運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-05-07 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月七日(木曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小沢 辰男君 理事 亀山 孝一君    理事 渋谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 小林  進君 理事 長谷川 保君    理事 八木  昇君       浦野 幸男君    大坪 保雄君       態谷 義雄君   小宮山重四郎君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       亘  四郎君    伊藤よし子君       滝井 義高君    八木 一男君       本島百合子君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君  委員外出席者         厚 生 技 官         (児童局母子福         祉課長)    植山 つる君         労働事務官         (婦人少年局庶         務課長)    海野 将親君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  母子福祉法案内閣提出第九四号)  母性保健及び母子世帯福祉に関する法律案  (伊藤よし子君外十一名提出衆法第一八号)  重度精神薄弱扶養手当法案内閣提出第一一二  号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出母子福祉法案及び伊藤よし子君外十一名提出母性保健及び母子世帯福祉に関する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 政府提案母子福祉法案について御質問をいたしたいと思うのであります。  最初に、基本理念の問題でありますけれども、まず第一に、その前提となりまする母子概念であります。この母子という概念の中には、妊娠中の母及び胎児は含むのか含まないのか、伺いたいのであります。
  4. 黒木利克

    黒木政府委員 妊娠及び妊娠中の胎児は含みません。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 母子という概念の中に、当然妊娠中の母を含むまた胎児を含むべきであると思うのであります。なぜかなれば、その母子家庭福祉という問題を考えるとすれば、不幸にして妊娠中に配偶者と別れた方々、間もなく子供が生まれて、この法律でいう母子の範疇に入る、極端にいえば、明日そういう境遇になるという方もあるでありましょう。分娩後におきまする児童身心ともにすこやかに育成されるということを考える、あるいはその母の健康にして文化的な生活考えるとするならば、当然妊娠中で不幸にして配偶者と別れた人をもこの中に取り入れるべきであると思いますが、いまの御答弁では、そういうことが行なわれなくなるのではないかと思うのであります。いま一たび御答弁を願います。
  6. 黒木利克

    黒木政府委員 この母子福祉法は、御承知のように、母子福祉資金貸付等に関する法律を踏襲をいたしておりますが、この母子福祉資金貸付等に関する法律における母子というのは、いわゆる子供を持った未亡人家庭対象にしておるのでありまして、本法案におきましてもそれを踏襲いたしておるのであります。この場合に、第五条に、配偶者のない女子の定義がございますが、この中には、妊娠しておる婦人は含まないのでございます。ただ、従来、母子福祉という場合には、子供を持った未亡人子供のことをさしておりますが、母子保健と申します場合には、先生のおっしゃるように、妊娠中の母親及び胎児をも行政対象にしておるのであります。母子世帯、いわゆる子供を持った未亡人世帯というような従来の取り扱いと今度の法案では全く同じような取り扱いをいたしておる次第でございます。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この母子福祉資金貸し付け法が、戦後のあの戦争未亡人問題というところから考えられてきたことは御承知のとおりであります。しかし、ただいまの局長の御答弁のように、第五条におきます母子という概念は、すでにそういうものを離れて、もっと発展した概念であり、ことに、母子福祉資金貸し付け法等におきまする両親のない子供についてもその対象になっておるということにつきましては、全くその最初の発生のときの状況よりもすでにずっと発展をしておるわけであります。したがいまして、私は、母子福祉法というこれだけの大きな法律の名前をつけるということであれば、昨日伊藤よし子さんから御質問がありましたように、当然もっと考え方を広げるべきである、少なくとも、妊娠をして不幸にして配偶者と別れておるあるいは配偶者に捨てられた母子をもその対象として、健康な子供が生まれるように、またそれらのことにおいて、母は健康でやがて分娩してまいりました後に、直ちにまた引き続いてこの法律保護を受けるということにしていくべきだと思うのでありますが、この政府提出法案は、あまりに急いだのかどうか、そういう点が未熟であると思うのであります。これらについてどうお考えになるか、またこの法律を修正をなされるということは政府側としては困難でありましょうが、もし確かにそういうことであるという私の考え方に御賛成のお気持ちがあるなら、将来これは修正すべきであると思うが、これらについては、大臣はおられませんけれども、局長としてはどうお考えになるか承りたい。
  8. 黒木利克

    黒木政府委員 妊娠中の母性及び胎児に対しましては、将来母子保護立法というものの必要を感じまして、中央児童福祉審議会厚生大臣から母子福祉対策体系化、一元化についていま諮問中でございます。したがいまして、母子保健衛生の問題につきましては、もし立法するならば、先生のおっしゃるように、妊婦なり胎児も当然対象にすべきだと思いますが、従来母子福祉のいろいろな施策、たとえば国民年金母子福祉年金等におきましても、従来の母子家庭概念をそのまま採用いたしておりますし、これは母子に対する福祉施策全般に通ずる問題でありますから、今後関係方面とも十分協議して検討してまいりたいと思います。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この点は、御承知のように社会党提案のほうの法律では保健ということを非常に強く考えまして、すでに妊娠中の保健関係につきましても当然保護を与えるべきであるという立場でやっておるのでありますが、両案を照合いたしまして、私は、やはり政府案がそこまで進んでいくべきだと思うのであります。母性の健康にして文化的な生活を守るということであれば、まずその母性最初段階である妊娠中から婦人に対する保護がなされていかなければならぬというのは当然のことでありまして、社会党案におきまする第一条の母性の健康の維持あるいは母性保健、あるいは第二条におきまする「すべて母性は、子が心身ともにすこやかに生まれ育つためのみなもととして、その健康が保障されるものとする。」こういう考え方へ当然入っていくべきだと思います。お話のような、将来母子保健の一貫した法律をつくる、その諮問をしておるから、それが答申があってから後にまた関係方面考えるということも、現段階でわからぬことはありませんが、しかし当然いま母子福祉法をつくるならばそういう点を考えるべきで、社会党の案には御承知のようにわざわざ第二章には「母性保健」という章を設け、第五条には「母性保健」第六条には「栄養食品無償給付」第七条は「出産に関する保護」、第八条は「母性保健センター」というように、これを丁寧に扱っておるのであります。どうも政府案を見ますと、正直に言ってこの母子福祉法では、母親の健康というような点につきましてはわずかに第二十条の「母子福祉施設」「心身の健康を保持し」というようなこと、第二十一条の「母子休養ホーム」ぐらいなものでありまして、どうも積極性が見られない、非常に消極的であると思います。こういうような点についてさらに前進した考え方をこの法律に盛り込むべきであると、正直に私はこれを読みまして考えたのであります。  そこで、まずこの法律母子家庭福祉に関する原理を明らかにするということ、そのために生活の安定と向上のために必要な措置を講ずるということをうたい、第二条に、基本的理念として、児童心身ともにすこやかに育成されるために必要な諸条件、その母の健康で文化的な生活が保障されるようにする、そうしなければならぬというように書いておるわけでありますが、まず第一にそれらの健康の問題についてどうもこの法律では足りない、非常に不行き届きであるというように考えられるのであります。ただいまの御答弁がありましたから、一応そのときを待つといたしましょう。私はこういうような、その母の健康で文化的な生活を保障する、あるいは児童が、そのおかれている環境にかかわらず、心身ともにすこやかに育成される、そういうことを考えてまいりますときに、何と申しましても、母親の健康な生活というものをつくり上げていくということが第一に根本問題として十分に取り上げられなければならぬと思うのでありますが、第二に母親心身ともに健康な生活というもので考えてあげなければならぬ問題としましては、性生活の問題があると思います。これは母子世帯という境遇におきましてきわめて困難な問題でありますけれども、しかし現実問題といたしまして、性生活の問題についてどういうような方針をとっていくかということが、この際私は考えられなければならぬと思うのであります。まず、政府は一体こういうような配偶者のない不幸な婦人に対しまして、できるだけ結婚をさせる方針政策を立てていくのか、それともまたそういうことになってまいりますと、子供の不幸ということが考えられますから、なるべく結婚はさせないで、母子だけでまとめていくという方針をとられるのか、一体どういう方針で今後の母子対策というものに対していくのか承りたいのであります。
  10. 黒木利克

    黒木政府委員 先ほど社会党案の御趣旨の御説明がございましたが、実は母子保健に関しましては、未亡人母子のみならず、一般配偶者のある母親子供保健のことも対象にしなければならないという考え方から、この母子福祉法とは別に母子保健法というものを考えておるということを申し上げたのでございまして、先生のおっしゃるようにこの母子福祉法の中に母子保健を入れるのも一案かと思いますが、そうなりますと、一般母子をも対象にすることになりますので、法の形としてどういうものかというような考え方から、保健は別の立法でやるというように考えておる次第であります。  それからただいまの御質問未亡人再婚の問題でございますが、これはあくまでも本人意思を尊重すべき筋合いのものでございますので、政府がこれに介入するということはどういうものかと考えます。ただ本人意思を尊重して、再婚希望があるならば母子相談員なり、あるいは今度家庭児童相談室を設けますから、そういうような相談室でいろいろ相談業務というものをやる、政府としてはその程度のことを考えておる次第でございます。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もし古い考え方——それが必ずしも悪いという意味ではありませんが、古い考え方で、配偶者を失った婦人子供を持っておる人は、子供を大事に育てるという立場から、いわば母親あとの生涯を犠牲にして子供とともに生きていくという考え方を貫いていくということであれば、おのずからそういう政策が出てまいります。それとまたごく新しい考え方で、やはり一度配偶者と別れた婦人も、婦人といたしましての異性との関係については、やはり再び結婚生活をして家庭をつくっていくということのほうが、婦人のために当然なことであるということになりますれば、子供を引き取ってそれを養育し、保護してまいります制度というものを、十分に進めていかなければならない、当然そうなります。もちろんこれらのことにつきましては、その婦人意思によるということは当然のことであります。それはいずれにしても当然なことでありますけれども、政府といたしましてはもし最初に申しましたような考え方で進んでいくとするならば、母子寮その他について十分な手を打たなければならぬ。それから第二の考え方でいくとしますれば、それならばそれで子供たちを引き取る施設、あるいはその制度というものが今日の段階では絶対に足らない。もっともっといろいろ十分に発展させなければならぬということになりますので、おのずからどこに力点を置くかということで——両方やっていければもちろん一番よいのであります。両方やっていくべきでありましょう、しかしそれらは政府方針というものはある程度方向がきまっていかなければならぬ、どちらも不十分といえば不十分でありますけれども、当然そう思うのであります。今日それぞれの個人の個性によりますから、どちらとも言えないのでありますけれども、ある人々にしてみますれば、それはこういうセックスのはんらんする時代、性の露出をむしろ人生の一つの大きな意義と考えておりますような時代でありますから、これはなかはか、未亡人諸君、あるいは配偶者と別れた婦人にとりましては、容易ならぬときでもあります。非常に刺激の強いときでありますから、容易ならぬことであり、また戦後新しい憲法ができて、そういう面で非常に不幸な道に入っていってしまった婦人も、事実たくさんあると思うのであります。しかし性生活の問題は、同時にまた心の問題でもありまして、そういうものに対するきちっとした心の態度を持っておりますれば、案外これは容易に過ごせるものでもある。乱れた関係でもありますれば、これは際限もないということになるわけであります。いずれにいたしましても厚生省といたしましては、個人意思にまかせることは当然でありますけれども、どういうふうに今後持っていくべきであるか。両方を進めていくというなら、それは両方進めていくべきでありますが、方針を、これは本来大臣に承るべきものであると思いますが、直接の責任者である局長に伺いたいと思います。
  12. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに未亡人問題の核心に触れた御意見だと思いますが、少なくとも終戦前のように戦地にある夫、あるいは戦死した夫に何らかの不安を与えるようなことを防止するという意味で、母子保護なり、あるいは母子寮等が運営されたことは事実だと思います。この法案ではそういう考えは全然ございませんで、福祉国家理念で、むしろ未亡人という女性の人権を尊重するというたてまえから行政を講じてまいりたい。したがいまして、再婚等の問題につきましても、本人人権を尊重まして、そういうことが希望なら積極的に相談に乗ってあげる、あるいは子供養護施設等に預かる等の場合についても、そういう相談に親切に乗ってあげるというような方針でおるわけであります。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そこで「配偶者のない女子」という概念でありますけれども、これを読みまして、実は貸し付け法もこの第五条と同じものを書いておりますけれども、私は早くから非常に疑問に思っております。また、これはいかぬと思っております。何をそう思っておるかというと、この法律の第五条第一項の五号「配偶者精神又は身体障害により長期にわたって労働能力を失っている女子」これを配偶者のない女子という概念にしてしまうといけないと思うのです。私は芝居のことは十分知りませんけれども、たとえば壷坂霊験記を見ますと、お里が沢市をあれだけ一生懸命に大事にしている。それから箱根権現ですかの例のいざり勝五郎のあの段でも、私の見た芝居では、箱車に乗った勝五郎女房が引っぱって、ここらあたり山家ゆえ、という有名な文句が出てくるわけであります。モミジのあるのに雪が降る、さぞ寒かったでござんしょう、というせりふが出てくる。やはりあの労働能力を全く失ってしまった勝五郎に対する女房の、あのさわりあたりが、私は夫婦生活のほんとうの妙味だと思うのです。この第五条の第一項の五号「配偶者精神又は身体障害により長期にわたって労働能力を失っている女子」これは配偶者のない女子であるということ、これは前の貸し付け法からそういうふうになっていますよ。あの貸し付け法も、これはいかぬなと私は思ったのです。これはむざんだ。今度は病気のかよわい亭主のほうからその代表として文句を言われる。もし、こういうことになりまして、「配偶者精神又は身体障害により長期にわたって労働能力を失っている」という奥さん、これは配偶者のない者であるという法律をつくっていくとしますと、たとえば不幸にいたしましてカリエスで長い間寝ている亭主があるとしますと、労働能力はないのである。奥さんが奮闘をしてその亭主子供を養っているというような場合に、ただでさえ病気になっております亭主にいたしますと、これは非常に心細くなっている。そうして女房に養ってもらっておりますことに当然卑屈感を持っておると思います。それを法律概念では「配偶者のない女子」ということできめつけていくことは、病気をしておりまするかよわい亭主にとりましては致命的であります。この前の貸し付け法のときから私はこれはいかぬと思ったのでありますけれども、これはやはり考えなければいかぬと思うのです。今度の法律でも、これはわざわざそう書かぬでも、たとえば第五条「この法律において「配偶者のない女子」とは」というところを、扶養する配偶者のいない女子またはこれに準ずる女子というように書いてくれれば、こういういわば刺激的な概念というものはなくなってくると思います。これは、今度この母子福祉法をつくりますについてはぜひ改めてもらいたい。これは長い間病気をしておる、このごろのことでありますから、たとえば交通事故による脊髄損傷も出てまいりましょうし、あるいは鉱山、炭鉱等におきまするそういう人も出てきましょう。一家をささえるために奮闘してまいりましたそのあげくに、不幸な、そういう労働災害あるいは交通災害等によって再び立つことのできないような亭主も出てくるわけであります。それを女房が養って、いざり勝五郎女房のように、せっかくそういう美しい気持ちで、利己心を越えてその主人を大事にしていくというときに、「配偶者のない女子」ということばできめつけていくことは、私は人道上もちょっと許されないと思うのです。これはやはり病気をしておりまする気の毒な亭主に対しましては致命的なことばであります。でありますから、これは与党の皆さんにもひとつお考えただきたいのでありますけれども、法文を変えていただいて、配偶者のいない女子またはこれに準ずる女子というようなことばを入れていただいて、その準ずる女子の中にこういう者が入るのだということになれば、そこにりっぱに筋が立つわけであります。ただでさえそういう不幸な中にありまする亭主方々、これも全国では相当数あるわけでありまして、結核で長いこと寝ているという人もそうでありましょうし、あるいは精神病の人の中にもそういう人もありましょうし、あるいは労働災害交通災害等で頭をやられました人の中にもそういう人が多分にありましょうし、あるいは中風で寝ている、脳血栓、脳軟化等で寝ているという人にもそういう人が多分にありましょう。でありますから、やはり法律を新しくつくるとすれば、ぜひともこの際、旧貸付け法の条文をそのまま持ってくるのではなくて、このところはもっとあたたかい配慮をしてもらいたいと思うのであります。この点いかがでありましょう。
  14. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに、倫理的あるいは感情的と申しますか、労働能力を失った夫の立場考えますと、先生のおっしゃるようにおかしいのでありますが、しかし夫がありましても経済的にはないのと同じというような方なり、あるいは妻なり、あるいは子供たちの経済的な福祉をはかるという趣旨からいたしますと、対象はやはりこのような人たちまで広げたほうがよろしいというようなことから、こういう表現になったのでありますが、ただ法律上の表現としては、この「配偶者のない女子とは」とありまして、「死別した女子であって、現に婚姻をしていないもの及びこれに準ずる次に掲げる女子をいう。」というのがございまして、配偶者のない女子というふうに断定をしたわけではないのでございます。配偶者のない女子に準ずる次に掲げるところの女子ということでございますから、先生のおっしゃるように、配偶者のない女子ときめつけておるわけではないのでございますから、その辺は表現上これ以外にはやむを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ですから、私は第五条の最初に、この法律において「配偶者のない女子」ここのところにまたはこれに準ずる女子というものを入れれば、いまのようなことはなくなる。あとはこれでいいですよ。だから第五条のこの法律において「配偶者のない女子」というカッコの中、そのところに、またはこれに準ずる女子というように入れてもらえれば、いまのようなことはなくなっていくのじゃないか。そうでないと、いかにもこれは気の毒なことになりはせぬか、ただでさえ卑屈感を持つでありましょうそれらの不幸な亭主に対して、やはりもっとあたたかい夫婦愛のものをにおわしていくべきではないかというように私は思うのでありまして、この点全国の不幸な亭主のために大いに——かよわき亭主のためにというのではなくて、病気で病んでおります不幸な亭主のために大いに弁じておきたいと思います。  それから、そのような母子方々、特にお母さんたちをしあわせにしてまいりますのには、何と申しましても精神的な安定というものがなければなりません。かような意味で、母子相談員というのは、きわめて重要な任務を持っていると思うのであります。昨日、伊藤先生から常勤にというお話もありましたし、そういう団体からも常勤にしてほしいというお話もありました。また局長からはそれに対する年齢の問題、定年制の問題、その他のことが御答弁になりました。私は局長の御答弁も一理あると思うのであります。いずれにいたしましても、この母子相談員に人を得るということは非常に大事なことであり、私の知っている限りではなかなかいい人を得ている、りっぱな人を得ておると思うのであります。この点については、今後ともなおなお十分に力を注いで、母子相談員適任者をお選びになるということについて、十分な御努力をひとついただきたい。そのために一番必要なのは常勤非常勤を問わず、もっと報酬を上げるべきだ。報酬が低過ぎるように思うのであります。いま母子相談員報酬は幾らになっておりますか、伺います。
  16. 黒木利克

    黒木政府委員 実はこの母子相談員の給与につきましては、地方交付税の中に入れてあるのでありますが、したがって国から補助金が出ていないのであります。私のほうの調査では、平均いたしまして一万四千円程度のものが支給されておるようでございます。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 経歴はいろいろあると思いますが、大体その経歴から申しまして、また学歴から申しますとどんなことになっておりましょう、パーセンテージでけっこうです。
  18. 黒木利克

    黒木政府委員 いま手元に資料がございません。ただ手元にありますように年齢だけの調査しか持ち合わせがございません。あとで差し上げたいと思います。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私はかかる重要な任務を果たしまする相談員、おそらく母子相談員の適否ということがむしろこの法律を生かすか殺すかのキーポイントになると思います。このような重要な任務を持ちまする皆さんでありますから、常勤非常勤の問題は昨日お話がありましたように、またただいま申し上げましたように、私は局長の言われるのも一理あると思う。必ずしも常勤にしなくてもいいだろう、常勤にしなくても、公務員に正規にしなくても、報酬さえそれにふさわしいものを差し上げれば問題は解決するというわけでありますが、この際平均一万四千円と言われると、どうも一万四千円に私はなっておらないように思います。非常にいい人を得るためには、たとえばいなかの相当な素封家の未亡人というような方々が、わざわざ町に出てきてやるというようなこともしばしば行なわれておりますし、そういう方の中にもりっぱな、すぐれた人々もおるわけでありまして、おのずからこれらについてはやはり国が正規の補助をいたしまして、こういう制度を非常に重んずるということをし、そうしてりっぱな人に心おきなく働いてもらうということ、相当の額が出ますれば、もちろん常勤であろうとなかろうと毎日出てくるわけであります。また今日の実際の状態を聞いてみますと、ほとんど毎日出てきておられるようであります。でありますから、こういう人たちに対しましてはもっと厚遇をするように御努力を願いたいと思うのでありますが、これらについてもう少し制度を変える意思はないか、補助金等の制度をつくる意思はないかどうか、伺います。
  20. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに母子相談員の職務能力というものが母子家庭福祉に重大な影響がございますから、この資質なりあるいは職務能力なりを高めることを努力したいと思いますが、何といたしましても母子家庭の中の母親母子相談員に立てておる例が多いものでございますから、あまり高い資格を要求いたしますと、かえって母子相談員になる機会を失わせることになりますから、その辺がなかなかデリケートの問題でございますが、しかしこの問題は単にその本人のみならず、母子のたくさんの人たちに影響するところが多いものですから、できれば身分を安定させまして、専門家をもってこれに充てるというような方向に努力してまいりたいと思います。ただ母子相談員とか、婦人相談員非常勤制度がたくさんございまして、それとの均衡がありまして現在のところはこの程度にとどめておるのでありますが、これは社会福祉の専門職員化の問題とからみまして、現在中央児童福祉審議会等にも諮問をいたしましてこの資格を高める、したがって処遇も高めるということを検討してもらっておるのであります。とりあえずは地方交付税の測定単位と申しますか、それの大幅な引き上げをする必要があるということで、毎年実はこの増額を要求しておるのでありますが、その結果三十七年度には月給の平均が一万三千二百九十四円でありましたものが三十八年度は一万四千六百七十三円、これはおそらく三十九年度も一万五千円台にはなるのではないか、そのような交渉を自治省としておるところでございまして、御意見のように処遇の改善について積極的にあたりたいと考えております。
  21. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ぜひその点はひとつそういうふうに進めていただきたいのであります。この母子相談員相談を受けておりまする例等を見てまいりまして児童福祉白書のほうに出てまいりますのでありますと、昭和二十八年から三十六年まで二百三十三万三千八百四十六件、そうして解決したものが二百十九万四千五百二十四件という実にすばらしい働きをしているようであります。その内容について十分知りたいと思いまして参考資料を見ましたのでありますけれども、これを見ましても解決されているのは実に多い。ことにその中核が生活指導の問題であるということを考えますと、実にりっぱであると思うのであります。これらの点についてはなおなおひとつ格段の御努力をしていただかなければならぬと思うのであります。  おかあさんたちに安心して生活をしてもらうということについて必要なことの一つに、住宅問題が当然あるわけであります。この住宅問題を児童福祉白書によって拝見してまいりますと、住宅所有状況の割合というのが出ておりますけれども、それで見てまいりますと、昭和三十一年の八月調査と三十六年八月調査でありますからその後のことは十分にわかりませんが、これで見てまいりますと、三十一年の八月に比べまして三十六年の八月調査におきましては、第二種公営住宅において一・九%が二・八%になっております。ところが自家、自分のうちということにつきましては五九・六%が五五・四%に減っております。その他の項におきましては、その他というのは壕舎、事務室、小使室に寝泊まりしている者というように書かれておりますが、このその他におきましては三十一年八月が七・六%に対しまして三十六年八月は九・二%ということになっております。したがいまして第二種公営住宅でふえてまいりましたものと自分の家で減ってまいりましたもの、それからその他においてふえてまいりましたもの、これと差引をしてみますと、住宅事情はむしろ悪くなっているというように思われます。五・八%くらい悪くなっているというように思われるのであります。単にこれだけの表では十分なことはつかめませんけれども、そういうように思われるのであります。壕舎というのはもうすでにほとんどないでありましょうけれども、事務室、小使室等に寝泊まりしているという者がおそらくふえていっているのでありましょう。しかしこれらのものにつきましては、順次子供が大きくなるにつれまして、なかなかそこには住みがたいことにもなるのでありましょうし、またこういう小使室とか、事務室とかいうものはおそらく一間きりでありましょうから、子供が大きくなってまいりましたときに、男の子女の子というように子供が両方あるというような場合、ずいぶん困難な事態にもなるのではないか。二十歳以下の子供対象とするといたしますと、このごろの栄養のいい時代になってまいりましたから、大体男の子にしても、女の子にいたしましても、もう十二、三歳くらいで相当に成熟をしてまいる。こういう問題を考えてまいりますと、母子世帯福祉を守るためには、住宅問題については格段の努力をする必要があるのじゃないか。そうしておかあさんに安心して生活してもらえるというようにしなければならぬのじゃないか、こういうように思うのであります。これは古い統計でありまして、参考資料の中にありましたかどうか、私は参考資料を十分に読んでおりませんのでよく見えませんでしたけれども、この点どういうようなことに実態はなっているのか、承りたい。
  22. 黒木利克

    黒木政府委員 実はこの白書には先生御指摘のように母子の住宅事情というものが、昭和三十一年以来三十六年まではあまり改善されていない。もっと住宅対策に馬力をかける必要があるという意図から書いたのでございますが、この後昭和三十七年度、三十八年度両年度にわたりましてこの第二種公営住宅のワクも実は千五百ほどいただいたのでありますが、ただ地方庁の熱意といいますか、あるいは財政の事情等で実質は三十七年度はこの資料にございますように、千五戸、三十八年度は、千二戸というようなことで、本年度はやはり千カ所こえますが、まだまだ母子の住宅の問題の解決にはほど遠いのでありまして、こういうような法律の通過を見ました暁におきましては、ひとつこれについても馬力をかけよう。この第二種公営住宅の優先的取り扱いについては建設省から一定のワクをもらうことになっておりまして、地方庁が希望すれば千五百カ所以上、あるいは二千カ所も、二千五百カ所でももらえるわけなのでありますけれども、先ほど申しました地方の熱意の足りないために、今日のような状況にあるのでありまして、この法律を提案いたしました趣旨も、こういうような地方庁がもっと関心を持って母子住宅対策に真剣に取り組むようにという趣旨からでございます。
  23. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまのお話を承りまして、今日のような住宅が逼迫しているときにこういうようなせっかくの予算があるのに、これが十分に使えない。千五百戸のうち千戸くらいしか使えないというようなことはきわめて遺憾であります。せっかくの当局の御努力も、われわれの悲願も、ここで実現をしないということになっておるのであり、決して母子世帯皆さんのうちが十分にあるからそれへ入らないということではないことはだれが考えましても当然で、考えられることであります。せっかく本年度また二千五百戸分というワクがとれたとしますならば、どうかひとつ格段の努力をしてもらいたい。一体これができないというところは地方庁の熱意がないということだけでしょうか。こういう制度母子世帯に十分知らされていないのではないか、あるいは入居するにつきましての何らかの悪条件があるのではないかというように想像されるのでありますが、これらの点はいかがでありましょうか。
  24. 黒木利克

    黒木政府委員 確かにお説のような、地方公共団体の責務についての自覚が希薄になっておりますから、この第三条に地方公共団体の責務を書き、この第十八条に、従来規定のなかった——母子福祉資金等の貸付に関する法律とか、その他の法律においてこういう規定は初めてでございますが、こういう規定を置きまして、先生のおっしゃるように母子住宅の問題のさらに大幅な前進をはかりたいというような趣旨で運営してまいりたいと思います。
  25. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私はこの貸し付けの制度自体にも非常な一つの危惧を感ずるのであります。それは昨日も御論議になられました保証人の問題でありますけれども、保証人をつける、つけぬということはともかくといたしまして、貸し付け制度自体というものがその内に内包しておりまする一つの弱点、欠陥と申しますか、つまり確実に返せる人でなければ貸さぬということになっております。一番必要なのは、返せないようなあぶなっかしい人なんです。その人に貸して自立させていくということがこういう社会政策によりまする貸し付け制度のいわば目的でなければならぬ。ところが貸す、貸さぬということになりますと、とかく返済が確実であるという人に貸しやすい。だから返済がむずかしいという人には貸さないということになっているのではないかというように思うのであります。償還能率がいいというのも、これもそこらの問題はどう考えるのか、これはよほど突っ込んで実情を見ないといけないと思うんです。ただ償還能率がいいということ、これはもちろん婦人の、男子よりもずっとすなおな、まじめな性格というものから、犯罪人でも、不良少年を見ましても、男のほうが率はずっと多いのでありまして、これは婦人に頭を下げなければならぬということになりますけれども、しかし、どうもそういう婦人の性格のいいというところによる点も多分にあると思いますけれども、同時にまた、私はこの償還率がいいということですぐ心配になるのはそこです。一体ほんとうにあぶない人に貸しているのかどうか。あぶないけれども——もちろんめちゃくちゃにあぶない人には貸せられぬでありましょう。あぶないけれどもこの人に貸してやれば立ち直るかもしれぬという場合、償還ということに対しては非常にあぶないという危惧があっても貸してやる。でありますから、私もこの法律最初につくりますときには、こんなものはくれてしまうつもりでやればいいのじゃないかということで当時言ったことを覚えているのであります。そんなのは返してもらおうなんて考えぬでも、気の毒な母子世帯でありますから、これはもうくれてしまって、そして立ち直らせるくらいな気持ちでやるべきだというようなことを申したことを記憶しておるのでありますけれども、やはりその点はそう考える。それでこの住宅の問題でも、やはり入居いたしまする母子世帯について何らか、保証人とか何とかというようなめんどうくさいことがあるのだろうと思うのでありますけれども、一体それはどういうことになっておりましょうか。そこらに入れないという、あるいはあまり希望しないというような何らかの——ただに官庁、地方庁の関係だけでなしに、そういうものがあるのではないか。実態は一体どうなっておるのであるか、どういうふうにして入居するのであるか、それを承りたい。
  26. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに償還率がいいということをほめるというような運営は適当でないと私も思っています。したがって、単に義務的にこの資金の運用をやりますと、ほんとうに借りる必要のある母子に対して利用されないといううらみがございますから、そういうことのないようにというのがこの事業の運営のむずかしいところと申しますか、ねらいでなくてはならぬと思います。したがいましていろいろ財務当局の抵抗もあったのでありますが、昨日も申しましたように、相互保証ということで、これは償還能力があるいはないかもわからないが、そういう借りる人たちがお互いに保証し合えばそれでよろしいというようなことでやってみたのでありますが、これによりましてかなりそのような欠陥が是正されつつあるというふうに考えております。  それから、このお手元の資料には、——借りなかった、却下の理由というのを配付資料にはあげておきませんでしたが、別の資料を見ますと、三十七年度の貸し付け不承認理由調べというのがございますが、これによりますと、法に規定する資格に欠ける者、——配偶者のない女子、満二十歳未満の子供を持った母子というような、法に規定する要件に欠ける者が三十七年度年間六百十一件、二八・四%ございます。それから本人が辞退するあるいは資金計画なり資金の使途が不適当なもの、あるいは育英会の奨学資金等と重複するもの、あるいは入学資金等でも就学先の不合格というようなものによりますものが二千六百件でございまして、これが六九・七%でございます。残りの一三%余りが都道府県の貸し付けの財源が年度の終わりになりまして足りなくなった、これは翌年度回しというようなことで、年度の終わりの財源不足というものでございます。したがいましてこれを見ますと、償還能力がないからというような理由は端的には出ていないのでありまして、いろいろ私のほうで調査をしましたが、結局先ほど申しました相互保証の方法でかなりそういうような償還能力がないことによって不承認になる理由というものはなくなっておるのではないかというふうに判断をいたしておる次第でございます。
  27. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまの貸し付けの問題につきましては、この表に関する限りはたいへんいいと思います。ところがもうひとつこの表の裏に隠れておるものが考えられる。住宅の貸し付けについてはあとで伺いますが、この表の裏に隠れていると考えられるのは、最初からこの人はあぶないから手続をさせない、こういうものがあるだろう。手続をして却下されたのはこれであります。ところが最初からこれはあぶないから手続はさせない。手続はもうしてもだめだからという立場でやるというのがあるのではないかというように思うのですね。たとえばこれは実例でありますが、浜松市の社会福祉事務所が、生活保護の適用を受ける何といいますか、非常にその生活保護を受ける人間が少ないということで、一時ほめられた。ところが内容を調べてみると、そうじゃない。あまりきびし過ぎて、たとえば自己負担をあまりきびしくするというようなことから、もう生活保護を受けられないのだということで、実際の法の趣旨というものが行なわれない。そしてただ少なくして、それで市の負担、県の負担を少なくしているという誤ったことをやっておりましたために、なるほど生活保護の適用者は県下で非常に少ないという事態がある。それだから実際そこへ生活保護を頼みにいく人、あるいは民生委員に聞いてみますと、あんなものはしょうがない、あの事務所長なんか首にしなければしょうがないということを私はよく聞きました。それについて忠告をしたことがあるのですけれども、それに対して、同じ町にあります西遠社会福祉事務所というものは、これは実に親切に、一々相手の立場に立ってやつでくれる、こういう違いがある。だから割合多いです。多いけれども、相手の立場に立っていますから、憲法の精神生活保護精神というものはちゃんとそこに行なわれているということです。だからこの表だけを表面から見ますと、なるほど実にりっぱだ。これならばこの法の趣旨は行なわれているというように考えられますが、この裏に最初から手続を押えてしまって、させないというようなものが一体どれくらいあるのか。これは厚生省としても統計は出ないだろうと思いますけれども、おおよそ、直接おやりになっている植山さんなどのほうでは、そういう点などはお調べになったことがあるのかどうか、また現実に調査なさったことがあるのかどうか。調査したことがあるとすれば、実際どうなっているのか、そのような点はおわかりにならぬでしょうか。
  28. 植山つる

    ○植山説明員 いままでそういう調査はいたしておりません。ただ一年に一回母子相談員人たちを集めます会等がございましたり、また未亡人会の関係のときに、そういうことがないようには極力指導はいたしてまいります。ただいまの表にもございましたように、相談の解決したものと未解決のものの差が非常に少ない点からごらんくださいましても、借りたい人には貸しているような実情ではないかと考えます。
  29. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この表に関する限りは非常にりっぱにやっていられるわけです。私どももたくさんいろいろな法律をつくりますけれども、この母子福祉資金貸し付け法などは実にすばらしい法律であったというように実際を見て考えるわけです。どうかひとつそういうようなことで、訴えるところがなくて、ほんとうに無告の民として泣いている母子家庭がないように格段の御努力をいただきたいと思います。  それでさきの住宅問題へまた戻るわけですが、実際において、これは厚生省のほうではなくて、建設省のほうで扱っているわけですか。とすれば、いま直接伺っても無理かと思いますけれども、おのずから厚生省の関係も深いわけでありますが、これらについて一体第二種住宅に入居するのについては、どんな手続をしてやっているのでしょうか。おわかりですか。おわかりでなければけっこうであります。
  30. 砂原格

    ○砂原政府委員 これは先生もよく御存じだと思うのでありますが、第二種の住宅の問題は、各府県へ一応割り当てをするのでありますが、各府県とも、あるいは市にいたしても、第二種住宅は、ほんとうはあまり受け入れを好まないわけです。費用はたくさんかかるが、貸す家賃は安いし、市の負担、あるいは町村の負担率も高くなるしというような関係で、あまり喜ばない。そうしたものにやはり割当をさせるにことに努力はするのでありますが、そういうような実情で、地方の機関が受入れをしてくれる率が非常に伸びが悪いということが、私は第一にこの問題が非常に進んでいかないという原因になると思うのであります。それから、そういう低所得者あるいは母子家庭のような特定の場合の二種住宅の場合には、市のほうも、そうした生活者を入れるのでありますから、別段入居に対してそうむずかしい条件はつけておらぬようです。私たちの地方でもそういう例がたくさんございますが、入居の問題についてはそうむずかしいようではないように思っておるのでございます。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いずれにいたしましても、生活を安定させるのはやはり住宅が大きな役割をしております。したがいまして、せっかく予算を取りましても、これらがその三割も四割もが実現しないというようなことはどこかに欠陥がある。今日逼迫した住宅事情の中で大きな欠陥があるに違いないのでありまして、それらの点についてさらに十分な御検討をお願いいたしたいと思います。  それから、この母子家庭福祉をはかっていく、この母子家庭がほんとうにしあわせになっていくために必要なことは、やはりお母さんたち希望を与えること、子供たち希望を与えることであります。お母さんたち子供の成長に唯一の望みを託しまして奮闘しておるわけでありまして、世の荒波を乗り越えているのでありまして、希望を与えるということが何より大事だと思います。そういうような意味で、母子福祉資金の貸し付けの傾向を見てまいりまして、昨日も話があったことでありますが、修学資金が増加していっているのを見ますと、大体この母子福祉資金の貸し付けの法律の目的というものが順調に進んでいるなというように思うのです。これは順調に進んでいます。言いかえれば、母子世帯生活の傾向が安定してきている。もちろん戦後ようやく十八年を経まして、子供たちも大きくなってきたということも大きな原因でありましょうけれども、高等学校に、大学にというように子供を向けてまいります。生活がはなはだしく困窮しておれば一応そういう線は出てこないわけでありますから、修学資金がふえてきたということの内容を自分ながらに分析して考えてみまして、これはやはり戦後の母子世帯に対する政策というものがある程度成功しているなということを感ずるのです。子供の大きくなったことも原因でありましょうが、ともかくもこの白書の一〇九ページを見ましてもそうでありますが、この傾向というものを見まして、順次修学資金というものが非常にふえてきた。昨日伺った統計でも同様であります。これは何と申しましても一応生活が安定をしてきて、子供の教育に非常な努力をしだし、また大きな希望を持ってきているな、お母さんたち希望がそこに移ってきているなというように思うのであります。しかしそこで考えなければならぬことは一体修学資金はこの要求に対して十分にあるのかどうか、このワクが十分にあるのかどうかということであります。この申し込みと貸し付けの関係、これはどういうことになっておりましょう。あるいはいただいた参考資料にあるかもしれませんが、ちょっと実は参考資料を紛失しておりまして、けさ見つけ出したものですから、十分に見ておりませんが、どういうことになっておりましょうか。もしありましたらちょっとページを教えてください。
  32. 黒木利克

    黒木政府委員 修学資金の問題は、確かに立法の当初から見ますとウエートを占めてまいりまして、最近は四〇%を越しておるというような状況でございます。特に最近は高校進学と申しますか、高等学校に入る子供が多くなったわけでございますが、それに対しての申し込みと、承認あるいは不承認との比率関係でございますが、先ほど申しました、昭和三十七年度の貸し付け金の不承認理由調べで、修学資金のところを見ますというと、全体で不承認になりましたのが年間千三百九十四件でござます。そのうち入学できなかったとか、不合格であった、あるいは奨学資金、育英資金等と重複したというのが八百二十件、それから法に規定する資格のなかった者が二百五十四件、先生のおっしゃる貸し付け財源の不足によるというものが三百二十件あったというような調査結果がござます。
  33. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その貸し付け資金財源が却下いたしました三百二十件の内訳はわからないのでしょうか。つまり何に使った、たとえばこの修学資金等要求したが、財源がなかったというのがどれくらいなのでございましょうか。
  34. 黒木利克

    黒木政府委員 実はただいま報告しました数字しか持ち合わせておりませんが、この調査の誤謬があると思いますから、あと提出したいと思います。
  35. 長谷川保

    長谷川(保)委員 あとで調べて見せていただきたいと思います。  せっかく親子苦労の波を乗り越えて、ようやく子供が成長してきた。母親の後半生を子供たちの犠牲にいたしましたその最後の大きな報いを、報われるか報われないかということをお母さんたち希望にかけますのは、やはり今日の日本の社会の現状におきましては、学歴というものが子供の将来に非常に大きなものを持っていくということになりましょうから、したがって、せっかく能力があるのに修学資金が受けられないということ、もちろんその他の制度も今日あるわけでありますけれども、おのずからそれぞれまた制限がありましようから、せっかく母子福祉法というような法律をこれからつくっていく、母子福祉貸し付け法がそういうものに発展をしていくというとき、そういうようなことでお母さんたちを泣かしてはならぬ、希望を失わしてはならぬ、こう思うのでありまして、これらのきめのこまかい施策をひとつお考えをいただきたいというように思うのであります。  それから同様に、お母さんたちの大きな希望を満たしてまいりますのに、今度は就職をしていく子供たちの問題があるわけです。よいところに就職をさしたい。しかし昨日も問題になりましたように、保証人がないということも出てくるでありましよう。私の見たところによりますと、就職いたしまするのに対しまして、身元保証を三十一府県が条例でやっておるということがこの白書にございますけれども、あとの県は一体やっていないのかどうか。またこの白書をつくりました後に、そういう制度が全然できていないのかどうか。こんなことくらいは私ども静岡県あたりでも県知事がやっておるようでありますが、同時に県知事なり市長なりがそういうものを当然やって、暗い生活をしてまいりました子供たちお母さんたちに、希望を与えるというのは当然のことだと思うのであります。でありますから、三十一都道府県がやっておるという記事が白書の一一四ページにございますけれども、これらのことは当然残る県もやるべきであります。やっておらないとするならば、厚生省はこれを督励すべきであると思うのでありますが、これはその後残りの県はどうなっておりますか。
  36. 黒木利克

    黒木政府委員 これは三十七年度までの調査結果でございますが、三十八年度の調査はまだありませんから申し上げられませんが、この条例を設けていないところは、この白書にも書いてありすように、母子後援会というものが結成されておりまして、県が母子後援会に補助金を出しまして、身元保証のまた一種の再保証みたいなことをするような運営をやっております。私のほうではまたそういうような通知を出しておるのでございます。
  37. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そういたしますと、条例でやっておる三十一府県以外の府県というものは、母子後援会が全部できておるのでありましょうか。それらのことについては万遺憾のないようなことになっておりましょうか。どういうことになっておりますか。
  38. 黒木利克

    黒木政府委員 まだ手元に正確な資料がございませんから、大体の県において条例をやっておると思いますが、実は昭和三十年にこの通知を出しまして、それから各県ともだいぶ条例制定をやっておりますから、身元保証をしてもらえないために就職できなかったというような報告を最近聞いていないところをみますと、大多数の県において条例制定以外には母子後援会組織ができておるというふうに考えております。
  39. 長谷川保

    長谷川(保)委員 おそらく最近におきまする若年労働の不足ということから、こういう必要性がわりあいに少なくなっておるのではないかというようにも思いますけれども、せっかくこういうようにやってきておるのでありますから、それらにつきましても、もしそういうようなことで欠けておるところがありますならば、当局といたしましては当然府県をやはり督励して、そういう制度を十分にしてあげるということをやっていただかなければならぬと思うのであります。この母子家庭福祉を保障してまいりますために、どうしても大きな問題はやはり職業の安定であります。  労働省のほうに伺いたいのでありますが、労働省の中に、内職公共職業補導所、家事サービス職業訓練所というものがあるわけでありますけれども、これらについては実態はどういうようになっておりますか。現況をお教えいただきたい。
  40. 海野将親

    ○海野説明員 内職公共職業補導所につきましては、昭和三十年度から設置されまして、現在全国に三十五カ所設置されております。府県数といたしましては三十三県に達しております。これらの補導所におきましては、家庭の外へ出て働くことの困難な主婦、未亡人等を対象といたしまして、それらの方に適当な内職をお世話をする、いろいろ内職に関する事情の御相談にあずかる、あるいはまた、必要な技術の簡単な講習を実施する、あるいはまた内職に関するいろいろの情報を提供して御判断に供するというような仕事をいたしておるわけでありまして、三十九年度におきましては、さらに二カ所増設する予定と相なっております。  さらに家事サービス職業訓練所につきましては、昨年失業対策事業に従事をいたしております女子の日雇い労務者を対象といたしまして、これらの方々の常用雇用への就業を促進せしめるために、家事的職業に必要な職業訓練を行なうために、全国八カ所設けられておるわけでございます。一回の定員は六百六十名で現在実施をいたしておるわけでございまして、従来、今日まで入所いたしました数は二百六十一名でございまして、うち修了をいたしました者は現在のところ三百九十五名でございます。これらの方々の入所の状況は、年齢的には四十一歳以上の方が八〇%でございます。また子供のある方が五八%になっておるようなわけでございまして、主として中高年齢以上の御婦人の方の入所を見ておるようなわけでございます。内容が大体家事に関する料理あるいは育児、病人の看護等のことを訓練の内容といたしておりますので、本来御婦人の持っておられる特性にかんがみまして、入所せられました万はたいへん楽しく訓練を受けておられるというのが非常に特徴でございます。修了されました方は主として会社、事業場等におきまする炊事関係の業務に従事をされておるというような状況でございます。
  41. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大体それらの諸君の給与はどれくらいになっておりますか。
  42. 海野将親

    ○海野説明員 給与につきましては、東京におきましては通勤で一万五千円から一万七千円でございます。大阪におきましては一万二千円から一万八千円というような状況でございます。
  43. 長谷川保

    長谷川(保)委員 会社、事業場等の炊事場で働く人が多いといたしますと、あるいは相当な長時間になるかとも思うのでありますけれども、これらの時間は一体平均どれくらい働いておりますか。
  44. 海野将親

    ○海野説明員 時間はおおむね所定時間八時間でございます。
  45. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は、この母子世帯で特別事業を経営してまいりまする方々は別でありますが、そうではない方々はいまのこの労働省のほうの御関係の補導所関係のこの仕事というのは、非常におもしろいと思うのであります。ことに最近私どもよく承知しておりまするのは、パートタイムの家事手伝いであります。これは大体私の存じております浜松市で申しますと、たとえばあすこに国鉄の浜松工場というのがございます。その工場の官舎があすこに何百あるか存じませんが、ほとんど全部がこのパートタイムに出るのです。浜松における賃金はいま一時間大体六十円ないし七十円です。したがって母子世帯のような場合に子供が学校に行っている、あるいは保育園に行っているから、子供が帰ってくるまでに帰ればいい。これはパートタイムでありますから実に自由な時間で、条件で行けるわけです。ですからこういうものに対しまして母子世帯のお宅で子供を見ながら子供を学校に出し、保育園に出して、そのあと行ってくる。そうして夕方帰るまでには自分も帰ってきているということになりますと、かぎっ子というのがなくなってまいります。私は非常にいいのではないか。いま大体一時間六十円から七十円でありますから、一時間七十円といたしますと、五時間行ってくると三百五十円、それに大体食事は出先でやらせていただくというのが多いのであります。母子世帯の仕事には非常に適した仕事で、その要求は都市には非常に多いと思うのであります。でありますから、いまのような労働省におきまする職業補導所というようなこともぜひ進めていただきたいし、またそれらの家庭の家事のパートタイム、女中さんがございません時代でございますから、女中のかわりにパートタイムでいくということになりますと、これは非常にいい。ことに泊まり込みのお手伝いさんでございますと住宅問題が出てまいりますが、パートタイムで来てくれれば、住宅問題は別に部屋を考えなくてもいいということにもなりますし、これは働くほうでも非常に喜んで働く事態になりまするし、いずれにいたしましてもこれは非常にいいものだ。このパートタイム制というものを十分やはりこの際組織的に、あるいは積極的に厚生省におかれましても、労働省におかれましても考えてやる。それらのものについての十分な連携をおとりになって、積極的に、ひとつ協力的に全国母子世帯についてそういうような対策をおとりになるならば、ずいぶん生活が安定してくる面があるのではないかというように思うのであります。これらのパートタイム職の積極的なあっせんというものについて厚生省といたしましては何らかの形をとったことがあるのでありましょうか。これは労働省の関係として労働省だけでやっておるのでありましょうか。厚生省のほうでもそういう問題について母子世帯その他の問題として十分取り上げておるのでありましょうか、承りたいのであります。
  46. 黒木利克

    黒木政府委員 パートタイム制のことはまことにけっこうな御意見でございまして、厚生省も従来労働省にお願いをいたしまして、これは単に未亡人のみならず中高年齢層の婦人対策としていろいろ取り上げていただいておるのでありますが、この立法でも第十九条に特にそういうような意味の規定をいたしたのでありますから、この法案が通過しました暁におきましては、さらに積極的に労働省とも連絡をとりまして、労働省にお願いいたしまして促進してまいりたいと存じております。
  47. 海野将親

    ○海野説明員 私のほうといたしましては、先ほど先生の仰せのとおり、家事サービス職業訓練所に入所をいたしまして修了いたしました者は、本来的には家事使用人になっていただくということを目的といたしておるわけでございます。ところが入所してこられまする方々の現在での希望は、いわゆる会社、工場等の社会保障制度のあるところに就業したいという希望が相当強いものでございますから、したがいましてとりあえずそういう希望に沿った措置をいたしておるのでございますが、できるだけ本来の趣旨に戻りまして、家事使用人として就業することの利害得失等を十分啓蒙いたしまして、先生のおっしゃるような方向にこの施設が運営されるようにせっかく努力いたしたいと思います。  なおパートタイム制の問題等中高年齢者の婦人の労働力の有効活用の点につきましては、ただいま婦人少年問題審議会におきましてそのことをおはかりをいたして、せっかく御検討をお願いをいたしておりますので、その御諮問の結果が出ましたならば、その線に沿いまして所要の施策を進めてまいりたい、こういう考えでおります。
  48. 長谷川保

    長谷川(保)委員 まあ、これは海野さんの直接の管轄と違うかもしれませんが、職業安定所関係のほうでこのパートタイムのほうは積極的にやっているのでしょうか。われわれの見ているところでは、ほとんど全部が個人個人との関係で知り合いをたどってパートタイムで家事の手伝いに出ているということになっておりますけれども、これは職業安定所としては相当に力を入れてやっているのでありましょうか。私は母子福祉法立場から母子世帯の問題を中心として考えているのでありますけれども、職業安定所としてはパートタイムのあっせんという問題についてはどういうようにやっているのでありましょうか。私が現実を見ると、ほとんど個人個人との関係でやっているようでありますが、どんなふうになっているのでありますか。
  49. 海野将親

    ○海野説明員 私の責任外の問題でございますので、ちょっと責任を持ってお答えができないのはまことに申しわけございませんが、先ほど申し上げましたように、労働省といたしましても中高年齢者の労働力を有効に活用してまいりたいという点の施策をせっかく検討いたしております。また実際パートタイム問題つきましても、そういう点について東京都におきましては先ほどいろいろ実態調査をいたしまして、それらの労働力の需給の調節につとめておると聞いております。
  50. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまの職業あっせんの問題は、私はやはり相当に大きな力を入れることが必要である。確かに本案の十九条にもある程度のことは書いてあるのでありますが、社会党提案のほうにおきましては、第十三条の三項で、地方公共団体に母子世帯に対する家内労働のあっせん義務を課しておるのであります。これらの点についてはもっと積極的にやはり考える必要があるのではないかというように思うのであります。  それから次に伺いたいのは世帯更正資金あるいは生活保護法との関係ですね、世帯更正資金関係及び生活保護法自体と今度の母子福祉法との関係はどういうふうになるのでありましょうか。
  51. 黒木利克

    黒木政府委員 母子福祉資金と世帯更正資金との関係におきましては重複して貸し付け対象にはじないという程度の調整をやっておるにすぎませんが、なお生活保護法との関係では、これは収入として見ませんで差し引くというような運営はやっておりません。
  52. 長谷川保

    長谷川(保)委員 母子世帯のしあわせを見てまいりますときに、以上いろいろ御質問してまいりましたこととともに最後に慰安の問題があると思うのであります。やはり張り切って毎日を生活しますおかあさんたちに対しまして十分な慰安の道を与えるということを考えていかなければならぬのでありまして、法律には母子福祉センター、母子休養ホームというようなものがあり、社会党の案のほうにもそれに類したものがあるわけでありますが、今日実際にこれらのものが利用されておりまする状況でありますが、どういうようなふうに実際現状はなっておりましょうか。資料にあると思ったのですけれども、伺いたいと思います。
  53. 黒木利克

    黒木政府委員 母子のレクリエーションの施設といたしましては、この法律にも規定がございますように、母子福祉センターと母子休養ホームという二つの施設がございます。現在母子福祉センターは施設の数が二十六カ所でございます。母子休養ホームは三十八年度から始めたのでございますが、これは現在七カ所でございまして、母子福祉センターのほうは未亡人福祉の何と申しますかセンターといたしまして集会室、あるいは先ほども出ましたが内職等のいろいろ事前の講習会等、あるいは子供の問題等につきましての相談、助言に当たるというようなことを主にいたしております。なお単に未亡人だけでなしに、一種のかけ込み寺と申しますか、夫婦の間のいざこざがありまして行くところがないというような場合に冷即期間、預かるというような運営をやっておる地方もございまして、各地さまざまに運営をしておる実情でございます。母子休養ホームは最近に始めたばかりでございますが、政府補助金を出す前に各地におきましてこういう試みをやっておるのでありますが、これは主として未亡人団体あるいは婦人団体がその運営を委託されまして、軽費で保養ができる、あるいは子供をこの休養ホームで付属の託児施設で預かりまして、母親はのんびり一日が暮らせるというような運営をやっております。
  54. 長谷川保

    長谷川(保)委員 児童福祉白書に書かれております母子福祉センターの記事を見ますと非常にりっぱである。こういうように実際に各県とも全部が行なわれておるとすればけっこうなことであますが、何にしてもこういうものは遠くにあってはだめなんです。できるだけ数多くなければいけないと思うのです。質量ともにこれはしっかりやっていくということが必要であり、それがもしほんとうにできますれば、母子相談員とともにこの制度は私は実にいい仕事になると思うのです。いまのお話でございましても二十六カ所母子福祉センターがあるという。この数が非常に急速にふえているように思うのでありますが、実際において三十七年度で十府県がすでに二十六カ所ということになっておるとしますと、急速にふえていると考えられますが、これはいま府県に一カ所くらいのかっこうでできているのでありましょうか。それとももっと、たとえば相当の地方都市には、中都市以上のものにはこういうものをつくるという計画があるのでしょうか。一体計画としてはどういう方向でいくのですか。
  55. 黒木利克

    黒木政府委員 大体県が施設を直接つくりまして、これを未亡人団体等に経営を委託するという形式でやっておりまして、まだ中都市まで設置をいたしておるという事例はございません。大体各県設置を見ました暁にはそういうような都市までつくるように進めてまいりたいと思っております。
  56. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この国庫補助の関係はどうなっておりますか。
  57. 黒木利克

    黒木政府委員 これは従来の児童福祉施設と同じことで、国が三分の一の負担をいたしまして、県があとの三分の一、あるいは社会福祉法人等が経営いたします際には自己負担が三分の一ということになっております。なお、この施設法律上の規定は今回が初めてでございます。
  58. 長谷川保

    長谷川(保)委員 法律的に裏づけをつけて、そして予算的な措置をしていくということを進めていただかなければならぬわけでありまして、こういうものがわが党案におきましても、また政府案におきましても、ともに取り上げられていくことは、まことに喜ばしいことでありますけれども、問題はいま言ったように、すべての日本の社会保障が同様でありますが、形だけはできていった、数だけはふえていった、種類だけはふえていったけれども、内容が実はさっぱりできていない。外国のお客さんが来た場合、一番いいところだけを見せれば、なるほど日本の社会保障は進歩している、こうお思いになるかもしれませんけれども、こういうような母子福祉センターなどもあるいは母子の休養ホームにいたしましても、これはやはり質量ともに相当に多くなっていかなければならぬと思うのであります。厚生省としては今後どうでしょうか。実際としては、各府県の婦人団体のこの要求は非常に強いと聞いておるのであります。でありますから、県に一カ所というようなことではその用をなさないのでありまして、ことにこういうものができるようになると県都に集中いたしまして、さっぱり地方の中都市などには恩恵がないという形になる。そこにいる婦人たちはほとんど何らの恩恵も得られないという形になって、それでは何もならぬのでありまして、ことにはんぱな不公平なことになるように思われます。この方面の予算というものは、相当に今後考えていただくことが母子福祉のために大事だと思うのでありますが、その点、今後の方針としましてはどんなふうに思っていらっしゃいましょうか。
  59. 黒木利克

    黒木政府委員 先ほど、母子福祉センター、母子休養ホームは、現在は県立が多いということを申し上げましたが、今回の法律案では二十条に、都道府県のみならず、市町村なり社会福祉法人、あるいはその他の法人が設置することができるというような規定を置きましたので、今後は、御意見のように中都市等にも設置を奨励してまいりたいと思います。  なお、本年度から、児童福祉施設あるいは母子福祉施設、社会事業施設というようなものの補助金の運営は、社会局、児童局を合わせまして、本年度は約二十五億円でございますが、各県の申請に基づきましてその緊急度から補助をつけていくというような運営に変わりましたので、各県あるいは各都市のそういう設置をしたいという希望がありました場合には、この二十五億円の運営で要望を満たすこともできるわけでありますから、できるだけ各都市にそういうものが設置されるような機運を醸成してまいりたいと思います。
  60. 長谷川保

    長谷川(保)委員 税金問題でありますが、せっかく自立してまいりましたおかあさんたちにとりまして、やはり相当の税制上の配慮をするということは国として当然でありまして、現実にもやってはおるのでありますが、むしろこの際、母子福祉法をつくるならば、社会党の案の第十四条にありますように、税制上の配慮を国の義務としてやるということをここらに書いたらどうかと思うのでありますけれども、どういうわけでこれらの点については触れなかったのでありましょうか、伺いたいと思います。
  61. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに、未亡人の団体からは母子福祉法を制定してほしい、その中には課税面の特例措置も規定してほしいという要望がございました。そこで財務当局と協議いたしたのでありますが、財務当局の言い分では、課税の政策というものはできるだけ一つの課税体系、立法体系の中でやりたい、他の法律に一々こういうような規定を置くということは適当でない、これは税制の一元化を妨げて、かえって複雑になりまして国民にも迷惑をかけるというような御意向がございまして、ついに協議がととのわなかったのでございます。しかし、この法律に規定がなくとも、従来とも所得税あるいは市町村民税、法人税等の税額控除なり非課税の制度がござますから、この内容を母子世帯にできるだけ有利に、改正ごとにお願いするというような方針でまいりたいと思っております。
  62. 長谷川保

    長谷川(保)委員 母子寮の問題でありますが、これもまた御承知のように、社会党法案では、第十五条に母子寮の項がわざわざとってあるでのあります。これは児童福祉法の第三十八条に母子寮の規定があるわけでありますけれども、母子福祉法というなら、母子寮はやはり社会党の案のようにここに持ってくるべきじゃないか。児童福祉法の中にとどめておいて、この母子福祉法の中に母子寮の問題が出てこないというのは、どうも法律として変じゃないかというように思うのでありますが、この点、やはり母子寮児童福祉法のほうに置いて、ここに載せなかったのは何らかの理由があるだろうと思う。私どもは、母子福祉法もしくはそれに類する名前の法律であれば当然やはりこの中に母子寮は持ってくるべきである——乳児院は児童福祉法の中に置くといたしましても、当然母子寮はここに持ってくるべきであると思うのでありますが、どうして母子福祉法という名前をつけながら母子寮をこの中に持ってこないのか、むしろ社会党案のほうが当然ではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがでありますか。
  63. 黒木利克

    黒木政府委員 確かに、おっしゃるように母子福祉法の中に母子寮を入れるべきであります。また社会局の保護施設も入れるべきだと思います。ただ、今回の法律案を国会に提出するに際しまして、実はすでに三十九年度の予算の概算案というものが決定をしておりまして、国会にすでに提出されておりまして、そこでは、母子寮の措置費につきましては施設保護費の中に計上されてしまっておったのであります。したがいまして、予算の組みかえをしませんと、この母子福祉法案の中に取り入れることができないというような技術上の問題がありまして、残念ながら間に合わなかったのでありますが、次の改正の機会に、ぜひ社会局の保護施設をも含めまして、母子寮の規定と挿入したいと考えております。
  64. 長谷川保

    長谷川(保)委員 同様に助産施設も、母子福祉法ができるなら児童福祉法からこっちにとるべきだ。これは、御承知のように児童福祉法の第三十六条にあるわけであります。これもこっちにとるべきではないかというように思うのであります。  先ほどお約束しておきました時間が過ぎてきたようでありますから、一応私の質問はこれで終わることにいたしたいのでありますが、大臣お留守の間にいろいろ私の意見を局長に申し上げました。率直に申しまして、この母子福祉法は未熟だと思います。いまもお話がありましたように、この法案をつくってまいりました作成の経緯もあったでありましょうけれども、未熟であると思うのです。むしろ、やはり社会党の案のほうがより適切であるというように、てまえみそではありませんけれども考えます。その項目一つ一つについて大体申し上げたわけであります。ひとつ十分お考えをいただきまして、政府としまして提案した以上、政府で修正することはできますまいけれども、直すべきところはいま直していただくという形をとっていただくなり、あるいは次の機会においてこれを直すなりというお考えをいただきたい。もしメンツにこだわらなければ、社会党法案をひとつ通して政府案を撤回していただくということをお願いすべきでありますけれども、政府立場もありましょうし、自民党の立場もありましょうから、そうなかなか簡単にまいりませんでしょうが、率直に申しましてむしろ社会党案のほうが熟しておる。社会党のほうも完全とは申しませんけれども、熟しておるのではないかというように思いますし、ことに私、強く先ほど申しました点は、「配偶者のない女子」という項目でありますが、その中に「精神又は身体障害により長期にわたって労働能力を失っている女子」というのがあるわけであります。長い間病気しておる、けがをして伏せっておるというような気の毒な亭主に対しまして、その奥さん子供配偶者のない女子ということでやることは不適当だというふうに考えまして、むしろやはり第五条の「配偶者のない女子」というところに、またはこれに準ずる者ということを入れていただいて、この内容をここに盛っていただければいいのではないか。そうでないと、病気やけがをして長い間働くことができず、女房の働きで生きている気の毒な亭主に、いよいよ卑屈感とまた失望とを与えるのではないか。私はさっきいざり勝五郎の例を出したのでありますけれども、むしろこういうところにもっとあたたかい、夫婦の愛情というものが妨げられないような、きめのこまかい配慮というものをしてあげる必要があるのではないかということを申し上げたのです。それらについては、また局長お話しの上で適当な処置をしていただきたいということを強く希望いたしまして、私の質問を終わります。
  65. 田口長治郎

    ○田口委員長 内閣提出の重度精神薄弱児扶養手当法案を議題とし、審査を進めます。
  66. 田口長治郎

    ○田口委員長 提案理由の説明を聴取いたします。小林厚生大臣
  67. 小林武治

    小林国務大臣 ただいま議題となりました重度精神薄弱児扶養手当法案について、その提案の理由並びにその要旨を御説明申し上げます。  政府は、かねてより母性保健対策を講ずることにより精神薄弱児の出生を防止するとともに、不幸にして精神薄弱の状態にある児童につきましては、児童福祉法に基づく児童福祉施策の一環として、児童相談所による相談指導、在宅指導の助成等を行なうほか、精神薄弱児施設または里親制度を活用しての援護の措置を講ずることによって、その福祉の増進をはかってまいったところであります。しかし、これらの諸施策は、かかる児童の将来の自立のための保護、特にその生活及び職業の指導に力点が置かれていたのであります。  今後、精神薄弱児の福祉を増進するためには、これらの児童家庭にあって介護されている場合には、在宅指導を強化するとともに、特に重度の精神薄弱児の父母その他の養育者には、国の責任において特別の手当を支給することにより、その福祉の増進をはかる必要があると考えられます。  かような家庭にある重度精神薄弱児について、国が一定の手当を支給する制度を設け、精神薄弱児対策に一歩前進をはかりたいと存じ、この法律案提出した次第であります。  次に、重度精神薄弱児扶養手当法案の内容について、その概略を御説明申し上げます。  第一に、支給対象者の範囲でありますが、この手当は、日常生活において常時の介護を必要とする程度精神薄弱の状態にある二十歳未満の児童を監護する父母またはその児童を養育する父母以外の者に支給することといたしております。ただし、その者が公的年金給付を受けることができる場合、または一定額以上の所得がある場合などにおいては支給しないことといたしております。  第二に、重度精神薄弱児扶養手当の額は、一月につき、監護しまたは養育する重度精神薄弱児一人当たり千円といたしております。  第三に、重度精神薄弱児扶養手当に関する費用は、給付費及び事務費とも全額国庫で負担することといたしております。  第四に、この法律の施行期日でありますが、昭和三十九年九月一日から施行いたすこととしております。  以上が重度精神薄弱児扶養手当法案の提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  68. 田口長治郎

    ○田口委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  この際、竹内黎一君より発言を求められておりますので、これを許します。竹内黎一君。
  69. 竹内黎一

    ○竹内委員 ただいま提案理由の説明を聞きました重度精神薄弱児扶養手当法案に関連しまして、資料の提出をお願いしておきます。と申しますのは、実は参考資料というものをちょうだいしたわけでございますが、この中には、精神衛生に関する数字、統計が全然ございません。今後の法案審議を進めていく上に、やはりそういった数字も必要であろうと思いますので、精薄児を中心にした最近の新しい数字に基づく衛生統計をひとつお出し願いたいと思います。  また、もう一つ、これは文部省の所管になるかと思いますが、やはり精薄児を中心にした、いわゆる特殊教育に関する資料もあわせて提出されるよう、委員長においてお取り計らいを願いたいと思います。
  70. 田口長治郎

    ○田口委員長 承知いたしました。  本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十二日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時二十五分散会