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1964-02-06 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月六日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 大原  亨君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       伊東 正義君    浦野 幸男君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       高橋  等君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    渡邊 良夫君       伊藤よし子君    高田 富之君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山口シヅエ君    山田 耻目君       吉村 吉雄君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 福田 篤泰君  出席政府委員         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         労働政務次官  藏内 修治君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労災補償部         長)      石黒 拓爾君         労働基準監督官         (賃金部長)  辻  英雄君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 二月五日  医療金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第六一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 日本経済は非常に重大なときにきておるわけですが、そういう中におきまして、労働行政基本的な姿勢につきまして最初一つ質問をいたしたいと思います。  これは原則的な質問のようですけれども、大切な問題ですから端的に所信を明らかにしてもらいたいと思うのですが、労働省とか労働大臣というものは一体何のためにあるのか、これは労働大臣はじめ政務次官、各局長にずっと一貫して質問いたしますが、労働省労働大臣は何のためにあるのか、こういう点につきまして労働大臣より確固たる所信をひとつ披瀝してもらいたい、こう思います。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 簡単なようでなかなかむずかしい御質問でございますが、私個人として考えておるところを申し上げさせていただきたいと思います。  御承知のように、国民生活を維持いたしまするには、何と申しましても国内の経済発展、文化の進展ということが必要であろうと思っております。こういう意味におきまして、経済発展の基礎になります労働というものが真に経済発展に応じて進んでいくといことが必要だと思います。そういう点に労働省仕事一つがあることは申すまでもないと思うのでございます。しこうして、経済発展労働というものが即応いたしてまいりますためには、労働者生活が安定をし、そうしてまた労働者労働権というものが正しく守られるということが大事でございまして、そういう意味におきまして憲法で保障されました労働三権を擁護する。そうしてまた、適正な労働条件のもとに能率的な労働が行なわれるような社会環境をつくっていくということも必要であると思います。かような労働権の擁護であるとかあるいは労働条件の維持、改善とか、さらにまた、これらの仕事を通じましての労働者生活の安定をはかる、こういうことがおしなべて労働行政目標でなければならない。そこで、労働省といたしましては、これらの目標を達成いたしまするために、絶えず国の経済、また労働者状態労働組合基本的権利が擁護されておるかどうか、こういうことに注意をしながら仕事を運んでいく、これが必要である。こういうことで進みたいと思っておる次第でございます。
  5. 大原亨

    大原委員 雇用労働者の数も増加いたしますし、それから技術革新等、好むと好まざるとにかかわらず大きな変革があるわけですが、それに伴うて労働の質の変革がある。そういう情勢に即応いたしまして、労働者生活権利を守る、そういう労働省の本来の任務について積極的な任務が果たされているかどうか、こういう点が一つ問題だと私は思います。一応設置法に基づく、あるいは憲法その他に基づく一応の説明が大臣からあったわけですが、私は観点を変えて質問をいたします。これは自民党諸君の中でしばしば言われておることですが、自民党生産の党であって社会党分配の党である、こういうことを言う人があります。これはことさら選挙等におきまして言う人がおりますが、これにつきまして、私は労働大臣所信の一端がわかると思いますので、この点について方向を変えまして質問をいたしたいと思いますが、そういう考え方につきましてはどういうようにお考えになりますか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、生産分配というものは二にして二にあらず、切っても切れない問題であると思っております。したがってこの生産分配を二つに分けて、ある政党生産の党である。ある政党は逆に分配の党であるというような考え方をすることは正しくないんじゃないかというふうに思います。
  7. 大原亨

    大原委員 私は時間がないから私の見解を端的に言うのです。労働省労働者保護のたてまえですけれども伴食大臣ではないけれども非常に発言力がいままでは弱い。だから私が逐次これからずっと質問いたしていきますけれども、そうだと思うのです。しかしながらこれを重視すべきだという意見もあるのですが、いま私が申し上げた点に対する労働大臣答弁は非常に要領のいい答弁ですけれども、公平な分配をして国民生活安定向上させる、そのために生産があるのだと私は思うのです。生産手段だと思うのです。目標生活向上だと思うのです。表裏一体だというようなことを言うことは、ことばの上ではきれいですけれども、やはり核心をついていないのではないか。  それから、特に自民党諸君議論してもらいたいのですが、こういうところで議会の審議を、フリートーキングをやってもらうといいのです。自民党諸君が、自民党生産の党であって、社会党分配の党であるというようなことをよく言います。言いますけれども生産の党であるというふうに自民党が主張することは、やはり大きな企業の利潤に奉仕する、こういうことを裏づけておる。ですから高度経済成長だといって、高度経済成長議論になるのですが、池田内閣は、経済を成長させればだんだんと国民生活が潤うてくるのだ、こういうことを言うて、そうして馬の鼻の先にニンジンをぶら下げてやるようなニンジン政策をとるわけです。しかし、それは政治といたしましてはさか立ちをしておるのであって、これはやはり公平な分配のために政治というものは行なわるべきである。このことが生活安定向上であって、生産手段だと思う。表裏一体というふうにそつのない答弁がございましたが、そういう点を明確にしていかないと、労働行政厚生行政が積極的に政治の中において地位を占めるということはあり得ないのではないか、私はこういうふうに考えるのであります。これについて、与党諸君の座席のほうからごたごた議論があるようですが、もし意見があればひとつ言ってもらいたいと思います。ただ、そういう点につきまして、労働行政とか社会保障厚生行政とかの全体の政治の中における位置づけ、こういうものにつきまして、問題は幾らスローガンに掲げましても、何回選挙をやりましても、どんな政策を発表いたしましても、そういう位置づけができておらぬから、考え方基本がなっておらぬから政治が前進しないのじゃないか、私はそういうふうに考えるのであります。その点につきまして労働大臣の確固たる御所信をひとつ御発表いただきたい。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 大原さんの御意見はまことにごもっともに思います。ただここでわれわれが頭に入れておかなければならない問題は、国民生活向上のためには常にできるだけ多くの分配を可能ならしめるようにすること、また多くの分配を望まなければならぬということだと思うのでございまして、より少ない分配というような方向に計画が向かうようになりますると、これはかえって労働行政の主たる目的にも反する結果になりはしないか。そういう意味におきまして、私は、より多い分配のためにはやはりより大きな生産ということを頭に置いておく必要があるんじゃないか、生産分配とどちらに重点を置くかということは、政策としていかがなものであろうか、こういう意味分配生産は車の両輪のごとく考えていかなければなるまい、こう申し上げた次第でございます。
  9. 大原亨

    大原委員 分配を公平にするということ、これが政治なんですよ。世界的に見てみましても、これからの情勢というものは戦争ということはあり得ないし、やっちゃいけないわけですよ。ですから、生活向上させるということが両体制間の競争になるというわけです。これはやはり政治の一番大きな目標で、このことを平和共存とこういう。したがって生活をどのように向上さしていくかという具体的なプランがなければ、私はそれは政治じゃないと思うのです。これは資本主義の諸国におきましても——これから逐次問題点ごとに時間のある限り私は質問いたしていきますけれども、世界の情勢からいいましても、日本分配は公正でないと私は思うのです。高度成長政策借金政策で、大きな企業におきましては部分的な一応の成果をあげているけれども物価倍増等によって実際の賃金は下がっておると思うのですが、いかがです。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実質賃金の上がりの程度というものが、物価が上がっておりまするために、名目賃金の増加に比べまして相当下回っておるということは事実であります。しかし現在までの統計の示すところによりますると、年年実質賃金が若干でも上がりつつあるということが統計にあらわれております。
  11. 大原亨

    大原委員 労働大臣に私がこういう質問をいたしましたのはどういうことかというと、生産に寄与する労働ということを最初答弁のときに言われたのであります。そこで、もちろんそういう側面もあるわけですけれども、しかし政策政治の部面において、生産に従属した労働政策——その他これからたくさん申し上げるが、そういう観点からいいますと、生産に従属した労働政策ではないか、こういうふうに私は端的に申し上げると一緒に、生活向上するということは、生産分配かという一つ抽象論をいいましても何ですが、私は所得倍増政策によって実質賃金向上してない、こういうことを申し上げて、いまの労働大臣の御答弁に対しまして反論いたしますから、これは労働大臣、各関係局長でひとつ御答弁いただきたいと思うのです。  この十二月二十五日の労働経済指標によりますと、表面の下段ですが、労働生産指数昭和三十五年を基点一〇〇といたしまして、三十八年の十月は一二六・四です。それから裏側を見ていただきまして、二段目の一番左側で名目賃金指数実質賃金指数が出ておりますが、これは実質賃金指数消費者物価を分母といたしまして名目賃金指数を計算し直したのだと思いますが、それを見ますと、昭和三十五年を一〇〇といたしますと昭和三十八年の十月の九三%になっております。一方の生産性のほうはどんどん上がっておりますけれども実質賃金池田内閣高度経済成長政策が始まった昭和三十五年を一〇〇といたしますと、政府統計によりましても九三%に下がっておるじゃないですか。これは他の資料でこれからいろいろ私が総論的に議論いたしたいと思うのですけれども、この政府統計によりましても明らかにこれは公平な分配じゃないでしょう。労働行政がないということです。労働災害労働時間、あるいは最低賃金その他の問題等で、あるいは関連する社会保障問題等で、逐次総括的にその点を集中的に議論いたしたいと思いますが、この賃金だけを見ましても実質賃金は低下しておるじゃないですか。昭和三十五年を一〇〇といたしましたならば、所得倍増政策が始まった年、計画された年ですが、それが昭和三十八年の十月には九三になっておるのです。いかがですか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど私は労働賃金実質賃金は年々若干ずつでも改善されておるということを申し上げましたが、これは大局的に申し上げた次第でございます。というのは、年平均をとりますと、年々改善されつつあるということを申し上げたわけでございます。御承知のとおり、わが国賃金形態といたしましては、盆暮れの定期的な給与というものがございますので、年々の収入月別にいたしますると、月によって非常に高い低いがございます。その年は前年に比べて全体としては上がっておりながら、特定の月を抽出いたしますると、その月が季節的に特別の給与がないというような月もあるわけでございまして、そういった点が月別にいたしまするとはっきり出てまいりますので、ある月とある月と、該当する年々の月を比べますればともかくでございますが、ほかの収入の多い前年の月と収入の少ない今年の月を比べますると、いま御指摘のようにパーセンテージあるいは金額において下がったような統計が出てくるのは、これは事実そのとおりなのでございます。そういった点から御指摘のような結果が出ておると思うのでございます。なおこの点につきましては、技術的な問題を政府委員からこまかく申し上げさせていただきたいと思います。
  13. 大原亨

    大原委員 労働大臣は、時と場所によってでこぼこがあるから全体としてそういう現象があらわれておるのじゃないか、こういう御答弁ですが、これは非常に苦しい御答弁で、これを私がここでコテンパンにしましても意味ないことですが、これは全く実態がそうなっておるわけです。そこで私はそれについて、賃金を担当している基準局長のほうからひとつもう少し具体的な御答弁をいただきたいと思う。私ども社会党の立場をはっきりしておきますよ。生産が上がるということはいいことです。国の経済発展するということはいいことなんです。労働者一人当たりの生産機械化その他技術革新によって上がっていくこと自体はいいことなんです。しかし、その結果が労働条件その他に正しく反映をして、これが公平に分配されるということなしには、引き続いて生産発展もないということなんです。国民経済発展もないということなんです。そういう公平な分配をしないでおいて、あらゆる施策経済成長生産に集中するというところに物価倍増国際収支の悪化があるわけです。だから、それは政府姿勢がさか立ちをしておるわけです。労働省はもう少ししっかりしなければいかぬ。与党諸君がおられるし、大蔵政務次官もいるわけですから、私の言っていることについて議論があると思うわけです。私はそういう点は与野党ともここで議論をしまして——労働行政基本的な問題について一部の自民党諸君労働憲章等で発表されている。その見解を聞いてもいいけれども、それは聞かないが、とにかく基準局長いかがですか。もう少し懇切丁寧な事実に基づいた客観的な答弁、あなたは労働大臣答弁とは違っていいんですけれども、ぱっとした答弁をしてください。
  14. 大宮五郎

    大宮政府委員 賃金改善向上していかなければならないということは当然でございまして、その賃金改善向上は、簡単につづめて申し上げれば国民経済全体の向上に伴っていくことが望ましい、こういう基本的な考え方を持っておるわけでございます。そういう観点から先生指摘生産性賃金関係につきましても、両者関係は国全体としての生産性向上、それから全体として賃金改善向上、これが両々相まっていくことが望ましいのではないかと思っておるわけであります。そういう点から先ほど先生指摘になりました製造業生産性賃金関係は、必ずしも全部の関係をあらわすものではございませんけれども、比較的広い範囲での生産性賃金関係に該当するものと見てよろしいかとも思うのでございます。そうしますと、先ほど大臣からの答弁もございましたように、製造業における生産性向上賃金向上は、長期的に見ますと大体いままでのところ見合っておるのではないかとわれわれは数字的に解釈しております。もちろん景気のいいときには生産性向上のほうが上回り、景気の悪いときには生産性向上が下回るという関係はございますけれども、これは通して見ますと、大体見合っておる。その両方関係を見る場合には、賃金のほうが、これまた先ほど大臣から申し上げましたように、日本賃金盆暮れ賞与多額に支給されまして(「多額に支給ということはない」と呼ぶ者あり)相対的に多く支給されまして、数字で申し上げますと、たとえば昭和三十五年を一〇〇にした指数で申し上げますと、三十七年の十月の賃金指数は一〇四・八でございますが、同じ昭和三十七年十二月の指数は二四九・一となります。したがいまして年平均いたしますと、三十七年の平均指数は一二三・〇となるわけでございます。年平均指数の値と十月の賞与などの月の指数はむしろ十月のほうが平均よりもだいぶ下回るような数字になるわけでございます。したがいましてこういう生産性賃金関係を見る場合には、技術的に大体年平均数字でもって両方を見るというふうにしておるわけでございます。そういう点から見ますと、三十七年の賃金指数はいま申し上げましたように、一二三・〇でございまして、一方生産性指数は一一三程度でございます。もちろんこれだけで、こういう短期間でどうこうということは申せませんが、最近の景気の回復に伴いまして、やや従来と違う両者関係が出てまいりまして、いままで景気調整過程では生産性向上率よりも若干賃金上昇率のほうが上回っておりましたが、最近は生産性向上率がまた少し上回り始めておる、こういうふうに短期的にはいろいろ変化してきております。しかしながら長期的にいうと大体つり合ってきておるというふうに考えております。
  15. 澁谷直藏

    澁谷委員 関連して。直接関連というわけではございませんけれども、私は労働問題全般を通じていろいろと御質問申し上げたいと思うのでございますが、何と申しましても、労働問題の一つ基本の柱は雇用問題でございます。そこで労働省で最近のわが国雇用失業情勢現状はどうなっておるか、今後の見通しはどうかという点を安定局長からお伺いいたしたいと思います。
  16. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま雇用失業情勢現状と将来の見通しについて御質問がございましたが、私ども現在の雇用失業情勢につきましては、先ほどからの労働経済指標にもございますように、完全失業者数字の点から申しましても、昭和三十四年当時六十五万程度ございました完全失業者が、今日の最も新しい時点でございます十月現在では二十八万に激減しておる。また、労働市場情勢を見ましても、いわゆる求職率殺到率の点につきまして、同じくこの経済指標から見てみますと、三十四年に平均二・〇倍であったものが、同じく最近、昨年の十月の指標によりますと、〇・五倍に改善をされておる。また潜在失業の問題の観点からいろいろ検討されるわけでございますが、この点につきましても、総理府の統計局でやっておりまする就業構造基本調査によりますと、三十一年七月に二百七十八万ございましたのが、三十七年の七月には二百一万に激減をしておる。こういった数字的な実績を見て検討いたしてみますと、最近雇用失業情勢は著しく改善をされつつある。また今後の将来の見通しにおきましても、経済高度成長に伴いまして、この状態はますます改善が加えられていくであろう。現に中卒、高卒等のいわゆる学卒の求人と求職のバランスの状態を見ますと、来年は約三・七倍——四倍近くの倍率になることが予想されます。そういった状態でございますので、今後の労働力の需給の関係につきましては、従来懸念されておりましたような労働力の過剰という状態から、不足の状態にだんだん移り変わっていきつつあるのではないか、かような情勢判断をして、雇用失業対策につきましては、こういった情勢判断のもとに、基本的な方向を消極的な政策から積極的な政策へ相当切りかえていかなければならないのじゃないか、かような考え方行政を進めておるような次第でございます。
  17. 澁谷直藏

    澁谷委員 ただいまの答弁によりまして、わが国雇用失業というものが全般的に非常な改善を見ておるということが明らかにされたわけでございますが、御承知のように、戦後十数年間にわたりまして、日本の最大の悩みの一つは、いわゆる失業問題であったわけでございます。それが最近の高度経済成長の影響によりまして、雇用失業問題が大きく改善されて、むしろ部分的には労働力不足という問題が新しくここに登場してきておるということであろうかと思います。そこで、置かれておる状態が激変してまいっておるわけでございますから、これに対応する労働政策雇用政策というものもまた当然大きくこれは変わっていかなくてはならぬ。そこで、今後の職業安定行政分野におきましては、従来も失業対策に非常な重点を置いてきた安定行政であるわけでございますが、今後はこの高度経済成長によってわが国経済というものが大きく再編成されつつある。したがって、これに伴って、雇用失業というものも大きく再編成されつつあるわけであります。特に今後の職業安定行政分野におきましては、いわゆる労働力流動性を促進するという政策一つの中心的なテーマとしてここに登場してきておる、かように考えるわけであります。最近非常に大きな政治問題となっておりまする物価上昇という問題をとらえましても、その物価上昇一つの有力な動因として労働力不足という問題が一つの大きな原因となっておるということは大体識者の認めておるところであります。そういう意味から考えますと、物価問題を解決するという見地からも、労働力流動化対策というものを強力に推し進めなければならないと考えるわけでございますが、そういう点から労働省ではこの労働力流動化対策というものを今後どのように推し進めていかれるつもりであるか、これをお尋ねしたいと思います。
  18. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま御指摘がございました労働力流動化の問題、これは今後のわれわれの雇用政策の最も大きな柱の一つでございますが、その内容といたしまして私どもが考えておりますことは、何といっても労働力が地域的に偏在をしておる、こういう実情でございますので、これらの労働力を地域間に移動しなければならない。このためには、一番大きな問題は住宅の問題でございます。こういう見地から、移転労働者用住宅を一昨年から大量に建設を始めたわけでございますが、今年までにすでに一万二千戸ほど建設をしております。来年度はさらに一万戸建設いたしまして、この流動化に対処してまいりたいと思います。もちろん、これだけの住宅政策住宅問題が解決するわけではございませんので、住宅の本格的な解決は、これはもちろん建設省の住宅政策にございますが、移転者の移転就職までの暫定的な住宅措置として、いま申しましたような住宅対策をとっておるわけでございまして、建設省の本格的な住宅政策にも、われわれの雇用政策観点からいろいろと注文をつけ、またこれらの移転労働者用住宅建設省の住宅政策との間には連携を保って今後住宅対策を進めてまいりたい、かように考えておるのでございます。  その第二点といたしましては、いわゆる労働市場センターの設置を考えておるのでございます。これは御承知のように、現在安定所が四百五十幾つございますが、その安定所が狭い管轄地域を担当いたしまして、その中で小さな労働市場を形成しながら、いろいろ設備その他の関係もございまして、今日の産業経済活動の実態からいいますと、半ば動脈硬化といいますか、半身不随的な機能しか果たさないような状態になっておるのが実情でございます。これを真の意味の全国的な規模における労働市場を名実ともに形成するということが、われわれの雇用行政の大きなねらいでございます。こういう意味労働市場センターを設置して、全国一本の近代的な労働市場建設し、強力に雇用政策を進めてまいりたい、こういった考え方澁谷先生指摘流動化の対策には対処してまいりたいと思うわけでございます。これがひいては、労働力の供給不足から生じます賃金の著しい暴騰といったようなことが物価上昇にいろいろと悪い影響を及ぼしておる場面もございますので、そういった面につきましては流動化の積極的な対策によりまして、合理的な労働力の配置が行なわれ、賃金も、労働市場の近代的な機能を通じて合理的に決定される、こういった仕組みを通じて、物価の問題にも間接的にいい影響を与えていくようにというふうな考え方で、今後雇用行政を進めてまいりたいと思います。
  19. 大原亨

    大原委員 労働大臣がおられましたときの、基準局長に対する質問につきましては続けますが、ちょっといまの職安局長澁谷委員質問に対する答弁、これにつきましては、確かに殺到率は、お話のように、昭和三十四年の二・〇から昭和三十八年十月の〇・五に変わってきておるわけです。しかしこれは職安の窓口だと思いますから、実際上の問題とは若干離れておると思います。しかしそういうふうに殺到率求職率は好転をいたしておるようですけれども、いまはしなくも八百長質問の中ではっきり出ましたように、新しく市場に出る中卒や高卒のそれが窓口を通してやりますが、その求人率が四倍になっておりますね。とにかくひどい求人難ということです。そのことの占める量と、それから、〇・五倍というものの中における学卒以外の中高年齢層における就職状況、これは年齢別の殺到率をひとつ発表願いたいが、それをやっていくと、実際上、職安の窓口にあらわれてこないもの、そういうものとの関係があって、その数字はすれ違いになっておるんだ。だから、これは数字の魔術であって、そういうことを池田総理大臣などがぬけぬけとラジオやテレビやあるいは国会答弁で、十分検討しない人々を相手にしてやっておるわけだ、これから逐次数字を私は反駁するけれども。それで、年齢別の殺到率をあなたがひとつ発表してもらいたい。これは労働省が発表している資料も別に私は持っているけれどもあなたの言っているように、そんなに好転してないですよ。
  20. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま大原先生指摘のように、殺到率の内容を分析いたしますと、中高年齢者につきましては、非常に改善の速度がおそいということは事実でございます。これを数字的に比較いたしてみますと、三十五年の十月時点におきまして、二十歳から二十四歳の層で、一・五倍でございます。これが四十歳から四十九歳の層になりますと、三・七倍、さらに、五十歳以上になりますと、十五・三倍というふうに、非常に求職率殺到率はよくないわけでございます。しかし昨年の十月時点におきまして同じ年齢で見てみますと、二十歳から二十四歳の層では、四年前に一・五倍であったものが一・一倍に改善されております。また、四十歳から四十九歳の層では、四年前に三・七倍であったものが二・〇倍に改善されております。それから、五十歳以上につきましても、同じく十五・三倍が七・四倍に改善をされております。しかし全体として見ますと、先ほどのような学卒の二倍、四倍という求人の倍率からいたしますると、この中高年齢者の求職率は非常に悪いわけでございまして、学卒を含めた全体の殺到率はよくなっておりまするが、御指摘のように、中高年齢層については、まだまだ改善をしなければならないと思います。しかしながら、三十五年当時から比べると、著しくよくなっておるという事実だけはお認めいただきたいと思う次第でございます。
  21. 大原亨

    大原委員 この問題はあとでまた私なり同僚議員のほうからさらに質問いたしますので、私はこの点は保留いたしておきますが、とにかく四十歳から四十九歳までの殺到率が、昭和三十八年が二倍である。そうして五十歳以上が七倍であるというのは、これは実際上の問題を考えてみましたならば、べらぼうな数字であります。これで就職状況が好転したということを、学卒だけを対象にいたしまして言うことは、これは日本雇用情勢を正確に把握するゆえんではない、この点だけ指摘をしておきます。  それから、先ほど御答弁になりましたことで、私はこのことだけでさらに他にたくさん問題がありますから深追いはいたしませんが、明らかなことは、生産性はとにかく上がっているわけです。私が申し上げましたし、あなたがお話しのように、上がっているわけです。そうすると、池田内閣所得倍増政策ということからいえば、一年間に七・三の実質賃金向上があって初めて十ヵ年間に生活水準が倍になるのだ、所得が倍になるのだ。日本の成長率、国民所得の増加率というものは世界でも有数ですけれども、私が言うように、分配が非常に不公平であって、このこと自体が日本経済の大きな内部矛盾になっておる。こういうことを指摘したいのだけれども、ともかくも、先ほど御答弁になりましたことは、あなたの数字は、それはもちろんボーナスやその他夏期手当等の一時金が入ってくる問題等があるけれども平均数字を見てみましても、とにかくあなたが言ったのは、名目賃金をあげて言ったのだ。私が指摘をいたしましたのは、実質賃金なんです。生活が上がったということは、貨幣価値が下落いたしまして、一万円の給与の者が八千円しかの生活ができなくなったら、これはこれだけならば、生活が下がったといわなければならぬ。名目賃金が幾ら上がりましても、物価が上がって貨幣価値が下落いたしますと、実質賃金が下がってくる。そうすると、実質賃金の点からいいますると、昭和三十七年の平均昭和三十五年に比較いたしまして一〇九・〇で、九%上がっているということになりますが、しかし生産性と比較してもそうだし、あるいは所得倍増政策という政策上の観点からいいましても、これは自民党の閣内や党内にもそういう批判があるように、それは政府委員が何も苦労して答弁する必要もないのであって、ほんとうに高度成長政策というものは、これは放流のあるべき姿に向かっていない。じゃ、どたんばに、十年目のときにどかっと上げるのかということになる。そんなことはあり得ないはずだ。だから、高度成長政策はそのまま明らかに、一番生産のにない手である雇用労働者はどんどん増加しておるわけです、国民の中に占める位置は増加しているわけです、そういう点からいいますると、やはり労働者を犠牲にしてやっておるところに問題があるのじゃないか。そこに労働災害や、その他逐次申し上げるけれども、問題があるのじゃないか。  それから、職安局長にお尋ねするのだが、潜在失業者、不完全就業者、これはあとで同僚委員からも質問があるから私は簡単に質問しておくのですが、不完全就労者、職はあるにいたしましても安定した職場でない、食える賃金でない、あるいは、社会保険の適用がなくて常に病気やあるいは失業そういう恐怖にさらされておる、そういうふうな状況の、いわゆる安定した職場でない労働者の、私は三つくらい項目をあげたけれども、そういう実態をもう少し、いまのような机上の数字でなしに、実態に即して、いまの雇用の質の問題について、職安局長殺到率の問題と同じように正しく事務的にも把握をしなければならぬ。いいところだけの数字を引っぱり出しておいて、そうしてそれを上司が答弁する資料にするということではいけない。そういう私が申し上げたような点についてのあなたの見解を簡潔に答弁してください。
  22. 有馬元治

    有馬政府委員 統計局数字は先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、この不完全就業者の定義につきましてはいろいろな定義がございまして、かつて雇用審議会等においても、先生指摘のような所得面から見た推定をした実績がございます。それによりますと、六百万をこす潜在失業者がおるという推定数字ももちろんあるわけでございますが、これは不完全就業者の定義がなかなかむずかしい。現に昨年ILOにおきましても専門家会議を開きまして、この定義の問題についていろいろと討議をしたわけでございますが、いまだに結論を得ていない状況でございます。私どもは、いずれの定義をとるにいたしましても、今後の雇用政策一つの大きな焦点として、この不完全就業者の問題を本格的に取り上げて、これについての対策を講じていかなければいけないのじゃないか。全体としての労働力不足という事態に進みつつある今後の問題といたしましては、その点を十分重視いたしまして、雇用政策を積極的に立ててまいりたい。この点につきましては、雇用審議会におきましても、この問題についての検討をこれから積極的に進めると思いますし、私どもも実態についての調査を、来年度はぜひこの領域について行ないたい、そのための予算も計上してございますので、漸次実態をつかんだ上で的確な施策を講じてまいりたいと思います。
  23. 大原亨

    大原委員 これはしばしば本委員会におきまして議論になっておるところですけれども、不完全就業者の問題につきましては、社会保険の問題もあれば、最低賃金制との関連もあれば、あるいは臨時工、社外工等の身分の問題、日雇い等の身分の問題、あるいは無権利状態、組合がないような場合、こういう問題等たくさんな観点から私どもは究明できると思うのですが、こういう点につきまして、雇用構造を明確に分析をして、そうして安定雇用のほうへ時っていくというのが完全雇用政策の柱であって、私はこの政策というものは労働省の非常に大きな仕事分野であると思うのです。これはしばしば指摘されておるように、あるいは政府委員のほうで、この点については調査をして、そうして何とか実態を把握したいという繰り返しの答弁が重ねられておるわけですが、この点を早くやって、そうしてそれに対する科学的な対策を立てなければならぬ、私はそのように思いますが、労働大臣のこれに対する御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 不完全就業者の対策の重要なることは、まことにお説のとおりでございます。つきましては、その対策の基礎になるべき不完全就業者の調査を進めなければならぬということも、もとより申すまでもないことだと思います。ただ、これにつきましては、先ほど来政府委員から申し上げましたとおり、従来なかなか調査が困難でありますために完全な調査がなかった。このことがまた完全なる対策の樹立をおくらせておったと思うのでございまして、これは労働行政といたしましては、ゆゆしき欠陥の一つであると存じまするので、早急に具体的な改善策を立てて、すみやかな調査及び対策を実施いたすように懸命な努力をするようにいたしたいと思います。
  25. 大原亨

    大原委員 きょうは時間も十分ありませんが、大切な大綱的な問題ですけれども賃金部は職務給の問題をやっておるわけです。それで欧米その他の職務給の研究をしながら、日本に似合ったようなことで、いまのような実質賃金が非常に低下しておる中で、労働者内における分配について職務給を導入するということについては、私はたくさんの問題があると思う。それと同様に、労働行政厚生行政社会保障制度等の問題について連関がない。たとえば、児童手当あるいは老後の保障、身体障害者の保障、そういうような保障なしに賃金体系を考えてみても、これは非常に抽象的な浮き上がったものになって、結局は日経連の手先だというように労働行政がいわれてもしかたのないような結果になるのではないか。私は、そういう観点で、潜在失業者の不安定雇用の問題を指摘いたしましたけれども、実質貸金を向上さしていく、そうして毎年確実に実質貸金が向上するのだというそういう政治方向を示すと一緒に、賃金の合理化を進めることは非常に大切な問題ですけれども、しかし、合理化ということがどういう立場に立って行なわれるかという点につきましては、たくさん問題があるし、特に厚生行政社会保障政策との関連を一元的に考えなければ、決して賃金体系の問題だけを議論することはできないのじゃないか。私は、その点につきまして、ひとつ労働大臣見解を示していただきたいと思う。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 貸金の問題が社会保障と切っても切れない関連があるという点、これは私も同意でございます。ところで、社会保障につきましては、いま日本社会保障は急速な発展の途上にあるわけでございまして、またこれを発展させまするためには、いわゆる所得倍増政策の堅実な進展が必要であるというのが、いまの政府としての考え方でございます。したがって、社会保障につきましては、相当長期にわたる努力が必要でございますが、職務給なりあるいはその他賃金全般の問題につきましては、絶えずこれらの社会保障とにらみ合って研究を進めるということは当然でございまして、労働省といたしましても、特に今後そういう方面に留意をしながら研究するようにいたさせたいと存じます。
  27. 大原亨

    大原委員 働く場合には食えるだけの、働けるだけの賃金が保障されるということで、働く機会を失った人にあっては、社会的な保障をしていくということで国民生活が安定していくわけです。高度成長の中でも雇用労働の面が非常にウェートが高いわけです。だから、そういう総合的な一貫した計画なしに政治が行なわれるということはあり行ない。私はその点を指摘しておきます。  それから、労政局長にお尋ねいたしますが、あなたのほうがよけいなことをやればマイナスになるわけです。しかし、積極的にいいことをやろうと思えば、いろいろな点から制肘があるでしょう、そうでしょう。そういうことですが、今年度の労政局の行政の中で、あなたが特に重点として取り上げたい——私がいままで議論いたしました点だけではございませんが、労働行政の実態に触れて、そういう問題についてのあなたのお考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  28. 三治重信

    ○三治政府委員 労政局の関係行政の実施面につきまして特に力を入れたいと思いますことは、労働福祉対策として中退法の改正をぜひお願いしたいと思っております。これは間もなく国会に提案されるように大体いま案が固まりまして閣議決定を経るばかりになっております。この中耳はいろいろありますが、大きな点は、規模の拡大、掛け金の増額、還元融資制度をつくる、それからさらに新制度といたしまして、建設業における大工、左官等の方々のいわゆる退職金制度を新しいくふうのもとにできるような法制的な措置を講じてまいるというような、従来ああいう方たちの問題がなかなか解決できなかったので、この問題の一つを切り開いていきたいというふうに考えております。  そのほか、労働福祉の問題につきまして、いわゆる福祉活動を各地方の中小企業の中心地で増進するような援護措置をとりたいと思っております。  それから、労使関係の安定の部面につきましては、大単産並びに産業別としては非常に組合のほうが発達しておりますので、われわれはそれについては自主的に労使でやっていただくことにして、中小企業関係につきましてはまだまだ突発的なちょっと常識で判断しかねるような事件も起きる場合が相当ありますので、組合法が戦後施行されて労使関係の安定ということについてやってきましたのは、それは大体において行政措置としては私たちはやらなくて、中小企業の問題につきまして、地方において労働教育を兼ねて中小企業の労使関係の正常化に力を注ぎたいというふうに考えております。  なお、所管としては全部が私たちのところではございませんが、ILOの関係国内法の問題につきましては、今国会で通過ができますように大臣の指導のもとに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  29. 大原亨

    大原委員 私は労政局の仕事の中で一番大切な点は労働者権利の問題だと思う。これは労働大臣最初に御答弁になったとおりでありますが、権利の問題だと思う。やはり労働基準、権利、こういうふうな問題と実質賃金の問題は全部うらはらです。権利の問題だ。私は、時間がございませんからILOの問題についてはこまかな質問をいたしませんが、労働大臣に端的に質問いたします。やはり開かれた国際社会ですから、日本だけが孤立していくわけにいかぬわけであります。したがってそういうお互いに腹の中を見せながら、そしてその中で友好関係を結んでいく、こういう結果になると思うのです。私は端的に質問いたしますが、ILOから調査団が日本に派遣をされるというふうな、そういう理事会の決定がございましたならば——予算措置等その他なされておるようでありますが、なされましたならば、日本としては当然この調査団の受け入れが問題になると思いますが、受け入れはいたしますか、いかがです。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 調査団に対する調査の命令と申しますか、決定と申しますか、これにつきましてはご承知のように、昨年晩秋の理事会におきまして、次の理事会にILO事務局から具体的な提案をするようにという決定に相なっておりまして、その具体的な提案は今月の理事会において行なわれると思います。その具体的な提案を基礎にされまして、ILOといたしましては、日本政府に正式に承諾するかあるいはいなかという問い合わせをされてくると思うのでございまして、政府といたしましては、その正式の照会を待ちまして態度を決定いたす予定でおります。
  31. 大原亨

    大原委員 それは当然断わる理由はないと私は思うし、日本の立場からいいましても、十大工業国ですから、当然、やはり胸襟を開いてやるべきだと思うのですが、その点は政府はまだ態度を決定をしていない、しかし労働大臣としては当然、そういう要請があれば日本調査団の来日はあり得る、こういうお考えですか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、ただいま申し上げましたるごとく、正式の照会を待って態度を決定すべきものであろうと思っております。したがいましてただいまのところは、いかなる照会がくるか、その内容を見るまでは何とも申し上げかねるという状況でございます。
  33. 大原亨

    大原委員 この十四日か十五日のILOの理事会で、日本政府代表がそういう決議に対しまして発言をしなければらない機会がある。もうそれは迫っておるわけです。十五日というのは日本の代表が発言をする機会がある、発言をしなければならぬ。そのときに意思表示をすることになる。この発言の機会が一ヵ月後とか二ヵ月後ということであれは私はきょうここで差し迫った議論をいたしません。しかしその機会は非常に近いわけです。おそらく私は政府代表に訓令をされておると思います。しかしそのことは正々党々と国連の専門機構であるILOに対しまして、私どもの態度の表明はやはりすべきではないか。して何ら差しつかえないのではないかと思いますけれども、まあひとつ念のためにもう一回御答弁を願いたい。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まだ理事会の決定がございませんので、いかなる決定がなされるか、これがわが国として受諾できるものかどうか、これについては推測の域を脱しないと思うのでございます。ただ政府として言い得ることは、いままでに伝えられておるような状況では、現在の段階で特にこれを拒否しなければならぬ特別の理由はないと思っておりますが、しかしこれを受諾するということを申し上げる時期ではないと思っております。
  35. 大原亨

    大原委員 拒否する理由はないということでありますが、ILOについていろいろこれに対する労働界や革新側の評価があるわけですけれども、最近の労政行政は非常に枝葉末節のことまでやられるわけだが、労働行政の大切な点といたしましては、私どもの考えは、資本主義か社会主義かという以前に民主主義の原則として労使対策ということ、中小企業の問題、労働条件向上はやはり労働者の人権——労働権を守るという労働大臣のおことばというものは、やはり中小企業労働者の団結権を尊重し、これを促進するという立場、これはやはり日本におきましては日雇い、土建、港湾関係等その他いろいろ含めまして大きな問題になっておりますけれども、そういうことであります。したがって、憲法による労働三権を尊重するのだという大臣最初答弁でしたけれども、中小企業問題は労政行政では非常に大きなウェートを占めておると思うが、その中で一番尊重さるべき問題は中小企業労働者の団結権をやはり保障していくという、そういう憲法にきめられた権利に基づく行政上の措置だ。これは資本主義の立場に立つ自民党といえども、封建的な政党でなく近代的な政党である限りは、このことについて積極的に促進すべきことであって異論はないはずである。またこれは自民党が民主的な政党か非近代的な政党かのバロメーターである。この点については態度を明確にいたしまして、社会問題を合理的に、民主的に解決をしていくということが、国際的に見てみましても日本の立場というものをはっきり対外的に説明できることになる。八十七号条約の団結権保障の問題は、公務員や公共企業体の労働者だけの問題ではないわけです。たまたまそういう現象を呈しておりまするけれども、そのいう点で労政行政といたしましては積極的な方針を立てて、行政上の措置をすべきである。そういう点が抜けたような行政というものは魂のない行政であると思うけれども労働大臣の所見を伺わしていただきたい。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労政行政といたしまして憲法二十八条の労働三権、これを保護するということが最重点であることは先ほど申し上げたとおりでございまして、労政局でやっておりまするいろいろな施策は結局これらの点で、すなわち、労働権の保護ということの外郭的な仕事をやっておるわけで、あくまでも中心は労働権の保護でなければならぬと思います。また中小企業に対する労働行政、特に労政行政といたしましても変わったことはないのでございまして、労働権の保護ということが中心であります。いままでの人情から見ますと、労働権の中でも特に問題となりますのは、労働組合の結社の自由ということだと思うのでございます。すなわち、労働組合を組織する自由あるいは労働組合を組織しないの自由、加入するの自由、加入せざるの自由、こういう問題につきましてとかく中小企業には問題がありがちでございまするので、これらの点につきましては労政当局といたしましても常に留意いたし、組合の結社の権利の擁護に遺憾なきを期しておる次第でございます。
  37. 大原亨

    大原委員 労働災害につきましてもたくさんの問題があるわけで、私も若干用意したわけですが、これは時間の関係で申し上げません。しかし私が一つお尋ねしたい点は、労政局長とも関係ありますけれども労働災害から人命を守るということ、労働者の自分のいのちを守るということ、このことは生活を守る、賃金を守る問題、労働条件問題等でいろいろ議論になるけれども、事人命にかかわる労働災害の問題は、労使対等の立場において労働者の発言権を認めるべきであって、これを一方的に管理運営事項と称して経営者の処置だけに放任するということはできない。労働災害の問題、事人命に関する問題はいわゆる団体交渉の対象と当然なるべきものである、人命に関する基本的な問題だから……。そういう点で私はその一点だけをこの際ひとつ明らかにしてもらいたい。労働災害全体の問題はこれはいまや重大問題ですから、この問題は各方面から議論いたしますが、管理運営事項として労働災害から人命を守る問題を団体交渉の対象から忌避するような、そういう経営者あるいは当局等に対しましては、政府として、労働省といたしまして明快な方針を持って臨むことが、私は災害をなくする、少なくする一つの大きな基本である、こういう点につきまして、基本的な問題ですからひとつ労働大臣見解を明らかにしてもらいたい。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一口に労働条件と申しましても、具体的にはいろいろな事項があると存じますが、労働災害に対する、安全の問題は最も基本的な事柄であることは申すまでもございません。したがいまして、これはいわゆる労働組合と使用者との団体交渉において当然話し合いをされるべき労働条件の最も基本的なものだ、こういうふうに考えております。したがって事が管理運営に関する事柄である場合もありましょうが、その場合におきましてもやはり労働条件の中心をなすものでございますから、当然団体交渉においては必要に応じて話し合いをされるべき事柄だ、かように面っております。
  39. 大原亨

    大原委員 それでは、訓練局長がお見えになっておるようですが、これはあとでお伺いすることといたしまして、婦人少年局長にお伺いいたします。  いままで議論をしてまいりましたけれども、まだ十分でありませんが、そういう雇用情勢労働情勢の中で婦人少年局は、まあマンネリズムになるとはいわないけれども、機械的におちいらないように今後どういう点について努力をしていこうとしているのか、こういう点について、ひとつ端的に発表願いたいと思います。
  40. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 婦人少年局におきましては、婦人労働者並びに年少労働者の保護をいたしまして、かつ、その婦人労働者並びに年少労働者の働く機会につきましても十分それが本人に満足であるように、またよき条件のもとに働けるように援助をしていくところの使命を持っていると思うのでございます。このために婦人少年局ではいろいろ努力をいたしておりますが、ごく最近におきまして力を入れておる点について御説明を申し上げたいと存じます。  第一点は婦人労働者の問題でございますが、特に最近のような雇用の事情でございまして、一方におきましては労働力が不足しておりますし、かたがた婦人におきましては、従来から比較的年齢の高い婦人につきましては雇用の場に出ますことが非常に困難でございました。したがいまして婦人につきましては、できるだけ適正な保護を得ながら、そして雇用の機会が守られるように、最近の問題といたしまして特に婦人労働力の有効活用という観点から、婦人労働力が十分に守られながら発揮されるような対策を講じていきたいと思っておるのでございます。それにつきまして、現在におきましては婦人少年問題審議会の委員の皆さまに、どういう労働の形において、また母性保護が守られながら、しかもその適正な能力を生かすことができるような方策としてはどういうことを配慮していったらよいかという点について御相談申し上げております。この委員の先生方のお力によりまして今後できるだけその方面において充実するような努力をさせていただきたいと思っております。また年少労働者におきましても最近の雇用を見ますと、たいへんに進学率がふえておりますし、かたがた、年少者の不足で、事業場においてはたいへんお困りのよりにお見受けいたします。年少者につきましては就業の困難という状態はないのでございますが、将来の若い労働力といたしまして、十分にりっぱな産業人に成長していただくことが就職後において大事な問題でございますので、婦人少年局といたしましては、就職をいたしました年少労働者に対しまして、十分に職場に定着をして能力が発揮できるように、労働保護の状態改善いたしますと同時に、また職場その他の社会環境を整えて満足して働けるような援助活動をいたしておるのでございます。一つの方策といたしましては、特に年少労働者に対して条件の比較的よくなかった中小企業に対しまして、年少労働の問題をよく理解をしていただき、かつ、社会のいろいろな施設を積極的に利用しながら状態改善していただくための推進力になるところの年少労働者福祉委員をお願いいたしまして、この方々の理解によって条件を改善していくことを進めております。  それから第二は、年少労働者の職場外の生活が十分に満足でありますように、その援助の意味におきまして勤労青少年ホームもできるだけつくっていただくようにお願いをいたしまして、余暇時間並びに職場外の生活が充実して、その中に労働力を養いながら、しかもかつ人格形成がその間においてできていくような援助の方策を進めておるのでございます。  それから第三には、これは今後の努力をいたしたいと思っているところでございますが、年少労働者がせっかく職場に就職いたしましても、今日においてはなかなか定着しにくいような事情にございますので、この定着を進めます一つの問題点として、なかなか事業場において年少者が発言しにくかったり、あるいはまた条件がよくなかったり、あるいは友人関係の問題などで悩みも多く、そのような悩みを打ち明けてそうして相談をしながら将来の人生設計にも積極的に援助のことばを与えて、そうして職場環境に適応することが可能になりますようにというような考え方におきまして、職場に相談施設を置いていただくことを社会に理解をしていただくような活動を進めさせていただきたいと思っておるのでございます。  当面そのようなことに努力をいたしております。
  41. 大原亨

    大原委員 各局長にそれぞれ質問いたしたいのですが、私は時間の関係労働大臣にかいつまんで質問したい点は、たとえば身体障害者の雇用促進法をつくった。これはつくっただけで一つも効果がなかったと思うのですよ。それからいまの婦人少年局長の話で、新しい分野雇用構造が変わってきている。こういう実情の中から、婦人労働の適職に応ずるような適材通所というか、それからその中で生活が安定できるような、そういう施策等についても、一定の職を限ってどうとかいうようなことを婦人少年関係で言う意思は私はないけれども、とにかくそういうことは一つの大きな労働問題、雇用問題における問題だ。そこで身体障害者の雇用促進法にいたしましても、官庁自体が、労働省自体がやっていますか。労働省自体が何%は身体障害者からとるのだ、仕事を選択して、そしてこれだけは雇用を保証するのだ、こういうようなことをやっておりますか。
  42. 有馬元治

    有馬政府委員 私のところ自体は責任率をオーバーしております。
  43. 大原亨

    大原委員 どのくらいオーバーしておりますか。
  44. 有馬元治

    有馬政府委員 すぐ調べて後ほど申し上げます。
  45. 大原亨

    大原委員 身体障害者雇用促進法の法律的な影響等についてはあらためて私は質問したい。これは政府提出法律案にはないけれども雇用問題としてはきわめて大切な問題である。これはやろうと思えばできる問題なんですよ。法律をつくっておいて、ILOその他に国際的に弁解しようとするだけで肉質が伴わなければ日本雇用政策はないということになる。外国では資本主義の国でも法的な規制力を持たしてやっておるわけですから、これはひとつ問題点を指摘しておきます。この点はあらためて私どもといたしましては労働大臣質問いたしたいと思うし、あるいはどういうふうにしてやるのだ、こういう点についても具体的に後の機会にお聞きしたいと思うのですが、その点について労働大臣見解を明らかにしていただきたい。
  46. 大橋武夫

    大橋国務大臣 非常に大切な御意見でございます。私どもも今後努力をいたします。
  47. 大原亨

    大原委員 この前の国会では、御承知のように職安法並びに緊急失対法の二つの法律案が非常に大きな問題になりました。私ども社会党がこの問題について重大であると考えるのは、失業者、半失業者の問題、中高年齢層の問題、雇用者の問題、そういう問題等について、日本においては最低賃金制や完全雇用政策社会保障政策、そういう近代的な国家においてはどこでもやらなければならぬ問題について、問題を総合的に考えて失業問題を解決すべきである、こういう点で私どもはこの問題を大きく取り上げまして、そして国会の論争に出したのであります。しかしながら御承知のような形でいわゆる失対関係二法案は通過をいたしたわけです。雇用情勢について、学卒あるいは中高年齢層等の断層あるいはその他のいろいろな問題についていままで若干議論をいたしてまいりましたが、そういう観点から考えてみまして、この問題はやはり依然として大きな問題だ。したがって、私は時間の関係で端的にこれから質問いたしますが、いわゆる職安法関係で、就職促進措置の申請件数、それからそのうち失業者として認定をした件数、そして法律に基づいてそれぞれの三つ——正確に言えば四つあろうが、それぞれのコース、法律にいう就職促進措置を進めておる件数、これの現在の段階における実態を発表していただきたい。
  48. 有馬元治

    有馬政府委員 一月二十日現在におきまして、申請件数が三千九百十一件でございます。そのうちで認定を行ないましたものが千七百三十六件でございます。さらに指示を具体的に行なった件数は九百三十三件でございます。指示の内容は五つのコースに分かれるわけでございますが、第一に長期職業訓練コースに指示をいたしましたものが百八十四件、それから短期訓練にも指示をいたしましたものが三百件、それから職場適応訓練に指示をいたしましたものが九十四件、それと職業講習に指示をいたしましたのが百四十一件、残りの二百十四件が就職指導でございます。
  49. 大原亨

    大原委員 そういう中で失対適格者として登録されたのは何名ですか。
  50. 有馬元治

    有馬政府委員 これは御承知のように昨年の十月一日から法律が施行になりまして、新しいいま申しましたような中高年齢層措置を開始したわけでありますが、原則としてはこの措置を受け終わってなおかつ就職ができなかった者について失対適格者として登録するわけでありますが、現在のところは、このコースを受け終わって失対事業に紹介をしたケースはまだございません。
  51. 大原亨

    大原委員 失対の現在の適格登録者は全部で何名ですか。それから昭和三十八年の四月では何名でしたか。
  52. 有馬元治

    有馬政府委員 三十八年の四月におきましては三十二万六千二百六十一名、最近の一番新しい十二月におきましては三十万八千二百六十九名でございます。
  53. 大原亨

    大原委員 本年度の予算定員はざっと十八万幾らだったのですが、それは登録者を年度平均何名というふうに考えてありますか。予算定員の基礎です。
  54. 有馬元治

    有馬政府委員 失対の対象者数を年間平均におきまして二十七万七千名と見込んでおります。したがってそれを前提といたしまして収容者数は十九万四千。その内訳を申しますと、特別失対が八千、失対事業が十八万六千、合計十九万四千、こう見込んでおります。
  55. 大原亨

    大原委員 そうすると平均して二十七万人に減るということなんですね。年度の最終には何名になりますか。大体の予想でよろしいから……。
  56. 有馬元治

    有馬政府委員 三十九年度の当初が二十九万五千と、三十万をちょっと割ったところを想定しておりまして、年間平均が、先ほど申しましたように、二十七万七千という想定でございますので、年度末におきましては二十六万見当を予定しております。
  57. 大原亨

    大原委員 いままで職安の窓口を通して失対の登録者をやっておりましたときには、いわゆる失対に対する希望者は、相当わんさあったわけです。念のために聞きますが、去年、昭和三十八年四月当時のいわゆる職安の失対の窓口で失対に働きたいというふうに申し出た希望者は何名ですか。
  58. 有馬元治

    有馬政府委員 希望者の数字は的確につかんでおりませんが、昨年の四月現在におきまして、日雇い登録者の総数は四十六万七千人でございます。そのうち、先ほど申しましたように、四月現在におきまして失対適格者として登録されている者が三十二万六千二百六十一名、こういうことになっております。
  59. 大原亨

    大原委員 大臣、私がいまここで演説したのをお聞きでわかるように、十月に実施されたわけですけれども、就職促進措置によってまだ進行中であって、手続きが完了していないというふうなことを言えば、言いのがれはあるでしょうけれども、登録者が一人もないということで、出るほうだけはどんどん出ていくことを予想している。日雇い登録者、失対に働きたいという人は、社会的にいろいろな事情を考えてみても、よほどせっぱ詰まってバーとかキャバレーとか、そんなところへいくよりも、やはり働きたいというまじめな考え方や切実な立場の人が多いわけです。そういうことから考えてみましても、いままでの私の質疑応答の中で数字を明らかにしているように、登録者や希望者というものは、事実上雇用情勢がそんなに急転回して改善されているというふうなことは、いままでの討論の中ではっきりしているように、そういうことはあり得ないのではないか。新たな登録者が十月以降新しい法律によって一人も出てこないというふうなことは、これは行政一つの意図を持ってやっておるのか、あるいは行政上の怠慢であるのか、机の上で仕事をしているのか、非常に怠慢である。私はその二つに一つであると考えますが、どういうふうにお考えになりますか。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは特にそういう意図を持ってやっておるということはございませんし、また所管の連中も一生懸命法の趣旨を理解し、これを適正に運用したいという熱意を持って相当張り切っておりますので、怠慢であるはずもないと思っております。結局、雇用情勢がああいうふうになっておる結果、偶然にも御指摘のようなことになっておるにすぎないと思います。
  61. 大原亨

    大原委員 大臣、こういうことになっておるんですよ。職安の窓口で失業者として認定されるものの数は、いまの御答弁によりましても、千七百三十六件あるわけですよ。失業者として認定したものをそこでそれぞれのコースへ分けるわけです。分けるわけですけれども、就職指導をするということが二百十四件になって相当多数占めておりますが、それら全体の訓練その他を考えあわせてみて、一件もないというふうなことは、時間的に見てもいかがなものですか。実際上の地域の現場の問題についてお話をすればもう少しはっきりするんですけれども、これは行政としては怠慢じゃないですか。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 具体的に各職業安定所の事務の実情を私一々調べたわけではございませんけれども、職務怠慢というようなことがあるとは思いません。みななかなか熱心にやっております。  ただ、今度の法律が、御承知のように希望者を直ちに失対事業に編入するということだけでなく、事前の促進措置を講ずるというたてまえになっておりますので、その原則に従って事務は処理されておると思うのであります。むろん地区によりましては、例外的に失対に回すという措置もしなければならぬことになっておりますが、たまたまそういう地区においてそうした事実が行なわれておらない。おそらくそれらについては一応職業指導とかあるいは適応訓練とか、そういう便宜的措置が講ぜられておると思うのであります。また、そうした措置を講ずることが当人のためにもいいという判断を現地でいたした結果だと思います。
  63. 大原亨

    大原委員 失業多発地帯では、どういう法律改正があって、どういう規定がある、その法律はどういうふうに運用されているか、その点について局長のほうから答弁してください。
  64. 有馬元治

    有馬政府委員 失業多発地帯につきましては、御承知のように今度の改正法によりまして、緊急失対法第十条の第十三項の規定が設けられまして、この規定によりまして指定地域を指定いたしますると、この地域については、促進措置を受け終わらなくても失対事業に直入できる、こういう特別措置を講じておるわけでございます。
  65. 大原亨

    大原委員 それでは、その法律に従いまして、失業多発地帯については直接に失対に働くという、こういう措置はとられておりますか。
  66. 有馬元治

    有馬政府委員 現在十条三項の措置は法的にはとっておりますが、この措置を設けました理由は、御承知のように、就職することが著しく困難な地域ということで、就職促進の措置を実施するには、こちら側の人的な面あるいは職業訓練等の物的な施設の面、こういった人的、物的両方の能力の限界等も考えて、促進措置を受け終わらなくても失対事業に入れる、こういうことでつくられたわけでございますが、現在までのところ、そういった人的、物的能力の限界を越えて、就職することが著しく困難であるという事態には、幸いにしてぶつかっておりませんので、この地域の指定によって特例的に失対事業に流入するという事例が現在までのところ幸いにしてないわけでございます。
  67. 大原亨

    大原委員 直接に失対に登録していく、ストレートでやっていくという、そういう措置がいろいろと議論になってそういう法律をつくったわけです。未解放部落の問題もあるけれども、つくったわけです。それを全部やはり同じように、職安の窓口においてコースが全部終わらなければ登録しない、登録は一件もない、こういうことはいかがですか。
  68. 有馬元治

    有馬政府委員 この制度は、あくまで現地の実情によりまして、安定所長から知事を経由して、そういう必要の場合には大臣に認定を仰ぎにくる手続になっておりますが、私どものほうでこれを締めたりゆるめたりというふうな操作は全然やっておりませんが、現地の実情からいたしまして、現在までのところはそういった手続申請がなされておりませんのて、現地において一般的な就職促進措置のペースで具体的な失業問題に対処をしておる、こういうふうに私ども情勢判断をしております。
  69. 大原亨

    大原委員 いままで議論になったことはこういうことですよ。とにかく働けるところで、失対で働きたい。そして働きながら就職の指導もできるじゃないか、こういう措置もあるのだから、失業多発地帯においては、たとえば、夕張とかあるいは北九州とか炭鉱地帯等におきましては、ごっそり山が倒れて失業するわけだから、そうすると生活保護にいく以外にないということです。そういうところにおいてはストレートで入るということを適用しながら、失対については必要に応じて、雇用情勢に応じて、家族をかかえてほうぼうへ移転するわけにもいかぬから、働く場所を与えよう、こういうことだ。そういうふうに失対で働けば、今度は適用基準もなくなったし、内職をしても生活保護が引かれるということもないから、とにかくみんなが働いてやろう。そういうところに国が憲法二十七条に基づいて労働権を保障しているわけです。職場を与えるという失対事業が起きているわけですから、だからその趣旨からいうと、いままでの議論からいうと、あなたのほうでかってにそれを曲げて解釈して、そして一定の段階、コースを経なければ、しかも相当の日時がたっておるのに失業の認定をしながら実際には失対の登録にまで持っていかない、そういうようなことは法律違反ですよ。この点いかがですか。
  70. 大橋武夫

    大橋国務大臣 問題は、緊急失業対策法第十条第三項によって指定された地域において、促進措置を講ずることなく直ちに失対事業に従事させる措置をとることの意味だと思うのでございます。大原さんのお話を伺っておりますると、さような土地においてはできるだけ、就職促進措置を講ずることなく、直ちに失業対策事業に投入することが法律の精神である、こういうふうにちょっと伺えるような御発言であったのでございまするが、私どもは、この規定のできました沿革から考えまして、従来の失業対策事業の実績等から見まして、できるだけ失業対策事業にかえて、失業者に対しては就職促進措置を講ずることが理想的なんだ、ただ多発地帯等においては、職業安定機関の能力並びにこれを受け入れる職場等の関係から見て、就職促進措置を講じたいことはやまやまであるが、講じたからといって就職のために必ず好結果を得るという保証がない場合もあるだろう、また安定機関の能力から見てそういう促進措置を講じ得ない場合もあるであろう、そういう場合には、まことに策の下なるものであるけれども、実情やむを得ず直ちに失業対策事業に従事させるということにしなければならぬ、そういう意味でこの規定ができたわけなのでございます。したがいまして、私どもは、この規定のありますこと、またこの規定の必要であることは重々承知いたしておりまするが、その該当地域におきましても、職業安定機関の能力の許す限り職場開拓によって一般の就職口を探してやるということが、失業問題の根本的な解決をはかるゆえんである、こう考えまして、でき得る限り、能力の許す限り、また相手が適当な能力を持っておりまする限り促進措置をできるだけ講ずることを主眼として、やむを得ざる場合には直ちに失対事業に投入するようにしよう、こういう方針でこの規定を運営いたしておるのでございます。先ほど局長から申し上げた趣旨は、そういう趣旨に御理解いただきたいり存じます。
  71. 大原亨

    大原委員 説明としてはすらすらと、頭のいい答弁だけれども、しかしそれは十条を設けた趣旨が結果的に死ぬような答弁じゃないですか。それからあなたは、やはり親切に就職指導をやることが本人のためだと言われる。そのことはわかるのですよ。わかりますが、いまの人的条件とそして労働者の職業指導、紹介についての能力から考えてみて、結局は窓口で閉ざすことになりはせぬか。そういう場合には、失業多発地帯についてはストレートで入れて、それで働く場所を与える、明らかにそういう措置をしても、こんなにたくさんの人がどこへも行けそうもない。特に中高年齢層の問題についての議論をしたわけだけれども、そういう点について分析をするならば、もう少し親切な方法があるべきじゃないか。その点について私は、そういう手続は手続として、絶対にこのことを排除している文章とは思わぬけれども、その点で手続は手続とするけれでも、少なくともこの前私ども立ち会ったときにもいろいろ議論されたけれども、とにかく時間を切って、行政上の処置についてはすみやかにやる。大体安定した職場を、そんなに簡単に、現在家族をかかえた人々として移動して、住宅その他の問題がある中で、なかなかできない。だからそれを登録までの時間を区切って、大体この範囲くらいまでには手続を完了してやるべきだ、こういう方針を示さなければ、あの失業多発地帯における例外規定も、特に未解放部落そういうところにおいては実情に即してストレートで失対事業において働いてもらうんだ、こういうことをしばしば政府が繰り返したけれども、そのことが死んでしまうのではないか。手続をもう少し早くやって、そしてそれについては時間を切るべきじゃないか。こういう点について大臣いかがですか。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私はこの法の精神は先ほど申し上げたとおりで誤りないと思っております。したがいまして、現在において直ちに失対事業に従事させるような実例があらわれていないということは、幸いにしていわゆる失業者、そして失対事業に従いたいという申し出の数が、まだ職業安定機関が促進措置によって処理できる能力の範囲内にとどまっておることだと思うのでございまして、これは雇用情勢から申しましてまことにけっこうなことではないか、こう思うのでございます。ただしかし、たくさんの職業安定機関でございまするから、末端において法の趣旨を誤解し、促進措置を講ずるところの能力以上の申し出があった場合には、それらは一切締め出しをするんだというような扱いをしているところがあるいはあるかもしれません。私どもは万々さような間違いはないと確信いたしておりますが、そこでもしそういう実例があるようでございましたならば、これはとんだ間違いでございまして、これはお説のとおり、促進措置の能力以上の申し出を処理するためには直ちに失対事業に回すという措置をすみやかに講ずべきだと思います。したがって、そういう、実例がございましたならば、御連絡をいただきまするならば、直ちに取り調べまして間違っておればこれを是正するに決してやぶさかではございません。
  73. 大原亨

    大原委員 最後ですが、未解放部落の問題はまたあらためて全体の問題で議論いたしますが、失業多発地帯その他、取り方がいろいろ議論になるのですが、ともかくも就職促進コースで進めていく場合に、実際の生活上の問題あるいは就職する見通しがないのに、じんぜん職安の窓口の人的なあるいは能力等の限界からできないことによって渋滞しているような問題、そういう問題等が実情の中で明らかになりましたならば、これについてはこれはすみやかに善処する、こういうふうに大臣はお答えになったというふうに考えてよろしいか。
  74. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおりでございます。
  75. 大原亨

    大原委員 私はまだ序論の序論くらいで、これからずっと質問を続けていこうと思いました。特にあれほど大きな問題になりましたので、たくさんの問題があるわけです。これをめぐりまして、やはり事実上政府雇用の場所を与えて、賃金政策の中においても大きなウェートを占めておるわけです。社会保障にも関係してきておる問題です。したがって、私はこの問題につきましては十分に時間をかけまして議論したいと思いましたが、せっかく防衛庁長官御出席になっていただいて、御病気ということですから、私はきょうは途中で質問を保留いたしまして、これは引き続いて議論する、質問する、そういうような質問ができない限りは断じて法案等についても審議することはできない。当面をいたしておりまする政治問題で重大問題は、与野党を問わず十分議論して法律案をやるということがやはり国会の責任であるし、あるいはその法律をほんとうに生かしていく道である、こういうふうに私どもは考えます。したがって、私はそういう問題はたくさんあるという点につきましては問題を保留いたしまして、私の質問は一応きょうは終わることにいたします。
  76. 田口長治郎

    ○田口委員長 河野正君。
  77. 河野正

    ○河野(正)委員 午前中に引き続きまして、私も労働雇用の点につきまして若干お尋ねを申し上げてみたいと考えております。特にきょうは駐留軍労働者雇用について触れてみたいと思いますが、防衛庁長官は健康を害されておられますにもかかわりませず御出席をいただきましたので、私も簡潔に論議を進めてまいりたいと考えております。  午前中からいろいろ論議が繰り返されましたように、中高年の労働力と低賃金問題等が非常に密接な関連のあることが特に指摘をされてまいりました。その点と、特に基地で働きます駐留軍労働者との関係というものが非常に重大な関係にもございますので、そういう意味で私もこの点を強く取り上げてまいりたいと考えております。  御承知のように、昨年の秋アメリカのマクナマラ国防長官によりまして、ドル防衛あるいはまた経費の節減を目的として、米軍基地施設の大量閉鎖というものが発表されましたことは御案内のとおりでございます。このことが基地労働者あるいはまた基地周辺の住民に及ぼしまする影響というものが非常に重大でございますので、そういう点を当時私どもも憂慮いたしまして、実は当委員会におきましてもさっそくこの問題を取り上げてまいったのでございます。しかし、当時はアメリカ側の強い要請等もあって、その全貌を明らかにすることができないということでございまして、私どももその点をきわめて遺憾に感じましたが、同時にまた、この問題と関連いたしまする基地労働者あるいは周辺の住民もそれぞれその全貌というものが明らかにされなかったために、非常に不安を感じてまいったというのがその実情でございます。ところが十二月三十一日、日米共同発表という形式によりまして、実は大量整理というものがそれぞれ発表をされるというような事態が生まれてまいりました。そこで私はこの問題はいま申し上げますように、基地で働きまする労働者にとりましても、基地周辺におりまする住民にとりましても、きわめて重大な影響を持つわけでございますし、いま私が指摘申し上げましたように、すでに十二月三十一日におきましては、日米両国間の共同声明という形で発表されたわけでございまするから、この際その全貌を具体的にひとつお示しいただきたい、かように考えます。
  78. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 昨年の本衆議院における委員会におきまして、実は日米交渉中であるために、まだ全貌は発表できないということを河野委員に答弁したのでございますが、いま御指摘のように合意が成立いたしまして、昨年の十二月三十一日に日米共同声明並びにアメリカ第五空軍の発表と相なったわけでございます。その骨子は、アメリカの在日空軍の配置転換の問題でございます。一つは、板付にありますF105戦闘機を、横田基地に三スコードロンを移す。それから三沢にあります戦闘機部隊は、従来の形を改めて、本国との交代制、いわゆるローテーションになる。立川の航空輸送団は本国に引き上げる、これが大体三つの米軍の配置転換の骨子でございます。
  79. 河野正

    ○河野(正)委員 大体いま長官から、その骨子については御発表願いましたけれども、私どもが一番憂慮し、また駐留軍労働者ないしは基地周辺の住民というものが一番不安に感じておりますのは、いま御報告を願いました骨子に基づいて、どういう形で人的な節減というものが行なわれていくか、そのことが地域の経済あるいはまた駐留軍労働者の解雇その他に大きな影響を持つわけでございます。そういう意味での御発表をお示しを願いたい。
  80. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 先般、衆議院本会議におきましても、ごく概略御報告申し上げた次第でございますが、今回の米軍の配置転換に伴います駐留軍関係労務者の整理、削減の問題が出てまいりました。私どもも絶えず米軍側と連絡しまして、その結果を待っておるわけでありますが、まだ最終的な結論には達しておりません。今日の段階におきましては、おおむね六千名削減されるのではないか、そのうち二千五百名が空軍関係でございます。ただ、よく御案内のとおりに、現在の欠員の問題、さらに将来の自己任意発意によるところの退職者の関係、こういう二点から実際に削減される、整理される実数は相当下回るのじゃないか、こう考えております。
  81. 河野正

    ○河野(正)委員 私どもが巷間伝うるところによって仄聞いたしますと、大体MLCあるいはIHA、これの両方を含めまして、大体八千人に及ぶ整理が行なわれるのではなかろうかというようなことを私ども承知をいたしておるわけでございます。  そこで、いま最終的な結論には到達しておらないということでございましたが、大体六千名程度ではなかろうかというふうな御説もございました。それではその六千名程度というものが、MLCを対象とする数字であるのか、あるいはまたIHA、諸機関労務者を含めての数字であるのか、それをもう一つこの際お示しをいただきたい。
  82. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 ただいま申し上げました六千名の整理は、MLCの関係でございます。
  83. 河野正

    ○河野(正)委員 基地でそれぞれ雇用されておりますのは、大臣も御案内のようにMLCのみではございません。ただ身分関係政府雇用という点がございますけれども、しかしこれは後ほど触れますけれども、MLC、すなわち政府雇用であるからといって、特別に雇用が安定しておるというものでもございません。でございますから、やはり基地が閉鎖される、あるいはまた基地の配転が行なわれる、そのために起こってくる事態だといたしますならば、MLCのみならず、IHAというものも当然対象として御検討願わなければならぬ、こういうふうに考えます。単にMLCが六千人である——巷間伝えられるところによれば、八千人だと言われておりますけれども、大きい数字を示すよりも小さい数字を示したほうが世論の反撃も少ないというようなことで、小さい数字を意識的にお示しになっても困るのでございまして、やはり政府としては飛地の閉鎖に基づいて出てきます整理人員については、それぞれ対策をお立ていただかなければならぬことでございますから、特に後ほど労働大臣にも御所見を伺いたいと思いますけれども、大量整理ということが今後労働省が検討いたします雇用安定法その他とも重大な関係を持ってまいりますから、そういう意味で、やはりIHAも含んでの数字というものをひとつここで明確にお示しをいただきたい。
  84. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 私どもは、いわば刺激を避けると申しますか、あるいは影響をおそれて数の下回ったものを申し上げておるわけではございません。事務的にいままでの米軍との交渉の結果、推定で大体六千名と申し上げたわけでありますが、なお御指摘のIHAのほうは、事務当局の大体の算定は数百ないし一千名前後ではないか、こういう判定をしておるわけであります。
  85. 河野正

    ○河野(正)委員 そういたしますと、今度の基地の縮小によって当然起こってまいります整理の対象というものは、MLCが概算して約一千名、それから諸機関労務者でございますIHAが大体一千名、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  86. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 大体そのとおりだと思いますが、先ほど申したとおり欠員、それから自己任意退職者、この数がまだはっきりつかめませんが、その数が出ますと、これは実数を下回るのではないか、そうわれわれは想定いたしております。
  87. 河野正

    ○河野(正)委員 そういたしますと、具体的に骨子というものが大体明確になったわけでございますから、たとえば福岡の板付基地ではF105戦闘機というものが移るということになりますと、板付ではどの程度削減されるのか、あるいはまた三沢ではどの程度削減されるのかそういうような各基地ごとにおきます整理者を大体総合してMLCが六千人、IHAが一千人というような数字になっておると思いますので、その内容について、ひとつこの際明らかにしていただきたい。
  88. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 具体的な内訳の推定については事務当局から申し上げます。
  89. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまのお尋ねの各基地別の整理見込みでございますが、実のところまだ明確な連絡に接しておりません。大きく申しますならば、空軍関係で二千五百という数字がございます。陸海関係で三千五百、大体陸海空似たような数字だと思いますが、そういうような数字を合わせまして六千という数字になります。  さらにこまかくなりますと、まだはっきりした最終的な数字を申し上げるわけではござませんが、一応話し合いなりあるいは私どもの検討なりの結果出ましたものでは空軍の二千五百のうちの二千ぐらいが板付ではないか、このように考えております。
  90. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、大体概要の数字というものが明らかになってまいりましたし、またそれぞれ各基地の性格なり今後の方針というものが、当然そういう点からも明確にされたというふうに私どもは理解をいたすわけでございます。そこで、実はすでに発表されました整理者の対象人員というのがあるわけです。すでに管理者側より発表された剰余人員というのが示されております。まあ示されておらないでも、すでに報道機関、マスコミによりまして大体この程度が整理ぎれるだろう、そういう数字もございます。そこで、いま防衛庁長官あるいは施設庁長官からそれぞれ空軍、陸海軍に対しまする整理者人員、それから基地におきましては、板付のごときは大体二千人というふうな数字が示されて、今後の基地のあり方というものがこれで明確にされたわけですから、やはりいまさみだれ式に発表され、また予想されておりまするそれぞれの整理者というものも当然いまの示されました整理者と同一に取り扱われる。たとえば、板付では二千名が整理されるということでございますなら、は、その二千名の中に——これは板付の場合は対象になっておりませんけれども、たとえば、千歳では三月に三十三名整理、あるいはジョンソン基地では百六名、横田では二月に百二十五名、それから大きいところでは相模が三月に二百名、現在こういうように発表されておりまする余剰人員、これがこの大量整理の中に含まれておるのかどうか、あるいはまた別個だとするならば、私どもはまた別ないろいろ要望等もございます。その辺の事情がどういう事情であるのか、ひとつお答えを願いたい。
  91. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまお示しの、各基地におけるこの三月ごろまでの整理の予告があったというような数字でございますが、これは正確には、いまお話しの数字がそのとおりであるかどうかよく存じませんけれども、私ども概数といたしましては、この一月から三月までの間に約八百名ぐらい整理該当者が出るのではないかと考えております。この数字が今回の大量整理の内数であるかどうかというようなお尋ねであったかと思うのでありますが、この点につきましては、内数になる者もありまたそうでない者もあろうが、この点は御承知のように、ここ数年、年年干ないし二千というものがいろいろな合理化その他の見地から減ってきておるわけでございますから、そういうものもあろうかと思います。八百というものは例年の例に比べますと多いのであります。そういう意味で、新しい事態に即応するものも入っているだろうということは考えられますが、全部がそうであると言い切るのも少しむずかしいかと思います。
  92. 河野正

    ○河野(正)委員 実は私ども承知をいたしておりまする数字を見ますると、大体この一月から六月まで、すでに発表されたもの、あるいはまた報道機関、マスコミ関係で予想されまする数字というものは、いま施設庁長官から発表になった一千名を大きくこえて、大体二千四百九十名というふうな数字も出てまいっております。もちろん報道機関、マスコミ等によりまする予想の数字でございますから、それが的確であるかどうかということには若干の疑問もございますけれども、一応いま申し上げるように、二千四百九十名という膨大な整理者が出るという予想でございます。その中身が今度の基地閉鎖に基づく大量解雇、すなわち六千ということでございますけれども、その中の内数の者もあるしそうでない者もあるというような御所見でもあったわけですが、そこで私どもも今度の大量整理によって、また大幅な基地の配転その他によって大体今後の基地の方向というものが定義づけられるというように理解するわけです。そういたしますると、いままですでに発表されました余剰人員と申しますか対象人員の解雇整理というものは当然この六月——アメリカの会計年度末でございまする六月まで延期することを強く要請する必要がある。そしてアメリカのほうも一応この七月から新年度でありますから、新年度までに大体そういう問題を解決するという方針等でもございましょうから、そこで私は、整理するならばその時点で整理すべきであるというように考える。もちろんさっきの長官の発表によりますると、一千名の中身の中に大量整理の内数もあるということでございますから、一千名の中のどの程度かわかりませんけれども、また私ども承知いたしておりまする二千四百九十名という数字の中のどの程度かわかりませんけれども、要するに大量整理の中に含まれておらない整理対象者、こういう方々もひとつこの大量整理の時点まで整理を延ばす必要がある。大体大量整理が終わると今後の基地のあり方というものが固定化するだろうというのが常識でございますから、そういう判断をいたしますると、私は当然大量整理以前の余剰人員の整理の時期というものはその時点に合わすべきであろう、こういうように思うわけでございまするが、その点いかがですか。
  93. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 配置転換の問題あるいは本国に撤退するというような問題につきまして、実はどのくらいの機数あるいはどのくらいの所要兵員が具体的にいつ、どの地点にどこから行くかというようなことをいろいろいま打診中でありまして、アメリカもまだ具体的な計画もないようでございます。大体六月末日を一応のめどとしてやる。したがって、これに伴う労働者の削減計画を御指摘のようにまとめてひとつ延期して、撤退の終期まで保留しておいて、その間においてやればいいじゃないかという御意見もございますが、先方の計画自体もまだこまかい点まで具体性がございませんので、一応御参考の御意見として承っておきます。
  94. 河野正

    ○河野(正)委員 その点は最終的に結論に到達しておりませんし、また個人的にどの人が対象かという点につきましても、大量整理とさみだれ程度とダブっている点もあろうかと思います。ですから私どもも、生活権の問題等がございますから、いま申し上げますように大量整理の時点に合わして整理が行なわれるようにできるだけ努力するということをお考え願いたいし、その点に対してぜひひとつ努力願わなければならぬと思いますので、御努力願えまするかどうか、その辺の御所見もこの際承っておきたいと思います。
  95. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 全部まとめていわば撤退の終末の時期に合わせ得るかどうか、これは私どもはっきり申し上げられませんが、私どもとしては、一人でも犠牲を少なくしたいという方針には全然同感でございます。その線で検討させていただきたいと思います。
  96. 河野正

    ○河野(正)委員 いずれにいたしましてもMLCに対します六千名の大量整理、それにIHAの一千名近い整理、それと若干関連する者もあるし、関連しないところの整理者もある、こういう多数の整理者が出るわけでございます。したがって私ども、この大量整理という現実のきびしい事態に対しましては、何らかの強力な雇用安定方策というものが立てられなければならぬということでございます。この点は、いずれ後ほどまた突っ込んで労働大臣にいろいろお尋ねをいたしたいと思いますけれども、いずれにいたしましてもこれほどの大量整理者が出てまいるわけでございますし、われわれはこの際、この大量整理を契機として、いわば駐留軍労働者雇用安定方策に対しまする明確な方針というものを立ててもらわなければならぬ。こうしないと、残った基地の労務者というものも常に不安を感じなければならぬということでありますから、この際、駐留軍労働者雇用安定方策に対しまする明確な方針というものをぜひお立て願わなければならぬ。この点は、労働大臣の方針とも関連してまいりますから後ほどお伺いしたいと思いますけれども、一応防衛庁、長官からも、長いことお引きとめするわけではありませんから、そういう御所信につきましてもひとつこの際承っておきたいと思います。
  97. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 これもよく御案内のとおりに、従来、地方駐留軍関係離職者等対策協議会が総理府の中に設置されております。さらに、法的には駐留軍関係離職者等臨時措置法、これは法的にも中核があって、協議会が中心となり、関係の各省が寄り寄り集まりまして具対的に対策を練って、また実施をしておるというわけであります。御指摘のように、何といいましても職場の性格から申して、安定性がないということはいなめないと思います。たしか社会党のほうでも雇用安定法案を御提出になりましたが、御趣旨につきましては私どもも全く同感でございます。ただ問題は、あの法文の中に、解雇制限、その他米軍の労務者というむずかしい条件から考えて、直ちに私どもとしては同意できない点があるわけでございますから、所管は労働省でありますが、われわれとしても大きな関係がありますので、今後とも十分連絡をとりながら検討をし、また実際にいい方向、実績のあがる方向に努力してまいる考えでございます。
  98. 河野正

    ○河野(正)委員 この安定雇用という問題の中で、駐留軍労働者と一般労働者と異なる点は、一般の場合には、その企業で永久に固定化していくということが安定雇用だと思うのです。ところが駐留軍の労働者の場合は、むしろ現在の職場におるというよりも平和産業のほうに移っていく、そしてそこに安定雇用を求めるというのが、駐留軍労働者雇用安定方策だと私は思う。この辺が、一般企業の場合と駐留軍労働者の場合には、安定雇用といいましても本質的に違ってくる、こういうように考えるわけです。そこで、この駐留軍労働者の場合の安定雇用対策として、再雇用方策というものを立てていくことが当然安定雇用基本方策でなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。そういう意味社会党雇用安定法を考えて、今度の国会の中でいろいろ御審議を願う、そういう方針を決定いたしておるわけでありますが、幸いにして長官も、具体的な問題は別としてもその方向については御同意を願いましたので、さらにひとつ、一般の企業の場合の安定雇用方策と駐留軍労働者の場合は本質的に異なりますので、そういう点を十分頭に入れながら今後とも一格段の御協力をいただきたい、かように考えます。  そこで、この安定雇用政策につきましては、後ほど労働大臣ともいろいろと論議をかわしたいと思いますし、長官たまたま健康を害されておりますので、具体的な、いま聞いておかなければならぬ点に若干しぼってお伺いしておきたいと思います。  その第一は、いよいよ職場を離れるわけでございますから、その際問題となります点は、再雇用の問題もございましょうけれども、その点は後ほど触れるとして、退職手当の問題、それから特別給付金の問題、こういうことが、防衛庁としては当面して一番大きな問題になってくるだろうと思います。そこで、この退職手当の点については大幅に増額をしてほしい、特に再雇用の面は中高年齢層で、平均年齢は四十三歳というようなことで、炭鉱離職者よりもさらに一そう悪条件でもありますので、やはり退職手当の問題については非常に重大な影響がございます。  そこで、この点についてはいろいろ御努力を願っておる点もございますが、しかしながら、一般の企業の退職手当と比較をして非常に問題になる点もございます。もちろん増額の問題もございますし、それから自己退職の場合には全額支給されないという問題等もございます。こういう点についていままで私どもお願いしてまいりましたし、また米軍側とも御交渉なさったわけでございますので、その間の経緯についてこの際承っておきたいと思います。
  99. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 昨年九月末、アメリカから在日空軍配置転換について申し入れがありましたので、私ども関係者集まりまして、わが国としての提案を三ヵ条いたしました。その一つが、いま御指摘の退職手当その他の問題であります。幸いにベースアップによります遡及の問題について、ようやくアメリカ側も承諾しまして解決しましたが、退職手当の増額につきましては、いまだにアメリカ側としては同意いたしておりません。しかし、最終的の共同声明の場合にも、実は文書をもって私の名前で、退職手当問題について今後ともわれわれは増額交渉をする、アメリカ側の回答は不満足である、明確にその点は今後の交渉の議題にするということを留保いたしまして、これは財源その他から考えまして私は可能だと思うので、今後何とかいたしたいと考えております。  なお、特別給付金は、三十九年度予算が成立した場合には、四月からそれぞれ五千円、一万円、一万五千円、三段階に五千円ずつ増額するという案を予算に組みまして、御審議を願っておるわけでございます。これは組合の要求とはだいぶ離れておりますが、増額に一歩踏み出したことを御理解いただきたいと思うのであります。  なお、この給付金の問題につきましては、この席で申し上げてどうかと思いますが、私どもは大蔵省その他といま折衝いたしまして、予算が成立した場合に四月から増額支給されるのはけっこうであるが、できれば少しさかのぼって何とか手当てできないか。臨時措置法に基づく政令を改正すれば、法的には可能でございます。しかし、大蔵省その他、なかなか難がございまして話はまとまっておりませんが、いませっかく努力中でございます。
  100. 河野正

    ○河野(正)委員 いま長官から、退職手当と特別給付金の両面の問題についてのお答えがございましたけれども、それを整理する意味において、まず退職手当の問題について若干重ねてお伺いしておきたいと思うのでございます。  それは、いままでの制度によりますと問題が二つございます。一つは額の問題、もう一つはこの制度、すなわち自己退職については全額もらえないという問題、これが若干再雇用をはばむ原因にもなっておりますし、そういう意味からも、自己退職に対して全額支給しないということはかなり問題があろうと思います。その二つの問題があるわけでございますが、その第一の問題も各段階があって、二年から五年までは一・三、五年から七年までは一・五、七年以上は一・七で頭打ちでございます。ところが、御承知のように昭和二十七年の四月に一応占領が終わったということで、それまでの退職金は精算がされた。ところがその後すでに十年以上経過をいたしまして、そして今日、十年以上のいわゆる長期勤続者というものがかなりおられる。ところが、その長期勤続者に対しましては、七年以上というものは一切一・七で頭打ちでございますから非常に不利を招く。それから、もちろん今日まで、退職手当の問題等についてはアメリカ側といろいろ交渉の経緯がございますが、その際、勤続年数の少ない方々については公務員に比べてかなり有利だというようなことで、長期勤続者の問題が非常に軽視されてきたといういきさつ等もあるようであります。ところが御案内のように、駐留軍労働者の場合には、何年つとめましても、別に職階給が上がるわけではございませんので、十年つとめようが労務者は労務者です。一般の企業の場合は、長年つとめますと係長になり、課長補佐になり、あるいは課長になるというように、職階制に基づきまして昇進をするという道もあるわけでございますけれども、駐留軍労務者の場合には、十年つとめようが十五年つとめようが、労務者は労務者、幾らまじめに勤務いたしましても労務者は労務者である。ところが一方におきましては、七年以上何年つとめましても退職手当というものは一・七で頭打ち、こういうような一つの大きな矛盾がございます。もちろん、いま申し上げましたように、短期勤続者の場合は国家公務員と比べて非常に有利だというようなことで、今日までこの退職手当ての交渉というものが推移してまいったといたしましても、いま申し上げますように、今日では長期勤続者というものが非常に多いわけであります。しかもその長期勤続者というものは、非常にまじめに長年つとめられた、ある意味におきましては基地における功労者であるが、そういう方が非常に不利な条件に置かれているというようなことでございますから、そういう点についても、これは当然大幅な改正というものが行なわれなければならぬ。単に増額してほしいというようなことでなくて、内部的にそういう大きな矛盾、不合理があるわけでございますから、そういう不合理については、この際大幅に改善する必要があろうと私どもは考えるわけです。そこで、この退職手当の問題についてはなお交渉の余地がある、増額については可能性があるのだ、その点はけっこうでございますけれども、いま申し上げますような内部的な矛盾、そういう点についても当然検討されなければならぬわけでございますが、そういう点についてはどのような方針で臨んでまいっておられますか、この際、ひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  101. 小野裕

    ○小野政府委員 重要な問題でございますけれども、いろいろ折衝にあたりまして技術的な問題も入っておりますので、私から申し上げておきます。  退職手当の改善につきまして、かねてから米軍と折衝をしてきておるわけでありますが、非常に渋いということは御承知のとおりでございます。昨年の夏以降におきまして、私ども米軍側と折衝いたしました最終的な詰めでいろいろこちら側は要求したわけでございますが、なかなか思うようにまいりません。最後にぜひこれだけはということで努力いたしましたのは、十年以上勤続で退職される方について、十年以上こえる分につきまして率を上げるという一点で非常に狭くなったのでございます。しかしながら、私どもとしては、いろいろの交渉の経過から見まして、それだけを最後の問題にいたしまして折衝してまいったわけでございますが、これに対してまだ先方の同意は得られずにおる状況でございます。
  102. 河野正

    ○河野(正)委員 そうしますと、退職手当の増額というものは、具体的に分けますと、十年以上の長期勤続者に対しては率を上げていく、そのことがこの退職手当の増額について可能性がある、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  103. 小野裕

    ○小野政府委員 大体そういうことでございます。ただ私、誤解があるといけませんので、こまかいことでありますから申し上げますが、十年以上の場合に十年をこえる年数について色をつける、こういうことになっております。
  104. 河野正

    ○河野(正)委員 ところが、これは後ほどの特別給付金とも関連をしてくるわけですけれども、実は退職手当が十分支給されるという場合の特別給付金の性格と、それから退職手当が非常に寡少で不十分な場合の特別給付金の性格とは、おのずから違ってくると思うのです。ですから、退職手当はなるほどアメリカ、それから特別給付金の場合は日本政府でございますけれども、この二つの問題は、常に車の両輪のごとき性格を持つというように私どもは理解をするわけです。そこで、退職手当というものが非常に少なければ、当然特別給付金といりものがやはり重点的な手当制度にならなければならぬ。ところが、今日までの特別給付金の性格を見てまいりますと、これは国会の席上におきましても長官から明らかにされましたけれども、これは立ち上がり資金じゃないのだ、性格的に申し上げますと一つの見舞い金だ、こういうことで終始をしてまいっております。もちろん、この特別措置法ができます際の論議の中でもそういう論議が行なわれたかと思いますけれども、しかしながら、この退職手当というものが十分に支給される場合には、日本政府がお見舞い金だという意味で特別給付金をお考えになっても、それは私ども全然反対するところではございませんけれども、退職手当のほうはちょっぴりもらう、日本政府から支給するところの給付金もまたお見舞い金だ、こういうことになりますと、駐留軍労働者、特に退職する方々というものは全く立つ瀬がないと思うのです。ですから私は、この退職手当てを考える場合には、常に特別給付金の性格というものをあわせ考えながらこの問題の折衝に当たっていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。そういう意味から申し上げますと、先ほどのお話でございませんけれども、特別給付金の問題は、五千円が一万円になり、二万五千円が今度二万円になるというようなことで、五千円ずつアップされるということでございますが、そういうことでございますと、私はやはり、この退職手当というものはもっとお考え願わなければならぬ問題ではなかろうかと思う。これがどうしてもアメリカとの交渉の中で渋いということでありますならば、今度は特別給付金の大幅な増額という形でそれをカバーしてもらわなければならぬ、こういうふうに私は考えておるわけでございますが、そういう私の考えに対しまして、どういうふうに長官はお考え願っておりますか、これは今後の問題等もございますから、ぜひひとつこの際、率直にお気持ちをお聞かせいただきたい。
  105. 小野裕

    ○小野政府委員 米軍のほうから支給される——支給は私のほうでございますけれども、終局的には米軍の負担になる退職手当と政府国庫から出ます特別給付金のかね合いで考えろというお話でございます。私どもも努力しておりますが、特に基地労務者の方々の退職の際の処遇としては、できるだけよくして差し上げることが当然であるということは考えております。しかしながら、実際の問題といたしまして、やはり予算の問題になるわけでございますから、現在の退職手当の制度は、先生は非常に若いうちはいいかもしらぬが、古い人になると悪いとおっしゃいましたけれども、現在の制度は、民間の経営状態のいいところの方と比べますと、確かに低いかと思います。しかし、一般の公務員の退職手当と比べますならば、必ずしもそう悪いというようには考えておらないわけでございます。ただ、それだけですべてきまるものではございませんけれども、一応手当制度だけを考えますと、まだ多少色がついておるというようなことがございますので、米軍としてはなかなか承知をしないわけであります。そういうようなところから、私どももいまの段階におきましては、若干の手直しは要求しておりますけれども、全面的にいまの状態がどうにもならないものであるというようなことには考えていないわけでございます。できるだけいずれも前進させたい、改善したいという気持ちはございますけれども、そういうような認識を持っておる状況でございます。
  106. 河野正

    ○河野(正)委員 この退職手当の評価でございますけれども、これは駐留軍労務者の場合は金額オンリーという立場をとらざるを得ぬと思うのです。一般の公務員の場合、職階制等があって、長年まじめにつとめて、能力があればそれぞれ昇進をするという道も開かれております。ところが、駐留軍の場合は、いかに能力があって十年まじめにつとめましても、労務者であるという面でございますから、この場合に触れられるものは金だけしかないわけです。そういう場合の駐留軍労務者と、一般の場合の、まじめにつとめ、しかも能力があれば、どんどん階級というものが昇進をするという公務員とは、またおのずから見方というものが違っていかなければならぬと思うのです。しかも、この七年以上というものがいままで頭打ちであった。そういうような長期勤続者につきましては、必ずしも公務員と比べていいのだというような点もございません。ですから、その点は十分お考えを願いたいという点が一つでございます。  それから、政府国庫から支給いたしまする特別給付金の問題でございます。これは同じ法律に基づきまする問題でございますけれども、たとえば、これは先般の委員会におきましても取り上げてまいりましたが、電電公社の場合は、五年未満の勤続者で八ヵ月、それから五年以上の場合は十ヵ月というふうに法律改正が行なわれました。一例でございますけれども、電電公社の場合と比べますと、非常に大きな格差がある。同じ法律の中でもそういうような格差があるという点について、私どもは非常に矛盾を感じます。そういう点からも、私は、この退職手当の増額というものがなかなかアメリカとの交渉で渋いということでございますならば、やはり特別給付金の中で大いに御考慮を願うべき問題ではなかろうか、実は電電公社の一例を取り上げてまいりましても、そういう感じを強く持つわけです。でございますから、この点についてもひとつさらに格段の御努力を願わなければならぬというふうに考えるわけです。私が申し上げました点についてぜひ御同意を願いたいし、またその方向で御努力願わなければならぬわけでございますけれども、そういう点についての防衛庁長官の御所見もこの際ひとつ承っておきたいと存じます。
  107. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 退職手当の問題は、先ほどお答えしましたとおり、日米の話し合いとして今後も努力を当然続けます。  なお、御指摘の特別給付金でありますが、五千円ずつの増額というだけで私ども満足いたしておりません。これからもその増額についても努力をする方向でやりたいと思います。
  108. 河野正

    ○河野(正)委員 以上、当面する問題点若干についてお尋ねをいたしましたが、実はこの駐留軍労働者の問題がドル防衛を契機として非常に重大な事態を迎えておるわけで、雇用安定その他私ども非常に切実な要求があるわけです。しかし、長官も御健康を害しながら御出席をいただいておりますので、いま申し上げました諸点についてのみにとどめたいと思います。そこで、いま申し上げました点につきましては、さらに格段の御努力と御配慮をお願い申し上げたいということで、あとは御静養を願いたいと思います。いずれ防衛庁方面に対します質疑はあらためて行なわせていただくことにして、きょうは雇用対策についていろいろとお尋ねをいたしておるわけでございますから、そういう点と関連をしてひとつ労働大臣のほうにお尋ねをしてまいりたい、かように考えます。  駐留軍労働者の場合もそうでございましたが、やはり中高年労働者雇用というものが非常に窮屈だ。それから午前中、失対制度の問題等もいろいろ御論議がございましたが、いまの池田内閣雇用政策というものがどういう点を中心として推進されておるかということが、いま私がいろいろと御指摘を申し上げました駐留軍労働者の問題とも関連をいたしてまいりますので、特に労働大臣にも御所見を承っておきたいと思います。特に先に論議されました失対制度の問題を見てまいりましても、やはりいまの雇用政策というものが低貸金労働力を大量に送り出す方向日本雇用政策というものが推進をされつつある、そういうような感じを、われわれは残念でございますけれども、強く持つわけでございます。そこで、そういう基本的な雇用政策に対します所見もこの際大臣のほうから承っておきたいと思います。
  109. 大橋武夫

    大橋国務大臣 雇用政策といたしましては、申し上げるまでもなく、完全雇用ということを目標にいたしまて、すみやかに先進国に劣らない程度まで進むべきだ、こう思っております。そういう方向で努力をいたしておるのでございます。しかし申すまでもなく、完全雇用の達成につきましては、それにふさわしいだけの経済的な諸条件が必要でございまして、これは単に労働政策だけの問題でなく、国の経済全体の問題であることを考えなけれげなりません。したがって、労働省雇用対策といたしましては、与えられたる現在の条件の中で、できるだけ条件を改善しながら、目標に一歩一歩着実に前進するという姿勢をとるべきだと思っておるのでございます。特にかような見地からいたしまして、雇用政策の当面の重点と考えておりますものは、一つには中高年齢の労働者に対する対策であり、一つには不完全就業者の、取り扱いというものだと存じます。さらに数え上げれば、技能労働者の養成というような問題もあるのでございます。これれらの養成を通じまして、高能率、高賃金目標とし、ことに低賃金の解消をはかることを雇用対策の目標に進んでまいりたい、かように思っております。
  110. 河野正

    ○河野(正)委員 きょうは雇用政策を根本的に堀り下げて論議いたしますのが私の目的ではないわけでございますから、すべて駐留軍労働者雇用問題と関連する形でお伺いをしてまいりたいと考えております。  いま、大臣のほうからも完全雇用で努力していきたいというふうなお答えもございました。ところが今日の労働力の事情を見てまいりましても、午前中の委員会でもいろいろ問題になっておりましたが、若年労働力というものが不足をしております。新聞や週刊誌、雑誌等でもいろいろ報道いたしておりまするように、中学卒のごときは、かねや太鼓でスカウトしなければなかなか人が見つからない、そういう現象が顕著に出てまいっております。ところが一方では、中高年労働者の就職難という結果が生まれてまいっております。このような現象がどうして起こってきたか、それにはいろいろ言い分はあると思いますけれども、私はどうも安上がり労働力というものが、いまの企業で非常に期待されておる。そういうことから、若い人は非常に不足をしておるけれども、年守りはきらわれる。なかなか就職ができない。そういうことがいま申し上げましたように、安上がり雇用というふうな考え方から端を発しておるのではなかろうか。そういうことになりますと、さっき申し上げましたように、駐留軍労働者の場合は、平均が四十三歳ということでありますから、家族構成からいきましても、なかなか新しく再雇用するという問題が困難になってくるということは当然でございます。そこで、そういう完全雇用はけっこうでございますけれども、安上がり雇用というようなことになりますと、実際完全雇用といっても、中高年齢層というものは、なかなか再雇用の場というものが与えられないという結果になりますので、そういう点についてどういうふうに対処されようといたしまのか、この際ひとつ承っておきたいと思います。
  111. 大橋武夫

    大橋国務大臣 経済原則の推移にまかせますらなば、やはり使用者といたしましては、できるだけ経済的に労働力を手に入れたい、すなわち河野さんの、言われる安上がりの労働力ということにねらいをつけるのは当然だろうと思います。しかし、かような考えを横行させてまいりますと、これに伴い疾して労働条件の劣悪化また労働者生活の困窮、こういうことで国の労働力の涵養ということから申しまして、非常にマイナスになることでございますので、そういった点からもこの安上がり労働力の傾向に対しましては、できるだけ是正する必要があると思います。また福祉国家という立場から申しましても、労働者生活を擁護し、労働者の人格を完成させていく、そういう意味からもやはり社会的に見て、おのずから妥当な賃金というものを労働者のためにできるだけ保証してやるということは、政策として当然だろうと思っております。労働省といたしましては、そういったことを考えながら、貸金の問題に対処すべきだと思っております。
  112. 河野正

    ○河野(正)委員 いま、大臣からもお答えがごさいましたように、企業側としてはなるたけ安い賃金、それでは労働者側は困るのであって、やはりその点は国が極力に政策的に解決していかなければならぬということに当然なろうと思うのです。そういう意味では、いま大臣のお答えの方向は私どもけっこうだと思いますが、ところがこれも一例でございますけれども昭和三十七年度の総理府の統計によりましても、年収十八万円以下の労働者が八百三十八万人、こういう数字になっております。ところがこの収入の中身というものは、これは午前中の論議でもございましたように、期末手当あるいは残業手当というものが含まれている。そういうことになりますと、実質の月収というものは一万二千円あるいはまた一万三千円、こういう程度に総理府の統計がなっております。ところが生活保護費は、ご承知のように大体それ以上の基準になる。そういたしますと、この八百三十八万人というものの実質的な月収は一万二、三千円、そういう労働者というものは、日本の全労働者の大体三八%ということになるわけですが、そういたしますと、全労働者の三八%程度というものは、生活保護者並み、または家族構成の少ない人ですと、それ以下の収入しかないということに実態がなっているわけです。これも私は一例としてこの際御指摘を申し上げておきたいと思いますけれども、最近職安のあっせんによりまして、失対から産炭地振興の事業所に再就職した。ところが八時間労働で資金が三百円、そういたしますと、もちろん失対よりも安いし、生活保護よりも安い。こういうことになりますと、結局大原委員との論議の中でも失対問題がいろいろやりとりされたわけでございますけれども、失対制度は、政府改善したという、ところが実質的には、いま言ったように、低賃金にどんどん政府が追い込む、これは政府の方針か何か知らぬが、現実に現場ではそういう現象が出ておる。これは具体的な実例を調査してきておるわけですから、この実例は間違いないのです。いま大臣からは、けっこうな答弁をいただいたわけですけれども、現実にはそういう方向行政というものが運用されておらぬということになっておるわけです。こういう点はどのようにお考えになりますか、ひとつお答えをいただきたい。
  113. 大橋武夫

    大橋国務大臣 失対事業から他の職場へかわった場合に、八時間三百円の賃金ということは、私どもは意外に思うのでございます。また実例をお手元にお持ちだということでございますからよく伺わせていただきたいと存じます。さような行政の運用というものは、これは決してわれわれの意図いたしてわるところではございません。もしそういうふうにしてでもとにかく失対従事者を何とか片づければよろしいのだというような考えで、この失対の取り扱いをいたすようなことがありましたならば、間違っておりますので、私どももよく取り調べて是正をいたしてまいりたいと思います。
  114. 河野正

    ○河野(正)委員 いまの点はもう明白な具体的な事実でございますから、ひとつこの点は十分政府の方針に沿うように御配慮を願いたいと思います。自民党の中からそういうばかなことはないという話がありましたけれども名目賃金というのは多いわけです。ところが実質賃金になりますと、八時間働けばそれこそ三百円、超勤や何かするから、ある程度賃金が出てくるから失対よりも多いような感じを受けるのですが、残業なんかしなければそういうことです。ですからやはり実質賃金というものがいまのような方向では、国の方針と反していくわけです。ですから、その点はきょうは追及することは目的でありませんが、その点を十分配慮して、低貸金に追い込むというような政策はぜひひとつお慎み願いたい、こういうふうに思います。  そこで時間もございませんから、先ほど御指摘を申し上げました駐留軍労働者の問題について、労働大臣に関連いたしますことについてさらにお伺いを申し上げてみたいと思います。先ほどちょっと触れたわけでございますけれども雇用の安定を考える場合に、一般の企業の場合と駐留軍労働者の場合と本質的に異なります点は、一般の企業の場合にはその職場に固定化させていくということが安定雇用だと思うのです。ところが駐留軍労働者の場合は、そういう不安定な基地にとどまるのでなくて、むしろ平和産業という方向に再雇用していくということが雇用の安定、この点が一般の雇用の場合と駐留軍労働者の場合とが若干本質的に違ってくる。そういう点だと思うのです。  そこで私は、駐留軍労働者の問題を解決するためには、再雇用のための法的処置をとる以外にはその抜本的な解決はないということを、先般の委員会におきましても御指摘を申し上げてまいりました。ところがその際労働大臣といたしましては、その趣旨ついては御同意を願ったわけでございますけれども、次のような点で今日までその方策がとられなかったということをお答えになったわけです。それを申し上げますと「再就職の場を確保するために法的措置を講じてはどうかという点でございまするが、私どもといたしましては、現在までの段階におきましては、大体駐留軍関係の離職者の大量整理の時期は終わったように一応考えております。したがいまして、現在の段階で法的措置まで進み出る必要があるかないか、この点はとくと研究をしてみなければならぬと思っておるのであります。特に先ほど御指摘になりました最近のアメリカ軍の予算節約等に伴いまする外国基地の整理引き上げ、こうした問題につきまして、今後駐留軍の離職者がどういうふうに発生していくか、これにつきましては、実は私どもまだ確たる情報を得ておりません。したがいまして、今後の情勢につきましてある程度見通しを立てるというところまでいっておらないのでございます。今後の情勢いかんによりまして、お示しのような方途も十分に検討をいたしたいと存じております。」こういうようなお答えをいただいたわけでございます。ところが先ほど防衛庁長官あるいは施設庁長官の論議の中でも明らかになりましたように、すでに昨年の十二月三十一日、日米両国間の共同声明という形で、大量整理というものが発表されたわけです。したがって、さきの委員会におきます労働大臣の駐留軍労働者雇用安定に対しまする法的措置というものも、当然御検討を願わなければならぬ段階というものが生じてまいったというように私考えるわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  115. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回のアメリカ軍の撤退に伴いまする駐留軍労務者の離職の見込み数は、私どもが防衛庁の当局から聞いておりまする数字は、板付を中心とする空軍の二千名を含めて約六千名の大量整理ということでございます。これにつきまして法的措置が必要かどうかという問題なのでございまするが、なるほど石炭離職者の対策並びに鉱山の離職者対策につきましては、御承知のような法的措置をお願いを申し上げたのでございます。今回のものはこれらに比べますると、その規模もそれほど大きなものではございませんし、また炭鉱あるいは鉱山の離職者の法的措置をお願いいたしました当時に比べまして、今日は一般の離職者に対する法的措置も相当完備いたしてまいっておるのでございます。したがいまして、それらの措置を講じてなお足らざる部分について、必要があれば法的措置を講ずるということに相なると思うのでございますが、いま労働省といたしましては、この問題については十分に研究をいたしておりまするが、法的措置を講ずべしという結論を得るにはまだ至っておりません。
  116. 河野正

    ○河野(正)委員 私どもは、特にこの際強調をいたしてまいりたいと思いまする点は、御案内のように駐留軍労働者の場合は、政府雇用するというたてまえをとっておりますことは御承知のとおりでございます。そこで少なくとも民間の企業でございまする石炭産業あるいはまた金属鉱山、こういう面におきまする法的措置というものは、完全ではございませんけれどもある程度行なわれてまいりましたことは、御承知のとおりでございます。ところが国が雇用いたしましてアメリカに労務を提供しておる、むしろ公務員的な性格を持っておりまする駐留軍労働者に対しましては、民間の企業よりも劣悪な条件の法的措置を受けなければならぬという根拠は、私はないと思うのです。少なくとも炭鉱離職者あるいはまた金属鉱山におきまする離職者、これ並みの法的措置というものは、当然行なわれなければならぬというふうに私どもは考えるわけでございますが、そういう基本的な私ども考え方に対しましてはどのようにお考えになりますか。
  117. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これが民間の雇用と違いまして政府雇用でございまするので、まず解雇を必要とする場合におきまして、従前の雇用主でありました政府が、解雇に際して、いままでの使用者という立場で、離職する労務者に対してどれだけの措置を考えるかということがまず当然必要なことではなかろうか。これが民間の雇用でございますると、いろいろ雇用主の状況に応じまして、また雇用主の個々の人たちの考えの異なるのに応じまして、なかなかある条件が保証できませんから、法的措置も必要だと思います。雇用主が政府でございまするならば、政府間の話し合いで、政府としてまずどういう措置を講ずるかということが考えられるべきだと思います。そして法的措置ということに相なりますると、その政府から離職した者に対する法的措置ということでございまして、第二段の段階で初めて一般的な離職者というものとの処遇を考えながら法的措置を考えていく、こういう考え方の順序でよかろうかと私どもは心得ております。
  118. 河野正

    ○河野(正)委員 私どもが非常に不審に思いまする点は、たとえば政府雇用である、そこで政府の機関においてそれぞれを考えていきたいというふうなお答えもございましたけれども、炭鉱離職者等については、たとえば公営企業への、あるいはまた政府、自治体、そういう方面におきまする優先雇用、たとえば郵政省、国鉄等につきましても炭鉱離職者が優先的に雇用されておるというような面も開かれております。いまの大臣のお答えを聞きますと、政府雇用でございますから、基地が閉鎖され、離職しなければならぬということになりますれば、当然政府間でそういう問題を解決していくということでございまして、けっこうでございますが、今日まで、まことに残念でございまするけれども、そういう方策というものはとられておらぬという面がございます。さらにまた、中高年齢層の再雇用というものが非常に困難になっておるという点から、炭鉱離職者あるいはまた金属鉱山の離職者に対しましては雇用奨励金制度がございまするけれども、この駐留軍労働者に対しましてはそういう恩典も与えられておらない。それから、さらに就職促進手当の通用につきましても、これまた同じでございます。それから住宅の確保につきましても、これまた同じでございます。そういうことでありますると、政府雇用で当然政府が責任を持たなければならぬ立場にありながら、民間の離職者よりもきわめて劣悪な条件のもとに置かれておるということについては、きわめて不審を抱かざるを得ないというのが率直な意見であります。同じ離職者でございますから、どの離職者よりもよりよい職をやれという主張はさておくといたしましても、少なくとも政府雇用でございますから、いまの炭鉱離職者または金属鉱山離職者並みには当然取り扱わるべき筋合いの問題だと私は思う。もちろん、駐留軍離職者に言わせますならば、それ以上の処遇、条件というものが要望されると思いますけれども、それはさておくといたしましても、いま申し上げましたような雇用奨励金制度の問題、あるいはまた就職促進手当の問題、あるいはまた政府、自治体、あるいは公営企業への優先雇用の問題、そういう問題が当然解決されなければならぬというように思うわけでございまするが、その点はどうでありますか。
  119. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、この離職者に対しまして、ことにそれが事業王の都合による大量の離職の場合におきましては、従来の雇用関係から考えまして、まず雇用主ができるだけ離職する失職者に対しまして将来のことについて相談にも乗り、めんどうを見るというようにしていただくことが望ましいと思っております。炭鉱離職者あるいは鉱山離職者の取り扱いにつきましても、私どもは、石炭会社あるいは鉱山会社に大量解雇の場合には常にそれを要望いたしておるのでございます。そしてそれらのあらゆる措置を講じた上でなおどうしても離職者が出てくる、これについては、従来の雇用王である会社側において最善の努力をしてもこれだけはどうしても自分の手に合わない、そういう場合において、労働省として自余のものにつきまして責任を持ってお世話をしよう、こういう考え方でいままで御相談をいたしてまいっておるのでございます。駐留軍の離職者対策につきましても、私どもはやはり同じ考え方を持っておるのでございまして、従来の雇用主であります防衛庁あるいは防衛施設庁、この方面において、大量解雇でございまするから、それらの失職者の将来についてできるだけ親切にめんどうを見てもらう、また解雇の際の諸手当等につきましてもできるだけ考えてもらう、そして当局も努力をし、本人たちが努力をしてもどうしても、就職できない者があるという場合には、それらの者を対象として、労働省としてできるだけ責任を持ってお世話をいたしたい、こういうふうにやっていきたいと思っておるのでございます。今回の六千人の退職の問題につきましては、六千人の退職の見込みだということを一応承っておりますので、私どももこれらの方々の今後の問題について絶えず注意をいたしておりまするが、しかし具体的には、今後の措置についてはまだ防衛庁と直接御相談する時期になっておらないのでございまして、いずれ防衛庁から御相談があると思いますから、その際には、人ごとというような考えでなく、親身に御相談に応じたい、かように思っております。
  120. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、いま大臣からいろいろお答えを願ったわけですが、その筋からいっても、まず当面して防衛庁あるいはまた施設庁が雇用の問題についていろいろめんどうを見る、それが不幸にしてできない場合は民間と同様だという話でございますから、その面については、雇用奨励金制度、あるいはまた就職促進手当の適用、あるいはまた政府、自治体、公営企業への優先雇用というような面がやはり考慮されなければならぬというふうに思うわけでございますが、その点はいかがですか、話をしぼって。
  121. 大橋武夫

    大橋国務大臣 当然お話のような考え方になるわけでございまして、私どもといたしましては、その段階に応じまして実情をよく調べて、どういう法的措置が現実に必要であるかということを考えてまいりたいと思います。
  122. 河野正

    ○河野(正)委員 時間もございませんから、最後に一つ。少なくとも駐留軍労働者の場合は、年齢的に見てまいりましても非常に高年齢ということ、しかし一方におきましては、炭鉱離職者、金属鉱山におきまする離職者と違って、特殊技能を持っておるというような点等もございます。でございますから、私は、先般の委員会の中で職場適応訓練という制度のお話もございました、しかし、炭鉱労働者と違って、駐留軍労働者の場合は特殊技能、技術を持った人が非常に多いわけですから、そういう点については、職場適応訓練よりもむしろ雇用促進手当制度でいくほうの比重が大きかろうと思うのです。ですから、そういう点についても御考慮願わなければならぬだろうし、また炭労の場合も郵政省その他で雇用された面もございますから、これは政府雇用だから当然政府間の話し合いによって解決する点は、民間の場合よりも非常に有利な面があろうと思うのです。そういう意味で、そういう点については御解決を願わなければならぬと思います。また、さっき指摘いたしましたように、就職促進手当の適用も駐留軍の場合は除外をされております。こういう点についても、ぜひ御考慮願わなければならぬ面もあろうと思います。そういうものを含んで、整理が出てまいりました面については最大の御配慮を願うというふうに私ども理解したいと思いますし、そういう点についてきちっとした御答弁がございますならば、私もそれを理解して質問をやめたいと思います。そういう意味でひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  123. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、駐留軍関係の労務者の方々のたびたびの大量の失職につきましては、ほんとうに御同情申し上げておる次第であります。ことに駐留軍関係の職場というものは、元来安定性の薄い職場であり、しかも待遇も決して十分であるとは言えません。それにもかかわらず、その仕事日本の防衛の重要な部分に協力しておられる大切な仕事でございます。長い間こうした大事な職場で非常な苦労をされてきた方々が今回失職されるということにつきましては、これは国家の立場から、できるだけの御協力を将来のために申し上げるというのが当然だと思うのでございます。そこで、この失業の問題につきましては、政府といたしましては十分に実情に注意し、実情から見て必要なあらゆる法的措置をすみやかに講じていくべきである、こういうふうに考えるのはもちろんでございまして、今後またいろいろ皆さまの御指導を得、御協力を願って、問題の解決に当たりたいと思います。
  124. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後二時三分散会