○森山
委員 ILO八十七
号条約の批准並びにこれに伴う関連法案の審議につきましては、そもそもの始まりは
労働組合がこれを
ILOに提訴いたしましたのが昭和三十二年ということでありますから、すでに八年越しの問題になってまいりましたし、法案が
提出せられましたのが昭和三十五年でございますから、すでに五年越しでございます。特別
委員会が
設置せられまして、昨年の六月から審議が軌道に乗ったわけでございます。私もこの実質審議の冒頭の六月二十五日にこの問題の
質疑に当たりまして、自来今日まで特に四十三国会及び四十六国会の二国会でこの問題についての審議は相当尽くされてまいったわけであります。今風会におきましては、すでに
質疑時間は五十時間をこえ、
質疑者は自由民主党が私を含めて八名、社会党が八名、民社党一名というような状況でございまして、ようやく審議は大詰めの
段階にきたような感じがいたします。
したがって、私は、この
段階においてはあえて論争のための論争や抽象的論議は避けざるを得ないのでございます。ただし、当面問題になっております
倉石問題点として取り上げられている事項に関連し、あるいはまた
倉石問題点なるものの論点にあまりにも焦点が置かれて閑却されたその他の問題に関連し、従来の
質疑との重複を可及的に避けつつ疑問点を明らかにいたしたいと思います。また、当面の態度といたしまして、
公務員労使
関係の将来に関する影響、ひいては
わが国の政治、
地方自治等への影響も十分考慮しなければなりませんので、したがって私は、政治家の一員として若干の妥協は必要かもしれないけれども、その妥協は無原則であってはならない、譲るべからざる一線を保持することは何よりも必要でありますので、この
質疑を通じてこの点の明確化に資したいという心がまえで以下の
質疑を申し上げたいと思います。
質疑の第一点でございますが、最初に本日は
倉石、河野両先生が
おいでになりますので、この
倉石問題点という問題について私は
質疑を行ないたいと思います。しかし、
内容はきわめて微妙でございますが、まず最初に私どもの理解をしておる限度を申し上げて、お立場上あるいは御
答弁をすることが適当でないということであるならば、それはあえて御
答弁をお願いするということは私はこの際は差し控えておこうと思うわけでございます。
世上、八十七
号条約の批准並びに関連いたします国内法
改正案の
取り扱いに関連いたしまして、いわゆる
倉石修正案なるものが伝えられておりますが、これが昨年の九月、自由民主党内で発表されました際には、自社両党の審議の際に
検討を要する
問題点を示したものであると
説明をされました。この
倉石問題点は本年の四月すでに新聞紙上にも公表されておりまして、これがはたして両党をいかなる程度まで拘束するものであるかということを私は明らかにする必要があると思います。
このようなことをあえてこの
段階で聞かなければならないというのは、最近新聞紙上において自由民主党が公党間の約束を破ったような非難をされることを耳にするからでありまして、決してわれわれは公党間の約束を破るがごときことをやったのではないということをこの機会に明らかにしておかなければならないと思うのでございます。昨年の特別
委員会の
設置の決定をみましたときの新聞報道、いろいろございましたが、六月十四日の朝日新聞が最も詳細に書いておるのでございます。他の新聞はこれよりみな簡素な表現になっておりますが、一応新聞に書いてあることを読み上げてみたいと思います。
「(1)自民党の
ILO問題世話人会と社会党の
ILO条約批准促進対策特別
委員会を
窓口としてこれまで自社両党が話し合ってきた結果を尊重し、両党は
ILO案件を審議する特別
委員会を設ける、(1)同
委員会での審議を通じて両党は
ILO関係国内法
改正案の
政府原案を
窓口折衝の結果に基づいて修正するよう努力するとの合意に達した。」という報道であるわけでありまして、いろいろ新聞を見たわけでありますが、朝日が一番詳しくそういう点が書いてございまして、「努力する」というふうに伝えております。これは口頭の了解、口でお約束をしたのだそうでございます。約束されましたものはそういう努力をするということでありまして、
問題点そのものをうのみにするという約束をしたものではないというふうに私は理解をいたしておる次第でございます。これによりまして、本年の四月の二十二日に、
ILO八十七
号条約批准並びに
関係法案については、昨年六月十三日の前尾幹事長、成田書記長会談の約束を守ることを確認して特別
委員会を
設置する、同
委員会の審議にあたっては、意見の一致を見よう十分な審議々尽くす、こういうことになっておるのでございます。自由民主党幹事長あるいは社会党の書記長との間の約束というものは、いわゆる
窓口折衝に基づくところの
問題点について、これが円滑な運営ができるように努力するという約束をしたのだというふうに考えておるわけであります。
それからもう
一つ、しからば
倉石先化と河野先生の間でもってお話し合いをされましたその
内容を、われわれはいかように理解をしておるかという点も、ひとつこの機会にはっきり申し上げておきたいと思います。昨年の九月十四日付、自由民主党
ILO問題世話人会代表として
倉石先生の名前をもちまして、党所属国
会議員に次のような書面が送られております。
「
ILO八十七
号条約関係法案について
検討を要する
問題点」の送付について
ILO八十七
号条約の批准並びに
関係国内法案の取
扱いについては昨年三月、自社両党の話合いを行なうこととなり、
ILO問題世話人会が設けられ、小生これが代表として今日まで社会党と数十回にわたり話合いを行ってきましたが、その話合いの結果にかんがみ、さらに去る、第四十三回通常国会において国際労働
条約八十七号等特別
委員会が
設置せられ、同
委員会において慎重に審議せられましたが、その結果等にかんがみ、今回「
ILO八十七
号条約関係法案について
検討を要する
問題点」をとりまとめ、九月十三日
ILO問題世話人会並びに労働問題調査会に
提出し、御
検討をいただき、さらに党の正式機関において御
検討をいただくこととなりましたので、貴殿におかれましてもよろしく御
検討賜わりたくお願いいたします。」というのが、党内の全議員に配付せられておるわけでございます。そしてこの手紙にありますように、九月の十三日に
ILO世話人会が開催されまして、その席上で
窓口折衝に当たられました
倉石、齋藤両先生からこの
問題点についての御
説明があったわけでございます。
その際、われわれは、この
倉石問題点の
内容は、社会党との間にこれを必ず実行しますという約束をしたものであるかどうかということについて、私もその一員でございますが、世話人各位から非常に何回にもわたって、
倉石、齋藤両先化にその真意をただきれたのでございますが、さような約束は全くしておらない、
倉石問題というのは
問題点を列記したのであって、妥結の目安である、そのまま全部が全部両党を拘束するという性格のものではないというお話であったわけでございます。われわれはその
意味で、これらが
問題点になっているということ、これを国会の審議の経過においていろいろ議論していくうちには、あるいはこれらの項目の中に
二つや三つなくなるものがあるかもしれない、あるいはこれらのものの中に書いてない事柄でもつけ加えられるというようなこともあるかもしれない、さような性格の
問題点であるというふうに理解をいたしておったのでありまして、この理解は自由民主党の党内におけるところの一般的な見解と言っても私は差しつかえないと思うのでございます。
しかるに、最近の新聞紙上を見ますと、約束が守られておらないとか、あるいは公党間の不信行為であるとか、そういうような表現が新聞紙上に出ておりますことはまことに心外にたえないところでございます。昨日の
総評岩井
事務局長のお話によりますと、昨年自民党の
倉石氏から私に対し
ILOに関する
書簡を寄せられている、それには
関係者の合意どおり
ILO案件を成立させることや、将来
国家公務員、
地方公務員にも
団体交渉権を与えることを約している、この秘密
文書はいま
総評の金庫に納めてあるが、いずれ公表の時期もあるだろう、さようなことが——
一つのミステリーと申しますか、さようなことが新聞紙上に出ておりますことは、私としてはまことに心外にたえないところでございます。
こういった
文書があったかどうかというようなことにつきましては、私はこの際格別論究しようとは思いませんけれども、この問題についてでき得るならば、河野先生も
おいでになることでありますし、
倉石先生が特別
委員長として
委員長席におられることでありますので、御所見をお伺いできれば幸甚に存じますが、お立場もあることであり、時期も時期でございますから、特に御
答弁を推し控えたいという御趣旨であれば、けっこうでございます。一応私といたしまして
質疑をさせていただく次第でございます。