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1964-05-12 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十二日(火曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小沢 辰男君 理事 亀山 孝一君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 小林  進君 理事 長谷川 保君    理事 八木  昇君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    松浦周太郎君       松山千惠子君    粟山  秀君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木 一男君    山田 耻目君       吉川 兼光君  出席政府委員         労働政務次官  藏内 修治君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月七日  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第一六四号) 同日  戦傷病者中央援護福祉施設建設費助成に関する  請願羽田武嗣郎紹介)(第三三九七号)  戦傷病者特別援護法改正に関する  請願羽田武嗣郎紹介)(第三三九八号)  同(登坂重次郎紹介)(第三四三三号)  戦傷病者の妻に対する特別給付金支給に関する  請願羽田武嗣郎紹介)(第三三九九号)  同(登坂重次郎紹介)(第三四三四号)  公衆浴場営業用上水道及び下水道料金減免に関  する請願椎熊三郎紹介)(第三四一三号)  同(田口長治郎紹介)(第三四一四号)  同(坂田英一紹介)(第三四四二号)  同(福永健司君外一名紹介)(第三五九二号)  公衆浴場業健全経営維持管理特別措置に関  する請願外一件(江崎真澄紹介)(第三四一  五号)  同(加藤清二紹介)(第三四三八号)  同(佐々木義武紹介)(第三四三九号)  同(鈴木善幸紹介)(第三六五八号)  全国一律最低賃金制の確立に関する請願小林  進君紹介)(第三四一六号)  同(島上善五郎紹介)(第三五〇八号)  同(加賀田進紹介)(第三六六〇号)  理学療法士及び作業療法士法制化に伴う経過  措置に関する請願宇野宗佑紹介)(第三四  三六号)  同(唐澤俊樹紹介)(第三五〇七号)  同(吉川久衛紹介)(第三六六一号)  理学療法士及び作業療法士制度化に関する請  願外十四件(宇野宗佑紹介)(第三四三七  号)  全国一律最低賃金制実施に関する請願天野光  晴君紹介)(第三四五八号)  療術の制度化に関する請願和爾俊二郎君紹  介)(第三四五九号)  同(安藤覺紹介)(第三五七四号)  同(石田博英紹介)(第三五七五号)  同(小沢辰男紹介)(第三五七六号)  同(島村一郎紹介)(第三五七七号)  同(關谷勝利紹介)(第三五七八号)  同(高見三郎紹介)(第三五七九号)  同(中村庸一郎紹介)(第三五八〇号)  同(永山忠則紹介)(第三五八一号)  同(野呂恭一紹介)(第三五八二号)  同(八田貞義紹介)(第三五八三号)  同(原田憲紹介)(第三五八四号)  同(水田三喜男紹介)(第三五八五号)  同(三田村武夫紹介)(第三五八六号)  同(毛利松平紹介)(第三五八七号)  同(山田彌一紹介)(第三五八八号)  同(山村新治郎君紹介)(第三五八九号)  父子家庭援護に関する請願谷口善太郎君紹  介)(第三四八九号)  P・T師法の制定及びあん摩師はり師、きゆ  う師及び柔道整復師法改正等に関する請願(  臼井莊一君紹介)(第三五三二号)  全国一律最低賃金制即時法制化に関する請願  (川上貫一紹介)(第三五三三号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願(上村千一  郎君紹介)(第三六五三号)  同(中島茂喜紹介)(第三六五四号)  同(田口長治郎紹介)(第三六五五号)  同(谷垣專一君紹介)(第三六五六号)  同(福井勇紹介)(第三六五七号)  あん摩業における盲人の職域確保等に関する請  願(亀山孝一紹介)(第三六五九号)  南アルプス国立公園早期指定に関する請願(吉  川久衛紹介)(第三六八四号)  同(倉石忠雄紹介)(第三六八五号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第三六八六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働災害防止に関する法律案内閣提出第六  号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働災害防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。八木昇君。
  3. 八木昇

    八木(昇)委員 労働災害防止法について若干質問をいたしたいと思うのですが、その前にちょっと数字的なことを二、三お伺いをしたいと思います。  それは、労働省のほうから資料としてお出しいただいておりますものには、労働災害状態について昭和三十二年度以降の数字が大体示してあるのですが、ちょっと聞くところによりますと、昭和三十年度昭和三十一年度あたりは比較的災害が少なかったようにも聞きますので、昭和三十年度と三十一年度数字がわかれば、概略御説明いただきたいと思います。
  4. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 数字でございますので、私からお答え申し上げますが、資料といたしましては、三十年、三十一年の資料がもちろんあるわけでございますが、実数から申しますと、休業八日以上の死傷件数は、三十年においては三十三万五千四百、三十一年におきましては三十六万六千というように、三十五年、三十六年の数字から見ますと、実数ははるかに低くなっております。しかしながら、別に死傷千人率、千人当たり死傷率を見ますと、三十年におきましては二八・二、三十一年におきましては二八・四という数字になっておりまして、現在の、たとえば三十七年の死傷千人率の二一・三に比較いたしますと、最近は死傷千人率は低下しておるという状況にございます。  なお、確かに三十年におきましては死傷件数実数が少ないのでございます。それは御承知のように、二十九年、三十年はかなり不況でございまして、産業活動が停滞しておったというような背景が裏にございまして、それで産業活動が不活発というようなこと等も、死傷災害実数が少なかったことの原因ではなかろうかというふうに見ておるわけでございます。
  5. 八木昇

    八木(昇)委員 その理由につきましてはいろいろ考えられると思いますが、昭和三十二年と比べて昭和三十八年がどうだという場合と、昭和三十年と比べてどうだという場合では、だいぶ開いてきますので、ちょっと参考までにそこの数字を伺ったようなわけです。  ついでにそういった数字をもう一つだけ聞いておきたいと思うのですが、それは本年度労働災害防止対策関係として、国は一体いかほどの予算を計上しているかという問題についてでございます。この予算書によりますと、私ども内容が詳しくわからないのでありますが、一応事業主団体における自主的災害防止活動助成として、労働災害防止団体に対する補助金、これに三億四千万円がある。その次に労働災害防止に関する行政指導強化として、三項目ばかりありまして、第一項目高率災害事業場災害防止、これが四千三百万円、それから検定検査が四千八百万円、重要職業性疾患防止が四千八百万円、こういうことになっております。それから災害防止に関する技術振興で、研究機関整備充実という点で一億二千八百万円、計六億七百万円、こういうふうになっておりますが、労働災害防止対策関係予算としては大体こういう数字だと理解していいわけですか。
  6. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 人件費などを除きまして、いわゆる事業費は、先生いま御指摘のとおりでございます。
  7. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの数字のうち、事業主団体における自主的災害防止活動助成という項目の三億四千万円、これの内訳は、中央協会が一億円、業種別協会が二億円というように、大きな内容について説明してありますが、これについてちょっと説明をしてください。
  8. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働災害防止団体に対する補助金は、御指摘のように三億四千万円でございまして、そのうち一億円が中央協会、二億四千万円が業種別協会補助されるわけであります。業種別協会としましては、五つ協会が予定されておりまして、建設業、林業、陸上貸物取り扱い事業港湾荷役業、鉱業、この五つ災害多発業種が予定されております。この補助対象となります費目は、人件費の中の主要な部分と、それからいわゆる活動費と申しますか、経常的な経費の中で特に必要な部分に対して補助をするという予定になっております。
  9. 八木昇

    八木(昇)委員 これはむろん政府一般会計からの支出でございますね。——そうじゃありませんか。これは労災からですか。そうしますと、今度は労働基準局並びに労働基準監督署、ここにおける基準監督官一般職員のそれぞれの人数、それからこれらに要する人件費予算、それを説明してください。それの前年度と比べての増減も若干含めて説明願いたい。
  10. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働基準局人員でありますが、昭和三十八年度におきましては合計八千七百六十九人の職員定数になっております。それが三十九年度におきましては百六十九名の増員を見ておりまして、八千七百六十九名に百六十九名をプラスしたのが三十九年度の定員ということに相なるわけでございます。その中で監督官は何名かということでございますが、監督官の総数は三十八年度におきまして二千三百九十八名でございます。その内訳は、一般会計が千五百四十三名、特別会計が八百五十五名となっております。これに対しまして、三十九年度におきましては百六十九名の増員があるわけでございますが、このうちの相当部分監督官としてふやしたい、かように考えております。  その人件費総額でございますが、一般会計人件費総額は二十億九千万、特別会計人件費は二十四億七千万、かように相なっております。
  11. 八木昇

    八木(昇)委員 これだけ労働災害問題が大問題となっておることを考えますと、労災防止関係の全般的な予算が非常に少ないし、人件費も非常に少ないと思うのです。いまの八千七百六十九名プラス百六十九名が本年度基準局並びに監督署関係人員だということでございますが、これは明確には分けられないかもわかりませんけれども、この中で労働災害防止関係といいますか安全衛生関係といいますか、そういった方面の仕事を主として行なう、まあそういう方面に主として従事しておるという部門の人員は、どのくらいであるか。それから、それを今度は基準監督官についても説明してください。
  12. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 安全衛生業務に従事する職員でございますが、第一線の監督署になりますと、一般監督安全衛生監督が含まれて監督が行なわれておりますので、その区別をはっきりさせることは実はちょっと困難なのでございますが、一応私ども災害防止対策に従事しておると考えております職員の数は、監督官一般職員、全部合計しまして二千六百人程度災害防止関係業務に従事しておるというように考えております。その中で監督官はどのくらいかということになりますと、これもなかなか区別が困難でありますけれども、千四百八十人程度監督官として安全衛生業務に携わっておるというふうにわれわれは考えております。
  13. 八木昇

    八木(昇)委員 ということは、今年度監督官が二千三百九十八名プラス百六十九名の数でございますが、その二千五百名余りの監督官のうち千四百八十名程度安全衛生関係に従事しておるという意味でしょうか。であればさらにお伺いをいたしますが、その監督官といいましても、役付職員——課長であるとかその他、これらも全部監督官になっておるわけでしょうが、実際この中で現場を歩いて事実上実働的な監督業務を行なっておる者はどの程度で、そうしてその人たちは一体一年三百六十五日のうち何日くらい現場へ出動しておるのか、その辺をちょっと説明してもらいたい。
  14. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど申し上げました数字は、たとえば労災補償職員は含まないとか、賃金関係専門職員は含まないとか、いわゆる安全衛生以外の業務に従事しておる職員を除きまして計算した数字でございます。したがいまして、災害防止対策のために活動しておる職員の数は何名かということになりますと、先ほどの数字を再びお答えするということになるわけでございます。それらの職員が三百六十五日のうち何日どの程度監督しておるかという点につきましては、実は各局及び各監督署におきまして、それぞれの地方の状況に応じましてそれぞれの監督実施計画をつくっておりますので、三百六十五日のうち何日監督に従事しておるかという点につきましては、非常に個別的な事情がございますので、本省といたしましては明確な数字を持ち合わしていない、こういうことでございます。しかしながら一年間のうちでも、たとえば六、七月は安全週間が実施される、九月ごろは衛生週間があるというようなことでございまして、年間数回にわたりまして安全衛生業務重点的に実施されるということもございますので、一年間を通じて見ましたならば、そういう安全週間衛生週間をピークにいたしまして災害防止のための監督業務が非常に強化される、こういうことは申し上げることができると思います。
  15. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、全国企業の数はばく大な数にのぼるのですが、その企業も大小さまざまあるわけですから一がいには言えないでしょうが、一体一つ事業場について監督官は一年に何回——私は一年半に一回くらいしか来ないと思うのですけれども、実際どのくらいの割合で現場へ出向いて監督業務に従事しておるか。
  16. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 三十八年四月一日現在の労働基準法適用事業場の数が百八十六万九千というふうになっておりまして、御承知のように年々適用事業場の数は増加いたしております。それに対しまして労働基準監督官及び基準局職員の数はそれに比例してふえておりませんので、機械的に計算いたしますと、職員一人当たり適用事業場担当数がかなりな数字になっておることは事実でございます。一方年間どれくらい監督を実施しておるかと申しますと、定期監督と申しまして、監督計画を作成いたしまして定期監督を実施いたしております数は、昭和三十六年度では十七万六千、三十七年度では二十万というように逐年定期監督実施の数も増加いたしておりますが、適用事業場数がかなり上回っておりますので、監督実施率としては定期監督は一一%ないしは一二%というような数になっております。しかし別に申告による監督があるわけでございます。すなわち、労働者当該事業場において基準法違反があるという申告を行ないました場合には、その申告に基づく監督はほとんど実施いたしておりますので、定期監督の二十万という数字申告監督が上積みされるわけでございます。そのような状況にございます。ただその監督を実施いたしますには、事業場数がふえたから直ちにそれに比例して業務が繁忙になるかどうかという点については監督やり方にも関係があるわけであります。すなわち古くからあります事業場におきましては、労働慣行がある程度一定しておりますので、毎年監督実施しなければならないというわけのものでもない。かなり成績がよろしくて、そうして労働慣行が非常に良好であるという事業場もあるわけでございます。したがいまして、監督の場合には問題のある事業場対象といたしまして重点的に監督するということが実効があるであろうという観点から、監督実施やり方もそのように運用いたしておる次第でございます。
  17. 八木昇

    八木(昇)委員 以上承って、いろいろ釈明はされますけれども、私も非常に驚くのですが、労働基準法適用事業場の数が百八十六万九千あるというわけですね。その百八十六万九千の事業場を千四百八十人程度の人でもって監督しているわけですね。そうしますと、千四百八十人の人が百日間出動して十四万八千にしかならない。事業場は百八十六万あって、先ほどの御説明定期監督は一一%ないし一二%とおっしゃるのですから、平均をとりますと一事業場について十年間に一ぺんしか定期監督は受けないということですか。
  18. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 機械的に計算いたしますればそれに近い結論になってくるのでございますが、ただ行政指導といたしましては、たとえば労務管理指導監督をあわせまして集団指導を実施いたしております。具体的に申しますと、約八百の集団を把握いたしまして集団として指導するということになりますれば、その一回の件数相当数監督ないしは指導が行なわれるということに相なりますので、監督回数としましては、数はそう多くならないので対象となっておる事業場は相当な数にのぼるということもございますので、私ども労働基準監督実効があがりますようにという観点から、中小企業に対しては集団指導、最も注意を要すべき事業場に対しましては定期監督ということで実施いたしておりますので、確かに労働基準監督官の数は事業場数の増加に比例いたして伸びておりませんので、なかなかたいへんだということは率直に申しまして言うことができると思います。しかしその点は行政運用にあれこれいろいろ配慮をいたしますと同時に、たとえば監督実施のために機動力を増強する、その他いろいろの措置を講じまして監督をできるだけ容易ならしめるように配慮いたしておる次第でございます。
  19. 八木昇

    八木(昇)委員 この点についていろいろ質疑する点が本日の重点でありませんから、あまりかれこれ申し上げませんけれども労働基準法は戦後でき上がったわけで、まだ歴史も浅いわけですね。そうして実際には労働基準法使用者に十分な認識をまだ得られていないわけです。特に中小企業においては、むしろ多かれ少なかれ基準法に違反しておるというのは公然の秘密みたような状態にまだ日本の現況はある。こういうことを考えると、これは何も監督官をふやすばかりが能じゃありませんし、それから監督をするばかりが能ではないので、要は基準法が厳正に守られて、円滑にこれが実施せられておるというところが中心でありますけれども日本状態は、基準法に関する限りはまだまだ過渡的状態にあるという事情考えると、これはあまりにも弱体過ぎはしないかということを痛切に感ずるわけです。一体これでいいとお考えになっているかどうか。当然いいとはお考えになっていないと思うのですが、これについてどういうお考えを持ち、今後どういうふうにやりたいと思っておられるか。これは労働省局長だけの考えじゃどうにもならぬ問題だろうと思いますので、これは次官からお答え願いたい。
  20. 藏内修治

    藏内政府委員 労働災害防止につきまして、いまの安全管理体制というものがあまりに弱体ではないかという御指摘がございました。そういう点は確かに御指摘のとおりであろうと思っております。そういう点につきまして、この災害防止するという観点から、重点業種に対する監督強化であるとか、あるいは自主的な安全体制を監視をしてとらせるというようなこと、あるいは行政体制あるいは法令の整備、こういうような点にいろいろ重点を指向して、労働行政として最重点を指向してやってまいったわけでありますけれども、それでもまだわが国の災害発生状況というものは必ずしも低い状態には押えられておりません。そういう状態からいたしまして、むしろこの災害発生そのもの災害現場においてどういう点に原因があったかという点を把握することももちろんでありますけれども、さらにもう一つ労働の環境であるとか、その他種々の要因というものが必要であろうと思います。そういうものを正確に把握するということが必要であろうと思います。そういう点から見ますると、労働基準法のもっと徹底した教育といいますか、この法律の取り扱いを特に使用者に慣熟していただくということも必要であろうと思いまして、より総合的な対策というものをただいま労働省として案を立てておりまして、これを近く中央労働基準審議会審議をお願いしょうと思っております。確かに現在の災害防止のための監督官の数等も現状においては不足であろうと思いますので、この点も鋭意増員の方向に努力をしてまいりたいと思っております。
  21. 八木昇

    八木(昇)委員 それは当然のこととして、今後内閣全体としても、労働災害について相当重要な関心を持ってきておりますし、世論もその声が、特に労働災害関係して非常に批判も強いわけですから、積極的に努力をしていただきたいと思うのです。  それともう一点、これも次官伺いたいと思うのですが、労働災害関係予算が、いまの人件費を除いてわずかに六億というのは非常に少ない。しかもその内容を聞きますと、一般会計からの支出分というのは、これはもうほとんどわずかであって、これはこの労災のほうの金から出ておる。しかも労災の金というのは政府の金ではないのであって、結局保険料として取り立てた金からの支出である。しかも私非常に遺憾だと思いますのは、監督官を含むそれらの人件費についても一般会計からの支出よりはいまの労災関係から出ておる支出のほうが多いでしょう。そこで、そういう点についてお考えはありませんか。私は当然これらの経費は、特に人件費に関しては一般会計から全額支出すべきものではないかというふうに考えるのですが、その点どうでございましょうか。
  22. 藏内修治

    藏内政府委員 確かに八木委員の御指摘のとおり一般会計から支出いたしまする経費よりも労災特会から出ておる経費のほうが三倍近くの金額になっております。しかしながら一般会計それ自体を三十五年度と三十九年度とを比較いたしますと約倍になっておる。一般会計自体も極力ふやしたいと思っておりますが、労災関係経費から支出いたしまするという、まあ国際的と申し上げてはおかしいのですが、世界各国の例もございますし、つとめて一般会計のほうをふやすようには努力をいたしますが、特会のほうの支出もある程度はやむを得ないのではないか、かように存じております。
  23. 八木昇

    八木(昇)委員 これはぜひとも一般会計からの支出を、今後一挙にできないにしても、ふやしていくように努力をしていただかなければならないと私は思うのですが、こういうようなことはどう考えても私は現状のようなことは許されないと考えるわけです。それと、これはこの社会労働委員会調査室のほうで御調査になった資料によりますと、西ドイツとかフランスあたりでは労働災害保険財源から、災害防止方面活動のために、その財源の大体三%、保険料収入の約三%を大体注入しておるということになっておるのですが、これを日本に当てはめますというと、本年度保険料収入が約六百億円になりますから、これの三%といえば十八億ということになる。この十八億円は、ほとんどがいわゆる活動費、ここに書いてありますところの各種の災害防止するための検査であるとか、あるいは研究費であるとか、その他そういう活動費の部面に、少なくとも二十億くらいは回されるべきではないかというふうに考えるわけです。その点についての政務次官のお考えと、それから、現状日本において、それらのいわゆる活動費の面にどの程度労災から資金が支出されておるかという点を、局長のほうから御説明願いたいと思います。
  24. 藏内修治

    藏内政府委員 労災保険のほうから支出しております経費人件費施設費と両方合計いたしますると、約一五%近い数字になるわけでございます。こまかい点は、またひとつ基準局長から説明いたさせます。
  25. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のように、外国の例を見ますると、たとえば西ドイツでは、保険料収入の約三%を災害防止活動費に充てておる。フランスにおきましても、同様約三%であります。このように、外国におきましても、災害防止活動のために、労災保険料収入を充てるという例は多いわけでございます。そういう意味合いから、労災保険のたてまえといたしましても、保険給付に直接要します費用のほか、保健施設、たとえば労災病院の建設であるとか、それから、先ほど申しました災害防止協会補助金であるとか、そういった直接保険給付に支払います経費のほかに、保健施設等に要する費用といたしまして全体の約一五%を予定しております。しかしこの率は、多少前後することがあるわけでありますが、保険料収入全体の規模が増加いたしてきておりますので、この一五%という保健施設等に充て得る経費に若干の余裕も生じてきたという事情にございまするので、先ほど申しました災害防止協会補助金というようなものも考え得るに至ったということが申し上げられると思います。  それから、はなはだ恐縮でございますが、先ほど一般会計人件費を二十億九千万と申しましたが、これは三十七年度数字を申し上げました。三十九年度におきましては、二十七億六千万というふうに、労災保険人件費を上回っておりますので、御了承いただきたいと思います。
  26. 八木昇

    八木(昇)委員 二十七億六千万と二十四億七千万ですね。——まあ、一応数字的な点の質問は以上程度にいたしまして、最近、労働災害の千人率というのは、幾らかずつでも落ちてきたということをいわれるわけですが、しかしながら、全体としての労働災害発生件数というものは、ずっとやはりふえてきておる。しかも、三池炭鉱のあの大災害、あるいは同じその日に鶴見事故が起こる。しかも、一たび起これば、たいへんな大事故が発生するという現象になってきておることは、私が申し上げるまでもないわけですが、最近、こういう労働災害が瀕発する根本原因は一体何であるかということについての見解をお示しいただきたいと思うのです。それは一口に言えば、私は、資本家陣営の合理化攻勢である、最大の原因はそこだと私ども考える。というのは、技術革新だ、合理化だ、生産性の向上だ、開放経済体制に備えてこれはもう日本の鉱工業における至上命令だということでもって、盛んにこれをあおっている。そうして、それぞれの企業家は、激しい企業間の競争に勝ち抜いていくためには、これは絶対的にそういう強い進め方をせざるを得ない。これに対して、災害防止する方面の体制というものが伴っていないというところに、思わざる大災害というものが起こる。三池炭鉱の場合などは、その一番典型的な例ではないか、こういうふうに私ども考えるのですけれども、一体、これほど最近、労働災害が起こる最大の原因、その根源は何であるかということについての御見解をひとつ承りたいと思います。
  27. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 きわめて重要な問題でございますが、災害発生原因を検討いたします前に、災害現状をつぶさに検討いたしまして、その問題の原因を突き詰めたいというふうに日ごろ考えておるのでございますが、災害発生件数は確かにまだ七十四万というように膨大な数になっておるのでありますが、しかしそれにいたしましても、三十六年の八十一万をピークといたしまして漸減してきておるのでございます。全体としては七十四万という死傷件数に相なっておりますことははなはだ遺憾でございますが、しかし、さらにこれを各産業別に見ますると、従来、災害対策上きわめて問題の多かった建設事業であるとか貨物取り扱い事業といったような事業におきましても、最近は著しい事態の改善を見ておりまして、死傷千人率から見ますると、たとえば建設事業などにおきましては、三十三年においては八九・九という非常に高率な死傷千人率を示しておりましたが、それが三十八年におきましては、四五・五というように半減するに至った、このような実績もあるわけでございます。したがいまして、災害発生原因を検討いたします場合には、この産業別のある程度きめのこまかい原因探究をいたしまして対策考える必要があると思います。しかしながら、最近における産業構造の変化あるいは企業における体質改善といったようなもろもろの問題がございますので、従来における問題意識では不十分であるというふうに私どもも反省いたしまして、この際、労働災害防止対策のために問題点を明確に把握し、その対策を根本的に考える必要があるというふうに考えたわけでございます。そのような観点から、先ほど労働政務次官からもお答えがございましたように、中央労働基準審議会に、労働災害防止上の問題点と対策という観点から試案を提示いたしまして、目下検討を願っておるのでございますが、従来、労働省がとっておりました態度と基本的に違いまするのは、災害防止の問題を単に技術的な問題として把握するにとどまることなく、たとえば人命尊重観念の高揚、産業の体質改善を要する問題、企業外の阻害原因企業内の問題、行政上の問題といったように総合的な立場から問題の探究をいたしまして、その上に立って対策考えたいというふうに考えておる次第でございます。その内容は、非常に多岐にわたりますので、詳細は避けたいと思いますが、総合的な角度から問題を把握して対策を講じたいというふうに考えておる次第でございます。
  28. 八木昇

    八木(昇)委員 いまお答えいただいた、労働災害防止上の問題点と対策という労働省の試案を中央労働基準審議会にいま諮問をしておられるというその問題についてはこのあとちょっと御質問したいと実は思っております。  その前に、いま申し上げましたように、いわゆる近代的な形での災害というのが非常に悲惨な大事故を生んでいるわけですね。なるほどいま局長が言われるように、あるいは建設関係であるとか林業関係であるとか港湾関係であるとか、そういった部面での災害関係というのは、足の骨を折った、手の骨を折った、ある場合には墜落して一人死んだ、二人死んだというようなものについては、多少とも災害防止が進んでおるということが言えなくもないかとは思うのです。しかし、近代的な様相を持つ災害はこれから先はますます大きな社会問題となるだろう、こういうふうに考えるのです。たとえば一つの例として乗りものの運転に従事する人、電車の運転手あるいは蒸気機関車の運転手、あるいは飛行機あるいはタクシー、トラック、こういうような人々については、一日何時間以上乗務させてはならぬ、こういうようなこと等について、現在の基準法の限界一ぱいということになれば、どうしても相当無理がくるところがありはしないか。そういう交通機関にしましても、だんだん近代化し、高度化していきますと、現在の基準法の労働時間の規制ということだけではこれは無理なのじゃないか。たとえば、非常な高速度で走るところの電車の運転手は、一日に四時間なら四時間以上は乗務させてはならぬというようなこと等が必要なのじゃなかろうかとぼくらはしろうと考え考えるのですが、そういう点については現実にはどういう指導がされているか、そういう点を伺いたいと思います。
  29. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 確かに先生御指摘のように、科学技術の進歩に伴いまして、高能率の機械設備ができてまいる、または新しい化学物質を利用するということによりまして、一たん災害発生しますと、非常に大きな災害が生ずるということを私どもも心から心配いたしておる次第でございます。この点につきましては、まずそのような高性能の機械、それから非常にスピードの伴う機械といったような、機械自体についての安全性をさらにさらに高めるということが基本であろうと思います。すなわち、そのような性能の高い、しかし危険の伴う機械施設に対しましては、安全装置の完備、自動制御装置を付帯的に設備するとか、そのような特別の配意が必要であろうと思います。そういった安全な状態に機械施設を置いた上で労働時間をどうするかというふうにわれわれは考えるべきでなかろうかと思っておる次第でございます。そのような観点から、労働時間問題につきましてはいろいろ問題があろうかと思います。したがいまして、この点につきましては、各方面の意向を聴取すべき必要があるという観点から、すでに労働基準審議会に対しまして、労働時間のあり方についてもいろいろ御検討願っておるというような次第でございます。
  30. 八木昇

    八木(昇)委員 労働時間問題については少しのんびりし過ぎているのじゃないかと思うのです。たとえば、タクシーなんかの場合、実際には最大限一日に何時間くらい乗務することが許されているのですか。
  31. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 タクシーの場合も、原則としては八時間であるわけであります。しかし一週を通じての八時間という観点から、隔日に休みまして隔日に十六時間勤務する、こういうような形もとられておるわけでございます。したがいまして、当該日だけをとらえますと十六時間というような状態がございますけれども、一週間を通じては八時間という原則が採用されておる、このような形になっておるわけであります。この点につきましてもいろいろ御意見があろうかと思うわけでございますが、そのような問題につきましても、すでに労働基準審議会におきましていろいろ御検討願いたい、かような考え方で諮問をいたしておる次第であります。
  32. 八木昇

    八木(昇)委員 東京あたりでタクシーに乗って運転手にどういう勤務をしているかと聞きますと、一日勤務して一日休む、それで勤務の日は十六時間だそうですか、これはべらぼうな話だなと私は思うのです。私自身が自動車を運転しますから、自分で運転してみてわかります。それは何時間かならばやはり緊張が何とか続きますが、しかし、十六時間も都会地なんかで休まずにぶっ飛ばしておるというのは問題があります。それで基準法上は原則は八時間になっておるが、時間外労働というのは許していないのですか、実際八時間以上の労働は。
  33. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御承知のように、八時間という労働時間の例外といたしましては、一般に行なわれておりますのは、労働基準法三十六条に基づくところの労使協定によりまして時間延長を行なうということにいたしておるわけでございます。したがって、いわゆる三六協定による例外はかなりあるわけでございます。  なお、ただいま自動車運転手の問題の御質問がございましたが、自動車の運転上の安全問題につきましては、現在の路面整理の問題その他いろいろございます。しかしながら労働省といたしましては、この運転管理、労務管理と申しますか、そういう観点からさらに改善の必要があるというふうに考えまして、労務管理全体の面からさらに向上改善をはからなければいけないということで指導しておるような次第でございます。
  34. 八木昇

    八木(昇)委員 タクシー問題はあまり私も詳しく研究はしておらぬのですけれども、その三六協定によって八時間以上の労働を労使協定で協定する場合、基準法ではたとえば炭鉱労働者の場合には二時間以上の時間外労働は、いかに労使協定を結ぼうともやらせてはならぬことになっていますね。しかし、タクシーの場合には三六協定を結べば何時間でもいいのですか。現実にそれが行なわれておるのでしょう。
  35. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 法律上は三六協定をなすべき場合の制限条項というのは、御指摘のように炭鉱でありますとか、年少者であるとか、そういった特別のものにしか規定いたしておりません。したがいまして、それじゃ無制限かという考え方も出るわけでございます。しかし、その程度につきましては、労働者が従事します作業の種類、形態によりましてかなり違ってくると思うのであります。その点につきましては、いわゆる三六協定をいたしまして労働基準監督署に届け出をします際に労働基準監督署においてその三六協定の内容審査をする、そしてその作業にふさわしい合理的な形における時間延長というような措置がとられますように配慮いたしておるような次第でございます。
  36. 八木昇

    八木(昇)委員 いなかあたりのタクシーの運転手は、八時間なら八時間といっても、八時間のうち半分くらいは休んでいるというようなところもないわけじゃないのですね。そういうところでは、労働者自体が八時間じゃなくて、もっと十時間も十一時間も、場合によっては十二時間も希望するということがないわけじゃないでしょう。しかし東京であるとか大阪であるとか名古屋であるとかいうような大都会地において、現実に三六協定によって一日の時間外労働を三時間も四時間も認めておるという実情があるのかないのかということを聞いておるわけです。
  37. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 タクシー会社によりましては、三六協定によりまして、かなりの時間外延長をやっておるという例もあるようでございます。ただこの問題は、御承知のように労働時間の面ばかりではなくして、賃金体系の問題とも関連するわけでございます。したがいまして、通常の工場労働のように、機械の運行と労働が結びついて、作業時間が精神的、肉体的緊張を伴うというものとは違う労働におきましては、その点いろいろ問題もあるわけでございます。タクシーの場合におきましては、賃金体系が御承知のように、基本給以外に歩合給に依存する面が非常に多いわけでございますので、その歩合給制度のあり方と関連しまして、労働時間をどうするかという問題が出てくるわけでございます。それとのからみ合いにおいて、時間外延長もいろいろな形で処理されてきておるわけでございますが、ただそれにいたしましても限度がございます。したがいまして、昭和三十六年ごろから行政指導重点といたしまして、タクシー会社に勤務する運転手の労働時間についての適正化指導を行なってきておるというような実情でございます。
  38. 八木昇

    八木(昇)委員 その適正化指導の方向というのは、会社では、たとえばどの程度くらいの労働時間に目標を置いてやっておられるのか。また現在の都内の実情について、どうも十分に把握しておられないように実は見受けるわけですが、こういう問題は、タクシーのみならず、たとえばダンプカーの場合でもすべてに当てはまるわけです。むろんこれは賃金体系の問題とからみますけれども、しかし賃金体系の問題とからませておくこと自体が、もはや今日の状況ではこれは許されぬことですから、もう少しく説明をしてくれませんか。昭和三十六年ごろより行政指導をやっておるというのですが、労働時間の問題については、一体どの程度くらいのところに限度を置いて行政指導をやっておられるのですか。
  39. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほど申しましたように、各産業、各業態によりまして、その限度に差があるであろうと思います。しかしながら労働省としましては、労働基準審議会におきまして、労働時間問題の検討をしていただいておりますが、それと関連いたしまして、時間外延長の限度が三六協定によるとしても、どの程度が合理的であるかどうかという観点からの検討をいたす必要があるということで、審議会としても目下御検討をいただいております。なおかつ三十九年度の行政方針といたしましても、協定による時間外延長の限度につきまして適正な指導をいたすように方針を示しておるところでございます。ただ個別的に何時間がいいかという点につきましては、審議会で検討中でもあり、さらに実態を十分把握する必要がございますので、個別的には明示するに至っていないというのが実情でございます。
  40. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは、いままでのそういった幾らか具体的な数字に関連してのいろいろな問題についての質問を一応終わりますが、先ほど局長から御答弁がありましたように、現状では労働災害防止対策がきわめて不十分だということは政府としてもそれを認識している。そこで今後抜本的な対策を立てるために一体どうしたらいいかということの結論を得るために、労働省としては労働災害防止上の問題点と対策案なるものを作成して、いま中央基準審議会に諮問をしておるという話でございました。その案なるものの概要を私個人としては一応仄聞しております。しかしこの委員会としても、それの内容等について労働省考え方をただしたい、それがためには一応その資料を各委員に提示をしてもらいたい。
  41. 藏内修治

    藏内政府委員 資料委員各位に配付いたします。
  42. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは、それをさっそく配付していただくことにいたしますが、いまその諮問に基づいての基準審議会の審議の進捗状況は一体どういうふうであるのか、そしてこの労働省の諮問に基づいて中央労働基準審議会が結論を取りまとめになるのは一体いつごろになる予定であるか、そうしてその答申が出たならば、それに基づいて今後労働省としてはどうしようとするつもりであるか、これは次官からでも、局長からでもけっこうですから……。
  43. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 中央労働基準審議会労働災害防止についておはかりしておるのでございますが、従来までとってまいりました経過及び今後の見通しにつきまして私から申し上げます。  労働省としましては、三月十三日にまず労働災害現状と問題点をどのように把握すべきかという観点から現状と問題点についての意見の統一をはかりたい、こういう観点から、まず問題点の提起をいたしたような次第でございます。  労働基準審議会におきましては、たとえば、産業構造変革過程における問題を取り上げるべきである、あるいは災害原因別に問題を把握すべきである、あるいは中小企業のみならず、大企業においても、さらに体制整備もはかる必要があるので、大企業についても配意すべきであるというような問題が提示されまして、その後原案を修正した上で、四月の十七日に対策を付加いたしました原案を労働基準審議会に提示したわけでございます。その後対策を中心に御検討をいただいておりまして、五月十五日に労働基準審議会でさらに対策についての御検討がなされることになっております。いつ結論を得るかという点につきましては、労、使、公益それぞれの委員がございますので、十五日に結論が出るかいなかはまだはっきりいたしませんが、労働省としましては、できるだけ早い機会に審議会の検討を終了することを期待している次第でございます。ただ、目下御検討願っておりますのは、総合対策の全体的な問題でございます。いわば総論でございますので、この総論的な対策審議会で御検討いただいた後に、各論的に個別的な問題についてさらに検討を引き続いてお願いするということになろうかと思います。  対策の中では、たとえば有害ガス、蒸気、粉じん等に対する衛生工学的管理を確立するようにという項目がございます。その管理基準をどうするかという管理基準の策定という問題になりますと、これは別個に労働基準審議会の衛生部会において御検討願うということになりまするが、そういった個別的な問題につきましても、できるだけ本年の秋ごろには個別的な結論を得たいというふうに考えておる次第でございます。
  44. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、労働省の提示しておられますこの案の中身について直接的にお伺いすることは、一応後日に譲りたいと思っておるのですが、労働災害防止対策についての二、三の基本的な問題点について若干この際は承っておきたいと思います。  私どもは、この労働災害防止あるいは安全問題全般に取り組む政府の基本的な態度としては、これは使用者だけが幾ら一生懸命になっても解決できない問題であるし、また労働者だけが一生懸命熱意を持っていても、使用者側にその熱意がなければこの成果は期し得られない問題である、結局政府労働災害問題に対処するあり方としては、労使双方の完全な協力一致の体制で初めて労働災害防止安全衛生問題は成果を上げることができるのだという考え方で、政府はこの問題に臨まなければならぬのではないか、私はそういうふうに実は思っております。それがためには、ただ労使完全協力でやるべきものだというだけではだめなのであって、すべての労働災害に関する問題については労使が対等の権限を持つといいますか、労使平等の、対等の原則に立つ機関のもとに、そうして労使が対等の権限を持って、さらに労働災害防止活動を行なうという考え方が、一番上から一番末端まで貫かれておらなければならない、こういうふうに考えるわけです。そしてまたそういう考え方は何も私どもがあえて言うわけじゃないのでありまして、ILOの三十一号勧告において随所に強く要求されておる点だ、こういうふうに考えるのですが、その点についての考え方をひとつ述べていただきたいと思います。
  45. 藏内修治

    藏内政府委員 ただいま八木委員からお話しになりました安全管理体制を労使対等の権限のもとに設置すべきである、そういう体制が貫かれる必要がある、これは原則的には御趣旨のとおりであろうと思っております。しかしながら日本の労使の実態を詳細に検討いたしますると、必ずしも労働組合の組織等の完全なるものはまだまだ全般的に行きわたっておるという状態ではございません。そういう状態にありまする際でございますので、実質的に働く人たちの意思が反映できる形のものに今後ともつとめてまいりたいと思いますが、労使対等の機関の設置には、まだ全般的にはその時期に達していない面がかなりあるのではないか、実質的にそういう面を助成してまいりたいと思っております。
  46. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げましたとおり、基本的にはそうあるべきであるというふうに私ども考えております。その際に、その原則を貫きますために産業全体としてどうするか、産業を個別的にどうするか、企業別にどうするかといういろいろの問題があろうかと思います。それと、政務次官からお答えのように、その組織が強固なものとそうでない、あるいはまだ組合が結成されておらぬというようなものもあるわけでございます。その点につきましては、実情に即しましてそのような趣旨が実現されるように具体的な手段、方法を考えたいというふうに思っておるわけでございます。
  47. 八木昇

    八木(昇)委員 これは少し態度としては消極的であり、またある意味では非常に憶病な態度ではないかと思うのです。というのは、労働基準法そのものにしてからが、いまから二十年昔にはこんな法律なんというものは現在の日本の実情に合わないということが言われたし、その後相当長い期間にわたってそういうことが言われたのですけれども、しかし革命的というそういう大げさなものでもございませんけれども、そういう革命的な考え方を持ってああいう基準法をばんと打ち出して、そしてそれが二十年間曲がりなりにも実践せられてきたところに、相当その根がおりてきているわけです。なるほど初期の段階において労使対等という原則を一〇〇%貫いていった場合に、部分的にはそのこともによってスムーズに事が運ばないという部面なきにしもあらずであっても、しかし少なくともこの労働災害に関してはこの際は抜本的な施策を立てようという以上は、そういう積極的なかまえ方でこの際やらなければだめだと私どもは思っております。それにもかかわらず、いまこの国会に提案されておる労働省労働災害防止法案なるものは、これは全く私どものこういう考え方に反しておる。というのは、ただ使用者団体だけで労働災害防止協会をつくらせるというものであって、しかも当初の原案の後に大災害が起こって世間で大きな問題になってくるや、たった一点申しわけ的に修正をしてあるのは、参与という何かわけもわからぬようなものをくっつけて、そしてその参与には労働者などを入れることができるというような道をほんのちょっぴり開いておるというようなことでは、政府がほんとうに労使対等の原則に立って労働災害防止の問題に本腰を入れようとしておるというふうにわれわれとしては考えることができないと思っておるわけです。その点を釈明願いたいことが一つと、それからもう一つは、ILOの産業災害の予防に関する三十一号勧告なるものは一九二九年の六月に採択されているわけです。そうすると、いまの日本状態がヨーロッパ各国の一九二九年以前の状態にあるとはどう考えたって考えられません。このILO三十一号勧告には随所に労使が一体になってやれということが書いてあります。一々読み上げはしませんが、その中の二、三を読み上げますとこういうことが書いてあります。災害予防の研究調査についてという項目の中の第一項の中にこう書いてある。「公の機関は、使用者労働者の産業上の団体、災害予防の監督に付責任ある機関並に望ましきときは技術上の団体及災害保険の機関又は会社の協力に依るべし。又使用者労働者の産業上の団体は、各個の産業部門に於ける災害予防の為の機関に協力すべきことを望ましとす。」こういうふうに書いてある。そして第二の災害予防活動の推進の項目の六には、「産業災害の予防に関係ある一切の当事者間特に使用者労働者間の協力が満足なる結果をもたらすことは、諸国に於ける経験の示す所」であるということが書いてある。そうして第七項には、「一切の産業又は産業部門に於て、事情の要求する限り、国の監督機関又は他の権限ある機関並に関係ある使用者の及労働者の代表団体の間に定期会合を催し」ということがきめてある。使用者労働者の代表でそれらの団体相互間に定期会合をやれということが書いてある。それから八項目には、事業場における安全組織を設置せよ。そしてさらに「各個の事業場に於ける管理者及労働者の間並に当該産業に於ける使用者団体及労働者団体の相互の間、国との間及他の適当なる機関との間に於ける協力。」をやれ。その方法は例として、「事業場に対する安全監督員の任命、事業場安全委員会の設置」ということが書いてある。それから十一項目にも、労働者団体等もこれに参加すべきことが書いてある。それから二十一項目には、「各国に最良く適合せる方法、例へば公の監督機関に於ける地位に資格ある労働者を任命すること、労働者が望ましと認むるときは監督機関若は他の権限ある機関の職員の臨検を求むることを之に認むる又は監督官企業を臨検しつつある際之と面会する機会を労働者若は其の代表者に与ふることを使用者に求むる規則を定むること、規則の施行の確保及災害原因の確認の為の安全委員会労働者代表を加ふることに依り、安全規則の遵守を確保するに付労働者をして協力することを得しむる為法律上又は行政上の措置を為すべし。」と、こうなっておる。  こういうように、すでに一九二九年に採択された三十一号勧告が各種の労働災害のための機関または政府機関のみならず、民間の企業における各機関に労働者代表を参加せしめよという精神で終始貫かれておるわけです。そこで三十一号勧告を順守する意味合いからしても、政府としての先ほど御答弁になったような態度は、これは適切でないのじゃないかと私は思うのです。少し長たらしく読み上げましたけれども、その点もう一度お答えいただきたい。
  48. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 第一の労使対等の原則を安全衛生問題についても貫くべしという点につきましては、原則的に、基本的にはそのような原則を労働省といたしましても貫くべきであるというふうには考えておるわけであります。ただ労使対等と申しましても、内容的に特質がございます。具体的に申しますと、安全衛生基準を法律で定めるないしは規則で定めました場合に、その法定基準というのは、労使交渉によって基準を定めるという性質のものではないのでありまして、事人命に関しますので、法定基準に違反した場合には、罰則をもって順守さすということでなければならないと思います。それ以上上回る作業環境ないしは労働環境における安全衛生の基準をどうするかということに相なりますれば、労働協約によっていろいろ定めるということになるわけでございまして、それは安全衛生のみならず、一般の労働条件、作業条件として労使の交渉によって決定するということでございますので、その点におきましては、労使対等の交渉ということは最も効果的に実現されると思うのであります。  ところで、先生の御指摘の点は、機関なり、制度的に、労使が対等の立場でいろいろな見解を述べ得るような組織なり体制を、上から下まで実現したらどうかということであろうと思うのでありますが、その点についても、審議会制度をどうするかというような国なり行政組織上のあり方の問題が一つあると思います。その点につきまして、さらに改善強化する必要があると存じまして、先ほど来問題になっております労働省作成の対策原案におきましても、その点について一つの構想を示しておるような次第でございます。行政組織なり国全体の体制としてもどうするかという問題じゃなくして、個別企業においてはどうするかという点につきましては、安全衛生委員会等の活用の問題が出てくるわけでございますが、その点につきましても、労働省としては検討に値する問題であるというので、対策の中に事項として明記してあるというような次第でございます。  それから第二の問題として、ILO勧告三十一号の産業災害の予防に関する勧告の趣旨が生かされてないじゃないかという点の御質問でございますが、御指摘のように、労使の団体が関与するないしは協力するという関係は、たとえば災害予防の研究の場合の協力とか、あるいは定期会合を持つというような、何と申しますか中身の問題ではなくて、これこれの場合には労使の団体が協力するとか、定期会合を持つ、こういうような仕組みのことを言っておるというふうにわれわれは考えておるのでございまして、そういった仕組みなり形をどうするかという点につきましては、今後におきましてもできるだけ改善して改めていかなければならないと考えております。また勧告する場合に「資格ある労働者を」云々というような御指摘がございました。これは労働監督制度が完備しない国もありますので、いろいろな事態を考慮してこの勧告というものができておると思うのでございますが、労働監督制度はどうあるべきかという点につきましては、各国それぞれの事情もあるようでございますし、外国の例を見ましても、必ずしも勧告のような形にはなっておらぬ向きもあるようでございます。これはILOにおける勧告という形式にもよることでございますが、いわゆる批准という問題がここにはないわけでございます。各国それぞれの事情によりまして、必ずしも勧告に定める状態にはなっていないようでございます。しかしながら、たとえば監督機関の職員の臨検の問題、あるいは労働者申告できるような制度といったようなことにつきましては、形はやや異なっておりますけれども、現行の労働基準法におきましても、監督機関の臨検制度があり、また労働者労働基準法違反を申告したとしても、それによって労働条件に差別取り扱いを受けないという規定も設けられておりますので、若干形は変わりますけれども、実質においてはかなり実現されている面があるのではなかろうかというふうに考えております。しかしいずれにしても、現在の状態で十分だというふうには認識しておりませんので、今後における対策をどうするかという面と関連をいたしまして、さらに考えていきたいと思っております。
  49. 八木昇

    八木(昇)委員 だいぶ時間もたってきましたので、あとは項目的に私どもの強く要望しております点数項目について申し上げて、この際政府の見解をただしておきたいと思うのです。  一つは、現在総理府に設置されております産業災害防止対策審議会は現状のままではたいした意義がないのじゃないかと私ども考えておりまして、これの内容について相当根本的な改正を強く実は希望しておるのであります。しかしこれは現在内閣委員会のほうに総理府設置法の一部改正ということでもって提案をされておりますので、内閣委員会の場で適当な政府側の代表に来ていただいて——むろん総務長官に出ていただくと同時に、労働省やその他関係の皆さんにも御出席いただいて、これについては内閣委員会の場で見解をただしたいと思っておりますから、きょうのところは省かしていただきます。  第二の点として、この際私どもは、中央、地方及び今度は業種ごとにそれぞれ安全衛生審議会、安全センターとでもいうべきものを設置すべきだということを実は考えておるわけであります。この安全センターは公益側、労働者側、使用者側の三者構成として、最低月に一回以上ぐらいは会議を開く。そうして先ほど申しました安全対策のための審議会の決定しておる方向に基づいて安全衛生関係についての実践活動をやっていく。そうしてさらにこれには監視員制度、一口に言えばパトロール制度というようなものを設けて、状況によっては巡回監視といいますか、安全監視パトロールといいますか、そういうものをやらせるべきではないか。そうしてそのメンバーは労働者に当たらせるべきではないかという考え方をわれわれとしては持っておるし、かねてそういうふうに主張してきたところでございます。こういう点について労働省として考えるところがあるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  50. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 いま八木先生が御指摘の点につきましては、私どももそのような意見を伺っております。ただそれを具体的にどう考えるかという段階になりますと、行政組織としてそれを考えるのかどうか、ないしはそれは諮問機関的なものか、行政活動をする機関として考えるかという点については明確にいたしておらないのでありますが、諮問機関であるならば審議会という形式に相なりますし、具体的な実践活動ということになりますと、行政委員会という形になるわけでございます。現行の行政組織を前提にして、そのような考え方を具体化するということになりますれば、さらに内容的にも形式的にも十分検討しなければならない問題が多々あると思うのでございます。そういう観点から、その趣旨なり考え方については理解できるのでありますけれども、具体的な方法になりますと、いろいろな問題があろうかと私ども考えるわけであります。そこで労、使、公益の意見をさらに的確に反映する、御指摘のように月一回ぐらいは必ず開いて問題を検討するということは、きわめて望ましいことと考えておりますので、労働基準審議会の中に安全衛生部会を常置するというたてまえをとって、問題が生じました際には職種別に問題をさらに掘り下げて検討するということでございますれば、実現の可能性は十分あるという観点に立ちまして、労働省作成の対策原案にもそのような趣旨を盛り込んでおるような次第でございます。なおその点につきましては、安全衛生だけの専門的な審議会をつくったらどうかという意見もあるわけでありますが、先ほどのタクシーの質問にもございましたように、労働時間の問題等労働条件と安全問題が相関連をいたしておりますので、はたして専門的な審議会がいいのか、労働基準審議会という総合的な審議会の中に専門部会を常置するのがいいのかどうかという点につきましてはいろいろな考え方があろうと思いますが、私どもとしては後者のほうが適当ではなかろうかと考えまして、原案の中にお示ししたという次第でございます。
  51. 八木昇

    八木(昇)委員 それについての私どもの意見もありますけれども、きょうのところは一応見解を承っておくという程度にしておきたいと思います。  そこで次の点は、労働基準法適用事業場全部、結局十人以上の労働者が働く事業場には全部この際安全衛生委員会というものを設置すべきではないか、そしてその委員会は労使対等の原則に基づいて運営するというようにすべきだと実は考えておるわけであります。  それからもう一つの点は、現在の法規によりますと安全管理者、衛生管理者を置かなければならないというのは、労働者五十人以上の事業場に限られておるわけです。ところが実際にはもっと零細な企業においてもいろいろな問題が発生をしておる実情にあるわけでございますから、これはやはり基準法適用事業場全体、すなわち十人以上の労働者が働く事業場全体に安全管理者、衛生管理者というものを置かせるべきではないか。その場合に、そこの事業場専任の管理者を置くことが無理だとすれば、その管理者は二つ以上の事業場の管理者を兼ねるという措置をとってもいいのではないかと私ども考えておるのですが、その点についてのお考えを承りたいと思います。
  52. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 結論を先に申し上げますと、労働基準審議会で、いま御指摘の点は審議をわずらわしておるところでございます。今後さらに詰めて御議論を願いたいと思っております。ただ一般的に申しますれば、産業別ないしは災害多発業種としからざるものとに差がある、それをどうするかとか、いろいろ技術的な問題がありますので、そういうものをひっくるめまして労働基準審議会で御検討願っております。
  53. 八木昇

    八木(昇)委員 この点は、特にいまのように災害が多発する業種については、五十人という限界を切るべきではないかと私は考えまするし、私どもの要望する線どおりにいかないまでも、ぜひともそれに近い線の結論を審議会も出すでございましょうが、政府としてもそういう方向で対処していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから次の点は、すべての使用者に産業災害防止規定というものの作成を義務づけるという考え方がないかどうか、その点伺いたいと思います。
  54. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 個別企業について、すべての企業災害防止規定を義務づけるということになりますれば、その実行性の問題につきましていろいろ問題があろうかと思います。労働災害防止法峯で考えております災害防止規定は、個別企業ではなくして、ある特殊な産業をとらえまして、個別企業を横断的に考えた立場からの災害防止規定を考えまして、それをつくらせるというように考えておるわけでございます。個別企業における災害防止規定といたしましては、法律的に突き詰めて考えますならば、就業規則的なものとして作成する場合も労働基準法上予定されておるわけでございまして、それ以外に個別企業における災害防止規定をつくるということを法律的にどう理解すべきかという問題があるわけでございます。したがいまして、そのような点につきましても、さらに検討を続けてまいりたいと思っております。
  55. 八木昇

    八木(昇)委員 次の点は、今度政府が提案しておられる労災防止法の中に、元方事業主と下請事業主間における安全衛生管理の責任を明確化するという点があるわけです。これは昔から問題になっておる点でございますから、いま政府の提案せられておるものの中身については根本的に異存があるわけではありませんけれども、これはむしろ労働基準法の一部改正としてこの点を明らかにすべきじゃないか、そういう基準法そのもので明確化すべき基本的な問題点じゃないかというふうに私ども考えるのですが、その点についていかなるお考えをお持ちであるか承りたい。
  56. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御承知のように、労働基準法では、原則的には個別的労働関係を前提といたしまして、個々の労働者使用者との関係を規律する規定がほとんどでございます。ところが御指摘のような数個の下請を元請との関係において結びつけて安全管理責任を明確にするというような、個別企業を越えた特殊なケースをその中に持ち込むことがいいかどうかという点については、立法論としてもいろいろ御議論もあることであろうと思います。ただ法律の特殊性に応じまして、たとえば労災保険法のように、保険料を徴収するという観点から元請と下請についての関係を特殊に保険法自体で規定した、それぞれの個別的必要性に応じて規定したという例はあるわけでございます。そこで、今回労働災害につきまして特別立法がなされるという機会におきまして、その個別的問題として処理するという立場から労働災害防止法の中に規定したような次第でございます。
  57. 八木昇

    八木(昇)委員 これは純然たる質問なんですが、現在いろいろな事業所でいろいろな事業が行なわれる場合に、使う機械からいろいろな材料、工具類まで一切がっさい元方のほうのもので、それを使用して、さらに下請の組の人が仕事をしておる、こういうふうな場合などが相当あるだろうと思うのですが、その実情はどういうふうでしょうか。
  58. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御承知のように土木建築と申しましても、建築の場合と土木の場合とでは、かなり形態が違っておるようでございます。いま御指摘の点は、土木関係の面を御指摘と思いますが、その点につきましては、道路整備事業であるとか、隧道事業であるとか、工事の極数によりましても、かなり差がございますので、一がいにそうであるということは申し上げかねるのでございます。しかし最近の土木工事事業におきまして機械化が進んでおりますので、経済的に弱体な下請企業が、そのような高度な機械を所有することができない。そのために元請から貸与されるという例は少なくないというふうに見ております。ただそれが——私いま申し上げてよいのかどうか疑問に思いますけれども、単純な労務だけを提供する状態のものであるかどうかということになりますと、これはかなり個別的に調査いたしませんと、ここで結論的なお答えを申し上げることは困難かと思います。
  59. 八木昇

    八木(昇)委員 単純な、文字どおり労務だけを提供するということは、それは許されていないですね。これはちょっと横道でございましたが、以上、私が申し上げた点について御答弁がありましたけれども、その御答弁では、私は、実は十分納得をまだしていないのであって、私が申し上げた点を十分考えた上で今後とも対処していただくようにお願いを申し上げる次第であります。  そこで先ほどの問題に返るわけですが、いま基準審議会にはかっておられるこの「労働災害防止上の問題点と対策」というものについて、基準審議会がいつになるかは別としましても、近い将来、もし答申をしたという場合に、この扱い方をどうするかという問題です。この内容を一べつしますと、非常に広範多岐にわたっておる。大体三通りくらいに分かれるのじゃないか、その一つは、法律にしなければならない内容のものがある。それから一つは、各種の政令によって措置しなければならない問題がある。それから、そのいずれの措置も一応必要ではないけれども、しかし行政指導の面やその他でやらなければならない面がある。しかも、その法律にしなければならない面についても、基準法関係する部面もあろうし、それからいろいろな法律関係する面がある。それともう一つ、ここに新たに政府労働災害防止のための法律案というものをいま出しておられる。これとの関連が出てくるという問題も出てくる。  そこで、この答申が出た場合に、その上に立ってどういうふうにされるつもりなのか、その辺をちょっと伺いたい。
  60. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 この答申が出ました後におきまして個別問題についての検討にさらに入っていくと思います。その際に内容的に法律改正でいくか規則改正でいくか行政指導でいくかという内容の問題と関連した具体的措置の形式も、御審議いただくことになろうかと考えておるわけであります。さらに問題によりましては予算措置によって具体化するというものもあるわけでございます。個別的な検討になりますると、全体としての答申が出ましたあとの作業に入るわけでございまするので、若干期間を要すると考えております。  そこで労働災害防止法案とどういう関係になるのかという点につきましては、私ども使用者側におきますところの安全推進体制を自主的に確立してまいる、そして事業主に対する啓蒙指導、それから具体的な安全指導等をできるだけ早く進めていきたいという観点から、労働災害防止法案におきますところの自主的体制の確立ということの早期実現を期待しておるわけでございますし、また元方と数個の下請との関係を規律する問題も、現在の公共事業等の実施状況から見まして、できるだけ早くそのような状態を実現したいというふうにも考えておりまするので、そのような個別的な内容を一本の法律といたしております関係上、しかも内容がいずれも緊急を要しますので、これはこれとしてできるだけ早く実施に移したい。そして対策要綱に示しておりますような長期ないしは短期にわたる、しかも複雑多岐にわたる各種の手段、方法につきましては、できるだけ早い機会に結論を得ることを期待しておりますけれども内容によりましては審議期間に長短があることでございますので、問題に応じました審議ないしは具体的対策の確立を考えておるわけであります。  そこで労働基準法とどういう関係になるのか、別個の単行法を出すのかということにつきましても、審議会でいまそのような結論を得るに至りませんので、総論的なこの要綱自体はできるだけ早く御答申いただきますけれども、個別的な問題について法律で規定するかどうかという点につきましては、さらに御検討を願うということになると考えております。
  61. 八木昇

    八木(昇)委員 これは質問をしておる私もずっと込み入ってきておりますから、質問をしておるほうもずいぶん頭が混乱するくらいに、混乱しやしませんか。こういう不十分とはいいながら、私ども考えからすれば相当抜本的なものですよ。こういう抜本的なものを出して、これに基づいて審議会の答申を得て、その答申の上に立って各種の法律改正し、また各種の政令を発し、それから予算措置を必要とするものはそれについての対策も打ち、行政指導面でやるべきものはやるべきものとする。それへ持ってきてこの国会では労災防止法というものが提出されておって、これはこれで成立した、こういう形になってきた場合には一体どういうふうにされるのか。われわれ質問するほうだって相当混乱するわけなんですが、ましてや専門的でない下部の人たちは、これができ上がってきた場合に百六十何万もあるところの事業場の事業主などというのはこの法の体系、運用等々について、どういうふうに変わってどうなったのかとても理解できませんよ。私はそう思うのです。しかも現在提出してありますこの労災防止法なるものそのものが、もともとは去年の三月提案されたものでしょう。それでその後去年の十一月に至って三池大災害や鶴見事故、その後相次ぐ大事故が発生しておって、去年三月出した労災防止法、そういったふうな程度のことで当面の事態はとてもだめなんだ。もう少し抜本的な労働災害防止に対する対策を基本的に法律の上からも、省令の上からも、行政指導の上からも建て直さなければならぬということにいまやなってきているわけです。いま政府が提案しておる労災防止法案なるものは、もう時代の進展に著しく立ちおくれておりますから、これは一年やそこらおくれたって、こんな法律ならたいしたことはない、いま政府が出しておるような法律なら、これは待つべきだと私は考える。それでその審議会の答申は五月の十五日にまとまらないまでも、私の観測では七月ころまでにはまとまるだろう、それですべてを総合したところの観点の上に立って、もっとすっきりした臨み方をあらためて政府がしたほうがいいのじゃないかと私は思うのですが、これは次官からお答えいただいて、さらに局長からも補足的に見解を承りたいと思います。これはわれわれある程度専門的に研究している者でさえ混乱するのに、ましていわんやと私は思うのです。
  62. 藏内修治

    藏内政府委員 現在御審議を願っておりますこの労働災害防止法と申しますのは、政府考えております総合的な災害防止対策の中の一つとして考えておるのでありまして、まずこれをひとつ成立さしていただいて、この法律によりますと重点的に使用者の自主的な災害防止体制というものをまず確立をしておきたい、こういうことでございます。そうしてこのわれわれの考えております。ただいま中央労働基準審議会に御審議を願っております個々の法律の新しく立法を要する問題もありましょうし、政令の改正を必要とするものも出てまいりましょうし、そういうものが出そろいました上で、災害防止のいわゆる法律体系としてはもう一回検討をお願いしたい、こういうつもりでございます。
  63. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げたとおりでございます。むしろ労働災害防止法の占める位置づけが明確でないというような意見も一部に私ども伺っておりましたので、むしろ全体の中でどのような地位を占めるのかということを明確にする必要があるという意味合いにおきまして、この総合的な対策考えたわけでございます。ただいま政務次官からお答え申し上げましたとおり、使用者の自主的活動の推進という項目一つございます。その中で災害防止法が位置づけされる。あるいは企業外の原因としてとらえられました土木建築事業の元請と下請との関係を規律する問題としてこの災害防止法が考えられておる。このように総合対策の中で、災害防止法でとられておる手段が、それぞれ位置づけされておるというふうに私ども考えておるような次第でございます。  なお、先ほどもお答えしましたが、この対策には内容的にすぐできるものと、かなり長期間にわたって検討しなければならぬものがあると思いますので、みんな出そろうまで待つというような形は現在の事態からしてなかなか許されないのではなかろうか。緊急なものから逐次具体化いたしまして、手を打っていくということを私どもは希望いたしておるような次第でございます。
  64. 八木昇

    八木(昇)委員 しかし私どもの判断からしますると、去年の三月あたり考えていた取り組みの姿勢が、その後の事態の非常な急速なる深刻化によって、これはもう実情にそぐわぬようになってきたけれども、しかし一たび出したものを、しかも一回は衆議院で多数決であったにしろ通って参議院まで行ったものを、全く御破算にするわけにもいかない、そういう気持ちが多少とも働いて、なおこの法案は法案としてまあ一応何とかというような考え方が、どうしても根底に働いておるように感ぜられるわけなんです。と申しますのも、この労働災害防止に関する法律案の第一条、法律の目的なんという項目は大上段にかまえた文句が書いてある。「労働災害防止を目的とする」云々、そうして「総合的かつ計画的な労働災害防止対策の推進を図り、もって労働災害防止することを目的とする。」というふうに大上段にかまえてあるのですが、その内容たるやこの目的の線にぴたっとマッチしてないと私ども考える。  それからまた、この法律案を出すにあたって、労災保険審議会や基準審議会に過去において諮問をしておられるのですけれども、そのときの使用者側の意見などを読んでみると、ますます私どもは不安を感ずるわけなんです。あくまでも事業主の自主的活動により推進するというたてまえのもとにこの法案の趣旨に賛成する、こういうことが使用者側の意見ですね。だから労働災害防止使用者の自主性にまかせてもらいたい、そういう精神においてこの法案に賛成するというのが第一項にある使用者側の意見です。それで、使用者側が真剣に労働災害対策について努力をしなかったからこそ最近ああいう大事件が起こっている。また、使用者の立場からすれば企業の採算、他企業との競争というような点からして、使用者の自主性にまかせていたのでは労働災害防止の完璧は期し得られないからこそわれわれはここに法律をつくろうというわけなんですから、その点からいうても、いまの労働省側の法案というものは非常な危険性を含んでいるということを考えるわけなんです。そういう点から抜本的に出直したらどうかというわれわれの見解を一応きょうのところは表明しておきたいと思うわけです。十二時半近くになっておりますから、きょうのところは以上の程度で一応質問を打ち切りたいと思いますが、何か答弁があれば答弁してください。
  65. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御承知のようにこの法案の内容とするところは、まず災害防止計画をつくるということが第一であります。第二には使用者の団体を組織して使用者指導啓蒙に当たらす。第三点は元方と下請を特別規制するということであります。私どもが再三この法案を提出いたして御審議をわずらわしておるゆえんのものは、そのような事柄自体は、三井三池の災害、国鉄鶴見の災害が起こったからというて本質的に否定せらるべき事柄ではないというような考え方に立ちまして審議をわずらわしておるのでございます。ただ、これだけでは十分でないじゃないか。さらに対策をもっと根本的かつ多岐にわたってなすべきであるという御意見がございますので、それにはどう考えたらいいかという観点から、総合的な対策考えておるような次第でございまして、三井三池あるいは国鉄鶴見などのあの大災害を契機としてとった姿勢は、総合的対策の確立及び推進にあるというふうに考えております。  なお、使用者にまかせただけでは心もとないという点につきまして、私どもは次のように考えております。使用者安全衛生義務というものは法律使用者に課しておるのであります。法律で課し、さらに安全衛生規則で具体的に義務を課しておるのであります。それは使用者の責任でありまして、安全衛生についての責任の所在といえば使用者でございます。その使用者労働基準法及び安全衛生規則で定めた基準以上にさらにセーフティコード的な災害防止規程をつくるという形をとらしめることは、使用者に任意に好きかってに事を運ばせるということではないのでありまして、ことばは悪いのでありますが、もう一つ広い足かせが加わるということでありまして、ことばはいかようにも表現できると思いますが、立法の精神としては、さらに使用者の義務が上積みされておる、こういうふうに私どもとしては考えておるわけであります。自由かってに事を処理させるというのではなくて、一方においては補助金を交付し、その面から財政的なコントロールを行ないますと同時に、一方におきましては災害防止規程という一つの法規範を設定してさらに義務を負荷するということでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  66. 八木昇

    八木(昇)委員 これで終わります。
  67. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十三日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時二十六分散会