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1964-02-18 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十八日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       伊東 正義君    浦野 幸男君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       渡邊 良夫君    亘  四郎君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木 一男君    山口シヅエ君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         郵政事務官         (人事局長)  増森  孝君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (大臣官房統計         調査部長)   大宮 五郎君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金部長)    辻  英雄君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  栄作君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君  委員外出席者         議     員 河野  正君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 二月十四日  委員高橋等辞任につき、その補欠として竹内  黎一君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員吉川兼光辞任につき、その補欠として小  平忠君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員小平忠辞任につき、その補欠として吉川  兼光君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十三日  公害対策基本法案吉川兼光君外一名提出、衆  法第一一号) 同月十四日  母子福祉法案内閣提出第九四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  駐留軍労働者雇用安定に関する法律案中村  高一君外十二名提出衆法第一〇号)  中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八九号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  中村高一君外十二名提出駐留軍労働者雇用安定に関する法律案議題とし、審査を進めます。     —————————————
  3. 田口長治郎

    田口委員長 提案理由説明を聴取いたします。河野正君。
  4. 河野正

    河野(正)議員 ただいま議題となりました駐留軍労働者雇用安定に関する法律案提案理由説明を行ないたいと思います。  私は日本社会党を代表いたしまして、駐留軍労働者雇用安定に関する法律案提案理由説明をいたします。  御承知のように、現在、特殊な労働者として軍事基地に働く労働者がおりますが、これは駐留軍労働者と呼ばれております。  いま、これらの労働者の身辺に大きな問題の起こっていることはすでに周知のところであります。ごく大まかに述べてみますれば、これらの労働者米軍の戦術の都合で、いっでも離職の不安にさらされていること、また軍事基地で働くという事情のもとで、常にその権利を制限されているということであります。  離職の不安ということについて見れば、戦後二十数万人もいた労働者が、いま六万人前後しかいないことをもってしても明らかなところであります。  この不安定な立場にある労働者雇用を安定させることは急務であると考えます。この目的をもって日本社会党内閣委員会社会労働委員会において政府の善処を要望してまいりました。しかし、御承知のように、政府はいまだに強力な安定の措置をとっておりません。  この明らかに不安定な雇用状態に置かれた労働者につきましては、雇用主たる日本政府が、雇用安定の措置を講ずることは当然であります。これらの労働者米軍戦略変更によって、一方的な通告で解雇されることは許されないことであります。ここに日本社会党が、こういう不安定な状態に置かれました労働者にたいしては、それにふさわしい雇用安定措置を講じなければならないと考えるものであります。  しかし、こういう立場にある労働者雇用の安定とは、現在の職場にいつまでもいるという意味のものではなく、むしろ、他の安定した平和産業の中の職場に移ることが、この種の労働者雇用の安定となると考えられます。  そういう意味で他の一般産業労働者雇用問題とは違った性格をもっているのであります。  これは、日本社会党基地撤廃要求しその実現を考えている現状からいっても、正しい雇用政策あり方であると私は考えるものでありまして、こういう見地に立って日本社会党は、駐留軍労働者雇用安定に関する法律案を提案した次第であります。  次に、法案内容について御説明いたしますと、第一条、目的は、この法案の基本的な立法目的を示したものであります。それは、米軍撤退等に伴って解雇される場合に、安定した職場への再就職を容易にするための必要な措置を講じ、これらの労働者雇用の安定をはかろうというものであります。具体的に申しますと、米軍撤退とか部隊の縮小とかいう理由で、形は政府雇用者でありながら、その雇用は常に不安定であり、再就職の保障もなく、いつ解雇されるかわからない状態に置かれている駐留労働者雇用の安定をはかることがその目的であります。  第二条は、本法案によって保護される駐留軍労働者範囲を定めたものでありまして、もっぱら政府雇用労務者だけを対象としております。  第三条について見ますと、第一項では、防衛施設庁長官は、アメリカ軍撤退等の場合には余剰となった労働者解雇しようとするときは、労働大臣同意を得なければならないこと。第二項では、右の労働大臣同意は、解雇されようとする労働者が安定した職業に再就職することが確実であると認めた場合にだけ許され、第三項では、かつ、その同意はあらかじめ駐留軍労働者雇用安定審議会意見を聞かなければならないこととし、第四項では、右同意を得ないでなされた解雇は無効であることを確認的に規定したものであります。  第四条は、雇用計画について規定したものでありまして、アメリカ軍撤退等による余剰労働者を転職させる計画作成義務労働大臣に負わせたものでありまして、第三条による解雇制限を受けた労働者についてだけでなく、将来予想される余剰労働者の分も含めた計画雇用計画であります。  第五条と第六条は、転職促進措置実施規定したものであります。  第五条は、職業指導職業紹介公共職業訓練その他の措置が効果的に関連して実施されるような義務労働大臣に課したものであります。  第七条と第九条は、第三条の労働大臣の不同意にかかる労働者に対する措置規定したものであります。これは、第四条〜第六条と異って、第三条によって解雇制限を受けた労働者についての特別措置を明らかにしております。  その特別の措置とは、第三条によって解雇をストップされた全労働者に対し、第五条の転職促進措置を必ず受けさせる義務を課したことであります。  第十一条は、駐留軍労働者雇用安定審議会規定したものであります。  審議会の役割は、駐留軍労働者雇用安定に関する事項を関係行政機関に建議することのほか、第三条による労働大臣同意、不同意をするとき、及び第九条による不同意の取り消しのとき、意見を述べることであります。  以上が、本法案提案理由内容であります。何とぞ慎重審議の上、本法案の御採決をお願いするものであります。      ————◇—————
  5. 田口長治郎

  6. 田口長治郎

    田口委員長 提案理由説明を聴取いたします。大橋労働大臣
  7. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま議題となりました中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  中小企業退職金共済法は、その施行以来四年有余を経過したのでありますが、その普及状況を見ますと、昭和三十八年十一月末現在で制度加入事業主数六万五千余、従業員数八十四万人余を数え、中小企業従業員福祉の増進と中小企業の振興に貢献いたしてまいったのであります。  これらの推移から見まして、この制度は、中小企業労働福祉対策の柱の一つとして、今後さらに一そうの普及発展をはかるべきものでありますが、現行制度運用中小企業実情とを考え合わせますと、幾つかの改善すべき点があるのであります。  すなわち、その一は、現行制度では、適用対象である中小企業者範囲は、製造業等につきましては常用従業員数二百人以下に限られているのでありますが、昨年制定されました中小企業法本法におきまして、中小企業者範囲は、製造業等について従業員数において常用従業員数三百人以下としており、その企業実態を見ました場合、退職金制度のないところが相当数あるのが実情であります。  第二は、現行制度では、掛け金月額最高額は、被共済者一人につき千円でありますが、最近における賃金水準上昇等により、現行最高額制限実情に即さないものとなっているのであります。  第三は、この制度普及に伴いその実施に当たっている中小企業退職金共済事業団業務上の余裕金は逐次増加しつつあり、昭和三十八年度末においては約百億円に達する見込みであります。この余裕金運用は、現行法上は、特定有価証券取得等に限られておりますが、制度加入者たる中小企業者からその福祉施設設置のための資金として融資する道を開いてほしい旨の要望が強く、かつ、中小企業実態からかかる福祉施設を拡充することが特に緊要であります。  第四は、短期雇用者につきましては、現行制度においては退職金共済契約包括加入の原則の適用が除外されているのでありますが、事業特殊性から相当数従業員が個々の事業主との関係においては、短期雇用者として転々とすることが常態である建設業等においては、近年、技能労働者中心とする労務確保対策一つとして、これら短期雇用従業員についても退職金共済制度適用を要望する機運が急速に醸成されつつある実情にあるのであります。  政府は、このような実情にかんがみ、かねてから中小企業退職金共済審議会本法改正について諮問いたしておりましたが、その答申を得ましたので、答申趣旨に沿って、必要な改正を行ない、中小企業退職金共済制度の一そうの普及発展をはかるために、この法律案提出した次第であります。  次に、法律案内容につきまして概要を御説明申し上げます。  この法律案内容は、以上申し述べました趣旨に基づいたもので、その第一点は、本制度適用対象である中小企業者範囲を、製造業等について現行常用従業員数二百人以下から常用従業員数三百人以下にまで拡大することといたしたことであります。  第二点は、掛け金月額最高額を、被共済者一人につき現行の千円から二千円に引き上げることといたしたことであります。  第三点は、中小企業退職金共済事業団は、制度加入者たる共済契約者またはその団体に対し、従業員福祉を増進するために必要な労働者住宅その他の施設設置整備に要する資金の貸し付けを行なうことができる道を開くことといたしたことであります。  第四点は、建設業その他の労働大臣が指定する特定業種中小企業者に期間を定めて雇用される労働者について退職金共済制度特例を設けることといたしたことであります。この特例内容は、この退職金共済制度実施主体といたしましては、特例を最も効果的に実施運営するために、業界の多数の事業主自主的責任体制のもとに特定業種退職金共済組合を、特定業種ごとに、全国を通じて一個設置することとし、この場合、積立金長期にわたり安全に管理するとともに労働者に対する確実な給付を保障するため、中小企業退職金共済事業団の場合に準じて、その業務財務等について必要な規定を設けているのであります。  特定業種退職金共済契約につきましても、中小企業退職金共済事業団を当事者とする退職金共済契約に準じて取り扱うことといたしておりますが、建設業等実態にかんがみ、元請負人の事務処理に関する所要規定を設けることといたし、また、退職金につきましては、本特例を設けることとした趣旨にかんがみ、一企業を退職するごとに退職金を支給することとせず、従業員の死亡、廃疾、転業その他支給事由を法定し、他方、掛金の納付があった日数はすべてこれを合算することとし、その額につきましては、現行中小企業退職金共済事業団退職金の額の算定方法を参酌して政令で定めることといたしております。  また、掛け金につきましては、単一の日額制によることとし、十円以上百円以下の範囲内において特定業種退職金共済組合の定款で定め、その納付方法につきましては、失業保険日雇い労働保険者に関する特例の例にならって、退職金共済証紙制度を取り入れることといたしております。  その他法律改正に伴い、所要経過措置等を定めるとともに、関係法律の条文について所要整備をすることといたしております。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  8. 田口長治郎

    田口委員長 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  9. 田口長治郎

    田口委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。小林進君。
  10. 小林進

    小林委員 大臣にお伺いいたしますが、これは予算委員会等でも、もう質問が出ておりまして、若干内容を繰り返すような形になりますけれども、重大問題でございますので、やはり主管の委員会においてきめのこまかい御答弁を得たほうがよろしかろうと思いまして、あえて御質問を申し上げる次第でございます。  その第一点は、春闘に関する問題であります。今回の春闘のかまえは、従来にない組織的な姿勢の高い、しかも長期にわたる戦いの組み方ができ上がっているようでございますし、各労働団体も非常にかたい決意でこの問題に対処していこうとしているようでございます。われわれが外部で調査いたしたところによりますと、大体春闘目標三つありまして、第一番目には、ヨーロッパ並みの大幅の賃金値上げを獲得する、第二番目には最低賃金制、これはもちろん全国一律でありますが、全国一律の最低賃金制確立を獲得するということ、第三番目には、時間短縮の問題でございまして、欧米先進国並みの時間をひとつ獲得したい。こういう三つ目的が集約せられているようでございますが、まずこの三つ要求と、それから春闘に対する労働大臣見解を承っておきたいと思います。
  11. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労働条件につきましては春闘目標は、お述べになりましたとおり、大幅賃上げ最低賃金制確立労働時間短縮、この三項目と承知をいたしております。  賃上げの問題につきましては、何と申しましても春闘中心目標に相なるものと存ずるのでございますが、これについては、本年は特に組合側また使用者側相当その態度は強いものがあるようでございまするので、長期にわたるまた相当激しい闘争が予想される次第でございます。労働省といたしましては、これらの問題につきましては、労使とも日本経済実情また企業の経営の状況等について十分なる理解を持たれまして、自由にして自主的な団体交渉によって適切な解決を得られることを心から希望をいたしておる次第でございます。もとより、これに関しましては、政府としてことさら介入するごとき考えはないのでございまして、あくまでも労使間の自由な話し合いによって解決せられることを希望いたしております。また労使間の話し合いによって解決が得られない場合におきましては、労働委員会等中立機関の手をわずらわしましても円満に解決していただきたいと思うのでございます。  そのほかに、いろいろな政治的要求春闘に際しては掲げられておるのでございまするが、これらの政治的要求組合として主張されることはもとより自由であると考えるのでございまするが、しかしこれは労使間において直接解決できる問題ではございませんので、これによって争議に訴えるというようなことは筋違いのことではなかろうか、こういう感じを持っておる次第でございます。またもちろんそうしたことは当然あるはずはなかろうというふうに予想もいたしております。
  12. 小林進

    小林委員 政治問題についての主張についても、大臣見解をお述べになりましたが、これは私ども大臣の御意見とは全く反対でございまして、たとえば日韓会談反対だとか、F105Dの配置反対だとかあるいは原子力潜水艦日本への寄港反対だとか、こういうことは大臣の御見解では労使関係面接影響ないじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、しかし働く者の立場からいたしまするならば、そういうような日本の平和を乱し、軍事的な体制が進められていくことは、全部労働者生活に響いてくる問題でございます。賃金値上げの問題あるいは日常の生活そのものに響いてくることであります。彼らは彼らの生活を守り、彼らの賃金を守り、彼らの要求を貫徹するためには、やはり突き詰めていけば、そこに大きな壁があるのであります。その壁を破らなければ自分たち生活を守られないということは、これは見解の相違といたしましても、われわれは労働者がそういう壁を打ち破ろうとして立ち上がろうとしておるその戦いは、断じて無理ではないと思います。この点は、大臣とはまことに見解が違いますけれども、しかし、ここで足踏みをしておりますと質問趣旨をはぐらかされるおそれがあります。大臣のペースに乗せられるという危険性がありますから、これはこの程度にいたしておきまして、その直接労使関係に影響するという第一番目の、ヨーロッパ並みの大幅の賃上げというこの要求です。これは一体大臣はどのようにお考えになっているかです。労働行政賃金行政を担当していられる最高責任者なんでありますから、労使の間に介入をしないというその考え方はよろしいけれども、やはりこういう賃上げに対して、這般の事情から見て、これが正当であるか正当でないかくらいの見解をお示しになることは当然であると思うのでございますが、いかがでございましょう。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のとおり、わが国の現在の賃金状況には非常に幅の広い格差存在をいたしておるのでございます。これは企業規模別格差、また業種別格差、また労働者年齢別格差、こういった格差存在は、日本賃金形態の特徴ともいうべきものでございます。したがって、日本賃金水準と申しましても、その水準はどこにこれを求めるかということになりますと、いろいろ、上と下は非常な幅がございます。そういう意味におきまして、ヨーロッパ並み賃金、という主張をされましても、大企業、ことに生産性の高い大企業等においては、ヨーロッパ、特にイタリアあたり賃金に比べまして、企業によってはほとんど変わりない、ないしはこちらのほうが上回ると考えられるような賃金存在をする。その反面において、中小企業等におきましてはその六割程度にしかならないような賃金存在をいたしておるというような状況なのであります。そこで、おしなべてヨーロッパ並み賃金になることは、これは日本経済発展に伴って当然われわれが心がけるべき目標ではあると存じますが、これを獲得するに要する経緯と申しますか、今後の段取りと申しますか、そういう点を考えますると、なかなかこれは簡単に結論を出せない点もあろうと存ずるのであります。したがいまして、この問題につきましては、私ども業種により、あるいは企業規模別により労使間の話し合いは簡単にいきかねるものもあろうかと存じまするが、要するに、経済実情、また企業状況、これらを十分労使双方とも勘案されまして適切な解決を得られることを希望いたしておる次第でございます。
  14. 小林進

    小林委員 私は、大臣にそういう第三者的、評論家的な御答弁をお願いしておるのではないのでありまして、労働行政を担当しておられる最高責任者として、日本賃金欧米並み賃金に近づくことが一体不当な要求であるか、私は正当な要求であると考えているが、これを大臣はどうお考えになっているかということをお尋ねしているのであります。私は、詰めて言うならば、労働行政を担当しておられる労働大臣でありますから、そして池田さんのことばをもってするならば、もはやその経済的な実力において世界で第五番目とか六番目とか、大国並みとかという、そういうことをおっしゃるのならば、その経済生産をささえている労働者賃金を、せめて五つの国並みにはいかなくても、欧米並み賃金に引き上げていくのが至当じゃないか、これがいわゆるでこぼこをなくした日本経済の正しいあり方ではないか、実はこういう返答が私は大臣からあってしかるべきだという考えでお尋ねしているのであります。それを一番いいところだけとってきて、その中にはイタリア並み賃金もあるとおっしゃるが、それはほんの一部分でしょう。あとのところはまだ六割にもいかない、五割程度しかいっていない、それは一体好ましいことですか。困難だなんということばで、最高責任者である労働大臣としてそういうような無責任な答弁をされることは、私はないと思います。その一つ並みのものがようやくイタリアに近づいているならば、その六割や五割にある賃金もその格差をなくして、そうしてすべてが矛盾のない形でヨーロッパ賃金並みに近づいていくというのが、少なくとも労働行政を担当していられる労働大臣の願望でなくちゃならない、希望でなくちゃならないと私は考えておりますが、いかがでしょう。  なお時間がございませんから続いて申し上げますけれどもイタリア並み賃金とおっしゃいますが、これはあなた方がお出しになっている「労働時報」の中にもちゃんとあります。この中に日本において、これは繊維労働者関係だけでございますけれども、これでも日本労働者付加給付を含む賃金全般がほぼ欧州の比較的低賃金国であるスペイン、ポルトガルギリシア南イタリア水準にようやく近づきつつあるということがいわれておるのでありまして、いまヨーロッパにおいてもイタリア賃金並みが非常に低賃金であるといって、いわゆるフランスやイギリスという国々からイタリアの低賃金非難、排撃せられておることは、大臣先刻御承知のとおりであります。ヨーロッパにおいてさえ非難をせられているそのイタリアポルトガルギリシアの低賃金にようやく日本ハイクラス——一部の賃金がやや近づいているにすぎない。そのほかは全部レベルダウンをいたしましてそこにも至らないという、その現状の中に立って日本労働者が、少なくともヨーロッパの先進国並み賃金に近づきたいという目標を掲げて春闘を続けることは、これはその言わんとすることは私はもっともだと考えておる。また労働大臣としても、その要求の妥当性を一応私は労働行政を担当する者として認めてしかるべきだと考えるのでありますが、いかがでございましょう。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 小林さんのお考えは、私は原則的にそのとおりだと存じます。労働大臣といたしましては、日本賃金水準が一日もすみやかにヨーロッパ並みにまで上昇するということは、労働条件の改善という意味で望ましいことであると考えておるのでございます。ただ、この賃金の上昇ということが、やはり企業の経営の中において達成されるべき事柄でございますので、労働生産性がやはりヨーロッパ並みにまで全般的に向上するということが、当然前提として必要であろうと思うのでございます。しこうして、労働生産性の向上ということは、労働者の技術水準の問題であるばかりでなく、やはり生産の設備にも関係ある事柄でございまするので、実際の賃金の交渉の間におきましては、これら諸般の状況労使双方が十分に検討されて解決していただくことが望ましいと存じております。
  16. 小林進

    小林委員 大臣、あなたのおっしゃるのは、賃金は資本主義国家においてはやはり資本の利潤とマッチしていかなければならぬことだけはわかるのでありますけれども、その企業の実績とその成長率が、先ほども言われるように、総理大臣ヨーロッパの二流国を凌駕して第一流国に上がっているのだ、こういうことを言われているのでありますから、私はそのことば、その実績の裏づけとして、やはり賃金もそのレベルにいくのが至当ではないか、こういうことをお尋ねいたしているのでございますが、これはひとつ総理大臣にお伺いすることにいたしましょう。とても労働大臣では問題の解決にならぬようであります。総理大臣にひとつお尋ねをすることにいたします。  ただここで、いわゆる政府賃金政策というもの、これは労働大臣春闘に対してお出しになっておるもの、これについて私は少し考えている——少しではありません。中立不介入とおっしゃることばの中に相当重大な介入の事実があるのではないかという感じを私は抱きました。申し上げまするけれども、昨年の十二月の二十七日に、「最近における賃金動向について」という労働省の見解が発表されている。その中で、大橋労相は賃金行政考え方の一端を明らかにした。これはわが党で出しておりまする「労働通信」という非常に権威のある貴重なる資料に基づいて申し上げるのでありまするが、その中に、「わが国経済は」これは大臣、あなたのことばでございますよ。大臣のおことばで、「わが国経済は本格的な開放体制へ移行を迎え、国際収支の改善および経済体質の強化をはかり、経済の均衡ある発展をはからねばならない、このため。今後とも相対的に賃金の低い分野の賃金の改善に努め、最近の雇用労働情勢の変化に対応するよう、賃金制度などの改善をはかること。」いわゆる賃金の低い分野に対しては、あなたはこういう意見を述べられておる。次は賃金の高い部分に対してはあなたはどう言われているか、「賃金が国民経済の成長に見合い、他の国民各層の所得と均衡を保ちながら上昇していくよう生産性の上昇率の高い部門ではその成果の一部をできるだけ価格の引き下げに振り向ける機運をつくり出し、また生産性の低い分野は労使協力して生産性向上に努めることにより、消費者物価の安定と相まって引き続き実質賃金の改善向上に努めることなのである。」こういうことをあなたは言っていられる。低くても賃金は上げてやらない、高くても、もうかっても賃金は上げない。こういうあなたの見解なんです。これは私は、賃金闘争を行なう労働者戦いの方向に対して労働省としては大きく水をぶっかけた一つ見解ではないかと思うのでありまするが、労働大臣いかがでございましよう。
  17. 大橋武夫

    大橋国務大臣 小林先生のお読みになるような意味に読まれる方もあるかもしれませんが、実は私どもはそれとは逆な意味で書いていると思っております。というのは、御承知のごとく昨年秋以来、これは春以来かもしれませんが、特に秋に入りましてから、物価の上昇が非常に足取りが早くなってきた。これではコストインフレの危険もある。そこで何とかインフレを押えるために物価を押える措置を講じなければならぬ。特に政府といたしましては、公共料金の一年間据え置きというような方針を打ち出してまいったわけなのであります。したがいまして、一部においては賃金も公共料金と同じように据え置きが当然ではないか、したがって賃上げに対しては一切これを認めないのだというような議論をする向きも出てまいったのでございますが、しかし、生産性向上に伴いまして賃金を引き上げ、労働者生活水準を向上さしていくということは、労働行政として最も頭に置かなければならぬ問題でございます。一面において、物価を押えるということに協力することも労働者生活安定の立場からいって必要でありますので、これらの点を考えながら、生産性の上昇率の高い部分においては価格の引き下げに一部を振り向ける、一部を賃金の引き上げに振り向けるというような気運を醸成して、生産性の低い分野においては生産性を向上させ、実質賃金の改善につとめる、こういう意味で、いかに物価対策ということがありましても、やはり生産性向上にあたってはその一部を賃金の引き上げに振り向けて、そうして労働者生活水準の向上に意を用いてほしいという意味をも含めたわけでございます。これは必ずしも小林先生の言われるような趣旨ではなく、その逆の意味をも含めてこの文章はできておるのでありまして、そういう意味で、結局、われわれの態度というものは決して一方的なものではないというふうに真意を御理解いただきたいと存じます。
  18. 小林進

    小林委員 私どももその労働大臣の談話の発表の内容を見せていただいているのでありまするけれども、その文章をすなおに読んでいけば、あなたのおっしゃるような、そういう牽強付会なとまでは申し上げませんけれども、そういう結論はどうしても出てこない。すなおに読んでいけば、何といっても春闘に対する政府の先制攻撃である、こうしかとれない。そうして生産性の高い部門では賃金を抑制して価格を引き下げろ、生産性の低い部門では労使が協力して生産性向上につとめろという訓辞の内容だ。経営者や管理者のほうでは両手をはたいて喜んでいる。労働大臣を招待して一ぱい飲ましておみやげを持たしてやりたいような、そういう好ましい内容であり、好ましい内容ででき上がっている。その一部を労働者賃金のほうに回せなどという感じは残念ながらわれわれはくみ取ることができないのでありますが、どうでございましょうか。第三者の立場から見てわれわれはそう考えざるを得ないのであります。いま一回聞かしてもらいたい。
  19. 大橋武夫

    大橋国務大臣 小林先生は名だたる名文家でございまして、文章の書き方は、間違いないたいへんりっぱな文章をお書きになると思いますが、私はどうも昔から作文はあまりいい点をもらったことがございませんので、私の書いた文章が真意を表現していないような点があるかもしれませんが、しかしこの文章は必ずしも小林先生の御解釈になったような意味を持つものではないという証拠は、今日までどこからも経営者が、私に招待してみやげを持たしてくださるという申し込みのないのを見ても、はっきりいたしておると思います。
  20. 小林進

    小林委員 しかしお互いに緊張をして、それは自分たち生活をかけた戦いをしているという重大な場面でありますから、どうかひとつ労働省のほうでは、第三者のわれわれが考えても何か春闘に水をかけ、経営者のほうに軍配を上げるようにとられがちな、こういうような談話というものは十分慎重にかまえていただきたいということをお願いしているのであります。大臣は経営者のほうから喜んで招待はないとおっしゃいましたけれども大臣がおっしゃるのでありますから、それはきっとないでしょう。ただ私は、やはりこういうような談話が出るということは労働者の側に有形無形の大きな不利を与えているということを率直に申し上げて、さらに一段の慎重なる姿勢をお願いする次第であります。  次に、その第二番目の要求であります最低賃金制確立の問題であります。私どもがかねがね全国一律の最低賃金制確立の問題をお願いいたしておるのでございますが、これに関連いたしまして、これは予算委員会でもわれわれの同僚の多賀谷君が質問をいたしているようでございますが、最低賃金制に関するILOの第二十六号条約、これをなぜ一体御批准にならないのかということを、予算委員会では時間がなくてさっと過ぎたようでありますが、いまひとつきめのこまかい御答弁をしていただきたいと思う。いま、あなた方政府の業者間協定を中心にした最賃法がここで審議されたときの速記録を取りに行きましたが、その速記録の中には明確に、これは二十六号には抵触しない、この最賃法が通れば間髪を入れず——間髪を入れずということばは使いませんけれども、直ちにILOの二十六号は批准するのだ、こういう明快なことば政府側が答弁をしている。答弁をしているのがうそだといったら、あのときの基準局長はいまの堀事務次官でありますので、委員長ちょっと堀事務次官を呼んでください。(「政府委員じゃないのだ」と呼ぶ者あり)説明員でもいいから呼んでください。そういうようなことを答弁しておきながら、今度はあなたは予算委員会で多賀谷君の質問に対して、二十六号に抵触するかいなかやや疑問の点があるから、ILOに現在問い合わせ中である、こういう答弁をしている。こういうようなことが一体国会で許されていいのか悪いのか、実に私は不可解千万にたえないのでありますが、この問題に対する御答弁をお聞かせ願いたいと思います。
  21. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私も長い間社会労働委員をやっておりまして、現行最低賃金法が国会に提案されました当時、その審議に加わっておりますので、小林先生の言われました政府答弁については記憶をいたしております。したがって私も、最低賃金法が制定されたのであるから、ILO二十六号条約はいち早く批准されておるものと思っておりましたが、労働省へ行って聞いてみますと、この条約はまだ批准されていなかったのであります。いろいろ事情を聞いてみますと、先般多賀谷委員に予算委員会でお答えいたしましたように、現行最低賃金法では二十六号条約との間に若干の規定上の食い違いがあるということが、その後ILO事務当局との打ち合わせで明らかになった。それが救われない矛盾であるか、それとも批准差しつかえないものという結論になるか、微妙な点がございまして、これについては目下ILOにおいて結論を出そうということで取り調べ中であるのでございます。  そこで、その取り調べの結果、現行法で差しつかえないとなれば直ちに批准するわけでございまして、現行法では批准が困難だということになりますと、おのずから現行法改正ということも批准の準備として考えなければならぬ状態にございます。御承知のごとく、ILO加盟国には国内法の整備ということと無関係に条約を批准する慣例になっておる国もございますが、わが国は、従来条約の批准にあたりましては、まず国内における関係法規を整備する、そして批准し得る状態を国内で確実にしておいた上で批准をするという国際的な慣例を維持してまいっておりますので、そういう考え方から、この最低賃金法が二十六号条約に照らして適切かどうかという問題は、批准についての最も大切な先行条件に相なっておるのでございまして、この点政府といたしましては、ILOの法律委員会の結論を一日千秋の思いで待っておるような状況でございます。
  22. 小林進

    小林委員 大臣があなたの前々任者のこの場におけるILO批准問題に対するそういう確約をすなおにお認めになったことは、私は大臣の良心を高く評価するものであります。そのとおりお認めになりましたから、倉石さんがどうここで発言したとか、当時の堀基準局長がどう発言したとかいうことを再びここで繰り返すのはやめましょう。あなたがお認めにならなければ、私はその速記録を勧進帳のごとく読み上げて、冷たい事実で断固鼓を打って排撃するつもりでありましたけれども、お認めになりましたから私はその点には触れませんけれども、しかしその法律委員会でいま疑問としている規定上の問題点がどこなのか、私はそれをお聞かせを願いたいと思います。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ちょっと政府委員から説明させます。
  24. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 最低賃金決定制度の創設に関する条約、二十六号条約と申しておりますが、この条約の中で、たとえば第三条で、関係のある使用者及び労働者は云々というようなことばがございます。あるいはまた、運用に参与するという日本文になっております。これが英文ではアソシエーテッド・ウィズ、こういうことばでございまして、現在の最低賃金法によるところの賃金審議会の構成は、当初私どもは、使用者及び労働者の代表が参加しておりますので、最低賃金決定の申請手続が、たとえ業者間協定であろうとあるいは労働協約であろうと、その審議機関が三者構成でございまして、労使の代表が参加しておりますので、この二十六号条約の批准が可能ではなかろうかというふうに考えておったのでございますが、その関係のある労働者ということば意味が、当該最低賃金決定に直接関係のある労働者ということになりますと、機構上いろいろの問題が出てくるわけであります。また各種の業態ごとに最賃をつくる場合に、関係ある労働者の参加を認めるというようなシステムがどのようにして成り立ち得るかという点についても、いろいろ検討すべき問題があるようでございます。そのような点、昭和三十六年に御答弁申し上げまして、自来御答弁しておるのでございますが、きわめて法律解釈的な立場からの問題としてこの問題を取り扱ってきたのでございます。しかし、かたがた御承知のように、最低賃金法が施行せられまして四年有半になりますけれども、その間におきましては、御承知のように昨年最低賃金制度の今後のあり方につきまして審議会答申を得まして、今後新たなる展開を期したい、かように思っている次第でございまして、一方において二十六号条約の解釈につきまして有権解釈と申しますか、権威ある解釈を明らかにすると同時に、実質的に最低賃金法の運用の面におきましても二十六号条約の線に接近せしめる、両々相まって一日も早く批准いたしたい、かような方向で進んでおるわけでございます。
  25. 小林進

    小林委員 いまあなたがおっしゃったそういう問題点は、あなた方のお出しになった最低賃金法を審議するそのときに、やはり一番問題になった点なんです。それは大臣も御存じのとおりであります。いわゆる業者間協定というものには、当該労働者の代表がいないじゃないか、労働者の意思が賃金決定にタッチしていないじゃないか、いわゆる賃金決定の原則というものは、労使が対等の立場に立って話し合い賃金をきめるというのが、労働法規の原則じゃないか、それが否定をせられて、経営者、管理者だけが寄り集まってかってにきめたその賃金が最低賃金というのは、いわゆる法規違反だ、そういうことは国内法違反だ、ましてやILOの場においてそんなものが通るはずはないじゃないかということを私どもは言ったのです。いまいろいろ基準局長は長々とおっしゃいましたけれども、問題はやはりそこなんです。問題はそこをついているのであります。でありますから、これ一条を見ても、いかに労働省が、残念ながら賃金一つきめる段階においてもほんとうに労働者を守るという立場を捨てて、そうして経営者の立場だけに立ってものごとをきめているかといういい証左だと思う。多数に名をかりて、国会におけるわれわれの正論を土足でけって、ILOの場においてもこんなのはすなおに批准できるなどということは、俗なことばで言えば詐欺ですよ。詐欺的言辞を弄しながらこの法律を通しておいて、そうして労働者を圧迫しておる。あとで私は時間があれば言いますけれども、あなた方の最低賃金法が、この物価高、インフレの世の中に、いかに手かせ足かせとなって、経営者に利益を与え、零細なる労働者を痛めつけておるかということを、私は例をもって論じてみたいと思う。そういうような大きな誤りを犯して、それがILOという地獄の三丁目のえんまさまの前にひょっとこれを押えられて、まかりならぬという、いまそこでつかえている段階だというのが実情であります。どうですか、大臣、反省をせられて、深く全国労働者の前に内閣の不明を陳謝せられて、同時にこの最低賃金法を全国一律に改める意向はありませんか。どうでございましょう。私の要求は間違っておりましょうか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 だいぶおことばが極端でございまして、国会の委員会の席上においてはいかがかと存ずる点もなきにしもあらずと思うのでございますが、確かに当時の労働省といたしましては取り調べ不十分でございまして、そのために、いまから考えますると誤った答弁をいたしておったと考えなければならぬこともあったと思うのでございます。その点はまことに遺憾でございます。しかし、これに対して小林委員から内閣の不明を陳謝しろと言われまするが、私どもは現内閣の閣僚でございまするので、他の内閣のことをどうこうと言う立場にはおりません。しかし、今後におきましては、ILOの重要なる条約に関係ある事柄につきましては、事前に槙重に勉強いたしまして、答弁については誤りなきを期するようにいたしたいと存ずる次第でございます。
  27. 小林進

    小林委員 まあ大臣が国会における前の内閣の間違いをお認めになりましたので、私はそれ以上この場においてはこの問題をさらに追及しようとはいたしません。しかし、前の内閣と今の内閣と内閣が違うからとおっしゃるが、確かにそれは国会法上あるいは憲法上違うかもしれませんけれども、その性格は違うといったところで政治上においては大同小異であります。同じ自民党の政党内閣であります。岸内閣と池田内閣の違いだけであります。その池田さんだって、当時の内閣の閣僚として、やはりここに論議せられた政治の成果に対しては連帯の責任を負われる地位におられると思うのです。当時大蔵大臣か通産大臣でいられた、それが総理大臣になられたというだけの話でありまして、内閣がかわったから、前内閣の答弁ややり方に対しては一切責任がないということは、政治家として、私は正当に答弁される大臣ことばじゃないと思うのです。官僚ならば別でありましょうが、政治家の責任というものは内閣の交代によってそんなに変わるものじゃありません。社会党内閣、自民党内閣の違いはある。社会党内閣でやったことに対して政治的責任がないとおっしゃるならわかりますけれども、同じ自民党内閣ですよ。前内閣のやり方に対して責任がないということは私は了承できませんが、これは、きょうの場合はこれで終わります。また最賃法の審議の場面もありましょうし、他にまた論ずる機会もありましょうから、そのときにはまたあらためてひとつ言わせていただきます。きょうのところはやめにいたします。  次に、時間短縮のことであります。これも春闘の闘争の大きな目標になっておりますが、この時間短縮もはたして労働者要求が間違っておりましょうか。先ほども私は申し上げましたように、ILOの第一号条約一日八時間労働、週四十八時間にしようということ、しかもこれはILOの第一号です。いまは百十九号までいっておりますが、その第一号の条約さえも、まだわが日本は批准をしていないではありませんか。こういうようなことは、私は、日本として非常に恥ずかしいことじゃないかと思う。週四十時間であるとか、週休二日の問題はあとにいたしまして、この四十八時間、一日八時間労働を決定した第一号をわが日本がいまだ批准をしていないことに対して、労働大臣としては、一体矛盾をお感じになっていないのかどうか、この批准をおやりになるお考えはないのかどうか、いま一回明確にお考えをお聞かせ順いたいと思います。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第一号条約につきましては、この趣旨を採用いたしまして現行労働基準法が制定されておるのでございます。ただ、御承知のとおり、労働基準法におきましては、原則労働時間に対する例外の取り扱いがございます。この例外の取り扱いという点におきまして条約と多少内容が違う点がございますので、批准に至っておらないのであります。しかしながら、労働省といたしましては、世界の大勢であります一日八時間、一週四十八時間労働というものはもう常識化しておりますので、できるだけこれに向かって国内の労働時間短縮を進めていくことは当然必要であると考えておるのでございまして、行政上の指事といたしまして、この考え方を採用し、それに対して労使双方の協力をお願いいたしておるような次第でございますので、おいおいに第一号条約の批准の運びに達するものと考えております。
  29. 小林進

    小林委員 その例外の取り扱いということを具体的にひとつ労働基準局長からお知らせを願いたいと思います。
  30. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ILO第一号条約の問題点の中心は、ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでありますが、どういう点が違うかということでございますが、御承知のようにこの第一号条約は工業的企業における時間制限というたてまえになっております。これに対しましてわが国の労働基準法は、工業のみならず全般にまたがる非常に適用範囲の広い法律であります。その法律の中で労働時間規制という問題を扱っておるのでございますが、その原則は、御指摘のように趣旨とするところはこの第一号条約にのっとっておるのでございますが、この適用範囲が非常に広範であるといったような点もございまして、若干の例外を設けざるを得ないという立場から幾つかの例外が設けられております。たとえば一週四十八時間のワク内で、一日九時間まで延長されるといったような例外措置、その他があるわけでございます。この例外につきまして、この第一号条約で認めておるところの例外条項と必ずしも合致しない、こういう点がございまして、今日まで批准しないという状態にあるわけでございます。今後の問題点といたしましては、この条約が工業的企業に限定されておる条約でございまするが、そういった適用範囲の条約と、労働基準法といったような法律と、どういうふうな観点から相互の関連を関連づけて考えるかといったような問題、労働基準法の改正にまで及ぶといったような非常に微妙なかつ重大な問題がございまするので、この点につきましては、いろいろ検討はいたしておりますけれども、何分にも影響するところが広範かつ甚大でございますので、慎重に検討いたしておるような段階でございます。
  31. 小林進

    小林委員 この工業的企業適用されるという、そういう企業範囲と、日本は広く一般労働者適用しているというところに困難さがあるとおっしゃいました。それでは、この一号条約に工業的企業と称するものが例示的に示されております。この中にある業種は、あなたがおっしゃるように、一日八時間、例外措置として一日九時間まで延長を認めるということになっているというが、その規定どおりに全部やっておりますか。  あわせてお聞きしますけれども、一号条約を将来どうしても批准するために、そういう例外的な規定を改めて、そういう条件を備える努力をされる意思があるのかないのか、これもあわせてお聞かせを願いたいと思います。
  32. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御質問の第一点の工業的企業においては、しからば第一号条約が批准できるような形の制度になっておるかどうかという点につきましては、労働基準法の例外規定は、そういった工業的企業だけに限定した例外規定でございませんので、その点につきましては、否定的なお答えになるわけでございます。  それから、第二点の今後の問題でございますが、御承知のように現状といたしました、労働時間規制で一番問題になっておりますのは、中小企業における労働時間規制が労働行政におきましても一番問題になっておるわけでございます。私ども中小企業における労務管理の改善と相まちまして、今後労働時間が短縮されますように、労働基準監督のみならず、いろいろな労務管理面の指導を通じましても、現在努力をいたしておるような次第でございまして、そういった実態面における水準引き上げという努力を十分にいたす必要があるというふうに考えております。かつまた、最近における問題の焦点はこの第一号条約を離れまして、一般的に四十時間をどうするかといったような問題にも及んでおる非常に広範な内容を含んでおりますので、いま部分的にどうこうするというような角度からではなくして、わが国産業、特に中小企業におけるところの労働時間管理の体制の改善と相まちまして、総合的に考えてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  33. 小林進

    小林委員 そういたしますると、第一号条約を批准するための努力はしない、こういうことですな。中小企業の労務管理で、深夜作業をやったり、一日十時間も十二時間もやっておるし、基準局あたりでは、そういう居残り作業なんか一月のうちに大体何時間ぐらいはよろしい、その範囲でやりなさいというふうな指導をしていられるようでありまするが、やはりその程度の指導にとどめておいて、一号条約の四十八時間については、これは直接批准の問題では努力をしない。けれども、いまもILOの場には週四十時間、週休二日制の問題もあるのだから、むしろそっちのほうに飛びつくような態勢をつくり上げていきたいとおっしゃるのかどうか。今後のやり方の問題であります。時間もありません。私は十二、三問質問を用意しているのに、第一番目の春闘でつまずいておるので、非常に時間が気になってしょうがないのですが、要領よく答えてください。  この週四十時間、週休二日制の問題で、政府の代表もILOに行っていられるようでありますけれども、どういう指令を持って行って、どういう態度をおとりになっているのか、これも一つ、ついでにお聞かせを願いたいと思うのであります。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私からお答え申し上げます。労働省といたしましては、なるほど最近一週四十時間という機運も高まりつつありまするが、何しろわが国の現状は、ただいま小林委員の御指摘のとおり、四十八時間原則の維持さえ容易でないというような状況でございます。したがって、今後は、さしあたり四十八時間原則をできるだけすみやかに実現する、そしてILO条約第一号の批准ができるような状態にしていく、それを第一次の目標として今後努力をいたしてまいりたいつもりでございます。もちろんその過程におきまして、基準法の労働時間に関する規定改正ということも、当然ある時期に必要と相なるでございましょうが、できるだけその時期のすみやかなることを希望いたしております。
  35. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働時間四十時間の勧告採択にあたっての政府の態度でありますが、政府は棄権いたしております。
  36. 小林進

    小林委員 なぜ棄権されたかという趣旨を……。それは重要です。
  37. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 この審議の過程におきましては、いろいろな意見が述べられまして、政府といたしましても、わが国の労働時間の実態にかんがみまして、この時間問題はそれぞれの国の経済社会の実情に即した観点から検討すべきであるという立場に立ちまして、真摯な意見を展開したのでございます。しかし、その間いろいろな出入り、折衝がございましたけれども労働時間を短縮するという基本的な方向は、これは積極的に反対すべきいわれはない。ただ、法制的あるいは制度的に四十時間をその国においていかに実現するかという実行の問題におきましていろいろ問題があるわけでございますので、そういった理念の問題と現実の問題と、双方の立場から考えました場合には、政府といたしましては棄権というような立場をとらざるを得なかったというふうに私は理解いたしております。
  38. 小林進

    小林委員 いまお話のありましたとおり、まだ四十八時間の第一号も批准できないような未成熟なわが日本労働行政であります。政府側としては、確かに四十時間、週休二日に、おこがましくも賛成するということもできない、おもはゆい気持ちで棄権されたであろうという、そういう心情もわかります。それはわかりますけれども、そのILOの場において、いまも言うように、いわゆる先進国の間に四十時間、週休二日が論じられているときに、しかもILOは国際機関の中では最も権威のある機関です。その機関の、しかも第一号だ。第一号というと、本を開けば巻頭文じゃありませんか。ILOを開けば、巻頭文に当たる一番大切な第一号ですよ。その第一号の条約さえも批准できないということは、私は国家の醜を天下にさらしているものであるといわなくちゃならぬと思う。よくILOの常任理事国なんかお受けになりましたね、恥ずかしくもなく。いやしくもILOの常任理事国であるならば、ILOの精神を守り、できるだけ各条項を正しく実施するという指導的役割を演ずる責任がありますよ。その責任の地位にあるわが日本が、その第一号の条約さえも批准できないというがごときは、もって私は何をかいわんや。  時間がありませんけれども、なおいま春闘戦い抜くいま一つの大きな柱の中には、わが国の労働災害の問題がある。いま労働者は生命の危険にさらされておりますが、その問題からどう一体わが身を守るかという問題が、同じく春闘の柱になっております。それはまたあとでゆっくりひとつ御質問申し上げることにいたしまして、いま申し上げた春闘三つの柱、ヨーロッパ並みの大幅の賃上げを獲得する、最低賃金制確立を望む、時間の短縮という、この三つ要求もいまこうやって労働大臣と話をしてみれば、いずれも無理からぬ要求であります。未成熟なわが日本をそのまま露呈している。労働者要求がちっとも間違っていないということは、大臣説明を通じて明らかになったじゃありませんか。それをやらないで、わが日本自身、政府自身が、われわれに言わせればサボタージュをしているということまでが明らかになっている。これはあなた方は了承せられぬかもしれませんが、われわれは説明の過程を聞いていけばそのとおり解する。政府の側にこそ、経営者の側にこそ、管理者の側にこそ大きな間違いがあるということがわずか一時間の問答のうちに明らかになったじゃありませんか。こういうことはやはり政府も真剣に考えて、いま少しわが国の労働行政というものに本腰を入れて私は政府に取り組んでいただかなければならないと思うのであります。  春闘の問題はこれで、不満足でありますけれども、問題を次に残しまして、差し迫っているILOの問題をひとつお尋をいたしたいのであります。  ILOの問題は、これは大臣がおいでになりませんが、この前、外務大臣がILOに対する見解を御発表になりました。あの外務省の発表は、労働省の発表とやや見解が異なっておるようでありますが、いかがでございましょう。外務省と労働省との見解の相違点なきや。
  39. 三治重信

    ○三治政府委員 お答えしますが、先生は外務省の見解労働省の見解というものに違いがあるように言われましたが、それは新聞に出たことによってそういうふうにお感じになったということかと思いますが、今度の理事会に対しましての日本政府の態度は、常時外務省とわれわれ連絡しながらジュネーブの代表である青木大使に情報並びに連絡をしているわけでございまして、新聞に出た感じで、あるいは違いがあるようにお感じになったかもしれませんが、われわれとしては労働省外務省は一体であるというふうに思っております。
  40. 小林進

    小林委員 ILOの理事会が十五日に開かれましたね。十五日に日本問題が上程されました。モース総長が提案いたしました実情調査調停委員会日本調査団を派遣する云々の問題の報告がありました。それに対して労働省は堀事務次官が直ちに談話を発表いたしました。大臣発表ではありませんでしたね。
  41. 三治重信

    ○三治政府委員 当局です。
  42. 小林進

    小林委員 当局発表を事務次官が発表した。その中には、この報告に対していわゆる諾否か留保かという問題があるわけでしょう。労働省は返事をしない。イエスもノーもない。これはほおかぶりです。留保でいくという、こういう発表をせられましたね。そうではありませんか。それに対して外務大臣の大平さんは、諾もだめ、否もだめ、留保もまた日本に及ぼす損失は甚大である、彼はこういう見解を発表しておる。この見解は同じですか。私はこの違いが一体どうしたのかということをお尋ねしておるのであります。労働省の発表をいま一回ここでひとつお聞かせを願いたいのであります。
  43. 三治重信

    ○三治政府委員 この実情調査調停委員会への付託についてということについて、一応当局の見解として出したのでありますが、これにつきましては外務省にも話をして、労働省としてこういうふうな態度、一応この付託についてのいまのところの見解はこうだということで出したわけでありまして、この点については事務当局としては了解もついていることであります。大平大臣見解につきましては、私たちは新聞で見たのでありまして、はたしてこれが正式——何と申しますか、その点について、あるいは若干のニュアンスの違いを感じられておるかもわかりませんが、われわれとしてはそういうふうなことはないというふうに感じております。
  44. 小林進

    小林委員 私も外務大臣から直接公式の場で承ったわけではございませんから、ニュアンスの違いだろうと言われればそれを否定するだけの材料を持っているわけではございません。ございませんが、しかし非公式なり、あるいは新聞紙上で報道せられたところによれば、諾も失うところが多い、否もまた失うところが多い、留保はまた悪影響を及ぼすこと甚大である、何といっても早急に国内態勢をつくり上げて、いわゆる批准をするだけの態勢をつくり上げて処置していかなければならないという談話を発表せられておる。これに対して労働省は、ILOでこういう事実がジュネーブで決定せられておる、これに対しては労働省は留保していく以外にはない、まるで木で鼻をくくったようなつれない談話を発表せられておる。あれをちょうど私どもも読んだり、あるいはテレビやラジオを通じてその談話の発表を聞いているが、労働省のおっしゃる留保というのはいわゆるほおかむりである。もっと解釈すれば、無視する、ジュネーブのILOの理事会で、常任委員会でかってにおやりになったのだからわれわれの知ったことじゃない、これは無視していきます。こういうような高姿勢にとれるような発表のしかたである。非常に違うのです。一体この留保するということの真意は何をさしているのか、われわれにわかるようにひとつお聞かせいただきたい。ほおかむりしていくというのか、無視していくというのか、そんな問題にならないような軽々しい程度にしか考えていないというのか、そこら辺をひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 去る十五日のILOの理事会の決定は、日本政府といたしましては、これを非常に重大な事実として受け取っているわけでございます。そこで、この決議の結果、近くILOから日本政府に対しまして、実情調査調停委員会への日本関係事件の付託についての諾否の回答を求められることとなるのでございまして、この諾否につきましては、日本政府といたしましては、国際、国内の諸般の情勢をもとにいたしまして慎重に検討をいたしておる最中でございます。そこで、先般の労働省の見解として発表いたしました文章の中には、関係国内法の改正案を今国会に提出し、早期成立のため努力中である、現在直ちに諾否の回答をすることは困難である、こういう趣旨を申したわけでございます。  なお、外務大臣の談話として報道されたものの内容を私詳しくは読んでおりませんが、先般自民党の労働調査会におきましてILO問題について外務大臣説明をされたことがあります。その際において、近く理事会の決議が採択されるであろうけれども、その決議が採択されるということは日本にとって非常に重大なことである、それで、その決議によって日本調査調停委員会の付託についての諾否を求められることになるわけだが、これに対して直ちに承諾をするということもなかなか困難であるし、また受諾しないということもなかなかむずかしい事態を招くことになるであろう、したがって、これに対しては慎重に検討をしなければならぬが、いずれにしても今国会においてILO条約の問題を処理することが大切だと考える、こういう趣旨説明をされたわけでございまして、それが新聞に報道されたものと思うのでございます。そこで、このいわゆる外相談話なるものは、先ほど私が申し上げました労働省の見解とは全く内容的には一致をいたしておるわけでございまして、この点もあわせて御了承をいただきたいと存じます。
  46. 小林進

    小林委員 ILOの内部の審議の過程は私ども外部にいる者はよくわからぬのでありますが、聞くところによると、三者構成でできている。その各国の代表もあげて日本政府のやり方を非難する立場に立っている。ただ、ソビエトといま一つどことかの国と二ヵ国だけがそういう日本政府のやり方に反対する立場に立たなかったというふうなことを聞いておりますが、その内容について、経営者代表、国代表、労働者代表、この三者構成のそれぞれの要素がILO八十七号に対する日本政府のやり方に対してどういう態度をとっているのか、具体的に参考までにお聞かせを願いたいと思います。
  47. 三治重信

    ○三治政府委員 そのこまかい内容につきましては、われわれもまだ先生のいまおっしゃったような新聞情報しか承知をしておりません。理事会の中においては、結局賛成、反対というふうな、採決をとったようではないようでございます。それから発言者としては、労働側代表が一人希望的な発言をしたということを聞いておりますが、どこが賛成し、反対したというふうな詳細については、別に情報として入っておりません。ただ、ソビエトのほうはこういう問題について反対というよりか、棄権をした、この審査に入らないという棄権のほうをとったというふうに承知しております。それからいま申し上げたように、その採決の場合の発言は青木大使がされて、そのあと希望的な発言として労働側のモリさんが発言されたというふうに聞いております。
  48. 小林進

    小林委員 こういうような会議の成り行きは、今後のわが日本を方向づける重大な問題でありますから、いま少し正確に情報をとってください。そのために青木大使をジュネーブに公使からわざわざ大使に昇格して常駐せしめておるのであります。なお、そのほかに労働省からもいま広瀬君が行っているのでしょう。広瀬君を高い金を出して、あそこに派遣しておる。こういう重大な会議内容が、もうきょうは十八日で日にちもたっているのに、そういう情報も入っていない。だめです。そういう能力のない者は交代させなさい。この重大な問題を日本国民が全部心配しているのですよ。今度の通常国会の一番の山はILOだろう、内閣の命取りになるだろうといわれ、それだけ国民全般が大騒ぎをしなければならぬ重大問題です。そういう重大な問題のポイントを握りながら情報一つよこさないで、どこの政府の代表が棄権して、どこが賛成し、だれが発言したかということを持ってこないような、そんなのはだめです。そういう者はいわゆる行政官として能力がない。そんなのは早くやめさせなさい。そういう者を置くからどうもいけない。あなたが詳しく資料をとって、その内容を報告してください。  私は時間もありませんから次にいきますけれども、五月からILOの調査調停委員会が行動を開始する。いまの日本の国内情勢は、御承知のとおり全く停とんの状態だ。ILOが活動を開始する五月までいわゆる留保という形でこれをとどめておいて、いまおっしゃるように、国会において法案の成立に努力中だからという理由を向こうにたたきつけておいて、一体国際情勢に及ぼす影響はないかということです。私どもは、あるいは信頼の点において、あるいは経済の面において、あるいは貿易の面において、あるいはOECDの場において、日に日に日本は不利な状態に追い込まれていくのではないかという情勢判断に立つが、一体労働大臣はどのようにお考えになりますか、承っておきたいのであります。
  49. 大橋武夫

    大橋国務大臣 五月上旬にこの三人委員会が発足をいたすことに相なっております。このことは決議の内容にはっきりいたしておるのでございまして、日本政府の諾否の回答はそれに間に合うように行なわれなければならぬことは当然であると考えます。労働省の見解におきまして、いま直ちに諾否についての回答をすることは困難であると言われましたのは、ただいままだ二月の中旬でございます。四月中旬ごろまでに回答すれば、この手続上支障がないと認められますから、そのときまで慎重に検討する時を得たい、こういう意味で申したので、最後までほおかぶりで回答もしないで五月の時期を迎えようという考えではございません。
  50. 小林進

    小林委員 大臣の御答弁の御趣旨はわかる。行動を開始する前に批准をしてしまえば一切が白紙に戻るということはおっしゃるとおりであります。だからということで、その五月まで、あるいは四月の中旬に批准をするというめどがおありになるならば、その四月の中旬でもよろしい、その間諾否の返事をしないで留保の形にしておくことが、日々わが日本を国際舞台において不利な方向へ位置づけていくのではないか、その危険がないか、その心配がないかということをお尋ねしているわけであります。いかがでございますか。情勢判断の問題であります。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 情勢判断といたしましては、まだ正式にILOの事務局から日本政府に対する受諾の勧告は参っておりません。私どもとしては、その正式の照会がありました後に、先ほど申し上げましたごとく、四月の中旬までに回答をすれば三人委員会の活動に支障はないと存じますので、それまでの間に諾否の回答をいたしたい、かように思っておるのでございまして、このことによって情勢上日本が新たな不利な状態を招くとは考えておりません。
  52. 小林進

    小林委員 この点は大臣と私どもは若干見通しを別にしているのであります。特にOECDの諮問委員会等における影響その他も考えておりますが、私どもの同僚の山田代議士がこの点はまた場所を改めてそういう御質問を申し上げることにいたしておりますので、私はその問題には触れません。触れませんが、ただ大臣のおっしゃるように、四月中旬まで何らの諾否の返事もしないでおくことによって、影響はないというその考え方には残念ながら私ども反対であります。諸多の場合に大きく有形無形の、その間における日本の損失は非常に大きいものと私どもは判断いたしております。これは見解の相違でありまするから、このままにしておきましょう。  そこで、ILO八十七号が十五回もの勧告を受け、十六回も正規の場で日本問題が討議をせられてきたというその原因は一体那辺にあるのか。特にこう大きく内閣の屋台骨をゆするような問題になっているにもかかわらず、なおかつそれが批准をする段階に至らない原因はどこにあるか、政府と自民党との意見の不一致にあることは間違いないと思いまするが、大臣、いかがでございましょう。あげて責任は政府と自民党にあると思いますが、いかがでございましょう。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いろいろな事情があるようでございまして、私どもその事情をつまびらかにいたしておりませんので、だれに責任があるというふうなことは考えてみたこともございません。私どもはとにかくできるだけ努力をいたしまして、すみやかに批准が得られるようにいたしたいと念願するのみでございます。
  54. 小林進

    小林委員 やはり問題が停滞をしているときには、どこに一体原因があり、どこに責任があるかということをも明らかにしてかからなければ、私は問題の解明にならないと思うのでありまして、大臣の責任云々というよりも、問題解決のために努力したいと言うのは、あまりにも政治的発言過ぎる。そういう政治的発言でいく限りは、私は問題解決の端緒をつかむことはできないと思うのであります。  別な角度からお尋ねいたしまするが、総評の臨時大会において、岩井事務局長がこのILOの問題に対する労働者側の見解を明らかにいたしました。この見解に対して大臣はいかようにお考えになりますか、参考までにお聞かせを願いたいのであります。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 おそらく総評において見解を取りまとめられたにつきましては、総評といわゆる自民党ILO世話人代表との間の話し合いのいきさつもあってのことと存じまして、私ども、その話し合いにつきましては詳細に承知をいたしておりませんので、これについて立ち入ったことをかれこれ申し上げる立場にないと存じます。
  56. 小林進

    小林委員 あの談話の中には、岩井総評事務局長と自民党のILOの窓口であります倉石氏とがしばしば会って、両者の間で意見一致の上に倉石修正案というものができ上がったのであるから、あれを一部でも動かすことは了承することはできぬ、こういうふうな談話の趣旨であったと思うのであります。いま労働大臣は、倉石さんと岩井さんとの間にどういう話ができ上がっているのか、私はその場にタッチしたわけではないからそれは知らないとおっしゃる、その大臣答弁はそれはそれでよろしいと思う。あなたは交渉の相手ではないのでありますからそれはよろしいと思いますけれども、私がお尋ねをいたしたいことは、一体倉石、斎藤両氏を窓口にしてきたあの委員会というものは、あの交渉代表者というものの性格は一体どういうものなのか、それが一つであります。  それから、いま一つは、倉石、斎藤両氏からは、社会党の河野密氏や多賀谷真稔氏等——これはわが社会党の窓口であります、そういう窓口と窓口の話し合いの経過は、詳細にわたって必ず労働大臣のところに報告せられておると私ども了承しておるのであります。したがって、あの倉石・河野あるいは総評の岩井さんといってもよろしいが、そこらででき上がったあの修正案には労働大臣の理解と承諾がちゃんとでき上がっているものであるとわれわれは了承をいたしております。この点はいかがでありましょうか。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いわゆるILO世話人会というものは自民党の党機関として設けられたものと承知をいたしております。これが倉石さんの立場である、こう考えるのでございまして、これは自民党の党内の機関、こういうふうに考えていいものだと思います。そうして、いわゆる倉石・河野折衝の問題でございますが、これは政府から独立いたしております与野党の間における政治的折衝でございまして、労働省といたしましては、その折衝につきましては関係する立場にはないわけでございます。これが国会におきまして、両党の話し合いあるいは一党の提案によりまして、委員会の正式の議題として修正案の形であらわれました場合におきましては、政府としての見解を当然申し上げるべきだと存じますが、ただいまのところ、労働省として、いわゆる倉石案なるものにつきまして内容にタッチいたしておるという段階ではございません。
  58. 小林進

    小林委員 いささか重大な発言の部類に属するかと思うのでありますが、そういたしますと、労働大臣は倉石・河野会談の内容については何ら承知をしていないとおっしゃるのでありますか。私どもの聞くところによりますれば、交渉の過程は逐一労働大臣に報告をいたしまして、労働大臣の了解と了承のもとにこの話が進んでおる、もっと詳しく申し上げますと、この倉石・河野会談の原案作成でございます。いわゆる条文の修正あるいは改正、そういうものの作業には労働省のあなたの部下であります、これが全部これに参与をしていると私は聞いております。いかがでございましょうか。これは重大発言でございますから、ひとつ食言のないように御答弁をいただきたいと思います。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたるごとく、倉石世話人代表は自民党の党機関でございます。したがって、その話し合いについての仕事は党の仕事でございまして、当然他の党機関が参画をするということは考えられますが、党機関にあらざる労働省がこれに参画をするということはあり得ないことですし、またさようなことはございません。ただ、倉石さんあるいは党からの依頼によりまして、労働省の職員のもので、場合によりまして個人的なアルバイトとしてお手伝いをしておったというようなものは、これは私は存じませんが、労働省の正式の職員が労働省の事務としてこの折衝に参画した事実はございません。
  60. 小林進

    小林委員 政党と内閣とが大臣の言われるごとく、さほど明確に区別が行なわれ、立法府と行政府大臣の言われるがごとく、さほど明確に差別がつけられ、憲法に明示せられ、国会法に示されるとおりに国会が動き、行政府が動いているというならば、私は大臣答弁をそのとおりちょうだいをいたします。けれども、いまのあなたの答弁は、かくあるのが本来の姿だ、そういうだけの説明でありまして、それは不実は全く違っておるのであります。そしてその中に入っている労働省の役人を、アルバイト的作業などという表現のしかたは、これはすなわち大橋労働大臣のみが発案した、あなたの特許的ことばです。特許的詭弁です。そんなことでわれわれの国会における審議をごまかそうとしたって、それはごまかすわけにはいかぬ。それはいきませんが、私はここでこの問題を掘り下げて、証拠や資料まで示しながら質問をして、黒白を論じてみたところで、これはILO承認に何らプラスになるわけじゃございませんから、これはひとつ大人の風格を示して、私のほうでほこをおさめます。たまにはやはり大臣に一本お貸ししておかなければ、そのうちに返してもらうこともあるだろうから。しかし、これはともかく国際的な影響をよく考慮して善処していただかなければいかぬ。政府と政党などということをおっしゃいますけれども、まだしかし自民党の中にはウルトラ右翼がおいでになったり、まだILOの本体とか、この及ぼす影響等をお考えにならない方があると思いますけれども、ここはひとつ政府と政党は別だなどというようなことは、一応国会の場でおっしゃることばはお見のがししてあげることにいたしますけれども、自分の党内においてはそんなことじゃなしに、大臣もひとつ大いに努力していただいて、一日も早く批准するようにしていただきたい。繰り返して申し上げますけれども、このILOが批准できない原因は、あげて政府と自民党との意見の不一致にあるのだ、これだけは私は声を大にして叫んでおきますから、その責任のあり方をいま一度反省をしていただいて、早急に問題を解決をするようにしていただきたい。しかし、何しろきょうは本会議がありまして、本会議のベルが鳴るまでに私の質問を終わらなければなりませんので、ILOの問題は一応これでおさめます。  次に、失対問題に対するお尋ねをしたいと思うのであります。これは事務的な質問になりまするが、失対事業における単価と補助率を事務的にここでお聞かせ願いたいと思います。
  61. 有馬元治

    ○有馬政府委員 来年度の予算単価といたしましては、五百一円九十銭でございます。補助率は、御承知のように、労務費、事務費、資材費等について三分の二国庫補助をやっております。
  62. 小林進

    小林委員 三十九年度における労力費の基準額が五百一円九十銭というのでございますが、それに対する補助額が幾ら、資材費が二分の一でありますから、基準額が幾らで補助費が幾ら、事務費は三分の二でありますから、基準額が幾らで補助費が幾ら、監督費が二分の一で、基準額が幾らで補助費が幾らか、ちょっと数字でお話をいただきたいと思います。
  63. 住栄作

    ○住政府委員 三十九年度の労力費につきましては五百一円九十銭、補助率は三分の二でございます。資材費につきましては八十三円七十六銭で、補助率が二分の一でございます。管理監督費につきましては三十七円三十九銭で、補助率が三分の二でございます。事務費につきましては三十四円八十銭で、補助率が三分の二でございます。
  64. 小林進

    小林委員 そこでお尋ねをいたしますけれども、私は失対専業に対する五百一円の賃金の問題、それから就労日数が二十二日、この日数の問題、それからいわゆる職業訓練のあり方失業保険の問題、そういうことに分けてお聞かせを願いたいと思っておるのであります  まず、賃金問題でお尋ねいたしますけれども昭和三十八年度の失対賃金は四百五十八円でございますか。
  65. 有馬元治

    ○有馬政府委員 そうです。
  66. 小林進

    小林委員 この四百五十八円、このたびは五百一円九十銭でございますが、この五百一円九十銭の中には、北海道等、寒いときの石炭手当ですか、何手当ですか、二円入っておりますね。その二円が入っておりますから、正確にいえば四百九十九円五十銭でなければならぬ。昨年度の四百五十八円の中に二円が入っておれば、四百五十六円何ぼになるわけでありますが、この賃金格差であります。これをひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  67. 有馬元治

    ○有馬政府委員 北海道の冬季加算分は、五百一円九十銭には、二円入っております。それから本年度の四百五十八円の計算の中にも二円入っております。したがって、格差といいますか、アップ率を計算しますと、九・六%のアップということになるわけでございます。
  68. 小林進

    小林委員 そこで私はお尋ねいたしますけれども、その昨年度の四百五十八円はいわゆるPW賃金でございましょう。一般賃金よりは一〇%以上安い評価ででき上がった賃金でございましょう。もっと言いかえれば、昨年度の四百五十八円はPW賃金だ、だからPWを廃止すれば、四百百十八円の一側四十五円八十銭をプラスしたものが昨年度の正当な一般賃金である。つまりPWという、その地区の賃金より一割安くなくちゃならないというそのことを廃止すると、昨年度の失対賃金は本来四百五十八円に四十五円八十銭をプラスした五百三円八十銭であるべきなのだ。それを、その中からあなた方は一割とって四百五十八円という数字を出しておる。ところがこの物価高の世の中で、三十九年度の賃金は、北海道の二円を含めても五百一円九十銭、昨年よりは二円何がし安いじゃないですか。昨年より安い賃金をおきめになるというのは一体どういうわけですか。九・六%とおっしゃったが、その九・六%は違うのです。去年はPWがあった、ことしはPWを廃止した。だから去年のままにしていただいたところで、ことしは五百三円八十銭もらえるところなんです。それをPWを廃止したと言いながら、昨年より二円も安い五百一円九十銭という賃金におきめになった理由は一体どこにあるのでありますか。労働大臣にひとつこの点の矛盾についてお聞かせ順いたいと思うのであります。
  69. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その経緯については政府委員から説明いたさせます。
  70. 有馬元治

    ○有馬政府委員 ただいま小林先生から御指摘がありました点でございますが、先般の失対法の改正によりまして、新しい賃金決定の条項が従来と比べて非常に変わってきたのでございます。すなわち旧法におきましては、同一地域において同一職種に従事する労働者に通常支払われる賃金を基準として定めるいわゆるPW方式によっておりましたが、今回の改正によりまして、その決定条項が、「同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金を考慮して、地域別に、作業の内容に応じて定める」こういうふうに賃金決定の原則が変わったのでございます。と同時に、従来ありました低率賃金原則が廃止されたのでございますが、この新しい賃金決定の条項に従いまして、かつまた新法によりますと、労働大臣賃金を決定するにあたりましては、失業対策事業費金審議会意見を聞いて定める、こういうふうな手続になっておりますので、私どもとしましては、新法の賃金決定条項に従い、さらに審議会意見を聞きまして、今回の賃金を、予算上の単価を算出したわけでございます。
  71. 小林進

    小林委員 いま一回昨年の賃金から繰り返してまいりまするけれども、昨年は旧法に基づいて同一地域の同一種類の作業に支払われた賃金、この賃金によってでき上がったその価格が五百三円八十銭であった。しかしそこにPWがあったから、それから一割を引いた。だから同一地域における同一種類の同一賃金は五百三円八十銭になった。しかしPWがあったから一割引いた四百五十八円におきめになった、こういうことですね。この四百五十八円はそれに間違いございませんね。いかがでございます。
  72. 有馬元治

    ○有馬政府委員 ことしまでの賃金の決定のしかたにつきましては、先ほど申し上げましたように旧法のPW方式で算定をいたしまして、さらに低率賃金原則を適用してきめておったわけでございますが、来年度からは新法によりまして賃金を決定いたしますので、旧法時代と決定の基準がかなり異なっておりますので、新法と旧法といまのような算術計算で判り戻しをして直接比較をするということにはならないわけでございます。
  73. 小林進

    小林委員 私はことしの賃金を聞いておるのではない。去年の賃金は四百五十八円でございます。これはすなわち同一地域の同一業種賃金からPWがあるから一割引いた、それが四百五十八円である。だからこれに一割足せば昨年度の賃金は五百三円八十銭になることは間違いありませんねということをお聞きしておるのでございます。それに対する御返事をいただけばよろしゅうございます。
  74. 有馬元治

    ○有馬政府委員 一割かければいまの先生の御指摘のとおりの計算になります。
  75. 小林進

    小林委員 昨年はその一割を引いたのでありまするから、かけ引きじゃなくて、昨年あなた方が四百五十八円というPW賃金をおつくりになった。そのもとの値段は、五百三円八十銭になりましょう。だから、昨年の同一地域における同一業種賃金は、五百三円八十銭と労働省は御算定になったのでございましょうということを聞いておるのでございます。大臣いかがでございましょう。私の質問に間違いがございましょうか。大臣一つ答弁いただきたいと思います。
  76. 大橋武夫

    大橋国務大臣 数字の問題でございますので、政府委員から申し上げたほうが、正確を期し得られると思います。
  77. 有馬元治

    ○有馬政府委員 昨年の計算方式によりますと、小林委員のお説のとおりでございます。
  78. 小林進

    小林委員 そうすると労働省は、いわゆる失対労務者の賃金を五百三円八十銭と認定をせられた。大臣、いまの御答弁のとおりであります。昨年の十月からいわゆる失対法、職安法を新しく改正をせられて新法というものをおつくりになった。そこで法律改正が行なわれたというのでありまするが、いずれにしてもことしの四月からの失対賃金は、去年より下回ること二円、五百一円九十銭におきめになった。下がっていることは間違いない。さっきの答弁のとおりです。この物価高の世の中に、なぜ一体賃金をお下げになったのか。客観情勢は賃金が下がっておりますか。日雇い労働者の賃金は下がっておりますか。労働者賃金下がっておりますか。その理由はと聞きますと、さっきの職安局長のお話は、去年は旧法で賃金を決定した、ことしは新法で決定をした、だからこれだけの差ができた、こういう答弁でありますが、大臣それでよろしゅうございますか。失対賃金が去年より二円安い、それは新法によったからだという。それでよろしゅうございますか。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 数字のことは事務当局から申し上げます。
  80. 有馬元治

    ○有馬政府委員 旧法時代の計算をかりにいたすとすれば先ほどのような数字も出てまいりますが、来年度の失対賃金は昨年改正を経ました新法の決定基準によりまして算定をいたしておりますので、いま御指摘のような計算で比較検討さるべきではなくて、決定基準そのものがかなり違ってきておりますので、旧法で低率賃金原則がかりになかったとすればという前提ではじき出された架空の数字と比較して議論するわけにはまいらないのでございます。
  81. 小林進

    小林委員 私は架空の数字——あなたそれは重大なる言い過ぎであります。架空の数字という言い方はこれはたいへんな発言でございますよ。昨年の質金の四百五十八円という数字は、それじゃ架空の中から生まれたものですか。この四百五十八円という昨年の失対労務者の賃金は、正しくあなた方の決定せられた賃金である。その四百五十八円はPWによって削られたのでしょう。PWというのは、あなたさっき言っているように同一地域の同一業種労働者がもらっている賃金より一割引いて失対賃金をきめたというのが、これがあなた方のいままでのきめ方なんでしょう。それが架空だというのは一体何ですか。その同一地域の同一業種賃金というものが、架空じゃなく現実にちゃんと存在しているから、それから一割引いて四百五十八円というこれもまた現実のいわゆる賃金が生まれてきたのじゃありませんか。架空ですか。それは職安局長、あなたの言い過ぎでしょう。そういうことを言っちゃいけません。取り消していま少し明確にお答えなさい。
  82. 有馬元治

    ○有馬政府委員 架空と申し上げたら非常に誤解がございますが、昨年の四百五十八円に低率賃金原則をはずして割り戻せば五百三円八十銭になる。これが去年のPW方式で算定した場合の低率賃金原則をはずした場合の賃金であったはずだ、こういう御議論ですが、それはそういう計算もできますが、私ども現実にとらえておる賃金額としてはことしは四百五十八円、それから来年度の賃金の出し方はどうなるかといいますと、先ほどから申し上げておりますとおり、新法の賃金決定条項に従ってはじき出されておるわけでございます。どこでそういうような見解の違いが出てくるかということなんですが、従来のPW方式の賃金決定条項と先ほど申しました新法の賃金決定の基準とは相当異なってきておるのでございます。具体的に申し上げますと、この新しい賃金条項に従って失対賃金審議会は予算の編成にあたって中間報告をいたしておりますが、この賃金審議会意見によりますと、失対事業の作業が主として屋外労務であることにかんがみまして、屋外労働者の職種別費金調査の結果を考慮することが最も適当である。これが大前提になりまして、この場合におきまして同調査結果のうち、建設業の総合工事のうちで失対事業の事業種目に対応いたしまする道路河川等の工事種類における定額制通勤日雇い労働者の一般的な給与額、これは俗にモード値といっておりますが、この一般的な給与額を基礎として職種の選別につきましては失対労務者の労働力の構成に兄合うように配慮する、こういうふうな非常にこまかい、実情に合った考え方を中開報告において審議会から出されました。私どもはこの籍議会の意見に従って予算単価を算出したわけでございます。
  83. 小林進

    小林委員 そういう失対賃金審議会ですか、最低賃金審議会ですか、私もその答申は持っておりますが、あとでまたあなた方にお伺いするつもりでしたけれども、いまはまだそこまであなたから聞きたいと思っていないのです。私はそこまで質問をしておるのではないのです。昨年の賃金のきめ方をお尋ねしておるのですよ。昨年の四百五十八円というこの失対賃金がどうして出たかということをあなたにお聞きしているのですよ。その四百五十八円はその地域の同一業種賃金から一割引いた賃金が四百五十八円でございましょうということを聞いておるのです。同じところで働いて同じ仕事をしておりながら、われわれだけが一割安く賃金を払われるのは憲法違反じゃないか、そんなばかなことはないじゃないか、だからそのPWをやめてくれ、同じ地域で同じ仕事に携わっているから同じ賃金を払ってくれ、だからPWを廃止せよという闘いを数年来してきたわけです。その闘いの成果について、それなら一割はねたのが昨年度における同一地域における同一業種賃金なんでございましょう。それをあなたは架空などとおっしゃるから、それは言い過ぎだというのです。では、この四百五十八円という貸金はどこから出てきたのですか。同一地域の同一業種賃金から一割引いて出してきたのでございましょう、引かなかったらいくらになるかというのです。引かない賃金がその地域の正確な賃金じゃないですか。引かなかったら幾らになる。それは架空ではないでしょう。架空ではなくて、その地域、その地区にあった実在する賃金でしょう。そうじゃありませんか。実在する賃金であったのですね。そうでございましょう。
  84. 有馬元治

    ○有馬政府委員 PW方式で算定をした実在する賃金でございます。
  85. 小林進

    小林委員 それからいきますと、私の言いたいのは、新法とか旧法とかいっても働いている労働者は変わりないのですよ。去年働いていた失対労務者も、きょうこの新法で働かせる労働者も、失対労務者の人格に変わりない同一人なんです。その同一の人間が、あなた方がかってに新法によった、旧法によったという形であなたたちの法律のなぐさみと言っては悪いが、その改正によって——PWを廃止すれば当然五百三円もらうのだ、それがPWは廃止になったけれども五百一円しかもらえない。失対労務者の立場でものを考えたら、これほど矛盾する話はないじゃないですか。消費物価はどれくらい上がりましたか、労働大臣。消費物価の値上がりと賃金の問題について、労働大臣の御所見を承りたいと思います。
  86. 大橋武夫

    大橋国務大臣 消費物価は、昨年と今年と比べますと、大体昨年一年間に七・六%の上昇率という統計でございます。
  87. 小林進

    小林委員 消費物価の値上がりが総合的において七・六%、私ども七・八%と計算しておりますが、いずれにしても上がっている。その上がっている物価の中で、特に日雇い労務者や失対労務者のような、人生の一番底で苦労をしている方々にとって日常の野菜だの肉だの、食べものなどの物価の値上がりは、これは七%や八%じゃない。もっともっと値上がりをして、痛切に苦しんでいる。そういう実情の中で、PWの賃金が廃止せられて、そして去年そのままでいっても本来五百三円八十銭の賃金がもらえるというさなかに、法律が変わりましたからといって五百一円九十銭しか払わない、こういう行政のあり方が、一体親切な血の通った政治のあり方であるかどうかということを大臣にお尋ねするのですよ。大臣、これはあなたの労働行政として最大の間違いだと思う。私は少なくとも大臣の真意がここにあったとは思わない。思わないけれども、結果はそういう形にあらわれておる。どうでありましょうか。直ちにこの賃金をお改めになる、七%、八%上がったこの物価の値上がり、そしてプラスPWを廃止したというこの二つの要素を取り入れた現実に即した実態賃金をおきめになる意思ありやいなや、大体私の言うことに無理があるかないか、そこから答弁をしていただきたいと思います。
  88. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のように、予算の単価と実行上の金額とには多少の違いがあり得るわけでございまして、明年度の実行上の金額といたしましては、各地域、各業種を通じまして、四月一日からの実施でありまするので、今年度中に正規の手続によって決定されるわけでございます。その決定に際しましては、法律改正趣旨にのっとりまして、適正を期してまいりたいと存じます。
  89. 小林進

    小林委員 実行上の賃金においてそういう矛盾を是正しながらいきたいという大臣のお考えでありますならば、私はその御答弁を了といたしまして、この問題はまだ意見はたくさんありますが、この席ではこれ以上申し上げるのはやめておきたいと思うのであります。  この際、特にこの問題で一言つけ加えておきたいことは、その実行上の賃金をおきめになるときにも地域的の格差が非常に大きいのであります。同時にこの地域格差は、いまはものによってはむしろ農村都市のほうが中央都市よりもさらに物価が上がったり、住みづらい面があるのであります。諸般の事情を十分考慮せられて、あまり地域の格差ははなはだしく設けないように御考慮願うこともあわせてお願いいたしたいと思うのであります。いかがでございましょうか。
  90. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御趣旨審議会委員諸君によくお伝えいたします。
  91. 小林進

    小林委員 賃金問題は将来を期してここでひとつ留保をいたしまして、次に新法がしかれて以来、緊急失対法、職安法が昨年の十月から実施せられたのでありまするが、その後の実施状況を概略お聞かせ願いたいと思うのであります。
  92. 有馬元治

    ○有馬政府委員 新法が昨年の十月一日から施行になっておりまするが、これによりまして就職促進の措置を新たに講ずることになりましたが、その実績につきまして、一月末現在におきまして御報告申し上げますと、認定の件数が二千八十九件でございます。それから指示の件数がそのうちに一千二百十八件ございます。指示の内訳は五つのコースがございますが、まず長期訓練につきましては二百四十件、それから短期の訓練につきましては三百八十二件、それから職場適応訓練につきましては百七十一件、それから就職指導が二百九十件、それから職業講習が百三十五件、施行当初にはまだこの制度が周知徹底いたさなかった点もございまして、十二月、一月と最近になってようやくしり上がりにこの制度が実際の運用を見ておる、こういうふうな実績になっております。
  93. 小林進

    小林委員 長期訓練が二百四十件、短期が三百八十二件、そういう訓練の状況が一体新法の望むがごとくいっておるか。設備あるいは訓練の人員関係——最近は職業訓練所が内部にいろいろな問題を内蔵いたしまして、方々で問題が起きておるようでございます。そういう問題が出ておりますので、職安行政が新しい失対法に基づく訓練を受け入れるような体制で一体できているのかどうか。その点もひとつお聞かせ願いたいと思います。
  94. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま御指摘の中高年属に対します職業訓練でございますが、公共職業訓練におきましても特に重点を中高年層の訓練に置きまして、本年度におきまして、三百七十職種の新設をいたしました。訓練人員におきまして三十八年度におきまして延べ八千七百三十人の訓練ができるような施設、機械の整備をいたしております。
  95. 河野正

    河野(正)委員 関連して。小林委員から春闘あるいは賃金問題、さらにまた職安行政という諸問題についてお尋ねがございましたが、私もそれに関連して若干お尋ねを申し上げてみたいと思います。  その前段としてお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、いまの職安行政とも関連がございますが、いわゆる政府機関に関係いたしまする特殊法人の労使関係、この問題が、実は今日まで、主管省の方針にも問題はございますが、一方におきますると、大蔵省が非常に強い内部干渉を行なう、そういうようなことによりまして政労協関係労使関係というものが紛争状態を続けるというようなケースが非常に多かったことは、当委員会におきましても再三再四取り上げてまいった問題でございます。そこで、それぞれ問題点につきましてはいろいろございます。東北開発の問題もございますし、その他原子力研究所の問題もございます。いろいろございますが、きょうは当面職安行政の問題が取り上げられてまいりましたので、それに関連をして、職業訓練所におきまする労使関係について若干お尋ねを申し上げてみたいと思っております。  特に、この労使問題について、行政上最も責任のございまする労働省の管轄の中で、実はこの職業訓練所の労使問題というものがいろいろ問題を起こしてまいっておりますることは、私どもきわめて遺憾に感ずるのでございます。特に職業訓練所におきましては、いまもいろいろ御指摘がございましたように、失対の諸君、あるいはまた炭鉱離職者の諸君、あるいはこの午前中、駐留軍労働者雇用安定法等を取り上げてまいりましたが、駐留軍労働者の諸君、そういう諸君が、いろいろと転職のための訓練を受ける、そういう環境の中にございまする職業訓練所の中で労使関係の紛争がございますることは、これは私はきわめて遺憾だと指摘せざるを得ないと考えております。そこで今日まで日直、宿直の拒否あるいはまた時限スト等が、労働大臣の足元で引き続き行なわれてまいっておりますし、なおまた年末手当の問題——もう政労協関係におきましてはほとんど年末手当闘争につきましては終結をしておるのでございますけれども労働大臣の所管でございまするこの職業訓練所におきましては、そういう問題がまだ依然として労使間の紛争という形で継続されておる。私は、重ねて遺憾だと考えておりまするが、この点についてひとつ大臣の御所見を承りたいと思います。
  96. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政労協関係の紛争の中で、特に労働関係の機関において長期の紛争が続いておるということは遺憾ではないかという御質問でございますが、私もさように存じます。
  97. 河野正

    河野(正)委員 特に、労使の紛争そのものも私は遺憾でございますけれども政府機関の中でも、労働者を保護する行政庁と申しますると、やはり労働省でございます。ところがその労働省の足元におきまするこの職業訓練所、しかもいま申し上げますように闘争が継続して行なわれておるわけでございます。年末手当におきましても他の政労協関係のそれぞれの単組と比較いたしましても、最も低い方針というものが出されておる。それからなおまたこの賃金関係におきましても、三十六歳で二万九千三十三円というふうに政労協関係の各単組と比較いたしましても、最も低い水準のもとに置かれておる。職業訓練所の使命というものが、いろいろ重大な使命というものを持ってまいっておりますが、そういう使命もさることでございますけれども労働大臣の足元におきますこの職業訓練所の中で、最も低賃金に呻吟しなければならぬ、最も劣悪な労働条件のもとに呻吟しなければならぬ、こういうものが許されていいのか悪いのか。私は、かねがね労働大臣に対しましては敬意を表してまいりましたけれども、事この問題に関しましては、全く労働大臣の今日までの方針につきましては、私どもも承服するわけにまいりません。こういう劣悪な労働条件のもとに置かれております事態というものを労働大臣はどのようにお考えになっておりますか、ひとつこの際お尋ねをいたしたいと思います。
  98. 大橋武夫

    大橋国務大臣 総合訓練所を中心とした争議につきましては、私もかねてから心配いたしまして、いろいろ実情も承っておるのであります。ただ御承知のごとく、これらの機関の特質から見まして、予算に関連ある事項につきましては大蔵省と事前協議を必要といたしますので、この争議の実質的解決に先立って十分大蔵省の理解を得る必要があるわけでございまして、ただいませっかく専務当局といたしましてもこうした問題について大蔵省といろいろ話し合いをいたしておる段階だと存じておるのでございます。したがって関係者におかれましても、できるだけ協力しまして大蔵省の理解を得られるようにしていただくことが必要であろうと考えております。争議権に直ちに訴えるということよりも、関係者相協力して適正な結論を得るように努力をしていただきたいものと考えております。
  99. 河野正

    河野(正)委員 実は私は先般大蔵省でいろいろ交渉を持った経緯があるわけでございますけれども、大蔵省にその間の事情を追及しますと、何ら干渉せぬ、こういうふうな話でございますし、一方いま大臣にお尋ねすると、大蔵省と事前協議のためにいろいろ問題があるというようなことで、お互いに水かけ論の域を脱しないと思うわけです。しかしそういうことでは、今日までも政労協関係の問題につきましていろいろ要望いたしてまいりましたけれども、私はいまのような事態では、なかなかこの問題を解決することは困難だ、こういうふうに指摘せざるを得ないのでございます。特にこの職業訓練所の場合は、近代産業に対応する技能労働者の養成を目的とする、地域住民に対するサービス機関である、こういうように近代産業に対応する技能労働者の養成というふうな崇高な目的を持って運営されなければならぬというような機関におきまして、政労協傘下におきましても最も劣悪な労働条件である、こういうことではたしていま私が御指摘を申し上げましたような近代産業に対応する技能労働者の養成を目的とする、そういう使命というものが達成されるのかどうか、私どもは残念でございますけれども、そういう政府の方針というものを疑わざるを得ないというのが率直な意見でございます。そういうような崇高な使命を、高度な使命を持っておりまする職業訓練所の職員に対しまして、そういうような大臣の足元におきまする職員というものがそういうような劣悪な状態に置かれておる。これは私は全く納得もいきませんし、また冒頭に指摘いたしましたように、それでは大蔵省といろいろ事前協議をされて、そしてその経緯というものがどういう形で進みつつあるのかもう少し具体的に、ひとつ納得いくような方向でお答えをいただきたい。
  100. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 私が現在承知しておりますところによりますと、現在統合訓練所におきまして、争議の状態になっておりますのは年末手当の問題でございます。それから、あわせましてベース改定につきましての交渉がいままで数回持たれております。その交渉の経過を簡単に申し上げますと、要求書が提出されまして、その間に年末手当につきましての交渉が大体前半主でございまして、それから一月半ば以後につきましては給与改定についての交渉も行なっております。三十八年の十一月五日から二月十日までにおきまして、合計二十六回の団体交渉をやっております。したがいまして、年末手当並びに給与につきまして二十六回労使双方が話し合いを持ちまして、またその団体交渉には理事長、副理事長も出席をした交渉もございます。給与改定問題につきましては、まだ労使双方について話し合いの余地が十分ある状態でございますが、年末手当につきまして中労委にあっせんを申請いたしましたところが、これが不調に終わりました。その結果、労働協約の規定に基づきまして、全総訓の組合のほうからストの通告をいたしました。これによって時限ストを現在二回やったというような事情でございます。先ほど大臣からそれらの年末手当、給与問題等につきましての御答弁を申し上げたわけでございますが、政府事業団との関係は、やや事務的に申し上げますと、まず予算の獲得につきましては、労働省が政府部内におきまして事業団の要求をバックいたしまして、失業保険の保険施設でございますので、失業保険特別会計からの出資金、交付金につきまして予算の大ワクを大蔵省と折衝してきめるわけでございます。この大ワクに基づきまして、事業団におきまして予算計画を立てます。これは事業団法に基づきまして労働大臣並びに大蔵大臣の認可を受ける必要があります。この予算計画の認可がありますと、これに基づきまして、その細部の執行につきましては、事業団の責任においてこれを執行するということになっております。ただし給与の問題につきましては、事業団に給与規定がございます。この給与規程は事業団で立案をいたしまして、これにつきまして同じく労働大臣、大蔵大臣の認可を得て初めて給与規程が発効をする、こういうたてまえになっております。年末手当につきましてもベースの問題、給与につきましても、この給与規定に明記されて効力が生ずる、こういうような手続になるわけでございます。
  101. 河野正

    河野(正)委員 細部の施行はその事業団にまかされておるということでございますから、そこで、要は、問題はその予算の大ワクをきめる際にやはりいまのベースが高いのか低いのか、いまの労働条件がいいのか悪いのかということを基礎として、総予算のワクというものが決定されなければ、そういうものが全然無視され、たな上げされて決定されれば、当然細部の施行の場合に非常にベースが低くなる、あるいは年末手当が少なくなる、こういうことにあるわけですから、私どもは無理なことを言っておらぬと思うのです。これは御承知のように私どもが知っておりまする政労協の傘下二十六単組のどの例を見てまいりましても、この総合職業訓練所の場合が一番低いわけです。ですから、他の組合と比べてさらにいい条件にあるということになれば、これは無理な話かもしれませんが、労働省の足元にございまする職業訓練所の場合が一番低いわけですから、これはやはり、そういうことを基調として総ワクの算定というものを行わなければ、いつまでたっても改善されぬと思うのですね。そこで私がきょう御指摘申し上げたいのは、いまの労使間の紛争状態を研究しなければならぬ、これは炭労の失業者、あるいはまた全駐労の離職者、あるいは失対の諸君、こういう方々が転職のためにしっかり技術を身につけて再就職しようという非常に大事な機関でございますから、そういう点は早期に解決することは非常に望ましいと思うのです。いま私が申し上げたのはそうむちゃな要求ではない、ささやかな要求だと思うのでありますけれども、最低の条件でございますから、そういう点を十分考慮に入れて総ワクの算定に当たる要求というものをやってもらわないと、いつまでたってもいたちごっこで解決しない。そういう方針で臨んでいただけるかどうか、ひとつこの際お答えをいただきたい。
  102. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま申し上げましたように、当面の紛争は年末手当でございますけれども、同時に予算年度が三月まででございますので、給与改定につきましても、早く団体交渉をやりまして、円満な解決をはかるということが最も望ましいと思うわけでございます。私どもといたしましては、先生御指摘のごとく、炭鉱離職者、駐留離職者、あるいはその他の中年層等をかかえておりまして、これらの訓練を受けておられる方々が非常に切実な要求で訓練所に通っておられるわけでありますので、やはり争議状態というものが、この訓練の目的に照らしまして望ましくない状態であることは言うまでもございません。しかし、労使関係でございますので、やはり基本におきましては労と使が自主的な交渉によりまして、話し合いをもって円満に妥結するということがあくまで基本線ではなかろうかと思うのでございます。われわれといたしましては、訓練行政の角度から見まして、一日も早く解決をしてもらいたい、一日も早く正常運営をしてもらいたいというふうに思っておりますけれども、同時に、労使の双方の自主的な交渉、まじめな態度でお互いに交渉するということがなされるということも強く要望いたしたいと思います。そういう角度から申しまして、われわれとして、自主性を尊重しつつ解決についてお役に立てるという面がございますれば、協力をいたすということにやぶさかではございません。
  103. 河野正

    河野(正)委員 労使間の自主性を尊重されるということ、あるいは労働省がいろいろ労使間に干渉しない、そういうたてまえはけっこうだと思います。そうあるべきだと思います。ですけれども、ただそういう紛争状態が続くことは、これは訓練生のためにもいいことではございませんし、また私どもも一日も早くそういう面からも終結さしてもらわなければならぬということでございますが、現状を見てまいりますると、どうも目標を見誤って、そうしていたずらに労使間の紛争というものを混乱におとしいれるというふうな傾向がございますことは、これはまことに遺憾だと考えるわけであります。たとえば、いま組合のほうでも宿直、日直拒否闘争を続けているわけですが、この職員が日宿面をやります場合には、日直手当というものが三百六十円出る。ところがそれを拒否しておりまするから、この職業訓練所のほうではアルバイトを雇って日宿直をやらしておる。ところがそういうアルバイトに対しましては千円の手当を支給しておる。しかも念の入ったことには、食事まで支給をしておる。そういうようなことで、いま局長は自主的な解決、自主的な話し合いで円満解決が望ましいと言われたが、そういうことはなるほど大筋としてはけっこうでございますけれども、いまのような当局側のとっておりまするような方針のもとに、円満に自主交渉ができるかできなか、これは非常に疑わざるを得ぬと私は思うのです。こういう点はいかがでございましょう。
  104. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 争議に入りました場合に、個々具体的に組合側の戦術、理事者側の戦術、それぞれあると思うのでございますが、ただいま御指摘になりました宿日直につきましても、アルバイトを雇っておるというような事実はございます。私どももそういう報告を受けております。ただ全部が全部ではございませんで、管理者側がみずから宿直、日直をやるというようなことをやっておる訓練所も相当数ございます。いずれにいたしましてもそのような状態になりました場合に、円満な形でいくよりは労使双方ともロス、マイナスが出るということは御指摘のごとくでございますので、われわれといたしましても、たとえば三十八年度の予算につきましては、すでに大ワクが決定されまして、これに基づいてその範囲内で事業団においていろいろできる限りのやりくりをして事に当たりたいという方針でやっておるわけでございますので、先ほど申し上げましたように、年末手当だけでなくして、年度内に十月にさかのぼって実施しようという案が、給与改定において持たれておるわけでございますので、それらを含めまして全体として労使関係が円満にいくようにという面において、私どもも早期解決に協力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  105. 河野正

    河野(正)委員 私どもも早期に円満解決を望むわけです。そういう意味で、ここでいろいろ所見を述べたり所見を伺ったりいたしておるわけであります。ところが、いま具体的な例ですけれども、政労協関係に対しましては労働三権が適用されるわけですから、当然労働者の権利であるストライキというものはやってもいいわけです。ところがいま申し上げまするように、日直なり宿直なりの拒否闘争をやりますると、アルバイトを雇う、あるいは宿日直を管理者がやるということはもう当然のことでしょう。ところがアルバイトを雇った場合、一般の場合には三百六十円ですが、アルバイトの場合には千円、こういうようなことで、自主解決、自主解決といいますけれども、はたして自主解決が期待されるのかどうか、いたずらに刺激のみ与えて、かえって労使間の関係というものが激化する、これはもう当然のことだと思うのです。しかも管理者側がどういうことを言っているかといいますると、アルバイトに対して千円の日当を払う金はあっても、職員に払う金はない、そういうことを公言しておる、そういうことで、なるほど労働省が言っておられまするように、自主解決は望ましいわけで、われわれもそうあってほしいと思いますけれども、そういう管理者側の姿勢では一そう労使間の関係というものが激化するだけであって、私は自主解決を望むわけにはいかぬと思うのです。そういう具体的な例が出てきておるわけですから、そういう点についてどういう指導をやっていこうとされまするか、ひとつお聞きしておきたい。
  106. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま具体的な問題について御指摘がございましたが、私も細部につきましては詳細は存じておらないのでございますが、そういうようなことばのやりとりなりあるいは具体的な個々の事件の処理について、おそらく、私どもの想像でございますけれども理事者側にも悪いところがあるだろう、これは考えられます。また、労使関係の間柄でございますので、組合側にも足らざるところがあるのではないかというふうに考えます。理事者側につきましても、組合側につきましても、われわれとしましては、先ほど来申し上げております早期の解決という方針のもとに理事者側に悪い点がございますれば、これを是正しろということを強く申し上げておりますし、早く円満な妥結ができるようにという面で個々具体的にどうするかということにつきましては、それに入ってみないとわからないわけでございますが、方針といたしましては、そういう方針で努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  107. 河野正

    河野(正)委員 そこで私どもも、いま申し上げますように自主解決が望ましいわけで、そうあってほしいと思いますけれども、それを阻害する要素というものが幾つもあるわけですね。その一つとして私どもがここでぜひ取り上げてみなければならぬのは、秋田の総合訓練所で所長が暴力をふるったというふうな問題も出てまいっております。基本的には自主解決ですけれども、そういうふうな姿勢では——たとえばいま日直、宿直問題を取り上げてまいりましたが、そういう具体的な事例、さらには秋田の訓練所におきまする所長の暴力行為、この暴力行為を秋田県会あるいは大館の市会でも取り上げられておるそうでございますけれども、そういうような姿勢というものがいたずらに紛糾というものを長引かせ、そして労使間の対立というものをますます激化させている。私どもも、できるだけ労使問題は自主的に解決することが望ましい、そのためにもこういう当局側の姿勢というものについては、労働大臣の足元でございまする以上は、一刻も早くやはり適正化してもらわなければならぬというふうに考えるわけですが、そういう点についてはどういうお考えでございますか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  108. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま秋田で具体的に暴力行為があったというお話でございますが、事実につきましては、労働省としては、確認はいたしておりません。ただ一般論といたしまして、労使関係の間に暴力行為があるということは望ましくないことは、申すまでもないところでございます。この問題につきまして、事業団の理事長の見解といたしましては、そのような具体的な暴力行為はなかったのだということを組合に対しても言っておるという報告を受けております。
  109. 河野正

    河野(正)委員 これは刑事事件に発展しておりませんから、私どももそういう姿勢ということで指摘をしておきたいと思いまするが、と同時に、今日まで労使の間において不当労働行為と考えられるような現象が多々ございます。たとえば課長がそれぞれ現場へ出てまいりまして、そしていろいろ組合運動を押えるような言動をやる、あるいはまたある訓練所におきましては、組合施設組合の集会のために使うというふうな申し入れをしますと、直ちに所長が生徒を集めまして、長々と訓示をやる、そして組合がその施設を使用することができないようにやっていくというふうな現象もございます。極端な例は、福岡の八幡のケースでございますけれども、どうしても所内の運動場を組合行事には使わせない。そこでやむを得ぬから街頭に出て組合の大会をやる、こういうことでは、労使間の問題を自主的に解決することが望ましいとおっしゃっても、私はなかなかそういう方向には参らぬと思うのです。ですから、労働省というものは、労使関係につきましては一番適正な行政指事をなさるというように私ども考えておりましたし、またそういうことを今日まで期待をし、信頼をしてきたわけですけれども労働省の足元でそういうことが行なわれておる。これは非常に大きな責任があると私は思うのだ。まあそれはどこの所管の中でそういうことが起こってもそれは悪いことですけれども、特に労働省の足元でそういう事態が起こりますことは、私の最も遺憾とする点でございます。そういうことは御承知かどうかわかりませんが、御承知であるならばひとつその辺の事情をお聞かせいただきたい。もし御承知でなければ、私がこういう具体的な事例をここに指摘をしたわけですから、その点に対して今後どういうふうな行政指導をなさろうといたしまするか、その方針をひとつお聞かせいただきたい。
  110. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいまの八幡の件につきましては、私は報告を受けておりませんので、存じません。ただ今後の方向といたしまして、私も実はある総合訓練所を地方公共団体に移管するに際しまして、全総訓の幹部の諸君とも何回かお会いをいたしまして、意見交換もいたしましたし、援助もいたしたわけでございますが、現在の事業団におきます総合訓練所関係労使関係におきましては、先生御指摘のようにやや未習熟と申しますかの点があるのではないかということを、これは私個人の見解でございますけれども、感じております。今後長い労使関係でございますので、やはりそういうものをだんだんとよくいたしまして、基本的な考え方といたしましては、私はやはり話し合いを十分に尽くすことによってほとんどすべて問題が解決するのではなかろうかという信念を持っておりますので、そういう線で、たとえば話し合いが断ち切れて身動きがつかないような際に、労働省が何らかの指導をするということでこれが解決できるという場合には、私どもも幾らでも御協力をいたしたいというふうに思います。
  111. 河野正

    河野(正)委員 いまの職訓におきます暴力事件と関連をして、これは郵政省御出席だと思いますから、ひとつお尋ねをしておきたいと思います。  これも大体いまの職訓と同じケースだと思いますけれども、昨年の十二月十四日福岡の博多郵便局において、やはり管理者側が交渉団に対して暴力を働いた。これは全逓の中央本部も告発をしておりますし、また被害をこうむりました浦という職場委員も告訴の手続をとっておるそうでございます。これはたまたまちょうど同じケースであります。秋田の場合にも団体交渉の席上で起こった暴力事件でございますし、このほうも団体交渉の中で起こってまいりました暴力事件ということでございますが、この点についてどのようにお考えになっておりまするかお聞きしたいと思います。
  112. 増森孝

    ○増森政府委員 お答え申し上げます。  労使関係の交渉等におきましては暴力等が起こらないようにするということは、先ほど労働省からの御説明と同様でございます。先ほど先生から御指摘の告訴の問題でございますが、私のほうにも報告は入っております。十二月十四日午前八時に博多郵便局の集配課の事務室で集団交渉をいたした際に、庵屋敷という人事部の部員から突き飛ばされたという内容でございます。これに対しましては、いま私どもの報告を受けておりますのは、こういう告訴があったけれども、この人事部の部員は別に暴力をふるってはいない、ただ集団交渉をやめなさいと言ったときに、浦君という被害者でございますが、ころんで置いてありますファイバーに腰を落としたという報告を受けております。
  113. 河野正

    河野(正)委員 これは暴力あるいはまた物理的な行為がなければ、何ぼ何でも本人は三十八歳ですから、ころんで郵便集配箱の中に倒れ込んで、腰椎捻挫で全治十日間の負傷を受けるということはあり得ないと思うのです。やはり物理的なものがなければあり得ないと思うのです。そういうことをこの人事部の庵屋敷という係がやったということで、告発事件ということに発展したのです。ですから、それはなるほど業務命令ということでありましょうとも、業務命令だから暴力をふるっていいということじゃないと思うのです。それは別個の問題だと思うのです。要はやはり先ほど午前中もいろいろ春闘の問題が取り上げられてまいったのでございますけれども、最近ややもすると当局側の姿勢というものがそういうような暴力的な風潮というものをだんだん持ってきたというように私どもは理解せざるを得ないと思うのです。ですから、いま局長がおっしゃったように、単に業務命令を出した、ところが自然発生的に本人がころんで負傷したというような答弁では納得するわけにいきません。いかがですか。
  114. 増森孝

    ○増森政府委員 その点につきましては、組合側の被害者とそれから加害者と申しますか、それの間に食い違いがあるわけであります。これらにつきましては司法当局の厳正な判断を待たざるを得ないと思います。なお私どものほうとしましても、もうしばらく調査してみたいと思います。
  115. 河野正

    河野(正)委員 私は結末としては告訴しているわけですから、司法当局が厳正な判断をして裁決することと思うのです。ですけれども、要はやはりそういう業務命令を出す、そうすると、物理的な力というものを発揮する、そういうような傾向というものが最近は非常に強くなったというように私どもは理解をするわけです。ですからやはり秋田においてもそういう事態が発生をいたしております。ですから多少の食い違いがあっても、業務命令として、出ていけということで、物理的な行為をやったことは否定することはできぬと思うのです。こういうことではさっきの労働省の御見解ではございませんけれども労使間の関係というものは自主的に円満に解決されることが望ましいとおっしゃっても、そういう姿勢では私はなかなか自主解決を望むことはむずかしいと思うのです。多少の食い違いがあろうとも、私は当局側にそういう高い姿勢、ことばをかえて言いますれば、一つの弾圧的な傾向というものが非常に強くなったというふうに疑わざるを得ぬと思うのです。この案件についていろいろ細部については食い違いはございましょう。しかしこういう事態が起こったことについては遺憾だというふうにお考えになりますか。
  116. 増森孝

    ○増森政府委員 もし事実暴力行為があったとすればたいへん遺憾だと思っております。私の受けた報告では、そういう事実がないという報告でございます。なお、先生の御指摘になりましたような管理者側のほうが高姿勢ではないかというお話につきましては、われわれも十分気をつけまして、そういうことのないように努力している次第でございます。
  117. 河野正

    河野(正)議員 それではこういうことですか、そういう行為があったとすれば遺憾だ、それならこの場合はないというように断定できますか。
  118. 増森孝

    ○増森政府委員 所管は熊本の郵政局でございますので、私まだ詳しい報告を受けておりません。なお調査いたしまして、不十分なところがあれば十分私ども善処したい、こう考えております。
  119. 河野正

    河野(正)委員 そこでこれは大臣ひとつお聞き取り願いたいと思うのですが、先ほど総合職業訓練所の所長の暴力事件、それからまた郵政省関係で福岡の博多郵便局におきます暴力行為、こういう二つの具体的な例を御指摘申し上げたわけですが、私はどうも労働省の方針としては、労使間で自主的に円満に解決することが望ましい、そういう方針については私ども異論がございませんが、いまのような当局側の高い姿勢ではなかなか自主解決を望んでいくことはむずかしいであろうし、またますます労使間の関係というものを激化の方向へ押しやっていく傾向が強まっていく、私はこういうふうに考えるわけです。こういう傾向について大臣としてどのようにお考えになりますか、お伺いしたい。
  120. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労使間の団体交渉あり方でございますが、これにつきましては、一時は双方非常に強い態度で時として暴力が頻発したという状況がありまして、私どもまことに団体交渉あり方としてかくあってはならない、こう存じておったのでございますが、近来労使双方とも漸次団体交渉になれてまいりまして、だんだん話し合いの精神に徹しつつあるように考えております。ただ、中に御指摘のようにいろいろとまだ十分正しい気持ちに徹し切れないものもあるかと存じますが、これらにつきましては機会あるごとに指導いたしてまいりたいと存じます。
  121. 河野正

    河野(正)委員 もう本会議が始まりますのでひとつ結論を結びたいと思いますが、この職業訓練所におきまする昨秋来の労使間の紛争、これは職業訓練所の使命というものが非常に重大でございますし、また環境という面でも非常に重大の意義を持っておりますので、そういう意味から、すみやかにこの事態が終結することを私どもは望みますし、そのためには、これは労働省の足元でございますから、積極的に自主解決ができるような方向でぜひ指導をやってもらわなければならぬと思うのです。そうしないと、この同じ政府関係の特殊法人の機関の中でも最も劣悪な状態にある、それからさらに極端な例は、指導員が生徒を訓練をし、教育をする、そうしますと、就業しましたこの生徒のほうが指導員である先生よりも高い給与をとる、こういうようなことさえもあるわけです。このことは、いかにこの職業訓練所の職員の方々の給与の水準が低いかということを明確に示しておると思うのです。しかも労使間の状況は、私が申し上げまするように、局長は未習熟ということばを使ったようでございまするけれども、この労使間の慣行というものがなかなかうまくいってない。これは具体的な例を二、三あげて御指摘申し上げましたが、そういう点も含んで、当面としてはまだ年末手当が解決しないわけです。これは職業訓練所だけが一つ残っているわけですから、これはやはり早期に解決しなければならぬ。この点についても前向きの方向で解決するための積極的な御努力を願うお気持ちがありますかどうか。これらの点をひとつ大臣のほうからお聞きをして、適切な御答弁をいただけますならば、これで一応きょうのところは中止をいたしたい、かように思います。
  122. 大橋武夫

    大橋国務大臣 総訓の争議状況が長く継続することは、総訓の社会的使命から考えましてまことに遺憾に存じております。したがって、当局といたしましてはすみやかに解決することが望ましいものと考えておりまして、できるだけ争議解決のためにはいろいろお手伝いをいたしたい、かように存じております。
  123. 小林進

    小林委員 関連質問が若干長かったようでございますが、関連も終わりましたので、いよいよまたひとつ本舞台に返していただくことにいたします。  私は、先ほどから失対の問題についてお尋ねをしてきたのでございますが、その失対の実態がどうなっているか。三十六年十一月には労働省で実態調査をおやりになりましたが、最近これに関する資料をいただいておりません。最近のものがありましたならばいただきたいし、ないならば早急に調べていただいて、現在失対適格者になってからの期間、失対適格者の年齢、失対適格者の転職希望率等を漏れなく含めて、最近の失対の状況をひとつ御報告いただきたいと思います。まだ多くの問題が含まれておるようでございますので、研究させていただきたいと思います。  それから労働安全の問題について、実は私はこれをきょうの質問中心主題にしておきました。ここで一番時間をちょうだいして、これをきめこまかくお尋ねをする計画で来たのでございますけれども、残念ながらいま本会議のベルが鳴りましたからきょうはできませんので、ひとつ労働災害の安全防止に関する行政の体制をどう整備されていくのか、指導監督をどう強化するのか。いわゆる基準法を、まだ運営せられていない面がたくさんございますので、これをどういうふうに的確に運営をしていくか。特に、労働災害に対する補償の千日分などというところも時代にマッチしない面があるというふうにわれわれは考えておりますが、そういう面も含めて、一応できるだけ最近の資料を御提出いただきたいと思うのでございます。  そういう問題に関連をいたしまして、また本会議の済みましたあとに、きめこまかく質問を続行いたしてまいりたいと思いますので、本会議のベルが鳴りましたので、これで私の質問は一応休憩することにいたします。
  124. 田口長治郎

    田口委員長 暫時休憩いたします。    午後一時五十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕