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村上(茂)
政府委員 第一の労使対等の原則を
安全衛生問題についても貫くべしという点につきましては、原則的に、基本的にはそのような原則を
労働省といたしましても貫くべきであるというふうには
考えておるわけであります。ただ労使対等と申しましても、
内容的に特質がございます。具体的に申しますと、
安全衛生基準を
法律で定めるないしは規則で定めました場合に、その法定基準というのは、労使交渉によって基準を定めるという性質のものではないのでありまして、事人命に関しますので、法定基準に違反した場合には、罰則をもって順守さすということでなければならないと思います。それ以上上回る作業環境ないしは労働環境における
安全衛生の基準をどうするかということに相なりますれば、労働協約によっていろいろ定めるということになるわけでございまして、それは
安全衛生のみならず、一般の労働条件、作業条件として労使の交渉によって決定するということでございますので、その点におきましては、労使対等の交渉ということは最も効果的に実現されると思うのであります。
ところで、先生の御
指摘の点は、機関なり、制度的に、労使が対等の立場でいろいろな見解を述べ得るような組織なり体制を、上から下まで実現したらどうかということであろうと思うのでありますが、その点についても、
審議会制度をどうするかというような国なり行政組織上のあり方の問題が
一つあると思います。その点につきまして、さらに改善
強化する必要があると存じまして、先ほど来問題になっております
労働省作成の
対策原案におきましても、その点について
一つの構想を示しておるような次第でございます。行政組織なり国全体の体制としてもどうするかという問題じゃなくして、個別
企業においてはどうするかという点につきましては、
安全衛生委員会等の活用の問題が出てくるわけでございますが、その点につきましても、
労働省としては検討に値する問題であるというので、
対策の中に事項として明記してあるというような次第でございます。
それから第二の問題として、ILO勧告三十一号の産業
災害の予防に関する勧告の趣旨が生かされてないじゃないかという点の御質問でございますが、御
指摘のように、労使の団体が関与するないしは協力するという
関係は、たとえば
災害予防の研究の場合の協力とか、あるいは
定期会合を持つというような、何と申しますか中身の問題ではなくて、これこれの場合には労使の団体が協力するとか、
定期会合を持つ、こういうような仕組みのことを言っておるというふうにわれわれは
考えておるのでございまして、そういった仕組みなり形をどうするかという点につきましては、今後におきましてもできるだけ改善して改めていかなければならないと
考えております。また勧告する場合に「資格ある
労働者を」云々というような御
指摘がございました。これは労働
監督制度が完備しない国もありますので、いろいろな事態を考慮してこの勧告というものができておると思うのでございますが、労働
監督制度はどうあるべきかという点につきましては、各国それぞれの
事情もあるようでございますし、外国の例を見ましても、必ずしも勧告のような形にはなっておらぬ向きもあるようでございます。これはILOにおける勧告という形式にもよることでございますが、いわゆる批准という問題がここにはないわけでございます。各国それぞれの
事情によりまして、必ずしも勧告に定める
状態にはなっていないようでございます。しかしながら、たとえば
監督機関の
職員の臨検の問題、あるいは
労働者が
申告できるような制度といったようなことにつきましては、形はやや異なっておりますけれ
ども、現行の
労働基準法におきましても、
監督機関の臨検制度があり、また
労働者が
労働基準法違反を
申告したとしても、それによって労働条件に差別取り扱いを受けないという規定も設けられておりますので、若干形は変わりますけれ
ども、実質においてはかなり実現されている面があるのではなかろうかというふうに
考えております。しかしいずれにしても、現在の
状態で十分だというふうには認識しておりませんので、今後における
対策をどうするかという面と関連をいたしまして、さらに
考えていきたいと思っております。