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1964-03-03 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月三日(火曜日)    午後一時三十分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君       浦野 幸男君    大坪 保雄君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    粟山  秀君       亘  四郎君    伊藤よし子君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木  昇君    山田 耻目君       吉村 吉雄君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房審議         官)      工藤 誠爾君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 二月二十八日  委員藤本孝雄君及び亘四郎辞任につき、その  補欠として江崎真澄君及び稻葉修君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員稻葉修君及び江崎真澄辞任につき、その  補欠として亘四郎君及び藤本孝雄君が議長の指  名で委員に選任された。 同月二十九日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 三月二日  委員小宮山重四郎君及び多賀谷真稔辞任につ  き、その補欠として小川半次君及び滝井義高君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員小川半次辞任につき、その補欠として小  宮山重四郎君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員西岡武夫辞任につき、その補欠として原  健三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員原健三郎辞任につき、その補欠として西  岡武夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十六日  最低賃金法の一部を改正する法律案本島百合  子君外一名提出衆法第一九号)  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律を廃止する法律案吉川兼  光君外一名提出衆法第二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。去る二十七日の社会労働委員懇談会内容は記録してございますので、本日の会議録に参照としてその記録を掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、そのように取り計らうことにいたします。     —————————————
  4. 田口長治郎

    田口委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。八木昇君。
  5. 八木昇

    八木(昇)委員 私は主として労働者基準法適用に関する問題について、若干御質問したいと思うのであります。  最近、各企業におきまして、特に重要産業基幹産業、それは結局大企業ということになるわけですが、その大企業におきまして臨時工というものが数年前から激増しております。それから同時に炭鉱あたりにおきましては、炭鉱合理化が進むにつれて正規会社従業員である坑内夫というものが極度に減らされて、いわゆる組夫というものがふえておる。そしてその組夫坑内採炭事業そのものに従事することはできないはずでございますが、事実はほとんど従業員である坑内夫と同じ仕事をやっておる。この数が非常に増大しておる。あるいはさらにいわゆる社外工と称するものができて、そうして一つ企業の中でそこの会社の本工の人と臨時工の人と、それから社外請負に雇われておる社外工、この三つの種類の連中がほとんど同一作業に従事しておるというような状況が出ておるわけでございまして、これは非常に遺憾な状態だと思うのです。これは労政局長にもお伺いをしたいと思うのでありますけれども、ごく最近の労働者総数と、その総数の中で日雇い、臨時雇い、あるいは不規則的な季節的な労働者、こういうものはそれぞれ一体どのくらいの数になるのか。さらにいわゆる社外工というような形で働いておる労働者は一体どのくらいの数であるか。これは的確な数字はあるいはおわかりでないとすれば、およそのところをひとつ御説明いただきたい。
  6. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点は、一つ労働者であるかいなか、労働関係が成立しておるかいなかという点から問題になります委託による、たとえば電力会社における検針事務とか、そういった場合の者と、それから明らかに労働者であるが、いわゆる常用と異なった取り扱いを受けておる者、御質問は大きく分けてその二点にあるかと存じます。  従来やっておりました仕事を一部下請ないしは委託契約で下におろすという場合の契約自体につきましては、労働基準法上はとやかく申すべき筋合いではございませんけれども、私ども労働基準法適用がありやなしやという観点から、たとえそれが委託契約ないしは請負契約という形式をもってその契約が締結されておりましても、その実質において使用従属関係が成立しておるという場合には、労働基準法適用ありとして取り扱っておるわけでございます。ただこの問題は、その実態把握を必要といたしますので、検針委託契約を受けて一定業務を行なっておる者が労働者であるかどうかという点を、通り名前と申しますか通称の呼び名だけでは判断できない、個別的に実態把握して判断せざるを得ないという点が問題でございます。率直に申しまして、労働基準法施行事務の中で個別的に扱わなければならないケースでございますので、かなりむずかしい点がございますが、そういった点につきましては従来とも注意をして処置をしておるところでございます。  それから第二点の、常用とほとんど同じ労働形態であるが、いわゆる臨時工という処遇を受けておるという者につきましては、これは労働基準法上は、いわゆる解雇制限労働基準法第十九条の適用関係がどうなるかということによって差異が生ずるということでございまして、事柄の適否を社会的ないし経済的に判断するのは労働基準法のたてまえから申しましていかがかと存じます。ただ言い得ますことは、最近の人手不足に関連いたしまして、従来の臨時工形態のものが常用化されるという傾向が一部に見られるようでございます。  なお、臨時日雇い名義常用されておる者の数の把握でありますが、労働省といたしましては、その数は約四十八万人というふうに把握いたしております。なおこの調査を行ないました年月は昭和三十七年十二月でございます。
  7. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの数字はだいぶ違うのじゃないですか。私はこれをちょっと見たのですが、これは参議院の委員会での答弁であったと思いますが、昭和三十四年の場合で労働者総数が当時二千十六万人、その中で日雇いが約百万人、それから臨時雇いが九十六万人、季節的、不規則的労働者が二十五万人、これらを合わせますと全体の労働者数の約一割、実際は私はこれよりもっと多いと思うのでありますが、そういう政府答弁がありました。現状はどうですか。
  8. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、常用とほぼ変わらない作業をしておりながら、臨時工取り扱いを受けておる者の数を申し上げたわけでございます。この調査といたしましては、十二月にやっております労働異動調査報告という調査によって知り得るわけでございますが、昨年の三十八年十二月に行ないました調査の結果はまだ集計いたしておりませんので、私は三十七年の十二月の数字を申し上げたわけでございます。繰り返して恐縮ですが、臨時雇い名義常用と変わらない労働をしております者の数が三十七年十二月におきまして四十八万人ということに相なっております。
  9. 八木昇

    八木(昇)委員 それでそういった状態が非常にふえてきておるということについて、私ども非常に遺憾に思います。しかしながら、曲がりなりにもそういった労働者の場合は一応基準法適用を受けておるわけですね。ところが基準法適用を受けないように、その網の目を意識的にくぐるといいますか、非常に巧妙なやり方で新しい方法を編み出して労働者を使うというやり方がふえておるわけです。その一つの例として、電力会社におけるいわゆる委託集金人あるいは委託検針員という問題があると私は考えるわけなんです。先ほどちょっとお話がありましたが、どういう契約のしかたかあるいはその契約の条文がどうであろうとも、実際問題として実質的には雇われておる労働者とほとんど変わらない、そういう実質的な内容を持つ人々については、いわゆる労働者として基準法適用をすべきものであると考える、そういう御答弁だったと思うのですが、そうでしょうか。
  10. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 委託契約あるいは請負契約というその契約形式にとらわれず、実体的に判断いたしまして、使用従属関係が成立いたしておりましたならば、それは労働関係ありとして労働基準法適用がございます。ただ、その判断にあたりましては、どのような手がかりで判断するかという具体的な判断基準につきましては、いろいろ問題があろうかと思いますが、私どもといたしましては、たとえば検針業務でございますならば、集金業務遂行方法、つまりそのやり方に対する指示のしかた、あるいは会社に出勤する出社の要否、それからその業務他人によって代替せしめ得るかどうか、その代行の可否というような点を総合的に勘案いたしまして、たとえ委託ないしは請負契約名義で行なっておりましても、使用従属実質がきわめて明確であるというものにつきましては、労働基準法適用を行なっておるわけでございます。
  11. 八木昇

    八木(昇)委員 さらに具体的にはこのあと労政局長も来られてからあわせてお伺いしたいと思うのです。  そこで、ちょっと見解をお伺いしておきたいと思うのですが、労働者というのは一体何をさして労働者というかということです。労働者定義が、労働組合法第三条に一つ規定してございます。それから労働基準法の第九条にやはり労働者というものの規定がございます。それから憲法に、これは何条でございましたか、これは勤労者という表現になっておるわけですが、規定があると思います。これはそれぞれ示す内容が異なっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  12. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘のように、憲法第二十八条には、団結権団体交渉権等の保障に関連いたしまして、勤労者という名称を用いております。労働組合法の第三条、それから労働基準法の第九条に、労働者定義がございますが、それぞれ法律特殊性から見まして、労働基準法第九条のほうは労働基準法適用を受ける事業所事業使用されるという要件と、それから賃金が支払われるという二つ要件を掲げてございます。それに対しまして労働組合法第三条では、「「労働者」とは、職業種類を問わず、賃金給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。」というふうに規定いたしておりまして、使用従属ということばを使っておりません。もっぱら賃金その他の収入によって生活をする者をいう、こういうふうに定義づけておりますが、これは一般労働者がそのような状態にあるという点を前提にいたしましてこのような規定ができ上がっております。この本質論になりますといろいろ学説も分かれておりますが、使用従属関係中心にいたしまして労働者であるかいなかということを判断すべきではなかろうかというふうに考えております。
  13. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、なるほど基準法の第九条に規定してありますところは二つあります。基準法適用を受ける事業所、そしてそれに働く労働者。そして、その労働者とはこういうものである、これがこの基準法対象となる労働者だということになっておる。しかし、労働組合法の場合にはいわゆる労働者とは何かということを第三条で書いてある。でございますから、基準法の場合には二つのことを意味しておりますけれども、しかし労働者というものの解釈は同じでしょう。
  14. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働組合法の第三条と労働基準法の第九条の労働者定義の相違の非常に明確な点は、労働組合法第三条におきましては失業者もこの労働者定義に入ります。しかし、労働基準法の第九条の解釈におきましては、基準法適用事業使用されるという点が明確に規定されておりますので、労働組合法の第三条と、第九条の定義を比較いたしますと、労働組合法第三条の定義のほうが広いということがいえるわけでございます。
  15. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと労働組合法第三条の「この法律で「労働者」とは、職業種類を問わず、賃金給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。」というこれは、完全に失業をして何も仕事をやっていない者も入るということでございますか。それはそうなのですか。
  16. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 さようでございます。これはほとんど学説上も争いがない。
  17. 八木昇

    八木(昇)委員 そういう違いはかりにあるとしても、基準法の第九条の場合、たとえば電気事業はこの基準法適用対象になっておるわけですね。それに働いておる労働者。その労働者というものはいわゆる使用従属関係にあって、そしてその結果収入を得て暮らしておる者、こういうことになるわけですから、いわゆる労働者というものの解釈のしかたにその点では違いはないわけでしょう。
  18. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先ほどもちょっと申しましたように、労働組合法という法律の性格から見まして、労働組合員には失業者も含む、これは外国の例からも当然でございます。このほうは幅広く定義をいたしておるわけであります。労働基準法のほうは、現実に労働時間がどうなっているか、安全衛生はどうかというような当該事業所使用されておる状態中心にいたしておりますので、当該事業使用されるという点が明確になっておるわけでございます。これは、それぞれの立法の特殊性からいたしましてこのような定義が定められておると私どもは理解いたしておるのでございますが、先生の御質問がそういった個別的な法律の場を離れてもう少し一般的な法律概念としての労働者定義をどう考えるかというような意味にもとれるように私お伺いしたのでございますが、その点になりますと、所管とちょっと離れますけれども参考までに私の考えも申させていただきますと、中心的な概念としてはやはり使用従属関係に立つ者というのが中心概念であって、それは必ずしも労働基準法にいうところの、現に適用事業所使用されているかどうか、そこまでは厳格かつ狭く解釈しなくてもよろしい、かように私ども考えておるわけでございます。
  19. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで今度は具体的にお伺いいたしたいと思うのですが、数年前から全国電力会社が、どこでも同じ、大同小異なのですが、それまでは電気料金集金をする集金仕事、それから各家庭電気メーターの針を調べる検針仕事、これらは全部そこの会社従業員がやっておったわけです。ところが数年前から集金仕事検針仕事をいわゆる委託という制度に逐次移していったわけでございます。そういうようなわけで、たとえば検針の場合を九州電力の例で申しますると、全体の約八五%が今日では委託検針、残りの約一五%程度はまだ社員の直接検針ということになっておる。そこで九州電力契約をして委託検針をやっておる人たちが約六百五十名、それから集金仕事は、最近ではもうほとんど全部委託集金になっておる、その委託集金人の数が九州電力だけで実に二千五百人やっております。二千五百人の人が委託集金人でございます。これを全国電力会社でどうなるかといいますると、おそらくこれの七倍か八倍かになるだろうということが考えられる。ところが、たとえば委託検針人について説明をいたしますと、これは委託検針契約というものを電力会社の各営業所営業所長がその委託検針をしたいという個人とそれぞれ個別契約をする。そういう委託検針契約ということにして、一人当たり需用家平均して約三千軒分を委託を受けて検針をする。そうして、区によって幾らか違いますけれども、一軒について単価四円という手数料を払っておる、こういう契約をしておるわけです。しかもそのやり方というのは、一カ月三十日のうち一日から二十三日までの間にその三千軒分の検針を終わらなければならない。その月の三日と十日、十七日は休み、二十四日以降月末までは休み、あとは毎日、朝会社に出ていって需用家カードを受け取って、その日の朝行けない場合には前日の夕方でもよろしい、とにかく検針のためのカード、台帳を受け取って——大体電力会社社員は四時半か五時までの勤務ですから、三時ごろまでに検針を終わって電力会社へ戻ってこなければならない。そうしてそのカード検針した結果の表を電力会社の係員に午後三時ごろまでには渡さなければならない。だから事実は毎日区切られている。そうして需用家のほうもちゃんと一軒一軒その家は何日が検針日ということが指定してございますから、その日に二百軒なら二百軒は必ず行かなければならないわけです。そういうことを実際はやらされておるわけなんです。こういうことは表面の契約委託契約とかなんとかいう、どういう形式になっていようとも、実際にはある事業所において使用され、そして従属という関係にあるとすれば、それは労働者である、そして基準法適用をすべきものであるという先ほどの御答弁でございましたのですが、私は当然これに当てはまると思うのですけれども、いまのような実態の場合、実質的にこれは使用従属関係にあると言えないかどうか、基準局長としての御解釈を承りたい。
  20. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 いま御指摘の点は、集金業務やり方について、かなり詳細なる指示を受けておるということ、それから出社のしかたが毎日で、かつ指定されておるといったような点をあげられまして、これがどうかということのようでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、集金業務遂行方法についてきわめて具体的な指示がなされておる、それから一定の時期に必ず出社しなければいけない、そして一般労働義務一身専属義務でございまして、他人に代替せしめることができるかどうかという点にまでかなりな制約を与えておる、とすれば労働関係ありと判断すべき場合が多かろうと思います。ただ問題は、私どもも若干承知いたしておりまして、この集金業務ないしは検針業務を行ないます業務実態も、地域によって若干の差があるようでございます。ほかの例といたしましては保険外交員につきましても労働関係があるものと、きわめてフリーな立場に立ちまして純然たる委託契約関係だと認むべきものがございますので、保険外交員につきましてもしばしば問題になるのでございますが、御指摘検針業務集金業務につきましても私ども実態を正確に把握いたしまして処理したい、法の適用を免れる、そういう目的のためにそのような処置をなさないように注意をしてまいりたい、かように考えております。
  21. 八木昇

    八木(昇)委員 委員会でありますからあまりこまかいところまでをやろうとは思っておりませんが、また後日適当なときに労働省のほうにも行って、こまかいことを話も聞きたいし意見も言いたいと思っておるのですが、ただ私は参考までにある一人の人の委託検針契約証書なるものを実はちょっと借用してきたのです。これによりますと、非常に明確に規定してある。必ず出社しなければならぬということも書いてあるのです。それからその検針やり方というのは、本人にちゃんと身分証明書が交付してございまして、それを呈示して検針をしなければならぬことになっておりまして、むろんこれはほかの人に絶対代行をさせることはできないようになっております。それから必ず出社しなければならぬ、それを怠った場合には首を切ると書いてある。毎日出社しなければならぬと規定してある。そしてさらに今度は作業要領というものもこんなに詳細に規定してあるのです。そしてきちっとこのとおりにやらなければならぬ。しかも社員代行もやらなければならぬ——ということは需用家にしてみると、その人が電灯会社正規社員であるか、あるいは委託検針員であるかということはみな知らないのですから、メーター検針に行くと電力会社に対する苦情とかいろいろな話を当然君たちは持ちかけられる、そういう場合には誠実に話を承ってきて、遅滞なく電力会社にその苦情の趣その他を責任を持って伝達しろというようなこと等々までこまかに規定してあるのです。しかもその言い分は、君たちは一人一人経営主であって事業主だ、こういうんですね。一つ電力会社に二千五百人の委託集金人がいる、その集金人それぞれ一人一人が独立の経営主だ、こう言う。それから六百何十名の委託検針人に対しても、個々の経営主だ、こう言うのです。しかも、月に三千枚です。三千軒です。そして手数料は四円ですから、わずかに一万二千円です。そうして特に検針人というのは雨の日も風の日もきまった日に必ず検針に行かなければ、一カ月の間の使用料を読むのですから、一日でも三日でもおくれると電気料金の計算のしかたが違ってきますから、絶対に行かなければならない。だからこれはほとんど若い人が現状は多いのです。そして高等学校などを卒業している者、いなかで家庭事情で家を離れることができないというような事情の人が相当います。そうしてしかもこれは何十年やろうともこの委託検針人たるの地位からは一つも上がることができない。そうして収入はぴしゃっと何十年やったってそれにくくられておる。それからその金額そのものが著しく低い。しかもこれらは基準法適用も受けない。したがって、業務の途中で災害を受けてけがをした、死んだといっても何ら労災法適用も受けないし、病気をしましても社会保険適用を受けていない。それぞれ自分で国民健康保険に入って、そうして保険料はおのれが払っている。こういうような雇用の状態、これをよろしいとお考えになるか。これは労働大臣のほうからお伺いしたいと思うのです。そういうような状態というものは、電力会社だけじゃありません。いろんな企業において非常にふえてきておるわけです。こういう点についていかにお考えになるか。そうして、これらについてどういうふうに指導をされようとお考えになっているか。これは労働大臣からでもよろしいし、それから基準局長には、いまのような実情を考えた上でなおかつ基準法上の適用問題について先ほどのような不明確な御答弁でよろしいかということをお聞きしたい。
  22. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 いま御指摘の点につきましては、具体的な解決はまた契約書などを拝見さしていただきまして個別的に処理さしていただきたいと思います。ただ実態が、労働者であるにかかわらず法の適用を免れるために委託契約等契約形式を用いておるものにつきましては、これは私ども労働基準法適用立場から厳に監督をいたしまして誤りなきを期したいと思います。ただ、かりに一般的な労働者であるといたしましても、その労働条件がどうであるか、賃金の問題あるいは退職金の問題、その他の処遇の問題につきましては、これはそれぞれの企業において決定されることでございますから、その当不当を申し上げるのはいかがかと思います。しかしながらたとえば災害補償などの問題につきましては、使用従属関係がございましたならば、たとえ委託契約という名義契約で行なっておりましても労働基準法適用ありと判断いたしまして災等補償の義務を遂行さしたいというふうに考えております。
  23. 八木昇

    八木(昇)委員 非常に具体的な問題ですから大臣がお答えになるのもお答えがしにくかろうと思いますから局長に続いて問いますけれども、この基準法適用の問題はもう二、三年も前から九州各県の労働基準局にこの当事者の人たちが何度も陳情をしているのです。そうして結局各県の基準局ではどうも扱いかねて、結局九州全体を通ずる問題だからというので、福岡の基準局に最終的には一括して、そうしてこれは何回も陳情しているわけです。ところが福岡の基準局としては、どうも解釈をよう下し得ません、労働省本省あたりの見解を聞かなければというようなことで、ずっといままで逃げてきているわけですね。それで正規にこれらの該当者の方々が、労働基準法適用をしてもらいたいという申請をいずれ出すだろうと思うのです。今日まで労働省のほうに、出先の基準局からこういう問題について問い合わせなり指示を仰ぐというようなことがあったかどうか。もしなかったとすれば、出先の基準局のまことに怠慢だと私は思うのです。もしあったとすれば、それに対してどういう問答をなされたか、また今後そういうものがきた場合に一体どうされるか、承りたいと思います。
  24. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 お話は私どもも承知しております。たしか三十六年ごろからそういった問題がだんだんと表面化いたしまして、それが各局ごとに処理できないという面もございましたので、労働本省におきまして調整を進めておったわけでございます。ただ検針業務あるいは集金業務と申しましても、さまざまな型がございまして、きわめて労働関係の成立が明らかであるというようなものから、かなりゆるやかなものまで幾つかあるようでございます。実態的に判断いたしまして、労働関係ありと思われるものにつきましては、労働基準法適用につきまして誤りなきように指導いたしておるのでございますが、かなり契約条件がゆるやかであって、自由裁量の余地のあるものにつきましては、契約の相手方と十分話し合いをさせまして、その関係を明確にするように指導しておるところでございます。しかしながら先ほど来先生から本問題につきましていろいろ御指摘を受けておることでございますから、さらに私ども行政指導の面につきまして、より具体的な方針を持ちまして処理してまいりたいと考えております。
  25. 八木昇

    八木(昇)委員 そこでなお重ねて、これは念のために伺っておきたいのですが、電力関係の組合で、全国組織として電労連というのがございます。電労連の下部の組織として九州電力労働組合というものがあるのでありますが、そこの渉外部長が談話を発表しておるのによりますと、近く労働省はこの委託集金人委託検針人に対して労働基準法適用をするという考えがある、早くて今春、おそくとも本年内にはそういう基準法上の適用をするということの認定をすることは確定的だ、こういう趣旨のことを委託検針人の組合の役員の諸君に向かって言っておるわけですが、そういう事実があるかどうか、ちょっと確かめておきたい。
  26. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 私承知いたしておりません。監督課長も同席しておりますので聞きましたところ、承知していないということでございます。
  27. 八木昇

    八木(昇)委員 これは労政局長に伺いたいと思うのですが、委託検針人委託集金人も、いずれも数年前から労働組合をつくっているわけなんです。労働組合をつくりまして、労働法上の資格認定をそれぞれの地方労働委員会に申請をいたしました結果、いずれもその資格認定を受けておると私は承知しておるのですが、それらの状況を御承知でございましたらばちょっと御説明いただきたいと思います。九州電力に関してのみでなく、全国的な状況を……。
  28. 三治重信

    ○三治政府委員 お尋ねの件につきまして、九電ではいまの九電一本の組合になる前に、各県別に組織されておったときにその資格審査で認められたことがございます。東京電力につきましては、三十五年の三月に中労委で行なわれておりますが、これは東京電力の常用労組ということになっております。それから北海道では三十八年の九月に地労委で適格とされております。四国電力は目下資格審査申請中でございます。
  29. 八木昇

    八木(昇)委員 ただいまのお答えのように、それぞれ各県別に組合をつくっておりました当時に、資格認定を申請し、いずれもその認定を受けたという事実があるわけです。ということは、労働組合として文字どおり認められたことであり、これらの委託検針人委託集金人はいわゆる労働者であるということが認められたということに当然なる、私はそう思うのであります。さらにことばをかえて言いますと、電力会社から使用され、これと従属関係にあるということを認められたことである、こう思いますが、そうでございましょうか。
  30. 三治重信

    ○三治政府委員 労働組合のほうの労働者という場合には、必ずしも支配従属関係にある労働者というばかりよりもっと広い範囲になります。たとえば失業者の組合でも、それが失業者同盟をつくった場合には労働組合になるということになりまして、団結の自由の関係——もちろんそれをやっても団体交渉をやる相手がないような労働組合は、実質労働組合の機能を十分果たせない組織ではあるかもわかりませんが、しかし過去において労働者であった者、将来労働者になる見込みの者、またそういう地域的な同士が集まって団体を結成することは許されるということでございますので、これは労働一般でございますけれども、大体において労働者定義はそう違わないようになっております。しかし個別の問題になってきますと、それぞれの立法で実際の適用になってくると相当ニュアンスが違ってくることは当然想像されるわけでございます。
  31. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで具体的に伺いますが、私が聞き及んでいるところでは、これは労働委員会では、委託ということが非常に変わったことばの表現でございまして、一体この場合の委託というものの実質の中身は何か、くだいていえば請負であるか労働による報酬であるかいずれであるかということが当然論議をされたと思う。この検針人人たち集金人人たち実質というものは文字どおり会社請負仕事をしておるのか、それとも会社に労務を提供し、その報酬を受けて生活をしておるという実態であるか、いずれであるかということが論議された結果、請負であるという結論がもし出されたとするならば、労働組合として認められなかったはずです。労務による報酬を受けて生活をしておるのが実態であるということが認められたから、いわゆる労働組合として資格認定を受けたものである、私はそう思うのですがその点はどうでしょうか、労政局長からお答えいただきたい。
  32. 三治重信

    ○三治政府委員 その場合の労働組合の基準というのは、おそらくこの会社からそういう人たちが生活費のほとんど大部分を実質上受けているというふうな関係から、委託とか常用とかそういう区別なくして、結局働いていることによって報酬を得て生活をしているという実態面を見て組合員の資格審査を認められたことと思います。もちろんこういう検針人、それからことに集金人でも、一般の相互銀行とか信用金庫の集金人みたいに、不特定多数の、自分の努力によってその実績が違うということではなくして、電力を使っている各家庭一定の範囲をきめて集めるわけでありますから、その集める範囲あるいはその報酬の単価、あるいはそのほかいろいろの指示を受けることについての話し合いをやるには労働組合として認めたほうがいいのではないかということから、実態上から来ていることではないかというふうに感じております。
  33. 八木昇

    八木(昇)委員 そこでさらに伺いますが、そういう審議の経過を経て労働組合としての資格認定を受けたわけなのです。したがいましてその委託検針人労働組合、委託集金人労働組合というものは、当然いわゆる労働三権といいますか、ストライキ権それから団体交渉権、そして団結権、これは労働組合としての資格認定を得ておる組合である以上当然あるもの、こう考えますが、どうでございましょうか。
  34. 三治重信

    ○三治政府委員 資格審査で労働委員会が認めたということからいって、完全な法内組合であるから労働三権は当然あるのだ、そちらのほうからいけばそれが常識的なことというふうに思います。実際の問題として、現在この会社とこういう方々との話し合いと申しますか交渉に、会社のほうは労働協約ということでは応じていない。結局その話し合いの結果、そういう委託契約の改定、——委託契約をとういうふうに改定するかということで話し合っているのがその実際でございます。
  35. 八木昇

    八木(昇)委員 その実際というのは、会社側の態度が糾弾さるべきじゃないですか。当然労働委員会の資格認定を受けたところの法内組合であるこの委託検針人労働組合に対して、あなた方とは団体交渉はいたしませんと言っているのですよ。話し合いならばいたしましょう、それからあなた方と労働協約は締結いたしません、処遇の改定というようなことならば話し合いをいたしましょう、と言っておる会社側の態度というものは糾弾さるべきだと思うのですが、どういう御見解でありますか。
  36. 三治重信

    ○三治政府委員 これはそういう表現そのものはそう適当なことではないと思いますけれども会社側のほうも、実質的にそういう組合との話し合いの結果、改定すべきところは改定しているわけですから、いわゆる不当労働行為みたいなことにはならぬと思うのです。それから、そういう話し合いの結果、いわゆる委託契約として現在結んでいるいわゆる働く人の条件というものを実質的に改正する、それもそこにお持ちのように、各個人別にそう違うわけじゃなくて、集金人なり検針人の待遇とかいうものは、労働条件的なものに関しては、就業規則に準ずるような規定にしてあるわけですから、これは結果から見れば、その目的は十分と申しますか、決して会社やり方がそういった団体、労働組合との話し合いをしないとか、団体交渉しないということではなくて、実際の作用は、私はそう変わっていないのじゃないかと思います。おそらく会社としても一般の定員と申しますか、職員の組合とこういう人たちとの間にその実際の取り扱いを別々にしているということから、そういう表現になっていると思います。しかしながら、この人たちのそういう交渉能力とか、また交渉の結果について、一切会社側が応じないでいるということがないという結果から見れば、必ずしも違法ではないというふうに、われわれのほうでは研究した結果、考えております。
  37. 八木昇

    八木(昇)委員 どうもそういう解釈は、一体どういうわけで成り立つのか、私にはよくわからぬわけですが、労働組合であることが認定され、そして労働法上の一切の保護を受けるわけですから、ひとつも違わないはずですね。当然その労働組合から団交の申し出を受けたならば、拒否することができない。それ以外に解釈のしようが何かあるのですか。
  38. 三治重信

    ○三治政府委員 ただいまのわれわれが調べた結果によりますと、先ほどから先生がおっしゃるように、実際は団体交渉をやっているのだけれども、ことばの上では、団交ではない、話し合いだ、こういうふうに言っているとか、そういうようなところは、あまり穏当だとは思いませんけれども、私たちはこれを調べたときの判断では、実際上は団体交渉が行なわれており、その結果によってそういう委託契約を直しておるわけなのだから、普通の労働組合と実際上はあまり結果的には違っていないじゃないか。また、労働協約を結ばぬということが労働法上違反になるというわけでもないわけです。実質上こういう組合なり労働者、または労働者的なものが、結社の自由によってやったものが、それが相手方に対して話し合いが十分できる、その了解のもとにおいて、そういう労務の提供、あるいは委託契約というようなもので、実際上この話し合いの結果の条件が確保されていけば、実際の作用は同じじゃないかというふうに判断しておりますが、これについて、そういうものが実際上は私は十分機能していると思いますけれども、それが法の形式上違反しているかどうかという問題になりますと、これはやはり第三者機関で判断していただくよりほかに手はないと思います。労働省がこれについて、非常な微妙なところであまり違法だ違法でないということは、やはり私たちのほうは、実態的にそういう話し合いがよく行なわれており、またその話し合いの結果が守られていれば、そこに法の運用上そう重大な支障はないという判断をしているわけであります。これが重要な間違いだ、あるいはそういうものだというふうに組合側が判断されれば、これはひとつ第三者機関で判断をしていただくような御措置をおとりになるほうがよりベターじゃないかというふうに考えております。
  39. 八木昇

    八木(昇)委員 むろん労働協約を結ばないこと、あるいはいまのように正規の団交に応じようとしないこと等について、不当労働行為であるかどうかということは、実際に労働委員会に不当労働行為であるとの申請をして、労働委員会の裁定を待たなければ何とも言えないととではあります。しかし、法がある以上、労働法というものがある以上、労働省として、その法について労働省としてはこういう解釈であるという解釈は当然持っておるべきはずのものでありますので、そういう意味で伺っておるわけです。それで少なくともあなた方は、委託契約なのだから労働協約は結ばないという会社側の態度は適切でないとお考えでしょうか、どうでしょうか。労働組合として資格認定を受けている相手の団体に対して、依然として委託契約である、あなたたちは文字どおり労働者ではない、こう言っている。しかし、労働者であると認められたから労働組合として資格認定を受けている相手の団体に対して、労働協約を結ばないと数年にわたって拒否し続け、今後もその態度を貫き通そうとする使用者側のあり方についてどうお思いですか。
  40. 三治重信

    ○三治政府委員 二つはっきり分けておきたいと思うのですが、労働委員会で資格審査を得た組合については、会社側が労働協約を君たちの組合と結びたくないというのはともかくといたしまして、団体交渉でないというのは穏当じゃないと思います。資格審査を受けた、法内組合になったものについては、団体交渉として応ずべきだと思います。その応じた結果、普通ならば団体協約を結ばれるのが望ましいわけなんですが、必ず結ばなくちゃ違法だということにはならぬと思います。それから、これは先ほどから非常に問題になっておりますように、そういうふうに資格審査を受けていない、いわゆる事実上の団体、事実上の労働組合というふうになりますと、やはり法の保護を受けるためには、資格審査の手続をとられたほうがなおいいわけです。その他の場合におきましても、いずれにしても現在私たちが調べた結果の範囲内におきましては、会社側は実質上の団体交渉に応じ、その応じた結果については委託契約書を直して執行しているから、実際の行為としては不当労働行為とか労働法違反のようなことにはならぬではないだろうかというふうに判断をしております。ただ、法内組合であるのに、資格審査を得てきた組合であるのに、団体交渉はしないというのは、これは若干その言い方はくさいところがあるのではないか。しかし、実際を調べてみると、申し入れがあれば必ず団体交渉をやっているわけですから、その実際の作用はそれほど私たちの調べた限りにおいては反法律的ではない、しかしその中の一部言われている、団体交渉ではないという表現は、そういう法内組合においては不穏当だというふうに考えております。
  41. 八木昇

    八木(昇)委員 私の気持ちからすれば非常に不十分なお答えでございますけれどもあと質問もありますので、あと一つ二つ質問する程度できょうは終わりたいと思います。  そこで伺いますが、先ほど基準局長がおられるときにちょっと話をしたのですけれども電力会社営業所長委託検針人が、委託検針契約証書というものを取りかわしているわけです。これの中身によりますと、これは一年ごとに契約を更改するわけです。そして事実は、全部毎年ずっと連続してやっているわけです。長い人はもう六年も七年もなっておる。将来もその形だと思うのです。ところが途中で病気をした、たとえば結核になったというような場合、あるいはバイクで検針に回っておってひっくり返って三カ月なり四カ月なり仕事ができなくなったというような場合、それから自分の家族の者に不幸があったというような場合、いろいろな場合があるのですが、何らの保障がない。そうして会社のほうに一方的に、結局この委託業務に支障を来たしたと認められる場合には、いつでもこの契約を破棄することができる、こうなっております。しかも事実は、九州電力関係だけで委託集金人二千五百人、委託検針人六百何十名という人たちが、ほとんど月のうち二十三日間は毎日出社して、割り当て枚数の一日二百枚くらいは必ずその日に検針をしなければならないようになっておる。したがってほとんどこれによって生活しているわけですね。そういう人たちは、一体何の法律によって、どういうことによって生活を保障されるのですか。これを教えてもらいたい。こういう不安定な、全く一方的な状態に置かれておる人たちは、どの法律のどこによって、あるいは法律によらないとすれば一体どういう方法によって自分の生活が守られるのか、それを教えてもらいたい。
  42. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 原則的なことで恐縮でございますけれども労働者でございますれば労働基準法その他の労働法規の適用があるわけでございます。したがいまして問題のポイントは、やはり使用従属関係が認められるかいなかということにあろうかと存じます。労働基準局立場といたしましては、先ほども申し上げましたように、法を免れる目的をもってそのような委託契約とか、あるいは請負契約というような形を擬装いたしておりますならば、その基準法適用関係につきましては厳正に指導してまいりたいというふうに考えております。でありますから、たとえば巡回集金中に事故を起こした、それが業務上の災害と認められるような場合には、災害補償の請求問題として具体化してまいろうかと思います。さらにまた労働関係ありと認める場合には、解雇の場合に労働基準法の二十条の適用がありやいなやという点から問題になろうと思います。したがいまして、労働一般適用あるかどうかというよりも、そのような関係が認められることに従いまして、労働基準法その他の法律の個々の条章の適用関係につきまして、具体的な問題が発生すると思うのであります。そのような点につきましては、労働法規の各条音の適用につきまして誤りなきを期してまいりたい、かように考えております。
  43. 八木昇

    八木(昇)委員 非常に消極的なお話なんですが、現実に何万の人がこの状態で働いているわけです。これは電力会社のみならず、ほかの企業にもあります。最近では、たとえばヤクルトの配達人、それから日本電建の従業員、これは基準法適用を受けてなかったのです。ところが基準法適用を受けるようになったと聞いておりますが、こういうのに近いような状態で働いておる人たちがたくさんおるのです。それで、きょうもきのうもおとといも、そういう状態が現に起こっているわけですね。みんな、バイクでころんだり、けがしたりなどしておるのですよ。全国各地にはたくさんおると思うのですけれども労災法適用も受けていないでしょう。それからまた、社会保険適用も受けていないでしょう。一切受けていない。けれども、事実はみんな泣き寝入りをしているでしょう、どうしようもないですから。それをいまのように、個々の事態が発生して何か申請でもしてこられたならばというようなことでは、これは問題にならぬので、やはり根本的に、こういうような状態の人が基準法適用すら受けていないということ自体について、これは労働省がやろうと思えばあすにでもできるのですから、もうこの解釈一つですから、基準法適用を当然すべきものであると考えれば、あすからそうなるでしょう。むずかしい問題は一つもない。ですからその点は、先ほども申し上げましたが、ともかく早急に、この問題について、前向きの姿勢で労働省としてひとつ明確な処置を願いたい。これは特に大臣に強く要望をするような次第でございます。  なお、いろいろ具体的なこまかい点、そしてまた実態のこまかい説明等々は、またおりを見てお伺いしたいと思っております。  一応きょうは以上で終わります。
  44. 田口長治郎

    田口委員長 山田耻目君。
  45. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ILOの関係について少し御質問いたしたいと思います。  二十七日に、青木大使、労使関係の副理事を呼びまして懇談会をこの席でいたしましたが、直面をしておるILOの問題が、国際的にはかなり基準の高いものとしてながめられておる。特に日本の国際信用についても憂慮すべき問題点があるということなどが懇談会の席上でかなり浮き彫りにされていったわけでございます。特に所管の大臣である労働大臣にお伺いしたいのでありますが、最近、政府内部でも自民党の内部でも、だいぶんILOの問題についてごたごたが起こっておって、新聞その他でも、適切な報道かどうかは別といたしまして、憂慮すべき事柄が伝えられております。総理が、本会議でもそうでありますが、それぞれの委員会で、この国会で必ず批准をしたいということをしばしば言明されておりますし、前者、後者の話を合わせてみましても、ILOの問題は国際的にも国内的にもかなり急迫の度が増してきておる。この時期に、所管の大臣として、条約八十七号の批准の取り扱いについてどのような基本の方針をお持ちなのか、それらについてまずお伺いをいたしたいと思います。
  46. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 八十七号条約につきましては、かねてから総理大臣からも申しておられますとおり、ぜひ今国会において批准までこぎつけたい、かような考えでございます。労働省といたしましても、これに伴う国内法等はすでに提案いたしてございまするので、すみやかなる御審議を待っておる状況でございます。
  47. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 今国会に政府の原則的な態度が提案をされておるということの御答弁でございますが、これらについては後段のほうで少しお伺いしていきたいと思います。まず私は、日本の政府なり所管の大臣がもっとまじめに、しかも具体策をもって真剣に条約批准に立ち向かっていただくために、若干前段として御質問をいたしておきたいのは、昨年、四十七回総会のあと労働者側の理事であるモーリ、デボック、このお二人が日本に行って少し労働者側の理事立場から日本の事情をながめてみたいという意向もございましたし、労働四団体も日本に招待をするということをきめて御案内をしたのであります。昨年九月来日の予定が日本の国会の事情を見てお流れになったのでありますが、いよいよこの四月の十二日に日本に来る。しかも飛行機の予約も終わった。それに自由労連のベクー、パティトもこちらに来るということでありますし、たまたま実情調査のための一本派遣の応諾の時期にもからんでくることでありますし、ただ単なる日本の旅行というふうにこれをながめるわけにはいかないと思うのであります。来日いたしましたときには、労働大臣として会見をして条約八十七号の批准について所感が述べられ得るような事情にあるかどうか、このことについてお伺いをいたしたいと思います。
  48. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国会御審議の状況によると思います。
  49. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 国会審議の状況だということでございますけれども、条約八十七号の批准の問題が今回の百五十八回理事会でああいう形になりまして、少なくともケースナンバー百七十九の中にある八十七号の問題としては、ある意味では最後通告であるというふうな立場が青木大使からも述べられておりますし、私たち、あなたのそうした形式的な御答弁でなくて、こういう問題を、日本の国際信用を低下させないために、しかも労働大臣直接の所管の問題でありますだけに、国会審議中だから都合によっては云々という態度でなく、もっと問題にまつ正面から取り組んで処置なさるという態度というものがあるのかないのか、お聞きしておるわけであります。
  50. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は、この問題につきましては、日本のためにぜひすみやかなる批准が必要であるということを考えて、しこうして、この国会においてぜひこれが成立を期したいということを真剣にこいねがっておるわけでございます。さような意味で、外国からの視察のお方が見えましたならば、現在の状況をお話しする以外はないと思います。
  51. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ILOのことに関しましては非常に心をくだいておられる大臣でありますから、おっしゃっておるような姿勢で十分日本の所管大臣として正確に御応答いただくようにお願いをしておきたいと思うわけであります。  そこで、青木大使のお話にもございましたが、四十七回の総会で南アの人種差別非難決議の動議が出されまして、百五十八回理事会で採択をされているのであります。もしも日本でこのまま条約八十七号が批准されてまいりませんと、ことしの六月の百五十九回理事会なり四十八回総会では、きわめて憂うべき事態が起こるのではないかというふうに一般的な空気としては推察されるわけであります。たいへんなことでありますので、労働大臣としての見通しなり、所感についてお伺いをいたしたいと思います。
  52. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この批准が今国会でできないと日本にとって大きな不利益が予想されるということは、私もさように考えております。しかし、この国会はまだ会期も相当長いのでございまして、必ず批准ができるものと強く期待をいたしております。
  53. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 最初の発言のときも政府はこの国会で条約の批准の審議を求めて関係案件をかけていると述べられ、いまの御発言の中にも似たような趣旨の、長い会期の中で必ずという御趣旨でございますが、大臣は、二年ばかり前から、条約八十七号を批准するにふさわしい国内法の改正について——与野党と申しますか、あるいは政府と社会党との関係と申しますか、あるいは労働団体の関係と申しますか、それぞれで国内法の改正についての調整の話し合いが進められておるということは、御存じでございますか。
  54. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 聞いております。
  55. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 昨年の八月の半ばごろ一応取りまとめを終わりまして、申し合わせの事項として確認をされておるという内容について、御存じでございますか。
  56. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 倉石議員から内容を聞いたことはございます。
  57. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 特別委員会を設置するという一つのまとめのもとに、具体的な委員会指摘と同時に、付託すべき中身の問題等についていろいろ相談されたと仄聞をいたしておるのでありますが、この事態が今日一体どのようになっておるのか、これらについてお伺いをいたします。
  58. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 社会党の河野議員と自民党の倉石議員とのお話のことでございますが、私からその後どうなったか申し上げるべき事柄ではないように存じます。
  59. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 一応四十四、四十五国会でも申し合わせ事項を確認するという立場で話が進められておると理解をいたしておりますが、今日どういう点が問題になっておるということを、いろいろ憶測的な報道かもしれませんが、新聞などでは報道いたしております。それらについて、大臣にもっと具体的な意見があったなればお伺いしたいと思います。
  60. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 いわゆる倉石問題点といわれる事項は十数点あるようでございます。これにつきまして、自民党内で検討が進められておるということは聞いておりますが、まだその結論については、私承知をいたしておりません。
  61. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 総評がそういう話を進めておる、あるいは公党間で申し合わせをしてみて、それがいささかも誠意を持って作業を推し進めていくというふうな空気も見えないし、国際的にはああいう立場できびしい指弾がございますし、ILOとしても歴史的な事件として実情調査調停委員会に日本問題を付託をする、こういうふうな形になってまいりまして、この際政府に強い反省を求めなくてはならぬ。労働者の権利というものは座して与えられるものではない。やはり国際的な歴史の中にも教えておりますように、もっときびしく対決をする以外にやはり解決の道はないのではないか、こういうふうに長い間話し合いの過程をたどってまいりました。総評が二月の二十日の幹事会で四月の中旬を期してゼネストをかけても条約の批准というものを成立させる、労働者みずからの権利というものを戦い取っていかなくてはならぬという方向を確認をし、内外に明らかにしております。こういう事柄について、ひとつ私はやはり現政府に対する不信感の集積だと見ますけれども、やはり労働者みずからが自衛上の立場として、やむにやまれずにこういう諸行動を組織していかざるを得なくなったのだとながめておりますけれども、時あたかもILOの労働者側の代表が日本に見えますし、あるいは実情調査団に対する日本の態度も述べなくてはならぬ時期でもありますし、きわめて労働行政の上からも大切な事柄だと思いますけれども、これらについて労働大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  62. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題につきましては、私ども実質的な審議がすみやかに進められることを希望いたしておるわけでございます。御承知のとおり、衆議院における予算の審議も終わりましたので、おそらく自民党としてもこの問題を委員会審議の軌道に乗せるべく努力をされることと存じます。この段階におきまして、倉石問題点その他につきまして私から申し上げることはいかがかと存じます。なお、この問題については総評等の強い希望のあることは私も十分に承知いたしておるのでございます。おそらくILOの労働代表者の各位が来日されましたならば、これらの方々に対しまして日本の労働組合からも相当熱烈な訴えが出ることと存じますが、要はこの条約をいかにすみやかに批准可能な状態に置くかということでございまして、私どもはそれに向かってこの会期中努力をいたさなければならぬと考えております。
  63. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 予算問題が昨日まで衆議院にかかっておりましたので、おっしゃっているように条約に関する審議が渋滞しておった。条約に関する審議が渋滞しておったのは国会の審議上のそうした過程から生まれてきておるものなのか、それとも政府なり自民党の中で、あなたもいま重ねてお触れになりました倉石さん云々の中身でございますけれども、そういう事柄がからみついて条約批准に対する審議を渋滞させておるのか、この点については、やはり私は所管の大臣としてあるべき姿については整理された態度でお答えいただきたいと思うわけであります。  二番目に労働行政上の立場からどうお考えかと聞いたことは、日本で労働組合の諸活動が激化して、その時機になりませんと、やるやらぬということについては触れるわけにはまいらぬといたしましても、こういう労働者の権利を守っていく、少なくとも国際的な水準に、日本の労働者の権利を最低限到達させるというために多くの労働者が結集してストライキ宣言をするということは過去ございません。その意味で、私は労働行政の上からもきわめてたいへんなことだと申し上げておるわけです。これに対して労働大臣が責任を食う立場から、どのようにお考えになっておるのか。ただ審議を全体的に促進させるということだけで解決できない問題だと思いますので、一点、二点からめてひとつ重ねてお話を聞きたいと思います。
  64. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これはどうも幾らゼネストがありましても、それで解決するとかいうような問題でございません。要するに国会の審議が進捗する以外に解決の道はない問題でございます。私はひたすら国会の審議を促進願うように努力する以外にないと思います。
  65. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 それは御指摘のように労働者労働争議というものが、直ちに条約を批准したり、法律を改正したり、直ちにそれが生み出してくれるものとは私も思いません。やはり国会の中で審議をされて、結論がつけられていかなくてはならないものだと思いますが、今日までの過去の経緯をお考えいただいて、そうしてどの時点にILOの問題がのぼってきておるのかということをお考えになるならば、そういう機械論的なもののおっしゃり方は、私は不穏当なような気がしてなりません。少なくとも今日までILOの問題について、そうした事柄をあらゆる角度から与野党の間で、あるいは労働団体との間で、あるいは国際舞台を通して、ある意味では私はぎりぎりの限界点にきておる時期が指さされておるのではないかと考えております。そういう時期に到達しておるのでありますから、技術的に国会審議云々という問題よりは、どこがひっかかっておるか、このひっかかっておるところをどのようにして労働大臣は前向きで善処していくのかという大綱的な御方針というものをやはりお考えになっておらないはずはないと私は思う。大臣がそれをお考えにならないということは私はないと思いますので、そういう時点に到達をした今日、どういう指導方針なり、あるいは政治上の方針をお持ちで対処されようとしておるのか、それらについてお答えをいただきたいと思うわけであります。
  66. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在この問題は特別委員会設置についての与野党間の意見の対立というような段階にまいっておるのでございまして、この問題は国会の中において、国会それ自体によって解決されなければならない問題になっておりまして、もはや労働省あるいは政府がどうこうという段階を越えておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、政府与党に対しまして、すみやかに審議をお進め願うよう百方お願いいたしておる状況でございます。
  67. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 この種の問題につきましては、政府と与党との間で意見をおまとめになって解決できるものだと思いますけれども、さっきから私がお聞きしておりますように、特別委員会を設置をする。そうしてその内容については政府与党案のみでなくて与野党を含めて申し合わせというものが尊重されていくということでなくてはならぬと思うのです。これらが解決されませんと、私は事態の円満な進捗というものは期待できないし、これらについてあなたはどのような御配慮をなさっておるのか。昨今、特にきのうあたりの新聞を見ますと、何か日教組の交渉権の樹立の問題についてかなり難航しておるというふうにしぼられた形で報道なさっておるのですが、こういうことは一体どういうところからそういう動きが出ておるのか、所管大臣として無関係なことではございませんので、ひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。
  68. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 党内のいろいろな動きについて、私も党員の一人としてむろん知っておりますし、ことに労働省としては関係の深い仕事でございまするから、注意をいたしておりますので、いろいろの問題についても承知はいたしております。しかし、私は、この問題がすみやかに解決し、審議が促進されることを心から希望いたしておるのでございまして、いまこの席におきまして、私がその承知いたしておる事柄について申し上げるということがはたしてそれにかなうかどうか、むしろこれは党内の問題でもございまするので、しばらく申し上げることを差し控えたほうが賢明ではないかと存じます。
  69. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 条約の批准を——これは時間的な拘束もありますけれども、されてまいりました条約が国内法の改正に伴ってあらためてまた条約違反をつくり出していくというふうなおろかさは、所管大臣として当然おとりにならないだろうし、そういう国内法の改正はおやりにならぬと私も思うわけでありますが、いまの問題を少し形を変えてお伺いいたしまするが、百五十八理事会にかかりまして、一応留保になっております公務員に関する委員会の専門家会議が、去年開かれたわけでありますが、この公務員に関する専門家会議で国家公務員、地方公務員の団体交渉権に関する事柄がとりまとめられております。これが百五十八理事会で一応留保になりましたのは、結社の自由に関する事柄と関係があるので、百五十九理事会まで留保されておるわけであります。おそらく百五十九理事会では異議なく採択されるものと見られておりますが、こういうふうに日本からの政府代表もお出でになりましてきまっていきました国家公務員なり地方公務員の団体交渉権の付与という問題と、八十七号条約にいわれておる国内法の改正との問題の中には不可分の関係のものがあると私は思います。だから私はやはり全体をながめて、行政上措置される、あるいは条約を批准するということが政府にとってはきわめて大切だろうと思いますし、そういう関係で批准した条約がつくり出した国内法がまたそれに抵触するというおろかさを繰り返されないために、一体この専門家会議に対して労働大臣はどういうお気持をお持ちなのか、答弁をお願いしたいと思います。
  70. 工藤誠爾

    ○工藤説明員 専門家会議の結論、この間の理事会に提出されましたが、先ほど先生のおっしゃったことと若干違うことは、報告が提出されたのが実は期限が非常におそくなったために、各代表は十分検討するいとまはないということで留保になったのでございます。それから、先生御承知のように専門家会議というものは専門家の御意見でございまして、これが今後ILOとしてどう取り上げるかは、理事会に上がり、さらにそれが見解になるかということをそこで検討するわけでございまして、むろんILOの今後の方向としては非常に参考にはなると思いますが、それがそのままILOの公式見解ではない。その意味で一つ参考であるというふうに考えております。
  71. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 どうもこまかいことになってたいへん恐縮です。結社の自由委員会にかかっておる、特に条約八十七号の批准というものは、あらゆるILO条約に先がけて基本的なものであるということは、政府の皆さんも十分御存じだと思う。そこの中にある結社の自由なり、少なくとも基本的な権利である団体交渉権の確立ということに抵触するということを前提として専門家会議は議論していないわけです。だから当然日本のように国家公務員なり地方公務員に団体交渉権を付与されていない、こういうところが異例な状態として存在をするからこそそういう問題が見られてきておるわけであります。ですから当然、確かに出された時期がおそいから、あるいは中にこの自由委員会に関する事柄があるからということで留保されておりますけれども、百五十九理事会にかかりましたときにはその精神が否決されるというべき中身のものではないのです。そういう結論が出ておりますし、御承知のように専門家会議でありますから、それが理事会で採択されましたら大切な結論になってまいりますので、そのことと、一体日本のそうした関係との関連について、やはり大臣のほうの所感を伺いませんと、私は日本政府がどういう態度をおとりになるかということにもからみつくからお伺いをしておきたいわけであります。
  72. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今度の理事会に提案になりました条約案は、条約として成立した場合にどうするかというお尋ねに帰着するかと存じますが、これがどういう形で成立をいたしますか、その情勢を見まして、国内の事情等々と照らし合わせまして、いろいろ検討を加えた上で批准すべき場合には批准をいたしますし、当分批准が困難であるということならば実際上やむを得ないであろう。いずれにしてもできた条約案、条約を検討する必要があると思います。
  73. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 もう終わりたいと思いますが、大臣少し御存じないものがあったかと思いまして、私の意見を申し加えておきたいのでありますが、条約八十七号の批准をするということは、八十七号の持っておる精神全体を批准するわけであります。その中にはいまの国家公務員の専門家会議で採択されております国家公務員、地方公務員の団体交渉に関することも、八十七号条約の批准すべき精神の中に包括されておるという立場で理解されなくてはならない性質のものなのであります。でありますから、この専門家会議の結論自体が、私は批准の対象になるとかならぬとかいうものではなくして、よってかかっていくところは、結社の自由の委員会の持っておる精神にかかっていくわけでありますので、それらについて、私はそういう機械的な答弁をいただくのでは、精神が十分把握されてないのではないだろうかと思うわけです。  そこでいまの与野党の中で、あるいは政府与党の中で、八十七号条約批准にからんで、幾つかの渋滞しておる具体的な面があるとするならば、そういうふうにILOの場所ではかなり団体交渉権なり結社の自由なりというものについては、原則的な、基礎的なものであるという立場できびしい指摘を受けておるのでありますから、両者をからみ合わせてお考えいただくならば、私は所管の大臣としてもっとすっきりした答弁なり、これからの方針がお示し願えるものというふうに考えて、からませて申し上げておりますので、個々の部分を追及してまいりますと、あるいはかえって思わしくないこともあるかと思いますので、そういう面をからませて、どういうふうに措置したらいいかという方針についてお考えがありましたら、ひとつお述べをいただきたいと思うわけであります。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 いわゆる労働者の権利、すなわち団結権、団体交渉権、団体行動権というもの、これは憲法上の権利でございまして、われわれはこれをあくまでも尊重しなければならぬと思うのでございます。もとより公共の福祉からくるところの制限をこうむることは免れませんが、それにいたしましても、ILOに加盟をいたし、ILOの憲章を守っていくわが国といたしましては、できるだけ労働三権を擁護し、尊重するという立場に立たなければならぬことはもちろんでございます。  かような意味におきまして、これらの労働三権に関する国際条約につきましては、できるだけその趣旨を国内においても取り入れるように努力するのは当然であるわけでございますが、条約についていかに措置するかということを具体的にお答え申し上げるということになりますと、先ほど来申し上げましたるごとく、実際この条約ができてみたところで国内情勢と照らして結論を出さなければならない、かように存じてお答えをいたした次第でございます。どうぞそういう趣旨で御了解いただきたいと思います。
  75. 八木昇

    八木(昇)委員 ちょっと関連して。直接ILOの問題ではございませんけれども、国際関係の問題でありますので、ちょっと関連して一、二この際伺っておきたいと思います。  これは国連開発の十年の一環として、ジュネーブで貿易開発会議がこの春開催される。これには世界の百二十数カ国が参加をして、そうして非常に長期にわたって、しかも世界各国網羅しての論議があると承っておるわけでございますが、これに対して日本のほうは朝海氏を団長に相当数の代表団を派遣される。特に日本は、その会議の副議長国に立候補を予定しておられるというようにも仄聞をしておるわけでございますが、この会議に、世界の各国の中で近代国家と称せられるところは、ほとんど各国の代表団の中に労働者代表を加えておるというふうにこれも仄聞をしておるのでありますが、その状況をお聞かせ願いたいと思います。
  76. 三治重信

    ○三治政府委員 その点は先日もあるところで御質問を受けたわけでございますが、聞きましてからすぐ現地と連絡をいたしまして、間もなく帰ってきますから、それによってよくわかるだろうと思いますが、どうも労組関係の方は、何と申しますか、そういう国連の機関なり何かからの正式な情報というものは、政府にはこないようでございます。したがって各国が労働組合なりそういう国内の事情として、何と申しますか、政府がそれに対して要望なり、あるいは労働団体みずからが自費で行くか、政府が金を出すか出さぬか、顧問とか随員とかいうかっこうでない方についても政府代表と一緒に行くことになるか、いずれにしても、各国ともそういう労働団体から申し出る、あるいは政府から話しかけて代表を出すというような国もあるでしょう。その関係事情につきまして、いま問い合わせているわけで、各国の事情等もまだはっきりわからないということですが、間もなくわかるのじゃないかと思います。
  77. 八木昇

    八木(昇)委員 私が聞いているところでは、アメリカはむろんのこと、西ドイツやフランス等々も労働者の代表が加わっておるということも間違いないと承知をしておるわけでございます。これは大臣に伺いたいのですが、その会議は南北問題、開発国と未開発国との貿易をどう進めるかというような問題、あるいは体制の異なる資本主義国家群対社会主義国家群との間の貿易問題というようなことが中心だと聞いておりますし、これは非常に重要な歴史的な会議ではないか、当然労働問題にも非常に関係の深い問題でありまするし、労働大臣のお考えとして、こういった種類会議労働者代表を出すということについてどういうお考えをお持ちであるか、それからまた今度の代表団の中に、労働省からはどなたかお行きになるのであるか、もしならないにしても、将来労働省としてはどういう意欲を持っておられるか、私は労働省としても出てもらいたいと思うのですが、これは大臣にお答えいただきたいと思います。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 貿易に関係ある会議のように聞いております。したがいまして、貿易に関係ある生産に従事します使用者の代表、労働者の代表が行かれるということは、事情が許す限り望ましいことだと思っております。労働省といたしましては、まだどうするかきめておりませんが、もし必要があれば、御承知のようにヨーロッパに労働省の官吏が外交官として駐在いたしておりますから、それを出席させるということもあり得るわけでございます。  いずれにしましても、もう少し会議の様子並びに各国の代表団の構成の様子等について事情を明らかにした上で方針をきめたいと思っております。
  79. 八木昇

    八木(昇)委員 この種の会議は必ず財界人の方は何人か行かれるのです。ということは、経営者側の人は必ず行かれるのだけれども労働者側は日本の場合はほとんど参加していないのです。それからまた役所のほうも通産省の関係は盛んに行くけれども労働省関係は関心が薄いのか、それだけ政府の中で力が弱いのかよくわかりませんけれども、もう少し積極的にやってもらいたいという考えを私としては持っておるわけで、その点労働大臣あたりにも、もう少しがんばってもらいたいと思っております。  そこでもう一つ念のために聞いておきますが、この会議労働者代表を加えろという申し入れが労働者の四団体、総評、新産別、中立労連、同盟会議から申し入れがあったでしょうか、そういう申し入れをやるというようなことをちょっと聞いておりますが。
  80. 三治重信

    ○三治政府委員 冒頭でうちの官房のほうへ連絡があったようですが、まだ正式の文書は来ておりません。まあいままでは、従来、そう格式張ったことは労働省としてやっておりませんが、申し入れがあったと申して間違いないと思います。
  81. 八木昇

    八木(昇)委員 その問題は、先ほど大臣のお答えのように、ひとつ今後、特にわが国の国際感覚が、労働問題に関して非常に立ちおくれておるという印象を私ども持っておるわけですが、積極的に出ていってもらいたい。  これに関連して、もう一つでございますが、いまOECDの加盟について国会に政府は御提案になっておる。社会党としては、相当批判的な意見もあるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、OECDに加盟をするということになった場合には、その中において、労働者の意見も相当反映したいと考えるわけです。そこで、御承知のように、OECDの中には、BIACというんだそうですか、経営者の諮問委員会と、TUACという労働者の諮問委員会があると聞いております。経営者の諮問委員会に対しましては、日本の経営者団体は非常に積極的で、あるいは商工会議所、あるいは経団連、日経連等、それからまた、貿易関係の経営者の団体も一緒に結集して、すでに国内委員会がつくられておる、そして現地にすでに連絡者を派遣しておるというふうに聞いておるのですが、その辺の事情はおわかりでございますか。
  82. 工藤誠爾

    ○工藤説明員 わが国がOECDに加盟いたしましたら、それに伴いまして、諮問的立場として、使用者の関係及び労働組合の関係ができますことは、先生のおっしゃったとおりでございます。それで、国内における受け入れの態勢としまして、経営者のほうは、御承知のように、BIACの日本の委員会と申しますか、というものができて、すでに陣容が整っておるというふうに聞いております。しかし具体的に活動しておるかどうかということにつきましては、私どもの知る限りにおいては、まだその段階まではいってないようでございます。組合のほうにつきましては、私どもの得ている情報では、昨年、組合の四者が集まりましたときに、日本がOECDに加盟したら、当然組合としても加盟することを考えなきゃいかぬのじゃないかという話があったそうでございまして、その後、特に進展があるようには聞いておりません。
  83. 八木昇

    八木(昇)委員 最後に一問、これは大臣にお答えいただきたいと思いますが、国際自由労連傘下の組合が十四カ国、キリスト教系の組合で四カ国が、すでに労働者諮問委員会正規に加盟しておる。それで、わが国としてどういうふうにお考えか、これは将来の問題でございますけれども、ちょっと大臣の見解を伺っておきたい。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私、この問題について、先般、組合のほうとお話ししたこともあるのでございますが、組合の加盟の問題でございますから、当然組合が決定されるべき事柄でございます。しかしできれば四団体が、何らか国内の受け入れ態勢というものをお考えになる必要があるのじゃなかろうかというようなことを申し上げた次第でございます。
  85. 八木昇

    八木(昇)委員 これで終わります。
  86. 田口長治郎

    田口委員長 本日は、この程度にとどめ、明四日、十時より委員会を開会いたします。    午後一時二十六分散会      ————◇—————   〔参照〕 昭和三十九年二月二十七日(木曜日)  社会労働委員懇談会    午前十時二十一分開会
  87. 田口長治郎

    田口委員長 これより社会労働委員懇談会を開催いたします。  当委員会といたしましては、労働関係基本施策に関する件について調査を進めておりますが、本日は特に委員懇談会において、国際労働機関理事会における結社の自由及び団結権の保護に関する条約等に関し、問題の経過を中心に、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部特命全権大使青木盛夫君、国際労働機関理事使用者副理事三城晃雄君、国際労働機関理事労働者理事原口幸隆君の御出席を得ましたので、その御意見を承りたいと存じます。  三君には、御多忙中にもかかわらずわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  では最初に、青木盛夫君からお願いいたします。
  88. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 私、青木でございます。  この八十七号案件と申しますのは、ジュネーブのILOの理事会におきましては、御承知のとおり、すでに六年目でございます。私がジュネーブに参りましてから四年間、だいぶ長くなっておりまして、ILOの事務局及び関係理事の方は、皆さんいろいろな御意見がありますけれども、大体この問題は打ち切りたい、そういう関係で、今回特別調査団の派遣ということを決定されたというふうに、私は現地の感触で思っております。  まず、実情調査委員会というものが問題になりましたのは、おととしの中ごろからでございますが、はっきりこの問題が理事会等において公式の場で言われ始めましたのが、去年の三月の理事会です。それで、去年の通常国会において批准ができれば、こういうことはもうやめにして、すべて御破算と申しますか、日本政府と総評の関係も解決するということで、ILOの事務当局は待っておったのでございますが、去年の通常国会で本条約の御批准及び関係法規の改正案が通らなかったという事態から、去年の十一月の理事会におきまして、調査団を派遣しよう、この調査団派遣に関しましては、むろん理事会における労働者グループは日本政府の不信を鳴らしまして、日本政府は何回も八十七号条約批准の意思を表明しておるにもかかわらず、いまだにしない、この上は一体どういうことになっているか、実情を調査すべきだ。ところが、政府側代表及び使用者側代表も、ILOの結社の自由委員会及びILOの理事会というものは、日本のためだけにあるものじゃございませんで、世界百何十カ国のためにあるのでございまして、この問題を六年間も続けるということはとても耐えられぬ、その意味で、この問題にケリをつけるという意味からも、実情調査委員会を派遣すべきだということにきまりまして、去年の十一月の委員会におきまして、派遣の原則がきまりました。その実施の内容というものを今回の二月の理事会におきまして討議にはかりまして、それが可決されたわけでございます。  その間、西欧諸国の政府代表は、私に対しまして、結社の自由というようなものは当然日本にあるんだろうと思うけれども、こういうふうに問題がこんがらがったと申しますか、複雑化した以上は、ぜひこの調査を受けてもらいたいということを申しましたし、また共産国の代表等は、共産圏におきまして従来調査団を断わったという関係からでございましょうが、私に対しまして、一体日本政府調査団を受ける気があるのか、受けぬでもいいじゃないかというようなことを申してまいりました。   また、調査団派遣に関しましては、相当な予算を要しまして、四万何千ドル、すなわち、大体二千万円近くの金が要るものでございますから、ILOにおきましては、技術援助その他もう少し労働者の実費にためになることに使ったほうがいいんじゃないかという議論もございまして、いろいろ議論がございました。その間、財政委員会におきまして、ソ連代表は、大体こういうところに金を使うのはいかぬと言いまして、非常にもめまして、財政委員会には労働省の工藤審議官が御出席になっておったのでございますが、約三十何分この問題で時間を費やしております。  そういう関係でいろいろ議論がありました結果、今回の理事会において、日本政府調査団派遣に関する総長の提議の受諾を要請するということがきまったのでありまして、その要請書は私がこちらに持ってまいりました。  大体ILOの八十七号条約は、戦後のILO条約の三大条約といわれておりまして、基本的人権に関する条約ということになっております。すなわち、差別待遇、強制労働、結社の自由という、この三つがILOの戦後における最大の条約、そういう意味におきまして、ILOといたしましては、日本政府にぜひこれを批准していただきたい、すなわち、これを批准しないということは、いかにも世界に対して何か結社の自由がないような感触を与えるのじゃないか、この概念が事務局のみならず、政府代表、労働者代表、使用者代表にまではびこっております。ことに最近は日本の経済の発達が目ざましいのでございまして、他の国際会議等におきまして日本の地位が非常に上がっております。そういう関係から、日本はこれだけの経済発展をしているけれども労働問題においておくれておるのじゃないかというようなことが、外国の有力新聞その他にそろそろ出始めております。こういう観点から、現地の私といたしましては、一日も早く条約の御批准、それから国内法規の改正を終えて、この問題を解決していただきたい、こういう気持ちで政府に対して報告に参ったわけであります。  私の発言はこれで一応終わります。(拍手)
  89. 田口長治郎

    田口委員長 次に、国際労働機関理事使用者副理事三城晁雄君にお願いします。
  90. 三城晃雄

    ○三城晃雄君 私は、ただいま委員長から御紹介がありました三城であります。  昭和三十四年であったかと思いますが、日本の第八十七号条約の問題が初めてILOの場において取り上げられました当時、ここにおられる原口さんと御一緒にこの社労委の参考人として皆さま方にお目にかかりまして、すでに五年を経過しました。いまだに同じ問題で呼びここへお招きをいただきましたことは、私はなはだ残念に思う次第であります。  ただ、この問題は、ただいま青木政府代表からお話がありましたように、政府と組合との問題、また日本の国会の問題であるというわけで、私ども使用者側の者は、いわば番外の者と申し上げていいかと思うのであります。したがいまして、ジュネーブにおける私の活動も、いわば介添え役でありまして、必ずしも事情をつまびらかにし得ないこともありますので、本日は、私は、ジュネーブの理事会における使用者側グループが、この日本の問題についてどういうふうに考えておるかということをきわめて率直に申し上げまして、皆さま方の御参考に供したいと思うのであります。  基本的に申しまして、この八十七号条約の内容とするところの結社の自由というものは、使用者側のグループと申しましても、私の申します使用者側というのは、資本主義をもって立っているところの使用者側でありまして、共産圏の使用者側を含んでいないことを御了承願いたいと思いますが、この資本主義を基盤とするところの使用者代表なるものは、結社の自由というものを非常に重要視いたしておるのであります。したがいまして、この八十七号条約が各国において批准されることを強く願っております。それはどういう事情かと申しますと、第一には、日本においてはこれはあたかも労働組合の問題のごとく理解されておりますけれども、これは皆さま方が御承知のように、条文に使用者の結社の自由もうたっておるのであります。日本においては使用者の結社の自由が完全に認められておりますので、われわれは別にどうということを考えませんけれども、近隣諸国で最も全体主義的な色彩の強い国においては、使用者団体といえども政府からかなり制約を受けておるのであります。そういう意味において、使用者側も、われわれの自由ということにおいて、これを非常に尊重しておるのであります。  それからいま一つは、ILOの場において、共産圏諸国の使用者側あるいは広い意味において共産圏諸国の代表たちと立ち向こう場合に、私ども使用者側の者は、この八十七号条約の精神を錦の御旗として戦っておるので、共産圏の使用者側の代表をわれわれは仲間に入れていないのでありますが、その第一の理由は、共産圏諸国においては結社の自由がないから、したがって、彼らは自由なる代表でないということをもって理由といたしておるような次第であります。それのみならず、最近の経営者は、基本的人権を尊重するということを非常に重要視しておるのでありまして、われわれ使用者側の国際的組織であるIOEの綱領にも、われわれは、ただ物質的に社会に福利をもたらすだけではなく、基本的人権を尊重して、道義的にも社会に福利をもたらす責任があるということを非常に強く主張しております。そういうわけで、われわれ使用者側のグループは、ジュネーブにおいてはこの八十七号条約を非常に尊重しておるということを一つ申し上げておきたいと思うのであります。  しからば、日本の問題について彼らはどういう態度であるかと申しますと、初めは日本の政府使用者という立場からこの問題が訴え出ているのでありますから、そこはやはり使用者的な感覚から、日本の政府立場に対してかなり同情的な考え方を持っていたように了解しております。したがいまして、私も、実は結社の自由委員会の副委員をしておりまして、たびたび会議にも出たのですが、彼らの気持ちは、日本政府がすみやかにこの問題を解決して、こういうトラブルをひとつなくしてもらいたいというような気持ちを非常に好意的に持っておったのであります。ところが、一年、二年、三年と経過して、日本政府はすみやかに批准して云々という約束をたびたび繰り返しているうちに、彼ら好意を持っているところの使用者グループといえども、これは少しおかしいぞという疑問を持ってきたのであります。  ちょっと申しおくれましたが、使用者側としては、総評方面からあまりにたびたびいろいろな提訴をなさるので、実は委員のほうもいささか倦怠を感じておったということを申し上げておきたいのであります。  そういうふうなところで、日本政府に対して、同情的ではありましたけれども、いま申し上げましたように、約束ばかりで、一向に実行がなされない、何度待ってもどうも実現がない。そこで、私に対して、一体どういう事情だろう、日本では民主主義政治が戦後行なわれているということを聞いている、いわゆる新憲法においては、西欧的な民主主義であって、議会政治が多数決原理で行なわれると自分たちは了解しているが、多数党、しかも大多数党の総裁である総理が、これほどはっきり国会においても声明しているにもかかわらず、どうしてこの法律の改正も条約の批准もできないのだろうかという質問を、私はたびたび浴びせられるのであります。それはもっともな話で、日本では多数政治でやっているのだ、日本の国会の多数決主義ということは、ILOの総会同様である、しかしながら、わが池田内閣は低姿勢、つまり、野党の意見も十分聞いて、願わくは満場一致で事を運びたいという気持ちでいるのだ、そういうわけで、隠忍自重して今日まできている。しかし、隠忍自重にも程度があるのじゃないか、こういう質問であります。それももっともであるが、しかし、遺憾ながらわが国会はまだ未熟である、したがいまして、どうかすると、意見が合わない場合は、少数党が多数で押し切られる場合には、場合によっては力、フィジカル・パワーを用いて阻止する場合もあるのだ、まだこういうふうな状態でありますから、その辺は、なかなか何百年の歴史を持っているイギリスなどの民主主義のようにはいかないのだということを私は説明して、もっぱら汗をかいているような次第であります。しかし、やはりそれにも限度があります。そういうわけで、今回は調査団の派遣ということになりました。  そのとき、私は、昨年の理事会にこの調査団派遣の案が出たときに、使用者グループの中で、これはILOの本来の筋道と違う、この調査団というものは、提訴があった問題が現実に即して調べないとわからぬときに、初めて調査団を派遣するのが筋道であって、そのためにできている、コンプレイントがないものに対して調査するというのは筋が違う、もっとも、総評から提訴されている問題で、懸案になっている問題を調査するだけならよろしい、しかしながら、これには一括して日本の条約批准の問題も調べると書いてある、これは大体調査団設立の趣旨に反するということを私は言ったのであります。と申しますのは、総評さんといえども、条約を批准していないということを提訴してはおられない。なぜかならば、条約を批准するとかしないとかいうことは、主権の問題であって、これは提訴されるべき問題ではない。アメリカでも、カナダでも、インドでも批准していない、にもかかわらず、調査団を派遣していないじゃないか、日本が批准していないことによって調査団を派遣するというならば、アメリカにもインドにも調査団を出さなければならぬことになるということを私は言ったのでありますが、それに対しては、使用者側のわが同僚いわく、あんまり何べんも侮辱されると黙っておるわけにはいかないのだ、こういうわけです。つまり、何べんも約束して実行されないにはよほどミステリアスな理由があるのだろう、だから、これをこの機会に行って調べるということは間違いじゃなかろう、しかも理事会がそういうふうにきめれば、必ずしもこれは筋違いとは言えない、こういう説明で、なるほど理事会できめたのでありますから、きめた以上は、これは筋違いと言うわけにはいかぬわけです。ただ、日本政府がこれを受け入れるか受け入れないかは、日本政府のこれまた自由であります。  そこで、その問題を申し上げる必要はないのでありますが、そういうぐあいで、使用者側の人といえども、やはり国際機関としてちゃんとした職務を果たすべき結社の自由委員会というものが、最も先進国、強国である日本の国のような政府から侮辱されているというような意識を持てば、これはなかなか黙っておれない。アメリカの裁判所のことはよく知りませんけれども、裁判所に出頭して法廷を侮辱すると、侮辱罪というものがあるそうでありますが、本来の罪悪のほかに侮辱罪でさばかれるということを聞いておりますが、ややこれに似たようなものではないかと私は考えておる。そういう意味におきまして、ひとつ国会においては多数決原理ですみやかに解決していただいたほうが、ILOのほうはおさまるのじゃないかと私は思うのであります。  一言簡単でありますけれども、御説明申し上げます。(拍手)
  91. 田口長治郎

    田口委員長 次に、理事労働者理事原口幸隆君にお願いします。
  92. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 労働側から出ております原口でございます。  この八十七号条約は、先ほど青木大使の言われましたように、ILOのたくさんの条約の中では、一番基本的な条約として特別扱いになっておりまして、ほかの条約では批准していなければ問題になりませんけれども、この条約に限って、批准していなくとも提訴できる仕組みになっておりますし、特別の理事会に付設いたします結社の自由委員会というものがあって、これを取り上げるという特別な条約であります。  さらに、日本が提訴しております内容については、私の立場から言っても、他の国の提訴内容に比べて、内容が日本の場合はきわめてひど過ぎるという内容ではありません。日本の場合よりも、もっともっとひどいものがあります。ありますが、なぜ今日までこんなに大きな問題に、ILOの場で問題になったかということについては、私は大きな課題があるような気がいたします。それは、日本という国がILOの中では自動的に常任理事国になる立場にあります。しかも、世界の十大工業国の一つであります。さらには、最近は五つの指の中にも数えられるというような世界の有力な工業国であります。そういうところに問題の背景があると私は思います。  そのILOをいわば代表すべき国の日本が、この条約について五年以上の日にちを要している。日本のはケースナンバー百七十九という一連番号が付されておりますけれども、現在結社の自由委員会に提訴されております番号は三百五十台であります。百台で残っておるのは日本だけであります。しかも、八十七号条約については、いま世界の加盟国が最近百十になったはずでありますが、六十五カ国においてすでに批准を見ておる。日本は百幾つかのすでにできましたILO条約の中で二十四しかまだ批准をしていない。しかも、その中には、先ほども御指摘がありました結社の自由の条約、強制労働、差別待遇というようなILOとして中心的な条約、さらには労働時間、社会保障、最低賃金というようなきわめて重要な条約というものが批准されていません。  私の組合は、資本主義国の組合の大多数が連ねる国際自由労連に入っておりますけれども、このわれわれの提訴は、国際自由労連もまた共同提訴人になっておるわけでございますが、この自由労連の一つの常識として、一つの商品が外国に向けて貿易のルートに乗る場合には、その商品が結社の自由の保障のもとにつくられておるかどうか、その商品をつくる場合に労働者がいやだと言う権利が保留されておるかどうか、さらには最低生活というものが一応国として保障された状態でその商品ができておるかどうか、その二つの基準が、やはり国際貿易のしにおいて、商品の正当性を認める大きな基準になるという一つの常識を持っております。そういう点から見ても、日本の場合にはこの条件を欠くというような、そういうもろもろの背景があればこそ、私は、八十七号条約の問題で、日本のケースが毎回の理事会で——しかも結社の自由の問題というのは、委員会で討議が終われば理事会においては発言がもうほとんどないというのが慣例なのでありますけれども、日本の問題に限って理事会においてやりとりがあるということを見ても、ILOの場では非常に大きく考えられておるというふうに思っております。  さらに、今度の理市会でいよいよきまろうといたしております調査団、実情調査調停委員会というものについては、御承知のように、ILOとしては、いままで共産圏に向けての提案はありましたけれども、全部断わられておりますけれども、重要なる一つの制度であります。いままでお蔵の中に閉じ込められて一回も日の目を見なかった調査団というものが、ようやく日本のケースをかりてこれが日の目を見ていくということは、あの膨大なILOの機構としては歴史的な事件であります。このことが日本に対して発動されるということは、その他の国々に対して将来の可能性をつくる結果にもなるわけですから、ILO自身としても重大な提案であるというふうに考えなければならないし、先ほど御説明がありましたように、ソ連圏のほうは、もともとこの結社の自由ということについては、政治的な攻撃の材料にされるという意味合いから、常に避けて、委員会理事会の決定についても常に棄権の態度をとっておりますし、また、資本主義国の政府の方や使用者の方々が、ソ連圏に対する批判の材料としても一番強く前面に押し出しておる結社の自由の問題でありまして、今度の財政委員会の議事録を見てみますと、ソ連政府がこの調査団の発動に対しては強く反対しておるということからもうかがえるのじゃないかというように思います。  労働側の内部の雰囲気について若干御紹介いたしておきたいと思いますが、先年なくなりました、イギリスTUCから出ております前の労働側の議長であるサー・アルフレッド・ロバートという人がおりますが、この人が日本の提訴の始まるときからわれわれに協力をして、先頭に立ってやってくれた人でありますが、御本人については私は非常に申しわけないとは思っておりますけれども理事会の議長に日本の方が擬せられたことがあります。そのときに、日本から出ておる私の反対ではなしに、労働側の議長のほうから、ILOを代表すべき議長として、基本的条約でごたごたしているような国の代表は、ILOの議長にはふさわしくないということで、これまたILO始まって以来のできごとであります、理事会の議長が予定されていた方がなれなかった。それほど労働側の態度というものは、この点についてはきびしいものがございます。今回においても、日本政府の態度いかんによっては、労働側の内部でも大激論がございまして、この理事会ではっきり日本政府のイエス・ノーを聞きたいというような激しい議論もございましたけれども、まあ労働側としては、日本政府が今度はおそらくやってくれるであろうし、また日本政府の代表の方の意思表示というものの内容も十分勘案をして、それによって労働側の態度を発表しようということで、青木大使のお口から出た日本政府の態度というものをお聞きした上で、労働側としてはきわめて簡単に、しかもあまり強いことばではなしに、日本政府の善処を要請して終わっておりますけれども労働側としては、延びに延びたこの問題が、今度こそは終わるであろうという期待を一〇〇%時っておるというふうに私は考えております。  で、労働側の一部の人たちで、日本の民主主義について疑問を抱く人たちが若干いるわけですけれども、われわれを含めて、たとえば世界労連、自由労連というような団体がございまして、そこに行って簡単に声明に調印をする。しかし、日本に帰ってくれば、そのことを忘れて守らないというように、われわれの組合関係でも、そういうような欠点を——私自身が反省しなければならないと思っておりますけれども、何か外国人、特に西欧の人たちの理解する民主主義というものと、日本の中にある雰囲気というものが相当違っておるということを、私は、過去七年間のILOのいろいろな諸会議を通じて痛感をいたします。去年は総理大臣がはっきり議会で表明されたことがILOに報告されたわけですけれども、あそこまではっきり報告された場合には、他の国であれば、もう絶対に国の信義にかけてそれを果たすというのが、やはりほんとうの民主三義ではないだろうか。そういう立場からの批判というものを私は聞いております。  とにかく対外的には、数字の上あるいは生産性、貿易高で言っては最初に申し上げたような有力な工業国、ILOのいろいろな統計の中にも、代表国の一つとして日本の名前が常に掲げられておるのですが、私は一番おくれているのが労使関係労働関係であり、これは日本の最大の当面の課題ではないだろうかというように考えます。ILOは三者構成でございますので、私の立場としては、当然日本政府の態度に対する批判なり批評というものをしなければならない立場にありますが、それでも、最近の私の心境としては、毎回数年にわたって日本政府の態度だけを非難しておることが、はたしてこれがいいのだろうかというような、やはり日本という立場でどうして解決できないのかという実感を持たざるを得ない、これが最近の心境でございます。どうかILOの空気を率直に消化していただきまして、これはひとり日本だけの問題ではなしに、各国が八十七号といえば日本だというような、きわめて不名誉な経過をたどっておりますこの問題を、一日も早く解決をしていただきたいというように思います。  最後に、私は私の感じを申し上げますけれども、八十七号条約そのものに反対をされている方あるいは政党はないのではないかと思うわけです。八十七号条約そのものの批准に、反対をしているという言い方なり態度は、私はほとんど耳にいたしておりません。だから焦点は、八十七号条約を批准するにあたって、日本の労働関係の持っておるいろいろな課題を前向きに解決するのか、うしろ向きに解決するのかというところに、私は、この条約批准問題の焦点があるような気がいたします。したがって、私は、やはり西欧の組合のように、相手にも権利と行動の自由を求めると同時に、社会的責任を強くしてもらうという、そういうおとなの労使関係というところにまで日本の国内の事情を持っていかなければ、幾らりっぱな商品が外に出ても、日本の実態というものが整っていかないというように考えますので、国会の諸先生方の賢明なる御判断をお願いする次第です。(拍手)
  93. 田口長治郎

    田口委員長 以上で三君からの御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  94. 田口長治郎

    田口委員長 本懇談会は、参議院の関係で十二時三十分までに終わりたいと思います。つきましては、質問通告者が七人ございまして、各員に機会を与えたいと思いますから、その点お含みの上、質問は一人について二問程度にお願いをいたしたいと思います。  この際、小林君より発言を求められておりますので、これを許します。小林進君。
  95. 小林進

    ○小林委員 質問が二問に制約をせられておりますので、ごくかいつまんで重点的にお尋ねをいたしたいと思いますので、どうか参考人の先生方もひとつ私の質問に対して落ちのないように、懇切にお答えくださいますことをあらかじめお願いを申し上げる次第でございます。  まず最初に、政府代表の青木大使にお尋ねをいたしたいと思いますが、この二月十五日のILOの理解会が正式に対日実情調査の手続をきめられて、モース事務局長から日本政府に対し、その受諾の要請があったわけでございまして、先ほどのお話では、その要請文を大使みずからお持ちになって帰国されたということでございましたが、私は第一にお伺いいたしたいことは、この理事会の受諾の要請という行為でありまするが、これは一体いかように評価をすべきかという問題でございます。ILOはILOとして、こういうふうな要請をされるということは、ILOがなし得る最も強硬なる行動である、あるいは最後通牒という——こういうことばが適当かどうか知りませんけれども、最後通牒にも値する最強硬なる態度である、こういうふうに解すべきではないかと思うのでありまするが、この、要請に対する評価の問題であります。これをひとつお聞かせをいただきたいのでございます。  第二点といたしましては、この要請を受諾すべきか、あるいは拒否すべきかという問題でございます。共産国といたしましては、自由委員会それ自体の設立を認めないという別個の立場から、過去の例といたしましては、ソ連、チェコスロバキア、ハンガリー等が、そういう要請を拒否したという例があるそうでございまするが、自由主義圏内といたしましては、先ほども原口労働側代表が言われましたように、蔵の中に入れておかれたものが初めて日を浴びて、日本政府に対して初めてこれが発動されたのであります。ここで、ILOとしては、一つの新しいテストケースとして行なわれるのであるから、これは最も重大なる事項であるというお話があったのであります。これを受諾しないと一体どういう結果になるか、あるいは受諾すればその影響はどういうふうになっていくか、大使は国際の場において一番見解がいまのところはお広いのでありますから、ジュネーブにおいて国際情勢を見られておる立場から、その受託の可否の問題について、ひとつ御意見をお聞かせ願いたいと思うのでございます。  なお、第三の問題といたしましては、これは若干私の見解が入りますけれども、受諾をして、実情調査調停委員会が日本へ来て、そして日本の労働行政をくまなく見られた場合には、それは必ず報告書というものが作成をせられ、その報告書は理事会なりあるいは総会なりの場において発表されると思うのでありまするが、その場合において、その報告書の及ぼす影響であります。そこまで至らないことを私どもは熱望しておるのでございますが、われわれ国会議員としてはそういう場合も予定をしておかなければならない。その報告書の及ぼす影響は一体どんなものか。話が唐突になりますけれども、青木大使は外交官でいらっしゃいますから——かつて日本が満州国を侵略いたしましたときに、侵略をしたか侵略でないかということで、あのときは国際連合ではございません。国際連盟でございましたけれども、国際連盟で同じく調査団というものが編成をせられた。当時イギリスのリットンという伯爵が団長になられて、そして日本並びに満州国の調査に来られて、その調査報告書類というものが国際連盟の場で報告をせられた。これを契機にして、日本は国際連盟にいたたまれなくなって、ついに脱退をいたしました。世界の孤児になった。世界の孤児になって、それが認められずして、だんだん孤立のままで戦争に突入して、第二次世界大戦を勃発するということになったのでありますが、そのリットン報告と、いまの事実調停委員会が日本に調査に来て行なわれる報告というものは、国際連盟と国際連合あるいはILOと舞台は違うだろうけれども、本質的に世界的な最も権威ある機関であることは間違いないのであります。そういう報告が行なわれたときに、一体日本が世界の場でいわゆる孤立化すというふうな危険が想定せられないやいなや。これは、私どもは、やはり政治家というものは先をもって論じていかなければなりませんので、いささか先のこともお尋ねいたしておきたいのであります。  第四点といたしまして、これは重大な問題ですが、お伺いいたしたいことは、わが日本はILOの常任理事国であります。その理事国が、先ほども大使が言われました、ILOの中でも最も基本的な条項であるといわれますこの結社の自由に関する問題について、六年間もこれを繰り返しておる、十六回も理事会、自由委員会の勧告を受けるというふうなことを繰り返しておいて、なおかつ常任理事国の地位にとどまっていて一体よろしいものかどうか。普通のわれわれの常識をもってすれば、まあこれくらい——常任理事国といえば、まずILOにおける指導者の立場であります。最もILOの精神を正しく行なわなければならない道義的、政治的責任のある地位であります。その地位にある常任理解国の日本が、これくらいILOに非難を受けているという状態でありますから、この際、一応私は、常任理事国を拝辞するのが常識的な解決ではないかと考えるが、この問題はいかがでございますか。  なお、青木大使に対する最後の質問でありますけれども、これは昨年も、春の通常国会でILOの問題が論ぜられたときに、ジュネーブにおいて青木大使が、もうILOの場においては日本に対する同情国は一つもなくなったというふうな発言があったとかいうことが、一応この国会の場で論議になったことがあるのであります。これは直接大使からだれも聞いたものがあったというわけではないのでありますけれども先ほどの経営者の三城さんのお話にも言われたように、経営者のほうも、この八十七号の問題に対しては、日本政府やり方に同情的ではないというふうな御発言がございましたが、経営者の代表、政府の代表——ソビエトや共産圏は別でありますけれども、自由主義の陣営の中で、政府の代表、経営者の代表の中で、せめてこの日本の立場を一国でも理解せられる国がないかどうか、もし幸いにして一つの国でもございましたら、私どもまだ救われた気持ちになるのでありますが、そういう国がありますかどうか、お聞かせを願いたいと思うのであります。これで第一問を終わります。  それでは今度は、原口さんにお聞かせを願いたいのでありますが、御承知のとおり、わが日本がこの八十七号を批准ができない問題の中には、いろいろの、要素がありますけれども……   〔「委長長、注意をしろよ」と呼ぶ者あり〕
  96. 田口長治郎

    田口委員長 小林君、簡潔にひとつ……。
  97. 小林進

    ○小林委員 いろいろの要素がありまするけれども、その中で、いわゆる国家公務員であります。公務員の話し合いの問題について、いまこれが批准をできない問題の一つの要点になっておるわけであります。いわば職員または職員団体は、職員団体以外の団体または連合体を事実上組織することを妨げず、その職員、職員団体またはこれらの団体は、国または地方公共団体の当局に対してその不満を表明し、または意見を申し出て、話し合いをすることができることを規定するという点、いわゆる職員団体の連合体が、その連合体を管理、監督するいわゆる責任者と、自分たちの経済的なあるいはその他の問題について、不満を表明したり話し合いをするという、そういうことは許されるべきではないというのが、これは自民党側の解釈であります。これがいま、国際の場において批准できないデッドロックの大きな問題のポイントになっておるわけであります。こういう国軍の職員団体が、あるいは連合体が、その連合体の、反対側の責任者と話ができないなどということを規制いたしておりますことが、一体世界のILOの場から見て、これが世界の労使関係の常識となっているのかどうか。もし私ども労働者側の立場に立つ者が、われわれの考えておることが世界の場において非常に非常識である、こういうことになるならば、われわれもまた考えなければならぬと思うのでありますけれども、こういう点、世界先進国の慣行法、規定等をひとつここでわれわれの理解のできるようにお話をいただきたいと思うのであります。その他問題がございまするけれども、他の質問者がおりますので、一応これで打ち切ることといたします。
  98. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 お答えをいたします。  ただいま報告の受け取り方ということから最後の通牒ではないかというお話がございましたが、ILOというもの自体が国際機関でございまして、日本に戦争をしかけてくるというようなことはむろんない。ただし、ILOとしては、最後の通牒という意味が、いままでとってきた手続ではいかぬ、いままでとってきた、結社の自由委員会で議論してきた、報告を出してきたという手続は、もうこれでやめましょうという意味の最後の通牒という意味ならば、私はそのとおりと存じます。  それから、これを受けるべきか受けざるべきかという御質問に対しましては、これは政府の自由でございますが、いままで日本政府がとってきた態度その他から、またILOの理事会の空気から考えまして、なかなか受けないということになりますと、それは相当な冒険だと、私の個人的な意見では考えております。  それから、報告書がどういう影響があるかというお話に関しましては、報告書そのものがまだできておりませんので、私その正確な答弁をする立場にないのでございますが、この報告書ができますれば、御承知のとおり、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、ドイツ語、各国語になりまして、各国にばらまかれます。そういうことから、日本の労働関係の状況及び政府と公務員の関係というようなことが世界的に宣伝される。よかれあしかれこれが出ます。  それから、先ほど日本政府理事が常任理事国から退散すべきかどうかというお話に関しなしては、これもまだ想像の域でございまして、報告も出ておらず、日本政府が批准または国内法の改正をやるかやらぬかということもきまっておらないのでございますから、ただいま私がお答えしかねるのでございます。  それから最後に、同情国があるかどうかという問題に関しましては、結社の自由の問題に関し総評からあれだけたくさんの提訴があったということに関しまして、ずいぶん日本の労組は勉強家だ、やたらに持ってくるということを皆さん言って困っておられますが、日本政府ももう少し早口にこの問題を解決してくれぬか、そうじゃないと、ILOという機関は、日本政府のために、あるいは日本の総評のためにだけ存在しているのじゃないという意味から、早くこの問題を片づけてくれという意味で、そういう意味では同情者はございませんです。なるたけ早く解決してくれということで、いつまでもこれを引っぱっていくということに関しては、もう同情者はござません。
  99. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 公務員の団体交渉の御質問でございましたけれども、私の知る限りでは、組合である限り、団体交渉は必ず原則としてできる。ただ、方法について、あるいは運営についての取り扱いについてはいろいろあるようですけれども、団体交渉ができないというのは組合ではありませんから、そういう意味では、西欧の職員組合、公務員——若干範囲が違いますけれども、団体交渉はできる。できるできないということが問題になること自体がおかしいので、労働組合という結社の自由のもとに組合ということを認めるならば、当然そこに話し合い、団体交渉ができるということでございまして、交渉することもできない組合というのは、労働組合じゃないというふうに思うわけです。  そこで、日本の場合には、私の感じでは、当局なり政府が、自分の所属の、自分の対する組合というものを独立さしていない。独立さしていないから、交渉権がないというふうに言われているのじゃないだろうか。だから、やはり八十七号条約のほんとうの精神というものは、労働組合を独立させるところに、対等の立場を認めるところにあるわけなので、そういう面で、私は、単純に明確にこの問題を割り切るべきだというように思います。  なお、この際ですから、私の感じをちょっと簡単に述べさしていただきたいと思いますが、日本の労働組合は、民間を含めて会社なり当局なりが便宜供与をしておる面が非常に多い。つまり、独立さしていない。そういう面では、調査団がもし日本の労使関係の背景というものを克明に見るならば、非常に重大な課題を労使双方に与えるというように私は感じております。
  100. 小林進

    ○小林委員 二問でございますから、あとの三問は簡単にやります。二問目は簡単にやります。  そこで、大使にお伺いいたしますが……
  101. 田口長治郎

    田口委員長 時間がないから……。
  102. 小林進

    ○小林委員 簡単にやります。  ILOの最も基本的な条項でありまする週四十八時間制をきめました第一号条約を、まだ日本は批准をいたしておりません。最低賃金法ができたのでありまするけれども、これもILO第二十六号の最低賃金法規定と相抵触することがあるということで、これもまだ批准できないような立場でおるのでありますが、この問題について、日本はやはりILOの常任理事国としては、第一号、第二十六号の週四十八時間、最低賃金法というものは早急に批准を行なうべきではないか、そうしないことによって、日本の国際上における経済的な交流、そういう点に重大な支障があるのではないかと私は思います。この点が一点。これは三城さんに、支障がないかどうかお尋ねします。  それから、当面やはり八十七号を批准しないことによって——日本はOECDに加入することを今度の国会で初めて決定したわけです。ほんとうの経済の交流、自由主義国と経済の共同あるいは情報交換等、その他の利益を受けることになっておりますけれども、その中にも、このOECDの中における国際自由労連の影響力は非常に大きいと私どもは聞いておりますけれども、こういう面からも、八十七号を批准しないことによって、国際的な場で日本の受ける影響は非常に甚大である、かように私ども解釈をいたしておりますけれども、経営者側からお考えになりまして、そういうようなことは大して支障はないというふうにお考えになっているかどうか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  103. 田口長治郎

    田口委員長 簡潔にひとつお願いします。
  104. 三城晃雄

    ○三城晃雄君 八十七号条約を批准しなければ、国際社会においてどういう影響があるかという御質問だと思いますが、先ほど申しましたように、世界各国の経営者団体も、八十七号というものは尊重いたしておりますので、八十七号はすみやかに批准したほうがよろしいということは、私先ほど申し上げたとおりであります。しからば、具体的にどういう影響があるかと申しますと、必ずしも、いま直ちにこれこれの影響がある、たとえば、これを批准しなければ、日本の輸出品に対して関税の差別を設けるとか、あるいは輸入制限を受けるとか、そういうふうなことが具体的に何かあるかどうかということは、私は何ら確かなる情報を持っておりません。大体その程度でございます。  一号と二十六号の問題は、ILOの条約というものは、先ほど申しましたとおりに、これを批准するかしないかということは、各国政府の主権の問題でありまして、ILOの憲章上は何もこれを強制するという立場にはない。各国のそれぞれの国情に応じてできるだけすみやかに批准するということになっております。使用者のほうの立場から申しますと、現在まで一号と二十六号を批准していないからといってどうこうという、何も貿易上あるいは国際経済協力の上で、いままで特に障害が起こっているとは思っておりません。
  105. 田口長治郎

    田口委員長 河野正君。
  106. 河野正

    ○河野(正)委員 他の委員の発言も多いことでありますから、私は議事に協力するために、簡潔にお尋ねを申し上げたいと思います。  第一は、青木大使にお伺いしたいと思いますけれども、率直に申し上げて、ILO八十七号批准という問題よりも、それに関連いたします関係国内法をめぐる諸問題で、ILO八十七号批准そのものが今日まで遷延されたというのが、私は率直な意見ではなかろうかと思います。そういたしますと、この国内法の改正に対しますILO内におきます態度というものがどういう態度であるか、ひとつ率直にお聞かせをいただきたいと思います。
  107. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 お答えいたします。  国内法の改正の問題に関しましては、ILO事務当局といたしましては、これは国内問題である、日本の国内問題に口を出すことは内政干渉のおそれがあるということから、全然その問題には触れておりません。ただし、総評から提訴がありました関連国内法に関して、結社の自由委員会が報告の中に触れた程度でございます。今度の国内法を改正しようという点に関しては、非常に、むしろ遠慮をしておるという状況でございます。
  108. 河野正

    ○河野(正)委員 第二問目は、三城さんにこれまた簡潔にお尋ねいたします。  先ほどの御報告を承りますと、使用者側代表の方はやや門外漢的な立場である、市外ということばをお使いになったようでございます。ところが、私どもが仄聞する範囲によりますと、いま日本は十大工業国である。非常に経済が伸びてきたにもかかわりませず、労働条件が非常に整っておらぬじゃないか。そういうような面から考えてまいりますと、私は、やはり使用者側がこの問題に対して門外漢であったり、あるいはまた番外的な立場であっていいというようには考えない。たとえばガットの中でも、コストの場合にやはり労働賃金がどうだ、労働条件がどうだ、これは先ほど原口さんの御報告の中にもありました。そういう労働者の権利保障というものを背景としてというようなおことばがございましたけれども、そういう立場から考えてまいりますと、必ずしも私は、使用者側がこの問題に対して門外漢的な立場であっていいというふうには考えない。そういう考え方から、ややもすると、八十七号批准そのものがだんだん遷延されるのではなかろうか、こういうふうに私は思う。ですから、この八十七号批准については、やはり使用者側も労働者側も一体となって、この批准の促進をはかる、そのためには、使用者側も重大な関心を持って、門外漢でなしに、重大な関心を持つという立場をとることが、促進する一つの要因ではなかろうか、こういうふうに考えますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  109. 三城晃雄

    ○三城晃雄君 非常に重要なポイントであると思いますが、私が門外漢であるということを言いました意味は、この問題は、もともと日本の労働組合あるいは国際労働組織から日本政府が提訴されている問題である。したがって、日本の使用者は、これに対して法律的に関係がないのであります。かたがた、日本の民同産業を律しているところの労組法なるものは、八十七号それ自体と完全に一致しているものでありますから、民間産業に関する限りは、この問題に対して違反の問題ということは法制上はないわけです。そういう意味の門外漢、つまり、これを裁判と仮定しますと、われわれは裁判の被告でもなければ原告でもない、また弁護士でもない、そういう立場に立っているというわけであって、私が関係するのは理事会のメンバーとしてこの問題に関係するということであって、日経連は直接関係していない、こういう意味であります。間接にこの問題の影響するところは民間にあるではないかという御意見は、御指摘のとおりでありまして、むしろ、これが貿易だとかそういうものにいろいろな意味で将来影響するとしますならば、実際の被害は民間産業にありと言わなくちゃならぬので、われわれは、その意味において、熱心なる関心を抱いている点においては人後に落ちないのであります。
  110. 田口長治郎

    田口委員長 大原亨君。
  111. 大原亨

    ○大原委員 簡単に御質問をいたします。  第一は、国際労働機関憲章の第十九条の第八項に、「いかなる場合にも、総会による條約若しくは勧告の採択又は加盟国による條約の批准は、條約又は勧告に規定された條件よりも関係労働者にとって有利な條件を確保している法律、裁定、慣行又は協約に影響を及ぼすものとみなされてはならない。」こうあるわけですが、いまいろいろとお話がございましたように、条約の批准をめぐりまして、関係国内法で意見の対立がありまして、そうして政府を代表いたし、使用者側を代表するということではございませんが、国会に提案されますると、議院内閣制度の与党である自民党が、いわゆる政府を代表して倉石代表を与党の中で選任いたしまして、社会党では、ILO八十七号条約の批准を促進すべきであるという観点から、河野代表を選任いたしまして、河野・倉石会談が数十回にわたりまして続けられて、妥結点を見出したわけであります。つまり、私どもは、このILO憲章のいま私が読み上げました精神に従って、河野・倉石会談が持たれて、それぞれ各方面から検討いたしまして、数十回の会談の後に、一つの意見の一致点を見出したのであります。少なくともILOの問題、国際的な労働問題は、国内において労使間で十分、お話がございましたように消化をいたしまして、何でもかんでもILOの舞台に持ち出すというふうなことは、これはやはり自粛をする必要があると思うのです。労使双方とも自粛をしなければならぬ。しかしながら、遺憾ながらその話し合いの精神といいますか、そういう点においてやはり経験等のこともございましょうけれども、日本の政府は、私ども立場から言うと、関係国内法が示しているように非常に頑迷であると思うのでありますが、そのことは別にいたしまして、非常に問題がある点につきまして、努力に努力を重ねましてそういう一致点を見出したのです。私は昨年の春にILOに参りましたけれども、そういう国際的な問題に対して、日本の最大の野党である社会党がどう考えておるかということで、河上委員長の書簡を提示いたしましていろいろとディスカッションいたしましたが、話し合いの精神についてはきわめてけっこうである、ぜひその妥結点を見出すことは、これは労使に関係をいたしました問題ですから、社会党と政権を持っておる与党との話し合いはけっこうであるというような、いろいろな議論をいたしてまいりました。結論はもちろんございませんけれども、議論いたしましたが、この話し合いの精神によってでき上りました調停案、そういう河野、倉石氏のいわゆる一つの合意に達しました事項については、これを尊重して、これを守って直ちに条約を批准することが、日本の国際的な真価を高めるゆえんではないだろうか、こういうふうに私は考えるのであります。この点につきまして青木大使と、それから三城さんにはあとで御質問申し上げますが、原口代表とで、この点に対する所見をひとつ明らかにしていただければけっこうだと思います。
  112. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 お答え申し上げます。  先年、先生がILOに行かれまして、ILO事務当局とお話し合いになったということはあとで漏れ承ったわけでございまするが、ILOの事務当局は、国内問題には介入しないという原則がございますから、倉石先生と河野先生との、要するに野党と与党との間の穏便な話し合いというものを歓迎するということを申したのだろうと思います。まだその話し合いの結果というものは私らのところにも公になっておりませんから、それ自体をILO事務当局がいいの悪いのといったとは、私は思っておりません。
  113. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 日本政府がILOに対して出された報告の中には、野党と与党が話し合いを進めているという表現がございますので、ああいう話し合いということは、公式な報告の中に入っておる限りにおいて、私は正式なものとして受け取らざるを得ない。また今度の理事会の直前のグループ会議の中で、一体どうしてもめているのだという質問に対して、私の説明ではなかなか仲間が納得しにくい問題があるわけです。去年話し合ったものが、それがまた御破算になりつつあるのだというような説明では、どうも連中も納得いたしませんし、その辺は、形は非公式であっても社会的には正式な話し合いとして、相互の信頼という問題を裏切らない形で、国内的にも、また国際的にも報告していただきたいという気持ちでございます。
  114. 大原亨

    ○大原委員 この質問はさらに続けませんけれども、日本政府がしばしばILOに対して弁解をする際に、与野党において話し合いが繰り返されておる、こういうことがいまお話しのように文書に載っているわけです。したがって私は、その問題についてILO批准促進の立場から、私どもといたしましての真意をディスカッションすることは、これは決して国内問題、国際問題を出すゆえんではない、こういうふうに理解いたします。政府のほうは労使関係使用者側の一方的な立場にあるわけですから、その立場での報告だけでは十分でないと考えまして、事は国会に上程されておりますから、そういう立場でディスカッションいたしたのであります。  それから第二の点でございますが、ただいま小林委員からの御質問がございましたけれども、もう一回私が他の方々にも御質問いたしたいのですが、つまりILOに対する問題の一つの焦点は、実情調査団受け入れをどうするかという問題があります。基本的な態度をどうするかという問題がございます。そこで先般、本委員会におきまして私が労働大臣質問いたしました際に、大橋労働大臣は、実情調査団の派遣という最悪の事態がきた場合に批准ができないでいた場合に、これの調査を拒否するという理由は見当たらない、こういうことを話されたのであります。そこで私は、それ以上立ち入って追及をするというようなことにつきましては若干留保いたしましたけれども、そういう言明でございました。したがって私は、第一線で国の利益と名誉のために働いておられる皆さん方は、共通のそれぞれの立場があると信じますけれども、青木大使からは若干の発言がございましたが、実情調査団を受け入れることを拒否せよという一部暴論が、青木大使の言われたようにあるわけです。そういう不幸な事態にならないことを私どもは希望いたしますけれども、しかし実情調査団を拒否する理由がないということを大橋労働大臣が言明されましたが、このことについて実情調査団の受け入れをどうするかという返答に際して、私どもがいろいろと議論を戦わす際における参考意見を参考人からお聞きしたいと思います。その点で青木大使、三城さん、原口さん、それぞれひとつ参考意見をお聞かせいただければけっこうだと存じます。青木さんはよろしいです。
  115. 三城晃雄

    ○三城晃雄君 調査団を受け入れるべきか拒否すべきかという御質問だと思いますが、ILOの、私は先ほどからくどく申し上げておりますとおり、使用者側の立場から申しますが、なるべく調査団を受け入れないで済むようにしてもらいたいという気持ちなんです。と申しますのは、すみやかに批准が済んで、もう調査団を出さぬでもいいというふうになってもらいたい。それは調査団を出すことのいろいろなILOとの精神的、物質的負担もありますので、なるべくやりたくない、そういう気持ちである、私もその点においては非常に同感であります。しかし、そういうことで運ばなかった場合はどうするかという問題は、これは使用者側の人たちは受け入れてほしいという気持ちであろうと思います。私もそのほうがいいのじゃないか、受け入れること自体非常に不名誉と考えております。しかしながら、これを拒否するということは、さらに恥の上塗りだと私は考えております。
  116. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 労働側は、当然のことでございますけれども理事会において正式に事務総長の提案を支持し、その実現について日本政府が善意を持ってこれを受け取るように、そうしてこたえてくれるように要請をいたしております。したがって、労働側としては、調査団の来日については、これを歓迎するという立場にございます。また、ちょうど南ア問題の直後に日本の問題がかかりまして、議長のほうから、青木大使が急に帰国しなければならないというようなことも理由に述べられて、日本の問題がかかったわけでございますが、青木大使を通じて述べられました意見、態度というものを通じての全部の受け取った印象としては、これは日本政府としては調査団を受け入れると受け取ったというふうに私は判断いたします。なお、大使が言われました、こういったことが不必要になることを希望するという希望を表明されましたけれども、私も来日に至らないで、問題が自主的に国内で解決されることを希望いたします。
  117. 大原亨

    ○大原委員 終わります。
  118. 田口長治郎

  119. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 先刻のお話に対して二、三お尋ねをいたしたいと思います。  現在、日本では非常に異常な労使関係が持たれております。これは野党の先生方もおっしゃるとおり、事実非常に異常な姿を示しております。これについて、これは私の完全な私見ですけれども、本来公平な労使関係、また労働組合活動の本質的なものは、よく悪口を言われます対象になっておる資本主義諸国のほうで、むしろ健全な労働組合活動というものが行なわれておるのではないかというのが私の考え方です。ところが、きょう三人の先生方の御意見を伺っておりまして、労働者の天国のように言われております社会主義諸国の中で、かえってILO八十七号条約の精神にもとるような、健全なる労働組合活動また結社の自由というものが認められておらない、そのような御意見を承りまして、私ども考えておったことが正しかったのではないかとちょっと喜んでおります。それで、先刻からの野党の先生方の御質問と違った意味で、二点ほどお尋ねいたしたいと思います。  現在、ILOに対し、世界じゅうの国々からいろいろな問題が提起をされておると思います八十七号条約に関して、各種団体からその国に対し提訴を行なっておるような例がほかにありますか。また、わが国から提訴をしている問題の中で、労働関係団体以外に提訴をしておる例がほかにあるかどうか。また、もし労働関係団体以外からILOに対し、八十七号条約に関して提訴をしておるとすれば、それはどのような問題か、まずその点を大使からお答えをいただきたいと思います。
  120. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 お答え申し上げます。  ただいまの御質問、ちょっと私がぼんやりしておりまして、間違えておるかもしれませんけれども、その場合には御指摘願います。  八十七号条約関係の提訴というものは全部一応結社の自由委員会にいくということになっております。先ほどたしか原口代表からの御説明がありましたけれども、いままで全部で三百五十件、日本の案件は百七十九号案件と申しております。一本の案件がたいへんな部数でございます。それでほかに各国がこういう問題を出しておるかというお話でございましたが、去年の秋解決したカナダの案件は、これはカナダのフランス系の組合とそれからアングロサクソン系の組合の何か事件でございまして、その関係政府として非常に取り扱いがむずかしかった。しかし、この二百何十号案件が去年の十一月までに解決いたしました。それからイギリスは、先ほど原口さんからお話のあったサー・アルフレッド・ロバートが私に話した。自分がおったときには十五年間いろいろ問題が起こったけれども、一ぺんもILOには提訴しなかった。それはなぜかといいますと、ILOに提訴するなんというのは組合が非常に弱い国だ。組合が非常に弱い国で、国内でどうしても解決できないような国のためにこの結社の自由委員会に出す。日本は総評なんか相当強いらしいから、いいかげんに打ち切ってもらいたい、こういうようなお話でございました。ほかの国からも出ることは出ておりました。たしか去年でございましたか、イギリスの銀行の従業員が組合をつくった、それで銀行の重役がそれを許可しないということから、イギリスまで今度は一つ出ております。これはイギリス人らしく、ごく静かに法律論だけをやっております。
  121. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 ただいまお答えいただきましたものに関連いたしまして、日本の各種労働団体から相当多数の提訴がなされておると伺いました。そのわが国の各労働関係団体から行なわれております提訴に対するILOの反応、並びにそれらの提訴を通じてILOとしてはわが国の労働運動、また労働関係団体というものにどういう感じを受けておるか、その点を簡単でけっこうですから、お答えいただきたいと思います。
  122. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 この提訴をしたものに対しましては一応報告書が出ております。これは報告書だけでもうこのくらいの報告書で、この報告書は日本政府にそのつどお送りいたしておりますから、いま私がこの際説明するのを省かせていただきます。  それから第二の点で、どういうふうに思っておるかということに対しましては、このILOというものは一番上はたとえばアメリカから下のほうはごく最近独立したアイボリー・コースト、象牙海岸とかいろいろな国がございまして、やはりその国々の実情に応じて条約の適用というものを認めていこうという気持ちがあるのです。その点で先ほども十大産業あるいは日本の経済の発展が非常に高いから、日本に対してはやはりその高い標準でILOが臨んでおる、アフリカの新興国と違った標準で日本に対しては要求しておる、こういう形になっております。
  123. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 終わります。
  124. 田口長治郎

    田口委員長 青木大使は十二時十分までに、どうしてもほかの用件で退席しなければならぬということでございますから、以後の質問者は青木大使に質問をお願いいたしまして、その後お二人の方にはあと質問を残していただきたいと思います。
  125. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 私も実は通告をしておきましたのですけれども、大体十二時までに、お願いするということでお願いいたします。
  126. 田口長治郎

    田口委員長 山田耻目君。
  127. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 たいへん御苦労さまでございます。青木大使に一括して二つほどお聞きしたいと思います。  百五十八回の理事会で、四十七回総会から回されました南アの人種差別の決議が非難として採択されたということでありますが、同時に出されておりましたILO憲章の改正についても取りまとめができまして、あとは総会にという順序でございますが、憲章の問題は総会では、かなり問題があるといたしまして、こうした非難決議というものがこれから日本のILO条約八十七号批准の取り扱いいかんにかかりましては、あるいはむしろ未批准ということにでもなりましたならば、こういう非難決議がなされるのではないだろうかと一部うわさされております。日本が国際信用を失う上でたいへんなことでありますので、万々そういうことはないとは思いますが、なぜILOの未批准というものが、日本という国にとって、一部でありましても、これだけ大きいながめ方をされるのであろうか、それらについては、特にこれから日本が国際経済の分野に進出をしていく、OECDの問題、IMF、ガットの問題などで、そういう国際的な経済分野において、こういう事態が続くならば、一体日本はどういう立場になるであろうか。そうした判断について特にそういう衝に中心的にお当たりになっておる青木大使に条約の未批准と国際的なそういう日本の位置づけの関連について、できましたら明快に御答弁いただきたいと思います。  いま一つは、この間の理事会で日本に実情調査団を派遣する態度の御採択があったのでありますが、私は時期的に見まして、六月の理事会までには一応の証人喚問を終わって、それらの報告がなされるということがILO事務局などの筋ではないかと理解いたすのでありますが、その意味から見ますと、時期は非常に限られております。  いま一つは新聞紙等で報道されておりますように、モーリ、デボックなど労働者側の有力な代表が、日本に四月の十二日にお見えになるということが報ぜられておりますし、すでに飛行機の予約もなさっておるというふうに承っておりますが、こうした日本においでになる時期と日本が実情調査団に対する諾否の回答をする時期とはきわめて微妙なものになってくるのじゃないかという気がいたします。六月の理事会の報告等もかねまして、そこでなおこの上重ねて国際信用を失墜しないように一体どの時期ごろに応諾を与えることがいいだろうかということについて、おのずから時期は限定されてくるだろうと思うのでありますが、青木大使としていつごろの時期がいいのではないかという御判断がございましたら、これは具体的に条件はそろっておるわけでございますので、お話を伺えたらけっこうだと思います。  以上、二点でございます。
  128. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 ただいまお話しのありましたように、南アの問題は一応総会に上がるということになってしまいまして、日本の問題が実は残るという状況に相なりまして、そのために非難決議があるのじゃないかという御心配はまことにごもっともなんでございますが、私は非難決議というものがされる前に、日本政府がこの問題を解決していただくということに衷心から期待をかけておりますし、私も現地でこういうことにならぬように粉骨砕心するつもりでございます。  それから、国際的な経済関係に響くということはまことにごもっともでございまして、私もガットの代表をしておりまして、低賃金それから低価格という問題と、日本の輸出に対する差別待遇問題に対しましては一生懸命いま戦っておるわけでございますが、こういう問題のためにこのガットにおいてせっかく着々と効果をあげてきた差別待遇というような問題の解決がおくれる、あるいは挫折するということを心配しておる次第でございます。  それから、回答の時期をいつにしたらいいかというお話でございましたが、回答の時期は、第一回の会合を五月にやるというILOの希望からいたしまして、四月の初めごろにはするということが常識でございますけれども、御承知のとおり、提案自体には回答の期限がついておりません。法律的には、日本政府はこの次の理事会までしなくてもいいということも言えるのじゃないか、私はそんなことではとても現地では説明ができない、やはりなるたけ早く御回答を願いたい。
  129. 田口長治郎

    田口委員長 大坪保雄君。
  130. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は二問お尋ねいたしたいと思いますが、青木大使に対して一つ、後刻原口さんにお尋ねいたしたいと思います。これはあとでお尋ねいたします。  私どもは今日の段階ではILO八十七号条約は批准しなければならぬと考えております。なるべくすみやかに批准すべきである、こう考えておりますし、私どもの自由民主党でもそういうことは決定いたしておる。しかし、それが現実に批准の手続が取り運べないその理由、原因というものについては、これは青木大使もあるいは御承知かと思うのでありますけれども、先刻原口さんもちょっと御発言の中にことばを漏らされたのでありますが、わが国の労働連動は正常状態ではないと私ども考えるわけであります。結社の自由あるいは団結権の擁護というようなことは、いわゆる民間産業については一〇〇%わが国は認められておるというのが現状だと思います。ただ御承知のように、全体の奉仕者である公務員及び国の行なう官行事業ないし公共企業体の事業、これは公共性のきわめて強い、公益性のきわめて強い、国の経済社会に非常に大きな影響を及ぼすものであるから、そしてかつて特殊の来情があったから特別の立法をなされて現在のような公労法、地公労法というのが設けられておる。そこで公務員ないし公共企業体の労働者に対してある程度の制限がなされておる。それがILO八十七号と関連するわけでございます。ところが先刻申しますように、私どもから見ますると、ILO八十七号条約を批准して、そういう現在制限されている方面に対しても民間企業と同じように一〇〇%の団結権ないし団体行動権が許されるということになると、現状においては国民に非常に大きな迷惑を及ぼすおそれがある。どこの先進国の実情を見ましても、かつて労使関係の不正常ということがあったところにおいては、やはりそれに対する保障の法律というものがあった。イギリスのごときも数年前まではきつい保障の法律があったわけであります。その他何か公共の、国民大衆の利益を守るための保障の制度があるわけでありますが、わが国においては、もし公労法四条三項、地公労法五条三項が削除をされるとなった場合に、その保障はない。これでは国民全体に対してその利益を守ることにならないから、最小限度の抑制規定を設けようというのが、今回政府が出しております国内法の改正案だと思うのであります。これに対しましては総評はあげて反対すると言っておる。でありますから、従来のいきさつから考え、そして現状の実情から考えますると、ただいまのままで八十七号条約が批准されれば非常に大きな混乱をもたらすおそれがあるということを私も非常に心配しているのです。そういうわが国の国内事情労働運動の正常でない状態、そういうことをジュネーブにおける各国の政府代表なり資本家代表なりというもの、あるいは事務局等においては知っておられるであろうか、その辺の感触を大使にお伺いしたいと思うのです。ただ何か日本の政府がいたずらに怠慢である、絶対多数を持ちながらやれないのはどういうわけだ、政府の怠慢であるのだというようにのみ考えられておるのであるか、私どもは非常に与党として苦慮いたしますから、その点を一点お伺いいたしたい。もしできるならば三城さんからも、あなたがお聞き及びになって、そういう感触をどういうようにお持ちになるか、できればそれをひとつお聞かせを願いたい。
  131. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 お答え申し上げます。  先ほどのお話がございましたILOではどう見ているかというお話でございますが、これは各国その発展の段階で労働組合の運動というものも違っておるということはILO事務当局においてもよくわかっておりますし、これははなはだ原口さんに対して申しわけないのですけれども、総評が出したあの提訴自体をよく読んでみると、日本の組合活動がちょっとおかしいのじゃないかというような感想を持たれたのじゃないかと思うのです。それから先ほど日本の公務員その他のことに関して八十七号批准をしたらばたいへんなことになるのじゃないかというお話がございましたが、その点は、八十七号条約とちょうど裏になります団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約、要するに九十八号条約というものがございまして、これは公務員の適用排除になっております。
  132. 三城晃雄

    ○三城晃雄君 日本の労働事情などについて、こまかいことはジュネーブの理事会の人たちはあまり知らないと思います。ただ民間産業に関する限りわれわれは何ら問題はないということは、私は絶えず言っております。しかしながら、使用者側の人たちなどの考え方は、八十七号条約に矛盾するような国内法の改正をした場合に、何か国内的な混乱が起こるということがかりにありとすれば、それに対する適当な措置をとることについて反対はないわけです。ただその適当な措置が、八十七号にそれ自体がまた矛盾するということであるならば、片方を押えて片方をなんということになるので、それはどうも矛盾する。しかしながら矛盾しない範囲内において行政措置あるいは法律改正によってやるということは何ら異議はない、それはけっこうでしょう。ただし、そういうふうなことであれば、絶対多数を持っている与党は、与党の考えによって、与党の判断によってそのとおりの措置をすみやかにとって、しかるべく批准すればいいではないか。やるならやるように早くやれ、やるなと言っておらぬ、こういう考え方です。
  133. 田口長治郎

  134. 八木昇

    八木(昇)委員 いよいよ時間がないそうでございますから非常に残念でございますが、端的にお伺いをしたいと思うのでございます。  もともとILOの八十七号条約というのはアメリカのAFLが提案をして、そして最終的に八十七号条約の採択になったと思うのでありますが、それは結局、一言にして言えば、国家の立法措置や行政措置によっていわゆる不当労働行為という疑いのあるようなことが行なわれないように、国際的な各国の政府によるところの不当労働行為の禁止、こういう精神が根本であると思うのであります。したがいましてこのILO八十七号条約は、たとえばイギリスやフランスなどのように、軍隊や警察官にすら団結権を認めておる国もあるわけで、したがって、なろうことならば、国家公務員や教員であろうが、一切がっさいストライキ権までをも認める、そういう内容のものにしたいという積極的意図があったと思うのであります。しかしストライキ権までも認めるような内容にくくって八十七号条約をきめれば、八十七号条約批准をためらう国々がどうしても出てくる。だからそこまでは言っていない。しかし当然、それが公務員であろうが何であろうか、少なくとも団結権、団結権を認める以上団体交渉権、これらは最低の基準としてその自由は認めなければならぬ、そういう趣旨のものである、こう当然常識的に理解しなければならぬと思うのであります。そうなりますと、朝日新聞の二月十三日の社説にも書いてあるのですが、たとえば教職員の組合あるいは公務員の組合が文部省やあるいはその他と、意見を具申し、そうして話し合いをすることができるというようになっておる倉石修正案に対して、いろいろと異を立てておることは筋が通らない、そういうことについては、その背景に何があるかといえば、先ほど自民党の委員の方が御質問になったように、現在の日教組のようなあり方では困るという心配がうしろにあるのであろう。その御心配の心情は推察できないではないけれども、しかしそういうようなことが背景にあって、そうしていまの八十七号条約批准問題がにっちもさっちも進まないようなことになっているとするならば、それは正しくないということをずばり言い切っておるのです。そこで、私もそのとおりだと思うのでありますが、もし倉石修正案の線でなくて、政府が当初出しておりまするそういう国内法に対する考えのまま、そのままを国会で押し切って八十七号条約をあわせて批准をしたとしても、それでは問題の解決にならないのではないか。もしそういうことであったとするならば、政府原案のまま、あるいはそれを若干緩和したとしても、教組やらあるいは公務員の組合には団体交渉を認めないような精神のものでこれを押し切って八十七号条約を批准しても、必ずILOで今後またそれは尾を引いて問題になり、八十七号条約の最終的解決にならないのではないか、こう私は考えるのですが、そういう点についての青木大使の御見解を承りたいと思うのであります。その問題がいまこの通常国会で問題になっており、しかもILO当局は四月中旬までにこの問題の調査団を日本政府が受け入れるかどうかの諾否の回答を求めておる、こういうことになっておるわけです。そこでまず第一段の私の見解についてのお答えをいただくと同時に、国会の推移いかんにかかわらず四月中旬にはこの調査団を受け入れるか受け入れないか、イエスかノーかという態度の表明をもう迫られておるものと理解するのですが、あわせてその点もお答えをいただきたいと思います。もう四月中旬までにはこのうやむやの不明快な日本政府の態度表明は許されない。調査団を受け入れるか受け入れないか、諾か否か、イエスかノーかということを四月中旬までには回答が迫られておると思うがどうかという点であります。以上であります。
  135. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 ただいま団体交渉権のことに関してお話がございましたけれども、九十八号条約と八十七号条約はちょうど表と裏になっておるとよく言われますが、八十七号条約のほうは団体交渉権そのものを規定はしていないのでございます。それで団体交渉権の問題、これはまた非常にむずかしい問題でございまして、ILOの中でいまことに公務員の団体交渉権の問題を討議中でございます。専門家委員会の報告が今度の三月にちょうど出てまいりまして、それを討議の過程においていろいろ議論が出まして、この次の理事会にまた持っていこうというようなことでございまして、この問題に関しましては、私はただいまお答えを差し控えたいと思います。  それから先ほどおっしゃいました回答の期限でございますが、これは先ほど申し上げましたように、ILOはどこまでも五月にやりたいという希望を持っている。ILOというものはやはり非常に忙しいのでございまして、もし五月にやらないと七月になるか八月になるかわからない。ぜひ五月にやらしてくれと言っておりますけれども法律的には回答する義務はない。
  136. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうことで情勢として許されるかどうかを伺っておるわけです。
  137. 青木盛夫

    ○青木盛夫君 出先として私の立場は非常に困難です。
  138. 田口長治郎

    田口委員長 どうぞお帰りください。御苦労さまでした。  大坪保雄君。
  139. 大坪保雄

    ○大坪委員 原口さんにお尋ねいたしたいと思いますが、あなたはずいぶん長くILOに御関係になっておりまして、各国の労働グループとはしょっちゅう接触をとっておいでになるわけでございますが、この日本のILO八十七号条約批准問題も六年がかりの問題でありますが、これに対して総評の訴えを何とか好意的に処理しようというのが国際自由労連の立場だろうと思います。それはわかります。ところが先刻青木大使もお話しになったのでありますが、ソ連をはじめとする共産国のほうでは、むしろ調査団の派遣というようなことは反対である、新聞には退場したというようなことまで書いてあったものがあったのであります。これはどういう理由であるか、先刻青木大使もちょっと触れられましたが、そこは私は今日お尋ねはいたしませんが、おそらくあなたは世界労連の連中とも御接触になっているだろうと思う。この問題に対して、国際自由労連の連中は総評に対して好意的な立場をとっておるであろうと思うが、世界労連の連中はどうであるかということであります。  それから、ついででありますが、先刻あなたのおことばの中に、日本の国際的立場として一番おくれているのは労使関係だけであるように思われるということばがございました。私は実は非常に聞き耳を立てた。その後に、日本も大人の労使関係になってもらって、そして早くこの問題を批准したほうがいいというようなおことばもあったかのように思います。その労使関係の大人になるということについて、あなたのもう少しふえんしたお気持ちをお述べいただきたいと思います。
  140. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 世界労連は、御承知のように、ソ連圏並びに一部の資本主義国の労働組合が入っておりますが、世界労連のほうは、当初は日本の結社の自由の問題についての提訴について、正式な支持の態度を表明いたしておりません。さらに、世界労連という労働組合を代表する人は、いまのところ理事会にはおりませんので、直接そのことについては申し上げる材料がないわけですが、やはり結社の自由という問題について、ILOの基本的な問題であると同時に、たまたまこれがソ連圏に対する非難の材料として、てことして、結社の自由という問題が使われた、そういう経過から、ソ連圏はこの問題については常に棄権でありますし、今度の財政委員会においても、日本政府が受けないことをむしろ望んでおるというようなふうに聞き及んでおりますが、世界労連については、自由労連ほど日本の問題については深い関心を示しませんし、私の知る限りでは、世界労連が日本の提訴について正式な支持の態度を表明したことはないというように感じております。国際自由労連は、御承知のように、政府使用者、政党からの独立した組合運動の自由というものを強く主張いたしまして、この結社の自由の精神というものが、国際自由労連の成り立ちの基本的な精神と合致をいたす関係上、自由労連としては、自分のものとしてもこの点を重要に考えているというふうに思います。  それから、第二点の問題については、これは私の主観も若干入りますけれども政府なり使用者なりが組合に対して独占性を認めてない、ここに私は一番大きな日本の課題があると思います。独立を認めてないから、交渉権の問題も出てくる。もし独立を認めるならば、交渉しなければならなくなるのは当然でありまして、この辺に大きな問題があると思います。もう少し平たく私の感じを申し上げれば、民間を含めて、できれば組合がないほうがいいのではないか、あっても弱いほうがいいのではないか、御用組合的な組合のほうが健全な組合だというような一つの常識、もし組合がはね上がって言うことを聞かなければ、それを押える法律がなければならないというような、労働組合を社会的に正当に認める以前の雰囲気が相当あるところに、私はこの問題の中心点があるような気がいたします。したがって、私たちの希望としては、また、西欧のわれわれの仲間が、なぜ日本の労働組合がこの問題でゼネストができないのか。先ほど青木大使は、日本の組合が弱いからというような表現も使われましたけれども、私は全く同感であります。日本の労働組合は権利の問題についてきわめて弱い。外国の労働組合であれば、賃上げはしなくても権利の確立のためにゼネストをすると彼らは言い切っております。それほどの関心を持っておるのですけれども、残念ながら総評は力がありませんし、そういう力は全然ないわけなので、結局ILOにこまかいことまで提訴せざるを得ないというような結果になっているのだろうと思うわけです。
  141. 大坪保雄

    ○大坪委員 いまのことばでちょっと理解しがたい点がございますから、もう一問。  いまのお話で、組合に独立を認めてない点が日本の労使関係の正常でないところのおもなる点だというようなお話がございました。それはそれでいいのです。そうすると、日本の労働組合の独立を認めるということは、たとえば今日いろいろな組合に対して認めておりますチェック・オフとか専従職員の承認とかいうことはやるべきではない、こういう点を含めてのことであると理解してよろしゅうございますね。
  142. 原口幸隆

    ○原口幸隆君 協定事項に属すべきことだと思います。
  143. 田口長治郎

    田口委員長 これにて懇談会を終わります。    午後零時二十二分散会