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1964-06-02 第46回国会 衆議院 国際労働条約第八十七号等特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月二日(火曜日)    午前十時十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 愛知 揆一君 理事 安藤  覺君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 森山 欽司君 理事 河野  密君    理事 多賀谷真稔君 理事 野原  覺君       秋田 大助君    稻葉  修君       小笠 公韶君    亀山 孝一君       正示啓次郎君    渡海元三郎君       永田 亮一君    長谷川 峻君       山本 勝市君    有馬 輝武君       大出  俊君    小林  進君       田口 誠治君    安井 吉典君       山田 耻目君    栗山 礼行君       吉川 兼光君  出席政府委員         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君  委員外出席者         参  考  人         (東京工業大学         助教授)    慶谷 淑夫君         参  考  人         (明治大学教         授)      松岡 三郎君         参  考  人         (拓殖大学教         授)      竪山 利忠君         参  考  人         (産経新聞論説         委員)     大場 鐘作君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      野村 平爾君         参  考  人         (時事通信社主         筆)      村田為五郎君     ————————————— 六月一日  ILO条約第八十七号の無条件批准に関する請  願(大原亨紹介)(第四一五四号)  労働基本権の確立及びILO条約第八十七号の  無条件即時批准等に関する請願下平正一君紹  介)(第四二二八号)  ILO条約第八十七号の即時無条件批准等に関  する請願外五件(有馬輝武紹介)(第四二七  九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件(  条約第二号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)  地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)      ————◇—————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案、及び地方公務員法の一部を改正する法律案の各案件一括議題といたしまして、参考人より意見を聴取することといたします。  本日ここに御出席をいただきました参考人の方々は、産経新聞論説委員大場鐘作君、東京工業大学助教授慶谷淑夫君、時事通信社主筆村田為五郎君、明治大学教授松岡三郎君、早稲田大学教授野村平爾君及び拓殖大学教授竪山利忠君、以上の六名の諸君であります。  この際、委員長から参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  皆さまには御多用中のところお繰り合わせ御出席いただきまして、ありがたく厚くお礼を申し上げます。  参考人各位には十分御承知のとおりでございますが、ただいま審議中のILO八十七号条約及び関連国内法改正案は、本国会において最も注目を集めている重要な案件でありまして、本特別委員会といたしましては、本日まで慎重な審議を進めてまいっておりますが、今回学識豊かな参考人各位より貴重な御意見を承り、もって本案件に対する審査の参考にいたしたいと思う次第であります。何とぞ各位の忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序について申し上げます。まず午前中は御出席参考人各位からおのおのお一人当たりおおむね二十分以内で御意見を順次御開陳願いまして、午後になりましてから委員から参考人各位に対し一括して質疑を申し上げることになっております。  それではこれより慶谷参考人松岡参考人、竪山参考人大場参考人野村参考人村田参考人順序で、順次参考人の御意見を承ることといたします。  まず最初慶谷参考人にお願いいたします。慶谷参考人
  3. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 私は慶谷でございます。  ILO案件批准国内法改正問題につきまして、私の意見を申し述べたいと思うわけでございます。  まず第一番に申し上げたい点は、この国会におきまして、ILO八十七号条約批准並びにそれに伴う国内法改正案をぜひ通過さすべきであるということでございます。  御承知のように、ILO八十七号条約批准の問題は、ちょうど昭和三十二年に、当局が被解雇者を含む組合との団体交渉公労法四条三項違反の組合であるということを理由に拒否したことから始まるわけでございます。それ以来、わが国公労法の問題はILOの舞台に登場をしたわけでございます。政府のほうも、ILOの八十七号条約批准につきましては労働問題懇談会に諮問をいたしまして、昭和三十四年の二月十八日に労働問題懇談会からILO八十七号条約批准すべきであるという答申を得ているわけであります。その答申を受けまして、政府ILO八十七号条約批准、それに伴う国内法改正の準備をしているわけでございます。  まず最初にこの条約国会に登場いたしましたのは昭和三十五年でありまして、三十四国会におきまして、ILO八十七号条約批准とそれに伴う国内法改正法案と申しますのが提出になったわけであります。それ以来、この国会で同じ案件提出されますのはちょうど六回目でございます。六回も提出されて、長い間審議を得たわけでありますから、この国会におきましてILO八十七号条約批准し、そうしてそれに伴う改正法案を通過せしめるというのがやはり当然ではなかろうかと思うわけでございます。ちょうどILOにおきましても、この九月に実情調査委員会わが国に派遣するという段取りになっておりまして、国際的にも日本国際信用を高めるという意味におきましても、ILO八十七号条約批准しそれに伴う国内法改正するという時期が熟してきたと思うわけでございます。  それのみならず、ILO案件は長い懸案の問題でございますから、この条約批准とそれに伴う国内法改正という問題をあとに延引をさせるということは、公務員労使関係に対してあまりいい影響を与えないんじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。すでに公労法四条の三項あるいは地公労法五条の三項は、形式的には存在いたしますけれども、実質的には死文化しているのじゃなかろうかというふうに考えるわけです。そういうふうな法律の条項をそのまま残しておくということは、公務員労働関係の将来のあり方を考えた場合におきまして、あまりいい影響を与えないのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  第二の問題といたしまして、ILO八十七号条約批准するに伴いまして問題となっておりますところの国内法改正点につきまして私の意見を述べてみたいというふうに思うわけでございます。  ILO八十七号条約批准に伴って必要な国内法改正点というのはごく限られているわけでございますが、いろいろ自民、社会の間の対立点とかいうのを拝見いたしておりますと、どうも条約本流といいますか、そういうふうなことよりも、もう少し第二次的な問題というのが問題点としてあげられているようであります。したがって、ILO八十七号条約批准する場合におきましては、もう少し本流を見失わぬようにすることが必要じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  ILO八十七号条約批准するにあたりまして公労法地公労法改正点といたしましては、やはり公労法四条の三項、地公労法五条の三項の廃止等が中心問題になると思うわけでありまして、そういうふうな法文の廃止と、それから管理者組合承認といいますか、そういう点が公労法改正の中心問題になるというふうに考えるわけでございます。  それと付随的に専従職員の問題が取り上げられておるわけでございますが、専従制度廃止するかどうかの問題は、ILO八十七号条約案件とは直接に関係のない問題であり、ILO九十八号条約の問題ではないかと考える次第でございます。しかし専従制度を認めるかどうかという問題は、たとえそれを認めるといたしましても直ちに条約に違反する問題じゃないのじゃないかというふうに考えるわけであります。専従制度を認めるかどうかというのは、それぞれの国の組合組織とかあるいは労働慣行によって非常な影響を受けると考えるわけでございます。わが国労働組合は御承知のように企業別労働組合が支配的でありまして、民間の労働組合におきましては、専従制度というものが労使関係を安定させる一つの潤滑油になっているというふうに考えるわけでございます。もし在籍専従廃止につきまして強い反対があれば、私は労使関係を考える場合におきましても、別に在籍専従制度廃止する必要はないのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  そのほか公労法改正といたしましては、公労法の十七条の二に争議指令の不拘束性に関する規定がございますが、これは当然のことでありまして、法律に置いておこうが置いておくまいが、別に実体的な問題の判断には何ら響影を与えるものではないというふうに考えるわけでございます。  次に、国家公務員法地方公務員法改正の問題につきましてお話を申し上げてみたいと思います。  先ほど引用いたしました昭和三十四年の二月の十八日の労働問題懇談会答申におきましては、ILO八十七号条約批准するに際しまして国家公務員法地方公務員法改正問題点につきましては全然触れていないわけでございます。私も法律論といたしましては、現行の国家公務員法の九十八条の二項と地方公務員法の五十二条の一項の改正を伴わないでもILOの八十七号条約批准はできるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、この委員会における政府委員の御答弁を見ましても、国家公務員法の九十八条の二項とかあるいは地方公務員法の五十二条の一項の「職員は」というふうな規定は「職員のみは」というふうに読むのだという御答弁が出ているわけでございます。そういうふうな解釈が支配的であるとするならば、やはりILO八十七号条約批准に伴いましてそれに相応する国家公務員法地方公務員法改正が必要であるというふうに考えるわけでございます。  それ以外に国家公務員法改正といたしましては、ILO八十七号条約批准に伴いまして消防職員団結権を認める、これは当然のことであります。  ところで、国家公務員法の九十八条の二項、地方公務員法の五十二条の一項の改正案としては、いろいろ政府案が出ているわけでございますが、最初職員団体定義につきましていろいろ問題があるようでございます。一応政府の原案では労働条件改善勤務条件改善目的とする団体職員団体だというふうに定義をしているわけであります。その場合におきまして、勤務条件改善を主たる目的とするかどうかにつきましていろいろな意見の食い違いがあるようでございますが、法律的に申しますと「主たる」を入れるかどうかによって職員団体の活動の範囲が狭くなったりあるいは広くなったりするということはないと考えておるわけでございます。  それから、職員団体につきまして登録かあるいは未登録かの問題がございます。登録した団体のみが交渉することができる、未登録団体というのは交渉することができないかどうかという問題もあるようでございますが、ILO八十七号条約批准するたてまえからいたしますと、登録かあるいは未登録かの問題は取り上げるべき問題ではないのではないかというふうに考えるわけでございます。したがって、登録されていようと登録されていまいと、すべての団体交渉権を有すると考えるべきであると思うわけでございます。  ただ、国家公務員あるいは地方公務員につきましては、登録制度を存置することはある程度必要ではないかと思うわけでございます。と申しますのは、やはり公務員は全体の奉仕者であり、公務を遂行する責任を負わされているわけでございますから、そういう意味におきましてできるだけ職員組合内部運営は民主的ならしめることが望ましいわけでございます。そういうふうな組合運営民主化を確保するという意味におきまして、何らかの形において登録制度というものは必要ではなかろうかと考えるわけでございます。そして、登録をした組合に対しましては別の特典を与えていくという方法がいいのではなかろうかと考えるのでございます。  そういうふうな国家公務員法改正がいろいろありますけれども、そのほかの問題としては国家公務員人事行政の機関の改編という問題が取り上げられておるのでございまして、人事院の権限を若干縮小いたしまして、あるいは大幅といえるかもしれませんけれども、人事局をつくるという案が出ておるわけであります。しかしながら、公務員人事行政中立化をはかっていくという意味におきまして、そういうふうな案につきましては政策的に再検討をする余地があるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  次に、地方公務員法につきましては、一番問題となっておりますのは、いわゆる新聞なんかで報ぜられるところを見ますと、中央交渉の問題であります。すなわち国が地方公務員職員団体あるいはそれ以外の団体交渉することができるかどうかの問題でございます。その問題につきまして国が話し合わないとか話し合うとかいろいろ議論があるようでございます。もちろん国と地方公務員との関係から申しますと、本来雇用関係はないわけでございますから本来の意味における交渉という問題は起こってまいらないと考えておりますけれども、しかしながら、国と、地方公務員の結成する職員団体あるいはそれ以外の団体とが事実上の話し合いをするということは何ら差しつかえない、そういうふうな話し合いを拒否する理由は存在をしないであろうというふうに考えるわけでございます。たとえば教育の問題にいたしましても、日教組と文部大臣が話をするにいたしましても、それはあくまで教育問題につきましての意見を聞くというだけでございます。それによって別に文部行政のいろいろな決定というものが影響を受けるところがないと考えるわけでございます。公務員の場合におきましてはそういうふうな広い意味話し合いというのがわりあいに少ないと思うのであります。できるだけ国が積極的に公務員と話し合っていくというふうな筋道を立てていくことがこれからの公務員労働関係を考えていく場合におきまして非常に必要な問題でなかろうかと思うわけでございます。もちろんそういうふうな事実上の話し合い法律で書くかどうかの問題がありますけれども、別に書いたってそれが権利化されるわけではないと思いますし、要するにそういうふうな事実上の話し合いをしていくならば法律でそういうふうな話し合い筋道をきめていくほうがはっきりするのではあるまいかというふうに考えるわけでございます。  今回の国内法改正と申しますのはILOの八十七号条約批准に伴う最小限度改正であるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、将来における公務員労働関係あり方につきましては、これはいろいろ考えるべき問題があるわけであります。伝えられるところによりますと、将来公務員労働関係の問題につきましては、公務員制度審議会というのをつくりましていろいろ検討をしようという案もあるようでございますし、また政府のこの委員会における答弁を見ましても、将来公務員労働関係を前向きに解決するように努力をしたいというふうに言っておるわけであります。  それで、公務員労働基本権の問題につきましては、これをどの程度認めるかにつきまして現在いろいろな議論がなされておりますが、やはり将来の形といたしましては、その労働基本権をできるだけ認めて、前向きの姿勢で考えていかなければならないと思うわけでございまして、一応その判断の基準となりますのは、昭和三十年の十一月の十五日に出されました公務員制度調査会答申であると思うわけであります。この公務員制度調査会答申におきましては、大幅に労使協議制公務員労働関係に採用するとともに、労務職員とかあるいは臨時職員につきましては五現業並みに取り扱っていくべきだという結論を出しておるわけであります。ここら辺が私は公務員労働関係改善していく場合における第一のステップではないかというふうに考えるわけであります。  しかしながら、この労働関係につきましては、法律におきましていかに権利義務を定めたところでうまくいくものではないと考えるわけでありまして、やはり労使関係を支配するのは労使慣行であります。ひるがえって考えてみますと、まだ公務員労働関係につきましては、ほんとうの意味における労使の対等といいますか、管理者職員とがお互い人間的に平等といいますか、お互い人間性を認め合うという意識が非常に薄いのではないかと考えるわけであります。したがって、いろいろ権利を認めるということもございますが、しかしそれと並行しまして、当局職員とが、管理者職員とがお互い人間性を認め合っていくという関係を形づくるようにお互い努力をしていく、そうしてお互いに、労使双方におきまして、当局職員組合とが十分意思を疎通していく、そういうふうな努力をいたしまして、当局職員組合との間における信頼関係を確立さしていくという方向に持っていくというのが筋じゃなかろうかと思うわけでございます。こういうふうな方向というのが私は公務員労使関係の長期的なビジョンと申しますか、将来のあるべき姿ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  私に与えられました時間もまいりましたので、以上で私の意見の発表を終わりたいと思います。(拍手)
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 ありがとうございました。  次に松岡参考人にお願いいたします。松岡君。
  5. 松岡三郎

    松岡参考人 私、明治大学松岡三郎です。  ILO八十七号条約批准に関連して提出されました政府案に対して私の感想を申し上げます。  まずILO八十七号条約批准については私は政府提案を全面的に賛成いたします。もうすでに日本労働法学会理事をはじめとして、有力な教授たちは一九五七年、それから五九年の二回にわたって批准についての声明をいたしました。学者がこのような声明をすることはめったにないことでありますが、私はこの声明の多くの学者と同じようにこの批准に賛成いたします。  しかし、この批准と引きかえというと多少語弊がありますが、国内法改正については私は反対です。その理由は、要約いたしますと三つあります。  第一の理由は、この政府案の中には、労働組合自主性に関する国際常識に反するものが多々あるということです。  第二の点は、公務員の近代的な人事管理基本原理から非常に縁遠いものがあるということであります。  第三番目には、公務員労使関係発展的解決に対してのイメージが欠除しているということです。  この三つの理由について政府案の若干の規定を取り上げて検討してみたいと思います。  もとより国内法の中で、政府当局者が今度こそ本腰を上げて公務員人事管理に対して責任を持つという姿勢を持ってきたことは私は敬意を払いたいのです。しかし、その責任の持ち方に問題がある。第一に私は国際的な視野から見て組合自主性原理に反するということを申し上げましたが、その若干をここで申し上げたいと思います。  ここで注意していただきたいことがあります。それは立法府が法律審議する場合に、親族法とか相続法などの場合にはその国の特殊性というものを強調すべきだと思います。しかし、労働関係の場合には労働力の公正な評価、つまり労働者人間として見る場合にはイギリス人日本人もどこの国も同じだということです。そういう観点から、よその国と違って日本特殊事情はこうだというようなことは私は持ち出すべきではないというようにまず提案をしたいと思います。  そしてまたそういう観点は、公務員は全体の奉仕者とか公共福祉ということはどこの国でも考えていることです。その考えた結果、いまの国際常識が樹立していることです。だから、こういう観点から考えてみますと、まず職員でない者が組合代表者になれるということについては政府案は取り上げました。しかし、職員でない者が組合員になれるという規定については非常に消極的です。これは百八条の三の四というところにありますが、私はこの規定はぜひ職員でない者も組合員にすべきだと思います。この点はごく常識的に言っても、これは少し強調して、誤解をされるかもしれませんが、アメリカの大統領になれるという場合にはアメリカの国民になれるということが前提でなくちゃなりません。代表者という高い地位につけるが一メンバーになれないということは常識に反する。この規定は、私はそういう意味でとらないと思います。この点はすでに三十六年の七月の十日に、大阪高等裁判所が和歌山県の県教組事件で、はっきりと職員でない者も組合員にすべきだ、組合員にしないということは、全体の奉仕者とか公共福祉を持ち出しても理由はない、と言い切っております。  第二番目に、管理職範囲について人事院規制で定めるという百八条の二の規定であります。この点も、元来自分の仲間は自分で選ぶ、つまり結婚の相手は自分で選ぶ自由があるというのが基本的な考えです。ただ公共福祉を持ち出すならば、非常に自由性原理に反するような者を選びますとこれこそ公共福祉に反する。だからこの場合に考えるべきことは、これは五十四次報告と五十八次報告にも言っておりますが、団結独立性自由性が考えられる。これは客観的なものであり、アプリオリのものである、先験的なものであると言っております。こういう客観的なもの、先験的なものを人事院という行政権力判定することは国際的な常識に反するだけではなくて、日本国憲法の精神から見ても好ましくないと思います。現に公労法の場合には、労働組合法第二条、使用者利益代表者という考え方を取り入れて、これについて行政官庁が何らかの判定を下す。これならまだいい。頭から人事院規則で取り扱うということは大きな問題だと思います。むしろ非組合員であるかいなかの判定は、行政権力判定すべきでなくて、裁判所が認定すべき問題だと考えます。  第三番目に、登録組合だけが交渉権を持っているという規定は、もうすでに結社自由委員会の五十四次報告や五十八次報告で強く取り上げられて、議論済みであるかのごとくです。この点はその報告は、「政府は「非登録団体も平等に当局に対し、その構成員利益を促進し保護するために要求を提出交渉することができる」と述べている。これは無条件的保証であり、本委員会はこれをそのようなものとして正式に記録する。」ということを言っております。そうであるならば、誤解のないようにはっきりと非登録団体平等権というものを規定をするか、もしくは登録という文字を削除すべきであるというように私は考えます。  第四番目に、労働条件維持改善だけを目的とする団体というように労働組合規定しようとしておりますが、労働組合は一部的には組合員の福利厚生とか、あるいはときには政治的な批判もすることがあると思います。こういう立案は非常に誤解のもとになる。だから、法律をつくる以上は誤解のないような法律をつくっていただきたいということを考えます。いま政府提案された条項についての国際的な視野から、あるいは国際的な常識からこれを取り上げましたが、取り上げられない中に多くの問題があります。たとえば公務員の争議行為に対する刑罰科の問題、それからILO九十八号条約に基づく不当労働行為制度の問題、こういう問題は何も取り上げられていません。この点はあとから時間があれば触れたいと思います。  政府提案いたしました国内法改正案が、国際的な常識に反するという点を指摘いたしましたが、次に、いま提案されました国内法案は公務員の近代的な人事管理原理に反するという点を私は指摘したいと思います。  第一に、今度の国家公務員法改正を見ますと、労働条件のほとんどのものが人事院から人事局に取り上げられました。これは私は、公務員労働組合がスト権というものを諸外国のように認められた暁はそういう労働条件というものを、やはりそういう責任体制を持つべきだと思いますが、ここで問題なのは、労働条件に関するいろいろな、たとえば職階制の立案を初めとして、労働条件のあらゆるものが政令で定められるということです。政令というのはこれは政府がきめるわけです。ところで政府労働組合使用者です。いまヨーロッパの学界では、政府を、購買者としての政府、生産者としての政府使用者としての政府というように三つに分けて、使用者としての政府のあるべきイメージというものについて検討を行なっておりますが、この使用者としての政府労働条件について、自分でお手盛りの政令できめるということが非常に非近代的だと思うのです。この点についてはあくまでも、そういう問題については人事局を設けても人事院が第三者の公正な、公正ということばはちょっと問題でありますが、むしろ当事者でない第三者機関である人事院が、この点については人事院規則でやるという現行のほうが私は正しいと思います。そういう労働条件使用者である政府が一方的にきめるだけでないのです。いまの現行法はその労働条件、つまり労働力の売買条件について公務員は対等な立場で話し合うことができないというようになっております。いまの公務員がやれることは、こんな条件では労働力を提供しないということだけです。これは普通の市民社会でもいえることでありますが、そんな条件では物を売らない。三越に行きますとそういうものがたくさんあります。正札がついて、これより売らぬぞ。ところが、公務員の場合にはそういう条件では売らないぞと言いますと、それをそそのかした者は三年以下の懲役、十万円以下の罰金に処せられる。つまりおれの言うとおりに働け、働かなかったら監獄に行けということになる。これはいってみれば、強いことばでいえば暴君ネロの姿です。こういうような形が出てきますと、私はこれが公務員人事管理に対する近代的な考え方だとはとうてい思いません。その証拠には、ヨーロッパの先進諸外国ではそういう非近代的な人事政策をとってはおりません。しかも今度の案によりますと、そういうおれのいうことを聞けということについて最後のたよりになる人事院の権限は大体縮小されます。大体ということばよりももっと、ほとんどおもな権限はない——これは評価の問題ですが、ないという姿であります。私が、公務員の今度の政府案公務員人事管理の近代化から見て非常に批判すべきだと言いました第二の点はこれです。  こういう考え方からいいますと、いま私が申し上げたことを少し先進諸外国の常識というものから公務員人事管理政策を判定をしたいと思いますが、その意味では、私はやはりたとえばイギリスを持ち出したい。イギリスの場合には、よくいわれるのですが、ホイットレー氏委員会というのがあります。ここで注意をしなければなりませんことは、ホイットレー委員会だけに目を向けてはいけない。ホイットレー氏委員会の背後にある公務員団体交渉制度というものの背景が樹立しているということです。この点は、イギリスでは一九二七年法によって官公労のストライキが禁じられましたが、一九四六年には官公労のストライキ禁止の規定廃止いたしました。そういうことだけではありません。イギリスのこの私の読んだ一九六〇年のV・L・アレンのトレード・ユニオン・アンド・ガバメント、これは七三ページに述べているのですが、第一次大戦以前のイギリスの公務員組合はどんな姿だったかといいますと、ラウンド・ロビンのペティション、ラウンド・ロビンというのは小ぶとりのかわいいこま鳥です。イギリスに行かれた人はよく知っておられますが、かわいいのが頭をぺこぺこ下げていくというラウンド・ロビン、ペティションということは陳情ということだ。第一次大戦前のイギリスの国家公務員はかわいいこま鳥の陳情であったのですが、第一次大戦後は国家公務員はコレクティブ・バーギニング、団体交渉ということを言い出して、これが公務員労使関係の背景になっているということ、ストライキを刑罰にしない、そして団体交渉という概念で裏づけられているということがやはり国際常識だ、これはフランスでも、一九五〇年のドエーヌ判決で国家公務員のストライキ権というものを保障いたしました。これは公務員だけではありません。国鉄についても、イギリスでは一九二〇年のエマージェンシー・パワーズ・アクトというものがあります。これは一応ストライキを認めて、国鉄がストライキをして非常事態になりますと軍隊が出る。軍隊が出てそれを静めますが、ストライキを静めるのじゃありません。軍隊がみずから国鉄を動かすのです。軍隊が国鉄を動かしますと、軍隊はえらそうに見えても、国鉄があまりうまくいかないところを見ると、世論というものはあのえらい軍隊が動かしてもだめならば国鉄労働者労働力の価値はたいしたものだということで、労働力の、自分の力を見せる方法があります。この点について国際労働法学会の理事長のオーカーン・フロイント教授は、ストライキはいかなる場合にもそれをそそのかしたりあおるということについては刑罰を科すべきではない、刑罰を科すということはインボランタリー・サービチュード、強制労働になる、これは公務員を奴隷にするものだ、こういうことを言っておりますが、これは私は世界の労働法学者の通説だと言っていいと思います。この点は日本でも同じです。日本の場合にもたくさん書いたものがありますが、東大の教授たちが註解憲法の本を出して、その上巻の五四八ページに公務員について刑罰を科している点は憲法違反の疑いがある、こういうことをいっております。ここでこういう世界の常識日本の学界の常識というものをなぜ日本公務員人事管理政策に取り入れないのでしょうか。私は、立法府、国会でこの提案審議するにあたってはこういう常識を入れていただきたいということをお願いする次第です。  第三番目に、私は、このいまの公務員労使関係発展的解決についてイメージがないということを指摘いたします。私は、このイメージというのは、実はいまの国際的な常識を背景とした発展的な労使関係の解決に指向することだと思います。この点について、たとえば在籍専従者の問題について申し上げますと、在籍専従者という問題は、国会審議の速記録をばらばらと読んだのですが、この点はむしろ従業員組合でなくするのだから在籍専従者の制度をなくすべきだという立論がありましたが、こういう立論はまた国際常識に反します。むしろ職員でない者が組合をつくった場合にはどうしても組合幹部は職場から浮き上がります。だから、どこの国でも、専従者に当たる、たとえばイギリスではショップ・スチュワード、それからドイツではベトリープス・ラートというような制度で、こまかくいえば多少違うかもしれませんが、その思想は、大体同じ制度があります。しかも、いま申し上げたのは民間だけではありません。これは国家公務員についても、すでに人事院当局も相当調べておりますが、イギリスにもフランスにもイタリアにも西ドイツにもスウェーデンにもイスラエルにもすべてこういう制度があります。こういう在籍専従という制度は、職員組合をやめるという形で取り上げるべき問題ではないと思います。たとえば教員の場合でいいますと、教員の上部団体の人はどうしても職場の人から縁遠くなりますから、これが非職員になりますと縁遠くなる。どうしてもそういうのがショップ・スチュワードやベトリープス・ラートの役割りを演じなくてはならないと思います。特に、私の一応の想像ですが、この国家公務員法改正案が何らかの形で通った暁には国家公務員が全体的な組織になる。そうすると、全国一つの統一的な組織になりますと、上部団体の幹部というのは大蔵省とか文部省とかいろいろの人から出ますが、どうしても縁遠い。そうであるならば、やはりこの場合にはフランスとかイタリアのように各官庁から派遣した日本在籍専従者というようなものを残しておくべきだというように申し上げたいと思います。  それからさらに違法な指令に対して拘束力がないという規定の評価の問題ですが、この点は法律家がすなおに読むとこのとおりだということになるのだと思うのですが、しかし、いま労働純合法というものはゼネラル・クローズというのがたくさんあります。労働組合法一条二項、あるいは七条、八条、これは「正当な」という文字があります。この「正当な」という、つまり正当であるかないかの解釈については裁判所や、最高裁判所も分かれているわけです。学者も分かれております。そういうような非常に高い法律解釈の規定、ゆとりのある規定をここに置きますと、使用者はこれを乱用いたします。裁判所でも最高裁でも何十年もかかってもみにもむようなことを一人の管理者判定にまかせるということは労使関係を混乱におとしいれるだろう。特にこういう問題について大きな高い巨視的な視野から見ますと、それは団結にあるいは団体行動に対する介入だ、それを言いがかりにして介入をするという余地があるということをここでひとつ申し上げたいと思います。  それから最後に、教育公務員という問題ですが、これは新聞で問題になっている教育公務員中央交渉の問題です。私は、いまの教育公務員交渉問題については、いまの制度であるならば、これはどろ沼式だと思うのです。これはちょうど、国鉄の今度の四・一七事件と同じです。交渉能力がありません。現在の日本文部行政のもとでは、たしか俸給の半分も政府が持っている。それから定員法の問題、それから産前産後の休暇の問題ですら、これは政府あるいは国会、つまり中央が問題とする法律でつくられているわけです。だから地方公務員である教育公務員が地方庁に行っても、これは政府の考えはこうだとかいうことであるならばしかたがない、政府にいけば交渉権がないということになると、やけのやんぱちになってしまう。だからこの点は、そういう一つの救いをわれわれは立法府に求めたいのです。その救いは二つの方法のいずれかだと思います。第一の方法は、地方自治団体に文字どおり交渉権を持たせる、交渉能力を持たせることです。つまりいま国鉄が交渉能力があるかどうかの問題ですが、これがないとすれば、ないのが問題でありますから、この点について交渉能力を持たせるということが一つの救いです。それができないなら——いまのここで提案されておる政府案によりますと、それができませんならば、やはり実力者である政府交渉をするというチャンスを与えなくてはなりません。こういうようないずれも否定しておくということは、これがごたごたしないほうがふしぎです。私は労使関係の発展的な解決に夢がないと申し上げましたが、その夢について二つのうちいずれかを求むべきですが、私はいまの段階であるならばあとの方法しかないだろうと思うのです。  この点について一つ行き当たるのが管理運営に関する事項という問題です。私はこの点は頭から管理運営、あるいはたとえば日本の政治がこうだとかああだとかいうような問題は国会でやるべき問題だと思うのですが、労働条件と密着した関係で、そのことを話し合わなければ労働条件が解決しないというような問題は、話し合っていいのではないか。そしていいことがあるならば、もちろん政府が取り入れる、いけないことがあるならいけないと言うべきだ、頭から門前払いを食わすということは夢がないというように思います。そしてこれは現に最高裁判所が、大浜炭鉱事件に関する判決を見ますと、労働条件でなくても、労働条件維持改善関係することならば、交渉権があるといっております。ここで一つ、民間と公務員は違うぞという問題ですが、民間と公務員の場合の大きな違いは予算関係であります。この予算関係というものがやはり中心であるべきだというように考えるのですが、この点になりますと、ヨーロッパはこの点については非常にリーズナブルです。たとえばフランスやなんかの例を出してまねをしろと言いませんが、フランスの教育公務員はよくやります。ドゴールが出たときにも反対のストライキをやりました。これはドゴールに反対なんです。ドゴールによって労働条件影響があるという形で出してきたのです。ベルギーは一九六〇年に年金を六十歳から六十五歳に引き上げたのでストライキをやりました。これは内閣が非常に責任をとります。それから一九六二年にイギリスの国鉄は、国鉄があるものを払い下げるというので、首切りに反対して、国鉄総裁やめてくれという意味を含めてストライキをやって、これは円満的に解決したのです。ここらあたりには管理運営ということの小細工的な法律論争によって労使関係を混乱させるというような形のものは見えません。  私はそういう意味で最後に申し上げたいのは、日本公務員の位置づけということは、先進諸外国の常識というもの、つまり先進諸外国が、全体の奉仕者とか公共福祉ということを考慮の上に、公務員人事管理公務員の基本的権利の調整を求めている点に、われわれのイメージを求めるべきだと思います。これが私の参考意見としての結論であります。(拍手)
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 ありがとうございました。  次に竪山参考人にお願いいたします。
  7. 竪山利忠

    ○竪山参考人 竪山でございます。  八十七号条約批准の問題は非常に長期間にわたっておるわけでありますが、一体なぜこれが批准されないのかという点を局外から見ますれば、特に疑問に思うわけでございます。この理由は言うまでもございませんけれども、八十七号条約を純粋に取り上げてない。これは率直に申し上げますれば、政府提案をいたしましても、これにからませまして国内法の、組合側からいいますれば改悪というものをは一緒にのまそう、こういうところがこじれている原因じゃないかと思います。そういう一方におきまして、これにひっかけまして、またほかのところで問題を広げていくというところに問題があるように私は思いますので、この取り扱い方ということについて基本的に私たちは反省する必要があるのではなかろうか。そういう点で、ぜひ八十七号条約それ自身を純粋に取り扱っていただきたい、こう思うのです。それでなければ、国際的な視野から見ました場合に、われわれは国内事情だ、国内事情だといっておりますけれども、外から見ましたら最も明確な条約批准が、なぜ一体このようにこじれていて批准されないのか、もし今国会におきましてこれがだめであるということになりましたら、たいへんな問題じゃなかろうか。われわれ国内でお互いに事情をよくわかっている者の感覚からいいますれば、ああだこうだといいますけれども、外から見た場合にはきわめて単純率直な権限が承認されてないということでありますので、この点は、態度としまして、ぜひ批准しなければいかぬ、こういうふうに思うわけであります。  しかし、それと同時に、なぜこれが批准されないか、あるいはおくれたかという原因といたしますれば、この問題はもっと大きな根本問題をかかえている。言いかえれば、本来がそれが問題でないのだとあるいはいえるのじゃないかと思います。さきのお話にもありましたけれども、三十二年に首を切られた幹部をいただく組合というものに対しまして、団体交渉権を拒否いたしました。だからこの問題の根源は、公務員や公労協関係労働組合に一切争議権を認めないということ、その結果解雇される、解雇された三役が組合の主要な指導者として残る、そういたしますと、これに対して団体交渉を拒否する、そこで今度は、その職員でない身分の者も組合の中に保有していかなければならぬという組合側の立場になります。そこで改正する必要があるのが八十七号条約だ、こういうような順序にきている日本の特殊な問題の立て方でありますので、私たちはこの問題をそしてはいけない、正面から団体交渉権並びに争議権の問題についてはこの際考えなければならぬのじゃないかというように考えるわけであります。  そこでいろいろ議事録を拝見しますと、法理論やいろいろなお話がございますが、双方ともほんとうの問題を表に出さない、紳士的というのか何かわかりませんけれども、そういうことじゃなかろうかと思います。それでぜひお考えを願いたい点は、おそらく双方とも、日本の労働運動のあり方とか労使関係あり方あるいは政府のもとにおきます労働関係というものをどうすべきかという根本問題に突き当たっているのだと思います。この問題は、やはり率直に相互に意見を交換していかなければならぬのじゃないか。ことに四・一七ストは回避されましたけれども、内容からいいますればきわめて重大でございます。政府はこれに対しまして違法ストライキだと、こういっている。しかしおそらく労働者の多くはそれがやむを得ないものと考えている、こういうような鋭いところまでまいっております。しかも、あれが回避されないで実行された場合には、私は方法、手段としましてはきわめて先鋭なものだと思います。政治的革命的なものになってしまうようなところまできております。  ところで、そういうような境地に組合が置かれました事情は一体何か。百もご承知のことでございますけれども、その指導者の人でも、かつてはそういった違法な行為というものを避けながら、どうして組合の主張を進めていくかという点に非常に苦心した人たちでございます。社会党から出ておられる議員の中で国鉄関係の方がおられますが、これらの人たちが、昭和二十五年あたりの大会の議事録をお読みになればわかりますが、政府が仲裁裁定を実行しないと言った場合には一体どうすればいいのか、これは非常な事態であるから、非常な事態においては救済する方法としてわれわれはストライキもやらざるを得ない、これは合法的である、こういう合法的という立場に立って理論づけ、何とか組合としての主張を伸ばしていきたいという苦境に立っております。それがいつの間にか慣習化してまいりました。そういう点で、公務員なり公労協関係職員労働者というものに対しまして、一切そういう組合員に力を与えないということでは、この問題は解決しないと思います。  そういう意味におきまして、実は八十七号条約がこじれます面は、問題の焦点はそこにない。ひょっとしましたら、あれは改正しなくてもいい、言いかえれば、在籍専従がやれるようなそういう職員の身分を持った人たちの組合だけでもいきたい、しかし解雇の問題があるから実はあれをはずさなければならぬというふうなジレンマに立っているんだと思います。そういう点で、根本問題はやはり公務員におきますあるいは官業におきます労働関係を根本的にこの際取り上げなければならぬだろう。しかも四・一七ストに見られますような状況が考えられるとするならば非常に緊急である。しかもその上に民間の場合にはいろいろな争議がございまして、批判を受けるようなものもございました。けれどもその民間の労使関係に比べて一体政府関係労働関係は進んでいるのかどうかということになりますと、非常な立ちおくれというものにあるんじゃないかと思います。そういう点ではここに大いにこの労働関係立法の検討が要るんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  それから、いろいろ論議の過程で私たちはこういうことを感じます。言いかえれば、この労働関係のものは労使関係自体の慣行あるいは労働運動の発展の段階、進め方、こういうものを基礎にして判断すべきものだ。したがいましてそういった慣行やら労働運動自体の自主的な動きというものをば助成する、その中においてこれを法定化していくというふうな順序が必要なんじゃないか。それをば形式的に外から持ってきまして、こうあるべきだという規制の態度は、労働運動やら労働関係を扱う態度としますれば逆ではないか、こういうように思います。  それから第二に、同じようなことでございますけれども、労働運動としますれば、何としましても民間の産業労働者とそこにおける労使関係というものが一つのモデルだと思います。出発点だと思います。しかしながら近代国家におきましては政府の役割りも国家の役割りも非常に拡大してまいりました。したがって被雇用者の身分にあるこれらの人たちはそういう点で共通面がある。だから近代国家としますれば民間における労働関係、それを規制した労働立法をできるだけ、公務員やらあるいは官業関係におきましては内容からいいますればほとんど同じでございますから、そういう点については権利を確保してやろう、しかしその条件は必ずしも一本ではございません。確かに公務員とか官業の場合とか公益事業とかいろいろございますから、具体的な姿におきましてはいろいろな相違がございますけれども、根本の考え方はそういうものをば適用していこう、これをば援用していこうという態度からきているわけでございますから、それを忘れましてそこに条件がないとか、あるいはこうあるべきだという考え方もいけない、と同時に、すべてこれは被雇用者であるから労働者である、こういう一般論で権利規定するのもまた間違いだと思いますが、とにかく立場としますれば民間における労働者に与えた権限をば、公務員の場合でももちろん、官業の場合におきましてはもちろんでございますが、どういうふうに適用していこうかという視野でもって問題を解決しなければならぬのじゃないか、こういうように考えているわけであります。  そういうふうなことと、特にILO八十七号条約につきましては、私たち外から見た場合に、日本の姿がどうであるかということをよほど考える必要があると思います。国内ではお互いが許し合ってかってなことを言っておりますが、外から見たらどのように見られるかという点について、言うなればナショナル・インタレストというものがあるのじゃないかと思います。対立し抗争をしながらもそこにナショナル・インタレストがあるのじゃなかろうか。あるいは少なくとも国内で自主的に解決できる分野、しなければならぬ分野と、国際的に連携していかなければならぬ分野とについて日本労使双方がしっかりしたけじめをつける、言いかえれば、こういう国内法改悪とか改正の問題につきましては、日本労使慣行の中から日本自体が自主的に解決するという必要があるのじゃないかというふうに思います。そういったことから考えてみますと、私の結論としますれば、八十七号条約は、今国会がどのような事情にあろうともぜひこれは批准していただきたい。これは日本全体の問題だ、日本全体の運命の問題だ、こういうふうに思います。けれどもこれで問題が解決するのでなくて、むしろこれは敵本主義といいますか、敵は本能寺だという形でこれは振り回されておるわけでございます。そういう点でさっき言いました団交権あるいは罷業権、争議権、こういったような基本問題につきまして、言いかえれば全体としての公務員あり方とかあるいは政府労働者あり方あるいは労働関係というものをこの際こそ抜本的に解決すべき段階だ、こう思います。そういう点で私は、今国会ではぜひ八十七号条約は、いかなる問題があろうともこれを批准するということ、次いで、これで終わりというわけではなくて、実はこれは出発点なのだ、その点で根本問題を直ちに解決するために罷業権まで含めました労働関係あり方について直ちにひとつ御審議願う、進めるという方法にしていただきたいのが私の結論でございますし  いま、一般論でそういうことを強調いたしましたが、これから個々の問題につきまして意見を述べさしていただきたいと思います。そうしますと、関係国内法の中で、公労法四条三項あるいは地公労法五条三項というふうなものを削除すれば、ILO八十七号条約の問題の批准は同時的にできるわけでありますからこれだけを上げていただく、これを決定していただくということでいいのじゃないかと思います。公務員の場合におきましては、さきにもお話がございましたけれども、いままでのあり方に合わせまして適用解釈をするということになっている程度でありますから、今回はこの新しいあり方に適用解釈されるということで解決はつくのじゃないかと思います。そういう点で今国会では八十七号条約批准公労法及び地公労法関係の、そういった直接関係のある部分だけを少なくとも上げてしまうといいますか、批准して決定をしていただくということが大事なのじゃないかと思います。そこでこれに関連しまして抱き合わせしてといいますか、問題をこじらせました理由は、こういう法律を認めれば組合権利が非常に強くなるあるいは組合だけが得をするという感覚があるのではないかと思います。そういう点で在籍専従の問題とか、チェックオフの問題に問題が発展してきていると思います。  ところで、この在籍専従をどう考えるかという問題でございますが、今回もし八十七号条約批准されて、さっき言いました点の削除がなされました場合に、もしある官公庁の組合あるいは官業の労働者が従業員だけの組合をつくった場合はどうなのでしょうか。従業員だけの組合をつくってならないという規定なのかどうか。もしそれがつくり得る可能性があるということだとしますればどうなのでしょうか。そうしますと従業員だけで、職員だけで結成する組合専従職員が持てないということになります。これはこの趣旨であるかどうかということになるわけであります。そういう点で私は、組織の形態をどういう形にするかというのは組合側の自由な選択によるのではないか、職員外の人を入れる組織形態もあり得るし、従業員だけで結成する組織形態もあるのだ、どちらが理論的で、どちらが将来の方向を代表するかという問題につきましては、私自体もやはり職員外の者を入れていくような横断的な各国の組合の姿をとらなければいけないと思います。けれどももし今日の段階におきまして職員だけでつくるというふうな組合があった場合には一体これは認めないのでしょうかどうか。そういう組合を認めない、在籍専従を認めないとすれば、組合活動はできません。もしそれを認めるということでありますならば私は認めなければならぬのじゃないかと思います。そうだとすると在籍専従の問題はやはり労使双方の一つの慣行、考え方というものにゆだねるべきであって、ここで法律在籍専従を禁止するとか、あるいは三年くらいはいいが、あるいは五年くらいはいいがというふうな論議はおかしいのじゃないか。しかもそういう専従制度が各国にも一応あるとすれば、あるいはさっき松岡先生のお話にありましたが、ショップ・スチュワードの運動とか工場における従業員集団というようなものの役割りはたいへん大きいわけであります。その場合におきましては、それは従業員でなければ、ショップ・スチュワードの運動も工場委員会の運動もイタリアの内部委員会の運動も可能ではございません。そういう点においては、その段階においては認めるべきだということが必然になってくるとしますれば、これはやはり相互の労働関係日本使用者労働者がどういうふうな慣習として確立していくか、その自主的決定にまかすべき問題ではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。特に日本組合が、多くは企業別の従業員組合であるという組織形態をとっています。したがいまして、さっき言いました削除すべき条項も、ある意味では、政府からもし弁明するとすれば、民間の大部分が、労働協約によってそういう形をとっているから、それをばここでまあきめたにすぎないんだという弁明もなされるような状況でございます。そういう点で、民間の労働組合におきまして、従業員が組合を結成する、従業員でなくなりますと、身分を失うという事実もあります。そうなれば、在籍専従が自由な意思によって選ばれておりますから、それを官公庁の場合だけがいけないという理由がなかろうと思います。そういう点で、私たちは、これは法律でもって規制したり上から決定するよりか、労働慣行自体や労働運動自体の手にゆだねるべき問題だ、こういうふうに思います。  チェックオフの問題につきましても、私は同様のことが言えるのではないかと思います。労働運動の筋からいいますならば、やはり少数を組織してだんだん拡大していく、やがて全従業員が入るようになっていくというふうな発展方法をとるわけでございます。その中間の過程におきましては、組合費はみずから組合が集めるというのが当然の成り行きだと思います。しかし何千何万というような大量の組織を持つような今日の段階になってまいりますと、これは労使交渉によりまして、その制度をも認めるというやり方をしていますから、官公庁の場合におきましても、認めるか認めないかということは、むしろそこにおきます労使関係の中で自由に決定さしてしかるべき問題であって、法律上こうあるべきではない、あるいはこうあるべきだというふうに規制しておくべき問題ではない。そういう規制をしますれば、むしろ八十七号条約の精神とは違反するという形になるのではないかというふうに思います。そういうふうなことと、もし今日の日本労使関係を真剣に政府もお考えになっているんだということになりますれば、こういう在籍専従の問題でも、チェックオフの問題でも、簡単に規制したり禁止するということがどういう結果を及ぼすか。私はもう労使関係や労働運動はどうなろうとかまいません、とにかく合理的に考えた場合に筋が立っているということを期待するんだ、これは非常に正当な感じがいたしますけれども、しかしそういう人たちに限りまして、むしろこれが組合に対しまして打撃を与えるのじゃないか、あまりに強い力になっているからこれは打撃を与えるのじゃないかというねらいがあるという感じがします。そうだとしますれば、たてまえとねらいとは非常に違う、こういうふうな立て方が、やはり今日の問題をこじらせておる主因ではないか。率直にやはり考えていただきたい。労使あり方を私は組合のほうにもお願いしたいのであります。これは既得権であるということでもってそれに甘んずるという態度はとるべきでない。しかし今日の労働運動の実情や組織の実情からいいまして、そうすることが組合運動を前進させるのじゃない、順調に発達させるのではなくて破壊的な結果になるんだからというふうな認識から主張するのはいいと思いますけれども、既得権だという名において、あらゆるそういうものをば獲得すれば、筋が通ろうと通るまいとどうだというような態度をとるべきではないと思います。そういう点からいいますれば、これはもっとフリーに組合も考えるべきではないかと思うわけであります。そういう点で、筋はひとつ通してもらいたい。しかしそれを決定する場所は法律ではない、こういうことを申し上げてみたいと思います。  それから私たちが、非常に本来の趣旨から問題が離れてからましている、この際一緒に抱き合わせをすればあるいは通る可能性がある、こういうような意味で一番大きく問題になっている点は、何といいましても人事局の設置、人事院の権能のほとんどのものをそこに移行するという問題じゃないかと思います。これはだれの目でも明らかだと思います。これは八十七号条約批准に直接関係がある問題ではなくて、明らかに新しい公務員制度の根本的な確立といいますか、あるいは従来の公務員制度をば根本からゆるがす一つの変化措置だと思います。こういうことをばこの際一緒に一括審議ということが許されるかどうかということでございます。私は、この人事局の設置というものは、今日の人事院の設置、運営のしかたというものが妥当であるかどうかという点については非常に疑問を感じます。あるいは組合の諸君からいえば、そういうものはなきにひとしい、政府の息がかかって独立性がない、こういう意味でこれを軽視する傾向がありますが、しかしそれは逆に人事院を隔離して、ほんとうに趣旨に沿うような運営のしかたに進めるということが必要でありまして、人事院の設置の原因は、何といいましても中立性あるいは全体に奉仕する公務員という立場を、これを保障していくというために必要なものでございますから、これをばゆるがすということになれば、人事院総裁が全力をあげて反対しておりますように、明治的な公務員制度、官僚制度というものにもう一ぺん返るのだというだけの重大さを持っていると思います。これを八十七号条約をからませてこの際解決してしまおうということはいかがかと、こう思うわけであります。したがいまして、人事院の今日設置されたものは、一つは公務員に対しまして、本来の団体交渉権もなければ、もちろん争議権がないという事態を救済するという意味を持っておりますが、しかしこれ自体は新しい一つの人事機関として、いろいろ各国でできておりますが、それにならった一つの装置でございますから、これを生かすことに全力をあぐべきじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。もしこれをあえてされるとすれば、公務員における労働関係を、政府の論理からいいましたら、これはきわめて大きい対立関係に置く。しかも政府人事管理をきつくやるかわりに、あるいは政党内閣でございますから、そういう点で人事管理を徹底してやる、こういうことだとすれば、そこから保障を得る方法は、すなわち労働組合——職員組合があって、団体交渉権を付与して、そして争議権を裏づける、こういうものが必要だという論理になるのじゃないかと思います。局は設置したが、職員団体のほうの権能はかなりうやむやであるということでは、これは進みません。そういう点で人事局の設置とは、政府公務員に対して、民間における被雇用関係と同じようなそういう政策をむしろやらんならぬのだということになります。よくわかりませんが、いわゆる倉石案というものが出ているようでございます。これを見ますと、その方向に行きかかったような感じがいたしますが、これは論理的な必然だと思います。だから人事局を設置して、人事院の機能をばほとんどそこへ吸収するという大方針を立てられるとすれば、当然争議権、団体交渉権が要求されてくる、これは論理的必然の結果じゃないかと思います。もしそうでなくて、現状におきまして人事管理あるいはその公正を守る、中立を守るということを人事院に期待するならば、むしろ人事院自体の確立、運営のしかたという点に焦点を向くべき問題ではないか。そういう段階におきましては、あえていま直ちに公務員に罷業権を与えよ、こうは申しません。また団体交渉権あるいは協約を与えよとは申しませんけれども、しかし根本の精神としますれば、さっき申しましたようにやはり民間の労働者に与えるような三権をば援用していくのだ、しかしその条件ありやいなかという問題はわれわれは審議しなければならないと思います。当事者能力のない状態において、形式はそうなりましても、内容は結局限定されたものにならざるを得ないということは事実でございます。その点で私たちは公務員とは何か、全体の奉仕者というものもありましょうが、民間の企業と公務員、あるいは官業とがどこに相違するのか。運営においてどういう特質があるのかということについて、もっと私たちは突っ込んだ考え方をしなければならぬと思います。そういう点でマッカーサーが公務員改正をやりました。しかしこれはポリシーによって大きく随意にやっております。曲げられております。しかし理論づけとしますれば、公務員の雇い主、雇用者は国民である。国民の総意を代表するものは国会である。国会とそういった政府との関連、そしてそこから民間のような団体交渉制度というものは、そのまま適用しようと思っても適用されないのだ、こういう理論づけがございます。また主権というものを行使していくわけでございますから、民間の工場で何を生産しているか、場合によってはその工場はつぶれても、これは全体に響影はないということとおのずから異なると思います。そういう点のこまかい規定といいますか、具体的な条件は検討していかなければなりませんけれども、方向としますれば、私はそういう公務員の位置もやはり適用できる場面は適用するという精神の中で、これを具体化するという問題になるのじゃないかと思います。  その他管理職員と非管理職員とをという問題があります。たてまえとしますればいかにもっともらしくて、むしろこちらのほうが組合運動化じゃないかと思われるような規定でございますが、そのねらいがどこにあるかということが一つと、私はこの点を、各国の労働運動は自分の体験から、みずからそういう区別をしていったわけでございますから、この際無理に法律規定でもって区別をして、結局組合側から言いますれば、組合の分割になるのだというふうなやり方は避けていただきたいと思います。  最後に一番大きな問題は、何といいましても、日教組の場合の管理職及び中央交渉の問題だと思います。私はそういう観点から、方向としますればやはりそういう何らかの交渉の場、話し合いの場があるということは望ましいことだと思います。しかしそれは同時に、やはり日本労働組合の組織にも影響があると思います。企業別であり、雇用別である。したがって団体交渉締結の相手はその企業である。それを模倣して、各官庁もそういう形になっている。こういうような姿が根本問題でありますし、その中央交渉の問題について難点がある理由であろうと思いますので、やはり労働組合あり方を今後はどうするか、そういう条件が熟さない中においては中央交渉議論が十分確立しない、こういうふうに思うのであります。  最後に申し上げておきたい点は、さっきのお話にもございましたけれども、労使関係をほんとうに正常化していくというためには、相互の理解、話し合いの場というものが必要だと思います。そういう点で公労法の八条にありますように、次のようなことを団体交渉できるのだという、その前文のところで、管理運営事項についてはこれは外だというふうにわざわざ否定的な形で挿入してある点はむしろ、ホイットレー委員会の問題もありますが、そういうような状況をかえって積極的に阻止しているのじゃないか。そういう点で団体交渉範囲はこれこれであるという形で、ああいうただし書は要らないのじゃないか。むしろある意味におきましては、労働条件に関連のある問題は話し合いつつやっていくという姿勢を持たなければならぬ。しかしこれは、最後の問題に労使お互いの、不信である、あるいは今日のゆがめられた労働運動の状況という点が根本にありまして、口では言わないけれども、譲ったらたいへんなことになる、また一方は、もぎ取れという戦法である、こういうこじれた状況が最後にあると思います。そういう点で私はそのこじれをなくするためには、やはりすっきりした労働三権の確立をやっていく。公務員の場合にもどの程度採用できるか。根本的には相互信頼を取り戻す。信頼ということが無理ならば、相互認識を取り戻すというふうな一つのチャンスじゃないか。そういう点で私結論として申し上げますけれども、八十七号条約の問題をそのような根本問題とからませて、そしてこれをだめにしてしまうということは、ぜひやめていただきたい。そういう点でさっき言いましたような公労法四条三項と地公労法五条三項の部分の削除と八十七号条約批准、そのあとの問題につきましてはもっと審議して、緊急な事態の中で根本的に検討するというふうにお願いしたいというのが、私の意見でございます。(拍手)
  8. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に、大場参考人にお願いいたします。
  9. 大場鐘作

    大場参考人 産経新聞の大場でございます。私は記者的な感覚で申し上げることになると思いますので、その点御了承願いたいと思います。  ILO八十七号条約関係国内法改正の問題を考える場合に、私は前提になるような条件が二つほどあると思う。その一つは、ILO条約批准の緊急性ということでございます。いま一つは、それに関連する国内法改正問題であります。  私は、まずこの国会ILO八十七号条約批准することが先決問題であると考えております。それにはいろいろ理由がございますが、第一には、ILO憲章によりましても、ILO加盟国はその条約を早急に批准し、その原則を実施することが必要であるということがはっきり規定されております。もちろん批准そのものを義務づけたわけではないでしょうが、加盟国としては当然の責務があるわけであります。それから第二には、日本が八十七号条約批准するということは、国際的な公約になっておるように思います。この点については、いや約束した覚えはないのだ、いう御意見もあるかと思いますけれども、私は国際的に公約してきたのではないかというように考えております。たとえばいままでの経過から見ましても、三十三年二月のILO理事会に、日本政府代表は閣議決定の報告をしております。その閣議決定は、三十三年二月に、八十七号条約は国際的にもきわめて重要なものであるので、自由にして民主的な労働組合の発展を期するという労働政策の基本的立場からこれを批准することとするという決定をしております。そこで日本政府の代表は、こういう閣議決定をいたしておりますという報告をしておるわけであります。それから、次いで六月の総会におきまして、これは委員長倉石さんが当時労働大臣でございましたが、出席をしまして、条約批准のため必要な国内的諸条件は近き将来充足されるものと信じており、その充足を待って批准の手続をとることを明らかにするという演説をしております。国内の条件が充足されるというそういう条件つきではありますけれども、しかし批准の手続をとるということをはっきり言明したわけです。それから同じ年の十月の理事会でも政府代表は、日本政府は八十七号条約批准並びに公労法四条三項の廃止がすみやかに実現されるよう必要な国内的条件の充足に努力しておる。さらに三十四年二月の理事会では、労働者代表の質問に対しまして、日本政府は閣議で八十七号条約批准を決定しており、理事会は日本政府がその決定に従って必要な措置をとるものと確信してよい、こういう発言をしておるわけであります。したがいまして、こういう日本政府の代表の報告なり、あるいは発言を通じてILO当局が、日本政府は八十七号条約批准公労法四条三項の廃止を約束したのだというように受け取ったとしても、私は当然だろうと思います。したがいまして、その結果今日まで十数回にわたって早期批准の勧告が行なわれてまいりました。さらにことしの二月には、日本問題に関する実情調査調停委員会の設置がきめられまして、五月に発足いたしております。そして証人喚問とかあるいは調査団の派遣という具体的な活動は、九月から始めるということになっております。九月まで延ばしたということは、この国会条約批准ができることを期待して九月まで延ばしたのではないかというように考えられるわけです。こういういままでのいきさつを見ますと、日本国際信用はこの問題を通じて非常に失墜しております。したがってこの際国際信用を回復するということは、政府ばかりでなく、与党も野党も全部を通じての大きな責任ではないかというように私は考えるわけです。  それからいま一つは、八十七号条約の内容そのものにつきましては、関係者の間に全く異論がないはずだと思います。あらためて申すまでもございませんが、八十七号条約は第一に、団体の自由な設立と無差別加入の原則、第二には、規約の作成あるいは代表選任の、自由、その他自主運営の原則をきめております。第三には、連合及び総連合の自由な設立、それから国際団体への自由加入の原則、第四には、行政的権限によって団体の解散または活動の停止を禁止しております。第五には、法人格取得についての干渉的制限を禁止しております。第六には、国内法令を尊重しなければならないという義務を持たせておりますが、国内法令はこの条約の精神に反するようなものであってはならないということを規定しております。第七番目には、団結権の自由な行使を確保するという原則を規定しておるわけです。ですから政府も閣議決定で、労使慣行をよくするという面からも必要だという立場で、この批准の方針をきめたわけでございまして、この原則については関係者に全く異論がない。  それから第二番目には、これからの日本の国際的な立場を考えましても、やはり八十七号条約を早急に批准しておくことが必要ではないだろうかというように考えます。日本はIMF八条国への移行なり、あるいはOECDへの加盟をいたしまして、開放経済体制に入ったわけでございます。そういたしますと、国際舞台においていろいろな活動をしなければならなくなります。その間際舞台における日本の発言力を強める、あるいは活動を容易に促進するためにも、ILO八十七号条約批准がきわめて緊急な問題であるというように考えます。特にOECDでは労組諮問委員会というのがございまして、これが相当強い発言力を持っておるようです。やがて日本におきましてもその委員会に加盟することになるだろうと思いますが、そこの中心的な勢力になっております国際自由労連が、昨年十月でしたか、日本に参りましたベクー書記長がたしか労働大臣とお会いになったときに、日本のOECD参加については、日本政府が労働界における義務を余すところなく尊重かつ履行し、労働者の一切の労働組合権利を保障しなければならないというような要望をされたと聞いております。もしILO八十七号条約批准がだめだということになりまして、国際自由労連との関係などもまずくなるということになりますと、OECDの舞台で日本が活動する上に大きな支障がくるだろうことは容易に予想されるところでございます。さらにそれらのほか、いままで盛んに言われております日本の低賃金に対する批判なり、あるいは日本商品に対する輸入制限というような問題もございます。それらの点を考えますと、やはりこの国会条約批准することが第一義でなければならないというように考えるわけでございます。  しかし条約批准するためには、やはり国内法改正ということを無視できません。そこで国内法改正問題につきましては、労働省に設けられました労働問題懇談会答申がございました。この懇談会は労使、学識経験者の三者構成でございます。ここに労働大臣から諮問をいたしまして、その答申がございました。その答申によりますと、八十七号条約批准すべきものであるということをまずはっきりしております。ただしその条約批准に伴う措置につきましては、大体三つの考えを出しているように思います。  第一は、八十七号条約の原則に直接抵触する部分を削除しなければならない。この抵触する部分は、公労法四条三項と地公労法五条三項であるということでございます。第二は、四条三項及び五条三項の廃止にあたっては、その他の関係諸法規についても当然必要な措置が考えられるであろうが、要は労使関係の安定、業務の正常な運営の確保ということにあるのであるから、特に企業の公共性にかんがみて、関係労使国内法を順守し、よき労働慣行の確立につとめることが肝要である。第三には、ILO条約の精神である自主運営、相互不介入の原則がわが国労使関係にも十分取り入れられるよう、別にしかるべき方法で労使関係法全般についても再検討することが望ましい、こういうことでございます。つまり条約批准のためには、公労法四条三項と地公労法五条三項の廃止ということが絶対的な条件であって、そのほかの改正については必ずしも絶対的な条件ではないという趣旨だと、私は解釈するものでございます。  なお、労働問題懇談会委員をされております石井照久教授の報告を見ますと、四条三項、五条三項の削除に伴うその他の規定については、所要の技術的な調整を加えること。それから国家公務員法及び地方公務員法については別段の措置を必要としない、こういうことを言っております。つまり他の規定改正については技術的な調整をすることが必要である。それから国公、地公両法については別段の措置を必要としないという趣旨でございます。  以上の点から考えまして、国内法改正につきましては、第一に、公労法四条三項と地公労法五条三項の削除並びにそれに伴う技術的な調整が必要でございます。それから第二には、政府のいままでの答弁を見ておりますと、公労法四条一項のただし書きの、たとえば管理職員の団結を禁止しているような条項、あるいは地方公務員職員団体登録また登録団体だけが交渉できるような規定、これもどうも条約に直接抵触するように伺いますので、この点も手直しすることが必要であろうと思います。  第三点は、条約の自主運営、相互不介入という精神に従いまして、在籍専従及びチェックオフはやはり廃止するほうが妥当だろうと思います。特に労働組合は、企業意識の払拭あるいは産業別組織への発展ということを志向しております。日本の企業組合規定しておる理由にはいろいろございますけれども、その一つは、在籍専従あるいはチェックオフが企業組合をしばりつけておる大きな理由でございます。ですから、企業組合から脱皮して産業別組織に発展するというならば、むしろ在籍専従なりチェックオフはみずから廃止するくらいの私は意気込みがあってしかるべきではないかというように考えております。  それから第四番目に、そのほかの改正については、審議会なりあるいは委員会なりを設けて、日本公務員労使関係はどうあるべきかという基本的な問題点からあらためて検討をするということが必要だろうと思います。その程度の最小限の改正にとどめて、この際は八十七号条約批准を行なうということが、先決ではないかと考えておるわけです。ただ実際問題といたしますと、とにかく今日まで非常にこじれてきた問題でございます。また、私が申し上げましたような最小限度改正にするということになりますと、政府原案は全面的に否定されるような形になります。これもあまり好ましいことではないと思います。また、現在の労働組合あり方から見まして、管理者側が非常な不安を持つことも十分理解できます。逆に野党なりあるいは組合側が、政府原案に対して強く反対することもわからないではございません。  そこで私はやはりこの際、自民党と社会党の窓口折衝の結果まとまった、いわゆる倉石試案と称せられるこの案で局面を打開するのが最も現実的な行き方ではないだろうかというように考えます。この倉石案、いわゆる妥協案は、一つは少なくとも労働問題の権威者が一年余にわたって、関係者の意見も聞きながらつくり上げた案でございまして、一応了解点に達した案でございます。それから第二には、政府の代表もILO理事会において、与党及び野党がそれぞれ交渉責任者をきめ、善意と互譲の精神に基づき熱心に交渉しているという旨を数次にわたって発言しております。つまり、これはいろいろの解釈ができるかと思いますが、私は、この話し合いがまとまれば条約批准はできるんだということを表明したものではないかと考えるわけです。それから第三番目に、倉石試案といわれるものも、個々の項目につきましては、たとえば在籍専従の取り扱いとか、あるいは管理職範囲の決定方法、非登録団体交渉権及び日教組の中央交渉権の設定というようないろいろ問題点もあるかと思います。しかしそういう問題点も、当局側の管理体制を整備するなり、あるいは労使慣行なり労使関係のルールを確立していけば、私はそれほど心配する問題ではないのじゃないかというように考えるわけです。  具体的な内容につきましては時間もございませんので省きますが、問題は、ILO条約をとにかく批准するということが先決問題だということ。それから国内法改正については最小限度にとどめるのがよかろう。ただ現実に両党の話し合いの結論というものが出ておるのですから、それを基本線に考えるのが最も妥当ではないかということでございます。  私はいつも感じておるのですけれども、何か法律できめさえすれば労使関係はよくなるんだというような感じをどうも受けます。しかし労使関係の問題は、これは人間関係の問題でございまして、法律や規則できめたからよくなるというものではございません。逆に、あまり法律や規則できめることによって労使関係をこじらせるという場合が非常に多くございます。そういう点を考えますと、確かに末端機関などでは若干問題が起こることが予想されますけれども、そういう問題はやはり労使双方努力によっていい労使関係を築き上げていくという努力が、私はむしろ必要なのではないだろうかということを感じておるわけでございます。  以上によりまして私の意見の開陳を終わります。(拍手)
  10. 倉石忠雄

    倉石委員長 ありがとうございました。  次に野村参考人にお願いいたします。
  11. 野村平爾

    野村参考人 早稲田大学の野村です。いままで参考人の方々が述べました点の八十七号条約承認を求める案件につきましては、私もこれは賛成でありますので、その理由などはくだくだしく申し上げません。省略をさせていただきたいと存じます。  それから八十七号条約批准いたしますと、御承知のとおり、憲法の九十八条二項の関係から、この批准しました条約を尊重しなければならないというたてまえになるわけです。そういう点から問題になる点を二、三申し上げてみたいと思います。  八十七号条約と抵触している点をまず是正をしている点は、確かにこの法案の中にあらわれております。たとえば公労法四条三項あるいは地公労法五条三項、こういうものを排除して、労働組合法のいわゆる組合自主性を維持するという原則に立ち戻った、この点は私はけっこうだというふうに考えております。  それから八十七号条約との関係で問題になるだろうというふうに指摘されました点は、同じく公労法四条一項ただし書きとそれから地公労法五条一項ただし書きの規定であったわけです。この点を労働組合法の原則に立ち戻るということにいたした点はよろしいと思うのです。ただ経過規定の中で、従来の非組合員はそのまま非組合員として管理職にとどまるというような形になっておったかと私は記憶しておりますが、そうだとしますと、せっかく正しい原則に立ち返りながら再検討を怠るという結果になるわけでありますから、私は、この経過規定をも含めてこれはもう一度再検討して、正しい組合の自主的なあり方というものに立ち戻るようになさることが適当ではないか、こういうふうに考えております。この点は結社自由委員会の五十四次報告の第百項だったかと思いますが、そこのところを参照していただきますと、ILOのほうの考え方の精神というのもそういうところにあるのではないかというふうに考えるわけであります。  それから公務員法、これは国家公務員地方公務員もそうでありますが、この職員団体登録制度の問題です。登録制度の問題について従来取り扱いを見ておりますと、職員でない者が加わったり役員になったりいたしますと、取り扱い上登録が取り消されたり、あるいは登録が受理されなかったりしたという実例がございます。これは八十七号条約の、つまり公務員にも適用になる八十七号条約の第二条の事前の認可制という、つまり事前の認可がなくて組合を結成する自由という、あの規定に若干抵触をするというような考え方があるわけです。私もそのように考えております。ところで最近になりますと、何かこの点についての解釈を改めるというような話で、解釈さえ改めればよかろうというようなお話のようでありますけれども、今度の改正法案を見ますと、地方公務員法国家公務員法改正法案の中でも、大体登録組合というのを中心にして規定をしているわけです。末登録組合交渉ということについての明確な規定を欠いているというような点が考えられて、この点は松岡参考人がたしか指摘をされましたが、私もそういう点でもって、やはりこの登録制というのはいっそのことこの際はずしてしまうほうがきれいになるのではないか。しょせん職員でない者も組合員に入れないとILO八十七号条約に抵触する、こういう考え方なのですから、したがって、これは単なる届け出なり、あるいは通知なりというような形式に改めて、そしてこの登録制度というようなやっかいな問題を残す点はおやめになったほうがむしろよろしいのではないか、こういうふうに考えております。  それから組織のほうから考えてまいりますと、たとえば地方公務員のほうになってまいった場合には、地方公務員は任命主体ごとに登録をいたすというような形になるわけでございます。したがって、任命主体が異なるごとに小さな組合ができて、それが登録を受ける、こういうような形になる。そうしますと、たとえば産業別の横断的な組合をつくるのだというようなことを考えたような場合にも、あるいは非常に幅広い連合体をつくるのだというようなことを考えた場合でも、これはひとしくいまの登録制の問題にからまってくる。こういうようなことになるわけでありますから、したがって、登録制度があるために、やれ交渉が適当でないとか、適者であるとか、あるいは単位として交渉しなければいけないのだとかいうやかましい問題を起こす結果になるのではないか、こういうふうに私は考えております。  第三番目に指摘をしておきたい点は、八十七号条約の精神から考えてこの点は直すべきだということを、議事録の中の政府側の答弁といったようなものの中から拾ってみたところが、いわば在籍専従制度の禁止の問題とか、あるいはチェックオフの禁止の問題とか、こういうのが出てまいります。そのときに使われておりますことばは、八十七号、九十八号等、ILOの考え方は、相互不介入ということが精神である、だから在籍専従制度を設けて、それを認めるとか、あるいはチェックオフを認めるとかいうことは、いわゆる便宜供与になるのだ、こういう便宜供与になることをやったのでは、自主的な組合が育たない、いわゆる介入をしていることになるのだ、こういうようなお考えのようでございます。しかしこの点については、大体もう一つ高く上がってお考えになっていただきたい。ILOの考え方は、単に相互不介入ではなくて、労使対等という考え方があります。労使対等、相互不介入、そしてそれよりももう一つ高いところへ参りますと、ILOの機関憲章とか、あるいはフィラデルフィア宣言とかいうような附属書の精神から考えてまいりますと、使用者団体労働者団体を対等な立場に置いて、そしてお互いに協議をして、貧乏をなくしていく、こういうことがILOの理想である、こういった考え方に立っているわけであります。したがって、いままで論議をされておりました問題の中で、在籍専従制度のことについては、結社自由委員会では、これ以上取り扱わないという言い方をいたしましたけれども、それを置いていいとか悪いとかというような判断はいたしておりません。ですから別にILOは、在籍専従制を置いたから、それでいけないのだというようなものの考え方をしているわけではない、こういうことです。それから、ではそのことによって実際に不当労働行為的な介入が日本組合の場合に起こっているかというと、これは起こっている個所もありましょうが、起こっていない組合のほうが大体である、こういうふうに私は考えるわけであります。したがって、日本の国内的な労働慣行という点から見て、これがはなはだしく支障になっているというようなことは私は理由にならない、こういうふうな気がいたすわけであります。  そのほか、これはILOの正式の機関として、臨時に招集されたものではありますけれども、昨年の十一月二十五日から十二月の六日にわたる間に、公務員に関する労働条件についての専門家会議というのがありまして、十五カ国の代表が集まったその会議の大体の結論は、むしろ在籍のままの職員代表制を置くということが労使関係をうまくいかせる方向である、こういったような考え方を出しているわけであります。これはもちろん日本法律を直ちに拘束するような力を持つものではありませんけれども、国際的なものの考え方としては、大体ほかの国がそういう方向を差し示している、こういうことが言えるのではないかというふうに思うのです。この点はショップ・スチュワードの問題とか、フランスの協議制、あるいはドイツの経営協議会のような例をあげられました松岡先生のお話もありましたが、大体私もそういうふうに考えているわけであります。竪山参考人が申しましたように、この問題を考えるにあたって、私も同じように考えるのでありますけれども、およそ法律でものを規制すればそれでよろしいという考え方で問題を片ずけるのではなくて、法律というものはワクを広くとっておいて、そのワクの中でもって組織みずからが判断をして、組合としての健全なる発達を進めていく、こういうやり方をすることが労働組合としては正しいやり方である、つまり組織の問題と法律の問題をイコールで考えないということが、非常に大事なことではなかろうかというふうに私は考えております。したがって、専従制度の問題にしましても、チェックオフの制度の問題にしましても、法律でこれができないようにするという形ではなくて、法律でもってできるようにするけれども、そのできるようにすることの範囲内において組合がみずから判断をして、在籍でない者を専従にするとか、在籍の者を使用者側と協議をして、そのことによってこれをつくっていくか、その協議を土台としてこれを法制化していくか、こういうような道をとるのが賢明なやり方ではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  第四番目に、労使対等、労使不介入、そういう原則に立つとしますと、ちょうど松岡参考人が言われましたように、やはり労働政策についての大きなイメージというものが必要ではなかろうかというふうに考えております。現在の国家公務員法を見ますと、確かに国家公務員から団結権も制限し、団交権もきびしく制限し、そうしてストライキ権も禁止する、そうしてときにはあおり、そそのかした者に対しては刑罰を加える、こういったような体制をとり、他方においては、人事院を設けて、これに幅広い権限を与えて、この人事院の機能によって公務員の生活の安定、将来の安定というものを考えて、ひたすら公務に専念させよう、こういう一応の理想図をつくっている。これは一つの統一した形をとっているわけでございます。そこでそういう統一した形をとっていた場合に、はたして人事院がそのような機能を過去において十分に果たし得たかというと、これは現実に果たし得なかったということが私たちの考えでございます。そこで、そうだとすると、世界各国を見ますと、こういう体制に近い体制をとっているのは大体アメリカあたりでしょうが、他の欧州諸国におきましては、むしろストライキ権を認め、交渉、協議制度も設け、そこでこれを不可分に考えて、しかもその上に調整のためのさまざまな機関を設けて、それによって運営していく、こういったようなやり方をとっているわけであります。だからこの改正案の中で一番問題になっていると伝えられ、われわれが新聞紙等で拝見しておりますいわゆる内閣に人事局を設けるというこの考え方に対しましては、同時に組合のほうを対等な立場に置くという原理をやはり並べて立てないと、これは論理が一貫しないし、全体性というものが保てない、こういう考え方にならざるを得ないのではないかというふうに私は考えるわけであります。  そこで、むしろこの際労働組合を完全な組合としていって、そしてそこに団交権、争議権というものも禁止はしない。しかしこれに対して適当な調整の機関を設けながら、国民の利益とこれをうまく調和さしていく、こういうような考え方に進むというやり方が一つの賢明なやり方ではないか。こういう方向に向かって進まないで、つまり一方だけ片輪な改正をやるということに対しては適切ではない、私はこういうような考え方を持っております。  その場合に、もう一つ加えておきたいことは、同じく先ほどあげました公務員専門家会議の席上に出ました一つの考え方——考え方というよりは、ほぼ大多数の専門家の賛成をした意見によりますと、現在九十八号条約の適用、すなわち不当労働行為禁止に関する条約の適用については、公務員をはずすような規定になっているわけであります。これはやはりはずすべきではないだろう。公務員につきましてもいまのような労使関係というものを考えるならば、やはりこれは加えていくべきだ、こういったような考え方が出されておるわけです。したがって、九十八号条約のたしか第六条でありますか、公務員に適用をはずすというあの規定については、国際舞台においてやがて問題になってくる、こういうふうに考えるわけであります。  そのほかにまだ小さな問題がたくさんあるわけでありますけれども、なるべく二十分というふうに制約された時間をこえないのが礼儀であろうかと思いますので、大急ぎで二、三点を指摘しておきますと、たとえば、管理運営事項という問題でありますけれども、現在の管理運営事項というのは実はいたずらに紛争を起こしております。全林野関係におきましては、一ぺんに百九十三の支部の協約がこれによって破棄され、それから全逓におきましては、鹿児島地本、あるいは宮崎地本の支部におきまして、これが破棄されて、そのために訴訟になったり争いになったりごたごたやっている。こういった問題が非常に多いわけです。したがって、管理運営事項というあいまいな、いずれにも解釈できることばはなるべく避けて、むしろ、勤労条件等に関する事項については団体交渉の対象にするということ一本で進むほうが適切だというような気がするわけでございます。  いろいろまだ申し上げることがたくさんあると思うのでございますけれども、時間が参りましたので、これで私の意見の陳述を終わります。(拍手)
  12. 倉石忠雄

    倉石委員長 ありがとうございました。  最後に村田参考人にお願いいたします。
  13. 村田為五郎

    村田参考人 村田でございます。時間も迫りましたことと、他の参考人からいろいろ御意見も出ましたので、できるだけ簡単にお話を申し上げさせていただきたいと思います。  私も言論報導機関の一端につながる者といたしまして、所懐の一端を申し述べさせていただきたいと思いますが、これまで過去十四回にわたってILO理事会から勧告がありましたたびに、私たち報道機関に携わる、特に論説関係の担当者が、いろいろとILO八十七号条約批准促進について賛成の意見を述べてまいりました。そのつどこれがなかなか実現しないということについて、私どもはたいへんこれを残念に考えてまいりましたが、今度の国会こそは、私どももどうしても日本の国民的利益、国家的利益という立場から、八十七号批准案件承認するように努力していただきたいと、特に国会の皆様にお願いいたす次第であります。  私どもがILO八十七号条約批准承認案件につきまして、積極的に賛成の立場をとっております理由は、先ほどもお話がありましたように、第一点といたしましては、国連の専門機関でありますところのILOの根本的な精神というもの、また国連憲章、ILO憲章あるいは一九四四年の第二十六回ILO総会、いわゆるフィラデルフィア宣言においてうたわれておりますような精神にのっとって、結社の自由と団結の擁護が、今日私たち日本の国民といたしましてもきわめて重要であるということ。また世界の百十カ国が加盟しております中で、特に日本は常任理事国の一員ともなっております関係もございます。このILO八十七号条約案件がこの国会において通過いたしますことが、私たち日本の国民的な立場といたしましても、きわめて重要であるということを強調したいと思います。  第二点といたしましては、これまでのILO理事会の勧告からもいろいろうかがわれますように、日本政府はすでにこの批准についてこれをすみやかに促進するような確約をしておるのにかかわらず、なおこれを実現していないのはどういうわけかということについて、国際的な信用を問われておるわけでありますが、その点につきましても日本の立場ということを考えますと、日本がこのILO理事会の常任理事国といたしまして、今日果すべき役割りはきわめて大きい、そして今日日本の置かれております立場が、この四月からのIMF八条国への移行、さらには続いてOECD加盟というような事態に進みまして、日本が自由化への発展をいま進めております状態において、国際舞台において日本が果たすべき役割りがきわめて大きい。きのうもOECDのクリステンセン専務総長が日本にやってまいりましたが、先ほどの参考人意見の中にもありましたように、OECDの中に労働組合諮問委員会も設けられることになっていて、日本も当然この中に加盟をすることになると思います。その意味からも日本は、このOECDから、今後の国際舞台での自由化の問題について、労使関係の正常化、労使慣行の正常化という問題について、特に強く要求される事態が進んでくると思います。その意味から申しまして、もう日本は今日早くこの国際舞台でこの自由化の状態に即応していく必要があるということを第二の理由としてあげなければならないと思います。  また、現在日本労働組合が多数加盟しておりますところの国際自由労連が特に強い影響を持っております西ヨーロッパ諸国での、たとえばEECとかあるいはOECDに対する影響力という点から考えましても、日本といたしましては、この際、国際自由労連のその立場も考えて、日本がすみやかに、国際自由労連が促進運動をしておりますところのこの八十七号条約批准を進めることが必要であるという点が第三点であります。  さらに第四点といたしましては、ILO理事会から日本に対してすでに実情調査調停委員会の席で日本の実情を調査するために調査団を派遣することについて日本政府に問い合わせがまいりまして、日本もこれに対してその申し入れを受け入れるという回答をいたしておりますが、この九月ごろに予定されておりますところのこの調査団の派遣がもしもかりにも実現するということになりますれば、やはりこのことは労使双方にとりまして、日本の国際的立場の上からいって不利な状態となるのではなかろうかと思います。むしろ今日進んで八十七号批准案件承認し、そうして国際舞台においての日本の公正な立場を世界に表明することがきわめて必要な段階であるのではないか、これが第四点の理由であります。  このような観点、つまり間際的に日本の立場ががきわめて注目されているという立場から考えまして、いまこの批准を促進するとともに、同時にあわせて国内関係法案の改正もまた必要となってまいりますことは当然であります。先ほどからの話にありますように、公労法四条三項、地公労法五条三項の削除の問題はこれは当然のことといたしまして、そのほかの問題につきましては、時間の関係からできるだけ省略さしていただきたいと思いますけれども、問題点として考えられます職員団体目的につきましては、「勤務条件維持改善を主たる目的とする」という「主たる」という点について、必ずしも大きなこだわりを感ずる必要はないのではないか、それが特に政治的な目的に利用されるという点については、この法律のたてまえとしては政治的な行為がその中に含まれるものではないということをこの点では考えてよいと思います。  また、職員団体登録、非登録の問題について御意見がございました。参考人の方からもいろいろ問題点が指摘されましたけれども、これはやはり三十四年の労働問題懇談会答申の中にもありますように、労使関係の正常な確保、さらに相互不介入の原則をたてまえとして、そのたてまえから考えますと、登録、非登録ということは問題でない。相互不介入、自由な原則からいって、ILO八十七号の精神からいって、この規定は非登録登録であることを問わないというのが原則であると思います。  三といたしましては、今日いろいろ問題点といわれておりますいわゆる中央での交渉あるいは話し合いの点でありますけれども、交渉ということばはこの場合にはむしろ当てはまらない。地方団体地方公務員との交渉ということでありますれば中央と地方公務員との交渉ということはあり得ないわけでありますから、この点につきましては、むしろ不満を表明するあるいは意見を開陳するという意味での話し合いというものは別に持つ必要はあると思いますけれども、しかしながら交渉ということをこの中にうたう必要はないのではないかという点であります。  四は在籍専従の問題でありますけれども、在籍専従につきましては、今日まで民間につきましてもまた官公労につきましても、格別大きな支障はなかったように思います。しかしながら、あまり無制限に在籍専従をそのままにしておくことはどうであろうか、やはりこの点については一定の制約、今度の法案に規定されておりますような猶予期間を設けてその制限をすることが必要な条件ではなかろうかと思います。  五としていわゆるチェックオフの問題でありますが、この点もまた在籍専従と同じように、労働組合自主性という立場から考えてみますと、やはりチェックオフは廃止するのが原則としては正しいと思います。ただこれまでの慣行からながめてみますと、実際に大きな弊害はなかったように思います。この点についてはむしろ地方の議会などの決議などで自主的に御決定になるのがいいのではないかと思います。  六として、人事院の改組、人事局を内閣に設置するという問題について、人事院の権限を大幅に制限する点が取り上げられておりますけれども、人事院の第三者的な公正な立場というものは今日まで非常に大きな役割りを果たしてきたと思います。したがいまして、私は人事院の今日のあり方、これはかなり重要な要素と考えます。また人事院が持っておりますところの権限のうち、特にその公正確保というような意味において、分限、懲戒の基準設定というような問題については、少なくとも人事院に残しておくことが当然であろうと思います。  次に、公務員制度、公共企業体のあり方についていろいろ議論がございますけれども、この点につきましても今日労使双方関係からながめてまいりまして、根本的な検討を加えるために調査会あるいは審議会においてこの問題とこの際真剣に取り組む必要があるのではないかと思います。また公務員公共企業体等のあり方全般につきまして、やはり私はILOの精神から申しますと、確かにただいまの野村参考人の御意見のような点があろうと思いますけれども、しかしながら同時にまた、公務員あるいは公共企業体の職員には、それぞれ特別な国家的、国民的な立場に立っての公の立場というものがあろうと思います。その立場をやはりこの問題の中で強く考えておく必要がある、こういうような点からいって、今後の調査会あるいは審議会においては、これらの点をよく勘案しながら、十分御検討を願いたいと思う次第であります。  以上、私申し上げました点は、要するに、ILOの根本的な精神から申しますと、人間としての私たちの立場、それは公務員であるとあるいは民間人であるとを問わず、すべてその自由、そして人権を尊重するという立場から考えなければならない問題であると思います。この見地からながめてまいりますならば、私は、いまいろいろと各党各派の間で御意見がありますところの意見の相違も、十分それはその間のお話し合いによって解決できる問題であろうと思います。この通常国会においてぜひともこの案件批准承認を得ますように御努力をお願いしたいと思う次第でございます。  時間がまいりましたので、私の話はこの程度で終わることにいたします。(拍手)
  14. 倉石忠雄

    倉石委員長 これをもって一応参考人各位の御意見の開陳は終わりました。  この際申し上げますが、松岡参考人はやむを得ない所用のため、これにて退席されますので、御了承願います。  松岡参考人には御多用中にもかかわらず御出席を願いまして、貴重な御意見をお伺いできました点を厚くお礼を申し上げます。  午後は二時三十分から再開し、参考人に対する質疑を行なうことといたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  15. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  午前中退席されました松岡参考人を除く参考人に対する質疑を行ないます。質疑の申し出がございますのでこれを許します。  なお、質疑の申し出が多数になっておりますので、申し合わせの時間一人十分程度をお守りの上、質疑をなされるようにお願いいたします。森山欽司君。
  16. 森山欽司

    ○森山委員 質疑時間十分以内ということでもございますしいたしますので、長い時間の質疑を差し控えさしていただきます。  私が参考人各位に御質疑を申し上げようと思いましたのは、特に本日の松岡三郎参考人のお考えについてでございまして、私はかねがね松岡参考人のお考えというものについて、たとえば昭和三十六年の「労働経済旬報」四七〇号に、「公務員人事管理政策」というのがございますが、こういうものを通じて「ILO八十七号批准公務員改正を結びつけるのは、ILO批准と引換えに安保体制の推進をスムースにするため、命令一下火の中水の中に入ることも辞さない公務員体制を実現しようとする便乗政策断行にほかならない。」という考えをお持ちになって、るると御所見をお述べになっておられますし、本日もまたそれと同工異曲のお考えがございました。私としてはとうてい納得がいかないわけでございます。その点についてさらに松岡参考人のお話を伺いたいということで質疑の申し出をいたしたわけでありますが、残念ながらお帰りになってしまいました。  そこで、野村先生がお見えになっておられますので、野村先生にごく簡単に私はお伺いいたしたいと思います。  松岡三郎参考人のお仕事は、この本日の通知によりますと明大教授ということになっておりますが、いろいろ調査いたしてみますと、総評の中央講師団法律部門担当、日教組の講師団員、労働者教育協会の講師、母親大会の講師、こういう種類の仕事を御担当されておる。この際野村参考人にお伺いいたしますが、野村先生も総評の中央講師団法律部門御担当というお仕事にあられるかどうか、ちょっと伺いたい。   〔発言する者多し〕
  17. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  18. 野村平爾

    野村参考人 私は総評の講師団というものがあるかどうか存じません。任命書もいただいたことはございません。
  19. 森山欽司

    ○森山委員 総評の法律部門のお仕事についていろいろ御相談にあずかっておる御立場にあられるかどうか。
  20. 野村平爾

    野村参考人 相談に来ればどこでも相談に応じます。
  21. 森山欽司

    ○森山委員 私の質問は以上であります。
  22. 倉石忠雄

  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 野村先生並びに慶谷先生、竪山先生にお尋ねいたしたいと思います。  ILO八十七号条約の第五条は、連合及び総連合の規定をしております。さらに第六条は、その連合並びに総連合は、いわば単位組合と申しますか、そういう組合と同様な規定の二条、三条、四条を適用する、こういう規定があるわけです。  ところが、日本の労働法体系は、労組法、公労法地公労法、さらに国家公務員法地方公務員法とあり、このたび改正になりました連合会の規定も、実は地方公務員間の連合会は単位組合と同じように認めておる。国家公務員間の連合会は同じように認めておるわけです。ところが、国家公務員地方公務員との連合会、あるいは一般の労働者、労組法等の組合との連合会、こういうものが何ら法上に規定されておりません。たとえば都労連という組織を考えてみますると、都労連には一般職の地方公務員がある。それから同じ地方公務員の学校の教職員組合もある。さらに水道、都市交通のような地方公営企業の組合員がおる。さらに単純労働者の一般労組法の適用の組合員がおる。これらが一緒に連合会を組織しておる。こういった連合会に対して何ら法上に規定をされていない。これは一体八十七号条約の精神に合致しておるかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  24. 野村平爾

    野村参考人 私は先ほど公務員についての登録制度をはずしたほうがいいという考え方を述べました。私のそういう考え方を述べる基礎にありますのは、つまり国家公務員地方公務員とが一つの団体をつくっても、これはILOとしては当然そういうものを認めるわけでございます。そういう認め方をする以上、登録場所がないというのは不都合であるだろう。こういうふうに考えて登録制度をはずしたほうがいいだろう。ただし組合交渉を申し入れるときには、自分の組織下にある労働者のために交渉を申し入れる、こういうかっこうになるのだという考え方に立っているわけです。
  25. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 ILO八十七号条約の第五条の問題について御質疑があったわけでありますが、この労働者団体といいますのは、使用者に対して労働者団体の連合体をつくるという趣旨ではないかと思います。それでいま御指摘のように、労働者組合体が事実上つくられていますし、またそのように活動をしておると思うわけであります。それに対して何ら禁止措置が残されておりません。現状を考えてみますと、このILO五条の精神も十分に生かされているのではないかと考えるわけでございます。
  26. 竪山利忠

    ○竪山参考人 御指摘のとおり、私はいろいろな形の連合組織、それがやはり活動を認めていくという方向だと思います、ILOが。  ただし、いま私たちの労働運動の現状から見まして、大きな欠陥があるんじゃないかと思います。それは企業別の組織であるということ。したがいまして、労働協約から労働条件の決定はすべて企業内になっておる。こういう姿では、そういった連合組織が一〇〇%の意味においてやはり自己主張ができないような盲点があるのではないか。これが横断的組織になっておりますれば当然そういう連合組織は、さっきおっしゃったような方向に引き続きができると思いますけれども、こういう点において企業内組合という特質を何とかヘッド・アップしなければ、あるいは団体交渉のしかたも企業内だけで最終決定を持つのだ、そういうやり方をしていたのでは、やはり交渉相手がどうだとか、当事者能力がどうだとかいうことで、非常な損害を受けるのじゃないか、こう思うのです。  いま一つは、それに関連するわけでありますけれども、いわゆる工場委員会とかそういうふうな組織運動があるわけです。やはり向こうでは横断組織があって、そしてその横断組織が工場内や企業内に根をおろすという必要から、従業員だけの集団としての工場委員会というものを認めておりますから、そこで団体交渉とか、そういったショップ・スチュワードの連動というものが相補足し合う、そういう関連があると思うのです。日本の場合は、それが一人でもって二役をしなければならぬというところに不明確なものが残っておりますから、さっき言われました連合体等の主張を充実させるためには、労働組合あり方そのものを根本的に充実させる必要があるのじゃないかと思います。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は立法論としてお聞きしておるわけです。それは日本労使関係法がいわば行政法のワク内で区別されておる。国家公務員国家公務員法によって規定され、国家公務員間の連合会しか法律に認めていないわけです。もちろん禁止はしておりません。禁止はしておりませんけれども、登録問題を除いても、交渉については何も差別がないんだということを政府自身がILO答弁しておるのです。それはいいといたしまして、登録、未登録にかかわらず地方公務員国家公務員との連合会というものは法律に何にも保護規定もなし、何らの規定がないのです。それは事実行為としては禁止はしていないでしょうけれども。そこで、何らかこれは規定をする必要があるのじゃないか。  もう少し言いますと、結局こういう行政法の中に労使関係規定を置いて、それを細分しておるところに間違いがあるのじゃないか。もちろん国家公務員には国家公務員のいろいろな特徴があるでしょう。あるでしょうが、それは一本の法律の中においておのおのそれに対する対応の処置をとればいい。これは戦後労組法が一本のときと同じ状態ですね。同じ状態にしなければ、単に五条だけでなくて、六条の規定ですね。六条の規定というのは、要するに単位組合と同じだ、私はこういう意味だろうと思う。ですから、この規定から見れば、個々に細分しておるというところにILO八十七号条約としては問題が出てくるんじゃないか。少なくとも九十八号条約は行政の管理をする公務員については適用ないとしても、しからば地方公務員と地方公営企業の労働組合とが連合会をつくることができない。その連合体は団体交渉保護がない。こういうことになれば九十八号条約違反という問題も起こる。だからここに私は根本的に再検討の問題があるのではないか、こういうように感ずるのですが、もう一度ひとつ御答弁願いたい。
  28. 野村平爾

    野村参考人 私の申し上げた意味もその点とは違わないのですけれども、組合というものは組合員が自主的につくるものでございます。ですから、いかなる公務員でも、自分たちと共同の利益を守っていく必要があると思うならば組合をつくれるというのがILOの考え方なんです。そういう意味においてつくる連合体であるということならば、その連合体の団結権というものが保障されなくてはならない。これが八十七号条約の考え方だと思っております。
  29. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 先ほど公務員労働関係が行政法だというふうにお話しになりましたけれども、私たちは公務員労働関係につきましては純粋に行政法であるとは理解していないわけです。やはり労働法の特別法の……。(多賀谷委員「行政法の中で区別している」と呼ぶ)それをそういうふうにとれるか、いろいろ見解の相違もあるわけであります。私たちは労働法の一つの特例として公務員労働法というものとしてとらえておるわけでございます。  この労働者の連合、労働団体の連合会を法律保護するという点の御質疑があったわけですけれども、わが国労働組合の組織というものは企業別が主体でありまして、そこまで十分に行動するまで発達していないように思うわけでございます。そういうふうな連合体を法律保護するといたしまして、その実益というものがどこにあるかということが問題になるわけでございます。将来そういうふうな連合団体というのが発達いたしまして、それに対して国が積極的に、まあ干渉するというふうな事態になりましたら別問題でございますが、現在のところはそれを立法的に保護するというふうな要請はないのではないかというふうに私は判断しているわけでございます。
  30. 竪山利忠

    ○竪山参考人 日本の労働法体系が非常にばらばらになったり、まちまちになっておるということは私も認めますから、そういう点は整理していかなければならぬと思いますが、組合組織の実体論というものも十分やはり考慮に入れていただかなければならぬのではないか。さきの主張からそう思うのですが……。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が聞きますのは、実は政府——たとえば日教組の中に国家公務員の教職員も入っておるわけです。ところが、国家公務員の教職員については、日教組は、最終的な国家公務員の教職員についての任命権者である文部大臣に対しては、日教組それ自体としては地方公務員の主たる団体であるから、これは国家公務員についての労働条件について交渉する資格はない、こういうことをおっしゃる。とにかく当該包含をする国家公務員の教職員労働条件についても文部大臣交渉をする必要がないし、また日教組は資格がない。ただ国家公務員の諸君から委任を受けた場合、この場合には委任団体として日教組は資格がある、こういう論理を展開されるわけです。  そうすると、一体自分組合の中にある構成員の勤労条件すら交渉のできない組織ということになれば、一体これは八十七号条約規定をしているその規定から著しく離れるのではないか、こういうように考えるわけです。  そこで私はお尋ねしたのですが、野村先生の見解は一応わかりました。要するにその構成員の勤労条件、これを改善するためにはその当事者と会うのだ、こういうことですから大体趣旨はわかりましたが、慶谷先生はそういうふうにおっしゃらなかったのですから、ひとつ御答弁願いたいと思います。事実問題として非常に支障がある。
  32. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 私もその構成員労働条件につきましては交渉はできるのではないかというふうに考えておるわけでありまして、その点それと異なる考え方を持っておるわけではございません。ただその場合、組合の組織がどうあるかという問題だけではないかというふうに考えるわけでございます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に八十七号条約の事前の認可の規定と関連をして、登録問題は先ほどから議論がありましたのでよくわかりましたけれども、労組法の資格審査、この労組法の資格審査は、これは事前の認可に該当しはしないだろうか、こういうように考えるわけです。それはたとい資格審査をしなくても、不利益を受けた当該組合員の場合は地労委に救済の申し立てができます。ところが労働組合団体交渉の拒否にあった場合、これは資格審査に通らなかった場合にはその救済の申し立てばできない。そうすると、この労組法にいう資格審査というのは、これは事前の認可になる。少なくともILOでも実質上組合運動に響影がある、こう考えるのですが、三先生から御意見を承りたい。
  34. 野村平爾

    野村参考人 かつて二十四年に労組法が改正になりましたおりに、私はやはり公述人としてここへ参加したことがございます。その際、この労組法五条一項という規定はそういうような御趣旨のような規定になるのではないかということを申し上げたことがあるわけです。その考え方は、基本的には別に改めておりません。  ただ、若干考えられます点は、第二条のただし書き第一号、第二号等の考え方と、それから第五条の二項の考え方を硬直に取り扱わない限りは、第五条一項の規定があってもさほど組合の自主的な団結を妨げるようなものにはならないのではないか、こういうふうに考えておったんです。  ただ、その後の実例として私の記憶しておりますのは、二十八年かに、全自の日産の分会がこの規定に基づきまして不当労働行為の救済申し立てをしたときに受理をされなかったという件が記憶されております。もしそういうことがありますと、この規定は問題になるというふうに考えております。
  35. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 結論的に申しますと、労働組合法の資格審査の問題はILOの八十七号条約第二条の事前認可の規定に触れることはないというふうに考えるわけでございます。それで、現在労働組合法におきましては、労働組合の成立は自由でありまして、ただ労働組合法上の特別の恩典を与えるというためにこの資格審査をしておるわけであります。いろいろ労働委員会で仕事をしている経験から申しましても、別に現在の労働組合がその資格審査で落ちるというのはないわけでありまして、その点は労働者権利を侵害しているというふうには考えておりません。ただ将来の立法政策として、そういうふうな資格審査制度を維持するかどうかという点は残るのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  36. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私も大体同じような考え方でございまして、そういう疑いがあるわけでございましょうけれども、現実の運営のしかたという点ではそこまでいかないのではないか。もし実情を見ていまして、中には非常に御用組合ができたというようなことも審査の対象になるだろうと思いますが、運営の実情からいいましてそこまでには至っていない。そしてILO条約においては、多くの新興諸国が労働法を実施しておりますが、その場合に、この登録制度政府組合——もちろん新興諸国の政府はかなり急進的でありますし、社会主義的でもあります。そのためにそういう点では政策自体が保守的だというわけではありません。しかし自分らの支持を受けるために、その登録制度を利用してかなり強固な政府組合の色彩を持っている場合があります。こういった世界的な事例が頭にあって問題になるのじゃなかろうか。日本の現状としてはそれほど弊害はないのではないか、こういうふうに思います。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この労組法の資格審査の規定は、当時司令部のほうから示唆があって、いわば指導的なものを法律に入れたところに問題が今日残っておるのではないか。私は、個々の労働者の場合は組合の資格審査が通らなくても救済ができる、こういうことですから、組合自体のいわば団交拒否という場合には救済の方法がない。これは恩恵的といわれるけれども、やはりそういうものがないという場合とあるという場合とでは実質上に理論として影響があるんじゃないか。ですから、この際八十七号批准にあたっては、これを通すために政治的にいろいろ努力するのは別として、理論としてはこの際やはり資格審査の問題も触れておく必要があるんじゃないか。こういう意味でお尋ねしたわけです。先生方の御意見は一応わかりましたが、私としてはもう一度検討してみたい、こういうように思います。  続いて、管理職組合規定、これは国家公務員地方公務員にはじめて創設されるわけです。管理職団結権がないというのはILO八十七号条約違反だということで指摘を受けております。しからば、公労法地公労法の今度の改正のように何も規定をしなくてもいいんじゃないか。公労法地公労法は何ら規定がないのです。ただ禁止がないだけで、それを削除しておるわけですから規定がない。ところが国家公務員法地方公務員法の場合にはなぜ管理職組合というものを創設し、それを規定をしたか。これがどうもわれわれ納得ができないのです。これをひとつお聞かせ願いたい。
  38. 野村平爾

    野村参考人 たしかこの問題は公労法関係のほうから起こってまいったわけであります。それは従来の公労法の中に管理監督の地位にある者、機密の事務を取り扱う者は組合員にも役員にもなれないというふうに規定してあったわけです。ところが三十三年、三十四年ごろにわたりまして非常にたくさんの管理監督職員がつくられました。その結果としまして大体十二、三人に一人くらいの割合で管理監督職ができてしまったのです。これは法律がそう規定してあったものを、解釈運用上の問題として結果的にそのようになってきた。たとえば二十二万いる全逓という組合では約二万人そういうような者があるというようなことになってくる。  ところが、今度の改正を見ますと、先ほど来、私はこの点を指摘いたしたのでありますけれども、経過規定の中で従来非組合員になっている者はそのまま非組合員にしておくということになっていて、これを再検討いたしません。画検討をしたほうがよろしいというのが私の意見だった。私の意見のように再検討いたしますと、残るところは、使用者もしくは使用者利益を代表する労働組合法第二条ただし書き一号の規定に該当する者だけが残ることになるわけですから、したがって管理監督職の組合というようなものは要らないという結果になるのだろうと思うのです。  その規定を今度なぜそのまま国家公務員法のほうに移したかということは、私は立法当事者でありませんのでその意味がよくのみ込めないのでありますが、私が答弁しなければならないものでございましょうか。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ほかに御意見はございませんか。
  40. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 私も現在の法律がどうしてそういうふうな規定になっておるかという事情はよく存じませんけれども、しかしながら、ILO八十七号条約批准した暁におきましては、管理監督の地位にある者も当然組合をつくれる、そういうふうにするのがあたりまえだというふうに考えておるわけです。
  41. 竪山利忠

    ○竪山参考人 非組合員範囲という形で日本には特殊な状況があるわけでありまして、管理者のほうはできるだけたくさん管理職をつくって、実質には管理職でなくとも非組合員を争奪せよ、組合のほうは逆の形で対抗すればいいというのが日本の特殊な実情ではないかと思うのです。そういう意味におきまして、どういう趣旨か私も存じませんけれども、やはり管理職と非管理職を寸断するというような政策が出ておるのではなかろうか、こう思うのです。  これに対しまして、私たちはどう考えたらいいかということになりますと、私は、いままで申しましたように、労働運動とか労使関係慣行という中から実体が生まれなければならないのではなかろうか。それに応じて法的な措置が講ぜられるという順序になるべきであります。そういう点が、今日の場合におきましては法律のほうから先んじてこれを分断したりあるいは義務づけたりするということは誤りでなかろうかという感じがします。  それじゃ、労働組合管理者である人たちでもできるだけ多く組合の中に取り込んだほうがいいのかということになりますと、運動の歴史を見るとわかりますように、労働組合である以上は、中に規準がありまして、できるだけ拡大したらいいというわけにいかない。もしそれを拡大するならば組合自体が弱化したり、病的現象を起こす。この法則から労働組合の組織のしかたが出てくると思います。  そういう意味におきまして、管理者をどの範囲まで入れるとかあるいは入れるべきでないというような問題は、法的に規制するものでなぐ、労働組合自体が労使慣行の中から決定すべき問題だ、こういうふうに考えるのであります。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に一問お聞かせ願いたいと思います。  政府公務員労使関係を取り扱う場合に、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」という憲法第十五条を常に引用されるわけであります。これを一体先生方はどう解釈されるのか。今度の人事局が設置されることになると、分限、懲戒、降等、いわば中正、公正を要求しなければならない公務員に対して、現在の日本の政治の前提は政党政治ですから、こういったいわば中正を要求されている者まで時の政党の内閣が人事局によって支配をする。こういう可能性が出てくる。これと憲法の全体の奉仕者で一部の奉仕者でないという規定とどういうように調和して読むべきであるか。これは非常に疑問に思っているわけですが、各先生からひとつ御意見を承りたいと思います。
  43. 野村平爾

    野村参考人 私は、全体の奉仕者という観念は、たしか二つの流れに沿って生まれてきたというふうに考えております。  一つは、アメリカでかつて政党が交代するたびに役人がかわった、こういう歴史がある。そこで、政党がかわっても役人はかわらないんだというその意味において、むしろ国民に奉仕する者だという意味をはっきりさせる必要がある。これはアメリカ公務員法のできた理由はそこにあるというふうに考えております。  それから、ドイツの憲法で、かつて官吏といわれたものが、今度公務員というふうになって、公務員は全体の奉仕者となる。これは第一次世界戦争のワイマール憲法でございますか、そのときにそういうことばが使われました。このときまでにはドイツにおきましては、官吏はあの当時のカイザー、皇帝に対して忠誠を誓うところのものである、こういう考え方になっていた。そこで、そういう一部の特権者に奉仕するものではなくて、国民のために仕事をするものだ、こういう考え方がドイツ憲法の考え方であったと思うのです。  したがって、全体の奉仕者というのは、むしろ公務員のやる仕事の性質のほうから出てくることでありまして、特定のものに従属するという考え方ではないというふうに私は考えているわけでございます。これがごく簡単ではありますけれども、全体の奉仕者意味としてはそんなような考え方をしている。  そこで、分限その他大幅な人事院の権限が今度は内閣の人事局に移る、そういうことになった場合に、一体全体の奉仕者という考え方にかえって逆に抵触をするのではないかという、そういう御質問のように伺ったのでありますけれども、これを調整するための適切な機関というものがあればよろしいわけです。ところが、そういう機関、たとえば労働組合職員団体、こういったようなものがあって団体交渉をするとか、あるいは協議をするとかいうようなことによってある程度の世論の反映をそこにやらせるということができるということになればともかくも、そうでない場合になりますと、かえって独立の機関の手にそれを置いておくということのほうがむしろ公務員制度には合致する。こういうことになるのではないかというふうに考えております。
  44. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 憲法第十五条二項の、公務員は国民の全体の奉仕者であるということは、従来日本の官吏は天皇の行吏である、天皇の公務員であるといわれたわけです。それが国民主権主義になりまして、国民全体に奉仕するのが公務員である。そういう意味におきまして、憲法十五条の二項が生まれたのである、そういうふうに解釈しているわけでございます。  ところで、人事局の設置との関係でございますけれども、私は人事局の設置と憲法十五条二項との関係は全然ないと考えております。
  45. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私は別に言うことはございませんが、野村先生が言われましたように、アメリカのスポイルス・システムというものが非常に乱用されまして、そういう点でいわゆる人事行政につきまして中立化する必要があるというような趣旨でつくられまして、アメリカの体系では人事院とか、あるいはそういった人事機関というものに対して非常なウエートをかけておるわけでございます。  したがいまして、雇用関係にしましてもいろいろ考え方があると思いますが、やはり公務員のほんとうの雇用者は国民である。そして国民の意思、総意を代表するものは国会である、こういうふうなつながりでありますから——ことに政党内閣でございます。その政党内閣におきます公務員制度というものが、それに直接やはり動かされていって中立性を失う危険性が非常に大きいわけでありますから、そういう点ではこれはやはり沿わない、そういうふうに考えるわけであります。それだけに今回の人事局の設置につきましては、組合側の態度でもやはりその重大性を認識できまして、人事局の設置を交換条件にするような態度は組合のとるべき態度ではないのではないかというのが私の意見でございます。
  46. 村田為五郎

    村田参考人 私は、公務員——公務員というのは戦前も戦後も、やはり公共福祉のためには非常によく考えている人たちである。またそのためによく仕事をしておる方たちであると考えております。そのためには国としても十分公務員に報いるだけの制度がなければならないと思っております。  フランスで、ドゴール大統領が出る前の時代にたびたび政変がありましたのにかかわらず、比較的政局がよく安定し、経済がまたわりあい動揺しないで過ごしてきたというのも、フランスの公務員が非常にしっかりしたバックボーンを持っていたというところに原因があると思っております。  したがいまして、このたび人事院が改組になりまして、あるいは人事局に移るといたしましても、またその仕事がどのような結果になるかわかりませんが、その結果がどうでありましょうとも、公務員の立場というものは非常に公共福祉を考えておる立場である。その意味からすべての問題を解決すべきであると考えております。
  47. 大場鐘作

    大場参考人 私も憲法の、公務員が国民全体に対する奉仕者であるということは、結局主権在民というのに対応して設けられたものだと思います。それが一点。  それから第二点は、やはり公共福祉というものを守り、これを促進する立場にあるということが一つだろうと思います。  したがって、公務員あり方については、やはり忠誠あるいは公正を要請されます。それに対して人事院というものが設けられ、中立的な立場から処理をしていくということになったと思います。  したがって、私も人事局人事院のいまやっておる仕事を大幅に移すということについては賛成をいたしません。ただ、雇用関係あるいは仕事を進めていく上に能率とか、あるいは公正とか、ここに出ておりますような、あるいは服務の状態とか、そういうものを管理するのは、別の第三者機関ではなかなかむずかしいのではないか。実際には、やはり各省庁なり、あるいは内閣に一つのセクションを置いて、そういう点を管理することがむしろ能率をあげるという意味では必要なのではないだろうかというように考えます。したがって人事局を設けるということについては、そこに移す内容というものは一定の限度をもって考えるべきであろうと思いますが、人事局を設けるということについては私は賛成をしておるわけであります。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に一点。  村田先生、フランスの例をあげられましたが、フランスは御存じのように公務員はみな争議権がある。そういたしますと、先生のおっしゃる公共福祉というのと、公務員の争議権を禁止するというのは何ら関係がない、こう考えてよろしいでしょうか。
  49. 村田為五郎

    村田参考人 私の申し上げましたフランスの例は、フランスの公務員全体の国民的な気持ちとしての問題でございまして、何ら争議権の問題などに触れてのお答えではございません。
  50. 倉石忠雄

    倉石委員長 山本勝市君。
  51. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ちょっと二、三お伺いしたいと思います。  最初に伺いたいことは、松岡先生のお話の最初に、一般的な態度として、親族法とか相続法とかいうようなものは、これは各国の特殊の国情というものを考慮しなければならぬ。しかし労働関係法といったようなものは、イギリスの労働者日本労働者も変わりないので、それで各国の特殊事情を考える必要はない。私はこうおっしゃったように受け取ったのですけれども、質問できなかったのですが、非常に驚くべき意見だと私は思ったのです。それで、ほかの先生方が同じような考えをまさか持っておられないと思いますが、持っておられるのかどうか、結論だけを伺いたいと思うのです。私は、労働関係法で問題になっておるのは、労働力とかあるいは資本とかいう、そういう一つの物的なものが問題になっておるのじゃなくて、労働者と、あるいは資本家とかないしは使用者という、人間関係が問題になっておるのだと思う。それで人間関係というものはいつでも歴史的、社会的な性格のものだというのが私の考えであります。ですから資本とか労働力とかいうものには国籍はなくても、資本家とか使用者とか労働者というものには国籍がある。学問や技術には国籍はなくても学者や技術者には国籍があるといわれておるのも同じ理由だと思うのであります。そういう点から申しますと、人間関係規定するものとすれば、労働関係法は当然に歴史的、社会的に各国とも、いわんやそれぞれの国の国情というものを考慮に入れなければ真に正常な関係というものは生まれてくるわけはないと思うのですが、いかがでしょうか。どういうお考えでしょうか。ちょっと最初に伺いたいと思います。野村先生から結論だけ……。
  52. 野村平爾

    野村参考人 私は、松岡先生がどういう意味でおっしゃったか、そのことについてお答えするわけではないのです、私の考え方として申し上げたいと思うのです。  労働条件を各国ともに同じようにしていこうというのがILOの考え方なんです。各国ともに同じような条件にしていこうという考え方は、これは国際的に共通の考え方であります。それから労働関係でありますが、労働関係にワクをつけていろいろこまかに規定をするという段になりますと、それはその国々の実情というものを反映してつくらなければいけない。しかしILO条約というのはおよそどんな国であってもこの程度のことは共通にやりたいという、その表現がILO八十七号条約になっているんだ、こういうふうに考えるわけでありますから、おそらくは松岡さんもそういう意味でもって、これはその国の特殊事情ということではないのだとおっしゃったのではないかと私も聞き取りました。そうでなくて、すべてのことがその国の労使関係というものの現状を無視してやってよろしいのだというような、そういう御発言だとすれば、私ももちろんそうではないと考えております。
  53. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ちょっと、簡単でけっこうですが……。
  54. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 労使関係というのは基本的には人と人の関係でございますから、したがってそれぞれの国の工業化の発展段階あるいはその国における経営のやり方、あるいはその国の慣習によって影響を受けるものでありまして、やはりイギリスあるいはアメリカ、ドイツと日本と比べれば、それぞれの国におきまして労使関係の特質というものがあらわれておるわけであります。したがって労使関係の問題を考える場合におきましては、そういう点を十分に考慮しなければならないと思うわけでございます。ただ工業が高度に発展をすればするほど労使関係はだんだん同一化傾向をたどるであろうというふうに考えております。
  55. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私は、いままで主張しましたたてまえから、やはりその国の発展段階あるいは歴史的、社会的事情があるということは強く主張しておりますけれども、その中でもどうしても共通、普遍なものがある。どちらかといいますれば、日本の労働事情や労働立法は模倣といわれるかもわかりませんが、その基礎的な点についてはやはり近代化しなければいかぬ。さっき団交権、ストライキ権のことを申しましたが、やはりヨーロッパの先進国と同じような基本ラインを一致しなければいかぬ。それを具体化する中においては、日本のいまの労働組合労使関係の発展事情というものを参酌する、こういう立場をとっております。
  56. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ただいまの問題は、私は御意見は御意見として、たとえば裸で歩いておる労働者と、それから自家用車あるいは自家用飛行機を使っている労働者とが、たとえば労働時間について同じ労働時間にしたいんだという、希望は希望かもしれませんけれども、そういうことは少し無理じゃないか。だから同じように少なくともここまではやりたいという希望ならば——また生産性が非常に低い砂漠の中の国と、生産性の高い国と、最低労賃についてこの額くらいまではといっても、これも無理じゃないか。これはしかし意見になりますからなにしますが、第二に、これは野村先生に伺いたいのですが、法律というものについての意味ですね。法律で禁止してやるよりも、法律というのはワクをきめるのだ、ワクの中で自由な判断で行動をさせよう、こういうふうなものだというふうな御意見であったと思う。まさに私もそのとおりだと思うのですが、そのワクというのはやはりこういうことはしてはいけないんだという禁止的な規定、私は主たるワクはそれだと思うのですよ。ちょうど自動車を自由に運転してよろしい、こういう場合にほんとうに自由に運転し得るためには右側を通ってはいかぬ、この線から入っちゃいけない、こういうようにはっきりしてくれてこそ運転手は自由に運転できますけれども、その禁止のワクがあらかじめはっきりきまっていないで、そうして自由な判断でやりますと、かえっていざこざが起こってその自由が阻害される。ですから八十七号条約の十一条の、その自由な行使をさせるというための措置の中には、いろいろな意味の措置があると思いますが、いけないことはいけないと初めからはっきりと明定しておく、これがかえって自由な活動をさせるゆえんだろうと思うのです。ですから禁止的事項はワクでないという御意見では私はないんだと思いますが、しかしおことばの中に、禁止的なことよりもワクをきめてとおっしゃったが、そのワク自身が私はむしろ禁止的な性格を持っているものでないかということと、それからもう一つ、ワク、つまり自由に団結権を行使する、その他すべてほかの自由権を行使する場合のワクをきめるべき原則というのがやはりあるのじゃないかと思うのですが、野村先生のそのワクを定めるについての原則というふうなものを、ひとつ二、三お教え願いたい、こういうことです。
  57. 野村平爾

    野村参考人 一般論として交通法規の例をあげられましたが、交通法規はまさにそのとおりでございます。労働組合がワクをきめるということで、たとえば八十七号条約でつくってあるのは、八十七号条約が国際的な常識としてきめたワクであります。だからこういうワクの範囲内でおやりなさいということを私実は申し上げておるわけなのでして、別に自動車がどこを飛ばしてもよろしいとか、右側をかってに飛ばしてもいいとか、スピードは幾ら出してもよろしいとかいうような、そんなむちゃくちゃなことを私はちっとも申し上げておらないわけであります。登録制度とかそれから在籍専従制度についての取り扱いのしかたについて、私は具体的にワクをはめてはワクのはめ方が適当でないだろう、こういうふうに申し上げたわけであります。
  58. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 まことにかってなことですけれども、どうしても四時半までに大阪ビルに行かなければならぬものですから……。それで、お伺いするのも決してあげ足をとったり、そういう意思は毛頭ありません。ですからお答えもいろいろな弁解といってはなんですけれども、こういう意味で言ったんじゃないというふうなそういうお答えでなしに、ひとつ気楽にお答え願いたいと思うのです。  もう一つ第三に、このILOの中に社会主義の国家がたくさん入っておる。それでその社会主義の国家においての労使関係というものは自由国家と違いますから、大体国営事業あるいはそれに準ずべき公社、公団のようなものばかりだと思います。したがってそこにはわれわれの国におけるような団結権の行使というようなものはないということが常識になっております。労働組合はありましても、ロシアならロシアの労働組合の動きというものは、これはわれわれの言う労働組合の自由というものはないと思う。そういう国々がたくさん平気で席を並べておられる理由ですね。どうして長い間そういうものが席を並べておられるのだろうかということです。私の考えではおそらくこういう論理が背景にあるのじゃないか。それは、社会主義国家における労使関係というのは資本主義国家における労使関係とは性格が違うのだ。つまり利害の相反する階級的対立ではないのだ、使用者労働者が。こういう意味で、私は、そういう論理があるから、かりに自由国家群の人が不満でありましても無理に追及もできないし、本人たちもまたとにかく平気ではないかもしらぬが、そこにすわっておられるというのではないかと思うのですが、そうとすると、その論理は自由主義の国家においても公務員であるとかあるいは公団、公社というふうな社会主義国家における労使関係とちょうど性格的に似たものがある。これは階級として使用者労働者が対立しておるという、民間のように利害対立した団体ではないのだという同じ論理を主張できない理由はないのじゃないか、日本の場合でもですね。こう思うのですが、この点はいかがですか。
  59. 野村平爾

    野村参考人 ただいまお話がありましたが、私の記憶ですと、いまILOに加盟している国は百十ぐらいあるわけです。そのうちにたしか十一、二しか社会主義国家は入っておらないと思います。それから労働組合系統の代表者の数からいいますと、圧倒的に自由労連系の労働組合が多くて、そうして理事国もほとんどそれで独占をしている、こういうような形でございます。ですから世界労連系の組合の発言力というのは国際舞台においては非常に小さい、こういうふうに考えておりますので、ILOあたりで決定していることは大体欧米先進国などのものの考え方が基準になって、そして低開発国でもこの程度のことはやれるのだろうというようなことをきめたのがILO条約だと、実はこういうふうに考えております。そのときに社会主義国家の人ちたがそれに対してどんなふうな受け取り方をしているかは、これは存じません。しかしおそらく資本主義国家においてもそのくらいのことはあたりまえだろう、こういうような考え方で受け取っているのではないか、こういうふうに想像をしております。
  60. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 しかしILOのメンバーに入っておって、それでILO条約の中で中心的な、根本的にはILO条約そのものの精神ともいわれる結社の自由、団結権保護ですね、この八十七号条約について、それが明らかにわれわれの国日本なんかよりもはるかに自由がないことをだれも知っておる人々が平気ですわっておるとか、平気にすわらせておるということですと、何だかILOというものはあまりどうも権威がないのじゃないかといったような感じを常識的に持ちますよ。平気でおられるのだ……。   〔発言する者あり〕
  61. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 まあ君らは黙っておって……。
  62. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  63. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 それからもう一つ今度は伺いたいのは、憲法二十八条の勤労者の団結権の精神と、それからILO八十七号条約結社の自由、団結権保護に関する精神というものは、全く同じものか違うのかという点です。
  64. 野村平爾

    野村参考人 お答えします。  第一の問題はILOは権威があるのかないのか、皆さん方がILOは権威があるからと思って八十七号の批准をここで議題になすっていらっしゃるのだろう、こういうふうに考えて私は実はお答えをしているわけでして、皆さん方がそういうものは権威がないのだとおっしゃるなら、私も本日はここへ出てまいりません。そういうような意味におきましてやはり国際的な信義という点からいうならば、やはりILOあたりできめた程度のことは尊重をするというのが正しい態度であるだろう、こういうような考え方を持っておるので、私はお答えをしておるわけでございます。それから第二点におきまして、ILO結社の自由といっている場合には、もちろん使用者団体も含んでおります。しかし日本憲法では勤労者の団結権と、こういっておりますから、その点は違っております。しかしその他を除きましては、団結権という意味においては変わりがありません。これは国際的に別に定義が下っているわけではございませんので、大体日本の憲法に定義がございませんから、これは国際常識やいままでの歴史的な観点などから考えて世界がそう考えているようなものが団結権であると、こういうふうに理解をしております。
  65. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 憲法に勤労者に関する限りは、使用者のことは憲法にはなくて、八十七号条約使用者の場合もきめておることはそのとおりですけれども、しかし勤労者というか、労働者団結権保護に関しては全く同じ精神のものだ、こう理解していいわけですか。
  66. 野村平爾

    野村参考人 考え方でございますか。
  67. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 憲法の精神と八十七号条約とは……。
  68. 野村平爾

    野村参考人 憲法の考え方は団結権だけではなくて、団体交渉権並びに争議権まで規定しております。しかし八十七号条約は、直接にはそのことは、交渉権並びに争議権のことは規定しておりません。その意味においては八十七号とそれから憲法の二十八条とが全くイコールであるということはいえないと思います。八十七号よりは憲法の二十八条のほうが幅の広い規定を盛っているということは事実でございます。
  69. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 精神においては変わりはないわけですね。
  70. 野村平爾

    野村参考人 精神という意味がわかりませんのですが、どんなことでございましょうか。
  71. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 同じ結社あるいは団結権に関して、同じ問題に関してもし憲法の規定と八十七号条約とが違うのだということになると、範囲が違うとか、一方は使用者のこともきめておるというようなことは問題じゃないですけれども、同じ労働者結社あるいは団結権の行使という問題について憲法と八十七号条約とが考え方が違うのだとしたら、憲法と違った条約批准することにちゅうちょせざるを得ぬのじゃないか、私はそう思うのです。私は批准すべきだと思うのですよ。それは同じだと思うからです。それで実はいま伺っておるわけなんです。
  72. 野村平爾

    野村参考人 おっしゃるような意味の精神であれば、同じでございます。
  73. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 そうしますと、今度批准したらどうしても抵触するというので、公労法四条三項とか、地方公労法五条三項というものは削除するということは、政府もそういう説明をしておるし、そういう疑いないようになっておりますが、しかしもし、私はちょっとしろうとで疑惑を生ずるのですけれども、もし違っておるのだということになると、憲法とそれとが違うと、憲法に違う条約批准することにこれはちょっとちゅうちょしなければならぬことになるし、同じということになれば、批准はこれは問題にならぬですよ。しかし、公労法ILO八十七号条約と直接に違反すると解釈すると、何だかそれは憲法に違反しておったということを認めざるを得ないようなジレンマにおちいってくるのではないか、ここのところです。
  74. 野村平爾

    野村参考人 それですから、私は始終四条三項は憲法違反であるということを、私自身としては申しておりました。ようやくこのごろになりまして、日本裁判所もそういう考え方を述べかけております。これはやはりこの問題が起こってから、裁判所あたりがそういうような考え方をとってきた。一番初めは、三十七年の盛岡地裁の考え方の中に、そういうものがあらわれました。昨年になりまして、そういう考え方がまたあらわれました。これはやはりいままでの公労法四条をそのまま考えておったことが間違いであったという反省が、日本裁判所の中にも生まれつつある、こういうことではないかと私は考えるのでございます。
  75. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 どうも質問しておいて、答弁のほうを簡単にやってくれと言うのは、まことに失礼な話なのですけれども、各結論だけを聞かしていただけば、裁判所がどうとかこうとかいうことは、私時間がないものですから……。  それでもう一つは、団体の自主権といいますか、団体の自由といいますか、団体が自主的、自由な判断で決する、これは一つの精神だと思う。その場合に、団体を構成しておる個人の自由と矛盾する場合が生じますね。これは要するに集団主義というか、コレクティビズムと自由主義との間の問題だ。だから、個人の自由というものを出発点として、その個人は団体を結成する自由がある。こういうふうに個人の自由から派生してきたといいますか、その個人の自由の行使の結果として、団体団結する権利というものが認られてきたのだと私も思うのです。しかし、一たん団結ができてしまいますと、団結が自主的にやれるということになったら、今度は団体が第一義的なものになる。したがって、個人がこれに対してかれこれ言うということは、団結を乱すおそれが起こってくるから、それでしばしば組合においても分裂主義者——結束を乱すということを最大の罪悪のように考えている。また団結することは義務だ、ことに労働者が、資本主義社会においては、一つの階級として団結することは責任だ、こういうふうによく言われますが、しかし、私は、日本の憲法はやはり個人の自由というものに出発しておるので、団結する自由があるが、同時に団結せざる自由もあるのである。団結するということは義務じゃないというふうに私は理解しておるのです。そこで、やはり団体がコレクティビズムの弊害におちいらないように——もちろん団体は個人に一々自由にやらしておったら団結がくずれますから、制限しなければならぬが、そこに団体が自主的行動というものに対しての一つのワクというのですか、制限といいますか、こういうものはいろいろな意味で、その自主的行動に対してのワクというのはいろいろな、外からも内からもあるのじゃないかと思うのですが、その団体を構成している個人の自由を確保するというための団体自身の自主的活動を制限する一つのワクはどういうふうなものだろうか、ここのところです。
  76. 野村平爾

    野村参考人 どうも質問が長かったので、どこが質問の要点だか、よくのみ込めなかったのですが、もし個人が団結に入って困るならば、脱退の自由はあります。それから加入をすることがいやならば、加入をしない自由はあります。この点は別に日本法律は禁じておりません。しかし、一たび団結をしたら、その団結においては多数決に従って行動をするということでありますから、団結にとどまっておる限りは団結体の行動に準ずる、こういうのが団結権の考え方だと思うのです。
  77. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 最後に、ちょっとこれは、先ほど森山さんが質問されたときに、野村先生にまことに失礼な質問をされたようですが、日本労働組合総評議会教育宣伝部、総評中央講師団の名簿の中に先生の名前がちゃんと印刷してある。それで先生は何かそれを否定されたけれども、事実ここにあるが、これは間違いないのかどうかということをただしてもらいたいということで……。
  78. 野村平爾

    野村参考人 私は、次のように先ほどお答えしました。頼まれればそのときはやります。だけれども、総評から費用をもらって私は総評に飼われている人間ではございません。その点は変わりはございませんので、どうぞ誤解のないようにお願いします。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは次に願います。小林進君。  この際ちょっと申し上げますが、ほかに質疑者も多数残っておりますし、参考人の御都合の向きもあるようでございますから、どうぞ申し合わせのように十分以内にお願いをいたします。
  80. 小林進

    ○小林委員 きょうは六人の先生方のお話を聞かしていただきまして、その中には一人の先生くらいは国内法における政府の原案でよろしいというふうな御証言でもいただけるものかというふうに期待をいたしておったのでございますけれども、そういう意見をちょうだいする先生が一人もおいでにならない。最低限度、何とか倉石さんとか河野さんとかおっしゃる修正案程度のものならというその程度の御証言にとどまっておるのでございまして、いささか私どもは期待に反したような次第でございます。この点だけをひとつ申し上げまして、時間に制限もございまするので、参考人の先生方に一括してひとつ御証言の中で若干お教えいただきたいことを申し上げてみたいと思いまするので、よろしくお願いをいたします。  慶谷先生には登録の問題について、登録は存置すべきである、しかしそれは全体の奉仕者であるから組合運営民主化のためにも登録をして、そのかわりとして何か特別の権利といいますかを与えたらよろしいではないかというふうなお話があったやに承っておりますので、この点をいま少し私ども納得のいくようにお話を承れればけっこうだと存じます。  なお、第二番目の問題といたしまして、一番問題の点は、中央交渉の点である、こういうことで、中央交渉の問題についても先生のお話がございました。教職員が中央で国と交渉できるかいなかは、本来は雇用関係がないので交渉権はない。私の記憶が間違いでございましたら御訂正願いたいのでございますけれども、交渉権はないと思うが、しかし事実上話し合いすることを拒否するような理由もまたないではないかというふうなお話であったと思うのでありますけれども、この点をいま少し御解明をいただければけっこうかと思うのであります。  第三点といたしましては、公務員に関する審議会、これは中央審議会といいまするか、倉石・河野修正案でございまするか、何かその中にあるとかないとかいうお話でございまするけれども、審議会を設けて、いろいろ公務員関係のことを取り上げていくというのだが、スト権については基本三権を認めるという前向きの形で研究をしていくことが大切なのではないかというふうなお話があったのではないかと私は思います。この点をひとつ、できればわかりやすいようにお話しをいただきたい。  なお、この際でございまするから、これは慶谷先生だけではございません、三先生にひとつあらためてお聞かせを願いたいのは、憲法第二十八条といわゆる公共福祉とスト権との関係でございます。先ほどもお話がございましたが、なお憲法第十五条の全体の奉仕者と労働三権の問題、これは私はやはり公務員法に関するまことに重点ではないかと思いますので、この点をどうかひとつ私たちにもわかりやすいようにそれぞれの先生方から御解明をいただきたい、かように考えております。  松岡先生はお見えになりませんので、松岡先生の分は後日また承ることにいたしまして、次に竪山先生にお伺いをいたしたいのでありますが、第一点といたしましては、わが日本労使関係においては民間のそれに比較してやはり政府関係労使関係といいますか労使の間というものは非常におくれている、こういうふうなお話があったと思うのでございますが、これはまだ私どもこの委員会でいろいろ審議を重ねております範囲内においては、むしろ公務員やその他に大幅に権利を与え過ぎるではないかなどという自民党の諸君の考え方が大いにあるのです。なおお役人の中にも、むしろわが日本には公務員法やあるいは公労法や、こういうような法律があって非常に進歩的だ、公務員公共労働者に対する権利の与え方は非常に進歩的だ、こういうような解釈をしている者が役人の中にも多いのであります。私をして言わしめれば実に残念しごくだと思うのでございますけれども、そういうような解釈をしている者もあるのでございますから、そこへ先生の御証言の中にも実に日本公務員法あるいは公労法関係は非常におくれておる、こういう全く反対の御証言があったのでございますので、これをいま少しく具体的に御解明いただければしあわせだと思うのでございます。  第二点といたしましては専従の問題でございます。従業員だけの組合のときに専従を認めないということになると、実際には非常に困難が生ずるのじゃないか。いわゆる職員外の者を含めた場合にはその人をして専従の役割りをせしめることができるからそれはそれとして、その職員以外の者を含まない純職員だけの団体の中においてその専従を認めない場合には非常に困難いたします、むしろ専従を認めたほうがよろしいのではないかというようなお話があったと思いますが、この点もひとつあらためてお聞かせ願いたい。  第三点といたしましては人事院の問題でございまして、この人事院のいまの権限を大幅に人事局に移すということは公務員制度にとって全く新しいやり方で、いま八十七号批准とは直接関係がなくて、こういうような改組は一つの大きな革命ということばをお用いになったかならぬかちょっと忘れましたけれども、そういう意味の非常に大きな変革をもたらすものであるから、むしろ改めるならば人事院というものを強化する方向で日にちをかけてゆっくりやったほうがいいのではないかというお話だったと思うのでございますけれども、この点をひとつお聞かせ願いたいと思うのでございます。  なお、これは先ほども申し上げましたので省略いたしますけれども、全体の奉仕者である公務員と労働三権との関係のお話なんかもあったと思いますので、この点もひとつ……。先ほども申し上げましたが、私は特に憲法第十五条にいう全体の奉仕者なるがゆえにこのスト権を取り上げるというこの因果関係がどうしてもわからない。全体の奉仕者というその理由のもとにスト権を取り上げる。むしろイギリス、フランス等は全体の奉仕者なるがゆえに若干の制限はありながらもスト権は与えている、こういう考え方の中に、全体の奉仕者だからスト権をとるんだ、この理論構成がどうも私にはわかりません。この点をひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。  次に大場先生にお尋ねをいたしたいのでありますが、それはILO八十七号はやはりこの国会において批准をすべきである。その批准をすべしという理由の中に、日本国際信用はこの問題で失墜をしておる、この際これを回復する必要がある、こういう御証言がありました。これも実はこの委員会審議の過程において、やはりいままで批准をしなかったことはわが日本の国際的な信用を失墜したのではないかというような、こういう質問が繰り返されている中にも、それほどの信用上の影響はいままではないという政府側の答弁がございましたが、たまたま先生のおことばの中には、失態がある、信用を失墜したという、そういうきめつけた御証言がございましたので、特にそこら辺具体的にお聞かせを願いたい。特にOECDの中では労組の諮問委員会があって、特にその中心をなす自由労連等の発言が非常に強い、そういうことでOECDの中においても将来わが日本の経済的活動に大きな支障があるのではないかというようなお話がございました。こういう点もあわせてひとつお聞かせを願いたいと思います。  第二点といたしましてはこのILO報告であります。ILO数次の報告の中に、たとえば一九六二年四月二十日のごとく、与野党が引き続き善意と互譲の精神をもって、そして話し合った結果、問題点についての意見の調整は著しく進捗を見たというふうな形で、この与野党の話し合いの結果がILO八十七号の批准に欠くべからざる重大な関係を結んでいるというような報告をしているのではないか云々というお話がございました。これは私が実は一番関心を持ったところでございますけれども、労働大臣等はやはり政党は政党、政府とは関係がない、そういうお考えでILO八十七号批准に関する数次の報告は、それは与野党間の交渉経過をただ事実を事実として事務的に報告しただけであって、この報告に対する批准あるいは与野党間の交渉に対して政府批准をしなければならないという関係もそうないというふうな意味答弁が繰り返されておりますので、この点もひとつ私の納得いくように……。
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちょっと小林君に申し上げますが、御質問だけで十分を経過してしまっておりますので……。
  82. 小林進

    ○小林委員 もう時間がないと思いますので……。
  83. 倉石忠雄

    倉石委員長 参考人の方からどうでしょうか。
  84. 小林進

    ○小林委員 それでは二問だけお尋ね申し上げておきます。
  85. 倉石忠雄

    倉石委員長 ひとつ御協力を願います。
  86. 小林進

    ○小林委員 これは村田先生に、ほんの軽く一点でありますけれども、在籍専従の問題について、あるいはこれを認めるとどうも際限なく広く行なわれるようなことになってむしろ困るのではないか云々の御証言があったと思いますけれども、この在籍専従の問題について先生だけが、何かお聞きすると反対の立場からお話をされたように聞いておりますので、お聞かせをいただきたいと思うのでございます。  野村先生にはただ一点、九十八号の六条の公務員の地位を取り扱うものではない云々に対して、先ほどのお話をいま少しくふえんをしてお聞かせ願えればけっこうだと思います。  以上、五先生に対して私の質問は終わります。
  87. 倉石忠雄

    倉石委員長 それではお近くから。ひとつ野村参考人にお願いいたします。
  88. 野村平爾

    野村参考人 私に聞かれました分は、一つは、あとのほうから逆に答えるわけでありますが、この不当労働行為に関する九十八号条約規定は、ILO公務員問題に関する専門家会議で取り上げられて、その方向としては将来九十八号条約公務員に適用すべきである、こういう考え方が出されているということを申し上げたわけで、もちろんこれはまだ勧告にも何にもなっておりませんから、直ちに各国を拘束したりするようなものではございませんけれども、向かうべき方向を指示しているような考え方ではないかということで申し上げたわけでございます。  それからあとは公共福祉と全体の奉仕者との関係で、これはみんなに共通にということでございましたが、全体の福祉、全体の奉仕者という考え方は、せんじ詰めれば、広い意味公共福祉と同じことでございます。公共福祉というものは、およそどんな争議行為がありましても、これは何らかの影響を受けるものであります。ただその受ける程度の大きいものと小さいものとがあるということは認めなければならないと思うのです。しかし同時に、公共福祉が大きな影響を受けるような場合には、ストライキをやる労働者の利害範囲というものも非常に大きい。そこでなるべく争議行為に発展をさせないで問題を解決していくというやり方が実は望ましいやり方だ、こういうふうに考えておるわけです。それを法律で禁ずるのではなくて、事実上の調整制度や何かを利用しながらそういう方向へ持っていくというのがよかろう、こういう考え方を私は申し上げたわけでございます。
  89. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 私に御質問がありましたのは、全体の奉仕者との関係を合わせまして全部で四点だというふうに考えておりますが、まず初めからお答えを申し上げます。  第一に御質問になりましたのは登録制度の問題でございますが、私は登録制度交渉権との問題は結びつけて考えていないわけでありまして、登録をしてもしなくても交渉権はあるのだ、交渉能力はあるのだというふうに考えておるわけでございます。公務員組合が全体の奉仕者といいますか、そういうふうな性格から申しまして、労働組合の内部の運営がフェアに、公平に行なわれるようになるのがいい。要するに少数組合の独占運営というふうにならないほうがいいわけであります。そういうふうな意味におきまして、何らかの形におきまして登録制度を残しておくということは必要ではないかということを申し述べたわけであります。  第二番目の中央交渉の問題でございますけれども、たとえば日教組の問題について申し上げますと、文部大臣地方公務員との間におきましては、要するに雇用関係はございませんから、その両者の間におきましては、いわゆる団体交渉的なものは本来存在をし得ないわけであります。しかしながら、教育行政をやっていく上におきましては、国家公務員地方公務員もひとしく携わっているわけです。そういうふうな公務員の協力を求めていくということが、教育の成果を上げるゆえんではないかというふうに考えるわけでございます。そういうふうな意味におきまして、私は、たとえば文部大臣なら文部大臣が積極的にそういう、地方公務員である教員との間に、日教組との間におきまして話し合いをしていくというふうな筋道を立てていくということが必要じゃなかろうかというふうに考えるわけであります。そうすることによりまして教育効果も非常に上がっていくじゃないかと思うわけでございまして、そういうふうな話し合いがなぜ行なわれないかということにつきましては、私は疑問に思っているわけでございます。  第三は、審議会を設けてやるということをお話し申し上げましたが、現在問題となっておりますのはILO八十七号条約批准の問題であります。これは先ほども申し上げましたように、それ以外に公務員の問題はいろいろあるわけです。そういうふうな問題をいろいろここで取り上げておりましては、問題の発展はございませんし、またそれだけの時間的な余裕もないと思いますので、労働基本権の問題はもう少し時間をかけて、そういうふうな審議会をつくって、前向きの姿勢で十分に意を尽くされたらどうかということを申し上げたわけでございます。  最後に、全体の奉仕者と労働三権の制限の問題ですけれども、特に労働三権の問題で問題となりますのは、争議権の問題でございます。私は、公務員は全体の奉仕者で国民に奉仕する性格を持っているわけですから、現在争議権を制限する憲法上の根拠というのは、全体の奉仕者性にあるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、公務員と申しましてもいろいろな種類の公務員があるわけでして、そういうような公務員を十ぱ一からげにしまして、すべての公務員につきまして争議権を剥奪するという現在の立法政策がいいかどうかにつきましては、十分に検討する余地はあるやに考えるわけでございます。
  90. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私の受けました御質問の第一は、官公労関係労働関係が民間に比べておくれておるのではないかということについて説明を求められたわけであります。これは労働運動をいろいろ批判するのはなんでございますが、率直に申しまして、民間にもやはり行き過ぎたものやら、あるいは不当だと考えられるような争議も起こっております。しかし長い間の経験の中から、裸で取り組みまして苦しんでおる中に、ほぼ一つの安定とルールができていったように思います。ところが先回の四・一七ストを見てもわかりますように、政府は違法ストだという、しかし労働組合のほうでは、そういう手段に訴えなければわれわれの要求は無視されてしまう、そういう形で対抗するような状態になってまいりました。これは何がそうさせておるんだろうか。ことに政府職員であります労働者がそういうことになっておりますのは何のゆえかということになりますれば、御承知のとおりでございまして、私は率直に言って、権利を与えたならば乱用されはしないか、あるいは非常な危機に当面するのではないかという恐怖というか、そういう観点から取り締まりやら、ものを考える段階でなくなってきた。言いかえれば、この点ではっきり筋を通す、そこから再出発しなければならぬのではないかと思います。たとえばストライキの問題にいたしましても、なるほど法律では十七条で禁止されておりますけれども、事実上では首を切られることを覚悟して、救済する措置の用意さえあればやっておるわけであります。ある意味におきましては、私鉄よりか自由であります。いつでもやれます。だから、そういう禁止されておる組合のほうが自由にやれるという状態に立ち至りました現状を考えましたならば、ここらで、一切の争議行為を許さない、あるいは専売公社も含めていかなる形態のストライキも官公労については許さないなんていうことは、ILOが指摘しておるとおり、私は間違いではないかと思います。いわんや公社、公団で労組法の適用を受けて堂々とストライキをやっておるということを考えますならば、問題はストライキを禁止したから安定したというのではなくて、むしろあまりに抑圧し過ぎておるから異常な状態が起こっておるのではないか。そういう点で、官公庁でありますから任意にしておって、自由裁量にするわけにはいきませんけれども、あまりにこまかい法律にたより過ぎ、あるいは法律によって抑え過ぎて、その上に安定を期そうという態度が、労使関係労働関係の場合におきましては逆効果だというふうに感ずるわけであります。  そういう点で当局の方も、あるいは職員のほうも、双方とも民間の労組と同じような悩みと苦労をして、ここに新しい安定した労働関係をつくるというふうにいくべき段階ではないだろうか。それについては権利の問題が一つ欠けておるということ。あるいは団体交渉にいたしましても、御承知のように、当事者能力が完全に欠如しておる。公社という名前はアメリカ方でいただきましたが、肝心かなめの、TVA——こまかい指図ではなくて、一括予算で自由裁量ができるという形になっておりますので、ルーズベルトも、公務員の場合においては民間産業におけるがごとき団体交渉は成立しない、けれどもTVAという方式ではこれは可能であると言って非常に喜んだわけでありますが、そういう一番大事な点が欠けたままできておるというところに、この官公庁関係のそれを悪くしておる原因があるのではないか。公務員の場合におきましても、おそらくそれに準ずるもので、与えるものはやはり与えられる、一定の制限はあるでしょうけれども、そういう関係は直す必要があるのではないか。そういう点私は率直に申し上げまして、やはり権力やら法律やら、あるいは大きな独占体であるとか、そういうものにあまり依存し過ぎていて、ほんとうの労働関係への努力が双方欠けておるのではないか、この点押えるよりか、むしろ一定の条件を与えて立て直していくという段階ではないかという意味で、民間より非常におくれているのじゃないか、こう申したわけであります。  専従制の問題は、さっきも申し上げましたけれども、たとえばILO条約八十七号を批准すれば、四条三項やら五条三項を削除しなければならぬといたします。言いかえれば特定の組織形態を、日本ではこれは支配的なんですけれども、特定の組織形態を法律で法定する、あるいは限定するということが結社の自由の違反なのでありますから、もしそれが批准されたからといいまして、いわゆる職員だけでつくっている団体はいけないのだ、こういうふうにしたとすれば、適法解釈されたとすれば、それはまた新たなる結社の自由への侵害ではないだろうか。そういう点で、もしそれを認めるとするならば、どうしても在籍専従制度は残さなければならぬという事情になるのじゃないか。それは民間の労組は労働協約によって自由にやっておりますが、やはりそういう形があるのじゃないか、それを否定するのですかどうですか、こういうことなのであります。ただ根本の問題は、在籍専従制度が非常に理想的であるというふうには考えません。日本労働組合もやはり企業別組合から脱皮していかなければならぬというふうなことでありますから、そういう点ではみずからその労働関係の中で解決をしていく。そしてさっき工場委員会、職場委員会の話がございましたが、これは各国では労働組合が横断組織で企業の外にある。その場合に、工場や企業には従業員が大きな集団としている。場合によって、そういう組織を持たなければ組合は浮き上がってしまう。また生産の問題とかその他の問題にしましても、従業員でなければタッチできない問題でありますから、そういう点で組合あり方とそれを補助するような形になります工場委員会、あるいはイタリアの場合には内部委員会、そういうふうなものが相関関係で活用されている。そういう職場に至りましてはもちろん在籍者でなければできないわけでありますから、そういうものもあるではないかという点で、私は一切専従制度はいけないというふうには思いません。けれども、日本のそれはあまりに在籍専従に依存し過ぎておりますから、将来の方向としますれば、企業から独立をしていくという点で必要なのじゃないか。しかしさっき申しましたように、いわゆる官公庁や公務員関係組合の場合において、いま直ちに法律でもってこれを禁止する、たとえそれが三年なり五年の猶予期間はありましても、そういう態度はいいのだろうか、むしろこれは労使関係の中で自主的に解決する方向を目ざすべきではないかというのが、私の意見であります。  それから第三は、人事院人事局の問題でありますが、これについては、さっきも強調いたしましたように、やはり人事院が設立されているという理由は、どうしても政党的な、そういうシステムというようなものもありますから、そういう点で公平、中立な人事行政が必要である、そういうたてまえと、争議権その他が失われておりますから、それを補償するという意味におきまして人事院の整備強化は必要なのでありまして、人事局をつくる、それによって今度はその代償としての労働組合のほうは、何か妥協案というのがありますが、はたして何が補償されたのかわからない。そういうふうなことで、人事局は認めた、しかしこちらのほうは、よくわからないが、何かもがれたというような形の取引はやめるべきじゃないか。ことに人事局をつくられて、古い公務員制度というものに返るということになりますと、団体交渉や闘争やらストライキであとから追っかけたって間に合いません。公務員制度の根本が変わっていたのでは追いつかないと思います。そういう点でこれは取引の用具に資すべき案件ではない。やはり人事局について反対していかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思います。  それから公務員の三権の問題でありますが、さっきも申しましたように、ストライキ権の問題でありますけれども、一切争議行為を禁止して、団体交渉をしましても、いわゆる自分の主張を支持するささえがないという状態で、しかも労働団体をつくって運動しろなんということは、これはエネルギーやスタミナの点からいいましても無理な措置じゃないかと思います。そういう点で、三権の問題をやはり公式に取り上げていく必要があるのじゃないだろうか、そのことがかえって正常化する原因じゃないか、こういうふうに考えます。けれども、それではさっきの全体の奉仕者という問題もある、公務員という特質もある、これはどうなのかということになりますと、そのスト権の行使とかあり方という点について具体的な条件、そういうふうなものを考えていくということで解決がつくのではないか、したがいまして、はなはだ理想的かもわかりませんが、公務員はストライキ権はあれども、この点についていわゆる公共福祉とか、あるいは全体の奉仕者というモラルを持って奉仕され、したがって権利はあるけれども乱用しない、こういう安定した形にすることが必要ではないか、そういうモラルの問題を、取り締まり規定とか何か法的な措置でもってつくり上げようというのは逆効果だ、公務員の今日のものの考え方、あり方という点について、やはりこれはモラルの問題、もっと社会的な問題だ、そういうものを確立するのであって、法律で規制するということではできないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そういう点でストライキ権の問題でも、私はおそらく、ストライキ権を認めないとか、できるだけ制限しようという意図には、日本の労働運動はこういう現状だからという一つの恐怖やら、あるいは批判があるのではないかと思います。しかしここで申し上げたいと思いますのは、かつて激しい闘争がやられました。そしてその労働運動のあり方については機を得て鋭い批判がなされましたけれども、それでは労働組合が立ち直ってきたときに、きわめて民主的で合法的な方法でやろうというふうになったときに、たとえばマッカーサー書簡によります公労法とか公務員法の改正というものが幾らかでも改善され緩和されたかといいますと、それは据え置きになってしまったわけであります。そういう点で私は、政府当局は労働運動に借りがあるのではないか、そういうことをしないから、また労働運動自体が、そういう主張をした人まで含めまして、非常にゆがめられた関係に追いやられている、こういうふうに思います。そういう意味から言いますれば、たとえばほかにも例があります。スト規制法の問題を取り上げてみてもいいと思います。当時、二十八年に制定されたときは、これは三年限りの時限立法である、労働運動が改まれば当然そういう必要はないのだという立場でやりました立法だと思います。ところがその後におきまして、たとえば電力関係労働者にしましても、労働組合あり方にしましても、変わっていきました。また今ロスト権が規制されておりますが、これはやむを得ずという形で違法ストをやるかといいますと、やっていない。そういう組合にもまた、権利は保障されておらない。こういうような怠慢な政策では、労使関係というものは解決しない。そういう点で私は、公務員から官業の労働者を含めまして全部のスト権のあり方、そういうものを全体として一つの基準で考えていただいて、そこでやはり権利を与える、しかしそれは公共福祉に奉仕する人たちであるとか、公益事業であるとかいうことで、みずから労働運動内部の力でもって正しいあり方をしていただく。それには政府自体がおそれていたり、あるいは法律にたよったりという形ではどうも打開ができないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  91. 大場鐘作

    大場参考人 私への質問は、第一に国際信用の問題だと思います。ILO条約批准しないからどういうことをやるというようなことは、具体的には起こっていないと思います。しかしたとえば二、三年前ですか、アメリカで縫製工がすべて日本の商品は扱わないというようなことをきめたり、あるいは沖仲仕が日本の商品は荷役をやらないとかいうようなことをきめた。その理由は、日本は低賃金である、ダンピングをしてきている、だからやらないのだということを言っております。そしてその背景としては、日本労使関係は非常におくれているのだ、だから低賃金なんだということをかなり理由づけにしておるというケースは、具体的にもかなり起こっているように聞いております。それから、たとえばこの前のILO理事会からの勧告の中にF項というのがございまして、組合運動をやったことによって逮捕その他の処罰をしてはいけないというようなことがございました。そういう点も、日本労使関係に対する誤解というものが非常に強く受け取られていると思うのです。それはやはりILO条約批准しない、少なくとも国内法でもめて、ILO条約批准できないというところに大きな問題があるように思います。  それから、OECDの中には労組諮問委員会というのがございます。これは国際自由労連とキリスト教労連がそのメンバーになっております。したがって日本では、使用者側のほうはすでに日本委員会というのをつくって受け入れ態勢ができているわけですけれども、労働組合のほうはまだそこまでいっておりません。いずれ参加するようになると思いますが、その場合にはたしてスムーズに参加できるかどうか、国際自由労連あたりから、さきにも申しましたベクー書記長の発言なんかから見ましても、スムーズに参加できるようになるかどうか、その辺に支障が起こるのじゃないかという疑問も起きます。それからまた労働組合諮問委員会にも参加できないということになりますと、政府の立場としても国際舞台での発言力はかなり制約される、阻害されるということは、当然これは予想されると思います。  それから第二の点で、ILO理事会に対する政府報告をどう解釈するかということですけれども、公式の発言として一九六二年四月二十日以降数回にわたって同じようなことを述べております。しかも、交渉責任者をきめて話し合いをしておるのだということを言っておる以上、この話し合いがまとまれば批准が可能なんだということを示唆したものだと解釈するのが、私はあたりまえだと思います。そういう意味におきましても、交渉が一応まとまったら、その結論を基本にして条約批准を考えるのがやはり妥当ではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。  それから憲法の問題ですけれども、労働基本権があるということは、これは私は民間の労働者においても、あるいは公務員においても変わりはないと思います。ただその基本的な権利を使う場合にどうかということについては、おのずから秩序なり制約というものがなければならないと思うのです。したがって公務員の場合あるいは公共企業体の労働者の場合には公共福祉ということ、国民全体に対する奉仕者という立場から、それに適切な制約というものは当然あってしかるべきだと思います。その場合に、現在のように、三公社のいろいろな事業の性質も違うし、また国民福祉に対する影響も違います。それから同じ五現業においても、その労働三権を使う場合の影響というものは、おのずから違ってまいります。それを一括して公労法というものできめておるところに、私はやはり矛盾があると思います。したがってこういう問題については、いまILO条約をここで通すか通さないかというときにこういう問題をほじくり出していたんでは、私は当面の間に合わないと思うので、そういう問題についてはあらためて別に根本的に検討したらどうかということを申し上げたわけでございます。
  92. 村田為五郎

    村田参考人 私に対する御質問は在籍専従の問題がございまして、私申し上げましたのは、現在までの在籍専従の実績はさほど大きな影響はないと思いますけれども、しかしながら間々休暇期間が非常に長くなり過ぎて、そのためにこれを退職金に計算いたします場合に少しどうもこれは適当ではないのではなかろうかというような場合も考えられますので、そういうような点はなおよく考える必要があるのではなかろうかと思います。ただ、この御提案になっております中にも、在籍専従の点につきましては法律施行後二年、さらにそのあと三年間の猶予期間がございますので、五年あとということになりますれば、その廃止になるまでの期間、十分労使の間において労使慣行についていろいろ御検討になる余裕があるのではないかと思っております。  それから公務員のスト権その他の問題でありますけれども、基本権の問題につきましては、私もただいまの大場参考人の御意見のとおりであります。また現在の状態で、人事院の給与勧告などが出まして政府もこれを忠実に実行しております関係から、そのような点においては現状においてさして不自由はないのではなかろうか。ただ今後の問題として、このような問題をこれから審議会あるいは調査会においてさらに御検討になる必要は十分あるのではなかろうか、そういうふうに考えております。
  93. 小林進

    ○小林委員 再質問もありますけれども、時間がないようでございますから、これをもって一応、委員長に協力するということで打ち切りたいと思います。
  94. 倉石忠雄

    倉石委員長 栗山礼行君。
  95. 栗山礼行

    ○栗山委員 参考人の先生にお伺いをいたします前に、委員長にちょっとお伺いをいたしますが、委員長のお示しになりました十分間は、質問者の質問時間が十分でございましょうか、御答弁をいただく時間を加えまして十分であるかどうか。できるだけ委員長の……。
  96. 倉石忠雄

    倉石委員長 申し上げますが、実は参考人においで願いました方々の中に、四時以後にはいろいろな所用をお持ちであるということを最初お申し出いただいた方もおいでになるので、はなはだ御迷惑だと存じまして、若干延びることをこちらからお願いいたしておるような次第でございますから、質疑応答を含めて十分間とお願いをいたしたいと思いますが、だいぶまだ残っておりますから、十分以内でけっこうでございます。どうぞひとつ……。
  97. 栗山礼行

    ○栗山委員 以上了承できまして、寸足らずで御質問申し上げ——また具体的にたくさんお伺いをいたしたいということを考えておったのでありますが、以上のようなことでございますので、私の質問の要点が尽きるかどうかということについても非常に疑問があるわけでありますが、御賢察をいただきまして御答弁をお願いいたしたいと思います。  私はまず第一に、今度のILOの八十七号批准にあたりまして、関係国内法改正等を含めて一括提案、一括審議、一括採決、提案権者であります政府がこういう方式をおとりになってまいったこの点を、私は各参考人の先生にお伺いを申し上げたいと思うのであります。御承知のとおり、岸内閣の時代からこの問題は同じ形において提案をされてきたということでございます。一回においては鉄道営業法の問題等も含まれましたのでありますけれども、今回はこれを引っ込めました形において、同じ内容のもの、同じスタイルにおいてこれを提案されておる、こういうことは御案内のとおりでございます。同時につけ加えまして、そういうことがILO八十七号の条約批准につきましては、委員会審議においていずれもそれを、一致するという結論が生まれております。ただ問題は、公労法地公労法国家公務員法地方公務員法、そういう直接関係しない問題等を含めます審議というものに多くの重要な問題が内在いたしておりまするがゆえに、この問題が廃案になり、あるいは多くの問題を呼びまして十分審議に至らないという経過をとっておったと思うのであります。そういうことから、いわゆる窓口折衝という形がとられました。それを前提にいたしまする審議という条件で委員会が設置された、こういうような、非常に沿革においてどうも複雑多岐な内容を持ってまいったことは、これは先生方の御承知のとおりであります。そこで提案権者であります政府のそういう提案の仕組みにおいて、私はどうも納得がいかない、あるいは意図されることも非常に多くの問題点を内蔵いたしておるのじゃないか、こういう考え方を率直に持つわけなんでございますが、政府がこういうふうに依然として同じスタイルで同じ形においてこの問題を提案されるというこの提案のしかたについて、先生方はこれをよしとするお考えを持つかどうか、この点について参考人の各先生方の端的な御意見を承りたいと思うのであります。
  98. 野村平爾

    野村参考人 八十七号条約承認に関する案件が出ますと、これに関係のある、それに抵触する部分の国内法は、憲法第九十八条第二項によって直さなければなりません。その限りにおいては、私は国会は同時に問題にすべきであろう、こういうふうに考えております。
  99. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 どうも、政府の意図を聞かれているわけですが、はっきりわからないわけですけれども、ただ、政府のほうでは何べんも法案を提示し、全然審議が進まなかった、国会での討論もなかったという中で、依然として同じ法案を出しているという状態じゃなかろうかというふうに考えるわけです。
  100. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私は最初から主張申し上げておりますとおり、やはり八十七号条約は純粋に取り上げるべきだ、からましたところに非常に問題が出てきたのじゃないか、また、からましたついでに一方のほうもこれにからますというようなやり方は、やはりまずいのじゃないか。本筋に返っていただきたい。したがって一括審議のやり方は、特に人事局の設置などということまでこれにからますということは、どう考えてみましても納得のいかないことじゃないかと考えております。
  101. 大場鐘作

    大場参考人 私はその点はどっちでも差しつかえないのじゃないかと思います。国会でおきめになることでありますから、私どもがどうこう言う筋合いのものではないと思います。
  102. 村田為五郎

    村田参考人 この点、私も同感でございまして、国会でおきめになる問題でありますから、その点どうこう言うことはございません。
  103. 栗山礼行

    ○栗山委員 再度御意見を伺わないことにいたします。私の申し上げておるととが寸足らずで、明快なお答えを求めたかったのでありますけれども、時間がございませんから、つつしんで拝聴したということにとどめておきたいと思います。  その次にお伺いを申し上げたいのでありますが、これも関係の先生全体でけっこうでございます。御承知のとおり、労働問題懇談会答申が出てまいりまして、政府はこれに基づく閣議で、ILO批准、これに関連する問題に取り組む、こういう経過を生んだと承知をいたしておるわけでありますが、ただこの中には、御承知のとおり、労働問題懇談会答申の内容のうちで政府の御都合のいい場面のみをとらえて取り組んでいらっしゃるということも否定することはできません。同時に、公務員制度調査会が三十年十一月十五日に答申をいたしておると思うのです。私は資料を持っておるのでありますが、当時のわが国公務員制度について沿革から具体的な問題点方向を示されておるわけでありますが、答申を尊重する立場に立つ政府が、今度の公務員法の改正にあたりまして、これを全的に否認をされて、御都合のいい部面のみをとらえて公務員法及び地方公務員法の今回の改正に至っておると思うのであります。もう一点、御承知のとおり臨時行政制度調査会は、まだ最終的な答申は出ておりませんけれども、その過程では中間報告等もなされておるわけであります。私はいつかの国会で文書をながめたのでありますけれども、行政制度の問題については部分的にこれを改正しない、行政制度調査会の答申を待って、ひとつ総合的に行政制度の抜本的な改正をはかりたいということ、これは池田総理みずから言われた内容でございます。しかるに今度の問題を考えますと、人事院といわゆる人事局の設置、こういう分割と申しますか、あるいは分担と申しますか、いろいろ表現のしかたはあろうかと思うのでありますが、これはわが国公務員制度及び行政制度についての抜本的な問題を含む問題であるやに私は承知するのであります。これらの点から、労働問題懇談会及び臨時行政制度調査会、公務員制度調査会等の答申を尊重する立場を否定いたしまして、今度の国家公務員法地方公務員法改正を行なわれておる、こういう問題のとらえ方を私はいたしておるのでありますが、こういう一つのとらえ方について先生方の所見を承りたいと思うのであります。
  104. 野村平爾

    野村参考人 労働問題懇談会の結論がどういうふうに取り上げられたかということですが、思い起こせば、三十四年でありますからあまり明確ではありませんけれども、あのときは国内法改正と全逓の正常化ということを条件として批准すると言いましたが、その全逓の正常化のほうはおやめになったことは事実でございます。国内法は一緒にやる、こういうことであって、国内法の内容としては公労法地公労法を当時問題にしておったと思います。私たちの個人の考えとしては、公務員法の中にも八十七号条約に抵触する問題があるぞということは申し上げておったわけです。たとえば登録制度といったようなものでございます。だから八十七号条約批准をなさるならば、それと抵触する部分だけをお直しになるということはけっこうだと思います。それ以上の問題になりますと、何もそう急いでおやりになる必要もない問題がたくさんあるのではないか。私のほうから申し上げますと、行政制度の審議会とかいろいろのものをつくっておられますが、一体しまいにどういうふうに調整をなさるのだろうかということを実は見守っておるというのが実情であります。しかし労働問題については、やはりはっきりした線はこのILO批准という線に沿ってだけはお出しになっておかないと、行政制度の審議会等においてもILOの考え方についての御理解が十分でないというようなことがあっては困るというふうに私は考えております。
  105. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 労働問題懇談会にしても、公務員制度調査会にしても、臨時行政制度調査会にしても、政府のほうでは必要があって設けておると思うのであります。当然その答申を行政に反映をしていこうということで設けておると思いますので、そういうような委員会的なものからこの答申が出ましたら、当然それを実際の行政に反映していく、これは当然じゃなかろうかと思うのであります。
  106. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私は冒頭からそういうことをはっきり申し上げておりますので、あらためて申し上げる必要はありませんが、いわゆる倉石案なるものがございますが、内容を拝見しますと、中央交渉にしても、諸先生方から御意見がございましたが、内容的には非常に具体的な内容というものは伴いませんし、その他の点についても、人事局を許したかわりにという形では、これは組合としてもおかしい内容ではないかと思います。そういう前提で根本的にひとつゆっくりということでなくて、次の機会に急いでひとつ御検討願って、この際はそういうことが取り入れられないから自民党のほうでもこれはしようがない、あるいは社会党のほうでも流してしまうのだ、こういう態度はぜひおやめ願いたい。八十七号条約は純粋に取り上げて両方ともこれを御決定願いたいと思います。
  107. 大場鐘作

    大場参考人 私は、先ほども申し上げましたように、この労働問題懇談会答申の基本線にのっとっていない政府原案が出ておった、したがって今日の混乱を及ぼしてきておると考えております。だからできればもう一度振り出しに戻って、答申を尊重するという立場で対処すればよいのじゃないか、これが基本的な考え方である。しかし、ここまでこじれてきたものを、いまさら返せといっても無理だから、社会、自民両党の話し合いのついたものを基本線として考えたらよかろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
  108. 村田為五郎

    村田参考人 行政機構の改善につきましては、いろいろの機関で御検討になっておることはそれぞれの意味があろうと思いますけれども、しかしその間の意思の統一というものが十分はかられておるのであろうかという点については多少の疑念を持っております。しかしながら、ILO八十七号の批准案件はぜひとも承認しなければならないということは、全くそれと関係なしに必要なことだと思っております。
  109. 倉石忠雄

    倉石委員長 栗山君、時間ですが……。
  110. 栗山礼行

    ○栗山委員 それじゃもう一点だけで終わります。人事院の問題については、非常に重大な問題で伺いたかったのでございますけれども、時間がございませんからこれをひとつ留保いたします。  最後に、公企体及び地方公企体の従業員に労働三権を与えるという意見がかなり強いものがあるのでありますが、これについて先生方がどのような御意見を持っていらっしゃるか、これだけをお伺いいたします。
  111. 倉石忠雄

    倉石委員長 栗山君に申し上げますが、ただいまお尋ねの点は、先ほど来しばしばお話があったとおり、あなたはそこにおいでになって御聴取なさったことと存じますが、いかがですか。
  112. 栗山礼行

    ○栗山委員 それでけっこうです。
  113. 倉石忠雄

    倉石委員長 質疑をなさる方に申し上げますが、参考人各位にお約束の時間をすでにはるかに超過いたしておりまして御無理を願っておる次第でございますので、午後五時に終了いたしたいと存じます。したがって残余の方々は、ひとつ質疑の問題点を明らかにして、きわめて簡明にお願いをいたしたいと存じます。野原覺君。
  114. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間もございませんようですから、私は簡潔に申し上げたいと思います。先ほど私の同僚の小林委員から、本日の参考人の先生方の中にお一人ぐらいでも政府原案に賛成する方があったのではなかろうか、そういう予想されたことの意味において私は期待に反したという発言がございましたが、実は、同僚ではありますけれども、私は小林さんとその考えを異にしておるのです。私は、本日は労働界の代表の先生、評論界の代表のそうそうたる方々がお越しになられましたので、これは政府原案に賛成するどころか、河野・倉石話し合いというものは最もレベルの低いものではないか、こういうような御意見があるだろうと思っておりましたところ、案にたがわず、そういう意味において私の期待にお答えいただいて、実は非常に愉快に思っておるのでございます。  そこで特別委員長に、私はこの機会に御要望申し上げたいと思いますが、日本の学界なり日本の評論家の方なり、今日労働問題に関心を持たれる学識経験のあられる方々は、少なくとも八十七号の批准はこの国会で何としてもやり遂げなければならぬし、批准に伴うところの国内法改正は、八十七号の精神に沿って行なわれなければならぬ。団結権を制限するということではなしに、団結権保障の角度で国内法を考えていかなければならぬ、これが圧倒的な国民の声だろうと思うのであります。そこで特別委員長は一そうの勇気を持たれて、あなたが河野さんとの間におまとめになられたその線を実現されるように、私はまずもって御要望いたしておきたいと思うのであります。  第一問は、これは慶谷先生と竪山先生にお尋ねをいたしますが、八十七号条約批准は、もう先生方に申し上げるまでもなく、ILOに対して日本政府団結権の保障を約束することである。団結権の保障を約束するということは二つの意味がある。それは団結権の保障に違反する、阻害しておるところの立法はこれを削除する、公労法四条三項、地公労法五条三項等であります。その次には、団結権を保障する立法を一そう推進しなければならぬ。この二つのことが、私は八十七号条約批准団結権保障の中身であろうと思うのであります。そういう意味において、国内法の整備にあたっては団結権制限の国内法というものではなくて、これはあくまで毛前向きの、団結権を保障する国内法に整備しなければならず、もし団結権制限のものであるということであれば、これは八十七号の精神にそむくものだ、私どもはこういう考えで国内法審議に臨んでおるのでございますが、これは間違いでございましょうか。お二人の先生の御意見を簡潔にお教え願いたいと思うのであります。
  115. 慶谷淑夫

    慶谷参考人 いまおっしゃたお説はもっともであると思います。
  116. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私もさっきから強調しておりますとおり、そうしたい、こう思っております。
  117. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そこで竪山先生にお尋ねをいたしますが、先生の先ほどのお話の中に、八十七号条約批准を純粋に考えたらどうだ、関係国内法については公労法四条三項、地公労法五条三項の削除くらいにとどめて、あとは抜本的にゆっくり時間をかけて考えていったらどうだというお話があったように私は記憶いたします。そこでこれは先生に失礼でございますけれども、申し上げるまでもなく、憲法の九十八条の二項によれば、条約法律の上位規範ということになっておる。八十七号条約批准されますと、この条約の内容に抵触する法律条約違反としてこれは許されないということになる。そうなってくると、少なくとも八十七号条約批准するにあたっては、条約違反の国内法はやはり残しておいてはいかぬのだという角度からでも、その他の国内法の整備をしなければならぬと私どもは考えておるのであります。もちろん今日の国会情勢を竪山先生御心配になられて、もし八十七号条約批准が流れるということになればたいへんだということでのお話だとは思いますけれども、今日の国会というものが、今日批准ができなければ条約が一年間で有効だから一年の間に国内法の整備ができるか、八十七号の精神にぴったり合った団結権の保障を前向きに持っていくような国内法の整備ができるかといえば、残念ながら日本国会は今日そういう状態にございません。そこで私どもは、これは非常にたいへんなことではありますけれども、八十七号条約批准をきっかけに、少なくともこれに抵触するところの法規は直しておこうじゃないか、こういう考えで臨んでおるのでございまして、この点については若干先生と御意見が違うかと思いますが、重ねて私どものそういう考えに対する御批判があれば承っておきたいと思うのであります。
  118. 竪山利忠

    ○竪山参考人 私は、そういうことは大事だからひとつゆっくりというのではなくて、別途の機会でひとつこれを進めていただく、団結権ばかりでなくて、争議権からあるいは団交権について御検討を願う、こういうことで中途はんぱな一つの改定はやめたらどうかという私の考え方でございますから。
  119. 野原覺

    ○野原(覺)委員 非常に急ぎます。その点は若干、先礼でございますが、考え方が違うようであります。  野村先生にお尋ねいたします。  先ほど御質問がありましたけれども、九十八号条約の第六条の問題、これは先生から御説明がありましたように、昨年末の公務員専門家会議で、この問題は公務員にも適用するような方向に持っていくという意見が圧倒的であった、こういうことのようでございますが、とは申しましても、現実に九十八号条約の第六条には、公務員という文字がうたわれておって、適用除外が規定をされておる。こうなってまいりますと、この公務員の解釈ということがやはり現行法の問題として出てくるわけです。私は、これはいろいろな文献で読みましたが、この公務員というのは一般の公務員をさすのではない、これは国の行政に従事する公務員誤解だ、こういうことを書いた権威ある書物も二、三あるのでございますが、この点先生の御見解をお教え願いたいと思うのであります。
  120. 野村平爾

    野村参考人 その点については英文とフランス文の使い方が違いますので、それで議論があるわけです。議論がありますので、その議論を越えて、地方公務員であろうと国家公務員であろうと、特に国家公務員を中心として、公務員専門家会議のほうでは、将来これは条約を直していく必要があるだろう、こういう考え方を出したということを申し上げたわけです。ですから、だんだんそういう方向に向かっていくであろうということを予測しての発言でございます。
  121. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この一点で終わります。最後に村田先生と大場先生とお二人にお尋ねをしたいと思います。  それは世間で俗に言われておる日教組の中央交渉の問題です。先ほど大場先生の御発言の中にもこれは的確にございました。慶谷先生からもお話があったのですけれども、一体教員の給与とか勤務条件というものは、現行法が教育行政は地方分権のたてまえをとっておるにもかかわらず、中央で決定しておるわけなのです。人事院が給与を勧告すると、文部大臣がそれに口をいれるわけです。そうして教員の給与は国家公務員の給与に準ずるということになっておる。だから、地方、都道府県では現行法でこれを自由に動かすことができるのであります。それからまた、教育立法の立案権というものは文部大臣が持っておるのであります。たとえば学級編成ですね、これは法律で「四十九人を標準として」ときめられております。その四十九人を、今日日本の学校の先生方は、四十人にしてもらいたいという運動をしておりますけれども、これを知事や市町村長に持っていったって、これは何の運動にもならぬ、どうしても中央に持ってきて文部大臣にお話を申し上げなければならぬ。こういうような給与とか勤務条件その他、たとえば時間外の勤務手当の問題がございます。教員には時間外勤務手当は支給されないことになっている。ところが千葉県の人事委員会が教員にも時間外の勤務手当を支給すべきだという決定をして、そうして千葉県の教育委員会にこれを申し送った。千葉県の教育委員会文部大臣に問い合わせした。そうしたら文部大臣からそれはまかりならぬと、こうきたわけですね。こういうように教員の給与とか勤務条件とか、しかも教育の予算編成権、教育立法の立案権、それから知事、市町村長に対する、教育委員会に対する文部大臣の指導助言、こういうものがありますから、どうしても今日教員諸君が団結して一つの団体を持ちまして、中央に向かって話をしていかなければならぬのであります。これはどうしても話をしていかなければならぬ。そのことを私どもは口をすっぱくして実は主張しております。この点に対して、一体そういうような中央との話し合いを要求することは間違いか間違いでないのか、これは村田さんと大場さんの御意見を承りまして、終わりたいと思います。
  122. 村田為五郎

    村田参考人 私、午前中申し上げたのでございますけれども、話し合いをなさるという点につきましてはこれはいいのではなかろうか。いろいろ不服の点もございましょうし、御意見をお述べになる点もございましょうから、その点につきましては、一応話し合う機会を、場を、何らかの形でお持ちになるということは必要ではなかろうかと思っておりますけれども、しかしながら、法律関係から申しますと、中央交渉ということはどうも適当ではないのではないかという意味でございます。
  123. 大場鐘作

    大場参考人 私もその点は、中央で話し合いをするということは当然だと思います。ただそういう点になりますと、三公社あたりも同じような問題が出てくる可能性はあると思いますが、教育の場合には、必ずしもその勤務条件だけでなく、教育行政の上においても私は話し合いをすることが当然ではないか、しかし、それにはやはり話し合いをするルールというものがありますから、これは組合のほうもルールを守って、正常な形で話し合いをするということが必要になります。
  124. 野原覺

    ○野原(覺)委員 以上で終わります。
  125. 倉石忠雄

    倉石委員長 なお山田耻目君、田口誠治君、吉川兼光君の三君の御質疑があるわけでありましたが、諸般の状況に御協力を願うことになりまして、御中止になりました。よって、これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかせられましては、御多用中のところ、おそくまで長時間にわたって貴重な御意見の御開陳を願いまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は、明三日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会