていけるというために必要な
医療の技術的な組織というものがどうなるかということと、それからそういったものを可能にする
医療の経営というものがどういうものであるかということを明らかにしていこう、そうしてこの場合においては特に
医療の経営に伴うフェアリターンの問題あるいは
医療担当者の適正な
所得とか
社会的地位といったような問題を明らかにしていくことに
重点を置いていこう。
それから第三点は、元来ほかであるならば自由であるところの分野に、いろいろの国の権力に基づく法制というものが加わってってきておるのは、それ相応の理由があるということは明らかであるけれ
ども、その理由というのは、一口にいうと公共性という観念がもとになっているというふうに理解すべきだと思うので、
医療に
関連して
考えられる公共性というものはどういうものであるかということを明らかにしよう、これが第三点でございます。
それから第四点としては、いまのような
医療に関する供給の
条件というようなものを満足させる
医療の需要の組織というものはどういうものになるべきであろうか、これを現状を考慮しながらひとつ検討してみよう。
大体かいつまんで申し上げますと、この四つにこれらの方々の共通の認識を整理いたしまして、そしてこれをお互いが分担しながら
研究を進めていって、しかるべき時期にもう一回相互の
研究の間の
調整をはかっていくことにしようということで、一番最初に申し上げました
医療の長期趨勢の問題は東大の嘉治助教授、それから二番目の
医療に関する技術的組織の適正化という問題については、慶応大学の外山教授、それから経営の適正化という問題は、上智大学の高宮教授と横浜国立大学の伊藤助教授、それから三番目の公共性の観念については、一橋大学の高橋教授と慶応大学の大熊教授、これに必要に応じてほかの人も議論に参加する、それから四番目の需要の組織の適正化の問題については、一橋大学の高橋教授と慶応大学の外山教授が
担当する、こんな分担で進めようじゃないかということで、いまちょうど各人の個別
研究に入り、ときに集まりながら、自分はどういう方針で自分の個別
研究を進めていこうとしているかという問題についての方針みたいなものを、ほかの人から若干批判を聞きながら今後の
研究を進めていく、こういう
段階に入っているようであります。いまのところはこういう
研究を進めていって、大体ことしの秋から年内ぐらいに各人の構想をまとめ、相互の
調整を終えて、来年の一月からそれぞれ自分の分担についての
研究結果の報告の起草にかかって、おそくも三月中には
提出をする、大体こんな進行
状況でございます。
それから二番目の問題としての
医療費基本問題
研究員の
研究と、現在御審議をいただいております
社会保障研究所法案による
研究所の
研究の
関係でございますが、ただいま申し上げましたように、
医療費基本問題
研究員の
人々によって行なってもらっております
研究は、適正な診療報酬の決定に資するという当面の政策
目的にかなうための
研究をしてもらう、その
意味で個別的であり、多分に実用との
関連というものがそこにはっきり出ておるわけであります。そういうような
意味で、
社会保障研究所において
研究すべき事項に比べると、やや個別的で、応用的な傾向が強いものになっておる、こういう
関係でございます。もし
社会保障研究所ができましたならば
医療費について私
どもぜひやってもらいたいと思っておりますのは、私も正確に知らないで、
ことばだけ言うので恐縮ですが、実は
医療費のマネーフローというのをぜひやってもらいたいのであります。この
研究は
日本では遺憾ながらどこでもやっておらないのでありまして、
医療費の問題というとすぐ
負担能力がどうとかこうとかという議論ばかりで、
医療費というものが
経済全体の循環の中で一体具体的にどういうふうに流れているかという基礎的なものが固まっておりませんために、いかにも学問的な扮装をこらしていわれている議論も、実はよく洗ってみると、肝心なところはかなり腰だめてやっている、こういう傾向があるわけでありまして、このために、どうも
医療費の問題が、
ほんとうの
意味で基礎のがちっとしたものになり得ない。そういう
意味で、現在私
どもが、
研究所ができたらぜひ手をつけてもらいたいと思っているのはそういうことでございます。非常にむずかしい
研究でございますが。それから
厚生科学研究費で今
年度やってもらおうと思っておりまするものとの
関係は、先ほど私が、現にこれらの
人々によって進められておりまする
研究の概要を申し上げたことで明らかでありますように、いまのところ直接これらのものは含まれていないのでございます。