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1964-04-08 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月八日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君       倉石 忠雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松浦周太郎君    松山千惠子君       亘  四郎君    伊藤よし子君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山口シヅエ君    山田 耻目君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君  委員外出席者         議     員 八木 一男君         厚 生 技 官         (国立予防衛生         研究所腸内ウイ         ルス部長)   多ケ谷 勇君         参  考  人         (子供小児マ         ヒから守る中央         協議会事務局次         長         新日本医師協会         幹事長)    久保 全雄君         参  考  人         (日本医科大学         教授)     村上 勝美君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月七日  療術の制度化に関する請願天野光晴紹介)  (第一八八〇号)  同(今松治郎紹介)(第一八八一号)  同(臼井莊一君紹介)(第一八八二号)  同(大高康紹介)(第一八八三号)  同(金丸信紹介)(第一八八四号)  同(鴨田宗一紹介)(第一八八五号)  同(鈴木善幸紹介)(第一八八六号)  同(關谷勝利紹介)(第一八八七号)  同(渡海元三郎紹介)(第一八八八号)  同(登坂重次郎紹介)(第一八八九号)  同(中山榮一紹介)(第一八九〇号)  同(毛利松平紹介)(第一八九一号)  同(粟山秀紹介)(第一八九二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第一八九三号)  同(伊東正義紹介)(第一九四三号)  同(今松治郎紹介)(第一九四四号)  同(大石八治君紹介)(第一九四五号)  同(大倉三郎紹介)(第一九四六号)  同(金丸信紹介)(第一九四七号)  同(鴨田宗一紹介)(第一九四八号)  同(菅野和太郎紹介)(第一九四九号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一九五〇号)  同(始関伊平紹介)(第一九五一号)  同(關谷勝利紹介)(第一九五二号)  同(田中伊三次君紹介)(第一九五三号)  同(高橋清一郎紹介)(第一九五四号)  同(千葉三郎紹介)(第一九五五号)  同(中川俊思君紹介)(第一九五六号)  同(中村幸八君紹介)(第一九五七号)  同(西村直己紹介)(第一九五八号)  同(亘四郎紹介)(第一九五九号)  同(今松治郎紹介)(第一九八六号)  同(池田正之輔君紹介)(第一九八七号)  同(臼井莊一君紹介)(第一九八八号)  同(大久保武雄紹介)(第一九八九号)  同(金丸信紹介)(第一九九〇号)  同(河野正紹介)(第一九九一号)  同(小泉純也君紹介)(第一九九二号)  同(佐藤洋之助紹介)(第一九九三号)  同(關谷勝利紹介)(第一九九四号)  同(田中伊三次君紹介)(第一九九五号)  同(塚原俊郎紹介)(第一九九六号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第一九九七号)  同(橋本登美三郎紹介)(第一九九八号)  同外二件(三木喜夫紹介)(第一九九九号)  同(森山欽司紹介)(第二〇〇〇号)  同(渡邊良夫紹介)(第二〇〇一号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二〇五一号)  同(小島徹三紹介)(第二二三二号)  同(五島虎雄紹介)(第二二三三号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願谷川和穗君  紹介)(第一八九四号)  母子福祉法制定に関する請願周東英雄君紹  介)(第一八九五号)  同(中村高一君紹介)(第二〇〇九号)  同(ト部政巳紹介)(第二二〇〇号)  らい予防法改正等に関する請願亀山孝一君  紹介)(第一八九六号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一九一九号)  同(黒田寿男紹介)(第一九二〇号)  同(島口重次郎紹介)(第一九二一号)  同外一件(長谷川保紹介)(第一九二二号)  同(山花秀雄紹介)(第一九二三号)  同(米内山義一郎紹介)(第一九二四号)  同外三件(勝間田清一紹介)(第二〇〇八  号)  同(木村武千代紹介)(第二〇四八号)  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  の一部改正に関する請願田中正巳紹介)(  第一八九七号)  緊急就労対策事業打切り反対に関する請願(  井手以誠君紹介)(第一八九九号)  同(井手以誠君紹介)(第一九二五号)  原爆被害者援護法制定並びに原子爆弾被爆者の  医療等に関する法律改正に関する請願(栗林三  郎君紹介)(第一九〇〇号)  国有林労働者差別待遇撤廃等に関する請願外  四件(八木昇紹介)(第一九〇一号)  同外十四件(安井吉典紹介)(第一九六六  号)  同外十一件(下平正一紹介)(第二〇一四  号)  同外三件(山内広紹介)(第二〇一五号)  駐留軍労働者雇用安定等に関する請願(平岡  忠次郎君紹介)(第一九一〇号)  同(山花秀雄紹介)(第一九一一号)  同(秋山徳雄紹介)(第二〇〇二号)  同(野間千代三君紹介)(第二〇〇三号)  公衆浴場業健全経営維持管理特別措置に関  する請願關谷勝利紹介)(第一九二六号)  同(田中伊三次君紹介)(第一九三八号)  同(春日一幸紹介)(第二二二三号)  同(藏内修治紹介)(第二二二四号)  同(原健三郎紹介)(第二二二五号)  進行性筋萎縮症児救済に関する請願田中正巳  君紹介)(第一九二七号)  同(白浜仁吉紹介)(第二〇四九号)  同(田口長治郎紹介)(第二〇五〇号)  全国一律最低賃金制即時法制化に関する請願  (松本七郎紹介)(第一九二八号)  同外一件(滝井義高紹介)(第二二二八号)  同(桜井茂尚君紹介)(第二二二九号)  同(山口丈太郎紹介)(第二二三〇号)  身体障害者に対する義務雇用及び安全就業等に  関する請願山崎始男紹介)(第一九六五  号)  理学療法士及び作業療法士法制化に伴う経過  措置に関する請願辻寛一紹介)(第一九七  一号)  同(海部俊樹紹介)(第二〇四七号)  同(春日一幸紹介)(第二二三一号)  業務外災害による外傷性せき髄障害者援護に  関する請願石橋政嗣君紹介)(第二〇〇四  号)  同(井手以誠君紹介)(第二一九九号)  業務上の災害による外傷性せき髄障害者援護に  関する請願本島百合子紹介)(第二〇〇五  号)  同(井手以誠君紹介)(第二一九八号)  肢体障害者援護対策に関する請願(本島百合  子君紹介)(第二〇〇六号)  看護人名称改正に関する請願加藤精三君紹  介)(第二〇〇七号)  全国一律最低賃金制の確立に関する請願外百件  (志賀義雄君)(紹介第二〇一〇号)  同外二件(河野正紹介)(第二二二六号)  同(滝井義高紹介)(第二二二七号)  戦争犯罪裁判関係者の補償に関する請願外二件  (大坪保雄紹介)(第二〇二二号)  理学療法士及び作業療法士制度化に関する請  願外一件(海部俊樹紹介)(第二〇四六号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法による障害年金、  一時金の不均衡是正に関する請願今松治郎君  紹介)(第二一一〇号)  同(加藤常太郎紹介)(第二一一一号)  同(佐伯宗義紹介)(第二一一二号)  同(進藤一馬紹介)(第二一一三号)  同(壽原正一紹介)(第二一一四号)  同(田中伊三次君紹介)(第二一一五号)  同(高瀬傳紹介)(第二一一六号)  同(高橋清一郎紹介)(第二一一七号)  同(高橋等紹介)(第二一一八号)  同(谷垣專一君紹介)(第二一一九号)  同(坪川信三紹介)(第二一二〇号)  同外一件(寺島隆太郎紹介)(第二一二一  号)  同(南條徳男紹介第二一二二号)  同(西村直己紹介)(第二一二三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二一二四号)  同(福田繁芳紹介)(第二一二五号)  同(藤本孝雄紹介)(第二一二六号)  同(永山忠則紹介)(第二二〇一号)  戦傷病者中央援護福祉施設建設費助成に関する  請願今松治郎紹介)(第二一二七号)  同(大倉三郎紹介)(第二一二八号)  同(加藤常太郎紹介)(第二一二九号)  同(金丸信紹介)(第二一三〇号)  同(佐伯宗義紹介)(第二一三一号)  同(進藤一馬紹介)(第二一三二号)  同(壽原正一紹介)(第二一三三号)  同(田中伊三次君紹介)(第二一三四号)  同(高瀬傳紹介)(第二一三五号)  同(高橋清一郎紹介)(第二一三六号)  同(高橋等紹介)(第二一三七号)  同(谷垣傳一君紹介)(第二一三八号)  同外二件(寺島隆太郎紹介)(第二一三九  号)  同(永山忠則紹介)(第二一四〇号)  同(南條徳男紹介)(第二一四一号)  同(西村直己紹介)(第二一四二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二一四三号)  同(福田繁芳紹介)(第二一四四号)  同(藤本孝雄紹介)(第二一四五号)  同(和爾俊二郎紹介)(第二一四六号)  戦傷病者特別援護法改正に関する請願(今松  治郎君紹介)(第二一四七号)  同(加藤常太郎紹介)(第二一四八号)  同(金丸信紹介)(第二一四九号)  同(佐伯宗義紹介)(第二一五〇号)  同(進藤一馬紹介)(第二一五一号)  同(壽原正一紹介)(第二一五二号)  同(田中伊三次君紹介)(第二一五三号)  同(高瀬傳紹介)(第二一五四号)  同(高橋清一郎紹介)(第二一五五号)  同(高橋等紹介)(第二一五六号)  同(谷垣專一君紹介)(第二一五七号)  同(坪川信三紹介)(第二一五八号)  同外二件(寺島隆太郎紹介)(第二一五九  号)  同(中村寅太紹介)(第二一六〇号)  同(永山忠則紹介)(第二一六一号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二一六二号)  同(南條徳男紹介)(第二一六三号)  同(西村直己紹介)(第二一六四号)  同(福田繁芳紹介)(第二一六五号)  同(藤本孝雄紹介)(第二一六六号)  同(和爾俊二郎紹介)(第二一六七号)  戦傷病者の妻に対する特別給付金支給に関する  請願今松治郎紹介)(第二一六八号)  同(大倉三郎紹介)(第二一六九号)  同(佐伯宗義紹介)(第二一七〇号)  同(進藤一馬紹介)(第二一七一号)  同(高瀬傳紹介)(第二一七二号)  同(高橋清一郎紹介)(第二一七三号)  同(高橋等紹介)(第一二七四号)  同(谷垣專一君紹介)(第二一七五号)  同(寺島隆太郎紹介)(第二一七六号)  同(中村寅太紹介)(第二一七七号)  同(永山忠則紹介)(第二一七八号)  同(福田繁芳紹介)(第二一七九号)  同(藤本孝雄紹介)(第二一八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外九名提出衆法第三八号)  予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出  第三〇号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  八木一男君外九名提出生活保護法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。   三 児童福祉法昭和二十二年法律第百六十四号)   四 社会保険診療報酬支払基金法昭和二十三年法律第百二十九号)   五 身体障害者福祉法昭和二十四年法律第二百八十三号)   六 地方税法昭和二十五年法律第二百二十六号)   七 結核予防法昭和二十六年法律第九十六号)   八 国有財産特別措置法昭和二十七年法律第二百十九号)   九 らい予防法昭和二十八年法律第二百十四号)   十 入場税法昭和二十九年法律第九十六号)   十一 学校給食法昭和二十九年法律第百六十号)   十二 就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律昭和三十一年法律第四十号)   十三 租税特別措置法昭和三十二年法律第二十六号)   十四 学校保健法昭和三十三年法律第五十六号)   十五 社会福祉事業等施設に関する措置法昭和三十三年法律第百四十二号)   十六 国税徴収法昭和三十四年法律第百四十七号)   十七 日本学校安全会法昭和三十四年法律第百九十八号)   十八 社会福祉施設職員退職手当共済法昭和三十六年法律第百五十五号)   十九 連合国占領軍等行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律昭和三十六年法律第二百十五号)   二十 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律昭和三十七年法律第百五十号)   二十一 老人福祉法昭和三十八年法律第百三十三号)     …………………………………    理 由  現行の生活保護制度は、その基準がきわめて低く、運用が著しくきびしいため、健康で文化的な最低限度生活を保障することができず、かつ、自立を助長する目的を果たしていないことにかんがみ、題名を生活保障法に改め、憲法第二十五条の精神に合致するようその基準改正及び適用の方法不服申立て制度等改正をする必要がある。これが、の法律案提出する理由である。     …………………………………    本案施行に要する経費  本案施行に要する経費としては、約五千万円の見込みである。     —————————————
  3. 田口長治郎

    ○田口委員長 提案理由説明を聴取いたします。八木一男君。
  4. 八木一男

    八木(一)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりましたわが党提出生活保護法の一部を改正する法律案、すなわち生活保障法案につき、その提出理由趣旨並びにその内容の大綱につき御説明を申し上げます。  生活保護制度は、憲法第二十五条の精神を実現すべき制度の中で非常に大切なものであり、社会保障制度の基盤をなすものでありますが、この重要な制度を規定する生活保護法が、制度発足後十数年間、その間に社会状態家族関係経済状態生活水準等の急激な変遷に際会しているにかかわらず、変化に応じた根本的な改正がなされず、その運用も、また枝葉末節にとらわれて根本的精神にもとる方向がとられ、そのため、憲法に明記された健康で文化的な生活を営む国民基本的権利が実際には保障されず、多くの不運な人たちが人間らしい生活をなし得ないでいる現状は、まことに憤激にたえない状態であり、その間の政府の責任は、まさに重大といわなければならないと存じます。  わが党は、この現状にかんがみ生活保護法を抜本的に改め、その重大な欠陥を是正して、憲法の条章のほんとう意味の実現をはかろうとするものでありまして、法律名も、その趣旨に即応するよう、生活保障法と改めようとするものであります。  以下、順次、おもなる改正点とその理由について御説明申し上げます。  まず改正の第一の柱は、本法施行をより実情に即した適切なものにし、特に保護基準を適切なものにして、その改正社会経済情勢に対応して迅速に行なわせるようにするため、生活保障審議会をつくることであります。生活保護制度には生活、住宅、教育、出産、生業、葬祭、」時の各扶助制度があり、また六種類加算制度、四種類控除制度があり、かつその基準年齢別、性別、世帯構成別所在地域別におのおの計算されるわけで、非常に複雑な構成になっておりますことは各位の御承知のとおりでありますが、そのあらゆるものがあまりにも低過ぎていることは周知の事実でございます。まず、その中心である生活扶助制度で調べてみますと、東京都標準四人世帯で、一月、一万六千百四十七円、四級地一万一千七百八十七円、一人当たり月四千三十七円、四級地の場合は二千九百四十七円しか支給しないのでありまして、そのうち飲食物費については一級地一万四百十七円、一人当たり二千六百四円、一人一食平均二十八円ということに相なります。もっと具体的に、年齢別地域男女別飲食費一食当たりを出しますと、六歳から八歳までが一級地で一食平均約二十七円、四級地約二十円、十八歳から十九歳までが一級地男子三十六円、四級地約女子二十二円、六十歳以上一級地男子二十九円、四級地約女子十七円ということに相なるわけであります。多いところで三十円台、少ないところでは十数円台の食費という、まことに驚くべき僅少な金額に相なるわけでございまして、これでは全く健康な生活ということはできず、ただ現在生きているというだけで、自分の体力を消耗し、当然長らえるべき生命を縮めていると言っても断じて過言ではないのであります。嗜好品費を分析しますると、たばこ、甘味等は考慮されておらず、パンツなど消耗度の多い下着が一年に約二着余、四十ワットの電灯しかつけられない状態では、文化的な生活などとは絶対に言えないのであります。  右のような実情から見て、即時大幅な基準引き上げが断じて必要であり、その後も物価の上昇に見合うことはもちろん、さらに一般生活水準向上等に従って、時を移さず改正をさるべきものであります。  しかるにかかわらず、基準引き上げについてはその場限りのごまかしの方法しかとられていなかったため、生活扶助を受ける世帯生活水準一般勤労世帯生活水準に比して、立法当時よりぐんぐんと低下してきたのであります。  すなわち、その比率は、昭和二十六年及び二十七年が五四・八%でありましたのが二十八年より四〇%台に下がり、三十二年度よりは三九%台に下がり、三十七年度の改定によってようやく四二%に達しました。昭和三十九年度の改定で四七%に達するであろうかと推定されるだけであります。本来健康で文化的な最低生活水準ということは絶えず進展すべきものであり、単純にきめがたいものでありますが、特定地域における特定の時点においては、客観的に決定し得るもので、かつ決定すべきものであります。  しかも、最低限度というからには、その実施予算ワクというもので縛り、不可能にすることは絶対に許されないものであり、逆にそのことを国民に保障するために、予算が組まれなければならない性質のものであります。  しかるにかかわらず、この当然の原則が完全に無視され、主管官庁予算要求までが当てずっぽうのきわめて無責任無気力不十分のものであり、さらに、それすらも予算ワクということで大なたをふるわれるというやり方では、いつまでたっても不運な人たちが人間らしい生活を保障されることは実現できないことになり、その間における人権の侵害はあとからではいかにしても補うことができなくなるわけであります。  このような欠陥をなくし、かつ、この法律運用大綱をより実情に即したものとし、この法律に筋金を入れるために、生活保障審議会制度を設けようとするわけであります。すなわち、同法の第二章のあと生活保障審議会の章を起こし、基準決定に関する厚生大臣権限との関係に関して第八条に第三項から第五項までを新しく規定するほか、所要の改正をすることによって同審議会の活用をはかろうとするものでありまして、まず審議会は、両院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する委員八名及び厚生労働、大蔵、自治、文部各事務次官計十三名をもって構成され、十分重大な任務を補佐するに足る事務局を置き、毎年一回以上保護基準の適否に関する報告をし、変更の必要を認める場合の勧告権を持ち、厚生大臣はこれについて必要な措置を講ずべきこととし、また厚生大臣保護基準制定改正の際の諮問義務を課し、厚生大臣審議会意見によりがたいと認める場合の再諮問義務を規定するとともに、従来社会福祉事業に規定されておりました社会福祉審議会生活保護専門分科会の機能をも本審議会に吸収し、実施要領その他の本法施行に関する重要事項及び本法改正についても諮問を受け、またはみずから進んで関係行政庁意見を述べ、関係行政庁はこれらの答申、勧告意見を尊重すべき義務を規定するものでありまして、審議会として、最も大きな権限を付与してその熱心な調査、民主的な審議による適切迅速なる決定によって、従来の政府の怠慢、無責任のため憲法第二十五条の精神が実際に十分に確立されていない弊を除こうとするものであります。  改正の第二の柱は、自立助長に関してであります。  本法目的として、第一条に自立助長が明記されておりますが、自後の具体的条文はわずか生業扶助の項を除いて、それ以外はこの目的を実現しようという意味を持つものは全然なく、それのみか、この目的を抹殺する作用を有する第四条のごとき規定すらあるのであります。  自立助長は、対象者が機械ではなく、生きた感情を持つ人間であることを念頭に入れたものでなければ実効があがりません。現在の収入認定制度は、不運な人が何とか苦しい努力の中から人間らしい生活を再建しようとする意欲を喪失させる仕組みになっております。夫が死亡し、足腰の不自由な老母と幼い三人、四人の子供をかかえている母が、懸命に働いた収入扶助の金から差し引かれるのでは、疲れだけが残る仕事をやめて、せめて家族たちのそばにいて子供たちをかわいがり、親に孝養を尽くしたほうがよいという気持ちになることはあたりまえの話であろうと思います。苦しい中、条件の悪い中で、母を慕う子供、看護してあげたい親を目をつぶって家に残し働きに出ることは、その子供に、親に、少しでもおいしいもの、栄養になるものを食べさせたいという考え方で気力をふるって働いているのに、その収入が実際の生活を潤すものにならないのでは、働く意欲など喪失し、自立の道は閉ざされてしまうことは明らかであります。  現在の制度運用においてもこの実態が直視され、行政上はこの法律をできるだけ広く解釈して、冷酷無比な収入認定制度を緩和しようという方法がとられておりますが、いかにせん、第四条第一項の鬼畜のごとき条文に縛られて、十分なものになっておりません。  いわゆる勤労控除という制度は、大衆の切なる希望に従って厚生省が知恵をしぼり切ってつくった制度でありますが、条文に縛られて、必要経費控除という理論の上にしか立てないため、実際の働きによる実生活向上という問題はほとんど解決しておらず、勤労控除等でもし実際的に幾ぶんの効果ありとしても、この制度は働く者一名につき幾ら控除制度であって、前例のことき、家族を多くかかえた未亡人には何分の一の効果しか及ばないわけであります。したがって、この勤労控除制度は、必要経費補てんという目的のため有効な制度であり、存続拡充すべきものでありますが、ほんとう自立を促進するためには、これとは別に、対象家族に応じた、しかも、必要経費というワクに縛られない収入認定控除制度をつくり、要保護者家庭中のある程度働き得る者が家族のために一生懸命働いた収入が実際に相当程度家族を潤し、その結果さらに働く意欲を燃やし、仕事の習熟顧客の増加等によってさらに収入がふえ、自立の道が急速にかつ大きく開けるようすべきであります。本案は、そのため第八条の二の規定を新しく設け、右の目的を達成しようとするものであります。  以上は、自立助長をはばむ収入認定を緩和しようとする条文でありますが、他の点においても、自立助長に配慮いたしておりますことはもちろんであります。  改正の第三の柱は、適用の過酷な要件を緩和しようとするものであります。  現行法でこれを規定いたしておりますのは、保護の補足性の条項、すなわち、第四条第一項及び第二項であります。まず第一項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定されているのでありまして、あらゆるものまで極端に縛ったこの過酷きわまる条文のために、数年前までは、病床の老人かただ一つの楽しみであったラジオ、それも売り払った場合幾ばくの金にもならないものでも処分しなければ扶助が受けられない、なき夫の形見の記念品を泣く泣く手放さなければ扶助が受けられない、田畑のまん中の家を処分しなければ医療扶助が受けられない、といった状態があったわけであります。  このように実情に合わない条文に対して、行政に当たるものは、厳密に言えばこの悪条文を幾ぶん犯したとも言うべき苦しい解釈をしながら、できるだけあたたかい運用がなされ、現在では、ラジオとか自転車とかを保有し、また家屋等の全般的な処分をしなくても保護が受けられるようになっており、また、逐年幾ぶんずつ緩和される傾向にありますけれども、やはりこの条文に縛られて実情にそぐわず、対象者の人間らしい感情を踏みにじり、あるいは再起の希望を断つことが非常に多」いわけであります。  この点を改めるため、右条文中、「その他あらゆるもの」を「その他のもの」に改めて冷酷な鉄条網を取り払い、さらに、積極的に第四条第一項に後段を加えて、たとえば親の形見、夫婦の記念品、老人、病人、子供等の娯楽品など、社会通念上保有させることが適当なもの及び将来再起のため必要な、たとえば家屋、田畑、店舗、オートバイ、三輪車等々自立助長に必要なものの保有をしたままで保護が受けられるようにしようとするものであります。  次に、第二項では民法の扶養義務者の扶養が本法保護に優先して行なわれるものとすることになっており、この条文のため、家族とともに余裕のないきりきりの生活をしている人が、要保護者に対する扶養義務のため、その生活を破壊されたり、また、それをめぐって親戚間の感情が対立したり、また、遠方に親戚がいるため保護を必要とするものが急速に保護が受けられなかったり、いろいろの不都合が生じ、担当者も扱いに苦悩する現状にかんがみ、実情に合わない民法の扶養義務優先条項を削除して、あたたかい運営を行なおうとするものであります。  改正の第四の柱は、現在保護世帯を単位として行なうことを原則としているのを、個人単位を原則とすることに改めようとするものであります。  現在、世帯単位を原則とされているため、民法にいわゆる生活保持義務者ではない扶養義務者が同一世帯にいることによって、要保護者と完全に同一水準生活をしいられることになっていることは、全く不合理といわなければならないことでありまして、実例をもって考えてみますと、障害者の父、病人の母、幼い弟妹二名と同一世帯でいる十八歳の少年がどのくらい懸命に働いても、収入がこの五人の生活保護費以上の金額にならない限り実生活費を引き上げることにならないわけであって、若い青年の人権がじゅうりんされ、両親に対する孝心も実際には実を結ばないことになるわけでありますので、このような重大な欠陥をなくすため、第十条を改め、原則に個人単位とし、ただ例外として、同一世帯の夫婦と未成年の子供のみを単位として扱うことにしようとするものであります。  このことによって、要保護世帯の中で懸命な努力をする青少年はその働きに見合う生活を建設し、かつ、実際的には収入のある部分は、両親や弟妹の生活のため消費せられて、青少年の勤労による自己の生活建設の努力と、家族に少しでもよい生活をと願う愛情が実際上実を結ぶことになると考えるものであります。  改正の第五の柱は、本法施行上の苦情の処理を民主的なものにするため、中央、地方に、苦情処理機関を置こうとするものであります。  従来、本法の取り扱いにいろいろ苦情が生じ、かつ、その処理が必ずしも適切に行なわれないことは、いわゆる朝日裁判の例をもっても明らかでありますが、裁判に訴えることはもちろん、実際は官僚の手によって冷ややかに処理されることが多い。知事決定に期待が持てず、苦情申し立てすらもあきらめている対象者が多い今日、民主的な機関を設けて本法のよき運用を期することが緊要なことであり、そのため、第六十五条の二の規定を新設し、第六十六条に改正を加えまして、保護決定及び実施についての審査請求や再審査請求については、厚生大臣が裁決する場合は中央生活保障審査会の、都道府県知事が裁決する場合は地方生活保障審査会の議決を経て行なわなければならないものとし、第九章の二を新設して、中央審査会及び地方審査会の組織及び権限を規定したのであります。  中央審査会は、厚生省に置かれるものであり、厚生大臣の任命する学識経験者六名、関係行政機関の職員五名、計十一名をもって構成するものであります。特に、その機関の特質にかんがみ、心身故障など特別の場合のほかは、その意に反して罷免することができないことにしようとするものであります。地方審査会は、各都道府県に置かれるものであり、関係地方公共団体の職員六名、学識経験者七名、計十三名をもって構成し、委員の身分が保障されることは中央審査会と同様であります。  以上が具体的な改正点でありますが、その他本法の理念を明らかにするための改正を行なおうとするものであります。  まず、現行法の目的が、生活に困窮する国民に対してつくられたものであるとしているのを発展させ、憲法第二十五条の理念を明確に確立させるため、生活に困窮するというあいまいかつ消極的な規定を改め、健康で文化的な生活を維持することができないものに対して適用させるものであることを規定するため、第一条及び第四条を改正し、さらにこの改正と前述五項の抜本的な本法骨組み改造に対応し、かつ、題名より恩恵的なものであるという誤解を一掃し、国民の生存権を明確にするため、題名を生活保障法改正しようとするものであります。  本改正法は、昭和四十年一月一日から施行しようとするものであり、ただし、生活保障審議会に関する規定は、その任務上、公布の日から直ちに施行するものであります。  本法施行に要する直接の費用は、生活保障審議会及び審査会の費用で年間約五千万円であります。  以上が本法案の内容の概要でありますが、要するに、本法案は、社会保障の基盤の法律である生活保護法があらゆる面でその目的を十分に果たしておらず、国民の生存権がはなはだしく侵害されている点を根本的に改め、憲法第二十五条の精神を実際に確立しようとするものであります。健康な生活を保障する目的を持った法律が不完全であり、対象者が自分の体力を食べて健康をすり減らしながら毎日を送らなければならない状態、文化的などとはどんな観点よりも言えない状態、寿命や人間性をすり減らす状態を幾ぶんでも少なくするためには、この法律をごまかすことすらしなくてはならない状態関係官庁が違反すれすれの行政解釈をしなければならない状態を考えるとき、生活保護法改正は一日もゆるがせにすることはできないと存じます。  このような欠点を根本的に改め、ほんとうに健康で文化的な生活を保障し、さらにほんとう自立の助長をはかるため、あらゆる観点から検討をいたしました本法案でありまして、憲法を尊重し、擁護する義務を持たれ、そのことに最も忠実な各位の慎重な御審議の上、急速なる満場一致の御可決を心からお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
  5. 田口長治郎

    ○田口委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 田口長治郎

    ○田口委員長 内閣提出予防接種法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
  7. 大原亨

    ○大原委員 最近、また生ワクの使用に伴うていろいろな事故が起きたのが新聞その他で報道されているわけですが、先般私が名古屋に参りましたときに、二件ほど問題が持ち上がっておりました。この問題につきまして厚生省はどういうふうな調査をし、かつ、その調査の結果についてどういうふうな判断をいたしておるか、こういう点につきましてお答えいただきたいと思います。
  8. 小林武治

    ○小林国務大臣 局長からお答え申し上げます。
  9. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のように、名古屋市におきまして、生ワク投与後麻痺を起こしたと称する患者が二名ほど報告されております。その一例については、これは後の診断の結果、ポリオ小児麻痺等の症状ではないという診断が出ております。いま一つの例は、小児麻痺にきわめてよく似ているということで、これは現在なおビールス学的の調査研究を行なっております。
  10. 大原亨

    ○大原委員 一件については小児麻痺の症状の疑いがある、こういうことなんですけれども、その一件というのは加藤君のことですか。——それは大体どういうことが原因で小児麻痺を起こしたのですか。少し専門的に、しかもわかるように答えてください。
  11. 若松栄一

    ○若松政府委員 この生ワクを飲みまして——生ワクでございますので、生きたビールスでございます。したがってそれが、ほんとうの小児麻痺を起こし得るかどうかということはきわめて疑問なわけでございますが、従来すでに十数年の研究の結果セービンワクチンが安全であるということは、セービン株の技術によってはそのような、従来言われておりますような小児麻痺の症状は起こらないということで、セービン株の安全性が確認されたわけでございます。しかし、相当多数のワクチン投与を行ないますと、その期間内に、ワクチン投与とは関係のない小児麻痺患者も起こり得るわけでございます。したがって、ワクチン投与の期間に小児麻痺症状を起こしました患者については、一例一例精細な調査をいたしまして、これがワクチンと関係があるかないかということを厳重に調査いたすわけでございます。たとえば昭和三十七年には二百数十名の患者が報告されておりますけれども、その中でワクチンとの関係も——積極的な証拠は何もないけれども、そうかといって、ワクチンとの関係も、必ずしも否定もできないという例が六例ほどあるわけでございます。同じような例はカナダにも四例、あるいはアメリカにも十一例というぐあいに報告されておりまして、これはワクチン研究者の間ではコンパティブル・ケースということばを共通に使っておりますが、要するに、どっちつかずのケースということであり、直接否定もできなければまた肯定もできない、小児麻痺ワクチンを飲んで、そのワクチンの作用があり得る期間内に小児麻痺の症状が起きた例という意味でございます。そういうものが諸外国にも報告されておりますし、従来日本にも出ておりまして、今度もそのような例であったと思うわけでございます。
  12. 大原亨

    ○大原委員 これは、実際に現地でいろいろと当たっておられる伊藤委員のほうから、この問題は質問をしてもらいます。私はちょっと問題を提起しただけです。ただ、アメリカの例でしたかを私が雑誌で読みましたところが、そういう生ワク投与の際に、とにかくその生ワクを投与したことによって小児麻痺を起こしたのではないかという疑問が国民の間に起こった際に、政府は一時生ワクの投与を中止しまして、そして、事いやしくも生命に関する問題ですから、これをあらゆる点から検証した。そして結果的にはこの生ワクによる小児麻痺ではなかったということが、半年後か幾ら後でしたかわかって、初めてまた投与を始めた。私は新しい医薬品に対するこういう慎重な行政上の配慮というものがなされた例を聞きますが、いまの御答弁でもわかるように、これはあとで逐次伊藤委員のほうから質問してもらうことによってわかることですが、とにかく生ワクの投与と関係がないというふうな、そういう断定はできないというふうな御答弁です、一面から聞いてみますと。しかし、そういう問題についてはもう少し一いろいろな事故が今日までずっと起きて、その後におきましても兵庫県や豊中市、その他大阪のほうでも起きておるようですが、やはり住民が納得するような措置あるいは検証、専門的な見解、こういうものを逐次明らかにしていくような、そういう積極的な措置が必要ではないかと思うのですが、いかがですか。
  13. 若松栄一

    ○若松政府委員 そのように生ワクチンを投与した場合に、引き続いて小児麻痺症状を起こす例が各国にも見られておりますので、その点は、私どももすでに数年間その経験を積んで調査の方法等も確立しておりますので、今度の接種におきましても、あらゆるそういう麻痺症状の起きた例については迅速に報告をしていただき、それを精密に検査するというような体制を確立しておりまして、そのためにこのような報告が現在入って、そして検討いたしておるわけであります。
  14. 大原亨

    ○大原委員 そういう事故が起きた際に、それを打ち消すことだけに厚生省の当局がうき身をやつす、こういうふうなやり方が私は見られると思う。新聞発表だけを私は見てみたのですが、四、五日前、名古屋、その他兵庫県のほうに行っておりまして新聞に出ておりましたけれども、そういうふうに大阪や兵庫県でも引き続き起きているわけですけれども、それはたくさんの例だから起きる場合があることは予想できましても、しかし生ワクの投与の結果ではないということが断定できないというふうな、そういう御答弁もあるように、やはり生ワクを投与する際における措置といたしましては、いろいろな手当てをすることが必要でもあるだろうし、もう少し積極的に——積極的にという意味は、打ち消すという意味ではなしに、やはり納得できるような措置をとることが正しいのではないだろうか、この点において私は手抜かりがあるというふうに思いますが、いかがですか。
  15. 若松栄一

    ○若松政府委員 私ども、積極的に打ち消すとかあるいは隠すとかいうような意思は全然ございませんで、きわめて率直に事態を正確に、科学的に観察していくという努力をいたすつもりでございます。ただいたずらに今度また麻痺が起きた、また麻痺が起きたというようなことを発表いたして新聞等で大きく取り上げますことは、かえって不要な心配をかけ、あるいは不要な混乱を起こすということも考慮いたしまして、そういう大きな取り扱い方はむしろ避けて、科学的に慎重に検討した結果を将来の行政に正しく反映させていくという努力をしていくつもりでございます。
  16. 大原亨

    ○大原委員 その科学的にというのは、やはり民衆が納得できる、こういうことでなければ独断である、独善である、こういう批判を受けることは必然であると思います。  そこで、その問題はあと回しにしますが、私は、一般薬務行政にも関係しておるのですけれども、もうちょっと別の角度からこの問題を検討したいのです。質問が少し飛びますが、二年前でございましたか、ソークワクチンを各製薬会社につくらして、法律をつくって一斉に小児麻痺対策でやりましたね。その注射のソークワクチンは、その当時どのくらいのストックがあったのですか。生ワクチンに転換いたしましたときに、ソークワクチンのストックがどのくらいございましたか。
  17. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ソークワクチンの当時の状況でございますが、従来、国産品と輸入品の両方でそのころソークワクチンの接種をやっておりまして、輸入ワクチンが大体七千リットル、それから国産品が一万一千リットル、そういうことで、結局この一万一千リットルと輸入品七千リットルとをプールいたしまして、大体ソークの接種をやっておったわけでございますが、当時生ワクを開始いたしましたころは四千五百リットル国産品がありまして、その後逐次また使っていきまして、現在の手持ちは残が千五百リットル、このようになっております。輸入品は全部使い切りました。
  18. 大原亨

    ○大原委員 ソークワクチンは、希望者に対して任意接種をしてだんだんと減ったわけですか。生ワクを投与し出してからソークワクチンがだんだん少なくなっているのは、ソークワクチンはそういう希望者に対して接種したわけですか。
  19. 若松栄一

    ○若松政府委員 昭和三十六年に予防接種法改正いたしまして、それ以降は予防接種法による法定の接種をいたしております。
  20. 大原亨

    ○大原委員 この千五百リットルの国産のソークワクチンは、今後はどうなるのですか。
  21. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 生ワクチンの投与が始まりましても、またソークとの併用ということは考えられるわけでございまして、現行法では、予防接種法改正案を出さない前は、ソークのほうは強制接種になっておりますが、このただいま審議をいただいております予防接種法改正後におきましても、やはりソークワクチンの任意継続ということは可能だというふうに考えられるわけでございます。つまり併用という形で、希望する方には、ソークワクチンも生ワクチンと一緒に投与するということになってまいろうかと存じます。
  22. 大原亨

    ○大原委員 そこでお伺いしますが、生ワクチンは、当時の情勢から、古井厚生大臣のときに、いろいろな社会問題が起きてまいりましてやってまいりましたが、生ワクに転換をいたしましてソークワクチンを使う方針を変えたために、どのくらい製薬会社は損害を受けていますか。
  23. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 当時、国産品と輸入品とのプール制と言いますか、先生御承知だと思いますが、国産品は出回ったばかりでございまして、非常に価格が高い、しかし、輸入品につきましては比較的安く入るということでもって、高い価格と安い価格とをプールにいたしまして操作するという方法を、大蔵当局とも相談をいたしまして確立いたしまして、それでもって結局、ある程度の輸入品によります価格分と国内価格の統一をはかったわけでございますが、その後生ワクの投与が始まりましたために、このプール価格によります計算も、ずっと三十六年度以降続けまして、大体昨年におきまして一応プール価格の生産は終わっております。それで、損益どのくらいという点につきましては、まだ私ども業界との損益の結果につきましての検討は完了いたしておりませんけれども、大体設備投資されました分を除きまして、損失はほとんどない。つまり設備投資された分は、これはワクチンメーカーのその他のワクチンのほうに回っておりまして、生産されました分のソークの損益につきましては、まず投資分を除いて損益はないというふうな見込みを立てておるわけでございます。
  24. 大原亨

    ○大原委員 千五百リットルを投与しましたときに、徴収する金額は幾らですか。
  25. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ワクチンの価格としましては、二百二十六円でございます。
  26. 大原亨

    ○大原委員 二百二十六円だから、千五百リットルで幾らですか。
  27. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大体三億円です。
  28. 大原亨

    ○大原委員 大体三億円ですね。それじゃ、三億円というのはまるもうけ、これは売っても売らなくても設備投資やその他の減価償却はできておる、こういうことですか。
  29. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 それを全部売ってしまっても、設備投資の分の回収ができるとは私どもは考えておりません。しかし、千五百リットル分が逐次出ていくことによりまして、その分はまるまるメーカーのほうのプラスにはなっていくわけでございます。メーカーのワクチンに要しました損失分は、それを売ることによってカバーされる、こういうふうに考えております。
  30. 大原亨

    ○大原委員 つまり、千五百リットル分はまるまる製薬会社のもうけになるということですね、いままで設備投資の償却はできているのだから。
  31. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先ほど減価償却分といいますか、設備投資分の回収ができておるとは申しませんで、その分は若干残っておるだろうというふうに推定を私どもはしておるわけであります。完全に減価償却まで終わったというふうには考えていない。したがいまして、六社のメーカーのほうには、設備投資分の損失はまだ若干残っておる、こういうふうに考えられるわけでございますけれども、しかし、その分は他のワクチンの投下資本のほうに回っておりますので、その分を除きまして、管理費その他の関係の償却分は大体とんとんで終わっておるだろう。したがいまして、そういう議論から言いますと、千五百リットル残っておる分をさばいていけば、その分はいわゆるメーカーのプラスになってまいります。したがいまして、それは設備投資の償却分に回っていくのではないかというふうに私どもは考えておるわけであります。
  32. 大原亨

    ○大原委員 あなたの答弁は、ソークワクチンの設備も、一応償却が終わったら全然むだになるというわけではないから、実際上はこれで損益はない、こういう話だったわけです。だからもうかっているという。それはともかくといたしまして、株式会社の日本ポリオワクチン研究所、これはその関係の六会社がつくったのですか。
  33. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 さようでございます。この関係六会社のうち、いわゆる株式会社という形にありますのは武田と東芝でございまして、あとの四社は社団もしくは財団という形で運営されているワクチンメーカーであります。
  34. 大原亨

    ○大原委員 日本ポリオワクチン研究所はどういう目的でつくったのですか。
  35. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ポリオワクチンと違いまして、生ワクチンは、ポリオワクチンの製造のように六社でつくるという必要はないわけでございます。つまり、ロットが非常に大きい。仕込みの生ワクの液、これが非常に大きく、しかもロットが大きいために、製造する場合に何千万という多量の製造が可能である。ところが、ソークワクチンの場合は、やはりロットが少ないために六社分を必要とするということで、結局生ワクチンを製造する場合には、製造過程におきまして慎重な検定その他が必要でございますけれども、その製品自体は一社でもって相当多量につくれるということでもって、六社でつくる必要はなく、これは一社にまとめたほうがよいではないかということにいたしたわけであります。
  36. 大原亨

    ○大原委員 もうちょっと聞きたいわけです。しろうとですからあとでいろいろ研究することにいたしまして、一つの会社でつくったほうが、ばらばらでつくるよりか原価が安いかもしれぬ。技術的な指導もできるかもしれない。それでは、やはり予防接種薬についても、内服薬、注射液を問わず、これは一つの会社にまとめて株式会社をつくってやるという方針ですか。
  37. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 他のワクチンにつきましては、私ども必ずしもそういう考え方はとっておりません。やはり一社に限定してやったほうがよいと判断いたしましたのは、生ワクの場合だけでございます。
  38. 大原亨

    ○大原委員 しかし、他の場合だって、それをやれるのだったらそのほうがよいじゃないですか。どうですか。
  39. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 それは、確かに、新しいワクチンの製造ということで考えるとすればそういう考え方も成り立つでございましょうけれども、しかし、ワクチンにつきましては、戦前戦後を通じまして、やはりそれぞれのワクチンメーカーというもの、が生産をいたしてきておるわけでございますので、いまここであえて一社に統合するというふうな考え方は、私どもとっておらないわけでございます。
  40. 大原亨

    ○大原委員 しかし、ソークワクチンはソークワクチンで、相当被害があるといって製薬会社がやんやん騒ぎ出した。そしていろいろ埋め合わせをするということが、薬務行政の一つの大きな重点になっておった。それでその中から生ワクの問題が起きた場合に、一つの株式会社をつくった、営利会社だ。あなたのほうがそういう指導をしておきながら、他のほうにおいて指導ができないというのはなぜですか。ここだけつくって何です。
  41. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 あるいは同じことの繰り返しになるかと思いますけれども、ソークの場合と違いまして、生ワクにつきましては、多数の会社でつくれば結局ロットの分が非常に大きくなりますので、それだけつまり供給過剰になるおそれもあるし、片一方におきまして、生ワクの需要といいますものは、大体生後何カ月日ということで人員も三百万前後ということで固定をいたしておりますので、固定された需要につきましては、それをまかなうだけのワクチンといいますものは、六社も一ぺんにやる必要がない、十分一社で足りるということ。それからまた、いわゆるセービン博士との連絡その他も、こういう一社のほうに集中的にやって、セービン博士との連絡その他をよくするという趣旨も含めまして、やはり一社が適当だという判断をしてやったものと思います。
  42. 大原亨

    ○大原委員 そういう技術的ないろいろの場合には、技術料が要るのですか。
  43. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 セービン博士の株をわが国に入れました件につきましては、セービン博士のほうと連絡をいたしまして寄贈を受けたのでございますので、輸入については寄贈ということになっております。
  44. 大原亨

    ○大原委員 三百万人に生ワクチンを服用させますと、いまの単価では大体総額幾らですか。
  45. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 原価四十七円ということに計算をいたしまして、大体一億四、五千万円です。
  46. 大原亨

    ○大原委員 それでお尋ねをいたしますが、カナダやソビエトから輸入いたしましたのを使いますとどのくらいですか。三分の一くらいかな。
  47. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 三十八年のカナダ、並びにカナダの一型、二型、それからソ連の三型、その分の原液が一人十七円でございます。十七円でございますので三分の一、これは原液代だけでございますから、手数料その他検定料等を加えますと若干金額は上がるのでございますが、大体昨年までカナダ等から入りましたびんの原液は十七円、こういうことになっております。
  48. 大原亨

    ○大原委員 ぼくは政府の取り上げ方を見ていろいろ疑問があるのだけれども、こういうふうにすべきじゃないかと思うのですよ。普通の常識から言えば、カナダやソビエトの生ワクを急速に投与した。こういう経験があるわけですが、それを最初の一年度は、たとえば五分の一なら五分の一を国産、五分の四を輸入品、こういうふうにしてやってブール計算をしていけば値段も安くなるし、国産品もだんだんと値段についても逐年安くできるようになるだろうから、値段の点においても、あるいは経験や安全度の上からも、十分国産品について人体実験、野外実験等をする余地があったのじゃないか。そういうことで逐次国産品を広めていく、国産品を使っていく、そういう方策を立てるべきじゃなかったか。製薬会社との関係をあえてくさいとは言わないけれども、いままで質問してきたように、ソークワクチンを生ワクチンに急転換をして、当時の情勢で、製薬会社との関係も非常にあって、国産品を一ぺんに使うということは無理し過ぎておるのではないか。だからそういう行政全般について問題が起きた場合に、それについて国民が納得できるような、そういう行政上の措置をとる余地なしに、間違いはない、間違いはないということで進めておるきらいはないか。原則として、日本の技術で国産品を使って国民の治療をやる、国民の生命や病気から守っていく、こういうことについて私ども社会党は賛成だけれども、行政のやり口というものが少し慎重さを欠いておるのではないか。そこで私は、立ち入ったいろいろな問題については、新しい事態が起きない限りは触れませんけれども、将来の薬務行政全般、医務行政全般を考えてみて、そういうことに私は一つの問題があるのじゃないかと思う。薬務局のほうが公衆衛生局のほうに圧力をかけて、国産品を使え、国産品を使えというのでそういうことをやったのじゃないか。少し急ぎ過ぎておるような気がする。値段の上から言ったって、十七円と四十七円であるならば、少なくとも初年度は二十四、五円、十円増しくらいのところでやって、逐次値段を調整しながら、国際的な価格に近づけて、国産品を安心して使えるような、そういう方向をとるべきじゃないか。いかがですか。
  49. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 非常に急ぎ過ぎたんじゃないかという先生の御意見でございますけれども、生ワクを至急国産をやらなければならないということで、生ワクチンの安全性の問題なり国産の問題なりを考えましたのは、実は三十五年当時からでございまして、すでに三十五年から三十七年までにかけまして、生ワクの安全性の試験研究費は、一億五、六千万円の国費を使って、その研究をやっておるわけでございます。一方でそういう安全性の試験を国費をもって大々的にやった上で、しかも片方におきまして、ワクチンにつきましては原則としてやはり国産でやるのがたてまえであって、あらゆる先進国におきまして、輸入品でやるという考え方は、原則としてとっておらないのが世界の通説であることは、大原先生御存じだと思うわけであります。したがいまして、私どもとしましては、片や生ワクチンの安全性の研究を始めると同時に、生産を国でやるということでもって、このワクチンの製造に積極的に乗り出したわけでございまして、その点は、私どもとしましては国内需要に応じただけの態勢を整備するということで努力をいたしてきておりますので、先生の御意見もさることながら、私どもとしては真剣にこの問題には取り組んでおるつもりでございます。  それからまた、価格の点につきまして、非常に高いじゃないかという御意見でございますけれども、実はカナダ、ソ連ワクチンの十七円といいますのは、国家検定料が入っておりません。全部、当時は、国家検定分は国の予防衛生研究所で国費をもってやりましたので、検定分は入っておりません。それが一人分に換算をいたしますと大体六円ぐらいになります。それからまた、末端のほうに配給いたします分も国で全部予算負担をしたということで、希釈液費だとかあるいは梱包料を含めますと二円くらいかかります。したがいまして、十七円プラス八円の二十五円というものが大体四十七円に対応する値段でございますけれども、しかし、さかのぼって、ソ連の生ワクチンの投与を古井元大臣のときに始めましたときのソ連のワクチンの値段は、三十円でございます。日本のワクチンが最初に出ましたのは四十七円。しかしその四十七円の中には、国家検定料が大体六、七円入っておりますから、四十円対三十円というふうにお考えいただければ、まあ十円くらいの差があるという点も考えまして、私どもとしましては、四十七円というのは確かに昨年の十七円に比べますと高い値段でございましょうけれども、そう不当に高い値段ではないというふうに考えられるわけであります。それからまた、やはり外国のワクチンを輸入するということになりますと、どうしても外国の商社は市場開拓のためにある程度のダンピングをやるわけでございまして、カナダ、アメリカにおきましては大体九十七円前後を国内販売価格として売られておるというふうにも聞いておりますので、私どもとしましては、四十七円というのは、そう先生御指摘のように不当に、べらぼうに高い値段だというふうには実は考えておらない次第でございます。
  50. 大原亨

    ○大原委員 たとえ十円にしても二十円にしたところで、安いほどいいわけだ。十七円と四十七円では差がある。国家検定料云々の問題について、輸入品については検定料を取らずにおいて、国産品について取る、しかも半ば強制的な生ワクチンの投与について取るということ自体が問題だ。問題だけれども、値段について考えてみても、逐次漸進的にやっていくことが、いろいろな経験の上に、特に生命やそういうものに対する行政上の立場からいったっていいじゃないか。  特に指摘したい点は、前の議事録にあるそうだけれども、あなたの前の薬務局長は、動物実験だけでなしに、やはり人体実験も慎重にやった上でやるのだ、こういうことを言っておったけれども、人体実験については、若干やったけれども十分でないということが今日いわれておる。そういう点でやはり問題を残しながら、事態に直面した場合にはどうも消極的に、安全だ安全だということだけでは——私も日本の技術やその他の水準について信用しないわけじゃない、それは国際的な水準に達しておると思うが、やはりこれは一つの経験であるから、慎重さがなければいけない。そういう面においては慎重さが欠けておるのじゃないか。公衆衛生局よりも薬務局のほうが、業者の力が少し強いのじゃないか、そういう点を私は指摘しておきます。これは、大臣もおられぬことだし問題はまだあるから、保留しておきます。  それからもう一つ、これに関連をして、この前私は強肝剤についていろいろ質問したけれども、そのときに強肝剤の医薬品の許可基準その他の資料を私は要求した。資料を要求したところが何も一返事をよこさないけれども一、どういう理由だ、その点について答弁してもらいたい。どういう中身を持って、どういう裏づけを持った許可申請がなされて、どういう行政上の措置で許可したか、こういう資料を出しなさいと言っているけれども、出さないのはなぜか。
  51. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 私ども、そういうお話を大原先生から政府委員室を通じて承っておりまして、政府委員室のほうに実は御返事をいたしておりましたのが、大原先生のほうの御連絡が悪くて非常に立ちおくれましたことにつきましては、深くおわびをいたします。申しわけないと存じますが、製薬許可の中身につきましては、実は名称を含めまして、名称、用法、容量、それから効能、効果、試験方法等、省令に基づきまして多数の申請書が出てまいるわけでございます。それで名称や用法、容量等につきましては、これはそうたいした問題にはならないわけでございますけれども、たとえば試験方法につきまして、どこの研究所でどれだけのデータをもってどれだけの効能、効果があったというふうな中身につきましては、製薬メーカーとしましてはお互いの会社の秘密を守るというふうな関係もございまして、私どものほうに書類を持ってくる場合にも極秘の書類として私どもはこれを取り扱っておるわけでございまして、結局審査をいたす場合には、私どもは、薬事審議会委員の下にあります特別部会なりあるいは調査会におきまして慎重に検討いたしますけれども、これは絶対に口外しないというたてまえにいたしておるわけでございます。したがいまして、その資料をすみやかに提出するということにつきまして、私どもは、会社の秘密にも属することでございますので、いままでちゅうちょをしておりました。こういう事情になっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  52. 大原亨

    ○大原委員 二つうそがある。政府委員室を通じて資料を要求した際に、政府委員室ば、薬務局から返事がありませんから資料の提出ができませんと私に言うておるじゃないですか。君はうそのことを言っておるじゃないですか。どうです。
  53. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 その辺は、あるいは私のところまでそういう話になっておらないかもしれませんけれども、私どものほうとしては、いま私が申し上げました理由によりまして、資料の提出はにわかにはできないということを正式に御返事申し上げておるわけでございます。
  54. 大原亨

    ○大原委員 それなら、初めからそう言えばいい。そのことをなぜぼくに返事をしなかったか、二週間も三週間もほうっておいて。国会において審議する資料を出せと言ったら、そのことについてなぜ返事をしなかったか。最初にあなたが言った答弁は違うじゃないか。そういうでたらめな答弁をするな。なぜ答弁しなかったのだ。君は審議を妨害するのか。ちゃんと資料を出しなさいと言ったそのことについて、なぜ出せませんという理由を言わない。しかも君の最初の答弁は違うじゃないか。政府委員室からは、薬務局にいろいろ言っておるけれども、薬務局から出てまいりませんという答弁だ。どっちがほんとうだ。官房長を呼びたまえ。
  55. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 政府委員室のほうには、私のほうから、こういう理由によって提出はちゅうちょせざるを得ないということで、政府委員室の要求に対してはお答えをいたしておりまして、その点は私のほうからあるいは大原先生のほうに御連絡すべきであるかもしれませんけれども、資料の要求は常に政府委員室を通じまして話を承っておるのでございますので、政府委員室のほうに御返事を私どものほうとしてはいたしたわけであります。(「個人的な問題だ」と呼ぶ者あり)
  56. 大原亨

    ○大原委員 個人的なものにしても、議員が薬務行政審議する上において必要な資料について要求した場合においては、何らかの返事をすべきだ。個人の言うことだってそうじゃないか、行政について議員が監査できないことはない。政府委員室の連絡と薬務局長の答弁は違うのだ。その点については、政務次官のほうでしかるべく調査をして、あらためてその点について答弁をしてもらいたい。
  57. 砂原格

    ○砂原政府委員 この問題は、あらためて答弁といいましても、すでに薬務局のほうから政府委員室のほうへ申しておることだけは間違いはないというのでありまして、あるいは大原先生のほうへお伝えをいたしますのに食い違いを生じたかとも思いますが、この点はどうぞあしからずお許しをいただきたい。この程度でこの場はこらえていただきたいと思います。
  58. 大原亨

    ○大原委員 議員がそういう資料を要求した際に、一々委員会にはかって委員会の議決を要するんじゃないんだ、法律について議員は審査権があるんだから。もし資料を出さなかったならば、審議できないじゃないか。多数によって審議は幾らでも妨害できるじゃないか。その点については、政府委員室を通じての答弁と薬務局長の答弁が違うから私はおこっているんだ。その点については、政務次官は政府部内について調査してもらいたい。  もう一つ、第二の問題、その医薬品の許可を受ける資料について、どういうデータをそろえてやったという大まかな資料について——全部が全部じゃないけれども、ある程度の資料についてこれを公開してはならない、議員に示すことができないという法律的な根拠をひとつ説明してもらいたい。
  59. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 別に法律的な根拠があるからということで私は申し上げておるわけではございませんので、従来の行政の慣行上、そういうものにつきましては公開をしない。しかし、国権の最高機関であられます衆議院におきまして、ぜひともこれは出さなければいけないというふうな御決定がございましたならば、私どもとしましては、これを拒否する何らの理由もないわけでございます。
  60. 大原亨

    ○大原委員 私が言っているのは、前回もそうですか、この問題でもそうだ、この予防法についても、ソークワクチンについてもそうだ、生ワクチンについてもそうだけれども、行政審議する際における資料については、前に厚生大臣の答弁があったように、やはり薬務行政については、いままでのマンネリズムについて若干の反省を加える必要があるということは、厚生大臣もしばしば答弁している。そういう点から見て、少なくとも日本では、国民の生命や健康に大きな問題のある、薬にもなれば毒にもなるそういう性質を持っている医薬品売買について、たとえばスーパーマーケットの目玉商品になるとか、街頭で一般商品と同じように簡単に売られているということは、あまりにも軽率な取り扱いではないか。厚生大臣はそのとおりですと、こう言った。だからそういう問題については、やはり納得のできるような資料を提供すること、あるいは納得できるような手続をとることが必要なんです。そういう面において、私は、どういう経過を通じてそういうふうに問題となる医薬品が許可されたか、こういうことについて資料を求めた。そうしたら、法的な根拠も何もないのに拒否しているじゃないか。法的な根拠も何もない。委員会の許可を得るとか、法律上のその問題については秘密事項であるとか、そういう根拠がないのに、私に対してそういう資料を出せないということはどういう理由なんですか。どこに根拠がある、もう一回はっきりしてください。議事録にとどめておいて、問題によったらわがほうは国対の問題にするから、法的根拠がないにもかかわらず資料を出さないという根拠をはっきりしてもらいたい。
  61. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先ほど申し上げましたように、別に法的根拠があるというふうに私は申し上げておるわけじゃございませんので、委員会決定がございますれば出しますので、それだけを私は申し上げておるわけであります。
  62. 大原亨

    ○大原委員 あなたの答弁は違うじゃないですか。いまの答弁はまた違うじゃないか。前の答弁のときには慣行上と、こう言った。今度は、委員会の決議があったら出します、こう言っている。どこに基準があるか。実際に行政がやっておることなんだ。たとえば第三者あるいは参考人にだれを呼ぶかという問題でなしに、行政が実際にやっていることについて、行政を監督したり審議したり——前の厚生大臣の答弁によると、やはり薬務行政についてはもう少し公開をして、もう少し納得できるようにしなければならぬということを言っている。だから、そんなことについては慣行上、あるいはしばらくすると委員会の決議によってというようなことは、どこに根拠があるか。許可をした基準、裏づけというものは、当然国会において国民が知る権利がある、医薬品として国の行政で許可しているんだから。私は、ソークワクチン、生ワクチンの問題についてはもう少し慎重さがほしいということについて、原則としては、国産品を使うことについては、技術的にも日本においてはそれは十分耐え得るだけの水準にあると思うけれども、しかし、事生命に関する問題は国民を納得させなければならぬ。そういう意味からいって、薬務行政の問題と関連しているから、そういう資料等について私が提出を要求した際には、積極的に協力すべきである。出すべきである。(「協力の限界があるよ」と呼ぶ者あり)出すべきでない、限界があるということをそちらのほうで言っておるけれども、そういう見解をとっておるのか。いままで法律上の根拠がなかったら、ちゃんと出すべきですよ。医薬品としてなぜ許可をしたか、こういうことは行政の範囲に属する問題なんだよ。資料を出さないのだったら審議できないじゃないか。そういう点について資料を出さないということがあるかね。答弁は全く支離滅裂じゃないか。こんなことで審議はできないですよ。委員長理事会を開いてください。(「理事理事会」、「続行続行」と呼ぶ者あり)そんな根拠のないことで審議について協力しないのだったら、審議はできない。
  63. 田口長治郎

    ○田口委員長 伊藤よし子君。
  64. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 私は、簡単に一点だけ御質問を申し上げたいと思います。  国産生ワクチンの安全性の問題につきましては、先日来御質問も申し上げましたし、参議院の社労における速記録も拝見いたしまして、私自体は大体わかったように思うのでございますけれども、先ほど大原委員の御質問の中にもございましたように、最近、愛知県において一、二また死亡と入院の事例が出ております。そこで私は帰りましたときに、愛知県の方からたいへん専門的な立場での御質問がありまして、それに対して私では説明がつきませんので、あらためてその一点だけをお聞きしたいと思います。  ワクチンの単一性の検定とそれからワクチンの汚染の有無の検定、あるいは動物実験による安全試験というものはわかりましたが、野外実験の点でございます。人体に対する安全試験がされてないということを、専門的な立場でたいへん不安がっている人がございますので、その点についてひとつ明快な御解明をお願いしたいと思います。  これは専門の方でもけっこうでございますから、ひとつ専門的な、つまり、ただいま申し上げましたように、第三段階までのすべての諸検査を通過  した各ロットについて、百人、千人、万人、十万人の単位で必ず対照をとりつつ段階を踏んで人体安全試験を行なう、この試験の範囲は、少なくともワクチンの安全性、副作用、抗体産生の推移、ワクチンビールスの排出と伝播の推移、ワクチンビールスの毒性復帰に関する追及調査、罹患率の長期調査等を含むものでなければならず、ワクチン投与前後のビールス学的、血清学的検査は必須のものであるということに対する御説明を願いたい。  それからもう一つは、世界で生ポリオワクチンの生産が始まりました一九五七年以来、いかなる原株を用いたにせよ、自国で初めて生産した生ポリオワクチンを、以上の四つのステップを踏まずに自国民に一斉投与した例は、世界じゅうにどこにもないというようなことを反対の方がおっしゃるわけでございますけれども、御解明をお願いしたいと思います。
  65. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 ただいまの伊藤先生の御質問にお答えしたいと思います。  すでに参議院でもいろいろ御説明申し上げましたので、大体の趣旨はおわかりになったというお話で、ただ自国産のワクチンは野外実験を経て使うべきではないか、そういうお話でございますので、これに対する私の専門的な見解を御説明申し上げたいと思います。  ワクチンがこのように広く使われますに至る段階で、すでに御説明いたしましたように、この株で、こういうつくり方をしてこういう検査を経たものが安心して使い得るかどうか、そういう段階になるためには相当慎重なテストが必要でございます。したがって、このセービンワクチンも一九五七年ごろから少しずつそういう試験的投与を経まして、それで広く世界に使われるようになりましたし、またわが国におきましても、一九六〇年からごく小規模の試験投与を経て逐次大規模な投与にまいりましたことは、御承知のとおりであります。ただ、一九六一年に流行が非常に迫りましたために、少し投与を急ぎまして、千三百万という投与が行なわれたことも御承知のとおりであります。  それで、ただいま、世界の各国で数百人、数千人、数万人、数十万人という段階を経なければ投与が行なわれていないというような専門学者の話だということでございますが、これはこの前の参議院の社労委でも申し上げたのでございますが、ソ連におきまして、モスクワで生ワクチン、セービンワクチンが初めてつくられまして、そのロットがどういうように使われたかということを申し上げれば、これに対する御理解をいただけると思います。  すなわち、これは一九五九年にワシントンで開かれました生ポリオワクチンに関する研究会の記録に載っておることでございますが、チュマコフ博士は、一九五九年にソ連で生ワクチンをつくりまして投与するにあたりまして、セービンワクチンの安全性は、その前のセービン博士、つまりこのワクチンをおつくりになったセービン博士が御自分でおやりになった実験、それからその同じワクチンを方々に分与してやられた、つまりアメリカ産のワクチンをシンガポールで十九万人分、ソ連でも十一万人分を前の年の五八年にもらっております。しかし、もちろんこれはまだ投与しておりません。それからチェコで十四万人分を、五八年の十二月にセービン博士のつくったワクチンを投与しております。それからスモロジンスキー博士が、レニングラード研究所におきまして約千二百人分くらいの小規模の投与を、これもセービン博士からもらったワクチンでやっております。そうしてセービン博士のおつくりになったワクチンの安全性は十分に確認されたというふうに考えた。しかしながら、ソ連の科学アカデミーにおいて、一九五八年の十月に約五万人分くらいの野外投与をやれというような決議が行なわれて、それで一応その野外投与を取り上げた。ただし、ここで使われましたワクチンは、もとのセービン博士からもらったワクチンが約二万七千人分くらい、それからソ連のレニングラードで一足先につくりましたワクチンが約一万二千人分くらい、合計約四万人分くらいの試験投与が五九年の一月に行なわれております。それで五九年の三月には、モスクワ製のワクチンが数百万人分投与されております。ごくはっきり日時の記載してあります一例を申し上げますと、エストニアにおきまして、五九年の一月九日にセービンのもとのワクチン二万六千人分を投与しております。それで三月の十五日から六月にかけて、モスクワ製のものを六十五万人分をいきなり投与しております。それからリトワニアにおきまして、同じ一月に、千人分のセービン博士のつくったワクチンで試験投与を行なっております。それから三月以後、五十万人分を同じ地区で行なっております。すなわち、セービンのもとのワクチンによるテストをやりまして、いきなりモスクワ製のものを約百万人分エストニア、リトワニアで投与しておりまして、これは実験といえば実験でありますが、わが国の対象年齢の幼児が約百五十万しかいない、その上の年齢層はすべてワクチン投与を完結しておるという段階では、現在のようなステップをとるのは全くソ連の例と同じことであると私は理解しております。
  66. 田口長治郎

    ○田口委員長 谷口善太郎君。——十分の時間割り当てをいたします。
  67. 谷口善太郎

    ○谷口委員 本問題は人命に関することでありますし、私どもとしてはこの国産生ワクを開発することに賛成でありまして、したがって、りっぱなものに仕上げたいという念願を持っておるのであります。そういう立場から、現在起こっております国産生ワクに対する大衆的な不信、不安というものが、どこから起きてくるかについて明らかにする必要があると思いますので、私はこの問題につきましては、実は一カ月ほど前からいろいろ用意したのであります。きょうはできるだろう、きょうはできるだろうと思って、質問できる日を考えては質問の要項を書き直すこと五回、きょうは最後にできると思って用意してきたのですが、十分間ということであります。こういう重大な問題を十分間ではとても質問できるわけがありませんし、私の持っておる疑問を明らかにすることはできないだろう。ですから、端的に一、二の点について、幸い多ケ谷先生がおいでのようでございますから、お聞きしたいと思います。  二月二十日に国家検定を終わっております。その前に、政府の言っているところによりますと、国際的基準に沿うて製造し、国際的基準に沿うてそれらのことをやってきたというふうに聞いているのでありますが、実際に具体的にどういう試験、何をどういうふうにやられたかという点を明確に答えていただきたい。一番問題になっているのは人体実験をやったかどうか、そのことをお聞きしたい。
  68. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 いまのお話で、国家検定が終わりましたのは一月の二十日であります。国家検定が始まりましたのは昨年の九月でございまして、約四カ月かかりましてテストを終わっておりますが、ワクチンの国家検定と申しますのは、基準に定められました検定項目でありまして、これを一口に簡潔に言いますると、まずワクチンを構成しているビールスが、大もとのセービン博士の種のビールスとひとしい性状を備えておるという、つまり同定試験であります。これはいろいろな方法を使います。その最も重大なものはサルの神経組織によります神経毒力試験でありまして、これが標準のセービンの株とひとしいものであるということを確認するために、膨大なサンプルを使いまして脊髄、脳に接種して病理標本を調べます。そのほかにもいろいろ、もとの株と同じであるというテストをいたします。その第二は、ほかの迷入物がないかという安全性の試験でございます。これはサルのじん臓細胞を使いましてビールスをはやしまして、しかも生きたまま使います関係上、考え得るいろいろなビールスなり細菌なりが迷入する可能性がございます。したがってこれは非常に厳密な、考えられ得るあらゆる手段を使いまして実験動物あるいは組織培養、それもサルの細胞、人の細胞、ウサギの細胞といったような、考え得るあらゆる要因となるべきものを見つけ得る方法をもちまして迷入物がないということをテストいたします。そういったような安全性ともとの種との同一性、それからもう一つは、その中に含まれているビールスが、ちゃんと表示どおり含まれているかどうか、これは一種の力価試験になるわけでありますが、そのようなテストを1型、2型、3型、別々の原液につきまして——原液も、製造過程の二つの段階においてとりました原液につきまして調べます。その上で今回の政府の方針のように一、2、3型、三型混合したワクチンを使います場合には、その混合した最終の形態につきまして、さらに一回無菌試験あるいは一般的な安全試験及びビールス量の検定、そういうものを行なうわけでございます。
  69. 谷口善太郎

    ○谷口委員 人体実験はどうです、おやりになりましたか。
  70. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 人体実験は、国家検定の基準の項目の中には含まれておりません。
  71. 谷口善太郎

    ○谷口委員 社会党さんの「国産ポリオワクチン問題にたいするわれわれの態度」というのでは、「東京大学、慶応大学、日本医科大学において医師の厳重な監督のもとに数百例の試験投与がおこなわれて、事実上の安全実験がおこなわれている。」というふうに書いてあります。これは社会党さんの御報告ですから、社会党さんのお調べの結果だと思うのでありますが、こういうことはなさいましたか。
  72. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 これは私がお答えすべきことではなくて、むしろ厚生省の局長なり課長からお答えするのがほんとうだろうと思います。私の了解しておりますところでは、高津教授や何かは、一応これは国家検定が終わった安全な品である。したがってこれを、高津教授は実験ということばを非常におきらいになりまして、実験ではない。定期投与として御自分でお使いになるのだ。そういう正しい臨床観察や何かは非常に詳しく調べる、そういうお考えでおやりになったことと私は承っております。
  73. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますとこれば、厚生省としては、そういう実験をなさるようにそういう過程の中ではなさったのですか、いかがですか。
  74. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 私ども高津教授あたりから聞いておりますのは、いま多ケ谷先生のおっしゃったとおりでございまして、学者の方が任意に自発的にやっていただいたということで、厚生省側からそういうことをやってくれということを頼んだりした事実はございません。
  75. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、政府としましては、人体実験はしなかったということですか。
  76. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 今度の場合、先生御指摘のような人体実験はやらなかったのでございますが、しかし先ほど多ケ谷先生からお話がありましたように、過去におきまして、セービン博士の株によりますソ連あるいはカナダのワクチンを五十万人程度の人に実験をやっておりますので、その必要はないというふうに判断をいたしたわけでございます。
  77. 谷口善太郎

    ○谷口委員 政府は、WHOの生ワクチン投与についての勧告は御承知でしょうな。
  78. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 承っております。
  79. 谷口善太郎

    ○谷口委員 内容をおっしゃっていただきます。
  80. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 きわめて専門的なことでございますので、多ケ谷先生のほうから御説明いたします。
  81. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 WHOでは、数回にわたりまして印刷物として生ワクチンに関する刊行物を出しております。それでWHOの勧告が最後に出されましたのは、もし私の記憶違いでなければ、一九六〇年か六一年だったと思います。それで、それまでに二号ぐらい出ておりますが、一応WHOとしては、新しい生ワクチンの株を取り上げて、これを開発し、実行に移すべき場合には、こうこういうことをせいということをかなり詳しく述べてあります。それから同時に、WHOとしては、たとえばある特定の株を世界じゅうに使ってほしいというふうにすすめる立場にはございませんので、考え得る、たとえばポリオ生ワクチンについて言えば、セービンの株、コプロフスキーの株、ーコックスの株、いずれも三者取り上げまして、こうこういう株はこういうものであって、いままで調べた性状はこういうものである、したがって、こういうものをまず野外に使う場合には、これはその一つ前のWHOの勧告だったと思いますが、まず新しいこういう株をテストする場合には、ポリオが非常にはやっている、つまりポリオビールスで相当汚染されていて、しかも子供のうちにポリオにかかってしまうような地区が、まず試験投与をやるのにふさわしいであろう、そういうようなことにも一応触れられております。しかしながら、すでにでき上がりました一九六二年以降の世界的な情勢に関しましてのWHOのきまった意見というものは、その後WHOとしては発行されておる話は私は聞いておりません。
  82. 谷口善太郎

    ○谷口委員 先生おっしゃるとおりに、六〇年にたぶん専門委員会勧告が出ているように思うのです。私も詳しいことは存じませんけれども、私の知っている範囲では、六〇年に出ましたWHOのクロニクル、それにはこういうふうに書いてございます。私自身写してきたのでありますが、「ソビエトにおいて非常に大量な投与をやったり実験もやっている。それからその他の国々においても、セービン株による生ワクチンについては、相当の実験がなされておる。その成果の上に立って、新しい開発を同じ株で同じ方法でやった場合でも、製造及び投与に関しては」——はっきりとこう書いてある。「WHOの専門委員会勧告が厳守されねばならぬ。すなわち、使用される生ワクチンは、サルによる実験室テストで無害であることが証明されるだけではなく、さらに人体実験で無害であることが証明されねばならぬ。」これが勧告であります。日本政府は、お聞きのとおりそれをやっていないのです。人体実験をやっていない。それでもって国際的基準に沿うたやり方だ、こう言っておる。国際的基準に沿うたことをやってなくて、国際的基準勧告を無視してやっておって、そうして国際的基準に沿うてやっておるという、うそをついておる。うそをついて国民をごまかしておる。そうして一斉投与に踏み切っておる。私どもは、この日本の開発された生ワクは、非常に危険なもので、副作用があって、やったらえらいことになるというふうには考えておらない。日本の科学者はそんなばかじゃありません。世界的に私どもは信頼しておる。そういう科学者陣だと思う。けれども、新しく開発せられた生ワクチンについては、これはどんなに科学的な慎重さを持っても足りないので、したがってこういう勧告があると思うのです。この勧告を無視して、そうして国民に実はうそをついてやっているという政府の科学政策そのものに対して、国民は信頼してないのです。だからこういう不安が起こっているわけでありまして、実は私はこの質問を用意しましたときには、この日本の開発された新しい生ワクチンというものにつきまして、どう考えていいかわからないという立場にあった。そういう点から、日本政府のとっている非科学性については相当突っ込んで質問するつもりでおった。しかし、いまとなりますと、事実は投与の中から相当の被害が起きておる。さっきこの問題につきまして大原委員から質問がございましたが、政府は、事実は何人死者があって、どれくらいの発生率があって、どれくらいの障害が起きたかということ、この投与の過程での事故についての資料を持っていますか、持っていられましたらここへ出してもらいたい。
  83. 若松栄一

    ○若松政府委員 途中におきましてどのような事故があったかというお話でございますが、すでに投与を始めましたときに、投与直後に下痢を起こして急性腸炎あるいは急性消化不良症で死亡いたしましたり、あるいは肺炎その他の呼吸器疾患で死亡いたした者が多数報告されました。この者は、しかしポリオの生ワクチン服用とは直接の関係はないということは、専門学者の御意見の一致したところであろうと思います。そういう意味で、もちろんそのようなことに十分理解のない民衆の方々が非常に不安を起こして、そして関係があるのではないかというふうに考え、したがって地元新聞等で取り上げられた例は多々ございます。私ども承知いたしておりますものだけでも、九例ほど、いわゆるこれに関連して死亡したのではないかといわれるような報告が出ておりますが、それは全部、現在のワクチンに関する学問的な規範からいいますと、ワクチンの直接の関係ではなくて、偶発的に腸炎なり呼吸器疾患を起こして、それによって死亡したものであるというふうに考えております。
  84. 谷口善太郎

    ○谷口委員 もう時間がありませんから突っ込んで言いませんけれども、私の聞いたのは、政府としては何例くらい資料として持っていられるかということです。
  85. 若松栄一

    ○若松政府委員 死亡例として報告されましたものを九例、私どもとして存じております。
  86. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それはアカハタに出た例ですな。政府の調査でつかんだ結果でないでしょう。
  87. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま申し上げましたのは、いわゆる死亡として報告されたものでございまして、そのほか死亡でなくても、生ワクを飲んだために起こったんじゃないかという不安を持たれて報告され、あるいは報道された例は、私ども十四例ほど報告を受けております。しかし、これもすべて生ワクの投与とは直接関係のない、偶発的なものであるというふうに理解しております。
  88. 谷口善太郎

    ○谷口委員 アカハタのほうでも実は政府の資料と一致する。と申しますのは、アカハタのほうへは、あるいは共産党のほうへは全国から資料がきます。ですけれども、私どもは、さっき政府委員がおっしゃったとおりに、この問題を直ちに、生ワクを飲んだから、したがって死んだのだというような取り扱いをしたのでは、これはたいへんなことになるというので、一々厚生省当局に確かめた上でその分だけ載せておる。だから政府資料とわれわれの資料とは、一致するはずなんです。しかし、たくさんあります。しかし政府は、実際は、こういう問題に対しては相当慎重な機構と対策でもって対処しているようにさっきから言っておりますが、うそつきなさい、やっていないでしょうが。だって、どこかの例では、死者の場合、これは死者をすぐに埋めてしまって、民間の科学者が調査に行くことを妨害したのはだれですか。政府は資料を持っていないですよ。そういう持てるような体制を持っていない。都道府県知事や、あるいは地方の府県庁へ出したあなた方の注意書きにはどう書いてあるか。事故が起きたらどうだとか、あるいは事故が起きた場合には困るから事前にどうしろというようなことは一つも書いてなくて、国産生ワクは安全だから、反対運動をやっているやつの意見を聞くことなしに、強引にやれということだけ言っているのです。何も体制をつくっていないです。調査してないのです。いまおっしゃったとおり、新聞に出ていることをあなた方は材料として使っている。私どもは、何もこんなことでこれをがあがあ言って、ここで政治的な論議をしようとする気はないのです。だが、この態度はよくないというのです。セービン株であり、国際的基準に沿うて製造されたと私どもは思うのです。だから危険なものではないかもしれません。しかし、日本に初めてつくって初めて大量投与するんです。その前に人体実験をやっていないという手抜きもやっていますが、こういう問題につきましては、相当慎重に、政府の側では対処する体制とその準備が必要だと思う。その準備や体制につきましては、政府は、やっているやっていると言っていますけれども、やってないです。時間がないから私はここで事実をあげて言いませんけれども、幾らでも出します。せっかく科学者たちが努力をして国産生ワクをここまで開発してきたものを、もう一つ科学的に最後の仕上げをするという態度がなぜ政府はとれぬのです。なぜりっぱに、国民が納得し、国民がそうだ、これこそというふうになるような、そういう態度でもって科学開発ができないのですか。なぜあわてるのです。なぜあわてて大量投与をやるのです。そういう政府の態度こそ、国民が不信を持っている最大の原因なんです。科学者もこれはよくないと思うのです。こういう態度でなくて、私どもの言っているのは、さっき大原さんもおっしゃったし、伊藤さんもおっしゃった、私ども賛成です。ほんとうにりっぱな国産生ワクを開発するために、科学的にやるべきことを全部やるという余裕を持っていいじゃないですか。もし関係会社に損失を与えることがあったら、政府予算を出して関係会社を救いなさい。そして科学的に、ほんとうにりっぱなものを開発するということが必要だと思うのです。そういうことを私どもは言っておるのです。  私はまだいろいろ申したいことがありますけれども、政府はWHOの実際の基準をやっていないということを、ここで暴露をしたのです。あなた方やっていないです。基準に反している。基準を実行してないです。それでもって基準を忠実に守っているというふうに国民にうそをついている。その態度はよろしくない。(「それは独断だ」と呼ぶ者あり)独断じゃない。証拠を持っている。  終わります。
  89. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 先ほどのWHOのクロニクルのお話でございますが、WHOで一応ワクチンの製造、それから使用に関するリコメンデーシ・ヨンを出しておるところで、特にそういうようなことは申しておりませんし、もちろん同じ七一ビンの株でも現在世界じゅうの学者がいろいろ研究しておりまして、さらにもっといいものということで変異株をつくろうという試みが、非常にたくさんなされております。残念ながらまだ成功しておりませんが、もしそういうものができまして、たとえばサルの試験や何かで非常にすぐれているという結果が出ましても、これを使う場合には、もちろん慎重に人体投与のステップを踏んでやるべきだと私は考えております。ただ従来のものは、セービン博士からきた株で、しかもセービンの指示します基準に従ってつくったわけでございます。しかも同時に、わが国におきましては、過去においてソ連の品、カナダの品の検定の経験もございまして、製造法並びに検定法で考え得るセービンの同一性というものは、十分証明済みと私は確信しております。
  90. 谷口善太郎

    ○谷口委員 こうなるともう一言申します。  それなら申しますが、厚生省の内部で、問題がここまできたら、五千人ほどの人体安全野外テストをやるべきだという意見が出ておるのはどうですか。あなたは、人のふんどしで相撲を取った話ばかりしている。自分のふんどしでつくったそれについて、われわれは慎重な科学的な一切のテストをやれと言っている。これは国民の要望だと思う。WHOの場合も、新しい株を開発したとかいうことを聞いているのではない。これははっきりと、セービン株によってソ連あるいはアメリカ、カナダ、イギリス、こういうところがやっておる。このこと自体を成果として、その上に立っての勧告なんだ。  終わります。
  91. 田口長治郎

    ○田口委員長 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      ————◇—————    午後一時二十八分開議
  92. 田口長治郎

    ○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  去る二日の委員会において、法案審査のため参考人より意見を聴取することに決し、その人選等については委員長に御一任願うたのでございますが、本日、日本医科大学教授村上勝美君及び子供小児マヒから守る中央協議会事務局次長、新日本医師協会幹事長久保全雄君の両君が参考人として本委員会に出席されておりますので、御紹介いたします。  なお、国立予防衛生研究所腸内ウイルス部長ケ谷勇君が説明員として出席されております。  参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人の方々には、御多忙のところ御出席いただきましてまことにありがとうございます。  本案については各方面に広く関心が持たれておりますが、当委員会におきましても、この機会に本案に深い御関係をお持ちになっておられる参考人の方々から忌憚のない御意見を伺い、審査の参考といたしたいと存じます。  なお、議事規則の定めるところによりまして、参考人の方々が発言なさります際には、委員長の許可を得ていただくことになっております。また、参考人は、委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、以上あらかじめお含みおきを願いたいと存じます。なお、議事の整理上御意見をお述べ願う時間はお一人十分ないし十五分程度とし、参考人各位の御意見開陳のあと委員の質疑にお答え願いたいと存じますから、よろしくお願い申し上げます。まず、村上参考人。
  93. 村上勝美

    ○村上参考人 私は村上でございます。本日は参考人として何かお役に立つことができれば幸いであります。  このたび、予防接種法の一部を改正する法律案に関する件だと思いますが、内容を憶測いたしますところ、今回の生ワクチンその他に関するいろいろな問題点があろうかと存じております。私がいままで考えておりますことを率直に申し上げますと、今回いろいろ問題になっております国産生ワクチンにつきましても、私ども臨床家といたしまして、結論的に申し上げますと、これは従来の外国産のものと比べて少しも遜色がない、むしろたいへん進歩したワクチンだと思っております。実際にこれにつきまして、ウイルス性神経系疾患の鑑別に関する研究会がつくられておりまして、またそれを中心にした監視部会というのもつくられております。その後の発生が非常に少ないということ、それから生ワクチンを飲んだあとのいわゆる疑わしいケースと申しますのがたいへん少ないということで、このデータは、世界各国のいろいろなものを参考にいたしましても、まあ満足すべき成績であろうというふうに存じております。  それでいろいろ問題点があって、たとえば先般来死亡例があるというようなことで、すでに厚生省の説明会で私も発言いたしましたように、ちょうど時期が子供の急性下痢症の非常に多い時期に遭遇しておったということ、またそれが四、五年来の比較的患者の多い年に遭遇しておったということで、対症のいろいろな日常の診療上の経験から申しましても、それは決してワクチンとは関係がないであろうというふうに考えております。それで死亡例を一例ずつ検討いたしましたところが、一つも関係がないという結論になっておりますし、私もそう確信しております。  それから、その後少数の何か疑わしいというような症例があるようでございますが、中央監視部会で検討いたしました結果、これはいろいろな基準を置いておりますが、たとえば小児麻痺と臨床上は区別がつかないというのがA、それから疑わしいけれども小児麻痺によるものとは断定できないというのがB、全然違ったものがCということになっておりまして、これは三十七年、三十八年両方ともいろいろと検討しておりますが、その比率はほとんど変わっておりませんで、毎年、疑わしいかと思われる、否定できないというのが三十七年に三例、それから三十八年が、現在のところはAグループに属しますのが十例でございますけれども、そのうちに一例がどうやら疑わしいのではなかろうか、こういうことで、カナダの成績あるいはアメリカの成績、それからソ連でも初期にはそういうことが、たとえば数百万人に接種して十五名の麻痺患者が出たというようなこともございまして、これは現在の学問的段階においては、確かに小児麻痺のビールスによって起こるということは決定しかねる状態でありますが、一応念頭に置いていろいろなことを各国とも施行しておるようでございます。  それで、この予防接種法をソークから生ワクチンにかえるということは、私どもは早くからそれを主張しておりました。と申しますのは、ソークワクチンではやはり完全でない。中和抗体のあがり方が、一回目、二回目では、全体の百人のうち三十人か四十人しか免疫体ができない。そうして第三回目をやりまして初めて七〇%ぐらいに率が上がる。その間約八カ月から九カ月かかるのでありまして、その急激な防疫というのには非常に不向きであります。したがいまして、世界各国とも生ワクチンに切りかわったようでありますが、生ワクチンは、やりますと私どもの経験でも非常に早く、しかも九〇%以上中和抗体ができます。それで、厚生省がおやりになりましたいろいろなことは、私どもがかねがね考えておったことを、つまり私どもの意見がいれられまして、そうしてあのじゅうたん投与という形になった。これはソークではとても間に合わない、生ワクチンでなければいけない。それから、前に申し上げました中和抗体のあがり方から考えますと、どうしても今後は生ワクチンでいくほうがよかろうということを私どもは信じております。  それで、ソークワクチンのほうは、こく初期にその中に生きたビールスがありまして、アメリカではたいへん人体実験みたいにポリオが発生したことがありましたり、いろいろな点がございます。最近は製品が非常によくなっておりまして、そういうことはなくなっておりますが、受ける側の子供の立場としますと、私どもは、どちらかというと、予防接種というのはできるだけ副作用の少ない、しかも経口的にやれるものがよろしい。と申しますのは、注射というのは子供自身にとりましては非常なストレスになる。このストレスというのは、たいへん心理的にも、肉体的にも目に見えない害があるというふうに考えております。  そういうことで、この予防接種法の案をちょうだいいたしておりますけれども、これには賛成でございますし、また国産の生ワクチンというのは、私が、少数例ではございますが実際にやりました結果、副作用というのは下痢が三十例中三例、それが一日くらいでなおっております。子供は、大体におきまして、春から夏にかけましては、一〇ぐらいはいつも何か故障があるものです。昔は一五%と言っておりましたが、一〇%ぐらいは何か故障があるもので、それに偶然当てはまるのか、統計学的にはやはり有意の差ではないと考えております。特別これといった副作用というものは、臨床上感じておりません。  簡単でございますけれども、私の意見を申し述べさしていただきました。(拍手)
  94. 田口長治郎

    ○田口委員長 次に、久保参考人にお願いします。
  95. 久保全雄

    ○久保参考人 私は、医学を探究する者の一人として、また新日本医師協会の幹事会を代表して、さらにポリオを日本から完全に追放するため努力しておる母親、労働者たちによってできている子供小児マヒから守る中央協議会の役員として、初めて国産量産化されるポリオ生ワクチンの製造することを聞き及んだとき喜んだ次第であります。しかし、その量産化は、拙速を排し、動物実験、対人少数実験、大量フィールド実験を積み重ねて、安全にして完全、優秀な国産生ワクチンを製造せよ、そのために必要な研究機関、衛生研究所を充実強化せられたい旨を時の西村厚生大臣に申し入れて以来、数回にわたって要請を行なってきました。この要求は、厚生省が正式に選んで派遣したところの海外ポリオ対策研究調査団の報告とも合致しており、完全な生ワクチンを保障するための条件であるのに、この要求は完全に無視されて、人体安全テスト抜きに強行されました。そしてすでに二百万人の乳幼児が飲まされた。だが、その結果はどうであったか。新聞に報道されたわずかな資料をとってみても、九名の死亡、六名の麻痺患者が出た。死亡者に対しては何ら細菌学的にも疫学的にも探求されず、簡単にワクチン接種に関係なしと即断し、大衆に不安を植えつけるような非科学的なことを行なっただけでなく、気の毒にも二月の二十七日投与、三月十三日発病した名古屋市の患者、二月二十八日投与、三月十四日発病した同じく名古屋市の患者、三月七日投与、三月二十一日に発病した大阪豊中の患者、三月九日投与、三月十九日発病した兵庫県赤穂の患者、三月二十四日投与、三月三十一日に発病した大阪の患者及び熱海市の患者で六名の麻痺患者が出ている。若松、熊崎両局長をはじめ、ここに御出席せられておる多ケ谷技官諸氏は、絶対に安全だから心配ないと言われたが、この犠牲者に対してどのように考えておられるか。しかもこれらの麻痺患者は、ポリオが流行していない時期に、しかも接種後に麻痺症状で発病したものである。  ここに外国の例をとってみましょう。カナダ、アメリカでは、百万人に一人の発病者が出ても一時投与を中止した。しかも夏季の流行期であったが、慎重に検討した。今回は流行期でないのに、次々と疑わしい麻痺患者が発生したにもかかわらず、投与は強行された。はたしてこれが国民の健康を守る厚生省のやってよい態度であろうか。  次に、投与の問題についてもわれわれは重大な提案を行なってきた。それは何よりもワクチンの量産化、大量投与などは、学問的に権威を持つ関係諸学会の協力を得て投与の方法論を確立し、実行に当たっては、投与後の経過観察に関し保険医療機関と研究機関を総合的に運用し、対症者全員の理解のもとに行なわなければならないことを要求してきた。このことをも無視された。そこでわれわれは厚生省に対してその不当を抗議するとともに、このようなことは学問的に許されるかどうか、四月二、三日に京都で開かれた第三十四回日本衛生学会総会に対しその見解を求めた。その結果、同学会の幹事会及び評議員会では、これは重要な問題で十分な検討の必要があるとして特別に委員会を設け、検討することになったという連絡があった。これを見てもわかるように、実施に当たっては、いままでの慣例によっても関係諸学会の統一された見解の上でやるべきである。  しかるに一部の学者と厚生官僚だけによって簡単に実施しようとすることは、科学の原則を無視し、人命を軽視した行政のやり方である。このような事実は、厚生省の首脳部の内部でも心配していたことである。たとえば前薬務局長の牛丸氏は、検定基準をつくる場合は人体安全テストが必要であると言われていた。ところがアメリカからのセービン株がおくれて届いたこと、細菌製剤課長が予算を組まなかったこと、製造がおくれたことからお流れとなり、予研の検査がおくれたことなどから、人体安全テストは必要ないというように変わってしまったのである。このことは、某新聞記者に牛丸氏自身が語りたところでありますが、一般世論になっている。また、麻痺患者や投与後の発熱、下痢、嘔吐患者が想像以上に多いことに医師や大衆は驚いていると同時に、それをひた隠しに隠そうとしている行政官僚たちに対し、不安はますます大きくなっている。  昨日、子供小児マヒから守る中央協議会の齋藤定信氏が前葉務局長を訪問した際、完全実施のためには人体安全テストが必要ではないかという問いに、完全、実施のためにはそのほうがよいであろうと答えた。また実川技官に、接種が通ったとしても今後の投与に母親たちの不安を消すことができなければ、問題は残るではないかという問いに対し、もちろん残されるであろうと言っている。この事実からしても、厚生省は、予防対策に関してあまりにも軽率な実施を無責任に強行したことになり、許すことができない。厚生省の関係者は、投与前に三百名の子供に飲ませ、検査したと発表しているが、どのように検査し、安全であるという論拠を出されたのか。生ワクが完成されたのは一月二十日となっているが、一月二十八日から数百例の検査が始まっていると言っているが、もし厳密な科学的検査をするならば、少なくとも二カ月以上はかかるはずです。それなのに、二十日足らずにおいて実施している。このようなテストで、安全性及び効果性に対する結論がどこから科学的に証明されて出されているのか。それが大衆にとっては、不安におとしいれている一つである。いま全国各地では陳情、署名の運動がますます高まりつつある。この混乱は無責任きわまる実施から起こるものであり、また予防法通過後には、各地方自治体では他のワクチン予防接種と同様に医師会委託の問題も発生し、厳格にやらるべき予防接種は、その場合でも混乱を免れないものであろう。  予防接種を社会医学の立場から検討される場合、日本脳炎ワクチン、やがてやられることであろうはしかワクチンの問題、目下テスト中の流感生ワクチンの問題に関しても、同様にそのルーズさからやがてまた大衆の大問題となるであろうし、国家検定が通っており、強制接種で行なわれている種痘で、毎年十数例ないし二十数例の死亡者に対して何ら問題にされずに経過してきておりますが、これらのあらゆる問題に国民大衆は引き続き抗議を行なうであろう。よって国産生ワクチン第一号は一時延期して、その実施に再検討を加えるべきである。これは私の意見であります。(拍手)
  96. 田口長治郎

    ○田口委員長 次に、多ケ谷説明員にお願いいたします。
  97. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 国立予防衛生研究所の多ケ谷でございます。私はいままで参議院の社労委でもいろいろ御説明申し上げましたので、私のこまかい陳述は議事録を御参考いただければ幸いと思いますが、ただいま時間が十分ないし十五分というお話でございますので、問題をしぼりまして、私の見解を二、三お述べしたいと思います。  生ワクチンに限らず、すべてのワクチンでも同様でございますが、非常に大量に投与いたしました場合に’そのよって起こる考え得る事項あるいはその効果、そういったものの判定というものは、ただまい久保参考人の申されましたように、相当慎重にやらなくてはいかぬということは私も同感でございます。それでこの生ポリオワクチンにつきまして、先ほど言及されましたカナダとアメリカにおきまして、一九六二年において疑わしい例があるので一時投与を中止したというようなお話でございましたが、アメリカでは、これは年をとった者に対する投与を慎重に行なえというような勧告を出しておりまして、年少者の投与を停止したことはございません。カナダのほうは、約四百万人投与しまして四人の疑わしい麻痺患者が出たというので、一時投与を延期しましてその対策をいろいろ調査した、そういうことはすでに学会誌にも報告をされております。しかしながら、これに対しましてこのワクチンの創始者であるセービン博士が、その後アメリカ当局の出したデータにつきまして、相当詳しく一例一例批判しておられます。それでこのセービン博士の論評をもってしますと、これは疑わしいといわれた患者を、医学的な根拠のもとに無理にワクチンと結びつけることは不可能であるというように、セービン博士が一々否定していかれた例が大部分でございます。それで、その後アメリカの公衆衛生当局もさらにこの調査を続け、一、二ワクチンによって起こり得る可能性もあるし、また起こった積極的な証明もつかない一これは日本語の適当なことばがないのでありますが、英語ではコンパティブル・ケース、両立し得るケースと言っておりますが、そういうものを初めに十六例ほど出しましたものを、さらにしさいに検討して、一、二それに該当しないというものを訂正いたしておりましたが、その後生ワクチンの安全性と効果という点につきまして、一九六三年早々にアメリカ公衆衛生当局ば声明を出しまして、いままでの事例を検討した結果、生ワクチンはやはりポリオの対策として最も有効な道具である、したがってこれの投与は一、2、3型とも継続しよう、そういう結論を出しております。  それからカナダの場合には、約一年たちまして昨年の十一月に、やはりカナダの公衆衛生当局が、従来報告された四例についてその後いろいろしさいに調べたが、この四例とも、生ワクチンによるという積極的な証拠は学問的についに立てられなかった、かつその生ワクチンを投与した地区におけるその後のポリオの発生状況、抗体のあがり、そういうものを詳しく検討した結果、生ワクチンは大いに使おうという政府の方針を披瀝した文書を公式に出しております。  それでわが国におきましても、昭和三十七年のちょうど秋でございますが、当時生ワクチンが三十六年に非常に効果をあげまして、引き続いて大量の投与が三十七年に行なわれたのでありますが、九月にそういうようなカナダの発表がありまして、引き続いてアメリカもそういう見解を出したということで当時はわが国でも、先ほどの海外調査団の趣旨を生かしまして、生ワクチンを投与したあとのそういう疑わしい患者、あるいは投与の効果をさらに確認するための、つまりポリオ容疑患者として届け出られている患者を一々詳しく検査する委員会というものをつくりまして、その手で情報を集めておったのでありますか、当時カナダあるいはアメリカに見られたような疑わしい例というものがやはり数例、先ほど村上参考人が述べられましたように目についたわけであります。それでそれをしさいに検討する一方、当時3型ワクチンが非常に重要な問題であるということをカナダが言いまして、アメリカでも大体において一、2、3型別別に投与いたしました関係上、3型ワクチンについてのみ注意を喚起されておって、1型、2型については何ら危険性はないという意見だったわけであります。それで当時すでに、これは私の口から申し上げるべきことではないかもしれませんが、決定しておりましたカナダの3型ワクチンを中止しまして、一応絶対安全であるといわれておりますソ連の3型ワクチンを三十八年には投与に取り上げたわけであります。それで三十八年度も、前記のような一年間のポリオ容疑患者の届け出患者の詳しい個別カードの収集、それから検査成績をしさいにそういう委員会で検討しておりますが、三十八年度はまだデータが全部完成しておらないようでありまして、検査の成績は全部集まっておりませんが、その中でやはり3型投与後一カ月以内にポリオ様の麻痺患者というものが約九名出ております。それにつきましては、先ほど村上教授が言われましたように、症状的にはポリオとよく似ておるということでございますが、これをビールス学的に検査いたしますれば、当然生ワクチンを飲んでおりますから、ある程度の生ワクのビールスがふん便から出る。それから急性期と回復期の抗体調査をすればそういう抗体もあがっておるということで、こういう生ワクチンの感染が考えられるわけであります。しかしながら、かような症状を起こす病気というものは、エコー、コクサクキー、そのほかの腸管内でふえるビールスとしていろいろ報告されております。わが国におきましても、たとえば昨年度はコクサクキーのAの7というものによりまして、これは生ワクの投与とは無関係の時期にではありますが、やはりポリオ様疾患の麻痺というものが報告されております。それでそのようなものが見つかった場合は、一カ月以内に起こった疾患がポリオでないという断定はつくのでありますが、そういうことが見つからない場合には、これは非常にむずかしいわけであります。したがって、セービン博士が言っておられますように、その症状のかなり厳密な範疇を設けると同時に、たとえば抗体のあがり方が少しでもおくれておるものは、その生ワクを飲んだ時期に腸管内のほかのビールスがふえておって、そのためにそういう疾患が起こる、ポリオビールスのふえがおくれておると判断するというような一応の基準もありますが、そのように非常にむずかしいものであるということをひとつ申し上げておきたいと思います。  それから、これは三十六年、三十七年当時の記録をいろいろめくってみればわかるのでありますが、このポリオ容疑患者と見られます者の中で、約三分の一だけが臨床的にポリオの症状を備えておるものでありますが、生ワク投与後の一つの特徴としては、夏場のポリオの発生しておる時期に集中をしない、いわゆる季節発生曲線が消失するということが、生ワクチンの効果の最も顕著な例とされております。すなわち、生ワクチンを使っていない国におきましては、日本もそうでありましたが、大体六、七月ころから九月。ころまでが山である、発生する、そのほかの時期の発生はごくわずかである。ところが生ワクチンを投与いたしますと、そういう高い山が消えまして一様に年間ばらばらばらばらと、そういうポリオと似た症状が出ておることになるわけであります。したがって季節曲線が消失した後に、生ワクチンによるものが、はたしてある一つの時期に集中しておるかどうかというようなことも、一つの判定の基準になるわけであります。しかしながら、たとえば三十七年度と三十八年度を比べてみますと、幾らかその月別の発生の山に相違がございます。それで三十九年度はどうであるかというようなことは、今後一年間の推移を見なければわからないことでございまして、このような成績を判断するためには、やはり相当長期の観察と同時に、なるべく厳密な実験室内の検査と、さらに臨床的な信頼のできる診断を合わせて、数年間のデータをとりながら判断していくことが非常に大事だということを、私は特に強調したいと存じます。(拍手)     —————————————
  98. 田口長治郎

    ○田口委員長 参考人に対する質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  99. 滝井義高

    滝井委員 久保先生にちょっと二、三点お尋ねしたいのですが、問題は、生ワクを投与する場合に、国産生ワクチンでは人体実験をやっていないので、野外実験をやっていないので、いろいろと障害が起こる、したがって母親の気持というものが非常に不安になっておる、これが現状だと思うのです。そうしますと、端的に言って、いまわれわれはこの母親の気持をやわらげることが一番必要なんです。具体的に一体どうすれば母親の気持をやわらげることができるか、これをひとつお示し願いたい。
  100. 久保全雄

    ○久保参考人 それは、だれもが納得するような科学的な発表をやっていただく、その場合には、母親たちだけでなく学者も全員が納得する。国産生ワクの第一号という点に一番の問題があるというふうに考えております。第一号をつくられる場合には、少なくともこれを人体安全テスト——安全という上に立って、動物実験の上に人体実験というのが科学の常識であろう。これはいかなる科学の文献にも書かれてあるだれもの常識になっておる。それが抜けておって、発表されておらない。だから初回の生ワクチンというものに対する不安−生ワクチンそれ自体に関しては、おかあさんたちの切望はいまでも消えておりません。国産生ワクチン第一号という点に関して安全テストをやっていただくということと、実施した患者、対象者に対しては、効果判定を少なくともやっていただきたい。少なくとも投与後の経過の状態を調査していただきたい。そういうものの論拠の上に立って次の投与の計画をどういうふうに進めるかということを十分検討して、そうして納得のいくような形のときには大衆は喜んで協力する気がまえでおる、こういうふうに言えると思うのであります。
  101. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一番問題は安全テストの問題になるわけですね。あとの問題は、実施したあとの患者の効果の判定とか、投与後の経過の調査というのは、これは国産のワクチンでもできるわけで、現在安全テスト、人体実験をやっていないということが一番論点の急所になるような感じがするわけです。そう理解して差しつかえないでしょうか。
  102. 久保全雄

    ○久保参考人 人体実験ということは、現在二百万飲まされたということで、これはモルモット以下の扱いを受けたというふうにおかあさんたちは考えている。安全テストというのは、少なくとも安全性の保証を持ちながら経過を観察し調べている、そういう結果がどうであるかという発表が出される、そういうことをまずやってほしい。それをやられなかったという点に関して、少なくともその安全性というものを確かめる再検討をやっていただきたいというのが、母親たちの気持ちであります。
  103. 滝井義高

    滝井委員 ところで、すでにこの前の衆議院の本会議の質問では、百六十万人程度終わっているという現実があるわけです。衆議院の予防接種法審議が幾ぶんおくれているために、すでに百六十万済んでしまっておるという現実が、さいぜんのお話では二百万というお話もあったのですが、その現実があるということです。その現実の中で、やはり不安を解消する方法を見つけざるを得ないと思うのです。そうしますと、その現実の中で、一体久保さんとしては、どう不安を解消していくかということをお聞きしたいわけです。それになお人体実験をやらなければならないということになれば、問題は、二百万実施したその結果がほんとうワクチンのどこかに欠陥があったために、製造過程なりセービン株自体に欠陥があったために九名か十四名かの事故が起こったということになるのか、それとも、ワクチンを内服させることによって、野外実験をやった外国製品にも起こるようなものであるとすれば、これはたいして問題がないわけです。ここらが私は現段階では非常に重要なところだと思うのです。そこで母親の気持をやわらげるためには、輸入品においてもこの程度の事故は起こりますよという証明が一方においてあり、そしてその証明と国産ワクチンの事故がたいして変わらないということになると、これは現実に人体実験をやったと同じ結果になっておりますから、たいして変わらないのじゃないかという感じがするわけです。ここらの究明を久保さんとしてはどうお考えになっておるのか。問題は、もう過去の死児のよわいを数えても問題は解決しない。すでに百五十万なり二百万人に予防接種をしたいということ現実に立って、すでに国産の第一号で人体実験をやられたわけです。したがってこれの批判を少しやってみる必要がある。この結果が、外国の品物と比べて相当大きな欠陥があるものだということが認められるのかどうかということを、もし御検討になっておれば御説明願いたいと思うのです。  同時に、多ケ谷さんのほうがわりあい基礎的なことをおやりになっているのですから、さいぜん、季節的な曲線の消失が生ワクチンにある、その後はばらばらと出てくるというようなお話があったわけですね。そのことは、外国のものを飲んだ後にもそういう結果があるわけで、そうしますと、今度の国産ワクチンを飲ました後における——これは二月から始まっているのですから、飲ましてだいぶんなるわけですね。これは当然学者として、あるいはこういうことに関係を持っていらっしゃる多ケ谷さんとしても、速急にデータを出す必要があると思うのです。幾ぶんの御検討はされておると思いますが、そこらのところも、あわせて多ケ谷さんからも御説明願いたいと思います。先に久保さんからひとつ。
  104. 久保全雄

    ○久保参考人 まず外国のものと今度のものが同じであるかどうかということに対するはっきりした科学的な解明を拝見してないわけで、死亡した患者九名、これに関しては、一名の解剖例を除いてはほとんど、私たち会員が調査したところによると不明であるという報告の後に、今度は、そうでないというようなことが言えるというのは、少なくとも科学的でないのではないか。また一死亡にも経過報告が載せられております。それに対して、一々そうでないという小児科の諸先生、専門家のことばはついておりますけれども、無診にして遠くで判定を下すということが、社会的な影響でどういうことがあるかということを、まず医学者も医者も考えていただきたい。現物を見ないで、検案をしないで東京で関係ないと言っている、この非科学的なことに対して母親たちはそれを了解していない。あるいはすべて解剖され、それから菌の検索がされ、あらゆるものでそうでないという結論が出たものであれば、母親たちもそれを是認するでしょうけれども、そういう形のものを見せていただいてないという点が第一点。  それから現在起こっている麻痺患者の問題にしても、結果が出るのはもっとあとだ。これらは数日にして病名がそうでないという結論がついておる。少なくとも諸検査をやれば、これはもう一月近くはかかるであろうのに、そうでないという結論が出ている。こういうことも母親たちを不安にすると同時に、一般の良識ある医学者であれば、これはやはり一方的ではないか。だれもそうだということを言っている人は一人もないのです。ないのですけれども、そうでないという結論が先に出される。不明というのであれば話は別でありますが、そうでないという結論になっている。だから今後やる場合のやつは、少なくとも実施の方式を保険医療機関と総合的に持って、そうして投与事前の観察、事後の経過を調査をし、万一の場合の治療体制もきちっと確立させる中でやるというような形がまずとられるべきではないか。そのためには、少なくともどういう地域から始めるか、あるいは全体にかけるとすればどういうことになるのか、そういう問題に関して十分検討していただきたいというのが、私たちの見解です。
  105. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 先ほど御質疑のありました点について私から申し上げます。  昭和三十七年でありますと、たとえば届け出のポリオ患者、臨床的に一応地方の現場のお医者さんがポリオとして届け出られましたものが、一月十二、二月十八、三月十六、四月十六、五月二十三、六月二十二、七月三十二、八月三十五、まずこういったようにやや夏場がふくれておりますが、一月と八月の間がせいぜい三倍くらいです。ところが、これがすべて先ほどの臨床的にポリオであると断定できないものが入っております。そういうものが、ただいま久保参考人の言われましたプロトコールを見ただけで判定のつくものであります。そういうものを除きますと、あとはいろいろ詳しい調べをしなければ判定がつかない。先ほど村上教授の言われましたグループAというクライテリアに入るものが残るわけであります。それが三十七年度では一月八例、二月三例、三月六例、四月二例、五月十一例、六月六例、七月十四例、八月六例、九月十五例、こういったような数になるわけであります。三十八年度になりますと、全体の届け出の患者が三十七年度に比べて約半減しておりますが、この場合におきましても、たとえばその届け出の患者は、一月六名、二月十名、三月七名、四月九名、五月十名、六月十七名、こういう数で進行しております。しかしながら、これを臨床的の症状をきっちりと整理しまして、ポリオであるかないかは詳しく調べなければわからないという例だけを残しますと、一月二例、二月二例、三月二例、四月三例、五月六例、六月六例、ここでちょっとふくれまして、七月三例、八月三例、そういうことになっております。したがって届け出患者と申しますのは、一応現場のお医者さんが、これは小児麻痺ではなかろうかということで手続をとるわけでありまして、それを臨床の症状や何かで、たとえばあとになって、これはどうも全然違うものが入っていたということで、現場のほうから転症を届け出て取り消すこともあります。しかしながら、取り消されないでポリオ患者として記録に残るものが大部分であります。それを現場の症状をすべて——厚生省におきまして一つのホーミュラをきめた個人カードを全国に配っておきまして、それに詳しい検査症状を書き入れて中央に送ってもらい、それを東大の高津教授を班長とする先ほどのサーベイランスといいますが、ポリオの鑑別診断分科会で詳しく討議をしまして、最終的にこれがAグループのものだろうということをきめます。したがって、一年間の総決算が出ますのは、翌年の大体二月かそこらになるわけでございます。それで本年度の分につきましては、私どものほうは、そういった臨床及び疫学的な方面とは違いまして、ワクチンの検定と基礎的研究でございますから、この検査成績には非常に関心を持っておりますが、まだ本年度の患者発生数の詳しい個別カードといったようなものは拝見しておりませんので、本年度の資料につきましては、まだ的確に把握しておりません。
  106. 滝井義高

    滝井委員 母親の気持ちとしては、飲ませたい気持が非常に強いわけです。ところが飲ませるとすれば、国産ワクチンで子供が死ぬかもしれないという気持ちがある。ところがこれを飲ませないと——これはだんだん少なくなりましたけれども、野生のビールスで小児麻痺になるかもしれないという恐怖心があるわけです。このジレンマの中にいまあるわけです。したがってこのジレンマ、母親の不安の気持ちは、外国の品物を輸入して飲ましたら解消できるかということ、第二点としてはここです。そうするとその場合に、一体この品物はほんとうに外国の品物の輸入品であろうか、また国産ワクチンとすりかえて飲ませていはしないかという不安が出てきはしないかという感じがするわけです。ここまでくると、これは政治に対する不信感なんでしょうね。この気持ちが、三十五年に流行があり、そして母親の強い要請によって生ワクを輸入した、そうして輝かしい功績を立てて、当時の厚生大臣に強く迫って、勇断を持って古井さんが生ワク実施した、こういう歴史的な経過があるわけです。したがって外国の品物を入れても、その外国の品物を信頼するかどうかという問題が出てくるわけです。ここらの問題が一つと、それからいま一つは、では生ワクを外国の品物を入れて飲ませたとたんに、子供が下痢を起こして死ぬるということが起こらないかという保障、これはないわけですね。ここまでくると水かけ論になってしまう感じがするわけです。ここまでくれば、もうすでに百六十万も二百万も飲ませているのですから、もし生ワクを飲ましたことによって子供に事故が起こったというときには、全責任を政府が持つという形をとる以外に方法がないのじゃないか。私はここまでくると政府不信感だと思うのです。輸入をするにしても一日、二日で輸入ができるわけではないから、輸入した品物を具体的にわれわれのかわいい子供に届けて口から飲ませるためには、これはどんなに早くたってやはり二カ月はかかると思うのです。そうした疑いがあれば、外国の品物も国で輸入したあとで人体実験をやってくれという要求だって起こると思うのです。そうしてこれが四、五カ月かかるということになると、これは問題の打開の方法としてなかなか困難だと思うのですが、一体この矛盾と乱れた麻の中で、政治としてはどう快刀乱麻の結論を出していくかということを、久保さんなり村上先生なり多ケ谷さんにお聞かせを願いたいところなんですね。このジレンマを一体どうするか。輸入品を入れても、もうここまで疑いを持った母親に、この飲ましているのは、先生ほんとうに外国の品物ですか、この外国の品物も人体実験をやったのですか、こう言われた場合には、これはやはり人体実験をやらざるを得ないと思うのです。そのことについては久保さんも、輸入品だって人体実験をやるべきだという、この主張は変わりないのでしょうね。この乱れた気持を何か解明する方法はあるでしょうか。これがなければ、もう政府の責任で実施をして、もし下痢であろうとワクチンを飲ましたことによって死亡が起これば、政府がやはり責任を持つという体制をつくるよりほかに、この段階では方法がないのじゃないかと思うのです。これに対する先生方のお考えをあわせてお聞かせ願えれば幸いだと思います。これはむしろ大臣に聞くほうがいいかもしれぬが……。
  107. 久保全雄

    ○久保参考人 おかあさんたちの生ワクの要求は、日本のものを排撃していることは一回もないのです。とにかくいい生ワクチンであってほしいというのが最大の願いです。だから外国のものより優秀であるということばは、すなおに受け取りたかった。しかし外国のものより優秀であるという対比実験が見せられていない。対比実験がやられなかった。それから人体安全テストの要求というのは、ソ連の生ワクチンのときに、三回にわたって予研並びに金沢大学予研という形で寄贈しているのに、これをやらなかったのは政府の側だった。今度の場合も安全テストをやってほしいという願いがある。これはおかあさんたちの願いは前と違っていない。飲んだいまとなっては、少なくとも飲んだ人たちの経過観察と効果判定をきちんと調べてもらいたい。それから今後の投与に関しては、少なくとも投与方式を改めてほしい。サーベイを確立して、滝井先生が言われたような全部の保証、明らかにそうであるというものの保証ではなくて、疑わしきものすべての保証をやるという中で研究を進めるという態勢がやはりなされなければならない。  それから輸入品の問題が出ておりますけれども、おかあさんたちは、国産をやめて輸入しろということは一回も出していないのです。万一、流行の危険性が予知されるならば、そのときには三カ月から一・五歳までのものではなかろう、相当年齢の上まで流行がくるものだ。その場合には、わずか生産量六百万人分のものではどうにもならぬであろう。その場合に、外国のかつて経験のあったものを入れてほしい。それから同じ兄弟にソ連のワクチン、カナダのワクチン、日本のワクチンを飲ました経験を持っている子供の親たちが、その飲ましたあとの反応からソ連ということばをつけてあるのであって、このソ連ということばは科学者が言っているわけでもないし、だれが言っているわけでもなく、母親たちの、飲んだ自後の子供に対する育ての中から出てきている願望である。こういうものは安全というところから出てきているので、政治の問題というふうにはおかあさんたちは考えていない。ですから、国産生ワクチンをよりよいものにしてほしいという願望、それについて手だてを講じていただきたい。それから万一流行の予測、予知があるのでしたら、暫定的に、いままで使った経験のある優秀なワクチンを使っていただきたい。この点では、おそらく労働組合であろうと母親であろうと、どんな人たちも違っていないであろう。
  108. 村上勝美

    ○村上参考人 私は、理論的にはやはり十分慎重な態度をとることが必要だと思います。世界各国を見ておりましても、英国のごときは非常に慎重なようであります。これは国民性あるいは国柄と申しますか、まだ予防接種が英国では強制的ではありません。しかし、事ポリオに関しては、義務的ではないのですが、自発的に七、八〇%近くそれを受けるという、関心が非常にある。そういう国柄でありまして、非常に慎重でありますが、大体が大流行のなかったところでありまして、日本と国情が違う、あるいは国民性が違うという点も私どもは考えております。それと国産につきまして、技術的なことは多ケ谷さんからお話があると思いますが、私ども臨床家といたしましては、結局ソークワクチンの開発というのを自発的に始めまして、その技術というものは非常に高く評価しております。原株がやはりセービンの株からきている、世界で最優秀といわれておりますから、その点でまず最初に安全である。製造工程その他非常に厳重にやっているということでありまして、どういう事情で国産を急にやったかという事情は私は存じませんが、いまの状態ではそのまま推進してよかろうという、臨床家のほうから多少妥協した気持ちもあろうかと思いますが、せっかく行なわれて系統的に大流行を防止し得た、そのあと始末という点では抜けてはいけないことだというふうにいま感じております。
  109. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 先ほど参考人が申されました完全な患者の調査、それから抗体有効性のサーベイ、これは私どもも数年前から政府に、政府の正規の事業としてやれということをお願いしてきたことでございます。したがって、昭和三十七年度から政府におきましても流行予測調査という予算を取られまして、主として各都道府県の衛生研究所と協力して、生ワクチン投与の年齢のみならず、先ほど久保参考人の言われましたずっと年長者をも含めて、毎年血清の中のポリオ抗体のサーベイをやっているわけでございます。したがいまして、万一抗体が低下するというような徴候が見えますれば、そのときは直ちに広い範囲の生ワク投与ということは、当然すぐ打てる態勢に政府でやっているように私は見ております。それから一方容疑患者の届け出及びそれの検査でございますが、これはやはり昭和三十七年から発足いたしました高津教授を班長とする委員会で、一つ一つのケースを検討しておるわけであります。ただし、これにつきましては、地方の末端のお医者さん方の協力とか、あるいはこれは厚生省の厚生行政上のPRでしょうが、各都道府県の衛生部のPRとからみまして、まだまだ理想的な状況にはいっていない。たとえば届け出患者がありましても、それの検査材料が何らとられていない。もちろん、非常に不便な山間僻地でそういうことが起こることもありますからやむを得ないことと思いますが、都会地の病院でそういう診断がなされても、何ら検査材料がとられていない。あるいは臨床的な検査が、病院に入院しているにもかかわらず落ちなくとられていないとか、今後改良すべき点は多々あると思います。こういう点を完ぺきにして、それによって正しく批判できる学問的なデータを出してあげるということが、すなわちおかあさん方なり社会一般に対する一つの啓蒙運動でもあり、安心させる資料となる、そういう線で現在も私どもは努力しておるわけであります。
  110. 田口長治郎

    ○田口委員長 河野正君。
  111. 河野正

    河野(正)委員 このたびの法律改正によりまして、いよいよわが国でも国産生ワクが本年度から実施をされるということになったのでありますが、その過程の中で一部の方々から強く安全性に対します疑惑が出たということが、この際私は一番大きな問題だと考えております。  そこで、まず第一に今日までの体験からお伺いをいたしてみたいと思う点は、御案内のように昨年までソ連製等、輸入の生ワクが実は服用されたわけでございます。そしてことしは国産の生ワクを使ったところが、死亡患者が出たとかあるいはまた六名の麻痺患者が出たとか、こういうようなことが問題になっておるわけでございますので、そこで対照的に、いままで外国の生ワクを使った場合に、当局が言っておりますような偶発的な現象というものがなかったのかどうか。いま国内で九名の死亡者が出たり、また、六名の麻痺患者が出たり、こういう程度の偶発事故というものも起こらなかったのかどうか。こういう点も、私は、この問題の解決と申しますか、その意味におきましては、かなり大きな意義があろうかと考えております。そこで、いままで外国の輸入の生ワクを飲んだ際の偶発的な事故というものがどういう状況であったのか、過去の経験に照らしまして、ひとつ多ケ谷さんあるいはまた村上教授からお聞かせいただけばけっこうだ、かように思います。
  112. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 これはあとで村上教授からも補足していただければと思いますが、三十七年及び三十八年度の、先ほど申しましたポリオの鑑別診断の回答と申しますものは、すべて届け出のポリオ患者についてのみやっております。すなわち、さきに参議院の社労委でも高津教授が申しましたように、飲んでから四日以後一月以内にポリオにまぎらわしい麻痺を示したもの、そういうものを対象としております。したがって、たまたま何かの原因で飲んだ当日死亡したとか、翌日死亡した、そういった例は、昨年度、一昨年度の外国品を使いました当時、特に拾い上げられておりません。したがって、こういうものを比較することは現在不可能でございます。それで、一月以内に発病した症例と申しますものは、昭和三十七年度に、二百八十七名の届け出患者のうちで二十一例ございます。それで、二十一例ございますが、これを先ほどの臨床症状から、ずっとABCという三つの範疇に分けますと、実際にポリオ様の疑わしい症状をかなり備えておるものというものが、十例だけ残っております。すなわち、それ以外のものは、一見ポリオに似たような症状を示しておりますけれども、一応臨床的に専門的に見れば、そうではないというように判断されておるわけでございます。それで、そのうちで材料がとられて検査が行なわれておるものというものは、全例についてはなかなか行なわれておりません。これは各地で起こりまして、各地の衛生研究所あたりでとられるものですから、そういう材料をとってないところがかなり多いわけであります。あるいは材料をとっておっても、その取り方にいろいろ不備がある、そういうようなことで、必ずしも全例についての判断は下せないわけでございますが、一応生ワクチンを飲んでおりますから、生ワクチンのビールスが便に出る。それから抗体のあがりを調べておりますと、たとえば2型の抗体はあまり動いておらないが、3型の抗体だけがあがっていたという場合には、3型の感染があった、そういうように考えるわけでございますが、そういうような、一応ポリオの感染のあったと考えられます例が、三十七年度には約六例ございます。最初三例ということでございましたが、その後検査の成績が追加されまして、六例になっております。それから、三十八年度になりますと、届け出患者が百三十一名ですか、そのうちで、生ワクチンを飲んで一カ月以内にポリオ様麻痺にかかったという例が十三例ございます。すなわち、毎年の届け出患者の約一〇%は、そういうものが一月以内に起こっているということでございます。それで、その十三例のうちで、先ほどのように臨床症状の上から、これはどうもポリオと区別しにくいと考えられます例を拾い上げますと、九例になります。それで、これは三十八年度の検査成績がまだ全部届いておりませんので、そのビールス分離及び抗体の上昇の面で判断できるものというのは、先ほど村上教授が言われました一例に、その後もう一例データが届きまして、二例になっておりますが、三十八年度は、全般的にいいまして、三十七年、三十六年の生ワク騒ぎのあと、やや生ワクチンによって患者が減ったという安心感もありましたせいか、検査材料の採取という点で非常に悪くなっております。そういう意味では、とにかく一カ月以後に症状的にポリオと区別しにくいというものが、三十八年度に九例、三十七年度に十一例、そういうくらい出ておるということでございます。  それで、ほかの外国の例でございますが、これは先ほど申し上げましたように、アメリカで約百万人に一人ぐらいの割りで出た。それから、カナダでも、四百万人に飲ましたら四人ぐらいポリオと似た麻痺が出たというようなことを申しております。それで、そのほかの国々では、ソ連では一例もないと言っておられますが、ソ連のこまかい、こういうサーベイランスのデータは、学会誌にも全般的な総合的なデータは出ておりますが、個々のデータが出ておりませんので、私どもこまかい点はうかがい知ることができません。それから、チェコなんかにおきましても、一例もないということを言っております。しかしながら、チェコで、一九六一年にWHO主催のポリオの講習会がありまして、これはおもにヨーロッパ地区の方の講習会でしたが、私が特別に参加さしていただきまして、チェコの現状もその会議議題となっていろいろディスカッションがございましたが、いま言いましたような範疇で調査すれば、やはり数名のそういう患者がございました。しかしながら、これはビールス的な検査がまだ完了していないとか、それから、その他のいろいろな、先ほどセービン教授が反駁されましたような理由によりまして、これはそう考えにくいのだというようなチェコの専門家のお考えでございました。アメリカの例におきましても、アメリカの政府当局ば、そのように十数例の麻痺患者が生ワクを飲んだあとに出ている。これはアメリカ当局も、決して生ワクによるものだとか、よるものでないという表現は避けております。生ワクによるということは否定もできないし、肯定もできない、そういう表現を使っておりますが、ドクター・セービンは、これは全部否定しております。これは一例もそういう例には該当しないのだ、たまたま違う病気が重なってこうなったというふうにセービン博士は反駁しておられます。そういう意味では、アメリカでは一例もないという見方もできるわけでございます。日本におきましては、村上教授にあとでお伺いしていただければと思いますが、一応そのアメリカの政府当局あるいはカナダの専門学者のような態度で、ドクター・セービンの態度とは、やや臨床家としての御意見がドクター・セービンそっくりの御意見ではないように私は理解しております。
  113. 村上勝美

    ○村上参考人 これは先ほど久保さんからもいろいろお話がありましたところの、現地に行かなくて、患者を見なくて診断がつくかという問題でございます。これは現在、小児科医が四千名おりまするが、その半分ぐらいは若い方だとしますと、案外に小児麻痺に関する経験は少ないという点もございますが、また、内科、小児科の先生が、こらんになります場合は、ほんとうのいろいろな症状がおわかりにならないという点ももちろんございます。それで、中央監視部会でそういう先ほど多ケ谷さんからおっしゃられました詳しいカードを送っていただく、しかもそれを、検査事項その他がその報告に間に合わなければ、追加して報告してもらいまして、先ほどのような、だいぶ時間がたってからそれが完成するわけであります。  御参考のために、臨床的にはどういう点を小児麻痺と言っているか。これは少し専門的になりますが、まず、発熱をもって発病して、下熱に前後して麻痺が起こるという第一の項目がございます。それから、第二が、弛緩性麻痺ということで、麻痺した足あるいは手の腱反射が消失するかあるいは弱くなる、それから髄膜刺激症状のほかは、バビンスキーという脳から起こるいろいろな病的反射が見られないという項目が第二でございます。第三は、髄液所見が水様透明あるいは多少細胞がふえている。ところがこの中で一番大事な点は二番目の弛緩性麻痺であって、腱反射その他が減弱あるいは消失するということでございます。  それで私ども委員が——臨床の委員は、東大高津教授、慶応の中村教授と私でございますけれども、それが集まりまして、いろいろ検討いたしまして、これはAに属する——この決定は非常に慎重にやりますが、それからその他で多少疑いがあるかもしれないというのをBにいたしますと、三十七年度の中央監視委員会では、大体三〇%がAになっております。それから五二%がBで、意外にCが多かった。Cというのは、脳の中におできができている、あるいは階段から落っこちて足が動かなくなった、そういうはっきりした、ポリオとは関係のないものが相当多かったのであります。それが三十八年になりますと、多少件数も減っておりまして、全体の届け出数が約半分になっております。そのうちAと思われるのがやはり三〇%、ところがBがふえまして、Cがうんと減ってきた。これはみんなの診断のレベルが上がってきているのではなかろうかというふうに考えます。  それで今度のいろいろな麻痺症例、たとえば熱海の例では、いま日大に入院中でございますけれども、これは言語障害があります。これは吉倉教授の診察によりますと、運動性の言語障害、それから右の手足の弛緩性麻痺がございますが、右の足はだんだんよくなってきております。それで急性小児性片麻痺症という病名がついておりまして、おそらく大脳の下、ちょうど間脳のあたりの一つの血管の拘束症ではなかろうかという診断がついております。神経性疾患の診断というのは、確かに中をあけてみて、ここがこういうふうになっているということを見なければ確実には言えないのでありますが、しかし症状から比較的部位診断というのがはっきりつきやすいものでありますから、そういう意味で、これは明らかに従来のポリオによって起こるものとは異なっているということでございます。  それから、ほかの大阪、豊中、名古屋その他の麻痺例を聞きましたが、やはり東京から専門家が出かけてまいりまして、現地の教授といろいろ相談をしたり、あるいは豊中、神戸では中央市民病院の小児科医長が見ておりまして、小児麻痺らしい、つまりAグループに属するということを言っております。こういうことは私ども経過を長く追わないと決定的な診断ができない、また血清学的あるいはビールス学的診断というのがたいへんおくれるということで、もちろんこれは確実にポリオによって起こったとか、これはポリオによって起こらないということは言えませんが、私ども臨床家的な常識から申しまして、やはり診断がつく。それに最近はコクサクキーとかエコーとか、非常に出てきたようでございまして、そういうふうなものを一切がっさい小児麻痺、ポリオのビールスによって起こったとは即断できないという段階でございます。
  114. 河野正

    河野(正)委員 生ワクを服用することによって起こってくる事故と申しますか、そういう点は、要するに実際に生ワクによるものかどうかということは、それぞれの国における実情等も報告をいま受けたのでございますけれども、つかみ方の相違によっていろいろ見解の相違もあるようでございます。いずれにいたしましても、この生ワクの安全性という問題は、純粋に学問的な問題だというふうに私は考えます。その際、今日までいろいろ承るところによりますと、専門家の方々は、非常に水準も高いし、また安全性も非常に高いというふうな御説明でございます。しかしながら一部に、おかあさまの方々を中心として、なおその安全性に対して不安の向きもあるという現実も、決して私どもは無視してはならぬと考えております。  そこで、いままでいろいろ参考人の方々から承ってまいったのでございますが、特に久保さんの御見解でございますと、これは学問的な点よりも、むしろ人体実験が特におかあさまの方々の強い要望であった、ところがそういう要望なり要求なりというものが満たされなかった、その辺に非常に問題点の力点があろうかというふうに私ども判断しております。そこで、その点が解消されればこの国産生ワクの安全性については十分御納得できるものかどうか、この辺は、もう百九十万も実は服用した今日でございますから、今後これをどうするかという問題もございますけれども、しかし一応久保さんの御発言によりますと、人体実験が行なわれなかった、その点がきわめて不満であるし、またおかあさま方が安全性を一番気にする点だ、こういうふうな御発言がございました。この際、その辺の御見解も承っておきたい。
  115. 久保全雄

    ○久保参考人 おかあさま方は科学を無視して言ったのではない。少なくとも小児科学会とかあるいはウイルス学会、それから衛生学会、公衆衛生学会、あらゆるものがこれに対して安全性を認め、統一された見解であればおかあさんたちの不信はなかった。しかし、つい最近行なわれた衛生学会において、評議員会と幹事会で討議して、なおかつこれに対して結論を出しておらない、特別に委員会を設けて討議します、こういう連絡になっておる。そうしますと、これは少なくとも医学者といっても一部の医学者の問題であって、私たちが医学という場合には、そういう総合的な学会の問題の中で了承されるものが母親たちにも了承される問題だ、そういうふうに理解しておるわけであります。私たちも、私個人でなく、自分の団体の各種の専門グループの討議の結論として、おかあさんたちの要求は正しい、そういうふうに思っております。
  116. 河野正

    河野(正)委員 生ワクの安全性というものは純粋に学問的な問題である、ただ受けるほうの国民としては、やはり学問的な問題はあっても、その科学性というものが国民の間で納得されなければならぬ、こういうことは当然のことだと私は思うわけです。ところがいまの久保さんの御発言によりますと、学会において統一された見解がまだ行なわれておらぬ、こういうことでございますと、これは私どもいま指摘いたしましたように、純粋に学問的な問題であるという点におきましても非常に疑惑の生ずる点でございます。  そこで、先ほど来いろいろ承っておりますと、主としておかあさま方が反対されております理由というのは、人体実験が行なわれなかった、その辺に反対の一番大きな理由があったろうというように私どもは判断をして久保さんにお尋ねしたわけでございますけれども、いま久保さんのほうから、たまたま今日学会においてまだいろいろ疑問が残っておる。そういう科学性に基づいておかあさま方がさらに納得がいかぬのだ、こういうふうな重ねての御発言でもございますので、そこでこの点は多ケ谷さんのほうからと村上先生のほうからそれぞれお答えを願って、その疑問が解明されるならばこの席上で御解明を願いたい。このことがきわめて重要だと思いますので、重ねて両先生から御見解のほどを承りたい、かように考えます。
  117. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 衛生学会の話は、私も学会へ出ませんでしたので、あとで衛生学会の幹事の方から私はお伺いしたのでありますが、久保参考人が冒頭陳述で読み上げられましたような趣旨を織り込んだガリ版刷りの申し入れを衛生学会に対してなされた中で、それにつきまして衛生学会としては、これは生ワクだけの問題ではない、流感のワクチンあるいは麻疹ワクチンあるいは種痘の副作用、そういうもの全般にわたる要望書ですが、生ワクは冒頭に出ておりますが、終わりのほうの三分の一ぐらいは、そちらのほうの問題についてもあわせて衛生学会の見解をただす、そういうような要望書で、私も実はその文書は拝見しております。それで衛生学会でも、これは衛生学会の幹事会なり評議員会なりが単独では全般的な答えはできない、したがってこういうことに関する一つの専門委員会をつくって、衛生学会として、いわゆる予防接種というものについての真剣な研究討議をやっていこう、そういうふうにきめたということを直接幹事の方から伺っております。
  118. 村上勝美

    ○村上参考人 学会各方面のそういう表向きの決議とか、そういうことはまだ私伺っておりませんが、小児科学会に関しましては、このビールスに関する仕事をやっている教室が十九、四十六学校ございます。それから大きい病院を入れますと非常に大多数の、ほとんど一〇〇%に近いビールス関係の連中がタッチしておりまして、それで学会でも演題はたくさん出ますが、その際、こういうふうないわゆる政治的な問題と言ってはちょっと語弊があるかもしれませんが、学問的には何の反論もないという状態でございます。衛生学会の話もちょっと承りましたけれども、こういう中でも、たとえば私の学校の乗木教授などは、ちゃんとそれはよく心得ておられますが、そういう一つの形として出ているという状態ではないというふうに思います。
  119. 河野正

    河野(正)委員 時間が迫りましたので、要約してお尋ねをいたしたいと思うのであります。  そこで、一つは、生ワクの安全性というものは純粋には学問的な問題でありましても、やはりその安全性がほんとう国民の間に理解されなければならぬ。この際、私がきわめて必要だと思いまする点は、先ほど村上先生の御発言の中にもちょっとあったと思いますけれども、実際に国民の健康管理というものは、お役所が担当いたしますより実地医家というものが担当する場合が非常に多いわけでございます。そこで、専門家が安全性を確認したならば、やはりそういう点を実地医家に徹底的に理解させる必要があるのじゃないか。この理解が欠けますと一やはり実際乳幼児の健康管理というものは、お役所よりもむしろ実地医家が担当しておる。これが現在の日本の実情でございます。そこで、たとえば生ワクを飲んで下痢を起こした、さあ生ワクを飲んだからそのための症状じゃなかろうかということで、いたずらにおかあさん方の心配を大きくしたり、また感情を刺激したり、こういう面も多多起こってくる、かように考えるわけです。そこで、やはり今後、専門家の間で学問的に安全性が確認されたならば、それをどうして国民に徹底させるか、こういう点については、いままでとってこられた当局側の方針にやや手ぬかりがあったのではなかろうか、こういうことを一つ心配いたします。これらの点について、妙案がございましたらひとつ村上先生からお教えをいただきたい。  それからいま一つは、これはついでに申し上げますが、今日まで新聞の論調等を見ておりますると、先ほど久保さんからも御発言が重ねてございましたけれども、やはり新聞その他の論調によりますると、おかあさま方の心配の一番大きな理由は、人体実験が行なわれなかった、そこに一番大きな心配があったろうというふうに私どもは判断をしております。そこでことばを返しますと、それならば人体実験というものは、どういう場合に人体実験をやるべしというふうにお考えになっておるか。今度の場合は、やらぬでよろしいというようなことでやられた、そこにおかあさま方の非常な心配が起こってきたのでありますから、しからばことばを返して申し上げますならば、どういう場合には人体実験をやったほうがよろしいというふうにお考えになっておるか、この辺の事情等についてもお聞かせ願えれば非常に幸いではなかろうか、かように考えますので、ひとつそれぞれお答えを願いたいと思います。
  120. 村上勝美

    ○村上参考人 予防接種というもの自体が、私どもはもう数年来、あるいはもっと前からの念願ですが、これはやはり子供をよく見ていく、いわゆる家庭の方がやられることが一番理想だと思います。そういたしますと、その接種時のからだの状態あるいは体質ということがある程度よくわかっておりまして、そのために今度はやらない。これは百日ぜき、ジフテリアの混合ワクチンについても同様のことが言えます。  もう一つ理想を言いますと、これはやはりある小さな製品をつくりまして、各開業医の先生方の手元にあって、一週間飲ましてすぐできるとか、あるいは二週間飲ましてできるというのが望ましい姿で、将来はそういうふうにならなければいけない。また大衆の皆さんを集めていろいろ申し上げても、母親というのは自分の子供のことばかりを考えておりますから、結局PRの力が足りない。そういう点で、やはり開業医の先生や実地医家の先生たち、あるいは近くの病院でやるという形になると、その点非常にスムーズになるかと思います。  それから、もう一つのお尋ねの人体実験はどういう場合に必要かということでございますけれども、これは最初たとえばセービンの生ワクチンを開発する、あるいは最初人類に使うという場合には、十分な動物実験、たとえばチンパンジーを使いまして、もうこれは、だいじょうぶだということがわかった上で、なおだめ押しの人体実験をやるというようなことが行なわれます。たとえば最近開発されておりますはしかの生ワクチンは、もう研究が三、四年目に入っておりますが、こういうふうなもので、たとえばエドモンストンのアメリカの株とか、あるいは伝研の松本さんが開発されたものとか、大阪の奥野さんが開発されたもの、こういう種類がたくさんあります場合に、これをどういうふうにして選択していくかという問題があります。それからまだ副作用が強いという点で、その副作用は実際科学的に見た場合にどういうことがあるかということを調べる。それから、私の考えでは、数年のそういう段階を経ましておそらく一般に使える状態になるであろう。そういうときに人体実験というものがどうしても必要であろう、こう思います。セービンの生ワクチンは、すでに歴史も古くなりましたので、ほとんどそういうこともございませんし、セービンの株から正規の製法の基準に従ってできておるという点で、私はそれほどまで人体実験を固執する必要はないであろうと思います。
  121. 久保全雄

    ○久保参考人 医薬品それ自体は、サリドマイド事件でもわかるように、人体安全テストを通って検定でりっぱに通ったものであり、人体に異常がなかったにもかかわらず、今度は遺伝の上においてアザラシ子ができてしまう。これは医薬品です。このワクチンに関しては、少なくとも生物学的な菌でありますから、動物から人間に移行する場合には、原則としてどうしてもそこの関門を通るのはあたりまえである。飛行機のように、アメリカのダグラスを日本で製造しても、ああいうように飛行試験をやった後でなければ乗せないわけです。汽車にしても、試運転をしないうちに客を乗せることはない。そういう点からも、医者が人体安全テストを軽視しているということは重大な問題ではないか。  それから臨床医と申しますけれども、社会の中の集団を対象にする学問というものは、一人対一人の医学でやっている学問とは別のジャンルのものである。社会という大きな動きの中で社会医学としてつかんで、それをどういうふうに実施して危険をなくし、いい成績をあげるかということは、少なくとも社会医学の内容の入った学問、ジャンルの意見が第一にそんたくされるべきである、個々の一人一人の経験医学の上に立つものよりも、それが優先されるべきであるというふうに私は理解しております。  以上の点からしまして、人体安全テストの問題は、初めから要求していたものを日本の医学者はなぜ無視していったか、そういうような人たちがやる現在の実施に関して、はたしてほんとうの医学という態度でやっておられるかどうかという点の疑点を持っている、そういうことであります。
  122. 田口長治郎

    ○田口委員長 谷口善太郎君。
  123. 谷口善太郎

    ○谷口委員 参考人の先生方に三点、簡単にお尋ねしたいと思います。  最初に村上先生にお尋ねいたしますが、先ほど何か監視部会というのがあって、これによって学者の先生方が協力して対策を講じていらっしゃるようなお話でしたが、この監視部会というのはどこにできたのですか、それとも国家機関でしょうか。またその内容ですが、このポリオ問題につきまして政府が調査団を出しております。この調査団の報告によりますと、投与した後の監視機構について、常時監視機構ですか、そういう機構が非常に厳重に監督をして、今後ますます大がかりな投与になるから、体制的にりっぱなものをつくるべきであるという報告があります。そういうものとしてこの部会があるのでございましょうか、それが一点であります。  それから、先ほどから出ております今度の投与に関して起きた事故、死んだ人もあるものと思いますが、これについて解剖その他をなさって、十分な調査をなさった上での結論かどうか、その点についてお尋ねいたします。
  124. 村上勝美

    ○村上参考人 昭和三十六年以来、生弱毒ポリオワクチン研究協議会というのが厚生省のサゼスチョンのもとにでき上がったのであります。それが一応おしまいになりまして、どうしても画竜点睛の意味で、あとを監視していかないと、せっかくやり始めた仕事がしり切れトンボになるというので、やはり厚生省のサゼスチョンと生ワク協議会のメンバーでそういう中央監視部会というものをつくりまして、東京在住の人たち中央委員になりまして、各府県にそれぞれ監視員というのがありまして緊密な連絡をとり、その連絡の方式としては、先ほど申しました、多ケ谷さんからも詳しくお話がありましたが、詳しいカードをつくって、それによって市民のほうの監視をやっております。しかし、もちろんこれでは私どもとしてはまだ非常にもの足りないのでありまして、たとえば疑わしい患者が出たといえば電話一本で飛んでいって、すぐそこですべての問題を採取するとか、あるいは臨床的に見るというような、チェコスロバキアのようなシステムでやりたいというのが私どもの理想であります。それとほぼ並行しまして、ウイルス性神経系疾患の鑑別に関する研究会というのがありまして、これはメンバーとして、ほとんど各小児科あるいはビールス学の人たちが集まりまして、毎年二回いろいろな症例を持ち寄ったり、あるいはこういう病気の診断基準はこういうように日本できめたらいいだろうというようなこと、それからエコー、コサクサキーという、ポリオに非常に似た発病をさせる病原体のいろいろな検査方法の材料のサプライというようなことまでやっております。そういうようなことは厚生省の人たちも一お出になってや っておりますが、大体は両方一緒に協力してやっている状態であります。予算が非常に少ないそうでありまして、私ども、これはもう少し将来伸ばしていかなければならないと思っております。  それから事故につきましては、六例中一例が死亡して、その子供は三重県の子供で、内臓の重量が脳、肺以外は全部半分であったという体質異常の子供であったのでありますが、その子供なんかは、ポリオの生ワクを飲みまして、家に帰りまして三時間ぐらいで死んでおります。そういうことは飲んだから起こったのか、そういう遠方に連れていったり何かしたことが原因なのか、あるいは前から、たとえば解剖しますと肺にうっ血があったというようなことから、肺炎になったのではないかというようなことがあります。しかし、ほかの死亡例を見てみますと、これは私ども、直接いろいろ受け持ちの先生に接して話を詳しく聞いたわけではありませんので断定的のことは申せませんが、消化不良症から脱水症状を起こして、一日、二日あるいは三日、水分を補給しないと急激に十数時間以内に死ぬことがあるということで、死亡の原因が医学的常識からいいまして、おそらく神経系の疾患ではなかろうか、こういうふうに思ったわけであります。
  125. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ありがとうございました。  久保先生にお尋ねいたします。先ほどからの議論の中で、百六十万とか百八十万とかをすでに投与してしまった。だからなお人体検査が必要だと考えたのか、あるいは重大な欠点があるからというのかという質問が出ておったようであります。私はあの質問を聞いてびっくりしたのでありますが、百六十万の正規のいろいろなテストをやらないものを投与した、その結果わずかしか出なかった、これは考え方として非常にびっくりしたのでありますが、そういう考え方自体が政府にあるのではないかという点です。これは私は非常に重大だと思います。すべきテストをしないで、たくさんに投与するというやり方をやっておる。今度出ました幾人かの死者、これに対しても、いま村上先生もおっしゃいましたが、非常に各先生方御努力なさっておられるようでありますが、実際科学的に見たら、私どもしろうとが見ましても不完全である。そういう状況で、しかもはっきりしないものを、政府の側から、この生ワク関係のないものだという結論を出しておるという状況であります。しかし、これは私どもとしては、そう簡単には結論は出せないと思います。こういう態度でやられたのでは困るし、こういう態度でやっておることが、いま申しましたような事故が起こっておる結果になっておると思いますが、これは流行期でない時期の投与であります。もしこれを流行期に向かって投与した場合には、私、しろうとでよくわかりませんが、誘発されて非常に危険な状態になるおそれがあるのじゃないかと考えますが、その点はいかがでありますか。
  126. 久保全雄

    ○久保参考人 人体安全テストの問題だけでなく、ワクチンの使用に関しても、母親たちがいままで科学的な方法をとっていないということを知っておるわけであります。八戸で流行したときのワクチンはソークワクチンです。少なくとも三回三ccを使わなければならないワクチンが、〇・一ccという方式で一回やられた。しかも、それを〇・一〇でいいのだという発言をしたのは、ほかならぬ国立予防衛生研究所のウイルスリケッチア部長です。そうして少なくとも国家検定には三ccを使うのが〇・一cc使われたという過去の業績から、現在まで一度も学問的に納得されるようなことがなされていなかった。また北海道の流行のときにはDDT、石灰だけをまいて、ワクチンの輸入という問題をほとんどやろうとしていなかった。予算は自衛隊に回して石灰、DDTをまかした。ワクチンの輸入はしなかった。このときも母親の運動によって入れざるを得なくなった。今度の場合においては、人体安全試験は科学者だけでなく、いまや一般常識になっている。サリドマイド事件以来、これは一般の常識です。その常識がなぜ生ワクチンの場合に適用されないのか、また政府のほうでは、少なくともそういう計画を持っていたのになぜやめてしまったのか、こういう点に関しては、これは母親だけでなく、私たち医師の立場でも不安であります。
  127. 谷口善太郎

    ○谷口委員 多ケ谷先生にお尋ねしますが、これは実際は大臣に聞いたほうがいいことだと思うのですが、きょうは政府説明員という関係もありますので……。今度予防接種法の一部改正が通りますと、生ワクを投与されるということは国民義務になります。法律によって義務化されるわけです。したがって、これは拒否すると処罰されるわけであります。しかし国民としましては、小児麻痺予防という見地から、当然適齢年齢の者全部がやるべきだという点では希望が非常に強い。そういう点では、法で強制されましても強制というふうな感じがなくて、大いに協力して自発的にやる、そういうものだと思うのです。しかし、投与されるワクチンそのものが納得できない、不安があるというふうになってくると、たとえ処罰を受けてもいやだと言う人が出てくる。そうすると、処罰を受けるわけであります。そういう非常にやっかいな問題が、この法律改正案が通りますと当面起きるわけです。私は思うのですけれども、こういう場合でも生ワクチンそのものの選択権といいましょうか、これをやってもらいたいという、そういうものは基本的に国民にあるんじゃないか。政府が一方的にこれだというようにきめて押し切る、しかも法の強制力によってやるということは、あってはならぬのであります。幸いにして生ワクのこの問題に関しましては、国産もありますが、同時に、世界的に幾つも同じものが開発されている、経験もあるという状態がありますから、これは当然選択権があるんじゃないかという場合があると思う。その場合に、やはり政府としては、国民のその選択権の自由が保障できるような、そういう対策をとるべきだと思うが、そういう対策がとられないで、一方的ないまのような状況で改正をやって犯罪者をつくり上げる。そうなりますからね。そういうことはやはり見合わすべきだというように考えているわけなんですが、そういう点について、先生に聞くのはちょっと無理だと思うけれども、しかし、そういうことについての皆さんの御意見も、ほんとう意味ではまた科学的な問題も含みますから、そういう点でもし御意見がございましたら、お漏らし願いたいと思います。
  128. 多ケ谷勇

    ○多ケ谷説明員 私、実はそういう問題につきましては、ちょっとお答えする筋合いでもないと思いますし、あれなんですが、要するに、これは先生方にもお考えいただけるかと思う問題は、結局予防接種が国家の防疫体制上絶対必要である場合に、強制接種という予防接種法で規定することがはたして妥当であるかどうか。すべての予防接種を任意接種でやっているイギリスなんかもあるわけでございます。イギリスはジェンナーの国でありますから、種痘だけは比較的最近まで強制接種だった。ところがそれを任意接種に変えました。変えましたために、やはりやりたくない人が出てくるわけであります。それでそれがだんだん積もり積もって、ときどきイギリスはインドから天然痘が入って小流行をいたします。そういたしますと、これはやらなかった人の責任だとはいっても、前に種痘をやって免疫の低下した人も、やはりかかるということになります。それでは任意接種か強制接種かという点は、また非常にむずかしい問題でありまして、任意接種であればそういう選択権もあるだろうが、強制接種ならそういう選択権はないのかという問題になりますと、これはたいへんむずかしい問題で、もちろん簡単に手に入ってしかも簡単に使えるビタミン剤とかなんとかいうもので種類が幾つもある場合には、選択権というものは十分あるわけでありますが、予防接種にはたしてそういう選択権があるかどうかということは、ちょっと私自身としてはお答えいたしかねます。
  129. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ありがとうございました。これで終わります。
  130. 田口長治郎

    ○田口委員長 本島百合子君。
  131. 本島百合子

    本島委員 参考人の方々は三時までという時間的お約束があるそうでございますか、多ケ谷先生はあしたの委員会に出ていただけるのでしょうか。——それでは多ケ谷先生のほうの質問は取りやめまして、久保さんにお尋ねいたします。  今回の運動に際しまして、こういう事故が発生いたしましてから、そういう人々に対する補償の問題等を取り上げておられると思いますが、それはどんなようになっておるか、あるいはまた、その折衝過程において政府でどういうようなことを言っておりますか、その点一ぺんお聞かせを願いたい。
  132. 久保全雄

    ○久保参考人 少なくとも飲んで下痢をしたという者が、関係あるかないかということを明らかに調べるためにも、そういう者は当然全部医療保障の対象になるべき筋合いだというふうに考えられるわけですけれども、一切これはやられておりません。いままでかかった患者並びに死亡した患者はそういう適用には入っていない、少なくともほんとうに安全性と効果性を調べるためには、そこまでのことをきちっと体制を立てておやりにならない限りは、ただ申し出ろという、そういうことだけでは届けばこない。名古屋の場合には、申し出ろという通達がきてないというわけです。大学自身がそう言っている。それから日本の申し出制度というものが、それほど確率が高いかどうか。伝染病の届け出よりも、伝染病の死亡者の数が多かったという年が前にあるわけであります。そうすると、届け出はいかに不十分なものであるか、そういう点から言っても、いまの医療の体制の中で実施するということは一応やめて、再検討して実施方法を考えるべきだ、これが考え方です。
  133. 本島百合子

    本島委員 それで政府のほうと折衝されましたか。その過程ではどういう答弁でございましたでしょうか。
  134. 久保全雄

    ○久保参考人 政府のほうの答弁は、明らかにそうだという認定が出た場合には賠償の対象になる。しかし、そうでない場合にはそれはそうならない。例を聞きましたらは、たとえば下痢患者、熱患者、そういう者は申し出ろ、これを母親が言い落とした場合には、その場合責任はないのだ、それからそれを聞きのがして接種させる場合には、医師または保健婦のほうに責任があるのだ、政府が責任をとるという場合には、明らかにこのワクチンだというのがれられない証拠が出たときだけである。しかも今度の場合には任意接種である。ですから実際にはそういうものには入り得ない。法的にはないけれども、自治体の市町村では自分の自治体において責任を持ちますという答弁を口でやって一般の方にやらしてしまった。しかし実際に調べてみたら法的根拠は何もない。天然痘で死んだ数例というものは、その数は数百あるいは千をこえている。ところがこれは少なくとも強制接種ですから国家賠償法が適用になるわけです。ところが国家賠償法が適用になった例はない。全部民法で本人または自治体の示談という形が裁判の形式ではとられているわけです。そういうようなことも母親たちの不安の一つなのです。
  135. 本島百合子

    本島委員 ありがとうございました。  もう一点村上先生にお尋ねいたしますが、こういうふうにおかあさま方が非常な不安を持ち、子を持つ母としての苦悩というものが今回ほど大きかったことはないと思うのです。それがソ連製のものを使っておったのが一挙に国内製品とかわった、この機会に起こったということで非常な衝撃だったと思うのです。そういう点について先ほどからいろいろお話を聞いておりましたが、今後おかあさま方にどう安心してもらうかという御質問が出ておりましたけれども、あなたのほうの立場からしてこういう方法をとったならばある程度安心してもらってもいいじゃないかという基準があるのではないかと思います。その点お聞かせ願いたいと思います。
  136. 村上勝美

    ○村上参考人 母親の不安が非常に大きいということは、これは数年前の北海道の大流行以来小児麻痺はことに母親の関心が深いわけで、そういうことからスタートして、こういう予防接種という問題が非常に関心を持たれております。私ども小児科医としましても、三分の一麻痺が残るということは非常にえらいことでありますが、結局どうして国産だけがそういうふうに取り上げられるかという点を私のほうから考えてみますと、これは三十七年、三十八年に中央監視部会でいろいろやっておりますのに、九名とか十名とかいう疑わしい、つまり接種して四日から三十日の間に発病したともどうともつかないようなものが相当あるのでございます。これはさっきもお話しいたしましたように、カナダで四百万人接種して四名というぎりぎりのどちらともつかない、疑わしいといえば疑わしいというふうなことがあったと同じように——それで私が聞きましたところ、大体接種開始から一カ月たっておりましてあと一〇%くらい残っているかもしれませんけれども、いままでの報告例では、これは私、数学的に申し上げるのではなくて感じから申し上げますと、麻痺患者が発生したというのが必ずしも多いというふうには思えない。それから副作用の点でも、実際にタッチした人たちに聞いてみますと、それも従来の製品と変わりないということでございまして、そういうふうな意味実情といいますか、もう少しより科学的な成績を少しずつ一まあ公表となるとはっきりしたことを言わなければいけませんけれども、そういうPRというものがやはり厚生省側からも相当必要である。それから接種する場合に禁忌というのがありまして、その禁忌が大体四%から五%ございます。これは報告された数字から見ますと、四%、五%というのは、事前に診察して投与する場合に、一般の小児の事故率といいますか、つまり下痢、発熱、くしゃみ、せき、そういうものが五%くらいありますから、適当に実にうまく数字の上でも私どもの考えと一致しているというふうに考えております。ですから結局結論的に申しますと、そういう少しずつわかった事実をPRするということで不安が解消するのではないか。私どもは知っているおかあさんから、電話であるいは口頭でいろいろ質問を受けますけれども、よくその事情を話すと皆さん賛成してくださいます。
  137. 本島百合子

    本島委員 もう一点最後に承りますが、そういたしますと、ソ連製のものと国内産のものとは全く遜色はない、同格に見て差しつかえないということを確信持って言っていただけるものでこざいましょうか。
  138. 村上勝美

    ○村上参考人 私がいままでたびたび申しましたように、私自身は今後の中和抗体の上昇率とかそういうことの結果から、おそらくだいじょうぶと思います。そういう意味で現在の時点においては、ソ連製も、カナダのものも、ファイザーも、おそらく世界一流の製品だ、それに肩を比べてもいいものだと思います。
  139. 田口長治郎

    ○田口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には有意義な御意見をお述べいただき、まことにありがとう  ございました。厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は明九日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時二十七分散会