○大橋国務
大臣 実はこれはだいぶめんどうな問題でございますが、これを御
説明させていただきますと、私は今度の争議に関連しての問題点が二つあると思うのです。
その
一つは、組合の要求であります大幅賃上げ、これに対して最終的にどの
程度の額にするか、これが
一つの問題だと
思います。それからもう
一つは、組合側が大幅賃上げ達成のための手段としていま宣言をしておりますストライキの問題でありまして、このストライキをどうやって回避するか、この二つの問題だと思うのでございます。
この二つの問題がいろいろの場合に混同されておるのでございまして、私が問題解決の道は仲裁以外にないだろう、こう申しておりますのは、大幅賃上げの要求について最終的な結論を出すのは仲裁裁定によるほかはなかろう、こういう
意味で申しておるのであります。ストライキを避ける方法としてはそれでは何があるか、ストライキを避ける方法としては、仲裁手続へ移すということは、これは切り札ではございません。なぜならば、
法律によりますと、仲裁になったからといって特別にストライキをしてはならぬということにはなっていないのでありまして、そもそも公労法においてはストライキは絶対にいけない、こうなっておるわけでございます。それをストライキをやろうというところまで組合がきておるのでございますから、単に仲裁に移すからというそれだけでは、ストライキはやまらない。これはどうしても組合の方々がストライキをやめようという気持ちになっていただかなければならぬ事柄だ、こう思うのでございます。そこで、御本人がストライキをやめようという気持ちになっていただくきっかけとして、あるいは仲裁手続に移すということが役に立つ場合もあるかもしれない。しかし、やみくもに仲裁手続に移したからといって、それではたして御本人が、それではストライキをやめようという気持ちになってくださるやらくださらぬやら、そのことについては、私はいま見通しとしては全然どちらともわかりません。そういう段階におきまして、職権をもって仲裁に移行するということははたしていかがなものであろうか、こういう気持ちがいたしますので、この際職権で仲裁に移行するという手続を選ぶ気持ちになっていないわけなのであります。
そこで、もう
一つの問題、すなわち賃上げの問題でございますが、そもそもこのストライキが計画されたのは、大幅賃上げを実現する手段として計画されたことでございます。そこで大幅賃上げ実現の手段として、はたしてこのストライキというものがどれだけ効果があるかということを
考えてみますと、現在
政府といたしましては、いろいろな
事情から、調停段階あるいは団体交渉の段階において、自分のほうの側から、組合の要求のうちこの
程度までは認めるであろうという具体的な数字を示した回答を出すことは、困難な
状態に追い込まれておるわけなのでございます。このストライキを避けるには
政府に具体的な回答を示してもらわなければならぬ、こう言って組合側はいま固執しておられますが、これではどうもストライキを避ける
政府の具体的な回答というものは、先ほど来申し上げましたごとく実際上提示されることはない、こう見られておりますので、そういう点を固執される限り、ストライキを避けるという道は開かれないのではなかろうか。そうなりますと、この大幅賃上げを決定する方法、手段というものは、仲裁以外にはないわけであります。仲裁裁定に対しましては、すでに昨日関係五
大臣と組合代表者との会談におきましても、
政府側は、公労委の結論に対してはこれを尊重するという態度を明らかにしておられます。したがって、大幅賃上げの回答をできるだけ早く得たいと
考えられるならば、組合におかれまして進んで仲裁へ手続を移される措置をおとりいただくことが問題解決の早道ではなかろうか、こういうふうに
考えておるわけなのでございます。それに対しては、
政府側はいつでも喜んで同意をしよう、こういうことを申しておるような実情でございます。したがって、私は使用者側という
政府の立場でなしに、労政当局という立場から、公平に両者の状況を判断いたし、また公労委の手続の進行状況などをも
考えまして、この段階におきましては当事者双方が話し合われて、すみやかに事件を仲裁に移されるということが適当である、それが問題の解決をすみやかならしめる唯一の道である、こう思っておるのでございます。ことに
政府側の立場を
考えましても、
政府側は、必ずしも現在の六百円だけでこの事態が解決できるものとは
考えておらないと私は判断をいたしておるのであります。すでに春闘も進行いたしまして、ある
程度の春闘相場というものが出てきておるのでございます。しかし
政府の立場としては、自分の口から
金額を切り出すということはどうもできない、そのかわりに、公正なる第三者機関である公労委が
金額を示したならばそれに従おう、こういう意思を示しておるわけなのでございます。したがってそういった実情から
考えまして、この際労使双方が話し合われて、事態を仲裁手続に移すという措置をとられることが適当である。そしてこれは、やはり組合が仲裁を進めることによってストはやめようという気持ちを持っていただくということが、ストを避ける根本でございますから、話がそこまで進めば、何も労働
大臣が職権でやることはない。当事者同士の話し合いで仲裁に移れるではないか。この際労働省が労使双方の話し合いに介入して、職権で動くというようなことは何ら必要のないことであるし、また、そういう形で組合の意思に反してこの事案を仲裁に移しましたとて、それがストライキをやめさせる法的な保証もないわけでございますから、この際職権仲裁は避けて、当事者がその気になるまでできるだけ説得を続けるという態度でまいりたい、これが私の
考え方でございます。