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1964-05-19 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十九日(火曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小沢 辰男君 理事 亀山 孝一君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 河野  正君 理事 小林  進君    理事 長谷川 保君       浦野 幸男君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    松浦周太郎君       松山千惠子君    粟山  秀君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木  昇君    山口シヅエ君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十五日  委員浦野幸男辞任につき、その補欠として田  村元君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田村元辞任につき、その補欠として浦野  幸男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十八日  母性福祉保障法案本島百合子君外一名提出、  衆法第五二号)  中高年齢者雇用促進法案吉川兼光君外一名提  出、衆法第五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働災害防止に関する法律案内閣提出第六  号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働災害防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林委員 労働災害防止に関する法律案について御質問を申し上げたいのでございますが、この法律案提出されるに先立ちまして、昭和三十八年の四月に、労働省は新産業災害防止五カ年計画推進要綱というものを御発表になったのでございますが、その推進要綱と、このたび提出をせられましたこの法律案との関係がどういうふうになっておるか、特に推進要綱に盛られた内容がそのままこの法案の中に盛られているのかどうか、そういうことについてお話を承りたいと思うのであります。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実は昨年発表いたしました災害防止の五カ年計画というものは、一つ考え方をあらわしたきわめて抽象的なものでございます。それに関連いたしまして法案提出いたしたわけでございまして、この法案成立を待ちまして、これを具体化して年次計画をつくって進んでいきたい、こういう考え方法案提出いたしたのでございます。
  5. 小林進

    小林委員 それによりますと、あるいは事業場だとか、業者団体だとか、あるいは安全団体業種団体という、そういうようなものの名前を羅列をいたしまして、それらのものにのみ責任を持たせて、労働省自体行政指導といいまするか、労働省自体責任をのがれるような体制になっているように見受けられるのでございまするが、この辺はいかがでございましょう。
  6. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の新産業災害防止五カ年計画推進要綱におきましては、ただいま大臣からお答え申し上げましたとおり、昭和三十八年から四十二年までの平均年間災害死傷千人率を八・八%ずつ毎年引き下げようという到達目標を示しておるのでございますが、その具体的な災害防止活動内容につきましては、別途労働省から要綱を出しまして、その目標達成のための払うべき努力内容につきまして具体化しておるわけでありますが、その推進要綱の中におきまして、「行政活動積極的展開」という項目が冒頭に掲げられております。しこうして、その行政活動積極的展開の第一は、監督指導充実強化でございます。御指摘のように、労働省が何をなすべきかという点につきましては、安全衛生に関する監督指導が非常に大きなウエートを占めますので、計画推進要綱におきましても、監督指導充実強化を第一に掲げておるような次第でございます。業界の自主的活動等につきましては、監督指導充実強化という項目の次に要綱では示しておるような次第でございまして、その点につきましては、労働省といたしましても、できるだけの努力を払いたいと考えておる次第でございます。
  7. 小林進

    小林委員 監督指導充実強化を第一に掲げているというお答えでございましたが、それは非常にけっこうでございます。けれども、その前に私はやはり行政体制整備と申しまするか、労働省自体の労働安全に対する体制がまず整っていかなければならないと思います。機構整備と申しますか、体制強化といいましょうか、そういう点が私はまだどうも不明瞭でございまして、具体的にその点をどのようにお考えになっているのか、その点ひとつお答えを願いたいと思います。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 機構整備と申しますると、要するに労働基準監督機構でございますが、現在のところ労働基準監督官は必ずしも安全監督にばかり従事しているわけではありませんが、一応労働災害防止に携わっておると認められまする監督官の総数は千四百八十人であります。この数というものは、近年におきまする事業場の増加の状況と照らしますると、必ずしも十分とは言えないのでございます。これを増員する必要があると思うのでございます。監督機構整備というものは、まずこの増員根幹になるべきものと考えております。明年度以降努力をいたしたいと思います。
  9. 小林進

    小林委員 大臣お答えにありましたとおり、やはりどうしても労働災害防止とか安全の問題は、何といっても主管官庁たる労働省みずからが責任を持つという体制を持たなければならぬのでありまして、私が最初から繰り返しておりまするように、今次提出せられた法案は、何か労働省責任をその下部の事業所とかあるいは業種団体等に転嫁するというふうな感じといいますか、においがしてならないのでありまして、私どもはやはりそういうようなにおいは払拭いたしまして、もう一つ行政の面で至厳なる成果をあげ得るような、まず中央体制といいまするか、行政体制をひとつ整えてもらわなければならぬという希望が強いのでありまして、たしか推進要綱の中には、自主活動促進について、この自主活動監督行政の次に掲げているとおっしゃいまするけれども法案内容自体は絶えず自主活動といいまするか、業者みずからがひとつ責任を持ってやれというようなところに重点が置かれております。決してそれはいけないというのではありませんけれども、何といってもやはり行政機構体制——基準監督官の増設あるいは至厳なる規律、そういうようなところからまた監督署をたくさん設けるとか、そういうところから問題を解明していかなければならないと思うのでございますが、大臣いかがでございましょう。来年の予算なんて言わないで、当然この法案と同時にそういう体制ができ上がっていなければならないと思うのでございます。お答えを願いたいと思います。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働災害防止につきまして行政監督の重要であることはお説のとおりでございまして、私どもは何よりもこの点に力を入れる必要があると存じておるのでございます。今年度の予算の編成に際しましても、労働省といたしましては監督官増員根幹であると考えまして、大蔵省に厳重に交渉いたしております。財政多難のおりではございまするが、今年度におきまして百六十八名の増員を獲得することができたわけなのでございます。この努力は今後におきましても引き続き推進いたしたいと存じておるのでございますが、申すまでもなく、労働災害防止につきまして本来その責任を負うべきものは使用者でありまして、労働基準法その他労働者の安全及び衛生に関する法令におきまして、使用者義務者として規定いたしておるのはこの趣旨に基づくものでございます。今回提案いたしました労働災害防止に関する法律案は、このような使用者としての安全衛生に関する法定基準を順守することを当然の前提とし、さらに、使用者自主的災害防止活動促進しようとする意図のもとにつくられたものでございまして、その活動促進するに当たりましても、使用者の任意にまかせるということでなく、法定基準以上の自主的な災害防止規定の作成についても所要の監督を加えまして、また補助金の交付による財政的規制措置等を講ずるなど、行政機関としてもできるだけこれに協力するたてまえをとっておることを御承知賜わりたいと存じます。
  11. 小林進

    小林委員 使用者災害に対する責任の持ち方というものについては、また後ほど別個の立場で御質問を申し上げたいというふうに考えておるのでありますが、いずれにいたしましても、労働者を使っているその使用者が、災害に対して責任を持たなければならないということは、今日あらためて申し上げるまでもないのでありまして、それはもう古今東西昔からきまりきっていることである。そのきまりきっておる過程の中でだんだん災害がふえているのは何がゆえか、やはりこの災害というもの、労働者の被害というものを使用者だけの責任にまかしておけないということで近代的な新しい監督行政労働行政というものが生まれてきたのであります。その近代的な監督行政労働行政によって昔から繰り返している使用者責任がぼかされたり、使用者人命を粗末にしているという至らざる点を補っていかなければならないというのが、私は労働行政根幹でなくてはならないと思います。いまさら大臣の前で古い話を繰り返そうというのではありませんけれども、ああやって炭鉱災害が出たり何かしたときにも、いわゆる炭鉱災害に対する主たる監督官庁行政官庁、これをどこに持ってくるかということがこの国会の中でもしばしば論ぜられたはずであります。その論ぜられた中にも、炭鉱における災害がやはり炭鉱経営者労働者だけの中に——通産省炭鉱監督行政というものを持っている。通産省とは何だ。これはやはり資本家のチャンピオンとして石炭屋利益中心考え官庁なんだ。そういう利益追求し、経営者利益に奉仕するような通産省の中に、こういう労災等に対する監督行政を置くことが、やはりこの炭鉱における労働災害根本的に防止できない大きな原因であるのではないか。だから、石炭なんかの行政に対して、労働災害防止するというならば、まず通産省という、そういう産業中心を置くような省から、利益を度外視しても労働者立場を守ろうという労働省にこそ、炭鉱災害監督責任庁といいますか、責任的機関をこっちへ持ってくるのが至当ではないか。こういう論議がしばしば繰り返されてきたことは大臣よく御承知のはずである。大臣自身もそういう論理構成に若干御賛意を表せられて、労働省通産省の中にある監督機関を持ってきてもよいとか、あるいは持ってくるべきであるとか、そこら辺は若干不明瞭でありますけれども、持ってくることに賛成であるとか、反対でないとかいう意思表示をされたこともあるはずである。その賛成をされた意思の中には、やはり労働省がそういう利益追求産業の成長を度外視しても災害防止する、そのためには労働省がやはり一番適役であると、そこまで飛躍をしたお考えを持っている労働大臣が、いまさら振り出しに戻ったような、経営者責任を持つ、使用者責任を持つ、だから自主的にこれにまかして、幾らかでも補助金をくれておけばそれでよかろう、そういう意味の御答弁をされることは、私は前後の論理が合わないのではなかろうかと思うのであります。この際、こういう労働行政の中で最も重要な人命に関することは資本家にまかせない、労働省が全面的に責任を持ち、労使の間に強力な監督権を発動して、労働者生命はあくまでも守ろうというかまえと、機構と、行政が必要ではなかろうかと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。私の考えは間違っておりますか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御意見のほどは十分理解のできるところでございます。ただ私どもは、今回おきめになりました法律によりまして、役所の権限を規定されておる。その法律の定めに従って省の仕事を進めておるわけでございまして、現在の法律といたしましては、鉱山における安全の問題は通産省の所管ということに規定をいたしておるのでございますので、これを尊重いたすほかはない次第でございます。
  13. 小林進

    小林委員 私、産業災害を見る場合に、いかにも労働者生命というものが安く取り扱われ過ぎているという感じを深ういたすのでございますが、いかがでございましょうか。日本じゅうで何が安い——まあ河野議員なんかも数日前にアメリカから帰って来られて、日本の物価は非常に安いと感心せられて、アメリカ品物は高いと言われた。なるほど日本品物は安いのでありまして、ミコヤンさんも日本品物は安いと感心せられたそうでありますが、もろもろの日本の安いものの中で何が一番安いかというと、人間の命ではないかと思う。日本ほど人間の命の安売りをしているところはないと考えているのでございますが、そのうちで一番安いのは何かといえば、国鉄で運ばれている人間の命であります。いつぽかっとやられるかしれない。やられると、その命はほんの五十万か百万でおさらばです。第二番目は、自動車ではね飛ばされた人間の命でございまして、これなんかも、朝起きて晩家へ帰って寝るまで、いつはね飛ばされるかわからない不安定の中に生きているのでございます。はね飛ばされてしまった命は驚くべき安値でございます。第三番目は、産業災害で失う人間の命の安さでございます。こうした災害の危険にさらされているわれわれの生命を一体だれが価値づけ、だれが値打ちをつけてこれを守ってくれるのかといえば、さしあたりは労働省労働省の中でそういう災害を担当している。その機関でいま少し人間の命を大切にするように行政を進めてもらわなければならぬ。大臣人間の命が一番安過ぎるという私の意見に対していかがでございましょう。大臣の御所見を伺いたい。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、人間の命というものは金にかえるべきものではないと思います。したがって、幾ら高い金を出してもこれで十分だということはない。ただ現在ありまするいろいろな死者に対する弔慰金あるいは賠償金、こういうものは私は命に対する代償というものではなくして、これは遺族に対する賠償なり弔慰金である、そういう意味においてのみ理解できるものだ、こう思うのでございます。それにいたしましても、安いじゃないかというお話につきましては、格別反対はございません。
  15. 小林進

    小林委員 大臣人間の命は金であがなえないものである、国鉄やその他の事故に対するお国の金は弔慰金である、しかしその弔慰金に対して安過ぎるではないかということに対しては別に反対を申し述べるほどのことはない、こういう御所見でございましたが、私は死んだ人に贈る金が命の代償金でないという御意見に対しては賛成であります。賛成でありますけれども、それでは失った命はしかたがないから幾らの涙金でもいいのかといったら、それはやはりそれで済むものではないのであります。名前弔慰金であろうと、あるいは香典であろうとも、おろうそく代であろうとも、どんな名前であろうとも、かけがえのない生命をそういう災害のために失ったとすれば、それを償うものは金銭以外にないじゃありませんか。かつて国鉄があれだけの事故を起こしたときに、前の総裁十河さんという方がおられました。国鉄事故があったら飛んでいって、ハンカチを目に当てて泣いてばかり、弔いをしている。いかに十河さんがハンカチで涙をぬぐって泣いたまねをしたところで、それで死んだ命の代価になったかというと、そうはいきません。やはり死んだ人に対して、その命を失った何かに報いるとしたら、金銭以外にありません。  話は余談になりますけれども、今度の鶴見事故が起きたときには、新しい総裁石田さんが飛んでいかれて哀悼の意を表せられたが、石田さんは泣かなかった。肩をすぼめて、そうして帰っていかれた。遺族の受けた感じはこれのほうがよかった。そんな、涙を流してハンカチを目に当ててもらうよりは、無言のうちに頭を下げて、あのうらさびしい姿で帰っていった石田総裁の姿のほうがむしろ命に対する弔いとしては胸を打つものがあったという、そういうような話もございまして、いろいろございますけれども、命というものがそういう弔いハンカチではやっぱり間に合わない。金でそれを償ってもらおうとするならば、名前が何であろうとも、もう少し出してもらわなくちゃならない。しかし私の申し上げたいのは、死んでから出す金の多寡を言っているのではないのでありまして、それほど金で償うことのできない大切な命ならば、死なない先になぜ一体安全操業あるいは安全作業にもう少し意を用いないかということを申し上げたいのでございます。  話が古くなりますけれども、三十八年の十一月九日、三池三川鉱の大惨事が起きまして、四百五十八名の犠牲者が生まれたのでありまするけれども、一体何であの犠牲が生まれたかといえば、石炭合理化の名のもとに資本のあくなき利潤追求による結果だと私は思う。彼らは利潤追求というこの至上命令に対してこそあらゆるものを犠牲にしてでも取り組むというかまえはあるけれども、その利潤追求のための手段として使われる人間生命に対してはそれほどの熱意を示してないじゃありませんか、それほどの万全の策を講じていないじゃありませんか。これが私はわが日本に惨状の絶えない、災害の絶えない根本理由だと思います。人間生命の尊重よりも、生産第一主義に狂奔している、こういう姿勢です、こういう機構ですよ。これが災害発生のもとをなしている。国鉄においてもしかりであります、自動車にしてもしかりであります。われわれはなぜ一体道を歩いて毎日自動車にはね飛ばされる危険を感じているか。タクシーをはじめ、安全に人間生命を守ろうなどということを第一基準にして走っている車はないじゃありませんか。何とかして早く、能率をあげて、幾らかでも利潤追求しようというこの至上命令で、車はみんな走っているじゃありませんか。いわゆる公社などといわれる、利潤追求よりは、やや公に奉仕する形ででき上がっている国鉄ですら、独立採算などといって、まるで利益追求中心にして合理化合理化という過重労働だ、こういう形が災害のもとをなしていると私は考える。だからそこに生産第一主義ということが一番重点に置かれている。金にかえられない人間生命などというものは第一目標にされないで、第二第三に軽く扱われているというこの基本的な姿勢災害が絶えない根本理由があると私は考えるのでございまするけれども大臣いかがでございますか。大臣の高潔なる御所見を承りたいと思います。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 昔から安全運動のモットーといたしまして、安全第一、生産第二ということがよくいわれるのでございますが、私はこの点におきまして、最近の実情は十分に反省しなければいかぬというふうに考える次第でございます。
  17. 小林進

    小林委員 話が古くなりましたけれども三川石炭に関する事故発生原因がどこにあるかというその根本理由は、いま申し上げましたように、生産第一、利潤追求第一の合理化に一番重点を置いて、人間の命などというものはその次でよろしいという企業のあり方、そこにこの四百有余名人命を失った根本原因があるのではないかと私は判断をしている。これに対して大臣はどうお考えになっておるかということをお尋ねいたしたのであります。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は三井の企業責任者といたしましても、安全の観念は十分にあるものと思います。ただ何ぶんにも石炭鉱業の重大なる危機に当たりまして、何とかこれを切り抜けようということに気持ちが走りまして、その結果安全の問題がなおざりにされておったということは私は否定することができないことだと思うのでございまして、その点にあの悲惨な大事故発生原因があったものと思うのでございます。この点につきましては、私どもといたしましても、反省をしなければなりませんし、また企業者たる責任者といたしましても、ただいま十分に反省をいたしておる次第でございます。
  19. 小林進

    小林委員 大臣はなかなか理解の深い御答弁をいただきまするので、感謝にたえないのでありまするが、私も大臣のお考えと同じです。そういう安全操業というものが、まあ大臣資本主義社会ということをおっしゃいませんでしたけれども資本主義社会の中においては必ずそれが軽視をされる傾向になりがちなんです。企業利益をあげなくてはならぬのであります。そこで生産が重視せられ、利益追求がどうしても重要なる課題になって、生命を守るという安全操業の点が第二、第三に軽視されるというところに問題発生根本理由がある。この基本的な原因を腹の中に入れて、そして安全操業の問題に取り組まなければ根本的な問題の解決にならないと私は思うのであります。話がくどくなりまするけれども、これはいわゆる重点でありまするから、さらに繰り返してお尋ねいたしますけれども、私は国鉄のあの三河島の事故あるいは鶴見事故、こういう事故もなぜ一体起きたのかといえば、第一には人員の削減であります。人員国鉄は削減しておる。第二番目にはスピードアップであります。能率引き上げであります。こういうようなことによって国鉄合理化というものを進めていった。なぜ合理化するか。それは赤字を退治して一ぱい利益をあげよう、こういう考えのもとに立って人員を減らした。スピードアップもした。あるいは能率引き上げもやった。そして合理化をした。こういうことが、ついに三河島事件を勃発したり、鶴見事故を起こした根本原因であると私は思うのでありまして、この点を一体政府行政の面において、その根本原因を是正するために適当なる処置をいままでおとりになったことはございますか、お尋ねをいたしたいと思うのであります。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題につきましては、国鉄責任におきましてその原因を調査追及いたしまして、これに対する対策として特に安全対策に力を入れなければならないということに相なりまして、したがって今年度の国鉄予算等におきましては、その成果がある程度あらわれておるものと考えます。
  21. 小林進

    小林委員 これは委員長お尋ねしますけれども、この際早急にひとつ国鉄総裁運輸大臣を呼んでいただけませんでしょうか。これは人命に関する安全操業の重大な点でございまするから、お呼び願えませんか。いかがでありましょうか。
  22. 田口長治郎

    田口委員長 いま手続しています。
  23. 小林進

    小林委員 それじゃ早急にひとつ……。  大臣の御答弁の中に、そういう原因をいま追及しながら次の安全操業方法等を研究しつつあるというお答えがございました。私のお尋ねをいたしていることは、そこではないのでございまして、たとえていえば、三河島の事故が起きた、あるいは鶴見事故が起きた、こういうときになりますと、まず検察庁や警察のお手入れを受けるのは働いている労働者なんです。あるいは機関士が赤いシグナルとか黄色いシグナルを見誤ったのではないか、あるいは発炎筒のたき方が悪かったのではないか、あるいはおまえが安全運行の正しい運転を誤ったのではないかということで、この諸君がいわゆる刑事被疑者になって捕えられています。そして中にはその刑事被疑者たるの地位に耐えかねて自殺をしていく者もあるという悲惨な事実がある。そういう悲惨な事実があるけれども、いま大臣がおっしゃったように、その大きな災害原因はどこにあるか。利益追求重点を置いて安全作業を軽視しているというところにその原因があるのは遺憾ながら認めざるを得ないとおっしゃる。利益追求重点を置いて安全なる操業作業を軽視した責任者は一体だれなんだ。これは自動車運転者ですか。石炭労働者ですか。機関車を運転する機関士ですか。旗を振っている国鉄の職員ですか。これは職員じゃないのです。機関士じゃないのです。そういうようなことをやらせているのは国鉄なら国鉄における責任者なんです。管理者なんです。総裁なんです。そういうような経営と管理のしかたの中から災害が生まれてくる。どんなに忠実な機関士が夢中になってシグナルをながめていても、やはり災害は絶えない。しかるにこういうおそるべき事故発生したときに、忠実に任務を遂行している労働者のわずかなしみほどの欠陥があったかどうかということをいわゆる刑事責任の対象にして、そしてその人たちは三十年、四十年働いてきた実績を無にして、次の日から冷たい監獄にぶち込まれてしまうというような悲惨なことをしておる。その災害根本原因をなした管理者に一体どれだけの刑事責任が課せられているか、一体どれだけの責任をとらしているか、これが私どもの最もふに落ちない根本理由なんです。こういうような形がある限りは、どんなに言ったところでこの世の中に労働災害なんというものはなくなりっこないと私は考えておる。それをお尋ねしたいのであります。一体その管理者やそういう計画をした人たちにどれだけの刑事責任が問われたことがあるか、お尋ねいたしたい。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 災害についての責任労働者にばかり重くして、経営者等には一向追及されていないのではないかという御趣旨かと思うのでございます。すでに国鉄鶴見事故の問題につきましては、この行政上の責任の調査のために特別に調査会が設けられまして、その調査会においてはすでに結論を出しておることも御承知のとおりでございます。すなわち、過密ダイヤその他国鉄の安全施設に重大なる欠陥があるということがいわれております。これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、今年度予算等におきましても、これが改善に必要な経費を計上されておるものと考える次第なのでございます。  ただ、その前に、刑事責任経営者にないのはどういうわけかということでございまするが、経営者につきましても、やはり業務上の過失によってこういう結果を生じたという刑事上の責任がはっきり証拠立てられるならば、私は当然追及されるだろうと思うのでございます。しかし、現在の刑事責任からいいますと、なかなか管理者の責任を実証することはむずかしいという結果だろうと思うのでございます。しかし、これ以上の問題は私も専門の立場におりませんので、詳しく御答弁を申し上げることのできないことはまことに遺憾に存じます。
  25. 小林進

    小林委員 いみじくも労働大臣がおっしゃいましたように、しばしば起こる国鉄労働災害の問題についても——しばしばではございません、これは毎日毎日といってよろしい、太陽が西から出るようなことはないと同じくらいに、毎日国鉄事故というものは起きていないことはありません。日本じゅうどこかで起きている。その起きている事故の一番の理由はどこにあるか。いま大臣も過密ダイヤ、いわゆる安全施設の不足、この二つが事故を起こしている根本理由である、こういう結論が出たとおっしゃった。問題は明らかじゃございませんか。一体その過密ダイヤを組み得る力が労働者にありますか。安全施設を完成する責任労働者にありますか。これは経営者責任じゃありませんか。その経営者がダイヤを組む、管理者が行なうべき施設を行なわない、明らかじゃありませんか。これくらい明瞭な話はないじゃありませんか。しかし、それを刑事責任を問うときになったら何とおっしゃいますか。一体その管理者に過失があったかどうか、それを実証することが困難である、だから彼らには刑事責任がない。彼らには刑事責任がないばかりではない、行政上の責任もない。こういうことでありますから、先ほどから私が繰り返しているように、こういう過密ダイヤを組んだその管理者や経営者で、事故が起きて処分をされたり、左遷をされたり、四十年、五十年の勤務をゼロにしたなんというものは一人もいない。そういう過密な、危険な作業を命がけでやらされている気の毒な労働者だけが、四十年五十年つとめていた生涯を棒に振ったり囹圄の人になったりする。それもいま言ういわゆる現行刑法の過失責任があるかないかという、針の目を突っつくような、そういう過失責任を問われて囹圄の人になるなどということが、正当な人間に対する平等の扱いであると言われますか。これがいまの世の中の常識であるというならば、その常識こそが人間を殺している。管理者として、あるいは大臣としてのあなたが、それが正しい常識であるとおっしゃるならば、まず為政者のそんな常識から改めていかなければ、いま労働災害のこういう法案を出してわれわれが審議したって、こんなものはまことにむだな苦労です。根本はそこから改めていかなければならぬ。もしどうしても過失というものが犯罪を構成する必要な要件であるならば、無過失責任論ということばもあるのでありますから、過失なしとしたって、責任をとるべきそういう法律上の処置が行なわれている。どうしてもこういうような事故が起きたときには、労働者にまさる三十倍五十倍の責任を、こういう過密のダイヤを組んだ、安全の施設を怠った管理者にどさっと責任を持たせるという、そういう抜本的な法律改正まで生まれてこなければ、私は問題の根本的な解決にならないと思う。大臣いかがでございますか。私の主張が誤っておりましょうか。ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私といたしましては、そういう高遠な責任の問題までどうもどうお答えしていいかよくわかりませんので、御勘弁をいただきたいと思います。
  27. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 国鉄の場合は必ずしもこれに相当するかどうか明確でありませんが、一般労働基準法上の安全保持の責任につきましては、御承知のように使用者に直接安全衛生に関する法定基準を守る義務を課しております。したがいまして、一般に経営の事実上の問題は別といたしまして、法律安全衛生に関する義務が課せられております際には、その事案に対して当然罰則の適用があるわけでございまして、労働基準監督機構におきましても、労働基準法違反の中でも特に災害を起こした事案につきましては、最もこれを重視いたしまして、司法処分に付するということにいたしておるような次第でございます。現に労働基準法違反の中で安全衛生に関する規定に違反した送検件数が最も大きな比重を占めておるというのが現状でございます。
  28. 小林進

    小林委員 端的に私に結論を言わしてもらえば、国鉄三河島みたいな事故が起きた場合には、運輸大臣とか国鉄総裁以下全役員は全部懲戒免職にしてしまえ、なおその上に、過失の問題もあるならば刑事責任もあわせて追及をして監獄にぶち込んでやれ、それくらいの峻厳な罰則なり行政措置がとられるならば、私は国鉄事故なんというものは、あしたから目に見えてなくなると見ている。繰り返して言いますけれども、こんな事故を起こしたら、運輸大臣国鉄総裁以下それに関与する役員は全部懲戒免職、同時にあわせて刑事責任を追及いたしまして監獄へぶち込んで、そうしていままでの実際の身分を剥奪してしまえ、それほどの責任を負わしたら、国鉄事故はあなたのおっしゃるように、一年間に八%、——五年間でその事故をなくしてなんて、そんなマンマンデーでなくてよろしい、あしたから国鉄事故は半分はなくなります。一年もたったら何にもなくなります。これは私は神かけて断言できる。私の言うことが少し荒っぽくて、おまえの言うように事故をなくするわけにはいかぬとおっしゃるかもしれませんが、大臣、いかがでしょう。これをやったら一年以内に国鉄事故はなくなりますよ。この私の見通しに間違いがあるかどうか、大臣の御所見をお伺いしておきたいと思う。
  29. 大橋武夫

    大橋国務大臣 鉄道の問題は私にもよくわかりません。
  30. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 災害対策ないしは安全衛生に関する管理体制の問題が常に問題になるのでありますが、安全管理体制のキーポイントは何であるかと申しますと、先生の御指摘のようにトップマネージメントが安全管理体制についての直接責任を持つということであろうと思います。安全管理体制につきましては、トップマネージメントから第一線監督者へというようなスタッフの系統を通じまして、一貫した安全意識を持つということが基本的な要件であろうと思います。そういう観点から申しますと、懲戒処分とかどうとか、そういった処分、処罰の問題は別にいたしまして、基本的な安全管理体制姿勢というのはまず経営首脳者からというお考えは、われわれも常日ごろ産業界に対して申しておるところでございます。今後、安全管理体制強化するにあたりましては、ただいま申しましたような趣旨に基づいて、さらに徹底をはかりたい、そのためにも、たとえば労働災害防止法によるところの自主団体ができましたならば、安全第一という観念を経営者みずからに浸透させるというような啓蒙、教育的な役割も積極的に展開させたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  31. 小林進

    小林委員 大臣国鉄のことは御存じないとおっしゃいましたから、では国鉄のほうのことは国鉄責任者がお見えになったときに、私の主張が間違っているかどうか、私の意見に対し賛成かどうか、その際あらためてお伺いすることにいたしまして、この国鉄の問題は、ここで一応留保をいたしまして、一般論としての安全操業の問題に移ります。  いまも基準局長の言った安全衛生の義務を経営者や管理者、特にトップマネージメントにいままで責任をとらしてきたかどうか、これはわかりませんが、おそらく工場長くらいのところまでは責任をとらして、そこで違反行為や過失があれば、やはり罰則の適用、司法処分にもする、こういうことをおやりになってきたというのでございますが、また石炭問題に返りますけれども、私どもは、おととしですか、例の九州の田川地区上田炭鉱災害を調査に参りました。上田炭鉱のあの大きな災害で、いまでもまだ死体がそのまま炭鉱の中に埋もれていて、出てこないはずであります。ああいう災害も目の前に出ておりますが、あれも資本主義的なものの考え方でいえば、上田さんという人も気の毒だ、あの災害のために自分の身上を棒に振るくらいみんな災害者の方々に弔慰金をやったり、見舞い金をやったりしたというので、自分のためた金はなくなったということなんだけれども、あれほどの大きな災害を起こした原因は一体何にあったかといえば、先ほどから繰り返しておりますように、やはり上田社長が、この石炭山を通じて利益を上げたい、黒字を上げたい、生産を上げたいということで、肝心のあそこに働いている労働者諸君の安全を守ろうというところに手抜かりがあった。だから、あの事故が起きた。しかし一体上田さんその人が刑事責任を問われましたか。司法処分に問われましたか。いまも言ったように、自分の私財を投じて、会社の財を投じてあと始末をしたために、赤字になった、経営が困難になったという気の毒な場面は出たけれども、あなたの言われる刑事責任その他について何も追及されていないじゃありませんか。何かありますか。私はそれ以外にまだ申し上げますが、一体経営者や管理者の中で、そういう事故を起こして、刑事責任を問われて、囹圄の人になっている社長とかトップマネージメントというような方々がどれだけおありになるのか、あわせてこれも具体的にお聞かせを願いたいと思うのであります。
  32. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 これは先生御承知のとおりでございますが、安全に関する問題は、きわめて具体的かつ現場に即した問題でございますので、労働者に対する安全を確保するための配慮といたしましては、直接その職場に関与するところの経営首脳者を中心といたしまして、安全管理体制が形成されているわけでございます。鉱山保安法関係は格別といたしまして、労働基準法におきましても、安全管理につきましては、安全管理者という制度を設けまして、その責任を明確にしつつ、安全対策を推進しているような次第でございます。  かような観点から見ますと、企業としては一企業でございますが、本社は東京にある、現場は地方にある、こういうような場合には、社会的な企業再建の問題と安全管理上の直接責任という問題につきましては、常識的な考え方と多少のギャップがあるということもやむを得ないと思います。全体としての企業のトップマネージメントの責任ということになりますれば、社会的、経済的にいろいろな判断がなされることと思います。ただしかし刑法上の責任を追及するということになりますれば、先ほど大臣お答え申しましたように、故意、過失の立証という問題ともからみまして、きわめて具体的に処理せざるを得ないということになるわけでございます。何と申しますか、トップマネージメントの責任を追及しないということではなくて、そういった安全問題の具体性、それに対する刑事責任の立て方の問題、そういったメカニズムとも関連いたしまして、必ずしも社長が送検されない、こういう例はございます。ございますけれども労働基準法上一個の事業場として明確に把握され、その責任が明らかな場合は、先ほど申しました司法処分に付する場合におきましても、社長などのような最高責任者を送検するという例は少なくないのでございます。
  33. 小林進

    小林委員 具体的に社長でこういう司法処分を受けて、その地位を失って、監獄に入っておられる人が実際に一人でもおられますか。
  34. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 実際にいるかどうかということでございますが、労働基準監督官が司法処分に付する、すなわち送検いたしまして、それが裁判手続を経まして、労働基準法違反という理由によりまして罰則の適用を社長みずからが受けるという例はございます。しかしながらそれが直ちに懲役何年というような刑に処せられるか、罰金刑に処せられるか、あるいは執行猶予になるか、刑の執行につきましてはいろいろなニュアンスがございますので、基準法違反があって、有罪であるからといって、直ちに囹圄の人になるというふうには、すべてがそうであるということが言えないのは当然であるかと思います。しかし社長などのような地位にある方が刑事責任を問われるという場合はあるわけであります。ただあとやめるかどうかというのは、その場合は法人におけるあり方の問題でございまして、これは基準法とか刑法の問題ではないというふうに考えます。
  35. 小林進

    小林委員 私は災害が起きて、そのために働いている労働者責任をとらされて、いままでのつとめをおっぽり出されて、そうして刑事責任を問われて、囹圄の人になったなどという例はしばしば知っておりますけれども、そういう大きな事故を起こした社長さんクラスが、あるいは労働基準局の送検の手続くらいまではいったかもしれませんけれども、それから先司法処分を受けて、そして囹圄の人になった、あるいは社会的地位を失ったり、身分を失ったりするような例は寡聞にして聞いたことはございません。ただそのために、その企業なり、その会社なりが左前になって、赤字になって、その赤字や事業の失敗の責任を負うて、社長やトップマネージメントが会社を辞職した、その企業をやめた、そういう例は幾つも知っておりますけれども、事、安全操業に関して責任をとってやめたという話も聞かなければ、あるいは司法処分を受けて囹圄の人になったなどという例も私は聞いたことがございません。だからその例があったら、まことに望ましい、今日の世の中における美談にも値する話だから、ひとつあったらお聞かせ願いたいということで盛んにお願いしておるのでございますけれども、具体的な例はお示しにならないようでございます。ございましたらひとつお聞かせ願いたい。
  36. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 こういう公の席上におきまして、個別的な会社の名をあげて申し上げるのはどうかと思いますけれども、これは周知のことでございますから一つの例を申し上げますが、三井三池の鉱業所の災害の直後、鉱業所の責任者が配置がえをされたことは、これは御承知かと思います。これは法律上の責任とは別におのずから当該企業としての一つの部分社会における処分、処罰の問題はあろうかと思います。そういった一つ意思のあらわれではなかろうかと思うのであります。  それから、先生御承知のことを申し上げて恐縮でございますが、刑事上の不法行為の能力の問題もございますので、会社と申しました場合に、企業であるところの法人そのものの責任と不法行為を行なった人の責任というような問題につきましては、刑事上の不法行為の問題としてもいろいろ議論のあるところでございます。したがいまして事を処理するにあたりまして、刑事上の不法行為の問題としては、これは法律規定に従いまして厳正に行なう。それから社会的、経済的ないろいろな責任ないしは倫理的、道義的な責任というものは別個になろうかと思いますが、そういった点につきまして、いやしくも社会的に非常に大問題になったというようなケースについては、刑事上の問題のみならず別な角度からのいろいろな批判は免れない。そういうことをもちまして社会的な問題に対する責任は、それぞれの角度から処理されるべきであるというふうに私ども期待いたしておる次第でございます。
  37. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いま責任問題をいろいろ言われましたが、三井三池の不祥事件の際におきまして、私も栗木社長を呼びました際に、これだけ世間を騒がした大事故であるから、会社においても責任問題をはっきりさしてもらいたいということを要望いたしました。会社におきましても、それは当然のことであるというので、責任者に対してその責任を明らかにする措置を講ぜられた次第でございます。
  38. 小林進

    小林委員 現場における企業責任者企業内におけるそういう行政的な処置によって配置がえをされたというようなことも、それは一応責任を明確にする意味において、ないよりはいいことかもしれません。ないよりはいいことかもしれませんけれども、私がお尋ねいたしておりますのは、そういう企業内部における人事の異動、配置転換等をお尋ねしているのではありません。それはもう企業においては災害があろうとなかろうと、成績のいい者はいいポストへいくだろうし、そういう災害なんかが起きて企業を赤字にしたり、成績の上がらぬ者が左遷されるというのは、これはあたりまえな人事なんであります。私の言っているのは、企業の中でそういうような災害を起こすような、先ほど言った安全設備を怠ったとか、あるいは過密ダイヤを組んだとか、あるいは労働者に超過勤務をしいたとか、あるいは合理化促進するために一人一日八トンとか十トンの過剰なノルマを課して人員を減らしたとか、そういうようなことで災害が起きたのだから、その災害について刑事責任なり司法処分を行なわれたものがあるか、労働者が司法処分や刑事責任を問われているのに相対比して、経営者や管理者の中にもそういう刑事責任や司法処分を問われた者があるかということを私はお聞きしている。ところが、先ほどのおことばのように、そこにいきますると、やれ故意だの過失だの、故意、過失がなければ何も刑事責任には問われないんだ、あるいは不法行為があるかどうかということによって責任の成立、不成立があるからそれはだめなんだ、企業自体の責任はそういう刑事責任などは食わせられるものじゃないんだ、企業責任はいわゆる司法処分、刑事責任の対象にはならないとか、そういうことで、私ども労働者立場からものを考えている者は、刑法というものは実にうまくできているものである、こういう一番大きな人殺しをやっている——私たちに言わせれば人殺しだ、まるでまとめて四百人、五百人の人殺しをしている、そういうような計画、別なことばで言えば、これは実際のことを言えば陰謀と言ってもいいのです。陰謀は悪いけれども計画なんです。このことをやれば必ず殺されるというそういう危険な計画を、ダイヤを組んだのでありますから、別なことばで言えば陰謀と言ったっていい。そういう人たちはいわゆる刑法の範疇の中に入れて過失を問われたり、故意の範囲の有無を問われても全部刑事責任の対象外にされているという、それを私は言いたい。その矛盾を一体あなた方はお気づきにならないのでございますか、その矛盾をお考えにならないのでございますかと私はお聞きしているのでございまして、そういう矛盾を改めない限りは、ここへどういう法案をお出しくださっても日本の国内から災害はなくなりませんよということを申し上げているのでございます。どうもこれは平行線でさっぱり一致点が見出されないようでございますけれども——答弁がございますか。
  39. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 小林先生るる御指摘の点につきましては、災害発生原因一つの大きな問題点であるということは私ども深く考えておるところでございます。ただ災害問題の所在につきましてはいろいろな御意見があろうかと思います。たとえば、災害発生原因については次のような三つの原因がある。第一は、社会環境、労働環境の不備ないしは労務管理、安全衛生管理体制の不備といったような一つの問題から生ずる場合、第二としては、物自体における欠陥、つまりは機械設備の欠陥とか有害ガス等の存在ということによる災害、あるいはまた労働者の身体の状態、行動の適否などからくる問題といったように、一つ体制からくる問題、物的な原因からくる問題、人的な面からくる問題と幾つかあろうかと思うのでございます。そこで、労働省といたしましても、今後災害防止対策の万全を期するためには、まず労働災害発生事由の問題点を明確に把握し、そして大体認識を統一した後に対策を立てたいという見地から、労働基準審議会にはかりまして労働災害防止対策の問題点とその具体的な対策について審議をわずらわしてきたところでございます。ごく近い機会にその結論を得ることと期待しておるのでありますが、御指摘の点につきましても十分留意いたしまして今後の対策を講じてまいりたいと考えます。
  40. 小林進

    小林委員 ただいま災害の起こる三つの理由を御答弁になりましたが、私は、物的とか人的要素あるいは人の健康その他の関係によって事故が起きるという問題にはまだ質問が及んでいないのでありまして、主として第一の環境、その環境も、これは労働省だけでお考えになる狭い意味の安全行政を言っているのではございません。国自体の姿勢の問題、資本主義自体の構造の中にその危険の生まれる問題があるということでございますから、これは言いかえれば労働省行政から離れて、政府自体、国自体が姿勢を直してもらわなければならない、こういう問題を問うているのでございます。いまの基準局長の答弁は、それはそれなりでちょうだいいたしておきます。この問題は、いずれ国鉄でもお見えになったり総理大臣でもお見えになったら、またひとつこのお経を繰り返していただくことにいたしまして、次にいま少し具体的に問題を展開したいと思います。  今日、就業人口は二千六百万とか二千七百万くらいといっておりますが、男子十五歳以上の就業者の中の死亡総数の中における不慮の事故死の比率を職業別にお聞かせを願いたい。
  41. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働災害によりまして死亡した者の総数は、昭和三十八年中においては六千四百三十人、三十七年においては六千九十三人というように死亡実数を把握しております。これは職業別には把握いたしておりませんが、産業別には把握はいたしております。ただ御質問の中で不慮のというおことばがございましたが、御承知のように、労働災害においては、補償問題にからみまして災害補償の場合には、労働者が過失がございましてもこれは問いませんので、過失の有無という意味の不慮ということでございましたならば、これは統計としてはあらわしておりません。その不慮ということが第三者の不法行為による事故であるということでありますれば手元には資料はございませんが、第三者の加害行為による災害ということで数字はございます。
  42. 小林進

    小林委員 私の言う不慮の死というのは、後段におっしゃる第三者の加害行為によってなくなったものですよ。それでよろしゅうございますから、それをひとつお聞かせください。
  43. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ございますけれども、手元にはございませんので後刻……。
  44. 小林進

    小林委員 それではあとで資料にしてちょうだいいたしたいと思います。  これは労働省ではないのでありますけれども、厚生省ですか、昭和二十九年、三十一年、三十五年と三つに分けて、職業別、産業別死亡統計というのがあります。それによると、二人のうち一人は事故で死んでいる、しかもその数というものは確実に増加している、こういう統計なんでございますが、これはひとつ厚生省に御連絡をいただいて、いつでもよろしゅうございますから、こういう数字を参考までにお聞かせ願いたいと思うのでございます。  次に、産業災害の実態は一体どうなっているのか、最近の情勢、けがで一日以上休まなければならないような件数はどうなっているのか、その中の死亡者の数字がどうなっているか。できればその経済的な損失は一体概算どれくらいになるかという資料がおありのはずでございますので、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  45. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 最近の全産業における死傷件数を申し上げますと、死傷総件数、これは御指摘のように休業一日以上でございますが、三十八年中におきましては七十五万二千五百件、その中の死亡者は先ほど申し上げましたように六千四百三十人でございます。三十七年におきましては七十九万四千二百件、死亡者が六千九十三人、三十六年は最高でございまして、死傷件数八十一万四千件、その中の死亡者が六千七百十二名、かようになっております。逆に申したわけでございますが、最近におきます死傷件数は三十六年が最高になっております。その後、実件数といたしましては漸減の傾向をたどっております。  ただいま申し上げましたのは実件数でございますが、これを労働者が増加しておるという最近の実情から見ますると、災害発生率の状況はただ実数だけでは把握できないのでございまして、一つ基準としましては死傷年千人率、千人について何人の死傷者があったかという観点からの一つの比率がございますが、これを見ますると、昭和三十二年を一〇〇としますれば、千人率は漸減いたしておりまして、三十六年では七七・七、三十七年では七一・五、三十八年は六五・二というように、まだ高率ではございますが、しかしながらかなり目立って低下しておるという傾向を認めることができます。  経済的損失につきましては計算方法がなかなか困難でございますが、世界各国共通の一つ考え方といたしましては、ハインリッヒの法則と申しまして、直接損害を基礎にして一定の経済的損失を推計する方式があります。それによりますれば、三十八年におきましては経済的損失推計額二千三百三十億、三十七年におきましては二千二百五十億、三十六年におきましては二千百億というふうに推計いたしております。   〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  46. 小林進

    小林委員 なかなかおもしろい——おもしろいと言っては悪いのでありますけれども、統計の数字をお聞かせいただきまして、だいぶ参考になったのでございますが、なるほど三十六年が八十一万四千件、死亡者が六千七百十二名、三十七年が七十九万四千二百、死亡者が六千九十三名ですか、三十八年は、これが若干減りまして、七十五万二千五百、死亡者が六千四百三十名、こういうふうに減っておりまして、比率でいけば、三十二年を基準年度にして六五・二%まで減ってきたとおっしゃるけれども、経済的な損害でいきますと、やはり物価が上がっていくから、三十八年が一番損害が多くて、二千三百三十億円。これはわれわれ気の小さい者は飛び上がるような大きな額で、災害によってこれだけの損害が生じてくるわけであります。経済的に考えても、労働災害というものは、私は一日もないがしろにはできないと思うのでありますけれども、経済的損害にも償うことのできない人命がいまなお三十八年で六千四百三十名も失われているというこの事実であります。六千四百三十名です。たいへんな数字だ。これは単に労働災害といえない。六千四百三十名ですからね。たいへんな数字だ。これを一体どうなくするかということが私は根本問題だと思いますけれども、何か一番最初の基準局長のお話によりますと、これから五カ年計画で一年間八%ずつ災害を減らしていく。六千四百三十人の八%といったらどのくらいになりますか。八%ずつ減らしていく。たいへん緩漫な数字の持ち方ではないかと思うのでございますが、いかがなものでしょう。八%の出た理由をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  47. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど申しました災害防止五カ年計画における年平均の減少目標率は八・八%でございます。これは死傷件数全体をひっくるめまして、その死傷千人率につきまして八・八%ずつ下げていきたい、こういうことでございます。この計算も平均を大づかみにしたものではございますけれども、各産業ごとの災害の実績を基礎にいたしまして、各産業別に災害減少の目標を設定いたしております。そういうことからいたしまして、努力目標としてはかなり実現性のあるものというふうに考えておりますが、五カ年の第一年度でございます三十八年の実績を見ますと、到達目標を上回りまして、九・四%の減少を見るに至りました。したがいまして、私どもとしては、漫然として八・八という年間目標を掲げておるのではなくして、できるだけ努力をいたしまして、それの成績をさらに上げたい。いま申しましたように、三十八年におきましては、すでに九・四%という実績を上げましたので、三十九年の目標といたしましては九・五%というように五カ年計画を上回る目標を示しておるような次第でございます。しかし、同じ災害と申しましても、死亡災害が最も深刻であり、重大でございますので、単に平均的な災害減少率を目ざすのではなくして、死亡事故はなくせ、これはゼロにしてもらいたいというふうに私ども努力いたしておるような次第でございます。諸外国の実績を見ましても、災害の率そのものはそう低くはないのでございますが、死亡事故ということになりますと、きわめて件数が少ないのでございます。したがいまして、全体の率の低下をはかると同時に、死亡につきましては一日も早くこれをゼロに近づけるという方向で努力したいと考えております。
  48. 小林進

    小林委員 死亡については別途ゼロに近づけていきたいという。それは非常にけっこうであります。ぜひそのようにしていただきたいと思うのでございます。いずれにいたしましても、ただいま、三十八年に八・八%の目標を凌駕して九・四%まで災害を縮めることができたとおっしゃいましたが、一体その数字はどうして出たのか。先ほどおっしゃいました死傷千人率によれば、三十二年度を基準年度にいたしまして一〇〇にして、三十七年度が七一・五、三十八年が六五・二、七一・五から六五・二を引くと、六・三%にしかならないですね、減少率は。そうすると、三十八年の九・四というのは三十二年の基準年度とは別途のところからまたその比率をおとりになったではないかと思うのですが、どうも労働省というのは、あっちから比率をとってきたりこっちからとってきたり、御都合のいいように勘定してきて、なかなか理解しづらいのでございますけれども、単純向きに容易に理解し得るように比率の数字をお示しいただきたいと思うのでございます。
  49. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 まことに説明が行き届きませんで、たいへん失礼を申し上げましたが、死傷千人率はきわめて単純なのでございます。すなわち、三十八年について申しますと、労働者数が、これは労働基準法の適用を受けまして統計の対象となっております労働者数でございます。これが二千二百八十一万七千人でございます。   〔澁谷委員長代理退席、亀山委員長代理着席〕 死傷件数が七十五万二千五百人、その千人率が三三でございます。同様に、労働者数と死傷件数を対比してみますならば、三十七年は三六・二、三十六年は三九・三、三十五年は四二・四というふうになるのでございます。これは千人率の実数でございます。先ほどは三十二年を一〇〇とした場合の指数を申し上げました結果、ちょっと混乱を招いたようでございまして、はなはだ恐縮でございます。
  50. 小林進

    小林委員 そこで大臣にひとつお尋ねをいたしたいと思いますけれども、私は、政府の経済政策をお進めになるとかいうときに、十年間に所得を倍にしようとか、成長率を年に五%とか六%とか率を上げようとおっしゃる努力目標はけっこうでございますけれども、こういう労働災害という人命に関するような問題を、そういう経済成長と同じようなカテゴリーで、ことしは八%減らしていこう、来年度は七%減らしていこう、そんな目標の立て方で行政を進めていっていいものかどうか。特に先ほど基準局長も生命に関することだけはゼロにしていくようにやっていきたいと言われたけれども、ここらあたりは私はいま少し計画を密にやって、今日この現場においても一人も命を失うようなことのないような安全行政を立案していくのがほんとうではないかと思いまするが、この点について御意見をひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 産業災害防止五カ年計画というものの考え方でございますが、従来から災害はできるだけ減すがいいということで、気をつけろ、気をつけろでやっておったわけであります。しかし、災害防止五カ年計画におきましては、一応どの程度まで減すか、これはむろん減せるだけ減すにこしたことはないのでございますが、努力の上にも努力して、どの程度にまで減し得るであろうかということをいろいろ検討いたしました結果、五カ年間に昭和三十六年度の実績を全産業について約半減したい、こういう目標を立てたわけでございます。それを毎年毎年災害減少の成績を引き上げていくという意味で五カ年に割りつけた結果が年間対前年比八・八%ずつ減していけば五カ年間で半減という目標に一応到達するであろう、こういうことでやったわけでございます。結果的に見ますると、とにかくその五カ年計画の推進によりまして、ある程度災害減少の実績をおさめつつあるわけでございますから、一応この五カ年計画計画として意義があったというふうに評価していただいてもよろしいのではないかと思います。
  52. 小林進

    小林委員 この五カ年計画災害を三十六年度を基準年度にして半分にする、これは行政を担当するにはそういうふうな計画をやはり立てていかなければならないのかもしれません。そうしてその目標の八・八%を少なくとも九・四%まで引き上げ成果をあげたというような御答弁もいただいておるのでございまするが、その中で私の言うこの人命、六千名からの人間が毎年労働災害で殺されているにもかかわらず、その命も含めて五カ年間で六千人死んでいるのを三千人にする、その三千人を一年計画で八%ずつ減らしていく、そういう安全計画が一体まともであるとお考えでありますかどうかということを聞いておるのです。所得倍増計画日本産業や経済を十年間で倍増するという、そういう計画で一年間に七%なり五%なり計画を伸ばしていくという計画ならば私はちょうだいいたしますけれども、いまみすみす人間の命がこうやって失われている。その命を五年間に半分にいたしますというふうな安全の計画、それとこれとは別個じゃないか。それを同じカテゴリーで計画を立てているのは私はちょうだいしかねます。言いかえるならば、今日この時限から、こういう作業のために一人も命をなくさないように計画を立てますという計画を何で立てないのかということを私はお尋ねをいたしておるのであります。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただ計画を立てて実行をしないというのならそれは幾らでもできます。しかしやはり行政上の目標として計画を立てました以上は、努力によってその成果をあげていかなければならない。計画はあってもさっぱり実績があがらないということになれば、それはやはり当局としては一つの失敗だ、このくらいの強い考えでもって進んでおるわけでございまして、またそれだからこそある程度災害防止成果をあげつつあるものと私は考えておるわけなのであります。もちろん八・八%ずつ災害を減らしていくということの中には、ことに重要なる人命をそこなうような重大な災害というものは一日も早く絶無にしようというつもりはあるわけでございまして、八・八%というのは、何もかも平均して八・八%ずつ減そうというようなつもりがあってやっておるわけではございません。できるだけ人命災害は一日も早く絶無にしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  54. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま大臣が申し上げたとおりでありますが、この減少目標産業ごとに非常な違いがございます。災害多発業種としからざるものとにおきましては、年間におきます減少率もかなり違うわけでございます。その中でも建設事業、貨物取り扱い事業などにおきましては、かなり高率な災害率を占めておりますので、したがって年間減少率も目標としては八・八%を上回る一一%以上の目標を設定しておるわけでございます。そのように各産業災害実績に応じた目標を個別設定いたしまして指導いたしておりますが、なかんずく死亡災害におきましては、建設業等におきまして多発いたしております。したがいまして死亡災害を減少するには、全産業を一律にとらえるのではなくして、そのような特定産業における死亡災害の減少につとめることが死亡災害を減らすキーポイントであろうというふうに考えまして、ただいま大臣が申し上げましたような精神を業種別指導の面において生かしておるということでございます。
  55. 小林進

    小林委員 これもしかし労働省だけで解決し得る問題ではございませんけれども、三十六年には、年間八十一万四千人もけがで一日以上休んでおる人たちが生まれておる。三十七年には七十九万、三十八年には七十五万、わずか四万前後の減少しか見ないのであります。それは重傷から一日休むという軽傷も含めておるのですから、それはおっしゃるとおり一〇%でも八%でも予算その他の問題もあるのですからそれはけっこう——けっこうとは申しませんけれども、それを絶無にしようという計画を打ち立てるならばそれでいいですが、それは別として、その中の死亡率ですよ。三十六年には六千七百十二名死んでおる。三十七年には六千九十三人死んでおる。三十八年には六千四百三十名とむしろ四百名もふえておるというこの死亡者だけは、産業災害で死んでいく人の命だけは、労働大臣もおっしゃるように、命は金で買えない、何よりも命が大切だとおっしゃっておる、この命だけは、漸減だ、順次比率で減らしていくという計画の中に入れたのでは、少し人間の命の扱いがお粗末すぎるではないか、あるいは実際上できない相談かもしれないけれども行政を担当する最高責任者としては、労働大臣、あなただけに言うことじゃない、せんじ詰めていけば総理大臣のところにいくのでありますが、少なくとも行政を担当する者は人の命を一つもそこなわないくらいな心がまえでいてもらわなければたまったものじゃございません。こういうことを私は申し上げておる。いかがでございますか、私の申し上げておることが間違っていましょうか。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 別に私ども考え反対しておるわけではございません。お考え計画にして進めていくと、われわれの計画の中にあるわけでございます。
  57. 小林進

    小林委員 どうも国鉄もなかなか見えないようでございますのでまたこの次にお伺いすることにいたしまして、次に予算の問題をお聞きしておきたいと思うのでありますけれども産業災害予算、これは労働省産業災害予算でございますが、三十八年度、三十九年度をお伺いいたしたいのでありまして、なおつけ加えて具体的にそれをどんなぐあいにお使いになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  58. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 安全衛生関係予算のいわゆる事業費的なものだけを申し上げますと、昭和三十五年一億四千八百万円、三十六年は一億七千万円、三十七年は一億七千九百万円、三十八年は三億六千六百万円、三十九年は六億七百万円というように、額といたしましては増加を見ております。それをどのように使うのかということでございますが、三十九年について申しますと、高率災害事業場災害防止活動に四千二百九十九万円、検定検査の強化に四千八百二十七万円、それから労働災害防止協会の育成に三億四千万円、重要職業性疾患防止対策に四千八百二十万円、研究機関整備充実に一億二千七百九十八万円というふうに計上いたしまして、それぞれの項目ごとに充実強化をはかりたいと考えております。
  59. 小林進

    小林委員 三十八年度の三億六千六百万円のお金はどんなぐあいにお使いになりましたか。
  60. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 三十八年度は三億六千六百万円でございます。高率災害事業場災害防止に二千七百十四万円、検定検査の強化に三千七百七十五万円、労働災害防止協会の育成に一億五千万円、しかしこれは労働災害防止法の成立を見ませんでしたので、これは不用ということに相なったわけでございます。それから重要職業性疾患防止対策に四千五百二十八万円、研究機関整備充実に一億五百八十二万円という内訳になっております。
  61. 小林進

    小林委員 この災害防止協会に三十八年度の予算を計上されて一億五千万円が使わなくなったということですが、今年度の防止協会に三億四千万円計上せられているわけでございますけれども、この法律がかりに通ったといたしますると、三十八年度分と合わせて今年度使用されるのでございますか。三十八年度分はそのまま大蔵省へ戻入といいますか、返されるわけでございますね。
  62. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 三十八年度にこの予算に計上せられました一億五千万円は全然使わず、これは繰り越されず、そのまま使わなかったという結果に相なりまして、三十九年度は三十九年度予算分として計上しました三億四千万円の予算で処理をするということになるわけでございます。
  63. 小林進

    小林委員 なお、ただいま提出をせられておりまする法案につきましては、若干関係団体その他におい意見の交換その他が行なわれておりまするので、そういう意見の交換の過程における問題をここで御質問を申し上げることはしばらくおくことにいたしまして、また次の機会に話の固まったところででも御質問を申し上げることにいたしまして、その前にわが社会党としてこの法案審議の過程に御希望申し上げたい点があります。申し上げて、お答えをいただきたいと思うのでございまするが、第一番には、安全衛生行政は何といっても労働省に一元化する、特に抜本的な予算化をひとつはかってもらいたいというのが、われわれの考えの第一でございます。現在安全衛生行政が一本化されていないことは御承知のとおりであります。どうしてもこれは一本化しなければならない。この点はいかがでありましょう。ひとつ大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その問題は政府といたしましても研究の価値ある問題だと、かように考えましていろいろ検討をいたしておるところであります。
  65. 小林進

    小林委員 同時に、いま申し上げましたように、抜本的な予算化をはかるということで先ほどお尋ねいたしました三十九年度の六億七百万円の中には、もちろん先ほど言われました労働基準監督官等の人員の増加に基づく費用は入っていないとは考えておりますが、別個に計上されているとは思いまするけれども、いずれにいたしましても、この六億の金は何か安全協会と民間団体に補助金でもくれて、そこでひとつ安全行政を自主的にやらせようというところに予算の面においても重点が置かれている。あとは研究機関等に一億何ぼの金をかけようというのでありますが、そういうことではなしに、いま少し予算を大幅にひとつ組み上げて、そして抜本的な対策予算の面においても組まれないものかどうか。先ほどからもおっしゃいましたように、三十五年度や六年度から見れば一億何がしの金が六億まできたのでございますから、経過の上では大きな増額でございましょうけれども、先ほどから繰り返しておりまするように事人間生命に関する問題であります。五億や十億や百億や二百億によってもし問題が処理されるならば、そんな金は何ぼ出したっていいじゃないか。こういう予算の面においてもいま少し本格的なかまえで取り組めないものかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  66. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この安全の問題につきましては、昨年の三池、鶴見の惨事を契機といたしまして、国民全体が安全問題の重要性を深く認識されました。労働者側におきましても職場の安全ということについて強い要望が出てまいりましたし、また使用者側におきましても産業の基盤強化産業の発展という上からいって、どうしても安全を重点にしていかなければならぬという機運が出てまいったのでございます。かような機運を見まして労働省といたしましても安全についての抜本的対策をこの際至急に確立する必要があると考えまして、先般来労働基準審議会におきまして、労使の代表をも含めまして十分に検討を願っておったわけでございます。この検討の結果今後の安全行政をいかにすべきか、また安全行政重点をどの辺に置くかということにつきましてある程度審議会の御意見も固まりまして、両三日中には答申があるものと思うのでございます。もちろんこの答申は安全対策全般につきましていろいろな方面を網羅いたしておりまするので、今後はその中の各項目ごとにさらに一そう精密な検討を加えていただきたいと思っておるのでございまして、明年度予算編成までに具体化し得るものはこれを具体化して、今後画期的な行政の刷新をはかってまいりたいと考えております。
  67. 小林進

    小林委員 それでは個条的に御返答いただきまして、他は後日に留保いたしたいと思いますが、これはこの法案に直接関係はいたしませんが、この法案の審議の過程において次にお伺いをしておきたいことは、労災保険です。労災保険の対象に新しい職業病もひとつ加えていただきたい。これは労災の問題でございますから、大臣お答え願いたい。ここで特にお尋ねをしておきたいのは、通勤事故を加えていただけるかどうか、この取り扱いの問題でございます。
  68. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働者の通勤中における交通事故について事業主の責任を認めるべきかどうかという問題につきましては、当委員会におきましてもいろいろ御論議のあったことでございます。何分近年におきまする交通災害というものの頻発の傾向にかんがみまして、通勤途上におきまする交通災害というものをやはり一つの業務上の災害として事業主に責任を持ってもらうということが、労務管理の上からいっても適当ではないかという意見もかなり広まってまいりましたし、現実に労働者方面の要望も強くなっているようでございます。そうした状況にございまするので、労働省といたしましても、この問題を、労災保険審議会においてただいま労災保険法の全面的改正の検討をなさっておられまするので、そのうちの重要なる項目一つとして御指摘の点を審議いたしていただくようにお願いをいたしておる次第でございます。審議の結果を待ちまして善処いたしたいと存じます。
  69. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御質問の前段の新しい職業病を考えて処置してもらいたいという御指摘がございました。御承知のように外国の法制とわが国の法制とは若干趣を異にいたしておりまして、諸外国におきましてはいわゆる職業病をそれぞれ法律または命令で特掲いたしまして、その特掲されたもののみが法的に職業病としての取り扱いを受ける、こういう形になっております。しかしわが国におきましては、労働基準法施行規則三十五条の規定で第一号から第三十八号に至るまでの個別的な職業病の列挙主義と包括規定を置いて、個別、包括両面にわたるきわめて弾力的な規定を設けておりますので、新しい職業病が法的にどう扱われるかという問題は、認定基準の問題とかかわりを持つということになろうかと思います。そういう観点から法制的にはほとんど問題がございません。ただいま申しました労働基準法施行規則第三十五条の規定によって処理するわけでございますので、行政の実際面における処置につきまして今後万全を期してまいりたい、かように考えます。
  70. 小林進

    小林委員 行政的処置で新しい職業病が処置していけるというなら、これはなおさらありがたいのでございますが、ぜひひとつ労働省は遅滞なくそういう新しい病気に対して適当なひとつ処置を講じていただきますることを切にお願い申し上げる次第でございます。  なお、第三点といたしましては当面労災法上の遺族補償をひとつ大幅に引き上げてもらえないか、こういう強力な意見があるのであります。なお、最低はいわゆるその人の賃金のいかんを問わず百万円、今日ちょっと百万円は少ないかもしれません。最低百五十万円ぐらいまではどうしても遺族補償でいけるように改めてもらえないかという問題でございますが、この点御所見はいかがでございますか。
  71. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、労災保険制度全般につきまして労災保険審議会でいま審議中でございます。したがいまして遺族補償が今後どうあるべきかという問題についても検討を願っておる次第でございますが、ただ諸外国の例を見ますると一時金というたてまえというよりも、むしろ遺族に対する補償でございますので、遺族にどういうような形、たとえば年金なら年金という形で充実をしていくというほうが適切ではなかろうかという見方もあるわけでございます。そういった問題を含めまして目下審議会において審議調査中でございます。
  72. 小林進

    小林委員 じん肺の療養に必要な経費、これもひとつ、願わくは全額補償をしてもらえないかという意見が強いのであります。御所見はいかがでありますか。
  73. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 じん肺につきましては、じん肺症の特殊性に応じましていろいろな問題がございます。補償の面におきましては、一般災害補償の改善に伴いまして今後充実されることが期待されるわけでございますが、じん肺患者につきましては、生活援護的な各種の問題がございまするので、単に労災補償の問題のみならず、いろいろな施策を通じまして労働者の生活安定に努力したいと考えておる次第でございます。この問題も、労災保険審議会におきまして労災保険法の全面検討の一環といたしまして検討願っておる次第でございます。
  74. 小林進

    小林委員 この際労働災害防止に関する法律案に関係をいたしまして、新しく中央に労働中央安全審議会ですか、名前は何でしたか、中央安全審議会でしたかが設けられることになっておるのでございまするが、この構成、特に規模であります、内容等についてわれわれのほうでは強く要望を申し上げておるのでございます。これに対する労働省のはっきりした御意見を承っておいて、一応きょうの質問を終わりたいと思います。
  75. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御質問の点、答弁に誤りがあったならばお許しをいただきたいと思いますが、労働災害防止に関する法律案の中で設けられておる機構ではないようでございまして、労使公益の三者構成になる審議会として、安全衛生の重要性にかんがみ、安全衛生審議会という専門、独立の審議会を設けるべしという御意見ではなかろうかと思いますので、お答えを申し上げます。  確かに安全衛生問題は特殊専門的な性格を持つものでございまするから、独立した別個の審議会を設けるというのも理由のある御意見でございます。が、しかし顧みますと、わが国の現状におきましては、安全衛生の問題が単に技術的な安全衛生問題にとどまらず、労務管理などの問題と非常に大きな関係を持つわけでございます。したがいまして労働省としましては、現在中央に置かれております労働基準審議会の中に安全衛生専門部会を常設して、絶えず安全衛生問題を調査審議するという体制のほうが、むしろ現実に合うのではなかろうかという考えを持っております。ただしかし、この点につきましても労働基準審議会に諮問いたしまして、その意見を聞いておるところでございます。ごく近い機会に、安全衛生問題に対する審議体制をどうすべきかという点についての結論を得ることと考えております。  ただもう一つ、先生の御質問の中に各省間における問題を処理するために産業災害防止対策審議会の存置の問題があるが、それはどうかという点を御指摘かどうかちょっと私はっきりいたしませんが、御承知のように総理府の中に産業災害防止対策審議会が設置せられておりました。これは去る三月三十一日をもって廃止されることとなったのでございますが、現下の情勢にかんがみ、さらに存置する必要があるという見地から、総理府におきまして総理府設置法の一部改正法案として同審議会の存続につきまして目下内閣委員会で御審議をいただいておるような次第であります。この総理府の産業災害防止対策審議会の運営等につきましてもいろいろ御意見があるようでございますが、この審議会をさらに強化いたしまして、真にその目的を達成し得るように運用するという点については、総理府、労働省、関係各省一致した意見でございますので、今後この運営につきましては、できるだけその設置の趣旨、目的に合致するように努力していきたいと考えております。
  76. 小林進

    小林委員 産業災害防止対策審議会の法案は現在内閣委員会で審議されておりますかどうですか。
  77. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 提案されておりますが、具体的審議はまだ……。
  78. 小林進

    小林委員 これに対する各省の一致点、あるいは労働省のお考え、構成メンバー等についてひとつ御意見を承っておきたいと思います。
  79. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 これは直接私からお答えするのはいかがかと思うのでございます。ただこの審議会の構成につきましては、できるだけ労使委員を同数という形で構成すること、あるいは専門家会議を設けること、あるいは安全監督行政についてもある程度の調査をなし得るような体制をとることなどにつきまして、御意見があることを承知いたしております。これらの点につきましては、過般総理府等におきましていろいろ検討をいたしておるところでございまして、方向としてはそのような考え方についてはおおむね賛成であって、これをどのように具体化するかという点につきましては、それぞれの段階において考慮したいという趣旨が表明されておるようでございます。したがいましてこの点につきましては、労働省の直接所管ではございませんけれども、今後の審議会の構成、運営につきましてはできるだけ協力いたしたいと考えております。
  80. 小林進

    小林委員 それでは、まだ質問は残っておりますけれども、きょうのところは一応これをもちまして私の質問を終わりたいと思います。
  81. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時四十九分散会