運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-16 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十六日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       伊藤よし子君    滝井 義高君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  實本 博次君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月十五日  戦傷病者戦没者遺族等援護法による障害年金、  一時金の不均衡是正に関する請願江崎真澄君  紹介)(第二七六六号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第二七六七号)  同(松浦周太郎紹介)(第二七六八号)  同(青木正紹介)(第二八六七号)  同(奧野誠亮紹介)(第二八六八号)  同(坂田道太紹介)(第二九三二号)  戦傷病者中央援護福祉施設建設費助成に関する  請願江崎真澄紹介)(第二七六九号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第二七七〇号)  同(松浦周太郎紹介)(第二七七一号)  同(青木正紹介)(第二八六九号)  同(奧野誠亮紹介)(第二八七〇号)  同(坂田道太紹介)(第二九三三号)  同(荒舩清十郎紹介)(第三〇四一号)  戦傷病者特別援護法改正に関する請願江崎  真澄紹介)(第二七七二号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第二七七三号)  同(松浦周太郎紹介)(第二七七四号)  同(奧野誠亮紹介)(第二八七一号)  同(坂田道太紹介)(第二九三四号)  同(荒舩清十郎紹介)(第三〇四〇号)  戦傷病者の妻に対する特別給付金支給に関する  請願松浦周太郎紹介)(第二七七五号)  同(青木正紹介)(第二八七二号)  同(奧野誠亮紹介)(第二八七三号)  同(坂田道太紹介)(第二九三五号)  同(江崎真澄紹介)(第二九三六号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第二九三七号)  らい予防法改正に関する請願亀山孝一君紹  介)(第二七七九号)  療術の制度化に関する請願天野公義紹介)  (第二七八〇号)  同(藏内修治紹介)(第二七八一号)  同(四宮久吉紹介)(第二七八二号)  同(田中正巳紹介)(第二七八三号)  同(地崎宇三郎紹介)(第二七八四号)  同(中島茂喜紹介)(第二七八五号)  同(野見山清造紹介)(第二七八六号)  同外六件(藤尾正行紹介)(第二七八七号)  同外一件(神田博紹介)(第二八七八号)  同(櫻内義雄紹介)(第二八七九号)  同外四件(戸叶里子紹介)(第二八八〇号)  同(中村高一君紹介)(第二八八一号)  同(肥田次郎紹介)(第二八八二号)  同外四件(森下國雄紹介)(第二八八三号)  同外三件(山田長司紹介)(第二八八四号)  同外三件(渡辺美智雄紹介)(第二八八五  号)  同外三件(稲富稜人君紹介)(第二九五九号)  同(内海安吉紹介)(第二九六〇号)  同(横路節雄紹介)(第二九六一号)  同(進藤一馬紹介)(第二九六二号)  同外三件(高瀬傳紹介)(第二九六三号)  同外二件(西村榮一紹介)(第二九六四号)  同(金子一平紹介)(第二九九二号)  同(金丸徳重紹介)(第三〇四二号)  理学療法士及び作業療法士制度化に関する請  願外三十三件(小川半次紹介)(第二七八八  号)  同(小坂善太郎紹介)(第二八八六号)  同(春日一幸紹介)(第二九六六号)  同(藤本孝雄紹介)(第三〇四六号)  同(伊藤よし子紹介)(第三〇四七号)  公衆浴場業健全経営維持管理特別措置に関  する請願中野四郎紹介)(第二七八九号)  同(神田博紹介)(第二八七七号)  同(永山忠則紹介)(第二九九四号)  同(横山利秋紹介)(第二九九五号)  生活保護基準引き上げ等に関する請願大原  亨君紹介)(第二七九〇号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願大原亨君紹  介)(第二七九一号)  同外二件(中川俊思君紹介)(第二九九三号)  結核対策充実に関する請願外二件(大原亨君  紹介)(第二七九二号)  全国一律最低賃金制の確立に関する請願横山  利秋紹介)(第二七九三号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三〇一〇号)  同(田口誠治紹介)(第三〇一一号)  同外一件(山内広紹介)(第三〇一二号)  駐留軍労働者雇用安定等に関する請願石橋  政嗣君紹介)(第二八二七号)  同(泊谷裕夫紹介)(第二八二八号)  同(野間千代三君紹介)(第二八二九号)  同(畑和紹介)(第二八三〇号)  同(大出俊紹介)(第二九〇三号)  同(米内山義一郎紹介)(第二九〇四号)  同(大村邦夫紹介)(第三〇一三号)  国有林労働者差別待遇撤廃等に関する請願外  十二件(八木昇紹介)(第二八三一号)  同外十二件(八木昇紹介)(第二九〇六号)  同外十八件(八木昇紹介)(第二九七三号)  同外九件(八木昇紹介)(第三〇一四号)  看護人名称改正に関する請願臼井莊一君紹  介)(第二八七五号)  同(始関伊平紹介)(第二八七六号)  業務上の災害による外傷性せき髄障害者援護に  関する請願田邉國男紹介)(第二九六五  号)  同外十八件(田原春次紹介)(第三〇四四  号)  全国一律最低賃金制即時法制化に関する請願  (前田榮之助君紹介)(第二九六七号)  看護職員労働条件改善等に関する請願(黒金  泰美君紹介)(第三〇四三号)  理学療法士及び作業療法士法制化に伴う経過  措置に関する請願藤本孝雄紹介)(第三〇  四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一〇五号)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 国民年金法並びに児童扶養手当法の一部を改正する法律案について若干御質問を行ないたいと思いますが、やはりこの法律案というものも社会保障政策の一環でございます。したがって、そういう社会保障政策という一つの基本的な考え方にのっとって、この問題に対しまする御所見なり御所信なりを明確にする必要があろうかと考えております。特に池田内閣においても常に口を開けば福祉国家建設、こういうふうに主張をされてまいりましたことは、私からことばを重ねる必要はなかろかと考えております。しかしながら問題は、その主張なり公約なり、あるいはまたいろいろ演説の形容ではなくて、要はその内容がいかに充実したものであるか、ことばを変えて申し上げますならば、表現はりっぱでございましても、内容的に空虚なものであるというようなことでは、国民のための真の社会保障政策ではないのでございます。そこで、そういう社会保障政策基調として、国民年金にいたしましても児童扶養手当にいたしましても、考えなければならぬということは当然のことでございますので、私はまず第一にお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、社会保障制度全般について政府の基本的な考え方がどうであるか、これが基調でなければならぬわけでございますので、この法案の審議に入るに際しまして、まずそれらの姿勢あるいはまた心がまえ、そういう点についてひとつ明確なお答えをいただいてまいりたいと考えます。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 これはもう前々からの問題で、社会保障に対する政府考え方ということはいろいろの機会に述べられておりますのでよくおわかりくださっておると思います。内容がまだこれに伴わない、こういう問題でありますが、社会保障は、もう御承知のように、生活保護の問題と医療保障所得保障、この三つが中心になって、そこへいろいろのマイナスをしょっておる方々に対してマイナスをカバーする、こういうようなことが入って、そうして社会保障が成り立つということはよく御承知のとおりであります。この内容充実していく。いずれにいたしましても政府は、気があせっても実が伴わない、こういう事実はありますが、何事も一度にはまいりません、とにかくできるだけ毎年これを補完していくということで進んでおるわけであります。ことしにいたしましても私たちは相当前進したと思っております。ことに国民健康保険のごときは、昨年十月世帯主七割給付ということになったのでありまして、続けてどうかといういろいろの議論がありましたが、税金をまけるといったって、まける税金のない階層も多い。したがって国民健康保険等でこれを補うのが唯一の道だ、こういうことで、ことしもあえて家族の七割給付までも、政府内で非常な激論の結果、これも一応緒についた、こういうことであります。また一方、国民年金に先んじて厚生年金を一万円年金に実現したいということで実は近く法律も提案いたしたい。こういうことで、私は考えとしては相当前進をしておる、そのテンポのおそい早いはいろいろの議論はありますが、政府としては精一ぱい努力をしておる、こういうことでございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 今日まで社会保障に関しまする諸政策というものが、次から次に打ち出され、かつ改善をされてまいりましたことについては、私どもも同慶に感ずるところでございます。なるほど大臣お答えにもございましたように、逐次前進しつつあるという現実は私どもも認めざるを得ぬと思うのでございますけれども、しかしながらその前進というものが、実は今日の日本高度成長経済のもとで、一体どういう関連を持つか。これは先般の東京地裁の広島、長崎の原爆の際にも示されたのでございますけれども、やはりあの判決文の中でも、いまの高度成長経済のもとにおける手だてとしては十分でない。なるほどそういう施策そのもの前進した施策であるといたしましても、現在の日本経済規模経済の実態からいって、それがはたして適切な程度のものであるかどうか、この辺が見解の分かれる点であろうというように私は考えております。そこでやはりこういう社会保障政策というものは、憲法第二十五条に規定された健康で文化的な生活保障、これが基点としていろいろ立案され、また施策の推進が行なわれてまいっておるというように考えております。しからばこの憲法第二十五条で保障されておりまする健康で文化的な生活というものが、一体今日の高度成長経済のもとにおきまして、最低生活はどの程度が適切であるか、この辺の判断のしかただと思うのです。その判断が非常に高いか低いかによって、同じ社会保障政策といたしましても、やはりその間に差異が出てくるということは、これは否定することができない事実でございます。そこで今日の高度成長経済が行なわれ、また生産というものがある程度上昇してきた、そういう段階の中で、第二十五条の精神というものをどの辺でとらえるのか。そのとらえ方によって、実際の政策そのものに断層が出てくるわけでございますので、そのとらえ方という点が、非常に大きな意義を持つものではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけでございまするけれども、その点についてはどのようにお考えになっておりますか。これもかつての委員会におきまして、若干論議された点でございまするけれども、私ども現実国民年金あるいは児童扶養手当法審議をするわけですから、この際その点も重ねて御見解を聞かなければならぬ、かように考えるわけでございます。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 私、担当大臣としては、いまの高度成長経済に合ったような形で社会保障が行なわれておるかどうかということについては、私個人としては疑問を持っております。その欠陥を補うために、私は非常に努力をいたしておるのでありますが、しかしやはり政治というものは一つの妥協であって、理想を追うばかりでは政治にならない。政府部内の考え方としては、私の言うべきことは言い、この程度にいまとどまっておる。それでこれでいいかといえば、担当大臣としてはいいとは思わぬが、政府部内としてはやむを得ないということでこれでがまんをしておる、こういうことでありまして、生活保障的なものが、高度成長経済にまだ非常に伴っておらないという感じを私は持っております。ただしそれ以上にまだひどいのは生活環境ではないか、こういうことで私はことしもいろいろお願いしておるのであります。  そこで、いまのようなごみや下水やし尿の状態では、食うものは満足に食べても他の環境をあのままで置いてそれで健康で文化的な生活ができるか、こういうことにも私は非常に大きな疑問を持っておりまして、この方面にも非常に大きな力を入れなければならぬと思うのです。これは何も低所得者だけの問題でなく、日本人全体の生活環境をよくするということでなければならぬ。その方面が非常におくれておる。ことにこれから新産業都市というても、いままでの政府というものは経済開発ばかりに力を入れておって社会開発が伴わなかったというきらいがあるのでございまして、こういう方面がおくれていることがまた一つの非常に大きな欠陥である、両方直さなければならぬ、こういうふうに思っておるのでございます。要するに高度の経済成長というものの、経済は伸びるが生活犠牲にされておらないか、こういうことに非常に大きな問題がありまして、生産生活の調和といいますか、争いといいますか、それが非常に大きな問題であるのでございます。その方面においても、厚生省は被害者を代表するのだ、通産省は加害者を代表するのだということで、この二つをどういうふうに調和していくかということに非常に大きな問題があるのでありまして、いまの生活自身内容と同時に環境の問題、両方とも私はいまの状態経済成長に伴っておらないというふうな感じを強く持っているものであります。
  7. 河野正

    河野(正)委員 いま厚生大臣から非常に前向きの御見解を承ったわけでございます。憲法保障された二十五条の最低生活というものをどこでとらえるか、特に高度成長経済との関連でそういうものが処理されなければならぬ、それについては大臣からも非常に前向きの御見解をいただきましたので、ぜひひとつそういう御見解基調として、さらに社会保障政策の拡充と充実のために格段の御努力をお願い申し上げたいと考えます。  そこで、厚生大臣のほうから前向きの御見解をいただいてまいりましたことと関連をして、もう一つ重大なことは、今日までもこの社会保障政策につきましては、ある面におきましては社会保険審議会でいろいろ御検討をされて答申されたときもございますし、また一方におきましては、社会保障制度審議会——私もその末席を汚しておるわけでございますけれども、この審議会のほうでいろいろ大臣の諮問に対してお答えをして、真に国民のためによりよい社会保障政策をつくっていこうという努力がそれぞれ行なわれてまいっております経緯もございます。そこで、いま大臣からも前向きの御見解をいただいたのでございますが、それと同時に、第三者機関でございます社会保障制度審議会の中でいろいろ御検討願って出されてまいります答申というものがまたきわめて重要な意義を持つわけですし、これがある面におきましては、今日の社会現状の中での社会保障についての第三者一つ見解というものが示されるわけですから、そういう意味で私は社会保障制度審議会答申というものはきわめて重要な意義を持つものではなかろうか、こういうふうに実は考えておるのでございます。ところが答申が出されましても、その答申がどの程度政策の中で取り入れられるのかという点につきましては、いろいろ杞憂もございます。私ども新入りでございますけれども社会保障制度審議会に出てまいりまして、各公益代表その他の委員方々のいろいろな御意見を聞いておりましても、やはり最大公約数答申が行なわれる。それはもちろん合議制度でございますから、形式的にはそのような形式をおとりになることにつきましては私どもも異論はございません。ところがその背景には、積極的な意見を出してもはたしてその意見が取り入れられるかどうかという杞憂が実はあるということを、私どもは見のがせない現状にあるような印象を受けてまいっております。ですからむしろ社会保障制度審議会から出されます答申というものは、答申としてはやはり低い答申が出される。論議としては非常に高いものもございますけれども、結論的には非常に低い答申が出されるという現状にあるようでございます。低い答申が出され、しかもその答申というものが十分に尊重されないということになりますと、非常に大きな問題であろうと考えざるを得ないのでございます。この点、ある面におきましては、社会保障制度審議会等の経験を通じて感じてまいっております私の見解でもございます。でございますから、比較的低い形で行なわれる現状にある社会保障制度審議会答申でございますので、したがってそれらの答申については、私は完全に尊重されるという建前をとらなければならぬと思うのでございますけれども、それらの点に対して大臣はどのようにお考えになっているか、ひとつこの際明確にお答えをいただきたいと考えております。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 私は個々の問題については申し上げませんが、過去のこれらの審議会等答申は、河野さんは低い、また見方によればそうでもない、こういう見方もあります。政策というものは実現しなければ意味がないのです。だから理想ばかりをもし追うような答申があっては、私どもはやはり困る。日本現状あるいは近い将来を洞察して、日本でもこれくらいのものはやれるのだ、ほんとうに努力し、熱意を持てばやれるのだ、また国の財政も許すのだ、こういうふうなある程度の見通しを持って出していただくことが一番私はけっこうだと思います。しかしそれだけではいけないので、一つ目標というものを掲げておやりになるものも、ある目標に向かって即座にどうこうというわけではなくて、やはり順次実現していく、こういうことになるのでありまして、私はやはり社会保障制度審議会答申もそういう部面もあると思うのでありますが、いずれにしろ私どもは尊重していかなければならぬ。そうしてできるものから最大の努力を払ってこれを政策に取り入れる、こういうふうにすべきであると私は思うのであります。しかし何と申しましても、私も予算編成に当たってみて、やはり相当国民所得が大きくなければできないということで、社会政策なんかはいずれにしてもある程度富んだ国でなければ実現不可能であります。社会政策というのは生産の再分配の問題でもありますので、そういうところでまだ壁がある。すなわち全体としてまだ日本の富が低い、こういう感じを持つのでありまして、社会保障制度充実するには、やはり富の充実国民生産成長をはからなければならない、これが両々相まっていかなければならない。先ほどお話しのように、成長社会保障がマッチしておるかどうか、こういう問題が種々起きてくるわけでありますが、先ほど申したように、私は必ずしもマッチしておらないと思います。やはり成長のほうがいま進んでいるのではないか、こういうふうな気もいたしております。しかしいずれにしろ、こういう答申政府としては十分にそしゃくをして、実現に努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 いま私が御指摘を申し上げた点については、いろいろ前向きのお答えをいただいたのですが、ただ社会保障制度審議会答申についての見解については、若干意見を異にするのです。と申し上げますのは、出てくる結果が高いか低いか、そういうことでなくて、社会保障制度審議会でいろいろな意見が出てまいります。ところがその出てまいっております中で、最終的に取りまとめられる案というものは、非常に下がっていくわけです。その結論が高い低いではなくて、少なくとも社会保障制度審議会に出てきまする意見内容というものは最大公約数になりますから、下げられるという傾向が非常に強い。ですから、本来から申し上げますと、非常に高度な意見もございます。ところが、極端な低い意見というのはないのです。これは前向きの委員会ですから。したがって、非常に高度なものを求めても、現実問題としてなかなか困難であろうというふうな配慮もあって、やや低目に答申されるという傾向があることは否定することができない事実だと思うのです。ですから、極端に申し上げますると、答申をされまする内容よりももっと高度な論議が行なわれておるというのが実情だと思うのです。そこで私は、社会保障制度審議会で取りまとめられた答申については、そういう実情であるとするならば、完全にそれが政策の中に織り込まれるということが当然であろう、こういうことを御指摘申し上げておるわけです。その点はそのようにひとつ御理解をいただきたい、こういうように考えます。  次にお伺いをいたしたいと思いまする点は、これはむしろ総理あるいは大蔵大臣に御質問申し上げることが適当だと考えますけれども、きょうはその準備がございませんでしたので、考え方としては今後閣議等がございますから、ぜひひとつ反映してもらいたいということで、大臣のほうにお尋ねをいたしておきたいと思います。そういう意味でございますから、本質的には総理あるいは大蔵大臣に尋ねるべき性質のものでございます。いままでも大臣からいろいろ御所見を承ってまいったのでございますけれども、なるほど大臣は非常に前向きで社会保障全般についての御見解を持っておられる、それをはばむものは、やはり予算関係だというふうに私ども考えます。ところが、三十九年度の予算編成を私ども見てまいりましても、財政当局予算編成にあたって機械的にいろいろ押えるというふうな傾向がございます。たとえば本年、私ども承知いたしております範囲におきましては、最初予算要求額というものは、前年度各省予算の五割増程度にとどめろ、こういうふうなワクというものが閣議で提議をされたかのように承っております。ところが池田総理も、口を開けば福祉国家建設社会保障政策について重点を指向したい、こういうふうな主張をされるのをたびたび私どもは聞かされてまいっております。そのように最初から予算規模が大きくなるわけです。これは予算現状でも増加させなければならぬという趨勢にあるわけですから、それは当然のことだと思うのですが、その際に前年度の五割増で押えろというような機械的な予算編成方針で、はたして重点的な施策というものが施行できるのか。社会保障政策に力点なり重点を指向するということであるならば、むしろ私は、そういう社会保障政策的な予算に対してはワクをはずすという方針で検討する、予算規模の絶対的なワクもございますので、そういうワク内でどの程度に調整すべきかということならわかるのでございますけれども最初からワクをはめてしまって、予算編成作業を行ないながら、その政策というものが重点施策だ、こういうことは私ども聞こえないと思うのです。これは、総理あるいはまた大蔵大臣のほうから予算編成についての方針というものを出されるわけですから、むしろ冒頭に私が御指摘申し上げましたように、総理あるいは大蔵大臣にお伺いするほうが適切であろうと考えますけれども、やはりそういう方針閣議で出されるということでございますならば、そういう予算編成方針というものが社会保障政策前進をはばむ一つの隘路になるということを私ども感じます。そういう意味で、その点に対しまする所見というものは、本来から申し上げますならば総理あるいは大蔵大臣と思いますけれども、きょうはその準備がございませんし、閣議の問題等でもあろうかと思いますので、本日は厚生大臣のほうからそれに対しまする御所見を承っておきたいと思います。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 これは役所によって非常に違うのでありまして、たとえば五割増しの問題につきましても、科学技術庁のような新しい役所は、五割増しでは困る、例外を認めてもらいたい、こういうこともあります。またそんなに初めから五割増しなんというものを出さぬでもいい役所もありますし、これは個々によって違う。私ども全体は五割増しでやっても、個々の必要な施策は、たとえばし尿施策のごときは十割増し以上になっております。ですから、その中で、やはり相当重点的に実施できるものは、たとえ五割増しであってもやれる、こういうふうなことが実際に行なわれております。したがって、それも、その省全体の予算の五割増しでまかなえなければ、また問題が生じてきますが、その中でもって個々の政策では五割も十割もいくものがある、こういうことは現実に存在しておるのでありまして、一がいには申せないと思います。しかしいまのやり方が一律に五割ということは妥当でないという議論が出ておりまして、いまのように、新しくできた役所は一切そういう抑制に応ずるわけにはいかないということで了解を得ておる部面もありますので、弾力的にはある程度行なわれている、こういうふうに思います。すなわち、不必要なものは五割どころではない、三割でもいいし、必要なところはこの制限にとらわれないという部面があって、項目ごとに相当弾力的に行なわれておる、こういうことをひとつ御理解願いたいと思います。
  11. 河野正

    河野(正)委員 いまの大臣のような御説も私はあり得ると思うのです。ですけれども、そういう五割増しなら五割増しというワクをはめて、省内で重点施策をやるということになりますと、勢い省内の他の項目が圧迫を受ける可能性が出てくる。し尿処理その他じんあい問題については、私ども大臣方針に対して非常に敬意を表するわけですけれども、厚生省内でそういうことを重点にして大幅の予算を食う、しかも厚生省全体の予算ワクが五割増しで押えられるということになりますと、勢い他の施策におきまする予算というものが圧迫を受ける、それはいままでやっておったけれども、これはたいしたことはないということでございますならばけっこうでございますが、やはり厚生省の施策というものは非常に国民生活と密接する政策がほとんどでございます。ですから、どれ一つとらえても前年度より予算が減少していいというような事業というものはなかろうと私は考えますし、またそのようなことでは、私は厚生省がはたして国民生活あるいは生活内容あるいはまた環境について非常に熱意を持っておるかどうかというようなことについては疑問を持たざるを得ないと思うのです。でございますから、大臣のような御説もあると思いますけれども、やはり私はそういうワクをはめるということは非常に危険性があるというふうに考えます。そこで今回出されましたこの国民年金法及び児童扶養手当法案そのことについては私どももそう問題ではございませんけれども、基本的にはその内容の幅等についていろいろ問題がございます。ですから、いろいろ意見があるわけでございますけれども、それらの意見につきましてはいずれ後ほど申し上げたいと思いますが、今度政府が取り上げていただいた前進的な問題点についてさらに私どもの要望なり希望があるわけでございますが、そういう要望なり希望というものが満たされない。しかもそういう満たされない原因というものが、いま私が申し上げますように、厚生省そのものの予算というものを五割増し程度に押えるから、そういう結果が生まれてくるのじゃなかろうか、実はこういう心配をいたすわけでございます。もしそういうワクの設定等がなければ、あるいはもっとさらに前進した前向きの改正が実現されたのではなかろうか、こういう気持ちを実は強く持つわけでございます。そこでいまのような予算編成方針というものがこれらの法改正の中身について圧迫を加えたのではなかろうかという疑問をわれわれは持っておりますので、それがそうでないということならば何をか言わんやでございますけれども、私どもはそういう杞憂を持っております。そこでそういう事情等についてもひとつこの際お聞かせ願えれば明らかにしていただきたい、かように考えます。
  12. 小林武治

    小林国務大臣 実はいまの予算編成を五割増以内にして出せ——実際各省で出してみたところが厚生省だけが五割出たというような状態であります。あと一省どこか出たかと思いますが、その程度でどこの省でも五割までは持っていくというようなことにはなかなかならぬぐらいの五割増であることはひとつ御承知おき願いたいと思います。ただ社会保障そのものは多少おくれておるからテンポを早めるということで、このワクが不利になるという面はあります。こういうものにつきましては、私どもも大蔵当局とも話し合いをしておるのでありますが、この五割増しでもって押えられたということでなくて、予算各項目について検討した結果、総額でどうこうというような問題でやられておるようなことはありません。予算のふえ方は少なくても、一般予算が一三%であっても、厚生省は二〇%ふえております。そういうことで、多い少ないはいろいろ見方がありますが、一般の増に比べて厚生省が非常に伸びておるということは事実になっております。私どもはやはりこの全体のワクでどうこうということよりも、項目別に検討をし、交渉をするという方向で進んでおりまして、全体で何割になったからというようなことではやっておりません。
  13. 河野正

    河野(正)委員 そこで、いまの点と若干関連をしてお伺いいたしたいと思いますが、国民年金法が昭和三十四年に制定されまして、その後四年有余の間に三次にわたる改正が行なわれた。今回の改正を含めますると十三次の改正が行なわれる、こういうふうに承っております。そこで私どもがいろいろ杞憂いたしますのは、こういうふうに次々に改正しなければならぬ——これは次々に前進するわけですから、その点については異論はありませんけれども、やはりいまのようにある程度予算の制約を受けるから、これだけはやりたいと思ってもそれが中途はんぱでとまる、そこでまた次の改正をしなければならぬ、こういう傾向というものはやはり予算編成のしわ寄せとして起こってきておるのではなかろうか、そういう感じを持つのです。そこで私どもに言わせていただきますならば、やはり国民年金に対しまする確固たる基本方針が打ち出され、そしてこのスズメの涙のような改正ではなく、国民のための国民年金でございますから、そこで政府考えております確固たる方針というものを積極的に実現をしていただくということがきわめて望ましいということは何人も否定するわけにまいらぬと思います。ですからある意味におきましては朝令暮改だというそしりも免れないだろうと考えますし、またある意味におきましては、これは極端な言い方かもしれませんが、何か計画に一貫性がないというそしりも出てこようかと考えます。ですからどこで踏み切るかという問題がございますけれども、いま大臣も、予算ワクの規制によって支障を来たすものでないというようなおことばがございました。それならば、やはり朝令暮改的に次から次に改正をする、もちろんその改善というものは前向きでございますから、私どももそのこと自体にはとやかく言うわけではございませんけれども、やはりどこかでこの方針は一挙に強く打ち出していく必要があろうと考えます。そのことがこの予算ワクの規制にならないということでございますれば、なおさらどこかで一挙に確固たる政府方針を打ち出される必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでありますが、それに対してもひとつ大臣の前向きのお答えをいただきますならば幸いだと考えます。
  14. 小林武治

    小林国務大臣 私は申し上げておきますが、われわれもいろいろなこういう附帯決議もありまして御要望もよくわかっておりますから、これを全部やれば当局としてどんなにすっきりするかという気がいたしますが、実情がなかなかこれを許さない。私はこういう問題は解決がない、いつも直していかなければならぬと思います。待遇とかこういういろいろなものは性格上これで解決した、あとは何もしなくてもいいということはあり得るはずはありません。いまこれを全部やればまた次に必ず出てくるのでありまして、それがこういう問題の本質です。したがってやはり一度にはなかなかできないので、できるだけのことを順次やっていくというのが私はやむを得ない方法であろうと思います。たとえば福祉年金を昨年百円上げた、ことしになってもまた百円上げたらどうか、こういう説があったのであります。これは私が責任を負わなければなりませんが、私は、去年上げたのにことしもまた百円上げなければならぬということは、お話のようにちびちびこういうことをやることが妥当であるかどうか、こういうことに私は非常に疑問を持って、百円上げるならば、ことしはひとつがまんして来年の問題にしてもらおうじゃないかというようなことを私が言い出した。この点は私が責任を負わなければならぬと思いますが、百円でも上げたほうがよかったというふうな意見が今日ではまた出ております。しかし、いずれにしましても、たとえばいまの遺族援護の問題につきましても、もうこれで済んだかと思うと幾らでも出てくる。これはこういう性質上、もう当然あとからあとから出てくるのでありますから、やはり朝令暮改であっても、できるならば毎年少しずつでもものをよくするのだ。こういう方法で、ものをよくする程度はもっと上げればもっとけっこうでありますが、こういう方法になるのはある程度性質上やむを得ない。それでもやはり私はいいことだ、前進だ、こういうふうに考えております。前進のしかたが少ない、のろい、こういう御批評はまたあろうか、かように思います。
  15. 河野正

    河野(正)委員 そこで、いまいみじくも大臣から御答弁の中で承ったのでございますけれども、そういうことになりますと、国会におきまする附帯決議という問題も、私は一つの問題として取り上げなければならぬ問題でなかろうかというふうに考えます。御承知のように今日まで国民年金法改正が行なわれますつど、しばしば改正が行なわれておるわけですけれども、その改正が行なわれるつど衆参両院において、しかも与野党一致の附帯決議が行なわれておる。この与野党一致の附帯決議が行なわれた点につきましては、そのつど厚生大臣から、十分尊重をいたしますという公約を実はいただいておるわけです。ところがこの改正、特に今度の改正でもそうでございますけれども、その中の大部分というものがやはり無視され、軽視されるという実情にあると思う。ですから、いまなるほど十数条にわたりますところの改正が行なわれた。そういう改正が行なわれたことが朝令暮改である。そういうそしりを受けることも前進のためであるので、やむを得ぬというようなお答えもございましたけれども、やはり国会の意思というものがどこにあるかということは、これはもう大臣も十分に尊重する——これは小林厚生大臣に限りませず、歴代の大臣からもそういうお答えをいただいておる。ですから、国会の論議なり国会の意思というものを尊重する、そういう意味からも、やはりこの附帯決議の内容なり精神というものがもっともっと私は尊重されるべきであろう。そういうことにならぬと、この附帯決議についても、今後一考も二考も要する問題ではなかろうか、これは国会側として考えなければならぬのではないか。ですから、この附帯決議について、私どもは、いままではどうも国会の意思なり論議なりというものが軽視されたというふうな感じを強く持っております。ひとつ小林厚生大臣におかれては、いずれこの国民年金法及び児童扶養手当法の一部改正の最終段階で、与野党の間でどのような話し合いができるかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、過去は過去といたしましても将来については、ひとつ大臣も国会の意思というものを十分尊重していただかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございまして、それに対しましてはぜひ小林厚生大臣に限っては十二分に尊重していただく、こういう方向で前向きのお答えを、これまたいただければけっこうだ、かように考えます。
  16. 小林武治

    小林国務大臣 昨年の御決議も私どもは一生懸命で検討をして、そうしてここに出たのでありまして、これで私どもは大きく欠けておるのは、福祉年金の幅をふやす、これはできなかったのでありますが、もう一つは、夫婦とも福祉年金満額で受けられるようにしろ、こういうことはことしは結局出ておりませんが、このことも相当議論いたしましたが、ことしは出なかった。そのほかいまの内科疾患の問題と、児童扶養手当についても障害年金についても入れろ、これはこの中に入れております。それからもう一つは、福祉年金と公的年金との併給、これは昨年やめたばかりであります。しかしこれは国会の御要望が非常に強いので、あえてことしこれを入れまして、このために二十数億の予算を組んでおる。こういうことで、われわれとしては、できるだけの限度において決議を尊重したからしてこの法律案が出た。こういうことで、これがなければまだうまくいかなかったかもしれませんが、非常に尊重したつもりであります。欠くるところはあるが、一生懸命尊重しておるからして、こういうような改正案が順次出てくるというふうにひとつ御了解を願いたいのでありまして、まだ尊重のしかたが足りない、こういうおしかりはやむを得ないことで、できるだけそういうおしかりを受けないように努力はいたしますが、さような事情でございますから……。
  17. 河野正

    河野(正)委員 過去は過去といたしましても、今度の改正案に対しまして、最終的に与野党の間でどのような話し合いになるかわかりませんけれども、私どももいろいろ意見を持っているわけでございますので、与党のほうにも御相談をして、最終的にはこの委員会見解というものを取りまとめてまいりたい、こういうように考えております。そこで、いろいろ御努力願っております点につきましては、私どもも了とするにやぶさかではございません。ですけれども、もし与野党におきまする見解が一致を見ましたならば、ひとつ大臣も特に国会の意思というものを尊重していただいて、さらに私どもの希望というものが、大幅に前向きに前進するように御努力を願いたいと思います。こういうようにこの点は御要望をいたしておきます。  それから、これは内容の点でもあり、また基本的な点でもございますけれども、ひとつ伺っておきたいと思います点は、年金の金額についてでございます。現行の拠出制では、六十五歳から最高月額三千五百円、こういうふうになっておるわけでございます。ところが、生活保護費を私どもが見てまいりますと、大体一級地四人世帯で一万六千百四十七円、一人当たりにいたしますと約四千円程度ということになるわけでございます。もちろん憲法保障された最低生活というものがどの程度であるかというような点で、特に今日高度成長経済政策が実行され、そして日本経済規模というものが非常に上昇をいたしてまいっておりまする現段階でございますから、したがって、国民最低生活というものが逐次上昇するということは当然でございまして、そういう意味生活保護世帯の基準額が上がりますことについては、私どもも異論はございません。これは大いにけっこうなことです。むしろ現在の四千円程度でもどうであろうかというふうに考えておりますのが、私どもの率直な心境でございます。ところが、この保険料を払って拠出をいたしまする年金というものが、むしろ生活保護の基準額よりも安い程度に置かれておる。この点、私どもも非常に矛盾を実は感ずるわけでございます。一方では、もちろん保護世帯でございますから、これは全額国ないし府県、地方団体が持つということになりますけれども、ところが拠出するほうの年金のほうは、それ以下の金額で押えられておる。これらは逐次改善されることはけっこうでございますけれども、なおなおそういう矛盾というものが現実にも存在しておるということは、私どもも無視できないと思います。これらの点についてどういうふうにお考えになっておるのか。これも具体的な、しかも基本的な点でございますので、大臣のほうから率直にひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
  18. 小林武治

    小林国務大臣 いまの三千数百円というのは、厚生年金等の権衡もあってきめられたのでありますが、私どもは、お話のように生活保護世帯でも一人当たり四千円、いろいろな扶助を入れれば四千何百円、こういうふうな状態になっておりまして、いまの給付ではきわめて妥当を欠くということは、一種の常識としてあり得ることであります。こういうことで、御存じのように厚生年金を一万円に引き上げる、こういう法案を近くお願いしようと思っておりますが、これを引き上げるということにつきまして政府部内に非常な論議があったのであります。なぜあったかといえば、これは当然国民年金に響いてくる。したがって、国民年金給付額もある程度引き上げることを前提としなければ、厚生年金をかような金額にきめることはできないということはおわかりくださると思うのでありまして、したがいまして、きのうもこの質問が出ましたが、私は、拠出による老齢年金というものは本格的にまだ始まっていない、したがって多少期限がおくれてもがまんしていただけるのではないか、四十一年には厚生年金の計算の更改期がくるので、その際にこれらの問題も解決しなければならないと思っておるのでありまして、厚生年金が直るということはこれに対する影響というものを前提としてやる、こういうことで御了解いただけると思います。
  19. 河野正

    河野(正)委員 いまお答えをいただいた中での厚生年金につきましては、いずれまた法案が出てまいりますから、その際においていろいろ私ども意見というものについてはお伺いしてまいりたいと考えております。そこで、あえてこの際厚生年金については触れようとは考えませんけれども、しかし、せっかく国民が掛け金をかけてそして年金をもらおうということでございますので、やはり国民年金制度という点から見ましても、生活保護の基準額よりも低いという点について私どもも了承できませんし、その点については厚生大臣のほうからもいろいろ前向きの御見解等も承っておりますので、そういう理解と認識の上に立って、さらに前向きの努力をお願い申し上げておきたい。この点もひとつ要望いたしておきます。  それから、一昨年になりますが、老人福祉法等も実は制定をされました。老人福祉に対しまして政府が積極的な方策を打ち出されたことにつきましては、私どもも喜びとするところでございます。ところが、この福祉年金を見てまいりましても、これも先ほど大臣から若干の御意見がございましたが、それはいままで月額一千円であったのが昨年から百円増加されたけれども、これではどうも不十分のそしりを免れぬ、そこで、この点も改善をしていきたいというような話でございます。ところが、今日物価指数というものがどんどん上がってまいります。ですから、昨年なるほど百円増していただいたのでございますけれども、物価指数から検討いたしますると、むしろ私は、百円上げられたというよりも実質的には下げられたというふうな理解を持たざるを得ないと思うのです。でございますので、百円上げたから次はひとつ来年も考えてみようというようなことでは、これは私どもも納得するわけにまいりません。というのは、物価指数がどんどん上がってまいりますから、現実には、名目は一千百円といたしましても実質は百円の値打ちがない。この福祉年金の発足いたしました当時を一〇〇といたしますと、現在の物価指数が一二五になる。そういたしますならば、この福祉年金の実際の値打ちというものは、発足当時の八百八十円というようなことも言われております。そこで私は、やはり実態というもの、名目的な年金額でなくて実質というものを御検討願っておかないと、せっかく厚生大臣が前向きの社会保障政策というふうに言っていただきましても、受けるほうの国民というものは、納得いくわけにはまいらぬのであるというふうに考えます。そこで、そういう点についてもどういう御見解を持っておられるかということをこの際明らかにしていただきませんと、私は国民はなかなか納得するわけにはまいらぬだろうというように考えるわけでございます。そこで、この老人福祉という面について、政府は大いに御配慮願っておるのはけっこうでございますけれども、そういう老人福祉に対します政府方針というような点から申し上げましても、この点に対しまする御所見をこの際明らかにしていただきたい、かように考えます。
  20. 小林武治

    小林国務大臣 これは実はお気にさわるかもしれませんが、老齢福祉年金を始めたときは、いわば所得保障として考えたよりか生活の多少の足しにする、あるいは慰安ということで、だれも千円が生活保障になるということで始めたのじゃあるまい、したがってそういう趣旨からしますれば、必ずしも、いろいろの物価騰貴とかいうことに準じて上げるべきものであるかどうかというようなことも、多少の議論もあります。しかし実際問題となれば、とにかく三十四年に千円だった、その後も二割五分以上も物価が上がっているんだ、スライドしてある程度上げたらいいだろうという議論は、むろん実際問題としてはあるわけでありまして、私どもその趣旨からしますれば、お話のように、きめたときに比べれば千円の値打ちはないんだ、こういうことが言われるのであります。それをある程度補完していくのがよいということが言われます。私もこれは、やっぱり実際の国民考え方に合うようにするには、そういうものを用いて上げるほうがほんとうじゃないか、こういうふうに思っております。この機会は見送ったのでありますが、私はそういう考え方が次の機会には導入されるであろう、こういうふうに考えております。
  21. 河野正

    河野(正)委員 私は、社会保障政策でございますから、発足当時の見解がどうであろうと、やはり時の流れ、あるいは現実というものに適応する完全な制度に達成するように、努力していかなければならぬことは当然のことだと考えております。そこで、いまの福祉年金の精神というものがどのような考え方で発足したといたしましても、やはり私は、現状にマッチするような形に逐次改善されなければならぬ、そういう方策というものをとらなければならぬと思うのでございます。でございますから、これらの点についても若干の見解の相違はございますけれども、逐次完全なものに仕立てていくということについては、これは大臣もしばしばおっしゃっておりますように、この点については意見の相違というものはなかろうと考えております。そういう意味で、発足当時の見解がどうであろうとも、やはり現状に適応するような制度に改善していくという方策というものはぜひひとつとっていただきたい、かように考えます。  それから、その点に関連をいたしますけれども、また大臣からもちょっと触れられたと思いますけれども、この制度発足当時の未完成なものを逐次改善をして、そして完全な制度に仕立てていく。そういうことになりますと、やはり年金額のスライドという問題も、当然検討していかなければならぬ重要な点だろうと私は思っております。その際問題となりまする点は、経済がだんだんと上昇してまいりますので、国民全体の生活水準というものが高まってまいります。これが一つあります。それからもう一つは、物価というものがだんだん上がっていく傾向がございます。そこでこのスライドを考える場合には、生活水準が上がっていくという面と、物価がだんだん上昇していくという二つの面が考えられなければならぬ。これらの点については、若干今日の年金法というものは不完全なものがあるのではなかろうかと私どもは理解せざるを得ぬと思うのです。でございますから、逐次未完成なものをりっぱなものに完成さしていくという方向というものは、お互いに意見の一致があるわけでございますから、そういう意味で、いま私が指摘いたしまするような生活水準にやっていくという点については、これは現行に認めたことでございますから異論ございませんけれども、もう一面の物価が上がっていくという面については欠ける点があるのではないか、こういうことを実は考えるわけでございます。私どもも、こういう社会保障政策でございますから、それはもう与野党一致して完成したものに仕立てていかなければならぬわけでございますから、そういう意味で、ひとつこの点もお尋ねをいたしておきたいと考えます。
  22. 小林武治

    小林国務大臣 まあ生活程度の向上というのはきわめて不確定な要素であり、また基準とするにはきわめてむずかしい問題でございますから、これにスライドするというようなことは現実になかなかむずかしい問題でありまして、これが非常に違ってくれば、やはり給付額を変える、こういうふうな方法によるほうが私は本筋だと思います。しかし、物価の面につきましては、わりあいに根拠がはっきりする。したがって、この問題についてはある程度スライドで解決される部分があろう、こういうふうに思いますが、これにつきましての方法としては、それじゃ何割上がったときにいじるのだ、そういうふうないろいろ具体的な方法がありまして、困難な問題があります。わけてもスライドは、国民年金に限らず、そのほかの各種の共済組合の年金あるいは厚生年金等も同様な問題が出てきまして、なかなか大きな問題でありまして、いま直ちに具体的に、理想として私はそうあるべきだと思うが、適切な方法が得られるかどうかということについては非常に議論があるところでありまして、私どもも、いま政府部内で全体の問題としてこの問題を検討しております。したがって、原則論的な規定は、私は厚生年金についても同じに必要じゃないと思いますが、じゃこれをいざ具体的にどういうふうにするかということについては、まだなかなか結論にならない。しかし、理論としては当然そうあるべきものだと思うのでありまして、そういう方向に進むための原則的な規定などは、私はやはり厚生年金などにも必要だろう、こういうふうに思っております。
  23. 河野正

    河野(正)委員 それからさらに、具体的な点について一、二お伺いをしてみたいと考えております。  その一つは、今度の改正によりまして、障害年金、障害福祉年金及び児童扶養手当の支給対象となる範囲を、結核、精神病等の内科的疾患に基づく障害者にまで拡大をせられたのでございます。この点については、私どもも同慶に感ずる点でございます。ところが、いま社会的に非常に問題になっております心臓疾患、あるいはまた、最近ライシャワーが刺傷を受けまして問題となりました精神的な欠陥者でございまする精神薄弱者、こういうような、いま社会的問題となっておりますような心臓疾患とかあるいは精神薄弱者等がその範囲に入らなかったことにつきましては、どうもいまの社会的な現況から見て、すっきりせぬ点があろうかと考えております。この点については多少私も意見を持っておりますし、特に心臓疾患については、二、三日前でございましたか、テレビを見ておりましたところが、黒木局長が非常に卓越した御高見等も漏らしておられました。そのように、厚生省の中でも特に心臓疾患については非常に重大な御所信を持っておられるようでございます。にもかかわりませず、いま申し上げますように適用範囲に入れられておらぬというようなことで、私どももこの点は非常に不満を持っておるわけでございます。この点について、どのようにお考えになっておりますかひとつお聞せをいただきたい、かように考えます。
  24. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 今回、障害年金につきまして内部障害を取り入れるにつきましては、内部障害全般について、いま御指摘のありましたようにほかのものがまだあるわけでございますが、内部障害を取り入れることについて若干専門的な問題もございまして、実は今回、精神と結核性疾患ということにいたしましたが、これも二年間ほど専門の方々審議をわずらわしておりまして、具体的にどういう方法でこれを適用していくかといったことの審議の結果でございまして、現段階におきまして、実は結核については比較的技術的にも容易である、しかし精神につきましては、若干まだ研究を要したがいいという面もあったのでございますが、結核だけ今回取り上げるというのもいかがかと考えまして、思い切って結核、精神と、この大きな二つの柱のものは今回取り入れるということに踏み切ったわけでございまして、ただいま御指摘の精薄というものが次に控えておりますし、またその他の問題も二、三ございますが、これは引き続き専門家の御意見も聞きまして拡充していくという方向に考えておる次第でございます。
  25. 河野正

    河野(正)委員 精神病が取り上げられてなぜ精薄が取り上げられなかったかというような点については、関連をいたしますから、私どものきわめて納得できない点なんです。心臓疾患については、結核を取り上げたから心臓疾患というようなことで、関連はございます。特に関連はございますけれども、いまの精神病と精薄の場合は、これはきわめて密接というよりも、ある意味においては、時と場合によっては同一のものとみなしてもいい場合もございます。でございますが、その点が除外されたという点については、もう少し的確なお答えをいただきたい。
  26. 小林武治

    小林国務大臣 これは、私は担当大臣としてでなく、個人として不満に思っています。というのは、なぜこれを入れないかということは、精薄というのは保険事故の対象になるように保険が始まってからなるものじゃない、子供のときからなってしまっておる、したがって保険事故にならぬ、こういうようなことを理屈としておるようでございます。しかし、精神障害者が入って薄弱が入らぬということは、そういう理屈はあるかもしれぬが、世間一般の考え方から見て、きわめて権衡を欠くじゃないか、私はこういう個人的な意見を持っております。したがいまして、十分、精神薄弱者の手当てをする際にも、私は実は成年も入れたかった、保険事故にならないとすれば、そっちの方向でやりたいということを強く述べたのでありまするが、いろいろな関係でこれは漏れてしまった。したがって、保険事故にもならなければこの手当法の対象にもならぬということで、ここに一つの大きな穴があいておるので、私はぜひ近い機会にこの穴を埋めてしまわなければならぬと思っております。私個人はそういう考えを持っておりまするが、とにかくいろいろの都合でことしはそれができなかったことを非常に遺憾に思っております。しかし、この欠陥は、どういう方法によろうが是正されなければならぬものである、こういうふうに私は考えております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 この点は、大臣から前向きに、どういう方法であろうと実現をしなければならぬということでございますから、あえて異論を申し上げません。ただ、これは御参考のために聞いていただきたいと思いますけれども、精薄の場合は生まれつきだということが理由の一端とするならば、私どもそれはちょっと異論があるのです。しかし、大臣は、そういう欠陥というものは是正をしたいということでございますから、これは大臣に対して申し上げるのでなくて、もしそういう見解を述べられる人があるならば、そういう見解については大臣のほうでもひとつ認識していただきたいという点がございます。  それは、いま私が御指摘申し上げましたし、大臣のほうからもお答えがございましたが、精薄の場合は生まれつきだ、これがもし除外をする理由の一端であるといたしますならば、本質的には精神病患者は生まれつきで——これはだれでも精神病になるわけじゃないのです。これはたまたま、そういう症状というものが思春期以降に出てくるという事態が非常に多いということだけであって、本質的には、これはもう一つの、アンラーゲといって、生まれつきそういう素質を持っておるということですから、いま大臣がちょっと触れましたような保険事故にならぬということが除外をする理由であったとするならば、その点は大いに考え方を改めてもらう必要があろうというふうに、私は専門的立場から申し上げておきます。しかし、この点は、大臣が率直に是正しなければならぬとおっしゃっておりますし、あえて申し上げませんけれども、ただ参考意見として申し述べるにとどめておきます。  それからいま一つの、これは黒木局長がおられますけれども、心臓疾患が最近非常に大きな社会問題となってまいりました。テレビでも最近取り上げられるケースが非常に多くなってまいりました。特に厚生省の医療行政の中でも、最近は結核と心臓疾患というものが並列して取り上げられる、こういう傾向でございます。そこで従来の結核療養所というものは、今後は胸部疾患のセンターというようなことで、結核と心臓疾患をあわせて一つの医療行政の中で処理していこう、こういう厚生省におきまする医療行政の方向というものもすでに打ち出されておりますし、そういう見解というものが、今日まで国会におきましてもしばしば披瀝をされております。そういう厚生省の方針からいたしますると、私は、やはり心臓疾患というものも、精神病と精薄の関連と同じようにすみやかに実施さるべき問題ではなかろうか、こういうふうに考えております。特に低所得者の心臓疾患については、厚生省でもいろいろ何らかの財政的の措置をされるというような話も、実は黒木局長から直接聞いたわけではありませんけれども、テレビを通じて私ども聞かしていただきました。そういうことでございますから、ひとつこの際、当委員会においても、せっかく御出席でございますので、黒木局長からもその方面方針というものを明らかにしていただきたい、かように思います。
  28. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御質問の先天的な心臓疾患を持った児童及び先天的な消化器系統の疾患を持った児童に対しまして、手術可能な低所得世帯の子供さんに対しまして育成医療の適用をするというようなことで、四月一日から予算措置も講じておる次第でございます。
  29. 河野正

    河野(正)委員 いずれにいたしましても、最近特に精薄の問題あるいはまた先天的な心臓疾患の問題等も、社会問題として非常にクローズアップされてきたのでございますし、もちろんそういう事態もございます。と同時に、せっかくこの際、この適用範囲が拡大され、また拡大をされました点と非常に密接な関連もあるわけですから、これは大臣からも率直に御所見を承っておる際でもありますので、ぜひ早急にこれらの点が改善をされるように、この点は強くお願い申し上げておきたいと思います。  それから最後に、一点だけぜひお尋ねをしておきたいと思います点は、国民年金の積み立て金の運用でございます。この点は、もちろん被保険者がそれぞれ拠出をするということでございますし、ことばをかえて申し上げまするならば、その原資というものは被保険者のものである、こういうふうに申し上げましても、私は別に過言ではなかろうというふうに考えております。そこで、この積み立て金の運用については、被保険者の生活内容充実、向上あるいはまた住宅、病院、厚生福祉施設、そういうような面に主として運用さるべき性格のものではなかろうか。今日のように、この積み立て金がせっかく被保険者によって積み立てられながら、財政投融資の原資になるというふうなあり方については、若干問題があるのではなかろうかというふうに私ども考えております。この点は、被保険者にとりましてはきわめて重大な点ではなかろうかというふうに考えますので、この点についての御所見をひとつこの際承っておきたい、かように考えます。
  30. 小林武治

    小林国務大臣 これは端的に申し上げて、全部が全部被保険者のもの、こういうふうな考え方は成り立たないと思いますが、多くの部分がそれに入っておる、こういうことは言えるのでございまして、お話のような議論は十分あり得ることであります。厚生省としましても、そういう御説に相当共鳴をしていろいろ話し合いをしておりますが、何といたしましても、財政投融資の中の非常に大きな部分を占めておるだけに、国家財政全体の立場から言うて、なかなか話し合いが進まない、こういう事情にありまして、私どももお話のようなことがある程度できることが適当であろうと思って、厚生当局としてはそのような向きを絶えず話し合いを進めておる、こういうことでございます。
  31. 河野正

    河野(正)委員 その点に関連してでございますけれども、やはり被保険者の意向というものが反映をされ、そしてその資金の運用が行なわれなければならぬということは、これは大臣もお認め願えたと思うのでありますけれども、そういう意味で、やはり被保険者の意向を反映させる、そしてその意向によってこの資金の管理、運用が行なわれる、そういう方策がとらるべきではなかろうか。要するに、被保険者が拠出をするわけですから、被保険者の意見が反映せらるべき審議会その他が設置されて、その意見に基づいて管理、運用されるということがきわめて望ましいというふうに私は考えますけれども、その辺の事情はどうでございましょうか。
  32. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 現在年金の積み立てが、いま大臣から申し上げましたように、資金運用部資金に預けまして、資金運用部資金で郵便貯金等と一括して運用されておる、こういう現状になっております。そこで資金運用部資金の運用につきましては、資金運用審議会というものがございまして、そうして学識経験者によりまして、郵便貯金をも含めて一括した運用について審議されておるわけでございます。  そこで問題は二つございまして、年金あるいは広く言えば社会保険の関係による資金といいますか、そういったものを別途の形で運用していくという方針をきめるといいますか、管理、運用していくということを確立する必要があるのじゃないかという点が一点ございます。現状のままにおきましては、いろいろの意見もありますし、また一括しての運用になりますので、やはりそういった審議会的なものにつきましても、年金関係についての学識経験者はもちろん入っておりますが、そういった審議会の構成になるということでまず別途にする、別途にするしかたとしましていろいろございますが、従来から厚生省としては、特別勘定を設けて、そうしてその勘定の金はどこにどういうふうに運用されているかということを明確にするということを強く主張いたしておる次第でございます。  それからもう一点としましては、現実問題として、この資金が、一部には還元融資として年金福祉事業団を通じて還元融資されているという現状でございまして、この事業団の運営につきましては労使の代表の方々が参与として関与いたしておりまして、基本的な面等については御意見を伺っているという現状でございます。
  33. 河野正

    河野(正)委員 これは被保険者が拠出をいたすわけでございますから、私ども見解としては、いま局長から前段に触れられましたようにその積み立て金というものは資金運用部からはずして、ひとつ別個の形で運営をせらるべきではなかろうかというふうなことを強く考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、せっかく国民のための国民年金法であり、児童扶養手当法でございますから、やはり国民の満足する、あるいはまた納得する方向でこの問題が処理せられねばならぬということは、これは何人も否定することはできない点であろうと考えております。そういう意味で私ども、きょうは若干その荒筋の問題について触れてまいったわけでございます。その中におきまして大臣から非常に前向きのお答えをいただきましたが、要はそれをいかに実現していただくかということが問題であろうと思いまして、いずれまた具体的には突っ込んでいろいろ別にお尋ねしたいと思いますし、なおまた、最終的に与野党間でいろいろ希望、要望等が一致した点につきましては、この法案を未完成から完成したものに仕立ていくという意味で、さらにひとつ格段の大臣の御努力というものをお願いしなければならぬことではなかろうか、そういうことを考えております。  そこで、大体いま私がお尋ねした段階の中で、いろいろ前向きのお答えをいただいてまいりましたけれども、私どもはきょう大まかな点を取り上げてまいりましたが、それらの点についてはさらにひとつ格段の御善処をお願いしなければならぬということでございますので、総括的に私ども意見に対して大臣の御所見を承って、一応私のきょうの質問を終わりたい、かように考えております。
  34. 小林武治

    小林国務大臣 御意見は十分了承いたしました。
  35. 田口長治郎

    ○田口委員長 吉村吉雄君。
  36. 吉村吉雄

    ○吉村委員 きのう時間の関係で中断をしておきましたけれども、老齢年金の額の問題、福祉年金の関係ですけれども、これらにつきましては大臣から相当積極的な内容充実への決意の表明がありましたので、その実現を期待をいたしまして、次の二、三の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  一つは、政府は国会におけるところの附帯決議というものをどういうふうに考えておるのか。附帯決議がついた場合には、大臣もこれを実現をするために努力します云々という発言が必ずつくのでありますけれども、今回の年金法の改正案の中でその大臣の決意表明と全くうらはらな、それを裏切るような状態が出ていますので、附帯決議に対する政府考え方というものを、初めに明らかにしていただきたいというふうに思います。
  37. 小林武治

    小林国務大臣 附帯決議は政府は尊重したい、こういうことでお答え申し上げておりますし、また今度のこの改正案も、附帯決議を尊重してその内容を法案に盛っておる。この盛り方が少ない、こういうことになるのでありまして、みんなやりたいが、いろいろの事情でできない。したがって結果において不足であるが、私どもは根本的には尊重するたてまえで、ことしのこの問題にしましても、先ほど申し上げたように公的年金制度の併給問題あるいは内部疾患の問題、精神障害の問題、あるいは所得制限緩和の問題、こういうふうな事柄を取り入れてこの法案が出ていることは御承知のとおりでありまして、まあ大きい問題としては大幅にふやせと言うたがそれはやってない、あるいは夫婦の併給を両方満足に支払え、これもできておらぬというふうな大きなことが抜けてはおりますが、しかし多くのものをまた取り入れてやっている。これは真剣に尊重してやって、大きな結果は不満足である、こういうことになると思うのでありますが、尊重するたてまえには変わりありません。
  38. 吉村吉雄

    ○吉村委員 附帯決議を尊重しながら、部分的にせよ実現しているものもあります。私がいま特にそういうことについてお尋ねしましたのは、今回のこの改正案の中で、公的年金との併給額の問題で軍関係の遺族扶助料、これを支給されている方々と、他の一般の公的年金を支給されている方々との間に、すでに現行の中でも七万円を限度として軍関係のほうは併給する、それから他の公的年金のほうは二万四千円で押えられておる、こういう状態になっておりまして、前回の国会におきまして、御存じのようにたくさんの附帯決議の中に「福祉年金と他の公的年金との併給の限度額の不均衡を是正すること。」という項が入っておるはずでありますが、今回軍関係の併給限度額については、七万円から八万円に引き上げられることになりました。ところが、他の公的年金関係についてはそのままになっておるということになりますと、この不均衡というものは、ますます拡大をするということになるわけです。これらについて一体どういうふうに考えておるのか、このことが問題と思いまして、あえて質問をいたしたわけです。
  39. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 ただいまの点でございますが、併給問題につきましては、実は昨年の九月一ぱいで軍関係のベースアップが実現いたしまして、したがいまして、十月以降におきまして、九月末までにおいて軍関係の公務扶助料と福祉年金と併給されておった人たちが、現実に二十数万人十月以降には併給がなくなるという事態が起こったわけでございます。そういう意味におきまして、現実にそのときまでもらっておった人がもらえなくなった、これはベースアップの結果御本人としては収入がふえたという結果でございますが、そういう事態が大きく起こっておる。それを放置することは、政策的に考えても適当ではないのじゃないかという政策論というものが出てまいりまして、そうして少しの期間のズレはありますが、三十九年の一月から、従来差額をもらっておった人について、従来もらっておった差額ぐらいが支給される措置を講ずるということに実はいたした次第でございます。軍関係でない一般の公的年金との併給、要するにその限度額は二万四千円との差額ということになっておりますが、これにつきましても、いろいろ議論がありまして検討いたしましたが、この部分につきましては、その併給の限度額を引き上げるのが適当であるという議論があるわけでございますが、いま申しました軍関係と同じように、基本の年度額が、従来もらっておった年度額の差額をもらえなくなったといった事態がその時点において起こったというわけのものではないわけでございまして、制度として二万四千円が適当かどうか、金額の高さが十分かどうかという議論がございますので、これは二万四千円、要するに月額二千円、この関連は拠出年金の二十五年で月額二千円というものもございまして、制度の全般的な改正考える際にさらに検討したほうが適当じゃないかということで、二万四千円のところは見送ったような次第でございます。
  40. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は、この軍関係の二万四千円対七万円という現行のあり方自体にも非常に問題を感じておるのです。そのことにつきましては、相当各方面からも意見があることは御存じのとおりだろうと思うのです。いまのお話によりますと、軍の関係の公務扶助料の増額に伴って約二十四万人の方々が併給という恩典を受けることができないようになったのでという話ですけれども、そこでお尋ねをしたいのは、では一般の公的年金受給者にして二万四千円という限度額のために、併給を受けられないでおる人数というものはどのくらいの人数になるのですか。
  41. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 その公的年金との併給につきまして、現に二万四千円のところでどれだけ受けているかという数字は、概略わかりますが、かりにいまの二万四千円がたとえば五万円ならばどれだけ受けられるか、あるいは七万円ならどれだけ受けられるかということになりますと、そういった数字はありません。それで現に二万四千円のところで併給を受けているところの人間の数は、約一万人強というふうに記憶いたしております。
  42. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうしますと、二万四千円ということで制限をされているために、軍関係と同じように現行のごとく七万円だとすれば、これは相当の方々がその恩典を受けられることになるだろうと思うのです。それをどういう事情によるかは別にしまして、軍関係のものについては七万円までの限度額を認めておった、他は二万四千円までしか認めていない、こういうことについては、特に軍関係だからといって、これに差をつけなければならないという理由はどこにもないと思うのです。にもかかわらず、今度さらにいまのような話で一万円の増額をする、こういうことになったとするならば、この不均衡というものはもっと拡大された感じを該当者が抱くことは当然だろうと思うのです。この前の附帯決議の中でそういうものがあえてつけられたということについては、これを尊重する立場に立つならば、片方を八万円とするならば、一ぺんにそこまでいかないとしてもこれをもっと引き上げをする、二万四千のものを引き上げをする、こういうことによって相当数この恩恵をこうむれるようにする、こういうふうにしなければ、附帯決議の趣旨というものは全く無視されてしまうことになりませんか。この点は一体どうですか。
  43. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 いまの点で、ただ一言御理解願いたいと思いますのは、御承知のように、国民年金の拠出年金におきまして、二十五年で二万四千円という年金が支給されるわけでございます。二十五年間掛け金をした人が二万四千円という年金をもらう、これは拠出年金です。四十年で月額三千五百円、二十五年で二千円というものをもらうわけでございます。ところが、この人たちは福祉年金との併給がないわけでございます。同じ年金体系の中で拠出年金をもらえる人でございますから、福祉年金と併給されないわけでございまして、福祉年金は一般会計で出しているものだから、他の公的年金の関係においては、その点を考えまして、二万四千円以下の公的年金をもらっている者についてはというので、その差額が支給されております。これをかりに五万円までの差額は支給するということにいたしますと、国民年金の被保険者については、拠出年金を受給することになった場合に、福祉年金との併給は何もない、他の公的年金との場合はあるというような結果が起こるわけでございまして、そういった面におきまして、この併給についてはいろいろ意見があるところでございまして、それをどうするかという問題としましては、将来さらに検討しなければならぬ面があるわけでございますが、いまの御質問に関連いたしましてそういった考え方もございますが、いま言ったような現在の制度の立て方がそういうことになった点から、さらに検討しなければならぬという面のあることを御理解願いたいと思います。
  44. 吉村吉雄

    ○吉村委員 将来検討をしていかなければならない問題だということはわかりますが、拠出年金制の問題については、現在そういう効力があるというそういう問題ではないので、将来においてそうなるということです。私がこれを問題にするのは、軍関係との間に特にそういった差をつけなければならないという根本的な理由というものの説明には、いまの答弁ではならないと思うのです。その点は一体どういうふうになっておるのかということです。
  45. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 この併給の制度が設けられました際におきましては、いま申しました二万四千円、月額二千円というのは、一つには拠出制国民年金の二十五年掛けたものが月額二千円です。年金を受けるということから、それに満たないものとの差額は出してもいいのじゃないかということで二万四千円がまずきまりまして、その際において公務傷害による軍人の扶助料、この扱いをどうするか。その当時からすでに限度額が高かったわけでございまして、たしか五万何千円だったと思います。それで、一般の公的年金と軍公務による死傷の場合の扶助料との倍率というものを考えまして、その際大体兵、下士官、それから尉官くらいまでの平均をいたしますとその倍率が約三倍であるということで、二万四千円の約三倍に見当を置きまして七万円、七万円との差額について福祉年金を併給するということに政策として行なったということでございまして、その結果、いままでの二万四千円と七万円というものが出ておる次第でございます。
  46. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ですから、単にそれは理論的な根拠があるのでなくて、政策にすぎないということになるだろうと思うのですが、現在の時点に立って、そういう政策というものが一体国民を納得せしむるものであるかどうかということについては、非常に問題がある。ですからこそ、この前の国会においても、この均衡をとるようにしなさいという附帯決議がつけられたものというように私は理解せざるを得ない。同時にまた、今回の改正案を提案する以前に社会保障制度審議会に諮問をしておりますけれども、その答申の中でもこの問題について触れられております。ですから、いまの説明の中では、社会保障制度審議会においてもこの不均衡をなくしなさい、考慮をしなさいということをあえて言っている、こういう状態を全く無視して、そうしてかえって不均衡を拡大するような措置をとるということについては、私は非常に問題があるというふうに言わなければなりません。もし三分の一というものが、当時妥当な政策的なものとして今日に至っているとするならば、やはりそれをそのまま踏襲しようというなら、八万円にする場合には、その三分の一まで上げるというならば一応の理屈は通ります。しかし、片方は八万円に上げて——ほんとうは九万円にするというのが原案だったようでございますが、八万円に上げておいて、片方はそのままにするというのでは、これはどう考えても納得するわけにはいかないと思うのです。こういうことを平然とやっていくのでは、国会でどういうような附帯決議をつけて国会の意思はこうこうでありますと言ってみたところで、あなた方のほうでかってな理屈をつけてやられたのではどうにもしようがないのではないか、こう思いますので、こういう点は政策上の問題だとするならば、ひとつ大臣のほうからもっと明確な答弁をお伺いしておきたいと思うのです。
  47. 小林武治

    小林国務大臣 またあまり率直なことを言うとしかられますが、私は、実はみずから十分検討しておりません。したがって的確なお答えができない。これからいろいろ十分検討していきたいと思います。この問題等につきましては、私もまたいろいろ考えがありますが、ここで速記にするような答えはなかなか出しにくい。そういうことで、私としては遺憾ながら受け身の勉強をおもにやっておりまするので、この問題については私自身が検討を欠いておった、こういうことを申し上げざるを得ません。
  48. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は、この社会保障制度の中で根幹となっているこの国民年金法——すべての政策がそうでありますけれども、それらが国民全体から信頼をされ、納得ができるようなものでなければ、これはどうしても、正しい意味内容充実をしないということになっていくと思うのですよ。軍関係と他の公的年金の関係が三分の一という、そういうあり方自体に非常に問題があるというふうに考えておったわけでありますが、それらが附帯決議の中で生かされた今日は、これを改善して均衡をとっていくようにする、あるいはその審議会のほうでもわざわざそのことを答申の中に付しているわけですから、大臣がそこのところを十分に検討しなかったというのはきわめて残念なことでありますけれども、将来これは附帯決議を尊重し、しかも今日の社会情勢の中で、本来の意味であるならば、併給限度額については、軍関係とかその他の公的年金受給者とかいうことで差をつけるようなことのないようなところまでこれを政策的に実現していく、こういうことでなくてはならないというふうに思うのですけれども、そういう線に向かってひとつこれから検討、努力をする意思はありますか。
  49. 小林武治

    小林国務大臣 おかげでいまは十分にその問題についての理解ができました。
  50. 吉村吉雄

    ○吉村委員 答弁を強要するつもりはございませんけれども、理解をされたということは、そういうことで今後努力をしていくということに解していいのですか。
  51. 小林武治

    小林国務大臣 そういうことにおとりくださってけっこうです。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 私もちょっといまの点、質問しようと思って準備しておりましたので、時間の関係でちょっと関連させて聞いておきたい。  御存じのとおり、この条項は、御丁寧にさかのぼってことしの一月一日から実施することになるのですよ。それでこれは二十四万人程度対象者があるわけです。七万を八万に引き上げないと、二十四万人程度の人が没になってしまう。だからこれを急速に救済しなければならぬ、こういうようなことなんです。それならば、一体なぜ恩給を引き上げるときに、そういうことも見越して初めから八万円にしてあげないのかということです。私の言いたいのはここなんです。いいですか、一昨日も中小企業の退職金の共済法の審議のときに言ったように、一つの制度できちっとやればいいものを、わざわざちょぴりちょっぴり恩典に浴さしていくのですね。そういう制度は一体事務的にどういうことになるかというと、その恩典に浴する人になってみれば、福祉年金のほうの事務の手続をしなければならぬ、今度は恩給の事務の公務扶助料の手続をしなければならぬ、併給の事務の手続をしなければならぬ、こういうふうにその末端の貧しい人たちが、これは二通りも三通りも事務の手続をするというのはたいへんですよ。役場に行き、それから戸籍謄本を取りに行くというように、右往左往して、こういう事務はなかなか複雑だからわからないのですよ。こういう制度はつくるべきではないと思う。どうせ国のお金を七万円から八万円に上げなければならぬということなら、公務扶助料を八万円にしたらいい、そうして年金との併給をやめてしまう、こういう制度をとるべきだということを何回もこの制度ができるときから言っている。それをやらずに同じようなことをやっている。そうして二十四万人の人を、いかにも自民党の出した金で恩典に浴させたような形で選挙のときにひっかけて出す。これは選挙政策以外の何ものでもない。私はこういうけちな選挙政策はとるべきではないと思うのです。これは全く党利党略なんですよ。それならば初めからもう事務の簡素化をやって、はっきりさせるために八万円をおやりになったらいいでしょう。大臣がいま御理解がいったならば、むしろこの条項を削除して、この国民年金法の附則で公務扶助料を八万円にする、こういうようにしたほうがすっきりするんですよ。私は今度はそうすべきだと思う、大臣もいま理解がいったならば……。国の金を差し上げるのは同じことなんです。そうして他の公的年金についても上げなければならないことは当然なんですから、これは上げるべきなんです。それをめんどうくさい、大衆にわかりにくいことばかりして、役人の権限を拡大している。そうして事務的には大衆、国民に多くのめんどうを与えるという政治は——民主主義というのは、それはめんどうくさい、あるいは忍耐が要りますよ。要りますけれども、こういう事務的なめんどうくさいことと忍耐を大衆にしいるべきではないと思う。理屈はそうですよ。どうしても国の金を七万から八万に上げなければならぬ、これが国家に生命をささげた御遺族に対する当然の帰結だとすれば、初めからあっさり八万円出して、こういう年金と併給してやるような形をとるべきではない。一方で君らに恩給を七万円やるのだが、もう一ぺん自由民主党はその恩典に浴させるんだぞという、こういう何か当然のことを、あたかも押し売りをして特別にしてやったような形をとるべきでない、そういうニュアンスが強いわけです。そうして大衆にいたずらに事務的に混迷をせしめるべきではない。これはうちの党にもはかって、今度むしろ修正したいと思うのです。予算はちっとも変わらないんだから……。年金の金を移しかえてでも当然すべきです。こういうめんどうくさい法律をいつもいつもつくって、そうしてわれわれのような忙しい者にこういうことで頭を使わせて、国会議員の能率の面からいってもこういうことはやめるべきですよ。そういうことを年金局長が抵抗できないところに、いまの政治の堕落、腐敗があるわけです。大臣どうですか、十分おわかりになったというならば、そういう方向でものごとを解決すべきで、何もあなたのやらなければならぬ社会保障が、恩給に類似する公務扶助料でどうしてもやっていけないという人がある場合に、これを併給する必要はない、しかもわずかに千円以下の金を併給しようというんですから。それならば、初めから同じ金を出すのなら一本で出したほうがいいが、それはどうですか。
  53. 小林武治

    小林国務大臣 これは御意見として承っておかざるを得ないと思います。いろいろの考え方があると思います。いまの公務扶助料のふえたときに、併給ができなくなるということを立案した役所でも知っておった、こういうふうに思いまするが、それがいいか悪いかは別問題として、十月で切れるのだということは、おそらく知っておって出したというふうに私は思っております。
  54. 吉村吉雄

    ○吉村委員 とにかくいまの問題につきましては、国民が何かそれぞれの過去の職歴とかあるいは環境によって差別をつけるようなことのないような立場で、ひとつ十分善処をしていただくように要望しておきたいと思うのです。  それから、これは一つ新しい問題なんですけれども、実はいまの年金制度というものは、国民年金の場合には被用者以外の方々が全部入っておることになっております。そこで、被用者の制度でありますところの共済組合、こういうところと非常に内容的にも、制度的にも不均衡があることが問題になっておるのですが、その中で、旧軍人で七年以上の人たちは、これは一時恩給の対象で一時恩給をもらっておるわけです。それから十二年以上の方々は、下士官、兵の場合ですけれども、これは恩給の受給資格があるということになっております。七年以下の方々については、共済組合、たとえば国家公務員、地方公務員あるいは公共企業体共済組合、こういうところは、七年以下の軍期間というものを組合員期間として通算しておるということになっております。ところが、一般の農民なり自由業者なりが加入しなければならないところの国民年金においては、そういう制度もない、あるいは厚生年金のもとにおけるところの民間の会社、工場、これまたその通算の措置もない、こういう実情にあるのですけれども、やはり社会保障は、どういう職域にあろうとどういう地域に住んでいようと、平等な政治の恩恵というものが受けられるという、そういうシステムでなければならないと思うのです。そのような観点からしまするならば、いまのような状態に対して社会保障ということをやっていかなければならないところの厚生省としては、どのようにこの問題を考えられておるか、ひとつお伺いをしておきたいのです。
  55. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 いま御指摘がありましたように、まあ一例だと思いますが、軍の在期間というものが、共済系統の被用者年金におきましては、年限の加算とは若干違いますけれども、年限が有効に働く措置が伸べられている。それが厚生年金並びに国民年金においては、その措置が講じられてないということは事実でございます。これは各種の公務員関係の共済年金におきまして最初からあったわけじゃなしに、あとからでございますから、だんだんその範囲が拡張されまして、軍期間だけではなしに、たとえば満鉄とか、そういったような機関での在職期間も考慮されるといったような政策的な改善がなされてきたわけでございます。そこでただいま御指摘のように、各種年金を通じてそういった措置が一貫してない、不統一であることは非常に不合理じゃないかという御意見でございますが、現在皆年金になりました体制のもとにおきましては、各種の年金期間の通算という制度は設けられておりますが、これは通算制度が始まりました時点以降の問題でございまして、その以前におけるそういった、いま出ましたような軍関係の期間をどうするかといったようなものの取り扱いは一貫した方針できておりませんので、今後の長期保険におきます総合調整といいますか、そういった点をどういうふうにしていくかということは一つの大きな問題でございます。現在厚生年金におきましても、たとえば旧令共済の組合員の期間との関係といったようなものも具体的に出ておりますし、そういった各種の関係におきまして、やはり統一的な措置を今後考えていかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。ただ、厚生年金におきましてもそういった問題が起こる以前に、現実にかつて厚生年金の被保険者であった人たちが脱退手当金をもらって、そしてもう厚生年金の被保険者であった期間をふいにしているといったような例もあるわけでございまして、そういったものとの関連においてものを考えなければいけないところに非常に複雑な要素もありますので、そういった要素も含めまして、今後これこそ前向きで検討していかなければならぬというふうに私ども考えておる次第でございます。
  56. 吉村吉雄

    ○吉村委員 この通算年金通則法ですか、これができるできないにかかわらず、いま私が提起をしておる問題というのは、処理する気になれば処理することができると思うのです。通算年金法の場合は、どこの制度のもとにおいてもそれが全部通算をされるという、そういう制度ですから、いま私が申し上げているのは、その一つの制度であるところの共済組合の年金制度の中では、軍関係の期間というものが全部通算をされることになっておるわけでしょう。国民年金厚生年金についてだけは、それは適用されていない、こういうことになっておるのです。もちろん厚生年金の場合といえども、一たん脱退手当をもらってやめておる人もあります。そのままの人ももちろんあるわけです。しかしそれは、同じように各共済組合の場合にもそういう条件というものはあったはずです。それを全部克服して通算をすることになっておるわけですから、私としては、そのことは何も理由になるものではないはずだと思うのです。要は、財源的にどうするかという問題がひっかかってくるのじゃないかと思うのです。ですから、実はこの旧軍人の七年未満者の方々の中で、いろいろの運動があることを私も聞いております。たとえば三年以上の方々については一時恩給を支給すべきであるというような運動が行なわれておる、これも知っておりますけれども、そういうようなやり方をかりに実現をしたとしても、三年以下の方々の不満というものは残ってくる、こういうことになります。これを最も合理的に今日の状態の中で解決するとすれば、やはり社会保障制度の中に組み入れた中でこれを解決する以外に道はないのではないか。しかも他の共済組合等ではこれを実施しておるということになるならば、ある人が農業に従事しておったから、そういう軍期間の七年というものは何の恩典もない、ある人は国家公務員であり、地方公務員であったために、それが通算をされて老後の生活保障に役立っている、こういうようなあり方は、社会保障の制度の上から見てきわめて私は問題があると思うのです。どうですか。
  57. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 ただいまの点は、私どもも、皆年金という体制になって、すべての国民が一定の年齢、条件に該当するといずれかの年金制度の傘下に入るという体制になった今日におきましては、非常にごもっともな御意見でございまして、やはりそれはこれを調整していく、すべての制度を通じて、大体同じような取り扱いにしていくという方向でものを考えていかなければならぬと思っております。ただ、ただいま御指摘のように、そういった場合にその部分の財源をだれが負担するかということが大きな問題でございまして、それが大きくからんでくる問題、かように存じております。
  58. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いまの局長の答弁は、将来検討していくということだと思うのですけれども、これは非常にたくさんの人が該当しておるのです。この前、私予算の分科会で若干質問をいたしましたところが、七年未満者というのは、実数は把握していないそうですけれども、約五百万人というお話でした。このうち、もとより官公労のほうで働いておる方もあるでしょうから、相当引かれることは引かれるとは思いますけれども、最も多いのは農業従事者が多いのではないかと思います。いまの状態の中でも、農民が加入しているところの国民健康保険あるいは国民年金というものは、被用者のそれらの制度と比較して非常に劣悪な条件の中にある。その上に軍関係の期間についても差別扱いを受ける。こういうことでは、官尊民卑の思想というものが、制度上の上にまでそういうふうになってくるのかどうかわかりませんけれども、これはやはり断ち切らなければならないと思うのです。いま局長が、十分検討していかなければならないということを答弁されましたけれども、ひとつ大臣どうですか、これは非常に大きな問題なんです。したがって相当決意を持って、財源的な措置等も考えながら、しかも社会保障制度の中で政治の恩恵というものは平等に受けられる、こういうような原則を確立するという意味からも、ぜひ実現をしてもらわなければならないというふうに私は思うのですけれども大臣の決意のほどを聞かしてもらいたいと思う。
  59. 小林武治

    小林国務大臣 いまの問題については、十分な決意を持って検討いたします。
  60. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これは特に大臣からその決意を明らかにしてもらいたいというふうに申し上げておるのは、予算の分科会におきまして、野田総務長官は、新しい問題でございますけれども、しかしどうしてもこれはそういう方向で実現をしていきたいという趣旨の答弁があったわけです。問題は、社会保障的に解決をしていこうということになっておりますので、したがって厚生省のほうと十分連絡をとりながらという答弁がなされました。その際、年金課長ですか、出席しておりましたけれども、御存じであろうと思います。一番問題なのは、やはり厚生省がどういう態度をとるかにかかっておると思いますから、非常に該当者が多い、しかもこの該当者の大多数というものは、社会保障制度の中でも劣悪な条件下にある方々でございますから、ぜひひとつ実現をするように——国民年金法は四十一年に大改正をしなければならないことになるだろうと思いますので、ぜひそれまでの間には具体的な成案を得て、そして提案できるように、そういう前向きの姿勢で努力をしていただくように特に要望しておきたいと思うのです。
  61. 小林武治

    小林国務大臣 了承いたしました。
  62. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それでは、ひとつぜひそういうことで実現に努力していただきたいと思います。  時間もありませんので、一応これであとの質問は保留をしておきたいと思うのですが、きのうから私は大体三つの問題について政府見解を尋ねてまいりました。一つは、今日の状態の中で国民年金というものを考える場合には、福祉年金制度の充実をはかっていかなければならない、そのためには、むしろ福祉年金の制度というものは分離をすべきではないかということすら申し上げたわけでございます。生活保護基準というものが、きのう申し上げましたように三十四年以来約二倍に引き上げられておる。にもかかわらず、老齢年金額に例をとりますならば、わずかに一〇%の百円しか増額されていない、こういう状態では、制度発足にあたっての状態から考えてみますと矛盾もはなはだしい、こういうふうに言わなければならぬと思いますが、この点については大臣からも、相当決意を持って福祉年金内容充実に当たりたいという答弁があったので、これは了承しておきたいと思うのです。  第二に、いわゆる附帯決議の関係あるいは審議会答申の関係から、軍関係の併給額の問題あるいは一般公的年金受給者の併給額との不均衡の問題については、軍関係だからといって、あえてそういう差をつけておくことは今日の時世では何ら理由のないことではないか、こういうふうに考えますので、この点は十分に情勢を考慮されて、だれでも同じように社会保障の恩恵というものを平等に受けられる、こういうようにぜひ考慮していただきたい。  最後の問題については、特に大きな問題になりますので関係の方面と折衝をされまして、これはぜひ実現ができるように期待をし、一応きょうの質問は終わっておきたいと思います。
  63. 田口長治郎

    ○田口委員長 暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕