運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-09 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月九日(木曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君       伊東 正義君    大坪 保雄君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松浦周太郎君    松山千惠子君       粟山  秀君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    伊藤よし子君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山口シヅエ君    山田 耻目君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君  委員外出席者         厚 生 技 官         (国立予防衛生         研究所腸内ウイ         ルス部長)   多ケ谷 勇君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出  第三〇号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出予防接種法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 予防接種法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。  昨日参考人からいろいろと御意見を聞かしていただきましたので、重複をしないように二、三お尋ねをしたいのですが、まず第一は、今度の改正では、第一回を生後六カ月から生後二十一カ月に至る期間にいままでなっておったものを、今度三カ月から十八カ月に至る期間というように、三カ月ずつ予防接種の時期を、特に急性灰白髄炎については早めておるわけですね。この早めた理由というのは、一体どういう学問的な検討の結果早めることになったのでしょうか。
  4. 若松栄一

    若松政府委員 前の法律ではソークワクチン対象に考えておりますので、ソークワクチンは三回接種法をとっております。それも第一回を行ないまして四週後に第二回をやり、さらに七カ月経過して第三回をやるというたてまえになっております。したがって、それらの接種夏場等をはさみますと、夏場期間をさらに延ばしますために、理論的に計算しますと、どうしてもいろいろ場合を想定いたしまして、二十六カ月くらいまで余裕を見なければならない。今度のワクチンでは二回接種でございまして、一回目と二回目の間隔が六週間ということになっております。したがって、およそ二カ月間あれば十分なのでございますけれども、第一回目を春にやり、二回目をやるまえに夏場にかかりますと、二回目は夏を越してからやらなければならないということになっております。したがって、約一カ年間くらいをとらなければならないわけでございます。したがって、一年と、この最初に始めます三カ月ですから、一年と三カ月くらいが大体最大限である。しかも何らかの実施上の手順等でおくれることも考慮いたしまして、さらに三カ月延ばしまして、十八カ月ということにいたしたわけでございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そういう技術的な問題もあるかと思いますが、もっと根本的に生後三カ月でやる場合と、生後六カ月でやる場合は、これは片やソーク、片や生ワクということだけの違いでこういうことになるのか、それとも新しい学問上の研究の結果、生後三カ月ぐらいになったときが最も急性灰白髄炎に対する抵抗力が弱くなっておるから三カ月にやるのか、そういう学問的な根拠があって三カ月短縮したのか、いまのように全く技術的なことを中心にしたのか、その点はどうなんですか。
  6. 若松栄一

    若松政府委員 前の法律では六カ月から最初第一回をやることになっておりました。それは、御承知のように母体から引き継ぎました免疫が、だんだん生後低下いたしてまいりまして、生後六カ月ぐらいが最低になるわけでございます。その後自然免疫等でまた免疫が上昇してまいるのが例でございます。したがって、母体から引き継いだ免疫が低下する過程のどこで予防接種をやるべきかということが学問的な検討対象になりますが、ソークワクチンの場合は注射でございまして、母体から受け継いだ免疫がありますと、注射によっても免疫の獲得がなかなか困難でございます。したがって、免疫がある程度少なくなった六カ月からソークワクチンをやることになっておりましたが、生ワクチンでは六カ月まで待たなくても、三カ月でも十分に免疫ができる。完成した免疫ができるということが明らかになっておりますので、今度は三カ月に繰り上げたわけでございます。したがって、主としてこの六カ月を三カ月に繰り上げた理由は、ワクチンの性格上の理由でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、母体から引き継いだ免疫力が一番低下するのは生後六カ月であるということになれば、六カ月から飲ましてもいいことに学問的にはなるわけですね。ところが、三カ月ではまだ低下していないから、三カ月ならあわてることはない、こういう形になるわけでしょう。いまの答弁では繰り上げた理由が学問的には明白でないわけでありますが、何かもう少し根拠がはっきりならないですか。
  8. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 ただいまの問題を少し私のほうから補足説明申し上げます。免疫を開始するのは生後できるだけ早いほうが有利なわけでございます。しかしながら、注射をして免疫する場合には、もしも母体からきました抗体が幾らかでも血液の中に残っておりますと、皮下に入れました抗原がその抗体で中和されまして抗原としてきかないわけでございます。したがって、ソークワクチンにつきましても、できるだけ早く免疫付与したいということで、学者が生後早い時期からかなり強いワクチン注射したりなんかしていろいろ研究いたしました。しかしながら、結局免疫体酸性能力が強まって、しかも母体の影響が消えて有効にソークワクチンがきくというのは、大体生後六カ月以後である。したがって、生後六カ月以前にソークワクチン注射したのではほとんど効果があらわれない。そういうことで世界じゅうで大体生後六カ月以後に開始する、そういうことになっております。  それから生ワクチンの場合は、これも生後非常に早い時期に免疫付与したほうがいいというので、産まれて数時間後とか翌日という投与研究的にはやられております。しかしながら、生後非常に早い時期に投与しましても、ビールス腸管の中でふえますけれども、その後は、生後三カ月ぐらいまでの間は抗体をつくる力が割に弱っております。したがって、まだ感染はしても抗体が十分できてこない。したがって、こういう時期には自然の摂理で、母親からもらった抗体赤ちゃんがつくる抗体のかわりをするような形で、感染防御ということが成立するようになっておりますが、しかし、人工的に付与する場合には、したがって、母親抗体がそろそろ低下し始める三カ月あたりが、抗体生力も発達してくるし、ちょうど時期的にマッチしてまいりますので、生後三カ月ごろから投与することが、世界的にやや広く行なわれております。ただし、非常にポリオビールスが蔓延しておりましたソ連がこの投与を開始しましたときは、ソ連では全部産院に入れてお産をさせるという社会主義的な管理が行き届いておりました関係上、そこで飲ませればのがれっこはない。そういうことで、生後二日とか翌日とかいうときに飲ませる方式をとっておりますが、そのほかの国では、大体において生後三カ月以後というのが学問的にいっても一番妥当な線であろう、そういうふうに考えられております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりました。いまのような説明なら、大体しろうとでもわかるのです。  次は予防接種を、ポリオに限らず、やらない人が相当あるわけです。今度のように、国産生ワクチンに対する母親不信感が漂ってまいりますと、完了しない人が相当出てくると思うのですが、これらに対する処置政府は一体どうするつもりなのか。こういう伝染病予防法とか予防接種法とかいうようなものは、馬を水ぎわに連れていっても、馬が水を飲みたくなければ飲まないように、強制的な法律となったとしても、なかなか全部連れてきてやらせるというわけにはいかないわけです。ところが、今度のように国産生ワクチンに対する不信感が漂ってまいりますと、相当の人たち予防接種の、特に生ワクを飲むことの機会を失ってくると思うのです。政府はこれに対する処置を当然考えておかなければならぬのですが、どういう対策を講ずる所存ですか。
  10. 若松栄一

    若松政府委員 予防接種法は、わが国では法定の予防接種については一応強制というたてまえをとって、罰則さえ設けておるのでございますが、世界各国の例では、必ずしも強制というよりは、任意接種をとっている国はたくさんございます。わが国においては、予防接種強制されておりますけれども、現実には強制権を発動するというふうなことは、いまだかってその例がなかったわけでございます。今後とも、特殊な事態でない限り、そのようなことはおそらくないだろうと存じております。といいますのは、伝染病というものは、ある程度の、国民にある一定率以上の免疫があれば、少なくとも流行という現象は起こってこないということは定説でございまして、たとえばジフテリアの流行というものは、国民の六〇%が免疫があれば流行は起こらないという考え方定説でございます。そういたしますと、私どもといたしましては、予防接種法によって強制的に行なうということは少なくとも社会防衛的な考え方であって、したがって、流行を阻止すれば、ある意味ではこの目的が達し得られる。そういう意味では、現在の接種率が必ずしも一〇〇%になっておりませんけれども、おおよそ流行を阻止するだけの免疫は十分であろうと考えております。したがって、これ以上につきましては、ある意味では個人衛生、個人防衛的な意味がかなり加わってまいりますので、そこら辺は国民常識といいますか、自己防衛自己衛生の範疇にある程度まかすよりやむを得ないのではないかという考えでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、特に今度のポリオに対する不信感から飲まなかった児童に対しては、政府としては積極的な対策はやらない、こういうことなんですね、いまの御答弁によれば。自発的にやるという気持ちにならない限りはいかんともしがたいので、そのままいくよりしかたがない、こういうことになるのですな。そういうことになると、相当予算が余ることになりはせぬですか。
  12. 若松栄一

    若松政府委員 予算は、従来の実績が八〇ないし九〇%の実施率でございますので、大体そこら辺をめどにして組んでおります。しかし、予算が余る余らぬという問題よりも、やはりできるだけ衛生教育を徹底しまして、できるだけ機会があれば受けてもらうだけの指導はいたすつもりでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 予算の点はあとで触れますが、もう少し未完了者に対するPRを親切丁寧にやって一これはあと医師会の問題も出てきますが、PRをやる。そうして、今年だけで国産の生ワクチンは終わるわけではないのです。来年もやはりやらなければならぬ。こういうように法律が変わってくれば、ますますそういう形になるわけです。そうしますと、その不信感が依然として、今年から来年にかけてずっと続いていくということは、日本予防衛生にとっても非常に不幸な歴史を残すことになるわけです。したがって、特に未完了者についても政府がある程度責任を持って、十分納得のいくような形をとっていくことが必要だと思うのです。そのことが同時に予防接種に対する、あるいは伝染病予防に対する国民衛生思想の普及にも非常に役立ってくると思うのです。そういう点については、公衆衛生局長のほうではもう少し積極的にやらなければいかぬのじゃないかと思うのです。どうもいまの答弁では不満です。  そうしますと、次に問題になるのは、だんだん飲まない人が出てくるということになると、夏場にかかってくるわけですね。三十八年八月二十七日の伝染病予防調査打ち合わせ会ポリオ部会意見としては、六月から九月になるともう投与は避けたほうがいい一これは何か免疫付与効果というものは、その時期の投与では低下するのかどうかわかりませんけれども、避けたほうがいいという意見があるわけです。そうしますと、未完了者PRして五月までにやってもらっておかなければ、六月から九月はだめだ、こういう観点もあるわけですね。これの理由もあわせてお聞かせ願いたいと思います。  そうしますと、生ワクを飲ませる適期というものは、秋口か冬場以外にない。もう流行し出して、夏場はこれを飲ませることは避けたほうがいい、こういうことになっておるわけですね。そうしますと、やはり飲ませる時期は限られてくる。こういう問題もあるので、そういう点十分PRをしてもらわなければならぬが、夏場を避けなければならぬという理由はどういうことですか。その生ワクの力の弱っておる菌が便とともに出て、それがまた種がえりというか野生化してくるというか、力が弱くなるというか、そういう感染力の強いものにかえることがあることを予想しているのか、そこらのところはどういうことですか。
  14. 若松栄一

    若松政府委員 夏場は御承知のように、ポリオそれ自体の流行期でもありますし、同時に、ポリオ以外の各種の腸管ビールスの活躍時期でございますので、インターフェアの問題も起こりまして、せっかく生ワクチンを飲ましても他の腸内ビールスの妨げを受けて効果が十分にあがらないということむございますし、また一方、ポリオ流行期でございますので、先般来問題になっておりますように、ポリオ麻痺性疾患が起きましたときに、はたして生ワクチンの服用のために起きたのか、他のビールス疾患で起きたのかという非常にまぎらわしい点も起こってまいりまして、そのようなことのためにかえってトラブルを起こすという危険もございます。その腸内ビールスインターフェアその他の問題については、専門家でいられる多ケ谷先生の御説明をいただいたらどうかと思います。
  15. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 ただいまの局長の御説明で大体尽きると思いますが、それともう一つは、先ほど御質問のありましたように、飲まない子がふえた場合に危険じゃないか、それに対しましては厚生省の事業としてもなされておりますし、それから私ども予防衛生研究所の、これは私どものほうで、WHO、世界保健機構腸内ビールスのレファレンスセンターというものになっておりますが、この業務としても毎月一定数の健康の子供ふん便を集めまして、それからどんなビールスが出るかということをずっと継続して観察しております。それで過去二年間の経験でございますと、生ワクチン投与してから二月ぐらいの間は、わりにポリオビールスふん便の中にときどき出てまいります。しかしながら、その時期を過ぎますと、それ以後ポリオビールスは取れておりません。それでほかのコクサクキービールスであるとか、エコービールスであるとか、そういうものは取れてまいります。もしも免疫を受けない子供さんがかなりふえまして、野生ポリオ日本にかりに消えたとしても、海外旅行者が持って帰るということもあり得るわけでございますし、そういうことが蔓延してくる徴候が見えますれば、まず普通の健康、いわゆる見かけ上健康な子供ふん便に当然それはあらわれてくるわけでございます。そういう場合に緊急対策として夏場の生ワクチン投与ということも場合によっては考えられることでございます。  一方、なぜ夏場に使わないかということは、先ほど局長も言われたように、ほかのビールスがふえておりますとポリオビールスのつきが悪い、そのために免疫のできが悪いということもあります。それからもう一つは、昨日も申し上げましたように、ポリオ発生患者季節曲線がほとんどなくなったと申しましても、六、七、八月ごろはほかの月に比べまして倍くらい――倍といっても例数が少ないのですが、片方が五、六例、片方が十例の差でございますけれども、やや夏場が多いということはいなめないわけでございます。年によりまして各国とも違いまして、ある年はかなりそういうコクサクキービールスなりエコービールスなりによる特定の疾患がはやりますとい夏場にぐっとふえることも予想できます。そういうところでもしもワクチン投与しておりますと、それとワクチンとの重なり合のために要らざる心配を民衆によけいかける。そういう意味でも衛生行政上好ましくない。それで、大体において秋場から冬場、春先にかけて免疫を完了しておけば、夏の間に生まれて、あるいはその間に感受性のある年齢に達する赤ちゃんも、まわりの子供さんが免疫を得ておれば、そこでそういう危険なポリオビールスが到達しない、そういう原則で夏場を避けるというふうに考えられておるわけであります。
  16. 滝井義高

    滝井委員 現在の全国的な投与の状況を御説明願いたいと思うのです。そして、まず第一にソークをやっておったときに、第一回にソーク注射をし、それから四週間において第二回目をやる。さらに七カ月において第三回目をやるわけです。その場合に、第一回が一〇〇とすれば二回がどの程度になり、三回がどの程度に減少してくるのか。それから今度の生ワクは六週間の間隔をおいて二回目を飲ませるわけですね。その場合の第一回の接種を受けた人と、それから、早いところはもうそろそろ二回目をやっておると思いますが、その率ですね。それからいまひとつは、第一回目のときに付与される免疫力と申しますか、二回目、三回目のソークのときの免疫力付与状態、それから生ワク付与状態、これをひとつ御説明願いたい。
  17. 若松栄一

    若松政府委員 ソークワクチン予防接種の場合の経験で申しますと、大体八〇%くらいが第一回目を受けまして、二回目、三回目にそれぞれ一〇%程度脱落があったようでございます。それから生ワクでは大体第一回目が九〇%前後でございまして、二回目を完了する者が若干脱落する。一〇%までいかない程度脱落率があったようでございます。なお、ソークの場合及び生ワクの一回目、二回目で免疫のできる程度というものを、いま私手元にちょっと資料を持っておりませんが、多ケ谷先生からひとつ……。
  18. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 私も正確な資料を持っておりませんけれども、大体の概念を御説明申し上げますと、ソークワクチンの場合には、ソークワクチンの二期が、つまり免疫体産生能力によってずいぶん違うわけでございます。非常に優秀なソークワクチンでありますと、二回接種で大部分の八〇%以上のものが抗体を持つようになります。しかしながら、通常力価ソークワクチンですと、二回の接種抗体を持ち、ここで半数から六〇%、三回接種によりまして約八〇%、優秀なワクチンですと、三回接種でほとんど一〇〇%抗体を持つようになります。したがって、これはワクチン力価によりますので一がいに一章えませんが、少なくとも三回目の接種まで持っていかなければ安心した状態にはならないというのが常識でございます。
  19. 若松栄一

    若松政府委員 資料手元に一部ございましたのでちょっと申し上げますが、ソークの場合で、開発当初はかなり免疫力が弱かったようでございますが、かなり改善された段階で、第一回の接種で約三〇%、二回接種で七〇%、三回接種で九〇%、四回接種で初めて九六%の免疫力ができるという記録がございます。
  20. 滝井義高

    滝井委員 生ワクの場合はどうですか。
  21. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 生ワクチンの場合は、これは使います生ワクチンビールス組み合わせによって違います。一番理想的な組み合わせば1型、2型、3型を別々にタイプ別投与する方法でございまして、これは研究段階わが国でも使っておりますし、各国とも使っておりますが、実施段階になりますと、子供さんを少なくとも三回集めなければいけない。さらにそのあとでもう一ぺん三つの型の混合したものを投与するのが一番理想的で、合計四回集めて一回りの投与ということになりますので、実施上なかなかむずかしい。それでわが国でも今回考えておりますのは、1、2、3型を三つ一緒にしたものを投与する。そうしますと、このような投与形態でありますと、三つの型に対する免疫体を持つようになりますのはどうしても二回の投与を完了しないとむずかしいわけであります。二回の投与をやりますと、大体において九〇%以上の者は抗体を持つようになります。しかしながら、一回の投与では、ある型、少なくとも一つないし二つの型には九〇%の免疫ができますが、もう一つの型に対しては五〇%とか、あるいは場合によっては四〇%というようなでき方になりますので、それを補う意味で少なくとも二回投与が必要である、そういうふうに考えております。
  22. 滝井義高

    滝井委員 結局これは、ソークに比べて生ワクのほうがはるかに予防接種を受ける人の数も多くなってくるし、それから免疫力付与のほうも、とにかく二回やれば九〇%ということになって非常に高くなってくるわけです。そこでこれはどうしても未完了者のないような方法で精力的にPRをしてやってもらわなければならぬということになるのだろうと思う。そうしますと、そういうように八〇%、九%の生ワクを飲ませることによって免疫力付与せられた人たちは、二回飲んでおけばこれは一体どの程度持続期間があるのかということです。
  23. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 世界じゅうの、比較的早い時期から生ワクチンを使いました国はソ連でございますが、ソ連は御承知のように毎年毎年投与を繰り返しております。したがってこれは免疫力持続という意味では参考にならないわけでございます。それでわが国では過去二回、二年間にわたり生ワクチン投与を行ないまして、その後の抗体を調査しておりますが、いまのところはあまり下がっておらないと考えております。そのほかチェコとかハンガリーとかいう国がわが国と似たような投与方法を行なっております。しかしこれはどのくらい続くかという正確なデーターは、これもやはりせいぜい三、四年の経験でございますのでまだ出ておりませんが、少なくとも最高値に達した免疫体が一年後にはやや下がる、半分とか四分の一の値に下がりますが、それ以後はかなりその値を保ったまま少なくとも五、六年は持続するというふうに考えられております。したがって今後十年、十五年たちましたあとで、たとえば去年なりことしなり赤ちゃん投与を受けた人が中学生、高校生になったときどういう抗体の持ち方をしているかということは、今後毎年その抗体調査をやっていって、それを参考にして、万一下がるようなことがあれば、そこでもう一度全国的にも再投与を行なうということも考えなければいけないだろう。しかしながら現在までに得られていますデータでは、少なくともここ数年間はそういう危険はあるまいというふうにわれわれは判断しております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、一年後に三分の一か四分の一に免疫力が下がってくるということになったときに、三分の一、四分の一くらいの免疫力があれば野生ビールスによる感染というものはあったにしても、その体内における抗体によって確実に防止できるという学問的な証明はあるわけですね。
  25. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 これは十分ございます。と申しますのは、生ワクチンで上がった抗体をはかりますときには、血清を何倍まで薄めてビールスを中和する力があるかということをはかるのでありますが、通常五百倍とか千倍という値に到達いたします。ですから四分の一に下がったとしても百倍くらいの抗体は十分あるわけであります。  それで何倍の血清の抗体があったら麻痺を防ぎ得るかということは非常に大きな問題でございまして、ソークワクチンが使われ始めました当時、かなり大がかりな研究がアメリカで行なわれております。その結論を申し上げますと、結局、血清中に四倍薄めて中和能力が証明されるくらいの抗体があれば麻痺は防げるというような、これはかなりたくさんの数を扱った疫学的な研究の結果なされております。それから動物実験ではチンパンジーとかあるいは普通のサルに受動的に免疫体を与えまして、それでさらにビールスをかけてどのくらいで麻痺を防げるかという研究もなされておりますが、この結果では少なくとも十倍に薄めた濃度で有効であるような抗体であれば相当強力なビールスを与えてやっても麻痺は防ぎ得る、そういうような学問的な裏づけがございます。
  26. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、そういうようにみんなが免疫力を持ってくる、一年半たって三分の一、四分の一に下がったところでなお野生ビールスに耐えることができるということになりますと、ある地帯に小児麻痺が流行した。その小児麻痺の流行というのは野生ビールスによる自然感染流行なのか、それとも投与した生ワクの一、2、3型の菌によって起こったものであるかどうかという、この鑑別ですね。たとえばセービン株を十九代まで追跡してみた、ところが3型についてはなお毒性の復帰が認められたということをいわれているわけですね。だから3型は非常に不安定だということがまた野外実験をやらなければいかぬのだという一つの大きな理由にもなっておる。そこでこの鑑別というものが学問的に可能でしょうか。
  27. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 これは御説のとおりに、免疫力がかなりある集団にポリオ疾患、麻痺を起こす疾患が起こった、その場合にこれが何によるかということがわれわれビールス学者あるいは小児科病理学者の非常に大きな関心事でございます。そういう点を鑑別するために、昨日も申し上げましたように、ポリオ容疑患者の一つ一つの例を詳しく検査してビールス分離も試みる、そういうことで過去二年間われわれやってきたわけでございます。しかしながら一つは、ポリオ以外の腸管に触れるビールスでそういうポリオ様の麻痺が起こる、これはかなりはっきりそれを起こすビールスも知られております。現にわが国でも昨年はコクサクキービールスのA7というビールスポリオ様の麻痺が起こった例が二例、ビールス分離ができて報告されております。そのほかポリオ様の麻痺を起こしまして、生ワクチン投与した時期にもしそういう病気が出ますと、生ワクチンを飲んでおりますから、当然ふん便の中に生ワクチンポリオビールスが出てまいります。それから抗体も上がる、そういうことで鑑別はなかなかむずかしいのでありますが、野生ビールスと生ワクチンビールスとを区別し得る方法もございます。ただしこの区別はなかなかむずかしくて、血液型の親子鑑別と同じようなものでありまして、ある場合には、どうしてもこれは野生ビールスとしか考えられないというような結論がかなり簡単に出る場合もございますし、それからこれはどちらもいい得ないというような消極的な結論しか出ない場合もございます。  したがって、これの鑑別ということはなかなかむずかしい仕事でございますが、それと同時に、その生ワクチン投与していない時期、そういう時期に同じような疾患が出まして、それからいろいろ手をかえ品をかえてビールスの分離を試みましても、何もビールスが取れてこない場合がかなりたくさんございます。こういうものが何によるものであるかということが、これはまだ学問の研究段階でございますが、今後いろいろ研究が進みますれば、あるいは何か病原体が見つかるかもしれない。しかしながら現在の段階は、いろいろ手をかえ品をかえてビールス分離を試みても何もビールスが出ない、ただし臨床的な症状はポリオとよく似ておる麻痺である、そういう例がかなりございます。現にわが国でも生ワクチン投与して、先ほど申し上げましたように、一月から二月くらいの間は投与した生ワクチンに由来すると思われるポリオビールスがある集団には残っておりますが、それ以後になりますと、そのビールスは消えてなくなってしまいます。したがって、そのあとでそういう例が出ますと、これの分析はビールス分離を幾ら試みても何も出ない、あるいはポリオ以外のビールスが出る、そういうことが再々起こってまいります。したがって先ほど御説のようにポリオビールスが不安定だということも研究の結果わかっておりますが、しかしこれがほんとうにそういう野生に返って、しかも流行を起こすくらいまで強く返ったというような報告はいままでございませんし、そういう意味で、これは決して一〇〇%理想的な種とはいえないけれども、現在われわれがワクチンとして使い得る株のうちではセービンのビールスが一番理想に近いものである。そういうふうにわれわれは考えておる次第でございます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 この免疫抗体持続、それから野生ビールスによる自然感染の状況ですね。そういうようなものをもう少し詳細に調査をやることが、いまの多ケ谷先生の御説明からいって必ずしも明確でない、相当不明な点があるわけですね。そうしますと、そういう基礎的な研究と申しますか、むしろこれは実施段階に入っていろいろ問題が起こってきておるわけですから、そういう調査をする機関と申しますか、予防衛生研究所か何か厚生省でそういう特定の生ワクによる免疫抗体持続とか、野生ビールスによる自然感染の状況とか、あるいは生ワクを飲ました場合のその菌がどういうような運命をたどっていくのか、こういう問題について特定の研究費を出して特定のグループに研究させる体制というのができているのですか。
  29. 若松栄一

    若松政府委員 生ワク研究協議会がその衝に当たっておったわけでございますが、一応その目的を達しまして、協議会そのものは解散いたしましたけれども、先ほど来のお話のように、投与後の麻痺性患者の発見とその鑑別であるとかいうような問題は、サーベイランスの組織をそのまま持続いたしておりまして、東大の高津教授を中心にしてそのような鑑別組織を続けております。また、国民免疫程度持続の問題を判定いたすためには、すでに数年前から流行予測事業といたしまして国が予算を計上いたしまして、国立予防衛生研究所及び地方衛生研究所の協力を得まして、免疫程度の観察を続けております。そのように将来とも持続的に体制を継続していくつもりでございます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 それは予算としてはどの程度のものを計上してあるのですか。この予防接種予算項目の中にはそれはないわけですね。そういうような予算は厚生省の課か研究所か何かの中にあるのですか。
  31. 若松栄一

    若松政府委員 正確な端数まではいま承知しておりませんが、流行予測事業についてはすでに従来からも予算がありまして、本省に二千万円程度予算を計上いたしております。なお、サーベイランスの関係は、私どものサーベイランスのほかにいろいろ小児に起こります麻痺性疾患全般の問題を研究いたしますので、これはいま百万円程度研究費で実施いたしております。
  32. 滝井義高

    滝井委員 これほど問題になったテーマですから、やはり麻痺性疾患全部を百万円ということでなくて、生ワクに対して特に国産については不安感があるわけですから、したがって、そのやった成果について、こういう機会にこそやはり金をもらって明らかにしていくということが大事なんですね。それはこの前も私言ったのだけれども、拝啓池田内閣総理大臣殿と手紙が来たらそれをやる。そのことだけはあわててやる。ライシャワーが刺されたら精神病患者のことを言うということでなくて、こういうじみな声なき声の問題についても相当金を出してやる必要があるのです。こういうととろが抜けておるから、母親不信感が起こってくる。こういうところにやはり百万じゃなくて、千万か二千万くらいの金をつぎ込まなければいかぬです。この前のたばこの肺ガンの問題でも同じです。きのう、私、専売公社の総裁のところに行ったのです。そうしたら何と言っておったかというと、ある議員さんがたばこの肺ガンのことを質問しておったけれども質問をしておった人がぷかぷかたばこをのみながら平気でやっているから、あんなものは金を出さぬでもいいのじゃないですかということなんですな。だから、そういう形で、こういうじみなことは結局ばかにされて予算がつかないのですよ。こういうじみなことにこそ、拝啓内閣総理大臣殿とか、ライシャワー大使の刺傷事件だけでなくて、やはりあなた方が積極的にいって取る必要があるのです。いま厚生大臣がいないのだけれども、こういうところにこそ金を出して学者の諸先生方にハッスルしてもらって、国民の不安を一掃していく形をとるべきだと私は思うのです。どうですか、この際思い切って一、二千万円の金をポリオのこういう事後の調査のためにやるという意思は、局長としてありませんか。
  33. 若松栄一

    若松政府委員 この事業は、大体型がきまってある意味では軌道に乗っておりますので、これ以上特別に大きな予算でどうこうというような事態はなさそうに思います。また不安を解消するためにPRであるとか、あるいは実際に不安を感じた父兄、母親たちがお医者さんに相談する場合に、お医者さんが明確な回答を与えてやるというような形のPRもぜひ必要だと思いますので、そういうような形、方法をとりまして、できるだけ今後不安の解消に役立つようないろいろな方式をとって、手を尽くしてまいりたいと思っております。
  34. 滝井義高

    滝井委員 この患者の調査事業とか、いま言ったように免疫抗体持続とか、野生ビールスによる自然感染の状況等は、学問的に未知の分野が非常に多いわけですから、もう少しやはり金を出してやる必要があると思うのです。三池の一酸化炭素の中毒の場合だって、日本の医学陣が指導力をほとんど失っておったわけでしょう。だからああいう点についても過去において政府が金を出して研究しておけば、三池のああいうときだって、その研究書を見れば書いてあるわけですから、一挙にやれるわけなんです。ところがそういう指針がないものですから、ああいう形になって非常に悲劇を拡大しておるわけです。今度だって同じです。だからこういう問題についてもう少しこの際金を取ってやるべきだと私は思うのです。そうして学者のグループをつくってもらって、――麻痺患者だけをたった百万円ぐらいでその研究ができると思ったら大間違いですよ。  大臣、いま大臣がちょっと席をはずしておる間にお尋ねしたのですが、免疫抗体持続とか、野生ビールスによる自然感染の状況とか、ポリオ患者の調査というようなものは、未知の分野が非常に多くて進展をしておらぬわけです。そこでこの方面の予算を幾ら組んでおりますかと言ったら、麻痺の疾患に対する研究をやるのに百万円組んでおる、こういうことなんです。ところがそれでは実質的な研究もできぬじゃないか、少なくともポリオはこれだけ大きな社会問題にもなっておるのだから、その百万円にもう一つぐらいマルをつけて、千万円か二千万円ぐらいの金を出して、この際やはり学者陣を動員して一挙に研究をしてもらう必要があるのじゃないか。昨日も共産党の谷口さんが言われておりましたけれども、なくなった赤ちゃんの解剖その他についてもやられておらないわけです。これは金がなくてやれない、やはり解剖させていただくためには何がしかの金を遺族にお礼しなければならぬので、そういうこともできない。せっかく大事な学問的な成果を築こうとする基礎が打ち立てられないわけです。これは三池のときと同じです。三池のときに一酸化炭素の中毒患者が死亡した、その死亡した遺族の皆さんにお願いしてやるべきだというのをぼくらはずいぶん主張いたしました。しかし手おくれになってできなかった。それと同じで、やはりこういうときにはある程度学者の意見もいれて、政治は積極的に側面的にこれを推進してやるという形を、間髪を入れずとるべきだと思うのです。そういうことがいつもとられないのです。だからこれはどうしてもこの際、大臣、やはり鉄は熱いうちに打たぬといかぬのです。だから、悪いことでなくて、この前、拝啓池田内閣総理大臣殿と水上さんが言ったら、大臣はさっそく重度の精神障害の子供の手当てをつけることにしましたし、ライシャワー事件が起こりますと精神障害者のために何とかしなければならぬということになったわけです。あれほどまでに大きくジャーナリズムが取り上げたものははなばなしくやるけれども、こういうものはやらぬというのではいかぬ。やはりこれも間髪を入れず、じゃ、ことしは金がないけれども、千万円くらいを何とかやり繰りしましょうというくらい言うと、学者もハッスルするですよ。研究も一段と前進していく、こういうことだと思うんです。どうですか。麻痺だけを百万くらいでやってというのじゃ、これで行政の責任を果たせるとは言えぬですよ。
  35. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは御趣旨のとおりだと思います。ことしは予算が少なくて、科学技術庁にでも話せば特別研究費も出してくれると思いますから、私ひとつよく交渉して善処したい、かように思います。
  36. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ特別研究費を――私もいまちょっと予算書を持ってきておりませんが。科学技術庁にどういう項目があるか忘れましたが、この前ガンの研究は科学技術庁に特別の研究費があって、それから少し出したんです。だから肺ガンのときにちょっと私指摘しましたが、ぜひひとつこれは科学技術庁の佐藤長官に話して、そして千万円くらいはすみやかに回して、学者陣がハッスルするようにぜひやってもらいたいと思います。  次は薬事法との関係をちょっとお尋ねしたいのですが、この薬事法に基づく生物学的製剤基準三十八年七月二十三日厚生省告示三二〇号というのがあるんですね。これは外国製剤を国産する場合に、同一の工程で同一の内容でもそれが市販をされる場合には野外実験をして、その安全性を確かめるということにこの生物学的な製剤基準というものはなっておるわけですか。たとえばサリドマイドのときには、非常に強くそういう方針をとりましたね。これは牛丸君のときだった。サリドマイドについては、いろいろ奇型児も生まれるので、子供に関係するような薬というものは特に厳重に国家検定をやらなければいかぬ、こういうことで大臣の指示その他も出ておりました。この生ワクの場合はやはり子供に飲ませるんですね。この関係をちょっと御説明していただけませんか。ちょっとその基準が私の手に入らなかったので、見ていないのですが……。
  37. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御指摘のように生ポリオワクチンの基準は、昨年の七月に告示をいたしたのでございますが、人体実験をやるというふうな規定は入っておりません。国家検定をやるという規定が入っておるわけでございます。  それから御質問のサリドマイドのああいう事件に伴います安全性の試験の問題、これにつきましては告示とか省令とか、そういう形じゃなしに、指導としてこれをやっておるわけでございまして、いわゆる製薬許可申請がある場合の試験方法の中に、動物試験をやるようにというようなことで、通牒で指導をいたしておるという現状でございます。
  38. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、生物学的な製剤基準の関係は、もう国家検定を受ければいいというこれだけのことで、それから先に、それが胎児に及ぼす影響その他については、厚生省としては、薬務局としてはもうやらなくてもよろしい、こういうことなんですか。――まあ首を縦に振っておるからそうらしい。そうしますと、昨日以来いろいろ論争をしておった、薬務局としてはもう野外実験なんかはやる必要はないということらしいが、野外実験一をやるほうがベターだという意見は、これはみんな言っておったわけでしょう。しかし、いま国産の生ワクはその必要はないのだということだったんですね。そうすると、これは今後の問題もあるので・薬務局としてはどういう場合に野外実験を必要としますか。
  39. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 従来の御議論でおわかりいただけますように、いわゆる人体実験なり、そういう野外実験の関係は、生ワクチンの場合にもこれは製造基準をつくるまでの段階におきましていろいろ人体実験が行なわれたわけでございますので、すでに行なわれておるという前提のもとに基準をつくったというのが経緯でございます。それで一般的に生ワクチンに限らず、その他のワクチンについて基準をつくる場合にどうするのかという御質問でございますが、これにつきましても生ワクの場合と同じように基準ができるまでの過程におきましては、やはり野外実験というものが行なわれた上で、安全性が確保された上で初めて基準が確認されるということになっておりまして、これはすべてのワクチン等につきまして、基準ができるまでの間の過程におきましては、生ワクの場合と同じような人体実験が行なわれるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  40. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、基準ができたときには人体実験が行なわれておるということを前提にしておる、こういうことなんですね。日本の製剤その他についても今後やはりそれを当然やらなければならぬ、しかし、今度の場合は、それが行なわれていなかったわけでしょう。外国製剤を国産する場合は、同一工程、同一内容でも市販されるまでに野外実験をやはりやらなければならぬということは認めるわけですね。外国の製剤でも日本でそれを市販される場合には、同一の工程、同一の内容でもやらなければいかぬわけでしょう。たとえば、サリドマイドだってそうでしょう。同じ工程、同じ内容のものをつくるにしても、外国のものをそのまま持ってくるのじゃなくて、日本でつくる場合には、厳重に、これが母体を通じて胎児に及ぼす影響なきやということを調べてみなければいかぬわけでしょう。そうなんでしょう。そこをはっきりしておいてください。
  41. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 おっしゃるとおりであります。
  42. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今度の場合は、一体どうであったのか、こういうことなんです、あなた方の処置としては。
  43. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先日来御説明申し上げておりますように、今度の場合には、セービン株という同一の株を輸入いたしまして、それでもって人体実験を行なったということでもって、いわゆる先生御指摘の人体実験は終わったというふうに考えて基準をつくったわけでございます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 同一の工程で同一の内容ですね。同じ株でも市販されるまでに野外実験をして安全性を確かめなければいかぬということが前提になっておるでしょう。そうすると、日本ではそれがやられていない。やられているとあなたが見ておれば私は何も言わない。やられておると見ておるかどうかということです、日本で。
  45. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 私どもセービン株につきましては、人体実験が行なわれておる、野外実験が行なわれておる、こういうふうに見ておるわけでございまして、委員会の席におきましても、私はかつて御説明申し上げましたように、昭和三十五年以降、国の予算でもって、生ポリオワクチンの安全性確保の研究予算として一億四千万円近くの予算を使いまして安全性の実験をやっておる次第でございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 薬務局としては、製剤ができてまいりますと、この製剤が人体に対して無害である、ワクチンでいえば、これが安全性と免疫性を完全に持っておるという太鼓判を押してもらわなければならぬことになるわけです。その太鼓判を押すためには、薬務局としては、何かその太鼓判を押す機関をお持ちですか。それともただ製薬会社が持ってきたら、もう効能書きだけを見て、これでだいじょうぶだと太鼓判を押すことになるのですか。そのできた製品に対する追試実験というものを、薬務局はどこかの手をかりておやりになるのですか。ただ持ってきた効能書きというか、それだけをごらんになって判を押すことになるのですか。そこらあたりの手続、方法はどういうことになっておりますか。
  47. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 普通の医薬品の場合と違いましてワクチン類のこういうものにつきましては、先生よく御承知のように、国でもって告示されました基準というものがあるわけでございます。その基準の中に、メーカーが製造する場合にはその基準に基づきまして厳重な自家検査もやるという中身でもって、各種のワクチンにつきましては自家検定を終えたものを初めて製品として厚生省のほうに持ってくる。それにつきまして、やはり基準に基づきました国家検定を予防衛生研究所でやる。その国家検定で合格されれば、その国家検定の中身は自己検定の中身より以上に厳重な国家検定を終えるわけでございますので、国家検定に合格されたものは完全に安全性が確保されておるという認識のもとに先ほどは処理をいたしておるわけでございます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 製薬会社が自家検定をやってきた。さらにそれを、ワクチン等については厳重な国家検定をおやりになることになるわけです。そうすると、さいぜん私が申し上げましたように、国家検定をやる機関というものは、相当の予算的な措置がしてないと、自家検定以下の検定になってしまうおそれがあるわけです。されぜん公衆衛生局長さんもお答えになったように麻痺の問題はわずかに百万円だということになると、これは厳重な国家検定というものが行なわれたということに見られぬわけですよ。特にその投与された個体そのものに対する影響はもちろん、同時に遺伝的にその薬物というものが一体いかなる障害を及ぼすかということが確かめられない限りにおいては、これはだいじょうぶだという太鼓判を押せないわけでしょう。自家検定は、武田薬品あたりへ行ってごらんになると、あれだけりっぱな研究所を持って相当な金をつぎ込んでやっておるわけです。日本の国家検定をやるのは予防衛生研究所でやるわけでしょう。そこらがやはり相当の金をつぎ込んで、学者陣をそろえておかなければいかぬことになるわけです。問題はそういう状態になっておるのかどうかということですよ。一体これは厚生省の予算書のどこに予防衛生研究所の予算があるのか知らぬけれども予防衛生研究所の予算は総額幾らですか。そしてどの程度の機構と人員があるのですか。これは所管は公衆衛生局ですか。その陣容と予算をちょっと説明してください。
  49. 若松栄一

    若松政府委員 予防衛生研究所は、総予算約七億でございまして、人間が五百五十人くらいおります。そのうちの約六〇%が検定の業務に従事いたしております。検定業務の内容につきましては多ケ谷部長から御説明申し上げたいと思います。
  50. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 いま滝井先生の御指摘になりましたような、予研がはたしてそれだけの陣容と予算等を備えておるかというお話でございますが、これは見方がいろいろであろうと思います。厚生省や大蔵省の係の方々はこれでいいだろうということで予算をお出しになる。現場の者としてはこれに決して満足していないわけであります。たとえばこれは一例でございますが、人材を集めるのにつきまして、これは全般論になりますが、実は議員の先生方にぜひ真剣に考えていただきたいのですが、研究公務員というのは、教育公務員や医療公務員よりも二号ぐらい低いと思います。したがって大学から優秀な人材を集めたいと思ってもまずまいりません。つまり予研にくると給料が下がるわけです。したがって予研にきてやってくれる人は、ほんとうに学問に熱心で、給料の低いのを意に介しないというような方がわずかにきてくださるだけで、あとは人集めに非常に苦労しておるわけであります。そういう点、研究公務員の身分の保障という点から見ますと、こういう省直属の研究所は非常に冷やめしを食わされておる。それは一つ、非常にわれわれ痛感しておる点でございます。  それからもう一つは、いま検定と研究のお話がございましたが、研究が主体になりませんと、検定もほんとうにしっかりしたものはできない。いま武田を例に出されておっしゃったとおり、でございまして、現在約七億で半分が人件費でございます。残りの約三億五千万のうちのおよそ七千万、六千八百万ですか、そのくらいが純然たる研究費でございます。そのほかは検定費とか検査費とか、それから一般の光熱水道費とかいろいろございますが、われわれといたしましては、たとえばただいまの麻痺例の調査をいたしますという場合には、年間にそういう材料が何件くるかわからないということで、したがって研究費が潤沢にないと、これを十分手を尽くして調べ得ない。しかしながら従来、たとえば過去二年間におきまして、厚生省が、国費をもって、一億数千万円という生ワクチン研究費を出して、それに予研も参与しまして、しかも日本のレベルとしては非常に高い仕事ができたとわれわれは誇りに思っております。しかしながら決してこれに満足しておるわけではございませんで、もっともっと充実した研究体制というものを国家全体の問題としてお考えいただかなければならぬと、われわれは痛感しておる次第でございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 五百五十人で、七億円が予防衛生研究所の費用だ、こういうことであります。七億円という金は、われわれ個人から見れば決して小さな金ではありません。けれども一国の予防衛生のいわば基礎的な面を確立しようとする国家機関としての経費として考えると、これはやはり少ないわけですね。やはり私は国民の不安と不信感というものは、こういう基礎的なところが薄弱なところから生まれてくると思うわけです。日本の国家検定その他が、もう少しけんらん豪華とまではいかなくともまあ、国民の目について――少なくともこの予算の中のどこかの項目として出てくるようにならなければいけないのではないか。これは幾ら探してもなかなか見つからない。おそらくその他の中に入っているのだろうと思う。予算説明書の中にも出てこぬというようなことでは、これはやはり悲しむべき現象だと思うのです。戦前荒木さんがノモンハン事件が起こったときに、あの人は陸軍大臣をやってから文部大臣になった方ですが、ソビエトはだいじょうぶだ、竹やりでおれらはやっつけてみせると言ったんだが、火焔放射機でばっとやられて負けちゃった。当時石原莞爾将軍が日本の三千年の歴史にこれくらい汚点を残した事件はない。これがノモンハン事件だと言った。ところが時の指導者である荒木さんは、なにだいしょうぶだ、われには必勝の信念がある、竹やりを持っていったら負けやせぬと言った大臣談話を発表したのを、私子供心に覚えております一これは何も裏づけのない必勝の信念が導いたので、理性が導いておるのじゃない。やはりこういう公衆衛生行政というものは学問の理性によって導かれなければ、私はうそだと思う。そのためには、いまいみじくも多ケ谷さんが言われたように、ほんとうに優秀な国家検定をやろうとすれば、やはり基礎が、ピラミッドの底辺がしっかりしておらなければいかぬのですよ。基礎的な研究の成果というものがきちっと確立された上に初めて優秀な国家検定というピラミッドの頂点が出てくる。そういうところが確立をされていない。いま言ったように給料が安いということになればハッスルしないですよ。こういう点、われわれ国会議員の給料を上げるならば、同時にやはりこういう研究者の給料も政府がみずから出してくる。総理大臣等の給料もどんどん上がったのですから、こういう研究者の給料も率先をして上げていくという形をつくらなければ、私はうそじゃないかと思うんですよ。こういうことは何か小さいようであるけれども、こういうところから母親の不信と不満が政治に対してあらわれてくる。それが集中的にポリオのこういう国家検定にあらわれてきておるのです。だから、私はさいぜん、麻痺患者の調査費では少ないから千万くらいはと言ったら、大臣は科学技術庁と相談していただくということになりましたが、やがて八月になれば来年度の予算もやりますから、ひとつ今度は、私、七月の改造でさらに小林厚生大臣が続くことをお祈りしながら、どうですか。去年の予算は、大臣はし尿大臣と言われた。ことしはひとつポリオのおじさんと言われるくらいに、この国家検定の面でひとつ、これは日本の全婦人の気持ちをつかまえるわけですから、大臣、来年選挙だと思うんですが、これをやれば、おそらく当選確実だと思うんです。私もきょうは宣伝するわけじゃないけれども、好敵手ですから、なんじの敵を愛せよということがあるのだから、静岡県でぜひまた最高点で当選してもらわなければならぬのですが、そういう意味でこういう学問的な、人のやらないところをやってもらうことが必要だと思うんです。いままでみなはでなことばかりやった。ところが幸い大臣はし尿というほかの人がやらないところをやってくれた。僕はここを買いたいのですよ。来年は大臣ひとつこういう学問的な基礎づくり、厚生行政の基礎づくりを学問的な成果でいこう、こういうところでぜひひとつやってもらいたいと思うんです。これは、ことしはと言うと、いつもことし、ことしということになりますから、来年度は、日本の公衆衛生の学問的な基礎固めのために小林厚生大臣がハッスルするというトップ記事をひとつつくってもらいたいのです。大臣どうですか。ひとつここらあたり十分御検討願いたいと思うんですが。
  52. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの予防衛生研究所のことも、私不十分でいままでよく知らなかった。きょう、おかげでよくわかりましたから、こういう御趣旨は私はまことに同感いたしますので、私がかわっても、事務当局その他が強くこの点を実現するように私よく申し伝えておきますから、御了承願いたいと思います。
  53. 滝井義高

    滝井委員 大臣が遺言じゃないけれども、していただきましたので、ぜひひとつ公衆衛生局長さんもがんばってやっていただきたいと思います。これは私、胸にとどめておきますから、来年度の予算のときには、代議士である限りもう一ぺんやります。  次は、こういう公衆衛生行政に対する医師の協力です。すでに今度の生ワク接種にあたって、やはり医師会の中でも、どうも不安心だという意見が出てきているわけです。特に医師の協力を要請するという点において一つの隘路になっている点はどこかというと、予防接種における事故の責任は法律的には接種者である医師にあるということになっていることですね。これはもちろんワクチンそのものが、製造過程が非常に間違っておって悪かった、どこかワクチン自身に欠陥があったというときには、これがわかれば医師の責任ではないことになるわけなんですが、しかし多くはそういうことは簡単にわからぬので、あのお医者さんが飲ましてくれたんだ、そうしたらうちの子はこうなってあのお医者さんに殺された、そういう形が端的に素朴な大衆の中から出てくるわけです。こういう点についても、技術的に医師に誤りがなければ、そういう事故の場合はやはり国が前面に出て、国が責任を持ってやるという体制を固めておく必要があると思うし、またそういうPRもして医師会の協力を得なければならぬと思う。医師会が今度の問題について局部的に協力ができかねるという問題が出てきたのは、そういう点も一つ含んでおると思いますが、一体政府としては医師会の協力体制をどういうふうにしてとろうとしておりますか。
  54. 若松栄一

    若松政府委員 お話のように、医療行為それ自体にはある程度常に若干の危険を伴うことがございます。しかしその危険あるいは事故というようなものがどこに起因するものであるかということを十分各ケースごとに検討いたさなければならぬと存じます。それが全く技術者である医師が技術的な過誤を犯して、その原因に基づいて、それのみによって起こったという場合は、これはやはり医師として責任をとってもらわなければならぬのはやむを得ないと思います。しかし医師の技術的責任でない、医師の行為にきずのなかった場合、それにもかかわらず事故が起きたという場合には、これは国が責任を負わなければならぬものと存じます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 技術的な責任によるときはそうだと思いますが、そこらあたりのPRがやはり徹底していないのですね。何もかも予防接種をやった医者の責任だと思い込んでいるのですね。またいままで多くそういうように社会的にいわれてきた。そこでそういう点のPRをやはり医務局のほうと協力してやる必要がある。同時に今度の問題について医師の全面的な協力が得られない地域が相当あるわけです。そこでこういう点に対する打開策というものは何か手をお打ちになりましたか。
  56. 若松栄一

    若松政府委員 御承知のように、今度はっきりした形で協力を拒んだのは、奈良県の医師会の例がございます。それもただいま御指摘がありましたように、当時伝えられましたように、生ワクが不安だから協力しないということではなしに、お話しのような予防接種というものと医師との関係、特に事故の起こった場合の責任のとり方等について明確でないということが直接の動機になって協力を拒否したようでございます。しかしそれも奈良県の議会におきまして、知事並びに厚生部長が十分説明をいたしまして、納得されまして、協力体制が復元したわけでございます。私どもといたしましては、実は今度の予防接種計画でいろいろ問題が起きましたのは、いわゆる偶発的な事例が問題になりましたので、この偶発的な事例については私ども遺憾ながら当初それほど大きな問題として予測をいたしておりませんでした。いわゆる麻痺性の患者の発生することがポリオ予防接種に基づく最も重大な関心事だったわけでございます。したがって、このような偶発的な事例が相当あり得る、それに対処してPRをするという点に手抜かりがあったことはまことに遺憾であったと思います。また医師会等に対しましても、この時期が時期でございまして冬の時期でございますので、腸炎あるいは気管支炎、肺炎等の起こる事例が相当あることを予想して、事前にそのような連絡をし、また国民に対してもそのような啓蒙をしておくという点が足らなかったことはまことに遺憾であったと思いまして、今後はそういう点についても十分気をつけてまいりたいと思います。
  57. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつそういう協力体制をとるようにしてもらいたいと思います。たとえば今回の予防接種の経費は二億六千三百五十五万九千円、こういう経費の中に、たとえば今度の生ワクを飲ましたところが直ちに下痢を起こして子供がなくなった、これはポリオに関係ないのだ、全く春に多い腸炎のためなんだ、こういう説明は学問的にはできるかもしれません。しかしそのかわいい子供を死なした母親にとってみれば、必ずしもそう割り切れないですね。そうすると、それはあの先生が飲ましてくれたからこうなったのだということにもなるし、ワクチンが悪いからという宣伝の前に、あのお医者さんがようからだを見てから飲ましてくれればこうはならなかったと、まず第一番に医者、そして次にワクチンが悪くなかったかということになってくる。そこで、そういう予防接種の二億六千万円程度予算の中に、そういう場合にはやはり間髪を入れず国がお見舞いをする金くらい計上しておかなければならぬと思いますよ。そうすれば安心するんです。それは受ける側も、予防接種を担当する医師の側も安心がいくわけです。そういう経費はないわけでしょう、あるのですか。今度八例ばかりなくなった、あるいは谷口さん十四例くらいだとおっしゃったのですが、そういうものに何か国としてお見舞いを差し上げたのですか。
  58. 若松栄一

    若松政府委員 差し上げておりません。
  59. 滝井義高

    滝井委員 こういうところがやはり一つの政治の欠陥なんですね。これは責任がないかもしれないけれども、やはり、マッカーサー元帥がなくなると間髪を入れず池田さんお見舞いを出すでしょう。やはりこれは国の一つの行事として――これは公衆衛生だけれども一つの大きな政治の行事ですよ、毎年やるのですから。そういうときになくなったら、やはり何ぼか国があたたかい手を差し伸べるという形は、非常に政治にほのぼのとしたものを与えますよ。こういうところも、大臣はなかなかそういうこまかいところまでは手が届かぬですよ、厚生行政というものは髪の毛のてっぺんからつめの先のことまでやるのですから。そこらは局長さんなり課長さんがやはり配慮して、それをやってごらんなさい。これはずいぶん違いますよ。厚生省のお役人がわざわざやってきて、なくなった子供のために花輪まで添えて香典までいただいた、ということになると相当違いますよ。これなら予防接種をやってもいいんだ、そうまで子供のためを思ってくれる行政ならやってもいいんだと、国民の中からぼつ然として協力態勢が出てきますよ、ひとつ注意をしておいてください。去年は二億六千三百五十五万でやったわけで、ことし八千二百六十万に減っておるのです。そんなものくらい入っているのかと思ったが入ってないそうですから、そんな点もぜひ注意をしていただきたいと思う。  次は接種の費用です。これは予算書を見ると公費負担三〇%となっていますね。今度予防接種法が出てきますと三分の一は国が持ち、三分の一は県が持って三分の一は自治体が持つのですね。そうすると、ワクチンを飲む大衆は一体幾ら負担することになるのかということなんです。そこでやはりこのワクチンを最終的に子供に飲ませる段階における総費用をまず御説明願って、それで、その費用の中で国が幾ら、県が幾ら、市町村が幾ら、個人が幾ら、これをひとつ御説明願いたい。そしてそれを今度は輸入品の場合、たとえばカナダやソビエトの品物を輸入した場合の、末端に持っていったときの価格と、それから国、県、市と飲む本人の負担、これをひとつ比較して御説明願いたい。
  60. 若松栄一

    若松政府委員 お話の前段だけのお答えを申し上げます。今度の生ワク投与は、大体一人当たり六十円前後になろうかと思います。薬の原価と輸送料、手数料その他接種のために人の雇い上げ等も行ないますので、その単価等にも若干差がございますから、全国一律というわけにはいきませんが、市町村がこれをきめますので、およそ六十円前後ということになると思います。そしてこの現在の予防接種法におきましては、定期の予防接種につきましては被接種者の負担になっております。したがって、原則としてその費用は全部個人負担になるわけでございます。しかしポリオ予防接種におきましては、特にこの普及をはかりたいというために、三〇%程度を費用負担を免除いたす、この基準は大体市町村民税で均等割り以下というところで線を引いております。それが大体三〇%程度という見当でございます。その市町村が費用を負担し、免除した分については、国と都道府県がそれぞれ三分の一ずつを負担するということになるわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ちょっと私錯覚を起こしておりました。低所得階層だけの三割ですか、それともたとえば百人、Aという町に生ワクを飲む子供がおる、その百人の三割になるのか、低所得階層が三十人おる、その三十人の三割ということになるのか。
  62. 若松栄一

    若松政府委員 全対象の三割程度を見込んでおります。
  63. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、低所得の人がいま言ったように均等割り以下ですから、均等割りを納めておる人以下ということになると、非常に限定されてくるわけですね。市町村の富裕の状態によって三割というのが違ってくるわけですね。こういう経費というものは、そう大きな経費でないわけです。ちょっと私予算を見違えておったのですが、去年の予算に比べて、三十九年度予算は、予防接種において一億八千九十五万一千円削減されておるわけですよ。そうすると、こういう経費は、やはりもう少し大衆がこういうことになれてしまうまでは、特に生ワクという新しい試みをやるわけですから、国がいままで輸入でやっておったのを国産でやるわけですから、こういうことぐらいは、そう貧しい人だけにその三割ということでなくて、もう少し全部の人に飲ましてもいいのじゃないでしょうか。無料で飲ましてもいいのじゃないかと思うんですね。これは一説には、保険でやったらという意見も出たことがあるのです。ところが保険経済が非常に不如意になったために、それに手が回らなくなってしまったんですね、こういうことまでには。やはり医療というものが予防と治療とあと保護という、こういう総合的な形で進められなければならぬが、何かやはりこういうことも金を出していくということになると、なかなか行きたがらないのですね。そのときに現金を持っていかなければならぬということになるわけですね。子供が一人ならいいけれども、二人、三人おるということになると、やはり相当の金を持っていかなければならぬということになる。そういうことで市町村によっては、あなたが言われるように進歩的なこういうことに非常に関心を持つ市町村は無料でやってしまう。北九州なんか、多分無料でやったと思うんですね。そういう点では、何かここらちょっと考慮する必要があるんじゃないでしょうか、どうですか。あなた方衛生行政を扱うものとして。いままですべて十円とか十五円とか取ったんですよ。レントゲンをとる場合だって集団検診をやる場合だって、それからチフスとか等の予防注射をやる場合も、みんな金を取りました。取ったのを私記憶しておりますが、しかしこういう非常にあとに身体障害者を残すというような疾患については、やはり国が金を出してやってやっても、そう何十億という金がかかるわけではないんじゃないかと思うのです。そういう点は、あなた方自身としては、行政としてどうお考えになっておりますか。  それから、前段の、国産でいえば六十円前後だ、したがって、六十円前後はみんな負担をすることになるということですが、輸入品の場合は幾らだったんですか。
  64. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 輸入品につきましては、三十六年以降金額が変わっておりまして、最初ソ連並びにカナダから入れました分は、ワクチン代として三十円、それから三十七年に入れました分は、カナダの分で二十円、それから三十八年以降十七円、こういうことになっておりまして、これはワクチンの原液でございまして、国内の、現在わが国でつくっております研究所の製品は、末端価格四十七円ということになっておりますが、この四十七円の中には、国家検定をやりますための検定料、それが、大体六円程度、それから、希釈液費あるいは梱包料等の雑費、その他の供給経費関係として七円が入っております。つまり六円プラス七円というものが四十七円の中には入っておりますが、片一方の、昨年までやりました十七円と対比するためには十三円分を加算するということで、大体三十三円と四十七円というふうに比較していただければよろしいかと思います。
  65. 滝井義高

    滝井委員 末端に行きますと、梱包料から検定料まで入れて外国のものは四十七円、検定料や希釈、梱包等を除くと三十四円程度になるわけですが、結局この六十円には、検定料その他は同じように入っておるわけでしょうからね。やはり幾ぶん価格が高くなるわけです。こういうところにも大衆の抵抗が出てくるわけです。そこで、輸入したものが安い。国産品愛用、国産の技術を振興させるということで、高いのはやむを得ませんけれども、やはりその差額だけは最小限国が見るという制度ぐらいは確立しておく必要があると思うのです。行政としては、急に物価が上がったから、去年よりことしは高くなるのだという説明ができないことはないかもしれませんけれども、やはり大衆は抵抗を感ずるのです。これはまだ実施をされておりませんし、これを見ますと、千六百九十一万六千円ですね、三分の一補助で。だから、これをもうちょっと大蔵省と折衝をされて、すでに去年の予算でやった分もありますし、ことしは予算が一億八千万も削減をされておりますから、ここらあたりはもう少し予算を何とかやりくりしてもらっても、私、これを安くする必要があると思うのですが……。
  66. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま予防接種法の経費の点にお話がありましたけれども、実は御承知のように、従来やっておりますポリオ投与は――生ワク投与緊急対策の継続でございまして、予防接種法に基づくものではございません。ただいまお話しになりました予算は、予防接種法に基づく接種の経費でございます。したがって、削減しておりますのは――ソークワクチンを使う場合を想定した補助金が従来は計上されておりました。ソークワクチンは単価が非常に高かった。それが今度は生ワクチンになりまして、単価が安くなりますので費用が減ったということでございます。したがって、全体といたしましては、その予防接種費のほかに、従来緊急対策予算がいわゆる法律に基づかない予算補助としてあったわけであります。  なお、実際に国民が負担する経費につきましては、お話のように抵抗を感ずるようなことがあるとすれば、私どもとしては国民のために、将来できるだけ負担を軽減する方向へ努力をしていくことが必要であろうと考えております。
  67. 滝井義高

    滝井委員 私、それはわかっておるわけです。わかっておるから、たとえばいままではソークだったから金がかかっていたわけですが、生ワクになって金が安くなったんだから、安くなった分をすぐ大蔵省に返上してしまわずに、その分は、予防接種を受ける人のほうの負担率を三割とせずに、これを五割とか六割ぐらいに見て、そうしてこれをもう少し安くする方向に持っていくとかいうことは、予算の内部のやりくりでできると思うのですよ。ことしは飲んだ人に六十円負担させます、貧しいところは公費で三割ぐらいは見てあげますということだけでは、一般の人は抵抗を感ずるということです。これはわずかなようですけれども、こういうところがやはり大事なところだと思うのですよ。一億八千万も削減されておるのですから、そこをひとつ六千万、努力して半分にするとか、あるいは三分の一持ってきてくれとかいうことになれば、それだけ前進するのですよ。ぜひひとつそういう点も努力をお願いいたします。  次はこのワクチンをつくる体制です。株式会社日本ポリオワクチン研究所というのがおつくりになっておるわけですね。私はこういうものは、優秀な学者をそろえた予防衛生研究所等もお持ちですから、ここで――北里研究所なんかどんどんおつくりになっておるし、おつくりになったらどうかと思うのです。これは何かこういうものがつくれないような隘路があるんですか。ワクチンを製造するというのは、他の商業的な薬品をつくるのと違って、非常に高度の研究体制のもとにじみにやっていくことなんですから、そうもうける必要はないと思うのです。そうしますと、予防衛生研究所の七億の経費もあるし、こういうものをつくって、幾ぶんでもここに研究所の利益が上がるどいうことになれば、研究所もやりよくなるんじゃないかと思うのです。こういうものは、こういう株式会社につくらせるんじゃなくて、むしろ国産生ワクチンということで、国みずからでおやりになるほうがいいんじゃないかと思うのですが、何か薬務行政上隘路があるのですか。
  68. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 わが国のこういうワクチン――医薬品を含めまして、ワクチン類につきましては、原則として民間会社でつくるということをたてまえにいたしておるわけでございます。それで、従来の考え方としましては、民間会社がつくったワクチンを国家検定を行なうということで、予防衛生研究所が国家検定を行なっておりまして、同一の機関で、片っ方で生産をし、片っ方で検定をするというふうなたてまえにはいたしておらないわけでございます。それからまた、御指摘のようにワクチンメーカーと称するものは現在六社ございますが、この六社が生ポリオワクチンを一斉につくる必要はないわけでございまして、生ポリオワクチンポリオワクチンと違いまして、ロットが非常に大きい。したがいまして、六社一ぺんにつくれば、需要が固定いたしておりますので供給過多になる。むしろ各社の製造能力を結集しまして一社に集中的にやらしたほうがきわめて便利であるというふうな考え方のもとに、それぞれ六社から出資をさせまして一つの会社をつくった、こういう経過になっておるわけでございます。
  69. 滝井義高

    滝井委員 自家検定をやって、その上にまた国家検定をやるということはおかしい、二つに分かれておる、六社が一回でつくるのでは問題があるという御説明ですけれども、これは非常に商業性が少ないわけです。生まれる子供は百五、六十万ときまっておるのです。これは日本の統計の中で、政府がつくった経済計画の中では統計がみんな間違っておったけれども、人口の推定だけはきちっと合っておった。人口問題研究所の推計だけはぴしっと当たる。そうしますと、毎年三カ月から十カ月の子供に飲ませるということも法律できまっておるわけですから、こういうものを何も営利会社につくらせなくても、国がつくったらいいじゃないか。何もこれで医療国営になるわけでもないし、商業的にうまみのない投機性のない製品ですから何でもないわけです。国は得意の事業団や公団をどんどんつくっておるのだから、これもそういうものをつくっておやりになったほうがいいじゃないかと私は思うのです。いまのような説明ではこういうものをつくってやるという理由にはならぬわけです。  時間がないとうしろからせき立てていますから次に移りますが、この法律は四月一日実施法律になっておるが、四月一日に実施できないとすれば、法律的にどういう隘路が出てきているか、どういう困難な問題があるのか、御説明願いたい。
  70. 若松栄一

    若松政府委員 法律が通りませんと、事実上従来の法律がそのまま適用されるわけでございますが、従来の法律ソークワクチンの規定でございますので、事実上ソークワクチンはいま市町村ではほとんど実施しておりませんから、この間完全に空白になるわけでございます。もしこれが比較的早い機会に成立をいたしますとほとんど支障なく経過いたします。その支障のない限度といいますか、大体五月一ぱいまでに接種を完了いたしますと、一回と二回の間隔が六週間でございますので、一カ月半の経過が必要になるわけでございます。したがってその一カ月半と、第二回目を準備する期間の一週間なり十日ありますと、ほとんど実際上の支障がなく実施できるのではないかと存じております。
  71. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この法律は四月中に通してしまわなければいかぬということなんですか。現在自治体で生ワクをどんどん飲ませておりますが、この関係はソーク法律であるけれども、生ワクを飲ませることができておるわけです。予防接種法ではないけれども現実には進行しておる。現実に進行しておるとすれば、法律が通らなくたって現実は現実として――さいぜんどの程度子供に飲ませたかというお答えがなかったけれども、本会議で百六十万とか、百九十万とおっしゃておりましたから、それだけの子供に飲ましておるならば、別に法律が通らなくたってやっておるわけですね。しかも六十円おとりになっている。それから低所得者階層は均等割以下は免除するわけですから、ソークだって同じように免除するわけでしょう。事実上支障はないのじゃないのですか。
  72. 若松栄一

    若松政府委員 ソークは現在ほとんど実施しておりませんので、これにはほとんど関係ございません。ただ今回の騒ぎで若干延期しておるところがございます。延期して三月中には実施できずに、四月に入ってから実施するというところがございます。これは予防接種法によるものでなく、市町村が独自の立場でやることになりますので、これは法律とは全く無関係で市町村が実施することになります。
  73. 滝井義高

    滝井委員 だから無関係に市町村が実施するということは、やはりそこに生ワクがあることが必要だ。生ワクは厚生省がどんどん提供しておる。いま言ったようにPRもしておる。六月から九月の夏場ではだめですよ、適期はいまですよ、こういうことを言えば、別に法律がなくても動く。法律があっても、社会保障立法、衛生関係立法は、あなたの言われるように強制した前例はないのです。そうしますと、法律があってもなくても、現実の問題として予算は通っておるということになれば、そうあわてる必要もないような感じがするのでありますが、ちょっとそこのあたり、この法律の限界は大体いつ裏だということをかわりやすく説明してもらいたい。
  74. 若松栄一

    若松政府委員 生ワクチンは、確かに現在でも法律に基づかずに実施しております。したがってこの法律に基づきませんために市町村が任意でやる立場をとっておりますので、これに対して市町村が減免等をいたしましても、予防接種法では国庫負担がないわけであります。そういう点で支障が出てくると思います。  なお、実施期日の限界といたしましては、一カ月半と若干の期間でございますので、どうしても四月十日前後でないと最終が六月に入ってしまうことになるわけであります。
  75. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、すでに生ワクを飲ましておるところで免除したところは全然財政上の補助はないわけですか。たとえば交付税で見てやるというようなことです。三十八年度の二月から始めておりますから、二月に使った生ワクに対する市町村負担分経費は全然市町村単独の経費になってしまって、この予防接種法でまだ生ワクは入れてないし、自主的にやっておるから、それはおまえのほうのかってだ、国はめんどうを見ないということになりますか。
  76. 若松栄一

    若松政府委員 三十八年度分として実施いたしたものは当然三十八年度の予算でめんどうを見ますが、三十九年度に入って予防接種法によらざる実施はやむを得ないと思います。
  77. 滝井義高

    滝井委員 三十八年度分については、予防接種法には生ワケはないわけです。ないのを自主的にやっておるわけです。いまあなたは三十八年度は見ますと言いますが、見るとすれば、交付税で見るのか、それともここに三十八年度予算として計上されておる二億六千三百五十五万九千円の中で見るような予備的な経費をとっておりますか。とっておるとすれば、三十九年度も、法律が通らなくても、これは緊急な事態ですから、四月十日に公布されるとすれば、十日までの間にすでに進行しておるわけでしょう。それは見ないというわけにはいかぬわけです。一回目をやって、二回目がもう一ぺんあるから、今年度にやったものとみなしますか。
  78. 若松栄一

    若松政府委員 先生のおっしゃった予算予防接種法の施行に要する経費でございまして、そのほかに、予算措置としてポリオワク投与の特別対策費が三十八年度は七千五百万ほどあるわけでございます。したがいまして三十八年度のポリオワク投与はそういう法律に基づかざる予算措置でもって補助しておるわけであります。したがってこれは三十八年度限りでございまして、三十九年度は法律が四月一日に施行されるものと期待いたしまして、そういう特別対策費としての予算補助の費用は計上いたしてありません。したがってやむを得ないということになるわけであります。
  79. 滝井義高

    滝井委員 接種が完了したというのは、法律では二回することになっておりますから、一回と二回の終わったときに初めて完了したことになる。したがって法律が通らない前に、適期があるから一回だけはやる、しかし二回目は法律が通ったあとにやるということになる。したがって完了したというのは法律が通った後であるというので、いまからやっておってもいいわけでしょう。どうせ二、三日のうちには通るわけですから、そういう解釈が成り立つわけでしょう。法律が通っておらなくて四月一日からということになっておりますから、四月十日に公布されたとすれば、どうせ公布の日を修正しなければいかぬ。それで十日までのものがだめだということになれば、これはまた陳情が起こってきますよ。だからここでそれは二回目をもって完了したものとみなして、四月からのものは行政解釈としては適用いたしますということの言明を得ておかぬことには、四月一日からきょうまでにすでにやった分はだめになってしまう。そうでしょう。そこらはそういう解釈にしてもらわなければいかぬですよ。
  80. 若松栄一

    若松政府委員 三十八年度の予算は三十八年度において支出負担行為をしたものにつきましては支出されるわけでありますから、三十九年度に入ってやったものについては適用されません。したがって第一回目を三十八年度内にやって、第二回目を三十九年度にやったという場合に、三十九年度のものは新たに改正されて成立いたします予防接種法によってやるように経過規定を設けてあるわけであります。
  81. 滝井義高

    滝井委員 三十八年度にやったものは三十九年で見るわけでしょう。第一回目を三十八年度でやったものは、三十九年度に二回目をやるわけですから、経過規定で見るわけでしょう。その場合に、四月一日から今日まで、この法律の成立するまでにやった分は一体どうしますか。それを全然見ないということになればあとで問題が起こるから、それは四月一日にこの法律はあったものとみなして、法律の施行期日を変えておかなければいかぬ。それは法律的には、じょうずの手から水が漏れないようにしておかなければいかぬ。
  82. 若松栄一

    若松政府委員 第一回目を三十八年度でやったものが第二回目をやるときには、新しい法律でやることに経過規定を定めてございます。したがってその分については新たに予防接種法によって補助がいくようになります。しかし法律が成立いたしますまではどうしてもブランクになりますので、大体月の半ばまでにはおそらく成立さしていただけるだろうからということを各県に通知におきまして、その間はしばらく見合わせるように現在指導いたしております。
  83. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一日から十五、六日までは全国的にはポリオの生ワクを飲ましていない、こう考えてさしつかえないですね。もし飲ましておるとすれば、その間についてもこれは補助金をやりますということをこの法律にわれわれは入れなければいかぬわけです。だからそこをはっきりしておいてもらわぬと、修正のしぐあいがあるのです。四月一日から十五日までには全国的に飲ましていないのですね。どこの市町村も一つも飲ましていないという確認があれば修正する必要はない。
  84. 若松栄一

    若松政府委員 若干の市町村は飲ましていると思います。というのは、三月中に実施すべきものを、どうしてもいろいろな事情でおくれるので、それは四月にやる。その場合には市町村ごとになりますと、それほどの補助金になりませんので、それは承知いたしておりますと市町村が申しております。したがってこの十日間ばかりのブランクの間にやむを得ず三十八年度分を持ち越して実施いたしておる分については市町村も県も了解して、これは市町村自体の費用でやるというつもりで準備をやっておるはずでございます。
  85. 滝井義高

    滝井委員 市町村がそういうことをやっておるかもしれないけれども、四月一日施行ということになっておりますから、一日から十日までのものは――法律は何もわれわれだけの都合ではなくて全般の国会の都合でおくれているのですから、その分についてやらないと不公平が起こる。これはあとで施行の期日を修正します。当然修正すべきだと思う。  これで最後ですが、伝染病予防法予防接種法の関係ですね。この両法律を勉強してみますと、費用の負担その他はほとんど同じですね。問題は、こういう二つの法律を現段階で分ける必要があるかどうかということです。伝染病を予防するためには予防接種というものが徹底されなければいかぬわけです。これはがこれが別々の法律になっておるところにやはり問題があると思う。そこで伝染病予防法予防接種法を一本にすべき段階がきたと思う。これは私ばかりかと思いましたところが、佐藤さんのほうの臨時行政調査会においてもやはりそういう意見がある。こういう二つになっておるために伝染病なり予防接種の業務が事務的に非常に複雑になっておる。事務の簡素化という点からも一本化すべき必要があるということを、私ばかりが考えておるのかと思ったら、偶然ほかの人も考えておる。あなた方はそういうことを検討したことがあるのかどうか。近い将来検討してそういう方向にいくべきだと思うがどうか。
  86. 若松栄一

    若松政府委員 御承知のように伝染病予防法は昔からございます。そのほか強制接種には種痘法がございまして、戦後に予防接種が非常にたくさんの種類が出てまいりまして、現在、結核予防法に入っておりますBCGまで含めまして、あらゆる予防接種を一本にして予防接種法が成立いたしたわけであります。しかしBCGを予防接種法に入れておくことは結核対策実施上不便があるというので、結核予防法の中にBCGを引き取りました。同じような趣旨で、伝染病予防法対象になっておりますような疾病に対する予防接種伝染病予防法の中にあってもむしろ当然ではないかということは私ども考えております。将来はそのような方向で検討してみたいと存じております。
  87. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ……。以上でけっこうです。
  88. 田口長治郎

  89. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 昨日来御質問申し上げているわけなんですけれども、昨日の御答弁の中に、生ワク投与において九件の死亡と、それから十四件の申し出があった、それが全部国産ワク投与に関係がないという御答弁がございましたが、念のために、私が存じております五件以外のところの個々について、厚生省の御調査になっている死亡の診断の結果でございますね、病名をちょっとお聞きしておきたいと思います。それは東京都奥多摩町の福島みどりさん、それと愛知県安城市今村の伊吹誠さん、福井県足羽町の山本利秋さん、それと名古屋市の二人の乳児が発熱及び麻痺症状を起こして入院しているという件について、それはどういうふうでございますか、それだけをちょっとお聞きしたいと思います。
  90. 若松栄一

    若松政府委員 先生のお手元資料と私ども資料を完全に照合することがいまのお話だけではむずかしいのでございますが、後のほうの名古屋の件につきましては、症状的にはポリオの症状であるというのが一例、一例は脳脊髄膜炎という診断が確定いたしております。  なお最初の偶発的な例といたしましての死亡例が九例報告されておる、それを含めまして十四例を私ども承知しておるというふうに昨日申し上げましたが、それらの大部分が急性腸炎あるいは急性消化不良症というようなもの、七、八割程度が腸関係の疾患でございまして、あと肺炎あるいは漿液性脊髄膜炎というようなものが一、二ございます。
  91. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 そういう御答弁は何べんも承っておるのですけれども一つ一つの死亡の事例について御調査の結果がわかっておるのでございましょう。それを承りたいわけなんですが、安城の件は御報告がきておりませんでしょうか。御調査になったんじゃないのでしょうか。
  92. 若松栄一

    若松政府委員 安城市の件につきましては、後ほど詳細調べまして御報告申し上げたいと思います。
  93. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 名古屋の一、二例の麻痺の起きている子供さんのその後の症状はどうでございますか。
  94. 若松栄一

    若松政府委員 名古屋市で二例麻痺例が起きておりますが、一例は先ほどの脳脊髄膜炎の症状で経過しております。もう一例は非常に軽い麻痺がまだ残っておりまして、現在いろいろの技術的な検査を続行いたしておりますが、まだ正式に決定はいたしておりません。
  95. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 それではただいま私が御質問申し上げました件についてあとから詳細御報告を願いたいと思います。
  96. 田口長治郎

  97. 本島百合子

    ○本島委員 昨日多ケ谷先生お出ましになったときに御質問申し上げる予定でありましたが、時間の関係で省略して本日承ることにしたわけです。  その第一点は、先ほど滝井先生もお聞きになっておりましたので、その点は省略していただいてけっこうですが、たしか厚生省関係の医師の給与の引き上げというものが三年か四年前にあったのであります。その当時一般医師との給与の体系を整えるということであった。それが現在二号俸低いとおっしゃったのですが、それはどういうわけで低いのであるか、あるいは一般病院の医師との関連においては同じものであるかどうかということ、いま一つは、研究の費用が足りないということを言われ、なおかつ都道府県の衛生局に委託して調査その他をやることになっておる、しかし予算がないためになかなか思うにまかせないという御答弁があったわけですが、そういう点について、ただいま伊藤よし子先生から御質問があっても、その症状等の報告がなされないということを見ますときに、やはり都道府県の衛生局あたりでそうした予算がないためにできないのか、あるいは研究所自体にないからできないのか、この二点を承りたいと思うわけです。
  98. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 ただいまの御質問の、まず第一に給与の点でございますが、私ども厚生省直轄の研究所につとめております公務員の給与体系は、研究公務員の範疇に入っております。したがって、医師、薬剤師、獣医師、あるいは大学の生物学出身の者全部を含めて研究公務員という人事院の一つワクに入っております。そして病院で働いておる医学部出身のお医者さんのほうは医療公務員でございまして、体系が違うわけでございます。それでやっている内容はむしろわれわれのほうが相当きつい一これは臨床のお医者さんに言わせれば、臨床のお医者さんもきついと言うのと同じだと思いますが、せめてそれと同じレベルに持っていっていただきたいと思っております。卒業後たとえば三年なら三年、五年なら五年たったレベル、あるいは初任給からすでに調整号俸や何かついて違うのでありますが、二号くらいの差がいつでも出ております。一方教育公務員のほうも、これは医学部出であろうと、理学部出であろうと、大学の職員はすべて教育公務員でありますが、やはり研究公務員よりも格差がある。これは人事院で出しております資料ですでにそうなっております。したがって、研究公務員に入る人は一応それを承知の上で入らざるを得ない。われわれのように、昔教育公務員でありまして、戦後予防衛生研究所ができたときに伝染病研究所から半分移ったという者は自然的に研究公務員へ移ったわけでございますが、そういう待遇上の違いというものがいつの間にかできてしまっているということで、研究公務員全般の大きな関心事だと思いますので、これは人事院の問題としても総合的に御解決をぜひお願いしたいとわれわれは熱望いたしておる次第でございます。  それからその次に、研究費のお話でございますが、ただいま伊藤先生の御質問のありましたような例でも、大体においてたとえば現在麻痺例の五例の材料が予研に来ておりますし、それから死亡例でも解剖のあったものは予研に材料が来ているというふうに、そういう検査材料はできるだけすみやかにわれわれの研究所に送られてくるのがたてまえになっております。しかしながら同時に、地方の衛生研究所で能力のあるところはまず現場で検査をやる、それからそれと同じ材料を私どものほうにも二重に送ってきまして、両方で結果を出し合って万遺漏なきを期するというような体制になっておるわけでございます。それで先ほどの滝井先生のときのお話に、ちょっと私の返事が誤解を招くといけませんので、ここでもう一度補足して申し上げておきますが、先ほど何か検定費も十分にないために研究がよくやれないのではないかというようなお話もちょっとあとでございましたが、そういうことはございません。と申しますのは、検定費はわれわれが万全を期して世界的なレベルで恥ずかしくない検定をやるための原価計算をこまかくいたしまして、一つの検定についてはこれだけの材料が要るのだという予算を組みまして、厚生省のほうへお出しする、それがつまりある程度検定料金の原価計算になるわけでございます。したがって、検定のほうは一件受け付けますれば、それに見合うだけの検定費が大蔵省から支出される。したがって、検定費に関しましてはわれわれは何も文句を言っておりません。それから検定施設もかなりりっぱなものをいまつくっていただいておりますし、これは世界的な規模において考えましてもそう劣るものではない。ただし一般の研究費でございますが、これは決して十分とは言えない。まだまだ研究というのは、たとえばこういう研究対象になるような麻痺例とか死亡例というものが年間何例か発生すれば、それに付随しまして特定の検査だけやっていては間に合わない。たとえばどうしても病原体を見つけ得ない場合には、直接サルに刺してでも何か病気が起こるかどうかというようなテストもやりたい、そういう場合にはやはり十分の余裕のある研究費がなければできないということを申し上げたいわけでございます。
  99. 本島百合子

    ○本島委員 厚生大臣にお尋ねいたしますが、ただいまの御報告を聞いておりましても、二号俸低いということは、こういう特殊の問題と取り組んでおられる所員の方々に対して、その研究意欲が相当阻害されると思うのです。したがって、そういう給与等についてもある程度の引き上げということを行なっていかなければならないのではないか、民間でできない点を多く背負っておられる分野でございますので、こうした点について厚生大臣はどのようにお考えになっておられますか、御所見を承りたいと思います。
  100. 小林武治

    ○小林国務大臣 研究員の号俸が低いということは適当でない、しかしこれは政府全体の問題でありますから、これを全体の問題として私ども人事院等にも交渉したい、かように考えます。
  101. 本島百合子

    ○本島委員 これは大臣に承りたいのですが、今回の問題が起こりましてから急遽またソ連製の生ワクチンを緊急輸入するという手はずをなさったと思いますが、八百十万人と聞いております。そうすると、国産品との比較をきのうお尋ねいたしましたが、遜色ない、こういう御答弁であった。そうすると、量的に足りないからだということにはなろうかと思いますが、一般の受ける感じは、もしソ連製のものがここにまた入ってくる、両方使われる、こういうことになった場合においては日本品は非常に劣るという印象をもっと深めるんじゃないか、このように思うわけですが、この点はどういうふうになっておるのか、ソ連製のものは緊急輸入はしないのだということになったのであるかどうか、この点をお聞かせ願いたい。
  102. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは御承知のように国産でもって全部まかないたい、こういうことを考えておりまして、いま輸入計画等はございません。ただ、何としても価格が高い、この問題については十分検討しなければならぬ、私どもかように思っております。
  103. 本島百合子

    ○本島委員 この点私心配して、再確認の意味でお尋ねしたわけです。輸入されるということが一般に流布されておるわけです。そうした場合に、国産品よりはやはり従前使っておったソ連製品を服用したいというようなおかあさまの声がかなり出てきたということです。そうしますと、国産品で今後全部まかなっていかれるということになれば、ただいま滝井先生も御質問された六社のメーカーに対する一本化の問題が出てくると思うのですが、その一本化をされるために政府はどのような措置をされるお考えであるかどうか。
  104. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまは一本化された形で製造されておるということでございます。
  105. 本島百合子

    ○本島委員 一本化された形というのが私さっきから御答弁を聞いてわからないのですけれども、六社それぞれつくっておって、その製品だけが一本化ということなんでございますか。
  106. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 六社といいますのは、ワクチンメーカーとしていろいろなワクチンを製造しておるのですが、これが六社でやっておるわけでありまして、ソークワクチンについては六社でやった。ところが生ワクチンについては六社でやる必要がない。つまり、六社でやれば過剰生産になってしまいまして、しかも値段もかえって高くなる。したがいまして、需要は固定しておりますから一社で十分まかなえるので一社でやることにしておりまして、ほかの社は全然つくっておりません。
  107. 本島百合子

    ○本島委員 その点は私の聞き違いであったと思いますが、そういたしますと、今回のこの事件を契機といたしまして、昨日も参考人にどのようにすれば一体国民不信感が取り除かれるかということをお尋ねいたしましたところ、積極的な厚生省のPR活動であるというようなことが言われたわけなんですが、そうした点についてはどういうふうにお考えになっておりましょうか。まだだいぶ投与すべき人々が残っておるはずでありますが、こうした点についての特別なお考えというものがあるかどうか、あるいはこのままの形において法律ができますれば強制的になるから必然的にその線に沿ってやるだけだというお考えであるかどうかを承りたい。
  108. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは要するに国産ワクチンの安全性とそれから有効性についての信用が十分行き渡ればやれる、そういうふうなPR並びに投与等についての注意、こういうようなことをひとつ十分気をつけて心配もできるだけ解消する、こういう努力は続けていたしたいと思います。
  109. 本島百合子

    ○本島委員 時間がないらしいので、あと何分ですかといううしろから御注意がありますのでこれを最後といたしますが、今日地域的には子供を小児マヒから守る会というような会も相当にできているし、またそうした会に所属しなくともおかあさま方の不信感から、現在の国産品に対しては投与を受けたくないというような空気もかなり出ておると報道されておるわけなんですが、こういう特別な地域に対して厚生省としてどういうふうな形をとっていかれるかということが一点。  もう一つは、何といっても小児麻痺から子供を守るということになれば、これはもうおかあさま方ばかりでなく、すべての人々が大きな恐怖を持っておる。ちょうどこの流行期に私、東北のほうへ社労委員会から国政調査に参ったわけであります。そのときに、ちょうど流行期に入っており、たまたまその地域から発生いたしておったわけでありますが、そのときのおかあさん方の真剣な恐怖というか、またそれに対する対し方、要望というものをいまだに忘れることができないわけです。したがって、今回のような事件が起こりました場合に、簡単にこれは特定の人々の特定の運動であるからというような考え方に立ってはいけないことはもちろん、私自身もまたこうした小児麻痺を日本から撲滅していくというときにかくあってはならない、こういうふうに考えておるわけでありますが、厚生省として、いままで短い期間であったが、とにかくPRみたいなことはしていない、やはりする必要はないというような御答弁を先ほど聞いておったわけですが、しかし、私は、昨年の予算分科会で、優生保護に関連をいたしまして、妊娠中絶の服用薬、これがアメリカからたしか来ておるはずだが、これはいまだに市販されていない、どういうわけかと質問いたしましたところ、アメリカ人と日本人は体質が違うから、そのまま服用するわけにはいかない、ただいま研究しております。こういう御答弁であったわけです。ところがこれと引きかえまして、ワクチンの場合においては、カナダからソ連製にかえる場合も、また国産品にかえる場合も、大体実験、野外実験もしていない、こういうことになりますと、幼児に適用するものはこのように軽々に行なわれる、大人に使うものは体質が違うということで十分慎重な御研究が行なわれておるということを知りましたときに、政府のやり方というものに私自身非常に不信を持つわけです。したがって、昨日参考人も申しておりましたが、こういう実験というものがきちんと行なわれ、統計的にあるいは医師会のほう、あるいは研究所のほうで一致した安全性を保障してくれるならば、この服用、投与に対して反対するものでない、こういうことを昨日言われたわけでありますが、こういう点についてどういうふうにお考えになっていままでの措置をとってこられたか、あまりにもこのワクチンの問題の場合だけは軽々ではなかったかという気が私自身もいたしますし、一般のおかあさま方もいまそれを非常に心配していると思うわけであります。そういう点に対して明確な御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと存じます。
  110. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 人工避妊薬のお話が出ましたので、私からお答えいたします。  これは、いわゆるワクチンと人工避妊薬との関係は全然別でございまして、避妊薬のほうでなぜ私どもとしては簡単に許可できないかということにつきましては、現在新薬の特別部会のほうで慎重に検討いたしておりまして、いわゆる副作用の問題、つまり長期間何年にもわたって飲むような避妊薬をここで許可したような場合に、はたしてその安全性の問題に対して、胎児の影響がどの程度出るかという問題があるわけでありまして、これは慎重に検討いたしておるわけであります。ワクチンの場合は、過去にしばしば申し上げましたように、四千人以上の実験を終わっておるということでこれは使用許可をした、こういう経緯でございます。
  111. 田口長治郎

    田口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  112. 田口長治郎

    田口委員長 ただいま委員長手元に、竹内黎一君、伊藤よし子君及び本島百合子君より、予防接種法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。     ―――――――――――――   予防接種法の一部を改正する法律案に対する修正案  予防接種法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  附則第一項中「昭和三十九年四月一日」を「公布の日」に改める。     ―――――――――――――
  113. 田口長治郎

    田口委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。竹内黎一君。
  114. 竹内黎一

    ○竹内委員 自由民主党、日本社会党及び民主社会党三派共同提案にかかる予防接種法の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。  修正案は、お手元に配付してあるとおりでありますが、その内容は、附則第一項中施行期日「昭和三十九年四月一日」とあるのを「公布の日」と改めるものであります。  何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。
  115. 田口長治郎

    田口委員長 修正案について、発言はありませんか。     ―――――――――――――
  116. 田口長治郎

    田口委員長 発言がなければ、これより予防接種法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括し討論に付します。  申し出がありますので、これを許します。谷口善太郎君。
  117. 谷口善太郎

    ○谷口委員 日本共産党は、本案に反対であります。その理由を簡単に申し述べます。  この法律案は、従来小児麻痺の予防接種として採用していましたソークワクチンにかわりまして、経口生ポリオワクチンに切りかようとするものでありまして、一般的に申し上げれば、小児麻痺の予防ワクチンの発展の現段階から見まして妥当な法改正だというふうに私どもも思うのであります。しかし、実際の政府の意図は、最近経口生ポリオワクチン国産化に乗り出しました日本ポリオワクチン研究所の第一号製品を、広範な国民の不安があるにもかかわらず、法改正によって生後三カ月より十八カ月の乳幼児に強制的に投与しようとするところにあります。  国産ポリオワクチン第一号製品は、政府の言うところによりますと、原種が七一ビン株であり、製造工程及び国家検定がすべて国際的基準によって科学的に処理されたものであるので、完全に安全有効だと言うのでありますが、しかし、法案審議の過程で明らかになったところによりますと、世界保健機構、すなわちWHOの専門委員会が厳守されねばならぬと勧告しておる人体安全実験を全く行なわず、ただ動物実験だけを行なったものでありまして、その安全有効さが科学的に証明されているとは言えないのであります。しかも、政府は、この科学的に安全有効の証明されてない国産生ワクチンを任意投与と称して、すでに百数十万の乳幼児に半ば強制的に投与したのでありますが、その結果は、実に十数例の死者を出し、かっかなり多数の発熱者、下痢者、嘔吐者その他の故障者を続発させ、国民に非常な深刻な不安を与えているのであります。冬の時期、すなわちポリオ流行期でない時期の投与においてさえ、このように世界的に類例のない高率の事故者を出している事実にかんがみまして、流行期に向かってのこの不完全な国産ワク法律による強制投与は、いかに危惧さるべきものであるかは論をまたないのであります。したがって、現行予防接種法を改正して、国産ワク強制的に投与せんとする本法律案は絶対に成立さしてはならぬのであります。  第二に、すでに述べたごとく、政府は本年二月から三月にかけて任意投与と称して、半ば強制的に百数十万の乳幼児に国産ワク第一号を投与し、その結果異例に高率の事故者を出しているのでありますが、この過程において政府は何一つ科学的な対策を講じなかったのであり、また科学的対策を講ずる機構も、組織も、用意も持っていないことを暴露したのであります。このことは、昨日の本委員会における日本医科大学の村上教授の発言で明らかにされております。すなわち、村上教授は、この問題に関しては、単に学者の間につくられた監視部会によって、死者の起きた場合にのみ地方から文書報告を受けて、それを対象に調査しただけであって、死者の出た場合、直ちに現地におもむいて解剖等の科学的調査をしているのではなく、そういう不完全な監視方法にすぎないと言っているのであります。  政府が六一年九月、各国に送ったポリオ調査団の公式報告には、完全に安全有効を証明された生ポリオワクチンであっても、投与にあたっては完全な常時監視機構を整備して、対象者に対する事前の健康管理から投与後の組織的、科学的な経過の監視と結果の追及は必要欠くべからざるものであり、各国ともこの監視機構を持たないものはないという意味の主張をしているのであります。このことなしに、法改正によって投与強制し、国民に義務づけることは、国民の生命を脅かすことにほかなりません。これが反対の第二の理由であります。  人命に関するこういう問題では、当事者たる国民、この場合は母親たちでありますが、この母親たちの意見に耳を傾けて対策を講ずることこそ第一義的に大切であります。政府は、直ちに本法律案を撤回すべきであります。同時に、国産ワクの一斉投与を即時中止して、その完全な開発に努力すべきであります。そのために、WHOの基準による少数の人体実験はもちろん、国産開発第一号という新製品の現実にかんがみ、大量の人体安全野外実験をして、その安全有効性を証明すべきでありますまた、政府は、いまこそ小児麻痺対策の観点からのみならず、一般に予防接種法に基づく予防接種において、完全な監視機構をつくるために、全国の科学者、医師、民主的組織の協力を得て、断固として邁進すべきであります。同時に、小児麻痺流行期に向かって国産ワクに対する理由のある不安からいまだに愛児に予防接種をなし得ないでいるところの多くの母親たちに対して即時に、正しい、かつ積極的な方策を講ずべきであります。そして、今日まで半ば強制的に投与された乳幼児の中に起こった事故者及び今後起こり得る事故者に対しましても即時無条件に国家補償の処置を講ずべきであります。  われわれは以上の理由から、国産ワクの完全な開発を望むがゆえに、あえて本法案に反対せざるを得ないのであります。  なお、三党共同の附帯決議が出るようでありますが、これにも賛成できないことを残念に思います。なぜなら、このような附帯決議では事態の改善に何の効果もないからであります。  終わります。
  118. 田口長治郎

    田口委員長 長谷川保君。
  119. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に対しまして賛成の意を表せんとするものであります。  申し上げるまでもなく、小児麻痺は実におそるべき病気でありまして、ことにその後遺症につきましては、非常な不幸を人の生涯にわたって与えるものであります。これが撲滅は全人類の念願とするところであります。幸いにいたしまして、数年来、ソークワクチン接種、また今回のようなセービン株の非常にすぐれたポリオワクの服用等によりまして、世界的にこのおそるべき病気が絶滅の道をたどりつつありますことは、まことに御同慶にたえないところであります。しかしながら、これらの国産ワク等の今回の服用の実情を調べてまいりますと、一部に非常な不安があります。この世の母の不安、これはある方々がそれらについてことさらなる宣伝をしたという点だけでできているのではもちろんありません。世の母たち親たちにしてみますれば、服用するにいたしましてもしないにいたしましても、いずれにいたしましても、この小児麻痺という病気が非常なおそるべき病気であるというところからいたしまして、服用させなければ愛児がポリオにかかる、小児麻痺にかかるということを恐怖せざるを得ない。服用するとして、これがはたして安全であろうどうか、服用することによってあるいは逆に小児麻痺にかかるかもしれない、こういう二つの間にはさまった大きな不安であり、迷いであります。これらにつきましては、私は、政府といたしまして十分なこれらに対する対策を立てるべきであるということを強く思うのであります。  したがいまして第一に、この世の親たち、母親たちの不安の解消のために、政府は今日におきましても十分な啓蒙活動をすべきである。また今後におきましても、その経過の追及を十分いたしまして、そして権威ある立場に立って、世の親たちの不安というものを解消するために努力すべきである。この努力のしかたが、今日の段階において、私どもは現状においては足らないと思う。したがいまして、社会党は、まず第一に、この世の親たちの不安と解消のために、政府がさらに格段の努力をすべきであるということを強く主張しなければなりません。  第二に、これらの母親たちの不安、世の親たちの不安というものを来たしておりまする事情について、この服用の前後におきまする服用の施行の管理というものが十分でないということを考えます。たとえば、約二百万人近くにいたしまして、十数名の、これを服用した後において不幸にしてなくなったという子供たちが出ているようであります。また相当数の発熱、下痢等を起立した子供たちが出ているようであります。しかしこれらにつきましては、当局の調査によりましても、また私ども社会党の議員が現地に飛びまして調査いたしましたところからいたしましても、大体において急性腸炎あるいは急性肺炎あるいは脳脊髄膜炎その他のほかの病気のものであるということがほぼ明らかなようであります。もちろんこれらにつきましては、なおしばらく経過をしなければ、これらのことがはたしてどういうことであるかということについて確実なことにはならない点も今後あろうかと思いますけれども、一応いままで調査したところによりましては、ほぼそういうことのようであります。いずれにいたしましても二百万人からの子供たちが服用したのでございますから、もしかりにこの服用の結果何らかの障害があったといたしましても、それは数からいたしますればさればといって、この服用をやめるというようなことを、流行期を前にいたしましてすべきでないことは明らかであります。しかしいずれにいたしましても、一人の子供の命というものは無限の価値を持っておるのでありますから、これらについては、当局といたしましてなおなお念には念を入れ、当然合理的な対策を立てる努力をいたすべきであります。ことに、私ども服用の現場等をいろいろ調べてみますと、都会、ことに東京都等におきましてはあまりに子供の数が多いかげんでありましょう、それらの事前の服用児の管理というものがきわめておろそかにされておるようでありまして、発熱をしておるとか、かぜを引いておるというような子供を必ずしも十分に調べずに服用させておるようであります。こういうような事前の管理、また飲ませたあとの管理、ことに発熱その他の症状を起こしておる子供たちの健康管理につきましては、当然政府が保健所その他の機関を動員いたしまして十分な管理をして、万遺憾ない処置を十分講じていかなければならないと思うのであります。  第三に、私はさらにこの価格の問題について一言しなければなりません。これは政府当局におかれましても、市町村民税の均等割以下の所得の方たちに対する免除ということをし、それが全国民の大体三〇%に及ぶということも伺ったのでありますけれども、これらの配慮に対しましては、私ども了といたします。しかしなるほど、小児麻痺というおそるべき病気を免れるということのために、六十円前後の代金を払ってもいいじゃないかという議論も立ちましょうけれども、しかし同時にこういうような全国民に漏れなく服用させて、このおそるべき病気を予防していくというような、全国民の問題につきましては、こういうものはやはり当然無料としていくということに、将来努力すべきでありまして、私どもこの点を強く政府に要望しておきたいのであります。今後こういう非常に有益な、そうしてまた全国民になさねばならぬこういうような生ワクチンの服用あるいは予防接種というようなことにつきましては、当然無料で政府が行なうという努力を進めていただきたいのであります。  以上、三点を強調いたしまして修正案に賛成、また修正案を除きまする原案に賛成の意を表するものでございます。(拍手)
  120. 田口長治郎

    田口委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより内閣提出予防接種法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について、採決に入ります。  まず、竹内黎一君、伊藤よし子君及び本島百合子君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  121. 田口長治郎

    田口委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  122. 田中正巳

    ○田中委員長 起立多数。よって、予防接種法の一部を改正する法律案は、竹内黎一君外二名提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  123. 田口長治郎

    田口委員長 この際、橋本龍太郎君、河野正君及び本島百合子君より、予防接種法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付するとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めますP橋本龍太郎君。
  124. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 自由民主党、日本社会党及び民主社会党、三派共同提案にかかる予防接種法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付するの動議を提出いたします。  案文を朗読いたします。    予防接種法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  一、国産生ワクチンに対する国民の不安が依然として残っている現況に鑑み、その安全性を明らかにし、その不安を一掃するため、政府は努力を行なうべきである。  二、ワクチン投与にあたっての管理使用の方法等については更に改善の要があるので、服用前後の健康管理等には政府は遺憾なきを期すべきである。  三、ワクチン国民保健上欠くことの出来ないものであるので、政府はこれが投与の際の国民の負担を軽減すべきである。  何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。(拍手)
  125. 田口長治郎

    田口委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  126. 田口長治郎

    田口委員長 起立多数。よって、本案については、橋本龍太郎君外二名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、コバヤシ厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小林厚生大臣。
  127. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまの御決議の趣旨に沿うよう善処いたしたいと存じます。     ―――――――――――――
  128. 田口長治郎

    田口委員長 ただいま議決いたしました本案についての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  130. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十四日、火曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時十一分散会